#果実の灰でうつわを作る
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monthly-ambigram · 2 months ago
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2025-5月号
アンビグラム作家の皆様に同じテーマでアンビグラムを作っていただく「月刊アンビグラム」、主宰のigatoxin(アンビグラム研究室 室長)です。
『アンビグラム』とは「複数の異なる見方を一つの図形にしたもの」であり、逆さにしたり裏返したりしても読めてしまう楽しいカラクリ文字です。詳しくはコチラをご参照ください⇒アンビグラムの作り方/Frog96
 
◆今月のお題は「対語」です◆
今月は参加者の皆様に「対語」のお題でアンビグラムを制作していただいております。メジャーな対義語は掘りつくされているのではと思われる中、作家の皆さんがどのような作品を作り上げてきたのか、楽しみにご覧ください。
皆様のコメントがいただけますと幸いです。
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「損失/収益」 回転共存型:すざく氏
利益を失うこと/利益を得ること。 「損」の左の点のハネと「益」の左払いの重なり処理の切り替わりがうまいです。よい書体とデザインですね。
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「アオムケ/ウツブセ」回転共存型:ヨウヘイ氏
顔や物の表面が上を向いていること/下を向いていること。 ドット表現が生きていますね。線が途切れたりという、1ドットの増減があっても割とこの解像度でも読めてしまいます。
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「質素/華美」 図地反転共存型: いとうさとし氏
飾り気がなくシンプルの様子/華やかで美しく派手な様子。 「質」の上部にはみ出しがありますがそれを補ってあまりある全体的な完成度の高さです。文字のバランスも良く、すばらしいですね。
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「闘(⿵门𭔰)争/逃走」 回転共存型:繋氏
「トウソウ」の同音異義語。 ステキな書体のデザインです。セリフやヒゲ部分もうまく生かされていますね。
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「支配/服従」 回転共存型:KSK ONE 氏
相手を束縛すること/されること。 中央の「彳」相当部分のリガチャが気持ちよいです。筆致がかっこいいですね。
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「過激/穏健」 回転共存型:douse氏
度を越して激しいこと/おだやかで行き過ぎていないこと。 太めの書体にすることで字画の衝突を自然に見せつつ、方向を切り替えるのに生かしています。「過」は大陸式のグリフですが気にならないものです。
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「空虚/充実」 振動型:.38氏
なかみが何もないこと/満ち満ちて豊かなこと。 字画の絶妙な波うちと太さの変化で振動を実現させています。先割れ字画の具合もよいですね。中央の字画はハネとハライが切り替わります。
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「陸/海」  敷き詰め図地反転型:アンビグラム研究室
「陸」と「海」の敷き詰め図地反転アンビグラム。陸海の図地反転の作例は複数存在します(一番早い作例はこちら→2010-05-06)。 本作はoyadge01氏と意瞑字査印氏が対応解釈、作字をkawahar氏がそれぞれ担当して制作されました。
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「愚痴/感謝」 図地反転共存型: いとうさとし氏
言ってもしかたのないことを言って嘆くこと/ありがたく思って礼をいうこと。 非常に読みやすく驚くばかりです。「心/心」の図地対応は応用が利きそうですね。
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「昨日/明日」  振動型:lszk氏
今日の一つ前の日/一つ後の日。 重ね合わせ処理をうまく利用した傑作です。矢印による示唆があるため、すぐに読めますね。
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「脆弱/強靭」 敷詰回転共存型:douse氏
もろくて弱いこと/しなやかで強いこと。 黒パーツと灰色パーツを入れ替えていると見ることができます。角度の調整や線の出し入れの具合が絶品です。
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「文明破滅/創世記譚」 鏡像共存型:ちくわああ氏
世界の終わりとはじまり。 文字単位での対応付けではないのですがバランスよく仕上がっています。かなり難しい対応付けをしている力作です。文字内の✨を自然にする中央の星デザインもよい工夫ですね。
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「福良Pです/凶悪Qです」 図地反転共存型:つーさま!氏
QuizKnockのとある企画で発生した対義語。 「です/です」が図地対応できることに驚きです。「P/Q」がよいデザインですね。塗りつぶしが効果的に使われています。
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「彼誰時のバス停/黄昏時の駅前」 回転共存型:松茸氏
明け方←→夕暮れ、バス停←→駅前。 適度なデフォルメが気持ちよく、全体的に素直に読める良作です。「亭」部分が袋文字のようになっている部分が上から下まで渡っているので気持ちよいですね。
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「竜頭蛇尾/有終完美」 鏡像共存型:とりけとん氏
尻すぼみになること/最後までやり遂げること。 全体の流れで読むデザインではあると思いますが、一文字ずつ見てもかなりうまく調整されています。そのまま掛け軸にもできそうなよい作品です。
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「おまえらの二次創作」 重畳型:Jinanbou氏
「オイラーの公式」に対する偽対義語(こちら)。 2ブロック分ずらしながら並べるとうまく配置できます。配置の発見と文字の切り取り方がすごいですね。
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「貧乏舌/鼻セレブ」 回転共存型:てるだよ氏
こちらの偽対義語が初出でしょうか。 ポストに対するのコメントでは対応部分の前後関係が逆と��う指摘も多くありましたが、このデザインによればうまい配置になっています。細かい筆画にも工夫がありますね。
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「SYNTAX/SEMANTICS」 回転共存型:兼吉共心堂氏
構文 (syntax) と意味論 (semantics) は、プログラミング言語において、コードの構造と意味を区別する概念。 珍しくラテン文字での作品。文字数の違いをクリアするための圧縮手法が見所です。
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「攻守」 旋回型:うら紙氏
主に競技における攻撃と守備。 全体的に三角のペン形状とし、「攻」の最初の部分と「守」の点を自然に見せています。ポイントを押さえたよい作品ですね。
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「誕生/死滅」 図地反転回転共存型: いとうさとし氏
生まれること/死に絶えること。 「誕/滅」の自然さに驚きます。「生/死」はシンプルな文字同士の対応付けの分、細かい凹凸の調整が見所ですね。
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「是/非」 敷詰振動型(180度回転同一型):kawahar氏
道理にかなうこと/誤っていること。 縦に読めば首を縦に振る肯定の「是」、横に読めば首を横に振る否定の「非」です。ちょっとしたウロコの調整でうまく読めるように仕上げられています。
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「光/影」 振動型:ラティエ氏
物事の明るい部分/暗い部分。 主観的輪郭を利用した知覚シフト。作例が非常に少ない手法ですがうまく扱っており、言葉にマッチしていてとても良い作品です。
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「平面/立体」  回転共存型:lszk氏
2次元/3次元。 平行四辺形のような部分を平面的に見たり立体的に見たり切り替わるところがぴったりですばらしいです。「面」の窓も斜めに切られているので「立」の時に柱状に見えてきます。
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「鷹/鳩」 回転共存型:douse氏
政治的な立場として、強硬派/平和派。 文字の特徴を的確にとらえたすばらしい図案化です。バランスが絶妙なので、まだれが小さくてもしっかり「鷹」ですね。
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「祝/呪」  回転共存型: oyadge01氏 × 意瞑字査印氏
「祝」を180°回転させると「呪」と読める王道のアンビグラム。意瞑字査印氏が対応解釈、oyadge01氏が作字を それぞれ担当する合作の制作スタイルです。
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「分裂/統合」 敷詰回転共存型×2:オルドビス紀氏
別れること/まとまること。 「分/合」「裂/統」それぞれが敷詰共存の関係です。字画本体と装飾が切り替わる効果が実感できる作品ですね。レタリングとアンビグラムが絶妙に融合しています。
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「平坦/起伏」 回転共存型:Σ氏
表面が平らなこと/表面に動きがあること。 「坦/起」は無変換共存の関係ですが、もう一文字と合わせて角度を調整することで一文字目と二文字目の関係を入れ替えています。裏になった「犬」も愛らしいです。
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「浪費/節約」 鏡像共存型:螺旋氏
無駄な出費を増やす/減らす。 「浪/約」がとても自然で驚きです。「費/節」の省略の仕方がすばらしいです。最大公約数をとるというだけでもなく、書体の力によるものも大きいですね。
 
 
最後に私の作品を。
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「眼鏡(めがね)」 回転型:igatoxin
熟字訓にルビをふるときは、対語ルビ(グループルビ)で均等に。逆に、文字ごとにルビをふるのは「対字ルビ(モノルビ)」です。
 
 
お題「対語」のアンビグラム祭、いかがでしたでしょうか。御参加いただいた作家の皆様には深く感謝申し上げます。
さて次回のお題は「能力」です。スキル、技術、技量、熟練、パワー、資質、知能、独創性、スタミナ、異能、資格、器量 など 参加者が自由に能力というワードから発想・連想してアンビグラムを作ります。
締切は5/31、発行は6/8の予定です。それでは皆様 来月またお会いしましょう。
——————————–index——————————————
2023年 1月{フリー}   2月{TV}        3月{クイズ}        4月{健康}   5月{回文}    6月{本}               7月{神話}   8月{ジャングル} 9月{日本史}     10月{ヒーロー}     11月{ゲーム}         12月{時事}
2024年 1月{フリー}         2月{レトロ}   3月{うた}         4月{アニメ}   5月{遊園地}      6月{中華}          7月{猫}     8月{夢} 9月{くりかえし}    10月{読書}          11月{運}           12月{時事}
2025年 1月{フリー}   2月{記憶}    3月{春}       4月{キッチン}   5月{対語}    6月{能力} 
※これ以前のindexはこちら→《index:2017年~》
9 notes · View notes
destinygoldenstar · 5 days ago
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🩷クリエイティブ・カラフルプリキュア - 第1話「情熱のアーティスト!キュアチェリーが世界を彩る!」🩷
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「できた!!」
小柄な金髪の幼稚園児、さくらけいこちゃんが笑顔でクラスの前に立ち、手に持った紙をめくると、自分が描いた絵が現れた.
雑然とした庭の絵。三角形が草のようで、オレンジ色の棒に紫色の塊が木として描かれ、ターコイズブルーの空にはバナナとサクランボが浮かんでいる。少なくとも、バナナとサクランボなのかもしれない。紙の上で見ると、緑とピンクの線のようにも見える。
「外の庭よ!」 とケイコは興奮気味に言った。そして「木」を指差して、「見て!ピンクの木よ!きれいでしょう?」と言った。
彼女は他の子供たちの沈黙の中で返事を待ちます。
すると誰かが「あれは木じゃない!ブドウだよ!」と叫びます。
すると、笑いが湧き起こります。
「枝も葉もないよ!」
「バナナは緑色じゃないよ、バカ!」
「それは果物じゃない!塊だ!」
「果物は飛ばないよ!」
「それは青空じゃないよ!」
からかい合いの会話はしばらく続き、一人を除く全員が指さして笑いながら、ケイコの絵がどれだけ下手かを延々と語り、ケイコ自身と絵を笑いながら笑っていた。
ケイコはその場に留まり、笑顔はますます作り笑いになっていく。笑い声と侮辱の言葉が頭の中に吸い込まれていく。彼女は硬直し、教室の淡いヴィンテージ調の色合いは薄れ、笑い声はますます大きくなる。紙に置いた手は震えている。
「それは芸術じゃない!ゴミだ!」
その最後の侮辱は小さな子供をすすり泣かせます。
「おい!もういい!もういい!」先生の優しい声が聞こえたが、ケイコの耳には雑音のように聞こえた。「優しく話すか、何も話さないかのどちらかだ。さくらに謝って――」
ケイコはすでに教室のドアを飛び出して逃げ出しました。
「さくら!!」
ケイコは小さな校舎のドアからよろめきながら出て行った。階段を下り、レンガ敷きの道を駆け下りる間、涙以外のことには何も注意を払っていなかった。
彼女はつまずいて膝を打撲し、あざができた時にようやく立ち止まった。写真を胸にしっかりと抱きしめ、まだ泣き続けている。
再び顔を上げ、目を拭うと、彼女は自分が学校の近くの畑の脇の歩道にいることに気づいた。彼女は実物を見つめ、それから写真を顔に当て、そしてまた実物を見つめた。
その木は丸くも茂りもせず、枝いっぱいに淡いピンクの花びらが四方八方に広がり、その一部は落ちて柔らかな緑の草の上へと舞い落ちていく。
確かに、果物は飛びません。
確かに空は青いですね。
彼らは正しかった。
ケイコは、涙が落ちた自分のぐちゃぐちゃな絵をじっと見つめている。彼女の作品はひどい。ひどいものだったら、芸術を作る意味なん��ないだろう。
「やあ、坊や」
鋭い爪が皮膚に食い込む手で恵子の顎が上がる。
女性は灰色の肌色で、背後に黒い髪を乱雑に垂らし、太陽の光を遮っている。鋭い歯を見せてケイコの目を見据える。
恵子は、目の前にいるこの女性の姿が気に入らないと泣き言を言った。
女性は「素晴らしい創造的な取り組みですね、ぜひ見たいです」と言いました。
女性の手が恵子の顔に伸びる。その動きに続いて、恵子の胸に痛みがこみ上げてくる。
最後に彼女が見たものは、彼女のバージョンのすべてが灰色に変わり、何かが引き裂かれるかのように胸が燃え、暗闇しか見えなかった。
彼女は動けなかった。
彼女は叫ぶことができなかった。
"停止!!!"
突然、オレンジ色の光が点滅した。ケイコは何も見分けられなかったが、明るいオレンジ色の光と、目の前に誰かの影が見えた。
「これは取らせないぞ!」少年が懇願する。
女性の声が嘲笑う。「もう何年も使えるインクがあるのに、なぜこんな無意味なことをしろと言うの?」
オレンジ色の光がより明るく輝き、少年は彼女の発言に衝撃を受けたようだ。
彼女は嘲る。「あなたはこの世界に一人残され、誰もあなたのような人間を気にかけないわ。新しい姿ではなおさら。価値のない動物よ。もう二度とあなたの泣き声を聞くことはないわ」
感情を表せるのは思考だけだったケイコは、その言葉を信じずにはいられなかった。みんなが彼女の絵を見て笑っているのに、一体誰が彼女の作品に関心を持つというのか?誰が彼女のことを気にすると言うのか?
「それでも……この子を連れて行くわけにはいかない!」
そこから恵子ができるのは、震えながらも言葉に自信に満ちた少年の声を聞くことだけだった。
「勝てません。魂の創造性を奪うことは決してできません…それは素晴らしい祝福です。そしてこの子たち…この子たちは…私が亡くなった後も情熱を追い求めるでしょう…そして、愛するものを決して諦めません。彼らは世界のために絵を描くでしょう!」
青い光が影を覆い、オレンジ色の光を消し去り、���然とした悲鳴が聞こえます。
ケイコの目が覚めた。辺りを見回しながら、彼女は草むらに転がり落ちた。何が起こったのか、ただの夢だったのか、それとも全て現実だったのか、ケイコには分からなかった。
彼女の前にはもう誰もいません。ただ、畏敬の念を抱きながら青い空を見つめる彼女と、ぎこちなく震えながら通り過ぎるオレンジ色の鳥だけが残っています。
彼女は涙を拭って受け入れた。この不思議な声が正しいと知っているからだ。
彼女は誇らしげな笑��を浮かべて、再び絵を手に取りました。
「さくら!!」先生が駆け寄ってきて、さくらを見つけた。いつものように安心した様子で、さくらを抱きしめる。「大丈夫?!そんなに飛び出さないで!」
ケイコはただ空を見上げて、もういなくなってしまった鳥を探すことしかできなかった。「鳥?」
「学校に戻ろうね。戻ったらすぐにクラスのみんなで謝るからね。」
先生はケイコの手を取り、学校へ連れて帰りました。ケイコは空いている手で微笑みながら手を振り、「じゃあね、鳥さん!」と言いました。
彼女は何人が笑おうと気にしない。自分の情熱を追い求めるつもりだ。
どういうわけか、彼女は偉大な芸術家になるでしょう。
彼女はこの世界のために絵を描くつもりです。
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8年後
「もう着く?」14歳のケイコが尋ねる。彼女は顔と手をバンの窓に置き、薄紫色の瞳で外を通り過ぎるたくさんの建物を楽しそうに眺めている。ケイコはシートベルトを締めておらず、車の後部座席にひざまずいている。
「50回」前の席に座っている妹は、ケイコが何回この質問をしたかを数えている。それ以外は、ケイコは手に持ったタブレットにしか注意を払っていない。
「遠くないって言ったでしょ!」ケイコは泣き言を言った。「そんなに何度も聞いたわけじゃないのに!」
助手席に座っていた母親は、落ち着いてこう言った。「もうすぐ着くわよ。ケイコ、シートベルトを締めてね。」
「ブー…」ケイコはそれを聞いて、自分の席に深く腰掛け、シートベルトを締めた。それでもじっとしていられず、席の中で身をよじりながら、同じく乱れたウェーブのかかったブロンドの髪を指で弄んだ。髪は同じように乱れたお団子にまとめられ、ピンクのリボンが付けられている。「まさか夢の学校に通えるなんて想像もしてなかったわ!まさか夢だなんて言わないでくれるの?」
もう夢だとは思えない。彼女は寄宿学校の制服を着ている。淡いピンクのブラウスに濃い色のオーバーオールスカート、ローファー、ストッキング、そして真っすぐに結ばれていない赤いリボン。
「こんなに長い間、嘘をつくわけないよ」運転中の父親がそう言って彼女を安心させた。
珍しく、妹は数字以外のことを言った。「そもそも、どうしてこれに興奮しているの?寄宿学校なのに」と彼女は尋ねた。
「芸術を称える寄宿学校よ!」ケイコも答えた。彼女はシートベルトを外し、後部座席の反対側にあるスクールバッグに手を伸ばした。前のポケットから、キャンパスのパンフレットを取り出した。「ここのアートプログラムは、全国でも最も有名で成功しているプログラムの一つよ!」
彼女はページをめくると、絵を描いたりスケッチをしたりする大人の写真を見せてくれた。「石川の有名人もたくさんこの学校に通っていたのよ!絵で表彰されているのよ!」
彼女はバッグから別のものを取り出す。それはバッグの中にしまってあるたくさんのスケッチブックのうちの1冊だ。彼女はまた椅子に膝をついていて、気づかない。「まあ、たぶん無理だろうけど、この作品で表彰されるなら…」
紙に描いた2枚の絵は、まるで絵画みたいだった。ところが、紙がくっついて、まるで塊みたいに見えてしまった。彼女はそれに気づき、眉をひそめた。「あら、紙を両面印刷するべきじゃなかった…」
「ママ!」妹が告げ口する。「ケイコはまだシートベルトを締めてないわよ!」
「ケイコ」
「あ、ごめんなさい!」ケイコは席に戻り、シートベルトを締め直した。忘れていた。
彼女はまだスケッチブックとパンフレットを腕に抱えている。目を大きく見開いて、それらを見つめる。そして、熱意を込めて言う。「でも、絵を完璧に描けるようになるの!それに、次郎ちゃんとあおいちゃんと一緒に習うし、私と同じような子たちと何時間でも絵について話せるし!」
「念のため言っておくけど、君をここに転校させたのは、そういう理由じゃないわよ」母親が席の上で指を立てて、ケイコに見せながら口を挟んだ。「君はこの環境で成績が上がるか確かめるために来たのよ。楽しいことよりも、これが一番大切なのよ。ここは寄宿学校よ」
ケイコの笑顔が消える。両手で顎を支え、家族から目を離し、窓の外を猛スピードで走る車を眺める。
「ケイコ、このことについては話し合ったのよ」母親はまだ言い続けている。「どんなに情熱を持っていても、学業に関係ないなら、大人になっても成功できないわ。夢が叶うのと同じくらい真剣に受け止めなきゃいけないのよ」
ケイコはため息をついた。「わかってるよ、ママ。真剣に考えてるんだから…」それからまた顔が明るくなった。「あら、もう着いたの!」
ケイコの叫び声に、妹は耳に指を当てた。ケイコは「ママぁ …
寄宿学校のキャンパスは街の反対側の丘陵地帯にあり、遠くには赤レンガと白い石の縁取りで囲まれた巨大なアカデミーの建物が見えます。最も大きな建物は3階建てで、光沢のある緑色の傾斜屋根と白い窓が建物を区切っています。中庭は庭園のようで、パティオとベンチがいくつか置かれています。2つ先の丘の向こうにある建物も同じ外観ですが、塔のような形をしています。建物と建物を結ぶ小道はすべてピンクと紫の石畳で敷かれています。キャンパスのいたるところに様々な花が植えられ、色とりどりの花が咲き誇っています。丘の麓に下りる階段もあり、そこにあるキャンパスの入口の建物は、正面のパティオの両側に石の鳥の像が置かれた、大きな白い美術館のようです。正面のガラス壁からは、絵画で飾られた内部が垣間見えます。正面玄関の上には、「ようこそクラフトアカデミーへ」と書かれた大きなラベルが虹色で掲げられています。
「よし、もう着くぞ!」父親はケイコを降ろすために建物の前に車を停めながら、からかうように言った。ケイコは急いで車から降りると、畏敬の念を抱きながら、その場に立ち尽くし、すべてを眺めていた。
キャンパスは、いつも通っている学校よりもはるかに多くの色と光で満ちている。賑やかな十代の学生たちの声が、彼女の五感を音楽で満たす。美術館の建物自体も、少女とは比べ物にならないほど巨大で、まるで彼女が探検できる魔法の世界を思わせる。小さな雲が少しあるだけの晴天で、太陽の光がすべてを輝かせている。
「どう?」残りの家族は柔らかな笑顔で車から降りてくる。父親が尋ねる。「これで全部期待通りだったか?」
恵子は喜びに目を潤ませながら、振り返り両親の方を向いた。「冗談でしょ?!もう、全部よ!」
恵子は両親に駆け寄り、抱きしめた。その抱擁の中で、ついに喜びの涙がこぼれた。溢れ出る感情に、恵子は静かに「愛してる」と告げた。
「大丈夫だよ」父親は娘の背中を優しく撫でた。別れ際、恵子は涙を拭うと、母親は説明した。「家はここから少し遠いけど、通りの向こうに海沿いの町があるの。綾乃さんと康弘君が、必要なお金は何でも手伝ってくれるわ。それに、もし何かの理由で家に帰らなきゃいけない時は、バスに乗ればいいのよ。もしその日、何かの理由でバスがなかったら、電話があるでしょ。電話して」
「わかった」ケイコは親指を立てた。「わかった。オープンハウスの後、私の作品を見せてね」
ケイコは二人から立ち去ろうとしたが、立ち止まり、振り返って再び二人を抱きしめた。「最後のハグ!」と生意気な声で言った。
最後の抱擁を交わした後、ケイコは目の前の美術館へと楽しそうにスキップしていった。
階段を下りきった途端、ポケットの中の携帯が振動した。ケイコは取り出してメッセージを見た。
というか、5分おきに同じ内容の大量のメッセージが送られてきた。
葵 綾乃「入り口すぐ左の鳥の像のところで、私と次郎が待ってます!」
ケイコは親指を立てて、アオイにメッセージを受け取ったと伝える。
ケイコはパティオへの階段を駆け上がり、左の方を向いて頂上まで行き、反対側がきちんと見えるまで歩く。
像の背にもたれには、女の子と男の子の2人のティーンエイジャーが寄りかかっている。男の子は3人の中で一番背が高く、濃い紫色の髪をしていて、明るい青色の瞳を縁取るようにグレーの眼鏡をかけている。制服は濃い紫色の可愛らしいジャケットにグレーのパンツ、そして同じ赤いネクタイとローファーだ。女の子も眼鏡をかけているが、彼女の眼鏡は赤で、瞳はより濃い青色だ。濃い青色の前髪の片側を耳の後ろに引っ掛けるように、赤いバレッタを留めている。制服の上には紺色のタイツと紺色のジャケットを着ており、ネクタイの位置も完璧に揃っている。
「次郎!あおい!」ケイコは笑顔で二人に大きく手を振った。
あおいはスマホから顔を上げてケイコに気づいた。安���のため息をつき、優しく手を振り返した。「ケイコ、よく来たね。」
ケイコは二人に向かって歩き出した。三人の中で唯一、元気いっぱいだった。「さて、クラフトアカデミーでの冒険が始まるのが楽しみな人はいる?!」
彼女が興奮して飛び跳ねているにもかかわらず、他の二人は不安そうな表情を浮かべている。「え…わからない…」と次郎が言う。
ケイコは言葉を止めた。「私が何かしちゃった?」
「いいえ、あなたじゃないわ!」あおいは手を差し出してケイコを落ち着かせながら保証する。そして緊張した笑みを浮かべる。「私…あなたが私を転校させようとしたなんて信じられない!一体私は何をしているのかしら?」
「すごいことしてる!」ケイコは友達を励まそうと、いつものテンションを保った。「後悔しないよ!」
「もう…」アオイは腕を組んで呟いた。
「寄宿学校だ!!」ジローはノートをぎゅっと抱きしめ、自分がどれだけパニックになっているかを表現した。女の子たちと話すというより、支離滅裂なことを言って一人で笑っている。「もちろん寄宿学校に行くよ。だって、どうして寄宿学校に行きたがるの?!こんなの慣れてないんだもん!!」
「次郎!」ケイコは彼の肩に手を叩きつけた。「深呼吸してね?」
彼は耳を傾けた。
ケイコは親指を立てて、彼に念を押す。「パニックになった時は、現実の存在を忘れるまでアニメを見るのよ」
「ああ、でも学校だよ」と次郎は答える。
「美術学校だよ!」ケイコは彼を放し、両腕を広げる。興奮が戻ってきたようだ。「僕たち仲良し3人、すぐに馴染むよ!」
「えーと…」次郎は二人を横目で見る。「それはどうかな…」とネズミのように小さな声で言った。
