#君とふたり枯野をゆけば
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12月22日(日) open 12-18
今週も皆さまありがとうございました。 閉店してすすっかりと暗くなった店内ですが、入り口に一遍の詩を貼りました。 いつもフリーペーパー「紙漉十二月」を届けてくれる木下太尾さん が、詩集『君とふたり、枯野をゆけば』と、ずっと自分が欲しいなと思っていた、木下さんの漉いた和紙で作られたレターセットを届けてくれました。 木下さんの活動などがわかりやすく伝わる何かがあるといいな、と思っていたら、何種類かの詩を和紙に印刷したフリーペーパーのようなものを持ってきてくれました。 お持ちいただける、手触りの良い、詩のご用意がありますよ。 自然とすぐ隣に息づいた木下さんの詩と和紙。 これはもう、私の言葉は必要なくて、実際に手に、目に、してみて欲しいです。
今週、本を取り扱ってほしいという依頼を断わりました。 最後の最後まで嫌な気持ちをこちらに抱かせる依頼でしたので、どうしたらこんな風に想像力を欠いた行いが出来るのだろうと、もやもやしていたのですが、そんなことが吹き飛ぶくらい、たくさんの方からの素晴らしい作品や、素晴らしい愛ある活動を見せていただきました。 皆さまいつも本当にありがとうございます。 来年以降のお店の方針や思いがあるので、また改めて皆さまにお伝えできたらと思っています。
来週が今年最後の営業となります。 どうぞ2024年最後まで、よろしくお願いいたします。
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翌日、嶋田は図書室にいた。昨日も出勤はしていたがサテライト授業があり、忙しかった。一応、大手予備校の講師の説明だけでは解らない生徒の為に詳しい解説をしてあげなければならなかったのだ。特別進学コースと言っても、皆、大手予備校の講師の説明が解るとは限らない。
この日は、特に急ぎの仕事もなかったのでノートパソコンを持ち込み、小説の執筆をしていた。彼は、一人の体育教師に片想いをする中学生を主人公に小説を書いていた。大樹の私小説が、この小説を書くきっかけとなった。
嶋田も、中学時代に同性に対し興味があることを悟ったが、異性に全く興味がなかった訳でもないので、なかなか自分自身の中で受容できずにいた。周囲は専ら異性に興味があったし、実際に自慰の対象としていたのは異性だった。
しかし、高校に進学するにつれて興味が同性の方が強くなっていくのを感じた。嶋田は中学校を卒業する前に一人の女子の同級生と付き合っていたが、互いに違う高校に進学するとおのずと疎遠になっていった。彼女は私立T女子校、彼は県立M高校だった。
この頃から、嶋田は小説を書くのが好きで、部活動も文芸部に所属していた。当時は文豪と言われる作家の作品は一通り読み、彼なりに文体も研究していた。顧問の教師からは、
「嶋田君の書く小説は、しかし内容がイマイチ」
と酷評だった。何をテーマに書きたいのか見えてこないと言われていた。同級生からは、
「もっと気楽に書けば?」
と、あまり正統派を貫かない方がいいともアドバイスを受けていた。
嶋田は、周囲から自分が書いた小説がなかなか評価されないことに不満だった。色々研究しているのに、何故? それでも、自宅と学校の往復で一日が終わる毎日を繰り返しているから、おのずとそれが小説の内容にも反映されてしまうのだと、次第に考える様になった。何か刺激が欲しい…。いつしか、彼は学校の帰りにこっそり、当時水戸駅北口にあった成人映画館に足を運ぶ様になっていった。この時は、高校生と気付かれない様に予め学ランをスポーツバッグの中に突っ込んで館内に入った。目前に映し出される、肉欲のままに男体にまたがりエクスタシーに酔い痴れる女の表情を見ながら彼は興奮し、トイレの個室で自慰をすることを繰り返した。最初はただ肉棒をしごくだけであったが、徐々にあたかも誰かに肉体を弄ばれているかの様に乳房をまさぐったり、激しく身体を揺さぶったりしていた。
「あッ、あん!」
唇を舌で舐め回し、肛門の奥に潜む前立腺がうずくのを感じながら、彼は自慰を楽しんでいた。
或る日、学校で嶋田は一人の教師に呼び止められた。授業でも部活動でも接触したことがない、全く面識のない男性教師だった。
その教師は、谷田部大輔と言った。普段は一年生の数学を担当していた。当時、彼は三十代後半だった。黒縁の眼鏡をかけ、背が高かった。嶋田は嫌な予感がした。空き教室の一室に連れて行かれ、
「君、駅前の映画館でよくオ○ニーしてるだろ?」
と露骨に聞いてきた。嶋田は否定したが、
「オレもよく行くンだ。で��ければ、言いふらすぞ」
「先生、何様!?」
「『何様』って…生意気だぞ!」
谷田部は嶋田に平手打ちを食らわすと、彼を床に突き飛ばした。両手���押し付けると乱暴に唇を奪い、学ランを脱がせた。
「や、やめて!」
そう嶋田が声を上げると、谷田部は再び平手打ちを二度食らわした。そのまま嶋田は気絶してしまった。
気付くと、そこに谷田部の姿はなかった。しかし、ワイシャツはボタン全部が外され、スラックスとブリーフは空き教室の隅に脱ぎ捨てられていた。床には、恐らく彼が跳ばしたのだろう、乳白色のねっとりとした淫液が点々としていた。嶋田は下半身の穴に鈍い痛みを感じた。この時、彼はようやく自分が犯されたのだと認識した。
「あぁぁぁぁぁ!」
彼は悲鳴の様な声を上げ、慟哭した。誰か助けに来ないかしら? 平手打ちをされた際に外れてしまった眼鏡を探しながら、彼は泣き叫んだ。
結局、その空き教室は職員室が併設されていない校舎の中にあったので、人気はなかった。声も涙も枯らした状態で、嶋田はようやく制服を着て、フラフラと真っ暗な廊下を歩いて校舎を出た。
翌日、嶋田はいつもの様に家を出たが学校へは行かず、県立図書館の自習室で勉強をした。途中、文芸部で書いている小説に目を通し、周囲が面白いと思わない原因は何か模索した。その最中に、彼は昨日の出来事をフラッシュバックし、気分が悪くなってしまった。トイレの個室でしばらく嗚咽を上げ、周囲がそれに気付いたのか職員が駆けつけた。
このことはすぐ学校に知られ、教育指導の池野辺勝が迎えに来た。職員が事情を説明すると、池野辺は声をかけた。
「嶋田、大丈夫か?」
「…」
「とりあえず…学校で話を聞く。大丈夫、怒りはしないよ」
「…はい」
池野辺は、普段は野球部の顧問をしていた。保健体育を担当し、角刈りでサングラスに似た、レンズにブラウンのグラデーションが施された眼鏡をかけていたが、よほど校則から外れたことをしなければ優しかった。涙目でうつむいてばかりの嶋田の背中を擦り、
「よほど学校に行きたくない、辛いことがあったンだな?」
と、そっと彼を介抱した。
学校に着き、職員室隣の相談室に嶋田は通され、テーブルを隔てて池野辺が座った。彼は、嶋田の首筋に青あざがあるのを認めた。何故、そんなところに…?
「嶋田。その首にある『青なじみ』、どうした?」
「『青なじみ』?」
「何だか、噛まれた様な?」
嶋田は、恐らく気絶している間に谷田部が痛烈な接吻を食らわせたのかと思った。それより彼は、谷田部の「肉棒」に��半身の穴を挿入された痛みの方が強かった。再び、あの時の光景がフラッシュバックし始めた。嶋田は全身を震わせ、声を上げて泣き始めた。
「オ、オレ!谷田部先生に、犯されたンだ!無理矢理、ビンタされて制服も脱がされて…。ケツの穴掘られちゃったンだ!」
「嶋田!?」
「先生、怖い! また谷田部先生に犯される! 助けて!」
錯乱した嶋田は池野辺の方に回り、しがみ付いた。戸惑いながらも池野辺は、
「嶋田、落ち着け! 落ち着いて…」
と、図書館で彼をなだめた様に背中を擦った。
池野辺は嶋田の担任に事情を話し、嶋田は当分の間、保健室で自習することになった。時折様子を見に来ては、
「嶋田、大丈夫か?」
と声をかけた。その都度背中を擦り、
「大丈夫。校長先生にも話をしたから…」
と、谷田部への処分がもうじきであることも伝えた。
一方、谷田部は授業中は平然を装っていたが、自分がしでかした過ちを悔いていた。嶋田を犯したあの日、オレはどうかしていた。仕事ではなく、プライベートで色々あった。ゲイであることを妻に知られ、酷い言葉を浴びせられてイライラしていた。その腹いせに駅前の成人映画館へ足を運び男漁りをしていたが、トイレで偶然嶋田の姿を見つけ、好いカモがいたと犯行に及んだのだ。
池野辺に呼ばれ、会議室で聴取されたが、谷田部は胸ぐらをつかまれ、
「オレにも嶋田と同い年の子どもがいる。もしお前と同じ過ちをしでかした奴がいたら、オレはそいつをブッ殺す」
と言われた。
谷田部にも二人の子どもがいた。自分がゲイであることは学生時代に悟っていたが、世間体のゆえに現在の妻と結婚した。確かに、もし自分がしでかした過ちを、二人の子どもが誰かにされたら…恐らく、オレも池野辺先生と同じ思いになるだろう。
次第に、嶋田に対して「赦してもらいたい」と言う思いが強くなってきた。谷田部は池野辺に、彼に謝罪する機会をつくって欲しいと懇願した。すると池野辺は、
「でも、教育者としてあるまじき行為をしたことに変わりはないからな!」
と、処分する方向性に変わりはないことを示した。
翌日、嶋田は池野辺に声をかけられた。会議室に入ると、奥の方に丸刈りにした谷田部が両手を前に組み、会釈をした。池野辺が嶋田の身体を支える様に左腕で彼の背中を抱えていた。池野辺は言った。
「今回の過ちについて谷田部先生の方から謝罪したいって、申し出があったンだ」
嶋田は無言だった。人気のない真っ暗な空き教室の中で制服を脱がされ、平手打ちもされ、挙げ句に犯されたのだ。あの日から一週間は経過していたが、あたかも昨日あったかの様に、鮮明にフィードバックしてしまった。彼は叫んだ。
「この変態! どれだけ惨めな思いをしたか知ってるのか!? お前なんて死んじまえ!」
今にも飛びかかろうとする様子だったので、池野辺はとっさに背後から嶋田を制止し、抱きしめた。その光景を目前に谷田部は床に正座し、泣きじゃくりながら言った。
「嶋田君に、どれだけ酷いことをしたか…先生も反省してる…。君を汚してしまった、その罪は図り知れない…。だから、君に謝りたいンだ…」
しかし、嶋田は錯乱状態に陥り、谷田部の言葉に耳を貸さなかった。池野辺は必死に彼を制止し、言い聞かせた。
「嶋田、谷田部先生もこう言っている。君の心の傷は容易には癒えないのは、重々に解る。でも、このままではいけないよ」
泣き叫び続けるうちに、嶋田は池野辺の両腕の中で気絶してしまった。そのまま脱力し、
「嶋田!」
と池野辺は訴えた。
その様子を目前に谷田部は両腕で頭を抱え、
「嗚呼、オレはなんて馬鹿なことをしたンだ! このまま死んじまった方がイイ…」
と号泣した。この言葉に池野辺は、
「ふざけるな!」
と、谷田部を平手打ちした。池野辺の両眼には涙が浮かんでいた。彼は、
「もしお前が死んだら、彼は一生涯癒やされない心の傷を負うンだぞ!? この過ちを一生涯償う覚悟で生きなきゃダメだ!」
と、今度は谷田部を抱きしめた。
「池野辺先生…」
結局、嶋田は池野辺に抱えられながら保健室に連れて行かれ、気付くまでベッドに横たわっていた。目を覚ましたのは夕方で、ベッドの右側には池野辺が座っていた。彼は嶋田の両手を包む様に握り、
「今、教育委員会に処分を決めてもらっているから…」
と言った。その言葉に嶋田は無言で頷いた。
一ヶ月後、谷田部は懲戒免職処分となった。未だスクールカウンセラーも設置されていなかった時代なので、しばらく池野辺が定期的に嶋田のアフターフォローをした。この間に彼は成人映画館に出入りしていたことを告白した。それに対し、
「君たちの齢は、異性に対する興味があるから、まァ、目をつぶるよ」
と、池野辺は言った。
文芸部の方にも足を向ける様になったが、これまでの作風を一新しようと創作に没頭した。徐々に周囲から、
「前より面白くなった」
と言う声をもらえる様になった。
一方、谷田部から性暴力を受けたが同性の方に興味が強くなっていた。偶然書店に置いてあった「アドン」や「薔薇族」などの雑誌に手を取り、その中に載っていたグラビアを「おかず」に自慰をすることが多くなり、嶋田は苦悩した。このことは池野辺には相談しなかった。
池野辺からは、懲戒免職になった谷田部のその後を聞くことはなかった。嶋田は結局自分もゲイだったことを悟り、彼に対して酷い言葉を浴びせてしまったことを後悔した。その傍らで、池野辺に対し横恋慕に近い感情を抱く様になってしまった。
卒業が近くなった頃、嶋田は池野辺に好きになってしまった様だと告白した。その言葉に彼は眼鏡を外し、これまで見せたことがない穏やかな微笑を見せた。しかし、
「気持ちは嬉しい。嬉しいけど、オレは教育者だ。君が社会に出ても恥ずかしくない様に指導する責任がある。だから…」
と、途中言葉が見当たらない様子をみせたが、
「君の気持ちは先生の胸の中に仕舞っておくよ」
とつないだ。
池野辺は、嶋田が卒業すると他の高校に異動してしまった。昇格もし、嶋田は池野辺が遠のいてしまった気がした。フラッシュバックに苦しんだ時も彼は守ってくれた。時折抱きしめてもくれ、心が絞め付けられそうな時も慰めてくれた。
パソコンのキーボードからふと指を止め、
「池野辺先生、未だ健在かなァ?」
と呟いた。
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【ベイファスリンクスの街にて】 作/いずるは
『生きた鉱脈』、『無限の宝』、『不死の源泉』、呼び方は多々あれど、それらはいずれも一つの種族を指す。
彼らは強靭な肉体を持ち、永遠ともあだ名される程の長命、そしてその鮮やかな瞳からこぼれる涙は、美しい宝石になったという。
採取されるそれらの石は装飾品、魔導具、果ては薬にまで使用され、その希少性、有用性故に狙われ、奪われ、滅んだとされている。
――表向きには。
--*--*--*--
大きな街は良い。人が多く、物も多く、周囲は適度に関心が薄く、情報は集まりやすい。
その中、雑踏をかき分けながら二人組が大通りを進んでいた。長い外套を羽織る青年と、顔を隠すように頭巾を被った小柄な人影。
「今日はこの辺りで宿を取ろうか」
傍らに立つ連れ合いに青年は声を掛け、やがて一軒の宿屋に入る。
慣れたようにやり取りをし、二階にある一室に通されたところで、少女はようやく頭巾を外した。
透き通るような白い肌。鮮やかな色の瞳が、窓からの陽光を反射して美しく輝く。
「今日は混んでるから、一部屋しか空いてないってさ」
室内は簡素なものだ。寝台が一つと長椅子、机、古びた角灯に衝立。
「寝るときは君がそっち使ってね」
寝台を指差しながら青年が窓を開けると、ふわりと風が入り込み、淀んだ空気をかき回していく。
「いいの?」
「数日だけだし俺はこっちで大丈夫。毛布もあるから」
元よりそういう使い方をすることもあるのだろう、手慣れた様子の店主からは毛布を渡されている。
必要最低限の荷解きをし、さて、と腰を伸ばした。
「外見てこようと思うけど、一緒に来る?」
「行く」
再び彼女が頭巾を被るのを確認してから扉を開けた。
馴染みの行商人から仕入れた認識阻害つきの外套は、少女の外見や存在自体を薄くさせ、なかなかに重宝している。
特殊な出自であることは、往々にして隠しておいた方が都合が良い。窮屈? という青年の問いには首を振る。
「今日も素材探しから?」
「そうだね。良いの見つかるかな」
「この間もそう言って高いの買ってたけど」
「あはは」
--*--*--*--
階下は酒場になっており、片隅では早々に管を巻く客が見えた。昼食には遅く、夕食には早い時間帯。
客足はまばらだが厨房からはこれからの仕込みか、賑やかな音、香ばしい��いが鼻をくすぐる。
ふと、少女は立ち止まり青年を見上げた。この先のことを思うと、今言っておかねば後悔する。
「お昼、食べてからにしない?」
「確かにね。そろそろおなかすいたかも」
道中、携帯食を口にしてはいるが必要最低限だけだ。落ち着いて食べられるならば、それに越したことはない。
名物だという料理は、衣をつけて揚げた肉に甘辛いたれをかけ、小麦粉を練って焼いた生地に挟んだ料理だった。些か大きく、少女の手には余るほどの大きさ。
綺麗に三等分されたうちの一つにかぶりつく。揚げたての熱さと、肉の脂の甘み、共に挟まれた野菜は瑞々しい。
手軽で美味しいと評判だという店員の言に偽りはなかった。
「おいしいねぇ」
自身の分をぺろりと平らげた青年が楽しそうに少女を見ている。
小さい口を一生懸命動かし咀嚼し飲み込むが、二切れを食べたところで、最後の一つが残ってしまった。食べたい気持ちはあるが、どうにも入りそうにない。
「食べようか?」
と笑う青年に皿を渡す。どうやらこの店は大きさも売りらしい。
「おいしかったけど、せっかくなら少ない量もあればいいのに」
「量が多いのは、色々な人に食べてもらいたいかららしいよ」
少し食休みしたら行こうか、という青年に頷き、手持ちの水で喉を潤した。
生ぬるいが、あらかじめ含ませておいた薬草のすっきりとした香りが口内の脂を流してくれる。
この腹の満ち具合だと、消化するのに大分かかりそうだ。
--*--*--*--
外は抜けるような青空、日差しは穏やかだが、季節外れなほどに少し汗ばむような気温。
大通りには所せましと露店が並ぶ。競うように軒先を連ね、客を呼び込もうと声を張る。
見慣れぬ果物や野菜、調味料に漬け込まれた肉、手入れされた武具や防具に、美しい織物。
そのうちの細工物が並んだ店で、青年は足を止めた。舶来の品だという首飾りには大きな石が留められている。
「きれいだね。どれかいる?」
即座に少女は首を振った。
「持ってるから、大丈夫」
そっと胸元に手を添える。外套の下には、大事な首飾りが収まっている。
見る角度によって水色や紫に色を変える石、透き通り、青みを帯びた花びら。蕾のような飾りに繊細な銀細工。見ずとも思い返せる程には眺め、大切に身に着けてきた。
「遠慮しなくていいのに」
「遠慮じゃない。それより、素材屋さん行かなくていいの?」
「そうでした」
彼の本職は細工師だ。店は持たず、旅をしながら様々な街で素材を仕入れ装飾品に仕立てる。
些か路銀調達の冒険者稼業の方が時間は長いような気もするが、その生活を変えるつもりはないらしい。探し物があったから、と聞いたこともある。
細工物の店主に別れを告げ、大通りを振り返ると時間帯のせいか先ほどより人が増えているようだった。
「はぐれないようにね」
と、差し出された手を握り、再び雑踏に戻る。
--*--*--*--
いくつかの店を回り、いくつかの資材を仕入れ、軽く夕食を済ませて宿に戻ってくる頃には、月が昇っていた。
「さすがに夜は涼しいねぇ」
少女は一階の酒場で貰ってきた温かいお茶をゆっくりと口にする。じわりと胃の腑まで温かさが落ちていく。
「今日は良いの買えた?」
「まぁまぁかな。ほら、このあたりの素材とか綺麗じゃない? 特殊な貝から作られるんだって」
戦利品を並べていく彼は楽しそうに見える。そして決まって言うのだ。
「何か作る?」
「いい」
飽きずにほぼ毎回、同じようなやり取りを繰り返している。
細工師として気になるからというのも理解はできるが、少女は新しい装飾品を必要としていない。今あるもので十分だ。
「ずっと同じのだと飽きない?」
「飽きない」
「効果付けたりとかもできるよ」
「今もついてるから大丈夫」
「そういわず」
なおも食い下がる青年の目を、少女はじっと見る。
「リートスが最初にくれた、これがいいの」
「ユウェル……」
リートスと呼ばれた青年は少し困ったような笑みを浮かべた。
確かに少女、ユウェルが身に着けている首飾りは、出会った当初に渡したものだ。それがこんなに気に入られるとは。
嬉しい反面、気恥ずかしくもある。だからこうして何かにつけて、新しいものを勧めるのだが彼女は取り付く島もない。
「明日もあるんでしょ。私、そろそろ寝るね」
冷めてしまったお茶を飲み干し、ユウェルは立ち上がる。
「わかった。俺はちょっと作業してからにす��から、もう少し明かりはつけておくね」
衝立の向こうから少しだけ少女が顔を出した。
角灯の揺らめく炎が、彼女の瞳に反射する。
「おやすみなさい、リートス」
「おやすみ、ユウェル」
--*--*--*--*--*--*--*--
「たとえば、そうだな。枯れない花を探しに行くのなんてどう? 融けない氷や、手に収まる星空を見るのも良いね」
そう言って、細工師の青年は、うずくまる少女に手を差し伸べた。
窓から薄く差し込む光が埃に反射し、周囲に金粉を散らしたようにも見える。青年の浮かべる表情は柔らかく、少女が見てきたどの顔とも違う。
伸ばされたその手を取れば、きっとここから抜け出すこともできるだろう。
けれど身体は錆びつき、空気は泥濘のようにまとわりつく。重い。動けない。それでも。
恐る恐る手を伸ばし、そっと彼の手を握る。暖かく、優しく握り返される。緊張が、硬直が、解けていく。
「本当に、連れて行ってくれる?」
干からびた喉からは、かすれた小さな声しか出ない。
「君が望むなら」
跪いた彼が頬を撫でた。眩しさに、目が染みる。涙など、とうに枯れたと思っていたのに。
「これから、よろしくね」
少女は小さく頷く。陽の光が、穏やかに二人を照らしていた。
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ブンその2
21話 ・「(姉の読み聞かせに対して)ぜ~んぜん、王女はいつも最後には幸せになるってお約束じゃん。」 ・「今、王女って言った?」 ・「へぇ~すっげぇな~。だって本物の王女だろ?可愛いのかな…。」 ・「王女って可愛い声だな~。」 ・「女の子でも、ずいぶん姉ちゃんと違うなぁ~。女はみんな姉ちゃんみたいと思ってたから。」 ・「オレ、弟君(おとうとぎみ)?」 ・「おーい、ねーちゃーん!」 ・「だってつまんねぇんだ…。(王女に)何を聞いても「カタジケナクオモイマス」てしか答えないんだもん。」 ・「(近衛兵ヴィーがローナ王女だと知って)なんてこった!」 ・「アンタが本当のローナ王女様だったのか…。」 ・「ソードカービィだ!」 ・「(魔獣スッシーに対して)この魚野郎め。」
22話 ・「竜巻だぁ…。」 ・「…姉ちゃん?カービィ!ロロロ!ラララ!ねーちゃん!(最後のねーちゃんが「ネーチャーハン」に聞こえるため、ニコニコ動画でネタにされていた)」 ・「よく晴れてるなー、さっきの竜巻は何だったんだ?」 ・「あー!ボートがこんなんじゃ帰れない!姉ちゃんどうしよう…(泣)。」 ・「こんな密林に都合よく食べ物があるかなぁ…。」 ・「(この島に)住んでる人を見つけて助けてもらおう!」 ・「隠れ家みたいだ!行ってみようぜ!」 ・「(焚火が)さっきまで燃えてたんだぜ。ってことは人がいるんだよ。」 ・「(先住民は)恥ずかしがり屋なのかな?」 ・「くそぉ…好き勝手やりやがって…えい!(ダコーニョに石をぶつける)」 ・「(ダコーニョが銀河戦士団だと聞いて)銀河戦士団!?」 ・「返せー!カービィは魔獣じゃなーい!」 ・「ていていていていていていていてい!(魚を素手で捕ろうとする)」 ・「(カービィを探す前に)腹ごしらえをするのが先だ。」 ・「(ダコーニョは)訳わかんない人だぜ。ほっときなよ。」 ・「(ダコーニョのスパルタ訓練に対して)こういうアニメ、見たことあるよ。」 ・「くっそぉ…ふざけやがって!あぁ、お前の勝手には我慢できねぇよ(ダコーニョの横暴に堪忍袋の緒が切れて逆らうも、転ばされてメタナイトマークのナイフを落とす)。」 ・「メタナイト卿を知ってんのか?(ナイフをメタナイトに)貰ったのさ、この前。」 ・「ホントさ、(戦争が終わったことを)いい加減に信じてくれよぉ。」 ・「こいつら(デデデ達)は仲間なんかじゃないんだよ。」 ・「その身体じゃ無理だ、オレがやる(竜巻に突撃するが吹き飛ばされる)。」 ・「え、ダコーニョさんここに残るの?一緒に帰ろうよ、メタナイト卿にも会えるしさ。」 ・「鬼軍曹ー!元気でな―!」
23話 ・「姉ちゃんあれダイナブレイドの…(ベイビー)。」 ・「これで(ダイナベイビーは)自分の巣に戻りたくなるよ。」 ・「(デデデの自然保護運動に対して)その反対だろ!」 ・「オレ達が責任持って返すってば!」
24話 ・「この赤い△マークは何?」 ・「すっげー!(忍者って)かっこいいー!な、カービィ?(オレたちも忍者になろうぜ!)」 ・「(デデデが巻物を偽物とすり替える様子を見て)あ、ドロボー!」 ・「汚いぞーデデデー!」 ・「ダメだダメだ!こんなこと続けてもムダだ!巻物をもっと詳しく調べて、勉強するんだ。」 ・「任しとけって!な、カービィ?」 ・「ドロボーはそっちだろ?」 ・「静かにしろ、本物の忍者がいるぞ。」 ・「ホントだー、そこに本物の忍者がいたんだ。じゃあ、まだ近くにいるんだ。」 ・「やったー巻物だー!」 ・「やれるもんならやってみろ!」 ・「(ベニカゲの手裏剣投げが下手くそなのは)カービィと同じじゃねぇか。」 ・「(巻物が)成績表?成績表なんてなんで欲しいんだ?」 ・「(ベニカゲの成績の話を聞いて)ガッカリさせる話だな。じゃあこの△はダメって印か。」 ・「よし、オレが何とかする。ベニカゲだったな?ベニカゲ、特訓してやる。手裏剣が下手なヤツはお前だけじゃない(励ましになってない)。」 ・「ほら~、もっと腰を入れて(一頭身のコイツらに腰なんてないだろ…)。」 ・「でも、(手裏剣が)当たらないことにはな。」 ・「ははは、バカだなぁ。これは巻物じゃない。(ベニカゲに対して)何を恥ずかしがってる?だからお前はダメなんだ。これはコイツの成績表だよ、落ちこぼれの(ベニカゲかわいそう)。」 ・「(撤退するベニカゲに対して)どーせ煙玉だろ?」 ・「(川で流されるベニカゲに対して)泳げんのか~?」
