#稽古場レポート
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theatrum-wl · 2 years ago
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【稽古場レポート】 『It's not a bad thing that people around the world fall into a crevasse.』 劇作家女子会。feat.noo クレバス2020 小杉 美香
50本の短編を長編として編纂した群像劇というから、コロナ禍の日々を淡々とスケッチする、記憶装置のような作品を想像していた。 でも何か、そうじゃないっぽいぞ。 ��のレポートでは『クレバス2020 It’s not a bad thing that people around the world fall into a crevasse.』はどんな作品なのか、長いサブタイトル「世界中の人々がクレバスに落ちるのは悪いことじゃない」とはどういうことなのか、通し稽古を見学した感想を踏まえて少しだけお伝えしたいと思う。潜入したのは稽古も佳境の9月下旬。3回目の通し稽古の日だった。
重なり合う物語 まず最初にお伝えしておくと、本作は2幕構成、上演時間約2時間45分の大作である。小さなエピソードの積み重ねでこの長さだと、途中で集中力が切れてしまうんじゃないか(場面転換が49回あるってこと⁈)と心配になるけれど、実際はそうでもない。エピソードの終わりを食い合うようにどんどん次のエピソードが入ってきて、舞台上では複数の物語が同時に展開していく。劇場じゅうを浮遊する俳優たちの小さなハミングが入れ替わりのBGMとなって、音と物語の“重なり”を強くイメージさせるのが印象的だ。
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[撮影:noo] エピソードはひとり語り、もしくは2人で会話するミニマムな形式のものがほとんど。内容は例えば、「リモート会議でカメラを切り忘れた上司のヅラが露見して��惑する会社員」とか、「不要不急の鯛焼きを買いに出かける男」といった比較的ライト(?)なものから、「ネカフェが閉店して路上生活者になった男」「地元での親の火葬に立ち会わせてもらえない女」などのヘビーなものまで、さまざまだ。どれも元は短編作品なので起承転結があって見応えがある。 けれど、先述のように各エピソードの始めと終わりには“のりしろ”部分があるので、一度の観劇ですべてのエピソードを網羅するのは不可能に近い。観劇スタート時には頑張って全てを追いかけようとしていたが、次第に「それはしなくていいんだ」「目に入ってきたものを見て、耳に入ってきたものを聞こう」と、演出に身を委ねることができた。まあ要は諦めた。自分が知覚できた物語は氷山の一角に過ぎないのだ、クレバスだけに……
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[撮影:noo] 併置され、重ねられることは、各エピソードを演じる俳優にとっては、たったひとつの自分の物語がどんどん薄まっていく、軽いものになっていくようなストレスがあることだろう(自分の長セリフの間にまた別の面白い話が始まるなんて、私ならふて腐れる)。でも実際は、重なることで確かに物語の強度が上がっているし、ノイズの中で語りを続ける俳優は魅力的に見えてならない。客席的には俳優の緊張感こそご馳走なので、ぜひ抱えたまま千秋楽を迎えてほしい、なんて思う。 ネットとの関わり というわけで舞台上は「どこを見ていいか分からない=どこを見ても��し」な状態なのだが、その贅沢さを際立たせているのが映像のパートである。エピソードのうち何本かは、YouTubeやzoom風の映像として舞台上のスクリーンに投影される。映像を織り交ぜることで否応無しに強調されるのが、生身の演劇のとんでもない情報量だ。どれほど見やすく・面白く編集された動画が流れていても、目の前に存在している人間の方に意識が向いてしまうのを感じる。映像は他者と違ってこちらに近づいてきたり刃物を振り回したりはしない。決定的に“怖くない”存在であり、現実の切ない代替手段なのだと思い知らされる。 ネットを駆使してなんとか他者と繋がりを持とうとする「zoom飲み会の寂しくない解散方法を考える男」「機種が古くてLINEのグループ通話に入れない男」「リモートセックスを試みるカップル」「閉 店する喫茶店への餞の言葉をTwitterでつぶやく男」らの挿話にも(可笑しさとともに)切実な想いが滲む。手元の小さな画面を見つめるそのザラザラした感じは、誰しも身に覚えがあるのではないだろうか。 ※なお、通し稽古では映像が完全な状態で挿入されていたわけではないので、映像のエピソードに関しては劇場入りしてから大きく印象が変わるかもしれない。期待!
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[撮影:noo] また、どうしても無視するわけにいかないのは、覆面YouTuberの動画撮影を描いたエピソード「チムチムリーの恋愛相談室」だ。畳み掛けの凄さに、取材を忘れて爆笑してしまった(思い出すだけで元気が出るので、ぜひ本当に配���してほしい)。コロナ禍の不安や緊張感が通奏低音のように漂う本作だが、ちょいちょい深刻なこと抜きで笑えるポイントがあるのがうれしい。一服の清涼剤……と言うにはあまりにも濃い味だったが、俳優の祝祭的ハイテンションに心から拍手を送 りたい。 クレバスに落ちる瞬間 ところで、本作に南極探検隊のエピソードは無い。二度とは出られぬ氷の裂け目である「クレバス」は出てこないし、“クレバスに落ちる”がどういう状態を指すかの説明も無い。ただ、見ていてはっきりと「あ、落ちた」という瞬間は感じとることができる。 伊東沙保演じる「誕生日前夜に死ぬため公園にやってきた女」と、大石将弘演じる「普通の派遣社員の男」のふたりの演技は圧巻で、強くシーンに惹きつけられた。真面目に人生や他者を愛そうとすればするほど、深い裂け目に滑落する危険がある。登場人物は(人間もそれ以外も)皆それぞれ生きづらさを抱えているけれど、この二人が深く落ちていく余韻はとりわけ丁寧に描かれ、心に残った。ぜひ劇場で目撃してほしい。 三人姉妹 そして滑落を防ぐのに有効なのは、ザイルで身体を結��合うことである。短編の積み重なる本作の軸となっているのが、女性3人のふしぎな連帯だ。緊急事態宣言中にDV避難を余儀なくされた女性を、友人らしきふたりの女性が迎え入れ、手助けする。どうやらそのふたりのうちひとりは自殺願望を抱えており、クリニックで服薬治療を受けているらしい。もうひとりは徹底して彼女たちの肩を持ち、「なぜそこまで面倒を見るのか」と疑問を呈する恋人を撥ねつける。詳しくは描かれないが、このひとりにとっても、彼女たち3人の連帯でしか得られない安寧があるようだ。
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[撮影:noo] 3人の具体的な関係性は不明で、側から見るとこの友情は不可解なようにも思えるが、互いに結び合ったザイルパートナーなのだと理解することができるだろう。誰かひとりが落ちそうになったら他のふたりが助けるし、ひとり落ちたらもしかしたら全員落ちるかもしれない。ていうか既に3人とも落ちているのかもしれない。それでもなおこのスタイルで働き、生きて、行進を続けてゆく所存なのである。 DV避難を余儀なくされた女性は、自覚の追いつかないまま深い恐怖と絶望の中にいる。彼女に友人ふたりがゆっくりと近づいていくシーンは、観劇後も優しい余韻とともに胸に残った。 「日々を越えて」 総出演者23名、2時間40分かけて、この『クレバス2020』はたったひとつのことを言い続けているような気がする。筆者の感じたそれは、「悪くないね」ということだ。「生きていかなくっちゃあね」や 「月が綺麗ですね」と言い換えてもいいかもしれない。社会生活が元々苦手な人もそうでない人も、コロナ禍でさまざまな不自由と断絶に向き合い、変化を飲み込まされた。あの期間、大なり小なり私たちはクレバスに落ちたのだと思う。ではなぜそれが悪くないかって、その下で会えそうだから……ではないだろうか。