ケイコはすでにガラス張りの玄関ドアに向かって歩き、友達を先導している。「え?入るの?」
葵はため息をつき、ジローに自信に満ちた笑顔を向ける。「ケイコちゃんが幸せなら、私たちも幸せでしょ?」と彼女は認める。
ジローは首を傾げ、「さようなら、ビジネスの世界…」と呟く。
三人は一緒にドアを開けて中に入る。
ケイコが中に入ると、目と口を大きく開け、悲鳴を上げ始めた。
ロビーは開放的な空間で、大理石の床と青いカーペットが、中央の飾りの周りのドアや階段へと続く通路を形作っている。階段には専用のバルコニーと窓がある。窓のうち二つは抽象的な色ガラスがはめ込まれたガラス板だ。窓の周りには、それぞれ独自のスタイルで描かれた絵画が数点、天井には手作りのシャンデリアがいくつか飾られている。
しかし、ケイコの目を惹きつけたのは、中心にある作品だった。キャンバスを模した巨大な粘土像だが、全体に繊細な装飾が施され、淡いラメが散りばめられ、まるで魔法のような雰囲気を醸し出している。絵の具の点々はそれぞれ異なる色で、キャンバスから虹のように飛び出している。
次郎と葵が中に入っていき、二人はより落ち着いた様子でその場の雰囲気を味わった。次郎は「おやまあ、すごい…パンフレットとこんなに忠実だ��は思わなかった」と言った。
「本当に本物だなんて、嬉しい!」ケイコは像に近づこうと駆け寄った。周りの柵に少し強くぶつかってしまったが、気にしない。「本当に生徒が作ったのよ!生徒が…作ったのよ!」
葵と次郎は、もっと気楽な様子で近づいて見てみた。葵は「すごいですね」と認めた。
次郎はぎこちなく握手を交わした。「えーっと、ちょっと雑な彫刻作品ですね。学生が作った作品だと分かりますよ」
恵子は批判に首を横に振った。「え、そんなことどうでもいいの!芸術ですよ!素晴らしい!」
次郎は何か文字が書かれた看板を見つけた。それを使って説明する。「『芸術のキャンバス』。これは卒業生が最初に作った作品の一つで、僕たちが生まれる前に作られたものなんだ。確かな証拠は失われているが、これを作ったのは『プリキュア』という魔法少女だったという言い伝えがあるんだ。」
ケイコはその情報に驚き、小さく微笑んだ。
視界の隅で、ケイコは友人たちの背後の扉が開き、中から何かが出てくるのを捉えた。
「あそこにブースがあるわよ!」ケイコはドアを指差した。他の二人は振り返る。二人が理解する間もなく、ケイコはドアに向かって歩き始めた。「さあ、見に行こう!」
「待って、ケイコ!」アオイは手を伸ばすが、ケイコは聞かない。
「捕まえた!」ジローもケイコに続き、すぐ後ろをついていく。
「あなたたち二人はだめ!ちょっと待って…」
葵は二人の後を追おうとしたが、そこに人影が迫ってきた。彼女は上半身を抱きしめ、固まった。
「あら、そこにいたのね。あなたを探してたのよ」葵は作り笑いを浮かべ、友人たちが入ったドアの反対側のドアを指差した。「ビジネスホールとプログラムを見せてあげるわ」
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廊下は広大だ。少なくとも、ブースの数からするとそう思える。ブースには上級生たちが何人も参加し、様々なアートプログラムを披露している。陶芸ブース、折り紙ブース、宝石学ブース、写真ブース、クロスステッチブース、木工ブース、フラワーアレンジメントブースなど、数え切れないほどのブースがある。圧倒されるが、同時に魔法のような空間でもある。
ジローはアニメーションブースでプレゼンテーションを見ている子供たちの中にいた。3年生の男子生徒が2台のモニターでプレゼンテーションをしている。1台は走るアニメーションの絵コンテ、もう1台は2Dの走るアニメーションの未完成版で、色付けもされておらず、粗削りだ。
彼はこう説明する。「それで、ここにあるボードを参考に、思い通りのアニメーションを作っていくんです。」
小さな観客席の他の子供たちが拍手する。ジローは手を挙げて尋ねる。「そのソフトはどこで手に入れるんですか?僕は紙でアニメーションを作ることしかできないんです。」
「プログラムに参加すれば、学校がリソースを提供してくれるんだぞ!」男は嬉しそうに答えた。パンフレットを配りながら、次郎に直接一枚を手渡した。
「ありがとう」次郎は手に持ったパンフレットに微笑みながら言った。「ねえ、ケイコ、あれ、すごく素敵だったよ…?」
隣に友人がいないことに気づき、次郎は言葉を���まらせた。「ケイコ!?」
ケイコは走り去り、今は絵画ブースにいた。彼女は絵画の真正面にいて、畏敬の念を抱いていた。どれも細部まで緻密に描かれ、写実的で、色彩と光の深みが深く、すべて絵の具だけで描かれている。
「ねえ」ケイコはもう一人の新入生、男子生徒に邪魔された。「視界を遮ってるよ」と何気なく言った。
「すみません!」ケイコは恥ずかしそうにそう言って道を譲った。
その男子生徒がブースの係員に「僕の作品を見て、感想を聞きたいんだけど」と尋ねるのが聞こえた。
それでも、ケイコはそれを見て嬉しくて仕方がなかった。いつか自分もこんな作品を作るんだ。「他に何かあるかな…?」
「みんな、グルメ!」誰かが声をかける。振り返ると、絵付けブースの十字架は料理ブースだった。店番をしているのは男子制服を着た人物で、肌は濃いオレンジがかった色で、目は緑色、髪は濃い緑色のマレットヘアだ。「私から料理プログラムについて聞きたい?」
ケイコは肩をすくめて、そこへ行くことにした。「料理?それって何?」と尋ねる。
生徒は嬉しそうに答える。「そう、聞いてくれて嬉しいわ。料理とは料理の芸術よ。私たちのプログラムでは、生徒に何でも料理の仕方を教え、自分だけのオリジナルレシピを作れるようにしているの。こんな感じよ。」
彼らは緑と白のクッキーの無料サンプルが載ったトレイを手に持っていた。ケイコに差し出すと、ケイコは一枚受け取り、一口食べる。彼女は鼻歌で答える。「これはパンダンクッキーで、ダークチョコレートが入った、私からもらったのよ!」ケイコは眉を上げた。二人は付け加える。「私はタイ人よ。」
「あれ、何個作ったの?」隣のブースにいる3年生が尋ねる。それはさらに肌の色が濃い女の子で、制服の上にダークレッドのセーターを着ている。深紅の髪は彼女の瞳の色に合わせて編み込まれている。彼女は舞台芸術のブースで働いている。
料理を学ぶ学生は腰に手を当て、女の子にニヤリと笑う。二人はウインクして「ショーの観客数に合わせてね」と言う。
女の子はクスクス笑う。それから気を取り直して腕を組んだ腕を解く。「あ、そうそう、そういえば、ここは舞台芸術のプログラムなの。演技、合唱、ダンス、あと…楽しいことを教えているの。興味があるかどうかわからないけど。」
「ケイコ!」ケイコが返事をする前に、ジローは友達を見つけた。「いた!探していたんだ…」目の前にいる人物を見て、彼は立ち止まる。そして大げさに息を呑む。「この二人を見つけたのか?」
「投影する方法の一つだよ…」赤毛の少女は再び腕を組みながら認めた。
「ケイコ、これは伝説の人物なんだよ!」次郎はケイコを掴み、揺さぶる。ケイコは困惑している。「あ、分かった。もし分からなかったら…」
次郎は緑髪の生徒から説明を始める。「あれはキアオ・モンド…」
「キアオ・ミドリ」二人は訂正する。
「キアオは料理の天才よ。小学校1年生から料理を習ってるのよ!」
「正しくは『彼女』よ」と二人は訂正する。
「この辺りの街の『川崎ダイナー』でパートのコックをしていて、ここに転校して��た時からずっと働いてるの。たぶん、ダイナーの大人のほとんどより腕がいいわ!」
「え、私、全然違うの!」ミドリは慌てる。
ケイコは驚きしか感じなかった。男子制服を着ているから気づかなかったのだ。「え、女の子なの?!じゃあなんで…?」
次郎は赤毛の生徒の話を続けた。「そしてこちらはスカーレット・アケミ。地元の舞台のほとんどに出演しているパフォーマーなんだ。女優、歌手、ダンサー、その全てを兼ね備えている! あまりにもスターで美人なので、今生で見るのはちょっと申し訳ない気持ちになる…」次郎は言葉を失い、言葉を失った。
アケミは恥ずかしそうに顔を赤らめ、何も言わなかった。
「あ、この学校で一番の生徒だよ。それが言いたいんだ」次郎が付け加えた。
ケイコは満面の笑みを浮かべた。「すごい!」
「あ、ありがとう」とミドリが言った。
しかし、ケイコは両方のブースに手を叩きつけ、テーブルを揺らした。「あなたのレベルに達するにはどうすればいいの!秘訣は?」
そうすると、ケイコは誤って舞台芸術ブースにあった喜劇の仮面を倒してしまった。床に落ちた仮面の下には悲劇の仮面が隠されていた。
「えっと、サン…?」アケミはそれを拾い上げるために前へ駆け出した。
「すみません!」ケイコは手を離した。
「あなたの経歴も仕事内容も知りません」とミドリは答えた。「でも、スカーレットさんと私は長年、プロの現場で技術を学んできました。正直、そういう経験がないと難しいと思います。でも、不可能ではありません。夢を見続けてください。」
「ああ…」ケイコはその答えに少しがっかりした。彼女らほどの経験はない。この二人はケイコより2歳くらいしか年上ではないのに、既に彼女よりもはるかに素晴らしいことをしている。他の生徒たちもそんなレベルなのだろうか?
「1年生の皆さん!」もう一人の3年生がチケットの入ったカゴを持って歩き回っています。できるだけ多くの人の注目を集めようと、チケットを空中に振り回しています。「ショーケースのチケットをゲットして!」
ケイコとジローは数歩近づくだけでチケットを受け取ります。ジローが「これは何のチケットですか?」と尋ねます。
「このチケットを持っている1年生は、2階の工作ブースに入場できます。」生徒は答えます。「大人向けのアートショーケースにご招待します。アカデミーのみんなに自己紹介するための工作をしてください!最高の第一印象を与えてください!」
ケイコとジローは驚きの声を上げます。二人は互いに顔を見合わせ、チケットを見つめ、また見つめ合います。そして、二人とも興奮して飛び上がります。「これは最高!」と叫びます。
次郎は落ち着くために息を吸い込み、それから付け加えた。「うまくできたら…」
ケイコはまだ興奮していて、落ち着きがない。彼女は次郎に言った。「これをやらなきゃ!ここにいるみんなに私の実力を見せつける、最高の第一印象になるわ!」
彼女はチケットを空高く掲げ、興奮して笑いながらくるりとくるりと回る。次郎は体が硬くなり、どう反応していいのか分からなくなる。
するとケイコは立ち止まり、ようやく息を吸った。「…何を描いたらいいのか分からない」と彼女は気づいた。
「ああ、まずはそれを整理した方がいいんじゃないかな」と次郎は涙を浮かべながら認めた。
ケイコはすでに考え事をしていて、周りの声がかき消され始めていた。「私自身の自己紹介は…」
「つまり、まずは正確に…」
「自分の気持ちを表現する機会…」
「それで、みんなが見てるから、恥ずかしい思いをすることになるのよ」
「そして、たくさんの人がそれを見ることになる…」
「ケイコ?ケイコ?」
「さくらケイコの絵よ!」
この時点で、ケイコは自分の小さな世界に浸り、すべての雑音はかき消されていた。世界は抽象的なワンダーランドで、すべてが色で彩られている。彼女はかつての桜畑に戻ったが、今度はすべてが色で彩られている。
彼女はため息をつき、偽りの世界の新鮮な空気を吸い込んだ。「芸術は本当に世界を美しくしてくれるのね、そう思わない?」と微笑みながら言った。
彼女は畑を歩き、周囲に散る花を眺めた。花はどれも様々な色に輝き、きらめいていた。「まるで誰かが作ったみたい。頭の中にある抽象的な考えを、誰かが思い描いていたみたい。」
彼女は一輪の花を掴み、畏敬の念を込めて見つめた。「そして、彼らはそれを恥じない。称賛され、愛されている。」
彼女は花を空に投げ上げ、くるくると回って、花が鳥に姿を変えて飛び去っていくのを見送った。「すべては創造性。そして、すべてが芸術となり、みんなの目に触れる!ここが私の居場所!」
彼女は一歩下がって木に寄りかかり、考え込んだ。「他の場所では、私の脳はあまりにも違っていて、恥ずかしい思いをするけれど…でもここなら?私はありのままでいられる。そして、成功する。」
彼女は目をこすって考えようとする。彼女の周りには、鏡が埋め込まれたさくらんぼが浮かんでいる。すべてが瞬いている。彼女は顎に手を当て、考えながら、その中を前へ前へと歩いていく。「みんなをあっと言わせるようなものを作らなきゃ…技術を磨くことができる、充実した学校生活につながるものを。そうすれば、私は有名な芸術家になって、称賛される。私の人生の目的が達成されるわ!」
彼女の心は、すべてを輝かせる輝く日の出へと向かう。彼女は微笑みながら、「ここにいるみんなは何かを作るために生まれてきたの。そして私がこの世界に生み出すものは、きっと美しいものなのよ!」と語りました。
ケイコは片足でジャンプし、両手を上げたが、体が後ろに倒れた。
想像の中でのすべてが崩れ落ち、現実に戻った。
現実では、ケイコはドアに寄りかかっていて、それが開いた。ケイコは裏庭のポーチに落ち、背中から着地した。
「痛っ…」ケイコは衝撃にうめき声を上げた。彼女は膝をついて背中をさすった。彼女は再び屋外、裏庭にいた。柵で囲まれた小さな庭があり、真ん中に噴水がある。反対側には門があり、そこから丘を登ってキャンパスの他の部分へと続く階段へと続いていた。
その時、けたたましい鳴き声が聞こえた。
彼女は振り返って庭を見渡した。小さな子供たちが外で遊んでいた。そのうちの一人が鳥の尻尾をつかんで引きずり下ろしている。他の子供たちは皆、鳥が必死に鳴きながら逃げようともがいているのを見て笑っていた。
ケイコはそれを見た途端、立ち上がり、拳を振り上げた。動物の虐待に我慢ならなかったのだ。
���おい!!!」ケイコは怒りに駆られ、叫びながら突進した。「あの鳥を放して!うわっ!」
彼女は階段でつまずいて、顔から転んだ。
小さな子供たちは、もがく鳥を抱きかかえたまま、困惑した様子で彼女を見つめる。
ケイコはすぐに立ち直り、地面に両手を叩きつけ、頭を振り上げて子供たちに、まるで怪物のように恐ろしい怒りの表情を向けた。そして、その事実をわざとらしく、彼女は恐ろしい雄叫びを上げた。
子供たちは恐怖のあまり叫び声をあげ、鳥を放した。皆、両親のところへ泣きに走って逃げ出した。
放された鳥は惰性で後ろに投げ出され、何かペンのようなものを地面に落としてしまう。鳥はそれに気づかない。
鳥は飛び去ろうともがくが、地面に落ちてしまう。ケイコはきちんと起き上がり、膝をつきながら鳥に近づく。優しく近づき、驚かせないよう声を低くする。「大丈夫?」と優しく尋ねる。
ケイコは鳥の足元にそっと手を滑り込ませ、顔の方へすくい上げる。ケイコの手の中で、鳥はぎこちなく立ち上がる。こうして二人はきちんと向き合うことができた。
二人が目を合わせた瞬間、世界が止まったように思えた。目の前にいる存在の姿を、ケイコは吸収していく。
その鳥は鮮やかなオレンジ色で、さらに鮮やかなオレンジ色の縁取りが施されている。くちばしは薄茶色で、羽の先端には紫色が少し見えている。額にはピンク色の斑点がある。ケイコが今まで見たことのない鳥だ。
鳥は深い青色の目で彼女を見つめている…まるで人間のような目だ。
すると鳥は翼を広げ、ケイコの手から飛び立った。ケイコは衝撃を受けた。
ケイコは鳥が飛び去るのを見上げ、視界から消えるまで目をそらさなかった。そして声に出して尋ねた。「あれは何の鳥なの…?」
その時、太陽の光が彼女の視界の隅で何かを照らし、彼女はそれに目を留めた。
地面にペンが落ちていた。普通のペンではない。ピンク色のペンで、キャップが凝っていて、大きな赤い丸とピンクの羽根が描かれている。
不思議そうにケイコはそのペンを拾い上げ、「どうして鳥はこれを持っていたの…?」と声に出して尋ねた。
「ケイコ!」ケイコは振り返ると、ドアのそばにアオイとジローがいた。アオイは「いたわ!ずっと探していたのよ!」と叫んだ。
「あおい!」ケイコは立ち上がり、ペンを手に友達のところへ急いだ。「絵に決めた!」と元気よく宣言する。
「もう決めたの?」三人が校舎の中に戻ると、あおいが尋ねる。
背後のドアが閉まった直後、遠くから空に浮かぶ人影がこちらを見ていた。彼は眼下のキャンパスを眺め、得た情報を整理していた。
「芸術を称える学校…なんてひどい…完璧だ。」
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「外で見た鳥の絵を描いてるの!」
ケイコは美術館の廊下を歩きながら友達と話していた。
「わかった?」ジローは返事に眉を上げた。「あれはオリジナル?」
ケイコは両手を前に突き出して説明しようとする。「違う、違う、わからない!珍しい鳥だったの!誰も見たことない鳥よ!」
「ああ。」アオイの声のトーンと腕を組んでいる様子から、彼女はそれほど感銘を受けていないようだ。
「オレンジ色の鳥だったのよ!」
「ええ…」
「ピンクの斑点のある、明るくて美しい鳥よ!」
「ええ、きっとそうだったわ。」
「紫色もあったわ!」
「それなら魔法ね。」
「深い青い目で、じっと私を見つめていたのよ!」
「わあ、きっと意識があるのね」葵の声はずっと無表情だった。それが彼女の言葉を信じていない証拠だとは思えなかったが、次の言葉で明らかになった。「私の推測では、あの鳥があなたに魔法の粉を降らせて、それを右から二番目の星まで空へ運んだのね」
ケイコは皮肉に体が震え、頭上に雪雲がかかっているように感じた。笑顔が作り笑いになった。「あなた…信じてないの?」
「ええ、信じてますけど…でも…鳥でしょ。鳥に魔法の力があるなんて?」葵は疑問形に答えた。
「じゃあ、私がそれをしてはいけないと思うの?」ケイコは尋ねた。
「いや、やれ!君の芸術なんだから!」と葵は言い張る。「鳥を描きたいなら、鳥を描けばいい。」
「そうだな、俺は恵子とプロジェクトをやるんだ。」ロビーの階段に近づくと、次郎は葵に尋ねる。「本当にやりたくないのか?」
「きっと良くないだろうな…」葵は視線をそらし、少し不安そうな表情を浮かべる。
恵子は抗議しようとした。「何だって?でも…」
次郎は彼女の言葉を遮る。「でも、一人でここにいるのは辛いだろうから、それは分かってる。これ以上無理強いはしない。」
次郎はそれを聞いてケイコをじっと見つめる。ケイコは意味を理解し、頷いて同意する。
「二人とも楽しんで!」アオイは手すりにもたれながら笑顔で言う。「ただ、誰かを轢いて気が狂わせたりはしないでね。」
「ええ!」ケイコは敬礼をして、埃まみれの猛スピードで二階へ駆け出す。
次郎とアオイは少し心配そうに見守る。
「誰か轢いちゃうよ」次郎が指摘する。
「ええ、分かってるわ。」アオイはため息をつく。
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美術館の2階には、生徒用の絵の具ブースとして区切られたエリアがあります。イーゼルと棚があり、絵の具と筆、そして水の入ったコップが全員に用意されています。すでに何人かの生徒がイーゼルで絵を描いています。
ケイコは、ホールの他の部分からすべてを遮断する支柱のそばで生徒を見守っている近くの先生に近づきます。生徒たちがケイコの方を向くと、チケットを見せます。「ショーケース用のものを作りに来ました。」
「わかりました。」先生は親切にもケイコからチケットを受け取り、支柱の一つを開けてケイコを中に入れます。先生は空いているイーゼルを腕で指し、「パネルのないイーゼルは空いています。好きなイーゼルを選んでください。ただし、他の人のブースを横取りしないでください。」と説明します。
「わかりました!」ケイコは同意し、目の前のイーゼルに向かいます。キャンバスと絵の具と筆は反対側の棚にあるので、ケイコは必要なものを取りに行かなければなりません。彼女はそうする。小さなキャンバス、水を入れたカップ、筆、そしてオレンジ、青、ピンク、茶、紫の絵の具の入った容器を手に取る。色を混ぜて明るくするため、白い絵の具の容器も用意する。
全てが揃うと、鉛筆で鳥の輪郭をなぞる。鳥が翼を大きく広げた姿勢でなぞる。確かに、なぞった線はちょっと…雑だ。どの線もまっすぐではない。しかし、これは絵画の美しさでもある。骨格は単なる参考資料であり、完成品では誰も見ることはないので、完璧に描く必要はないのだ。
「うーん…」ケイコは鉛筆を顎に押し当て、輪郭をじっくりと眺める。「ちょっと華やかにしたい…棚にラメでも置いてあるか��?」ラメがあったかどうかは確認できなかった。
何かがチラッと目に留まった。視線を下に落とすと、制服の襟に付いていたペンが目に入った。不思議に思いながら、ケイコはそれを手に持ち、歩きながらそのペンから目を離さない。
ジェルペンのようなペンのようだが、インクは入っていないようだ。ペンをカチッと鳴らし、何も期待せずに手の上で何度も軽く叩く。
しかし、手にラメのピンクのインクが付いているのを見て、ケイコは目を見開いた。
どうして?!頭の中で考えてみる。インクなしで、どうしてこんなことができるの?!
ラメペンだ。本物のラメなんて関係ない。これなら完璧!
景子は振り返ろうとしたが、顔を上げなかったので、その瞬間…
ドスン!
別の女の子に頭からぶつかってしまった。二人とも床に倒れ込んだ。床には本が散乱している。景子は一瞬の間を置いて、傷ついた顔に手を当てた。
「気をつけて!」もう一人の女の子が叱責する。
「本当にごめんなさい!」景子は謝り、手を離して女の子を見た。彼女は怒りで歯を食いしばり、深い黄色の瞳が鋭く彼女を見つめている。オレンジがかった赤毛はバサバサとしていて、肩にほとんど触れていない。制服のネクタイは外され、袖はまくり上げられている。赤い指なし手袋をはめている。全体的に、彼女は強面かつ恐ろしく、その表情もそれをさらに引き立てている。
「あの…」景子は何と言えばいいのか分からなかった。「あ、本を持ってくるのを手伝おう…」
しかし、ケイコが本に手を伸ばすと、少女は本を引っ掻き、自分の腕の中に投げつけた。それは何かを恐れていることを示す行動だった。「私のもの触らないで!私が持ってるのよ!」
「ごめんなさい!」ケイコは少女が一人で本を拾うのを見守った。
「アキノ!」駅の先生が二人を叱った。「転校生にそんな意地悪しないで!彼女は親切にしているつもりなのに!」
「それに、私のもの触らせないで!」少女は怒鳴り返した。
少女はまだひざまずいているので、ケイコが先に立ち上がり手を差し伸べた。「せめて私が手伝わせて。」
少女の目は、険しい表情から困惑へと変わった。きっと彼女は親切の基本的な行為を理解しているのだろう?「あなた…どうして?」
「轢いちゃった。お詫びしたいの」とケイコは優しく言った。「ここはそんなに難しいことじゃないでしょ?」
少女はためらいがちにケイコの手を取り、ケイコは彼女を抱き上げた。
「もしよかったら、さくらケイコです」とケイコは挨拶した。
「秋野レイ…」少女は少し懐疑的な様子で挨拶を返した。
「それで、ご職業は?」ケイコは手を組んで尋ねた。
「あなたのは何ですか?」レイは質問に返答する。
「私、画家なの!」ケイコは嬉しそうに言った。「ほら、見て!見て見て見て!」
ケイコはレイに見せるためにキャンバスに駆け寄った。誇らしげに満面の笑みを浮かべた。「外で見かけたこの鳥を描くの!まだ描いてないけど…でも、きっと美しくて、みんなをびっくりさせるわ!」
「あらまあ…」レイは肩の力が抜け、表情も柔らかくなった。「羽が小さすぎると、そんなに美しくないと思うわ。羽がメインになるべきよ。キャンバスのスペースを最大限に活用して。誰も白いものを見たい人なんていないわよ。」
「あら…」ケイコの笑みは、批判されて少し���った。
「おい、アキノ!あっちへ行っちゃえよ!」先ほどブースにいたあの少年が、レイを叱った。「あんたがみんなを引き裂くなんて、誰も望んでないわよ!」
レイは腕を組んでケイコにニヤリと笑う。そして、皮肉たっぷりにこう言った。「私、ここではすごく人気者なのよ。わからない?」
ケイコは皮肉に気づかなかった。「じゃあ、どうしてみんなあなたのことが嫌いなの?」とケイコは尋ねた。
レイは言葉を失い、どう答えていいか分からなかった。彼女は振り返ることにした。「わかった。じゃあ、もう行かなきゃ」
「じゃあ、学校で会おうね…」とケイコは言った。そして、ケイコに手を振って付け加えた。「ああ、感想ありがとう!すごく参考になるわ!」
レイは言葉を止める。その言葉に、彼女は驚きで目を見開いた。
レイはほんの数秒、感動の表情を見せたが、すぐにそれを隠して立ち去った。
そう言うと、ケイコは輪郭を修正し、羽を大きくする作業に戻った。レイの言う通り、これでもういい感じだ。
ケイコはすっかり自分の世界に浸り、完全に集中すると、頭の中のあらゆる音や背景が消え去る。彼女の背後にあるものはすべて、ピンクと紫の魔法のゾーンだ。
さあ、作業開始だ。
ケイコは小さな斜めの筆、毛先が尖った筆を取り、オレンジ色の絵の具に浸す。丁寧に線に沿って筆を動かし、鳥の体の輪郭を描き出す。
それが終わると、別の平筆を取り、オレンジ色の絵の具に浸す。これでオレンジ色の輪郭を塗りつぶす。
それが終わると、両方の筆をきれいにする。3本目の筆を取り出し、パレットの上の白い絵の具に意識を向ける。手に持った筆で、オレンジ、紫、茶色、ピンクの絵の具に絵の具を浸し、混ぜ合わせて色を薄くしていく。オレンジはクリーム色のようなオレンジ色に、紫はラベンダー色に、茶色とピンクの色はより柔らかい色合いになる。
斜めのブラシを再び使い、鳥のお腹と尾羽の残りのオレンジの輪郭を描きます。頭と翼の先端には紫色の部分、くちばしと足には柔らかな茶色を使います。平筆を使って、これらすべてを塗りつぶします。
頭の3つの部分が空白になっているので、斜めのブラシを使ってピンクのハゲ部分を丁寧に塗りつぶし、次に濃い青色の目を塗りつぶします。
この時点で残りの部分は乾いているので、ケイコは大きくてふわふわした扇形のブラシに移ります。オレンジ色の塗料をブラシに軽く含ませ、鳥の体全体にも軽く塗りつけて、羽の質感を出します。
残りの質感には扇形のブラシは使用せず、代わりに小さなトリムブラシを使って羽と足の線を丁寧に描きます。次に、トリムブラシを使って瞳孔と目の白い部分を塗りつぶします。
アート制作の過程では、アーティストが自分の要素に没頭し、シンプルな紙に情熱を注ぎ込むこと以外に何も大切なことはありません。
仕上げに、ケイコは見つけたペンを手に取り、鳥の周りにピンクのグリッターで背景を描きます。絵全体が輝き、ペンで鳥の輪郭を描くことで鳥自身も輝きます。小さな渦巻きや星が至る所に散りばめられています。額のピンクの斑点にもペンを使い、際立たせています。
ケイコは自分の作品に感嘆し、出来栄えに微笑んでいます。
ある意味、芸術的な境地が終わってしまうのは残念ですが、最終的な結果には必ず価値があるのです。
背景の音や物音が脳裏に蘇り、最初に聞こえてきたのはアナウンスだった。「5分後に展示会が始まります!」
外は夕暮れ。体感するよりもずっと時間が経っている。
「ケイコちゃん!」ジローがケイコを見つけて、こちらへ来ている。「こんにちは!」
「ねえ、ジローちゃん!」ケイコは嬉しそうに挨拶する。
ジローがケイコの隣に来ると、絵がちゃんと見える。「わあ、すごい…」
「素敵でしょう?」ケイコは誇らしげに尋ねる。
「正直、こんなにいい作品になるとは思わなかったよ」とジローは認める。手に持っていたノートを開き、ケイコに見せる。「ところで、僕の作品、どう思う?」
スケッチブックの上部に指先を置き、端を少し傾けるとページが落ち、物語を描いた複数の絵が現れる。
鉛筆で描かれた女の子が本を持っているアニメーションだ。ページから猫が現れ、女の子の肩に飛び乗る。最後は女の子が子猫を抱きしめるシーンで終わる。
「可愛い!」ケイコは頬をぷにぷにさせながら大喜びする。
「え?」とジローは照れくさそうに尋ねる。
「つまり…子猫ね」とケイコが指摘する。
ジローは顔を赤らめ、どもりながら言う。「えっと…ちょっと可愛いものが描きたかったんだ」
「大丈夫!あなたにぴったりよ!」ケイコはジローの肩に手を置いて安心させながら言った。「あなたの仕事は本当にすごいわ。こんなにたくさんの絵を繋げて、動くアートを作るなんて、誰にでもできることではありません。」
「ええ、でも、もし笑われたらどうしよう?」
ケイコの笑顔が消える。その言葉が彼女の心の奥底を突き刺した。
からかい合いの喧騒はしばらく続き、一人を除く全員が指さして笑っていた。ケイコの絵がどれだけひどいかを延々と言い続け、絵とケイコ自身を笑っていた。
ケイコはその場に留まり、笑顔はますます作り笑いに変わっていった。笑い声と侮辱の言葉が頭の中に吸い込まれていく。ケイコは硬直し、教室の淡いヴィンテージ調の色合いは薄れ、笑い声はますます大きくなっていく。紙に置いた彼女の手は震えている。
「それって芸術じゃない!ゴミ!」
最後の侮辱の言葉に、小さなケイコはすすり泣いた。
もし絵が気に入らなかったらどうしよう?幼稚園で起きたことと同じことがまた起こったらどうしよう?
