#子どもたちが安心して眠れる夜を
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kennak · 4 months ago
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不眠症で通院している患者さんから「最近夜中に目が覚める」との相談を受けた。最近は眠りの調子が良かったのにどうしたのだろうと事情を聞くと、長年飼っている老犬が夜中に何度も悲しげな声で吠えるようになったのだという。ご近所の迷惑にならないか心配で、吠えるたびに一階に降りてケージ内で寝ている犬に声をかけなくてはならなくなった。  睡眠薬を服用しているので夜間の階段の上り下りは危ない。思案した結果、寝室にケージを持ち込んで同じ部屋で寝るようにしたところピタリと夜鳴きが無くなった。  犬も歳を取って夜中に目を覚ますようになり、不安になってご主人を呼んでいたのだろう。お互い安心して眠れるようになり一件落着となった。
第167回 犬や猫と添い寝する飼い主の止むに止まれぬ睡眠事情 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
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europiumoooon · 7 months ago
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何年か前私はここでインスタントオナニーの話をした。名前の通り手っ取り早い自慰行為なんだけど、今はその逆でタイパより丁寧さに最近力を入れている。手っ取り早くしすぎたせいで、慣れもあったし、なんせ、行為自体早く終わらせなきゃ悪、みたいな思いが勝手に付いてきていた。セックスレスにも繋がるけど、慣れと手っ取り早さを行為に当て嵌めてはいけない。
最近読み始めた本がある。アンソロジー本で『私の身体を生きる』各著者の性や身体に関することがエッセイとして書かれている。私の知らない部分を見入っては圧巻というか関心というか。20代後半になって性に関することで悩んだり通院することになったり三大欲求であると共に切るに切り離せないものだと思っているので、これを機に振り返ってみようと思う。
私の初体験は知らない男だった。知らないというのは素性をそこまで知らずインターネットで知り合った男だった。私は16、向こうは32。家の縛りや慣習に辟易として早く捨ててしまいたいと思っていた。初めて行ったラブホテルは部屋になぜか自転車が置いてあったので今でも印象に残っている。わからないなりに咥えたり喘いでみたりしたけど挿入時は痛みがあった。出血はしなかったことに安心した。その後、大学進学のための上京で欲が爆発した。行為が好きだった、裏にはいつと贖罪があった。好きにさせてしまった、と思えば身体を差し出して許しを乞うてみたり、可哀想だから、と頭ひとつ出て相手を見下している部分もあった。そんな私を知った母親から「私は純潔で父に捧げた」と言われた時は取り戻せない後悔より、だから?と見下していた。
コロナ禍に学生に戻った時なんてTinder無双をした。チンソムなんてしょうもない事もしていた。
欲だから浮き沈みもあって、修論書いていた時は1年間性行為と無縁だった。っていいように書いてみたものの、無双の中で出会った男に無理矢理犯されて痛みと共に下物の色がおかしくなってその時初めて婦人科に行った。M字開脚に放心になりながらも、異形成と知りコルポスコピーも受けた。癌になるかならないかのグレーゾーン判定を受けた時は人生呆気ないかも、と思った。結局なんやかんやで生き延びているし、最近の定期検診も大丈夫だったので適度に生き抜いていきたい。
再社会人になってからも少し遊んでいたが、ピルを飲み始めたら体調が悪くなった。常に気持ちが悪く、欲もどうでもよくなった。丁度その頃付き合い始めた恋人と燃えあがるような想いと行為だったのに、ピルと具合の悪さが続いて花火のように消化してしまった。ちょっとした興味本位もあったのに、なんだかな��。
夜になると欲を消化しないと眠れない日々が続いた。冒頭のようにしていたら、上手く達せられなくて、脚ピンの良くない体位でどうにか、を繰り返した。パブロフの犬。
夫婦間のレスの投稿をXかnoteかはてなで読んだ。行為が嬉しさだと気付いたような文を読んだ時は、幸せの先の嬉しさか、嬉しさゆえの幸せか鶏卵になった。
飲み会や日常で聞く下ネタに嫌悪を抱いている。どうでもええわ。が核心。勝手に私の知らないところで勝手にどうにかしてください。奥ゆかしさこそみたいなものもある気がする。(知らんがな)
29にして常日頃将来を見つめ直し思い悩んでいる。性もそう。このままじゃと思って伝えたけど、家族になり過ぎる前に妊娠出産を得ないと安寧に縋ってしまうかもしれないと自分自身で思う。この脅迫概念に近しいものは、時期やイベントが過ぎれば呆気なかったなと思うかもしれない。わからないが故に時間と共に杞憂して焦っている。女故の性に囚われてしまっている。
消費期限と揶揄されることがあり、焦るにせよみないにせよ人生80年、100年ある中でなんたる微々たるものよ。
私の性は自分のものでいたいけど、世間的にといい家族といいレールに敷かれる上でぞんざいに扱われている気がする。
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yutakayagai · 11 months ago
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七月になり、ようやく広樹のギブスが取れ、サポーターだけになった。通学は自転車に戻り、時折ラガーシャツにも袖を通した。
一方、克也は広樹が辞めないで済んだことに胸を撫で下ろしたが、未だ自分自身の気持ちを言えずにいた。浩志からは、
「いつまでもウジウジしてンじゃねぇよ! チ◯ポ付いてるンだろ!?」
と一喝されていたが、男同士が好きになることに対して罪責感があった。未だ、同性愛が世間的にタブーとされていた時代である。浩志が大学生だった昭和三十年代の後半と比べると、五十年代の前半は女装したり女言葉を使ったりする芸能人も多く活躍したが、やはり偏見はあった。
夏休みになり、秋の試合に向けて練習にも力が入った。浩志も普段はポロシャツとジャージーと言う格好だったが、時折ラガーシャツとラグビーショーツでグランドに現れた。そんな姿に漫画研究会の利江子たちは、
「あれぇ〜? ヒロシったらラガーマンになってるぅ!」
「きゃッ! なんで、あんなにラグパン短いの!?」
「いゃァ〜ん、何か誘ってない?」
「ラグパンって、パンツ穿かないンでしょ!? エッチぃ〜!」
と、相変わらず盛り上がっていた。そんな彼女たちに浩志は、
「鶴田ッ! 一応、穿いてるぞ!」
とラグパンの裾をチラッと上げてみせた。何故、アタシの名前を知ってるのとびっくりしながら、
「ヒロシ、このスケベっ!」
と笑い転げた。他の同級生は黄色い声を上げていた。
休憩時間になり、広樹は予め作っておいた麦茶の入ったやかんを二つ、ベンチのある日陰に置き、部員に声をかけた。皆、待ってましたと言わんばかりに詰め寄って来て、麦茶の注がれたプラスチックのコップを手に取った。浩志も蛇口の水を頭から浴び、
「このまま昼飯にするぞ」
と、眼鏡を片手に持ちながら首に掛けたタオルで頭を拭き、彼は校舎に戻って行った。
その間、日陰で弁当を食べたり芝生に横になったりと、それぞれ休んでいた。克也もケヤキの幹に寄りかかった。視界には空になったやかんや、プラスチックのコップを片付ける広樹の姿があった。なかなか告白できずにいる克也は、
『今なら言えそうな気がする』
と立ち上がった。そっと近づき、広樹の手を取った。
「加藤先輩…?」
「ちょっと来て」
そう言われるがまま、広樹は克也に手を引っ張られた。連れて行かれたのは部室だった。窓を全開にしていたが殆んど風が入らず、蒸し暑かった。十二畳はあるかないかの室内で、克也は広樹と見つめ合った。両手を握りしめ、
「額田君、好きだ」
と克也は唇を奪った。身体を密着させ、広樹の背部に両腕を回し、愛撫した。広樹は嫌がることなく、奪われた唇が克也のものと一体になる様な感覚を得た。
ラグパンの中で股間が隆起していくの互いに感じながら、二人はブリーフ越しに恥部を弄った。内腿から汗が垂れ、次第に濡れていった。克也はこれまで抑えてきた感情を露にしながら喘ぎ、広樹のラグパンを脱がせた。
「あぁん、はァ、ああん…」
鼻息を粗くさせながら、二人はブリーフを膝まで下げ、肉棒の裏側を合わせながらしごいた。
「あッ、あん、ああん…」
先走り汁で手指を汚しながら、克也は広樹のラガーシャツを胸元までたくし上げ、乳房を咥えた。
「イ、イキそう…」
「オ、オレも…」
オルガズムは二人一緒に達した。ドクッ、ドクッと粘度が強い乳白色の愛液を流し合い、克也は広樹の唇を求めた。広樹も舌を絡ませ、二人は暑さも忘れて愛し合った。
練習を終え、体育館に併設されたシャワーを浴びた部員はそれぞれ、制服に着替えて帰って行った。浩志もワイシャツとスラックスに着替え、職員室の扇風機で涼んでいた。嗚呼、今日は飲みにでも行こうかなァ…。そう思っていると、
「…先生」
と克也が訪れた。浩志は、
「何だ、帰ってなかったの?」
と気だるそうな声で聞いた。克也は言った。
「オレ、額田君に告白しました」
「へぇ〜、良かったね。…で?」
「…そのままエッチしちゃった」
「へぇ〜、良かったね」
何も考えずにこう言ったが、否、「エッチしちゃった」って、何が? ようやくコトの真意に気付いた浩志は、
「ハァァァァァァ〜!?」
と上半身を起こした。
「犯っちまったのか!?」
「声が大きいよ!」
「…お前、溜まってたンだな」
「何か、気持ちが大きくなっちゃって…」
克也は、徐々に真顔になっていく浩志の様子に、嗚呼、怒られるのかなと不安になった。しかし、浩志はバンッと彼の背中を叩き、
「よくやった! これでこそ男だ! 気持ち良かったっぺ!?」
と、寧ろ喜んだ。何だ、この先生!?と克也は呆然とした。そして、浩志は克也の股間を鷲づかみにし、
「イイぞ、イイぞ! その調子でガンガン攻めろ! 若いってイイなァ〜!」
と揺さぶった。
「や、やめッ…! おしっこ漏れちゃう!」
もし誰かいたら問題になるなと、克也は思った。
この日を機に、克也と広樹は浩志から色々と「性のてほどき」を受けた。時折、部室で『さぶ』や『アドン』などのゲイ雑誌を渡され、ア◯ルセックスの仕方も山奥のモーテルで「伝授」された。克也は、
「オレは純愛が好きなのに!」
と心の中で叫びながらも、沸々を込み上げてくる肉欲に負けて広樹と絡んだ。広樹も、克也を所謂「セックスシンボル」としてしか見られなくなり、ラグビーショーツから覗くブリーフに生唾を飲んだ。克也の家も若宮町にあった為、水府橋の下で毎日の様に愛し合った。
一方、ラグビー部の成績は劇的に飛躍した。これまで県大会で二回戦以上は勝ち進められなかったのが、関東大会でも上位の方まで成績を残した。他県のシー��校を打ち破った時には、浩志は嬉しさのあまりに、
「これも皆、克也と広樹の『愛』あってこそだ!」
と口走り、二人は火消しに追われた。
そんな克也と広樹だが、個別に利江子から漫画のネタに色々とインタビューを受けた。あまりにしつこいので、
「イイじゃん、愛してるンだから。好きにさせてくれよ」
と広樹は言い切ったが、
「えぇ〜!? そんなにラブラブなのぉ〜!? だったらイイじゃ〜ん!」
と、寧ろ彼女の創作意欲に火をつけてしまった。
広樹は浩志との思い出を「熱弁」した。途中、浩二は笑いをこらえるのに骨折り、
「う、嘘ッ!?」
「それ、本当ですか!?」
「高校生だったのに!?」
云々と、何度も聞き直した。
二人が話している間、大樹は座布団を半分にして折り、枕の様にして眠っていた。寝息を立てている我が子を気にしながら、広樹は目頭をハンカチで押さえた。今は高校生だった二人を浩志が手を出し、淫乱にさせたことを信じられないと思っているが、その数年後には中学生になったばかりの大樹をまさか自分がそうさせることになろうとは、考えてもいなかった。
午後九時を回り、広樹は大樹を起こした。
「長居をしてしまってすみません。告別式には妻が来ますので…。私、K百貨店に勤めておりまして、明日から秋に催される物産展の関係で北海道へ行くンです。克也、否、加藤さんは通夜には行けるそうです」
「K百貨店にお勤めですか? 大変ですね。道中、気を付けて」
玄関で広樹と大樹を見送ると、茶の間に戻って浩二は残っていたお茶を飲み干し、片付けた。徐々に、彼は浩志との永遠の別離がきているのだなと実感した。
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chisasarasa · 4 months ago
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241117
朝、眠ったままの朝。暗い中バス停でバスを待っていると、どこか遠くに連れていかれそう。 ニトリの、家具・インテリアの看板の文字ばかりが目立つ。 寝過ごすと陸別までいくバスに乗って、アルバイト。 いつもと違う人たちといつもと違う動きをして、疲れた。 新しくレシピを教えてもらう。 大体このくらいってわからない。大さじ3杯の安心。
車の練習をしたかったけれど、あまりにも疲れてしまって、やめた。 スーパーで助六寿司を買って、2人で分けた。
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241118
朝、身体が重くて、起きられない。 でも、起きてしまえば案外そんなこともなくて、安心する。 窓の外が薄く水色で、冬。 今年は秋から冬になる瞬間の空気が感じられなかった。厚みを失ったように薄く、透き通っていく空気。 北海道の冬はあの、甘く懐かしさもある冬とは異なる気がする。凍てつく。
今日から大学での実験補助の仕事が始まった。 ひさしぶりにやる作業。 いつぶりだろうと考えてみれば、7年。大学を出てから、7年。
18時ごろに家につく。 里芋と人参の煮物をつくる。 煮ているときからよい匂いがして、嬉しい。 たっぷりと甘いにんじんと滑らかな里芋がごろりと、おいしかった。 制作はしなかった。 こんな日々でいいんじゃないだろうか、と思う。 少しずつ遠のいていく。つくること。
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241119
朝、目覚めてすぐにiPhoneをみてしまう。 昨日から実験を教えてくれている人が、今日、誕生日だった。
餃子を包んで、焼いた。 焼いたつもりだったけれど、蒸らし過ぎて、水餃子のようになった。
夜、彼の調子が悪い。
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241120
朝、声が出にくい。 喉が枯れている。 さすがに病院に行きたいけれど、保険証の切り替えのタイミングで、面倒だから行きたくない。 のんびりと過ごした。 小説を読んだり、映画を観たり。 よい休日、といった感じがする。 仕事から帰ってきた彼と歩いてドラッグストアに行く。 ボディーソープがなくなりそうだから、買う。 ヤギの絵がかわいかったから、ヤギミルクのボディーソープにしてみる。 ヤギミルクの何がいいのかは読んでいない。
晩ごはんはハムカツ。 うまく揚げられなかった。 揚げ物は難しい。
(ドローイングがない。描いていないのか失くしたのかわからない)
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apothecaryscript · 3 months ago
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Maomao no Hitorigoto Episode 34: Poisoning / 猫猫のひとりごと 第34話 『中毒(ちゅうどく/Chudoku)』
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Please note that the English lines are just my translation.
