#俺は大学あるけどキャンパス内にあったかスペースとか���々あるし
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母、日本の友達呼んでも全然来てくれないからガチですみちゃんに来て欲しいらしい
「人が来るってなると掃除も捗るし!」って喜んでる
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【黒バス】Bye bye by Bye bye
2016/05/03発行コピー本web再録
封された手紙と一緒にお渡ししておりました。
手紙の中身の一文は最後に入れておきます。
この感情に色をつける。そうすると、俺は何色の絵の具を手に取れば良いのだろう。
悲しみはブルーで、イエローはハッピーだ。恋だったらピンクで、情熱レッド? いいや情熱はバイオレットかもしれない。『危険信号』は赤と黄色で、緑は『癒し』。或いは運命。
いつの間にか、俺たちの感情は、大昔に誰かが塗り分けた姿をそのまま使わされていることに気づく。まるで神様みたいだよな。一番最初に、空を青に塗ったみたいに、夕焼けを橙に染めたみたいに、夜を闇色にしたみたいに、俺たちは決められた色で動いている。赤は止まれ。緑は進め!
別にそれに、文句��言う訳じゃない。ただ、教えて欲しいだけなんだ。正解があるなら、正解であるに越したことは無い。一度色を塗ってしまったら、上塗りできる保証なんて、どこにもないだろう。
なあ、俺って今、何色なんだ?
一番最初のピカソでも、モネでもダリでも、或いはエジプトの壁画を描いたような古代人でもなんでもいい。誰か教えてくれないか。俺のこの感情は、果たして何と呼ばれるものなのか。
なあ、お前だったら、俺を何色に塗ってくれるんだ?
*
「真ちゃんさあ、これ版画の授業ってわかってんの」
「もちろんだ」
「版画ってさあ、こう、なんかさ、ざっくり線をとってさ、大まかな形を表現してさ、そんで自由に色を塗るようなもんだなって、俺、思ってたんだけど」
「そうか」
こんなやり取り、前にもした気がする。した気がする、というか、間違いなく、したんだよな。覚えてるし。あれはいつのことだったっけ。確か、校庭のど真ん中で、俺とコイツは並んで絵を描いていた。油彩の授業だったんだ。空から鳥の糞が落ちてきて、真ちゃんは嫌そうな顔したんだっけ。青空と、強い風。何処かから飛んで来たコンビニのビニール袋が、夢みたいに空を舞い踊っていた。
写真みたいに覚えているのに、細かい所がぼやけている。
まあ、過去は過去だ。今は今。油彩じゃなくて、今学期の課題は版画。風のない教室の、後ろの方に陣取って、俺は緑の頭越しに、どう贔屓目に見ても版画には見えない風景画を覗き込んでいる。
美術の授業は大概自由だ。思いっきり大声で喋っていても、席を移動しても、なんなら、他の教科の宿題をやっていても怒られやしない。自由な感性が自由な作品を生む、だとか、なんとか。そういうポリシーらしい。ホントか? ただまあ、そうは言っても秀徳高校、自由には責任がつきまとう、ということで、提出期限が一日でも遅れれば落第、中身が酷ければ容赦なく赤点、泣きつけば減点。恐ろしい世界。
「お前、下絵の段階でその細かさで、どうやって彫る気よ? マジで一生かかっても終わんねえだろ」
「馬鹿が。誰がこれを彫ると言った」
「いや、え?」
戸惑う俺を他所に、真ちゃんは淡々と、教室の風景を白い��ャンパスに写し取っている。写すとは言っても、動き回っている生徒たちは軒並み存在を消されて、そこに描かれているのは、がらんどうの教室だ。がやがやと、ざわざわと鼓膜を揺らすあらゆる感情のお喋りと、面前のキャンパスの静けさが噛み合わなくて違和感しかない。精密な筆致のせいで、余計に奇妙に見える。机の上の落書きも、汚れたままの黒板もそのままなのに、それを生み出した筈の人間がいない。いやでも視界に映る、沢山の制服と喧騒、その全てが排除された白黒の教室。
「え、じゃあお前、何描いてんの」
「見たままだが」
お前の目には邪魔な生徒は映ってねえのかよ。怖ぇよ。
というのは、まあ冗談として、見たまま、見たままね。じいっと見つめる俺など知らん顔で、テーピングされた左手は着々と教室を完成させていく。鉛筆の粉がこぼれて、指先が僅かに黒ずんでいるのを、俺は黙って見過ごしている。
「いや……版画の下絵じゃねえの?」
「彫刻刀など、一歩間違えれば手を傷つけるようなもの、使うわけが無いだろう」
「いや、それは、まあ、ちょっと思ったけどさ、いやでも、彫らずに版画とか無理だろ」
「お前が代わりに彫ってくれるんだろう?」
「絶対にお断りだわ! どんな苦行だよ!」
冗談だ、と真ちゃんは嘯くが、ここで俺が「やってやるよ」などと言っていたら、マジでやらされていた気がするので油断ならない。真ちゃんは案外、目的のために手段を選ばないずるい男なのだ。ホントの話ね。その目的のほとんどが、まあ一般的には害のないものなので、あまり周囲に伝わらないだけである。こわい奴だよ。
今だって、真ちゃんの目的はこの風景画を完成させることにあるので、さっきから話をしている俺のほうへ振り向いてもくれないのだ。あーあ。優先順位がはっきりしてやがる。
こっち向いてよ。見ればわかると思うけど、お前の隣には今、俺がいるんです。
「教師には、版画は絶対にやらないと言ってある。例え成績評価で最下点を付けられようが、なんだろうがな。とはいっても、授業中に何もしない訳にもいかないだろう。美術の授業なのだから、美術的なことを行うべきだ。代わりとして、油彩とレポート提出で代替評価としてもらうよう交渉した」
「はあ……そんなことできんの」
「監督に我が儘二十一回分で」
「マー坊に謝れや! いや二十一回分って、すげえんだか、そうじゃないんだかもよくわかんねえけどな!」
「授業の回数なのだよ」
「一回につき一ワガママかよ。節約してんじゃねえよ」
言ってしまえば、こんなの授業のボイコットだ。授業一回につき三ワガママくらいは使われて然るべきだろ。等価交換とは言わないが、最低限の仁義っつーか。なんつーか。
「だから水曜は二回しかワガママが使えん」
「なんで不満げなんだよ。二回も使えることに感謝しろよ。一般ピープルはゼロ回だからな」
まあ、真ちゃんの手を傷つけたくないのはバスケ部の総意だ。どんなに腹立たしくても、こいつの手が毎週水曜四限に傷ついてたんじゃ話にならない。というか、それこそ俺が見ていられなくて代わりに彫ってしまいそうだ。奴隷根性極まれりってか。手を止めて消しゴムを探しているらしき瞳に、俺はそのへんに転がっていた消しゴムを放り投げる。こうやって、言葉にされる前に甘やかしてしまうからいけない。わかってんだけどなあ。
マー坊も苦渋の決断だったろうな。そんで、なんで美術の教師はオッケーしたんだよ。普通に考えたらありえねーだろ。自由か。これも自由の一環だっていうのか。
「うっわ、緑間、ナニやってんの」
「真ちゃんさあ、彫刻刀使わねえかわりに油彩なんだってよ」
「うーわ、相変わらずだなお前」
「うるさい。これが人事を尽くすということなのだよ」
立って騒いでいた三村が、真ちゃんのキャンパスが目に入ったのか、ずかずか近づいて悲鳴をあげた。そりゃな。版画でこれやろうと思ったら気が狂うよな。でもちげーんだよ。こいつは既に先生に交渉済で、何故か一人だけ油彩をやるんだよ。高校生が、教師の作ったカリキュラムに逆らうって、なかなかどうして、普通できねえもんだけどな。
三村は、どへぇ、だか、うひゃあ、だか、意味の無い雄叫びをあげて真ちゃんの絵を見ている。真ちゃんはもう会話は終わったといわんばかりに、黙って己の作業を進めている。そうして、窓の外は青い。昔のように青い。覗き込めば、校庭で馬鹿みたいに笑ってる俺がいそうな気がする。
気がつけば、三村はもう元の位置に戻って騒ぎを広げていた。机が揺れる音、椅子が床をこする音、笑い声、叫び声、どうでもいいお喋りと、低く聞こえてくる誰かの愚痴。誰かが空気を震わせるたびに、そこが色づいていく。黄色い声、赤い叫び、緑の音、青い響き。多分世界中で、ここがいま、一番雑多にうるさいんだろうな。
「ってかさあ、真ちゃんクラスメイトも書こうよ」
「何故」
「何故って、これ風景画だろ?」
「あんな動き回る喋り倒す輩を、一人一人���いていたら、それこそ終わらないのだよ。風景画だからこそ、人を配置する必要性は無いだろう」
「まあ、そりゃそうかもしんねえけど」
教卓の歪みも、窓の外の街並みも正確なのに、生徒たちがいないだけで全く違う教室だ。段々と完成されていく世界があんまりモノクロなので、俺は何故か不安になる。白と黒の線だけの世界は、ちょっとぞっとするほど冷たい。
「お前だけ描いてやろうか」
