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Saihate Diary
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フロム地球/日本/北海道/知床
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saihatediary · 4 years ago
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Anytime, Ainutime!体験記④「創る時間〜木彫体験〜」
→前回のおはなしはこちら
木に感謝の心を込めて
朝から参加した「Anytime,Ainutime!」ツアーも、いよいよ最後のプログラム「創る時間〜木彫体験〜」。
ここで午前中に森をガイドしてくれた瀧口健吾さんが、講師として再び登場。アイヌの伝統楽器「トンコリ」を形どった木製チャームに、好きな模様を彫るのです。
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▲こちらは瀧口さん作。さすがプロのクオリティ。ハードル上がる〜
悩んだ末に、上着に付けていたバッヂ、知床観光PRのキャラクター「知床トコさん」を彫ることにした。
彫刻刀を持つなんて、何年ぶりだろう。
刺繍のときもそうだったけれど、心の揺れが直に伝わって作品に現れる。普段の生活のあり方そのものが、仕上がりの良し悪しに反映されるような心持ちで、楽しくも緊張する。緊張しつつも楽しい。
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▲塗料を塗ると溝に色が入り、彫った絵柄が浮かび上がる。うれしい瞬間。
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全員完成!チャーム全員集合!!個性が出るなあ。
ちなみに、このチャームの形、伝統楽器「トンコリ」は樺太アイヌがルーツで、本来は長さ1mほどの弦楽器。
以前、知床で知り合ったアイヌの方が「トンコリは女性の身体を模した楽器。大事に扱わないとね」と話していたなあ。優しく澄んだ音色が印象的だった。
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こちらはアイヌミュージシャン、OKIさんのトンコリ演奏。しびれる。
終了後、アイヌ衣装で記念撮影。ちょっと気が引けている。
前回紹介したアイヌ刺繍のことを思うと、この衣装が出来上がるまでにどれだけの時間と思いをかけてきたのか。想像もつかず、頭が下がる。そう感じたことを含めて、本当に体験してよかった。
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最後に、アイヌコタンぶらり
「Anytime,Ainutime!」ツアー終了後、なんとなく気持ちが高揚したまま、ほとぼりを冷ますようにアイヌコタンを歩いた。
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朝と同じ風景なのに、なんだか違って見える。
ぼんやり歩いていると、アイヌの衣装から普段着に着替え、メガネをかけた瀧口さんが、店主を務める民芸品店「イチンゲの店」に入っていくのが見えた。
そうだ。今日、このツアーでガイドをしてくれた方々は、アイヌという(私たちにとっては)いわば非日常の世界に誘ってくれつつ、当たり前だけど、ここで生活を営むいち住民だ。
コタンはファンタジーなんかじゃなく、地に足のついた……アイヌの表現でいえば「大地をしっかり掴んだ」暮らしの場なんだ。瀧口さんが案内してくれた森の木々のように、名を知り、役割を知ると、視野が開けて一気に身近になる。
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「あ、ここ、アイヌ刺繍を教えてくれた西田香代子さんのお店だなあ」
ふらりとのぞくと、同じようにふらりと入ってきた猫を、西田さんがあやしているところだった。
▼いぶかしげな猫。
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▲西田さんのアイヌ刺繍作品もたくさん並ぶ「チニタ民芸店」(引用:釧路・阿寒湖観光公式サイト)
「今日はありがとうございましたー」
「あらーもう帰るの? 今の時間帯はねえ、ここから見える雌阿寒岳が夕陽に照らされてきれいなのよー。紅葉してきたわねえ。あのふもとにあるオンネトーもすごくきれいだから、またゆっくり来たらいいよ」
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私が地元の斜里岳や海別岳のご機嫌を毎日うかがっているのと同じように、西田さんたちアイヌコタンの人々も、こうして雌阿寒岳や雄阿寒岳を愛でているんだな。仲間のように。家族のように。
話は飛ぶが。