25話 ・「(城の庭で遊んで)何がいけないんだよー!意地悪だなー!」 ・「覚えてろ!お前(エスカルゴン)が何か頼んでも聞いてやんないからな!」 ・「エスカルゴンに手紙を書くなんて誰かなぁ…。」 ・「(エスカルゴンがオレたちに頼み事なんて)ありえないって言ったじゃん。」 ・「これを聞いたらデデデも怒るだろうな~。」 ・「(デデデの前で)お芝居しろっての?」 ・「(お願いを聞いてもらってご機嫌になるエスカルゴンを見て)何だよあの態度!」 ・「こーゆーときは結局、カービィにお任せになるんだよな~。」 ・「エスカルゴンそっくりじゃん…(エス母を見て笑う)じゃあカービィ、頼んだぜ。」 ・「ダメだ…(エスカルゴンが緊張して)ビビってる。」 ・「(エス母に対して)面白い人だな。」 ・「(エスカルゴンが大王なのが)嘘だって分かったら、さぞガッカリするだろうなぁ…。」 ・「(エスカルゴンの母が「長生きはするもんだねぇ」って)プッ、言うと思った…(笑)。」 ・「ねぇ、急に(デデデの)態度が変わったの姉ちゃんのせい?」 ・「オレたちのおかげだぜ?感謝して欲しいね?」 ・「ちぇっ、終われば元の木阿弥かよ(「元の木阿弥」とは「もともと悪いものが一旦良くなったあと、再び元の悪いものにもどること」を意味する。てかなんで教養のないブン��そんな難しい言葉知ってんだ…)。」
26話 ・「(ボールのヘディングが)上手いぞカービィ、よ、シュート!」 ・「ま、魔獣…。」 ・「(メタナイトは)死んじゃったの?助ける方法はないのかよ!」 ・「(ソドブレに対して)カッコつけすぎだよー。」 ・「よっぽどのことがあったんだなー、メタナイトと。」
27話 ・「ウィスピ―ウッズなんて久しぶりだな。」 ・「(リンゴを食べるカービィに対して)オレの分も残しといてくれよ。」 ・「あのときはデデデがゴルフ場を作るとか言って、木をみーんな伐り倒してさー。」 ・「何だー花くらいで、第一コイツ枯れそうじゃん。」 ・「よせよ、花に名前なんか(笑)。」 ・「ちぇっ…オレたちは濡れても良いってことかい(ウィスピーがラブリーを優先して雨宿りさせたため)。」 ・「あいつ、まだ(ゴルフ場計画を)諦めてなかったのか。」 ・「それにしても、デデデのヤツ…なんでラブリーを狙ったんだろ?」 ・「さ、さっきは(花に)顔なんかなかったよなぁ…。」 ・「(ラブリーが)しゃ、しゃべった!」 ・「いくら植物が進化するって言ったって、いきなり顔が現れて言葉まで話す?デデデの仕業だ。ラブリーになんかしたんだ。」 ・「だからこんなにペラペラ喋るんだ!」 ・「デデデはお前を倒したがってる。アイツ…ゴルフ場計画を諦めていないんだ!」 ・「ラブリーのヤツ…どんどん大きくなってく…。」 ・「メカバッタだ!ヤツら(デデデ達)、これでずっと覗き見してたんだ!」 ・「クソッ…こうなりゃ(ラブリーを)引っこ抜いてやる~!」 ・「やったぁ!『一文字斬り』だぁ!(※ゲームのカッターカービィにはこのような技はありません)」
28話 ・「(ユニフォームを)着るとどうなるんだ?」 ・「ねーちゃん気にするなよー。どーせデデデの気まぐれさ。」 ・「面白そうだ!(デデデ・ファクトリーに)行こうぜ姉ちゃん。」 ・「(エスカルゴンに「子供は作業するな」と言われて)ケチケチすんな―!どう?カワサキ、面白い?おい、カワサキったら!じゃ交代させろ!」 ・「姉ちゃんもやれよ、面白いぜ?」 ・「でも、こいつはママも喜ぶぜ?」 ・「便利グッズを作るために、昼も夜も交代でぶっ続けで作るんだって。」 ・「あ、姉ちゃん!やっとその気になったんだね、今日もなんか貰えるぜ。」 ・「(アイスドラゴン・ロボを見て)オレ達そのために働かされていたのか。よーし、(ロボを)ブッ壊してやる」 ・「(村長夫妻の「自然を大切に」発言に対して)忘れたのかよ…村は姉ちゃんが守ったのに。」 ・「チキシジン?(子供らしく「知識人」の言い間違え?)」
29話 ・「よーするに、(「レストラン・ゴーン」は)デデデの店だ。」 ・「でーも(料理は)高いんだろー?」 ・「(「ムッシュ・ゴーン」の料理に対して)げ、たったこれだけ?」 ・「(カワサキって)よっぽど嫌われてるな。」 ・「でも本当のところ…どれ���らい辛いかは食べてみないと。」 ・「もちろんさ。いっただきまーす。」 ・「…(カービィなんかに)負けるか!うわああああああ!かれええええええ!(火を噴く)」 ・「激辛カレー?もう古いぜ。(レストラン・ゴーンの)シャーベットの方が良いよ。姉ちゃんも一度食べれば分かる!(変な音を立てて足で浮遊する)」 ・「(姉にシャーベットがカービィそっくりだと指摘されて)そういえばそうだね。」 ・「あ!久々のコックカービィだ!」 ・「やったファイアカービィだ!(※カレーが辛すぎて苦しんでいるだけです)」 ・「(デデデ達に対して)罪滅ぼしに、『カワサキホットスペシャル』を食え!」
30話 ・「(カービィに対して)ちゃんとベッドで寝ろよ~。」 ・「ほーらやっぱり…。何してんだー降りて来いよー。」 ・「タマゴだ。こりゃ皆を呼ばないとな…。」 ・「姉ちゃんが(カービィが)鳥になっちゃうなんて言うから、カービィのやつ…。」 ・「(天気が悪くなってきたし)カービィ、オレたちは行くぞ。カービィはトッコリの巣で寝たから鳥になったんだ(笑)。自分の産んだタマゴだ、しっかりメンドー見てやれよ。」 ・「オレ、アイツ(カービィ)のおもりじゃねーよ!」 ・「ちぇっ、一体どこへ消えたんだよ。ん、すっげぇ…雷が落ちたんだ…。あ…のんきなヤツだ…(タマゴの上で寝るカービィを見て)。」 ・「降りろカービィ!ヒナが生まれるぞ!」 ・「(ガルボを見て)カービィに似てねぇな…。」 ・「やっとアイツ(ミニガルボ)と引き離せたぜ。アイツのおかげで村はパニックだ、なんで怒らないんだよ…。甘やかしてると、とんでもないヤツに育つぞ。」 ・「(親ガルボを見て)な…なんでこんなに急に育ったんだ…。」 ・「ガルボ!」 ・「ファイアカービィだ!(前話とは違い、今回は正真正銘本物のファイアカービィである)」 ・「どんな怪物でも(カービィが初めて自分で育てたペットだからな)…。」
31話 ・「来ちゃったのかカービィ…。」 ・「まぁ良いじゃん(姉は自身のぬいぐるみを勝手に作られて不満がっていたが、彼は特に不満はない様子)。」 ・「やっぱり姉ちゃんの言った通りだ!カービィ!戦士らしく(デデデ大王像と)戦え!」 ・「それより、そっちこそ(カービィを助けたことが)デデデにバレるぜ(彼がカービィを助けるためにデデデを裏切ったのは、今に始まったことではないので問題ないが)。」 ・「とにかく、ここは危険な罠だらけだ。なぁ!(カービィ)」 ・「そーいえばコイツスイカ好きだから…。」
32話 ・「(エスカルゴンのヤツ)大人のクセに泣いてやがる…(笑)。」 ・「(歯磨きは)オレはいいよ、だって虫歯なんてないもん(食べかすだらけの歯を姉に見せる)。」 ・「大丈夫~いつもこうだもん。じゃ、おやすみ~。」 ・「嫌だー!嫌だー!歯医者なんて嫌だー!」 ・「歯医者なんか絶対に行かねーぞー!歯医者の方がもっと痛い!」 ・「怖くないけど行きたくないんだ!」 ・「やっぱりオレ帰る…。」 ・「(デデデに対して)あぁオレは良いよ、お先にどうぞ…。遠慮するなよ大王なんだから…。」 ・「こうなったら何でも来いだ!(口を開ける)」 ・「オレも~!(デデデを追いかける)」 ・「(デデデにぶつかった衝撃で)あれ?歯が痛くない。」 ・「(ハーデーに治療されて)あれ?全然痛くなくなった。すげー!ありがと。」 ・「もう一度吸いこむんだ!(ハーデーに歯を治療してもらったにも拘わらず、恩を仇で返している)」 ・「これからは寝る前に、ちゃんと歯磨きしよーっと。な、カービィ(元から歯がないカービィに歯磨きは不要でしょ…)。」
33話 ・「でもさぁ~、そんな星って自然が残ってるのかな~?科学が進んでさ、いろんなもの作り過ぎてさぁ、ゴミだらけかもしれないぜ?」 ・「解決?どんな風に?」 ・「(謎のUFOを発見したカービィに対して)何だよカービィ。へへ、居眠りしながら天体観測はダメだぜ。」 ・「ゴミの山じゃん。」 ・「姉ちゃん!(ゴミの量が)昨日より1000倍くらい増えてる!」 ・「カービィ!(サンドウィッチを)全部食っちまうなんてひどいよぉ!」 ・「皆!姉ちゃんが犯人を突き止めた!」 ・「このままじゃ大火事になっちゃうぜ!」 ・「ファイアカービィだぁ!」 ・「あ、姉ちゃん、あれ!ライオン座を見ろ!」
34話 ・「姉ちゃんアレ見ろよ!確かアイツ…。」 ・「(コックオオサカに対して)また現れたな~!」 ・「(オオサカが)まさかの本物だったのか。」 ・「ひょっとしたら、オオサカはこの村で店を開くつもりだぜ(人口の少ないププビレッジじゃ集客率が悪いので、彼がそこで店を開くことは絶対なさそうだが)。」 ・「(オオサカの料理を食べて)うんめぇ~!ヤバいぜ…このままじゃ本当にカワサキの店潰されちゃう…。何か秘密があるんだ!」 ・「(オオサカのヤツ)何かコソコソしてねぇか?(小声)」 ・「(カワサキに対して)バカにされても良いのか?その意気だ、頑張れ!」 ・「じれったいなぁ…いくら師匠だからって。」 ・「ギ・ジ・ラエキス?オオサカのメチャウマ料理の秘密?(ギジラエキスを入れたカップ麺の臭いを嗅いで)たまんないぜ。」 ・「カワサキに恥をかかせるつもりだ。」 ・「(ギジラエキスを)飲めばどんなマズいモンでも美味しく感じる。」 ・「この薬はオオサカの持ち物のなかにあった。」 ・「(カービィがギジラエキスを飲み込んで)姉ちゃんヤバいよ…。」 ・「アイツ(魔獣を見て)何喜んでんだ?カービィ!そいつは料理じゃないぞ!」
35話 ・「カービィ見ろよ…ゴーカートだ!はぁ~いいなぁ…かっこいいな~。(ガングに乗りたいかと聞かれて)もちろん!」 ・「すっげー…最高だなカービィ。」 ・「姉ちゃんも乗れば分かるよ、すげーかっちょ良いんだ。」 ・「(チャンネルDDDを見て)グランプリレース!?」 ・「見てくれ、オレもこれで(レース)出場だ!小さくても性能はすごいぞ!なぁガング?」 ・「うわ~かっちょいいなぁ~(ボンネットについたデデデの装飾を触る)。」 ・「姉ちゃん、このレースはドライバーが1人じゃ走れないんだよ(じゃあ何で[[彼>メタナイト卿]]だけ単独運転なんだ…)。」 ・「どお?デデデに負けないようにできる?こっちは(デデデに比べて)マシンもオレも軽い!���しゃーこれで勝ったぜ!」 ・「(ガングに1人でレースに出られるのか聞かれて)ででででも、絶対、1人じゃダメってんじゃないだろ?どーしてくれんだよ、ねーちゃん!」 ・「…ぶっちぎりだぜ。」 ・「(両親に対して)うるさーい二人とも!(姉が助手として参加したので)マ、マジかよ…。」 ・「ねーちゃん良いじゃんかー。対戦相手は多い方がやりがいがあるぜ。」 ・「(カービィは)スタートに出遅れたよ!」 ・「(トッコリへの返信)デデデかメタナイト卿だと思うけど~?(レース中にこんな会話する余裕あるのか…)」
36話 ・「クソ~アイツ(メタナイト)も敵だ!」 ・「(デデデの巻いたまきびしを除去する姉に対して)姉ちゃん!そんなの良いから乗れったら!」 ・「焦ったってダメ…ヤツらには何周も抜かれてる。うっせーな…姉ちゃんなんか乗せるんじゃなかった(ほんこれ)。」 ・「(カービィに抜かされて)クッソ~負けるもんか~。」 ・「(宇宙艇で飛ぶカービィを見て)すっげー飛んでる!」
37話 ・「姉ちゃん、ひでえよ…カービィがかわいそうだ!悪いことは何もかもカービィのせいって言ってるぜ。次を見てろよ!」 ・「けど、村の連中が噂してたぞ。デデデはずっとカービィを追い回してんのは、カービィがなんかやらかしてたからだって。」 ・「(デデデにストーカーされようが)別に気にすることなんかねーよ。」 ・「カービィが(スナック菓子を)拾ってあげたんだ。」 ・「(餃子が食えて)ラッキーだな、カービィ。」 ・「さっきのお菓子といい餃子といい、カービィ得してるよなー。」 ・「まるっきりカービィを悪者じゃんか。」 ・「姉ちゃん…「カービィを追い出せ」なんて、昔みたいに騙されやしないよ~(お前も昔騙されてたじゃん)。」 ・「(カービィの胃袋は)ブラックホールだ。だって見ろよあれ!(小麦の山を完食するカービィを見て)」
38話 ・「姉ちゃんすげーな。この原作者に手紙を書いたってワケ?返事来ると思う?来ない方に賭けるね、なぁカービィ。本を書く人なんて忙しいに決まってる。いちいちファンに返事なんて書かないって。」 ・「確かに、メチャ面白いよな~。さぁ、続きを読んでもらおう。」 ・「大人でも、読み終わったヤツはまだいないんだってよ。」 ・「続きはどーしてくれるんだよ!」 ・「(入学したら)本の続きが分かる?話の続きを教えてくれるって本当なのかー?」 ・「やだなぁ…話の続きを教えるのに、こんなバカなことにつき合うなんて。」 ・「すっげー!パピポテの原作者の先生か。」 ・「お金の為だろ?」 ・「(クリーンカービィを見て)はは、なんだありゃ。」
39話 ・「じいさん、どっから来たの?(エスカルゴンが高齢だと分かるセリフ)どうしたの?」 ・「あぁ、迷子の変なじいさんね。そのじいさんなら、カービィと一緒に海にいたぜ。」 ・「他に誰かいるかい?エスカルゴン。ねぇ、お腹空いてない?」 ・「(エスカルゴンの)名前が分かっただけなんだよ…。」 ・「つまり、(ボウキャックを身体から追い出すのは)痛いわけ?」 ・「頑張れ!エスカルゴン!」 ・「思い出した!(ボウキャックが体内から出たことで思い出す)」 ・「(ボウキャックに)憑りつかれたら忘れられちゃうぜ~。」 ・「見かけないヤツだな…(ボウキャックに憑りつかれたカービィを見て)。おい何とか言えよ。」
40話 ・「(ザコ魔獣から助けてもらって)サンキュー!ソード!ブレイド!どっからこんなに湧いてくるんだ?こいつら…。」 ・「こいつら一体何匹いるんだよー!元を絶たなきゃ…。」 ・「(裏切ったナックルジョーに対して)何だよそれ!(怒)」 ・「(ザコ魔獣に荒らされる村の惨状を見て)こりゃひどいぜ!」 ・「カービィ!こっちもだ!(吸いこんでくれ!)」 ・「ちくしょージョーのヤツ…一体どういうつもりだ…。」 ・「ダメだ…こっちはカービィ1人っていうのに、最強の敵が2人がかりじゃ…。」 ・「ファイターカービィ!」 ・「(ナックルジョーが)魔獣ハンター…。」 ・「オレたちすっかり(ジョーに)騙されちゃったな~。」
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ある画家の手記if.124 告白
香澄と一緒に車で家を出た。留学から帰ってくる絢の迎えに。 絢と僕らはもう親戚ってわけじゃないけど、僕も香澄も少しでも早く会いたかったから。 かいじゅうくんキーホルダー、役に立ったかな…。 出てくる前に香澄とじゃれてた名残でまだ少し体があつい。車内の空調を強くしたら髪の毛が後ろに靡いた。 香澄も僕もだいぶ髪が伸びた。僕の髪はちょっと前は大型犬の尻尾くらいの長さだったけど、今はクラゲの触手くらいの長さになってる。
空港で会えたのは絢だけじゃなくて、ちょうど同じタイミングで帰ってきたまことくんと雪村さんと光くんもだった。 絢に「おかえり」って言って頭を撫でたら撫でた手に噛みつかれた… 合間をみて雪村さんにちょっと大きめの箱を渡す。「帰国祝いです」って笑って渡したら向こうも笑って受け取ってくれた。 いい包装紙がなかったから山雪の工房を借りて、大きな紙に自分で描いてデザインしたかいじゅうくんと絢ちゃんの柄を刷ってみた。包装するリボンにも、綺麗にレタリングしたアルファベットとかいじゅうくんと絢ちゃんの顔を描いて、シルクスクリーンで刷って入れた。 かいじゅうくんもだけど、雪村さんにあげるなら絢ちゃんも一緒に入れたほうが喜ばれるかなと思って。絢が僕に絢ちゃんを見せてくれたのは病院に持ってきてた一回くらいだけど、たまに送られてくる画像にもよく写り込んでるし特徴は覚えてた。 絢はたまに、みんなにじゃなくて僕だけに画像だけ送ってきてくれたりする。嬉しい…んだけど、謎の画像が多くて、どれも絢が外を歩いてて撮った写真みたいなんだけど、枯れた蓮のドアップだったり、寂れて朽ちて顔の印刷が禿げた公園の動物の遊具だったり、…謎だ。毎回一応送ってくれた写真にはコメントしてる。
帰って来るやいなや絢と一緒にあっという間に香澄も攫われていって、残された僕とまことくんとでぽかんとその場に立ち尽くす。 正確には僕一人。まことくんはそこまであっけにとられたふうでもなくて、慣れてるみたいな涼しい顔で絢たちを見送ってた。オーストラリアでもこんなことあったのかな。 このまま香澄も一緒に行かせちゃっても特に危険はないと思う…わがまま言ってるふうでいて絢がそう判断してもいるんだろうし…。 絢の家族の人間性とか危険性については香澄からも絢からも僕はほとんど聞いたことがない。それぞれ個人についてなら間接的な情報を聞けたこともあったし、それが無意味ってことじゃないけど。情香ちゃんからの報告も、つまるところあくまで情香ちゃんへの対応なんだと思う。 僕は香澄みたいに彼らと個人的な関係を築けてるわけじゃない。…でもみのむしくんは渡せた、これ以上は高望みかな。 ひとつ音にもならないくらいのため息をつく。煙草…はここは禁煙かな。 となりのまことくんのほうへ視線をやって話しかける。僕はまことくんにも話しがあったんだった。 「まことくんは機内でなにかもう食べた? 僕は空港内のカフェで軽く食べて帰ろうと思うけど、よければ奢るよ」 にっこり笑って誘う。「君と少し話せたらなって思って」 「え?や…ありがとうございます…」 まことくんは愛想笑いでも警戒するような感じでもなく、僕に対して特にどういう感情もなさそうな顔。 「食べて帰ろうかと思ってますけど… 香澄も絢も居ないのに俺だけなんか悪いですし」 お辞儀してそのまま一人で行っちゃおうとするから、もう一声かけてみる。 「香澄も絢も居なくていいかな。できれば君と個人的な話が二人でできればいいなって思ってたから。…無理強いはできないけど」 まことくんがカフェに向かって歩き出す僕の斜め横にくる。 「そういうことならありがたく奢ってもらいます。院生て金無くて。留学とか行っといてなんですけど」 今の言葉でとまってくれたのかな。その前と言ってることはほとんど変わらないけど、どこで思いとどまってくれたんだろう…。 「お金があってもなくてもやりたいことはやらなきゃね」 院生か。僕は院には行ってないけど卒業後それなりに極貧生活だったな。まだやってることがはっきりとは結実しない期間ってことなのかな。 院には慧が行ってた、その慧の部屋に僕はしばらく入り浸ってたから、まことくんと慧では分野は違うだろうけど院生がそれなりに忙しいスケジュールを抱えてるわりにまるで儲からないのはなんとなく知ってる。 一緒に来てくれるってことで、まことくんの肩からひょいっと荷物を預かる。僕のランチの提案で重たい荷物を抱えて当初の予定より余計に歩かせることになるから、せめて。飛行機から降りたばっかりだし。 そのとき気付いた。まことくんの荷物の端っこで揺れる、荷物に付けてあるキーホルダー…木彫りの、かいじゅうくん、僕が香澄と一緒に作った 「ーーー……」
まことくんと二人で入ったのは飛行機の離着陸や滑走路が見える日当た��のいい綺麗なカフェ。 軽く食べるっていっても僕はもともとが一度にそんなに食べきれないから小さなワッフルとコーヒーだけ。 夏だけど僕はコーヒーは一年中ホットで飲んでる。空港内は涼しいからまことくんもこの季節に見てて暑苦しいってほどじゃないはずだ。 テーブルの向かいの席にまことくんも座る。 こうして綺麗に正面から姿を見るのは初めてかもしれない。 絢や香澄と一緒に家に遊びにきてたことは何度もあるけど、まことくん個人と面と向かって話したことはない。 顔立ちはシャープな印象だけどパーツや骨格の造り自体はそんなに細く鋭く尖ってるわけじゃない、骨ばってもない、てことは表情でかなり顔が変わるのかな? 造形より印象が圧倒的に強く出てる。 表情豊かな人だ、多分。造作的な表情の変化の幅が大きくて広いって意味じゃなくて、ほんの少しごく僅かな表情の変化だけで内面や感情を非常に雄弁に物語る、って意味で。 少ない情報…出力から、相手に膨大な入力をもたらす相貌、ひとの顔は見る人間と見られる人間の双方の視線で織りなして編まれる、出入力のアンバランスが造作より印象が圧倒的に勝る容貌に繋がってるのか…どうかな… まことくんが飲み物しか頼まないから「好きなもの頼んでいいよ」って言ったら僕と同じワッフルを頼まれた… さっきお金ないって言ってなかったっけ… あんまり量食べないほうなのかな 余計なことかもしれないけど、店員さんにメニューの中からいくつか腐りにくい日持ちしそうな料理を頼んでテイクアウトにしてもらった。 コーヒーに口をつけながらまずはなんてことない話を始めてみる。 昔、慧につっこまれた、突然本題を相手の顔面にパイみたいにぶつけていく話し方やめろ、それは会話じゃない、って。 そのパイをぶつける話し方って案外、美術講師をやってた頃には生徒に通用してたんだけど。先生と生徒なら、要点が話の頭に来たほうが早くて助かる、ってことだったのかな。 「そういえばまことくんの名前って本名じゃなかったんだね、最近香澄が呼び方を変えたので初めて知ったよ」 まことくんも飲み物を飲みながら答える。 「そうですね。まことって呼んでたのは香澄の勘違いというか…本名は張磨寿峯です」 ことねって名前がふとした話題に出てきたとき、最初僕は香澄が誰の話をしてるのか分からなくて、新しい友達ができたのかなと思った。なんとなく、香澄も呼び方を変えてすぐにしっくりきたわけでもないみたいだった。 名前、というより呼び方なのかな、相手そのものの僕の中での存在のあり方を呼称って形で包括してる。呼び方を変えるときは相手の存在形式が大幅に変わったときか、変えるときで、だから僕の中では絢はずっと絢だったりする。 …僕は名廊に絢がいたときから、絢のことを「絢」って呼んでたから。あの日理人さんと会って。今でも僕が「絢」って呼ぶとき、それはなんとなく「雪村絢」の絢じゃなくて「絢人」を略したものとしての絢だったりする。…言わな��てもいいことだから、言わないけど。 「はりまことね… 綺麗な名前だね。…僕も呼び方変えたほうがいいかな?」 香澄から呼び方を変えた経緯とかは聞いてないからまことって呼ばれるのになにか不都合が起きたんじゃ… 「呼びやすいように呼んでください。絢はまだまこって呼んできてて、逆にぬいぐるみのサメに寿峯って名前つけてんですよ。まぁそういうのも別にいいかなって思います」 杞憂だった。 絢はまことくんにもぬいぐるみ買ってたのか…。 …そう言われれば…こう、鋭利な印象と魅力的な部分に相似が… もしかして絢もそう感じた…? 「サメ… ………まことくんがサメに似てるから…?」 訊いてみたらまことくんの表情のニュアンスが少し変わった。嬉しそう…楽しそう…? 「そうそう、サメ似てるって…絢から聞いてました?」 「いや、僕は何も聞いてなかったけど、印象が似てると思って…」 絢はぬいぐるみが好きなのかな。そういえば僕によくノエルぶつけてくるね。好きな人にそのイメージのぬいぐるみをあげてたりするのかな。 僕から見るとサメってすごくかっこいいけど、絢から見てもまことくんはそんなふうに見える? なんとなくにこにこする。 そのまま立て続けてサメからゆきちゃんからノエルからかいじゅうくんからみのむしかいじゅうくんの話をしそうになって一度冷静になる。 留学から帰ってきてまだそのままだし、そんなにここに長居させるわけにもいかない。国が変わると空気とか水とか匂いに慣れるまでに時間がかかるとか体壊すとかって前に稔さんから聞いたような…。 僕とまことくんとはしょっちゅう会えるわけじゃないから聞きたいことがあるなら今聞いておかなくちゃ。 「そういえば絢から通話で聞いたよ。まことくん、絢と付き合い始めたんだって?」 僕が聞きたかったのはそういう話。 まことくんはさっきの顔からまた元に戻って短く答えた。 「ああ…はい」 「…」 こういうのって、例えば家族とかでも本来は無遠慮に聞いていい話じゃないんだろうな。誰とどう交際するとか結婚するとかって。 名廊はそのへんも古いからな…そろそろ誠人くんがそういうのにも耐えがたくなって変えてそうな気もするけど。男女関係なく、誰かと交際するときはもちろん結婚前提だし、相手もそれなりの家で、相手の家の親族は軽く洗ってあまりに見るに耐えかねる人物がたとえ遠縁にでもいたらそこで話は終わり、とかだった。 ずっと家の子供たちを幼稚舎から西蘭に通わせる理由にそれもある。あの学内だけでプライベートな人間関係が構築されるなら、西蘭には名家の子や一定レベル以上に優れた能力を持つ子しか入らないから、学内で普通に恋愛しても家曰く「ひどいハズレ」を引くことがない、とかなんとか。…考えてて嫌になるし、実際嫌になったから僕は大学は別のとこにいったんだっけ… 「…立ち入ったことだったかな」 眉を下げて訊いたらまことくんがフォローを入れてくれた。 「いえ、絢が香澄と直人さんに伝えたのは聞いてました」 まことくんと絢が付き合い始めたのが留学期間中であってるなら、まだそんなにどういう交際になるのかとか、はっきりしてないのかもしれないし、僕は別に���風立てたいわけじゃ…ない。 「…伝えてきたのは絢の行動であって君の積極的な意思が伴ってたのかはわからないし、だから僕がその事実関係を知ってることを君も知ってることと、僕がその関係について絢じゃなく君にも遠慮なく踏み込んだ話をしていいのかは、別だから…」 慎重に言葉を選ぶ 相手を悪戯に傷つけないように 土足で踏み込まないように 「君が嫌なら金輪際絢との関係については話題にしない…って言いたいけど、最低限僕が君としたい話だけ、ここで僕にさせてくれるかな」 どこまで僕がエゴを抑えて話せるか 「答えられることなら」 まことくんはさっきまでと同じ声で答���た。 「絢が香澄と直人さんに伝えたいって思うのは納得できてますし、俺もそれは了承してます。でも今は俺しかこの場に居ないから。俺一人で答えられる範囲じゃ無いって思ったら、それはすみませんけど、話せないってこともあるかも。それでもよければ」 むしろここに絢もいたら、絢は僕がまことくんに聞きたいことや話したいことを茶化したり誤魔化してくるか混ぜっ返してくる。そしてもう一度同じ話題に戻れない流れを作る。絢はそういうのが上手い、ここでは厄介な存在だから、今はいないほうがいい。 …なにから話せばいいのかな 絢とまことくんが付き合うって知って頭を掠めたものはなんだったっけ …髪留め