猫猫(マオマオ)「ふぁ~あ… 桜花様(インファさま)が自分(じぶん)の部屋(へや)に戻(もど)らなかったせいで、すっかり寝不足(ねぶそく)だ…」
Maomao “Fuaaaa… Infa-sama’ga jibun’no heya’ni modora-nakatta-sei’de, sukkari nebusoku-da…”
Maomao “Ahh… I really have a lack of sleep because Lady Yinghua didn’t go back to her room…”
寝不足(ねぶそく/Nebusoku): lack of sleep, sleep deprivation = 睡眠不足(すいみんぶそく/Suimin-busoku)
子翠(シスイ)「おはよ~!昨日(きのう)は災難(さいなん)だったねー…」
Shisui “Ohayooo! Kino’wa sainan datta-neee…”
Shisui “Good morning! Yesterday was a disaster, wasn’t it?”
災難(さいなん/Sainan): disaster, mess, tough, unfortunate
It’s used when something bad happened without your intention.
猫猫「あぁ、でも、無事(ぶじ)で良(よ)かった」
Maomao “Aa, demo, buji’de yokatta.”
Maomao “Yeah, but I’m glad we’re safe.”
子翠「どうしてみんなの具合(ぐあい)が悪(わる)くなったのかなぁ?」
Shisui “Doshite minna’no guai’ga waruku-nattano-kanaa?”
Shisui “I wonder why everyone became sick?”
具合が悪くなる(ぐあいがわるくなる): become sick, become bad
猫猫「ここで、猫猫の豆知識(まめちしき)。密閉(みっぺい)された空間(くうかん)で物(もの)が燃(も)えると、有毒(ゆうどく)な空気(くうき)が発生(はっせい)することがある。この空気は無味(むみ)無臭(むしゅう)。頭痛(ずつう)やめまいを引(ひ)き起(お)こし、死(し)に至(いた)ることもあるとか」
Maomao “Koko’de, Maomao’no mame-chishiki. Mippei-sareta kukan’de mono’ga moeru-to, yudoku-na kuki’ga hassei-suru-koto’ga aru. Kono kuki’wa mumi-mushu. Zutsu’ya memai’o hiki-okoshi, shi’ni itaru-koto’mo aru-toka.”
Maomao “Here’s Maomao’s bits of knowledge. When something burns in an enclosed space, toxic air can be produced. This air is tasteless and odorless. It can cause headaches and dizziness, and can even be fatal.”
死に至る(しにいたる/Shi’ni itaru): fatal = 死に(しに): to the death + 至る(いたる): reach, arrive, achieve
猫猫(あんな危険(きけん)なことが起(お)こったんじゃ、今後(こんご)催(もよお)しが開催(かいさい)されることはないだろう…)
Maomao (Anna kiken-na koto’ga okottan-ja, kongo moyooshi’ga kaisai-sareru-koto’wa nai-daro…)
Maomao (Now that such a dangerous accident did happen, the event probably won’t be held in the future.)
子翠「私(わたし)、次(つぎ)の会(かい)を企画(きかく)しようと思(おも)うの」
Shisui “Watashi, tsugi’no kai’o kikaku-shiyo-to omou-no.”
Shisui “I’m thinking of planning the next event.”
猫猫「えっ?」
Maomao “E?”
Maomao “Huh?”
子翠「せっかくの集(あつ)まりがなくなっちゃうのって、もったいないじゃない?」
Shisui “Sekkaku’no atsumari’ga naku-nacchaunotte, mottai-nai-ja nai?”
Shisui “Wouldn’t it be a shame for this wonderful gathering to be ruined?”
猫猫「確(たし)かに、子翠は怪談話(かいだんばなし)がうまかったしなぁ…」
Maomao “Tashika’ni, Shisui’wa kaidan-banashi’ga umakatta-shi-naa…”
Maomao “It’s true that you’re so good at telling ghost stories, Shisui…”
子翠「エヘヘヘ…。でも、もっとみんなが安心(あんしん)して楽(たの)しめる会(かい)がいいと思(おも)って」
Shisui “Ehehehe… Demo, motto minna’ga anshin-shite tanoshimeru kai’ga ii-to omotte.”
Shisui “Hehe. But I think it would be better if the event was one where everyone could feel at ease and enjoy themselves.”
安心する(あんしんする/Anshin-suru): feel at ease, relieved ⇔ 心配する(しんぱいする/Shinpai-suru): worry
猫猫「…と言(い)うと?」
Maomao “…To-iuto?”
Maomao “What do you mean?”
子翠「名付(なづ)けて!『虫(むし)の可愛(かわい)さについて語(かた)る会(かい)』!!…なんてどうかなぁ?」
Shisui “Nazukete! ‘Mushi’no Kawai-sa’ni tsuite Kataru Kai’!! …Nante do-kanaa?”
Shisui “Let’s call it a ‘Meeting to Discuss the Cuteness of Insects’!! How about that?”
名付ける(なづける/Nazukeru): name = 名(な): name + つける: put on
猫猫「あぁ……」
Maomao “Aa……”
Maomao “Ahhh…”
子翠「朝(あさ)まで寝(ね)ないで語(かた)り明(あ)かすの!一度(いちど)やってみたかったんだぁ!せっかくだから三夜(さんや)連続(れんぞく)とかにして、飲(の)まず食(く)わずの極限(きょくげん)状態(じょうたい)で虫(むし)の魅力(みりょく)について話(はな)し合(あ)うんだ~!」
Shisui “Asa-made nenai-de katari-akasu-no! Ichido yatte-mitakattan-daa! Sekkaku-dakara san-ya-renzoku-toka’ni shite, nomazu-kuwazu’no kyokugen-jotai’de mushi’no miryoku’ni tsuite hanashi-aundaaa!”
Shisui “We’ll talk until the morning without sleeping! I’ve always wanted to try this! Since we have the chance, let’s do it for three nights in a row or something, and discuss the charms of insects under extreme conditions, without food or drink!”
連続(れんぞく/Renzoku): in a row, continuity
極限(きょくげん/Kyoku-gen): extreme, limit
猫猫(かなり危険(きけん)な会(かい)だ…!さささささ…)
Maomao (Kanari kiken-na kai-da…! Sasasasasa…)
Maomao (That is a quite dangerous meeting…! Sneak, sneak…)
子翠「猫猫!まだ話(はなし)は終(お)わってないよ~~~!」
Shisui “Maomao! Mada hanashi’wa owatte-nai-yooooooo!”
Shisui “Maomao! I’m not finished yet!”
猫猫「次回(じかい)、『狩(か)り』。壬氏様(ジンシさま)の遠征(えんせい)にお供(とも)するらしい…。あぁ~…」
Maomao “Jikai, ‘Kari.’ Jinshi-sama’no ensei’ni otomo-suru-rashii… Aaaa…”
Maomao “Next episode, ‘The Hunt.’ It seems I’ll be accompanying Master Jinshi on his expedition… Ahh…”
遠征(えんせい/Ensei): expedition
お供する(おともする/Otomo-suru): accompany, go along with
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blr-blue · 3 months ago
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 最近、ノートパソコンのBluetoothマウスを紛失しており、ずっとマウスパットでカーソルを操作している。きっと部屋の中のどこかにあるのだが、見つけることができない。だけど部屋の掃除をする体力はないので、あきらめて不便なPC生活を送っている。
 そして今日はとうとう、PCに繋げる用の有線のイヤホンも紛失したことに気付いた。まあ、それもこの部屋の中のどこかにはあるのだろうが、片付ける気にも探す気にもなれない。有線のイヤホンがなくても、AirPodsを繋げれば別にそれで済むのだが、Win機なので接続がいちいちダルくて、もうそのままwebミーティングもPC内蔵のスピーカーとマイクでやってしまっている。迷惑なやつだ。
 先日、地元の友人と誕生日プレゼントを交換した。わたしがお願いしたのはチェキだった。貰ったものを開けてみたら、別売りのフィルムがないと写真を撮れないやつだった。その友人は、フィルムを買って一緒に付けておくという気遣いができるタイプでもない。だから今わたしの手元には、写真の撮れないチェキ本体だけがある状態だ。あの子はそういうところの詰めが甘いが、まあ、言ってしまえばそういうところも愛している。後でフィルムを買わなきゃな~と思ってはいるけれど、たぶんさき数か月は買わない気がする。面倒だから。
 ちょっと嫌なことが起きたけど、そういうときにすぐに連絡が取れる人が数人いて助かった。これは個人的な見解だが、Tumblrなどの媒体に、多数に向けて負の感情を書き記すことはきわめて容易だけど、個人を相手に悲しみを共有することにはかなり大きな心的リソースを要する。そういうことを話せる人間のことをわたしはとても信頼している。
 小説ならともかく、Tumblrやらnoteやらで日記を投稿するときですらいいね数を気にするようになったら終わりな気がしているんだけど、最近自分にその傾向があるから気を付けようと思う。日記やら思考の表出において良し悪しがあるわけがない。あるのは思考の種類と、言葉回しの差分だけだ。だれの思考も高尚じゃないし、下劣でもない。ただ誰かの思考がそこに転がっているだけだ。
 この間の土日は平日の睡眠不足を補うかのように長く薄く眠っていた。眠り方がよくわからない。研究がそれほど忙しいわけでもないのに、なぜか最近、数時間しか眠っていないのに目が醒めてしまう。土曜日、いつもの起床のあとに、昼寝のような形で、さらに数時間眠った。きもちがよい。やっとふつうの思考ができる気がした。
 最近は朝から予定があることが少ないので、あまり市販の睡眠改善薬を飲んでいない。そろそろ睡眠外来に行きたいと、裏で書いている日記(来年製本するやつ)に書いているが、一向に行ける気配がない。
 ここ数年は気圧の変化にいい意味で鈍感でいられたのだけど、最近気圧の変化による偏頭痛がまた悪化している気がする。
 頭が痛いことはとても恐ろしいことのように思う。以前どこかの記事でちらりと話したが、わたしの父の家系は脳疾患の家系である。祖父はわたしが生まれる前に、くも膜下出血で亡くなっている。父も数年前にくも膜下出血で倒れた(なんと運が良いことに生きている)。弟と妹は両方とも発達障害+てんかん持ちである。母とわたし以外、脳になんらかのディスアドバンテージがある。
 数年前に父が倒れたとき、父��しきりに頭が痛いと言っていたらしい。それを聞いた母が、夜中に救急車を呼んだ。父は歩いて救急車に乗り込めるくらいに意識はしっかりしていたらしいが、搬送先でくも膜下出血であることがわかり、そのまま緊急入院をした。
 一親等以内にくも膜下出血の既往歴がある場合、発症率は3~7倍に跳ね上がるらしい。祖父の遺伝子が父に継がれ、父の遺伝子がわたしに継がれている。いつ、わたしの番が来るだろう。わたしの脳は脆弱なのだ。
 頭痛がするとこわい。もしかしたら、と思ってしまう。頭が痛くて鎮痛剤を飲もうとするとき、たまに、この痛みは薬で誤魔化しても良いのだろうかと不安になる。もちろん、飲んだ方が楽になるに決まっているだろうけど、痛みを痛みのまま感じていた方が、本当にヤバい痛みがやってきたときにすぐ気づけるんじゃないかとか、そういう意味のわからない被害妄想をしてしまう。
 春のにおいがする。あたたかい。風がやわらかい。今年の冬はあまり外に出なかったからか、そこまで寒さを厳しく感じなかった。
 先日SUQQUの口紅を使い切ったので、去年の秋に空港の免税店で買ってストックしておいたシャネルの口紅をおろした。春には似合わないパープル系で笑ってしまった。それを買ったときはきっと、冬を生きるためにその色を選んだのだろう。けれど思ったよりもSUQQUの口紅を使い切るのに時間がかかってしまって、季節外れの今、シャネルのパープルが居心地悪そうに浮いている。ごめんね。
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kuruiizon · 11 days ago
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眠罪 (Minzai) by MAD MEDiCiNE; a super scuffed English translation
I'm not at the level of fluency to be able to translate this correctly, but, hey, we've all gotta start somewhere, right? Just... don't expect this to be any good, lol.
Also, sorry for the weird formatting. I copied and pasted this from Google Docs without realising how awful this would look on here and I'm too lazy to fix it. I'll make sure to not do that again, haha.
Sleeping Pills
(Lyrics JP, Romaji, EN)
どうして?どうして?
Doushite? Doushite?
Why? Why?
僕をひとりにしないで 
Boku wo hitori ni shinaide
Don't leave me alone
痛くしないから
Itakushinai kara
So that I won’t be hurt
二度と目覚めないでバイバイ
Nidoto mezamenaide bai bai
Never wake up again, bye bye
午前0時のバイアス
Gozenreiji no biasu 
12-o-clock bias
ヘラるシナプス
Heraru shinapusu
Sad synapse 
なんだか嫌な予感で
Nanda ka iyanayokan de
Something like a bad premonition 
眠れないや
Nemurenai ya
Keeps me awake
「ねえねえ 誰とどこにいるの?」
“Nee nee, dare to doko ni iru no?”
“Hey, hey, where are you going? With who?”
