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dba-taipei-japanese-hair · 6 years ago
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kurihara-yumeko · 8 years ago
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【小説】満ちない (上)
 夢を見ていた。
 大好きなあの人と、雪のちらつく夜の街を歩いている。
 うっすらと雪が積もり始めている道を注意深く歩きながら、背の高い彼を仰ぐことは難しい。私はちらりちらりと彼を見上げるが、不思議と鼻くらいまでしか視界に収めることができない。目を合わせることなど不可能だ。あの貫くような真っ直ぐな瞳に見つめられるのかと思うだけで、盛大に転びそうになる。
 どこかへ向かって歩きながら、彼と話をしている。けれど夢の中は不思議となんの音も聞こえない。何を話しているのかはわからないが、私の口の動きに応えるように彼の口元も小さく動き、本当にときどき、微笑む。力が抜けて気が緩んだような彼の笑みを見ていると、しゃっくりでもしたように胸の奥がぎゅっとする。
 隣を歩く彼の左手が、ほんの少し手を伸ばせば届く距離にふらふらと揺れていて、私はそれに触りたいと思う。でもどうしても、触れることができない。勇気が出ないのだ。触れてしまえば、きっと彼をびっくりさせてしまうだろう、と私は考えている。驚かせてはいけない、と思っている。そんなことをしては壊れてしまう。まるで薄い氷の上を渡っているかのように、静かに、淡々とした緊張感が流れている。
 不意に、道の途中で彼は立ち止まった。
 私も一歩遅れて立ち止まる。前を向いたまま動かない彼の視線の先に目を向けると、道の向こうから誰かがやって来るところだった。
 ああ、来てしまった。「彼女」が来てしまった。
 私は反射的にそう思う。向こうからやって来る人物のシルエットは、不自然なほどにぼやけていて、誰だかわからない。男なのか女なのかも曖昧だ。なのに私は、それが一体何者なのか理解している。彼女を知っている。そして、絶望している。この後に起こることを、既に知っているからだ。
 隣にいる彼はゆっくりと歩み始める。こちらへやって来る彼女に向かって、一歩一歩、足を踏み出していく。すぐ側にいる私のことなど、この一瞬で忘れてしまったとでも言うように、まるで吸い寄せられるように行ってしまう。
 行かないで。
 そう言いたいのに、私は言うことができず、少しずつ遠のいていくその広い背中をただ見つめている。否、夢の中では声を上げているのかもしれないが、世界からは一切の音が消え去っているのでわからない。
 彼と彼女は道の真ん中で出会い、そしてどちらともなく腕を伸ばし合い、抱き締め合う。私が見ている目の前で、いつの間にか二人は裸になっていて、そうして彼の肩越しに、彼女の顔が見える。こちらを見つめている彼女は何も言わないが、意地の悪い笑みを浮かべている。彼の背中に回る彼女の白い腕。その指先が、愛おしいものに触れるように彼の背を撫でる。
 やめて。
 私は呆然と、その光景を見つめている。身体が少しも動かない。寒さに縛り付けられてしまったかのように、一歩も動けない。その光景から顔を背けることもできない。さっきまではあんなに胸の辺りが温かい気がしていたのに、今は頬を刺すように吹く風の冷たさが痛い。
 舞う粉雪がだんだんと吹雪へと変わっていく。二人の姿が、霞んでいく。見えなくなっていく。
 やめて、行かないで。
 声が出ない。足が動かない。吹雪の向こう、裸の二人はそのまま向こうへと歩き出している。私が触れることさえできなかった彼の左腕に、彼女が自分の腕を絡みつけて歩いている。
 白く煙る視界の中、二人の姿がどんどん遠く、小さく、霞んでいく。音が消えたはずの世界で、私の喉が高くか細く、ひゅーと鳴るのがやけにはっきりと聞こえた。
 先輩、行かないで。
 先輩。
 やっとの思いで瞬きをひとつしたら、凍りついた睫毛の先に付いた雪が、目尻から水となって頬の上を流れ出した。
 不意に、何かが頬に触れたことに身体がびくんと震え、そうして私は、夢から覚めた。
 目に飛び込んでくる光が眩しい。思わず強く目をつむる。その時、またひとつ、涙が溢れ出るように零れていくのを寝起きの頭の片隅で感じた。そして、その涙の跡をなぞるように、また何かが頬に触れる。反射的に身じろぎをしてしまった。
「すみません」
 そう声をかけられたのと、私がもう一度まぶたを開けたのはほぼ同時だった。目の前には、人間の顔があった。白目がちな三白眼がこちらを見ている。
「起こしてしまいましたか」
 低い声。抑揚がない。少しも申し訳なく思ってなさそうな声音。眩しい光は天井の照明だとわかる。白い天井、白い壁。ここは室内。私の身体は仰向けに横たわっている。そして彼はすぐ側に座っていて、心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「どうして……」
 私はここにいるのだろう。
 湧いた疑問は途中から声にならなかった。喉が渇いている。身体を起こそうとしたら、視界がぐらりと揺れた。頭が痛い。
「大丈夫ですか。今、水を持ってきます」
 彼はそう言って立ち上がり、どこかへと向かう。私の視界から消えた。辺りを見回す。ここはどこだ。小さなテーブル、背の低い本棚、床にそのまま置かれたテレビ、コンビニの袋、破れた網戸、表紙の取れたノート、散らかっている紙はプリントだろうか、それともレジュメか。
 振り返ると、台所に立つ彼の後ろ姿が見えた。ペットボトルからコップへと水が注がれている。さっき、水を持ってくると言っていた。水。水瀬。水瀬政宗。それが彼の名前。ああ、ここは水瀬の部屋だ。
 自分がどこにいるのかわかったことへの安心感からだろうか、それとも、悪い夢から覚めたことへの安堵か。彼が水を持って戻って来るよりも早く、私は再び布団に倒れ込んで眠ってしまった。そうして、そんな夢を見ていたことはすっかり忘れてしまった。
 私が水瀬政宗と出会ったのは、今年の夏のことだった。
 大学二年生の夏休み、私の所属するサークルのコンパがあった日のことだ。
 夏休みコンパと呼ばれるそのコンパには、毎年多くの部員が参加する。例年、大学の近くの飲み屋で行われるそれに向かうため、待ち合わせ場所の大学正門前に向かった時、まだ集合時間には早いというのに、そこには既に大半の部員が集まっていた。親しい顔をすぐに見つけ、雑談をしながら時間を潰していると、そのうちに、部長で三年生の岩下先輩が点呼を始めた。
 最初に名前を呼ばれたのは、この春に入部したばかりの一年生たちだった。
 私たちのサークルは、その名を「文化部」という。名前だけでは一体どんな活動をするのか不明瞭なこのサークルは、実際、明瞭な活動なんてひとつもしていない。
 サークル棟五階の角部屋、北向きの一室が部室として宛がわれ、私たちは時間があるとそこに集い、他愛のない談笑やカードゲームに興じている。それが活動といえば活動だ。年間行事としてコンパやら合宿やらが設けられているが、それ以外にも部員同士で飲み会や旅行など、遊んでばかりいる。
 どうしてこんなサークルが設立されたのか、どうして存続が認められているのか、そこが疑問ではあるけれど誰もその点には触れない。私たちはただただ、貴重な大学生活をそうやってだらだらと過ごすことで食い潰していた。
 こんな非生産的なサークルだというのに、毎年二十名ほどの一年生が新入部員として入部する。春にあった新入部員歓迎コンパに続いて二度目のこのコンパには、この年のほとんどの新入部員が参加しているようだ。岩下先輩が名簿を読み上げる声を聞きながら、私はこっそりと人数を指折り数えていた。
「――水瀬、水瀬政宗くんは?」
 その名前を呼んだ時、岩下先輩は名簿からふっとその目線を上げ、辺りを見回した。
「水瀬くんは、来てる?」
「来てませーん」
 一年生のひとり、髪を明るい色に染めている、威勢の良さそうな男子――名前は確か、倉木だった。さっきそう呼ばれていた――が、そう答えた。
「そうなんだ。今日は来ないのかな。実は彼からだけ、出欠の連絡をもらっていなくて」
「来ないんじゃないスか。あいつ、そういうの来ないっぽい感じでしたし」
 岩下先輩はちらりと倉木の顔を見て、一瞬口をつぐんだ後、「そう」とだけ言った。
「誰か、水瀬くんから連絡をもらっている人はいる?」
 部長のその問いかけに、一年生たちは皆静かに首を横に振った。誰もその水瀬という部員から今日のコンパの出欠について連絡を受けていないようだった。
「っていうかさ、ミナセって誰だっけ? そんな人、一年の中にいた?」
 私から比較的近いところにいる一年生の女子三人のうちのひとりが、他の二人に向けて小声でそう言っているのが聞こえてきた。
「え��、いたじゃん、すごい目つきが悪い人だよ」
「んー……新歓コンパの時、いた?」
「いたいた、ずっと壁際の席に座ってたよ。全然しゃべってなかったけど」
「あ、もしかして、あの、粗大ゴミみたいな人?」
 三人のうちのひとりがそう言うと、残りの二人が小さく噴き出すように笑った。
「粗大ゴミみたいな人って、何? ちょっとさぁ、ひどくない?」
「いや、でも、そんな感じだよ、ほんとほんと」
「なにそれー、全然わかんないんですけど」
 女子三人はくすくすと笑っている。
 私はどこかうわの空で彼女たちが話しているのを見つめていた。すると、三人のうちのひとりがふとこちらを振り返り、たまたま彼女たちを見つめていた私と目が合ってしまった。するとたちまち、その子は頬を真っ赤にして黙り込んでしまう。彼女の異変に気付いた他の二人も、同じように私を振り返り、うつむいて黙り込んだ。どうしたのだろう。何か悪いことでも、あったのだろうか。
「ちょっと世莉、」
 隣にいた夏希が私の腕を肘で突いてきた。
「なに一年生にガン飛ばしてんの。やめなよ」
「別にそういうつもりじゃ……」
 私は慌てて否定したが、夏希は睨むように私の顔を見て、ふん、と鼻を鳴らした。
「その気がなくても、世莉みたいな美人の先輩に見つめられたら、びびって当然だよ」
「もう、またそうやって馬鹿にして」
「僕は思ったことをただ言ってるだけ」
 夏希はそう言って私から目線を逸らしてしまう。私より頭ひとつ分背の高いこの友人がそうやってそっぽを向く時、大抵、私の意見など聞き入れてはくれない。何を言っても無駄なことはわかっているので大人しくしていることにした。
 三人の女の子たちもすっかり静かになってしまった。私のせいなんだろうか。だとしたら、なんだか申し訳ない。ただ、彼女たちの言う「粗大ゴミみたいな人」というのが一体どんな人なのか、気になっただけなのだけれど。
 結局、岩下先輩は水瀬という一年生のことを欠席扱いということにしたようだ。点呼が再開され、二年生の名前が呼ばれていった。私は「粗大ゴミみたいな人」について考えていたせいで、自分の名前が呼ばれた時に咄嗟に返事ができなかった。夏希にやはり肘で突かれて、慌てて返事をした。
 その夜のコンパは楽しかった。私は基本的に、飲み会というものが好きだ。皆でわいわいとお酒を飲んでいるうちに、酔いが回って何も考えられなくなる。何も考えなくていいというのは都合がいい。人見知りで、人と話したり関わったりすることが不得手だと感じている私にとって、アルコールはそういった問題を些細なことだと錯覚するのに便利だ。だからいつも、ついつい飲み過ぎてしまう。最近は夏希が程良いところでたしなめてくれるので、ありがたい。
 ただ、この日は厄介なこともあった。それは一年生の、先程の威勢の良さそうな男子学生、倉木だった。彼は自ら私の隣の席に座ることを志願し、積極的に話しかけてきた。知り合いという訳ではない。今まで言葉を交わしたことは一度もなく、もちろん面識もほとんどないに等しい。何度か部室や部の行事で顔を合わせたことはあるのかもしれないが、そこでは挨拶をした程度の関わりしかないはずだ。
 自分に興味を持たれるというのは苦手だ。倉木が軽快に飛ばしてくる、「休みの日は何をしているのか」や「今度一緒にどこかへ遊びに行かないか」という質問に、私は上手く答えることができず、しどろもどろになってしまった。途中、夏希が半ば強引に倉木と席を交換して隣に来てくれてほっとした。
 それでも、私がお手洗いに席を立ち、お手洗いから廊下へ戻ると、まるで待ち伏せするようにそこに倉木がいて、「コンパなんか抜け出して、二人で飲みに行きませんか」と声をかけられて、私はほとんど半泣きになって逃げるように席へ戻った。大学入学当初から、男性からこんな風に誘われることは度々あったが、一度も上手く対処できたことがない。
