#桜が叩き落とされた
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脈打つ楽園
窓枠から揺らぐ桜の枝も、明日には新緑に飲み込まれそうだ。そういえばここ最近の私の心は綺麗なものに反応しづらい日々が続いていたと思う。晴れの日にカーテンを開けると世界が広がる気がしたし、少し雑にひいてしまったコーヒー豆から苦味を感じた時でも満足していたし、少し開けた窓から春一番が吹き込めば、髪の間に隠れた前髪が目に入ってだるがった��、それさえ日常のきらめきの一粒に、感じていた。
限りなく思い出せる出来事として、喜びに溢れていたはずの、ぱりんと割れた器があって、肌に刺さるほど大きな破片はないから散らばったまま放っておいたのであった。掻き集めてしまえば自分が必死になって過去に浸るような馬鹿な羽目にあうので、毎日思い切り踏んづけて、粉々にする。胸を張るように歩いても曇天の日が多いとあからさまに気分は下がって、記憶の引っ掛かりである音楽を街中のドラッグストアで聞けば瞬きの回数が多くなった。ことごとく気分が天気に左右されるのは通常であったが、あの冬というのは、幾分長かった気がする。
青々とした芝、本当の芝生は全く青くない。はげて土が見え、何日か前に落ちた赤褐色の枯葉、折れたての小枝に誰かが落としたガムの包装紙。秋に忘れられたどんぐりの頭、裸足の指をくすぐる小さな蟻、どこからか飛んできた灰色の石ころ。大きな幹からぐんぐん伸びた枝や生まれたての葉っぱが影を落として、太陽は数分ごとに位置を変え、私たちはそれから逃げるように、お尻をよじらせ木陰を追いかける。誰かの恩恵を受けたわけではなく、私はいつも芝生の上にいる。小学生の時、近くの公園が養殖中になると近くのブランコで口を尖らせ、早く陽の光の元で寝転びたい気持ちを抑え、スニーカーの先端でゴム床を蹴った。中学生になると、芝生の上で読むものがミステリー小説になった。官能小説も相変わらず読んでいた。高校生、私は一人になりたかった。ブレザーの背中についた細い葉を手で振り落とし、スカートも入念に叩いて、草の匂いが残る裸足で靴下を履いて、窮屈なローファーで電車に乗った。それから今も、私は芝生の上で寝っ転がったり、体育座りをしたり、枝葉から覗く太陽をかざした手のひら越しに見たり、首が痛くなれば、足の甲を走る蟻を応援したりしている。
仲良くなったら変わるよ、好きになったら変わるよ、大人になったら変わるよ、経験したら変わるよ。自分というものが変化するということが���前提で人に教えられると、すごく窮屈な気分になる。好きなものは変わらない、増えるだろうけど。逃げ道だって変わらない。泣く時に来る場所も、聴く曲も、読み返す詩も、変わっていないのに。手の届かないところで美化され、日記の彩りとして消費され、全部同じになんてなれない。あくまで共通のものが私と貴方と誰かに存在して、分かり合える喜びが胸を満たすけれど、貴方や誰かが存在する以前から私はずっとここに居たはずだ。貴方のせいで変わったわけじゃ無い。貴方や誰かを通り過ぎた私が、覚えたての感情を抱いても、知らせたりなんてしない。私の全ては、貴方や誰かに、関係がない。もう居なくなったなら。
一定の冷たさが占めていた、細々とした砂利の音と唸る波の音が聞こえた真夜中の海に似ている。目を覚ませば春風が部屋の観葉植物を力強く揺らす季節になっていた。眠りかけていた機微ごと叩き起こされるも、自分のいる場所は変わっていない。薄く開けた唇の隙間から、生温かい陽気を味わう。次に瞳を閉じた時には安らぎが欲しい。深い眠りと呼吸に身を任せて。
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たまごやき
大好きなあなたのことを考えながら、卵焼きを焼いている。
そんな詩めいた言葉を口に含みながら、よく溶いた卵をフライパンへ注いだら、弱火に熱した鉄のうえで薄い黄色がふくふく泡立った。洋食屋のシェフだった祖父直伝の卵焼きのレシピの内容は、たまごと醤油と砂糖、あと塩だけ。あせったらすぐ焦げてしまうので、深呼吸しながら巻いてゆく。出来上がった卵焼きの完成度で自分の気分が分かるのはまた別の話。
そうやって、わたしは今、もうこの世にいない大好きなあなたのことを考えながら、卵焼きを焼いている。
だって、卵焼きを焼くと、あなたの耳のうしろへ鼻を寄せたときと同じ匂いがするから。
あなたはわたしのお誕生日の次の日におうちへ来てくれた。茶色くて、骨が太くて、レッドアンドホワイト、オス、と札がついていた。お店で抱っこしたときはあんなに大人しかったのに、うちにくると暴れん坊になった。ラッキーって名前をつけようとしたら、父親が「こいつはそんな感じじゃない」と言って、すぐに〈チャチャ〉という名前になった。本当に声が大きかったよね。すっごいうるさかったよ。横に住んでるビーグルの男の子と、窓越しによく会話してたよね。散歩がすっごく好きだったよね。行けない日は網戸越しに外を見てたよね。バイクもトラックも本気で追いかけたよね。獣医さんの処方した薬は嫌いだったよね。そうそう、話は戻るけど、あなたをお会計(ペットショップ)してるとき、この子は心臓が弱いから生きられても12年ですって言われたんだよ。わたしは10歳だったから、説明を受ける両親の後ろで指を折って22歳まで数えてみたな。実感湧かなかったな。小さくてかわいいリボンを首につけて、ケーキを持ち帰るときとそっくりの段ボールに入って、空気穴から鼻を出してるあなたを見ながら、約12年のカウントダウンが始まりました。懐かしいね。
大好きだよって何度抱きしめただろうね。
私が悲しかった夜。外の空気を吸いたくて、でも門限が厳しかったからひとりでは出られなくて、「散歩連れて行ってくる」って口実で抱っこしたら、眠そうだったのに一緒に歩いてくれたよね。絶対前を歩いてくれたよね。でもそれはただ、自動販売機のひかりに吸い寄せられていたからだって知ってるよ。歩くたびに背中の毛が羽根みたいにふわふわゆれて、あれ、今思えば癖っ毛だったのかな。いろんなところでいたずらしてたし、オムライスのたまごをつまみ食いしたこともあったよね。勝手にテーブルに登ってティッシュを散らかしてたよね。私がリコーダーの練習をしてたら、エーデルワイスに合わせて遠吠えし出したのにはびっくりしたな。あれ今ネットに流せば話題になるんじゃないかな。いろんな携帯を経由してるからもう画質がびがびだけどね。
梨が好きだったよね。おじいちゃんの焼いたパンが好きだったよね。大きい毛布が好きだったよね。こたつも好きだったよね。ひとりっ子でわがまま放題だったあなたに、弟ができたのはその頃でしたね。黒いチワワのちくわ。妹命名です。手の先だけが茶色くて、ちくわをはめているみたいだったかららしいよ。最初は喧嘩してたけど、ちくわがあまりにもどこ吹く風だから、あなたは早々に諦めていましたね。いいコンビだったよ。お留守番も悲しくなくなったよね。いきなり部屋の電気をつけたら、ふたりでまぶし、って顔してたよね。血は繋がってないのに面白いくらい似てたよ。そしてそのまた次の年、コーギーのまめが来て。まめとは……相性あまり良くなかったよね。おんなじ毛の色してるくせにね。たまに、未知の生命体と交信するみたいに見つめ合ってたね。かわいかったよ。なんだかんだ一緒に寝たりしてたよね。リビングに毛玉がみっつ落ちてる光景、好きだったな。
あだ名たぶん10個くらいあるよ。思い出せないけど。チャチャはチャっくんになって、テレビでもののけ姫が流れた次の日、ヤックルにちなんで、チャックルになったよね。どうせなんて呼んでも振り向くんでしょあなたはね。
変なところ鋭かったよね。動物的勘っていうやつなのかな。
家出しようとしたら、静かに目で行くなって言ってくれたよね。
部活の大会で負けて、頭に顔を押しつけて泣いて、あたまびっしょびしょにしちゃってごめんね。
受験勉強で夜更かししてじゅう��んに寝かせてあげられなくてごめんね。
うるさいって言ってごめんね。でもそれはほんとにうるさかったからこれでおあいこです。
私が大学生になって、あなたの心臓がいよいよ悪くなって。大好きなおじいちゃんの食パンに包まれた薬を飲んでたよね。たまにぺって吐き出して怒られてたよね。たまに発作を起こしてたよね。つらかったよね。何もできなくてごめんね。
夜寝る前に、こっそりあなたの頭に鼻を寄せて、おやすみ、大好きだよ、って言うようになったのはその頃です。そして、卵焼きの匂いがすると知ったのもそれがきっかけです。ごめんね。でもね、朝起きて、あなたが死んでいたら後悔すると思って。自分勝手でごめんね。嫌だったよね。いや生きてるわ、って思ってたよねきっと。でもさ、そんなことでわたしのこと嫌いになったりしないよね。警戒心の強いあなたがわたしのお腹でぐーすか寝るくらいだもん。家族だもんね。
わたしがあなたを最後に見たのは、冷蔵庫の前に伏せをしている姿でした。いつも通りでした。この夜が山場だって両親から言われて、覚悟はしてたの。でもどこかで、大丈夫だろうって思ってたのも本当だよ。だってあなた信じられないくらい骨が太いんだもん。叩いたら太鼓みたいな音するんだもん。チワワのくせに8kgもあったんだもん��あっ、体重測るのはわたしの役目だったよね。わたしがあなたを抱いて体重計に乗って、表示された数字から48を引いたら、あなたの命の重さが分かりました。……そんな重くなかったって? ちゃんと重かったよ。そしてね、すっごいあったかかったよ。
朝。ベッドで寝ていたら、父親が入ってきて。目が覚めたのが先か、父が口を開いたのが先か覚えていないけど、そこで全部を悟りました。父親がわたしに声をかけるときは、決まって大事な話があるときだから。
チャっくんが死んだわ。
一言一句たがわず覚えています。
ベッドから出て、階段を降りて、リビングの柵を跨いで。この柵はね、あなたが脱走するから苦肉の策で設置したやつね。それを跨いで。
頭の横に母、足元に父、おなかのよこに妹。そして心臓の前にわたし。ちくわとまめはどこにいたかな。ごめん二人とも、その瞬間だけは見えてなかったかも。許してね。
死んでたね。
涙が出なくて。だって悲しくなくて。強がりとか薄情じゃなくて、分かってたから。半分だけあなたが死ぬって分かってたから。そっか、死んじゃったかって、あなたの目の前にいるくせにそんなことを思ったわたしのこと怒ってる? ……怒ってなさそうだね。この世の終わりのように泣く母に相槌を打って。初めて見る父親の泣き顔にびっくりして。妹は泣いてなかったったかな。
あまりにも悲しくなくて、普通にお化粧をして、遊ぶ約束をしていた友だちとそのまま遊びに行って、パスタを割り勘��て、電車に乗って帰って、恋人に迎えにきてもらって。こうやって文字にしてみたらすごく最低なやつだね。実際そうだよ。母親は不満そうでした。その反応が普通だよ。
だって、悲しくなかったの。当たり前だったから。あなたが生きていようが死んでいようが、わたしがあなたを好きなことに変わりはないし、今まで生きてきた時間は消えないし、思い出もなくならないから。そしてね、あなたが死んでからいまこの瞬間まで、あなたが死んだことを悲しんで涙を流したことはありません。懐かしくて泣いたことはあるけどね。
それは、あなたがぜんぶを連れ去ってしまったからです。
ビルでも建てられそうな隆々とした骨の中で、弱かった心臓を守っていたあなたは、いつだって気丈で跳ねっ返りが強くて。わたしが煌々と電気をつけて勉強するから寝不足だっただろうに、ごはんももりもり食べて。発作のときもどこか豪快で、心配になるような弱りかたはしなくて。ああ思い出した、肉球を怪我してるのに海に入って、血が出てるのに何にも言わなかったよね。気づかなくてごめんね。染みたよね。そんなふうにあなたはずっとまっすぐで。散歩のときはリードを引っ張って。あげく、もうすぐ死にます、なんて診断されて帰ってきて。
好きだったよ。
大好きだったよ。
いや、大好きだよ、今も。
火葬場に行くあなたを、最後にちくわと触りました。まめは連れて行かないでって吠えていました。うまくできた話だよね。泣かせるね。
遺骨になったあなたは、わたしが部活のカメラで撮ったぶさいくな写真を遺影に採用されて、いつもお仏壇はものでいっぱいです。最初はみんなさめざめとお菓子を備えてたけど、今では半分投げやりです。チャっくんにあげとくか〜って軽い感じです。
たまに夢で会いますね。
最初は良かったんだけど、いつしか、夢の中でさえ、なんであなたが生きてるんだろうって思うようになりました。たぶん、わたしにとって、あなたがこの世にいないことが普通になったから。
わたしは、あなたがいないことを悲観的に捉えたことはありません。会いたいなとは思うけど、悲しんで泣いたりはしません。たぶん、これからも。
一月生まれなのに桜が似合うあなたに。
みんなに撫でられすぎてあたまだけ癖っ毛が落ち着いていたあなたに。
悪知恵ばっかり働くあなたに。
ちょっとしゃくれてるあなたに。
しっぽが長いあなたに。
お風呂が大好きなあなたに。
10歳で亡くなったあなたに。
わたしの誕生日プレゼントとしておうちに来てくれたあなたと、その運命に。
耳の後ろが卵焼きなあなたに。
会いたいなと思いながら、さっき、卵焼きをお弁当に入れました。
気が向いたら会いに来てね。今日でもいいよ。そろそろのぼせそうだからお風呂あがるね。明日もお仕事だから早く寝るね。
おやすみ、大好きだよ!
……あれ、なんか伏線回収みたいになった? 職業病かな。うふふ。そうだといいな。
でも本当におやすみ。大好きだよ。
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桜林美佐の「美佐日記」(259)
「国が強くあり続ける秘訣とは?」
桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、259回目となりま
す。
今回も感想を頂きました。いつまでも災害派遣が続
いていることに関し「期間の設定など何らかのルー
ル」がないからであり、日本人の、なんでも竹を割
ったように決めず、曖昧にしておこうという悪い習
性が出ていると感じます」→本当にそうですね。あ
りがとうございます。
さて、先月末からこの6月は米陸軍関係者たちにと
って様々なイベントが続くことになります。
まず、5月の最終月曜日は「メモリアルデー」で戦
没将兵を追悼する休日でした。この日、軍人墓地な
どでは子供たちが全てのお墓に花や国旗を置いて国
の英雄たちを偲びます。
米国人の友人は、どんなに忙しくてもこの日だけは
必ず行事に参加するよう子供に教えていました。き
っと彼女も親からそう言い聞かされて育ったのでし
ょう。教育は本当に大事です。
最近、中国人ユーチューバーが靖国神社の石柱に赤
いスプレー缶で落書きし、日本の警察の手がおよぶ
間もなく本人は帰国していたのだとか。
トンデモないヤツだと思いますが、一方で、先人へ
の感謝を忘れがちな私たち日本人にとってはある種
の好機にしなければとも思います。
かつて、小泉首相が靖国参拝を行ってがんがん叩か
れていた頃、終戦記念日には何時間も並ぶほどの人
が訪れました。
靖国批判がかえって日本人の愛国心を思い出させた
と言えます。この光景は日本の強さを見せつけたの
ではないでしょうか。
中国人が、スプレー缶で落書き、なんてあまりにも
できすぎた挑発行為よりも、私は日本人が慰霊・顕
彰を忘れてしまうことをむしろ案じていますので、
この事件を機にその大切さを改めて思い起こすこと
ができればいいと思いました。
米軍人のメモリアルは続き、6月6日は「Dデー」で
した。第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦の
日ですが、今年は80年という節目でした。
さらに6月14日は「米陸軍創設記念日」です。この日
は星条旗が国旗に採用された日でもあります。
イギリス植民地だった米国各地で独立を目指した人
々が1775年6月14日に蜂起し、ジョージ・ワシン
トン将軍が最高指揮官となりました。今年は249
周年にあたるそうです。この日に合わせて米陸軍で
は大々的に誕生日パーティが催されます。そして7月
4日には独立記念日を迎えますので、行事が目白押
しなのです。
米国の強さはここにあると、私は感じます。国が強
くあり続ける秘訣を知っているからこそ、日本には
その大事なことを忘れさせる作戦を行ったわけで、
逆に言えば、彼らが守っていることを真似すれば強
くなると言えるでしょう。
米軍でも募集が非常に厳しくなっていて、2023
年度に目標を達成できたのは海兵隊と宇宙軍だけな
のだそうです。このあたり詳しくは新潮社『フォー
サイト』で元航空教育集団司令官の荒木淳一さんが
米軍のリクルート危機について書かれています。
陸軍ではこの2年間で5%の人員減となっている可
能性があるといいますので、わが国だけではなく米
軍の将来も案じられる昨今ですが、経済状況だけで
はない不変の価値観が基礎になっていれば大崩れは
しないのではないか、一連の行事を見てそんなこと
を考えさせられる6月です。
今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