「えっ」
「この課題��終わるまで、一ミリも動かずに静止して黙っていられるならな」
「死ねって言ってる?」
「親切心だ」
お前も、人のばかり見ていないで、自分の課題をやったらどうだ。
そう顎で示された先は、今日の授業開始からほとんど進んでいない俺の下絵だった。そもそも何を描いているんだ、と言う真ちゃんには、俺の半分も進んでいない下絵じゃ何も伝わらないらしい。テーマ? テーマはね、体育館。いっぱい見てるし、床と壁しかねえから楽かと思って。ちなみに、バスケのゴールリングは省略してある。ゴールは描くために存在してるわけじゃないから、いいんだよ。
「遅れれば落第」
「あー! あーもう分かってるよ! くっそ、油彩の奴には負けたくねえ。油彩で合格して版画で落ちるのは勘弁」
もういっそ、下絵なしに彫ってみたら、味のある絵になるんじゃねえ? そう思って、試しに適当な所に刃を入れてみたら、木の欠片だけが無意味に散った。ぱらぱらと、木屑が落ちる。強くやりすぎたのか、深く抉れて、一箇所だけ穴があいたようだ。三角形の、あなぼこ。
「おい、高尾、飛ばすな。木屑があたってるのだよ」
「うるせー」
がりがりと、彫る。がりがりと。がりがり、がりり。意味のわからない奇妙な曲線が生まれて、俺もなんだか不思議な気分だ。楽しいような、気持ちいいような、妬ましいような、何か。体育館の床が、丸く抉れていく。
「勢いよく、いきすぎじゃないか」
「いーんだよ、こんくらいで」
「後戻りできないのに、よくやるな」
後戻りできないのにね。ホントにな。俺は彫っていく。体育館? いいや、目に見えない、俺の中の何かの景色を。
多分、今期の美術、評価ヤバイな、これ。
*
バッシュの靴紐は右から結ぶ。俺じゃあなくて、真ちゃんの話。真ちゃんの、結び目は、とても綺麗だ。性格出るよな。右と左が綺麗に対称になっていて、紐は長すぎず短すぎず、バランスを保って鎮座している。なんだろう。あるべき姿として、おさまってるんだ。紐ひとつに言い過ぎかもしれないが、こいつの場合は一事が万事これなのだ。鉛筆は絶対に芯が尖っているし、ハンカチはいつも縦に二回、横に二回畳まれてポケットに入っている。
俺はといえば、シャー芯は使い切る前に無くすし、ハンカチなんて持ってりゃ御の字、鞄の底で無限に折れ曲がっている。靴紐は何故か滅茶苦茶右上がりになるんだよな。自分でわかっちゃいるが、わかっただけで綺麗に結べりゃ問題無い。
「高尾交代! 多野上はいれ!」
「ハイ!」
「スリーメン五本、バック走三、残りケーオージャンプ五十、先頭水城、はじめ!」
「はい!」
喉に細かい罅が入ったような熱がある。それでも体育館中に響くような大声で、俺は必死に数を数える。
イチ、ニ、サン、ニ、ニ、サン、サン、ニ、���ン、ヨン、ニ、サン。五回目、飛んだ瞬間に汗で滑って、顔が引きつった。下手な転び方しても、着地しくっても、すぐに捻挫だ。必死に体制を立て直しながら、俺は声を出し続ける。ロク、ニ、サン。
コートから出て、一瞬も休ませてもらえない。練習なんて、地獄の代名詞。至るところの筋肉が悲鳴をあげている。脛が剥がれ落ちそうだ。上げっぱなしの腕は震えて、そろそろ感覚が無い。血流が、必死に酸素を運んでいるのがわかる。指先から、脳みそのてっぺんまで、どくりどくりと脈動している。口の中に血の味がする。真っ赤な世界。
「そこまで! 一分後ランニング十周、そのままAB分かれて一ゲームだ。水分忘れるな!」
水飲んだら吐くけど、飲まなかったら死ぬな、って、冷静なところで考えた。体は今にも体育館に倒れこみそう。倒れたらもう、今日は試合に出させてもらえないだろうから、必死にふんじばっている。下を向いたら吐くから上を見上げている。体育館の照明が目を焼いた。視界の端には、緑色した頭がよぎる。視線をそのままスライドさせれば、そいつは浴びるように水を飲んでいた。マジかよ。バケモン。
「真ちゃん、さあ、そんな一気に飲んで、腹、やばくねえの」
「問題無い。飲まない方が死ぬだろう。恐らくマラソンのあと、水分補給の時間はないぞ」
「うそだろ……、いや、そっかマー坊言ってねえわ、くっそ」
「高尾、靴紐」
「あ?」
「あぶない」
近寄りながら、わざわざ指で指し示されたのは、俺のバッシュの右側。いつの間にか紐が解けて広がっている。もしかして、さっき滑った時に踏んづけたか? このままじゃ間違いなく転ぶ。自分が転ぶだけならまだしも、他の奴まで転ぶだろう。
結び直さないといけない。わかってる。当たり前だ。わかってる。
「ちょい待って……」
「何を待つのだよ。さっさと結べ。他の奴の邪魔だ」
「わーってる。わーってるけど、今しゃがんで、下向いたら、間違いなくヤバイ。リバース確実」
「……そういうことか」
呆れたような溜息に、心臓にまで罅が入る音がした。軋みをあげて唸っている。どくりどくりと流れていた血が、そこからじわじわ染み出していく。悪かったな。お前とは違う。情けねえ。動けねえ。畜生。
「全く、だからお前は駄目なのだよ」
「うっせ……」
ただ上を見ることしか出来ない俺に、覆いかぶさるように緑色の影が刺す。俺を見下ろす瞳は、逆光になっていてよく見えなかった。どつかれるか、冷たく諦めろと言われるか、どっちだろうな。腹を殴られて強制退場すらありえる。そんなことを俺が考えているなんて露知らず、溜息と一緒に、真ちゃんは、ふっと、しゃがみこんだ。
「は? え?」
「こっちを見るなよ。下を向いたら吐くんだろう。俺の頭にかけたら許さないからな」
「���、えっ、真ちゃん、俺」
「もう休憩が終わる。待ってられるか」
ごついバッシュに神経など通ってやしないが、気配だけで、真ちゃんが何をしているのかなどすぐわかる。しゅるしゅると、擦れる音、足首に、僅かな刺激。俺の靴紐を結んでいる。こいつが。緑間真太郎が。
「そもそも最初の結び目がゆるいんじゃないか? 結ぶの下手だろう、お前」
「うっせーよ……てか、余計なお世話だわ」
「そうか」
なら、次からは余計な世話をかけるなよ。
そう言いながら立ち上がったこいつは、確かに、かすかに笑っていた。ムカつく。悔しい。心臓が大きく動いて、血が染み出すどころか溢れ出ている。けど、それだけじゃない。顔に熱が集まっている。嬉しい。照れくさい。恥ずかしい。お礼を言うのも変な感じがして、茶化そうにも言葉が無かった。口だけを馬鹿みたいに開けて、餌を待ってる雛鳥かよ。俺が何も言えない間に、ホイッスルが空間を切り裂いた。
「これでマラソン中にへばったら、笑ってやるのだよ」
「うっせー、ぜってーに負けねえ。お前こそ疲れたへろへろシュート撃って外すんじゃねえぞ」
「誰に言ってる」
走る。怒声に応えるように、走る。走って、走って、もつれた足で、走る。下は見ない。腕を振れば、体は勝手に前に出る。床なんか見なくても、俺は足つけて走っていられる。顔をあげて、先頭をひた走る緑色の弾丸を睨みつけた。
「やめ! ゲームするぞ! 別れろ! チンタラするな! 走れ!」
才能を軸に、努力を装置に、意思を燃料に変えて、誰より早くひた走る、一つの、弾丸。高く高く撃ち上がる、ミサイル。天井すれすれから、地面を穿つように叩きつけられる、兵器にも似た何か。
あれはお前だ、お前のエネルギーそのものだ。お前の感情を、一つの球体に詰め込んで、お前はそれを撃ち上げる。
呼吸だってままならないような汗の中で、俺はそれを必死に見届ける。本当に、もう、一歩も動けない。声だって出せない。ブザーの音と、床に転がったままのボール。いつかあれが爆発したら、きっと世界は終わるだろう。誰も逃げられやしないんだ。いつか、あのボールが爆発したら、俺にトドメを刺すだろう。今はまだ、俺は、ブッ倒れそうな体を必死に地面に突き刺している。
「……っ、ふ、倒れなかったじゃ、ないか」
「ぁ、っはぁ、はぁつ、っ、は、あ、たりめー、っしょ……」
整列に並びに行くのも、もう無理だ。そう思ったら、強く腕をひかれた。今度こそ思いっきり転びそうになるけれど、転ぶだけの足すらもう動いてない。引きずられている。腕が動けば、体は前に出る。腕を動かされれば、体は前に、進まされる。力技すぎんだろ。
「や、っめ、ろ、おい、はなせっ、て」
「整列だ。待てない」
「あるけっ、から」
「嘘をつけ」
靴紐、解けなかったろう。そう言ってこいつが楽しそうに笑うので、俺は思わず下を見る。綺麗な蝶々が、俺の右足にだけ止まっていた。左側の、なんと不格好なこと。笑っちまうね。笑っちまうが、下を見たのは、本当に失敗だった。
*
「お、高尾きた」
「あっれ、どうしたの酒井」
雨だった。そして俺は弁当を忘れていた。四限が終わった瞬間にダッシュかけた俺は、目的の焼きそばパンとカレーパン、あとキムチおにぎりをゲットすることに成功。授業が時間ぴったりに終わってくれたことが、今回の勝因といえるだろう。気分が良いのでおしるこでもついでに買ってやろうかと思ったが、冷静に考えて多分あいつは今日の分をもう持ってる。朝一で買ってたもんな。
