Tumgik
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左右
継ぎ接ぎだらけ、ちぐはぐで、言いたいことを言えたり言えなかったりして、言えないことばかりで、頭の中はいつも色んなことでぐるぐる渦巻いて溢れて止まらなくて、分かってることも分からないことも信じたいことも信じられないことも憤りもありがとうも恨みつらみも愛もみんなぐちゃぐちゃで、罪悪感とか欲望とかそういうものにサッともってかれる、囚われちゃって逃げられなくて逃げられない内に居心地が良くなって首輪が外れた後ものこのこ遊びに行ったりする、何が間違いで何が正しかったのかは答えを出せないままで蓋をした、時々取り出してみてもやっぱり上手く扱えないで、後悔や反省や自己嫌悪ばかりに忙しくして改変や革新や前進の為に使うべき脳味噌のことなんかすっかり忘れてしまう、言い訳のように前進することに迷う、良いのか悪いのか許されるのか許されないのか、右から見れば真実のような迷いも左から見れば言い訳がましい迷いだああ言えばこう言うだ。 僕らが僕らの過去と未来のためにすべきことは、自分のために生きるということではないのか。 少し変わって、でもこのまんまじゃまたダメで、もう少し、そうしたらもう少しって変わっていかなきゃいけないんだ、恐いけど。
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ライター
雨が降りそうな朝だった。小さな置き手紙が一枚、ベッドの横にあるテーブルの上にあった。 「一人で生きていく」 たった一文だった。寝惚け眼で周りを見渡すと、彼の物がなくなっていた。嗚呼、と私は声を漏らす。とうとうこの日が来たか、という風に。 彼が私の家に住みだしたのは5年前のことだった。主に私の稼ぎで生活をしていた。彼は時々それに耐えられないと泣いたが、彼は結局私の家から出られず、そのまま5年が経った。 初めて彼が泣いたのを見た時から、私はいつかこんな日が来るのではないかとぼんやり思っていた。だからあまり驚きはなかった。いつの間に家を出たのだろうかと、疑問はそれくらいだ。 一人で生きていく。 どうするのだろう。彼にはお金もないし頼れる身内もいない。ホームレスにでもなるのだろうか。私はまだぼんやりとした頭でそんなことを考える。しかし不思議と心配する気持ちはなかった。私の彼への気持ちはもう、なくなっていた歯ブラシの一本への気持ちとさほど変わらないのかもしれない。 煙草を吸おうとベランダへ出た。しゃがみこんで、煙草を咥え、ライターのないことに気がついた。立ち上がるついでにふと灰皿を見ると、ライターが一本、落ちていた。 それは彼のライターだった。私はそれを拾い、煙草に火を点ける。 最初で最後の、彼からの贈り物だと思った。
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冬眠る夜
僅かな光に寄っていく煙草の煙を見ていた。 十五で田舎の家を出て三年が経つ。得体の知れない男が横で眠る情事の後。私は考えに耽っていた。 東京へ出て来た時の私は期待だらけだった。星がほとんど見えないのにも興奮した。空気が澄んでいないことにも喜んだ。池袋という街がとても気に入ってよく散策した。 しかしそれにもすぐ飽きた。星がほとんど見えないことにも空気が澄んでいないことにも池袋という街にも飽きた。 そうして一年前この街に移り住んだ。ここはスーパーもあるしコンビニも本屋もあるし寂れているけれどラーメン屋もあるし、何より夜が静かだった。静かな夜に安堵していることに気がついた時は、結局私は田舎育ちなのだなと残念な気持ちで納得した。抜け出したつもりでいたのにと、一人泣くこともあった。ホームシックとは違う、期待を裏切られた悲しさからだった。 「どうしたの?」 横で眠っていた男が目を覚ました。私は何でもないと言い、煙草の火を消してベッドに潜り込む。 「もう一回する?」 ニヤニヤと汚い顔で笑いながら男は聞いた。私は頷く。 ねぇもっと夢を見せてよ。もっとワクワクさせて、ドキドキさせて、私に希望を見せてよ。 男が果てるまで、私は何かに祈っていた。 ねぇもっと、もっと。 男から漏れる声以外は何も聞こえない、静かな夜のことだった。
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夢の話
思い出を売れる質屋みたいなところに行く夢を見た。思い出にまつわるものなら何でも買い取ってくれる質屋で、例えばそれが飴の包み紙でもどんぐりの傘でも何でもいいという。値段はついているようだけれどいくらか分からなかった。私はいくつか買い取ってもらおうとしていたけど、その中にチロルチョコの包み紙みたいなものが一枚あったことしか思い出せない。「思い出にまつわるもの」を店主の前に並べている実感だけはあるのだけれどものの色や形は靄がかかったみたくぼやけてしまっていて何を並べているのかまでは分からなかった。 さあそれでは買い取りますね、というところで目が覚めた。
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雨の日