皆様にとって素晴らしい1週間となりますように。
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2025/6/21 手が届かないように高いところに置いておいた弁当を、なんとかして叩き落として、テーブルに乗せて、丁寧に割り箸まで割って、「ハイ、どーじょ」って娘がしてくれました。 ぐちゃぐちゃになってしまったそのお弁当を前に、私は素直にありがとうと言えませんでした。 まだまだです。
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🍶 カルシス アバンギャルド(久米桜酒造・鳥取県西伯郡伯耆町) ︎良い感じのマセレーションの色味。 そのレモンイエローの液体を見るだけで条件反射で喉が鳴る方もいらっしゃるかなと思います。 自然が織りなす圧倒的な酸味はそのままに、エチケットのような混沌とした雰囲気も。 なんだか時代の味、なんて思ってしまいました。 集まって、もつれて、解けて、馴染んで。 時間と共に、飲んでいる人に合わせてフィットしていくような酒。 R5BYラストカルシス、思い残さないようにどうぞ!
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### 『白い雪と姉弟の誓い』
#### 第一章:冬の始まり
12月のとある夕暮れ時。窓の外では今年初めての雪が静かに降り始めていた。リビングのストーブの前で、私はお姉ちゃんの膝枕でくつろいでいた。ストーブのオレンジ色の炎がお姉ちゃんの長い睫毛を優しく照らし、ふわりと甘いシャンプーの香りが漂ってくる。
「弟くん、髪の毛伸びたね」
お姉ちゃんの指が私の前髪に触れた。その手のひらはいつもより少し熱く感じた。
「...お姉ちゃん、熱あるんじゃない?」
心配そうに額に手を当てると、確かにいつもより熱い。お姉ちゃんはふふっと笑って私の手を握り返した。
「大丈夫よ。弟くんに心配されるだけで、もう治っちゃいそう」
ストーブの火がぱちりと音を立て、お姉ちゃんの黒髪に赤い光の輪が浮かんだ。私はその美しさに見とれながら、ふと疑問が浮かんだ。
「なんでお姉ちゃんは、僕のことこんなに大切にしてくれるの?」
お姉ちゃんの表情が一瞬曇った。窓の外で雪が激しくなり、ガラスを叩く音が部屋に響く。
#### 第二章:過去の影
お姉ちゃんはゆっくりと目を閉じ、深いため息をついた。
「...弟くん、あの時のこと覚えてる? パパが家を出て行った夜のこと」
記憶の奥底が疼いた。5年前の冬、激しい夫婦喧嘩の末に父親が家を出て行ったあの夜。私は恐怖で震えながら、お姉ちゃんにしがみついていた。
「お姉ちゃんだけは、絶対に離さないって誓ったの」
お姉ちゃんの声が震えていた。握っている私の手に力がこもる。
「あの時からわかったの。家族って、すごく脆いものだって」
ストーブの火がゆらめき、お姉ちゃんの頬を伝う涙を照らした。私は思わず立ち上がり、お姉ちゃんを抱きしめた。お姉ちゃんの身体は細くて、でも温かかった。
「大丈夫だよ。僕はどこにも行かないから」
#### 第三章:歪んだ優しさ
それから数日後、学校からの帰り道で同級生の美咲さんと一緒に歩いていると、ふと背筋が寒くなったような気がした。
「...あれ? あそこに立ってる人、翔くんのお姉さんじゃない?」
美咲さんが指差した先には、確かにお姉ちゃんが立っていた。���笑いを浮かべながら、じっと私たちを見つめている。
「ちょっと待ってて」
急いでお姉ちゃんのもとへ走り寄ると、お姉ちゃんはにっこり笑った。
「おかえり、弟くん。お友達?」
その笑顔は一見優しそうだったが、目だけが全く笑っていなかった。美咲さんに軽く会釈すると、お姉ちゃんは私の手を強く握り、家路へと急ぎ始めた。
「...お姉ちゃん、怒ってる?」
「怒ってないわよ。ただ...」
突然立ち止まり、お姉ちゃんは私をじっと見つめた。夕暮れの光を受けて、お姉ちゃんの目が潤んで見えた。
「弟くんが他の女の子と仲良くしてるのを見ると、お姉ちゃん...ここが苦しくなるの」
胸に手を当てながら、お姉ちゃんは囁くように言った。
#### 第四章:崩れかけた均衡
その夜、私はベッドの中で悶々としていた。お姉ちゃんの異常なまでの執着。でも同時に、あの寂しげな表情が頭から離れない。
トントンとドアを叩く音がした。
「...弟くん、まだ起きてる?」
お姉ちゃんが入ってきて、私のベッドの端に腰かけた。パジャマの袖から覗くお姉ちゃんの腕は、月明かりに照らされて白く輝いていた。
「今日のこと、ごめんなさい」
お姉ちゃんの声がかすれていた。「お姉ちゃん、我慢できないの。弟くんが誰かと仲良くしてるのが...」
「...お姉ちゃん」
私はお姉ちゃんの手を握った。冷たかった。
「僕はお姉ちゃんのこと、大好きだよ。でも...」
「でも?」
お姉ちゃんの目が一瞬険しくなった。私は覚悟を決めて言葉を続けた。
「お姉ちゃんだけのものじゃないんだ。他の友達とも...」
「違うわ!」
お姉ちゃんの声が鋭く響いた。突然、お姉ちゃんが私に覆いかぶさってきた。
「弟くんはお姉ちゃんのもの。あの夜約束したでしょう? ずっと一緒だって...」
お姉ちゃんの涙が私の頬に落ちた。熱くて、でもどこか冷たく感じた。
#### 第五章:雪解け
翌朝、家中が異様な静けさに包まれていた。リビングに行くと、お姉ちゃんが窓の外を見つめながら紅茶を飲んでいた。
「...おはよう」
お姉ちゃんは振り向き、いつもの笑顔を見せた。でも、その笑顔にはどこか無理があるようだった。
「弟くん、昨日はごめんね。お姉ちゃん、少し...いや、かなりおかしかったわ」
窓の外では、昨夜降り積もった雪が朝日に照らされてきらきらと輝いていた。お姉ちゃんはその光を背に、ゆっくりと話し始めた。
「実は...カウンセリングに行ってるの」
「え...?」
「お姉ちゃんのこの...歪んだ愛情。これじゃ弟くんを苦しめるだけだってわかってきたから」
お姉ちゃんの目からまた涙がこぼれた。私は急いで駆け寄り、お姉ちゃんを抱きしめた。
「大丈夫だよ。僕も...お姉ちゃんと一緒に頑張るから」
お姉ちゃんの身体が小さく震えた。窓の外では、雪解けの水がきらきらと滴り落ちていた。
#### 第六章:新たな絆
それから数ヶ月後。お姉ちゃんは少しずつ変わっていった。過剰な干渉は減り、私と友達が遊ぶのも認めてくれるようになった。
ある晴れた日曜日、公園でお姉ちゃんとピクニックをしていた。新緑の香りが心地よく、遠くで子供たちの笑い声が聞こえる。
「ねえ、弟くん」
お姉ちゃんが突然真剣な顔��言った。「あの時は本当にごめんね。お姉ちゃんのせいで...」
「もういいよ」
私はお姉ちゃんの手を握り返した。「お姉ちゃんだって、辛かったんだよね」
お姉ちゃんの目に涙が浮かんだ。でも今度は、悲しみだけではない何かが込められていた。
「ありがとう。弟くんがいてくれて...本当に良かった」
風が吹き、桜の花びらが私たちの周りを舞った。白い雪の季節は終わり、新しい季節が始まろうとしていた。
(完)
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monologue: DJ公募と自身の考えの変化
久しぶりにDJ公募に応募してみました。
サブカルチャークロスオーバーイベント���patchwork』の公募です。 メイン・セカンド・ラウンジの3フロアでそれぞれ一人ずつ選出する"plus one"という企画。
個人での応募は……何年振りだろう。(だいたい8年くらい?)
自分自身、とあるパーティの公募採用がキッカケで本格的にDJを始めることになったのだけど……ここ数年はいろいろな公募の案内を見かけても見て見ぬ振りをしていました。
理由は単純。
「落ちるのが怖かったから。」
情けない話なのは自覚しています。そうとしか言えないので……
何度か見かけて応募しようと挑戦したことはあったのですが、実際結果のことを考えるとどうも気分が悪くなってしまい、思うようにMIXTAPEを仕上げられませんでした。 (これは以前書いた"不完全な完璧主義"にも通じる話なのですが、そもそも公募に対して納得のいかないものは出したくないので……)
DJ公募に落ちる = 自分のDJは求められていない。
そういった思い込みと恐怖がありました。考えすぎな話なのだけど。
……というのがちょっと前までの話。 最近は考えも少しずつ変わってきました。
お陰さまでDJの活動は安定してきていて、最近は自分の為に遊びに来てくれるお客さんも増えてきました。ありがとうございます。
『double-think』を始めとした活動の軸もでき、自身のプレイスタイルも固まってきたような気がします。さらにソレがそこそこ良い評価をいただけるように。うれしい話です。
そんな中、「いろいろ場所での活動を通じて組み上がった自分のメインフィールドはどこまで通用するのか?」とちょっと気になってきました。
あと、イベント・パーティ企画をしていく中で「結局のところ、出演はパーティとDJのマッチングである。」という考えを実感してきたのもあります。つい先日は桜逢祭の入学試験でソレを痛感しました。
例え落ちても別に死なないし、自分が自信を持っているプレイスタイルも、周りからいただけている評価も変わらない。
……じゃあ、久しぶりにちょっとやってみようか?
そんなカンジでDJブースに向かい、一本のMIXTAPEを録りました。
最近考えている"double-think"スタイルを30min.に纏めたMix "breakbeats & bassline + nerd"の信条を執念的に投入。
わりと当たり前の話でしたが、まあ自分としてはちょっと一歩抜け出した感じがあったのでつらつら書いてみました。
ダブユカでした。
--
ちなみにこの記事は結果発表からちょっと経ってから投稿されるように設定してあります。
結果どうなってるかな。どきどき。
~MIXTAPEのちょっとした解説メモなどなど~
"double-think" style
最近の自身のプレイスタイルのことをホームパーティのテーマになぞらえて"double-think"スタイルと呼び始めました。
ざっくりいえばマルチジャンルのクロスオーバー、ネタモノからインスト、オーバーグラウンドからアンダーグラウンドまで無節操に渡り歩く……そんなカンジです。
"文脈"すら一回壊してから再構築しているので自分の中で「コレは許されるのだろうか」と矛盾した考えのもと実行しています。
今回はサブカルチャーを意識して"a-style"と添えました。
MIXTAPEについて
自身のプレイスタイルの信条である "breakbeats & bassline + nerd"を執念的に叩き込みました。
好きなA-Popやゲームミュージックを織り交ぜながらナード要素を散りばめつつ、ベースライン(ミュータントベース)、ハードサウンドを叩き込み、ヴォーカル系のトランシーなガラージでキレイに締めたモノをラストで全てぶっ壊す。
そんなカンジです。コレが最近の"いつも通り"。
個人的には「天天天国地獄国 (Dub Edit)」のサビから一気に治安が急降下するとこが好きです。完全にあっかんべーしてます。
30分程度でコレをまとめるのって正直かなり難しいんじゃないか……って思ってたんですが、意外にも上手い具合にまとまった気がします。
もしよかったら聴いてみてください。何卒。
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0407-08
引っ越し翌日、はじめてのお客さんはおれのかわいいはるちゃんでした👦🏻🍊🧡ご飯作りながらはるちゃんがくるの待ってたんだけど、仕事終わりだったからドタバタでお迎えいけなくて、音量の調整を忘れてたバカデカいピンポンの音が聞こえた瞬間大焦りしました!(ほんとにデカすぎて心臓止ま��かと思った)ドア開けたらいつも通りかわいいはるちゃんがいて、死ぬほどニヤニヤしそうになるのがんばって抑えて。火かけっぱなしだったから急ぎ足で部屋戻ったんだけど、勝手にひとりでずっと萌えてて。毎日これやりたいな…って思ったけど、距離が遠くて難しそうなので諦めます。無念。おれがご飯つくってるときに挙動不審にニヤニヤしながら部屋うろうろして、「プリン買ってきたから冷蔵庫入れとくねーー!!」って大声で言ってて、なんでお土産渡すだけなのに照れてるのかまったくわからなかったけど、可愛かったからずーっと照れててくれてもいいなとか。思いました。そこからお風呂入って、寝る準備して、さーて飲むぞーー!ってテレビの前に座ったら23時で「えっ、23時!?!?」ってひっくり返ってるおれ。そうだよーってニコニコ笑ってるはるちゃん。一緒にいるときはいつも時間の経過が早くて嫌になるなあとか内心思いながら、はるちゃんのお土産をおつまみに超絶飲酒🍶とはいっても、はるちゃんのこともいっぱい甘やかして可愛がりたかったから、お酒はほどほどに切り上げてふたりだけの時間を過ごして、あまりにも幸せでどうにかなってしまうんじゃないかなって。眠るときにはるちゃんがいてくれるのがいちばんの幸せで、はるちゃんのことを抱きしめながら眠れる時間があればおれはどんなことだって乗り越えられるような気すらしてます🦸
なんだかんだ寝てて起きたら6時?7時?くらいだったんだけど、さすがにおやすみの日にその時間に起きて動く気力は、ダメ人間のおれは持ち合わせていなかったので…しっかり二度寝!ガッツリ二度寝!ハッピー二度寝!テレビ見ながら寝落ちてたからテレビのほう向いてたんだけど、はるちゃんが後ろから抱きついてくれるのがあまりにも幸せで、向かい合わないのもそれはそれでいいなあ…とかなんとかかんとか。結局起きたのは11時くらいでした。しっかり好きなひとと9時間くらい寝れました、ハッピー!!!!!起きた理由は「お腹が空いたから」だったんだけど、準備する気力を叩き起こすにはもう少しかかりそうだったから、とりあえずUber🍝魔法がかかってるらしいパスタをね、頼んだんですけれども。ふたりでいるだけでただでさえ魔法がかかってるようなものなのに、パスタに魔法がかかってたせいでいつもの何倍もハッピータイムになってしまいました。美味しかったです。
で、転入届出すのに市役所付き合ってもらったんだけど(残念ながら婚姻届ではないです。残念ながら)待ち時間にはるちゃんの帰りの電車調べてたときに「今日帰ったら寝る準備して電話しなきゃだもんねー!」って言ってて「電話しなきゃなの?」ってニヤニヤしながら聞いたりして。市役所でプロポーズしてやろうかなと思いました。相変わらず偏差値が、ない………。そこからプチ観光地みたいなところフラフラして、ジュース片手にコロッ��食べて。急な階段をふたりで桜横目に息切らしながら登って!この時点でカロリーはだいぶ消費されたんだけど(めちゃくちゃ怖い床が抜けそうなところも登りましたし)まーーーたプリン食べて!!!!前の晩だけじゃなくてこのあいだの旅行でもプリン食べたのに、どれだけプリン食う!?って自分でも笑ってしまいそうになったけど、はるちゃんが好きなものだからたくさん食べてほしいなあって気持ちもあれば、わざわざ2時間くらいかけてきてくれたのもうれしかったし。めっちゃ路上でふたりで食べさせ合いっこして、またバカップルしてました。すみません。自分でも重度のバカップルな自覚はあります。旅行終わりにバイバイするときは、はるちゃんのほうが寂しがってたけど、今回はおれのほうが寂しがってました😔はるちゃんにバレてたっぽいっていうね。情けない。でもはるちゃんも寂しいときの手の繋ぎ方してたからふたりとも寂しがってたのかも(はるちゃんは「寂しくない!!!!」って言い張ってたけど)。駅の待合室で座ってるときの悲しそうな顔見てると泣きそうになっちゃって、まあ泣かないけどさ、でももう連れ帰ってしまおうかなって思うくらいには離れたくなくて。うーん、困ったね。合鍵も無事に渡せたし、頻繁に会えないような距離でもないし、いつだって会えるんだけど。それでもやっぱり日常的にふたりでいられないのが寂しくて仕方ない。ひとりで眠るほうが違和感あるし、ひとりぶんだけご飯を作るの難しいし。どうなったって一緒にいたいのに、いられなくて腹立たしいまであります。仕方ないことだけど、やっぱり一緒に住みたいなあ…。おれの職業柄、夢みたいな話になりそうですね。悲しいなーーーー。
とはいえ、すっかり忘れてたけどおれたちも5ヶ月目!5ヶ月経ってちょっと落ち着くかと思いきや全然落ち着かず。ずーーーっと付き合いたてのときのまま、どきどきもするし、ときめきもするし、愛情も爆発したままだし。恋しくてたまらないのでいい加減責任とってください!なんの責任でしょう。言った本人がわかってません。会う予定もはっきりとしてないけど、いつだって会いたいし、いろんなところに行きたいし。はるちゃんとなら川辺でピクニックとかしたりしてもきっと楽しいはずだから、夏も秋も冬も次の春も、たくさん思い出作っていこうね🌊🍁⛄️🌸来月で半年!もっともっと好きになる半年でありますように!今月もありがとう。来月もよろしくね。
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世に母あるは幸いなり