氷の裂け目の冷たい水に洗われて、月が綺麗って誰かに伝えたい、とか、ずっとこういう自分でいたい、とか、そんな澄み切った感情に気づくことができたからではないだろうか。 本作が「こんなことあったよね〜」という単なる記録のパッチワークに止まらないのは、このとてもポジティブかつタイトルそのまんまメッセージの力である。見る人によって受け止め方は異なるだろうけれど、この舞台が語りかけてくるものはとても強い。もし誰かと一緒に観劇すれば、それぞれのクレバスについて、きっと劇場を出たあと話が尽きないことだろう。それって、私たちがあの日々を生き抜いた最高のご褒美なのではないだろうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ・小杉美香 フリーライター 西洋美術史専攻のち、東京で小劇場やってました。 好きな滑舌は「炙りカルビ×5」。 ライティングの得意分野はアート/映画、 そしてやっぱり演劇が好きです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 劇作家女子会。feat.noo クレバス2020 「It’s not a bad thing that people around the world fall into a crevasse.」 作:モスクワカヌ(劇作家女子会。)  演出:稲葉 賀恵 公演日程:2023年9月27日(水)~10月1日(日) 会場:シアター風姿花伝 2020年第20回AAF戯曲賞特別賞を受賞した作品。コロナ禍による緊急事態宣言中の2020年の日本を��な舞台に、当時を生きた人々へのインタビュー、ニュース、社会情勢をもとに書かれた50本の短編作品を、長編として編纂したもの。緊急事態宣言中にDV避難を余儀なくされた若者を軸に展開される、コロナ禍を舞台にした群像劇。 【本作をご観劇になるお客様への事前のご案内】 本作は、直接的な描写はありませんが、下記を想起させる表現を含みます。 希死念慮 自殺 虐待 性暴力
12歳以下の方がご観劇する際は、保護者の方の同意があることが望ましいです。 事前に台本の内容をご確認される場合は、以下のリンクから閲覧が可能です。 https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/item/Itsnotabut.pdfまた、ご観劇の際のご心配事等ありましたら、本公演に関するお問い合わせ先へご連絡くださいませ。
舞台出演者: 伊東 沙保  大石 将弘  勝沼 優  木内 コギト  工藤 広夢 小池 舞 小石川 桃子  小早川 俊輔  田実 陽子  田尻 祥子  西田 夏奈子  丸山 雄也  水野 小論  毛利 悟巳  ユーリック 永扇  吉岡 あきこ  蓮城 まこと
映像出演者: 阿久澤 菜々 今井 公平 KAKAZU 小林 彩 小林 春世 β
スタッフ ドラマターグ:オノマリコ(劇作家女子会。/趣向) 美術:角浜有香 照明:松本永(eimatsumoto Co.Ltd.) 音響:星野大輔 音楽:西井夕紀子 演奏:白鳥永晃、日比彩湖、Ingel(Falsettos)、Miuko(Falsettos) 映像:和久井幸一 衣裳:富永美夏 演出助手:大月リコ(yoowa) 舞台監督:土居歩、松谷香穂 照明オペレーター:渡邉日和(eimatsumoto Co.Ltd.) 音響オペレーター:宮崎淳子 宣伝美術:デザイン太陽と雲 映像製作:佐藤茉優花 制作:植松侑子、古川真央(syuz’gen) インターン:山尾みる 主催:劇作家女子会。 noo
公演日程: 9月27日(水)19:00~ 9月28日(木)13:00~ 9月29日(金)13:00~/19:00~ 9月30日(土)12:00~★/18:00~ 10月1日(日)12:00~ ★…公演終了後、ポスト・パフォーマンストークを実施いたします。*受付開始��開演の60分前、開場は30分前 ★ポスト・パフォーマンストークゲスト 磯野真穂氏:人類学者・博士(文学)/ 修士(応用人類学)  本公演は上演時間2時間45分(途中休憩あり)となっております。 チケット:   「整理番号付自由席」 劇作家女子会。応援チケット(特典あり) ¥10,000 ★下記に説明がございます。 劇作家女子会。応援チケット(特典なし) ¥6,000 チケット(前半割) :¥4,200 チケット(一般)  :¥4,500 チケット(U24)   :¥3,200 ※ チケット(障がい者):¥2,000 ※ チケット(当日券)   :¥5,000 【チケットについてのご案内事項】 ※整理番号はご予約順に割り振られます。 ※開場時、チケットに記載されている整理番号順にご入場いただきます。 ※開演時間を過ぎますとお席にご案内できない場合がございます。 ※「チケット(前半割)」は、9月27日と9月28日、9月29日の13時の上演回に適用となります。 ※U24チケットはご観劇当日に24歳以下の方が対象となります。当日受付にて身分証をご提示ください。 ※障がい者チケットは、身体障害者手帳・精神障害者保険福祉手帳をお持ちの方、また付き添いの方1名様までご利用頂けます。 ※車椅子でご来場されるお客様は、予約フォームの備考欄等にお書きいただくか、お問い合わせ先の電話番号までご連絡ください。 ※未就学児の方のご観劇はご遠慮くださいませ。 【★劇作家女子会。応援チケット(特典あり)とは?】 特典ありの応援チケットをご購入頂いたお客様には、ご来場時に『クレバス2020another』と題した小冊子を特典としてお渡しします。(劇作家女子会。4名の2020年についてと対談が収録予定です) 本公演に関するお問い合わせ 劇作家女子会。feat. noo (制作担当:合同会社syuz’gen) 〒116-0013 東京都荒川区西日暮里5丁目6-10 gran+ NISHINIPPORI 6階 TEL:03-4213-4290(土・日・祝祭日を除く平日10:00~18:00) FAX:03-4333-0878 MAIL:[email protected]
公式ホームページ:https://gsjoshikai.tumblr.com/
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oratokyosaigunda · 9 months ago
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anime_oshinoko
🌟「東京ブレイド」特集号配布決定🌟 TVアニメ【#推しの子】 『舞台「東京ブレイド」特集号』フリー冊子 9/21(土)よりアニメイト18店舗& 京まふKADOKAWAブースにて配布決定🌟 「姫川大輝×鳴嶋メルト×星野アクア」&「有馬かな×黒川あかね」の撮り下ろしグラビアの豪華W表紙✨ 役者陣のインタビューに加えて、稽古場潜入レポート・初日公演密着取材なども収録✨ ▼配布詳細はこちら▼ https://ichigoproduction.com/Season2/news/i
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chaukachawan · 3 days ago
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地球の核まで
今年度の稽古日誌でははじめまして!えると申します。ちゃうかネームの由来が好きなキャラだと言うとかなりの確率でDEATH NOTEのLだと思われますが、違います。本当の由来はひろがるス��イ!プリキュアのエルちゃん/キュアマジェスティというキャラです。もし37期にプリキュア語れる人がいたらぜひ私にお声がけください。飛んで喜びます。
毎日はエブリデイ!の役者なのですが、一生稽古日誌を当ててもらえないため、異分子かつ老害にもかかわらずこわしなの稽古日誌を書かせていただきます。
6/16(月)の稽古内容は…
🗣発声
🦁猛獣狩りゲーム
🌿樽枝
😮‍💨はぁっていうゲーム
💃キャスパ/📘シーン練
キャスパァ!!楽しいね!!!
みなさんにたくさん踊り狂ってもらいました。
…ん?
6/16(月)…?
ここで問題です!今は何月何日でしょーか!
答えは~~~
6/24(火)です!!!!
