バレエ鑑賞第21弾 マリインスキー劇場 ネオクラシック・トリプルビル 《マルグリットとアルマン》 振付:アシュトン 出演:テリョーシキナ、ズヴェーレフ 椿姫という名でノイマイヤーが手がけた全幕作品もありますが、このアシュトンの作品は30分の中にヒロインの高級娼婦マルグリットと青年アルマンの恋模様、マルグリットの死が描かれたミニアチュールです。 艶やかな女性が病に弱り、静かに息を引き取る様子はたった30分の物語とは思えないほどドラマティック。なのに、話の展開に置いていかれることなくじっくりとドラマが進んでいくのが不思議でした。 特に印象的だったのが最後のマルグリットの死。高級娼婦でいつも艶やかに、周りの紳士達を虜にしていた彼女の死は、アルマンの2人きりの寝室で、ひっそり、ゆっくり、とても静かに描かれていて「あんなに華やかだった舞台がこんなに静かに終わるのか」と、びっくりしました。 《In the Night》 振付:ロビンズ 出演:バトエワ、セルゲイエフ/コンダウーロワ、イワンチェンコ/スコリク、スメカロフ ショパンの甘美なノクターン、星のように電気がキラキラした黒い背景、3組の男女…まるで夜の街をランデブーする3人の恋人達のような、ロマンティックな作品。もともと好きな作品だったけど、ますます気に入りました。 ロビンズといえばウエストサイドストーリーの振付もしたアメリカの舞踊家ですが、In the Nightは綺麗なクラシックのパが基調とされていてモダン要素がかなり少ないです。 作品のコンセプトや、音楽の世界観の表現に、ハリウッド映画のようなエンターテインメント性を感じました。夜のバーやレストランで上演して欲しいです。笑 《Symphony in C》 振付:バランシン 出演: バランシン作品の中で一番豪華な、デフィレのような作品、シンフォニー・イン・C。 4人プリマバレリーナが1楽章ごとに代わる代わる登場して本当に豪華なんです! バランシンといえば音楽の視覚化ともいうべき独特の振付が高く評価されていますが、私は彼のフォーメーションの巧みさにも注目すべきだと思います。 彼の中で一番の基盤にあるのは音楽をいかに視覚化するかなのですが、その視覚化の試みは振付だけでなく、何人に踊らせるか、群舞とソリストで振付を分けるか、それとも全員に同じ振りを踊らせるか…など、フォーメーションの作り方にも見られます。そして、それが見事に音楽の盛り上がりと一致して感動的なのです! コールドバレエをここまで効果的に使う振付家っているのでしょうか、私の知る限りでは、白鳥の湖2幕で有名なレフ・イワノフ位なのではと。やっぱりバランシン好きです。
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バレエ鑑賞第14弾 マリインスキー劇場《バフチサライの泉》
この作品はプーシキンの詩を基にソ連の舞踊家ザハーロフが作った1934年初演の作品です。
あらすじを簡単に言うと、
ポーランド(当時はソ連)のとある宮殿で貴族ポトツキー一族が娘マリアの誕生日を祝っていたところ、タタール人が襲撃。邸宅にいた女性は捕らえられ、男達は全員殺されてしまう。
タタールの頭領ハン・ギレイはマリアの美しさの虜になり、彼女を自分のバフチサライ宮殿に連れ去る。
ギレイの寵姫ザレマは、ギレイが自分に全く興味を示さなくなったことに不安や苛立ちを隠せない。彼がポーランドの令嬢マリアに魅了されていることを悟ると、ザレマは嫉妬心に駆られてマリアを刺し殺してしまう。
その場に立ち会わせるもマリアを救うことができなかったギレイは激情しザレマを殺そうとするが、愛する人に殺されるなら本望というザレマの態度にうろたえ、手を下すことができない。
殺人を犯したザレマは翌日突き落とされて処刑される。
ギレイは2人のことが頭から離れず、バフチサライの宮殿にある泉に悶々としながら佇む。
ポーランドとタタールという2つの異なる文化圏が舞台となっていますが、初演当時どちらもソ連圏であったということが興味深い。
この「プーシキン(古典)作品の舞台化」はアヴァンギャルドの後の"社会主義リアリズム"から始まったもので、政治的な意味合いがかなり強いです。
