#高木大丈夫
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2025年夏、ニューアルバム発売&初の全国ツアー決定!
ファーストアルバム『いいCD」から5年ぶりのニューアルバム『新しいCD』が今夏リリース。アルバムを提げて、メガネブラザース初の全国ツアー開催決定!

メガネブラザース "New Album" Release TOUR 2025
8/1(金) @静岡・浜松エスケリータ68 Open 18:00 / Start 19:00 ご予約はこちら (エスケリータ68 ウェブサイト)
8/3(日) @広島・広島LIVE Cafe Jive Open 18:00 / Start 18:30 LIVE Cafe Jive メール予約:[email protected] ※日程・出演者名・お名前・枚数・電話番号を明記して下さい
8/4(月) @大阪・梅田ムジカジャポニカ Open 18:30 / Start 19:30 ご予約はこちら (ムジカジャポニカ ウェブサイト)
8/5(火) @愛知・名古屋K.Dハポン~空き地~ Open 19:00 / Start 19:30 ご予約はこちら (K.Dハポン ウェブサイト)
10/10(金) @神奈川・元住吉POWERS2 Open 18:00 / Start 19:30 POWERS2 ウェブサイト予約:8/1〜 ご予約はこちら (メガネブラザース予約フォーム)
10/13(月・祝) @北海道・帯広studio REST Open 17:30 / Start 18:00 studio REST メール予約:[email protected] ※日程・出演者名・お名前・枚数・電話番号を明記して下さい ご予約はこちら (メガネブラザース予約フォーム)
10/14(火) @北海道・札幌Live&Bar After Dark Open 19:00 / Start 19:30 アフターダーク電話予約:011-261-0890 ご予約はこちら (メガネブラザース予約フォーム)
【TICKET】
前売 / 予約:¥3,900
当日:¥4,400
学生:¥2,500 (要予約) ※学生証をご持参ください
※オーダー別
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🆕🎶 「 あしたもあおうよ (feat.森俊之) 」 new single by 高木大丈夫, 森俊之 is now available worldwide! 🌐 Listen now on our weekly updated playlist and discover new sounds from Japan 🎧 https://spoti.fi/42HdAgd
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私は、高校を卒業してすぐに就職した。生まれ育った静岡県の山奥から、千葉県松戸市へ。 やたらと地方出身者ばかりを集める会社だった。会社名義でアパートを借りてくれ、家賃まで払ってくれる。なんていい会社に入れたのだろう、というのは若さゆえの勘違いだった。 とにかく休日というものがない。シフト上で「休日」とされている日にはタイムカードをうってはいけない。それだけのことだった。 そんな環境でも二年間勤めたのは、単に逃げられなかっただけだ。会社名義でアパートを借りているので、職を失うというのは住居を失うのと同義だった。 食事もろくに摂れなかったため、がりがりに痩せた。食事の時間があるならば、そのぶん寝る時間にあてたかった。となると歯など磨くはずもない。虫歯が痛み、前歯を一本失ったが、それすらどうでもよくなっていた。 関連会社の男性社員から「借金してでも逃げろ」とまで言われ、ようやく逃げたのが二十歳の頃。 振り返れば、その二年間に休日という休日はなく、七百連勤以上を続けていたのだ。 千葉県内に土地勘などなかった。あてもなく新京成線に乗り、新津田沼駅で降りた。新津田沼を目指したわけではない。単に人がたくさん降りたから、つられて降りた。それだけだった。 駅とイトーヨーカドーがくっついているのは驚きだった。そんな場所がこの世にあるとは知らなかった。 そのままイトーヨーカドーへ入った。エスカレーターで上の階へあがると、そこにはゲームセンターがあった。ゲームセンターといっても、小さな子どもをメインターゲットにしたもので、真ん中には大きなトランポリンが設置されていた。 ここで働きたい。そう思ったのは、子どもが好きだとかそんな理由ではなかった。暇そうだったからだ。もう一生懸命働きたくなどない。この二年間で、一生分働いた。そんな気分だった。 求人誌で見つけたのか、インターネットで見つけたのかはいまとなっては記憶が曖昧だが、そこのゲームセンターは求人広��を出していた。アルバイトで、週に三日程度から可。 とはいえ、住所不定の若造を雇ってくれるとも思えない。先に住居を探した。 幸いなことに、新しい住居はすぐに決まった。駅から遠い、築五十年超の木造アパート。壁を叩けばゴキブリが五、六匹出てくるような部屋だったが、ようやく自分の居場所を手に入れた気分だった。 その住所を履歴書に書き、就職の際に両親が買ってくれたスーツに身を包み、伸びたままだった髪は自分でカットした。がりがりの体と失った前歯はどうしようもなかった。 鏡を見て、「まあ、これは雇わないだろうな」と自分でも思うほどだったが、面接ではなんとなく好感触を得た気がした。 そして数日後、採用が決定したと連絡があった。なぜ採用されたのかは知らない。他に応募者がいなかったのかもしれない。 赤いポロシャツに、黒いズボン。センスがいいとは言いがたい制服だったが、不満はなかった。 とにかく来客数が少なく、やることと言えばクレーンゲームの景品の補充だとか、当時流行っていたムシキングとかおしゃれ魔女などのカード補充とか。 あとはトランポリンで遊びたい子が来たら対応をした。たしか五分で百円。十分だったかもしれない。詳細は覚えていないが、百円玉を握りしめた子どもが目をきらきらさせながら声をかけてきたのは覚えている。 一度の勤務が四時間程度。それを週に数日。時給はたしか八百円ほど。食っていけるはずもなかったが、しばらくはその生活を続けた。とてももう、まともに働く気力などなかった。 借金がある程度膨らんでから、ようやく他にも仕事を始めた。コンビニ、警備員、チラシのポスティング、宅配便の仕分けなど。非正規雇用ばかりを山ほど抱えて、なんとか借金は返した。 ゲームセンターでのアルバイトは続けるつもりだったが、近いうちに閉店すると耳にした。一時間あたりの売り上げが私の時給を下回っているような有様だったので、遅かれ早かれそうなるだろうとは思っていた。 閉店まで続けようかとも考えたが、そのときに面接を受けた倉庫作業の会社で正社員の誘いがあったので、そのまま辞めてしまった。辞めた後、しばらくは営業をしていたようだったが、たしか一年経たずに閉店してしまった。 私は就職し、転職し、結婚して離婚した。また就職して、転勤して、いまは東京の西のほうで暮らしている。 津田沼まで片道一時間強。あまり気軽には来れなくなってしまった。 あれから約二十年。私はすっかりおじさんになってしまったが、おじさんになれてよかった。いま振り返ると、あの頃の自分はいつ人生を終わりにしてもおかしくはなかった。 あそこで働いたのは一年だったか、二年だったか。もっと長かったかもしれないが、まったく思い出せない。 あのゲームセンターはたぶん、七階のマクドナルドの前にあったはずだが、いくら検索しても情報は出てこない。 まるで幻だったかのように、私自身にも曖昧な記憶しか残っていない。検索しても、トランポリンがあったのは屋上だという情報ばかり。屋上ではなかったのはたしかなのだが。 ともあれ、私がなんとか再起をはかれたのは、あそこで働いた期間があったからだ。変に忙しい職場に入っていたなら、きっと潰れてしまっていた。 しかしまさか、イトーヨーカドー津田沼店自体がなくなってしまうとは。 なんとなく、イトーヨーカドー自体はずっとそこにあってくれるような気がしていたので、いつでも行けると思い込んでいた。 二十代前半の、あの時期の私の中心にはイトーヨーカドー津田沼店があった。書店にもよく寄ったし、四本の親知らずのうち三本はヨーカドー内の歯科で抜いてもらった。 あと、誰も気にしていないようなことだけれど、トイレの洗面台の脇に置かれた小さな花瓶に花が生けてあったのが好きだった。造花かもしれない。ただ、誰かの気遣いがそこにあった。トイレ自体古かったが、きちんと清掃しているのはよくわかった。私とは違い、仕事熱心な人が清掃を担当していたのだろう。もう何年も訪れていないので、最近はどうだったのかは知らない。 テナントが徐々に撤退していったのは伝え聞いていだが、それがなんだか思い出の場所が徐々に衰弱していくようで受け入れられなかった。 さて。ここまで長々と書いてきてどう締めればいいのかわからない。結局、歳ばかり重ねて、あの頃からまったく成長などしていない。 「さようなら、いままでありがとう」 でいいのだろうか。 あと、「寂しい」と「もう大丈夫」を付け加えて文を締めたいと思う。 小山征二郎さんが、イトーヨーカドー津田沼店閉館に寄せたエッセイ
時給800円のゲーセンに救われた… 閉館の商業施設に寄せた思い出
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鈴木拓さんの恋愛相談、田中みな実さんが相手でも鬼スパルタで草 田中「ふとした瞬間でも彼のこと好きって思ったら好きって言っちゃう。」 鈴木「好きとかってあんまり言わなくていいんです。何で言うの?相手の好きと自分の好きは沸点が違うんだから、付き合ったら『好き』なんて言わない方がいいし、聞かない方がいい。好きだ好きだ言ってる奴ほど別れる率高いんです。」 田中「じゃあどうすれば男の人を不安にさせられるんですか?」 鈴木「不安にさせなくてもいいんですけど、ある程度自由にさせるのが絶対条件。」 田中「私は『何時に帰ってくるの?』とか『誰と飲みに行くの?』とかって一切聞きません。」 鈴木「あんたは"私は聞きません感"を出してるんですよ。『本当は聞きたいけど聞かない私って物分かりの良い女でしょ?』という魂胆が透けているのが重いんです。」 田中「深夜の四時でも彼が帰ってきたらお水出して『大丈夫?飲みすぎちゃった?』って言える女ですよ。私は。」 鈴木「そんなことしなくていいんですよ。そのまま寝てたらいいんです。そっちの方が可愛いし、男も気を使わないじゃないですか。」 田中「なるへそ(怒)じゃあ男の人って何で本妻や本命の彼女を大切にしないんですか?」 鈴木「ちゃんと本妻や本命の彼女を大切にする男はいますよ。何がおかしいのかって、多くの女性は真面目で地味なつまらない男を好きにならないんですよ。危険な香りがする男しか見てないのはあなたでしょ。だから犯人はあなたんですよ。(高笑い)」 田中「ああああああぁぁぁぁあ(狼狽)」
田中みな実、自身の恋愛の現状明かす「一言でこじらせてるなんてまとめられたくないくらい本当にやばい状態」 | ガールズちゃんねる - Girls Channel -
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翌日、K高校近くの私電の駅にはワイシャツ姿のサラリーマンや制服を着た高校生などがホームで待っていた。大型連休が終わり、ようやく日常が戻った雰囲気である。
K高校も、大半の生徒が寮から離れなかったが、四日ぶりに制服に袖を通した。翔もその一人だが、亮司から「性の手ほどき」を受けたからか清々しい気持ちでいた。これまで悶々としていた「余計な」羞恥心と、「悶々と」していた劣等感から解放された思いがした。これが「ロストヴァージン」なのかと彼は思った。
「…おじさん」
翔は、亮司の両腕の中で抱かれた時のことを思い出していた。意外と筋肉質で微かに男臭さもし、それが彼の潜んでいた肉欲をくすぐられた。接吻した時の唇の生温かさやとめどなく噴き出す唾液、総てが彼の本能を起こさせたのだ。白いタンクトップにセミビキニブリーフという格好にワイシャツを羽織っただけの姿で彼は洗面台の前に立っていたが、翔は初めてその光景がいやらしく感じた。彼は顔を赤らめ、下半身の一部が硬くなるのを感じた。
「…ダメ、ダメだ。今から学校なのに」
彼は股間を押さえ、そそくさとスラックスを穿いた。
秀一は、昨日のうちに準備した背広に袖を通し、自転車に乗ってK高校へ向かった。全寮制なので正門に生徒の姿はなかったが、昇降口に貢が立っていた。大型連休明けだからか、生徒の様子を見に来た様だった。駐輪場に自転車を停めた秀一は、
「おはようございます!」
と貢に一礼���た。貢も、
「益子先生、おはようございます。朝からイイなァ〜」
と笑顔を見せた。
「今日から本格的に授業なンで、緊張してます」
「そうですか? 次第に慣れますよ。大丈夫ですって」
「まァ、改めてよろしくお願いします」
そう言って秀一は昇降口へ歩いて行った。間もなく、たまたま近くにいた亮司が貢の許に来て声をかけた。彼は、
「嗚呼、やっぱり秀一だ。殆んど変わらないなァ…」
と言った。
「なかなか、イイ尻してるよね〜」
「お、おいッ! お前、食っちゃダメだからな!?」
「バカ! オレは亮ちゃん一筋だよ」
「ッつ〜か、ゴールデンウィークの時は何やってたンだよ。淋しかったよ」
「え? あのゲイバー主催の一泊旅行へ行ってたよ」
「な、何ぃ!?」
「解った、解った。今夜、煮るなり焼くなりしてよ」
「本当かよッ!?」
そう言っておきながら来たことがねぇじゃねぇかと、亮司は草取りを再び始めようと背を向けた。ロータリー周辺の「ツゲ」の下を草取りする為、彼は両膝をついて臀部を突き出す様にしたが、とっさに背後を気にした。また「ブリーフライン」をなぞられると思ったからだ。案の定、其処には貢がいた。亮司は、
「このスケベ!」
と言い放った。それに対し、
「イイ尻してるンだもん」
と貢はピシャリと、両手で自分の臀部を突き出しながら叩いた。
そんな二人のやり取りを見ていたのか、寮の方から来た岩﨑が眠そうな様子で、
「…ッたく、朝っぱらからお色気漫才やってンじゃないわよ」
と呟いた。貢は、
「おはよう。何か眠そうだな」
と言った。すると、岩﨑は突然彼に抱きつき、
「で、出たのよォ〜!」
と絶叫した。あまりに股間を突き出してくるので、貢はおのずと腰を振った。てっきり喜ぶかと思ったが、
