#篭島敏男
Explore tagged Tumblr posts
Audio
ちょっと待ってJINYA par 篭島敏男 🎧 Nouveau titre ajouté à notre playlist Spotify 🎶 Jmusic Weekly Digest 🔗 https://open.spotify.com/playlist/7AKGDRwkrYIALKJ1uU3Ghj
0 notes
Text
【アンケート企画】 「2017年の3本」
WLでは読者のみなさんから2017年に見た舞台作品の中で印象に残った3本を、その理由などを書いたコメントとあわせて募るアンケートを実施しました。WLスタート以来毎年行っているこの企画、3回目の今回は20名の方にご参加いただきました。掲載は到着順です。
雨宮 縁(会社員) ・劇団四季『ノートルダムの鐘』(四季劇場〔秋〕) ・ホリプロ『パレード』(東京芸術劇場 プレイハウス) ・ホリプロ『ファインディング・ネバーランド』(東急シアターオーブ ) 『ノートルダムの鐘』は何が悪なのか? 怪物は誰なのか? 人間の業と差別について圧倒的なクワイアの歌声で問われる秀逸な作品。 ミュージカル『パレード』はストレートプレイを見ているようなミュージカル。アメリカ南部で起こった実話の冤罪事件をミュージカル化した異色作。ある少女殺人事件をきっかけに人種差別や成功者への妬みなどから警察やマスコミ、政治家様々な立場の人達により犯人に仕立て上げられていく恐ろしさ。これが物語ではなく実話であるというさらなる恐ろしさに声が出ない程の衝撃だった。実力者ぞろいの出演者達で見応え満点だった。 ブロードウェイミュージカル『ファインディング・ネバーランド』は来日公演。ミュージカルらしい作品。イマジネーションの世界は自由だと夢のあるミュージカル。窮屈な現実から解き放される感動作で前向きな気持ちにしてくれます。(年間観劇本数:24本)
小田島 創志(大学院生・非常勤講師) ・KAAT『オーランド―』(KAAT神奈川芸術劇場) ・やみ・あがりシアター『すずめのなみだだん!』(小劇場てあとるらぽう) ・地人会新社『豚小屋』(新国立劇場 小劇場) 1.KAAT『オーランド―』…ジェンダー、言葉の意味、文化慣習、時代精神などの脱自然化を、舞台上で緻密に表現。観客の想像力を喚起する役者さんの演技も白井さんの演出も圧巻。「男である」「女である」のではなく、「男になる」「女になる」というボーヴォワール的な価値観を、演劇的にスタイリッシュに表現していて素晴らしかった。 2.やみ・あがりシアター『すずめのなみだだん!』…個人と社会、個人と宗教の関係性を、コミカルかつ丁寧な言葉を紡いで描いた意欲作。テーマが複層的で、観客側の思考を誘う。 3.アソル・フガード『豚小屋』…個人よりも集団が過剰に優先され、個人の犠牲の上に集団が成り立つ状況下で、戦争に駆り立てられる庶民の「受難」を、北村有起哉さんと田畑��子さんの壮絶な演技で伝えていた。(年間観劇本数:53本)
豊川 涼太(学生) ・ロロ『父母姉僕弟君』(シアターサンモール) ・木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談 通し上演』(あうるすぽっと) ・ままごと『わたしの星』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) 今年の3本を選んでみると、全てが再演(初演はどれも観ていない)だった。 特にロロ『父母姉僕弟君』はキティエンターテイメントプロデュースで、より大きなサイズで大きなスケールで上演できていた。 他の方々も語るように、再演賞を設ける等、演劇界全体で再演文化の定着に力を入れて欲しい。(年間観劇本数:50本程度)
なかむら なおき(観光客) ・月刊「根本宗子」『スーパーストライク』(ザ・スズナリ) ・劇団四季 『ノートルダムの鐘』(四季劇場〔秋〕) ・こまつ座『イヌの仇討』(紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA) 『スーパーストライク』は良し悪しの前にもっとも欲していることが届く作品だったので。『ノートルダムの鐘』はあえて出来事だけを表現して観客に判断を任せているのが面白かった。そして『イヌの仇討』は忠臣蔵を下敷きに目に見えない得体の知れない大きな力を描いていて続々としたなぁと。あ、これらは趣味です。 で、上演された作品を見ると、今の世の中に応答するような作品が多いように思うのです。そして小劇場界隈で育ってきた演出家が大劇場の演出を務めるようになってきているように思うのです。また少し変わったかなぁと思うのです。(年間観劇本数:100本ぐらいですかね)
北村 紗衣(研究者) ・ケネス・ブラナー演出、トム・ヒドルストン主演『ハムレット』(RADA) ・カクシンハン『マクベス』(東京芸術劇場 シアターウエスト) ・モチロンプロデュース『クラウドナイン』(東京芸術劇場 シアターイースト) 今年は『ハムレット』を6本見て、アンドルー・スコット主演版や川崎ラゾーナ版なども良かったのですが、ヒドルストンの『ハムレット』が一番好みでした。ハムレット以外の若者役を全員女性にするキャスティングが効いていました。カクシンハンの『マクベス』はまるでゴミみたいなセットでしたが、内容はゴミとはほど遠いエネルギッシュなものでした。『クラウドナイン』は大変面白かったのですが、あまりよく考えずに「レズ」とか「少年愛」などという言葉を使っているマーケティングは大変残念でした。 (年間観劇本数:121本)
町田 博治(会社役員) ・青☆組『グランパと赤い塔』(吉祥寺シアター) ・小松台東『山笑う』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) ・ SPAC『アンティゴネ ~時を超える送り火~』(駿府城公演特設会場) 『グランパと赤い塔』 吉田小夏が人の綾なす思いを紡ぎ、丁寧に織り上げられる。 背筋が伸び厚みと洒脱さを合わせ持つ老紳士を佐藤滋が見事に演じ、福寿奈央の初老の妻も見事。二人が作品に一本の筋を通す。 裏の主役とでも言うべき女中役を大西玲子が、目線、ことば、仕草、身体で見事に演じていた。役者が皆素晴らしい。 『山笑う』 兄と妹、地方と都会、肉親ゆえの諍い。 静かに光る小さな宝石の様な作品。 松本哲也の演出がシリアスさと笑いをバランスさせ絶妙。厚みのある演技、役者達のバランスも絶妙。 『アンティゴネ』 冒頭女優石井萠水がミニ・アンティゴネを演じ客を引き込む。 舞台は一面水。灯篭が浮かび明かりが揺れる。あの世と現世の境としての水、水上で舞台が静かに進む。背後に投射された動きが影となり、台詞、歌唱が絡み、幻想的。 「弔い」にこだわるアンティゴネ、最後、円く連なってゆく静かな盆踊りが弔いを暗示胸を締め付ける。(年間観劇本数:299本)
文月 路実(派遣社員・フリーライター) ・ゴキブリコンビナート『法悦肉按摩』(都内某公園) ・NODA・MAP『足跡姫』(東京芸術劇場プレイハウス) ・ 範宙遊泳『その夜と友達』(STスポット) 「五感を総動員する」と謳っていたゴキコンの本公演は、まさにその通りの悪夢だった。入り口で目隠しされ、何が何やらまったくわからない状態で味わう地獄。四方八方から泥水や血糊や汚物や虫が飛んでくる。突然役者が飛び出してきて身体の上に載る。内容はいつも通りのひどい話だ。テント内はかなり暑く、なにやら異臭がすごい。終わったときには頭に虫がとまり、レインコートは泥や血糊でぐしょぐしょ、汗で眉毛が半分消えておったとさ。そんなに過酷だったのにもかかわらず爽快感を覚えたのは不思議。普段使わない感覚を刺激されたからか。これこそが演劇の力なのでは。『足跡姫』は勘三郎へのオマージュ。ここ数年の野田作品のなかで一番ストレートに「想い」が伝わってきて、純粋に美しいと思った。『その夜と友達』は、生きづらさを抱えた「夜」というキャラクターが個人的に刺さった。「しんどさ」を知ってしまった人間にも希望はあるのだと信じたい。(年間観劇本数:42本)
永田 晶子(会社員) ・努力クラブのやりたくなったのでやります公演『フォーエバーヤング』(人間座スタジオ) ・燐光群『湾岸線浜浦駅高架下4:00A.M.(土、日除ク)』(ザ・スズナリ) ・dracom Rough Play 『ぶらんこ』(OPA_Lab) 上演日順です。 ・説明が削られ、描くべきことだけ残った合田団地氏の劇作は、努力クラブの魅力のひとつです。同世代の俳優による静かな演技で、人生における中途半端な時間の儚さをより楽しめました。 ・燐光群の公演で、劇場という閉ざされた空間が持つ危うさを確かめました。戯曲に負けない強い演技と、暗闇にわずかな光を感じるラストシーンが印象的でした。失われた街に思いを馳せる機会にもなりました。 ・既存戯曲を本読み一回・稽古一回で上演するラフプレイを観て、演劇は一度きりの瞬間に在ると思いました。会場全体に広がる「わかりあえなさ」に、戸惑いつつも笑いました。戯曲を忠実に辿ろうとするデッサンのような行為は、dracom の新作での慎重な表現にも繋がっていたと思います。(年間観劇本数:100本くらい)
青木 克敏(地方公務員) ・SPAC『アンティゴネ〜時を超える送り火〜』(駿府城公演特設会場) ・ロシア国立サンクトペテルブルク マールイ・ドラマ劇場『たくらみと恋』(世田谷パブリックシアター) ・NAPPOS PRODUCE『SKIP〜スキップ』(サンシャイン劇場) あまりぱっとしない演劇状況に思えました。その中で、SPACの宮城聰さんの取り組みは素晴らしいものに感じています。アンティゴネは構成がしっかりとしていて分かりやすいかったですが、私の価値観を揺るがしてくれるほどの感動を、与えてくれました。たくらみと恋では、俳優陣をはじめとして芸術レベルの高さを見せつけられました。そして、スキップ。なんだかんだ言っても、キャラメルボックスは、夢と希望をいつだって分かち合おうと走り続ける劇団です。(年間観劇本数:32本)
