#急に掛かったんだけど素子の声が…
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untranslated text of servamp events drama
I don't know how to upload an audio file, it's too big. Here's the event drama from a long time ago, but this lovely episode is often missed
リリイ:御園、紅茶が入りましたよ 御園:あぁ リリイ:どうしたんです?そんな…難しい顔をして 御園:リリー2月10?あと何日だ? リリイ:えーと、10日ほどですが リリイ:あ、もしかして誕生日会の準備でしょうか?あ、それでしたら… 御園:いや、さっき堂々たちがバレンタインの話をしていた 御園:友達同士でもチョコレートの交換をすると聞いたのだ リリイ:あぁ、友チョコですか! 御園:真の友情を築いた者同士がその友情の証に互いが作ったチョコレートを交換し一層絆を深め合う!これであっているな! リリイ:えっと、あっているような、微妙に違うよな… 御園:どうなんだ!! リリイ:あってます! 御園:やはりそうか、まあ、城田と千駄ヶ谷に友情的なものを感じていないわけでもないからな。奴らに友チョコを用意してやろう! リリイ:ふふ、応援していますよ、御園! 御園:しかし、あと10日ほどしかないとは、そもそもチョコレートとは、一体どうやって作るんだ?
黒:真昼ー、コーラなくなった 真昼:早、もうなくなったのかよ?お前飲み過ぎだぞ! 黒:血を飲まずに、コーラですませ心優��い吸血鬼に向かってなんて言い種だ? 真昼:そこは血を飲めよ! 真昼:あ、いや、まって、コーラと同じペースで飲まれたら俺が大変なことになるんじゃ? 真昼:…ほどほどに飲めよ! 黒:注文の多いやつだな! 真昼:来たかな? 黒:あー? ヒュー:頼もうー 鉄:邪魔するぜ?真昼の兄貴 真昼:急に来てもらってごめんな、2人とも、旅館の手伝いも大丈夫なのか? 鉄:今は繁忙期でもないし ヒュー:おぉーあ、おおおお! ヒュー:日本が誇る文明の利器、こたつがあるのじゃ!どれどれ、吾輩にオーっと 黒:っつ、冷えたまま入ってくんな! 真昼:あ、寒いし!とりあえず鉄も上がってくれよ! 鉄:お! 鉄:電話で言ってたのってこの食器棚か? 真昼:そうなんだよ、この下に家の鍵落としちゃってさ 真昼:どうにかして取ろうとしたら、どんどん奥に入っちゃって 真昼:もう食器棚を動かして取るしかないと思ったんだけど 黒:真昼の非力な腕じゃ無理だった 真昼:俺が落としたのも悪いけど、蹴って入れたのは黒だからな! 黒:たまたま通りかかっただけだし、そういう責任転嫁とは向き合えないで 真昼:とにかく!そんなことで呼び出して本当に申し訳ない! 鉄:気にすんな、力仕事は得意だ 鉄:毎日背中にヒューと適当に何か乗っけて指立せしてるしな ヒュー:うん、昨日は座布団十枚の上に吾輩が乗ったの! ヒュー:揺れる座布団の上でいかにバランスを保つか!あれは吾輩にとっても良い訓練であった 鉄:今日は20枚行ってみるか? 黒:何目指してんだ? 真昼:誰だろう?宅配便かな? 御園:なんだ、空いているじゃないか!邪魔するぞ 真昼:は?御園とリリイ!? リリイ:えっと、鍵が開いていたもので、お邪魔いたします! ヒュー:なんじゃ、なんじゃ、賑やかになってきたの! 黒:植えすぎだろう!俺の休日が 鉄:おぉ、ちび、久しぶりだなあ。 御園:な、なぜここに貴様らがいるんだ? 真昼:あ、あの、それについては後で話すから、御園こそどうしたんだ? 御園:そ、それはだな…おい!リリイ!千駄ヶ谷もいるなんて想定外だぞ!て直した方がいいんじゃないのか? リリイ:でも、鉄君にもあげるつもりなのでしょう?でしたら、隠す必要はないのでは? 御園:そうか?そうだな 御園:ん、貴様ら、2月14日が何の日か知っているか? 黒:貴様ちゃん、また自分の誕生日を知らせに来たのか? 御園:違う!確かにその日は僕の誕生日だが、そうじゃない方だ! 真昼:そうじゃない方?ってー、バレンタイン? 御園:正解だ! 真昼:なんだ、びっくりした ヒュー:吾輩知っておるぞ、女の子がチョコを用意し、それを意中の相手に投げつける! 真昼:嫌がらせか! ヒュー:掛け声はこうじゃ!鬼は外! 真昼:それは節分!! 黒:なんつう暴力的きな愛情表現だ、向き合えねー 鉄:好きなやつにあえて投げつけるのか、不快な リリイ:愛と憎しみは紙一重と言いますからね ヒュー:そうすると厄が払われると聞いたんのじゃが 真昼:だから節分と混ざってるってヒュー! 真昼:なんでみんなものりがいいんだよ!ただ渡すだけでいいの! 真昼:でも、どうして急にバレンタインの話? 御園:ふん、ふん、ふん。貴様らはまだ知らんだろうから、教えてやろう。 御園:このバレンタインは何も恋愛うんぬんだけのイベントではない 御園:友情を確かめ合うイベントでもあるんだ! 真昼:うん?確かにクラスの女子も友達同士で交換とかしてるもんな、友チョコってやつだろう? 御園:ん⁈はい、知っていたのか⁈ 真昼:うん 御園:まあ、そこで、僕も、貴様らにチョコを作って渡してやろうと思った、一応、とも、友達だから、な 真昼:御園 黒:作るって、貴様ちゃんチョコ作れんのか? リリイ:ふふ、だから真昼君に教わりに来たんですよね?独学で作って美味しくない物を渡すのは忍びないと 御園:そんことは一言も言ってないぞ!リリイ! 真昼:そっか!俺でよかったらもちろんいいよ!一緒に作ろう!その方が分かりやすいだろうし 御園:あぁ! リリイ:よかったですね、御園! ヒュー:うん、作ったチョコを皮で投げ合い、絆を深めるのじゃな! ヒュー:なんとも美しい友情じゃなの! 黒:どうしても投げてんだな? 鉄:俺は料理とか得意じゃねえけど、手伝えることあったら何でも言ってくれよ? 真昼:じゃあ、とりあえず材料の買い出しに行こうか 黒:その前に、家の鍵ないと出かけらんねえだろう? 真昼:あ
ロウレス:リーヒーたん!俺も疲れたっす! ロウレス:バレンタイン限定スイーツだかなんだか知らないですけど、朝から一体何件コンビニ走越したと思ってんですか? ロウレス:休憩ー!一回休憩すべきっす! リヒト:うるせえぞ、クズネズミ!てめえがぐずぐずしてる間に売り切れるかもしれないだろう? ロウレス:売り切れてるんですよ、実際!もう散々回って全滅だったじゃないっすか?そのとろける…なんとかチョコラみたいな リヒト:とろける贅沢、天使のフォンダン勝負だ ロウレス:名前なんてどうでもいいんっすよ!ううぅ、もう、ハリネズミや寒さに弱いっすからね! リヒト:だったらここで勝手に凍ってろ! ロウレス:俺をここに放置しても、限界距離越えてヘロヘロになのはリヒたんっすからね! リヒト:次の店に行くぞ ロウレス:ちょ、ちょ、ちょリヒたん!まって! ロウレス:この店で最後ですからね、ここになかったら帰るっすよ! リヒト:スイーツコーナー、スイーツコーナー ロウレス:全然人の話聞いてない? リヒト:あった、最後の一つはやはり天使である俺のために残されていたとしか思えない べル:ああ!!あったよ椿きゅん!えっと、名前何だっけ? 桜哉:とにかく贅沢、ゲロ甘ぼんぼんショコラだったような気がします 椿:いやだな、桜哉、と��ける贅沢天使のフォンダンショコラだってばー リヒト:ああ? 椿:あ? 椿:これはこれは、強欲の兄さんにそのイブじゃない? べル:こんなところで会うなんて、あ、マジ運命!きゃー素敵!殺す! ロウレス:げー、最悪っす 椿:最悪だなんてひどいなあ、可愛い可愛い弟でしょう? 椿:さあ、ほら、もっと嬉しそうな顔してよ!最高の休日だって喜んでよ! 椿:あはははははは、はははっはは、ああ、面白くない 桜哉:椿さん、ここコンビニなんで、急に大声で笑うのやめてくださいよ 桜哉:ほら、店員さんから白い目で見られてますし 椿:冷静に言わないでよ、桜哉 べル:え、どうする?椿きゅん?せっかくのチャンスだから、こいつら串刺しにしちゃう? 椿:えへへ、いいね!て言いたいところなんだけど、僕、今はそういう気分じゃないんだ。 椿:ただ今日発売のバレンタイン限定スイーツを買いに来ただけだし リヒト:偶然だな、俺もだ。 椿:なんだ~気が合うじゃないか?気が合うついでに早くそのスイーツから手を離してくれない? リヒト:てめえこそ、さっさと離せくず悪魔!これは天使である俺にこそ相応しいだ! 椿:いやだよ!僕はこの辺のコンビニを回り尽くしてやっと見つけたんだから! リヒト:俺はこれで10件目だ 椿:僕は11件目だ! リヒト:12件 椿:13 リヒト:14 椿:15 ロウレス:やっちゃえ、リヒたん!天使の力見せつけちゃって! べル:頑張れ!椿きゅん!そんな電波野郎ぶーさしゃえ! ロウレス:あ?なんすかあんた?なんかちょっと微妙にキャラかぶってな��すか? ロウレス:てかその眼鏡のセンスどうしちゃったんですか? べル:あ?てめえこそ!インテリぶった黒縁メガネかけやがって、笑っちゃうぞ 桜哉:お先に失礼します。 べル:ちょっと桜哉!何帰ろうとしてんですかこら!? 桜哉:いや、たかがチョコでよくそこまで熱くなるなって ロウレス:たかがじゃないですよ、リヒトはこれの発売をスマホにアラーム登録して待ってたんですからね?しかも、なぜか俺のスマホに べル:スーパーキューンだって!昨日の夜は楽しみすぎて寝てないんだからな! 桜哉:遠足前の幼稚園児かよ? 黒:おら会話するとか信じらんねえ、 真昼:悪かったって、御園たち外に待たせてるし、早く済ませ…ん? 桜哉:真昼! リヒト:猫さん! 椿:ちょ!急に手を離せたら! リヒト:あ 椿:落ちた… ロウレス:ああ、これは食べられないっすね べル:あはははははは 桜哉:それ、ちゃんと買い取ってくださいよ。 桜哉:それより真昼は買い物帰り?この後暇? 真昼:ええ?あ、いやいや、その前になんなの?この状況! 黒:おい!かがなんだって!何も見なかったことにして、さっさと帰るぞ! 真昼:いや、でも桜哉もいるし 桜哉:簡単に言うと、人気スイーツの最後の1個を巡って、椿さんとそこ羽生えた人が揉めて、結果的にスイーツは床に落ちたみたいな感じ? 桜哉:あ、まあ、大したことないって 椿:ん、立ち直りそうにないよ… リヒト:あ…また探す! 真昼:未だかつて見たことないほどダメージ受けてるけど?! ロウレス:ていうか兄さん達こそどうしたんですか?その大量の板チョコちょ袋からはみ出してるんですけど? べル:あはははははは、分かった!女子からもらえないからって、自分で作っちゃうって作戦だ、殺し! 真昼:誤解だ! 桜哉:いや、もらえないって言うか、真昼が作ったチョコの方がうまいって分かってるから、みんな渡しづらいですよ 真昼:桜哉… 桜哉:真昼がモテるって話は聞いたことないけど… 真昼:フォローするなら最後までしろよ! 真昼:まあ、こっちも色々あってさあ、これから御園たちと俺の家でチョコを作ろうって話になってるんだ 椿:あ、そうか! べル:あはは、椿を復活した? 椿:うん!とっても面白いこと思いついたからね 椿:ね、城田真昼、これと同じものを作ってよ~ 真昼:いきなり何言ってんだよ!無理だって リヒト:なるほど、猫さんが作ってくれるのか?とろける贅沢、天使のフォンダン勝負 黒:いや、俺は作んねえけど 真昼:何ちゃっかり全員家に来る流れになってんだ!? 真昼:なー、桜哉もなんとか言ってくれよ! 桜哉:真昼の家!この近くだよな! 真昼:こいつが一番来る気満々だ! 黒:あ…面倒くせえことに 御園:遅いぞ!城田!????な、椿!?貴様らはなぜここに!? リリイ:おお、これは、これは 椿:あらら、色欲に傲慢も、兄弟水入らずってやつかな べル:大集合だね、椿きゅん!もうこの店ことばっかしちゃったペットで考えじゃない? 桜哉:その前に店の人に通報されそうですけど リヒト:く、悪魔がゾロゾロと、まとめて天使の力で浄化してやる! ロウレス:さすがリヒたん!この世に迷った最後の天使!ジャパニーズカッコイイ! ヒュー:あ!床にチョコが落ちているということはつまり! 鉄:友情を確かめ合ったのか? 真昼:いや違うから!いい加減覚えて! 真昼:椿とリヒトさんがどうしても買いたいバレンタイン限定スイーツがあったみたいなんだけどで、かくかくしかじかで床に落としちゃって 椿:で!これから城田真昼の家に行って、代わりに作って貰うってわけね、ベルギア? べル:あーそうそう!突撃!隣の晩御飯! 御園:晩御飯じゃないだろう!城田は僕と友情の証である友チョコを作る約束だ! ロウレス:あははは!男同士で友チョコって虚しくないっすか? ヒュー:何を言うか?バレンタインに送るチョコには日頃伝えられない感謝も込められておるのじゃぞ? ヒュー:親しき仲にも礼儀あり、性別など関係なしじゃ! 鉄:お歳暮みたいな感じか?ヒューはいつもいいこと言うぜ。 リリイ:もらったら素直に嬉しいものですしね。 椿:日頃の感謝?あれ?なんか僕も欲しくなってきたようなかしら。 桜哉:な!真昼!俺もチョコ作りたい!俺が真昼にやるやつ 椿:ちょっと桜哉!くれるなら僕でしょう?最近の桜哉は僕より城田真昼優先で困っちゃうよ べル:城田真昼白玉昼オフィシャルストーカーだもんね 桜哉:おっしゃるサポーサーみたいに言わないて貰っていいですか? 桜哉:スポンサーねスポンサー見たり言わないでもらっていいですか? 真昼:桜哉、桜哉っ俺は聞いてるよ、聞いてるよ、桜哉、ちゃんと聞いてるよ、桜哉:動揺した、真昼��りがとう! 桜哉:あと!俺はストーカーじゃないんで。 リヒト:おい、かんてんじゃねえよ 桜哉:くそ リヒト:あと、その猫さんはチョコを食べても大丈夫なのか?前にテレビで猫にチョコが毒だって言ってたぞ 真昼:あー、いや、まあ、黒は雑食なんで、チョコも普通に食べますよ 黒:俺はチョコよりポテチの方がいいんだけど 鉄:なあ、この人数で作るなら材料を買い足すか? 真昼:いや、練習用にと思って結構多めに買ったから、これでも余るくらいじゃないかな? 黒:どうすんだよ、そんなに作って? ロウレス:あ、俺らだけで消費するより、せっかくなのは会場のみんなにお裾分けしたらどうですか? 真昼:会場? 御園:なるほどな リリイ:あ、せっかくですし、メッセージカードもつけましょうか! 椿:というわけで、会場の物販にてチョコがコーヒーを発売中! べる:買わないなんて選択肢はないよね! 桜哉:十個ください!真昼のやつ! 真昼:先紛れて宣伝かよ!あっていうか作るなら、そろそろ行かないと! 真昼:この人数うちに入るかな… 黒:バレンタインとも向き合えねー
真昼:な、やっと見つけた! 真昼:おー、黒! 黒:真昼 真昼:こっち買い物も終わったぞ!欲しがってたゲームなかったのか? 黒:あった、けど初回版AとB、どっちにするか迷ってる。 真昼:ん、それで中々戻ってこなかったのか… 真昼:そんなのどっちでも大して変わんないだろう? 真昼:なんだよ!その分かってねえなみたいな溜息! 黒:初回Aには限定のもちもち快眠枕がつくし、Bにはふわふわ熟睡ブランケットがつくんだぞ! 黒:究極の選択だろう! 真昼:どんなゲーム買おうとしてんだよ! 黒:あーだんだん選ぶの面倒くさくなってきた。両方買ってくれ。 真昼:この間恐竜とかを狩りするゲーム買ったばっかりだろう。買うならどっちか1本にしろ! 黒:じゃあ、俺がA買うからホワイトデーに真昼がBを俺にプレゼンとするってことで 真昼:バレンタイン何ももらってませんけども!!むしろ俺があげたよな?! 黒:こまけやつだな、じゃあ、Aのもちもち快眠枕 真昼:そっちでいいんだな?買ってくるぞ 黒:お、さっさと帰って、狩りのゲームの続きもやらねえと 真昼:お前な…分かった、帰ろう 真昼:あ、ホワイトデーと言えば、1階の特設コーナー今日までだったよな? 黒:お前1個もチョコレートもらってないくせに、やめとけ。自分に勝っても虚しいだけだぞ。それが許されるのは女子だけだ 真昼:ほっとけよ!ちょっと覗いてみるくらいいいだろうな。 真昼:美味しそうなやつあったら1個買ってやるから 黒:しょうがねな。
御園:高校1年の参考書は…この棚か? 御園:うん、(じー)、レベルの低い問題ばかりだな。別のにするか リリイ:(じじじじー) 御園:おい!リリイ!視線が鬱陶しいぞ! 御園:僕にくっついてこないで、店の外で待ってろ! リリイ:うん、ですが、御園が迷子にならないか、心配で 御園:こんな狭いフロアで、どうやったら迷子になるというんだ! リリイ:あーそんなこと言って、参考書コーナーに辿り着くまで散々迷って���たじゃないですか? 御園:あ!あれは!貴様を巻こうとして、わざとあちこち歩き回ったんだ!迷っていたわけじゃない! リリイ:あ!御園!こっちの参考書の方がよさそうですよ? 御園:ああ、そうか?…で、違う!口を出すな リリイ:しー、本屋では静かにですよ? 御園:たかが買い物くらい、僕1人でできるというのに! リリイ:ふふ、御園は以前と比べると、外出が増えましたよね~ 御園:そうか? リリイ:えー、以前は家の物に頼んで用事を済ませることが多かったですから、これも真昼君達の影響ですかね? 御園:影響などない!僕はただ、自分で使う参考書だから、自分で選んだ方が効率的だと思っただけだ! リリイ:おお!成長しましたね~御園… 御園:涙ぐむなあ! リリイ:お使いの様子を写真に撮っておかないと! 御園:お使いじゃない!カメラを向けるな!撮るな!
ロウレス:あ!リヒたん、リヒたん!ホワイトデー特設会場ってここじゃないっすか? ロウレス:すげえー人多いっすね リヒト:ち、なんで日本の休日はどこもかしこも混んでるんだ ロウレス:しょうがないっすよ。行列を見たらとりあえず並ぶのがジャパンの風習らしいし? ロウレス:で、今回狙ってる限定スイーツは何なんですか?またフォンダンショコラスか? リヒト:ついて来るんじゃねえ!消えろバカネズミ! ロウレス:あ、いてぇ、すぐそうやって蹴る、暴力天使! リヒト:ごちゃごちゃうるせえぞ!クズネズミ! ロウレス:あ、あんまりっすよ! ロウレス:俺花粉症だから、この時期あんまでか出かけたくないのに! ロウレス:リヒたんが今日しか出店しない店があるっていうからついて来たなのに リヒト:花粉症?なら、俺はクズネズミアレルギーだ ロウレス:クズネズミアレルギーって何っすか?俺といると、いつも全身痒くてしょうがないとか、そういう? リヒト:それだな ロウレス:ああああ!電波発言が痛すぎて全身痒くなるのはこっちっすよ! ロウレス:いい年した男が限定スイーツなんか買っちゃって、可愛いと思ってんですか?そういうのあざといって言うんですよ! リヒト:あー? 椿:あれ~?強欲の兄さんとそのイブじゃないか? ロウレス:あ?椿 椿:前にもこんな風にあったね!元気だったかい? リヒト:おい、待て!てめえが持ってる袋! 椿:あー、これかい?老舗の和菓子屋、夢夢あんのホワイトデー限定、和風マカロンスペシャルボークスだよ。 椿:最後の1個が買えるなんてついてると思わないかい? リヒト:最後の1個だと!? 椿:もしかして、君もこれが買いたくてきたのかい?なら、1足遅かったみたいだね。 ロウレス:え!リヒたんが狙ってたのってマカロンだったんですか?マジで女子みたいっすね リヒト:おい、それをよこせ! 椿:あー、嫌にきまてるじゃない リヒト:それは天使である俺にこそふさわしいんだ!クズ悪魔がさっさと浄化されろ! 椿:あ!ちょっと!暴力ふるな!この電波天使何とかしてよ!これじゃカツアゲじゃない! ロウレス:天使っつより大魔王っすね 真昼:おい、クロ店の中で猫の姿はまずいって!ちゃんと自分で歩けよ!黒:ニャー!引っ張んな! 真昼:ああーあ、ん?なんかこっちの方は騒がしいな? 黒:おい、近づかない方がいいって 真昼:でも誰か困ってるのかもしれないし… 黒:え? 椿:そうなんだよ!困ってるから助けてくれ��いかい? 真昼:な、椿!?それにリヒトさんとロウレスも! リヒト:あ!猫さん! 黒:だから近づくなって言ったのに! 真昼:どういう状況?なんかバレンタインの時も似たようなことがあったような… ロウレス:まさにそうっすよ!この2人が限定スイーツ巡って、あーでもないこうでもないって リヒト:またか! 御園:城田…って、なん、なん貴様ら! リリイ:これはこれは、皆さんお揃いで! リヒト:ち!また悪魔が ロウレス:なんでどんどん集まってきちゃうんすかね? 椿:兄弟ってそういうものなんじゃないの?はははははは、はははっはは、ああ、面白くない 真昼:えーと、椿今日は1人なんだな。 椿:君達と違って、僕のサブクラス達は忙しいからね。 椿:毎日僕のために色々動いてくれているんだよ?送ったトークアプリにも返信できないくらいにね 真昼:桜哉なら先、バレンタインのお返し何がいいってトークアプリが 椿:え? 真昼:え? 黒:まあ、なんだ、ドンマイ 御園:ドンハイポレントインのお返し? 御園:おい!リリイ、僕も城田にチョコレートをもらったか? リリイ:あ、えっと、そうですね! リリイ:バレンタインデーにチョコレートをもらった人は、その相手ホワイトデーにお返しする習慣がありますよ 御園:そんなルールがあったのか! 御園:だが、今挙げられるものなど…は!城田! 真昼:え、あ、え、あ、どうしたんだ?御園? 御園:バレンタインのお返しだ!受け取るがいい! 真昼:何この袋、う?!参考書!? 御園:あまり嬉しそうじゃないな 真昼:え、いや、うん、まあ、勉強は大事だけど、気持ちだけでいいって! 真昼:結局バレンタインはうちで一緒に作ったし、お菓子とか気を使わなくていいからさあ! ロウレス:あーそういや言ったっすね!結局チョコだけじゃなく、夕飯まで食ったような リヒト:猫さん付きのこたつ、あれはよかった。 黒:いや、俺こたつのオプションじゃねんだけど… 真昼:ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと!話を戻すけど、結局その限定スイーツはどうなったんだ? ロウレス:最後の1個椿に買われちゃったんですよね~ ロウレス:ああーかわいそうなリヒたん~また城田真昼に作ってもらうってのはどうすか? 真昼:え?いやちょっと? リヒト:クズネズミにしてはいいこと言うな 真昼:待って!待って!なんでまた突然のように、俺の家に来る流れになってるんですか? 御園:僕も行ってやっても構わないぞ リリイ:えー?ああ、御園が行くのでしたら、私もご一緒します! 真昼:ええー?な、黒もなんとか言ってくれよ! リヒト:よしよし 黒:ゴロゴロゴロ 真昼:いつの間にリヒトさんの腕に! 椿:うん、面白そうだし、僕も行っちゃおうかな! リヒト:あ?てめえは来る必要ねえだろう?くず悪魔 ロウレス:そうだ!そうだ! 椿:えー、1人だけ仲間外れなんて、寂しいじゃないか? 椿:なら、これならどう?きつねさんだよ、コンコン リヒト:きつねさん!よし、俺が抱っこしてやろう ロウレス:ちょろい!ちょろ過ぎっすよリヒたん! 椿:さあ!出発しようか 黒:うう、やっぱ真昼の方が1番落ち着くな。安定感はねえけど! 真昼:文句言うな乗るな! 真昼:はー、結局こうなるのか?向き合えね 黒:おい、俺のセリフ取るな 真昼:たまにはいいだろう? 黒:じゃあ、シンプルに考えて、向き合えねー 真昼:混ぜるのはどうなの!?
椿:さあー、集まったみたいだし、そろそろ始めようか? 真昼:いや、あの、何を? 椿:何って?ファミレスに集まってすることといえば、秘密の会合に決まってるじゃない? 真昼:えー、秘密なのに、ファミレスなの? 真昼:それに黒も面倒くせえって言って、来てないんだけど… 椿:怠惰の兄さんはいても、いなくても一緒だから構わないよ。どうせ人の話なんか聞いてないだろうし 真昼:まあ、確かにそうだけど ロウレス:会合だか、なんだか知らないですけど、要件があるなら早くして欲しいっす、俺今日この後バイトなんで ロウレス:あ、お姉さん、ポテト追加で リヒト:おい!くずネズミ、メロンパフェも追加しろ ロウレス:自分で頼めばいいじゃないですか? ロウレス:すいません!メロンパフェも追加 真昼:悠長に注文してる場合じゃないだろう!俺ら一応敵同士だろう? 椿:散々ドラマシーディーとかで一緒に温泉だの、プールだの雪合戦だのしてるじゃない? ロウレス:まあ、今更っすよね? 真昼:それ触れちゃいけないところ リヒト:このクリームソーダ輝く天使の鐘から生み出されたような甘さ 椿:あー、黙々と飲み続けてるところ悪いけど、僕、映画を撮ろうと思ってるんだよね? 真昼:は?いきなり何言ってんの?お前 椿:だって今回の映画、僕の出番少ないんでしょう? 真昼:なん、なんか悪かったよ。それについてはなんかごめん 椿:ないなら、作っちゃえばいいんじゃない? 椿:ってことで、僕の、僕による、僕のための映画を撮ろうと思い立ったわけさあ ロウレス:そのことと俺らが呼ばれたことどう繋がるんですか? 椿:ああ、さしが悪いな、手伝ってもらうためだよ! 椿:今日は第1回スタッフミーティングってわけ! 椿:あ!強欲の兄さんは美術、そのイブは音楽担当ね! リヒト:なんで俺が悪魔のために協力しなきゃならないんだ? ロウレス:俺もお断りっす、冗談じゃねえすよ! 真昼:っていうかそもそもなんで俺たちなんだ?自分のサブクラスたちに手伝ってもらえばいいだろう? 椿:それじゃつまらないでしょう? 椿:こっそり撮って、サブプラスのみんなへ突然のサプライズ上映会、きっと全員感動でむせび泣くよ~考えただけで!ははははは、あはははははは、あはははは、あはっは、っ 真昼:ああ、もうー!ほら水、はい 椿:あ、ありがとう! ロウレス:わー、リヒたんとは別方向に頭があれっすね リヒト:あ?!なんか言ったか?バカネズミ リヒト:どうでもいいが、さっきからテメエの足邪魔なんだよ! ロウレス:ごめん~~長すぎて蹴ちゃったみたいっすね~ リヒト:バキバキに折ってやる! ロウレス:あ!いて!やったっすね!お返しっす! リヒト:悪魔のくせに天使の俺に勝とうなんざ!百万年早いんだよ。 椿:あああ!痛い痛い!ちょっと!僕の足にも当たってる!! 真昼:ちょっと落ち着けってみんな!ここファミレスだから、テーブルの下で蹴り合うな!ほら、ポテトとパフェ来たから! リヒト:ちっ ロウレス:ふん! 椿:はあー、あざになってる… 椿:もう監督は僕なんだから!スタッフは言うこと聞いてくれないと困るんだけど! 真昼:明らかに人生ミスです。 ロウレス:っつうか、出番はどうなってんだ?オレだって、オレ自分主演の映画撮りたいっすよ! ロウレス:かっこいいアクションにド派手なCG演出!こうスカットするようなやつ リヒト:クズネズミ主演の映画なんて誰が見る? リヒト:主役は天使たらこの俺!そしてその相棒は猫さん! リヒト:俺の天使力と猫さんの可愛らしさが欠け合わせた映画こそ、全世界が求めているものだ! 真昼:リヒトさん、リヒトさん、口にクリームついてますよ? リヒト:っん 真昼:は…おい、椿、映画撮るって言い出したのお前だろう?話が脱線してるけど? 椿:ファミレスの抹茶みずも、まあ、悪くないよね? 真昼:デザートに夢中になってる場合じゃないだろう! 椿:はは、ごめんごめん、まあ、でもアクションっていうのは採用かな?主演は僕!だけど、爆発をバックにかっこよく歩いてくるカートとかが取りたいよね! ロウレス:ダサイ、どうかでみたようなsceneっすね 椿:もうー、主演は譲らないけど、手伝ってくれるお礼にエキストラとして出してあげるからさあ、ちょっと真剣に考えよ リヒト:なんで上からなんだよ、てめえは ロウレス:そうっすよ大天使に対して頭が高いじゃないですか? 椿:うん、アクション映画か 椿:何か意見があるなら手を挙げてお知らせください! 真昼:挙手制なの?じゃあ、はい 椿:はい!城田真昼ね 真昼:あーこの間黒と映画館行ったんだけど、その劇場フォーディーエックス上映もやっててさあ、アクション映画ならそういうのも面白そうだなでちょっと思った リヒト:フォーディ…なんだそれ? ロウレス:オーディエクスっていうのはいわゆる体験型の上映方法っすね。 ロウレス:例えば車が走ってるシーンに合わせて座席シートがい揺れたり、あと嵐のシーンで水が降ったり、風が吹いたりまるで自分が体験してるみたいに映画を見られるんですよ。 椿:えー、面白そうじゃない!採用! ロウレス:あと、香りとかも設定できるらしいですね。 椿:じゃあ、僕が登場するたびにいい匂いがすりようにしようか~ 椿:うーん、お稲荷さんの匂いとか? 真昼:登場の度にいなり寿司のにおいてどうなんだ? 椿:じゃあ、抹茶 リヒト:俺はメロン ロウレス:オレは生ハムとチーズが大好きですね 真昼:全部混ざったら大変な匂いになるぞえー 椿:そんなにいうなら君の登場シーンにも何か匂いをつけてあげるからさあ、何がいいの?柔軟剤?消臭剤? 真昼:俺も食べ物がよかった! 椿:ん、文句が多いな 真昼:なんで俺がわがままみたいな扱いになってる 真昼:ぞっていうかさっき聞き飛び出たんだけど、俺は何の担当で呼ばれだんた? 椿:エリー 真昼:は? 椿:アシスタントディレクター 真昼:あー? ロウレス:ん、確かに向いてそうですね。ちまちま動き回るの。 リヒト:なるほど、適役だな 椿:撮影に関わる細かいプロ全般をお願いするよ!あとケータリングの手配もよろしくね 椿:美味しいやつ、美味しいやつ、美味しいやつ、僕安っぽい弁当は食べられないから 真昼:誰が手伝うか!! ?:お前だ。