先の10月27日、私の実母桑木朋子が永眠いたしました。世寿95の生涯でした。

母は、令和3年に遷化しました前住職(蓮華寺第29世修善院日正上人)の50年に及ぶ法灯を陰日向となり支えました。

結婚前は大阪市内���居りましたので、昭和30年代の当地、それもお寺に嫁ぐことは大変な決意であり、葛藤もあったかと思いますが、管内のお上人方、寺庭婦人の皆様、檀信徒の皆様、そして近隣の方々に支えられ、私の家内にバトンタッチするまで、坊守としての責務を果たすことができたと思います。
母は今から9年前、気管支からの大量出血により6時間以上に及ぶ大手術と突然の停電を乗り越え、奇跡的に生還しました。当時、齢85でありましたが、よくぞ大手術に耐えうる体力と生命力が残っていたものだと感心いたしました。

それからは、本人も私たちも、これから先の人生は更に賜っ��寿命と心に刻み、日々を過して参りました。

この3年ほどの間に両親を失いました。

コロナ禍が無ければ、もう少し元気な時に孫と一緒に好きなところへ連れて行ってあげたかったのですが、それも叶わず空白の時は無情に移ろいました。

私ども夫婦と3人の孫とで暮らすようになってから、子ども達は様々なことを教えられ、晩年には「分け隔てなく人は衰え、或いは変貌し、或いは壊れていくように見えて、やがて死にゆく」ことを学びました。


長女は、数年前に亡くなった近所の酒屋のお婆ちゃんが、葬儀前日の本堂に安置されていた棺の横で、太鼓を叩きながら一生懸命にお題目を唱えていました。

通夜の日には、一人でお祖母ちゃんの枕辺に座り、お経を唱えながら目ヤニを取ってあげていました。

家族として、本当にかけがえのないものをいただいたと思います。

師父の遷化には春の桜が咲き誇り、今、母の旅立ちは秋の桜がひっそりと花を付けました。 桜散り、梅はこぼれる、菊は舞う、椿は落ちて、牡丹崩れる、と、花の終わり一つを取りましても様々な美しい表現があります。

一方で、人の終わりは、苦しみに満ちた終焉が多く、母の最後もそうでした。 それでも、為すべきを為し、尽くすべくを尽くして、往いた母の人生は美しく、共に過ごせた時間に感謝したいと思います。
有り難う、お祖母ちゃん、お義母さん、お母さん・・
世に母あるは幸いなり 父あるも、また、幸いなり
追記: 何処から情報を得られたのか、私が存じ上げない母の知人が葬儀に駆けつけ、涙ながらに棺に花を手向けてくださいました。杖を突き、介助がなければ堂内まで上がれない方も数人いらっしゃいました。 種々ご事情があれども、「故人の遺志」とひと括りし、遺族の都合で通夜や葬儀を割愛してしまうことは、「生者の意志」を曖昧にして死者への悼みを軽んじているだけではないかと個人的に感じます。
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10月前半のこと
10/5日は横浜Buzzfrontにてライブでした。
呼んでくれたみほちゃんを始めとし関わってくれた方々来てくれた方々ありがとうございました(^O^)
個人的には今までで1番緊張して(いつもしないのに)超カチカチでうまく叩けなくて悔しい思いをしましたが、頑張っていきたいと思います。

スタジオの最寄駅、桜木町駅にいたやさしピエロ。ぴおシティという駅ビルが昭和を感じてよかった。閑散としておらず、昼間から立ち飲み屋さんは大盛況している感じがタイムスリップした気持ちにさせられた。
10/12はベースの72368とギターサポートしてくれたタクくんの結婚式がピューロランドでありました。
面白い&可愛いで和んだシーン。本当におめでとう!

我ながら良い写真😉
私の地元にはクルーのようなものは無い(多分)ので2人のそれぞれのクルーの方達が集まりお祝いしているのを見てなんだかファミリーな感じがしていいなと思いました。岡山の人ってなんだかカッコいい!

練馬にて電波系ハウスに遭遇😀
翌日はタクくんがいるWest side unityとFCM主催のイベントでした。
すっごい人でびっくりしました。ステージも大きくて上がりました。かっこよかったな!
スマホを落下させていないのに気がついたら画面が割れているという怪奇現象が起き、今日は画面を修理しに行きました。インカメは手遅れで死んでしまいましたがオールオッケ(^O^)
手作りアイロンビーズを貰いました。可愛すぎよね💖