矢野 靖人(一般社団法人shelf代表理事・芸術監督) ・WORLD STAGE DESIGN『The Malady of Death』(台北国立芸術大学) ・HEADZ『を待ちながら』(こまばアゴラ劇場) ・SCOTサマーシーズン2017『サド侯爵���人 第二幕』(新利賀山房) The Malady of Death”はバンコクの盟友、僕がいちばん信頼している僕自身のプロデューサー的存在でもあるリオンが演出する作品とあってわざわざそれを観るためだけに台湾まで行った作品。そういうことが出来る/したいと思える仲間がいることに感謝。今年いちばん記憶に残っている。デュラス晩年の最後の恋人は実はゲイで、しかし献身的にデュラスを愛し、デュラスに尽くしたという。美しく儚い作品だった。鈴木忠志「サド侯爵夫人 第二幕」はこの超絶技巧のこのアーティフィシャル(人工的)な日本語台詞をねじ伏せた俳優陣に快哉。久しぶりに劇場で観劇した飴屋法水さんの「を待ちながら」はこちらが思っていた以上に泣けるほどに清々しくベケットで。選外に1作品、APAFワン・チョン氏演出の「Kiss Kiss Bang Bang2.0」を。ノンバーバル且つインターナショナルな演劇の新たな可能性を垣間見せてくれた。(年間観劇本数:43本)
野呂 瑠美子(一観客) ・劇団昴ザ・サードステージ『幻の国』(サイスタジオ大山第1) ・劇団チョコレートケーキ『熱狂』(シアターウェスト) ・文学座創立80周年記念公演『中橋公館』(紀伊国屋ホール) どの時代をどういう切り口で、どのように選ぶかは作者の意識と力量による。劇団チョコレートケーキの古川健さんは、大きな歴史の流れを巧妙に切り取り、多大な資料を元に、新たに肉付けをして、その時代がどんなであったかを観客に見せてくれる。『幻の国』『熱狂』ともに、3時間ほどの舞台からは、困難な時代に置かれた人々の思いと息遣いが伝わってくるようであった。文学座の真船豊の『中橋公館』も、殆ど知られることがなかった、外地・北京で敗戦を迎えた日本人の様子をよく伝えていて、感心した。どの作品も、過ぎ去った時代を描きながら、実は現代をきちんと映し出している秀作揃いで、感動とともに、印象深い作品となった。最近あまり見なくなった歌舞伎だが、今年は仁左衛門の『千本桜』がかかり、おそらく彼の一世一代の知盛であろうと思われて、拝見した。人生は速い。(年間観劇本数:80本)
片山 幹生(WLスタッフ) ・SPAC『病は気から』 (静岡芸術劇場) ・ゴキブリコンビナート『法悦肉按摩』 ・平原演劇祭2017第4部 文芸案内朗読会演劇前夜&うどん会 「や喪めぐらし」(堀江���幸「めぐらし屋」より) ノゾエ征爾翻案・演出のSPAC『病は気から』は17世紀フランス古典主義を代表するモリエールの喜劇の現代日本での上演可能性を切り拓く優れた舞台だった。ゴキコンはいつも期待を上回る斬新で過激な仕掛けで観客を楽しませてくれる。高野竜の平原演劇祭は昨年第6部まで行われ、いずれも既存の演劇の枠組みを逸脱する自由で独創的なスペクタクルだったが、その中でも文庫版200頁の小説を4人の女優がひたすら読むという第4部の企画の体験がとりわけ印象的だった。食事として供された変わったつけ汁でのうどんもおいしかった。(年間観劇本数:120本)
kiki(勤め人) ・日本のラジオ『カーテン』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) ・あやめ十八番『三英花 煙夕空』(平櫛田中邸/シアトリカル應典院) ・風琴工房『アンネの日』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) カーテン:この一年で拝見できた日本のラジオの作品はどれも面白かったが、結局一番好みにあったのがコレ。劇場の使い方や題材の面白さに加えて、奥行きのある人物描写で15人のキャストの魅力が充分に生きた。 三英花 煙夕空:あやめ十八番初の二都市公演で、東京と大阪の会場がどちらも物語によく似合いつつ印象はガラリと変わって面白かった。音の響きや照明も変わり、キャストも変わって、東京公演では濃密な仄暗さが、大阪公演ではエッジの効いた明暗がそれぞれ印象に残った。 アンネの日:風琴工房の題材への取り組み方にはいつも心惹かれるが、観る前には地味だろうと思っていたこの作品がこの一年で最もツボにハマった。描かれた人々の誠実さと強さ、それを演じるキャスト陣の説得力が魅力的だった。(年間観劇本数:155本)
りいちろ(会社員) ・第27班 キャビネット公演B『おやすみ また明日 愛してるよ』(シアターミラクル) ・コマイぬ『ラッツォクの灯』(石巻 GALVANIZE gallery) ・アマヤドリ『青いポスト』(花まる学習会 王子小劇場) 2017年も足を運ぶ先々に多彩な舞台の力がありましたが、中でも常ならぬ舞台の密度や呼吸を感じた3作品を。 この一年、くによし組や劇団ヤリナゲ、劇団普通、KAZAKAMI、遠吠え、キュイなど若い作り手たちの作品にも心惹かれつつ、てがみ座『風紋』、風琴工房『アンネの日』、青組『グランパと赤い塔』、うさぎストライプ『ゴールデンバット』、ワワフラミンゴ『脳みそあるいてる』など実績のある作り手の更なる進化を感じる作品も数多く観ることができました。FunIQ��5人の作演での連続上演の試み,ロロの「いつ高シリーズ」やシンクロ少女の『オーラルメソッド4』のように過去作品と新作を合わせて上演することも作品の世界観を再認識させ作り手の進化を感じさせる良いやり方だったと思います。またあやめ十八番や水素74%などの歴史建造物での上演にも、スイッチ総研の諸公演やガレキの太鼓ののぞき見公演などの企みにも捉われました。(年間観劇本数:315本)
矢作 勝義(穂の国とよはし芸術劇場 芸術文化プロデューサー) ・ イキウメ『天の敵』(東京芸術劇場 シアターイースト) ・TBSテレビ『俺節』(TBS赤坂ACTシアター) ・風琴工房『アンネの日』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) 『天の敵』は、戯曲・演出・美術・俳優など全てのピースが寸分の狂いもなく組み合わされた、これまで観たイキウメ作品の中で一番素晴らしい舞台でした。 『俺節』は、主演の安田章大の歌・芝居ともに素晴らしく、回りを固める小劇場系の俳優も一丸となり、見事に劇世界を支えていました。何と言っても、脚本・演出の福原充則の仕事ぶりが充実していました。 風琴工房の詩森ろばさんは、2017年の1年間で多数の作品を生み出していましたが、なかでも『アンネの日』は、教養エンターテイメントと名付けたいと思います。事実の羅列や解説にとどまらず、それをエンターテイメントに昇華しながらも、一つの物語として創り上げられたとても素敵なものでした。 番外として、自身の劇場制作の、青木豪作、稲葉賀恵演出の「高校生と創る演劇『ガンボ』」と桑原裕子作・演出の穂の国とよはし芸術劇場プロデュース『荒れ野』を上げておきたいと思います。(年間観劇本数:132本)
須川 渡(研究者) ・ dracom『空腹者の弁』(ウイングフィールド) ・山下残『無門館の水は二度流せ 詰まらぬ』(アトリエ劇研) ・アイホールがつくる「伊丹の物語」プロジェクト『さよなら家族』(AI・HALL) 今年も関西で多くの作品を観ました。劇場の閉館はたびたび議論になりますが、dracomと山下残はこの問いかけに作品という形で応答していました。dracomはウイングフィールドという場所で演劇を続けること、山下残はアトリエ劇研がなくなることの意味を、どちらも非常に挑戦的な方法で示していました。『さよなら家族』は、伊丹という場所と時間をかけて丁寧に向き合った秀作です。スタイルは様々ですが、観客である私も、同じ場所にとどまって演劇を観続けるとはどういうことかに思いを巡らせた1年でした。 (年間観劇本数:133本)
かいらくえんなつき(演劇ウォッチャー) ・ロロ いつ高シリーズvol.4『いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した』(こまばアゴラ劇場) ・悪魔の���るし『蟹と歩く』(倉敷市立美術館 講堂) ・範宙遊泳『その夜と友達』(STスポット) 2017年も前半は大阪にいたので、関東近辺の演劇はそこまで多くは観ていません。とはいえ、ここにどうしても挙げたいと思う関西の作品に出会えなかったのは、残念。 選んだのは今後ずっと忘れないだろうなと思う観劇体験だったものです。 この他に挙げられなかったのは、FTで上演された『忉利天(とうりてん)』 (構成・演出・美術:チェン・ティエンジュオ)。 これだけをみていうのもと思いますが、それでもいいたくなるぐらい、中国の勢いを感じさせられ、それと裏返しの日本の閉塞感を感じました。 2017年は(も?)色々と区切りとなる出来事の多かった1年だったような気がしています。 毎年同じようなことを書いている気がしますが、2018年はもっともっと新しい刺激的な作品に出会いたい!!(年間観劇本数:おそらく150本くらい)
