#湧水を知っていると、地震などで水道水が止まったときなど重宝するかも。
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2025.04.09(水)
所用で有休をとったので、昼から陽気に誘われて福井市中心部の足羽山(あすわやま)にある足羽神社へ出かけた。笏谷石(しゃくだにいし)の愛宕坂を上ったところに建つ神社の境内に、樹齢約380年の「しだれ桜」が今や満開に花を咲かせていた。やはりこのしだれ桜はいつ見ても美しい。
愛宕坂を戻り5、6分ほど歩くと桜並木が続く足羽川堤防に着く。風は北風でもありやや冷えるかなという程度で、平日にもかかわらずどちらも多くの人で賑わっていた。
土曜日に訪れた万葉の里「味真野苑(あじまのえん)」では水芭蕉と旧谷口家住宅の「彩りを紡ぐ“織り・藍の二人展”」を見学、それと日帰り温泉ができる国民宿舎 鷹巣荘(たかすそう)の近くの「水分神社(すいぶんじんじゃ)」(「みくまり」とは呼ばないようです)でも桜が咲いていて、ちらほらと参拝者も来ていた。この神社の湧水、知る人ぞ知る「ふくいのおいしい水」なんです。
西東 みなみにきたか 糸桜(哥川 かせん)
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【SPN】見えない手錠
警告:R18 ※スカ描写(排尿シーン)、性描写
ペアリング:サム/ディーン
登場人物:ディーン・ウィンチェスター、サム・ウィンチェスター、アーサー・ケッチ
文字数:約7800字
設定: バンカーにて、賢人アイテムに呪われて拘束されたディーンと、兄をないがしろにして後悔するサム。
言い訳: 拘束シチュを最大限活かさなかった。 いつも通りの謎時系列で兄弟の他にケッチが出てきます。
◇
今日も今日とて賢人基地の謎は深い。 ここのところ曜日を決めて基地の倉庫の整理をしている。その日は他のハンターたちからのヘルプコールがなければ事件には関わらず、食料も前日のうちに買い込むか、残り物だけで済ませて外出はしない。朝から晩まで資料とアイテムに埋もれ続ける平和で知的冒険心が満たされる(サムにとっては)休日だ。サムは地道に整理分類を続けていたが兄のディーンにそこまでの情熱はなかった。 サムは兄の態度が不満だった。サム以上にこのバンカーを”我が家”として認識している兄が、その我が家にどんな秘密が隠されているのか――もしかしたら時限付きの危険物だってあるかもしれない――無関心なことが理解できない。 今日もまた予定していた休日。ベッドから出てこないディーンを無理やり引きずり出してコーヒーを淹れさせ(この鬼!と怒鳴られた)、ハムとチーズのサンドイッチを手に倉庫へ直行する(飯くらいキッチンで食べろよ、とディーンはいう)。 サンドイッチを齧りながらデスクに向かい、前回整理した目録を確認していると、コーヒーをすすってぼーっと突っ立っているディーンが目の端に入る。「ヒマならその棚の埃でも払っといてよ」と若干いらつきながら指示する。声音は穏やかだったはずだが弟のいらつきに敏感な兄は「ハイハイわかったよ」と逆らわずに棚へ向かった。 パタパタとディーンが働く音だけを耳にしながら目録をデータベースに入力する作業に没���していた。しばらく後に「あ」と声がしたが他に大きな物音もしなかったので無視した。コーヒーに手を伸ばすとすっかり冷めていたので集中しすぎてあっという間に一時間程度は経ったんだなと思う。 「なあサム」 棚の間からディーンが声をあげる。 「何だよ、もう飽きたの?」 「そうじゃなくて、なあ」 「何だよ、もう」 ため息を吐いて立ち上がり、兄のもとへ向かう。ディーンは壁に設えられた棚の前に立ち尽くしていた。こっちを向いて後ろ手に腕を組んでいる。 「何? ナチのお宝でも見つけた?」 軍隊の”休め”のポーズに似ていたのでまた質の悪いジョークを思いついたのかと眉を寄せる。そうじゃなくて、と返す兄の顔が少し強ばっているのにようやく気づく。 そういえばこの棚はまだ手を付けてない。サムが把握していないアイテムが並ぶ棚は、ディーンの偶に発揮される凝り性によってきれいに埃が払われていた。 「ディーン……?」 「おれ、呪われたみたいだ」 ゆっくりと後ろを向いたディーンの腕は、まるで手錠にかけられたように手首が交差して重なっていた。 棚にはいかにも呪われたアイテムっぽい骸骨の手があって、土台にはご丁寧にギリシャ語で「見えない手錠」と書かれていた。
『見えない手錠?』 ディーンが呪いのアイテムに拘束されてから半日、サムは倉庫をひっくり返す勢いで解呪の資料を探したが全く手がかりがない。ディーンは今のところ”後ろ手で卵を割る”遊びにハマっていて楽観的だが、サムはそうはいかない。自分のおざなりの指示でディーンが呪われてしまったのは痛かった。 「そう書いてあった。同じ棚には他にもアイテムはあったけど、全部封印されたままだったしディーンの状態からして原因はそれで間違いないと思う」 電話の相手はアーサー・ケッチだ。かつての敵で今も腹で何を考えているのかわからない相手に自分たちの窮状を話すのは抵抗があるというかはっきりと嫌だったが、賢人のアイテムについて尋ねるのに彼を除外するわけにはいかなかった。 『君たちといると退屈しないね』とケッチがいうのでサムは「いないだろ」という言葉を飲み込んだ。 『まあ端的にいうと仲良くなるまで外れない手錠だ』 「は?」 『乱交大好きなギリシャの富豪が十七世紀に作らせたものだったと聞いてる。アイテムが置かれた土地の所有者とアイテム自身が認識する所有者が連動する。主人以外の人物が触れると拘束し、その拘束は主人と激しいファックをすることでしか解けない』 「おい……」 『つまりアイテムは君がその基地の主人だと判断した、ディーンではなく。確か���ンリーは君たちの父方の血筋だったな? ふーん、興味深い……』 「やめろ、僕らの血筋について興味を持つな」 サムは髪をかきあげた。「ふざけないで解呪方法を教えてくれ。どうしたらいい」 『だいたい君は賢人の道具の扱い方を心得てない。しまい込まれた道具にはそれなりの理由があるんだ、封印された位置にすら。まあ、確かに放置するには危険だし、五十年代のアメリカ賢人の収集品を整理するのは意義があることだが……サム、君には疎い分野だし、アドバイザーが必要だ。今回のようなことがないように、次からは私も付き合おう。もちろん、君たち兄弟がよければ』 「いや、よくない。ありがとう。さっさと解呪方法を教えてくれ」 急に無音になった電話に、通話口をふさいで舌打ちするケッチの姿を想像する。コホンと咳が聞こえて通話が再開した。 『解呪方法はさっき言ったとおりだ。本来は複数人での性行為中にランダムで誰かが拘束されるのが正しい遊び……使い方だったと記憶してる。他に誰もいなければ勝手に土台に戻るはずだが、側に置いておいたほうがいいな。ほら、骸骨の手首があっただろ? あれが土台だよ』 「それはわかってる」 『他に何か聞きたいことは?』 「ない」 『そうか、お役に立てて何より。次の木曜日に伺う……』 サムは黙って通話を切った。
ギリシャのふざけた富豪が作った乱交目的の拘束具が、なぜアメリカの賢人たちの手によって基地に保管されていたのかその理由を聞けばよかったとサムは思った。だけど、聞くまでもないと思い直す。これまできっと、数えきれないほど悪用されてきたに違いない。 「というわけなんだ」 解呪方法の説明を黙って聞いているディーンに、サムの罪悪感の嵩は増す一方だ。「ケッチが言ったことの裏は取れてないけど嘘をつかれてる感じでもなかった。もっと調べることもできるし、最悪、ロウィーナに聞くこともできるけど……」 「そいつは最悪だ」 ディーンは唇をすぼめる。 「だろ? 見返りに何を要求されるかわかったもんじゃない」 二人は無言になった。サムはいたたまれなくなって自分の足を見つめる。呪いを解くためにファックするなんてどうかしてる。兄の呪いを早く解いてやりたいけど、そのために早く自分と寝ようなんて軽々しく口には出せない。 「サム、おまえとやるのはいいんだが、その前に何か食いたい」 「へっ?」 「腹減った。何か食わせてくれ」
ディーンが割りまくった卵でフレンチトーストを作ろうとしたが、色々と怪しい手つきを見てディーンが「スクランブルエッグでいい」というのでそっちにした。 調理台のスツールに座ってディーンはサムが食器やら飲み物やら用意するのを眺めていた。腕が使えていたら頬��でもついていたに違いないのんびりとした表情だった。サムはディーンのやわらかい視線を感じながらフレンチトーストを諦めたパンをオーブンで温め、山盛りのスクランブルエッグと共に調理テーブルに並べた。 冷蔵庫からビールを取り出そうとすると、ディーンに止められた。 「すぐにやるんだからワインがいい。やってる最中にげっぷ出まくったらやだろ?」 サムはガタガタ音を立ててビールを冷蔵庫に押し戻し、グラスにワインを注いだ。 「喉が渇いた」 というので先にワインを飲ませてやる。今更ながら解呪方法を探すのに忙しくしていて、肝心の兄本人の世話を全くしていなかったことに気が付いた。後ろ手でドアは開けるし卵も割れるかもしれないが、コップから水を飲むことはできない。自分は兄を呪いにかけてしまっただけでなく飢えさせていたのだと思うと自己嫌悪で鉛を飲んだように胸が重くなった。 「卵」「パン」と指示されるままに兄に給仕していく。そのうちディーンは何もいわなくなった。サムも無言になった。自分が運ぶスプーンが兄の唇に包まれるさま、兄が咀嚼して飲み込むまでの一連の動きから目が離せなくなる。 ディーンに注いだワインを飲み干してしまうと、彼はにやっと笑っていった。 「サミー、もっと、楽しもうぜ」 サムは自分にと注いだグラスにまだなみなみとワインが残っているのに気が付いた。手を伸ばしてグラスをつかみ、ゆっくりと仰いで咥内に留める。ディーンはまたあののんびりとした表情をしてサムが顔を近づけてくるのを待っていた。 グラスが二つとも空になると、ディーンは酔いでうるんだ瞳でサムを見つめた。 「トイレに行きたい、サム」
二人してバスルームに駆け込んだ。後ろ手で拘束されているディーンは上に着ているTシャツとネルシャツは脱げない。サムが下半身だけ脱がせ、シャワーブースに入った。裸になったディーンのを後ろから抱き込み、下腹部にシャワーの湯をかけた。 「あれ、当たってるぞ。おまえ、脱いだ?」 「うん」 「なんで?」 「だってお湯がかかるから」 「あー、おまえだけ、ずるい」 「お尻は僕が洗ってあげる」 そういって湯のすべりを借りて指を潜らせると、「バカ!」と怒られ肩で胸を突かれる。「朝からトイレ我慢してんだ! 先にオシッコさせろ!」 「ええ? トイレ、一度も行ってないの?」 地底を這いつくばるような声でディーンはいった。「行ったよ、ああ、見えない手錠で両手が繋がれててもトイレには行ける。でもな、足の指でベルトは外せない!」 「ごめん」 サムは指を抜いて尻を撫でた。「全然気づかなくてごめん。おしっこしていいよ」 ディーンはうーんと唸って首を落とした。ネルシャツの襟もとからすんなり伸びたうなじにサムの食欲が湧く。ディーンは排尿に集中しようとしているようだが、ワイン一杯分の酔ったふりでは羞恥心を打ち消すには���らず、苦労しているようだった。 サムはディーンのペニスに手を伸ばした。 「サミー!」 「両手で持つ? 片手で持つ? いつもどうしてるの?」 ディーンは首を振ってまたうなった。「両手……」 サムはシャワーを壁に固定して、両手でペニスを持って構えた。 「これでいい? ディーン、目をつぶって。僕も目をつぶるよ。シャワーで全部流れるまで目をつぶってるから」 肩口に顔を乗せて、ディーンにも見えるように目をつぶる。ハア、と熱い溜息が頬にかかった。シャワーの熱気に一瞬なじみのある臭気が混じる。どういうわけかそれにますます食欲をそそられて、サムはすぐ側にあるうなじに嚙り付いた。ひっとディーンは仰け反って、排尿の勢いが増したのがサムにはわかった。まるでイッたみたいだ、と思った。 「あ、あ、サム……まだ出る……」 顎、それから開かれた口にもかぶりついて、サムはいいよ、と励ました。それから僕も、といった。「僕も出していい?」 朝からトイレのことなんて頭になかったから、今さらもよおしてきた。サムは片手をディーンのペニスから放して彼の顎をつかみ、きつく唇を押し付けて下半身も密着させる。熱気に喘ぎながら唇を吸って、サムは溜まっていたものを排出した。 ディーンのペニスを握りながらディーンの尻におしっこをかけている。これってファックするよりもどうかしてるよな。 「あ……つ………」 ディーンが漏らす言葉を飲み込みながら、ああ、向かい合ってすればよかった、とサムは思った。そうすれば自分もディーンの熱いおしっこをかけてもらえたのに。 自分が出し終わってディーンのペニスを何度か根本からしごくと、ディーンが肩を回してやめるよう訴えてきた。 「もう終わった、終わったから」 「じゃあ洗うけど、いい?」 「ああ……」 「中もだよ?」 「いいって言ってんだろ」 ディーンは疲れているみたいだ、と思った。当然だ、一日中腕を拘束されて過ごしているのだ。言わないだけで腕は強ばっているだろうし痛みもあるに決まってる。呪われてパニックになるサムをよそにディーン本人は「どうにかなる」といって泰然としていた。もしかしたら長期戦になると思って体力を温存していたのかもしれない。ディーンはそういう野生動物みたいなところがある。
貪るように体を重ねていたのはサムが地獄に落ちる前のことで、お互いまだ精神的にも肉体的にも若かった。不安や疑惑を欲望のエンジンにお互いを引きずり落としあうようなセックスができたのは若く未熟だったからだ。 サムにとっても我が家となった基地にメアリーが戻ってきてから、何となく関係を控えるようになった。全くやらないわけではないが、今日我慢すれば明日は出先のモーテルでやれるという場合は諦めるのもそれほど苦ではなかった。昔は衝動が起こったら今すぐにファックしなければ死んでしまうと思うくらい切羽詰まっていたからずいぶんと平和に落ち着いた。 平和? 平和などまやかしだ。一時の小康状態にすぎなかったのだ。きっかけさえあればサムはいつでも欲望に火をつけること��できるし、言い訳があればなおのこと大胆になれる。 呪いを解くために。腕を後ろ手で拘束された兄の負担が減るように。 上に乗ってくれる? そのほうが、ディーンが一番楽だと思うんだ。 ただ騎乗位の兄が見たいだけのサムの提案を、吟味する間もなくディーンは頷いた。楽というならもっと別の体位がありそうなのは、サムよりよほどマニアックな性技にくわしいディーンならわかるだろうに、バスルームでの洗浄と執拗な拡張ですっかりのぼせていて、考えが巡らないようだった。本当なら休ませるべきだとわかっていたが、ここで言い訳、一刻も早く呪いを解いてあげないと。 激しいファックってどれくらい激しくしなきゃならないのかな。 ディーンは膝立ちでベッドの上を移動して、サムの腰をまたいだ。さすがに体幹がいいから腕がきかなくても倒れ込んだりしない。今はのぼせているから、ちょっとフラフラしているけど。 勃起したサムの上を、ディーンが前後に揺れながら下りてくる。 「ゆっくりでいいから……」 体の自由を奪われた相手を、自分のいいように動かす。久しぶりに感じる、たまらない愉悦。 よだれを垂らしそうになりながら兄が太腿を震わせて挿入に苦労しているのに見入っていたので、彼が涙の溜まった瞳で睨みつけているのに気づくのが遅れた。 「えっ?」 「えじゃねえよ、まぬけ。鬼。ビッチ。入るわけねえだろ、少しは手伝えよこっちは手が使えねえんだぞ」 「え、大丈夫、入るよ。先端がちゃんとハマればあとは自然と入ってくるって。中をあれだけ柔らかくしといたんだから」 唖然とした兄の頬にぽろりと涙がこぼれた。本人の胸に弾かれてサムの腹に落ちる前に消えてしまったが、美しいものを見てサムは興奮した。 「ディーン、僕も手伝うから、一個お願いを聞いてくれる?」 返事もきかずにサムはディーンのネルシャツの裾をまくって内側にまるめ、上に引き上げていく。何かを悟ったが信じられないという表情の兄に首をかしげてみせ、開かれた口の中にまるめた裾を押し込んだ。 日に焼けても赤くなるだけですぐに色が引いてしまうディーンの今の肌は真っ白だ。体毛のない腹から胸にかけてのなだらかな曲線、ピンと立った赤い乳頭がいじらしくおいしそうで、見ると唾液が湧いてくる…… 鼻息が荒くなったサムにディーンが身を引いた。サムは両手を伸ばして脇腹を掴む。そのまま手を上にすべらせて親指で乳首をこすった。 「んーっ!」 シャツの裾を強く噛んだあと、ペっと吐き出してディーンは叫んだ。「お、おまえは、おれを、何だと」 「ごめん、本当にごめん」 兄をいじめたいが、この状況では不謹慎にもほどがある。「呪いを解こう。ちゃんとやるよ。僕が当てるからちょうどいいと思ったら下りてきて」 ハアハアと荒い息を抑えながらディーンは弟をにらみつける。 「偉そうに、呪いが解けたら、ぶん殴ってやる���らな」 サムはディーンの尻を左右に開いて先端を割れ目に押し当て、ぬかるんだ鍵穴を探した。腹をむき出しにしてディーンが仰け反る。ぷっくりと縁がふくらんだ穴にペニスの先が当たったのを感じると、サムは尻を支えていた手を放した。疲れ切ったディーンが自然に落ちてくるまで時間はかからなかった。 「これ……いつ……解けるんだ?」 挿入を続けながらディーンは目を閉じた。 「さあ。ケッチに騙されたのかも」 「あ――あ――やばい、サム、やばい……今……」 根本まで入りきったと思ったすぐだった。急にディーンの顔色が変わり、一瞬にして上り詰め、風船が割れるように弾けた。何が起こったのかサムにも本人にもわからなかった。 くたくたとディーンが倒れ込み、サムは慌てて肩を支える。紅潮した全身から発汗した彼は起き上がるとき、サムの胸に手をついていた。 「……嘘だろ?」 サムは茫然とつぶやいた。「今のが、激しいファック?」 あまりに唐突なので拍子抜けしてしまった。サムは動いてもいないし、ディーンだってそうだ。理解できなくてサイドテーブルに置いた土台の骸骨の手を見つめてしまう。”見えない手錠”が土台に戻ったからといって”見えない”ままなのは変わらないが――。 明言はされなかったが、ケッチのあの言いようでは、”主人”である自分がフィジカルな絶頂を迎えた時が解呪のタイミングだと思っていた。 「なんだ……何が不満だ……悲しそうな顔すんなよ……サミー」 すぐ側で、汗と涙できらめいた睫毛がまたたいた。ディーンが熱い手でサムの頬をつつむ。パタパタと軽く叩いて笑い、ちゅっと口に吸いついた。 「――入れただけで相手をイかせて呪いを解くなんて、ハ、たいしたご主人様じゃねえか」 サムは息を呑んだ。 「……ディーン……ワオ……ディーン……そのせりふ、かなりやばいよ」 「殴るのはもうちょっと後にしてやる」 ディーンは自由になった腕を上げてシャツを脱いだ。
◇
きっかけはサムの失態から呪われてしまったディーンを解呪するための”激しいファック”だったが、おかげで以前の狂った情動がなくても情熱的に愛し合えると再確認できた。何となく周りに気まずいからという理由で遠慮するのをやめた。 ディーンは幸せそうだしサムもそうだ。仮初の平和は消えたが、今まで築いてきた兄弟の関係が変わったわけでもない。ただ一つ、今までと変わったことといえば、彼が時々拘束されたがるようになったことくらいだ――本当に手錠を使ったりしない。呪いを受けたときのように、”見えない手錠”を使う。ディーンは拘束されたふりがうまい。 同じ疑念が三回目に心に浮かんだとき、サムはディーンの携帯端末からこっそりケッチの電話番号を消してしまおうとした。だが思いとどまって、目録の備考欄に一文を付け足した。 ――”見えない手錠”――愚かな臆病者を目覚めさせるあなたの策略それから愛
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第34話 『旧き世に禍いあれ (2) - “ブラストフォート城塞"』 Catastrophe in the past chapter 2 - “Blastfort Citadel”
ブラストフォート城塞を見渡せば、『城』という華やかな言葉の印象とは遠い、石造りの堅牢な風貌は砦のそれと言っていいだろう。
スヴェンはこの建造物も元は修道院だったと噂では聞いていた。ただ、城塞に研究所を設けた時には既に砦として使われていて、実際のところどうだったかは、皆目見当がつかない。むしろ験を担いだ誰かの作り話ではないかと考えていた。作り変えられた施設にしては、礼拝堂だったと見られる建物もなく、険しい斜面をわざわざ切り出して作られた来歴の割には、この地に作られた由来すら記録に残されていないのも疑念の余地がある点だった。
城塞と名を冠しながらも、城壁の内側に市街はない。居並ぶのは兵舎や倉庫、そして厩舎などの背の低い軍用の建物で、全てが同じように暗い色をしていた。
はぁと深い息を吐く。その息は白く、スヴェンは体をぶるりと震わせた。外套の襟を直し、足を早める。
短い秋は瞬く間に過ぎ去り、もうすっかりと冬だ。視界に入る山岳はすっかりと白い雪に閉ざされている。ブラストフォートは年中気温が低く、1年の半分以上は雪に覆われている。
この城塞は、トラエ、ラウニとソルデの三国間で起きた紛争の中心地となった。三国の国境線が交わる丁度中央地点で、思惑も戦線もぶつかり合った。互いの国へ進攻するに際しても、ここを通らず他二国に兵站を送るにはどうあってもリスクの高い迂回が生じる関係で、攻めるも守るも、話はまずこの城塞を手中にしてから、という事情もあった。この要塞を抑え��国が勝つと信じられ、激しい争奪戦が目下進行している。
トラエがこの城塞を維持し続けられているのは、”軍神”ゴットフリートのおかげだ。不敗を誇るゴットフリートは、皇帝の厚い信望を受け、ブラストフォート城塞に陣を敷いた。ここを確実に堅持し続けることが、即ち勝利を意味する。武勲で比肩する者のいないゴットフリートが此度の采配を受けたのも、当然の帰結であり、疑いを示す者もいなかった。
対するラウニやソルデもそれを理解していたからこそ、戦火はさらに激しくなって行った。トラエ無双の英雄が、史上最も堅牢を誇る城を守護している。つまり、ここを打ち崩したもの、あるいは守り抜いたものが、この戦争を制するに等しい。この三国戦争の顛末を決定づける、天下分け目の決戦地の様相を呈していった。
ゴットフリートは戦場で一度もその膝を地面についたことはなかった。スヴェンが城に派遣されて3年、ブラストフォート城塞は今もトラエ帝国領のままだ。各地で名を馳せたどんな名だたる英雄が攻めてこようとも、この城塞を越えた者は未だかつていなかった。
(砦としての適切なつくりと、それを最大限に生かす武将……。理屈で言うは容易いが、それがこうして揃い立つと、これほどまでに守り抜けるものなのか)
スヴェンは眼鏡のブリッジを押し上げて、先を急ぐ。その手は幾冊もの分厚い魔術書があった。
激戦地とはいえ、兵糧が乏しくなるこの季節には大きな動きも見られなくなる。天候によってはなお一層、双方ともに大人しいものだ。攻めあぐねた敵軍に二面三面と包囲されながらも、ブラストフォート城塞はまるで平時のように静まり返っていた。
(ああ……どうしてうまく行かないのだ……)
城塞の中にある研究室の扉を開ける。
真っ暗な部屋を、たったひとつのランタンが照らしていた。本来はもっと採光がいい窓があったのだが、スヴェン自身が本棚で潰してしまっていた。外光は観測を伴う実験に不向きだ。
城塞の中の、私の城。眼鏡を再度押し上げて、ふふと短く笑う。
「次はうまくやってみせる……この書こそ本物だ、今度こそ……吾輩が見つけるのだ」
ぶつぶつと言葉を口の中で繰り返しながら、長い執務机の上に置かれていた書類や本を床にすべて落とし、新しい本を置いた。
本棚やコートハンガーにかけられた外套、並んだ靴などは嫌と言うほど規則正しく、寸分のずれもないように置かれているというのに、余程気が高ぶっているのか、今は床に落ちた本たちを気にして直すそぶりもない。
大きな椅子に腰かけて、その本を開いてページを手繰り始めた。
世界を知るということに限りはあるのだろう��。スヴェンは幼い頃からずっと考えていた。世界を知るためにありとあらゆる本を読み解き、特例を受けて最高学府に進級したときも、当然のこと、以外には特に何も思わなかった。神童と呼ばれ、世界の知識を見る間に吸収し、未知の研究に邁進し、知性で遥かに劣る両親とは縁を切り、知こそが価値とする者達とこそ縁を深め、生きてきた。
――この世界は、一個の生命だ。
そう悟ったのはいつのころだろう。それからスヴェンの関心は世界の表層を辿ることではなく、世界の成り立ちの根源を掴むことに移った。
この感覚までも理解し共有できる者はさすがにいなかったが、スヴェンは気にすることはなかった。目的と到達点は明確だったからだ。
世界が生まれた瞬間を見る。つまり、過去へ遡行しその瞬間を観測することが出来れば、世界が生命であり、巨大な有機体であり、何がどうやってそれを作り出したのかを証明できるのではないか、と考えた。菌類はそれぞれの菌根で膨大な情報網を作り上げることで知られている。ならば世界は? 世界と世界を構成する生命や物質との関係も、似たものではないのか?