では👋千紘でした。
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ユートピアを考えていた。
このなだらかなスロープをのぼる体はだいぶ軋んでいた。皆が支える滑車は見事に装飾され様々な色合いを纏い蔦をおおく絡めている。そこのミチを抜けると断層にあたるから、低く照らし尽くした桟道はなんぼもなく、曲線に沿って地下を巡ってください。厳粛な門扉は硝子でできており遠くまで見渡せていたが、ちょうど突きあたりの掉尾を飾るからなんてこともない、そこはゆるりとあればいい。 歩みだすときはどうせ坂道を転げるように自由を求める、いつかの雨晴れ。ひときれ振りまく苦笑いに流れるらしい わたしの日常は、腐った美術館だと畫けば、 fragileをのみこんでいった 無意識の傾げ、やわらかく暗がりを抱擁する低い空に神の皓さは具象する、湿っぽい賢者であろうと叩き壊した少々の本音はやはり馨り、あたりいちめんないような感覚と憂いたすべては酔彩、 (溜息、)羽とすれば咲くがいいか。 四六浮き積と漂う媒体、崩してむき出しに沈シンだ柔肌と、ちょうど上澄みの配列をいつかと散り敷かれる、 つまらない祝日がたどたどしく腰をおろして。 どうやら、読みかけの頁 と混じりあい 孤独を拐かしたように感じ、生身の体はまた地に湛む 一夜の姿を見せ/考える/ジオラマだと勝手、わらえばいいけど。しかしだよ。この雨はやまなかったが、あなたはやわらかなかおをして、たまにかがやいてみえる。 繊細は腐静仏と吸い寄せられ ひとつぶの常ジョウは物換星移 いま暁のことですから ハンドルNでは風刺画にもなりゃしないが そうだな これは焼けた砂浜の車をやめて、素足で降り立ち おんなはまた/猥りがましいから胎をさすって。ビーチハットを目深に被り、奥に統べるように干潟を浚い、この瞳もなにもみえやしないが。キャンバス上を、流れてゆく先々を想像したときに。――と、まあそんなしあわせがほしかった。そう、声なき声で。いつかの稚気をそぎおとした某名のひとつとして、 それともなにか適した通勤バスのなかは温室じみて、しばらく床に落ちた水加減が混じり、座席はテンプレートのように日差しが溶け込み、にわかにひっくりかえした特徴は天地に蒼くざわめいた。 決して。軽く蒸れ乾いた沈黙(額縁)を、のそのそと 這い出ると/おおごえで/振り向けば、主張がない/視覚を 片々な素材を塗り重ね、或いは くたくたな結び目の一方に火をいれたばかりのものは、枢ククリ地図を片手に押し開き、この状態を完璧なものだと、一途にあり。こわばる実を幾つか抱いた木々がまたヒトカズに入イる。独自な悪路にさしかかるワダツミの質感までがアサギと可溜り、珠海の鳳獄や銀竜草ユ��レイタケと解き、あっちこっちに群生し、おどろくほど弱い罠だとひとつ摘みとり、瞬く間に枯れて、どうせまわりはおだやかに過ぎゆくのですから もはや風であれ繋がれ、ほつれ目からそれぞれの人相を窺う、あるべきところへ薪は焚べられたのです。 怖気とは苦しみで悲しみで飼い殺した未知不明の蛇行を挟んでここに、種を蒔く。 無遠慮な灌木が芽吹きはじめる。侘しさが降り注ぎ窓に並ぶ。例えるなら眼鏡ごしに平行線の感傷とする。なにを掴み取ればよいのか。なにより御承知のとおり 喜劇覚書など粛々と眠るまえに ――ここに、延ばして掻きとるだけの今とは、ただただ下る 生活と通過する故に、蝋燭を立てインクを溢すのだから。その質感とあれば消沈の舵は荒廃を取り分け旨は潮流をややこと更け、刻としてうつほと孕む一筋のひかりを掴もうと手を伸ばし、ぬくみだけが輪郭と繊細に沁みて ……行く先をはじまりとみようが、柔らかな陽が透きとおったリネンのカーテンから現にみちみちて。シンプルないたみばかりが喉元を絞めるから。目覚めているようでどこか夢の最中あり、秒針も忙しない鼓動が重ならずに呼び起こしただけ切り抜きなのです (ひたぶる視覚に沿って包まれていたと、おもわれる、堺はまたどこかで傷付いて、脳裏ではたくさんのオリが生まれては消えていくのだ) ではやがて十坪に満たない明日になったら、赫々たる尊びも、ね――もう褪せた夏の秘色を解いたばかりの、あれら連中(労働者)はハリツケの丘を一蹴する。タンパク質が絵にかいたようなifの夢 (同時に朝もやと書き置き、手繰り寄せた白湯を啜った) 沖から外を眺め見ることが叶うよう、彫り込まれた深い庇が一夜のように天赦し、ゆるくズレていくと 人生のにぎわいにあたる。のちに複製され、舌の先まで熱い手のひらの流れに、記憶の隅に複雑に追いやられてしまい、なにもないほど、あたりまえになる このおとこの口から、光沢のある眼球まで感覚を欠けて、斜めから錠を取り付け、(まったく大袈裟な微睡みだと咳き込んでさぁ) 順序よく咀嚼させたものです。 ぬるい愚直なれ、鬱蒼とある なんぼか くねくねと、 まんべんなく虚脱感を肉体に添えるからだと 些細な��史と覗き込めば銀河の畔もなれはて、一朝の圧倒を縫ってそれほど充てる、澪標の跡は手のひらだけに催涙雨と成す しかし豊かな光や深い影が情け無いかも知れません。いまやあなたの芝居がかった振る舞いも幅広く、自然という退廃美と永久欠番の黒鍵と奏でる自白なども、いろを混ぜ合わせ、憐れみひとつも感じないから。膿んだほとぼりとはきっと反復する、ほんのつかのまの名画だとして ではループする7番線の占いは―― 「どうってことねえの。」 ――もしシーラカンスの脊柱は太い中空の管~左右を除する足音が発する。そうしたなかで皆それぞれに閉ざされていて、晴た口吻のまどかに手を付けた展望のあぶき、かろやかに伏し拝みしどき、受け皿を序す貽貝の毒はへばれども堅く。くどくどとそれを憔悴爆撃とすくんでも老いても あれらはどうであろう《多機能携帯端末と徘徊する》 、と―― 並んでいるところに立って おとこは むかっていた、 碑錆びた名残りとある廟のようでも。 天体観望会は、アンタレスだけ満たし、うららかな裏を反して。考える葦であればびくともしない性格で。悠長に眠っているくせに。月蝕のあいだじゅう表情が消える。 (あなたのネグリジェを、黄昏が、さりげなく梳いたという) にんげんは俯瞰してみれば限りなく小さく、日常の如何にのっぺらとしたことよ。あの手この手も、多少の変化にびくつきながら過ごす、懐かしさもちょっとしたありえない夢も、抄録コラージュしたばかりで 気づけば景観を彫像する箱庭であるのに、ほんのすこしかいま見る窓辺では霧のむこうにある、風景とはひやりとなみだしたり、肖像がほころびたりするけれども、春がまた濡れている あなただとして 〈枝と花で飾る、ことを。〉 おもいかえしては此等、あるがまま 〝恣意ている〟から ゆらぎ (尾ひれがつく。そう想われるのだ) すりつぶす星の粒が、ゆがんだ波が寄せては引いて、いつかの桜花を兆すまで闇が浮かび落ちる、わずかな影が同形な足で真直な選を追いたら、すくわれ続ける。うたかたの日は昇り、また沈み、一匹の貧相な観賞魚アナタをおもいえがく 爛れた流星痕とは���遊んだ野火だったから 況して、それからずっとひかりはリビングダイニングに処方箋を継ぎ足す。あなたから仕切られた曲線で、くすんだ指で 蝶尾がそこら中ともしらぬものを仄カタムけ、真っ白に潰されたひかりに値いし、天穹と深海をいずれも結ぼれるように反射した六畳一間に わたしと金魚鉢ひとつ、空蝉と置いてな(筆舌に尽くしがたい) 2024/07/27
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六篇 下 その二
京見物をして��る弥次郎兵衛と北八。 方広寺の柱の穴につっかえてしまった弥次郎兵衛。 やっとのことでくぐり抜けることが出来た。
それより二人は境内をめぐり歩いて、蓮花王院の三十三間堂にて、
いやたかき 五重の塔に くらべ見ん 三十三間 堂のながさを
と詠む。 ここよりこの御門前を北の方に行くと往来は、ことに賑わしくなる。
いかにも都の風俗は男女ともにどことなく柔和温順にして、馬方や荷物を運搬する人足までも綺麗に洗濯して、きっちりと折り目の付いている衣装を着ていて行儀正しい。 それに、あの『おっしゃりますことわいな』と言う言葉もなまめかしくておかしい。 二人は目にするもの耳にするもの、すべてが珍しくてあちらこちらを見ながら歩いていたがそのうち、にわかに往来が騒がしくなってきた。 「ほうほ、よいよい。えっこらさっさ。ほうほ、よいよい、えっこらさっさ。」 と誰も彼もが、走り出している。
弥次郎兵衛は、 「やたらと人が走っているようだが、向こうに何かあるんだろうか。この人ごみはすごい。」 と言うと、往来の人に問いかけてみる。 「もしもし、なんで、ございやすね。」 「あこにえらい、いさかいがあるわいの。」 と聞かれてた男は答える。 「なるほど、けんかか。京のけんかも珍しい。」 と北八も見物しようと駆け出している。 弥次郎兵衛もそれに追いつこうと駆け出してみると見物人は、山のごとくで行き来も出来ないほどになってきた。 二人はこの人を押し分け押し分け、前に進む。
さて、けんかの一人は魚屋らしく、そこに魚屋が使う大きな桶をおろしておりその相手は、職人の男らしい。 いづれも極めて屈強な若者たちであるが、都の人は心も悠長にして最初から、殴りあうわけでもなく日あたりのいいところで、ふたり向かい合って立っている。
魚屋が言った。 「これいの。お前の方から当りくさって、そないなこというもんじゃないわい。おのれ脳天、叩いてこまそかい。」 相手の職人が答える。 「おきくされ。普通に歩いておっただけで、手がちょっとふれただけじゃ。」 と言いつつ手ぬぐいを丁寧におって、鉢巻をする。 これが江戸っ子なら、ねじり鉢巻だというところ。
「えらそうな口をきくもんじゃな。いってえ、わりゃどこのもんじゃい。」 「俺かい。おりゃ、堀川姉が小路さがるところじゃわい。」 「名はなんというぞい。」 「喜兵衛というわい。」 「としはいくつじゃ。」 「二十四じゃわい。」 「おきくされ。おのれ二十四にしちゃ、えろう若い。うそつきくさるな。」 「何いうぞい。ほんまじゃわい。前厄で、今年、かかあを死なしたわい。」 「そりゃ、えらい力をおとしとったじゃあろ。よい気味さらしたな。」 「いや、そればかりじゃない。乳飲みくさるがきがあるさかい、えらい難儀なめにおうてるわい。」 「そんなら、おりゃ、われの二つ上じゃわい。」 「うそぬかすくさりゃ。われも若い。家はどこじゃぞい。」 「一条、猪熊通り、東へ入所じゃわい。」 「そうかい。やい、あそこに目の見えん、寸伯という針医があろがな。」 「おお針医がありゃ、どうじゃというな。」 「いや、こちの親戚じゃさかい、おのれが逃げ出すなら、言伝、たのもうとおもてじゃ。」 「いやじゃわい。 なんで、われの言伝を、誰がいうんなら。えらいあほうめじゃな。」 と掛け合い漫才のように、やっている。
見物の人があくびしながら 「十兵衛さん、もういのうかい。」 「またんせ。今に打ちあうじゃあろ。」 と話しかけられて男は、答える。 「いや、わしゃ家に客ほっておいてきたさかい。」 「そしたらそのお客、つれてごんせ。 そのついでに一枚、羽織るものでももってきなせえ。少し、寒くなってきた。」 と話している。
又、こちらの方にいる見物は軒下に座り込んで、無精ひげをぬきぬき、 「見なされ、あっちゃの若者のほうがえらいやつじゃわいな。」 「いやこっちゃの男も、えらい頭じゃ。」 「ほんに。その頭で思い出した。奥方はどうじゃいな。痛所はえいかいな。」 「はい、おかたじけなうござります。 落ち着いておりましたが、昨日から急に様態がわるうなってつい昨夜、死にましたわいな。」 「そりゃ、おまい御愁傷じゃあろ。御葬礼はいつじゃいあな。」 「それが、今出しておりますとこじゃあったがえらいいさかいがあると、人が走るさかいわしもついつられて、ちいとばっかし見てからにしようかと、それまで待てと言うて、待たしておきましたわいの。」 とおのおの気の長いものばかりである。
皆が皆、悠々と見物していると職人の男が、 「こりゃ、やい。もうちょっと、こっちゃへよりくされ。 日がかげって、寒うなったさかい。」 「おおよったぞ。わりゃ、どうすりゃ。」 「おのれ今、俺がことをあほうとぬかしおったがなんで、俺があほうじゃろ。」 「あほうじゃさかいあほうじゃわい。」 「なにぬかしくさる。そういうわれがあほうじゃわい。」 「いや、こちゃあほうじゃない。賢いわい。」 「われが、賢いなら、おれも賢いわい。」 「おお、われも賢いか。そしたら、このけんかはやめにしょうわい。」 「ひょっとして互いに、競りあって着物でもひきさいたら、損じゃさかい。 やめにしてこまそうかい。」
「えろう、遅なった。もういんでこまそ。」 「俺も、われがいにくさるのと同じ道じゃほどに連れだって、帰ってやるわい。それにしても今日は、いい天気じゃあったな。」 「ほんに暖こうて、えいわい。」 と互いに、挨拶してこの二人連れ立って帰って行く。 見物人もこそこそとちりじりにみな帰っていったのを見て、弥次郎兵衛と北八は腹を抱えて笑いだす。 「ははは、なるほど、上方ものは、気が長い。 あんなうすのろのけんかが、どこにあるもんだ。」 「あのなかで損得を考えて、やめにしたんだから大笑いだ。」
公家衆の います都は おのづから 喧嘩やめるも うたとよみなり
などと詠みながらそこを過ぎ���くと、はやくも清水寺に到る清水坂についた。
両側の茶屋からはそれぞれの店で商っている田楽を焼く団扇の音が聞こえかぶせるように、賑やかな呼び声がかかる。 「もしな、お入りなされ。茶あがって、お出んかいな。」 「名物、南蛮うどんあがらんかいな、おやすみなされ。なされ。」 弥次郎兵衛は、その声の方をちらっと見たが、 「うまそうだが、もっと先に行ってからにしよう。」 と言うと、北八も黙ってうなずく。
まもなく、清水寺についた。 境内を巡り歩いて音羽の滝をみてから、弥次郎兵衛が一首詠む。
名に聞こう 音羽の滝の あるからか のぼりつめたる 清弦の恋
本堂には十一面千手観世音があり、その昔、延鎮(えんちんと読み、僧侶の名前)が夢の中でみた霊像だということだ。 坂の上田村丸が建立したといわれている。 北八と弥次郎兵衛はしばらくこの、宝前で休みながら一首詠む。
境内に 数ある桜は すき間なく 手もたくさんな 千手観音
二人が休んでいるところの側の小高いところに、机が置いてありそこに寄りかかるように座っている僧が参詣する人に、 「当山観世音の御影は、これから出ますぞ。 誠に霊験あらたかなる事は目が見えないものが、見えるようになり耳の聞こえないものが、聞こえるようになり足の悪いものが、歩いて帰れるようになる。」 と喋っている。 「一度、拝すれば、いかなる無病達者なものでもたちまち西方、極楽浄土へすくいとらんとの御請願じゃ。 どなたもいただいておかへりなされ。 賽銭は、たくさんはいらぬ。 お心もちしだいで結構。御信心のかたは、ござりませぬかな。」
北八は、坊様の様子を見ながら、 「よくしゃべる坊主めだ。」 と笑っている。
つづく。
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各地句会報
花鳥誌 令和6年2月号

坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年11月1日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
星の出るいつも見る山鳥渡る 世詩明 人の世や女に生まれて木の葉髪 同 九頭竜の風のひらめき秋桜 ただし 太陽をのせて冬木の眠りけり 同 生死また十一月の風の音 同 朝湯して菊の香に上ぐ正信偈 清女 懸崖の赤き菊花の流れ落つ 誠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月2日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
秋空の深き水色限りなし 喜代子 故里は豊作とやら��紅葉 由季子 菊花展我等夫婦は無口なり 同 しぐれ来る老舗ののれん擦り切れて 都 狛犬の阿吽語らず冬に入る 同 謎々のすつきり解けた小春の日 同 杣山の織火となりぬ紅葉山 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月4日 零の会 坊城俊樹選 特選句
綿虫と彼女が指せばそれらしく 瑠璃 梵鐘のはらわたに闇暮の秋 緋路 逝く秋をくづれゝば積み古書店主 順子 綿虫や浄土の風が抜けるとき はるか 太き棘許してをりぬ秋薔薇 和子 弥陀仏の慈顔半眼草の花 昌文 綿虫のうすむらさきや九品仏 小鳥 参道で拾ふ木の実を投げ捨てる 久 綿虫は仏の日溜りにいつも 順子 香煙はとほく菩提樹の実は土に 小鳥
岡田順子選 特選句
腰かける丸太と秋を惜しみけり 光子 九品の印契結ぶや冬近し 眞理子 古に大根洗ひし九品仏 風頭 綿虫や浄土の風が抜けるとき はるか 奪衣婆の知る猿酒の在り処 光子 神無月ならば阿弥陀も金ぴかに 俊樹 蚤の市に売る秋風と鳥籠と 和子 下品仏とて金秋の色溢れ 俊樹 綿虫と彼女が指せばそれらしく 瑠璃 梵鐘のはらわたに闇暮の秋 緋路
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月4日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
ありきたりの秋思の襞を畳みをり かおり 秋日入む落剝しるき四郎像 たかし 返り花ままよと棄つる文の束 美穂 凩や客のまばらな湖西線 久美子 凩のやうな漢とすれ違ふ 睦子 小鳥来る小さなことには目をつむり 光子 流れ星キトラの星は朽ちてゆき 修二 凩に雲や斜めにほどかれて かおり 人肌を知らぬ男のぬくめ酒 たかし 老人が老人負うて秋の暮 朝子 冬の日や吾が影長く汝に触れて 同 身に入むや妣の財布の一セント 久美子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月10日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
秋思消ゆ「亀山蠟燭」点せば 悦子 この町へ一途に滾り冬夕焼 都 新蕎麦を打つ店主にも代替はり 佐代子 添ふ風に方位はあらず狂ひ花 悦子 HCU記号音満つ夜の長し 宇太郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月11日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
トランペット響く多摩川冬に入る 美枝子 竹林の風音乾き神の留守 秋尚 公園の隣りに棲みて落葉掃く 亜栄子 句碑の辺の風弄ぶ式部の実 同 新のりの茶漬に香る酒の締め 同 歩を伸ばす小春日和や夫の癒え 百合子 朔風や見下ろす街の鈍色に 秋尚 ぽつぽつと咲き茶の花の垣低き 同 リハビリの靴新調し落葉ふむ 多美女 濡れそぼつ桜落葉の華やぎぬ 文英 露凝りて句碑に雫の朝かな 幸風 大寺の庭きりもなや木の葉散る 美枝子 山寺の風の落葉を坐して聞き 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月13日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
風除の日だまりちよっと立ち話 和魚 風除の分厚き樹林影高き 秋尚 揚げと煮し切り干やさし里の味 あき子 薄日さす暗闇坂に帰り花 史空 渦状の切干甘き桜島 貴薫 切干や日の甘さ溜め縮みたる 三無 風除けをせねばと今日も一日過ぎ 怜 切干や少し甘めに味継がれ 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月13日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
確かむる一点一画秋灯下 昭子 幽玄な美女の小面紅葉映ゆ 時江 ���り糸の浮きは沈みし日向ぼこ 三四郎 六地蔵一体づつにある秋思 英美子 赤い靴なかに団栗二つ三つ 三四郎 着飾りて姉妹三人千歳飴 ただし 正装で背中に眠る七五三 みす枝 雪吊の神の恐れぬ高さまで 世詩明 七五三五人姉妹の薄化粧 ただし トランペット音を休めば息白し 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月14日 萩花鳥会
夜鴨鳴く門川住居六十年 祐子 捨てられて案山子初めて天を知る 健雄 ゴルフ玉直ぐも曲るも秋日向 俊文 山茶花や現役もまた楽しかり ゆかり 舟一艘ただぼんやりと霧の中 恒雄 献茶式津和野城下や朝時雨 美惠子
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令和5年11月14日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
秋の暮百均で買ふ髪飾 令子 虫食ひの跡そのままに紅葉かな 紀子 背の丸き鏡の我やうそ寒し 同 小春日や杖つく母を見んとする 令子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月15日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
小春日や日々好日と思ひたり 世詩明 禅林を通り来る風秋深し 啓子 何事も無き一日や神の旅 同 炉開きの一花一輪定位置に 泰俊 一本の池に煌めく櫨紅葉 同 三猿を掲ぐ日光冬日濃し 同 立冬こそ自己を晒せと橋の上 数幸 小六月笏谷石は饒舌に 同 如何にせん蟷螂は枯れ僧恙 雪 猫じやらしもて驚かしてみたき人 同 一匹の枯蟷螂に法の庭 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月17日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
小鳥来る赤き実に又白き実に 雪 幽霊の出るトンネルを抜け花野 同 おばあちやん子で育ちしと生身魂 同 見に入みぬ八卦見くれし一瞥に やす香 時雨るるやのつぺらぼうの石仏 同 近松忌逝きし句友の幾人ぞ 同 季は移り美しき言葉白秋忌 一涓 菅公の一首の如く山紅葉 同 落葉踏み歩幅小さくなる二人 同 冬ざれや真紅の句帳持ちて立つ 昭子 今日の朝寒む寒む小僧来たりけり やすえ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月17日 さきたま花鳥句会
からつぽの空に熟柿は朱を灯し 月惑 白壁の色変へてゆく初時雨 八草 六切の白菜余すひとり鍋 裕章 一切の雲を掃き出し冬立ちぬ 紀花 小春日や草履寄せある躙口 孝江 柿を剥く母似の叔母のうしろ影 ふゆ子 いわし雲よせ来る波の鹿島灘 ふじ穂 鵙たける庵に細き煙たつ 康子 雲切れて稜線きりり冬日和 恵美子 水鳥の羽音に湖の明けにけり 良江
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令和5年11月18日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
紫のさしも衰へ実紫 雪 蟷螂の静かに枯るる法の庭 同 二人居て又一人言時雨の夜 清女 母と子の唄の聞こゆる柚子湯かな みす枝 還りゆく地をねんごろに冬耕す 真栄 帰省子を見送る兄は窓叩く 世詩明 人に無く芒にありし帰り花 同 香水の口よりとどめさす言葉 かづを 時雨をり故山の景を暗めつつ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月19日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
浮寝鳥日陰に夢の深からむ 久子 呪術にも使へさうなる冬木かな 久 無敵なる尻振り進む鴨の陣 軽象 冬日和弥生も今も児ら走る 同 冬蝶の古代植物へと消えぬ 慶月 谿の日を薄く集める花八手 斉 冬天へ白樫動かざる晴れ間 慶月 青空へ枝先細き大枯木 秋尚 旋回す鳶の瞳に冬の海 久 冬の蜂おのが影這ふばかりなり 千種 水かげろうふ木陰に遊ぶ小春かな 斉
栗林圭魚選 特選句
竹藪の一画伐られ烏瓜 千種 遠富士をくっきり嵌めて冬の晴 秋尚 白樫の落葉急かせる風のこゑ 幸風 切り株に鋸の香遺る冬日和 久子 四阿にそそぐ光りや枯れ芙蓉 幸風 白樫の木洩れ日吸ひて石蕗咲けり 三無 小春の日熊鈴つけしリュック負ひ 同 青空へ枝先細き大枯木 秋尚 寒禽の忙しく鳴ける雑木林 貴薫 草の葉を休み休みの冬の蝶 秋尚 逞しく子等のサッカー石蕗咲けり 亜栄子 甘やかな香放ち桂紅葉散る 貴薫 あづまやの天井揺らぐ池の秋 れい
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月26日 月例会 坊城俊樹選 特選句
薄き日を余さず纏ふ花八手 昌文 耳たぶに冬の真珠のあたたかく 和子 黒松の肌の亀甲冬ざるる 要 雪吊をおくるみとして老松は 緋路 冬空を縫ふジェットコースターの弧 月惑 ペチカ燃ゆフランス人形ほほそめる て津子 上手に嘘つかれてしまふ裘 政江 嘘つつむやうに小さく手に咳を 和子 手袋に言葉のかたち作りけり 順子
岡田順子選 特選句
池一枚裁ち切つてゆく鴨の水尾 緋路 黒松の肌の亀甲冬ざるる 要 自惚の冬の紅葉は水境へ 光子 玄冬の塒を巻きぬジェットコースター 同 光圀の松は過保護に菰巻きぬ 同 ペチカ燃ゆフランス人形ほほそめる て津子 雪吊を一の松より仕上げをり 佑天 不老水涸れをり茶屋に売る団子 要 遊園地もの食ふ匂ひある時雨 俊樹
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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ある画家の手記if.116 行屋虚彦視点 告白
今日も雨。 降ってる間は静かでいい。 やむと下から上に登る気配に肌の上を虫が這う。 ガリガリ服の下の肌を引っかきながら口にくわえてたゼリー飲料を飲み込む。 なんか今日やけに…窓の外が青いな
最初にここに来たとき、俺はスマホの充電器と行き道で買ったスポドとゼリー飲料しか荷物持ってなかった。 光熱費払ってればなんも物がなくても近くにコンビニあるだけで暮らせないこともないだろうし、俺はあいつのいない空間があればそれで、だだっ広いフローリングだけの部屋にいるのもいいかと思ってた。 母さんが死んで、あの人のおかげで自分が人間っぽい生活できてたことを知った。 掃除洗濯とかいちいち着替えたり風呂入ったり料理作ったり。俺は一人じゃ自分になんにもしてやる気がない。自分が嫌いとかなんとかじゃなくてだるい。身支度も、俺がきちんとしてないと迷惑かける人間とかもいないし、てんでいまだに服は全身500円の古着からなんもレベルアップしてない。 俺って今中学生だっけ…高校生だっけ…てか何歳だっけ…この前違うインタビューで二連続で聞かれてテキトーにどっちにも違うこと言った気がすんな…。 フローリングだけの床の真ん中に仰向けになって毎日過ごしてた。高い空間、薄めの色…?
そうして色々疎かにしてたら、連絡きたと思ったらそのまますごい早さで香澄さんが訪ねてきて、引っ越してすぐだしなんか用事か忘れ物かなと思って上がってもらったら香澄さんは歯ブラシとかラップとかトイレットペーパーとかタオルとか生活必需品ぽいやつをどっさり携えてて、誰のだ?って思ったら全部俺んだった。 そのまま香澄さんが買ってきた食材使ってキッチンで料理はじまって、なんもしないのもあれだから俺も隣で料理すんの手伝って、その日は久々になんかうまいもの食べた。そういえば焼肉とかまた食いたい。 消耗品が揃ったのは助かったなって思ってまたフローリングの中央にいるだけの元の生活に戻ってたら香澄さんに布団買いに行こうって言われて…誘われて?一緒にホームセンターに布団一式買いに行って、リビングの真ん中にふわふわの布団だけ敷いてある状態になった。 他にもいくつも部屋はあるし風呂場は俺が何人入るんだって広さだしで、部屋をどれも活用して暮らした方がいいかもな…と思う反面、…俺は基本怠惰でだるだるしてっからな…イラついてるときはだるっとはしてないのかもだけど…布団の周りに生活に必要なもの全部揃えてそっからあんま動きたくねぇー…
