Tumgik
#あヴぁ階段
sorairono-neko · 5 years
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今日、婚約した。本当に結婚してくださる?
 勇利は水を止めると、丁寧に手をぬぐい、かけていたエプロンを外して振り返った。 「じゃあ、ぼく帰るね」  食事を終え、洗い物をしたら、勇利がすぐに「帰る」と言い出すのがヴィクトルには不満だった。おかげで、できるだけ長く時間をかけて食べようと、行儀の悪い癖がついてしまったくらいだ。 「もうすこしいいだろう?」 「だめ」  勇利は笑った。 「あんまり長居したら、それが習慣になっちゃうでしょ?」  それの何がいけないのか、ヴィクトルにはさっぱりわからなかった。かえって、それならなんとしてでも引き止めたいというふうに思った。 「あんまり長居したら、離れがたくなっちゃうでしょ?」  承服できかねるというヴィクトルの気持ちを感じ取ったのか、勇利はそんなふうに言い直した。ヴィクトルはますます何がいけないのかわからなくなり、ますます勇利をまだいさせたいという気がした。 「帰ってからやりたいこともあるしね」  勇利が付け足した。 「それはなに?」  ヴィクトルは語気も鋭く問い返した。 「どうせ、俺の動画を見るとか写真集を眺めるとか、そんなたわいもないことだろう。くだらない。本物を見ればいいのに」 「ぼくがしたいのは今日の反省だよ。自分の映像を見て、ノートにいろいろまとめたいんだよ。注意点とか、そんなことをね。それをときどき見返すと、自分の考えや目標が整理されてすごくためになるんだ」  言ってから勇利は楽しそうに笑い、腰に手を当てた。 「この会話、何度目?」 「送ろう」  ヴィクトルはしぶしぶ了承し、溜息をつきながら上着を取った。勇利は自分のリュックサックを取って、マッカチンに挨拶をした。 「マッカチン、またね」  勇利がロシアに移り住むとき、ヴィクトルは当然自分の家に彼を住まわせるつもりでいた。それが当たり前だと思っており、勇利の住居に関しては問題ないときめつけていた。だから、勇利が自分で住むところを探してきたときは驚き、それ以上にうろたえた。 「いい場所なんだよ。リンクからも近いし、建物も古くておもむきがあるし。あと、家賃も手頃で、なんとかなりそうだから」  ヴィクトルは、ただちに癇癪を起こし、きみは俺の家に住むべきだと主張しようとした。しかし、もうすこしのところで思いとどまった。勇利は自立心の強いたちをしている。自身に必要以上に踏みこまれることを好まない。長谷津ではともに暮らしていたけれど、家族がいるのと、ふたりきりで生活するのとではまた勝手がちがうだろう。長谷津へ行った当初だって、勇利の性質が難しいと知ってからは、ごく慎重に、真剣に仲を進展させたのだ。環境が変わるのだから、いきなりへだたりをうめるようなことをするのはよくない。また警戒されてしまうかもしれない。勇利はすぐにひとりで考え、勝手に思いつめるのだ。「もう終わりにしたい」といつ言い出すことか。 「そ、そう」  ヴィクトルは超人的な努力で平静を装って返事をした。 「その場所は知ってるよ。確かに静かでいいところかもしれない。でも、何かあったらすぐ俺に言ってね」  ヴィクトルの自宅から車で十分程度というところも、譲歩の理由だった。もっと遠かったら文句を言っていただろう。しかしつまりは、もっと遠ければ「勇利にとって好ましくない」と却下することができたということなので、それもヴィクトルにとっては不幸だった。 「勇利がさぁ……、ひとりで部屋を借りたとか言うんだよ。どうかしてると思わない? あの子頭おかしいんじゃない?」  ヴィクトルはヤコフにぐずぐずと愚痴を言ったものだ。ヤコフはつめたく応じた。 「普通のことだろうが。何が気に入らんのか理解できん」  ヤコフは何もわかってない、とヴィクトルは思った。  そういうわけで、ヴィクトルと勇利は現在、別々に暮らしている。勇利と知り合ってからなかったことなので、ヴィクトルは不満と不安でいっぱいだった。  だが、何の手立ても講じず、のんびりとしていたわけではない。勇利が来てから、ヴィクトルはすこしずつ、彼と過ごす時間を増やしていった。まずは外食に誘い、それが頻繁になると家に招待してごちそうし、近頃では、ふたりで買い物をして食事の支度をする、というところまで進歩していた。そしてヴィクトルはある日、とうとう提案したのだ。 「勇利、これを持っててくれないか」 「なに? 鍵?」 「俺のところの鍵だよ」  勇利は驚いた。 「え……。そんな大切なもの、だめだよ」 「ちがうんだ。これは俺のためでもあるんだ。俺だってひとりなんだから、たまには助けが必要になることもある。ほら、たとえば病気のときとか、留守にするからマッカチンの世話を頼みたいときとか。具合が悪くて動けないとき、誰かに連絡するとしたら、それは勇利なんだよ。勇利がいちばん近くに住んでいるからね。そうなったら、それ、必要でしょ?」 「うーん、そうだね……」  勇利はためらいながらも鍵を受け取った。ヴィクトルはそれでたいへん満足したのだが、しかし、勇利はけっして勝手にヴィクトルの家に入ってこようとはしなかった。彼のほうから訪問してきたときも、必ず呼び鈴を押して礼儀正しくふるまう。ヴィクトルがどきどきしながら「鍵を持ってるんだから入ってくればいいのに」と言ったら、笑顔で「そんなの失礼でしょ」と返された。失礼だったら鍵を渡したりするわけないだろ! ヴィクトルは、勇利はなんにもわかってない、と拗ねたものだ。  そんなふうに、一定以上に親しくはなれなかったけれど、ヴィクトルが注意深く距離を縮め続けたこともあって、いまでは、勇利はヴィクトルの自宅で過ごすのが当たり前になっていた。練習のあとふたりで一緒に帰ることもあるし、ヴィクトルに別の仕事が入っていたりすると、勇利がひとりで買い物をしてやってくることもある。そんなとき、ヴィクトルは幸福に包まれる。 「市場へ行ったらね、すっごく新鮮な野菜があったから、名前もわからないやつも一緒くたにして買ってきちゃった。これ、どうやって調理すればいいのかな? ヴィクトル知ってる? 知らないなら一緒に調べてよ」  カウンターに買い物袋を置きながら言われると、ぼうっとなってしまう。 「勇利……」 「なに?」 「タダイマって言ってみて」 「え? 入るときにお邪魔しますって言ったよ」 「言って」 「た……ただいま?」 「オカエリ」  もう勇利、俺といるのが普通になってない? 自分の部屋になんて、寝に帰ってるだけじゃないか。ヴィクトルは、勇利もここで暮らせばいいのに、一緒に暮らせばいいのに、とそんなことを毎日考えていた。  しかし、勇利のほうはそう思わないようで、毎日、夕食の洗い物が済むと、すぐに帰ると言い出す。ヴィクトルは、もうすこし堕落すればいいのに、とうらめしく思った。 「あ、なんだか混んでるみたいだね」  勇利は助手席の窓から、彼の住む建物の前に何台か車が停まっているのを見た。 「ここでいいよ。歩いて帰る」 「前まで行くよ」 「でも、時間かかりそうだよ。すぐそこだから大丈夫」  勇利はにっこり笑ってヴィクトルを見た。 「ヴィクトル、どうもありがとう。気をつけて帰ってね」 「ああ……」  勇利は車から降り、リュックサックを背負って、それを揺らしながら駆けていった。ヴィクトルはその子どもっぽい後ろ姿を、窓越しにずっと見守っていた。古めかしい階段を駆け上がると、戸を開ける前に、勇利はさっと振り返った。彼はヴィクトルに向かってにっこり笑い──はっきりわからなかったけれど笑っているはずだ。そうにきまっている──肩のあたりでちょっと手を振った。それから建物の中へ入った。  ヴィクトルは溜息をついた。なんで勇利を見送らなきゃならないんだ、とふてくされた。勇利が「おなかすいたぁ」と言いながら家に入ってくるときのときめかしさとは正反対の気持ちを、いつもこのとき味わう。  勇利、おかしいと思わないか? 毎日リンクで一緒にいて、そのあとは俺のところへ来て、ふたりで料理をして、食事をして、笑いあって、そして俺はきみをきみの部屋へ送る。きみはひと晩眠って、朝になるとまた俺とリンクで会うんだ。 「もう一緒に住めばよくない?」  ヴィクトルは不満だった。  それにしても、勇利はどういうつもりでいるのだろう? ヴィクトルには勇利の気持ちが謎だった。彼がヴィクトルのことを愛しているという事実は疑いようもなく、それについては安心しきっている。なにしろ彼は、テレビカメラの前で、「初めてつなぎとめたいと思ったひとはヴィクトル」「そのヴィクトルへの気持ちを愛と名付けることにした」と言い切ったのだ。日本語だったので何を言っているかはわからなかったし、勇利もそのことについてはひとつも教えてくれなかったけれど、あとでミナコが説明してくれた。それでヴィクトルは楽々とした気分になり、加えて勇利は離れずにそばにいてなどと言ってくるし、指輪など渡してくるしで、もう愚かなほど浮かれきっていた。  しかし、このところ、その愛というのはどういう愛なのだろうと心配になってきた。勇利はヴィクトルのスケートを昔から愛している。その延長線上にあるものではないだろうかという気がしてきた。勝生勇利ならあり得ることである。彼の愛情に偽りの混じる余地はないけれど、それはヴィクトルの望むたぐいのものではないのかもしれない。  ヴィクトルは勇利に尋ねてみようか、どうしようかと迷った。だが、どうにも踏みきれなかった。人の本音を知るのがおそろしいと思ったのは初めてだ。勇利は本当に、ヴィクトルのこころをかきみだす子である。どうしてこう次から次へと難題を突きつけてくるのだとヴィクトルは溜息をついた。 「ヴィクトル、なに食べたい?」 「うーん……この前つくってくれたやつかな。生クリームの入ってるスープで、じゃがいもがごろごろの……」 「ああ、あれね。じゃがいもの皮むくの手伝ってね」  市場でじゃがいもを手に取りながら、勇利はにっこり笑った。これなんてもう、普通の友人同士の会話じゃないだろう? 特別な関係の者しかこんな話しないぞ。セックスしたふたりの話しあいだ。ヴィクトルは独り合点した。  まじめにじゃがいもの皮むきにいそしみ、ヴィクトルは勇利の美味しいスープを食べた。 「今日のお昼、俺が食堂へ行ったとき、勇利、女子選手に囲まれてたよね」  ヴィクトルは、こころの狭いところを見せないようにしなければ、と思いながら話した。 「なんだか盛り上がってたようだけど、あれ、何についてのことだったの?」 「あのさ、囲まれてたって、ぼくが座ってるところにミラたちが来ただけだからね。しかもあとからヴィクトルが割りこんできて、彼女たち迷惑そうだったじゃん。話してたのは結婚の話だよ」  ヴィクトルはスプーンを取り落としそうになった。 「へ、へえ……」 「結婚観? 理想の結婚? なんかそんなことを話してたよ」 「勇利に訊いたの?」 「ううん、彼女たちが好きにしゃべってただけ」 「それ、勇利に語る必要ある?」 「知らないよ。ぼくに話してたっていうより、たまたま空いてる席に座ったらぼくがいて、ぼくに関係なく話題にしたんじゃないの」 「そうか……」  ヴィクトルは勇利の薬指にある指輪を見た。でもこれ、お守りだったな……。  勇利は何か結婚について考えてることはある? その質問がなかなかできない。 「ヴィクトルはさ」  勇利が顔を上げた。ヴィクトルはどきっとした。 「……なに?」 「結婚するとなったら」 「うん……」 「結婚式の日を忘れちゃいそうだよね」  勇利が笑った。 「忘れっぽいでしょ? 花婿が式場に現れなくて大騒ぎなんていうこと、ヴィクトルならあり得るかもね」  ヴィクトルはスープをのみこんだ。急に味がわからなくなった。 「……俺の結婚がきまったら」  ヴィクトルはつぶやいた。 「勇利がおぼえていて、式はこの日だよ、って注意してくれればいい」  勇利がヴィクトルを見た。ヴィクトルは真剣に彼の目を見返した。勇利はほほえんだ。 「ぼく、ヴィクトルの生徒っていうより、マネージャーみたいだね」 「…………」 「ごちそうさまでした」  ヴィクトルは洗い物を勇利と一緒にしながら、どういう意味だ、とずっと考えていた。勇��が「そろそろ帰るよ」と言い、「送るよ」と応じて車を運転しているあいだも思案していた。出た結論は、「勇利は俺の意図とはちがう受け取り方をしている」ということだった。  勇利のアパートメントが近づいてくると、彼はふと窓に顔を寄せ、「あ」とつぶやいた。 「どうかした?」 「ううん……」 「なに?」 「いや、いま中に入っていった人、この前、親しくなった人だから。カフェで声をかけられたんだ。同じアパートメントに住んでるって」 「……女?」 「いや、男の人だよ。ぼくよりずっと年上で、プロレスラーみたいな体格なんだ。髭も生えててすっごく強そうなんだよ。でも気は優しくて、奥さんと娘さんの写真をうれしそうに見せてくれた。仕事でひとりでここへ来てるんだって。家族に会いたいって言ってた」  ヴィクトルは不愉快になった。たぶんその男は気のいいたちで、いかにも子どもっぽい東洋人がひとりで暮らしているのを気遣ったのだろう。だから話し相手になろうとした。べつにヴィクトルが心配するようなことはないし、勇利にとっても、そういう友人ができるのは喜ばしいなりゆきだ。だが、それでも、いい気持ちはしなかった。勇利が自分の知らないところで人間関係を築いていくことが我慢できなかった。  すこし、まずいな、と思った。勇利との境界線がわからなくなっている。彼のすべてを把握していないと気が済まない。これはあまり健全な感情ではない。制御しなければ。きっと勇利との間柄が不安定だからこんな気持ちになるのだ。彼の愛を勝ち得ていると信じられるなら、ここまでのことは思わない。 「じゃあヴィクトル、どうもありがとう」  勇利が言って扉の取っ手に手をかけた。 「とっても楽しかった。おやすみ」  彼は車から降りようとした。ヴィクトルは勇利の手首をつかんでひきとめた。勇利が振り向き、なに? というようにヴィクトルを見た。ヴィクトルは顔を近づけ、黙ってキスした。 「え……」  勇利がヴィクトルを凝視した。ヴィクトルは彼の黒い瞳をのぞきこみ、まじめにみつめた。勇利はふらつきながら車を降りた。習慣のように彼は戸を閉めた。  ヴィクトルはくらくらした。とにかく、安全に運転して帰らなければ、と思い、殊更にそのことに意識を集中した。  さて困ったことになった。 「マッカチン、勇利にキスしちゃったよ」  勇利はどう思っているだろう。怒っている? あきれている? 照れているだろうか? 自分でしたことなのにヴィクトルらしくもなく動揺し、赤くなったり青くなったりした。そして「俺らしくない」という判断に腹を立てた。自分らしいとはなんだろう。いままでの経験からくる言葉なのか? 愛したのは勇利が初めてだ。これまで積み重ねてきたことなんて関係ないだろう。ヴィクトル・ニキフォロフは、人を愛したらこうなるのだ。これが「俺らしい」のだ。  しかし、開き直っても事は進展しない。翌日、ヴィクトルはどきどきしながらリンクへ行った。勇利はもう来ていた。彼はヴィクトルに気がつくといつものように笑い、「おはようヴィクトル!」と駆け寄ってきた。 「今日はどんなふうに進める? ぼく、午前中はリンク使っていいんだよね」 「ああ……」  ヴィクトルの悩みなど知らぬといったふうに、勇利は明るかった。ヴィクトルもどうにか普段のようにふるまいながら、これはどういうことだ、と困惑した。キスされて平然としているなんてちょっと普通じゃない。冗談だとでも思っているのだろうか。そういえば、前にキスしたときも、勇利はほのかに笑ってさえいた。突然くちづけられたというのに落ち着いて、清廉な感じで、それを受け容れて──。  ヴィクトルはどきっとした。前にキスをした。そうだ。リンクでキスをしたことがある。試合のあと。ヴィクトルは「驚かせるにはこれしか方法がなかった」というようなことを言った。勇利は「そっか」という態度だった。べつにいやがってもいなかったし、そういうものなんだね、と言いたげだった。  もしかして──あれと同じと思われているのでは?  突然頭を抱え、手すりに突っ伏したヴィクトルに、隣にいたヤコフが「なんだいきなり」といぶかしげな視線を向けた。ヴィクトルはそれに気づかなかった。  なんというか──勇利にとってキスは習慣になりつつあるのではないだろうか。まだ二度目だけれど、その可能性が高い。ヴィクトルが頻繁にくっついていったり、さわったり、耳元にささやいたりするものだから、キスもそのうちのひとつ、と受け取っているのだ。そうにきまっている。 「あぁあ……」 「だから何なんだおまえは」  いや、待て。待って。たとえそうでも、好意がなかったらそんな気持ちにはならないのではないだろうか? 接触過多なところだって、いやなら拒絶するだろう。あの勝生勇利だ。ヴィクトルにだって遠慮しない。普通、「驚かせたかった」とキスされて「そうなんだ」とうなずく者はそうそういない。誰だってそういうのには感心しないだろう。とくに驚かせる必要もない別れ際などに、理由もなくされたらなおさら──。  しかし、勇利なのだ。そう「あの勝生勇利」だ。ヴィクトルを愛しているのである。ヴィクトルの望む愛かは別として。人生をヴィクトル・ニキフォロフに捧げきっている勇利なら、キスくらいどうということもないのではないか? たとえ、キスしたいという気持ちで愛していなくても──。 「ヴィーチャ、聞いとるのか」 「気分が悪くなってきた」 「なんだと」  そのとき、トレーニングルームで基礎訓練をしていた勇利が戻ってきた。彼はヴィクトルを見ると、「どうしたの?」と心配した。 「気分が悪いそうだ」 「そうなの? 大丈夫? 病院行く?」 「いや……そういうのじゃない」 「すこし早いがもういいだろう。上がれ」  勇利は帰り道で、熱はないのか、頭痛はするかとヴィクトルの体調を気遣った。 「勇利の顔を見たら治った」 「そういう適当なこと言ってないで、まじめに答えてよ」 「本当だ」  その日は出来合いのものを買って帰ってふたりで食べた。ヴィクトルがいつも通り話すようになったので、勇利は安心したらしかった。 「ヴィクトル、ちゃんと寝てる? 忙しいんだからたくさん睡眠とらないとだめだよ。今日は送らなくていいよ。ゆっくりやすんで」  もう耐えられなかった。ヴィクトルは帰り支度をととのえる勇利の手首をつかむと、じっと彼をみつめ、低くかすれる声でささやいた。 「帰したくない」  勇利は目をみひらき、それからかすかな苦笑を浮かべた。 「そんなこと言って。さびしいの?」 「ここにいてくれ」 「マッカチンがいるじゃない」 「泊まっていって」 「もう具合は悪くないんでしょ」 「勇利」  ヴィクトルは勇利にキスした。勇利がぽかんとした。 「絶対に帰さない」  ヴィクトルは勇利を寝室へ連れていった。そこで服を脱がせたけれど、彼はとくに何も言わなかった。ベッドに押し倒しても黙っていたし、あちこちさわっても、身体じゅうにくちづけても、誰も知らないようなところへ入りこんでも、やっぱり文句は言わなかった。 「おはよう」  目がさめると勇利が笑っていた。ヴィクトルはまくらに顔を押しつけた。 「どうしたの?」  朝一番に勇利の笑顔を見るのは心臓に悪い……。ヴィクトルはうめいた。 「目ざめたらヴィクトルが隣にいるっていうのは心臓に悪いね。綺麗すぎてどきどきするよ」  勇利はヴィクトルが思っているのと同じことを言い、そっとベッドから抜け出した。 「どこ行く?」 「朝食の支度してくる。