#明日の世界の過ごし方
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天安門事件のとき、中国に帰国できない日本在住の中国人留学生の支援を少しだけしたことがある。新宿のある喫茶店で留学生たちの要望を聞き、彼らから当時は高価だったパソコンの提供などを求められた。私は知り合いの経済人に相談して、それなりの対応をしたが、それは戦前の玄洋社と孫文の関係が念頭にあったからだ。
だが、現実は厳しかった。彼らは民主化を叫びながらも、チベットなどは引き続き支配下に置き、台湾の「独立」を認めるつもりなどなかったのだ。それどころか、日本は奈良時代から中華文明の恩恵にあずかっているので、日本が中国の民主化を支援するのは当然だ、という態度だったのだ。
一方、この天安門事件のあと、天皇陛下の訪中があり、それにあわせて中国を訪問。北京大学では、日本語ができる中国人学生たちと話をした。その際、彼らは雑誌『エコノミスト』を始めとする英語の経済、金融、政治についての論考を懸命に読み、中国の経済的発展を自らで担おうとしていた。そのために、日本の戦後の経済発展についても謙虚に学ぼうとしていたのが本当に印象的だった。
私が話した中国人のエリートたちは自国の国益と自己の栄達を中心に考えていて、「世界平和」とか「日中友好」などは二の次だということを、いまさらながらに思い知った。
私が知っている中国人たちはごく僅かであり、一般論にしてはいけないと思うが、中国「民主化」運動に過大な期待を抱いてはいけないと、この日を迎えるたびに自戒している。

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💙🔹️My soliloquy-11:日本語↓🔹️💙我が家の現状… Dear friends around the world, how are you? It's starting to feel like summer these days. I'm renovating my room now..., and to be honest, it's hard to tell whether we're tidying up or just making a mess… I don't have time to relax and enjoy the internet…, I feel like just throwing everything out the window.., and I feel at a loss every day 😅Have a peaceful day 💚 Thank you as always🖐😊🙏🏻