 その後、何もなかったような顔で自分の席へ戻って来た倉木は、一度もこちらを見ることなく、他の部員たちの輪の中で笑っていた。
 コンパがお開きになった後、鞄からスマートフォンを取り出そうとした時、私は部室に忘れ物をしていることに気が付いた。
「なに、忘れ物って。何を忘れたの」
 二次会には行かず、家に帰る前に大学に戻ると告げると、私を送ろうとしてくれていた夏希が、眉間に皺を寄せてそう訊いてきた。嘘をついて誤魔化してもどうせすぐにバレると思ったので、私は観念して正直に答えることにした。
「夏希のノート……」
「は?」
「だから、夏希のノートだよ」
「もしかして、今日部室で会った時に、僕が渡したやつ? 補修講義のノート?」
「そう……。部室で受け取って、その後、別れたでしょ? その時に、部室にそのまま置いてきちゃったみたい……」
「サイテー」
 夏希は露骨に嫌そうな顔をして、大きな溜め息をついた。私は黙って肩をすくめる。自分でも情けないと思う。
「世莉が、僕のノートはわかりやすくて参考にしたいって言ったから貸したのに。それを忘れたの? 馬鹿なんじゃないの?」
「ごめん……」
「ひとりで部室まで戻って取ってくれば? 僕はもう帰る」
 どうやら、本当に夏希を怒らせてしまったようだ。ただでさえ歩くのが早いのに、いつも以上に早足で去って行ってしまった。私はいつも夏希のことを怒らせている気がする。
 とぼとぼと、大学へ向かってひとり歩いた。
 昼間の熱気が夜になっても冷め切らず、地上付近をうろうろとしているような気温だった。酒に浮かされた身体には暑い。ときどき吹いてくる風は生ぬるく、首の後ろに汗で貼り付く髪が鬱陶しい。蝉の鳴き声が幾重にも重なって、渦を巻くように耳の中で響く。見上げた空には星も月も見えやしない。
 ああ、どうして忘れ物なんてしてしまったんだろう、そう思いながらサークル棟の玄関をくぐり、電球が切れがちな暗い階段を五階まで上っていく。この建物にはエレベーターというものがない。入部したばかりの頃は、部室に辿り着くまでに息切れしていたものだけれど、最近になってようやく、途中で休憩を挟まなくても上り切れるようになった。
 夏休みだというのに、サークル棟の中は静まり返っていた。私を迎え入れた静寂に、今が夜遅い時間なのだということを思い出す。それに加え、学生たちの多くは故郷へ帰省しているのだろう。私は今年の夏も、実家には帰らなかった。大学に進学してひとり暮らしを始めて以来、一度も故郷へ帰っていない。
 部室の前まで来て、私は一瞬、足を止めた。部室の扉に嵌め込まれたヒビの入った曇りガラスからは、室内の明かりが漏れていた。中に誰かいるのだろうか。私は手首の腕時計に目線を落とす。夜は更け、もう日付も変わっている。こんな時間に人がいるなんて、珍しい。
 ドアノブに手をかけ、扉を少しだけ開けた時、私は思い出す。こんな時間に、よくあの人はここにいた。ひとりで、何をするでもなく、誰かを待っている訳でもなく、来訪者を拒むでもなく、ただこの部屋にいた。
 そんな彼の後ろ姿を思い出しながら扉を開けたが、そこには誰の姿もなかった。なんだ、誰かがここを後にする時、照明を消し忘れたのか。そう思いながら部室へ入り、窓辺に置いてある小さなテーブルへと近付くと、そこには私が忘れていった夏希のノートが置いてあった。良かった。やはり部室に忘れて行ったのだ。万が一ここになかったら、どうしようかと思っていた。
 ノートを手に取った時だった。その声は唐突に、私の耳に届いた。
「小堺夏希さん、ですか」
 声のした方を振り向くと、部屋の隅、壊れかけている古いテーブルの上に、ひとりの男子学生が腰をかけていた。散らかったテーブルの上で、まるで置物のようにひっそりと膝を抱えている。物に紛れていて、存在に気付かなかった。
 見覚えのない男だった。ここ、文化部の部室にいるということは、恐らくは部員なのだろうけれど、知らない人だ。今日のコンパにももちろん来ていなかった、と思う。本当に部員なのだろうか。部員だとしたら、どうしてコンパには顔を出さないで部室にひとりでいるのだろう。
 誰もいないと思っていただけに、驚いて何も言えないでいると、この男はもう一度尋ねてきた。
「小堺夏希さん、ですか」
 私は息を呑み、それから、「違います」とだけ言った。ノートの表紙には夏希の名前が書いてある。この男は、恐らくそれを見たのだろう。そして私を、ノートの持ち主だと、つまり夏希だと思い込んでいる。
 この人は、私のことも夏希のことも知らないのだ。知っていれば、私たちのことを間違えるはずがない。
「違うんですか」
「これは、友達のノートなんです」
「そうですか」
 男の顔はどこか爬虫類に似ている。目がやや離れている点だろうか。目つきが悪い。こちらを窺うように見つめるその瞳は、上目がちなせいか、黒目よりも白目が大きいように見える。
「では、あなたは?」
 男の膝を抱えている手に、何かが握られている。あれはなんだろう。瓶だ。ウィスキーの瓶。瓶の口は開いている。さっきまでそれを飲んでいたのだろうか。だが男の周囲を見てみてもコップやつまみの袋などは見当たらない。瓶から直接、口をつけて飲んでいたのだろうか。深夜に、誰もいない部室の片隅で?
「……これ、ですか? 飲みます?」
 私の目線に気付いた男が、手に持っていたそれを掲げるようにしてこちらへ見せる。
「いいですよ、飲んでも。でも、気を付けて下さいね」
 気を付ける? 一体何に気を付けろと言うのだろう。
 そんなことを考えながら、私は夏希のノートを鞄に仕舞ってから、男の方へと歩み寄った。これでまたノートを忘れてしまったら、もうあの友人はしばらく口を利いてくれなくなるだろう。それは避けなければならない。
 私は男の手から瓶を受け取り、くんくんとにおいを嗅いでから、瓶に口をつけ、その琥珀色の液体を喉に流し込んだ。
「あ、そんな勢いよく飲んだら――」
 目の奥で花が咲くような強烈な熱さが、舌を焦がすように喉の奥へと通り抜けていく。ああ。なんだこれは。とんでもなく、強い酒じゃないか。こんなものを、水で割ることもつまみで誤魔化すこともしないで、ちびちびやっていたのだろうか。変な男だ。
 ぐらりと地面が揺れるような気分がした。なんだろう、毒でも入っていたんだろうか。
 なんだかどっと酔いが回ってきた。そういえば飲み屋を出る前、飲めもしないビールを一気飲みしたんだっけ。夏希が見ていない隙に、一年生が先輩に注がれて困っていたのを飲んであげたのだ。その分の酔いかもしれない。アルコールはいつもそうだ。気持ちが良いのはほんの短い間だけで、後からどんどん悪いものがやってくる。
 気が付いた時には、床に膝を突いていた。なんだか少し横になりたい。目の前がぐるぐると回って、気分が悪い。
「あの、大丈夫ですか。酔っているんですか」
 全く酔いを感じさせない声でそう言われ、手から瓶が奪われる。「大丈夫です」と答えようとして、自分の言葉が舌足らずになっていることに気付く。テーブルの上に座っていたはずの男は、いつの間にかそこから降り、床に座り込んでしまった私の目の前にしゃがんでいた。
「だいぶ酒臭いですよ。飲んで来たんですか。ああ、そうか、今日はコンパだったな」
 男は私に顔を近付け、鼻をひくひくさせてからひとり言のように、「参ったな」と言った。
「酒を勧めるべきではありませんでしたね」
 身体が熱くて泥のように重い。頭が痛い。何か言わなきゃと思うのに、上手い言葉が何も出て来ない。横になりたい。少し眠りたい。
 溶け出すように体勢が崩れていく私を、いつの間にか目の前の男が支えてくれている。その腕に抱きつくように身体を委ねながら、もうほとんど回らなくなった頭で考える。
 一体誰なんだろう、この人。
 さっきまでこの部屋には、誰もいないんだと思っていた。部屋の片隅に、まるで物みたいに座っていた。まるで、この部屋に置いて行かれて、忘れ去られてしまったみたいに。
 ああ。そうか。わかった。わかったぞ。
 それは確信だった。思わず笑い出してしまった。そういうことだったのか、と思う。そういう意味だったのか、なるほど、確かに、彼にはそういう雰囲気がある。
「あなたが、水瀬くんなんだね」
 ぽつりと私が口にした時の、彼の表情が忘れられない。
 豆鉄砲を食らった鳩は、きっとこんな顔をしているんじゃないだろうか。
 恥ずかしいことに、私の記憶はそこで途切れている。
 次に目が覚めた時、私は水瀬の部屋にいて、彼の布団に横になっていた。すぐ目の前には、クッションを並べた上に寝転んでいる彼の背中があった。腕時計を見ると、時刻は朝の五時半だ。
 痛む頭を押さえながら起き上がり、規則正しい寝息を立てている彼の寝顔を肩越しに覗き込んだら、起こすのが申し訳ないような気がした。しかし、かと言って見知らぬ男の部屋ですることもなく、私ももう少し眠ろうか、それとも今のうちに出て行った方がいいのだろうか、ということに悩んでいるうちに、彼は目を覚ました。
 起き上がった水瀬は、自分と私にコップ一杯の水を用意してくれてから、簡単に事の成り行きを話した。
 記憶が途切れた後、私はしばらく部室の長椅子に寝かされて休んでいた。一時間ほどして目を覚まし、家に帰ると言い出したが、とても自力で家に帰れる様子ではなく、彼は送りますと言ったが私がそれを受け入れなかったので、なら自分の部屋に来ないかと提案した。何故なら彼は、大学の裏門を出て百メートルも歩かないところにアパートを借りていたからだ。彼に半ばおぶわれるようにしてこの部屋に来て、そうして、私は敷いてもらった布団で眠った。
 その後、一度途中で夢にうなされて目を覚ましたのだというが、私はすぐにまた眠ってしまい、そして、今やっと起きたということだった。
 私は話を聞いているうちに、申し訳なさと恥ずかしさで死んでしまいたくなった。すみません、すみませんと謝ったが、水瀬は難しい顔をしているままだった。怒っているのだろう。当然だ。初対面で、酔い潰れられて、自分の部屋に連れて帰る羽目になるなんて、不遇以外の何物でもない。
「ひとつ言っておきますが、」
 水瀬がどこか苦しげに、呻くようにそう言ったので、私はちらりと彼の顔を見上げた。何を言われるのだろう、と内心、心臓が痩せ細るような心境だった。彼は眉間に皺を寄せたまま、
「あなたには、やましいことは何もしていません」
 と言った。
 私はその瞬間、呆気に取られた。
「あなたを俺の部屋に連れて来たのは、あのまま部室で寝かせ続ける訳にもいかないだろうと思っただけで、その、深い意味はなく……」
 何も言えずにぽかんとしている私の顔を見もしないで、彼は続けて言う。
「まぁ、そりゃ、男女ですから、こういったことはしない方が良いということはわかっていますが、でもやはり酔い潰れたあなたをあそこに放っておく訳にも……」
「あの、」
 私が声をかけると、彼はやっとこちらを見た。
「なんでしょう」
「あの、私、信じますから」
「何をですか」
「あなたのこと。あなたの言葉、信じますから。だからそんなに、弁解しなくて大丈夫です。助けて下さって、ありがとうございました」
 頭を下げて、もう一度顔を上げると、今度は彼がぽかんとした表情をしていた。
「…………そう、ですか」
 まだどこか納得していないというような顔で、だけれども彼はそう言って、きまり悪そうに頭を掻いた。
「まだ、名乗っていませんでした。水瀬といいます」
「はい、知っています」
「そういえば、昨夜も俺の名前を呼んでいましたね。どうして、俺のことを」
「文化部の人たちが、あなたのことを話しているのを聞いたので」
「そうですか。どうせ、良い話ではないのでしょうね」
 それはあまりにも自然に、平然と彼の口から発せられた言葉だった。その声音にはなんの感情も含まれていないように思えた。
「それで、あなたの名前は?」
「田代です。二年の田代世莉」
「田代さん、ですか」
 彼はそう言ってから、小さく息を吐いた。
 部屋のカーテンは閉められていたが、隙間から朝の光が射し込んでいた。今日も外は暑そうだなという夏の予感に気が滅入りそうになる。
「田代さんの鞄は、そこです」
 彼が指差した先は、居間から台所への入り口付近だった。そこには確かに、私の鞄が置いてある。
「帰るなら、どうぞ。俺は、もう少し寝ます。寝不足なので」
 水瀬はそう言いながら、再び身体を横にしようとする。こちらに向けられたその背中に、「あの、」と声をかけると、その動きは止まった。
「私も、もう少し、眠っていってもいいですか」
 あまりにも図々しいお願いだった。だけれど私も眠たかったのだ。彼はしばらくそのままの姿勢で止まったまま、黙っていたが、やがて、「どうぞ」と一言だけ言って、座布団の上に転がった。
