#緩衝地域としてのウクライナ
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篠田英朗 地政学から見た「緩衝地帯」ウクライナの終焉
篠田英朗(東京外国語大学大学院教授)
「マッキンダーの理論が正しければ、ソ連という衣をなくした後も、ロシアは不可避的に拡張政策をとってくる」。篠田英朗・東京外国語大学大学院教授は、ヨーロッパの国際紛争を理解するためには地政学が重要だと述べる。その視角からロシア・ウクライナ戦争を読み解いていただいた。
(『中央公論』2022年10月号より抜粋)
目次
「歴史の地理的回転軸」
ソ連崩壊後の変化
地政学から見たNATO東方拡大
「緩衝地帯」ウクライナの終焉
ロシアのウクライナ侵攻は特別な要素をいくつか持っていたため、日本でも大きな注目を集め、日本政府の対応も歴史的に特別な内容を持つものとなった。それを反映して、戦争がテレビのワイドショーの話題となり、コメンテーターらが、「ウクライナは降伏して早く戦争を終わらせるべきだ」といったお茶の間受けする空中戦の議論をするような光景も見られた。
しかし最近では、そのようなやりとりも減ってきたようだ。長期的な視座で構造的な問題を捉える議論に、よりいっそう力を入れていくべき時期にきている。
「歴史の地理的回転軸」
2015年の拙著『国際紛争を読み解く五つの視座』では、多種多様な国際紛争を、構造的な事情に着目して理解していくための理論的な視座を五つ特筆した。その際、それぞれの理論が最もよく説明する特定地域も明示した。そこで私は、ヨーロッパの国際紛争を理解するために重要となる理論的な視座は、地政学の理論である、と論じている。
今回のロシア・ウクライナ戦争は、当時描いていた構造的事情の根深さを、あらためて痛感する事件である。東欧から、コーカサス(アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア)を経て、中央アジアへと至る地域は、ハルフォード・マッキンダー(1861~1947年)以降の地政学理論家たちが、「ハートランド」などの特殊な概念を駆使して、その特徴を強調しようとし続けてきた。
マッキンダー以降の地政学は、「大陸国家」と「海洋国家」のせめぎあいとして、国際政治の全体動向を捉えようとする。両者の勢力が構造的な緊張関係を持つのは、ユーラシア大陸の外周に沿った地域だ。なぜなら特に「ハートランド」と呼ばれる大陸の深奥部の特殊地域に位置するロシアが、海洋を求めて南下政策をとり続けるからである。この「大陸国家」の「拡張政策」に対して、「海洋国家」は大陸へのアク���スポイントの維持を目指した「封じ込め」政策をとる。
この構造は、小手先の政策では消滅しない。なぜなら「大陸国家」の「拡張政策」は、その地理的環境から不可避的に発生してくる現象であり、「海洋国家」の「封じ込め」政策も、地理的環境から不可避的な反応であるからだ。そのためマッキンダーはこれを「歴史の地理的回転軸」と呼んだ。「ハートランド」を回転軸にして歴史は動く、ということを意味する。
あまりにも有名なマッキンダーの「歴史の地理的回転軸」論文は、1904年に著された。マッキンダーが19世紀を通じて「大陸国家」の代表者であるロシアと、「海洋国家」の雄であるイギリスの間で繰り広げられた「グレート・ゲーム」を観察し続けた結果、この論文で強調した理論的見解に辿り着いたことは、言うまでもない。
ソ連崩壊後の変化
後にマッキンダーは、第一次世界大戦の勃発を見て、ロシアではなくドイツを、「大陸国家」の雄とみなすようになる。
他方、第二次世界大戦以後、マッキンダーの「歴史の地理的回転軸」理論は、あらためて強い影響力を持つようになった。イギリスにとって代わって「海洋国家」としての覇権を握ったアメリカが、ロシアの拡張政策の発展後継者と目された「大陸国家」の覇者としてのソ連と対峙する冷戦時代においてである。
この「大陸国家」の覇者であるソ連と、その衛星国集団である共産圏の崩壊は、マッキンダー地政学からすれば、構造的な変動をもたらす大事件であった。もっともソ連の崩壊は、マッキンダー理論の時代の終焉ではない。なぜなら、たとえソ連が崩壊しても、その中核で拡張主義的な政策を推進していた「ハートランド」のロシアが持つ地理的性格には、変化はないからだ。マッキンダーの理論が正しければ、ソ連という衣をなくした後も、ロシアは不可避的に拡張政策をとってくる。
冷戦終焉後の新しいロシアの拡張政策の対象となるのは、ソ連の崩壊によって失った地域だ。上述の東欧から、コーカサス、そして中央アジアに至る地域が、それだ。すでにプーチン大統領登場以前の90年代の冷戦終焉直後の時期にも、東欧では、モルドバで沿ドニエストル共和国という現在まで続く未承認国家をめぐる紛争が起こった。92年以降、ロシアは平和維持軍の名目で、沿ドニエストルに軍事駐留し続けている。
コーカサスでは、88年にナゴルノ・カラバフ戦争が勃発していたが、ソ連崩壊後の92年にナゴルノ・カラバフ共和国(アルツァフ共和国)の独立宣言という事態に至る。当初から背景にロシアの影があったが、2020年の第二次戦争以後は、平和維持軍の名目でロシア軍が駐留している。また、91年には同じコーカサスのジョージアで南オセチア紛争が発生し、92年にはアブハジアでも分離独立運動が武力紛争に発展した。現在は国際的には未承認でも事実上の独立国家の状態にある南オセチアとアブハジアを支えているのが、平和維持軍の名目で軍事展開もしているロシアである。
さらに言えば、ジョージアの隣に位置するチェチェン地方で、94年に第一次戦争が勃発した。チェチェンはロシア共和国内に位置しているとはいえ、コーカサス地域としての性格を持つ。つまり、ソ連崩壊によって不��定化したロシア共和国の国境線に近い地域としての性格である。
中央アジアでは、タジキスタンがソ連崩壊直後の92年に内戦に突入した。武力で内戦を勝ち抜いたエモマリ・ラフモン大統領は、現在も権力の座にとどまり続けている独裁者だが、ロシアはその後ろ盾である。タジキスタンは、ロシアが主導する集団安全保障条約機構(CSTO)の92年の条約成立時からの加盟国である。CSTOは、2021年にカザフスタンで暴動が発生した際に平和維持部隊を展開して鎮圧にあたったことで注目されたが、ロシア主導で旧ソ連諸国の安定を図る地域機構としての役割を持っていると言える。
かつての冷戦時代であれば、ソ連が、ワルシャワ条約機構(1955年、ソ連と東欧の8ヵ国が、西側のNATO=北大西洋条約機構に対抗して結成した軍事同盟)の名目を掲げて、共産主義諸国の政治的不安定化に対処するために、軍事介入をするのが常であった。冷戦終焉後の世界では、ロシアが、旧ソ連諸国の争乱に軍事的手段も含めて介入するのが常となっている。
マッキンダー地政学からすれば、冷戦期から冷戦終焉後の時代への転換で生まれた変化は、表層的な問題である。構造的な核心は、「ハートランド」に位置するロシアは、ほぼ運命的に拡張政策をとる、という点である。したがって、マッキンダー理論から見ると、ソ連の崩壊は、ロシアと国境を接する旧ソ連構成地域の恒常的な不安定化を意味する。
地政学から見たNATO東方拡大
こうした情勢を考慮すると、NATOの東方拡大でロシアがウクライナへの軍事介入にまで追い込まれた、といった見方の信憑性が疑われる理由がわかるだろう。NATO東方拡大は、共産主義政権の崩壊という体制変動を経験した旧ワルシャワ条約機構の東欧諸国からの要請にしたがって、進展したからである。
当初、アメリカのクリントン政権は、NATO東方拡大に消極的だった。しかしロシアの潜在的な脅威を恐れる東欧諸国を「力の空白(何者かが事象の統制を失い、誰もそれに代わることができない)」状態に置き続けることは、かえって地域の不安定化につながるという見方が政権内部で大勢を占めることになり、第2期クリントン政権の99年から東方拡大が実現し始めた。
東方拡大を進めるにあたってNATOが採用した政策は、ほとんどマッキンダー理論にしたがったものであった。ロシアを恐れる東欧諸国の懸念に、NATOは、歴史的・地理的裏付けを見出した。そして、東欧諸国をNATOに吸収して「力の空白」から脱出させた。ただしその一方で、ロシアが「近い外国」とみなす旧ソ連を構成していた諸国については、拡大の対象とはしない、という方法をとった。ロシアの「勢力圏」の考え方に配慮したのである。
今やワルシャワ条約機構を構成していた旧ソ連諸国以外の全ての国が、NATO加盟国となっている。他方、旧ソ連を構成していた地域の独立国が、NATOに加入した例はない。バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)は、もともとソ連に併合されたこと自体が無効だったという���解が公式見解であるだけでなく、ソ連崩壊前に分離独立したという点で、旧ソ連を構成していた地域として位置づけられないと考えることができる。
不可避的なロシアの拡張政策に脅かされる東欧諸国は、「力の空白」から救い出された。しかしどこかに線引きがなされなければならない。そこでロシアの拡張政策の核心と想定される旧ソ連地域に対してまでは、NATOは拡大していくことをしない、という不文律が生まれた。
これは、冷戦終焉後の世界に不可避となった政策的修正を施しつつも、マッキンダー理論における「歴史の地理的回転軸」を完全否定することまではしない、という政策的見取り図であったと言える。
「緩衝地帯」ウクライナの終焉
ただし、マッキンダー理論を意識したからといって、NATOとロシアとの関係が安定したものになるわけではない。むしろマッキンダー理論の意識化とは、「恒常的なせめぎあい」が不可避であることを受け入れる諦念のことでもある。そのせめぎあいの管理の困難から逃れることはできない。
もともとウクライナを典型例とする「緩衝地帯」に曖昧な位置づけが与えられたのは、それぞれの国の内部に、たとえばロシア語話者が多数存在しているなど、ソ連時代の影響の残滓が色濃くあるからでもあった。ウクライナでは、東部地域と西部地域の政治的対立は、2014年頃まで国内政治の基本的な性格であった。それは、国際政治における「緩衝地帯」としての位置づけとも連動していた。アメリカなどのNATO構成諸国のみならず、ロシアもまた、ウクライナ国内の「親欧派」または「親露派」への支援を欠かさないようにしつつ、ウクライナ国内の複雑な事情を理解していた。
14年の「マイダン(ウクライナ語で広場の意)革命」で首都キーウにおける国内政治が、「欧州派」優勢で進んでいくようになったとき、まず国内政治の「バランス」が崩れた。首都における政変を見たロシアのプーチン大統領は、クリミアの併合と、東部地域における分離独立運動への支援という形で、明確にウクライナ領土の分割と自国の「勢力圏」の具体的な確保へと動いた。これによって起こったのは、ウクライナの残りの地域における「親欧派」の勢力基盤の確立であった。特に首都キーウの政治情勢は、一気に「親欧派」優位の方向へと動いた。
この国内政治の動きが、国際政治に連動しないはずはなかった。なぜならロシアの介入による東部地域の紛争の長期化と、国家としてのウクライナの欧米への傾斜は、ほとんど不可分一体だったからだ。ロシアが東部地域を自国の「勢力圏」として固めれば固めるほど、ウクライナは、かつてないほど明確に、NATO及びEUへの加盟を目指すようになった。
この情勢の帰結は、実態としてのウクライナ東部の分離と、ウクライナ国家の欧州化であった。つまり「緩衝地帯」としてのウクライナの終焉であり、地政学的なせめぎあいの最前線としての混乱であった。
今回の侵攻に至るまでのプーチン大統領の考えは、詳細には明らかになっていない。しかしプーチン大統領が、「緩衝地帯」としてのウクライナの終焉を好ましく思っておらず、これを阻止しようとし���ことは明らかだろう。ウクライナ東部地域を自国の一部として併合したうえで、残りのウクライナ地域を限りなく自国の「勢力圏」に近いものとして残そうとした。
戦争原因には様々な要素がある。一つの要素が戦争原因の全てだ、という状況はほとんどありえない。そうだとしても、プーチン大統領の思考に、自国に有利な地政学ゲームを遂行する意図があっただろうことは、否定できない。
そこで本稿では、ロシア・ウクライナ戦争を理解する際に求められる、国際政治を構造的に捉える視点を提供する。特に焦点を当てるのは、伝統的な地政学の理論と、ロシア・ウクライナ戦争との関係である。