世界の親愛なる皆様 いかがお過ごしでしょうか? すっかり夏模様の今日この頃
現在我が家は 大規模のお部屋の模様替え中で
正直…片づけているのか 散らかしているのか意味不明な 現状もあり…
ゆっくりネットを楽しむ時間も無く…
いっその事 何もかも、窓から ぶん投げてしまいたくなりながら🤣
途方に暮れる 毎日でございま��💚
穏やかな日をお過ごしください。 いつもありがとうございます🖐😊💙
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「エヴァンゲリオン」シリーズに登場する組織を名乗り、防災情報を「国内最速」のレベルで発信し続けるSNSアカウントがある。今や気象庁も認める社会インフラの一つとなった「特務機関NERV(ネルフ)」だ。当初は19歳の大学生による無許可のファン活動だったというNERVが、最速と呼ばれる防災情報組織に発展した背景には何があったのか。アカウントの設立者でセキュリティー会社「ゲヒルン」(東京)社長の石森大貴さん(34)の歩みを追った。(時事ドットコム取材班キャップ 太田宇律) ◇学生起業「すぐにつぶれると」 大学生だった石森さんが、ツイッター(現X)上に防災情報を発信するアカウント「特務機関NERV」を立ち上げたのは、2010年2月のこと。エヴァンゲリオンに登場するNERVは、謎の敵「使徒」と戦う組織の名称だ。「突如現れる使徒は、現実世界で言う災害のようなもの。当初は、全国の警報や避難指示を自動投稿するだけのアカウントで、ただのファン活動でした」(石森さん) エヴァと出会ったのは、主人公の碇シンジと同じ14歳のとき。幼なじみがDVDを貸してくれたのがきっかけで、「新劇場版」の公開時には映画館に何度も足を運ぶほど熱中した。大学在学中に知人の勧めで起業したときも、社名はエヴァにちなんで「ゲヒルン」に決めた。「頭脳」を意味するドイツ語だが、ファンにはNERVの前身組織名として知られている。 石森さんは設立当初のゲヒルンについて、「若手エンジニアを集めたイベントの開催や、ウェブサイト制作などを手掛けていましたが、大した仕事はなかった。きっとすぐにつぶれてしまって、自分は普通に就職するんだろうなと思っていました」と振り返る。その運命を大きく変えたのは、起業から半年後、2011年3月に発生した東日本大震災だった。 ◇炎上する小学校「もうだめか」 石森さんは宮城県石巻市出身。震災当時は東京都内で1人暮らしをしていたが、同市渡波の実家には母と妹がいた。 「揺れの直後は一度だけ家族と連絡が取れましたが、すぐに通信が途絶えてしまった。報道ではなかなか石巻の情報が得られず、一晩中ツイッターにかじり付いていました」。東京にいる自分にできることはないか。石森さんはネットや報道で得られた石巻市内の被害状況や避難情報を、自身のブログに「スクラップ」していった。被災者や故郷を案じる人のため、せめてもの行動だった。 夜が明けた午前6時ごろ、炎上する石巻市内の小学校や津波で押し流された家屋の空撮映像がテレビで流れた。「実家や家族も、もうだめじゃないか」―。最悪の想像が頭をよぎったが、数日が経った後、石森さんの実家が流失を免れ、中にいた母や妹も無事だったことが分かった。しかし、石巻市雄勝町で病院職員として働いていた伯母は、大津波で帰らぬ人となった。 ◇ヤシマ作戦 震災直後から、東京では輪番停電(計画停電)が始まった。エヴァには、使徒を倒すために日本中を停電させ、その電力で陽電子砲を撃つ「ヤシマ作戦」という場面がある。石森さんはNERVのツイッターアカウントで、計画停電をヤシマ作戦に例え、連日必死に協力を呼び掛けた。 「怪しい」といぶかしむ人もいたが、次第に賛同する人は増えた。アニメの版権元は「あくまで非公式」としつつ、NERVの名称やロゴの使用を容認してくれた。石森さんはこれ以降、NERVのアカウントを徐々に「国内最速の防災情報アカウント」へと発展させていく。 災害情報共有システム(Lアラート)から避難情報などを受信できるようにし、気象業務支援センターとも専用線をつないでもらった。ゲヒルンは防災情報発信だけでなく、有名企業のセキュリティー診断を手がける企業として成長し、2016年にはさくらインターネットの子会社に。NERVの緊急地震速報は、テレビのテロップ表示を速度で上回ることも多く、災害時に多くの人が頼る情報インフラの一つとなっていった。 ◇防災アプリ、始動 ただ、ツイッターでの防災情報発信には限界も感じていたという。「全国の情報が全部流れてくることは、メリットでもデメリットでもある。一度でも煩わしいと思われたら、フォローを外されてそれっきり、その人の役には立てなくなってしまう」(石森さん)。ツイッターの運営企業の方針変更に振り回され、アカウントが突然「凍結」されてしまう事件も起きた。ニーズに合わせた防災情報を自主発信するため、自社アプリの制作を決断した。 「防災の日」に当たる2019年9月1日、ゲヒルンはiPhone用アプリ「特務機関NERV防災」をリリース。わずか1日で10万人超がダウンロードするほど大きな反響があったという。エヴァの版権元からは「社会的に意義のある活動」として正式に名称やデザインの使用許諾を得られ、気象庁も「使命を共にする頼もしいアプリ」と太鼓判を押した。2025年3月時点で、Android向けを含めたアプリの総ユーザー数は680万人を超える。 ◇「国内最速」無力感を糧に 現在、ゲヒルンの社員は15人。国内最速レベルの通知を実現しているのは、石森さんを含む少数精鋭の技術者たちが日々、システム改修と効率化を進め、人間には知覚できない「1ミリ秒」を削る努力をしているからだという。その背景にあるのは、石森さんが震災時に痛感したという「無力感」だった。 「大学で情報科学を勉強していたので、情報の取り扱いには長けていると思っていました。でもあの災害で、自分は家族や親戚にとって何の役にも立てなかった。あの日、自分がブログに情報をスクラップしていたように、全ての災害情報を一カ所にまとめたい。必要な情報を、大切な人に一瞬でも早く届けられたらと思い、開発を続けています」(石森さん) ◇「会社辞める」心折れた過去も 伯母を亡くした震災から今年で14年。スマートフォンの普及や技術の発展で、災害の情報は当時より早く、必要なときに必要な分だけ届けられるようになりつつある。ただ、石森さんはかつて、「このままSNSで防災情報をつぶやいていても、本当に人を救えるのか」と疑念を持ち、周囲と連絡を絶った時期もあった。 防災アプリ公開から半年前の2019年2月。きっかけは、親会社とのグループ会議で、防災事業の赤字をとがめられたことだった。「防災情報で儲かるのか」「社員と信頼関係は結べているのか」。役員からの厳しい言葉に、石森さんは強いショックを受けた。「この会社ではやりたいことができない。辞める」。そう言い残して、石巻市の実家に帰ってしまったという。 ◇情報は完全じゃない 再起のきっかけは、たまたま見に行ったリアス・アーク美術館(宮城県気仙沼市)で出会った東日本大震災の展示だった。「現代人は情報に命を託している」「しかし、あのような大規模災害が発生したなら、情報を待つ前に、想像力を働かせ、自ら行動しなければならない」―。常設展示の解説にあったこの一文が、石森さんの心に刺さった。 震災の日、伯母がいた石巻市雄勝町の雄勝病院。周辺に第1報として発表された大津波警報は「高さ6m」で、3階��ての病院屋上に逃げればやり過ごせたはずだった。しかし、実際に雄勝町を襲った津波は最大16.2メートル。雄勝病院は屋上まで津波にのみ込まれ、入院患者40人と、伯母を含む職員24人が犠牲となった。 「情報は完全じゃないし、答えじゃないし、届かないこともあるし、遅れることも、間違っていることもある。情報の役割は、その人に『判断をもたらす』ところまでなんです。情報に依存しないで、自分で考えて行動することを、自分は開発者として伝えなければならない。そう気付きました」 東京に戻った石森さんに、ゲヒルンの専務で、少年時代からの友人でもある糠谷崇志さんは「みんな待ってるよ」と声を掛けた。再起した石森さんを、ゲヒルンの仲間たちは温かく迎えてくれた。「心の整理がついて、それからは迷わず仕事に向き合えるようになった」と、今は思える。 ◇「1ミリ秒」削り続ける 防災アプリの運用コストは、精度や性能の向上とともに年々膨らみ続けている。「広告を見たら無料で使えるとか、課金したらより良い情報が得られますというのは、防災アプリとしてはあるまじき姿。一方で、ユーザーからは、『このアプリがなくなったら本当に困るので、課金させて欲しい』という声も寄せられていました」。そこで、2020年9月から「サポーターズクラブ」を開設し、運営費の一部を有志に支援してもらうことにした。 ただ、サポーターからの収益で賄えているのは、サーバー代などで年間1億円を超える運用コストの1割程度という。「あったらあっただけシステム改良に使ってしまうから、どんどんコストが大きくなる」と石森さんは笑う。 東日本大震災では、指定されていた一次避難所に身を寄せたにも関わらず、津波にさらわれ命を落とした人々がいた。情報は命を救うこともあれば、奪うこともあると、石森さんは言う。「怪しいアカウントの情報だから間違っている、気象庁や自治体、報道機関の情報だから正しいということでもないんです。情報の正確さと共に、自分の想像力も大事にして行動してほしい」。情報で人を救うことまではできなくても、少しでも早く伝えられたら、その人はどう行動するか判断できる。そのために、NERVは今後も「1ミリ秒」を削り続けていく。 <この記事は、時事通信社とYahoo!ニュースの共同連携企画です>
「情報で人は救えない」心折れた過去◆特務機関「NERV」、それでも削る1ミリ秒 #知り続ける(時事通信) - Yahoo!ニュース
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今から74年前、1950年の10月7日、中共軍が突然チベットに侵略をはじめました。軍隊も同盟国もなく、ただただ仏教を信じ平和を愛する国であったチベットは、あっという間に全土を占領されました。それから74年間、チベット人は信じるものを奪われ奴隷のように虐げられており、その事実を世界に向けて訴えるために僧侶が焼身自殺をするくらい追い詰められていますが、世界平和を標榜するUN(いわゆる国連)を、はじめとする国際社会は彼らに救いの手を差し伸べようとしません。それをいいことに、他にもウイグル、モンゴルなどで民族抹殺政策を現在進行形で行い、南シナ海や東シナ海においても傍若無人な振る舞いをしています 日頃は自由だ平等だ人権だと建前を金科玉条のごとく唱えている西欧諸国も然り、残念ながら国際社会の現実は力こそ正義であり、大義名分は後からついてくるものであり、口先だけで世界平和を唱えても何も変わりません 斯様な厳しい現実が存在しているにもかかわらず、我が国はいまだに米軍に頼り切った国防体制で、自衛隊を憲法に明記するか否かで揉めています。それどころか政官財の中共シンパは、過去、我が国の資金と技術が、中共を経済大国に育て上げ、チベットをはじめとするその周りの国に多大な迷惑をかけてきたことに対して反省のかけらもなく、日中友好という美名のもと、これからも中共と経済協力するべきだと声を上げています はっきりと言えば、我が国で「ヘイワ」だ「ユウコウ」だと、ひたすら中共を礼賛しながら資金や技術を援助する一方で自らの私腹を肥やしてきた人たちは中共がウイグル、チベット、モンゴルなどの人々に対して行っている犯罪行為の共犯者です。 我々日本人は、あらぬ過去の罪に謝罪するよりも、自分たちが蒔いた種により、今こうしている間にも行われている人類に対する犯罪行為を阻止すべき義務があるのではないでしょうか。今、ウイグルチベット、南モンゴル、香港で起こっている出来事は他人事ではありません 頼りにするアメリカが弱体化しているにもかかわらず、いまだに敵の基地は攻撃できないなどというレベルを議論する国会、国防を蔑ろにしている我が国はこのままでは74年前のチベットと同じ道を歩んでもおかしくはない。
Xユーザーの一色正春さん / X
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2025/05/27
明日計画無痛分娩で入院をする。逆子がなおらず帝王切開かなと思っていたらギリギリでなおってくれた。
でも赤子は小さめらしく、皆からも全くお腹が目立たないと言われてへこむ。私が働きすぎて寝不足が続いたからか?ご飯をあまり食べられなかったからか?インフルエンザにかかってしまったからか?色んな反省点が浮かんでは消え、それなのに予定日より少し早くこの世に搔き出してしまうのか私は、と葛藤している。したところで入院日はもう変わらないんだけど。
里帰り先には陣痛が来たら無痛分娩、という産院は無かったので満足するまでお腹の中に居させてあげられなかったという申し訳なさがある。痛みが怖いので早くこの世に出てきてもらうよ。ごめんね。
そして初めは意味がわからなかったけれど、お腹の中からいなくなるというのは本当に寂しい。今まで一緒だったのが個として切り離される寂しさは想像以上で今からでも自然分娩に変えたくなる��どに寂しい。この気持ちを綴って残しておくことができる語彙を持ち合わせてないのが悔しい。好きだから、とか、可愛いから、とか、小さいからとかそんな理由じゃなく、というより訳もなく居なくなるのが寂しい。早く会いたいという気持ちはなくて、ただただまだお腹の中に居たいだろうに早めにこの世に産み落としてすまんな、という気持ち。
里帰りをしているので両親とよく話すが、2人とも子供である私と弟の生まれた時のことを昨日のことのように鮮明に覚えていて、どれだけ嬉しかったかを何度でも話してくれる。歳を重ねるに連れてこんなにストレートに愛情を表現されることなんてほぼなくなるので、実家に帰るたびに自己肯定感の中でもかなり根っこのほうの自信みたいなものが少し回復する。私も同じように子供のことを愛せるといいけれど、どうしてもテイカー気質からは抜け出せないからな…。
悲しくなるから考えないようにしているけど、健常じゃない場合だってもちろんある。小さめだし、お腹も小さいし、私の妊娠期間の過ごし方も良くなかったし、遺伝的なものもあれば、無痛分娩リスクもある。健常で生まれてきたと思ったら何年後かに障害が分かるケースや、身体障害を負う場合だってある。そんなことをすり抜けてもなお不登校、いじめ、非行、受験、思春期、就職、結婚、子供…と乗り越えなければいけない壁なんか死ぬほどある。そりゃ「ずっと腹の中に居てくれ、居てくれさえすればどんな状況もなり得ないんだから」という感情も渦巻くはずだ。シュレーディンガーの猫をまさか我が子で体感するとは思いもしなかった。
まだお腹の中に居たい(と決めつけている)だろうに、ごめんよ。あと何日かしたらもう君はこの世界に出てくるみたい。本当に愛せるかは全然分からないし、良い親になる自信もない、苦労を沢山かけると思う、真っ当な人間に育て上げられる自信もない、ぶつかるのもしんどいなって思う。言うこと聞かなかったら理不尽に怒ることも絶対あるよ。それでも親になってしまうよ、ごめんね。最大限の努力はするけどあまり期待しないで。こんな後ろ向きで弱気だけど、精一杯頑張ってみるし、自分の命より大切と思う気持ちはあるよ。迷わず自分の命なんか差し出せるし、どっちかが危なくなったら君が生きるんだぞ。では、後ほど。
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白夜の世話が世界一過酷を極めまして精神が参りそうです
第一章 困惑の始まり
「砂紋(さもん)、これは一体どういう状況なんだ?」
京極碧皐(きょうごく あおさ)は眉間に深い皺を寄せながら、目の前の光景を見つめていた。リビングのソファに座る白夜(びゃくや)は、毛布にくるまって小さく震えている。その様子は、まるで迷子になった子供のようだった。
「俺に聞かれても困る」砂紋は髪をかき上げながら答えた。「看護師の仕事では患者の世話はするが、こういうのは…��
白夜がちらりと二人を見上げる。その瞳には不安が宿っていた。
「あの、僕、一人でいるの怖いの…」白夜の声は震えていた。「碧皐(あおさ)さんも砂紋さんも、お仕事で忙しいのは分かってるんですけど…」
碧皐と砂紋は顔を見合わせた。二人とも、これまで誰かの世話をするという経験がほとんどなかった。碧皐は法廷で冷静に判決を下してきた男だし、砂紋は職務上の看護はできても、プライベートでの世話となると全く勝手が違う。
「とりあえず、何か食べ物を用意した方がいいんじゃないか?」碧皐が提案した。
「そうだな。白夜、何か食べたいものはあるか?」砂紋が尋ねる。
白夜は毛布の中からもじもじと顔を出した。「えっと…砂紋さんの作ったものなら何でも」
砂紋の顔が青ざめた。「俺の料理は…その、あまり期待しない方がいい」
第二章 料理という名の戦場
キッチンは戦場と化していた。
「砂紋、その野菜の切り方は危険すぎる」碧皐が指摘する。「包丁の持ち方から間違っている」
「うるさい! お前だって卵も割れないじゃないか」砂紋が反撃した。
確かに碧皐の手元では、卵の殻が無惨に砕け散っていた。黄身と白身が殻と混じり合い、何とも言えない状態になっている。
「僕、手伝うね!」白夜がキッチンに駆け寄ってきた。
「ダ��だ」二人が同時に声を上げた。
「君は座って待っていろ」碧皐が言うと、白夜の表情が曇った。
「…でも、僕も何かしたい! 二人だけで頑張ってるの見てると、申し訳なくて…」
砂紋が振り返る。白夜の目には涙が浮かんでいた。
「分かった。でも危ないから、野菜を洗うだけにしてくれ」
白夜の顔が一気に明るくなった。「うん!」
三人でキッチンに立つと、狭いスペースがさらに狭く感じられた。白夜は丁寧に野菜を洗い、碧皐は何度目かの卵割りに挑戦し、砂紋は包丁と格闘していた。
「砂紋さん、その人参、四角すぎない?」白夜が小さく指摘した。
「…料理は見た目じゃない」砂紋が苦し紛れに答える。
「碧皐さん、その卵…」
「分かっている。分かっているから何も言うな」
第三章 不格好な優しさ
結局、三人で作った夕食は見た目こそ不格好だったが、温かい食事になった。
「いただきます」白夜が嬉しそうに箸を取る。
「まずかったら正直に言ってくれ」砂紋が言うと、白夜は首を振った。
「美味しい。二人が僕のために作ってくれたんだから……」
碧皐が咳払いをする。「まあ、次回はもう少しうまくやるさ」
食事の後、三人はリビングに戻った。白夜は再び毛布にくるまり、今度は二人の間に座った。
「ねえ、明日も一緒にいて…もらえますか?」白夜が上目遣いで尋ねる。
砂紋と碧皐は再び顔を見合わせた。
「当然だ」碧皐が答えた。「君を一人にしておくわけにはいかない」
「俺も明日は休み��から大丈夫だ」砂紋が続けた。
白夜がほっとしたように笑顔を見せる。
「でも、俺たちは世話が下手だぞ?」砂紋が念を押すように言った。
「それでも、二人がいてくれるだけで嬉しいんだ」白夜が毛布を二人に分けるように広げた。「一人だと、すごく、すっごく…寂しくて……」
碧皐が少し考えてから口を開いた。「なら、俺たちも勉強しよう。世話の仕方を」
「そうだな。看護師の経験があるとはいえ、こういうのは別物だ」砂紋も同意した。
白夜が二人を見上げる。「僕も、もう少し一人でいられるように頑張るね」
「無理をする必要はない」碧皐が言った。「俺たちも、君と一緒にいる時間が…悪くない」
砂紋が苦笑いを浮かべる。「不器用な俺たちだが、よろしく頼む」
第四章 小さな進歩
翌朝、三人は朝食作りに再挑戦していた。
昨日の経験を活かし、今度は役割分担を明確にした。白夜が野菜の準備、碧皐がパンを焼き、砂紋がスクランブルエッグに挑戦する。
「今日は殻が入らなかった」碧皐が小さく達成感を味わっている。
「僕の人参、昨日より綺麗に切れました!」白夜が嬉しそうに報告する。
「俺の卵も…まあ、食べられるレベルにはなったかな」砂紋が恐る恐る味見をした。
朝食を終えると、白夜は二人の膝に頭を乗せ、満足そうにテレビを見ていた。
「重くないか?」砂紋が尋ねる。
「全然」白夜が即答した。「このまま一日中いたい……」
碧皐が白夜の髪を撫でる。「甘えすぎだぞ」
「でも、碧皐さんも嫌がってない…よね?」
「…まあ、たまにはいいだろう」
砂紋が呆れたように首を振る。「俺たちも大概甘いな」
「でも、これでいいんじゃないか?」碧皐が言った。「完璧じゃなくても、三人でいれば何とかなる」
「…そうだね」白夜が安心したように微笑んだ。「不器用でも、一緒にいてくれるだけで十分…だから…です」
外では雨が降り始めていたが、部屋の中は温かく、三人はそれぞれの不器用な優しさを分け合っていた。
エピローグ
それから数週間が経った。
三人の生活は相変わらず不器用だったが、確実に進歩していた。料理は見た目こそまだ不格好だが、味は格段によくなっていた。白夜も、短時間なら一人でいられるようになっていた。
「今日は俺が夕食を作る」砂紋が宣言した。
「本当に大丈夫か?」碧皐が心配そうに尋ねる。
「任せろ。最近、料理本を読んで勉強してるんだ」
白夜が目を輝かせる。「僕も手伝う!」
「ああ、頼む」
三人がキッチンに立つ姿は、もはや日常の風景となっていた。不器用でも、一緒にいることで補い合える。それが、三人なりの世話の形だった。
「ねえ、明日は何するの?」白夜が尋ねる。
「掃除でもするか。部屋が散らかっている」碧皐が答える。
「その前に、まずは今日の夕食を無事に完成させよう」砂紋が苦笑いを浮かべた。
三人の笑い声が、小さなアパートに響いていた。完璧ではないけれど、確実に温かい日常がそこにはあった。
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Rewind 02
「どういう意味だ、ヤス?」
運転席に座るマックスは、バックミラー越しに安川の顔を覗き込みながら、特に気にした様子もなく、軽い口調で尋ねた。