もうずっと返事がないな
Mou zutto henji ga nai na
There's never any response
もっともっと悪い子でしょ
Motto motto warui ko desho
You must have gotten naughtier
寝てるはずないくらい
Neteru hazu nai kurai
You couldn’t have been sleeping
ラ リラ リラ リララバイ
Ra rira rira rirarabai 
La lila lila li-lullaby
ワンシートの絶対的愛
Wanshīto no zettai teki ai
One sheet of true love
ラ リラ リラ リララバイ
Ra rira rira rirarabai
La lila lila li-lullaby
残さず 飲み干して
Nokosazu, nomihoshite
Drink it all up
連れ去って着せ替えして遊びましょう
Tsuresatte kisekae shite asobimashou
Take you away, dress you up, play with you
そっと君が目覚めないように
Sotto kimi ga mezamenai you ni
Softly so as not to wake you
真っ白パジャマ着せて おやすみ
Masshiro pajama kisete, oyasumi
Put on white pajamas, goodnight
夢の中ならば 世界中でふたりきり
Yume no naka naraba, sekaijuu de futarikiri
In this dream there’s only me and you
睡魔の囁き 永遠の眠りに堕ちて
Suima no sasayaki, towa no nemuri ochite
Whispers of sleep, fall into eternal slumber
夢から醒めたら 僕を拒むでしょ
Yume kara sametara boku wo kobamudeshou
When wakefulness draws near, I won’t accept it
そんな存在いらない
Sonna sonzai iranai
I don’t need that kind of existence
二度と目覚めないでバイバイ
Nidoto mezamenaide, baibai
Never wake up again, bye bye
午前3時になります
Gozensanji ni narimasu
It is now 3’o’clock
喰らうロータス
Kurau rōtasu
Devouring lotus
なんだか夢見心地で
Nanda ka yumemigokochi de
Feeling kind of dreamy
破る処方箋
Yaburu shohousen
Violating the prescription
安定剤たんない脳内
Antezai tan nai nounai
Tranquilizer-free brain
嘘つき お医者さん
Usotsuki oishasan
The doctor is a liar
もう同罪 僕だけに教えてよ 全部
Mou douzai, boku dake ni oshiete yo, zenbu
You’re guilty too, just tell me everything
キミのボクとボクのキミじゃないの?
Kimi no boku to boku no kimi janai no?
I’m yours and you’re mine, right?
そいつダレ?邪魔させないよ!
Soitsu dare? Jama sasenai yo!
Who’s that? Don’t get in my way!
おやすみ3秒 このまま一生
Oyasumi sanbyou, kono mama isshou
Fall asleep in three seconds, keep living this way
覚めない夢で愛を謳っていよう
Samenai yume de ai wo utatte iyou
Within the endless dream, let’s sing our love
ラ リラ リラ リララバイ
Ra rira rira rirarabai
La lila lila li-lullaby 
ワンシートの退廃的ハイ
Wanshīto no taihai teki hai
One sheet of a decadent high
ラ リラ リラ リララバイ 
Ra rira rira rirarabai
La lila lila li-lullaby
残さず吐いて
Nokosazu haite
Throw it all up
連れ去って着せ替えしてみてもまだ
Tsuresatte kisekae shite mite mo mada
Trying to take you away, dress you up, and still
なんでここを出たがるのかな
Nande koko wo detagaru no kana
Why would you want to leave this place
真っ赤な花が咲いた おやすみ
Makka na hana ga saita, oyasumi
Bright red flowers bloom, goodnight
夢の中ならば 世界中でふたりきり
Yume no naka naraba, sekaijuu de futari kiri
In this dream there’s only me and you
睡魔と契約 甘い眠りのキスで
Suima to keiyaku amai nemuri no kisu de
The contract of sleep, with sweet sleepy kisses
夢から醒めても 君がいないなら
Yume kara samete mo, kimi ga inai nara
When wakefulness takes over, if you’re not here
そんな現実いらない
Sonna genjitsu iranai
I don’t need that reality
二度と戻れないよきっと
Nidoto modorenai yo kitto
I definitely won’t go back again
ひとりきりで 迎える 苦しい朝なら
Hitorikiri de, mukaeru, kurushii asa nara
If I must bear a painful morning all by myself
こないで こないで 夜に閉じ込めて
Konaide, konaide, yoru ni tojikomete
Don’t come, don’t come, let the night imprison me
外は悲しいことばかりだから
Soto wa kanashii koto bakari dakara
Because it’s all so sad out there
みないで みないで ほら瞼閉じて
Minaide, minaide, hora mabuta tojite
Don’t look, don’t look, hey, close your eyes
夢の中ならば 世界中でふたりきり
Yume no naka naraba, sekaijuu de futarikiri
In this dream there’s only me and you
睡魔の囁き 永遠の眠りに堕ちて
Suima no sasayaki, towa no nemuri ni ochite
Whispers of sleep, fall into eternal slumber
夢から醒めたら 僕を拒むでしょ
Yume kara sametara boku wo kobamudesho
When wakefulness draws near, I won’t accept it
そんな存在いらない
Sonna sonzai iranai I don’t need that existence
二度と目覚めないでバイバイ
Nidoto mezamenaide baibai
Never wake up again, bye bye
僕のモノだずっとずっと
Boku no mono da zutto zutto
You’re mine, forever and ever
(Notes) 
Minzai typically means sleeping pills (眠剤), however, instead of using the character zai 剤, for medicine, the title uses the character tsumi 罪, which means sin or crime, but it can be pronounced the same way as zai 剤. The title is obviously a pun, but I’m unsure of how to translate it. I’ve left it as “Sleeping Pills” for simplicity's sake.
Sources:
youtube
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mlyzvt-no2157 · 5 months ago
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Fさん宅の訪問販売
Fさんというのは、新卒のときに就職した会社の営業部にいた中年男性のことである。この会社の営業部は、何故か、非常に容姿に恵まれた人が多い中、Fさんは、お世辞にもイイ男とは言えなかった。どちかというと、贔屓目にみても、中の下か、下の上だろうという容姿である。しかし、自信家のFさんは、自分がイイ男でスタイルも抜群であると固く信じ込んでいた(実際は、背が低く、頭と顔が大きく、かなりのメタボのぽっちゃり体型で、手足が太くて短いのに、無理に海外のハイブランドのスーツを着ているため、脚の裾は引きずっており、手は指先しか出ておらず、ウエストはベルトの上にお腹の肉がぷよぷよと乗っかって、シャツのボタンは今にも弾き飛びそうだった。だが、あるとき、私の所属する部署の新人に鼻っ柱をへし折られ、ヤケクソを起こし、落ちる所まで落ちたが、上司の励ましによってスタイルを取り戻し、その後、男性ホルモン注射に夢中になってしまったという経歴?を持つ、かなり残念でかつ痛くて変な人である)。
さて、Fさんはかなり前に離婚したバツイチで、Fさんは実家から会社へ通っていた。Fさんのお母様はかなり前に他界しており、当時大学生だったの息子さんの衣食住の面倒は、Fさんのお父様が見ていた。Fさんのお父様は、Fさんと血が繋がっているとは思えない程、紳士で、Fさんが離婚した後も、元若嫁であるFさんの奥様と週に2~3回の頻度で子供を交えて会っていたらしい。恐らく、Fさんが、どこか遠くに単身赴任して滅多に家に帰って来なければ、Fさんと元奥様は離婚しなかっただろうと、会社の皆が思っていた。Fさんは、よく会社で、「親父の面倒はオレがみてやっている」と言っていたが、「お父様がFさんの面倒を見て下さってるの間違いじゃないですか?」と私は反論していた。ちなみに、営業部の全員が私と同じ意見だったが、それを言うとFさんはふてくされて仕事をしなくなってしまうので、営業部の人達は私と同じ事を言えなかったらしい。
なぜ、親子近く年上のFさんに対して私が反論できたかというのは、違う部署だったことと、Fさんが戦場記者や戦場カメラマンに対して、コンプレックスと憧れを抱いていたからである。Fさんも、最初から営業マンではなく、元戦場記者だった。だが、新人の頃に戦地を取材したFさんは、戦場の悲���さ・目の前で無抵抗な女性や子供や惨殺されるところ、病院に運ばれても、次々と人々が死んでゆくこと、昼も夜も怯えながら仕事しなければならない地獄に耐えられず、たった一度の取材をしただけで営業部に異動したのである。だから、戦場記者や戦場カメラマンを続けていられる私の上司のMさんや、カメラマンのYさん、同期のS君や私などはFさんから一目置かれていた。
前置きが長くなってしまった。そんな、人間性にはかなり問題がある(面白いと言えなくはないが、家族には絶対なりたく人である)Fさんだが、Fさんのお父様は、世界的に有名な大手総合商社の経営企画部の部長&取締役だった超エリートである。それゆえ、基礎年金・厚生年金・企業のOB年金を含め、Fさんのお父様の収入は凄い額で、普通のサラリーマンの平均年収の2~3倍はあろう額だった。そのためか分からないが、Fさんの家の家計は、全てお父様の年金や投資して運用している不労所得などから支出していた。その事を当然だと思っているふてぶてしいFさんは、息子の養育費や自分の食費や被服代など生活に必要なお金を一切家に入れず、給与は全てFさんのお小遣いになっており、Fさんは非常に金遣いが荒かった。
そんな、金遣いの荒いFさんが大好きだったものは、訪問販売である。あるとき、何処のメーカーの物を取り扱っているのか得体の知れない訪問販売の営業マンがFさん宅を訪れ、羽毛布団を紹介した。この羽毛布団は100年使っても羽毛がダメージを受けることなく、干さなくても湿気たりしないので、お手入れも簡単、その気になれば洗濯機でも洗える、乾燥機OK、そして何よりこの羽毛布団で寝ていれば、金運が上がるという怪しさ満載のシロモノだった。そして価格はなんと1枚70万円である。常識で考えたら、日干しやそれが無理でも乾燥機で布団を干さないとダニの巣窟になるのは当然のことであることは、大人であれば誰でも知っている。しかも、高級マザーグースダックの羽毛布団を普通の家庭用洗濯機で洗ってしまったら、へしゃげてしまい、布団がダメになることも少し考えたら分かることである。第一、布団はある程度長く使っても、寿命というものがあり、ウン十年も使うような物ではない。まして、100年も使ったら、中はダニやダニの死骸や埃の巣窟、そもそも100年後に自分が生きている可能性の方が遥かに低い。しかも、1枚70万円である。寝る布団の質で金運なんぞ上がる訳がない。金運は、本人が為替や株式の仕組みをよく勉強して、如何に上手に投資するか、今までに無かったようなモノを起業して大ヒットするかなど、本人の努力が必須である。そんな、ぼったくり価格の胡散臭い羽毛布団なんぞ、即断るのが常識だと思うが、高級品やハイブランドが大好きなFさんは違った。Fさんは即決で羽毛布団を自分とお父様と息子さんの3人分を購入し、合計210万支払ったのである。
