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アマデウスシナリオ「機械仕掛けの神子(アマデウス・エクス・マキナ)」

プレイヤー人数:4人
リミット:2(推定プレイ時間4時間)
推奨PCレベル:2
シナリオ作成者コメント:2016年6月に行ったセッションのシナリオを再編集したものです。利用改変はご自由にどうぞ。
PDF(シナリオ本文、予言カード、NPCキャラクターシート)のダウンロードはこちら→https://goo.gl/IL2KRO
カクヨムでリプレイ連載中です。完結しました。シナリオのイメージを掴むのにお役立てください。→https://kakuyomu.jp/works/1177354054881438298
タイトル画像はFuLinHyu様よりお借りしました。
■プリプレイ
◆はじめに
本稿は、冒険企画局「神話創世RPGアマデウス」のシナリオである。プレイヤーキャラクター(以下、PC)は2レベルPC4人を想定している。リミットは2で、プレイ時間は4時間程度だと思われる。このシナリオは、「神話創世RPGアマデウス」(以下、「基本」)、「アマデウス02鮮血ラグナロク(以下、「02」)」、「アマデウス03絶界九龍城(以下、「03」)」に収録されているルール、データを使用する。
⚠警告
PLとしてこのシナリオを遊ぶ予定のある者は、ここから先は読んではいけない。
◆シナリオの背景および概要
蔭洲枡(いんすます)村という日本海に面する漁村に、絶界が発生する。絶界の主はクトゥルフ神話の怪物、ショゴスだ。このショゴスを討伐する予言を受けたのは、何故か現代の神子ではなく、未来の神子だった。ヘパイストスの血を授かった機械の子であるHRM-2.1(ハルム)がそうだ。HRM-2.1は怪物を討伐するため、未来からタイムマシンで現代にやってきた。しかし、時空移動の途中でティンダロスの猟犬に遭遇し、目を付けられてしまう。しかも、HRM-2.1は現代の蔭洲枡村に到着した時、時空移動の衝撃で一時的に記憶を失ってしまった。ティダロスの猟犬はHRM-2.1を追って現代にやってくると、そこに絶界を形成する。そうして、蔭洲枡村は、ショゴスとティンダロスの猟犬という二体の怪物の絶界が重なりあった状態となった。
PC達は、蔭洲枡村の神話災害を解決するよう万神殿から依頼された神子だ。実はPC達が倒すことを運命づけられているのはティンダロスの猟犬の方なのだが、PC達は二つの絶界が重なりあっているという事実には未だ気づいていない。もし間違ってショゴスと戦うことになってしまったなら、為す術もなく惨殺されてしまうだろう。果たしてPC達はこの事実に気づくことができるのか。そしてHRM-2.1の記憶を取り戻し、神話災害を解決することができるのか。
◆シナリオの準備
まず、GMは本稿をよく読んで、シナリオの流れを確認すること。
次に、「ティンダロスの猟犬(「03」p.163)」の本体カードと、「かみつく(「基本」p.272)」、「逃走(「基本」p.279)」、「ショゴス(「基本」p.276)」、「毒牙(「02」p.218)」、「吸血(「02」p.218)」、「時間の角(「03」p.163)」の脅威カードを準備する。また、本稿p.7からの予言カードもカードにしておくこと。
■メインプレイ
◆導入フェイズ
●シーン1〜4
各PCの導入をPC①から順に行う。ゲームマスター(以下、GM)は【暗示】を読み上げて、予言カードをPLに渡す。PLが予言の内容を把握したら、GMはPCの親神として、PCに万神殿に行くよう促すこと。
●シーン5
万神殿では、ペルセウスがPC達を出迎える。ペルセウスはPC達に、蔭洲枡村の神話災害の解決を依頼し、蔭洲枡村の絶界は鍾乳洞になっていることを説明する。PC達が追加の情報を求めた場合、基本的には蔭洲枡村の絶界は強大で、万神殿の方でも調査が思うように進んでいない(これは、二つの絶界が重なりあっていることの伏線である。)と告げ、PC達にくれぐれも気を付けるようにいうこと。PC達が蔭洲枡村に向かうことにしたら、「活力の決定」と「冒険の準備」を行い、導入フェイズは終了となる。
◆冒険フェイズ
●PC④の【真実】について
このシナリオでは、PC④の予言カードの【真実】は特殊な内容になっている。これは「親神の発言の意図を推理し、披露する」というものだが、PC④が「ティンダロスの猟犬」の存在に気づいた場合、正解とすること。PLに「ティンダロスの猟犬」についての知識がなくても、「不定形の怪物(ショゴス)の他に、氷柱石に別の怪物が潜んでいる」というようなことを言い当てられれば正解としてよい。これは、マスターシーン「ティンダロスの猟犬」を経たあとであれば、容易に気付けるだろう。