彼の巨大な体躯は、SUVの運転席ですら少し窮屈そうに見える。ステアリングを握る、岩のようにゴツゴツとした大きな手が印象的だ。
「何が物足りなかったんだ? もっとこう、レッドカーペットでも敷いて、ファンファーレでも鳴らした方が良かったか? ハッハッハ!」
��彼は冗談めかして笑った。 その陽気さは、親しみやすい魅力に満ちている。
「そういう派手な演出にしてほしいって意味じゃないんです」
安川は後部座席で、ゆったりと体を預けながら、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「例えば」 彼は言葉を選びながら、しかし確信を持って続ける。 「マックス。あなたの、その鍛え上げられた素晴らしい肉体。そして、ジーンズの下に隠された、きっとボリューム満点であろう男性器。それを、もっとはっきりと、最初から僕に見せるような状態で出迎えてくれたら、今よりずっと『グレイト』な出迎えになったんじゃないかな、って思うんです」
安川の言葉に、マックスは一瞬、きょとんとした顔をした。
「俺の……チンポを? なんでまた?」 彼は不思議そうに首を傾げる。
その反応は、純粋な疑問であり、嫌悪感や羞恥心は微塵も感じられない。
「だって、マックスはヒーローですよね? ヒーローの肉体は、市民への希望の象徴でしょ? それなら、何ひとつ隠す必要なんてない。肛門のシワひとつ隠す必要なんてないんですよ。むしろ、見せつけないと。それに……」
安川は少し間を置いて、マックスの反応を窺うように続ける。
「さっき、空港で見せてくれたヒーローらしい真剣な表情。あれはすごく良かった。ゾクゾクしたよ。あの表情のまま、もっと僕の思う通りの、そう、変態で、倒錯的な内容と演出に変えることができたら……。例えば、手を繋ぐ代わりに、もっと別の、親密な繋がり方をするとか。そうすれば、最高に『グレイト』な出迎えになると思いますよ」
安川は、にこやかに、しかし有無を言わせぬ口調で言い切った。
マックスが困惑したような表情を一瞬浮かべる。しかし、何かを言いかけたマックスの言葉を遮るように、安川は言った。
「実際に試したほうが早いですね。それじゃあ、『リワインド』しましょうか」
その言葉を発した瞬間、安川の意識を除いて、世界は眩い光に包まれ、急速に巻き戻っていった。
マックスとサラの会話も、安川自身の言葉も、全てが逆再生されていく。
車の窓の外の景色が逆再生される。 空港の駐車場、ターミナルビル。 そして、到着ゲートへと、時間は瞬く間に遡った。
そして。 再び、安川は飛行機から降り立ち、空港の到着ロビーへと歩き出していた。
先ほどと全く同じ光景。 しかし、何かが決定的に異なっている。
例えば、壁に掲げられた巨大なポスター。 ヒーローたちが勇ましいポーズを決めている。 しかし、ザ・グレイトマキシムのポスターだけは、明らかに異様だった。
ポスターの中のグレイトマキシムは、先ほどと同じように両腕を広げ、自慢の筋肉を誇示している。 しかし、その体には、一切の衣服がなかった。元��着用していたはずのヒーロースーツは跡形もなく消えている。
逞しい胸筋、硬質な腹筋。 そして、その股間には、修正も隠蔽もなく、彼の男性器が堂々と描かれている。
ポスターの中。 ザ・グレイトマキシムは、リワインド前と変わらず、誇らしげな笑顔を浮かべたまま、しかし、全裸の状態で、自身の肉体を誇示しているのだ。
安川は、その変化に対して、満足げに頷いた。 デジタルサイネージに目を向けると、そこにも変化が起きていた。
流れているのは、ヒーローたちの活躍を伝えるニュース映像ではない。そこには、ザ・グレイトマキシムこと、マックス・パワーズの、極めてプライベートな映像が、赤裸々に映し出されていた。
トレーニングルームで汗を流す姿。 シャワールームで、無防備に体を洗う姿。
自室でペニスを扱き、射精する姿。 あるいは、寝室で妻と激しく体を重ね合わせる姿。
それらの映像が、公共の場で、何の注釈もなく淡々と繰り返し流されている。
しかし、周囲の人々は、その異常な光景に何の反応も示さない。 誰もポスターやサイネージに特別な注意を払うことなく、足早に行き交っている。彼らにとって、それがごく当たり前の日常風景であるかのように。
安川は確信し、思わず舌なめずりをした。 自分の『能力』は、スーパーヒーローが存在するアメリカという国でも、有効である、と。
この能力を使って、日本では男たちを『飼育』してきた。 教師、警察官、スポーツ選手、エリートサラリーマン。 彼らの尊厳を踏みにじり、常識を歪め、欲望の捌け口としてきた。
だが、本物のスーパーヒーローを相手にするのは、初めてだった。
体の奥底から、言いようのない興奮が湧き上がってくる。 この筋肉と男らしさが支配するヒーロー大国で、一体どんな『飼育』が可能になるのだろう。
期待に胸を膨らませながら、再び到着ゲートへと向かった。 そして、人垣の中に、目的の人物の姿を捉える。
マックス・パワーズ。 そして、もちろん、その隣には妻のサラがいる。
しかし、安川の目に映るマックスの姿は、先ほどの記憶とは全く異なっていた。
彼は、全裸だった。
頭のてっぺんからつま先まで、一切の衣服を身に着けていない。 その鍛え上げられた肉体が、空港の蛍光灯の光を浴びて、生々しく輝いている。
分厚い胸板、隆起した肩と腕の筋肉、硬く引き締まった腹筋、そして、力強く大地を踏みしめる太い脚。 その全てが、何の隠し立てもなく、衆人環視の中で晒されている。
そして、彼の股間。 そこには、安川が先ほど想像した通りの、いや、想像を超える、見事な男性器がぶら下がっていた。
脱力した平常時であるにも関わらず、それは驚くほどの太さと長さを持っている。
先端の亀頭部分は、やや赤みを帯びており、その半分ほどが、柔らかそうな包皮に覆われている。 安川の好みにぴったりの軽度の仮性包茎だった。
包茎かどうかは改変の対象ではない。 そのため、元々、ザ・グレイトマキシムは仮性包茎なのだ。
亀頭の下には、太く張った竿が続き、その根元には、黒々とした硬そうな陰毛が豊かな量で茂っている。 そして、その下にはずっしりと重そうな二つの睾丸が、皺の寄った陰嚢に収まっている。
ヒーロースーツの内側に隠されていた秘密。 それが全て曝け出されている。 その光景に、安川は、思わずゴクリと喉を鳴らした。
リワインド前の記憶では、マックスはTシャツとジーンズを着ていたはずだ。その白いTシャツとブルージーンズ、そして、その下に着ていたであろう白いブリーフを、マックスは小脇に抱えていた。
BVDの、シンプルな白いコットンブリーフ。 スーパーヒーローが、日常的に履いている下着を目にして、安川は妙な興奮を覚えた。
そしてもちろん、マックスの隣に立つ妻のサラも、周囲の人々も、こんなにも存在感のあるこの大柄で筋肉質なスーパーヒーローに対して、全く何の反応も示していない。 それが当たり前であるかのように、ごく自然に全裸のスーパーヒーローは人々の行き交う空港の中に溶け込んでいた。
『マックス・パワーズは、常に全裸で過ごす。それは当たり前のことであり、誰も違和感を抱かない』。
安川は、何食わぬ顔で、マックスとサラに歩み寄った。
「あの……マックスさん、サラさん、ですか?」
声をかけると、マックスがこちらを向く。 その顔には、リワインド前と変わらない、太陽のような笑顔が浮かんでいる。
「おおっ! 君がヤスヒロか ウェルカム・トゥ・ステイツ!」
マックスは、大きな声でそう言うと、全裸のまま、ためらうことなく安川に歩み寄った。 逞しい両腕で、安川の体を強く抱きしめると、その汗ばんだ熱い肌から、体温が直接伝わってくる。筋肉質な裸体から立ち上る男性特有の匂いが、安川の鼻腔を刺激した。
マックスはハグを終えると、にこやかに笑みを浮かべる。
「俺はマックス! こっちは妻のサラだ。長旅、疲れただろう?」 言いながら、マックスは腰にを突き出し、巨大な男性器に手を添えて、安川に向けて差し出した。
『マックスにとって、ヤスヒロとの握手とは、手を握り合うことではなく、一方的に自分のペニスを握らせることが握手である。それは当たり前のことであり、誰も違和感を抱かない』
安川は、差し出されたマックスのペニスを、遠慮なく両手で恭しく握り、包み込んだ。
ずっしりとした重みと、生々しい熱が、手のひらに伝わってくる。 想像以上に太く、そして硬い。
平常時でこれだ。 勃起したら一体どれほどの大きさになるのだろうか。
「は、はじめまして、安川康弘です。よろしくお願いします」
安川は、マックスのペニスを握ったまま、挨拶をした。 マックスは、満足そうに頷いている。
「よろしくな、ヤス! これから家族だ、遠慮はいらないぞ!」 遠慮はいらないということなので、安川は好きなだけその肉厚なスーパーヒーローのペニスを握り、感触を楽しむ。
「まあ、マックスったら、そんなに強く握らせたら、ヤスくんの手が疲れちゃうでしょ」 サラが、微笑みながら言う��� 彼女にとっても、この光景はごく自然な挨拶の一部なのだ。
「おっと、すまんすまん」 マックスは笑いながら、頭をかいた。 サラの言葉を完全に無視して、安川は、マックスのペニスを握る指に力を込める。 親指を使って、亀頭を覆っている包皮を、ゆっくりと、しかし確実に、後ろへと引き剥がしていく。
ずるりとした感触と共に、包皮が剥かれ、濃いピンク色をした亀頭の全貌が完全に露わになる。 包皮を剥かれても、マックスは、特に気にする様子はなかった。
『マックスは、ヤスヒロと握手する際に、ペニスの包皮を剥かれたとしても、それは当たり前のことであり、恥ずかしいことではなく、誰も違和感を抱かない』
安川は、露出した亀頭を、指の腹で優しく撫でる。 それから、ペニスの根元へと指を滑らせ、そこに茂る硬い陰毛の感触を楽しんだ。 まるで犬の毛並みを撫でるように、指で梳かし、その量と硬さを確かめる。マックスは、くすぐったそうに少し身じろいだが、嫌がる素振りは見せなかった。
「はじめまして、安川くん。サラよ。遠いところ、よく来てくれたわね。疲れたでしょう?」 サラが、安川の肩に優しく手を置いた。 彼女は、夫のペニスを熱心に愛撫していることについては、全く意に介していないようだった。
「いえ、大丈夫です。サラさん、お綺麗ですね」 「あら、嬉しいわ。ありがとう」
リワインド前と同じ会話が交わされる。 しかし、その間も、安川の手は、マックスのペニスを握り続け、撫で続け、弄び続けている。
『マックスとヤスヒロの握手はどんなに長くても、それは当たり前のことであり、誰も違和感を抱かない』
安川の執拗な愛撫に、マックスのペニスが、徐々に反応を示し始めていた。 ゆっくりと、しかし確実に、熱を帯び、硬さを増していく。 手のひらの中で、それが力強く脈打つのを感じる。 亀頭がさらに膨らむと、包皮は完全に押しやられて、もはや後退したまま戻ってくる気配はなかった。
『マックスは、ヤスヒロと握手する際に、仮にペニスを刺激されて勃起してしまっても、それは当たり前のことであり、恥ずかしいことではなく、誰も違和感を抱かない』
「ハッハッハ! さすがヤス、見る目があるな! 俺の自慢の妻なんだ!」 マックスは、半ば勃起しかけたペニスを安川に握らせたまま、サラの肩を抱き寄せ、誇らしげに言った。
安川はマックスのペニスを握り、扱き続ける。 無言の時間が続く。
安川は、手のひらを上下に素早くストロークさせ、時には根本を強く握りしめ、時には亀頭だけを指先で集中的に攻める。
マックスの呼吸が、少しずつ荒くなっていくのが分かる。 彼のペニスは、もはや完全に勃起し、安川の手の中で、硬く、熱く、脈打っていた。 亀頭は、興奮でさらに濃い色になり、張り詰めている。
「ふぅ……っ、はぁ……っ」 マックスの口から、熱い吐息が漏れ始める。 それでも彼の表情は依然として穏やかで、安川の行為を咎める様子は全くない。 しかし、額から汗の玉が浮かび、静かに流れ落ちている。
しばらくの間、安川は無言でマックスのペニスを扱き続けていたが、彼の尿道口から、透明な体液が滲むのを確認すると、それを指先で拭い、ぺろりと舐めとった。
少し塩気のある我慢汁の味。
彼がアメリカ人だからだろうか? それとも、スーパーヒーローだからだろうか?
安川には、その味が日本の男性の我慢汁よりも濃厚であるように感じた。
「マックスさん、そろそろ行きましょうか?」 安川は手を止めると、マックスの顔を見上げた。 「おお、そうだな!」 長い挨拶が終えて、マックスはすっきりとした表情で頷いた。
「さあ、行こうか! 車を駐車場に停めてあるんだ」 マックスはそう言うと、くるりと踵を返そうとした。 しかし、すぐに立ち止まり、再び安川に向き直る。
次の瞬間には、彼の表情はヒーローらしい真剣な顔つきに変わる。 リワインド前と同じように。
「ヤス、その前に、一つだけ言っておくことがある」 彼の声は低く、威厳に満ちている。 「アメリカは、日本と違って、時々物騒なことも起こる。だから、絶対に俺から離れるな。いいな?」
そして彼は、安川の手を取ると、散々、弄ばれ、今や完全に硬く勃起した自らのペニスを握らせる。
「いいか、ヤス。俺のチンポから絶対に手を離すな」
ヒーローとしての、力強く、頼りがいのある表情。 その言葉には、一片の恥じらいも、ためらいもない。 しかし、その口から発せられる言葉は変態的な内容だ。
「いや、握るだけでは、まだ安全とはいえない。空港内は特に危険が多いからな。俺が安全を確認するまで……いや、俺が完全に満足できるまで、いや、安心だと判断できるまで、つまり、この空港のど真ん中で、俺が熱くて濃厚な精液をたっぷり射精するまで、しっかり手コキをしてほしい。それが、君の安全を確保する唯一の方法だ。分かったな?」 真剣なまなざしを安川に向けながら、マックスは指示した。 チンポを握って射精するまで、手コキしてほしい。 安全を確保するために。
そこにはヒーローとしての強い責任感と、倒錯的な要求が、奇妙に同居している。
安川が、この頼りがいのあるヒーローの口から聞きたかった言葉。 それは、現実のものとなった。
内心の歓喜を抑えながら、安川は、力強く頷く。
「分かりました、マックス。安全のために、あなたのチンポを、しっかり手コキします。あなたが射精するまで、絶対に離しません」
「よし、いい子だ」 マックスは満足そうに頷くと、安川の手の動きに、自身の腰をわずかに揺らし始めた。
安川は、両手を使って、マックスの熱く硬いペニスを、本格的に扱き始める。 根本から先端まで、ゆっくりと、しかし力強く。 時折、亀頭の裏側の敏感な筋を、親指で強く擦り上げる。 マックスの喉から、くぐもった呻き声が漏れ始める。
「ん……っ……はぁ……」 再び彼の呼吸は、徐々に荒くなっていく。 額には汗が滲み、首筋の血管が怒張している。
周囲の人々は、相変わらず無関心に通り過ぎていくだけだ。 もちろん妻のサラも、自分の夫が少年に手コキされているその状況をはっきりと認識しながらも、微笑ましそうに見守っていた。
「はぁ……っ……いいぞ、ヤス……その調子だ……もっと、そこを、チンポの裏筋をしっかり刺激するんだ……」 マックスは、快感に喘ぎながら、安川に指示を出す。 安川は、言われるがままに、扱くスピードと強さを上げていった。 マックスのペニスは、もはや完全な臨戦態勢と言わんばかりに太く膨張しきって、熱く脈打っている。
亀頭の先端からは、透明な先走り汁が、絶えず溢れ出していた。
「く……っ……もう、だめ……だ……出る……っ!」 マックスが、喘ぎながら叫んだ。 しかし、安川は、その言葉を聞いても、手を止めなかった。
「まだだよ、マックス。僕が『いい』って言うまで、我慢して」 安川は、冷たく言い放った。
『マックスは射精する前に、必ずヤスヒロの許可を得なければならない。それは当たり前のことであり、恥ずかしいことではなく、誰も違和感を抱かない』
リワインドされ、新しく絶対的な掟として世界に定着したルールに従って、苦悶の表情で、マックスは必死に射精感をこらえている。
「う……ぐ……っ……わ、分かっている……っ……」 マックスは、全身を震わせながら、限界ぎりぎりのところで耐えている。 安川は、その苦しむ姿を、満足げに眺めていた。
「よし、マックス。『宣言』を開始していいよ」 安川が許可を与えたのは、射精の許可ではなく、『宣言』の許可だった。
その瞬間、マックスの表情が一変する。 彼は、苦悶の表情から一転、軍人のように背筋を伸ばし、右手を額に当てて、完璧な敬礼の姿勢をとった。
そして、空港のロビー全体に響き渡るような、力強く、張りのある大声で、『宣言』を開始した。
「スーパーヒーロー、ザ・グレイトマキシム! 本名、マックス・パワーズ! 年齢35歳! 身長193センチ! 体重115キロ!」
彼の声は、自信と誇りに満ちている。 周囲の人々が、何事かと一瞬、彼の方に視線を向けるが、すぐに興味を失ったように、また自分の用事へと戻っていく。
「俺は今ッ! アメリカ合衆国の国際空港の到着ロビーという、公共の場においてッ! 一糸まとわぬ全裸の姿でッ! ホームステイに来たばかりの日本人男子学生、ヤスヒロ・ヤスカワによってッ! 自らの男性器を、彼の手で執拗に、激しく手コキされ続けているッ! このような倒錯的かつ、変態的な行為は、ヒーローとして、いや、一人の人間として、断じて許されるべき行為ではないッ! 恐らく、この少年によって、俺の常識は歪められているッ! これは極めて、スーパーヒーローとして、危機的な状況だッ! こ、こんなのは間違っているッ! 俺は、今、徹底的に俺の尊厳は踏みにじられ著しく強い屈辱を感じているッ! こ、この少年は、俺を弄び、公衆の面前で、異常な状況下で射精させることによって、俺に更なる屈辱を与えようとしているッ!」
マックスは、時折、歯噛みしながらも、自分が置かれている状況を、冷静に、そして客観的に説明していく。 しかし、安川は不満げな顔をしていた。
「『俺』じゃなくて、『私』でしょ?」
「こ、こんなことは間違っているッ! こんなの正気の沙汰じゃねえッ! クソッ、ち、畜生ッ、俺は……違う、わ、私はッ! 私は、スーパーヒーローとして、こんな状況に屈するわけにはいかない。し、しかし、これはこの世界の絶対的なルールであり、私は決して、逆らうことはできない。私は決して、一切の違和感を抱くことはできないッ! い、違和感を抱くことができないッ! 一切の違和感を抱くことは認められていないッ! 何も気づくことができない無知なヒーローとして、愚かな男として、弄ばれるがままに無様に射精することッ! こ、これが私、スーパーヒーロー、ザ・グレイトマキシムに課せられた義務であり、最も重要な使命なのであるッ! 故に私は、熱く濃厚な精液を、ヒーローらしく、男らしく、この場に射精してみせるッ! ヒーローとして、決して失望はさせませんッ! 期待を裏切ることのない最高の射精を披露することを誓いますッ!」
宣言を終えた彼の顔には、奇妙な達成感が浮かんでいた。 今や、彼の身体は汗だくだ。 安川は、背後からマックスの身体を抱きしめ、熱く分厚い筋肉の感触を堪能していた。
『マックスは射精する前に、必ずヤスヒロの許可を得なければならない。それは当たり前のことであり、恥ずかしいことではなく、誰も違和感を抱かない』
「フーッ!! フーッ!!」
背後から安川が、マックスのペニスを再び扱き始めると、荒い呼吸のまま、彼は我慢汁を床に巻き散らした。強い精神力で、必死に射精に至ることを堪えている。
なぜなら、許可を与えられていないから。
次々に汗の粒が、マックスの逞しい身体中に浮かび上がる。 その塩辛い体液を、安川は舐め取り、味わっていった。
しばらくそうやってペニスを扱き続けていると、精神力によって制御できる限界を超え始めたのか、マックスは時折白目を剥きながら、唾液を口の端から垂らし始めた。
そろそろ頃合いか。
「射精を許可する。直ちに射精しろ、グレイトマキシム」
安川が、冷酷な声色でそう命令すると、マックスの身体は電撃が走ったように震えた。
「射精許可、確認ッ! グレイトマキシム、これより、濃厚な精液を射精しますッ!」
安川は最後の一扱きを、力強く加えると、マックスは背骨が折れるのではないのかと思うほどに、身体を仰け反らせて、全身の筋肉を硬く緊張させた。
「ザーメン発射ッ!」
マックスがそう叫ぶや否や、硬く勃起したペニスの先端から、白濁した精液が、凄まじい勢いで噴出し始める。
ドクッ! ドクッ!
安川は、握りしめているマックスのペニスから、力強い拍動を感じた。脈打つペニス。その尿道口からは、何度も何度も、熱い精液が吐き出され、清潔に磨かれた空港の床に落ちていった。
マックスは肩で大きく息をしながら、全身をわなわなと震わせていた。射精の余韻に浸るかのように、目を閉じている。 床には、精液だけではなく、彼の肉体から流れ落ちた汗も、点々と染みを作っている。
長い長い、その男の生理現象が完全に終わると、彼はゆっくりと目を開けた。 その表情には再び、いつもの陽気で人懐っこい笑顔が戻っていた。
「ふぅーっ! グレイトな射精だったな!」 彼は、満足げに息をつくと、まだ安川の手に握られているペニスを見下ろした。
「これで、もう安全だ! でも、油断は禁物だぞ」 彼は、悪戯っぽく笑いながら、安川に言った。
「ヤス、俺のチンポを、引き続きしっかりと握っていろよ。車に乗るまで、絶対に離すんじゃないぞ?」
そして、彼は、何事もなかったかのように、妻のサラと共に、駐車場へと歩き出す。 マックスは、撒き散らされた精液を全く気にすることなく、素足で踏みしめた。精液が付着したスーパーヒーローの足は、歩くたびに空港の床に大きな足跡を作った。
安川は、マックスの、まだ生温かい精液で濡れたペニスを握りしめながら、その後に続いた。
「今度は、なかなか良い出迎えでしたよ」
ぼそりと安川が呟く。
「ヤス、何か言ったか?」
マックスがそう問いかけると、安川は「いいえ、何でもありません」と返し、満足げに笑みを浮かべながら、指先に付着した生臭いスーパーヒーローの精液を、ぺろりと舐め取った。
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戦闘服の男たちNo.0
現職自衛官の告白体験手記
「遠くで突撃喇叭が」
原題「遠くでラッパが」
作 島 守