夢を見ていると言われた。気が狂ったとも。けれど、スヴェンは時間を移動することに執着し、トラエ皇帝はスヴェンの情熱に理解を示した。思えばこんな突拍子もない目的に意義を見出す皇帝というのもまた、妙ではあるとは思った。皇帝にもまた、過去に遡行する事で成し遂げたい、”過去に戻ってでもやり直したい何か”が、心中にあったのかもしれないが、それを聞き出す術をスヴェンは持たないし、スヴェン自身興味もなかった。少なくとも、時間遡行がもたらしうる皇家の安定、全ての危険を排し、あるいは時を超えて未来の悲劇を食い止め続けて、皇家そのものを永遠に君臨させる、という”表向きの”理由――そのために、皇帝はスヴェンを支援することを決定し、臣君達も、やや半信半疑ではありながらも、それを支持した。
「これだ」
今日も皇帝に頼んでいた奇書が届けられた。
スヴェンはブリッジを押し上げ、眼鏡の位置を直す。正常な観測のためには、眼球とレンズの距離は常に1.5cmを保たねばならない。立ち上がろうとして自分が先程叩き落した本を見やり、露骨に眉をしかめる。頭の中を整理し終えて一息ついたら、急に普段の几帳面さが顔を出した。手早くそれらを元あった場所へそそくさと戻して、室内を完璧に揃え、部屋の中心に立った。
「まず、魔石を用意して……」
木箱に詰めてある魔石を取り出し、机に置く。魔石は貴重な資源である。研究には大量の魔石が不可欠だった。魔石なしには、相当な魔力量を消耗する実験を繰り返し行うことは出来ない。ブラストフォートは戦地だ。当然、魔術���部隊が使うために魔石も大量に集められていたが、落城までには湯水のごとく消費されていた魔石も、入城し防衛に転じてからは、ゴットフリートを中心とした白兵戦主体の迎撃戦において、これらが投入される機会も乏しく、結果余剰が出ていた。山と積まれた荷物を運び出すにも、労力がかかる。それならば、国内にいる魔石を必要とする人員が、逆にブラストフォートまで来れば良い。研究をする場所としては些か物騒な地ではあったが、自由にできる大量の魔石が得られる機会には代えがたかった。スヴェンは二つ返事で前線まで足を運んだ。研究には様々な代償がつきものだ。それを理解してくれる後ろ盾を得たスヴェンは、他の誰よりも恵まれていると言えるだろう。
取り上げたいくつかの魔石の中から、更に質の良いものを選ぶ。一番大きいものはナリだけで中身は薄く、魔力自体は少ないようだ。ページをたぐる仕草に似た動作で、一粒ずつ指を触れては次の石に触れ、研ぎ澄ませた感覚で内容量を確認していく。最後に触れた人差し指ほどの魔石が最も密度が高く、多くの魔力を秘めていた。
「よし……よし……まずは一時間前に戻る……そうだ……」
長い間研究し、様々な方法を用いたが、まだ成功させたことがない。
スヴェンも焦り始めていた。戦火は年を追って激しさを増している。今は冬期で戦線が膠着しているが、雪が溶ける頃にはまた激化される。2国がこの城塞を攻め、帝国は防戦し続ける。魔石の余剰が出ているのも今だけだ。魔石の消費量も年々増え続け、そうなればいつ自分に回してもらえる分が枯渇するとも知れない。そう考えれば、時間は限られている事になる。一度でも成功させられれば、魔石を消耗する前の時間に何度でも戻って、ほぼ無限の実験を繰り返し、術式完成を確実なものにすることが出来る。それが理想であり、今の目標だ。勿論この方法は戻る人間の肉体時間の経過は加味されておらず、スヴェン本人の寿命の解決という課題が残ってはいるが、禁術に手を出せば、その辺りは時間遡行に比べれば造作もないだろうと見当がついていた。
本のページを睨むように再度読み上げようとした時、パチン、と何かが弾ける音がした。ふぅっと風が頬を撫でる。
音がした方向を振り向いて、スヴェンは動けなくなった。
空間に大きな渦が現れたのだ。
その渦に向かって風が吹き込んでいる。
「おお!」
未知なる光景に弾んだ声を上げる。
まず渦から出てきたのは、手だった。男の両の手が伸び、時空の切れ目をこじ開けて、その姿を現した。これから始めようとしていた実験によって、数分か数時間の未来から自分が戻ってきたのではないか。どうやら、今実験している術式は成功したのではないか。歓喜に身が打ち震える。
単純な転移魔術など、スヴェンも何度も見たことがあるし、日常的に行使している。周辺空間に生じた歪の性質や姿の現れ方から、今目の前で行われているものは、通���のそれとは質が異なることは一目で判断できる。それは”理論上、時間遡行が成功すればこのような形で転移が成されるだろう”と想定した結果そのものだった。
「スヴェン博士か?」
渦から現れた男に尋ねられ、スヴェンは驚いて身を竦めた。
男は自分の身なりに気が付いたのか、ゴーグルの中の目を丸めて、被っていたマスクを外した。城塞の戦士たちよりも重装備だが、防寒具として見ても、防具として見ても、異様な姿をしていた。それはむしろ、ガスや毒に汚染された領域に立ち入る者が使う防護服に似ていた。
男は軽く会釈した。
「僕はフィリップ。スヴェン博士で間違いありませんか?」
「いかにも、吾輩はスヴェンだが……」
答えながら、興奮で何度もメガネを押し上げる。
「僕は未来から来た」
「おお、やはり! では、未来では時間移動の方法が確立されたのか! 素晴らしい! 素晴らしい!!」
スヴェンは無邪気に飛び跳ねた。
悲願だ。
奇跡が目の前で起きたのだ。経緯こそまだ判然としないが、宿願が果たされたのだ。
「その方法が知りたいか?」
「ああ、無論だ。吾輩にとって、生涯をかけた研究の成果だ!」
「僕の生きる時代にはその技術は確立している」
身の内から湧きあがる感動に震える。長い時間をかけた研究が実を結ぶのだ。喜ばない人間がいようものか。
スヴェンはズレたメガネを何度も押し上げ、唇をペロリと舐めた。
「未来では、あなたの完成させた基礎を発展させ、実際に過去に飛ぶことが出来るようになった」
「そうか……そうか……! それで」
「研究資料はある。それを渡してもいい」
フィリップと名乗った男は荷物からひとつの本を取り出して見せた。スヴェンは手を伸ばしたが、ぴたりと手を止める。
「……吾輩は、基礎を完成させた……?」
「ああ、そうだ」
「つまりは吾輩が術式を確立させたわけではないのだな」
基礎を完成させた研究者が自分だとして、その先、実際に技術転用することは別の次元の話になるはずだ。魔術、火薬、物理……この世の全ての技術はそうして生み出されてきた。小さな研究の成果を種として多くの科学者が取り組み、発展的に理論を大成させていく。芽吹いたものを育てひとつの大樹とするにはそれだけの手間と時間と閃きが必要になる。
今までもスヴェンは『時間遡行の第一発見者』『行使者』となるために、寝食を忘れ、周囲から気味悪がられるほど、研究に必死で取り組んできた。
それでも時間が足りないと感じていた。その肌感覚は間違いではなかったのだ。
目の前に提示された本は確かにスヴェンを求めた結果に導くだろう。
だが、同時に自身の敗北を決定づけるのだ。己の力量だけではここには辿り着けなかったのだと、認めることとなる。
フィリップは静かに逡巡するスヴェンを見ていたが、やがて、微笑みながら頷いた。
「これは’’真実’だ。研究者としての矜持はさておき、”真実”を知りたくはないか?」
スヴェンはハッとして顔を上げた。
真実。
私は何のためにここまで進み続けてきたのか。
彼が言っていることが正しく、自身で術式を完成することがなかったとしても、それは過程に過ぎない。私が目指していたものは、あくまで”真実”ではないのか?
「もしも、それをいただくと言ったら? 何が望みだ?」
心のどこかで、素直にそれを受け取る事に呵責が生じていたのだろう。だから、それを受け取る事を、無意識に合理化したがっていたのかもしれない。未来から来た男に対価を返すことで、”真実”を受け取ってしまう自分に理由を与えようとしていた。
予見した通りにスヴェンの瞳に灯った貪欲な光を見出して、フィリップはにやりと笑った。
「城塞内の警備情報をいただこう」
「警備の? 何故だ?」
「知らない方がいい。あなたには関係のないことだ」
「……そもそもお前は、何のためにここにいるのだ?」
「知れば、来たるべき未来のことも伝えねばならなくなる。必要以上に過去を変える事は避けたい……ただ、必要なものがあるとだけ。それを持ち帰る事だけなら、この時代の歴史には影響しない、それは保証しても良い」
まるで台本があるかのように、フィリップは淀みなくスヴェンに語り掛ける。
未来から来た。それは間違いないだろう。スヴェンが口外もしていなかったはずの、仮説段階の転移の様子そのものが目前に展開したことで、疑う気持ちなど寸分もなくなっていた。受け取った資料に目を通せば、そこからもまたフィリップが未来から来た事が真実であるという証拠を得る事もできるだろう。ただ、もう一声、フィリップが信頼に値するという、自身が”真実”を受け取る事に感じる呵責を打ち消すだけの理由を求めたかった。
「受け入れたいのは山々だが、警備情報をとなると難しい。未来から来た事が仮に真実でも、君がトラエ以外の人間であったならば、私の立場からすれば利敵行為に与しかねない事になる。理解してくれるか」
スヴェンはこう言い放ちながら、内心で自嘲した。スヴェンは、フィリップがトラエの人間である事を証明してくれる事を期待していた。彼があらかじめ私の呵責を砕く準備までした上でここに来ていると、察しが付いていた。その上でこんな事を方便にするのは、戯曲を棒読みする姿を見透かされるようで、歯がゆかった。
フィリップは答えをやはり用意していたようで、間髪入れずに分厚い上着のポケットから、ひとつのネックレスを取り出した。金色のネックレスは傷がつき、古いものだった。スヴェンはその取り出す様を見ながら、やはり見透かされていたのだと、思わず赤面した。
「開けてみてくれ」
スヴェンはおずおずと受け取り、開いた。そして息を飲む。
「これは……!」
「一緒に映っているいる赤ん坊が僕だ」
一目見て分かった。写真に��った男は、ゴットフリートだ。城塞の食堂で目にした、岩でも噛み砕きそうな厚い顎、豹を思わせる眼光、右頬と左こめかみに負った特徴的な傷跡。スヴェンの知るゴットフリートよりもかなり年を重ね、白髪や白髭を蓄えた風貌で笑っていた。
――未来だ……。
スヴェンは、ごくりと息を飲んだ。
「あのゴットフリートが、人の親、果ては老人か……。戦場で死ぬような者ではないとは、思っていたが」
「祖父は一族の誇りだ」
「……分かった。警備情報を渡そう。だが、本当に面倒事は起こさないのか……?」
「表立っては何も起きないから、安心していただきたい。この時代には捨て置かれたものを、持ち帰るだけだ」
スヴェンには、その言葉の意味まではわからなかった。
その後の逡巡を見越したように、ゆっくりと研究書をスヴェンに差し出す。
「戻れる先は魔力の量に左右される。魔力を1点に集中すればいい。杖を使えばいいだろう」
「お……おお……」
「この本に詳しくまとめられている。運命は、未来は変わらない」
「本当に?」
「あなたが、あなたのために使うだけに留めれば、自ずとそうなるだろう」
答えないスヴェンの胸に、ドンと本が叩きつけられる。
その感触に、スヴェンの理性はぐらりとふらついた。
月が高く上ったのを見上げて、フィリップはゆっくりと山岳の斜面を進んだ。姿勢を低くし、音を立てないように。
(……不安はあったが、狙ったタイミングに戻れたな……)
グレーテルと徹底的に城塞の歴史を調べた。
激しい攻防戦から間がなく、その後しばらく戦闘がない、天候が落ち着いている時期。かつ、当日の天気が晴天で満月であること。
いくら協力を得ることが出来て警備の状況が把握できていても、誰もいないはずの山の斜面で灯りを用いて、遠目にでも見つかる危険を冒すことは避けるべきだ。暦を遡り、目途をつけたのが今日この日だった。
斜面には雪が積もっている。この積雪から数日、戦線に動きはなかったと記録されている。束の間の平和。だが、その直前には、この斜面で、たくさんの人と人が殺し合ったのだ。静寂に包まれた雪景色の中、あちこちに矢が突き刺さったまま放置されていた。戦闘の跡だ。
左右を見渡してから、フィリップは一番近くの雪を掻いた。そこにも矢が刺さっている。
(……矢先の雪がほのかに赤い)
山岳地の雪らしく、水を含まないさらさらとした雪で、払えば埋もれたものが簡単に姿を現す。
「……あった」
雪の下には、傷の少ない兵士が眠るように倒れていた。
念のため体を検めるが、四肢も無事で、背中に矢を受けた痕があるだけだ。専門外だが、転がした下の赤黒い土の色から察するに、死因は失血だろう。
こんなに状態のいい屍体を見たのは、いつぶりか。
ここはまさに、フィリップにとって宝の山だ。
見渡す限り、無数の屍体が隠されている。先日攻め入ってきたが退路を断たれ、殲滅の憂き目にあったラウニの一個師団がこの斜面に眠っている。
ざっと見積もっても数千から万を超すだろう。 この雪の下にある屍体さえあれば、それらは全て、二人が未来で戦うための手足となる。計り知れないほどの戦力だ。
グレーテルも転送を待っているだろう。と言っても、未来で待つ彼女の方からしたら、突然数千の屍体が目前に現れるような形になるのかもしれないが。
兵士を完全に雪の上に横たえてから、フィリップは術式を展開した。過去に遡行することに比べ、未来に送ることは難しくはない。状態が劣化しない静止した時空間に屍体を閉じ込める。そして、ある特定の時期に来たら、閉じた時空間から屍体を現実に表出させるように仕込んでおく。川の流れを下るように、時の流れに逆らわずに未来へ向かうのであれば、身を任せるだけで良い。逆に、流れに逆らって上流に向かおうとするには、莫大なエネルギーを要する。それが、時間遡行研究者たちがたどり着いた、ひとつの答えであった。
遺体はぼぉっと青白い光に包まれて、ふっと消えた。
成功だ。
こうして閉じ込めた屍体全てが、グレーテルの元で姿を現すだろう。彼女も状態のよさとその数に感動するはずだ。周囲を見渡し、笑みが溢れる。
屍体の数は多ければ多いだけいい。フィリップは近くの雪中を再び探り始めた。
「ん? なんだぁ?」
突然降ってきた声に、フィリップはぴたりと動きを止めた。
振り向けば、豪奢な装備に身を包む屈強そうな男が、首を傾げながらこちらを見ていた。ありえない。
「――……巡回はいないはずじゃ……」
スヴェンから得た警備資料は棚から即座に取り出されたものであって、あの場で嘘を取り繕うためにあらかじめ用意できるようなものではなかったはずだ。
だからこそ、その内容を信じたフィリップは夜を待って行動を開始したのだ。
「巡回なんざしてねえさ。散歩してただけだ」
男は野太い声で言った。
「しっかし、誰だ、お前は。さっき屍体を掘り返してたよな?」
「……何のことだ」
「おいおい、しらばっくれても無駄だ。見てたぞ。目の前から消えたんだからな」
失敗した。
頭の中で思考が急回転を始める。どうやってこの場を切り抜ける? 取り繕うか、命を奪い口を封じるか、逃げるか?
「転送魔法か? それで屍体を運んで何しようってんだ」
「それは……」
なにかうまい口実はないか、言葉を手繰ろうとするフィリップを待たずに、男は叫んだ。
「戦場泥棒は重罪だぜ!」
雪をギュッと踏みしめる音を立てて、男はフィリップに飛び掛かる。
やるしかないか。
咄嗟に、重力歪曲《グラビティプレス》の術式を展開する。
跳躍し上向いた兜の中の顔を、月明かりがはっきりと照らす。豹のような眼光がこちらを見据えていた。一瞬、フィリップの胸中に幼い日が去来した。
(――……ゴットフリート爺さん!)
逃げなければならない。話も通じない。殺してはいけない。
月明りを背に大きな影が落ちる。
フィリップは咄嗟に術式を変じて、空間移動《テレポート》に切り替えた。短い距離であればすぐに展開して移れる。
鈍い音を立てて、ゴットフリートが鞘から引き抜いた剣が雪に突き刺さる。さきほどまでフィリップが立っていた雪の跡は、衝撃で爆ぜて消え失せる。そのまま、目線を数歩先のフィリップに向ける。
「はっ、やっぱり転移か。ラウニの連中は知ったこっちゃねぇが、ここには俺の隊の奴も幾人か眠ってんだ…」
雪から剣を振り上げるように引き抜き、巻き上げられた細かい雪がまるで煙幕のように広がる。視界が真っ白に染まる。
フィリップは咄嗟に腕で顔を庇ったが、視界に影が過る。
(まずい!)
二度目の転送が一瞬遅れ、避け切れなかった。ゴットフリートの剣先は肩から胸にかけて切り裂く。傷は浅いが痛みによろめく。
雪の影から突きを繰り出したゴットフリートは、目をぎらりと輝かせる。
「魔術師相手は滅多にやれねえんだ。面白えな……!」
まともにやり合ったら、殺される。
運が悪すぎる。
本気でやり合ったところで、ゴットフリートに勝てるわけもない。仮に勝てたとしても、祖父である彼を今この場で殺したら、未来から来た自分は一体どうなる? 前例がなく、全く予想がつかない。年老いてからも人の話を全く聞かなかったあの男が、戦場跡をうろつく怪しい男が語る”理由”なぞ、おとなしく聞いてくれるはずもない。殺さずに無力化出来るような術も持ち合わせてはいない。
なんとかやり過ごして、逃げるしかない。
再度テレポートをしようと身構えたフィリップに向かって、ゴットフリートが大きく踏み出そうとして、ぴたりと止まった。
「……なんだ? 臭ぇな……」
眉をぐっと止せ険しい表情で辺りを見渡す。
確かに何か匂いがする。嗅いだことのない匂いだ。
「屍体の臭いでもないな……なんの臭いだ……?」
唐突に、その匂いが一層強くなった。
屍体は確かに掘り返した。けれども、この気温で、雪の下にあった兵士の体は腐敗するはずがない。凍て��き、匂いもなかったはずだ。
腐ったような、けれどももっと酷く脳を直接刺激するような……嗅いだことのないほど異臭。
「……うっ」
胸が悪くなる。
ゴットフリートも片手で鼻を抑えながら、周囲を見渡した。
ふたりの視点が1点にとまった。打ち捨てられた盾だ。放り出されて地面に突き立ったままのそれが、奇妙な黒い靄に包まれている。
「おい、小僧、お前の術か、ありゃあ?」
ゆらゆらと噴き出ていた黒い煙の密度が増す。
フィリップは自分の背中が粟立つのを感じた。
あれは、だめだ。
理由はわからない。ただ、本能が叫ぶ。けれど、足が竦んで動かない。
盾を包んでいた煙は次第に細くなり、盾と地面が成す角から勢いよく噴き出した。そして、その煙が見たこともない不気味な黒い猟犬の姿を取った。
~つづく~
原作: ohNussy
著作: 森きいこ
※今回のショートストーリーはohNussyが作成したプロットを元に代筆していただく形を取っております。ご了承ください。
旧き世に禍いあれ(3) - “猟犬の追尾”
「ショートストーリー」は、Buriedbornesの本編で語られる事のない物語を補完するためのゲーム外コンテンツです。「ショートストーリー」で、よりBuriedbornesの世界を楽しんでいただけましたら幸いです。
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1章:ボクと魔王が地下室で
『そう!この少年こそ、これから始まる とんでもない物語の主人公なのです』
祖父「剣ひとふり持って世界をかけめぐった若いころを思い出すわい。」 「わしらの家系は、冒険家の家系なのじゃよ。お前の母親も若いころに 冒険の旅に出てお前の父と出会った。お前の母も娘の頃から今の性格 (ボケボケ)」
『東:廃墟←違うってば!』
役場事務員「この村の人々の分類表を管理すること 分類表、はるか遠くにいる王様から定期的に送られてくる表 私達が送る報告書をもとに特徴で分けてある 社会の秩序を保つために必要」
父「ううむこの紋章はううむ 月夜に現れる七色ネズミのしっぽの形を」 「人の運命を変えるポラックの壺。ポラックは何百年も前の実在人物」
スタン「決してフレンドリーな魔王ではないが自分でも名前を間違える」 ジェームズ「300年前世界の半分を破壊したが勇者とやらに倒された偉大な 大魔王ゴーマ様。スタンはゴーマの生まれ変わり、大魔王の 後継者」
スタン「なぜか壺の中だったけど300年でようやく復活魔力がたまった」 スタン「これはいい影だ。3年前はひどい目にあったからな」
村人「聞くところによると教会ってテネルにある一つだけらしいわよ どんな神様の教会なのかしら。誰も知らないのよね」 団長「影の魔王さんよ」 スタン「なぜそれを知っている!」
2章:ボクと魔王とピンクの勇者
キスリング「光と影、正義と邪悪、そういった二元論こそを止揚して新たなる パラダイムを構築し人の生に真のリアリティをもたらすことこそ が重要でありそのためにはこの社会の構造に深く分け入り疎外 された者たちの様相を直視して……という理論に基づき真の学問 を確立するため私はこれから修羅に入る 後ろ姿の時雨てゆくか 懐に忍ばせたポエム帳のみを友として 暗く冷たい道をゆく…おうすごいなイカすなサイコーだな」
歯車役所「最新の分類表が王都から届いたが「魔王」という項目が出来た それも一人じゃなく何人もいる!これは大変な時代になったぞ」 『勇者協同組合』 『ネジ回し亭(店名)』 『大勇者ホプキンス』
スタン「勇者というのはただ一人!そう決まっておるのだぞ!」 ロザリ「あたしは勇者大学のエリート」 歯車博士「全ての歯車この町自体が先年記と呼ばれる遥か古代の人々の遺産 先年記については何も、なにひとつ分かっておらぬ…」
スタン「なんでお前なんかが魔王なんだ」 下水道「なんでって言われても困る、魔王だから魔王なんでやんす 生まれ持った品格ってやつでやんすか?」
ロザリ「3年前アスタルゴルタ山の人食い猿退治の際に壺を見つけて開けたら 影を乗っ取られた。自ら命を絶つしかないと短剣を喉にあてた時 『グオオ苦しい、こいつはウエストが太すぎて尻が垂れている! 魔王スタンにふさわしい影ではない』 それ以来影がピンク色に。しかも恥ずかしい蛍光ピンク。 エリートから落ちこぼれ勇者に仕事もなくなった」
スタン「お前も崖下に蹴り落しただろ!おかげで誰も来ない森の中で1年半、 バカな猟師が拾うまでどれだけ��細かったか」 ロザリ「影は斬れなくても宿主なら斬れる。可哀そうな少年を救うためには 私的にはOKなのよ」 スタン「お前の影は余がお前の存在に影響を与えたしるし。今の余では力が 足りない。封印されてる間に偽魔王たちが横領している。偽魔王を すべて退治し力を完全に取り戻したら真っ先に戻す。約束だ」 ロザリ「じょーだんじゃないわよ!私は勇者よ勇者! 大体魔王の約束なんてのがアテになるもんですか!」 スタン「あっそう、じゃあ余は知らん」 ロザリ「あっ、そういう態度とるわけ?」 スタン「バカバカバカバカ女!」 ロザリ「バカバカバカバカバカ魔王!」
『こうして勇者と魔王のレベルの低い口喧嘩はいつまでもいつまでも』
ロザリ「影の出来ない状態ならあいつはこの世界に出てこられない 王女様がこのあたりをお忍びで巡行している噂 王女様にスタンのことを話せばきっと君と切り離せる」
3章:ボクと魔王とワガママ娘
ロザリ「魔王と言えども一人じゃ何もできないのね」 スタン「全力の力を出せればこの程度…うー… ちっ!気分悪いわ!行くぞ、子分!」
リンダ「私の歌を聞いてください…都会の人って冷たくって… やっぱり、あなたはとてもいい人なんですね 歌詞も題名もないけど歌います!」 スタン「なめてんのかこのドオンチが!耳が腐るわ!」 リンダ「やっぱり私って才能ないですか?分かってるんです。どうせ 私なんて…ダメなんです あなたのおかげで勇気が湧いてきました ちかみさんって言うんですね。また会いに来てください わたし、ここでずっと歌ってますから」
駅員「鉄道は使えないよ。あれ?なんでだっけ?それより君たちは?掃除? さっきも来たような…君たちだっけ?鉄道は使えないよ。閉鎖中。 あれ?なんで閉鎖されてるんだっけ?君たちは?掃除?」
艶女性「ここに電話ちょうだい。話を聞くくらいはできるわ」 スタン「うーなんだか余もその店に行ってみたいような…」
キスリ「待っていたよ勇者殿、私の愛しい協力者よ!」 ロザリ「は?どなたか存じませんが道を開けていただけません?」 キスリ「ふははは!女勇者どの、さあ行こうではないか!大いなる探求の 旅へ!このグッテン・キスリングと共に! 私の鋭敏な頭脳が告げているのだ!すなわち君こそが、その娯楽性 とその不運において比類ない素質を持ち各種の特異例を引き起こす トリガーとして機能する生体機械であると!」 ロザリ「…何を言ってるのかしらこの人?」 スタン「要するにお前が面白そうだからついてきたいと言っておるのだ わはは!さすがは大根足女!怪しいオヤジにモテるようだな!」 キスリ「ふははは!まさにしかり!偉大な学者であるこのキスリングの 一生のテーマこそ、オバケ!女勇者どの、君と一緒なら間違いなく 豊富なオバケとの���遇があるだろうと私のカンが告げているのだ!」 ロザリ「このバカ影だけで手一杯だってのにあっち行って!しっしっ!」
キスリ「美しい女勇者殿、私の本心を読み取ってほしいものだ そう、研究はただの口実。可憐な貴女に魅せられてしまった と、こう言わねばならないかな?」 ロザリ「あら、やだ、そんな…もー、こまっちゃうなー、うふふ… ねえ、どうしようちかみ君?」 スタン「子分に聞かずに余に聞けこの洗面器女!余は反対だ!怪しすぎる!」 ロザリ「…そう、あんた反対なの。じゃ、あたしは賛成ね 悪い人じゃないみたいだし一緒に行きましょ!」 スタン「バカ女が…甘い言葉に乗せられおって…」
学者のキスリングが仲間になった!