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夕方、秀一は当直の準備をしにいったん帰った。ようやく引っ越しの片付けを終えたばかりだったが、彼はスエットスーツや下着などをボストンバッグに詰め込んだ。まァ、三泊四日の小旅行に出掛ける感覚で過ごせばイイと、彼はそう自分自身に言い聞かせた。
私立K高校に戻ると、寮の前では大平が待っていた。当直業務を教える為だった。彼は、
「まァ、何もないンですけどね〜」
と当直室にある備品や巡視の流れを大まかに話した。もし生徒が体調を崩したらどうするのか?と秀一は質問すると、
「各部屋に内線電話があるンで、夜間帯に連絡があった時には様子を見に行きます。昼間は保健室の谷中先生が病院に連れて行くべきか判断し、保健体育の教師が同伴します。勿論、家族には電話しますよ」
と即答した。
「まァ、何もありませんけどね〜」
それだけで終わってしまったからか、秀一は不安になった。大丈夫かよ!?と、彼は大平を視線で訴えたが、
「…状況が深刻なら、岩﨑校長や理事長先生に電話すれば大丈夫ですよ! そ、そんな怖い顔しないで!」
と大平は苦笑した。
秀一は、見た目のわりには口角が上がると「えくぼ」ができる大平が可愛いと思った。まァ、許してやるか…。彼は、大平と一緒に宿直室に入ると背広のジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めた。スエットスーツに着替えようとしたのだ。スラックスも脱ぎ、真っ白なスポーツビキニだけになるとたまたま秀一の方を向いた大平が、
「キャッ、 エッチ!」
と完全に裏返った声で叫んだ。ウェストゴムには黒地に白くブランドのロゴがあしらわれ、布地の方は所謂「シースルー」だった。秀一は素肌からサックス色のポロシャツを着ながら、
「そ、そんな目で見るからいやらしく感じるンでしょ!?」
と反応した。大平は居ても立っても居られなくなり、そのまま彼を押し倒した。こんな性衝動に駆られるのは、恐らく先日正美を迎えに来た八坂以来だった。彼は秀一の股間にビキニ越しに頬擦りをした。
「そ、そんなァ、イヤぁぁぁぁぁ〜ン!」
二人はそのまま濡れ事に耽った。
畳には、愛液を拭き取ったティッシュが散乱していた。大平は、オルガズムの後に自分の「失態」を恥じた。とりあえず水色のビキニブリーフだけ穿き、秀一の目前に正座していた。彼は、
「つ、つい、『その気』になっちゃいました…。御免なさい…」
と小声で詫びた。
一方、秀一は何事をなかった様にスポーツビキニを穿き、ポロシャツに袖を通していた。その表情に怒りはない様だった。
「…久しぶりに興奮しちゃった。大平先生、『キス』巧いンだもん」
「ぼ、僕、キスだけが巧いって誉められるンだけど、フェ◯が下手って言われちゃうンです」
「じゃ、後で教えてあ・げ・る」
「キャ、そ、そんな…」
まるで童貞を喪失した少年の様に、大平は目を大きく見開き、赤面した。嗚呼、益子先生もやっぱり「エッチ」なンだと彼は安心した。これまで見せていたのは「うわべ」だけだったのだと思った。
大平が出て行った後、愛液の「匂い」が漂っていたので秀一は窓を開けた。ついにやってしまったと、彼は後悔した。どうしても身体に触れられると「その気」になってしまう。それは亮司と付き合っていた頃から変わらなかった。特に大学時代、彼は男娼の様に「ハッ◯ンサウナ」に出入りしては名も知らぬ男たちと寝てきた。教師になってからも飽くことなき肉欲に振り回されていた。しかし、生徒に手を出すことはしなかった。亮司と同じ様になっては辛いと思ったからだ。
秀一は、大平が頬擦りをしてきたビキニの「もっこり」をスエットパンツ越しに押さえた。嗚呼、誰かにまた手を出されたら…。彼は不安になった。このK高校自体が男色を奨励している様なものだった。一気に破廉恥な気持ちにさせられた大平を彼は憎んだ。開けてはならぬ「パンドラの箱」を彼は開けてしまったのだから…。でも、「シカト」するのは大人がする振舞いではあるまい。
とりあえず、今夜は淡々と当直業務をすればイイやと思った。
各部屋では、急きょ秀一が当直をやることになったと生徒らが噂をしていた。翔も、遊びに来た正美がさっそく彼について話題にしていた。プライベートの秀一を垣間見たという翔は、
「引っ越しの荷物を片付けていたけど、コーヒーをご馳走になったよ」
と言った。
「え〜!? お前、ラッキーだな!」
「益子先生、エッチな下着を穿いてるンだぜ」
「何、誘惑してきたの!?」
「否、洗濯物が干してあったンだ」
「な〜んだ」
正美は、本当にセッ◯スのことし���頭にない。翔は、オレの様な初心者に秀一が興味はあるまいと思っていた。しかし、バルコニーに干してあった、あの真っ白なビキニブリーフに彼は性衝動を覚えた。あの後、彼は自室でオ◯ニーをした。すっかり亮司による「性の手ほどき」を受けてから、淫液を流すことにエクスタシーを感じていた。
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悟りを覚えると書きまして。
2025.04.05 sat
先日、昨年4月から1年通ったお笑い養成所を卒業した。所属は、できなかった。自分たちトリオは今段階では世話を焼けない売り込めないとのジャッジメント。それでも続けようとは思う。なぜか応援してくれる人がいて、やっぱりお笑いって楽しいし面白いし、自分に足りない要素だから。
コロナ禍、贔屓にしているバーで出会った初対面。その子が同じようにお笑いが好きでラーメンズ好きで盛り上がった。
「一度でいいからネタを人前でやりたい」と言ったら「じゃあ組みましょう」とあっけらかんと始めたコンビ。元はTHE KISSしかやらないコピバン『WISS』みたいにラーメンズをやるつもりだった。でも相方・わたしのどちらも、小林賢太郎のインテリ感を自然に出せる気がしない。コピーするにしても、あの鼻につくけども、板にもつく小賢しい言い回しができない。
じゃあオリジナルだ!と養成所に入った。1期生ってかっこいいよね、お金がないしちょうど良いと、その養成所に決めた。
養成所がど平日なので深夜残業もザラにある現状では金がもったいない、と会社も辞めた。その前に真面目な恋人だと思ってた同棲相手にわざとバレるように浮気されたり、別れるから引越し先探さなきゃだったり、相方が養成所のエントリー期限を過ぎてしまったり、昼飯もろくに食えん仕事中に「助けて!!」と鬼LINEが来ていたり、そのLINEを重要取引先で確認したり。
「助けて欲しいのはこっちだよ!」
早速、感情の拠り所をなくした。もう散々を通り越して散々々々々々々な2023年末〜2024年のはじめ。同棲解消、離職、お笑い養成所通い、親が聞いたら卒倒後に罵倒される爆弾を三つ抱えた、とにかくズタボロのカッスカス雑巾の33歳女性の爆誕であるちなみに2023年は本厄、2024年は後厄であった。本当に厄年だった)。
でもプロの道を進むつもりはなかった。ただの好きが興じて始めた習い事だった。
卒業ライブには大学の同級生、前職の同僚、前職で世話になった校正の方、現在バイト先のアートギャラリーのスタッフさんが来てくれた。本当にありがたい。
養成所に誘ってくれた相方は中間ライブで頑張って燃え尽きたタイミングで、体調を崩してフェードアウトしてしまった。今は元気そうでなにより。
「お前は一見フレンドリーでとんとん拍子で話進めて、そのくせすぐ飽きて辞めるんかい。ネタ書けるようになりたいギャ��ーになりたいって言いながら、一回も書かないでわたしに書かせて、辞めると言わずに辞めるんかい」
と思った。この時には仕事モードでお笑いをやってしまい、遊ぶようにやらないとなのに、心の鋭利な部分が研ぎ澄まされていく。
結婚したやつ=マトモではないよな〜〜!!ただ翻弄できる相手をハイエナのように見つけて、そいつとは関係性を深めるのがうまいだけ!そんで結婚という契約で縛れば、金銭と精神の安心が確保できて、ラクでいいよな〜〜〜!!!
誇張なしで思った。こういう捻くれてる部分が露呈してきた。ちゃんとしないと!が元々の目標を濁らせていく。ウッソー!?真面目に勉強して真面目に就職して真面目に社会人やってたのに!!?ウッソッソ〜〜〜!!?!?あっ、でも部屋汚いし家事嫌いだし!税金の払込遅れてる!あれ???もしかして本当はヤババ人間!!?
ちなみに、その子とは解散と言われてないし、わたしも言ってないから一応まだ組んでいる、とわたしは思っている。無期限休止。どっちかが気が向いて、またどっちかもその方向を向きたくなったら、自然とそうなる。そんだけ。遊びみたいにできたら良いな。
人を傷つけるのが怖い、楽しく盛り上がったらいい。だから基本的にはへらへら笑っている。けどムッとしたら刺しちゃう。しかも急所狙いに行く。そんなやつ怖いに決まっている。
お笑いをするのには、覚悟というものがいるのだろうか。人を傷つける、という覚悟が。
謝っても許してもらえるのだろうか?だったら最初からするな、とならないのだろうか。
お笑いにしても絵にしても文章にしても、すべての表現は、どんなに気を配りきっても、届く母数が多くなれば傷つく人が出てくる。これは絶対だ。全員違う人なんだから。ありとあらゆる表現を覚え、それに傷つく者がいると知り、表現自体を恐れては何も言えなくなる。
けれども開き直るのは違う気がする。他人を気にして言葉を選んで生きてきて、権力も気も弱そうだから舐められて、そのことに気づいた大人になってようやく遺憾し、言葉の意味そのものだけに敏感になっていた。開き直ると、平気で文脈を気にしないでひどい言葉を投げられるようになった。
本当に言いたくて言ってる生々しさはあるまま、本当は他にも話したい思いが置き去りになり、変な空気になる。
同期が趣味のアイドルやギャンブルの話、流行ってるネトフリのドラマなど、わたしが興味のない話で盛り上がっている。運営の若い女性らも楽しそうにしている。どっちが先に巻き込んだか知らないが。
「やってらんねー!この陽キャ仕草の非モテ軍団」
「ギャンブルアイドル下ネタ、下世話な話!!内輪で盛り上がって、あいつオモロいよな??はあ??怠惰の産物じゃねえか、バーーーカ!!!」
「結局こいつらが認める女性って、面のいい女か、自己主張激しくて行動読めない『おもしれー女(笑)』か、ラランドサーヤAマッソヒコロヒーみたいに男笑いできる女じゃねえか!!!」
「こいつら自分の話しかしねえな!てめえが話してばっかで、わたしのこと聞きゃしねえな!」
とへらへら笑いながら憤怒していた。自分は楽しませよう!と面白いおふざけできないくせに。同期は面白くて好きではあるし、仲良くなりたいのに、めちゃくちゃ苦手。ふと何が好きなのか分からなくなる。
これ「正しく在りたい」が原因な気がする。「正しさ」は多数によって定められた他人軸である。それを自分軸にしている。裁けない凶器を振りかざす。
舐められたくない、ちゃんとしたい、でもふざけなきゃ笑わせられない。え、何が面白いの???何が正しいの???
もう正しいとか正しくないとか、そういうものが人を知る/仲を深めるということにおいてノイズにしかならない。正しさで人は笑わない、動かない。 気に食わない/苦手だからって、他人を変えたいなんておこがましいんだよ、バーーーカ!!!黙って去れ、孤高に生きろ。
相手が知らない趣味でも、オチのない話でも、自分がどう思ったか共有できれば、その熱意で他者は興味を持ってくれるのではないか。
最近のわたしは本当にそれができない。そもそも、感情の波がない。凪。気づくのに時間を要する。時間がなくても��間に気づけるのは、怒りか悲しみか寂しいみたいな負の感情ばかりである。
お笑いをやるにあたり「ツカミが大事」「フリとオチが来るようにする」「手短に話す」といった技術面は理解した。技術だけあっても、そもそもの感情やそこから湧き上がる熱がないと、話題にすらならないんじゃあないだろうか。
本当は「何を話しているか」ではなく「楽しくその場を過ごしたい」からお笑いをしているはずなのに。そもそも何が楽しいのか、本当にわからない。
今は養成所で出会った兄弟コンビとトリオを組んでいる。3人仲良く所属できなかった。兄弟は凹みきっていて、わたしは「まあ結果だしてないしそうだよねえ」と腑に落ちていた。
変わってるし欠けた部分がとても多いけど、自然体で緊張を和らげる魅力がある。この前の卒業ライブで実感した。お客さんも前2組の演者も緊張して笑いが中々起きない中、あの兄弟が「はいどうも〜」と出ていったら、それだけで空気が和んだのが場数の少ないわたしでもわかった。その実、自分らのネタはウケた。
あの兄弟とネタをやるなら、お笑い関係なしに他人と関わるなら、わたしはきっと、負の感情に引っ張られた言葉を投げない方が良い。
それを使ってウケる人もたくさんいるし、わたしが管を巻いているのが面白いと思ってくれる人も結構いる。うまく物事を動かすなら、やらない。面白かったとしても。
りんご屋さんの��商をひと月ぶりにした。行商では道行く見知らぬ人に「りんごいりませんか?」というだけの単純なお仕事。だから、「人(=自分)」そのものが、どうハマるか/ハメるかが重要になる。
「りんごいりませんか?」
「え、ああ、重いから」
「いや、めっちゃ軽いですよ」
相手の言葉を間にうけて、レスバするように返してしまう時間が続いた。店長が釘を刺した。
「相手が要らんって空気出してたら、何を言おうと無理やから。そこにエネルギー引っ張られんでええんやで。自然なままでやった方がいい」
そこでシンプルにしてみた。相手から蔑ろにされたにしろ、こっちから勝手に声かけておいてムッとするのは違うよな。むしろ反応帰ってきただけでありがとうか。
余計なことを言わず、真っ直ぐに伝えるようにした。説得という二の矢でなく、声掛けの一の矢を丁寧に。
そうしたら件数は呼べなかったけど、ダメなスパイラルはなくなった気がする。呼べなくても乱さず、次、次。りんご店長の接客がすごいので10万は行った。
昨日の行商は、印象的なひとがいる。
一人は品の良さそうな女性。「青森のりんごいりませんか?」で来てくれた。「ええ?」と戸惑いながら笑って興味を持ってくれて、「減農薬で皮ごと食べられるんです、赤いのもね、青いのもあるんです」といったら、りんごの乗ったハイエースに近寄ってくれた。その人は生りんごだけでなく、りんご酢も6本買ってくれた。良い商品とは言え、知らんやつからパッと変えるほど安くはない。
重たいし近所だというので、りんご酢が箱を持っていく。6本も買ってくれたのはガンになって入院している知人にプレゼントもするからだそうだ。りんご店長も10代でガンになっており、ガンを受け入れて治すことからやりたいことを没頭したら、ガンがきれいになくなったそうだ。今は奥さんと子供6人とねこをりんごで養っている。
それを聞いてガンになったのは知人なのに、女性は自分のことのように嬉しそうに笑っていた。女性の住むマンションに向かいながら感が極まって
「最近自分がわからなくなっちゃったんですけど、お酢をこんなに買っていただいて、このままでも大丈夫なのかなって嬉しかったです」
と情けなく笑っていうわたしに「そうですよ、あなた真面目そうだから寄っちゃったのよ」と女性は言った。
恵比寿の大通りを見下ろす桜並木はここ数日の雨に負けずに満開を保ってくれていて「今日は晴れて、桜もきれいですね」と口から溢れていた。
真面目がコンプレックスだった。褒められているけど、それが重要な場面って実はそこまでない。仕事とか任務とか、責任が伴うシーンだけ。しかも真面目ではないがふざけるのが上手い方が話題の中心にいたりする。わたしがミスをするとちゃんと指摘される。ふざけるのが上手い奴はトリセツを提示するので、苦手だと周知���れてることをミスっても、笑いながら指摘され、そいつも笑って、済まされる。
なんで自分は頑張ってるのに。と思い込んでいたが、勝手にやってただけなのだ。仕事できない勉強できないって思われたくないから、自分から進んでやってきただけだ。本当はそんなに真面目でもない。
しかもよくよく思い返すと、わたしは相当に守ってもらっている。本当に困ったら助けてくれる人が絶対にいる。
小さいことからそれに慣れすぎて、助けられるのが当たり前になっていたかもしれない。おいおい、とんだロマンチスト・エゴイストである(?)。
本当の意味で、真面目に生きていこうと思う。真面目に真面目をやって、時には真面目に不真面目を考える。そうしたら、少しずつふざけるのも遊ぶのももっとうまくなるだろう。無理しなくても友だちが増えるだろう。
ていうか本当に真面目にやんなきゃやばい、主にお金。基盤をつくる一年。お笑いももちろんやる!!!ランジャタイにあいたーーーい!!!
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3/16 スプラ3フルパ
小娘・しろ生き物・祓魔師・ヒーロー・お肉・うめちゃん・ホスト
#でびリオンとあそぼ
第1回目でした!
楽しかったー!!!
スプラの名札風を今回みんなに作らせていただいて。
ゲームも楽しかったし名札の2つ名つけるの楽しかった!
最初でびリオンとあっと2だけでいいよねって話してたけどやるならフルパ!ってなって集まってくれたメンツ!
小娘から○○つかまえました!って連絡来た時すごく嬉しかったり、小娘に○○捕まえたよー!って連絡するのも楽しかった!
ギリギリの時間まで任務をしなければいけないことになってしまって、主催だし集めた以上1番に居なくちゃっておもってめちゃくちゃ急いで0時前にVC入って待ってたらみんなの入室音が聞こえて本当に幸せだった!
人見知りの子が沢山いるであろう環境の中繋がってる繋がってないとか関係なしにみんな報告しあったりナイス!って声掛けあったりしていて素敵なフルパができたなと実感できた!
またこのメンツで集まってフルパやりたいから任務とか色々頑張りたいなって思えたよ!
今回のみの特別名札!!第2回のこのメンツがあればまた使いたい!!
集まってくれてありがとう!
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2022年5月、埼玉県朝霞市の内装会社社長の男性=当時(43)=を暴行し、事務所に放火して殺害したとして、殺人や現住建造物等放火の罪に問われた茨城県鹿嶋市、無職の男(33)の裁判員裁判の論告求刑公判が25日、さいたま地裁(金子大作裁判長)で開かれた。検察側は懲役24年を求刑し、弁護側は懲役18年が相当と主張して結審した。判決は11月7日に言い渡される。 検察側は論告で、競艇が原因で内装業者だった男への報酬支払いに窮した共犯の男(39)=同罪などで起訴=から、殺害や詐欺を持ち掛けられた「利欲目的の計画的な犯行」と指摘。背後からバールで殴り、「痛い」と振り向いた男性にさらに強打を加えたとして「重要な役割で、責任は重大」と批判した。 被害者参加制度で出廷した男性の父親は「こんな残忍��ことをした人間を許せない。息子がふびんでならない」と声を震わせ、「命をもって償ってほしい」と求めた。 一方、弁護側は「金銭トラブルによる怨恨(えんこん)」が動機と主張。共犯の男が主導し、男は「従属的で、関与は限定的」とした。男は最終陳述で「事件を起こし、男性の未来を奪った。申し訳ありません」と述べた。 起訴状などによると、男は仕事仲間の男と共謀し、22年5月14日、朝霞市の「長葭内装」事務所兼作業場で、男性の頭部をバールで複数回殴打。頭蓋骨陥没骨折などを負わせ、事務所兼作業場に放火し、急性一酸化炭素中毒などで死亡させたとされる。 ■元妻もだまそうとした(以下、初公判記事) 2022年5月、朝霞市の内装会社社長の男性=当時(43)=を暴行し、事務所に放火して殺害したとして、殺人や現住建造物等放火の罪に問われた茨城県鹿嶋市、無職の男(33)の裁判員裁判の初公判が17日、さいたま地裁(金子大作裁判長)で開かれた。男は「間違いありません」と起訴内容を認めた。判決は11月7日。 冒頭陳述で検察側は、22年4~5月ごろ、内装業の下請け業者だった男への報酬支払いに窮した仕事仲間の共犯の男=同罪などで起訴=から、男性を殺害し、同社に虚偽の工事代金を請求する計画を持ちかけられたと説明。殺害後、2人はメッセージアプリのやりとりを削除。男性に代わり社長に就いた元妻から虚偽の報酬をだまし取ろうとしたが、元妻に支払える金銭がなく、未遂に終わったとした。 一方、弁護側は男が共犯の男から「男性からの支払いが滞っている」と言われ、男性に不満を抱いたと説明。「男性を殺せば請求できる」などと殺害計画を持ちかけられ「憂さ晴らしの物騒な冗談だろう」と考えていたとして、犯行を主導したのは男ではなく共犯の男だったと主張した。 起訴状などによると、男は仕事仲間の男と共謀し、22年5月14日、朝霞市の「長葭内装」事務所兼作業場で、男性の頭部をバールで複数回殴打。頭蓋骨陥没骨折、脳挫傷などを負わせ、事務所兼作業場に放火し、男性を急性一酸化炭素中毒などで死亡させたとされる。また、6月3日、請け負い工事の未払い報酬があるかのように装い、同社から約283万円を詐取しようとしたとされる。 ■死因は焼死と判明(以下、事件当初の記事) 朝霞市上内間木の内装会社、「長葭(ながよし)内装」で2022年5月14日に事務所兼作業場が全焼して焼け跡から男性1人の遺体が見つかった火災で、県警は16日、現場の出火状況などから放火殺人事件と断定し、朝霞署に80人態勢の捜査本部を設置した。遺体は連絡の取れていない同社の社長男性(43)とみて、身元の特定を急ぐとともに、殺害された経緯を調べる。 捜査本部によると、司法解剖の結果、死因は焼死と判明した。遺体の気道には、煙を吸い込んだ際のすすが残っており生前に火を付けられたとみている。また、現場の平屋のプレハブはガスが通っておらず、普段は火の出ない場所から火が出ていたことから、県警は放火殺人として捜査を開始した。 全焼したプレハブは、横10メートル、縦13メートルの南北に長い建物で、約40坪の広さ。作業場��事務所スペースに分かれていて、遺体は建物南側の事務所の床で倒れていた。出火は建物の内部からとみられ、出入り口の扉は消防が突入する際には施錠されていたという。作業場のシャッターは下りていた。 県警によると、同社は社長男性が1人で経営していて、同業者の仕事を手伝ったり、手伝ってもらうこともあったという。 14日午前9時50分ごろ、通行人の女性(47)から「建物から煙が出ている」と119番。プレハブを全焼し、焼け跡から身元不明の遺体が発見された。
許せない…息子死亡、職場で襲われる 背後からバールで殴られ「痛い」と振り向いた息子、さらに殴られ頭蓋骨陥没 襲った男、法廷で「申し訳ありません」 声を震わせた父「命をもって償って」(埼玉新聞) - Yahoo!ニュース
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Mがタラウマラを退職して今月末で早くも1年になる。Mとの出会いはサイクルショップすずめ時代で、彼がダルクからの帰り道に3,500円のママチャリを買いに来たのがはじまりだった。その後も何度か話をしているうちにとても面白い人だと思うようになり、おまけにサイクルショップすずめが立ち退きを迫られていたタイミングだったこともあり、純粋な気持ちで「自分はこれから新しい店を始めようと思うが、一緒にやらないか?」と声をかけた。その後はとんとん拍子に話が進んで……という訳にもいかず、突然連絡が途絶え、聞いていた住所を訪ねるも接触ができなかったりした(笑)。やっぱりあかんかぁ、と自分は自分で今後の準備に取り掛かっていたところで、突然サイクルショップすずめの店頭にふたたびMが現れて「ぜひともやらせてください」と言って来た。最初に声をかけてから数ヶ月が経過していたと思う。そこからは本格的にタラウマラの準備に取り掛かった。Mには諸々の事情があったので、契約面、資金面については僕がすべて請け負い、あくまでも雇用する者とされる者の関係性のうえで二人三脚で開業の準備を進めた。僕は開業資金の100万円を借り入れ、���中で不足が生じたので社会福祉協議会から新たに40万円を調達した。その間に数人の友人たちに「Mと一緒に新しい店をやろうと思う」と伝えたら、全員から猛反対された。これは誇張や脚色ではなく、本当に色んな人から「何を考えてるんですか?」「いままでやってきたことを棒に振るんですね」「あなたがやろうとしていることは商売ではなく福祉だ」との助言をもらって、これまでのMがやってきたことを勝手に想像しないではなかったが、それ以上にそんなダメダメなMをきちんと支えたいという想いが遥かに上回っていた。なかには「あなたがMと一緒にいるなら、もう関わりたくない」と言ってきた人もいたが、その方とは未だに再会できていない。とにかく当時の僕はMに夢中だったし、むちゃくちゃに酒癖は悪いがどこか憎めないところがあって、すべては許容範囲だと感じていた。実際タラウマラが始まっても酒でのトラブルは絶えなかったし、M自身も慣れない仕事で精神的にきつかったのだろう、いつだって抗不安薬を手放せないでいた。それでも僕はMの才能に魅せられていたし、ひとりの友人としてもこんなに腹の底から笑い合えるのは初めてだとも感じていたから、最初の2年間は本当に楽しかった。タラウマラで雇用する際にひとつだけ約束事として交わしていた「違法な薬物に手を出さない」ということもきちんと守ってくれていたように思う。Mの音楽作品もコンスタントにリリースを重ね、また彼自身の尊敬する先輩や友人からオファーを頂く機会も増えていった。とにかく酒や違法薬物をできるだけ遠ざけ、それ以上に夢中になれることをふたりで模索していた。僕はあのときの自分の感覚とMを信じて良かったと心の底から快哉を叫んだ。唯一の不安は金銭面だった。そこだけは本当に苦しかった。社会福祉協議会に追加の借り入れを申し込んだが、それでもまったく足りなかった。互いに友人や親戚の仕事を手伝ったり、単発の日雇いバイトに従事することで何とか糊口をしのいでいた。そんな金銭的な不安を打開するために僕は出版物のリリースを目論んだ。もともとMは編集者になりたかったと言っていたこともあり、それならば、と季刊刊行物を制作しようと思い立った。それが「FaceTime」である。タラウマラのような小さな店舗ではどれだけ頑張っても自転車だけでは到底2人分の給与は稼げない。Mの持っている技術で新たに売上をつくることができれば、今後、彼自身の自信にも繋がるだろうし、タラウマラの第2ステージとしても最高だと思った。実際、滑り出しは順調で尊敬する友人たちが素晴らしいテキストを寄稿してくれたこともありvol.1の500冊はすぐに完売した。Mの編集技術も回を重ねるごとに更新されていった。ちょうどその頃、Mに恋人ができた。Kという彼女は僕の「DJ PATSATの日記」を読んでMに興味を持ち、好きになったと言っていた。しばらくするとKはジョージアへ1年間の語学留学に発つことになるのだが、ロシアとウクライナの戦争が激化し、ジョージア国内でもキナ臭い動きが表面化したことで、彼女は緊急帰国した。そして淡路にあるM宅での同棲が始まった。突然の帰国に際してタラウマラからは自転車やTシャツを贈呈した。するとMが「Kが土井さんに直接お礼を言いたいとのことですので、土井さんの勤務日にお邪魔しますのでよろしくお願いします」と言って来たので、そんな気を使わんでええよ、と思いつつも心のどこかで楽しみに待っていた。しかし予定の日にKがタラウマラに現れることはなかった。