「あの、今度は水瀬くんが布団に――」
「眠るので、静かに」
 そう言ってから、一分も経たないうちに、再び規則正しい寝息が聞こえ始めた。
 私もさっきまでと同じように、布団に横になる。身体が疲れているのか、すぐに眠気が襲ってきた。まぶたを閉じる少し前、そういえば、彼とは初対面なのに気負わずに会話ができていたことに気が付いて、それだけが少し、不思議だった。
「馬鹿じゃないの?」
 私の話を、夏希はそう言って一刀両断した。
「どうして初対面の男の部屋ですやすや眠れる訳? 危機感なさすぎでしょ」
「水瀬くんは、やましいことは何もしてないって言っていたし……」
「だから、それを鵜呑みにするのが馬鹿だ、って言ってるんだけど」
 目の前の友人は苦い顔をして私のことを見ていた。その表情の原因は、飲んでいるコーヒーのせいではないだろう。
 大学の学食。私と夏希は向かい合うように座り、自動販売機で買った紙コップのアイスコーヒーを飲んでいた。夏希はブラック、私はミルク入りだ。こんな不味いコーヒーを飲むくらいなら泥を舐めた方がましだ、なんてこの友人は言うけれど、泥水より不味い液体を啜りながらもここにいるのは、ここが冷房の効いた場所だからだ。
 夕方の学食には私たちの他にも人の姿がちらほらあって、夏休み中の補講が終わったものの、真昼の熱気を忘れられずにいる外気温にうんざりして、皆行くあてもなくここにいる。
「それで、そのまま昼過ぎまで一緒に眠って、お詫びに昼食をご馳走して、それから別れたってこと?」
「そうだよ」
 私が頷くと、夏希は深い溜め息をついた。
「……送って帰ればよかった」
「夏希は私のこと、置いて帰ったくせに」
 冗談半分にそう言うと、途端に夏希は私を睨み、
「世莉が僕のノートを部室に忘れてきたりするからでしょ」
 と怒った。私は笑いながらそのノートを鞄から取り出し、差し出す。
「本当に助かったよ、ありがとう。また借りてもいいかな」
「もう二度と貸さないから、不必要な期待はしないでくれる?」
 ひったくるように私の手からノートを奪い、夏希はすぐに自分の鞄に仕舞い込んでしまう。不機嫌そうな表情。どうやら本当に怒っているようだ。私は小さく肩をすくめた。
「これでも、反省してる。酔っ払って、水瀬くんに迷惑かけちゃったこと」
「水瀬なんてどうでもいいんだよ」
 そう言う友人の声は、明らかにいらいらしている声音だった。
「僕が怒っているのは、見知らぬ男の家にほいほいついて行く、世莉の無神経さについてだよ」
「別にほいほいついて行った訳じゃあ……」
「酔ってて記憶がないからって、許される訳じゃないからね」
「そんなこと言われても……」
「もう二度と、他の男の部屋に泊まらないで」
 切って落とされたように発せられたその言葉は、私の胸に重く響いた。
 夏希はどこか思い詰めたような顔をしている。その表情は、既に怒りの形相ではなくなっていた。諦めと悲しみが入り混じっているような、そんな風に見えた。私は何かを伝えなくてはと思いながら、なんて言えばいいのかわからないまま、ただ黙っていた。
「ごめん」
 やがてそう口にしたのは、私ではなく夏希の方だった。その言葉を聞いて、自分はこの友人が謝罪の言葉を口にするのを待つために沈黙していたのではないか、という考えが私の脳裏をかすめた。
「世莉の彼氏でもないのに、僕がそんなことを言う権利、なかったね」
 苦笑いをしながらどこか気まずそうにそう言う友人に、「ううん、そんなことない。こっちこそごめんね」と言いながら、私は卑怯な人間だ、と思った。
「でも、世莉にあんまり軽率な行動をしてほしくないっていうのは、本当」
「うん、わかった」
「何かあってからじゃ、遅いんだからね」
「うん」
 夏希は心配性だな、と思ったが口には出さなかった。余計なことを言うと友人をまた怒らせてしまうような気がして、そしてそれ以上に、悲しませてしまうような気もした。
「僕は、」
 夏希の細い指が、コーヒーの紙コップをテーブルの上に戻す。空になったそのコップを、軽く握り潰すようにしながら、
「世莉が傷つくの、見たくないんだよ」
 と、言った。
 友人の手の中でだんだんと潰れていくコップから目を逸らして、私は「わかった」と返事をする。自分の手元のコップの中には、白と茶色が混ざり合った不味い液体が、半分以上も残っていることに、飽き飽きした気持ちになりながら。
 確かに、私は軽率だったのかもしれない。文化部の部員たちで誰かの部屋に集まって飲み会をして、そのまま泊まることはあっても、異性の部屋にひとりで泊まることなんて、そうそうないことだ。他の部員にこのことが知れたら、夏希が私を怒ったのと同じように、決していい顔はされないだろう。
 文化部はほんの数年前まで、不特定多数の異性との性行為を目的としたサークル、いわゆる「ヤリサー」だと呼ばれていたというが、少なくとも私が入部した時には、そういった雰囲気はなくなっていた。夜になると部室をラブホテル代わりに使う部員がいたというが、今は夜間に部室で誰かと出くわすことさえ稀だ。
 それでも私は、夜の部室についつい足を運んでしまう。そうすれば、会いたい人に会えるような気がするからだ。以前から、私は誰かに会いたくて、夜の部室の扉を開いてみることが多々あった。
 だが、本当に私が会いたいと思う人には、部室に足を運んだところで、もう会うことはできない。あの人に最後に会ったのは、彼が大学を卒業していった日だった。あれから、まだ半年も経っていない。今でもときどき、夜に部室を覗けば彼がそこにいるんじゃないかと思ってしまう。そんな訳はないのに。
 あの人に初めて会ったのも、私が部室に忘れ物をした夜のことだった。
 忘れ物を取りに部室へ向かった時、部室の照明が点いていることに気が付き、扉の前で思わず足を止めた。ああ、誰かいるんだ。そう思うだけで気が重かった。大学一年生の五月。私は未だ、大学生活にも文化部での活動にも慣れることができずにいた。
 文化部の人たちは明るく親切で、私に対してもよく話しかけてきてくれた。私���それに自分なりに精いっぱい明るく礼儀正しく答えていたつもりだったけれど、正直、話しかけてもらえることに嬉しさと同じくらい申し訳なさを感じていた。私は気の利いたことや面白いことは何ひとつ言えなかったし、訊かれたことにさえ満足に答えられなかった。今は親しげにしてくれる人たちも、そのうち私に飽きて近寄ってくれなくなってしまうのではないか。そう思うことも恐ろしかった。
 その夜、部室にいたのはひとりの四年生男子だった。もちろん、初めて彼と出会ったその時は、学年など知る由もなかった。だが、年上の男性であるということは一目でわかった。彼には年上の威厳たるものがあった。屈強な身体つきに、鋭い目を持つ彼は、運慶と快慶の金剛力士像を連想させた。彼は静かに読書をしていて、部室へ入って来た私の方をちらりとも見やしなかった。
 私はいつの間にか忍び足になっていて、そろそろと部室の中を歩きながら、「おひとりのところすみません、ちょっと忘れ物をしてしまって……」と言った。「そうか」と彼は答えた。その目線は手元の本に向けられたまま、ほとんど動かない。
「私、間抜けですよね、部室に忘れ物をするなんて……」
 この時部室に忘れていったのはペンケースだった。私のペンケースは誰かが途中まで遊んだままのボードゲームが占領しているテーブルの片隅に置いてあった。ゲームの駒を落としたりずらしてしまったりしないように気を付けながら、それをそっと手に取る。
「ここ、五階じゃないですか。階段の上り下りだけでも大変なのに……」
 私の話を聞いているのかいないのか、彼は返事をしなかった。ただ黙って本を読んでいる。無言でいるのも気まずいかと思って話しかけてみたが、かえって読書の邪魔だったかもしれない。自分の安易な考えを反省しつつ鞄にペンケースを仕舞い、しかし、ここまで話しかけたのにこの後無言で部室を出て行くというのも、なんだか変なのではないか、と悩み始めた時、彼は言った。
「無理に、話さなくていい」
 思わずびっくりして彼を見たが、あの人は未だこちらを見ようともしていなかった。その表情からはなんの感情も読み取れなかったが、それでも、どうやら怒っているという訳ではなさそうだった。
 私は急に頬が熱くなるのを感じた。そのまま無言で彼に向かって一礼をし、「お疲れ様でした」の挨拶もしないで、ほとんど走り去るように部室を後にした。もう顔から湯気が出るくらい、恥ずかしかった。
 彼に見抜かれていた。無理をして話しかけようとしていることが、バレていた。そして、そんな私を彼は許してくれていた。私はそう思った。かけてくれた言葉はぶっきらぼうなものだったが、その声音は彼の見た目に似つかず穏やかで、私を安心させてくれた。それが嬉しかった。
 息が上手くできなくなるまで猛烈な勢いでサークル棟の階段を駆け下り、キャンパスを全力疾走した。講義棟の近くまで走って来た時、ぜえぜえと荒い息を吐きながらついに立ち止まり、そうして私は泣いた。恥ずかしくて嬉しくて、頭の中は大混乱していた。そんな私の頭上では、大きな満月がまん丸い顔をして、街じゅうを柔らかい光で照らしていた。
 それが、私があの人と初めて出会い、そうして彼に恋をした、その最初の夜だった。
  <続く>
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sabooone · 8 years ago
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黎明、即ち再開の空の下で/10/2011
どこをどうして迷い込んだのか、今となっては思い出せない。
百合子は広すぎる洋館のしんと静まった暗い廊下を一人で歩いていた。 女中も召使いも誰もおらず、先ほどまで一緒だった兄さえもいなくなっていた。
普段からお転婆がすぎると母から怒られてはいたが、今日ばかりは深く反省した。 廊下は広く長く、一歩一歩進むごとに暗闇が深くなっているような気がする。 じんと鼻先が痛み、涙が溢れそうになるのを百合子は堪えた。
しばらく行くと暗い廊下にぽつりぽつりと灯りがつきはじめた。 百合子はほっとしたが、それらの灯りはより深く暗いところへ行くための目印だったのだ。 そうと走らない百合子はその灯りを頼りに、階段を降りる。
下階の方からは、ごうんごうんと音が聞こえてくるので誰かいるのかもしれないと思った。 階段を踏み出せば不思議な匂いがした。それは苦いような青臭さだった。 しばらく行くと古い扉があらわれ、音も匂いもその中からしているようだった。 その取っ手に手を伸ばし、引いてみるがぎしりと金属音がするだけで開かない。
百合子は何度か押したり引いたりしてみたりしたが、どうやら鍵がかかっているらしくびくともしなかった。
「誰かいないの?」
声をかけてみても同じで、がっくりと諦めて更に続く階段を降り始める。 階段は行き止まりにまた扉があって、百合子はそれを押して開けてみた。
瞬間、あふれる光りに百合子は思わず目を瞑った。 さわさわと何かが風に揺れる音がして、甘い香りが鼻孔をくすぐる。 ゆっくりと目を開き、何度かぱちぱちと瞬きをしてようやくそこが花いっぱいの温室だと分かる。
「まあ……」
先ほどまでの寂しさを忘れ百合子はその花々に見蕩れた。 白や朱に黄色、薄紫に紅といった様々な色の花が百合子の背丈ほど伸びているのだ。 花壇はきっちりと区切られ、脇には水路がちょろちょろと流れている。 そして更に上を見上げると、ガラス張りの天井に魚が泳いでおり、その透明な天井から差し込む陽の光はとても明るかった。 まるで夢のなかのようだと思う。
「きれいね」
百合子はそう言って花に触ろう手を伸ばした。
「ダメですよ」
急に声をかけられて振り返った。 そこには下働きらしい少年がおり、厳しい顔つきをして百合子を見ていた。
「あの……あ、わ、私、迷ってしまって……」
とっさに口をついて出たのはそんな言い訳だった。 花を盗もうとしたのだと思われたのではないかと不安になる。
「それに……花をとろうとしたのではないわ。みたかっただけなの」 「花が――お好きなんですか?」 「ええ、好きよ」
少年の顔つきが幾分か柔らかくなった気がして、ほっとしながら百合子はそう答えた。
「ここの花はダメですけど、庭園にはもっといろいろな花があります。 それなら、良いですよ」 「本当?」 「はい」
少年はそういうとすたすたと部屋を出る。 百合子もそれに遅れまいと追いかける、二人が部屋を出るとがちゃんと音を立てて扉がしまり暗い廊下に戻る。 暗い階段を少年の後をついて歩きながらそれでもどこからかあの花の匂いがした。 そして、それが少年から香っていることに百合子は気がついた。
がたん、と自動車が揺れる。 うとうととうたた寝をしていた百合子は窓硝子に額を打ち付けた。