梅雨の頃も嫌い。まさに憂鬱の旬って感じがするでしょ。全部がかったるくなって、身体も何でか重たくなって、動きたくないって思うでしょ。人間は、動いてないと憂鬱になるのよ。 彼女は窓の外を見ながらそう言った。僕は、うんそうだねと返した。僕は梅雨がそれほど嫌いでもない。雨音は心を落ち着かせてくれるし、濡れたアスファルトの匂いが好きだし傘を通してみる空は綺麗だ。 それでも僕は目の前の何より美しい彼女に同意してしまう。少し寂しいけれど、頷いてしまうのだ。そういつものこと。いつものことだった。
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最果て
愛してる。彼はベッドの中でそう言った。私はありがとうと応えた。私も愛してる、そう言った。彼は満足そうだった。けれど私は交わされた言葉の浅さに気が付いていた。私達は決して愛し合ってなどいない。ただ一人では世の中のあらゆるものから逃げるのが怖くて、二人になっただけ。まだ逃げている最中だからさようならが言えないだけ。だから彼の愛してるも私の愛してるもペラペラな紙切れのようなものなのだ。 私は思う。このまま何処まで逃げ続けられるのだろうかと。終わりはあるのだろうかと。終わりがきたら、どうなるのだろうかと。ただ一つ分かっているのは、それを知った時、私たちはきっと互いに手を離しさようならと言うだろうということだけだった。 私達は今日も逃げる。光から身を隠す。最果てに出会うまで。さようならと手を離すまで。
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台詞
「自由に生きたいとか言ってるけど、実際は帰る場所とか守るべきものとかそういうの喉から手が出るほど欲しいんでしょ?」
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金魚
真っ赤な金魚を女は飼っている。少し前に近所で催された夏祭りで女の恋人がとってくれた2匹の金魚だ。女は金魚に1号、2号、と名前をつけた。見分けがつくの?と恋人は笑ったが、女にははっきりと二匹の違いがわかっていた。1号は黒い点が1つ、目のそばにあり、2号は1号より少し赤が薄い。女はこの2匹を大切に育てている。金魚鉢がなかったので、昔買った花瓶の中で育てている。女の恋人は窮屈そうだと言ったが、女は2匹が縦に泳ぐところも気に入っていた。
真っ赤な金魚は毎日縦に泳いだ。女は2匹に餌をやったり、花瓶の水を換えることが習慣になった。
ある雨の日、いつも通り水を換え2匹に餌をやっていると、女は2匹が自分のおかげで生きているのだと実感した。それからというもの、女は真っ赤な2匹の金魚に熱を持って接し始めた。喋りかけたり、いつも通りの時間に餌をやる為仕事を早退したり、恋人とのデートを断ったりするようになった。いつの間にか、生活の中にいた2匹の真っ赤な金魚は女の生活を乗っ取り、女はその事に気づくことなく2匹の世話をし続けた。 真っ赤な金魚は今日も縦に泳いでいる。
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土曜日
こんなことが、もう四年も続けられていた。しかし初めて男に服を脱ぐよう言われた土曜日のことを、少女は忘れていない。混乱したまま恐怖がやってきて、彼女は一晩泣き続けた。その後しばらくは訳もわからず無理矢理に抱かれ続けた。毎日泣いた。誰に相談することも出来なかった。そして一年が経つ頃、当然の如く少女は心を病んでいた。死んでしまいたいと強く願っていた。しかし少女は覚悟してしまった。それは生きてゆく為の覚悟だった。少女の中の僅かな希望が、この家を出られる日が来るという希望が、生きてゆくことを選ばせたのだった。 それから少女は抱かれている間もその後も一切泣かなくなった。そして父親は少女にとって男となり、特殊な土曜日が完成した。少女が自由になれるまで、あと三年の頃であった。 :終わり
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土曜日
少女は男の娘であった。しかし男にとって少女は娘ではなく若い女であった。少女に母はいない。そして少女はまだ若過ぎた。その為目の前で食事を摂る男のことを父親ではなく男として見なければならなかった。そうでなければ生きてゆけないと、少女はすっかり思い込んだのだ。男は決まって土曜の夜に少女を抱く。少女は父親に犯される恐怖より生きられなくなる恐怖を選んでいたので、土曜には男がすんなり部屋に侵入できるようわざわざ部屋の鍵を閉めずにいた。男もまた、それを分かっていてドアをあえてノックし、まるで少女を犯すための承諾をとるように入ってもいいかと尋ねた。 二人は決まって土曜日の夜にセックスをする。少女は何も言わず服を脱ぎ、男は何も言わず彼女の身体を貪った。事が終わると、男は必ずすまないとこぼした。少女は首を横に振り、男が部屋を出るとようやく部屋の鍵を閉めた。 :続く
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無題
貴方のことを文章にしていたら遺書になった。と、彼女は言った。僕がどうして?と聞くと、彼女は首を横に振り分からないのと困った顔をした。読ませて欲しいと頼んだら断られてしまい、僕も困った顔になった。そんな僕を見て彼女は、愛しているわとキスを1つくれた。夕日が沈む少し前の、優しいキスだった。