戦利品を抱え、割と朗らかな気持ちで教室に舞い戻ったら、俺の席には酒井がいた。
「いやマジ聞けよ。緑間ガチうけんだけど」
「おい、やめろ」
「えー、なになに」
「いやそれが」
「やめろと言っているだろう」
俺が購買にパンを買いに走っている間に何が起こったんだ? 窓際一番後ろ、真ちゃんの席。そのひとつ前、俺の席。俺が昼飯を買ってくるのを一人待っている筈の場所に、酒井が座って爆笑している。いや、そこ俺の席だから。
緑間がマジうける、のは今に始まったことじゃない。だけど、真ちゃんがその内容を喋らせようとしないのは珍しい。基本的に己の信念と欲求に正直に生きている男だから、なんというか、恥��らいというものが無いのだ。
何を恥ずかしがることがある、人事を尽くした結果なのだよ。俺の生き様に、恥ずべきことなど何も無い。
恐ろしいスタンスだ。己の信念を裏切らなければ、何をしても良いと思っていやがる。まあ、ラッキーアイテムとか、説明するまでもねえけど。
普通の人なら恥ずかしくて出来ないようなことを、こいつは平気でやってのけて、それを一つも隠さないのだ。おかしいだろう。
「酒井、言ったらはっ倒すのだよ」
「や、緑間ってそんなキャラだっけ? こええ!」
「五月蝿い。さっさと消えろ」
蠅を追い払うようにして、真ちゃんは酒井を追っ払った。けたけた笑いながら退散する背中を、俺は見送る。真ちゃん、酒井と仲良かったっけ。そういや、この前サッカーのチーム分け一緒になってたな。そん時は、真ちゃん倒すのに燃えすぎてよく見てなかったけど、どうやら、真ちゃん、イコール、面白い奴認定、は広まったらしい。そりゃな。嫌でも一緒にいりゃわかるよな。一緒にいて分かんないんだったら、そいつの目はレンコンかなんかなんだろう。
「真ちゃん、どーかしたの」
「いや、別に」
「ふーん」
がさり、と音をたてて、ビニールに入った昼食を真ちゃんの机に置く。俺の分だけ半分スペースをあけて弁当を広げていた真ちゃんは、こちらの準備が整うのを黙って待っている。チャイムが鳴って、何にも言わずに走り出したのに、待っててくれるんだから、こいつも大分まるくなったというか、なんというか。餌付けに成功したらこんな気持ちなんだろうな。そ��は、ちょっとだけ俺の心を満たす。
「酒井と何話してたのさー」
「別に、と言っただろう。お前には関係ないのだよ」
でしょうね。そうだろうよ。多分、本当に、どうでもいいことなんだろう。真ちゃんが毎日ナイトキャップかぶって寝てるとか、ラッキーアイテム保管用の部屋があるだとか、案外AVは女教師ものが好きとか、そういう感じの。多分、俺も知ってるような、或いは、知らなくても何も問題ないようなこと。知っても仕方がないこと。
「気になるなー気になっちゃうなー」
「しつこい。さっさと食べるぞ」
「へいへい」
誰も知らなくても問題ないようなことで、人間って出来上がってる。高尾和成が、何を好きだろうが、嫌いだろうが、家で何してようが、関係ない。幼い頃の初恋の先生の名前だとか、未だに捨てられないBB弾が入った、缶からの存在だとか、そういうの。そういうものの、寄せ集めで、俺の体は出来上がってる。きっと誰だって、そうだろう。
だけど、俺は、何だかいたたまれない気持ちになる。俺の知らない緑間真太郎がいることに。俺は知らないのに、俺じゃない誰かが知っている、緑間真太郎が存在していることが。
「聞いてよ真ちゃん。俺本当に今日勝ち組でさ」
「何が」
「焼きそばパンとカレーパンダブルでゲットした」
「何だと? どんな裏技を使った」
「いや走っただけなんだけどさ」
だから俺は、馬鹿みたいに喋り倒す。どうでもいいこと。知らなくていいこと。知ってほしい、こと。
くだらない、どうでもいいものが組みあがって出来上がった、俺のカラダと血肉を、お前には知っていて欲しい。
雨がざんざか降っている。俺は結構、窓越しに聞くこの音が好きなんだけれど、お前は果たしてどうだろう。どうでもいい、知らなくていいことを、俺は何故だか、知りたくなる。灰色の雨が降っている。
*
「お兄ちゃんはさ」
「うん?」
「誰かになんかあげたいとか、思ったことないの?」
「なんじゃそりゃ」
夜、リビングのソファでテレビつけながらゴロついていたら、何やら妹ちゃんが不審な動きで台所に立っていた。普段料理なんて、てんでしないくせに。がさごそと、音を立てて動き回っている。台所は、料理をする場所だ。まさか包丁探して誰か殺しに行くわけでもあるまいし。とすると、へえ、なんか作って持っていくのか。
でもバレンタインって結構最近終わったばっか。ていうかコイツ、バレンタインに友チョコとかする可愛げも無かった気すんだけど。マジでどうしたんだろうな。
「彼女いないの」
「あ? そういう話? 彼女ができたらちゃんとプレゼントしろってこと?」
「違うよお、まあ、それはそれで、そうなんだけどさ」
起き上がりもせずに声だけを寄越す俺に、妹ちゃんも淡々と、姿のない声だけを返す。
「私が彼女だったら、イベント及び記念日ごとにプレゼントを所望するね。そんでもって、他の人と遊びに行くときは必ず報告するようにしてもらう」
顔が思わず引き攣るのを感じる。単純に怖い。何が怖いって、俺の妹は、なんというか、割と俺に似て、人生楽しんだもん勝ちというか、あまり何か���執着しないタチなのだ。
周りの空気を壊さない程度には合わせるけれど、自分の好きなことだけをやってるタイプ。それがこんな、こと恋愛になると、束縛型というか、なんというか、女って怖い。
「えー……と、つまり、お前彼氏できたってこと?」
「出来てない。片思い。多分」
「多分って」
「脈なしじゃ無いと思うんだけど、なんか、人のことは分かっても自分ってなると、分かんないよね」
「ああ、成程」
台所で、恐らく調理器具を探していたのであろう音がひと段落して、今度はガシャガシャとボウルの音が聞こえてきた。普段料理の音なんて意識したこと無いけど、こうして聞くと、料理の音って、メシ作るのとお菓子作るので全然違うんだな。いや、お菓子とは限らねえのか。なんか勝手に、誰かに渡すんならお菓子って、そう思ってた。
「友達だったらさー、『それ絶対に脈アリだよ、長本くんも待ってるって、コクっちゃいなよー』とか言えるけど、自分となると、自意識過剰なんじゃないかとか、いやそうやって謙遜してる方が逆に変じゃないか、どう見ても私のこと好きじゃないかとか、ぐるぐるしちゃうよね」
「自覚してんのは良いけど、長本誰だよ」
「サッカー部のフツメン」
「イケメンじゃねえのか」
「お兄ちゃんよりカッコよくない」
「んー? それ俺のこと褒めてんの? けなしてんの?」
「事実。お兄ちゃんはフツメンの上」
あんまりにもな言い草に、思わず笑ってしまう。正直かよ。テレビでげらげらと、作りこまれた笑い声がする。別にテレビなんて見ていない。頭の中を空っぽにしたいだけだ。何だか最近、色んなことを考えすぎてお疲れの俺。学校楽しい、バスケ楽しい、生きてて楽しい。でも何か苦しい。たまに、ひどく、呼吸しにくい。心は簡単に体を裏切って、勝手に俺を息苦しくする。名前の無い、色も形も得体のしれないエネルギーが、俺の中でとぐろを巻く。
「そんで? なんかクッキーでも焼くの」
「大正解」
「わかりやすいな」
「わかりやすいから良いんじゃん。好きでも無い人にクッキー渡さないでしょ。しかもこんな時期に」
「成程。明快だな」
誕生日でも記念日でもない日に、突然付き合ってもいない奴からクッキー渡されたら、勘違いする方が難しい。俺もお菓子って、勝手に思ったくらいだし。だからこそ、渡すのは結構勇気いると思うけどな。
「迷ったんだけどね」
「何が? クッキー渡すか?」
「それもだし、何を渡すかっていうか。別にクッキーあげたいわけじゃないんだよね」
「うん? よくわかんねえな」
ガシャガシャと、音は続いている。クッキーって、こんなにずっと、何かをかき混ぜているもんなのか。ずっと、少し荒っぽい、音がする。恋をして、ウキウキしたリズムではなく、やるせない、大雨のような音だ。あらゆる感情をかき混ぜて、種を埋め込んでいる、音。
「何でもいいんだよ。ていうか、なんかさ、自分の持ってるもの全部あげたくなっちゃうの」
「お前そんなボランティアキャラだっけ?」
「うっさいなあ。そうじゃなくて、その人にはってこと。その人には、自分の持ってるもの、��部あげたくってさ」
「おお、恋してんな」
「恋だよ。これはマジで恋だよ。だってさ、あげたいだけじゃなくって、全部欲しいんだよ。意味わかんくない?」
「ソレ、分かるのか分からないのか、どっちなんだよ」