「っ……」
不意の痛みに思わずぶつけた額を押さえて苦悶の声をあげる。 じんじんと痛む額をおさえつつ、何か夢を見ていたような気がしたのだが、どんな内容だったか思い出せなくなってしまっていた。 掬い上げては指の隙間からこぼれ落ちる砂のように、夢の記憶が遠ざかる。
「あともう少しで到着しますよ」
運転手が百合子に声をかけて返事をするときには、すっかりと夢の内容は思い出せなくなっていた。 深い緑が続く車道。 百合子は、神奈川県の山奥に建つある洋館に招待されていた。 事の起こりは数週間前、百合子のもとに不思議な手紙が送られてきたことから始まった。
/-/-/-/-/-/
名探偵、野宮百合子嬢に告ぐ。 貴方が真の名探偵であるというのならこの家に伝わる財宝を探し当てよ。
「随分と挑発的な手紙だな」
斯波の服装はすでに病院の用意したものではなく、自前のいつもの洋装だった。 まだ退院は早いのか、それでも会社への指示だけは出すようになっていた。 前日にあのようなことがあったばかりだというのに、百合子はその手紙をもって斯波の病室を尋ねている。 考え始めたらだめなのだ、深く考えてしまうと今でも顔から火が出るほど恥ずかしいし手も震える。 心臓の鼓動は鳴りっぱなしになるし、まともに斯波の顔を見られなくなる。
「そうなの、それでねこの差出人がまた奇妙なの」 「蔵元澤三郎っていうと、数年前に死んでるじゃないか。 たしか心の臓が弱っての病死だったか――それにしても面白い偶然だな」 「偶然?」
きょとんとした百合子に斯波は知らなかったのかとばかりに驚きながら言った。
「真島芳樹は蔵元邸の庭師だったんだぞ」 「蔵元邸の?――藤田は蔵田家の庭師だったと言っていたわ」
百合子はそれを聞いてわずかに戸惑う。 確かに藤田に確認した時はそう言っていたはずだ。 藤田は真島よりも長く野宮家に仕えていたから、情報は確かなはずだった。 その情報を知ってから一度だけ蔵田家を訪れたがすでに邸は売買され、違う住人が住んでいた。 手伝いのものや女中などもすっかり人が変わっていたためそれ以上足跡をたどることはできなかったのだ。 その事を斯波に伝えると、なるほどなと頷きながら説明し始めた。
「蔵元は、元々蔵田家の番頭をやっていたんだ。 江戸時代末期、蔵田は水田開発だの塩田開発だので土地持ちになって、更に質商や金融業も営んでの豪商となった。 そして、当時多くの豪商が私札を発行��ることになる――ところがだ、私札を発行した家は大名に賃金を支払不能にされたりして没落の道をたどった。 ただ、蔵元は私札発行には目もくれず東京近隣の土地を買い上げた。 だから、あの頃の蔵田家といっても実質は借金まみれの没落家だったはずだろう。 蔵元は恩返しのつもりかいくつか蔵田の借金を負っていたはずだから……東京にある蔵田の邸はほとんど蔵元の所有と思っていいだろう」
そこまで喋って斯波は百合子の視線に気がついた。 じとりと湿り気の帯びた瞳が、不審そうに斯波を見つめている。
「何だお姫さん」 「どうしてそんなに詳しいの?」
百合子が不審がってそう問うと、斯波はにやりと口の端を釣り上げて答える。
「敵情視察は基本ですからね、真島とやらのことを聞いてからは人をやって調べさせた」 「探偵の助手が別の探偵を雇って?」 「別の探偵じゃない俺の部下だ。――それでこの挑戦受けるのか?」 「……まだ、受けないわ。だってまだ斯波さんも本調子じゃないし、 仮に今受けると言ったらあなた無理やりにでもついてくるでしょ?」
白いシャツの下にはぎゅうぎゅうとき��くさらしが巻いている。 毎日包帯を取り替えて抜糸もされていない傷口を日に何度も消毒する。 夏も終わりようやく涼しくなってきたものの、斬りつけられた傷口が化膿しなかったのは運が良かったのだろう。
「傷はもう塞がってるが……」 「いいえ、そんな状態でついてこられたら逆に足手まといですからね。 あなたの性格はよおく知っているもの、斯波さんの傷が癒えるまでは保留にするわ。 それに、いまだに記者が家の周りをうろついていて……何を書かれるか分からないものね」 「ああ、それは英断だな」
斯波は手紙を折りたたんで百合子に手渡す。 秋の涼しい風が開いた窓から入り、白いカーテンをはためかせる。 百合子が見舞いにと持ってきた花がそよそよと揺れた。
(そういえば斯波さんのために花を選ぶ日がくるとは思わなかったわ)
百合子は自分の髪が長かった頃のことを思い出していた。 自分も斯波もあの頃から随分と変わってしまったような気がする。 そう思ってちらりと斯波を盗み見ると、斯波も百合子を見ていたようで一瞬目があう。 百合子はどきりと心臓が跳ね、ゆっくりと顔が紅潮していくのがわかった。 そんな百合子に対して斯波はどこか気の抜けたような顔をして笑った。
「ところで、今日は林檎を食わしてくれないのか?」
重湯が物足りないと文句を言っていた時に、差し入れにと市場で買った林檎をもってきたのだが、 刃物の扱いが苦手な百合子は随分と苦労して皮を剥いたのだ。 ごつごつと見た目も悪く、買った店が悪かったのかすかすかと海綿のような林檎だった。
「私がやるよりも、斯波さんがやった方がお上手だったじゃない」
見かねた斯波が一つ試してみたらするすると器用に林檎の皮を剥いていくのだ。 まるで職人技のようだと百合子は感動したが、何をやらせても器用にこなす斯波を少しだけ憎らしく思った。
「なんだなんだ、連れない人だな。俺はお姫さんが切ってくれた林檎を食いたいんだ」 「もう、そんなに言うのならやりますけど」
そう言って机に置かれた籠を取る。そこには水果千疋屋と書かれていた。
/-/-/-/-/-/
(結局、斯波さんを騙して一人で来てしまったけれど……まさか後から追っては来ないわよね)
斯波にはしばらく親戚の家で大人しくしているつもりだから、当分見舞いに行けないかもしれないと伝えておいたのだ。
東京から神奈川まで自動車でだと半日もあればつくが、そこから山奥の別荘へと向かう道は悪路が続いていた。 こんな山奥に邸を建てるなどと酔狂なことだと百合子は考えながらぼんやりと車窓を見つめる。 そして、木々の間から見え始めた塔を見て絶句する。 とても山奥に建っているとは思えないほどの、別荘と呼ぶには些か大きすぎる建物が見えてきた。
「あの、あれが……」 「蔵元邸です――まあ地元の人間は蔵元城と呼んでいますけどね」 「そう、城……」
聳え立つ塔をもち、外堀をめぐらせ跳ね橋をかけている様は城と形容するのが一番ふさわしいだろう。
「何でも英吉利の有名な建築家を呼んで作らせたっていうほど先代が英吉利贔屓らしくてね。先の災害にも耐えたそうですよ」 「先代っていうと、数年前に亡くなった?」 「そうそう、港の辺りの土地を持っていたらしいし、土地開発と貿易なんかで儲けたらしいけどね。 この辺りじゃどこぞの議員さんやら華族さまよりも有名だよ。ところでお嬢さんはどういった用事なんだい?」 「雑誌の取材です、こう見えて編集者なので」
運転手は何も知らされていないのか、呑気に問いかける。 百合子もとっさに答えたが、どうにも”探偵”です、とは言えなかった。
「へえ、東京からわざわざねえ。へえ、雑誌の記者さんか」
ミラー越しに検分されるように見られているのを感じる。 百合子は気にもしないと言う風に軽く髪の毛を触った。 薄紫のモダンな洋装に手首までの白い手袋、流行りの帽子を被ってタイを結んでいる。 どこからどうみても東京のモダン・ガールであり、職業婦人である。 そしてミラーの視線に今気がついたという風に、にっこりと笑って見せてから問いかけた。
「蔵元家は地元の皆さんにも慕われていたみたいですね」 「そうだねえ、俺の曾祖父さんがよく言っていたけどほら天保の飢饉には金何両だかを献じたって。 先代で一時期ちょっと雲行きが怪しくなった時があったらしいが、やはり商才だろうね。 すぐに立ち直って――まあ、その矢先に先代さんはお亡くなりになったんだけどね」 「そうなんですか、えっとじゃあ今は――」 「跡取り息子の宗太さまって方が継いだらしいけど、どうだろうね。 北海道あたりの――何と言ったかな室蘭だったかな……とにかくそのあたりに製銅所が出来るという話があってそれの投資に躍起になっていたと聞くよ」 「そうなんですか」
興味深そうに相槌を打ったのが気になったのか、運転手の顔が曇る。
「あ、今の雑誌に書くつもりかい?まずいなあ……」 「いいえ、大丈夫ですよ」
運転手は困ったように頬を掻くと、それきり黙ってしまった。 もう少し話を聞きたかったが、仕方が無いと諦める。 百合子も自分で下調べをしてはみたものの、さすがに限界があった。 今はもう新聞社に立ち入ることもできないし、斯波を頼りにすることもできない。 けれど、今まで詳細のつかめなかった真島の過去に何か触れられるのなら、と思うと居ても立ってもいられなくなったのだ。 斯波はきっと怒るだろうな、と百合子は思った。 何も告げずに一人で行動することに、眉根をよせて作るしかめっ面を思い出す。 くす、とわずかに笑みが溢れるのを居住まいを正す事でどうにか誤魔化した。
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病室の扉が開く。 現れたのは山崎だった。 しゃくしゃくと瑞々しい林檎を頬張りながら、斯波は山崎を一瞥して確信したように頷いた。
「山崎、行ったか」 「ええ、社長の仰るとおりでした」 「やはりな――。よし、ではこの中から一番目を引く見出しを選べ」
斯波は寝台にあぐらをかき、敷物の上にに筆文字で書いた半紙を並べた。
一、怪奇!死人からの挑戦状、野宮百合子最後の事件! ニ、T氏の埋蔵金を探せ!美人探偵百合子の事件帖! 三、華族探偵野宮百合子と呪われた洋館の謎! 四、名探偵野宮百合子、危機一髪!~呪われし財宝と最後の事件~
それに全て目を通して、しばし考えこむ。 そして、どこか誇らしげにしている斯波に率直に聞いた。
「社長、これは一体……」 「もちろん、各新聞社に送るタレコミだ」 「なぜ、新聞社にこれを送る必要が?」 「山崎、良い質問だな。真島芳樹にお姫さんを見つけさせるためだ」
自慢気に言う斯波の顔を今度は心配そうに山崎は見つめた。 その視線に気がついたのか、ばつの悪そうな顔をする。 眉根をよせてしかめっ面を作ると、少し気分を害した様な声を出した。
「何だその目は、ん?」 「いえ、三日三晩の高熱の後遺症かと……」 「馬鹿者。いいか、真島とやらはお姫さんに見つからないように逃げてるんだぞ。 それを見つけようと探すのははっきり言って無理だ」 「左様で……」
山崎はほっと胸を撫で下ろす、どうやら頭が茹だってしまったわけではないらしい。 それを見て斯波も調子がついたのか、自らの作戦の構想を語りだした。
「だからだな、今の華族探偵ムーブメントにのるであろうこの記事を真島が目にするとだな。 真島がこれは一大事とお姫さんの様子を窺いに現れるかもしれん。 何しろこの蔵元家はかなりきな臭い。政治家に心酔しおかしな投資に大金を突っ込み傾きかけたはずが、貿易で急に盛り返したりとまあ何とも動きが怪しい」 「それはまあ社長の仰りたいことは分かりましたが……いいのですか? お二人が出会ってしまったら、恋心が再燃して愛の逃避行に走る可能性も……」
その言葉に斯波はぴくりと眉尻をあげた。 そして少しだけ考えこむように沈黙するが――。
「まあ、もちろんその可能性も考えなかったわけではない。 しかしお姫さんは俺に”嫁になってもいい”と言ったんだ。 どうだ、これはかなり俺を好いている、いや俺のことを着実に愛し始めていると言っても過言ではないぞ? (あまりの可愛さに理性がぶち切れてつい手を出しそうになってしまったがな、はは) こうなると――禍根は、この真島だけなんだからな。 まあ、俺もこんな記事を打ちつつも真島がお姫さんの前に現れる確率など五分……いや、いいところ二分くらいなものだろうと考えている。 探しても見つからない、炙り出しても現れない、そうなってようやくあの頑固者――いやいや意思の固いお姫さんも諦めるというものだ。なあ」 「仰るとおりで」 「さあ、ぐずぐずしていられないぞ。 記事の方にもそれとなく蔵元家の存在を匂わしつつ真島に伝言を入れ込まねば。 いいか、場所や個人名が特定されてしまって記者が嗅ぎつけたら元も子もないからな、塩梅だぞ塩梅。 よおし、まずは熱い茶だ。茶を入れろ!」 「はい」
山崎はそう命ぜられて一旦病室を出る。 中ではああでもないこうでもないと原稿を推敲する斯波の声が聞こえる。 側仕えの女中に熱い茶を入れるように言うと、深くため息をついた。
(百合子さんが関わられると急に人がお変わりになる……)
斯波の作戦が成功しようが失敗しようが、山崎の心労が晴れることは無さそうだった。