その後、3度、同様のことが繰り返されたので僕ははっきりと気分を害していることをMに伝えた。Mは狼狽しつつも「Kの仕事が急に忙しくなって、家から一歩も出ていないんです」と必死にKを庇っていた。ちょうどその頃、常連のOさんがタラウマラにやって来た際に「そう言えば先日、Mさんの彼女を紹介してもらいました」と言うので「どこかでばったり会ったんですか?」と聞くと「いやいや、タラウマラでに決まってるじゃないですか!ビールまで頂いてしまって」と笑う。Oさんが店を出た後、僕はMに電話をしてはっきりと怒りを露わにした。もうKには挨拶に来てもらわなくて結構!と伝えるとMは終始すみません、ごめんなさいと誤っていた。翌日、Kは菓子折りを持ってタラウマラにやってきた。本人と直接話をしても僕の中で靄が晴れることはなかった。その後、周知の通りMの商業出版が決まり、Mは多忙な日々を送ることになるのだが、明らかに酒量は増えていった。そして遂には◯◯にまで手を出してしまうことになる。タラウマラを一緒にやるうえでの絶対的な約束を彼は破ってしまった。僕の妻は心底呆れて「もうあかんで、やめてもらって」と言っていたが、本人が深く反省していたこともあって、僕はなぜか不問に付することにした。いま思えばもうどうでも良くなっていたのかも知れない。その代わり、Mには土日だけの勤務にしてもらい、給料もそれまで売上の完全折半でやって来たところを日給制に切り替えた。Mは義兄のバイト、土日のタラウマラ、商業出版の執筆、最後の「FaceTime」の編集作業と引き続き忙しそうにしていた。その頃からますますKがタラウマラの業務について口出しをしてくるようになった。給与面、業務時間、業務負担についてなど、それらすべてをMの言葉を介して僕に伝えられた。何度かそばで聞いていた友人が「それ以上はKのことを土井さんに言わない方が良い、ネガティヴキャンペーンにしかなってない」と注意をしてくれた。Kは「なぜMばかりそこまでやらないといけないのか」と繰り返しているようだったが、物事には役割分担というものがあり、僕には僕のやるべきことがあり、MにはMのやるべきことがあるというだけの話だ。どこからか金が降って湧いてくる訳でもなく、自分たちで稼がないといけないのだから。そして遂にはタラウマラで行われるイベントの際にMは「いまのあなたには執筆の方が大事でしょ」とKから言われたとのことだったので、僕はイベントの最中にMに対して「もう帰りや」と言ったのだが、Mは慌てて「そういう意味じゃないんです」と訂正した。いまでもそれがそういう意味じゃなくてどういう意味だったのかわからない(笑)。「淡路が嫌いやから」という理由でMとKが引っ越しをしたり、その後も色々あったが、綱渡りのような精神状態で互いに業務を遂行していた。そしてその先に待ち構えていたMの解雇を決意するに至る決定打は、実につまらない些細なことだった。ライブやバイトのスケジュールでMは度々シフト変更を求めてきたが、僕も家族のことなどで逆にMにお願いすることが何度もあったので、そのこと自体については持ちつ持たれつで何ら気に留めるようなことでもなかったのだが、ある日Mが同日の予定変更を何度か重ねて依頼してきたことがあった。最初の変更時に僕自身もプライベートの予定を入れてしまっていたこともあり、2度目の依頼の際には代わりに出勤することもできず、その日は店を閉めることにした。一応Mに休みたい理由を聞いてみると「Kがどうしてもその日に新開地の立ち飲み屋に行きたいと言っている」とのことで、この瞬間にはっきりと僕の中で何かが崩れた。あのときのことはいまも忘れられない。本当にこれまでMと積み上げてきたことがはっきりと物音を立てて崩れ去った瞬間だった。僕は「わかった、でももうMとはタラウマラをやっていくつもりはない。年内で辞めてくれ」と伝えた。その後も例によって色々ありながらも、彼がタラウマラを辞めると決まってからは僕も色んなことがふっ切れて、随分と気持ちが楽になった。Mの商業出版に関しても素直に応援することができた。ただ一点だけ、彼の出版を手がける編集長がタラウマラにやってきた際に「著者と打ち合わせしたいので、しばし外して頂けますか?」と直々に言ってきたことについてはいまでも呪いのように自分の内側に燻り続けている。タラウマラはコワーキングスペースでもなんでもなく、僕が借金して作り上げた自転車屋やで(笑)。
※ ここから先は「他人の事情」につき閲覧注意!
それはさておき、2022年の年末でMはタラウマラを退職した。最後の1ヶ月は本当にたくさんの方々がタラウマラを訪れ、みな口々にMを労ってくれた。ほんまに色んな人から愛されとんなぁ、と驚いたのをいまでも鮮明に覚えている。タラウマラを始める際には周囲からあれだけ反対されたのに、どないやねん(笑)。しかしある意味でこの両極の振れ幅こそがM「らしさ」なんやと思���。最後にシャッターをふたりで閉めた際に僕は素直にMに「楽しかった。ありがとう」と伝えることができた。Kからも「色々お世話になりました。これまではタラウマラにあまり顔を出せずにいましたが、来年はもっと遊びに行きます」とメッセージが届いていた。年明け早々にはMと友人と一緒にmole musicに行った。出会った頃のように話をして、笑うことができて嬉しかった。別れ際に「出版もうすぐやな、楽しみにしてるで。僕も同じタイミングで何か作ろうと思ってるから、タラウマラでダブル出版イベントとかできたらええな」と冗談めかして言った。そして「Kと一緒にいつでも遊びにおいでな」と言ってその日はMと別れた。その後、Mの書籍のリリース日が決定したが、タラウマラ限定特典についての打ち合わせもしっかりできないままに、いよいよ出版社へのオーダーの期日が迫っていた。Mは「義兄のバイトで忙しくて」と言っていたから、退職して間もないし確かにそうだろうなと思っていた。もちろんKも年が明けてから一度も顔を出さない。SNSで別の友人の書店には頻繁に行っている様子だけは伝わってくる。そんなある日、Kがインスタグラムに投稿した内容を見て愕然とした。Mからは「週7で義兄のバイト」と聞かされていた日に彼らは旅行に行っていたのだ。思わず「またや」と無意識に言葉が口から漏れた。1年前、Kの帰国後の挨拶問題とまったく同じことが繰り返されたと感じた。僕は瞬間的に自分を見失うほどの怒りが込み上げた。そしてみんなが呆れてものも言えなくなるような醜悪な内容をSNSに投稿した。純粋に死んでほしいと思ったし、自分も死にたくなった。結果、たくさんの人が僕のもとを去った。それは仕方のないことだといまでも思っている。誰だってあんなことを書くような奴と付き合いたくない。それでも継続して僕との付き合いを続けてくれている方々、大丈夫ですか?あなた方のほうが狂っていますよ、だけど心からありがとうと思っています。自転車関連でも、Mの退職後は何人ものお客様から「あの子がおらんねやったらもうええわ」と言われたし、それまで良好な関係だった方々にいつもと同じように挨拶をしても露骨に無視されるようになったり、Mを��っていた若者からレジ金を盗まれたりもしたけど、この1年で自分なりのやり方を確実につかんだ。何事もゼロをイチにするまでの地道な活動こそが最も大変で、イチがサンになってようやく人々に少しだけ気にかけられるようになり、サンがゴになって多くの方々に認識される。言うまでもなくKや某編集長はゴ以降にMと出会った人たちだ。そんな彼らに僕らがふたりで積み上げた期間を蔑ろにされたような気がして、自分でも愚かだとは思いつつも怒りを抑えることができなかった。でもそれはもう大丈夫。僕はいまもやるべきことを継続してやれている。何度も言うけど、いまでもサポートしてくれるみんなのおかげ。Mはどうだろう。編集長が言ったように僕が彼の足を引っ張ることになったので、どうにも本来の力を発揮していないように思う。ガヤの勝手な意見やけど、これだけは言っておきたい。Mの胸には「チェンソーマン」のデンジみたいにスターターが付いていて、それを引っ張ってやればとんでもない能力を発揮する。だからお楽しみはこれからってことですよ。
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そもそも何が起きたのか 内閣府に設置されている、再生エネルギータスクフォース(以下、再エネTF)において、次期再生エネルギー調達にかかる固定買取価格(FIT)を政権に対して提言するにあたり、再エネTFの構成員の何者かが中国国営の送電企業の『国家電網公司』の資料を流用し、その電子透かしが資料にそのまま掲載されていたことが発覚した事件です。https://web.archive.org/web/20240323041756/https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20240322/240322energy05.pdf 本件資料は中国語では現存するものですが、問題は、「日本語で記載されていること」「資料そのものに電子透かしが入っていること」を考えれば、この内閣府で行われた再エネTFで構成員から日本政府に向けて提言するために、国家電網公司から渡された、日本語に翻訳されたペーパーであることは間違いありません。 なお、現在再エネTFでは「サイバー攻撃があった可能性」を理由に公開が停止されています。事件の背景や推移は何か 再生TF構成員の一人である大林ミカさんが問題視されたのは2003年ですから、足掛け20年以上の「この人、駄目だよな」とみんなで言いながらヲチしてきたことになります。 もともとは、大林ミカさんは成田市一坪地主系統でも割と活躍していたNPO団体原子力資料情報室という反原発団体で要職を占めていた方です。その後、飯田哲也さんの環境エネルギー政策研究所を経てソフトバンク系の自然エネルギー財団の事業局長なるポジションにいらっしゃいます。 自民党側では再生エネルギー議連の事務局長であったのは河野太郎さんの側近でもあり先日受託収賄で逮捕された秋本真利さんであることは押さえておく必要があります。 自然エネルギー財団 - Wikipedia ja.wikipedia.org https://digital.asahi.com/articles/ASR9752K9R97UTIL009.html 菅氏が「オヤジ」で河野氏が「兄貴」 秋本議員、再エネ促進は利権に:朝日新聞デジタル 2020年12月15日夜、秋本真利衆院議員=受託収賄容疑で逮捕=は、業界団体「日本風力発電協会」の代表理事を務める「日本 digital.asahi.com ソフトバンク系と言えば、東日本大震災に伴う津波で発生した福島第一原発事故を受けて、当時の旧民主党政権・菅直人さんとソフトバンク・孫正義さんが握って、太陽光ではFIT42円/kWhなどという途方もない高値を提示して再生エネルギーシフトを目指した大盤振る舞いに繋がりました。メガソーラーバブルが発生して日本各地で山林を切り拓いたメガソーラーがプロジェクトとなり、他方で電力送電インフラに対する負担や日中の電力あまりから使われない電力をどうするかなどの問題が勃発しております。 河野太郎さんのパワハラ記事の元になった脱炭素の方向性を決める「エネルギー基本計画(2021年)」では、現段階でも荒唐無稽に近い「(国内全エネルギー供給のうち、再生エネルギーへの依存比率を)36~38%程度」とする話を、河野太郎さんが「38%『以上』」とすることにこだわり、それが誰の手によるものなのか私にはまったく分かりませんし心当たりもありませんが文春に流れて記事化されるという事態になりました。 小泉進次郎さんに伝えたい再生エネルギー周辺の雑感 | 文春オンライン コロナ禍にもかかわらず、投資界隈では急速に「再生エネルギーが次に来る」ということでバブルみたいな状態になっております。 bunshun.jp 河野太郎大臣 パワハラ音声 官僚に「日本語わかる奴、出せよ」 | 週刊文春 電子版 9月29日に自民党総裁選が迫る中、世論調査で「次期首相1位」に挙げられる河野太郎ワクチン担当相兼規制改革担当相(58)。 bunshun.jp この問題にはいくつか解決するべき事情を孕んでいます。セキュリティクリアランスはどうするべきなのか 再エネTF構成員は、他にも飯田哲也さんや高橋洋さんなどが入っております。 問題は、政府的にアリバイ的なものに過ぎない会議体とはいえ、河野太郎さんが選任したこの再エネTFの身体検査はちゃんとやるんでしょうねという話です。 というのも、再エネTFとは無関係に、河野太郎さんが出席している政府の会議体において、本来出席の資格がないにもかかわらず大林ミカさんらが対面、オンラインを含めて出席しているようにも見受けられます。さすがに外部から指摘を受けて直接参加することは減ったようですが、問題であることに変わりはありません。 現在進められているセキュリティクリアランス法案では、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報(Classified Information)として国家安全保障政策の中に「再生可能エネルギーや原子力の 最大限の活用を始めとするエネルギー・産業部門の構造転換、大胆な投資によるイノ ベーションの創出等を通じ、脱炭素社会の実現に向けて取り組む」ものとして、再生エネルギーも指定された情報に含まれることになります。https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keizai_anzen_hosyo_sc/dai10/siryou.pdfhttps://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshou/national_security_strategy_2022_pamphlet-ja.pdf 一般的に、政府における会議としては、再エネTFなど会議体に対して諮問する内容そのものが指定された情報であって、知る必要性(Need-to-Know)の要件を満たすのは河野太郎さん本人のみであると共に、本件中華国家電網公司から出ている提案資料の内容は明確に政府検討において必要とされる内容(のすべて)であることから、セキュリティクリアランスにおいて大臣や政務三役も含めた政治家も含まれるべきだという議論は如実にこのような事態があてはまるのではないかと危惧されます。 突き詰めれば、「国家のエネルギー戦略を左右する重要な地位にある政治家(この場合は河野太郎さん)が、その内容について政府会議体(再エネTF)に諮問するにあたり、問題が疑われる人物(大林ミカさんなど)に対して我が国の重要な情報(再生エネルギーの調達状況・計画や我が国のエネルギー行政における問題点など)を公開した」疑いがあるという話になります。再生エネルギーはどこまで、どう推進させるべきか 世界的に気候変動対策のためにも脱炭素を進めるにあたり、再生エネルギーにも注力するべきだという話はあるでしょう。 他方で、再エネ賦課金が2024年も再び値上がりし、実質的に旧電大手に対する買い取り義務がある以上は、国家全体で再エネ拡大を丸抱えする形になっています。電力自由化や送配電分離など各論についても「GX実現に向けた基本方針」に準拠する必要はあります。 5月電気代、全社値上がり 再エネ賦課金増が影響 5月の家庭向け電気料金は、大手電力10社全てで4月に比べ値上がりする見通しであることが21日、分かった。再生可能エネルギー www.sankei.com https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/pdf/kihon.pdf 再生エネルギーは有望であり採算に合うのだというのであれば、むしろ再生エネルギーに対する賦課金・助成金やそれを支える制度についてはいずれ撤廃することが求められている割に、今回の再エネTFの議論においても再エネ拡大のために投資するべきだという内容が中心になっているように見えます。脱炭素とベースロード電力の確保を政策的に進めるのであれば、安定供給のアテのない再生エネルギーや蓄電池の充実だけでなく、原子力発電所の再���働と新型原子力や高効率火力の増発を優先させなければならないはずです。 また、日本経済に負担のない再生エネルギーの推進を再エネTFが掲げるのであれば、もっぱら中国産レアメタルに依存する大型蓄電池・車載用大容量バッテリーや、世界的にシェアが高い中国製太陽光パネルから、部分的にでも国産の製造や技術開発にも投資をしていかなければなりません。しかしながら、そのような国内産業に投資する再エネ政策は、再エネTFにとって何らか不都合であるからか、そのような提案を含めた議論や記述が一切ないのが印象的です。「再エネは必要」だが未来や着地を見据えた議論をしましょう 再生エネルギーを語るうえで中国企業や彼らの抱える技術が大事だという議論はもちろんありますので、その一切を排除しろという話ではなく、バッテリーであれ太陽光パネルであれ中国の関与は一定出てきてしまうのは仕方がありません。 ただ、その実現に向けた政策を検討するにあたり、政府に対して中国系企業から得た情報やプレゼン資料を流用する形で、彼らにとって都合の良い提案を行ってきたのだとするならば、それは単にゴロ行為であるだけでなく影響力要員であり、スパイであると疑われても仕方がありません。 目下、そのような事態が起きないようにさまざまな法制を検討している状況において、まさに足元で、また資源国ではない日本で死活問題でもあるエネルギー問題において、反原発活動家に類する人物が大手を振って政府の会議体に出入りしているのはさすがに問題ではないかと思います。 それは同時に電力自由化やエネルギー調達、送配電問題などインフラにまつわるさまざまな問題においても「私たちはどこに向かおうとしているのか」をまず先にきちんと把握し、都度、その計画を調整しながら状況を改善させていく必要があります。 再生エネルギーが必要だという議論にはまったく異論はないのですが、それを進めるうえで、自由化や再生エネルギー拡大と電力安定供給、災害・緊急対応も含めた全体的なロードマップはもっと詰めていかないと駄目なんじゃないですかね。
河野太郎の再生エネルギータスクフォース(内閣府)で元活動家構成員が中国企業の資料で政府への提言取りまとめ|山本一郎(やまもといちろう)
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役者にまで魅せられて
☆2ステ褒め
・アロー声綺麗〜〜前説でさえ聞いていたくなるね
・前説の曲流すの気づいた白子えらい!僕はすっかり忘れてました(え)
・いやゴミ箱被ったアローマジマジと見ると面白いな。そういう役やってもいいね
・ベガさん声キリッとしててかっこいい。空気締まる感じする!
・だめこふくいい!
・リサイクルマークハンド忘れないの嬉しいよ採用してくれてありがとう
・最初のテンポいいね!!怖い話を彷彿とさせますね
・深山捕まるの上手いよ��(語弊)
・コンちゃん跳躍力あるなぁ
・みそかもかっこいい……
・椅子から立ち上がるだけで笑い取れる3人すごいよねマジで
・こりちゃん座りに行くとき検察官とかの方見るのいいね
・スチルさんの控訴事実めちゃくちゃスルッと頭に入ってくる。声綺麗ですね
・なすかさん「異議なし!」百発百中なんか??
・スチルさん本とファイルの使い方上手いですよね
・裁判長がおやすみなさいで手を振るのいいよね
・ゆにかわいい。マスコットすぎる
・夢の世界へ!の後の倒れ方3人とも綺麗よな
・やっぱタイトルコールいいなああああ!!!カッコ良すぎるだろこれマジで
・ゆに、怪しい人ですから、の前のタメいいね!無意識に注目しちゃう効果あるぅ
・ゆにセリフのリカバリーいいね。
・フードの被り方かっこよい
・いやでええええす(圧) 好き
・ゆにハケ際で振り向くのいいね
・地味に後ろにいるこりちゃんの動き方も丁寧で好き。実際に仕掛けがある上手側には触れないギリギリで止まるこだわりっぷり
・2場って本当に3人の会話だけで進んでいくのに、こんなに引き込まれるのなんでなんだろう。やっぱ上手いんだろうな
・コンちゃんだいぶ強くベガさんに当たるな!!恨みとかあんのか!?
・コン「はぁい」だけで笑い取れるのすごいよ。
・いや待てよく考えたら2→3場だけでもこんな複雑な場転してたんだ……。こんなスムーズにできるのえぐいよ。練度が。
・O阪大学でも笑ってもらえたのは、カヌレさんとらっしーさんとひらりの御手柄ですわ。素晴らしいです
・いつも普通に聞いちゃうけど、白子の声もちゃんと嫌な塾講師なんだよな。
・「優おにいちゃん!」可愛い(可愛い)
・いいねぇ提灯
・こりちゃんの「わるぅ〜い」がすごく好き。これのおかげで中弛みしないといっても過言じゃない
・いやでも本当輪投げって何が楽しいんだろ
・「向き合ってみるのも悪くない」と「子供と遊ぶ夢を……」の間を音照無しで一人で適切に取れるの上手いよねぇ
・「村上さん」というワードが出てこないのに、明らかに「コイツが件の女か」と思わせる苔丸の少女さとこりちゃんの動揺がいいですよね!
・あさぎ暗転入り超綺麗なんだよな
・台置いてからめちゃ急いでくれるこり好き
・ポテトの商人マジで好き。本当に。ポテト食うだけで笑いとるの本当すごい。「油売るなよ」が霞むくらい強い
・苔丸のつるーってしゃべる感じもなんかいいよね。実際に喋ったことはあんまりないから、市原が脳内で一番スムーズに会話ができる速度で喋っているということにして、それが夢に出てきてるみたいな。
・カヌレさん子泣き上手いなぁ��多分イデア界からきてるわこの泣き方
・「結構な勢いで食べるな」っていう置くタイプのツッコミでもウケるのすごい。こりちゃんセリフごとの言い方変えるの上手いんよな
・いいねええ狐不気味だよおおおお
・照明チカチカもいいですね!!もしかしてらっしーさん結構遊んでます??
・夢占いで空気変わるのすごいよ。アサギにしては珍しく普段の声で演じきれなくて少し頑張らなきゃいけない役だと思うんだけど、ちゃんと雰囲気変えきれているからすごい
・ポテトヘアピンつける位置最高すぎるんよな。下手側向いた時に初めてちゃんと見えて、気づいたお客さんからクスッとくる感じがいい
・ほいくしぃ〜〜?好きなんよな
・「喧嘩でも売ってやる!!!」いいね……
・深山優しく抱擁してくれてありがとう
・「お前にお父さんと呼ばれる筋合いはない!!」は、脚本上唐突すぎるからウケるか不安だったんですけど、コンちゃんとこりちゃんが上手いおかげで必中です。ありがとう
・僕も好きです!(おい)
・押し倒されたあと、こりちゃんはなんでそんな綺麗な倒れ方ができるんだ???どこで教わったんだ???
・「してみよっかな!」1ステより明るい声でいいね!
・マリオウケましたねえええ!!!最高です
・ちゃっかり深山を飛び越える市原
・やっぱ緑の飾りが深山のところにあるの好きです。付け直してくださってありがとうございます
・市原も東雲も声が全力で裏返ってて命を感じた。
・市原の「何がです?」のタメ方がいい。マジで客の心理と揃ってる
・「さいっこうでさ!!」もいいよねええ楽しそう
・やっぱ場転複雑だな!!よくやるよ本当に。すごいよ
・寝起きの二宮美味いんよな
・クロユリ……?
・引き戸、のツッコミ一番好き
・漫才いいねええええ!!!なんかマジで、ステージによって反応変わってるのがマジもんの漫才すぎる
・司会者の喋り方もいつものアサギと少し違う?気がする?ちゃんと演じてくれてるのが嬉しい
・松本人志ウケるの悔しい。僕が介入したところがなくてマジでこりちゃんの力だから
・二宮、エリアへの入り方も力強いし、一人語りも力強いの、いいですね。今日の二宮は憤りでしたね
・知らない人がステージに座ってるかと思ったら、えりちゃんでした。チクショーー
・えりちゃんのストモなんかおもろい
・ジャガイモのところも言い方が上手いおかげで想定の3倍くらいウケてる。ありがとう
・深山の店員いいよな、こなれてる感じが最高
・「諸説ありますが」で首くいって向けるのいいな
・二宮のグラスが他2人より少し下がってるの本当に!本当に!!!
・あかんなんか泣きそうになってきた。自分が書いた話で泣くわけないのに
・ラビのこの、お客さんにちゃんと聞こえるけど、明らかに言いづらいことを言ってる絶妙な声量すごいよ
・「それが一番嫌!」���ァン←「異議なし!」の伏線回収??今度はちゃんと異議があるっていう
・やっぱここの2人の会話にBG入れない判断したの正解だな。白子がない方がいいって言ってくれた気がする。ありがとう
・「ふたりで、やめよ」これえぐいて。マジで。言い方すこすこのすこ
・大集の外はかんかん照りだったはずなのに、なんかこのシーン見てるとすごい雨降ってる感じしたわ
・携帯電話の電源をお切りいただきたい理由が分かりますね。僕は他の公演を見にいく時は今後もちゃんと切ろうと思います
・回転扉大丈夫か?大丈夫か?
・なんだこのシーン(落語を見ながら)でも全力でやってくれている5人が私は大好きです。なんかゆるあさんみたいな文体になってきたな。気のせいかな
・7場の初め、前説と同じなのアツいよな
・ん?キャマメルマキアート?アマガミアローだ!レアですよこれは
・セクシーすぎるので、の後に一礼するの素晴らしいです
・ラジオ聞いてる時に微笑んでる深山と黒川が本当に、本当に好き
・鍵しまうこんちゃんナイス��断!!
・店員も声変えてくれてるんよな
・「嬉しいことだ、嬉しいことだ」の2回目で手が止まるコン好き
・年功序列の制度のせいで、めちゃリズムよく読んでくれて嬉しい
・楽天家を演じなくなって少しおとなしくなった二宮、か……
・キャラメルマキアートがアトラクションみたいにハケるの本当好き
・「楽しいことがないわけじゃないんだけど」のセリフ、複数回あるけど一つ一つ丁寧に言い方変えてくれてるのありがとう
・アローめちゃくちゃ照明の紐わかりやすく引っ張ってくれるのなんかいいよね。まぁ電気の紐がそんな伸びるはずはないんだけどさ
・車の後ろで寝るアロー、服も帽子も黒いこともあって、手が超綺麗に映っててなんかこういいですね(え?)
・「お〜おつかれ〜」明るい声なのがかえって苦しいよ
・苔丸車→ベッドの場転かなりスムーズになったよね
・見返したくなる……?
・ふと思うんだよね。米津リストラしてよかったって。さよーなら、またいつか。
・時計止められた時の驚き黒川かわいいです
・ここ毎回アドリブでセリフ変えてるアロー結構えぐいことしてるんよな。しかも全部辻褄合ってるのがすごい。個人的には家電ばっかり新しいのに買い替えてそれで満足してるってやつが好き
・えりちゃん、読んでる感出すのうまっ
・見つかんねぇよ。2ステの言い方好き
・キャ↑ラメルマキアートを一つ
・エレガのマイムマジで好き。エレベーター乗るたびやってほしい
・「本当ですか?」 いい言い方するよね
・裁判所再来のシーンいいなぁ、見てるこっちの息が荒くなりそう
・あさぎがんばれ!!
・やっぱハマると気持ちいいね、踏切ビート
・漫才やる2人が上手いおかげで、アローのセリフでちゃんと漫才のこと思い出せるんよな
・アロー、エリアに入る出るを上手に使ってくれてるの嬉しい。あえて光が当たらないところから押し出すことで、黒川自身は再びゴミ箱の中に帰っていく感じがするの、すごいよなぁ。でもその時には微笑んでるんだぜ。深山が未来を見てくれるようになったから。かーーー、綾鷹進むわぁぁ
・ユニが喋り始めると途端にしゃがみ出すオペ席ほんまおもろい
・「市原君」いいんだよなぁ。ベガさんやっぱこういう気が効くところがズルいんですよね
・市原の「おおーいいですねー!」で救われる中年がいるんです
・「何食べにいく?」の言い方がもう最適解なんよなぁまりおさん!!超好き
・なんだ最後の可愛い二人組は。
・キャスパだあああああああ
・2と8笑顔いいねええ
・いやキャスパ激しいい!!!練習の賜物だよマジで。本当にありがとう。
〈総評〉
めちゃくちゃ最高でした。脚本書いてよかったです。ってのは唯端楽生が言ってました。ありがとう。みんな大好きです。
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【盛岡で本番直前合宿】初日がスタートしました。
東北新幹線の盛岡駅に降り立つと、気温2度の真冬の寒さでした。駅から徒歩3分くらいの練習会場となる盛岡市民文化ホールまでは八甲田山の行軍のような辛さでありました。