なお、PC④が正しい推理を披露した時点で、マスターシーン「ティンダロスの猟犬」が発生していない場合、GMは直ちに「NPC エプロンドレスの少女」の予言カードの【真実】を公開し、その後マスターシーン「ティンダロスの猟犬」を発生させること。
●1サイクル目
PC達は、蔭洲枡村に到着する。蔭洲枡村の絶界はPC④が夢で見たとおり、鍾乳洞になっている。壁や地面は一面冷たい石灰岩で覆われており、天井からは氷柱状の鍾乳石が垂れ下がっている。シーンを行う。以下の「鍾乳洞シーン表」を使用すること。全員がシーンを行った時点で、PC②の予言カードの【真実】が公開されている場合、マスターシーン「戦略的撤退」が発生する。公開されていない場合、マスターシーン「蹂躙」が発生する。
鍾乳洞シーン表
ドーム状の広い空間に出る。地面には水が溜まり、天然のプールを作っている。
光の届かない真っ暗な空間。ライトで照らさないと一歩先すら見えない。
石柱に阻まれた狭い通路。人一人が身体を縦にしてなんとか通れるくらいの幅だ。
天井から無数の氷柱石が伸びている。その先端からぽつり、ぽつりと水滴の滴る音が聞こえる。
地面を緩やかに流れる水が鍾乳石の畦を形作っている。段々畑を思わせるそれは水を湛えて煌めいている。
石の花が咲き乱れる空間に出る。石灰岩が結晶化したもののようだ。幻想的なムード。
●マスターシーン「戦略的撤退」
☆発生条件:1サイクル目終了時に、PC②の予言カードの【真実】が公開されている。
PC達が、鍾乳洞を進んでいくと、急に絶望の闇が深くなる。周囲に「テケリ・リ!テケリ・リ!」という鈴を転がすような声が響き、何かが蠢くような気配がする。「逃げろ!/逃げて!(PC②の親神の口調に合わせること。)」とPC②の親神が叫ぶ。その声に押されてPC達が駆け出した次の瞬間、背後に四方から粘性を持った触手が伸び、つい先程までPC達がいた空間を絡めとった。「テケリ・リ!テケリ・リ!」という声が一層大きく��る。まるでPC達をあざ笑ってるかのようだ。PC達は脇目もふらずその場から逃走した……
2サイクル目に移行する。
●マスターシーン「蹂躙」
☆発生条件:1サイクル目終了時に、PC②の予言カードの【真実】が公開されていない。
PC達が、鍾乳洞を進んでいくと、急に絶望の闇が深くなる。周囲に「テケリ・リ!テケリ・リ!」という鈴を転がすような声が響き、何かが蠢くような気配がする。まずい……!そう思った時には手遅れだった。四方から粘性を持った触手が延び、PC達の身体を絡めとってギリギリと締め上げる。それと同時に絶望の闇が一層深くなる。PC達は絶望の闇の瘴気にあてられ、そのまま意識を手放した……
終了フェイズに移行し、強制終了の処理をすること。
●2サイクル目
2サイクル目の最初にマスターシーン「邂逅」が発生する。戦闘に勝利した場合、マスターシーン「記憶喪失」が発生し、その後通常のシーンを行う(敗北した場合は強制終了の処理に移る。)。「OBJ 大容量記憶装置」の予言カードの【真実】が公開された場合、マスターシーン「記憶を取り戻した少女」が、「NPC エプロンドレスの少女」の予言カードの【真実】が公開された場合、マスターシーン「ティンダロスの猟犬」がそれぞれ発生する。マスターシーン「記憶を取り戻した少女」、「ティンダロスの猟犬」の2つのマスターシーンが発生すると、マスターシーン「氷解」が発生する。
2サイクル目の終了時までに、PC①の予言カードの【真実】が公開されると、マスターシーン「決戦へ」が発生し、その後決戦フェイズへ移行する。公開されなかった場合、マスターシーン「絶望の闇に」が発生し、その後直ちに終了フェイズに移行する。
●マスターシーン「邂逅」
☆発生条件:2サイクル目が開始する。
PC達は逃げ出した先で、高さ1.5メートル、幅1メートルくらいの奇妙なカプセルのような物体を発見する。PC達が近づくと、そのカプセル型の物体は、「プシュー……」と音を立てて開かれた。PC達が中を覗き込むと、そこには11、12歳くらいの少女が、目を閉じ、眠るように佇んでいた。少女はメイドが着るようなエプロンドレスを身に着けていた。少女はゆっくりと目を開くと、PC達を見つめる。そして何か言おうと口を開いた。「侵入者ハッケン…排除シマス」少女はそう言うと襲い掛かってきた!