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衰退する蔵田家の一方で、蔵元家が急成長した理由にとある共同経営組織の存在があった。 これは元は清と英吉利の貿易を代行している会社で、貿易の中継地点として日本での拠点になる会社の経営を蔵元に願い出たのだった。 日本での活動をより円滑にするために財界や政界にも顔が広い蔵元に支援を受けていた会社が、いずれ蔵元を内側から食い荒らすほどの巨大な組織であった事は蔵元の当主であった先代しか知らない。 毎年毎年生み出される莫大な利益が何から生まれているのか、それを知ったときにはもはや後戻りはできないほどの闇の深みへと沈んでいたのだ。 人の欲を食って膨らみ続ける金――権力や富をもう欲しいとは思えなかった。 だから、共同経営者の使いから火急の要件を聞いた時、何十年ぶりかに心の休まる思いがした。
それは、組織が蔵元から手を引くというものだった。 蔵元名義の会社や工場、港は全て閉鎖か転売するという内容だった。 手元に残るのはほんの少しの資産とわずかな土地くらいなものだろう。 いつ、政府や役人にあの恐ろしい罪が暴かれるかと不安に思う日々に比べれば多少の不便など目を瞑ることが出来た。
こうなると、悩みの種は一人息子のことだった。 そんな内情を知らない息子は、会社の権利書や土地の証明書などを引っ張り出しては調べ上げている。 何をどう勘違いしたのか資産を隠し持っていると考えているようだ。 ふ、と例の共同経営者について全て洗いざらいを話して、説得してみようかと考えてみるもすんでで思いとどまる。 それが共同経営者の男との盟約だったのと、何よりこの邸の秘密を知った息子は恐れるよりも喜び勇んで利用するだろう。 だから、やはりこの邸は男の言う通り、朽ちるに任せるのが一番いいのだ。
ずぎり、と心臓が痛む。 もうずっと、体調が思わしくない。 ふるえる手で水差しを探すが、ぶるぶると震えて焦点が定まらない。 手の甲が硝子に触れ、勢い余って机から水差しが落ちる。 絨毯に水差しが転がる重い音がして、水を散らしながら転がる。 ぜいぜい、と額に脂汗を浮かせて床に倒れ込んだ。
その音を聞きつけた秘書が扉を開けて駆け込む。 ぼんやりとした意識の向こう側で必死に名前を呼ぶの分かる。
「この邸だけは……」
震える舌は最後の言葉をどうにか紡ぎ出し、糸が切れたようにそのまま力が抜ける。
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城には二つの種類がある。 一つは敵の侵攻を防ぐ要塞としての城、ぐるりと囲む城壁や堀にかかる跳ね橋は城塞としてのそれである。 そしてもう一つはマナーハウスと呼ばれ、貴族たちの別荘としての建物で広く美しい庭をもつものだった。 蔵元の城はその二つを兼ね揃えていた。
威圧感のある城壁に、跳ね橋をみてよくも政府などに目を付けられなかったものだなと思ったが、一歩跳ね橋より中に入ってみるとそこは美しい庭が広がりその中央に噴水が輝いていた。 開けた道が一本噴水まで続く、そしてその奥に欧州の絵本の挿絵をそのままそっくり建築したようなマナーハウスが建つ。 道なりに両脇には動物を象��た木の葉が刈りこまれており、造形は躍動する馬だとか跳ねる兎だとかで、午後の日差しも相俟って庭は不思議な雰囲気が漂う。 マナーハウスは薄いクリーム色をした建物で、外壁を緑の蔦がからみつくように覆っている。 背後には森が続いているようで城壁が見えないほど広い。 自動車が止まり、運転手にドアを開けられて外に出ると城壁によって外界と遮断され、まるで本当に別の国に迷い込んだようだった。
「お待ちしておりました、名探偵殿」
百合子にそう声をかけたのは30代半ばほどの男だった。 焦げ茶色の洋装に撫で付けた髪に口髭、微笑んでいるが目の奥は百合子を検分するように光る。
「素敵な招待状をありがとうございます、ご依頼はどのような?」
男は苦笑して答える。
「招待状の通りです、私の父は数年前に病気で亡くなったのですがその際遺産を屋敷に隠したと遺言を残したんです、遊び心の多い人でしたので。 最近、貴方のご活躍を耳にしましてね、是非我が邸の謎も解いてもらおうと思ったんですよ」 「それにしても、亡くなったお父上のお名前を使うなんて……」 「これは賭けだったんですよ、なあ?」
男は後ろに控えている秘書に笑って同意を求める。 50代前半ほどの老紳士風の秘書は無表情のままかしこまって礼をした。
「ここではそれほどでないが、東京では今や貴方の名前を知らない者はいない。 そんな有名な探偵殿に普通に依頼を出しても選り好みをして受けてはもらえないだろう?」
得意そうに弁舌を振るう当主。 百合子が依頼を受けたのは全く別の理由だし、嫌味な言い方にかちんとくるも微笑んで同意してみせた。
「旦那様、野宮様もお疲れのことでしょう」 「ああ、そうだな。兎に角、貴方の手腕が発揮されるのを楽しみにしているよ。 依頼の説明や身の回りの世話は秘書の日野に任せてある」 「まずは宿泊のお部屋にご案内を」 「ええ、では失礼いたします」
自動車に積んだ荷物を持ち秘書の男が邸を案内する。 残された当主は内懐から煙草を取り出し火をつけ、興味深そうに百合子の後ろ姿を目で追った。 ふうと煙を吐き出して、吸殻を捨てる。ぎゅっぎゅと革靴の底で踏みつぶしながら今度こそはどうだろうと思案に暮れる。
(本当に遺産なんてあるのか?)
父親が病死して土地という土地、遺品という遺品を総ざらいしてみたもののそれらしい遺産は何もなかった。 傍から見ればあれほど土地持ちだ資産家だと思っていた邸は空蝉のごとく何も残っていない。 財界を唸らせるほどの金と権力が父親の死によって、全て見せかけだったと気付かされる。
(いや、そんなはずはない――)
では、あれほどの金はどこから出ていたのか。 やはり何か隠してあるに違いない、否、そうでなければならない。 当主を継いだ宗太は焦りを感じていた。 北海道の投資に失敗して以来、それの損失を補填しようと様々な事に手を出した。 どこそこの土地に線路が走るだの、土地開発案があるだのと仲間内からの情報を信じて買ってみれば全て嘘の情報であったり値を吊り上げられていたりし、急かされて金を渡せば仲買人が金を持ったまま失踪したりした。 先日もまた戦争があるからと儲け話を持ちかけられ、唯一残っていた不動産やら証券を整理して逐次注ぎ込むも利益は全く上がらなかった。 どれもこれも最初だけは上手く運用出来て潤沢な配当があった、それが日が経つに連れ雲行きが怪しくなりそして損失を補うために次に次にと財産を注ぎ込むことになるのだった。
そして勝手に土地を抵当に入れているのが、当時当主だった父親の知るところになったのが運の尽きだったように思う。 当主とはいってもどうしてかすでに半分隠居したような暮らしをしていた父親に、金の無心をせまるも無下に断られる。 これから戦争で世界が動く、日本だって動かざるをえない状況になる、そうすれば人も金も物も動き絶好の機となると何度説得しても応じなかった。 宗太は慌てた。他の仲間達は我先にと儲け話に乗っているのに、自分だけはただ借財が増えるばかりだ。 蔵元の財産と呼べるものはこの邸以外にはもうほとんど残っていなかった。 土地も山も、田畑も、不動産も、貿易会社工場も――全て名義だけが蔵元で実質は色々なところに切り売りされていた。
もはや宗太が頼れることは死に際の父親が繰り返した、この邸だけは人に売るな――。というその言葉だけだった。これが遺言らしい遺言ともとれる。 英吉利の建築家が設計したという城を、これまで何人も探偵を雇って調べさせてはみたが何もでない。 本当に父親の遺産は全て幻だったのだろうか。 もう二年半も人をやっては調べさせている、しかし何もでない。 潮時を感じていた、この邸を売るなという遺言はあれどこのあたり一帯、背後の山も森も湖まで含めての残された唯一の土地。 売ればいったいいくらになるだろうと考えていた。
「申し訳ございません」 「いいんです慣れてますから」
秘書が百合子に頭を下げる。 先ほどの当主の無礼な言動を思ってのことだろうが、こういった事は初めてではない。 形式通りに邸を一巡案内される。 広すぎる廊下、広間、書斎、渡り廊下を経て玄関からテラスに出た。
「あの噴水は裏手の湖から直接水を引いています。 日中はあのように陽の光を受けて虹色になるように設計されています」
説明を受けて噴水を覗き込むとたしかに清らかな水が流れ、鮮やかな色をした魚が放されていた。 中央から吹き出す飛沫が美しい虹を作る。
「使用人の方にお話を伺っても?」 「それは構いませんが先代の頃にだいぶ人を減らしまして今残っているのは本当に少数です」 「その、先代様が資産を整理されて寄付をされた――というのは何か理由があったんですか? それに、人員の整理をするなんてまるで全てから手を引くような印象を受けたんですが」 「それは――私にも分かりかねます」 「そうですか……」 「ではお食事をこちらの部屋まで運ばせて、その後に使用人をお呼びしましょうか」 「ええ。――いえ、皆さんお仕事で忙しいでしょうから調査も兼ねて私が伺います。 なのでお話だけ通しておいてください」
斯波の情報が正しければ、真島はここで庭師をしていたのだ。 使用人たちに聞けば何か分かるかもしれない、ふと秘書の日野に真島のことを聞こうと顔を上げるが僅かなためらいの後に言葉を飲み込んだ。 そんな百合子の様子に気がつかず、秘書が部屋から去ってからほっと一息つく。 何だか一挙手一投足を監視されているようで居心地が悪い。
(あの秘書は食えないやつだ、お姫さん気をつけたほうがいいぞ)
今ここに居ないはずの助手がそう言うのが目に浮かぶ。 そう、当主などよりもよっぽど切れ者であるあの秘書こそ一番気をつけたほうがいい人間だろうということを百合子も薄々感づいていた。 先代の秘書と言うのなら財政には一番詳しかったはずである。 帳面などの管理や資産運用も先代に代わって取り仕切っているはずの秘書が、なぜ先代が資産の全てを寄付したのかという問いに「教えられない」「答えられない」ではなく、「分からない」と答えるはずがない。 食事を終えて紅茶を飲むと、調査も兼ねて邸の散策に出かけた。
(皆、言うことは先代様は素晴らしい方だったということばかりなのよね)
判を押したような答えに不思議に思いながらも、庭師の老人を訪ねて番小屋へ向かった。 ざくっざくっ、と土を掘り返す音が聞こえそちらへ向かう。 邸の使用人は洋装で統一されているのか、庭師の老人も汚れたシャツを来ていた。 年齢は勿論、格好も違うのに、百合子はなぜか少しだけどきりとした。 土を耕すその姿がどことなく真島と重なって見えたからだ。
「あの――」
振り返った老人は白髪で日に焼けた顔にはたくさんの皺がきざまれていた。 真島とは似ても似つかない姿形だった。 呼びかけた声に額の汗を手ぬぐいで拭きながら腰を上げ、老人は百合子を見て微笑んだ。
「ああ、噂の探偵さんか――ご苦労様で」 「お仕事中に申し訳ないですが、いくつかお聞きして良いですか?」 「ええ、勿論。まあ、私が知っていることと言ったらこの庭のことぐらいなものですけどね」 「以前勤めていた真島芳樹という男を知っている?」
蔵元の遺産関連の質問にこの邸の使用人はまるで回答を用意しているかのように、百合子の質問に答えた。 遺産があるとすればそれは全て寄付された、先代様は偉い方だ。――と。 思い切って別の質問に切り替えようと思ったのはそのためだった。 そこから会話を切り崩そうと考えて、あえて真島のことを話題にした。
「は?ええ、――たしかに、真島という男がいました。 けれど、なぜそれを?」 「私の邸の庭師だったの」
するりと百合子は答えた。
「とすると、貴方……もしかして野宮子爵の……?」 「そう、もう爵位は返上してしまったけど……」 「そうかい、それは懐かしいねえ。あの小さな姫様が」
老人の返答に驚くのは百合子だった。
「お前、私を知っているの?」 「ええ、一度だけお会いしましたよ。姫様はたぶん覚えていないでしょうが……」 「私、この邸に来たことがあるの?」
それは老人に向けた言葉だったが、同時に自分にも問いかけていた。 老人はいつだったかなと想い出すように空を見上げた。
「そう思い出しました、昔は先代様がハウスパーティーをよく開いていたんです。 その時に――確か皆様でいらっしゃいました。若様が十になるかどうかで姫様はまだ五つかそこらだったと」 「そうなの?全然――思い出せない」
どうにか思い出してみようとするも何も思い出せなかった。 もどかしさばかりが胸につのる。