TYOのOG菊池桃加ディレクター率いるNHKの密着ドキュメンタリー取材班的には「いい絵」なのでしょう。一昨日には菊池Dによる記事も公開されていました。 坂本龍一監督からもらったもの 「東北ユースオーケストラ」の団員たちがつなぐ思い - 大震災と子どもたち - NHK みんなでプラス
監督のご命日である、3月28日、BSにて映画「戦場のメリークリスマス」を放送するその直後の枠にて、昨年のTYO番組が再放送されることが決まったそうです。
Dearにっぽん「見ていてね、坂本龍一監督~東北ユースオーケストラの再出発~」放送日 3月28日(木)午後3:04~3:29【BS】
クラリネットを吹き、わちゃわちゃしてたうちの子が、NHK入局2年目にして実に頼もしい貢献でございます。ありがとうございます。

東京出発前から寒さに立ち向かう覚悟はしており、スキー用並みにパンツで集合した引率の先生役も隅に映り込んでいます。

(この時はベルトをし忘れたことに気づいていなかった・・・)

今年も「安全第一、健康第一」を唱え、坂本龍一監督も「本番前に無理しないでね」とおっしゃっていたこと。体調がすぐれない時は無理をせず、休みましょう。本番でも曲間でステージから降りてもいいんだからね。それもみんなと演奏する一つのカタチだ。過去にも本番でステージを降りた団員は何人もいるから気にしないでね、と伝えました。何しろ今回参加しているOGには看護師資格保持者もいますから心強いです。と保護者関係者のみなさまにおかれましてもご安心ください。
いつも演奏できることの感謝を忘れずに本番を迎えましょうと言っていますが、今年はそれに加えて、坂本龍一監督への感謝の演奏です。天国の坂本監督に聴いてもらうという気持ちを込めた演奏しましょう。

おりしも今日20日は東北ユースオーケストラと坂本龍一『The Best of Tohoku Youth Orchestra 2013~2023』のCDが発売されました。収録曲である『ETUDE』での間奏のピアノのアドリブでは、これまで練習から本番まで一度として同じ演奏はされなかったことを引き合いに、「今回の演奏曲での即興パートもみんなあらかじめ決めた同じ演奏を繰り返すのではなく、その場その時の即興で演奏するのが坂本龍一スピリットですよ」ともお願いしました。

一般社団法人東北ユースオーケストラの代表理事である、ヤマハ株式会社執行役の押木正人さんも初日から合宿参加にご参加です。

本社のある浜松銘菓「夜のお菓子」を差し入れにいただきました。
岩手組の保護者ご一同からもうれしいメッセージ付の地元銘菓2種類の差し入れをいただきました。


こちらは四期の演奏会でTYOオリジナル楽曲『くぐいの空』の作曲を委嘱した仙台市出身の音楽家・仁科彩さんからの差し入れです。細やかなお気づかいをありがとうございます。
そして、生いちごも!