「そういう感じなんだよ」
分かんねえよ。あまりにもアホらしい会話に、考える方が馬鹿らしくなってくる。勢いと感覚だけで話しすぎ。コイツはどんな顔してこんな話してんのかと、ソファから起き上がって台所に向かった俺はちょっと後悔した。
「見返りが欲しいんだよね」
想像していたより、三百倍くらい、真剣な顔をしていた。全然楽しそうじゃなかった。むしろ、嫌そうな顔をしていた。手元でクリーム色になっている何かは、もう十分に混ぜ合わさっているのに、コイツは手を止めない。俺は何故だか、この遣る瀬無い物体を見て、バスケットボールを思い出す。感情の坩堝。あらゆる衝動を詰め込んだ、一つの爆弾。
「不純すぎねえ」
「だよねえ」
このクッキーは、あのボールと同じなのだ。爆発したら、死んでしまう。誰も逃げられない、致死性の爆弾だ。それを必死に溶かして、かき混ぜて、一つの形に、閉じ込めている。
誰かはそれを、信念と呼ぶかもしれないし、執念と恐れるかもしれない。大切な気持ちをありったけ詰め込んだけれど、どうでもいい物だって、一緒に沢山入れてしまった。
それは、俺の、或いは誰かの、全てなのだ。
「自分のものあげるのなんてさ、勝手じゃん。あげればって感じ。相手が欲しくなかったら捨てるだろうしさ、はいどーぞ、はいどーもって感じで、終わりじゃん。でもさ、欲しいんだよね。相手の全部知ってなくちゃ嫌だし、自分が知らないとこ出されると、ムカつくし不安になるし、でも全部なんて無理ってわかってるから、もやもやするしさ」
ガシャン、と一際大きな音を立てて、調理器具は洗い場に放り込まれた。
「何で無理って分かってんのに欲しがるんだろうね?何で無茶って分かってんのにやろうとすんだろうね? そんで、そこまで分かってるくせに、なんで心のどっかで期待してんだろうね?」
溜息と一緒にチョコチップが放り込まれていく。この一粒が、コイツの感情で、あの一粒が、コイツの感情だ。そうやって、感情を消化している。
「むなしいわ。むなしいけど、何もしないのも耐えらんないから、クッキー。本当は、全部ぶん投げたいし、全部欲しいけど、どうしようもないから、クッキー」
あー、もー、やだやだ。そう言って笑う顔は、俺によく似ていた。本当に、馬鹿だなあ。俺もお前も。
「やっぱお前って俺の妹だわ」
「はあ? 何当然のこと言ってんの」
「欲張りで、嫉妬深くて、でもへんに計算できるから上手いこと傍目には帳尻合わせて、その癖頑固だから自分の意思は曲げれずに、最終的に勢い任せに突っ走ってる感じが」
「あー、そりゃ、私だわ」
「だろ? ちなみに俺もだ」
「じゃあ、お兄ちゃんも恋してんの」
「してるね。こりゃ」
ほんと、やだやだって感じだよ。参っちゃうね。こんな所で、こんな形で、自覚する羽目になるなんて、な。妹ちゃん、お前のその爆弾は、思わぬところに被害を及ぼしているぞ。
「じゃあ、これあげるよ」
無造作に放り出されていた、透明な袋を一つ取って、俺の心臓に押し付けたこの爆弾魔は、やけに楽しそうな顔で笑っている。仲間ができたのが嬉しいらしい。
「十五枚セットしかなかったからそれ買っちゃったけど、別に十五回もクッキーあげる予定ないし」
まさかお兄ちゃんも恋する乙女だったとはね。それで、何か、あげればいいんじゃないの。
俺の中ではね、恋って、ハッピーピンクなイメージだったわけ。女の子がね、きゃいきゃい夢見て、男はそれにそわそわしてる。彼女欲しい、エロいことしてえって叫んで白い目で見られてさ、それ見てけたけた黄色く笑うみたいな。そう言う感じ。まあ別に何色でも良いんだ。なんかこう、しんみりした夕焼け色でも構わない。
けど、まさか、こんな戦場みたいな、沼地みたいな、何にも掬い取れない代わりに、全部に足を絡め取られるようなモンだとは思ってなかった。爆弾は俺の心臓に眠っている。
「高尾!」
「うっわ、びっくりした!」
「さっきから呼んでいるのに、お前が返事をしないからだ」
「へっ、マジ?」
「本当にどうした? 彫るのも進んでいないし、話しかけてもこないどころか、こちらが話しても気づいていないし」
「あ、あー、ごめんごめん。考え事。ぼんやりしてた」
お前のこと考えてたよ、なんて言える筈もなく、戦争と平和について考えてた、と言ったら怪訝な顔をされた。そんな顔を見れたことでさえ、なんだか嬉しくなってしまう。
全部知りたいし、全部知ってほしい。構って欲しいし、構いたい。驚く程今までの俺のアレコレは恋だったし、今だってそれの真っ最中だ。
「お前……本当に間に合わないぞ」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ、な、筈」
俺って鈍感だったんだろうか。いや、気づいては、いたと思う。俺の、この、不可解な熱に。ただそれに、恋という名前を付けるのを渋ってただけなのだ。友情ってタグを付けて、カテゴリ分けしていればよかった。その中で、親友とか、相棒とか、好き勝手なラベル貼り付けて、満足できるハズだったんだ。俺の心の中じゃ、俺が神様。俺の気持ちは、俺が決められる。それなのに、このザマ、笑っちまうね。
「ってか、真ちゃん進んだね……」
「当たり前だ。作業していたのだから」
覗き込んだキャンパスは、相変わらず、誰もいない教室。だけど、白黒から段々と色を重ねられた景色の印象は随分と違った。窓の外は青い、教室は陽が差し込んで暖かい。机の影だって、僅かに揺れて緩んでいるようだ。お前に見えている景色は、きっと、誰かが想像するより、優しい。
「あれ? 真ちゃん、ここ塗るの失敗したの?」
「ん? ああ」
画面の端、青空にはみ出して僅かに一筆塗られた橙色を指させば、真ちゃんは不本意そうな顔をした。失敗したらしい。
「端にお前を描こうと思ったんだが」
「へっ?」
「冷静に考えると、お前はいつも隣にいるから、この視界には写らないのだよ。それでやめた」
「えっ、と」
「弁当やら他の授業の時は正面にいるがな。今更この画面のど真ん中にお前を配置するのは流石に無理があるし」
「俺、描こうとしてくれたの」
「? 言わなかったか?」
「……言ってた」
冗談だろうなって、思ってたよ。
喉がからからに乾いていく。今すぐ水を飲まないといけない。水を飲まないと死んでしまう。だけど、飲んだら、吐いてしまいそうだ。俺の感情。俺の爆弾。お前は本当に、俺を殺すのがうまい。
「…………それで、失敗しちゃったんだ」
「そうだな。まあ、いいだろう、別に」
「いいの?」
「塗り直せばいいだけの話だ。油彩なのだし」
失敗したら、やり直せばいい。正解するまで、それだけの話なのだよ。
淡々と、そう言う真ちゃんは、きっと躊躇いもなく、一筆分の俺を、青空で塗りつぶすだろう。それでいい。それが正解だ。正しいものがあるなら、それに越したことはない。
俺は、後戻りできない穴を見つめて、笑っている。三角形に、深くえぐれた、穴ぼこ。俺の爆心地。
そういえば、リボン渡すの忘れてたよ。それだけ言って、妹ちゃんは部屋から出ていった。クッキーの結末は聞いてない。ちなみにおこぼれにも預かってない。
透明な袋と、きらきらしたリボンを蛍光灯に翳して考える。光が反射して、ちかちかする。そうだ。恋って、こんなイメージだった。
全部あげたいけど、無理だから、クッキー。
我が妹ながら聡明だ。それは酷く正しかった。そうして愚かな兄は、何もあげるものが見つからなかった。
おしるこ? ラッキーアイテム? 参考書? NBAのDVD? あいつが喜びそうなものはいくつも思いつくけれど、それは別に、俺があげたいものとは違う。
全部あげたい。その見返りに、全部欲しい。
信じられない強欲だ。俺は、俺そのものを与えたいのだ。あいつそのものが欲しいのだ。そんな小っ恥ずかしいことを考えて突っ伏した。信じらんねえ。自覚って怖い。恋って怖い。やばい、俺、絶対に、誰とどこに行くとか、めっちゃ聞いちゃうよ。休日の予定とか、いちいち確認しちゃうよ。俺ってもしかして、結構粘着質な束縛タイプだったのか。
どうしようにも行き詰まって、溢れたそれを持て余して、俺は、すっからかんのビニール袋に、何にもいれずにリボンを結んだ。
全部あげたい。全部欲しい。お前が好きだ。恋をしている。そんなの、言える筈も無かった。クッキーなんて、渡せてたまるか。全部が手に入らないなら、いっそ、何にも無い方がマシだ。嘘。何も無いなんて無理。だから、ラベルはお前が貼ってくれ。友情でも、相棒でも、下僕でも、まあいいや。
その透明な爆弾を、下駄箱に、誰もいない隙に、放り込んだ、空っぽの袋。名前もない、中身もないこれを、お前はただのイタズラだと思って、捨てるだろう。
*
「高尾」
「んあ、どーしたの真ちゃん」
「見ろ」
「っ、ええ!? で、ジャンボヤキソバオムレツパン!」