「何よ、この欲求不満が!」
と股間をめがけて膝蹴りをした。
「ぎゃあァァァァァ〜!」
激痛が全身にはしり、貢は両手で股間を押さえながら跳び上がった。何事かと階上にいた生徒の一部が窓をガラッと開けたが、岩﨑が怒鳴った。
「見てンじゃないわよ!」
嗚呼、何だよこの学園の野郎どもは…。そう思いながら亮司は、何事もなかった様に草取りに専念をした。
ようやく痛みが引いた貢は、理事長室に岩﨑を招いた。ずっと股間を両手で押さえている彼に、
「悪かったわよォ〜。あとで慰めてあげるからさ、許してぇ〜」
と岩﨑は懇願した。しかし、貢は唇を尖らせながら、
「もう抱いてやらねぇから!」
とそっぽ向いた。余程痛かったのか、
「もし『使いもの』にならなくなったら、お前のせいだからな!」
とすすり泣き始めた。オイオイ泣く様子に岩﨑は彼の隣に座り、
「いや��〜ん、そんなこと言わないで! 貢のこと、愛してるから!」
と接吻を繰り返した。
まるでコメディーだなと貢は、スラックスの中で自分の「ムスコが」「復活」を遂げたのを感じつつ、接吻を止めない岩﨑に「とどめ」のフレンチキスをした。そして、曲がってしまったネクタイを直しながら髪も整えた。岩﨑もようやく我に還り、
「き、今日は…抱いてね。当直室にいるから…」
と貢に背を向けた。
校内に「おばけ」? 貢はデスクの背後にある窓の前に立ち、何か思い出した様だった。彼は言った。
「そう言えば…父さんが話してたなァ。昔、いじめに遭った生徒が雑木林の中で自殺をし、大変だったって…」
「『自殺』!?」
「あぁ、その生徒は厳格な両親の許で育ったがウチに来て『ゲイ』の洗礼を受けたが、凌辱されることにエクスタシーを感じたらしいンだよ。いつしか、それがいじめにまで発展し、あの雑木林で縄に縛られたり吊るされたり…。この事を知った両親が驚愕して教育委員会に訴えてやるって殴り込みにきたンだ」
「そ、そんなことが…」
「父さん、この学園を潰されてたまるかと毎日躍起になってたな…。もしかしたら、その生徒の声かも」
岩﨑は、貢の話を聞いて血が引いていくのを感じた。あの声はやはり気のせいではないのだと、次第に恐怖感が込み上げてきた。彼は言った。
「…だったら、今晩来てよ。本当、聞いたンだから! 独りじゃ怖い!」
先刻の勢いは何処へやらと言わんばかりにナヨナヨと、まるで本当の女になったかの様な感じで貢の背部に身を寄せた。貢は、雑木林から聞こえてくる声を聞いたことがなかった。ただ、当直をしていた一部の教師や、寮の中にいた生徒の数名からは「おばけがいる」という話は聞いていた。怖気づいている岩﨑に、
「解った。今夜、行くよ」
と声をかけた。
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鉢物の間引き
こっちも手入れします😅 この日は気温も高めで、よく晴れてくれました😊 たまには鉢物も点検しないといけません💦 大きめの鉢へ入れてあるこの三つをスッキリさせてみようと思います😅 まずは幸福の木から😅 プラ製の鉢を叩いたり、土と鉢の境い目にスコップを入れて鉢から出します。焦らず、イライラせずで辛抱強くがんばらないといけませんね😭 根っこがほぼ詰まった状態💦 背丈が大きくなったヤツを処分して小さめのものを活かすように間引いていきます。 隣町のホームセンターにて買い置きしてあった赤玉土と、地元産の有機肥料を混ぜて元の鉢へ戻します。 これで幸福の木は終了、他の二つも同様に間引いていきます。 これであと何年かは大丈夫かな😅 根っこが順���に伸びてくれれば心配は入りませんが… とりあえず様子を見ていきます。それではまた✋

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陳舜臣 - 神獸之爪 (1966)
1980年由鈴木清順改編為電視電影:「傑作推理劇場 陳舜臣の神獣の爪」 (12月25日、テレビ朝日) 此為陳舜臣原著翻譯。
神獸之爪 (1966) 陳舜臣
一
警官西脇八點多鐘才回到家裡。 「王先生已經來過好幾次了。」 當妻子秋子站在大門口告訴他時,他才想起自己與王仁銘已經約好兩家夫婦一起打麻將的事。
西脇住在神戶北野町一幢條件較好的兩層樓房的一樓。二樓住著一位名叫王仁銘的中國人。他是從新加坡來的華僑,現在在華僑貿易進出口辦事處工作。
王仁銘個子高大,眉眼間顯得十分開闊,下巴也較長。雖然已經三十六��,但做事並不穩重,甚至有時還會流露出孩子氣。他的妻子是日本人,名叫真沙子。雖然年紀也不小了,但仍然讓人覺得像個孩子似的。人們都說性格相近的人容易結為夫妻,一點也不假。
「真沙子確實討人喜歡。」秋子曾這樣評論道。在年僅二十三歲的秋子眼中,年長的真沙子也被視為幼稚的孩子。
王仁銘夫婦都有工作。他們雖然結婚將近十年,但至今仍未生下一男半女。這正好促使樓上、樓下兩對沒有孩子的夫婦,常常在閒暇時圍坐麻將桌旁,展開方城之戰。
吃晚飯時,秋子突然停下手裡的筷子說:「不知怎麼的,我和王太太在一起時,心裡總有種說不出的感覺。」「王先生可是個好人。」西脇說。
「他的太太看起來也像個老實人,但是……」秋子想起,有一天晚上,在山本路看到真沙子依偎著一個男人在散步。那個男人並不是她的丈夫王仁銘。
起初,秋子把這件事告訴西脇時,他怎麼也不肯相信。他想:真沙子像個孩子似的,怎麼會做出這種事呢?然而,就在半個月前,西脇也親眼見到了這一幕。而且那天晚上,真沙子跟一個男人走進了北野町的一間住宅。這戶人家門前,釘著一塊木牌,上面寫著「松江」二字。
這間住宅是戰前蓋的一幢古色古香的洋房。牆上的油漆已經脫落。灰色的圍牆內,有一個相當寬闊的庭院。這幢房子的主人與附近的鄰居沒有什麼來往。
鄰居們對他也不熟悉,只知道他前年喪妻,兒子還在東京上大學。
西脇曾在白天遇見過房主兩三次,覺得他是一個比較古怪的男人。他身材高大,眼睛雖小,卻炯炯有神。
這眼神讓人見了,不由得心生提防。幾乎每個見過他的人,都有這種感受。
「王先生真叫人可憐。」秋子說。
「他不會認識那個男人吧?」
「當然不會認識。如果認識的話,王先生就是再老實,也不會忍住這口氣。」「王先生真是倒楣。」西脇由衷地同情王仁銘。他與王仁銘交情深厚,不單純是因為鄰居關係。西脇在搜查二科工作,人們都視他為奇才,因為他在大學時代研究考古學。而王仁銘也與考古學有些淵源。
王仁銘出生在中國江蘇省C縣。十歲那年來到日本。他早年失去雙親,被叔父收養。C縣有許多古墓,而他的叔父正是古墓盜竊團夥的頭子。因此,每當看到沾滿泥土的考古文物,總會讓他想起自己的少年時代。難怪一看到西脇的考古學圖片時,就不禁勾起一陣思鄉之情。
「這種銅器,在周家庄這個地方出土很多。像這種黑陶做的人俑,我叔叔家裡多得是。」有一次,王仁銘拿出一張褪色的舊照片給西脇看。王仁銘不知道自己的父母長什麼樣。十歲那年,如同父母般撫養他的叔父也不幸去世了。這張照片上有十幾個人,最靠左邊的那個用紅鉛筆標記的人就是他叔父。
「這就是我叔叔。」他用誇耀的口氣說道。他的叔父也像他一樣,身體非常強壯,但看起來卻不像他那樣悠閒自得、親切和藹。到底是盜墓團夥的首領,讓人望而生畏。
「這是叔叔臨終前的照片。」他補充說。
西脇再仔細一看,照片上的人幾乎都站著,只有中間兩個人坐在椅子上。而且,坐在椅子上的兩個人頭上,用紅鉛筆打了兩個「X」。
「這是什麼意思?」西脇問。
「他們是大熊和小熊,我的叔叔就是被他們殺害的。因為我不知道他們的名字,所以這樣稱呼他們。」說到這裡,王仁銘那雙平時顯得悠靜、溫和的眼睛,剎那間發出一束異樣的光芒。西脇第一次看到王仁銘如此嚴肅的表情。
「這兩個傢伙是從日本來挖掘古墓的。」王仁銘解釋道。據他說,從日本來的發掘隊並不是什麼搞學術調查的學者,而是專靠盜墓賣文物牟取暴利的團夥。大熊這個人滿臉絡腮鬍子,難怪王仁銘叫他熊。小熊雖然看起來年紀很輕,卻給人一種體弱多病的感覺。雖然長相與熊毫無關係,但因為他是大熊的同夥,所以被稱為小熊。
這是一張外景照片,背景像是一個寸草不生的開闊地,或許就是盜墓現場。照片下方寫著「1940年」幾個字。此時正值日本昭和十五年,當時正處於中日戰爭的激烈階段,也是日本在中國大陸為所欲為的時代。不難想像,從日本來的強盜般的盜墓團夥是如何仗勢欺人,到處亂挖古墓的。
據王仁銘說,當時大熊小熊一夥來到C縣後,得知他叔父熟悉古墓地點,便與他搭上了關係,開始合伙挖古墓。
這幫人雖然利用他叔父,但一旦發現較有價值的古墓地點,就不再需要他叔父了。何���分贓時還得給他一份。這樣,他叔父就被他們視為眼中釘、肉中刺。
那天拍照後,他的叔父失蹤了。參加拍照的人們因為最後看到他叔父是與大熊小熊在一起,就向大熊小熊追問起來。
「我們也在找他。那天,我們在廟前分手時還說第二天再見,結果再也沒見到。」大熊和小熊這樣回答道。
當大熊小熊幹完事,用卡車滿載出土文物回到日本一個月後,人們才發現了王仁銘叔父的屍體。
古時候,為了防止後人盜墓,墓穴都用一種特殊的黏著劑封閉起來。從新石器時代開始,就採用將天然石灰磨成粉末,加水製成「泥糊」的方法將墓穴封閉。後來,隨著時代的發展,在石灰中又加入陶器的細粉末和碎石,有時還要摻上糯米。盜墓的人要想行竊,就必須首先打穿這堅實的牆壁。
有一天,一個以盜墓為生的男人,偶然走進了一個已被盜過的古墓。他進去一看,發現過去明明被鑿開的墓穴又被人用磚和水泥重新封上了。附近的盜賊不會這麼文明,絕不會盜墓後再把墓穴封上。他感到很奇怪,於是叫來同夥,又重新把墓穴的磚拆開。結果一看,被洗劫一空的墓室裡,靠著封閉的牆壁下倒著一具男屍,但不是古人的屍體,因為他還穿著現代的服裝。從他那件染著血跡的衣服可以想像,他可能直到咽下最後一口氣,都在絕望地敲打著這被封死的牆壁,求得死裡逃生。
這個人就是王仁銘的叔父。
當時,王仁銘只有十歲,是個聰明過人的孩子。看他現在這副模樣,人們無論如何也想不到他曾被當時村裡的人稱為神童。叔父死後,王仁銘這個孤苦伶仃的孤兒,變得更加無依無靠。當時,駐紮在這一帶的一個日本軍司令,不知道他是理想主義者還是好事者,忽然想到要把這個中國的神童少年帶到日本受教育。王仁銘在東京上了小學,在鹿兒島又度過了中學時代,神童也漸漸變成了凡人。他靠半工半讀掙了點錢,好不容易才讀完大學商業系。現在是個平凡的、靠工資糊口的職員。只有當他打起麻將時,才能稍微顯露出一點昔日神童的靈機。
然而,這天晚上打麻將,王仁銘卻一敗塗地。他的妻子真沙子倒是很幸運,連連滿貫,節節獲勝。西脇夫婦正好相反,西脇的戰績相當不錯,而秋子卻是狼狽不堪。
「以夫婦為單位��勝負的話,今天是平局。」王仁銘慘敗之餘,卻還風趣地說道。因���從九點半以後才開始打麻將,所以直到第二天清晨快兩點時才結束。「打個通宵也可以。」打得順手的真沙子正在興頭上,她一個勁兒地提議再戰一局。西脇考慮到第二天還要上班,就制止說:「咱們今天就打到平局吧。」然後,西脇夫婦走下樓,喝了杯熱茶,就上床睡覺了。此時正是清晨兩點鐘。
二
第二天早上,西脇上班後不久,科長就把他叫去了。
「你能到一科來幫幫忙嗎?因為事情出在你家附近。」「我家附近出了事?」「噢,你可能還不知道。今天早上發現一具屍體,被害者是跟你住同一條街的松江雄太郎……」「什麼?松江?」毫無疑問,就是把王仁銘的妻子真沙子帶回家的那個男人。
「驗屍結果還沒出來。但鑑識科說,作案時間可能在昨晚十一點到夜裡零點之間。」「噢。」西脇鬆了一口氣。案件發生的時刻,王仁銘還在打麻將。昨夜如果沒打麻將,西脇出於自己的工作性質,不得不懷疑到王仁銘身上。因為被害者是他妻子的情夫。再者,說不定王仁銘已經發覺了妻子的姦情。
科長考慮到事情發生在西脇家附近,西脇較便於了解情況,而且西脇直到最近人事調動之前一直在搜查一科,因此就委託他協助調查松江雄太郎的案件。
可是,西脇卻有些憂慮,他想:難道王仁銘的妻子與被害者似乎有關係的事非得說出來不可嗎?西脇本人比誰都更能證明兇手不是王仁銘。考慮到王仁銘,他就想盡可能不把這件醜聞公開出去。
昨晚,西脇他們從九點半到將近早晨兩點之間,一直圍著桌子打麻將,沒有一個人走開。但如果要準確無誤地說,過了十二點半時,真沙子曾離開過一次。那是聽到電話鈴響後,真沙子一邊嘀咕著「都這麼晚了,誰還來電話」,一邊走了出去。電話機就在隔壁,可以一清二楚地聽到她的聲音。
「什麼?你問停電?這裡沒停過電。」這就是她講的全部內容。因為正是打麻將打得起勁的時候,加上又是深更半夜,所以她很不耐煩地說了一句,就把電話「喀嚓」一下掛上了。她回到座位上說:「是個醉鬼,突如其來地問什麼時候停過電。」「是認識的人打來的嗎?」王仁銘一邊放牌一邊問。
「說不準。喝醉的人聲音和平時不一樣,但大體上我能猜到是誰。」她一邊說,一邊翻著牌。
如果說昨晚打麻將的時間裡有什麼異常,頂多就是這一個電話了。
西脇來到一科時,調查已經有了相當進展。調查主任對西脇說:「關於調查的注意事項,我不說你也知道。」他開始單刀直入地講起了案情經過。
在一幢牆皮脫落的古色古香的寬敞洋房裡,只住著房主人松江雄太郎一個人。他的妻子已經去世,獨生子現在東京。早晨八點鐘,女傭人來到這幢洋房上班時,才發現松江倒在臥室的地毯上。被害者是因頭蓋骨被無刃兇器猛擊致死的。死者穿著睡衣,床上還有睡過覺的痕跡。女傭人吉川房子也證實說:「主人常常很早睡覺,一般都在十點半左右。」從死者躺在地上情況判斷,不是被兇手從床上拖下來的,就是在兇手進屋時醒來,自己從床上走下來的。床上沒發現血跡,從屍體和房間的情況都看不出有撕打的痕跡。
「恐怕是偷襲。被害者五十五歲。聽女傭人說,他很喜歡誇耀自己的身體如何如何棒。睡覺時從未不鎖臥室的門。」看來,人過於自信是要吃虧的。「主任說道。」那麼,院子大門上栓了沒有?」「院子大門倒是上了栓,但是那堵板牆不高,很輕鬆就可以跳進來。外屋門雖然上了鎖,但屋子西面的窗子壞了,窗門閂也掉了。要是他老婆還在,門閂是會及時修上的。現在估計兇手只能從這個地方鑽進來。進來後是廚房。」松江死了妻子後,家裡到處都是漏洞。更糟糕的是,女傭人也不知道有沒有丟東西。手提保險櫃仍上著鎖,女傭人不知道裡面有多少錢。打開後,發現裡面放著十二萬日元。另外,桌子的抽屜裡也隨便塞著三張一萬日元的紙幣。房間裡並沒有被翻亂的痕跡。
「好像不是來偷東西的。」主任皺著眉頭說。
「好吧,我們還是先到現場去看看吧。」
西脇趕到松江家時,兇手闖入松江家的路線已經基本被推測出來了。原來,鄰近松江家西邊有一塊空地,空地的一角長著一棵很大的松樹,其中有一根很粗的樹枝,緊貼著板牆頭,伸進了松江家的院子裡。兇手可能爬上松樹,攀著這根離地面兩米多高的樹枝,跳到院子裡的草坪上。他在樹枝上事先繫好繩子,逃走時,仍順著那條繩子攀上板牆,然後再順著松樹滑下去。