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煙草とキャンディー
煙草とキャンディー、これがあれば私は何処ででも落ち着くことが出来る。騒がしい街の中や大勢の客で賑わう居酒屋、知り合ったばかりの人間の家、主にセックスを求めて客がやってくる仕事場。何処でも。これはある種の才能だと私は思う。静かな心でいることは大切だ。 今日も私は煙草とキャンディーの袋を2つ買って仕事場へ向かった。到着するなり仕事が入る。客は初めて体を重ねる相手だった。私は用意された鞄に煙草とキャンディーを忍ばせ客の指定したホテルへと向かった。ホテルは仕事場からほんの数分もかからない場所にあった。よく行くホテルだ。ホテルの管理人は何処も皆、なぜか無言だ。何に気を遣っているのか、はたまた軽蔑でもしているのか、とにかく黙っている。私があえてこんにちはなどと挨拶してみても会釈するだけだった。なので私はホテルへ着くと真っ直ぐエレベーターへ向かう。客の指定した部屋の前で持ち物を確認し、チャイムを鳴らす。男はすぐにドアを開けた。いかにも冴えない、しかしとても真面目な中年という感じで、私に一礼などして部屋へ招き入れた。 一通りの情事が済み、時間が余ったので私は煙草を吸ってもいいかと尋ねた。男は頷く。 私は煙草とキャンディーの袋を取り出し、煙草に火をつけた。すると突然、セックスの間も口を開かなかった男が言った。 「キャンディー?」 私はこくりと頷く。 「これがあると、落ち着くの。」 私はキャンディーの袋と煙草をそれぞれ指差し言った。男は何故か首を傾げている。 「君、恋人は?」 「いませんよ。」 そうか、と男は納得したぞというような声色で頷いている。私の頭の上にはクエスチョンマークがいくつも並んでいた。 「君は孤独なんだね。」 男はそう言い、私は何のことだかさっぱり分からず黙った。孤独。どうして煙草とキャンディーからそれが連想されるのか私には分からなかった。 指定された時間が迫り、男は私に金を渡すとありがとうと言ってまた一礼した。私は男とホテルを出て、道の途中で別れる。仕事場へ戻り、受け取った金をカウンターの男に渡し休憩室へ入った。すぐに煙草に火をつける。 「孤独。」 口に出してみてもやはり分��らなかった。私は孤独?自分に問いかけてみてもピンとくるものはない。 もしまたあの男に会えたら尋ねてみよう。私はそう思うことにして、吸い殻を捨て、キャンディーを1つ口に含んだ。
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鉄塔
そんな女にある日、友人から結婚式の招待状が届いた。中には仲良く寄り添う二人の写真と返信用のハガキが入っていた。女は写真をじっと見つめ、それをそっと封筒にしまうといきなり立ち上がり外へ出た。そして女の住むアパートから一番近い鉄塔の前に立った。女は鉄塔を見上げている。あの天辺へ行って電波のように。女は思い切って鉄塔を囲むフェンスから身を乗り出し鉄塔に触れてみた。鉄塔は冷たく、硬かった。女はフェンスから身を引き、その場にしゃがみ込む。女は鉄塔を見上げて再び思う。あの天辺へ行って電波のように飛んでいきたい。理由は女にもよく分からなかった。けれども女はその思い一つでずっと、鉄塔を見上げ続けていた。 :終わり
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鉄塔
女は普段、小さな会社で事務員をしている。地味なスーツを着て出掛け、ひたすら書類に目を通す。そして定時には退社し、小さなアパートへ帰る。これを繰り返している。女の毎日はつまらなそうに見えるが、必死で就職活動をし、何とか就職することが出来た会社の仕事を、女はそれなりに好ましく思っている。しかし周りの友人知人がワーキングホリデーへ行ったり結婚したりしているのを知ると、やはり自分の生活を見直さずにはいられなかった。 :続く
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鉄塔
女は鉄塔を見上げるのが好きだ。無機質な外観とその背の高さが女の心を引くのだ。いつか天辺に登って電波のように飛んでいきたい。そんな夢を見ながら女は鉄塔を見上げる。 :続く
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台詞
「昨日引っ掻いた手の甲の傷も一昨日殴った太腿の痣も週末には消えてるから、都合の良いアタシみたいでなんか愛しちゃった」
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生活
いつも畳が見える、レースのカーテンが隅に括られてある窓、射し込む強烈な日射しが畳をジリジリ焼いていて、それをワタシはじっと睨んでる、畳の上では色んなことが起こる、悲しいこと嬉しいこと痛いこと苦しいこと愛、愛、愛、フレームアウトする画面、畳と一緒にワタシも焼かれていた、焦���たワタシが夜の冷たい畳の上に寝ている、静かだ、一度だけ蛙が鳴く、焦げたワタシをワタシが見ている、そしてここには何もないと気付き、全て幻だと知る。
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