「人事を尽くした結果なのだよ」
「いやいや、えっ、それ限定五個のやつじゃねえの! どんな裏技使ったんだよ!」
「走った」
「や、やっぱそれかー!」
階段を登るのに三段飛ばし出来るのは、やはりアドバンテージとして強いな。そんなことを悠々と言うこいつは、本日昼飯を忘れたらしい。お前でも忘れることあるんだなって言ったら、忘れたのは母だ、とぶっきらぼうに返された。いや、鞄の中持ってんじゃん。勝手に手を伸ばしても、真ちゃんは止めなかった。やけに軽い感触と、何の反動もなく開いた蓋。
「ぶっは、えっ、うそ、こんな漫画みてえなことあんの」
「あるのだよ。目の前に」
「やっべ、中身入れ忘れるって、真ちゃんのママさんも、結構、天然っつーか、なんつーか」
「受け取った時に軽いことを指摘すれば良かったのだよ……俺のミスだ」
いや別にこれにミスとかねーだろ。そう言って笑う俺の心は穏やかだ。透明な、俺の爆弾をぶち込んだ、次の日。真ちゃんから何か言ってくることは無かった。まあ、そりゃ、当然だろう。そもそも俺からだと、わかる筈もないし。そうして、勝手に目に見えない感情を押し付けた俺は、ホンの少し、すっきりしている。
「そういや、俺多分あと二週間くらいで終わるわ、版画」
「なんだと。抜けがけか」
「抜けがけってなんだよ」
名前をつけられなかったこの日々を、俺は気に入っている。
「あ、お兄ちゃん、おかえり」
「んあ、どーしたんわざわざ」
「いや、帰ってきたらさ、封筒あったんだけど、なんかどこにも名前がなくて。間違いなのかな。でも、切手も貼ってないから、直接ウチのポスト入れたと思うんだよね。だから、お兄ちゃん、心あたり、ないかと思って」
リビングの机の上に、ひとつだけぽつりと置かれた、名前も無い、宛名も無い、緑色の封筒。緑色。緑は癒し。或いは、運命。俺の中で、緑色は一人しかいない。
「あー、もうあけた?」
「開けてない。心当たりあったら、悪いと思って」
心臓が、うるさい。あの日、黙って下駄箱にぶち込んだ筈の爆弾が、俺の胸で鳴っている。
「あ、あー、多分俺だわ。サンキュ」
「うん」
それ以上、何も聞かれなかった。俺がクッキーのこと、何にも聞かなかった、お返しとでも思っているのかもしれない。
心臓が痛い。呼吸が苦しい。
部屋に戻って、少し震える手で、開けた。中に何か、が、
入っている。
読みたくなかったけれど、見ないでいることは出来なかった。俺はもう、確信している。これは、あいつからだ。
さあ、覚悟を決めろ。
勢いのままに開けば、予想に反して、それは手紙では、なかった。いいや、手紙、なのだろうか。たった一言。見慣れた文字で、書いてあるそれは、一瞬で視界に飛び込んできた。
脳みそが処理しきれずに、その一言を、何度も何度も、読み返す。想像していた全ての言葉と違うその一言を、理解するのに、しばらく時間がかかった。
そうして、理解して、俺は思わず、笑ってしまう。
なんだよそれ、そんなの、ずるい。いいや、ずるいのは、俺だって同じだ。名前も無い、中身もない、リボンだけをかけた、空っぽの袋。宛名も無い、差出人も無い、たった一言だけの手紙。
そうだな、分からない筈が、無かった。伝わらない筈が、無かった。だって、俺とお前は、ずっと隣で、下らない話を、していた。
「ちょっと出かけてくる!」
走って飛び出す。今すぐに、伝え��行こう。
この胸の爆弾が、俺を急かす。走れ! 今にも爆発して、世界を終わらせそうな、高鳴りよ!
どうしてやろうかと思った。
まさか、バレないとでも、思ったのだろうか。俺に分かるはずが無いと、思ったのだろうか。いいや、確かに、分かる方が、おかしいのかもしれない。けれど、俺には分かる。
パスが通った時に、シュートが決まった時に、目が合った時に、或いは、教室で、下らない話を、している時に。
俺とお前が抱えていたのは、全く同じ、ものではなかったか。お前の、その自慢の目には、見えていなかったとでも、言うつもりだろうか。
いいや、違う。分かっていただろう。俺に分かったように、お前だって、知っていた筈だ。それをこんな、回りくどい手段で、俺に決めさせようというのなら、お前がずるい。
お前は本当に、ずるい男だ。
無視してやったって、よかった。むしろ、その方が簡単だ。名前も無い、中身もない空っぽの袋に、俺は好きな名前をつけることができる。名前をつけないでいることができる。
けれど、俺は案外、みっともない男なのだ。あいつがどう思っているのかはしらないが、俺は、目的のためには、手段を選ばない。大切なものが、両手をあげて飛び込んできたら、みっともなくとも、そのまま掴み取るだろう。
掴み取ってやる。後悔などしない。俺は俺に、恥じることなど一つもないのだ。
しかし、実際、どちらが我が儘だという話だ。こうやって、言葉にされる前に、甘やかしてしまうから、よくない。悟って、理解して、動いてしまう。下らないことばかりを喋る口で、お前は肝心のことを言おうとしないのだ。
そうはいくか、と、思う。
俺だけに決定権を委ねて、終わらせるなど、言語道断だ。お前の抱える感情には、お前が自分で名前をつけろ。俺は俺に、決着をつけるので手一杯なのだから。
暫く考えて、手近な便箋を手にとった。長々と、書いてやるのもにくらしい。そもそも、そう、伝わらないと、思っていることが、腹立たしい。気がつかれないと、思われていることが、腹立たしい。お前が俺を見ていたように、俺だって、お前を見ていたのだと、何故、気がつかない。大馬鹿者。
一言だけ書いた。宛名も差出人も、つけなかった。明日の帰りにでも、直接郵便受けにいれてやろう。別に、他の誰に開けられて、困るようなことは書いていない。あいつだけが、分かればいい。あいつだけが、分かることを、書いた。
さあ、この愚かな戦争に、別れを告げよう。
「お前は、リボンを結ぶのが下手くそだ」
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2009.8.29-9.12009年度ゼミ旅行高橋ゼミ 韓国ゼミ旅行2009
8月29日-9月1日の4日間、韓国へゼミ旅行に行ってきました。
8月29日(土),9月1日(火)飛行機での移動
30日(日) 清渓川
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宗廟
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清渓川文化館
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東大門デザインプラザ
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Leeum
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ソウル大学美術館
31日(日) 北村伝統韓屋保存地域
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空間社
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景福宮
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梨花大学キャンパス
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仙遊島公園
2009.8.29-9.1旅行後、各建築についての対談1(30日)
訪問建物批評
清渓川について 新国×湯沢×濱野
清渓川について簡単に説明しますと、ソウル中心部を流れる川で高度経済成長に伴う都市化の進展や水質汚濁、また増大する道路交通に対応するために川の上に蓋をし道路として使われていました。しかし、かつての清流に川を復元するという事業が行われ、2005年9月に清流として復活した河川です。�
湯沢 最初の印象として高速道路をなくして突拍子もないプロジェクトだと思いました。
新国 清渓川文化会館にも行って思ったけど、もし高速道路でなくもとの川の状態であったらこの計画は実現しなかっかもしれないね。昔の川の様子を見る限り、状態はあまり象が良くなかったけどそこに莫大なお金をかけてまで川を整備することが実現したかは分からないね。
濱野 今の状態になってから街の様子もすごく変わったのだろうというのを感じます。川へ下りて行けて、あんなきれいな空間が続いていると楽しいだろうね。
湯沢 街の中で自由に川で遊べる場所はなかなか無いと思う。日本だと柵があったりして川へ入れないことが多いじゃない。
新国 そこは機械を通して水を調整している事が効いているんだろうね!
