#甘い罠 8つの短編小説集
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misasmemorandum · 2 years ago
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『甘い罠 8つの短編小説集』
髙村薫の 「カワイイ、ア��タ」 が収録されているので借りた。せっかくなので他の作品も読んだ。女性作家さんたちの作品集。
江國香織 「蛾」 夫と別居中の主人公。夢なのかな。よお分からん内容でした。
小川洋子 「巨人の接待」 バルカン半島の小国の地域言語でのみ書く小説家。主人公はその通訳者。主人公がこの言語を使えるようになったのは、この「巨人」の作品を原語で読めるようになりたかったから。これ、読書好きにはある種の夢だよね。「巨人」はあだ名で本人は実は小柄。他言語とのコミュニケーション、敷いては人間同士の意思疎通について書いているのかな。割と好き。
川上弘美 「天にまします吾らが父ヨ、世界人類が幸福デ、ありますヨウニ」 女子として結婚まで処女を保つかどうか、恋人とするかどうか、ついつい「いや」と言ってしまうのはこの時代のコケティッシュなのか本音なのか、昔の体の関係のない恋人との再会。主人公は小説家で恋人は編集者。恋愛もので、最後はまあ、どーでもえーーって感じ。軽いような、それでも深刻なような、何かに流されてるような、ふわふわしてるような、主人公が悩んでいるからか、そんな感じがする作品だった。
桐野夏生 「告白」 鎖国して20年後、武士を殺して日本から逃げたヤジロー、ゴアに着く。そこで日本人の老人に会い、、、。戦国時代に人狩りというのがあったんだって。狩られた人は奴隷になって、外国人に売られたりもしたそうだ。知らなかった。作品はちょっと尻切れとんぼって感じ。恐怖ものなのかな?だ。
小池真理子 「捨てる」 他の作品と比べるとフツーな内容。その分わかりやすかったが。夫を捨てて、これまでの人生を捨てる女性の話。
髙樹のぶ子 「夕陽と珊瑚」 ちょっとしたミステリーになるのかな。種明かし系。認知症の老女と若いヘルパーが組んで行った復習と遺産相続。ちょっと小気味よいお話。
髙村薫 「カワイイ、アナタ」 書簡形式。小生が貴兄に宛てて書いている。もう私には雄一郎が加納に書いてるとしか思えませんでした(あほ)。
自分の頭のなかで何か尋常でないことが起きているというより、自分のなかに隠れているものの姿を垣間見たというところでしょうか。(p186)
雄一郎が美保子に一目惚れしたみたいに、見知らぬ若い女性の後ろ姿に恋してしまったおじさん。どちらも脚がポイントになってる。このおじさんのストーカー的な恋なのか、実は猟奇的な何かが隠れているのか、はたまた、雄一郎が美保子に対して持った感情をこの逸話で反芻しているのか。このおじさんの話を「あまり笑えない夜話」と書いたのはだからか。色々考えてしまいます。楽しい!
林真理子 「リハーサル」 中年女性の情事。アダルトな内容。私のタイプの作品ではない。女性の老い。女性の体の老い。性の相手としての魅力がなくなって行くことなど。主人公はフランス語の通訳翻訳者。リハーサルは、久しく情交を持たなかった愛人とする前に夫とマンネリな行為をひたして大丈夫と思うこと。林真理子ってこんな作品書くんだね、だ。
好きでないタイプの短編もあったけれど、それなりに楽しく読みました。
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