「あの子は私もびっくりするほど植物を咲かせるのが上手でね、今も元気にしてるのかい?」 「……爵位を返上して邸を手放した時に真島とも別れました。 そう、ではやはり彼はここで庭師をしていたのね」 「ああ元々は先代様の共同経営者の下働きをしていたらしいんだが、彼がそうだな十二、三のころかな一時期ここの庭師の手伝いとして雇われるようになってね。 すごく腕が良かったから私もこれでようやく弟子が出来たと喜んでいたんだが――すぐにまた別の仕事につかされたらしくてね。 まあ、頭の良い子だったから庭師にはもったいないと思ったんだろうね」 「では、ずっとここで働いていたわけではないの?」 「そうさね、それから十年も経ったかなあという頃にまた戻ってきてね。 その頃にはしっかりとした青年になっちまってて見違えたよ、それで庭師の仕事も相変わらず見事でどこで修行を積んできたんだと笑ったよ」 「じゃあ、その頃に私の父にその庭師の腕を気に入られて?」 「そうそう、蔵田の邸に移ってすぐね」
真島はその空白の十年の内に復讐に必要な全てを用意したのだ。 そしてそれはこの実体の見えない蔵元家の内情に深く関わることのようにも思えた。
その日の夕方、当主は最後まで姿を現さなかった。 百合子としてもこれ以上嫌味な言葉を言われる心配がなくなり少しだけ安堵した。 夕食も部屋で取る。 食前酒のアルコールがきいたのだろうか、百合子は強い眠気に襲われた。
(何か思い出せればいいんだけど――)
百合子はうとうととしながら、記憶の底を覗き見る。 そもそも五つか六つの頃の記憶などあってもちらほらとしたものばかりだった。
(真島が下働きをしていたという会社は何をしていたのかしら――)
先代の書斎にある名簿などを調べればまた違う糸口が見つかるかもしれない。 そう思いながら百合子は眠りについた。
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夢の中で百合子は五つだった。 猫がぐるぐると百合子を取り囲み、その三日月のような瞳が不気味に笑う。 すると、次は黒い影が伸びて馬の影絵が現れる。 ウサギがぴょんぴょんと飛び跳ねて百合子の背を叩く。
Gone to get a rabbit skin, To wrap his baby bunting in♪
外国の言葉など何一つ知らないのに百合子にはそれが恐ろしい呪いの歌のように聞こえて耳を塞いだ。 じっとうずくまり、海底に沈んだ石ころのようにぎゅうとからだを縮こませて。 ふわりと、花の匂いが漂ってそれにつられて目を開けると、動物たちは消えていた。
どこをどうして迷い込んだのか、今となっては思い出せない。 百合子は広すぎる洋館のしんと静まった暗い廊下を一人で歩いていた。
Purple, yellow, red, and green♪
百合子は色とりどりの花を摘みながら歌う。 誰かに教えてもらった詩を口ずさみながら。
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悪夢にうなされるようにして百合子は目覚めた。 ぐっしょりと寝汗をかき、身体が硬直して動かせない。 まだ身体は夢を見ている状態なのだ――。指を動かそうともぴくりとも動かず、息も浅く緩く繰り返す。 ただ、頭だけは冴え渡っていてとっさに身体が動かない事がもどかしい。 視界もまだぼんやりとしており、真っ暗な天井に差すわずかな月の光がちらちらと見えるだけだ。
働き過ぎて疲れた夜に同じようなことを体験した。 百合子は半ばあきらめて、先ほどの夢を思い出していた。 あれが夢の出来事なのか、それとも何かしら昔の記憶が混ざっているのか判断がつかなかった。 ただ夢の中で流れていたあの奇妙な歌には覚えがあった。
特有の残酷な詩が百合子は苦手だった。 あの詩を教えてくれたのは兄だっただろうか――。 それも思い出そうとするが、教えてくれた相手は顔に靄がかかっている。 それに、あの兄が外国の動揺を歌って聞かせてくれただろうか、と。
氷が溶けるようにゆっくりと百合子の身体もほぐれ、 凝り固まっていた体の節々がぐぐぐと引きつるように伸びた。
ぎしりと寝台の音をたてて起き上がり、カーテンの隙間から夜の庭園を望む。 月光を受けた噴水の水がきらきらと光っていた。
翌朝、先代の書斎に入り従業員名簿などを調べてみたが、そこに真島の名前はなかった。 共同経営者だったという男やその会社について調べてみても同じだった。
「この共同経営者という男に、遺産を全て騙し取られたと考えるのが妥当だと思いますが――」 「ではなぜ父は、この邸だけは手放すなという遺言を残したんだ?」 「それは――例えばこの邸が凄く気に入っていたとか……」
百合子の答えに現当主は嘲笑した。
「遺産は必ずある――。依頼を受けたからにはきちんと調査ぐらいはしてもらいたい」 「この邸に、動く壁だとか回る本棚だとかそういった仕掛けがあるとは思えないんですが」 「ふん、ならば遺産ではなく、父がこの邸に執着した理由を探ってもらいたいな」 「執着――」 「そう、父のこの邸に対する思いはそれこそ異常だった」 「それは例えば――どんな風にですか?」 「とにかく、人の手に渡らせるなだの朽ちるに任せろだの。 死に際はそんなことばかり言っていたな」 「それで、あなたは先代様が何か遺産を隠していると?」 「他に何がある?」
どうやら、現当主はその逆のことは考えもつかないようだった。 百合子には先代の執着はまるでこの邸を恐れているかのように感じた。 現当主の後ろに控えている秘書に目を向けて問う。
「どちらにしろ、この共同経営者とやらが何者かが気になりますわ」 「それは――私共も気になって何度も調査をしていたのですが、 先代様はその会社のことについては蔵元家の者は一切関わらせず社員の多くは共同経営者側の人間だったようです」 「その代表の方のお名前と会社名を教えていただいても?」
百合子はその名前を書き取り、使用人に案内され電話を借りた。 交換手に取次ぎ、斯波の入院している病院にかける。
「ああ、お姫さん。どうだ、親戚の家はゆっくりできてるか?」 「え、ええ。まあね、も、もちろんよ。 それよりも、ちょっと調べて欲しいことがあるんだけど――」
百合子は斯波に現状を悟られないように、詳細を説明した。
「その会社と代表なら知ってるぞ。――なるほどな、そういう事か」 「どういうこと?」 「その会社も代表もそっくり蔵元と同じような状況なんだよ」 「どこかの会社に買収されていた――ってこと?」 「そうだ。いくつもの会社を経由して元締めの組織を隠しているんだ。 よほど表に出たら危険な組織なんだろうな……」 「それでも、たどっていけばいずれは分かるのでしょう?」 「それは分かるが――ここまで用心深いんだちょっとやそっとじゃ尻尾を掴ませないだろうな。 まあ、調べてはみるが……」 「ええ、ありがとう」 「いいのか、真島はその中枢にいるんだ。 調べたら知りたくない事実を知らなくてはいけないかもしれない」 「……いいわ。毒を食らわば皿までねぶれ、よ!」 「お姫さん……」
勇ましすぎる百合子の言葉にうなだれるような斯波の声が聞こえた。
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その日は午後からまた庭師の老人を訪ねて、階下に降りた。 虹を作る噴水の横を通り、動物の形に刈り込んだ植樹の通りをまっすぐに歩く。 その時に百合子は違和感を覚える。 しかし、それが何なのか分からないまま庭師の番小屋へ向かった。 小屋の周りには食用の小さな菜園があり、脇には大きな井戸がある。 菜園を見てそこに茄子や南瓜と言った野菜が植えられていて百合子は真島を思い出さずにはいられなかった。 番小屋の扉を叩いてみても反応がなく、どうやら庭師はどこかへ出かけているようだった。
少しだけ散歩をしようと花々の咲き誇る庭園を歩く。 その時、ふとある香りが漂った。 それは昔の記憶を呼び起こす鮮烈な香り――。
「真島?」
振り返り、背後を見る。 ひらひらと蝶蝶が舞い、午後の日差しに咲く花があるだけだった。 太陽の香り、花の香り――何とも形容しがたいあのあたたかく甘い香りに脳が揺さぶられる思いがした。
ふ、と記憶の一部分が蘇る。
目の前を歩く少年の姿。 百合子は暗い階段を少年の後をついて歩きながらそれでもどこからかあの花の匂いがした。 そして、それが少年から香っていることに気がついた。
「これは、記憶なのかしら――それとも私が勝手に作り上げた幻想?」
それでも確かに、あの少年は真島なのではないかと思えた。 庭を一周する。次第に日が傾き、木々の黒い影がぬるりと伸びる。 それ以上の収穫らしい収穫はなく、また遊歩道を通って邸へ向かう。
足元に、動物の影が落ちて一瞬ぎくりとする。 それは猫の形をしており、尻尾がくるりと巻き、あくびをするように身体を伸ばしている。
百合子はどうしてかゆっくりと、動物の影を作る植樹に近づく。 葉は刈りこまれて、綺麗に整えられている、誰かが毎日世話をしている証拠だった。 横には馬が、そしてその向かいにはウサギの植樹が並ぶ。
確かに子供の頃、この植樹を追ってどこかに迷い込んだはず……。
百合子は遊歩道を引き返して番小屋に向かっていた。
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「もしもし。 そちらにお邪魔している野宮百合子嬢の助手の斯波というものだ。 彼女に話があるんだが」 「申し訳ございませんが、そのような方はおりません」 「何を馬鹿なことを言って――」 「お掛け間違いでしょう、それでは失礼致します」
日野は電話を切ると現当主の居る書斎へ向かった。 扉を叩く暇もなく、部屋へ入る。
「どうやら、あの女探偵が遺産の隠し部屋を見つけたようです」 「本当か?」 「はい、どうやら庭園の一角に入り口があったようで――」 「庭?……庭とは盲点だったな。ようし、行くぞ」 「はい」
喜び勇んで部屋を出る現当主の後に日野も続いた。
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リンゴみたいにまあるくて、コップのように深くって、 王様の馬が集まっても持ち上げられないものってなあんだ?
庭園の一角にある東屋で人々が集い午後の茶会を開いている。 ハウスパーティと銘打たれた茶会に百合子はうんざりとしていた。 茶会に参加している他の子供達はやれ流行り着物だの新しいドレスだのと自慢ばかりしているし、 同じ年頃の男の子はどうしてか百合子に意地の悪い言動ばかりかませてくるしと、 百合子は兄と一緒に茶会を抜けだして庭園を散策する方が楽しかった。
着せられた新しい洋服が腹に苦しくて一刻も早く脱ぎ捨てたいと思う。 少し年上の女の子には「あまり似合ってないわね」とからかうように笑われたのも屈辱だった。 思い出しただけでも恥ずかしさに顔が赤らむ。 そして今もまた妙に作り上げた猫なで声で兄の名を呼んでいるのがそうだ。 馴れ馴れしく瑞人さんなどと呼び、大胆にもにっこりと微笑んで向こうに何々の花がありますのよとしなを作ってみせていた。 兄も悠然と微笑みそうですかなどと答えて、百合子にお前も一緒に行こうという。 おじゃま虫の百合子を例の少女はじとりと嫌な目で見た。
百合子はとっさに、私はもう少しこの花を見てます、ともごもごと答えてその場から逃げる。 兄の呼ぶ声が聞こえたが今更戻るのも癪だった。 当て所なく庭園を彷徨っていると、美しい蝶が一匹ひらりと目の前を舞う。 色は黒く、わずかに深い瑠璃色が模様で入っている美しい蝶だ。 それが風に乗ってふわりと飛ぶと、甘い花の香りがした。 花の蜜の香りに誘われるように、百合子もその蝶を追う。 どうぶつのかたちの植木を撫でて、遊歩道を外れる。
背の高い草木が生い茂る道を横切ると、一瞬、蝶を見失う。 どこへ行ったのかときょろきょろと視線を泳がせていると、がさりと草を踏む音がした。 百合子は人がいるとは思わず、ぎょっとしてそのまま固まる。どうしてか、息を殺してそっと見を屈めた。
百合子のいる場所の少し先に一人の少年が居た。 向こうは百合子に気が付かず、がさがさと背の高い草をかき分けてまたどこかへ消えてしまった。
蝶が消えた瞬間に、入れ替わるように少年が現れたので百合子は彼が蝶の化身のようにも思えた。 なにより、ちらと見えた少年の顔に表情はなかったがその横顔ははっと息を呑むほど美しかった。 そしてやはり、花の蜜のような甘い香りがあたりを漂う。
(一体何の花かしら……)
こんなにも芳しい香りを放つ花を百合子は知らなかった。 気がつけば先ほど少年が歩いていた道をたどるように百合子も歩いている。 そして開けた場所に出たと思えば、そこには大きな井戸があった。
(リンゴみたいにまあるくて、コップのように深くって、 王様の馬が集まっても持ち上げられないものってなあんだ?)