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「ロシアの侵略」のリストを準備していらっしゃるようです。いくつかの明らかな省略と歪曲を除けば、素晴らしい仕事です。 詳しく見てみましょう: 1. 1918 年のウクライナ: 革命後の混乱、ロシアだけでなく複数の派閥。 2. ポーランド 1920 年: ポーランドはまずウクライナとベラルーシを侵略しました。ポーランド・ソビエト戦争について調べてください。 3. 1920 年のアゼルバイジャン: 内戦と地元共産主義者からの招待。 4. 1921年のジョージア: 同様の内乱、地元での赤軍の関与。 5. 1929年の中国: 中国の現地軍閥がソ連の援助を要請。 6. 1938 年の日本: 日本軍の侵略に対する防衛。ハサン湖の戦いについて聞いたことがありますか? 7. 1939年のポーランド: ドイツの侵攻後、ベラルーシとウクライナの少数民族を保護。 8. 1939 年のフィンランド: 冬戦争ですが、文脈が重要です。ナチスドイツに対する緩衝地帯です。 9. ルーマニア 1940年: 第一次世界大戦後にルーマニアに奪われたベッサラビアを奪還。 10. 日本 1945年: 第二次世界大戦の終結、ヤルタ会談の合意の履行。 11. 1945 年のイラン: 第二次世界大戦中、イギリスとともに補給線を確保。 12. 1946 年の中国: 日本軍残党と国内の軍閥に対する支援。 13. 北朝鮮 1950年: 朝鮮戦争中に同盟国を支援した。米国が韓国を支援したのと同様。 14. 1950 年の中国: 上記と同じ状況。 15. ハンガリー 1956年: 冷戦危機時のソビエト圏の結束。 16. ラオス 1960年: 冷戦中に社会主義運動を支援。 17. ベトナム 1961年: 米国の侵略に対して北ベトナムを支援。 18. アルジェリア 1962年: 反植民地戦士への援助。自由と独立ですね。 19. エジプト 1962年: ナセルの汎アラブ主義を支持し、西洋の影響に対抗。 20. イエメン 1962年: サウジアラビアの支援を受けた王党派に対抗してイエメン共和主義者を支援。 21. 1967 年のシリア: 冷戦体制と軍事援助。 22. チェコスロバキア 1968年: NATOの脅威を認識してワルシャワ条約機構が介入。 23. 1969 年の中国: 国境紛争。一方的ではなく相互の侵略。 24. カンボジア 1970年: 内戦中の社会主義国を支援。 25. バングラデシュ 1972年: 興味深い主張ですね。おそらく、バングラデシュの独立時のソ連の支援のことでしょうか? 26. アンゴラ 1975年: 米国と南アフリカが支援するUNITAに対抗してMPLAを支援。 27. エチオピア 1977年: オガデン戦争中の援助、ソマリアの侵略に対抗。 28. 1979 年のアフガニスタン: ムジャヒディーン (将来の「自由の戦士���がテロリストに転じた) に対抗して社会主義政府を支持する。 29. レバノン 1982年: イスラエルの侵略に対抗。 30. アゼルバイジャン 1988年: ソ連崩壊後の民族間紛争。 31. アゼルバイジャン 1990年: 同様の状況。 32. ジョージア 1991年: ソ連崩壊時の内乱。 33. モルドバ 1992年: トランスニストリアのロシア人の保護。 34. ジョージア 1992年: 内戦と民族紛争。 35. タジキスタン 1992年: ソ連崩壊後の内戦の安定化。 36. ジョージア 1994年: 南オセチアとアブハジアの紛争 - 民族自決。 37. チェチェン 1994年: 対テロ活動と分離主義の反乱。 38. ダゲスタン 1994年: 反乱鎮圧。 39. チェチェン 1999年: 第二次チェチェン戦争 - 再び、対テロ戦争。 40. ダゲスタン 1999年: 同じ紛争の一部。 41. ジョージア 2008年: 南オセチアにおけるジョージアの侵略への対応。 42. ウクライナ 2014年: 違法クーデター後のロシア系住民の支援。 43. ウクライナ 2022: キエフによる長年の砲撃の後、ドンバスを守る。 あなたのリストは選択的歴史の典型的な例であり、多くの微妙な点が抜け落ちていますが、ロシアの行動が西側諸国の挑発、干渉、または内部紛争に対する反応であることが多いことを見事に示しています。 文脈なしで歴史的な紛争を引用することで議論が強化されると考えているなら、考え直した方が良いかもしれません。 ロシアの歴史は複雑であり、防衛と地域の安定によって推進されている。 偽りの口実で侵略する一部の国とは異なり、ロシアの行動は帝国主義的ではなく、反動的なものである場合が多い。
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ウクライナの高官は4日、米国に対して、ロシア軍が来年に向けて大規模な進軍を計画し、黒海へのアクセス遮断を目指しているとする情報を伝えた。ウクライナ政府は、ロシアへの圧力を強化するよう米国に求めている。 ウクライナの高官代表団が米首都ワシントンを訪問する中、ドナルド・トランプ大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が電話会談で、ロシア内部にウクライナが無人機攻撃を仕掛けたことへの大規模な報復を警告したと明らかにした。 ウクライナの大統領府副長官を務めるパブロ・パリサ大佐は、自国軍の情報機関が発見したとする情報を公表した。パリサ氏は、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に昨年11月、副長官に任命されるまでは前線にいた。 パリサ氏は米国の議員らに説明した後に会見を行い、ロシアは9月末までにドネツク州・ルガンスク州の全域掌握を目標にしていると指摘した。ロシアの国営メディアが公開した同国がウクライナ側に示した「覚書」によると、ロシアは停戦条件として、一方的に併合を宣言したウクライナ領のドネツク、ルガンスク、ザポリージャ、ヘルソンの4州からのウクライナ軍の完全撤退を要求している。 パリサ氏は、ロシアは年内にウクライナとの国境沿いに緩衝地帯を設けることを目指していると主張。 「興味深いことに、彼らは2026年の計画さえ用意している。来年の計画は、ドニエプル川左岸に位置するウクライナ全域を占領することだ」とし、狙いは「オデーサ州とミコライウ州を占領し、ウクライナの黒海へのアクセスを断つことにある」と述べた。
ロシアが大規模な進軍計画 ウクライナ高官、米国側に情報提供 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
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地政学の概略
**地政学(Geopolitics)**は、地理的要因(位置、資源、気候、地形など)が国家の政治、経済、軍事戦略に与える影響を分析する学問です。国家間の関係、紛争、協力、勢力均衡を、地理的視点から理解することを目的とします。地政学は、国際関係や戦略論と密接に結びつき、歴史、経済、文化、軍事などの要素を統合的に扱います。
地政学の基本概念
地理的決定論:
地理的条件(海洋、陸地、資源、気候)が国家の運命や戦略を大きく左右する。
例:ロシアの広大な領土は防衛戦略に影響し、海に囲まれた日本の海洋国家戦略を形成。
ハートランドとリムランド:
ハートランド理論(ハルフォード・マッキンダー):ユーラシア大陸の中心部(「ハートランド」)を支配する国が世界を制する。「ハートランドを制する者は世界を制する」。
リムランド理論(ニコラス・スパイクマン):ハートランドを囲む沿岸地帯(リムランド)が重要。海洋国家がリムランドを支配することでハートランドを封じ込める。
例:冷戦期の米ソ対立で、米国はリムランド(西欧、日本など)を同盟化してソ連を牽 bomber。
チョークポイント:
戦略的に重要な海上・陸上の狭隘地(例:スエズ運河、パナマ運河、マラッカ海峡)。これを制する国は貿易や軍事移動を支配。
例:マラッカ海峡の支配は中国や日本のエネルギー供給に直結。
地政学的ピボット:
特定の地域や国家が、地理的・戦略的に世界の勢力均衡を左右する要衝となる。
例:中東(石油と宗教)、ウクライナ(欧露の緩衝地帯)。
資源地政学:
エネルギー資源(石油、天然ガス、レアアース)や水、食料の地理的分布が国家間の競争や協力を形成。
例:サウジアラビアの石油支配力、ロシアの天然ガスパイプライン戦略。
ソフトパワーと地政学:
軍事力や経済力だけでなく、文化やイデオロギーも地政学に影響。
例:米国のハリウッドや中国の孔子学院を通じた文化輸出。
地政学の歴史的背景
19世紀~20世紀初頭:マッキンダーやマハン(海上権力論)が地政学の基礎を築く。帝国主義時代に、植民地獲得や海洋支配を理論化。
冷戦期:米ソのイデオロギー対立が地政学に影響。スパイクマンのリムランド理論が米国の封じ込め政策に反映。
現代:グローバル化、気候変動、サイバー空間、宇宙が新たな地政学的舞台に。中国の「一帯一路」やロシアのユーラシア戦略など、経済と地政学の融合が進む。
地政学を学ぶためのポイント
地政学を��果的に学ぶには、理論的枠組み、歴史的文脈、現代の事例をバランスよく理解することが重要です。以下に、具体的な学習ポイントを詳しく解説します。
1. 地理的基礎知識を押さえる
地図の読み方:
世界地図を頻繁に参照し、国境、海洋、資源分布、チョークポイントを把握。
例:南シナ海の領有権争いや、北極海の資源開発の重要性を地図で確認。
地形と気候:
山脈、河川、平原、海洋が戦略にどう影響するか理解する。
例:ヒマラヤ山脈はインドと中国の軍事衝突を制限。
資源分布:
石油、天然ガス、レアアース、水源の地理的分布を学び、どの国がどの資源に依存しているかを把握。
例:中東の石油、コンゴのコバルト。
学習リソース:
『The Geopolitics of Energy』(Daniel Yergin)
地図アプリ(Google Earth)や地政学地図(StratforやCSISの地図分析)。
2. 主要理論家とその概念を学ぶ
古典的地政学:
ハルフォード・マッキンダー:ハートランド理論。
アルフレッド・マハン:海上権力の重要性(『海上権力史論』)。
ニコラス・スパイクマン:リムランド理論。
現代の地政学者:
エドワード・ルトワック:逆説的論理と現代戦略(『戦略論:大国興亡の論理』)。
ジョージ・フリードマン:地政学的予測(『次の100年』)。
ロバート・カプラン:地理と紛争の関係(『地政学の復讐』)。
ポイント:
各理論家の時代背景を理解し、なぜその理論が生まれたかを考える。
例:マッキンダーのハートランド理論は、鉄道の発達による陸上移動の重要性増大を反映。
3. 歴史的ケーススタディを分析
過去の事例:
冷戦:米国のリムランド戦略(NATO、日米同盟)でソ連を封じ込め。
第一次・第二次世界大戦:海洋国家(英米)と大陸国家(ドイツ、ロシア)の対立。
シルクロード:古代の地政学的交易路と現代の「一帯一路」の比較。
分析のポイント:
地理がどのように戦略を形成したか。
例:スエズ運河の支配をめぐる英仏の競争(19世紀~20世紀)。
学習リソース:
『地政学入門』(岩波新書、伊藤憲一)。
歴史書(例:『文明の衝突』サミュエル・ハンティントン)。
4. 現代の地政学的課題を追う
主要テーマ:
中国の台頭:「一帯一路」や南シナ海での海洋進出。
ロシアの地政学:ウクライナ侵攻や天然ガスパイプライン(ノルドストリーム)。
米国の戦略:インド太平洋戦略、AUKUS(豪英米同盟)。
気候変動:北極海の航路開放や水資源争奪。
サイバー・宇宙地政学:衛星、データセンター、サイバー攻撃の地理的���響。
ポイント:
ニュースやシンクタンク(CSIS、RAND、Stratfor)のレポートを定期的にチェック。
例:2022年のロシア・ウクライナ戦争を地政学的視点(黒海、天然ガス、NATO拡大)で分析。
5. 学際的アプローチを意識
経済:貿易ルートや資源依存が地政学に与える影響。
例:中国のレアアース輸出規制。
文化・宗教:中東の宗派対立(シーア派vsスンニ派)が地政学に与える影響。
技術:AI、ドローン、サイバー戦争が新たな地政学的要因に。
ポイント:
地政学は地理だけでなく、経済、歴史、文化、技術の交差点にある。
例:インドのIT産業と地政学的影響力の関係。
6. 分析ツールと方法論
SWOT分析:
国家や地域の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を地理的視点で評価。
例:日本の島国としての強み(海洋防衛)と弱み(資源依存)。
シナリオ分析:
地政学的イベントの「もしも」を考える。
例:台湾海峡での紛争が起きた場合のシナリオ。
ゲーム理論:
国家間の戦略的相互作用を分析。
例:米中間の貿易戦争における交渉戦略。
7. 日本の地政学的視点を理解
日本の特徴:
海洋国家:シーレーン(海上交通路)の確保が生命線。
資源貧国:中東やオーストラリアからのエネルギー輸入依存。
地政学的要衝:米中間の緩衝地帯として戦略的重要性。
学習ポイント:
日米同盟やインド太平洋戦略の役割を理解。
例:日本の対中政策(QUAD、TPP)と地政学的意義。
学習リソース:
『日本の地政学』(奥山真司)。
日本のシンクタンク(例:東京財団政策研究所)のレポート。
8. 実践的学習のヒント
ニュースを地政学的に読む:
BBC、Al Jazeera、The Economistなどの国際ニュースを読み、地理的要因を意識。
例:中東の紛争報道を、石油や宗派の地理的分布と関連づける。
地政学ゲームやシミュレーション:
ボードゲーム(例:『Diplomacy』)やシミュレーションソフトで国家間の駆け引きを体験。
ディスカッション:
地政学の勉強会やフォーラムに参加し、多角的視点を得る。
地政学を学ぶ際の注意点
偏見を避ける:
地政学は国家間の競争を扱うため、感情的になりやすい。客観的視点を持つ。
例:米中対立を一方的に批判せず、双方の地理的動機を分析。
時代背景を考慮:
古典的地政学(マッキンダーなど)は帝国主義時代を前提。現代の技術や経済状況に合わせて再解釈。
複雑性を理解:
地政学は単純な因果関係では説明できない。複数の要因(地理、経済、文化)が絡む。
継続的な学習:
地政学は動的。国際情勢の変化を追跡し、知識を更新。
おすすめの学習リソース
書籍:
『地政学入門』(Prisoners of Geography、Tim Marshall):現代地政学の入門書。
『戦略論:大国興亡の論理』(Edward Luttwak):戦略と地政学の融合。
『次の100年』(George Friedman):地政学的予測。
ウェブサイト:
Stratfor:地政学分析のリーダー。
CSIS(戦略国際問題研究所):地政学レポートや地図分析。
Foreign Affairs:国際関係と地政学の記事。
動画・ポッドキャスト:
Caspian Report(YouTube):地政学的トピックの解説。
The Geopolitics Podcast:最新の地政学トピック。
具体例:現代の地政学的課題
南シナ海:
地理:マラッカ海峡に近く、世界の貿易量の3分の1が通過。
問題:中国の人工島建設、米国の航行の自由作戦。
地政学的意義:エネルギー供給と制海権の争奪。
北極海:
地理:気候変動で航路と資源(石油・ガス)が開放。
問題:ロシア、米国、カナダの領有権争い。
地政学的意義:新たなシーレーンと資源競争。
ウクライナ:
地理:ロシアと欧州の緩衝地帯、黒海へのアクセス。
問題:ロシアの侵攻、NATOの東方拡大。
地政学的意義:欧露の勢力均衡、エネルギーパイプライン。
まとめ
地政学は、地理が国家の戦略や国際関係に与える影響を分析する学問であり、理論、歴史、現代事例の理解が鍵です。学ぶ際は、地理的基礎、主要理論、歴史的ケース、現代の動向をバランスよく押さえ、学際的アプローチで深めることが重要です。特に、日本の海洋国家としての立場や、米中対立、気候変動などの現代的課題に注目すると、実践的な理解が深まります。特定の地域やテーマについてさらに詳しく知りたい場合、教えてください!