ヴィクトルはもうすこしゆっくりしてて」 「勇利」 「んー?」 「その……身体は大丈夫かい?」  ヴィクトルは心配した。勇利が笑った。 「うん。ちょっとだるいけど、とくに差し障りはないよ。優しくしてくれてありがとう」 「いや……」 「パンがいい? シリアル?」 「……パン」 「了解。悪いけどシャワー貸してね」  勇利はヴィクトルのバスローブを羽織ると、かろやかな足取りで寝室を出ていった。扉の向こうから、「おはよう、マッカチン。ごめんね、ひとりで寝させちゃって」と謝る声が聞こえた。 「…………」  ヴィクトルはぽすっとまくらに頭をつけた。白い天井をみつめてしばらくぼんやりとした。それからわき上がる喜びを抑えきれず、ごろんと寝返りを打って、勇利の寝ていたところへおもてをこすりつけた。  勇利とセックスした! セックスしたんだ……。  ヴィクトルは浮かれ、まくらを抱きしめてベッドの上を転げまわった。あまりおぼえていなかった。ただ、勇利がかわいかった。その感想でこころは埋め尽くされていた。  ヴィクトルは、勇利との甘美な時に思いをめぐらせながらあちこちへ転がる、ということに時間を費やした。勇利が戻ってきて、「ヴィクトル、ごはんできたよ。ヴィクトルもシャワー浴びたら?」と言ったとき、彼は目をまるくした。 「なんだか、さっきよりベッドがめちゃくちゃになってない?」 「シャワーを浴びるよ!」 「ああ、どうぞ……」  勇利は、食事のすぐあとには帰らなくなった。毎日というわけにはいかないけれど、夕食後、居間のソファや寝室のベッドで過ごす時間はじゅうぶんにあった。ヴィクトルは浮かれて安心しきった。これで勇利はヴィクトルのものになり、ヴィクトルは勇利のものになったのだ。 「材料、全部そろったよね?」  いつものように夕飯のための買い物を済ませた勇利は、袋をのぞきこみながら言った。 「そうだね」 「今日は失敗しないようにしないとね。前のときは、すこし焦がしちゃったから」  言ってほほえむ勇利が、ヴィクトルには天使にしか見えなかった。ヴィクトルはふいに彼の肩を抱き寄せ、耳元にくちびるを寄せた。 「食事の材料はそろったけど、まだ足りないものがあるよ」 「なに?」 「スキン……前ので最後だったんだ」  勇利はまっかになって、ヴィクトル買ってきてよ、とそっぽを向いた。ヴィクトルはしあわせを感じた。  望み通りヴィクトルが買って、今夜は焦がさずに鶏の香草焼きをつくり、そのあと、購入したばかりのゴムをふたつ使った。勇利は静かにヴィクトルの下から抜け出ると、「シャワー貸してね」と言って浴室へ行った。 「一緒に浴びよう」 「だめ」 「なんで」 「恥ずかしいから」 「さっきまでもっと恥ずかしいことをしてたよ」 「シャワーを一緒に浴びるほうが恥ずかしいよ」 「ふたりで温泉にも入ったのに」 「シャワーのほうが恥ずかしい」  勇利は絶対にヴィクトルと浴室へ行ったりはしないのだった。 「ねえ、勇利」  ヴィクトルは勇利を送る車の中で提案した。 「たまには泊まっていったら?」 「ああ、ごめん。めんどうだったら送らなくてもいいよ。ぼく大丈夫だから」 「そういうことじゃなくて」  一緒にいたいと言っているのだ。相変わらずにぶい子だ。 「こんなのは手間でもなんでもないけど、勇利だって、慌ただしく帰りたくないだろう?」  勇利は窓にもたれて外を眺めていた。 「だめ」 「なぜ?」 「朝、困るよ。着替えもないし」 「持ってくればいいだろう?」 「いいよ、そんなの……」 「よくわからないな」  勇利が振り返った。彼はかすかな微笑を浮かべた。 「いいの。だって、そんなことしたら、だんだんあいまいになってくるでしょう?」 「何が?」 「ぼくはリンクへ行って、ヴィクトルと一緒に帰って、ヴィクトルと食事をしてるんだよ。そのあと泊まったりしたら、そのままリンクへ行くことになる。ぼくはいったいいつ自分の部屋に帰るの?」  その通りだ。だから泊まっていって欲しいのだ。勇利は何もわかっていない。 「線引きはちゃんとしなきゃ」  勇利がきっぱりと言った。線引きとはなんだろう。何と何のあいだに彼は線を引いているつもりなのか。 「今夜もどうもありがとう。いつもごめんね」  車が停まると、勇利は優しく言った。 「勇利」  ヴィクトルは彼を引き寄せ、情熱をこめてキスした。勇利は目を閉じ、それからうすくまぶたを開けてほのかに笑った。 「……おやすみ」 「おやすみなさい。気をつけて」  勇利は最初の夜以来、けっしてヴィクトルのところへ泊まっていかない。私物だって持ちこまないし、合鍵も相変わらず使おうとしない。浮かれていたヴィクトルも、すぐに不安になってきた。  ヴィクトルは、勇利と特別な関係になれたと思っていた。奥まで踏みこんだ、かたく結ばれた間柄だと。たとえば勇利に何か個人的な問題が持ち上がったら意見を言うことができると思っていた。助言も、反対する考えも述べられる。その権利を得たと確信していた。しかし、本当にそうだろうか? 勇利はヴィクトルをそういう相手として取り扱っているだろうか? なるほど、愛は交わすようになったかもしれない。けれど、それだけではないか。勇利の態度に、これまでと何かちがうところがあるだろうか? 勇利はいつだって──謙虚で、どこか遠慮がちで──。  ヴィクトルはこわくなってきた。勇利はヴィクトルのことをどう思っているのだろう? コーチ。親しい相手。そして──セックスをする関係。 「セックスフレンド?」  ヴィクトルの顔が引きつった。まさか。勇利はそういうものの考え方はしない。そんなたちではないのだ。もっと純粋で、健全で、ごくきよらかだ。身体だけのつながりなんてよしとするはずがない。  でも……。  帰宅したヴィクトルは、台所や居間や寝室を眺めた。ここにさっきまで勇利がいた。しかし彼の痕跡はまるでない。おまえの夢だ、と言われれば、そうかもしれない、という気になってくる。勇利は自分の存在をかけらも残さない。  まるで──いずれ離れるのだから、と言っているみたいに──。 「そんなばかな」  ヴィクトルは次の休みの前夜、いつものように勇利と過ごし、ベッドでは激しくふるまった。勇利は驚いており、普段よりたくさん泣いたが、いやがることはなかった。疲れきった勇利が眠ってしまうのを見て、ヴィクトルは安心した。これで勇利はどこにも行かない。ヴィクトルは彼を抱きしめ、みちたりた気持ちで眠りに落ちた。  翌朝、勇利はベッドにいなかった。台所のカウンターの上に、書き置きがあった。 『よく眠っていたので起こさず帰ります。今日は一日寝てるから、電話してきちゃだめだよ。貴方のせいなんだからね』  ヴィクトルは溜息をついた。どうして勇利は泊まっていってくれないのだ。  もしかしてセックスも同じなのだろうか、とヴィクトルは気がついた。これもヴィクトルが勇利に多くする接触の一種なのか。もちろんヴィクトルはそんなつもりはないけれど、勇利はそう受け取っているかもしれない。 「へえ。ヴィクトルってさわったりキスしたりするだけじゃなく、えっちなこともするんだぁ」  そんな勇利の声が聞こえるようだ。ただの生徒にそんなのするわけないだろ! ヴィクトルはいらだった。セックスも驚かせる方法のひとつだとでも思っているのだろうか。そんなことを言い出すやつは頭が変ではないか。  どうにかしなければならない。勇利はおかしい。どこかがおかしい。何かすれちがっている。勇利と愛を交わしたつもりになっているのに、甘い雰囲気にならないのはどうしてだ。  ヴィクトルは勇利と話しあいたかった。しかし、なかなか言い出せずにいた。言おう、とこころをきめたのは、勇利と一日一緒にいられなかった日で、外での仕事をして帰宅する途中、ヴィクトルは勇利の部屋へ寄ることにした。  車を停め、石段を上って建物の中へ入る。狭い内廊下を歩き、階段を上り、奥の勇利の部屋を目指した。  そのとき、すぐそばの扉の向こうから、女性の甲高い笑い声が響いた。ヴィクトルは気にしなかったが、それに続いた青年の声にびくりとし、足を止めた。  勇利の声だった。  頭の中が真っ白になった。勇利がいる。自分の部屋ではない部屋に。女性の部屋に。夜に。楽しそうに話している。何をしているのだ。何をするのだ? ──これから。  ヴィクトルはくるりときびすを返した。気がつくと自分の家におり、かたわらにマッカチンが座っていた。どうやって帰ってきたのかまったく思い出せなかった。  どうしよう。  落ち着きなく、うろうろと部屋の中を歩きまわった。どうしよう。どうしよう。勇利はヴィクトルのことをどう思っているのだろう。やはりセックスするだけの相手なのか。彼はヴィクトルの誘いを断ったことなんてないけれど、自分から抱いて欲しいと言ったこともない。  どうしようもなくて、ヴィクトルは電話をかけた。クリストフが出るなり、挨拶もせず、洗いざらいぶちまけた。勇利が鍵を使ってくれない。勇利が泊まっていってくれない。勇利が抱いて欲しいと言ってくれない。勇利が女の部屋にいた。勇利が──勇利が。  クリストフは黙って聞いていた。ヴィクトルが口をつぐむと、彼はひとしきり楽しそうに笑った。 「ヴィクトル、俺はね、ヴィクトル・ニキフォロフにそんな泣き言を言われる日が来るなんて、思ってもみなかったよ」 「皮肉はいいんだ」  ヴィクトルは文句を言った。 「単純明快な解決方法がある。聞きたい?」 「ああ」 「勇利に訊けば?」 「は?」 「勇利に訊けばいい。おまえは俺を愛してないのか? なんで泊まっていってくれないんだ? セックスフレンドのつもりなのか? どうして女の部屋にいた? ──全部訊けばいいんだよ。ばかばかしい。そんなの、相談のうちにも入らない」  クリストフは通話を切ってしまった。 「りんごを買ってきたよ。美味しそうだったから」  翌日もヴィクトルはちょっとした用事でリンクへ行けず、しかし帰りは早いと勇利に連絡していたので、彼は練習のあと、ひとりで買い物をしてヴィクトルの部屋へやってきた。 「今日は肉じゃがをつくろうと思うんだ。どう?」 「ああ、いいね」  ヴィクトルはうなずいた。勇利はにっこりして「玉ねぎはヴィクトルが担当ね」と言った。以前、玉ねぎを切って泣いているのをからかったので、根に持っているらしい。なんてかわいい勇利、とヴィクトルは胸が甘く痛むのを感じた。  料理のときも、食事のあいだも、勇利はいつも通りだった。いや、いつもより機嫌がよいくらいだった。もしゆうべヴィクトルが勇利の住むアパートメントへ行っていなかったら、「一日俺に会えなかったから、今日は会えてうれしいんだな」などと浮かれた考えを起こしていただろう。しかしヴィクトルは知ってしまった。だから別のことを想像する。勇利はあの女性と一緒にいたから、そのことを思い出して今日も楽しそうにしているのだろうか。俺より彼女のほうがいいのだろうか。あのあと、ふたりは夜をともに過ごしただろうか? いやなことばかりが頭を占める。 「りんごをむこうか」  食事のあと、勇利がつやつやしたりんごを持ってヴィクトルに笑いかけた。とても可憐で、そのまま絵に描いてしまいたいくらいみずみずしい笑顔だった。 「いや、いらない」  ヴィクトルは上の空で答えた。 「せっかく買ったのに」 「そんなことより」  ヴィクトルは勇利を抱きしめた。勇利はおとなしくキスを受けたけれど、焦らすようにヴィクトルのくちびるを指一本で押し戻し、「シャワーを貸して」とささやいた。 「今日、クラブで浴びられなかったんだ」 「なぜ?」 「順番待ちだったんだよ」 「そう」  これも、以前なら、早く俺に会いたくてシャワーをあきらめたんだな、などとはしゃぐところだ。  ひとりになったヴィクトルは、居間のソファに座り、そこに置いてあった勇利の携帯電話をなにげなく取り上げた。他人には操作できないようになっているが、ヴィクトルは別だ。彼は手早く目当てのものを起動させた。  勇利の自分以外とのつながりを調査しようとしたわけではない。そんなみっともないことはしたくない。ただ、勇利の予定を確認したかったのだ。確か来週、取材や撮影が何本か入っていた。ヴィクトルは予定表を調べ、満足すると、携帯電話を戻そうとした。しかし、ふと思いとどまった。とくに目的があったわけではない。なんとなく、過去のカレンダーをひらいてみた。適当にめくったら、去年の十二月が表示された。それを眺めたヴィクトルは、どきっとして手を止めた。グランプリファイナルショートプログラムの前日。そこに何か書きこみのしるしがある。  勇利に日記をつける習慣はない。ただのおぼえ書きだろう。だがヴィクトルは、吸い寄せられるようにそこに指をすべらせていた。その日の詳細がひらいた。 『今日、婚約した。ヴィクトルが長谷津に来たときのような驚き』  ヴィクトルは目をみひらいた。手がふるえた。思わず携帯電話を伏せ、呼吸を深くして自分を落ち着かせなければならなかった。それからもう一度ディスプレイをのぞきこみ、カレンダーに戻した。その翌日にも書きこみがあった。ショートプログラムの日だ。ヴィクトルは憑かれたようにそれを表示させた。 『昨日の婚約という言葉は正しくない。ヴィクトルは冗談で言ったのだし、それはぼくもわかっている。だけど、そういうことにしてみたかった。ヴィクトルと結婚はできない。でも金メダルは獲りたい。もうヴィクトルはぼくにキスしてくれないだろうけど、メダルにはしてもらいたい。彼はぼくのメダルにキスし、永遠にぼくから去るだろう』 「ごめんね、わりと時間かかっちゃった」  勇利がバスローブ姿で寝室へ入ってきたとき、ヴィクトルはベッドに横になってぼんやりしていた。 「ヴィクトル? 寝てるの?」 「……いや……」  勇利が隣にすべりこんできた。彼はヴィクトルのほうを向き、ほのかに笑った。ヴィクトルの頬にふれ、それからバスローブをはだけようとした。 「勇利」 「なに?」 「きみは俺のことをどう思っているんだ?」  勇利が目を上げた。ヴィクトルは真剣に彼をみつめた。にらんでいるといってもよい目つきだった。 「……どうって?」 「なんで俺とこんなことをする?」 「ヴィクトル、したくないの?」 「俺との関係を勇利がどう受け止めているのか知りたい」 「…………」  勇利はもぞもぞと起き上がった。ヴィクトルも身体を起こして座った。勇利はうつむき、それからヴィクトルをちらと見てほほえんだ。 「ヴィクトルはどうなの?」 「…………」 「なんでぼくとこんなことするの」  勇利が左右の手を組み合わせ、ぎゅっと握った。ヴィクトルは、その手がふるえているのを見た。  ──勇利。別れを告げようとしたのはきみだ。なのになぜ、俺のほうが去ってゆくと感じているんだ? 「勇利は何も言ってくれない」  ヴィクトルは苦しく吐き出した。 「俺が求めることに従うばかりだ。きみは自分の意思でこうしているのか? それとも、俺が望むから慈愛の精神で身を捧げるのか?」 「…………」 「どうして鍵を使わない? なぜ泊まっていかない? セックスだけすればいいのか?」  勇利はくちびるを引き結んでいる。 「とても不安だ。勇利の気持ちがさっぱりわからない。何を考えているんだ? 笑ってるだけじゃなく、ちゃんと思っていることを口に出してくれ。そうじゃなくてもきみは難しいんだから」  勇利はうつむいていた。ヴィクトルは待った。やがて勇利は口元をふるわせ、ちいさな声で「なんだよ……」とつぶやいた。 「え?」 「なんでぼくが責められるんだよ。ぼくが悪いの?」 「悪いなんて言ってないだろう。わからないと言ってるんだ。俺は勇利と一緒に目ざめた朝は一度しかない。勇利はこういうことをするのがいやなんじゃないかって──」 「自分はどうなんだよ!」  勇利が顔を上げ、激しく言った。彼の目は、透明なしずくがこぼれそうなくらいにうるんでいた。 「ぼくが何も言わないって、ヴィクトルだって言わないじゃん!」 「俺は──」 「ヴィクトルがなんでぼくとセックスするのかわかんないよ! 意味なんてないのか、遊んでるのか、交流の一環なのか、──それくらいしかぼくに価値がないからなのか!」  勇利の目から涙があふれた。ヴィクトルはあぜんとした。勇利は何を言っているのだ? 「ヴィクトルはまるで愛してるみたいにぼくを抱くから、ぼくだって混乱するじゃないか! なんでこんなことするんだろうって。何が目的なのかなって。でもこわくて訊けないんだよ! 進歩のないおまえのスケートにはうんざりしてる、性欲の解消くらいしかおまえは役に立たないって言われたらどうしようって──もうコーチやめたいんじゃないかって!」 「そんなわけないだろ……」  ヴィクトルはぼうぜんとしてつぶやいた。ますます勇利がわからなくなった。なんでそんな考え方する、ととりみだした。そういうつめたい態度を取ったことがあっただろうか? 「そんな──そんなひどいことを、俺が──」 「わかってるよ! ヴィクトルはそんなこと考えないよ! でも不安なんだよ!」  勇利は泣きじゃくった。 「ロシアに来て、クラブの人たちのスケート見て、みんなすごく上手いし、どんどん新しいことを取り入れてるし……。ぼくなんかがここにいていいのかってこわいんだよ! ぜんぜんかなわないんじゃないかって……ぼくだけ幼稚で、ぼくなんかを生徒に持ってるヴィクトルが笑われてるんじゃないかって……」  ヴィクトルはものが言えなかった。勇利は知らないのだろうか? 彼の言う「上手いクラブのみんな」は、勇利のスケートを見てうっとりしているのだ。流れるようなスケーティングに感銘を受け、ステップシークエンスの足捌きをうらやみ、彼の音楽性に魅了されている。わからないのだろうか? 「そんな中でもヴィクトルはいちばん上手で、ぼくはそれがうれしいんだけど、こんなひとをコーチにしてていいのかなって憂鬱になるし、ぼくがいなかったらヴィクトルはもっと練習できるんじゃないかとか、ぼくがもろいから気にして毎日家に呼んでくれるけど、本当はもうちょっと自立して欲しいって思ってんじゃないかとか、苦しくて……。毎日自分の動画見直して、修正できるところを書き出して、ひとりでもちゃんとできるとこを見せなきゃってがんばってるんだけど、上手くいかなくて、でもヴィクトルに抱きしめられると安心して、ぼくはヴィクトルに甘えて逃げてるんじゃないかって気がして、そんな自分がいやで、でもヴィクトルが優しくしてくれるとうれしくて、もしこのひとがぼくから離れたらぼくはどうなるんだろうって……、」  勇利の頬から、��粒の涙が次々と流れ落ちた。 「そんなことばっかり考えるんだよ!」  彼は激しくしゃくり上げた。 「ヴィクトルこそ、なんでぼくを抱いたりするんだよ! かわいそうだから? そうして寄り添わ���いと、ぼくがいかにも崩れてめちゃめちゃになりそうだから!?」 「…………」 「ヴィクトルはぼくにどんな自分でいて欲しいか訊いたよね。恋人がいいならがんばってみるかって。がんばれば恋人のふりもできるんでしょ? そんなつもりなくても、ぼくが望むならそういうお芝居ができるんでしょ?」  ヴィクトルは目をみひらいたまま、ゆるゆるとかぶりを振った。 「ちがう、そういう意味じゃない……あれは……」 「自分の教え子にならそんな親切ができるんでしょ……」 「そうじゃない……」  勇利の身体がひときわ大きくふるえた。 「……ぼくに訊かないでよ……どんなつもりかなんて……。こんなみじめなことしか言えないよ……」  勇利はうつむきこむと、手の甲で目元をこすり、ちいさな嗚咽を続けて漏らした。ヴィクトルは口が利けなかった。  愛していると言ったことはなかっただろうか。勇利に。──なかったかもしれない。いつも、まなざしで、しぐさで、ふるまいで伝えているつもりになっていた。