エプロンドレスの少女との戦闘を行う。エプロンドレスの少女(HRM-2.1)のデータは本稿末尾に付属している。HRM-2.1との戦闘は、「アンタゴニスト」(「02」p.214)のルールを使用する。 なお、GMは戦闘前に3D6を振り、HRM-2.1(ハルム)の活力を決定すること。戦闘開始時点でHRM-2.1(ハルム)の生命力は活力を含め最大値になっている。
●マスターシーン「記憶喪失」
☆発生条件:エプロンドレスの少女との戦闘に勝利する。
「ひゃんっ!」PCの攻撃を受けて、少女の身体は地面を転がった。「うう、いたた……あっあれ?ここは?」少女はゆっくりと身体を起こす。「あなたたち……だれ、ですか?」「私……?私は……誰なんでしょう?タイムマシンに乗って未来からやってきたことは覚えているのですが……それ以外のことが全く思い出せません……何故この時代にやってきたのかも」どうやら先ほどのカプセル型の物体はタイムマシンだったらしい。
「ええと、こういう時どうすればいいんでしたっけ……」エプロンドレスの少女はタイムマシンの座席の下からひっぱりだしてきたマニュアルをめくる。「なるほど、わかりました。どうやら時空移動の際に、衝撃で私の記憶の入ったストレージだけがどこか別の場所に転移してしまったようなのです」続けて少女は申し訳無さそうに言う。「あの、初対面の方々にこのようなことを頼むのは大変不躾だとは承知しておりますが、ストレージを探すのを手伝っていただけないでしょうか……衝撃で飛ばされた程度なので、この近くにはあるはずなのですが……」
その瞬間、突如青い粘液を纏った触手のようなものがエプロンドレスの少女に迫る!この時点でPC③の予言の【真実】が公開されている場合、PCの誰かが【技術】で判定を行える。成功すると、少女を守ることができる。PC③の予言の【真実】が公開されていないか、判定に失敗した場合、少女はその触手のようなものに身体を貫かれる。生命に別状はないようだが、重傷を負ってしまう。黒の領域にインガを2つ配置する。(さらに、決戦フェイズ時、パラグラフ2の「かみつく」の脅威カードを「ショゴス」に差し替える。詳細は後述。)。
GMはここで、「NPC エプロンドレスの少女」および「OBJ 大容量記憶装置」の予言カードを机上に出し、【暗示】を読み上げること。以後、この二つの予言カードを調査することができる。
「OBJ 大容量記憶装置」の調査を行う場合、記憶装置を探し歩くことになる。これは「危険な旅」である。調査判定の前に移動判定(判定:【技術】)を行い、失敗した場合、以下の鍾乳洞試練表を使用すること。
鍾乳洞試練表
絶望の闇が濃くなるのを感じる。洞窟の奥からコウモリが闇に紛れて飛びかかってくる。黒の領域にインガを1つ配置し、もう一度試練表を使用する。
迷い込んだ先で人間の白骨死体を発見する。これはもしかしたら自分達の末路かも知れない。急に不安が襲ってくる。「絶望」の変調を受ける。
突然洞窟の奥から堰を切ったように大量の水が流れてくる。鉄砲水だ。【武勇】で判定を行い、失敗すると2d6点のダメージを受ける。
均衡が崩れたのか、天井から伸びた氷柱状の鐘乳石が一斉にあなたに降りかかる。【技術】で判定を行い、失敗すると1d6点のダメージと「重症1」の変調を受ける。
銛を持った醜い半魚人と遭遇する。上手く意思疎通できるだろうか。「臆病1」の変調を受ける。さらに【愛】で判定を行い、失敗すると1d6点のダメージを受ける。
石灰泥に足を滑らせて転ぶ。そのまま石筍に頭を強かに打ち付ける。「重症2」の変調を受ける。
●マスターシーン「記憶を取り戻した少女」
☆発生条件:「OBJ 大容量記憶装置」の予言カードの【真実】が公開される。
エプロンドレスの少女は記憶装置を受け取ると自身の身体から端子を伸ばして接続した。しばしの沈黙の後、少女は語り始める。「思い出しました……!私の名前はHRM-2.1(えいちああるえむにいてんいち)。ヘパイストス様に作られた神子で、ヘパイストス様からは「ハルム」と呼ばれていました。ヘパイストス様の命で、あのドロドロした怪物を討伐するためにこの時代にやってきたのです」
これ以降、PC③は、自身の予言カードの【真実】を公開できる。
●マスターシーン「ティンダロスの猟犬」
☆発生条件:「NPC エプロンドレスの少女」の予言カードの【真実】が公開される。
幻視が終わったその瞬間、天井から垂れ下がる氷柱石の先端に凄まじい悪意が凝縮するのを感じる。それと同時に周囲を名状しがたい悪臭が満たす。次の瞬間、氷柱石から青い粘液を纏った触手のようなものがPCに迫る!ここで、「NPC エプロンドレスの少女」の予言カードの【真実】の調査に成功したPCは、防御判定を行い(判定:【愛】、目標値5)、失敗すると2D6−1点のダメージを受ける。これはティンダロスの猟犬の「吸血」である。GMは、適当だと思うならば、PCが受けたダメージの半分(切り捨て)を決戦フェイズの本体の生命力に加算してもよい。PCを襲った触手のようなものは、怪物の舌だった。PC達はようやくその姿を視認した。氷柱石の鋭角の中、青い原形質を滴らせる怪物がこちらを凝視している。その姿は獲物を狙う猟犬を思わせた。怪物は、PC達が自分を警戒しているのに気づくと、再び氷柱石の鋭角の中へと消えていった。