極力物は少なくしたい。全部黒とか白とかで統一したってそれぞれ違う音も色も光も出す、なくていい物はなくていい。 …と、思ってたんだけど、香澄さんが来るたびどんどん家具増えてって。とりあえずリビングの隣の部屋に配置しといた。どれも実家にある家具の地獄のセンスに比べれば全然色もデザインも穏やかだから黙ってもらっといた。その中にでかい謎のクッションみたいなソファみたいなのがあって座ると凹んで面白いからしばらくそれに乗っかってた。 あとで俺も一人で出かけてって同じソファ見つけ出して買ってリビングに二つ並べた。香澄さんが来たとき用。 それで香澄さんはここに来たときにはオフホワイトのそのソファに定位置みたいに座るようになった。香澄さんが俺に買ってくれたやつは濃紺。香澄さんのをオフホワイトにしたのは、多分香澄さんの生来持つ色をよく引き立たせるから。…ほんとはちゃんと見えてないけど、それでもまあまあの確率で当たるといえば当たる。 もらってるものにはその場でレシート見せてもらってきっかり現金で返した。俺の財布ん中見て香澄さんはちょっと引いてた。 ここくる前に���展やって全部売れたしな。しばらくはなんもする気ない。 これも母さんが死んでから気づいたけど、俺は金がなくなって電気ガスが止まろうが路頭に迷おうが飢えようがその気にならないと描かないっぽい。まだそこまで金がなくなったことも描かない日が続いたこともないけど。以前はいざって時の母さんの治療費にとか思って絶え間なく描いてた。 …あとは、描く以外にどう肯定すればいいのか分からなかったから、音と、色と、触覚、痛み、…絵にしないと美しくはない世界を。それをそうとしか感じられない、そう感じる俺を疑わない、俺を。 ここに絵を描く道具はなにも持ってこなかった。荒療治みたいなもんだ。他の方法を模索するための。描くために補助的に使える緩和策とか。いつまで続くかわかんねーけど。
違う日に、たまに会話に自然に紛れるみたいに出てきてたアヤって人を、香澄さんが連れてきた。 香澄さん曰くキラキラしてて王子様みたいな人。聞くからに俺が苦手なタイプだな…と思ってたら実物はなんか違った。 「こないだ話した王子様だよ」ってなぜか得意げに紹介されて、玄関先でしばらくその人をじっと見たせいで少し場の空気変になった気がする。 咄嗟に補完する色を脳内検索してみたんだけど無理だった。黒と白の墨っぽいマチエールに薄紅色に金粉みたいなのが細かく舞ってる、完成されすぎてて加える色も補完する色もない。別の色を加えようとしたら今の美しさを損なう、隣に全然違う色を置いてもほとんどの色が優雅さで負けて圧殺される…いや、香澄さんなら隣にいて遜色ないか、赤っていうか朱に白筋だし、雅な色だしお互い引き立てあうし相性いいな、香澄さんにもよく見たら金箔乗ってるし、葬式場に咲き零れた桜に朱塗りの盃をあげてる感じか とかなんとか思ってたせいですぐに反応できなかった。 その人もその人で俺のことしばらくじっと見てた。目の白濁が不気味だったかなと思って、なんとなく初めて眼帯で隠したほうがいいかとか思ったときに訊かれた。 「その目、どうしたの」 ここまでストレートに俺本人に訊いてくる人も珍しいなと思った。影で色々言われてんのは知ってるけど。 答えようか迷ってたらさらに続けられた。「直にぃから聞いて知ってるよ。行屋虚彦くん。9歳で初個展を開いて以来ずっと現役活動中の画家。でしょ」 空気の流れに沿って薄紅色がはらはら舞いながら俺の顔の横を通り抜ける …オルゴール音みたいなのが これはたぶん実際の音じゃないな 音が鳴る人…だ いや、誰でもそうだけど。普段は無視してる音を俺が拾ったのか… そこで初めて、視覚情報に意識が戻った、その人に微笑みかけられたんだってことに気づいた
香澄さんに買ってもらった爪切りで爪を切る。 少々深爪になるくらいまで切っとかないと、今日みたいな日は肌引っかきすぎてこのままだと怪我する。 床から灰色が緑に混ざって登ってきてた。足を一度床に強く叩きつけたら緑だけ少し落ちた。下の階に迷惑か。 爪をゴミ箱に捨ててパーカーをかぶる。 いつもの黒い長袖とデニム。この時期これで外出歩くのは暑いけど、室内では年中クーラーつけて過ごすからこれでいい。設定温度は十九度。 インターホンが鳴ったから出たら香澄さんだった。 鍵を開けて部屋に通して、香澄さんがお土産に買ってきてくれたコーヒーをお互いに一個ずつ持って、クローゼットからブランケットひっぱってきて香澄さんに渡す。俺はずっとここにいて気温感覚麻痺してるけどこの部屋だけたぶん極寒だから。香澄さんが買ってくれたブランケット、柄がなんか控えめにかわいい感じだけど、俺がガキだから…?それとも香澄さんがこういうの好きなのか。 いつものオフホワイトのソファに沈み込むみたいにして香澄さんが座って、濃紺のソファに俺が座る。このソファ、人を堕落させるとかなんとかいう触れ込みがあるらしい。どういうことだよ。 「こんなしょっちゅう俺のとこ来てて直人さんなんか言わないんですか」 コーヒーの蓋をとって冷ましながら隣の香澄さんに訊く。今日のは水銀みたいなの立ち上ってんな。 「直人?うつひこくんによろしくって」 よろしく、って…俺によろしくって… なんなんだよ… 俺あんま…機嫌とられんの好きじゃねー��だけど…厚意が苦手って俺ひねくれてんのかな…なにが気にいらねーんだ… 直人さんが養子とったのも、養子ってのも、よくわかってない。何がどうなったらそうなるんだ…。 推測…というか見たままなら…なくもないけど…でもそういう素振りなかったしな… 二人してリビングで並んでいつも陽の差し込む全面強化ガラスの窓のほうを向いてぼんやりする。 ときどき話したり沈黙が続いたり。 俺はそれで居心地悪くないし、過剰なもてなしみたいのされるのが俺が好きじゃないから香澄さんにも特にしてないんだけど、俺の感覚だしな。それでいいのかはわかんねえ。 パーティで初対面だったときも俺は無理して愛想笑いとか親しみやすい喋りとか一切しなかった。いつもそうだ。無理してて続くわけねえし身の丈に合わねえことして無様になるのも嫌だ。それで生意気だの社会のマナーが身についてないのガキだのって言われても俺は実際生意気でマナーのなってないガキだしな… 香澄さんも居心地悪いなら来なきゃいいんだろうし。…それとも俺そんなに放置すると大人としての責任問題に繋がるほど危なげに見えてんのかな… 湿気で肌に虫が這うのをガリガリ引っかきながらぼんやりソファの上で窓の外を見てたら、 ーーーーーー急に きた 下から青? … やばい、 これは 空気中を埋めつくすみたいに ここ十七階だろ これもう 手遅れじゃねえのか 「香澄さん!!」 ソファから反射的に立ち上がって香澄さんの体をガラスから遠い位置に突き飛ばしてリビングに敷いてた一番分厚い布団を香澄さんの体にばさっと被せた 少々乱暴な動作になったけど死ぬよりましだろ しばらく窓の外の色を見て急激すぎる変化がないのを確認してから俺も一緒に布団の中に潜った 「うつひこく…「ちょっとすいません、スマホで情報確認します、香澄さんは布団から体出さないでください」 言葉に被せるみたいにして言って黙らせて手元のスマホの画面を弾いて確認する。 直後にきた。 一度重低音が鳴ってガラス窓や床や部屋全体が揺れた。ぶつかったり割れるような固い家具がないからよくわかんねえな、この高さの新しい建物なら免震構造か制震構造でできてるはず。 スマホで情報見てたら警報が出た。震度5。震源地が。ここは震度3だったらしい。もっとでかくてやばいのがくる気がしたけど、違ってたならいいか… まだ少し余震が続く中で、混み合いすぎてて繋がらねーかもと思いながらも直人さんに電話をかける。繋がった。 「あ、もしもし。ここに香澄さん居るんですけど、そっち大丈夫ですか。こっちは二人とも無事です。……はい。…そうですね。俺がそう言ってもあれなんで、本人に代わります」 香澄さんに電話が繋がったままの俺のスマホを渡す。 正直こういうのよくわかってねーけど、災害時には家族で連絡とって合流したり、なんか…そういうのあるらしい。母さんは電話出られねーしあいつは日本にいたことほぼないしケータイの一つも持たねえしで結局よく分かんねえけど。 …パーティ会場で、この人のことを「息子」って言って俺に話す直人さんが…その関係を大事そうにしてるのを、見たから 俺にあの人の大事なものを守る筋合いとか別にねえんだけど…香澄さん単体となら付き合いはあるけど… 二人で布団かぶったまま、香澄さんは隣で直人さんと電話越しに安否確認とって、今日は電車とか車道も全部混み合うだろうからってことで、香澄さんはここに泊まってくことになった。 余震が来ても倒れてくるようなものはこのリビングにはないけど、ガラス窓が全壊するとかに備えて一応二人で窓から離れた位置でふかふかの布団をかぶって寝る。一人分しかないから一緒に寝ることになった。 もともと一人で使うにはデカすぎるくらいだったし、俺がペラいし小さいから二人で寝ても余裕でスペースは余った。 布に巻いた靴を二人分、布団のそばに置いとく。 布団かぶってスマホで情報流し見しながら、ここまで大袈裟に騒いだり備える必要全然なかったっぽいのを知って安心と一緒に微妙に恥ずかしくなってくる。 「あの」 背中向けてるから見えないけど香澄さんに声かける。 「大袈裟に騒いですみませんでした…」 目視で見えた感じじゃやばいように見えた、でもそれは単に俺の目がおかしかっただけだ ほとんど見えなくなった方の白濁した目は今も何かを拾い続けてる、それも以前より鮮明に鋭く拾うこともあるくらいで 俺の見てる世界は、前よりさらに俺の見てる世界以外の何でもなくなった 誰だってそうだ、…そう言えないくらい隔たってる 実害のあるレベルだ 今もこうして香澄さんを巻き込んでるし 耳の奥でガリガリ音がするのをパーカーかぶって両手で頭おさえてやり過ごす 絵を描いてれば空腹か体力の限界がくれば疲れて倒れるみたいに眠れてた 今は描いてないからなかなか眠れない 暗い空間に青い光が床を走っていくのをじっと見ていた
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第2話「地(とし)上」
目覚めた先に見えたのは、暗闇に染まった無機質な天井だった。左右に視線を動かし、シンプルな照明器具があるのを見つけて、ここが自室でないと思う。その直後に、自室を最後どころか、地下都市クーニャを出たのだと思い出した ゆらぎは、がばりと慌てて起き上がる。
身体の軽さで、クーニャを出るときに着ていた上着が脱がされていることを知る。そろりと、���闇の中で少し手を伸ばした先に、上着は丁寧に畳まれて置かれていた。
掴んだ上着を身につけつつも、暗闇に慣れた視界は、現在地を把握するのにそう時間は掛からなかった。と言うよりも、随分とシンプルで物がない部屋だったのだ。
窓に引かれた濃い色のカーテン、彼が寝ているベッドも似たような色合いだ。部屋の片隅に積まれたのは、頑丈にそして入念に封をされた無機質な箱がいくつか。それだけがあった。それしかなかった。
ゆらぎはベッドから静かに降りると、窓際へと移動する。夜闇の冷たさを吸い込んだカーテンを掴み、隠された光景を広げた。
「うわっ」
ガラスのキャンバスに映り込む外の景色に、驚きの声をあげる。
そこに広がっていたのは、光の洪水であった。
地下都市クーニャでは見られなかった高層ビル郡。それらの間を通り抜ける幾つもの光が流れる道。ギラギラと輝くのは車か部屋の灯りか。消灯時間になれば真っ暗になっていたクーニャとは対照的な光景に、ゆらぎは一歩後に引く。
その時、来客を告げる音がした。ついで、慌ただしい様子の足音が、部屋の外ーーおそらく廊下を駆け抜ける。聞き覚えのある声がしたが、その内容まではさすがに聞き取れなかった。
ゆっくりと、そしてこっそりと部屋の扉をゆらぎは開ける。ほとんど音はせず、来客と家主の会話は止まることなく進められていた。
「新人を列車から連れ去った上で、イカロスに直接乗せるとか馬鹿じゃねーの!」
「うるさい。結果的にペティノスたちを殲滅したから良いだろう。大体お前だって、ノリノリで組んでたじゃないか」
「まさか、移送中のまっさらな新人のことだとは思わないじゃねえか。直接搭乗は禁止されてる。それを、兎成姉妹のイカロスにわからないよう小細工までしてやったことにオレは怒ってんだよ」
「だが、あれをしなければまず間違いなくペティノスを削りきれずに、犠牲者はもっと出た。左近だって、まっさらな何も知らない新人を尊い犠牲とやらにはしたくなかっただろ?」
「それはッ」
そこで来客者は押し黙る。わなわなと握る手を震わせてはいたが、それでも怒りを相手にぶつけることはしなかった。
ゆらぎは、そこまで聞いてようやく来客者の男が、あの黒のイカロスから聞こえてきた声の主だと気付く。そして、家主と思われる人物が、ゆらぎをイカロスで連れ去ったあの痩せた男だとも。両者ともがどこか似たような声質で、髪型や目の色などは違うが、それでも面影が重なる不思議な感覚に支配された時、第三者が現れた。
「はいはーい、右近も左近も夜中に大声で怒鳴りあうんじゃないの。あんまりにもうるさいと、獅子夜くんが目覚めるよ?」
先程まで言い合っていた二人とは違う、落ち着いた声。けれど、茶目っ気も含まれた言い方に、右近と左近の二人はムッとした表情を浮かべる。
二人の間に、文字通り床から浮き上がるようにして登場したのは、イカロスの中で現れたエイト・エイトと呼ばれる人物だった。その身体は透けており、彼がAIで、現れたのがホログラムだと分かる。
左近と呼ばれた来客は、少し落ち着きを取り戻したようだが、それでも言いたいことはまだまだあったようだ。
「だいたい、エイト・エイトも右近の無茶振りに応えるなよ。めろり教官だってカンカンに怒ってたし、ユタカ司令官も」
「あー、はいはい。うん、左近の怒りが治らないのはよーく分かった。オレちゃんだって、まずいなぁって自覚はあったさ」
「だったら、なおさらやるなよ」
テヘッとふざけたポーズをするエイト・エイトに、遂に毒気が抜けたのか。項垂れる左近に対し、エイト・エイトや右近は大して反省している素振りもなく、また慰めることすらしなかった。
がくりと膝をついていた左近は、そこでようやくゆらぎの存在に気づく。お、と顔を明るくさせた彼の様子に、右近もまた後輩が目覚めたのを知ったらしい。エイト・エイトだけは、肩をすくめた後に、パチンとウィンクをして、その場から消えた。
「よー、起きたんだな」
馴れ馴れしく近づいてくる左近に、彼がこれまで接したことのないタイプだったゆらぎは身体を固まらせる。
白い髪と桜色の目。けれど面立ちは右近とよく似ているし、痩せ型であるところも同様だ。色だけが違うだけで、あとは殆ど一緒であることに違和感がある。人間のクローンは違法であるが、ペティノスの一件を黙っていたこれまでのことがあるからか、ゆらぎはその説を捨てきれないでいた。
「獅子夜ゆらぎ、だっけ? お前すげーな、ダイブ直後だったんだろ? それであそこまで乱戦に対応できるなんて、本当天才だな。なぁなぁ、オペレート中の景色どこまで見えたんだ?」