勇利は「ヴィクトルの愛は知っている」と言うから、それに絶対的な信頼を寄せていたのだ。  勇利に「完全」なんてないのに。彼はいつでも不安定で──その均衡のあやうさにヴィクトルは惹かれたというのに。 「勇利」  ヴィクトルは両手を差し伸べ、勇利の頬を包んでおもてを上げさせた。勇利の幼い顔は、痛々しくおびえた表情だった。 「金メダルで結婚というのは、冗談なんかじゃない」  勇利がつらそうに瞬いた。 「俺は本気だ」  彼はひとつしゃくり上げた。 「勇利を優勝させると言っただろう? そして勇利が金メダルを獲ったら結婚だ。どちらもまじめに言ってる。俺の口から言ってるんだ。このふたつの意味、わかるよね?」  勇利が目をこすった。 「……わからないよ」  彼はつぶやいた。 「ちゃんと、はっきり言ってよ。ぼくはフィーリングとかいうので生きてないよ……」 「勇利、きみを愛してる。結婚しよう」  勇利の目から新しい涙がこぼれた。ヴィクトルは彼を抱きしめ、ベッドに倒してささやいた。 「俺は勇利のコーチだ。きみを必ず優勝させる。でも強敵がいる。ヴィクトル・ニキフォロフだ。どちらの俺も手加減はしないよ。それが俺の愛だからね」  ヴィクトルは勇利の涙を指でぬぐい、かすかに笑ってささやいた。 「勇利。ヴィクトル・ニキフォロフを倒して俺と結婚してくれ」  その夜勇利は、最初に結ばれた日以来、初めてヴィクトルの部屋へ泊まった。朝、甘い余韻を帯びながら、ベッドの中でたわむれるのは、なんという楽しさだろう。 「勇利……、一昨日の夜、誰といた……?」 「んー……?」  勇利はヴィクトルに抱きつき、裸身をぴったりとくっつけていた。ヴィクトルは彼の素肌の体温がここちよく、ひどく幸福だと思った。 「えっと……、ああ、前に話した同じアパートの人……」 「え?」  ヴィクトルはびっくりした。 「また忘れちゃったの?」  勇利がくすくす笑う。 「言ったでしょ。プロレスラーみたいな人だよ」 「いや、それはおぼえているが……」 「珍しくぼくが早く帰ったから、いつも送ってくれる彼氏にふられたのかってすごく心配してくれたんだ。ちがうって言ったんだけど聞かないの」  勇利の肩が楽しそうにふるえる。 「ぼく、一昨日ちょっと調子悪くて気が滅入ってたから、まあいつふられてもおかしくないですけど、って言ったら、ますます気になったらしくて……うちでごはん食べろって招いてくれたんだ。そのときちょうど彼の娘さんが来て、一緒に食べたの」 「あ……」  その女性の声か! ヴィクトルは合点した。 「彼女はぼくを知ってたみたい。ヴィクトル・ニキフォロフの教え子よって彼に言ったんだけど、彼はヴィクトルのことは知ってたけどぼくはわからなかった。ヴィクトルが日本のスケーターを連れて帰ってきたってあんなにニュースになってたのになんで知らないの、って彼女は大笑いしてたよ」 「そうか……」 「それがどうかしたの?」  勇利はヴィクトルの肩に頬をすり寄せて甘えた。たちそうだ、とヴィクトルは思った。 「いや……」 「あ、わかった。ヴィクトル、ぼくが浮気でもしたんじゃないかと思ったんでしょう」  勇利はゆうべの彼からは想像もつかない、明るい声を上げて陽気に笑った。 「ばかみたい」  ヴィクトルはほほえんだ。 「そうだ。ばかだ」 「なに、開き直っちゃって……」  勇利がヴィクトルの肩口を指先でなぞった。 「やめてくれ」 「どうして?」 「たちそうなんだ」 「はしたない」  言いたくないな、とヴィクトルは思った。あんなみっともないこと……。でも、言おうとヴィクトルはこころぎめをした。 「勇利、きみに白状しなきゃいけないことがふたつある」 「なに? もしかして隠し子がいるの? 何人?」  ヴィクトルはぎょっとして勇利をみつめた。勇利はくすくす笑っている。 「勇利……」 「ちがうの? じゃあもう奥さんがいるの?」 「精神攻撃をやめてくれ。ゆうべから、もう……」 「ゆうべ? ぼく、何か言った?」 「涙にはよわいんだよ」 「苦手なんでしょ」 「いや、勇利の涙にはよわいんだ」 「そう言うと聞こえがいいね。何を白状するの? さっさと言いなさい」 「ひとつめはね……、一昨日、俺はきみの部屋へ行ったということ」  勇利はきょとんとした。 「え? ぼくを待ってたの? いつごろ? いなかったよ」 「いや、部屋の前までは行かなかった。行けなかったんだ」 「どうして?」 「行き着く前に、ほかの部屋から、きみの声と女性の笑い声が聞こえたから……」  その恥ずかしい告白を聞いて、勇利はひどく長いあいだ笑っていた。ヴィクトルも笑った。いまは何が起こっても可笑しい。 「おもしろい?」 「うん、おもしろい」 「俺という男に幻滅した? みっともないって……」 「ううん、すてき……」  とりつくろいではないようで、勇利はうっとりとヴィクトルをみつめた。朝のひかりにきよらかに輝いている彼の可憐な頬のほうがすてきだった。 「もうひとつは……?」 「もうひとつはね……、きみの十二月のカレンダーを見てしまったということ……」  勇利は瞬いた。すこし考え、それからはっとし、わずかに口をひらいた。彼は信じられないというようにヴィクトルをみつめ、それからおそろしい顔でにらみつけ──、そして最後に上品にほほえんだ。 「怒らないのかい?」 「ゆるしてあげる」 「こわいな……」 「どういう意味かな……」 「いや、意味はない。とくには」 「最初にけなげな告白をしてくれたからね。そっちで帳消しにしてあげる。ぼく優しいでしょ?」 「ああ、優しい」  ヴィクトルは笑って、勇利のまくらにしていた腕で彼のつむりを抱き寄せ、髪にそっとくちづけた。 「勇利のほうは、俺に告白しておくことはない?」 「うーん……」 「いまのうちだよ。いま言ったらゆるしてあげる」 「本当?」  勇利が顔を上げた。 「本当さ」 「じゃあ言うけど……」 「なに?」 「ぼく、じつは……デトロイトにいたころ……」  ヴィクトルはどきっとした。どうやら勇利はこの機会に、本当に懺悔らしいことをするつもりのようである。何もないと信じていたから言ったのに、とんだ事態になってしまった。どうしよう。何かあったのだろうか。誰かと──親密な愛を交わしていたとか? まさか結婚していたなんてことは──。 「これはピチットくんしか知らないことなんだけど……、ぼく……、デトロイトで……」 「あ、ああ……」  ヴィクトルはごくっとつばをのんだ。 「写真立てにヴィクトルの写真を入れて、ずっと机に飾ってたんだ……そして毎晩寝るときは『おやすみ』って言ってキスしてたの……」 「…………」 「ごめんね……だから、ぼくのファーストキスの相手は、ヴィクトルなんだ……」  ……なんだ。  なんだ。  なんだ……。  ヴィクトルは安堵の深い溜息をついた。額に手を当てる。 「おまえね……」 「あははっ、びっくりした? どきどきした? 心臓止まりそうだった?」 「俺をもてあそんで……」 「いま、すっごくうろたえた顔してたね。ヴィクトルでも動揺するんだぁ……」 「いい加減にしないと……」 「ぼく、いやなやつでしょ」  勇利がヴィクトルの頬に手を当て、ぐいと自分のほうを向かせた。 「ああ、困った子だ」  ヴィクトルは彼をにらむ。 「もうこりごり?」 「そこまでは言ってない」 「本当に?」  勇利は目をほそめてほほえんだ。 「ぼくはめんどうくさくて、すぐ泣く扱いづらいやつです。コーチ、それでもぼくと結婚してくださる?」  それから数日後のある休日、勇利が家にやってきた。彼は自分の鍵で勝手に扉を開けて入ってきて、大きなトランクとリュックサックをどさっと床に置いた。 「なんだいその大荷物」  ヴィクトルはきょとんとした。 「ぼく、今日からここで暮らしますから」 「え?」 「部屋は引き払ってきた。だって結婚するんでしょ? ぼくは慎重なんだ。ヴィクトルって変なひとだし、わけのわからないこといっぱいしそう。結婚したあと慌てないように、いまから教育しておかなきゃね」  勇利は腰に手を当て、それからヴィクトルを得意げに見た。彼のきらきら輝く瞳に、ヴィクトルはいっぺんにのぼせ上がった。 「困った?」  ヴィクトルは勇利を夢中で抱きしめた。 「そういうの、大好きだよ!」
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hisatsch6120 · 6 years
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見捨てられたアイドル @avandoned_ ! 最近のはポップなギターサウンドで良いね! あヴぁ階段の頃もあれはあれで(笑) #あヴぁんだんど #あヴぁ階段 #JOJO広重 #LEARNERS #レコード #7インチ #VINYL https://www.instagram.com/p/BpjxbHhgTS5bRuYn2j0xGjGFS9wAb7wgsRPdJM0/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=vecm4iw39r0
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nosunosu1 · 7 years
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Nosu’s game of the yare 2017
今年もやります。 魔女と百騎兵2、ダンガンロンパV3要素はありません。
総括
新ハードSwitchが華々しくデビューした一年でしたね。 自分もイカ2とゼルダとマリオデやりたくて買いました。もう売りました
今年は文句無く世間一般的にはゼルダがNo1です。 でも世間的に1位のものを1位だってブログ書いたって面白くできる自身は無いので必死で荒を探したわけですよ。でもですね、死ぬほど面白かったんですよ。 というか、ハングライダーみたいなので滑空してるだけで楽しいゲームってそんなの反則以外のなんでもないわけで、それでいてキノコ狩りすんのも楽しいし、パズルも面白いし、戦闘も楽しいし、ストーリーも面白いし、このゲーム完璧じゃねえの?みたいな感じで膝から崩れ落ちてたんですよ。 でもですね、ついに見つけました。
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ミファーのamiiboブサイクすぎる
(なお、作中では最カワの模様) そんなわけでゼルダはランキングから除外しました。
ネタバレは極力無いように、だから買って あと先に謝っておくけど今年俺がやったゲームだから今年のじゃないのが結構あるけど許して亭許して
続く
Cuphead http://store.steampowered.com/app/268910/
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価格:2000円(今なら1600円) ジャンル:ボスラッシュ系アクション
美術では今年1です。とにかく見た目が凄すぎる。 昔のディズニー映画見てるときにコントローラー渡されてそのまま主人公操作してるような感覚。最初のトレーラー見たときはジョークフィルムだと思いました。本当に出たと聞いたときにおそるおそる起動して動かして本当に見た通り動かせて感動しました凄い。それでどうやってんのかと言うと一枚一枚手書きでアニメ描いてるらしくてドン引き。ゴリラ的手法。 ゲーム性もバランスも良く出来ていてとても面白いです。トライ&エラーにストレスがあんまりない。達成感はちゃんとある。非常にバランスがいいと思います。 そして音楽がすんげ~~いいです。昔のディズニーの生演奏劇伴っぽさまで再現してます。レトロゲームを元ネタにしたパロディっぽい曲とか、ニッコリ。 クリアまでアクション慣れてる自分で5時間くらい。友達家に来た時2人プレイしても面白かったです。2人プレイすると敵のHPかなり多くなってるので歯ごたえは変わらず。嬉しさは共有。
Enter the gungeon http://store.steampowered.com/app/311690/
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740円 弾幕シューティングローグライク
みんなが好きなとんかつとカレーを合体させたら美味しいに決まってるじゃん。でも大丈夫。このカツカレーはカツが苦手でも運さえよければ消えるから! そんな感じです。 必死に豆鉄砲をパンパンしながら頑張って2階のボス倒してたのに、次のプレイでは全画面超協力レーザーで10秒焼き殺し余裕でした。そんな運ゲーですが、基本のベースはやっぱり見下ろし型STG。やりこみである程度クソ運でもなんとかなります。こちらの攻撃は宝箱からドロップする銃に依存しますが、敵の攻撃方法は変わらない。当たらなければどうということはないわけです。 1プレイ長くても40分程度、下手すると5分で死亡するのに今steam見たら
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正直超楽しいです。安いし是非やってみてね。
Hollow Knight http://store.steampowered.com/app/367520/
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1500円 (セール中1000円) ダークソウル風メトロイドヴァニア
メトロイドヴァニアってジャンルを知らなかったんですけど、こうマップの上下左右が別のマップに繋がってて、穴に落ちると下のマップの上から出てくるアクションをメトロイドヴァニアって言うらしいです。へー 攻撃手段は短剣かカツカツMPの魔法で、ボス戦がありえんほどムズいです。ソウルシステム(経験値と金が共有・死ぬとその場に落とす)があってロストもあります。でもロストしたのはたまーに。そこは若干優しい かなりダークソウルっぽいカジュアルアクションでやれること増えていきます。泳げるようになったりロックマンXみたいに壁ジャンプできたりダッシュできたり。 理不尽さのバランスが体力の少なさに振られてる感じで結構ストレスですけど、操作性はとてもいいので爽快感はあります。 なんとかサンクチュアリよりこっちの方が好きだったなあ。こういうデフォルメっぽい絵柄がキビキビ動く系アクションが好きならたぶん好き。 実績少し集めて20時間くらい。
RabiRibi http://store.steampowered.com/app/400910/
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2100円(セール中1400円) 横スクロールアクションで弾幕シューティングをやろうゲーム
もうジャンルがよくわかんないけどPVを見てくれ。 とにかくヌルヌル動くドット絵が好きな人、鬼難しいアクションが好きな人、ごちうさが好きな人はベストバイだ。 序盤のストーリーはなんか良くわからんがウサギが萌え絵のバニーガールになっちまったから飼い主探すんべって感じでふわふわしてるけど、終盤までずっとそうだから心配するな。 台湾製のゲームだけど絵柄を見てるとちょっと光沢がありすぎる日本の萌え絵っぽくて良い。3日くらい風呂入ってない髪みたいな感じでめっちゃそそる。くさそうで ただこのゲーム、本当にムズいから心折れる可能性がある人は難易度最低でやってほしい。一個上で散々ダクソっぽい!って言ってたホロウナイトの40倍はムズい。歯ごたえがありすぎる以外は欠点の無いゲーム。 ちなみにPS4とかに移植されるみたいだよ。今年2番目くらいに好き
Shantae: Half-Genie Hero http://store.steampowered.com/app/253840/
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ロックマンXっぽい2Dアクション 2000円(1300円)
・死ぬほどシコれる ・難易度はぬるい ・曲がアラビアン調でいい。ガムランとか流れる ・6時間くらい ・死ぬほどシコ ・くさい女の子がでてくる(ゾンビ) ・ゲームキューブのロックマンX思い出す感じ
うーん。すき
Stardew Valley http://store.steampowered.com/app/413150/
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牧場物語 今1000円
牧場物語ってやったことねえんだよなあ~でも面白いって聞くしやるか と思って買って丸3日ほぼ不眠不休でやってました。恐ろしいゲーム。 どう森みたいに自分の牧場カスタマイズするぞ~って人より、アトリエみたいなタスク管理してやること忙しくやりたい人にこそおすすめしたい。 明日までに醸造セットを作りたいから今日はダンジョンの何階でアレをドロップさせて~、同時並行で木材も集めたいし~みたいなゲームです。スローライフとはいったいなんだったのか。 手塩にかけたジャガイモが実をつけたあの嬉しさは変えがたいものだったなあ~。良いゲームだったと思います。 一つだけ、結婚相手がブスしかいないのでMODでキャラクターデザイン変えたほうがいいです。マジで。オークしか居ない。switch版とかあるけどMOD使えないから拷問だと思う
VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action http://store.steampowered.com/app/447530/
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サイバーパンクバーテンアクション 1500円(1000円)
今年1番期待してたゲーム。でも思ってたのと違ったんですよね。 ぼくのそうぞうするさいきょうのヴぁるはら→この女の子に酒飲ませて体の関係であるディストピアを作り上げた犯人の情報を掴んで世界を平和に!!! ではなく、淡々と酒っぽい何かを酒の味にしてるバーテンが客の愚痴を聞くだけのゲームでした。 でも、凄くキャラの背景とか思い浮かぶんですよ。客との対話と何枚かのドット絵だけで世界観が脳に作り上げられる感覚があり、それでいて複線の回収が派手じゃない程度にいくつかあり、 下世話な下ネタを言っている人が実は結構重めの過去とかあんのにそういう話は本人の口からほとんど出てこなかったり。それがまわりまわって伝わってきたり、物凄く練られてるゲームです。 プレイしたあとボディブローのように効いて来るハイパースルメゲーだと思いました。 飲ませたカクテルによってそのキャラが幸せになったり不幸になったりするわけじゃなくて、ただ単純に世界は淡々と回ってくるんだからうまい酒くらい出してやろうって気になる感じ。 うまくいえないなあ。語りつくせない何かがこのゲームにはあったと思う。主人公の境遇とか考え方が自分と重なって刺さったりする。 だいたい15時間弱で本筋がおわります。攻略見ながらスキップしながらキャラエンドを見る感じで+1時間~2時間。カクテルはキーボード操作で作るのがオススメ。 ぼくはドロシーちゃん。
以下急にやる気の無くなるインディーズ以外のタイトル
Life Is Strange(PS4)
タイムリープ系アドベンチャーちょっとパズル フリプだった