想定では、これ以降PC④は自身の予言カードの【真実】を公開し、正しい推理を披露できるはずである。
●マスターシーン「氷解」
☆発生条件:「記憶を取り戻した少女」、「ティンダロスの猟犬」の2つのマスターシーンが発生する。
このシーンは、「記憶を取り戻した少女」、「ティンダロスの猟犬」の2つのマスターシーンのうち、後に発生したシーンの次のシーンに挿入される。
HRM-2.1は、ハッと気がついて言う。「あの怪物は……!そうです、あのワンワンの怪物は、私を追ってこの時代にやってきたんです……!」「私が討伐の予言を受けたのはあのドロドロの怪物だけ。もしかしたら皆さんが予言を受けたのは私を追ってきたワンワンの怪物の討伐なのかもしれません」
このシーンは、シナリオの背景をPLに明かすためのシーンであり、シナリオクリアのために必須のシーンではない。GMはこのシーンを行わなくても構わない。
●マスターシーン「決戦へ」
☆発生条件:2サイクル以内にPC①の予言カードの【真実】が公開される。
「そうです。実際に対峙した皆さんならわかるでしょう、残念ながら、通常あのドロドロの怪物は、私達が束になっても勝てる相手ではありません」「ですが、ヘパイストス様は私に『対ドロドロの怪物用プログラム』をインストールしてくださいました。これを使えばあのドロドロの怪物の動きを止めることができるらしいのです」そして少女は初めて見せる真剣な目つきでこう言う。「さぁ行きましょう、怪物のところへ!」
これにて冒険フェイズは終了し、決戦フェイズに移行する。
●マスターシーン「絶望の闇に」
☆発生条件:2サイクル以内にPC①の予言カードの【真実】が公開されない。
逃げ出してきたはいいが、あの怪物に勝つ方法などあるのだろうか……?何の手がかりも掴めぬまま、ただただ時間が過ぎていく。そのとき、突如洞窟の奥からものすごい勢いで絶望の闇が吹き出してくる。あなたたちは絶望の闇に飲まれ、そのまま意識を手放した……
終了フェイズに移行し、強制終了の処理をすること。
◆決戦フェイズ
●戦闘開始前
戦闘開始前の描写は、冒険フェイズ時、マスターシーン「ティンダロスの猟犬」が発生しているか否かで分岐する。
◯マスターシーン「ティンダロスの猟犬」が発生している場合
PC達は怪物との決戦のため、先ほどの広い空間にやってきた。周囲には絶望の闇が満ち、どこからか「テケリ・リ!テケリ・リ!」という嘲るような声が響く。そうしてあなた達の前に、玉虫色の原形質の塊が姿を現した。それと同時に、周囲を名状しがたい悪臭が満たす。PC達は天井の氷柱石に凄まじい悪意が凝縮するのを感じる。見ると、氷柱石の鋭角の中、青い原形質を滴らせる怪物がこちらを凝視している。怪物達の敵意が一斉にPC達に向けられる。PC達は恐怖で肌が粟立つのを感じる。勝てない、と直感が告げる。その時、HRM-2.1が一歩前に進み出て言う。「大丈夫です!プログラム起動。モード制約(リストリクション)」彼女がそう呟くと、彼女の身体が光り輝き始める。すると不定形の怪物の動きが止まる。
「これであのドロドロの奴の動きは封じました!奴は私に任せてください!」「皆さんは、あのワンワンをお願いします!」
(PC④が推理に成功している場合)そう、あの猟犬は鋭角の中に潜んで獲物を狙うのだ、とPC④の親神が囁く。これにより、怪物の本体の攻撃値と防御値が1点ずつ減少する。
怪物は、PCたちを威嚇するように、グルルと喉を鳴らすと、勢いをつけてPC達に襲いかかった! これより戦闘に移行する。
◯マスターシーン「ティンダロス」の猟犬が発生��ていない場合
PC達は怪物との決戦のため、先ほどの広い空間にやってきた。周囲には絶望の闇が満ち、どこからか「テケリ・リ!テケリ・リ!」という嘲るような声が響く。そうしてあなた達の前に、玉虫色の原形質の塊が姿を現した。怪物はPC達に気づくと、おぞましい敵意を向けてくる。PC達は恐怖で肌が粟立つのを感じる。勝てない、と直感が告げる。その時、HRM-2.1が一歩前に進み出て言う。「大丈夫です!プログラム起動。モード制約(リストリクション)」彼女がそう呟くと、彼女の身体が光り輝き始める。すると不定形の怪物の動きが止まる。「これであのドロドロの奴の動きは封じました!今のうちに奴を!」
だがそのとき、天井から垂れ下がる氷柱石の先端に、凄まじい悪意が凝縮するのをPC達は感じる。それと同時に周囲を名状しがたい悪臭が満たす。何かがおかしい。あなた達はそこでようやく気づく。ここには、あのドロドロ以外にも、「何か」がいる。そのとき、あなた達に向かって青い粘液を纏った触手のようなものが襲いかかる!全員2D6−1点のダメージを受ける。
PC達はようやくその姿を視認した。氷柱石の鋭角の中、青い原形質を滴らせる怪物がこちらを凝視している。その姿は獲物を狙う猟犬を思わせた。怪物はグルルと喉を鳴らすと、勢いをつけてPC達に襲いかかった!