「…邪推の域を出なくて申し訳ないけど、僕はずっとまことくんは絢じゃない別の人のことが好きなんだと思ってたんだ。今もそうなのかなと、僕は思ってる。…僕はなにか勘違いをしてるかな?」 向かいでまことくんが唖然と…ぽかんと…?してる。 脱線してないことを示そうとしてにこっと笑って続ける。 「…僕は君がその人の誕生日に髪留めを贈ったのを知って、そうなのかなと思ったんだけど。」 「え」 まことくんの食べてる手が止まった。目が合う。…これもあんまり僕からは言っちゃいけないことだったかな。 これに関しては何も攻撃の意図はないから最初に声をかけた時のまま、穏やかな笑みを崩さないでおく。 「香澄のことですか」 「うん。決められたたった一人の相手としか恋愛や交際をしちゃいけないとは僕は思ってない、けど…自分の大事な子たちに無節操に軽い気持ちで手を出されるような動きをされると心中穏やかじゃない。香澄にも絢にも、幸せになってほしいから」 香澄は僕が幸せにするけど、香澄に髪留めを贈って、絢に告白されたら付き合って、僕はどっちのこともいい加減に扱われていたずらに気を持たせて蔑ろにされたようで 少し怒ってて でも …どういう行為が本人の中で下衆な行いだって認識されてるのか、その行動を一人一人の相手がどう受け取るのかは、分からない…場合によってはそれでいい関係だって多分あるんだ 今回は僕がただ拭えない違和感を感じただけで、それだって僕は本来部外者だし… 僕と香澄と情香ちゃんの関係だって、信じがたい、受け入れがたい、って人はいる パーティでそういう声も聞いたから だから結局僕の気持ちより絢の気持ちのほうがずっとずっと今は大事にしな��ゃいけない でも絢は… 傷つけられても、…気付けないかもしれない 「…君は絢のことをどう思ってるの」 まことくんは訝しげな表情で僕にしっかりした声で返した。 「俺は付き合うなら一人だけです。絢と付き合うなら二股とか浮気はしません」 眉が下がっていく… 一緒に目線も下がって、手元のコーヒーをじっと見つめることになった。 「それは君の主義信条方針であって君の気持ちは一言も出てきてない。僕はそれが怖い。僕は、絢のことをどう思ってるのかって聞いたのに。…」 どんな崇高で堅牢な主義思想や人道的な判断を貫くより絢のことを誰より一番に最も深く愛してほしい、どれだけ道に外れることになっても愛の形が歪になってでも …どこからが僕の本当の願いで、どこからが変えられなかった過去だ 悲しい顔した僕の向かいでまことくんは少し気分を害したみたいな空気で言った 「…好きですよ」 その言葉に、僕は「お前ごときに絢を幸せにできるとでも思うのか」って怒鳴りたかった、そうしなかったけど その言葉は本来はまことくんに向けられたものじゃない、その怒りも、本当は僕に向けられたものだ、だから言わなかった 今ここでこうして絢の恋人相手にあれこれ訊いてみるなんて滑稽な真似してまで僕は絢に幸せになってほしい、 そうじゃないと僕が困るから? 絢は僕の犯した因果から産まれた 僕一人では負いきれないほどの咎を、まるで無関係のはずのまことくんに負わせてしまったような気持ちでいる、 僕が 絢を幸せにしてあげられればよかった 誰より深く優しく愛して死ぬまでそばにいて慈しんであげられたら それはできない 僕が絢を一人の連続した人間だってふうに思えるようになったのは、香澄に会って 香澄と愛し合ったから 深く優しく慈しむような愛し方も 僕の中には元々なかった 香澄と関わって育まれたものだ それは香澄と僕で編んだもので、僕が一度そういう愛し方を学んだからって誰しもにそれを適用できるわけじゃない あくまでその人との関係の中で生まれたものを途切れないように大事に紡いでいくだけで、それがどこに行き着くかどんな形になるのかは、そうしてみないと分からないし、香澄とまったく同じ形になることは相手が誰でもきっと起きない
「…」 少しの間黙り込んじゃったけど、手元のコーヒーを一口飲んでからまことくんに柔らかく微笑みかけて、話を続ける。 「そう… それならよかった。…僕が訊いて君が答えてくれたのに、言われたことを鵜呑みにもできなくてごめんね。君を信頼してないってこととも違うんだけど…。」 好意なんてものを単純に絢にとって良いものだなんて信じられるわけがない、絢だけじゃない、好意をかさに着て香澄に好き勝手に振舞ってきた人間がどれほどいたか いつも好意はどんな悪意より尚たちが悪かった 好きだって、まことくんの言ってる好意がどういうものかは、真実を僕が知ることはなくてもせめてこうして話さないと何も分からない 「…僕は当人と直��一対一でのコミュニケーションを重ねないことにはどうにも個人像が得難いらしくて、今まで君のことも家で幾度となく見かけて挨拶を交わしたりもしてるのに、僕には君をどういう人間のようにも思えなかった。こうして多少不快なやりとりを通してでも僕は君のことを知りたかった、絢を傷つける人間を僕はもう二度と絶対に許さないから。」 理人さんも、誠人くんも、僕も。 流石にもう分かってるよ、理人さんが優しくて儚げで壊れそうなお兄さん、なだけじゃなかったこと。…誠人くんも。…僕も。 まことくんは…どういう人なのか。プロファイリングみたいな成果がこの会話で欲しいんじゃない、お互いの中にまず一人の人間として根を下ろす覚悟がまことくんにも僕にも必要じゃないかなってことなんだけど…。 まことくんが僕の少々重たい言葉を継いだ。 「…絢がすごく真剣に物事考える奴だってことは俺も感じてます。だから正直なんで俺?って思いましたけどね。直人さんみたいに周りに絢を心配する人が居るのはあいつにとっていいと思いますよ。俺は俺が関わる以上のことは絢にしてやれないんで」 ………。 絢に…何かを要求してるわけじゃない…? 関わる以上のことはできない… なら、 どう関わりたいかだけがネックだ。 「僕はもう絢にとっては親戚でも従兄弟でもなんでもない存在だから…正直どこまで僕の一存で絢に鬱陶しくいつまでも構っていいものかはずっとはかりかねてるんだけどね…。君は、絢とどういうふうに関わっていきたいと思ってるの?」 ここまで訊いていいのかな、嫌なら「答えられない」で済むからいいのかな、とか思ってたらまことくんの顔から力が抜けた…僕なにか変なこと訊いたかな… 「どうっていうか… 俺わりと絢はそのまんまで好きなんで。絢がやりたいようにやってるとこ見てられればそれで」 「ーーー……」 「俺も絢もやりたいこと違うと思うんですけど、それでも相手の興味あることが自分の糧になったりもしますし」 「………」 ………そっか… 絢は今度は 際限なく尽くして相手の欲求や混乱を鎮めて満たしていくような関係は 自分を少しでも損なうような関係は、望まなかった…のか 絢のことが… そのままで好き…… 「………まことくんは、なんで自分なのかって言ってたけど、僕は今すごくよく分かったような気になったよ…あの家を出たあとの絢らしいね… 前からいい子だったけど、ずっとずっといい子になった…」 自分で言ってて優しい気持ちと一緒に笑みが溢れる。 「僕だけかもしれないけど話しを聞けてすごく安心したよ。好意を振りかぶって傷つけてくる人間が、大勢いたから…好きだから付き合うってだけじゃどうしても警戒心が抜けなかったんだ」 そのままの絢が好き… 絢に何を求めてるんでもない、何でもこなす器用なあの子にそのスペックを自分との恋愛に活かしてほしいだとか、あの美しい容姿を連れ歩いて自己顕示の道具にしたいだとか、ただ愛玩したいだとか、そういうのじゃなかった… 僕がほっとしてる間にまことくんは「はぁ。そうですか」てまた元の顔に戻っちゃってる。…?違う感じもする… おたおたしながらコーヒーに口をつけて��解みたいなことを言う。なんとなく目が泳ぐ。 「ご、ごめん、絢の話ししてたのに自分語りみたいになっちゃったね。喋るの苦手で…話すとき言葉が抜けがちとか主語がないとか日本語じゃないとかよく言われるんだ…」 正直に白状したらまことくんに笑われた。苦笑いみたいな感じだけど。 マグの向こうをそっと見る。この子ちょっと困ったような感じの苦笑みたいな笑顔が映えるな。少し痩せ気味の体型とも合ってて全体の空気に統一感がある。苦笑に皮肉や嫌味っぽい暗い雰囲気が混じらないから向けられたほうも嫌な気持ちにならない。無表情に近いときの顔の造作がそういう笑みの印象から…遠くはないけど、でもすぐに思い描ける感じでもないから、そこに少しのギャップがあるのかな。 「日本語になってないって…」 まことくんは苦笑したまま返してきた。 「や、別に、会話って言語外のニュアンスが色々ありますから」 「…ニュアンス頼りだと齟齬にいつまでも気付けないこともあるし…」 僕の場合はニュアンス以前な気がするけど… 「香澄に会ってからは気をつけようとはしてるんだ…あの子ははじめて会った頃はあんまりどういう言外のニュアンスも醸さなかったから、僕も何も汲まなかったひどい歴史があって… …絢はそういうとこは醸すかどうかしっかり統制してるからこれもやっぱり僕には難しいんだけど…相手が汲んでほしくないものは汲めないし…」 「そういうものじゃないですか、人間関係は」 僕がおたおたしてたら総まとめにされちゃった…。 続けづらくて黙ってコーヒーを飲んでたらまことくんが続けてくれた。 「俺は前まで絢が好きなのは香澄だと思い込んでたんですけど まぁ、そういう…はっきり言われないとわからないこともありますね。絢が香澄を好きなのは間違いないと思いますが」 「…?うん。…?」 絢は香澄が好きで香澄も絢が好きでまことくんは香澄が好きだけど絢も好きで付き合ってて、…いい関係だと思うけど… 「留学最終週とか絢ずっと香澄に会いたいとかくっつきたいとか色々言ってて、それで今日会った途端あれじゃないですか。マジで置いてかれたし…」 まことくんがちょっとおかしそう?に笑ってる 絢、もうすでにまことくんに甘えきってるな… 「置いてっても君ならちゃんとそこにいると絢が思ってるからでしょう。両想いだね」 僕がそう言ったらまことくんは笑顔の余韻を漂わせてる。 「あー…まぁ…だといいですね…」 真っ先に駆け寄っていく相手と、置き去りにしていく相手。どっちがどうとは言えないけど、違う形の信頼関係が両者とそれぞれにあるってことかな。 「僕は絢が君を選んだことがすごく嬉しいよ。どれだけ今の段階で深く愛しあってても、絢が香澄を恋人に選ぶよりも、君を選んだことが。 あの子は生まれた時から自分のすべてをたった一人のひとに捧げて、その生き方を愛ゆえだと思うことで耐えて生きてきた。本当に愛かもしれなかった、それはもう分からないけど、絢の世界ではずっと愛し愛されることはあの子が身を削る形のものでしか成立しなかった。 でも君はそのままの絢が好きだって言った。絢はやっと身を削らなくてもそのままでいるだけで愛し合える相手を見つけて、そういう君のことを、自分の意思で選び取れたんだと思って。」 きっと怖かったんだろうな。がんばったね絢。 笑んだ目元に自然と涙が薄く浮かんだ。僕のほうにまっすぐ視線を向けたまま、まことくんは黙ってた。 僕から続ける。 「それに君はいくら恋人でも絢のために身を削る真似はしない、…ような気がした。」 にっこり。これから変わるかもしれないけど。 「まぁそうですね」 そうであってくれるから、絢はまことくんを選んだんだろう。 僕の勝手な想像だけど、絢から聞く限りでは、絢がまことくんとの関係を恋人って形にするのを少し急いたのは、絢が香澄と今後も一緒にいるためでもあったような気もする。 自分の気持ちの成就もあっただろうけど、絢の人間関係はそれほど大きな広がりを見せることはもうないはずで、絢と香澄はそうならないように思いあっているものの、お互いに少し、お互いのことになると我が身を省みなくなるところは…あるよね。 長々話し込んだけどコーヒーも飲み終わったし、まことくんも食べ終わってるから日が落ちる前に空港を出る。夜道の運転は暗所が見えない僕は避けたほうがいい。 「食べ終わったし、そろそろ僕らも帰ろうか。送っていくよ」トレーを持ってワッフルを包んでた紙を丸めてゴミ箱に入れながらまことくんのトレーも彼の手から預かって片付ける。 「はい。じゃぁ…ほんといいんですか奢ってもらって」 「もちろん」 会計しながら話す。 「まことくんは遠慮しそうな気もするけど、ご飯作るのが面倒だったりお金がなかったらいつでもうちに泊まってってたくさん食べてってね。一人暮らしだって聞いたし。香澄も喜ぶよ」 「ありがとうございます。機会があれば」 丁寧に「ごちそうさまです」って言って僕に頭を下げる、わかりやすい愛想はそんなにないけどどこも無礼じゃない…躾の行き届いた子?っていうのかな…?いや、この年齢ならもう躾とかってことじゃないのかな…。
香澄と絢は向こうの車で帰ったみたいで、ロールスは駐車場でいい子に待ってたから後部座席にまことくんを乗せる。 僕が持ってたまことくんの荷物も乗せて、その横に食料を乗せた。 ふと思いついて運転席からバックミラー越しに提案する。 「今日はうちに泊まっていったら?今夜は香澄も絢のところに泊まるみたいだから僕も家に一人だし。おいしい晩ごはん作るよ」 さっき香澄と絢から連絡が来てたのを見た。僕一人だとちょっと寂しい。 「いや、さすがにそれは…帰って荷ほどきとかもしたいんで」 「そっか」 今まではずっと留学先で絢と同室だったみたいだし、急に一人の部屋に戻って一人で寝起きするのも寂しいんじゃないかなと思ったんだけど、一人のほうが落ち着くし静かでいいって場合もあるし、これも無理強いはできないな。 「じゃあせめて家まで送っていこう」 そこから先はまことくんのナビで一緒にまことくんの下宿までいく。 車の運転はなるべく安全運転で。 後ろのまことくんに話しかける「そのキーホルダー、絢からもらった?」 荷物についてたかいじゅうくん。僕と香澄がお守りに渡した��のを他の人に渡すなんてよっぽどだ。 まことくんは「借りてるだけで返します。それも何度も断ったんですけど」って言ってる。相当絢が食い下がったな。お守り、自分よりまことくんに持っててほしかったのかな。
まことくんの下宿についたら、車から荷物を持って降りる彼に、カフェで受け取った大きな袋を運転席から差し出す。 「これ、さっきのお店のメニューで日もちしそうなやつをテイクアウトしといたんだけど…疲れてるかなと思って、数日は料理しなくていいように」 慌てて付け足す。 「アレルギーとかあったり食べきれなさそうだったらこのまま僕が持って帰るよ」 「あーありがとうございます…なんか色々してもらって」 絢を呼べばぜんぶ処理できる気はするけど、絢ももしかしたら今頃はしゃぎすぎて熱出してるかも。 まことくんは袋の中身を確認して「助かります。いただきます。ありがとうございました」って綺麗にお辞儀した。 背筋もいいけどお辞儀の仕方が綺麗なだけじゃない、茶道じゃない…何か武道をやってたのかな。 「役に立ちそうならよかった。それじゃあ、お疲れさま。留学先から絢を無事に帰してくれてありがとう。おやすみ」 運転席の窓を閉めて車を出す。
聞きたいことが聞けたのとはちょっと違ったけど、それより当初の目的は達成できてる気がする。 最初はたしか香澄の話題に頻出していた、名前だけの存在だった”まこと”くんに、実体が伴い、造形が伴い、存在感が伴い、今日ようやく僕なりの像が得られた。 これからそこに少しずつ違うものが追加されていったらいいな。
香澄視点 続き
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2022/11/12〜

11月12日 たぶん最後のギンレイホールへ行った。 アルバイトをしていた時、地下鉄の出口の案内をさんざんしていたのに、B4のbだったかB3のbだったか分からず、B3で地上へ出ると一つ道を間違えていた。やっぱり紀の善は閉店していて、細い道を通ってギンレイホールへ到着。 お世話になった社員さんへご挨拶をした。 「君、意外とよく来るな!」と言ってくれた。 今回の閉館のことは突然決まったことらしく、次の場所の目処は立っていないらしい。社員さん方もほとんどこれで退社されるとのこと。 久しぶりにロビーの内側から、ガラス���越しに犬を連れた人々が通り過ぎるのを見ながらお話をした。 グッズの缶バッチをいただいて、あ、もう会えないんだろうな、と思いながら「お元気で」と言い合って別れた。

ギンレイのみなさんに差し入れを、と、近江屋洋菓子店でお菓子の詰め合わせを購入。いちごのケーキがたくさん並んでいてかわいい。いちごのショートケーキは日本人が作った可愛さがある。
ガーディアン・ガーデンで写真の1wall 展を鑑賞。最後の1wall 展で、今日は最後が多い日。 いわゆる家族、を、冷静に観察させてくれる展示だった。 取り留めのない会話が流れる居間。 私の祖母は物静かだったので、ひとりでに語り始めることはなかったし、母も余計なことをあまりたらたら話すことはなかったので、適当に何か会話が生まれている、いわゆる居間っぽい感じは、少し羨ましいかもしれない。

gggではデザイン対象の展示を鑑賞。 キコフの器がかわいい。 年賀状を作り始めたところだったので、いろいろなパッケージデザインを観て、あれで良いのかな…と、悩み始めた。
4ヶ月ぶりに髪を切って染めた! こ��な場所にも安心感がある美容室ってあるのね〜、とフランクでおしゃれでヤスミノさんのヴィジュアルっぽいお店だった。 髪色を白っぽくしたい!と伝えていて、頑張って座り続けて、出来上がりがピンクっぽくて、あれ?でもかわい〜、となった。 自分が白って言ってなかったことにしていたら、色が抜けると白っぽくなるとのこと。なるほど。 年末年始金髪計画も相談させてもらった。(もったいないという結論。)
初めて“おうちクリーニング”モードで洗濯してみる。ヒートテックなんてクリーニングモードでなくて良いのにね〜、と干してみるとカイロを貼ったまま洗濯していて残念な気持ち。
11月13日 ギンレイホールの支配人からお礼のショートメールが入っていた。いつまでもお世話になってしまって、でも、アルバイトを辞めても少しだけ繋がりを持たせてもらえて幸せ。 来週、ハロウィンのキャンディを持って、研究室にもう一度行って、ちゃんと挨拶しようと思えた。
気圧がだめっぽい感じは当たっていて、湿度が高くて呼吸がしづらい。
フィルム現像を出したデパートの、物産展かいつまみ食材売り場みたいなところに、マンスーンさんがラジオでおすすめしていたとり野菜みそがあった。パッケージの金髪お母さんキャラもちゃんといる。参考書でワンポイントアドバイスをくれるキャラみたい。
年賀状はやっぱり指向を変えて“ポップをはかる年賀状”にしようかな。年末年始も開館している図書館でお正月を過ごしたい。
今日は何もなかった。

11月14日 実家の忘れ物を送ってもらって、実家と関わりを持ったことで何かざらざらした気持ちになる。“ありがたい小包”が届いた。
とても忙しなく1日を過ごして帰宅した今も息が上がっていて呼吸が不自然。 昨日届いた新しいルームフレグラン���がいい香り。
朝のバス停に何かのカードが裏返しで2枚落ちていた。 発車したバスの車内で、ずっとリュックの全てのポケットを探ったり、荷物の中身を取り出してはしまっている人がいて、あ!と思った。さっきのカードは、バスの乗車証も兼ねている職員証だったのかも知れない…特段拾い上げもせずに見過ごしたこと、何か悪いことをしてしまった人でなしの気分になった。
2023年ポップをはかる年賀状をつくる…

11月15日 久しぶりにmoney treeを開いて、もうダメ。お金がない、というより、電気代がとっても値上がりしていたり、カードの引き落とし額が増えていたりで少し落ち込む。お金を使い果たす豊かさを知りたいです、バタイユ先生。 でも、今のところ節約すべきポイントがないのでこのままずるずるまたmoney treeをアインストールする日々を送ってみる。
前の職場でとってもお世話になった上司へメッセージを送る。近々お会いできるかもしれないので、その旨を連絡してみた。 今の職場の上司から、奥さんが4月に出産予定である報告を受け、育休をとるつもりであることを相談してくれた。男性が育休を取るには、証明書類が必要で手続きが少し面倒らしい。でも、出産とか子育てってそれに比べられない大変さがありそうで、その手伝いを友人や他人がもっとライトにできるシステムってあるのかな?身内でそんな手続きが必要なら、他人ならどうなるのかしら。考えながら、昔、都写美のトークイベントで志賀理江子がぬらりひょんみたいにそんなことを言っていたのを思い出した。
来週予定されている職場の食事会の件で、私は人前で食事が取れないことを伝えてみると「ちょうど良かった!今回はやっぱりバルにしたので、みんなで取り分ける感じで残す心配をしなくても大丈夫ですよ。」と言ってくれた。 自分の食事のことは、自分でももうどうにもできないので、人に伝えることをあきらめていた(理解してもらえはしなくても、それ以上に距離を置かれることしかないと思っていた)。 初めて社会の場で伝えてみて、その相手がこの方でよかった。

11月16日 乗り換え駅で忙しなく乗り換えの道を歩んでいたら「あ!ちょっと!!」 みたいな感じでおじさんが正面から声をかけてきて、反射的に立ち止まらず視線を向けずまっすぐ通り抜けてしまった。よく街でいたずらに声をかけられる事があるので、自分のペースを崩さないで歩く癖がついている。たぶん今回もからかいっぽさがあったので正解だったと思うけれど、朝の通勤時間帯になんだったんだ…と、私に何を伝えたかったのか後々気にしている。
国宝展のチケットの予約をすっかり忘れていたことを、相手からの“忘れていてごめんなさい”メッセージで思い出す。 よくない感じで仕事の忙しさに、(文化的)生活が壊されている!
2期下の方のデスクにかわいいマスコットがいるのが気になっていて、今日やっとそのことを話せた。 バイエルみたいな名前(忘れてしまった)の水属性のポケモンらしい。イグアナがモチーフとか。クリスマス仕様で白のふわふわのマフラーを巻いていてかわいい。私が知る限りだと、その方が退勤した後はデスクからいなくなっているので、持ってきて持ち帰っているという、とても愛な感じ。
ネコのチーズケーキが再販されていた! コンビニご飯は心が枯れるけれど、でも、アイテムとして買ってしまうこともあるよね。

11月17日 乗り換え駅にちいかわのガチャガチャが入ったと思ったら、売り切れて、今日はもう他のキャラクターのガチャガチャが入っていた。
ポケモンって動物の野生の要素を残しつつキャラ化しているので、変に平面化されたり擬人化されていなくてかわいいかも。ちいかわは人間社会の世知辛さをやってる感じが受けていると思っていて、それ以外で純粋に外面だけで愛でている人もいるのかな。
髪をすかれすぎて悲しかったけれど、すぐ乾かせる様になった。あとカラーシャンプーに戻したらきしまなくなった。
せっかくバラを買ったのに、それを楽しむ余裕がないほど何かに呑まれている1週間。 ポップをはかる年賀状を作りながら、全くポップじゃなかったな〜2022年、と反省している。
空腹を紛らわすためにナイアシンフラッシュして、ナイアシンフラッシュで頭痛を起こし、イヴを飲んで胃が痛くなって胃腸薬を飲む訳の分からないループをしている。

11月18日 疲れすぎたので今日は日記お休みです!と、するつもりだったけれどちゃんと今書いている。 掃除もしてしまったし、ウォークインクローゼットの中のいらないものを少し捨てた!えらい!