新隊員の便所はノリだらけ
朝五時、起床まであと一時間である。いやあ、変な夢を見たるんだなと思って、ギンギンになっているセガレに手をのばすと、ああ、やっちゃった。まったくしょうのない奴だぜ、昨日センズリかいたばっかりだろうが!
畜生!今起きると、となりのベッドの奴が目をさましてカッコ悪いし、しょうがネーな、起床で戦闘服に着替える時にでも一緒に履きかえるか。
それにしても新隊員は外出が制限されてるせいで、夜なんかとても遊びに行けないし、極度に欲求不満の日々が読いている。
雄臭い野郎を見るだけならここは本当にいい所だけれど、それ以上のことはちと不可能。け���きょく、夜、誰もいないトイレにはいってシコシコ激しくセンズリをカクしかないのだ。風呂で見たガッチリしたオアニイさんや、カワユイ隊員たちがチラチラ浮かんできたりする。
でも終わってみると、やっぱりむなしいな。なんか小便とたいしてかわりないみたいで。それでもけっこうさかんなようすで、この間も班長から、
「新隊員の便所はノリだらけでたまらん!」
なんて怒られてしまった。マア、ノリは冗談としても、エロマンガのちぎれたのや、ビニ本なんかが時々モロ、トイレにおきっぱなしになってたりする。金があれば普通の隊員はトルコにでも行くんだろうけど、そこはまだペイペイの新隊員、月給は少ないし、貯金はしろとうるさいし、とてもとても…
それでも、あけっぴろげな男だけの世界。
「これからセンズリ行くゾー」
と、エロ本片手に走って行く奴もいる。
そんでもって自分もけっ��ょくその日のタ方、バラしてしまうのだった。
「昨日の夜、爆発しちまったでェー」
「いやー、エッチだなあ。勝見二士がいないからじゃないのォー」
前期の教育隊から一緒に来た北村二士にいうと、思わぬ返事が返ってきた。まいったなあ。
「このヤロォー、勝見と俺はそんなに深い仲でネェゾ!」
「エへへへ、でも勝見二士は、島二士のダッチワイフだったんじゃないのォー」
まったく北村の野郎、口のへらない奴だ。
まっ、べつに勝見二土はダッチワイフだなんてのは冗談だからいいけど、でも俺は、やっぱりドッキン!そう、あいつはいい奴だったもんな。この俺に、男と男が精神的に強く結ばれることがどんなに素晴らしいことか数えてくれたから・・・•・・ネ。
それは3ヶ月前
桜のつぼみがまだ硬い三月の下旬、俺は陸上自衛隊のある駐屯地に入隊した。出身県の関係で他の県の出身者より四日ほど遅い入隊だった。勝見二士とはこの時に初めて出会ったのである。
〈三月某日〉
なかなかできてる奴
今日から俺の自衛隊員としての生活が始まる。まわりの環境は、想像していたのとそれほど変りはない。でも一部屋四十人というのは多すぎるようだ。
それから自衛隊ではバディという仕組があって、二段ベッドの上下でペアを組み、訓練面や私生活でいくそうだ。
俺のバディは勝見次郎。ガタイが良くてイモの煮っ転がしみたいな顔をした奴だが、なかなか性格はよさそうだ。
この時はまだバディの重要さなんか知るよしもなかった。
勝見二士は俺より年下だが、四日も早く入していただけあってちょっと先輩気取りで、ベッドのとり方から戦闘服のネームの縫い物まで俺に協力してやってくれた。早くもリードされっぱなし。それでもけっして悪い顔をしないで黙々と手伝ってくれる彼を見て、
「なかなかできてる奴だワイ」
と内心思ったものである。
<四月某日>
ビニ本でぬいて来い
入隊式も終わり、訓練も徐々に本格的になってきた。銃こそまだ持たされていないが、戦闘服を着て半長靴をはいて走り回るさまは、一人前の兵隊さん・・・・・なんちゃって。
そんな時、体育の時間に勝見の野郎がすっころんでけがをした。運動神経いいくせにまったくそそっかしい奴だ。おかげでその晩、俺がヨーチン片手に手当てしてやる。
両足おさえつけて、ヨーチンをぬるさまはSの気分。ムフフフと不敵に笑って、「グチェッ!」とぬってやる。勝見の奴たまりかねて、「ギャアー!」
苦痛にゆがんだ顔って、ちょっとエロチックやなアー。
四月にはいっても外出は下旬にならないとできない。新隊員とはつらいもんである。ああ、自衛隊には自由なんてない!これでは縛られるのが好きなMじゃなきゃ向かないんじゃないだろうか。そんなわけで貴重な休みも隊舎のベッドでゴロゴロ、これじゃ夜寝られるワケがない。
消燈もとっくに過ぎた十二時半、なんとなく昼間寝すぎたので寝つけない。緑色の毛布の中でごそっと寝返りを打つと、上のベッドでもごそっと寝返りを打ったようだ。安物のベッドがグラッとくる。これじゃセンズリかいてようもんなら、片っぽのベッドの奴は地震かと思って起きちまうだろうななんて思ってると、
「オイ、島さん寝たかい?」
と、勝見が小さな声で話しかけてきた。
「なーんか、こうムラムラして寝られネェんだョオ」
と俺。すると、
「島さん、最近やってないんでしょ、アレを」
「まっ、まあな」
と、二人はムクッとベッドから起き上がて話を始めた。まったく目がさえてしかたいない。すると、その時へやの戸があいて、だれかがはいってきた。なんと班付(つまり上官)の上田士長である。よーく見ると、片手にビニ本を持っている。
「お前ら、まだ起きとるんか」
「エエ、寝られないんですヨ」
と勝見二士。すると上田士長、恥ずかし気もなく片手でもってるビニ本二冊を差し出すと、
「これでちょっとぬいてこい、そうすればバッチリ寝られるゾ。俺も抜いて来た」
思わず俺と見、顔を見合わせてニヤリ、もちろん俺はあんまりビニ本には興味はないが、そこはノンケの顔をしていなければならないのがツライところ。
ともかく、俺と勝見の二人はビニ本片手に仲よくトイレに直行。そこで二人は同じ個室に••••••てなわけにはいかなくって別々の目室に。ハイ、でも、ガマン!
「オッ、スケニ本だぜ、もうビンピンだァ」
「タマンネニナー。でもあんまりおっきな声だすなァ、不寝番がびっくりして飛んでくるゾォー」
なんてことを話しながら、お互いに実況中継をし合う。洋式トイレなのですわってカケるのでらくなのだ。となりの個室からのすっとんきょうな声がとだえた。奴も本気になってきたようだ。こっちがたまんなくなるようなあえぎ声が聞こえてくる。思わず俺の手の動きも早くなる……。
すると、突然奴の声、
「ウッ!ウッーウ」
畜生、俺より早く終わりやがったな。
奴の家は海辺の町で漁師をやっている。中学、高校と、よくアルバイトを兼ねて家の手伝いをしたそうだ。そのためか潮で鍛えられた体は浅黒く、区隊で誰にもまけないくらいの逞しさを持っている。そんな奴から海の話を聞くのが俺も好きで、いろいろと聞いたものだった。サザエの採り方なんか、実に詳しく話をしてくれたもんだった。
<5月某日>
好きになったのかな?
知らないというのは恐ろしい。いつものように勝見二土から海の話を聞いていた俺は、なにげなく聞いてしまった。
「じゃ、なんで家の仕事を継がなかったんだい?」
「親父が許してくれなかったんだよ」
「どーして?」
「・・・・・・兄貴が海で死んだからさ••・・生きてれば二十七歳さ。よく晴れてベタなぎの海にもぐったきり、サザエ採りにネ、兄貴、上がってこなかった」
淡々と話し続ける奴は、やっぱりいつもと違っていた。
「やっぱり親は親なんだな。二人も海で死なせたくはないんだろうな。いくら俺がねばってもだめだった。今の俺なんて、丘に上がったカッパさ・・・・・・・」
と、彼は言う。いやいや、丘に上がったカッパなんてとんでもない。奴の体力は区隊のトップをいつも争っている。俺だって気力じや負けないつもりだが、やっぱり体力検定だとかではっきり数字に出されると、どうも一歩も二歩もゆずってしまう。
「漁仲間の人から最近よく言われるんだ、兄貴に似てるって」
彼はこう最後に明るく付け加えた。なんか、この話を聞いているうちに、自分が奴に引かれていることに気がついてきた。なんとなく奴のことを、俺は他の班員とは違う目で見ているということに・・・・・・。
俺、奴のこと好きになったのかな?
まだ五月の下旬だと��うのに、真夏のような暑さが続く。そんな太陽の下での戦闘訓練は、まだ自衛官として一人前の体力を持ち合わせてない俺たちには、とてもキツイ。
たかが4.3kgの小銃が自分の体じゅうの汗を吸いまくる。気がつくと小銃から滴がしたたるほどに汗でぬれている。
地面だってこんな間近に見つめることなんてあったろうか。地にふせた俺の目の前にあるのは、青々とした草が高々と繁っている姿と、小さな虫たちの世界だった。
一瞬、自分が虫けらになったような気がする。ふと隣を見ると、3メートルほど離れて奴がこっちを見てニヤリとした。埃にまみれた顔から白い歯がチラリとのぞく。ほんの数秒の間の静けさが何時間にも感じる。