これより戦闘に移行する。
●本体と脅威
怪物の本体は、「ティンダロスの猟犬(「03」p.163)」。脅威は、パラグラフ1から順に「逃走(「基本」p.279)」、「かみつく(「基本」p.272)」、「毒牙(「02」p.218)」、「時間の角(「03」p.163)」、「吸血(「02」p.218)」である。
ただし、マスターシーン「記憶喪失」で青い粘液を纏った触手からHRM-2.1を守ることに失敗している場合、HRM-2.1は重傷を負っているせいで不定形の怪物の動きを完全に止めることができない。この場合、パラグラフ2の脅威は「かみつく」から「ショゴス(「基本」p.276)」に差し替えられる。
また、PC④の予言カードの【真実】が公開されている場合、本体の攻撃値と防御値は1点ずつ低いものとして扱うこと(それに伴い、脅威の攻撃値、防御値も1点ずつ下がることになる)。
●戦闘終了後
PC達の猛攻を受けたティンダロスの猟犬は、青い膿を撒き散らしながら靄となって氷柱石の先端に吸い込まれるように消えていき、そして二度と現れることはなかった。PC達がティンダロスの猟犬を退散させたのとほとんど同時に、HRM-2.1はショゴスを倒していた。
◆終了フェイズ
●エピローグ
「まさか怪物は二体いたとはな……」とペルセウスは呟く。見事怪物を打ち倒したPC達は、万神殿に戻り任務の報告をしていた。「君たちが向かったあの鍾乳洞は、二体の怪物が作り出した二つの絶界が重なりあってできたものだったらしい。こちらの調査不足で君たちを危険な目に遭わせてしまった、申し訳ない」そう言ってペルセウスは、PC達に向かって深々と頭を下げた。「だが、よくやってくれた」そう言ってペルセウスはPC達を労った。
「ああそれで、君たちが洞窟で発見した機械の神子のことだが」ペルセウスは思い出したかのように続ける。「未来に帰る方法がないようなので、しばらく神殿で預かることにした。さすがはメイド型ロボだけあって家事については万能だから、重宝しているよ」そう言ったペルセウスの背後からHRM-2.1がひょこっと顔を出す。「タイムマシンが時空移動の衝撃で壊れてしまったみたいなんです。なので、直す方法がわかるまでしばらくこちらにお世話になることになりました」「これからよろしくお願いしますね、皆さん!」そう言うと、HRM-2.1はにこりと微笑んで頭を下げた。
●強制終了
戦闘に敗北した場合、およびマスターシーン「蹂躙」、「絶望の闇に」が発生した場合にこの処理を行うこと。
全員悪夢表を使用し、結果を適用する。死亡に至らなかったPCは万神殿で目を覚ます。ペルセウスがため息を吐き、「駄目だったか。まぁ事前に絶界の調査を十分にできなかったこちらにも非がある。そう気に病むな」と励ましてくれる。もし死亡したPCがいる場合は、「◯◯のことは残念だった」などと弔いの言葉を述べるだろう。
■予言カード
◆PC①
【暗示】大変だ、という声が頭の中に直接響いてくる。これはあなたの親神の声だ。なんでも蔭州枡村という漁村が絶望の闇に包まれてしまったらしい。神話災害を解決して村を救え、と親神はあなたに命じた。
あなたの【任務】は、この神話災害を解決することだ。
【真実】あなたは未来の光景を幻視した。あなたの傍には見覚えのない少女が立っていた。エプロンドレスに身を包んだ彼女が何かを呟くと、少女の身体が光り輝き、怪物の動きが止まった。
この【真実】が2サイクル以内に公開されると、マスターシーン「決戦へ」が発生し、その後決戦フェイズに移行する。公開されなかった場合、マスターシーン「絶望の闇に」が発生し、その後直ちに終了フェイズに移行する。
【トリガー】エプロンドレスの少女の正体を知る。
◆PC②
【暗示】あなたは未来の光景を幻視した、あなたは玉虫色の不定形の怪物と対峙していた。「テケリ・リ!テケリ・リ!」と鈴を鳴らすような声が響く。あなたの周りには4人の人影があった。この4人があなたと共に怪物を倒す神子たちのようだ、と親神が囁いた。
あなたの【任務】は、怪物を倒すことだ。
【真実】幻視には続きがあった。怪物はあなた達に気づき、おぞましい敵意を向けてくる。その瞬間、あなたは恐怖で肌が粟立つのを感じる。あなたは直感的に悟る。勝てない、と。戦ったところで為す術なく惨殺されてしまうことは目に見えていた。「まずいな……」と親神が呟く。そこで幻視は終わった。
この【真実】が1サイクル以内に公開されると、1サイクル目の終了時にマスターシーン「戦略的撤退」が発生する。公開されなかった場合、マスターシーン「蹂躙」が発生し、その後ただちに修了フェイズに移行する。
【トリガー】あなたが、生命力を1点以上回復する。
◆PC③
【暗示】あなたは親神から予言を受けていた。あなたは新たな神話災害の解決に向かうことになり、向かった絶界で新たな仲間と出会うことになるだろう、と親神が尊大な口調で告げる。
あなたの【任務】は、絶界で出会う新たな仲間の【任務】を手助けすることだ。
【真実】予言には続きがあった。親神が言うには、絶界で出会う新たな仲間は、怪物に狙われているのだという。その時、あなたの脳裏に、怪物が青い粘液を纏った触手のようなものを伸ばし、人影を貫く光景が浮かぶ。貫かれたのは、あなたには見覚えのない人物だ。よく警戒することだ、と親神が忠告する。
この【真実】が1サイクル以内に公開されると、危険が迫ったとき、PCの誰かが技術で判定を行える。成功するとこの未来は回避できる。
【トリガー】あなたが、他のPCに対して新たに【想い】を1点以上獲得する。
◆PC④
【暗示】あなたは夢を見ていた。青く仄暗い鍾乳洞にあなたは立っていた。壁や地面は一面冷たい石灰岩で覆われており、天井からは氷柱状の鍾乳石が垂れ下がっている。ここが、あなたが次に向かう絶界のようだ、と親神が囁いた。
あなたの【任務】は、この絶界から無事に帰ることだ。
【真実】夢には続きがあった。親神は、天井から垂れ下がった氷柱石を見つめて、「これはよくない」と呟いた。何を言っているのかと訝しがるあなたに対して、親神は「この氷柱石はあなた達にとって障害になるだろう」と告げる。……どういう意味だ?