大人の防災訓練は、ここぞとばかりにみんな喋りまくっていてその相槌で忙しかった。こうゆうとき思ったもの見えたものをフィルター通さずぱっかりみんな喋り始めて、社会人じゃなくなって、でも社会をするために集められた人達なので、本当に何も生まれない会話がずーっと同時多発的に発生していてすごかったし、私も海外旅行でカップ麺と非常食(まずい)を交換させられた話などをした。
保存食の配給を無視して受け取らないでいたら「何で!?持って帰ろうよ!どうしてそんなことするの?」と少し怒られ口調も入れて問いただされてしまう。食べ物のストックは大切!と力説された。私はそうゆうものを、あ!!と、なって一気に捨てたことが何度もある。
午後休みをとって表参道でネイルをしてもらって、町が平日にも存在していて、帰りに混んだ電車で暖房を浴びて、とっても疲れてしまった22時。これから今日の一食目。
仮囲いの中のクリスマスツリーが、今日のポップ。

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72. 『±0』
(英題)Bleach on the Gifted Fates
2021/07/18
作曲: thus(2021) 編曲: thus(2021) 歌詞: thus(2021) 絵: thus(2021) 動画: thus(2021) (フォント: マメロン 5 Hi Regular) © 2021 thus. Composed by thus
ニコニコ動画 https://nico.ms/sm39104374
YouTube https://youtu.be/5BRpXNW34_Y
哔哩哔哩 https://www.bilibili.com/video/BV1iv411E77c/
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遥(はる)かに涅(そ)めた 束(つか)を垂(た)らし降(お)り立(た)って 宛(さなが)ら斑(まだら) 紐(ひも)の風水(ふうすい)を 吸(す)い上(あ)げ
ねぇ、褪(あ)せない話(はなし)をしよう 未(ま)だ弖爾乎波(てにをは)も無(な)い欠落(けつらく)併(あわ)せ合(あ)った 延々(えんえん)連(つら)なれる 文字(もじ)化(ば)けた遺跡(いせき)で 石壁(せきへき)画伯(がはく)展示(てんじ)が 事(こと)痣(あざ)闢(ひら)く様(さま)彫刻(ちょうこく)の陰影(いんえい)が 漂白(ひょうはく)されて――
前(ぜん)パラダイムに残(のこ)る渣物(おりもの) 熔(と)けず 熔(と)けずの型(かた)が背後(はいご)で 勇名(ゆうめい)上梓(じょうし)に恵(めぐ)まるる者(もの) 顔(かお)から形(かたち)も賜物(たまもの)の限(かぎ)り 天(てん)パラダイムに供(そな)う平片(ひらかた) 「生(い)きてる世界(せかい)が違(ちが)うからね」と 鼎天秤等(ていてんびんら)に物置(ものお)き只(ただ) 普通(ふつう)の為(な)りにも 意味(いみ)型解(かたと)いてみた
円(まど)かに終(お)えたい そう願(ねが)っていた、ずっと 綺麗(きれい)をどうにか希釈(きしゃく)したいと 語(かた)らい
苑(その)か 方形(ほうけい)区画(くかく)〆(しめ)た 恣意的(しいてき)尺度(しゃくど) 美的(びてき)保存(ほぞん)の企(たくら)みが
そうして 大事(だいじ)な話(はなし)をしよう 脊髄(せきずい)が壊(こわ)れた苦(くる)しみの系譜(けいふ)を 穎(えい)と付箋(ふせん)して 懇談(こんだん)から遠(とお)ざけ 御身(おみ)が造(つく)った玉座(ぎょくざ) その矯(た)めに元(もと)いも卜(うらな)う許(ばか)り 揮発(きはつ)していく
超(ちょう)パラダイムへ追(お)い遣(や)る礼(れい) 融(と)かす 融(と)かすは僕(ぼく)が為(ため)だと 倫連乱露(りんれんらんろ)と擬態(ぎたい)を遂(と)げ 姿(すがた)形(かたち)など捉(とら)えれん僕(ぼく)が 沒((めい))パラダイムを踏(ふ)み躙(にじ)れと言(い)う 尸(かたしろ)定(さだ)めた称揚迎合(しょうようげいごう) 御身等(おみら)はそれらに紛(まぎ)れていて 対数距離(たいすうきょり)取(と)り 天(てん)を仰(あお)いでいた
――戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って
三殊(さんしゅ)の指(ゆび)から組(く)み滲(にじ)む灰汁(あく) 吊(つ)れよ、吊(つ)れよと 洗(あら)う肉月(にくづき) 功績(こうせき)欲(ほ)しさに妙(みょう)を釁(ぬ)りたけ 喰(く)われ、喰(く)われの凶(わざわ)いに化(ば)け 「凡庸(ぼんよう)ならざれ」「面黒(おもくろ)く在(あ)れ」 潰(つぶ)れる僕(やつがれ)略記(りゃっき)に潰(つぶ)れ 天性(てんせい)ありきの鬯(においざけ)不味(まず)い 返(かえ)せ! 返(かえ)せよ 僕(ぼく)が没個性(ぼつこせい)
――戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って ――戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って ――戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って ――戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って
才美(さいび)に冷(さ)めた末(すえ)に退避(たいひ)を試(こころ)みて リスト 手書(てが)いた 幺(おさな)い気概(きがい) ずっと有(あ)って
じゃあ、内緒(ないしょ)の話(はなし)をしよう その御身(おみ)睦(むつ)まじく衒(う)れ込(こ)み刺(さ)していた 遠(とお)く眺(なが)めて 彗星(すいせい)を見(み)る目(め)で 沈黙音(ちんもくおん)を掻(か)き消(け)し 「ほら何(なん)にもない」と頭(あたま)に木(き)を植(う)えた 当該(とうがい)に無断(むだん)でした 僕(やつがれ)は「居(い)ない」から
丁(てい)パラダイムで見(み)ていたんだよ 零(お)ちる雫(しずく)の味(あじ)を拵(こしら)え 頭葉(とうよう)欲(ほ)しがる者(もの)が分(わ)からない 「傘上景色(さんじょうけしき)はさぞ綺麗(きれい)哉(かな)」と 丁(てい)パラダイムに御身(おみ)は寄(よ)らない そこには何(なん)にも無(な)いからとされる 面々(めんめん)細工(さいく)を継接(つぎは)ぎして 球近傍(きゅうきんぼう)迄(まで)来(き)て呉(く)れた君等(きみら)、
「丁(てい)パラダイムの視野(しや)を知(し)れるか 称揚(しょうよう)されたの憂(う)さを知(し)れるか」 「癆(かぶ)れの戯(ざ)れだと眼(め)にも呉(く)れず 『次(つぎ)だ次(つぎ)だ』と枯渇済(こかつずみ)とさる」 「丁(てい)パラダイムの淵(ふち)を知(し)れるか 遠(とお)く離(はな)れた君等(きみら)であるなら」 「滾々(こんこん)と垂(た)れる僕(やつがれ)の音(おと)、沈黙(ちんもく)の聲(こえ)が聞(き)こえるだろうか」
現(げん)パラダイムで 俯瞰(ふかん)した酷(こく) 熔(と)ける 熔(と)けるよ 腫(は)れ衣(ぎぬ)を着(き)て 倫連乱露(りんれんらんろ)の放念(ほうねん)にして 踊(おど)れぬ畳字(じょうじ)で繰(く)り返(かえ)し告(つ)げる 「零(れい)パラダイムで 見(み)つめ直(なお)して 僕(ぼく)と君等(きみら)は 違(たが)わないから」 鼎天秤(ていてんびん)から読(よ)み取(と)れること 偏色(へんしょく)眼鏡(めがね)を外(はず)し見(み)た壁(かべ)は
前(ぜん)パラダイムに残(のこ)る渣物(おりもの) 熔(と)けず 熔(と)けずの型(かた)は儚(はかな)しい 勇名上梓(ゆうめいじょうし)へ恵(めぐ)ませた者(もの) 顔(かお)から形(かたち)も容物(いれもの)許(ばか)りだ 丁(てい)パラダイムの事切(ことき)れ時(どき) 「心(こころ)の叫(さけ)びは同(おんな)じ筈(はず)だ」と 称揚(しょうよう)辛苦(しんく)の殴(なぐ)り彫(ぼ)りから 原点(げんてん)名付(なづ)いた時間(じかん)の隅(すみ)まで
戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って 戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って 戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って 戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って
――戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って ――戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って ――戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って ――戻(もど)って 于(ああ)、戻(もど)って
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10080019
君が行方不明になった、と君の母親から連絡を受けた時、夏はもう姿を消して、君の好きな秋がなりを潜めはじめた10月の頃だった。
君の母親は元来不安定なところがあったが、俺に頼ってくるあたり本当に不安定になって、自分を保つことすらギリギリなのだろうと推察された。君の母親は、君を奪った俺を毛嫌いしていたから。それでも俺に連絡を取って、金切り声で君がいなくなったことを喚き散らしていた。俺のせいにしている彼女の電話をそっと切り、着信拒否した後、俺は車のキーを手に取った。
暫く走った先に、俺と君がよく夏の間避暑地に使っていた別荘があった。別荘と言ったって、こじんまりした可愛らしい、御伽話の小屋のような、可愛らしい一軒家だ。俺が子供の頃、母の父、祖父に連れて行ってもらってから、隠れ家のように使っていた。
母も、父も、この家を気に入っていた。それだけじゃない。初恋の人も、次の彼女も、必ず俺はこの場所に連れてきて、そして、窓から見える青々とした森の景色と、時間が止まったような感覚を共有してきた。人が出会う理由も、別れる理由もそれぞれ人の数だけあるだろう。俺は君と結婚するつもりで、いつかこの家でプロポーズ をしよう、と思っていた。
果たして、君はそこにいた。細く白い身体を綺麗な、艶やかなワンピースで包んで、君はフローリングに座り込んでいた。ああ、それ、俺がこないだの誕生日に買ったワンピース。綺麗だよ、似合ってる。そう言いたいのに、声が出ない。俺が君に向けた愛は愛だとか情だとか、そんな簡単な言葉じゃ表せない、いわば、世界の全てだった。
「どうしたの、急に、音信不通になったりして。」
「どうしてかしら、分からないわ。でも、何となく私、もうここから、出たくないの。」
「そっか。それなら別に、出なくていい。ずっとここにいよう。」
君は人間だったのだろうか。勿論俺はどこぞのヤバい奴らとは違って正気だから、君が人間だったってことは理解してる。でも、君から「実は私、天から下りてきたの。」と言われても俺はきっと信じただろうし、信じさせるだけの魅力が君にはあった。それだけだ。
「世界は、変わるのかしら。」
「変わらないよ。だって、君の世界はここで、俺の世界もここだから。」
「閉鎖的、って笑われるわよ。でも、私、そんな貴方が好き。」
食事だけを買い出しに行って、それ以外は全部、君と過ごすだけの日々。幸せだった。君の瞳に映るものが僕だけである、そんな幸せを噛み締めて、僕はこのまま死んでもいいと、いや、むしろもうここが天国なのではないかと錯覚した。
「君が、たまに人間じゃなく見えるんだ。」
「あら。私の肩甲骨が天使の羽に見えるのかしら。」
「もっと立派な翼が肩から生えて、後光がさしてる。」
「馬鹿。ねぇ、今日は甘い紅茶が飲みたいわ。」
「いいよ。...おや、君、これは。」
「ん?......あら。何かしら。」
ある日、君の二の腕に、小さな、小指の先ほどの双葉が生えた。俺は色々調べたけど、ヒットするのは漫画や小説ばかりで、人から草木が生えてくる、なんてそんな奇天烈な��気は見つからない。病気、だなんて、君のことをそんなふうには思いたくなかった。君は最初に生えたその子に「天使の羽」と名付けて、脱脂綿に染み込ませた水をポタポタと垂らして水をやった。君の指が黄緑の双葉を撫でて、君が嬉しそうに笑う。
部屋に時折、蝶や蜜蜂が入ってくるようになった。理由はほかでもない。君の身体から生えた草が育ち、花を咲かせ始めたからだ。ホタルブクロのような花から、ガーベラのような花まで、名前も色も、どれも図鑑では見たことのないものだった。ひらひらと飛んだタテハチョウが君の腕の花に止まって、長い管を伸ばして蜜を吸っていた。俺はその花を蝶が止まったまま摘んで、そして、庭へと植えていった。庭に揺れる、金色に光った丸っこい花が美しくて、俺は君から生える花を無心で植え替えた。種を落とし、また芽吹いて、未来永劫花を咲かせてくれたら、と、思ったからだった。
そしてあの日夜中に目を覚ますと、隣���寝ていたはずの君がいなくて、リビングの方が眩しく輝いていて、俺は、現実が何より残酷だと思い知った。
植物に蝕まれた君は、身体中から花を咲かせながら、フローリングに寝そべって、命を落としていた。悲しかった。悲しい以外の言葉が出てこなかった。君がいない世界が、変わらず回っていくことが悍しくて、君に触れても冷たいままの、蝋人形みたいな腕を、美しいと思えない。俺は夜が明けて外が明るくなっても、ずっと君を眺めていた。そして、君を、半分、庭に植えよう、と思った。
植物になった君を、庭に植える。いけないことをしているのは、分かっていた。だって君は人間で、俺も人間で、人間の世界にはルールがあって、僕は、保護責任者遺棄致死とか、死体遺棄とか、そんな難しい名前の罪に問われることになる。でも、それでも、君が命を使って咲かせた花を、俺は、粗末に扱って枯らすなんて、出来なかった。ごめんなさい、世間。ごめんなさい、世界。俺は、君を愛してる。君への愛を元に生きている俺が、愛に背くことは出来ない。
「愛してるよ。どんな姿になろうと、世界がどう変わろうと。まるで、夢十夜みたいじゃないか。ねえ、君、夏目漱石は読むかい?」
「読まないよな。君はいつも、現実主義を曲げることがなかった。SFも空想も、君にとっては道端の石も同然。俺と触れ合う温度と、目に映るこの刹那の世界が、何よりも好きだったもんね。」
そして俺は、君を、寝そべり胸元で手を組んだ姿で、顔以外の全てを地面へと返した。ゆらゆらと、生えていた花が俺の呼びかけに答えるように揺れる。次の日も、その次の日も、俺は君を見つめて、喉が乾いたら、夜露が溜まった花びらを食んで乾きを潤した。君のそばで100年待つつもりだった。また会いにきてくれる、そう思ったからだった。君が好きだった。君のいる世界でしか、上手く呼吸が出来なかった。でも、でも...これが、ずっと続く幸せなんて、思ってはいなかった。
急に、玄関の扉が乱暴に叩かれて、そして、こじ開けられる嫌な音がした。君が気に入っていた白い木の扉が破られて、堅苦しい服を着たいかつい人達がたくさん入ってきた。
「お前だな。マルヒを確認!確保!!」
「痛い、何ですか、僕は何も、していません、乱暴はやめて...」
「酷い部屋だ、何だここは...探せ!」
「主任!庭です!!」
「これ、うっ...」
「おい岡野、吐くなら外に出ろ。」
男たちが土足のまま、君の生えた庭を踏み荒らしていく。君を囲うように無数に生えていた花が散って、踏まれて、変色して消えていく。やめて、やめてください、僕の、大切な君を、これ以上蹂躙しないでください。やめて、そういう声は猿轡を噛まされて、何も届かなくさせられました。
男たちは部屋の中を荒らし、君を庭から掘り起こそうとして、とにかく僕が憎くてたまらないようでした。僕の両手に手錠をかけた、おそらく一番偉いであろう男の人に、僕は、「もう一度庭が見たい。」と言うと、男の人は僕を哀れに思ってくれたのか、庭へ連れて行ってくれました。
「また、会いに来るよ。」
「......しっかり見とけよ。」
これが全ての真実です。
ね、二人は幸せでしょう?その先を知りますか?このまま終われば、綺麗な純愛のまま、覗き見した貴方の気分も切なく清らかなまま。それでも真実を見ますか?
「常人にも分かるように翻訳してくれないか。」
「ガイシャの母親から行方不明届が出され、捜索を行った結果、捜査線上に被疑者Aが浮上しました。被疑者Aはガイシャの元交際相手でしたが数ヶ月前に振られており、同様に行方が掴めなくなっていました。行方を追った結果、助手席にガイシャを乗せたAが県道○号線のNシステムにて確認出来ました。自宅の状況から見て断定は出来ませんが、Nシステムで確認した時点で既にガイシャは亡くなっていたものと思われます。同時に行った家宅捜索により、Aの自宅から、過去の殺人に対する"戦利品"が大量に押収されました。毛髪、歯、骨など、行方不明者リストとの照合やDNA鑑定を進めていますが、科捜研曰く少なくとも12名以上はあるだろう、とのことです。」
「......続けろ。」
「Aは運んだガイシャが腐敗する様をただ眺め、蛆が沸きカビの胞子が生えた腕に水をやっていたようです。そして、カビた箇所を抉っては現場の庭に埋めていました。行動の意図は不明です。現場の寝室には複数人の衣類と写真があり、庭、リビング、キッチン等に遺体の一部と思われる肉片が散見され、判別作業は難航しています。全体の人数はまだ不明ですが、白骨死体が2体ベッドの上に綺麗に寝かされていました。身につけていたもの、体格、骨年齢から恐らくAの父母と思われますが、劣化が激しく断定は出来ないため、自供待ちです。」
「...肝心の自供は取れそうなのか。」
「難しいかと。詳細は精神鑑定待ちですが、先生の所見では恐らく刑法39条の適用対象になるだろう、と。」
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第34話 『旧き世に禍いあれ (2) - “ブラストフォート城塞"』 Catastrophe in the past chapter 2 - “Blastfort Citadel”
ブラストフォート城塞を見渡せば、『城』という華やかな言葉の印象とは遠い、石造りの堅牢な風貌は砦のそれと言っていいだろう。
スヴェンはこの建造物も元は修道院だったと噂では聞いていた。ただ、城塞に研究所を設けた時には既に砦として使われていて、実際のところどうだったかは、皆目見当がつかない。むしろ験を担いだ誰かの作り話ではないかと考えていた。作り変えられた施設にしては、礼拝堂だったと見られる建物もなく、険しい斜面をわざわざ切り出して作られた来歴の割には、この地に作られた由来すら記録に残されていないのも疑念の余地がある点だった。
城塞と名を冠しながらも、城壁の内側に市街はない。居並ぶのは兵舎や倉庫、そして厩舎などの背の低い軍用の建物で、全てが同じように暗い色をしていた。
はぁと深い息を吐く。その息は白く、スヴェンは体をぶるりと震わせた。外套の襟を直し、足を早める。
短い秋は瞬く間に過ぎ去り、もうすっかりと冬だ。視界に入る山岳はすっかりと白い雪に閉ざされている。ブラストフォートは年中気温が低く、1年の半分以上は雪に覆われている。
この城塞は、トラエ、ラウニとソルデの三国間で起きた紛争の中心地となった。三国の国境線が交わる丁度中央地点で、思惑も戦線もぶつかり合った。互いの国へ進攻するに際しても、ここを通らず他二国に兵站を送るにはどうあってもリスクの高い迂回が生じる関係で、攻めるも守るも、話はまずこの城塞を手中にしてから、という事情もあった。この要塞を抑えた国が勝つと信じられ、激しい争奪戦が目下進行している。
トラエがこの城塞を維持し続けられているのは、”軍神”ゴットフリートのおかげだ。不敗を誇るゴットフリートは、皇帝の厚い信望を受け、ブラストフォート城塞に陣を敷いた。ここを確実に堅持し続けることが、即ち勝利を意味する。武勲で比肩する者のいないゴットフリートが此度の采配を受けたのも、当然の帰結であり、疑いを示す者もいなかった。
対するラウニやソルデもそれを理解していたからこそ、戦火はさらに激しくなって行った。トラエ無双の英雄が、史上最も堅牢を誇る城を守護している。つまり、ここを打ち崩したもの、あるいは守り抜いたものが、この戦争を制するに等しい。この三国戦争の顛末を決定づける、天下分け目の決戦地の様相を呈していった。
ゴットフリートは戦場で一度もその膝を地面についたことはなかった。スヴェンが城に派遣されて3年、ブラストフォート城塞は今もトラエ帝国領のままだ。各地で名を馳せたどんな名だたる英雄が攻めてこようとも、この城塞を越えた者は未だかつていなかった。
(砦としての適切なつくりと、それを最大限に生かす武将……。理屈で言うは容易いが、それがこうして揃い立つと、これほどまでに守り抜けるものなのか)
スヴェンは眼鏡のブリッジを押し上げて、先を急ぐ。その手は幾冊もの分厚い魔術書があった。
激戦地とはいえ、兵糧が乏しくなるこの季節には大きな動きも見られなくなる。天候によってはなお一層、双方ともに大人しいものだ。攻めあぐねた敵軍に二面三面と包囲されながらも、ブラストフォート城塞はまるで平時のように静まり返っていた。
(ああ……どうしてうまく行かないのだ……)
城塞の中にある研究室の扉を開ける。
真っ暗な部屋を、たったひとつのランタンが照らしていた。本来はもっと採光がいい窓があったのだが、スヴェン自身が本棚で潰してしまっていた。外光は観測を伴う実験に不向きだ。
城塞の中の、私の城。眼鏡を再度押し上げて、ふふと短く笑う。
「次はうまくやってみせる……この書こそ本物だ、今度こそ……吾輩が見つけるのだ」
ぶつぶつと言葉を口の中で繰り返しながら、長い執務机の上に置かれていた書類や本を床にすべて落とし、新しい本を置いた。
本棚やコートハンガーにかけられた外套、並んだ靴などは嫌と言うほど規則正しく、寸分のずれもないように置かれているというのに、余程気が高ぶっているのか、今は床に落ちた本たちを気にして直すそぶりもない。
大きな椅子に腰かけて、その本を開いてページを手繰り始めた。
世界を知るということに限りはあるのだろうか。スヴェンは幼い頃からずっと考えていた。世界を知るためにありとあらゆる本を読み解き、特例を受けて最高学府に進級したときも、当然のこと、以外には特に何も思わなかった。神童と呼ばれ、世界の知識を見る間に吸収し、未知の研究に邁進し、知性で遥かに劣る両親とは縁を切り、知こそが価値とする者達とこそ縁を深め、生きてきた。
――この世界は、一個の生命だ。
そう悟ったのはいつのころだろう。それからスヴェンの関心は世界の表層を辿ることではなく、世界の成り立ちの根源を掴むことに移った。
この感覚までも理解し共有できる者はさすがにいなかったが、スヴェンは気にすることはなかった。目的と到達点は明確だったからだ。
世界が生まれた瞬間を見る。つまり、過去へ遡行しその瞬間を観測することが出来れば、世界が生命であり、巨大な有機体であり、何がどうやってそれを作り出したのかを証明できるのではないか、と考えた。菌類はそれぞれの菌根で膨大な情報網を作り上げることで知られている。ならば世界は? 世界と世界を構成する生命や物質との関係も、似たものではないのか?
夢を見ていると言われた。気が狂ったとも。けれど、スヴェンは時間を移動することに執着し、トラエ皇帝はスヴェンの情熱に理解を示した。思えばこんな突拍子もない目的に意義を見出す皇帝というのもまた、妙ではあるとは思った。皇帝にもまた、過去に遡行する事で成し遂げたい、”過去に戻ってでもやり直したい何か”が、心中にあったのかもしれないが、それを聞き出す術をスヴェンは持たないし、スヴェン自身興味もなかった。少なくとも、時間遡行がもたらしうる皇家の安定、全ての危険を排し、あるいは時を超えて未来の悲劇を食い止め続けて、皇家そのものを永遠に君臨させる、という”表向きの”理由――そのために、皇帝はスヴェンを支援することを決定し、臣君達も、やや半信半疑ではありながらも、それを支持した。
「これだ」
今日も皇帝に頼んでいた奇書が届けられた。
スヴェンはブリッジを押し上げ、眼鏡の位置を直す。正常な観測のためには、眼球とレンズの距離は常に1.5cmを保たねばならない。立ち上がろうとして自分が先程叩き落した本を見やり、露骨に眉をしかめる。頭の中を整理し終えて一息ついたら、急に普段の几帳面さが顔を出した。手早くそれらを元あった場所へそそくさと戻して、室内を完璧に揃え、部屋の中心に立った。
「まず、魔石を用意して……」
木箱に詰めてある魔石を取り出し、机に置く。魔石は貴重な資源である。研究には大量の魔石が不可欠だった。魔石なしには、相当な魔力量を消耗する実験を繰り返し行うことは出来ない。ブラストフォートは戦地だ。当然、魔術師部隊が使うために魔石も大量に集められていたが、落城までには湯水のごとく消費されていた魔石も、入城し防衛に転じてからは、ゴットフリートを中心とした白兵戦主体の迎撃戦において、これらが投入される機会も乏しく、結果余剰が出ていた。山と積まれた荷物を運び出すにも、労力がかかる。それならば、国内にいる魔石を必要とする人員が、逆にブラストフォートまで来れば良い。研究をする場所��しては些か物騒な地ではあったが、自由にできる大量の魔石が得られる機会には代えがたかった。スヴェンは二つ返事で前線まで足を運んだ。研究には様々な代償がつきものだ。それを理解してくれる後ろ盾を得たスヴェンは、他の誰よりも恵まれていると言えるだろう。
取り上げたいくつかの魔石の中から、更に質の良いものを選ぶ。一番大きいものはナリだけで中身は薄く、魔力自体は少ないようだ。ページをたぐる仕草に似た動作で、一粒ずつ指を触れては次の石に触れ、研ぎ澄ませた感覚で内容量を確認していく。最後に触れた人差し指ほどの魔石が最も密度が高く、多くの魔力を秘めていた。
「よし……よし……まずは一時間前に戻る……そうだ……」
長い間研究し、様々な方法を用いたが、まだ成功させたことがない。
スヴェンも焦り始めていた。戦火は年を追って激しさを増している。今は冬期で戦線が膠着しているが、雪が溶ける頃にはまた激化される。2国がこの城塞を攻め、帝国は防戦し続ける。魔石の余剰が出ているのも今だけだ。魔石の消費量も年々増え続け、そうなればいつ自分に回してもらえる分が枯渇するとも知れない。そう考えれば、時間は限られている事になる。一度でも成功させられれば、魔石を消耗する前の時間に何度でも戻って、ほぼ無限の実験を繰り返し、術式完成を確実なものにすることが出来る。それが理想であり、今の目標だ。勿論この方法は戻る人間の肉体時間の経過は加味されておらず、スヴェン本人の寿命の解決という課題が残ってはいるが、禁術に手を出せば、その辺りは時間遡行に比べれば造作もないだろうと見当がついていた。
本のページを睨むように再度読み上げようとした時、パチン、と何かが弾ける音がした。ふぅっと風が頬を撫でる。
音がした方向を振り向いて、スヴェンは動けなくなった。
空間に大きな渦が現れたのだ。
その渦に向かって風が吹き込んでいる。
「おお!」
未知なる光景に弾んだ声を上げる。
まず渦から出てきたのは、手だった。男の両の手が伸び、時空の切れ目をこじ開けて、その姿を現した。これから始めようとしていた実験によって、数分か数時間の未来から自分が戻ってきたのではないか。どうやら、今実験している術式は成功したのではないか。歓喜に身が打ち震える。
単純な転移魔術など、スヴェンも何度も見たことがあるし、日常的に行使している。周辺空間に生じた歪の性質や姿の現れ方から、今目の前で行われているものは、通常のそれとは質が異なることは一目で判断できる。それは”理論上、時間遡行が成功すればこのような形で転移が成されるだろう”と想定した結果そのものだった。
「スヴェン博士か?」
渦から現れた男に尋ねられ、スヴェンは驚いて身を竦めた。
男は自分の身なりに気が付いたのか、ゴーグルの中の目を丸めて、被っていたマスクを外した。城塞の戦士たちよりも重装備だが、防寒具として見ても、防具として見ても、異様な姿をしていた。それはむしろ、ガスや毒に汚染された領域に立ち入る者が使う防護服に似ていた。
男は軽く会釈した。
「僕はフィリップ。スヴェン博士で間違いありませんか?」
「いかにも、吾輩はスヴェンだが……」
答えながら、興奮で何度もメガネを押し上げる。
「僕は未来から来た」
「おお、やはり! では、未来では時間移動の方法が確立されたのか! 素晴らしい! 素晴らしい!!」
スヴェンは無邪気に飛び跳ねた。
悲願だ。
奇跡が目の前で起きたのだ。経緯こそまだ判然としないが、宿願が果たされたのだ。
「その方法が知りたいか?」
「ああ、無論だ。吾輩にとって、生涯をかけた研究の成果だ!」
「僕の生きる時代にはその技術は確立している」
身の内から湧きあがる感動に震える。長い時間をかけた研究が実を結ぶのだ。喜ばない人間がいようものか。
スヴェンはズレたメガネを何度も押し上げ、唇をペロリと舐めた。
「未来では、あなたの完成させた基礎を発展させ、実際に過去に飛ぶことが出来るようになった」
「そうか……そうか……! それで」
「研究資料はある。それを渡してもいい」
フィリップと名乗った男は荷物からひとつの本を取り出して見せた。スヴェンは手を伸ばしたが、ぴたりと手を止める。
「……吾輩は、基礎を完成させた……?」
「ああ、そうだ」
「つまりは吾輩が術式を確立させたわけではないのだな」
基礎を完成させた研究者が自分だとして、その先、実際に技術転用することは別の次元の話になるはずだ。魔術、火薬、物理……この世の全ての技術はそうして生み出されてきた。小さな研究の成果を種として多くの科学者が取り組み、発展的に理論を大成させていく。芽吹いたものを育てひとつの大樹とするにはそれだけの手間と時間と閃きが必要になる。
今までもスヴェンは『時間遡行の第一発見者』『行使者』となるために、寝食を忘れ、周囲から気味悪がられるほど、研究に必死で取り組んできた。
それでも時間が足りないと感じていた。その肌感覚は間違いではなかったのだ。
目の前に提示された本は確かにスヴェンを求めた結果に導くだろう。
だが、同時に自身の敗北を決定づけるのだ。己の力量だけではここには辿り着けなかったのだと、認めることとなる。
フィリップは静かに逡巡するスヴェンを見ていたが、やがて、微笑みながら頷いた。
「これは’’真実’だ。研究者としての矜持はさておき、”真実”を知りたくはないか?」
スヴェンはハッとして顔を上げた。
真実。
私は何のためにここまで進み続けてきたのか。
彼が言っていることが正しく、自身で術式を完成することがなかったとしても、それは過程に過ぎない。私が目指していたものは、あくまで”真実”ではないのか?