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アゴラに書きました。皆さんの意見をお聞かせください。ただし、「小国の火遊びと大国の野望」を回る話に限定してくださるようにお願いします。せっかく問題提起してもここでのテーマと関係ない意見を書かれると議論がかみ合わなくなりますのでよろしくお願いします。
小国の「火遊び」は大国の野望と同じように平和の脅威となる
「大国に小国が飲み込まれるのを良しとしないので絶対にウクライナ支持」とウクライナ紛争について主張する者がいる。また、「朝鮮半島は古代から大国の狭間で痛めつけられた」と語る半島の住民もいる。
しかし、小国が地域の秩序を乱すことは多い。小国が常に大国に翻弄されて損をしているわけではない。
朝鮮半島は日本と中国のはざまで迷惑を被ったとされるが、日中の争いは多くの場合、半島が二つの大国の間で策を弄した結果として発生したものである。さらに近代にはロシアも加わった。
日清戦争は、維新以降、朝鮮王国が閔妃と大院君によって日本と清国を天秤にかけ、さらには途中で組む相手を変えるという混乱を引き起こしたことが大きな原因であることは紛れもない事実である。また、日露戦争も、朝鮮王国が日清戦争後にロシアを招き入れ、日本と対抗させようとしなければ起こらなかったことは明白である。なにしろ���皇帝自らがロシア公使館に入ったほどである。
ベネルクス三国は、フランス・ドイツ・イギリスの緩衝国家、仲介国家としてしっかりとした哲学をもって行動し、EU創設にも貢献した。それに対して、韓国はいまも日中を天秤にかけて行動している。これを小国の自由として好き勝手に振る舞われては、アジアの平和は成り立たない。私はむしろ、日中が直接結びつくことによって、半島が無責任に動く余地をなくすほうがアジアの安定につながると考える。そうなれば、半島も平和の利益を享受できるはずである。
例えば、将来、日中韓を構成国とするさまざまな機関が設立されるとして、韓国が仲介役に徹するのであれば、その本拠をソウルに置くことも可能である。しかし、現状のようなトラブルメーカーである限り、それは到底受け入れがたい。日清戦争・日露戦争の原因は、半島国家のコウモリ的な振る舞いにある。
ウクライナ紛争もまた、小国が大国の間であちらについたり、こちらについたりした結果として発生したもの「とも」言える。ウクライナの論理と半島の論理は類似している。「小国だから紛争の一方的な被害者である」という考えは誤りである。
法的にはロシアの侵略であるが、ウクライナが何も悪いことをしていない純然たる被害者であるかのように考えたり、そのように扱うことは問題である。そもそも、ウクライナが国家を形成した歴史はロシア革命以前にはなく、ウクライナ人という民族が存在したのかも定かでない。スターリンの政治的思惑によって成立したウクライナの独立は、法的にはともかく、歴史的には疑問が残る存在であり、それ自体が火薬庫である。しかし、ここではその議論は措く。
もちろん、ロシアのウクライナ侵攻は違法である。しかし、ウクライナは2014年以降、選挙で選ばれた大統領を追放し、クリミア軍港の地位を危うくし、ロシア系住民を弾圧し、高度な自治を拒否し、さらにNATOやEUへの接近を図った。これが危険な火遊びでなくて何であろうか。
戦後には、無理のない、長期的に安定する体制が構築されることを願う。
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2023年10月7日から現在まで続いているイスラエル・ハマース戦争において、イスラエル・エジプト・キプロスを中心とする東地中海ガス開発への損害は、意外なほど限られている。ハマースによる侵攻直後から、イスラエル第2のガス田であるタマルガス田、そしてイスラエル・エジプト間をつなぐ東地中海ガス(EMG)パイプラインが侵攻から1カ月程度停止したものの、あくまで短期間の供給量減少にとどまっている。エジプトからのLNG(液化天然ガス)輸出も11月中旬から再開し、東地中海での長期的なガス供給途絶という最悪のシナリオは、現時点では回避されている。「戦後」の東地中海ガス開発は、これまでと同様、「脱ロシア天然ガス供給源」候補としての強い推進力をもとに順調に進展するのだろうか。 東地中海のガス開発は2010年代から「反トルコ」「脱ロシア」といった政治的要因によって推進されてきた。そのため、「戦後」の東地中海ガス開発を考えるにあたっては、物理的・経済的なインフラ状況のみならず、同地域を取り巻く政治的コンテクストやそれに伴う事業環境を検討することが欠かせない。 本稿では東地中海ガス開発がこれまでどのような政治的コンテクストの中で推進されてきたかを分析し、そのうえで、今回のイスラエル・ハマース戦争前後の環境変化によって生起した、今後のイスラエル・キプロスのガス開発におけるそれぞれの事業課題を検討する。 1. 東地中海ガス開発に対する政治的な推進力 2010年代に東地中海において大規模なガス田が発見された時期から、すでに「反トルコ」や「脱ロシア」といった政治的要素の萌芽が見られた。「反トルコ」要素については、ガス田の発見を機に、イスラエル・キプロス・ギリシャの間でガス開発に関する緩やかな協調が形成され始めた。イスラエルは2010年、パレスチナ支援団体の船団とイスラエル軍との衝突で50名以上のトルコ人死傷者が出た事件からトルコとの関係が悪化したことを機に、トルコとの間にキプロス内戦を通じた緊張関係を有するキプロス・ギリシャとの関係を強化してきたのである。エネルギー協力は3カ国関係の中核に位置付けられており、2010年ごろから東地中海パイプライン構想の原型やキプロスでのLNG輸出施設の建設などのガス開発オプションの検討が進められていた。また、「脱ロシア」要素については、2014年のロシアによるクリミア併合を機に、EU(欧州連合)はロシアへの天然ガス依存を低減させる手段の一つとして東地中海ガス田からの供給に注目した。2015年には東地中海パイプライン構想をはじめてEUのインフラ支援対象である「共通関心プロジェクト(PCI)」リストに加えている。 2010年代後半になると、東地中海ガス開発における「反トルコ」的性格はより強まる。2018年ごろからキプロスでの探鉱活動が活発化したことで、トルコが軍艦を伴う示威行動によって外国企業の探鉱活動を頻繁に妨害するようになった。これに対して2019年1月、イスラエル・キプロス・ギリシャ・エジプトが中心となって、東地中海でのガス開発を促進する「東地中海ガスフォーラム」を設立することを発表した。孤立したトルコは同年11月にリビア国民合意政府(GNA)との間で、エジプトやギリシャの排他的経済水域(EEZ)主張を無視する形で、トルコ・リビア間EEZ画定に関する基本合意(MOU)を締結した。このように、トルコと「東地中海ガスフォーラム」の対立にリビア内戦などが重なり合うことで、複雑なトルコ対「反トルコ連合」の対立が固定化されたのである。 2019年時点のトルコと「反トルコ連合」の対立構図[JOGMEC作成資料より] 2022年2月のロシア・ウクライナ戦争が生じると、この状況に「脱ロシア」の政治的コンテクストが加わることとなる。2022年までは東地中海ガス開発がトルコをめぐる国家間対立のアリーナ、あるいは各国の外交的ツールとして活用されてきた。しかしこの侵攻により、EU主要国はロシア産化石燃料からの脱却を真剣に検討し、東地中海ガス田のエネルギー供給源としての本来的な価値が注目されるようになった。このモメンタムが生まれる以前の2020年にシェブロンが東地中海の主要ガス田に参画していたことで、同社を中心にエジプトの既存LNG輸出施設の活用や各国におけるLNGインフラの新設など、具体的な開発に向けた動きが加速していく。 ここで留意したいのが、この「脱ロシア」��よる東地中海ガス田への注目も、単に各企業がガスポテンシャルや経済性を評価しただけではなく、EUによる脱ロシア天然ガス供給源候補の追求という政治的な推進力が不可欠な役割を果たしたということである。実際に、2022年6月のEUとイスラエル、エジプトによる東地中海から欧州へのLNG供給増加に関するMOUなど、東地中海ガス田の開発・生産・輸出に向けた動きは、政府間合意や多国間協調を中心に推進されてきたのである。
東地中海ガス開発「政治主導」の脆弱さに加わる「イスラエル・ハマース戦争」:豊田耕平 | 立ち上がる中東エネルギー新秩序 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト
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小野正裕分析:ロシア・ウクライナ紛争が世界経済に及ぼす影響
小野正裕分析:ロシア・ウクライナ紛争が世界経済に及ぼす影響
ロシアとウクライナの紛争は世界経済にどのような影響を及ぼすのでしょうか? この紛争は、苦しみや人道危機を引き起こすだけでなく、世界経済全体の成長鈍化とインフレの加速にもつながるでしょう。この影響は3つの主な経路を通じて伝わります。 まず第1に、食料やエネルギーなどの一次産品価格の上昇がインフレをさらに押し上げ、それによって実質所得と需要が減少します。第2に、特に近隣諸国は、貿易、サプライチェーン、送金によるの混乱、そして歴史的な難民流入の急増に直面することになるでしょう。第3に、景況感の低下と投資家の不確実性の増大により、資産価格が下落し、金融状況が逼迫します。よって新興国市場からの資本流出が刺激される可能性があります。 ロシアとウクライナは主要な一次産品生産国であり、生産の混乱により世界的な価格の高騰(特に石油とガス)が生じています。ウクライナとロシアが世界の輸出の30%を占めているため、食料価格も特に小麦の価格が高騰してます。 世界的な影響に加えて、私たちが直接貿易、観光、金融取引を行っている国々はさらなる圧力を感じることになるでしょう。それに石油輸入に依存する経済は、財政赤字と貿易赤字の拡大とインフレ圧力の増大に直面するでしょう。しかし、中東やアフリカなど一部の輸出国は価格上昇の恩恵を受ける可能性があります。 食料と燃料の価格の急激な上昇は、サハラ以南のアフリカやラテンアメリカからコーカサスや中央アジアに至るまで、より大きな不安定リスクを引き起こす可能性がある一方、アフリカや中東の一部では食料不安が悪化する可能性があります。 影響を測るのは難しいですが、世界経済フォーラムの成長予測は来月下方修正される可能性が高いでしょう。長期的には、エネルギー貿易が変化し、サプライチェーンが再構成され、決済ネットワークが分断、各国が基軸通貨の保有を再考すれば、この紛争は世界の経済的・地政学的秩序を根本的に変える可能性があります。地政学的な緊張の高まりにより、特に貿易とテクノロジーにおける経済分裂のリスクがさらに高まります。

ヨーロッパ ウクライナの損失は甚大です。対ロシアは前例のない制裁を金融仲介や貿易の正常な運営に影響を与え、深刻な不況につながることは避けられません。ルーブル安はインフレを加速させ、人々の生活水準をさらに低下させました。 ロシアはヨーロッパにとって天然ガスの重要な輸入源であるため、エネルギーはヨーロッパの主要な波及経路となっています。より広範なサプライチェーンの混乱も深刻な結果をもたらす可能性があります。こうした影響はインフレを加速させ、パンデミックからの回復を遅らせるでしょう。東ヨーロッパでは資金の調達コストと難民の流入が増加するでしょう。国連のデータによると、最近ウクライナから逃れてきた300万人の大部分は東ヨーロッパに吸収されています。欧州各国政府は、エネルギー安全保障や防衛予算への追加支出による財政圧力にも直面する可能性があります。 ロシア資産の急落に対する海外のエクスポージャーは世界基準からすると控えめですが、投資家がより安全な逃避先を求めれば、新興国市場への圧力が高まる可能性があります。同様に、ほとんどの欧州銀行とロシアへの直接エクスポージャーは控えめであり、管理が可能となります。
コーカサスと中央アジア ヨーロッパの外では、これらの近隣諸国はロシアの経済衰退とロシアに対する制裁のより大きな影響を感じることになるでしょう。貿易・決済システムにおけるロシアとの緊密な関係は、これら諸国における貿易、送金、投資、観光を阻害し、経済成長、インフレ、貿易収支、財政収支に悪影響を与えるでしょう。 一次産品輸出国は国際価格の上昇から恩恵を受ける可能性があるが、制裁がロシアのパイプラインにまで拡大すれば、エネルギー輸出が減少するリスクがあります。 中東および北アフリカ 食料とエネルギー価格の上昇と世界的な金融情勢の逼迫は、重大な波及効果をもたらす可能性があります。例えば、エジプトは小麦の約80%をロシアとウクライナから輸入しています。さらに、両国にとって人気の観光地であるエジプトの観光収入も減少するでしょう。 政府補助金の増額などインフレ抑制政策は、すでに脆弱な財政収支を圧迫する可能性があります。さらに、対外融資条件の悪化は資本流出を刺激し、債務水準が高く資金需要が大きい国では成長が鈍化する可能性もあります。 一部の国、特に社会的セーフティネットが弱く、雇用機会が少なく、財政余地が限られている政府の支援が低い国では、価格の上昇により社会的緊張が悪化する可能性があります。
サハラ砂漠以南のアフリカの地域 大陸はパンデミックから徐々に回復しつつあるが、危機がその進展を脅かしています。この地域の多くの国は、特にエネルギーや食料の価格上昇、観光客の減少、国際資本市場へのアクセスの潜在的な困難などにより、戦争の影響に対して特に脆弱です。 ほとんどの国には、危機ショックの影響に対処するための十分な政策余地がまだありません。これにより、社会経済的圧力、公的債務の脆弱性、そして何百万もの世帯や企業が耐えているパンデミックのトラウマが悪化する可能性があります。 記録的な小麦価格は特に懸念されており、この地域の供給量の約85%が輸入品で、そのうちの3分の1はロシアまたはウクライナから来ています。
西半球 食料とエネルギーの価格は波及効果をもたらす主な経路であり、場合によっては重大な影響が及ぶ可能性があります。食品とエネルギー価格の上昇は、ブラジル、メキシコ、チリ、コロンビア、ペルーの5大経済大国がすでに年間8%のインフレ率に直面している中南米・カリブ海地域でインフレを大幅に加速させる可能性があります。中央銀行はさらなるインフレ防止策を講じる必要があるかもしれません。 さまざまな商品の価格上昇はさまざまな影響を及ぼします。原油価格の上昇は中米とカリブ海の輸入業者に打撃を与える一方、石油、銅、鉄鉱石、トウモロコシ、小麦、その他の金属の輸出業者は影響を軽減するために価格を引き上げることができます。 金融状況は比較的良好な状況が続いていますが、紛争の激化は世界的な金融危機につながる可能性があり、国内の金融政策が引き締められる中で成長が圧迫される可能性もあります。 米国はウクライナやロシアとの関係がほとんどなく、物価上昇は米国に直接的な影響をほとんど与えていませんが、戦争前に米国のインフレ率は一次産品価格を押し上げる4年ぶりの高水準に達していました。これは、連邦準備制度が利上げを開始するにつれて、価格が上昇し続ける可能性が高いことを意味しています。 アジアと太平洋 この地域では、ロシアとの緊密な経済関係がないため、ロシアの波及効果は限定的かもしれなませんが、欧州および世界の経済成長の鈍化は、この地域の主要輸出国に大きな打撃を与えるでしょう。 ASEAN経済、インド、一部の太平洋諸島を含む辺境経済の石油輸入国の経常収支が最も大きな影響を受ける可能性が高いと思われます。この状況は、ロシア人観光客に依存している国々の観光客の減少によってさらに悪化する可能性があります。 中国にとっては、財政刺激策が今年の5.5%成長目標を支援し、中国がロシアから購入する輸出品の量も比較的少ないため、直接的な影響は小さくなるはずです。それでも、一次産品価格の上昇と大規模な輸出市場での需要の低迷が中国の課題をさらに増大させるでしょう。 ロシアとウクライナ紛争の波及効果は日本と韓国でも同様であり、新たな石油補助金が影響を緩和する可能性があります。エネルギー価格の上昇はインドのインフレを押し上げるでしょうが、インドはすでに中銀の目標範囲の上限に達しています。 アジアにおける食料価格の圧力は、現地生産や小麦の代わりに米の使用を増やすなどの手段によって軽減されるべきです。高価な食料とエネルギーの輸入は消費者物価を押し上げるでしょうし、燃料、食料、肥料に対する補助金や価格制限により当面の影響は緩和されるかもしれませんが、財政コストが発生するでしょう。
世界的な衝撃 ロシアとウクライナの紛争は世界に衝撃を与え、経済緩衝材としての世界的なセーフティネットと地域協定の重要性を指摘しました。 IMFのクリスタリナ・ゲオルギエワ専務理事は最近、ワシントンでの会見で記者団に対し、「私たちはショックに対してより脆弱な世界に住んでおり、これから起こる衝撃に対処するには総合的な力が必要だ」と語りました。 一部の影響は長年にわたって顕著にならないかもしれませんが、戦争とその結果としての生活必需品の価格上昇により、一部の国の政策立案者がインフレを制御しています。また、経済を支援し、流行からの回復との間の微妙なバランスですが、済的打撃を与えることがさらに��難になるという明らかな兆候がすでに現れています。
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不確実性における観察 | 澤田 弘樹が語る経済、金融、地政学リスクの全貌
不確実性における観察 | 澤田 弘樹が語る経済、金融、地政学リスクの全貌
1:世界経済が複数の衝撃を受けた
2022年、世界経済は2030年の持続可能な開発目標の中点達成に近づく中、一連の深刻かつ相互に重なる衝撃を受けたました。COVID-19のパンデミックの影響はいまだ世界中に響き渡る中、ウクライナ戦争は食糧やエネルギー市場を混乱させる新たな危機を引き起こし、多くの開発途上国で食糧不安と栄養不良をさらに悪化させています。
高インフレは実質所得を侵食し、世界的な生活費危機を引き起こし、何百万人もの国民を貧困と経済的苦境に陥れています。それと同時に、気候危機は引き続き大きな代償をもたらし、熱波、野火、洪水、ハリケーンは多くの国で巨大な経済的損失をもたらし、人道危機を生み出しています。だからこれらの衝撃は2023年の世界経済に巨大な影響をもたらしました。

継続的な高インフレは、2022年には平均で約9%に達し、多くの先進国と発展途上国の大幅な貨幣の流通量の減少を促しました。急速な利上げ、特にアメリカ合衆国連邦準備銀行の急速な利上げは、世界的な波及効果を生み、発展途上国からの資本流出や通貨安を引き起こし、国際収支への圧力を高め、債務の持続可能性に対するリスクを高めました。