どちらかといえば、私も「安物を沢山」よりも「高い物を長く大事に使う」タイプの人間である。だが、その考えを適用する物には、向いている物と向いていない物がある。例えば、腕時計などは、いい物であれば、きちんとメンテナンスを続けていれば、自分の代だけでなく、子供に譲ることもできる。財布も私が現在使っている物は、就職した時に購入したものをまだそのまま使っている。だが、布団はそういう買い方に向いていない物だと思う。70万円の布団を1枚より7万円(それでも高いが)の布団を10回買い替える方が、余程、衛生的で清潔で快適である。
Fさんの訪問販売でのお買い物は、羽毛布団だけにとどまらなかった。羽毛布団で金運が上がったのか下がったのかは謎だが、多分、何の変化もないと思われる。羽毛布団の訪問販売の営業マンが来てから2か月後、Fさん宅に、また別の訪問販売業者が訪れた。今度はアコヤ貝をうる業者だった。アコヤ貝は、おなじみの真珠を養殖する為の貝である。真珠が欲しければ、アコヤ貝を自分で育てて真珠にするのではなく、真珠として出来上がっている物を買うのが普通である。だが、Fさん宅を訪れた業者は違った。『このアコヤ貝には、直径15mmを超える花玉真珠の原石が眠っている。来年の春に、このアコヤ貝を開けると、まばゆいばかりに光り輝く、立派な直径15mm以上の花玉真珠が必ずできているはずである。アコヤ貝1枚の中に、少なくとも真珠は3つ以上入っている。その真珠を宝石店に売りに行けば、1粒あたり最低でも300万、平均で500万以上の値段で買い取ってくれるだろう。今回は、特別にあなただけに、アコヤ貝を1枚あたり50万円でお譲りしましょう』という、如何にも胡散臭いシロモノだった。これはいくら何でも断るだろうと普通は思うが、とにかく「普通でないもの。後にプレミアが付く」などのキャッチフレーズが大好きだったFさんはアコヤ貝に飛びついた。そして、訪問販売の兄ちゃんに薦められるがままに、アコヤ貝を10枚も購入したのだ。そのアコヤ貝は、側部が透明になっている円柱状の入れ物に入っており(イメージとしては、ツナ缶が透明になったような物)、何処からでもアコヤ貝が見られるようになっており、上部は缶詰よろしく、開封用のフックまで付いていた。何故、私がそんな事を知っているかというのは、Fさんが会社でみんなに自慢するために、合計500万も投資したアコヤ貝の缶詰(?)を全部持ってきて、デスクの上に並べてニマニマしていたからである。なお、待ちに待った翌年の春、Fさんは嬉しそうに、アコヤ貝を空けていたが、花玉真珠はおろか、10枚あった貝の中に真珠ができていた貝は4枚だけで、しかも到底真珠とは言えない黄ばんだ小さな粒(直径3~4m程度)で、僅かに場所によっては真珠色に輝いているかな?というような物だった。
それでも、懲りないFさんが、訪問販売で散財した物は計り知れない程多い。私が知っているだけでも、食器棚を改造したとしか思えないガラスの観音扉になっている500万円の真っ白な仏壇(私が某安価な家具チェーンで8万円で買った自宅にある食器棚ソックリだったし、観音扉を開けさせてもらい、中を見たら、側面に一定の間隔で穴が開いていた。その穴は何の為に必要なのか尋ねてみらた、「『気』を通すために、必ず開けておかないというえない穴」だそうである。でも『気を通す』と言っているが、穴は外部に貫通しておらず、どう見ても、食器棚の中棚を取り付ける為のフック穴としか思えなかった。そして、肝心の『気』とは何か?と尋ねてたら、Fさん本人もよく分からないと答えるものだから、思わずひっくりかりそうになった。)、南西向きの屋根があるにも拘らず、高層マンションに面した北向きの屋根に付けられた600万円のソーラーパネル、法外な値段のオール電化工事で(オール電化にも拘らず、台所のコンロは何故かガスのまま)など例を挙げていったらキリがない。
私が転職してかなりの年月が経ち、更に関西に引っ越してきて、そろそろ5年近くなる。Fさんが今でも散財を続けているのか、とても気になるが、3年程前に、Fさんのお父様の訃報連絡があった。Fさんのお父様はどんな思いで息子の散財を見ていらしたのかと思うと、やはり、高齢の親に心配をかけるような親不孝物にはなりたくないと思ってしまった。
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nephe1o · 4 months ago
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Denisa-profile
▼プロフィール
【名前】デニサ ノルダール(Denisa Nordahl) 【年齢/性別/身長】??歳/女/161cm 【一人称/二人称】私(わたし)/貴方 【長所】慎重・献身的・聡明・優雅・忍耐力 【短所】冷淡・保守的・生真面目・過保護 【好き】月夜・魔法・調薬・お世話・実用的なもの・可愛いもの 【嫌い】人混み・熱気・借金・運任せ
凛とした佇まいの気品ある雰囲気の女性。 表面上は冷淡で近寄り難いオーラを感じさせるが、実際は心優しく包容力のある穏和な性格。 堅実的に物事を考えて何でも卒なくこなす能力があるものの、規律を重視してしまうが故に柔軟な対応をやや苦手としている。
風と闇魔法を得意とする聡明な魔導師。 大きな街の商家の生まれだが、店を経営する両親が大口の取引に失敗し莫大な借金を抱えてしまった影響で、彼女は奴隷として売り飛ばされることとなり幼少期は過酷な日々を過ごしていた。 後に奴隷として働かされている際にとある魔導師と出会い、魔法の資質を見出された彼女は彼に引き取られ、彼が住む村で魔女として育てられる事となる。 天性の恵まれた魔力と頭脳を活かし優秀な魔女として成長した彼女は、彼や村人への恩返しの為に魔法や調合した薬を使って様々な貢献を行いながら平穏に暮らしていた。 そんなある日、突然何の前触れも無く村が武装した奴隷商による大規模な人狩りに遭い、抵抗した村人は惨殺され、若い女性や子供は捕獲され村は崩壊してしまう。懸命に戦った彼女もまた重傷を負ってしまうが、親代わりであった魔導師の身命を賭した手助けで、彼女だけは辛うじて逃げ出すことに成功する。以後、追っ手に追われ瀕死のところをとある人物に救われ、一命を取り留めている。 現在は村を襲った組織に対する復讐に加え、命を救われた恩義を返すべくその人物の苦手分野を補う補佐役として協力し、共に各地を転々としながら旅している。
魔法の改良や調薬が趣味。 戦闘用の高威力な魔法や病気の治療薬など、主に自分の能力を高めたり、人の役に立つ魔法や薬の研究を好んで行っている。特に薬に関してはどれも効能が高く、安定した品質で周囲からの評価は極めて高い。 因みに使役する魔物はゲイザー。邪視により視線が合った者を麻痺・眠り・混乱・石化など様々な状態異常にする能力を持っている。
◇「私は自身の責務を全うします。邪魔をするのであれば容赦はしません」 ◇「僭越ながら私がお相手させていただきます」 ◇「用件があるのでしたら手短に。そんなに暇じゃないので」 ◇「彼のチャームポイントはこの大きな目玉と表皮のつるつるとした手触りね。ふふっ可愛い私の子」 ◇「大丈夫ですか?辛い時は無理せず、甘えてくれてもいいんですよ?」 ◇「あの可愛さは流石に反則よ…反射的に抱きしめたくなっちゃうじゃない…」 ◇「別に私は完璧なんかじゃないの…私にも誰かに寄り添って甘えたくなる時だってあるのよ…?」 ◇「善悪多様…貴方にとっての善は私にとっての悪。よって私は貴方の罪を裁きます」 ◇「おかえりなさい。お風呂でしたら既に準備が整っていますよ。一日の疲れを落とすには入浴が一番効果的です。よろしければお背中お流しいたしましょうか?」 ◇「この身が朽ち果てるまで…私は貴方に尽力する事をお約束いたします。私はもう同じ過ちを決して繰り返したりはしません 」
◆「ジル…貴女はもう少し危機感を持って行動しなさい。貴女の積極性と行動力は高く評価出来るけれど《好奇心は猫をも殺す》という言葉もあるのよ。貴女を一人きりにしたら何をしでかすか気が気じゃないわ。貴女は私のそばから離れないこと。わかった?」 ◆「燿香。貴女はとても努力家で真っ直ぐな人です。そして可愛…ごほん。他人に愛される容姿を持っている。それは素直に誇るべき素質だと私は思います…事のついでに少しだけ頭を撫でてもいいですか?」
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▼使い魔と武器
◆使い魔は「ゲイザー」。 邪視により視線が合った者を麻痺・眠り・混乱・石化など様々な状態異常にする能力を持っている。能力を使い過ぎると目が充血してくることが欠点。 又、視力が人間の数十倍あり遠方まで広く視認が可能な為、索敵能力は非常に高い。 因みに彼は主人の調合する目薬が大好きで、よく主人に目薬を差してもらっている。
◆希少な魔鉱石製の緑色の斧槍。 魔鉱石で作られた武器は使用者の内包する魔力によって性能が多様に変化する珍しい性質を持つ。 内部の宝石は魔力によって浮遊している状態。
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▼リンク
◆他クリエイター様による作品一覧
6 notes · View notes
lumi-kissa · 8 months ago
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先日、スーパーの保存袋の棚の一番下で埃被ってたこれを見つけて、こんな可愛いジップロックあるんだ!と思い即購入した。
鶏肉とか入れるのもったいないなあ。
知らなかったけど結構前に登場したBEAMSコラボの商品でした。
ほかのコラボ商品もめっちゃ可愛かった。
🩷
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親友からもらったバニラの香りの紅茶がとてもおいしくて、最近毎日ティータイムしています。デカフェだから夜のティータイムも安心。
紅茶の時はいつもこのカップ👑スコーンが食べたくなるね。
🩵
今日は息子達が学校を休んでるのでお弁当もつくらず朝のんびりできました。
特に何もなくても、疲れが抜けない、なんかダルい、行きたくない、そんな日もあるので、1学年の間に3日だけ、特別休暇を与えてます🤭
今日ふたりともそれを使ってる。疲れてるんだと思う。いつもがんばってるからね。
🫶
新しい仕事も慣れてきて、一昨日納品した記事は一発OKでうれしかった☺️
今日もがんばろう💻
手順を覚えるまでは集中して作業します。1カ月分の量を5日くらいでやっちゃう。じゃないとすぐ忘れちゃうからさ。
この仕事は、これまでやってきたどの仕事よりも楽しい。
💛
土曜日の深夜、相変わらず全然眠れないなぁと思って怖い映画観たりしてたら、なんとなく顔に違和感を覚えて、鏡を見たら口の中が腫れ上がって首に蕁麻疹が。
その日の夕食はお寿司🍣エビは避けたんだけどなぁ🦐
遅延型アレルギーかもしれないから、昨日から口に入れたものを全部メモすることにした。
まだちょっと顔が腫れてて悲しみの月曜日。
🤢
それでも楽しい1週間を過ごす気満々です🎀
心は青空。
🫰🏻💗
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kennak · 2 months ago
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熊本市立中学校に進学したばかりの男子生徒が2019年4月に自殺し、背後に小学校6年時の担任教諭の不適切指導が指摘された問題。不適切指導が認定され、教諭は2022年12月に懲戒免職となった。 経過 熊本市立藤園中学校に入学したばかりの1年の男子生徒(以下Aさん)は2019年4月18日夜、マンションから転落して死亡した。飛び降り自殺だとみられている。生徒の自殺原因について、2019年3月に卒業したばかりの熊本市立五福小学校で、6年の担任だった教諭からの指導を苦にしていたことが指摘された。 教諭の行為 当該の男性教諭・Y(2022年12月時点で60歳)は、2014年度に熊本市立五福小学校に着任し、2018年度まで5年間同校に勤務した。 教諭は着任当初から、当該校の3年以上の児童を加入対象とする部活動の顧問を受け持った。当該部活動は教諭着任後、大会などで好成績を修めるようになったという。その一方で当該部活動は教諭着任後に指導が厳しくなったと指摘された。なお当該教諭が顧問を務めていた部活動については、2019年に当該教諭が他校に異動したのち、同年度より地域クラブとして運営形態を変更する形で、少なくとも2022年度までは当該教諭が引き続き外部指導者として指導にあたっていたという。 一方で教諭が着任後の2014年度以降、当該教諭は部活動の指導のみならず授業などの際に、児童の胸ぐらをつかむなどの行為、「バカ」「アホ」「役に立たない」「何ば考えっとや」などの暴言、大声を出すなどの威圧的な行為を繰り返し、苦情が度々学校に寄せられていた。 2014年度には、当時担任していたクラスの児童が、教諭の威圧的な指導への恐怖心から保健室登校状態になるなどした。 2015年2学期には、部活動に所属していた当時6年の女子児童(Aさんの3歳上の姉)に、「お前の顔を見るとイライラする」などと暴言を吐き、保護者が教諭に抗議した。 2016年度・17年度には学級担任を外れて、教科の専科教員となった。教諭の元々の主専門は社会科だというが、専科を受け持った教科は社会科とは別の教科だとされる。専科になった理由については、教諭本人は「自分で希望した」などとしたが、一部の管理職は「児童や保護者とのトラブルが相次いでいたことを不安視して専科に回した」「その教科を専門とする教員が、新年度に専科担当を希望しなかったので、この教諭を専科に回した」と証言した。 2017年度には、授業中に当時3年の児童の胸ぐらをつかんで壁に押しつけるなどし、後頭部にこぶを作る事件が起きた。そのことを把握した教頭が教諭に指導した際、教諭は逆上し、「そんくらい、すっでしょうもん(そのぐらいするだろう!)」と怒鳴りながら、教頭のいた場所のすぐ横の壁を殴って威嚇した。 