「えっと…」次郎の小さな声がケイコを現実に引き戻す。「列に並んだ方がいいよ。あおいはもう並んでるし。僕はここにいて、間違いがないか4回くらい確認するから。」
ケイコの頭上に暗い影が垂れ込める中、彼女は低く「わかった…」と言った。
次郎はケイコに親指を立て、視界から消えた。ケイコは一人で絵を持って階下へ降りる。廊下のすぐ近くに、彼女が使える階段がある。
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階下に降りると、ケイコは講堂のすぐ近くの裏口に気づいた。舞台上のアナウンスの声が反響し、ショーがすでに始まっていることを知らせていた。扉の前には、作品を発表しようと待つ子供たちの列が続いていた。
ケイコはキャンバスを握りしめ、列の最後尾へと急いだ。絵を見つめると、胃がムズムズしてきた。実際に見てみると、輪郭が完璧に描かれておらず、粗い部分がある。絵の具の塗りが均一ではなく、ざらざらとした質感だ。まるで幼児が描いたかのようだ。
その時、ケイコは目の前に何かが映り込み、思わず息を呑んだ。
先ほどの少年が、イカのキャンバスを持って目の前にいた。背景には本物の海があり、水や岩礁がとてもリアルに描かれている。イカ自体は複雑な生き物だが、その描き方はプロ並みだった。陰影、重なり、色彩、絵画に求める��のすべてがそこにあった。
それを聞いたケイコは、自分の絵をぎゅっと抱きしめた。そしてついに、静かに、真実を認めることができた。「私はここには合わないの…」
ゆっくりと、しかし確実に列は進み、ケイコは舞台裏へと向かった。舞台の前方にスポットライトが集中し、辺りは薄暗い。カーテンの隙間から、ケイコは保護者や上級生たちの観客の姿を見る。本当にたくさんの人がいる。じっと見つめすぎると、観客は大きくなり、目つきも険しくなる。
その光景に、ケイコは息を呑んだ。自分にもできるのだろうかと不安になった。
絵が下手すぎる!みんなにバカにされるぞ!
その時、目の前の少年がスポットライトを浴びる。ケイコの体は石のように硬直している。あと一人、そうすればケイコは立ち上がる。この少年の素晴らしい絵をみんなが見て、それから彼女の下手な絵なんて誰も気にしなくなるだろう…
少年は誇らしげな口調で、笑顔で自分の絵を披露する。「これは、メソニコテウティス・ハミルトニ、通称ダイオウイカだよ!この生き物を忠実に再現するように描いたんだ。南の冷たい海に生息し、肉食獣として何日も魚を捕食するんだ!たくさんの触手を持つ美しい生き物で、そのうちの2本は人をしっかりと掴んで口元に引​​き寄せるようになっているんだ!」
彼は明らかに自分の作品と、このテーマに情熱を注いでいる。ケイコは鳥について何を知っているというんだ?飛ぶ…それだけだ。だから、観客全員が拍手しているのが聞こえても不思議ではない。
驚いたのは、近くで誰かがゆっくりと拍手する音だった。
その音を聞いて、ケイコは意識が朦朧とした状態からハッと目覚めた。舞台の向こう側に、影に隠れた二つの目があることに気づいた。
「おめでとう!誰も気にしない!」
その言葉に皆が立ち止まり、声の方に注目する。
人影がスポットライトの中に現れる。小柄な十代の少年だが、制服を着ていない。片方の襟を折り返した淡い色のトップスに、グレーのパンツ、指なし手袋をはいている。黒髪はジェルで尖らせたようにツンツンとしており、肌は人間離れした灰色の色合いに見えるほど青白い。彼のあらゆるものに色彩と彩度が欠けている。まるで白黒のようだ。それでも、顔には悪意に満ちた薄笑いが浮かんでいる。
「え、あなたは誰ですか…?」 男子学生は困惑して尋ねる。
「ああ、気にしないでください。みんなが思っていることを言っているだけです。」 灰色の少年は宣言する。「あなたのくだらない絵なんて誰も気にしません!次の100枚のくだらない絵を見れば、みんな忘れてしまいますよ!」
「おい!」先生がステージに上がり、彼を呼び出した。「ここにいるなんておかしい!どうやって入ったんだ?」
「君の安全なんて、簡単に隠蔽できるもんだ」灰色の少年は、全く恐れることなく言った。「文字通りだ」
彼は両手を掲げ、指を鳴らした。たちまち、教師は壁に投げ飛ばされた。腕や物理的な力で投げ飛ばされたようには見えない。まるで…魔法のようだった。
誰かが倒れるのを見て、観客全員が立ち上がり、パニックに陥る。ケイコは暗闇に隠れ、恐怖で体が硬直し、何もできない。
しかし、少年はこの���の男の手に委ねられ、無防備な状態になっている。彼は明らかに緊張し、声は震えていた。「な、何がしたいんだ…?」
「僕が最後に君の目に映るんだから、隠しても仕方ないだろうな。」灰色の少年は肩をすくめ、銀色の瞳を光に輝かせながら、両手を差し出した。「僕の名前はノワール。この世界から醜い色をすべて消し去るために来た…君は僕を助けてくれるんだ。」
ノワールの掌から黒い破片が飛び出し、彼は「情熱よ、逆転せよ!不安よ、我のもとへ来い!」と唱える。
生徒が胸を掴み始めたのを見て、ケイコは恐怖に震える。ノワールは一体何をしているんだ?
黒い破片が学生の体から飛び散る。体中の色がすべて吸い取られ、灰色の影だけが残った。彼は動かなくなった。
黒い破片はノワールの手に当たり、黒い折り紙の鳥へと姿を変える。ノワールは顔に笑みを浮かべる。
「わあ、美しい!」ノワールは言った。「これで完璧だ!」
ノワールは手と折り紙を頭上に掲げた。「見よ!インクリング!」
折り紙は辺り一面に黒魔術を噴き出す。イカの絵に反応し、黒魔術も噴き出す。
折り紙は巨大でインクのように黒いイカに変身し、銀色に輝く二つの目だけがその対比を成す。
目撃者たちの悲鳴が響き渡り、ほとんどが既にドアの外へ逃げ出していた。舞台上の巨大イカモンスターが無数の触手を動かすと、その下では舞台の色が消え、灰色に染まり始めた。モンスターは舞台から飛び降り、椅子を叩き壊し、二本の鉤爪の触手で壁を掴む。壁もまた灰色に染まる。やがて、部屋の中のすべてが色を失い始める。
モンスターが舞台からいなくなると、ケイコはパニックに陥り、少年のもとへ駆け寄る。「先生!先生!大丈夫ですか?!」
彼は返事をしない。
ケイコは彼を掴もうとするが、恐怖に息を呑む。彼は…石にされてしまった!
この混乱を見守るニヤニヤしたノワールを見つめ、ケイコは叫ぶ。「どうしたの!?」
ノワールはニヤニヤを止め、ケイコの方を向く。彼は無礼にも「どうして気にするんだ?」と尋ねる。
彼が何をしたかは明白だ。わざわざ説明するまでもない。
「建物から避難しろ!」教師が叫び、全員を出口へと誘導する。「今すぐ避難しろ!!」
退散する群衆の中にいたアオイは立ち止まり、振り返る。ステージ上にまだ友人がいるのに気づき、「ケイコちゃん!」と叫ぶ。
ノワールはケイコを無視して飛び始める。そして声に出して言う。「いいか?行くぞ、インクリング!建物全体をカバーしなければならないんだ。まずは上から始めよう!」
インクリングは動きを止め、主の後を追う。触手で天井を叩き壊し、そこから這い上がる。瓦礫が飛び散る。
ケイコはそれを見ながら、頭の中で理解する。2人は2階へ行く…!
2階だ!!
「えっと…」次郎の小さな声が恵子を現実に引き戻した。「君も並んだ方がいいよ。葵はもう並んでるし。僕はここに残って、間違いがないか四重に確認するから。」
次郎は2階にいるよ!
それに気づいたケイコは、危険が迫る舞台裏の階段へと全力疾走し���めた。
「ケイコ!!」アオイもそれに気づき、ケイコの後を追う。ケイコがドアノブを掴むと、アオイも追いつき、ケイコのもう片方の腕を掴む。怖くなったアオイは、ケイコをドアから引き離そうとする。「さあ、行かなきゃ!」
「でも…」ケイコは腕を引っ張られるケイコに抵抗する。「…次郎!」
「次郎?」アオイはケイコの言い分に気付く。
その言葉にアオイは油断し、ケイコはアオイの腕を振り払う。ケイコは勢いよくドアを開け、壁に激しくぶつかる。階段を駆け上がる。
「ケイコ!!!」アオイはドアにしがみつき、叫ぶ。「ケイコ、やめて!!!!」
ケイコはもういない。
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インクリングは廊下を駆け下り、周囲のあらゆるものが色を失いつつある。触手が四方八方飛び回り、触れたものすべてにへこみをつけている。2階にいる人々は皆、叫び声を上げながら、見つけ次第階段へと駆け寄っていく。
窓の外では、オレンジ色の鳥が一羽、この光景をじっと見ていた。
鳥は、窓を割って穴を開ける触手から、かろうじて逃げ出した。触手が避けた後も、鳥の視線は建物の中へと続く穴に釘付けだった。
次郎は群衆の後ろで、ノートを抱えて逃げている。しかし、インクリングは群衆と、そして彼自身に追いついてきた。
次郎は出口の階段を見つけ、それを見据える。彼は出口へと全速力で駆け出す…
しかし、触手が階段の前に激突し、出口を塞いでしまう。
悲鳴をあげながら、ジローはどもりながら振り返ろうとしたが、目の前にインクリングがいた。インクリングの上に浮かんでいたノワールはニヤリと笑った。ノワールは「え、犠牲者って何?」と考えた。
ジローは逃げ出そうとしたが、その場に硬直していた。インクリングは触手をジローに向け、ジローは目を閉じた。
その時、ケイコが階段のドアを勢いよく開け放った。「ジローちゃーーーーーー!!!」
絶望の波が押し寄せ、彼女はドアを塞ぐ触手を体から投げ捨て、友人に向かって突進した。彼女はジローを抱き寄せ、二人とも道から押しのけた。触手は狙いを外し、床に落ちた。ケイコとジローは重なり合って床に倒れ込んだ。ノートはジローの手から投げ飛ばされた。
ジローは何が起こっているのかほとんど理解できていない。ケイコは何も理解しようとしていない。階段のドアから触手が逃げていくのに気づいた。「ケイコちゃん…?」
ケイコは彼の言葉を遮り、腕を掴んで引き上げた。「行け!行け!ここから出よう!すぐ後ろにいるわ!」
二人は立ち上がり、ドアに向かって走り始めた。ケイコはジローを先に出せるようにドアを開けた。あとはジローの後を追うだけ…
「何これ?」
ノワールの声が聞こえ、ケイコはためらった。振り返ると、ノワールがジローのノートを手に取り、パラパラとめくっていた。ノワールは見たものに冷酷な笑みを浮かべた。「猫の絵だって?冗談だろ」
ノワールの拳がノートを砕く。ノワールの手の中で、ノートは黒い粉と化し、消え去った。ノートの下部だけが残され、床に落ちた。ジローが一生懸命に描いたノートは、一瞬にして破壊された。
ケイコはそれを見て心臓が止まるかと思った。血が熱くなった。
この少年は、友人が一生懸命に作った作品を、何の罪悪感もなく破壊したのだ。
ケイコは眉をひそめ、歯を食いしばって怒りの唸り声をあげようとした。
ケイコが何かするよりも早く、何かが視界を横切った。
オレンジ色の何かがインクリングに向かって飛んできて、ギャーギャーと鳴いているのを見て、ケイコの目は怒りから驚きへと変わった。あれは…?
速い飛行��落ち着くと、ケイコはそれをはっきりと見ることができる。同じ柔らかな紫色の羽、同じピンクの斑点、同じ青い目…
鳥?!
確かに、それは先ほどの鳥だった。建物の中でインクリングに向かって突進している。ノワールも驚きながら、頭を振り返った。「何だ…!?」
鳥はインクリングの周りを素早く飛び回り、触手を避けながら、くちばしでインクリングの体をつつこうとする。しかし、どうやら効果がないようだ。
ケイコは気づかないうちに、外に出てその光景を目にしていた。ノワールと同じように、ケイコも混乱している。なぜこの鳥が建物の中にいて、インクリングと戦おうとしているのだろう?普通の鳥が、なぜこんな危険に身をさらすのだろう?
これらすべてが結果をもたらし、鳥はインクリングの目を撃ち、片目を閉じさせた。しかし、もう片方の目には、開けた場所に立っているケイコが映っていた。
インクリングは触手をケイコに投げつけ、ケイコはそれに気づき悲鳴を上げる。
鳥は急降下し、ケイコの体に体当たりし、二人とも勢いよく壁に投げ飛ばされた。ケイコの背中は壁に激しく打ち付けられ、鳥を胸に抱きしめたまま床に倒れ込んだ。
「ううっ…」ケイコはうめき声をあげ、起き上がろうともがく。目を開けると、腕の中にいる鳥に気づいた。仰向けになっていたケイコは、鳥を抱きしめた。鳥は怪我をしているようには見えなかった。
気のせいかもしれないが、鳥は彼女の触れ方に反応して息を呑んだ。まるで人間のような息切れだ。鳥自身も驚いたようで、硬直した表情から困惑した表情へと変わった。
その時、腕が頭上の壁に穴を開け、鳥を掴んだ。
ケイコは悲鳴を上げて這いずり下がったが、背中が壁の柱にぶつかった。
ケイコは、その人物が全身で壁を突き破るのを防いだ。それはまたしても薄灰色の男だった。ただ、この男の方が背が高く、黒髪を小さくまとめたポニーテールにしていた。同じ灰色のパンツを履いているが、黒いシャツの上に白いノースリーブのロングジャケットを羽織っている。腰と上腕二頭筋のベルトは、どちらも銀色のバックルで、非常に淡く彩度が低い緑色だった。
ケイコはただ見ているしかなかった。相手は自分が捕まえた鳥にレーザーのように集中していて、ケイコに気づいていないようだ。
男は外に出て、もがく鳥に得意げに微笑みながら、空中に浮かんだ。
「モノ!!」ノワールが叫び、相手の名前を明かす。モノはノワールの隣に飛び上がり、二人ともインクリングの頭上になる。「今、現れたのか!?」
「残念ながら、そうせざるを得なかった。」モノの声は、以前よりはしわがれ声や泣き言っぽくなくなり、落ち着いた単調な声になった。「それが私の任務だった。」
「そして、私があなたの任務をこなしている姿を見ろ!」ノワールは怒って叱る。「仕事中に寝てると思ったんだ!」
「寝てたけど、ラウンジから追い出されたんだ。」モノは呆れたように目を回す。「こう考えれば、私の仕事量はあなたより少ないのに、私の方があなたより多くを成し遂げている。」
「そんなわけないだろ!」ノワールは鼻で笑う。
「鳥に負けそうになったんだぞ。」
「負けてない!」
二人はしばらくそう言い争っていたが、鳥がモノの掴みから逃れようともがいているのを見て、再び注意が戻った。
モノは鳥の必死で無駄な試みに思わず笑ってしまった。彼は鳥を揺すり、挑発するように言った。「ああああ、どうしたんだ、鳥ちゃん?何もできない���か?」
鳥はまだもがいている。ノワールもニヤリと笑って加わる。「好きなだけ試してみろよ。プリキュアはもういないんだから!安心だ!」
「プリ…キュア…?」ケイコは理解する。柱の後ろからこの話を聞いていたのだ。
二人の少年は狂ったように笑う。インクリングは触手を伸ばし、口を開けている。鳥を食べようとしている。モノはインクリングの手に鳥を掴み、悪意に満ちた口調で尋ねる。「何を言っているんだ?イカの餌食になる覚悟はできているか?」
「…絶対に…」
部屋の全員が目を見開く。
しわがれ、緊張しているが、これが人間の声であることは明らかだ。
「まさか…」ノワールは信じられない思いだった。
ケイコ自身も信じられない。あの鳥が…喋ったなんて!?
「…まさか…」モノは息をしようとして、えずく。「…終わった…」
そうだ。あの鳥は喋っている。
あの鳥に知性があるなんて!?