樹枝上有被繩子摩擦過的痕跡。長時間沒洗刷的骯髒板牆內側,發現了腳印似的痕跡。由於腳滑,登不住板牆,所以留下的不是完整的腳印。至於兇手潛入臥室的途徑,大家認為還是從那個掉了門閂的窗子進來的。窗框的突出部���積滿了灰塵,在那裡發現了用手扒過的痕跡。
「兇手好像戴了手套。」鑑識科的人搖著頭說,「窗內除了發現很多女傭人的指紋外,再也找不到其他的指紋了。」兇手爬進房子後,可能脫掉了鞋,在廚房的磁磚地上找不到什麼可疑的足跡。到了走廊,過道上都鋪著地毯。
無人照管的庭院裡,雜草叢生,根本無法發現腳印,這使調查人員大傷腦筋。
三
「真是個怪人!」調查主任在了解被害者情況時,忍不住嘆了口氣。西脇在松江生前,曾有幾次在路上與他打過照面,得到的印象也是如此。
松江雄太郎十七年前遷居來到神戶,從那以後就一直住這幢房子。至於他來神戶前的經歷則一無所知。聽女傭人說,松江似乎不願與人來往,家裡難得來一次客人。
「當然,我下班回去後,什麼人來就不知道了。」女傭人說。她的意思是晚上可能有人來。西脇心裡捏了一把汗。因為晚上的客人很自然會讓人聯想到女人。調查主任好像也想到了這個問題,不由得問道:「你家主人有女朋友嗎?」「這點我就不清楚了。我早上來得很早,可屋子裡總是主人一個人。」五十九歲的女傭人回答道。言外之意,就是說沒有在這裡過夜的女人。
松江雄太郎在神戶市內開了西餐館、酒吧、茶館、彈子房等四個店鋪。他只到各店收取銷售額,並不直接參與經營。但有時也召集各店的經理,鼓勵他們搞好經營。據女傭人說,到家裡來的客人中,除了四個經理外,還有兩三個人,至於與這幾個人是什麼關係,女傭人根本不知道,更不知道對方的姓名。
「其中有一個人有點怪。」女傭人有些猶豫地說。
「怎麼有點怪?」調查主任觀察著女傭人的表情,心情有些緊張起來。
「已經是一個多月前的事了。有一個客人不知為什麼竟跟主人大聲吵了起來。店裡的人遭到主人的訓斥,而那個人卻敢反過來同主人爭吵。主人也不示弱,加上他又很固執,一開口就罵起來。因為窗戶開著,會客室的爭吵聲自然傳到廚房來。」「他們爭吵什麼?」「我可沒偷聽。聲音是自己傳過來的,我沒注意聽,所以不清楚。只聽得他們爭吵著要砸碎什麼東西。」「砸碎什麼東西?」「好像是什麼貴重的東西。」「這個客人長相如何?」「是個又矮又胖的中年人。過去我在的時候,他從來沒來過。雖然我沒好好注意過他,但給我一種讓人難以摸透的感覺。」警察又分別向松江投資經營的四個店鋪的經理詢問了一些情況。其中,彈子房經理石川談的內容證實了女傭人講的那些話。
「前些天松江先生說,一個傢伙借錢不還,反而找���口吵架。」「什麼藉口呢?」「松江先生只講了這些,沒再多說。他平時不愛講話,而且很討厭那些講起話來喋喋不休的人。我在他面前,從來不多說一句廢話。」可以想像,石川所說的「藉口」和女傭人說的「砸碎什麼東西」是一致的。
「如果能知道那個客人的名字就好辦了。」主任邊說邊心情煩躁地用鉛筆頭一個勁地戳著桌子。
「松江先生很少對人談自己的事。」石川抱歉地說。「但這次能借給那個人錢是很出乎意料的。」「怎麼?這種情況很少嗎?」「是的,他在金錢上摳得很緊。他不僅不借給別人錢,也不願意向別人借錢。怎麼說好呢?總之,他不喜歡與別人建立任何關係,是個性格孤僻的人。」松江雄太郎的工作,似乎就是每天到四家店鋪挨家巡視。聽說在高興時,有時還看看電影,或到寶塚一帶去玩樂消遣。他對圍棋、象棋、麻將絲毫不感興趣,相反,有時卻去賽馬場和賽車場。為了消磨時間,還常常去彈子房玩彈子。由此可見,諸如看電影、玩彈子,或看賽馬、賽車等娛樂,都是不需要對手的。
他很討厭與別人在一起,而這種人往往是利己主義者。
「先把那個向被害者借錢的男人找到。這項工作就請西脇負責吧。雖然沒有人了解被害者的詳細情況,但他的兒子回來後,可能會獲得一些線索。」主任果斷地吩咐道。之後,又帶著懷疑地說了一句:「不知道他到底有沒有女人?」西脇現在必須找到那個向人借錢、反而尋找藉口吵架的男人。西脇又問了一次女傭人,回答的內容與對主任大體相同,沒什麼更多的新東西。可能是刨根問底的緣故,把她惹煩了,只聽她說道:「我可沒這毛病,死盯著人家的臉一個勁地看。」別看她上了年紀,但生氣時噘著嘴的樣子,看起來倒覺得可愛。
「好了好了。」西脇說。結果,線索就是那個男人向松江借了錢。雖然錢數無法查到,但松江雄太郎既然在錢上摳得很緊,就一定會留下借據。
在手提保險櫃裡沒找到借據。兇手很可能把借據偷走了。而且,作案動機很可能就是為了銷毀借據。但是,如果是這樣,保險櫃裡留下的十二萬日元現款就令人費解了。也許這十二萬日元從借款的金額來看,只不過是零頭,根本不值得一拿?然而,過了不久,從有關方面了解到,松江把重要的文件一直放在銀行保險櫃裡保管。
西脇馬上來到銀行查對。在眾多的股票中,只發現了一張借據,金額是一百五十萬日元。借款人是宮原一郎,家住神戶市生田區下山手街。借款期限是到三月十日為止。現在早已過期。宮原家住在一幢公寓裡。這幢公寓是一座鋼筋混凝土結構的四層樓,樓內沒有電梯。西脇在一樓的角落裡找到了「宮原」的門牌,但房門緊鎖著。
公寓的管理員不在。剛好有一位住在樓上的家庭主婦買東西回來。西脇向她一打聽,馬上就知道了宮原的工作單位。原來他是京町北島大廈裡的長谷川商社的貿易商。
西脇好像在哪裡聽人說過北島大廈的名稱。記得是哪個熟人與這個大廈有關係,但一時又想不起是誰。
四點多鐘,西脇決定留下兩個同行的刑警繼續偵查,自己到北島大廈去看一看。北島大廈是一幢新建的樓房,但規模並不大。每層樓有兩大間辦公室。長谷川商社的辦公室設在三樓。
長谷川商社的對面,掛著「大昭物產股份有限公司」的牌子。西脇看到這塊牌子,突然想起王仁銘的夫人真沙子就在這個公司工作。正因為這個原因,使西脇對北島大廈這個名稱感到耳熟。
長谷川商社的辦公室裡,共有十二、三個男女職員。宮原到大阪出差去了,聽說馬上就能回來。
桌上放著晚報。西脇順手翻開一看,松江雄太郎被害事件已經用很醒目的標題登出來了。西脇把報紙拿給社長看,並說:「老實說,我們正在搜集有關被害者松江的情況。你們公司的宮原是被害者的熟人。我是為了向他了解情況來的。」社長剛才看到刑警的名片時,不知發生了什麼事,臉上不禁現出緊張的神色。
聽了西脇說明來意後,才放下心來。他那小小的鼻子上,架著一副搖搖欲墜的寬邊眼鏡,鼻子下邊長著一撮修得很整齊的小鬍子。
「唉,原來是這樣。」社長一開口,只見小鬍子也跟著上下牽動著。他深深地點了點頭。
西脇決定到一樓的咖啡店等著。他要了杯咖啡後,就打電話給調查主任,匯報了以上的經過。主任又交代了西脇幾句,並告訴他被害者在東京讀書的兒子剛剛回到家。
「從被害者兒子的談話中,了解到了一些被害者早期的經歷。戰前,被害者在一位名叫鯉本男爵的大富翁手下幹了很長一段時間,但具體情況他也不了解。如果找到跟鯉本男爵有關係的人,大概就能知道更詳細的情況。另外,為慎重起見,我派山崎去幫助你。哦,你現在在大廈的咖啡店?好,我知道了。」調查在穩步進行著。
大約過了十五分鐘,山崎刑警趕到咖啡店。兩人一起又去了三樓長谷川商社辦公室。
宮原已經從大阪回來了。他顯得很激動,一邊攤開手裡的晚報,一邊很快地說道:「我在回來的電車上看到報紙,不禁大吃一驚,沒想到身體那麼棒的人會被人殺掉。」西脇仔細觀察著對方的表情。正如松江家女傭人說的那樣,他確實給人一種難以摸透的感覺。他胖胖的,年紀可能已過四十五歲,臉色很難看。
「因為你與被害者相識,我想麻煩你到警察局來一趟,我們有話要問你。」西脇說道。
「當然可以。」宮原答道。他眨了眨眼睛,隨後嚥下一口唾沫,只見喉頭上下動了一下。從每一個舉動都看得出他是個謹小慎微的人。單憑他因為借款與被害者發生過口角,還不足以把他作為嫌疑犯逮捕起來。
西脇開車帶著宮原返回縣警察局。西脇的臨時助手山崎刑警,為了進一步掌握情況,暫時留在長谷川商社。
據宮原在調查總部談的情況,知道他很早就與被害者有關係了。宮原在廣島讀完小學後,到橫濱的一家貿易公司作小伙計。昭和十二年(1937年)他在商業學校夜校畢業後,才成為正式職員。後來由於工作關係,他經常到國外出差。
「我所在的橫濱貿易公司的社長與鯉本男爵的關係非常好��鯉本先生是有名的古董收藏家,他通過我們公司,來搞外國的珍貴古董。松江當時正在鯉本男爵家做事,因此,我們也就認識了。」宮原講話時很不鎮靜,確實看得出他心裡忐忑不安。沒等警方開口,他自己就談起了向松江借錢、與他吵架的經過。
「我受到你們的懷疑也是沒有辦法的。在電車上看到晚報時,我就想這下子可糟了。」宮原不時抽搐著面部的肌肉,仍在不停地敘述著。
宮原說他妻子留在老家廣島,打算來年兒子上中學時,一塊把家搬到神戶。他向松江借錢是為了在搬到神戶前蓋好房子。
「松江看在老相識的面上,很痛快地把錢借給了我。我告訴他說,家裡收藏著一個很值錢的唐三彩,我願意拿它做抵押。因為它相當於我借的金額的全部價值。當他來到我家時,我把唐三彩拿出來給他看了。可是他不要。結果,我沒用什麼東西抵押就把錢借來買了塊地。最近,因為期限快到了,我正打算把這塊地處理掉。」唐三彩是唐代的陶製冥器。冥器又稱為明器,不做實際生活用品,而是用作陪葬的。冥器同日本的俑人一樣,最開始是作為殉葬者的替身出現的。除了替身外,還有供死者在另一個天地裡使用的馬、車、駱駝、房子等各種日用器具模型。宮原收藏的唐三彩是一個為保護死者用的避邪「神獸」像。據宮原說,這個「神獸」一副龍顏,頭上長著兩隻漂亮的角,頸上鬃如浮雲,立足利似鷲爪。高度約二十公分,色彩也保持得基本完好。特別是聽說由於在釉彩中用了藍色,所以在唐三彩中也算是珍貴的藝術品了。
如果將它變賣,足以償還松江的借款。
宮原平時把這隻「神獸」鎖在櫃子裡。可是有一天,他從公司下班回家,竟發現櫃子鎖被撬開,裡面的那隻唐三彩的「神獸」不翼而飛,其他東西都原封未動。很明顯,來者的目的是專為偷「神獸」來的。這肯定是明白「神獸」的價值,而且知道它鎖在櫃子裡的人幹的。一定是松江雄太郎!宮原腦子裡立刻閃現出這個人。因為宮原向松江借錢時,特地請他到家裡來,從櫃子裡拿出「神獸」,給他講了半天,目的是想以此作借錢的擔保。「因為沒有別人知道,所以我懷疑是松江偷去的。但是因為我沒抓到證據,所以不能當面指責說是他偷的。沒過多久,我就找到了證據。我偶爾聽到他家附近的人說松江把陶器的碎片丟到垃圾箱裡了。」宮原說著說著,聲音漸漸變得嘶啞起來,而且開始大口大口地喘起粗氣了。
四
「我馬上到松江家的垃圾箱去找,果然不出所料,唐三彩被砸得粉碎。我把碎片撿起來,拿到他家去當面對質。」宮原說到這裡,拿出髒手帕擦掉前額上的汗珠。「他為什麼要把好不容易偷來的貴重東西砸碎呢?」西脇盯著宮原手裡的手帕問道。宮原拿著手帕的手不住地顫抖著。
「他就是那種人。對我來說,他是我們以前經常來往的客戶的管家,所以他總是瞧不起我。現在雖然已經不是那種關係了,可他還想小看我。也許他嫉妒我有那麼珍貴的唐三彩,或者是想到我把唐三彩變賣後還給他錢,他就失去了我會有求於他的優越感,所以才這麼幹的。但到底是因為什麼,我也不大清楚。總之,他是個怪人,而且不是一般的怪,簡直怪得像個瘋子。當然,我是了解他的,他是個……」宮原可能想到沒有人相信這種話,說到這裡,就不再繼續往下說了。他深深地嘆了口氣,然後傷心地低下了頭。看到他這個樣子,西脇鼓勵他說:「這些我都明白。在這個世界上確實什麼人都有。」「不錯!」宮原恢復了平靜,抬起頭說:「這是一種發瘋的舉動,對他來說不是錢的問題,而是他一直想要控制我,叫我聽他的話。」「你去質問松江時,松江是怎麼回答的呢?」「他從頭到尾都裝作不知道的樣子。他說自己什麼也不知道,既沒有偷、也沒有砸過唐三彩。」「你在他家的垃圾箱裡找到了陶器的碎片,這不是一個很有力的證據嗎?」「可是他根本不講道理,瞪著眼睛硬說是別人路過扔的。簡直氣死人。」「這麼說,你們的爭吵還沒得出個結果。那麼,最後怎麼辦了?」「松江說,隨便你怎麼說,反正我沒有偷,也沒有砸壞過。隨你自己去認為這個值一百五十萬日元的唐三彩抵銷了借款好了,可我沒幹這種事,也不認為借款已經抵銷了。但是,我今後決不再催你還錢。就是說,雖然借條還在我手裡,但我不催你還錢,實際上也就等於銷帳了。對松江來說,雖然他嘴硬,死���不承認自己偷了唐三彩,但肯定心裡不舒服,所以就想出了這麼個辦法來解決了事。」「這麼說問題就這樣解決了?」「是的。雖然採取了這個奇怪的方式,但……」「但總是留下了疙瘩,對不對?」宮原被西脇這麼一說,不安地向四周看了看。然後,用手背擦了擦頭上的汗。
「沒有。我後來認真地想了想,覺得不能總是耍小孩子脾氣,眼下得忍耐才行。所以,我就寫了一封信給松江,說過去的事就算了吧。」「你們真的和好了嗎?」「請你相信我。後來我在元町見到他時,他主動跟我握了手。他說他已經看了我的信,那回發生的事就當沒那麼回事算了。打那以後就一點疙瘩都沒有了。」「真的嗎?」「求求你,請你相信我。我怎麼會殺他呢?他一次也沒催我還錢,我有什麼理由要殺他呢?對了,我在那封信上,對到他家吵架的事賠了禮,道了歉。這些都是實話。那封信正好是在十天前寫的。我想信一定還在松江家裡,你只要看看那封信就會明白的。」宮原急了,只見他額頭上,汗水直淌,無論怎麼擦都來不及止住。他說的這些話,與其說是為自己辯解,倒不如說是在訴苦求情。
聽到宮原比較反常的語氣,又看到他這副樣子,西脇對他的懷疑越來越深了。
宮原可能認為與松江吵嘴這件事事關重大,對他不利,便想方設法為自己開脫責任。西脇感到這裡面有文章。
在松江家裡,調查人員沒有找到宮原寫的那封信。當然,這並不等於宮原沒有寫過信。松江雄太郎從來都是看了別人來的信後,統統把它燒掉。女傭人吉川房子也說:「除了股票分紅通知單外,無論是什麼樣的信件,頂多保存兩三天就讓我燒掉。」燒信時,女傭人也不會逐個看寄信人的名字。即使宮原真的來過信,事隔十天也早就化為灰燼了。
調查總部決定先不放宮原回去,留他待一段時間。在這段時間裡,調查總部又收到了不少情報。
根據得到的這些情報,大體上掌握了宮原一郎這個人物的情況。宮原原姓佐藤,戰後,他到廣島一個叫宮原的家裡作養老女婿時改了姓。他在公司裡的工作情況不好也不壞。做事謹小慎微,但一激動起來,臉色頓時變得蒼白。
有兩三件事使調查科的人們特別感興趣。
據宮原本人講,昨天晚上正在聽收音機時,突然停了電,他就稍微睡了一會兒。那時大概是十一點左右。過了差不多一個小時,他醒來,重新點上了燈繼續讀書,直到一點鐘才睡。平時他很能熬夜,十二點鐘是不會上床的。他住的公寓對面有一家麵包廠,每天都做夜班。工廠的幾個工人正好對著公寓一樓的窗戶工作,所以經常可以看到宮原的窗子。他們從窗子裡透出的燈光,知道一樓角落這間房子的主人每天睡得很晚。昨晚十一點多只停了一下電,馬上就恢復了正常。但是宮原的房間有一段時間沒有亮燈,一直到過了十二點後才看見燈光。
五
麵包廠工人所談的情況與宮原的自述是一致的。
有一位住在二樓的公司職員由於工作關係,經常在十二點左右回家。他上樓前,每次都經過宮原房間前面。昨天,他十二點回來,正好也注意到宮原的房間關著燈。