湯沢 皆で夜実際に清渓川沿いでお酒を飲みながら過ごしたけどライトの演出もすごくきれいで心地のよい空間でした。(終了)
2009.8.29-9.1宗廟 鎌田×西澤正子×濱野
鎌田 宗廟はどうだった?
西澤 王様の通る道があるのが面白い。
鎌田 韓国って身分とか性別とか立場に敏感でそいうところが宗廟でも感じられた。
濱野 王殿の門をくぐった時に床が高くなってて開けた空間が圧倒的だった。そこで何かが行われていたことを感じた。
鎌田 石畳のスケール感はすごい。
西澤 ディティールじゃなくてスケールが大事なのか?配置が大事で風水が使われているのが面白い。
鎌田 自然の地形を元に配置を決めている。
西澤 王宮と比べたら質素。あと王殿のドアがずれているのが、日本と違うなーと思った。
鎌田 人が使う空間ではなく儀式の為の空間が多いのが不思議だった。
濱野 他にこういう建物を見たことがない。
鎌田 ピラミッドも儀式のための空間だね。日本だと何だろう?実際に儀式が行われているの見てみたい。(終了)
2009.8.29-9.1Leeum 卯月×大澤×山家
卯月 サムスン美術館Leeumはマリオ・ボッタ、ジャン・ヌーベル、レム・コールハウスの三人の有名な建築家の美術館が集合した贅沢な美術館です。今回レム・コールハウスの建築はまだ完成していなかったので他の2人の建築について主に話合いましょう。
山家 みなさん個人的にはどっちが好きですか?
卯月 自分はヌーベルかな。
大澤 自分もジャンかな。
山家 ボクは裏切るようですが、期待を込めてレムかな(笑)
卯月 レムの黒いコンクリートが浮いてる感じがね。(笑)
山家 では気を取り直して ヌーベルのいいと思った点を上げますか?ボク自身は、美術館の原点というか、箱ものの機能を突き詰めてる感じがいいと思いましたね。色づかいなどはやはりヌーベル独特でしたけど。
大澤 んーっと、美術館の「閉じた箱」っていうイメージを具体的に形態として表現しているようで、そこらへんがおもちゃの箱の中に入ったみたいで面白かった。抽象的であるプログラムを凄く鮮明に具象化した建物って感じ。
卯月 しっかりした箱スペースとそれ以外のスペースでいい具合に空間をつくってると思う。展示スペースのすぐ隣には自然光が入ってくる様な自由に移動できる空間があって良かった。あの黒のテクスチャーは独特だね。トイレまであんな感じだった。
山家 美術館に多く見られる白の空間ではなくて、あんな感じの雰囲気にできたのは、現代アートだからですかね?
大澤 あぁ。でも絵画が展示してある場所の壁面はさすがに白だったよね?
卯月 全部展示スペースは白じゃなかったっけ?
大澤 白か。でも確かに全体の雰囲気としてまず最初に黒が出てくるのは、何でだろう?
山家 そうだっけ???なんか薄暗いかんじが未だに残ってるんですけど。
大澤 あ、ナラさんとか、ジャコメッティーとか黒いとこあった。
山家 やっぱり箱のイメージが強すぎて、その箱が黒っぽい色をしていたから、全体にそう感じてるのかも。
卯月 基本的に展示スペースはニュートラルな白い箱でそれ以外の残余空間は黒かった気が。何点か例外はあったかもだけど。
山家 なんか色の話ばっかになっちゃいましたね。ここで、少しだけボッタにふれておきましょうか?
大澤 ぐるぐるしてたね。
卯月 そうだね。ボッタはとても明快な構成でストレスなくすんなり見れた���螺旋状の動線と展示スペースな感じ。展示→ぐるぐる(抽象的な空間)の繰り返し。規模がこれ以上大きいと飽きてしまいそうだけど。
大澤 ボッタのほうは韓国の古美術が主に展示されてたけど、その仕方と動線の関係から、ちょっとかたいそういうジャンルも見やすかった気がする。ヌーベルみたいな空間にあれ展示されてても見る気なくすよね。
山家 そうですね。なんか美術館みたいな静かにしなきゃいけない場所よりもっとあの階段ではしゃげる施設にあってもよかったかな?なんてボクとしては思いましたけどね。
大澤 まぁ、若干みんなはしゃいでたけど。(終了)
2009.8.29-9.1ソウル大学美術館 西澤×新国×山家
西澤 まずは感想から。新国君はどう感じましたか。
新国 やっぱりあのエントランスのキャンティレバーが印象的でした。ああいうのあまり見かけないからワクワクしました。
山家 遠くの山の稜線となんとなく角度があっていて、それもねらいなのかなって思った。
西澤 それは気づかなかった。
山家 エントランスにしても、裏にしても、ヤジロベーの構造がほんとにうまく機能していたなって感じがしたよね。
西澤 エントランスもそうだけど、裏がすごかった。裏はキャンティというより浮いてるって感じで。
山家 あんまり味わったことがない感覚でしたね。
新国 そうですね。あれを支えているものが、中の階段だってゆうのを知った時は驚きました。逆に、外から構造が透けて見えるのがすごい気になりました。あれはあまり好感がもてませんでした。
山家 あれはなんでだろう。中から透けてるわけでもないようだし。ボクもないほうがいいかなって思いましたね。もっとドッシリとしたものが浮いているほうが緊張感が増すような気がしました。
西澤 確かに。でも上物がかなりマッシブだから、あれくらいの見た目の軽さが無いと結構重苦しいかも。�� そいう意味では構造だけでも透けてるのはいいのかもしれない。�
山家 ちなみに、階段室の半透明の素材は、富井先生曰くSANNAに影響されたらしいですけど(笑
西澤 そうなんだ(笑
新国 階段室の周りに展示室が囲ってる構成でしたっけ?