「もしも、それをいただくと言ったら? 何が望みだ?」
心のどこかで、素直にそれを受け取る事に呵責が生じていたのだろう。だから、それを受け取る事を、無意識に合理化したがっていたのかもしれない。未来から来た男に対価を返すことで、”真実”を受け取ってしまう自分に理由を与えようとしていた。
予見した通りにスヴェンの瞳に灯った貪欲な光を見出して、フィリップはにやりと笑った。
「城塞内の警備情報をいただこう」
「警備の? 何故だ?」
「知らない方がいい。あなたには関係のないことだ」
「……そもそもお前は、何のためにここにいるのだ?」
「知れば、来たるべき未来のことも伝えねばならなくなる。必要以上に過去を変える事は避けたい……ただ、必要なものがあるとだけ。それを持ち帰る事だけなら、この時代の歴史には影響しない、それは保証しても良い」
まるで台本があるかのように、フィリップは淀みなくスヴェンに語り掛ける。
未来から来た。それは間違いないだろう。スヴェンが口外もしていなかったはずの、仮説段階の転移の様子そのものが目前に展開したことで、疑う気持ちなど寸分もなくなっていた。受け取った資料に目を通せば、そこからもまたフィリップが未来から来た事が真実であるという証拠を得る事もできるだろう。ただ、もう一声、フィリップが信頼に値するという、自身が”真実”を受け取る事に感じる呵責を打ち消すだけの理由を求めたかった。
「受け入れたいのは山々だが、警備情報をとなる���難しい。未来から来た事が仮に真実でも、君がトラエ以外の人間であったならば、私の立場からすれば利敵行為に与しかねない事になる。理解してくれるか」
スヴェンはこう言い放ちながら、内心で自嘲した。スヴェンは、フィリップがトラエの人間である事を証明してくれる事を期待していた。彼があらかじめ私の呵責を砕く準備までした上でここに来ていると、察しが付いていた。その上でこんな事を方便にするのは、戯曲を棒読みする姿を見透かされるようで、歯がゆかった。
フィリップは答えをやはり用意していたようで、間髪入れずに分厚い上着のポケットから、ひとつのネックレスを取り出した。金色のネックレスは傷がつき、古いものだった。スヴェンはその取り出す様を見ながら、やはり見透かされていたのだと、思わず赤面した。
「開けてみてくれ」
スヴェンはおずおずと受け取り、開いた。そして息を飲む。
「これは……!」
「一緒に映っているいる赤ん坊が僕だ」
一目見て分かった。写真に写った男は、ゴットフリートだ。城塞の食堂で目にした、岩でも噛み砕きそうな厚い顎、豹を思わせる眼光、右頬と左こめかみに負った特徴的な傷跡。スヴェンの知るゴットフリートよりもかなり年を重ね、白髪や白髭を蓄えた風貌で笑っていた。
――未来だ……。
スヴェンは、ごくりと息を飲んだ。
「あのゴットフリートが、人の親、果ては老人か……。戦場で死ぬような者ではないとは、思っていたが」
「祖父は一族の誇りだ」
「……分かった。警備情報を渡そう。だが、本当に面倒事は起こさないのか……?」
「表立っては何も起きないから、安心していただきたい。この時代には捨て置かれたものを、持ち帰るだけだ」
スヴェンには、その言葉の意味まではわからなかった。
その後の逡巡を見越したように、ゆっくりと研究書をスヴェンに差し出す。
「戻れる先は魔力の量に左右される。魔力を1点に集中すればいい。杖を使えばいいだろう」
「お……おお……」
「この本に詳しくまとめられている。運命は、未来は変わらない」
「本当に���」
「あなたが、あなたのために使うだけに留めれば、自ずとそうなるだろう」
答えないスヴェンの胸に、ドンと本が叩きつけられる。
その感触に、スヴェンの理性はぐらりとふらついた。
月が高く上ったのを見上げて、フィリップはゆっくりと山岳の斜面を進んだ。姿勢を低くし、音を立てないように。
(……不安はあったが、狙ったタイミングに戻れたな……)
グレーテルと徹底的に城塞の歴史を調べた。
激しい攻防戦から間がなく、その後しばらく戦闘がない、天候が落ち着いている時期。かつ、当日の天気が晴天で満月であること。
いくら協力を得ることが出来て警備の状況が把握できていても、誰もいないはずの山の斜面で灯りを用いて、遠目にでも見つかる危険を冒すことは避けるべきだ。暦を遡り、目途をつけたのが今日この日だった。
斜面には雪が積もっている。この積雪から数日、戦線に動きはなかったと記録されている。束の間の平和。だが、その直前には、この斜面で、たくさんの人と人が殺し合ったのだ。静寂に包まれた雪景色の中、あちこちに矢が突き刺さったまま放置されていた。戦闘の跡だ。
左右を見渡してから、フィリップは一番近くの雪を掻いた。そこにも矢が刺さっている。
(……矢先の雪がほのかに赤い)
山岳地の雪らしく、水を含まないさらさらとした雪で、払えば埋もれたものが簡単に姿を現す。
「……あった」
雪の下には、傷の少ない兵士が眠るように倒れていた。
念のため体を検めるが、四肢も無事で、背中に矢を受けた痕があるだけだ。専門外だが、転がした下の赤黒い土の色から察するに、死因は失血だろう。
こんなに状態のいい屍体を見たのは、いつぶりか。
ここはまさに、フィリップにとって宝の山だ。
見渡す限り、無数の屍体が隠されている。先日攻め入ってきたが退路を断たれ、殲滅の憂き目にあったラウニの一個師団がこの斜面に眠っている。
ざっと見積もっても数千から万を超すだろう。 この雪の下にある屍体さえあれば、それらは全て、二人が未来で戦うための手足となる。計り知れないほどの戦力だ。
グレーテルも転送を待っているだろう。と言っても、未来で待つ彼女の方からしたら、突然数千の屍体が目前に現れるような形になるのかもしれないが。
兵士を完全に雪の上に横たえてから、フィリップは術式を展開した。過去に遡行することに比べ、未来に送ることは難しくはない。状態が劣化しない静止した時空間に屍体を閉じ込める。そして、ある特定の時期に来たら、閉じた時空間から屍体を現実に表出させるように仕込んでおく。川の流れを下るように、時の流れに逆らわずに未来へ向かうのであれば、身を任せるだけで良い。逆に、流れに逆らって上流に向かおうとするには、莫大なエネルギーを要する。それが、時間遡行研究者たちがたどり着いた、ひとつの答えであった。
遺体はぼぉっと青白い光に包まれて、ふっと消えた。
成功だ。
こうして閉じ込めた屍体全てが、グレーテルの元で姿を現すだろう。彼女も状態のよさとその数に感動するはずだ。周囲を見渡し、笑みが溢れる。
屍体の数は多ければ多いだけいい。フィリップは近くの雪中を再び探り始めた。
「ん? なんだぁ?」
突然降ってきた声に、フィリップはぴたりと動きを止めた。
振り向けば、豪奢な装備に身を包む屈強そうな男が、首を傾げながらこちらを見ていた。ありえない。
「――……巡回はいないはずじゃ……」
スヴェンから得た警備資料は棚から即座に取り出されたものであって、あの場で嘘を取り繕うためにあらかじめ用意できるようなものではなかったはずだ。
だからこそ、その内容を信じたフィリップは夜を待って行動を開始したのだ。
「巡回なんざしてねえさ。散歩してただけだ」
男は野太い声で言った。
「しっかし、誰だ、お前は。さっき屍体を掘り返してたよな?」
「……何のことだ」
「おいおい、しらばっくれても無駄だ。見てたぞ。目の前から消えたんだからな」
失敗した。
頭の中で思考が急回転を始める。どうやってこの場を切り抜ける? 取り繕うか、命を奪い口を封じるか、逃げるか?
「転送魔法か? それで屍体を運んで何しようってんだ」
「それは……」
なにかうまい口実はないか、言葉を手繰ろうとするフィリップを待たずに、男は叫んだ。
「戦場泥棒は重罪だぜ!」
雪をギュッと踏みしめる音を立てて、男はフィリップに飛び掛かる。
やるしかないか。
咄嗟に、重力歪曲《グラビティプレス》の術式を展開する。
跳躍し上向いた兜の中の顔を、月明かりがはっきりと照らす。豹のような眼光がこちらを見据えていた。一瞬、フィリップの胸中に幼い日が去来した。
(――……ゴットフリート爺さん!)
逃げなければならない。話も通じない。殺してはいけない。
月明りを背に大きな影が落ちる。
フィリップは咄嗟に術式を変じて、空間移動《テレポート》に切り替えた。短い距離であればすぐに展開して移れる。
鈍い音を立てて、ゴットフリートが鞘から引き抜いた剣が雪に突き刺さる。さきほどまでフィリップが立っていた雪の跡は、衝撃で爆ぜて消え失せる。そのまま、目線を数歩先のフィリップに向ける。
「はっ、やっぱり転移か。ラウニの連中は知ったこっちゃねぇが、ここには俺の隊の奴も幾人か眠ってんだ…」
雪から剣を振り上げるように引き抜き、巻き上げられた細かい雪がまるで煙幕のように広がる。視界が真っ白に染まる。
フィリップは咄嗟に腕で顔を庇ったが、視界に影が過る。
(まずい!)
二度目の転送が一瞬遅れ、避け切れなかった。ゴットフリートの剣先は肩から胸にかけて切り裂く。傷は浅いが痛みによろめく。
雪の影から突きを繰り出したゴットフリートは、目をぎらりと輝かせる。
「魔術師相手は滅多にやれねえんだ。面白えな……!」
まともにやり合ったら、殺される。
運が悪すぎる。
本気でやり合ったところで、ゴットフリートに勝てるわけもない。仮に勝てたとしても、祖父である彼を今この場で殺したら、未来から来た自分は一体どうなる? 前例がなく、全く予想がつかない。年老いてからも人の話を全く聞かなかったあの男が、戦場跡をうろつく怪しい男が語る”理由”なぞ、おとなしく聞いてくれるはずもない。殺さずに無力化出来るような術も持ち合わせてはいない。
なんとかやり過ごして、逃げるしかない。
再度テレポートをしようと身構えたフィリップに向かって、ゴットフリートが大きく踏み出そうとして、ぴたりと止まった。
「……なんだ? 臭ぇな……」
眉をぐっと止せ険しい表情で辺りを見渡す。
確かに何か匂いがする。嗅いだことのない匂いだ。
「屍体の臭いでもないな……なんの臭いだ……?」
唐突に、その匂いが一層強くなった。
屍体は確かに掘り返した。けれども、この気温で、雪の下にあった兵士の体は腐敗するはずがない。凍てつき、匂いもなかったはずだ。
腐ったような、けれどももっと酷く脳を直接刺激するような……嗅いだことのないほど異臭。
「……うっ」
胸が悪くなる。
ゴットフリートも片手で鼻を抑えながら、周囲を見渡した。
ふたりの視点が1点にとまった。打ち捨てられた盾だ。放り出されて地面に突き立ったままのそれが、奇妙な黒い靄に包まれている。
「おい、小僧、お前の術か、ありゃあ?」
ゆらゆらと噴き出ていた黒い煙の密度が増す。
フィリップは自分の背中が粟立つのを感じた。
あれは、だめだ。
理由はわからない。ただ、本能が叫ぶ。けれど、足が竦んで動かない。
盾を包んでいた煙は次第に細くなり、盾と地面が成す角から勢いよく噴き出した。そして、その煙が見たこともない不気味な黒い猟犬���姿を取った。
~つづく~
原作: ohNussy
著作: 森きいこ
※今回のショートストーリーはohNussyが作成したプロットを元に代筆していただく形を取っております。ご了承ください。
旧き世に禍いあれ(3) - “猟犬の追尾”
「ショートストーリー」は、Buriedbornesの本編で語られる事のない物語を補完するためのゲーム外コンテンツです。「ショートストーリー」で、よりBuriedbornesの世界を楽しんでいただけましたら幸いです。
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詩集「十代プリズム」

詩集「十代プリズム」 1.子供時代 2.夢想少女 3.家出少年 4.最終遊戯 5.満員電車 6.夢遊する泡沫 7.政治家たちのナイトクラブ 8.群衆の断末魔(Heart to Heart) 9.杭 10.大丈夫の呪文 11.嫌いな人との付き合い方 12.21XX -オーサカ狂想曲- 13.シースルー・エモーション 14.ラブ・カルチャー 15.二人は恋人同士 16.混沌と瞑想のポピュリズム 17.詩人の生息地 18.青春プリズム
______________________________________________________________________
1.「子供時代」
艶やかに燃える あの頃の思い出 大切なのは自分の意志だ 湧き上がる欲望だ
純粋だった頃の僕にはもう戻れない だけど今できるのは 夢へ走ることだけさ 後悔なんてしたくない だから頑張れる
嵐のように過ぎ去った青春の日々 もう遅すぎると懺悔を繰り返し いつしか僕たちは大人になってしまった 子供時代を思い出す度に涙が止まらなくなる それでも立ち止まってちゃ何も始まらない 君は君のままで走り出すしかない
艶やかに燃える あの頃の思い出 大切なのは自分の意志だ 燃え上がる欲望だ
僕たちは社会の歯車として生きている 今できる精一杯(ぜんりょく)を 愛する人のためにぶつけて せめて子供時代の自分を裏切らぬよう 理不尽に耐えて ただ生きている 希望がなくとも ただ生きている 愛する人の笑顔のために
愛がなくちゃ ただの歯車さ 愛があるから 生きている価値がある 価値なんて自分で創造するものだ 誰かに認められるものじゃないのさ 自分の道くらい自分で決めればいいさ 誰かが決める人生なんてつまらないじゃんか
そんな当たり前さえ僕らは忘れてしまった 大人になった僕たちはゾンビのように生きている まるで魂を抜き取られたかのように 無表情で社会(マクロ)の一匹として生きている 未来なんて 明日なんて 今日があればそれでいい 画面が友達さ 空想が友達さ 友達なんて何処にもいない 現代社会の縮図
艶やかに燃える あの頃の思い出 大切なのは自分の意志だ 燃え上がる欲望だ 僕が僕でいることだ
純粋だった頃の僕にはもう戻れない だけど今できるのは 夢へ走ることだけさ 後悔なんてしたくない だから頑張れる
涙なんて拭いて 悲しみも吹き飛ばせ 嵐のように変化する 現代(いま)をまっすぐに生きてゆけ 大人たちの声に耳を塞いでいいんだ 子供時代のように自分だけを信じて生きろ
生きているだけで価値なんて生まれない 価値は自分自身で創り出すものなのさ
これは自分という名の物語の始まりに過ぎない
2.「夢想少女」
何かにかぶれて 誰かに紛れて いつかに怯えて 目線を逸らして 時代に遅れて 泣き出して 夢の中でしか自分になれない少女たち
君はまるで操り人形 操られることでしか主張できない 心棄ててる
何かが駆け出し 誰かが叫んで いつかが始まり 目線は何処かへ 時代は変わった 涙も枯れた 夢と現実の狭間で絶叫する少女たち
お前はまるでピエロのよう いろんなカルチャー着せ替えて 自分で何にも出来ないくせに 生意気ばっか言ってんじゃねえ 大人の本音
何かを信じて 誰かに任せて いつかを願って 目線に入らず 時代に流され 絶望し 再び夢の中で妄想する少女たち
少女を彩るのは 安物のリップクリームと石油���立てのコスチューム 夢想少女(きみ)は何処へいく??
3.「家出少年」
大人になりたくない 子供のままでもいたくない 大人と子供の境界線 あと少しだけ駄々を捏ねさせてよ
大人は理解ってくれない 子供の蒼い主張(ビート)を 大人と子供の境界線 あと少しだけ子供のままでいさせてよ
だから 僕は家出をしたのさ 片道切符と下着忍ばせ 君の元へ向かうぜ もう僕は自由なのさ!
大人は自分勝手さ 「子供の癖に生意気だ」って言う 大人と子供の上下関係(ヒエラルキー) あと少しだけ背伸びさせてよ
大人が何かを主張(ビート)する 子供はそれに追従(グルーヴ)する 大人と子供の上下関係(ヒエラルキー) あと少しだけ歯向かわせてよ
だから 僕は不良になったのさ 往復切符と教科書(テキスト)忍ばせ 君の元へ向かうぜ もう僕は自由なのさ!
何でもかんでも否定されてばかりじゃ 何にも言えなくなって 僕は僕を見失う そうなってしまう前に……
だから! 僕は独りになったのさ 両手に覚悟と夢を忍ばせ 君の元へ向かうぜ 君だけのために走るぜ
もう僕は自由なのさ! もう僕は自由なのさ!!
4.「最終遊戯」
独りを過剰に怖がり 誰かと群れることがすべてだと そう声高らかに宣言する君は 本当に人間かい?
「生きろ」 「死ぬな」 「生きてることに価値がある」
大人はいつも無責任 子供はいつも無計画
虚無に放り出された frustration 夢幻に放り込まれた satisfaction
僕らは今何処で何をしているのだろう? 何のために生きているのだろう?
僕らは今何処で何をしているのだろう? 何のために生きているのだろう?
「諦めるな」 「今を大切にしろ」 「夢を持て」
うるせえんだよ ふざけんなよ 消えちまえよ
声なき叫びがこだまして 君は君でいられなくなる
けたたましく響く vibration ぬくもり求める communication
君は今何処で何をしているのだろう? 何のために生きているのだろう?
嵐の中に放り出された 一欠片のmoral 刹那の中に放り込まれた 孤独のfunny girl
大人にすべてを依存して 行く先さえも決められない それが現代の私たち 私はただの子羊さ
5.「満員電車」
ちょっと、そこの君。 そんなに座ることに拘らなくたっていいじゃん 座って何が得になるの? 人生変わるの?? 少年のまっすぐな瞳が胸に突き刺さる
いつしか、僕らは純粋な心を忘れてしまった。 ずっとずっと少年のままでいようと約束したのに 今や永遠のスパイラルの中で生きている 孤独の中で生きている
たかが三十分、されど三十分。 イヤホンを付けた君は本当に大切なものに気付かずに 耳の中を流れる音楽にただ夢中で 運命の出逢いさえも流れていってしまうんじゃないか そんな気すらもしてしまうよ
結局、 僕らは猿に逆戻りしているんじゃなかろうか 人間であることを放棄しているんじゃなかろうか 人が人である証拠は感情を言葉にできることだ しかし、 今の人はそれを極端に恐れている
もしも、満員電車の中で。 わたしがわたしであることに満足して あなたが他の誰かにもし入れ替わっていたとしても わたしはそれをあなたとして認識するのだろう
それが人間ってやつさ
少年はつぶらな瞳で真実を見つめている
6.「夢遊する泡沫」
今日も僕は宇宙旅行を続けている 希望と失望と絶望を携え 誰とも理解らない誰かのために闘っている 闘いは誰のためにあるものなのか 答えさえも理解せず あるはずのない永遠を信じて闘っている 僕らは何のために生きているのだろう そもそも 何故生きているのだろう 哲学的思索の果てに 夢幻世界で夢遊を続ける泡沫たち 朝から 真昼間から 夕方から その拠り所は知らないが とにかく 誰かのために闘っていることだけは確かだ 時代は変わり 運命も変わり続けてゆく そんな過去と未来のコンツェルトに翻弄され 僕らは夢遊する泡沫として生命を紡いでいる あゝ 何故生まれてきてしまったのか 何処かで大男が叫んでいる 恨めしい声で叫んでいる 最終電車が堂々と通り過ぎた頃 見えない誰かが線路上で踊っている 生きろ 生きろ 生きろ 誰かが呪文のように唱えている
7.「政治家たちのナイトクラブ」
君が誰かなんて関係ない ただ闇雲に踊り明かそう 片手にドンペリ 片手にシャンパン お酒の力でノーサイド
あんなこと言ってゴメンね 敵も味方もない夜だから 大人同士のカンバセーション 「好きだよ」弾む会話
今日の主役は私たち 国民なんてどーでもいい 明日も主役は私たち またあの場所でヨロシクね!
何を言ったかなんて関係ない ただ頓狂に語り明かそう 片手に印鑑 片手にFAX 時代なんて気にしない
こんなこと言ってゴメンね 愛も希望もない世界(くに)だから 子供のように笑わせて 「好きだよ」皮肉な言葉(こえ)
今日の主役は私たち 国民なんてどーでもいい 明日も主役は私たち またあの場所でヨロシクね! くれぐれもお手柔らかに!!