「えーと…」モノは否定するように、ぎこちなく笑う。「地球の鳥が喋るなんて知らなかった…」
「おい!」ノワールはモノの肩を叩く。「あれは妖精だ!」
鳥は呼吸に、いや少なくとも窒息しないように話すのに苦労している。「私を…処分して…よければ…」モノ、というか彼は、外に出る。
「私は、この姿では何の役にも立たない…でも…この子たちの情熱…処分できない…この人たちは…この世界を…永遠に彩り続けるだろう!」
ケイコの目に輝きが宿る。鳥の言葉に誘われて過去に戻った彼女は、かつて自分を救ってくれた謎の人物を思い出す…。
「勝てません。魂の創造性を奪うことは決してでき���せん…それは素晴らしい祝福です。そしてこの子たち…この子たちは…私が亡くなった後も情熱を追い求めるでしょう…そして、愛するものを決して諦めません。彼らは世界のために絵を描くでしょう!」
ケイコは階段のドアのそばにある鳥の絵に目を留めた。インクリングはそれを見逃した。ケイコは手を伸ばして拾い上げ、じっと見つめた。
これを描いた時、ケイコは情熱を持っていたのだろうか?もちろん。
だから、たとえ無駄だったとしても、何もできないわけにはいかない。
「妖精がどうやって逃げ出したのか、私には理解できない」ノワールは鳥に言った。「まあいいだろう。これでだいぶマシになった!」
モノは再び、インクリングが食べられるように、鳥を触手にかざした。二人はこれから起こる出来事に笑い出した。
「おい!!」
一同は立ち止まり、廊下の奥へと視線を向けた。ケイコが目の前に立っていた。ケイコは絵を差し出し、インクリングに見せると、「消し忘れてるよ!」と言った。
「何ですって?」モノは自分が何をしようとしているのか分からず、片方の眉を上げた。
ケイコは安心させる。「ほら、きっとこれはあなたの…ペットの…イカ…モンスターにとって、もっと美味しいおやつになるわよ…」
「震えてるじゃないか」ノワールが言う。「どうして他のみんなみたいに走らないんだ?」
「わ…わかんない…」ケイコは認める。「でも…友達の絵を台無しにして…それに、知性のある人間を殺そうとしてるなんて…鳥だろうとなかろうと、そんなことは許せないわ!」
「人間だって?」鳥はケイコの言葉を理解した。それからケイコの制服の襟元に目をやった。ペンがそこにあった。「待って…!」
「馬鹿だな」モノは指摘する。肩をすくめて微笑む。「でも、もしどうしてもと言うなら、インクリングはまず君の絵を食べるだろう…そして君も!」
インクリングがケイコに突進する。ケイコは怯え、どうしたらいいのか分からず、すすり泣く。もう、終わりだ。
「あなたの情熱は何なの!?」
ケイコは鳥が叫んでいることに気づいた。「どうしてそんな絵を描いたの!?生きたいなら答えて!」
「私…私…」ケイコは鳥が何をしようとしているのか分からなかった。深呼吸をした。彼を信じなければならない。
「この世界のために絵を描きたい!!!」
フラッシュ
ケイコの絵からまばゆいピンクの光が放たれる。
インクリングは後ろに倒れ、少年たちの目はくらみ、鳥は逃げ出すチャンスを得る。
「な、何が起こっているの?」ケイコは閃光に不意を突かれる。
ピンクの光が魔法のようにケイコの周りを巡り、彼女を守ろうとする。絵自体が形を変え、別の何かへと歪んでいくのをケイコは見守る。
「ついに!ついに!!」鳥は喜びの涙を流しながらケイコの腕の中に飛び込む。「プリキュアを引き受けてくれたんだね!」と嬉しそうに言う。
「何言ってるの!?」ケイコは驚きの声を上げる。「なんで言ってるの!?」
「いいから、ここからが大事よ!」
絵が新しい形へと変化し終える。ケイコの目の前に現れたのは、パレットのようなものだった。それは、宝石がちりばめられたピンクの縁取りの、きらきらと輝く派手なパレット。ガラスの蓋が付いていて、真ん中に空いているスペースがある。周りのスペースには、黄色、オレンジ、赤、ピンク、紫、青、緑の順に色が塗られている。
「これがプリキュアパレットよ!」ケイコの手の中で浮かんでいる装置を見ながら、鳥が説明する。「さっき私を助けてくれた時に見つけたペン、覚えてる?」
ケイコはそれを取り出す。「これ?」
「ペンをクリックして、パレットの好きな色を3色タップして、空いているスペースで混ぜて、『プリキュア クリエイティブチャージ!』と叫ぶだけで、あとはお任せ!」
ケイコはためらう。これが自分にどんな影響を与えるのか、彼女は知らない。
「信じて!」鳥は懇願する。
鳥の表情からして、本物らしい。以前も彼女を助けてくれた。きっとまた助けようとしているのだろう。
ケイコはうなずき、自分の選択を決める。
ピンクネオンペンのクリック音とともに、背景はピンク色の魔法の空間へと変化します。
全身がピンク色に染まった佐倉けいこは、ペンを頭上に高く掲げています。もう片方の手でプリキュアパレットを持ち、それを開きます。
「プリキュア クリエイティブチャージ!!」
彼女はペンでパレットのピンク、赤、緑の点を軽く叩く。3つの点が光り、真ん中にキラキラと輝くチェリーピンクが現れた。ペンをペンに浸すと、ペンがペンで満たされた。
ケイコはペンを持って飛び跳ね、あちこちに絵の具をこぼした。背景は緑と赤の絵の具の斑点で覆われた。ケイコ自身の腕、脚、頬も絵の具の斑点で覆われており、ケイコは目に見えてそれに気づいた。
彼女はペンを手首の周りで回転させ、魔法の絵の具で円形の白い腕章を作った。
彼女はペンを足の周りで回転させ、足を広げて地面を踏み鳴らし、つま先とヒールが濃いピンクの、膝丈の丸い白いブーツを作った。
彼女はペンを差し出し、全身を回転させると、渦巻くインクが彼女の胴体に触れ、フリルのついたピンクのスカート、太い赤いベルト、そして薄緑の縁取りと花のような白い肩パッドが付いたゆったりとした薄ピンクのジャケットを形作った。
彼女はペンを掲げ、微笑む。カチッという音とともに、ペンは燃え上がり、ピンクの絵の具の斑点がついた。彼女はペンを投げると、ペンは回転し、絵��具が四方八方に飛び散った。
絵の具は彼女の胸に落ち、大きな赤いリボンと薄緑のブローチが現れた。
絵の具は彼女の耳に落ち、赤いチェリーのイヤリングが現れた。
絵の具は彼女のベルトの後ろに落ち、淡い半透明のピンクのリボンと、スカートの後ろから垂れ下がった厚手の布地が現れた。
絵の具の飛沫は彼女のスカートに落ち、赤と緑の絵の具の斑点となった。
絵の具は彼女のリストバンドに落ち、赤いリボンが現れた。しかし、彼女が腕を前に伸ばすと、ペンがリストバンドに落ち、彼女がそれを振り払うと、リボンはほどけ、今度は赤いリボンがリストバンドから垂れ下がった。
再びペンを握り、彼女は頭の上をなぞると、側面に赤いチェリーが飾られた薄緑のヘッドバンドが現れた。ヘッドバンドから魔力が漏れ出し、ブロンドの髪がマゼンタ色の塗料で覆われた。
ケイコはお団子ヘアを持ち上げ、放すと塗料が髪に反射して光り、髪に溶け込む。髪は濃いピンク色の髪型になり、何本かの後ろ髪と大きなトップのお団子ヘアが重なり、大きなつむじが桜の茎のように見える。
ペンを顎に当て、歯を見せて笑う。恥ずかしそうに親指で顎についた塗料をはじく。瞳は髪の色と同じピンク色に輝いている。
彼女は空中に飛び上がり、ピンク色の魔法が彼女から噴き出す。
ジャンプの頂点に達すると、ピンク色の魔法が背後で塗料となって爆発し、彼女は四肢を大きく広げてポーズをとる。
ネオンペンとパレットが彼女のベルトに取り付けられる。
ヒロインは落下し、上からさらにピンク色の魔法が彼女から噴き出す。
「筆で情熱と命を世界に広げる!」
彼女はぎこちなく着地し、危うく転倒しそうになったが、なんとか踏ん張った。そして最後のポーズを決めた。片足を上げ、反対側の腕を頭上に上げてピースサインを作る。
「ピンクのペインター!キュアチェリー!」
ノワールとモノはゆっくりと床から立ち上がり、目の前のピンク色の光を見つめる。膝をついたままのモノは、息を呑みながら尋ねた。「これは一体…?」
ノワールは腕と歯を食いしばる。「こんな…ありえない!」
「やっと!!」鳥は喜びに溢れ、光の周りを飛び回る。嬉し涙が頬を伝う。「プリキュアが帰ってきた!!」
ピンク色の光は人影から放射されており、その存在によって周囲の絨毯も同じ色に染まる。ピンク色の光が消えると、窓から夕陽が差し込む。ヒロインは鮮やかなチェリーピンクの瞳を見開く。
そして、その瞳は驚きの表情に変わる。「な、な、な、なに?!何が起こったの!?」彼女は驚きのあまり、自分の変わった姿を見て身をよじり始める。「な、な、なに!?私に何が起こったの!?!な、なに!?」彼女はピンク色の髪を掴む。「私の髪に何が起こったの!?」鳥はキュアチェリーの腕に飛び込み、胸に顔を埋めて泣きじゃくる。「会えて嬉しいよ!!」
「私って何なの!?」チェリーは疑問に思うように叫ぶ。
鳥は翼で涙を拭う。興奮している。「わかったわかった、プリキュアになったんだね!創造の力を持つ伝説の戦士!インクリングを止めてみんなを救えるんだ!」
「ちょっと待って、プリキュア、ゆっくりして!力だって?!」チェリーは言葉に詰まる。息を吸って少し落ち着こうとする。「それで…伝説の戦士?どういう意味?」
「インクリングと戦わなきゃいけないの!」
チェリーは言葉を止める。
彼女はインクリングを見る。
それから鳥を見る。
そして再びインクリングを見る。
そして鳥を見る。
��だめ!」彼女は振り返り、鳥を抱きかかえたまま走り出す。
「そこに突っ立ってるんじゃない!」ノワールはインクリングに向かって叫び、拳を床に叩きつける。そしてもう一方の手で、走ってくるキュアチェリーを指差す。「捕まえろ!生きたまま食べちまえ!!」
インクリングは命令に従い、彼女を追いかける。インクリングが追いついてくるのを見て、チェリーは叫びながら廊下を走り続ける。触手は絶えず彼女を追いかけ、攻撃しようとしてくる。
「なぜ逃げるんだ!」鳥は叫ぶ。
触手が降りてくる。チェリーはそれを避けようと右によろめく。
「正気か!?」チェリーは叫び返す。
「インクリングと戦わなきゃいけないんだ!!」鳥は要求する。
触手が地面に叩きつけられる。チェリーは左に倒れ、床に倒れ込んだ。彼女は素早く立ち上がり、次の触手に捕まる前に走り続けた。
「できない!!」チェリーは叫んだ。
「でも、あなたはプリキュアなのよ!!!」鳥が反撃する。
触手が上からチェリーを掴み、突き刺そうとする。チェリーはそれに気づき、叫び声をあげる。触手に突き刺される寸前、チェリーは予想以上に高く飛びのいた。その動きに、チェリーは鳥を放してしまう。両足は隣の壁の頂上に着地する。
「な、何しちゃったの!?」チェリーは自分の行動に愕然とする。「ど���すればいいの!?」
インクリングは別の触手をチェリーに向けて放つ。反射的に、チェリーは脚を使って壁から飛び降りる。その結果、全身がものすごい速さで吹き飛ばされ、ガラス窓を突き破ってしまう。衝撃で窓ガラスは粉々に砕け、それを支えていた壁の梁が崩れ落ちて横に傾く。他に掴むものが何もなかったチェリーは、梁に掴まり、建物の外にぶら下がったままになった。
「キュアチェリー!」窓の内側から飛び立つ鳥が叫ぶ。
「助けて!!」チェリーは叫び声をあげ、宙ぶらりんの状態から足元をすくい上げようと必死に逃げ回る。「助けて、助けて、助けて、助けて、助けて!!」
「私は鳥だ!持ち上げられない!」鳥は翼でくちばしを包み込みながら答える。
鳥は振り返ると、インクリングが梁に引っかかっているキュアチェリーに触手を向けているのに気づく。インクリングはキュアチェリーの方を向き、「俺の言う通りにしろよ!いいか?」と詰め寄る。
「えっと…いいか?」チェリーには他に選択肢がない。
触手は窓の外へ飛び出す。
「ジャンプ!」
チェリーは触手を飛び越えます。
「手を叩け!」
チェリーは足を開き、両手で触手を叩きつける。するとピンク色の魔法の弾丸が飛び出し、インクリングは身悶えした。チェリーの体が少し突き上がった。
「スライド!」
チェリーは触手に足を引っかけ、体が滑り落ちて中に戻ります。
「インクリングの顔を殴れ!」
チェリーは触手から飛び降り、インクリングの顔に拳を打ち込んだ。パンチの衝撃でピンク色の魔法が拳から放たれ、インクリングは壁に叩きつけられた。
チェリーは着地に失敗し、つまずいて転げ落ちた。
「よし!練習してるんだね!」鳥は祝福し、大丈夫かとチェリーのところに飛んできた。
チェリーは難なく立ち上がった。床にひざまずき、自​​分の手を畏敬の念を込めて見つめた。「私には本当に力があるのね…」
「ええ。髪を見ればわかると思ったのに」鳥は答えた。
チェリーは前を見ると、インクリングが立ち上がった。髪のつむじが乱れながら、彼女は叫んだ。「まだ続くの?!」
チェリーは立ち上がり、また逃げ出そうとするが、振り返った途端、鳥が目の前に舞い降り、耳元で鳴き声を上げた。あまりの音に、チェリーは思わず耳に指を突っ込んだ。
「もう二度としないぞ!」鳥は、チェリーに厳しいように、���を突きつけた。「お前はもうプリキュアだ!このインクリングと戦って、みんなを助けろ!断るなんて許さないぞ!」
チェリーは涙がこぼれるのを感じた。これは要求の厳しい鳥だ。
「しっかりしろ!さもないと、あの世でお前をハーピーにしてやる!」鳥はチェリーの顔に向かって唸り声を上げた。
「ハーピーって言うの?」チェリーはそれがどういう意味かと尋ねた。
「背中に標的がいる。お前の力で、奴らに撃ち返せ。」鳥は説明する。それから、チェリーの顔から離れたインクリングに翼を向けた。それから彼は何気なく言った。「気をつけろ」
二人は触手の攻撃をかわした。柱の陰に隠れていた。
「コスプレの力って、どういう仕組みなのかしら!」チェリーは両手を爪で引っ掻きながら叫んだ。
「だって、ほんの数分前に目覚めたばかりだし…」鳥は翼で自分の頭を押さえながら認めた。二人は少し考え、それからもっと分かりやすく説明しようとした。「絵を描くのが好きなんでしょう? 君の力は、戦闘を楽にする敏捷性と強さを与えてくれる。絵を描くのと同じで、筆を撫でるのではなく、殴ったり蹴ったりするんだ。」
「わ…わかったような…」チェリーの言い方から、彼女は明らかに確信が持てていない。
「手伝うから、思いつきでやればいい!」鳥は彼女を安心させた。
チェリーは彼を睨みつけた。
「ダジャレを言おうとしたわけじゃないのよ。」
キュアチェリーは再び開けた場所に歩み出し、インクリングと対峙する。彼女は走り出す体勢を取り、標的を睨みつける。深呼吸をする。
インクリングは四方八方に触手を放ち始める。キュアチェリーは前に駆け出す。
触手は彼女の周りに乱れ飛ぶ。チェリーは一本の触手をくぐり抜け、反対側から来たもう一つの触手をかわす。そして飛び上がり、インクリングの顔面に回転キックを放つ。別の触手が彼女に向かって振り下ろすと、チェリーは飛び降りてインクリングの顔面に再びキックを放つ。
もう一本の触手が、既に彼女を巻き付けるようにループ状に巻き付いて、彼女に向かってくる。彼女はそれを防ぐために、グリップの両側を掴み、かろうじてしがみつく。彼女は手を離し、触手に捕まる前に手足を閉じて飛び降りる。
彼女は床に着地し、体を転がして着地する。さらに触手が追いかけてくるが、チェリーはその度にそれらをかわし、触手を踏み台にして飛び降り、獣を蹴り飛ばす。3回目以降は、腕で触手の攻撃を1回防ぐのがやっとだった。別の触手が彼女を刺そうとしてきたが、彼女はなんとか後ろに倒れて殴りつけた。反対側からも別の触手がやってきて彼女を掴もうとしたが、彼女はかろうじて足を滑らせて床に横たわり、触手が絡まるのを防いだ。
不運なことに、3本目の触手がどこからともなく現れ、倒れている彼女の体を叩きつけた。触手は彼女の体を投げ上げ、天井に叩きつけた。
天井からシールのように剥がれ落ちていくチェリーは、柱にしがみついていることに気づいた。頭を振って衝撃から逃れようとする。インクリングの触手が2本、まだ絡まってしまっているのが見える。あと8本だ。
このインクリングをもっと包めるかも!チェリーは微笑みながら考える。
「おい!」チェリーはインクリングの注意を再び引こうと叫ぶ。「こっちにいるよ!」
「何をしようとしているんだ?」遠くから鳥が尋ねた。
触手が一筋、彼女に向かって噴き出してきた。チェリーはそれをかわすどころか、掴んで強く引っ張った。それに対し、別の触手が彼女を掴もうと迫ってきた。チェリーは掴んでいた触手で攻撃を防ごうと、二本の触手は絡まってしまっていた。
チェリーは床に飛び降り、インクリングの周りを走り回り、触手を誘い込んだ。上から一本の触手が追いかけてくる中、チェリーは一本の触手をくぐり抜けた。彼女はその触手を飛び越えると、さらに二本の触手が絡まってしまっていた。
彼女は絡まりから飛び降り、宙返りするが、隙を突かれて一本の触手に捕まってしまう。わざと両手を頭上に上げて、自由にしている。キュアチェリーはインクリングの顔に抱きつき、口を開けた…
手でインクリングの皮膚を弾き、インクリングをひるませた。すると触手が頭を貫こうとしたが、空いた腕で掴まれていた触手を振り払い、避けた。触手は互いにぶつかり合い、絡み合った。
今や、そこにいたのは二本の爪のような触手だけになった。
キュアチェリーは柱に向かって走り、両手を大きく振り回して柱に近づく。二本の爪が追いかけてくるが、キュアチェリーは柱をよじ登って避ける。爪は必死の力で柱に打ちつけ続け、その力は構造物にひび割れを起こし、崩れ落ちようとしている。崩れ落ちるだろう。
まさにこれこそが、キュアチェリーの狙いだった。柱の上に乗り、柱の後ろに回り込み、壁を支えに両足で柱を押し上げる。
構造物は折れ、柱はインクリングの頭に叩きつけられた。明らかな脳震盪とともに、それは気絶し、残った触手は床に縮こまった。
キュアチェリーは床を転がり落ちて着地する。今度は両足で着地し、自分の巧みな技に微笑みを浮かべる。鳥は驚きで目が真っ白になる。彼女は誇らしげに尋ねる。「こんな感じ?」
「わ…感心しました…」鳥は認める。しかし、壊れた柱と、その残骸には目を留める。「…本当に壁の破片をぶつけたんですか?」
「うまくいったわ!」チェリーは反論する。
鳥は言う。「今度はペンキを撃って仕留めるのよ」
チェリーのプライドは崩れ落ち、混乱が広がる。「何ですって?」
鳥は説明する。「プリキュアパレットを取り、ネオンペンをピンクのボタンにもう一度押し当てて、クリエイティブウィングを塗るんだ。パワーが上がり、大量のペンキを好きな攻撃の形でインクリングに投げつけることができるんだ!」
「わかった…」チェリーはベルトからペンとパレットを取り出し、鳥の指示に従う準備をした。
ピンクネオンペンのクリック音とともに、背景がピンク色の魔法の空間へと切り替わる。
「ピンクネオンペン!私の翼を創って!」
彼女はパレットのピンクのボタンにペンを押す。中央のスペースにピンクの絵の具が現れ、ペンを浸すと、ペンがペンで満たされる。
キュアチェリーは魔法の絵の具をくるくると回し、激しく飛び跳ねる。
回転が遅くなると、魔法の絵の具は彼女の周りを回転し、背中に降り注ぎ始める。
ピンクの光が瞬く中、彼女の姿が完成し、チェリーは足を外側に蹴り上げ、頭上にピースサインを描いてポーズをとる。
チェリーは驚いて彼女の背中を振り返る。「それは…」言葉が出ない。
彼女の背中には、丸いピンクの妖精の羽が生えていて、濃いピンクの縁取りが施されている。
チェリーは両手を握りしめる。両手を広げると、赤いペンキが手からこぼれ、赤い球体の形になる。
「ゴー・ワイルド・チェリーズ!」
球体はいくつかの小さな球体に分かれ、彼女の体の周りを回転する。
​​「プリキュア…」
彼女は頭上に手を上げる。球体はすべて合体して、大きな赤い球体になる。彼女は手を後ろに引く。彼女は標的を見つめる。
「チェリー…スプラッター!!!」
彼女は球体を投げる。球体はいくつかの球体に分かれ、すべてインクリングに命中する。それらはモンスターの体に張り付く。
キュアチェリーはペンを手に振り向く。ペンをカチッと閉じると、羽が消える。彼女は歓声を上げながら空中に飛び上がる。「やった!」
球体は、インクリングの体中にピンク色の塗料を轟音と混沌のごとく次々と爆発させる。爆発はインクリングを色で覆い尽くす。
「カラフル…」インクリングは呟き、その反応として体が光る。ピンク色の光に包まれ、インクリングの体は消え去る。後に残るのは、白く浄化された、宙に浮いた折り紙だけ。
攻撃を受けたチェリーは息を荒くした。振り返った自分の仕業を確認するが、めまいでほとんど集中できない。「私、やったの…?もう終わったの…?」
疲れ果てて、彼女は膝から崩れ落ちる。
「きっと、君の体はそんなに力を使うことに慣れていないんだ」鳥は彼女に説明する。「心配するな。何度か戦えば慣れるし、それほど消耗もしなくなる。」
「何度か戦えばってどういうこと?」チェリーは信じられないといった様子で息を呑む。
「ほら見て!」鳥は翼��空を指差した。チェリーは見上げると、浄化された折り紙が空中に浮かんでいた。
「あれは、彼らが盗んだあの少年の情熱だ!君は彼を救ったんだ!」
折り紙は飛び立ち、階段の扉から出て行く。
「どこへ行くの?」チェリーが尋ねる。
「宿主のところへ戻る。」鳥が答える。
折り紙は講堂に戻り、少年の像と対面する。折り紙は形を失い、輝く魔法へと変わり、少年の体に流れ込む。
石が彼の体から砕け、色彩が戻り、少年は膝から崩れ落ちる。めまいで頭を抱えながら、彼は尋ねる。「ここはどこにいるんだ…?」
「ちょっと待って、あの少年たちはどうなったの?」チェリーは辺りを見回しながら尋ねる。「どこへ行ったの?」
ノワールとモノは、心配そうな表情で建物の上空に浮かんでいる。
「ショキョ様はきっと喜ばないだろうな…」ノワールは呟き、自分を抱きしめる。
モノはニヤリと笑って、「いいだろう…お前のせいだって言ってやる」と決意する。
ムーは空中に消える。
ノワールは怒りに目を見開き、「ちょっと待って!」と叫ぶ。
ノワールは空中に消える。
キュアチェリーと鳥のいる場所から、おそらく警察のサイレンの音が聞こえる。
「わかった」鳥は飛び上がり、ノワールに指示を出す。「元の髪に戻したいなら、ペンの蓋を閉めてくれ。裏で会おう。」
「待って!」チェリーは叫び、手を伸ばしたが、鳥はすでに窓から飛び出していた。
階段を上ってくる人の足音が聞こえ始める。彼女は慌ててペンを取り、閉じようとした。
一瞬のうちに変身が解け、制服姿とブロンドの短いカールヘアが戻った。
ケイコは、これがうまくいったことに驚き、自分の手を見る。膝の上にプリキュアパレットがあることに気づく。それは服の他の部分のように消えていなかった。ケイコはそれを拾い上げ、「パレットはそのまま…?」と観察する。
階段のドアが勢いよく開き、数人の警察官が被害状況を確認するために入ってきた。一人の警察官がひざまずいているケイコに気づき、近づいてきた。
「さあ、行きましょう。大丈夫ですよ。」彼はケイコを階段を上り下りさせるのを手伝った。警察はケイコを襲撃に巻き込まれた、ごく普通の被害者だと考えている。「怪我は?」
「いいえ。」ケイコは静かに答えた。
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ケイコは階下のロビーに案内された。そ���には警官たちが警備にあたる場所があった。ケイコは二人の警官が教師と話しているのに気づき、そのうちの一人が状況を説明しているのを耳にした。
「犯人は顔と身元を明かしました。しかし、どうやら逃げてしまったようです。見つけることができません。しかし、彼らはここでのテロ行為で社会の敵となっています。彼らが作り出した怪物については…私たちはあなたを信じています。目撃者がそれを証明しています。しかし、私たちがここに到着した時、怪物は…消えてしまいました。問題の少年は怪我をしていませんが、ショック状態です。何が起こったのかは分かりません。少なくとも2週間はかかる工事のため、博物館の警備に警官を派遣します。また、このようなことが再び起こった場合に備えて、学生を守るためにキャンパスにも警官を配置します。」
次郎と葵は正面玄関で、他の学生たちが警察の検問を受けている列に並んで待っています。葵はケイコを見て息を呑み、次郎の肩を軽くつついて自分にも気を引こうとします。
「ケイコちゃん!!」葵は泣きながら、ケイコの元に駆け寄り、ぎゅっと抱きしめます。「大丈夫?!何があったの?」
「葵!」恵子は恵子に会えて嬉しくて抱きしめ返す。「大丈夫よ。本当に。」
葵は慌てて恵子から離れ、髪を引っ張る。「二度とあんな風に驚かせないで!」と厳しく言い放つ。そして少し間を置いてから、「怖がらせるのは分かってるけど…でも…」と付け加える。
次郎も一緒に恵子を抱きしめる。彼はさらにパニックになっている。「恵子、何が起こったのかわからない!! 君、君は僕のすぐ後ろにいたって言ってたから、見なかったし、階下に降りても見えなかったんだ…ごめん!あのものにやられたと思ってた!!」
「次郎、大丈夫よ。」恵子も次郎を抱きしめる。「ただ、君が無事でよかった。」
「ええ、どうしたの?」次郎が離れると、葵が尋ねる。「次郎のすぐ後ろにいたのよ!だから…」
「それは…」恵子は全てを説明しようとした。喋る鳥、パレット、キュアチェリー、喧嘩…
しかしその時、窓の外に鳥がいて、彼女をじっと見つめているのが見える。鳥は厳しい表情をする。
「あれは…」ケイコは言葉を戻した。「ノートだった…次郎、落としたんだ…」思い出して、ケイコの表情は悲しげになる。「取り戻そうと思ったんだけど、あの男が…壊しちゃった…ごめん、次郎、頑張ったのに…」
「ケイコ」次郎はケイコの肩に手を置き、目を合わせるように言った。「ノートはもう一冊作れる。サクラケイコっていう友達はもう二度と作れない」
二人は再び抱き合い、ただ二人とも無事で良かったと喜んだ。
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ケイコはこっそりと裏庭へ出た。ありがたいことに、柵に止まっている鳥以外、誰もいない。
鳥はケイコが現れたのを見て微笑んだ。「君みたいな人をずっと探していたんだ。奇跡だよ…ありがとう。今まで本当にありがとう。」
「それで…私はこのままでいいのか?」ケイコは尋ねる。鳥はケイコに口を挟もうとするが、ケイコは自らの問いに答える。「いずれにせよ、私は自分で選んだのだから。」
「もう?」鳥は首を傾げる。
「今日、友達の作品が壊されちゃったの。他にもたくさんいるのよ。」ケイコは説明する。彼女の表情は終始、厳しく真剣そのものだった。「そんなことはさせたくない。誰もこんな目に遭うべきじゃない。誰もが自分の情熱を世界に示し、利用されるべきではない。そして…もしそれが、私が愛するものを守るための手段なら、あなたの望みを叶えてあげる。私はキュアチェリーになるわ。」
鳥は安堵の笑みを浮かべた。「そう言ってくれると期待してたのに。」
「それで…私と一緒にいるってことだよね?」ケイコは彼を指差して尋ねた。「ところで、お名前は?」
鳥は羽根を広げて握手を申し出るように答えた。「オレニジです。お会いできて光栄です。」
「サクラケイコです…ケイコと呼んでください。」彼女は羽根に手を伸ばしながら答えた。
二人は握手を交わし、約束と新たな同盟を固めた。二人は希望に満ちた笑顔で見つめ合った。
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moko1590m · 5 months ago
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東京大学、全大気のデータ作成に成功:気象予測の未来を変える 記事の本文にスキップ
著者牡丹堂・パルモ 公開:2025-01-15・更新:2025-01-15
 東京大学の研究チームによって、大気圏すべてを網羅するデータセットが作成されたそうだ。
 佐藤薫教授らが開発したデータ同化システム「JAGUAR-DAS」と、ここから作成されたデータセット「JAWARA」は、地上から高度110 kmまでの大気全体をカバーしたものだ。