西澤 半分は動線になってたから、囲ってはなかったと思う。
山家 ただ、質がどこもいっしょなかんじになってた気はする。中の作品がなに一つとして思い出せないほど、建築が強かったですね。美術館としては空間に落ち着きがないように感じました。�
西澤 僕も思いました。
山家 やっぱり室が動線の一部として機能してたからじゃないでしょうか。美術館にはむかないかもね。
山家 僕が一番好感をもったのは、中の講義室ですね。すごく身体スケールに近い感じがして、やっぱりかなり細かなところまで気を使ってるんだなって感じました。
西澤 確かに、外ではあれだけ大胆なことをしつつ、中はかなりヒューマンスケールで考えらてた。
新国 そうですね。しかしなんであんな形にしたんでしょう。あの講義室みたいな空間が下の空間に影響を与えてる点では面白いけど、それが外である意味がイマイチ分からない。とくに大学内だから。公共の中にあったらもっと良い場になりそうだなとか思いました。
西澤 ���部が外部に影響してるんじゃなくて外形が内部に影響してるんだと僕は思ったな。ファサードに関して言うと、正面が平らだともっと重たい感じになっちゃうから動きをつけたかったのではないでしょうか。
山家 どちらが先にあったとしても、動線を基本に一貫しているというか、すべてが形にでていたと思います。
新国 そうですね。人の動きを考えて形を導いていった結果があの形なのかもしれないです。
西澤 そう思います。すごく無駄の無い、うまい設計だと思いました。(終了)
2009.8.29-9.1旅行後、各建築についての対談2(31日)
訪問建物批評
北村伝統韓屋保存地域 アルマ×卯月×植松
卯月 北村は最初は高級住宅地だったみたいだね。
植松 ぜんぜんそんな気がしなかった。歩いてみて塀しかみえなくて外観では隣の建物との境界は分かるけど中が全然分からなかった。カフェで入れる場所があったけど。
アルマ ギャラリーもたくさんあったね。
植松 伝統的な町にギャラリーが存在してる感じが京都みたいだった。でも看板とか日常的なものがポップだった。
アルマ ほとんど通りに対して閉じていて中庭がある暮らしなのが感じられた。窓もあったけど小さく、閉じられていた。
卯月 そうだね。やはり生活の様子が全然外に出ていなかった。Leeum美術館のエリアもそうだけどなんで高い所にお金持ちの人が住んでいるのかな?やっぱり人より上にいたいから。
植松 横浜とか神戸も傾斜地が高級住宅地なイメージ。
卯月 アルマの国は?傾斜地に住んでる?
アルマ そんなこともない。伝統的な住宅はあるけど、身分の高い人が住んでた大きな住宅は博物館になっていて、普通の住宅はそのまま使われている。
植松 瓦とか塀が少しずれていたり、建物の処理が乱雑だなと思っていて富井先生に聞いてみたら、富井先生が「そういうところが僕の韓国の好きな所なんだ」と笑顔でおっしゃっていたのが印象的だった。
卯月 宗廟とかでも瓦とか荒くて気になった。
植松 沖縄もざっくりそれに近いかも。
卯月 あとバスから降りた通りを歩いていて、新しく建てられた白い石づくりみたいな建物が建っていてさらに坂があり、細い路地があってヨーロッパのように感じた。
アルマ 歩いてどんな気持ちだった?
植松 天気がよくて気持ちよかった。
卯月 坂があって道が細かく折れ曲がっていて先が見渡せないのと、いろんな模様やパターンが塀にあって歩いていて楽しかった。
アルマ 素材は同じだけどいろいろな模様や石の積み方、木の組み方があってよかったね。
卯月 通りに対しては装飾とかあって気にしている感じはしたけど...
植松 なかはぼろっとしてたりして。坂の上から住宅を俯瞰してみた時につぎはぎな屋根が目についた。
アルマ 緑があまりなかった気がする。
植松 一番高い場所にあった家はすごく大きくてそこには木がいっぱい生えていた。かなり密集してるからあまり庭も広くないのかな。
卯月 広場とかないし共同の場所も見られなかった。
アルマ 時間もなかったし見つけられなかっただけかもよ。
植松 今度はもっとゆ��くり見学して中もしっかり見たいね。(終了)
2009.8.29-9.1空間社 星野×井口×大澤×西澤俊太郎
星野 じゃあ、まず感想を。
西澤 スキップフロアの構成がうまかったと思う。
星野 間違いないですね。
井口 レンガのテクスチャーと採光の関係で空間に重みを感じました。好きな空間でした。
星野 重み。水の中みたいに、自分のまわりに空間が存在していると感じました。
大澤 私は、すごく私的な空間だと思いました。会社でもあるんだけど、設計者の趣味がものすごく反映されていると感じました。 たぶんそれは、井口君が言ったような重みのようなものから感じたんだと思います。
星野 感覚的にいいと思う要素はたくさんあったと思うのですが、そういう要素全体をまとめるような図式とか考え方とかあったと思いますか?
大澤 やっぱり、スキップフロアとかレンガのディティールが全体のバランスをとっているんだと思う。
井口 空間すべてに同じ質感があったからずっと異世界にいるようだった。
西澤 空間構成としては図式とかはなくて、設計者の趣向の空間イメージを繋ぎ合わせて出来ていたように思う。
星野 なるほど。繋ぎ合わせてる、複雑。
大澤 確かに複雑な空間構成だった。
井口 なんだか楽しそうにつくってる感じはしたね。
星野 ずっと、近くに設計者の金さんを感じるような。それくらい個人が出ていた感じはありますね。
星野 大澤さんが感想で言ってたみたいに、私的だったり主観的な空間だったと思ったのですが、それがこんなにたくさんの人にいいと思われる(韓国の学生にも人気があった)のはどうしてだと思いますか?
西澤 モノを作るような感覚で作られていたからじゃないかな。実際、気に入らない部分は壊して作り替えながら建築されていたらしいし。話を聞かなくても、そういった一連の手数が伝わってくるような迫力があったと思う。
井口 建築自体に存在感があったね。
大澤 モノ自体が訴えかけてくるから安心感があるのかも。なんで?どうして?って疑問がわくよりも先に、安心感のような空間に対する素直な感動のようなプラスの感覚を覚えるから。
星野 金さんは建築だけじゃなくて芸術一般に深かった人らしいので、とても納得できます。私自身も、絵がすごくうまくて芸術的な才能のある人が作ったという印象を受けました。(終了)
2009.8.29-9.1景福宮 植松×鎌田×西澤正子
植松 景福宮はどうでした?
鎌田 日本の住宅とは違い、敷地が広いのに一つ一つの建物が塀で囲まれていて不思議だなと思いました。
植松 塀は多いけれど王宮なのに開放的ですごく気持ちよかった。
西澤 特に康寧殿の真ん中に部屋が風通しが良くて気持ち良かったな。
鎌田 いわゆる応急の物々しさがないように感じて、富井先生のお話によると韓国の伝統的な住宅のつくりと王宮のつくりが基本的には同じだということで、私達がイメージする王宮とは違った感じがした。
西澤 あと、障子のはり方が日本と逆というのも面白かった。
植松 水上に作られた宴会場である慶会楼はどう思った?
鎌田 こんなに太い柱が大平面にたくさん立っているのはあまり見たことがなくて・・・・
西澤 なんかスケール感が違うって思った。
植松 ���の下部の方が太くなっているのが印象的だった。
鎌田 よく見ると断面が四角い柱と丸い柱があって、形式的な意味があるのかな、と。また間仕切りのない大空間が機能のあるのかないのか不思議なスケール感でした。
植松 こんな所で宴会したいね。
鎌田 ここで酔ったら水に落ちて大変なことになってたなぁ・・・(終了)
2009.8.29-9.1梨花女子大学 川鍋×星野×アルマ
川鍋 ここは女子大で、中で使っている人と、今回のように外から見に来た人では感じ方が違うかもしれないけれど、少し大味かなと思いました。広場(キャンパスバレー)と内側の施設はあまりかみ合っていなくて、外に対して女子大が開いていくというイメージとは少し違っているかもしれない。
星野 谷があって、その両側の建物内には吹き抜け、内側に廊下、教室となっているので、教室と広場は結構離れています。奥のほうにあるシースルーEVの吹き抜け部分みたいに、ガラス壁面のもっと近くまで床がきて、人が話したり動いたりしている様子が外の広場から見えるようになっていてもよかったかもしれないと思います。
川鍋 逆に、この谷のガラス壁面は中を見せないようにしているのかもしれない。鏡面仕上げのフィンで。
アルマ フィンには、空を映し込むという意図があるみたいです。この壁面は長いしとても大きいので、ただの壁では圧迫感がありすぎます。それに、この形は建築ではなくランドスケープだと思う。だから、中が見えるかどうかという問題ではない気がします。
川鍋 でも、この谷はかなり空間的(建築的)だと思う。かなり空間的につくられた、とても強い場所だと感じました。雑誌掲載のCGパースでは、イス的なものがたくさん置かれたりしていたけれど、実際はそういう使われ方はしていないですね。中の活動が溢れ出したり、ここでイベントが行われているような、そんな所を見たかったという気持ちもあります。
アルマ 「階段を円形劇場に見立てた野外劇場」という言い方もペローはしていますね。
川鍋 ああ。それで、使われていない劇場みたいになっていた。きっと、いろいろなことに使えるはずなんですが、使い手の問題なんでしょうか。むさびの中でも、12号館の前なんかは何かがなければ使われない場所になっていますね。
星野 芸祭で野フェスが出れば、使われる場所になるような。12の前が普段使われないのは、建築の方にも問題があると思いますが、ここはどうでしょうか。たとえば、もう少し小さな要素が付け加わってちょっと複雑になっているとか階段がでてきているとか。ここを使って何かをする色々な企画が大学にあるとか。
アルマ 今の、自由なままにしておくのがいいんじゃないかと私は思います。階段なんかが出てくると、空の見え方には邪魔になってくるし、ここの谷は女子大だから、今のように静かでモニュメンタルな場がいいです。くつろいだり、おしゃべりしたりして集まるのは、屋上の緑の方でやるのがいいと思う。大学のまわりには賑やかな繁華街もあったし。
川鍋 たしかに、くつろいだりするのは屋根の上っていうのはよくわかります。
星野 この谷は、大学を象徴する場であるということですね。
川鍋 もしかしたら、そっちの方が合っているかもしれないです。「カフェから溢れた人が留まって寛ぐ」とか「授業を終えた学生たちが集まって」ともペローは書いているけれど、それよりも、今のような状態の方がつくりたかったのかもしれない。
星野 イスのようなものを出したりすることを考えなかったわけじゃなく、意図があってそうしなかったということですね。
川鍋 建築の批評というのはどうやってするのかということも考えますが、作者がやりたかったことに対し、建築がどれだけできているかという意味で話せばいいのかもしれません。そうするとキャンパスバレーは、今のような静かな状況でいいということですね。そう考えた方がよくわかります。
星野 確かにそうですね。賑やかな状態よりも象徴的な場であるということが大切だったと考えると、今のあり方を理解しやすいです。アルマがいてよかった。川鍋くんの、メンバー割り振りに感謝します。(終了)
2009.8.29-9.1仙遊島公園 湯沢×川鍋×井口
湯沢 川鍋君、仙遊島はどうでしたか?