薙野 信喜(無職) ・ Schauspiel Leipzig『89/90』(Berliner Festspiele) ・Akram Khan Company「Until the Lion」(Main Hall, ARKO Arts Theater) ・日本総合悲劇協会『業音』(西鉄ホール) 2017年は、海外で観た20数本の作品の印象が強い。パリで観たオペラ・バスティーユ『ラ・ボエーム』、オデオン座『三人姉妹』、コメディ・フランセーズ『テンペスト』、ベルリンドイツ劇場『フェードル』『しあわせな日々』、ソウルで観た Yulhyul Arts Group『Defeat the ROBOT 3』、明洞芸術劇場『メディア』の印象が強烈だった。
九州に来演した作品では、ヨーロッパ企画『出てこようとしてるトロンプルイユ』、サードステージ『舞台版ドラえもん のび太とアニマル惑星』、イキウメ『散歩する侵略者』、トラッシュマスターズ『たわけ者の血潮』 などが楽しめた。 九州の劇団では、劇団きらら『プープーソング』、そめごころ『ちずとあゆむ』、転回社『夏の夜の夢』 がおもしろかった。(年間観劇本数:156本)
でんない いっこう(自由人) ・東京芸術劇場『リチャード三世』(東京芸術劇場 プレイハウス) ・新国立劇場『プライムたちの夜』(新国立劇場小劇場) ・文学座『鳩に水をやる』(文学座アトリエ) 1.リチャード三世の人格形成に身体の障害を前面に出さなかったし、最期の苦しみを、脳内の様子が突然飛び出し襲い掛かるような映像と音響で訴えたプルカレーテ演出の意外性が惹きつける。 2.人は何に向って本心を言えるのか、自身の老後��応答するロボットを考えていたが、人型のAI・スライムなら2062年でなくとも頷けてしまう身近な物語であった。人を失した悲しみ、本来わかりえない存在、一個の人間。 3.童話作家だった男、今は認知症の鳩に水をやる男。誰にわかると言うのだ、その内面の心理が。過去を生きている男に通じる回路を持たない今を生きてる者達。次点は若い俳優、演出家の成長が嬉しい『その夜と友達』『ダニーと紺碧の海』『ナイン』気になる劇作・演出家で楽しかった『ベター・ハーフ』大野一雄に惹かれ、その時代の映像が見たくて、疑念を持ちながら観たのに何故か後半引き込まれてしまった『川口隆夫「大野一雄について」』等がある。(年間観劇本数:27本)
小泉 うめ(観劇人・WLスタッフ) ・点の階『・・・』(京都芸術センター 講堂) ・風琴工房『アンネの日』(三鷹市芸術文化センター 星のホール) ・神里雄大/岡崎藝術座『バルパライソの長い坂をくだる話』(京都芸術センター 講堂) 前半は人生最高ペースの観劇本数だったが、後半は落ち着いて、おしなべてみれば例年並みの本数になった。そのため見逃したと思っている作品も多い。演劇が演劇であるが故の悔やみである。 『・・・』 ファンタジーという言葉だけでは済まされない不思議な観劇体験となった。窓の外の雪や隙間から入ってくる冷たい空気までもが演劇だった。 『アンネの日』 詩森の戯曲はいつも緻密な取材力とそこからの跳躍力に支えられているが、この戯曲からは一人の女性として、ひいては一人の人間としての彼女の姿が明瞭にうかがえ、彼女の代表作となるだろう。 『バルパライソの長い坂をくだる話』 神里のターニングポイントと言える。再び上演される機会もあるだろうが、あの場所であの役者陣でのスペイン語上演は、当然のことながら二度とないものを観たという印象が強い。 西日本での観劇も例年よりは少なかったが、結局KACで上演された2本を選んでいるあたりも私らしいところか。(年間観劇本数:355本)
2 notes
·
View notes
Text
さよならするのはつらいけど










中国産のおかしなウイルスが世界中を圧巻する弥生と卯月。 約一ヶ月地元に篭っておりました。
世間で起きているそれは、さながら映画のようで、全くもって現実味がない。 目を覚ませば「はーい嘘でしたー」となってもおかしくないくらいに 浮世離れたセンセーショナルは、僕らの生活を確実に蝕みます。 地震、台風の次はこれかよ。 ったく、次から次へと来やがんな。 まぁびびってもしょうがないので正々堂々と迎え撃ちましょう。 できることを確実に。 大打撃は飲食業界とエンタメ業界。 飲み屋は閑散としているし、繁華街にまず人がいない。 エンタメ業界は壊滅。 なにせ打ち合わせも出来なけりゃ撮影すらも出来ない。 スタジオ撮影なんてもってのほか。 人と人で成り立つ撮影現場なんて、その「人と人」が害なもんで 即刻中止ですよ。 どこも怖くて現場が組めない状況です。 制作会社の皆さんは大丈夫なんだろうか。 下手すりゃ一年くらい仕事ができないのではないか。 悲観してても仕方ないのでしばらくニートを満喫します。 ありがたいことに編集仕事は幾つかいただいているので、 それをやりながら、次の企画を考えます。 自粛自粛うるせー世の中だからこそ、 その自粛の中でどれくらい遊べるか考えます。 マスク二枚なんかじゃおさまらない僕らの腹のうちを全部作品に変えます。 そういえば、名古屋で「コロナをばらまく」とか言って 呑気にフィリピンパブなんて行って、見事に移したおじさん。 亡くなってしまったそうですね。 まぁ行動も行動なのでとても擁護できませんが、 この人決して根っからの悪い人ではないような気がするんですよね。 もちろん移してしまったのは大罪だし、しかるべき罰を受けるべきなんですが どうもマスコミの報道は悪意があって本質がぼやける感じがします。 文字やニュースで見るとほんとやばい人ですから。

ホジのソロプロジェクト「NORM」の新譜「コンクリートフレイバー」の ジャケ写を撮りました。 これも本当は撮り下ろしかったけど、 こんな世なので去年真鶴へ行った時に撮影したものを提供させていただいた。 他にもNORM関連でも幾つか仕込んでいるので、 早くお見せしたい。 そして願わくば、早くこのクソウィルスが消え去って 真鶴で撮影をしたい。
youtube
youtube
さよならするのはつらいけど 時間だよ 仕方がない 次の回まで ごきげんよう
志村けんさんは、そのウイルスに屈したんではない。 「時間」だから去っただけだ。 笑いの王様であり、俺たちのヒーローがそんな簡単に負けるわけがない。 だから次の回を待っている。いつまでも待っている。 誰も傷つけない笑いと、誠実で優しさとわかりやすさに溢れたコントは、芸術でした。 笑っても笑いきれない、数々の芸術をありがとうございました。 小学校の頃、社会かなんかの授業で 自分の出身地を「志村県田代まさ市」と言ってクラスが大受けしたのを覚えています。 思えばあれから僕の周りにはおかしな奴が増えたような気がします。 志村さんのおかげです。 きっと世の中のほとんどの男連中が志村さんに一度は助けてもらったはず��す。 昭和から平成、そして令和。 ドリフターズととんねるずとダチョウ倶楽部と出川哲朗。 僕の笑いの中心はいつもそこにありました。 欲を言えば、一緒に映画を作りたかったです。 タイトルはもちろん「志村県田代まさ市」です。 W主演に志村けんさんと田代まさしさん。 脇に加藤茶さん、仲本工事さん、高木ブーさん。 他にも上島竜兵、出川哲朗、的場浩司、柳葉敏郎、V6の坂本、 小峠、松崎しげる、桑マン、ラモス瑠偉、元阪神のオマリー。 そんな男だらけの映画をやりましょう。 どうか、次の回で。 楽しみにしてます。
youtube
1 note
·
View note
Text
妖刀 闇太刀
闇太刀卓のNPCとかもろもろについてのまとめ。 私がRPやる上で考えた設定なので全体的に蒼天ナイズされてる。
シナリオ「妖刀闇太刀」ネタバレ有り
【NPC設定】
NPC1
名前:敷島 良男 フリ:シキシマ ヨシオ
性別:男 年齢:18 身長:平均ちょっと下 体重:平均 シナリオ:妖刀闇太刀(NPC)
NPCその1。PCたちのクラスメイト。 やや軽薄だがチャラくなりきれない、空気の読める女好きの三枚目。口癖は彼女欲しい。 クラスの女子に「いい奴だけど付き合いたくはない」と言われるタイプ。 情報通であり、特に女子の情報に敏感。
その実態は、「土蜘蛛」波木夜津香の忠実な腹心。 炎を扱う流派の生まれらしく、炎を扱い戦う。
NPC2
名前:波木 夜津香 フリ:ナミキ ヨツカ
性別:女 年齢:見た目は18、実年齢はもっと上。 身長:平均以上 体重:平均よりやや下 シナリオ:妖刀闇太刀(NPC)
NPCその2。 PCたちと同じ学年(別のクラス)に所属する、謎めいた魅力を持つ優等生の美少女。 学校中の生徒からの羨望を一身に集める所謂「学園のお姉様」。 学校の一大イベントである音楽コンクールの実行委員長でもある。それ故生徒たちにコンクールへの積極的な参加を促している。 恵まれた美貌とカリスマ性故に学校内にファンクラブが存在する。過剰なまでに熱烈なファンが多く、その人気は彼女に一声挨拶されようものなら暫くファンクラブ会員からの羨望と嫉妬の視線にさらされるハメになる程である。
その実態は学園に巣を張った妖怪「土蜘蛛」。 学園に不可視の糸を張り、それを通じ人間の生命力を糧として生活していた。
【NPC関係の設定余談】
・敷島の身長は具体的には決めてないんですが「170cmに届かなくてめっちゃギリギリしてる」ってイメージがあるので多分160後半とかです。 ・体格自体は悪くなく、運動もそこそこにするので筋肉もあり、体重は人並かちょっと重いくらいです。 ・敷島は吹奏楽部、入部理由は「モテそうだから」。担当はホルン。あんまりモテなかったので足が遠のき、今は幽霊部員です。 ・敷島は炎を扱いますが別に不知火だとかそういう設定は元々ありません。何かしら戦闘立ち絵に派手さが欲しかったのと、丁度メインウェポンらしきものが火術だったのでそんな感じの設定にしました。 ・↑の設定決めた時、きーちゃんが不知火��事は完全に失念してたんですが案外うまく嵌ったので良かった……かな……?
