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tear
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失われる物語
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myteary · 1 year ago
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ヘグムパロディ/暴力表現有り
「琴線」
汚い小せえ餓鬼だった。
その辺に居た売婦が置いていったであろう餓鬼だ。物心ついているかついていないかなんて知らない。只当時俺の管理していたシマから女とその客が逃げたのは事実。此奴は置いて行かれたソレの……息子。
四畳半一間の狭い部屋、お世辞にも綺麗な使われ方をしていたとは言えない。万年床みたいな布団の上に丸まって、誰から助けて貰えるかも分からず、然し泣くことも叫ぶこともない、……それがこの餓鬼との出会い。
きっとそうする力も及ばずに、まるで風が吹けば灯が掻き消えそうだ。だが目だけが消える事の無い炎を燃やしていた。
逃げられたのであれば追って返して貰う、どの様な手を使ってもだ。だが、餓鬼だけともなるとそうもいかない。何せ俺は体面は警察であって、"ホンモノ"ではない……。
どうしますか、というマンネの声に、連れていけ、とだけ零した。
餓鬼は暫く俺の家で預かった。
暫くの筈、であったが、いつの間にか大きくなっていく。
あの女の形見には到底なるまい。何せ戸籍も出生届ですら何もなかった。
働かせてどうにか少しでの足しにでもするか、…とも考えられたが、当時一緒に過ごしていたマンネが世話を見ていたので、それは辞めておくに越したことは無かった。どうせ大した金にはならない。
餓鬼はまるで飢えた猫の様に飯を良く食う。
この街の店のうっすいスープの刀削麺を良く好んだ。マンネや他のメンバーが仕事をしている時、俺は此奴を良く此処に連れて飯をやった。
箸の持ち方ですら儘ならなかった癖に、大人用の赤い箸を器用に使って何杯も、何杯も食べる。俺は別のテーブルで腰掛け煙草をふかして、餓鬼の食い意地を見ていたもんだ。
それから数年が立って、組織からデカい仕事を任された。
対面する組織のガサ入れだ。だが事実それは組織を崩壊させに行く事も同時であった。相手にとっては頭とその側近を逮捕されては組は終わったも同然。予想通りに抗争へと発展した。この名高いスラムの街では何処でも銃声音は鳴り響くが、一夜で此処まで死傷者を出した抗争は久しぶりだったかもしれない。
俺らのやる仕事は表向きでは決してない、二重スパイだってあり得る話で、碌でも無い非合法にも足を突っ込む事があった。死ぬ時は布団の上で綺麗に死ねるなんて思っていない。どんな悪人であれ、どんな組織であれ…、いつかは己の成した事がその身に反ってくる。
俺は右目に傷を負い、仲間の命を失った。
一人裏切りが出たの��原因であった。寝深く潜られた内部を深く突かれる。裏切者は抗争で起きた喧噪の最中逃げていき、消息は途絶える。
友人はもう戻らない、俺らのやっていた事はいつかは返ってくる。因果応報。だがこの様な方法で俺の命にも等しい人を、失うとは思っていなかった。
組織の仕事は結果的には収めたが、成功であったとは言い難い。
残党と裏切った者を追う日々に追われ、今までに無く汚いやり口を使って……嬲り、痛め、そして闇に葬り去った。此処で書くには惜しまれる程には。
一度、その仕事帰りを餓鬼に見られた事があった。
到底人前には出らない、尋常では無い姿であった筈だ。餓鬼は拳についた俺の血を見て、マンネに両の手で目を覆われ何処かへ連れていかれた。
今更善人ぶる訳もない、彼奴の出自と俺らの出会いがそもそもその様なものではない。この街に生まれ、此処で住むという意味では、正に"正しい姿"を見ただけなのだ。その手を洗う事もなく、紙煙草に火をつけた。
餓鬼もその内、此処から追い出さなくてはならない。もう傷を負うのは、…懲り懲りだからだ。
そうともしない内に、何時しか餓鬼は消えた。
何日もうちに帰らずが続き、久しぶりの事務所のソファで寝転がり、疲れ持て余した脳内で薄らと彼奴が出て行った事に漸く気が付いた。餓鬼は恐らく見てくれは14、15にはなっていた。もう一人で生きていけない程の年齢では無い筈だ。少しばかり金は消えたが…、まあこのくらい痛くも痒くも無い。勝手気儘に生き、好きな所でくたばれ。いつも言ってた事だった。
「あの子SUGAさんの、……若い頃に似ている。組織に入る前の、今よりもっと尖ってた時の。」
帰って来ない仲間達がそういって笑っていた事が脳裏に過り、胸の内にズシリとくる重石を取り除く為に、天井へと紫煙を吐いた。
