かねてから『地図の中の時間』『地下道のタップダンス』と言うふしぎな小説を書いたらしい久保村恵と言う作家の作品を探している途中で本作を見つけました。
一切解明されない作品世界の謎に突き飛ばされたままの底知れぬ恐怖と衝撃、水棲サイボーグに改造された子供たちの不気味さと痛々しさ(あの単眼!)、ラスト5行で物語の整合性無くぷっつりと打ち切られる結末にどよ~んとした不安感・寂寞感に捉われました。
本を読んで厭世観にさいなまれたのも初めて。
コースケがその後どうなったのか?非常に気になります。
【02.24 03:19】 URL // 瀬那 市太夫 ……
はじめまして。
「地下道のタップダンス」の記憶を持つ者(笑)です。
主人公が,地下から聞こえてくるタップダンスの音に誘われて下水道(?)をたどっていくと,地上世界の崩壊に備えて地下都市を作ろうとしている博士とその娘(この娘がタップダンスを踊っていた)に出会う。
結局その計画は間に合わず,地上世界は崩壊。
一人残された主人公は,絶望しながらも生きていくことを決意する…というストーリーだったと思います。
何となく,「ぼくのまっかな…」と似たプロットですね。
何か追加情報あったら教えてください>瀬那 市太夫さん(ご覧でしたら)
【05.18 02:08】 URL // ハヤシマン
ハヤシマン様、はじめまして。
貴重な情報ありがとうございます
ぼくは他のサイトで「地下道~」の話を見て「読みたいなあ」と思っていたので、あまり詳しい事は分かりません。
すいません。
ただ、件のサイトさんからの受け売り情報で、もしかしたらご存知かも知れませんが「地下道~」の続編的な作品として存在しているのが「地図の中の時間」と言うことらしいです。
ストーリーは―――――。
自分の名前にコンプレックスを持つ小学五年の女の子“ノボル”が、板切れに記された地図を手にした事で仲間たちと共に地図の中に在る荒涼な砂漠世界に迷い込んでしまう。
そこでノボルたちは、“教会”と言う組織によって支配されているこの世界を脱出するべく、同じ目的を持つ“とべない翼を持つヒットリ族”や“亀の甲羅を持つイシゴウラ族”の子供たちと知り合い、旅を続ける。
だが自分の魂を売り渡す事を条件に、この世界から逃げる術を教える邪悪な“ネクタイ男”の誘惑を巡って、子供たちはそれぞれに反目し始め、最後に地図の中の世界は子供たちの決闘が原因で崩壊。
ノボルたちはボロボロに傷付いたままで全員が生還する事に成功する。
永久に消えることの無い罪の記憶をそれぞれの心に深く刻み込んで―――――。
・・・とか言うストーリーらしいです。
「ふしぎなさかなカカミーゴラス」はしんみりとしつつも、微かな暖か味を感じる作品だったけど、久保村女史(?)の作品は本作しかり「地下道~」しかり「ぼくの~」しかり(執筆時期は’69~71年に集中してるみたいですね。)、不安と苦味を感じさせる作品が多いようですね~。(^^;)
【05.18 20:09】 URL // 瀬那 市太夫
ハヤシマンさん、瀬那 市太夫さん、こんにちは。
「ぼくのまっかな~」も「地下道~」も「地図の中~」もどれもこれも陰鬱で、子供時代に読んだらトラウマになりそう((;゚Д゚)
でもだからこそハヤシマンさんもこうやって覚えていたんですよね。
冒険心から危険そうなところにとびこんでいくんだけど、裏切られたり怖い思いをしたその上、帰るべき場所もないという……なんとも救いがないというか好奇心は猫をも殺すというか……。
それにしても、これだけ人の心に強い印象(トラウマ?)を残しておきながら、久保村恵という作家はなかなか情報がないですね。
グーグルで調べても「ぼくのまっかな丸木舟」ばかりですし。
地元の図書館にも「ぼくの~」しかないのが残念!