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 これまで技術的に観測が難しかった「中間圏」や「下部熱圏」までをも分析することができる。
 この画期的な成果のおかげで、天気予報や気候変動の予測がより正確になるだけでなく、宇宙気象の解明も進むと期待されている。
過去20年にわたる全大気再解析のデータ作成  最近ではずいぶんマシになったが、それでも天気予報に裏切られることが完全になくなったわけではない。
 もちろん気象予報士にも言い分はあるだろう。そもそも、これから天気がどう変化するのか予想するのは、そう簡単ではないのだ。
 大気は複雑かつ相互に作用するシステムなのだから、それを完全に読み解くのはかなり難しい。
 東京大学大学院理学研究科の佐藤薫教授らはこうした状況を前進させるため、大気大循環モデルとデータ同化手法を組み合わせて「JAGUAR-DAS」というシステムを開発。これを利用して大気全体のデータセット「JAWARA」を作成した。
 JAWARAは、地上から高度110 kmまでの大気圏の様子を2004年9月~2023年12月に渡ってとらえたデータだ。
この画像を大きなサイズで見る 地上から高度110kmまでの全大気をカバーする世界初の再解析データJAWARA。北極域の気温と赤道域東西風の19年間にわたる時間高度断面図。 image credit:東京大学プレスリリース  高度100 kmを「カーマン・ライン」といい、一般にそこより上は宇宙とみなされる。つまりJAWARAは地球の大気圏すべてを19年にわたり網羅したデータセットなのだ。
 特にすごいのは、このデータセットが高度50~110 kmまでの「中間圏」や「下部熱圏」までをもカバーしているところだ。
 この領域は、人工衛星で観測するには低すぎ、気象観測用気球では高すぎるため、これまでは観測が難しかった。だがJAWARAのおかげで、今後は「研究困難領域」と呼ばれたこの領域すらも詳しく調べられるようになる。
この画像を大きなサイズで見る 地上から高度110kmが全大気。高度約10km以上を中層大気と呼ぶ。灰色の線は大まかな物質循環の構造を表す image credit:東京大学プレスリリース 気象現象の解明や、天気予報、気候変動対策に有効  中間圏・下部熱圏の様子がきちんと解明されるようになれば、その下にある「成層圏」で起きる現象や、「対流圏」や地上の天気にどう作用しているのかなど、大気の働きの理解がさらに深まると期待される。
 それは天気予報をより正確なものにしてくれるほか、気候変動への対策を練るうえでも便利だろうという。
 また地球だけでなく、宇宙の天気の解明も進むと期待される。
 JAWARAがカバーする一番上の領域は、宇宙の一番下でもある。ここを分析すれば、大気が「電離圏」に与える影響や、太陽フレアが放出した高エネルギー粒子が地球の大気に与える影響といったことも調べられる。
 JAWARAという新しいデータセットの登場によって、これまで別々に研究されていた大気科学と宇宙科学が統合され、より深い理解がもたらされると期待できるそうだ。
 この研究は『Progress in Earth and Planetary Science』(2025年1月10日付)に掲載された。
References: Unlocking the Ignorosphere: Tokyo’s Breakthrough in Atmospheric Science / Press Releases - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部
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地球の成層圏で記録された謎の低周波音。繰り返し鳴り響く
(東京大学、全大気のデータ作成に成功:気象予測の未来を変える | カラパイアから)
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kaoriof · 10 months ago
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無題
平穏よりも胸のときめきをいちばんにしたら世界のぶあつい皮膚が一枚めくれたかのようになにもかもが歌い踊りかがやきはじめたのをいまでも覚えている。わたしは親が厳しくて外泊できないけれど、そのあいだに同級生の子たちはうつくしい島の海に反射する満月をみて、だれかと夜通しぴたりとからだをあわせて内緒話をするような、今にもぷつりと切れそうな糸のように細くて鋭い若さを世界の夢に浸らせている。感性を野放しにして、こどものころの感動をひとつずつ取り戻す時間がわたしにも必要だった。けれど思いどおりにいかないこともある、それも定めとおもって歯をぎゅっとくいしばる。わたしには必要だった。路上、白い廊下みたいに澄んだ朝霧をかんじる時間。薄いトップス。ズレた口紅。好きな男の子と寝て一限目をサボるとか、夜の街頭を走り抜け、くだらないことに時間とお金を費やすこと。「それだけじゃない、夜に遊ばなくても昼に釣りをしたりサッカーしたりそういう遊び方だってあるだろう。そっちのほうが幾分もまともだ」 おとうさんは夜遅くに帰ってきたわたしを叱りつけ、そう言った。わたしはけしてワルにあこがれているのではなくて、ただただ綺麗なものに飽きただけだった。わたしにとって祈りや信仰はさいしょから型があってそれに当て嵌めてハイ完成みたいなかわいいお菓子作りのようなものじゃなかった。昔も今も自分でうつくしい歌をつくれない。うつくしいものがたりをかけない。うつくしい絵を描けない。世の中にはフォロワーが万桁いる女子高生がいて、今、世界中では何千もの美術展が開催されていて、明日、いつかオリンピックに出るであろう少年がはじめてスケボーに乗るかもしれない。わたしには何もできないかもしれないけれど、彼らの生き様はわたしをわたしたらしめる微かなエッセンスとしてわたしに溶け込む。それを祈りという言葉で表象してはだめ?これからのことをかんがえると、ずっとどきどきする。目の前の光景が、訪れたことのない地の光が、風が、わたしを、わたしのからだを必要としてる気がする。世界中に張り巡らされた血管がわたしの心臓部にも繋がっているような心地。死ぬ5秒前ってどんな感覚なのかしらないけど、築き上げた塔が崩れてゆく感じなのかな、雪景色のような。
無題
朝起きたら腕に友達の噛み跡と身に覚えのない痣が3つくらいあった。耐え難い疲労がからだのあちこちにひっついて、入れ墨と化している。活字の海を、本をその背に背負えたらよかったのに、今のわたしを崖っぷちに引き止めているのはうつくしい言葉でもなくて、泥に塗れた重いカルマ。イヤホンの先から垂れ流れる音楽すらも風のように軽やかで自由なものではなくて、ねばねばした気持ちわるくてかなしいものに聴こえた。夏と、そのあつさと、その底知れぬ闇に街ゆくものすべてがこころのずっと奥の方で平伏している。昼過ぎにスクランブル交差点前の巨大スクリーンが薄青い空を泳いでいるようにみえたこと、街ゆく人の肌色が、シャボン玉のようにその熱を吸収して発光していたこと、ぜんぶなんか夢みたいにふわふわしているかんじがした。もうすぐでなつやすみなのに、大学入ってからそれまでもずーっと夏休みのような感じだったからあまりどきどきしない。みずみずしくずっと光っていたい。わたしもいつかデカい人間になりたい、いつかいつかいつかという文句ばかりが増えてゆくのを横目でみて、ぜんぶカサブタを剥がすように振り解いて拭ってくれる奇跡みたいな命、日々、音をどうしても期待してしまう。どうすればいいんだろーと思いながらまたあしたも友人と夜ご飯をたべにいく約束した。それでまた家に帰って、朝起きて虚無感に苛まされて、の繰り返しを大量の課題で中和する。薄暗い中でたべるごはんとか朝早起きして化粧をすることじゃない、今はなにもない海とか草原でなにも繕わずにその自然のデカさとか愛を仰向けになって享受するのがいちばんただしいきがする。たすけてと呼ぶには大袈裟すぎるし。
end
泣き出しそうに張り詰めた空気に鼻を啜る。世界の彩度が落ちて、ぶあつい服を着た街ゆく人たちが皆んなちっちゃな怪獣みたいにみえる。肌寒い。外はずっと灰色、モスグリーン、レモンみたいな匂い。大きな木が揺れて、木の葉の上に横たわっていた雨の滴が霧のように3秒間くらい降った。最近は毎日毎日やることが多くて、それをこなしているあいだに1日が終わる。3日連続で化粧を落とさずに寝てしまった。多くの人が電車にのっているときに外の景色に目をやらないのと同じ感覚で、わたしも生活の外側にひろがる微かな動きに鈍くなった。ずっと特別でありたかった、1番愛されたかった、そういった思春期的な熱望とどんどん疎遠になっていく自分に日々焦ったり安堵したりしている。だけど同時に、わたしの中をまだ生きている17歳のわたしがその面影をときどき覗かせる。期待させる。突拍子もなく走ったり、ゲラゲラ笑ったりする。些細なことで泣いたり、理不尽な世界に怒っている。良くも悪くも変わっていくのなら、これからの自分に期待をしたい。アルバイト先では後輩が6人くらいできて、みんなわたしよりも仕事ができる。わたしはもともと注意をされると衝動的に泣いてしまうところがあったし、シンプルに忘れっぽかった。あまりにも器用に仕事ができないので、ある日店長とそのことについて話し合ったら意識の問題と言われた。その1、人からのアドバイスに劣っている自分を見出してはだめ。その2、素直に人からの意見を受けとる。その3、自分のためでなくだれかのために働く。この3つを約束した。夜の繁華街で50歳の男性に飲みにいきませんかと声をかけられたり、あした授業にどんな服でいくかを考えながら化粧品を見に薬局に寄り道したり、腕に点々とのこる虫刺され痕をみて、それを残した蚊のことを考える。あした、図書館で借りた本の返却期限。わたしもちっちゃな怪獣になって寒さをまるごと食べてしまいたい、寒い日の、霞んだ光やクリアな淋しさ、果実のようにぎゅうぎゅうに酸っぱい気持ちを。
slow burning
大学一年生というよりも、高校四年生というような振る舞いをしているなあ、と自分のことを客観視する。新宿の横断歩道橋から行き交う人々を眺める。つい最近まで、委員会の同期の仲の良さにムラができていて、グループとかカーストとかそういう言葉が浮上してきてしまうほど揉めそうになっていた。それでも、それぞれが居心地の良い場所にしようと歩み寄っている。こういう、諦めによる愛想ではなくて心からの気持ちに胸を打たれる。明大前の飲み屋で酔っ払って「俺みんなのこと愛してるよ」と照れ笑いする先輩に、わたしたちみんな、キモいねーなんて言って茶化した。そのあと夜の大学で騒いでいたら警備員に注意された。机の下に10円玉を落としたのを拾わないで帰る。いつ��でも赦されていたい。山猫のような女の子でいたかった。すぐ隣、肌すれすれにだれかの温もりを感じて弱さを誤魔化すのではなくて弱さを共鳴しあっていたい。「東京の人は生き急いでいる」なんて言葉があるけれど、わたしは美しい光景がそこに広がっていれば必ず立ち止まる人でありたい。仕事に遅れそう、とか、終電が、とかじゃない、好きな人たちのためだけに忙しくありたい。恋人は待ち合わせをするとき、「どこでおちあう?」と聞くのだけど、高2の頃、初めて会う日、それを「(恋に)落ち合う」と勝手に解釈して勝手にどきどきしたのを思い出した。それからわたしも「どこで落ちあう?」と聞くようにしている。ドア窓の形に切り取られた青い影が電車のフロアに映って、がたんごとんという音に沿ってフィルム映画みたいに小刻みにうごいていた。池袋で新疆料理をたべて、お腹を下す。スペイン語の中間試験。渋谷で5分1000円の手相占いをしたら、鎖みたいにいくつもの線が絡まっていますね、と言われた。意外と気にしいなんじゃないですか?「そうですね」と答える。駄菓子屋で1000円使い切ったほうが幸せになれそうだとおもった。電車の隣の線路にカラスが一羽いた。こんなに近くでみるのははじめてだ、と思って、じーっとみつめた。黒なのに黒じゃなくて、光を受けて渋いグリーンや紫っぽくみえる羽毛に目を見張る。なんか、空はどこまでも真っ青なのに光の細部だけ色があたたかい夕方前みたい。ふわっとなにかに気付いて、じーっとそれを見つめて、そこになにかが“視える”とぜんぶ途端にスローモーションになって、焦燥感や虚しさがたちあがってくる瞬間がある。からっぽなのにぎゅうぎゅうな感じ。AirPodsをケースにしまう音が体感的に5秒間くらい耳に残ったり、自分の息遣いにどきどきしたり、すれ違う男子高校生の会話声や、鳥が羽をはためかせる様子がクリアに輪郭が保ったまま空中を転がる。ガムを買って噛みながら、心のもやもやしたなにかを同時に小さく噛み砕いてゆく。光の洪水。家に帰ってパスタをたべたあと、お風呂で下の毛をつるつるにする。夕方終わりにお風呂に入るの、とても好きだなあと思う。コンタクトレンズを外さないまま、化粧も落とさずベッドへダイブする。瞼の裏に東京タワーの赤がたましいの塊みたいにまあるく光っている、はやく何もかも諦められる年齢になりたいと思う。
無題
なんかまじでわたしが疲弊していて悲観しているのか、世界が残酷なのかわからなくなってきた。脳科学の講義を受講したあと、テキトーに混雑した休日の街をあるいていたら皆んなの脳みそが透けて浮きでてきそうで気持ち悪くなった。地球4周分の神経線維。そう、どでかい爆弾が街ゆく人々の頭蓋骨に葬られている。ニューロンが軸索を介してつながってゆく、放出と受容を繰り返してみんな手を繋ぎあってゆく。セール中でバイトの雰囲気がぴりぴりしていて、みんな資本主義の豚みたいに働いていた。うつくしくないとおもったし、私も美しくなかった。結いた髪に、ぴたっとあげられた前髪。なにを思っているのかを書くのがずっと怖かった。もしかしたら私の感じているこの欲望はとても汚らわしいもので、それゆえにだれかを傷つけてしまうかもしれない。でも、言葉にしなければすぐにわすれてしまう感情に名前をあげなくなって、水をあげなくなって、そうしたら、じぶんの脳みその溝をうめていたみずみずしい苔までもがすっかり枯れきってしまって虚構を連ねるようになった。空洞に哀しみの音だけが響き渡る。友達はいるけど、私はその友達の1番になれない。恋人みたいな人はいるけど、私はその恋人の1番にはなれない。1番っていうのはほんとうの意味での1番、2番とか3番とかがいない1番。圧倒的な2人の世界の中でのフェアで高貴な1番。有名になりたかった。文章でも外見でも写真でもなんでもいい、だれにも敵わない羽根で世界を羽ばたいてみたかった。わたしを選ばないで、そこらへんのそれっぽくかわいい女の子を選ぶかっこいい男の子たちを信じられないでいる。外国に行ったらモテるよ^_^と投げかけられた言葉について何回も考えるけど、考えるたびにかなしくなる。でもね、神様はいるとおもう。木漏れ日の首筋に、砂丘のしずけさに、広大な空の一枚下に、その温もりと永遠が芽吹いているのをしっている。そのたびに、わたしはこの世界に愛されていて、まだ19歳で、まだ何にでもなれて、そして世界を(気持ちがあふれてしまいそうなくらい)等身大で愛しているドラゴンみたいにかわいい女の子だとまじないを唱えるようにして心を強く保つ。アスファルトに散った桜が朽ちて、吐瀉物のようにグロテスクにぬるい光を浴びている。走り抜ける。だれかの憎悪の中に、疑念の中に、見下しの中に憧憬の眼差しを覚えながら。東京で灯される光の数だけ、アフリカの広原でつややかな花が咲けばいいのに。光の重さの分だけ、銃弾が軽くなればいいのに。帰り道、ひさしぶりにパンを買って帰った。
日記
弟がiPadのタッチペンを無くしたらしくて、それを聞いた母がすぐにAmazonで検索して新しいのを買った。こういうとき、ほんとうになんか小さなことだけれど、すごく心が愛にみちる。
大学の新校舎の建物のにおいが400人もの人が集まった大教室の縁をすべっていく。扉を開けた瞬間、目と目と目がわたしの顔を捉える。湿気漂うフロアにだれかがペンを落とす音、先生のマイクが吐息までもを拾って湿った熱を加速させる。「儚いって聞いて何を思い浮かべますか?蝶?蛍?蝉?トンボ?」 教授がそう聞くと、みんなのえらぶ選択肢がちょうど均等に分かれる。講義が終わるといつもすぐに帰るイケてる男の子が蛍を選んでいて、なおさらかっこよく見えた。わたし、インスタのフォロワーが490人いるんだけど、その人数って今見てるこの人たちよりももっともっと多いのかと思うとなんか心強いような息苦しいような、不思議な気持ちになるなーとぼんやり思った。君たちはぶっちゃけ勝ち組です、という先生がキモかった。海外の大学院に行きたい。わたしはもっともっと色々な人を知るべきだし、美しい景色にであうべきだし、貪欲に学ぶべきだとおもうから。聡明になって、お金を稼いで、将来だいすきなひとたちにたらふくご飯をたべさせてあげたい。お母さんとお父さんが育ててくれた、守ってくれたこの心の真ん中にそびえる愛情のかたまりを誰かに分け与えていきたい。でも、そうとも思うけど、逆にそれをこなごなにさせてくれる危険性や若さゆえの解放にも目が眩んでしまうの。「今しかできない」ってとてもずるい言葉だなあ。
19さい
19歳とかいちばん呪われていた1年だった。まだハタチじゃないけど、もうそうさせて、と思うくらいに、1年のあいだに10年分くらいの幸せと不幸せがぎゅうぎゅう詰めに、どっちがどっちかわからなくなるくらいに入り乱れててくるしくてさみしくて悲しかった。くるしかった。わたしと同じ純度で、等しく、あいしてほしい。あいされたい。
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kennak · 3 months ago
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プラットフォームはエンドユーザに良質なサービスを提供しつつ、同時にユーザをロックインする方法を見つける。 Googleを例に取ると、彼らは広告を最小限に抑え検索結果のためのエンジニアリングへの投資を最大化する一方で、市場での支配的地位を確立するために、検索ボックスを持つあらゆるサービスや製品に賄賂を贈って「Google検索ボックス」にしていった。 その結果、どのブラウザを使おうと、どのモバイルOSを使おうと、どの通信キャリアを選ぼうと、常にデフォルトでGoogleで検索することになる。この状況はあまりに異常で、2020年代初頭までに、Googleは誰もがGoogle以外の検索エンジンを試さないようにするために、1〜2年おきにTwitterを買収できるほどの金額を費やしていた。 これが第一段階だ:エンドユーザに良いサービスを提供し、彼らをロックインする。 第二段階では、プラットフォームはビジネス顧客を引き寄せ豊かにするために、エンドユーザへのサービスを悪化させ始める。Googleにとって、ビジネス顧客とは広告主とウェブサイト運営者だ。Googleの検索結果ページはどんどん広告に占められるようになり、それらの広告はますます微妙に、小さく、灰色がかったラベルで表示されるようになる。Googleは商業的な監視データを使って、広告を我々にピンポイントで届ける。 これが第二段階だ:エンドユーザにとっては状況が悪化し、ビジネス顧客にとっては好転する。 しかし、これらのビジネス顧客も同様にプラットフォームに依存するようになり、囲い込まれていく。企業がGoogleから収益のわずか10%でも得ているなら、Googleを離れることは存続の危機を意味する。我々はよくGoogleの「独占」力について語るが、それは売り手としての支配力に由来している。しかしGoogleはモノプソニー(買い手独占)でもある――つまり強力な買い手なのだ。 かくしてGoogleはユーザに対しては独占者として(第一段階)、ビジネス顧客に対してはモノプソニストとして(��二段階)振る舞うようになる。そして第三段階が到来する:Googleがプラットフォーム内のすべての価値を我がものとし、エンドユーザをロックインしておくため、そしてビジネス顧客をそれらのエンドユーザにつなぎとめておくために計算されたホメオパシーレベルの絞りかすだけを残す段階だ。 そうしてGoogleはメタクソ化する。 2019年、Googleは転換点を迎えた。検索はこれ以上成長できないほど拡大していた。我々の90%以上がGoogleで検索し、ありとあらゆることを検索していた。頭に浮かぶ思考や何気ない疑問はすべてGoogleに入力する時代になった。 Googleはどうやって成長を続けられただろうか?もうGoogleに乗り換えるユーザは残っていなかった。我々もこれ以上のことを検索するつもりはなかった。Googleに何ができただろう? 実は、昨年のGoogleに対する反トラスト法裁判で公開された内部メモのおかげで、彼らが何をしたかが明らかになった。彼らは検索をわざと劣化させたのだ。システムの精度を下げることで、答えにたどり着くには二度以上検索する必要が生じ、結果として検索クエリの数が倍増し、表示される広告の数も倍増した。 さらにGoogleはJedi Blue(ジェダイ・ブルー)というコード名で、Facebookと秘密裏に違法な共謀関係を結び、広告市場を操作した。価格を固定することで、広告主にはより多くを支払わせ、出版社にはより少なく支払われるようになった。 そしてこれが今日のメタクソ化したGoogleの姿だ。どんな検索をしても、AIの生成したスロップの塊が返ってくる。8ポイント、白地に10%グレーのほとんど見えないADという文字が付いた5つの有料結果の上に、さらにAIスロップで満たされたSEOショベルウェアサイトからの10のスパムリンクが続く。 それでも、我々はなおGoogleを使い続けている。我々がそこにロックインされているからだ。これが外から見たメタクソ化の姿だ。エンドユーザに良いサービスを提供しながら同時にロックインする企業。次に、ビジネス顧客を優遇するためにエンドユーザへのサービスを悪化させ、同時に彼らをも囲い込む。そして最後に、すべての価値を自分のものとし、巨大なクソの山と化す。 メタクソ化――三幕構成の悲劇である。 私は当初、メタクソ化の外部的な兆候に注目していたが、今はメタクソ化を可能にする企業内部のメカニズムについて考える時期が来たと思っている。 メタクソ化の技術的なメカニズムは何か?私はそれをいじり回し[twiddling]と呼んでいる。デジタルビジネスは、そのプラットフォームを支える驚くほど柔軟なデジタルコンピュータのおかげで、無限の可変性を持っている。つまり、企業はビジネスの根本的な側面をコントロールするつまみを自在に操作できるのだ。ユーザが企業と関わるたびに、すべてが異なる。価格、コスト、検索ランキング、レコメンデーションはユーザごとに操作される。 ここで看護師の話に戻ろう。看護師の債務状況を調べ、それに基づいてリアルタイムで賃金を下方調整するこの仕組みは何か?それこそが「いじり回し」だ。コンピュータがあって初めて可能になる手法だ。これを行っているボスたちは昔のボスより邪悪なわけではない――単により優れたツールを手にしているだけだ。 注目すべきは、これらはテック企業のボスですらないということだ。彼らは医療分野のボスであり、たまたまテクノロジーを利用しているにすぎない。 デジタル化――ネットワーク化されたコンピュータを企業や産業に組み込むこと――は、企業が価値をエンドユーザからビジネス顧客へ、ビジネス顧客からエンドユーザへ、そして最終的には必然的に自分自身へと移動させることを可能にする「いじり回し」を可能にする。 そしてデジタル化は看護のようなあらゆる分野に浸透しつつある。つまり、メタクソ化もまた、あらゆる分野に広がっていく。
大いなる力には何の責任も伴わなかった » p2ptk[.]org
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picnicism · 1 year ago