去年のゲームです。 パズルはちょっとひどいと思いました。空き瓶5本探せとか 普通に良作のレズゲーなんでフリプでDLしといてやってない人はやってどうぞ 10時間しなかったとおもう
GRAVITY DAZE 2(PS4)
キトゥンちゃん 定価
ごめんまだ途中…盛り上がってくるの遅くて、それでいて移動距離ながくてダレていったんやめちゃった。 後で加筆します。いまのところキトゥンちゃんがくさそうなので面白いです
ニーアオートマタ(PS4)
アクション 定価
レプリカントみたいなストーリー期待してたらキングダムハーツ2みたいな方面にシフトされてて正直微妙だった。 ゲーム要素はもともとあってもなくてもいいようなゲームだけどレプリカントよりはだいぶマシになってたと思います。でも無くていい でも曲とケツはよかった。金と時間かかってるゲームだとは思う。なんか一般向けに寄せた結果毒が抜けて味が無くなったような印象を受けます。 あとヨコオタロウさん(P)が発売前にレプリカントやってなくてもへーきへーきって言ってたのにおもっくそレプリカントからの続きモノなの頭おかしいんじゃねえのって思った でもエミールがかわいいので★5つです。自分エミールの屋台の曲歌ってもいいすか?いらっしゃいぇ~まいどあり~
バイオ7
バイオ 定価
すんげぇ面白かったゾ~~♪♪ 神ゲーですわ途中までは 発作おこしていつものバイオに戻るまでは本当に面白いです。超怖い。ありえない。アレをVRでやるとか死ぬ自身がある。 でも人形の指の件忘れてねえからな。覚えとけよ。ちょっとスプラッタとか虫とかもあるけど、良いアクセントだと思います。 マジで序盤は怖いし面白いし最高だからまだやってない人は一緒にファミパン(お前も家族だパンチ)しよう
oneshot
RPG 1000円(600円)
単独記事にもしたんでよかったら読んで下さい。 https://tmblr.co/ZHaXLl2R0H7n3 日本語訳されたのが今年ということで今年やりましたけど、凄すぎましたね。 過去最高に没入感のあったゲームです。あまりの没入感に終わった後の喪失感もありえないほどヤバかったんで気をつけてください。 ゲームっていう媒体のお手本みたいな作品だと思います。 なぜRPGゲームじゃなきゃダメなのか、ストーリーを楽しみたいなら小説や映画でいいじゃないかというヤボな疑問へのアンサーだと思います。 ゲームであること、言うなれば2次元であることの利点をフルに活かしてプレイヤーとキャラクターの間の壁をぶっ壊すという試みが良いですよね。 自分けものフレンズ好きなんですけど(唐突)やっぱりみんなが優しくて協力しあって生きているのって良いですよね。悪を打ち砕くカタルシスも好きなんですけど、全てがポジティブに動いた結果カタルシスになる作品ってなかなかないじゃないですか。ここすき 安いしすぐ終わる(1週3時間くらい区切りは2週で5時間~6時間)んでやってください!オナシャス! というわけで今年の一番はOneshotでした。
終わりに 今年も沢山のゲームに支えられて生きてきました。 ソシャゲに押されて据え置きゲーは肩身が狭くなってきましたが、ゼルダみたいな意欲的な作品が出てきて本当に嬉しかったですし、 去年も言いましたがUndertale級の作品がなんだかんだで毎年あるんで僕は幸せです。
さて、来年ですが。 一番楽しみなのはDoki Doki Literature Clubです。インディ界隈ではUndertale/oneshot/DDLCの3強らしいですよ。バイリンガル兄貴達オナシャス 自分でもトイックで190点取った実力を活かしてやろうと試みましたが、無理です。ギャルゲーなんですけど、女の子が筆記体で手紙書いてくるの。ムチャ言うなアルファベットすら読み取れんわ。
皆さんのオススメゲームがあったら是非教えてください。僕はもんむすクエストぱらどっくすで年越しします。 それでは、よいお年を
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chakabin · 7 years
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foobar2000、fillterパネル内を名前順にソートする
foobar2000で不便に感じていたポイントが一つ。。。 漢字のアーティストを読み仮名順に並べられない! ネットで検索をかければカッコいいUIは沢山見つかりますが、いずれも漢字表記のアーティストがアーティスト一覧の下部にごった返している。。。 これではUIの柔軟性、音の良さやソフトの軽さが売りでも個人的には第一線で使いたいソフトにはなりません。 この不便さを解消するために色々調べたところ2chでいいアイデアが紹介されていたので備忘録として起こしておきたいと思います。 これは私が使用しているUIですが、画像左側のように読み仮名の頭文字でアーティストを絞り込み、漢字関係なく名前順にソートされたアーティスト一覧から目的のアーティストを探せるようにすることが目標です。
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必要なコンポーネントは Colums UIのみ。残りはタグ編集の力技で進めますので foobar2000上でタグ編集を進める場合はMasstagger があると便利かと思います。 まず、必要なタグ編集から行いたいと思います 私はアルバムアーティストで絞り込みを行いたいのでアルバムアーティスト名を軸にタグ編集を行いますが、以下の3つのタグフィールドでも独自に定義してデータを入力してください。 アルバムアーティスト : %album artist% アルバム単位でのアーティスト名を入力します。上の画像での「あヴぁ階段 ~恋のノイズ大作戦~」のように1枚のアルバムに含む複数アーティストが存在するけど「非常階段 × あヴぁんだんど」のアルバムとして統一したい時などに便利。 コンピレーションアルバムの場合はVarious Artists だったりCompilationだったりご自由に。 読み仮名 : %albumartist_order% アーティストの読み仮名を入力する。アルファベットのアーティストは頭の "the" や "a" を除いて入力すると便利。日本語名のアーティストはすべてひらがなに統一しています。 頭文字 → %albumartist_initial% アーティストの頭文字となるひらがなもしくはアルファベット。ポイントは濁点、半濁点で始まるアーティスト名は濁点、半濁点を除いた文字で入力。 ---------------------------------------------------------------------------
ここでできるだけ手入力の手間を省くために便利なのがMasstaggerになります。 Masstaggerを用いてすでに情報のあるアーティスト名から自動的にアルバムアーティスト、読み仮名、頭文字のフィールドを埋めていきます。 コンポーネントを入れ、曲を右クリック、tagging > manage scriptsをクリックすると新たにウィンドウが出ます。 左のadd > Guess value from other fieldsをクリック Source formatに入力したいタグの内容(ここでは%artist%) Guessing patternに入力先となるフィールド名(ここでは%albumartist%)を入力します。 OKをクリックすると右側のボックスに入力される情報のプレビューが表示されます。 このようにして以下の3つのアクションを追加します。 add > Guess value from other fields Source format : %artist% Guessing pattern : %album artist% add > Guess value from other fields Source format : $upper($stripprefix(%albumartist%)) Guessing pattern : %albumartist_order% add > Guess value from other fields Source format : $cut(%albumartist_order%,1) Guessing pattern : %albumartist_initial% これを実行するためにRunをクリックすると自動的に上からアクションが実行され%artist%タグから%albumartist%、%albumartist_order%、%albumartist_initial%が入力されます。 source formatに入力している関数についての解説はこちらでされています ここでの問題は漢字、カタカナのアーティスト、濁点、半濁点で始まるアーティストは正しくタグ情報が入力されないことです。 これに関してはpropertiesを開いて手入力で修正しています(何かいいアイデアがあれば教えていただきたいです)。 また、私の場合は後の利便性のために数字で始まるアーティストの%albumartist_initial%タグはすべて”#”で手入力して統一しています。 ---------------------------------------------------------- タグの編集が済んだところでfilterの設定に入りたいと思います。 まず頭文字を一覧するフィルターを用意します。 preferences > Display > Columns UI > Filters Fieldsタブを開くことで現在登録されているフィルターを一覧できます。 Newボタンをクリックし Name : initial Fields : %albumartist_initial% これで頭文字用のフィルターが作成されました。 同様に Name : album artist Fields : $char(3)%albumartist_initial%%albumartist_order%$char(3)$char(3)$char(3)%album artist% これがアルバムアーティスト用のフィルターになります。 ここでうまく名前順にソートするミソが$char(3)にあります。こちらで説明されているように$char(3)XXXXXX$char(3)は文字色を定義する関数になるのですが、$char(3)に挟まれた文字列はソートには反映されるけど実際のインターフェースに表示されないことを利用して $char(3)の間に読みがなの文字列を挿入してソート用で実際には表示されない文字列を入力しています。上のfieldsには$char(3)が4つありますが、最初の$char(3)~$char(3)で見えない読み仮名の文字列を入れ、アーティストの文字列によって適当な色が定義されているのをリセットするために後の$char(3)$char(3)で文字色をリセットしています。 $char(3)~$char(3)で非表示はソートにはかなり便利だと思うので他の場面でも使えそうです。
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100htour · 7 years
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2017.9.30-10.1 ツアーレポート
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2017年9月1日[土]〜10月1日[日]の2日間、タイムトラベル100時間ツアーを開催しました。参加者は、障害福祉施設の��員やメディアの研究者など5名の方に参加していただきました。
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まずは、簡単なガイダンスでツアーの過ごし方のレクチャーを受けます。「何をしてもいいです。なんなら寝てしまっても構いません」と、かなりの自由を与えられて戸惑ったという方もいらっしゃったそうです。
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ガイダンスが終わると参加者は2階へ。そこには、1時間半前から場を温め続け若干疲れ気味で爆音を鳴らす人々が。(あたためているときの様子はこちら→https://soundcloud.com/sasakiyuichi/20170930-session-with-kazuki-ogata)ツアーのお客さんが来ると、「おもてなし」の精神で、疲れた身体をに鞭を打ちギアをあげるのはスタッフ。しかし、その様子を見て参加者の方は「だれがスタッフで誰が利用者か分からなかった」という感想を残してくれました。
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お昼ごはんの時間。利用者のみんなと席を並べ、おしゃべりしたり、お互いになんとなく存在を意識したりしながら共にお昼に一時をまったり過ごしました。
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昼食後、お互い同じ「女子大生」(片方は院生)ということではじまった、訪問客とバイトの腕相撲対決。「女子大生」というアイデンティティーをかけた真剣勝負が繰り広げられました。
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午後は自由時間。主に子どもが過ごしている3階で一緒に遊んだり、そのまま1階に残ってのんびりおしゃべりしたり、それぞれ思い思いに過ごしてもらいました。積極的にまわりに関わっていこうとする姿がみられました。
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りょうがくんが書いたABCの紙に丸つけ。りょうがくんが発する単語を聞き取って書いてあげるとよろこぶので、必死に聞き取ろうとしていました。気に入られないと、紙をがさっと持って他の人のところへ行ってしまいます。りょうがくんに振り回されながら一喜一憂。
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階段の方が騒がしいと思って見ると、おがたくんが倉庫から壊れた家電を運び出していました。それらを台車に乗せて散歩に行く、通称「おが台車」の準備をしているようです。
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「おが台車」が完成して出発するまでは、引き続き1階でのんびり過ごしました。途中、その場にいる全員が、りょうがくんが歌い飛ぶ様子を手拍子しながら見る一幕もありました。
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ようやく「おが台車」が完成すると近くの小学校へ散歩へ出かけました。みんなで不安定な台車を支えながら、わいわい移動。小学校に到着すると青空のもと、それぞれ思い思いに過ごしました。
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「おが台車」と平行して、おおたくんと散歩に行った一行(おおたくん、スタッフのササキ、参加者1名)もありました。そちらは、1対1対1の関係の中で充実した時間になったようです。
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利用者の皆をそれぞれの家へ送り出した後は、スタッフが毎日書いている振り返りに参加者も参加。その日に体験したこと・感じたことを紙に書き出していきました。
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夕食は、浜松餃子パーティー。浜松名物の持ち帰り餃子と豚汁でお腹を満たしました。
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夕食の後は、振り返りトーク。「スケジュールとか、プログラムを決めていなくても、ぬり絵をするとか、それぞれやることが決まっているように見えるが、どのように決まっていくのか?」という質問を投げかけられたり、「作品を作る/作らない」「訓練をする/好きなことをする」の二項対立について話したりしました。
 トークの後は、近くのスーパー銭湯で汗を流して1日目は終了しました。
 2日目は、施設がいつもはお休みの日曜日ということもあり、シークレットツアーとして、利用者2名にガイドになってもらって浜松の街中へ出かけて行きました。この日は、ゆりの木通りで手作り品バザールが開催されていて、多くの人でにぎわっていました。
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ガイドの一人、まつもとくんはバザールの人混みを元気よく疾走。じっくり出店を見ながら歩くと半日はかかるであろう道のりを、30分で駆け抜けていきました。駆け抜けながらも気になった人を見つけると次々と声をかけて挨拶。相手に伝わらない言葉を一方的に話しかけて、自分が満足すると去っていくというのを30分間全力で成し遂げていました。会場を一回りすると本人も同行したツアー参加者もヘトヘト。短時間で多くの人に印象を残すことができたのではないでしょうか。
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もう一人のガイド、ゆうじくんは、男性のツアー参加者とのんびり散策。男性にも、同じ年くらいの障害をもった子どもがいるということで、本当の親子のように街を歩いていました。男性は、帰りの車内で「最近、息子とこんな風にでかけてないな」と漏らしていました。
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手作り品バザールを駆け抜けた後は、ゲームセンターで遊び、昼食へ向かいました。
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昼食は、ローカルファミリー中華レストラン「五味八珍」。我々スタッフも利用者と外食に行く機会が、ほとんどないので、どうなるのか心配しましたが、ツアー参加者に囲まれ楽しく食事をすることができました。店員さんもやさしく対応してくださり、まつもとくんの握手に何度も応えてくれました。さすが、「お母さんへ お子さんは散らかす名人です。・・・」というポスターが貼ってあるお店です。
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昼食が終わると、のヴぁ公民館に戻って���代表の久保田と2時間ほどトーク。レッツ設立の背景や理念の話を、ツアーの体験も踏まえて、聞いてもらい、話をしていきました。
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ガイドの二人は、横で、のんびりビデオ鑑賞と絶叫しながらのゲーム。
 最後は、スタンプカードに29時間分のスタンプを押して、今回のツアーは終了。100時間の滞在を目指して、またのお越しをお待ちしております!