2018年度の教諭の行動 教諭は2018年度、専科教員から外れ、6年の学級担任に付くことになった。このことについては、教頭(2018年度に他校に転任)は「新年度の学校運営の構想では、この教諭を引き続き専科にすることを考えていた」、この年に着任した新教頭も「校長は、この教諭を専科にしたいと考えていた様子だった」と証言した。一方で校長は「この教科の専科ができる教員がほかにいた」「6年の学級担任を希望する教員がほかにいなかった」などとして、教諭を6年学級担任に配置した。 別の児童への暴力事件 担当クラスでは2018年4月はじめ、入学式の準備の際に、Aさんとは別の男子児童・Bさんに対して、この教諭が児童の胸ぐらをつかんで清掃用具のロッカーに押しつけるなどの暴行・「体罰」を加えた。この事件では、Bさんは首に打撲傷を負い、急性ストレス障害などと診断された。Bさんはその後登校できなくなり、転校した。 Bさんの保護者は、警察に被害届を出すなどした。しかし教諭は2018年9月に起訴猶予処分になった。Bさんの保護者が検察審査会に申立をおこなったものの、2019年4月に不起訴相当と議決された。 この案件での教育委員会としての当該教諭への処分は、「教諭のほかの行為についてもまとめて処分してほしいという要望があった」として、2022年11月まで保留状態になっていた。 この事件の被害児童Bさんは、自殺したAさんとも仲がよかったという。 クラスの状況 またほかにも���担任教諭のクラスでは、常習的な「体罰」や威圧的な指導が指摘された。当該教諭が2018年度に担当したクラスでは、教諭が日常的に「児童に大きな声で返事をさせる。緘黙傾向をもつ児童や大きな声を出すのが困難な傾向がある児童にもお構いなしに、大声を出させようとする」「何かあると、別の児童に対してその児童のどこが悪いのかを指摘させる」などの指導を繰り返した。このことで、直接の指導対象となった児童だけでなく、Aさんを含めて指導の様子を目撃した児童にも心理的な負担が生じる状況になり、クラスの雰囲気を萎縮させていたと指摘された。 卒業前に配布された卒業文集では、複数の児童が、文集に掲載された担任教諭の名前と顔写真を塗りつぶしたと指摘されている。また卒業式での呼びかけでは、ある児童が事前の予定原稿を独自に差し替えて、2018年4月に暴力事件を受けて転校したBさんの名前を出し「転校したB君のことを忘れないで」などと言及した。それを聞いた児童や周囲の教職員は「担任教諭への抗議・批判」と受け取ったとされる。 Aさん自身に関連することとしては、トイレの時間が長くなる、円形脱毛症が見つかる、口数が少なくなる、睡眠の状況が悪くなる、ぼんやりしている様子が目立つようになったなどの状況が出た。またAさんは家庭で、「担任教師がウザい」「学校がストレス」などと繰り返し話していたという。 卒業直前の2019年3月に、給食委員会の活動中に、Aさんがノートに「絶望」「死」「呪い」などと書き付けていたのを、委員会担当の教員が見つけた。教員は「担任教諭に対する書き込みなのか」と聞いた。Aさんは書き付けた理由を詳細に話さなかったが、やりとりを目撃した周囲の児童はいずれも「担任教諭に向けた書き込みだと察した」と委員会担当教員に伝えた。委員会担当教員は校長に報告し、校長からAさんに事情を聴いたものの、保護者への連絡はしていなかった。 また2019年3月8日付で、Aさんの保護者を含む保護者有志から「当該教諭への処分と、不適切指導の再発防止を求める」とする嘆願書が、熊本市教育委員会に出された。 また同校の教職員も、当該教諭の児童への不適切指導について、熊本市教委に相談していたという。 同僚教職員へのハラスメント行為 また当該担任教諭の威圧的な言動は職員室の雰囲気を悪くさせ、同僚教職員にも悪影響を与えていたと指摘された。 当該教諭が威圧的な態度で、他の教員に対して、教育活動上無理難題を押しつけるなどするなどの状況もあったという。「当該担任教諭が、6年生のクラス編成を強引に変更した。修学旅行の段取りを勝手に決めるなどした」などの被害もあったとされる。教諭の言動が原因で体調を崩して病院を受診し、病気休暇を取った教職員もいた。 ほかの教員は、当該教諭と顔を合わせたくないとして、職員室への入室をできるだけ避けて、教職員間の連絡や打ち合わせなどの際は別室に集まるなどの状況も生まれた。 教諭は児童らの卒業と同時に、2019年度に熊本市立力合西小学校に転任した。教諭が転任した後、職員室の雰囲気はがらりと変わったとされる。 児童の死亡 Aさんは熊本市立藤園中学校進学後、2019年4月18日夜に自殺した。自殺事案が起きたのは、中学校の入学式から約1週間後だった。 中学校は自殺事案の一報を受けて、Aさんがオリエンテーションで使った自己紹介・教科の学習プリントなどの提出物や、Aさんの教室の机周辺を確認したが、自殺の兆候をうかがわせるような内容は確認されなかった。学級担任や教科担任の教員への聴き取りでも、Aさんの異変を示すような情報は得られなかったという。 また小学校からの引き継ぎ資料も確認したが、Aさんに関して気になる情報は見つからなかった。 中学校は小学校に連絡を取り、情報交換した。小学校からは、6年の別のクラスの担任だった教員が、6年時の担任だった教諭が学年の児童に不適切指導を繰り返していたことを中学校側に伝えた。 Aさんの両親は、「死」などと書かれた小学校時代のノートを、Aさんの死後に自室から発見したことや、弔問に訪れた同級生から話を聞く中で、「Aさんの自殺には、小学校6年時の担任教諭の指導が関係しているのではないか」という疑念を持った。そのことを中学校側に伝え、同級生などへのアンケートなどがあれば開示してほしい、調査などをしてほしいと申し出た。 中学校側は、Aさんが自殺したことでの心理的なケアを必要とする生徒がいるかどうかを把握する目的の調査をおこなったものの、Aさんに関する直接的な内容を調査することはせず、それ以上の調査には消極的だったという。 熊本市教育委員会は事象を認知し、中学校側とともに対応していた。しかし対応が不十分だったと指摘された。2019年10月、自殺事案の背後には小学校時代の担任教諭からの不適切指導があったとする内容や、教育委員会の対応が不十分ではないかとする内容が、新聞報道された。 第三者委員会 第三者委員会は2022年10月24日、調査報告書を公表した。 調査報告書では、小学校6年時の担任教諭からAさんへの直接の暴力や暴言があったかどうかははっきりしないとした。一方で、担任教諭が日常的に威圧的な態度を取っていたこと、同級生への暴力や暴言を間近で見ていたことなどから、不適切指導を間近で目撃する形になった児童の精神状態に強く影響を与え、抑うつ状態を発症させて重症化させたと判断した。担任教諭の行為が自殺に至った一因だと考えられるとも指摘し、自殺との因果関係を認定した。 また、「事実関係を解明してほしいという家族の願いに十分に応えられていないこと」「小学校担任教諭への不適切指導への対応が不十分だったこと」「中学校での同級生への調査や心のケアなどの対応が不十分だったこと」など、小学校・中学校・および熊本市教委の対応が不十分だったことを指摘した。 小学校が、「死」などと書かれたノートの存在を把握していながら保護者に伝えていなかったことは、「伝えれば病院受診などに至っていた可能性が高い」などとして、伝えなかったことは問題だったと指摘した。小学校では、担任教諭の不適切指導に十分対応できなかったことは不十分だと指摘した。中学校と熊本市教委については、中学校での同級生への調査などの対応が不十分で、事実関係を解明してほしいとする家族の願いに十分に応えられなかったことは不適切だと指摘した。 マスコミの対応 第三者委員会の報告が公表されたことを受けて、熊本県内のマスコミは教諭への取材を試みた。一部週刊誌によると、教諭は異動先の学校の校長を通じて、マスコミ各社・担当記者に対して、教諭が自ら作成したという「『誤解を生む記事』を出さないように『真摯に取材すること』」「取材の際には、事前に取材の意図や書面で通知すること」「取材拒否にも異議を申し立てないこと」などと、自身にとって不都合な内容を取材したり記載するなとばかりに受け取れるような内容を書いた誓約書に署名捺印するように迫ったという。ほぼすべてのマスコミは、誓約書に応じなかったとされる。 教育委員会の対応 熊本市教育委員会は教諭の行為について150件以上を審議し、2022年11月までに、あわせて42件を不適切な指導や「体罰」だと認定した。その中には、調査報告書で指摘されたものも複数含まれているとされる。 熊本市教育委員会や、教諭の異動先の勤務校・熊本市立力合西小学校では、教諭を2022年11月中旬まで通常通り教壇に立たせていたという。しかし熊本市教育委員会は2022年11月17日以降、教諭を学校現場から外す措置をとった。 熊本市教育委員会は2022年11月、五福小学校および藤園中学校に在籍する児童・生徒およびその保護者に対して、当該教諭の行為に対する情報提供を呼びかけた。2022年11月末までに、57件の不適切行為の情報が追加で寄せられ、熊本市教委はうち12件について「詳細な調査対象とする」とした。 教諭への処分 熊本市教育委員会は2022年12月1日夜に教育委員会会議を開催した。先行して確認された42件の行為を処分対象とする形で、教諭の処分を審議した。翌2022年12月2日付で教諭を懲戒免職処分にすることを決定し、12月2日に公表した。 また熊本市教育委員会は2022年12月23日、すでに懲戒免職になった元担任以外の学校関係者や市教委事務局担当者についても処分を決めた。生徒が小学校6年在籍当時の小学校の校長を減給10分の1(2ヶ月)、また小学校6年時の小学校の教頭を停職14日などとした。校長や教頭については、Aさんが「死」などと書いていたノートの存在を把握しながら、校長は「保護者に情報提供しなかったこと」・教頭は「生徒の死後も市教委への報告を怠っていたこと」などが問題視された。また市教委関係者についても、7人を戒告、教育長・教育次長など7人を訓告とした。 処分不服申立 懲戒免職を受けた元教諭は2023年2月27日、処分を不服として熊本市人事委員会に不服申立をおこなったことを明らかにした。元教諭は「不適切行為はしていない」「『体罰』とされるものの事実認定については、時間や場所、対象となった相手などがはっきりしたものではなく、認定は不当」「市教委の調査に対し、弁明の機会が与えられなかった」などと主張し、懲戒手続自体が違法なものであると主張した。
熊本市立中学校生徒自殺事件(2019年) - きょういくブログ
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kyoto4 · 11 months ago
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『 貨物列車で行こう!』長田 昭二 緒 (文藝春秋)
わたしも乗りたい。
第一章 ついに貨物列車に乗る! 貨物線を歩く/乗れないから乗りたい――そこにロマンがある/人知れず日本の物流を支える駅/極限までのスリム化/「拳一つ分」の隙間/動力車の拠点「機関区」/ついに貨物列車に乗る!/突然の鉄道無線/いよいよ「貨物専用線」に進入/東京で貨物列車を見ない理由 第二章 ルポ・東京貨物ターミナル 鉄道貨物の全容を見るべく「東京タ」へ/貨物列車に乗って貨物駅に向かう/「新鶴見信号場」とは/梯子段を上る「垂直乗車」/「ブレーキ、ゆるめーゆるめー!」/心躍る〝短絡線〟/「いよいよ来たか……」貨物列車は地下へ/羽田空港の下を通る点線=東京港トンネルへの憧れ/昭和で見た夢が令和に実現/添乗区間が延長した!/「東京タ」の構内をほぼ二往復/輸送量は毎年約一〇三%の伸び/高まる大型コンテナのニーズ/変わりゆく物流の仕組み/日本最大の貨物駅にある「中央研修センター」に潜入/異常生時の対応を学ぶシミュレーター/ここに座った以上は定時運行遂行の義務がある/「輸送指令」は〝二度呼び〟が基本/懐中電灯一つで長大な列車を点検 第三章 経営再建と未来の貨物輸送――JR貨物トップインタビュー 「変えるをよし」の企業風土が自信をもたらした/さらなる被害が予想される南海トラフ地震への対策/経営が厳しいJR旅客会社が増えた現状/貨物輸送の新提案・新幹線による鉄道輸送は?/総合的な輸送体系「モーダルコンビネーション」という概念/「安全」のための人材確保と労働環境の整備が不可欠/あらゆる物流の集積地点「東京レールゲートWEST」/銀行員、ハウステンボス……様々な経験から生まれた経営軸/「企業として安全はすべての基盤である」/原風景は「貨物列車のある情景」/「ベテランから若手へ」鉄道を支える、技術を受け継ぐ仕組み/運転士によるリレー方式――確立された輸送体系が強み/鉄道貨物が抱える問題をテクノロジーで解決できるか/従来の設備を有効活用「積替ステーション」/「空荷」を解消した「ビール列車」 第四章 広島車両所探訪記 重要拠点・広島/迂回運転を実現した「匠の技」/歴史を刻む広島車両所/「日本一」の車両所/全般検査と重要部検査奈々枝歴史ゆえの「使いにくさ」/「走って磨かれて輝く」車輪/時に親子、時に兄弟/機関車にはトイレがない/憧れの〝車掌車〟の現実/ベテランから若手へ「技の伝承」/車両所は「大きな家族」 第五章 「セノハチ」貨物列車添乗ルポ――広島貨物ターミナル駅‐西条駅 フィーダー輸送の拠点/数字に出てこない忙しさ/日本一のフォークリフトドライバー/営業面の司令塔/もし列車が遅れたら……信号扱い所の修羅場/〝途中下車〟できない貨物は……/鉄道マンにとっての〝難所〟はマニアにとっての〝名所〟/九州と首都圏を結ぶ物流の大動脈/居住性に優れた運転室/無線の通信に沸き上がる感動/普段乗れない貨物線を走行/本格的な上り坂へ――補機本来の業務開始/上り線には架線が二本/「ノッチオフお願いします。どうぞ」/登りきって連結を外す/「ポウッ!」遠ざかる本務機/待ち時間も切らさない集中力/「発車!」「進行!」一人ぽっちで走り始める/視界も広く、軽快に走る/帰りのほうが忙しい/シカ、イノシシ……夜に遭遇する動物たち/登りと同じ十三分で「瀬野八」を下り終える/列車は貨物専用線へ。時速八十キロで快走/廃車を待つ〝もみじ色〟の機関車/物流を支えるプロの技と知恵 第六章 「文藝春秋」を北に追え!――青函トンネル貨物列車添乗ルポ 大きなミッションを持って貨物列車に乗り込む/「文藝春秋」十月号の積み込みを見学/貨物の積み下ろしや旅客の乗降は行わない「青森信号所」へ/貨物列車でなければ通れない区間に感じるロマン/中村さんが席を譲ってくれた理由が判明/トンボが乱舞する田園地帯を疾走/青函トンネル五十三キロを貨物列車はひた走る/世界第四位、長大トンネルの入口/しばらくすると飽きてくる……運転士の眠気対策は/地上に出たと思ったら次々とトンネルが……/津軽海峡と函館山を望む〝絶景路線〟/急に無数の線路と並走するようになり……/三〇五九列車は定刻より二分遅れで到着/「北斗9号」で三〇五九列車を追跡/コンテナ貨物取扱量全国二位の「札幌タ」/十七時間五十分の鉄路の旅/「盛りだくさん」にもほどがある一日の終わり/一日半ぶりの対面/「イクラ丼」か「混載丼」か/「あとがき」に代えて