【05.18 21:00】 URL // あひる
瀬那 市太夫様,ハヤシマンです。
ご返信有難うございます。
(あひる様,この場を瀬那様との情報交換に使わせていただくこと,お許しください。)
お話を伺って,もう一つ私が持っている物語の記憶と一致する点,そして一致しない点があることに気がつきました。
実は,「悪魔のネクタイ」という話を憶えていまして,どうもそれが,ご紹介の「地図の中の時間」と妙に一致するのです。
一致する点として,
・アナザーワールドもので,こちらの世界から飛ばされた子供達が参加する物語であること。
・「ネクタイ男」というキャラクターとタイトル(私の記憶の)との符合。
・「教会」なる組織について…記憶では,子供達が「ある鐘楼から鐘をはずす」ことを目的に戦っていました。
鐘がはずれた時,嵐のようなものが起こって,子供達は元の世界に戻されます。
この「鐘楼」と「教会」は関係が深い気がします。
…なんていうことがあります。
(どうも,同一の物語としか思えませんね…。)
で,全く記憶と違っているのが…
・話の順番が「地図の…」→「地下道の…」で(!?),
・「ノボル」というのが「地下道のタップダンス」の方の主人公の名であったこと(!!??)。
「地下道の…」の主人公が,「男の子みたいな,変な名前!」とクラスメートにからかわれて,飛び蹴りをくらわせて泣かせた,というエピソードがあったことを記憶していましたが,それが「ノボル」だったような気がします。
彼女(ノボル)は「悪魔の…」(あるいは「地図の中の…」)の世界から戻ってきた少年達のクラスメートで,彼らがする恐ろしい別世界の思い出話を小耳にはさんで,「何のことだろう?」と首をかしげる場面を記憶しています。
前のコメントで書きました通り,「地下道の…」のラストで世界は崩壊してしまいますので,順番としては「地図の…」→「地下道の…」の様な気がしています。
う~む,謎は深ま���ばかりですね…。
ネットでは久保村氏(男性なのか女性なのかも分からない…?)の情報はほとんど手に入らないので,悶々とするばかりです。
是非,原文を読んでみたいですよね…。
それでは,このへんで。
【05.18 22:19】 URL // ハヤシマン
あひる様,瀬那 市太夫様
ハヤシマンです。
久保村恵さん作品の情報,なかなかつかめずにいるのですが,久々に幼なじみにコンタクトを取って問い合わせてみた所,こんな話がありました。
・確かに,これらの(前述の)作品名にはおぼえがある。
何かの雑誌の連載だった気がする。
・「悪魔のネクタイ」の続編が「地下道のタップダンス」なのではなく,「地図の中の時間」が「悪魔のネクタイ」の続編なのではないか?。
・時系列でいくと,「悪魔のネクタイ」→「地下道のタップダンス」→「地図の中の時間」だったのではないか?。
確かに,「悪魔の…」と「地図の中の…」が別々の物語だったとしたら,共通点が色々あってもおかしくないですね…。
それに,私の記憶だと「地下道の…」の主人公が「男の子」だった描写があった気がして,前回書いたこと(主人公→ノボル(♀))と食い違ってるな?と思っていたのです。
そして,瀬那 市太夫様からの情報の,『「地図の中の…」が「地下道の…」の続編』というのは,時系列になっていたのを続編と勘違いされていた,ということかもしれません。
「地図の中の…」と,「地下道の…」の内容がどうもマッチしないことからも,そう見るのが妥当な気がします。
う~む,現状ではこれで頼みの綱が切れてしまいました。
これらの作品が「雑誌の連載」だけで,製本されていないとすると,探しようが無いですね。
あとはこのブログを見ている人からの情報に頼るしかないか…。
【05.28 20:58】 URL // ハヤシマン
あひる様,瀬那 市太夫様,
ハヤシマンです。
ついに謎が解けました。
私が記憶していた「悪魔のネクタイ」を含め,「地下道のタップダンス」「地図の中の時間」の所在ですが,いずれも「ことばの宇宙」という「ラボ教育センター」発行の機関誌に掲載されていまして,掲載の巻は,
「悪魔のネクタイ」1969年11月号~1970年10月号
「地下道のタップダンス」1971年1月号~1971年6月号