・夜津香様はかなりモデル体型のイメージが強く、高身長で細身、そして出るとこ出てます。 ・特に部活には所属していません。委員会の仕事が忙しい、と表向き言ってますがその実興味がないだけです。 ・夜津香様(というか土蜘蛛)は長命の一族で、夜津香様の年齢も現状の年齢も(なっちを除く)PC達からしたらそれなりに上です。ですが土蜘蛛の一族の中では若輩者、くらいのイメージです。 ・アレでいて土蜘蛛の中ではかなり穏健派かつ改革志向。古臭い形骸化したしきたりを嫌い、実用性最重視。
【シナリオ中のNPC達の言動について】
敷島は確かに「夜津香の腹心」でしたが、同時に確かに「PC達の親友の男子高校生」であり「黄菊はるきに恋をした少年」であったのもまた事実でした。 基本スタンスは「夜津香様の意志に従う」でしたが、どの立場も敷島には捨てがたい物だった故に最後まで迷い、苦しんで、それでも誇りと責任をもって「夜津香の腹心」である事を選択し、PC達と対立しました。 選択の結果、嫌われる事も何だったら殺される事も覚悟済みでした。
夜津香は夜津香なりの美学と理念、正当性の自認を持っており、好意や憎しみなどの感情からではなく基本的に損得で動いていました。 その為シナリオ中の行動もほぼ一貫して「自身に対して存在するだけで脅威となりうる闇太刀、およびその使い手の排除」であり、そこに黄菊はるき個人への特別な感情はほぼありませんでした。良くも悪くも中立に近い視点の持ち主です。
【戦闘について】 夜津香は張り巡らせた糸と異形の蜘蛛の足を用いての戦闘、敷島は炎を用いての戦闘。
余談ですが敷島は炎を扱う忍者ですが炎の扱いがそこまで得意ではなく、火力を出そうとすると命中精度が下がる為、シナリオ中は夜津香様の糸に炎を這わせ行き先を制御してもらう事で命中精度と火力を維持していました。
【奥義関係】 ・奥義<細蟹往先灯篭>(ササガニユクサキトウロウ)/分身の術/範囲攻撃 敷島の奥義……ですがまさかの公式のデータミスで本来指定できない特技が指定特技になってたので指定特技は独断で弄ってあります。 フレーバーは「複数人に対して並行して適確に攻撃を当てる。その動きはさながら腕が8本あるように見える程の素早さである。」
名前元ネタですが、「細蟹」は蜘蛛の別名で「往先」とセットで蜘蛛の歩いた軌跡(=糸)、「灯篭」は炎と土蜘蛛の塚から見つかった「蜘蛛灯篭」辺りからの連想。 蜘蛛の糸を辿って走る炎をイメージしての名前です。
奥義<八眼���臂の機略>(ハチガンハッピノキリャク)/絡繰術/完全成功 夜津香様の奥義。「土蜘蛛」で「絡繰術」で「完全成功」ってのがあまりにもイメージしづらくてちょっと困りました。 フレーバーは「蜘蛛の糸の如く張り巡らされた罠を使用して戦場を支配し、自分の望む結果を引き寄せる。」
名前元ネタは「八眼八臂」は八面六臂のもじりです。八つの眼と八つの腕を持つ蜘蛛と、完全成功的な意味で八面六臂の言葉の意味を引っ掛けてあります。 「機略」は蜘蛛なので罠とかそういう所からの連想。絡繰術らしさを出そうとして頑張ってなんかそれっぽい熟語を選択しました。
【シナリオその後】 PC達に負け、夜津香は学園から手を引いた。 この街からも離れ次の巣を探す夜津香に従う形で、敷島も学園から姿を消した。
卒業式の前の合唱コンクール。夜津香は実行委員長だったが『急な家庭の事情』という��でその場には現れなかった。 敷島は一応書類上高校を卒業した事になっているが、卒業間近に怪我をして入院したということになっており、卒業式には出ていない。
夜津香はこれまでと変わらず今もどこかで巣を張り、人の生命力を必要なだけ喰って生活している。 敷島は時折過去の恋懐かしみながら、彼女の手足として、常にその傍らに立っている。
0 notes
Text
目隠し鬼/08/2011
つうと飲み込み切れない唾液が顎を伝った。 噛まされた布は百合子の涎でぐっしょりと濡れている。 手首は皮膚に喰い込むほどきつく縄で拘束され、後ろ手で縛られていた。 ずりずりと畳を這いずりまわり、ようやく壁にあたって身体をうねらせて身を起こす。 ざらざらとした壁の感触を頬で確かめる。 光を失い、手足を縛られた状態では柔らかな剥き出しの頬の感触だけが現実だった。 壁伝いに這うと、頬はやがて壁から離れて格子に当たる。 ここが廃人を入れおくような座敷牢なのだと薄々ながらに気づく。 廃人、その言葉に百合子は自嘲の笑みを漏らす。 目も見えず、手足の自由もきかず、猿轡を噛まされてだらしなく垂れ流れる唾液。 気が狂いそうになって、声をあげようとするもとくぐもったうめき声しかあげられない。 もはや人であるとは思えなかった。 それなのに、身体の機能だけはまだ人間で。 百合子の漏れる声や衣擦れなどの異変を感じ取ると、三人の女中らしき者が百合子の着物の裾を割る。 そして縛られた足をそのままに、太腿まで着物を捲りあげては排泄を促すのだ。 怒りと羞恥からそれに抗っていたのも最初の内だけだった。 女中は器用に百合子の排泄物を瓶におさめて汚れた内ももを拭うと着物を元通りに戻す。 一定の時間がくれば涎で汚れた百合子の顔を拭うこともした。 髪の毛が幾筋が涎で頬に張り付いているのも丁寧に梳き、乱れた髪をきつく結い直す。 昼食や飲み物も最初の内は百合子に与えていたのだが、猿轡を外され女中の指に噛み付いてからはほとんど一日中猿轡を噛まされていた。 指を噛み千切るほど強く噛み、確かに鉄錆臭い血も口に残ったのだが女中はわずかな悲鳴もあげなかった。 斯波は更に百合子が自害することも恐れて、全ての自由を奪ったのだった。 これを廃人と言わずして何というのか。 座敷牢の外に控えているのだろう女中たちが僅かな衣擦れを残して立ち去る音を耳が拾う。 鋭敏になった聴覚がこつこつと靴が床を叩く音をつ��さに聞きとった。 斯波の情婦にされるのだ、と覚悟をしてからは、例えどんな痛みや苦しみや屈辱を受けたとしても決して表情に出すまいとだけ決心した。 ――情婦であれば、まだ良かったのだ。 あの男が乱暴に百合子の身体を蹂躙し、獣のような牙でもって心を食いちぎりさえすれば。 そうであれば、どれほど楽だっただろうか。 呼気がひくりと一瞬だけ痙攣する。 だんだんと足音が近づき、ぞわぞわとした悪寒のようなものが項を撫でる。 感情に蓋をするのだ。百合子はすっと目を伏せて浅い息を繰り返した。 光を失って良かったと思うのはこの瞬間だ――一体どんな顔をして斯波はいつも百合子の前に現れるのか。 錠前を開ける重い金属音が耳障りな音をたてる。 いつもなら、百合子の怒りの感情を引き出そうとするかのように百合子を辱める言葉を幾つか吐く。 しかし、今日の斯波は黙ったまま座敷牢の隅にもたれかかる百合子に近づくとゆっくりと頬を撫でた。 思いの外に冷たい指先に、百合子は反射的にびくりと身体を揺らす。 飽きることなく優しく頬をなでる斯波を、目を伏せたままやり過ごす。 斯波の人差し指あたりが鼻をかすめるたびに、苦い葉巻の匂いがした。 しばらくすると、指先が百合子の髪を梳く。結い上げられていた髪を乱され、ぱさりと一房、二房と崩れて流れる。 艶やかな髪は幾度と無く斯波に梳かれているうちに甘い香りを漂わせ始めた。 それを吸い込んだ斯波の呼吸が荒くなり、ぐいと顎を持ち上げて猿轡の上から唇を食む。 壁にもたれかかったままずるずると崩れ落ちる、それでも斯波は百合子にくちづけるのをやめず乱れた髪をかき分けるようにして百合子の頬に頬を寄せた。 熱い舌をぬるぬると顎の先から頬まで這わせて、百合子が飲み込みきれなかった唾液を舐りとる。 耳の中にまでその熱い吐息と舌先をぬめりこませて、ちゅぷちゅぷと耳朶を吸う。 執拗に耳朶を扱き、舌で何度も舐め上げる。 その斯波の舌の動き――それはまるでいつも百合子の花芯に与えられている快楽そのもので。 抑えていた悪寒がこらえ切れずに、ぶると身震いする。 すると、下腹の奥のほうがむず痒くなり身震いと同時ににちゃりとした熱い蜜が漏れる気配がした。 百合子だけがそれに気づきはっとする。意識を集中すればするほど感覚は研ぎ澄まされていった。 斯波が喉を震わせながら吐く熱い息は百合子の耳の奥に届く。 首元に舌を這わし、百合子の白い喉の中心の筋を何度も舌で舐め吸った。 着物の襟元をゆるめて肩に胸元と少しづつはだけさせる。 乳房を下から持ち上げるように掬う。白い柔肌をたっぷりと揉みしだき、乳首を指先で触れる。 「ぁっ……」 喉元に吸い付いたままの斯波の舌は、喘ぎ声にまでならないまでも百合子の熱を帯びた僅かな声の震えを捕らえた。 それだけで、いまだに本当の快楽を知らない百合子に斯波の知る女の快楽一つ一つを全て教えてやりたいと思う。 征服欲、嗜虐心、そういった物が斯波の中でむくりと起き上がる。 斯波の舌先が百合子の乳首を扱く。押しつぶすように捏ねたり、円を描く様に舐め回したりすると百合子の肢体はひくひくと痙攣するように揺れる。 音を立てて吸い上げると猿轡の奥からくぐもった声をあげた。 斯波の手に収まるほどの形の良い胸を揉みあげて吸い付きやすいように寄せる。 白かった素肌が快楽によって朱みを帯び始め、薄い桃色に染まる。 十分に乳房を愛撫し、帯もそのままに着物の裾を割る。 ゆっくりと何度も太腿をなで、雌の匂いが篭る内股を斯波のごつごつとした男の手が這う。 裾よけすらも濡らしてしまうほど蜜が垂れ、ぬるぬるとした女陰を斯波の太い指がまさぐる。 しばらく検分するように這わせていた指を、にちゃにちゃと音を聞かせるように引きぬく。 「随分と濡れているな」 恥辱から百合子の頬は上気し、抗議するように身を捩る。 その反応に斯波は笑い、耳元で囁く。 「貴方を清廉な精神の持ち主だと思っていたが、そうではないようだ。 憎い男の舌でこんなにも乱れてしまうとはな」 喉を震わせて発する低く甘い声が百合子の耳を掠める。 光を失った瞳で、すぐ近くにあるであろう斯波の顔を睨めつける。 「……違うと言うのなら耐えてみる事だ――もっとも未だに処女であってこんなに淫乱になってしまった貴方には無理なことだろうが」 そう言うと斯波は身を起こし、百合子の足の拘束を解く。 乱れた着物を押し広げて全体重をかけて足を開かせる。 百合子とて力の限りに斯波を押し返すも、上背のある斯波に押さえ込まれるとあまりに無力だった。 