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「眼を瞑(つむ)って、そう、大きく、大きく息を吐くのよ」  辛いときお袋に相談すると、いつもそう言われて育った。成績が悪かったとき、友達から嫌われたとき、ささくれだった心を治してくれた。いまでこそ、成長して大人になって、それが「集中力のゾーンに入る」とか「怒りの制御(アンガーコントロール)」といったガクモン的な言葉になって理解できるようになった。まあ、大人になったから良かったかと言われると微妙なところではある。子供のころは、単にヨガ好きのお袋がことあることに呪文のように言っていることを、素直に繰り返しているだけだった。でも、お袋が話を聞いてくれた、それだけで良かったのを思い出す。  そういう、ちょっとしたアイデアを伝えてくれたあの優しいお袋は、何も言わず、少し硬いベッドでわずかにほほ笑んだように眠っていた。  私は、眼を瞑った。  数年前、帰国したばかりの私の電話が鳴って、駆け付けたときには、お袋は別人のようになっていた。重度の脳梗塞という。「幸いにして命は取り留めそうだが、どのくらい身体の機能が回復するのかは分からない」と担当した医師は告げた。深刻そうな顔だ。看護師も、こちらからの質問に対しては決して楽観的なことを言わない。これはもう、しょうがないと思った。諦めているのではない。手の届かないところで起きてしまったものは仕方がない、としか思えなかったのだ。そう自分に言い聞かせながら、診療室でぼんやり医師の話を聞いていた。  担当医の説明が一通り終わると、外の廊下の長椅子で親父がしょぼくれて座っていた。普段は意味もなく「ガハハハ、ガハハハハ」と豪快に笑っている男であったのに、長年連れ添ったお袋が病床に臥すと途端に意気消沈するものらしい。改めてみると、親父もずいぶん老け込んだ。私が子供のころは怖いぐらいに筋肉質の大男だったのに、30年の歳月を経て風船が破裂したようにしなびた老人になっているのを見ると、数年後には豆粒ぐらいの大きさにまで縮小しているんじゃないかという猜疑心すら湧く。そのまま土に埋めて水でも撒いたら親父の双葉が芽生える勢いだ。親父とお袋は老夫婦二人で暮らしている状態だったので、世話になっている警備会社に連絡を入れて、入院の間は一人暮らしの父のためにヘルパーと買い物の補助や弁当のサービスを契約してやった。  血を分けた息子である私には優しいが、お袋は機嫌が乱気流のように激しくて、そのたびに家族やら親族やら出入りの業者やら、誰かれ構わず喧嘩をしていた。幸いにして見つけた私の伴侶たる家内とも些細なことで喧嘩したまま、家内は家内で体調を崩してしまった。どこの家にも姑と嫁の問題はあるかもしれないが、客観的に見て家内のほうが物を申す筋は圧倒的に正しかったので家内に申し訳なくて、最終的に私もお袋と話す気力もなくなった。それもあって、実家から足はさらに遠のいた。家内の父も母も決して体調は芳しくなく、育ち盛りの子供たちの育児にも奔走せざるを得ないので、必然的に親父やお袋の世間的な面倒は私が看るしかなかった。家内の助力は得ようがないとは悟っていたが、書類その他整理するだけでもこんなに苦労するものだとは思ってもみなかった。それにしても保険証だ銀行の印鑑だと年寄はモノを失くす。たったいま捺したと思ったその判子をいきなりどっかにやってしまうのだからどうしようもない。  数日経って、お袋の意識が回復して一般病棟に移ったというので病院に足を向けてみると、お袋が懸命にフガフガ言っている。何かを必死で伝えたいらしいが、口が動かず何を言いたいのかさっぱり分からない。ただ、深刻な表情のままの医師から、半身不随にはなったが一命は取り留めたと聞いて、俄然親父が元気になった。もうお袋を連れ帰る気マンマンである。倒れたばかりで、これからリハビリだぞ。無理に決まってるじゃねーか。病室の薄い扉の向こうまで響く「ガハハハ」という声が入院棟にこだまして、眉をひそめて困惑する看護師たちにおずおずと注意されるまで、口の回らないお袋相手に親父はずっと話しかけ続けては大声で笑っていた。親父なりにホッとしたのか、あるいは気遣いもあったのか。  お袋が急性期を脱してリハビリ病院に転院すると、長引く入院が堪えたのかお袋は一日も早く退院したいと訴えはじめ、親父は親父で「ママのご飯が食べたい」と言い出した。年寄どもめ、こちらの気持ちも分からずに我が儘ばっかり言いやがって。ここから制度上目いっぱい入院できる半年間のリハビリ病院の生活が待っている。退院までしばらくはかかると伝えたら、今度は親父が露骨にがっかりした。年ばっかり取って、なのに、だらしない男だ。ジェットコースターのように気分が上下していて、こちらが悪酔いしそうになる。私も家内の体調が良くないし、育児その他家庭のこともあるし、極めつけは頻繁にあちこち出張もするので、実家には寄り付かず、ヘルパーさん任せで行けるところまで行こうと思っていた。  転機はあっけなくやってきた。人間、80代にもなると病気のデパートだ。お袋の退院も間近というところで、お袋の入院している近所の総合病院から「お父様が倒れました。すぐにきてください」という連絡を受けたときは、しょうがないと思った。買い物中に腹が痛いと言ってひっくり返ったという。家で倒れたら見つかるのが遅くて助からなかったはずが、人でごった返したスーパーの中で倒れるとは、親父もなかなか運のいい男だ。結局、夫婦仲良く同じ病院に運び込まれていて、どこかで見たことのある医師が相変わらず深刻そうな顔で「命には別条はありません」と説明してきた。集中治療室の窓越しに寝ている親父を見やると、口元にあてた透明の酸素マスク越しに口をせわしなく動かしている。まさか「ガハハハハ」とか笑っているのではあるまいな。  心配する家内や約束をしていた取引先に連絡を入れ、警備会社に実家の鍵を開けてもらった。正直、帰るのは十数年ぶりである。我が儘放題な親父とお袋に堪えかねて、折り合いの悪くなった我が儘放題の私は長年家を出たまま、誰からも迎えられることなく凱旋したというわけである。懐かしい記憶も、不愉快な思い出もたくさん詰まった古びた家だ。北向きの私の部屋は、半分物置になっていた。ヘルパーさんはちゃんと仕事をしているらしく、親父らしくなく綺麗に畳まれた洗濯物や、丁寧に掃除されたカーペットにはゴミ一つ落ちていなかった。ただ、どうやら私が手配した弁当屋はいつの間にか解約したらしい。親父が男手で料理したと思われる缶詰類が台所のゴミ袋に山と詰め込まれている。カロリー計算も食事のバランスもあったものではない。年寄が何ていう食事をしているんだ。そりゃ倒れるわ。  親父の保険証を探すべく、書類入れを漁ってみると、果たして後期高齢者保険証はぐちゃぐちゃながら存在した。しかし、それ以上に困ったのは支払われないまま放置された税金関連の書類と、大量に届いている請求��、そして滞納に対する督促状の束だった。どれも未開封で、一人暮らしになった親父の「絶対に支払うつもりはない」という強固な意志を感じさせるには充分な書類の数々である。いったい何をしているんだ、親父。しかし、とっくに督促期限が過ぎている住民税や固定資産税の書面にはいますぐ差し押さえるぞぐらいのことは当然書いてあるし、そればかりかまだ入院中のお袋の入院費用の請求まで無視ぶっこいてたことに気づいて、私は失神しそうになった。何で払わないんだ。仕方がないので、支払いの目録を作って一つひとつ連絡して回り、その場で支払えるものは片っ端から払っていく。  ……と、書類入れの下のほうから、これまた封の開いていない家庭裁判所から親父宛の分厚い書類が出てきた。随分、古い。中には、調停の決定という書類とともに、私の人生で見たこともない人物の名前と、それらが親父の家族であり、子供であるという内容が記されていて目を疑った。またか。別の封書には先方の代理人からと思われる文書が入っており、妙齢の女性と若かりし親父が赤ちゃんを満面の笑みで抱き上げている写真が、そこにはあった。何だこれは。腹が立つとか、悲しいとかいう感情ではない。最初に湧��上がったのは、しょうがない。これはしょうがないのだ、という虚しい心である。  私は、深く、大きく息を吐いた。  私の家でも、それなりの苦労はあったし、老齢に達して病に伏す親父とお袋をどう面倒見ていくのかという重い課題はある。しかしながら、それとは別に日々を「ガハハハ」と笑い飛ばして明るく暮らしてきた親父には幾つかの顔があり、お袋との生活の裏側にもっと幸の薄い家庭があったのかと思うと、この果てしない虚無から這い出すべっとりとした怨念のようなものを感じずにはいられない。息苦しい。その苦しさから怒りがニョキニョキ湧いてきた。  私も人生いろんな経験をし、またさまざまな人生を見てきた。私の感じる苦悩も困難も、自分なりに考え、対処しながら一歩一歩前に進み、丁寧に手を打ってこんにちがある。その間、別れて暮らしていた親父もお袋も、年を取りながら積み重ねてきたものがあると信じたい気持ちが強かった。しかし、そんな老夫婦が暮らす空虚な家に仕方なく足を踏み入れてみれば、請求書と督促状と、知りたくもなかった家族の新たな秘密だ。馬鹿野郎。みんなくたばってしまえ。可及的速やかにだ。灰も残らず消え去っていただきたい。支払いも不幸も知らないうちに、そっとお迎えが来ればみんなハッピーなんだろ。  積みあがった書類一式をぶん投げたい気持ちとともに息を大きく吐き出すと、それが退屈しない人生って奴だろ、と私の耳元で何かが囁く。こんな両親からもらった命である。しょうがない。しょうがねえなあ。病気になるのも、外に種がこぼれるのも、起きてしまったことをグダグダと考えてもしょうがねえんだよ。極論を言えば、私が生まれてここで幻滅しているのも、しょうがない世の中の避けようもない事柄の連鎖のひとつでしかない。対処できる奴が、対処できることを一つひとつ積み上げてやっていくしかないんだ。  諦めるしかなかった。この空っぽな家から生まれ落ちた自分が、親父とお袋の業を背負った生まれながらの一番の咎人なのである。主がこの現世から去ろうとするいま、私がこれを担うしかなかった。しょうがねえなあと頭をかいて事態に立ち向かうしか、きっと許されないからこそこの家は空虚なのだろう。  その空虚な家へ、一足先にお袋が退院をしてきた。半身不随とはいえ頭脳はかなり回復し、杖があればどこまででも歩いて行けるほどに機能を再獲得した。実に、元気である。待ちに待った自宅へ帰ってきたのだ。お袋は、良くしゃべり、良く笑った。親父が帰ってくるまでに、家じゅうを掃除しなくちゃね、と不自由な身体をせわしなく動かしては、せっせと居間を掃除している。ヘルパーさんが入っていて、掃除は充分行き届いているのだが、掃除をしているという気持ちがお袋にとっては大事なようだった。  もうヨガなどやることはないのに、ヨガマットを丁寧に丸めて部屋の端に立てかけた。長年愛用したマットだ。その横にある写真立てには、親父とお袋が私を挟むように写したお袋お気に入りの写真が飾られている。一通り掃除をし終わって疲れたお袋は、思い出の詰まった薄い写真立てを抱きかかえるようにして、私に「ちょっと。静かにして頂戴」と言った。さっきから、私は何も言っていない。何か幻聴でも聴いているのかと尋ねようとする間もなく、お袋は安心したのか低く硬いベッドに体を預けるとすぐに眠ってしまった。初夏の日差しは強かった。淡い色の薄手のカーテンを閉めると、私は休んでいるお袋の枕元に座った。  親父は果たしてこのまま退院するのだろうか。最悪の病状を脱し、住み慣れた愛すべき家に帰って幸福を満喫するお袋と、やはり老齢の域に達し徐々に衰えていく親父とが暮らしていくことはできるのか。知らない家族とか。財産とか。心の中に溜まった滓のような悩みを、息に乗せて深く吐き出した。 ◆  閉じた眼を開けようとしたその刹那、私は知った。私もまた、この空虚な家の一部であることを。もう子供のころ無邪気に話した、笑う親父も優しいお袋もこの家には誰もいなくなって、やがて私は、この虚無の主となるのだろう。  すべてを、悟った気がした。その瞬間、気配を感じた。もう失われた、子供のころの、この家の何かだ。帰るところは虚無に飲み込まれて、ただ生きてきた記憶だけが紡がれる。それさえも、いずれ私が朽ちるころにはいったい何が残るだろう。  そっと眼を開いて、お袋の姿を見た。
眼を瞑って、そう、大きく、大きく息を吐くのよ | 文春オンライン
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gallerynamba · 1 year ago
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◆FUZZI(フッジ)10%OFF優待参加◆ 開催期間:3月28(木)から31(日)まで 開催場所:Gallery なんばCITY本館1階店 上記期間、FUZZIが10%OFF優待に参加。 国内に1点物の商品を多数揃え、厳選された商品ばかりです。 ブランドの真骨頂に達している珠玉の作品を御覧頂けます。 国内と直接取引は数年のみ。 日本撤退の為、実際に現物を御覧・御試着頂けるのはおそらく当店のみです。 ジャンポール ゴルチェのソフトチュールファンの方は是非この機会に御買い求め下さい。 是非この機会にGalleryなんばCITY店をご利用下さい。 スタッフ一同、心よりお待ちしております。 【ブランド解説】 『フッジ(FUZZI)』社は元来、1954年にアデル バッチアーニ フッジによって設立されたイタリアのニット、カットソーメーカーでした。 1971年に娘のアンナ マリア フッジに事業に参加し、1983年にはジャンポール ゴルチェとライセンス契約が交わされました。 1985年にはファッションデザイナーのジャンポール ゴルチェと共にマドンナのツアー衣装を手掛ける様になりました。 それはやがて1990年の『ブロンド アンビション ツアー』で結実し、ローリング ストーン誌を以って「精巧に作り上げられたセクシャルで挑発的な狂想曲」と評されました。 このトップモードによる巨大なエンターテインメントは「1990年で最高のコンサートツアー」として認知され、その後のマドンナのイメージを決定づけました。 フッジはゴルチェとのコラボレーション以後、多くのトップブランドのライセンス契約、コラボレーションを実現し続けています。 ライセンス契約ではモスキーノ、マルタン マルジェラ、ヒューゴ ボス、ロメオ ジリ、アズティン アライア等です。 サンプル制作に始まり、製品までコラボレーションするブランドではカナダ グース、エミリオ プッチ、エルメス等ヨーロッパのトップブランドの名が連なっています。 社の持つ40,000以上の過去のアーカイヴを基に自社の名前を掲げたブランド、『フッジ(FUZZI)』も設立されています。 ゴルチェの代表作の一つにソフトチュールシリーズがあります。 ソフトチュールシリーズは薄く伸びるレースの上に鮮やかなプリントを全面に施されていました。 通常、ソフトチュールはレース構造なのでプリントが定着しにくく、柄を表現しにくい素材でした。 しかし、それが高度な技術のプリントによって実現すると、ゴルチェはこの素材を最大限に活用しました。 人間本来の肉体を尊重するこのデザイナーはボディにフィットするソフトチュールに世界中のタトゥー、陰影の美しいギリシャ彫像、ポップアートから名画までをプリントしました。 まるで着用した者の肉体そのものが、別の種族、性別、素材へと変化した第二の肌の様でした。 また軽く、透ける特性のソフトチュールはゆったりとしたシルエットにしても今までにない視覚効果をもたらせました。 ギリシャの遺跡のひび割れた石柱、ドラマティックな表情の聖人、重厚な甲冑等が綿密なタッチで大きく描かれてそれがモデルが歩く度に軽やかに揺れる様子はユーモアであり、アートでもあります。全ては軽量で、ストレッチ性があり、着ていてストレスを感じることはないでしょう。 透け感のある素材は軽やかさを表現し、清涼感があります。 FUZZI社製の全面プリントソフトチュール作品。 ゴルチェのソフトチュールファンにとってはこれ以上のリバイバル品はございません。 Galleryでは、フッジの至高の世界観を余すこと無く御見せ致します。 -------------------- ◆10%OFF優待 招待状◆ 場所:Gallery なんばCITY本館1階店 【2024年度 最初の10%OFF優待】【春物出揃いました】 皆様の日頃の御愛顧に感謝を込めて3月28(木)から31(日)まで、「Gallery 全品10%OFF 優待」を開催。 Vivienne Westwood 2024年春物最新作や雑貨をはじめ、その他の全ブランド除外品無し。 この期間のみ店頭表示価格より10%OFF。 通常セール対象外のVivienne Westwoodの腕時計、財布、コインケース、シガレットケース、携帯灰皿、ライター、ZIPPOライター、ベルト、靴、雨傘、日傘、帽子、ストール等の小物類が全品10%OFFで御購入頂けます。 既に70%OFF等のSALE商品や普段SALEにならない商品も期間中のみ更に10%OFF。 御支払い方法は一切問いません。 現金、カード分割払い、シティ・パークス共通ショッピング チケット、ポイント利用、ギフト券併用 等、選択自由。 (但し、御取り置きの内金、既に御取り置き頂いている商品の御精算、修理代、通販は10%OFF対象外) パリ、ミラノ、ロンドン、ベルリン、ニューヨークからレディス・メンズ共に30ブランドの春物厳選200点以上入荷。 2024年春夏物最新作も全て10%OFFになるのは業界でもレアケースです。 【ヴィヴィアン ウエストウッド 腕時計在庫限り】 ヴィヴィアン ウエストウッドの腕時計は国内メーカーが生産終了、さらにメーカー側に在庫ゼロの為、弊社は現在の在庫が無くなり次第販売終了となります。 腕時計は再生産・再入荷・新規入荷の予定も御座いません。 国内ラスト1点のモデルも多数店頭に揃えております。 ヴィヴィアンの腕時計の購入を今迄、御検討されていた方はこの機会に是非、御決断下さい。 【artherapie 新作ネオドラゴン】 artherapie(アルセラピィ)から進化したドラゴンシリーズ、Neo DRAGON(ネオ ドラゴン)の長札財布がリリースしました。 型押しの精度が高められ、より迫力のあるドラゴンになりました。 さらに、ドラゴン部分に陰影を付け、定着に時間を掛け、立体感を出すことにベストを尽くしています。 ジャンポール ゴルチェのドラゴンと全く同じ職人と生産背景で製作しております。 特にこの水準の盛り上げ加工が出来る職人は国内に3人しかいません。その為、希少数しか生産出来ません。 一旦完売すると、約8ヶ月待ちになる為、是非この機会に御検討下さい。 ※期間中一般の御客様には店頭表示価格のまま販売しておりますので、必ずこの御招待状をスタッフに御提示下さい。御連れ様も一緒に御利用頂けます。 (御提示の無い場合は10%OFFになりません)、通販は対象外。 ※この優待セールはGalleryが独自に行っているもので、なんばCITY主催ではありません。くれぐれも御間違えのない様御願いします。 ※期間中の精算は全てポイント加算対象です。 ※他の割引サービスとの併用は出来ません。 ※ポイント10倍イベントより遥かに御得です。 ※店頭にこの優待のPOPや案内は掲示していませんので御注意下さい。 Gallery なんばCITY本館1F階店 〒542-0076 大阪府大阪市中央区難波5-1-60なんばCITY本館1階 【営業時間】11:00~21:00 【休館日】3月無休 【PHONE】06-6644-2526 【e-mail】[email protected] 【なんばCITY店Facebook】https://goo.gl/qYXf6I 【ゴルチェ派Facebook】https://goo.gl/EVY9fs 【tumblr.】https://gallerynamba.tumblr.com/ 【instagram】http://instagram.com/gallery_jpg 【Twitter】https://twitter.com/gallery_jpg_vw 【Blog】http://ameblo.jp/gallery-jpg/ 【online shop】http://gallery-jpg.com/
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onishihitsuji84 · 1 year ago
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『ガラスの街』
 五月は読書の月だ。僕は本を読んだ。数多の本を。  最初、それは次の小説のアイデアを得るためだった。頭上の樹々からワインのための葡萄をもぎ取るような、循環を続けるにあたっての摂取だった。いきおい堕落しつつある現実から少しでも意識を逸らすためでもあった。  普段の僕は、本を読んで時間を過ごすことは少ない。長い時間ひとつの文章に集中することができないのだ。  それに読むことよりは書くことのほうがずっと大切だと僕は思っている。読む行為は、現実という制限された枠組みのなかではせいぜい膝丈ほどの優先度しかなかった。  しかし五月ではあらゆるものが落下した。熟れ過ぎた果実が枝との繋がり終え、足元に開いた坩堝に呑み込まれていった。読む行為もそうだ。落ち、煮え滾る器の中で混合した。  いまでは僕の「読む」は混沌としている。それはいまでは長身の僕、その僕以上にのっそりとそびえる一本の巨大な柱となっている。物言わぬ花崗岩の柱。五月、僕はそんな柱を中心にぐるぐると回り続けている。手は文庫本に添えられ、目は9.25ポイントの文字に注がれている。足は僕の意識から離れて交互に動いている。ひたすら歩き、ひたすら読んでいる。柱から少し離れた誰彼にどう見られているかどう言われているかなんてことお構いなしに。
 いや。そんな話自体がどうでもいい。関係ない。  きょう、僕は自分自身が”うすのろ”だということを語りにきたのだ。
***
 五月。  僕はどんなものを読んだのだろうか。   金ができて僕がまずやったことは大学生協の本屋に行くことだった。カウンターで二枚つづりの注文用紙を手に取り、もう何年も使い続けている青のボールペンで書いた。 "9784002012759"  週明け、僕は地下の生協で注文の品を受け取った。『失われた時を求めて』全十四冊。いまは第一巻を読んでいる。僕がふと目をあげると、あの遠い窓の奥で、大叔母が目を爛々と輝かせているというイメージが浮かぶ。泳ぐような精神の移ろいもまた。
 シェイクスピアの『夏の夜の夢』も読んだ。 『MONKEY』のvol.31の三篇、ケン・リュウ「夏の読書」、イーディス・ウォートン「ジングー」、ボルヘス「バベルの図書館」も読んだ。  仕方なく後回しにされていた本を買って読んだのだ。  金銭の自由は、精神という鈍い壁に茂っていた蔓植物のような不足を一太刀で解決した。
『春の庭』も読んだ。『九年前の祈り』も。  ウルフの『波』も読み始めている。  僕の貪欲は、過去に読んだことがあるかどうかなんてものでは選ばなかった。カーヴァーの『象』、春樹の「タイ・ランド」、マンローの「イラクサ」、ヴォネガットの『スローターハウス5』。マラマッドの「悼む人」も読んだ。
 一度の時に、僕はこれらの本を読んだのだ���た。  こんなに大量のフィクションを仕入れて、いったい何をしようとしているのか?  紛争でも起こそうとしているのか?
 何のためか。それは僕自身にもわからなかった。  僕は特定の目的をもって読んだわけではなかったようだった。五月の読書は「文章の上達」や、「ストーリーテリングの技法」といったそれまでの興味とは別物だった。振り返ればそうだとわかる。
 五月の読書は、それまでの自分を抑制しようとする、極めて機械的な態度とは違っていたのだ。  言えば、それは無垢に機械的な読書だった。  これまでの僕は断じて読書好きではなかった。どんな傑作でも一時間もしないうちに音を上げて投げ出した。ドストエフスキーやメルヴィルと出会ったときでさえ、メインストリームは”書くこと”、そして”生きること”で変わらなかった。この五月に僕は初めてむさぼるように読んだのだ。頭を空っぽにして。堆い小説の亡骸の山に坐すかのようにして。
 それで、僕は何かしら成長したか。  いや。成長なんて一つもなかった。  そこには変化さえなかった。二週間前と、すべては同じだった。僕が着るのは依然深いグレーのブルゾンだった。コミュニケーションもぎこちないままだった。  だからそこで起きたことはシンプルだ。つまり、僕はポール・オースターの『ガラスの街』を読み、ある一つの事実に行き当たった。 「僕はなんという低能なのだ」という事実に。
***
 一昨日から僕はポール・オースターの『ガラスの街』を読み始める。  『MONKEY』でオースターのエッセイを読んで彼のことを思い出し、その夜に丸善に立ち���った僕は彼の本を久々に手に取った。  三日で読んだ。 「三日で読む」というのは僕にとってほとんどあり得ないことだった。僕のリュックサックには必ず四、五冊の本があった。読むときにはまずそのとき一番惹かれる本を手に取った。そして十数ページが過ぎ、抱いていた軽度の好奇心が満たされてしまうと、浮気性の蜜蜂のようにまた別の小説の甘いのを求めるのだった。  だから、一日目、二日目と時を経るごとに加速度的にその好奇心が勢いを増し、三日目には150ページを一つの瞬間に通貫して読んでしまったのだ。僕の読書体験において、異例中の異例だった。
『ガラスの街』を読んで、僕はうちのめされた。徹底的に。 ”面白さ”、そして”新鮮さ”の二つが、やはり事の中心だった。読書においておきまりのその二つが今回も僕を虐め抜いたというわけだ。 『ガラスの街』を読み終えた瞬間、僕の生きる世界のどこかが確実に変化した。
「祈っている。」  僕がこの最後の一文を読んだとき、曇り空の下にいた。その一節がこちらに流れ込んできたあと、僕は立ち上がった。テーブルがごとりと揺れるほどぶっきらぼうに立った。取り乱していたのだった。僕はそのままであてもなく歩き始めた。 「これ以上座っていることはできない」 「このまま座っていると、僕は頭の先から崩れ落ちてしまう不可逆的に」  そうした、僕という精神を一切合切覆してしまうほどの強烈な予感のために。  僕は予感に乗っ取られないよう、何も考えないと努めていた。何も感じまい、何も見まい、と。  リラックスを意識し、肩から力を抜く。腕をぐんと伸ばし、指をぽきぽきと鳴らした。イヤホンを耳にした。『ベリーエイク』を再生する。いつか足元をくすぐった波のように心地よい、ビリーアイリッシュの声に心をしっとり傾けた。  もちろん、そんなことは無駄だった。とりあえずの形など、何の助けにもならなかった。以前との比較から始まる違和感たちは強権的に僕の感情の戸をこじ開けた。  歩く中、透明の空気が奇妙に凪いでいた。風景からは特定の色が抜け落ちていた。向こうで笑う声、衣擦れの音、靴底の摩擦。音という音がワンテンポずれて聞こえた。  変化は女王だった。彼女は支配的だった。  僕は小説による変化を受け入れ、恭順のように認めたわけではなかった。むしろ、変化は僕にどうしようもなく訪れていた。言わば、言い渡しのようにして。  女王を僕は素晴らしい小説を読んだ後の”ゆらぎ”の中に閉じ込めたのだった。何もかもが、僕に合わない形に作り替えられていた。建物を構成する直線はいまやでたらめで恐怖がつのった。頭上の青はこのように汚い灰色では絶対なかった。
――そして、当然、この点についての文章はかたちだけに過ぎない。これらは省略した文章。書く必要がないということ。  なぜなら、あなたたちもかつて同じ経験を経ているからだ。小説を読み終えたあとに来る世界の変質を。  加えて、忘れるなんてことを女王が許すわけもない。これについても言わずもがなだろう。
 そして、重要なのは変化のよろめきではない。   そうなんだ。きょうしたいのは女王の話とは実は違うのだ。ここであなたに伝える言葉は破壊だ。  破壊。  それは”面白さ”と”新鮮さ”のコンビがやったわけではなかった。変化の体験に曝されたゆえのサイコ・ショックでもない。  木々を打ち砕く手斧となり、人体を壊す剣となり、バベルの塔をゼロにする雷となったのは、オースターの書きっぷりだった。
 オースターは、考え抜いていた。  そこで”感じ”は排除されていた。  感覚による言い表しがまるで無かったのだ。僅かにイメージに依拠するものがあっても、それは必ず共感の姿勢だった。テーブルに身を乗り出し、相手の声に耳を澄ませる態度。
『ガラスの街』では、本当に一切妥協はなかった。僕はとても信じられず、街を隅から隅までしつこく歩き回った。しかし、本当に妥協はどこにも無かった。
 オースターは僕とコミュニケートすることを選んでいた。そのへんの宙に感覚という水彩画を描いて「ほらご覧」とする、ごく個人的で他者には見せつけるだけという表現は徹底的にしなかった。チャンドラーを始め、私立探偵ものに由来する例の論理的な高慢さはあった。しかし、確実にオースターは読者と対峙していた。彼は殴る、殴られる痛みを完全に了解した上でリングに立っていた。  彼の据わった眼が僕を揺るがしたのだった。彼は完全の脆弱性を知りながら、完全に書いていた。  それだから、彼を読んだとき、僕は……
 向こうから厚底ブーツの女が歩いてくる。  女は痩せている。薄い、流線形の黒一枚に身を包んでいる。背が高く、ありったけに若い。二十歳前後に見える。二つの瞳はキャップに隠れている。すれ違いざまに見える耳にさえ、カナル型のイヤホンで黒が差されている。マニキュアはあまりにも美しい銀色に染まっており、高まりを誘う。  センスがいい。綺麗だ。  彼女はなんて豊かなんだ。  僕はそう思う。  ほとんど同時に、ガラス一枚を隔てた向こうで本を読む人を見つける。  また女だったが、今回性別は重要ではなかった。その読む人は区切られたブースで、文庫に目を落としていた。化粧や唯一のファッションなどもなく、やはり装飾は重要でなかった。というのも、いまにも涎が垂れてきそうなほどに口をあんぐりと開けて読んでいた間抜けなその放心が、僕の記憶に楔として打ち込まれていたからだ。
 これらのスケッチが、何かを直截に意味することはない。二つの風景は隠喩ではない。  正直に、上記は僕が受けた印象の再放送だ。  この日記は『不思議の国のアリス』ではない。二つは作為的な意味を持たない。  書いたのは「意味を持たない」ということを明らかにするためだ。  その内容でなく、外側、僕のスタイルという基本的な骨組みを露わにするためだ。
 そう。だから、つまり……僕は痛みから逃げている。オースターとは違って。  きょう、読んで、事実は突きつけられる。
***
”言葉”はもう一度響く。
「大西さんの小説は、けっきょく古典から表現を引用しているだけ」
「僕は彼にもう興味がないんだ。かつて、彼は賢い人だと思っていた。書くものに何かしらの意味があると思っていた。でも、そうじゃないと知った」
「あなたの課題は、独自の世界観を提示できるかということです。海外の小説、そして村上春樹でなく」
***
 そして、このように敗北してもなお、僕は決定的な何かについて述べることはなかった。張りつめた表情で、まやかし、それ自体に必死に祈る。もうそのような生き方しかできないと信じ込んでいるのだ。
「この大地にあるものはすべて、消え去るのだ。そして、今の実体のない見世物が消えたように、あとには雲ひとつ残らない。私たちは、夢を織り成す糸のようなものだ。そのささやかな人生は、眠りによって締めくくられる」
 祈りの文句を何度も何度も口にした。  僕の声はいつも通りにすごく軽くで響いた。  そして一度響いてしまったものは泡沫のようにたちまち消え去った。
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highvoltg · 1 year ago