ちょっと前に、色んな理由が重なってヒグマが街に出てきて駆除される流れは複雑な思いだ…というような話を、道外から来た旅人さんと喋っていたら「害獣がいなくなったー安心だー、という思いだけではないんですねえ」と言われ、ハッとしたことがあった。
なんというか、北海道での暮らしを通して、ヒグマを隣人だと思う気持ち、敬うような気持ちを自然に自分が持っていることに気付かされた。
その思いを突き詰めていった先に、あらゆる動植物にはカムイが宿り、役割があるというアイヌの教えに行き着くのかもしれない。
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『カント オㇿワ ヤク サㇰ ノ アランケㇷ゚ シネㇷ゚ カ イサㇺ=天から役目なしに降ろされた物はひとつもない』
今回のツアーでは、自然を敬い、畏怖し、共生するアイヌの叡智に触れることができた。
それは「異文化」ではなく、日常生活の延長線上にあるもの、道東に住む私にとっては「共感」するものが多々あった。
はじめは言葉遊びのように聞こえた「Anytime,Ainutime!」に、今は「YES!」と親指を立てたい。(了)
▶️アイヌ文化ガイドツアー「Anytime, Ainutime!」
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やっぱり買っちゃったまりも羊羹、かわいい。
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saihatediary · 4 years ago
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Anytime, Ainutime!体験記③「食の時間」と「創る時間〜刺繍体験〜」
→前回のおはなしはこちら
歓喜!「食の時間」アイヌ料理のフルコース
森や湖を散策した後は、アイヌ料理の店「民芸喫茶 ポロンノ」さんへ。
ポロンノは、前回紹介した音楽ユニット「カピウ&アパッポ」メンバーのお一人、郷右近富貴子さんと、夫の好古さんが営んでいるお店だ。実は、何回かお茶をしに行ったことはありますが、料理をいただくのは初。とても楽しみ。
▼とても賑わっていた店内。この時のBGMはYMO。独特のセンスが感じられる選曲が楽しい。
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▲鹿肉はモミジ、猪肉はボタン、馬肉はサクラ…って言いますね(ジビエトリビア)
まず最初に出てきたのが、カパチェプルイベ(ヒメマスのルイベ)と、エゾシカ肉のルイベ。
「えっ…凍ってる…!???」
目を丸くし、文字通り凍りつくベアさん&ピタさん(同じツアーの参加者)。
ここで、道産子であり港町育ちの私が出しゃばった。
「北海道では半解凍のまま食べる刺身をルイベって言うの。冷凍すると保存がきくし、寄生虫も死滅するんですよ〜〜(ドヤ顔で)」
ちなみに、ルイベ��アイヌ民族発祥というのは後から知った。アイヌの知恵、無尽蔵なり。
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続けて出てきたのが、左から
・アマム(豆やいなきびの入った炊き込みご飯) ・メフン(鮭の腎臓の塩辛。アマムとの相性抜群。ご飯がススム) ・ラタシケップ(カボチャ、とうきび、豆、シケレペの実などを合わせた和え物。地域ごとに食材は異なるそう) ・コンブシト(昆布タレがかかった米粉団子。コクのある甘さが最高)
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最後に真打ち登場、エゾシカ肉と山菜の具だくさんスープ「ユックオハウ」。
昆布と塩だけというシンプルな出汁に、シカ肉の旨味が映える。散策で冷えた体に染みること染みること…。食後にいただいたシケレペの実を煎じたお茶も、爽やかにおいしかった。
アイヌの食文化は、狩猟採集がベースだ。山菜や果実を乾燥させたり、肉や魚も燻製や塩漬けにするなど、厳しい冬を乗り越えるためのアイデアに満ちている。ルイベ然り、自分たちが当たり前に味わっていた調理法が、アイヌ発祥というものも多いはず。
手を合わせて、覚えたてのアイヌ語でつぶやいた。ヒンナ……。
「創る時間〜刺繍体験〜」ひと針から知るアイヌの思い
午後は、再び阿寒湖アイヌシアターイコロへ。
今度は、アイヌ刺繍のワークショップだ。学校でいえば給食後の時間は決まって眠くなる。そんな時間に、最も集中力を要する授業を受けるのだ。気合いだ。
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先生は、西田香代子さん。
オホーツク管内端野町(現・北見市端野)出身。阿寒湖漁協で事務員をしているときに阿寒湖アイヌコタンの「チニタ民芸品店」を営む西田正男さんと結婚し、お姑さんのアイヌ刺繍を手伝ううちに才能を開花させ、いまや優秀工芸師として数々の賞を受賞しているスゴイ方。
アイヌ刺繍の基本は、フランス刺繍と同様のチェーンステッチ。アイヌ語では「オホ」と呼ぶ。実は小学生のころ手芸クラブだった私は、わりかし得意だったことを思い出し���。