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tamanine · 8 months ago
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2024.10.13
映画『HAPPYEND』を見る。父の時代の学生運動のような雰囲気と、街の風景のクールな切り取り、存在感があり重厚な音楽の使い方から愛しいものとしてのテクノの使い方まで大変気に入り、今度会う人に渡そうと映画のパンフレットを2冊買う。その人と行った歌舞伎町時代のLIQUIDROOM、どんどん登らされた階段。小中学生の時に自分がした差別、あの分かっていなさ、別れた友人、まだ近くにいる人たち。
2024.10.14
銀座エルメスで内藤礼『生まれておいで 生きておいで』、ガラスの建築に細いテグスや色のついた毛糸が映える。日が落ちて小さなビーズが空間に溶けていくような時間に見るのも素敵だと思う。檜の「座」で鏡の前にいる小さな人を眺める。「世界に秘密を送り返す」を見つけるのは楽しい。黒目と同じだけの鏡、私の秘密と世界の秘密。今年の展示は上野・銀座ともに少し賑やかな雰囲気、外にいる小さい人たちや色とりどりの光の色を網膜に写してきたような展示。でも相変わらず目が慣れるまで何も見えてこない。銀座にはBillie Eilishもあったので嬉しくなる。
GINZA SIXのヤノベケンジ・スペースキャットと、ポーラアネックスでマティスを見てから歩行者天国で夜になっていく空を眺めた。小さい頃は銀座の初売りに家族で来ていたので、郷愁がある。地元に帰るよりも少しあたたかい気持ち、昔の銀座は磯部焼きのお餅を売っていたりしました。東京の楽しいところ。
2024.10.18
荷造り、指のネイル塗り。足は昨日塗り済み。年始の青森旅行時、2泊3日の持ち物リストを作成し、機内持ち込み可サイズのキャリーに入れ参照可能にしたところ、旅行のめんどくさい気持ちが軽減された。コンタクトや基礎化粧品・メイク用品のリスト、常備薬、安心できる着替えの量。持ち物が少ない人間にはなれそうにない。日常から多い。部屋に「読んでいない本」が多いと落ち着くような人間は持ち物少ない人になれない。
2024.10.19
早起きして羽田空港。8:30くらいに着いたらまだ眺めのいいカフェが開いておらず、とりあえず飛行機が見える屋上に行く。このあと雨が降るはずの曇り空からいきなり太陽が照り出して暑くなり、自販機でマカダミアのセブンティーンアイスを買い、食べる。突然の早朝外アイス。飛行機が整列し、飛び立つところをぼんやりと眺める。飛行機は綺麗。昨夜寝る前にKindleで『マイ・シスター、シリアルキラー』を買って「空港ではミステリー小説だろう」と浮かれて眠ったのに、100分de名著のサルトルを読み進める。実存主義を何も分かっていないことをこっそりとカバーしたい。すみませんでした。
10:15飛行機離陸。サンドイッチをぱくぱく食べたあとKindleを手に持ったまま眠ってしまい、11:55宇部空港着。
宇部空港、国内線のロビーは小さく、友人にすぐ会う。トンネルを抜ける時、窓が曇り、薄緑色の空間に虹色の天井のライトと車のライトがたくさん向かって来て流れる。動画を撮影しながら「綺麗くない?」と言うと「綺麗だけど本当は危ない」と言われる。かけるべきワイパーをしないで待っていてくれたんだと思う。
友人のソウルフードであるうどんの「どんどん」で天ぷら肉うどん、わかめのおにぎりを食べる。うどんは柔らかく、つゆが甘い。ネギが盛り放題。東京でパッと食べるうどんははなまる系になるので四国的であり、うどんのコシにもつゆにも違いがある。美味しい。
私は山口市のYCAMのことしか調べずに行ったので連れて行ってもらう。三宅唱監督の『ワイルドツアー』で見た場所だ。『ワイルドツアー』のポスターで見た正面玄関を見に芝生を横切ったが、芝生は雨でぐずぐずだった。でも全部楽しい。
広くて静かで素敵な図書館があり、心の底から羨ましい。小さな映画館もあり、途中入場できるか聞いたおじいちゃんが、「途中からだからタダにならない?」と言っていたがタダにはなっていなかった。一応言ってみた感が可愛らしい範囲。
YCAM内にあるのかと思っていたら違う倉庫にスペースのあった大友良英さんらの「without records」を見に行く。レコードの外された古いポータブルレコードプレーヤーのスピーカーから何がしかのノイズ音が鳴る。可愛い音のもの、大きく響く音のもの。木製や黄ばんだプラスチックの、もう存在しない電機メーカーの、それぞれのプレーヤーの回転を眺めて耳を澄ませてしばらくいると、たくさんのプレーヤーが大きな音で共鳴を始める。ずっと大きい音だと聞いていられないけれど、じっと待ってから大きな音が始まると嬉しくなる。プログラムの偶然でも、「盛り上がりだ」と思う。
山口県の道路はとても綺麗で(政治力)、道路の横は森がずっと続く。もとは農地だっただろう場所にも緑がどんどん増えている。私が映画で見るロードムービーはアメリカのものが多く、あちらで人の手が入っていない土地は平らな荒野で、日本の(少なくとも山口県の)土は放っておくとすぐに「森」になるのだ、ということを初めて実感する。本当の森の中にひらけた視界は無く、車でどんどん行けるような場所には絶対にならない。私がよく散歩をする所ですら、有料のグラウンドやイベント用の芝生でない場所には細い道を覆い隠す雑草がモコモコと飛び出して道がなくなってゆく。そして唐突に刈られて草の匂いだけを残す。私が「刈られたな」と思っているところも、誰かが何らかのスケジュールで刈ってくれているのだ。
山口県の日本海側の街では中原昌也と金子みすゞがそこかしこにドンとある。
災害から直っていないために路線が短くなっているローカルの汽車(電車じゃない、電車じゃないのか!)に乗って夜ご飯へ。終電が18:04。霧雨、暴風。一瞬傘をさすも無意味。
焼き鳥に挟まっているネギはタマネギで、つきだしは「けんちょう」という煮物だった。美味しい。砂肝、普段全然好きじゃないのに美味しかった。少し街の端っこへ行くとたまに道に鹿がいるらしく、夜見ると突然道路に木が生えているのかと思ったら鹿の角、ということになり怖いらしい。『悪は存在しない』のことを思う。
2024.10.20
雨は止んでいてよかった。海と山。暴風。人が入れるように少しだけ整えられた森に入り、キノコを眺める。
元乃隅神社、123基の鳥居をくぐり階段を降りて海の近くへ。暴風でiPhoneを構えてもぶれて、波は岩場を越え海の水を浴びる。鳥居の上にある賽銭箱に小銭を投げたけれど届くわけもない。車に戻ると唇がしょっぱかった。
山と海を眺めてとても素敵なギャラリー&カフェに。古い建物の改装で残された立派な梁、屋根の上部から太陽光が取り込まれるようになっていて素晴らしい建築。葉っぱに乗せられたおにぎりと金木犀のゼリーを食べる。美味しい。
更に山と海を眺めて角島へ。長い長い橋を通って島。古い灯台、暴風の神社。曇天の荒れた海も美しいと思う、恐ろしい風や崖を体感としてしっかりと知らない。構えたカメラも風でぶれるし、油断すると足元もふらつく風、窓につく塩の結晶。
山と海を眺めて香月泰男美術館へ。友人が見て良い展示だったからもう一度来て見せてくれたのだ。
全然知らなかったけれど、本当に素晴らしい絵だった。油彩なのだけど、質感が岩絵具のようで、フレームの内側に茶色のあやふやな四角が残っているのがとても良い。
フレーミングする、バチッと切り取ってしまう乱暴さから離れて、両手の人差し指と親指で四角を作って取り出したようなまなざしになる。
山口県の日本海側の山と畑と空の景色、荒い波、夜の静けさや月と雲、霧の色を見てから美術館へ連れて来てもらえたから色と色の境目の奥行きを知る。柿はずっしりと重く、花は鮮やかだ。香月泰男やシベリア抑留から帰ってきた画家で、この前読んだ『夜と霧』の暗さと冷たさを思い返した。絵の具箱を枕にして日本へ帰る画家が抱えていた希望、そのあとの色彩。 
夕飯は友人の知り合いのハンバーガー屋さんへ。衝撃のうまさ。高校生の時に初めて食べたバーガーキングの玉ねぎの旨さ以来の衝撃、20年ぶりだ。そんなことがあるのか。
2024.10.21
晴天。海は穏やかで、深い青、テート美術館展で見たあの大きな横長の絵みたい。初めて見た海の光。
海と山を眺めて秋吉台へ。洞窟は時間がかかるので丘を散策、最高。
風光明媚な場所にしっかりとした情熱が無かったけれど、「好きな場所だから」と連れていってもらえる美しい場所は、友人が何度も見るたびに「好きだなぁ」と思っただろう何かが分かり、それは私が毎日毎日夕陽を眺めて「まだ飽きない」と思っている気持ちととても近く、感激する。
今までの観光旅行で一番素敵だった。
道々で「このあと窓を見て」と教えてもらい、味わう。
ススキが風に揺れて、黄色い花がずっとある。山が光で色を変え、岩に質感がある。
山口市、常栄寺、坂本龍一さんのインスタレーション。お寺の庭園が見られる場所の天井にスピーカーが吊るされ、シンセサイザーの音を演奏しているのは色々な都市の木の生体信号だ。鳥の声や風の音と展示の音は区別されない。砂利を踏む音、遠くから聞こえる今日の予定。豊かなグラデーションの苔に赤い葉っぱが落ちる。
宇部空港はエヴァの激推しだった。庵野さん、私も劇場で見届けましたよ。
行きの飛行機は揺れたけれど、帰りは穏やかに到着、家までの交通路がギリギリだったため爆走、滑り込む。
東京の車の1時間と山口の1時間は違う。
何人かの山口出身の友人が通った空と道と海と山の色を知ることができてとても嬉しい。
「好きな場所」「好きな風景」ってどういうものなんだろう。
私が通う場所、好きな建築、好きな季節と夕陽。あの人が大切にしている場所に吹く風、日が落ちる時刻が少し違う、友人のいる場所。
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007cake · 20 days ago
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6/7(土)
四捨五入して三徹明け(とは)の昨日の夜、眠りに落ちていく瞬間があまりに気持ちよく未知の快感とも呼べそうで、あした目が覚めたら死んでるのかも あ、死んだら目は覚めないか わら みたいなことを最後に考えたんだけど、今日の朝しっかり意識が浮上してきたので一安心 ニッコリ 起きがけに ほあ〜〜〜宇宙とは一体なんなのだろうかとか考えちゃったのだがそれはさておき、超高級体重計の測定モードで約一年ぶりに色々診断してもらった。結果、「体内年齢18才」と表示され大歓喜。そうだよねそういえばわたくしたったこの前成人式終えたばっかりでした 超ニッコリ
その後、調子に乗りながらドラッグストアへ食品の買い物へ出かけたついでにコナンのチョコエッグをひとつ購入したよ。先週、ふたつ購入してふたつとも元太くんで ワハ!と笑っていたら、今日も元太くんだたよ、ワハ! 全15種+シークレットのはずなんだけどな。あれれ〜?おっかしいな〜〜??このセリフをわたくしも口にする日がくるとは思わなかったよコナンくん。。宇宙とは一体なんなのだろうか ★────次回、チョコエッグ諸伏高明現る❕
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okujirasama · 1 month ago
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5/27
ねむりのときのちいさな国のこと。
わたしの国はよく雨がふっている。
- 昨夜は眠れなかった。午前中に予約していた病院は調子が悪くていけなかった。毎日の���がなくなるのでたいへんだから、急遽、夜の診察を予約して、今、電車に揺られている。
頭が回らなくなり、身支度の段取りがわからなくなった。なにもわからないまま、とりあえず診察券やお薬手帳などをかばんにつめて、なんとか家を出た。顔色の悪さに家族が心配して駅まで送るって言ってくれたが、鬱が酷くて混乱してしまい、ひとりで歩いてきた。
-
寝込むような日がしばらく続く。具合が悪い。昼夜逆転をするようになった。夜、鬱で頭が回らなくなって布団に入るまでの段取りが分からなくなる。心の奥にしまって鍵をかけておいたはずの記憶があふれて、からだが動かなくなる。気がついたら朝になっていた。
-
診察室で話をしていたら、だんだん涙があふれて声が出ない。くるしい。主治医の先生にさすってもらったりした。人前で泣くというのがこわい。人にからだを触られるのがすこしこわかった。そのあたりから記憶が曖昧である。薬が増えた。月に1回の通院頻度だったが、今度は1週間後に通院することになった。仕事について話をしたが、まずは休養をしてくださいとのこと。
-
帰り道、雨が降っていた。すこしほっとする。ひかりがぼんやりとしてみえる。電車の中はあらゆるものがまぶしくて苦手。眼鏡をはずして、レンズに反射するひかりをじっとみつめていた。眼鏡を外したときのぼやけた視界に安心する。小川洋子さんのエッセイを少しだけ読む。
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demoncrepe · 1 month ago
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白銀の森
森が俺を呼んでいる。
故郷を奪われ、家族を奪われ、怒りのままに呪わしき男の影を追いかけた。しかし、暗黒の牢獄の奥底で、彼はすでに生き絶えていた。 手当たり次第に怪物たちを倒し、激しい怒りを、悲しみを、憎しみを、全身で湧き上がらせる。野獣のように暴れ狂う俺の前に、一頭の狼が現れた。