他怎麼會知道屋裡關著燈呢?原來,他看到宮原房門下面的縫隙裡沒有透出燈光,也就是說,燈是熄滅的。然而,房間裡卻傳出很大的收音機聲。
宮原說他正聽收音機時,突然停了電,他沒關上收音機就睡著了。房間裡的電燈是日光燈,一旦停電熄滅後,來電時一定要再按一次電燈開關才會亮,而收音機在來電時會馬上自動響起來。
電燈關著,收音機還在響,這並沒有什麼奇怪的。問題在於停電時間特別短,經調查證明只有五十八秒鐘。
如果停電時間過長,沒等到來電時就睡著了,這倒有可能。可是昨天晚上很快就來電了。況且,昨晚他又沒關掉收音機,應該很快就會知道來電了。可是他卻一口咬定自己睡著了。這種說法顯然很不合乎情理。
根據從公寓附近了解的情況得知,宮原有個女朋友,經常到他房間來。宮原的妻子在廣島,所以這個女人肯定不是他的妻子,無疑是司空見慣的男女情事。
然而,那個看起來與女人無緣的、平時無精打采的宮原居然也搞這種事,不免令人感到有些意外。
那個女人到底是誰呢?從長谷川商社回來的山崎刑警給大家解開了這個謎。「辦公室對面有個大昭物產公司,宮原跟那兒的一個女職員來往很密切。聽說那個女人長得很漂亮,宮原在廣島時就認識了她。宮原到神戶能進這家公司工作,也是由這個女人介紹的。公司裡的人都說,沒想到宮原這個傢伙居然能結識上那麼漂亮的女人。」聽了山崎的報告後,西脇頓時感到有些不妙。
「這個女職員叫什麼名字?」
「叫瀧村真沙子。」山崎刑警看著記錄本回答。
王仁銘的夫人真沙子,在公司裡仍然使用結婚前的瀧村這個姓。公寓裡,有些人晚上回來很晚。或許宮原把主意打在這上面,故意開著燈和收音機,來證明自己不在作案現場,其實這是很笨拙的做法。因為偶爾遇到停電,日光燈熄滅後,即使來電了,也不會自然再亮,而收音機卻響個不停。宮原苦於解釋,只好自圓其說地說在停電時睡著了。
宮原顯然有可疑之處。但既然找不到他在這段時間不在房間的足夠證據,就無法斷定他是兇手。到目前為止,他的男女關係,還不至於扯到案件裡來。只有西脇一個人知道,被視為宮原情婦的真沙子可能與被害者有關。
宮原被准許回家了。
西脇也拖著疲憊不堪的身子回到了家裡。
「你怎麼啦?」妻子看著他的臉色,不禁擔心地問道。
西脇回答說沒什麼。他身為警察,卻沒能把他掌握的可能成為解決案件的關鍵情況���供出來,這使他大傷腦筋。他鑽進被窩裡,翻來覆去怎麼也睡不著。正在這時,他忽然想起了昨晚打麻將時打來的那個電話。真沙子接電話時漫不經心地答道:「停電?這裡可沒停過電。」最後一句話聽起來很隨便。
為了偽裝不在兇案現場的證據而偷偷跑出去的宮原,回來後看到電燈熄滅著,而收音機大開,一定會大驚失色。但他只要稍動腦筋就會明白是因為停電引起的。為了進一步證明在松江被害的這段時間內自己不在兇案現場,就必須弄清楚停電的時間。可是,這件事向誰打聽好呢?如果被人知道自己向人打聽過,就會暴露自己根本不知道停過電。所以一定要向一個絕不會向警察告密的人,而且這個人本身還要與這個案件多少有些瓜葛,又不會暴露真相。
他選擇了真沙子。
但是,真沙子住的北野町沒有停電。雖然都在同一個生田區內,但從北野町到下山手街的公寓還比較遠;需要走三十分鐘。想到這裡,西脇掀開被子,坐了起來,只覺得頭暈沉沉的。好吧,我明天一早就去問真沙子,那天晚上是誰打來的電話。記得真沙子當時曾說能猜到是誰打來的電話。我是一個警官,工作性質決定我不得不犧牲與鄰居的友情。
第二天早上,西脇很早就醒了。他聽見樓上有響動時,立刻走到門外,衝樓上喊道:「王先生在家嗎?」「西脇先生,你喊我有什麼事嗎?」樓上傳來王仁銘帶著好像還沒睡醒的聲音。
「有件事想問問你夫人。」
「屋裡很亂,不過你上來好了。」
西脇上了樓。王仁銘穿著睡衣,靠著窗子正揉著眼睛。柔和的霞光,灑在王仁銘那寬寬的臉龐上。屋裡屋外呈現出一片天下太平的景色。
真沙子已經穿好了外出的衣服。
「西脇先生,你找我有什麼事?」
「王太太,前天晚上打麻將時,不是有人打來過電話嗎?」「是呀,怎麼了?」真沙子有些吃驚地反問道。
「是誰來的電話?因為有件事搞不通,所以才來問你。」「是誰?不過我說了你也不認識。他是我們對面那個公司的宮原先生。我們在廣島時就認識了。那天晚上他問我幾點鐘停的電。我也不知道他為什麼要問這個。」「哦,原來是宮原打來的電話。這傢伙真怪。」王仁銘在旁邊一面笑嘻嘻地說,一面用手拔著鼻毛。西脇細心地觀察了真沙子的表情,但絲毫沒發現與平時有什麼不同。
西脇開始這樣想著:在廣島時,已過中年而又毫無魅力的宮原看到鄰居真沙子是個漂亮的女人,就與她親近起來。真沙子雖然看起來像個孩子,但似乎是一個多情的女人。這種女人大多是輕浮不穩的。真沙子可能去誘惑過宮原。對她來說,偶爾去逗弄一下膽小怕事、給人當養老女婿的男人可能是件很開心的事。總之,兩個人的關係發展到被人議論的程度。
這位與女性無緣的宮原,也立刻被真沙子迷惑住了。據山崎刑警了解到的情況,得知宮原竟是個令人難以相信的感情容易衝動的人。他在一個偶然的機會,知道了真沙子��與別的男人有關係,非常生氣。對他這樣性格的人來說,那個男人如果是老實善良的王仁銘還有情可原,假如是第三個男人那簡直是無法容忍的。
松江雄太郎像一個妖怪,在玩弄著宮原心目中的神聖偶像——真沙子,這使宮原簡直難以忍受。這樣的事情,對心胸狹窄、謹小慎微的人,往往容易使他犯下驚人的罪行。西脇看到真沙子平靜的表情後,他的這番臆想雖然有些動搖,但並沒完全從根底上推翻。
即使宮原為心愛的人下了要把松江殺掉的決心,留下的也只是他一個人的痴情。因為輕佻多情的女人是不會看重他的這份情愛的。
宮原之所以向真沙子詢問停電時間,是因為他把她看成最值得信賴的人,而真沙子卻毫不在乎,被西脇一問,她就毫不顧忌地照實說出了宮原的名字,甚至連電話的內容都說出來了。由此可見,宮原殺死松江的可能性依然存在。
因為提到了宮原的名字,王仁銘開始談起了廣島的事,又說原子彈如何如何可怕。
「當然,死於原子彈之下是夠可怕的。但是,世界上還有比原子彈更可怕的死法,比如我叔叔就是一例。」「哦,你的叔叔……」正在思考的西脇,有點心不在焉地搭訕著。
「我曾經跟你說過,我叔叔被大熊小熊封死在墓穴裡。我聽說叔叔被人灌了安眠藥,否則,他不會眼睜睜地被拋進墓穴,老老實實地等著讓對方用水泥砌上磚,把自己封到裡面。何況,對方只有兩個人。」「嗯,可能是那樣。」「安眠藥吃得不多,結果叔叔在一片漆黑中醒了過來。他真的什麼也看不見,也不知道自己在哪裡,使勁敲牆也沒用。手磨破了,牆上留下了叔叔用頭撞牆的痕跡。
那時,他並不想撞開牆壁,而只想能夠快點死。漸漸地空氣沒有了,當時他肯定是悶得透不過氣來。你看,這不是比原子彈更可怕!」「噢,這真是太可怕了。」西脇這才注意到他的話,深深地點頭表示同意。
「如果讓他吃了安眠藥就死去倒還算慈悲,但這些傢伙偏偏讓叔叔吃了不能馬上就死的藥量,使他過後再醒來。真是慘無人道。」「真是一幫殘忍的傢伙。」西脇也迎合著說了一句,然後站起身來說:「對不起,今天我有急事,就在這附近發生了一起兇殺案,今早我也必須去一下現場。」「哦,聽說那邊有一個叫松江的男人被人殺害了。我在報上已經看到了。以前我在路上曾遇到過他兩三次……這事一出來,又得讓你們不得消停了。我不太認識這個人,前些天郵差錯把他的信送到我們家來了。他的門牌是37號,我這兒是31號,用阿拉伯數字寫是很容易弄錯的。郵差可能沒注意到松江先生的信箱,看到我家信箱就扔到裡面了。啊!對了,那封信……」王仁銘急急忙忙站起來問妻子:「上次那封信還給他了嗎?」「我不知道啊!」「對了,一直放在那兒沒動,將近兩個星期了吧?……這下可是太粗心了。」「什麼樣的信?」西脇問。
「就是普通的信封。因為收信人是松江雄太郎先生,我想寄信人一定寫錯了門牌,上回也有過一次。這次本想馬上送給他,可是叫我給忘了……」王仁銘從衣櫥的抽屜裡拿出一封信。
「請讓我看一下。」
「好吧,本應當把信送給本人,可是收信人已經死了。」西脇接過信,翻過背面一看,寄信人正是宮原一郎。
「那我把這封信拿走了。」西脇興奮地說。
王仁銘把信遞給西脇後,又開始拔起鼻毛來。
六
事件已得到解決,現在只剩下收尾工作了。
西脇去松江家聯繫時,看到大門口的信箱裡塞滿了報紙。房主人已不在人世,而報紙還是照常送來。
西脇一進客廳,看到松江雄太郎的兒子也在那裡。他完全不像他父親,是一個文質彬彬的大學生。他與先到的刑警一起核對著從調查總部送回來的參考物件。
辦完聯繫事項後,西脇坐在沙發上,抱著胳膊沉思著。由於宮原的自供,案子很簡單地結束了。但他總覺得還有些問題想不通。
松江的兒子與其他刑警交談的聲音,不斷地傳到他的耳朵裡。
「我父親是個很能幹的人,還在鯉本男爵家時,也不光是做普通的管家工作。他曾按男爵的吩咐,去過中國大陸,到過南洋,可以說是一個冒險家。」微弱的聲音裡滲透著他對父親的哀悼情意。
「哦,他果然是冒險……」一位刑警無可奈何地回答。
「是啊,因為鯉本先生是個古董和民間藝術品的收藏家,父親為收集這些東西,被派到很多地方。聽說父親在大陸挖過不少古墓。」「古墓」這個詞使西脇為之一震。他把疊在另一隻腿上的腳放下來,問道:「你父親是什麼時候去中國的?」「這個……」松江的兒子想了一會兒,「對了!聽說是我已故的姐姐出生的那一年,昭和十五年。」「昭和十五年?那麼地點呢?」「好像去過很多地方,不過主要是在上海附近。」上海附近是王仁銘的老家。
「也許他就是……」西脇暗自思忖著。
從體格上看,松江雄太郎有可能就是當年的大熊。照片上的大熊,有半個臉都被鬍子遮住,所以幾乎無法辨認長相。
西脇原以為這個案件是否因為牽扯到輕浮多情的真沙子,才使得心胸狹窄的宮原殺死了松江這個情敵。可是,根據宮原的自供,兇殺動機僅僅是因為平常的金錢關係的糾葛。
宮原經過三個階段的動搖,終於供出了犯罪的經過。最初是從被誤送到王仁銘那兒的信打開的缺口。信的內容是宮原向松江道歉,表示自己前幾天的態度無禮。在前些天,審問宮原時,宮原曾說,松江在那時已經讀過那封信,並主動上來握手,��過去的事就算了。所以不存在任何隔閡,兩人心情都很舒暢。
可是,松江不可能看過那封信,因為信根本沒送到他家。很清楚,宮原在供述中說了謊話。當警方把這個事實擺在宮原面前時,他還是極力找出這樣那樣的藉口,百般抵賴。但他的動搖神情,卻已無法掩飾了。
七
其次是弄清了他曾向附近香菸店的姑娘打聽過停電的時間。刑警追問他這個事情時,他卻狡辯說:「這只不過是客套話而已。我們不是經常習慣向別人打聽自己已經知道的事情嗎?」但是,當警方最後亮出宮原打電話問真沙子同一個問題的事實後,他像洩了氣的皮球,聾拉下腦袋說:「松江是我給……」真沙子把此事洩露給警方使他心裡受到了致命的打擊。宮原開始供述了他兇殺的動機。
「因為錢的事,松江責怪我,而且相當刻薄。更可惡的是,他不懷好意地對待我,把我珍藏的唐三彩『神獸』偷去給砸碎了。這不是單純的偷盜。他並沒把它拿去賣錢。
他就是想在精神上折磨我。他太殘忍了。松江雄太郎他……」說到這裡,宮原流出了眼淚。他用手帕擦去眼淚,然後像被什麼吸住了似的,激動地繼續說道:「不能讓這種人活在世上。他不僅對我,對其他人也同樣刻薄殘忍。不知有多少善良人吃盡了他的苦頭。有些人受他的侮辱比我還厲害。難道他不是社會的害蟲嗎?他是個惡魔,他一死,一定會有人很高興。說老實話,我一點都不後悔。」說完,宮原抬起了頭,挺起了胸。
事後,調查主任搖著頭說:
「這傢伙還以為自己是英雄呢。」
除了西脇以外,其他調查人員恐怕也有同感。人們聽到「社會的害蟲」這個獨白,大概都會這麼想。
但是,西脇覺得宮原話中有話,他暗暗地回味著宮原的話。
宮原說有的人受松江的侮辱比他還厲害,指的是誰呢?他沒有說出名字。調查主任等人好像以為這是一種修辭,是用來補充「社會的害蟲」這一概念性名詞的,所以沒有一個人追問指的是誰。誰都不以為這是指特定的人,而是籠統地把它解釋成善良的人們。
只有西脇一個人在思索著。他把「誰」換上了「真沙子」這個名字。
宮原又說,那個傢伙一死,一定會有人很高興的。
西脇相信,宮原是為了真沙子而殺死了松江雄太郎。
他心裡總有些悵悵不樂,這是因為人們忽視了動機的主要部分。而西脇本身卻掌握著能夠弄清這個主要部分的材料。
但是,他不能把這些說出去,因為他不想讓真沙子,特別是她的丈夫王仁銘捲進這個醜惡的案件中。
真是難辦呀!
他躺在沙發上,心裡悶悶不樂。就在這時,他忽然產生了一個疑問,松江會不會就是大熊?如果事實是這樣,這案情就完全不同了。真正懷有殺死大熊即松江雄太郎這種動機的人,不是別人,不就是住在樓上的那位悠閒自得的王仁銘嗎?
八
已經解決的案子又重新在西脇的腦海中分解開來。
王仁銘說過不知道殺死他叔父的兇手的名字。但是大熊和小熊既然挖掘古墓,就一定在當地住過很長時間。村裡人背後叫他們的綽號,但見了面,一定會很尊敬地稱呼對方的大名。王仁銘不可能不知道大熊的真名。
來到日本後,他可以根據這個名字,為叔父找到仇人。而找到仇人後又該怎樣下手呢?到了現代,人們不會把報仇稱頌為忠臣孝子的行為。不管是誰,只要殺了人,都要受到法律的制裁。但這並不意味著沒有安全可行的報仇方法。那就是自己不下手。
他要利用同犯。但如果讓同犯覺察出來是很危險的。同犯一旦被捕,供出自己來,就一切都完了。所以最好找一個連他本人都不知道自己是同犯的人。這種人與其說是同犯,不如說等於一把兇器。
外表看起來很老實的王仁銘,曾一度被人們稱為神童。他肯定也有一副制定嚴密作戰計畫的頭腦。他決定把在廣島認識的宮原一郎訓練成一把兇器。宮原是一個心胸狹窄,感情容易衝動的人,只要需要,他是什麼事都能幹得出來的,可以成為一把理想的兇器。況且,宮原又跟松江認識,這一點王仁銘可能也調查過。因為整整有二十五年時間,他可以一點不必著急,不慌不忙地了解有關松江的一切情況。或許他為了得到宮原這個再好不過的助手,特意搬到廣島去住了一段時間。
為了訓練這把兇器,他必須得到漂亮妻子的配合才行。她首先接近宮原,在她的甜言蜜語中,宮原一定被弄得神魂顛倒。
不久,她會在他的耳邊說道:有一個可惡的男人死纏著我。只要有那個男人在,我就一輩子不得安生……你看,我痛苦得要死。
她不厭其煩地反覆向宮原訴說:只要一想到他,我就討厭死了,只要世界上沒有他。用這些話語,來惹宮原發火。宮原漸漸地得到了暗示,把那個男人視為不共戴天的仇敵,非要置他於死地不可。最後,他果然變成一把兇器了。
這樣的話,唐三彩的「神獸」到底是不是松江偷去的就是一個疑問。宮原說只有松江才知道「神獸」的價值和所放的地方。他當然沒有把真沙子供述出來。其實,真沙子何嘗不知道「神獸」的價值和它所放的地方呢?正如公寓的鄰居們所說,真沙子時常出入宮原的屋子。
甚至宮原向松江借錢,也可能是真沙子鼓動的。她會說:松江雖然很令人討厭,卻有的是錢。你與他過去是老交情,儘管跟他借好了。
她知道宮原曾把「神獸」拿給松江看過,就把它偷出來砸碎,然後扔到松江家的垃圾箱裡,從而使兩個男人的裂痕越來越深。
這麼去猜想難道過分嗎?