いつも主役は私たち 今が良ければそれでいい 明日も主役は私たち スーツは素性を隠す仮面
今日の主役は私たち 国民なんてどーでもいい 明日も主役は私たち またあの場所でヨロシクね! ここは政治家たちのナイトクラブ
8.「群衆の断末魔 -Heart to Heart-」
今日も群衆の真ん中で 悲しいニュースがスキップをしている 愛なんて、独りなんて、と喚きながら 傍観者たちはただ感情論に走っている 怒りをぶつけようにもぶつける場所がない だったら周りの誰かにぶつけてしまえばいいじゃない 自分じゃない自分がまるで悪魔のように囁く 解決策も見出せないのに 慈しむだけのあなたに何ができるのだろう? 心と心を付き合わせ 変えようのない昨日よりも どんな風にだって変えられる明日を変えることが どれだけ有意義なことなのか何故わからないのだろう?? 夢は夢の中で言えばいい 独り言は独り言のままでいい 屁理屈なんて言わないで 被害者を減らすたったひとつの方法は 加害者を生まないようにすればいいんだ そうすればもう誰も悲しまなくて済むんだ ゼロになるまで考えろ 誰かのために心と心を付き合わせ ゼロになるまで考えろ それがきっと僕らにできる唯一のこと 傍観者にできる唯一のこと 泣かなくてもいい 寄り添わなくてもいい そっと手を差し伸べてあげられる勇気があればそれで十分だ
9.「杭」
僕が生きている 世界は狭すぎて 大事なことさえ 何も見えないよ
群衆の中に潜む 静かな時代の風 求められるのは忠順さ 個性などは要らない 世界を知らない子供(ひと)に 大人(きみ)は正義ぶって 世の掟(きまり)を教えようなんて 口癖(ルーティン)のように言う
ぶち壊せ! 何もかも、変えてしまえ。 走り出せ! どんな声も、耳を塞げばいい。 大切なのはその意志さ 出過ぎた杭は打たれない
君が生きている 世界は広すぎて 嫉妬心すら 感じてしまうよ
ビル群の影に隠れて いつも君は泣いている 常識が口癖さ 大人はつまらないよ
外界(せかい)を知らない子供(ひと)に 大人(きみ)は大人ぶって 外界(せかい)はつまらないよなんて わかりきったように言う
ぶち壊せ! 何もかも、変えてしまえ。 走り出せ! どんな声も、耳を塞げばいい。 大切なのはその夢さ 出過ぎた杭は打たれない だから思いっきりはみ出そう
ぶち壊せ! 何もかも、変えてしまえ。 走り出せ! どんな声も、耳を塞げばいい。 大切なのはその意志さ 出過ぎた杭は打たれない だから思いっきりはみ出そう
10.「大丈夫の呪文」
気安く言わないでよ うるせえんだよ 何度も、何度もさあ、 私だって言うときゃ言うよ ロボットじゃないんだから 人間なんだから 画面の向こう側にいるからって なんでも言っていいと思ったら大間違い 私は私なの、わかる? ずっと泣いてるし、ずっと怒ってる、 やり場のない感情をどこにもぶつけられず 誰かの言葉に怯え 誰かの行動に身構え 後ろ指を指されないように透明人間を演じてるの 目立たないことが正義なんでしょ? 制服はきっちり着てほしいんでしょ?? わかるよ、黒髪のままでいてほしいって ほんとはそう思ってるよね 私だってあなたの言いたいことくらいわかる 全部お見通しよ、女の子を舐めないでよ ……ちょっとくらい好きにさせてくれたっていいじゃん
11.「嫌いな人との付き合い方」
現代は「キライ」と言いづらい世の中だ。 「キライ」という言葉はどうしても角が立つ。
でも、やっぱり「キライ」なものは「キライ」だ。 「キライ」なものを「スキ」って言うのは難しい。 そういうもんだ。
「だってさ、キライなんだぜ?」 「キライなのにスキっていうほど面白くないものはないよなあ」
ちょっと気取って言ってみる。
現代は「キライ」と言ってはいけない世の中だ。 「キライ」という言葉よりも「フツウ」という言葉の方が好まれる。
だが、「フツウ」はやっぱり「フツウ」だ。 「フツウ」という言葉ほど曖昧なものはない。 もっと言えば、馬鹿馬鹿しい。
「そのマヌケヅラを何とかしろよ?」 「君は二文字の言葉さえ躊躇するのかよ」
言葉にそう言われているような気さえしてくる。
ばーかばーか。
絶対現実では言えないけれど、 布団の中では声を大にして叫べそうだ。
夢の中で、僕は毒舌になる。 臆病者の独演会、今夜も始まる。
12.「21XX -オーサカ狂想曲-」
数十年前、関西弁は消滅した。
すべてはひとつの言葉に統一され、 見知らぬネオンが街を支配し、 僕が僕を認識できなくなる。
お好み焼きも、たこ焼きも、どこへ行ってしまったのだろう。
日本食はとっくの昔に放棄され、 食糧不足のこの国に残されたのは、 ご飯のような無味無臭のなにか。
美味しくもなければ、不味くもない。
僕は何も感じない食事を済ませ、 ダイスほどの荷物を纏め、 メトロポリスを跡にした。
ここはいつから、こんな砂漠になってしまったのだろう。 最新式の方位磁石に目を凝らし、 まるで一ミリメートルの糸を手繰るかのように、 砂漠の都会(まち)を進んでゆく。
どんなに頑張���ても、夢なんて掴めっこないんだ。
胸に刻まられた消えない証が、 僕の好きに生きたいという欲望を、 永遠に不可能のまま葬ってしまう。
逃げたい、逃げられない、逃げようもない。
好きな人も、守るべき家族も、 誰かによって紡がれた石碑も、 みんな何処かへ行ってしまった。
環状線跡のスラム街に足を踏み込む。
明朝八時、 僕の最後の冒険は高らかに幕を開ける。 生きるために、最後の闘いを始めよう。
13.「シースルー・エモーション」
これ着けてごらんよ。 今流行りの、何もかも御見通しってやつ。 ほら、タダであげるからさ。
「えっ、いいの?」
少年はぎょっとした瞳でこちらを見た。 何か続けなきゃなと思い、私は必死に言霊とやらを膨らませた。
みんな、近いうちに必ず着け始めるから。 これさえ持っていれば、君も流行を先取りできるよ。 遠慮なんていらない。 さあ、早く着けなよ。
「でも。知らない人にモノを貰っちゃいけないって言われてるんだ」
私はよく教育された少年だな、と思った。 だけど、これを売らないと私は殺されてしまう。 命が懸かっているんだ。
お願い、これを受け取って。 私からの一生のお願い。 幸せになれる。 ほら、開運のおまじないだと思ってさ。
「わかった。貰ってあげる」
『良い子だ』 ……思わずそう言いそうになった。 いけない。 少年の前ではこの言葉は禁句だ。 これを言った瞬間、あどけない表情は怪訝な瞳に変貌する。
私は未来人として、このメガネを売らなければならない。 たとえ、そのメガネが何の変哲もないタダのメガネだったとしても。 私は私の仕事をするだけさ。
14.「ラヴ・カルチャー」
恋そのものが軽くなっている、 と、誰かが言った。
いつでもどこでも出逢えて、 誰とでも恋ができる。
手紙を送り会わなくても、 文通を繰り返さなくても、 パッと手を伸ばせば、 君を抱きしめることだってできる。
それが、 現代のラブ・カルチャー。
大人たちに何かを言われる筋合いなんてないし、 私たちは私たちのコミュニティをつくっている。
それが自由の正しい使い方であって、 真のクリエイティビティと言えるだろう。
愛と、理想と、希望を掲げて。 僕らは夢を叫び続けている。
15.「二人は恋人同士」
今年の夏が待ち遠しいよ キミと一緒につくろう 最高の思い出を
夏のビーチに水着姿の彼女 いつもと違うメイクに とびきりの笑顔を
キミと過ごした夏 世界色にきらめいてる あの日の記憶(メモリー) ずっと続かないかな 二人だけの素晴らしき日々 いつか歳を重ね 思い出 色褪せたとしても 僕たちはずっと一緒だよ 青春は終わらせない
夏の訪れに張り切る海岸線 半袖のTシャツに とびきりの時めきを
キミと過ごした夏 貴女色に輝いている 最高の思い出を
どうか終わらないで 二人だけの素晴らしき時間(とき)
いつか歳を重ね 今日(いま)がセピア色になっても 僕たちはずっと一緒だよ 青春は終わらせない
いつか歳を重ね 思い出 色褪せたとしても 僕たちはずっと一緒だよ 青春は終わらせない キミと最高の思い出を……
16.「混沌と瞑想のポピュリズム」
貴方を惑わす置き手紙 もううんざりよ その微笑(えがお)には 心残りは結ばれなかったこと きっと貴方はそう呟くでしょう
混沌と瞑想のポピュリズム 貴方は夢を見ているの
混沌と瞑想のポピュリズム 愛を知らぬ貴方にお似合いね
混沌と瞑想のポピュリズム 独身貴族は愛を知らない
悩ましく囁く愛の言葉 もううんざりよ 嘘つきには 「貴女に出逢って良かった」なんて 紳士気取りはもう止めてよ
混沌と瞑想のポピュリズム 私も夢を見ていたのかもしれない
混沌と瞑想のポピュリズム 嵐の前の静けさよ
混沌と瞑想のポピュリズム 涙は愛の渇望(リクエスト)
見つめ合い抱きしめ合い接吻(くちづけ)交わせば 誰でも虜に出来るなんて 貴女の口癖 独身貴族の悪い癖
混沌と瞑想のポピュリズム 誰もが夢を見ているの
混沌と瞑想のポピュリズム ずぶ濡れになりながら君は泣いている
混沌と瞑想のポピュリズム
混沌と瞑想のポピュリズム
独身貴族は愛を知らない
17.「詩人の生息地」
何をしていても、何処にいても、何故だか落ち着かない。 そんな日々が続くと、人は不安になる。
得体の知れない何かに常に追いかけられているような、 哀しみとも言えない感情に支配されているような、 とにかく、ネガティヴな気分になってしまう。
好きな人なんて、もういらない。
そう高らかに宣言したはいいけれど、結局恋を求めるのが人の性分。 愛と、夢と、希望があって、やっと半人前。
独りでいるだけで、世間からは白い目で見られているように感じる。
本当は独りが好きなのに、本当は独りでいたいのに。 これが同調圧力ってもの。 カフェテリアに、今日も誰かのヴォイス・アンサンブルが聞こえる。 その隙間で、息苦しそうに言葉を紡ぐひと。 それが詩人という生き物だ。
18.「青春プリズム」
屈折する、 感情も、行動も、何もかも。
挫折する、 夢も、目標も、何もかも。
愛なき時代とは言わないけれど、 今の時代に希望なんてない。
何もせず、 何かを始めようとするわけでもない、 そんな奴に希望なんて叫んでほしくない。
僕らに芽生えた反抗心は、 ひとつの青春プリズムを産み落とすこととなった。
かつて、大人にその力で反抗しようとした学生たちのように。
表面的には沈静化したつもりでも、 学生たちにはずーっと芽生え続けている。
大人にもなれず、子供にもなれない。 ジレンマが僕たちを大人にする。


あとがき「わたしの十代プリズム」
わたしたちは十代プリズムで屈折する。 内面的にも、外面的にも。 屈折しないと学べないことがいっぱいある。 ずっと楽しいまま生きられる人なんていない。 十代のわたしたちにとって、この世界は狭すぎるのだ。 なぜ、校則を守らなければならないのだろう。 どうして、就職活動の際にスーツを着なければならないのだろう。
わたしたちの素朴な疑問は、いつしか多忙に相殺されていく。 こうして、ティーンエイジャーたちは諦めるという言葉を知る。 要するに“挫折”を知ってしまうのだ。
挫折を知ってしまった人々は、もうまっすぐに生きてはいけない。 何をしようとも、屈折して生きるしかない。
わたしは四ヶ月後に十九歳になる。 あれだけ長いはずの十代が終わりを迎えようとしている。
「十代って、素晴らしいものだ」
十代になった頃、わたしはそう思っていた。 でも、それは半分正解で、半分間違っていた。
この詩集はわたしの十代の記録だ。 何処かがフィクションで、何処かがノンフィクション。
わたしは十代に入って、ようやく物心がついた。 誰かに指示されるのではなく、自分で考えることを学んだ。 多くの挫折を経験し、多くの絶望を味わった。 今も決して希望が見えているとは言えない。
だからこそ、書けた作品である。 逆説的に言えば、今しか書けない作品とも言えるだろう。
わたしにとって「創作」とは、ライフワークそのものだ。 恋人でも、親友でも、捉え方は好きにしてもらって構わない。
でも、ひとつだけはっきりしていることがある。
十代に創作という分野に出逢えて、本当に良かった。
たくさんの人に迷惑をかけ、多くの人を失望させてしまった。 過去はもう変わらないし、変えられない。 だけど、今から何かを変えることは可能だ。 物語という白紙のキャンバスに、無限の世界を描いていく。 その道筋の中で、誰かの人生を変えることだってできる。
あなたも何か描いてみたらいい。 みんなも、創作しよう。
いじめたり、いじめられたり、嫌なこともたくさんあった。 でも、いつもそばには創作がいた。 だから、今音楽大学で夢を追いかけられているし、ここで生きている。
最後に、あとひとつだけ。 不器用で、どうしようもなくって、文章も大して上手くはない。 話をすれば散らかり放題だし、ボソボソ喋るからみんなを困らせてばかり。 こんなわたしを支えてくれてありがとう。 ちょっとずつ直していこうと思っています。
これまで出逢ったすべての人々、これから出逢うすべての人々に感謝の意を込めて。
ありがとう。本当にありがとう。 これからもよろしくね。
詩集「十代プリズム」
Produced by YUU_PSYCHEDELIC Concept Created and Designed by UYUNOONUYU(ウユノユウ) Written by Yuu Sakaoka
Special Thanks to My Family,my friends and all my fans!!
YUU_PSYCHEDELIC
#詩#詩集#創作#YUU_PSYCHEDELIC#十代#青春#キリトリセカイ#teenager#poetry#youth#youthculture#art#modern art#poem#若者#アート
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帰ってきた者
ザクザクと草を踏む。
少しずつ色付いた葉が風でお互いを擦り合わせて乾いた音を鳴らしている。随分と涼しくなったこの山も、秋模様になりつつある。
スーッと大きく息を吸うと、新鮮な空気が肺を満たすのがわかった。とても気持ちがいい。
「ヤスヒコ」
数歩先を進んだヒナギがこちらを振り向いた。杖を支えに、比較的いうことを聞くようになった足をゆっくりと動かし彼に近づく。私が後ろを付いてきているのを確認した彼は、再び獣道を前に進んだ。
「ヒナギ、どこに行くの」
「そうだな、この先に少し開けた景色のいい野原がある。そこで昼でも食おうか」
私はヒナギの右手にある風呂敷の中身を想像してへらっと笑うと、それに気づいたヒナギもによっと口元を上げた。
本日、晴天なり。最高の散策日和である。
暫く歩くとヒナギの言った通り開けた場所に出た。どっしりと構える大きな木があり、彼は今は枯葉をつけているがそれは見事な桜の木なのだというのを教えてくれた。
その木の根元に座ると、彼は風呂敷を開けながら私に手を出すように言われた。両手を差し出すとポンと白い握り飯が手渡された。私の手の大きさをゆうに超えるそれは少しだけ歪な形をしている。口に含むとほのかに塩っけがあり、噛めば噛むほど米特有の甘さが広がった。
「おいしい」
「そうか」
私が食べ始めるのを確認したヒナギも手に持っていた握り飯を一口食べた。うんと1回深く頷く所を見ると、今日も満足のいく味のようだ。
とても長閑だ。小鳥が合唱をして、雲はゆっくりと流れ、色付いた木葉が時々風に吹かれて踊る。気持ちよさに目を細めた。そのままぼうっと森の方を見ると、キラキラと何かが輝いているのが見えた。何かが反射しているのだろうかと思ったが、それにしては不規則だし、何しろ動いている。
ヤスヒコ、と声をかけられ私は再び彼を見た。握り飯に手を付けずただ先をぼんやりと見つめる私を心配したらしい。ヒナギにお昼の後に向こうの方に行きたいと伝えれば、何か見えたのかと聞かれた。なんて表現すればいいのか分からずまごついていたが、どうせ一緒に行くんだからそんなに今わざわざ説明しなくてもいい、と彼は笑った。
こくりと頷いて、握り飯を再び口に含み、そういえばまだ光ってるのだろうかと森に目を向けたが、いくら眺めても再び煌めくことはなかった。ううん、と首を傾げるも変わらない視界。狐に化かされたような気分だ。
まぁ後であちらの方に歩くのだし、今は別にいいかと、最後の一欠片を口の中にほおり投げた。
昼も食べ終わり、ヒナギの手を引いて森の中に入った。入ってみれば、先程彼が先導した所とは違い、何やら普通の森とは違う、何かがズレているような雰囲気に少しだけたじろいだ。
「ヤスヒコ、お前は一体何を見たんだ」
「なにか、キラキラしてるもの。いきものみたいに、うごいてた」
目の前で光るものが通った。ほら、今みたいにと彼の手を離し指さしたが、ヒナギの反応がない。後ろを振り向くと、濃い霧が出ていて彼の姿が見えなかった。
彼の名前を呼んで見たが返事がない。
……何かがおかしい。
気付けば辺り一面に霧が漂っていて、先も見えないような状態だった。
その中でポツポツと光るものや、ぼんやりとした鬼火のようなものが漂い、光の筋を作っている。
確かに、私が見たものだ。
攻撃してこないのを見ると悪いものではなく、ただ空中を漂っているだけのようだが、突然1人になったせいで心細い。逃げるように何歩か後ずさりすると、トンッと背中に何かがぶつかった。
もしかしたらヒナギかも。希望を胸にくるっと振り返ろうとしたその瞬間、
「ばぁ!」
突然、2本の大きな角が生えた逆さまの幼女の顔が私の鼻先に現れた。
喉がひきつり、悲鳴も出ない。驚いて腰を抜かすと、空中にふわりと浮かんだ彼女は悪戯っ子のようにケタケタと笑った。
「わぁ、とっても可愛い山の子がいる!」
「山の子……って私?」
「他に誰がいるの?」
「……ヒナギは?」
「あぁ、彼? ほんの少しだけ山を迷ってもらってるだけ! 心配しないで」
それよりもお話しましょうと馴れ馴れしく私の腕を取る彼女。見知らぬ人、いや妖のあまりの図々しさに少し顔を顰める。
「あ、その顔は私に誰って顔だな?」
違う。
「私はこの森の妖精! あー、名前はないからお隣さんって呼んで」
「……おとなりさん?」
「そう、お隣さん。私達は山の中に、水の中に、里の中に、そして人の隣に閴暮らす悪戯好きなお隣さん」
サクかな。
「多分君の想像しているそれは違う子かなぁ……」
「なんでわかった」
「いや、君結構顔に出やすいよ。しっぽも揺れてるし」
そう指摘され、私は気まずそうに横を向いた。すると、ふわふわと私の周りを漂うだけだった筈の光の粒が、いくらか増えているのに気づいた。いくつかは私にくっ付いたりしたかと思えば離れたりと、不思議な動きをしている。嫌な感じは、しない。
「ふふ、君はとても精霊に好かれてるんだね」
「精霊……?」
私が不思議そうにしているのを感じ取ったのか、光の粒を指さした。
彼女曰く、精霊とはこの世に溢れる力の元で、生命そのもの。本能で生き、理性はもちあわせておらず、ただそこに在るだけのもの。場所によって増減し、特にこの山は神殺しの一件で、激減したことがある。
「精霊が突然激減すると、精霊を糧とする私たち妖精は存在が出来なくなるの。漸く山が立ち直ってきたってツグモネから聞いたから帰ってきたんだよ」
だいぶいい空気になったと、大きく息を吸った後、彼女は勢いよく私の腕をぐいっと引っ張った。前のめりになった体のまま、何をするんだと避難するように目前で浮いている彼女を睨めば、きししっと歯を見せ笑い、まるで森の奥へ奥へと誘っているかのように何度も腕をくいくいと引っ張る。
「この先に私たちの仲間がいるの。一緒に遊ぼう」
「だけど、ヒナギが」
「大丈夫大丈夫、彼が迷ってる間だけ! そんなに遠くないよ。それに今から行くところはこの山の中でも特別な場所なんだよ、気にならない?」
そう言われると気になってしまう。彼女の仲間がもっと居る。そして山の中でも特別な場所。好奇心が疼くのを感じ、けれどヒナギに対しての申し訳なさも感じてきゅっと握り拳を作った。
――ちょっとだけ。そう、ちらっと見て帰ればいい。あわよくば話も聞きたいけど、ちょっとだけ。
結局誘惑に負けた私は、ゆっくりと彼女の誘導を頼りに奥へと歩みを進めるのであった。
霧はどんどん深くなっていく。
あんなに美しく色づいていた筈の木の葉も、この霧の中では見えない。が、幸い、行先が先なのか精霊が先ほどよりも多く、ぼんやりとした視界の中光がゆらゆらと浮かんでは消え、震え、飛び回り、跳ねる光景は幻想的でもあった。
前で私の手を引っ張る彼女は随分とおしゃべりで、その口が止まることは無い。私は口下手であまり話すのが得意でないからほとんど聞くだけだったが。
そういえばどこに行くんだろうと、彼女に聞いてみたが、彼女はとっても楽しい場所としか答えない。
かなり歩いただろうか���最早先の道は見えず、夜のように暗い。精霊のおかげで所々はゆらゆらと蠢く異次元の光に照らされているが、それでも見えづらいのは変わりなく、私の手を握る彼女を頼りに進むしかない。
そんな中、ふと彼女の足が止まった。
「ねぇ、もしこの先あらゆる苦しみや悩みから解放されて、気ままに自由に楽しく生きられるとしたら、君はどう思う?」
「どういう、こと」
彼女がゆっくりとこちらを向いた。紅葉のごとく紅い瞳が暗闇の中でゆらゆらと怪しく揺れた。
「記憶もなく、傷だらけ。足はまともに動かないし、それに人間にも妖にもなりきれない。可哀想な可哀想な、山の子、我らの子」
掴まれている手から何かが這い上がってくる感触がして目線を手の方に向けると、彼女の手はいつの間にか木の根に変化し、私を飲み込まんとしている。木の根が太いからか、振りほどこうにも振りほどけない。地面から生えてくる植物は私の足に絡みつき、身動きを取らせないようにしている。
彼女の細い指が私の頬を撫でる。嬌笑を浮かべて迫ってくる彼女は美しいが恐ろしい。
「さぁ、私の目を見て。そして連れて行ってと一言だけ言えば、君は全てから解放される。自由になれる。
私たちと一緒に山へ帰りましょう、ねぇ?」
最早私の体は草木に絡め捕られ動かない。
私は彼女の視線から逃げるようにしてぎゅっと目を瞑った。
苦しみもなく、悩みもないだなんて。どれだけ素晴らしい世界だろう。
それでも、私は……――。
ゆっくりと目を開け、彼女の瞳をまっすぐに見つめる。
期待心からか、彼女瞳をさらに煌めかせて私を見つめ返した。
その様子を見て、私は口元を少し上げて、彼女に告げる。
「わたしは、行かない」
「どうして? 君はとっても辛いんでしょう? そんな状況から抜け出せるというのに?」
意味が分からない様子で、彼女は首を傾げた。絶えずその瞳は誘惑するかのようにゆらゆらと輝いている。
「たしかに、辛いことのほうがおおい。きおくはないし、ちゃんとあるけないし、にんげんなのか、あやかしなのかもよく分からない。先がみえなくて、こわいときもある。だけど、わたしはおもってるよりも、この生活をたのしんでる。わたしは何も知らないから、見えるものすべてが、あたらしくて、きれいで、うつくしくて、それに……」
少しだけ、今度は軽く瞼を閉じる。脳裏で風に揺れる緋色が揺れた。
「わたしは、まだあの人のとなりにいたい」
「……怪我が治るまでなのに? その後はどうなるかわからないのに?」
「それでも。……それに、わたしはまだ、あの人になにもしてあげられてないから」
苦笑いを零すと、目の前の彼女はやはり理解できないのか困ったように眉を顰め、今度は反対側に首を傾げた。
「やっぱり人間って変」
「そう……?」
「そうだよ、どうして辛い所にずっといようとするの」
「ツグモネも同じこと言ってた……なんでだろう、わたしにも分からない」
「変なの」
普通なら苦しい事とか辛いことから逃げたいって思うでしょ~、とそうぼやいた彼女は私自身に絡みついていた草木をほどいた。私は自由になった両手と両足を軽く揺らした。うん、痛くない。大丈夫。
「ヤスヒコ!」
私の後ろから聞きなれた力強い低い声が響いた。パッと後ろを振り向く。
少し離れた場所から、精霊の光を帯びつつこちらへ向かってくる大柄な人間。
「……ヒナギッ!」
言う事の効かない足を必死に前へ動かし、彼の元へ飛び込んだ。ぎゅっと私を抱きとめた彼の胸元に顔を擦り付ける。あぁ、安心する匂いがする。
「すまない、少し探すのに手間がかかった」
ふるふると首を振る。そんな私の頭を軽く撫で、ぐっと抱き上げた。
「森の妖精の一人か。悪いがこいつをお前さんらに渡すつもりはない」
「そのようだね。ざーんねん、熊みたいに強い保護者が来ちゃったし、打つ手なしか。ま、今回は諦めることにするよ」
「今回は、か」
「山の子が辛い思いをするのは嫌だもの。逃げ場を作ってあげるのは大切でしょ?」
「一生出てこれん逃げ場か」
「一生辛い思いをしてここで生きるよりは、あちらに行って生きるほうがいいもの……断られちゃったけどね」
残念そうに溜息を吐き、彼女はふわりと空中へ浮いた。
向こうのほうで、なにやら騒がしい声が聞こえる。笑い声だろうか。それと何かを呼ぶ声だ。よく見ると、木々の間から光が漏れているのが見えた。恐らく精霊の光だが、沢山いるのか非常にまばゆい。
「あーあ、呼ばれちゃった。私もう行かなきゃ。連れて帰れなかったって言ったらなんか言われるだろうなー」
「え」
「ヤスヒコ、気にしなくて���いぞ」
「そう、気にしなくていいの。
……ねぇ、君。もしこれから先逃げたくなったら私たちを呼んでね。いつでも君をあっちに連れて行ってあげるから。私たち山に住まう妖精はいつだって君の味方だよ」
私の方へ飛んできて、両手で頬を優しく挟んで彼女は笑いかけてきた。そして軽く額に口付けを落とすと光のほうへ飛び立とうとする。
そんな彼女の手を私はとっさに掴んだ。びっくりした様子で紅い目を見開く彼女。これだけは伝えておかねば。
「おとなりさん。わたし、かわいそうな子じゃないよ」
「!」
「だってわたし、今がとっても、たのしいから」
零れ落ちそうなくらい見開かれた瞳が、ゆっくりと元の形に戻る。にんまりとした笑みを作った彼女は「君がそう言うなら」、と一言そう言って、勢いよく光の向こう側へと飛んで行った。すると光が消えると同時に精霊がパッとはじけ、あたりに散らばった。
暗闇の中できらきらと光りながら浮かぶ精霊たちは、まるで夜空に光る星のようだった。
精霊の光が見えなくなったころ、徐々に元の景色が見えてきて、最後には赤黄橙と葉にお化粧をした森の姿へと戻った。
思ったよりもあの不思議な空間に長くいたのか、それとも時間の流れが違う所にいたのかは定かではないが、朝早くに家を出たはずなのに何時の間にか日は大きく傾いており、目に入ってくる西日が眩しい。酷使してしまった足はもう使い物にならず、大人しくヒナギに抱き上げてもらい、帰路を辿っている。
「おとなりさんは、わたしをどこにつれて行くつもりだったんだろう」
「彼らが住まう世界だ。……確かにあちらには苦しみも何もないというが、そもそも時間の流れが違うからな、人間がそこで生きるには姿かたちを変えねばならん……帰ってこれなくなるというのはそういう意味でもあるんだ」
「でも、どうして」
「単純にお前さんを助けたかったんだろうよ。彼女達なりの親切心だ。あいつらは山を大事にする者に対しては優しいからな。お前さんはその尻尾のせいかどうかは定かではないが、山の気を多く体に含んでいるようだし……まぁ、そういうことだろう」
私は歩くたびに振動で揺れる自身の尾に目をやった。ツグモネによれば山の主とそっくりだというそれ。今回の事といい、何かとても重要なもののようだが、やはり思い出そうとするとその先は誰かに黒く塗りつぶされたかのように思い出せない。
ここの山主がもし生きていたなら、私の問題なんか直ぐに解けていたろうに。
そんな叶いもしないような事を思いながら、私はヒナギの肩に顔を傾けた。
「だが、あいつらも悪気はないんだ。許してやんな」
「ん、わかってる」
「しかし見つけるのに苦労した。いや、その前にちゃんとヤスヒコの手を離さず握っておけって話だな。俺が迂闊だった」
「だいじょうぶ、きにしないで。……そういえば、どうやってわたしをみつけたの」
「ん? んー……秘密だ」
ニッと笑ったヒナギは、私をもう一度抱きなおし、あやすようにぽんぽんと背中をたたいた。
疲労が溜まっていたせいか睡魔が襲ってきたのはその後直ぐで。
少しはぐらかされたような気もしたが、私はそのまま彼に身を任せるようにして目を瞑った。
瞼の裏で、あの暗闇の森の中でみた精霊の幻想的な光がきらきらと瞬いた。
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#俺の一押しエロゲソングを聞いてくれ 集計(その2)
昨日アップした集計結果の続きです。2ポイント未満かつ1ポイント超の274曲になります(集計方法は前投稿をご参照ください)。