熱い息が陰核にかかる。 指で陰唇を広げられて赤く腫れ上がった女陰が露わになる。 ひくひくと勃起した陰核に優しく口付けてから舌で何度も扱くと百合子の小さな身体が跳ね上がる。 がくがくと震えるも、見えない瞳をぎゅっと強く閉じて快楽を耐えようと身体を固く縮こませる。 必死に堪える姿すらも愛おしくなり斯波は激しい愛撫をやめて百合子の反応を伺う。 女陰は束の間息をするようにぱくぱくと開閉し、とぷりとぷりと蜜を吐き出した。 涎でぐしょぐしょに濡れた猿轡を外す。百合子は荒い息を繰り返して悲痛な叫びをあげた。 「この卑怯者!!!私があなたに何をしたと言うのよ!!!!!! そんなに私が憎いのなら殺しなさい、殺せばいいじゃない!!!」 百合子の絶叫に近い悲鳴に、斯波が昏い表情をしたのを百合子が知ることはない。 今にも自身の舌を噛み千切らんばかりの勢いに、斯波は問答無用で口付ける。 手で口をこじ開けて、もう一方の手で顎を掴み。 「あぐ……んっ」 「あ��っ、お姫さん……っ」 斯波は思わず熱く猛った自身を百合子のその小さく白く柔らかい甘い身体にねじ込みたい衝動を覚える。 百合子の太腿に擦りつけるように腰を何度か往復させて先走りの汁を滲ませた。 ひくつく桃色の濡れた粘膜を擦り上げ、甘いじゅくじゅくとした蜜を泡がたつほど激しく味わいたい。 みっちりとその膣内に陰茎をおさめて境界が曖昧になるほど熱く蕩けるように揺さぶって――。 「うっ、くっ、お姫さ――あっ、はっ……」 斯波は百合子の乱れる肢体を舐め回しながらそう妄想しただけでびゅくっ、びゅくと陰茎が吐露したのを感じた。 そして息を荒げながら、汚れた自分の洋装を気にする風でもなく幾分か落ち着いた口ぶりで百合子に告げる。 「俺は貴方を愛しいがやはり憎らしい……」 「ひっ――あっ、っう」 「ここには俺と貴方しかいないんだ。声を我慢する必要なんてない。 ――まあもっとも、それが貴方の強情だというのなら話は別だがな」 そう言うと再び百合子の陰核に舌を這わせた。 花芯をむき出しにしてなぶり、音を立ててしゃぶる。 「やっ、……あっ、いや、いや……いやぁっ」 根元を指で押さえてきりきりに勃起させてから吸い付いて舌で愛撫すると絶頂が近い百合子は抑えていた声をこらえ切れずに漏らし始めた。 びくんと背中が弓なりにしなる。 「あっ、あっ、は、ああっ!」 ひくひくと身体が小刻みに震え、同時に膣がぎゅうぎゅうとしまる。 行き場を失った膣内の蜜は痙攣により押し出されて溢れた。 「はっ、はっ……」 肩で息をしている百合子を斯波は抱きすくめる。 弛緩しきった身体は力が抜けて斯波のなすがままだった。 強く抱きかかえ深く口付けても、嫌がる素振りはなくただ絶頂の波に百合子の精神は飲み込まれてしまっている。 しっとりと汗ばんだ肌に頬をよせて、何度も百合子の乱れた長い髪をかきまぜては接吻する。 光を失った瞳は闇色でとろりと快楽に溶けていた。 絶頂に飛んだあとの僅かな時間のみ、百合子は斯波に対する憎悪を見失う。 それはほんの刹那で、息が整い始めると次第に拒絶するように斯波の身体を押し返し始めるのだった。 意識の曖昧な百合子の口内を貪るように犯して、膣に指を挿入れる。 膣内での快楽を得たことのない百合子は違和感に身を起こす。 ゆっくりと膣を解すように指でかきまぜて、甘い痺れの残る花芯を再び責める。 ぐちゅぐちゅと蜜が斯波の指にまとわりついて卑猥な音を立てる。 「ひっ、……いやぁ、いや……っ。も、うっ――」 「お姫さん……」 死よりも甘美な情痴の陶酔を味あわせて、そして共に肉欲の地獄へと落ちるのだ。 熱く蕩けきった百合子の膣に斯波は媚薬を塗りこんだ。 ねっとりとしたその感触に百合子は身を捩って逃げる。 「いや、いやぁ――」 その薬が恐ろしいまでの悦楽の��淵にに身体と精神を突き落とすことを百合子は知っていた。 理性も恥もかなぐり捨てて、肉の���びを乞う。 軟膏は熱い愛液に溶け出してすぐに粘膜と一緒に混ざる。 じんじんと女陰が熱くなり、果てたばかりの身体が再び火照る。 「いや、いやっ、これ――とめて――」 「とめる?どうやって」 「あっ、くっ――いやっ熱い……」 「どうやって貴方の身体を鎮めればいいのか、俺に教えてくれないか」 意地悪く問いかける斯波の声にぎゅっと唇を噛み締めた。 疼きと痒みが襲う股を閉じてぎゅうぎゅうと腿と腿を擦りつける。 ぬちゅぬちゅと擦れる感覚にびくびくと軽く達する。それでも快楽の火種はまだ燻ったままだった。 気が狂いそうな頭の端でそれでも斯波への憎しみは消えなかった。 縛り上げていた両腕をこの場面で解く。 わなわなと恥辱に震えながらも百合子は快楽に疼く女陰に手をやるのを止められなかった。 「自ら慰めるとはとんだお姫様だな」 いつも斯波にされるように陰核を指先で何度も撫でる。 包皮の上から擦っているせいか、それとも初心な手つきからか思った以上の快楽は得られない。 百合子以上に百合子の身体を知り尽くしている斯波は、百合子に諭すように自分の手を添えた。 「こうやって包皮を剥くと――」 「あっ、ひぃ……あぁっ」 「ほうら、貴方の朱い珊瑚の玉だ」 背後から抱きしめて耳元で囁く。 百合子の空いている左手を乳房に添わせて、指先で突端を愛撫するように誘導する。 「ひぅっ……あっっ、あっ」 「そう、それでいい。だが、まだ足りないだろう?」 斯波の低音が耳に心地よく、百合子はこくこくと素直に頷いた。 一番の疼きを覚えている女陰の奥が、斯波の指を待ちわびるようにきゅうきゅうと蠕動している。 「貴方の口を吸いたい」 斯波が乞うようにそう言うと百合子は身体を捻って斯波の唇に吸い付く。 柔らかな唇に吸われ、斯波はその熱い舌で小さな舌を絡めとった。 もつれるように荒く、角度を変えて何度も接吻づけし、銀糸が垂れる。 「ひ!いっ」 斯波の指が百合子の膣に押し込まれ、ぐいぐいと陰核の裏の天井を押す。 びりびりと背筋に雷が走り、膣内で達する。 身体は硬直したまま弛緩せずに、絶頂のまま更に快楽を貪る。 見えない目の裏でぱちぱちと白い火花のようなものが爆ぜた気がした。 (死ぬのだ) 百合子は覚悟した。 だとすれば、死とは何と蠱惑的で甘美なのだろう。 「はう、あ、――ああっ!」 声が掠れるほど喘いでよがって、何度も気をやって、百合子は失神した。 /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/ 自分がまだ生きているということを知るのは節々の痛みからだった。 こじ開けられ、重くのしかかられる、身体。 憎い男に晒した醜態に、百合子は咽び泣いた。 それでも、理性や憎しみを捨て肉欲に溺れ享楽にふけることの悦びを知った身体は死よりも快楽を望んでしまう。 「お兄様――お父様、お母様……」 泣き言など一切吐かないと決めていたが、それきり堰をきったように哀しみが溢れ出す。 最後の力を振り絞ってどうにか、声を押さえて散らかった着物に顔を埋めて噛み締めるように泣いた。 「お邸に��りたい……」 斯波の動く気配を感じて声を押し殺す。 それでも漏れる嗚咽に、斯波は衝撃を受けたようだった。 「お姫さん……」 「わ、私を変にするのはもう止めて――お邸、お邸に帰りたい。 邸に帰して……お願い……」 幼子のように母を呼んで泣く百合子に斯波は戸惑った。 百合子の邸はもう無い。名を呼ぶ母も既に死んでいる。 野宮家の生き残りと呼べるのは唯一百合子だけなのだ。 落ち着かせるために触れようとすると百合子の身体がびくりと震える。 斯波は百合子を憎らしいとすら思っていた。 自分の心をかき乱し、その癖一向に自分の物にならない少女だと。 どれだけ自分が心を尽くしてみせても、時には強引に迫ってみても、どれほど愛してみても。 だから斯波は百合子を憎んだ。 しかし、今、百合子が初めて斯波の前で弱さを晒したのだった。 震えて咽び泣く姿は、ただの一人の少女だった。 この少女のためならどんな願いだって聞き届けるつもりだった。 それなのに、その少女の初めての願いは斯波には叶えられない願いだった。 「貴方の邸は……もう無い。人の手に渡ったんだ」 「いやっ、嘘――嘘よ。また嘘を言ってるのだわ」 「嘘じゃない――」 「真島の庭も、藤田の紅茶も――私の鏡台や私の本は――。 お母様のお着物に、お兄様の絵は――」 「もう何もない。野宮の邸はもう無いんだ」 「嘘よ――嘘。嘘!嘘!!」 百合子はわあわあと畳を叩いて泣く。 「貴方の居場所はもうここしかないんだ――だから」 泣き喚く百合子を抱きしめてやる。 泣き疲れて眠るまで幼子をあやすように優しくただ抱きしめただけだった。 /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/ それから百合子はただの人形のように大人しくなった。 快楽に喘ぎはするものの、以前のように斯波の言葉に歯向かうこともない。 これが、自分の求めいてた幸せだったのだろうか、と斯波は自身に問いかけた。 愛しい姫を側に置き、その身も心も自分のものにしたはずなのに。 「新しい着物はどうだお姫さん。 この鼈甲のかんざしが貴方の黒い髪によく似合うだろう」 人形遊びをするように斯波は新しい服を買い揃えては百合子に着せ替えた。 日陰の生活で百合子の肌はぬけるように白く、斯波は化粧道具の頬紅を取って百合子の頬にはたきこむ。 「ああ、綺麗だ。庭に咲く百合のようだ」 その言葉に百合子の表情が幾分か和らぐ。 「どうした?」 「百合……見たいわ」 ぽつりと呟くように言う。 斯波はその言葉に歓喜した。久しぶりに反応らしい反応を百合子がしたからだ。 「そうか、では今すぐ摘んで持ってこさせよう」 百合子の表情が翳る。 「なんだ、どうした、何が不満だ。貴方のためならいくらでも用意させるぞ」 「摘んだらすぐに枯れてしまうわ」 「枯れたらまた摘めばいいじゃないか」 斯波は百合子の言葉の真意が分からなかった。 ただただ、百合子が斯波に何かをして欲しいというのは初めてなのでなおも食い下がった。 「摘まなくていいの。咲いているところを――見たかっただけ」 百合子はもう興味をなくしたように口を噤む。 斯波は立ち上がり、百合子の小さな体を抱き上げて横抱きにした。 ぎいと座敷牢の閂を開け、こつ、こつ、こつ、こつ、と階段をのぼる。 