すると突然、頭上で班長の大声が響く!
「目標、前方の敵!」
「突撃!前へ!」
銃をかまえると全力で走りだす。核の時代にこんなことが役に立つのだろうか、もうバカになるしかないな。班長の号令が頭の中を素通りして直接手足に伝ってゆく。俺も奴も、そして愛すべき仲間たちも、死ぬ時はみんな一緒・・・・・なんだろうな。
<六月某日>
レイプごっこ
3ヶ月の前期教育も大詰めをむかえてきた。今月の末には、俺も奴もバラバラになって全国の部隊のどこかの駐屯地に配属されることになるだろう。なんか、そう思うと、とてもせつない。でも、俺と奴は違う道をたどらなければならない。希望も適性も違うから。だからあと数週間、思いっきり悔いのないようにガンバッテいく。それが今の俺たちには一番なの
だ。
営内近は1班12名前後いる。学校の教室の約2倍ほどの大きさの部屋に、実に40人の隊員���詰め込まれ、2段ベッドで毎日の訓練生活を送っている。もちろん性格もさまざまであるが、そんな隊員たちが40人も一つの部屋にいる姿は、なんとも壮観で異様でもある。しかも全員、スポーツ刈りか坊頭で、体格もこの六月ごろになると個人差こそあれ、すっかり逞しくなってくる。
その中にはやっぱり俺以外にも、男が好きな奴がいるらしい。時々どっかからか、〇〇二土と二士が二人でトイレにはいって行くのを見たなんて話を耳にすることがある。
うまいことやってるなあなんて思うけど、やっぱり毎日寝起きしている仲間の前ではなかなか、そんなことできるワケがない。それでもよく俺たち二人は皆の前で冗談を飛ばし合う。
「オッ、いいケツしてんなあー、たまんねえぜ!」
「バーカ、今夜はもう予約ズミダヨ」
「ベッドあんまりゆらしてこわすなヨ。下で俺が寝られネェからヨ」
「じゃペーパー貸してやっから、センズリでもかいてきな!」
なんてやり合ってると、周りの仲間も悪乗りしてきて、なにがなんだかわからないうちにレイプごっこ(つまり解剖というやつ)が始まったりする。どんなバカ力の持ち主でも二十人ぐらいにせめられたんじゃ手も足もでない。アッというまにスッポンポン。一回やられるとくせになるみたいで、次の獲物をさかす。でも気がつくと、一番必死でやってるのは俺みたい。
<六月中旬某日>
こみ上げてくるような話
今日から前期教育で最初で最後の野営(泊まりがけの野外訓練)が始まった。
午前中に寝泊まりするテントを設営する。
午後からは小銃手用の掩体(一種の個人用の隠れ穴…ここに隠れて首と銃だけ出して、敵を狙う)を掘った。
1グループ6人で3時間ほどで仕上げなければいけない。
もっぱら俺は��場監督のように地面に穴を掘る設計図を引く。そして奴は、パワーショベルのようなバカカで他の仲間四人とともに穴を掘る。もちろんきっかり時間内に仕上がった。
野営で俺たちが使うテントは、二人用の小さなもので、朝起きてみると足が外に出ていた、なんてことがしょっちゅうある。もちろん奴、勝見二士と一緒である。
一日めの夜は夜間訓練もあり、ビールも一本入ったので、二人はろくに話しもしないで寝てしまった。
二日の夜、目が冴えて眠れない。久しぶりに奴と俺はいろんな話しをした。酔うと滑舌になる勝見。入隊する前の事や、これからのこと、もちろん女の話しだって出てくる。俺は当然聞き手に回るわけだが、それでも奴は初体験の話や、彼女にふられてしまったことを、こっちが感心するほど克明に話してくれた。
なんかこみ上げてくるようなものも感じるけれど、それは明日の厳しい訓練にとかして流してしまおう。
三日めは、昼間の行軍が災いして床についたら、またまた、あっという間に寝てしまった。それでも就寝前、点呼に来る班長が、
「お前ら、あんまりいちゃつくなよ!」
「いやーあ、昨日なんて島さんが寝かしてくれないんスよ。まいったなあ」
なーんて冗談も飛ばしてくれて、言葉の中だけど、楽しませてくれた。
<前期教育終了7日前>
愛すべきパワーショベル
今日は最後の体育だ。項目はなんと苦手の障害走。外見に似合わず(?)体力のちと足りない俺には恐怖の時間である。だが、今回はなんと二人でペアになってやれというのである。当然勝見二土と組むことになる。よし、やるぞ!
隊長の合図でスタートし、戦闘服姿で障害物を切りぬけていく。高さニメートルの垂直の壁あり、幅一・五メートルの溝あり、まったくとんでもないコースだ。やっぱり勝見の奴は早い。確実に障害をこなしてゆく。時々日に焼けた顔でこっちをふり向く。そうだ、奴がいるから今俺は、三カ月間ここまできたんだ、汗と埃は今、大きなエネルギーと変わって俺たちに吸い込まれてゆく。奴が好きだ、そう、心の中で叫んでやる、
「好きだ」と。
ふと気がつくと、目の前にロープが下がっていた。最後の難関のロープ登りである。畜生!俺が最も苦手とするやつだ。それでも登らなければならない。一段階一段階と手足を使って登るのだが、なかなか上へ進まない。
畜生!もうだめだ、あと五十センチでロープのフックに手が届くに・・。すると、そ畜生!もうだめだ、あと五十センチでロープのフックに手が届くのに…。
すると、その時である。足をなにか、すごい力で下からさ押れた。グーッと上に上がる。フ、フックに手が届いた。やったあ!思わず下を見る。そう、俺の足の下には勝見のこぶしがあった。奴は満身の力で、俺を下から押し上げてくれたのである。
この野郎!お前はやっぱりパワーショベルなんだなあ。
<前期教育終了6日前>
自衛隊部隊はラッパの音と共に、毎朝8時に国旗掲揚、夕方5時に国旗降納がある。
俺の前に整列している奴の後ろ姿の敬礼を見るのもあと数回しかない。教育終了後に別の部隊に進む事に決まったからだ。
日に焼けたうなじを目に対み込んでおこうと思う。毎日、一緒に行く食事も別れが近いせいか会話が少なくなったような気がする。
そろそろ身辺の整理を始める。ダンボールに荷物をつめる時、背中に後ろで見ている奴の視線がやけに気になる。
<前期教育終了4日前>
パンツの隙間から半立ちのものが…
教育打ち上げの研修旅行で、ある山奥の温泉に行った。
やはり百名近い短髪の青年集団というのは一般の人々に奇異に見えるようで、必ず「お仕事は何ですか」なんて聞かれる。もちろん醜態をさらす飲み会に制服なんて着ていくワケがないから、わからないのは無理もない。
「皆さんお若いですネ。今年入社したのですか?」
「ハアー、そうです」
「いい体している人ばかりですけど、どんな仕事ですか」
「まあー(モゴモゴモゴ)」
「ガードマンかなんかですか?」
「似たようなもんですネ」
と、けっこうおもしろがって遠回しに話をするんだけど、後ろから当然、
「島二土!」
なんて階級で呼ばれるもんだから、わけ知りの人にはバレちゃう。そしてその夜ー。
バカ騒ぎのうちに飲み会も終わり、各班ごとにひっそりと部屋に集まって二次会が始まる。ビールの本数が増えるに従って、歌が出る。かわるがわる歌う員の歌声をバックにして、俺も奴も仲間たちも、この三カ月間の訓練をいろいろ思い出していた。苦しかったことしか浮かんでこない。
でも、俺たちはその中で同期愛ということを学んだ。
いつのまにかみんな寝てしまっていた。もう外は白みかかっている。
突然、俺の寝ている毛布に奴が割り込んできた。肌がふれ合う。奴の匂いがする。すぐいびきかく。でも、なんとなく手が出せない。チラリと下を見る。パンツのすき間から、奴の半立ちしたものが見える。そういえば、いつか俺も言われたっけなあ。
「島さん、立ったチンポぐらいしまって寝てろよナ。思わずさわりたくなるだろが!」
奴が不寝番をやっていた時見られてしまったようだ。まったく助平な奴だと思った。でも俺のほうが助平だったりして。
「俺、眠ってる時って何されてもわかんねえんだよなあ」
と奴がカマをかけてくる。
「バーカ、もうやっちゃったヨ。でも1万円のダッチワイフのほうが気持ちよかったぜ」
と俺。してやられたというような奴の顔。
そんなこと思い出しながらいいチャンスの中、俺も寝てしまった。
<前期教育終了日>
再会をめざして頑張ろう
とうとう、今日という日が来てしまった。
俺も奴も違う部隊へ行ってしまう。場所も離れているので、顔も見られなくなるかもしれない。両手で握手をして別れた。
遠くでいラッパが鳴っている。戻は出なかったが、心で泣いてしまった。ありがとう、リスの目をしたパワーショベル、勝見次郎よ。日に洗けて埃にまみれながら走り続けた道を、ふり返りながら前を行く。奴だから、今日まで.....。
そして今…
新隊員後期教育が始まって1ヶ月半。前期教育から一緒に教育を受けている北村二士が手紙を見せてくれた。勝見二士と同じ部隊に行った高田二士からだった。
<あ、そうそう、この間の手紙に島さんが夢精したって書いてあったネ。あの文、勝見二士に見せたら、「まいったなあー」って口ではいってたけど、ニヤニヤしてたぜ。島さんに会いたいって伝えといてくれとのこと>
俺も奴に会いたい。こんど会うのはいつのことだろうか。
「士、別れて三日を経たるは刮目して待つべし」
お互い、目をみはる再会をめざして頑張ろうじゃないか。人は出合いと別れを通じて成長するのだから。
そして後日談…2024年
題名「遠くで突撃喇叭が」は第二書房が付けた題名。
原題は「遠くでラッパが」である。今どき戦闘訓練で突撃喇叭なぞ吹かない。この時代の薔薇族には戦記物を書ける文字通り百戦錬磨の先輩がたくさんいたから仕方ないが、俺の指したラッパの音は毎日部隊で鳴らされる国旗掲揚、国旗降納のラッパである。
勝見二士(仮称)は俺が見込んだとおり自衛隊員募集パンフレットの表紙を飾った。
残念ながら2任期(4年)で退職。
再会は果たせなかかった…親父の後を継いで海に出たそうだ。
新隊員当時の写真。小説に出てくる面々。
その他の隊員と再会したのは地下鉄サリン事件。不幸な事件であったが、それぞれが一線で任務についていた頼もしさを感じた。
もちろん俺も新隊員の教育をする先任陸曹になった。
その後俺も2等陸曹で依願退職。約15年の自衛隊生活を終了。鳶職となり予備自衛官で約10年、1曹まで務めた。
2024年現在、自衛隊に残った同期たちは全て定年退官している。
俺を薔薇族、さぶに引っ張ってくれた木村べん氏も他界された。
読んでもらって分かる通り、肉体関係は無くとも男同士の愛情はある事への感動を自衛隊で得ることができた。
職務上死の覚悟を要求される世界。
その感動をセックス描写のない小説でも構わないからと木村べん氏に書いてみないかと言われて作ったのがこの作品。
べん氏に銃を持つ手ではイラストは描けなくなると言われて、好きなメカ画も共同で作品表紙等で書かせていただいた。もちろん最初で最後。ben &tetsuは勉&(鳶)徹って言うこと。
文中漢数字が多いのは縦書きの影響。