キスリ「おお、やはり私は正しかった!なんというオバケ出現率! これも女勇者殿の不運のなせるワザか!ああ…オバケちゃん ステキだ…あのフワフワが…あのフワフワが…ああ…」 ロザリ「…………」 スタン「バカ女、お前のせいだぞ。こんなのを仲間にしおって」
ー一旦マドリルー
暗い研究員「あれあれェ?キスリング博士じゃないですかァ?」 キスリング「有名人はつらいねぇ。世間が放っておいてくれないね。 簡単に正体がバレてしまう。その通り私こそ一筆盤上 火の用心、スマイル0円なグッテン・キスリング45歳。よろしく」 ロザリー「そんなに有名人なの…?もしかしてとってもエライ人とか?」 研究員「グッテン・バッテン実験でご高名なキスリング博士ご本人に お会いできるとはァ…当研究所へようこそォ」 スタン「大した研究もしておらんだろうに」 研究員「この黒っぽいのが現在の研究対象ですねェ?コイツはすごいやァ」 スタン「言うに事欠いて黒っぽいのだのコイツだの余をなんだと思っておる いますぐお前の人生に幕を引いてやるか!」 ロザリ「黙ってなさいよ」 キスリ「研究はまだまだ修羅の道だな。イバラの人生だよ。いまはオバケの 研究をしておる。それと私の心の動揺についても研究対象に とりあげたよ」 ロザリ「オバケだけじゃなかったの?」 スタン「このワカランチンの洗面器女が」 ロザリ「うっさいわね」
研究員「君たちはどこかの研究機関のものかね?…おやや?もしかして」 キスリ「そう、私こそ天上天下唯我独尊、孤立無援焼き増し無料な グッテン・キスリング45歳。よろしく。」 研究員「キスリング・イカリング理論でご高名なキスリング博士ご本人に お会いできるとは!」 スタン「なんだこいつは、エライヤツなのか?」 研究員「なんとこれが博士の現在の研究対象であらせられますか? ということはすでに例の二元論の研究は終えられたのですか?」 スタン「いうに事欠いて研究対象とはなんだッ!余はおまえら人間どもの 測りうる存在なのではないわ!お前の人生終わらしたろか」 ロザリ「黙ってなさいよ」 キスリ「 研究はまだまだ修羅の道だな。イバラの人生だよ。 私の研究は なかなかに人々の理解を得られなくてね。」
ミスマドリル「まるで夢みたい。この人こそ夢の中から現れた理想の恋人 もう悲しみとはオサラバ。あなたも祝福してくれるわよね」 恋する青年��もう彼女を離さない夢にまで見た最高の恋人 もうさみしさとはサヨナラだ。ちかみくんありがとう 人生で一番大切なものを手に入れたから二番目に大事なものを 君へのお礼にするよ。父から授かった伝説のスーパー・ アクセサリー一番星ワッペンだ」
スタン「なんかあやしいから余が中を見てきてやろう 玄関マットをかくしてやったぞ!何も知らずに帰ってきた住人は くつのドロが落とせないであろう!フハハハハ!」
ー一旦テネルー
病気療養中の娘「もしかして手紙を見ていただけたのですか?本当に? ああ神様感謝いたします。来てくださってありがとう 今ママが居ないので大したおもてなしができません よろしかったらまた日を改めて、ぜひまた 私に異国のお話をお教えください。お願いしますね 『手編みのぼうしを手に入れた!』 また絶対にいらしてくださいね。絶対、絶対ですよ? ああ、久しぶりに話して興奮しています。またいつか…」
スタン「ここがリシェロか?ふん、魚臭い街だな」 キスリ「ここは町全体が湖の上に張り出した形になっていて 建築学的にたいへん興味深いのだ。そのうえ港まで行けば 水の遺跡と呼ばれる古代遺跡を観察することもできるよ」 ロザリ「湖に沈んでる古い遺跡ね。いつ建てられたものか全くナゾの…」 スタン「壊れた建物などどうでもいい。この町を征服し偽魔王を 狩りだしてくれよう!子分よ、さっそく邪悪な計画を立案するのだ」 ロザリ「さあちかみくん、あたしとこの町の勇者協同組合に行って 人々のお役に立つのよ!」 スタン「ええいだまっとれカンの虫女!こいつは余の子分だ!」 ロザリ「ちかみ君はあたしが立派に更生させて見せるわ!」 ースタンー スタン「余の威厳の前には金ダライ女など風に吹かれるチリ同然なのだ!」 ロザリ「しっかりして!悪の道に染まっちゃダメよ!」 キスリ「不毛なケンカの間にあちらの方が騒がしくなっているようだぞ?」
係員「ビッグイベントがあると磁石に吸い寄せられるように勇者たちが ゾロゾロと姿を表すんだよ。���旗挙げて名を売ろうってんだな」
灯台管理人「歯車がこわれちゃってね。ん?すごいよ!これだよ! 湾曲率10.28%!やった!きゃっほー!お礼にこれを ただのペンライトじゃないんだ。王都第一工作社製の逸品」
スタン「なんかこの灯台、あやしいな。余は怪しいところが大好きだ ちょっと中を見てくるから、動くなよ なんだまったく…ぺっぺっ!ネズミの巣じゃないか あー期待が外れた。余はガッカリだっ!もっと ワクワクドキドキするような物を隠しとくような奴はいないのか リシェロ破壊爆弾とか、魔王空間発生装置とか���ういうような イケてる武器でもあればよかったがな。ほれお前にくれてやる (手紙のビン) 手紙なんぞ余には必要ないわ。 あんなものは心が弱い人間特有の…クセみたいなもんだからな。 さびしいだの、会いたいだの…中には、世界中でいちばん好きだ などと。まったく、みじめなものだ…言葉にしないと心の平穏を 保てない。あろうことか相手の気持ちを疑ったり。 挙げ句は、会いたいだなどと手紙のやりとりという行為自体を 無効にしてしまう。…情けない生物だな。そんな情けないヤツラ だからこそ、余が支配してやるのだ。ありがたく思えよ、子分」 ー手紙をきらうって、字が書けないの?ー スタン「調子に乗るな!余が何年この世にいると思っておる。 すべての言語を習得しているわ。能ある鷹は爪を隠し、世界一邪悪 な魔王は下民に知性をひけらかす必要などないのだ 言ったであろう。手紙なぞ、言葉でしか心を通じることのできない 下級な生物のすることだ、と…」
ロザリ「スタン、あんた私のいるときに出てくるんじゃないわよ あんたみたいなのといっしょにいるって世間に知れたら 勇者資格剥奪どころかお嫁にだって行けなくなりかねないわ」 スタン「くっくっく、笑わせてくれるな割れた茶碗女。どうせおまえなんか このまま独りさびしくババアになるに決まっているのだ!」 ロザリ「ちかみ君!ものすごくムカついたからとりあえず死んで頂戴!」 キスリ「誰か出てきたぞ」
町人「王女マルレイン様だ…」 スタン「王女だと?」
執事「王女マルレイン様はこれより船で水の遺跡に向かい重要な儀式を行う 姫様の祈りが妨げられぬよう終了するまでの2日間船を出すことを禁ず」 長老「何かあったのでしょうか…遺跡は誰も立ち入らぬ廃墟ですが…」 執事「関係ないことだ。船を出すことと、遺跡に近づくことはあいならん!」
ロザリ「こんなに早く王女様に会えるなんて!こうしちゃいられないわ!」 スタン「王女か…くだらん、くだらんな。小娘ではないか。ククク… おおかたそこの量産型ヤラレ勇者はこの機会に何とか王女の 役に立ちちょっとは有名になろうと俗なことを考えているのだろう」 ロザリ「やかましいわね!私はただ王女様に頼んであんたを…」 スタン「余を?」 ロザリ「なんでもないわよ」 スタン「まあいい。それより行くぞ蛍光ピンク女。王女に会うのだろう?」 ロザリ「やけに協力的ね…あんたまさか何か…」 スタン「余はまだなにもしておらぬぞ?」 ロザリ「まだ?まだってなに?え?あやしい…あやしいわよあんた」 スタン「お前こそ怪しいではないか。王女に何を頼むつもりなのだ?え?」 ロザリ「……………」 スタン「……………」 キスリ「まあまあ、とりあえず王女に会いに行こうではないか このグッテン・キスリング45歳は王女なる存在に、大変深い 学問的興味をいだいているのだよ」 ロザリ「そうね…ここでこの腹の探り合いをしていても仕方ないわ」 キスリ「まずは血液検査だな。うふふ、王女の中身はどんなかな?」 ロザリ「………まあいいわ、とにかく!せっかくだから王女様に お会いしに行きましょう!」
船守「船は出せないぞ」 スタン「残念だったな小ジワ女。王女の船が遺跡とやらから出てくるのを せいぜいボケーと待つことだ。まあ、余には好都合だ さあて子分よ、我々はこれより村を偵察し征服計画を練るぞ」 キスリ「私はこの近辺のオバケ分布をまとめなくては」 ロザリ「私は勇者協同組合に顔出さなきゃ…はああ…」 スタン「これは好機だ。ジェームス!余は素晴らしい作戦を思いついた 名付けて、王女に色々して世界を思うがまま計画だ! 今まで隠していたが余は下水道魔王とかいう偽物を倒し 新たなる力を手に入れた!人間の魂を支配し思うがままに 操ることができる!余の今回の計画はこの力を使い王女とかいう 小娘を洗脳することだ。王女というものに人間どもは弱いよう だからな。あの小娘を操り、魔王スタンに服従するよう 命令させるのだ。さて手下どもよ、この計画を実行するには 一つだけ問題がある。洗脳術を用いるには王女のすぐそばまで 行かねばならぬということだ。息がかかるほどの距離だ」 ーどうやって?ー スタン「それを考えるのがお前の役目だ!このグズ子分め子分め子分め! そしてジェームスよ」 ジェームス「心得ておりますぞ!」 スタン「流石」 ジェームズ「遠くから熱く熱く応援しておりますぞ!」 スタン「ジェームス?違うのだジェームス待つのだジェームス仕事がある のだジェームス」 ジェームズ「アリスちゃん今行くよー。はあああああっ!」
事情通男「王女様は天の声とやらを得るため水の遺跡に向かうらしいぞい」 事情通女「王女様には天の声とやらいうお導きを授かる力が」
ロザリ「見て!広場の屋根の上!」
へんなの「えー、俺は数いる魔王のひとり水泡魔王である! 我がアジトに踏み込んだ命知らずな王女は預かった! えーまあとにかく預かったのである!ははははっは! ………………なにしろあの女は預かった!命が惜しければ… あの、なんだ。おしければ…ははははっは、ではさらばだ!」 スタン「くそ!先を越された!ゆるせんぞ!」 ロザリ「なによその先を越されたって。どうなのちかみ君? このバカ、なにかたくらんでるんでしょ?」 スタン「ええいうるさいわ!あの偽魔王め会ったらボテクリこかしてやる!」 刃物女と汚れ学者はここで毛布にくるまって震えてろ! 余は行くぞ、水の遺跡へ!」 キスリ「私もお供するよ。なにせ王女の体を詳しく調査するのは この私に決まっているのだからね!」 ロザリ「とてもこんな奴らだけで行動させるわけにはいかないわね…」
子ども「こんな大事な時に村長がいねえんだもん。なんでいねえんだよ! 役に立たないジジイだよ、まったく。 憎み切れないロクデナシだよ、ほんとに。 あ、いけね。母ちゃんにそんな言葉は使っちゃダメって 昨日も言われたばっかりだ。母ちゃんには内緒にしてくれよ。な…」 おじさん「どうしようどうしよう、何かしなければ! どうしようどうしよう、なにをしたらいいんだろ。」 モブ勇者「オイラの出番がやってきたってわけさ。��速船を見つけなきゃ 誰より早く湖を渡ってオイラが一番乗りの大手柄!」 ニュース「(水泡魔王のセリフ要約)さあ起てよリシェロの人々よ!我らが手で 王女様を助け出そうではないか!さあ勇者よ前面に起て! 戦いは君たちに任せたぞ!後で戦いの報告をしてくださいね… というわけでリシェロ・ニュゥゥゥス担当はハート・ハート・ ジュニア記者でした。ファンレターはいつものところにね…」
副村長「やっぱりここは地元の勇者で行くべきじゃろ? ワシの甥っ子のボブでどうじゃ?」 村長「いやいやここはワシの娘婿のチャーリーじゃ!」 娘婿「お義父さん…ボクは通信教育で資格を取ったペーパー勇者ですよ…」 副村長「ほれみろ!ボブは3か月も勇者やっとるんじゃ!決まりじゃ!」 村長「なにを言っとる!お前の甥っ子は未だに馬にも乗れんそうじゃないか」
初老男「おお、もしやあなたは勇者ロザリー殿ですかな?」 ロザリ「は、はい…」 初老男「おおこれぞ天の助け!<光速のレイピア使い>と呼ばれる 勇名高き勇者殿に出会えるとは!」 ロザリ「いえ、そんな、私など…お恥ずかしゅうございますわ うふふふふふふふふ!」 キスリ「そして私が世界一のオバケ学者グッテン・キスリング45歳ですぞ!」 初老「おおそれはそれは…わたくしベーロンと申しまして王女マルレイン様 づきの侍従長でございます。じつは折り入ってお話がございます。 王女様の救出は国家的なレベルの大問題。一刻を争うのです しかし町の者たちがあの調子では…そこでわたくし個人からの お願いになるのですが…」 ロザリ「分かりました。みなまでおっしゃらなくてもけっこうです 私も勇者の端くれ。高貴なる王女様は必ず救い出して見せましょう」 ベーロン「おお、やってくださるか!もちろん王女様救出ののちは 王女様じきじきより褒賞をくださることでしょう! む。ところでそこにいる少年は?」 ロザリ「ああ、この子は…そう、私の弟子でございます。ほほほ…」 ベーロン「見たところ…でもないようだ。危険はあるまい…ふむ。 またそれも一興か……あーいやや、中々利発そうな少年ですな。 ではなにとぞお願い致します!船は私の方で用意いたしますので」
ー水の遺跡ー
スタン「クソナマイキなエセ魔王はどの辺に居るのだ?またプチっと退治 してくれようぞ」
水泡魔王「やっと来たな、やれやれ…」 ロザリ「水泡魔王とやら!邪悪なるたくらみのために高貴なる王女様を さらった罪、ゆるしがたいわ!この勇者ロザリーが貴様を倒し 王女様を救い出して見せる!さあ来なさい!」 水泡魔王「いやちょっと事実と違うというか…王女とかいうのが俺んちに 入って来たから捕まえたんだけどさ、オレも困ってたんだよな」 ロザリ「卑劣なウソをつくんじゃないわよ!王女様を人質に取り王家に 莫大な金銀財宝を要求するつもりだったに違いないわ!」 水泡魔王「あ、その手があったのか。気が付��なかった」 スタン「おい水泡魔王とやら、本当に何も考えずに捕まえただけなのか?」 水泡魔王「うん。捕まえてくれと言わんばかりにここに倒れてたんだ」 ロザリ「じゃあ今朝の宣告は?」 水泡魔王「だってハッタリぐらいかましとかないとマズいじゃん? ほらオレいちおう魔王だし」 スタン「うおおおおお!おいお前!捕まえたら取り合えず悪い計画くらい たてろ!余は情けないぞ!」 ロザリ「そんなことはどうでもいいわ!王女様はどこにいるの!」 水泡魔王「あの女ならこの上の部屋だよ。いやなんか、もーすっげー ワガママな女でさぁ、まいっちゃったよオレ…」 ロザリ「この魔王め!王女様に変なことしたんでしょ!」 ・変なことって何? ・変なことって何? ・変なことって何? ロザリ「そ、それは…あれよ…いろいろよ…」 水泡魔王「オレ人間の女になんか興味ないぜ。でもあんたらを叩きのめして 身代金がっぽりいただくことにしたよ!」
水泡魔王「あーあ負けちゃった。はああ魔力が抜けてく。 あんな女を捕まえたばっかりに…もうどうでもいいや なーがにが邪悪の道に導く開運アイテムだ。いらねーやい」 ちかみのアタマにうずまきハリガネが当たった! スタン「ふふん。あわれな。美代子文、余の魔力がまた少し戻って来たぞ」 元水泡「オレ勘違いしてたみたいです。自分が世界で一番にならなきゃって 思い込んじゃったみたいです。でも変なんですよね… なんでそんなこと思ったんだろ。最強魔王になってマドリル下水道 の奥に行かなきゃ!って思って。俺にはそこで大事な仕事がある って気持ちになってきちゃって。もうその気持ちが止まらなく なっちゃって。強迫観念っていうんですかねこういうの でもようやく目が覚めました!すんませんでしたっ!」
ロザリ「ちょーっと待った!スタン、あんたは王女様にそれ以上近づかないで」 スタン「お前こそ王女に取り入って点数稼ぎか。勇者というのは考えること がセコいな。」 ロザリ「うるさい!とにかくそれ以上近づいたらちかみ君の命はないわよ!」 スタン「いつも同じ手を使いおって。脳味噌がないのか頭蓋骨ザル女! この魔王スタンがそんな脅しにいつまでもビビると思っているのか やれるものならやってみるがいい」 ロザリ「くっごめんなさいちかみ君、正義のために死んでちょうだい!」 王女様「無礼者!わらわの前で見苦しく騒ぐでない!」 ロザリ「はっ申し訳ございません…王女様よくぞご無事で 侍従ベーロンから救出の命を受けた勇者ロザリーでございます」 王女様「なるほどな。これからいろいろよろしく頼むぞ」 ロザリ「は?それはどういう?」 王女様「わらわは王女マルレインじゃ。ロザリーとやら、役目大義である ふん、そこの子供、お前は?お前は誰じゃ? ほほう、ちかみというのか。薄汚れた格好をしておるのう おまえはここで何をしておるのじゃ?」 ロザリ「ちかみは私の弟子として私に同行しているのでございます」 キスリ「そして私が世界一の大学者グッテン・キスリングでございますぞ!」 マルレ「もう一人男がいたようじゃが」 ロザリ「え?…いいいいいいいいええ!おきき間違えでしょう! そんなものはいませんわ、ええ!」 マルレ「そうか、まあよい。それよりちかみ、喉が渇いた。紅茶をもて! お前は召使��のだろう>紅茶を用意しろと言っておるのじゃ」 ロザリ「王女様、ここは危険な場所ですわ、早く地上に戻らないと…」 マルレ「確かにここは湿っぽくて不快じゃ。一旦外に出てやってもよい だが見よ、わらわの靴はすっかり汚れてしもうた。これでは歩けぬ そうじゃちかみ、わらわの靴を磨く栄誉を与えよう。近く寄れ」 ロザリ「あの、おそれながらその役目、私が…」 マルレ「だまれ!わらわはちかみに命じておるのじゃ!」 スタン「チャンスだ!おほん、では磨かせていただきますでございますです」 ロザリ「あ!こらスタン!王女様に近づくな!」 スタン「クククもう遅いわ。出番だジェームス!女を足止めせよ! ………………おいジェームス?なんだこの紙は。なになに?」 ジェームス『親戚の法事がありまして有給休暇を取らせていただきます 愛をこめて、あなたのジェームス』 ロザリ「ふふふどうやら計画が狂ったようね。そのまま動くんじゃないわよ」 マルレ「その影はなんじゃ?おもしろいのう。わらわによう見せい」 ロザリ「あああ、いけません王女様!」 スタン「飛んで火にいる夏の虫よ!子分よ、王女に抱き着いて目を覗き込め」 マルレ「…!」 スタン「さあ王女よ、我が催眠術にかかれ! あ?あー?なんだこの娘は。魂がおかしい、おかしいぞ!」 マルレ「………はなせ。はなせと言っておるのだこの無礼者がー!」 18ダメージ ロザリ「素晴らしい張りてですわ…」
ベーロン「おお、王女様よくぞご無事で」 マルレ「うむ。ロザリーよ、褒賞はなにがよい?なんでも申してみよ」 ロザリ「実はとあるところにとても悪くて卑怯なオバケがおりまして… そいつが不幸なこどもに取り付き周りの罪もない者たちに 多大な迷惑をかけているのです。私も勇者として最善を尽くして おりますが力及ばず…どうか王女様のご威光をもってその 醜くて下劣で頭の悪いオバケを裁いていただけませんでしょうか」 マルレ「そのオバケというのはどこにおるのじゃ? いや、まて勇者ロザリーよ。今はその話をする時ではない いずれゆっくりと聞こう。ゆっくりとな…」 ベーロン「王女様はお疲れの様子、ひとまずおやすみいただきましょう」 マルレ「ちかみ、わらわは忘れんぞ。おまえの… よいか、特別に許してやるが責任は取ってもらうからの!」 キスリ「水泡魔王の下水道へ行かねばならぬ気がしていたとはいったい… 刷り込まれた強迫観念?いったい誰が魔王にそんなことを?」 ロザリ「これでやっと王女様とお近づきになれたわ。これでちかみくんも 私も救われる…うふふ、ふふふ…あのバカをあんなしてこんなして もーぎったんぎったんに…ふふふふふ…ふふふふふふ…」 スタン「おかしい、絶対におかしいぞ。あの小娘、只者ではない… なぜだ、なぜ王女には魂がないのだ…?」
ベーロン「おおロザリー殿、実は王女様が手紙を残して居なくなられまして そこでロザリー様にお願いが…」 ロザリ「ええ、ええ、言わなくてもわかっていますわ」 ベーロン「おお、さすがは勇者様…」 ロザリ「それほどでもございません。うふ、ふふふふふふふふふ…」 スタン「簡単に乗せられおってひび割れバケツ女が…」
ーマドリルー
リンダ「あ、ちかみさん会いに来てくれたんですね…うれしい………ぐすん ちかみさん聞いてくれますか?私ずいぶん頑張りました すこしずつ町のみんなにも知ってもらって…いまでは差し入れを くれるファンも出来て…でも皆さん口を揃えてこう言われるんです リンダちゃんは歌さえ歌わなきゃいい子なのにって やっぱり駄目なんですね、私才能がないんですね…」 『くじけるな!』 リンダ「はい!分かりました!そうですよね努力と根性ですよね! コーチ!私コーチのために一生懸命歌います!」 スタン「だーやめいなっとらん!」 リンダ「どこが悪いんでしょうコーチ!」 『発声が悪いよ』 スタン「そうだ!もっとこう腹の底からぐっと声を出せ!」 リンダ「分かりましたコーチ他には何が悪いんでしょうか!」 『リズムが悪いよ』 スタン「そうだ!シンプルかつコミカルなリズムこそが大切なのだ!」 リンダ「分かりましたコーチ!他には何が悪いんでしょうか!」 『気合が足りん!』 スタン「そうだ!コブシだ、コブシをきかせろ!魂を声に乗せるのだ!」 スタン「あとは歌詞がわるい」 リンダ「歌詞ですか…?私が作詞したんですけど…」 スタン「バカ者!お前は歌の言葉というものがまるでわかっとらん! いいか!征服、魔王、支配、暗闇、こういった言葉を使うのだ!」 リンダ「分かりましたコーチ!では特訓の成果を聞いてください!」 スタン「うむ、まあよかろう。」 『最高だよ!』 リンダ「なんだか生まれ変わったような気分です。ちかみさんのおかげです」 スタン「おい、教えたのは余なのだが」
ーテネル自宅ー
父「そこのまばゆいばかりに美しい人はどなただい?」 ロザリ「あたし?そんなーお父様ったらもうお口が上手ですわ! 縁あってちかみくんと旅をしている勇者ロザリーと申します」 父「スタンくんの世界征服は順調かい?」 スタン「ふん、まあまあだな、日傘女さえいなければ順調にいくのだがな」 ロザリ「お偉い魔王様は女ひとりに邪魔されたくらいで世界征服も できないのかしら?」 スタン「………………」 ロザリ「………………」 父「楽しいパーティだねえ。そちらは?」 キスリ「私は世界一の学者グッテン・キスリング45歳だ」 父「あなた相当デキますな…」 キスリ「あなたこそ」 父「そうそう、ちかみ、今かわいいお客さんがきてるんだよ。」
マルレ「おおちかみ、ジャマしておるぞ。散策を楽しんでおったら ボロボロの大きな家があったので興味を引かれ立ち寄ったのじゃ しかしここは居心地がいいのう。なにやら懐かしい感じじゃ」 母「ちょっとちかみ、王女様に襲い掛かったってホントなの? 女の子は繊細なんだからちゃんと段取りを踏んでね。それから… ちゃんと責任取るのよ」 マルレ「うむ、そうじゃちかみ、責任取ってもらうぞよ」 ロザリ「あのー王女様、責任っていったい、まさか…」 マルレ「そうじゃ。ちかみとその同行者たちよ、わらわと旅をするのじゃ わらわは決まりきった旅にはもう飽き飽きしておるのじゃ ベーロンの爺の言うとおりにしておったらきっとつまらんもの ばかり見せられる。夜更かしもできんし散歩も村人と話すことも できん。わらわは、つまらん!で、こっそり抜け出て来たのじゃ そして村で良いことを聞いたのじゃ。いま世界には何人もの魔王が いるというではないか。そこでわらわは決心したのじゃ。 わらわと手下どもで魔王退治を行い、王女としての務めを果たすと」 ロザリ「王女様、それはあぶのうございます」 マルレ「ええい黙れ黙れ!そのためにお前たちがおるのじゃろう! 危なくないようわらわを守るのじゃ!」 ロザリ「え?てことはなに?手下どもってあたしたちのこと?」 マルレ「そうじゃ。そもそも遺跡に居たのは護衛を選ぶためじゃ。 爺は話さなかったのか? 爺はお前を選んだのじゃ、ロザリー だいたい爺はうるさすぎる。のうロザリー、これはわらわの 王女としての義務なのじゃ。ロザリーよ、選ばれし勇者として わらわと共に戦うのじゃ!」 ロザリ「………………選ばれし勇者… わかりました。ええ!ああ選ばれし勇者!何ていい響きなの! ただしあの、ちかみくんを同行させるのはおやめくださいませんか」 マルレ「ならぬ!ぜったいにならぬ!ちかみ話すことがある。近うよれ ちかみ、おまえは王女たるわらわにあのような、あのようなマネを した以上もはやただではすまさん、一生わらわの召使いじゃ!」 スタン「小娘、王女だか何だか知らんが調子に乗るのも大概にしろ!」 マルレ「む、ちかみ、前から気になっておったがこの無礼な影はなんじゃ?」 スタン「余こそ世界唯一の真の魔王、すべての者の上に立つ至高の存在 魔王スタン様だ!そしてちかみは余の忠実なる子分なのだ!」 マルレ「ほう、そうなのか」 スタン「なんだその反応はこの小娘が!このグズな子分を好きに使えるのも ニセ魔王どもを退治するのもみんな余にだけ許された権利だ! 小娘が行楽気分ででしゃばるな!頭から食らって排泄してやるぞ! わかったかこら!」 マルレ「この影はちかみとは別の意志を持って居るようじゃな だがまあ自称魔王などいくらでもいることだしわらわは気にせぬぞ」 スタン「きにせんぞではない!少しはビビらんかこの小娘が! とにかくちかみは余のものだ!」 マルレ「いいや、わらわのものじゃ」 スタン「ふざけるのも大概にせんと後悔するぞ。え?」 マルレ「ちかみ、お前に問う。お前を動かせるのはだれじゃ。 お前のご主人様は誰じゃ。わらわか。それともこの下品な影か よう考えるのじゃ。わらわか?それともこの影か?」 『王女様です』 マルレ「よう言うた!決定じゃ!ちかみはわらわの召使いじゃ!」 スタン「ちかみ、よくも裏切ったなー。裏切ったなー。 ゆるさんぞー。呪ってやるぞー。」 マルレ「ではこうしよう。9割がわらわのもの、1割がお前のものじゃ」 スタン「なんだと!ナメるなよ小娘、最低でも半分は余のものだ!」 マルレ「いいや、勝ったのはわらわじゃ。4分の1以上はやれぬな」 スタン「待て待て待て!それはないだろう…せめて3分の1は!」
スタン「くっそあの小娘、大魔王様の子分を横取りしようとは恐れを 知らぬヤツ…おまけに我らについてくるとは…ったく 親の顔が見てみたいわ!」 母「そうそう、煮立ったら少しだけお酒を入れると良いのよ」 マルレ「ふむ、料理というのも奥が深いものじゃ。わらわは何も知らなんだ わらわには母と役を定められた者が居なかった。次の冒険では わらわにも母が居るとよいな…始まる場所にしてもそうじゃ お城ということで始めるより、普通の家でもちゃんとホントに ある場所の方がよいな…」 母「??????? ええと、まあ無理もないわ。王女ですものね でも、少しずつおぼえるといいわよ。あら?ごめんなさい王女様 こんな口の利き方をして…」 マルレ「なぜじゃろう?母上の場合そのような口調でも無礼だとは思わぬ それどころかほっとするようじゃ。母上はわらわの身分にまるで 頓着せぬのじゃな。不思議じゃ…」 母「ふふふ、王女様���あなたは私の息子のかわいいガールフレンドだわ。 私は平凡な母親だから、わたしにとってはそのことが一番大事なのね」 マルレ「ガールフレンドなどではない!だって、まだ… あったばかりなのじゃ…」 母「そう、でも…あらあらあら大変!お鍋が吹いてるわ!」 母「うふふ、まるでもう一人娘が出来たみたいね」
マルレ「うむ、ちかみか、こんな夜更けに何をしておる?」 スタン「貴様こそ何をしている。この家には盗むものなど何もないぞ」 マルレ「控えよ自称魔王!わらわをそちといっしょにするでない! それにしてもなぜこんなにもこの家を懐かしく感じるのじゃろう… わらわはほとんど城からでたことなどなかったというに こんなイナカまで来たことなどないのに… のうちかみ、わらわはお前の母上に礼がしたい わらわに料理を教えてくれたし、なぜだかとてもやさしい 気持ちにしてくれた。その礼がしたいのじゃ 月光草というものを知っておるか?月の光に反応して美しく 光るという花のことじゃ。それをプレゼントしたい それを探しにわらわは少し出かけてくる��夜明け前には戻るゆえ」