目には見えないが、陽光のあたたかさが頬にかかる。 ふわりと花の香りがした。 「良い香りね」 「ああ、夏椿の生垣だ」 しばらく歩くと足元から砂利を踏む音に変わり、しばらくしてから斯波は足を止めた。 百合子を抱いたままかがみ、手を百合の花に誘うと百合子はその花弁を傷つけないように優しく両手で形を確かめた。 そしてようやく、百合子は微笑んだのだった。 「さあ、もう日が暮れる」 「――帰りましょう」 百合子は名残惜しそうにそう言うと斯波の首に腕を回す。 ぱちぱちと火の爆ぜる音がする。灯籠の明かりが灯ったのだ。 野宮の庭の灯籠の火を入れるのはいつも真島だった。 /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/ 百合子の処女を奪うのに、当初は斯波の意地があった。 どんな女でも身体さえ奪ってしまえば一緒だという思いと、 気丈に振る舞う百合子自身の口から斯波の身体を求める言葉を引き出してやろうという思い。 それが次第に、躊躇いに変わり、今は罪悪感からいまだに百合子を抱けないでいた。 なにより、今百合子の処女をむりやりに奪ってしまえば、本当に百合子の心が壊れてしまうのではないかとすら思い、恐ろしくなったのだ。 今はただ快感に喘ぐ百合子の姿を見られるだけで幸せだ。 それでも一つになりたい、百合子の一番深いところで繋がりたいという思いが消えることはない。 庭に何度か連れ出すようになってから百合子は斯波に心を開きはじめているようだった。 (貴方の居場所はもうここしかないんだ――だからもうどこにも行かないでくれ) /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/ まるで羽をもがれた蝶だ。 幼虫のような胴体と足だけで這いつくばるように蠢くさま。 眩しく輝くような瞳も、溌溂としたその表情も、 ひらひらと袖を振って走り回る足、そして凛として気高く高潔だったこの魂も。 全てあの男に奪われてしまったのだ。 遠くから斯波の胴間声が聞こえた。 狂気を含んだその声音で、ひとつ、ふたつと数を数え上げる。 百合子は弱り切った白く細い足を震わせながら、どうにか木を支えに立ち上がる。 長い長い闇の生活で、とうに走り方を忘れてしまった。 いずれは笑い方も喋り方もいずれは泣き方すらも忘れてしまうのではないだろうか。 そうして全て奪われてしまって、それでも残るのはきっとこの憎悪や恐怖や快楽が入り混じった歪な感情だけだろう。 目を見開いても真っ暗な闇の中を、覚束ない足取りで逃げる。 手探りで木や植木を伝って、あちこち掠り傷を作りながら、鬼から逃げる。 捕まったらお終いだ。そう、捕まったら、今度は――。 百物語をした夜。 庭に出て鏡子と斯波の情事を目の当たりにして逃げるようにその場を離れた。 苦しい胸を落ち着かせながら、手をついた灯籠。 そこが分かれば、邸から逃げ出す事もそれほど難しくないだろうと考えた。 百合子を世話する奇妙な女中たち以外にも沢山の使用人がいるのだろうし、騒ぎとなっては斯波も百合子を隠し切れないだろう。 目が見えない分、灯籠の炎が燻らせる匂い、椿の香り、砂利道の音を来る日も来る日も頭に叩き込む。 斯波の足で何歩で座敷牢から外へ出るのか、そこから砂利道が続くのはどのくらいか、まわりに人の気配は無いか、東京の往来の雑踏や自動車のエンジン音、給仕人のわずかな声でもいい。 斯波は野宮の邸が既に失われたと言ったが、嘘に決まっているのだ。 否、嘘でなければならない。 あの男は百合子のことを愛しているはずがない。 本当に愛しているというのなら、このような仕打ちをするはずがない。 あの男は人ではないのだ。獣であり、鬼であり、悪魔なのだ。 そうでなくてはならないのだ。そうでなくては――。 夏の名残の気怠い熱気も夕暮れを過ぎると急激に冷え込む。 夏椿がその花をぽとりと道に落とした。 いつものように百合子を横抱きに抱えて座敷牢から庭へ出る。 砂利道を踏む音に、わずかに落ち葉の柔らかい音が混じっていた。 額を何かが掠めて百合子はびくりと震えて、反射的に斯波の首に抱きつく。 「落ち葉だ」 斯波はそう言うと百合子の黒髪に落ちた枯れ葉を抜き取る。 「何の葉かしら」 「銀杏だ、向こうには紅葉も楓もある。 剪定の強さと落ち葉の美しさがあるから街路樹にと植えたのはいいが 雨のように降る葉で土が埋もれてしまっているな」 街路樹。 百合子はその言葉も漏らすこと無く刻みつける。 「邸の庭にもあったわ……。 秋になると赤子の手のような紅葉が美しく色づいて。 私はお兄さまと真島と一番美しい紅葉の葉を探すの。 そうしてそれを、綺麗に水で洗って布に挟んで重い本で挟むのよ。 真島はいつも一番綺麗な紅葉を見つけられたわ。私が欲しがると笑って譲ってくれるの」 斯波は百合子の言葉を聞いているのか、何も応えなかった。 百合子は誰に話しかけるでもなく、思い出した過去の記憶をゆっくりと紡ぐ。 美しく儚い思い出、そこに斯波はいない。 「落ちた葉が重なってお布団のように柔らかいの。 私、その上に座って上を見上げるのが大好きだった。 だって、本当に降り積もる雪のように黄金や緋色の葉が落ちるの。 とてもとても美しくて――」 斯波が再び歩き出す。 小高い丘になった庭園の一角、街路樹の脇。 銀杏の落ち葉が敷き詰められて柔らかな絨毯のようになっている。 百合子をそこに降ろして、自身もすぐ横にかがむ。 百合子は盲た目をゆっくりと上へ向ける。 はらり、ひらり、と緋色の紅葉が降る。黄金色の銀杏が降る。 百合子の頬や額に掠めるように軽く口付けて、降り積もる。 「くすぐったいわ」 百合子は無邪気に笑うと、落ち葉の絨毯に寝転がり手を空に向ける。 顔に、胸に、足に腹に、幾重にも落ち葉が重なり窒息しそうだ。 闇のように黒い髪には葉が絡まり、斯波が新しく用意させたという緋色の着物の色が映える。 陶器のように白い肌に、紅を差したわけでもないのに紅い唇。 目を開けていようと、閉じていようと関係ないのに、百合子はゆっくりと目を閉じてみた。 そうする方が、より鮮明に過去を思い出せるような気がしたのだ。 どちらも口を開く事もせず、耳はぱさりぱさりと落ちる葉の音だけ。 ここは本当に東京��のだろうかと不思議に思うほど、人の声も自動車の音もしない。 街路樹の脇というのなら、人通りに近い道だろうに……。 百合子を庭に連れ出してから、百合子の中に渦巻いていた憎悪とか怨念が薄らいでいくのを感じた。 それと同時に、百合子が現在ではない過去へと意識を飛ばしているのだということも次第に理解し始めた。 なぜなら、彼女の過去には哀しみや憎しみなどの醜い感情は一切無かった。 ただ、ただ幸せで愛されていた思い出しかないのだ。 何度も何度も自分に問う。 今ならまだ戻れるのではないか――と。 自分が彼女から手を引き、後見人として面倒を見ればそうすれば或いは。 学校にも通えない可哀想な子供たちのためにと寄付や支��、慈善事業なら幾らでもしてきた。 だが、それと同じようには考えられないのだ。 この可憐な姫を自分だけのものにしたい。その欲求を斯波は止められなかった。 背筋が凍るほど美しく、儚く、妖艶で――この身が焦がれる程に憎い姫を。 今も、紅葉した葉に埋もれるように眠るその姿は息を呑むほど恐ろしい。 死人のように胸の上で手を重ね、過去に魂を飛ばして目を伏せている。 そこは随分と居心地が良いのだろう、僅かに微笑みを浮かべている。 だが、そこに斯波はいない。 ずぎりと心臓が痛む、きっとこれが悲しいという感情なのだろう。 この鈍い痛みに苛まれて悲しみからだんだんと憎しみへと爛れていく。 斯波の気配を感じ取ったのか、ぱちりと澄んだ目が開き側に座っていた斯波の瞳を見据える。 そして初めて百合子の方から斯波に触れた。 細い指先がさまようように斯波の頬を撫でる。 「斯波さん、泣いているの?」 頬は濡れていない。 それでも、百合子はそう問いかけて頬を撫でる。 敏感に斯波の悲しみを感じ取ったのかもしれない、斯波を気にかける百合子が嬉しくて本当に泣いてしまいそうだった。 「いや……」 「――そう」 どこか安堵したような百合子の表情に胸が穿たれた。 そんな斯波の様子とは逆に、 百合子は庭の様々な場所を回らせて、頭の中の地図をゆっくりと埋めていく。 いつか、機会を作って野宮の邸に帰るのだ。 相変わらず百合子を抱こうとしない斯波。 きっといつでも百合子の身体など支配できると思っているのだろう。 余興のように百合子の身体を弄び、辱めるつもりなのだ。 魂の汚れた獣の考えそうなことだと笑う。 斯波は百合子の言葉などでは傷つかないはずだ。 あの獣が人の心など持っているはずがない。 あの男は百合子のことを愛しているはずがない。 本当に愛しているというのなら、このような仕打ちをするはずがない。 あの男は人ではないのだ。獣であり、鬼であり、悪魔なのだ。 そうでなくてはならないのだ。そうでなくては――。 気配すら弱々しく斯波が泣いているのかとすら思った。 考えるだけでぞっとする。 あの鬼がいまだに人の心をもち、涙を流すなどということは許さない。 斯波という男は、百合子に無体な事をする癖に自分が傷ついたかのような顔をする事があった。 どうしてか、百合子はその表情を見る度にこちらが悪いことをした気になり、心が何度も揺れた。 けれど今はもうその顔も見えないのだから、何を感情を波立たされることがあろうか。 秋も深まったある日。 いつもは庭に連れ出される時間だというのに、斯波はいくら待っても来なかった。 そして、座敷牢に居ても分かるほどの人の声や足音が聞こえるようになった。 「一体何をし��いるの?」 百合子は斯波に問うが斯波は答えようとはしなかった。 そして当分は庭に出ることが出来ないと告げられ、目に見えて落ち込んだ百合子をまるで恋人がするように接吻で慰める。 抵抗を止めた百合子を受け入れられたと勘違いしたのか、その優しい仕草に吐き気と笑いが同時にこみ上げそうになる。 そうして数日ほど百合子が悲しげな表情をしていると許しを乞うように、では少しだけなら、と言うのだ。 日がくれて夜風が冷たい闇夜を百合子を抱えて歩く。 いつもと変わらぬ沈黙の闇だが、百合子にだけは分かった。 そくそくと軽い足音が遠くから聞こえる。