#中世ヨーロッパ ファクトとフィクション
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misasmemorandum · 2 years ago
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『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』 ウィンストン・ブラック 大貫俊夫 監訳
中世(5Cから15C)に関する迷信について一次資料を出しながら検証する。
1)中世は暗黒時代だった:中世をはローマ帝国以降ルネサンス前の文化/文明のない暗黒時代と誤解されている。5〜8Cは確かに知的面は衰退したが、11〜15Cは人口増加により都市化し、交易が活発化、芸術的な創造性が復興し、リテラシーが拡大された。
中世ヨーロッパのほとんどの住民は、まさに後期ローマ帝国時代に侵攻内し定住した蛮族の末裔だった...。フランク族、アングロ=サクソン族、ロンバルド族、(スペインやプロヴァンス地方の)西ゴート族などは、みなすみやかにキリスト教に改宗し、ローマ法や統治の基本構造をある程度受容し、ヨーロッパの諸国家や文化的諸地域として今に続く諸王国を創建した。(pp44−45)
2)中世の人々は地球は平らだと思っていた。BC6以降から地球は球形だと言うのが西洋文明の共通認識だった
3)農民は風呂に入ったことがなく、腐った肉を食べていた。入浴は前に読んだ本の通り。腐った肉を食べるために必要なスパイスの方が肉よりよっぽど高価
4)人々は紀元千年を恐れていた。一部の人がそうだっただけ。
5)中世の戦争は馬に乗った騎士が戦っている。ゲームの影響による錯覚。中世の戦争にあっては、むしろ希少要素。ほとんどが歩兵だった。
6)中世の教会は化学を抑圧していた。ローマ帝国と中世における「科学」とはアリストテレスによるギリシア自然哲学。異教のものになるけど。これは、当時のカトリック教会を攻撃しようとした近世/近代の著述家たちによる創作。現代の科学とは異なるが、当時の科学はあった。
7)1212年、何千人もの子どもたちが十字軍遠征に出立し、そして死んだ。こう言われてるのは、当時のカトリック教会の腐敗していたと、当時の親たちが薄情だったと、十字軍がいかに無秩序だったかと攻撃したいから。近代の著述家による創作。1870年の神学教授や20Cの十字軍史家など。これを主張することによって、中世の人々は、神の力、キリスト教徒のエルサレム奪回を確信し、十字軍に行こうとしない大人をけしかけた。近代の人々は、カトリックが支配する中世ならではの悪、野蛮、蒙昧、残酷の象徴、中世カトリック聖職者(子どもたちを送り出した)とイスラム教徒(子どもたちを奴隷にした)の双方を非難出来るから。
8)ヨハンナという名の女教皇がいた。「女教皇に関する一連の言及はオリジナルの手稿には存在せず、十四世紀や十五世紀に複写した写字生が付け加えた」ものだそうだ。ヨハンナがいたとされる855年、896年、1099年は教皇周りが混乱していた。896年の1年間に教皇が3人いたりしたそうだ。一人は6日くらいで死亡した。何故女性教皇がいたと伝説が生まれたかと言うと、「おそらくローマ住民が、異教の神像を誤解して女性の教皇の表象だと思い込み、作り上げだ(pp262−263)」からだろうと著者は言う。後世の写字生が書き加えているのを見つけたのはすごいと思うけど、これは疑問が残るよね。
9)中世の医学は迷信にすぎなかった。がれのす(130−210)の体液理論を基礎にして、*当時の*理論があった。
10)中世の人々は魔女を信じ、火あぶりにした。15Cより前に魔女として処刑されたのは1324年アイルランドに一人だけ。性的で悪魔と結託した魔女はルネサンスと近世の産物。ほとんどの魔女狩りは啓蒙時代と言われる17Cにプロテスタントの地域で起こって、世俗の指導者により行われた。
11)ペスト医師のマスクと「バラのまわりを輪になって」は黒死病から生まれた。クチバシをつけたペスト医師の絵は17Cから。1619年るい13世の侍医が15cmのクチバシを使っていた。中には香料や香草が入っている。この他に「瘴気」、毒性のある腐敗した空気を防ぐために、ブーツ、ロングコート、帽子、手袋を使う。この「バラの〜」は知らなかった。
最後に、間違った歴史認識をする「くせ」のようなものを翻訳者があとがきに書いている。
①短慮軽率型:一つ、あるいは数少ない資料に記された内容を時代全体に敷衍すること。
②優劣比較型:異なる時代、異なる地域と比較して優劣を決めてかかること。
③人身御供型:歴史的な出来事の原因・責任を、何かしらの先入観に基づき、何か一つの主体に押しつけること。
肝に銘じないとね。
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kihromah · 2 years ago
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June 12 2023 at 11:34AM - Mastodon -
ちなみにこちらの『中世ヨーロッパ:ファクトとフィクション』ですが、レイトとこぶしゲームクラブの元メンバーである(本人もうそのことを覚えてなさそうだけど)成川岳大さんも翻訳に関わっています @[email protected] https://ift.tt/sRwpBnu
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sendaihiscafe · 4 years ago
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せんだい歴史学カフェ 第112回放送「『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』を語る」
放送予定:2021年11月22日(月)21時~
せんだい歴史学カフェは、仙台で西洋史を研究している若手研究者有志が、歴史学の面白さをわかりやすく伝えるために始めたインターネット番組です。放送はツイキャスで行なっています(https://twitcasting.tv/sendaihiscafe/)。
今回のせんだい歴史学カフェでは、歴史学界隈だけでなく、中世ヨーロッパを中心とした歴史創作やファンタージ―創作界でも話題の書物、ウィンストン・ブラック著『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』https://www.heibonsha.co.jp/book/b557936.html を取り上げたいと思います。監訳者の大貫俊夫さん(専門:中世ヨーロッパのキリスト教修道制)https://researchmap.jp/ohnukiをお招きし、本書の特色や、監訳者としてどのようなことを考えたのか、本書を通じて伝えたいことなどをお聞きします。
歴史学カフェは Live 放送中のコメント欄、ハッシュタグ(#SendaiHisCafe)付きツイートを通じたみなさまからのご意見、ご質問を受け付けています。視聴者の方々とやり取りしながら、放送を進めていこうと思いますので、お気軽にコメントしてみて下さい!
それでは、どうぞお楽しみに!!
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