「地図の中の時間(悪魔のネクタイ第2部)」1971年7月号~1972年6月号
となっています。
これらの雑誌,「国際子ども図書館」(国会図書館の分館)に所蔵されていまして,コピーを有償で取り寄せることができました。
申込み方法の詳細はホームページ(http://www.kodomo.go.jp)に載っています。
いずれも各号5ページずつくらいですが,「悪魔の…」の前半はページの下の方に帯のように掲載されているため,ページ数にすると15ページずつくらいの分量になっています(そのためちょっと余計に料金が…)。
で,「悪魔の…」と「地図の中の…」は久保村恵さんの作品でしたが,「地下道の…」は鈴木悦夫さんという方(著名な方の様で…)の作品であることが分かりました。
また,「地図の中の…」に作者のプロフィールが出ていまして,久保村恵さんは女性の方であることが判明しました(笑)。
ちょうどこの作品の挿絵を妹のミエさんが描いておられまして,当時ミエさんが2歳年下で大学生とのことですので,恵さんは20代前半くらいだったみたいですね。
ご健康なら今でも十分にご存命と思われますので,どこかでこのページをご覧になっていたりして…?
物語ですが,「地下道の…」はほぼ私が記憶していた通りで,「地図の中の…」もほぼ瀬那様の情報の通りでした。
最後がもう一回り悲惨な(別世界の少年が,「教会」の回し者である彼の母親に馬で踏み殺される)ものになっていましたが…。
ちなみに「悪魔の…」は,
とある小学校の同級生である5人の少年少女。
その中の一人「ジュンコ」が作った「悪魔のネクタイ」という詩の通りの「ネクタイ」をした「悪魔」が現れ,その導きで彼らは見知らぬ世界に引き込まれる。
そこでは多くの少年少女が,その世界を牛耳る「最高支配者」とゲリラ戦を繰り広げていた。
5人の少年少女はともにゲリラ戦に参加,支配者の本拠地「とりで」に突入。
「青い石」と呼ばれるゲリラの少年リーダーの犠牲で「とりで」の「鐘」(毎日2回,すさまじい音をその世界に響かせる。
支配のためのアイテムのようなもの)を破壊,とりでを崩壊させる。
それとともに5人はもとの世界へ…
というような話です。
世界観や登場人物,アイテム類がとても格好よく,結構ドキドキする冒険物語になっています。
続編の「地図の中の…」では,5人のうちの2人と,新キャラクターである「ノボル」が,再びその世界に引き込まれます。
敵は子ども達を支配する「教会」(「教育委員会」の略なのだそうで(笑))に変わっていて,少しだけ雰囲気がファンタジー調になっていますが…結末はやっぱりダークですね。
長くなりましたが,以上,ご報告まで。
【06.11 01:04】 URL // ハヤシマン
ハヤシマン様、すてきな情報をありがとうございました。
初出が「ラボ教育センター」発行の「ことばの宇宙」ですか・・・。
ぼくが一連の情報を知ったサイトの執筆者の方の言葉を借りれば、この団体の教育方針については『全国規模の英語塾で、「生徒に購入させる高価な特殊オーディオ機材や、一般から募集した講師に高圧的に徹底させていたらしい独自のカリキュラム等、この英語塾にまつわる思い出は、大人になった今、思い出したくない事の方が多い。」』らしいです。(^^;)
そんなスパルタ式の教育誌なのにも係わらず、『己が管理的な教育方針を嘲笑するかのように、自虐的なまでにアナーキーな小説を連載し続けた』のがこれらの作品なんですね~
(同傾向の作品に偕成社「トレーニング・ペーパー」誌で連載していた、ナチ少年隊を思わせる全体教育組織“青空クラブ”に戦いを挑む、少年レジスタンス組織“黒マスク”の血みどろの抗争を描く、佐野美津男『夜のマスク』なる読み物があるらしいが)。
『地図の中の時間』の“教会”が“教育委員会”の略称であるのもこの方のサイトで知ってはいましたが
(地図の中の世界には“神”の概念が存在しないのに教会が存在するらしいですね。あとこの世界には湖に、頭痛に悩む巨大な蛇がいるとか・・・。)
かようなストーリーだと“自虐的”と言うのがよく判る・・・。
なるほど“久保村エミ”と言うのは恵女史(48年生まれ)の御妹君でしたか・・・。
実は件のサイトで『地図の-』の作者名が“久保村エミ(ミエ?)”となっていたので・・・ううむ、そう言う事か・・・?