其れからの数年後、"D"と言うゴロつきがこのスラムに現れる。どうやら組織を何人かのチームで潰し、放火をし、金まで盗み取ってしまう。……、狙われた組織は汚染されたものだけが選ばれていた。慌ただしく無線やら電話が鳴り響く。
「SUGAさん、Dにやられました。アジトの金全てやられています。」
………懐かしい猫の匂いがした。
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myteary · 1 year ago
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始まりは此処で、君は覚えてすら居ない。其れが好きなのだと小さな転機物が小声で教えてくれた。覚えておこうと思って覚えたのでは無い、いつしか心の中にあった。気づくのが遅かった。低い天井の暗がりの中、蛍光灯の下で君は愉しそうに朗らかに笑う。「それは何のゲームだ」 興味を抱いたのは娯しみでは無く君自身なのに。
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myteary · 2 years ago
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attention : シーグリピアニスト(非公式設定パロ)/暴力的表現有/創作SS
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フィルムを嗅がす音とレコードを針が回る音は似ている。不規則に鍵盤を叩き、片手は灰皿へと吸い殻を押し付ける。ジリジリとした音が鼓膜に触れる事が気に入った。
焼ける匂いが堪らない何かを煽られる。此処に口遊む声でもありゃ良いのに、俺は歌を唄えない。気紛れに指が滑れば不規則な音階がとある歌に辿り着いた。目の前の椅子に深く腰をかけた後、目の奥に広がるものを追いかけたくなり、瞳を閉じる。一音から三音、片手が馴染みないコードを付いた、煙草の灰がついたままの手も添えると見事に踊る、踊る踊る、誰も居ない空虚で指が勝手に動く。生み出す"何か"を作る時、音と言うものは溢れる涙に似ている。
呼吸をついて咽せる様にえづき、目頭が燃える様な熱いものが込み上げてクる様に。一時の煌めきがさようならとはじめましてを同時に生まれる"何か"に呼ばれる様に。言葉にして出来ない形容し難いものを鍵盤は応えとして導いてくれるが、…俺は言葉巧みには話せない。何故かって?、産みの女に喉を潰されたからだ。
いっそこの身体に火を付けて燃えていく瞬間に想える楽譜を、俺は弾き切りたい、呼吸が絶え脳が停止し、心の臓が諦めるまで。…実は諦めたい、命を手放し、其れと引き換えに得られる音楽が存るのならば。理想の音に焦がれ、この手に抱いて、想い付くまでは…俺はこの屋敷で独りいつか朽ちて死ぬだろう。
回らない音に酔いながら気持ちヨくなりてぇのに唐突に終わりを告げるものが降りかかる。…御前の事だよ。開けたくもない世界を瞼から侵される。肩越しに一瞥くれてやるとその視線に思いっきり意思を込めてやった。
" ……とっととこの部屋から失せろ。"
侵入者は壁に寄りかかって嗤っていた。
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myteary · 2 years ago
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渦中に飲み込まれる黄昏に、混沌とした雑音を、全て寄り添う様に貴方のものだと覚えていたかった。淡さ際立つ可憐さよりも、凛とした決して折れない佇まいを好むものだ。痛い程の光を受け止めては人知れず何処かで泣くその横顔に、惚れなおしてはその度過ちを知るのだろう。貴方の様な人が真っ直ぐに生きるには、この世界は少しばかり五月蝿過ぎる。瞼の裏に残るは其の前を向こうと踠く姿だろうか。
艶かしく残る傷痕が
そんな貴方が好きだった、届かなかった。
そう終わる日迄。
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myteary · 2 years ago
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飛べる筈の鳥を飛ばない様にしてしまったのは誰か。どこかで聞いたのだ、観賞用の鳥の羽の一部を切り、羽ばたけない様にしてしまうと。真っ先に思い浮かべる横顔があった。観賞用、そんな生易しいものでは無い。独占欲、そんな容易く片付く言葉ですら無い。その澄んだ瞳から全ての世界奪う様に目隠しを施したのは誰か。自由、と言いながら言葉で甘く重く、縛り付けるのは、だれか。
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myteary · 2 years ago