しかし……
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びっくりするくらい手が思い通りに動かない。チェーンの大きさもバラバラ。技術を磨かず流れた歳月に敗北した…。
ふと見ると、ベアさんとピタさんも苦戦している様子。「あ〜だめだ〜」「先生〜変なふうになっちゃいました」
ピーチクパーチクと声を上げる我々に「どれどれ」「あら〜」と根気強く優しく指導してくれる西田さん。まるで母。
しかし、オホのコツをつかむと心が凪いでいき、集中する気持ち良さに目覚めて、西田さんと会話する余裕も生まれた。それは、すごく大事な時間になった。
−−アイヌ刺繍は、どなたから習ったんですか?
「最初はお姑さんからやってみてって頼まれて、刺繍した布を、商品として仕立てていたの。お小遣いに目がくらんで(笑)。そのうちに、刺繍のデザインも頼まれてね」
−−刺繍の仕事は、季節によって忙しさに波がありますか?
「季節とかは関係なくて、基本的に気分が乗らないときは絶対に針を持たない。気持ちが刺繍に出ちゃうから」
−−刺繍の文様は、各家庭によって違うんですか?
「そう。自分でデザインするのよ。今、あなた方が縫っている文様が基本なの。渦巻きのゆるやかな曲線は『モレウ』、トゲのような線は『アイウシ』と言って、魔除けになる。これらを組み合わせることでいろいろな模様になるの」
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▲西田さんの作品集「テヘカラペ」より。基本の模様の組み合わせで無限に広がるデザインの宇宙。
「誰もがたくさん文様が入っている着物を着���れるわけではないのよ。その人の人格とか、皆から尊敬されているかどうかとか判断して、見合う文様を縫わなくてはならない。お金があるからって、好きなだけ材料を買ってたくさん文様を縫ってもらうこともできるけれど、昔は自分にふさわしくないものを身につけていたら笑われたものよ」
−−確かにそうですね。お金にものをいわせて、とってつけたように立派な文様の衣装を着ても…
「…似合わないよね。だから、毎日正しい行いをすることね。不誠実に生きている人が、文様を付けたから神様守って下さいって言ってもね、届くわけがない。それはそれは厳しいものよ」
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−−謙虚でいることが大切なんですね。
「そう。この針への感謝も忘れない。昔のアイヌは、針をなくしたら一大事。ご近所さんも集まって探したの。そのときにSOSを出す、危機を知らせるための声を『ケウタンケ』って言うの。人間が近づいたときにエゾシカが森の仲間に伝える、キイッていうような声で、遠くまで響かせていたそうよ」
−−午前中の瀧口さんのツアーでも「針1本を手に入れるのにヒグマの毛皮1枚や、キツネの毛皮3枚と交換するぐらいの価値があった」と聞きました。
「今のように金属の針が出来る前はね、シカの足の横の細い骨で針を作っていたの。シカのアキレス腱で糸も作っていた」
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▲ピタさんが一足早く完成。
西田さんとお話しているうちに、どうにか一つ作品が完成した。すごい達成感。
そして、最初の一針を刺したときとは、少し心構えが変わっていた。
刺繍を通して、誰かを思う気持ち、道具(針)の大切さ、それらを受け継いできた人々の、重い思い…西田さんから教えてもらったアイヌの心は、人生の支えになるような学びだった。自分も、この刺繍に見合うような生き方をしたい。
▼西田さんが縫った見本。裏の縫い目も美しい。今なら素晴らしさがわかる。
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▲西田さんが着ていたベスト。GUCCIのモノグラムに誘発されて作ったそう。尽きぬチャレンジ精神に痺れた。
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<次回予告> いよいよフィニッシュ。トンコリに何彫ろう? そして、最後にアイヌコタンぶらり。
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▶️アイヌ文化ガイドツアー「Anytime, Ainutime!」
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saihatediary · 4 years ago
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Anytime, Ainutime!体験記②「湖の時間」後編
→前回のおはなしはこちら
阿寒湖畔で童心に帰る
アイヌは木を「地面から生えている」のではなく「大地をつかんでいる」と考えていたそう。木それぞれにカムイが宿り、大地を守り、数多の動植物の命を育んでいると。
だからこそ、無駄に切らず、必要な分だけ大切に使う。これは、今に生きる私たちも、強く意識しなければならないことだと思う。