宮原曾說他從住在附近的人那裡聽到松江把陶器碎片扔到垃圾箱裡了。當問他從誰那裡聽說時,他回答道:「我也不知道他叫什麼,只是一個很面熟的人。最近沒看見他,大概搬到別處去了。」宮原說的這個人一定是真沙子。宮原千方百計地想把真沙子庇護到底。
宮原真是一把無以倫比的安全兇器。
隨著想像的發展,西脇的心越來越沉悶了,他到松江家去時,看到大門外的信箱裡塞滿了報紙。從外面很輕易就可以把報紙抽走,何況北野町這一帶行人又很少,難以被人發現。
假如王仁銘想幹掉松江,也一定對他的一切情況進行過調查。信件是再好不過的調查材料了。從外面拿走信,看了之後,再封好放回原處,這樣能在相當程度上掌握松江的情況。但是,王仁銘只是沒有把宮原給松江提出和好的信放回原處,因為這樣可以更加促使兩個人的關係惡化。
想到這裡,西脇不禁皺緊眉頭,覺得一陣噁心。這種令人髮指的推理,甚至使他覺得自己很惡劣。
西脇試想著人被悶在墓室裡的情景。
墓室裡充滿了發霉的難聞氣味。一個人醒過來睜開眼睛時,已是空氣稀薄,悶得他透不過氣來。他什麼也看不見,不知道這是什麼地方。他也許以為自己在地獄裡。他拚命地揉著眼睛,但眼前仍是一片漆黑。他以為自己突然變成了瞎子。聞著這氣味,一種職業上特有的嗅覺使他敏感地察覺到自己正置身於令人毛骨悚然的墓穴裡。
他發瘋似地敲打著牆壁。手上已是皮開肉綻。他想死,不,或許他認為自己已經死了。他用頭去撞牆,撞得鮮血直流,腦袋發疼。他這才發現自己還沒有死。這真是一個活地獄。
這簡直是慘無人道的兇殺方式。無論是誰,都應該為此而復仇。
西脇內心裡不知不覺地寬恕起王仁銘來。他站起身,在地毯上來回踱著步。刑警們把警察拿去保管的東西送還給了松江家。其中有一件東西送錯了地方。就是那個唐三彩的「神獸」。這件古董雖然被摔壞了,但並沒有被摔得粉碎。因為摔得塊兒大,由陶器的行家又把它粘了起來。粘合復原的「神獸」本是宮原的東西,刑警們卻把它送到了松江家來了。
「這送錯了。」一個刑警撓撓頭說。
「宮原的夫人從廣島趕來了,這個要還給她。」「真是太粗心大意了。」西脇聽到刑警的話,不由得停住腳步。
對古董比較內行的西脇看得出,這件「神獸即使在唐三彩中也算得出類拔萃的。龍頭上的角,栩栩如生,只是可惜缺了一塊。西脇暗想:太可惜了。
龍頭張著血紅的大嘴,頷下端就是鷲爪。鷲爪蒼勁有力,緊緊地摳住岩石。這只「神獸」在造型上特別著重刻畫了強有力的角和爪,使之上下相互對襯。
因為角上缺了一塊,使人感到這個「神獸」是靠緊緊摳住岩石的利爪來支撐全身。這些淋漓盡致地表現出利爪一旦抓住岩石,至死也不會鬆開的一種強烈形象,就像復仇者咬牙切齒準備復仇似的,異常兇���。西脇目光避開那「神獸」,不忍再看。
西脇暗想:簡直太過分了。或許松江雄太郎是應該得到報復的人。但是把宮原這個無辜的人當作兇器是不能原諒的。而且王仁銘夫婦絲毫沒有想救出宮原的意思。
宮原給松江寫了要求和好的信,可能是因為他與松江吵嘴時被女傭人聽到的緣故。宮原擔心殺害松江後,自己會受到懷疑,所以在行動前想用信來證明兩人早已和好。這個方法雖然很幼稚,但對宮原來說卻是煞費苦心。王仁銘夫婦扣下這封信的用意很明顯,他們必須阻止這兩人和好。
九
但在事後把這封信給警察看,警察自然要懷疑這兩人根本沒好過。王仁銘夫婦的這種行為可以說是見死不救,落井下石。事實上,宮原由於自己講得太多,已使自己處於極端不利的地位。宮原在電話中問停電時,恐怕在電話裡就告訴真沙子要保密。可是真沙子卻一點也不想替他保密。
當宮原知道真沙子說出了電話的事後,才下了決心坦白交代。
如果只是復仇倒有情可原。但是為了復仇,對當作兇器使喚的人見死不救,就未免太不近人情了。「西脇兄,勞駕,請把這個放在上面。」站在壁爐台前的西脇,聽到刑警招呼自己的聲音才如醉方醒。那個刑警雙手從桌子上拿起「神獸」遞給他。
「放在這上面,對吧?」
西脇接過神獸像,把它放在壁爐台上。壁爐台旁放著一本舊相冊。西脇漫不經心地打開翻看著。這好像是松江在鯉本男爵家裡當管家時拍的照片,背景大部分都是豪華的建築和庭院。忽然,他不覺屏住呼吸,目光停落在一張照片上。
這好像在哪裡看過的照片。噢!是與王仁銘曾給他看的那盪照片一模一樣,只不過這張照片上沒有「○」和「X」的標記。
西脇輕輕地吁了一口氣。
毫無疑問,松江雄太郎就是大熊。由此,西脇那個令人髮指的推理竟成了事實。
照片的左下角寫著字,因年久變色,鋼筆字跡很難辨認,看了半天才認出下面那行字:昭和十五年(1940年)秋,於江蘇省C縣,與佐藤一郎君挖掘古墓留念。
剎那間,西脇覺得心裡涼了半截。
宮原一郎是在戰後當養老女婿後才改用了宮原的姓,他原來姓佐藤。
西脇注視著照片上坐在中間的兩個人的面孔。一臉絡腮鬍子的大熊,就是松江雄太郎,年輕瘦弱的小熊,卻是宮原一郎。從二十五年前的照片上看,兩個人臉盤很小,一個留著鬍子,一個很瘦弱。但有人清楚地告訴西脇,這兩個人正是現在的這兩個人。
「宮原原來不是單純的兇器……」
此時,西脇腦海裡浮現出在朝霞的照射下,一個男人悠閒自得地拔著鼻毛的情景。想到這副面孔,倒使他覺得毛骨悚然,不寒而慄。
他合上相冊,一抬眼,看到了那副神獸的利爪。
光彩奪目的黃色利爪死死地扣住岩石,恐怕誰也難以將它掰開。
原載於《小説現代》
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原載於《小説現代》,1966。
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マジカルラブ - 黒沢心の声だだ漏れVer. (magical love - kurosawa's overflowing thoughts ver.) — full version
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(lyrics & unofficial translation below, kurosawa's thoughts in pink)
magical love be with you
すげー可愛い ��げー好き
suge kawaii suge suki
you're so cute, i like you so much
やばい めっちゃドキドキする
yabai meccha dokidokisuru
crap, my heart is beating so fast
指の隙間でチラ見 (最初はただ)
yubi no sukima de chira mi (saisho wa tada)
glancing through the cracks of my fingers (at first...)
僕にはもったいないって? (そばにいられたらって)
boku ni wa mottainai tte (soba ni iraretara tte)
aren't you wasting it on me? (being by your side...)
今までだったらそれで終わり (思ってただけなのに)
ima made dattara sore de owari (omotteta dake na noni)
if it had been before, this would've been the end (was enough for me)
一味違うthis love wow
hitoaji chigau this love wow
this love is different, wow
まさかこの年になってこんな
masaka kono toshi ni natte konna
i never thought i'd experience it at my age
初恋みたいな気持ちになるなんて
hatsukoi mitaina kimochi ni naru nante
this feeling that feels like a first love
ああ もうずるい
aa mou zurui
ah, it's just not fair
これ以上どうしろっていうんだよ
kore ijou dou shirotteiun da yo
if this keeps up, what am i supposed to do?
瞬間 近づく鼓動
shunkan chikazuku kodou
the moment i got near your heartbeat
聴こえた マジかよ マジカル!?
kikoeta maji ka yo majikaru
i heard them, it's for real, it's magical?!
ヤバイ 近いっ 可愛いーっ!
yabai chikai kawaii
crap, you're so close, you're so cute!
もう ムリ無理 見て見ぬフリ
mou muri muri mite minu furi
i can't keep pretending i don't see it
夢でも 胸高鳴り
yume demo munadaka nari
even in my dreams, it makes my heart race
運命変えちゃう love
unmei kaechau love
a love that changes destiny
君と 僕が? あわわっ
kimi to boku ga awawa
between you and me? i can't deal!
ハッピーエンドの途中
happi endo no tochu
on the way to our happy ending
焦る i want you (yeah)
aseru i want you (yeah)
i want you right now (yeah)
一緒なら越えてゆける
issho nara koete yukeru
as long as we're together, we can overcome it all
明日は七色 君と甘色 wow yes
asu wa nanairo kimi to amairo wow yes
tomorrow will have a rainbow, with you and the sweet colors, wow, yes
安達...
adachi...
四六時中 夢心地 (こんなに可愛くて)
shirokujichu yumegokochi (konnani kawaikute)
day and night, i keep dreaming (is your being this cute...)
そんなの聞いてないって (大丈夫なのか!?)
sonna no kiitenai tte (daijoubuna no ka)
saying things i've never heard you say (really okay?!)
想定外 好きが渋滞 chu (俺だけのものにしたい)
souteigai suki ga jutai chu (ore dake no mono ni shitai)
unexpected feelings stuck in a traffic jam (i want you to be only mine)
大胆不敵 this love wow
daitan futeki this love wow
this love is fearless, wow
これ以上好きにさせて
kore ijou suki ni sasete
why do you have to...
どうしようっていうんだよ
dou shiyoutteiun da yo
make me fall for you even more?
ああ このまま時が止まれば良いのに
aa kono mama toki ga tomareba ii noni
ah, i wish time would just stop right here
敏感 本音と嘘
binkan honne to uso
my sensitive true feelings and my lies
気づいた マジかよ マジカル!?
kizuita maji ka yo majikaru
you noticed them, it's for real, it's magical?!
ヤバイ 近いっ 可愛いーっ!
yabai chikai kawaii
crap, you're so close, you're so cute!
もう ムリ無理 見て見ぬフリ
mou muri muri mite minu furi
i can't keep pretending i don't see it
夢でも 胸高鳴り
yume demo munadaka nari
even in my dreams, it makes my heart race
運命変えちゃう love
unmei kaechau love
a love that changes destiny
君と 僕が? あわわっ
kimi to boku ga awawa
between you and me? i can't deal!
ハッピーエンドの途中
happi endo no tochu
on the way to our happy ending
焦る i want you (yeah)
aseru i want you (yeah)
i want you right now (yeah)
一緒なら越えてゆける
issho nara koete yukeru
as long as we're together, we can overcome it all
明日は七色 君と甘色 wow yes
asu wa nanairo kimi to amairo wow yes
tomorrow will have a rainbow, with you and the sweet colors, wow, yes
隣にキミの笑顔 (love is the magic)
tonari ni kimi no egao (love is the magic)
with your smile next to me (love is the magic)
yeah (love is the magic) oh
魔法が解けたって 大丈夫さ ふたりなら
mahou ga toketa tte daijoubusa futari nara
even if the magic is undone, we'll be okay as long as we're together
安達!
adachi!
幸せすぎてもムリ
shiawasesugite mo muri
i'm too happy, i can't handle it
未体験の胸騒ぎ
mi taiken no munasawagi
the apprehension of something unfamiliar
世界の数だけ love (あーっ) love (まって) love (もうっ) wow
sekai no kazu dake love (aa) love (matte) love (mou) wow
for every world out there, there's just as much of our love (ah...) love (wait...) love (jeez...) wow
大好きだ!
daisuki da
i love you!
初めてだらけのストーリー
hajimetedarake no sutori
in this story filled with our firsts
誰にも邪魔させない
dare ni mo jamasasenai
we won't let anyone interfere
特別以上の love
tokubetsu ijou no love
a love that's beyond special
愛しい 嬉しい 気持ち
itoshii ureshii kimochi
and the precious, happy feelings
ハッピーエンドの途中
happi endo no tochu
on the way to our happy ending
もう全部 i want you
mou zenbu i want you
i want you, all of you
一緒なら越えてゆける
issho nara koete yukeru
as long as we're together, we can overcome it all
明日は七色 君と甘色 wow yes
asu wa nanairo kimi to amairo wow yes
tomorrow will have a rainbow, with you and the sweet colors, wow, yes
magical love be with you
もう 幸せすぎる
mou shiawase sugiru
jeez, i'm too happy...
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250331
朝、目覚まし時計が鳴るよりも早く目覚める。 日が昇っていて、部屋があかるい。カーテンが遮光ではないせいで、そのあかるさで目覚める。 今はいいけれど、夏になればぐっすりねむれない、と感じるかもしれない。
仕事をして、帰ってきて、なんだか今日は疲れたな、と思う。 中国からの留学生にお茶をもらった。 オレンジティーみたいな。お湯を入れて飲む、と言っていた。 すっきりと、とてもよい香りがした。嬉しく思って大事にとってある。
夜、詩になりそうな言葉をつらつらと、iPhoneに打ち込んで、ねた。
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250401
朝、怖い夢をみていた。 逃げていた。ポテトチップスの袋を持って走っていた。 彼とマンションの内覧にいっていたはずなのに。
仕事。 「実験するの、すきなんです」というと、「そうですよね、テキパキ実験しているな、と思っていました」と言ってもらって嬉しい。 そう、実験するのがすき。 だけど、テキパキというよりバタバタと実験をして、アルバイト。 馬がくる。 馬車をひいてくれる馬。 今日のお客さまは小さな女の子たち。ドレスを着てやってきた。プリンセスになって馬車に乗るの、とのこと。可愛かった。
晩ごはんは冷凍庫にあったいつかのカレーとおいしい食パンの耳部分にチーズをかけてトーストしたもの。さくさくのパン耳はあまみがあって、カレーと相性抜群だった。とてもおいしかった。 さっとおいしいものが作れると嬉しい。幸せ。
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250402
朝、今日も部屋があかるくなって、目が覚める。 布団にいるまま漫画を読む。 リーフレタスをちぎって、トーストを焼いて、ミニトマトと生ハムを添える。 食べられるうちは大丈夫、と教えてくれるお皿に盛る。 これでいつでも思い出せる。なんて心強い言葉なのだろう。
夜、急にすべてが虚しくなる。 何にもならないのに、どうして生きているのだろう。 キャンドルに火を灯す。 木の芯が埋められたキャンドルはパチパチと音がする。
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250403
朝、カレンダーが3月のままであることに気がついて、4月にする。 仕事。 助教さんと一緒に研究室内の片づけをする。 エッペンチューブを入れる箱、試験管立て、たくさん、たくさん。 2010年と書かれたものもあり、歴史を感じる。 このころ、わたしたち、中学生とか高校生とかですね。 助教さんは1歳下だった。 大学で研究を続けていたら、助教の年齢なのか、と思った。
晩ごはんは鶏もも肉の照り焼きにした。 ふっくらと、おいしくできた。 自分で作ったものがおいしいこと、嬉しかった。
夜、小説を少し読んで、ねた。
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2ndアルバム『新しいCD』2025年7月30日発売!