先日、有志演奏会でお世話になった気仙沼市出身のパーカッションパートの三浦瑞穂さんのお祖父様が栽培されたフレッシュな果実でございます。『Three TOHOKU Songs』の民謡指導に来ていただいたこともありましたが、今日もステージ上のお孫が「ここの掛け声のイントネーションは」と伝聞リモート解説をしてくれていました。

今日は指揮の栁澤寿男さんが体調不良のため大事をとってお休み。急きょ福島事務局の竹田学さんに代役をお願いしました。

普段は福島ジュニアオーケストラで指導されているとはいえ、「緊張します」と突然のことにプレッシャーが大きかったようですが、毎月の練習にも参加してもらっているので、安心のバックアップです。





今日はコンサートミストレスの渡邉真浩さんの隣に千葉隆史くんの同じ郡山市出身の同級生コンビが並び微笑ましい姿です。


ということで、一曲目から順に丁寧に演奏曲をさらっている合宿初日でした。
今週末の23日(土)盛岡、24日(日)仙台(ともにゲストはのんさん)、30日(土)郡山(ゲストは吉永小百合さん)の演奏会は、まだチケットがございます。はやぶさなら東京から盛岡まで2時間ちょっと。坂本龍一監督の唯一のオフィシャルな追悼公演! プライベートアーカイブからの写真や、東北ユースオーケストラの団員と過ごした日々の動画など、未発表素材をふんだんに使った映像も見どころです。
ぜひご来場ください。
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2024.2.19mon_tokyo

▲蔵造り風の扉の先には、無限の可能性が拡がっている
ひとり仕事終わりに「くら寿司」へ寄る
曜日や時間帯も関係なく速やかにカウンター席へ案内してもらえるのが有難い
一方向へ流れるものをぼうっと眺めていると心がスーッとする。河川を眺めている時のような気持ちになれるから「回転寿司」が好きなのだと思う
頭の中にある日々の悶々とした悩み事にも。少しだけ流れのようなものを感じて、幾らか心に晴れ間が差すような気がするのだ
カウンター席は間隔が狭い。両隣に気をつけながら慎重に上着を脱ぐ。後ろにハンガーの用意もあるのかもしれないがよく分からないので背もたれへ掛ける
椅子の下に荷物を置くための天板がある。フックでもカゴでもなく直置きをする仕様で通勤用のシャカシャカした素材のバッグとの相性が悪く動作のたびにズリ落ちそうになる
過去に何回か床へ墜落させているので自分には「くら寿司専用バッグ」のほうが必要なのかもしれない
着席すると、今度はあがり用の湯呑みが頭上に設置された「ビッくらポン!」の脇にあることを思い出す。たとえ誰も見ていなくても、立ち座りを繰り返していることが恥ずかしい
後から席へ通された男性がさっそく右隣で「ビッくらポン!」への参加をアリと選択し、レーンから勢いよく取った2枚のフリー寿司に手をつける。いまだに特殊な皿の取り方に危惧するので羨ましい