この【真実】が公開されたとき、PC④はこの親神の発言の意図について、推理を披露することができる。その推理が正しかった場合、怪物本体の攻撃値および防御値が1点ずつ減少する。
【トリガー】冒険フェイズ中に限り、いつでも公開できる。
◆NPC エプロンドレスの少女
【暗示】彼女はタイムマシンに乗って未来からやってきたメイド型ロボットである。今は時空移動の衝撃で記憶を失っているようだ。
彼女の【任務】は、記憶を取り戻すことだ。……今のところは。
【真実】あなたは未来の光景を幻視した。エプロンドレスの少女は、計器を調整し座標を合わせ、タイムマシンを起動した。時空移動が始まる。少女のいた未来から現在に至るまでのビジョンが次々と浮かんでは消えていく。その時だ。時空の間に、青い膿を滴らせる犬のような怪物の姿をあなたは目撃してしまう。そして、怪物の方もあなたを見た!そこで幻視は終わった。
この【真実】が2サイクル以内に公開されると、マスターシーン「ティンダロスの猟犬」が発生する。
【トリガー】PCの誰かがこの【真実】を見たとき、またはPC④が正しい推理を披露したとき、自動的に公開される。
◆OBJ 大容量記憶装置
【暗示】エプロンドレスの少女の記憶を司る、大容量のストレージ。時空移動の衝撃でどこかに行ってしまった。
【真実】あなたは、タイムマシンからそう遠くない地点で、石筍の陰にこれが落ちているのを見つけることができた。幸いなことに、壊れてはいないようだ。これを少女に返せば記憶を取り戻すだろう。
この【真実】が2サイクル以内に公開されると、マスターシーン「記憶を取り戻した少女」が発生する。
【トリガー】いつでも公開できる。
■NPCデータ
◆HRM-2.1
●基本データ
名前:HRM-2.1
レベル:3
属性:赤
神郡:ギリシャ神郡
親神:ヘパイストス
背景:機械の子
境遇:加護
予言:帰郷
性別:女
年齢:1歳(外見年齢は12歳)
職業:メイド
●能力値
武勇:B++
技術:A+
頭脳:C
霊力:C+
愛:C+
日常:B+
生命力:12
●ギフト
親神の恵み
黄金の従者(「03」p.84)
内蔵武器(「02」p.179)
霊波計(「02」p.183)
合体変形(「03」p.99)
●人物
協力者:ヘパイストス 想い:1 関係:有用
●アイテム
鎚(「基本」p.216)
武器の身体(「03」p.92)
食料2個(「基本」p.218)
●所持金
5神貨
0 notes
Audio
TRPGセッション等で使うために作りました。
ほのぼのとした日常シーンのBGMです。以下から自由にダウンロードしてお使いいただけます。
http://commons.nicovideo.jp/material/nc139946
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アマデウスシナリオ「蛇日(だにっち)村の消失」
プレイヤー人数:5人 リミット:3(推定プレイ時間4〜5時間) 推奨PCレベル:1 シナリオ作成者コメント:サンプルシナリオが3〜4人用だったので、未経験者5人で遊べ、かつ初めてのGMにも回しやすいシナリオを目指しました。利用改変はご自由にどうぞ。 PDFのダウンロードはこちら→ http://goo.gl/PEC8ir
タイトル画像は、dibaer様よりお借りしました。
プリプレイ
◆はじめに
本稿は、冒険企画局「神話創世RPGアマデウス」の5人用シナリオである。リミットは3、プレイ時間は4〜5時間、プレイヤーキャラクター(以下、PC)の平均レベルは1を想定している。なお、予言カード(本稿末尾に付属)はシナリオ作成者が実際に行ったセッションにおける各PCの親神に即した文体になっているため、他の神格を親神に持つPCを使用する場合、ゲームマスター(以下、GM)は適宜これを書き換える必要がある。
◆シナリオの背景および概要
蛇日村では数年前からダム建設の話が進められていた。ダムができれば蛇日村はダムの底に沈むことになる。村人達は任意買収に応じず、反対運動を続けていた。しかし、そんな努力も虚しく、近いうちに強制収用の手続が取られることになった。たくさんの思い出が詰まった故郷がダムに沈んでしまう。蛇日村に住む登呂井(とろい)健一は、そのことを受け入れられずにいた。そんな彼に、人間に住処を奪われた物語を持つ夜刀神(やとのかみ)が憑依し、蛇日村は絶望の闇に覆われてしまう。夜刀神を倒し、登呂井健一を救い出すことがこのシナリオの目的である。
メインプレイ
◆導入フェイズ
●シーン1〜5
各PCの導入をPC①から順に行う。GMは、プレイヤー(以下、PL)に予言カードを配布する。その時、【暗示】についてはGMが読み上げるか、PLに読んでもらうとよい。PLが予言の内容を把握したら、GMは、各PCの親神として、PCに万神殿に行くよう促すこと。具体的には、コーヒーチェーン「カカオ」に行って神の飲み物(ソーマ、ネクタルなど)を注文するよう助言する。PCがそれに従って万神殿に向かったらシーン終了。
●シーン6
万神殿に集まったPC達は、神殿に所属する神子であるペルセウスから、5人全員で協力して、蛇日村で起きている神話災害を解決するよう、正式に依頼される。ペルセウスはPC達に、神話災害が起きているのは蛇日村という村であること、絶界の主は夜刀神という有角の大蛇であること、絶界内部の様子は分からないこと、一般人には蛇日村の存在自体が知覚できなくなっていることを説明する。PC達が依頼を受けたら、ペルセウスは、万神殿を経由すれば世界各地の「カカオ」に出ることができるから、蛇日村に一番近い「カカオ」に出て、そこから歩いて蛇日村まで向かうよう、PC達に告げる。PC達が了承したらシーン終了。その後、「活力の決定」、「冒険の準備」を忘れずに行うこと。