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lostsidech · 7 years
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4:Joint War of Lost-Side Children(前半)
 浅い眠りから目を開けた。
 軋む小さなベッドの上で着の身着のまま身を起こす。薄いモスリンのカーテンだけが下がっている窓辺からはもう光は入ってこなかった。ここへ来る前に買ってきた絆創膏を切れた頬に貼っていて、夜の空気がほのかにすうすうした。
 日沖翔成はしばらくぼんやりと窓の外を見つめていた。
 夢を見ていたわけではなくて、ほとんど覚醒に向かう意識の中で、記憶をたゆたっていたのだと思う。父親は最初に、ホムラグループの話をして、それから、それを少し敷衍した、世界の話をした。そういうことをどこで知ったかという話もした。
 翔成が今やっていることを、記憶のある父親が聞いたら怒るだろう。今となっては詮ない想定だけれど。
 ヴ、ヴ、とスマートホンが震えた。我に返って手探りで電灯を点けた。ターコイズブルーのカバーをかけた筐体を掴むと、電話着信がまさに今入っていた。ずきんと心臓が跳ねた。
 やっと来た。
『こんばんは、翔成くん』
 状態を受話にした瞬間、電波の向こうでくぐもった声が言った。女の子の声だ。
 こんばんは、と翔成は思った。待ってたよ、ヒイラギ会。
『あなたのこと責めたくはなかったけど……ちょっと理由聞いてもいいよね。わたしたち、高瀬くんに手を出せなんて言わなかったでしょう?』
 電話の声はきんと張り詰めて笑っている。翔成は見えやしない口角をこちらも無理に上げて、意図的に子供じみた声音を作った。
「電話くれたってことは、何か動いてる? 嬉しいな。仲間に入れてもらいたかったんだ」
『……嬉しい?』
「きみたちが最初に連絡をくれてから、もう一月くらい経つよね。だけど、おれ、先輩を探る以外の仕事なんにも貰わなくって……父さんたちは誘拐計画とか立ててたのにね。父さんたちは大人で、おれは子供だから、できることは違うけど……だけど、何かできるってとこ見せたかったんだ」
 あらかじめ考えていた口上は、無邪気に淀みなく翔成の喉を滑り出ていった。蓄電式の枕元灯以外光るものがない裏路地の廃病院の闇が、心地よく己の心情まで包み隠していた。
 電話の声は、たぶん静かに笑っていた。
『つまりあなた……これがおおごとだって、分かってやったってことね?』
「なかなか勇気があったでしょう? ……どう?」
『ありがとう。迎えに行くわ』
 ぶつり、と通話が切れた。こちらの場所は訊かれなかった。つまり恐らく、とっくにばれているのだろう。
 去年閉じたばかりのこの診療所は、本来すぐに他のテナントに取って代わられるところをホムラグループの仮押さえで膠着状態にされている。本社協力者の一人がもしものときの合流地点として指定していた場所だと、父親に聞いていた。���れこそ場所の指定だってヒイラギ会を介していたのかもしれない。翔成は何も知らない。
 最初にヒイラギ会の少女から接触があったのは、父親が記憶を失ってから間もなくだった。彼女は電話越しに『あなたのことは知っている』と言った。『お父さんから色々聞いているでしょう。お父さんたちが安心するためには、ホムラグループの構造を変えなきゃいけない。それを手伝ってほしい』と。
 翔成は最初から彼女たちを信用していなかったし、こうして決定的に裏切ってしまった。
(おれだって信用はされてなかったんだろうな、きっと)
 彼女が―実際に現れるのが誰かは翔成には予想できないが―翔成の真意の確認なり、後始末なりのためにここにやってくるのなら、ここがホムラグループの所有地である以上、グループにとっても無視できない展開になるだろうと翔成は期待していた。少年のやるべきことは、ここで何かがあったと確実に示すこと。そのために準備が必要なのは―
 鞄を開けて、ベッドの上にひっくり返した。
「頼むよ」
 ファンシーカラーに包装された片手サイズの携行注射。いわゆる注射器みたいに静脈を探して打つ必要はなくて、主に大腿に九十度で刺す筋肉注射だ。
 Artificial-Light。人工の灯。バイタライザーに与えられた正式名称だ。本来専門家が扱うために開発されたものではあるけれど、翔成たち一種のテロリストにとっては、自分で戦うために恰好の武器になる。
「今晩がヤマだ」
 呟いたとき、ふと部屋の入口のあたりで、ごほんと咳払いが響いた。
 翔成は暗がりに目を転じた。
「あれ」
 ゆっくりとまばたきをする間に、相手が部屋の中に一歩踏み入ってきて枕元の非常灯の輪に入る。
 待っていた少女、ではない。
「お兄さん、ホムラグループの新人さんじゃなかったっけ」
 声をかけると、黒髪を後ろに撫でつけた青いジャケットの青年はポケットに手を突っ込んでじっと翔成を見つめた。ワンショルダーの白いリュックを左肩にかけている。
 翔成はそっとバイタライザーを一本拾い上げた。
「ニコさんだっけ。今思うと、うちに来たのって、たぶん父さんの記憶のことの関係だったんだよね?」
「今ここにいることが答えだよ、翔成くん」
 溜息を吐くように静かな低い声で青年は言った。
「日沖翔成くん。つまりきみは、ホムラグループではなく、ヒイラギ会を刺激するつもりで高瀬くんに手を出した、ってことでいいのかな?」
 ヒイラギ会、という言葉が彼から出たことの意味に、一瞬遅れて気が付いた。
 ゆっくりと、ほんとうにゆっくりと、諦念なのか、絶望なのか、己に対する失望なのか、なんともいえぬ溜息が胸の底から溢れ出た。だけど、まだ判断しちゃいけない、投げ出しちゃいけないと囁く心の声が力の抜ける肩を糸になって引き留めた。
「そっか」
 簡単な相槌だけが零れ落ちた。
「ニコさん、調べたんだ」
「嬉しそうじゃないね」
 児子という名の青年は淡々としていた。
「共通の敵を見つけたんだと思ったけど。今しがた、君の電話を盗み聞きして」
 悪びれた様子はなかった。監視されていたのだろう。翔成の処遇を決めるために。
 翔成は笑ったまま答えを探した。こうなったら、目的を擦り合わせるしかない。
「ねえニコさん、おれは聞いての通り、ヒイラギ会の手先になりたかったんだよ」
 児子の目が少し細くなった。
「だから、翔成くんはそういうフリをして彼らをあぶり出したかったんだろう?」
「どうして? それだったら最初からあなたたちに頼んでいたよ」
「……そうしなかった理由を、俺が聞きたいよ」
 宵闇の中で、青年の声が少し苛立った。翔成は握った注射のキャップを親指で撫でた。
「父さんたちにはそうしろって言われたよ。あの人たち、ヒイラギ会から……真実を知っておきながら、結局ホムラグループを離れる気は一切なかったんだもの。ホムラグループに対抗するつもりで彼らから情報を集めていたんだと見せかけて、結局は彼らから集めた情報でホムラグループに味方するほうを選んでたんだ。つまんないよねえ? 反勢力なんて大層を言っておきながら、つまり箱から出られなかったんだ、レールを降りられなかったんだ」
「翔成くん。何が言いたいの?」
「父さんたちはホムラグループの味方だったよ」
 話すうちにスイッチが入ったように心地よくなっていて、指の中でペン回しみたいに注射器を弄んでいた。
「おれが違っても」
 そう言葉を結ぶと、向かい合っている児子の目が暗がりでぎらりと光った。何かを理解した表情変化だった。
 そういうことにしてくれ、という―これが懇願だと察したのだろう。翔成は微笑んで、指の上で踊る注射器をキャッチした。
 眼光鋭く、ホムラグループの青年は翔成の行動を総括する。
「つまりきみは、たとえ自分が何かしら処罰されるとしても、お父さんは責めないでくれって言ってるわけだ」
 肯定していいものかどうか翔成には分からなかった。翔成は普通の少年だから。真っ向きっての口舌も、搦手の交渉術も使えないから。
 児子が頷いた。
「なるほど、ヒイラギ会を信用していたわけではないけど、俺たちの仲間というわけでもないんだね。だからお父さんたちが最初に企図していた通り、俺たちにヒイラギ会の案件を丸投げするのも嫌だったと。それで協会と高瀬式を強制的に巻き込んだわけ?」
 そうだった。そうだったのだろう。男子中学生の頭でそんなふうに言語化していたわけではない。けれど、追っ手を増やせば誰かがヒイラギ会もホムラグループも、翔成よりきちんと裁いてくれると思った。
 たくさん悩んで、似合わない重荷に血を吐くほど考えた。あの四月、入学式の日の日暮れ前、父親が一つのことを翔成に頼んだ。翔成に頼るかどうかそれはそれは悩んだけれど、近々ホムラグループに所属する全員が一斉に調査される機会があって、外部に信じられる仲間を残しておかなければならない、と。翔成は嬉しかった、それが嬉しかったのだ。何をやっても目立たないごく普通の少年だけれど、父親は一人前と認めてくれるのだ。与えてくれるのだ、「いい子」じゃない役割を。
 けれど、どこか不安げにしていた父親の様子を映したように、事態は少々違う方向に進んだ。
「当然、ヒイラギ会に対してもいい挑発だろうね。彼ら、子飼いの翔成くんがそこまで目立つことをするとは思ってなかっただろう。ホムラグループに入り込んでいた以上こっちへのアンテナは張ってただろうけど、三すくみの真ん中に放り込まれたらさすがに普通の組織は身動き取れない」
 そんなもの翔成には分からない。だけど、確かに電話の相手はこちらに接触してきた。
 もう一つ理由がある、と心臓が言った。日沖翔成、お前は悔しかったんだろう。悔しかったんだろう……
「浅はかだね」
 児子青年はばっさりと言い切った。心臓の声は今は黙っておこうとばかりに翔成の芯を突くのをやめた。
「己が標的になることで、敵の尻尾を掴もうなんてさ。素敵なヒロイックだよ。映画の観すぎ。あんまりにもたくさんの失敗分岐を無視しすぎている」
 児子が一歩こちらに踏み出した。あくまで翔成の反応は待たない。
「実行以前にヒイラギ会に露見するリスクくらいは考えてただろうから割愛しよう。けどじゃあ、俺たちや高瀬式が、きみの思うほど早くに動き出さなかったらどうしてたの? きみはたぶん、真っ先にヒイラギ会に口封じされて、単独犯行の身代わりとして差し出されてたよ」 
 つまり、追っ手が増えるより先に、ヒイラギ会に気づかれて後ろから刺されたら、ということか? 翔成は疲れた表情筋を動かしてにやりと笑った。絆創膏を貼った頬が引きつれた。
「……考えたよ、それくらい。児子さんはおれを監視していたじゃない」
「分かっててやったんだ」
 青年は翔成の座るベッドの前で足を止めた。距離に対して目線があまりに違って、まるで高い峰の上から見下されているように翔成は感じた。
「だったら、怒られるのも覚悟してるよね」
 未成年非行だ。異能が関わっている以上、引取先には国と協会が協賛する特殊な少年院がまず候補に挙がる。けれど、この話し方だ��児子ひいてはホムラグループは、そちらに引き渡す気はないのだろう。ホムラグループはもっと穏便にことを収める手段を持っている。
「そっか」
 そうか、おれ、消されるのか、と思った。
 思念操作。封印。それは父親に与えられた十字架と同じだ。
 児子は腰をかがめると、翔成のひっくり返したバッグの口から、白いマスコットを拾い上げた。眼帯のネコ、ただしどこにも秘密の縫い目なんかない新品だ。先輩のために獲ったもの。確実に処罰の手が及ばない外部に疑われないように情報を託して、翔成が勝手をやるための隠れ蓑。
「俺の妖術は共感性だからね。きみと接触のあった物品を介して君にアクセスする」
 児子から事務的な解説があった。翔成の処理はこの場で終わらせるよう彼に一任されているのだろう。最小限の労力でインフォームドコンセントを実行するような、乾いた声音だった。
 ちくりと、仄かな抵抗が芽生える。父親が記憶を失って帰ってきたときのことを、翔成は覚えているので。
 その景色が鮮明に頭の中にひらめいて回り始めたのは、もしかして翔成の意志ではなかったのかもしれなかった。児子操也(そうや)が翔成の頭にアクセスしようとしていて、たぶん消すべき思念のつながりを探っている。翔成の行動理由を白紙にするために。
 抵抗感がうごめく。
 その晩、帰宅して食卓に着いた父親はいつもと変わらなかった。けれど、父に予告されていたのはまさにその日付だった。
 父さん。食後の廊下で呼び止めると、一杯引っ掛けてほろ酔い加減の父親は上機嫌で立ち止まった。
「なんだい、翔成?」
「秘密の話をしよう」
 いつか父親が散歩がてらに、翔成に話しかけたように。
「秘密?」
「世界の秘密の話だよ。SEEPって言ったらわかるよね? 超常師協会。あれと同じようなことを、ホムラグループが裏でやってるって話」
「グループが?」
「ホムラグループの裏の顔。父さんたちはそこから身を守るために手を打っていたけど、今は覚えてないでしょう……」
「待って、翔成」
 けれどそのとき、無邪気に話す翔成の言葉を、父親が歯が痛むような顔をして遮った。
「それがほんとうだとして、翔成は誰からそんなことを聞いた?」
 予想外の口調だった。どこか怒るような、翔成が不用意をやったことを叱るような。
 正直、焦った。父親はめったに声を荒げない人だった。いつぶりだろうか、もしかするとほんとうに分別のなかった幼少期以来のできごとだったかもしれない。一瞬、翔成は自分が、ずっと小さかったころに戻るような気がしたのだ。
 家族を守る、守るべきは父親である。そんな口調。翔成はもう守られる側じゃなくて、守る側に仲間入りしたと勝手に思っていた。
 使命感に燃えて、先走っていた翔成はそこで初めて、自分の幼さと後先のない有頂天を自覚した。焦ったから、翔成の手はもう少し丁寧に辿り着くはずだったヒントに伸びたのだ。
「これ、父さんがくれたんだよ。知ってるだろ」
 中身は口で言うなと釘を刺されている。だけど、そのものは今重要じゃない。まずは父親に気づいてもらいたかったのだ。日沖翔成は一人前の相談相手なのだと。
 けれど、父親は眉をひそめて、ぽつりと言ったのだ。
「大丈夫か、翔成」
 翔成を心配する口調で。同志としてではなく、ま��ものごとの分からない子供を気遣う、親の口調で。
 そのとき、ぽすんと納得した音がした。
 あ、これは単なる記憶の消去じゃない。『思念』の封印なんだ。
 必要な情報が消えるだけでなく、その情報に思い至るような思考の経路が閉ざされる。こだわりや信念、人への感情そのものが変わってしまう。理解していたわけじゃない。けれど、そう思わないと、腑に落ちなかったのである。
 父親が、翔成に対して信じてくれていたものが、消えた?