ロザリ「王女様はあそこにいらっしゃるわ。危険だから帰りましょうって いったんだけど、どうしても花を探すんだって聞いてくれないのよ」 マルレ「手伝ってくれるのか?…すまんな」
ロザリ「そろそろ夜が明けてまいります。お戻りになりませんと」 マルレ「なさけないのう、あれほど優しくしてくださった母上に 礼もすることも出来んとは」
マルレ「あれは…!」
マルレ「そなたたちのおかげで目的のものを見事手にすることができた」 ロザリ「もったいないお言葉です。さあ、お手の汚れを落としませんと」 マルレ「ん?ああ、ちいとも気付かなんだ。わらわは汚れを落としてくる」 ロザリ「お母さんにプレゼントするためにあんなに一生懸命になって… フフ…なんだか見直しちゃったな」
マルレ「やっと目が覚めおったか。今何時だと思っておるのじゃ! さっさと下へ降りてこんか!もうみんな集まっておるぞ! それと、わらわが母上に花を差し上げるときにはお前も必ず わらわのそばにいるのじゃぞ!よいな?」 スタン「あの小娘…大魔王様の子分を横取りしようとは恐れを知らぬヤツ オマケに我らについてくるとは…ったく、親の顔が見たいわ!」
マルレ「母上、また料理を習いに来てもよいか?」 母「まあ…もちろんだわ王女様」 マルレ「そうか、ありがとう母上。それとこれを…」 母「この花を私に?あらあらまあまあ、どうしましょう。 ありがとう王女様。ホント、うれしいわ! ああ、でもこうやってみると王女様、ほんとにお人形さんみたいに かわいいわ!昔、地下室にあったあの人形によく似てる… あれはほんとにかわいいお人形さんだったわ…なつかしい… あらあらあらいけない、そうそうそうそうだったわ。いい、ちかみ? あとであれを王女様にプレゼントするのよ?」 『わかったよ』 マルレ「?????????」
『魔王に勇者に学者に王女様…わけのわからない混成軍にまじり あてもなく旅立つちかみ。しかも怪しい交渉の結果 彼の立場は3割が魔王の子分、7割が王女の召使いということに…』
マルレ「のうちかみ、先ほどの母上の言葉がきにかかってならぬのじゃ 母上が別れ際におっしゃっていたあれとはなんじゃ?」 『オルゴール』 ロザリ「これはもしかして古代の機械?」 マルレ「なんときれいな音じゃ…なにやらなつかしい… ……………… もしかしてわらわにこれをくれるのか?」 『プレゼントする』 マルレ「ほんとうか?うれしいぞちかみ。わらわはこの音が気に入った」 ロザリ「ちょ、ちょっとちかみくんちょっと待ちなさい それ、お母さんから好きな子に贈るように渡されたんでしょ? まさかとは思うけど、それはいくらなんでも身分違いよ」 『それでもプレゼントする』 マルレ「本来王女たるわらわはそのような特別の意味を持つ贈り物を 軽々しく受け取るわけにはいかぬ。が、しかしちかみはわらわの 召使いじゃ。したがってちかみのものはわらわのものじゃ。 よってこのオルゴールを特別に貰ってやってもよい」
マルレ「さあゆくぞ手下ども!魔王退治に出発じゃ!」
ーボクと魔王と怪しいヤツらー
テネル
ジュリア「なんだかたくましくなっちゃって。あーあどんどんと理想から 離れていく。考え直してあげようかなとも思ってたのに。 それにそのきれいな人は誰?どーいうことよ誰なのよその人」 『この人は王女様なんだよ』 ジュリア「ウソまでついて私を馬鹿にしたいのね?私に気がありそうな そぶりを見せてたくせに。さよならしたら途端に他の女に 鞍替え…ちかみくんてあんがい… …くすん。結局そんな人だったのね」 スタン「くっ勝手なもんだな。これが人間というやつなのだな。 くっくっくっく。人間の本性、これ、悪なり。自分勝手なもんだ」 ジュリア「どうしてそんなに…こんなワケのわかんない影まで出して 私は、そういうとこがキライなのよ!」 スタン「ワケのわかんないとはなんだ!どうもこの村の住人はムカつく!」 ロザリ「ねえあなた、ちかみ君はそんな人じゃないわよ。 彼を見て来たんなら、わかるでしょ?それに、王女様ってのも 本当なのよ?友達なんだから信じてあげなきゃ。ね?」 ジュリア「いいわけなんか聞きたくないのー」 マルレ「わらわにはこのイナカ娘が何を怒っておるのやらさっぱりわからぬ そこのイナカ娘、とにかく怒りを鎮められよ」 ジュリア「あ・ん・た・な・ん・か・にイナカ娘呼ばわりされるいわれは ないのよーっ!」
村人「おいおいおいちかみも隅に置けないねぇ。誰だいこのべっぴんさんは」 ロザリ「なんて口の利き方!この村の人は王女様の顔も知らないの?」 マルレ「うむ、別に良いぞ。母上に料理というものを教わって たいそう機嫌がよいのじゃ。それにわらわは堅苦しいことが キライじゃ。世の中の民がわらわのことを下にさえ見なければよい しかしちかみよ。お前は別じゃ。わらわの召使いなのだからな」 スタン「おいこら!子分の半分は余のものだということで話がついただろ!」 マルレ「お前の分は3割じゃろうが!忘れたと思って数を水増しするない!」 ロザリ「ああもう!魔王様もバカ王女も…じゃない! 王女様もバカ魔王もいい加減にしてください!」 『あははははは。笑うしかないです』 村人「おいらすっかりカヤの外。しょせん村人Aの扱いはこんなものなのね…」
岩ガメと石コロの話 昔、ある川べりに大きな岩ガメが子ガメと一緒にナワバリに住んでいた。 岩ガメは子ガメをとっても大事にしてた。甲羅の黒いブチがラブリーで自慢。 ナワバリの中は怖い動物もいない、平穏そのもの。 ところがある時、ふと気づいたら子ガメが居なくなってたんだ。 岩ガメは探し回るがどこにもいない。子ガメの足でナワバリを出るのは無理 子ガメはどこだ、いないはずはないとパニックになる岩ガメ。 ナワバリをうろつくうちにあるものを発見した。何って、ただの石ころ。 ところが岩ガメは石ころを見つけるなり大喜び。 その石ころに黒いブチがついてたから 岩ガメは一安心。おお、我が子発見てんで石ころを持って帰った 前よりちょっと重いのなんか気にしない
岩ガメは石ころを子ガメと思い込んでナワバリの目立つところに置いた 石ころの方もこの意外な事態にどうしたもんかと悩んだけどどうもしなかった 石ころだから 岩ガメの信じ込みがあんまりなんで石ころでなくても何も言えなかったかも そのころ子ガメはってとナワバリのギリギリのとこでずっと寝てたんだ しばらくして子ガメが目を覚まして岩亀のところに行くと 岩ガメはなにやらいしころに向かって我が子と呼び掛けている。 いかげで子ガメは出るに出られない。 しょうがないから誰にも見えないナワバリの端っこから 様子を見てることにした。ナワバリの外は知らないし、おっかなかった
岩ガメが黒ぶちの石ころを子ガメと思い込んで暮らし始めてからしばらくして ナワバリにお客の赤ガメがやってきた 赤ガメを歓迎した岩亀は赤ガメに家族を紹介した。 赤ガメは面食らった。カメの子供に石ころがいるのか?って それで今まで誰も言わなかったけど赤ガメは思い切って言った うちの子ですって、それはどう見てもただの石ころじゃないか こんな当たり前のことを言うのに、以外と勇気が要った ショーゲキの私的からちょっとの間、場はシーンとした それが消えると岩亀は大笑い。岩亀は笑って言った おいおい赤ガメさん、この子を石ころだなんて一体何をいうんですか この子を見てください、この子はずっとここで話を聞いていても 私の子ではないなんてまったくいわないじゃないですか 赤ガメはもちろん、そりゃ石なんだからと思ったけどあきれてものも言えない 石ころももちろん、そりゃ意志なんだからと思ったけど石だから何も言えない だいたい、仮に私がそれを認めると私がバカみたいじゃないですか。と岩亀 いやだからね、あなたは。いや、だから岩亀さん、あなたは…
事務員「あらあらちかみくん、調べてみたんだけど、あなたの名前 分類表のどこにも載ってないのよ。こんな不思議なことってある? あるわけないわよねぇ。ナゾなのよ。ああ、たいせつな分類表 完璧な分類表に現れたたった一つの謎」
痩少年「なんだそのべっぴんさんは!」 ロザリ「この方は王女様よ」 痩少年「王女様に話しかけてもらった!きゃっほい!」 マルレ「なぜこんなに喜んでおるのじゃ?」 『あなたが美しいからです』 マルレ「世辞はキライじゃ。しかしお前が言うとなんだか悪い気はせぬぞ」
物知婆「この村の教会にはまだまだナゾがある。一朝一夕では解けない いくつものなぞ解きを乗り越えたのち、再びこの村へ帰ってくる時 はじめて大いなるナゾは解き明かされる」
酒場女将「あらあらちかみじゃないの。両手に花だねぇ」 ロザリ「なんて口の利き方を。こちらは王女様よ」 酒場女将「ええええええ、ああ、ああ、思い出した。王女様でしたね」 マルレ「よい、わらわは気にせぬぞ。市井の暮らしはつつましやかと 聞いておったがなかなかどうして、居心地が良いぞ」
ーマドリルー
おじさん「勇者組合ってあるだろ。あいつら黒幕商事ってところと 癒着のうわさがあるんだ���。それで問題は、黒幕商事ってのを オバケたちが運営してるってことなんだよ」 スタン「余の知らぬところで勝手に悪事を働きおって…うらやましいぞ!」
黒服男「あんたら勇者ですか。ねじ込む気?ねじ込む気ですね?強引に もちろんそうなのですね!すばらしい!というわけで奥へどうぞ」
マルレ「なんじゃ。こんなジャマ者はオバケどものように力ずくで 片づけてしまえばいいじゃろうに。だめなのか?」 キスリ「一方では私たちを素通りさせてもう一方では行く手を阻む。 風通しの悪い縦割り企業のステレオタイプを見るようだね 思うに、そこでジャマしているのは日常の職務に忠実なだけで 入口に居た黒服だけが、別の特別な指示で私たちを通した んじゃないのかな。となると、あの入り口の黒服くんが 誰のどんな指示を受けていたのか?気になるねぇ実に気になる」
お客様対応係「おや?そこ居るのはキスリング博士ではございませんか?」 キスリング「いかにも、私こそが放浪の天才科学者、今世紀最大の頭脳 グッテン・キスリング45歳。よろしく」
マルレ「悪事に対するのに穏便に行くのはなんともタイクツじゃ」 キスリ「それにしても個々の社員たちはどうも…私の慣れ親しんだものの ニオイが…いやしかし…ブツブツ…」 ロザリ「やっぱりこの先も簡単にはいかないかしら。向こうが攻撃して こないんじゃ、ジャマされても蹴散らすわけにもいかないじゃない」
キスリ「しかしもしそうだというならなぜ彼らはこういう道に?ブツブツ…」 ロザリ「この階もなんか違うみたいね。この騒ぎの張本人はどこなのよっ! そういえばこのビルって何階建てだった?いったいどのくらい 上がれば一番偉いやつが出てくるのかしら」
社員「そういやあの事務って普段何やってんだ? なんかオバケの偉さの研究とかなんとか」
マルレ「黙っておればさっきからなんともまだるっこしい話じゃのう」 キスリ「やはりこれは、ここの社員たちは…もしや私はおそろしく 興味深い空間に居るのでは…?」 ロザリ「この階も違うのぉ?ここにもこの騒ぎの張本人は居ないのかしら」
油男「いやーようこそ王女様!わしが、黒幕商事の会長ですわ! 王女様も最初から名乗ってくださりゃ手荒な真似はしなかったんです」 ロザリ「あんたでしょ!勇者とオバケの癒着なんて噂流してるのは!」 会長「なんのことですかな?そんなことより王女様!じつは ビジネスのご相談をしたくてね!というのは、王女様にうちの 名誉顧問になってほしいんですわ!まさかお断りしませんですな?」 マルレ「断る」 会長「気の強いお嬢さんで…双方にとって利益をもたらす提案なんですがね」 マルレ「それはそっちの都合ではないか。わらわの知ったことか」 会長「王女様、落ち着いて考えてほしいですな。例の勇者とオバケの噂で ワシらの情報操作の威力はお分かりのはず。いいんですかな? 王女様はほれ、そこのガキと毎晩いちゃついてるなんて そんな噂���世界に流れても」 マルレ「……………」 会長「何しろそのガキと王女様が一緒に歩いてるのを町の奴らも見てます からなあ、グハハハ!実はデキてて、道端や森の中でまー あれこれしてる、なんて…みんな大喜びで信じるでしょうな」 スタン「うぐぐ、なんという邪悪さだ」 キスリ「噂という見えないものを材料に脅しをかける。 スタンくんには絶対思いつけない策略だ」 スタン「なんだとこら!」 マルレ「ええいうるさい。静かにしておれ……… よい。噂とやら、好きに流せ。わらわはお前の策略には乗らぬ!」 会長「王女様は事態を把握されておられないようですな 明日の朝には王女様のお腹にそのガキの子がいることになってますよ ひどいねえまったく。グハハハ!」 マルレ「うるさい、かまわぬ!なぜならわらわとちかみは わらわとちかみは… 本当に愛し合っておるからじゃ!そうじゃろう?ちかみ!」 『そうです』 ロザリ(バカ!あれは王女様のハッタリよ!もっとうまくやりなさい!) 会長「やれやれ、王女様そう力まずともただの冗談ですよ。しかしまあ 子供にはかなわんですなあ。話し合いもできんのだからな 不本意ですがね。力づくでわしのものになってもらいましょうか」 会長魔王「グハハ、わしこそ会長魔王!情報と経済で世界を征服する男!」 キスリ「派手な煙が出た割に姿は変わっていないが。 スタン君、彼は本当に魔王なのかね?」 スタン「所詮は田舎学者、わからんか。今この男の魔力はこの建物を 粉みじんに出来るほど高まっているぞ」 マルレ「わらわは知っておる。この手の男は自慢話が大好きで しかも話がくどいのだ」 会長魔王「失礼な方だな王女様は!いいか、 他の低能魔王たちとわしは頭の出来が違うのだ! まずは勇者の悪い噂を徹底的に流すことで 勇者どもをこの世界の嫌われものにする この時に王女の口から勇者を非難する言葉でも 出りゃそりゃもう、効果は抜群だな 勇者たちが迫害の末に消えたら今度は他の魔王どもの 居場所を噂として流すのだよ。魔王どもはお互いに 戦うしかない。なんせ勇者が居ないからな! で、共倒れだ。残るのはわしひとり!」 ロザリ「なんだかまとめて聞くと結構強引な計画よね」 マルレ「うむ、自分で言うほど賢くはないな。まあよい。 会長魔王よ、正体を明かしたからはわらわの部下と 戦う気なのだろうな」 会長魔王「わしは会長ですからな。最終決済までは出てこないものですよ こういう些細な実務は部下たちに任せることにしてましてね …やつらと戦闘して王女様以外とっとと死んでもらえ。グハハ」
会長魔王「つ、つよい…特にその妙な影…只者じゃないな! どうだいうちの会社で仕事してみないか?給料弾むよ?」 スタン「このボンクラ経営者が!おまえなどとは格が違うのだ! 邪悪と混沌!恐怖と闇!それらすべてを統べるもの! 余こそ!あの!魔王スタ…」 ロザリ「ええいふざけるんじゃないわよ!勇者の誇りにかけて! 正義のため!平和のため!」 スタン「おい、バカ女!余の決め文句を…」 ロザリ「全ての人々の幸福のため!光の剣が悪を断つ!この!勇者ロザ…」 マルレ「ひかえよ会長魔王とやら!卑劣で下品なその本性! わらわはしかと見届けた!」 ロザリ「お、王女様…いいとこなのに…」 マルレ「この王子マルレインが居る限りお前のような者は許さぬぞ! ゆけい!我がしもべども!」 ロザ&スタ「………………」 会長魔王「説教はさておき、ただいまをもってワシは会長を 辞任しましたのでね。何の責任もありませんな では失礼!私は急いで帰らずの奈落に行かねば!」 ロザリ「う、うそ…逃げちゃったわよ…?」 スタン「追うぞ子分!余の魔力を持ったまま逃げる気だ! やつの行先など魔王マップでばっちりよ!」 マルレ「うむ。ここで逃がしたままではわらわの冒険も盛り上がらぬ ちかみ、追うぞ。」 ロザリ「そうね、勇者の悪い噂は元から断たなきゃどうにもならないわ みんな考えてることはバラバラだけど意見は一致してるようね」 キスリ「いや私はどうでもいいのだが…って誰も聞いてないし」
ー帰らずの奈落ー
スタン「うむ、ここだな間違いない。匂いがプンプンするぞ」 ロザリ「目の前にいても気付かなかったのに」 スタン「うぐぐ、それは子分が居眠りをしていたから悪いのだ! この子分子分子分!」 マルレ「わらわの召使いをいじめるのは許さぬぞ!」 キスリ「しかし妙だとは思わないかい。会長魔王はいかにも派手好きの 都市型魔王だと思ったけど、いざとなるとこんなところに 閉じこもるとはね…やはり魔王とはそういうものなのかな?」 スタン「たしかにな。余もこういう洞窟を見ると何となく 落ち着くようではある」 ロザリ「ふん!魔王の習性なんてどうでもいいわ!あたしは勇者! 魔王がどこに居ようと追い詰めて倒すのみ!」 スタン「思考停止してる女はこれだ。脳味噌に行くはずの栄養が全部 腹のあたりに行ったのだろうな。クク」 ロザリ「あたしのウエストを…あたしのウエストをバカにするなーっ!」 マルレ「しずまれしずまれ!ここは魔王の巣窟じゃ!バカ者ども! もっと真剣にやるのじゃ!」
ロザリ「ここがあんたの墓場よ!覚悟なさい!」 元会長「おいネーチャン、あんた耳悪いんか?わしはもう会長を辞任しとる 元・会長魔王だっちゅーの。ま、そんなことはいいけどな ワシは逃げたんじゃなくここにあんたらを誘い込んだんですわ」 スタン「うおおお!この説教オヤジが!聞いてるだけでムカつくぞ! とっとと勝負しろ!コラ!」 キスリ「キミの悪はあくまでも陰険で戦略的… しかしそれだけでは天下は取れないよ ストレートな恐怖を呼び起こせぬものに世界を統べることは できないのだ。そうだろ、スタン君」 スタン「…キスリング、おまえ…ただの変人かと思っていたが そうだ、余はそれを言いたかった。 わかったか!まいったかコラ!」 マルレ「さあ、最後の詰めじゃ。みなのもの、しっかりやれ! ちかみ、わらわは見ておるぞ。みごとわらわの代わりに 魔王を討ち取ってみせい!」
スタン「おおお、魔力が戻ってきた。これでまた1歩大魔王に近づいたな 元々・会長魔王とやら!ふははは!どうだ!これが真の魔王の力だ」 元々「おお、ワシは今まで何を…ここはいったい…どこ…?」 ロザリ「あんた、それでごまかすってのは流石に…」 元々「この手は通��しない?やっぱり?冗談よ冗談 いやしかし、本当に不思議だな。わしは長年金もうけだけ考えて 地道に悪い商売をしてたはずだが…なぜか突然、勇者どもの うわさを流そうなどと考え付いたんだ。一文にもならないのに、な 世界征服なんてワシの柄じゃない。そう思っていたのになぜか… 何かに導かれるように…そういえばなぜこんな行き止まりの 洞窟に来ちまったのか…逃げ場のない場所なのに… わからん、わからんのだよ。本当にな」 キスリ「元の元・会長魔王さん、あなた、下水道の奥に心当たりは?」 元々「おお、うん、あるぞ。 なぜだか知らんが下水道の奥に何かがある気がしていた 世界征服に近づいたら、そこへ…そこへ行くことを 確かにワシは夢見ていた…」 スタン「夢見ていただと。そんな軟弱なことだからろくな悪事も出来ぬのだ 子分!3匹もの魔王を倒したにもかかわらず余の魔力はまだ 完全ではない!つまりまだまだ偽魔王が居るのだ。 にもかかわらず、そいつらがどこにいるのか具体的な情報は さっぱりではないか!それがどういうことかわかるか? なぜ奴らは隠れている?お前の考えを言ってみろ!」 『王女が怖いから』 スタン「ええいこのグズ子分め!この魔王スタン様を恐れているからだ! 全く頭の悪い子分だ!この子分子分子分!」 マルレ「こら!自称魔王!わらわの召使いをいじめるでない! しかし魔王マップを見る限りまだまだ魔王は居るようじゃ なんとか探し出して退治せねばな。おお、楽しみじゃのう」 キスリ「では元魔王に聞いてみましょう。何か知っていることはないかね?」 元々「あ、ああ…他の魔王か、提供できる情報はある ここから少し歩いたところに不思議な像がある そこに横断トンネルがあるという」 マルレ「横断トンネル?なんじゃそれは」 元々「ほう、王家の方もご存じないとは… そこは世界の外からこの世界にいる魔王に物資・人員を 補給する通路だそうだ。わしは使ったことがないが」 キスリ「そこで待っていれば他の魔王が現れる可能性があるということだね それほど重要な通路なら入るために特別な道具が必要なのでは?」 元々「グハハ!さすがは学者先生だけあるな。そうだ、そしてわしはそれを 持っている。差し上げてもよろしいのですがね。王女様 ただしワシをここから無事に返していただければ!」 マルレ「よかろう、ロザリーもそれでよいな?」 ロザリ「ええ。正直、倒した後の魔王と言うのは普通のオバケより 無力に見えますわ。切り捨てるのも哀れのような…」 元々「ねーちゃん同情してるんかいな。同情よりも愛がほしいわー ねーちゃんワシとラブラブにならへん?」 ロザリ「前言撤回。やっぱり斬り捨てる方が良いと思うわ。ええ!」 『ミニチュアの像を手に入れた!』 ロザリ「あら、もう一つ何か落としたわよ?」 元々「ああ、それですかいな。要らんので別に差し上げますよ 悪ゴコロ着いた時から知らんうちに持ってたもんで 何に使うものやらワシにもさっぱりなんですわ」 『ラッパ状の金属管を手に入れた!』
ロザリ「これでよかったのかしら」 マルレ「あやつはもうただの子悪党じゃ。 わらわの関わるようなものではない さてちかみ。わらわの靴がまた汚れたぞ。お前のせいじゃ! よってわらわの靴を磨く栄誉を与える!はようせい!」 『はい……』 マルレ「というのは冗談じゃ。お前もお前なりによう戦ったの では町へ帰ろう。ちかみ。わらわは空腹であるぞ」
―ボスボス雪原―
ロザリ「うううさっむーい!ねえ何にもないわよ!物資何てないし!」 マルレ「確かにここに居ても仕方がないようじゃな。わらわも寒いぞ では帰るぞちかみ。宿についたらわらわの為に紅茶を入れるのじゃ」 スタン「いや、まて。出てこい、そこの奴!」 ???「ハーッハハハハハハハハ!言われなくても出て行ってやるぜ!オラ ハッハー!オラオラ!俺様こそ超絶格闘技をひっさげ 魔界からやってきた恐怖の男!肉弾死刑執行人!野生の風雲児! ビッグブル・ザ・ブルーザー!ただいま入場です!オラオラオラ!」 スタン「おいなんだお前は。余は筋肉には興味はない。さっさと去れ!」 ???「そうはいかねえぜオラ!オレの異名は巨牛魔王! 張ってた甲斐があったぜ!お前も魔王なら俺と勝負しな!」 ロザリ「げげっ!ほんとに魔王が居たのね!ってスタン!あんたどうしたの」 スタン「…なんでもないぞ」 ロザリ「そっかーあんたが魔王と気付いてくれるやつがいたんで感激 してるのね。うんうん…」 スタン「だまれだまれ!顔面メッキ女め!余の魔力完全復活にまた1歩 近づいたことを祝っていただけだ!さあこの筋肉ダルマをブチ倒せ」 巨牛「おーっとちょっとまってもらうぜ!」 スタン「とっとっと。ええい!ヒトが付き合いよく乗ってやれば! 一体何なのだ貴様は!」 巨牛「いざコブシを交わすとなれば男にはソレに相応しい戦場があるのさ! 魔王の勝負に相応しい熱い戦場、ウィルクの森の大樹のウロに ダッシュだぜ!オレ様のスピードについてこれるかオラ!」 キスリ「大樹のウロだって。やっぱり魔王は地下とか迷宮とかがいいのかね」 スタン「どいつもこいつもなめた態度とりくさって! ニセ魔王ってのはみんなああか!?」
スタン「むっなんだ?キサマは?」 ???「ここより先は世界ではないことを君たちに警告しよう 役者があまり舞台裏の深くまで踏み込むことは支配者を怒らせる」 ロザリ「?…何を言っているの?」 スタン「んだとぉ。支配者とは余のことだろうが」 ???「ハハハハ…そこの影、魔王の力を集めたいのだろう ならば目の前に現れる魔王だけを相手にせいぜい戦いに励むことだ やつを倒してもさらに、お前たちの世界に目覚めつつある 新たな魔王もいる。それに挑み続けることが今の君��ちの 役割だ。下手に深みを目指すなど、考えないことだ…」 ロザリ「言いたいことだけ言って逃げる気?名乗りなさい!」 ???「そうだな、では幻影魔王、とでも名乗っておくか」
声大おじ「おお!カールステン君!あれはどうだったかね! そうか、それもしかたない。何しろモノがこーんな ちっちゃな歯車だからなぁ。それが次元を超える爆発で 広く飛び散ってしまったんだからたまらない あ、いや、あの爆発は失敗というわけではないのだぞ アンティクル君。爆発したからには力源を引き出すことには 成功しているわけで…ともかく実験はあのかわいい部品たちが ないことには再開できん。 また作るには歳月がかかりすぎるからな」
ー大樹のウロー
ロザリ「ここなのよね、あの勝負好きな巨牛魔王とかいうのが 行くって言ってたのは」 キスリ「魔王の口上なんだからちゃんと聞いておくべきだよロザリー君 さあ行こう、オバケちゃんの群がる冒険の園へ」 スタン「聞いてられるかそんなもの。もし聞き間違いだったらお前の 頭上に不幸の翼が下りるからな。覚悟しとくがいいぞエセ学者」
巨牛「やっときやがったなオラ!たっぷり待たせやがってよ! オレ様のイライラパワーも加えて脳天から落として その腐った頭を粉末にしてやるぜオラ!」 ロザリ「あ、ほんとにここにいた」 キスリ「盛り上がってるところたいへんに済まないんだが、 巨牛魔王、キミは…ずーっとトンネルの奥に居たのかね? 世界征服もせずに?」 巨牛「そうだぜ?世界征服なんぞどうでもいい。強いヤツと闘うだけだぜ!」 マルレ「なるほど、魔王にも色々いるようじゃの では王女であるこのわらわが特別に審判を務めてやろう」 巨牛「行くぜオラ―!」
スタン「フハ、フハハハハハハ!魔力の戻る感覚はいいものだ! さあ子分、余は絶好調だ!次の魔王をブチ倒しに行くぞ!」 元巨牛「おお、ガンガン行くのか!あんたすげえぜ!」 スタン「おまえまだいたのか?魔力さえ取り戻せば用はない あっち行け、しっしっ!」 ロザリ「勝手に決めてんじゃないわよ! 大体あんた一人で勝ったわけでもないのに…」 元巨牛「いや、兄貴は強かったぜ。ベストバウトだったぜ、今の試合は! アニキたちなら、オレのこの燃え滾る格闘スピリットを! いつもバーニングな感じにしてくれる気がするぜ! そうだろ?スタンの兄貴!」 スタン「え?余のことか?え? いやちがうぞきっと。元巨牛魔王とやら お前は何かカンチガイをしておるぞ?」 元巨牛「水臭いぜ兄貴!そんな呼び方!オレのことはビッグブルと 呼び捨てでいいぜ!」 マルレ「ずいぶんとなつかれたようじゃな。良かったではないか自称魔王 かわいがってやるがよい」 ビッグ「以前は俺も最強の座を手に入れたら下水道の奥を目指せなんて 宿命の予備声が聞こえたこともあったけどさ。今分かったぜ! そこを目指すのはオレじゃなくアニキたちだぜブラザー!」 キスリ「む?また下水道の奥か。なぜだ?下水道の奥になにかあるのかね?」 ビッグ「オレにも意味は分からねえが俺的な解釈だとそこには 力の王者のみに手が届くグレートなマッスルなパラダイスがある! さあ!オレも今日からあんたらのファミリーに加えてもらうぜ!」 『元魔王ビッグブルが仲間になった!』 スタン「う、う、うむ。ま、まあよかろう…あー…」 ビッグ「おおっとそうだ。アニキに負けた以上この輝く大魔王世界ベルト はアニキの手に移らなきゃーな」 スタン「ぬぬ、いらん、いらんぞ!そんなわけのわからんベルトなぞ!」 ビッグ「と思ったらさっきの戦いでベルトが壊れちまってるぜ! じゃあ代わりにこれはどうだ?戦いの道に目覚めた時から持ってた」 『手回しハンドルを手に入れた!』 ロザリ「クックック。こまってやんの。��たしは賛成よ バカ魔王が困るのは大歓迎だしね!」 ビッグ「あ、これは姐さんっすか!よろしくっす!」 ロザリ「誰が姐さんよ!」 マルレ「そしてわらわがリーダーじゃ。たしか世俗では組長とか言ったかの」 キスリ「そして私は一行の知恵袋、学者のキスリングだよ」 ビッグ「あ、先生っすね!うっす!で、こいつは?」 『王女の召使いです』 ビッグ「あ?なんだそりゃ?オレ様をなめんじゃねえぜ?」 マルレ「ちかみはあれじゃ、なんじゃろう?」 スタン「要するに…ヤツはおまえの同輩だ」 ビッグ「なんだ、駆け出しっすね。よろしく頼むぜ。え、コラ!」
ーマドリルー