…はい。折角当ててもらったくせに1週間以上も放置していました。本当に申し訳ないです。いやでも本当、やることがたくさんあったんです。ではこの1週間のタスクを挙げてみましょう。
• 中間レポート(火曜〆切・未提出)
• ××の××(土曜〆切)
• 実験レポート(月曜〆切)
• その他諸々の課題×6(ほぼ未提出)
• 合宿担当のお仕事
• 合間合間にバイト
ひとつひとつ見ていきましょうか。
• 中間レポート(火曜〆切・未提出)
単純に興味でとった般教のもの。対面で提出の授業内ミニレポートがあるのに、ここ2週連続で行けてなくてまずいです。まだ間に合うかしら。
• ××の××(土曜〆切)
詳しいことはここではお話しできないのですが。こいつが一番の要因です。相当な時間を取ったのに結局土曜に間に合いませんでした…無念。
• 実験レポート(月曜〆切)
月曜の私は修羅場でした。こやつのせいです。23:59〆切のところ、23:52に提出しました。ゴミレポも甚だしいですが、出さないよりはマシなのです。それでは皆さんご一緒に、
『出さない神レポより、出すゴミレポ!!』
これ大事。テストに出ますよ。
• その他諸々の課題×6(ほぼ未提出)
もう全部挙げるのめんどくさいので省略しますが。マジでカスい生活を送っています。ある授業に至っては、あと1回提出忘れたら落単が確定してしまいます。頼むから37期はこんな大学生にならないでね。
• 合宿担当のお仕事
旅行会社さんとあれこれお話ししました。とりあえず行き先が決まってよかったです。みんなが𝑻𝒓𝒊𝒑を𝑬𝒏𝒋𝒐𝒚できるように頑張らせていただきます。
• 合間合間にバイト
私の作ったバーガーでマター���としていただくお仕事です。要領の悪い私のおかげで厨房はドタバ-タです。先輩はスゴーイ。
いや~~~改めて見返すと言い訳できないレベルでクズい生活ですね。もういっそ誰か私を埋めてください。楽にしてください。刃渡り数センチの不信感で静脈を刺してくれてもいいですよ。
質問リレー、またしても老害でごめんなさいね。
「みんなに布教したいもの」
自分の趣味をテーマとした漫画を読むのが好きです。
例えば、
和服:『爛漫ドレスコードレス』『恋せよキモノ乙女』『推し着物』
ごはん:『広告会社、男子寮のおかずくん』『肉女のススメ』『ロリータ飯』『猫と紳士のティールーム』
などなどなど…
本当は他にもオススメの漫画がたーーーくさんあるのですが、書こうとするとキリがありませんので…。みなさんもぜひ、自分の好きなものを扱った漫画を読んでみてはいかがでしょうか。
まだキラキラ新入生の布教したいものを知れてないので、次のテーマも同じにしておきましょう。
では、私は4限のプレゼンのスライドを作るとします(現在12:13、@自宅、3限あり)。来期は真面目に生きたい、と数ヶ月前も言っていたなあ…もう来世に希望を抱くしかないか…
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engekijin-concours · 3 months ago
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「演劇人コンクール2024」最終上演審査 総評・事務局レポート
11月に行われた「演劇人コンクール2024」最終上演審査について、演劇人コンクール 代表・平田オリザによる総評と、事務局によるレポートを公開いたします。 その他の審査員・公簿審査員による総評は「演劇人コンクール2024 記録誌」に掲載いたします。
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新しい演劇人コンクールを目指して
平田オリザ
 昨年は演劇人コンクールの在り方そのものを見直そうと考え、いったん開催をとりやめて、過去の参加者にヒアリングを行うなど検討を重ねてきました。結果として、それほど変わっていないのではないかと感じるかもしれませんが、私たちは今年度の開催を暫定的な方式と考え、今後も改善を繰り返していきたいと願っています。まず今年度は公募審査員制度を制定する、意見交換、講評の手順など工夫を凝らすといった審査面の改善を考えました。またコンクールの全体レポートなども公表します。来年度以降、上演方式についてもさらに模索を続けていきたいと思います。  さて今年は4人の演出家に参加していただきました。参加者を絞った分、濃密なコンクールになったと感じています。各審査員の講評にもあるように各人が戯曲と真摯に向き合い、その成果がよく現れる舞台となっていました。また演出家、出演者と各審査員の意見交換にも時間をかけ、深みのある議論ができたかと思います。  例年通り、審査の経緯について、簡単に報告します。  まず、各審査員が持ち点10点で投票を行いました。一人に10点を入れてもいいし、完全に分散させてもいいという方式です。結果として西田さんとはぎわらさんが、全審査員から得票を得ました。得票の順も西田さん、はぎわらさんの順で点差も開いておりましたので、若干の議論��ありましたが西田さんを受賞とすることが決まりました。  なお、新垣さん、松﨑さんに最多の点を入れた審査員もいたことも付け加えておきます。  その後、これも例年通り、最優秀賞とするか、他に賞を設けるかなどを議論しました。その中で各作品の評価もあらためて行いました。  結論として全会一致で今年度は最優秀賞を出そうということになりました。最優秀賞は2008年以来16年ぶり、演出家の受賞に限ると18年ぶりとなります。利賀村での開催以来、引き継がれてきた最優秀賞に関する不文律は「単にコンクールでの演出がすぐれているだけではなく、将来の日本の演劇界を背負っていける可能性の高い人物」というものでした。西田氏の今回の演出作品は、その基準に充分に値するものであったと思います。特に演出家としての作品全体への目配り、バランスなどが各審査員からも高い評価を得ました。  劇作家、演出家は、あとから振り返ると必ず、何度かの高揚期、成長期があります。西田さんはいま、その最初の時期に来ているのではないかと感じます。そのような時期に、他者や業界から消費されず、きちんといい仕事が残せるかが次のステップに進めるかの分かれ道となるでしょう。この賞が、多少なりとも今後の西田さんの仕事にいい影響を与えることを期待します。  次に次点のはぎわらさんについて、私個人としては個々のアイデアは素晴らしかったのですが、その意想が先行し、逆に戯曲の魅力をそぐ形になってしまった部分があったように感じました。しかしながら、その将来性は疑うべくもなく、劇団の上演も観てみたいと思いました。  次に点数が多かったのは松﨑さんでした。松﨑さんの『マッチ売りの少女』はもっとも大胆にテキストレジが行われていましたが、これも、どちらかというと理念や解釈が先に立ち、どうも頭で行った台詞の選択のように感じました。おそらく、もう少し俳優の身体と相談しながら台詞を精査した方がよかったのかもしれません。舞台美術や衣装のセンスは目を見張るものがあり、今後に大いに期待が持てる舞台でした。  新垣さんについては、一人だけ『楽屋―流れ去るものはやがてなつかしき―』に挑戦し見事に自身の世界観を投影した舞台を創りました。その創作態度、強い意志は、全審査員が好感を持ち「奨励賞」を贈ることとなりました。新垣さんには、もっともっとその世界観を大事にして、何かのアンチや抵抗ではなく、素直に新垣さんの世界を構築していっていただければと思います。  毎年のことですが、やはりコンクールは面白い。審査員だけではなく、観客も含めたすべての参加者に演劇とは、演出と何かを考えさせられる機会となります。この豊岡の地で演劇人コンクールが続けられることの意味をかみしめ、さらに楽しく、奥深いコンクールを目指したいと思います。
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���劇人コンクール2024 事務局レポート
演劇人コンクール事務局 綾門優季