メガネブラザース New Album『新しいCD』
▼2025年7月30日(水) ・SHIJIMI RECORDS Web Shop CD販売 (メンバーサイン入りCD ※数量限定) ・各種音楽配信サイト ・ライブ会場 CD販売
▼2025年8月27日(水) ・全国のCDショップにて発売 (※特典ステッカー付/一部店舗)
[収録内容] 1. 酒の効能 2. 新しいメガネ 3. ほくろ 4. しゃれこうべ 5. 通りを行く (Album Version) 6. 借りてきた靴 7. 手袋 8.いまさら言えない
一風変わった歌詞が本格サウンドにハマる、日本語ルーツミュージックバンド「メガネブラザース」が5年ぶりに放つニューアルバム。親しみやすくて、ちょっと変。懐かしさと違和感が交差するサウンドが脳をくすぐる、ルーツミュージックの新たな地平を切り拓く。交わりそうで交わらないふたりのギターボーカル「高木大丈夫」「さとうひろゆき」。その相反する世界観を絶妙にまとめ上げるベーシスト「遠藤定」と人気ドラマー「伊吹文裕」。そんな“今のメガネブラザース”の最新形が詰まった、New Album『新しいCD』。 配信で話題となった「通りをゆく」「借りてきた靴」に、新曲6曲を加えた全8曲を収録。
メガネブラザース:高木大丈夫(Vo,Gt)、さとうひろゆき(Vo,Gt)、遠藤定(Bs)、伊吹文裕(Dr)
【ライブ情報】 メガネブラザース “New Album” Release TOUR 2025 8/1(金) 静岡県 浜松エスケリータ68 8/3(日) 広島県 広島LIVE Café Jive 8/4(月) 大阪府 梅田ムジカジャポニカ 8/5(火) 愛知県 名古屋K.Dハポン~空き地~ 10/10(金) 神奈川県 元住吉POWERS2 10/13(月・祝) 北海道 帯広studio REST 10/14(火) 北海道 札幌Live&Bar After Dark ツアー詳細はこちら
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サイゼリヤのプロシュート(生ハム)はめちゃくちゃレベルが高い。ちゃんと食べて比較すれば、あのプロシュートは下手なところで買うよりもはるかにうまいことに気がつきます。 生ハムはそもそも空気に触れると酸化が始まってしまい、風味がどんどん落ちていきます。だからイタリアンレストランのなかには、生ハムの原木から都度スライスしたものを出しているところもあります。 注文が入ってからスライスしている店は信頼できます。プロシュートは切りたてが最高にうまいからです。 その点に注目すると、確かにサイゼリヤは切り立てではない。ですが酸化しないように、切ったものをすぐに真空パックしてお店に配送するという方法をとっています。 原木からその都度切っていくという方法は、ファミレスにとってコストが高すぎる。アルバイトに任せられる領域ではないからです。しかし、真空パックから盛り付けるだけなら簡単にできます。 あれだけうまいプロシュートをあの価格で出すための流通網を築き上げたのは、すごいと言わざるを得ません。サイゼリヤのティラミスとプロシュートに関しては、「これは本場じゃないね」などと言っている連中の味覚は信用しなくて大丈夫です。
リュウジが「イタリアンチェーン店」を馬鹿にする人に苦言 「本場じゃないなどと言っている連中の味覚は信用しなくて大丈夫です」(AERA DIGITAL) - Yahoo!ニュース
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井戸の底
運命が決まっているならばそれが知りたかった。
双子の姉との思い出は沢山ある。闇の司祭の一族として生まれた私と姉は、毎日両親に鞭で叩かれながら魔導書を読���、血を捧げるために身体中を切り刻まれながら魔術を覚えて、身体中痛くて夢の中でも泣いていた日々が、私の子供時代だ。そんな中で唯一の楽しみは、夜眠る前に、使用人から借りた絵本を両親に見つからないようにこっそり姉と二人で読むことだった。いつかこんな世界を見るまで二人で頑張ろうと励まし合っていた。
私と姉が10歳になる日、運命を分ける決闘が行われた。姉は決意を固めた目をしていた。私は姉の目が怖かったし、私たちが殺し合うのをけしかける大人も怖かったし、手に握らされた小さなナイフも怖かった。なす術はない、と思ったが、姉は私にとどめを刺さなかった。 姉が勝利を確信し、私に無防備な背中を見せたとき、最後の力を振り絞ってそこにナイフを突き立てれば私が勝者になれると分かっていた。だが、それでも、私はできなかった。姉は私を殺したいと思ったのなら、それを受け入れるのが私にできるたったひとつの愛だと思い込んでいた。
敗北した私はまだ命があったものの、もはや供物にすらならないほど衰弱していた。死んだ獣を処分するのと同じ麻袋に放り込まれると、生まれ育った寺院から、すぐそばの森の中、はるか昔に住民が去った廃村に残された古井戸に投げ捨てられた。私を捨てるように命じられたものが、穴を掘るのを面倒くさがったのかもしれない。そこまでしなくてもその辺に投げ捨ててしまえば狼たちの餌食となりもっと手間はなかっただろうと思う。だが、井戸の底には濁ってはいるが水が残されており、その水辺には植物が生え、虫たちの棲家となり、他の野生の生き物には襲われない安全な場所であった。私の運命が始まる瞬間だった。
井戸の底からは青い空や月や星が見えた。寺院にいた頃は外の景色を見ることも許されなかった私にとって、それだけで自由を感じた。身体は弱っていたが、もう手が痛くなるまで魔導書を書き写す必要もないし、腕や手首を切り裂きながら魔術の練習もしなくていいし、勝手に居眠りしても棍棒で尻を打たれないで済むんだ。絵本は読めなくなったが、まだ頭の中には残っていたから好きなだけ一人で読める。
苦難の日々から解放され、やるべきことがないので小さな世界をぐるりと眺める。そこかしこに小さな芋虫や蛆虫がおり、羽虫は水や草木を吸いながらぶんぶんと飛び回る。私はこのまま一生ここから出られないかもしれないが、こんな小さな芋虫たちはやがて宙を舞いこの井戸の外に出て、私が見たことのない花や、聞いたことのない獣の声を聞くのだろう。井戸に生えている草や苔を食べたが、食あたりを起こして小さな井戸の中で自らの吐瀉物と排泄物に塗れた。そこでさえ、新しい虫たちが沢山湧いてきた。
僅かに湧く地下水を舐めて生きていたが、とうとう虫を口にした。蟻、蝗、蟋蟀、蝶、蝿、蛾、蜈蚣。なんでも口にしたが、成虫は食べるところが少ない。芋虫のほうが栄養がある。 井戸の中で日のよく当たる場所で、芋虫の好む草花を育てた。井戸の壁の隙間まで活用して、水が乾いたら手で掬って水を与えた。芋虫たちはよく育った。
やがて虫の声が理解できるようになった。虫たちの世界も、あまり人間と大差がないことがわかった。もっと大きくなりたい、強くなりたいと望み、よそから来た虫に住処を追われ、病が流行り一夜にして一族が滅び、大きい虫だけが得をして、小さい虫はただ虐げられて搾取されている。 意外だったのは、芋虫を食べる私を虫たちは大して敵対的に思っていなかったことだ。彼らは己が大自然の流れの一部であることを知っている。芋虫は食べられるために生まれ、そのうち運がいいものが、より芋虫を増やすために次の世代を残す。私のような大きな生き物の糧になることは、彼らにとってなんら脅威では無く、雷のように破壊と創造による営みの一環であり、新しい命の一部になると考えていた。
ある日、虫たちは私に申し出た。 「大きなものよ、小さき我らをお救いください」 まるで神か王にでも祈るように、小さな蝿は手を擦りあわせた。 「東より毒蛾の軍勢が迫りつつあります。彼らは我らの生きる糧である草木を枯らし、先住虫たちを毒で殺し、住処を汚染します。彼らを退けるための知恵をお貸しください」 こんなところまで人間と同じなのか。寺院で教えられた東方の破壊と殺戮の黄の魔術師たちのことを思い浮かべた。
毒をもって毒を制す。毒蛾たちに対抗するためこちらも毒草や毒茸を用いて彼らを制することを提案した。蟷螂が材料を刈り取り、蟻はそれを固めて丸薬にし、蝶がその毒薬を毒蛾の巣に撒き散らした。生まれたての幼虫たちが卵から孵ると、貪食な彼らは何も知らずその毒薬を食べて死んでいった。 最初は幼虫を減らしても成虫たちが無限に卵を産みつけ鼬ごっこだったが、やがて成虫の寿命が尽きて死んでゆくと、効果が現れ始めた。毒薬も作り続けるうちに効果を高めるように調合を変えていった。
作戦がうまく進行すると、虫たちは私を持て囃した。 「我らの王、古井戸の神よ、我らをお救いくださったあなたの願いをどうかおっしゃってください」 私はこの古井戸から出たいと言った。すると、虫たちは協力して近くの木から丈夫な蔦を引き出し、井戸の中へ垂らした。 萎えた手足は蔦を登る力が失われていた。登っては滑り落ち、また登った。虫たちは私を活気つけるため、その身を捧げて私の脱出の手助けをした。
ついに井戸の底から這い出た。あれから何年経ったのかわからない。久しぶりに地面から立ち上がると、昔と異なる視界が広がる。自分がいつの間にか背が伸びていたことに初めて気がついた。
井戸の底にいた時は、早くここから出たいと願っていたが、井戸から出て本当の自由を得たとしたら、自分が何をしたいかもう一度問いただした。だが、答えはいつも同じ。 「もう一度学びたい」 誰にも強制されず、自らの意思で世界のあらゆることについて全て知りたいと思った。木々の向こうにあの忌々しい寺院が見える。近寄れば、昔と相変わらず僧侶たちが庭を掃除し、互いに議論し、何かを隠し持って扉と扉の間を忙しなく行き来している。彼らも虫となんら変わりない。あの古井戸の底のように、小さな環境を支えるための摂理に従っているだけだ。ちっぽけな虫を焼き殺して何になる?復讐を与える代わりに一冊の本を拝借した。
私は生まれた時の名を捨てて「エンキ」と名乗った。森を出て彷徨った後、小さなオールマー教会に拾われ、日々の奉仕活動を手伝い、説教や懺悔の手伝いをした。私の半生を語ると神父はいたく感動したようで、古い写本や古代史に関する研究書を見せてくれた。この頃から私に作家の才能が芽生えたのかもしれない。細部は誤魔化し、哀れみを誘うようにいくぶんか脚色された「エンキ」は、私であって私ではなかった。
オールマーは全てを象徴する。かの神がこの世のあらゆる形あるもの、形のない概念、呪文から何から作り出したとされている。だが、オールマーは結局人間が認知できるものだけの存在だ。オールマーにいくら人間が誰も知らないものを作り出すことを願っても、目の前にそれを現すことはできない。オールマーは全てを知るが、オールマーから何かを授けることはなく、願う人間の欲するもの、すなわち知るものしかオールマーに願うことができない。 知らないことを知るには神に祈っているだけでは解決できない。 新たな知識を求めて東へ西へ、あらゆる教団、神殿、集落へと向かった。その場その場で「エンキ」の過去は都合よく作りなおされている。 グロゴロス、シルヴィアン、そして小さな集落でのみひっそりと信仰される深淵の神。相反する知識を得るために自分の固定観念を破壊し、異なる教義を融合した。だが世界の真理はどこまでも深い光の届かない場所にある。
古今東西あらゆる知識が最も集積されているのはロンデン王立図書館より他はない。旅の中で得た知識を論文として発表し、アカデミアで何度か講義をしたことで業績を認められ、王立図書館への入館も許可された。王立アカデミアの学徒以外にここに入館を許可されたのは初めてらしいが、そんなことは大して重要ではない。暗闇の中、血を浴びることもなく、暗黒に包まれ来た道すらわからなくなる危険も犯さずに入れる場所で得られる知識がはたして私の欲するものたるかを吟味せねばならなかった。
嫌な予想は当たっていた。ある程度の好奇心は満たされたが、それだけだった。私の目指すべき場所はここではなかった。 司書の一人が私に言った。 「この書架に足りない知識があるならば、あなたがそれを埋められるでしょう」 彼は私の知る闇の魔術や神々の秘術にいたく関心を抱いている。それはこの図書館では彼に限った話ではない。 「館長は、あなたの知識により、この図書館がより満たされることを期待している。その優れた頭脳で世界の闇を照らし、オールマーの光で以て多くの学者たちにも目に見える形にすることが、あなたの使命だ」 暗黒の時代に生まれ、闇を制したいと思うのは自然な話かもしれないからが、闇に光を照らすことはできない。闇は闇のままでなくては存在できない。
王立図書館からロンデンの下宿先への帰り道、本を読みながら歩いていると、突然声をかけられた。 「おお、アレス……夢かと思ったわ。生きていたのね」 はるか昔に捨て去った名前を呼ばれた。顔を挙げると、見覚えのある司祭服に身を包んだ女性がいた。 「ローズ……」 双子の姉ローズがそこにいた。 私が王立図書館に出入りしていることは知らず、"エンキ"が"私"のことだとは全く気付いていなかったそうだ。彼女は今、寺院の用事で偶然ロンデンに滞在中だと聞いた。 「アレス、あなたを殺そうとした私のことを恨んでいるでしょう」 「そんなことは一度もない。心配していた」 「そう………」 麝香の薫りが漂い、顔は黒いヴェールに包んでいる。白い肌をまるで陶器のように厚く塗り固められて、幼き姉の面影は奥底に隠されている。彼女は妊娠しており、大きく突き出したお腹をさする。 「私は……あなたをずっと恨んでいた!」 そう叫ぶと突如彼女の両手が私の首にかかる。 「どうしてあの時殺してくれなかった!」 彼女の手に力が込められる。首が折れるかと思うほど強く締め上げられ、思わず跪いてしまう。抵抗しようとするが、目が霞み、首にかけられた手を引き離すことはできず、そのまま意識を失う。
意識を失った後、身体を揺り動かされて目を覚ました。見ると、買い物中だった従者が倒れた私を見つけたようで、心配そうに声をかけた。姉を探すために辺りを見回すと、少し離れたところで彼女は修道士たちに取り押さえられていた。 「奥様、お身体に障りますので帰りましょう」 穏やかな口調で宥めているが、両手を後ろで縛り上げ、頭には麻袋をかけ、まるで罪人のように連れ去られた。袋の中で彼女は口汚く私を罵り続けていた。
とある司祭の一人が私に教えた。 「アンカリアン家は数百年続く名のある闇の司祭の一族だ。彼らは長子だけが両親の力を全て引き継ぎ、それより後の子は力を持たない出来損ないしか生まれないと信じている。彼女はその幸運な"第一子"として生まれた正式な後継者だったが、政略結婚した闇の司祭との間の初めての子を死産してしまったそうだ。第一子を死なせた彼女は立場を失い、以降は魔術の触媒か生贄のために使う赤子を産み続ける哀れな家畜となってしまった。可哀想に、誰の子だか分からない赤子を、もしかすると人間かどうかさえ怪しいものを産み続ける」 哀れな姉の運命を聞き胸が痛んだが、そこに私が直接引き起こしたものはなく、私のせいで姉が不幸になったとは思わなかった。ただ、昔のような美しさが失われ、狂気に呑まれ、悲しみを覆い隠す白粉さえひび割れ、壊れた人形のようになってしまったことを寂しく思う。
世界を覆う闇は深まる一方だ。フェローシップが灯した希望はとうに消え果てた。どこかに攻め入れば特需と略奪により一時的に潤うが、戦争で手足や体の一部を失った帰還兵に居場所はなく、スラム街は広がり、人が人の形を忘れた景色ばかりが広がる。きっとどこかに、彼らの失った手足を全て持つ王国百足騎士がいるのだろう。
表の顔は大図書館の司書「エンキ」、裏の顔は闇の司祭「エンキ」として、あらゆる神の知識を解き明かす。が、世界を覆すほどの偉大な知識を得るには至らなかった。先人の知識を集積しただけでは到達できない。もはや、神にならねば私は私の限界を越えられない。 未知の世界、黄金に彩られた神���国にまつわる伝説は、伝聞録という形式で残されている。あるいは他人の書物を参考に創作ないし意図的な誤植をされている。本当の在処を判らないように、巧妙に、複雑な文脈で隠している。だが、あの地には本当の図書館がある。真の啓蒙者のみが辿り着けると言われた神の図書館が……
街の広場に聳え立つオールマー像の周辺で、落ち窪んで何処を見てるのかわからない浮浪者や、干からびた赤子を抱えた未亡人たちが物乞いをしている。 近頃は黒死病による死者も増えており、司祭と墓守は繁盛している。街の外れでは黒死病の死人が出た家の家具を燃やしている。
生まれつき身体が丈夫でないため街を離れるべきだが、どこへ逃げようと黒い魔物は決して獲物を逃さない。同じことを考えて郊外へと移動した貴族たちが病も一緒にくまなく運んだせいで、黒く染まった死骸が国中を埋め尽くす。薬草で咳を止め、熱を下げているが、世話係の従者は症状が重くなり故郷へ帰った。夜な夜な現実と見分けのつかない悪夢に魘される。部屋の片隅で蠢く虫たちが、小さな悪魔が私の体に入っていると囁いた。それは街中を駆け巡るものと同じもので、霧の中を自由に渡り、生きとし生けるものを皆殺しにする、どんな虫よりもずっと小さな悪魔だと…… いよいよ死んでしまう。何も成し遂げられないまま、こんなくだらない疫病のために私の運命は終わってしまうのか。そんなことは耐えらない。
司祭たちを呼び寄せ、オールマー像を取り囲む浮浪者たちを追い払うように言いつけ、かの像の前で黒ミサを執り行うことを言い渡した。オールマー像に私の四肢に杭を打ち、司祭たちは香炉を振りながらオールマーへの祈りを捧げる。 オールマーよ、私を天も見えないほど深い井戸の底から救いたまえ。