周りに先ほどの少年の気配はない。 井戸に近づくと先ほどの甘い香りとは打って変わって、苦いような青臭い匂いが一瞬ぷんと立ち上る。 百合子は後退って、再びきょろきょろと周囲を見渡した。 ふわふわと蝶が井戸の周りを舞う。
「この中?」
聞いてみても答えはないと分かっていても百合子は蝶に問いかけてみた。 すると蝶は、そうだ、と言う風に百合子の肩に止まる。 井戸の蓋をとってみる、想像以上に重くて百合子は新しい洋服の袖が汚れてしまったがすでに足元は泥や草花の種で汚れているので気にしないことにした。 ささくれだった木の蓋の枠に気をつけながら、ずりずりとずらして半分井戸の入り口が開く。
「誰かいないの?」
暗闇を覗き込んで呼ぶ。 足元の石ころを拾って井戸に投げ入れるとすぐにからんころんと音がして、中に水がないこととそれほど深くないことがわかった。 そして奥のほうから苦い胸のただれるような匂いに混じって、ふわと甘い香りがした。 その香りで百合子は先程の少年がこの中に入っていったと確信する。 井戸の縁を見れば底に続く梯子がかかっていた。お転婆の百合子ですらも、一瞬は躊躇せざるを得ない闇と深み。
「深いと言ってもコップくらいだわ」
自分に言い聞かせるように言うと、汚れた袖をまくりあげて井戸の縁に足をかけた。
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とっぷりと日が暮れて、ぱつぱつと遊歩道脇の街灯が明かりを灯す。 邸を振り返ってみれば、あの僅かばかりの住人が住む部屋の窓からも明かりが漏れている。 迷路のようになった庭園を早足で駆け抜けて、番小屋を目指す。 庭園の奥深くへと入ってしまうと、そこにはもう街灯の明かりは届かなかった。 雲の切れ間に挿し込む月の光だけを頼りに、百合子は進んだ。 あの日のような甘い香りも、青臭い苦い香りもしなかった。 ただ、夜露に濡れる草花の匂いだけ。
開けた場所には井戸が、そして今は番小屋が建っている。 百合子の背丈ほどもあると思った背の高い草は今はもう胸元ほどであの日のようには青々とはしていない。
井戸の蓋を軽々と持ち上げて中を覗く。 そこにひっそりと沈む闇と深みはあの時と同じだった――いや、むしろ以前よりももっと濃く底のない無限の穴に見えた。 ごくりと唾を飲み込み、あの日のように袖をまくって井戸の縁に手をかけた。
底まで降りて見上げると小さな丸い入口が見えた。 目を凝らしてみても真っ暗で、百合子は手探りで壁に触れてその凹凸からどうにか入り口を見つけた。 ようやく暗闇にもなれると薄っすらと周囲が見え始めた。 井戸の底から扉を開けて一旦中に入ってしまえば、そこは狭いしんとした廊下だった。 横にいくつか部屋の扉があるが、施錠されていて開かなかった。 ざらざらとした壁を手で伝いながら、かつこつと石畳の廊下を歩く。
一歩、一歩と歩みすすめるたびに霞となっていた記憶が実体を持ち始める。
長い廊下を一人で歩き、いつしか行き止まりまで来ていた。 そこから下は階段になっている――古くなった燭台は埃が被っている。 真っ暗なまま、階段を一段、また一段と降りる。
しばらくいくと古い扉が現れる。 取っ手に手を伸ばし、ぐいと押す。ぎしぎしと音がして緩く扉が動く。 もう一押し、百合子は力を込めてその扉を押すと、がりがりと擦れる音をさせながら扉は開いた。
中は広い工場のような作りになっており、銅色に鈍く光る天井まで届くほど巨大な太い筒が三本伸びている。 そしてそれに配管のようなものが無数に繋がり、壁や天井を這いまわる。 今はしんと静まったそこが、過去にはごうんごうんと音を立て青臭い匂いを発しながら阿片を製造していた部屋だということは百合子にも分かった。 暗闇に浮かぶ物言わぬ機材たちを見てぞくりと震える。 日本の政府は日本への阿片の密輸、密売を徹底的に取り締まる動きを見せている。 それなのに、東京にも近いこの土地にこのような製造工場があり、それこそ十数年前は確実に稼働していたのだ。
ぼんやりとした記憶の中で、あの夢の中の光景を思い出す。 あの時の少年は真島だったのだともう確信を持っていた。 庭師の老人の言葉が頭の中で反芻する。 百合子はその先に待ち構える漠然とした不安を振り払うように強く目を瞑って頭を振った。 その時、背後の扉が音を立てて開いた。 現れたのは蔵元の当主とその秘書、どうやら百合子の後を追ってきたらしい。
「なんだここは?」 「……おそらく、阿片の製造工場だと思います」 「あ、阿片?!」
思いがけぬ百合子の言葉に当主は素っ頓狂な声をあげた。 色々な情報が錯綜しているのか、そのまま呆然と立ち尽くす。 本当に一切知らされていなかったのだ。
日野と当主はひと通り部屋の中を歩き、今は動かぬその機械を見上げる。
「先代の遺言通りこれはこのまま――朽ちるに任せた方が」
百合子の言葉にはっと顔をあげて、青ざめた顔で頷く。
「そう、そうだな――」
当主言い終わるのよりも早く、日野が当主の後頭部を殴りつけた。 その手には黒光りする拳銃が握られており、無表情のままそれを百合子につきつける。 当主は呻き声を二、三あげてがくりと膝をつき、そのまま床に倒れこんだ。 痛みに悶える当主に日野がちらと目をやった隙に、百合子は床を蹴って配管の裏に回った。 威嚇するように一発、地面に向けて撃つ。 薄暗の闇にチカリと銃弾が床に撃ち込まれて爆ぜる花火が浮かぶ。
(ほ、本物――)
ひやりと冷や汗が首筋を伝う。 買ったばかりの皮のブーツ、ここに来るまでに泥や埃で汚れてしまったが踵が石畳のくぼみに足を取られ苦労した。 百合子はそれを脱ぎ、配管ごしに日野に投げつけた。 当たりはしないし、当たっても傷にもならないだろうが、日野は音のする方へ拳銃を向けてまた一発銃弾を放つ。 鈍い音にそれが配管に当たってしまったのだと日野も気がついたのだろう、舌打ちをする。 百合子は裸足のまま扉にむかい走る、足の裏がごつごつとしざらざらとした石の感覚に痛むが、弾を込める隙にどうにかその部屋から脱出出来た。 扉を乱暴に閉め、その背後から日野の怒鳴るような声があがる。 百合子は咄嗟に階段をかけ降りた。
螺旋状の階段に息の上がった百合子の吐息が反響する。 がつがつと追いかけてくる日野の足音が次第に迫っているのが聞こえた。 心臓は追い立てられる恐怖にどくどくと痛むほど打つ、壁を伝う手のひらも足も擦り傷だらけになりじくじくと痛んだ。
日野は恐らく、同じ事をしようと思っているのだろう。 当主を傀儡にして、もう一度阿片を製造し密売しようと。 そのためには表に出すための当主はまだ必要だ、ただ真実を知る百合子を始末すれば――と。
百合子はついに最後の扉にたどり着いた。 取っ手を回す余裕もなく身体をぶつけるようにして、扉を開ける。 転がり込むように部屋に入ると、そこは月の光が差し込む庭園だった。 今までの暗い部屋とは違いくっきりと薄闇に光が差し込んでいる、地下なのになぜと上をあおぎみると上はガラス張りになっていた。
「噴水?」
天井を色とりどりの魚が泳ぐ。 ぼうぼうと伸び放題の草花はもうここに何年も人の出入りがないことを教える。 整然としていた花の区画は曖昧になり、それでもちょろちょろと清水がどこから湧き出し床を濡らす。 管理する庭師を失った庭園でも花々は生命力たくましく生き続けていたのだ。 その花の蜜は人々の心を壊す毒だというのに、ただ生きるために繁殖し、床に壁に伝う様は神々しくもあった。
「さて……」
背後で日野の声がした。 百合子がゆっくりと振り向くと、ぐいと腕を掴まれた。 日野はただ拳銃を背中に突きつけて百合子の反応を見る。 陳腐な悪者にありがちな交換条件などは一切口にせず、このままここで百合子を殺してしまうつもりなのだと思った。
「私がここに居ることは助手が知っているわ、それに私の死体なんかがあがってみなさい。 どの新聞社だってほうっては置かないわよ」 「確かに、今この時期に死体があがれば――そうでしょう。 人の存在を確実に消すのは行方不明にしてしまうこと」
淡々と告げる言葉に百合子は震え上がる、殺されてたまるものかと百合子はぎりと奥歯を噛み締めるも固く掴まれた腕はびくともしない。 頭の中が恐怖でいっぱいになり、止めどなく溢れる思考を整理するまもなく、がちゃりと音がして撃鉄があがる。
その時ゆらりと目の前が揺れて、百合子は幻を見た。
「誰だ――」
二人の前に現れた人物を見て、日野がまっさきに声をあげた。 ぐいと背中を押す力が増すも、わずかに震え動揺しているのが分かる。
「お前が助手か? 一歩でも動いて見ろ、この女を撃つぞ」
そう言うと百合子の額に拳銃を突きつけた。
「取引のつもりか知りませんが、俺は助手なんかじゃありませんよ。 まあその女ともどもここで始末するつもりだから、手間が省けてちょうどいい」 「な、では、お前は――」
思わぬ第三者に日野の声が上ずった。 蔵元の者でもなく、探偵の助手ではない――そうなると必然的に残るのはこの阿片組織の人間だった。 日野ははあはあと息が上がり、現状を脱却する術を探す。
「わ、ま、まて! 私は蔵元の秘書で……」 「待つと思うのか?」
嘲笑するように言う。 日野は怒りにぶるぶると震え百合子を盾にしたまま、男に拳銃を向け直した。
その時、どんと大きな揺れが起こった。 足元から救われるような大きな揺れにふらつき、百合子は屈み込んだ。 瞬間に、だんと音がして日野の身体が弾け飛ぶ。 まるで揺れが起こることを知っていたのかのように男は冷静だった。 わずか数秒ほどで揺れは収まったが、建物の揺れは続いていた。
「な、地割れ……?」 「いいえ、仕掛けた爆薬が爆発したんです」
百合子の腕をそっと掴み起こす。
「私も殺すの?真島……」
百合子は真島の顔を見て問いかけた。
「いいえ、ああ言わないと貴方が危ないと思ったんです。 ――ここも危ないですよ」
この衝撃に天井の硝子も鉄骨も耐えられない事は一目瞭然で、しかも上にある噴水は裏手の湖から水を引いているのならばこの地下は全て水没してしまうだろう。 百合子は真島に言われるがまま手を引かれ、上へ上へと階段を登る。 階下で轟音が響く。 あの美しい庭園が水の底にたゆたい、魚たちが自由に泳ぎ回るさまを百合子は見たような気がした。
お前は、なぜここにいるの。 お前は、阿片組織の人間だったの。 お前は、今、どうしているの――。
百合子は聞きたい気持ちが溢れ、胸が詰まってしまった。 ただもくもくと階段を駆け上がる、時折ずずんと建物自体が沈みぱらぱらと砂が降ってきた。 ぜいぜいと息を繰り返し、苦しさで胸が痛む。 もう考える暇もなく、ひたすらに真島に手を引かれて階段を登っている。 聞きたいことをひとつひとつ足場に落としながら。
「そろそろ出ます」 「え?」
そう言うと、びゅうと風がふいた。はたはたと裾がはためき、夜風が肌に染みる。 苦しさに痛む胸を抑えつつあたりを見回すと、そこは城の一角にある塔だった。いつの間にか城を見下ろすほど高いところまで登っていたのだ。 ごうと瓦斯の燃える匂いがして、そちらをみると巨大な風船があった。 それは気球だろうということは知識としてだけ知っていた。 真島は網かごに乗り込み機材の調整をし、初めて見る気球に驚いている百合子に声をかける。
「乗ってください」 「こ、これに?」
じりじりと炎の調節をする真島。炎に照らされた横顔は何の表情もない、いや、むしろ――。
「真島、怒ってるの?」 「……久しぶりに再会して聞くのがそれですか。 ええ、まあ。怒ってます。いいですか、置いて行きますよ」 「ま、待って」
慌てて網かごに足をかけてのぼる。 すでに裸足だったし、裾はどろどろに汚れていたし、と思っても顔から火が出るほど恥ずかしい。 真島は百合子が乗ったのを確認すると、塔と気球をつなぎとめる太い縄をためらうことなく拳銃で撃ちぬいた。
真っ暗な闇空を、ゆっくりと気球が舞い上がる。 眼下には蔵元の邸が広がる。 爆発により地下が埋まり、そこに噴水の水が流れ込んだらしく大騒ぎになっていた。 暗闇にゆらゆらと松明の火のようなものが見えた。
「あ、当主が……」 「気絶していたので運び出しました。 あの辺りは前の災害で地盤が緩み始めていたので時間の問題だったんですが。 聡い割に傍迷惑な探偵が余計な事をしてくれたおかげでこの様です」 「な、私はただ単に依頼を――。 だって、私は……! わ、私……どうしても……お前に会いたかった」
別れを一方的に告げられて、ぽっかりと心に穴が空いてしまった。
「会って、それでどうするんですか?」 「私は、――莫迦みたいだけどお前を幸せにしたいと思ってた。 何も知らない子供だったから――そんな残酷なことを考えられたのね」
幸せであるということは絶対だと思っていた。 けれど、様々な事件にめぐり合う度に幸せとは何かと考えざるを得なかった。 実の妹を殺した姉、復讐に取り付かれた鬼、出生を呪う男――。 妬みや恨みと言った物を何一つ知らず、ぬくぬくと暮らしてきた百合子にとってそういった感情を理解するのは難しかった。
幸せの形は違うのだ。 ましてや真島は百合子を――野宮一家を心底憎んでおり、その人間から幸せにしたいなどと言われるなど屈辱以外のなにものでもあるまい。
「それでも私はお前が幸せでありますようにと願わずにはいられない」
真島が大好きだったから。 その言葉は決して口にできないし、言うつもりもない。 だから、百合子にはそう願うしか出来なかった。 人間とは不思議な力があって、何でも出来るような気がした。 強く願えば、そしてそれに怠らぬ努力をすれば、きっと何か奇跡のような事が起こせると信じていた。
「姫さま……」 「な、泣いてないわよ。これは――」
百合子は我慢しきれずに瞳に涙を浮かべていた。 対等な人間として話をしたかった。だから、決して泣くまいと思っていたのに。 自分の弱さに歯がゆさを感じてわざと乱暴に目元を拭う。