 同じ名前で進められているコンクールであったとしても、コンクールそのものの中身は、毎年度違っていることを知っている者は少ない。基本的には、その年の参加者はその年のことしか知らず、過去で起きたことも未来で起きたことも、比較出来ず、知りようがない。もどかしいように思う。毎年度、素晴らしいことを断ったうえで、今年度、素晴らしかったことをひとつひとつ紐解いていきたい。
 団体のあいだの交流の温度は、とても質感のいいものだった。ライバル意識むきだし、みたいな年もあったし、そもそもコンクールなんだからそれでいいのではないか、という向きもあるかもしれない。しかし運営側の経験的に言えば、それは排他性と自閉性に繋がる面があり、注意が必要である。特にコロナ禍が始まったばかりの時期は、上演の機会を守るという目的は達成されたものの、無観客での開催で、更に対面で意見交換を行う場が設定できなかったこともあり、せっかくこれだけの人数が集まったのに有益な情報のわたしあいがあまりなく、人との交流が失われた演劇のコンクールになんの意味があるのか、途方もない気持ちになって江原河畔劇場の前にある川を、劇場の窓からひとりでぼんやり見つめた日もある。誰ともなるべく出会わないことを人生の幸福のために選ぶとき、演劇というジャンルそのものの意義は、完全におしまいになってしまう。別のコンクールの話をしてしまって申し訳ないけれども、例えば2019年に、キュイがせんがわ劇場演劇コンクールに出場した際に出会ったひとたちは今でもかけがえがなく、濃淡あるけれど、交流が続いている関係者も複数いるし、数年が経過してから、キュイの現場に実際に関わっていただいた方もいた。コンクールは各地域で演劇の文脈が閉じてしまう傾向を破壊する意味合いがある。特に今年度は、どれくらいの期間稽古して、どのように本番に向かったか、各地域でかなり異なる特性の垣間見える話が出て、純粋な驚嘆の声が場内に漏れていた。SNSがここまで発達しても、有益な個別具体的な話になると、なかなか入ってこないのが世の常だ。バズらなくても有益な話はあるし、というよりだいたいの有益な話はバズるように創造されていない。目の前の誰かのためにそもそも人は話し、演じるのだから。
 今年度は4団体に絞られ、2日間のあいだにすべての決着がついたことも、良いバランスであった。休止前の2021年は6団体、2020年は8団体*が出場していたことを思うと、いったいどうやってコンクールを運営することが出来ていたのか、想像を絶する。4団体出場はコンクールの歴史の中でもっとも少なく、だからこそ、それぞれの団体がどのように動いているのかを、しっかり意識できる人数だった。高校でいうなら、学年の1クラスぐらいがぎゅっと集まった���度である。人はある一定の人数を超えたとき、把握しきれなくなって、誰かへの興味がどうしてもだんだんと希薄になってしまう。戯曲賞によって最終候補が4~10作品前後まで幅があり、その作品数の違いを受け止めるのとはまるで違う、良いコンクールのための、良いコミュニティのために適切な人数を考えるためのかけがえのない時間だった。
 最後に、劇団不労社主宰の西田悠哉氏から、関東とは違い、関西では演劇だけでは食べていけないという話がコンクールの受賞スピーチのなかであったことをここに記しておきたい。というのも、いまだに東京に出れば演劇で食っていける的な幻想が根強く残っているが、少なくともコロナ禍を経て、こまばアゴラ劇場をはじめとした小劇場が続々と潰れているいま、まさに「食っていける」領域にいたキャスト・スタッフの一定数も、これからどの山を登ればいいのかわからず、遭難している実情に直面している世界が広がっているからだ。ある世代には、今は冬の時代にみえるかもしれない。だが比較的若い世代では、その事実を後ろ暗いこととしてとらえず、オープンにしたうえで演劇をどう続けていくかのワークショップやシンポジウム、その事実そのものをありのままひとり芝居等で上演してしまうことさえ起きているのは、おそらく歴史的に重大な転換点に他ならない。私はこの変化を、来るべき春の兆しとして捉えて、穏やかに春を待つ。
*コロナ禍以前、利賀芸術公園で実施されていた「利賀演劇人コンクール」では、会場数に合わせて2〜3団体ずつが日程をずらし、順に滞在する形で上演審査を行っており、多い時には全体で11団体が参加していた。屋外も含む利賀の上演空間・特性に合わせた形式だったが、全参加団体が一度に集まる場はもてていなかった。
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illusionist-musical-2025 · 4 months ago
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「イリュージョニスト」稽古場レポート
稽古場の横の控え室にある舞台模型の前では、演出のトム・サザーランドがスタッフと共に打ち合わせをしていた。日本キャストが歌う音源を流しながら、模型のセットを触りながら、熱を帯びた議論を展開している。サザーランドがメロディを口ずさみはじめると(なかなかの大音量である)、傍にいたスタッフから、「歌詞の訳詞を持ってきて」と声があがった。ひとつひとつ日本語版訳詞と照らし合わせながら、舞台を構築しているのだろう。遠目で見ていたので細部までは聞き取れなかったが、議論はどんどん熱気を増していった。
サザーランドのこだわりは強く、「より良きものを作るために、作っては壊すを繰り返している。ドキドキしながらも贅沢な時間を過ごしています」と、アイゼンハイム役の海宝直人は語る。「“よくやる風”の舞台をやりたくない人なんですよ(笑)。朝からお昼すぎまで作ったものを午後には全部壊すことがあるほど」とハプスブルク帝国の皇太子レオポルド役の成河。これを受け、アイゼンハイムの育ての親でもある興行主ジーガを演じる濱田めぐみは、「演出がどんどん変わっていっても、みなさんすぐ対応するんです(笑)。みんなで意見を出し合いながら作品を作っています」。かつてアイゼンハイムと恋心を寄せ合い、現在は皇太子の婚約者であるソフィ役、愛希れいかは「その状況を楽しんでいます、というか楽しんでいないとい���れません(笑)。ものすごく緻密に細かく作っていて、演じるたびに考えさせられます。4年前、悔しい思いをした分、思いも強いです。今回のフルバージョン、ぜひ劇場で観ていただきたいです」と話す。
この日の稽古は、オープニングの「真実」からスタート。19世紀末という時代を体現するように退廃的なマイケル・ブルースによる楽曲が、「自分が信じる真実は、違う側面から見たら嘘かもしれない」というテーマを持つ同作の作品世界へといざなう。
歌いだしは、ストーリーテラー的役割も担うウール警部(栗原英雄)。「真実など陽炎。人は信じる、手にしたものを。だがすべてはかない幻だ」と含みを持って歌い上げる、「最初からテーマを突き付ける、ネタバレともいえる楽曲」(栗原)だ。スタッフや俳優がスタンバイすると、稽古場の雰囲気が一変したのが印象的だった。
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その栗原のソロを、濱田演じるジーガが引き取る。M2「嘘の世界で」は、ジーガのショウのシーン。曲調も一気に変わり、濱田は、両脇に踊り子や曲芸師たちを従え、一座を率いて、踊り、歌う。マイクなしの生声、稽古場でも濱田のパワフルな声と存在感は圧巻だ。共演者によると、濱田はカンパニーで1、2を争う努力家。気づけば、コソ練をしているらしい。
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続いてはМ3の「完璧なトリック」。10年間、面影を追い続けてきたソフィが客席にいることを知ったアイゼンハイムが自身の動揺を鎮めるように、そして、ソフィを思い出して歌う、物語が動き出すきっかけとなる重要な楽曲だ。不協和音や半音階、また素人にはなかなか予想できない転調を「これでもか!」と繰り広げるブルースの真骨頂ともいえる楽曲を、海宝はのびやかな声で歌い上げる。高音のロングトーンは聴く者の心に突き刺さる。コンサート版では、その後も重要なシーンで、この曲のメロディが使われていたと記憶しているが、今回のフルバージョンではいかに?