それが、誰であろうが構わなかった。 足音が出来るだけ百合子の近くを通るのをひたすら待つ、それは街路樹の向こう壁を隔てた通りから聞こえるようだった。 自動車のエンジン音も聞こえ、側に人がいると言うことが分かった。 「月は出ているの?星は輝いているかしら」 「今日は天気が悪い、雲がかかって何も見えない」 「そう――」 百合子はそれだけ言うとまた大人しく斯波に横抱きにされたまま身を預ける。 良い香りのする百合子の髪に斯波は頬を寄せ、胸いっぱいに百合子の香気を嗅ぐ。 ようやくこの姫が自分のものになるかもしれない。 斯波はだんだんと心を開きかける百合子を間近で見ながら歓喜で打ち震えた。 そうして、いつも気まぐれに散策する庭では何かと不便だと思い四阿を作ろうと思ったのだ。 女中の報告によれば、百合子は初めの頃よりも随分と大人しくなり女中に噛み付くなどということもすっかり無くなったようだ。 百合子につけている女中は曰くつきの……生来から耳が聞こえず喉が潰れた女中を使っていた。 それだから、彼女の存在が外に漏れる心配もない。 彼女のために作った四阿は数日でほぼ完成し、造園をした一行がまさに帰ろうと外の道で自動車に乗り込んでいた。 がりと鋭い痛みが顔を走り、斯波は反射的に目を閉じていた。 「ぐっ……!」 抱えていた百合子がもがき、思わず抱いていた手を放す。 「助けて!!お願い助けて……!!!」 走りだそうとした百合子が足元から力が抜けたように転ぶ。 金切り声をあげる百合子を見て、自分の顔から滴る真っ赤な血を見て、斯波はすぐに悟った。 どうした、どうした、という造園業者の声に斯波は声を上げて答える。 「なあに、ちょっと愛妾と遊んでいるだけだ。 俺の遊びを邪魔しないでもらいたいな」 その言葉に業者たちはどっと笑った。 「旦那も変わった趣味をお持ちだね」 「羨ましいな」 散々にそう言うと邪魔をしては悪いと早々に立ち去る。 ぎらぎらと怒りの滾った瞳で百合子を睨んだ。 百合子は弱った足を引き摺るように、地面を這う。その先には確かに庭園からの出口があった。 斯波は何もかも理解した。 「どうした、お姫さん。出口はすぐそこだぞ。 十だけ待ってやろう。十数えてから貴方を捕らえに行くぞ」 斯波の狂気を含んだ叫びを背中に聞きながら、百合子は恐怖で身体がすくんだ。 庭に出る時はいつも斯波に抱えられていたのだ。 飛んだり跳ねたりはお手の物で、真島を困らせるほど木登りをしたり藤田から逃げるために走ったりした百合子の足は棒のように動かなくなっていた。 それが、自殺し��時の後遺症なのか、それとも監禁による生活で衰えたのか。 百合子の足はすっかりと弱り細って歩くことすらままなくなってしまっていた。 惨めに地面を這いずりまわって斯波から逃げる。 これほど力いっぱいに叫んで喉が裂けるほど声をあげているのに、なぜ誰も気が付かないのか。 斯波の邸が広いとは言え、近くには他の邸もあった。誰かしら気がついてもいいはずだ。 百合子は出口の方角も忘れ、ただその声が遠のく場所へと這って逃げた。 体力も落ち、ぜいぜいと肩で息をする。呼吸が乱れてぐらりと気を失いかける。 汗で肌に髪が張り付き、苦しげに胸を上下させて息をする。 まるで羽をもがれた蝶だ。 幼虫のような胴体と足だけで這いつくばるように蠢くさま。 眩しく輝くような瞳も、溌溂としたその表情も、 ひらひらと袖を振って走り回る足、そして凛として気高く高潔だったこの魂も。 全てあの男に奪われてしまったのだ。 遠くから斯波の胴間声が聞こえた。 狂気を含んだその声音で、ひとつ、ふたつと数を数え上げる。 百合子は弱り切った白く細い足を震わせながら、どうにか木を支えに立ち上がる。 長い長い闇の生活で、とうに走り方を忘れてしまった。 いずれは笑い方も喋り方もいずれは泣き方すらも忘れてしまうのではないだろうか。 そうして全て奪われてしまって、それでも残るのはきっとこの憎悪や恐怖や快楽が入り混じった歪な感情だけだろう。 目を見開いても真っ暗な闇の中を、覚束ない足取りで逃げる。 手探りで木や植木を伝って、あちこち掠り傷を作りながら、鬼から逃げる。 捕まったらお終いだ。そう、捕まったら、今度は――。 「どうした、もう逃げないのか」 「ひっ……!」 百合子が身を翻して逃げようとするのを愉快そうに笑う声が響く。 「随分と手を焼かせてくれたものだな。 今までの態度は俺を油断させようとする演技だったのか」 「貴方の目も潰してやればよかった!その穢らわしい目に私が写ることのないように!」 「そうか!ああ、それは残念でしたね。傷は額を少し切っただけだ。 貴方が惨めに逃げ戸惑う姿も、泥と枯葉にまみれた様相も楽しませてもらった」 揶揄の言葉に斯波を睨めつける。 怒気を帯びたその視線に斯波はなぜか情欲し、黒い髪に絡みついた色鮮やかな枯葉を気紛れに掬いながら百合子の口を吸った。 かたくなに引き結ぶ唇の上を斯波の唇が何度も吸い付く。 これから訪れる仄昏い情交が暗示され、陶酔境にひたる。 「いい目だ」 百合子の頬を両手で包み込み、逃がさないようにして顔中に口付けを落とす。 抵抗の腕も身体ごと抑えつけられてびくとも動かない。 「どうした、ほら。 もうこんなに甘い香りを立ち昇らせているじゃないか。 ああ、貴方の香りはどうしてこうも俺を惑わすんだ。 頑なだった身体が柔らかく熱を帯びてきたぞ」 固い乳房を撫で回して手のひらで蕾を転がし指の股で軽く挟みながら、 吸い付くようにきめの細かい白い柔肌をさする。 「ああ、男を知らない幼さの残る柔らかい身体だ。 お姫さん、お姫さん……一生、一生……俺だけの物だ。 優しく抱いてやろう、ほら、いつものように快楽に溺れ潤んだ瞳で乞えばいい」 胸を揉みしだかれながら、息もできないほどに唇を吸われて。 白い胸元は執拗に吸い付いた斯波の口付けのあとが点々と残されている。 隅から隅まで自分の物だと言うように、己の印を刻み込んで。 百合子は浅く息をしながら、呻くように低い声で言った。 「殺してやる……」 「やってみろ」 「この気狂いの獣!いやっ、放して!」 「そうか、貴方は乱暴にされたいらしいな」 帯を掴まれてその場にうつぶせに倒れる。 着物の裾は割れ、履かされていた白い足袋も泥と落葉の欠片で汚れてしまっている。 みだりがわしい格好に斯波は生唾を飲み込み、月夜に白く浮かび上がる肢体を荒い息で舐め回す。 斯波は躊躇なく着物の裾だけを捲り上げて、百合子の白い太腿を曝け出すと、自分の陰茎を取り出し、自分の唾を手に吐きかけて���茎に摺り込み、性急にそれを百合子の膣に押し込んだ。 「いやああ!!」 喉の奥に絡みつくような悲鳴が上がる。 ずぐりと押し広げられる痛みに百合子は逃れようと四つん這いのまま地面をかきむしるが、それを逃すまいと斯波が帯を掴み百合子を引き戻す。 そして腰を打ち付けては反動で倒れこむ百合子の腰を掴んでまた引き戻しを繰り返した。 ねじり込まれた女陰が限界まで広がり痛みと痙攣でじんじんと熱を持つ。 白い内ももを幾筋にも血が流れ、百合子の破瓜を示した。 「ひぃっ、痛い!嫌あっ!」 斯波に腰を打ち付けられる度に、顔は苦悶に満ち、くぐもったうめき声をあげる。 痛みと熱で膣を始め身体が引き裂かれるように痛んだ。 百合子の身体を押さえつけ、一心不乱に責め立てる獣を見てどこか安堵する。 この身を裂く痛みが、苦しみが、憎しみの糧となる。 斯波の手が乱暴に百合子の襟元をかき分けて、乱れた黒髪ごと乳房を揉む。 外気に触れた肩があまりにも白く、斯波はたまらずにそこに噛み付く。 腰を滅茶苦茶に打ちつけながら、乳房の先端をきゅっと扱き軽く潰すと甘い嬌声が百合子の喉をついてでた。 既に下半身の痛みは麻痺し、乱暴に揺すぶられながら乳首に感じた甘い痛みに仄暗い快楽が呼び覚まされる。 「ほら、覚えているだろう。貴方はこうやって乳首をこね回されるのが好きなはずだ。 もうこんなに固く凝っているじゃないか」 そう言うと指先で摘まれ転がされる。 「あっ、あっ……」 白い喉を仰け反らせて喘ぐ。 「うっ、……ああ、よほど気持ちがいいんだな。 こうやって強く擦る度に……貴方の膣内が俺に絡み付いてくる。 ああ、堪らない……ああ……ッ」 恍惚とした声でその感覚を繰り返し味わう。 「雲が切れて月が出てきたな……貴方の白い肌を照らして青白く輝いている。 こんな庭で、獣のような格好で交わるとは俺たちには似合いの舞台だ。そうは思わないか?」 百合子の頬にかかる髪を何度もかきあげて耳に口付けながら囁く。 上半身は地面に押し付けられて、頬に落ち葉と土を感じながら快楽の声をあげまいと指を噛む。 「可哀想に、声を上げるまいとこんなに強く噛んで。 ああ、歯形に……なっている」 陰茎を抜き、百合子の手を取り上げて噛んでいた場所を口に含む。 ちゅぷと音を立てて吸い、歯形に舌を這わせて優しく舌先で舐める。 胸元も裾も乱れて、それでも帯だけはきつく締まったままだった。濡れた肌に乾いた落ち葉が付き、縺れた髪にも落ち葉がついていた。 未だに達していないいきり立った陰茎をそのままに、斯波は首元のチーフをほどき百合子の股を拭う。 じわりと血が染みた。 「これで満足?憎い女を手篭めにして、慰み物にして! 私が貴方に何をしたというの!?こんな恥辱を味あわせてもまだ足りないというの?!」 「満足?俺がこれだけで貴方を手放すとでも思うのか? 貴方の曇った眸はもう何も写していないのだな。 しきりに帰るというが、邸はない。借財はどうする?どうやって生活するんだ。 いっそ、この身体でも売ってみるか?」 「それでも、それでも貴方なんかの慰み物にされるよりも随分とましだわ!」 百合子の言葉に斯波は鼻を鳴らして笑う。 「貴方のような曰くつきの女は切見世女���が��いぜいだろうよ。 それは地獄のような毎日だぞ、日銭を稼がなきゃならんから一日に何人も何人も相手をしないといけない。 それに、客も病気持ちや普通の女郎屋では取らないような異質な趣味を持つ客も取ることになる。 何人も何人も貴方の身体の上を通って、最後は気が触れるか病気で死ぬかだ」 言いながら斯波は指を百合子の膣に入れてかきまぜた。 乱暴に擦り上げられ、押し広げられてじくじくと熱をはらんでいる。 花芯を包皮の上から愛撫し、裏の天井を押しながら責める。 