リンダ「ちかみさん!会いに来てくれたんですね…うれしい… 町の人たちもだんだん私の詩を聞いてくれるようになりました これもみんなコーチのおかげです」 マルレ「ちかみ、この女は誰じゃ」 ロザリ「最近町で評判のリンダちゃんってあなたなのね?」 リンダ「はい!よろしくおねがいしまーす!」 マルレ「リンダ?歌うたいか。わらわの召使いにみだりに近づくでない。」 リンダ「えー。誰なんですか。この偉そうな女は」 ロザリ「り、リンダちゃん。この方はマルレイン王女様よ」 リンダ「あー、そうなんですか」 マルレ「リンダとやら、もう一度言おう。わらわの召使いと みだらに話をすることは許さぬ」 リンダ「召使いって、コーチのこと?ひどい!ひどいじゃないですか!」 『それがいいんだ…』 リンダ「もーコーチったら、ほんとにおちゃめなんだからっ! とにかく王女だからってコーチ、ちかみさんのような優しい人を… 召使い扱いする権利なんてないと思います!」 マルレ「知ったような口を。お前がちかみの何を知っておるというのじゃ」 リンダ「王女様こそこの人の何を知ってるって言うんですかー?」 マルレ「わらわはこやつの家で母上に料理を教わったのだぞ。ふふん」 リンダ「そうなんですか。私の詩は実はコーチが作詞してくれたんですよ」 マルレ「しかたない。これだけは言いたくなかったが… こやつは初対面でわらわに抱き着いてきたのじゃ だから、こやつはわらわの召使いなのじゃ」 リンダ「えーどうしてそうなるんですか? 私そのくらいの浮気なら許しちゃいますよ とにかくもう決まってるんです。私にとってちかみさんは 運命の人なんです。召使いだとか言ってる傲慢な誰かさんとは 愛が!愛が違うんです!」 マルレ「………………」 ロザリ「あ、あ、あの、王女様?」 マルレ「…わらわはもう知らん。ちかみのバカ者!ちかみの浮気者!」
ロザリ「ちかみくん、王女様がね、この部屋に閉じこもったきりなのよ うん、もう、分かってるんでしょ?そういう、そういうことなのよ 苦しいわよね…おうじょさまもちかみくんも… あたしもババーンとヘンリーとの3人で勇者大学の モンスター退治の実習の時に…戦士、魔法使いだった二人に いっぺんに愛されてしまって…あたしはどちらの愛にも 答えることができずに…ああ!」 『ロザリーさん?』 ロザリ「はっ!と、ということでちかみくんも後悔しない選択をするのよ 結局、決断するのはキミなんだから」
マルレ「くどいわロザリー!わらわはここから出んぞ!」 『マルレイン?』 マルレ「ちかみ?ちかみなのか?さきほどはすまなんだ でも、今はまだ会いたくないのじゃ… 今、またおぬしの顔を見ると何を言うかわからぬのでな… わらわらしくないか?わがままで、乱暴で、あのリンダとかいう 娘とは違ってかわいくなくて…威張り散らしてばかりで 戦うこともできず、迷惑をかけてばかりで… すまぬ、今はそっとしておいてほしいのじゃ。 わらわは今、自分で自分がよくわからぬ この気持ちが何なのか確かめたいのじゃ。明日にはまたいつもの ように堂々としていられるよう頑張るから 今日はそっとしておいてくれ…」
親衛隊「せーのっ!りんだちゃーん!L・O・V・E、ラブリー・リンダ! ん~ん、最高最強魔王!」 ロザリ「え?」 スタン「今何か言わなかったか? おい!豚のひづめ女。お前は聞いたようだな? おいそこの一般民間人リンダファンとやら。もう一度申してみよ」 親衛隊「 L・O・V・E、ラブリー・リンダ!ん~ん 絶対最高スーパーアイドル!最高最強、天使の魔王!」 キスリ「言っちゃいましたね。はっきりと言い切っちゃいましたよ」 ロザリ「でもあんなかわいい子が?」 スタン「おい…バクハツ博士とコウモリ女。お前たちはまったく どういう頭をしておるのだ?あんな小娘が魔王のはずが ないであろうが。つまらぬことでめそめそ泣くような そんな魔王があるか。いくらインチキ魔王にもほどがあるぞ 魔王とは気高く、美しく、そして強いものなのだ!」 キスリ「確かに、言われてみればあの子が魔王とは考えにくいですな」 スタン「ったくリンダの奴め。魔王でもないくせにツノなどはやしおって ……………………………………うらやましい」 ロザリ「ん?何か言った?」 スタン「余もツノがほしいといったのだ!そうすれば余の人間どもも 申し越し余を恐れるはずなのだ。」 ロザリ「くっくっく。あんたにツノをつけたら牛よ、牛 ぷっくくく。牛みたいな魔王…ダサーイ」 スタン「黙れ!割れナベ閉じブタ女が! しかしリンダの奴…人間どもに夢を与えてどうする… 暗闇を与えんでどうする。どん底に突き落とさんでどうする! おい子分、リンダのところに行け。萌えというほど… いやいや、イヤというほど鍛えてくれるわ!」
リンダ「あ、ちかみさん!外の様子ご覧になりました? やっと町の人たちが私のファンになってくれました!」 ロザリ「あの、リンダちゃん…町の人たちなんだか様子が変なんだけど…」 リンダ「これでいいんです!もうみんな洗脳されちゃって幸せですから!」 キスリ「もしかしてキミは…」 リンダ「ええ!私魔王です。アイドル魔王って名乗ろうかなって! あれ、なんで驚いた顔をされてるんです?私言いませんでした?」 スタン「冗談もほどほどにしろ。お前のようなグズ女が魔王だと?」 リンダ「冗談じゃないですよお。魔力がなくて私困ってたんですけど ちかみさんのおかげで立派な魔王になれました! ね?コーチ、私と一緒に世界征服ツアーに出ましょう!」 『それはできない』 リンダ「そ、そんな…私コーチと戦うなんてできません!」 ロザリ「あっちょっとリンダちゃん町の人の洗脳を…あー逃げちゃった…」 スタン「おい子分、行くぞ、あやつを退治しに。しっかりせんか!」 ロザリ「ま、でも彼女の為にも倒してあげるべきなのよ。」 キスリ「魔王であるということは、いわば一つの幻想に無意識に憑依され 形而上的に拘束された状態と考えられる。その枠組みを破壊 することはいわば対象者を疎外から二十二開放する崇高な 行為であると言え、つまり」 ロザリ「だから、行きましょ。ね?」
ーボスボス雪原ー
ロザリ「ん、ここのようね。リンダちゃんが逃げ込んだのは」 ビッグ「ところで姐さん、組長はどうしたんです?」 ロザリ「部屋でふて寝されてるはずよ」 スタン「ということは心置きなく余が指導者だな!」
ー閉ざされた洞窟ー
リンダ「あ…コーチ…ここまで来たんですか。私を追って…」 ロザリ「リンダちゃん、どうもあなたを憎む気にはなれないけど これは、仕方ないことなのよ。あなたを倒さなくては 町の人の洗脳は解けないみたいだし…覚悟して頂戴!」 スタン「お前も魔王だろう。魔王なら、力でほしいものをもぎ取って見せろ この余から世界征服の権利を奪い取ってみるがよい そうすればお前のことを認めてやろう!」 リンダ「コ、コーチ!わかりました!これは弟子と師匠が 通らなくてはいけない儀式なんですね! リンダ、いきます!師匠を超えて見せます!」 キスリ「なにかが違う気がするが…」 スタン「胸を貸してやろう!アイドル魔王!」
リンダ「負けちゃった…でも気持ちはさわやかです 下水道の億にある伝説のスタジアムでコンサートするという夢は 消えちゃったけど…いいのよこれでいいのよリンダ、悔いはないわ」 キスリ「伝説のスタジアム?なぜ魔王によってこうも言ってることが バラバラなのか…」 リンダ「負けちゃった以上はこれも差し上げます。これが伝説の スタジアムへのカギなんだと思ってずっと持ってたけど �� もう、いらないから…」 『やたら長いネジを手に入れた!すると…』 スタン「お?おおおお?なんだー!?なんだ今のは何が光ったんだ!」 マルレ「みなのもの、ご苦労であった リンダとやら、わらわは… わらわは、ちかみを召使いにするのをやめる 理由は言えぬが、そうすることにした」 リンダ「そう…ということは、これから対等のライバルですね! でも負けませんよ!」 マルレ「ふふ、わらわも負けぬぞ」 リンダ「王女様はかれのどこがすきなんですか?」 マルレ「そ、それはじゃな…」 リンダ「私は、彼の目がすきなんです。 とても大きくて、きれいな黄色をしているわ」 ロザリ「…………え?」 マルレ「リンダ、彼の目は黄色ではないぞ」 リンダ「え?いえ、本体の方ですよ。やだな。」 キスリ「……………………… リンダ君、一つ聞いていいかね?君の言う本体とは 具体的にどのようなものなのだ?」 リンダ「え?え?え?だって、ちかみさんって素敵な影の方が本体でしょ? なんか変な人形をくっつけてるけど、あれって世を忍ぶための カムフラージュですよね? 時々口を利くみたいなんだけど、もー、ダサい声なの あれはなんとかしてほしいなー」 キスリ「なるほど、リンダ君も魔界のものだからそういう風に見えるのか」 スタン「言っておくがリンダとやら、余の名前はスタンというのだ 名前を間違えるとはけしからん」 リンダ「スタン…ああ、ステキな名前ね…コーチ!私もうおそばから 離れません!」 スタン「…え?あ、いや…うむ…まあ、よかろう…」 『元魔王リンダが仲間になった』
スタン「曲がりなりにも戦力がまた増えた。ぼちぼち、1つの大きな懸念を 解決するべき時かもしれんな」 キスリ「分かるよスタン君。君が言うのは下水道のことだね?」 スタン「きっと我々もまだ知らぬ更なる奥の領域があるに違いない」 リンダ「でもスタン様、真剣にその変な人形どうにかした方がいいですよ」 マルレ「…」 ロザリ「あの、えーと…ぷっくくくくくくく!ちかみ君、ごめんなさい!」 キスリ「少年の純情、ここに破れたり。ああ、青春の光と影」 マルレ「ばかばかしい!帰るぞ!ちかみは一生わらわの召使いじゃ!」
ーマドリルー
夢見少女「王女様、一度も姿を見せ��いまま王都に帰ったんですって… そういえば宮殿のある王都ってどこにあるんだったかしら… 全然思い出せない…へんね…」
マギ―「よっ久しぶりだね!あたいは元気だよ!なんてったって、 マドリルの美少女アイドルだからね!」 リンダ「ふふ、子供はかわいいですねー。アイドルですって でも顔はまあまあいいから大きくなったら私みたいな 本物のアイドルになれるかも」 マギ―「おばさん、だれ?」 ロザリ「あー、このお姉さんがリンダちゃんよ。有名なアイドルなのよ」 マギー「ふーん、あんたがねー。やっと最近目が出てきたところだったのに 落ちるのははやかったねー」 リンダ「…………………………… 天誅です!このクソナマイキなガキを血祭りにあげるです!」 マギー「あたい知ってるよ!こういうのヒステリーっていうんだよね!」 リンダ「もう許せないです!日陰に逆さにぶら下げて干物にしてやるです!」 ロザリ「マギー!リンダ!…いいかげんにしなさい! 全くつまんないことで喧嘩なんてするんじゃないの! アイドルだ美少女ギャングだっていうくらいなら もうちょっと自分のイメージを大事にしなさい!」
スタン「この町の歯車を止めてみるというのも面白そうだな」 歯車マニア「そんなの研究所の人でもない限り無理だよ! なにより私が許さないぞ!」 スタン「なるほど、研究所にスイッチがあるのだな?くっくっくっく こまれ、こまってしまえ!」 ジェームス「おおおお!悪いですぞ~悪そうですぞ~」 スタン「おお!そうであろう! わっるっそ~。きょ~あく~。こわ~。 っという目に合わせてやるのだ!」
スタン「ちょうどいい具合に研究員の姿が見えんな。都合がよいわ」 スタン「小娘、なぜここにおる?痛い思いをしたくなかったら そこをどくがよいぞ」 マギー「歯車博士から連絡を受けて裏口を通って駆け付けたのよ どうやら間に合ったようね。あんたみたいなうすっぺらな オバケの自由にはさせないわ。 新入りさん、あなたがいながらどうして?」 スタン「子分に何ができるというのだ。余の力を侮るでないぞ」 マギー「そっちこそ、マダラネコ団の力を甘く見てもらっては困るわ」 スタン「マダラネコ団か。所詮子供のお遊びにすぎん」 ディル「やっぱり悪いヤツだったんだな?おいらたちに勝てると思うなよ?」 トビー「まだらねこだんはまどりるでさいきょうでしゅ」 マギー「さあ、かかってきなさいよ!」 スタン「ほほう、威勢だけはよいな。勇者ホプキンスを思わせるぞ もっとも、他の勇者たちも同じように威勢だけは良かったがな さあ、いくぞ、覚悟は良いか?」 トビー「あわわわわわわ」 スタン「うーむ、どうもいかんな。威力がまだ弱いようだ お前たちを殺すほどには力が回復しておらんようだな まあよい。勇者ですらないお前たちを殺しても面白くもなんとも ないからな。それとも死んでみたいのかな?」 マギー「くっ」 スタン「さあこれはどうだ?」 マギー「きゃああああああ」 スタン「子どもはママのところに帰ればよいのだ。くっくっくっく」 ???「待て!」 スタン「誰だ?」 ロバート「マドリル、ヒゲモグラ団団長、ロバート・クリストフ三世だ」 マギー「ロバート!」 スタン「くっくっくっく、ほほえましい光景じゃないか。ふはははは」 マギー「ロバート、どうして…」 ロバート「話はあと、今はコイツを倒して研究所を守るんだ」
ジェームスが爆弾つかってちかみに当たって終わり
トビー「めがさめたでしゅか、からだにいたいところとかないでしゅか?」 スタン「まったくジェームスの馬鹿めが」 トビー「すたんをたすけるためめちゃめちゃにあやまったでしゅ どげざしていたでしゅ。だからこうしてたすかってるでしゅ」 スタン「他の奴らは?」 トビー「おもてのようすをみにいってるでしゅ はなしをきいたゆうしゃがすぐにここにかけつけるみたいでしゅ はやくにげるでしゅ」 スタン「ヘタレ勇者が少々来たところでどうとでもしてやるわ 余もなめられたものだ。しかし実際仕方がないかもしれん それで、お前はなぜ我らを助けるのだ?」 トビー「しんいりをたすけるのでしゅ。まだらねこだんはだんいんに やさしいのでしゅ。それにまぎーねえちゃんもろばーとにいちゃん もなんだかきげんがよかったでしゅ」 スタン「そうか、ちかみよ、歩けるか?歩けるならここから出るのだ それがお前の為らしいからな。早くいくのだ」
ー下水道ー
ロザリ「またまたこんなとこに入り込むことに。思えばここで スタンに気付いちゃったのがヘッポコ魔王街道の始まりなのよねー」 キスリ「運命のいたずらというやつかね。私は運命というものを 定量化し測定できる可能性について以前から考えているのだがね」 マルレ「しかし奇妙な場所も色々見てきてなれたが都会の地下というのは 独特の空気があってあまり気分がよくないのう」 キスリ「あそこだ、さらに奥があるようだぞ」
スタン「ここは行き止まりか。ここが偽魔王どもの集合場所だというのか?」 ロザリ「目立つ魔法陣が一つあるけど。なにかすごい秘密が…」 スタン「どこかで見たような図柄だ。急に期待感が薄まってきたぞ」 ロザリ「あんた魔王だ魔王だ言ってて魔法陣の特性もわかんないの? はずかしー」 スタン「貴様知らんのかこのレプリカ勇者め。魔法陣はもともと小物の 魔族や人間が使うものだ。足りん力を補うためにな」 ロザリ「まともに悪事はたらこ―と思えば失敗するドジがよく 言えたもんよねー。この偽悪者」 スタン「ギ!…ギ!ギ!…ギアクシャだとおお! お、おのれキサマ!魔王捕まえて偽悪者とはこれ以上ない メガトン級の侮辱の言葉を~!」 ロザリ「あーらいいこと聞いた!もー何度でも行ってやるわよ この偽悪者偽悪者偽悪者!」 スタン「くわああぁぁぁ!ゆるっせーん! 余の真の姿を見る恐怖の中で痛めつけてやろうと思っていたが もー我慢ならん!この場で無条件降伏に追い込んでくれる!」 ロザリ「あーらやってみなさいよ。あのミョーな執事でも呼んで ジェームスゥ、お願い守って~みたいな」 スタン「むわああああぁぁぁぁっ!」 マルレ「おいちかみ、これはとめたほうがいいのではないか?」 ビッグ「そうっすねぇ。お前の母ちゃんデベソとか言い出さないうちに…」 リンダ「なんでー?おもしろいじゃなーい!」 キスリ「あの、君たち、いいからちょっと黙っててくれないかな」 ロザリ「え?あ、すいません あ、で、なにかわかりましたか?」 キスリ「ていうか、魔法陣の端っこに我々の言葉で説明があったよ この魔法陣は上に乗ったものの特性をさらに伸ばすものらしい 偉大なる先人たちが悠久の時の中積み上げてきたこぼれる宝石の ように見事な言語学知識の助けを得て私が考えるに 乗ったやつの一番目立ってキャラが立ってる部分を もっと大きくしてあげるぜっ…ということなんじゃないかなぁ」 リンダ「そのまんまじゃない」 ロザリ「魔王たちが来るべき場所にそんなものがあるってことは ここでもっと強くなって大魔王にでもなれってこと?」 スタン「大魔王は余だっつーに。分からん女め。 うむ、しかしれはなかなかの代物だな! ま、最強の自負心もつよい余はそんなものに頼って 強さをもらう気などないが…こんなとこにどうぞお使いください とばかりに設置されているものを無視するのもまぁ スケールが小さいというものだ。うむ ではこの魔法陣、使ってやるとするか!わはははは!」 ロザリ「どうやって?あんたちかみ君の影にくっついてる身で どうやってそこに乗るっての?」 スタン「………………あああああっ!」 ロザリ「ぷぷぷー!ざーんねんだったわね!まあいいわよね? 度量の広い大魔王サマなんでしょー?」 リンダ「やーんスタン様、負けないで―!」 スタン「しかしやってみなければ!やってみなければわからんではないか! 子分ちかみ!余と共にあの上に乗って見ろ! いまやれ!すぐやれ!命令だー!」 ロザリ「なーんだ、やっぱり乗りたくてしょうがなかったんじゃない。 だっさー。」 ビッグ「うおお!光った!」 スタン「おいちかみ!何かお前の体が光ったぞ!何が!」
ロザリ「?…えーと?何をしてたんだったからしら?」 『ふー、僕は大丈夫みたいです』 キスリ「だからここにあるのは乗ったものの特性を伸ばす力のある 魔法陣なんだよ」 ロザリ「ああ、そうでしたね…これって人間が乗っても効果ないんですかね」 『あれ?きこえなかったかな?』 キスリ「効果があるかもしれんが…魔王のための設備のようだからね…」 ロザリ「ま、とにかくここに魔王が居ないとなれば長居は無用ね 出発しなくちゃ。あの大魔王の影を求めて!」 『ねえちょっと!何の冗談?』 ロザリ「さて、偽魔王にされてたあんたたちはこれからどうするの?」 ビッグ「とりあえず自分の温泉宿に戻るっす」 リンダ「あたしはどーしよかなー?」 ビッグ「勇者ロザリーさんには偽魔王になってたところを助けてもらって しかもオバケの俺たちをこうして見逃してくれるなんて 感謝するっす!」 ロザリ「あなたたちは無害なオバケのようだから。 真の勇者とはそういうものよ」 『みなさーん、どうしたんですかー?』 ロザリ「あら、この音は?王女様ですか?」 マルレ「うむ、わらわのオルゴールが鳴り出したようじゃ 勝手にどうしたというのじゃろう。大事な品なのだから 壊したら大変じゃ」 ロザリ「じゃ、行くとしましょう」 『ちょ、ちょっと、冗談ですよねー?』
ーボクと魔王が町から消えたー
幻影「礼の魔法陣が発動したようだが…様子が妙だな。 戦いが始まるようでもない。サーカス魔王が使ったのではないのか?」
町人「スタンっつー恐怖の大魔王が現れてこの地上をねらってるらしい」 夢見少女「大勇者ロザリー様ってステキなんでしょうね 強くて、美しくて、凛々しくて… 大魔王スタンを倒すためにすぐに行ってしまったらしいわ きっと華麗な技で恐ろしい大魔王を亡き者にしてくれるわ」 少女の声(リンダ)「みなさん、聞いてください…私の歌、聞いてください… あ、そこの方、どうか…そうですか… 誰か聞いてください…私の歌���…聞いてください…」 役員「また新しい分類表が来てますよ!大魔王と大勇者の分類があるやつ!」
ーテネル実家ー 祖母「そういえばおじいさん、ちかみはずいぶんと長く戻ってきませんねぇ」 祖父「ハハハ、おばあさんはまたまた誰ですか、そのちかみって」 ーテネルー
ジュリア「あー真面目で正直で影が薄くて結婚したら尻に敷けそうで 冷たいご飯を出しても黙って食べてくれそうで…あたしが 服を衝動買いしても何も言えないような男の子、いないかしら」
主任「新しく来ていた分類表のチェックは終わったかい?」 事務「はい。今度来た分類表もいつも通り完璧ね!あとはここから大魔王の 名が勇者様の力で早く消えますように…」
ートリステー
門の声「誰です?ここを訪れる人がいるなんて」 『あ、話ができる人がいた』 門の声「あなたは…そうですか。あなたも私たちと同じなのですね 今、門を開けましょう」
KT「私はK・T。これからもそこで私を呼べば
あなたにはいつでも門を開きましょう」 KT「はじめまして。私がK・Tです。ここはトリステ。 正確にはトリステに当たる場所です。こんなに間を置かずに2人も 新しい人が訪ねてくるなんて珍しいこともあるものだわ ここにいるのは世の中に気付いてもらえなくなった者たち 見捨てられた者たち 世の中は私たちが目の前にいても、そこに何もいないように ふるまうのです。人も、オバケも それを見せられるのが嫌でこの門を人に閉ざしていますが あなたのような人なら話は別です。」
ぶてぃっく「入ってこないでよ!ここにあるドレスもコートも全部 私のものなんだから!そうよ!誰にも気づかれないってことは 何してもいいってことなんだもの!この中のものは みんな私がもらっていくわ!いくら着飾ったって みんな見てくれないけどね!あははははは!」
建物「これを見る者はここを勇者協同組合として反応せよ」
宿屋主人「なんだい泊まるってのかい?こんなところでなぁ 変な奴もいたもんだね…まぁいいや。入っておいで…」
承認「なんだ新顔かい。オレもなぁ、真面目に商売やってたのに人には 影が薄い影が薄いって言われてなぁ。だもんで商売にならなくて こんなんなっちまうのと店たたむのとどっちが先かって感じだったな」
建物「プレートに掘られた家主の名が乱暴に削られている かろうじてホプキンスの家と読める」
紳士「こんにちは。君は世界からはじき出されたのかね? 自分の意志で出て来たのかね?しかし私は不思議なのだが 自然な世界に本当に内と外などあるのだろうか。 自然が、何を基準にそれを分けるのだ? 私は、内と外とを区切った何者かが居ると思うのだ 都合のよいように世界を分けた何者かが居るとね」
ブロック「おっ、おおっ?おお、おお!なんだいボウズ。お前さんかい オレだよ。サーカス団長のブロック様だ。せっかく俺が前に 忠告してやったってのに結局こうなっちまったか おめー自分が今どうなっちまってるかわかってるか? おめーたまに周りのみんなに無視されるようになって 焦ってるんだろ?…なに、たまにじゃなくずっと? そりゃ俺より自体は深刻だな。でもまあ心配すんな 多分何とかなる。オレが何とかなってるんだからな 今のオメーとオレは影の薄さが来るところまできて 誰も気に留めなくなってるのさそこらの石っころみたいにな。 だから今のオメーは世の中の連中の目には見えてても いねーも同然なのさ。こりゃあ誰の意地悪ってんでもなく 世の中がそうできてるって感じなのかなぁ 世界のルールから仲間外れって感じか このトリステの連中も、おめーとご同様さ ずっとこの状態なんだそうだ。なぜだか世の中から 気付かれなくても同じ有様の奴同士ならこうして 顔合せて話もできるんだな、これが。人に限らず 場所なんかにもそれはあってよ。オレも昔、初めて こうなった時は大パニックで今まで見えもしなかった 場所に何も考えずに入り込んじゃ、いろんなものを見たけどな でも今はオレの症状は軽いようでな。たまに団員どもに 無視されたりご同類の姿が見えたりするくらいだった あの時見た場所ももう来れないと思ったんだが おめーさんたちが横断トンネルやらを開けてくれたおかげでな こうしてまた来れたわけだ ああ、元に戻る方法が知りたいって? あせらねぇでも今しか出来ねぇこと、見えねぇものもあるし もーちょっと楽しんでからでもとも思うが まあ初めてじゃな無理もねえか 元に戻る方法は、分かっちまえば簡単さ まああくまで俺が戻れた方法だがな つまりは、世間で自分を主張しまくるのさ あちこちの連中の話なんかに割り込んであーだこーだ 言いたいこと言うんだ。大声でな。聞こえてなくても気にすんな 何度も何度も繰り返せばあるとき突然おめーが 何か壁を抜けたような感覚がするだろう そうなったらまたオレ様のところに来い。 オレ様が特別な術をかけてやる。そしたらまずは元通りだ」
瞳大娘「キミ、知ってる?この町にはずっとね、面白い子が居るのよ あたしたちよりずっと深みにはまってるくせに もどりたいって、いつまでも泣いてるの。 一つのところを動けないのに、世の中のことが見えるみたい その子にそっくりの子が一人いて、そのそっくりっ子の見るものが 見えたんだって。でも今はそれが見えなくなって、泣いてるの」
オバケ「オバケとはいったいなんじゃろう。 人にコーゲキするからオバケなのじゃろうか じゃあ私は一体なんじゃろうか。ブツブツ…」
建物「ここには何もない…暗号文もない、交換してほしいものもない 他に行ってくれ…」
建物「扉の隅に小さく落書きされている。ポラック様のイケズ」
少女?「ちかみ…ちかみはどこ?ちかみはどこにいったの?」 『きみはだれ?』 少女?「ちかみはどこ?わたしはここ…本当はここに居るの…」
ーリシェロー
『ボクなんかは?』『分かれる2人にならないといいね』 『聞いてますよおー』『どうせ教えてくれないじゃん。Rの意味』 『船を出しそうな人は見当たらないけど?』『オバケとかでないわけ?』 『スタンとロザリーさんが戦ったって…』『戦いはどうなったの?ケガは?』 『聞かせてよ』『もう知ってるからいいけどさ』 『あなたも勇者だったはずでは?』『世界の終わりだなんて、そんな…』 『そういうレベルの問題ですかっ!』『選挙がヤバいって?』 『あまり無茶はしないほうが…』『みんな本気でスタンを怖がってる…』 『本気でやりあったんだ、あの二人…』『その二人、どこ行ったんだろう…』
ーマドリルー
『あはは、スタンにそんな力が?』『って、誰か返事してよー』 『その分類表、ちょっと見せてよ』『目の前の僕に何か言うことないの?』 『なんでみんなそんなにスタンが怖いの?』『キミにもボクが見えない?』 『誰もいないって、僕の立場は…』『高級っぽいお客って、だれ?』 『なんなんだ、この親子は』『恐怖の大魔王スタン…』 『いっつも何か考えてるね』『考えてるのって、食い逃げの方法とか?』 『ロザリーさん、どこ行ったって?』『な、亡き者って、そんな…』 『ええっスタンが!?』『恐怖の大魔王って。アハハ、冗談でしょ』 『そんなに?で、スタンってどこ?』『いやそりゃ笑ってやるだろうけど…』 『え?ロザリーさん、大勇者?』『旅立ったって、どこに?』
ベーロン「どうだ、準備はいいかい、マルレイン? もうすぐ大勇者ロザリーが最後の力を手に入れて 動き出すころだろう。そろそろ私たちも行って また大勇者の前に現れようじゃないか。 大勇者はお前のために傷つきながら必死で戦うぞ どうだい、今度の冒険は楽しいだろう?」 マルレイン「………………」 ベーロン「ん?どうしたね、私のマルレイン?」 マルレイン「…楽しくないわ」 ベーロン「ん?なんだって?」 マルレイン「楽しくないわ …私は、もっと、ずっと楽しい冒険を知ってるはずなの。 どんなだったか、どうしても思い出せないんだけど… とっても、楽しい… 私を助けるのも、強いだけの勇者なんかじゃなくて… あの時は…あの冒険の時は…! あの冒険がまたしたいわ!なんとかならないの…?」 ベーロン「…だめだ。それだけは、ダメなんだ。マルレイン…」 マルレイン「………………… …せめて、どんなだったか思い出せればな… あの冒険、あの冒険って… 私、何がそんなに楽しかったんだろう… はっきりしたこと、何も思い出せないのに…」 ベーロン「…変だ。あの少年が幸いにも世界から消え すべては正しい方向に戻ったはずなのに… この子の中にはまだ、あの短い冒険の記憶が残っている… もしやあの少年、まだ完全に消えたわけではないのか? それとも、他に何か…?」
―テネル―
『逃げちゃんじゃないの?』『パンの受け取りはアニーの仕事なんだ…』
『はぁ、それはいかにもだね』『そんなもの置いてあったっけ』 『なんかスゴい武器できるの?』『あれ、来たんじゃないの?』 『たいていお使いは前から僕が…』『アニーがマジメに家の手伝いするの?』 『ボクも売り上げに貢献したと思うけど?』『やっぱり商人だねぇ』 『や、それはですね…』『仲間だったわけじゃないけど…』 『スタンがそんなことするもんか…』『壊された村なんてホントにあるの?』 『ボクのこと描いてないのがナゾだって前…』『なにが完璧だってーの!』