光り輝く女神が現れた。 「恐怖と飢餓の地下牢に、最も神に近い男がいる。預言に現れし救世主が」 預言?一体何の話をしている。今は私に神の力が必要なんだ。 「選ばれし男は神の国へと到達しようとしており、その扉に手をかけている」 貴様は何者だ。 「ここに神はいない。神のいる場所でその身を捧げなければ意味がない」 何と言うことだ! 腹が立って磔から降りた。神は私を迎えることはなかったが、私より先に昇天を迎えるものがいるなんて考えたくもなかった。
歴史から葬り去られた忌まわしい歴史を持つ地下牢。神のお告げも当てにならない。調子のいい時だけ預言だの救世主だの囃し立てられ、いざ用が済んだら世界から抹消されてしまう。森の奥から絶えず恐ろしい断末魔が聞こえる。黒死病の悪魔すらこの恐怖の牢獄には近寄らないようで、道すがらあの黒い死体を見かけなかった。その代わりに真っ白に変わり果てた亡骸がそこかしこに落ちていた。
闇の司祭たちにとって、ここは聖地ならぬ穢地として、あらゆる儀式が行われてきたことで悪名高い。覇権争いに敗北した哀れな一族や、魔女や悪魔憑き、異教徒たちの血で染め上げられた。牢獄の入口にたつ生白く全身が異常に発達した看守たちたちを避けつつ、地下牢を目指す。ここは死霊鬼が異常に多い。呪われた地で死んだ魂は、蜘蛛の巣に引っかかった蝶のように、容易に天へ昇ることも地獄に逃れることも許さない。死体と魂がそれぞれ過密状態になっているせいで、空いてる死体に入り込んでしまっているのだろうか。 闇と空腹と怪物だらけの空間で、徐々に私の正気も失われてきた。犬の目は四つに見えるし猫がブーツを履いて二本足で立っているように見えた。実際に目の前にあるものなのか、何かが見せる幻覚なのかさっぱり分からない。道なき道を辿ると坑道に入る。 近くに人の気配がした。 「おや、珍しい客人だ」 壊れた線路のそばで道端で呑気にお茶をしている人間が見えた。これも幻覚だろうか? 「私はノスラムス。ここに住む錬金術師だ。君は?」 「……私はエンキ。闇の司祭。この闇の奥にある真実を探りにきた」 「エンキ、お会いできて光栄だ」 「私も、人と会えて嬉しい」 「………」 闇の司祭がいれば、地下に潜む錬金術師もいる。ここはロンデンよりも面白い場所かもしれない。
探索中、古びた甲冑の騎士を倒すと、奥に先ほど出会った錬金術師の研究室があった。 「君、来てくれたのだね。まさな古騎士を壊してしまうとは……彼がいないとここでの研究活動は難しい」 「研究の邪魔をするつもりは無かった。私も知らない坑道を探索していて、先に進むため向かってくる敵を倒さなければならなかった」 「うーん。まあ、仕方ないね。お互い殺すつもりも妨害するつもりもないのはわかった」 見回すと、さまざまな実験器具や本がある。 「なんか読みたいのあれば読んでもいいよ。ここにある本はどれも読み終わったものばかりだから、必要なら持ち出してもいい」 「そうか。ありがたくいくつか貰っていく」 「……君を責めるつもりはないが、護衛がいなくなったのでここではもう研究は続けられない。ここにあるものはほぼ捨てるつもりだ。他に欲しいものがあれば持っていっていい。もしまた私に会いに来るなら、鍵付きの扉の向こうにある第二研究室まで尋ねにおいで」 「わざわざどうも」 「ちなみに、水を渡る必要があると言っておこう」 「……どうやって?」 「私に会いたいなら、考えておくれ」 ランプを手に取ると、いくつか道具を携えて、ノスラムスは去った。
青く虚な目をした地底人が守る「立方体」を手に入れ、例の男の牢屋のさらに向こうに閉ざされた扉を見つける。扉を開くと、ついにマハブレへと到達する。 どんな仕組みか検討がつかないが、過去の黄金のマハブレへ時間移動をすると、ついに夢に見た大図書館が現れた。しかし、初めのうちは興奮したが、神の図書館は、その殆どがあまり重要とは思えない本によって埋め尽くされている。卑猥な自動人形たちが闊歩しており、だらしない学生の部屋よりも乱雑で、期待外れだった。 「結局ここも井戸の底だった。私はただ、まだ広い世界があるのを小さな穴から見上げているだけで、実際の私は井戸の外に出られない」 啓蒙の魂を持つこの図書館の館長、ヴァルテールは、膨大な知識の中で溺れ、一番知りたいことを解明できない葛藤が随所に残されており、彼の生み出した生命のなり損ないたちが、手当たり次第に襲いかかってきた。それもまた彼の苦しみの表象なのだろうか。奥底には大図書館の館長ヴァルテールの昔の姿がいた。こちらを見ると、本でできた洞穴へと身を投げ、黄金の頭部に頭脳が剥き出しな像となって現れる。 「ヴァルテール、答えろ。啓蒙の魂ですら辿り着けない真理は実在するのか。あるいは、真理なんてものはどこにも無いのか」 「…………」 グロゴロスの魔術で精神を灼かれる。道中、ネクロマンシーで下僕にしたスケルトンたちは武器を手に攻撃を続けた。 「私は神になりたいと思っていた。前人未到の真理の扉に触れるにはそれしかないと。だが、貴様はそれに辿り着いていない。何故だ!」 ヴァルテールは何も答えない。脳が割れんばかりに痛む。
過去の世界でヴァルテールを倒すと、苦痛の神殿に訪れる。地下にあった謎の装置で、自分の肉体の複製を作ると、それを捧げることで仕掛けが動き出す。生皮を剥がされた自分を見て、流石の私もぞっとした。 背後から、同じ姿の"苦しめられしもの"が現れる。顔も肌もわからない、究極の美を求めた結果、自らの手で自分自身であることをやめてしまった。ロン=チャンバラの繊細な詩からは想像もつかないが、鎖で縛り付けられ苦しみを享受し、あらゆる痛みを受け入れる。 私も痛みを受け入れてきた。耐え抜かなければ辿り着けないのならば、血を流し、皮膚を焼き、手足に杭を打たれる痛みを乗り越えてでも、本当に欲するものを手にしたいからだ。彼はそうではないと感じた。しかし、ただ苦しみが欲しくて苦しんでいるのかといえば、それも違うと感じた。 力尽きた彼は、私に呪文をひとつ与えた。苦痛の鎖は私に与えられた手段だ。誰かに自分と同じ苦しみを味あわせるための、愛と束縛の鎖。
塔の中で眠ると、過去の私を見つけた。死を目前にして、肉体を捧げようとしていた。もう遥か昔のように思える。 夢から覚める瞬間に、あのとき私の前に現れた女神が再び姿を現した。 「少女を闇の奥へ連れていってください」 頷くと、無窮の魂を手にする。
マハブレの中心に立つ、堂々とした巨大な神殿へとついに侵入する。老いた兵士が闘犬の檻の前に座り込んでいる。 「我らはただの傀儡。大いなる計画の一部に過ぎない。どれだけ長く、支配者の座を守っても意味がない。過去の私を倒して欲しい」 通用口の鍵を手にすると、過去のフランソワを倒した。現在のフランソワは過去の己を恥じているようだ。神の国を支配しても、彼のそばにいたのは犬だけだった。支配者の格式は支配される国民が優れた存在でこそ確かなものになる。凶暴な獣の支配者に、真の支配者たる格式は存在せず、見た目だけ煌びやかなメッキのように安っぽいものであった。
ヴァルテール、チャンバラ、フランソワはいずれも頽れていたが、ニルヴァンだけはまだ次への一手を持っている。しかし魂を貰ったら用はない。私はまだ彼女が必死な私を嘲笑うような発言をされたことに怒りがある。奴の頼みを聞くつもりは無いが、ひとつ気になることがあり、例の男の元へと尋ねにいった。
水上歩行の呪文。こんな古代の呪文を使うことになるとは。簡単な封印を解いて、扉をノスラムスが研究をしていた。 「おお、よく来たね」 すぐ近くの廊下は逆さ吊りにされた死体で血まみれだが、研究室の中は整理されていた。 「わざわざこんなところまで来てくれてありがとう」 「これほど珍しい呪文を使う機会に恵まれるとは思ってもみなかった」 「気に入ってくれた?」 「舟が無かった時代に生まれた古代人専用の呪文だ。二度と使わないだろう」 「そうだよね〜昔は重宝したんだけどね〜」 マハブレを探索する最中で気になったことを尋ねた。 「フェローシップの五人目の仲間、"忘れられし者"とは貴公のことだな」 「…………」 「マハブレの大図書館にあるフェローシップの原本、および新たなる神々が、貴公について語るところによれば、見たもの、聞いたことをそのまま受け取る性格により、疑惑の種が植え付けられたと書かれていた。神の座に座る権利を放棄し、時の流れに葬り去られたと」 「あはは、ひどい言われようだ。まだここにいるのに」 「だが、過去の彼らと闘い、倒した後は、現在はみな弱りきっていた。ヴァルテールは貴公に遺言を残した」 ヴァルテールの名を聞いた瞬間に、ノスラムスの目の色が変わった。 「やつはノスラムスが正しかったと言っていた」 「…………」 「ノスラムスこそが真の啓蒙の魂の持ち主だと」 「ヴァルテール……彼がそんなことを……」 思わず顔を覆う。 「ごめんね、ちょっとだけセンチメンタルになった」 研究の引き出しから、奇妙な飾りのついたネックレスを出す。 「これを君に……ソウルアンカーだ。役に立つと思う」 「何だこれは」 「神の椅子に座ったら、君は新たな神へと昇天できる。だが、もしこれをつければ、それをもう一度思いとどまることができる。現世へ魂を結びつけるアンカーだよ」 「…………」 ノスラムスからそれを受け取ると、ついに神の座へと座る決心をした。
ソウルアンカーのおかげで、私はあの神の座から降りることができた。再び研究室を訪ねると、ノスラムスが飛びついてきた。 「ああ、エンキ。ありがとう……」 「なぜ礼を言う」 「ありがとう……ありがとう……」 ノスラムスは繰り返し礼を述べながら泣いていた。
「新たな時代が来たと思った。君のような、時代を次に進めてくれる存在を待っていた」 「私はただ、古い時代を止めただけだ。壊れた時計にとどめを刺したが、次の時を刻むものは、まだない」 「それは私も同じだ。古い時計も新しい時計もないまま、現実から切り離されて暗い洞窟の中を漂泊していた。時計の針を進めることも戻すこともできないでいる」 「そう言う存在がもう一人増えただけだ。今のところはな」 自分の選択が正しかったのか、間違っていたのか分からなくなった。
地上に戻ってまた元の生活に戻れる気がしなかった。新たな神々の仲間入りを拒んだからには、この旅はまだ終われない。ノスラムスの研究室に滞在して、これまでの彼の研究成果を見ながら、私は私の啓蒙の道を開くための次なる目的を探すことにした。
ノスラムスは時折フェローシップ時代の話をこぼす。 もっぱらヴァルテールに関する話題が多い。 「私とヴァルテールは異なるアプローチで生命の創造について解き明かそうとしていたが、本当は一緒に議論しながら答えを出したいと思っていたのに、ヴァルテールはヴァルテール独自のやり方で……シルヴィアンや他の神の力を使わずに創造することにこだわっていた。シルヴィアンの力を借りれば、命を作るのは簡単だったよ。でも、生命とは、それ自身が生きる意志���持つ存在でなくてはならない。私が作った"胎児"はただ苦痛しか感じず、哀れな存在だった。ロンは……ああ、ロン・チャンバラ、苦しめられし者の人間だった頃の名前だよ。詩人としても有名だったね。彼は胎児を見て、最も美しい魂だと賞賛したが、私は可哀想で殺してしまった。私の研究は最終的には成功したよ。ただ、ヴァルテールの妄執はとまらなかった」 「またヴァルテールの話か」 「え?やきもち?」 「…………」 「冗談だよ、無視しないで」 多くの魔術師や錬金術師たちが血眼で解明しようとした生命創造の秘密は、ノスラムスにはもう魅力がない様子だ。それもヴァルテール昇天が関係しているのかもしれないし、解��終わった問題だからかもしれない。実際、彼はその知識で自らを不老不死にすることに成功している。
生命創造の一巻は牢獄内の本棚にも置かれているが、二巻は破り捨てられ、この闇の中にばら撒かれている。 「大した理由はない。途中で飽きちゃったから破って捨てた」 おそらくはヴァルテールに相手にされなかったから拗ねて破り捨てたのではないかと考えている。悠久の時の中、あらゆる学問に精通し、人間の限界を越えて知識を高め、神の力を得られる黄金の玉座に惑わされないほど達観した人物が、こんなに子供じみたことをするだろうか?ノスラムスはすると思っている。優れた頭脳を持ちながら、人間関係について異常な執着があり、思い通りにならないとすぐ拗ねるのだ。
彼はより真実へと向かう高い志を掲げているが、実際のところ私に昔の友人の代理をさせている。 だが、私も彼に双子の姉の偶像を重ねている。魔術師はみな身体中に傷がある。魔術の世界で血は最も広く使われる通貨だ。年齢も性別もよく分からない顔をしているが、裾から覗く古傷が、長年魔術研究に身を捧げたことを物語る。傷だらけの白く細い腕見ると、捨て去ったはずの遠い過去の郷愁を呼び覚ます。
ノスラムスはこの世界の豊かな自然が失われることを憂いつつも、洞窟の外に出て実際の活動をすることを拒んでいる。神はもういない、力もない、新たなる神は間違っていると主張しながらも、彼はマハブレから離れることを嫌がる。 「おかしいかな?友達のそばにいたいと思うことは」 「私は友人が一人もいないので理解できないのだが、一人だけ昇天を拒絶した時点で友情を裏切っており、それでも尚彼らを友人と呼ぶのは傲慢ではないか?貴公だけが止める手立てを持っていた」 「止めたけれど、だめだった。私はおしゃべりは得意だが説得が下手なんだ」 何をどこから突っ込めばいいのやら。 「あと便利なんだよね、神と"物理的に"近くて、本来ならば何十人分もの司祭や道士の力が必要な強力な呪文を、坑道の中を満たす濃密な瘴気のおかげで素人でも"正しく唱えるだけ"で発動するくらい魔力が満ちている。手間暇かけた凝った儀式なしにここまでなんでも試せる環境なんて他にないからね」 「そっちが本音だろう」 ノスラムスが手のひらを差し出すと、小さな炎を作り、水に変え、土へと自在に変換し、青白く発光したあとに金属に変え、破裂音と共に消滅させた。まるで手遊びのように物質の変換をやってのけて、この環境がいかに優れており、彼がそれを存分に活用していることを見せつけた。素人でも使えるならノスラムスのような大魔導士にかかれば不可能などないに等しい。
私も彼も広い知識に反して狭い交友関係の中で生きている。なので自分のことを最も憎んでいる人物が自分にとって最も深く繋がった親友であった。
翌る日、眠る私を叩き起こして、ノスラムスが興奮した様子で言った。 「エンキ、ごらんよ。新しい神が生まれた。今回はすごいよ、旧き神にも匹敵する力を持っている」 「一体何が」 「ニルヴァンの娘、神と人の間に生まれた少女が、闇の中へと到達したようだ。君以外にもここに侵入してきた者が居たんだ。君とはすれ違いだが、彼女たちは深淵の神の中へ到達し、新たな神を誕生させた」 湖畔に手をかざすと、水面に深淵の神の腹の中が映し出され、何百、何千もの死体が堆く積み上がるのが見えた。やがて、死体の山を超えて闇の奥底へと徐々に近づくと、血で染まったように真っ赤な花畑が見え、その中心に、人間の姿からはかけ離れた"恐怖と飢餓の神"が、厳かに佇んでいた。 「これは旧き神の生まれ変わりなのか?それとも新たなる神の一種なのか?」 「いやぁ、表現が難しいところだ。新たな神ニルヴァンの娘なので旧き神の血筋ではない。が、マハブレで昇天したわけではないので新たな神でもない。尚且つ深淵の神を母胎に神として覚醒したので旧き神を元としている……」 「…………」 「エンキ?」
青く澄んだ空の向こうには何もなく、宝石のように輝く星空の真ん中では月の神レールが君臨する。井戸の底で見上げた空は、自由な世界ではなく、邪悪な神が支配する世界を丸く切り取った風景だった。
ノスラムスは私を、井戸の底の、さらに底へと連れてゆく。 「真実は上ではなく下にあるんだ」 真っ赤な花畑が足元に広がると、恐怖で体がすくんでしまった。なのに、妙に暖かい心地になる。まるで、幼少期に寺院で読んだ絵本の世界だ。
ああ、ローズ、ここが私たちの夢見た場所だ。
異常な喉の渇きと、目が霞むほどの飢餓に襲われる。だんだんと意識が遠のく。 「エンキ、エンキ!」 恐怖と飢餓の神は、苦痛に満ちた表情で私を見下ろす。名前を呼ばれるが、それが私の名前と認識できなくなっている。視界はぼやけて、手足に力が入らなくなり、声も出せない。死が、私の心と体を、優しく包み込むように、ゆっくりと浸透する。 「しょうがないな。悪いけど、溺れないでね」 そう言われると、体が持ち上がったと思った次の瞬間、水中に放り投げられた。
「ぐえ、ごほっ……」 サーモンスネークの湖に突き落とされたようで、何とか水の中から顔を上げる。 「大丈夫?」 大丈夫ではない。鼻や口から湖の濁った水が入ってきた。気持ちが悪い。が、まだ咽せて喋れないので咳き込みながら睨みつける。 「びっくりした、あやうく飲み込まれるところだったんだよ」 「驚いたのはこっちだ……」 どこからが幻想で、どこまでが現実かは分からない。あらゆる神秘に触れてもなお狂気に飲まれない鍛錬をしてきた私が、恐怖と飢餓の神が私の心に入ってきた瞬間に、なす術がなかった。それは、多くの人間の心を支配する力がある可能性を示唆していた。
将来の脅威に備えてできることを考えた結果、信仰を再び取り戻す必要があるという結論に至る。現在は魔法陣の研究をしている。 神への信仰には、神殿や巨大な像を建造するのが最もよいが、神の像を建造するには、多くの時間と費用と人手を必要とする。大地を清め、供物を捧げ、決まった手順により建築を進める。建造は早すぎても遅すぎても効力が失われるとされている。各教会が権威を失い、司祭の数が減った結果、既存の神の像は老朽化し、新たな像の建設ができなくなった。ロンデンのシンボルであったオールマー像こそいい例だ。この地に聳え立つ巨大なオールマー像に比べて小さく力もなく、街の飾りに成り果てていた。
