coastloop
coastloop
岸見303号室
199 posts
Don't wanna be here? Send us removal request.
coastloop · 14 hours ago
Text
「バブル」とジュリアナ東京の映像がセットで流れ、お金のせいで心の豊かさが失われた、とわかったふうな、でも結局何も言ってない雑な言葉でまとめられて、その単純な「物語」が長い間流通してきた。
柴崎友香"商店街育ち"(河出文庫「大阪」収録)
0 notes
coastloop · 14 hours ago
Text
海の水平線のような水面を挟んで南北の両側を東西に延びていく河川敷の堤防、その上を覆う広い広い大阪の空、あの河川敷は、そのまま十九歳の私が手にしていた時間的な自由の、空間的な表現だった。それは可視化された自由であり、物質化された時間だ。それが広いということは、自分がそれだけ自由ということなのだ、といつも思っていた。
岸政彦"淀川の自由"(河出文庫 「大阪」収録)
0 notes
coastloop · 4 days ago
Text
好意というのは、例えるなら血でなく唾なのではないか、吐けば、似つつもその人独特のにおいがし、だから恥ずかしく少し隠すようにするのでは、吐いても血よりは重大でなく、乾いても薄く、靄のようにしか残らないのでは、
井戸川射子"無形"(講談社)
0 notes
coastloop · 4 days ago
Text
口を自分の好きに歪めるだけの、まだ周りに矯正されてないような笑顔
井戸川射子"無形"(講談社)
0 notes
coastloop · 4 days ago
Text
レモンイエローの、薄めのダウンをまだ着ている。使いにくい色のは安くなっていくことが多いので、カンはとてもカラフルだ。
井戸川射子"無形"(講談社)
0 notes
coastloop · 7 days ago
Text
ともあれ、なんの努力もしなくても太陽が輝き、雨が降って川が流れ、花が咲き実がなり、わたしたちは呼吸をしている。だから身のまわりの存在やその成り立ちなどを、あらためて考えてみることは少ないけれど、でも天体のほうから見れば、わたしたちも同じ自然現象の一部ともいえる。
田中美穂"星とくらす"(WAVE出版)
0 notes
coastloop · 9 days ago
Text
季節というのは、いつも人間の感覚よりも先に移ろっていて、ふとそれに気づいた瞬間、あわてて体内の時計の針を進めるようなところがある。春は特にそうだ。
田中美穂"星とくらす"(WAVE出版)
0 notes
coastloop · 9 days ago
Text
ここまで違いがわかってくると、さっきまで知らなかったのが恥ずかしくてしかたがないけれど、でも、知らなかったことを知るというのはつねにそんなものだ。そして知ったとたんに、ずっと昔からそばにあったような親しさを覚えてしまうのもいいものだと思う。
田中美穂"星とくらす"(WAVE出版)
0 notes
coastloop · 11 days ago
Text
生まれた時から心の広さは4畳半くらいしかなかったが、現在ではマイクロビキニぐらいの面積になっている。
カレー沢薫"もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃"(講談社文庫)
0 notes
coastloop · 12 days ago
Text
重い障害のある人への支援は、専門的な知識だけじゃなく、クリエィティブな発想がいる仕事だ。
世界の感じ方が、まったく違う相手を落ち着いて観察し、ありとあらゆる想像を広げ、いくつもの仮説を立て、自分と相手の身の安全を守りながら何度も実践するのだ。他者に寄り添うということに、徹底的に向き合った人だけが、見えるなにかがある。
岸田奈美"国道沿いで、だいじょうぶ 100回"(小学館)
1 note · View note
coastloop · 16 days ago
Text
遠くに黒砂糖が仄めくような、甘みと苦みのないまぜになった、どこか懐かしい香りだった。
小田雅久仁"喪色記"(禍 収録(新潮社))
0 notes
coastloop · 16 days ago
Text
たとえば目隠しをされた人間は命のありようから抑制され、ひっそりと静かな物体と化してしまうのに、目隠しを外された途端、その人間は出し抜けに世界に対してひらかれた存在に一変する。
(中略)
目を通して、見ることを通して、人間は世界を把握し、世界とつながり、世界に居場所を見出し、世界に影響を及ぼしはじめる。目はほかの器官と較べ、まるで超越した存在によって顔に埋めこまれたかのように、あまりにも異質すぎはしないだろうか。
小田雅久仁"喪色記"(禍 収録(新潮社))
0 notes
coastloop · 18 days ago
Text
両者(自虐と謙虚)の見分け方として、謙虚な人間は「自分を下げて他人を上げる」が、自分の為に自虐をする人間は「自分を下げまくるだけで、他人を褒めはしない」のである。
カレー沢薫"もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃"(講談社文庫)
0 notes
coastloop · 20 days ago
Text
何の先行きも見えず、目に見える成果を上げることも報われることもなく、ただただ毎日を積み重ねてゆく中で、あるときふと、それが稲妻のように降りてくる一瞬があるのです。
坂本葵"その本はまだルリユールされていない"(平凡社)
0 notes
coastloop · 20 days ago
Text
もし、人生が本のようなものであったなら。まとまりもなく綻んでしまった私の人生を、針と糸で綴じ直すことができたらーーー。
坂本葵"その本はまだルリユールされていない"(平凡社)
0 notes
coastloop · 20 days ago
Text
私がこれまで読んできた本は、この世界のどこかの、顔も名前も知らない人の手によって、針と糸で丁寧に縫われてきたのかもしれないのだと、私はその時初めて気づかされた。
坂本葵"その本はまだルリユールされていない"(平凡社)
0 notes
coastloop · 22 days ago
Text
ひとは、偶然だけでは選択しない。しかし必然だけでは選択できない。というか、そもそも、完全に理想的な条件を持っている相手が現れたとしたら、そこには「選択」というものがそもそも介在しない。そして、選択というものが介在しない出会いというものは、出会いではない。少なくとも、そんなものはつまらない。
岸政彦"花田菜々子"出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと"(河出文庫)"解説
0 notes