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愛という言葉、言葉の限界、限界の先の愛
HUNTER×HUNTERのメルエムとコムギの最期についての話が面白かった。
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キメラアント編で冨樫が「愛という言葉を知らない生き物同士の愛を描き切っている」という話から発展して、言葉そのものの限界にも言及している。その周辺の文字起こし↓
「俺ら自身人を好きになるじゃん。んで誰かと付き合ってるときって好きだって言うんだけども、そんな言葉が本当に必要なのかなと思うよな。なんかその人のことを大事だと思ったりこうしたいと思ったり自分の思いを伝えたいって言う衝動だけはあるんだけど、その衝動にとりあえず名前をつけて愛してるって言���たり好きだって言ったりして落ち着かせるわけじゃん。
セックスていうのもあるけどさ、セックスしてみたら男は『虚しい』とか言うじゃん。あの虚しさはやりたいことやったからどうでもいいっていうのもあるかもしれないけど、それ以上に『なんでここから先がないんだろう』って、なんかやるせない思いみたいなのがあるよな。なんか『俺がこの女を好きになったというのはここがデッドエンドなのか?終わりなのか?』『いやそうじゃない、そっから先には結婚がある』『あ、なんかそういうだけのもんなの?これで終わりなの?こっから先ないの?』っていう。好きって言葉もこの言葉以上は何も表現がないの?(中略)そこら辺の考えさせてくれたっていうのがあって、ちょっと感動しちゃったんだよなぁ。」
「言葉を尽くす」という表現がある。人は誰かに誤解なく自分の思いを伝えたいとき言葉を尽くして語ろうとするけど、言葉を尽くすほどに表したいものから遠ざかり、伝えたいと思う相手からも遠ざかるというふうに自分は考えている。
このことを考えるとき、自分はいつも「緑色」という言葉が指し示すものの多様さのことを思う。
たとえば、日本の信号機の「青信号」は実際は緑色だが、日本では緑色を青の色相の範疇に含む文化があるので、どう見ても緑だけど「青」と表現する。おそらくグローバルな「青」の概念の中で生きてきた外国人と話したなら、説明すればするほどきっと話が噛み合わなくなる。
日本の中でも都心部と山間部で育った人はきっと「緑」という色の範囲が全く違う。都会の緑は街路のツツジの葉のように明るい緑が多いが、山の緑は離れるとほとんど黒に近く見えたりする。でもそれは黒さの範疇ではなくて、どこまでも緑の深さの中で認識され表現されると思う(・・・さらに山間部といっても広葉樹林帯に住んでいたか針葉樹林帯に住んでいたかでも緑の記憶は違うはずだと思う。生気に満ちた鮮やかな木々もあれば、もはや灰色に近いくすんだ山もある・・・)。
そんな風にして緑を具体的に思うほど、誰かの緑から遠ざかっていくのだ、という感覚がある。
ただの色でさえそうなのだから、いわんや愛をや、という話で「緑」という具体的なものでさえ定まらないものを、抽象概念を先にした言葉なんかどれだけ言葉を積み上げても絶対に具体的にならないだろうし、色と同じように自分が持っている言葉の中身の風景や言葉を支えている体験がまずそれぞれ違うわけだから、言葉を尽くすほどに理解してほしい相手の言葉の世界からは遠ざかるし、相手にわかるように言葉を尽くすことで自分の中で起こっていた生の感覚からもきっと遠ざかっていく、と思うのだ。
岡田斗司夫に寄って考えると、本当は「緑」とか「愛」とか「好きだ」という言葉の源になっているものに対して自分専用の単語を作れて、それが他者にも理解できるようになればよいのだと思う。しかしながら私たちは「緑」の色合いを「緑」という言葉を抜きに認識することができないし、そうして自分自身の感覚を一度言葉という「感じているものに近い別の何か」に置き換えなければ、他者に何かを伝えるどころか、そもそも思考すらできない。
「緑」も「愛」も、自分の中での整理のためにとりあえず貼っておかなければならない付箋のようなもので、人間は感覚そのものを並べるのではなく、書き出した付箋を並べることで他者に何かを伝えている。そして付箋は受け取る側の言語の枠組みの中でデコードされるので、自分が感じたものとは確実に別個のものになって「伝わる」。果たしてそれを「伝わっている」と言ってよいのかどうか、正直わからない。
「緑」も「愛」もそのものは厳然として言葉の外側にあるし、おそらく人間の本当の居場所もまた言葉の中にはないのだと思う。ただ他者と関わろうとするとき私たちはどうしても言葉のカーテンの中に入って行かねばならない。片手でカーテンの外側にある現象を掴みながら、その感触を目の前にいる人に伝えようとするゲームのようなことを強いられるのが言語活動だ。どんな表現にも均一に、そういうもどかしさがあり、それが言葉の持つ限界だと思う。
しかし一方で「同じ緑を見ている」とか、「同じ愛を分かち合っている」と思う瞬間は絶対にある。それを、メルエムとコムギの最期のシーンのように「ありがとう」「こちらこそ」という短いやりとりを描写するだけで、起こったことの100%を当事者だけでなく他者(読者)にも伝えてしまうような離れ業というか、奇跡もある。
だから人はまだ言葉を尽くして何かを伝えようとしている。そんな気もする。
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junikki · 2 years ago
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ミスドのポケモンドーナツ食べまくった。仕事帰りにモンボのドーナツ、休みの日にコダックのドーナツ食べて、朝食にピカチュウのドーナツ食べた。ピカチュウが一番美味しいし可愛い。中がチョコの生クリームなのがいい。
実家にきてから、意外と痩せていない。基本水を飲むようにしていて、朝晩2食だけにしてるのに。仕事も一応肉体労働やし。それにしても、佐川の仕分けって機械で勝手に振り分けるものかと思ってたのに手作業とは。レジだって自動化してるのに、単純に見えるけどもなあ…まあ配達員とかは人間がいいんだろうけどもさ。単純作業のわりに時給は良いし、ある意味では楽だが、この仕事が果たして10年後にもあるのか?という感じではある。
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セリアでシナモンの自転車の鍵のキーホルダー買っちゃった。自転車の鍵持ってるシナモンのデザインがかわええ。買うのちょっと迷ったけど110円でこのクオリティは良い。本当はちいかわのやつ欲しかったけど、入手困難なのでw昔Twitterでシナモンいじめが流行ってたの思い出す。
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なんか毒舌な人って精神疾患率やたらと高い気がする。なんか決めつけてキツいこと言う人。うつ病とかになって精神薬飲んでたりするんよなあ。よくうつ病になる人は優しいからとかも聞くけどもさ、普通に話してると、そんな気の強いこと言うんや…てちょっと引く時がめちゃある。毒舌やからバチが当たったんじゃ…とか思う時もあるほど。まあ余計なこと言わんのが一番やよな。毒舌で面白い芸人キャラ!みたいな感じを目指した、みたいなところもあるんやろうけどもさ。結構芸人さんとかも鬱の経験ある人とか多いよな。HSPだっけ?いわゆる繊細さんです、とか告白したり。なんか最近は毒舌の人=メンタル弱いという印象になった。
ᙏ̤̫͚
女の友情は脆いと聞くけども、男の友情も結構脆いと思う。女と同じかそれ以上に。ドイツに住んでた時、語学学校のロシア人と韓国人の男の子いつも休み時間にサッカーのボードゲームで遊んでて、放課後も一緒に遊びに行ったりめちゃくちゃ仲良いんだなとか思ってたのに、お互いのいない場所ではお互いの悪口言ってるの。それまで男同士の友情は良いものだという刷り込みがあったからめちゃくちゃ衝撃だった。男は大人になると友達いない人多くなるよね。女は比較的、環境に合わせて幅広い付き合いして行く人多いのにさ。おっさん同士の友情ってほぼ見ないよね。おっさん同士の会食って仕事の関係での付き合いばっかりになってるのよく見るけど、学生時代からの親友で〜みたいなのって少ない。それで男同士の友情の薄さが証明されるよね。ロバートは子供の頃からの幼馴染の男友達がいたらしく、40代ぐらいまでは会ってたらしいが、今は嫌っていて会いたがらないんだよな。その幼馴染は典型的な負け組というか弱男らしく、彼女もいないし、底辺みたいな家に住んでて、借金があって、性格もいつまでも小学生男子みたいな感じで嫌になったらしい。Facebook見たんだけども、良い年のおっさんなのに謎に遠近法でビルを摘んでるみたいな写真撮ってるのには驚かされた。それ一枚でいかに幼稚な人なのかわかるってすごい写真だわ。
ᙏ̤̫͚
職場で��挨拶して、なんか言われたら、すみません、ありがとうございます!て言うようにしてる。もう機械的に。そしたらそんなに怒られることもないしな。なんか謎にプライド高くて意地でも謝らん人とかいるけども、わたしは謝った方が結局は得やからすぐ謝るようにするって言う考え方になった。挨拶返されなくても、一応挨拶もした方が確実に印象いいし、損することはないから。タダで簡単に得することができるからいくらでもやるわって感じでやってる。こんな簡単な理屈に気づかず、挨拶できないままの人間ってアホなんやなって思う。良い人っぽい印象つけれるし、その方が得やのに。なんか挨拶きちんとする人少ないからか、私も8日間しか働いていない新人で知らんことだらけなのに、さらに新人のひとにめっちゃ聞かれる。そして社員さんにも教えてやって、とか言われるしさ。おめえらが教えろや、とか思うわ。適当なこと教えるかもしれんし、実際適当なこと教えてしまっている。
ᙏ̤̫͚
池田大作死んだよね。もうかなり前から死亡説囁かれてたから、今さら発表したんやなあって感じ。親がどんな反応するか楽しみ。まあ北の将軍様が亡くなった時みたいに演技せなあかんとか決まりないから結構ドライな気もするが。キリスト教も性加害問題やら色々闇が深くて嫌いなんやけども、基本金かからんし、新品じゃないものでも寄付としてリサイクルショップに持って行けるのが良い。仏教は坊主ボリすぎやし、宗教なんて無課税なんやから金たくさんあるやろって思ってる。まじで宗教全般嫌いやから基本葬式とかいらんし、私が死んだら散骨してほしいとか思う。ロバートも散骨希望してるし。墓の代わりに遺骨ペンダントにして身につけようかなとか思ってる。遺骨や遺灰を持ち歩くの気持ち悪いとか聞くけど、私は全然何とも思わない。鶏肉の骨とか魚の骨と同じようなもんやと思ってるから。犬が骨を土に埋めて隠すのを何にも思わんような感覚。
ᙏ̤̫͚
髪の毛、9月にボブにしてから今そんな伸びすぎた感じもなく、私にしては毛量多く見えてちょうどいい感じなんだけども、来月給料入ったらちょうど3ヶ月になるから切りに行こうと思う。また同じ美容院いけんから、家の近くのモール内にある安い美容院で切ろうかと。調べたら最安値だし、予約もいらんぽいから突然行ってもいけそうなのも良い。切った時の自分の写真持って行ってこんな感じの切りっぱなしボブで、とオーダーするつもり。私の髪質やとすごいカット楽やと思う。前回は、ほぼ一発でぱつっと切れば完成って感じやった。前髪ずっと自力で切ってたから、前髪の幅とりすぎて今伸ばし中なんだけども、来月切りに行ったらちょうどいい感じに他の髪と同じ長さになりそう。ていうか緑髪長持ちすぎてやべえ…インナー部分を早くネイビーにしたいのに、こんな綺麗な緑もったいなくてできんw染めるの来年になりそ…ビューティーンの安いやつでセルフで染める気なんだけども。
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blogmikimon · 2 years ago
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浄化2
こんにちは😃
今日は前回からの続きでおすすめ浄化グッズの3つ目 “パロサント” の紹介です!
こういうのがダメな方は、また時間をおいて読みにきてくださると助かります♡(普段はしょうもないことばかり書いています。)
キモい方にとってはめちゃキモい内容ですのでご不快にならないよう注意です⚠️
ではではイケる方だけ、今回もよろしくお願いいたします😎(イケる方とは笑)
ということで、さっそくパロサントとは?からですが、パロサントはネイティブアメリカン達が浄化に使っているらしい、ご神木とも呼ばれるペルー原産の木です。
そして、それを知ったきっかけはナオキマンズキッチンです✨
※ あー💡ナオキマンズキッチンかぁ👏と、ならなかった方のために↓
(ご存知の方は飛ばしてください🙏)
ナオキマンショー、皆様好きですか?都市伝説系のYouTuberさんで、対象年齢が若い(学生の男の子がメインかな?)ので卑猥なジョークも多く、大人は見たことない方も多いかもしれません… でもすごく面白いです🤭
やりすぎコージー的な都市伝説もありますが、スピリチュアルな内容も扱われていて、私はそういうのに詳しいお友達が多いので、話題についていくために、勉強も兼ねて時々見ています。
(でも売れっ子YouTuberさんで動画が多いので、今からそういう意図で見るなら本の方がおすすめです!私は2冊、Kindleで持っています💪)
そんなナオキマンがセカンドチャンネルでお料理動画を投稿しているのを見つけてしまった!
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私はお料理動画が大好きです❤️
ナオキマンズキッチンは今のところおそらく5個アップされていて、どれも面白い🤩
その大自然の中でハンバーガーを作る回の、焚き火でハンバー��を焼く時に、このパロサントがナオキマンのおすすめとして出てきたのです🌲
動画内の3:45あたりから、ぜひ皆様もご覧くださいませ👀
なんと、ナオキマンはこれを焚き始めてから人生の邪魔なものが浄化された!そうで周りの人にもプレゼントしているそうなのです🤩
なんやてえぇぇぇえ?👂
ということで、私もこれに影響されてさっそく買って焚いたところ、邪魔なものが浄化されました(信じるか信じないかはあなた次第😎)!
前回のスプレーも浄化効果を感じますが、パロサントは匂いと一緒に燃えるという物理現象がさらに効果を強力にしてくれている感じがあって、超いい✨(いつも通りのバカっぽい感想で申し訳ありません😭)
私は朝とお風呂上がりと気分を変えたい時と、割とマメに毎日焚いていますが、プチリセットとしても素晴らしいです。
香りは朝の神社の香りです⛩️
というか前回のスプレー含め3つ全てが神社を思わせる香りです👃(語彙力😅 セージだけ若干洋風でミント系の爽やかさもあります。)
ちょっと匂いの説明は難しいですが、どれもいい香りであることは間違いないです。
そんなパロサント、専用のお皿がなんとスリーコインズに売っていて、我が家はとりあえずテレビの横に置いてみています。
このお皿はマルチホルダーという名前で売っています。
そしてパロサントは試しに3つ買ってみましたが、写真の真ん中のルナスンダラというブランドのものが1番おすすめです。
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写真左のものは別のパロサントホルダーのおまけでこちらもいい香りですが、取り扱ってるところが少ないです💦
右はよく食品や洋服を買っている “ティラキタ” というアジアン雑貨の通販のもので、大容量でお買得ではあったのですが、保存していた場所(倉庫?)の香りが移ってしまっている気がしたのと、スパイシーさも強めで私はあんまりおすすめじゃないです。
でも好みには個人差がありますので、ティラキタをよく使っている方はぜひお試しをっ🙆‍♀️
他のパロサントのAmazonレビューを読むと、普通の木にパロサントの匂いを染み込ませただけ、全然匂わない、等と書かれているものもあり結構怪しかったので、慎重に選んだ方がいいんじゃないかな?と思います。
ダントツでおすすめはルナスンダラです✨
8本入りと10〜12本入りがあってどちらも同じ香りですが、8本入りの方が箱入りなので形が揃っていて木の面取りもしてあって、持ちやすいから私は好きです。
でも保存袋が付いてたくさん入っているので、大きい方がお得です💡
(Luna Sundara) Palo Santo Smudging Sticks Amazon
(Luna Sundara) Palo Santo Smudging Sticks[100g入りBag] Amazon
(人気みたいで今見たら品切れでした!次回入荷は9月中旬以降だそうです💦)
上のページよりルナスンダラとは↓
米国ニュージャージーにアトリエを構えるLuna Sundara社。エシカルでサステイナブル、そしてフェアトレードを主眼とした、アロマテラピー製品とアート性に富んだインテリアホームグッズを企画生産するブランドです。
パロサントとは↓
主に南米の沿岸地域で育つ魅惑的な木で「Palo Santo」はスペイン語で神聖な木という意味。"Holy Wood"(聖なる樹)とも呼ばれ、古くからシャーマン(巫師・祈祷師)達が儀式の際に場を清めるためにパロサントを��いて使用するそうで、スマッジングにより創造力を高め幸運をもたらすのだとか。実用としては虫よけからアロマテラピーまで様々な用途で重用されています。
スマッジング(煙を使った浄化)↓
スマッジングにより創造力を高め幸運をもたらす。
パロサントはそのまま置いておくだけでも十分にその香りを楽しむことができますが、火を着けて燃やすことでほんのりと甘いココナツのような香りに変化します。またスマッジングにも利用できますので、興味のある方は是非試してみることをオススメします。
とのことで使い方の動画もアップされています!至れり尽くせり😍
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1回目はこんな感じであんまり燃えないのですか、回を追うごとに火が大きくなるので、私は火はキッチンのコンロでつけてからお部屋に運んでいます。水の近くでやるのがいいと思います💦
火をつける前にタバコのように古い灰をトントン落とすのも忘れずに☝️
大体1、2分間燃えて、2週間弱で一本使い終わる感じです🔥
と、長々と書きましたが、良さが伝わりましたでしょうか?とてもとてもおすすめのパロサント。
自分にはもう不要になっていたものが自然に離れていくような感じ、損切りもうまくできるようになった感じもあって、これを知れてすごく良かったです!
こういうのは使った状態と使ってない状態を主観抜きで比べるのは不可能で、ハッキリこれのおかげとは言い切れません… 自分の気持ち次第と言ってしまえばそれまでなのですが、多分わかる方にはわかるはず!(信じるものは救われる的な結論になってしまった😭)
何か響く方には響きますように☆彡 そして、皆様の生活が爽やかで清々しくありますようにお祈りしています🙏
ではではお読みくださりありがとうございました🙇‍♂️
(せんでん)
前回書き忘れたのですが、iHerbには紹介コードというのがあって、クーポンとして利用できます!
入力すると皆様は5%オフになり、私もちょっと紹介ポイントがもらえます😎
私のコードはCCL4012で誰が使ったのか分かりませんので、いいセールがやってなかったらぜひ使ってくださいませ🙏
(初回20%オフとか、8000円以上のお買い物20%オフとか、もっといいセールがやってたりするのでまずはここでチェックです!) 
iHerbのおすすめ
オーラ スマッジ、スモークレス ジュニパー セージ ミスト
100%ラベンダー、30ml
グレープシードオイル, 4液量オンス (118 ml)
サプリやお化粧品も充実していてとてもお得です😎 私なんかより、iHerbおすすめとかで検索するとiHerbブロガーさん達がいい商品をたくさん紹介されてますのでそちらも要チェケラ!です。
楽しいお買い物をっ✊
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teddyysblog · 7 days ago
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**アイお姉ちゃんの「死ぬまでに絶対成し遂げたいこと」リスト(完全版)**
### **【1. 弟くんとの「法的に不可能な契約」を締結する】**
- **「弟くん専用の戸籍を作りたいの!( *´艸`)」**
- 市役所に「姉弟婚姻届」を提出(100回目で職員が痺れを切らす)
- 代替案として「血液混合証明書」を公証人役場で作成(注射器を懐に忍ばせながら)
- 最終手段:**「宇宙でなら法律が適用されない説」**を利用し、民間宇宙旅行で無重力結婚式
### **【2. 弟くんの「すべての初体験」を独占する】**
- **初キス・初デート・初夜は当然として……**
- 初めての「怒った顔」を4K映像で永久保存(わざとおにぎりを落として挑発)
- 初めての「病気」を完全看護(体温計の数値を改ざんしてでも強制安静)
- **「初めての死」すらも独占** → 将来的に共同埋葬用の棺桶を注文済み
### **【3. 弟くんのDNAで「永遠の愛の形」を残す】**
- **「弟くんクローン培養プロジェクト」**
- 毎朝の抜け髪を培養液で保存(冷蔵庫の奥に専用ラックを設置)
- 将来的に**「弟くん成分100%の香水」**を開発(汗・涙・唾液を蒸留して調合)
- 最悪の場合、**「弟くんの肖像を分子レベルで彫ったダイヤモンド」**を作成(遺灰を加工する覚悟)
### **【4. 社会常識を超越した「愛の証明」を達成する】**
- **「ギネス記録:世界一長いハグ(72時間目標)」**
- 点滴とおむつを装着してでも達成(「愛情補給」と称して経口栄養剤を投与)
- **「弟くん専用宗教」を設立**
- 教典:「お姉ちゃん教」
- 戒律:「弟くんは毎日お姉ちゃんを崇拝すること」
- 聖地:二人のベッド
### **【5. 死の瞬間まで「完全なる融合」を果たす】**
- **「最後の呼吸を同期させる装置」**を開発
- お姉ちゃんの心拍が止まったら、弟くんの心臓も自動停止する仕組み
- **「結合埋葬」**の準備
- 棺桶は一つだけ。体をバラバラにしてでも一緒に入る覚悟
- 墓石には「**死んでも離しません**」と彫刻(ハートマーク付き)
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### **【現在の進捗】**
「えへへ~実はもう『弟くん髪の毛コレクション』でギネス申請中なんだよね!(≧▽≦)」
(申請書類に「監視カメラ映像」を証拠として添付→職員が警察に通報)
**[※警告:お姉ちゃんの「成し遂げたいこと」の99%が刑法に抵触します。残り1%は宇宙法の盲点を突いた犯罪です]**
「ねぇ弟くん……お姉ちゃんと、**永遠に罪を犯し続けない?**(にっこり)」
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destinygoldenstar · 24 days ago
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クリエイティブでカラフルなプリキュア!
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これは非営利のファンメイドによる書籍形式のプリキュアシリーズです。プリキュアシリーズは東映アニメーションの財産です。正統なシリーズを応援してください。
「できた!!」
小柄な金髪の幼稚園児、さくらけいこちゃんが笑顔でクラスの前に立ち、手に持った紙をめくると、自分が描いた絵が現れた.
雑然とした庭の絵。三角形が草のようで、オレンジ色の棒に紫色の塊が木として描かれ、ターコイズブルーの空にはバナナとサクランボが浮かんでいる。少なくとも、バナナとサクランボなのかもしれない。紙の上で見ると、緑とピンクの線のようにも見える。
「外の庭よ!」 とケイコは興奮気味に言った。そして「木」を指差して、「見て!ピンクの木よ!きれいでしょう?」と言った。
彼女は他の子供たちの沈黙の中で返事を待ちます。
すると誰かが「あれは木じゃない!ブドウだよ!」と叫びます。
すると、笑いが湧き起こります。
「枝も葉もないよ!」
「バナナは緑色じゃないよ、バカ!」
「それは果物じゃない!塊だ!」
「果物は飛ばないよ!」
「それは青空じゃないよ!」
からかい合いの会話はしばらく続き、一人を除く全員が指さして笑いながら、ケイコの絵がどれだけ下手かを延々と語り、ケイコ自身と絵を笑いながら笑っていた。
ケイコはその場に留まり、笑顔はますます作り笑いになっていく。笑い声と侮辱の言葉が頭の中に吸い込まれていく。彼女は硬直し、教室の淡いヴィンテージ調の色合いは薄れ、笑い声はますます大きくなる。紙に置いた手は震えている。
「それは芸術じゃない!ゴミだ!」
その最後の侮辱は小さな子供をすすり泣かせます。
「おい!もういい!もういい!」先生の優しい声が聞こえたが、ケイコの耳には雑音のように聞こえた。「優しく話すか、何も話さないかのどちらかだ。さくらに謝って――」
ケイコはすでに教室のドアを飛び出して逃げ出しました。
「さくら!!」
ケイコは小さな校舎のドアからよろめきながら出て行った。階段を下り、レンガ敷きの道を駆け下りる間、涙以外のことには何も注意を払っていなかった。
彼女はつまずいて膝を打撲し、あざができた時にようやく立ち止まった。写真を胸にしっかりと抱きしめ、まだ泣き続けている。
再び顔を上げ、目を拭うと、彼女は自分が学校の近くの畑の脇の歩道にいることに気づいた。彼女は実物を見つめ、それから写真を顔に当て、そしてまた実物を見つめた。
その木は丸くも茂りもせず、枝いっぱいに淡いピンクの花びらが四方八方に広がり、その一部は落ちて柔らかな緑の草の上へと舞い落ちていく。
確かに、果物は飛びません。
確かに空は青いですね。
彼らは正しかった。
ケイコは、涙が落ちた自分のぐちゃぐちゃな絵をじっと見つめている。彼女の作品はひどい。ひどいものだったら、芸術を作る意味なんてないだろう。
「やあ、坊や」
鋭い爪が皮膚に食い込む手で恵子の顎が上がる。
女性は灰色の肌色で、背後に黒い髪を乱雑に垂らし、太陽の光を遮っている。鋭い歯を見せてケイコの目を見据える。
恵子は、目の前にいるこの女性の姿が気に入らないと泣き言を言った。
女性は「素晴らしい創造的な取り組みですね、ぜひ見たいです」と言いました。
女性の手が恵子の顔に伸びる。その動きに続いて、恵子の胸に痛みがこみ上げてくる。
最後に彼女が見たものは、彼女のバージョンのすべてが灰色に変わり、何かが引き裂かれるかのように胸が燃え、暗闇しか見えなかった。
彼女は動けなかった。
彼女は叫ぶことができなかった。
"停止!!!"
突然、オレンジ色の光が点滅した。ケイコは何も見分けられなかったが、明るいオレンジ色の光と、目の前に誰かの影が見えた。
「これは取らせないぞ!」少年が懇願する。
女性の声が嘲笑う。「もう何年も使えるインクがあるのに、なぜこんな無意味なことをしろと言うの?」
オレンジ色の光がより明るく輝き、少年は彼女の発言に衝撃を受けたようだ。
彼女は嘲る。「あなたはこの世界に一人残され、誰もあなたのような人間を気にかけないわ。新しい姿ではなおさら。価値のない動物よ。もう二度とあなたの泣き声を聞くことはないわ」
感情を表せるのは思考だけだったケイコは、その言葉を信じずにはいられなかった。みんなが彼女の絵を見て笑っているのに、一体誰が彼女の作品に関心を持つというのか?誰が彼女のことを気にすると言うのか?