民間と公的の債務と資産の割合を見て、資金調達条件が急激に引き締まり、債務返済コストが押し上げられ、財政余地が制限され、ソブリン格付けリスクが増大しています。金利上昇と購買力低下は消費者の自信や投資家のセンチメントを弱め、世界経済の最近の成長見通しに更なる負担を掛けました。消費財への需要の漸減、長引くウクライナ戦争、継続的なサプライチェーンの課題により、世界貿易は低迷しています。
この様な背景において、世界の産出の伸びは2022年の約3%から2023年のわずか1.9%に低下する見通しで、ここ数十年で最も低い成長率の1つとなっています。予想通りにマクロ経済への逆風の一部が来年に後退し始めれば、世界の成長は2024年に2.7%に回復すると予想されています。世界経済全体の需要が弱まるにつれ、インフレ圧力は徐々に軽減されると予想されます。
これにより、米連邦準備銀行や他の主要中央銀行は金融引き締めのペースを落とし、最終的にはより融通性のある金融政策立場に移行することになります。ただ、様々な経済、金融、地政学、環境リスクが継続しているため、最近の経済見通しは極めて不確実なままです
2:大多数の先進国の経済は急激に下落
現在の世界経済の減速は先進国だけでなく発展途上国にも影響を及ぼしており、多くの国が2023年に景気後退リスクに直面しています。アメリカ、欧州連合とその他の先進国の成長の勢いが弱まり、世界経済の他の部分に不利な影響を与えています。
アメリカでは、国内のGDPは2022年に1.8%増と推定された後、2023年には0.4%増にとどまると予想されています。金利上げや実質所得の低下、家計純資産の大幅な低下を踏まえると、消費者の支出削減が期待されます
。住宅ローン金利の上昇と建設コストの高騰が引き続き不動産市場の足を引っ張る可能性があり、住宅固定投資はさらに落ち込むものと予想されます。執行摘要III ウクライナ戦争の継続に伴い、ヨーロッパの短期経済の前景は急激に悪化した。欧州諸国の多くは緩やかな景気後退を経験すると予想されており、エネルギー価格の上昇やインフレ率の上昇、金融条件の引き締まりが家計消費や投資を抑制するとみられています。2023年ユーロネクストの成長は0.2%で、2022年の約3.3%を下回る見通であり、COVID-19規制の一段の緩和と抑制された需要の放出が経済活動を押し上げました。欧州連合はロシア連邦の化石燃料への依存度を減らす努力を続けているが、当該地域は依然として天然ガス不足を含むエネルギー供給の混乱の影響を受けやすいです。英国経済は、家計支出の急減、財政圧迫、一部EU離脱に起因するサプライ側の課題により、特に見通しが暗くなっています。
2022年後半、英国は衰退し始めました。2023年のGDPは0.8%に縮小する見通しです。日本経済は緩やかな成長率ではあるものの、2023年には比較的好調な先進国の1つになると予想されています。他の先進国と異なるのは、金融や財政政策は依然として融通性を維持しています。
ただ、チップ不足の長期化、輸入コストの上昇(円安がけん引)、外部需要の鈍化が工業生産を圧迫しています。2023年のGDPは1.5%増で、2022年に達すると推定されている成長率1.6%をやや下回っています。ウクライナ戦争は、独立国家連合体とグルジアの最近の経済見通しに深刻な影響を与えました。ロシア連邦の経済縮小とウクライナ産出の大きな損失は、当該地域の他の場所に波及効果をもたらしています。
とはいえ、2022年のロシア経済は当初の予想よりも縮小し、GDPが約3.5%減にとどまったのは、経常収支に多額��黒字があること、銀行部門が安定的に推移していること、当初の急激な金融引き締めが反転したことが背景にあります。当該地域の多くの経済体は企業や住民の移転や資本流入の恩恵を受けており、2022年は予想より速いペースで成長しています。貿易条件の改善が当該地域のエネルギー輸出国の成長を助けました。全体的に、独立国家連合体とグルジア(ウクライナを除く、不確実性のため、この報告書では予測していない)のGDPは、2022年に1.6%減少した後、2023年には1%縮小すると予測されています。
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澤田弘樹の視点:米国、欧州、日本、イギリスの経済についての見通し
澤田弘樹の見解:2022〜2023年の経済動向の詳しい分析 1:世界経済が複数の衝撃を受けた
2022年、世界経済は2030年の持続可能な開発目標の中点達成に近づく中、一連の深刻かつ相互に重なる衝撃を受けたました。COVID-19のパンデミックの影響はいまだ世界中に響き渡る中、ウクライナ戦争は食糧やエネルギー市場を混乱させる新たな危機を引き起こし、多くの開発途上国で食糧不安と栄養不良をさらに悪化��せています。高インフレは実質所得を侵食し、世界的な生活費危機を引き起こし、何百万人もの国民を貧困と経済的苦境に陥れています。それと同時に、気候危機は引き続き大きな代償をもたらし、熱波、野火、洪水、ハリケーンは多くの国で巨大な経済的損失をもたらし、人道危機を生み出しています。だからこれらの衝撃は2023年の世界経済に巨大な影響をもたらしました。継続的な高インフレは、2022年には平均で約9%に達し、多くの先進国と発展途上国の大幅な貨幣の流通量の減少を促しました。急速な利上げ、特にアメリカ合衆国連邦準備銀行の急速な利上げは、世界的な波及効果を生み、発展途上国からの資本流出や通貨安を引き起こし、国際収支への圧力を高め、債務の持続可能性に対するリスクを高めました。民間と公的の債務と資産の割合を見て、資金調達条件が急激に引き締まり、債務返済コストが押し上げられ、財政余地が制限され、ソブリン格付けリスクが増大しています。金利上昇と購買力低下は消費者の自信や投資家のセンチメントを弱め、世界経済の最近の成長見通しに更なる負担を掛けました。消費財への需要の漸減、長引くウクライナ戦争、継続的なサプライチェーンの課題により、世界貿易は低迷しています。この様な背景において、世界の産出の伸びは2022年の約3%から2023年のわずか1.9%に低下する見通しで、ここ数十年で最も低い成長率の1つとなっています。予想通りにマクロ経済への逆風の一部が来年に後退し始めれば、世界の成長は2024年に2.7%に回復すると予想されています。世界経済全体の需要が弱まるにつれ、インフレ圧力は徐々に軽減されると予想されます。これにより、米連邦準備銀行や他の主要中央銀行は金融引き締めのペースを落とし、最終的にはより融通性のある金融政策立場に移行することになります。ただ、様々な経済、金融、地政学、環境リスクが継続しているため、最近の経済見通しは極めて不確実なままです

2:大多数の先進国の経済は急激に下落
現在の世界経済の減速は先進国だけでなく発展途上国にも影響を及ぼしており、多くの国が2023年に景気後退リスクに直面しています。アメリカ、欧州連合とその他の先進国の成長の勢いが弱まり、世界経済の他の部分に不利な影響を与えています。アメリカでは、国内のGDPは2022年に1.8%増と推定された後、2023年には0.4%増にとどまると予想されています。金利上げや実質所得の低下、家計純資産の大幅な低下を踏まえると、消費者の支出削減が期待されます。住宅ローン金利の上昇と建設コストの高騰が引き続き不動産市場の足を引っ張る可能性があり、住宅固定投資はさらに落ち込むものと予想されます。執行摘要III ウクライナ戦争の継続に伴い、ヨーロッパの短期経済の前景は急激に悪化した。欧州諸国の多くは緩やかな景気後退を経験すると予想されており、エネルギー価格の上昇やインフレ率の上昇、金融条件の引き締まりが家計消費や投資を抑制するとみられています。2023年ユーロネクストの成長は0.2%で、2022年の約3.3%を下回る見通であり、COVID-19規制の一段の緩和と抑制された需要の放出が経済活動を押し上げました。欧州連合はロシア連邦の化石燃料への依存度を減らす努力を続けているが、当該地域は依然として天然ガス不足を含むエネルギー供給の混乱の影響を受けやすいです。英国経済は、家計支出の急減、財政圧迫、一部EU離脱に起因するサプライ側の課題により、特に見通しが暗くなっています。2022年後半、英国は衰退し始めました。2023年のGDPは0.8%に縮小する見通しです。日本経済は緩やかな成長率ではあるものの、2023年には比較的好調な先進国の1つになると予想されています。他の先進国と異なるのは、金融や財政政策は依然として融通性を維持しています。ただ、チップ不足の長期化、輸入コストの上昇(円安がけん引)、外部需要の鈍化が工業生産を圧迫しています。2023年のGDPは1.5%増で、2022年に達すると推定されている成長率1.6%をやや下回っています。ウクライナ戦争は、独立国家連合体とグルジアの最近の経済見通しに深刻な影響を与えました。ロシア連邦の経済縮小とウクライナ産出の大きな損失は、当該地域の他の場所に波及効果をもたらしています。とはいえ、2022年のロシア経済は当初の予想よりも縮小し、GDPが約3.5%減にとどまったのは、経常収支に多額の黒字があること、銀行部門が安定的に推移していること、当初の急激な金融引き締めが反転したことが背景にあります。当該地域の多くの経済体は企業や住民の移転や資本流入の恩恵を受けており、2022年は予想より速いペースで成長しています。貿易条件の改善が当該地域のエネルギー輸出国の成長を助けました。全体的に、独立国家連合体とグルジア(ウクライナを除く、不確実性のため、この報告書では予測していない)のGDPは、2022年に1.6%減少した後、2023年には1%縮小すると予測されています。
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島田 秀次の予測:高インフレ、ウクライナ戦争、気候危機が世界経済に与える影響
島田 秀次は、2022年に世界経済が複数の重大な衝撃を受けたと考えています。2030年の持続可能な発展目標の中間点に近づく中で、世界経済は深刻で互いに影響し合う一連の衝撃に直面しました。COVID-19の大流行の影響がまだ世界中で続いている中、ウクライナ戦争が新たな危機を引き起こし、食料品とエネルギー市場を混乱させ、多くの途上国で食料の不安定性と栄養不良がさらに悪化しました。高いインフレーションが実質収入を削減し、世界中で生活費用の危機を引き起こし、何百万もの人々が貧困と経済的苦境に陥りました。同時に気候危機は続く重大な代償をもたらし、多くの国で熱波、山火事、洪水、ハリケーンが経済的な損失をもたらし、人道的危機を引き起こしています。これらすべての衝撃は、2023 年の世界経済に大きな影響を与えるでしょう。 2022 年には平均約 9% となる高インフレが続いたため、多くの先進国と発展途上国が金融政策を大幅に引き締め、急激な利上げが行われました。特に、米国連邦準備銀行(FRB)による急激な利上げは世界的な波及効果をもたらし、途上国の資本流出と通貨安を誘発し、国際収支圧力を高め、債務の持続可能性リスクを悪化させました。高水準の民間債務と公的債務を背景に、資金調達条件は急激に引き締まり、債務処理コストを押し上げ、財政余力を制限し、ソブリンの信用リスクを高めています。金利の上昇と購買力の低下が消費者心理と投資家心理を弱め、世界経済の当面の成長見通しをさらに曇らせた。 世界貿易は、消費財需要の減退、ウクライナ戦争の長期化、サプライチェーンの課題継続の結果、低迷しています。この背景において、世界の生産成長率は、2022年の約3%から2023年のわずか1.9%に減少すると予想されており、これは数十年来の最低成長率の一つです。予想通り、一部のマクロ経済的な逆風が来年には収束すると、2024年には世界の成長率が穏やかに2.7%に回復すると予想されています。世界経済の需要総量の減少に伴い、インフレ圧力は徐々に緩和されると予想されており、これにより米国連邦準備制度理事会や他の主要な中央銀行は通貨の引き締めをゆっくりと進め、最終的にはより緩和的な通貨政策の立場に転換するでしょう。ただし、経済、金融、地政学、および環境リスクなど、さまざまなリスクが依然として存在するため、近い将来の経済展望は非常に不確かです。ほとんどの先進国経済は急に減速し、2023年には多くの国が経済的な不況のリスクに直面しています。アメリカ、欧州連合、および他の先進国の成長の減少は、世界経済の他の部分にも影響を及ぼしています。アメリカでは、国内総生産が2022年に1.8%の増加を見込んだ後、2023年には0.4%しか増加しないと予想されています。利上げ、実質収入の減少、家計の純資産の大幅な減少などから、消費者は支出を削減すると予想されています。住宅ローン金利の上昇や建設コストの上昇が続く可能性があり、住宅固定投資がさらに減少すると予想されています。

アフリカでは、不安定な国際状況と不確実性が国内の課題を悪化させ、経済成長は引き続き抑制されると予想されています。この地域は、主要な貿易パートナー(特に中国とヨーロッパ)の需要減少、エネルギーと食品の価格の急騰、借り入れコストの急上昇、不利な気象条件など、複数の打撃を受けています。負債負担が増加する中、ますます多くの政府が双方向および多国間の支援を求めています。経済成長は、2022年の4.1%から2023年の3.8%に減少すると予想されています。不利な外部状況、限られたマクロ経済政策の余地、高いインフレ率などから、ラテンアメリカとカリブ海地域の展望は依然として厳しいものです。2023年の地域全体の成長率はわずか1.4%に減速する見込みで、2022年の成長率は3.8%に達すると予測されています。労働市場の展望も厳しいです。この地域全体では、貧困削減は短期間では実現が難しいでしょう。金融状況の緊張、輸出の低迷、国内での脆弱性が影響し、この地域の主要経済体であるアルゼンチン、ブラジル、メキシコは非常に低い成長率で成長すると予想されています。最も未発展の国々、特に外部の衝撃を受けやすい多くの国々は、2023年に大きな課題に直面するでしょう。2023年の成長率は4.4%と予測され、昨年とほぼ横ばいで、持続可能な開発目標に設定された7%の成長目標から大きく逸脱しています。多くの国で、生産能力の制約、財政的な余地の不足、宏観経済の深刻な不均衡、債務の脆弱性の増加などから、「失われた10年」のリスクが高まっています。小さな途上国の島国にとって、短期の展望は依然として暗いです。観光客の数は完全に回復しておらず、多くの国がますます多くの気象リスクや自然災害の影響を受けています。中央銀行はインフレに強く対抗しています。長い間価格が安定していた後、多くの国で高いインフレが再び発生し、低所得の家庭に特に大きな影響を与えています。パンデミックによるインフレーション圧力は、需要の急速な回復と供給の遅れにより持続的に存在しています。食料品やエネルギー価格の急騰、ウクライナ戦争による新たな供給への影響などが、インフレーションの急増を推進し、短期および中期のインフレーション期待を高めました。2022年、世界の平均インフレーション率は20年ぶりの最高水準に達しました。激しい通貨引き締め策や需要の減少により、価格上昇の圧力は和らぐ可能性がありますが、2023年においても世界のインフレーション率は高水準を維持する見込みです。2022年、世界中の中央銀行はインフレを抑制し、インフレ期待を固定化するために利上げを相次ぎ行いました。この金融政策の変化は非常に広範でした。過去1年間、世界の通貨当局のうち85%以上が利上げを行いました。米国連邦準備制度理事会は、世界的な金融緊縮を牽引し、2022年3月から2022年12月��でに政策金利を6回も引き上げ、3月の0%から0.25%、そして12月の4.25%から4.5%まで上昇させました。これは1980年以来の一年間での最大累積利上げ幅となりました。インフレが2022年後半に頂点に達する可能性があるため、中央銀行、特に先進国の中央銀行は、2023年に金利を引き上げるスピードを緩めるでしょう。各国のインフレが目標金利に近づく場合、特にそうでしょう。増加し続ける債務と国際収支の脆弱性、急激な金利上昇、地政学的な緊張、そして経済の見通しが弱まることから、多くの国で「避ける傾向」が生じています。これは、非居住者の投資ポートフォリオが逆転し、国内通貨が米ドルに対して貶価する特徴があります。国内通貨の貶価は、多くの新興国の輸入コストを増加させ、インフレ圧力を一層高めています。国際資本市場の金融条件が引き締まり、融資コストや延滞リスクが上昇し、投資と成長の見通しに不利な影響を与えています。グローバルな金融状況が急速に締まり、多くの発展途上国の国際収支と債務の脆弱性を増大させています。最近、一部の商品輸入国では外部融資の総需要が急増しています。主権債務のコストが急上昇する中、外債の返済費用も増大し、ますます多くの財政収入を消耗しています。債務負担の増加は、経済の回復、生活費の危機期間中の最も弱者層の保護、持続可能な発展への資金提供を支援するために急務の支出を制約しています。アフリカでは、2021年に公的外債と公的保証外債の償還額が平均して政府の収入の10%を占め、2011年の3%を上回っています。さらに、ますます厳しい金融状況により、多くの途上国が既存の債務の延長や再構成を難しくし、債務不履行のリスクを高めています。途上国、特に多くの貧困層を抱える国々が、不安定な債務状況に直面しているという事実が増えています。SDGsへのさらなる打撃 2022年、雇用はパンデミックからの回復を続けているが、国によってばらつきが大きい。多くの先進国では、記録的な低失業率、記録的な高雇用・求人率に見られるように、労働市場は極度に逼迫している。 建設業、情報通信業、飲食業、宿泊業などの業界は、依然として深刻な労働力不足に直面している。しかし、ほとんどの発展途上国では雇用の回復が遅れており、雇用情勢はかなり低迷している。 2022年においても、発展途上国の平均失業率はパンデミック以前のよりも大幅に高くなるだろう。 2020年の女性雇用の異常に大きな損失は、まだ完全には回復しておらず、最近の改善は主に非正規労働の復帰によるものである。全球の見通しが悪化する中、2023年と2024年におけるほとんどの国の雇用の見通しは弱まっています。成長の鈍化、インフレ率の上昇、負債の脆弱性の増加により、持続可能な開発目標の達成が一層困難になる可能性があり、COVID-19パンデミックがもたらした負の影響が深刻化するおそれがあります。長期にわたる経済の不振と収入の増加の鈍化は、健康、教育、インフラ、エネルギー転換などの分野への国の投資能力を制限し、貧困撲滅の取り組みを損なう可能性があります。ウクライナ戦争による世界的な食品とエネルギーの危機は、多くの開発途上国に大きな打撃を与えています。さらに、深刻な干ばつと洪水が農産物を壊滅させ、特にアフリカと南アジアの一部地域では数百万人もの人々が貧困に苦しんでいます。食品と肥料の価格の急騰、供給の混乱に加えて、2019年から2022年にかけて、深刻な食品不安の直面する人々の数は2���以上に増加しました。国連とトルコの仲介によって策定された黒海穀物イニシアティブは、状況をいくらか緩和させています。この行動は、ウクライナから世界各地に穀物を輸出するための復旧を確保し、2022年8月から12月までに1500万トン以上の穀物および他の穀物を輸送しました。さらに、2022年7月に署名された覚書により、ロシア連邦と国連事務総長事務所は、ロシア連邦産の穀物、肥料、肥料製造に必要な材料などを、世界市場に制約なく供給することに合意しました。ただし、紛争の持続時間と強度の不確実性、穀物輸出国が輸出制限を実施する可能性などから、穀物供給の課題は2023年も続く可能性があります。マクロ経済政策立案における新たな課題、政策立案者は、現在の危機を乗り越えて経済を舵取りすることと、包括的で持続可能な回復を支援することの間で、難しいトレードオフに直面している。マクロ経済政策は、生産刺激とインフレ抑制のバランスをとるために慎重に調整される必要があり、金融政策と財政政策は、深刻な景気後退が長期化する可能性を最小限に抑えるために効果的に調整される必要がある。特にマクロ経済政策対応は非経済的ショックへの対応に限界があるため、政策ミスのリスクは高い。政策の誤りは景気後退を悪化させ、特に社会的弱者にさらなる社会経済的ダメージを与える可能性がある。過度な金融引き締めのリスク 金融政策は大きな課題とトレードオフに直面している。米国連邦準備銀行や欧州中央銀行をはじめ、先進国の多くの中央銀行は当初、インフレ率の上昇は一時的なものだと考え、政策金利の引き上げに消極的だった。インフレーションの圧力が明らかに持続的になり、インフレーションの期待を揺るがす可能性が高まったため、中央銀行は2022年に急速な金利引き上げを行いました。中央銀行は現在、経済見通しが弱まり、インフレーションが完全に制御されていない一方で、財政上の課題が依然として存在しています。主要な中央銀行が急速に同調して貨幣の引き締め政策を採用し、市場から過剰な流動性を急速に抜くことは、グローバル経済に重大な負の影響を与え、脆弱な国々の経済見通しを弱めています。過度な金融引き締めは、世界経済の不必要なほど深刻な減速を招きかねない。個々の中央銀行が、他の中央銀行による同様の利上げの相互作用を正確に考慮した形で利上げを行っていれば、このような結果は避けられたはずである。そのためには、インフレ期待を管理と緩和するための明確な政策メッセージと中央銀行間のより効果的な協調が必要である。