彼女はムーンレス。歪んだ世界で様々なものと融合してしまったが、人懐っこい狩の名手であった。腐肉を食べるとすぐに懐いて、俺の飢えた、悲しき心に彼女は寄り添ってくれた。たくましい四肢と夜の草むらのような香りがする毛並みを撫でると、子供の頃に真夜中ひとりで用を足しに行った時、遠くの河岸にこっちを見ていた狼の母子を思い出した。 感傷的になっていた俺の頬をムーンレスが舌で舐める。
この監獄でなすべきことは残されていなかった。より奥へと進んで、さらに強い敵を探し、死に場所を求めることもできただろうが、ムーンレスの湿った鼻が手に当たると、虚しい殺戮に溺れることを諦めることができた。
仇討ちのためだけにはるばるこの地に降り立ったが、もう帰る場所はない。諦めたら諦めたで、やはり虚しい。監獄を後にしても、ムーンレスは俺を心配してついてきた。今にも死にそうな仲間に思われたのだろうか。ムーンレスもこんな姿では森で他の狼と暮らすことはできないだろうに、外の世界に出て良かったのだろうか。尤も、俺自身も今どんな姿になっているのか分からなかった。もしかすると、あの生白く巨大な護衛か、爪や角が生えた悍ましい怪物に成り果てていたとしても驚くまい。
牢獄を覆う森の中、特に目的もなく彷徨っていたら、道のど真ん中で行き倒れている人間を見つけた。黒い服、長い髪、片腕が無く、雑な処置をしただけでまだ包帯から血が滲んでいた。 血の色と匂いからまだ生きていそうだ。ムーンレスが吠えると、身じろぎした。 「大丈夫か」 声をかけると顔をこちらに向けた。痩せこけており、目の周りに黒い影がある。あの牢獄にいた闇の司祭に似ている。 奇妙な化物たちに追われ、仮面を被った全裸姿の謎のカルトを見てきたせいで、普通に服を着て生きている人間を見つけただけで妙に信頼をしてしまった。普段なら服を着ているだけでこんな風には思わないだろう。倒れていた男が何かを言おうとしていたようだが、そのまま意識を失った。
安全なところに運び、水を飲ませて焚き火のそばで温めた。しばらくすると目を覚ました。 「気がついたようだな」 「…………」 「お前あんなところで何をしていた?」 「…………」 俺の言葉が下手なのか。一応街や船では通じていたが。ムーンレスが近寄ると身体を強張らせていた。 「大丈夫、彼女は何もしない」 「私は動物が嫌いなんだ」 「おや、口が聞けるようだな」 手招きしてムーンレスを呼び寄せる。 「俺はラグンヴァルドルだ。お前は?」 「……エンキだ」 エンキも俺と同様に地下牢を探索していたようで、敵に腕を切り落とされて、森で薬草を探してる最中に行き倒れたそうだ。 「街で治療を受けるべきではないか?」 「ロンデンの外科医の腕前を知らないようだな」 「……何か俺が助けになることはあるか」 「何故初対面の私を助けようとする」 「じゃあどうするんだ」 エンキは私の腕を指して言った。 「肘のあたりに鱗がある。貴様、サーモンスネークの魂を持っているな?」 「え?ああ、これのことか?」 坑道の水辺に現れた怪魚の魂を込められた石を見せる。身につけていると身体が硬化し出血しなくなる代わりに、少し皮膚に鱗が現れるのが難点だが、怪物たちと対峙するときに大いに役立った。 「貸せ、止血に使いたい」 「嫌だ」 「おい!さっきは私を助けようとしていたのではないか?」 「貸した後に返して貰えないと困る。これのおかげで俺も四肢を失わずに済んだし、珍しいから渡したくはない。何か差し出せるものはないか?」 「……何を要求するつもりだ」 とはいえ別に何も欲しいものはない。幼い頃から、獲物をどこまでも追いかける狩人であることと、自分の獲物をなるべく外国人に高く売る商売人であるように、周囲から叩き込まれた。仲間には気前よくどんな頼みでも聞き、困ってる人には手を差し伸べるが、いざ取引できそうになると、交渉してしまう癖があった。 「……しばらく一緒に行動しないか」 「それが要求か?」 「そうだ」 「いい、分かった。逃げないから、早く貸してくれ。血が減ってきた」 怪魚の魂を込めた石を受け取ると、包帯を外して腕の傷が塞がったことを確認した。 「これもしばらくつけていろ。体力と気分が落ち着く指輪だ」 革紐に二つの指輪を通したものを、首にかけた服の下にしまっていたが、それを外してエンキにつけた。 「……悪いな」 「今から仲間だからな」 「変な気を起こすなよ」 「冗談じゃない」
俺の格好やムーンレスは人里や街中ではあまりにも目立つ。森の外れ、水辺のあるところで次の目的地が決まるまで、簡単な拠点を作り野宿をすることにした。 彼は魔術を操るようで、俺が魔導書や魔術に関するアーティファクトを要求するならば殺すつもりだったらしい。俺はただ、あの地下牢に閉じ込められた男に復讐を果たすために来たのであって、この地にまつわる伝承や儀式には全く興味関心がないことを聞いて納得したようだった。 「私もあの地下牢には立ち寄ったが、私が到着した時には彼は死んでいた。貴公が殺したのだな」 「いいや、違う」 「ならば、良かった。復讐なんてくだらない」 「黙れ、お前に何がわかる」 「…………」 「いや、すまない」 焚火で木が爆ぜる音だけが響く。不穏な空気に、ムーンレスは悲しそうに鼻を鳴らす。
来る日も来る日も、薪を切り、狩りをして、家を建て、次の目的が思いつくことを待っていた。エンキはだいぶ回復したようだが、片手でできることは限られている。エンキは毎日丸太に座って、地下牢の探索で見つけた本を、何度も読んでいた。 「エンキはこの先どうするんだ」 「私は貴様の次の目的が見つかるまで囚われの身なのでね。貴様が決めなければ私も決まらない」 「そうか」 「私にも、私の帰りを待つ故郷も家族もない」 「そうか」 何かを誤魔化すように、薪を割ることに集中しすぎていたら、数日分もの薪が溜まって、明日の俺の仕事を減らしてしまった。
真夜中に目が冴えて、水を浴びに近くの湖へと訪れた。水面に夜空が映し出され、どこまでが地面で、どこからが水なのか境界は見え辛くなっていた。足元の感覚で境目に屈むと顔を洗う。ふと顔を見上げた時、白い大きな鹿が湖の向こうに立っているのが見えた。なんて大きい、初めて見る美しい鹿を見ていると、引き込まれていった。
ムーンレスの激しく吠える声で、意識を取り戻す。気がつくと腰まで水に浸かっている。動物嫌いなのに、ムーンレスのすぐ隣にはエンキも立っていた。 「何をしている。こんな時間に水遊びするな。死ぬぞ」 エンキが嫌味ったらしく俺を引き留めた。呆けてただけなのに入水しようとしたと思われた気がする。恥ずかしくなって急いで湖から上がった。 濡れてしまった装備を木にかけておいた。まだ夜明けまで時間があり、二人とも眠いだろうに、ムーンレスが口で薪を積んで、そこにエンキが何かをぶつぶつ唱えると薪に火がついた。 「しばらく火にあたれ。地下牢から離れても森は常に人を惑わす存在がいる」 「そのようだな。ありがとう、エンキ、ムーンレス」 火に当たると、他人からの優しさに触れて急に涙が出た。俺の精神が大分だめになっているようだ。 「月だ、月が心を乱しているんだ。だから、早く天井を作ってくれ」
三人で並んで横になっていた。星を見ていると不安な気持ちが募る。まだ眠れなくてエンキに話しかけた。 「あの男が、死んでお終いなんておかしい。きっといつか、再び世界に混乱を引き起こす」 「ラグンヴァルドル」 「俺の考えすぎならいい。だが、あの立方体のために俺の故郷を滅ぼす必要があっただろうか。取引や交渉の場があれば、誰も、何も……」 「休め。今夜は満月だ。狂気に飲まれやすくなっている」 「月は関係ない」 「ああ、そうだ」 「エンキも関係ない」 「それは違う」 「ムーンレスも」 「可哀想なことを言うな」 俺と関係ないことが傷つくのか? ヒルデの歌が聴きたい。ニョルンの寝顔が見たい。ウルドと酒が飲みたい。もう全部できない。二度と幸せは戻らない。かけがえのないものを奪われたのに、復讐することすら失敗した俺なんかと、関係がある人間はどこにもいない。
誰の目から見てもラグンヴァルドルの精神は追い詰められていた。 「貴様は人里の中にいないといけないのに、人を避けて暮らしているせいで気が触れている。私は一人きりの世界にいくらでも過ごせるが、貴様はそうではない」 「…………」 全くもってエンキのいう通りだ。だが、故郷を失い、他の地域でどうやって暮らせばいいのか分からない。 「ロンデンへ行く。ムーンレスは森に残ってもらう」 「森の中でひとりぼっちなんて、ムーンレスが可哀想だ」 「愚か者め、こいつも私と同じだ。一人でも平気だが貴様への好意だけで寄り添っていた」 「えっ」 「何だ、そんなに意外か」 「エンキは俺が好きなのか」 「言葉の綾だ。揚げ足をとるな」
ムーンレスとの別れの挨拶を十分過ぎるほどやった。ムーンレスは俺がいなくても平気かもしれないが、俺は平気じゃない気が���ている。森を後にして街に向かってひたすら歩いた。道すがら馬車が見つかって、後ろに乗せてもらった。 3人で過ごした小屋は壊すのが惜しくて残していった。人がいなくなると家は一気に壊れやすくなるので長くは持たないだろうが、かといって自分の手で壊してもいいとは思えなかった。血まみれの故郷が今どうなっているのか考えるとまた目の前が真っ暗になりそうになった。具合の悪そうな俺を見て、エンキは黙ってタバコを手渡してきた。はじめは怪我をして弱っていたのはエンキの方で、俺の方が元気だったのに、今ではすっかり逆転してしまった。
ロンデンに到着すると、エンキの知り合いであるブレア家に世話になることになった。大きな屋敷の中、使用人は俺とエンキを怪訝な顔で出迎える。家主とエンキが話をつけると、馬車で街まで出ることになる。 「仕立て屋に行く。"そんな姿"では目立つからな」 俺の自慢の毛皮はここでは場違いだ。エンキの服も大分周囲から浮いているだろうに。 こんなに大きな男は初めてだと仕立て屋がぼやきながら、身体を紐で測られた。しばらくの間は簡易なローブを借りたが、着慣れない服や靴に戸惑った。
屋敷では毎日講師がついて、ロンデンの貴族のマナーを叩き込まれる。我流で覚えていた言葉も、文法から細かい語彙まで覚えて、さらにテーブルマナーまで教わった。 しばらくすると仕立て屋に頼んでいた服が卸された。エンキは俺の着替え姿を見て鼻で笑った。 「馬子にも衣装だな」 「お前なりの似合っているという意味の言葉だと解釈した」 自分としては何がどう"良い"のかさっぱりわからないが、されるがまま着ていた。全身ぴったりな服は着慣れなくて、エンキのあの薄っぺらいローブが羨ましく感じた。
ほとんど立ったり座ったりしているだけで、身体が鈍りそうだった。 「狩りができないので気がどうかしそうだ」 「キツネ狩りにでも参加したらどうだ」 「キツネなんてわざわざ食べるものじゃない」 「そうだ。遊ぶために狩りをする。キツネは犬に食わせるだけで、人間はそれを馬に乗って追いかけるだけだ」 「なんと……」 「社交界で生きるためだ。参加しろ」 ブレア家の猟犬たちは甘やかされて、獲物を追いかける執念がなく、主人が気軽に肉や残飯をあげ過ぎているので少し太っていた。運動をさせて餌をやり過ぎないように助言し、許可を得て狩りの訓練を重ねた。元々良い血統を持っているようで、少し鍛えただけでみるみるうちに上達し、キツネ狩りでも活躍してくれた。毎日寝そべって、主人が食事を持ってくるのを待つだけのどんよりした目が、森で狩りをしてまた輝きが戻って嬉しく思った。 しかし、犬にとっては刺激的でも、人間にとってキツネ狩りは命や怪我の危険もない、ただの遊戯であった。俺の故郷の狩りは、生きるか死ぬか身体を張って命の糧を得るための重要な仕事であるが、これは全然違う。また昔のような狩りができるのを楽しみにしていたので少し残念であった。
ある日部屋に帰ると、手紙が置いてあった。美しく繊細そうな文字で書かれた恋文のようで、差出人は家主の娘であった。遠回しだが夜の誘いをしている。断るつもりであるが、それにしても何と言って断るか考えるためにエンキに相談することにした。 「ブレアの娘から手紙をもらったんだが、その、彼女は結婚はしているのか」 「してないが、やめとけ。あいつは父親と寝ている」 「侮辱にも程がある」 元から受ける気はないというのに、とんでもないことまで明かされた。 「侮辱も何も、真実だし、お互い同意の上だ。ちなみにお前にロンデンのマナーを指導したあの講師も手を出している。愛嬌に騙されたのなら仕方ない。ただ、お前はもうすこし"マシ"な相手を探した方がいい」 「…………道理に反する」 「何と思おうと厄介になっている身の上であることを忘れるな。正義感など振り翳さないことだ」 「エンキは何とも思わないのか」 「よく考えてみろ。私がその事実を知っているからこそ、私の頼みを断れず、見ず知らずの山男に服を仕立ててマナーを教えて世話を焼いているんだ。今の貴様は彼に感謝こそすれ批判できる立場ではない」 「…………」 「こんなのはお行儀がいい方だ。王族も貴族も聖職者も、もっと堕落し腐敗している。白夜騎士団はそれを正そうとした。しかし、正道では何も変えられず、邪道に手を染め、野望のために貴様の故郷を滅ぼした」 それを聞いて、手のひらに爪が食い込むほど、拳を握りしめた。 「今は何かを変える力がない。仲間もいない。変えたければこの群れの中で強くなることだ。羊の皮を被った狼になれ。獲物を狙う獣のように、最後まで、自分の姿を見せるな」 「やっぱり俺には、やっていけない」 「その気持ちは腹の中にしまっておけ。私も、貴様にここの常識に染まってほしくはない。だからこそ、羊の皮をかぶるんだ。怒りを内に秘めて、貴様の信じる正道を忘れず、牙を隠して笑え。だが、故郷の誇りを忘れるな。群れの掟が気に食わないなら、群れの中で強くなって、群れの親分になって、良い群れと良い掟を作れ」 俺なんかに文句が言える権利はないのはわかっていた。義憤に駆られた無知で田舎者な俺を、エンキはもっと馬鹿にすると思っていたが、意外なほど励まされてしまった。 「お前だけが俺の唯一の味方なんだな」 「馬鹿なことを」 「ああ、俺は馬鹿だ」 そう言って盛大に笑った。
新しい環境に放り込まれて、気疲れが絶えないが、過去を振り返る余裕がない分、森の中にいた時の陰鬱な気分は治っていった。 ブレア家の貴重な収入源である荘園で、ぶどうの出来が悪い土地を、売値は安いが痩せた土地でも育つ野菜に変えて収量をあげたり、野生動物たちを追い払うために猟犬をときどき見回りさせた。犬の訓練が得意なので、狩猟好きな貴族たちのために猟犬の躾や鍛え方も教えた。自分の得意な分野で力を示すことを実践するようにした。 収入が増え、他の貴族たちとの交流が増えると、ブレア家の領主と娘もだんだんと正気を取り戻したようで、領主は後妻を迎え、娘も別の領主の息子と結婚して家を出ていった。 「生まれついてのものではなく、ただ収入の不安を忘れようとしてあんなことをしていただけなんだな」 「それは好意的に考えすぎだろう。まあ、たまたま上手くいったと思うんだな」 禁じられた行為をやめた途端、領主はエンキを邪険にし追い出そうとした。エンキに頼んで、自分たちの快楽のために何やら怪しい呪文を使わせていたのに、都合のいい連中だと思った。 「これが普通の反応だ。私を疎むのが常識で、私を歓迎するのが非常識なんだ。戸口に立ってるだけで不気味がられる」 「誰もお前が幸運を運ぶ妖精なことを知らないなんてもったいない」 「精神をやられて目がおかしくなったようだな」