◆冒険フェイズ
●1サイクル目
蛇日村に一番近い「カカオ」から出てきたPC達は、そのまま歩いて蛇日村へと向かう。蛇日村は結構な田舎にあり、そこから1時間くらいかかるらしい。シーンを行う。以下の「道中シーン表」を使用すること。PC全員がシーンを行ったら、1サイクル目は終了。2サイクル目に移行する。このサイクルではマスターシーンは発生しない。
道中シーン表��D6
活気に溢れた繁華街を通りかかる。雑踏、すれ違う人々の話し声が騒がしい。客引きに捕まらないように気をつけよう。
閑静な住宅街へと入る。聞こえてくるのは、主婦達が噂話をする声や、時折通りかかる自動車のエンジン音だけだ。
噴水のある広場で子供達が駆け回っている。公園のようだ。周囲にはブランコ、すべり台といった遊具が置かれている。
寂れた商店街を通過する。店番をしている老人がいるが客の姿はなく、多くの店は昼間にも関わらずシャッターが下りている。
のどかな田園風景。田畑にはぽつり、ぽつりと農作業に勤しむ人の姿が見える。時折、害獣対策の鹿威しが響く。
段々と足元の勾配が急になってきた。山道に入ったようだ。辺りには木々が生い茂り、陽の光もあまり届かない。
●2サイクル目
PC達は、蛇日村に到着する。一般人には知覚できないが、神子であるPC達には、村が丸ごと絶望の闇に覆われていることがわかる。マスターシーン「絶界の入り口」が発生する。その後、通常のシーンを行う。絶界の内部は至って普通の農村のようだ。以下の「蛇日村シーン表」を使用すること。PC全員がシーンを行ったら、2サイクル目は終了する。この時点で、PC④の予言カードの【真実】が公開されていた場合、マスターシーン「怪物の住処へ」が発生する。公開されていない場合、マスターシーン「遅すぎた到着」が発生する。
蛇日村シーン表 D6
古びた神社がある。祀られているのはどんな神様なのだろうか。ヤマト神群の神か、はたまた邪神か。
民家が立ち並ぶ場所に出た。しかし、そのどれからも人の気配は感じられない。村人達は無事なのだろうか。
川辺に出る。川の水は冷たく澄み切っており、泳いだら気持ちが良さそうだ。水面に魚影がきらりと光る。
見渡す限り一面に畑が広がっている。大地から伸びる茎や枝には、瑞々しい野菜や果物が生っている。
小さな学校がある。木造の屋根は腐って今にも���れ落ちそうであり、グラウンドには雑草が生え放題になっている。
屋根付きのベンチが置かれたバス停を発見する。もっとも、この絶望の闇の中ではバスは来られないだろうが。
●マスターシーン「絶界の入り口」
発生条件:2サイクル目が開始する。
PC達は、絶界の中へと一歩、足を踏み入れる。その瞬間、PC達の侵入を拒むかのように、目には見えないが確かに重量を持った何かが、急速にPC達に迫る。これは、夜刀神の尻尾による「なぎはらい」である。「なぎはらい」の脅威カードの効果が発動する。PC全員は、圧倒的な質量をその身に受けて吹き飛ばされ、2D6点のダメージを受ける。これに対して防御判定をすることはできない。ただし、この時点でPC②の予言カードの【真実】が公開されていた場合、PC達は特に警戒していたため、上手く身を躱すことができる。この場合、PC達は「なぎはらい」のダメージを受けない。
●マスターシーン「怪物の住処へ」
発生条件:2サイクル目終了時点でPC④の持つ予言の【真実】が公開されている。
この時点で、PC①の予言カードの【真実】が公開されていない場合、これを公開する。PC④から、怪物の住処は谷間にあるであろうことを聞いたPC達は、この村の出身であるPC①の案内で、村の外れにある渓谷へと移動を開始する。これは「危険な旅」である。PC全員は、移動判定(判定:【技術】)を行う。成功したPCは何事もなく目的地に到着することができる。失敗したPCは、仲間達とはぐれてしまう。以下の「蛇日村試練表」の結果を適用すること。全員が目的地に到着したら、3サイクル目に移行する。
蛇日村試練表 D6
どこからか笑い声が聞こえるが、周囲を見回しても人の姿はない。あなたを笑っているのだろうか。黒以外の任意の領域からインガを2つ取り除き、もう一度「蛇日村試練表」を使用する。
蜂の巣を突付いてしまう。怒った蜂達の群れがあなたに襲いかかる。【技術】で判定を行い失敗した場合「重症2」の変調を受ける。
野生の熊と遭遇する。戦うべきか、どうにかしてやりすごすべきか。【武勇】か【頭脳】で判定を行い、失敗すると2D6点のダメージを受ける。
じとじととした沼地に出る。沼の表面にぶくぶくと気泡が上がったかと思うと、次の瞬間そこから絶望の闇が噴き出してきた。黒の領域にインガを1つ配置する。
林の中、人の身体に蛇の頭を持つ謎の生物と遭遇する。こちらに対して敵意を持ってはいないようだが、気味が悪い。「臆病2」の変調を受ける。
ぬかるみに足を取られ、転倒する。さらにそのまま土手から滑り落ち、不幸にも頭から田んぼに突っ込んでしまう。全身泥だらけになり、「恥辱」の変調を受ける。
●マスターシーン「遅すぎた到着」
発生条件:2サイクル目終了時に、PC④の予言カードの【真実】が公開されていない。