ゆらぎの肩を組み、矢継ぎ早に繰り出される左近からの質問。それらに答えるだけの度胸もなく、ゆらぎは視線をきょときょとと不自然なほどに、あちらこちらに向けた。
その様子が、あまりにも哀れに思われたのか。右近から助けが入る。
「左近、獅子夜くんが怯えている。一旦、離れろ」
「えー、親睦だよ、親睦。右近だけでなく、オレとも仲良くなろうよ、獅子夜くーん」
「だから、獅子夜くんは、まだ俺たちのことを知らないんだ。お前だけでなくて、俺のことも、この場所のことも」
そこまで言われて、左近の動きがピタリと止まった。
「え? マジ?」
「大マジ」
確かめるように、か細い声で左近が問いかければ、重々しく右近は頷く。その答えに、左近はゆっくりとゆらぎの肩から手を引いた。
「……自己紹介も、もしかしてまだ?」
とんでもない相手をみる、怯えるような左近からの問いかけに、ゆらぎは無言で頷く。その様子で現状を客観的に見た左近は、右近に近づくと、彼の頭を叩いた。
「この大馬鹿野郎が! 完っ全に誘拐犯じゃねーか!」
そのまま右近の頭を床に押し付けようとする。が、右近は右近でそれに抵抗しているようだ。十数秒の攻防だったが、右近が左近の脛を蹴り飛ばしたことで決着がついた。
床にうずくまる左近を放っておいて、右近がゆらぎに近づく。そして、ゆっくりとした丁寧な口調で自己紹介を始めた。
「今更ではありますが、自己紹介を。俺は神楽右近(からき うこん)。君を連れ去った張本人であり、あの青のイカロス、つまりナンバーズ五番のパイロットです」
そこまで一息に告げて、右近はぎこちなく握手を求めてくる。ゆらぎもまた、ぎこちなく握手を返した。互いにその手は冷たい。
続けて右近は説明する。
「ここは、俺が住んでいる家で、獅子夜くんがいたのは……君用の部屋のつもりです。本当は新入生は寮に入る規則なのですが、ここはナンバーズ用の宿舎なので、多少融通は効くと思って、連れてきました」
それと、と続く言葉にゆらぎは首を傾げる。
「そこにいる、俺とよく似た男は神楽左近(からき さこん)。察していると思いますが、あの黒のイカロス、つまりナンバーズ六番のパイロットで、俺の双子の兄弟です」
ゆらぎは双子という言葉を初めて聞いた。
地下にいる人類は全員、統一マザーコンピューターによって、ガラスによく似た材質の擬似子宮から生まれる。ランダムに選出された卵子と精子が受精し、擬似子宮に着床。その後十ヶ月ほどかけて生まれ落ちた胎児は、血縁関係にない、統一マザーに選出された二人組の親の元で一定期間育てられるのだ。
ごく稀に、何らかの事情で兄弟姉妹の関係になる子供たちがいるらしいとは、ゆらぎもクーニャで聞いているが、双子の兄弟はどういう意味なのかと戸惑う。
「どーも、神楽左近デス。この大馬鹿野郎とは双子デス。双子なのを後悔してマス」
先程まで床にうずくまっていた左近は、恨めしげな声で、右近の背後をとる。ぎりぎりと首元に腕を回し、大馬鹿野郎の評価に反抗する右近を押さえつけた左近。両者の表情はまるで違っていたが、それでもそっくりに近かった。
「あの……双子ってなんですか? クローンとは違うんですか」
ゆらぎの質問に、気がついたらまた一戦交えようとしていた二人は、動きを止める。
「あー、そっか。そうだよな、普通は双子なんて見ないだろうしな」
「俺だってここに来るまで、左近の存在を知りませんでしたからね。もしかしたら、双子は別の環境で会わないように設定されているのかもしれません」
「可能性あるよなぁ……たまたまオレたちがここにいるっていう、滅多にないというか、とんでもない偶然があったから、話が広がってここ最近は双子の説明をする必要がなかったんだもんな」
そこまで互いに確認し合ってから、右近から説明が入る。
「ええっと俺と左近は、全く同一の受精卵から発生してます。とある受精卵が二つに別れたのち、別の人間になっていったのが双子、というわけです。統一マザーへ情報の確認をしましたが、俺と左近は二つに別れた後に、そのまま同じ擬似子宮で成長を続けます。その後、健康状態に不備はなく、無事に生まれ、全く違う親の元で育てられました。説明した通り、同一の受精卵なので同一の遺伝情報を持っていますから、結果瓜二つの人間となるわけです」
「え、でも髪色も目の色も違いますが」
ゆらぎの疑問に、カラリとした笑顔で左近が答える。
「それは、オレが脱色してカラコン使ってるだけ。元々は右近と同じ色合いだったんだ。オレも右近の存在を知ったのは、この『都市ファロス』に来てからで、お互いあまりにもよく似ているもんでな。周囲が間違えて間違えて、すっげー面倒になったから、じゃあカラーリング変えちまえって。その結果これよ」
「双子といえど、別の人間ですからね。進路適正には性格も含まれますが、まさか双子が揃ってイカロスのパイロットになるとは思わなかったのでしょう」
「さすがに、めろり教官や他のAIは間違えなかったから良かったといえば、良かったけど」
「替え玉試験はできなかったですけどね」
「そこは惜しかった」
うんうんと腕を組み合って頷く動きがシンクロしていることに、これが双子なのかぁ、とゆらぎは妙な感想を抱く。そして、二人がゆらぎを見つめているのに気づくと、今度は自分の番なのだと悟った。
「えっと、獅子夜ゆらぎです。クーニャのエリア6出身……というか、今回の卒業はエリア6の番なので、ご存知かと思います。兄弟はいなくて、両親と暮らしていました。あとは……その、特には」
他に何か言うことはあったかと空回りする思考の中、「よろしくな!」と左近が肩を組んでくる。おずおずとゆらぎは「よろしく……お願いします」と二人に改めて挨拶の言葉を告げる。
「ええ、よろしくお願いします」
ようやく家主であり、正体不明の相棒である右近の表情が和らいだのを見たためか、ゆらぎの体から力が抜ける。
その瞬間、盛大な腹の虫の音が鳴った。
「……」
「……」
音の出どころを確認する双子に対し、ゆらぎは顔を真っ赤にさせながらも俯く。
「食事にしましょうか」
「そうだな」
「あの……本当にすみません」
右近と左近の「気にするな」の言葉が重なった。
こっちです、という右近の案内で、ゆらぎはリビングへと案内される。彼の一人暮らしというには、テーブルやソファなどは広々と置かれていた。
ゆらぎは案内されたダイニングテーブルとその椅子に座る。
「エイト・エイト」
右近の呼びかけにAIが再び姿を表す。今度はエプロンを身につけたホログラムで、完全に主人の用件を把握しているようだった。
「はいはーい、夜食だね。獅子夜くんだけでなくて、右近と左近も食べるかい?」
「ええ」
「お、エイト・エイトの夜食だ。やった、ラッキー」
じゃあ、少し待っ���てねー、とキッチンの方へ向かうAIと、その様子になんの疑問も抱かない双子の様子に、ゆらぎは一拍だけツッコミが遅れた。
「え、いや、AIのホログラムって料理できませんよね!?」
「エイト・エイトは起動してから長いもので……ああ言った小芝居をよくするんですよ」
ゆらぎの言葉に、あっさりと右近は返す。が、そんな理由で彼が納得するわけもなく、苦笑いを浮かべた左近が補足する。
「いや、起動してから長いって理由だけじゃないよ。ほぼ同時期に支給されてるオレのAIに料理頼んでも、温めた料理プレートをテーブルに置かれるだけだぜ。……まぁたぶんだけど、当初この家住んでたオレ含めた連中の世話している内に、ああいう小芝居というか、親みたいな対応し始めたんじゃないかな。料理の好き嫌いが全員極端だったし、いちいち対応するのも面倒な連中だったしな」
懐かしい風景だと言わんばかりの左近の表情に、ゆらぎは困惑を隠せない。
「左近さんも、この家に住んでたんですか?」
「そう。二、三年前に出てったけどな。それでもエイト・エイトの料理はうまいし、たまに食べに来てるぜ」
「たかりにきているの間違いでは?」
「いいじゃんか。右近がちゃんとメシ食ってるかどうかの、確認も兼ねてるんだし」
どうも彼の言葉通りならば、この家には複数人の人間が住んでいたようだ。この広さや部屋数も納得できる。しかし、どうみても今は隣にいる右近だけが住んでいる状況。なんとなく違和感がゆらぎを襲ったが、空腹を刺激するいい匂いが立ち込める。
ぐぅと再びゆらぎの腹が鳴った。
「今もっていくから、獅子夜くん待っててね!」
軽快な言葉と鼻歌交じりで登場したエイト・エイト。彼の周囲には、物理ハンドで運ばれている三つの器があった。
「空腹限界の獅子夜くん用、ごろごろ野菜のスープです。ブイヤベースは、この間調べた改良型を合成してみたよ」
どうぞ、とテーブルの上に並べられた器の中身は、ゆらぎがこれまで見たこともない色と形をしたスープだった。香りもまた、見た目以上に食欲をそそる。
「うまそー」
「ああ、そうだな」
先輩二人がエイト・エイトに一言礼を告げて、スプーンで口にする。その二人の嬉しそうな顔に、ゆらぎはいてもたってもいられずに、スプーンを掴んで食べ始めた。
一口で止められずに、二口、三口とかき込むように、野菜を運び込む。あつあつのスープに、舌がやけどしかけたりもしたが、それでも水を飲んで冷ますと、また次を食べ始める。
がつがつと食べるゆらぎを見て、エイト・エイトは満足そうな顔をした。
「いいねー、こんなに勢いよく食べてくれる子がいてくれると、お兄さん嬉しいなぁ。見てておいしいってのがわかるのは、本当にありがたいよね」
にこにことするAIに対し、何か後ろめたいこともあるのか、双子たちは黙って食べ続ける。それなりに好き嫌いがあった彼らは、それはもう数多くのわがままを、AIに対してぶつけていたのを後輩には悟らせないようにしよう、と無言のまま誓い合った。
「ああ、そうそう。ユタカ司令官から、明日の十時に司令室に来るよう連絡があったよ。獅子夜くんも連れてくるように、だって」
三人が三人とも食事を終えた頃に、エイト・エイトが右近に告げる。その内容に、家主は嫌な顔を浮かべた。
「もう少し遅い時間にはできないのか?」
「だめだめ、さすがに今回の一件は早めに説明した方がいいよ。獅子夜くんだって、これ以上蚊帳の外に放置すべきじゃないし」
「……」
「右近が恐れるものは、AIのオレでも分かるさ。でも、彼はスバルとは違う。彼をスバルと同一視しないって、前に約束したよな?」
「……ああ」
すまない、と口に出した右近にエイト・エイトは満足そうに笑った。
その様子を横から見ていた左近は、からかい混じりに「司令官はめちゃくちゃ怒ってたぞー。あ、でも夢見博士は普段通りで、むしろ直接搭乗の件ですっげぇ興奮してたな」と、ここにくる前の光景を告げてくる。
「憂鬱だがしょうがない。獅子夜くん、明日はファロス機関の本部に……獅子夜くん?」
これまで何も尋ねてこなかったゆらぎを不審に思った右近は、彼の名を呼ぶ。が、それに対しても返事はない。
「あ、これ寝ちゃってるな」
隣にいた左近が、うつ伏せになっていたゆらぎの肩を揺らして、その顔を確認したところ、大変健やかな寝顔を晒していた。
「まぁ、空腹も解消しましたし」
「疲れてるだろうしなぁ……部屋まで運ぶの手伝うぞ、右近」
「ああ、助かる」
今日はオレもこのままこっちに泊まるかなと零す左近は、ふとした疑問を右近にぶつけた。
「どこの部屋だ? もしかしてオレが寝泊まりしてたあの部屋?」
客間に改造されていたのは知っているが、だがこれでは寝泊まりできないかも、と彼が思った矢先に、右近から静かに答えが返される。
「……スバルの部屋だったところだ」
その説明に、一拍だけ左近は動きを止めた。
「……そっか。うん、そうだよな。あそこは、もう誰も使わない部屋だもんな」
むりやり自分を納得させるかのような口調の彼に対し、話はもう終わりだと言わんばかりに双子の兄弟は指示を出す。
「左近は、獅子夜くんの足元を持ってくれ。俺は頭側を運ぶ」
「りょーかい、了解っと」
三人を見守っていたエイト・エイトは、静かにその場から消えた。
***
都市ファロスは、中央に街で一番長い塔があることが特徴である。その塔こそが、対ペティノスに特化したファロス機関の本部であり、その塔からイカロスたちが発射される。
塔の周囲ほど街は発展しており、主要な役所、対ペティノスの防衛学校、さらにはペティノス研究や医療機関も集中していた。
逆に街の外側へ向かうほど、植物園や食肉の合成工場、あるいは交通網が可視化されており、隠されているが街の防御に関連した施設も多数ある。
人々は、そういった施設の合間合間に住居を作っていた。
「というのが、大まかな都市ファロスの構造となります。移動は基本徒歩と自動通路。あのチューブみたいなのは……自動車の一種です。あんまり俺は使わないのですが、知り合いのパイロットの中には、あれのマニアも何人かいますね」
右近からの説明に対し、ゆらぎは「はぁ」と気の抜けた返事しかできなかった。何もかもが地下都市クーニャとは違いすぎて、驚くのも飽きてしまったほどだ。
「で、今からこの塔に登るわけですが、ここはさすがにセキュリティが強固ですので、獅子夜くんは俺から離れないように。ナンバーズ権限で、一緒に司令室まで向かいますから」
「は、はい」
右近が指差す先にそびえるクリスタルのように輝く塔。下の方へはより広がっていて、細長いラッパを置いたような形だとゆらぎは思った。
入り口と思われる場所は無人で、誰もいない。エントランスとも言えない場所に右近は立ち止まる。その横にゆらぎが並ぶと、入り口が一瞬にして閉じ、光が途切れる。完全な闇にたじろぐ彼だったが、すぐに二人の前にホログラムが現れた。
「……ペンギン?」
どういうわけか現れたのは、アデリーペンギンだった。いつだったか祐介がおもしろいと持ってきた映像にあった姿のままだ。
何故と首を傾げるゆらぎに対し、隣の男に驚いた様子はない。
ーーご用件はなんでしょうか?
ペンギンから女性の声がした。合成音特有の、ぶつ切りにされた音に、これまでのAIたちとは違い随分と雑な印象を抱く。���ンギンのくちばしすら動いていない。
「ユタカ司令官への面会を予定している、神楽右近だ。同席者として獅子夜ゆらぎもいる」
ーー音声照合実施。声門に相違なし。ユタカ・マーティンのスケジュールを照会、矛盾なし。未承認の人物がいます。この人物が獅子夜ゆらぎですか?
「ああ」
右近の右人差し指がゆらぎを指した。
ーー獅子夜ゆらぎを登録します。バッジを提示してください。
指示された通りにゆらぎは卒業バッジを掲げる。その瞬間、何か光の線が複数彼を通り抜けていった。おそらくなんらかの光学センサーが、彼の中身ごと分析したに違いない。