 その瞬間、沸騰するように胃が熱くなった。
 それは怒りといってもよかった。こんなことを横行させているホムラグループに対する、これを平然と命じてきたヒイラギ会に対する。
 そうだ。それが悔しくて翔成は自棄になって、それが悔しくて翔成は我武者羅になって、やっとヒイラギ会とホムラグループを具体的に動かすところまで来て。そして今、行動理由を消されようとしている。
 思考が現在に戻ってきた。仄暗い廃病院の一室。人形を拾い上げた青年と向かい合う長い長い引き延ばされた一瞬。
(いやだ)
 おかしい、と思う、許せない、と思う。この感情そのものを、日沖翔成は失うのだ。
 それは、笑顔で安全に暮らすあったかい人生への回帰ではあろうけど。
(何にもない「いい子」に、戻りたくないっ……)
 とっさに注射器のバイタライザーを握りしめていた。ばちん、と勢いよく蓋が開いた。児子が驚いた顔で視線を落とした。
 考える前に、自分の脚に突き刺す。刺傷というより、殴られたような鈍い痛みが熱さとともに大腿部を駆け巡った。眩暈がした。くらりと白、そのあと虹色に光った視界が、一瞬だけの確信を翔成に与える。
「やめろッ!」
 それが協会で言う〈増強〉に当たることまで、翔成はいちいち考えられない。
 叫んで体当たりして、児子を突き飛ばした。常の倍近い膂力。軽く体格差と体勢を凌駕して、青年の体躯を床へ薙ぎ払った。
「なんだよ、翔成くんっ?」
 尻餅をついた青年が不服げに叫んだ。
「分かるだろ、協力がいちばんの近道だよ? 今や何も知らないお父さんを改めて探ることもない。ホムラグループの体面はきみ一人お仕置きすればじゅうぶんだし、ヒイラギ会はこっちで調べるし」
「お前は知らないから! お前は奪う側だからっ……」
 不安定なベッドの上で立ち上がっていた。後ろ手に背後の窓のロックを開けていた。
「『何もない』ってことがどれだけ怖いか、わかってない。どんなものだって、無かったことにしていいわけがないっ……!」
 父親の消される前の記憶だって、もう覚えているのは翔成しかいない。忘れたくない。忘れちゃいけない。
 さっと夜風が背中を撫でた。医院の三階の窓から翔成は身を乗り出した。強いてテレビや路上で見たことがある、協会の超常師たちをイメージした。たぶん彼らだったら、こういうところから飛び降りられるから。
 見様見真似でいいんだかわかんないけど、あんなふうに。おれだって空を飛びたい。想像できることは実現するって、さんざん宣伝が打たれているのだ。
 全身の主要筋肉や骨をなぞるような線を描いて、全身が鈍色に輝いた。一種それに信を預けたような気持ちで、翔成は窓枠によじ上った。
「浅はかだよ、きみは」
 児子の溜息が背後で聞こえたような、聞こえなかったような。考えている暇はなかった。
 窓を蹴った。植え込みが低い位置に見えていた。映画とかで知ってる、ああいうので衝撃を殺す……!
「だっ」
 現実は甘くなかった。
 一番高い木のてっぺんにまず突っ込んだ。小枝をばきばきと折った身体の表面を無数の擦過の痛みが焼いた。声が出た拍子に、口の中に尖った枝が突き刺さって口蓋を引っ掻いた。目だけは必死に閉じていたが、恐怖で固まった身体はほとんど団子になったまま地面に叩きつけられる。
 衝撃で呼吸が止まった。なんだって訓練なしでできるもんじゃないんだ、とひりひりした心で思った。増強が効いていたとしても、適切なタイミングで適切な部位を守るのは想像だけで何とかなる技術じゃない。
 しばらく、感覚がなかった。けれど動けたから何か効果はあったのだろう。痛みが引け、とがむしゃらに念じたら痛覚がじんわりと意識から追い出された。治癒系はなんとかなるかもしれない。
 きしむような痛みに悲鳴を上げる全身で立ち上がった。あ、これは打撲か、悪ければどこか筋や骨を痛めたな、というのがぼんやりと分かった。走って敷地を出たが、離れる間もなく、ゆっくりとした歩調で児子操也の足取りが近づいてきた。
 距離を測ろうと振り返ったとき、児子が立ち止まって手のひらの人形を見せる。
「そこで止まれよ」
 がくん、と全身の動きが止まった。児子が人形を握りしめる動作にそれは連関していた。
 たぶんさっき頭の中を探られそうになった段階で、翔成とあのマスコットはある程度紐づけられて対応していた。児子が人形を持っている限り、翔成に抵抗するすべはない。身体がうまく動かないのは、もしかすると不慣れや怪我のせいじゃなくて共感性とかなんとかいう妖術のせいだったのかもしれない。
(やだな……)
 感じ取れない。歯向かうことも、逃げることもできない。それは恐怖ではなかった。悲しみでも、もどかしさでもない。
 ヒイラギ会の敵を気取って、だからってホムラグループの誘いも蹴って、一人でやれるって気負い立った結果がこれだ。ヒイラギ会はまだ野放し、ホムラグループには制裁を受け、しかも自分が何をされようとしているのかだって分からない。
 カッコ悪いな、おれ……そんな感想が脳裡をかすめた。
 眩しいものばかり見て、真似しようとして、できもしないことをしている。いつもそうなのだ、普通のいい子でしかない日沖翔成を追い抜いて、たいてい強くて苛烈な光が目の前を通っていくから。疲れた視界の端にちかちかと光が瞬き、雑音が混じる。
 それは爆音で近づいてくるヘッドライトの光だった。
「えっ?」
 目を上げた。大型バイクだった。
 人気のない路上をこっちに全力で推進している。あっという間に路面を塗り替える光が数メートルに迫り、振り向いて目を見開いたままだった翔成の視界を焼いた。
 ドン、とそれは、人間というよりほとんど棒立ちの荷物を抱え上げる動作に近かった。
 翔成の胴体がすれ違いざまにさらわれて、くるりと踊るように本来座席ではない運転席前部に載せられていた。児子の反応も確認できなかった。もと立っていた場所が見る間に遠ざかる。全身を引っ張られるような抵抗を感じたが、伸びてきた手に肩を掴まれたあとぱっと身体が楽になった。
「よっ。ガキ捕獲、一丁上がり!」
 軽薄な声でライダーが言った。若い女性の声だった。
 翔成は目を白黒させた。なんだ、どういう状況だ? 攫われた?
「あぁありがとうセン、このへんで止めて」
 後部座席からさらに別の声がした。少年らしい。完全に状況に飲み込まれていたが、その声音ではっとした。肩を掴んでいたのはたぶん後ろの同乗者だ。掛かっていた術を解除された―
 路肩でブレーキがかかった。このあたりで翔成の視界も正常に戻っている。完全に動きが止まる前に、後部座席の人影が飛び降りた。翔成も上体を捻って振り向くと、夜の真ん中を元の道へ走っていく少年の後ろ姿が見える。
 翔成も思わずライダーの腕を振り切ってバイクを滑り降りたとき、怪我の痛みを瞬間的に忘れていた。たぶん。
「高瀬望夢?」
 大声で確認を取った。間抜けな聞き方だとは思うけれど。
 少年はその声に、忘れていたとばかりに立ち止まった。同乗者用のヘルメットを外しながら振り向く。
「よう。一日ぶり」
「なん……おまえ……」
 何を言えばいいのか分からなくて口ごもった。何をしにきた、だろうか? 彼が動くこと自体は不思議な事項ではないが、このど真ん中真正面に、自分自身で何をしに?
 けれどそれが訊けなかったのは、昨日まさに翔成が仮想敵とみなしていた―その相手に対する、落ち着かなさ、原因不明の羞恥に似た気持ちのせいである。
「バイタライザー、打ってるよな?」
 指示するように少年はてきぱきと言った。
「まだ体が動かなかったら、循環とか神経系を意識して。治癒は結局、自力がいちばん効く」
 言うだけ言ってバイク乗りの女性に向かってヘルメットを放り投げる。彼女は腕を伸ばして危なげなく受け取る。確認すると、望夢は用が済んだとばかりにまたきびすを返した。
「まっ、待てよ!」
 思わず引き留めていた。追いかけて、フードパーカーの襟を掴むような形で。ぎゅっと子供っぽく指先が白くなった。
 首が締まったらしい少年が一瞬息を詰めてよろめいた。襟元に指を突っ込んで不満げな顔で振り向くので、斜(はす)に睨まれる形になる。
「握る場所考えろ」
「ごめ……じゃなくて、何おまえ⁉」
 最初気遅れて謝りかけて訂正して、
「なんで親切な面してんの? おれ、処罰に来たんじゃないの……っ」
「怒るのはペアの領分だから……」
 少年がぼそぼそとよく分からないことを言った。
「ここで待ってろよ。お前の先輩連れてくるから」
 ぽかんとしてその言葉を聞いて、頭の中で反復した。
 つまり、
「秘匿派警察じゃない……協会から?」
「どっちも外れだ」
 少年の喋り方は明快だった。
「個人としてお前に興味があった。話を聞きにきた」
 目をぱちくりしたあと、胃の腑がどくん、と音を立てた。
 かっと全身が熱くなった。
「おまえッ……」
 頬が赤くなっているのだろうことを、もしかすると目が潤んでいるかもしれないことを自覚した。怨念に近いような声が出た。相手の襟首を握ったままだった手に力がこもった、たぶんそれは迷惑なことだっただろうけど。
「バカにしてんじゃねえよっ!」
 それは自分だとは信じられない大声で、引き絞ったバネから放たれたように閉じた空に向かって飛んで、一瞬で弧を描いて汚れたアスファルトの路面に墜落した。結局いくらも先へ届かず墜落するのだ。報われなかった。きつく擦れた喉がひりひりした。奥歯を食いしばった。
 何がこんなに、何がこんなに悔しいのか分からなかった。
「翔成(かなる)、お前」
 高瀬望夢が翔成の腕を振り払って体ごとこっちを向いた。
「びっくりするくらい負けず嫌いだな」
 負けず嫌い。
 知ったように言うなとか、言い返したいことはたくさんあった。なのに翔成のもう疲れてしまった身体はそれ以上の見栄っ張りを絞り出せなくて、こんなふうに幕を引きたくなかったのにふいにぼろぼろと涙が零れてきた。あぁ、負けず嫌いか、と思った。確かに今翔成は、自分の感情に負けている。
 悔しかったのだ。ずっと、似たような歳の誰かなら背負えるはずの重荷を、翔成には背負えないことが。父親やヒイラギ会の少女から高瀬望夢や、あるいはあの先輩の情報提供を受けた
                        とき、信じられないと思った。特別な少年少女は一人でも戦ってこられたのか? 何もない普通に生きてきた少年は、どうやって家族を手助けしたらいいのか分かっていないのに。
 望夢は静かな語調だった。
「瑠真が言ってたけど……お前は味方するって言っても跳ねのけるかもしれないって。なんの事情も知らないのに助けるとは思えないって、だから文句を言いに行くって言ってたけど」
 瑠真に接触したのは協会を��き込むためで、いざ翔成が失敗したときの信頼できるヒントの保存場所、でもあった。けれど彼女に手伝うと言われていたら、やっぱり翔成は断っていただろう。
「ちょっと分かった気がする。そういうことか」
 分かった気がする、か。さすが、秘匿派警察のお坊ちゃんは聡いね。望夢のしたり顔に噛みつきたかったけれど、体力がなかった。
 そういう態度だよ。おれが悔しいのは、おれが負けたくないって思うのは。人生の先輩ぶってなんでも分かるような振りをして、それでもいいよ、と言う。ほんとうにそれがただの振りで中身は自分と同じ冴えない中学生だったらいいのに。
 負けたくない。ようやく素直に認められた。これをずっと直視できなかった。自分の味方に来てくれた、この当の先輩たちに一方的に抗っていたのだった。
 発端は翔成がヒイラギ会の接触を受けて、なんだか現実感がなくふわふわしていた頃だ。たぶんぼうっとしていたから町中で誰かにぶつかって、それを常になくへらへらした態度で謝ったから、怒鳴られた。急に心臓が小さくなった。今の自分は人に叱られるような状態なのだと突然悟った。
 そういうときに、彼らに出会ったのである。
(「なにしてんの?」)
 強い声。きつすぎる視線。ほとんど彼女が悪役であろうという剣幕で、乗り込んできた少女。人の話を全く聞く気なく手のひらに派手な炎を突然現出させて、あっという間に無関係の通行人も含め人を追い払ってしまった。
 翔成は見た瞬間にはっとした。すでにヒイラギ会から七崎瑠真という人物をいくらか観察するよう電話で伝えられていて、その少女は聞いていた特徴にほとんど適っていたのである。
「よくわかんないけど」
 回想じゃなくて、目の前で声がした。袖で乱暴に目元を拭って顔をあげると、高瀬望夢が無表情にじっとこちらを見ている。角度によっては気づかわしげくらいには見えたかもしれない。
「俺にはそういう感覚ないから知らないけど、……でも逆に、そうやって悔しがれるとこがすごいんじゃねえの」
 ひねくれた口調だった。翔成は口の端だけで笑った。
「そういうとこだよ」
 先輩ぶるっていうのはさ。無条件にこっちを負けにするんだ、自分を飲み込めていないっていう一点で。
 後ろから呑気な声がかかった。
「悪いけどボーイズ、ほっといていいのかね」
 ずっとやり取りをバイクの女に聞かれていたことをそこで意識した。言葉の端に面白がっていたらしい響きすらあったが、不思議と翔成はここには恥ずかしさを感じなかった。
 振り返って尋ねる。
「ほっとくって……何を?」
「まさかほっとかないよ。俺が行くか……いや」
 了解しているらしい望夢が翔成を挟んでバイクの女に応答し、思い直したようにこちらを見つめた。翔成は目をぱちくりして少年の視線を受け止めた。
「何?」
「瑠真が足止めしてくれてるんだけど、お前も来る?」
「あし……」
 一瞬口をぱくぱくした。そんなに平和に生きていて常用する語でもないので状況との擦り合わせに困ったというところもある。
「……早く言えよ」
 勝ち負け云々じゃない、これはそう答えないと翔成が一緒に非道になる選択肢である。
「オーケー、一緒に行こう。セン、Uターンだ」
「全員で行く��? 分かれた意味って何」
 文句を言いつつふたたびエンジンをふかした女が視線で誘導した。望夢はなんの疑いを抱いた様子もなく再びヘルメットを取って後部座席に座るが、翔成はさっきの配置で行くならどう考えても道交法違反っぽい相乗りである。
「……あぁくそ」
 慣れない悪態をついて、足をかけた。なるほど、「いい子」でいる場合ではない。
「連れてってよ」
 同乗のあいさつ代わりに低い声で呟くと、返事をするように軽快なエンジン音が唸った。
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hyousiki-noguchi · 7 years
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電波ジャックドールズ
まず電波ジャックゲームです。
ナーフ
まぁナーフがありました。
先行の勝率が異常に高いかららしいぞ。お前前回も前々回のナーフの時もそういってただろ。
7月末のナーフ対象は以下7枚です。
縦長になるのが嫌なので画像貼りたくない…
やっぱ時間があるので貼ります。
ヴァンパイア
ヴ トーヴ-ブロンズ 「ワンダーランドドリームズ」
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前:2コスト 3/3
能力:攻撃不能 自分の場にニュートラルフォロワー1体を出した際攻撃可能になる。
後:2コスト 2/2
能力:自分の場にニュートラルフォロワーを1体出した際突進を持つ
当たり前だよなぁ?なんでヴァンパイアのカード調整係はニュートラル使えば勝てるゲームでニュートラルフォロワー出さないと攻撃できない、なんてのがデメリットになると思ってるんですかね。
ヴ バフォメット-シルバー 「神々の騒嵐」
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前:2コスト 2/1
能力:攻撃力5以上のヴァンパイアフォロワーを一枚ドローする。
  エンハンス5:そのドローしたカードのコスト��-3する。
後:能力:ヴァンパイアフォロワーを一枚ドローする。
暗き底のせいで目をつけられたクッソ哀れなカード、カードプールが大きくなるたびに壊れになる能力だったので仕方ないですが「自分と相手の体力を10にする能力を持つアザゼルを使ったワンターンキルデッキ」などの趣味デッキも諸共死んだので悲しいですね。
ヴ 暗き底より出でるもの-レジェンド 「ワンダーランドドリームズ」
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前:8コスト 6/7
能力:潜伏 潜伏状態で攻撃をした際相手のリーダーに6点(進化後なら8点)
   ラストワード:潜伏状態で破壊された場合相手のリーダーに6点(進化後なら8点)
後:能力:潜伏 どちらの効果も一律5点に。
一生暗き底から出てくんな。
ドラゴン ビショップ
ド ウロボロス-レジェンド 「神々の騒嵐」
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能力:相手のフォロワー1体またはリーダーに3点ダメージ。
   ラストワード:手札にウロボロスを一枚加える。自分の体力を3点回復する。
後:能力:体力3点回復を削除
妥当、というか遅すぎる。最後ウロボロス出しとけばウィッチとビショップ以外には勝てるクソゲーやってたんだから悔い改めろ。
ビ スノーホワイトプリンセス-レジェンド 「ワンダーランドドリームズ」
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前:2コスト 1/2
能力:ラストワード:スノーホワイトプリンセスを1体出し、進化させる。
進化後   2/3
能力:なし
後:進化後のスタッツを2/2に変更。
高い除去耐性を持ちイージスを出すまでのつなぎを簡単にしていまうかららしい。
いやイージスをナーフしろよ
ニュートラル
ニ ゴブリンリーダー-ブロンズ 「ワンダーランドドリームズ」
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前:3コスト 1/2
能力:自身のターン終了時ゴブリンを1体場に出す。
後:コストを4に変更、スタッツを2/3に
123アリスと呼ばれるコンボ。(わかりやすく言うと1コスト2コスト3コストと階段式にニュートラルフォロワーを出してアリスでバフをかけて引きころすゴミみたいなコンボ。)が強すぎるので3コスト帯に必ず入ってたこのカードをナーフします!ってことらしい。
いやアリスナーフしろよ。
別にこいつがナーフされても別の強い3コストがその枠に入っただけで何も変わらなかったぞ。
ニ 風の軍神・グリームニル-ゴールド 「神々の騒嵐」
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前:3コスト 2/3
能力:守護 エンハンス:相手フォロワーとリーダーに1点ダメージ、これを4回繰り返す。
後:エンハンス効果からリーダーへのダメージを削除。
一部界隈でシャドウバースを体現したようなキャラとまで言われていたミスターシャドウバース君もナーフを受けました。10PPになったらどっちが先にこいつ出せるかになってたんだから当たり前だよなぁ?