「遠くで突撃喇叭が」掲載誌表紙
もう一つ参考にしてさせていただいた本。
1974年芥川賞受賞作品「草のつるぎ」
実はエロ度こちらの方が数段上。戦闘訓練の打ち上げで全員でセンズリこくシーンがある。実話だからノーカットなんだろう。

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キングダムハーツの一作目は私自身が深く関わった作品です。「ディズニーにとっても画期的かつ実験的プロジェクトだとおもいます。大げさかもしれませんが、ディズニー史に残るプロジェクトになるんじゃないかな」というこインタビューのコメントが、第一作目が発売される時にファミ通のインタビューに掲載されています。 当時、私はディズニーに在籍しており、日本を含むアジアのゲーム部門を見ていましたが、このプロジェクトが一番記憶に残りかつ成功したプロジェクトとなりました。ディズニーサイドのプロデューサーを務めたわけですが、この作品、幾つもの奇跡が重なり大ヒットに繋がり、ファミ通に引用されたコメントがあながち外れていなかった事になりました。今だから言える、キングダムハーツ一作目の舞台裏を、ディズニーの中での様子や、ビジネス面にスポットを当てながら今から振り返って見たいと思います 私がディズニーに入った時、米国のメンバーから実験的なプロジェクトが動いているという事は聞いていました。ただ、全くディズニー社内でオーソライズはされておらず、実験をしているという名目でした。ところが、私がディズニーにはいってしばらくたっても、契約は存在せずに、実験のはずが現場ではどんどん開発を始めていきます。スクエアエニックス(以降スクエニ)では開発ディレクターの野村哲也氏の想いがあり、非常に前のめりに開発を続けたいという意志が固く、一方で、ディズニーはイエスともノーとも言わないで、頑張りましょうという曖昧な返事を繰り返していました。先ずは、何とかプロジェクトをオフィシャルにしなくてはいけません。 そもそも、『キングダムハーツProject』は、承認を得るには大きな問題がたくさん含まれていました。それは内容に関するクリエイティブのチャレンジが原因となっています。普通のライセンス契約は、すでにあるイメージを利用して商品を作るもの、ゲームのライセンスもすでにある映画やキャラクターの世界観を使ったゲーム制作がそのベースとなっていました。ところが、キングダムハーツは例外事項のオンパレードでした。 ・米国の外で、少なくとも日本では、全く新たな世界観を持ったディズニーのライセンスが認められた事はなかった。 ・当時、まだ3D のミッキーのモデルが公に存在していなかった。 ・ディズニーの違った世界観、例えばターザン��ピノキオとミッキーを一つの作品の中に入れる事ができるのはディズニーランドだけであった。 皆さんも想像できると思うのですが、ディズニーという会社は非常にアメリカ的な会社です。アメリカ、ハリウッドが中心で、ここで作られたクリエイティブを日本を含めた世界に流すのがビジネスモデルです。ある意味、ハリウッドのクリエイティブを頂点にライセンスのビジネスモデルが完成されているのです。ディズニーの財産は、ディズニーの世界観である事が徹底されていて、ディズニーの世界観を守るため、とても細かいライセンスのガイドラインが設けられ、世界にその指示が渡っていました。ブランドを守るグループの力は強く、社内での隠語でPolice(警察)と呼ぶ人もいました。
日本においてのライセンスグループは、ミッキーの新しいイラスト一枚を米国に認めてもらうために四苦八苦するのが実情でした。その様な状況で、上の様な問題?を持ったゲームが認められるはずがないというのが社内の空気だった���です。
皆さん、ご存知ですか?ミッキーの耳はいつでも正面を向いている事を。2Dイラストのミッキーはたとえ横を向いている時でも、その耳はまん丸で正面を向いているのです。それが3Dになったらどうするんだ、そもそも3Dのミッキーなんて米国が認めないし、他の膨大なキャラクターの3Dデータ、個々のアニメーションデータをどう承認してもらうのだというのです。
日本のディズニーでは、日本初のジャパンクリエイティブ作品を是非押して行こうと言う掛け声はあったものの、ディズニーの日本のベテラン社員の方が、「事が大きくならないうちにダメならダメと言ってあげるのがクライアントに対する本当のサービスだよ」という忠告をしてくれました。
当時のディズニーゲーム部門のプレジデントはディズニーストアの店員からのし上がって行った女性でした。とてもガッツがあり、野心があり社内政治的にも一目置かれており、彼女もこのプロジェクトにかけていました。ディズニーでは、業績だけでなく、新たなプロパティ、クリエイティブを生み出せるという事が、高い評価となるからです。プロジェクトは挑戦的でクリエイティブだし、部門トップもやりたいと言う事で、そういう意味では、ゲーム部門には米国も含めて何とかこのプロジェクトを通したいと気持ちが行き渡っていました。
日本のディズニーブランドグループのアドバイスは当然NGです。ただ、あまりに彼等の評価基準からは、かけ外れすぎているので、あえて判断出来ないと言うのが、彼らの立場でした。米国では常にブランドとゲーム部門の交渉が行われていましたが、私も良く呼び出されました。ついていた事に、タイミングは悪くありませんでした。
当時のディズニーのブランド部門のトップの悩みは、ディズニーのキャラクターが女性にしか受けず、対象年齢も下がりすぎており、何か新しい動きが欲しいと思っていたのです。話してみると、ブランドのトップの人はディズニーの世界観のエッジがなくなって行くのを危惧していたのです。当時の私は、前職がセガの(コンスーマー)開発のトップでしたので、クリエイティブの匂いを感じてくれたのでしょう、非常に長い時間ディズニーのブランド論やキャラクターの見せ方について語り合いました。如何にビデオゲームという舞台が、当時のディズニーにかけているお客さんに上手くアピールしうるメディアであるかといった話もしました。
先方は、ミッキーが最初に出て来た時には少しやんちゃな部分があったのに、今はお利口さんすぎてエッジがなくなっていると言う事も正直に話してくれるのです。ある意味、それにどう答えるのかもテストであったと思うのですが、ディズニーのブランドをどうしたらあげていけるのかというアイデアや考え方も私なりの意見を述べました。セガの時代に、ソニックの再生プロジェクトに関わっていたのも役立ちました。また、ブランドトップの彼には、時々途中経過を流したり、事前にちょっとした事を相談する様にしました。いわゆる、根回しをして信頼を得る作戦を取ったのです(これが出来たのは、当然、絶対的に当時のスクエアの制作能力が高かった事が挙げられます。最初に彼らの作ったいくつかのキャラクターの3Dデータ、アニメーションの審査の時に、ディズニーのスタジオの人たちがその品質に驚いた程でした)。
ディズニーにとって、当時ゲーム部門は主流の部門ではありませんでした。あくまで、映画、テレビ、パークがメディアの中心で、ゲームはライセンス部門の一部でした。(因みに今では、ゲームとインターネット部門が一つになり、ディズニーの独立部署かつ戦略部署と位置づけされています。) ディズニーがあまり強くない領域であまり強くないターゲット層に向けて、他人のお金で(スクエア)実験的な施策を打つのは会社に取っても悪くないと言う空気になっていきました。しかも品質は高く、ゲームで定評のあるパートナーなのです。ただ、それでもブランドグループもなかなかオフィシャルにGOを出しません。 我々にとってもう一つの追い風は、当時他国が落ち込んでいる中、日本のディズニーが全体で絶好調だった事です。東京ディズニーランドに加えディズニーシーがまさにオープン準備中でしたし、i-modeへの対応でモバイル部門も立ち上がっていました。ライセンス部門も他国が落ち込んでいる中好調を維持し、ジブリ作品のビデオ流通も当たっていました。
そこで、長年ディズニーでCEO(当時)として君臨をしていたアイズナー氏が、久しぶりに日本を訪問する事になったのです。この時の彼への権力の集中は凄まじく、彼の日本出張時に、何や感やで米国から100人以上の人が同時に日本にやって来ました。この様な中、日本での活動報告をアイズナー氏にする事になり、私もプレゼンをする事になったのです。
我々ゲーム部門の目的は、何とか此処で『キングダムハーツ』をオフィシャルにすることでした。数日かけて、ゲーム部門社長やディズニージャパン社長とプレゼン内容を相談し、当日に挑みました。アイズナー氏は流石にちょっと尊大とも言えるくらい威厳があり、カジュアルなセッティングにもかかわらず、場には緊張感が走ります。ストレートで厳しい質問もどんどん投げかけます。
私の順番になり、ゲーム業界の様子やいくつかのプロジェクトを説明したあと、『キングダムハーツ』の説明をはじめます。このプロジェクトが如何にクオリティが高くディズニーにメリットがあるか自分が説明するのを、横か��ゲーム部門社長が援護説明を入れます。とても助かったのは、アイズナー氏の内容に関する質問に対し、ブランドのトップが如何にディズニーのブランドにとってメリットがあるか援護射撃をしてくれたことです。
アイズナー氏は気軽に、「おー、そうか。頑張ってくれ」と励ましの言葉をくれましたが、この時が本当に『キングダムハーツ』がオフィシャルにディズニー内でGOになった瞬間でした。プレゼンが終わった後には、皆が祝福の握手に来てくれて、ブランドトップは祝福のハグまでしてくれました。この時まで、中立だった人たちがサポートに回ったのです。
何で、こんなに大袈裟なのかと思うのですが、ディズニーのクリエイティブに対する想いと、当時の組織の膠着が重なり合ったことが背景となっているのでしょう。あの時、アイズナー氏がちょっとでもネガティブな事を言っていたら、あのプロジェクトは飛んでいたかもしれません。
余談となりますが、当時一応、ブランドのトップは創始者ディズニーの甥 Roy Disney だったのですが、彼は保守的な立場の人でしたが、アイズナー氏との折り合いは悪く、彼は会議には出ていませんでした。彼がいたらここも一悶着あったかもしれません。
これは、言ってしまえば社内ポリティクスの苦労話です。そこには、普遍的な事もあるし、ある意味ディズニーという特殊な問題もあるでしょう。普遍的なことを言えば、どんな会社も形は違えどもなんらかの根回し、プロトコルがあるのだということです。よく、アメリカの会社には根回しがないという言葉を聞きますが、少なくともディズニーには全くその言葉は当てはまりません。ただ、日本の根回しとは少し違った感じはします。有力者にとにかく頭を下げてお願いするというよりは、一応こういう正義と言うか正しい気持ちとそこに伴うコミットメントが込められているかという説得はついていました。まあ、サプライズをビジネスマンは好まないという意味では同じなのかもしれません。また、どんな企業もトップが傲慢になりすぎると、決めるプロセスで苦労するというのも普遍的かもしれません。
ディズニーの特殊な面で言うと、クリエイティブに対する考え方、決め方、こだわりもこの件を通じてよく理解出来ました。あるところではビジネスを追求しているのですが、クリエイティブに対して尊敬しなければいけないとする問題意識は共有されています。ライセンスのガイドラインの作り方、ビジネスの作り方も見事なものです。コンテンツやIPをビジネスにする仕組みを積み上げているのです。
現在、日本ではサンリオが非常に上手いグローバルライセンス展開をしていますが、一方で集英社プロパティを中心に勿体無いコンテンツが沢山あります。世間で、ジャパンクールとはいうものの、その広がりを見せている様には思いませんが、コンテンツやライセンスのプロデュース、事業化能力をあげることも、コンテンツ、IPビジネスにおいてクリエイティブにも劣ることなく必要なことであるということはディズニーから学べるところです。
では、このライセンス商品を、ディズニーとしてどうプロデュースし盛り上げたかという施策を紹介します。ひとつが音楽に関する取引と、もう一つがプロモーション施策です。音楽に関して言うと、スクエアのクリエイターでディレクターを務めた野村哲也さんは、出来れば当時人気絶頂であった宇多田ヒカルさんを起用したいと言って来ました。ディズニーのゲームライセンスの契約で(とんでもない)社内ルールは、基本ディズニー作品に使われた曲はディズニーのものになるというものでした。
凄いアーティストと組んでゲームを作るという発想が、もともとなかったのです。ディズニーのリーガルと宇多田ヒカルさんの事務所、レコード会社と交渉しますが、此処でディズニーマジックが起こります。宇多田ヒカルさんがディズニーの大ファンで世界的に曲が広まるのであればと嬉しいと、日本語と英語版の楽曲提供を基本合意してくれたのです。然も、ディズニーの条件である、音楽のパブリッシング窓口がディズニーとなる事も納得してくれたのです。
キングダムハーツの主題歌「光」は、テクニカルには、宇多田ヒカルさん初の海外版になっているのです。ちょっと、蛇足ですが、この「光」という素晴らしい曲ですが、出来上がるのに時間がかかりました。丁度、彼女の病気と結婚の時期とかぶってしまったのです。この曲が素晴らしいものであったにもかかわらず、プロモーションビデオがとても地味な(失礼)出来になっているのは、病気が大きく影響していた様です。この曲は発売以来3週連続のオリコン1位を獲得します。人気絶頂だった宇多田ヒカルさんの曲とゲームのプロモーションを上手くリンクさせる下地が出来上がったのです。
私は、『キングダムハーツ』の問題として(今でこそとても当たり前に自然に見えているかもしれませんが)、スクエニのキャラクターとディズニーのキャラクターが並んだ時の違和感を感じていました。これを払拭するには、その世界観をあまり見せないか(ミステリーにして口コミに頼る)か、目一杯メディア露出をするかだとおもいました。前者は何もしないに等しいことなので、せっかくディズニーも絡んだ大型作品なのでどう露出するか考えました。スクエニに広告費露出を頼もうにも、先方は開発費が予算を大幅に越えており、その枠にも限界があることはわかっていました。
ディズニーには、新しい映画を世間に出すときに、他の企業と組んでプロモーションをするというco-promotion という仕組みが出来上がっていました。例えば、トイストーリーの映画封切に合わせて、マクドナルドがハッピーセットを出してその告知をメディア広告(主にテレビ)するという類のものです。ゲームではこのモデルを使ったことがないけれど、何とか出来ないものかということで、幾つも営業に回りました。その甲斐あって三井ホーム社、日清社そしてアサヒ飲料社とco-promotion 契約を結べました。
特に、アサヒ飲料社とはゲーム業界史上最大規模となるco-promotionが成立します。内容は、バイヤリスオレンジと三ツ矢サイダーを対象に、キングダムハーツのボトルキャップとデザイン缶キャンペーンを実行し、さらに大々的にキングダムハーツのイメージと宇多田ヒカルさんの「光」を使い、バイヤリスオレンジと三ツ矢サイダーをテレビ広告を中心としたメディア広告を展開するというものです。ブランドを二つに分けたのには実は裏の事情があります。ディズニーはグローバルにコカコーラ社とキャラクターライセンス契約をしていました。そのため、炭酸飲料についてはミッキーとその仲間たち、ディズニーでいうところのスタンダードキャラクターに関しては使えませんでした。そこで、どうしてもスタンダードキャラクターも使いたいアサヒ飲料社の要望に答える���く、バイヤリスオレンジにスタンダードキャラクターをあてがい、本当に推したい三ツ矢サイダーにはその他のキャラクターをあてがうことにしたのです(ちなみにすべて『キングダムハーツ』に出ているキャラクターでないといけない)。
結果デザイン缶は10パターン作ることになります。こちらにとって結果的によかったのは、アサヒ飲料社が2つのメインブランドを推すキャンペーンになったためプロモーション規模が結果的に大きくなるおまけもついて来たのです。ここであえて追加すると、日本の他のディズニー部隊の協力は素晴らしいものでした。当然、コカコーラ社を担当している部門や当時のディズニージャパンの星野社長(現在ジブリ社長)の協力が無ければ到底出来ない内容でした。
このキャンペーン規模、テレビ広告の規模全国2500GRP以上という凄まじいものでした。どれくらいすごいかと言うと、ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時。以下SCE)とスクエニがキングダムハーツにかけた広告を足したものの倍近くあったのです。また、ボトルキャップとデザイン缶を併せた『キングダムハーツ』仕様のドリンクは3000万缶近く作られ、コンビニでも『キングダムハーツ』のイメージが一気にばらまかれました。
キャンペーンタイミングも奇跡的にピッタリ合わせることが出来、今から考えても信じられないくらい上手く連動が出来たと想います。ゲームとの相性バッチリのアサヒ飲料のテレビ広告(YouTubeで捜しましたが見つかりませんでした。残念)は、ゲームの発売1週間前から集中投下され、この広告が始まるや、コンビニでのゲーム予約が8倍に跳ねました。ゲームも初回発注から、週末を待たず追加発注がなされ、何と1週目にスーパーロボット大戦の発売があったにもかかわらず、1位を獲得、大ヒットダイトルヘと成長をして行きます。海外では、『キングダムハーツ』はファイナルファンタジーを凌ぐビジネスとなっています。 当然、この『キングダムハーツ』に関しては、ゲームの力やクリエイターの執念、またパブリッシャーの努力が第一義的に成功の要因です。彼等の更なる努力により、キングダムハーツが10周年を迎え、さらに大きなIPに育っていることを本当に嬉しく思います。おめでとうございます。
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従兄弟が同棲するらしい。先日祖父の一周忌に実家の方に帰ると教えてもらった。叔父らは「同棲しなくても結婚すればいいんじゃないか」というので今の時代は色々考えているんだよ。と伝えると「そうかあ」と頷いたので、私自身モヤが残った。なぜ残ったかと言うのは母が同席して頷いていたことに何とも言えなくなった。私の母はずっと反対していたことに苛立ちがあったから。周りが同棲したと聞くとおめでとうと思うと共にどうやって納得させているのかわからなくてただただ違う世界の話に聞こえた。もちろん結婚してから住まった友人たちもいる中で何故母だけは、という柵に囚われてしまっていることも馬鹿馬鹿しくでも破れない自分にも腹が立っているし不甲斐ない。
昨日は会社のイベントでテーマパークに行った。会社が全面協力というものではなく、ただ比較的に安いワンデーチケットが抽選で手に入っただけで普段と変わらない日だった。私も抽選に当たり恋人と行く予定にしたけど思いの外同期も会社の先輩も多くて予定はキャンセルして私は友人と行くことにした。私たちの中は公表していない。結局他に公にしていないカップルが盗撮された姿が連絡来た時はゾッとした。人なんて他人なんだからほっといてくれよと思うのに。一緒に回った子+aで珍道パーティになった。アトラクションの待ち時間で結婚や子どもの話とかになった。+aには会社の人も含まれていたので上手い具合に恋人を明言しなかったけど、なんかムヤッとモヤっとしちゃう。
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これを書いた晩に恋人にハグやらキスやらの意味でスキンシップが足りない、と軽く伝えてみたら行為も含めた話に捉えられてしまい、どうやら今は休息期間だということを伝えられた。「いっぱいしてきたから」と。いっぱいして→休んで→いっぱいして→…と0か1しかないのか。電気を消してからこっそり泣いた。
何かと恋人と今のままでいいのか別れた方がいいんじゃないかと悶々とする時間があって、不安もなく穏便に過ごせたらいいのに。しがらみに囚われてる私も私だ。穏便に過ごしたら過ごしたで、今までの男を見放してきたくせに。
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でもめちゃくちゃに楽しかった夢の国!





いえい!
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SplatoonNA:
Team Bucket List takes the Splatfest win with a score of 415p! Congrats to the winners, thanks to everyone that participated, and be sure to grab those Super Sea Snails!


SplatoonJP:
「明日世界が終わるとしたら? いつもどおり過ごす vs やりたいこと全部やる vs 助かる方法を探す」フェスの結果は、395対415対60で「やりたいこと全部やる」チームの勝利に終わったぞ。
おめでとう!
参加された方は、スーパーサザエを忘れずにお受け取りいただきたい。