わたしの記憶が正しければ…
少し前��で「ビッくらポン!」は全員強制参加だったはずだ。いつも心配していた。ひとりで食事をする方の中には5枚に一度必ず訪れるガチャガチャの結果発表の時間に耐えかねて、つらい思いをしてる人も少なくないのではないかと
「あたり!が出ても声に出して喜べない人間の気持ちがわかりますか!?!」悲痛な叫びがカスタマーサポート にこだまして成仏を願っている。それが現在の選択肢が生まれた由縁ではないかと想像する
基本一名客が通されるカウンター席には、食事中の楽しい談笑は無いのである。レーンと寿司、そして自分。たまに虚しく響き渡る「ビッくらポン!」だけの世界
その禅にも似た寿司時間を破り去る、圧倒的存在感を放つ人物がカウンター席には一定数存在する 自分の頭の中には注文ページをインストール済みなんです。そう言わんばかりの猛スピードでモニターをタップし、注文レーンに続々と寿司を供給する。運び込まれた寿司をすばやく机に降ろしたかと思えば、今度は業務用バキュームのように寿司を吸い込んでゆく
ここは緊急病棟か。はたまた掃除機のCMなのか。とにかく規格違いの一分一秒を争うようなプロの食べ吸いはアスリート同然の代物である
手に汗握る感動…その歴史的快挙を真横に感じながら。何も気にしていない体裁を取る
自分はあくまでもゆっくりと。吟味しながら寿司を食べ進めていく。これこそが「回転寿司」のいちばんの楽しみなのかもしれない
プロの方々については、親しみを込めて「くラー」そう呼ばせてもらう事にしている
そんなことを考えていたら。湯呑みに注いだお湯のレバーが押し込まれたまま。自分の机の上だけが、どんどん水浸しになっていた
-プロフィール- ざんまもえ 32 東京 販売員
東京都在住。元・揚げもの屋「FRYDAY NIGHT」代表。現在は販売の仕事をしています。相変わらず料理が好きなので自炊のレシピをまとめたZINEを作る予定があります。 @frydaynight_tokyo https://seikatsunonaka.jimdofree.com
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連休二日目、大平は厨房職員の出勤前に開錠し、再び床に入った。昨日の母親とのやり取りが尾を引いているらしく、布団を頭から被った。嗚呼、辛い、淋しい…。この思いを誰に吐露したらよいかと、彼は何度も寝返った。
それから一時間経った頃、ドア越しに声がした。
「大平先生、検食お願いします」
彼は寝ていた訳ではないのですぐ布団から出た。ドアを開けると、其処にいたのは管理栄養士の石川忍だった。彼女は、
「何だ、起きてたンですか。もうすぐ生徒さん来ちゃいますよ」
と言った。
「あぁ、すみません…。今行きます」
そう言って大平は食堂へ向かった。食堂には、朝食を作り終えた厨房職員が休憩をしていた。石川も、今日は日曜日で人手が足らないとの事で厨房業務をしていたらしく、
「早く厨房職員、増やしてくれないかなァ〜。アタシ、朝弱いのよ」
と言った。向かい側で食事をしている大平は、
「でも、いつも美味しいよ。助かるわ」
と話した。
「たまに、亜鉛やタウリンたっぷりの献立も考えないといけないのよ。幸田理事長が、年頃の男子はヴァイタリティがなくては勉強やスポーツに良い成績が得られないって。まァ、亜鉛は味覚を感じるのに必要な栄養素だから仕方ないかァ〜」
「たまに遊びに来るよ、ウチの生徒が」
「あら、大平先生。ビンビンなのね? 絶好調なンだ〜」
「ほらほら、朝から際どいよ」
石川も、このK高校の裏の裏も読んでいる様だった。彼女も所謂「ボーイズラヴ」系の漫画が大好きで、半年に一回は特別メニューとしてマカを含んだドリンクを付けたり、すっぽんエキスを使った鍋などを出したりもしていた。大学時代に居酒屋でのアルバイト経験があり、たまに貢が理事会を開催する時には刺身や焼き鳥も作っていた。
検食を終えると大平は、
「今度、カキ食べたいなァ」
と、検食簿を書きながら言った。
「カキ? 寒くならないとダメでしょ? 美味いけどね〜」
「だよなァ…。ご馳走様」
返却棚に使った食器を戻すと、大平は宿直室に戻った。嗚呼、今日は何をやろう…。そう思いながら彼は布団を片付けた。
午前十時過ぎ頃、寮の駐車場に一台の四WDが停まった。宿直室で保健体育の教科書を開き、連休明けの授業の準備をしていた大平は、モニターでその車を確認した。丁度、半袖のポロシャツにジーンズという格好で正美が階下にやって来たので、大平は宿直室から出て聞いた。
「ご両親とお出掛け?」
「おはようございます。否、母の幼馴染でもある中学校の恩師です」
「夕方までには帰るンでしょ?」
「はい、ちょっとドライヴです」
大平は「中学校の恩師」と「ドライ��」という単語が意味深だなと思った。大概は家族などが迎えに来たり、逆に実家へ一時帰宅したりする場合が多いが、これまでに中学校時代の恩師というのは前例がなかった。もしかしたら、「恋仲」か?と彼は疑った。すると、車から七三分けに髪を整えたほぼ同世代の男がやって来た。彼は水色のオックスフォード生地のボタンダウンシャツに、ベージュ���チノパンツという格好だった。その男は八坂だった。彼は大平に挨拶し、
「黒木正美がお世話になっております、八坂周二です。今日はドライヴも兼ねて正美君に会いに来ました。よろしくお願いします」
と自己紹介をした。大平も会釈をし、
「私は一年生の保健体育を担当しております、大平雅之です。今週は寮の宿直をしております」
と言った。正美は、
「おじさん、待ってたよ。行こう!」
と靴を履き替え、何故か手を繋ごうとした。八坂は、
「ダ、ダメだよ。そんな人前で…」
と苦笑したが、
「イイじゃん、早く行こう!」
と正美は疾る気持ちを抑えきれない様子だった。八坂は正美に急かされるまま、
「門限までには帰りますので…」
と言った。
大平は、これまであんな無邪気そうな笑顔を見せる正美を見たことがないと思った。たまに、
「セッ◯スしてぇ〜!」
と、公然と口走る印象しかなかった。しかし、あの八坂もスラッとした雰囲気でイイなァと大平は思った。
その頃、亮司は昨日と同様に刈払い機を片手に校内の除草作業をしていた。この時期は雑草が伸びるのも早く、正直「いたちごっこ」ではあった。昨年は定期的に業者が来訪してやってはいたが、単科大学の方で来年度から従来の経済学部に加え社会学部も新設されるとの事で、極力コストを抑えたいという貢の考えがあった。彼は、
「熱中症にならない程度に草取りしてね」
と、一昨日絡み合った後に言ったのだ。亮司は、
「何だ、愛してるなら手伝えよ」
と布団の中で貢の片脚に自分のものを絡ませながら訴えたが、
「理事長も大変なンだよ、休ませてよ」
と亮司に接吻しながら詫びた。
昨日より日差しが強く、早くも頭の方から汗が噴き出す。亮司はペットボトルのスポーツドリンクのキャップを開け、数口飲んだ。嗚呼、この空気が何だか「あの頃」を思い起こさせるなァと、彼は再び秀一のことを想った。
亮司が顧問を務めていた陸上部に秀一が入部して三ヶ月が経過した頃、都立A高校に近い河川敷でジョギングをすることを練習メニューにしていた。未だ「根性で乗り切る」という考え方が根付いていた時代である。練習中に水分を摂ることを制限され、ギブアップしそうな生徒には「忍耐力が足らない」と叱責するのが当たり前だった。亮司もその一人で、指導するにも必ず怒鳴り声を上げていた。
そんな猛練習の中で、秀一は朝イチの新聞配達をしながら個人的に走り込みもしていた。周囲に話すことはせず亮司にも黙っていたが、たまたま犬の散歩をしに河川敷を歩いていた時に亮司は秀一がジョギングをするところを見かけていた。他の教師から秀一の家庭が火の車であることを聞いていた亮司は、そんな彼に少しずつ想いを寄せる様になっていた。
ある日の夕方、いつもの様に河川敷のジョギングをしていた時だった。普段であれば余裕の表情を見せていた秀一の足取りが徐々にペースが落ち、その場に倒れ込んでしまった。他の部員は一時的に足を止め、彼の許に駆け付けた。亮司は、
「益子!」
と身体を揺さぶった。意識はあるが朦朧とした様子だった。彼はその日の部活動を中断し、学校に戻ることにした。
保健室に連れて行った亮司は、ベッドに横たわる秀一を眺めていた。
「どうやら、睡眠不足の様ね」
と女性の養護教諭は言った。
「『睡眠不足』?」
「確か、益子君ってお母さんだけよね? お姉さんは看護婦さんで…。新聞配達もしながら成績も優秀だし、かなり頑張っている筈よ。それで部活なンだから」
「…そうか」
亮司は、秀一の学校以外の一面を知らずにいたことを悔やんだ。そもそも部活動の時にしか関わらないし、他の生徒に対しても同様だった。
秀一が目覚めた時には、とっくに夜の帳が下りていた。養護教諭もずっと残っていたが、
「とりあえず、何か美味しいものでも食べなさい。あとは無理はダメよ」
と彼に言った。
「佐々木先生、色々とありがとうございました」
亮司はそう頭を垂れ、秀一と学校を出て行った。秀一の家は河川敷近くにあったが、亮司は神田の方だった。今夜は、ずっと付き添い気持ちがあった。そうだ、駅前に食堂があるから連れて行くかと、秀一と一緒に山手線に乗って秋葉原駅前の定食屋へ向かった。カツ丼は大盛り、その他に秀一はカレーも注文した。あまりの食い込みのよさに亮司は驚き、
「普段、何食べてるの?」
と聞くと、
「普通に食べてますよ。でも、すぐお腹空いちゃう」
と秀一は話した。
「今日は沢山お食べよ」
まるで息子を一人持った様な感覚に、亮司は陥った。嗚呼、何とかしてあげたいと思いながら。その日は、秀一とは秋葉原駅で別れたが、回数を重ねるごとに逆に亮司が彼のところまで送って行く様になった。時折、無意識のうちに手を握り合うことも多くなり、互いに教師と生徒という関係を越えつつあった。
そんな二人の想いが通い合ったのは、夏休みが近づいた七月の中旬のある夕方だった。いつもの様に秋葉原駅前の食堂で食事をした後、西日暮里駅を下りて秀一をアパートまで送るその矢先だった。亮司はこれまで押し殺してきた彼に対する想いを河川敷の橋桁で告白した。突然唇を奪われた秀一は、最初は何が起きたのか理由が解らない状態だったが、
「…先生、僕も好き」
とおのずと舌を絡ませてきたのだ。一瞬、唇を離すと二人の唾液が一筋の糸でつながっていた。亮司はそのまま秀一を叢に横たわらせ、
「申し訳ない…。でも、秀一が好きなンだ。愛してるンだ。オレ、お前が欲しいンだ」
と、ワイシャツの第二ボタンを外しながら未だ十六歳になったばかりの「やわ肌」に手を忍ばせ、同時に首筋に唇を押し付けた。
「せ、先生。そんな、あぁ、あん…」
初めて経験するエクスタシーに忽ち秀一は酔い、今度は彼自ら亮司のネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外し、ランニングシャツの片側を肩からずり下げた。日焼けした肌に黒々と浮き出た乳房を弄った。
「し、秀一! オ、オレ、そんなつもりじゃ、あぁぁ…」
叢の上で、二人の体位は逆転した。周囲はすっかり暗くなっていた。人気もない。橋桁の上なので、たとえ声を上げても車の往来でガタガタという雑音でかき消された。スラックスを互いに脱ぎ捨て、二人はブリーフを片脚に絡ませた状態で肉棒を咥え合った。秀一は、銭湯でしか他人様のチ◯ポを見たことがなかったが、微かに小便の「匂い」がしつつも抵抗なくその裏側を舌の先でなぞったり、また先端を口の中で弄んだ。あまりに気持ちよく遊戯してくれていることに亮司は、
「し、秀一! 気持ちイイ! イイ!」
と歓喜を上げ、そのまま愛液を秀一の口の中に放出した。
「あッ、あん! あぁん! あん!」
亮司は頬を赤らめながら、うっすら涙を浮かべつつ、全身を震わせた。一方、あまりに卵白の様にヌルッとした感触だったからか、オルガズムが終わると秀一はすぐその場に亮司の愛液を吐き出した。
彼は、
「…先生、僕、我慢できない」
と訴えた。
亮司は、秀一に「お前の愛液を顔にかけて欲しい」と求めた。言われた通りに、秀一は亮司の顔の目前に下半身をさらけ出し、今にも多量に噴き出しそうにいきり勃った秀一の肉棒を亮司はしゃぶったりしごいたりした。そして、
「嗚呼、 イク!イッちゃう! 出ちゃう!」
と、見事なほどに熱く粘度を含んだ乳白色の愛液が亮司の顔面に飛び散った。「シャワー」の様に浴びた亮司は、うっすらと微笑を浮かべた。
初めてにして変態的な「痴情」を経験した二人は、それからこの様な濡れ事を重ねに重ねた。間もなく夏休みを迎えたが、すぐに亮司は仮住まいとして、西日暮里駅と都立A高校の間にアパートを借り、其処を「愛の棲家」とした。週二、三回は部活動の後、亮司自ら夕食を振る舞い、一緒に近くの銭湯へ行っては愛し合ったのだ。
『嗚呼、若かったよなァ。オレも』
木陰から漏れる日差しを時折見上げながら、もう一口スポーツドリンクを飲み、亮司は再び刈払いを始めた。
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桜くつ器
「くつ」というのは今自分で考えた動詞で、その場に固定するみたいな意味です。くくりつけるとか、打つとか、木槌で叩いてぴんと固定させる感じ。なにかいい漢字がないかなと思ったけど、思いつかなかった(と思ったが、「繰つ」というのがいいかもしれない、口が3つもあって硬そうなところがいい)。桜くつ器というのは、桜が固定されて飾られている器の意。
カウンセリングに行ってカウンセラーの先生に3ヶ月ぶりに話をしてもらい(ずっと予約の電話をかけることができず、3ヶ月ぶりとなってしまった)、さまざまなことが整理され、やっと、ここ数週間のうつ状態からすこし回復したように思われる。とくに一秒ごとに噴出していた希死念慮は無くなった。帰りに蔦屋書店に寄ってしまい、まさかここで本を買うとは思わなかったのだが、文庫本4冊をレジに持っていっていた。まだ前に買った本を読み終わっていないのになぜかこのようなことをしてしまう。これは23歳くらいからずっとそう。恐ろしい書籍購買依存症だ。「本を買う」という行為にのみ意味があり、読むことは全然しない。たまには読むが、1冊を頭から終わりまで読み切るということは殆どない。最近はその事に罪悪感も苦悩も呆れも何も覚えなくなってきた。この数ヶ月本を買うことをやめられていたのに、いきなりこのように浪費してしまい、衝撃もあるが、まあいつもの自分だなと思った。『京都SFアンソロジー』『貝に続く場所にて』『クララとお日さま』『実力も運のうち』の4冊。京都SFは暴力と破滅の運び手さんの「ピアニ���ト」が読みたくて買った(まだエチ小賞アンソロも読み終わっていないし、ブラームスの乳首も読み終わっていないのだが)。貝に〜は、書店で見て、芥川賞と群像新人賞の受賞作で、言語に関する物語とあったので、かなり気になって買ってしまった。講談社文庫はビニールが最初からかかっていて中が見えないのだが、帰宅してビニールを破って(この作業、省略したい。講談社は早く正気に戻って文庫本にまでビニールを掛けるのはやめてほしい)中を見たら、かなり余白の多い組版で、行間もひろく、見た目のうつくしさに拘りを感じた。いかにも芥川賞受賞作という感じで良い(組版への拘りというと黒田夏子の『abさんご』を思い出す。あれもかなり好きだった)。クララとお日さまは、ことこさんに内容を教えてもらった時に読みたいと思い、文庫化もしたことだし、と買っておいた。ひじょうによい子のAIの一人称で、カズオ・イシグロのいつものあれですよ、と言われたので(語り手の認識と世界との齟齬というかズレが特徴的なことが多い)、そして立ち読みしたところクララ(AI)にかなり好感を持ったので、読もうと思った。マイケル・サンデル(実力〜)は、かなり西洋哲学やキリスト教的価値観を引いて解説している(おそらくアメリカ人の状況を)と感じたので買った。『資本主義の〈その先〉へ』(大澤真幸)を読んでいるところなので、かなり内容に惹かれた。昔からだが、やはり「アメリカ」というものの面白さが私の冒険心を掻き立てる。同じくらい「日本」というものも面白いのだが、日本には一見してわかるような一貫性がない。だからこそ歴史の追いがいもあるのだが、やはりプロテスタントの「理想国家」として作られた人工物のアメリカのほうが理解しやすく、直截的なエキサイティングが得られる。昨日観劇したミュージカル「ラグタイム」では、二十世紀初頭のアメリカのフランス系アングロサクソン、ラトビア系ユダヤ、アフリカ系黒人の三つの民族の交わりがえがかれており、面白かった。私はスウィング・ジャズが好きなので、音楽としてのラグタイムにもっと言及があるのかしらんと思ったが、そこは特になかった。ミュージカルとしては、クラシック、ラグタイム、スウィング、ポップスと、割とオーソドックスなラインナップだったので、音楽的にはそこまでラグタイムに特化していたわけではなかった。そもそもこのラグタイムという語の、本来次の音が来るであろう箇所(次の拍)ではまだ音が来ず、ラグがあって少し拍より遅いところで次の音が来るシンコペーションのことを表している本来の意味とともに、さまざまな人種や民族がアメリカに絶えず流入し、立場がさまざまに変わりながら、「アメリカ人」になっていくまでのラグタイム(過渡期、猶予期間のようなイメージ)を描いているということなのかもしれない。私は音楽的なラグタイムは、クラシックとジャズを繋ぐ時期のもの(リズム、シンコペーション)という認識なので、まさにラトビア(欧州、クラシック)から移民としてアメリカ(新大陸、ジャズ)へ渡って、映画監督として「アメリカ人」として認められるまでのターテ(俳優は石丸幹二さん)の不遇の期間のことと考えると自然だ。音楽を、ジャズを主体としたミュージカルというのが見てみたいと思う(映画でも)。そういう作品はたくさんあるので、そのうち出会えるといいなと思う。そういえば前回日生劇場で見た「ジャージーボーイズ」はジャズを通り越してポップス…というかブルー・アイド・ソウル(白人がアレンジしたR&B)またはロックの話だったが、アメリカの商業音楽の世界を存分に楽しめた。ジャズのミュージカルとしては誰に焦点を当てるかだが、誰に当てても大物だらけの舞台(要素がもりだくさん)になってしまい、かつミュージカル・ナンバーもジャズにしないと成り立たなさそうだが、日本のミュージカル俳優はジャズ・シンガー(の歌い方)ではないので、なかなか難しいのではないかと感じる。「ラグタイム」ではサラ(黒人女性)役の遥海さんの歌唱が圧倒的で(彼女だけミュージカルの発声ではなく、全編通してソウルの歌い方だった)、歌だけでいえば主役の3人を凌駕していたのではないかと思う。完全に自分の声を縦横無尽に舞台全体で走り回らせ、かつコントロールも完璧だった。ミュージカルの歌い方では、ああいう芸当はできないというか、そもそも方向性が違うのでなんとも言うべきではないが、ソウルやジャズの歌い方もできるミュージカル俳優というのがもしいたら最強だろうな、ということを夢想した。クラシックの基礎の上にジャズの歌い方もマスターしているとなると、日本では平原綾香やKOKIAが私などは浮かぶが(上の世代だと美空ひばりや森山良子だろうか)、芝居も歌も極める上に、歌は2種類も、というのはやはり難しいのだろうか。我らが東啓介氏(私が舞台刀剣乱舞のバックステージ映像で好きになり一時期ガチで応援していた俳優)に関しては、私は今回もあまり納得が行かなかった。同行した友人は「28歳だし、そんなにすぐに変わる(成長する)ものではなく、熟達を求めるのは10年後とかかなあ」というようなことを言っていて(記憶違いがあったら申し訳ない)、私は東啓介にあまりにも多くを求めすぎているのだろうか、と思う。応援していることは応援しているのだが、追っていた頃の急成長と比べて、本格的なミュージカル俳優となってから、舞台上で分かりやすい「成長」というのが感じられないため、刺激に飢えているのかもしれない。演技もいつも同じに見えるし、発声の仕方も特に試行錯誤するでもなくいつも変わらず、なんかこう、変化…バリエーションが無い。それがつまらなく感じる。育ちが良く上品な所作、という当て書きのような役柄を続けて見てしまっているせいもあると思う。5DAYSの時みたいな、もっとしょうもない若者とか、マタ・ハリの時の恋に狂った青年とかの、本人の育ちの良さを封印するような役の方が見てみたいなあと思う。もっとヘドロの中を生きてきたような役を与えられた時に、果たしてどこまで生来の「品の良さ」を封印できるのか。というのは、彼を起用する演出家やプロデューサーが、どこまで東啓介の演技に期待してくれるのか、という問題も関わってくると思う。舞台上の発声はもっと先輩俳優の声の響きを聞いて試行錯誤してみてほしい。声が小さくても響かせるための発声。歌い方も最初の子音の破裂音というか呼気が入りすぎているが、これも前回から変化なしで、歯がゆい気持ちになった。歌はロングトーン以外でも「聴かせ」なければならないが、今のところロングトーンがないと東啓介の歌声はあまり目立てないというか、ほかの歌声との差別化が為されない。これに関してはどうすればいいのか素人にはわからないが、とにかく今までの練習や方向性を踏襲するのではなく、さまざまなやり方、歌い方、技法、発声方法を試して、もっと声に色をつけてほしい。ファンレターに書けばいいことを長々と書いてしまった。ファンレターに書きます。
夜、じゅんえん先生と話していたら赤森さんが来訪し、最終的に2時過ぎまでウエルベックの小説や文化や価値観の違いについて話してしまった。私は『ある島の可能性』を見つけて買って持っているだけでまだ最初の3ページしか読んでいないのだが、今日あらすじを聞いて、中身を結構拾い読みして、どんどん読んでいきたいと思った。ウエルベックを紹介する時の赤森さんは「とにかく中年男性主人公がキツい(見ていてキツい、キショい)」ということを語るのに非常に活き活きとしていて面白い。赤森さんはもともと面白い方なのだが、ウエルベックを語る時の赤森さんは「主人公のここが無理」ということを鮮烈に話してくれるし、ストーリーの面白さもきちんと伝えてくれるので、凄いなあと思う。ちなみにファフナーをTwitter上で語っている時の赤森さんもかなりのエンターテイメント性がある。
じゅんえん先生は酒が飲めない、かつ所得の低い私のことを気遣って、飲みに誘わないでいてくれたのだが(とても優しくて感動した)、今後は数回に一回は混ぜてくれるらしい。私があまりにも拗ねすぎたなと思ったのでやや反省した。
2023.9.19
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梢ちゃん、初めてのイリュージョン
1. 大阪から東京へ引っ越して、あっという間に1学期が過ぎた。 新しい学校で仲良しの友達もできたし、まあどんな環境にもすぐに適応するのがウチの強みやな。 弟の湊(みなと)は転校先の小学校に慣れなくてちょっと苦労している感じ。 それで母ちゃんが新聞の折り込みチラシで見つけた小学生向けの造形美術教室へ行ってみたらどうか、と提案してきた。 湊はウチと違(ちご)て繊細やもんね。 ゾーケイとかビジュツとか、そういうんは向いてると思う。
母ちゃんは教室へ電話を掛けて見学の予約をした。 土曜日午後のクラス。 「梢(こずえ)も一緒に来て」 「えぇー、ウチも?」 「湊は小2やし一人で行かされへんでしょ? いつもママが付き添えるとは限らへんし、そのときはあんたが連れてくの」 「あーん、貴重な週末やのに。母ちゃんのいけずー」 「そろそろ『お母さん』かせめて『ママ』って呼んでくれへん? いつも成○石井で母ちゃんって大声で叫ばれるの恥ずかしいんやけど」 「『おかん』って言われるよりええやろ? それに高級スーパーやゆうて恥ずかしがるんは田舎モンやで。だいたい成○石井くらいアベノ橋にもあったやんか」 「あ、そうか」 「分かったらよろしい、母ちゃん」 「そうやって親を煙に巻くの止めなさい」
2. そんな訳で3人で見学に来た造形美術教室。 三田さんというおばちゃんの先生が教えていた。 生徒は10人ほどで、それに保護者のパパとママが何人か来ている。 この日はカラーキャンドルを作っていた。 使い古しのろうそくとクレヨンを削って湯せんにかける。 何色か溶かして好きな順番で型に流し込めばカラフルなキャンドルが出来上がる。
「桧垣湊くんね? よかったら一緒に作らない?」 先生に誘われて湊は頷いた。 「あのっ、ウチもやらせてもらっていいですか!」 「こら梢!」 母ちゃんが止めようとしたけど、先生は笑って許してくれた。 「湊くんのお姉さんね? もちろんどうぞ」 「桧垣梢ですっ。中学2年です! ヨロシクお願いします!!」 だってキャンドル作り、すごい面白そうなんやもん。
「うわぁー、綺麗やん!」 どや、この色のチョイスはなかなかのもんやろ? 「水色を入れたいの? ええで、お姉ちゃんが一緒に削ったげる」 クレヨンを削るのを手伝ってあげた。この教室、こんな小っちゃい子にもナイフ使わせるんか。 「ボク! そこ指入れたらあかんっ。熱いでぇ~!」 湯せんの中に指を入れかけた男の子を止めた。ホットプレートの扱いも注意させんとあかんなぁ。
気が付けばウチは子供たちの輪の中にいてあれやこれや世話をしていた。 先生は後ろに立って笑っていた。
3. 「この娘が一番楽しんだようで申し訳ありません」 他の生徒さんたちが帰った後、母ちゃんが謝った。 ま、ウチを連れてきたらこうなるの���予想せんかった母ちゃんのミスやな。 「いいんですよ。よかったらこれからも毎週来てくれたら助かるな、梢ちゃん」 「ええんですか?」 「子供、好きでしょ?」 「ハイッ、好きです! ・・母ちゃん、ウチの分の月謝もお願い」 「あのねぇ」 「月謝なんて要らないわ。むしろお給料払わないといけないくらいよ」 「えぇ! お給料もらえるんですか!」 「な訳ないやろ」 母ちゃんがウチの頭を小突いた。
「ところで、」 母ちゃんは先生に向かって聞いた。 「三田、静子先生ですよね?」 「はい」 「覚えてませんか? 30年以上前ですけど京都の中学校で」 「京都? 確かに昔、京都で教師をしていましたが」 「私、美術部でお世話になった鈴木です」 鈴木っちゅうんは母ちゃんの旧姓やな。
「・・鈴木純生(すみお)さん? あの、捻挫して松葉杖の」 「はい!」 「きゃあ~っ」「きゃあ~っ」 母ちゃんと三田先生は両手を握り合った。 それからハグして、その場で跳ねながら一回転する。よお息が合うもんやと感心した。
「チラシでお名前見て、もしかしたら思ってたんです」 「懐かしいわ!」 「よかったら、あらためて昔のお話させ���ください」 「そうね、そうしましょう!」
・・後ろのドアが開��気配がした。 「先生、これも倉庫に置かせてもらっていいですか」 振り返ると背の高いお兄さんが立っていた。 その後ろには可愛いお姉さんもいる。 お兄さんは大きな丸いモンを抱えていた。 イケてない兄ちゃんやな。この、もさぁっとした感じ。 ウチの見立てやと30は超えとるな。もちろん彼女いない歴イコール年齢や。 それと比べてお姉さんはずっと若くてキュート。きっとピチピチの女子高生。
「ああ、まだ生徒さんがいましたね。出直します」 「いいのよ。もう済んでるから。・・それで何を置きたいの?」 「このボールです」お姉さんが答えた。 「くす玉なんだって」 「正確には人間くす玉です」 人間くす玉って、いきなり謎のワード。
「くす玉っ!?」 素っ頓狂な声を上げたのは母ちゃんだった。 「まさかそれ、S型の人間くす玉・・」 「よく分かりますね」 お兄さんが言った。 「あなた何者ですか?」
母ちゃんは両手で胸を押さえて深呼吸して、それから一人で叫んだ。 「きゃあああ~!!」 さっき三田先生とシンクロして叫んだときよりずっと大きな声だった。 皆が驚いて見守る中、母ちゃんだけが絶叫しながらぴょんぴょん飛び跳ねていた。 46歳の母ちゃんが急に若返ってハタチになったみたいに見えた。
4. 次の土曜日の教室。 ウチは一人で湊を連れて来た。 母ちゃんは前の晩からどこかへ出かけ、朝になって上機嫌で帰って来てグーグー寝ている。 ええ歳の主婦がそないな夜遊びしてええんか? 父ちゃんは笑ってたから許してるんやろうけど。
今日の造形美術教室の題材は千切り絵だった。 いろいろな色の和紙をハサミを使わずに裂き、糊で貼って綺麗な絵にする。 子供たちは一生懸命。ウチも一緒に絵を作る。 やっぱり楽しい。 ウチには造形美術の才能があるんやないか。
「みんなーっ、クッキーだよ! あたしの手作り!!」 れいらさんがお菓子を持ってきてくれた。 玻名城(はなしろ)れいらさんは先週出会ったあの高校生だった。 造形美術教室の卒業生で、ときどき子供たちに差し入れしてくれる優しいお姉さん。
「イッくんは二日酔いらしいです」 「男のくせに駄目ねぇ」 れいらさんが報告して三田先生が笑った。 イッくんとはあのお兄さんのことで、本名はえーっと、酒井功(さかいいさお)さんやったな。 れいらさんと同じく造形美術教室のOBで今もいろいろお手伝いしてくれているらしい。
「いったい何人で飲んだんですか? 先生」 「5人ね。イッくんと桧垣純生さんと私。それに桧垣さんの知り合いっていうモデル事務所の社長さんと、京都から来たイベント会社の社長さん。イッくん以外は全員女性よ」 「えっ、ウチの母ちゃんも一緒やったんですか?」 「そうよ。昔のお話が沢山できて楽しかったわ」 「社長するような人と母ちゃんが知り合いとか、知らなかったです」 「面白い人たちだったわ。皆さんお酒もぐいぐい飲むし、盛り上がっちゃった」 「先生もぐいぐい飲んだんでしょ?」 「おほほほ」 「イッくん可哀想。おばさんたちに飲まされて」 「んま、れいらちゃんったら失礼なこと言うわねー」 「ウチにも分かります。30過ぎのおじさんでも、おばちゃんたちから見たら若い男の子ですもんね。そら可愛がられますわ」 「梢ちゃんまだ中学生でしょ? 何でそんなことが分かるの?」 「えへへ、そうゆうんは得意なんです」 「でも30は可哀想よ。彼25歳だもの」 「うわぁ、ホンマですか~! ウチが言うたってチクらんといてくださいっ」 「あはは」「きゃはは」
5. 家に帰って、ウチは母ちゃんから若い頃の話を聞いた。 母ちゃんは京都の会社でイベントの司会やイリュージョンのアシスタントをしていた。 イリュージョンって、あのマジックのイリュージョンなのか。 二十歳のときの写真と言って見せてくれたのは、チャイナ服の母ちゃんが透明な箱の中に出現したところだった。 腰まで割れたスリットから生足出して、きらきら輝く笑顔で手を振っている母ちゃん。 今の母ちゃんと同じ人とは信じられないくらいに綺麗だった。
謎の『人間くす玉』についても教えてもらった。 人間くす玉は同じ会社のアトラクションで、中から女の子が飛び出すくす玉なんだって。 先週イッくんが抱えていたのは一番小さなサイズのくす玉。 「彼がクレクレしたから無料であげたって社長が言ってたわ。意味分からへんよね」 ウチにも意味が分かりません。
夜、れいらさんから LIME のメッセージが届いた。 『明日イッくん家に行くの。梢ちゃんも一緒にどう?』 『行きます!』 『イリュージョンを見せてくれるんだって』 またイリュージョン!? 後にして思えば、それはウチが新しい世界に足を踏み入れるお誘いだった。
6. イッくんのマンション。 「いらっしゃいませ!」 ドアを開けて迎えてくれたのは綺麗な女の人だった。 「あなたが梢ちゃん? 酒井多華乃(たかの)です。よろしくね」 「多華乃さんはイッくんの奥さんだよ。先月結婚したばかり!」 ほぇ~。ばりばりの新婚さんやないですか。 多華乃さんは七分丈スパッツの上にニットのサマーセーターを着ていた。セーターの襟ぐりが大きくて谷間がちらちら。 こんなセクシーな奥様がいるやなんて、この間は「彼女いない歴イコール年齢」とか思てゴメンナサイ!
リビングに案内してもらうとイッくんが待っていた。 ちゃんとお話しするのはこれが初めてだった。 「お招きありがとうごさいます! ・・あの、ウチも『イッくん』って呼ばせてもらってええですか?」 「いいけど?」 「実はどう呼ぶか寝ないで考えました。『イッくん』はちょっとナレナレしい、『イサオさん』はヨソヨソしい、そやかゆうて『イッさん』やと大阪のおっちゃんみたいで」 多華乃さんがぷっと笑う。 「なんでやっぱり、れいらさんと同じ『イッくん』で行かせてください!」 「梢ちゃんって面白いね」 よっしゃ、ウケてくれた! ウチは心の中でガッツポーズをする。
「イッくん、二日酔いは治った?」 れいらさんに聞かれてイッくんは頭をかいた。 「ああ、酷い目にあったけど、タカノがいてくれたから・・」 「熱いねーっ」 大喜びで冷やかすれいらさん。 いつものウチなら一緒に囃し立てるとこやけど、さすがに初対面で遠慮したのは我ながらエライと思う。
「・・んじゃ、さっそくやろうか」 「イリュージョン!?」 「うん、新作だよ。この場所に招かれたゲストだけが見れる限定イリュージョン。そして記念すべき最初のゲストが君たちだよ」 ぱちぱちぱち。れいらさんが拍手した。 今度はウチも一緒に思いきり手を叩いた。
7. 小さなテーブルを挟んで4人がソファに座った。 手前のソファにウチとれいらさん。 向かい側にイッくんと多華乃さん。 こちらから見て向かって左にイッくん、右に多華乃さんが座っている。
イッくんは多華乃さんの腰に左手を回すと、ぐいっと引き寄せた。 多華乃さんがイッくんに密着する。 ニットの襟がでろんと伸びて白い肩が出た。その肩にブラ紐はなかった。 あの、それはお客さんが男性のときに目を惑わすための演出ですか。 女でもドキっとするんですけど。
「これはサテンの袋。長さ2メートルあるのでうちの妻が全部入ります」 イッくんは多華乃さんを左手で抱いたまま、床の袋を右手で拾い上げた。 紫色でつるつるした光沢のある袋だった。 それを多華乃さんの頭から被せる。もぞもぞと右手だけで身体全体を覆ってゆく。 ・・そやから、わざわざ密着してそういう作業をするのは何でですか。 すごくエッチに見えるやないですか。
足先まで袋を被せた。 「足あげて」 多華乃さんの膝がぴょんと伸びて、目の前に袋の先が突き出された。 「れいらちゃん、袋の口をくくってくれる」 「これでいい?」 れいらさんはサテン袋の口を絞って結んだ。
「ありがとう」 相変わらずイッくんは袋に入った多華乃さんを左手で抱いたままだった。 つるつるしたサテンの袋を右手で撫でる。 多華乃さんのボディラインがはっきり分かった。 膝、腰、頭。 うわ、そこは多華乃さんの胸。 いくら奥さんやからゆうて、人前でそないに揉みしだいたらアカンでしょ。
「次はこのシュラフ(寝袋)。梢ちゃん、シュラフって知ってる?」 「ええっとキャンプとかで使うモンですよね」 「そう、携帯用の寝具だね。綿が入ってて暖かいんだ。・・これを被せるから手伝ってくれるかい?」 イッくんに指示されてシュラフを今度は多華乃さんの足の方から被せた。 腰の下を通すとき、イッくんは左手に抱いた多華乃さんを持ち上げて通し易くしてくれた。 頭まで被せ終えると、脇のファスナーを上まで閉めた。
「こっちは縄で縛るよ。・・ん? どこかな」 右手で足元をまさぐった。 「れいらちゃん、そっちに紙袋が置いてない?」 「ええっと・・、あった!」 ウチとれいらさんが座るソファの後ろに紙袋があった。 「そこに縄が入ってるから、それでここを縛って。できるだけきつく」 れいらさんはイッくんのソファの後ろに回り、言われた通りにシュラフの口に縄を巻いて縛った。
「二人ともご苦労様でした。後は座って見てね」 ソファに座ったイッくん。 ウチとれいらさんはその反対側に座っている。 イッくんの左手はシュラフ(の中の多華乃さんの腰)を抱いたまま。
「いま、タカノは二重の袋の中。暖かい、というより暑いだろうね。呼吸するのも辛いかもしれない」 右手でシュラフを押さえた。多華乃さんのちょうど顔にあたる部分。 「この中で美女が苦しい思いをしていると考えたら、・・ちょっと興奮するよね」 「イッくん! そういうフェチな妄想してる場合じゃないでしょ! 梢ちゃんも見てるのに」 「え、ウチ? 何のことですか?」 分からないふりをしたけど、二人の会話は何となく理解��きた。 じっと我慢してる多華乃さん。たぶん本当に苦しい。 そんな多華乃さんを抱きながら「興奮する」と言ったイッくん。ドSやんか。
「ごめんごめん。イリュージョンに戻ろう」 イッくんは右手でシュラフの口を縛る縄を掴んだ。 「いくよ。・・それ!!」 手前に引いた。 シュラフは腰の位置で二つに折れ曲がった。 「もう一回!」 すぐにシュラフの足先を掴んで持ち上げた。 二つ折りのシュラフが四つ折りになった。
「え」「え」 ウチとれいらさんは揃って声を上げた。 「二人で上から押さえてくれるかい」 言われた通りシュラフを押さえると、空気がしゅうっと抜ける音がした。 シュラフは四つ折りのまま潰れて平らになってしまった。
「えーっ、どうして!?」 「多華乃さんは!?」 二人で騒いでいると多華乃さんの声がした。 「お疲れ様、お茶にしましょ♥」 リビングに隣り合ったキッチンに多華乃さんがいた。 紅茶とケーキを乗せたトレイを持って笑っている。 少しだけ乱れた髪。少しだけ紅潮した頬。 とても色っぽかった。
8. 「いったいどうなってるの!?」 「それは内緒。今のところお客さんが来た時に見せられるのはこのイリュージョンだけだからね」 イッくんはタネを教えてくれなかった。 「あんなにたくさんあったイリュージョンの機材はどうしたの?」 「ほとんど人にあげるか倉庫に入れちゃったんだ。これからまた新しいのを作るよ」 「新居に汚いものを置くなって、三田先生に言われたみたい。私は気にしないんだけどね」 多華乃さんが補足してくれた。 「まあ彼のアパートにいろいろ怪しいモノがあったのは確かね」 「怪しいモノはないだろ、タカノ」「うふふ」 ���イッくんはね、何でも自分で作っちゃうんだよ。イリュージョンの道具から吊り床まで」 「スゴイですね! 吊り床って何ですか?」 「あ、ゴホンごほんっ」「・・ちょっと早いかな? 梢ちゃんには」 「???」
いろいろ話をしてイッくんと多華乃さんのことを教えてもらった。 二人は同じ大学で知り合って、一緒にイリュージョン同好会を設立した。勤めるようになってからも仲間と活動を続けている。 マジックの競技会にオリジナルのイリュージョンを出して賞を獲ったこともある。 たまに造形美術教室の子供たちにもイリュージョンを見せてくれているんだって。
「最近はれいらちゃんも参加してくれてるんだ。梢ちゃんはイリュージョンをしてみたいって思わない?」 「やりたいです。ウチもあんなすごいイリュージョンができるようになりますか?」 「できるわよ。私も最初は何も知らなくて始めたんだもの」 「ならウチの親が許してくれたら。あ、日曜日しかダメですけど、いいですか?」 「ぜんぜん大丈夫」
「梢ちゃんを誘おうと思ったのは訳があるの」 れいらさんが説明してくれた。 「三田先生、10月に還暦を迎えるのよ」 「カンレキって?」 「60歳のことだよ」 「先生そんなお歳やったんですか」 「だからお誕生会を企画してるの。そこでイリュージョンも見せようって」 「ははぁ」 「いつもだったらイッくんが多華乃さんとやるんだけど、たまにはサプライズもいいでしょ?」 イッくんと多華乃さん、れいらさん。3人がウチを見て笑っている。 まさか。 「れいらちゃんがものすごく推すんだ。新しく来た梢ちゃんっていう中学生がとてもいい子だって」 「あのウチそんないい子では」 「僕も梢ちゃんと会って思ったよ。是非、誕生会のイリュージョンをやって欲しい。・・タカノはどう?」 「大賛成よ。私も梢ちゃんのことが大好きになっちゃった」 「決まりね。マジシャンはあたし、アシスタントは梢ちゃんだよ!」 れいらさんが宣言した。 どうやらウチはいつの間にかイリュージョンに出ることが決まっていたらしい。 母ちゃん、ウチ、母ちゃんと同じイリュージョンのアシスタントするんやで。怒らんといてな。
「実はこんなのを設計しているんだ」 イッくんはノートに描いた図面を見せてくれた。 スーツケース?の中に膝を曲げて入った女の人のシルエットが描かれていた。 「タカノ用に描いたんだけど、梢ちゃんなら問題ないはずだよ」 「もしかしてウチがこれに入るんですか?」 「そうだよ。それで外から剣を刺すんだ」 「えええ~っ!!」
9. 還暦祝いなんて勘弁してちょうだい。 はじめのうち三田先生はお誕生会を嫌がった。 それでも造形美術教室の卒業生がたくさん来る、保護者の皆さんもお金を出し合って準備してくれると聞いて抵抗を断念した。 「ありがとう! ・・でも赤いちゃんちゃんこなんて着せようとしたら、その場で逃亡するわよ」
母ちゃんはウチがイリュージョンするのを嫌がるどころか大喜びしてくれた。 「三田先生のお誕生日にイリュージョン? 素敵やないの!! それであんた衣装はどうするの?」 「んー、まだ何も決まってへん、と思う」 「マジシャン役はあの高校生の女の子ね? よーし、母ちゃんがまとめて面倒みたげる!!」 母ちゃんはイッくんの携帯の連絡先を聞いていたらしい。 勝手に電話して衣装製作の了解を取り、るんるん楽しそうに準備を始めたのだった。
10. 「スーツケースが手に入ったんだ。サイズをチェックしたいから来てくれる」 次の週、連絡があってウチは一人でマンションへ来た。 イッくんと多華乃さんが迎えてくれた。
さっそくスーツケースを見せてもらう。 「メ○カリで買った中古品なんだ。これをイリュージョンに使う予定」 それは思ったより小さかった。 立てて置いたら腰くらいの高さしかない。 「入ってくれるかい。梢ちゃん」 「あ、はい」 いきなりですか。 ええですよ。そのつもりでスカートやのうてショートパンツ穿いてきましたし。
イッくんが広げたトランクの中にお尻をついた。 「両手は後ろに回してくれるかい」 「後ろですか?」 「そう。手錠掛けるつもりだから」 「てじょう?」 「うん、後ろ手錠。動けないように」 !!
「イサオ! イリュージョン初体験の女の子にそんなストレートな言い方はダメっ」 多華乃さんが叱ってくれた。 「梢ちゃんフリーズしてるじゃない。・・心配しないで、梢ちゃん。マジック用の手錠だから自分で外せるわ」 「身の危険を感じました。ウチは生還できるんでしょうか?」 「んー、大丈夫だと思うよ。しらんけど」 イッくんがのんびり答えた。 ウチの関西人アンテナが反応する。 「あ、今『しらんけど』言いました? ウチも使うチャンス伺ってたんですけど」 「一度言ってみたかったんだよ『しらんけど』。今の使い方でいい?」 「グッドです。イッくん大阪でやっていけますよ」 「ナニアホナコトイッテンネン」 今度は多華乃さんが言った。 「多華乃さん、それは東京のヒトがやると割とスベるんで止めた方がええです。あとイッテンネンやのうてユーテンネンです」 「難しいのねぇ」「ドンマイです」 「ねえ、そろそろ続きをやらない?」 「イッくん人のギャグには冷淡ですねー」 「うふふ。冷たいのも彼の魅力よ」 はいはい、ごちそう様です。
トランクの中で横になった。 身体を丸くして両手を後ろに回す。 「もっと顎を引いて頭を下げてくれる」 「はい」 「あぐらを組む感じで。もうちょっとお尻下げて。・・OK、そのポジションをよく覚えておいてね」 「了解っす」 外にはみ出した髪を多華乃さんが直してくれた。 「大丈夫だね。では蓋するよ」 カチャ。 トランクの蓋が閉じて真っ暗になった。 頭の後ろが押し付けられて痛かった。 ぎゅっと折りたたんだ膝と脛、足の甲も前に当たってキツイ。 狭いやん! 「起こすよ」 ぐらり。 お尻に体重が乗った。 すっと身体が沈んで後頭部に余裕ができた。 足は全然動かせないけれど、少しだけほっとした。
「肩を捩じって、片手ずつ前に出してみて」 ごそごそ。 あ、出せた。 「右手で左の壁、左手で右の壁。触れるでしょ?」 はい、触れます。 「あとはまた両手を背中に戻す」 ごそごそ。 戻せました! 「ここまでできたら問題ないよ。ちゃんと生還できるから安心して」 はい! 「何度も練習して慣れてね。出してって言ってくれたらすぐに開けるから」 分かりました!
11. 「・・梢ちゃーん、大丈夫?」 声が聞こえた。 この声は、れいらさん!? 「はーい、大丈夫ですぅ。れいらさんですかぁ?」 「そうだよー。もう15分くらい経ったっていうから開けるよー」 え? 15分も?
ぐらり。 ウチを閉じ込めていた空間が横向きになった。 カチャカチャ音がして蓋が開く。 イッくんと多華乃さん、それにれいらさんがウチを見下ろしていた。 あ、えーっと。 「じゃーんっ、たった今、囚われの美少女が救出されました!」 あかん、誰も笑てくれへん。 仕方ないので、自分で「えへへ」とごまかして起き上がった。
「大丈夫みたいだね。静かなままだから、ちょっと心配になって」 イッくんが言った。 「ぜんぜん大丈夫です。・・何か馴染んでしもて、ぼおっとしてただけです」 多華乃さんとれいらさんが安心したように微笑んだ。
本当は、女の子を閉じ込めるってこういうことなんかと考えてた。 ちょっとえっちな妄想もしてドキドキした。 でんもそんなん恥ずかしくて言われへんやんか。ウチ純真な中学生やのに。
「そういえばれいらさん、いつの間に来てたんですか?」 「遅れてごめんね。梢ちゃんのお母さんに衣装の採寸してもらってたんだ」 「れいらさんちに行ってたんですか、ウチの母ちゃん」 それで朝からウキウキ出かけて行ったのか。 「面白いお母さんねぇ。あの人から梢ちゃんが生まれたのなら納得だわ」 「変な納得のしかた、せんといてください」 「そうだ梢ちゃんのお母さん、イリュージョンやってたって教えてくれたよ」 「え、そうなの!?」 多華乃さんが驚いた。 「らしいです。ウチも詳しくは知らんのですけど」 「むかし京都にいた頃、かなり本格的なイリュージョンをやってたらしいよ」 「なんでイサオが知ってるのよ」 「前に飲まされたときに聞いたんだ。・・あ、別にわざと教えなかったんじゃなくて、僕は余計なことは喋らないだけだよ」 「む」 多華乃さんはイッくんの首を肘で絞めて押さえ込むと、その耳の後ろをゲンコツでぐりぐりした。 「あれはスリーパーホールド。多華乃さんの得意技だよ」 れいらさんが教えてくれた。
その後イッくんがスーツケースイリュージョンの仕掛けを説明して、皆で進め方を相談した。 途中でれいらさんが「あたしもスーツケースに入りたい」と言い出して入ることになった。 「何時間でも閉じ込めていいよ」なんて言うもんや��ら「なら駅のコインロッカーにでも預けましょか」って返したら「うわーいっ!」と喜ばれてしまった。 多華乃さんまで「あらそれ素敵」なんて言う始末。 「手錠は?」「いいですねー」 「DID♥」「ですっ!」 もうやっとれんわ。 でも、これだけあけすけに話せるんは羨ましいな。 ウチもさっきスーツケースの中で興奮しましたって素直に告白したらよかったかな。
12. お誕生会前日の造形美術教室。 子供たちがみんなで飾り付けをしていた。
ウチは湊と一緒にケーキを作っている。 ケーキと言っても食べられない飾りのケーキだった。 ダンボールの大きな筒に模造紙を貼って、その上から色紙で作ったクリームやフルーツをつける。 「姉ちゃんっ。そこはローソクやんか」 「あ、ゴメン」 「ここのチョコプレートはボクがやる」 「ならまかせるで」 「うん」 造形美術教室に来るようになって湊はずいぶん積極的になったと思う。
立ち上がって周囲を見渡す。 手伝って欲しそうな子は・・おらへんな。 それなら部屋の隅に座り込んでちょっとひと息。 明日はいよいよイリュージョンの本番か。 昨夜見た夢を思い出した。
スーツケースに入っている夢だった。 何故か学校の制服を着ていて、後ろ手に手錠を掛けられていた。 この頃、何度も同じような夢を見る。 ウチはいつもスーツケースに閉じ込められていた。 ・・またか。 夢の中で考える。 ・・それやったら、楽しまな損。
イリュージョンと言われてスーツケースに入ったウチ。 そのままどこかへ運ばれる。 街の雑踏が聞こえる中をごろごろ転がって、静かな場所に置かれた。 コインロッカー!? スーツケースごと、コインロッカーに収納されたんか。 あの、このスーツケース、女の子が入ってるんですけど。
囚われのヒロイン。DID。 ずっと前からDIDの意味は知っていた。ウチはおませな少女なんや。 おませなウチは絶対絶命のピンチにも憧れる。 もう逃げられへん。どこかに売られてしまう。 そうや、可愛い女の子は拉致られて売られる運命にある。 諦めるってキモチ、ちょっとええと思う。
小さく折り畳んだ身体が動かせない。 もどかしい。もどかしくてウズウズする。 そやけど、このもどかしさに耐えるのが乙女の務めや。 身体じゅうが熱くなる。
「・・梢ちゃん!」 誰かに呼ばれて我に返った。 ウチの顔を覗き込んでいるのは、れいらさんだった。 「梢ちゃんがヒマそうにしてるのは珍しいね」 「ちょっと休憩中です。れいらさんはどうしはったんですか?」 「さっきね、衣装を試着してきたの」 「お~っ、どんなでしたか」 「セクシー! 自分でもびっくりしちゃった」 「母ちゃん、ウチの衣装よりもヤル気出してましたもん」 「恥ずかしいけど、あんな恰好めったにできないから頑張って着るよ。梢ちゃんの衣装は?」 「それは明日のお楽しみです。・・ええっと、あの、つかぬ事を伺いますが」 「はい?」
思い切って聞くことにした。
「れいらさん、こないだスーツケースに入ったでしょ? イッくんのところで」 「入ったねー」 「失礼なこと聞くって怒らんといてくださいね」 「うん、怒らない」 「れいらさんと多華乃さん、やっぱりマゾの人ですか?」 「へ!?」 「あのときのお二人、ドMトークで盛り上がってたやないですか。コインロッカーに預けてほしいとか手錠掛けられたいとか」 「そ、そんなこと口ばしったっけ」 れいらさんが顔を赤らめるのを見たのは初めてやないかな。 「『ICレコーダー梢ちゃん』の異名を持つウチですから間違いありません。あのトーク、なんぼかはノリで言わはった思うんですけど、羨ましかったです。あんな風に性癖を発散する女の人を見たのは初めてでしたから」 「中2のくせに性癖なんて言葉使うのね」 「ウチはおませな少女なんです」 「あははは」 豪快に笑われた。 「いいよ、教えてあげる。マジレスすると多華乃さんはドMだよ。自分でも���言してるわ。旦那様のイッくんはS」 「分かります分かります」 「あたしはMとS両方あるな。お相手によってどちらでも。・・あ、お相手って男性に限らないからね」 れいらさんはそう言ってウインクした。 「梢ちゃんはMだよね」 「あ、ウチはまだ・・」 「スーツケースに詰められて感じてるじゃない。もうみんな気付いてるわよ」 ぶわ。 冗談やなしに顔に火が点いた。
しばらくけらけら笑ってから、れいらさんは言った。 「それでいいんだよ! SとかMとか恥ずかしいことじゃないんだし」 「それやったらお願いがあるんですけど」 「何だって聞いたげるよ」 「これからはウチも多華乃さんとれいらさんのドMトークに参加していいですか? ウチもエロいこと言いたいです」 「そんなこと!? あはは、大歓迎!!」 「ありがとうございます。何かすっきりしました~」 「梢ちゃんて本当に面白くっていい子ねぇ。ますます好きになっちゃった。あたしが三田先生なら絶対にぶちゅ~ってしてるところね」 「ぶちゅう~!?」
13. 三田先生のお誕生会が始まった。 造形美術教室の生徒さん、保護者のパパとママたち、卒業生が何十人も集まっている。 イッくんと多華乃さん、それにウチの母ちゃんもちゃんと揃っていた。
司会のれいらさんが開会を宣言した。 続いてイッくんが卒業生代表として挨拶。・・その直後。 ぱーん! 正面にあったケーキからクラッカーが弾けて紙吹雪が舞った。 「三田先生っ。はっぴぃばーすでーぃ!!」 ケーキが上下に割れて、中から立ち上がったのはウチやった。 母ちゃんの作ってくれた白い衣装を着ていて、手には花束。 ケーキから出て花束を三田先生に渡した。、 子供たちは大喜び。他の人たちからも大きな拍手。
ウチが飛び出したのはケーキの形をしたびっくり箱。 その正体は前日に湊が作ったダンボール製のケーキだった。 これをイッくんがたった一晩で改造してくれた。 クラッカーを取り付けて紙吹雪が飛ぶようにした。 上下に分離できるようにして内部を補強し、小柄な女の子なら収まる空間を用意してくれた。 ホンマ、イッくんって何でもできるスーパーマン。
「ご苦労様!」 花束を渡して戻って来たウチをれいらさんが労ってくれた。 「ケーキの中でドキドキした?」 「はいっ。次にパーティするときは一緒にびっくり箱しましょ!」 「いいわね!」 ウチは皆が集まる前からケーキの中にずっと隠れていたのだった。
お誕生会はそれから子供たちが歌ったり踊ったり、造形美術教室の昔のビデオを上映したりして進行した。 そしてメインイベント。ウチとれいらさんのイリュージョンの時間になった。
14. れいらさんが衣装を着替えて出てきた。 「うわあ」「れいらちゃーん!!」 「すごーい!」「キレイ!!」 大人も子供もみんなびっくりしてるなぁ。 「みんなー! お姉ちゃんこれから頑張ってマジックするよー。立ち上がったりしないで見てねー」 「はーい!!」
れいらさんは真っ赤なボディスーツとその上に短い黒ジャケットを着ていた。 ボディスーツはハイレグで胸のカットも深い。 バニーガールみたいにも見えるし、白いブーツを履いているからレースクイーンのようにも見える。 エロくて恰好いい。 母ちゃんが「萌える~!!」と雄叫びを上げながら作ったコスチュームだけのことはある。執念がこもってるわ。 何人かのパパが見とれてしまってママから叱られているのもお約束。 さすがにこれを女子高生に着せて小学生の前に立たせるんはええのかと心配やけど、三田先生が手を叩いて喜んでるから構へんのやろうね。