ートリステー
ブロック「うん、おしおし、もうぼちぼち戻れそうだな 頑張ったじゃねえか。よし、じゃ、いっちょオレ様が 元に戻してやるか。いいか…? いや、ちょいと待てよ、ボウズ。お前が元に戻るとこをさ この町の連中に見せてやってくんねえか 世の中から外れちまってもまた戻れるんだってこと���さ ここの連中に教えてやりたいのさ いいよな?ちょいと目に付く奴だけでも集めてくるぜ」
ブロック「よしじゃあ、始めるぜ。みんなもよく見ててくれ このボウズ見てやる気を出して呉れりゃ俺はうれしいぜ いいかボウズ、気を静かに保て。最初に話をしたいヤツの 顔でも思い浮かべてろ。行くぞ さあ、すんだぜ。どうだボウズ」 スタン「ふははははは!よくぞここまでたどり着いたな勇者ロザリーよ! ついに伝説の勇者の剣までも手に入れたか! こうなったからは余もあらん限りの力をもって 貴様と雌雄を決するのが礼儀と…」 『なにやってんの?』 スタン「礼儀と…って、おろっ? ………………… おう、なんだ。子分ちかみではないか お前今までどこに行っていた。今ちょうどそこの忌々しい勇者を …って、おろっ?」 ブロック「ハハハハ!影の大将が出てくるんならもうオッケーみたいだな!」 『勇者ってどこに?』 スタン「むむ、勇者は?あの逆さワイングラス女は? 確かに余は悪の大魔王として愚民どもの上に君臨し 最後の敵主たる奴と決着をつけるところだったはずだが… どういうことかわからんが、まあよかろう よしでは改めていくか子分ちかみよ。余の魔力奪回の旅を!」 ブロック「やっぱり影の大将に見えてるのはオレとボウズだけみたいだな」 まあお前の気にすることではねえよ。あとでボウズにゆっくり…」 ???「…こんなところにいたか、探したぞ」 幻影魔王「こんな世界の隅に潜んでいたとは思いもしなかったよ サー���ス魔王」 スタン「キサマ、余を無視するとは…なに?サーカス魔王だと…?」 幻影魔王「こんなにも自分の分類に反した行動を続けて 一体どうする気なのだ?サーカス魔王よ? お前は下水道の億でそこの大魔王を復活させ あの勇者と戦わせることでシナリオを修正するのが 新しい役割だったはずだ。 その役割を放り出すだけでなく、その少年が世界の外に消え かえってシナリオ習性が楽になったと思えば 今度はそれを助けてしまう。世界の皆がその少年の ことを忘れすべてが以前の形に戻ろうとしているのだ そもそも初めからお前は…選ばれた勇者に渡されるはずの 魔王マップをあちこちにバラまき、部下のサーカス団員も いつの間にかただの人間ばかりだ。我々はあの男の与える 役割で成り立つ。そんなお前が役割を軽々しく考えてよいのかな」 ブロック「お前こそな、幻影魔王くんよ。 お前のやってることも分類に外れてることが多いみたいだぜ」 スタン「だーっ!余を無視するなと言ってるだろがっ! だいたいこのオヤジ、貴様が魔王とは!」 ブロック「まあ待てや大将。幻影魔王も聞けや。 いっとくが、そもそもオレ様はもう魔王じゃねえんだぜ 下水道のネズミのオバケに魔力を丸ごとくれてやっちまった そのネズミもとっくにぶったおされて、魔力は今じゃ どっかの影魔王ん中。でネズミ君はうちの唯一のオバケ団員だ」 分類から外れてみるなんざ、やって見りゃ簡単なもんだったぜ。 お仲間もいたしな。 幻影魔王「あの男に知れたらただではすまんと思うがね…」 ブロック「その点、お前は上手く立ち回ってると思うぜ でも多分大丈夫さ。アイツはずっと例のお嬢さんにしか 目が向いてねえからな。もう、ずーっとじゃねえか」 幻影魔王「まぁ、無事を祈るよ。いちおうね」 スタン「よぉし!長話は終わったか?ならば自称・幻影魔王! ここであったからには余に負けて魔力を返してもらうぞ!覚悟は… って、コラアアァァァァッ!」 ブロック「ハハハハ!逃げられたな、大将! さぁて、あいつに知れたからにゃ俺も消えるとするか 影魔王さんもボウズもオレ様に聞きたいことがあると思うけどよ 今喋るわけにはいかないんでな。わりぃな。じゃっ!」 スタン「奴も逃げるぞ!怪しい!追え子分!知ってることを全部吐かせろ! どうした子分、なにをしている!追えと言っておろーがーッ! てえぇぇいっ!いってしまったではないか! ふん。お前の考えてることなぞ簡単にわかるぞ。 あの小ウルサい女勇者だの学者だの元魔王だのと 早く合流したいというのだろうが 余にすればあんな連中、ただ面倒なだけだが… まあ…好きにしろ。ったく」 『ちかみの手の中に友情の証が現れた!』
ロザリ「…………… あら! あらあらあら! あらあらあらあらあらあらあらあらあら! ちかみくんじゃないのー! もー、勝手にどこ行ってたの!?…ってあれ? あたしがどっかいってたんだっけ? 確かあたしたち討伐の旅を…?あ、そうだ!大魔王スタン! …は…そこにいるわよねぇ ??????????????」 『まあ、いいじゃないですか。どうでも』 ロザリ「あ?え、ええ。まぁそうね。よく見れば他のみんなも居ないのね バラバラになっちゃったの?なんでかしら? じゃあとにかくキスリングさんは探しましょ。後の2人は… やっぱさがすの?」
ビッグ「おっとちかみにスタンのアニキ、それにロザリーの姐さんじゃ ねえっすかい。探したっスよ。いやあ、いつの間にかどっかに 消えちゃうんすから何事かと思ったっすよ」 スタン「それはお互い様だ」 ビッグ「とにかく見つかってよかったっす!」
キスリ「やあやあみなさん。どうしてたか知らないがまた会えてなにより ロザリー君もスタン君もおそろいで…あれ? 大魔王がどうこう言って世の中が荒れてきていたような気もするが まあ気のせいだろう。ではみなさん、行くとしようか」 ロザリ「えーっ、でもやっぱりそんな気してたわよね?ね?」 スタン「うむ、そんな気がしていたよな?な?」
リンダ「きゃーん!スタン様!どこに行ってたのー?リンダ寂しかったー!」 キスリ「どこ行ってたのって、これは誰が姿をくらましたとか そういう問題じゃない気がするね。」 ロザリ「それはそうと、あんたはどうよ、リンダ!?」 リンダ「えー、なにがー?」 ロザリ「さっきの今まで世界が変な感じしてなかった? 大魔王が台頭してた感じとか 勇者が一人しかいなくてそれがあたしで…」 リンダ「………んー、リンダよくわかんなーい。何言ってんのー?」 ロザリ「こいつは………もういいわよっ」
ロザリ「よし、あとは王女様だけね 早く見つけなきゃ!あのおつきのおじさんに はぐれたなんてことが知れたら…!」 スタン「コトが知れたら、お前が刑場で泣きまくるザマが見られるかもな それはそれで…」 キスリ「まだ探してないのはテネル方面なのだろう? そこまでの道できっと見つかるさ」
ベーロン「あの虫のすかん少年…どうやらもどったか、この世界に マルレイン…思い出したな…あの冒険を… 思い出すとたん姿を消すとは…マルレイン… やはりあの子はしょせんは… どこへ行った…?またあの少年の家か…? 向かったのがまたあそこなら…もうただではおかん…」
―テネル―
キスリ「ここまで来たが、どうだろう、ちかみ君の家に立ち寄るというのは 王女様は前にあの家は居心地がいいと言っていたからね もしかしると、またあちらにいるかもしれない」 スタン「何でもいいから早くしろ。余はさらなる力を求め あの幻影魔王とかいうスカした男を探さなければならんのだからな」 ロザリ「ハカセに賛成だわ。あたしもいるならそっちだと思う 一人で帰っちゃってたらコトだけど…」 『帰るって、どこへ?』 ロザリ「え?どこへって…そりゃ、おしろとか… どこにあるのかって聞かれるとこまっちゃうけど…」 スタン「ふん。勇者の分際で王城の場所も知らんとはなんとも 切ない話だな!職業上問題があるのではないかぁ?わはは!」 ロザリ「う、うるっさいわね!じゃ、あんたはどうなのよ! 王城の一つも襲えなきゃ魔王とは言えないんじゃないの!」 スタン「王城の場所など時代によって変わるものよ 余は完全に覚醒したときの白の場所さえわかればそれでよいのだ」 ロザリ「あーもうっ!ああ言えばこう言う!」
悲鳴「きゃああああぁぁぁぁっ!」 「うわあああぁぁぁぁっ!」 キスリ「ん?何か聞こえたかな?」 スタン「あのマヌケな野太い声は…ちかみ、お前のおやじだぞ」 ロザリ「なんですって!急いで行ってみましょう!ちかみくん!」
ロザリ「な…これは…ベーロンさん!?…王女様!いったいなにを…!」 マルレ「ちかみ…く、苦し…助…」 スタン「なにやら面白いことがおこっているようだな」 父「おお!ちかみ!ロザリーさんたちもいいところに!突然あの男が! とか慌てつつこの息詰まる展開に期待感も隠せない私」 母「何言ってるのこんな時に!みなさん、なんとかしてください王女様が!」 ベーロン「来たか。とんだタイミングで現れるものだ。 これも勇者を勇者タラ占める分類の力かな?面倒なことだ」 スタン「?…キサマ何を言って…」 マルレ「ぐっ……く…………………」 ビッグ「ああなんだかとっても苦しそうっす!」 リンダ「やーん!女の子にあんなことするなんてなんて邪悪な奴なの!」 『マルレインを離せ!』 キスリ「王女のおつきであるあなたが何を血迷ってこんなことを! 自分の主君を殺める気ですか!」 ベーロン「そんな心配は無用だよ。この娘は主君ではないし 普通の人間のように死にもしない…」 ロザリ「?…この男、一体何を…?とにかく…!」 ベーロン「私はここにマルレインと話をしに来ているのだ。 ジャマはしないでもらおうか」 マルレ「ベ、ベーロン…グッ…お前……………」 ベーロン「フーッ…マルレイン 私は今までお前に何でもしてきたではないか こうしてきれいに作った世界であらゆる役を与えて 遊ばせてやった。なのにどうしてこうも私に答えないのか…」 マルレ「…………………?」 スタン「…まて、キサマ、今何と言った?」 キスリ「作った、世界…?」 ベーロン「ふん、そうだ。その通りだよ外野ども。 ここは私が分類の力で他の領域から切り離して作った小世界だ そしてお前たちも分類の力によってこの小世界に 住まわされている者たちだ。私の与える役割を ただ演じてもらうためにな。すべては我が最愛の娘マルレインに 退屈な永い生を楽しく遊ばせるため… そのはずだった… そもそも分類表とは何か? 勇者とは、魔王とは、オバケとは…? お前たちは考えてもみなかったろう あるわけがない。そんな賢しいことを考えぬ 素朴な住民として分類されていたのだから だがどうしたわけか永い時間の中で時にそこから 外れたものが現れることがある。その一人が今ここ 私の目の前で…」 マルレ「うぅ…ちかみ…助…ちかみ…ちかみ…」 『ベーロン!彼女を離せ!』 ベーロン「………………… やはりどんなに強く分類しても所詮は人形だということか この世界で消えた私の娘の代わりにはなれないということか! ならば、こんなもの!」
リンダ「え……に、人形!?」 スタン「どういうことだ!?いつの間にかニセモノとすり替えていたのか?」 ベーロン「そうではない お前たちの前に現れ、ともに旅していたのはずっと このマルレインだ。…おどろいたかね。」 キスリ「確か、消えた娘の代わり、とか言ったね」 ベーロン「その通りだ。この世界に遊ぶマルレインが何らかの事故で 姿を消したのはもうどれほど前なのか この世界で何が起こってもあの子は死ぬことはない 私の世界にあってはあの子は絶対的に守られているからな にもかかわらずこの世界をいくら探してもあの子は 見つからなかった。必ず、どこかにいるはずなのに それで、私は…………………… ちかみ!我が世界から半ば以上外れた異分子よ! すべてお前のようなもののせいだ! お前のようなはみ出し者が居なければ すべては静かに流れるものを! お前のようなものは捨て置かない!残った魔王に 最強の分類をかけ差し向けてやるぞ! 我が世界図書館がもたらす力でな!そして… そして新しいマルレインとまた安楽に過ごすのだ… 残った魔王とはお前のことではないぞゴーマの転生 はみ出し者にあてられて堕落したお前の何が魔王か 魔王は邪悪で強くなければならない! そしてマルレインの望むものに飲み倒されるのだ!」
ジェームス「…あー、どうされました、みなさん?ホウ酸食べた ゴキブリみたいにどん底な顔して?」 スタン「……………………………」 ロザリ「……ハァ。まったく、なんでこんなことに… なんなのよ、いったいあれは……………」 キスリ「…あー、まぁ、とにかく。さっきの出来事はとても奇妙で 異様だったが、同時に私たちにとって非常に重要なことだ 事態を理解しきってはいないがとりあえず気は落ち着けた」
ビッグ「あのベーロンてヤツ、なんだか腹が立つっスよ! あの悪逆っぷりと理不尽っぷりは元魔王の俺から見ても ちょっと並じゃないっすよ!」 リンダ「そうよそうよ!それにスタン様を差し置いてあの1段上の レベルに居るんだぜー的態度が激ムカつくわ!」
キスリ「ロザリー君はまだ少々混乱気味のようだが 起こったことは起こったこととして受け止め 自らの道について考察を勧めなければ」 スタン「おう、いつになくシリアスだな。似合わんぞエセ学者」 キスリ「茶化さないでもらおうか、スタン君。」
キスリ「さて、何について考えようか」 『マルレインのこと』 キスリ「うむ、彼女はあの通り人形だった。これまでの印象が どうであろうとこれは事実だろうね。ベーロンが、その力で 動かしていたということか。分類の力と言っていたね。 我々すべてにも作用しているそうだが… 分類の力については納得できることも多い。合理的に考えれば おかしなこの世界のありよう。でも今までの我々はそれに なんの疑問も持ったことがなかった 我々がふとそれを自覚することが増えてきたのは、ちかみくん キミに関わってからだと考えられる さて、ともあれ王女だが、あの人形の彼女 ベーロンが言うにはその真実は彼の娘だったようだが ベーロンは人形の娘を本人の代わりに自由に振舞わせていたという ただ、遊ばせるために その娘本人はかつてこの世界で行方不明 人形を遊ばせるために手間をかける、とは妙な話だが ベーロンも精神的に追い詰められた感じだったからね それにしても、どんな術であれ人形の振る舞いがああも 人間的になるものだろうか? 術を超えた何かがあるような気がするよ」
『ベーロンのこと』 キスリ「ベーロンはこの世界の創造主を自称していたね もっと広い世界から分類の力で切り離してこの世界を作ったのだと しかしその自分の作った世界で彼は本物の王女様を… 彼の娘、ということだが…見失ってしまった いつのことだかは知らないが… その娘が探しても見つからなかったとき、彼が身代わりの 人形を作ったというのは一体なぜだろう 自分の失敗を自分からごまかすためだろうか? 自分すらもだますことで? そして今や彼の中ではすべての責めは人形の娘さんに変えて 彼の偽りの日常を壊してしまった、君に向けられているわけだ 今の彼は、君、正確に言うなら、君のように分類の力が 作用しないものさえ居なければ元の日常が戻ってくると 思い込んでいるよ」
『この世界のこと』 キスリ「ベーロンが言うにはこの世界はもともと彼が自分の娘のために 作ったということだね。ベーロンの言う分類の力でくくられた この世界は、その住人、つまり私達やオバケに対しても 同じ分類で役割を課していた。 その伝でいうなら、私たちはみんな役者で… 私なら学者の役、キミならおそらくはごく平凡な少年の役… そしてスタン君たちは魔王と言う敵役でロザリー君たちは それを退治して見せてくれる正義の勇者の役、というわけだ 本物の王女様が遊びまわるための、刺激的だけど安全な 冒険世界だったというわけだね。 安全なはずだったんだ、本当は この世界の魔王と勇者の歴史がそのまま、彼が娘を遊ばせた 歴史であるとするなら…この親子がどれほどの時を 生きているのか、想像することもできないがね… ベーロンの言う通り、この世界が分類の力で切り離して 作られた箱庭なら…この世界の分類を取り払った先には 私たちの知らない広い世界が広がっているということだね」
ロザリ「…どういうこと?この世界が、あんな男の手で作られたもの? 分類表で人に役柄を与えて、あたしたちは完全にその役に なりきって…何も知らずにあいつの手のひらで踊ってたってわけ? そういえば、考えたらおかしなことばかりだったわよね 王女様にはわずかな兵士とベーロンしかいなくて…」 スタン「なんだこいつ、ブツブツと。まだ混乱しておるではないか」 ロザリ「王女様が世界全体に守られた主役中の主役だっていうんなら それも納得よね。…なのに… なのに、その主役が人形だったですって!? なぜ?なぜなのよ!あの子が人形!? そんなはずない、そんなはずないわ! あんなにナマイキで、あんなに高飛車で あんなに…かわいかったのに! あんなに楽しそうに騒いだり、ヤキモチ焼いたりしてたのに! そんなはずないわ! なんなの、これは…なんなのよ…」 ロザリ「………………… 大丈夫よ、ちかみ君。大丈夫… ごめんね、ちかみ君、あたしが取り乱しちゃって。 ちかみ君の受けたショックに比べれば…」
キスリ「さて、ともあれこれからどうするか、だが… ベーロンは最強魔王を作ってちかみくん 君に差し向ける、と言っていた」 スタン「なにがだっ!なぁーにが最強だ! 最強は余に決まっておろうがぁ!」 キスリ「まぁ、真の最強の座はともかく その新たな魔王が完成してキミにけしかけられるのを待つのは 危険があると思うのだよ。いっそ新魔王の完成前に こちらから出向いて脅威を除くのが良いと思う。 少なくとも待ちの戦法よりは有利に戦えると思うんだ この世界でのはみ出し者というなら、今や勇者ロザリー君も 元魔王たちも、そして私も同様だ」 スタン「小難しくいっているが、つまりは我々から先手を取って 攻め込んでしまおうというのだな」 キスリ「そう、新魔王の居場所をその完成より早く見つけられるか 正直分からないがね」 スタン「いいではないか。どのみち、あのベーロンのナマイキな 態度にはハラワタ煮えくり返ってたところだ 行って、ヤツのその最後の望みをはり倒して 大いにヘコませてやろうではないか!」 キスリ「いいねいいね。ナイスな態度だと思うよスタン君。 ロザリー君の意見は、どうだろうね?」
ロザリ「そうね。賛成するわ。 その魔王の力がどれほどのものか分からないし それに、あたしは勇者だもの。分類なんかに関係なく! 魔王は自ら挑んで、倒さなきゃね!」 スタン「余とて、分類などとは関係なく常に大魔王だ! その新たな魔王も見事倒し、力を取り戻してくれるわ! 忌々しい勇者たるお前もその時に打ち破ってくれよう!」 ロザリ「決まりね!あたしは問題の新しい魔王やベーロンは あのトリステの町の向こう側にいるんじゃないかと思うの あの向こうには、誰も行ったことがないのでしょう?」 スタン「よかろう 敵を探すというのならば、とにかく行ってみるしかないな」 ロザリ「それにしても…あのマルレイン王女が人形だったというなら この世界で消えたという本物のマルレイン王女は どこにいるのかしら…」
ー好感度イベント?ー マルレイン ジェームス「ふふふ…不幸な悪の子分殿はよく眠っておるようですな ふふふ、はははは…魔王に使える悪の執事とは世を忍ぶ 仮の姿…私の正体はな、な、なんと! 人々の枕元に強制的に愛を届ける 火と読んで闇のサンタさん! ではさるお方の思念と共に小荷物を一つ。 確かにお届けいたしますぞ…」 少女の声「ちかみ…ちかみ… …何をしておるのじゃ。 早くわらわを助けにこぬか。まったく、頼りにならぬ召使いじゃ ちかみ…わらわは信じておるぞ… ちかみ…ちかみ…」 『枕元に綺麗にたたまれた服が置いてある』 『ちかみは再開の服を手に入れた!』
ートリステー
『K・Tさーん!』 ロザリ「え?なに?中に誰かいるの?」 KT「…………ちかみさんですか。どうぞお入りください」 ロザリ「も、門が勝手に開いた…」
オルゴールが鳴り出す
少女?「ちかみ…ちかみはどこ?ちかみはどこに行ったの…?」 『ボクはここだよ』 少女?「ちかみはどこ?私はここ…本当はここに居るの…」 『君はそこから出られないの?』 少女?「出られないわ…怖いもの…出ていくと… みんな私に気付かないから…気付いてくれないから…ちかみ…」 『出ておいでよ…』 少女?「ちかみ…ちかみはどこ?ちかみはどこにいったの?」
スタン「おい子分、止まれ。何かいるぞ」 ロザリ「な、なによ。何かまちぶせ?」 幻影魔王「気付かれていたか。以前お前たちの前に 現れた時も同じことをしたからな。 私に課された分類の範囲でお前たちに忠告するには こんな方法しかないものでね」 スタン「性懲りもなくまた現れたか。しかも同じシチュエーションで」 幻影魔王「本来私はこの先の歯車タワーで お前たちを迎え撃つことになっている。 そのタワーに入るには深き墓穴で鍵を得る必要がある。 この旅急ぐならばせいぜい無駄なく歩くことだ」 ロザリ「なんでわざわざそんなことを?ヨユーかましてるつもり? あんたがそこのスタンに変わるっていう魔王なの?」 幻影魔王「お互いにとって幸いなことに、ちがう。 だが私を通過せねば、お前の言う新たな大魔王候補に 会うことはできんぞ。お前たちの意図は察しがついている その新たな大魔王が力をふるう前に 見つけ出して倒そうというのだろう。 私がこんなことを教えるのは、私が知りたいことを知る その方法としてだ。別に余裕を見せているのではない 話はそんなところだ。長話が過ぎるとベーロンの警戒を誘う。 タワーに来るならばまた会おう」 キスリ「待ちたまえ!君が知りたいこと、というのは…? ああ、消えてしまった」 スタン「妙な奴だな。誘導されてるようで余は面白くないぞ」 リンダ「えーでもなんかちょっとカッコいいかも―。なんなの、あの人?」 ビッグ「かっこいいっつーのはつまりは強いことっすよ!パワーっすよ!」 スタン「そうだ!あんなのかっこよくなどないわ!」 リンダ「あーん、スタン様、ヤキモチはみっともないわ。」
声大おじ「見ていろ図書館の奥に引きこもった愚かな保守主義者ども! この世の可能性の広大なるをとことん示しまくってくれるわ!」
歯車の塔
スタン「この奥にあのいけすかん幻影ナンチャラがいるのだな。 おい子分、例のものを使ってみろ」 ロザリ「これでもう開いたの?」 スタン「おい子分!お前の持ち物の中、何か光ってるぞ!なんだ!?」 『友情の証しが光に包まれレベルアップした!』 スタン「なにが起こったのだ?初めから、いきなり現れるわ光るわで なんとも妙なシロモノだったが」
幻影魔王「……………来たか。事は予定通り進んでいるな。 ではひとつ私とも戦って貰おうか。予定通りにな」 スタン「何を予定通り予定通りとやかましい! 余はあくまで余の予定で動いているのだ!お前らの予定など粉砕だ」 幻影魔王「勘違いするな。自分だけの予定で動くのは私も同じだよ 終わってみればわかることだ 言っておくが、お前たちの攻撃など私には通用しない 私のこの姿は幻…始めようか。楽しみだよ…ふふふ… さあ、お前たちに極上の敗北を与えよう」
スタン「よぉし!力が!余に力が戻るぞ! 無敵の力の復活にまた1歩近づいた!」 幻影魔王「よし…!これで…!」 ロザリ「!…消えた?幻影魔王が?」 スタン「ふん、放っておけ、無粋な重箱のスミ勇者 情けない敗者にはヨユー見せて高笑いするのが強者というものだ なあ子分!わはははは!」 リンダ「きゃーっ!スタン様、すてきー!」 ビッグ「さすがっすね!アニキ!」 リンダ「幻影魔王サマも負け際がシブいわー!」 スタン「んだとぉ!」
ーボクと魔王と夜とカゲー
スタン「ここが余に対抗する魔王を作るとかベーロンが嘘ぶいてた場所か? そんなものは余の圧倒的な力でだな」 キスリ「いや、ちょっと待ちたまえよスタン君。 ここに魔王が待ち構えているとはどうも思えないのだが」 ロザリ「のどかねぇ~、なんか。 あたしたちの知らないところにこんな村があったのね…」 ビッグ「熱い闘争のニオイがしないっすよ」 謎の声「魔王出なくなったお前にはこのわずかなニオイは感じられんか 巨牛魔王であった者よ」 スタン「何ヤツだ!?」 元幻影「私だよ。魔王と勇者。そして分類を外す者の一行よ」 スタン「むっ、お前は!」 ロザリ「あんた!さっきの今でまたやろうっての?」 元幻影「そうではないよ勇者。提案があってきた 私はそこの魔王にも女勇者にも興味はない。 ちかみよ。私はお前の力がなんであるか知りたい この世界のすべてに力を及ぼしているベーロン そのベーロンをああまで怒らせ焦らせるお前の力とは何なのか それを知るためには、お前に世界図書館に辿り着いて��らわねば この私も知らぬ場所だが… この村にはベーロン肝いりの魔王候補がいる。 お前たちには分が悪い だが私は自分のためにその勝算を引き上げる手伝いをしてやろう」 リンダ「えーと、それってつまりはさぁ…」 キスリ「仲間に入れてほしいなぁーってことかね?」 元幻影「………………………」 スタン「そういうことならまあよかろう! 以後、余の命令に服従するようにな!」 元幻影「別に服従などする気はないが… 改めて名乗っておくが私は本当の名をエプロスという 覚えておいてもらおう」 『元魔王エプロスが仲間になった!』 リンダ「おぼえておくわ!エプロス様ね!これから仲間ね!うれしー! あたしリンダ!よろしくねー!」 エプロ「あ、ああ。知っている。元アイドル魔王の…」 リンダ「あーん!そんなダサい呼び方禁止ぃ! スタン様からあたしを奪う勇気があるならリンダと呼び捨てて 強引にグリグリモグモグしてみて!」 エプロ「な、なにを…君の言っていることはなんかメチャクチャだぞ?」 ロザリ「なんか、周りが元・魔王ばっかで… いいの?ほんとにこれでいいの?ロザリー?」 キスリ「いいのだよロザリー君。ハハハハハ」
ーハイランドー
空仰男「このところ夜が待ち遠しい。夜の夢が。その恍惚の夢の中にあると 私を苦悩させる様々なものが体から離れていくような…」 リンダ「あらステキね。リンダの歌でもそうなれるわよ。聞いてみる?」
宿主人「え?お泊りですか?こんなところにね、ずいぶん久しぶりだ じゃあすいません、いろいろと準備しますんで 少ししたらまたいらしてくださいな。では…」
村人「こんなところに人が来るとはね。悪いことは言わないから 日暮れ前には帰った方がいいよ」 スタン「日が暮れると何があるというのだ?奥地の庶民よ」 村人「いや、なにかあるような…ないような… オレが神経質なだけなのかなぁ?」
疲おじ「なぜかもう気が沈んで何をするにも全然テンションが上がらない なんか一家でそんな感じなんだ。最近」 ビッグ「戦いで身体を厚くしていないからっす! いっちょ今からでもオレとやるっすか?」 エプロ「君は彼を殺す気か?」 痩村人「おや、外からの人か。この村の人ってさ、なんかミョーに 夜を怖がってる感じがするんだよな 私なんかは健康で規則正しい生活贈ってるから夜なんかは グースカピーだからわからんけどさ みんなはなんかゲッソリ元気なくてさ 外から来たあなたたちから見てそのへんどう?」 キスリ「キミも目の下にクマがあるぞ。何が健康なんだね。」
墓『だれかの身内のものとして反応せよ』 墓『だれかのご先祖のものとして反応せよ』 墓『特に名を秘す…って、誰も入ってないしぃ』 墓「夜を支配する力に抗った愚か者」
困ってる困ってる困ってるよ「あ、ちょっとそこに立たないでくれます? 手元が影になっちゃうんですよね。 図々しいこと言ってごめんなさいね ダメだやっぱり見えないや あの奥のところなんだろうな くそっ暗くて見えないよ…」 困ってる困ってる困ってるよはちかみの持っているペンライトに目を付けた 困ってる困ってる困ってるよ「ペンライトじゃないですか これで奥を照らせますね。強力な光だぁ あれま、こりゃあすごいや。て、あった! ありました。この影に引っかかってて… よいしょっと…これこれ。大事なんだこれ 他にも何か…よっと、かなり重いぞ… ああ!昔うちに居候していた勇者が 持っていた古い武器ですよ…」 『ちかみはこわれた銃を手に入れた!』 助かった助かった助かったよ「え?大事なものは何かって?いやぁ それは言えませんよふふふ」
宿主人「こちらに滞在されるなら夜は用心してくださいね。 いや…いろいろ。いえ、泥棒とかじゃなくてね」
スタン「おい、起きろ子分 何かこの村は妙だ。ちょっと様子を見に行くぞ」