「――俺はね、絶対に幸せにはなれないんだと思っていました」
真島がぽつりと漏らす。 その顔には微笑みが浮かんでいて百合子は驚いた。 山の端が白み始め、夜明けが近づく。 新しい陽の光が山々に差し込み、闇空を照らす。
「俺は愚か者です。幸せとは去った後に光を放つのだと――ずっと後になって気がつきました。 姫さまと過ごした日々を失って初めてあの日々こそが幸せだったのだと知った。 俺も――あの日からずっと祈っています、姫さまが幸せであるようにと」 「――っ、わ、私は、――わたしは、幸せよ。……幸せ、だわ」
こらえ切れなくなり嗚��をあげて泣く。 おそらく、これでもう本当に二度とは会えないだろうと言う気がしていた。 あの日、一方的に別れを告げた真島に百合子は答えられなかった。 真島のさようなら、と言う言葉に同じように返してしまったら別れを認めなくてはならないから。 これはきっとさようならと真島に言うための道のりだったのだ。 拒否し続けてきた別れを、今こそ受け止めるための長い道のり。 今の百合子ならこの別れに耐えられる、だからせめて少しでも笑って――。
「真島、さようなら」
/-/-/-/-/-/-/-/-/
「お姫さああん!」
自動車の窓から身を乗り出して斯波は叫んだ。 上空を漂う気球に百合子がいると信じて疑わない。
「や、や、山崎!もっと速度をあげろ!」 「しゃ、しゃちょう無理です!道も悪いですし何しろ向こうは空を飛んでいるわけで……」 「ええい、何を情けのない声を出してる!代われ莫迦者!! お姫さん今行くぞ!!!」
山崎を押しのけて運転席に座るも、ぐんとアクセルを踏み込んだ途端にハンドルが言うことを聞かなくなりきゅるきゅるとタイヤが空回りする。
「社長!気球が下降しています!」 「何?!ようし、あの方向は牧場だな、掴まれ!」
がたがたがたと揺れながら自動車は道を外れて牧場を爆走する。 途中に放牧された牛と正面衝突しそうになるが、ぐぐっとハンドルを切りぎりぎりの所でかわした。 しかし、何か石のようなものに乗りあげてバスンと嫌な音がして速度が急激に落ちる。
「社長!パンクしました!」 「くっ、仕方ない。山崎、そこの拳銃をよこせ!」 「どうするおつもりか聞いても?」 「最悪、あの気球を――撃ち落とす!」 「……」 「……冗談だ。相手はあの阿片王だぞ? 備えあって憂いはない」
そんなやり取りをしているうちに、気球が再び上昇する。
「ほら見ろ!いいから、拳銃を貸せと言っているんだ!」 「社長、向こうから人が歩いてきてますが……」 「何?!」
斯波が目を細めて牧場の丘陵を見据えると確かに人がこちらに向かって歩いてきてる。 遠目でもそれが百合子だと分かるやいなや、自動車に急ブレーキをかけた。
「お姫さん!無事か?!」 「斯波さん!どうしてここが?!」
斯波は百合子に駆け寄り躊躇なく抱きしめた。 顔を確かめるように少しだけ上体を離して、両手で頬を包み込み額の泥を拭う。 そして、今は小さい粒になった気球を見上げた。
「あの気球は真島か?」 「ええ」 「貴方は裸足じゃないか……!」 「これは、靴を日野という秘書に投げつけて……」 「ふ、服に血が……」 「これも――たぶん、日野という秘書の……」 「遺産探しだと思っていたのに、どんな危険な目にあったんだ!」 「話すと長くなるのだけど……」 「いや、良い!今はまだ聞きたくない、俺の心臓がもたんからな。 しかし、どうして真島と一緒に行かなかったんだ?」 「それも話すと長くなるのだけど……」 「いやいやいや。分かってるぞお姫さん」
斯波の表情がすっと引き締まり、真剣味を帯びる。 思わず百合子はどきりとしてその瞳を見つめた。
「社長~~~お忘れ物ですよ」 「山崎……なっ、それは持ってくるなと言っただろうが!!」
山崎が後から追いかけて持ってきたものは紙の束だった。 百合子はそれに見覚えがあった――原稿用紙だ。
「あの、これは?」
ミミズがのたうつような文字がいっぱいに書いてある。 紙であれども束になるほど多いので、腕にずっしりと重い。
「はあ、あの社長の所に編集長という方が来まして……」 「勝手に辞表を出すとは何事か、と怒っていたぞ。俺に辞表を押し返された。 ――それで、タイプライターで文字を打つならどこぞの自宅でもできようと……これを」 「そうだわ、私には借財返済という大きな目標があったわ……」
これからどうしようなどと途方に暮れる暇もない。 夜が明けて、日の出の眩しさに目を細める。 疲れきって身体は思いし、あちこちの擦り傷も痛む。 それでも心は晴れやかだった、束になった原稿を抱えて朝日に向かってぐっと拳を握る。
「私の夜明けはこれからよ!」 「お、お姫さん……」
斯波はその場にがくりと膝をついた。
数年も経てば、あの騒ぎもすっかりと忘れ去られていた。 ようやくタイピストから編集へと復帰して、探偵の依頼もまた少しづつではあるが受け始めていた。 大きな事件は少なく、失せ物探しや人探し素行調査と言った事件ばかりではあったが、それなりにこなしていた。
そして今日もまた鏡子婦人に呼び出されてホテルの一室に向かっている所だ。 他にも用事がある、それはようやく鏡子婦人の借財を返済するめどがついたことだった。 婦人はきっちりと貸し、そして百合子はそれをきっちりと返しきった。 その関係が、信頼で結ばれている証だった。 いつもはホテルのラウンジなのに、今日に限ってホテルに一室をとるということは恐らく借財の話などもあるのだろうと、百合子は感じながら案内された部屋を叩く。 すると、中から聞こえた声は鏡子婦人のものではなかった。
「あら、斯波さん早いのね」
扉を開けてみるとやはりソファに腰掛けていたのは斯波だった。 相変わらず派手な洋装を見事に着こなしている。 それにしても助手の斯波も呼び寄せているということは、なかなか難しい依頼なのだろうかと考えていると斯波がごほんと咳き込んだ。
「ああ、今日の依頼人は俺なんだ」 「……斯波さんが?」
ふと、最初の事件を思い出す。斯波が依頼を出すことなどあの事件以来初めてのことだ。
「どんな事件なの?」 「いや、事件じゃない。ちょっと人を探していましてね」
促されるまま百合子はソファに腰掛けた。 斯波の微笑んでいる目元に、僅かに不安を感じる。 入れたばかりの珈琲に口も付けず、少しだけ斯波は目を瞑った。 よほど難しい事件なのだと百合子は思い、居住まいを正して背を伸ばした。
「その人に、この手巾を返したいんだ」
胸元のポケットから取り出したのは一枚の真っ白な手巾だった。 とても大切な物を扱うように、そっと机に置く。
「手巾?」
それを手に取った瞬間に、百合子の時は止まった。 真っ白な手巾、それに見覚えがあった。 頭の芯の方から記憶が洪水のように溢れ、光のように周囲を照らす。 息が上がり、言葉が詰まる。
「これ、――私の、だわ」
そう、その手巾は百合子のものだった。 仏蘭西の特注品であまりにも白くて美しくて、一度も使ったことがなかった。 それと同時に、もう一つの記憶が呼び覚まされる。
「あ――」
その曖昧な記憶が逃げてしまわないように、目の前の斯波を見つめる。 確かに、昔、この手巾を一人の少年にあげたのだ。 その少年は泥にまみれて汚れていたことはかすかに記憶にあるが、顔には靄がかかり思い出せない。 浅く呼吸を繰り返す。
「あなた、なの?」
斯波がゆっくりと頷くと、百合子は初めてあった夜の斯波を思い出す。 妙に自分に執着する男――ただ単にそういう印象しかなかった。 斯波に気を許せるようになってきたのも、探偵業を初める前後ぐらいからでそれまではむしろ不審に思っていた。 百合子はどうして、と聞けなかった。きっと斯波はそういう男なのだから。
「ずっと貴方を愛していた」
その言葉は重く、百合子は不安になる。 自分はそれ程までに強く想われて良い人間なのだろうかと。 その気持ちを察知したのか、斯波は更に言う。
「貴方を知れば知る程にその思いは強くなった。 俺はもう貴方なしの人生など考えられない」 「私――もう歳だし、沢山子供生めないかもしれないわよ」 「ああ、俺は貴方がいればそれで十分だ」 「それに――たぶん、仕事も辞められないわ」 「分かってる」 「あの時からずっと私のことを想っていてくれたのね」 「そうだ」 「どうしてもっと早くに言わないの!!! 私だけが何も知らなくて、これじゃあただの莫迦みたいじゃない!!!」
混乱する百合子を斯波が優しく抱きしめて耳元で謝る。
「すまない――すまない」 「謝ってほしいんじゃないわ!いいえ、謝ったって許してやらないから!」 「そうか……」
きっと百合子は斯波を見上げて睨む。
「もっともっと強く抱いて、沢山愛してると言ってくれなきゃ許さないわ。 それも、ずっとずっとよ。貴方か私かのどちらかが老いて死ぬまでずっとよ」 「ああ、百合子さん愛してる」
百合子の言われる通りに強く抱きしめて搾り出すようにそう言うと、わなわなと震えている百合子の唇に唇を押しあてて吸い上げた。
「ああ、貴方の唇はなんて甘いんだ――」 「も、もう嘘ばっかり」 「嘘なものか、もう一度確かめさせてくれ」
恥ずかしさに俯いた百合子の顎を持ち上げて更に深く口付ける。 息をつく暇もないほどの激しい口付けに百合子は腰が抜けてソファに崩れ落ちる。
「あ、あの斯波さ――私もう……」 「部屋をとって正解だったな」 「だ、だ、だめよ。あああ、貴方まさかそのつもりで?」 「なぜ駄目なんだ」 「私たちまだ結婚していないのに。 それなのに――こんなこんな昼間から……ふ、ふ、不埒だわ」 「結婚していて夜ならいいんだな?」 「そ、それは、ふ、夫婦の営みとして――」 「分かった、では今日は貴方の口を吸うだけで我慢しよう」
ソファに横たわる百合子に覆いかぶさって、再び口を吸う。 オーデコロンの香りがふわりと降り注ぎ、葉巻の苦い香りが鼻を突く。 心地の良い重みに、服を隔てた皮膚がじんわりと熱を帯びた。 どんどんと息が上がり、口付けだけで快感に震える身体に怖気付いた。
「は、は恥ずかしくて……心臓が壊れてしまうわ」 「あまり可愛いことを言ってくれるなよ――」
どくどくと脈打つ百合子の心臓の音を確かめるように胸に触れる。 首筋まで真っ赤になった百合子が可愛くてそこを吸うと、ふわりと甘い香りが立ち上る。 それを吸ってしまってはもう斯波には我慢など出来なくなっていた。
洋装のタイを緩めてシャツの襟元を開ける。 がしがしと頭をかき、おもむろに立ち上がって部屋のカーテンを閉めた。
「百合子さん」 「は、はいっ」
百合子が上ずった声で返事をする。
「――俺の妻になってくれるか」 「はい……」 「よし」 「だ、だめ――私、下着が……」 「下着?」 「あ、ああ、洗いふるしたやつで――」 「大丈夫だ、暗いからしっかりとは見えん。 ――他には?」 「え?」 「もう、心配事はないか」
色々と言いたいことはあるはずなのに、その場の雰囲気に押されてか、多少の興味もあってか、この血が沸くほどの緊張の心地よさのためか――。 百合子は何も無いとばかりに首を振った。 二人ともおかしな熱病に浮かされているのだ、正気であってはこんな事は決して出来ない。 百合子は自分にそう言い聞かせた。
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「あらあら、うふふ……」
鏡子は扉の前で意味ありげに微笑を浮かべた。 どんな塩梅かと心配して見にきたものの、大きなお世話だったようだ。
「差し詰め、野宮百合子の事件帖、終幕といったところね」
ちょいちょいと癖のように項の髪を持ち上げると、足取り軽やかに廊下を後にした。
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dba-taipei-japanese-hair · 5 years ago
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dba-taipei-japanese-hair · 5 years ago
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dba-taipei-japanese-hair · 5 years ago
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dba-taipei-japanese-hair · 5 years ago
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dba-taipei-japanese-hair · 5 years ago
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dba-taipei-japanese-hair · 5 years ago
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dba-taipei-japanese-hair · 5 years ago
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dba-taipei-japanese-hair · 5 years ago
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dba-taipei-japanese-hair · 5 years ago
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dba-taipei-japanese-hair · 5 years ago
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