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М6「サヨナラはもう」は、もう二度と別れの痛みは耐えられない、本当の自分を殺してアイゼンハイムへの思い出を断ち切ろうと決意するソフィによるソロ。ソフィの意思の強さを感じさせる印象に残るバラードだ。愛希は、「この作品は、ほんとうに一曲一曲が大曲で、毎回、感動するし、心が揺さぶられます。セリフや歌詞で語られていない部分も大切に演じたいですね」と思いを語る。ちなみに栗原は、愛希について、「負けず嫌いなところがソフィにぴったり」と話していた。フルバージョンで、愛希が難役であるソフィをどう演じるか、注目したい。
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М8の「全ては解明できる」は、宮廷でアイゼンハイムが出し物を披露する前に、皇太子レオポルドが歌う、アイゼンハイムへの敵意丸出しのソロ。冷たい笑いにゾクゾクする。音楽的な面白さはもちろん、成河の卓越した演技力が実感できる一曲だ。
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それぞれのキャラクターのモチーフになる楽曲の披露に、作品への期待がますます高まる。ひとつのシーンが終わるごとに、スタッフ、キャストが、拍手喝采を送っており、稽古場の和気あいあいとした雰囲気が伝わってきた。栗原は、今回の稽古場を「役者の意見も取り入れてくれる開かれた稽古場」と語っていたが、さまざまな場面でその空気感を感じた。���談になるが、栗原は毎日、稽古場に差し入れをしているそうだ。「年を取ると余計なことを言ってしまいがち。口を出すより金(食べ物)を出せとモットーとしています(笑)。みんなの笑顔も見ることができますし!」と栗原。すっかりカンパニーの胃袋をつかんでいる。
そして、この日、出演者たちは口々に、サザーランドの演出について、興味深いエピソードを教えてくれた。「トムは空間を生かすことに長けた人。アイデアがすごい」(成河)、「普通の芝居や演出だと『つまらない』といって作り直すんです(笑)」(濱田)──。初日から1か月前の段階で、すでにステージングはできているように思えたが、きっとこれからも日々、変化していくのだろう。3月11日の世界初演、成河が「究極のエンタメの作り方を追求していきます」と力を込める『イリュージョニスト』は、さらなる進化を遂げているはずだ。「この作品を見終わった時、お客さまがどういう気持ちで着地するか楽しみです」という海宝の言葉を、私たちはどんな風に受け止めることになるのだろうか。
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(取材・文:長谷川あや/撮影:岡 千里)
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tsuchiuraura · 6 months ago
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つち浦々まちなか演劇めぐり 神立編 レポート
 2024年10月26日と27日に実施された「つち浦々まちなか演劇めぐり神立編」は、5カ所の会場で演劇や朗読など個性豊かなパフォーマンスが繰り広げられていた。日ごろは飲食店として営業している各店舗が劇場に様変わり。演者と観客の距離が近く、通常の劇場では味わえない空気感が魅力だった。
 27日の回で私が最初に観劇したのは米川理恵子さんと佐藤美樹さんの玉響(たまゆら)。美しい声音と音楽で贅沢な時間を過ごさせてくれた。午前の部では今なお多くの人の心を魅了をする金子みすゞの詩を朗読。米川さんの柔らかな声質が金子みすゞの詩の雰囲気と良く調和しており、佐藤さんのピアノの演奏が世界観をさらに強固なものとしていた。朗読だけでなく、メロディーに合わせた歌唱も絶妙で、あっという間の30分だった。  午後の部では朱川湊人の「栞の恋」を朗読。古本屋の一冊の本に挟まれた栞で、時間を超えた文通をするという物語。SNS全盛の現代だからこそ、より響くものがある。ユーモアを感じさせつつ切なくもある語り口は一編の一人芝居を見たようだった。  会場は隠れ家イタリアンの金澤屋。上演エリアには自然光が差し込み、あたたかな雰囲気が作品にも良く合っていた。  今回の演目で最も演劇的であったのは劇団√6による「Trash Fish」だ。福田琢哉さんのオリジナル作品で、「鬼仮面」という名の怪盗が逮捕された後の後日談を「捕まえた側(SIDE:A)」「捕まえられた側(SIDE:B)」から描くという面白い試み。SIDE:Aの会場は焼き鳥屋鳥吉。飲食店で働く二人の男女が仕込みをしている所から物語は始まる。うだつの上がらないアルバイトの男(カンフー店員)が「鬼仮面を捕らえた男」としてサイン会を開くも全く誰も訪ねてこない。やがて絵画専門の探偵が現れるが、カンフー店員とのかみ合わない会話は滑稽で笑いを誘う。最終的に絵画は「鬼仮面」の仲間にだまし取られてしまうが、カンフー店員はそれを受け入れられない、というところで物語は終わる。  SIDE:Bは、見事に絵画をだまし取った鬼仮面の仲間たち3人の物語。会場はノスタルジックな雰囲気が魅力の喫茶・酒場「のすたるじあ」と玉響の会場でもあった金澤屋。いずれも、秘密のアジトといった雰囲気を醸し出していた。「鬼仮面」が絵画を盗んできた理由がこ���エピソードで明らかにされる。  どちらのエピソードもコミカルな雰囲気で飽きさせないつくりだが、一方で社会と相容れない人々の悲哀のようなものも感じた。カンフー店員の行動や言動は喜劇的だが、見方を変えると人生につまずく男の悲哀が見える。怪盗団のスミスは元引きこもりで居場所を求めて泥棒を続けようとするが、罪の意識にさいなまれるテンテンは、探偵に情報をリークし、幕引きを図る。物語は悪役である泥棒が捕まって終わるがハッピーエンドという雰囲気ではない。最後、鬼の仮面を装着し逃亡を図るスミスの姿には何とも言えない苦みを感じた。  居酒屋寿々喜では、演劇歴約50年の役者、斜三次さんによる「極私的演劇温故知新」が披露された。アングラ演劇の旗手である唐十郎の足跡をたどりながら、アングラ演劇史を語るという企画。唐十郎の時代と自身の演劇キャリアが重なっている斜三次さんだからこそ、その語り口には生々しさや説得力を感じられた。ラストには、 斜三次さん自身が唐十郎の「糸姫」のワンシーンを演じる一人芝居が披露され、見る者の心を打った。  斜三次さんは最後に、これまで芝居を続けてきた理由を「皆さんと夢のように出会い夢のような一ひとときを過ごしたかった」と語り、幕を引いた。  会場の寿々喜は、カウンターと畳の小上がりがある居酒屋。独特の雰囲気が、斜三次さんの語るアングラの世界観に良くマッチしていた。  本格的な中華料理が食べられる中国料理店盛榮では、「よませてヨマセテ」によるグリム童話「ねずの木」の朗読が披露された。残酷な物語の多いグリム童話の中だが、この話も継母が息子を殺し、その肉を食べるという非常にショッキングで猟奇的な話だ。しかし、語り口のおかげでどこか現実感の薄いおとぎ話のように聞こえてそこまで重い空気にはなっていなかった。途中、小鳥が歌うシーンが何度かあったが、その際の歌声は非常に透き通っており印象深かった。ねずの木の後に読まれた「トゥルーデさん」も、短いがゾッとするような物語で引き込まれた。  「つち浦々まちなか演劇めぐり」は昨年、土浦市街地で開催された。昨年に比べるとエリアも参加団体もコンパクトだったため、移動ルートや次に何を見るか?という選択肢が分かりやすかったのは利点だったと感じる。観劇すると会場ごとにスタンプをもらえるスタンプラリーシステムも面白く「せっかくならもう1団体」「どうせならコンプリートを」と観劇意欲を誘われた人も多いようだった。  次の会場に移動��る際、知らない人がパンフレットを持ちながら同じ方向に歩いているのを目にすることも多く、そんな時に仲間意識を感じられるのも良かった。移動中のルートで街並みや知らないお店を発見するのも面白く、まち全体を会場とするイベントの醍醐味を感じられた。
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miruelemaga · 2 years ago
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エレキコミック発表会「鮎」 稽古場レポート
https://bookstand.webdoku.jp/melma_box/detail.php?mid=16&cid=3966
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tokyonow · 2 years ago
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(3月10日(金)より上演!梅棒 16th showdown『曇天ガエシ』稽古場レポートが到着! - Tokyo Nowから)
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petitcinema · 2 years ago
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2023.11.26 [ プチシネマ寄席10周年記念のらくごフェス ] レポート②
この日がお誕生日!の立川笑二さんのご登場��!
前日のLuck Apartmentでは、
なんとお客さんからのリクエスト(滑稽・怪談・人情・新作)から演目を決定するという特別な企画があり。
しかも結果「滑稽、怪談の要素がある新作」を二席!
最後がお客さんの「ひえぇぇ」で締めくくられた高座でした。笑
フェスでは古典「転失気」を披露され、前夜祭とフェスと両日参加された方は
笑二さんの振り幅の凄さに魅了されたようでした!!
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そして吉笑さんの出囃子が流れるはずが
音響スタッフが笑いながら何やらざわざわ。
なんと「ハッピーバースデー」が流れてきました。笑
兄弟子の吉笑さんの粋な計らい!!
