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彼らは読みつづけた
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読書で見つけた「読書(する人)」
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findareading · 21 hours ago
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本の上に、生れたばかりの新らしい太陽がキラキラと金色の滴を垂らしそうにまばゆく輝いている。槇子は神妙に朗読し、訳をつけていつた。学校の授業とちがうところは知らない単語を辞書を使わないでも佐川が教えてくれることだけである。
— 由起しげ子著「雪とポインセチヤ」(『生きる場所』2021年10月Kindle版、講談社〈ROMANBOOKS〉)
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findareading · 2 days ago
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家にいるときは、灯りを点けずに夕刻を迎えるほうだ。急いで暗さを追いかけたくないからだ。その代わり、声に出して詩を読む。夕暮れどきは黙読より朗読がいい。唇のあいだから出てきた黒い文字が鳥のように飛んでいく想像をしながら、詩と夕暮れはよく似合う伴侶のようだと思う。曖昧さと曖昧さ、見慣れないものと見慣れないもの、昇華と昇華の出会い。
— ハン・ジョンウォン著/橋本智保訳「夕暮れただけ」(『詩と散策』2024年10月第3刷、書肆侃侃房)
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findareading · 3 days ago
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瑠璃子が広げていたのは、漢字を羅列した中国の武俠小説であった。 挿絵を拾い読みしているのかと���うと、ちゃんと黙読していたらしい。読みさしのページに栞を挟んで、彼女は首筋をトントンと叩いた。
— 辻真先著『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』(2021年1月Kindle版、創元推理文庫)
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findareading · 4 days ago
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〈愛〉──〈愛する〉こと──それは真似ることだ。習得されるのだ。言葉、行為、「感情」さえも習得される。本と詩の役割。独創的な愛はきわめて稀有なものにちがいない。
— ポール・ヴァレリー著/鳥山定嗣訳「愛」(『メランジュ 詩と散文』2024年9月、幻戯書房〈ルリユール叢書〉)
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findareading · 5 days ago
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僕が常々疑っていたのは、人々が読むという動作をやっているだけなのではないか、あるいはその動きのなさを真似ているだけなのではないかということだった。僕だって子供のころに読書しているふりをしていた気がする、ひょっとしたらなにかから──父の怒りから?──逃避するために。
— ベン・ラーナー著/川野太郎訳『トピーカ・スクール』(2025年7月、明庭社)
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findareading · 6 days ago
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しょうがない よんで みるか はじまりかたは わるく ないね うんうん それから……?
— マリアホ・イルストゥラホ著/小川紗良訳『本がきらい 本がすき』(2025年4月、アノニマ・スタジオ)
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findareading · 7 days ago
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数日後、弥生は学校帰りに本を読みながら歩いていた。ランドセルが薪に見える、二宮金次郎みたいだと近所の人たちは言っていた。初子さんは本など読まない。開いた途端、眠くなる。弥生の持っている本はすごかった。豆のような小さな字が並んでいた。何がそんなに書いてあるのだろう。あの本を一枚一枚、ページをめくって最後まで読むのだから、たいした辛抱だ。
— 赤染晶子著「初子さん」(『初子さん』2025年4月、palmbooks)
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findareading · 8 days ago
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カフェでパンを買い直し、ランチをすませてから由佳利は町立ひかり公園に向かった。生家館のある役場近くの公園だ。休日までわざわざ来なくてもと思うが、座り心地の良いベンチがあって本を読むのにちょうどいい。 鞄の中に艶子のエッセイ集が入っていた。昨日の夜、ためしに冒頭部分を読んでみたところ、するりと入ってくる文章につられたちまち数ページ進んだ。
— 大崎梢著『百年かぞえ歌』(2024年10月Kindle版、KADOKAWA)
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findareading · 9 days ago
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藤野 (引用者注・藤野可織) それって読者にも当てはまると思います。どこかを必ず読み落としてしまってそうな読書体験。人がいっぱい出てくると覚えられないし、出来事もあんまり色々あるとすっぽり抜けちゃったり、何となく覚えてるけど時系列があやふやだったり。私はしょっちゅうそんな感じで、焦ったり自分の頭の悪さを罵ったりしながら読み進めるんですけど、モディアノにはそれを許すというか、むしろ促しているようなところがありますよね。