とはいえ、俺にとって何の縁もゆかりもないブレア家にこれ以上世話になるのは限界だった。ブレア家から独立するために、きつね狩りで懇意になった他の領主や商人たちと出資し海運会社を持つこともできた。故郷にいた頃では考えられないほど大金が動く大きな取引を、様々な国の人と取り交わすことは刺激的だった。騙されることも、見通しが甘くて大損することもあったが、市場は大きくていくらでも逆転の可能性があり、まだまだ試したいことが沢山ある。
そんな中、近所の森で恐ろしく巨大な獣が、次々に人を襲う話が出てきた。何年も会ってないムーンレスのことではないかという不安がよぎる。討伐のため若い男たちが松明を手に森の中を探索することになって、俺も志願した。 「狩りの名手と名高いラグンヴァルドルがいるのは心強い」 野獣討伐隊の指揮は俺が執り行うことになる。2〜3人1組で行動し、何か見つけたら笛で知らせるように指示した。
どうにかしてムーンレスを見つけたら逃がしてやりたいと思うが、何か心変わりして町の人々を襲う本能が抑えきれなくなったのならば、俺の手でムーンレスを殺そうという覚悟を決めていた。しかし、暗い森の中を歩くと、一時期収まっていた幻覚と絶望が蘇る。 悪夢と現実が渾然一体となり、俺に襲いかかる。 草陰でムーンレスが人間の子供の腸を食いちぎっている。弓を構え、ムーンレスの片目に弓矢を射ると、ムーンレスが人間の姿に変化する。美しい赤毛の美女、ヒルデが、片目を潰されて絶叫した。どこからか飛んできた槍が、彼女の心臓を貫きとどめを刺す。槍の飛んできた方向を見ると、プレートメイルに身を包んだ白馬の男が、甲冑の隙間から覗く鋭い視線で、俺を見下ろしていた。 「白夜騎士団!よくも、よくも!」 甲冑の隙間を縫って目を射抜くと、今度はウルドに変わった。 「ウ、ウルド!」 「ラグンヴァルドル……」 俺の名を呼ぶと、ウルドは死んだ。 森が真っ赤に染まる。炎が全てを焼き尽くす。白銀の甲冑に身を包んだ魔物たちが、剣で俺の家族を切り裂き、槍で仲間を串刺しにし、棍棒で老人の頭を叩き潰し、ナイフで子供達をバラバラにした。
気がつくと、山小屋で目を覚ました。俺が気を失ったのを、討伐隊の仲間が安全そうな小屋に運んでくれたそうだ。
帰ってきても、悪夢のことが頭から離れなかった。 「も、森が恐ろしい。俺はここでの暮らしに慣れすぎて、俺の心から森が伐採されてしまった」 「森がもう嫌いか」 「違う。俺の体は森の生き物でできている。自然の中で力がみなぎっていたが、心は、忌まわしい過去によって怒りと憎しみに染まった。愛と憎悪が綯い交ぜになっている。森に入ると幻覚が見える」 まだ消えない復讐心で、自分が制御できなかった。自分の手で、愛する妻ヒルデと、俺の叔父であり狩の師匠であるウルドを殺してしまった。血に飢えた暴力的な本能を恐れている。 エンキの手が俺の顔を撫でる。 「本当に、もう思い出すだけで辛いなら、記憶から消してやることができる」 「魔法みたいだな」 「みたい、ではない。魔法だ」 片腕がないので、口で革手袋を外すと、エンキは手のひらを俺に差し出した。 「この手に額を置いたら、貴様の記憶から、故郷の惨劇を消し去ってやる」 手首には無数の傷があり、手のひらの真ん中には、杭を打ち込まれたような大きな丸い傷痕がある。じっと見ていると、だんだん吸い込まれるように、顔を近づけていった。 が、俺はエンキの手袋を拾うと、その手にまた嵌め直した。 「お前は言ってくれたな、故郷の誇りを捨てるなと。だから、大丈夫だ」 「……そうか」 「悪いことに使えそうな魔法を知っていたんだな」 「どうする?私と何かした記憶を消されていて、私だけが覚えていて、貴様だけ何も覚えていないことがあったら?」 「何かだって?ハハハ!別に良い。こんなに世話になったからには、俺の心も体も、すべてお前のものだ。お前の好きなようにしろ」
森に関する恐怖と怒りの記憶をかき消すためにウイスキーとタバコを懐に携えた。記憶が蘇りそうな時は酒を煽るか一服することにした。どちらも感覚が鈍るので、獣の気配を見逃しそうになる。だが、仲間と共に獲物を追いかける行動が、一族の記憶と結びつく。 酒を飲みすぎてフラフラしていると、獣の唸り声が近付いていたことに気が付かなかった。恐ろしく大きい。だがその声も、臭いも、姿も、ムーンレスとは異なった。 「よかった」 俺の二回りも大きいグリズリーを目の前にして、安堵してしまった。ムーンレスを殺さないですみそうでほっとした。 弓矢で目を狙おうとするが、酔ってて狙いが定まらない。仲間は驚いて先に弓を射るが、射角が悪く、獣の肉体に深く刺さることができず、逆にこちらの居場所を教えてしまった。逃げる仲間を庇って、鋭い一撃を喰らう。肩から血が吹き出す。逃げろ、みんなを呼べ!と叫ぶと、笛の音が森中に鳴り響く。 自分の血を見て一気に興奮した。酔いは覚めて、肉体は本能的に戦闘状態へと入る。特製の強弓を引くと、目から脳天を貫く。が、グリズリーは片目を潰されて一瞬怯んだが、まだ力強く唸りをあげている。腕に力を入れたことで、傷口から血がさらに吹き出した。痛みは麻痺して感じない。
巨大な上に素早い。森の支配者の堂々たる咆哮に、本能的に自分が無力な生物であることを思い知らされる。攻撃を避けて次のチャンスを待っていたが、太い木の根に躓いて足元を踏み外してしまう。グリズリーは大きな前脚を振り上げる。終わったと思った次の瞬間、黒い影が獣に襲いかかる。 「ムーンレス!」 彼女は鋭い牙でグリズリーの首筋に食らいつく。思わず立ち上がった隙に懐に入り込み、グリズリーの腹に剣を突き刺して引き裂いた。 全てが終わった後に、ようやく仲間たちが辿り着く。 「ラグンヴァルドル!無事か!?」 「こんな巨大な獣を、お前一人でやったのか!?」 「いや、それは……」 「やるじゃないか!」 「英雄だ!」 仲間たちにはグリズリーが転んだ拍子に腹を切り裂いたと説明した。グリズリーの首の後ろには無数の牙が突き刺さった歯形が付いていたが、知らないふりをした。 倒したグリズリーの毛皮をもらえた。部屋に飾ると捨てさろうとした故郷の風習が戻ったみたいで、嬉しい気分の中に、森の中で感じた絶望が一滴おとされる。エンキは獣の死骸を壁に飾るなんて悪趣味だと言ったが、誰のだか分からない人骨を壁や棚に飾る人間に言われる筋合いはない。
グリズリーの貴重な生肝を持つと、森に向かって叫ぶ。 「ムーンレス、助けてくれてありがとう!これはお前の取り分だ!」 草陰にむかって生肝を放り投げた後、何かがさっと通り過ぎる音がして、彼女の遠吠えが聞こえた。
一度は持ち直したのに、獣を討伐した英雄として、今後の領地開発のために森の開拓メンバーに選ばれたが、森に足を運ぶ頻度が増えると、だんだんとまた悲しみを消すために酒やアヘンに溺れた。 熊の毛皮が俺自身の無惨な姿にも見えてきた。山で生きればよかったのに、人里に降りてきて、まんまと退治されてしまった姿が、ロンデンで今調子のいい俺が、現実に打ちのめされている姿と重なる。俺は生まれ変わりたい。なのに、心の奥の獣は、生まれ変わった後の、今の俺を食い殺そうとする。
エンキはブレア家を後にしてからも同じ家で暮らしている。とはいえ、今も昔も相変わらず朝は起きずに昼過ぎまで寝てばかりいたが、最近は夜中に研究だと言ってどこかに出かけていくようになった。以前やっていたロンデンの図書館の司書に復帰しているようで、たまに泊まり込みになって帰ってこないことも増えてきた。図書館に夜中の仕事があるのか俺にはわからないが、エンキは俺の仕事に首を突っ込まないでいてくれるように、俺もエンキの仕事について詮索するつもりにはなれなかった。ただ、生活する時間帯が真逆なのですれ違うことが増えている。それでも週に何度かは食事を共にしている。
だんだん社会復帰していくエンキと反対に、俺の生活はどんどん爛れていく。見かねた闇の司祭から健康的じゃないと言われた。 「よりにもよって一番不健康そうなお前に言われちゃおしまいだな」 「ふざけている場合ではない」 「別にふざけてもいいだろう。仕事も、少しばかり休むことにした」 「ちょうどいい。貴様を連れ出す手間が省けた」 「え?」
エンキと共に船旅に出る。出航時はよく晴れていたが、沖に出ると潮風は容赦なく帆を叩きつけ、波が荒れていた。だが、ベテランの船長が巧みに船を操作し、懐かしの故郷へと向かう。悲しみから逃げ続けて我武者羅に働いていたせいで、気がつけば5年もの歳月が流れていた。
壊された家の壁や床にはまだ血痕が残っている。野生動物に荒らされた痕跡はともかく、白夜騎士団の襲撃の後に、また別の人間によって家捜しされた後もあった。家具や絨毯はほとんど無くなっており、わずかに残された遺体でさえ、装飾品や金目のものは残らず取られ、服を着ているのは小さな子供の骨くらいだった。命だけでなく尊厳も遺品も奪われたことに言葉を失いそうになった。 何度も吐いて、泣いて、叫んで、湧き上がる怒りを地面やその辺の木にぶつけた。だが、変わり果てた姿は、幻覚で見たそれに比べればましで、現実という風が、一番残酷な瞬間を灰にしてしまった後だった。 どうやっても取り戻せないものが多すぎることを思い知らされる。一人ではどうにもできないものの大きさを知って、もう一人でなんとかしようとするのをやめようと思った。 「村のものを埋葬する」 「手伝わないぞ」 「じゃあ応援してくれ」 村人全員分の遺骨や遺品を探し出し、見つからなければ森の奥まで分け入って探しに行った。野宿しながら数日かけて捜索を続け、近くの森に立つ最も大きな唐檜のそばに、みんなを埋めた。 「私は闇の司祭だが、普通の司祭と違ってどんな神にも祈れる。貴様の神は何だ」 「オールマー信仰も、それ以外の"よその神"への信仰もない。我々は自然そのものを信仰している。みんなが先祖と同じ楽園にたどり着いて、再び自然の一部になることを祈ってほしい」 「分かった」 エンキは手を組んで、目を伏せる。人々の闇を暴き、より深い闇へと引き摺り落としてきた闇の司祭が、ただ一人の人間として、俺の一族の魂が安らかに眠ることを祈ってくれた。
お供えものとして、立派な鹿を取り、捧げた後に焼いていた。この地での最後の食事を終えると、エンキは言った。 「もうすぐ旅に出る。何だかんだで長い付き合いになったな」 「どこへ行くんだ」 「私の知らないものがある場所。東方、あるいは、もっと遠い場所へ」 「そうか。寂しくなる」 天へと続く、鎮魂の狼煙を見上げる。愛した人はみんな遠いところへ行ってしまう。村のみんなも、ムーンレスも、エンキも。 「お前には、数えきれないほど世話になった。どうしてこんなに、と聞いたらいなくなる気がしてずっと聞けなかった。だが、今聞いてもいいか」 「……本の続きが読みたかった。ラグンヴァルドルという男が、ほんの些細な、ありふれた絶望に敗北して堕落した廃人になったら面白くない。私はラグンヴァルドルという男の物語が続く方向に誘導した」 「期待通りの展開か」 「おおむねは」 「期待を越えられなかったのが残念だ」 「私の反応を気にされたら興醒めだ。貴様の気にすることではない」 「復讐が下らないと言ったのは、ロンデンで立身出世し、正しいやり方で世界を変えることが本当の復讐だからか」 「は?何の話だ」 「違うのか」 「貴様は知らんだろうが、レガルドや白夜騎士団は、当時ロンデンに住んでいた私に言わせれば、あんな山賊崩れの傭兵団を世界の救世主だと信じて支持していたのはごく少数派だ。一部の司教や貴族が囃し立てていたにすぎない。大抵の人間は、何も知らない若者が周囲の老獪におだてられたせいで何かを勘違いして、世界を革命すると息巻いていたのを冷ややかな目線で見ていたし、挙句に地下牢行きとなったことも当然の結果と感じていた。特に貴様の故郷を殲滅したことについては、誰の目から見ても意味のない虐殺で非常に反感を抱いていた。分かるか、ロンデンの民衆はお前の味方だったんだ」 「…………」 「元から支持者は少ないのに敵だけは多い。こんな下らない連中のために、復讐ばかり考えていたら自分の人生を見失う。そんな心底くだらないことを私のラグンヴァルドルにやってほしくはない。もう白夜騎士団なんて考える時間すら無駄だ。貴様にはもっと貴様にしかできないことがある」 「勝手な主張すぎる」 「ああ、自分勝手なことを言っている。貴様は私のものらしいから私が面白いと思う人間にしたって悪くないだろう」 「まあそうだ」 日がくれて夜空いっぱいに星が輝く。月のことはもう気にならなくなった。これから何かが起こっても、エンキが読んでる本の中にいると思えたなら、孤独も感じなくなるだろう。
里帰りから戻ると、まもなく旅に出発するエンキを港まで見送る。俺の知り合いにインデスへ向かう商工会の船があり、船に乗せてもらうことができた。 「陸路も考えたが船が出るならありがたい」 「いつでも、ロンデンに戻ってくることがあれば歓迎する。助けが必要ならば何でもやろう」 「ひとつ欲しいものが」 「なんだ」 「一束、髪をくれ」 「髪でいいのか、腕でも片目でもあげるぞ」 「いらない。別に魔術に使うものではなく、ただ思い出にするだけだ」 欲しい分だけ髪を摘んでもらうと、毛束をナイフで切って、散らばらないように編んで渡す。 「俺もお前の髪が欲しい」 「……いいだろう」 エンキの首の後ろの目立たないところから、一束髪の毛を切り取った。 「元から私がいなくても、貴様はこれくらい一人でできたんだ。私はただ貴様の大きな影に腰掛けていただけだが、悪くなかったと言っておこう」 「謙遜するな。今の俺にとって、お前が一番の親友であり家族だ」 エンキは最初に出会ったときに渡した怪魚の魂と、回復の指輪を返してきた。 「長いこと借りていたな」 「別に返す必要ないのに」 「あの地下牢の思い出だろう。取っておいて、子供にお守りとして受け継いでいけ。あの地獄から生きて持ち帰れた戦利品は貴重だ」 「そう言うなら」 船の汽笛が鳴る。そろそろ出発するようだ。 「ムーンレスにもたまには会え」 「彼女が暮らせるような土地を持って、お前の帰りを待つよ」 「そうか、少し遅くなるので食事は先に済ませてくれ。では」 貿易船に帆が張られ、船が出航した。
水平線の向こうに船が消えるまで、手を振った。
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