投稿者数 ポイント 曲名/作品名/歌手 _9人 1.993 dissonant chord/PRINCESS WALTZ/NANA _8人 1.981 穢れ亡き夢/11eyes 罪と罰と贖いの少女/Asriel _9人 1.973 Moving go on ~そこから見える未来~/3days/川村ゆみ _9人 1.965 こころに響く恋ほたる/アマツツミ/橋本みゆき _8人 1.948 brave genesis/創刻のアテリアル/オリヒメヨゾラ _8人 1.933 split tears/片恋いの月/fripSide _6人 1.918 GHOST×GRADUATION」/はつゆきさくら/monet 11人 1.918 コトダマ紬ぐ未来/アマツツミ/山崎もえ _4人 1.917 Fericita/シンシア ~Sincerely to You~/Rita _9人 1.915 赤い約束/FORTUNE ARTERIAL/Veil∞Lia _6人 1.906 最愛/涼風のメルト/霜月はるか 12人 1.885 ダ・カーポII ~あさきゆめみし君と~/D.C.II ~ダ・カーポII~/yozuca* _8人 1.883 機神咆吼ッ! デモンベイン!/斬魔大聖デモンベイン/生沢佑一 _4人 1.883 真実の翼 -サダメのツバサ-/僕がサダメ 君には翼を。/カヒーナ _7人 1.878 彼方/SinsAbell/東迦喜也 _6人 1.876 sword of virgin/恋剣乙女/fripSide _9人 1.866 嘘つきと傷あと/輝光翼戦記 天空のユミナ/水霧けいと 10人 1.845 For our day/そして明日の世界より――/川田まみ _9人 1.844 未来図/未来ノスタルジア/浅羽リオ _5人 1.843 jewelry days/オーガストFANBOX/榊原ゆい _4人 1.841 武士/真剣で私に恋しなさい!/きただにひろし 13人 1.839 Life is like a Melody/智代アフター/Lia 11人 1.833 sign/うたてめぐり/miru _6人 1.833 Saya's Song/リトルバスターズ! エクスタシー/Lia _8人 1.820 君が望む永遠/君が望む永遠/MEGUMI _5人 1.810 go!go! Summer drive!/ナツユメナギサ/月子 10人 1.807 I Bless Thy Life/天使ノ二挺拳銃/いとうかなこ _7人 1.804 二人色/恋色空模様/Duca _6人 1.802 久遠 ~詩歌侘~/恋姫†無双 ~ドキッ☆乙女だらけの三国志演義~/茶太 11人 1.794 永遠に咲く花/枯れない世界と終わる花/AiRI _7人 1.791 Eternal Recurrence/星空のメモリア/橋本みゆき _8人 1.790 Reconquista/レコンキスタ/飛蘭 _9人 1.789 濛々たる黒煙は咲き/信天翁航海録/Rita _5人 1.780 Destiny/あると/橋本みゆき 12人 1.778 Clover Day's/Clover Day's/真理絵 10人 1.771 モノクローム/グリーングリーン/YURIA _6人 1.764 恋せよ乙女!/サノバウィッチ/米倉千尋 10人 1.743 Happy birthday to.../終わる世界とバースデイ/KAKO _5人 1.743 あくびの戦士がふぁー/スマガ ~Star Mine Girl~/大槻ケンヂ _5人 1.742 brindiamo ~俺たちに乾杯/続・殺戮のジャンゴ -地獄の賞金首-/ワタナベカズヒロ _6人 1.737 Vanille Rouge -ヴァニーユ・ルージュ-/フォセット ~Cafe au Le Ciel Bleu~/佐倉紗織 _6人 1.735 言葉繋ぎ/すきま桜とうその都会 -End of the world and cherry Blossom Princess-/花たん _9人 1.734 Natukage/AIR/Lia _7人 1.719 ヒカリ/ジサツのための101の方法/佐藤裕美 _6人 1.709 僕と、僕らの夏/僕と、僕らの夏/WHITE-LIPS 10人 1.701 紅葉/きっと、澄みわたる朝色よりも/WHITE-LIPS _6人 1.700 style/それは舞い散る桜のように/YURIA _9人 1.695 Wind of Cronus/プレゼンス/真理絵 _8人 1.693 Rosa Morada/紫影のソナーニル/Rita 10人 1.692 Liblume/生命のスペア/霜月はるか _7人 1.686 あなたを想いたい/Routes/池田春菜 _4人 1.683 星団歩行/夜巡る、ボクらの迷子教室/夜巡る、ボクらの迷子教室 _4人 1.662 primal/プライマルハーツ/Ceui _8人 1.659 沙耶の唄/沙耶の唄/いとうかなこ _5人 1.658 mement vivere ~生きることを忘れないで~/月光のカルネヴァーレ/ワタナベカズヒロ 10人 1.658 悠久のcadenza/姫狩りダンジョンマイスター/織姫よぞら _6人 1.655 Treating 2U/Treating 2U/堤伊之助 _5人 1.652 せつなさのグラデイション/あかね色に染まる坂/橋本みゆき _7人 1.651 Moon Story/片恋いの月 えくすとら/UR@N _5人 1.640 ワールドイズマイン/グリーングリーン/bamboo _4人 1.636 時雨Dictionary/キミトユメミシ/民安ともえ _6人 1.635 遙かなる地球(ふるさと)の歌/マブラヴ/栗林みな実 _6人 1.630 キミガタメ - /うたわれるもの/Suara _7人 1.624 未来はきっとShiny Days/ボクラはピアチェーレ/奏英学園軽音部 Starring i.o _5人 1.618 GLORIOUS DAYS/恋×シンアイ彼女/yuiko _4人 1.617 imitation/Imitation Lover/榊原ゆい _9人 1.609 さよならの向こう側で/D.C.II P.C. ~ダ・カーポII~ プラスコミュニケーション/美郷あき _5人 1.607 桜霞 ~サクラノカスミ~/桜吹雪/西沢はぐみ _5人 1.603 with you/スズノネセブン!/茶太 _7人 1.600 Love Cheat!/いただきじゃんがりあんR/MOSAIC.WAV 11人 1.583 spiral of despair/痴漢専用車両 ~屈辱の痴漢電車~/fripSide _5人 1.583 この大地の果てで/永遠のアセリア/Tā _8人 1.574 冬に咲く華/彼女のセイイキ/美月琴音 10人 1.573 THE APPLE IS CAST!/抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?/夢乃ゆき _3人 1.571 MUGEN∞MIRAI/天神乱漫 LUCKY or UNLUCKY!?/神代あみ _5人 1.569 シンソウノイズ/シンソウノイズ ~受信探偵の事件簿~/霜月はるか×Ceui _4人 1.560 あたらしい予感/To Heart/AKKO _5人 1.545 ぴぃす@ぴーしーず!/Peace@Pieces/KIYO _9人 1.541 ツクモノツキ/ツクモノツキ/nao _4人 1.525 Cross Illusion/俺たちに翼はない AfterStory/美郷あき _4人 1.525 夏はマシンガン/みずいろ/マシンガン進藤 _6人 1.523 凪/もしも明日が晴れならば/WHITE-LIPS _7人 1.521 quantum jump/フレラバ/真里歌 _5人 1.510 nameless melodies ~だけど、きみにおくるうた~/とらいあんぐるハート2 さざなみ女子寮/鳥居花音 10人 1.504 Brand-new Heart/To Heart/AKKO _2人 1.500 DELICIOUS TEMPTATION/赤ずきんと迷いの森/杉��和哉 _3人 1.500 MOON TEARS/吸血殲鬼ヴェドゴニア/小野正利 _3人 1.500 Snow wish/デュエリスト×エンゲージ/Duca _2人 1.500 Velocity of sound/ソニック・プリンセス/MOMO _6人 1.495 さよならのかわりに/この青空に約束を―/つぐみ寮生会合唱団 13人 1.491 THIS ILLUSION/Fate/stay night /M.H. _8人 1.478 We Survive/V.G.NEO/KOTOKO _8人 1.474 My Sweet Lady/学☆王/佐倉紗織 _7人 1.469 Dreaming Continue/ぱすてるチャイムContinue/NANA _5人 1.467 つまんない恋/パルフェ ~ショコラ second brew~/高槻つばさ _4人 1.454 little explorer/eden*/原田ひとみ _4人 1.450 Love Hell Rocket/HoneyComing/青木春子 _5人 1.448 Celebrate/桜華/みとせのりこ 10人 1.424 魂響/魂響 ~たまゆら~/片霧烈火 _6人 1.421 Change The World/ゴールデンアワー/夢乃ゆき _5人 1.420 Causal Chain/うたてめぐり/遊女 _3人 1.417 As time goes by/コミックパーティー/美崎しのぶ _6人 1.414 終末のフラクタル/グリザイアの果実/飛蘭 _3人 1.410 The Engaged Fortune/アリス2010/橋本みゆき _8人 1.394 ダ・カーポⅢ~キミにささげる あいのマホウ~/D.C.III R ~ダ・カーポIIIアール~ X-rated/yozuca* _6人 1.392 可憐雪月花/絆きらめく恋いろは/KEiNA _7人 1.392 想いのカナタ/夏空カナタ/霜月はるか _6人 1.388 後ろ髪の証跡/ハピメア -Fragmentation Dream-/美月琴音 _4人 1.387 スクールバス/���リーングリーン/UR@N _6人 1.386 ジュヴナイル/蒼天のセレナリア/Rita _5人 1.386 運命SADAME/うたわれるもの/元田恵美 _6人 1.381 戦姫之理/龍戦姫 天夢/青葉りんご 10人 1.379 観覧車 ~あの日と、昨日と今日と明日と~/めぐる季節の約束と、つないだその手のぬくもりと/Duca _4人 1.375 Sleeping Pretend/すみれ/真里歌 _4人 1.367 Milky Ice/ウィッチズガーデン/雪村涼乃(遥そら) _3人 1.367 プチタミ/キミの声がきこえる/茶太 _4人 1.365 さめない熱/天使ノ二挺拳銃/ワタナベ _5人 1.360 Especially for you/ワンコとリリー/麗華 _9人 1.359 Like a Green/グリーングリーン2 恋のスペシャルサマー/UR@N _4人 1.355 マル秘☆恋愛法則/アッチむいて恋/NANA _3人 1.354 7th WORLD'S OUT/こんそめ!~combination somebody!~/西沢はぐみ _9人 1.354 magicaride/マジカライド/fripSide 11人 1.354 Explorer World/カミカゼ☆エクスプローラー!/NANA _6人 1.353 君恋ノ唄/戦国†恋姫/茶太 _6人 1.352 ∞未来/失われた未来を求めて/橋本みゆき _7人 1.348 希いの花/眠れる花は春を待つ。/Rita _7人 1.348 永遠なる絆と想いのキセキ/恋する想いと少女のキセキ/nao _5人 1.346 僕たちの未来/Fate/hollow ataraxia/rhu _4人 1.345 After All -綴る想い-/WHITE ALBUM2/上原れな _3人 1.341 SOUND OF DESTINY/WHITE ALBUM/緒方理奈 _8人 1.340 room/君が主で執事が俺で/KOTOKO _9人 1.334 First Love/ヒマワリと恋の記憶/夢乃ゆき _2人 1.333 cross my heart/innocent world/島宮えい子 _2人 1.333 Le Conseil/古色迷宮輪舞曲/tohko _3人 1.333 MOON PHASE/雫/Suara _2人 1.333 Running to the straight/ママトト ~a record of war~/仲村芽衣子 _2人 1.333 おもいで/Canvas ~セピア色のモチーフ~/くにたけみゆき _5人 1.838 カスミカゲロウ/霞外籠逗留記/Rita _5人 1.331 Till I can see you again/Chu×Chuぱらだいす ~Encore Live~/榊原ゆい _3人 1.327 星海を往く希望の歌/マブラヴ オルタネイティヴ クロニクルズ01/遠藤正明 _5人 1.324 Dearest Sword, Dearest Wish/ChuSinGura46+1 -忠臣蔵46+1-/Ayumi. _5人 1.322 Forget-me-Not/忘レナ草 ~Forget-me-Not~/Akira _5人 1.313 Silent Flame/魔王と踊れ! -Legend of Lord of Lords-/霜月はるか _3人 1.311 iを解きなさい/いきなりあなたに恋している/はな _3人 1.310 song for friends/リトルバスターズ! エクスタシー/Rita _3人 1.310 歩み/まじかる☆アンティーク/AKKO _4人 1.307 モンタージュ/最終試験くじら/美郷あき _8人 1.306 ナニカ/カナリア ~この想いを歌に乗せて~/NORI _4人 1.302 true eternity/彼女たちの流儀/fripSide _7人 1.299 closest love/Areas 恋する乙女の3H/fripSide _4人 1.297 祝福の歌/エーデルワイス/yozuca* _3人 1.291 I pray to stop my cry/凌辱看護婦学院/KOTOKO _3人 1.286 世界で一つのタカラモノ/ボクラはピアチェーレ/奏英学園軽音楽部 starring i.o _4人 1.282 My Dear Stardust/DEARDROPS/DEARDROPS _6人 1.274 COLD BUTTERFLY/聖娼女 ~性奴育成学園~/Duca _8人 1.261 トラワレビト/シークレットゲーム -KILLER QUEEN- DEPTH EDITION/遊女 _6人 1.261 beautiful flower/D.C.II/美郷あき _6人 1.260 星空のいま/星空へ架かる橋AA/相良心 _3人 1.256 Witch's Garden/ウィッチズガーデン/佐藤ひろ美 & 飛蘭 _9人 1.252 Lapis Lazuli/夜明け前より瑠璃色な/泉伶 _2人 1.250 Walk/学園ソドム ~教室の牝奴隷達~/神林未玖 _2人 1.250 ラブ・エレクション/ワールド・エレクション/薬師るり _3人 1.244 セ・キララ/se・きらら/橋本みゆき _9人 1.242 情熱のウォブル/タユタマ -It's happy days-/Kicco _6人 1.236 Raison d'etre/GUN-KATANA -Non-Human-Killer/電気式華憐音楽集団 _3人 1.226 祈りの時代/奴隷市場/MELL _5人 1.220 Heart To Heart/ToHeart2 XRATED/中山愛梨沙 10人 1.214 Change&Chance!/のーぶる☆わーくす/榊原ゆい _4人 1.213 thyme/シュクレ/KOTOKO _3人 1.211 Dote up a cat!/ネコっかわいがり! ~クレインイヌネコ病院診療中~/Rita _3人 1.210 見上げた空におちていく/見上げた空におちていく/片霧烈火 _2人 1.200 infinite knots/天結いキャッスルマイスター/佐咲紗花 _2人 1.200 Life goes on/カタハネ ――An' call Belle――/Rita _2人 1.200 Re:TraumenD/Re:LieF/紫咲ほたる _2人 1.200 saudade/漆黒のシャルノス/Rita _2人 1.200 Von Ljosalfr ~光の妖精より~/迷える2人とセカイのすべて/nao _2人 1.200 だっこしてぎゅっ!~汝、隣の枕(よめ)を愛せ/だっこしてぎゅっ! ~オレの嫁は抱き枕~/民安ともえ _3人 1.200 もう始まっている、未来。/Flyable Heart/KIYO _4人 1.199 ハジマリノトキ/鬼まり。/Rita _3人 1.196 恋せよ!乙女/恋せよ!!妹番長/Duca _3人 1.194 IN MY WORLD/猫撫ディストーション Exodus/桐島愛里 _5人 1.194 it's just farewell/カタハネ/Rita _9人 1.193 LOVING TRIP/オトメ*ドメイン/yozuca* _4人 1.192 残光ルミネセンス/円交少女2 ~JKアイドル真鈴の場合~/yuiko _6人 1.192 FaV/ラムネーション!/彩音 _3人 1.191 立ち上がれ教頭!/狂った教頭No.2 ~この支配からの卒業~/如日 _3人 1.188 unsymmetry/ぎりギリLOVE/KOTOKO _7人 1.186 チェリーレッドのピストル/FOLKLORE JAM/佐藤ひろ美 10人 1.185 own justice/暁の護衛~罪深き終末論~/神月社 _3人 1.184 広がる夜空の下で/星空へ架かる橋/青葉りんご _3人 1.181 Growing!/DRACU-RIOT!/米良梓(cv佐藤しずく) _3人 1.175 巫女みこナース・愛のテーマ/巫女みこナース/Chu☆ _3人 1.173 melty snow/あねいも2/川田まみ _3人 1.171 Eden's song/グリザイアの楽園/はな _3人 1.168 雨上がりに咲いた虹/D.C.II To You/yozuca* _2人 1.167 Castle Fantasia/キャッスルファンタジア聖魔大戦/CANDY _3人 1.167 君に逢えたから/いろとりどりのセカイ/eufonius _2人 1.167 志在千里 ~恋姫喚作百花王~ 【Piano Arrange】/真・恋姫†無双 ~乙女繚乱☆三国志演義~/茶太 _2人 1.167 名も無き物語/Hello, good-bye/Kicco _2人 1.167 輪廻の糸/天ノ少女/霜月はるか _6人 1.163 La storia/戦女神VERITA /織姫よぞら _4人 1.160 emotional flutter/ef - the latter tale./原田ひとみ _3人 1.150 やさしい世界を君に/天使の羽根を踏まないでっ/WHITE-LIPS _7人 1.148 Gregorio/Dies irae ~Acta est Fabula~/榊原ゆい _2人 1.143 Signal Heart/シグナルハート /Rita _2人 1.125 entrance to you/カスタムメイド3D/nao _2人 1.125 have eyes only for you…/North Wind/KIRIKO _2人 1.125 カカシ/水夏A.S+/彩音 _3人 1.125 スターチス/Color of white/結月そら _2人 1.125 メリーゴーランドをぶっ壊せ/はつゆきさくら/結衣菜 _2人 1.125 ラブ・パラダイス/W.L.O. 世界恋愛機構/片霧烈火 _2人 1.125 散歩日和/ワンコとリリー/Duca _2人 1.125 迷いの森/グリザイアの果実/佐藤ひろ美 _8人 1.124 アペイリア/景の海のアペイリア/薬師るり _3人 1.112 コイノニア/Noel/Rita _2人 1.111 こころのプリズム/コミュ -黒い竜と優しい王国-/桜坂かい _2人 1.111 天意悠久/斬魔大聖デモンベイン/いとうかなこ _2人 1.111 未来自画像/真剣で私に恋しなさい!S/KOTOKO _9人 1.110 淡雪/ましろぼたん/佐倉紗織 _5人 1.110 IN THE DARK/THE GOD OF DEATH/みるくくるみ 11人 1.108 satirize/螺旋回廊2/宮崎麻芽 _2人 1.100 Because of/妹のセイイキ/秋野花 _2人 1.100 青空の彼方へ ~Greensleevesより~/きると/KAKO _2人 1.100 占勇!魔界ブロードバンド/魔王のくせに生イキだっ!/綾瀬理恵 _3人 1.098 Color of Happiness/るな・シーズン 150分の1の恋人/AKI _6人 1.095 鏡の森/Trample on Schatten!!/片霧烈火 _6人 1.095 君とつくるもうひとつの未来/ここから夏のイノセンス/AiRi _7人 1.092 散って、咲いて/シークレットゲーム -KILLER QUEEN- DEPTH EDITION/遊女 _2人 1.091 Cross talk/ツグナヒ/MARY _3人 1.090 solitude/君の名残は静かに揺れて/KIYO _3人 1.090 そらうた/そらうた/佐藤裕美 _3人 1.088 EVERLASTING BLUE/AQUA/月子 _8人 1.085 Secret Liqueur/働くオトナの恋愛事情/霜月はるか _9人 1.084 ナグルファルの船上にて/素晴らしき日々 ~不連続存在~/monet _2人 1.083 flow ~水の生まれた場所~/水素 ~1/2の奇蹟~/KOTOKO _2人 1.083 恋鍵/いのぐれっ!/うえおかあい&風音 _2人 1.077 Escarlata/Scarlett ~スカーレット~/木蓮 10人 1.075 Platonic Syndrome/夏ノ雨/Duca _6人 1.072 Presto/はつゆきさくら/KOTOKO _2人 1.071 First Avenue/バイナリィ・ポット/masa _2人 1.071 no rain, no rainbow/ロンド・リーフレット/中原涼 _9人 1.071 疼/装甲悪鬼村正/VERTUEUX _4人 1.067 夢遥か/Garden/Duca _2人 1.067 絶対☆大好き/ぜったい遵守☆強制子作り許可証!!/藤原鞠菜 _2人 1.067 放課後のパティシエ/パティシエなにゃんこ/SAKKO _0人 0.000 神様のりんご//WHITE-LIPS _5人 1.060 月夜に舞う恋の花/千の刃濤、桃花染の皇姫/ういにゃす _2人 1.059 Erode/カスタムレイド4/電気式華憐音楽集団 _9人 1.058 Ashberry/エーデルワイス/NANA _6人 1.058 Only For You/民族淫嬢/カヒーナ _3人 1.057 fractale/Dark Blue/ひうらまさこ _3人 1.054 太陽のプロミア/太陽のプロミア/NANA _2人 1.053 Brand New Melody/もっと 姉、ちゃんとしようよっ!/理多 _2人 1.053 innocent Eye's/イノセント・アイズ/Akira _4人 1.053 シアワセノサガシカタ/ジサツのための101の方法/佐藤裕美 _2人 1.050 ブラウン通りで待ってます/ブラウン通り三番目/畑亜貴 _2人 1.048 ガチャガチャきゅ~と・ふぃぎゅ@メイト/ふぃぎゅ@メイト/み~こ _2人 1.048 私ってジャスティス/遊撃警艦パトベセル/keito _2人 1.033 Especial Friend/Silence 聖なる夜の鐘の中で……/A・S _2人 1.033 KANATA/七彩かなた/らん丸 _2人 1.033 青空ボレロ/巣作りドラゴン/畑亜貴 _4人 1.033 ヒトリ/天使のいない12月/AKKO _2人 1.032 ever/明日の七海と逢うために/橋本みゆき _2人 1.032 悲しみの向こうへ/School Days/いとうかなこ _2人 1.030 Snowy Tears/闇色のスノードロップス/小田ユウ _2人 1.029 Love Paint/BIN★CANダーリン/遊女 _2人 1.029 You can fly/マージ ~MARGINAL~/清水こずえ _2人 1.026 My Dear アレながおじさん/My Dear アレながおじさん/Orihime _2人 1.025 熱情/魔都拳侠傳 マスクド上海/マスクド上海 _2人 1.021 seven colors/はるかぜどりに、とまりぎを。/みとせのりこ _2人 1.017 FISSION/グリザイアの楽園/奥井雅美 _2人 1.016 ラムネ2017/ラムネ2/仲村芽衣子 _2人 1.006 roop ~遠い世界のキミに贈るたったひとつの恋の歌~/あきゆめくくる/Rita _2人 1.006 ラピスラズリの恋/あまつみそらに!/榊原ゆい 10人 1.004 二人だけのカーテンコール/アオイトリ/浅葉リオ
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第一印象を添えて
ゆるあです🐎
敬称略で失礼します、
1年経ったので時効だと思って大目に見て下さい
・久保勇貴/先輩
上から私たちをひっぱり上げようとしてくださる。同じ高さで沢山悩んでくださる。そして自身は更に上へ行こうとする。有り難すぎる存在。後輩たちと共に、わたしもまだまだ育ててもらいたい。くうやさんとの作業は進みが遅すぎてとても楽しかった。
・坪井涼/「そういうことっ」「わんわん」
1人の時にしれっと寄ってきてくれるのがとても嬉しい。これ以上は仲良くならないだろうことを確認した仲。地味に努力し続ける辺りかっこいいなって思う。今回の大道具ではゴコの理系脳に助けられました。これから���ちゃうかは君を必要としてるぜ
・慧丸勝/思ってたより身長低かった
何度でも言うよ、君は最高の大道具班員です。呼び出して1時間後に箱来てくれた時はほんとに感動した。最高。役者としては「え、そこ?」ってとこの引き出しがあってびっくりする。これからも色んなエドウィンを見せてね。
・中津川つくも/お姉さん
あこがれ。適当にあしらってくれるんだろうなと思っているから甘えてしまう。こんなになんでも出来る役者さんなのに、わたしなんかの意見すらまっすぐ聞いてくれる。沢山たくさん努力している。お客様にもつくもさんを沢山見て欲しいな。
・黍/zoomと印象違いすぎ
圧倒的片思いをし続けて、やっと最近両思いになれた気がする。だけど俺より好きなやつはいっぱい居るんだろと思って拗ねている。今回も各分野で流石と言わせるものを見せてもらっている。ありがとうとごめんねは喉が枯れるまで言ってもまだ足りない。
・梅本潤/全タの人
苦手かもと思った時期も実は一瞬あったが、今公演では改めて尊敬しかしなかった。舞監さんの仕事は基本知らないのだけど、それでも分かってしまった有能さ。役者としても超初期から抜群の安定感をみせてて焦ってしまった。いつからそんなに遠くへ行ってしまったの、、
・竹之内かの/あざとい
やっとすふれの凄さに気づき始めた。わたしが今まで見てたのは水上の綺麗な白鳥さんでした。尊敬。きっとわたしが知らない所ではまだまだ足をばたばたさせているんでしょう。可愛いのにイケメンだな。今回の役もそんな感じです、大好きよ。
・望月オーバーフロー/人間として可愛い
褒められていちばん嬉しい人。役者として個人としてスタッフとして、等々あらゆる面において、もったいない人だと思う。だけどあまり良さが知られすぎるとそろそろ死んでしまいそうだからこのままで良い。お忙しい中沢山気をつかって下さって大感謝
・杏仁アニー/にこにこ
気配りとあたたかさと、アニーさんの良いところは何度も聞き飽きてるでしょうがそんなところです。誰にでも、何時でも、同じようにっていうのも凄い。今回の役は可愛すぎて惚れそうです。普段は絶対聞けないだろうセリフも楽しみ。
・かけうどん/好きか嫌いの両極端だろな
一生分かり合えないんだろうと思います。その適当さに何度も困らされました。そのおおらかさに何度も助けられました。感謝してもしきれません。稽古場が、仕込み場が、そしてわたしがたけかわさんがいないと寂しいと泣いています。居なくならないで
・θ/共通点多いのでは
大チ様を特別扱いしてくれる。でもわたしの大切な人も大切にしないと承知しないぞ。すみません態度でかくてすみません、まじで役者のβは遠く遠く見えないほど向こうにいますほんとに尊敬だしかっこいい。大道具もめちゃくちゃ助かったほんとにありがとう
・君安飛那太/子犬みたいなおめめ
いや〜楽しそう。この役はコルク以外あったのかしら。魅力が最大限に引き出されてる。オムニぶりにちゃんと稽古が被って、初めてちゃんと仲良くなった気がする。改めて良いやつだなあ。そしてそしてPV最高すぎて震える。コルクの映像センスがほんとに好き。
・永満柊人/わ〜本物だ
会う度テンションが上がってしまう。本番まであと何度会えるか分からないですが、ながみつさんを完コピするつもりでひっつきにいきます。よろしくお願いします。立ってるだけで真似出来ない空気感をつくってしまえるのが羨ましい
・田中かほ
第一印象は割と間違ってないなという気持ち
・握飯子/変わった子
今は変な子だと思ってる。いつもいつもわたしなんかの意見を聞いてくれてありがとう。わたしの自己肯定感の半分くらいはクオリアのお陰。一緒にやりたい事を色々と話しながら、結局コンビニでアイスを買ってお散歩ばかりしている。そゆとこ含め好き。
・荻野琥珀/あ、山の人か!