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倒れた木から、新たな芽が育ち世代交代する「倒木更新」のひとつ。
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イオルの森にある看板。瀧口さんのガイドを受けた後だと、心にスッと入ってくる。
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散策中に聞いた樹木トリビアは30個以上!エピソードいっぱい。書ききれなかった。
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雄阿寒岳と阿寒湖が見えるスポットで、おもむろに歌い始めた瀧口さん。動揺してピンボケしちゃったが、ものすごくお上手でした…!
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瀧口さんが歌った「マリモの唄」は昭和28年に安藤まり子さんという歌手が歌ってヒット。阿寒湖観光の定番曲で、湖畔に歌碑もある。
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散策路に捨てられていた、懐かしの「ファンタ」缶…。何十年経っても土に還ることはない、という教訓のために、あえて置いたままにしているそう。ポイ捨てダメゼッタイ。
イオルの森を抜けて、少し歩くといきなり視界がぱっと開けて阿寒湖畔へ出た。日本百名山のひとつ、雄阿寒岳がかっこいい。
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景色に見とれていると、昔のアイヌの子どもたちがしていたという「カリプ遊び」が始まった。歩いているうちに、もはや普通に杖代わりに使っていた棒(テックワ)、こんな使い方もあったのですね。
「カリプ」というぶどうの蔓で作った輪による輪投げ遊びで、ひととき童心に返った。というか、今日は返りっぱなしだなあ。
帰る途中、瀧口さんの父、政満さん作の阿寒湖小学校(今春閉校)の門柱を見つけた。かわいい。
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政満さんはシマフクロウをはじめ野生動物や女性の像などの木彫り作品が評価され、厚生大臣賞や道知事賞も受賞している名匠。2017年に亡くなられたが、こうして阿寒の随所で作品が見られるのだ。日常と、匠の作品が自然に融合しているぜいたくさよ。
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ツアー後、ホテル「あかん悠久の里 鶴雅」の瀧口政満作品にも会いに行った。優しい風が感じられた。
こちらは瀧口さんの姉、夕美さんの著書。アイヌやウイルタなど先住民族ルーツの女性たちの人生を取材したルポルタージュ。今回のツアーのだいぶ前に出会っていた本。観光とアイヌの関係性、民族としてのアイデンティティについて考えさせられる。
<次回予告> アイヌ料理のフルコース!ふくれる腹を抱えながら「創る時間」に突入!刺繍を通して触れたアイヌスピリットとは!? 12月19日(日)更新予定。
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▶️アイヌ文化ガイドツアー「Anytime, Ainutime!」あ++
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saihatediary · 4 years ago
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Anytime, Ainutime!体験記②「湖の時間」前編
→前回のおはなしはこちら
憧れのムックリ
「これから皆さんに、ムックリを作ってもらいます」 アイヌの自然ガイドで木彫り作家、瀧口健吾さんが告げる。
わー…学生時代、技術の授業が一番苦手だったんだよな…と、一瞬ひるむが、何のために自宅から100㎞の道のりをドライブしてきたのだ!と己に喝を入れる。
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ムックリは、竹製の薄い板についた紐を引いて弁を振動させ、口の中で共鳴させて音を出す口琴の一種。
簡単に作れるキットを用意していただいたので、振動させる部分の板(弁)を薄く削り、紐を通せば完成というシンプルな作業だ。
しかし、板の厚みで音の良し悪しが決まるので気は抜けない。どうしても恐る恐る削ってしまい、案の定、遅れをとってしまった。
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瀧口さんにサポートしてもらって、なんとかムックリは完成。果たして、うまく鳴らせるのか。
まずは、瀧口さんが手本を見せてくれる。
「ミヨオォ〜〜〜ン…ビヨオォ〜〜〜ン」
これこれ。この、脳幹が揺さぶられるような音!