ーー登録を完了しました。それでは、司令室へと案内します。
ぴょこん、とペンギンが跳ねて背を向けたかと思えば、一瞬にして暗闇が消えた。
「うわっ、すごい……」
全面がガラス張りの箱のような部屋が、塔の中を上昇していく。何かしら特別な作りなのだろう。都市ファロスが眼下に広がる。
「それなりに機密の多い建物ですから……都市の景観が見られる代わりに、この塔でどれだけの人間とAIが働いているのか一切わからないようになっているんです」
そんな右近の説明を話半分で聞き流しながら、広がる街と覆う空を眺め続けるゆらぎ。彼の様子に、右近はこれ以上の説明は野暮かと思い口を閉じた。
ーー司令室に到着します。
先程の女性の声が響く。再度ペンギンが跳ねて、二人の方を見た。バイバイとジャスチャーのために羽をばたつかせたペンギンが、その場から消える。その直後に見えない扉が横に開き、広い部屋に出た。
大きな窓が都市ファロスを映し出す。その窓の前に置かれた重厚な執務机には、いくつかの画面が浮かび上がっている。全体的に品のいい家具で揃えられた部屋だった。
その中央に、男が立っていた。身長はゆらぎや右近よりも高い。一眼でわかるほどに、鍛えられた体躯だ。
「待っていたよ、神楽右近君。そして初めまして、獅子夜ゆらぎ君。ファロス機関の歯車の一つ、ユタカ・マーティンだ」
友好的な挨拶、浮かべる笑みは柔らかい。けれど、顔や手に刻まれた皺も、白髪に染まった頭も、血のように赤く鋭い目も、全てが年老いた狡猾な重鎮である彼を構成する圧となる。
「今回、君たちを呼び出したのはただ一つの理由からだ。神楽右近君。私は君に尋ねよう。何故、何も知らない新人に直接搭乗などという暴挙をさせたのか」
その言葉でようやくゆらぎは、目の前にいる男が非常に強い敵意を持っているのだと気付いた。
右近が挑発的な眼差しを添えて、質問に答える。
「俺のオペレーターを迎えに行っただけです。あのままでは、まず間違いなく今回の新人は犠牲となった。大多数の命を救うために、強行しました」
その迷いない答えに、ユタカは冷笑を浮かべた。
「そのために、直接搭乗のリスクも説明せずに、たった一人の新人を犠牲にすると? 確かに、事前情報で獅子夜君のオペレーター適正が高いことは事実だ。だが、直接搭乗はオペレーターに過度の負担がかかる。まして、基礎情報を直接的に脳内にインプットする『ダイブ』直後に、乱戦を行うことがどれだけの負担になるのか、長くイカロスに乗っている右近君が知らぬわけではあるまい」
何も知らないゆらぎにも、どのような事態だったのか分かるよう、ユタカが淡々と丁寧に説明を交えて問いかけていく。昨晩あれほど左近が怒っていたのも、この説明を聞けば頷けるものだっただけに、ゆらぎは顔をこわばらせた。
少年のその様子で、ユタカはパチンと指を鳴らした。途端に室内が暗くなる。
「どうも君は、獅子夜君に説明していないことが多いようだ。改めて、ペティノスやイカロス、そして現在の戦況について説明しよう」
ふわり、と天井から三つのホログラムが降りてきた。
一つはペティノス。
一つはイカロス。
最後の一つは、地球だ。
「約百五十年前に飛来したペティノスの正体は、現状分かっていない。彼らの形状も実に様々で、飛来した直後は絶滅した動���を模したものが多かったそうだ。が、近年ではその姿に統一性も法則性もない。ただ、小型なものは素早く、大型なものはパワー重視の戦略をとることは共通している」
ペティノスのホログラムが複数に分かれ、さらに形状が数秒ごとに変化していく。
「ペティノスが攻撃するのは、人類に限られる。数が大変少ないが、その他の動植物に対しての攻撃は、人間を狙うために巻き込むこと以外はないと断言していいレベルだ。つまり、あれらの狙いは人類の滅亡である」
ここまでいいかね、とユタカからの問いかけに、ゆらぎは無言で頷いた。
「ペティノスへの有効な攻撃方法は、必ず存在する人の顔を砕くことだ。砕く、と表現したが、それは銃撃でも切断でも構わない。ただ、顔を破壊しなければ、あれらは再生を続ける。
そして、その攻撃手段として開発されたのが、イカロスと呼ばれる機体だ」
ペティノスのホログラムと対峙するように、イカロスのホログラムが横に並ぶ。しかし、その形状はどこか弱々しく、ただの骨格標本と表現してもいいほどに細かった。
「イカロスは素体と呼ばれるものを基本とし、その周囲の装甲と武器をパイロットやオペレーターの得意とする戦法によりカスタマイズしている。獅子夜君が昨日、搭乗したあの青のイカロスは、乱戦を得意とする機体であり、背に羽のような銃を身につけた形状だ。似たような戦法をとる、黒のイカロスは腕を六本つけてのガンマナイフを用いた超接近戦での乱戦を得意とする。同じ銃を使う赤のイカロスは、長距離戦でのスナイパーのような戦法を。白のイカロスは、剣と銃を使い分ける中距離型だ」
ユタカの説明により、イカロスのホログラムが複数の姿へと変化していく。そこに映るのは、確かにゆらぎが見たあのイカロスたちだった。
「さて、そのイカロスだが、操作にはパイロットとオペレーターという二人の人間が必要となっている。パイロットはその名の通り、機体そのものの操作を行なっており、オペレーターは簡単に言うとレーダーだ。ありとあらゆる信号をキャッチし、あらゆる方向からの攻撃の察知および計算による敵の動きを予知レベルで推測していく。このオペレーターの成り手は非常に少ないのだが、理由は脳負荷が挙げられている」
そこでホログラムが一旦消え、どこかの映像が流れ始めた。そこには、ボサボサな髪を乱雑に結いあげた、白衣姿の女性が映し出されていた。
「今、写っているのは夢見・リー博士だ。ペティノス研究の第一人者であり、またオペレーター適正に対して脳科学分野からの研究もしている」
画像の中の夢見博士は、気怠げな口調で論文を読み上げる。
『つまり、オペレーターたちはありとあらゆる刺激を元に、自身の脳内に仮想領域を形成しているのです。AIならともかく、常に仮想領域を展開し続け、現実と仮想の二重の視界の中で戦闘をすることは、多大な負荷となっています。
ここで掲示しているのは、イカロスで取得できる情報量を徐々に拡大していったときの、オペレーターたちのストレス値の上昇具合をグラフ化したものです。
見れば分かると思いますが、一定の法則性があります。
そして、オペレーターを続けられる限界点の存在も見えてきました。これまでストレス値への耐性や、仮想領域の形成精度には個人差がありましたが、このグラフを用いればより適正な人材の判別および、長期的なオペレートの限界点の早期発見が可能でしょう。今後の進路適正試験において、これらの情報を元にしたオペレーター適正試験も導入すべきことが分かります』
そこで、ぶつりと映像が消えた。ついで、イカロスと地球のホログラムが再び現れる。
「これらのストレス値を軽減するために、導入されたのが間接搭乗という手法だ。二重の視界をなくし、より精密なオペレートを可能とした手法で、オペレーター病とも言われた頭痛・視力低下・記憶障害および色覚異常がなくなった。それを……」
そこで、再びユタカは右近へ視線を向ける。
「右近君は、利己的な理由で、一人の人間を使い潰すつもりか」
ぎらりとユタカの赤い目が右近を睨みつける。だが、右近もまた譲れない部分があったようで、負けじと言い返した。
「使い潰すなんて、そんなひどいことはしません。確かに直接搭乗にはデメリットも多い。が、メリットだってあります。それに、機体の性能向上によりAIとの連携も進み、オペレーターの負担は減りました。最後の空中楼閣撃破を狙うのならば、タイムロスの存在しない直接搭乗を行うべきです」
突如新しい単語が出たことで、ゆらぎは「あの、」と緊張した面持ちで手を上げる。ユタカは彼の疑問を察して、地球のホログラムを指さした。
「……確かに、右近君の言うことも、もっともな部分がある。だが、私は三十年前の大敗を知っている身だ。安易に、その意見を呑めない事情がある」
彼は、地球のホログラムのとある一点を指さした。その一点が拡大され、一つの奇妙な浮島が現れる。浮島は東洋のどこかの建築物を核として、その周囲に木々が生えている、なんとも奇妙なものだった。
これは……とユタカは説明を始める。
「空中楼閣と名付けられた、高度二十キロ地点に浮かぶ、ペティノスの拠点だ。この拠点周囲での時空転移により、ペティノスは現れ、地球に襲来する。……三十年以上も前に、地球上にこの空中楼閣は五十基ほど存在していた」
絶望的だったと続くユタカの感想に、ようやく彼の暗い過去が���間見えた。
「人類の空中楼閣撃破が、初めて為し得たのは三十年前。とある英雄たちにより、その大半が撃破されたが……そこで油断してしまったのだろうな、人類は」
ずらりと地球上のいたるところにあった空中楼閣の映像は、その撃破の映像であったが、歓喜にも似た雄叫びが流れるのとは対照的に、ユタカの声は淡々としすぎている。
「最後の空中楼閣撃破を目指した人々は、ある英雄の死により任務を失敗。歴史的大敗により多くの同朋が亡くなったが、特にパイロットを庇ったオペレーターたちがその割合を多くしていた」
スッと、司令官の視線が右近とゆらぎの間を通り抜けた。まるで、誰かが彼らの間に立っているかのように、視線が固定される。
「……同じ悲劇を繰り返さないためにも、次の空中楼閣戦において、オペレーターは間接搭乗を行うべきだ。そして間接搭乗によって起きる、目下の問題として地上と高度二十キロ地点での通信ラグについては、多くの技術者と科学者が解決方法を模索している。そう、焦るべきではないんだ」
それまでの怒りが勝った口ぶりとはうってかわった、ユタカの諭すような口調に、しかし右近は噛み付く。
「ですが、基地本部とのコンマ一秒以下のタイムロスが原因で、あの最後の大敗が起きたと言われています。オペレーターとパイロット間でのタイムロスは、それ以上に命取りなのは自明でしょう。そして、人類に残された時間が想像以上に少ないのは、俺の元オペレーターのスバル・シンクソンが証明しています」
あいつは、とそれまでにない激情を込めて右近は言葉にする。
「間接搭乗をしていたスバルは、それでも原因不明の病に倒れました。最期まで何の解決策もなく、薬も意味を成さず、原因すら不明で、この世を去ったんです。そして、スバルのような最期を迎える人間は、年々多くなっています。今は、確かにペティノスに滅ぼされていないけれど、いずれ時間が過ぎれば過ぎるほどペティノスに抵抗する力さえ失って、滅びるのは事実です」
右近の言い分で、ようやくゆらぎは、あの広々とした家の隙間を誰が開けたのか理解した。一緒に住むほどに、彼らは仲が良かったのだろう。そして、いなくなった後そこから引っ越しすることもできないほどに、未練を残す最期を迎えたのも察せられた。
その痛みをゆらぎは感じ取った。ユタカもまた、感じてはいる。いるのだが、頷けない。
「……これは、私だけの意見ではない。同じく、三十年前にオペレーターを亡くした現見さんもまた、直接搭乗には反対している。死の重みは、平等であるべきだ」
痛々しい吐露に、現見という人物とユタカが、同じ傷を負ったのだと察せられた。それでも、右近はたたみかける。
「現見さんには、俺が言います。俺が説得します。あの人だって、時間がないのは知っているはずです」
「そこまで言うのなら、明日のこの時間に他のナンバーズを召還しよう。そこで、君一人で彼らを説得してみなさい」
私ができる譲歩はここまでだ、とユタカは告げる。そして、彼はそのままゆらぎの名を呼んだ。
「獅子夜ゆらぎ君」
「……はい」
「君は、本当に直接搭乗でいいのかね? 先程から君の様子を見ていると、何も右近君から教えられていないようだ。先程説明したように、直接搭乗には多くのリスクが存在する。そのリスクを全て了承した上で、君はイカロスに乗るのか?」
ゆらぎは、どうすればいいのか正直分かっていなかった。
卒業してから、地上に出てから、ペティノスを見てから、イカロスに乗ってから、目覚めた先の空虚な部屋を見てから、右近の周囲の人間を知ってから……ありとあらゆる場面で、激情とされる何かは顔を見せていた。だが、その感情の正確な名前は分からない。それがどんな意味を持つのかも、彼は知らない。ただ、理解していることは一つ。
「おれは、まだ何一つ分かりません。分からないから、とりあえず右近さんと一緒に、イカロスに乗り続けようと思います」
「……そうか」
ゆらぎの答えに、満足はしていないユタカだったが、それでも一つの区切りとなったらしい。要件は終わりだと彼は告げて、退室を促す。それに右近は無言で頷き、ゆらぎは丁寧な礼をして去っていった。
再び、二人は都市ファロスを見下ろす見えない道を辿って帰っていく。その後ろ姿を見送ったユタカは、誰にも聞こえないことをいいことに、独り言を零した。
「きっと、こんな中途半端な私のことを卑怯者だとも言ってくれないんでしょうね、海下先輩と高城先輩は」
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【警戒レベル3】避難準備・高齢者等避難開始情報発令でスマホがギャンギャン鳴りまくる大雨の後に何事も無かったかのように現れた満月と叩き落とされた桜花 #大雨 #避難準備発令警報 #警報とわかっているが喧しい #音だけオフはダメなのかな #桜が叩き落とされた #地面に散った桜もいいもんだよ https://www.instagram.com/p/CM-l52zgr-j/?igshid=1omm14fjtbmm6
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これは流石に統一教会の工作みたいな話じゃなくて多分これを言ってる人達が統一教会と親和性があるんだと思う
[B! Colabo] 桜ういろう on Twitter: "【悲報】ネトウヨさんが「コンドーム=サタン」の勢いでColabo叩きの大合唱を一斉に始めた理由が謎で、いろいろ調べたら統一教会的にコンドームは堕落の象徴だった事実が判明 #純潔教育 #Colabo https://t.co/HuaS9Vxac4"
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