初のがっつり絡み、沢山迷惑かけましたごめんね。人の良さとか、役にまっすぐでまじめなとことかをいちばん近くで見れた気がする。怒った顔も悲しい顔も見たくないなと思わされる、それってハクの魅力。なんかもう1枚くらい殻を破った役も出来るんじゃないかとも思う
ちゃうかの一員となってはや1年。
おかげさまで最高にみちみちの時間を過ごしております。足りない、けれど精一杯のありがとうとごめんなさいを伝えながら、今日もわたしはしあわせです。
どうか、これを見て下さっているあなたもしあわせでありますように。
わ〜恥ずかしい
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口語俳句同人句集
浦賀広巳編『口語俳句同人句集』口語俳句会1963
芦田みさ子「紅絹」より 待合せれば恋人のようにさわやかに時計が鳴る 夕雲に吹くトランペット少年青年となるころ 涼しい水に洗うエジプトのお米よ
市川一男「透明なうろこ」より 春の三日月くらく人の死ねがつたこともある 子をうむ犬に春のまひるのむごい明るさ 海埋めたてられはじめからそうであつたように雲 世界中の時計に時をきざませ世の終りを待つているもの
伊藤後槻「十三夜塔」より 先客の女と俺に餃子両手で出す 一羽になつてつかまらない白い鶏だ月がでて
浦賀広巳「黄色い封筒」より 雪ふれば妻の名前すらすらと言える 黒い旅カバンここから単線となる町 ビール一気に飲む雲かたよつてゆく枯野 蛇つかまえ少年風船の重さでくる
大竹竜「見事な菊」より 柿むいて血のつながりに負けまいとする あいてにいつこうおかまいなくえんだんからつきのうらがわのはなし
小久保久雄「自分の名刺」より 混んだ男湯におんなの子のかなしい立て膝である 片手はおとこのそれをまさぐり運転手にあごで道をおしえる
佐藤東郊「竹の花」より がけ下めぐる水を拒否して竹の花ぴらぴら 前世の因ねんと思い知らされて月光のひまわり 月へロケットいちじくの葉もふきあげられ
高橋木槿「長い眉毛」より うそばかりつくこの男の涙がなんときれいな うらおもてみがかれたガラスのような透明なさびしさだ
田中君子「私のページ」より れんげのおし花が古い私のページから落ちる 大みそか夜の電車にだまつて座る
高田声三「かゆいところ」より 町かどに消えたあなたを風に追わせる こんなに家がたつてしまつて川魚料理 かゆいところをかいてじぶんにはすなお
富澤正一「葉ざくらの頃」より つばくろよ思い出だけで家がない 明日から職場がないひぐらしひとすじ やけ酒ものめない男で首の汗ぬぐつている
西村秀治「四季好日」より ニュース映画総理と見て画面にもいる総理 建物のてつぺんにくればくるで春の空遠くなる 山脈から暮れて菜の花畑に子供がひとり
早川八重子「ぶどうの花」より 私にだけわかる月日 冷い手に脈とられ 心の十字路に来て信号を無視した女 小さなヒミツを植え南風冷たい盆地 愛憎のかなたに碁石を並べる
早川宝「蹴ればとんでいく石ころ」より みんなのするようにやれば円満な人だという 生活のまずしさせめて時計だけは正確に 知らぬ町を歩くポストはどこでも赤い
藤井以身「足跡」より 雷雨予報 皿からキャベツがこぼれる 獣みんな出てきて月夜の雪に残していつた足あと 月の裏側写そうが昔と変わらぬだるまの顔
藤島範孝「遠い電話」より 雪の下で生きているということが遠い電話につながる ジエツト機とべとべキンタマにぎつてもらい風呂 おきわすれたもののひとつに薄情な耳
まつもと・かずや「黄という色の日本人」より よるに、おんなのくいのこしたさらをあらう ちちはつねに、おおきななみだためている ねこじたの天皇にねこじたの孤児たち、全くちがつたところでひなたぼつこ
松本裕「虫ぞろぞろ」より 親に甘えた記憶がないみごとないわし雲だが さまざまな生き方をすませて裏町灯を消していく
間宮春生「青麦」より 失業のひとりとなつて見ているかもめ サーカスがみたくてしぐれふる日曜 憲法改悪されるか黒ストツキング流行
水谷六子「愛欲の海」より 白もくげ空いつぱいに今日一日のいのち 愛欲の海あたたかく静かに真正面に満月のぼり 残雪消えてしまい夕ぐれの街ひろびろと帰る
森子朗「雲と人間と海と」より 雲を一トン売りそこねた風小僧の風のようなたくらみ ぬきさしならぬ海の広さに頭のゆがみどうなる 巨大資本のゆがみたとえばブラインド越しの西日というやつ
故・市川忠男「ミイラの気持」より サ・シ・ス・セ・ソ青いサ行のリズムにのびる草の葉 お堀星条旗をうつして古事記どおりのせきれい おなら出す注射もあつて病院はみんなのもの
故・市川たまお「みどりの道」よ�� もうすぐ暮れてしまうこの街のなにもかも さくら風のないのに散つて病名うちあけられる
故・島野一進「寒いところ」より つまずけばかげろうのかつさいゆれる うめいて目ざめる月光が額につきささつていた 枯木星いつぱいに吊しねむるなとは神の心か
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06250159
今となっては人が辿り着けない、忘れ去られた森の奥に、古びた洋館は佇んでいた。
夜には人間ではないものたちの舞踏会。
ひとりでに鳴り響くピアノの音に合わせて、魑魅魍魎は舞い踊る。
それを壁に寄りかかって楽しげに眺めていた男が、ふらりと宴に近づきピアノに触れる。その瞬間、ピアノはポロン、と和音を鳴らし、まるで尻尾を振ってじゃれつく犬のようにポロン、ポロンと楽しげな音を奏でた。
「そろそろ調律が必要だね、ピアノくん。」
ある者は体液を、ある者は魂を、そしてある者は全てを忘れられる魔法の粉を撒き散らしながら、魑魅魍魎は宴に酔いしれる。
その時、騒々しい音を立てて洋館の扉が開かれた。音の正体は何かに躓き派手に転んだらしい。驚いた魑魅魍魎たちが逃げ惑い、さっきまで上品な舞踏会を催していた洋館が、まるでお祭り。どんちゃん騒ぎ。
収集のつかない面々に呆れ顔の男。駆け寄り抱きついた騒がしい男が、太陽のような眩しい笑顔と歯を見せて笑う。
「ただいま!おそくなっちゃった!」
「......もう少し静かに入れないのかな、此岸。おかえり。」
「へへ、ごめんごめん、彼岸くん。ゆかがわれてたよ。なおさなきゃ。」
「そろそろ慣れてくれないと、君が来るたびに皆が驚くよ。」
「はは、だよね。ごめんねー、みんな。」
二人が揃ったのを見て、魑魅魍魎たちは散り散りに自らの住処へと帰っていく。ごめんねー、騒がしかったねー、と声をかける此岸を見ながら、場の温度が冷めていく。後に残すのは静寂のみ。呆気ないものだ。いつもこうして全てが終わった後は、酷く寂しい、心に穴が開いたような感覚になる。
どちゃり、と買い物をしたらしい此岸が戦利品を机に置き、遊び盛りの子供のようにソファーに飛び乗って雪崩れ込む。そこはさっきまで首無しの騎士が踊り狂って倒れ込み鮮血を撒き散らしていた場所だったが、どうせ汚れても洗濯するのは僕だ。と開き直って黙っておいた。
「はぁ、つっかれたぁ。まちってほんと、とおすぎだよね。」
「随分遅かったね。今日はどこで遊んでいたんだい?」
「いろんなとこにおでかけしてきたよ。ほらみて。おさいふすっからかん!」
「......此岸くん。」
「はい。」
「僕が今朝、街に行って買い物がしたい!と強請る君に渡したお金はいくらだったか覚えているかな?」
「えーーーー...っとぉ......かみがごまい、だから、ごせんえん?」
「...此岸。あれは諭吉だ。英世じゃない。君が持って行ったのは5万円だ。」
「あー。」
「あー。じゃないよ君。...まぁ、仕方がないか。こうなることは概ね予測済みだったから。で、何を買ったのかな。」
気まずそうに彼岸の顔を見ながらも、戦利品を早く見せびらかしたかったらしい此岸が、紙袋やらビニール袋やら机に投げ出していたあれそれを開封し並べていく。その楽しげな顔に毒気を抜かれた彼岸は、ため息を吐いて彼の前へと座り、広げられる品物の数々を手に取っては、釣られて笑った。
「これは?」
「かいだんでころがすにじいろのおもちゃ!」
「これは?」
「かっこいいりょうりどうぐだよ。かなものやさんでかったの。おにくをやくまえにたたくものなんだって!」
「もうあるんだけどなぁ。肉叩きなら。」
「えへへ。とげとげつよそうでしょ?」
「これは?」
「きんぎょ!こっちには、きんぎょばちもあるよ。えさも!これね、くろくてめがでてるのがぼくで、しろくてきれいなのが彼岸くん。」
「いいな。名前は?」
「しーちゃんと、ひーちゃん!」
「覚え易くて良い。採用。」
「あとね、これ。彼岸くんがすきっていってた、はなだよ。」
「...あぁ、アングレカムか。母に似て、好きな花だよ。よく覚えてたね。この子は日向が好きだから、枯らさないよう日に当ててやらないとね。」
「なんだかいいにおいがする、とおもって。ぼくちゃんとおみずやるね!」
ふんすふんす、と鼻息を荒げまるで褒美を待つ犬のような此岸の頭を撫で、彼岸はさて、と場を仕切り直した。それは、冒頭からずっと気になっていたことを、指摘すべきかと考えあぐねているうちに此岸のペースに取り込まれていたからだった。
「で。今日は何を連れ帰ったのかな。」
「なんのこと?」
「...君のせいで、僕は血塗れだよ。お気に入りのシャツが真っ赤だ。」
「あー...あは、だよね。ごめんね。すてきなかぞくをつれてきたんだ。といっても、ひとりはかけちゃったんだけど...」
「おや、お客様だったか。なら、おもてなししなきゃいけないね。支度しようか、此岸。」
「はぁい!」
後頭部に鋭い痛みが走ったところまでは覚えていた。が、目を覚ました場所は見知らぬ洋館らしき古い建物。ここがどこで、何月何日の何時なのかも全く分からない。口には猿轡、手足には指錠が掛けられていて、身悶えすることしか出来ない。が、身悶えした瞬間、足首に激痛が走り一瞬息が出来なくなる。足をやられた、と脳内で舌打ちを漏らし、あたりを見回せば傍らには横たわる妻と、そして娘がいた。もう一人の娘はどこに。襲われる直前まで一緒にいたはずだ。とコンクリートが剥き出しの床に頬を擦り付け周りを見回していると、古い扉がギィ、と軋んで開く。
「ほら、おきゃくさんだよ!」
「縛り上げて口枷まで。あぁ、血が滲んでるよ。全く...手口が雑だな。」
「ごめんって。だってあばれるんだもん。」
「そりゃ暴れるだろう。いきなり街中で拉致されるんだから。」
軽口を叩きながら部屋に入って来たのは、小柄で細身な色白の男と、その男よりも背が高く、健康的な身体に笑顔を浮かべた男。神経質そうな細身の男が我々を見て顔をしかめ、心配そうに私の顔を撫でた。気味が悪く避けるように身体をしならせ避ければ、しゅん、と困った顔をして顔を覗き込まれる。異常だ。まるで意味が分からない。
「とりあえず、おはなししないとね!彼岸くん!」
「そうだね。此岸。さぁ、いらっしゃいませ、お客様。」
彼岸、と呼ばれた男が私の後頭部へ手を回し、猿轡代わりに口に詰め込まれ固定されていたタオルを取った。肺に流れ込む新鮮な空気を目一杯吸い込んですることなど、一つしかない。
「っ 、ゲホ...誰か!誰か!!助けてくれ!!!!!」
「うわぁーうるさい!うるさい〜!」
「紳士、お静かに。ここは山奥の洋館。呼んでも誰も来ませんよ。」
「誰か!いないのか!助けてくれ!!!誰か!!!!」
「うるさいっていってるじゃんか!もう!」
髪をグシャリと掻き回して癇癪を起こす子供のように叫んだ此岸、と呼ばれた男が手に持っていた火かき棒を思い切り私の頭に振りかざした。その瞬間、鋭い熱さと、そして世界が揺れる気持ち悪さで目が眩む。振りかぶって頭の左側面を殴られた。耳が酷く熱い。
「コラ!此岸!」
「うぇぇ、ごめんなさぁい...だって、ぼくのみみ、いたくなっちゃうから...」
「すまないね。耳が切れてしまったみたいだ...。止血するから、大人しくしていてください。」
私の隣に蹲み込んだ彼岸がポケットから出した柔らかなハンカチで私の耳あたりを押さえ、「救急箱持って来てくれるかな、此岸くん。」と指示する。脱兎の如く駆け出した此岸を目で追えば、傷の様子を見ていた彼岸にくすくすと横で笑われた。
「可愛らしいでしょう、彼。子供なんですよ。」
「...どう見てもただの、大人の男じゃないか。なんなんだ、ここは。アンタは誰だ。目的はなんなんだ。」
「此岸が連れ帰って来てしまった、と聞いています。心中お察しします。」
「聞いてるのかお前、おい!」
「全く、ゴルフじゃあるまいし、火かき棒を振りかぶるなんて。」
「彼岸くん!もってきたよ〜!」
「ありがとう。」
さて、と、先ほど投げ捨てたタオルを拾い上げた彼岸が、私の口にそれを突っ込み直す。そして、救急箱の中から恐らく医療用の針と糸を取り出し、そしてにこりと気持ちの悪い笑みを浮かべた。
生きながら麻酔なしで耳を縫われる、その感覚は二度と味わいたくものだと、焼き切れそうな思考の中でどこか冷静な私が懐古していた。強張った手足の感覚はもう既に無い。
永遠とも感じ取れる時間の中、終わったよ、という声がどこか遠いところからモヤがかかったように聞こえる。目を開けば、優しそうな笑みを浮かべた彼岸が私の頭を撫で、よく頑張りましたね。と私を褒めている。
「うまいなぁ、さすが彼岸くん!」
「全く、君は火かき棒の使い方が分かってないな。そもそも人に振るうものじゃないし、何のためにここに板がついてると思う?」
「...あぁ、そういうことか!ぼくりかいした!じっせんしていい?」
「また余計なことを思いついたな。此岸。全く...。」
「よーしじっせん!こうでしょ!彼岸くん!!!」
声を発せない状況のまま、此岸が先ほど私の頭めがけて振りかぶった姿とはまた違う、上からストンと振り落とすような仕草で火かき棒を、妻と、そして娘の頭に下ろした。ぐちゃ、と鈍く聞こえたその音で、目の前が怒りにより真っ赤に染まった。びくん!と身体を震わせた妻と娘が目を覚まし、そして光景を見て、痛みに喉から搾り出された金切り声で絶叫する。
「ねぇ彼岸くん、ぼくじょうずにできた?」
「...そうだね、とても綺麗で鮮やかだった。で、誰が治療すると思ってるのかな?此岸くん?」
「あっ...」
「罰として明日の洗濯係は君だ。」
「ちぇっ...でも、てつだってくれるんでしょ?」
「...君に任せていたら、また蝶々やらバッタやらを追いかけて終わらないからね。」
「へへ、やさしいなぁ。ありがと!」
手慣れた様子で妻と娘の耳を止血し、火かき棒がざっくりと切り落とした耳を此岸へと手渡す彼岸の様子に、血の気がザザ...と失せていく音が聞こえた。私達は、来てはいけないところへ来てしまった。連れてこられてしまった。
「さ、皆様が落ち着いたところで、本題に入ろうか。此岸。」
「そうだね、彼岸くん。」
私達の体を起こさせ、壁に持たれさせるようにして座らされる。猿轡は外されたが、叫ぶのが無駄だと実感した3人は黙ったまま、ゲス野郎達を睨んでいる。目の前に置かれたアンティークの椅子に座った2人が顔を見合わせ、まるでパーティーのメニューを決めるかのように軽やかに話し始めた。
「どうやら、此岸くんから見た君達の家族としての姿に何か誤りがあったらしいんです。そこで、君達に、正しい家族の正解を見つけてもらおうと思います。」
「きげんは、えーと、いまがよるのにじだから、あしたのよる、じゅうにじまで!みつけられたら、ぶじただしいかぞくとして、これからもしあわせにくらしてもらうね。」
「彼岸、とか言ったか、お前。」
「はい。何でしょう。」
「もう1人、娘がいたはずだ。どこへやった。」
「あぁ、あのちっさいこ?べつのへやでねてるよ!さっきまで、ぼくとあそんでたんだぁ。」
「......人質から人質を取るなんて、クズだな。」
「あー、ちょっと、彼岸くんのことわるくいわないでよ。」
「此岸。いい。僕が優しいことは、君がよく知っているだろう?」
いきりたつ此岸を制して椅子から立ち上がり、私の目の前へ腰を下ろし、慈愛の目線をもって私を見つめ「大切なお客様なのだから。」と頬を撫でる彼岸。心底気持ちが悪く、強く噛み締めたせいで口の中に溜まった血と唾液を奴の顔へと吐きかけてやった。固まる表情と、彼岸を見て目を見開く此岸の顔。
「ひっ...彼岸くん!」
「はは、大丈夫。大丈夫だよ。明日までゆっくり待って、彼らに正しく生きてもらおう。此岸。」
「うん。かお、きれいにしてあげる。いこう?」
「ありがと。行く。」
閉じられた扉。絶望の音にも聞こえる。正しい家族?そんなもの、それぞれに正解があって然るべきで、そもそも私達は間違った行いをした覚えはない。社会のルールを守り、家族4人で楽しくお出かけしていただけだ。
「あなた...」
「パパ、こわいよ。」
「大丈夫だ。お前達も、あの子も、必ず助ける。」
「うへぇ、つめたーい。」
「温度は仕方がないよ、此岸。ただ、まだ身体は柔らかいだろう。12時間がピークだ、明日の朝ごろにはもう使えなくなってるだろうから、今のうちに楽しんでおきな。」
「うん、たのしむー!へへ、かわいいなぁ、」
ベッドの上に寝かされ、首が雑巾のように捻れた幼女相手に此岸が覆い被さり、意気揚々と腰を振っていた。まるでダンスでも踊っているかのようなその姿に、性的な欲求が生来まるでない彼岸は、命の強さを感じていつも見入ってしまう。
「はぁぁ、やわらかくて、しっとりしてて、きもちいい〜!���んかいでもできそうなきがするよ、彼岸くん!」
「あぁ、楽しめ。存分にな。」
「んんん〜〜ふふ、んふふ、あぁ、あぅ、ぅふふっ」
そっとスマートフォンを取り出し、家族の部屋の監視カメラの映像を覗く。此岸曰く、施錠は勿論彼らのアキレス腱を断っておいたから逃げるのは無理、とのことだった。その言葉通り、彼らは芋虫のように這い回り、そして、時折カメラを睨んでは、顔を突き合わせて何か話し込んでいる。全く、酷いことをする。と、目の前で無邪気に幼女と戯れる此岸を見遣る。壁の時計を見れば、そろそろ眠るべき時間だった。
「僕はそろそろ眠るよ。」
「はぁい!おやすみ、彼岸くん。どうかいいゆめを。」
「叶うことなら醒めない夢を。おやすみ、此岸。」
白濁と血と体液に塗れ、蝋のように強張り白くなった子供を見下ろす。今更何の感情も浮かばないが、唯一、彼岸が嬉しそうにしていたことが嬉しかった、と、此岸は汚れた愚息や身体を拭いながら思い返していた。彼岸は食欲も睡眠欲も、そして性欲も捨てた人間だった。代わりを満たすのが自分であることを、此岸は心から誇りに思っていた。
トン、トン、と家族が監禁された地下の部屋へ向かいながら、此岸は彼岸のことを思っていた。形容することが何もない空っぽの人生を、楽しさと不変で満たしてくれた彼岸に報いたいと思うのは、此岸にとって正しいことであり、それを止められる法もモラルも何もなかった。守るべきは彼岸、そして己の秩序のみ。
キィ、と開いた扉に弾かれたように顔を上げた家族が此岸を睨み付ける。傍らの椅子を引いて座った此岸は、消耗した様子の子供、そしていきり立った両親を見て、チリチリと焼ける胸の音を聞いた。
「幸せな私達がなぜこんな目に、って思ってる?」
「...貴様、さっきの此岸か?別人か?」
「此岸だよ。彼がくれた名前なんだ。覚えてくれてありがとう。」
「気持ち悪い。何なんだ、貴様らは。ホモのお遊びに、私達を巻き込むな!」
「口汚く罵っても、生憎僕らには効かないよ。」
「...目的は何なんだ。」
「彼岸はね、正しいことを正しいと思い続けてきた人なんだ。僕はそれを正しい、と肯定してあげるために、彼の側にいる。」
「何を言ってるのかさっぱり分からんぞ!」
「だろうね。」
「なぁ、逃してくれ、助けてくれ、頼むから。」
「僕にも彼岸にも、逃すメリットがないよ。」
「誰にも言わない、命だけは助けてくれないか、」
「明日答えを見つけたら、助かる。彼岸がそう言ってたでしょ?正しく生きれば必ず報われる。それを証明してあげてよ、彼岸に。」
「さぁ、行こうか。きっと彼らは聡いから、答えを見つけているはずだよ。此岸。」
「うん!彼岸くん、いこー!」
床に垂れ流された排泄物と、微かに血の匂いのするその部屋で3人は転がっていた。バランスを崩して倒れ、起き上がることが出来ないまま期限の12時を迎えたらしい。出したヒントはきっと何も伝わってないんだろうな、と、此岸は今後の行動を頭の中でシュミレートしていた。彼岸が優しい笑顔を浮かべて、彼らを見下ろす。
「さて、正しい答えは見つかったかな?」
「......私達は、共働きで、娘2人を育て、3人目は男の子がいい、と話していた。忙しい時期でも家族と過ごす時間は必ずとった。お出かけだって散歩だって、いつも横並び、皆で手を繋いで進んできた。貴様らの歪んだ正しさなんて、知らない!私達は私達家族として、これからも、皆で幸せに暮らす!これが答えだ!!!」
「...はぁ...はは、そっか、そっかぁ......」
バッドエンド。選択肢を間違えたプレイヤーはどうなるか。幾度となく繰り返したエンドロールを、一からまた見始める此岸の目に映るのは、昨日買ってきた肉叩きを母親に振るう彼岸の後ろ姿だった。
「だから!間違ってるって言ってんだろうが!何が家族だ、何が幸せだ!!お前らの幸せは!!!誰の不幸の上で!!!成り立ってると思ってるんだ!!!そもそも己が幸せだなんて誇らしげに恥ずかしげもなく言い放つその低能さと自惚れ具合の凄まじさに閉口しちゃうよ俺はさぁ。幸せ?はは、笑っちゃうなぁお前らお出かけで電車に乗ってたらしいが皆が皆スマホを見て会話なんて全く交わしてなかったらしいなぁ!それのどこが幸せな家族だ?おかしいだろ幸せなら和気藹々と仲睦まじく電子機器に囚われてないで語り合えよなぁ!ドラマで見たことあるかよ家族が無言でスマホ見てるだけのシーンをさぁ!間違いに気づかず生きてたからこうなったんだお前らは自分たちが間違ってたことを悔いて悔いて悔いて悔いて死ね!死ね死ね!!はははあーーー楽しいなぁ!」
「彼岸くん、」
「お前、安物買ったろ。折れたぞコレ。いつもの寄越せ。」
「へへ、ごめんね。じゅんびしてあるよ!はい、これ。」
こちらを振り向くこともなく彼岸が投げ捨てた肉叩きの柄の部分。折れた重い頭は、恐らく彼岸の前でずたずたのミンチに成り果てた身体のどこかに沈んでいるんだろう。手に持っていた彼愛用のバールを手渡す。
「彼岸くん、ぼく、ごはんつくってくるね!おなかすいちゃうでしょ!」
「あぁ、出てけ。出来たら呼べよ。」
「...うん、ありがとう。」
彼は愛用の道具を握り締め、目の前のミンチとの遊びを再開させた。こうなってしまった彼岸は見ているのが辛い、と、此岸はいつも終わるまでの間は部屋から出ていた。ぱたり、と閉じられた扉の向こうから、穏やかな彼から出たとは到底思えない狂気じみた彼岸の笑い声と、罵倒と、心を絞られそうな叫びが聞こえて、此岸は耳を塞ぎながらその場を離れた。
暫く経ち、肉のスープが完成した此岸が部屋を訪れると、部屋はさっきとは打って変わって一切の静寂に包まれていた。トントン、とノックをし、扉を開ける。返事がなく、鍵が空いている。終わりの印だった。
「此岸...?」
部屋の真ん中で体育座りする彼岸は、何時にも増して小さく見える。彼岸の後ろには赤をベースに構成されたなんらかの塊が飛び散り、固まり、前衛的な芸術のようにも見える100キロ超の肉が散乱している。震える手に握られたバールはひん曲がり、彼の手に血が滲んでいた。早く手当てをしてやらないと。
「彼岸くん、おかえり。ゆめはどうだった?」
「夢...よく、分からない、けど...悲しくて、嫌な気持ちになる、夢だった。」
「そうだね、まちがったゆめだよ。ぼくらのただしいゆめは、いつみられるんだろうね。」
「分からない、怖いよ、此岸...」
「だいじょうぶ。そうだ、きのうかってきたおはながひとつさいたんだよ!」
アングレカム。繊細な彼の正気を保つためのアイテム。花が咲く姿を見る度、「首を吊った母の姿に似ている。」と笑っていた。
「みにいこう!ぼく、ひさしぶりに、彼岸くんのえがみたいなぁ!!」
「此岸、また笑うだろう。僕は絵が下手なのに、描かせようとするのは何故なんだ。」
「みたままかこうってがんばるきもちがね、すきなの!だからほら、おそとであさごはんたべよ?そのあとふたりで、おへやのおかたづけするの!」
「あぁ...うん、そうしよう。」
朝ごはん。壁の時計はもう朝の7時を指していた。今日の舞踏会はとっくにお開きになっていただろう。
魑魅魍魎が夜な夜な集まるこの洋館。頼りない此岸だけじゃ、管理どころか存在を認知することすら難しいだろう。
今日は此岸と共に、舞踏会で自分達が舞うのもいいかもしれない。と、彼岸は立ち上がり、るんるんと楽しそうな此岸の後に続いて、部屋を出た。
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