川鍋 全体的にまとまりがあってバランスの良い感じがしました。メリハリもあるし。
湯沢 高橋晶子先生から聞いたんですが、設計時にどこまで残してっていう話があって、やはり残し方のバランスがうまいという話でした。俺もうまくいってると思います。
井口 僕もです。昔、浄水場だったということをいい意味で感じさせてないと思います。室伏次郎のいう遺構のようでした。
湯沢 私は少し感じたのですが。
井口 感じさせないというのは言われれば分かるが。
川鍋 公園として成り立っているということ?
井口 柱がうまく生きていると思う。貯水タンクとか公園のオブジェクトととしてうまく生きていると思います。
湯沢 感じさせるために作っているのでは?
川鍋 実際に浄水場というものを分かっているわけではないけど、水をつかっているという意味が見えてくるとは思います。長年使われてきたという感じはする。
井口 浄水場だったことを感じさせないように残し、うまく転用している。朽ち具合もよい。
湯沢 場所によって様々に風景が変わるし、施設もアミューズメントというか、歩いていて次に何が来るんだろうという、期待がある。どこか印象に残ったところはありますか? 川鍋 貯水タンクや列柱を残している部分。場所の力を感じたし、それがうまく別の場に置き換わっているところが印象的でした。(終了)
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人生は選択の連続である。
まじでティンダーってその通りで、右に左にswipeし続けて時間を潰してるとこれがほんと如実に表れてスキ。まぁ俺は右しか選ばないんだけどさ。
本日2019年11月25日は結構歴史的な日かもしれないって思って自分はこれを書くんですけどね。香港のことです。昨日(2019年11月24日)に香港で区議会選挙が行われた。結果本日発表された通りで民主派が8割以上をおさめる大勝利になった。これが意味することは何か。香港のデモはみんなの考えてる通りずっーとやってる。 今年の2月が契機となって始まったんだけど、いつのまにか11月。8ヶ月以上やってるの。今後多分もっと過激になることが今回の選挙でわかっちゃいました。香港はしばらくはいけないかもね。 ことの発端は歴史を紐解く必要があってそこまでは説明しきれないから個別で調べてください。簡単に説明しちゃうけど、(間違ってたらこっそり教えてください。)今年の2月に逃亡犯条例って法案が提出された。これはめっちゃ端折ると香港で起きた事件を中国でも裁けるようになるってことらしいんだけど、これが香港内で猛反発を受けた。香港は香港独自の法制度があって中国本土とは自治体制が全く異なるらしい。いわゆる一国二制度ってやつ。要は中国だけど中国じゃない。俺たちは中国人ではなくて香港人みたいな感じ。中国ってのは共産党社会なので「習近平の言うことは〜?ぜったい〜!!」みたいな感じな国家って聞いてる。香港が中国化されるんじゃないか、香港の民主的な部分が脅かされるんじゃないか。ってことでこの法案に対するデモは200万人が参加したって言われてます。(香港の人口は700万人って言われてる。名古屋市で250万人くらい。) んでそのデモはだんだん過激になってきて暴動にまで発展して収集つかなくなってます。その肝心な逃亡犯条例は廃案となったんだけど、デモはこの廃案とほかに4つも要求を打ち出したのでそれが全部通るまで混乱はまだまだ続くようです。 その中で行われたのがこの区議会選挙。この何がすごかったかっていうと、香港人たちが選挙によって自分たちの意思を表明する機会となった。正直暴動が行きすぎてる部分もあってネット上では批判もあったりしてる。ただこれを市民たちが投票で支持する支持しないの表明する機会となったわけです。つまり、立候補者は「こんな暴動やめましょう!」ってやつと「どんどん行こうぜ!」ってやつに二分化しちゃって、どっちに入れる?って話になったわけです。 で、結果民主派のどんどん行こうぜ!が大勝利したわけです。そこでこの記事を参照。
日本人が書いた現地レポートなんだけど想像以上に生々しい。内戦のようにその場から避難をする必要があるレベルに香港は今混乱してる。今後もっと混乱することになると思う。この状況を自分があまり認識していなかったのがヤバイ。
香港にとってこれは大変な契機になると思うし、今後歴史の教科書に載ることになると思う。それが毎日リアルタイムで起きているのに、感じない、目もむけない、知ろうともしない。別にこの1秒間で世界では何人死んでますとかそういうことじゃないんだけど、このまま世界は常に動いているのに何も知らないのはやばくない?考えないのはやばくない?あっちでは民主化を掲げて同世代の人たちが行動をしているのにこっちは新聞も読まない、へー、そうなんだ。これはやばくない?バスキアとか見て黒人奴隷制度に対する怒りを感じたんじゃないの?カニエウエストが神になりたいって言ってる背景を理解したくないの?歴史が理解できないから、流れが理解できないから、それじゃあ今のことに眼を向けないとやばくない自分?遡ると難しいから今から追っていったら?ってなったわけです。
Dumb Type
現代美術館でやってたダムタイプの展示会に行った。すげぇよかった。今の自分の心情にすごいあってた。境界線ってことをテーマにずっと展示を見てたんだけど最後のpHにやられた。
真っ黒な地面に真っ黒な文字で対義語がひたすら書いてあって、横には自分の価値観に対する質問が書いてある。これを照明装置が動きながら照らしていくんだけど、照らしたところしか自分らには見えない。この照明が自分に迫ってくる状態で文字を追ってた。
物事を区切って色んな角度から見てたのにそれが正しいのかもわからなくなっちゃった。
ザ・キングとアクアマン
https://www.netflix.com/title/81004278?s=i&trkid=13747225
Netflixで見たんだけどどっちも王様の話で共通するのは無駄な犠牲は払いたくないってとこ。無駄な争いで無駄に人が死んで、ほんなら私とあなたで戦いましょう、白黒つければほかに人は死ななくない?ってな感じ。
争いなんかほんとはしなくてもいいんじゃない?
ジョーカー

映画館で見た。
一番えぐい。
もう笑うしかなくない?この世界。もうむちゃくちゃだし。どう思う?って聞かれてわかる。。。って答えるしかない映画。
キングは中から物事を見てやめた方がいいよね〜ってなって、ジョーカーは中から見たらもう悲劇だからさ、外から見て笑ってみたら?って。んでダムタイプでそういう区切りやめたら?って言われちゃって。もっと色んなものに興味持ってさ、全部やっていきたいよね今後も。
ティンダーってアプリがあるんだけどこれはマジでハッピーなアプリ。Like or Hate.じゃなくてLike or Not Like.全部右にswipeして選択せずに区切りもつけずにとりあえずやってみません?ラブじゃん?
カニエが新しいやつ出したんだけどこれがまたわけわかんねぇ。正直カニエは通ってねぇ。服もそんな好きじゃねぇ。だけどこの記事読んだらコイツ、クレイジーだな、、ってなってから毎日がハレルヤ!ハレルヤ!ハレルヤ!ハレルヤ!
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