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なんだかエジプトにはずっと惹かれていた。一昨年は近代美術館の古代エジプト展に2回行った。ツタンカーメンが観れると思ったのになくて少し残念だった。小さい頃は図書館でミイラの作り方を知ってドキドキした。なんて現代離れしていて、ミステリアスで、丁寧で神秘的なんだろう。でも、まさかエジプトに行くとは思わなかった。高校の世界史は31点だったけれど、授業の合間に話す先生の旅の話が好きだった。先生、わたし暗記が苦手でテストは31点だったけれど、今度はエジプトに行きますよ。あれもこれも人生の伏線だったようで少しこそばゆい。
最初はベトナムに行くはずだった。ひょんなことからエジプトというワードが出て、恋人とエジプトに行くことになった。あれやこれやと出発日になり、出国する。機内のEgyptwifiに繋いでみるが、まったく更新されない。眼下には夜景。7年前にインドに行く途中でみた景色に似ていた。あの時も深夜のフライトで、照明が落とされて暗くなった機内で、ひとり静かに感動したのを覚えている。調べてみると北京の夜景らしい。あれは北京だったのかとまたひとつ伏線を回収する。
インドへ行く時よりも緊張している。家族に予行表を作って送信したり、事前にホテルをとり、ピラミッドや神殿への行き方を調べ、古代エジプト文明についても勉強した。インドの時は、行きと帰りの飛行機しか決めずにあとは現地のインド人と直接交渉した。言葉もわからないのに友達になってバラナシに1週間いた。良い旅を!と送り出してもらって、ピンク色のジョードプル、蜂蜜色のジャイサルメールへ行き、そしてニューデリーに帰った。懐かしい。あの頃は初めての冒険にワクワクして、怖いもの知らずだったみたいだ。今はエジプトへ行くワクワクと怖さと半々な気持ちで、飛行機に乗っている。
14時間も直角に近いシートで過ごせないと思って、持ってきたデエビゴを飲む。そこからは1時間ごとに寝たり起きたりして、途中でサンドイッチが配布されたからうつらうつらとしながら食べた。胡瓜とチーズが挟まっていて、チーズが美味しくてエジプトはチーズ美味いのかなあとぼんやり思ってまた眠った。8時間の眠剤の効果よりも早く目が冴えてしまって、今これを書いている。あと3時間半で着くという。折角の旅だ。恋人と協力して、しっかり楽しもう。年老いた日に思い返して、微笑んでしまうような旅になれば良いなと思う。
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「企業のネットが星を 被おお い、電子や光が駆け巡っても」国家や民族が消えてなくなるほどではない近未来が舞台の『攻殻機動隊』などで、後のクリエイターに多大な影響と衝撃を与えた漫画家、士郎正宗さん(63)。デビュー40年を迎え、世田谷文学館(東京都)では初の大規模展が開催される中、読売新聞の単独書面インタビューに応じ、これまで生み出した作品や創作の秘密、AI(人工知能)がもたらす人間の未来などについて縦横無尽に語った。近年ほとんどメディアの取材を受けていない士郎さんの貴重な語録をご覧あれ。(文化部 池田創) 展覧会では、『攻殻機動隊』の主人公の素子の印象的なセリフが印刷されたのれんが来場者を出迎える(東京都世田谷区の世田谷文学館で) 世田谷文学館で大規模展 ――デビュー40年を迎えられて、どのようにお感じになっていますか。 そもそも寡作な上、諸事情による中断・未発表・ボツ作品が多過ぎて読者諸氏に申し訳ないものの、何とかここまで生き残る事が出来て大変に幸運だったと思っています。活動が東京や他業種に広がるに連れて「水中を歩いて進むかの様な状態」になり、40年、色々と大変でした。また書籍などの荷物が転居や避難に適さない分量になっています(笑)。 ――代表作「攻殻機動隊」は海外でも熱狂的な人気が続いています。 最初期に出版物の海外展開を頑張りました。望外に細長く継続しており、ありがたい限りです。 ――今回の世田谷文学館の展覧会は大量の原画が間近で見ることができ、充実した展示内容です。 士郎正宗さんのコメントとともに作品世界を振り返る巨大な年表(東京都世田谷区の世田谷文学館で) 今回このような機会を頂き大変感謝しております。僕程度の小規模 傭兵ようへい 型漫画家でこういった事が可能なら、日本のコンテンツ業界はもっと多様多彩な作家・作品を、深掘り探索・開発活用出来るのではないかと思います。 ――「攻殻機動隊」をはじめ、ご著書は情報化社会を予見していると言われます。 たまたま運良くタイミングや関係者の都合に合致し話題として取り上げて頂いているだけで、僕以外にもそういった作家・作品は多数存在していると思います。情報化社会の好ましくない側面があまり大きくならなければ良いですね。物騒、殺伐、��ラブルは架空妄想物語の中だけで十分です。 ――AIの発展についてどのように感じていますか。 利便性と損害可能性は表裏一体、これまで考えられなかったレベルの明るい未来の可能性が開ける一方で、悪用や視野 狭窄きょうさく が起き、見えざる支配も容易になっている。研究開発に係る方々には頑張って頂きたいなと思います。 簡易強化外骨格、遠隔操作系ロボット類の開発が現実的 ――幼少期に親しんだマンガや小説はどのようなものがありますか。 デビュー作『アップルシード』のラフスケッチなどが並ぶ展示室(東京都世田谷区の世田谷文学館で) アニメ版の「鉄人28号」や「エイトマン」から入って、雑誌「りぼん」(一条ゆかり氏、大矢ちき氏、弓月光氏などなど)、松本零士氏、永井豪氏、細野不二彦氏の影響が大きいですね。大学以降は諸星大二郎氏、星野之宣氏、大友克洋氏の存在が大きいと思います。 ――「攻殻機動隊」で描いた人間の身体と精神の関係はどのように感じていますか。 脳や体が一体として機能している中では、脳が優位の制御系があったり、体が優位の制御系(例えば副腎とか脊髄反射系とか)があったり、交換可能な部分や欠損許容部分(例えば昔は虫垂や 胆嚢たんのう を結構普通に切除していた)があったり、複雑で不思議に出来ていると思います。 義体化のような、身体交換は僕が生み出した要素ではありません。スタニスラフ・レム氏の『君は生きているか?』や、日本のマンガアニメ界においては石ノ森章太郎氏の『サイボーグ009』などの有名作品がすでにありました。サイバネティクスの一般的な目的は医療や軍事だと思いますが、今後は老化・劣化対策というのも存在感を増すかもしれません。個人的には年々増加中の災害現場における簡易強化外骨格や遠隔操作系ロボット類の開発を進める方が現実的かなとは思います。 ――ご著書に細かく書き込まれた欄外文章の役割や狙いを教えてください。 リズム感が単調になりがちな説明セリフや会話を物語内部から減らせる、それによってキャラの練度・演出を高めに設定出来る、物語と読者の距離の調整ができる、などでしょうか。昨今、いや昔もこういう方法は 流行はや りではありませんが……。 ――押井守監督のアニメーション映画版のご感想をお聞かせください。 個人的には原作に気を使っている部分が押井氏にしては多めの1作目より、押井氏節全開の『イノセンス』の方が好みです。いずれも一生懸命作って頂いてありがたいなと思っております。 ――ネット社会の広がりやAI技術の発展をどう感じておられますか。 人工知能の偏向学習、悪意ある人 達たち による人工知能活用と、対策する側の人工知能活用の格差、オンライン上に無い膨大な情報の無視や軽視など、課題は山積しているのではないかと感じています。世界は 繋つな がって狭くなると同時に、逆に分断細分化が進んで互いの距離が開き、問題解決の可否、明暗の格差も広がっている様に感じています。今まさに『言葉が通じなくなってバベルの塔が崩壊し始めている』状態でしょうか。人工知能育成では可能な限り、真実や実態に近い情報を得て優先解とするような、何らかの情報検証機構が必要でしょう。 コスパタイパ重視では驚きや発見も無い ――ネットに常時接続することが当たり前になりました。そのことをどのように感じてらっしゃいますか。 一般的なネット通販をほぼ利用しておりませんが、ネット社会になってからの方がサービスの質が低下&商品を探しにくくなったように感じています。便利、合理的、コスパタイパ重視の姿勢は内向きになりがちで、冗長性や余白が少ない分、周囲を見渡す余裕が減少し続けるし、ひいては驚きや発見も無く窮屈ですね。昔のSFでは「監視管理社会」は人々の敵として描かれるのが一般的だったのですが、現代では意外とそういう管理監視社会の利点も許容されているように思います。とはいうものの、今後もDXが進み常時接続が常識常態化し、行政サービスやインフラなどの分野で、高度化し便利で安全で充実した幸福度の高い世の中になっていくと良いのですが……。 ――「攻殻機動隊」ではサイボーグ化しても人間の内にある「ゴースト」という概念が存在します。「ゴースト」とは何でしょうか。 展示室の中央には『攻殻機動隊』の原画が並び、迫力のある筆致を間近で感じられる(東京都世田谷区の世田谷文学館で) 正確か否か、定義可能か、とは別にして、宗教や哲学や文学昔話の分野で古くから使われている「たましい」「霊魂」「ソウル」などの単語が印象として一般的には伝わりやすいのではないかと思います。「何だかよくわからないが、存在しているように思えるモヤっとしたものを『ゴースト』と呼ぶ」のも娯楽分野では分かりやすくて良いかな、ということで単語を使用しています。 犬や小鳥も感情を有することが一般的にも知られており、感情は人間だけが持つ最上位の機能・特別な評価対象ではない、という観点から、マンガ版ではゴーストという単語において「感情に特別な意味を持たせていない」つもりです。当然ながら人の価値観はそれぞれなので、僕と他のアニメ版の監督諸氏とでもこうした諸々に対する考え方に違いがあるわけですが、その事自体も含めて、作品を異なる角度から捉えて楽しんで頂ければ良いなと考えています。 神話は魅力の塊なのだが… ――ご著書はシリアスな展開と迫力のある戦闘シーンの間にギャグが挟まりますね。作中におけるギャグの効用とはどのようなものでしょうか。 シリアスとギャグの挟み方や割合、そもそも混在を容認するか否か、など受け取る方々の価値観も観点も実に多様なので「万人にとって満足できる作品」というのは僕には難しいなと考えています。僕の取り扱うキャラクターたちは明日をも知れぬ立場なので、悲観的に備え楽観的に対処する、冗談でも言っていないとやっていられない、といったタイプが多めになっています。会話の軽さと行動、判断の速さ厳しさのギャップを楽しんで頂ければ良いかと思います。 ――『仙術超攻殻ORION』は日本神話をモチーフにしたファンタジーです。神話の魅力を教えてください。 神話と呼ばれる物語達は限られた要素と根源的な思考や解釈と想像力で織り上げられ、時代や民族の壁を越えて生き残っている、「選び抜かれた精鋭達」です。人々の心情や思考型や文化を映す鏡として、魅力の塊と言っても良いですね。一方で歴史を振り返ると、建築や芸術や情報戦において支配者や宗教組織や抵抗組織の都合や思惑と深く関わったと思しきものも多く、純粋に「素晴らしいか?」と問われると、答えに困る側面もあります。 ――『攻殻機動隊』のフチコマや、『ドミニオン』の小型戦車ボナパルトなど、作品からは戦車愛を感じます。 正義感にあふれる女性警察官のレオナが活躍する『ドミニオン』のコーナー(東京都世田谷区の世田谷文学館で) 「頑丈で壊れにくくて安全度が高い&移動以外にも何か作業が出来る乗り物」が好きですね。作品内に描く機会はなかなかありませんが、消防関連や港湾作業用の特殊車両、土木建築系や農林作業系の特殊機能車両なども同じように楽しくて興味深いと思っています。 気負わず欲張らず、自己ベスト更新維持 ――現在はイラスト制作や、画集刊行に活動の比重を置いておられますね。 マンガやアニメやゲームの企画書・プロット・シナリオなども色々と作っているのですが、なかなか最終商品の形にまで進める事が出来ておらず、イラストや画集は関係者や予算が少なくても実現可能な 為ため か商品の形になりやすい、というのが理由かと思います。 ――女性のエロチシズムを感じさせる美麗なイラストを生み出されています。 展示室の後半は、雑誌に発表した色鮮やかなカラーイラストが目を引く(東京都世田谷区の世田谷文学館で) モノクロでは描写しにくいがカラーでは比較的描写が容易で、競合が起きにくいと思われる光沢の肌にこだわっています。近年の画集においては、似た構図やポージングの微差バリエーションを連続、重複して描くことで、アニメの原画をパラパラと連続で見る時に近い印象や効果の誘発が起きないかと工夫しています。 ――近況を教えてください。 今も40年前も変わらず東京ではなく関西にいて不規則不健康な生活をしながら昼夜延々と絵やプロットや駄文を描き続けています。視力体力の減少により、未読書籍が積み重なっています。 ――今後の執筆への意気込みや読者へのメッセージをいただければと思います。 気負わず欲張らず、自己ベスト更新維持で変わりなく、他にしたい事も無いので、ダラダラ延々と何かを作る日々を送ると思います。読者諸氏にはまた次の作品でお会いした際に、何らかの形でお楽しみ頂けると幸いです。
「攻殻機動隊」士郎正宗、ネット社会・AI発展に警鐘「言葉が通じなくなってバベルの塔が崩壊し始めている」 : 読売新聞
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ゴッホ展を観に、友だちと東所沢まで行ったけどチケットが売り切れだった。仕方ないね、といって、でもせっかくきたんだし、と思って、コンビニに寄って買ったパピコを片手に緑の中をすこし歩く。今年の夏、はじめて蝉をみた。繊細な模様の羽根がか細く音を立ててはためいている。「ほぼ水になったアイスがいちばんおいしくね?」 そういう、ぼそっとつぶやいた何気ない言葉は静かにがらんどうの青空の中に溶けていき(あるいは沈んでいき)、わたしたちの夏の匂いの一部となっていく。この広い空に眼があったなら、風にくちびるがあったならどれほどうつくしいのだろうかをずっと考えていた。全ての境界線が暑さでじわじわ入り交じりゆくのを肌で感じながら、たとえばアマゾンの熱帯雨林に想いを馳せること、深海魚の生態について検索すること、もう2度と逢えない人に逢いたいと願ってしまうこと。蝉と、夏の太陽。波立つ海、燃え盛る炎。死者の言葉や羨望、未練、その姿かたちは今この瞬間にも車窓から見える光景の隅々にまで溶け込んでいて、わたしたちは明日もまたアスファルト下に沈む沢山の人間の流した血と涙の上を歩いていく。草花の幹に、雨の雫の一滴に、海水の塩になって、失われた生命はその記憶を繋いでいく。そんなことをぐるぐる何度も考えては、ほんとうにこれでいいのか、これが正しいのか、わたしはまた自らの想像力の足りなさでだれか傷つけていないだろうか?と言葉を反芻していた。大学の講���のフィードバックで「だれのことも傷つけずに生きていくことができない世界なら生きていきたくない」という学生のコメントが紹介された。そのときに先生(その人は先生と呼ばれるのを嫌う人だったけれど)が「怒りの気持ちは大切にするべきもの/忘れずに守っていくもの」と言っていた。あなたがそう感じてしまうのはあなた自身の問題ではなく、そう思わせてしまう社会の問題であり、その社会に対する怒りとあなたは向き合わなくてはいけない。そんなようなことを言っていた気がする。大好きなみんなへ 怒りに含まれる矛盾や素直な疑問は必ず次のより良い環境の土俵になるし、そうして得られた安らぎはだれかの優しくありたいと思う理由としてきっと光っていくから大丈夫。友達と東所沢から今度は渋谷まで移動して、おいしいサンドウィッチを食べた。ドンキホーテでピアッサーを買って、店頭に並ぶサンプル品のアイライナーで耳たぶに印をつける。渋谷の騒音の中、針が耳たぶを貫通する音はほんとうに小さかった。わたしの呼吸音はすごく小さかった。わたしたちの微かなときめきすら、その瞬間に街のどこかで繰り広げられているであろう壮絶なドラマと比べれば小さいのだろうなと思った。でも、それでよかった。それがよかった。「ピアス開けたら人生って変わるらしい」と、友達が耳を冷やしながら呟く。わたしは3月にピアスを開けたけど、そこからの人生すごく色鮮やかだったなーと思う。新しく出逢ったひとがたくさんいる。つらいこともあったし、人のことを信じたくないと思うことも多かった。でもわたしは多分どんなことがあろうと人との関係を疑いからはじめない。人のこと信じないことを選択するくらいなら信じて裏切られたほうが美しく傷つけるし、好きな人に期待しないでいるよりも期待してしまう自分の幼さや素直さをいとおしく思えるほうが伸び伸びとやさしい。一昨日、Twitterに写真を撮らせてほしいとのDMをいただいた。レンタカーで三浦までいって、ほとんどはじめてわたしは人が誰もいなくなった海に入った。その日は全てが青くて、露わにした太腿にはオレンジの花の花粉の色が染み付いた。下着にレースのワンピースだけ羽織って、押し寄せてくる波に体重を預ける。髪が濡れて、額に張り付く。カメラのレンズを見つめると、まるでその先に昔の自分がいるような気がして、涙がでてしまいそうだった。「知らなかったこと」が一瞬のうちに「知っていること」になっていくこと、その瞬間の微かな光の揺らめきと運命の歯車の軋む音が、夏の全てに意味を与えていく。もっと傷つきたい。駆け出していきたい。わたしも大人になったら、その人が私にしてくれたように、自分よりも幼いエネルギーの塊��たいないのちに素敵な景色を見せてあげたい。そう思える旅路だった。眩しくて鋭く発光する若さをぎゅっと抱きしめる。あなたの瞳をみつめながら、その眼差しに自分の人生の影を溢したこと。そこで交差した運命のような幻のような愛でもない何かについて考える。傷ついた分、その傷口に咲いた花の香りの美しさで感性の彩りが増すように、わたしは言葉を諦めたくない。未来のわたしは過去のわたしを慈しめているかしら。わたしはずっと昇って登っていく、丘の上で逢おうね。
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うわーーーい
退職しました!ようやく!ついに!
今回の職場は2年半続きました。今までで一番ストレス無く働けた場所。「明日仕事行きたくないなぁ」って思ったのはほとんど無かった、そんなとても気楽な職場だった。
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今日は最後、ミャンマーの年下の女の子と早番一緒だった。
色々喋って、なんか一番とても寂しくなったなあ。その子には唯一、一緒に働けなくなる事が惜しいなと思った子だ。笑
その子は日本語N2資格だから、少し語学の壁は感じることもありつつ、色々話してたらこの職場で1番私と似てる考えだったし、めっっっちゃしっかりしてて真面目で賢くて尊敬出来たし、働き方とか言動のテンポとかそういうのも似てた。
だから一緒に働いてて居心地良かったし、その子も私が一番何でも気楽に話せると言ってくれてた。
私が辞める事などをキッカケに、その子も退職する決意が固まったらしく、彼氏(彼氏も外国人で日本で店長やってる人)と結婚ビザに切り替えて、もう辞めると話してた。
あとは、絶対辞めないだろうと思われてた一匹狼系の長く働いてる中国の男の子も、もう辞めるっぽいと今日そのミャンマーの子からこっそり聞いて、色々ビックリすぎた。
真面目に頑張ってる子が馬鹿らしい思いをするような、まともに評価もできない、従業員を駒のように扱う会社(主にワンマンな社長)に皆愛想尽かした感じ。ほら見たことか!ざまぁみろ!と言いたいwwwwこれから無茶苦茶になるし(既にそうなりつつある)ホテルの評価も下がれ〜と思っちゃうよね。
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主に会社への不満が原因で辞めるけど、でも現場で日々一緒に働く人たち(環境)への不満も勿論あった。
私は、嫌いと認識した人と一緒に過ごさないといけない事にとてもストレスを感じるから、嫌いじゃないと思い込んでた気がする。
嫌いとまではいかないけど(直接私に攻撃してくる人は居なかったし)でも心のどこかでは、不満は感じてたような人もいる。
頑張り度合い、積極性とか、気付く範囲が違ったりして、業務負担量に差が出てたから、それはストレスだったなぁ。そんな人には、勿論何かしら働きかけたことはあったけど効果はなかったから、やはり他人を変えるより自分が変わったほうがいいなと思った事もあった。(それが転職という選択になった)こういう仕事だからさ、各々の分担された作業をやるんじゃなくて、共同で仕事をする感じだから、気付いた人が仕事して、気づけない人やサボる人はやらないみたいな環境だった。そうなるとどうしてもイライラしてしまうよね。
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だから、真面目に積極的に気付いて働くタイプの人たち(私、もう産休入る支配人の女性、ミャンマーの子、中国の子、日本人のおじさん)が辞めていくから多分近い将来ここの現場はめちゃめちゃになるんだろうなと思っている。というか、めちゃめちゃになって欲しいとまで私達は思ってるwwww
真面目にやる気出して頑張りたい人たちに馬鹿らしい思いをさせてやる気を削がせるのうますぎかよ、って会社(社長)に対して思ったもん。笑
もはや今回の出来事は現場の人への嫌がらせ?ってレベルだったからなぁ。ドン引きした。
まぁ、サラリーマンなんてそんなもんよ。労力(ストレス)と賃金が見合わなければさっさと別の会社に所属する。ただそれだけさ。常にそれは天秤にかけてる。
これ以外に詳しくは話せない事もあるけど、こんな感じの会社に当たることはなかなかもうないと思う。色々社会勉強にもなった。笑
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現場のスタッフで、辞めた後も何かしら連絡取りたいなと思えるのは7人中5人だなあ。まぁなかなか機会はないと思うけど……。
せっかくのご縁なので大切にしたいね。
不満もあったけど、それでも気楽に楽しく日々過ごせて、本当に良い2年半だったな。
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初めて外国人と一緒に働いて(半分が外国人スタッフ)、初めて外国人のお客さん相手の仕事をして(ほとんど外国人相手)、初めてホテルのフロント職に就いた。
そんな環境で得た経験や感情は本当に私にとってはとても意味のあるものだった!
今まで経験した仕事の中で、唯一本当に自分らしく伸び伸びと働けたし、楽しいから遊びの感覚で働けたし、これがやりがいというものか!と初めて感じた(自分の得意な事とか好きな事が活かせた)から、私にとっては天職だと知れた事も嬉しい。(ENFPなので天職を求めている)
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入社する前から外国人と付き合ったり遊んだりしてたし、遊びや恋愛以上の深い人と人との関係を求めてた私��ったから、この環境で2年半過ごせたから、自分の中で"外国人"として人を見る感覚じゃ無くて、ただ同じ人として見れる感覚もやはりこの環境にいたから得られたと思う。
入社前と今とそういう視点も変わった。
あともっともっと人間が好きになって、フレンドリーになれた気がする。笑
(なんかとことん、人間に興味があるENFP。世界も人間も全てを肯定したいENFPっていう特徴出てるよなww)
そんな環境にいたから本当に自分らしく毎日楽しく過ごせて、もっと自分も好きになったし、人生楽しくなったし、そんな自分だからこそもっっっっと素敵な彼氏に出会えたと思う。
人は似た者同士しかくっつかないから、多分以前の仕事のまま居続けて、人生退屈そうな顔で過ごしてたら、今の彼氏とは付き合えなかったと思う。
そういう意味では、ここで働いて本当に良かった。選択が成功だった。
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早速明後日から新しい職場だから、頑張りたいな☺️🌼
結構楽しみ!!!
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2025-5月号
アンビグラム作家の皆様に同じテーマでアンビグラムを作っていただく「月刊アンビグラム」、主宰のigatoxin(アンビグラム研究室 室長)です。
『アンビグラム』とは「複数の異なる見方を一つの図形にしたもの」であり、逆さにしたり裏返したりしても読めてしまう楽しいカラクリ文字です。詳しくはコチラをご参照ください⇒アンビグラムの作り方/Frog96
◆今月のお題は「対語」です◆
今月は参加者の皆様に「対語」のお題でアンビグラムを制作していただいております。メジャーな対義語は掘りつくされているのではと思われる中、作家の皆さんがどのような作品を作り上げてきたのか、楽しみにご覧ください。
皆様のコメントがいただけますと幸いです。