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さて自分といえば、もう悲しいほど鳴らない。 紐を引っ張る音だけが、ビン!ビン!と虚しく響く。
「ブルース・リーの拳法のような手つきで、素早く引っ張って」 「親の仇をとるくらい、左手はムックリをガッツリ掴んで」
瀧口さん独特の指導に従って頑張るうちに、わずかながら音が鳴るようになった。
実は、ムックリ演奏はアイヌコタンの姉妹音楽ユニット「カピウ&アパッポ」のライブなどで聴いて以来、密かに憧れていたのだ。
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▲ウタサ祭り2021 - GOMA×阿寒口琴の会(カピウ&アパッポの二人も含む)の演奏
本当に上手い人の音色には力強いビートが感じられ、心地よさに軽くトリップしてしまう。
「ムックリは、おもに女性が演奏し、恋しい男性に向かって夜に鳴らしていたそうです。風の音や、子グマなど動物の鳴き声、屋根からの雨だれの音なども表���するんです。音色で誰なのかわかり、携帯電話の呼び出し音みたいな感じ」と、瀧口さん。
カムイ(神)が宿る自然の風景を、音で描く。それは、アイヌの精神そのもの。
アイヌにとって音楽を奏でることは、日常生活の一部なのだなあ。歌も、踊りも、手工芸品づくりも。
イオルの森で怒濤の樹木レヴュー
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続いて、アイヌシアターから出てすぐ近くの「イオルの森」へ。
ここで、少し瀧口さんの紹介をさせていただきたい。
瀧口健吾さんは、阿寒湖三大巨匠のひとりである木彫作家・瀧口政満さんとアイヌ民族の百合子さんの間に生まれ、政満さんの跡を継ぎ、阿寒湖アイヌコタン内の民芸品店「イチンゲの店」を営みながら、自然ガイドも行っている。オーストラリアへの留学経験もあり、英語も堪能だ。
そんなルーツを持つ瀧口さんとの森歩きは、いつもと違ったものになるはず。いやがおうにも期待が高まる。
▼森の手前に置いてあった大きな丸太。チプ(アイヌ語で丸木舟)になるらしい。
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▲丸太の両脇の木。「まじないで丸太を守っている」そうで、こういう光景が普通に見られる。
ちなみに「イオルの森」の「イオル」とは、アイヌ語で「狩場」を意味する。
衣食住に関する物の材料をまかなうため、動物の狩猟や植物の採取をしてきたアイヌ民族にとって、森はスペシャルな場所なのだ。
▼森に入る前の、オンカミ(礼拝)。手をこすり合わせ、前へ…右へ左へ…上下させる…自然と厳かな気持ちになる。
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▲長い棒「テックワ」を持たされる。杖にしたり、先端に荷物をかけたり、木の実を採取するときなど、幅広く重宝された散策の道具なのだそう。
まず、瀧口さんは森の神様へ挨拶し、自分たちの安全を祈願する儀式「カムイノミ」を行う。「イナウ」という木の祭具を地面に刺し、アイヌの言葉を唱えながら塩と米、刻んだタバコの葉をカムイに捧げた。少しの緊張とともにワクワク感が増幅する。
ここからが瀧口さんの本領発揮、歩きながら怒濤の樹木レヴューが始まる。
「ナナカマドは独特のにおいがあるので、扉に立てて病魔を追い払ったり、木くずを湿布代わりに使ったりもしました」
「ヤナギはイナウを作るため、特にまりも祭り(特別天然記念物のまりもの保護を願う祭り)ではたくさん使われます。飢えに苦しむ人々をカムイが哀れんでヤナギの葉を川に放つと、シシャモになって帰ってきたというアイヌの伝説もあります」
「ヤチダモはとても固いので、家具づくりや子グマの檻などに使われました。野球のバットの材料としても活用されるんですよ」
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▲シケレペはキハダの実。柑橘系の味がした。腹痛や二日酔いの薬として食べたり、煎じてお茶にもするそう。森を歩くだけで、こうしたアイヌの生活の知恵に無限に触れられる。