店主人「あーダメだ。体は疲れているのになぜだかまったく寝れん」
ロザリ「?…ちょっとみんな、このシミ」 スタン「ツボに閉じ込められて以来余がなぜか縁遠くなっていたものだな」 キスリ「なぜいきなりこんなところに?」 ビッグ「こりゃあ…赤黒いっすよ、べっとりっすよ」 リンダ「やーん、きもちわるーい」 スタン「ぶるなっ!」
不気味な声「キャアアアアアアアアア!」 エプロ「聞いたか?」 スタン「どこからだ?」 ロザリ「この屋敷…昼にこんなところあった?」 スタン「なにかあるとすればやはりこういう場所か? あからさまに誘っている感じではないか」 エプロ「私でも見破れぬ幻術か。これはベーロンが直接手を貸して…」 スタン「夜にだけ道が開かれるというのは何か誘い込まれている気もするが」 ロザリ「警戒してかからないと何が起こるかわからないわよ」 謎の声「そんな必要はない。ここに誘ったのは私だが 私は礼節を知る魔王だ。不意打ちのような真似はせんよ」 吸血「私は…そうだな。自分の力の貯え方に自嘲をこめて 吸血魔王とでも名乗ろうか」 リンダ「なーにが」 スタン「あのベーナントカは余に変わる大魔王を生み出すとか なんとかぬかしていたが…それがお前か?」 吸血「そう、私分類で邪悪たらしめられている魔族であり、今また… 最強の魔王たれと分類の力に命ぜられ力をここで貯えている」 エプロ「ここにいる村人の血を吸ってか」 ロザリ「え?血を?どういうこと?」 キスリ「あの村人の様子…あれはあの魔王に繰り返し血を 吸われ��いるせいなのだろう。 ここはきっと、そのための村なんだ」 吸血「その通りだ、恐ろしき少年に率いられた分類世界を脅かす一団よ 村人は私の力となる無知で純朴な民としてそのような分類が かけられている。そのために彼らは存在し、他に役割はない これに抗うことはできない。真相を知ろうと知るまいと関係なく、だ 抗えないならすべてを忘れられるほどに邪悪になろうと思う 君たちからここに来たならばここで君たちもすすり 真の邪悪となろう」 スタン「おのれ黙って聞いておれば勝手なことばかりぬかしおってぇ! ここでは余が貴様の力を吸い上げ取り返すのが当初の予定と いうものだ!行くぞ子分よ! あのクサレ運命論者をだまらせてやれ!」 エプロ「気をつけろ!奴にはかなりの魔力がある! なにか対抗する手段が必要だ」
吸血「…………あーららら、負けちまったい まーしょーがねっかー、別に。手ぇーぬいたわけじゃねーもんなぁ」 ロザリ「なぁになぁに?さっきまでの重厚さがカケラもないじゃない」 吸血「だってホラ、魔王の分類取れたらさ、もうキバる必要もないよな みなよホラ、もう魔王の力が抜けて名前のアタマにも元がつくよ」 スタン「おおおぉぉぉ!力が!余に力が戻る!これでついに! …………………って、おろっ?」 ロザリ「変ね、変わんないじゃない。あんたが身体を取り戻して ちかみ君を離れたら即座に仕留めてやるつもりだったのに」 スタン「フカすなこの1人メリーゴーランド女! しかしなぜだ?この吸血魔王が余の力を持った最後の ニセ魔王なのだろうが!?」 キスリ「この場合2通りの可能性が考えられるが…」 謎の声「解説の必要はないよ学者君。私から説明しよう」
ベーロン「そこの影魔王君、吸血魔王を倒した君にしかし 魔力が完全に戻らないのは…なんのことはない 魔力の総量を私が意図的に目減りさせてあるからだ 君たちが自らここに来ると知った時、思いついたことがある 君が元通りの魔王となりたければ もはや私を服従させるしかない。君に魔王と言う役割を与えた 私を、どうにかできるというならね」 スタン「きっさまぁっ!」 ベーロン「女勇者君、君もだよ。君が勇者として邪悪を 打ち払いたいというなら、私を敗北させなければならない そうしなければ私は、君たちすべてを排除するまで 新たな魔王を作り、放ち続けるだろうね」 ロザリ「ふんっ!そんなくだらない挑発しなくても行ってやるわよ あんたのところに!いい加減頭に来てるのよね!」 ベーロン「ほう、それはいい。ちかみ君も同じ意見なのかな? ならば世界図書館を訪ねてくることだ そこで君たちには面白い見世物に参加してもらおう」
元吸血「世界図書館に行ける道?あ、教える教える 私は入っちゃいけないことになってたんだけどね 一応、許可を求めたうえでこの村から橋を出現させるんだ だから私はおとがめなしってことで、ね?」 スタン「なんでお前はそう、負けるといきなりヒクツなんだ」 元吸血「なんだとー!まあいいや。どういわれてももうどうでもいいもんね」 スタン「なにスネとるんだ貴様は」
ーボクと魔王が図書館でー
ロザリ「ここが世界図書館…」 エプロ「ここがベーロンが世界を操る力の源なら 我らがここに至れば派手な手出しはできまい 多少の邪魔は蹴散らして早く奥に向かうぞ」 スタン「あのベーロンめ、人間の分際でどえらい悪役っぷりを発揮しおって その罪状にふさわしい制裁を与えてやるのだ! む!おい子分!お前の持ち物の中!何か光ってるぞ!まさかまた」 『友情の証しが光に包まれレベルアップした!』 スタン「やはりまたこいつか!前に光った時には力が増したよう だったが、今度もそうか?まあ試してみればいいことか 行くぞ子分、ベーロンのところにな!」
ー世界図書館ー
静かな目の男「おお、来たな。ベーロンの怒りの源がこの世界の中枢 この世界図書館に」 ビッグ「むむ、アンタは人っすか。オバケでなく、戦わないっすか? 戦えないっすか?」 静目男「われらはこの世界に力を及ぼす分類を最終的に形にしているものだ 分類表を書き留めることでな。ここは図書館であるから さしずめ我らはその職員か。無力な働き手でしかないよ」 キスリ「分類表!人々にもおなじみのアレはここで書かれているのですか!」 静目男「その通りだ。君たちの事情も、ここにいる我々は承知している 君たちは、我々の運命も握っていることになるな」
分類表記述人「ただひたすら分類表を作成し、その効果をはかり 手を加えることが私の仕事であり それ以外のことは何一つ許されていない そういえば君たちは我々に似た男にあったことはないかね 人の話を聞かず好き勝手な名で人を呼ぶ男だ ポラックのような回りくどい方法でなく もっと単純で簡単な方法でベーロンの支配を打ち砕くことは できないかと、あいつは常に考えていた そして決死の覚悟でこの図書館から逃げ出したのだが 今どうしているのか。生きていてくれればいいが」
分類表記述人「あの男の娘マルレインがどうなったか君たちは知らないか? そもそもこの世界自体彼女のために合ったものなのにな 娘のために小さく世界を切り出し、魔王を配し勇者を置き 導く人々、邪魔するオバケを散りばめ娘を遊ばせる空間を なのにその娘がまさかこの世界の中で姿を消してしまうとは きっと、自ら分類の力から離れてしまったのだな 私達でも彼女を見つけ出すことはできなかった 顔には出さないが、ベーロンの心痛はわかる 君たちがベーロンに敵対するのは仕方ないが そのことは心にとめておいてほしいものだ そのうえで行くならば先に行くがいい。一番奥の場に 彼は居るだろう。我々の知らない意図をもってな」
分類表記述人「ここには昔ポラックという男がいてな。魔王や勇者に関する 重要な品々を持ち出し大騒動を起こしたものだ 魔王と勇者はこのお姫様のために冒険世界の基本を 成す重要な存��だったからな。あの頃はベーロンも荒れたよ ポラックはベーロンの…つまり他人の分類に支配される 人々を哀れと感じたのだ。その支配をいつか取り除くために 彼は逃げた。もう何百年も前のことだ といっても、これも分類で作られた時間の中での話だがね ポラックはベーロンと私たちの作る分類の決め事の 小さなスキ間から潜り込み、この世界を支配する力を 変質させようとした。岩のヒビにクサビを打ち込んで 割ろうとするようにね。第勇者ホプキンスもポラックの そんなクサビの1つだった。彼の活躍でこの世界はだんだんと 変質を見せ始め…そして君たちが今、ここにいるわけだ 君たちがこの世界の分類を壊すならそれもまた余の流れさ 元々は我らの仲間が最初に臨んだことなんだ ポラックがホプキンスの剣をここの中央棟に戻したのも あるいはそういうことを期待してのことだったのかもしれん」
スタン「ついにここまで来たな!一同わかっておるな これは大魔王の名のもとに調子こいたベーロンをへこませ 真の支配を確立する道行だ。しめてかかれ!」 リンダ「はーい、スタン様ン!」 ビッグ「頑張るっす!」 ロザリ「あーに言ってんのよ!これは不当な世界支配を展開していた 巨大な悪に対する正義の戦いよ!どっかのペラペラ魔王より ずっと手ごわい相手なんだから気合入れなさいよ!」 キスリ「私は知的探求のためにここに居るのだが」 エプロ「ちかみよ。皆好き勝手なことを言っているが 当然、これはお前の戦いでもあるのだぞ 我々はそれぞれの動機で集まっている。いわば行き会いの集団だ 仲間に遠慮することなく、お前はお前の理由で進め それが、私の知りたいことを教えてくれる気がする」 『ありがとう』 エプロ「礼など言うことはない。ここはせいぜい我がままに行け。いいな」
ロザリ「あら?」 キスリ「なんだ、鍵がないのかね」 スタン「むう、どういうことだベーロンめ。あんな大ミエ切っといて 今更扉でガードとはセコいやつめ」 エプロ「こんなものが障害になりえんのはお互い分かってることだろう ぶち破ればいいのではないか」 ビッグ「おお。なら、そういう役はオレに」 キスリ「いや、待ってくれたまえ。これが扉である限り あくまで扉として合理的に開かれるべきだ。そう思わんかね?」 リンダ「そんなもん?」 スタン「ならば、ここは久々に呼んでやるか ジェームス、おいジェームス!」 エプロ「ジェームス?だれだ、それは?」 ジェームス「ひ・さ・び・さ~ いや~しばらくぶりですな坊ちゃん。 ビギナー勇者どもみたいに扉の前に固まってどうされました?」 スタン「うるさいっ。かくかくしかじかなのでなにか策をだせ」 ジェームス「ほうほう。いやはっはっは。こんなことに悩んで どうしたのですか。これはもはや頓智の領域ですぞ、みなさん 聞けばこれはすなわち分類に対抗するための戦い ならば重要なのは分類にとらわれないことです」 ロザリ「はぁ?」 ジェームス「特にキスリングさん、あなたの意見はよろしくない これは扉だ、という分類にとらわれるからいかんのです 開く扉だ、なんてことを忘れればよろしい となれば、やることは1つ。はいみなさん、どいてどいて せーの…はあああぁぁぁぁぁっ!理不尽執事不動拳ッッッ! ほらこの通り。では心置きなくお通りください。あでゅー」 キスリ「………………」 リンダ「なによ、結局ぶち破っただけじゃない」 エプロ「まぁ、議論の手間が省けたのは確かだ。行くとしようか」 キスリ「う、美しくないなぁ……………」
ベーロン「………………」 スタン「いたな分類マニア。お前の手駒だった吸血魔王も既に余の力だ ここは余にやられて、大いにヘコんでもらおう」 ロザリ「あなたの悪役っぷり、魔王どもと違ってスッキリしないのよn どうにも許せないわ!」 ベーロン「…来たな。これでまた修正を図ることがで��る 全く今回のお前たちはよくも私を困らせてくれたものだよ…」 スタン「当然だな。大いに困るがいい」 ベーロン「もうこの世界には、ちかみだけでなくお前たちみな 不要となった。しかしゴーマの丹精も、ロザリーも ここまでの道のりで力を蓄えすぎている そろってここに来たのならそれも好都合 世界のだれも見ていないところで消えてもらうか…」 エプロ「なに?」 ベーロン「…お前たち2人、互角の力をふるって差し違えるがいい ほら、お前たちが望んでいた大魔王と大勇者の力だ! 受け取れ!」 スタン「うお、うおおおおおお!なんだこれは!!」
スタン「…うおおおお 余は、余は、ついにこの姿を取り戻したぞ! 余こそ大魔王、この世の邪悪を統べる者 スタンリーハイハットトリニダード14世なり!」
ロザリー「…正義の力、我に満ちたり! 我は大勇者、この世の正義を顕す者、ロザリー!」
ベーロン「世界の命運を定めるため、戦え!正義と邪悪よ!」
スタン「うおおおおおおおお!」 ロザリー「いやああああああああああ!」
ロザリー「光よ、われに守護を!」
キスリ「なっ…!ど、どうしたんだ、彼らは!?」 リンダ「きゃーっ!スタン様、なんかこわーい!」 エプロ「そうか、ベーロンは今からでも世界の習性を図る気だ」 ビッグ「ど、どういうことっすか!?」 ベーロン「これでよい、これで…ククク… もうあの2人はだれにも止められないのだよ さあお前たちも特等席で見物するがいい 戦いが終わるときには両者とも生きてはいまい!」 エプロ「おいちかみ、あの2人を止めろ!」 『うん、やってみる!』 エプロ「よし、なんでもいい、試してみろ!2人を正気に返すような なにかがないか?言葉は?道具は? 私の見たかったものがここで見られるか?」
ビッグ「おおう、こりゃ一体どうしたことだいブラザー! こんな時、オレはどうすりゃいいんだ、ええ? どっちか勝った方を大魔王世界ベルトのホルダーとして 認めてやるんだってことかぁ!?」 キスリ「むう、私が考えるに、この両者の戦いはすなわち意味論的に 呪敵記号のうちに設定・決定づけられた勇者、魔王の2つの 超強力なる属性が、それをもつ者の人格すら上から塗りつぶす ようにその全体を支配し、思考そのものがそこに固定された イメージのためにのみ機能しうるきわめて単純明快な機械的 側面をはっきりと浮かび上がらせ、それ故にそれのみによって 起こる闘争のモチベーションが… つまりだね、ちかみくん。彼らは今、自分が よーするに勇者だから。よーするに魔王だから 戦っているのだよ ではこれを制止するには?まとめて倒す?それが出来れば楽だね あはは。出来るもんならね。あわわ。さて、どうしよう」 エプロ「くっ!おいちかみ、何とかあの2人を止めなくては!」 リンダ「きゃーん!スタン様が恐くなったと思ったら今度は敵に いいように操られちゃってるわー!そこに飛び出すエプロス様の シブい助言!それを受けてちかみくんはどうするの? どうするのどうするのどうするのー!?」
『ちかみはボイスレコーダーのボタンのようなものをメチャクチャに 押してみた!すると…』
スタン『お、おのれキサマ! 魔王つかまえて偽悪者とは、これ以上ない メガトン級のブジョクの言葉を~!』 ロザリ『あーら、いいこと聞いた! もー何度でもいってやるわよ。 この偽悪者偽悪者偽悪者!』 スタン『くわあああぁぁぁっ! ゆるっせーん! 余の真の姿を見る恐怖の中で痛めつけてやろうと 思っていたが、もーガマンならん! この場で無条件降伏に追いこんでくれる!』 ロザリ『あーら、やってみなさいよ。 あのミョーな執事でも呼んで。 「ジェームスぅ、おねがい守って~」みたいな』
エプロ「…?この声は…?ちかみ、今の声はその機械から出ているのか? その機械はなんだ?」
スタン『お!おおおぉぉぉっ! 力が!余に力が戻る! これでついに! ………………って、おろっ?』 ロザリ『…変ね。変わんないじゃない あんたが身体を取り戻してちかみ君を 離れたら即座に仕留めてやるつもりだったのに』 スタン『フカすなこの1人メリーゴーランド女! しかしなぜだ? この吸血魔王が、余の魔力を 持った最後のニセ魔王なのだろうが!?』
エプロ「………………!」 キスリ「これは………」 ビッグ&リンダ「???」
ロザリ『…そうね。賛成するわ その魔王の力が どれほどのものかわからないし それに、あたしは勇者だもの 「分類」なんかに関係なく! 魔王は自ら挑んで、倒さなきゃね!』 スタン『余とて、「分類」などとは関係なく 常に大魔王だ! その新たな魔王もみごと倒し 力を取りもどしてくれるわ! いまいましい勇者たるお前も その時に打ち破ってくれよう!』
スタン『ついにここまで来たな! 一同わかっておるな これは大魔王の名のもとに 調子こいた男ベーロンをへこませ 真の支配を確立する道行きだ。しめてかかれ! 』 ロザリ『 あーに言ってんのよ! これは不当な世界支配を展開していた 巨大な悪に対する正義の戦いよ! どっかのペラペラ魔王より ずっと手ごわい相手なんだから 気合入れなさいよ! 』
スタン「………………」 ロザリ「………………」 スタン「………………」 ロザリ「………………」 スタン「……………… そうだ。そうなのだ…」 ロザリ「……………… ……そうよ」 スタン「なにをこんな、やる気だけ勇者なんぞと マトモにやりあっているのか。余としたことが いかんな…フフ。フハハハハ。いかんいかん」 ロザリ「まったくよ こんなスチャラカ魔王を倒したって べつに何がどーなるわけでもないじゃない?」 スタン「ここに来たのは & もっと、はるかに ロザリ 重要な敵を倒すためなのだから!」
ベーロン「…なぜだ?なぜ、止められる? すべての分類の力を集めていたのだぞ キサマたちには! そんな機械、マルレインの旅程を知るために 用意した、ただのオモチャではないか! ちかみ、なぜおまえは、こんな…」 ロザリ「…さあね。 うまく説明できないし、する気もないわ でも、あんたの本性を暴いてあたしたちを ここまで導いたのは 間違いなく、ちかみくんなの 頭がいいと自分で思ってるあんたなら わかるんじゃないの? 彼にあるものが、なんなのか?」 スタン「ベーロン、お前の思いこみなど、余は知らん 余は余だ。余の思うがままに行動するぞ もうお前も、どうすることもできまい!」 ベーロン「………… いや、まだだ。 私はここを維持しなければならんのだ 私のマルレインが、いつか帰る日のために! この世界ある限り私とマルレインの時間は永遠! 娘は今にかならず、私の前に帰ってくる! そしてマルレインはまたここでずっと 楽しみを得ながら過ごしていくのだ! ここは娘の国だ! 娘のための世界だ! 娘が楽しむための舞台なのだ! 娘の安息の場を、たかが小道具のお前たちに こわされてたまるかあぁぁっ!」 ロザリ「だまって聞いてれば勝手なことを… !…なっ…!」 スタン「ぬうっ…!」
ベーロン「この力で、最後の力で 全員、この世から消してくれるわ! そして舞台は作り直す! この世界の形は、カベだけは こわさせはせんぞ!」
ベーロン「…殺すなら、殺せ。 この世界も、もう…」 スタン「うむうむ。 お前のそういうザマを 余は見たかったのだ だが殺さんよ、う���ったい。 気は晴れた。どこでも行け」 ベーロン「…この世界の、分類の支配力は消える それが望みだろう…? 私は、開かれる広い世界の中にマルレインを探しに行こう… もう、マルレインが自分で 帰ってくることはできないだろう 広大に広がった世界で ここや私を見つけ出すことは… 私から探しに行かなくては… もう時間は有限だが、どんなにかかろうと… 人形ではなく、本当の………………」
ロザリ「ふー、これで、なにか世界が変わったっていうのかしらねー 全然変わらないみたいだけど」 キスリ「まぁ、世界がどうこういうのではなく 住人の認識の方の問題だからね これからは誰もが決められた枠でものを考えるのではなく 広く世界全体を感じられるようになるのだろうね」 スタン「ふん。余は魔王だ。分類の力が消えたとか消えないとか そんなことは関係ない。余は魔王である自分に誇りを持っている だから、余は行くぞ。真の邪悪を求めて」 ジェム「坊ちゃま、ご立派ですぞ! このわたくし、どこまでもご一緒いたしますぞ!」 スタン「おお、ジェームスか!そういえばお前、出てこないときは どこで何をしておったのだ?」 ジェム「いやもうそれは、木の陰から熱く熱く見守っていたのでございます」 スタン「ふん、まあいい…では、ここまでだな。ちかみよ まあまあ楽しかったぞ!お前もいつかまたこの広がった世界に 君臨する余の名を再び聞くだろう!その時余を訪ねたならまた 遊んでやらんこともないぞ!ではな!ハハハハハハハ!」 ロザリ「………………… ちぇっ、薄情なヤツね。最後のケンカ、しそびれちゃった… ………………………… …………………… あああああああっ! スタンのやつ!あたしの影、どーしてくれんのよ! さわやかににげてくれちゃってぇー! だいいち、こちとら勇者よ!考えてみれば邪悪求めて去った 魔王をほっとけるわけないじゃない!そーよ! こーなったら、とっととスタン捕まえておどして 普通の人生を取り戻さなきゃ。それじゃ、あたし行くわ ちかみ君、またねー!」 エプロ「…私はこの世界を解くカギは魔力にあると思うようになった 歯車タワーでしばらく修行しようと思う。では」 リンダ「ああーん、待ってえエプロス様ー。 リンダにグリグリモグモグしてくれる約束でしょー」 エプロ「…ば、バカな。私はそんなことは…」 リンダ「いいからいいから、さ、行きましょエプロス様 じゃーねー、ちかみ君、まったねー!」 キスリ「…うむ。では私も元の実地で学ぶ好感度の高い学者の道に戻ろうか 余のあらゆる事象が多面的な知性に発見され 観察されるのを待っているよ!じゃーねー!」 ビッグ「どこかに筋肉ムキムキ男の養成所<牛の穴>を作るっすよ そんで、今度はもっとアニキのお役に立つっス じゃ、失礼するっス」
少年「あ、おい!ちかみじゃないか?いいタイミングで帰ってくるなあ 今日は年に一度の祭りだぜ?今、村はその準備で大忙しさ お前も手伝って来いよ、人手は多い方がいいからな 役場の前でお前の父ちゃんが仕切ってるはずだから 早く行ってやれよ!」
ジュリア「あれ?ちかみくんじゃない?ひさしぶりね ふーん…………………………… ほんとに、たくましくなっちゃったわね あたしの好みとは全然違うけど でもねちかみ君、あたし、決めたの! あなたは私の理想とはちがうひとになっちゃったけど これだけ広い世界だもの きっとどこかに私の王子様がいるわよね だから待つわ。尻に敷かれても文句ひとつ言わない王子様が いつかわたしをむかえにきてくれるのを…」
おじさん「おっ、ちかみ!どこに行ってたんだ?こんな大変な時に! 何が大変かって!?そりゃお前、世界の果ての向こう側に 新しい世界が見つかったって言うんだ 何が恐いかって?!そこにはどんなおそろしいやつがいるか わからないじゃないか。ぶるる、おおこわ!」 ウワサ娘「ちかみ君!ちょっと聞いてよ!あたしのおばさん、また 見ちゃったんだって!ちかみ君の家の近くで! 不気味な、真っ黒い、影みたいなものを!それってもしかして 近頃ウワサのオバケってやつかしら! あっちかみ君、信じてないでしょ?ほんとなんだってば 今朝、君の家の近くで見たって言うんだから!」 父「おっちかみ?ちかみじゃないか! 今度のご帰還はお立ち寄りとは違う感じだね 何か得るものがあったかな息子よ …と、いろいろと話を聞きたいんだがなにしろ今 この通りお祭りの準備でてんてこまいなんだ 話はまた後で聞くことにして、ちょっと手伝ってくれるかな 長旅で疲れているだろうから、とりあえず材料運びは 他の人に任せておけばいいよ。ちかみは家に帰って みんなの昼食をとってきてくれ。 お母さんが用意してくれているはずだからね」 アニー「あ、お兄ちゃん!やっと帰ってきたんだ! お兄ちゃんが居ない間、あたしがずーっとお父さんの長話に 付き合わされてたいへんだったんだからね! あ、そうそう!そういえばさっき、ここで女の子にすれ違って ちかみ君の家はこっちですか?って聞くから 家までの道、教えてあげたよ! とってもかわいい女の子だったよ。おにーちゃんもやるねえ もー、このこの!さ、あたしはいかなきゃ! こういうところでかいがいしく働いて 女の子のミリョクをアピールしなきゃね!って、もういないし…」 母「あらあらあら、ちょうどよかったわ! ちかみ、あなたにお客さんが来てるのよ! ふふ、旅先でこんなにかわいい女の子を見つけてくるなんて お母さんも鼻が高いわ!さあさあ、いつまでもこんなところで 立ってないで、中へどうぞ。あ、いけない 村のみんなにお昼ご飯を届けなきゃいけないんだったわ」 女の子「あ、わら……わたしもおてつだいします」 母「あら、本当に?なんだか悪いわね。お料理、大丈夫?」 女の子「えっと…あの… 教えて…いただけますか?」 母「ふふ、もちろんよ」
ステータス
ちかみ 分類色:透 <年令>16歳 <職業>ただの少年 無口で影のうすい少年。 父はテネル村役場の課長。母は専業主婦 なんの取り柄もなさそうだが…
ロザリ 分類色:青 <年令>22歳 <職業>勇者 日傘をさした女勇者。レイピアの名手。 エリート勇者だったが、魔王スタンと出会って以来 お笑い勇者として屈辱の人生を歩むことに
キスリ 分類色:黄 <年令>45歳 <職業>オバケ学者 オバケの研究に一生を捧げている変人学者 フィールドワークと称して放浪の旅をしている。 趣味は足の爪切り
ビッグ 分類色:赤 <年令>忘れた<職業>魂の格闘家 元・巨牛魔王。汗と筋肉を愛するナイスガイ 夢は、筋肉マン養成所を創設し 筋肉のパラダイスを作ること
リンダ 分類色:青 <年令>ひ・み・つ<職業>アイドル歌手 笑顔がキュートな、元・アイドル魔王 その歌声はふしぎな力を持つ 魔王スタンをコーチと呼んでソンケーしている
エプロ 分類色:黄 <年令>不明 <職業>謎の魔術師 元・幻影魔王。謎の多いさすらいの仮面紳士 魔力の探求に夢中になるあまり世界の秘密にまで 手を出し、スタンたちを利用して自ら魔王を廃業
ーアイテムー 木の実:おやつにおすすめ HP50回復 大きな木の実:ビッグサイズの満足感:HP100回復 木の実セット:みなさまでお召し上がりください:全員HP50回復 野イチゴ:さわやかな酸味で頭すっきり:LP25回復 きまぐれイチゴ:増えるか減るかは時の運:LP??回復 元気の花:この世のものとは思えぬ美しさ:戦闘不能解除 元気の花束:その美しさに誰もが元気を取り戻す:全員戦闘不能解除 サビ抜きのお札:若さを取り戻したような気分で:サビ呪解除 目利きのお札:正しい価値を見極める能力:割増呪解除 エンゼルのお札:西洋魔術と東洋魔術のコラボレーション:死神呪解除 アラームのお札:鳴り響く鈴の音がけたたましい:睡魔呪解除 ウサギのお札:落ち着いてなんかいられない:カメ呪解除 中流のお札:人並みの幸せを望むあなたへ:金欠呪解除 すごいお札:あらゆる呪いを打ち払う逸品:すべての呪いを解除 浄化の石:冬山の清らかな空気を運んでくる:毒解除 覚醒の石:夏の日差しを思わせる輝きを放つ:眠り解除 開放の石:秋の大地の豊かさを宿す:封印解除 すごい石:4つの力を統べる奇なる石:毒眠封印マヒ解除 黒猫の像:闇そのものを思わせる姿:敵味方全員のHP半減 力のキャンディ:ちょっぴり大人のレモン味:攻撃力+1 守りのキャンディ:甘さ控えめグレープ味 速さのキャンディ:クールに決めるハッカ味 命のキャンディ:太陽の贈り物オレンジ味:HP+5 心のキャンディ:口当たり優しいストロベリー味:魔力+1 幸せのキャンディ:舌もとろけるミルク味 導きのジュエル:危険な道行には欠かせない:ダンジョン入り口に戻る 凍り付いたボトル:氷の花びらを封じてある;氷 ドクロのボトル:サソリの抜け殻を封じてある;毒 すやすやボトル:黒羊の寝息を封じてある:眠り 平凡なボトル:庶民の無力感を封じてある:封印 かなしばりボトル:大蛇の眼光を封じてある:マヒ 魔王マップ:魔王たちの居場所はこれでたちどころに明らかに しがない名刺:かなりどうでもいいテネル村役場課長=お父さんの名刺 堅苦しい名刺:研究はナゾだが権威はあるらしいマドリルの研究所長の名刺 あでやかな名刺:バーミラージュのママの名刺・プライベート情報もアリ それなりの名刺:いねむりばかりで頼りにならないマドリル役場長の名刺 ミニチュアの像:かの横断トンネルへの道を開く神秘の像 歯車タワーのカギ:砂漠の彼方・歯車タワーの扉を開く厳かなカギ ボイスレコーダー:いつまでも人の声を残しておける古代のふしぎな機械 手紙のビン:手紙を書いたらビンに入れて流してみようかな 古びた石人形:右手でまっすぐ上を指している古い人形 ちっちゃな歯車:色々なところに落ちていて集めるとけっこうな数になりそう レアな歯車:何か個性があるらしいサビた歯車…よくわからないけど 古いオルゴール:父さん母さん出会いの記念品だけど古くて時々調子が悪い 友情の証し:その確かな絆は少年に新たなる力を与えてくれる ペンライト:ポケットサイズと小さいながらなかなか強力な明かり