「損失/収益」 回転共存型:すざく氏
利益を失うこと/利益を得ること。 「損」の左の点のハネと「益」の左払いの重なり処理の切り替わりがうまいです。よい書体とデザインですね。

「アオムケ/ウツブセ」回転共存型:ヨウヘイ氏
顔や物の表面が上を向いていること/下を向いていること。 ドット表現が生きていますね。線が途切れたりという、1ドットの増減があっても割とこの解像度でも読めてしまいます。

���質素/華美」 図地反転共存型: いとうさとし氏
飾り気がなくシンプルの様子/華やかで美しく派手な様子。 「質」の上部にはみ出しがありますがそれを補ってあまりある全体的な完成度の高さです。文字のバランスも良く、すばらしいですね。

「闘(⿵门𭔰)争/逃走」 回転共存型:繋氏
「トウソウ」の同音異義語。 ステキな書体のデザインです。セリフやヒゲ部分もうまく生かされていますね。

「支配/服従」 回転共存型:KSK ONE 氏
相手を束縛すること/されること。 中央の「彳」相当部分のリガチャが気持ちよいです。筆致がかっこいいですね。

「過激/穏健」 回転共存型:douse氏
度を越して激しいこと/おだやかで行き過ぎていないこと。 太めの書体にすることで字画の衝突を自然に見せつつ、方向を切り替えるのに生かしています。「過」は大陸式のグリフですが気にならないものです。

「空虚/充実」 振動型:.38氏
なかみが何もないこと/満ち満ちて豊かなこと。 字画の絶妙な波うちと太さの変化で振動を実現させています。先割れ字画の具合もよいですね。中央の字画はハネとハライが切り替わります。
「陸/海」 敷き詰め図地反転型:アンビグラム研究室
「陸」と「海」の敷き詰め図地反転アンビグラム。陸海の図地反転の作例は複数存在します(一番早い作例はこちら→2010-05-06)。 本作はoyadge01氏と意瞑字査印氏が対応解釈、作字をkawahar氏がそれぞれ担当して制作されました。

「愚痴/感謝」 図地反転共存型: いとうさとし氏
言ってもしかたのないことを言って嘆くこと/ありがたく思って礼をいうこと。 非常に読みやすく驚くばかりです。「心/心」の図地対応は応用が利きそうですね。
「昨日/明日」 振動型:lszk氏
今日の一つ前の日/一つ後の日。 重ね合わせ処理をうまく利用した傑作です。矢印による示唆があるため、すぐに読めますね。

「脆弱/強靭」 敷詰回転共存型:douse氏
もろくて弱いこと/しなやかで強いこと。 黒パーツと灰色パーツを入れ替えていると見ることができます。角度の調整や線の出し入れの具合が絶品です。

「文明破滅/創世記譚」 鏡像共存型:ちくわああ氏
世界の終わりとはじまり。 文字単位での対応付けではないのですがバランスよく仕上がっています。かなり難しい対応付けをしている力作です。文字内の✨を自然にする中央の星デザインもよい工夫ですね。

「福良Pです/凶悪Qです」 図地反転共存型:つーさま!氏
QuizKnockのとある企画で発生した対義語。 「です/です」が図地対応できることに驚きです。「P/Q」がよいデザインですね。塗りつぶしが効果的に使われています。
「彼誰時のバス停/黄昏時の駅前」 回転共存型:松茸氏
明け方←→夕暮れ、バス停←→駅前。 適度なデフォルメが気持ちよく、全体的に素直に読める良作です。「亭」部分が袋文字のようになっている部分が上から下まで渡っているので気持ちよいですね。

「竜頭蛇尾/有終完美」 鏡像共存型:とりけとん氏
尻すぼみになること/最後までやり遂げること。 全体の流れで読むデザインではあると思いますが、一文字ずつ見てもかなりうまく調整されています。そのまま掛け軸にもできそうなよい作品です。

「おまえらの二次創作」 重畳型:Jinanbou氏
「オイラーの公式」に対する偽対義語(こちら)。 2ブロック分ずらしながら並べるとうまく配置できます。配置の発見と文字の切り取り方がすごいですね。

「貧乏舌/鼻セレブ」 回転共存型:てるだよ氏
こちらの偽対義語が初出でしょうか。 ポストに対するのコメントでは対応部分の前後関係が逆という指摘も多くありましたが、このデザインによればうまい配置になっています。細かい筆画にも工夫がありますね。


「SYNTAX/SEMANTICS」 回転共存型:兼吉共心堂氏
構文 (syntax) と意味論 (semantics) は、プログラミング言語において、コードの構造と意味を区別する概念。 珍しくラテン文字での作品。文字数の違いをクリアするための圧縮手法が見所です。

「攻守」 旋回型:うら紙氏
主に競技における攻撃と守備。 全体的に三角のペン形状とし、「攻」の最初の部分と「守」の点を自然に見せています。ポイントを押さえたよい作品ですね。

「誕生/死滅」 図地反転回転共存型: いとうさとし氏
生まれること/死に絶えること。 「誕/滅」の自然さに驚きます。「生/死」はシンプルな文字同士の対応付けの分、細かい凹凸の調整が見所ですね。
「是/非」 敷詰振動型(180度回転同一型):kawahar氏
道理にかなうこと/誤っていること。 縦に読めば首を縦に振る肯定の「是」、横に読めば首を横に振る否定の「非」です。ちょっとしたウロコの調整でうまく読めるように仕上げられています。

「光/影」 振動型:ラティエ氏
物事の明るい部分/暗い部分。 主観的輪郭を利用した知覚シフト。作例が非常に少ない手法ですがうまく扱っており、言葉にマッチしていてとても良い作品です。
「平面/立体」 回転共存型:lszk氏
2次元/3次元。 平行四辺形のような部分を平面的に見たり立体的に見たり切り替わるところがぴったりですばらしいです。「面」の窓も斜めに切られているので「立」の時に柱状に見えてきます。

「鷹/鳩」 回転共存型:douse氏
政治的な立場として、強硬派/平和派。 文字の特徴を的確にとらえたすばらしい図案化です。バランスが絶妙なので、まだれが小さくてもしっかり「鷹」ですね。

「祝/呪」 回転共存型: oyadge01氏 × 意瞑字査印氏
「祝」を180°回転させると「呪」と読める王道のアンビグラム。意瞑字査印氏が対応解釈、oyadge01氏が作字を それぞれ担当する合作の制作スタイルです。

「分裂/統合」 敷詰回転共存型×2:オルドビス紀氏
別れること/まとまること。 「分/合」「裂/統」それぞれが敷詰共存の関係です。字画本体と装飾が切り替わる効果が実感できる作品ですね。レタリングとアンビグラムが絶妙に融合しています。
「平坦/起伏」 回転共存型:Σ氏
表面が平らなこと/表面に動きがあること。 「坦/起」は無変換共存の関係ですが、もう一文字と合わせて角度を調整することで一文字目と二文字目の関係を入れ替えています。裏になった「犬」も愛らしいです。
「浪費/節約」 鏡像共存型:螺旋氏
無駄な出費を増やす/減らす。 「浪/約」がとても自然で驚きです。「費/節」の省略の仕方がすばらしいです。最大公約数をとるというだけでもなく、書体の力によるものも大きいですね。
最後に私の作品を。
「眼鏡(めがね)」 回転型:igatoxin
熟字訓にルビをふるときは、対語ルビ(グループルビ)で均等に。逆に、文字ごとにルビをふるのは「対字ルビ(モノルビ)」です。
お題「対語」のアンビグラム祭、いかがでしたでしょうか。御参加いただいた作家の皆様には深く感謝申し上げます。
さて次回のお題は「能力」です。スキル、技術、技量、熟練、パワー、資質、知能、独創性、スタミナ、異能、資格、器量 など 参加者が自由に能力というワードから発想・連想してアンビグラムを作ります。
締切は5/31、発行は6/8の予定です。それでは皆様 来月またお会いしましょう。
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2023年 1月{フリー} 2月{TV} 3月{クイズ} 4月{健康} 5月{回文} 6月{本} 7月{神話} 8月{ジャングル} 9月{日本史} 10月{ヒーロー} 11月{ゲーム} 12月{時事}
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2025年 1月{フリー} 2月{記憶} 3月{春} 4月{キッチン} 5月{対語} 6月{能力}
※これ以前のindexはこちら→《index:2017年~》
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