でもサラッとマクラに入られる吉笑さん、素敵でした。笑
さあ!吉笑さんといえば11/8に真打昇進内定となったばかり!
ファンにはたまらない真打トライアルの裏話などに続き
「ぷるぷるぷるぷるぷる」
きたーーーーー!!!
昨年NHK新人落語大賞にて見事満点優勝された「ぷるぷる」!!
テレビで見ていたので、生で聞けて嬉しかったです!というご感想も頂きました。
沸きに沸くお客様。もう幸せです。すでに。
お久しぶりの吉笑さん、めちゃくちゃパワーアップされて
その上勢いがものすごい今だからこその高座。
皆様と共有できて嬉しかったです。
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続きましては宮治師匠!
これがまた急遽変更された出囃子が口外厳禁。笑
熱演の高座を降りられた吉笑さんもこの表情。良い写真!
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ザ・エンターテイナーと勝手にお呼びしているのですが、
今回もマクラからドカンドカン爆笑。さすがです。
そのままの勢いで「手水廻し」へ。
終始勢いが衰えることない���治師匠。もはや怪物です。笑
最後に宮治師匠とご一緒したのは、2020年の1月。
あれから笑点メンバーになられて
今ではすっかりメディアに全国の落語会に引っ張りだこになられた今も、
お客様を全力で笑わせてやる!!!と全く変わらない宮治師匠。
写真を見ているだけでもお声が聞こえてきそうなほど。笑
今回の大きい落語会で緊張している私にも
気を遣っていただいて、もう本当にありがたい限りです。
ちなみに今回も送迎の車内でもめちゃくちゃ面白かったらしいです。
天賦の才能ととんでもない努力のお方。今後も爆笑王に君臨し続けること間違いなしです!!
本もぜひーーーー。
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ここから仲入り!
ライカ南国ホールではなんと会場内での飲食が可能ですので
ここでおやつタイムです。
ホワイエでは
12月のプチシネマ寄席 [ 玉川太福独演会 ]のチケット販売も!
これがまたすんごいんです。
太福師匠の代表作「地べたの二人」の舞台を
なんと今回はプチシネマ寄席に設定して創作して頂きました!!!
こりゃあもう祭り。是非お越しくださいませ!!
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そして仲入り後、後半の部へ!
その3へ続きますーー!
写真/コセリエ
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otajo · 2 years ago
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ラストまで描き切る完結編!ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」~忍の生きる道~開幕目前!稽古場レポート
http://dlvr.it/Swg9N8
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chaukachawan · 28 days ago
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絶賛迷走中!
こんにちは、あるいはこんばんは。37期生ピクセルです。
文章書くの好きなんですけど苦手なんですよね。カチカチに真面目なレポートとか体験記なら得意なんですけど...
初の稽古日誌、やりたいようにやらせていただきます。どうかお付き合いください。
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5/29の稽古内容は以下の通りです。
発声(一部寝ころびながら)
別の脚本グループと合同でやらせていただきました。肺活量って急激に増える方法ないんですかね。いつもとんでもないくらい長く伸ばしている人が数名いるんですがまじでリスペクトです。早口言葉自信満々に読み間違いました。恥ずかしい
パワースピーチ
 みなさんアドリブ力高すぎませんか??持っているエピソードの数が少ないんだろうか。大学生活Maxまで楽しんでいきたいのでなんでも手を出したい。アドリブ力対応力を盛ることが目下の目標でございます。
ヤバいやつエチュード
 その名の通りヤバいやつが1人いるエチュードです。この人に展開とクオリティの大半がかかっています。めっっっっちゃ面白かった。ほんとに。どこまで話していいのか分からないから秘匿しますけどほんまにおもろかった。ヤバいやつを引かない限り無限にやりたいです。
脚本稽古
 通しました。難しいねぇ。とりあえず長台詞は口をついて出てくるようになじませたい。変な思考が挟まると感情が行方不明になります。一辺倒にならないようにしたいなー。せっかく頂けた役なので大切にしたいです。書きたい事はいくらでもありますが、残念ながらネタバレです。とにかく楽しい稽古現場です。
入れエチュード(名称不安定)
 休憩のエチュードをしました。休憩のエチュード...?
お題の単語をしれっと言わなきゃいけないエチュードです。やりすぎていつものって感じがしま��。ただ面白れぇんだこれが。何回やったっていい。そろそろ自分のお題に対するリソースを圧縮して、人のお題を当てる方面に割いていきたい。めざせ完全勝利!
脚本通し
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フリートーク
 通しっていいですよね。もちろん細々止めてご指摘いただいて、確実に上達を実感するのもいいんですけど。気持ちが繋がるというか。ピントが合って腑に落ちるというか。なんかいいですよね。合奏と同じノリを感じる。
とにかく最近良いこと続きで幸せです。劇団楽しい!こんな楽しいことがあっていいんでしょうか。いつか帳尻合わせが来てもおかしくないなという考えがふわっと頭をよぎりますが、そんな訳ないので無限に遊ばせてもらいます。実はとんでもポジティブ人間なんです。ピクミンを育てるスマホアプリで毎日その日の気分を笑顔・真顔・泣き顔から選ぶのですが、4月ほぼ一面笑顔でした。絵ずらが面白い。
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本番が待ち遠しいです。絶対うまくなって見せます。まだまだ未熟者ですので足を引っ張り続けることが予想されますが、早く迷走の森から抜け出します。引っ張り上げていただけると幸いです。
どうぞよろしくお願いします!!
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underdog-movie · 4 years ago
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1月8日実施アップリンク京都での舞台挨拶レポート
1月8日(金)にアップリンク京都にて、森山未來さん、佐藤現プロデューサーが登壇しての舞台挨拶イベントが行われました。Q&Aの詳細をお届けします。
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Q1.3人のボクサー役の皆さんの印象を一言でお願いします。 (佐藤P)森山未來さんは役作りに関してストイックだとよく言われています。ストイックというのは禁欲的というか自分を犠牲にしてという印象が強いのですが、森山さんは自然体といいますか、「全身表現者」。日本ランク1位まで上り詰めたボクサーの肉体と技術を習得するというのをこの役を引き受けるうえで、苦労を苦労と思わず当たり前のこととしてやられている感じがしました。北村匠海さんは本当に男前。顔ももちろんですが、人間的に素晴らしい男前。音楽も役者もやっていて大変忙しく、睡眠時間も取れていないような中で嫌な顔一つせずボクシングを楽しそうに練習している姿に惚れそうになりました。心身ともに全部が男前な人間だなと思いました。勝地涼さんはおどけた役を完璧に演じ切りながらも、その裏では真摯に役にのめり込み、真剣そのものの表情を見せる。芸人さんが持っている目と近いなと思い宮城という役にキャスティングしました。 思い入れのある役になったとご本人も言ってくださっているのでうまくはまって良かったなと思います。