以上計7枚のナーフがありましたが、環境はどうなったかといいますと
皆さんお察しの通り変わりなくクソ環境でした。
確かに暗き底から出でるものを軸としたヴァンパイアのデッキはおとなしくなりましたがニュートラルバースと言わせしめたアリスちゃん自身にナーフがはいってないのでそのままニュートラル環境続行。
さらに今回何のナーフも食らわなかったネクロマンサー君が前パックのとき大暴れをしたヘクターを連れて環境トップに舞い戻りました。
そして8月末のナーフになります
ナーフ
計4枚ナーフされました。
スタッツのナーフ受けてるやついないから書かないぞ
環境トップはヘクターネクロ、次点でニュートラルウィッチ、ニュートラルビショップです。
ウィッチ
ルナルの魔術師・プリス-ゴールド 「ワンダーランドドリームズ」
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能力:相手のフォロワー1体に自分の手札のニュートラルカードの枚数と同じダメージを与える
   エンハンス7:このフォロワーは進化する。(進化後は疾走をもつ)
後:エンハンス削除
こいつは自分で使ってても理不尽だったし妥当。
ネクロマンサー
魔将軍・ヘクター-レジェンド 「神々の騒嵐」
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能力:ネクロマンス3:場の上限までゾンビを1体出す。
   その後自分の場のフォロワーは+2/+0し突進を持つ
後:ネクロマンス8:ゾンビを2体出す。に変更。
3度のナーフを逃れ続けたヘクター君も遂にはナーフされましたね。
悔い改めろ。
ヴァンパイア
豪拳の用心棒-ブロンズ 「ワンダーランドドリームズ」
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4コスト
能力:体力3以下の相手フォロワーを1体破壊し自分のリーダーの体力が11以上なら自分のリーダーに2点ダメージ。
後:コストを4から5に変更。
進化なしで相手を除去できるので進化を除去のために使う必要がなくアグロ系のデッキに必ず入ってました。
緋色の剣士-シルバー 「ワンダーランドドリームズ」
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能力:必殺 相手のフォロワー1体か相手のリーダーに2点ダメージ、自分のリーダーを2点回復させる。
後:相手のリーダーを対象にとれないように変更。
同上、妥当としか言えない。
あれ???
アリスちゃんのナーフがないね?おかしいね????
ちなみに9月現在の環境トップはニュートラルビショップです。
9月末には新パック実装で続々と新カードが発表されていますがどれもスタンダードパックのマイナーチェンジばかりでこのままでは次の環境もニュートラル環境が続きそうです。
言いたいことは一つ、アリスナーフしろ。
ち��みにパチパチには言ってないけど前使ってたアカウント手放して新しくアカウント作って遊んでます。
理由は2つあって、一つ目は前のアカウント2か月の間レジェンドカード1枚も引いてないんですよ。当然レジェンドカード引かなければ分解してカード生成もできず、デッキを作って遊べません。
二つ目はランクマッチがクソ環境すぎて嫌気が差したからです。だから新しいアカウントでルピ(パック購入に使うゲーム内通貨)貯めて新パック環境からフリーマッチの民になろうと思ってます。
ゲーム自体はリア友が飽きるまではやろうと思うので後でルムマやってフレンド申請交換しましょう。
追記
そういえばこういう話がありまして
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Fate/staynightとコラボしてリーダースキン出すそうです、おそらくルピでの販売はなくストファイコラボの時と同様クリスタル(有償通貨)のみでの販売だと思います。
それにしてもそれぞれのクラスの割り当て方がちょっと分からない。
アーチャー:たぶん元のエルフのリーダーが弓を使ってるから
セイバー:たぶん設定的に竜の因子を持ってるから
遠坂凛:たぶん魔術師だから
ランサー:たぶん次のパックでロイヤルにこいつの真名のキャラがいるから
ライダー:蛇のフォロワーが2,3体いるから
黒セイバー:は????
イリヤ:ビショップのカードに穢れた聖杯っていうカードがあるから???
あれ?主人公の士郎君いなくない?どうなってんの?
まぁこっちはいいんですよ、
皆さん覚えてますか、このゲームが一周年記念で人気投票イベントを行い各クラス上位のキャラをリーダースキン化するっていうイベントをやってたの
残念ながらケリドウェンは一位になりませんでしたがそれは別にいいんです。
9月に入ってやっとこの人気投票の続報が入りましてそれがですね
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は?
限られたキャラの中から人気投票させた上9月まで待たせて更に他のリーダースキンと違ってルピorクリスタルでの販売なし、他のレジェンドカードと同じ確率(1.5%)で毎パックで2リーダー分だけ実装とか頭おかしい。(このゲーム3か月ごとに新パック実装してるので最悪6か月待たされるんですが)
リーダースキン欲しい人は手に入らないし、興味ない人は新パックに時代遅れの性能のカードが入ってるし、運営は無能だと罵られるし誰が得してるんですか、これ。(ちなみにまだこのカードと後に発表されたドロシーは元がレジェンドのカードだからいいとしますがヴァンパイアの一位になったキャラクター、ブロンズでもシルバーでもゴールドでもレジェンドでもない、初期カードなんですよね、どうすんのこれ。)
キリがないので雑に切り上げて続きまして平和な平和なドールズのお話だぞ。
プロジェクト東京ドールズ
少女迷宮-ヤマダ
まぁ行ってしまえば常設の高難易度ダンジョンです。
クリアしていくとドールズの過去を思い出させるための記憶の鍵や衣装がもらえるぞ。
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これが現在の最上階55Fのボスだったんですけど、正直ヒヨのスキルでブレイクさせながら攻撃力上がってる時の攻撃はヤマダのスキルで無効化すれば作業だった。49Fのボスが一番強かったんですがそれは…
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まぁ無事クリアできましたという報告です自分が54Fの時にちょうど55Fクリア者が49人いたので恐らく50,51人目のクリア者です。
ここからヤマダの記憶の中身をネタバレするので嫌な人はミュートして修村でもプレイしてて
世界のすべて-MEMORY1
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ヤマダはドールズになる前も引きこもりやっててそれがヤマダの世界のすべてだったっていう話。
なんていうか、うん
知ってた。
**を殺す、夢-MEMORY2
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ヤマダの中の破壊衝動の夢、このことをマスターには話さない。
あれ?ヤマダの闇ってもしかしてかなり深いんじゃないですかね。
電子の海-MEMORY3
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「マスターキー」って痛いHNでいろんなところをハッキングするハッカーやっ���ましたって話。
絶対ヤマダ本人だぞこれ。
壊れたココロ-MEMORY4
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改めて自身の中のどす黒い破壊衝動のことを思い出しマスターに話す。
ヤマダにとっては3食ついてピグマリオン狩りで破壊衝動も発散できるドールズは天職だって言ってました。
大人たちの顔-MEMORY5
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自分に関係する大人たちの顔を思い出す、さらにワンルームで引きこもってたところからそんな大人たちから離れて一人ひきこもってたってことが分かる。
隠された財産-MEMORY6
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資金運用で手に入れた2億円の隠し財産があるらしい、物語上暗証番号を思い出すのはマスターに丁重にお断りされたけどヤマダに資金運用させてればドールズの資金難解決するのでは?
オチはない
UR、SSR事情
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ひげへSSRください。
おしまい。
こいついっつも最初だけ文章量多くてどんどん先細りしてんな。
そうだ!!!
今月9月ドールズでアヤ、ユキ、ヤマダのチームCのイベントをやってるんです!!!
全部走り切りますのでご期待ください!!!!!
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fishmans · 8 years
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2016年ベストトラック
まず日々聴いてる中で★★★★★を付けた曲があって、、、
レームダック/1983
ランタナ/AL
さよならジージョ/AL
Digi Piece/androp
Sunny day/androp
Rabbits in Cartoon/AOR
Cloud World/ATLANTS AIRPORT
オーケストラ/BiSH
23区/bonobos
LAY YOURT HANDS ON ME/BOOM BOOM SATELLITES
コロニー/BUMP OF CHICKEN
ファイター/BUMP OF CHICKEN
VIA SAIGON/The Chimney Sweeper
stand alone (blue)/CICADA
up to you/CICADA
閃光/CICADA
Curtain/D.A.N.
Ghana/D.A.N.
SSWB/D.A.N.
shurikenmachine/galcid
闇に目を凝らせば/GLIM SPANKY
風に唄えば/GLIM SPANKY
PERFECT SOUNF FOREVER/Homecomings
Wander Lust/illion
夏夜のマジック/indigo la End
family/JYOCHO
太陽と暮らしてきた/JYOCHO
Bed Room/LILI LIMIT
Kitchen/LILI LIMIT
lycopene/LILI LIMIT
LOVE LOVE/LUCKY TAPES
MOON/LUCKY TAPES
TONIGHT!/LUCKY TAPES
スローモーション/LUCKY TAPES
贅沢な罠/LUCKY TAPES
Submarine/METAFIVE
DOUKI/Moe and ghosts×空間現代
可笑しい/Moe and ghosts×空間現代
新々世紀レディ/Moe and ghosts×空間現代
数字/Moe and ghosts×空間現代
少し違う/Moe and ghosts×空間現代
同期/Moe and ghosts×空間現代
不通/Moe and ghosts×空間現代
幽霊EXPO/Moe and ghosts×空間現代
FLASHBACK50/(M)otocompo×Kit Cat
Detective 2016/(M)otocompo×Kit Cat
見上げた空は笑ってはいなかった/NAOMiRUSTY
雨が降れば/never young beach
NEW ERA/Nulbarich
17/odol
夜を抜ければ/odol
移住計画/OGRE YOU ASSHOLE
LOVE TRIP/the peggies
春が過ぎても/POLTA
スティッキーフィンガー/SAKANAMON
keep on raining/Shiggy Jr.
1994/The Skateboard Kids
Somewhere/The Skateboard Kids
STAYTUNE/Suchmos
ママゴト/Sugar's Campaign
SWEET HOME/Sugar's Campaign
Qwerty/SWIM SWEET UNDER SHALLOW
コーヒーピープル/TAMTAM
あーあ/tricot
Saturn/UQiYO
Ship's feat. 元ちとせ/UQiYO
h.v.c/WONK
Age/yahyel
Once/yahyel
トラック/yonige
Bugs Groove/YPY
ポストに声を投げ入れて/YUKI
Sleepless Sleep/yule
西鶴一代女 (noisy version)/あヴぁ階段
恋しい日々/カネコアヤノ
インターネットブルース/かもめ児童合唱団
私の世界/かもめ児童合唱団
あなたもロボットになれる/かもめ児童合唱団
クライベイビー/きのこ帝国
J-POP/コレサワ
セツナ/サニーデイサービス
すてねこ/シャムキャッツ
CALL/スカート
消えない星/チャットモンチー
カシオペア/テンテンコ
猫のベッド/テンテンコ
トロピカル銀河/テンテンコ
グレープフルーツジュース/ドミコ
アシンメトリ/ねごと
メーデー/パスピエ
小さな恋のものがたり/ハナエ
SHOW GIRL/ハナエ
Pain/ハルカトミユキ
夜明けの月/ハルカトミユキ
N.O./ハンバートハンバート
さよなら人類/ハンバートハンバート
Slave of Love/ビッケブランカ/ビッケブランカ
雨/ペトロールズ
noiseful world/ぼくのりりっくのぼうよみ
透明写真/ほそいあや
髪留め蛍光カラー/ほそいあや
しあわせゲットだぜ/ぽわん
あこがれ/ミツメ
ウラムの螺旋より/ヤクシマルエクスペリメント
see inside/ヤなことそっとミュート
ツキノメ/ヤなことそっとミュート
ナイトハイキング/ゆるめるモ!