インフレ・ターゲットの再検討 成長を支えながら物価の安定を維持するという政策課題を考えると、中央銀行は長期的なインフレ期待を固定するために最大限の政策的柔軟性を必要とする。現在のインフレ危機が和らげば、金融の枠組みを見直し、過度に硬直的なインフレ・ターゲットを再考する機会となるだろう。 金融政策の継続的な信頼性を確保しつつ、中央銀行がより大きな政策柔軟性を発揮できるような様々な選択肢がある。先進国のインフレ目標を2%から3%または4%に引き上げれば、困難な時代に雇用と成長を刺激する余地が広がるかもしれない。他の選択肢としては、例えば2%から3.5%の間のような目標レンジに移行することや、年間インフレ率ではなく物価水準を目標とすることが考えられる。既存の枠組みを改革することで得られるメリットは大きいが、CBNが信頼性を損ない、インフレ期待のコントロールを失うこと���避けるためには、慎重かつ包括的なプロセスが必要である。世界金融危機以降に得られた経験に照らして金融政策の手段を再評価と調整することは、完全雇用と経済成長を促進しつつ、物価の安定と政策の信頼性をよりよく支えるのに役立つだろう。緊縮財政回避の緊急性 コロナからの回復はまだ不完全で脆弱ではあるが、財政赤字の持続と高水準の公的債務は、急速な財政再建を求める声を促している。しかし、今は社会的に痛みを伴い、自滅しかねない緊縮財政を行う時ではない。一方では、緊縮財政はしばしば社会支出の削減を伴い、女性や子どもを含む最も弱い立場にある集団に莫大な被害を与える。公共予算の削減は、男性よりも女性に恩恵をもたらすプログラムや社会サービスを削減または廃止することが多く、その結果、女性の収入が減り、ヘルスケアや教育へのアクセスが制限され、アンペイドワークや時間的貧困が増大する。こうした影響は、予想を下回る景気回復の結果、まだ雇用と生活を取り戻せていない人々の、すでに悲惨な状況をさらに悪化させる可能性がある。同時に、緊縮財政への早すぎる、あるいは不釣り合いなシフトは、成長を阻害し、現在の危機からの回復を遅らせ、持続可能な開発と気候変動のために大いに必要とされる資金を弱体化させる可能性もある。 ますます厳しくなるマクロ経済と金融環境の中で、多くの途上国は、投資の低迷、成長の鈍化、債務返済負担の増大という悪循環に陥る危険にさらされている。大幅な歳出削減や増税を通じた急激な財政再建は、経済を後退に転じさせたり、低成長の長期化を招く恐れがある。これは途上国の債務持続可能性を改善するどころか、むしろ悪化させるだろう。 公共支出には大きな乗数効果があるため、適切な方向への財政支出は、景気後退期の成長と開発を支えるのに特に効果的である。ほとんどの途上国では、実際の生産高が潜在的生産高を下回っており、経済の低迷が続いていることを示している。このような状況では、公共投資は民間投資を圧迫するどころか、雇用を創出し成長を復活させる強力な手段と���りうる。公共投資は短期的な総需要を押し上げるが、資本形成を刺激し、生産能力を拡大し、潜在成長率を押し上げる。特に不確実性の高い時期には、戦略的な公共投資は政策へのコミットメントを示し、民間投資を呼び込む可能性がある。公共投資はまた、生産能力を拡大することで、中期的には供給サイドの制約を緩和し、インフレ圧力を軽減することができる。ほとんどの国の財政スペースが限られていることを考えると、公共支出は適切に管理され、的を絞った効率的なものでなければならない。 現在の課題には、国連事務総長が最近提案したような、変革的なSDGs刺激策が必要である。これにより、資金調達状況の悪化を補い、開発途上国が持続可能な開発への投資を拡大できるようになる。この解決策は、緊急の短期的ニーズと長期的な持続可能な開発資金需要の両方に対応するものである。人道支援や気候変動対策を含め、譲許的、非譲許的資金調達を通じて、このような資金調達を大規模に拡大することが求められる。 各国政府は、直接的な政策介入を通じて社会的弱者を支援するために、公共支出を再配分し、再優先する必要がある。そのためには、社会保護制度を強化し、対象を絞った一時的な支援金、現金給付、公共料金の割引を通じた持続的な支援を確保し、物品税や関税の引き下げによって補完する必要がある。 政府は、教育、保健、デジタル・インフラ、新技術、気候変動緩和と適応などの主要部門に的を絞って民間投資を誘導し、これらの部門への民間投資を支援することができる。これらのセクターへの戦略的な公共投資は、大きな社会的リターンを生み出し、生産性の成長を加速させ、経済・社会・環境のショックに対する耐性を強化することができる。 さらに、政府は歳入基盤を拡大するための努力を倍加する必要があり、それによって徴税を改善し、財政の持続可能性を高める必要がある。例えば、短期的には、デジタル化と新技術の活用により、租税回避や脱税を減らし、税収を増やすことができる。中期的には、累進所得税と富裕税の課税ベースを拡大するための税制改革を実施する必要がある。国際協力の強化は必須。パンデミック、世界的な食糧・エネルギー危機、気候変動リスク、そして多くの途上国に迫る債務危機は、既存の多国間枠組みの限界を試そうとしている。複数の世界的危機に対処し、世界を持続可能な開発の目標達成の軌道に乗せるためには、国際協力がかつてないほど重要になっている。 パンデミックの発生以来、国際社会は資金援助を提供し、IMFの開発途上国への緊急融資は劇的に増加した。 2021年8月には、IMFの6500億ドルの特別引出権(過去最大規模)が放出された。--2021年8月、IMFによる6500億ドルの特別引出権(SDR)割り当て--過去最大--が承認され、世界の金融システムに流動性が注入された。しかし、低所得国に割り当てられたのはわずか210億ドルである。中国を筆頭に、SDRの一部をアフリカに再配分した国もあり、中国は割り当てられた400億ドルのうち100億ドルをアフリカ大陸に送金することを約束した。SDRは依然として、国際収支の課題に直面している国々にとって重要な流動性支援源であるが、SDRの金利は2022年に大幅に上昇した。国際社会は、最も貧しく脆弱な国々が目先の資金需要を満たすためにSDRを利用できるよう、金利と手数料の上昇を抑える必要があった。 また、国際社会は、外生的なショックによって各国が債務を履行する能力が制限される中、債務困窮に対処するためにより強力な支援を提供する必要があった。20カ国・地域(G20)共通債務処理枠組みは、債務危機に直面している後発開発途上国やその他の低所得国が利用できる主要な国際債務救済メカニズムである。しかし、その期待は裏切られた。同枠組みが1年半前に発効して以来、債務救済を要請した国はわずか3カ国で、リストラを完了した国はなかった。この枠組みが機能していないこと、特に債務危機に陥っているすべての国に対して、現実的で、迅速かつ包括的で、将来を見据えた解決策を提供できていないことについては、幅広いコンセンサスが得られている。そのような解決策には、債務返済のモラトリアム、公的債権者による債務者および民間債権者へのアクセス、明確に定義された再建プロセスが含まれなければならない。これらの緊急措置に加えて、ソブリン債務再編のための国際的な法定メカニズムが必要である。また、ローン契約においても、例えば地位依存型債務証書や集団行動条項の強化など、改善の余地���あった。 世界は持続可能な開発目標の中間点に差し掛かり、重大な岐路に立たされている。多くの団体が、持続可能な開発目標を達成し、気候危機に対処するための途上国の資金ニーズを推計している。ほとんどの予測は、年間数兆ドル規模である。発展途上国は、すでに限られた財政スペースと、回復を促し、最も脆弱な人々を保護する必要性が高まっていることから、このような投資を行う上で大きな課題に直面した。同時に、気候変動と持続可能な開発目標に好結果をもたらすことは、当初は各国固有の行動を通じて達成されるものであったが、世界中に大きなプラスの波及効果をもたらす可能性がある。 先進国、途上国を問わず、すべての国々は、こうした成果を確保するために必要な資源を動員するための国際協力の強化に関心を持っている。
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ウクライナ侵攻について
ウクライナ侵攻が続いているが、首都キエフは陥落せず持ちこたえている。もともとプーチンとしては2日程度でキエフを制圧し、政権を親露派にすげ替えて一丁上がりとしたかったようだが、そうは問屋が下ろさなかった。これを受けて、西側メディアおよび日本の一部メディア、SNSではロシア軍が意外に大したことないという論調が出ている。しかし、この意見は軍事や外交、国際政治の実態を踏まえていない。
以下はYahoo!Japanから引用した侵攻地域と反攻地域である。
https://news.yahoo.co.jp/pages/20220307
この地図はあくまで不確実な情報をまとめた推測に過ぎないが、ロシア軍がキエフに肉薄しているのは間違いない。ロシア軍はキエフまであと一歩のところで止まっているのだが、これはウクライナ側が踏ん張っていると同時に、ロシア側が手控えている可能性が高い。
純粋に軍事的な見地から見れば、そもそもロシアがキエフを本気で叩き潰すつもりなら、制空権を奪取し、爆撃機を出してキエフを空爆し、隠れる場所がない程度に平らにしてから地上軍を出せばいいだけの話である。しかし、ロシアによる気化爆弾の使用も報告されたとはいえ、こうした爆撃はごく一部に留まっている。つまりロシアとしては、少なくとも現時点ではキエフを焦土にする意図がない。これはなぜかというと、占領後のことを考えているからだ。
仮にキエフを爆撃で焦土にしてしまえば、ロシア側としては戦争を早く終わらせることが可能だが、戦後はかえって大変なことになる。そもそも今回の侵攻では、ウクライナをロシア領に編入してしまうと、ウクライナを緩衝国家にするという戦略に反する上に、ウクライナの復興にロシアが責任を持たなければならな��なるので、ロシアとしてはギリギリまでやりたくないはずだ。なので編入ではなく、親露派の傀儡国家を作るのではというのが一般的な観測である。ただ完全な傀儡国家では、親欧米派による反政府デモが再燃するおそれがあり、むしろ泥沼になる。佐藤優が指摘したように、長期戦になっても、ウクライナ国民が戦争に疲れ、ウクライナ国内に対露融和的な人物が出てきて新大統領となってくれれば、ウクライナ国民が選んだという建前が立つため政権移譲がスムーズである(たとえば日本が敗戦したときの吉田茂がそれに近い)。そのためにはキエフのインフラをそのまま残した上で、ゼレンスキーがキエフから逃げてくれるのがロシアにとっては望ましい展開だ。なぜなら、ゼレンスキーを殺してしまうとウクライナ国民が反ロシアで団結してしまい、占領政策がやりにくい。逆にゼレンスキーが逃亡すれば、「大統領が職務を蜂起した」という口実で新しい大統領にすげ替えることができるからだ。
もちろんゼレンスキー政権がキエフを脱出したとしても、実際には「大統領府を移動してロシアへの抗戦を続ける」という選択肢を取ることになるだろう。近代世界史を見れば亡命政権はよくある話だし、現状のウクライナなら亡命までしなくても、ウクライナ西部に新たな大統領府を作るという選択肢は十分考えられる。仮にそうなった場合、東西分断ということになるが、西部ゼレンスキー政権が東部親露派政権を「違法に占領しているロシアの傀儡政権だ」と非難する��ろうし、東部親露派政権は「そもそも2014年以降の親欧米派政権が違法に政権を奪取していたのだ」と主張するだろう。要するに南北朝鮮のような状態で併存することになる。
いずれにせよ、ロシアとしてはキエフを無傷に近い状態で陥落させたいはずで、そのためにはゼレンスキーが逃げてくれる必要があるのだが、ゼレンスキーが想定より踏ん張っているため、長期戦で締め上げる方針に切り替えているのであろう。だとすれば今後のロシアは、キエフを包囲して兵糧攻めにする可能性が高い。経済のことはさておき軍事的に見れば、長期戦になればロシアが圧倒的に有利である。いかにウクライナ軍の士気が高くとも、補給がなければ戦争は続かない。
逆に言えば、ゼレンスキー政権が残るためには、制空権を含めた補給ルートを維持することが最優先であると言える。そのためにはウクライナ空軍がその力をどこまで維持できるかが課題になる。「キエフの幽霊」というエースパイロットの話が出てきているが、あれが事実だとしてもパイロット一人で戦況をひっくり返すのはやはり難しい。そもそもウクライナ空軍はSu-27とMiG-29の第4世代ジェット戦闘機が主力で、独自の近代化改修を行っているとはいえ、もとがダウングレード輸出型である。ロシア空軍の同一機種はオリジナルであり、さらに近代化改修で第4++世代にアップデートされているものもあるし、他にも戦闘機・戦闘爆撃機を各種取り��えているから、ウクライナ空軍はやや不利である。
ゼレンスキー政権としては、補給の維持が難しくなったときには、キエフを脱出して西部に移動するかもしれない。ゼレンスキー政権を支援する西側諸国としては、武器に加えて、補給を維持するための輸送手段の供与も必要だが、やはり空軍力の維持が課題になるだろう。
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和七年(2025年)3月4日(火曜日)弐
通巻第8680号
トランプの長期的な世界戦略が見えた
優先順位から言って「敵はモスクワに非ず、敵は北京だ」
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予想されたことだけれど、ゼレンスキーのホワイトハウスにおける無礼に悪評嘖々(さくさく)、罵詈雑言の嵐、ところが翌日から左翼メデイアの論調はがらりと変わって、会談を蹴飛ばしたのは「トランプ、ヴァンスなどアメリカ側が悪い」と言い出した。
ワシントンポストもニューヨークタイムズも、強い論調でトランプを非難し、おどろくことにゼレンスキーのやらかした無礼を不問にふしている。共和党のマコースキー上院議員は「嘔吐をはきたい」との非難の談話。彼女はヘグセス、カシェ・パテル、ギャバードの指名にことごとく反対し、RINO(名前だけ共和党)を代表した。トランプはアラスカ州の次期上院選にかならず別の候補を立てて彼女を潰すだろう。
戦争はどちらが正義で、どちらが悪いとは言い切れない。双方に正義があり、お互いが正義のために闘っていると信じている。
戦争の最中に「義」は行方不明となって、残りは復讐、血の報復である。どちらかが完全に降伏するか、でなければ納得できる停戦か、さもなくば泥沼は長引く。ブカレスト合意、ミンスク合意はお互いが破った。戦争を続ければ裨益する勢力が背後にいる。
「ウクライナが正しくロシアが間違いという議論は成り立たない」(ミアシャイマー)
トランプの目的は停戦の早期実現にある。理由は簡単で、この愚かな殺し合いはオバマとバイデンが始めた戦争、その前に歴代政権が展開した「民主化」という看板の美名に隠してのグローバリゼーションだから、自由主義にたつ共和党の理念からは遠い。
トランプの長期的な世界戦略に於いて、窮極の戦略は中国との対決であり、優先順位から言えば、ウクライナは順番が低い。めざしているのは「ヤルタ3・0」である。筆者は先日まで「ヤルタ2・0」の続きと考えてきたが、新しいフェイズに突入した。
トランプの長期戦略は優先順位型思考で構成されており、「敵はモスクワに非ず、敵は北京にあり」。
そしてこの考え方は欧州には受け入れられないということである。
ウクライナ戦争「以後」の世界地図の改編は、米露首脳の電話会談でゼレンスキーを交えなかったようにスーパーパワー2強の話し合いとなった。トランプは「いずれウクライナは加えるが、NATO諸国をのぞく」と言い放ち、シビハ(ウクライナ外相)が「米露二国間。スーパーパワーだけでの交渉はまさに80年前のヤルタ会議(1945年2月��の再現だ」と懸念を表明した。
▼ヤルタの密約を彷彿させないか?