60~70年初頭に書かれた作品とはいえ、日本の児童文学界においてアナザーワールドへの冒険物を執筆したのも、この当時においては随分斬新というか・・・
(天沢退二郎『光車よ、まわれ!』が72年ですから)。
今ならライトノベル系の作品とかでゴロゴロ転がっているジャンルですからね。
(まあもっともぼくは『地図の-』を始めて知った時『これは王国のかぎ』とかの荻原規子女史の作品を想起しましたが。)
しかし『ぼくのー』などが今月復刻された事もあるし、今回、作品も初出誌が存在するのも分かったからブッキングさんから書籍化していただきたいですねー。(^^)
(よだん)
先月5月に亡くなった『ぼくは王さま』シリーズでお馴染みの寺村輝夫氏の作品でダークサイド『ぼく王』とも言うべき『消えた2ページ』を15年ぶり位に再読破。
今回読んだのは83年に再販された際の版で、『ぼくの-』同様に中村宏画伯(中村ヒロシ名義)が執筆しているけど、そのタッチがかつてのダークサイドな感じを抑えて随分洗練された感じになっているのに気付く(それでも“王野くん”のキャラデザなどダークな味わいは健在)。
で、ラストは“主人公がボートに乗っていずこかへと旅にでる”って言うオチに『ぼくのー』のラストシーンに通じるものを感じる
(両作とも70年発表だし)。
『ぼく王』のラストの出発は比較的のんびりとしたタッチの挿絵だったけど、『ぼくのー』の挿絵では怒涛逆巻きすぎて、明らかにコースケ、水死しますよ(^^;)
【06.12 21:03】 URL // 瀬那 市太夫
皆さん。
ありがとうございます!
積年の心残りがすっかり溶けたような気がします。
実は私もその昔、かの英語塾に通っておりまして、『地図の中の時間』に、口では言えない程の衝撃を覚えました。
わたしはずっと『地図の中の時間』が『地下道のタップダンス』の続編にあたると思っていたのですが、その前に『悪魔のネクタイ』と言う作品があったのですね。
確かに『地図の中の時間』には“青い石 ”と言う名も登場しますし、『悪魔のネクタイ』なる詩を朗読する少女も出て来たように思います。
偕成社のトレーニング・ペーパーに連載されていた佐野美津夫氏の作品では、絶版になっていなければ『まぼろしブタの秘密』が書籍化されているはずです。
この作品と同じ登場人物が出て来る作品には『動物たちの自由の実験』と言うのがあったはずですが、内容の一部にかなりヤバい部分があり、恐らく書籍化は不可能かと思われます。
その後の佐野氏の連載物に、『風の中に目が光る』と言うミステリアスな物語があったはずですが、どなたか粗筋をご存じな方はいらっしゃいませんでしょうか?
p・s『地図の中の時間』等の入手方法を教えて頂き、感激の念に堪えません。ありがとうございました!
【06.21 21:39】 URL // カラス
2006.02.18『ぼくのまっかな丸木舟/久保村恵/国土社/グレフルbook』
http://futabk.blog1.fc2.com/blog-entry-397.html
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