メモを取る手が追いつかないほどの情報の嵐、いや、暴風雪。一つひとつの樹木に対し、アイヌの生活と密着したストーリーがあり、どれも興味深い。
ネイチャーツアー自体は知床でも経験済みだが、今回のガイド、瀧口さんがアイヌの木彫作家ということもあり「この木がアイヌ語でどんな名と由来を持ち、何に使われるのか」にポイントを置いた解説は新鮮だった。
<ボリュームありすぎで後半に続く〜〜!! 12/12(日)更新予定>
▶️アイヌ文化ガイドツアー「Anytime, Ainutime!」
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saihatediary · 4 years ago
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Anytime, Ainutime!体験記①プロローグ
身近すぎるからこそ…
初めて行った阿寒は、中学校の研修旅行だった。
北海道内でも屈指、蛇のごときワインディング・ロード「阿寒横断道路」を超えた先、温泉の湯気とともに漂う独特の異世界感。
約15万年前の噴火により生まれた阿寒湖と、マリモとの遭遇。昭和レトロな旅館で大騒ぎしたこと、地元・知床とは比較にならないほど軒を連ねる民芸品店に仰天したこと、悩んだ末にマリモ羊羹をお土産に買って帰ったこと。そんな他愛もない、断片的な記憶がある。
▼1934年、阿寒国立公園のポスター第1号(via. 弟子屈なび)
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▲こちらも昭和の観光ポスター。アイヌのお姉さんがムックリを弾く姿がかわいい。阿寒湖の典型的なイメージのひとつ。
その後、再び阿寒との縁が生まれたのはここ5、6年ほどのこと。
ナチュラリストの友達の誘いで、きのこ・粘菌写真家でもある自然ガイド新井文彦さんの案内で森を散策したり(きのこ観察に絞ったツアー、めちゃくちゃ楽しかった!)阿寒町商工会青年部主催のハイキング(地場産食材のランチバイキングが素晴らしい…あまり教えたくない…)に参加したりと、断続的に遊びに行っていた。
…とは言うものの、実はこれまで阿寒湖の代名詞でもあるアイヌ文化に触れる観光は、ほぼしていない。
興味がないわけではなく、むしろ、アイヌの歴史や文化は道産子の自分にとっては身近なものだ。そもそも道内の地名に代表されるように、アイヌ語ルーツの言葉も周囲にあふれている。言い訳すると、当たり前に受け止めてきたからこそ、あらためて向き合う機会を逃してきたといえる。
かつて、関口宏が司会の「知ってるつもり?!」という教養番組があったが、まさにそんな心持ちでこのほど、阿寒湖でアイヌ文化ガイドツアー「Anytime, Ainutime!」に参加してきた。
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阿寒湖温泉のアイヌコタンを舞台に、「森」「湖」「ものづくり」の3つの要素を通して、一日いっぱいアイヌ文化を体験する試みだ。
コタンはアイヌ民族が暮らす集落を指し、阿寒湖は36戸、約120人からなる道内最大のアイヌコタンとして知られている。ガイドは、そこに暮らすアイヌの方々。もうそれだけで気持ちが引き締まる。
ぶらり、夜の阿寒湖温泉
せっかくだから身も心も阿寒にどっぷり浸ろうと、張り切って前日入りした。
霧の阿寒横断道路を冷や汗をかきながら車でひた走り、ホテルのチェックインもそこそこに「Anytime, Ainutime!」ツアーの前哨戦として、「阿寒の森ナイトウォーク カムイルミナ」と「阿寒ユーカラ ロストカムイ」を体験した。
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いずれも2019年から始まった取り組みで、カムイルミナは阿寒湖のほとりにある「ボッケの森」を舞台にした散策型のアトラクションだ。
ちなみに、ボッケとはアイヌ語で「煮え立つ場所」。熱い泥が地下から噴出する、地質現象の「泥火山」があることを指している。まさに阿寒の大地のエネルギーが感じられるスポット。