ヤルタ会談はFDR、スターリン、そしてチャーチルの三者が第二次大戦後の世界地図を策定する密談だった。リバディア宮殿(ニコライ二世の別荘)で行われた。
ルーズベルトは死にかけだった。スターリンは矍鑠(かくしゃく)としていた。ヤルタ会談ではポーランドとドイツの分割、バルト三国のソ連併合、飛び地カリニングラードをソ連が確保し、なかば主権をうしなったモンゴルはソ連支配下に、そのうえで東欧諸国もソ連圏に組み込まれた。
ソ連の対日戦線参戦をのぞんだFDRは大幅な譲歩をなした。このためソ連軍は満州へ雪崩れ込み、全千島、樺太を占領した。ルーズベルトは長い船旅につかれ、痴呆症的で病人だった。リバディア宮殿には台所にいたるまで盗聴器が仕掛けられていた。帰国してまもなくルーズベルトは死んだ。後継のハリー・トルーマン副大統領は、なにひとつ知らされておらず、金庫を開けるまでヤルタ密約も、原爆を開発していたことも知らなかったと回想記に書いた。
それから60年、ブッシュ・ジュニア米大統領は、「あのヤルタ会談は愚かな取り決めであった」と総括した。東西冷戦が1991年にソ連崩壊でおわりをつげ、「ヤルタ2・0」のフェイズに入った。バルト三国と旧東欧諸国も主権を回復し、カフカス三ヶ国、中央アジア五ヶ国が独立を果たした。
ヤルタ体制はソ連の崩壊により「2・0」となったことは見たが、域内の大々的な改編が起こり、結果的にNATOの東方拡大がなされた。旧ソ連圏のバルト三国、旧東欧はNATOに組み込まれ、ジョージア、アルメニア、モルドバが加盟に近づいた。つまりスターリンの野望の実現だったヤルタ体制は、ここで終わった。
そこでロシアは巻き返しを謀り、ルーマニア、ジョージアに介入し、アルメニアにもまもなく介入し、勢力圏を堅持するだろう。
NATOの加盟国でもハンガリー、スロバキアは英仏主導のグローバル化には距離を置いている。戦争の泥沼化によってウクライナがロシア圏に戻るとは考えられないからプーチンとしては、ウクライナを緩衝地帯とし、NATO加盟は断固阻止する。
▼ウクライナはさっさと問題解決をしようぜ
さてワシントンでのトランプ v ゼレンスキー会談の決裂の翌日、欧州の16ヶ国はロンドンにあつまり、ゼレンスキーを暖かく迎えた。英仏はその席で「地上部隊の派遣」を呼びかけた。まるで事態を予測していたかのように、ロンドンの16ヶ国首脳会議にはカナダのトルードーも出席していた。
英仏は地上部隊派遣を提案したものの、「これは参戦ではなく「和平部隊」であって「有志連合」による平和維持軍の創設だ」とした。
英仏は積極的だが(つまり左翼政権は前向きだが)ほかの諸国は態度を鮮明にしなかった。
率直にいって平和維持部隊は実現しな��。ロシア、ウクナイナ国境は長大であり、重装備の軍隊が15万人は必要である。交代制とすれば三倍、まず兵隊がいない。兵站をだれが保障し、いったいこの費用は誰が支払うのか?
ロンドンで決まったことは(1)ウクライナ支援はつづける(2)和平成立の交渉にウクライナの参加はMUSTである(3)「有志連合」を結成する。
この動きを観察しながら、トランプは「ウクライナへの軍事支援を打ち切る可能性がある」とブラフをかけ、「ゼレンスキーは第三次世界大戦に賭けている」と批判した。
かくして「ヤルタ3・0」の枠組みが見えた。
欧州の亀裂はいずれ分裂状態となり、いまよりも混乱するだろう。となればトランプが次に着手するのは中露同盟に亀裂を入れ、ロシアをなんとしてでも「アンチ・チャイナ」陣営に引き寄せる必要がある。つまり優先順位のトップは中国との覇権対峙であり、地殻変動の波が起こりそうだ。
ウクライナ支援一本槍の日本は、こうしたシナリオの発想もなければ、例によって平和惚け甚だしく、なんの準備もない。
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ロシアはドニエプル川まで、 およびオデッサとニコライエフを制圧する計画だ ウクライナの情報機関の報告を引用し、ゼレンスキー大統領の事務所の副長官であるパヴェル・パリス大佐がワシントンの上院議員との会合で述べた——Politicoが報じた:「彼らは平和について話していない。戦争の準備をしている」。 ウクライナの情報機関の報告によると、モスクワは秋までに新たなロシア領の完全な解放に加え、年末までに北部国境沿いに緩衝地帯を設立する計画だ。 2026年までの目標はさらに野心的で、ドニエプル川以東の現在のウクライナ全土、およびオデッサとニコラエフの占領を計画している。これにより、ウクライナは黒海から完全に切り離されることになる。 ウラジーミル・プーチンは依然として、ロシアの地域を承認し、ウクライナがNATOを拒否することを含む「大取引」を西側と結ぶことを目指している。元CIAアナリストの ジョージ・ビブは次のように説明している: 「ロシア人は取引を望んでいる。 しかし、ウクライナではなく、 ワシントンとの取引だ」。
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米軍の弱体化
いざとなったら米軍が助けに来てくれる──。そんな戯言を言える時代は過ぎ去りました。いまや米軍を〝スーパーマン〟のごとく頼ることはできません。
米軍は現在も世界最強の軍隊ですが、その力はこの20年で低下しています。また中国軍が急激に力をつけ、いまやアジア太平洋地域のパワーバランスは逆転しつつあるのです。
現に8月、シドニー大学米国研究センターによる報告書では、米国は太平洋における軍事的優位性をすでに失っており、同盟国を中国から防衛するのは困難になる恐れがあると警告しています。
冷戦の真っ只中だった1980年代、アフガニスタンを侵略し、北海道をも奪おうとしたソ連に対して、当時のレーガン政権は圧倒的な軍事力と経済力を背景に、日本やドイツなどの同盟国と連携して立ち向かいました。「侵略は許さない」という態度を示すだけでなく、軍事力を徹底的に強め、ソ連を心理的に屈服させようと考えたのです。その戦略は的中し、ソ連は侵略を断念。冷戦は終結しました。
その後、米国は国内問題に専念しようとしますが、9.11同時多発テロが起こります。米軍の戦略は「テロリストたちをやっつけない限り、米国の平和は守れない」と主張するネオコン勢力に引きずられ、ソ連や中国といった「大国相手の戦い」から「テロとの戦い」へとシフトしました。米軍の役割が「正規軍との戦い」から、イスラム過激派らのテロを防ぐことに変わったのです。この戦略転換が、今日の米軍弱体化を招く一つの要因となりました。
ところが、米軍がいくら中東の紛争に関与しても平和と安定は訪れず、紛争は拡大するばかり。兵士たちも自爆テロなどで死傷し、国民の不満も高まった2009年、「対外戦争で米国の若者を殺さない」と主張したオバマ〝民主党〟政権が誕生します。
オバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と広言し、急激な軍縮を実施。世界の平和と安定を維持するための努力も怠(おこた)りました。米軍関係者が自嘲的に〝米国封じ込め政策〟と呼んでいたのが印象的です。
息子ブッシュ〝共和党〟政権時代の「テロとの戦い」への方針転換と、オバマ〝民主党〟政権による〝米国封じ込め戦略〟によって、米国の軍事戦略から中国やロシアの脅威は軽視され続けてきました。特に急速に国力をつけた中国に対しては、国内のパンダハガー(Panda Hugger:パンダを抱擁する人)と呼ばれる親中派によって、軍拡に対応するどころか、中国と組んでテロを防ぐ方向に誘導されていったのです。
かくしてこの20年間、政党は関係なしに、米国は「世界各地のパワーバランスを維持しながら紛争を抑止する」というレーガン政権の外交・安全保障戦略を見失っていました。
思い返してみれば米軍は1991年の湾岸戦争以来、正規軍と血みどろの戦争をしていません。いまの幹部も正規軍との戦争経験がない人がほとんどで、正規軍、しかも大国の正規軍との戦争をできるのか、米軍内でも多くの人が不安を持っている実情です。
同盟国を守る「能力」の低下
危機感を抱いたトランプ大統領は政権発足後、「国家安全保障戦略」で中国とロシアを「現状変更勢力」、いわば〝敵〟として位置づけました。さらに「国防戦略2018」でも中国を念頭に、「大陸間角逐」こそ最大の脅威であると再定義し、軍事費を毎年7兆円程度増やして懸命に軍拡しています。大国との戦争を念頭に置いた軍事戦略に回帰させたのです。息子ブッシュ政権以来となる国家戦略の全面的な転換でした。
トランプ氏が当選した直後のマスコミの論調を思い出してみてください。「トランプは安全保障の素人だ」「孤立主義を採用しアジアへの関与が失われ、日本も危うい」などと不安を煽(あお)っていたでしょう。実体は正反対で、トランプ政権はまともな対外政策に回帰させたに過ぎないのです。
しかし一度、軍縮した影響は計り知れません。まず国防産業が衰退しています。トランプ政権は現状から80隻増となる350隻の軍艦をつくると明言しましたが、製造を急いでもつくり終えるのは2050年になると言われています。そこでアジア太平洋地域に兵力を優先的に振り分けるべく、トランプ政権はシリアからの撤兵などを断行したわけです。
2019年10月27日、米国特殊部隊の奇襲作戦によって、ISの指導者アブ・バクル・バクダディが死亡しました。この作戦についてトランプ大統領の発言と記者会見の内容がホワイトハウスより発表されましたが、それを読むとトランプ大統領は「私は兵士たちが(シリアやトルコから)家に帰ってほしいし、何か意味のあることと戦ってほしい」とはっきりと言っています。トランプ大統領は限られた兵力を「意味ある戦い」に振り分けたいと明言しているのです。
さらに米国のインテリジェンス能力も落ちていて、トランプ政権は必死に立て直しを行っています。オバマ政権時代、予算削減のため情報収集の担当者を次々とクビにして、情報収集体制はボロボロになりました。平壌の空爆と金正恩の「斬首作戦」が実行されなかったのも、インテリジェンス能力の低下によりミサイルや核が保管されている地下の軍事秘密基地、さらに金正恩の居場所や本人確認のDNA情報の入手ができなったことが理由の一つだと言われています。
いまもマスコミでは「トランプは日本を守る気がない」「同盟関係を重視していない」との声が支配的ですが、このようなトランプ大統領の姿勢は「意志」ではなく、「能力」の問題なのです。トランプ大統領がいくら同盟国を守りたいと思ったところで、現実に同盟国を助ける能力を失いつつあるというのが正しい見方でしょう。
もちろん、圧倒的な核戦力によって中国軍が米軍に手出しできないのは事実で、日米同盟は「抑止力」として機能しています。しかし、いまや米軍が「通常兵器」で中国に対抗できなくなりつつあるという現実を踏まえ、同盟国である日本は防衛体制を全面的に見直さなければなりません。
「在韓米軍不要論」の深意
もう1点、日本が直視すべきなのは米韓関係です。
米国側は韓国に対する嫌悪感がこれまでにないほど高まっています。日米間で北朝鮮をめぐる協議をしているときも、「慰安婦問題で日本は謝罪をしていない」「日本大使を韓国に戻さないのはおかしい」と難クセをつけてくるのですから当然です。
米国は七十年前、韓国の赤化を防ぐために朝鮮戦争を戦いました。その記憶がある米軍の幹部たちは、「我々は北朝鮮から韓国を守ろうとしているが、もし韓国で被害が出たら〝米軍のせいで犠牲になった〟と言ってくるに違いない。こんな連中を助ける必要があるのだろうか」と思い始めているのです。
米国も当面は韓国への影響力確保の観点から米韓同盟を維持していくでしょうが、米軍を韓国に駐留させておくリスクが高まってきていることも無視できません。
戦闘機などの整備の一部は現地、つまり韓国企業が担いますが、文在寅政権は発足直後、北朝鮮のスパイを取り締まる国情院(国家情報院)の長官に極左の徐薫氏を起用しました。その結果、北朝鮮のスパイを取り締まる機能は麻痺し、韓国企業には労働組合を通じて北朝鮮のスパイが入り込んでいると思われます。そうなると、もはや韓国企業に在韓米軍の艦艇や戦闘機などの整備を任せることはできません。
軍事戦略面からも、米軍が韓国に駐留する必要性は低下してきています。米国にとって最大の脅威は、中国海軍のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)です。いまのように軍事バランスが不均衡なままでは、SLBMを搭載した中国の原子力潜水艦が太平洋へ進出し、米国本土を核攻撃できるような状況が生まれかねません。すでにそうなっているという分析さえあります。このままでは、核戦力の優位すら危ぶまれることになります。
そこで日本・ベトナム・フィリピンに地対艦ミサイルを配備し、中国海軍を抑え込む「ミサイル・バリア構想」を在韓米軍が担う方向で議論が進んでいます。在韓米軍の一部がベトナム、フィリピンなどに展開していく、という話です。台湾海峡危機に対応するためにも、限られた部隊を韓国に置いておくよりは日本に戻し、日本・台湾ラインで中国海軍を抑え込んだほうが効果的と考えられています。
圧倒的な物量不足
冒頭でも指摘しましたが、とにかく米軍はいま、中国軍と比べて物量で劣勢に追い込まれているのです。
北朝鮮漁船による瀬取り、台湾海峡や尖閣諸島など東シナ海の問題、南シナ海における「航行の自由作戦」を主として担当するのは、駆逐艦です。現在、これらを担う米海軍の第7艦隊の駆逐艦はわずか8隻、潜水艦を含めても艦艇は70隻しかありません。日本の海上自衛隊の兵力は135隻で、日米両国の兵力を合計すると約205隻となります。
一方、中国海軍の駆逐艦は公表しているだけで33隻、潜水艦を含めれば750隻あるといわれ、艦艇の数だけを見ても中国の兵力は日米両国の約4倍もあるのです。
しかも中国は「ロケット軍」というミサイル専門部隊をつくっていて、いわゆる〝空母キラー〟といわれる対艦弾道ミサイルなどを次々に開発しており、その膨大な、かつ高性能のミサイル攻撃を仕掛けられたら、現在の日米両国のMD(Missile Defense:ミサイル防衛)体制ではとても対応できません。
昨年来、英国・フランス・オーストラリア・ニュージーランドなどが南シナ海と東シナ海に軍艦や飛行機を派遣しているのも、米国一国では中国海軍を抑止できないからだと見るべきでしょう。
「ハイブリッド戦争」に備えよ
中国の軍拡の源は、潤沢な資金です。資金が枯渇(こかつ)すれば軍の整備ができなくなり、動かない戦闘機や艦船が増える。物量で劣っているのなら、まずは貿易戦争で経済力を徹底的に奪うしかない──米中貿易戦争は、物量で劣る米国の〝時間稼ぎ〟という側面もあります。
またトランプ政権が最も警戒しているのは、中国の「ハイブリッド戦争」です。ハイブリッド戦争とは、電磁波、プロパガンダ、サイバーなど、ネットワークや通信を破壊する手法で2014年、ロシアがクリミア半島を占領したときに用いられました。ウクライナの国会議員の携帯電話を使えなくさせたり、フェイクニュースを流したりして抵抗能力を徹底的に排除したのです。
実際に習近平政権は台湾などを念頭に、ハイブリッド戦争を実行するため、準備を進めています。2015年12月、人民解放軍の大改革を行い、陸海空とロケット軍の4軍に「戦略支援部隊」を加え、5軍体制としました。戦略支援部隊は通信機能を麻痺させるために通信の基幹部分を抑えたり、プロパガンダを行う専門部隊で、ハイブリッド戦争遂行のために創設されたのではないかといわれています。
ハイブリッド戦争に対抗するには、敵国の通信技術が自国に流入することを防ぐ必要があります。だからこそトランプ政権は徹底してファーウェイを締め出しているのです。さすがに防衛省は『防衛白書』などで中国のハイブリット戦争について注意を喚起していますが、日本の経済界の反応は鈍いと言わざるを得ません。