PC達は行くあてのないまま、村中を歩き回った。日も暮れかかった頃、ようやく村外れの渓谷で、額に鋭い角を持った大蛇が暴れているのを発見する。PC達はどうにかして近づこうとするが、その時、夜刀神の身体から絶望の闇が噴出し、急速に周囲に広がっていく。即座に終了フェイズに移行し、強制終了の処理を行うこと。
●3サイクル目
PC達は、谷に到着する。しかしそこには怪物の姿はなく、一人の青年が佇んでいる。PC①は、その青年が親友の登呂井健一であることに気づく。マスターシーン「登呂井健一」が発生する。その後、通常のシーンを行う。シーン表は使用しない。3サイクル目の途中で、登呂井健一の予言カードの【真実】が公開された場合(つまり、PCの誰かが、調査によって登呂井の予言カードの【真実】を見て、その公開を宣言した場合)、マスターシーン「変化」が発生し、その後直ちに決戦フェイズに移行する。3サイクル目の終了時点で登呂井健一の予言カードの真実が公開されていない場合、マスターシーン「不意打ち」が発生し、その後決戦フェイズに移行する。
●マスターシーン「登呂井健一」
発生条件:3サイクル目が開始する。
登呂井もPC①に気づき、話しかけてくる。登呂井は、PC①との再会を喜び、何をしに来たのか尋ねる。PC①は、登呂井を助けるため怪物を退治しに来た、などと言うだろう。それを聞いた登呂井は、突然真剣な面持ちでPC①に、故郷の蛇日村をダムに沈めたくない、などと言う。GMはここで、NPC登呂井健一の予言カードを卓上に出し、【暗示】を読み上げること。
●マスターシーン「変化」
発生条件:登呂井健一の予言カードの【真実】が公開される。
PC達は、登呂井健一に夜刀神が憑依していることに気づく。登呂井は、ばれてしまっては仕方がない、蛇日村を守るためには怪物の力が必要だ、倒されるわけにはいかない、などと叫び、額に鋭い角を持つ大蛇、夜刀神へと変貌していく。夜刀神は、大きく咆哮を上げると、PC達に襲いかかる。
●マスターシーン「不意打ち」
発生条件:登呂井健一の予言カードの【真実】が公開されないまま、3サイクル目が終了する。
PC①がそろそろ怪物を倒しに行かなければと登呂井に背を向けた時、突如背中に激痛が走る。PC①が驚いて背後を見ると、登呂井がPC①の背に短剣を突き立てている。PC①は1D6+2点のダメージを受ける。登呂井は、蛇日村は自分が守らなければならない、そのためには怪物の力が必要だ、倒されるわけにはいかない、などと呟き、額に鋭い角を持つ大蛇、夜刀神へと変貌していく。夜刀神は、大きく咆哮を上げると、PC達に襲いかかる。
◆決戦フェイズ
●怪物
本体カードは「夜刀神」、脅威カードはパラグラフ1から順に、「滅日」、「なぎはらい」、「巻き付く」、「串刺し」、「丸呑み」とする。
●偵察ラウンド
PC③の予言カードの【真実】が公開されている場合、「滅日」の脅威カードを公開する。その後、通常通り偵察判定(判定:【頭脳】)の処理をする。
なお冒険フェイズで、PC達は既に「なぎはらい」の脅威カードの効果を受けているが、この脅威の実体を捉えたとまではいえないため、「なぎはらい」の脅威カードは当然には公開されず、改めて偵察する必要がある。
●乱戦ラウンド
通常通り、2ラウンドで処理する。
●追撃ラウンド
通常通り行う。
●戦闘終了後
PC達の猛攻に、夜刀神は苦しげに大きく身をよじると、ズシンと大きな音を立てて地面に倒れる。大蛇はそのまま、まるで大気に溶けるかのようにすうっと消えてしまい、そのあとには登呂井健一が倒れている。登呂井は、瀕死の重症を負っているようだ。この時点で、PC⑤の予言カードの【真実】が公開されている場合、PCの1人が【愛】で判定を行える。これに成功した場合、登呂井を蘇生できる。【愛】の判定に失敗した場合およびPC⑤の予言カードの【真実】が公開されていない場合、登呂井はそのまま息を引き取る。
◆終了フェイズ
●エピローグ
登呂井を蘇生することに成功した場合、登呂井はPC①に対して、謝罪の言葉を述べる。憑依していた夜刀神が、登呂井を狂わせていただけだったのだ。また、失敗してしまった場合も、死に際に登呂井は、PC①に対して何か言うかもしれない。
その後、PC達は万神殿に戻り、夜刀神討伐の報告をする。ペルセウスは、PC達を労い、褒美として何か欲しいものはあるかと尋ねる。この時、PCが蛇日村のダム建設を阻止することはできないかと尋ねた場合、ペルセウスは少し考えた後、これを了承する。その場合、PC達は後日親神から、万神殿からの強い要請に政府の方が折れ、蛇日村のダム建設計画は白紙に戻ったことを聞かされるだろう。
●強制終了
マスターシーン「遅すぎた到着」が発生した場合および戦闘で全滅した場合にこの処理を行う。全員悪夢表の結果を適用する。死亡に至らなかった場合、PC達は、万神殿で目を覚ます。ペルセウスは、PC達には荷が重すぎたかもしれないと言い、蛇日村には現在別の神子達を向かわせていることを告げる。その場合、登呂井は死亡し、村はダムに沈むことになるだろう。
●経験値の獲得
通常通り処理する。「冒険」の経験値は、夜刀神を倒した場合は50点。そこから登呂井を死亡させた場合は−10点、蛇日村のダム建設を阻止した場合は+10点する。強制終了の処理による場合は0点である。
予言カード
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