— 都甲幸治ほか著『世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今』(2017年1月電子版第2版Kindle版、立東舎)
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findareading · 10 days ago
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「君は旅行が好きなのか?」 「うーん、旅行というより、何かを追い求めて険しきを冒す行為そのもの。いわば、まだ見ぬ冒険が好きなんだ」 「……冒険?」 「そう。だから僕は君を含めた、あまねく作家のことを心から尊敬している。彼ら彼女らはいつだって、僕たち読者に魅力的な冒険を与えてくれるからだ」
— 久住四季著『推理作家(僕)が探偵と暮らすわけ』(2018年12月Kindle版、メディアワークス文庫)
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findareading · 11 days ago
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もしだれかがその本をわたしから取りあげて 「これはもっと小さい子が読む本よ」 と言ったりしていたら、 もしかしたら、わたしは 自分みたいな人も本に登場していることを 信じられなかったかもしれない。 自分みたいな人にも物語があるなんて 思えなかったかもしれない。
— ジャクリーン・ウッドソン著/さくまゆみこ訳『わたしは夢を見つづける』(2021年7月Kindle版、小学館eBooks)
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findareading · 12 days ago
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その日は休日でしたから、朝早くから出かけでもして、夕飯刻にもなればゾロゾロ帰って来るだろうと気に留めぬように読書などして過ごしましたが、小半日が経ち、赤暗い雲が今にも空に蓋をしようというのに夕餉の匂いはせず、銭湯へいく者たちの下駄音もなく、扉の開け閉めの音もない。
— 黒史郎著『乱歩城〜人間椅子の国〜』(2017年9月Kindle版、光文社文庫)
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findareading · 13 days ago
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娯楽や文芸ジャンルの排除は、読書の指導、統制のしやすさとも結びついていよう。『読書会指導要綱』のモデルとなった読書会では、現実には実生活の生活指導や倫理指導、実践へと結びつける、いわばそこから生活の指針や倫理を教え、導くスタイルをとっていた。だが、虚構や想像上の世界ではそうした読書指導は難しい。 また、動労青年たちの楽しめる娯楽性豊かな小説は、指導者の存在を必ずしも必要とはしないし、言うまでもなく小説、文芸作品は多様な人物、立場からの視点が描かれ、解釈の幅も大きく、明快な教えや特定の倫理に収まるものでもない。
— 和田敦彦著『戦下の読書 統制と抵抗のはざまで』(2025年7月、講談社選書メチエ)
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findareading · 14 days ago
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「読書」というのは不思議なもので、昔からみんながやっていることなのに、「どうやっているか」はなかなか見えません。世に「読書術」の本が絶えないのは、なんとかそのプロセスを可視化して共有したい、という人類の願いの現れでしょう。本書もそうした狙いを持つ書物の中の1冊と言えそうです。
— 編集工学研究所著『探究型読書』(令和2年8月Kindle版、クロスメディア・パブリッシング)
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findareading · 15 days ago
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小田急線で新宿にでてから、都営新宿線本八幡行の各駅停車に乗った。智葉大学に近い大島駅まで二十五分かかる。余裕で座れたこともあり、読書の時間を得られた。
— 松岡圭祐著『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論Ⅳ シンデレラはどこに』(令和4年4月Kindle版、角川文庫)
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findareading · 16 days ago
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「……読者の知性と根気を信じましょうか」 「……そうですね。渦良先生の読者ならなんとしても読んでくれます。咲也と探偵のシリーズは人気だし」
— 似鳥鶏著「曰本最後の小説」(『小説の小説【電子特典付き】』2022年9月Kindle版、KADOKAWA)
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findareading · 17 days ago
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今年もまた夏休みは岡山の大原で過ごすべく決めている。さしあたり大正期の刊行物を少し携えるとして、全集物はどれにしようかと迷った揚句、鳥谷部春汀の『春汀全集』全三巻(明治42年・博文館)を持参することに決めた。
— 谷沢永一著『本は私にすべてのことを教えてくれた』(2021年1月Kindle版、PHP研究所)
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