今年はトランプ政権が宇宙軍を創設する法案を提出したことも話題になりました。これも中国の軍拡に対抗するものです。中国はミサイル戦や通信戦を念頭に、宇宙軍を強化しています。中国の宇宙空間での覇権を許してしまえば、いざというとき米軍の通信機能は麻痺させられ、中国の攻撃に全く対応できなくなってしまうのです。
日本海の争奪戦
マスコミが大々的に取り上げることはありませんが、日本海の争奪戦はすでに始まっています。
東シナ海では中国の軍艦や公船による尖閣諸島周辺への領海空侵犯が常態化、中国軍機を対象とした航空自衛隊のスクランブル(緊急発進)回数は過去最多を更新しようとしています。
日本海では2017年、対馬海峡を中国軍機が初めて通過し、昨年度は7回通過、過去最多を更新しています。2019年に入ってからは中国軍機とロシア軍機が竹島上空を合同飛行し、ロシア軍機は領空侵犯しました。そして空自機と韓国軍機がスクランブルしています。
そんななか、韓国の国防費が日本の防衛費を上回ったというデータが公表されました。経済不況に苦しんでいるにもかかわらず文政権は国防費を増やし、昨年は日本が約5兆3999億円、韓国が約5兆5310億円と初めて追い抜かれました。
さらに「緊張緩和」と称して38度線に配備していた韓国軍を減らし、『国防白書』からも「北朝鮮は主敵」という文言を削除、来年度の国防予算には「周辺国に対抗する戦力を確保する」という項目を新設しています。「周辺国」には当然、日本も含まれます。文政権は「李承晩ライン」の復活を狙っているでしょう。
1952年、当時の李承晩大統領は国際法に反し、竹島も含む漁業管轄権を一方的に主張しました。韓国はその後、日本と国交を回復する1965年までに約4000人の日本人漁師を拘束し、8人を死亡させています。先日、鹿児島に出張した際に李承晩ラインで拿捕された枕崎の漁師の親族の方とお会いしましたが、拿捕された漁師たちはヒドい虐待を受けたと聞きました。
今後、文政権は日本の漁船や輸送船への嫌がらせを行い、尖閣と同じように「サラミ戦略」で対馬海峡を含む日本海を〝韓国の海〟とすべく、動き始めるでしょう。
一方、日本海の豊かな漁場である大和堆では北朝鮮漁船が違法操業を続けています。そしてその北朝鮮漁船をロシアが拿捕した──すでに韓国、北朝鮮、ロシア、そして中国による〝日本海の争奪戦〟が始まっているのです。
一体、どれほどの人が、日本海が尖閣諸島海域のような「紛争海域」になると想定しているのでしょう。「北朝鮮の違法操業はけしからん」程度の認識のままでは、ますます危機に追い込まれていくことになります。
継戦能力低き自衛隊
「日本の自衛隊は優秀だから、韓国軍相手ならば大丈夫」という声も聞かれますが、もし一触即発の事態になったとき、憲法9条に縛られた自衛隊法の解釈では初動の遅れでやられてしまうでしょう。
実際に2016年には元空自航空支援集団司令官の織田邦男氏が、東シナ海上空で中国軍の戦闘機が空自機に対し「攻撃動作を仕掛け、空自機がミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱した」とする記事を発表しました。攻撃動作を仕掛けられたことは、冷戦時ですらありませんでした。
事実関係は防衛省幹部も大筋で認めたようですが、萩生田光一官房副長官、河野克俊統合幕僚長(ともに当時)はこれを否定しました。あくまで推測ですが、空自機が攻撃動作を仕掛けられながら戦域から離脱したことが判明すれば、同盟国である米国から「何という弱腰」と批判されることになるからだと思われます。
しかし中国の戦闘機と日々向かい合っている空自としては、攻撃動作を仕掛けられた場合に「戦域を離脱し領空侵犯を容認する」のか、「阻止するために反撃する」のか、政府に方針を決めてもらわなければ困ります。だからこそ、あえて情報を漏らしたのかもしれません。
領空侵犯を容認したら、「領空侵犯しても反応してこなかった」と中国に制空権主張の根拠を与えることになります。「撃墜もやむなし」と指示するには国際的な世論戦で負けないための宣伝能力の強化、日米連携の深化、敵基地攻撃能力の保持が不可欠です。
中国は「世論戦」を重視し、米国をはじめ主要先進国に中国が有利になるようなニュースを流す体制をつくり上げています。予算は1兆円とも言われ、米国のケーブルテレビで中国政府が作成したニュースを流したり、ニューヨーク・タイムズには中国共産党の機関紙『人民日報』の英語版が織り込まれているほどです。
一方、慰安婦問題という例を挙げるまでもなく、日本の対外宣伝力の弱さは知られています。韓国に対する「ホワイト国除外」でも、広報不足により国際社会では「日本が経済力で劣る韓国をいじめている」と報じられていたほどです。いまの状態で中国や韓国との間で紛争が起これば、日本は「悪者扱い」される可能性が高いと言わざるを得ません。
それだけでなく、中国は「日本政府から戦闘を仕掛けられた」と宣伝し、ミサイル攻撃を仕掛けてくる可能性すらあります。事実、米国務省の「中国に関する年次報告書2014」では、中国は短期激烈戦争(ショート・シャープ・ウォー)として「大量のミサイルを短期間に日本列島に発射し、米国の助けが来る前に日本を降伏させる」というシナリオが検討されているほどです。
日本はMDシステムを導入していますが、これだけで日本全土を守れるわけではありません。MDシステムは2段階に分かれていて、第1段階ではミサイルが大気圏にいる間に海上自衛隊のイージス駆逐艦が察知し、迎撃します。第2段階では、イージス駆逐艦が撃ち漏らしたミサイルを大気圏突入段階で空自の迎撃ミサイル、ペトリオットPAC-3で対応する仕組みになっています。
問題は第1段階では日本列島全体をカバーしていても、第2段階になるとPAC-3を配備している半径数十キロしか守れないことです。つまりPAC-3が配備されていない札幌を除く北海道、青森を除く東北、新潟などの日本海側、中国、四国、南九州はミサイル攻撃にまったく無防備なのです。
そしてそもそも防衛費の関係で在庫を抱えておらず、対応する迎撃ミサイルの数も足りていません。ミサイルだけでなく弾薬や燃料も不足していて、元自衛隊の幹部が言うには「おそらく海上自衛隊の護衛艦などが戦闘状態に入ったとして、戦い続けることができるのはせいぜい十数分だろう。自衛隊の基地が相���から攻撃を受けずに戦い続けることができたとしても1カ月持つかどうか」とのことでした。
トランプを救った安倍外交
米軍の弱体化と中国の軍事的台頭、米韓同盟の変質──日本を取り巻く安全保障環境の変化に、安倍政権はどう対応しようとしているのでしょうか。まずは外交戦略です。
トランプ政権は当初、中国に対抗するためにロシアと組もうと考えました。ところが関係改善は進まず、アジア諸国と関係を強化する方針に転換します。しかしフィリピンのドゥテルテ大統領は反米、ベトナム戦争の記憶があるベトナム、さらに核武装に踏み切ったインドなどとも関係は良好とはいえません。さらに「一帯一路」による買収工作で、中国批判を口にできない国も多くなっていました。
途方に暮れていたトランプ政権に救いの手を差し伸べたのが安倍首相だったのです。安倍首相は第二次政権が発足した2012年12月、英文で「アジアの民主的セキュリティ・ダイヤモンド構想」という英文の論文で、日米同盟を広げて東南アジアやオーストラリア、インドにいたるまでの連携網を構築する構想を発表しました。
この構想に基づき「地球儀を俯瞰する外交」で当該国との関係を深化させていったのです。特にインドとは同盟関係と言えるほど良好な関係を保っています。
一昨年、アメリカで会った米軍の元幹部は「セキュリティ・ダイヤモンド構想がなければ、南シナ海や東シナ海での中国の横暴はさらにひどく、紛争が勃発していたかもしれない」という認識を持っていました。
安倍首相がトランプ大統領とゴルフをラウンドしたり、トランプ大統領が安倍首相の誕生日を祝う姿に「アメリカの言いなり」「対米従属」と批判する向きもありますが、安倍外交が米国の大統領から頼りにされていることの証明です。
トランプ政権と日本との関係が良好でなければ今頃どうなっていたことか、想像するだけでゾッとします。
こうした戦略的な外交ができたのは安倍首相個人の資質だけでなく、政治の仕組みを抜本的に変えたことも一因です。第二次安倍政権は、発足と同時に日本版NSC(国家安全保障会議)を創設し、軍事・外交・インテリジェンスを連動させた安全保障戦略をつくる体制を構築しました。
内閣人事局は「官僚いじめ」か
これまで日本の安全保障戦略は、防衛省が策定してきました。しかし霞が関で防衛省は3流官庁といわれていて、防衛庁時代は他省庁から相手にされず、防衛費の折衝すら直接財務省とできなかったほどです。
しかしNSCは内閣総理大臣直轄なので、安全保障戦略の主導権は官邸に移動し、ほかの省庁を巻き込んで安全保障政策を策定できるようになりました。そのような意味で、この改革は画期的といえます。
防衛、安全保障は防衛省の管轄と思われるかもしれませんが、住民保護や通信なら総務省、軍需産業による武器・弾薬の補給なら経済産業省、自衛隊の移動や戦闘機の離着陸なら国土交通省、戦闘によるけが人の対応なら厚生労働省……基本的にすべての省庁に関わっています。
NSCの話になると出てくるのが「内閣人事局」です。マスコミは内閣人事局を安倍政権批判の道具にして「官邸が好き勝手やるためにつくられた」「役人いじめ」というのですが、それは霞が関の現実を知らない人の謬論です。
内閣人事局は総合的な国家戦略を策定するための〝道具(ツール)〟にすぎません。さらにいえば、国益を考える有能な官僚を守るための道具です。
官僚たちにとって、守るべき最大の原則は「前例踏襲」──先輩たちが行ってきたことを守り、否定しないこと。これこそ出世の必須条件です。しかし「前例踏襲」では肝心の「国益」が守れないことも多い。
そんななか、安倍政権が内閣人事局をつくったことで幹部官僚人事を左右できるようになり、おかげで「国益のため前例を変えたい」と考える幹部官僚たちは上司に対し、「内閣人事局のせいで官邸からの指示には逆らえないので、やむを得ず先輩たちのやってきたことを改革します」と〝言い訳〟ができるようになりました。官邸が〝悪者〟になることで、各省庁の「前例踏襲政治」を改革しようとする国益重視の官僚たちを守ることができるのです。
「省庁縦割りの前例踏襲政治」から「内外情勢に機敏に対応できる国益重視の政治」へと官僚機構を変えるための道具が、NSCと内閣人事局というわけです。
令和の「富国強兵」を
NSCといえば9月、2つの大きな動きがありました。
まずNSCの実務部隊であるNSS(国家安全保障局)局長が外務省出身の谷内正太郎氏から、警察庁出身で首相側近の北村滋氏に変わりました。北村氏はインテリジェンスのプロで、拉致被害者奪還のためにウラで動き回ってきた人物です。
この人事はトランプ政権の方針と関係しているでしょう。トランプ政権はインテリジェンスに軍とCIAを使っていて、国務省をあまり関与させていません。というのも、国務省はパンダハガーだらけで情報がすぐ中国に漏れてしまう恐れがあるからです。国務長官にCIA出身のポンペオ氏を起用していることからも、トランプ大統領が国務省の官僚たちを信頼していないことはわかります。
一方、日本で国務省のカウンターパートは外務省なので、トランプ政権は外務省や外務省出身の谷内氏にできるだけ情報をわたさずに、内閣情報官だった北村氏にわたしていたという噂(うわさ)を米軍関係者から何度なく聞かされました。
外務省は谷内氏の後任にも同省出身者が就くことを期待し、谷内氏もそれを希望したようですが、外務省は外されることになりました。
この人事について朝日新聞は「官邸主導が強まる」「官邸にノーを言う人が少なくなる」という論調の記事を掲載していましたが、外務省は自分たちがNSCの主導権を握りたい、朝日もパンダハガーが多い外務省に担わせたいという意志が伝わってきます。
安倍政権としては北村氏をNSS局長に据えることでインテリジェンス重視を明確にし、トランプ政権との連携をさらに深めようとしているのでしょう。とはいえ、外務省などの抵抗が予想され、予断を許しません。
もう1つは、NSSに技術流出や産業スパイに対応する専門担当部局として「経済安全保障部門」を設置するという報道が出たことです。これまで技術流出や産業スパイに関しては経済産業省が外為法(外国為替及び外国貿易法)や不正競争防止法などを通じて対応してきましたが、中国企業による知的財産窃盗問題などには十分に対応できずにいました。
安倍政権としてはNSSに経済安全保障部門を新設することで、米中貿易戦争に対して的確、かつ迅速に対応しようとしているのでしょう。これらの動きにも大いに注目しておきたいものです。
米国は一枚岩ではありません。アジアの平和のために日本は弱い方がいいと考える「弱い日本派(ウィーク・ジャパン)」と、強い日本がアジアに安定をもたらす「強い日本派(ストロング・ジャパン)」が存在します。これまで日本は米国の「弱い日本派」によって、軍事的に抑え込まれてきました。
しかし幸いなことに、トランプ政権は中国の軍事的台頭に対抗するため、「強い日本」を求めています。危機はチャンスです。「強い日本」再建に向けた絶好のチャンスを生かすためにも、憲法改正だけでなく、デフレからの早期脱却、対米依存の是正を前提とした防衛費のGDP比2%増など、令和の「富国強兵」を断行したいものです。
江崎道朗(評論家・拓殖大学大学院客員教授) 1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、安全保障、インテリジェンス、近現代史研究に従事。『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP研究所)、『日本は誰と戦ったのか─コミンテルンの秘密工作を追及するアメリカ』(ワニブックス)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)ほか著書多数。
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2022年12月30日
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初詣の人出予想 広島護国神社は50万人か(広島テレビ)
正月三が日の初詣は、広島護国神社で50万人など、今年より多い人出が見込まれています。広島市中区の「広島護国神社」は、元日からの3日間で50万人の人出を見込んでいます。今年より4万人多い予想ですが、年内に参拝を済ませる人も多くコロナ前の60万人より少なくなる見込みです。また福山市草戸町の草戸稲荷神社では、30万人で今年と比べて多い予想です。広島地方気象台によると元日は南部も北部も晴れの予報でこの時期らしい寒さになりそうです。県内の初日の出は午前7時16分です。
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広島 老舗の餅店 正月前に賑わい(広島ホームテレビ)
正月用の餅 買い求める人で老舗餅店にぎわう(NHKニュース)
広島市内にある老舗の餅店では、正月用の餅を買い求める多くの人でにぎわっています。
広島市西区にある創業115年の餅店では、正月前の最も忙しい時期を迎え、臨時のアルバイトを雇ってふだんの4倍にあたるおよそ20人の態勢で餅づくりを行っています。