このバフチサライの泉がバレエ化に至ったのは、単なる社会主義リアリズムの一端ではなく、ソ連に住む異民族に対する何らかの考え方が反映されたものなのではないでしょうか。
1幕でマズルカやポロネーズを用いてかなりポーランド色を強調していたので、何らかの意味があるはずです。
マリア役はノーヴィコワ。
リリカルで可愛らしくて、白雪姫のような容姿はお嬢様にピッタリでした。
こんなに可愛らしくて、踊りも綺麗なのに、今ひとつ拍手が大きくなかったのが気になった…三児の母であるママさんバレリーナに対して世間の評価は厳しいのでしょうか。
ザレマ役はコンダウーロワ。
筋肉質で締まった身体にハーレムパンツの露出度の高い衣装がめっちゃ似合う。シャープでセクシーな彼女、強く美しいタタールの愛妄役がよくハマります。
確かにノーヴィコワの一歩先を行く存在感と抜け目のない美しさが彼女にはある。
拍手の大きさからすると、観客は皆彼女を観に来たんだなっていう感じでした。
ノーヴィコワファンの私としては少し悲しかった…オレシアの方が出番長かったのに。
コンダウーロワ繋がり、ソ連バレエ繋がりというのもあるけど、
バフチサライの泉と愛の伝説ってどこか似てる気がする。強い女性が愛らしくリリカルな少女に嫉妬する所とか、ソ連内の少数民族が取り上げられているところとか、結局誰の恋愛も実らない三角関係とか、エキゾチックな雰囲気とか。
こういう比較ができるようになったのも、劇場に通い詰めた成果ですね…そろそろ卒論のテーマ決まらないかなぁ。(決めるのは自分です)
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バレエ鑑賞第9弾 マリインスキーバレエ《ロミオとジュリエット》
ロイヤルのマクミラン版、シュツットガルトのクランコ版、パリオペラ座のヌレエフ版など、バレエ《ロミオとジュリエット》は沢山の有名な改訂版がありますが、
元祖はソ連の舞踊家ラヴロフスキーによるバージョン。
他の改訂版を全幕で見たことがないので比較はし兼ねますが、今回は最もベーシックなロミオとジュリエットを観てきたというわけです!
元々名場面だけYouTubeで何度も観ていた私、作品自体も大好きだけど、何より好きなのがプロコフィエフが作曲したバレエ音楽!
全幕通して独特の和音が何度も繰り返されるのですが、その和音の重厚感、哀しさ、切なさ、美しさたるや、まさにロミオとジュリエットの世界観そのもの…踊りがなくても音楽を聴いてるだけで胸がキューンとする。
その位音楽が素晴らしいし、
このプロコフィエフの作曲無くして今のロミオとジュリエットは無いだろうと私は思ってます。
プロコフィエフ偉大なり。
そんな彼の音楽に踊りをつけたラヴロフスキー。
ソ連の舞踊家ですが、動きは優美なクラシックバレエ。しかしフェッテやピケといった技巧はほとんど使われず、俊敏で細かい動きが多いように感じられました。特に膝下の細かい足捌きが特徴的。そしてリフトが複雑。
今まで見たソ連バレエの中でもっとも古典スタイルが色濃く残された振付だと感じましたが、このシェークスピアの文学の世界にぴったりで良かったです!
また、ジュリエットはアラベスクやグランパドシャ、アチチュードなどの後脚を上げる動作が多く、キャラクター毎に少しずつ特徴的な動きがありました。
今回ジュリエットを踊ったのは、先日バヤデルカでヴァリエーションを踊っていた20歳のセカンドソリスト、レナータ:シャキロワ!
若いレナータは本当にフレッシュでジュリエットそのものだった!!
テクニックはまだ荒削りだけど、ベテランには出せないあどけなさや軽やかさはピカイチ。
ロミオのスチョーピン、マキューシオのチモフェーエフ、みんな若手でフレッシュでしたなぁ…
初めて全幕でロミオとジュリエット観たけど、好きな作品ベスト10に入るかな。(プロコフィエフの音楽は好きなバレエ音楽第1位)
次はもっともっと経験豊かなベテラン勢のジュリエットを観て、悲恋に心を抉られてみたいです…
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