Q2.本作のエキストラに参加をして役者さんはもちろん監督、スタッフの皆さんがとても良いチームだなと思いました。森山さんをキャスティングした理由は何ですか? (佐藤P)末永晃という役が寡黙でセリフが極端に少ない中での表現力、日本ランキング1位を目指すボクサーを体現する身体能力、あらゆる芝居の表現力を考えると森山さんしかいないな、と私も武監督も脚本の足立さんも一致したので声をかけさせて頂きました。 Q3.本作を観て、登場人物が色々と変化していく姿に胸を動かされました。 この作品にかかわってボクシングを練習されて、やる前とやる後で変わったことを教えてください。 (森山)1年前ぐらいからボクシングをやっていて、北村さんとの試合シーン、勝地さんとの試合シーンをやり切った時の爽快さ、気持ちよさはありました。個人的な話ですが、3月1日のクランクアップの2、3日前にナンバーガールの向井秀徳さんから連絡があり、コロナの影響でライブが無観客になってしまったのでフロアで暴れてくれないかということで、ちょうどクランクアップの直後にライブ会場に向かったんですけど、もうこれはシャドーボクシングを入れないとあかんやろ、みたいな気分になって(笑) ナンバーガールのパフォーマンスに合わせてシャドーボクシングできたところまでを含めて「アンダードッグ」を全てやり切った感じがしました。 (佐藤P)スタッフ一同、配信されたライブを熱い気持ちで観ていました。 Q4.配信版含めて作品を観るのが今日で3回目です。 主人公の晃を取り巻く人たちがすごく魅力的で、厳しいことを言いながらもそこに晃への愛情が感じられました。晃を応援したくなるような魅力とはどういうところだと思いますか? (森山)台本を読んだときは優しい言葉をかけてもらっているという印象は晃の目線から読むと全く無かったんですけど(笑)人にかけられる言葉というよりも、自分自身が置かれている状況に対してどう感じているかという重みというか、だからこそ自分の口から言葉が出ない、誰に何を言われてもなかなか言い返すことができない、それで寡黙になってしまっているキャラクターと自分では解釈していました。 最初試写を観た時も、晃が魅力的かどうか判断ができなかったし、この主人公で大丈夫なのか不安でした。 (佐藤P)末永晃という主人公が皆から愛すべき男と思われないんじゃないかと脚本段階から森山さんは心配されていましたね。公開してみたらお客さんが末永晃に共感してくれていて、嬉しい意外性でした。 (森山)どこに萌えポイントがあったのかむしろ教えてほしいぐらい(笑) ※お客さんから「負け続けてもくさっていないところ」と教えてもらい― (森山)めっちゃくさってるじゃないですか(笑) でも最後は身体で勝負、という仕事をしている人たちのメンタリティはやっぱり普通の人とは違うのかなと思います。晃が昼でなく、夜中営業後のジムで稽古をしているのは(若い人やトレーナーと顔を合わせるのもはばかられるような)ボクサーの成れの果てなんですよね。 でもそれでも自分の習慣で身体を動かすということで保たれるメンタリティや どれだけ荒んだ生活で心がささくれだってても、どこか落ちるところまで落ちきれないある種健康的な部分があるのかもしれないと思います。 (佐藤P)元々脚本には極端に晃のセリフが少なかったですよね。その中でも森山さんが晃という人物を作り上げていく中で、バイトしているサウナだったりチャンプアとの掛け合いなど割と気楽に話す雰囲気を作ったり、息子の太郎の前ではタバコも吸わないし、父親像を保とうとしている。そういう人間味は森山さんが演じることで脚本よりも増した印象がありますね。 (森山)そうしないとキャラクターを見せる術が無いんじゃないかと思ったし、誰と話せて誰と話せないのかという、僕としては寡黙さの意味が大事だと思っていました。子供と外国人と老人には強いけど、龍太(北村匠海さん)やジムの会長とはしゃべれない…そういうずるさというか染みついてしまった弱さがあり、そういう部分で人間性を出していくことが必要なのかなと思っていました。 Q5.「アンダードッグ」は他の映画に比べて日にちの経過が多い作品だと思いました。同じロケ地で全然違うシーンを撮る時の演技の切り替え方を教えてください。 (森山)武監督とも大変だったね、と話しているのが、劇中何度も登場した田淵の家の前に車で送迎しに行くシーン。2日間くらい通して撮り続けていました。ただ車で到着して明美(瀧内公美さん)をおろして、の繰り返しでしたが、劇中の時間の経過の中でシチュエーション、キャラクターの変化を描くのに僕だけでなく武監督も混乱していたと言っていました。 父親(柄本明さん)との家のシーンも前半パートのくだりを1日、後半パートのくだりを1日で撮ったりしていて変化を出すのが大変でした。 でも実際のシーン通りに順番に撮れたら映画として正しいのか、というとそうでもない気がしていて…。 脚本に書かれている順序と現場で生まれる順序というのがあるんですけど、例えば脚本ではラストのシーンを一番初めに撮らなければならなくなったとしても、そこから何かが生まれる瞬間というのが必ずあると思いますし、現場で生まれる時間軸と脚本の時間軸は違っていることで面白い瞬間が生まれることもおおいにあるといつも思っています。 それこそ、脚本通りに最終的な編集があがっていることは僕の経験では1回もないんですよ。 というぐらい、やっぱり現場で撮った体感として何を受け取ったかという力のバランスでシーンは組み替えられていくものなので、もちろん現場でやっている方は大変なんですけど、順番に撮ることが全てではないなと思います。 Q6.「アンダードッグ」は鏡越しのカットが非常に多いと思います。 晃がバックミラーを見るシーンのこだわりは何かありましたか? (森山)微妙な変化を武監督が切り取ってくれたんだなと思います。 もちろんいろんな感情で演じてはいるのですが、自分が演じている感覚と監督が受け取った感覚はまた違うじゃないですか。だからその時自分は何かを思って演じたんでしょうけど 編集で思った通りの使われ方をしたのかどうかは僕にももはや分かりません。 Q7.撮影で大変だったこと、楽しかったことはありますか? (森山)ボクシングのトレーニングで苦しい時間はありましたが、それを大変だったと当時思っていたかどうかは分からないです。楽しかったこと…今振り返ると全部が楽しかったなあと思いますが、楽しい楽しいと思って映画の現場にいることってないですよね?(笑) (佐藤P)みんなで一つになって真剣にやっていたことが後から考えると楽しかったなとは思いますけど、現場ではキャストもスタッフもギリギリになってやっているのであんまり思わないですよね。特にボクシングシーンは一歩間違えると大けがになりますし。 先ほども言いましたが森山さんは苦労を苦労と思わない方なのですが、試合のシーンは、数日前から一切の糖質を抜いて直前に糖質だけを取ってパンプアップさせる(「カーボローディング」という)手法を取るなど、相当大変なことを実践されていましたよね。
Q8.参考にされたボクサーはいますか? (森山)坂本博之さんですかね。ワン、ツーで攻めるというよりはフックといいますか。 (佐藤P)坂本博之さんは児童養護施設で育ってボクシングをはじめた方なんですよね。そう意味では生い立ちからすると龍太(北村匠海さん)に近くて、ファイトスタイルは晃に引き継がれているという。 そう考えたら、この作品は結構坂本博之さんに影響を受けている部分が多いです。 (森山)有名なタイトルマッチで坂本さんと畑山隆則さんの戦いがあるんですけど畑山さんのスタイルは龍太ですよね。 (佐藤P)龍太は生い立ちは坂本さんで、ファイトスタイルは畑山さんっぽいですね。 Q9.末永晃の入場シーンが好きです。CHAGE and ASKAさんの「モーニングムーン」を入場曲に選んだ理由は何ですか? (森山)入場曲はとても重要なので、武監督やスタッフの皆さんと何がいいかなと話していたんですけど、内藤大助選手がCCBの「Romanticが止まらない」を使っていたように、それぞれが自分のバックボーンで自由に決められる曲なので色々と考えました。それでパッと「モーニングムーン」が良いなと思って。なんでかというと、あの曲は夜と朝の間をさまよう人の歌なので、晃にとっては皮肉というか生々しくうつるんじゃないかと。 朝にはいけない瀬戸際でさまよっている人の風情がうつるなあと思ったし、あとはこの曲はある種男と女のアゲアゲな曲なので、きっと末永晃にもこういう時期があったんじゃないかなと思っていて。 世代的には「モーニングムーン」の世代ではないし人間的にアゲアゲの時期は過ぎてしまったけど、いまだに「モーニングムーン」をかけていて、朝にまでいきつけない夜の中でジメジメしている晃というキャラクターがいろんな意味でハマるなと思いました。 最後に、森山さんからのメッセージ 京都での上映はこれで一旦終了ということですが、全国各地でまだまだ上映は続きます。ABEMAでの配信版も始まっていますが、配信版は配信版の良さがあり、劇場版のスピード感もとても良くて、改めてそれぞれの違いが面白さとして伝わっていて良いなあ、と感じています。本日は本当にありがとうございました。
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grossherzigkeit · 6 years ago