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冷静と情熱の間に灯す光は鈍くも燻りもせずに滾滾とした焔。誘う様に揺らめき、終ぞ消える事は無い。叶うか叶わないか誰が決める訳でもなく只々虎視眈々と、瞳に俺だけが移る日を、刻々と待ち望む。一日千秋焦がれる胸の内、誰にも晒す積りは微塵も。焔は己の小さな対抗と命を賭けた。
…貴方は知る由も無い。
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myteary · 2 years ago
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帰って来ない部屋に意味等有るのだろうか。
何度も諦め聞かせては心冷め行く事を想像出来たのに、後数刻待てば今日は来るのでは無いのかと夢を見てしまう。愚かで意地張りで、何とも浅ましい。そろそろ目を閉じよう。始まりは俺だったのだから、終焉の幕を下ろすのも俺で良い。
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そうだろう、御前
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myteary · 2 years ago
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「増えたペットボトルだけが重なる日付を物語る。室内に居ればいつ太陽が上がったか何かその感覚は鈍るばかりだ。再生する、構成する、録り直す、音、音、音… ……飯は只生きる為に食う。酒は感性を研ぎ澄ませる為に。脳が熱くなったなら席を立ち狭い部屋を往復し息をつき、彷徨う刃の納め所を嗜めている」
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myteary · 2 years ago
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貴方が苦しむだけ苦しんで零れ溢れた世界が俺にとっては生き甲斐で甘い甘い生涯なのだ、貴方が生き辛く悔しみ血で描いたこの歌詞が、誰とも無くに向けた誰かに捧ぐこの曲が、俺にとっては、俺の人生を狂わせたのだと。
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貴方の修羅が俺の光なのだと。
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myteary · 3 years ago
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長い長い夜を通り越し、好奇心ばかりで悪足搔きをして来た。得体の知れない欲望と明けの知らない窓辺を拝み、いつしか此の感傷は癒すより先に膿を腫らし濃密な甘い汁として誘うに違いない。良いじゃねぇか…どうなるのか、唆られるだろ。のらりくらり夜を踊り一波越えたのなら、今は、熱く焦らして
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myteary · 3 years ago
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火を灯す音で紡がれる言葉を誤魔化した。掛け違えたボタン、音の外れたラブソング、何時迄も降りられない揺れる天秤…又は"シーソー"とでも言うのだろうか。噛み合わない言葉と想いだけがぶつかって溜息ばかりの部屋。其れが俺と御前。決まって「もういい」の合図を出すのも御前。そうだろう。
お題「誤魔化す」より
紫煙を吐き出す事でいつも濁したのは俺だ。手を離すのが怖かった。御前の寂しさを俺の寂しさで、埋めたかった。
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myteary · 3 years ago
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test 2
駄文を載せていく可能性が大いに有り得る… もしそれでも宜しければお付き合い下さい
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myteary · 3 years ago
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test
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