「ああっ、……ひっ」 手馴れたものでぷくりと腫れ上がった花芯の皮を舌を使って器用に剥くと、唇で挟み上下や左右に弄ぶ。 百合子は抵抗する力が弱まり、息を詰めてその快楽を受ける。 いつもならそのまま百合子が達するまで快楽を与え続けるのだが今日は違った。 とろりと蜜が溢れかえるのを確かめて、足を大きく開かせる。 先ほどの痛みを思い出して百合子は思わず足を閉じて腰を引こうとするが、がちりと斯波が固めて動かせない。 百合子の腰を少し浮かせるようにして、陰茎の先端を入り口に宛がう。 ぐぷ、と蕩けきった音がして百合子の蜜が斯波の先端に溶けて絡みついた。 そのまま、入り口でごく浅い挿入を繰り返す。 不思議なことに痛みでじんじんと疼いていた奥が斯波の逞しいそれの挿入を待ちかねるように蠢く。 「あ、あ、はやく……」 こらえ切れずに百合子は懇願していた。 「獣の摩羅をねだるとは、先程までは触れられるのも嫌そうだったじゃないか。 それが今はどうだ、自ら足を開いて腰を揺り動かして俺を誘っている」 そう言うとずぶりと半ばまで挿入し、雁首をしゃくり上げながら膣内を引っ掻く。 膣の壁をこそげ落とすかのような摩擦で蕩けるような快楽に身を震わせ、息を詰めてその感覚を味わう。 息が上がり喘ぐ声は一層艶を帯びた。 斯波がぴたりと動きをとめると、溶けきった思考の奥底から欲望だけがむき出しになった。 「や、……やめないで……」 「驚いたな、もう女の悦びを知ってしまったのか。 こんな少女のような華奢な身体で……。 もっとも貴方の身体に快楽を教えてやったのは他でもないこの俺ですがね。 貴方は快楽に身を委ねている時はとても可愛らしいな。 ん、ほら、奥まで欲しいのか?」 「はっ……う、あぁっ」 百合子はこくこくと頷く。 斯波はようやくしょうがないと苦笑し、細い腰を掴み陰茎を奥の奥まで押し込んだ。 「ああっ!ひっ、……苦しい……!」 息が詰まるほどの質量に必死になって胸を上下させ呼吸を繰り返す。 百合子の身体がわずかにも動く度に、膣内の斯波を締め付けびくびくと痙攣した。 これ以上は奥に挿入らない深くで斯波の先端が子袋の入り口を啄む。 びりりと雷に打たれたように背がしなる。 「あぁぁっ!んうっ」 その律動に合わせるかのように接吻し、ぐちゅぐちゅと唾液を絡ませて糸を幾筋も垂らす。 「分かるか、お姫さん。この奥の、一番深い所で接吻している感覚が」 百合子にはもう恥じらいや憎しみなどの感情は残っておらず、ただただ言われるがまま、斯波の言葉に頷いた。 「聞こえているだろう、この水音。貴方から立ち上がる香気とこの精神を狂わす��の匂い」 ゆっくりと陰茎を引きぬけば百合子の柔らかく溶けた膣襞が斯波に絡み付いてくる。 百合子は頭の後ろの方からばちばちと火花が爆ぜて、体の奥底からえも言えぬ快楽が沸き上がってくるのを感じた。 憎しみの感情が瓦解し、指から髪の先までを肉欲が支配する。 奥深く突き立てられる度に、淫靡な悦びに見が震える。 牝としての本能なのか斯波の陰茎が抜けないように膣が締まり、より深くつながるために両足を斯波の腰に絡みつける。 密着し触れる肌が熱く、のしかかる身体の重みさえ心地よい。 「ひう……」 浅く尽き、ぐうと奥に深く挿す。 そうしておいて引く時に雁首で襞をえぐるように抜く。 百合子はどんどんと高みに登らされ、快楽と恐怖の狭間で戸惑いぼろぼろと涙を零した。 「ああっ……!」 二度と帰っては来られない彼岸まで連れていかれそうで、それなのに身体は貪欲にこの気が狂うほどの悦楽を求めてしまう。 邸を破滅に追い込んだ憎い男――それもこの目が見えなければ、どうでも良いことだ。 盲妹とはよく言ったものだ。憎い男の姿形が見えなければまるで斯波という男の皮を被った鬼に犯されているように思えた。 そして、百合子はこの男を憎むからこそ生きることが出来る。 この男の言葉を信じず、憎み、僅かな希望に縋っているから、どうにか精神を保ち続けられるのだ。 だからこの男は徹頭徹尾、鬼でなくてはならない。 もし、この男の言うとおり野宮家を陥れたのが別の人間なら。 もし、この男の言うとおり華族という名のためではなく本当に百合子を愛しているというなら。 百合子は喘ぎ声とは違うくぐもった笑い声を喉の奥からあげた。 その声に斯波が百合子を見ると、彼女は揺さぶられ快楽に身を捩りながら穏やかに笑っていた。 背筋が凍えるほど美しいその相貌で。 斯波はぎりぎりと背中に爪を立てて掻き毟られ、甘い痛みに眉をしかめた。 腰の動きを速める斯波に絡みつき、斯波はなおもかき抱くように百合子の細い身体をかかえこむ。 逃げないように囚えて抑えつけ、乱暴に揺さぶる。 奥を突き上げ引き抜く度淫靡に揺れる乳房を揉みしだくと百合子の甘い香りは一層高まる。 ぐちゅぐちゅと粘ついた音を立てる女陰は斯波の陰茎に吸い絡みつき悦楽をねだっている。 百合子の眸が快楽に落ちる様相をみて、ようやく捕らえたと思った――しかし、実際は百合子の本当に気でも違ってしまいそうなほど甘美な肉襞に捕らわれていた。 白い華奢な肢体の少女を力任せに抑え抱きしめて、猛る自身の陰茎をねじ込み、無様な犬のように快楽を追って腰を振るなど今までの経験からは考えられなかった。 小刻みに絶頂に飛び、何度も百合子の子袋に射精してそれでも抱くことを止められなかった。 陰茎を抜きもせずに腰を打ち付け、愉悦に蕩ける百合子の身体を抱きしめる。 ずっと手に入れたかった愛おしい姫。やっと捕まえた。捕らえたはずだ。 斯波は体位を変えて、挿入したま百合子を抱き上げた。 持ち上げられた反動で一層深くまで陰茎が入り込む、熱くて熱くてたまらなかった。 じゅくじゅくに溶けてしまった百合子の女陰に包み込まれ、斯波は百合子に捕らわれるのを感じた。 「ああっ、深、い!ああ、うっ、ひぁっ」 ぶじゅぶじゅと、膣から垂れ落ちる蜜が挿入の度に卑猥な音を立てる。 百合子は斯波の上になり、欲を追う本能から不乱に腰を上下に動かした。 斯波がいつも責めてくる泣き所を自ら探す。 「い……。ああっ、はうっ――あっ、ああっ、あっ!」 弱い所を見つけると、そこに斯波の陰茎の先端を押し付け擦り、入り口が捲れ上がるほど激しい挿入を繰り返す。 身体の拮抗が取れず、百合子は崩れるように斯波の胸に倒れこんだ。 それでも、斯波の陰茎にむしゃぶりつく腰の動きは止められない。 黒髪を振り乱しながら斯波の陰茎を貪り食む百合子に、下から突き上げる。 「貴方は……こんなに淫らに蜜を溢れさせて俺の物を咥えて! 何て淫乱なんだ。気持ちいいのか?ん、どうなんだ。ほら、ほら!」 「あああっ!あっ!は、あ……っ!!」 じゅぼ、と音を立てて陰茎を抜く。 闇夜にも銀糸が引くのが明らかだった。 百合子の中で放った精液と百合子自身の蜜が一緒くたになって蕩け零れ落ちる。 「いやっ、お願い――」 「何が、お願いなんだ?」 百合子は深く乱雑な息を吐き、視線を宙に彷徨わせながら斯波の男根を握る。 ひやりと冷たく細い指に斯波はびぐりと痙攣した。 「これ……これでしょう?」 百合子は頬ずりして斯波の男根に舌を這わせた。 まるでそうする事で斯波の我慢が効かなくなることを知っているかのように。 辿々しい舌使いで根元からゆっくりと、浮き上がる血管を舌先で圧し潰すように舐め上げる。 「ああっ、……百合子さんっ!」 貴方はどこで、そんなことを――あ、うっ!」 斯波が信じられない思いで百合子を見る。 そして、自分の股間にしゃぶりつく愛おしい姫の淫猥な顔、小さな紅い唇が精一杯に頬張る浅黒い自身の男根、あまりの視覚的快楽にびりびりと身体が震えて吐精した。 百合子は顔に射精された噎せ返るほどの雄の匂いのする白濁液を手のひらで拭い、指に絡みつくそれを舐める。 その顔は斯波の知らない女の顔だった。 幼い頃に見たいとけない姫の顔でも、暴漢に立ち向かう勇ましい顔でも、快楽に耐える顔でもない。 着崩れて引っかかっているだけの緋い衣に、暗闇に浮かび上がる白い肌。 視線の定まらない昏い眸に、月明かりに照らされてしっとりと輝く黒い髪。 寒気がたつほど美しい女の顔。 百合子はその場に腰を下ろし膝を立てて太腿を割る、そして斯波を誘うように指で女陰を広げた。 先ほどまで斯波の陰茎を飲み込んでいた淡い桃色の膣口がぱくりぱくりと息をし、蜜を垂らす。 毎日斯波に教え込まれているのと同じように、百合子は花芯の皮を剥き蜜を掬い上げて塗りこむ。 斯波の思考が麻痺し、ごくりと喉が鳴る。 何度捕らえようとしても逃げられ拒絶され、その度に百合子への憎しみは増した。 そして今日ようやく捕らえたと思った。 快楽をその身に刻みこみ、二度と自分の元から逃げようとは考えられないようにしてしまおうと。 女の悦びを教えてやり、自分無しでは生きていけないようにするのだと。 百合子の髪を根元から掴み上を向かせて深く口付ける。 お互いの唇を貪り合いながら、落ち葉の敷き詰める地面に押し倒し身体中を愛撫した。 (捕らわれたのは――) 斯波は考えようとするも、百合子の甘い嬌声に思考を乱された。 甘い香りを吸い痺れて蕩けきった脳は、ただただ快楽を追い求める獣になれと命令するのだ。 その時、ふと黒尽くめの男の笑い声���蘇った。 斯波に百合子と死体の交換をもちかけた男、どうしてだか顔はぼんやりとも思い出せない、 だが、奇妙なことにその笑い声だけが何故か耳に残るのだ。 (何がおかしい) そうだ、斯波のぽつりと漏らした言葉に侮蔑するように笑ったのだ。 そして、男はこう続けた。 (……これは失礼しました。 ――いえね、貴方は”自分に鬼になれというのか”と今言いましたが) 相談を持ちかけられ、心を決めた時に、斯波は確かにそう言った。 それの何がおかしいというのか、斯波は憮然とした表情で男を見た。 (鬼というのは、元々は中国から伝わった言葉でしてね。 日本で差す鬼と、中国で言う鬼とは、少々意味合いが違うのです) 月が雲に隠れ、灯籠の火も遠く、斯波は曖昧な暗闇の中で百合子の身体らしい女の肢体を抱き続けた。 (中国で鬼とは死人のことを言います。 そう、鬼とは、貴方のことではなく――) 続きを思い出す前に絶頂で思考が飛ぶ。 思考を乱し、精魂を吸い尽くすように百合子が斯波の唇に口付ける。 この世のものとは思えないほど恐ろしい甘美なその肉で斯波を捕らえ、背筋も凍るほど美しい笑みで魅了させ続けながら。
0 notes