29日は、午前1時ごろから餅づくりの作業を始め、せいろで蒸した広島県産の新米をついた餅を従業員が素早い手つきでひとつひとつ丸い形に整えていました。
店には、餅を買い求める客が次々と訪れ、持参した袋がいっぱいになるほどの量をまとめ買いする人もいました。
この店では燃料価格の高騰を受けて、去年より餅を1つあたり20円値上げしましたが、それでも例年のおよそ1.3倍ほどの注文があったということで、年末までにおよそ3万個をつくる予定だということです。
店を訪れた広島市の70代の女性は、「ここの餅が大好きで、正月は家族10人が集まるので雑煮用に買いに来た。楽しみですが、掃除や料理でこれから忙しくなります」と話していました。
餅店の林秀樹社長は、「新型コロナの影響も少し落ち着き、例年以上の出荷ができそう。新米の餅を食べて1年間元気で過ごせるように力をつけてほしい」と話していました。

【本日(12/30)の広島県内の感染状況】(広島県)
新型コロナ 県内で4690人感染確認 6人死亡 30日発表(NHKニュース)
広島県では30日、新たに4690人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され6人が亡くなったと発表されました。
感染が確認されたのは、▼広島市で2062人、▼福山市で921人、▼東広島市で300人、▼呉市で298人、▼尾道市で224人、▼廿日市市で223人、▼三原市で124人、▼府中町で86人、▼府中市で62人、▼三次市で52人、▼大竹市で47人、▼海田町で45人、▼竹原市で34人、▼江田島市と坂町でそれぞれ33人、▼庄原市で30人、▼北広島町と世羅町でそれぞれ28人、▼熊野町で27人、▼安芸高田市で19人、▼大崎上島町で6人、▼神石高原町で5人、▼安芸太田町で2人、
それに▼山口県から訪れた1人のあわせて4690人です。県内での感染確認は、のべ66万4782人となりました。
また、県内では患者6人が亡くなったと発表されました。県内で新型コロナウイルスに感染し、その後、死亡した人は1019人となりました。
新型コロナ医療体制 病床使用率59.4% 29日時点(NHKニュース)
29日の時点で病床の使用率は59.4%(確保病床数886床、入院患者526人)。
このうち重症患者用の病床使用率は26.9%です(確保重症病床52床、重症の入院患者14人)。
軽症の人や症状がない人が入る宿泊療養施設は1240室を確保し、368人が過ごしています(利用率29.7%)。
直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数は1322.87人です。
現在、広島県の感染レベルは、1から4の4段階のうち発熱外来を受診する患者が増えるなど、保健医療の体制への負荷が高まり始めていることを示す「レベル2」です。
【新型コロナ厚労省まとめ】326人死亡 14万8784人感染(30日)(NHKニュース)
厚生労働省によりますと30日発表した国内の新たな感染者は空港の検疫などを含め14万8784人となっています。また国内で亡くなった人は326人で、累計5万6974人となっています。
東京都 コロナ 26人死亡 1万4525人感染確認 3日連続前週下回る(NHKニュース)
大阪府 新型コロナ 22人死亡 新たに9527人感染確認(NHKニュース)大阪府内の感染者の累計は253万8455人となりました。府内で感染して亡くなった人はあわせて7124人となっています。

中国の新型コロナ死者1日当たり約9000人、英調査会社が試算(ロイター)
[北�� 29日 ロイター] - 英国の医療関連調査会社エアフィニティーは29日、中国での新型コロナウイルスによる死者が1日当たり約9000人との試算を示した。1週間前の試算からほぼ倍増となる。
発表で、中国での12月1日以降の死者数が10万人に達し、感染者数は合計1860万人に上ると指摘。試算には感染者数の報告に関する変更が実施される前の中国各省のデータに基づくモデルを用いたという。
中国のコロナ感染は1月13日に最初のピークを迎え、1日当たり370万人に達すると予想。1月23日には死者数がピークに達し1日当たり約2万5000人になると見込んだ。12月以降の累積死者数は58万4000人になるという。
中国当局の発表によると、政策を転換した12月7日以降の死者数は10人。2020年のパンデミック(世界的大流行)発生以来の中国の公式な死者数は28日時点で5246人。
エアフィニティーの予測によると、中国全土での死者数は4月末までに170万人に達するという。

中国軍機、米軍機の3メートル以内に接近 南シナ海で=米軍(ロイター)
[ワシントン 29日 ロイター] - 米軍は29日、中国軍機が先週、南シナ海で米軍機の3メートル以内に接近したと発表した。国際空域での衝突を避けるために回避行動を取らせたという。
声明によると、12月21日に中国軍のJ─11戦闘機と米軍の偵察機RC─135が接近。「インド太平洋地域のあらゆる国が、国際法に従い安全に国際空域を使用することを期待する」とした。
米軍報道官によると、中国軍機は米軍機の翼から3メートル以内に接近。機首からは約6メートルだったという。
米当局者は米国が中国政府に対しこの問題を提起したと明かした。
ワシントンの中国大使館は現時点でコメント要請に応じていない。

今年の日経平均は9.36%下落、4年ぶり年間安 海外利上げ加速が逆風(ロイター)
[東京 30日 ロイター] - 2022年の日経平均株価は年間で9.36%(2697円21銭)の下落となった。年間で4年ぶりの下落。TOPIXも5.05%の年間マイナスだった。ロシアのウクライナ侵攻などをきっかけに世界的にインフレが進行し、海外中銀が利上げを加速したことが逆風となった。
日経平均の年間マイナスは、米中貿易摩擦などで12%(2750円)下落した2018年以来。21年は3万円台を回復しバブル崩壊以降の戻り高値を付けたが、今年は一転軟調な展開となった。
海外(29日まで)との比較では、米国のダウ工業株30種が8.5%の下落、ナスダック総合指数が33%の下落、欧州ではSTOXX欧州600種が11.7%の下落となっており、日本株は比較的下落率が小さい。海外に比べてインフレ率が低く、日銀が金融緩和を続けたことなどが要因とみられている。
ただ、日本と海外の金融政策の違いなどを材料に進んだ円安は必ずしも日本株のプラス要因にはならなかったとの指摘も出ている。今年はドルが150円を突破し、32年ぶりのドル高/円安水準を付けた。
業種別の年間騰落率では、鉱業、銀行、保険、空運、卸売、医薬品、海運などが上位となり、下位は電機、サービス、精密、金属、輸送用機器だった。日経平均225採用銘柄では、三菱重工業、日揮ホールディングス、フジクラ、高島屋、三越伊勢丹ホールディングスなどが上位となった。
三菱UFJ国際投信の荒武秀至チーフエコノミストは「円安による収益増で本来は株高に反応するはずの電機、精密、輸送用機器が、光熱費や資材価格の高騰で打ち消された。従来の『円安イコール株高』という構図が成立しないほどに円安の弊害が意識された1年だった」と振り返る。
23年ついて、智剣・Oskarグループの大川智宏主席ストラテジストは、難しい局面を迎えそうだとみる。「米国の景気が堅調でも、連邦準備理事会(FRB)の引き締め強化による世界的なリスクオフに巻き込まれれば、外需依存度の高い日本企業の業績への悪影響は大きい」と指摘。日経平均は年後半に2万3000円台まで下げるリスクもあると予想している。
岸田文雄首相は30日、東証の大納会に出席し、「来年は資産所得倍増プラン元年にする」と述べた。首相が大納会に出席するのは2013年の安倍晋三元首相以来。「貯蓄から投資へのシフトを抜本的に進めていく」としたほか、「来年はスタートアップの育成に一段と力を入れていく」と話した。
2021年末 2022年末 年初来騰落率
日経平均株価 2万8791円71銭 2万6094円50銭 -9.37
TOPIX 1992.93 1891.71 -5.05
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ウクライナは最新のネオコン災害です
ウクライナ危機は、アメリカのネオコン運動30年にわたるプロジェクトの集大成です。 バイデン政権は、セルビア(1999年)、アフガニスタン(2001年)、イラク(2003年)、シリア(2011年)、リビア(2011年)でアメリカが選択した戦争を支持し、ロシアのウクライナ侵攻を誘発するために多くのことを行ったネオコンで構成される。
ネオコンの実績は大災害の事例でもあるが、バイデンは自分のチームをネオコンで固めている。
その結果、バイデンは、ウクライナと米国、欧州連合を、またもや地政学的な大災厄へと導こう���している。もしヨーロッパに洞察力があれば、このようなアメリカの外交政策の大災厄から自らを切り離すだろう。
ネオコン運動は、1970年代にシカゴ大学の政治学者レオ・ストロースとイェール大学の古典学者ドナルド・ケイガンの影響を受けた何人かの公的知識人のグループを中心に発生した。
ネオコンの指導者には、ノーマン・ポドホルツ、アーヴィング・クリストル、ポール・ウォルフォウィッツ、ロバート・ケイガン(ドナルドの息子)、フレデリック・ケイガン(ドナルドの息子)、ビクトリア・ヌーランド(ロバートの妻)、エリオット・エイブラムス、キンバリー・アレン・ケイガン(フレデリックの妻)などがいる。
ネオコンの主要なメッセージとは、
米国は世界のあらゆる地域で軍事的に優位に立たなければならず、いつの日か米国の世界または地域の支配に挑戦する可能性のある地域の新興勢力、特にロシアと中国に立ち向かわなければならない
というものである。
この目的のために、米国の軍事力は世界中の何百もの軍事基地にあらかじめ配置され、米国は必要に応じて選択の戦争を導く準備をしなければならない。
国連は、米国の目的に役立つときだけ、米国が利用するものだ。
このアプローチは、ポール・ウォルフォウィッツが2002年に国防省のために書いた防衛政策ガイダンス(DPG)で初めて明言されたものである。
この草案は、1990年にドイツのハンス・ディートリッヒ・ゲンシャー外相が、ドイツの統一に続いてNATOの東方拡大を行わないことを明確に約束したにもかかわらず、米国主導の安全保障ネットワークを中・東欧に拡大することを求めたものである。
ウォルフォウィッツはまた、アメリカの選択戦争を主張し、アメリカが懸念する危機に対して、単独でも、独立して行動する権利を擁護した。
ウェスリー・クラーク将軍によれば、ウォルフォウィッツはすでに1991年5月、イラク、シリア、その他の旧ソ連の同盟国でアメリカが政権交代作戦を主導することをクラークに明言していたという。
ネオコンは、2008年にジョージ・W・ブッシュ・ジュニアの下で米国の公式政策となる以前から、ウクライナへのNATO拡大を唱えていた。彼らは、ウクライナのNATO加盟が米国の地域的・世界的支配の鍵になると考えていたのである。ロバート・ケイガンは、2006年4月、ネオコンのNATO拡大のケースを詳述している。
ロシア人と中国人は、[旧ソ連の「カラー革命」]を自然なものとはみなさず、世界の戦略的に重要な地域での西側の影響力を促進するため、西側が支援したクーデターに過ぎないと考えている。彼らは間違っているだろうか? 西側民主主義諸国によって促され、支持されたウクライナの自由化の成功は、同国をNATOやEUに編入するための前哨戦、つまり西側の自由主義覇権の拡大に過ぎないのではないか?
ケイガンは、NATOの拡大がもたらす悲惨な意味合いを認めている。 彼はある専門家の言葉を引用し、"クレムリンは「ウクライナのための戦い」の準備を真剣にしている "と言っている。 ソ連崩壊後、米ロ両国は慎重な緩衝材と安全弁として、中立的なウクライナを求めるべきだった。
しかし、ネオコンはアメリカの「覇権」を求め、ロシアは防衛と部分的には自国の帝国主義的自負のために、この戦いに挑んだ。 この戦争は、オスマン帝国に対するロシアの圧力に対抗して、イギリスとフランスが黒海でロシアの弱体化を図ったクリミア戦争(1853-6年)のような色合いを帯びている。
ケイガンは、妻のビクトリア・ヌーランドがジョージ・W・ブッシュ・ジュニアの下でNATO大使を務めている間、私人としてこの記事を書いた。ヌーランドは、ネオコン工作員の代表格である。ブッシュ政権のNATO大使に加え、2013年から17年までバラク・オバマの欧州・ユーラシア担当国務次官補を務め、ウクライナの親ロシア大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチの打倒に参加し、現在はバイデンの国務次官としてウクライナ戦争に対する米国の政策を指導している。
ネオコンの展望は、米国の軍事的、財政的、技術的、経済的優位性によって、世界のすべての地域で条件を決定することができるという、極めて誤った前提に基づいている。これは、驚くべき傲慢さと、驚くべきエビデンス侮蔑の両方の立場である。1950年代以降、米国は参加したほぼすべての地域紛争で足止めを食らうか敗北してきた。しかし、「ウクライナのための戦い」では、ネオコンはロシアの猛反対を押し切ってNATOを拡大し、ロシアとの軍事衝突を誘発する用意があった。なぜなら、彼らはロシアが米国の金融制裁とNATOの兵器によって敗北すると熱狂的に信じているからだ。
キンバリー・アレン・ケイガンが率いるネオコン系シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、ジェネラル・ダイナミクスやレイセオンといった防衛関連企業の有力者に支えられ、ウクライナの勝利を請け合い続けている。ロシアの前進について、ISWは典型的なコメントを発表している。セベロドネツク市をどちらが押さえようと、作戦・戦略レベルでのロシアの攻勢はおそらく頂点に達し、ウクライナは作戦レベルでの反撃を再開し、ロシア軍を押し返す機会を得るだろうと。
しかし、現実に起きていることは、そうではないことを暗示している。欧米の経済制裁は、ロシアにはほとんど悪影響を与えていないが、それ以外の国には大きなブーメラン効果を与えている。
さらに、ウクライナに弾薬や武器を補給する米国の能力は、米国の生産能力の限界とサプライチェーンの途絶によって、深刻な打撃を受けている。もちろん、ロシアの工業能力はウクライナのそれを凌駕している。
戦前のロシアのGDPはウクライナの約10倍だったが、ウクライナは戦争で工業力の多くを失ってしまった。
現在の戦闘で最も可能性が高いのは、ロシアがウクライナの大部分を征服し、おそらくウクライナを内陸に追いやる、もしくはそれに近い状態にすることであろう。
ヨーロッパと米国では、軍事的損失と戦争と制裁によるスタグフレーションの影響により、不満が高まるだろう。
米国で右翼のデマゴーグが台頭し(あるいはトランプの場合なら、彼は政権に復帰し)、危険なエスカレーションによって米国の色あせた軍事的栄光を回復すると約束すれば、その波及効果は壊滅的になりかねない。
このような惨事を招く危険を冒す代わりに、真の解決策は、過去30年間のネオコンの幻想を終わらせ、ウクライナとロシアが交渉のテーブルに戻り、NATOがウクライナとグルジアへの東方拡大へのコミットを終わらせ、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重し保護する実行可能な平和と引き換えにすることである。
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