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【「体育会系」という半端者】 「馬鹿は風邪をひかない」という格言の通り、長らく病院というものにはまるで縁のない生活を送ってきた身なのだけれども、さすがに40にもなると身体のあちこちにガタが目立つようになって、先月から定期的に病院通いを義務付けられてしまった。それで本日、その白い巨塔に赴いたら多くの患者が列をなしていて、しばらくボーっと、待合室のテレビに映る、日ごろまったく見る機会のない民放のワイドショーというものを見ていた。  ちょうどその時間帯の番組の話題は、今夏の高校野球を制した大阪・履正社高校に関することで、どういう練習や工夫の末にその栄冠をつかみ取ったのかということをいろいろレポート。個人的に非常に面白いものであった。  これはすでにさまざなメディアで多々報道もされていることだが、履正社野球部は日々の練習時間をきっかり3時間に限り、寮もなく、いわゆる「体育会系」という言葉がイメージする厳しさや統制とは縁が薄いのだという。そして履正社は敵チーム、わけても決勝戦の相手となった星稜高校のエースピッチャーに関し大変な研究・分析を行ってきて、万全の備えで戦いにのぞんだのだといったことが語られていた。そしてそういうレポートを見終わって私が思った第一の感想とは、「こりゃ、忙しそうなチームだ」というものであった。  昔、プロ野球界に「野村ID野球」といった言葉があったけれども、そういうデータ情報分析をへて試合にのぞむというのは、もはや高校野球の世界でも当たり前で、いわゆる「長嶋カンピューター野球」などというものは、完全に姿を消しているのだろう。あと、練習時間をきっかり3時間に限るというのも理にかなっていることで、体力というものは適宜の休憩を挟まないと実は向上しない。5時間も6時間も練習するなどというのは注意力を散漫にしてケガを生んだりするし、またきちんとした力が入らない状態で素振りを繰り返せば、おかしなフォームが身について修正できなくなるというのは、私が学んできた武道の世界でも同じことである。あまりにもな長時間練習というのは、実はダラダラしたものにしかならず、やってる人々の「自己満足心を満たす」以外の効果はほぼないのである。  また履正社が寮生活を採用していないといっても、あれだけ精緻なデータ野球を展開していれば、選手は自宅でも野球に関する相当な座学に打ち込んでいるだろうし、そして前述のように「きちんとした休息をとる」というのは実は立派な「練習」で、栄養管理なども厳格であるはずだ。履正社の選手に「自由」が与えられているからといって、彼らが放課後に遊びほうけていることは考えられない。  ワイドショーはしきりと履正社野球部の「自由で頭脳的な気風」を強調していたけれども、私自身はそれを見ながら、「いや、彼らは“自由で頭脳的”であるがゆえに、相当忙しいはずだし、また非常な自制心というものを求められているはずだぞ」と思ったのである。率直に言うが、「頭をカラッポにして、ただ怒鳴られ、殴られていればいい」というような「無為な時間の過ごし方」ができる「体育会系という半端者」よりも、履正社野球部はかなり「厳しい生活」をしているのではないかと思ったのである。  私はスポーツというのは武道・格闘技関連以外、しっかりと打ち込んだものがないけれども、私がバリバリそういうものに親しんでいた20年前の学生時代ですら、本気で上を目指しているような選手というのは、もうそんなに野蛮な上下関係や暴力的環境には生きていなかった。ある将来有望とされた名門柔道部の人に話を聞く機会があったのだが、「殴って人が強くなるならいくらでも殴りますけど、そんなことはないわけで。今はちゃんと研究しないと勝てないです。そりゃ、上下関係みたいなものが完全にないとは言いませんが、われわれには『シゴキをやっているヒマ』なんてないんですよ。だって強さに何にもつながらないんだから」と、笑って言っていた。  ただ、私はそういうことをもって「今の『体育会系』からはシゴキは消えた」などと言っているのではない。そういう「昔かたぎの体育会系」のおかしさは、残っているところにはあまりにも強固に残っている。私が学生時分に見た一番ひどい例は、名前は出さないがある国公立大学の某部であった。私はある関係上から出稽古に行かねばならぬ羽目になってそこへ赴いたのだが、強豪校であるなどという話はまったく聞かないそこには、本当に地獄のような上下関係、シゴキが横行していた。さすがに「客人」である私自身にそういう刃は向けられなかったものの、1年生や2年生がそれこそゴミのように扱われ、先輩たちに暴言や暴力に、私の目の前でさらされていた。私がそこへ赴いたのは夏休みの合宿中だったのだが、早朝から夜まで、12時間以上のぶっ続け稽古が行われていて、本当に自己満足のダラダラしたもの以外の何ものでもなかったことを今でも覚えている。  ちょっと唖然としている私に、その部の幹部はニッコリして言ったものだ。 「われわれは確かに弱小で、また高校から才能ある選手が入ってくるわけではない。だからこそ、われわれは一流校でもやっていないような厳しい環境に身を置いてがんばっているんですよ」  私はそのとき、「はあ、そうですか」というような返事しかしなかったが、いまだにこの論理不明の理屈をどう解釈すべきか悩んでいるくらいだ。  この部活の頭のおかしさは、私の見聞した範囲でも群を抜いていたものだったが、ただここがいわゆる「特殊例」なのかというと、これがそうでもないのだ。いまこの2019年時点ではもう、私は学生スポーツの現状などというものは分からないが、私が学生だった20年くらい前は、この「強豪校は理論的・科学的な練習に切り替えて脱根性論を図り、一方で半端な学校が『一流校をしのぐ』という珍理屈で体育会的過酷さを増す」という傾向が確かに見られ、無論例外はいくつもあったが、半端な学校の部活ほど馬鹿みたいに厳しかった。「普通の青年が普通の楽しみのためにスポーツをする場」というものは、これからどこに存在しうるのだろうと、ちょっと私は心配になったくらいだ(そして私はこの2019年段階において、「ちょっと体を鍛えたい」という人が雪崩を打つようにスポーツジムに走り、スポーツ競技に入門するという選択肢を最初からもっていない現象の原因の一つをここに見ている)。  いわゆるグローバル競争の激化する時代になって、「『根性』を出しても別に勝てない」というのは、スポーツだけではなくビジネスの世界でももう、当然の知見になりつつあると思う。収益を上げている一流企業ほど(下請けの搾取といった話はまた別にあるものの)、労働時間も短い「ホワイト企業」であるというのも、もう常識になりつつある。そしてブラック企業なるものは大抵、業績的には二流、三���の会社であって、自分も取材などでずいぶん行ったが、そういうところには「現金出すな、元気出せ!」式の不可解な標語が大きく墨書されて張り出され、社員はみんな日付が変わるころまで働いている。  そしてグローバル競争の中で「日本の企業」というものそれ自体が海外企業に劣後しつつあるというのも有名な話で、かくして「日本という二流」が、それゆえに「厳しい環境」に身を置く自己満足の潮流に流されているのだとしたら、私などはちょっと危機感を覚えるところがある。履正社の活躍というものが、そういう日本人の目を覚ますきっかけになればいいのだが。  とかくいま、「体育会系的厳しさ」というのは、半端者の証のようになりつつあるのだ。
2019年8月23日 小川 寛大
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don-dake · 6 years ago
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「『ラ・マンチャの男』50周年、稽古場レポート」 [參照]
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miruelemaga · 2 years ago
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コントの人ナーナ アイタ ペアペア」 稽古場レポート
https://bookstand.webdoku.jp/melma_box/detail.php?mid=16&cid=3752
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tokyonow · 2 years ago
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(『SHELL』稽古場レポートが到着!倉持裕×杉原邦生が注目の初タッグ!石井杏奈、秋田汐梨ら個性豊かな俳優陣が集結 - Tokyo Nowから)
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