れいらさんが手招きした。さあ出番や。 「マジックをお手伝いしてくれる梢お姉さんです!」 「よろしくーっ」 ウチはスーツケースを引いて出て行く。 あの中古のスーツケースはイッくんが改造して外観が変わっていた。 正面と裏側に細長い穴が6つ。 これはサーベル(剣)を刺すための穴。 ギミックの都合でキャリーハンドルは上げたまま固定。
ウチはお客さんの方に背中を向けると両手を後ろで組んだ。 その手首にれいらさんが手錠を掛けた。 左右に引っ張って手錠が外れないことを示す。 それが済むと、れいらさんはスーツケースを倒して蓋を開いた。 スーツケースの中は仕切り類が全部外されていた。 代わりに蓋の裏に剣刺しのギミックがついて、少しだけ狭くなったけどウチが入るのには問題ない。
うちは靴を脱がせてもらって裸足になり、スーツケースの中に横になった。 膝を引き寄せて身体を丸くする。 簡単な所作やけど、一発で決まるように何回も練習したんやで。

れいらさんはスーツケースの蓋を閉じようとする。と、中身が大きすぎるのかなかなか閉まらない。 蓋にお尻を乗せて座って閉めた。パチンとロックを掛ける。 キャリーハンドルを両手で握り、重そうにスーツケースを立てた。
れいらさんが次に手に取ったのはサーベルだった。 これもイッくんの手作りで、長さ1メートルほど。 銀色のブレード(刃)と手元が束(つか)になっている。 れいらさんはブレードを指で撫でて痛そうな顔をした。 「怖い人は目をつぶってねー」 スーツケースの後ろに立ち、一番上の穴にサーベルの先端をあてがった。 何人かの子供が自分の手を目の前にかざした。
15. カチャリと音がしてスーツケースが閉ざされた。 ウチはもう外へ出られない。 ぐらり。 スーツケースが立てられて世界が90度回転した。 いよいよここから本番。 ウチはスーツケースの中で深呼吸する。 こんな姿勢やから本当の深呼吸は無理やけど、大切なんは気持ちやからね。
スーツケースの中で身体を捩じった。 背中で手錠を掛けられていた両手を前に回した。 そんなことができるのは、左右の手錠が分離できるからだった。 手錠の鎖は紐で繋がっているだけで、その紐はリールで伸びるようになっている。
前に出した右手で左の壁をまさぐり、そこに6個並ぶレバーを探し当てた。 蓋の裏にはサーベルの一部、ブレードの先端だけが隠されている。 レバーを動かすとスーツケースの蓋の穴からその先端が突き出る仕組みになっている。 一方、れいらさんが持つサーベルは、スーツケースの穴に押し込むとブレードが縮んで束の中に収まる仕掛けになっているのだった。
「・・スチール製のメジャーがあるだろう? あれと同じ構造だよ。ブレードは硬いように見えて実は巻き取られてるんだ」 「?」「?」「?」 ウチもれいらさんも、一緒に聞いていた多華乃さんも、イッくんの説明はさっぱり理解できなかったと思う。 理屈は分からんでも、効果は分かった。 後ろからサーベルを押し込むのに合わせてレバーを操作したら、お客さんにはサーベルがスーツケースを貫通したように見える。 大切なのは二つ。 二人のタイミングを合わせること、それから6個ある穴の順序を間違わんようにすること。 それさえ守ればバッチリのはずや。
れいらさんが最初の穴に1本目のサーベルを押し当てた。 コツン。 スーツケースの中に音が響く。 ウチは1秒待ってレバーを下げた。 これでサーベルの先端がにょっきり顔を出したはず。
2本目、3本目。 ウチは順番にレバーを操作した。 後で聞いたら子供たちとパパママたちはビックリしていたらしい。 ウチが本当に刺されたって思った子が多かったんやて! うわぁっ嬉しいぃ、って叫んでしもたよ。 4本目、5本目、6本目。 全部のサーベルがスーツケースを突き通った。 れいらさんはそのスーツケースをくるりと回してお客さんに全体を見せた。

今度は後半。サーベルを抜く演技になる。 レバーを逆の向きに動かせばブレードの先端が引っ込み、同時にれいらさんがサーベルを引き抜いたらええんやけど、実はこれはけっこう、ちゅうか、かなり難しい。 前半でサーベルを刺すときは、れいらさんがサーベルを押し当てる音を合図に、少し遅れてレバーを動かせばよかった。 「・・でも、抜くときに少し遅れるのは困るんだ。ちょっと考えたら判ると思うけど」 「?」「?」「?」 またしても女性3人はイッくんの説明を理解できなかった。 「後ろで引き抜いてるのに、前に出ている先端がそのまま残っているのは不自然だよ。あれ?って思われてしまう」 「そうか」 れいらさんが気付いた。 「前も後ろも同時じゃないといけないんですね」
イッくん細かい。でもその通りやな。 ウチとれいらさん、スーツケースの中と外でタイミングを完全に合わせないといけない。 何か合図が要る。でもどうやって? イッくんのアイデアは単純やった。 「それならお客さんに合図してもらおう 」
16. 子供たちに向かってれいらさんが呼びかけた。 「みんなー、梢お姉さんが穴だらけになっちゃいました! 助けてあげたいですか?」 「助けてあげたーい!」 「じゃあ、この剣を抜きまーす! 何本抜かなきゃいけないかしら?」 「ろっぽん!!」 「1本ずつ抜くから一緒に数えてくれるー?」 「はーいっ」「数えるー!」 「数え間違ったり、声が揃っていなかったりしたら、梢お姉さんは死んじゃうかもしれないよ?」 「だめー!」「やだあっ!!」 「じゃあ練習しよう! いい? せーのっ、いーち、にぃーい・・。ああぁっ、ダメダメ揃ってないっ。もう一回!」 全員が揃って1から6まで数えられるまで練習させた。 「いくよ? せーの!」 「いーっち!」 れいらさんがサーベルを引き抜くと同時にブレードの先端が引っ込んだ。 「にぃーい!」 子供たちの声が響く。リズムもペースも綺麗に揃っていた。 「さーん!」 どんどんサーベルが抜けて行く。 「しいー!」 あと2本! 「ごぉー!」 これで最後!! 「ろぉーっく!!」
「はーい! 全部抜けたねー! 梢お姉さんは無事かなー?」 スーツケースを横に倒して、ロックを解いた。 カチャリ。 横になっていたウチが身を起こした。 「うわー!!」「あれー!?」 白い衣装がピンクに変わっていた。 立ち上がって一回転して見せた。 どうかな? 母ちゃんの作ってくれた早変わり衣装。 可愛いでしょ?

れいらさんに手錠を外してもらう。 小声で言われた。 「知らなかったよ。びっくり!」 「えへへ。黙っててスミマセン」 二人並んでお辞儀をした。
三田先生が駆け寄って来た。 「すごいすごいすごい!! どきどきしちゃった! ありがとう!!」 イッくんも来て握手してくれた。 「やられたよ。衣装チェンジとはね」
もう一度拍手を浴びながら皆でお辞儀した。 お客さんの中に母ちゃんと湊が座っているのが見えた。 湊は黙ってサムズアップしてくれた。 あんた、どこでそんなゼスチャー覚えたの。格好ええやんか。 ウチも笑って親指を立てて返す。 すると母ちゃんまで指を立ててウインクした。 母ちゃんっ、指が違う. 立てるのは中指やのうて親指やちゅうねん。
17. それから二週間経った夜。 ウチと母ちゃん、れいらさん、イッくんと多華乃さん夫妻、そして三田先生がレストランの個室にいた。 三田先生がお誕生会のお礼にと招待してくれたのだった。
「ウチ、フレンチなんて初めて」「あたしもです!」 「お箸で食べるフレンチ、いいですねー」 「友人のお店なの。形式張らずに楽しんでちょうだい」 ワインとノンアルコールのスパークリングで乾杯。 「あら、あなたたちもノンアル?」 先生がイッくんと多華乃さんに聞いた。 「僕らは後でいただきます。今は、ちょっと」 「彼、リベンジする気なんです」 多華乃さんが言った。 「タカノ、いきなり言う?」 「いいじゃない。頑張るのは私だよ?」 「あ、ぴぴっと来たっ。イリュージョンするんでしょ!」 れいらさんが言った。 イリュージョン!?
「この人、梢ちゃんの衣装チェンジに全部持ってかれたこと未だに根に持ってのよ。子供みたいでしょ? うふふ」 「そんなことはないよ。僕は」 「うん、イッくんってそうだよね」「分かるわ」「イッくん、ホンマですか?」 「ぼ、僕は・・」 「あまりイサオを苛めないであげて。その分、私が彼に苛められるんだから♥」 謎めいた微笑の多華乃さん。 他のみんなは笑っている。母ちゃんまでウンウンって頷いて。 まさかこの二人、ムチとローソクでSMプレイしてたりする?
18. 「ええっと、やろうか」「はい!」 イッくんと多華乃さんは席から立ちあがった。 一度出て行って戻って来た。 持ってきたのはあのスーツケースと紙袋。それからサーベル、ではなくて金属の細い棒。 「先日とは��向を変えたスーツケースイリュージョンをやります。・・これは」 イッくんはそう言って金属棒を持って水平に構えた 「ステンレスの丸棒です。直径5ミリ、スーツケースの穴をぎりぎり通る太さです。先端を円錐形に削り出しました」
イッくんはスーツケースを床に倒して蓋を開いた。 れいらさんが黙ってウチの肩を叩いた。それから開いた蓋の裏を指差す。 !! あの剣刺しのギミックがない。 蓋の裏に張り付けられていた黒いパネルのような仕掛けがなくなっていた。 6個の穴がはっきり見えた。
多華乃さんがさっとシャツを脱いだ。 ブルーのスパッツ。その上は黒いブラだけ。格好いい!! スーツケースの中に入って膝をついた。 そのまま身体を逆海老に反らしてスーツケースに収まる。むちゃくちゃ柔らかいやないですか。 イッくんが多華乃さんの肌を撫でる。ああ、また。 「あら♥」「まぁ♥」 嬉しそうな声を上げたのはウチでもれいらさんでもなく、三田先生と母ちゃんだった。