「それでも……この子を連れて行くわけにはいかない!」
そこから恵子ができるのは、震えながらも言葉に自信に満ちた少年の声を聞くことだけだった。
「勝てません。魂の創造性を奪うことは決してできません…それは素晴らしい祝福です。そしてこの子たち…この子たちは…私が亡くなった後も情熱を追い求めるでしょう…そして、愛するものを決して諦めません。彼らは世界のために絵を描くでしょう!」
青い光が影を覆い、オレンジ色の光を消し去り、漠然とした悲鳴が聞こえます。
ケイコの目が覚めた。辺りを見回しながら、彼女は草むらに転がり落ちた。何が起こったのか、ただの夢だったのか、それとも全て現実だったのか、ケイコには分からなかった。
彼女の前にはもう誰もいません。ただ、畏敬の念を抱きながら青い空を見つめる彼女と、ぎこちなく震えながら通り過ぎるオレンジ色の鳥だけが残っています。
彼女は涙を拭って受け入れた。この不思議な声が正しいと知っているからだ。
彼女は誇らしげな笑みを浮かべて、再び絵を手に取りました。
「さくら!!」先生が駆け寄ってきて、さくらを見つけた。いつものように安心した様子で、さくらを抱きしめる。「大丈夫?!そんなに飛び出さないで!」
ケイコはただ空を見上げて、もういなくなってしまった鳥を探すことしかできなかった。「鳥?」
「学校に戻ろうね。戻ったらすぐにクラスのみんなで謝るからね。」
先生はケイコの手を取り、学校へ連れて帰りました。ケイコは空いている手で微笑みながら手を振り、「じゃあね、鳥さん!」と言いました。
彼女は何人が笑おうと気にしない。自分の情熱を追い求めるつもりだ。
どういうわけか、彼女は偉大な芸術家になるでしょう。
彼女はこの世界のために絵を描くつもりです。
エピソードは2週間ごとに公開されます
エピソード1全編は6月20日(英語版)と6月21日(日本語版)に公開されます
AO3、WATTPAD、FANFICTION.NETでも両言語で利用可能になります
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moko1590m · 9 months ago
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富山大、地震発生前に生じる地殻変動に伴う電磁気現象の観測に成功 掲載日 2024/09/17 19:41 著者:波留久泉 富山大学は9月13日、高周波の電波を観測することにより、地殻活動に伴う電磁気現象を安定的に観測する手法を開発し、さらに、スーパーコンピュータを用いたシミュレーションにより、その発現メカニズムの解明に成功したと発表した。 同成果は、富山大 学術研究部 工学系の藤井雅文准教授によるもの。詳細は、米国地球物理学連合会が刊行する電磁波伝搬に関する全般を扱う学術誌「Radio Science」に掲載された。 地震前兆時などに地表面に電荷が出現すると電磁波が影響を受け、異常な伝搬をする 地震前兆時などに地表面に電荷が出現すると電磁波が影響を受け、異常な伝搬をする。特に、通常ありえない地点へ長距離伝搬する可能性が示された(出所:富山大プレスリリースPDF) 地震活動や地殻活動により地中の岩盤に強い力が作用すると、岩石を構成する元素の状態がわずかに変化する。そして、さまざまな物理的な効果により、電気を帯びた粒子などが生じ、それが地中や地表面を伝って移動することが知られており、その現象や副次的に発生する電気および磁気的な現象のことが、地震活動や地殻活動に伴う電磁気現象と呼ばれている。 この現象に関する観測結果は、これまでにも報告されてきたが、観測の再現性が乏しいため(科学は再現性がとても重要視される)、研究者の間では懐疑的な見解も少なくなかったとする。しかも、こうした自然現象に伴って発生する信号は非常に微弱な上に不規則であり、その観測は容易ではないことも研究の進展を困難にしていたという。そこで研究チームは今回、低雑音かつ高感度な観測装置を開発し、それを用いた長期観測を行うことにしたとする。 今回の研究では開発された観測装置を用いて、およそ10年にもわたる長期間の観測が実施された。それにより、異常な電磁気現象が地殻活動により生じる可能性が確認されたという。 またこの異常現象が、山岳や海岸の複雑な地形の表層に静電気のような電荷が出現した場合に電波が強く散乱されて生じることを、スーパーコンピュータを用いたシミュレーションにより解明することにも成功したとする。なお電磁波の散乱とは、光や電波などの電磁波が空間を伝わる際にさまざまな障害物によって進路を妨げられ、四方八方へ飛び散るように伝わる現象のことである。 また今回の長期観測において観測された一例として、2022年3月16日23時36分ごろに発生した「福島県沖地震」が紹介された。同地震の震源は福島県沖の深さ約57kmで、マグニチュードは7.4。宮城県登米市、同県刈田群蔵王町、福島県伊達郡国見町、同県相馬市、同県南相馬市の5つの市町村で最大震度6強が観測されたほか、北海道から九州までの広い地域で地震が観測され、上述した5つの市町村以外でも震度6弱が観測された地域もあった。この時の電磁波観測では、地震が発生するおよそ半日前から、顕著な異常現象が観測されていたという。 2022年3月16日福島県沖地震M7.4の発生前後に富山県富山市、同八尾町、静岡県磐田市で観測された前兆信号例 2022年3月16日福島県沖地震M7.4(点線円内、最大震度6強、死者4名、負傷者多数、火災十数件)の発生前後に富山県富山市、同八尾町、静岡県磐田市で観測された前兆信号例(右グラフの灰色背景部前後)。その他、多くの地震について同様の異常信号が検出されており、気象庁地震データベースとの整合性が確認されている(出所:富山大プレスリリースPDF) 研究チームは現在、機械学習を用いた信号解析により、今回の研究結果の観測データと日本における地震活動の関連性を推定する研究を推進中としている。地震は不規則な自然現象であり、その予測は容易ではないが、今後さらに観測データをより多く蓄積していくことにより、地震活動の前後における異常信号をより詳細に調査、探究していくとしている。
富山大、地震発生前に生じる地殻変動に伴う電磁気現象の観測に成功 | TECH+(テックプラス)
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catonoire · 17 days ago
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「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」展
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東京都現代美術館で「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」展を見る。造形作家で批評家としても知られる岡﨑の大規模個展で、作家自身が作品解説も書いている。本人濃度(?)の極めて高い展覧会と言えそうである。
冒頭の画像は、チラシやポスターにも使われている作品。そのタイトルは以下のとおり。
左 Amid the sea’s savage darkness, the little bird glimpsed a single piercing ray of light. What could it be? Awakened, it flew through the storm. Fish, enduring these raging waters, seem stronger, wiser than humans. Beyond twenty feet, wave-roars silence human speech. Reefs transform: slippery, spiked, twisted, sharp—their endless forms leave me utterly lost. 右 The roar of waves and wind deafens me. In reef shadows, I hear phantom whispers, mysterious sea flutes. Mesmerized by the rainbow sheen of fresh fish, divine rapture overtakes me. Sinking through swirling waves, consciousness dissolves. A voice echoes through silver air, "Wild storm! Yet garden, sea, sky—all ablaze." Pale fingers now grasp, cradle.
すべてではないが、かなりの数の作品が非常に長いタイトルを持っている。それも含めて作品が成立しているのだろうと思うので、なるべく正確に書き写すよう努めたが、誤入力があるかもしれない。
展示室は1階から3階まで続き、ミュージアムショップ近くのスペースにも展示が少しある。
展示室1階は「2020年までの仕事」と「さまざまなプロジェクト」。最初に掲げられていたのは、作家が「こづくえ」と名付けた工作物。これを1年あまり壁にかけて眺め、なぜかおもしろいと感じ、のちにシリーズ化していった由。平面を立体化する発想は、洋服の型紙などに通じているようである。
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下の作品《3時12分》は、箱に入れて送ったら「梱包材しか入っていなかった」と報告され、ごみ箱の中から梱包材とともに��見されたといういわくつきだそう。壁にかかっていれば周囲から際立った存在たり得るが、置かれた環境によっては作品とは認識されない事例。
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このシリーズは、以下のような大きな立体作品にも発展した。
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広い展示室でいちばん存在感があったのは、アクリル絵具による絵画作品群だった。透明感のある絵具と不透明な絵具の使いかたがおもしろく、大胆に描き殴ったかのようでありながら、ごちゃついておらず、すっきりした印象にさえ見える。とても長い作品タイトルは、発表当初はかなり奇妙なものと受け取られたらしい。
左 この方角がわたしにとっては、いつとはなしに生きる方角になっていたというわけだ(ぼくらが近づくと消えてなくなる水!)。衰弱していたので海までは出られない。わずかに見える地平線、光線の具合か、砂漠に反射するまぶしい光がぼくらの目を灼く。わずか一滴でも砂の底から草の芽を、緑の火花を誘い出す水。その残してきたすべてを飲み干す。 右 北へ向って五時間歩いたら景色が変った。なにしろできるだけ遠くまで行き(ぼくらは大股に! 歩いた)何もみつからなかったら日没までに戻らなければならない。真昼に消えて夜にはまた生れるあの雲の、日中のさいごに残る積雲の影。そのひとつひとつが、水の動きと水の深さをそなえた森の茂みをあらたに作り出すのだ。見わたすかぎり忙しなく。
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左 あなたがたの考え(善悪)は紙に書かれる。この紙きれを火にくべよう。紙が燃えたらその考えこそ過ちとなる。紙は炉に投げ込まれ、しばらく火の中にあったが、やがて焼けも焦げもせずふわり、ふわりと飛びだしていく。楽園に神が生ぜしめた(花も葉もめだたぬ)善悪を知る一本の木。その木から(禁じられた果実と同じく)紙きれも作られたのである。 中央 天使は翼があるから鳥という。顔かたちは玉のように清らか、声のさまも女のよう。心を寄せても返事は文ばかり、耳に入るは羽音だけ。 右 野には(この世界では見えぬ)育ちも摘まれもしない無数の種子が眠る。言葉は種子である。あなたの見る水は、いつのまにか漲り涸れる河のように水蒸気が作るのではない。地の底から、泉のように想起されるのである。
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左 石がとどく距離なら、隈なく見渡せるさ。よって、剥き出しになった骸に気づかぬ者—水を目の前に、乾いた口で飢えを我慢するような者は、だれもいない! 悲しみは消えず、きっと肌の上に残るだろう(だから)、いつまでもきりなく泣くことはない。奇麗な死を願うのであれば(食われたくなければ)。海綿と水を用意し、今すぐ洗濯に出たまえ。 右 遠く投げた石によって、少年の肩の筋と骨とは粉々に砕かれた。距たりゆえにこの男—ダレモイナイ、自身は、自分が何をしたのか知ることもない。同じ母から生まれた者を殺したというのに。見える通りその肌はつるつる、滑らかなまま。けれど(だから)心が晴れることはもうないだろう。感じられるのは右脚のくるぶしの痛み。その痛みに大粒の涙を流す、ダレモイナイ。他国のものよ、この男と戦うつもりなら、その鼻と耳を削ぎ落とし、犬に食わすことさえも躊躇うことないぞ。
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小さいサイズの作品も多く、大きいサイズのものとは違った魅力がある。左から、《出来/ルーテルの食卓》、《河内(ハノイ)/地球上ではじめての聲》、《瑠璃/西方の溌剌》、《戸口/雑巾と棕櫚の靴拭い》。
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床に置かれているのはタイル作品。奥の壁に見えるのが布を使った作品。
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床に置かれたタイル作品2点のタイトルは次のとおり。タイルと同じように文字を12×12に並べている。
ひ と の よ は お し よ せ る こ う ず い 、 た て 、 あ ん か ん と い え に ざ し て い て は な ら ぬ 。 れ ん れ ん と こ の よ に と う り ゅ う を き め こ む な 。 す く い の は し が げ き り ゅ う に の み こ ま れ ぬ う ち に い さ ぎ よ く た び た て 。 あ つ い じ ん あ い に お お わ れ た こ の よ に 、 こ こ ろ を あ わ そ う と は お ろ か な こ と 。 ゆ れ う ご く ど だ い に あ し を と ど め て は な ら ぬ   い こ う べ き い か な る か げ も お ち て い な い ま ひ る 、 ち か く に み ず わ き い で 、 て ん が い さ な が ら か た ど ら れ た い け 、 か う せ る か 。 み ど り の く さ が も え 、 す ず し げ な み な も 。 さ ば く を は し り ま わ っ た あ し を や す め 、 ぎ ん よ う に あ い た く ち を と ざ す 。 い ち わ の か ら す 、 き ぬ の う え に お か れ た こ く よ う せ き 。 だ れ の た め に も に ふ く す
い ま は わ た し を あ ら う と き で す 、 と み ず に み を な げ た 。 こ ん な う つ く し い ひ と が あ ざ ら し に た べ ら れ て し ま う 、 と ひ と び と は な き さ け ん だ 。 み を な げ る と い な ず ま が お こ り 、 い な ず ま を み て あ ざ ら し は み ず に う か ん だ 。 ひ の く も が と り か こ み け も の た ち が ふ れ る こ と も そ の は だ か の す が た を ひ と に み ら れ る こ と も な か っ た   は じ め て て ん ち が し ゅ つ げ ん す る よ り も ま え 、 ま だ な に も の も か た ち を な し て い な か っ た と き 、 い き る も の は た だ お お み ず の う え を た だ よ っ て い た 。 か み の こ と ば に よ っ て て ん ち が あ ら わ れ て か ら は い き る も の は き の う え に ず っ と と ど ま っ て い る 、 だ か ら い き る も の が う ご く た び に 、 こ の き か ら み ず が な が れ で て く る の だ
この下の画像は、布をパッチワーク的に組み合わせた作品のひとつ、《木灰木を育てる》。近づいて目を凝らして見ると、手芸作品ではないので必ずしも布を縫い合わせているわけではないようだった。
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絵画ほど多くはないが、立体作品も少なからず並んでいた。
(下の画像左) ハンバウとそむきにぐるものを ホクワクととらへたり (下の画像右) テウミンとたみをとむらって バツサイとつみをきりしは
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上の画像で壁に掛かっている小さいサイズの絵は《同じ名をもつ堅さと重量(頭陀袋)》。
また、展示室の隅の一区画が絵本に割かれていた。絵本の実物のほか、絵本『かく』の原画がたくさん。
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数々の「ポンチ絵」。作家曰く、デフォルメされて記憶された名画の印象を、設計用薄葉紙を破って表現した、絵画の似顔絵、とのこと。
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四谷アート・ステュディウム関連資料。2004年から2014年まで開校された芸術学校で、岡﨑はそのディレクターを務めていたとのこと。
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このほか、公園の計画に携わったり(雪と霧の公園)、環境保護的な活動に関わったり(灰塚アースワーク)、公共の場所に設置する作品を制作したり(ファーレ立川)、といった狭義のアートの域にとどまらない仕事も紹介されていた。
2階の小さなスペースでは、岡﨑が2021年に脳梗塞で倒れたことと関連した展示がなされていた。病後のリハビリで描いたものが《T. T. T. Bot (Table Turning Tripod Robot)》の描画過程に似ていたということから、それも展示されていた。《T. T. T. Bot》は2015年の作品で、人の描画過程の速度や方向などを記録し、それを反転させた動きを画板にさせることで、画板に筆を置くだけで描いた本人以外の人も自動的に描画過程を体験できるというもの。この説明では何が何やらという感じかもしれないが、展示室には実物と映像が用意されていたので、仕組みは想像しやすかった。
《T. T. T. Bot》の描画過程の絵はたとえばこんな感じ。
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ご本人の脳の写真も。
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3階は「2022年からの仕事」。やはりアクリル絵具の絵画作品が主役を張っている。
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(上の画像) ジャガタラ。バナナから生まれた。ある日イノシシの牙に引っかかったココナツを見つけました。持ち帰ったココナツを庭に埋めると数日で大木に育ち、花が咲きました。花をとろうと彼女は木に登り、指を切り、その血が花に落ちました。 ジャータカ。かつて菩薩は泥水を泳ぐ力強い魚でした。干ばつがありました。ルビーのような目を開き魚は言いました。助けを求めている世に如来が雨を降らせるのは初めてではありません。洪水が起こって、甘い花の香りが漂いました。 (下の画像) “You don’t see far, and you don’t see clearly,” said the Moon, “In the little pretty whirl here below.” Lute strings trembled moonlight. Gossamer threads caught starlight. Moments dissolved beneath crystal waters. “She wept for the world’s depravity, unheard by the ears of men.” Constellations pierced bamboo grove. Coral pendant caught lamplight. ‘There,’ she exclaimed, ‘there!’ and she knelt and kissed the purple carpet. Evening frost kissed pale skin. Temple candles flickered worlds. Ivory doves scattered dreams. I think she was actually weeping. Dawn shattered like sea glass.
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左から On Ohrid Lake’s rocky shore, an ancient sage meditated, his bird-like face carved by time and fasting. Swallows skimmed waters. The novice’s azure beads glinted. “Master,” he murmured, “your strength wanes like autumn light.” Behind them stood a monastery, half-hidden among olive trees, its burned walls whispering tales of sacrilege. “At night, Master, I see them: Hellenic maidens weaving flower crowns with blue wildflowers, their hair flowing with their hearts’ rhythm.” The youth’s voice trembled. Through azure darkness, mysterious figures like shadows - Macedonian shepherds driving boars through olive groves, Dryads herding pearl-white goats, laughter echoing across deep blue Aegean waters. Lilies and roses, planted by long-departed Orthodox monks, wove through the garden where ferns advanced like silent armies. “The ancient Thracian gods still walk here,” the old man murmured, eyes gleaming. Beyond the flower-strewn ruins, cypress groves stretched toward horizon, harboring secrets of Cyclopes and Thessalian nymphs dancing in moonlight. “I seek the moment when immortal spirits sing,” the sage revealed, clutching his cypress staff. “When the sun passes between Ram and Lion, their song trembles through creation. Tomorrow at dawn, I shall hear it.” His eyes blazed with ancient wisdom, reflecting centuries of searching through Byzantine and Delphic lore. The youth gathered roses bright as rubies and lilies white as pearls, weaving them through rushes as the last grains of sand fell. “You’ll find me young again,” the master had promised. When dawn painted the walls with clear light, he sat motionless, embracing the dewy flowers, his quest ended.
《露齿而笑/コロッケを食べるDavy Crocket. または口笛をふくJiminy Cricket》
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《Une Larme pour une Goutte d’Eau/ただ一つの慈悲》
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立体作品もやはり何点もあったが、Tumblrの画像枚数制限のため少ししか載せられない。
Examine The Tone And Reasoning Too; Consider The face, How It Changes Hue/聆音察理,鑒貌辨色
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(上の画像中央の立体作品) Hear the Breakers’ Deepening Roar/气喘如牛、舳艏揺曳倾海/Trampling, Trampling, Trampling, to Overwhelm the Shore! (上の画像左の平面作品) The faithful brown eyes closed in eternal sleep as the wind created an eerie howl. Through tall reeds, something leapt into deep water. “My brother, Follow the path to that volcanic pit,” I whispered. Animals absorb earth’s scent into their flesh; cubed meat wafts soil’s aroma. A large dun-colored beast moved at considerable speed across the green hillside. The stiffened limbs of our prey ceased their natural service. “It was bluish clay,” he muttered, tracking another creature. We glimpsed porcupines, an anteater, and a wild pig with curved tusks. After hunting for over an hour without securing a shot, darkness fell swiftly. (上の画像右の平面作品) The aged fish cast a vast, faint shadow on the pond’s bottom, its silhouette wavering like a mirage in the sunlight. The water’s slight murkiness and the shadow’s immensity rendered it imperceptible to the smaller fish, who swam on, oblivious to the ancient presence above. Daily, the old fish approached the shore, gazing skyward. It sampled the bitter earth, musing, “With time, I’ll adjust.” It longed to scale the bank, envisioning the wonders beyond: distant mountains, rivers, and luminous nighttime cities. The mysterious terrestrial world beckoned, teeming with countless unseen marvels.
最後に余談をひとつ。額縁やケースに入っていない作品が多いので、下の写真のように床のあちこちにテープが貼ってある。ある展示室でテープの先に踏み込んでしまった人がいたらしく、スタッフが「結界を張ってありますのでその先には入らないでください」と言っているのが聞こえてきた。結界。そう、確かに結界と言っていた、ごく自然に、当然のように、大真面目に。それが妙にツボにハマってしまい、誰かに話したくてたまらなくなったが話す相手がいないのでここに記しておく。
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kennak · 9 months ago
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機械輸出を巡る冤罪(えんざい)事件に巻き込まれた機械製造会社「大川原化工機」(横浜市)の社長らが国と東京都に損害賠償を求めた民事訴訟の控訴審は、元取締役に対する警視庁公安部の取り調べの違法性が争点の一つだ。一審の東京地裁判決は、人を欺く「偽計」を用いて供述調書を作成したなどとして、一部を違法と認定した。どのような状況だったのか。元取締役に聞きながら、取り調べの在り方を考えた。(山田雄之)  大川原化工機を巡る冤罪事件 警視庁公安部が2020年3月、国の許可を得ずに噴霧乾燥機を中国に輸出したとする外為法違反容疑で大川原正明社長や島田さんら3人を逮捕し、東京地検が起訴したが、21年7月に取り消した。1年近く身体拘束された社長らが逮捕・起訴は違法として東京地裁に起こした国家賠償訴訟の証人尋問で、捜査担当の警察官が事件を「捏造(ねつぞう)」と証言。昨年12月の地裁判決は捜査の違法性を認め、国と都に賠償を命じた。原告、被告双方が控訴。東京高裁での審理は、12月25日に結審予定。 ◆窓のない部屋で取り調べ39回  「うそをつかれたり、脅されたり。悪意に満ちてましたよ」。大川原化工機の元取締役の島田順司さん(71)は8月上旬、警視庁公安部の取り調べに対する憤りを「こちら特報部」に語った。 国家賠償請求訴訟の控訴審で、10月9日にある警察官の証人尋問への思いを語る島田さん(右)と代理人の高田剛弁護士  同社の「噴霧乾燥機」が生物兵器製造に転用可能だとして、国の許可を得ずに輸出した外為法違反を疑われた島田さん。逮捕前の2018年12月〜20年2月、任意の取り調べを39回受けた。1回3〜4時間。原宿署の灰色の窓のない部屋で、警察官と向き合った。  生物兵器製造に転用するには、機械を扱う人が細菌に感染しないよう内部を「殺菌」する性能が必要だ。大川原の機械はその性能がなく、国の輸出規制の対象にならない。島田さんは終始一貫して訴えたという。 ◆「あんなの供述調書じゃない」  だが、公安部が作成した島田さんの任意調べ時の供述調書計13通に目を通しても、そのような主張は登場しない。逆に輸出規制の対象になるとして「勝手に全て非該当と判定した」「国の許可を取らずに不正輸出を繰り返した」と容疑を認めるような記述がある。  一体どういうことなのか。島田さんに聞くと、「あんなのは供述調書じゃない」と声を強め、勾留中に記録した「任意事情聴取時の状況」という手書きメモを見せてくれた。 ◆話してもいない文言を付け加えられ 島田さんが書いた「任意事情聴取時の状況」のメモ。供述調書作成時の苦悩がつづられている  メモには「供述調書作成状況」という項目がある。調書が「供述した内容と大きく恣意(しい)的に変更され、誇張された」として、「警察はこのようなことをするのかと失望した」と記されている。「偽って」「認識していながら」「ずさんに」など話してもいない文言が多く付け加えられた、とも。「『無許可で輸出した』という部分は、『許可が必要とされない仕様なので、結果的に無許可で輸出した』と(補足するよう)何回要求しても入れてもらえなかった」という。  島田さんによると、取調室ではペンを貸してもらえず、調書の訂正したい箇所に印を付けられなかった。訂正を希望すると交換条件を付けられたり、一カ所訂正するたびに調書を取り上げられたりして、見落としや確認不足が起きた。 ◆何を聞かれ、どう答えているかも分からなくなった  当時の精神状態をこう振り返る。「平静を装ったけど、緊張で手が震えていた。逮捕をちらつかされ、『おまえだけが認めない』とうそをつかれて迫られ、何を聞かれ、どう答えているかも分からなくなった」  島田さんが「不正輸出を繰り返した」と容疑を認める趣旨の調書の存在に気付いたのは、逮捕後に弁護人に指摘されて��った。 ◆公安部の「偽計」を認定した地裁判決  国賠訴訟の東京地裁判決は、公安部の取り調べ時に「殺菌」の解釈を島田さんに説明したやりとりが調書にないことなどから、誤解させて調書に署名させる「偽計」を用いた取り調べで違法だと認定した。  この認定について、警視庁幹部らは本紙の取材にそろって不満を口にした。ある幹部は「『偽計』なんて犯罪行為のような認定は受け入れられない。今後の捜査にも影響する」と語った。 ◆新証拠の録音記録を確認したら…  東京高裁で6月に始まった控訴審。都側は輸出規制に精通する島田さんを誤解させるのは「不可能」で、調書に「殺菌」解釈を説明した形跡がなくても不自然ではないとして、地裁判決は「重大な事実誤認」などがあると反論している。 「生物兵器の製造には転用できない」と噴霧乾燥機の説明をする元取締役の島田順司さん=横浜市の大川原化工機で  大川原化工機側は終止符を打つべく、新たな客観証拠を提出した。13通目の調書作成後の2019年11月1日にあった34回目の取り調べで、島田さんが身体検査をくぐり抜けてひそかに成功した録音だ。  録音記録を確認すると、島田さんは噴霧乾燥機の輸出規制要件を巡って、自身の考えを説明し、経済産業省のガイドラインを根拠に大川原の機械は「該当しない」と訴えている。だが警察官は「ガイドラインは大した内容でも何でもない」「経産省は明確に要件に該当ですって」と述べ、取り合う様子はなかった。 ◆逮捕後の弁解聴取でも違法認定  代理人の高田剛弁護士は「公安部は独自に考えた『殺菌』の解釈を示さず、経産省の名前を出して決めつけで取り調べを進めた」と指摘。その上で「任意捜査の終盤でも、明確に不正輸出を否定していたことが明らかになった。改めて供述調書の不正確さが浮き彫りになった」と強調する。 島田さんの任意取り調べ時の供述調書。「不正に輸出を繰り返した」と容疑を認めるような文言がある  地裁判決は公安部が島田さんの逮捕後に弁解を聴く際にも、島田さんの指摘に沿った修正をしたように装って書面に署名させる違法があったと認定し、控訴審で争われている。取り調べに補助で立ち合った警察官の証人尋問が10月9日に予定され、島田さんは「正直に話してほしい」と話す。 ◆「なめんなよ」「ガキだよね」問題相次ぐ  最近も捜査機関の取り調べを巡る問題が目に付く。  19年に不動産会社社長が業務上横領容疑で大阪地検特捜部に逮捕され、後に無罪となった事件では、大阪高裁が今年8月、部下の取り調べで「検察なめんなよ」などと怒鳴り、机をたたいて責めたとして田渕大輔検事(52)を特別公務員暴行陵虐罪で刑事裁判に付すことを決めた。  18年に犯人隠避教唆容疑で逮捕されて黙秘した元弁護士が、取り調べ時に「ガキだよね」などと横浜地検検事から侮辱されたとして国に賠償を求めた訴訟で、東京地裁は7月、賠償を命じる判決を出した。  いずれも逮捕後の取り調べの録音・録画が義務化された検察の独自捜査事件だったため、映像から判断できた。一方、大川原の場合は録音・録画の対象ではなく、任意段階の様子は、島田さんの録音がなければ正確なやりとりは全く分からなかった。 ◆日弁連「全事件で録音・録画義務づけを」  「捜査機関の心証に合致する供述証拠を作るためのものではない」。かねて取り調べのあり方を問題視してきた日本弁護士連合会は6月の決議で、全事件の逮捕前からの全過程で録音・録画を義務づけるよう要望した。さらに録音・録画の状況下でも不当な取り調べが繰り返されていることは「公知の事実」として、弁護人を立ち会わせる権利を確立すべきだと主張した。  前出の高田弁護士も「捜査機関は際どいテクニックを駆使して自白をとりにくる一方で、取り調べられる側はペンさえ持てずに丸腰だ。希望があれば全過程を録音・録画し、弁護人の立ち会いも認めるべきだ」と話す。島田さんもこう訴える。「現状のままでは、われわれと捜査機関が全くフェアな関係じゃない。また必ず冤罪が起きる」 ◆デスクメモ  記事中の警視庁幹部の言葉にあぜんとする。捜査員が裁判で「捏造」とまで言い切った事件だ。かたくなな抵抗は内輪の論理にしか見えない。真っ先になすべきは、なぜ冤罪が起きたのかを徹底検証し、その結果を開示することでは。その上で、全面可視化を見据えた対応を求めたい。(岸)
悪意に満ちたウソ・脅し、変更された供述調書… 大川原化工機冤罪事件が浮き彫りにした取り調べの問題点:東京新聞 TOKYO Web
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