森の中ではアイヌのユーカラ(叙事詩)をベースにしたプロジェクションマッピングが展開され、光と音と動植物の物語に彩られた約1.2㎞の道のりを歩く。
案内役の���クロウに誘われる内に、さながらRPGの主人公になった感覚に陥り、心と体がバチバチに覚醒してしまった。今日、眠れるだろうか…。
続いて「ロストカムイ」。
阿寒湖アイヌシアター「イコロ」で行われる、アイヌ古式舞踊とデジタルア���トが融合した演目だ。
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動植物はもちろん、自然現象のあらゆるものにカムイ(神)があると信じられているアイヌの世界観を表現した舞台で、特に敬ってきた「ホロケウカムイ(アイヌ語で「狩りをする神」。エゾオオカミを指す)」にスポットを当てている。
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「天から役目なしに降ろされたものは一つもない」…アイヌのことわざから伝わる、(人間の都合で絶滅させられた)エゾオオカミへの思い、そして自然と人間の共生への願いが凝縮された渾身のパフォーマンス。
特に、女性たちが長い黒髪をバッサバッサと振り回して、嵐で揺れる松の木を表現した古式舞踊「黒髪の踊り」の肉体的グルーヴ感にすっかり魅了されてしまった。
アイヌの人々はこうして、歌で、踊りで、心身に動植物のスピリットを刻みこんできたのだろう。
「Anytime, Ainutime!」のプロローグとして、最高の夜を満喫した。
帰り道、ぶらり温泉街。
非日常の世界へ誘う気満々のアイヌコタン入り口。 阿寒湖周辺では工芸品に目を奪われて、なかなか宿までたどり着かない。
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コタンの「実践工房アシリ」さんでは、作りかけの作品を見せてもらった。かっこいい。
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「来たぜ阿寒…」と実感させられる建物。
Anytime, Ainutime!「湖の時間」
さて、前置きが長くなりましたが。いよいよ、翌朝から「Anytime, Ainutime!」ツアーが始まった。私のほかの参加者は、札幌で子ども服ブランドや旅行会社を営んでいるイギリス人のピタさんと、同じく札幌在住、会社員の傍ら北海道内の観光や生活の情報を発信している、台湾人のベアさん。
朝のアイヌコタンは、昨夜の幻想的ムードとは打って変わった爽やかさ。
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合流して歩き出してからすぐに、ピタさんとベアさんが「あっ!!」と同じ場所で立ち止まって大喜びしている。
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おねだりきつね。 観光客のSNSなどで人気らしい。知らないこと色々あるなあ…。
集合場所のアイヌシアターイコロに到着すると、今日のガイドの一人、アイヌ民族の自然ガイドで木彫作家、瀧口健吾さんが民族衣装をまとって待っていた。かっこいい��
「これから皆さんに、ムックリを作ってもらいます」
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わー…学生時代、技術の授業が一番苦手だったんだよな…と、一瞬ひるむが、何のために自宅から100㎞の道のりをドライブしてきたのだ!と己に喝を入れる。
<次回予告> 果たしてムックリは無事作れたのか?そして鳴らせたのか?期待半分でお楽しみに。12/12(日)更新予定。
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▶️アイヌ文化ガイドツアー「Anytime, Ainutime!」
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