ースタンのロザリー罵倒ネーミングー バカバカバカバカ女 バカ女 大根足女 洗面器女 カンの虫女 金ダライ女 割れた茶碗女 量産型ヤラレ勇者 蛍光ピンク女 小ジワ女 刃物女 頭蓋骨ザル女 ひび割れバケツ女 日傘女 バカ女 顔面メッキ女 豚のひづめ女 コウモリ女 割れナベ閉じブタ女 逆さワイングラス女 1人メリーゴーランド女 レプリカ勇者 無粋な重箱のスミ勇者
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16.12.9 ヒーローはギャンブルで語る
感覚のなくなりかけた心に降り注ぐ四十三度のシャワー。 あいつの顔がまだ傍にいる気がする。
「ソニックのバカー!」 声帯が切れてしまうかと思った。声帯がどんな形をしているのかはっきり知らないが、帯というのだから、痛いほど震わせすぎたら繊維みたいに引き裂かれてしまうのだとエミーは考えている。反対に唇を引き結ぶソニックは、きっと何か言いたいだろうにじっと我慢しているのが窺がえた。相手の年齢こそちょっとお兄さんだが、まるで同級生の素直じゃない男子と向かい合っている気分だ。 エミーはまだ、ぜえぜえと息を切らしている。もう一度「ばか」と小さく悪態をついたのが彼にも聞こえただろうか。思いのほか透明な声が出た。声帯は無事だった。だが堪忍袋は無事じゃない。 今度こそデートしてくれるって約束したのに。いつもいつもいつもいつも、これがいつもっておかしいでしょ! 「もう、絶対、今度こそ、ほんとに、許さない!」 鼻水を汚らしくすすりながら喚き散らす姿、乙女じゃない。でも何だっていいのよ! アタシが怒ってるってことがソニックに伝わりさえすれば! 無表情のような、そうじゃないような顔をしたソニックが朧になる。水彩画みたいな幻想はすぐにグズグズに変形し、もうほとんど何も見えなくなり、エミーは涙を拭って駆け出した。涙が取っ払われた一瞬見えた、ソニックの唇のかすかな戦慄きは見なかったことにして。
あれからしばらく経った頃だった。 ソニックが、今まで親しかった仲間たちに寄り付かずやたら一人で過ごすようになったのは。 でも、みんなその理由を言わないようにしている。今日も街は平和で、 退屈。 本当はみんなそう言いたくて仕方ないのだ。エミーは退屈が嫌いだから、何回でも言うけれど。
「エミーさん、お出かけデスか? 白いコートとっても可愛いデス!」 「ええ、そう~?」 「それからお花のついたカチューシャも」 「チャオー」 「ありがと、クリーム、チーズ。今日は決戦なの。決戦の金曜日」 「わあ……エミーさん、いつもと気合の入り方が違いマス。背後で炎が燃えてマス」 そう、今日は「いつも」と違う。あのソニックがめずらしくデートの誘いを受けたのだ。 あんまりにお前がしつこいからついに折れたんじゃねーの、とここへ来る前に果物屋で会ったナックルズにからかわれたが、それで構わない。重要なのは今日一日ソニックの隣で歩けること。それだけでエミーは十分幸せだった。普段好き勝手しているソニックにも、たまには人に合わせることを学んでほしい。 昨晩もらったビデオ電話で「静かなカフェテリアの一席を予約しといてやるからさ」と彼は言った。テイルスに作ってもらった通信機での会話だけれど、エミーは嬉しくて嬉しくてつい通信機ごと抱きしめてしまった。慌てて離れると画面の向こうでソニックは視線をふらつかせた。きっと照れていたのだ。 しかし今日は生憎の雨だった。せっかく買ったコートも濡れてしまいそうで、まだ昼時なのにまるで夕方のように暗い街を警戒しながら歩いた。ブーツが水溜りに入りそうになるたび不安になる。 デートに長靴なんて履いていけるもんですか。せめて可愛いデザインのものを持っていれば……。 道路を走る車のヘッドライトがしとしと降る雨粒の連なりを照らし出す。タイヤからクジラの潮吹きのような飛沫が上がり、大袈裟に飛び退いてしまう。「Hey!」と呼ばれたのはそのときだ。 ソニックは歩道の脇のベンチに、傘をさして座っていた。白いマフラーを巻いて、足を組んで、缶ボトルのコーヒーに口をつけて、ぼんやりとエミーを眺めていた。「Watch your step.」「へ?」駆け寄ろうとしたら視界がくんっ、と前に半回転した。 ふわりと白いのが頬に当たったと思ったらマフラーだった。ソニックは何事もなかったかのようにエミーに体勢を立て直させて、また目にも止まらぬスピードでベンチに戻る。「滑りやすいから」そして濡れてアスファルトに貼り付く黄色い葉を指差した。 「ソニックぅ……」ああ、うっとり。 「雨の日に真っ白なもの着てくるなよ。汚れるだろ?」 言い方が優しい。咎めているのではなくからかっているのだと、ちゃんとわかるくらいに。 この角を曲がった大通りにイチョウ並木があり、木枯らしが吹く頃になると黄色い渦が絶えない。さらに冬が深くなると、ギンナンがすごく臭い。 今度はちゃんと歩いて近寄る。もう一つわかったことがある。彼の用意した「静かなカフェテリアの一席」の正体というのは……。 「チョコレートケーキのおいしいお洒落なカフェを期待してたのに、これじゃカフェテリアじゃなくて、もはや野外じゃない!」と拗ねておいた。これくらい言ったって大丈夫だろう。「しかも車ガンガン通ってるから、静かじゃないし」 ソニックはまた一口飲んで、「店内のジャズを掻き消すくらい、人がぺちゃくちゃ話してるだけの密室空間、オレが好き好んで予約なんて取るわけないだろ?」 「それもそうだけど」確かに、この状況は半分予想通りだったりする。13時を回り、オフィスの昼休みも終わって、金曜日の雨の街に人はまばらであった。 畳んだタオルを隣に敷いてくれたのは彼なりの気遣いだろう。エミーは傘をたたんで、ソニックの隣でちょこんと座った。彼のさす傘はモミの木を髣髴とさせる深い緑色で、こんなパラソルのあるカフェテリアどこかで座ったことがある。跳ね返る雨もさして大粒ではない。時々、車や人が通って、景色は忙しないけれど、二人きりのベンチに収まってしまうと存外周囲の音は煩わしくなくなった。おばさんたちが職場や嫁の愚痴で盛り上がるカフェより落ち着くのは、言えてる。 何より、普段より無口なソニックは却ってどっしり構えている気がして、隣にいると安心する。 ただ、寒い。 「ねーえ、ソニック」 「くっつくなって」 「だってえ、寒いんだもん」 今日の彼は、すばしっこさがないというか、全体的に動きが鈍い。寒いからだろうか。好都合だけれど。 「ところでアタシの飲み物は? もしかしてソニックが飲んでるそれを二人でシェアするカンジでいいの? やっだ、それって関節キ」 「向かいに自販機あるから買ってこいよ」 「もうっ空気読めないわね。ムード考えてよ、ここは二人でひとつでしょ!」 イチョウの葉で濡れた道路脇のベンチでムードも何もあるか、という風にソニックは溜息をつく。いじわる。 「これからどこ行く? まさかずーっとここで寄り添い合ってるつもりじゃないんでしょ? アタシはそれでもいいけどお」 「ジョーダンよせよ。明日風邪でノックダウンだぜ」 そういえばソニックの横顔を、こんな近くで見つめたのは久しぶりだ。困ったような顔だからか、少し雨粒で濡れているからか、結構、キリッとして見える。素敵。 「あ、10分で終わる音速ジェットコースター風景巡りは、なしだからね」 「手厳しいな」 「当たり前! 今日はデ・エ・トの約束でしょ!」凄むと、ソニックはお手上げと言わんばかりに両手を挙げた。それから、オーケー、と溜息混じりに言う。 「エミーのしたいことに付き合うつもりで来たんだ、今日は。ショッピングでもスイーツでもカラオケでも、何でもいいぜ。ただし長時間同じ場所に滞在したくないな」 「いいわよ、ソニックがずっとおんなじ場所にいられないのよく知ってるもの。え、ていうか、本当に? アタシの行きたいところどこでも付き合ってくれるの?」 「今日は特別だぜ?」 彼の機嫌が特別よさそうには見えなかったが、ウィンクのひとつもなかったが、そう言われたら遠慮はしない。早速彼の手を引いて駅前のショッピングモールへ飛び込んだ。 なんだか変なソニック。 「エミー、これ、エッグマンが作ったポンコツロボットに似てるよな」 店内の壁紙や棚まで木でできたこじんまりした雑貨屋でモコモコスリッパを見ていたら、急に横から喋りかけられたので目を転じると、彼は木彫りの小さな置物を差し��してきた。丸いタマゴ頭に丸い胴体、丸い手足、丸い目、の下にジグザグのヒゲ……なるほど、彼らのよく知る悪の天才科学者によく似ている。思わずエミーも噴き出してしまった。 「なにこれ! エッグマンそっくりー!」 「これにデコのゴーグル描いたら、まんまだぜ」 ソニックというハリネズミは意外にも、大きな絵画から小さな貝殻まで、何でも興味を持つ。かと思えば興味のまったく湧かないものは見向きもしない。彼の好奇心は微妙な感覚らしく、エミーやテイルスでもたまにわからない。 店内をうきうきと巡るエミーの後をついていっている間、ソニックはエッグマン似の木彫りの置物をくるくる回して、離さなかった。会計のときになって「それ買うの?」と聞かれると少し黙ったが、結局、300リングと引き換えに最後までそいつを離さなかった。 「ソニックでもそうゆーの気になっちゃうんだ」 「別にいーだろ」 「責めてないわよ。いいじゃない」 エミーはソニックがそれをつい買ってしまった理由を想像しかけて、やめた。 ショッピングモールでしばらくソニックを連れ回していたが、彼が早々に疲れてきたようなので、一旦出た。相変わらずの雨と極寒だった。ソニックは木彫りエッグマンをやっぱりくるくる回しながらマフラーひとつで悠然と歩く。足取りのしっかりした彼と対照的に、何故だかエミーは、心に少しずつ不安が搔き曇っていくのを感じていた。地球でもっとも寒いホロスカを、ハダカに手袋という変態のような姿で駆け走ったソニックの耐性に違和感があるのではない。かといって彼が急にエッグマン似の人形を買ったことを気味悪く思ったわけでもなかった。 もっと、それこそ微妙な感覚で作用するべきものが、デートで浮かれたい気分を邪魔してくる。これはとてもウザい。でも、ソニックの気持ちを置いて一人で楽しめるほど、自己中じゃないつもりだ。 どこかでお茶したかった。互いの目を見つめてゆったりと話せたら何か変わるんじゃないか。ソニックと二人で楽しく過ごしたいからこそ。 「ね、さっきのベンチに戻って休まない?」 イチョウ並木の近くの? とソニックは目を丸くした。「多分びしょ濡れだぜ」 「またタオルで拭けばいいでしょ? せっかくソニックが選んでくれたカフェの席だし、あそこが何だかんだ、あんたは一番落ち着くくせに」 ソニックはハリを掻きながら苦笑した。星型にも近いコバルトブルーが大きく揺れる。 多分、ソニックは、本当はデートなんてしたくないのだ。でも、走りたい気分でもないから困っていたのだろう。雨続きだし、最近何も考えず地球を走りに走っていたはいいがいい加減飽きたし、それで、今この街をふらふらしているのだ。この、事件も事故もない、平和な街を。 「せっかくの白いコートがトラックの水飛沫で濡れる覚悟は?」 「うそ、あそこって飛んでくることあるの!?」 「道路と結構近いし、最初オレが来たときにちょうど水かぶってたぜ。サーフィンできそうなくらいの凄まじい水飛沫がな」 「それもう飛沫ってレベルじゃないじゃん。ていうかそれわかっててアタシをあそこに座らせたの!? 信じらんない!」 「Oh-oh….悪かったって」 「前言撤回、やっぱあったかいカフェでのんびりココアでも飲みましょ。はい決定。今日はアタシのプランに付き合ってくれるって言ったわよね!」 「オレは外の方が好きなんだけどなあ」 悪い科学者が襲来するのを彼は待っている。 悪役がいなければ彼はヒーローにもなれない。退屈だろう。 イチョウ並木を足早に引き返しながらエミーはひっそりと、ソニックの心を想った。拗ねるなよ、とソニックの拗ねたような声が届いた。後ろ姿と歩調は本当に気持ちが出てしまうんだとエミーは思い知ることになった。 イチョウの葉は人々の足跡でどろどろだった。からっとした晴れの日はすぐ風に舞い、濡れればぺったり貼り付いて足が滑りやすい。まるでテンションの落差が激しいおてんば娘みたい。自分にそっくり。 さみしそうな背中をアタシはしてるのかしら。アタシわがままなのかしら。 「ねえ、早く目が覚めてくれるといいわね」 さみしいのは。 「エッグマン」
乱暴に引き寄せられた。 白く霞む雨道では、風が吹いても、べったりと地面に張り付いたイチョウの葉は渦を巻くことはない。だから、周辺を歩いていた誰も、二人のハリネズミが突然消えたことに気づかなかっただろう。 誰の目にも止まらぬ速さで、細い路地に連れ込まれたエミーの前に広がったのは、ただただ細いだけの、路地の光景だった。雨でカビ臭い。左右の壁は多分民家だ、建物の窓をぴったり閉めてある。一本向こうの通りを歩く人が見える。思いのほかはっきり見える。道幅は、ハリネズミが二人並べないほどとても狭い。 彼の名を呼びたいのに声が出ない。 エミーは背後から締め付けられていた。 左右の白い壁が今にもこの身体を潰そうと迫ってくるような恐怖を背負った、ソニックの体温にぴったりと口を塞がれて、身体の線が、攣っていた。まるでこれから誘拐されるかのようだった。ソニックの力は優しい。もがけば簡単に振り解けるだろう。 「……どう、したの」 傘はイチョウ並木に落としたままだ。肩がどんどん冷たくなっていく。離された口元がまだ熱い。 「ビビって、どうしたのよ」 今日一緒にいたソニックは、まるでソニックじゃないような気がしていた。 「エッグマンが――誰かに襲撃されて、大爆発から逃げ切れなくて今も昏睡状態になってても、あいつはちょっとやそっとじゃ終わらないって、どうせ知らない間に回復してまた悪さをし出すんだって、いつもそう言い続けてたのはソニックじゃない」 もう半年経つ。遅すぎる、とは思う。 きっとソニックは何かを知っている。だから苦しんでいる。 「アタシたちはいつも通り平和な街を用意してればいいのよ。いつでもぶち壊せるように、そしてソニックがアタシたちをすぐ助けてくれるように」 どうしていつも大事なことを喋ってくれないの。 誘拐犯のように、悪の天才科学者のように。このまま街をひっくり返す事件が何も起こらなければ、ソニック自身が何かしでかすのではないかと思った。エミーと同じだった。彼も退屈を嫌う。自分に障害物がないことに退屈を感じる。だから追いかけてくる自分の存在だって、本当は、ちょっと可愛がられているのだと信じている。 ここでアタシがまた邪魔しないと、こいつ、ヒール役になっちゃうかも。 そんなはずがない。ソニックはソニックのままだ。でも、何故だかそんな悪い予感が加速する血流と共に全身を駆ける。雨が冷たく、皮膚だけが凍えていく。必死に吐いた息は真っ白だ。 何なのよこの悪寒は。 エミーは小さな破裂を繰り返すかのように身体をゆさぶって叫んだ。 「だからヘンなこと考えないでよ! アタシの隣にいて、ソニック!」 「大丈夫だ」 振り返ると雨音が目の前に迫った。 ソニックの眉間には雨粒が乗っていて、ぽつん、と鼻に落ち、はじけた。雨脚が地面を叩く音で割れたエミーの叫びはどこにも木霊せず、ただソニックにぶつかり、ソニックの中に吸収されたのだろう。でも、今の「大丈夫だ」は、エミーの訴えに対する何の返答にもなっていなかったことを、このときエミーは、気づけなかった。 「大丈夫さ、エミー」 ソニックの凛々しい微笑みが。 唇を熱くする。キスなんてされてないけど、されたあとのように。 血の加速が緩んで、甘い言いつけに乙女は、ほんと? と不安な気持ちをそのまま声にこめる。ソニックはけらけらと笑う。 「Of course. あの間抜けなヒゲオヤジがそう簡単にくたばるわけないだろ。ちょいと罠にハマって爆発に巻き込まれただけなんだ。どうせ自前のロボットか何かで地中にもぐって脱出でもしてるさ。ナックルズみたいに」 「誰がエッグマンを襲撃したのかわかってるの?」 「あー、エッグマンネガ。ほらあの、エッグマンの子孫とかいうヒゲタマゴ」 ブレイズやシルバーが忌々しげに彼の話をしているのを聞いたことがあるが、祖先であるエッグマンに嫌がらせをしに時々こちらの時代へ飛んでくる、という情報しかエミーは知らず、本人を目撃したことはない。木彫りエッグマンよりも顔は似ているのだろう���。 あ、と息を衝いた。 ソニックの表情は和らいでいた。憑き物が取れたみたいだった。自分がめちゃくちゃな思いのまま訴えたことが効を奏したのだとエミーの胸は晴れやかだった。 「……今あいつの心配をしたって、しょうがないわよ。ね、気を取り直してデートの続き、しましょ」 「なあリタイアって選択肢はなしか?」 「ソニックあんた何度も同じこと言わせないで。今日はアタシに一日付き合うって。今日は特別だって。忘れたとは言わせないからね」 「参ったな」 腕を組んで、うむむ、と唸った末に。 今日は特別。それを最後まで撤回しなかった。本当にソニックはエミーの荷物を抱えながら一緒にショッピングして、服を見て、おいしいパスタを食べて、特にラブラブなイベントも起きないまま夕方、普通に別れた。それでもエミーにとっては喜びで胸いっぱいになれた一日だった。 イチョウ並木での別れ際、ソニックは小さな巾着袋を放り投げてきた。 「何これ」 「お守り」 これも雑貨屋で買ったのか。何のお守りか訊ねる前に「See you,Amy! 気をつけて帰れよ」と雨粒できらきら光るクリスマスツリーのようだった傘を手早く畳み、今日初めて彼は走った。木枯らしよりも寒い風が立った。かろやかな足音が遠ざかるたび傘の水滴が光って落ちた。 プレゼント? うそ、ソニックから? 夢見たい! 耳が霜焼けで痛いのなんてどうでもいいくらい気分が高まって、お守りを握り締めたまま走って帰った。走らずにいられなかった! 雨はいつのまにか止んで、まだ空はどんよりしていたけれど、ああもう二度とこんな日は訪れないんじゃないかと思うくらい楽しくて、ソニックと取りとめのないことをもっともっと喋っていたかったという余韻に帰ったあともずっと浸っていた。本当に、特別な日だったな。ソニックそんなにエッグマンと会えないのが寂しいのかしら。素直じゃないんだから。アタシの前でももっと素直になってくれたらいいのに。 特別。その言葉を何度も咀嚼する。甘いひとときは噛むたびに味を失っていく。ガムのように。 もっと早く違和感を抱くべきだったのだろうか。
焼け野原でエミーは泣きそうになっていた。 空はあんこを引き延ばしたような黒、足元はベリージャムに飴細工、それが人体の変わり果てた姿と、その中身だと気づき、恐怖が閃光となって全身を撃ち、逃げ惑う。戦車も、ビルも、ひっくり返っていて、ここがどこかはわからない。何かに躓いて転がった。何よ、と叫びながら振り返るとたくさん枝の分かれた大木が横たわっていた。丸坊主だ。しかしイチョウの木だと、何故かわかった。むせ返るほどのギンナンの臭いがエミーの胃をこじ開けようとする。やめて、と口を押さえる。 助けてソニック。 もうアタシ一人なんだと思った。涙が止まらなくて息が苦しくなった。テイルスもナックルズもクリームも、それこそエッグマンも、みんないない、真っ暗で何も残されていないのだと思った。さっきまで空が見えていたはずなのに、足元の、自分の赤いブーツしかぼんやりと照らされない。どんどん視界が狭く……。 このまま闇に押しつぶされたらアタシも消える。ここから逃げなきゃ。意を決して顔を上げた。その先で――。 ソニック。 ソニック? 何かの残骸の小山に彼は立っていた。今すぐ駆け寄りたいのに、抱きしめて、ソニックと名を呼びたいのに、金縛りに遭ったかのように爪先一つも動かせない。それどころかまばたきさえできているのは謎だ。 ソニックの目元は夕霧のような影を帯びて、その奥に眉間のシワがはっきりとした黒い線で引かれていて、瞼が重いのか、まなじりが上がっているのか下がっているのかよくわからない目をして、やっぱり口は閉じていた。今まで見てきたあらゆる表情の中で、一番無表情に近かった。彼の浮かべる顔はいつも、何かしらはっきりした着色がされていたのだと気づいた。 みんなの前で「ソニック」を演じているのではない。それはちゃんとわかる。どんなソニックもソニックに決まってる。ただ、彼には、一人のときしか見せない顔もあるという、それだけの話だ。 エミーは、何だって喋りたい。喋っていい内容、喋っていい雰囲気はもちろん選ぶけれど、そのときの感情は我慢しない。たまに爆発させすぎて後悔をすることはある。じゃあ、ソニックに後悔はないのか。なんにも言わないから、風の体現者としてヒーローとして必要以上のことをみんなに晒さないから。 傷つくこともないって? 「それはあんたがまだこどもだからなの?」 やっと、声が絞り出せた。掠れ切ったかっこ悪い声だった。 視線が向く。ソニックの口元は上向きに弧を描く。初めて出会ったときから変わらない笑顔だ。きっと誰にでも同じ顔を向けている、彼の表情に特別はない。ただいつも何か楽しそうにしている、人懐こくて飾らない表情。オレは誰よりも自由だと象徴する、縛られるものがない者にしか浮かべられない表情――。 「教えてくれなければ、誰にも、な���にも、伝わらないのよ。それがわかんないほど、こどもでもないくせに」 この地獄をあなたが作ったの、それとも助けにきてくれたの。あるいは、これはどこかの未来の世界で……あなたはもしかしたら未来からやって来たソニックで……。 どれも違う。あなたは。 「つれてって。ヒールでも誘拐犯でもなっちゃえばいいのよ。だってアタシは、あなたが何を選択したって、世界とソニックなら、ソニックを選ぶもの。あなたと一緒なら怖くない。姿を消すならアタシを攫ってからにしてよ!」 言ってよ。あなたが企んでいること。アタシだって力になりたいわよ。 彼は退屈すぎておかしくなったのだ。そんな状態で一人で戦いに行かせたくなかった。シャドウほどじゃないにしても、彼は目的のためなら手段を選ばない、それも自分一人の目的のためならきっと簡単に命を賭けてしまう。まるでカジノに所持金を全部投げつけるみたいに。だから彼は他人をシビれさせる。正真正銘のクールな男だ。 みんな言う。だからソニックには何言ったってしょうがないんだって。彼もとやかく詮索されるのは嫌なはずだ。でも。 「アタシ、いつも、なんにも知らないまま待ってるだけなの、いやだ」 心のやわらかいところが、ついに裂けた音がする。 「でも、それでも、あなたがって言うなら。アタシいつまでも待ってるから。帰ってきて。お土産話も忘れちゃだめよ」 ソニックが少しだけ目を見開いたのは気のせいかもしれない。でも笑い方は……少し変わった。
もっと現実のにおいがする闇の中で、エミーは枕元の巾着を握っていた。魘されながら無意識に求めていたみたいだ。ソニックの風を少しでも残すものを。 そうだ……忘れていた。互いの腹を割って話したかったはずなのに、ソニックの「大丈夫さ」に安心した途端、本当に大丈夫だって思ってしまった自分が憎たらしい。ばかだアタシ、と呟く。天井にも届かない声は、エミーの中に染み渡り、ひりりと痛んだ。 巾着袋は麻紐できゅっと口を縛られている。そっと紐を解いた。途端、暗闇に湖が浮かび上がった。その正体は巾着から溢れ出した強い光。中に宝石を粉々に砕いたものがたくさん入っている。かなり細かい破片だが、大きさや形の統一感のなさから、市販の商品ではない。 これはカオスエメラルドだ。 ……これを渡すために、会ってくれたんだ。 寝汗でびっしょりの身体を引きずってエミーはシャワールームの扉を開けた。四十三度のシャワーは痛かった。元々熱めの湯は好きじゃない。夢の中では蹲って咽び泣いていたにも関わらず、目が覚めても、エミーの眼球には湿った膜の一つも張っていなかった。恐ろしく乾いていた。だから。 シャワーを浴びて洗面所の鏡に映る自分に少しだけ水滴が伝っていて、それは口に入るとしょっぱくて、びっくりした。びっくりしてもっと涙が溢れた。
「今までにありないくらいの寝坊だよ。ボスは早起きが結構得意だったのに」 「タフとはいえ、もう老体です。予想以上にダメージがあったんでしょう。ボスはロボットじゃないですから……」
185cmの128kg、IQ300で自称「悪の天才科学者」、そんなふざけた男が繰り広げる悪巧みを一つ残らず蹴散らしてきたソニックにとって、Dr.エッグマンと瓜二つの男から玩具にされるのは屈辱といっても過言ではない。彼はエッグマンの戦闘ロボットの大半を自分のCPUに改造し、未来世界へ持ち帰って、世界滅亡を目論んでいた。そこへ殴りこみにいたソニックは血のにおいをまといながら磔台で晒し者にされていた。 エッグマンネガはマフィアのようなサングラスをして、ヒゲを撫でる。「クーククク。こんな時代遅れのハリネズミ相手に苦戦するとは奴もヌルい。我がエッグマンネガ軍団の威力のお味はどうでした」 「スパイスが圧倒的に足りないね。これじゃエッグマンのヌルいパレードと同じじゃないか」 隕石が頭に落ちたと思った。エッグゴーレムの拳が磔台を傾けた。ソニックの目の前は星と共に無数のフラッシュバック。オーボットに渡された小型の機械。おびただしい管に抱かれたヒゲオヤジ。静まり返った基地。駆け寄ってくるエミーの朗らかな笑顔。雑貨屋で手に取った木彫りの置物。 「こら、落ちちゃいますよ」と宥めるエッグマンネガの口の中には溶けたガムでも貼り付いてるのかと思うほど、耳障りな響きでこいつは喋る。 「ならば台詞を変えましょうか。自分が沈めてきたロボットたちに甚振られる気分はどうです? ソニック・ザ・ヘッジホッグ」
「これがボスの作った『秘密兵器』です。エッグマンネガが襲来する数日前に、急に我々に渡されたんです。どんな威力かは教えてくれませんでしたが、カオスエメラルドを使えば威力は増幅するそうです。これなら一発でソニックの奴など木っ端微塵、って」 「お前たちにも渡しておくってボス言ってたけど、ボスも同じの持ってたのかな~……。何でボクたちにだけくれたんだろ」
エッグマンがこの事態を想定していた可能性はありえる。だからオーボットとキューボットにあれを託したのだ。本人としては自分たちのロボットに仇を討たせたかったかもしれないが、残念。面白そうな予感に嗅ぎつけられて、出番はソニックが奪ってしまった。 オレのために用意してくれたギャンブルだ。賭けないでどうする。 豆粒ほどのグレーの四角形のそれの中に、きっと精密なシステムがびっちり詰まっているはずだ。それと、粉々に砕いたカオスエメラルドの破片を一つ、ソニックはごくんと飲み込んで、エッグマンネガに立ち向かった。しかし案外やってくれた。できれば吐きたくはなかったが、先ほど腹に数発食らった。そろそろ意識も朦朧とし始めている。舌を噛んで無理やり気絶を食い止める。鼻血が口に入る。飲み込むと腫れた喉に滲みた。 ただのパクリ、というより、CPUを改造しただけでまんま同じロボットを使って、恥ずかしくないのか。ないのだろうな。そういう感覚がなさそうだから。 ソニックの耳がぴくんとした。
「ボス、聞こえてます? ソニックが舌出してあんたのこと馬鹿にしてますよ。早く起きないと今度はカンチョー辺りされちゃいますよ」
「クク、何を笑っているのです」 いーや、ととぼけた。びくびく震え始めた胃の片隅で強い反応を感じる。 ずいぶんと遅かった。破片の一部分だから秘密兵器に作用するのにかなり時間がかかると、エッグマンも教えてくれればよかったのに。……水臭いじゃないか。いや、昏睡どころか半分植物状態になっちまったお前の代わりに、オレがぶっ飛ばしにいくなんて、お前にとっては黒歴史かな? ざまあみろ。 何が起こるかなんて誰もわからない。とびきりシビれるサプライズを期待したい。 エミーのことを、思い出した。 「……大丈夫さ」 お前たちが笑ってくれるならオレは何度だって。 エッグマンネガのサングラスの奥が鈍く光った。そんな薄汚い光を食らう、巨大な輝き。ソニックは自由を奪われた手足をもがき、かつてない苦しさに呻いた。けれど信じているから。奴がこのギャンブルに勝たせてくれるって。そうだ言葉を駆使しなくたってあの我侭な悪の天才科学者の考えてることくらい、わかっちゃうんだ。ていうか、わかりやすいから。
でも、エミーには、本当は声に出して伝えたいことがあった。
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