イッくんはにやりと笑うと蓋をぱたんと閉じた。 すかさずスーツケースを立てて起こす。 紙袋から縄束を出してスーツケースに巻きつけ、荷物みたいにきりきり縛った。
れいらさんがウチの耳元でささやいた。 「多華乃さん、頭下向き」 ホンマや! あのポーズで逆立ち?
イッくんはスーツケースの後ろでステンレス棒を水平に構えた。 「前後の穴を一発で通すのが難しいんだ。・・練習の成果をご覧あれ」 息を整える。 いきなり穴に突き刺した。合図も何もしなかった。 反対側の穴から棒の先端が飛び出す。 すぐに引き抜き、別の穴に突き刺した。 抜いては刺してを何度も繰り返した。 むちゃくちゃ速かった。
今度はステンレス棒を6本、スーツケースの横に並べた。 まず1本を突き刺した。 すぐに次の1本を持って突き刺した。 立て続けに全部の棒を刺してしまった。
「・・おっと失礼」 テーブルにあった紙ナプキンで、一番下の棒の先端を拭いた。 ナプキンが血に染まったみたいに赤くなった。 ひょえー。 ウチらのイリュージョンより迫力ありまくり! 多華乃さんがどうなっているのか想像できなかった。 ぎちぎちに縄で縛ったスーツケースの中で、無理なポーズで逆立ちで。
「では助けてあげましょう。彼女が無事でいるかどうか心配です」 ステンレス棒を全部引き抜き、スーツケースの縄を解いた。 床に寝かせて蓋を開ける。 入ったときと同じポーズの多華乃さんが現れた。 ぐったりしているみたいやった。 イッくんが多華乃さんの背中に手を当てて起こした。
血!! 多華乃さんの胸と脇腹から真っ赤な血が流れていた。 ええ!! まさか、大怪我!? れいらさんも驚いて固まっている。 「・・ええっと、残念ながらイリュージョンは失敗したようです。妻は天国へ旅立ちました」
ガタ! 立ち上がったのは母ちゃんやった。 自分のナプキンを掴むと、二人に近づいて多華乃さんのお腹をごしごし擦った。 「ひ、・・きゃはははっ」 多華乃さんが身を捩って笑いだした。 「あーん、ごめんなさい!!」
「あんたら、やりすぎ! これ、ケチャップでしょ?」 母ちゃんが言う。母ちゃんの目も笑っていた。 「恐れ入りました」 イッくんが謝った。 「最��まで騙せると思ってたんですけど、さすがですね」 「昔よく使ったわ。匂いで分かるからお客さんと近いときは注意が必要なの」 「勉強になります」
19. 食事が済んで、三田先生がイッくんに聞いた。 「さっき、もし桧垣さんに見抜かれなかったらどうするつもりだったの?」 「そのときは蘇生措置をして生き返らせる予定でした」 「ウソ。スーツケースに入れて持って帰るって言ってたじゃない、イサオ」 「そっちの方がよかったかな?」 「そうね。私はまる1日詰められてもイサオのためなら耐えるわよ♥」 「多華乃ちゃん」「はい?」 三田先生がいきなり多華乃さんの頬を両手で挟んでディープキスをした。 「ん! んんん~っ!!」 「素敵よ、その心がけ。でも新婚だからってサービスしすぎると、彼、図に乗るわよ」 「はぁ、はぁ、・・はい」
「次は、」 三田先生が顔を向けたのは・・、ウチやった! 「一番頑張ってくれた梢ちゃん♥」 「は、はい」 ウチは顔を近づけてくる先生から逃げられなかった。 「本当に、一番お礼を言いたかったのはあなたなの」 「うわ♥」れいらさんの歓声が聞こえた。 「これからも、お願いね」 ちゅう。 マウスツーマウスでキスをされた。 女の人相手で快感やったというと変態みたいやけど、本当に気持ちよくてうっとりしてしまった。 ウチは皆が見ている前で60歳のおばちゃんにファーストキスを奪われたのだった。
・・それからウチは長いことイリュージョンの活動をすることになった。 イッくん夫妻とれいらさんにはまだ秘密があったけど、それを知るのはずっと先のことだった。
────────────────────
~登場人物紹介~ 桧垣梢(こずえ):14歳、中学2年生。一人称は『ウチ』。 桧垣湊(みなと):8歳、小学2年生。梢の弟。造形美術教室の生徒になる。 桧垣純生(すみお):46歳。梢と湊の母ちゃん。旧姓鈴木。 三田静子:60歳。小学生向け造形美術教室の指導者。嬉しいと誰が相手でもキスする癖がある。 玻名城(はなしろ)れいら:17歳、高校2年生。造形美術教室の卒業生で教室を手伝っている。 酒井功:25歳。造形美術教室の卒業生。趣味でイリュージョンをやっている。通称イッくん。 酒井多華乃(たかの):25歳。功の新妻。身体が柔らかい。
4年前に書いた 多華乃の彼氏 と 多華乃の彼氏2 での仕込みをようやく回収しました。 仕込みとは、造形美術教室の先生の名前を三田静子にしたこと、そしてイッくんが京都に行って人間くす玉をクレクレしたことです。 大抵の場合、回収方法はまったく考えずに執筆時のノリだけで仕込むので、そのまま放置で終わることも多いです。 今回はAIで作成したイリュージョン絵(=スーツケースに女の子が入って笑っている絵)が中学生のように見えたことから、この女の子を純生さんの娘にして仕込みを回収することにしました。 純生さんと三田先生のエピソード(純生さん中学3年生のとき)は『三田静子』をサイト検索すれば出てくるはずなので興味のある方はお読みになってください。
今回のイリュージョンは3つ。 イッくんのマンションでやった袋詰めからの脱出は、現実に演じることが可能と想定しています。 ただし、あの部屋(正確にはソファと隣接してキッチンがある)かつ観客が少人数でないとできないので、舞台で演じるには向きません。 袋の上から多華乃さんのボディを撫でまわすのは夫婦のイリュージョンだからできることですね。
梢ちゃんのスーツケースイリュージョンは、前記の通りスーツケースに入った女の子をAIに描かせたので、それなら剣を刺してしまえと考えたものです。 ダンボールの剣刺しはよく見かけるイリュージョンですが、スーツケースは珍しいかもしれません。 サーベル回避のギミックは、これならできそう?というものをイッくんに考えてもらいました。 刺すときと抜くときのタイミングの相違は作者のこだわりです。お読みの皆さまには面倒くさかったら申し訳ありません。
梢ちゃんのスーツケースで仕掛けを凝ったので、多華乃さんのスーツケースは一切ギミックなしの命がけです(笑)。 ダンボールよりはるかに狭いスーツケースの中、軟体ポーズでその上逆立ち。いったいどうやって6本のステンレス棒をすり抜けたのでしょうか? 最後に母ちゃんが止めたのは本当はルール違反です。 元プロだから分かっているはずですが、レストランで血まみれは悪乗りが過ぎましたね。
本話の最後で梢ちゃんの今後を示唆しました。 イッくん夫妻とれいらちゃんの秘密とは、もちろん 前話 で描いたあの趣味です。 梢ちゃんがどんなM少女に育って行くのか作者の私も楽しみです。
挿絵は今回もすべてAIで生成して一部手修正を施したものです。 一番うまくできたのはれいらちゃんのマジシャン姿。やはりAIは単純な立ちポーズなら簡単です。 ここのところAIに描かせた絵にストーリーをつける小説が続きましたが、次回以降はストーリーを先に考えて挿絵をつける従来の手順で進めたいと思います。 しばらく時間が開くと思いますが気長にお待ちください。
最後に小説ページの体裁について。 tumblr の入力エディタが更新され、従来の入力方法(HTML入力)が使いモノにならなくなりました。 大きな変化がないように努めていますが、一部違和感があるのはお許し下さい。 (例えば、後書き前の区切り線が引けない~泣)
それではまた。 ありがとうございました。
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河野太郎が、「年末調整を廃止して全納税者が確定申告する税制にする」とXで宣言して炎上や賛同やらされている問題。これはずっと以前から理想的な税制として語られてきたもので、別に太郎が急に閃いた事ではない。 https://x.com/konotarogomame/status/1830737429361504665/photo/1 https://nordot.app/1203999108206085074 シャウプ勧告 元々はGHQが戦前の日本の旧弊で反民主的な税制を是正せんとした税制改造(シャウプ勧告)に端を発する。つまりは民主的税制案である。 戦前の日本では納税単位がイエ単位であったり、戦時増税として物品税が多く設定されている為に市場じゃなくて個人売買した方がお得とか、税務署自体もやたら威張っているなどの問題があった。イエ単位の納税は個人がイエに縛られている事を前提とするので反自由、反民主的であり、会社員世帯が税額の面で不利になる。戦前は資本主義が未発達で会社員は限られたエリート的な身分だったが、これが大衆化して給与も下がったら不公平は看過しえないものになる。また地方自治体の税収源が少なすぎる為にを国家中央が握る地方交付金に依存しすぎているのがファシズムの浸透の原因にもなった。 こういう判断でアメリカ型の税制の更に理想的な形を日本で施行して、根幹から民主的資本主義国家の骨格を持たせようとした。 それで導入されたのが、法人税、青色申告と複式簿記、固定資産税などだ。戦前では土地の税金は地租、家屋の税金は家屋税で、共に国税であった。これを廃止して地方税の固定資産税として納税先は自治体となった。 で、問題の源泉徴収、年末調整だが、これも廃止して個人の確定申告にする事がシャウプ勧告に入っていた。だが困難という事で見送りされてしまったのである。 それはまず取りっぱぐれの問題。税務署も会社を押さえておけば効率的に所得税は見逃しなく徴税出来るが、社員個人の確定申告のみとしたらバックれる奴が出てくるに決まってるし確認作業も大変だ。 もう一つは社員が確定申告に来るのが大変だという問題。確定申告の為には一日休まなきゃならない。そして税務署で延々並んで…というのをやらないといけない。当時産業が殆ど吹っ飛んでしまって生きるのも大変な時期に金を払う為に一日休めるか、会社も社員がごっそり来ないという状態を是認できるか。 こういう反対意見に押し切られて天引きの源泉徴収と年末調整のままになってしまった。 総確定申告の理想性 シャウプ勧告には有ったのに見送られてしまった総確定申告制だが、その後も理想的税制として導入を訴える声はあった。 それはまず、太郎も言っているが税の仕組みが判るようになり、使われ方にも分解能が上がるだろうという事。 ブクマページなどでは「この機会に簡素化して控除も無くそう」みたいな事言ってる人がいるが、逆だよ逆。どういう行動の支出に控除があるのか、自分はどの控除が掛かっているのかという事を知る事が出来る。「控除も無くそう」というのは天引き以外の納税を知らない意見だ。「所得税」の欄の数字が所得額から単純に出てると思ってる。だがこの数字は会社が控除額を計算して算出しているのだ。 控除がどこに掛かるかを知れば、現在の国が不公平を是正する為に会社員のどこの負担を認めて差っ引いているかが判るようになる。 もう一つは利害の誘導。国がどのような行動をして欲しいか、というのが控除に現れる。マイホームを買ってローンを組んで欲しいか(見かけ上通貨流通量の増加→インフレ)、子供を産み育てて欲しいかなどだ。これは法人税や青色申告だともっと鮮明に意図が見える。 納税者意識は確実に高まるしその使われ方にも興味が行き易い。 今までは確定申告の為に一��休んで税務署に行くというのが負担だった。年度内で転職したのに確定申告に行かない(行けば取り過ぎ分還付されるのに)人も多かった。 でも電子納税なら夜でも出来るし時間も掛からない。税務署で並ぶ必要もない。負担にならないのだ。テック万歳である。 という事は増田は太郎の意見に賛同していると思うじゃん?残念だが反対なのだ。 ネオリベラリズム残滓の問題 太郎の意見ではこの施策が 所得情報を迅速に把握できるので、必要な人にピンポイントでプッシュ型支援を行うことができる としている。だが「所得情報を迅速に把握」と「ピンポイントでプッシュ型支援」は繋がるのだろうか? この二つは別の問題じゃないのか? 更に現在でも源泉徴収の為に社員のマイナンバーは必須となっている。総確定申告化で何か変化があるのか?何もない。 因みに自治体によっては低所得者向けに交通チケットや給付金、買い物券などの支援をやっている。現在でも納税額を見てプッシュ型でそれら申込書を送ったりしている。「ピンポイントでプッシュ型支援」されているのだ。 但し地方自治体が所得額を把握するには、国税が所得税確定→それを基に自治体が住民税確定と段階を踏むので、時期は6月辺りになる。太郎はそれを前提に「所得情報を迅速に把握」としたのだろうが、白色申告時期の3月から3か月程度でしかない。この文章を読んで「たった3か月じゃん」と思えないのはダメである。 だが問題は何故こういう力点と作用点が違う事象を言っているのに通ってしまうかという事である。 それは2000年代前半の日本でネオリベが流行した為なのだ。 日本でのネオリベ流行には特徴があり、支持者に経済音痴が大変多い。商取引での慣行や法制度、更には経済事件は非破廉恥罪で社会の善悪感情と異なるという常識すらない者が多い。 また「メンバーシップ型会社から自由な」個人��謳っているくせに経済事象を給与所得者の延長で考える事が多い。多いというか専らだ。つまりはB層の問題だ。 賛同する政策というのは何かを壊す(入力)というものが多く、その結果は任意の好ましいものになる(出力)という根拠がないものだ。 例えば郵便局を株式会社化して上場させるという入力に、サービス向上という出力が発生すると素朴に考える。だが普通に考えれば配当が欲しい株主が離島や過疎地でのユニバーサルサービス継続に賛成する筈がないよなぁ。 また、賃貸の家賃を安くする(出力)為に土地建物の相続を廃止(入力)して不動産会社が取得すべきという意見も見られた。これは既得権益者の地主などにも諭されていたが、物件取得費を家賃で回収する必要があるから安い物件なんて無くなるわなぁ。 太郎が今言ってる解雇自由化(入力)で雇用流動性という出力が得られる論も同じで、入力と出力が結びついていない。それを結びつけるのにはどうするか?という設問が出ない言論空間をアテにしているのだな。 こういうややこしい社会制度を解体したら望ましく自分が得する結果になる筈!というのは90年代まではリベラルがやっていた。自分が抑圧されているのは社会のせいだ、と。また海外出羽守も同じことを言っていた。 2000年以後になるとリベラルは退潮し、代わりにネオリベが流行した。これは市場を喰われたって事である。 だが実際に導入されてみるとこんな考えだったB層達は解放されず、勝者はノウハウを集積出来る法人であった。 また単に市場をシュリンクさせ余剰を無くして全体の賃金を縮小させデフレを進行させただけだった。日本からはGAFAMは現れず、Ankerも現れず、3Dプリンタなどの新しい技術を売る会社に日本企業の名はない。成長してLGサムソンになる会社もいなかった。 これらが出来なくなる基盤だけを提供したのである。日本のネオリベと米韓のそれは性質が違うのだ。 ところがそんな入力と出力の間を繋げる努力も無しに任意の入力すれば任意の出力が得られると言って憚らない連中は残存している。彼らが持つ社会へのルサンチマンが入力と出力の必然性を彼等の中で担保しているのである。 そんな連中に向けた言葉を語っているのが太郎なのだ。 今回の太郎の表明に「複雑な税制が無くなって控除が廃止される事」を望んでいる意見が寄せられているのがその証拠である。天引きサラリーマンから見たら控除の必要性なんて判らない。それでそれを敷延して判り易い世界が来る事を期待してしまうのだ。もうこういう支持のされ方をする政治家は落とした方がいいだろう。 太郎のアカンみ 太郎はかなり面白い来歴の人物だ。Wikipediaにもあるがアメリカの大学で政治学を学んでいるしその途中でポーランドに留学している。その間に後に初代ポーランド大統領になったワレサ「連帯」議長を訪ねている。当時はまだゴルバチョフのペレストロイアの前で、連帯は反体制運動と見做されていて太郎も公安警察にしょっ引かれている。 連帯は自由主義寄りだったユーゴスラビアの自主労組のような組織で、共産党独裁が前提のソ連勢力圏では「修正主義」と見なされて弾圧されていた。だが後の東欧の自由化の先陣を切った運動であった。 その連帯のワレサ議長に、ゴルバチョフ以前に会いに行くというのはすごい行動力だ。筋金入りのリベラルといっていい。 だがこういうリベラルが保守側に転向した際に最悪となるエピソードというのは多い。一番判り易いのがアメリカのネオコンサバティブで、その中心人物はスターリンに左翼偏向と詰られたトロツキストだった。 『国益』誌でソ連崩壊をアメリカ的民主体制の勝利(歴史の終わり)とする一派を押しのけて軍拡競争の為と総括した連中が911の衝撃に乗じて共和党内の穏健派を追い出し、宗教右派と手を組んで共和党ジャックしてしまった。その結果イラク戦争を起こし、イラク国内を平定出来ずにISISの活動を許し、中東を戦乱の渦に巻き込んでしまった。責任を問われて失脚し、穏健派をパージしていたので今の共和党は宗教右派と陰謀論のトランピアンに乗っ取られた、アメリカの覇権の内なる脅威みたいなもんになっている。 太郎の場合も実効性や結果のフィードバックを取り込んで行動していない。設計→実行→修正の行政組織の行動葎を取り込まずに、設計しっぱなしなのだ。イージス・アショア配備で断念する旨の報道が出たのに「自分は知らないから誤報」と言って後で泣き言言っていたのを覚えているだろうか?防衛省内の報連相サイクルからパージされていたという事だ。 ワクチン担当でも残数ショートで産業医接種を突然停止させ、その余波で通常の大規模接種も長く停止してしまったのに、それは外部の問題だと言って憚らなかった。自分の行動が及ぼす影響を考えず、自分の設計は正しいと言うだけだった。 どうも安倍菅時代に初入閣してそれが通ると覚えたようである。 Xのブロック問題も初めは「変なネトウヨ」(本人談)をブロックしていただけだった。紅の傭兵の息子だから中国のスパイだろお前は、的なものを相手にする必要はない。だが入閣後は自分の行為を評価している人全てブロックになって、マスコミの質問もブロック、となるとただ設計があるだけで、それが適切な出力となって社会に作用するか?という事を問われる環境に居た事が無い。 そうすると源泉徴収年末調整廃止と総確定申告化が如何にシャウプ勧告に基づき、ずっと議論されてきた理がある方策だとしても反対するしかない。 しかもこれが「ピンポイントのプッシュ型支援に繋がる」と、入力とまるで関係がない出力が得られる、と言っていれば猶更だ。これは20年遅れのB層に設計しっぱなしの政治家が語っているというだけの下らん話である。それは騙しがデフォルトのコミュニケーションをしているだけに過ぎないのである。
河野太郎の国民総確定申告制は昔から理想的な税制とされてきた
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エイメ桐山朱音の研修日
島の病院での研修
第一章 初日の戸惑い
潮風が頬を撫でる中、エイメ桐山朱音は白いコートの襟を正した。眼前に広がる小さな病院は、彼女が想像していた最新設備の整った都市部の病院とは程遠い。しかし、ここが彼女の研修地。立派な医師になるという夢への第一歩を踏み出す場所だった。
「おーい、新人さーん!」
振り返ると、白衣を着た中年の若い男性が手を振っている。髪は少し乱れ、笑顔が印象的だった。
「高見沢俊介です。院長をやってます。堅苦しいのは嫌いなんで、気楽にタカミーって呼んでください」
彼女は慌てて深々と頭を下げた。「研修生のエイメ桐山朱音です。これからよろしくお願いいたします!」
「おっと、そんなに堅くならないで」高見沢は苦笑いを浮かべた。「ここは島の小さな病院。都会のような設備はないけれど、人の温かさだけは負けませんよ」
朱音は背筋を伸ばし、真剣な表情で答えた。「はい! 私は必ず立派な医師になります。どんな困難にも負けません!」
高見沢は彼女の熱意に微笑んだ。「その心意気、いいですね。でも、まずは現実を知ることから始めましょうか」
第二章 現実の重み
研修が始まって一週間。朱音は毎日、教科書通りにいかない現実に直面していた。
「先生、この患者さんの症状は教科書の記述と違います」朱音は困惑した表情で高見沢に相談した。
高見沢は患者のカルテを見ながら答えた。「教科書は基本中の基本。でも、人間の体は教科書通りには動かない。一人一人違うんです」
「では、どうすれば…」
「観察することです。患者さんの表情、声の調子、歩き方。全てが情報です」彼は患者のベッドサイドに向かいながら続けた。「おはようございます、田中さん。今日の調子はいかがですか?」
高齢の患者は笑顔で答えた。「先生、おかげさまで随分楽になりました」
診察を終えて病室を出ると、朱音は感嘆の声を上げた。「先生は診察前から、患者さんの状態が改善していることを分かっていたんですね」
「そうです。田中さんの歩き方が昨日より軽やかでした。それに、声に張りがあった」彼は振り返り、朱音の目を見つめた。「医師は探偵でもあるんです。小さな手がかりから真実を見つけ出す」
第三章 挫折と学び
ある日、朱音は救急患者の対応で大きなミスを犯してしまった。幸い、高見沢がすぐに気づいて事なきを得たが、彼女の心は深く傷ついていた。
「私は医師に向いていないのかもしれません」診���室で彼女は俯いて呟いた。
しかし、彼は椅子に座り、ゆっくりと口を開いた。「朱音さん、失敗は成長の糧です。私も数え切れないほど失敗しました」
「でも、先生は…」
「完璧な医師なんて存在しません。私たちは人間です。大切なのは、失敗から学び、同じ過ちを繰り返さないこと」彼は窓の外の海を見つめた。「この島に来て20年。毎日が学習です」
朱音は顔を上げた。「先生でも、まだ学ぶことがあるんですか?」
「医学は日進月歩。それに、人の心は複雑です。技術だけでは治せない病気もある」高見沢は彼女の方を向いた。「あなたの正義感と真面目さは、きっと患者さんの心を救うでしょう」
第四章 成長の兆し
研修も中盤に差し掛かった頃、朱音は少しずつ変化を見せ始めた。
「先生、この患者さんは薬だけでは治らないと思います」彼女は自信を持って言った。
高見沢は興味深そうに尋ねた。「どうしてそう思うのですか?」
「昨日から表情が暗くて、家族の話をする時も元気がありません。きっと何か心配事があるんです」
「素晴らしい観察力ですね。では、どうアプローチしますか?」
朱音は考え込んだ。「まず、患者さんの話をじっくり聞いて、信頼関係を築きたいと思います」
高見沢は満足そうに頷いた。「その通りです。医師は治療する人ではなく、患者さんと一緒に病気と向き合う人です」
朱音は患者の元へ向かい、時間をかけて話を聞いた。やがて、患者は家族のことで深い悩みを抱えていることが分かった。
「朱音さん、あなたは立派な医師になれますよ」高見沢は患者が笑顔を取り戻した様子を見て、心から言った。
第五章 島での最後の日
研修期間が終わりに近づいた日、朱音は高見沢と一緒に島の岬に立っていた。
「先生、本当にありがとうございました。ここで学んだことは、私の一生の宝物です」
高見沢は海を見つめながら答えた。「あなたは既に答えを知っていました。私はただ、それに気づく手伝いをしただけです」
「私の夢は、立派な医師になることです。でも、その意味が少し変わりました」朱音は微笑んだ。「患者さんに寄り添い、一緒に歩んでいく医師になりたいです」
「それが一番大切なことです」高見沢は彼女の成長を実感していた。「技術は後からついてきます。その心を忘れなければ、きっと素晴らしい医師になれるでしょう」
夕日が海に沈む中、二人は静かに立っていた。島での研修は終わりを迎えるが、朱音の新しい人生はこれから始まるのだった。
エピローグ
数年後、朱音は都市部の病院で働いていた。高度な医療技術を駆使しながらも、彼女の診察室はいつも患者の笑顔で溢れていた。
机の上には、島の風景が描かれた絵葉書が飾られている。そこには高見沢からのメッセージが書かれていた。
「朱音さん、あなたは立派な医師になりましたね。患者さんを大切にする心、それがあなたの最大の武器です。島はいつでもあなたを歓迎します。-タカミー」
朱音は絵葉書を見つめながら、島での日々を思い出していた。あの時学んだことが、今の自分を支えている。技術だけでなく、人の心に寄り添うことの大切さを教えてくれた恩師への感謝の気持ちは、決して忘れることはないだろう。
海の向こうの小さな島で、今日も高見沢は患者と向き合っている。そして、新しい研修生たちに、医師として本当に大切なことを教え続けているのだった。
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