なんとなく/ラッキーオールドサン
LOVE?でしょ?/ラブリーサマーちゃん
PART-TIME ROBOT/ラブリーサマーちゃん
また明日/ラブリーサマーちゃん
青い瞬きの途中で/ラブリーサマーちゃん
ヒトミートペット/リアル3区
東京/赤い公園
1969/雨のパレード
ame majiru boku hitori/雨のパレード
epoch/雨のパレード
yuragi meguru kimino nakano sore/雨のパレード
Lunar Kick/石野卓球
かげろう/泉まくら
さよなら、青春/泉まくら
連れてって/印象派
道/宇多田ヒカル
花束を君に/宇多田ヒカル
Summer Sunny Blue/宇宙ネコ子
び、ね、つ/宇宙ネコ子
Moebius/王舟
ディスコブラジル (Alone)/王舟
GOLD FUNK/大橋トリオ
TOKYO BLACK HOLE/大森靖子
君の窓/片想い
summertimeblues/川本真琴 with ゴロニャンず
ジグザガー (rework with cero)/黒田卓也
少年A/黒猫の憂鬱
キジバト/毛玉
ダンス・ダンス・ダンス/毛玉
いる/坂本慎太郎
ディスコって/坂本慎太郎
できれば愛を/坂本慎太郎
鬼退治/坂本慎太郎
死にませんが?/坂本慎太郎
Long Goodbye/世武裕子
ベルリン天使/相対性理論
いいよ/象の背
雪の街 feat. 安部勇磨/冨田ラボ
Good Morning Sunshine/南波志帆
アコースティックス/蓮沼執太
わたしお嫁に行くわ/婦人倶楽部
恋するフォーチュンクッキー feat. The Scooters/星野みちる
catalyst/山本精一
東京絶景/吉澤嘉代子
ちとせつづり/吉田凜音
amen/米津玄師
夢中人/来来来チーム
幽霊部員/来来来チーム
その中から1曲目を決めて150分テープに収まるように選曲していった結果なので厳密な意味でのベストトラックではないかな。
ベストトラック(A面)
23区/bonobos
LOVE LOVE/LUCKY TAPES
夏夜のマジック/indigo la End
さよならジージョ/AL
グレープフルーツジュース/ドミコ
あこがれ/ミツメ
髪留め蛍光カラー/ほそいあや
かげろう/泉まくら
noiseful world/ぼくのりりっくのぼうよみ
Ship's feat. 元ちとせ/UQiYO
Cloud World/ATLANTS AIRPORT
Digi Piece/androp
Kitchen/LILI LIMIT
すてねこ/シャムキャッツ
セツナ/サニーデイサービス
SWEET HOME/Sugar's Campaign
ベストトラック(B面)
NEW ERA/Nulbarich
移住計画/OGRE YOU ASSHOLE
死にませんが?/坂本慎太郎
可笑しい/Moe and ghosts×空間現代
トロピカル銀河/テンテンコ
PART-TIME ROBOT/ラブリーサマーちゃん
FLASHBACK50/(M)otocompo×Kit Cat
あーあ/tricot
東京/赤い公園
スティッキーフィンガー/SAKANAMON
ジグザガー (rework with cero)/黒田卓也
ディスコブラジル (Alone)/王舟
コーヒーピープル/TAMTAM
Summer Sunny Blue/宇宙ネコ子
epoch/雨のパレード
クライベイビー/きのこ帝国
ダンス・ダンス・ダンス/毛玉
花束を君に/宇多田ヒカル
※時間ができたらリンクを
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100htour · 7 years
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ツアー参加者の感想 vol.02
第2回参加者Wさんより
1. まえがき
 ちょうど二年前に初めてアルスノヴァを訪れた私が、今回の観光ツアーに参加された方々の様子の変化や、再訪によって分かった私自身の変化をこのレポートに記そうと思う。
 最初に、参加者とともに4日間過ごした私自身から見た、彼らの様子の変化を、いくつかの例を出しながら紹介していく。またそれに伴って、彼らの変化を大きく三つのステージに分けて考えようと思う。
 二年前の自身の経験も踏まえて、今回参加された方々は、「戸惑い」「自由」「モヤモヤ」という三つのステージを繰り返し体験されたのではなかろうか。
2. 観察記録
ここでは、上記のステージ分けを踏まえて、参加者の様子、及びそれに対する私の感想を記録する。(文の最後に日にちと参加者の名前を記載)
また、三つのステージのそれぞれの内容は、
①戸惑い=アルスノヴァという未知なる世界に対して戸惑う
②自由=アルスノヴァの自由さに対して心地よく感じる
③モヤモヤ=自由である心地よさの裏側を察知して、モヤモヤする
と定義しておく。
 2-1 戸惑い編
・初日の佐藤さんの観光ソングパフォーマンスのあとに、参加者から「以前こちらに来たとき、最初どんな感じで過ごしていましたか?」と聞かれ、「いまみたいにどうすればいいのかよく分からなかったですね。それ(過ごし方)もみなさんの自由です。」���答えた。ちなみにこれが参加者全体から自分に対する最初で最後の質問となった。(初日・新本さん)
 ・りょうがくんから「カラオケ」の文字をねだられた際、参加者がマイクの絵を描いてカラオケを表現すると、りょうがくんは他の人に文字をねだりに行った。りょうがくんのやってほしいことが分かっている側からすると、絵で表現するのが斬新だったのと、それをあくまで受け入れないりょうがくんが印象的だった。りょうが君のことをあまり知らないからこそ、参加者はイラストで応答したし、それに対してのりょうが君の反応が見れたということで、知らない者同士がぶつかると起こる化学反応を見た。(初日・新本さん)
 ・土屋くんとボール遊びをしていた参加者は、土屋君の激しい動きに少し動揺していた。児童の利用者が予想以上に活発だったらしく、少し疲れましたと発言されていた。またこの参加者は、ときおりぼーっと利用者を眺めていることがあって、アルスノヴァという未知なる世界に対する戸惑いが端から見ていても感じ取れた。(初日・溝田さん)
 ・ある参加者は、児童の利用者が独自の世界を作っていると感じ、彼らを尊重しようと無理に接しようとはしなかったという。まだ利用者との距離感をつかみかねている様子がうかがえた。(初日・木下さん)
 2-1.5 「戸惑い」と「自由」の狭間で
・初日の振り返り前に、参加者とスタッフ数名でまいちゃんと音が鳴る机を叩いて遊ぶ。まいちゃんの気分が乗ってきて、スタッフ(佐々木さん・高林さん)は大いに盛り上がる。突発的に始まった机叩きによって、参加者はアルスノヴァの自由さを改めて体感する。(初日・新本さん、高橋さん)
 ・初日・二日目と、3階の児童のスペースではハンモックに寄りかかる参加者が続出。みなさん一様に、気持ちいいと感想を述べていた。あのハンモックは、参加者がアルスノヴァで自由に過ごすための一つの取っ掛かりとして機能していたように思う。「自由さ」を参加者が分かりやすく享受できる装置だった。ハンモックによって、「戸惑い」から「自由」へ移行した参加者も多くいたのではないかと感じた。(初日、二日目・参加者全体)
 2-2 自由編
・二日目の運動会にて。ある参加者は終始カメラを撮っていた。特に足立君が50m走で一位になった瞬間を撮れたことに興奮していた。参加者それぞれの運動会の楽しみ方があるということが分かる一例である。(二日目・木下さん)
 ・運動会にて、さとみちゃんのテンションの上がり下がりが続く。彼女が綱引きで負けてひどく落ち込んでいるところを見て、何人かの参加者は心を動かされたよう。この日のヒトマトにも、素直に感情を表現することはむしろ自然なことで、自分たち(参加者)もそうして良いのではないか、という意見がちらほら見られた。(二日目・参加者数名)
 ・運動会は、利用者さん方が競技に参加するのを応援するよりも、ブルーシートの上での待機時間の方が長かった。そこでツアー参加者はそれぞれ、さとみちゃんや川ちゃんなどと交流していた。ある参加者は、さとみちゃんがくすぐられると喜ぶことを発見して、二人して戯れていた。また、女性の参加者は川ちゃんからの絡みに対してちゃんと反応していたが、この間に川ちゃんの女性に対する過度な接し方を知ったよう。このように参加者が思い思いに利用者さんとの関係を深め、彼らの特性を知る時間となった。(二日目・たけまりさん等)
 ・初日に戸惑いの表情が見て取れた参加者は、1日経ってアルスノヴァの自由な雰囲気に慣れて、ヒトマトでも自分の好きなように書いているように見えた。参加者も自由にしていていいという認識が、二日目の振り返りの時点では外に現れていた。(二日目・溝田さん)
 ・3階では参加者が、岸くん?のチラシ破りを一緒にやっていた。「これ気持ちよくない?」と言いながら、普段することのないチラシ破りを素直に楽しんでいた。(三日目・たけまりさん)
 ・三日目の公民館での絵画教室では、大きな葉っぱの絵を描く。参加した5人のうち2人は葉っぱとは関係のない絵を描いていた。この頃には参加者さんはすっかりこのツアーの雰囲気にも慣れ、それぞれやりたいようにやることを意識せずにやっていたように見えた。(三日目・参加者全体)
 ・三日目のヒトマトは、文章だけでなくイラストが多く描かれ、それまでのヒトマトに比べると、遊びの要素がぐっと増えた。(三日目・溝田さん、小笠原さん)
 2-2.5 「自由」と「モヤモヤ」の狭間で
・二日目のヒトマトは、利用者が自由に振る舞う様子を肯定する内容が多かった。これはアルスノヴァの雰囲気・自由さを肯定しているとも取れる。反面、川ちゃんの女性に対する振る舞いを全肯定は出来ないというコメントもあり、いくら利用者が自由に振る舞うことを尊重するといっても線引きは必要であるという認識が、参加者のなかで表面化した。(二日目・参加者全体)
 ・三日目のおが台車。1回の踊り場で台車に乗っける家電を運ぶ際、ストーブを持ってきたおがちゃんの足元には大量の液体が。なんと灯油が漏れていた。これには正直引いた、めっちゃ笑ったけど。この件で水越さんが笑いながら、「おがちゃん、これは100%アウト」とおがちゃんをたしなめていたのも、水越さんには想定内の出来事だったと見受けられて良く覚えている。ちなみにその後2階から下りてきたNHKクルーの音声の女性は、灯油が漏れているのを見てかなり笑っていた。あのとき、あの女性の人間的な反応を初めて見た。人間、想定外の出来事が起こると、仕事や立場など、自分を纏っていたよろいが消え、素の自分が顕わになるものなのかと思った。そんな体験が何度も出来るのも、アルスノヴァ体験の「売り」であると感じた。
その後ヒトマトで、木下さんがおがちゃんの灯油漏れについて書くと、溝田さん、小笠原さんの両者から、「それは危ない」という反応が返ってきていた。自由の危うさを参加者が感じる一つのきっかけになったのではないだろうか。(三日目・一部参加者)
 2-3 モヤモヤ編
・2階にて、おがちゃんが演歌を披露。ツアー参加者全員がその場にいて盛り上がった。しかし、一曲歌ったら終わりの約束のはずが、音源を再度再生しようとするおがちゃんに対して、マッスルさんが叱る。叱り叱られている様子を一分以上の間、参加者はずっと見ていて、張りつめた空気を感じていた。ツアーの中で最もしんとした瞬間だった。その後の振り返りで何人かが、叱るのも度が過ぎると気分が良くないというようなことを書いていた。おがちゃんが欲望のままに演歌を披露しようとしていて、それをマッスルさんが許容していたあとでの叱りタイムだったために、急激に現場の温度が下がった。ここにアルスノヴァの一つの側面を見て取れた。「自由」が成り立つ上での「規制」。一見すると利用者にやりたいことをやってもらう自由度の高さが良く映るが、それを成り立たせているのは、スタッフさんの利用者に対する規制であった。超えてはいけないラインはしっかりと線引きする瞬間を見たツアー参加者は、アルスノヴァに対してまた違った印象を持ったのではないだろうか。(二日目・参加者全体)
 ・三日目の朝、ある参加者と食卓で話す。たけしくんのことも、アルスノヴァでは「普通
」に見えると話していた。たけしくんが普通に見えるのは、それほどアルスノヴァが「普通」の領域を大きく捉えているということ。それはそれぞれの自由を尊重しているということでもあるけど、やはり最低ラインの規制が必要で、そこはその都度考えなければならず、その考える行為自体が大変なことなのだろうと話していた。自由を支える責任の面を参加者は考えていた。(三日目・新本さん)
 ・最終日のお昼。「飛行場」にての会話。溝田さんは、利用者が自由に過ごしている裏には、利用者の排泄補助などをスタッフがしているという事実に、モヤモヤを感じたそう。また新本さんは、アルスノヴァに対して、言葉として定義してはいけないような、しない方が逆に定義できるような、モヤモヤ感を抱いたそう。両者とも、アルスノヴァの一面的に捉えることのできない、混沌とした実態を捉え、モヤモヤを抱えたようであった。(最終日・溝田さん、新本さん)
 2-4 番外編(どこにも当てはまらないエピソード)
・三日目の銭湯語りのヴぁ。女性陣はがっつりと話していたそう、主に夏目さんと暎ちゃんが話していたそうだが。男性陣はぽつぽつと話している人がいる感じ、というか竹内さんが新本さんやおじいさんと話していた。
→女性陣的には銭湯語りのヴぁは成功だったようだが、男性陣は一部のみといった感じだった。それでもこの企画自体、みんなでがっつり話すことを目的としていたわけではなさそうなので、話したい人は話す、そうでない人は話さなくていいという、あくまで参加自由のゆるさがここにも反映されていたように思う。(三日目・参加者全員)
 ・銭湯語りのヴぁの後、ゲストハウスにて参加者全員でおにぎり作り。参加者だけの共同作業は初。三日目の夜とあって、みな和気あいあいと楽しんでいた。それに加え、それまでのツアーではそれぞれが好きなように過ごすことが念頭にあったが、このおにぎり作りでは、全員が同じ方向を向いての作業で、目的もはっきりしていたので(翌日の朝食用のおにぎり作り)、ある種の安心感が全体に広がっていたように思う。何か決められたことを全員でやるというのが、このツアーにおいては逆に新鮮な行為だった。(三日目・参加者全員)
 ・最終日の公民館。一部の参加者が「音戯の部屋」に参加。「音戯の部屋」は、当初の最終日の趣旨(公民館で好きなように過ごす)からは離れていたため、参加者と遠藤さんの間には少しぎこちない空気が流れた。曲を一曲作るというのを知らずに参加したため、遠藤さんの「詞を作りたい人!」という呼びかけに誰も反応しなかった。ツアーの中での一貫した「自由さ」に参加者が馴染んだのか、この企画の強制性が浮かび上がった。(遠藤さんには申し訳ないことをした・・・。)
→結局、最終日の公民館は、各自がやりたいことを持ち寄って自由に過ごすということからは外れた感覚があった。(最終日・参加者一部)
 3. 四日間の総括
・参加者から、利用者の自由な振る舞いを肯定的に捉える感想をよく聞いたが、参加者自身の行動は、好きなように過ごす、とまでは言えないものだった気がする。日を重ねるごとにグループという枠が出来上がって、なんとなくみんなと一緒に行動する、というのが行動のベースとなっていった。(それはそれでいいと思うが、窮屈に感じていた人はいなかっただろうか。自分は一人になりたいときが何度かあった)
また自由参加の企画が何個かあったが、大体においてみんな参加していた。自由参加にしておいても、自分で参加するのかを決めるのではなく、周りに合わせて参加するか決める、というのが参加者の中での実態だった。(木下さんは除く)
 ・二年前に自分が参加した合宿と比べると、参加者の人数が多く、参加者同士がかたまるシーンがよくあった。アルスノヴァという現実離れした異空間にいながら、参加者が集まって現実空間が出来上がっているのは、ちょっともったいないかなと思った。異国を旅するのも同じだけれど、人数は多くいるより、少なく、出来れば一人でいた方が、より深いものを感じ取れるはずだ。そういった意味で、一人でアルスノヴァを体験する機会が少し減ったような気がした。
→久保田さんの言っていた、「あなた」と「わたし」の関係性という観点からも、その一対一の関係性が作られる機会がもっと多くあったほうが良かったかもしれない。ただ、ツアーなので、ある程度団体行動になっても仕方がないとは思う。
※ここまで、団体行動を強調して書いたが、実際に参加者が利用者と関わる局面では一対一の関係が成立していたので、団体行動が目立ったのは、参加者と利用者が関わる機会がツアーの中で少なかったことが原因にあるとも言える。
 ・上記の二つは、どちらも参加者の団体行動において言及したが、時間が経って考え直すと、それも含めての「ツアー」なのではないかと思った。アルスノヴァにいる利用者さんとスタッフの方々が、何をしてもいいという自由な雰囲気を作り出している状況で、参加者の団体行動が目立ったのはある意味当然のことである。だって普段の生活で人が���まったら自然と団体行動になるのだから。そしてそこに違和感を覚えるのも、アルスノヴァという特殊な空間にいるからだ。日常生活におけるなんでもない行為が、アルスノヴァにいると意識に上がってくるというのが、「問い」が見つかることそのものなのだろう。ここに書いたのは、あくまで個人的な感想で、実際に他の参加者の方々が自由な行動や団体行動について意識していたかどうかは分からない。ただ自分自身は、「アルスノヴァでは好きなように過ごす」という先入観、さらに言えば「好きなように過ごす」=「単独行動」というバイアスがかかっていたために、このような感想を持つに至った。極論、人と居たければ居ればいいし、一人になりたければなればいいのだろう。「自由であること」とはどういうことなのか。それを自分はすごく意識したし、他の参加者も考えることがあったのではないだろうか。
 4. 自分の感想
・二年前は、利用者の方々の、やりたいことを素直に行動に移している姿を見て、ただ「うらやましい」と思っていたが、自分が実際にこの1年半あまり、自由度の高い生活をした上でもう一度アルスノヴァを覗くと、その自由さの裏にある危うさが目に付くようになった。たとえばおがちゃんがストーブから灯油を漏らしても平気なのは、そこに水越さんがいるからなのだ。おがちゃんの自由が担保されているのは、水越さんがその都度責任を取っているから。それに限らず今回は、二年前に訪れたときと比べると、スタッフの方々の利用者さんへのサポートがよく目についた。そして自分は、二年前、自分自身の「心の底からやりたいと思うことがあるのではないか」という願望を、利用者さんに映し出していただけであったということにも気づかされた。あのとき、自分は「自由」のポジティブな側面しか見ていなかったのだ。「自由」と「責任」はセット、というありきたりな言葉が、今回のツアーで自分に重くのしかかってきた。
 ・ガイドの役割として、「好きなように過ごす」「参加者からの質問に答える」「レポートを書く」ということだけ言われていたので、自由度が高い分、自分はガイドとしてどうすべきなのか、何をしたらいいのかを考える局面が多々あった。そしてうまく考えがまとまらず、結果的にガイドとして特に何をするわけでもない自分に不甲斐なさも感じた。今回のツアーで強く感じたのは、「自由」を肯定するには「自主性」が必要であるということで、自主性がないと、自由であることはただの苦しみと化してしまうということを身をもって体感した。
 ・最後に、このツアーにおけるガイドの意義、またはその必要性についても言及する。ツアーが始まる前に認識していたガイドの役割としては、①参加者の見本となるように、好きなように過ごす、②参加者からの質問に答える、③ツアー全体のレポートを書く、ということだった。①に関しては、ただその場にいるという点においてクリアしていたと思う。ただ、レポートを書くために周りの参加者の様子などを観察したり話しかけたりしていたため、本当に好きなように過ごしていたわけではなかった。②は参加者からの質問がほとんど無かったために、役割を果たしたとは言いづらい。③に関しては、このレポートがレッツ側にどれだけ意味があったかということにかかっている。最終日に久保田さんから、「スタッフがいないところで何が起こっていたのかを教えてほしい」と言われたが、正直なところ、スタッフのいないところ(ゲストハウス等)で特筆すべき何かが起こっていたとは、自分には思えなかった。この点に関しては暎ちゃんの方が察知していたことが多いかもしれない。
 とにかく私が観察記録としてレポートできるのは、上に書いた内容のみです。私がツアー全体を通して参加者と共に行動して感じたことは、みなさん一様に、アルスノヴァという未知なる世界に戸惑い、そこで自由を体感し、慣れたころに「ただ楽しい」では片づけられない何かを察知してモヤモヤしたのではないかということ。そしてそのモヤモヤには、「自由」と「責任」、または「自由」と「規制」という、人間誰しも生活する上で考えずにはいられないような、人生の「問い」だったのではないかと思います。
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