魔法陣は神殿や像の建造よりも手軽な方法としているが従来式の魔法陣はあまりにも弱い。魔力が分散しないように四方を石造りの壁で囲まなければならず、描画のために生贄の血を捧げなければならないのに、さらに祈りや儀式のために犠牲者が必要となる。前者に比べて手軽なのは確かだが、それでも手間が多い。老朽化とともに壁がなくなればまた無力化する。書き方も教会や司祭によってバラバラである。大抵の場合は過去にうまくいったと思われている方法や手順をやっているだけだ。
より簡単に、かつ強力に神とつながるための専用魔法陣を考案する。私の理論に沿った魔法陣が生み出せたなら、壁も天井も要らない、場所を問わず床があれば問題ない万能な魔法陣となるはずだ。
手順を構築し、何らかの形でこの魔法陣を作るための技術をまとめたい。しかし、魔導書作りは一筋縄では行かない。ただ理論を書いただけでは神秘の力は生まれない。神の力を持つには、神の知識を自分の正気と引き換えに身につけるしかない。が、自分の人間性を犠牲にして無理やり書いた結果、支離滅裂な狂人の手記になっては意味がなくなる。 この地は神の研究には最適だが、結局それをまとめるための神秘の力と親和性の高い、最適な形式に悩んでいた。 「スキンバイブルがいいよ。神の知識や力と親和性が高いのは、結局人間の肉体そのものだ。多少欠陥があれど、神に似せて作ったと言われるだけあってね。ネクロノミコンも、大勢の人間の皮膚と血肉によって刻み込まれたからこそ、高度な神の知識をそのまま写すことができた。だから、読むだけで高度な呪文を得られる。が、あまりにも"刺激的"な本だ。誰も読めない本って、誰がどうやって書いたんだろうね。グロゴロスが辞書を片手に羽ペン持って書いてくれたのかな?あはは!」 彼はよく一人で話しながら一人で笑うことがある。長年の孤独で精神を病んだ結果の症状なんだろうと思っている。私が気の毒そうな顔をしているのを見ると、咳払いをして続けた。 「……まあ、私が言いたいのは、ネクロノミコンの形式を参考にしてみてはどうかということだ。人革はリザードマンに頼めば綺麗になめしてくれるよ。本は書くのも読むのも手軽でいいね、巻物は本当に大変さ!どこかで一文字でもミスしたら最初から書き直しなんだ。今時の司祭は巻物を書いたことも、下手をすると読んだことすら無いみたいだが、私やヴァルテールが修行していた頃はね……」 その後の巻物世代の老人の長話は全く覚えていないが、スキンバイブルについてはいいアイディアだと思った。
旧き神たちの衰退は、より邪悪な神の台頭を許すこととなる。恐怖と飢餓の神は強大な力を持つ。それ以外の神の力が衰退すれば、いよいよかの神によって支配されてしまう。グロゴロスもシルヴィアンもレールも決して良い神とは言えないが、神の支配力に拮抗できるのは同じくらい強力な神だけである。
神への信仰が直接民を救うとはかけらも思っていない。生贄による血生臭い儀式は、自分から進んで多くの人間を手にかけるほど好きではないが、否定もしない。いくらこの世から葬り去ろうとしても、人類のこうしたことへの関心は尽きないことをよく知っている。普段は歴史や法律の講義を居眠りしているロンデンの学生たちでさえ、私の語る闇の儀式についての講義は机から身を乗り出すほど前のめりになり、もっと知りたいとさかんに聞いてきた。隠したところで誰かが必死に掘り起こして実践するのだから、どうせならば効率的な方法を残してやろうという私の親切だ。何より、効果が現れないものは人々の関心が向かないので、それぞれの旧き神の信仰がそれなりに保たれるように調節してやる意図もある。
きっとこの本によって血を流し、心を失い、命を落とすものが一人や二人ではなく現れるだろう。だが、こんな呪いの儀式よりも、王侯貴族や権力者たちが引き起こす戦争の方が何倍も多くの犠牲者を生み出すのである。今後世界がどのように変化してゆくのか、これから私の書く本で何人死ぬのか、私の運命がどうなるのかは全く分からないが、それだけは確かだと言える。
神よりも人間の方が恐ろしいからこそ、神の力が失われた。しかし、私の望む、啓蒙の道の先にあるのが、恐怖と飢餓しかないなんてことは許し難い。首を吊ってもなお考えることを止められず、終わりのない思考の坩堝に落ちた哀れな男の二の舞はごめんである。 ノスラムスのためでも、ヴァルテールのためでも、世界のためでも何でもない。私は私のために、神の知識を人類に残さねばならない。
ノスラムスの校正を受けながら推敲を重ねる。彼よりも優れた校正人はいまい。ノスラムスは自分用に研究成果をまとめているのみで、本にして出すつもりがなく、他者に向けた執筆作業は嫌いらしい。 「だって、書いても誰にも読んでもらえなかったらどうしようって思うとさ、筆が進まないんだよね」 生命の創造はいい本だと思ったが本人は気に入ってないらしい。この地下牢の博物学について書けば読者も多いだろうに。 「エンキは怖くないの?」 「私には理解できない」 「そうかなあ、私が読むからじゃない?」 「一人でも書ける」 ノスラムスは私の回答に納得いかない様子だったが、お互い作業に戻った。
オールマーのスキンバイブルの原稿を校了し、次いでグロゴロス、シルヴィアン、レールのスキンバイブルも校了した。最後の"恐怖と飢餓の神"を修正している最中にノスラムスは言った。 「エンキのスキンバイブルは素晴らしい出来だ。ここで提案なんだが、ヴィヌシュカのスキンバイブルも追加してくれないか?」 「ヴィヌシュカ?」 「知らないのも無理はない。私が地上で暮らしていた頃でさえ、エウロパ内での知名度は殆どなくなっていた。だ���東南の熱帯地域ではヴィヌシュカはとてもポピュラーだ。あの地域ではむしろオールマーやグロゴロス、シルヴィアンの知名度がなくて、それらの伝承や神話がまとめてヴィヌシュカにまつわる伝承や神話として伝えられている」 「そんな神の名は聞いたことがない。新たな神の一人か?」 「とんでもない!もっとずっと古いよ。グロゴロスとシルヴィアンの間に生まれた神だからね」 「絶対に嘘だ。原典を出せ」 「いやぁ、どこだったかなぁ〜マハブレの図書館に残ってるといいけど……」 「チッ……だったら自分で行く」 「マハブレに?」 「東南の熱帯地域に」 「だめ!やだ!暑くて死んじゃう!太陽なんて何百年も見てないから、今見たら目が潰れちゃうかも」
深淵の神の体内よりも鬱蒼とした密林では、魔物のような声の野生動物が絶叫している。人がいないのにロンデンの盛場よりも遥かにうるさい。熱帯地域の気候に慣れておらず、呪文を使っても蒸し暑くてたまらなかった。恐怖と飢餓の地下牢とはまた別の方向で過酷な環境にある。
秘境の村を案内してもらうため、案内人に手土産として金貨とオピウムとタバコを贈ると、村人たちはまれびとを手厚く歓迎した。ノスラムスは頭に花を載せられる。 「わー、なになに?」 ノスラムスは女だと思われているのか、女たちに手を引かれ、女だらけの輪に吸い込まれていった。私は案内人とともに当初の目的であるヴィヌシュカの寺院を参拝した。
寺院や像、古い祠などを散策している間に夜になっていた。村へ帰ってきたらノスラムスは木で組まれた祭壇の上で、色とりどりの花が飾られた中心に両腕をまるで磔のように縛られていた。祭壇のそばには司祭と思われる派手な装飾品に身を包んだ男が、大きな焚き火のそばで何かを唱えており、その周りで村人たちは、酒や果物、肉などの料理を食べたり、太鼓や笛に似た原始的な楽器を手に歌ったり踊っている。 「あはははは!エンキ助けてー!今年のお祭りの捧げ物にされるー!」 私一人でヴィヌシュカ研究を進めている間に呑気に遊んでいた男のことは置いて、今夜の宿へ向かうと調査結果をまとめる作業にとりかかる。 しばらくして外で叫び声とともに何かが崩れ落ちる音などがしたが、気にせず作業を続けていた。騒がしい音が落ち着いた頃に宿へノスラムスが戻ってきた。 「無視するなんて酷くない?」 「地元民との交流を邪魔するなんて野暮だろう」 「へえ!君にそんな気遣いができるなんて知らなかったよ!ところで、君さえ良ければ夜が明ける前に次の村に行かないかい?」 そう言われて急いで身支度をして次の村へ移動した。
村から離れて、安全そうな場所まで逃げるとノスラムスから事情を聞いた。 「女の人たちにお家に連れられて、ご馳走食べたら睡眠薬っぽい味がしたんだよね。だから寝たふりをして何されるのか様子を見ようとしたら祭壇に捧げられたんだ。このまま何が来るのか待ってたんだけど、みんなオピウム吸いすぎて頭がおかしくなってたもんだから、暴れて祭壇倒しちゃって失敗しちゃった」 睡眠薬の効き目ではなく味がしたから寝たふりをするなんて誰も思わないだろう。私もノスラムスも自分の体を一番手頃な実験台だと思っているので大抵の麻酔や毒薬は味や痛みで覚えてしまっている。今も、私と話しながら食事に混ざっていた薬草がどれだったのかを確認するためにその辺に生えている草を手当たり次第に摘んで匂いを嗅いだり口に入れて噛んでいる。 「祭壇が倒れたら火が家屋に延焼しちゃって、風も乾燥してたから一瞬で火の海だったよ。あの村はもう焼け野原だろうね。早く逃げれてよかった。でも何を呼ぶつもりだったんだろう。私みたいなミイラでも受け取ってくれる神や悪魔っていると思う?」 「それは大変興味深い問題だ。せっかく寝たふりでも自ら捧げようとした後に途中で止めるな。どうせなら儀式を完遂しろ」 「エンキだって自分をオールマーに捧げた後自分で降りたらしいじゃん」 確かにそうだが。 「この地では神様のために儀式をやるけど、私たちは神に何か用事がある時しか儀式をやらない。人間の勝手な都合でやるから、途中で辞めちゃうのを大したことだと思ってない」 「普通の司祭はともかく、闇の司祭は季節行事なんかやらない。闇の司祭が扱う供物である人間は作物と違って一年中勝手に生まれてくるからだろうな。だが、定期的に要るか要らないかに関わらず毎年同じものをもらう方が逆に迷惑じゃないか」 「日頃からの"挨拶"は大切なことなんだよ。突然全然知らない人から『あなたに会いたい!今すぐここに来て!』とか言われたら怖いじゃん」 「私はそう言われたら会うほうだ」 「えー!信じられない。私は絶対行かない。まず自己紹介して、顔見知りになって、そこから徐々に間合いつめて、ちゃんと段階踏んで欲しいよ」 「自慢か?」 「え?いや、ただの人見知りだけど……」
かの神はこの地でさまざまな名を持っている。ブラーフ、ニヌシ、バラゴン。それぞれの一族、集落、民族の始祖たちとヴィヌシュカは融合している。彼らは異なる名前で存在するが、人々は自身が神の血を引くことを誇りとしている。 ヴィヌシュカ以前には漠然とした世界が広がっており、グロゴロスやシルヴィアンのように概念だけが存在する。無から有が生まれた瞬間があり、最初の実体ある存在としてヴィヌシュカないし別名の破壊と創造を併せ持つ祖先がいると信じられている。 不思議なことに、異なる集団や地域で同じ呼び名を使うことも少なくないにもかかわらず、"ヴィヌシュカ"という呼び方、あるいは似た響きをしている地域はなく、これはエウロパのみの呼称の可能性が高い。 「ヴィヌシュカはみんな聞いたことないって反応だね」 「こことエウロパは文化も言語も異なる。生と死はどんな人間にも共通する現象にもかかわらず、それぞれの言葉でもって表現されるように」 「それもそう、なんだけど。じゃあヴィヌシュカという名前はどこからきたの?って疑問に思わない?」 「…………」 「自然が、自然と名前をつけられたのは、人工物と"神の創造物"とを分けるためだよね?きっと、この地で呼ばれる創造と破壊の神と、ヴィヌシュカという名前の神が区別されたのは、何か理由があるんじゃないか」 「それについて、貴公に何か推論はあるのか」 「まだないね」
ヴィヌシュカがどのようにして生まれたか、よりも、ヴィヌシュカがなぜエウロパで廃れ、この地で篤く信仰されているのかが、かの神への理解となる。
ここでは虫や植物や動物、雷や嵐など自然現象はヴィヌシュカや大量にいるヴィヌシュカの子供たちと関連つけられる。各地域の地名、動植物の名前、それらをヴィヌシュカがなぜそう名付けたのかにまつわる神話があり、神話の中で、どのような性質かを説明する。毒のある生き物、薬として使える草花、危険な猛獣の生態、そうした博物学知識を人々が共有するために、愛情深く、嫉妬深く、短気で、寛容で、なんでも産み、なんでも殺すヴィヌシュカの寓話で自然を理解する。
エウロパでは動物や植物、とくに虫は「深淵の神」との関連が強い。自然を制圧し、人の住む場所から虫や植物を排除し、彼らを闇の中、すなわち深淵へと追いやった。 オールマーは全てを与える神だが、この肥沃な土地では水も食料には困らない。まだ都市化が進んでおらず人口が自然の中で分散しているおかげである。その代わり、他国との戦争よりも、自然界の猛獣たちの恐怖が未だに根強い。どの村でも、人を喰う獣によって体を失った人々がいる。猛毒の虫や蛇で命を落とすものもいる。畏れが信仰につながるならば、人間を恐れ、人間を敬うエウロパではオールマーが強く信仰され、自然を恐れ、自然を敬うこの地でヴィヌシュカが強く信仰されているのだろう。
ヴィヌシュカは私たちを拒絶する。私たちもヴィヌシュカを拒絶する。人々はオールマーの作りし世界こそが楽園と信じ、ヴィヌシュカが支配するありのままな自然の姿を支配せんとした。我々は山を切り崩し、森林を伐採し、灌漑のために河川工事をし、橋を作る。その結果、土地が枯れようとも、また肥沃な土地を探して切り崩す。王族たちの住む土地は枯れ果てている。都市部は自浄作用が機能せず、人間が生み出した穢れ、汚染、死体は、自然に還されることを拒み、人々の足元に堆積し続ける。大地と、人工物は、混ざり合うことなく、無理やり踏み固められる。恐怖と飢餓の牢獄にも、人間でつくられた廊下が存在した。地底人たちは人間を供物にした。自然ではないものを自然の神に捧げることは、自然から人間に対する報復なのだろうか。
ヴィヌシュカの力は燃焼と成長を促進する。燃焼はただ破壊するだけで無く、物質を変換し新しい素材を生み出す創造力でもある。成長は命の創造で必ず必要だが、一定を超えると老化となり生命を破壊する力を持つ。この神のお陰で非常に強力な魔法が使えるようになった。将来、この神はグロゴロスやシルヴィアンよりも強く信仰されても不思議ではないほど、便利な神だ。だが、ヴィヌシュカは根本的に人間を、特に文明の発達した人類を憎悪する。この神を真に信奉することは文明人には不可能である。今の世界を捨てて、まだ人間が自然の脅威に怯えながらも、自然から生きる糧を得て、自然に逆らわずに暮らし、やがて骨も肉も自然へ還し、破壊と創造の営みの一部になれる人間はほとんどいない。あらゆる力を、神に等しい力を手にすることができるとしても、その誘惑に惑わされない精神力がなければ、それこそ、神の座をも拒絶した男のように……
魔術師と錬金術師が揃えば、斧がなくても小屋が立ち、釘がなくても椅子を組み立て、糸がなくても布を編める。適当に拾った生木を呪文で乾燥させて火を焚いた。 火のそばで、鋭い牙があり、紫と緑色の混ざった色をした、小さな目玉の魚を焼いた。まがまがしい見た目に反して美味な魚で、毒もない。おまけに沢山いたので取りやすかった。魚好きなノスラムスは食べ終わってからもう一度川に爆弾を投げて取っていた。サーモンスネークもこれくらいの大きさで沢山いたらよかった。詳しく調べてないので知らないが、多分この魚もヴィヌシュカの子供かそのまた子供か特に関係ない人間がヴィヌシュカによって魚に変化したものなんだろう。 魚を食べ終わったノスラムスに私は尋ねる。 「なぜヴィヌシュカを追加しようと提案した?」 「それはもちろん、私が熱心な自然信奉主義者だからだ。あとは、ヴィヌシュカは君の予見する恐怖と飢餓の神による支配に対抗しうると考えている。自然は人間がコントロールできないものだが、アニミズムは恐怖による支配ではなく、感謝と敬意による信仰だ。闇への恐怖を自然保護という形に還元すれば、私がほとんど諦めかけていた野望が果たされるやもしれない」 恐怖と飢餓の神への対抗策というのは確かに分かりやすい。人間はただ自然から恵まれるものだけで生きることを受け入れられるのならば、という前提はある。それができないからこそ文明が進化し、ガス燈とランプが昼夜問わず人を働かせ、流通が発達し、大きな城を建てた。 「何より、君の心を救うと思った」 「どういう意味だ」 「上手くは説明できない。けれど、直感的に、ヴィヌシュカを知ることが君の安らぎになるんじゃないかと思ったんだ。君はどんな神であれ心から信仰したりしないのに、恐怖と飢餓の神の前では、その威厳に跪きかけていた。それが君の心にある深い翳りからくるものならば、取り払ってあげようと思った」 「余計なお世話だ」 「だが、ヴィヌシュカを辿る旅は本当によかった。こんなに楽しくなるなんて予想外だったよ。私こそ、この神に救われた気がする。君のおかげだよエンキ。私だけではこの地に辿り着けなかった」 「この程度の呪文は私でなくても使える」 「そう言う意味ではないよ」 焚き火に照らされたノスラムスの顔に、妙な胸騒ぎがする。いつもの作り笑いとは異なる、安らかな表情で微笑んでいた。なのに、私はその顔が嫌だった。
探せばまだまだ知らない伝承が見つかるだろうが、様々な土地の神や伝承、民話と融合したヴィヌシュカやその子供たちの伝承は、すでに旧き神の原型からかけ離れた、この土地の人々の生活の一部となっている。それは忘れられた神ヴィヌシュカの姿とはまた別の信仰であり、私が追究する必要はないと考えた。 ヴィヌシュカのスキンバイブルを完成させるには充分な成果を得て、旅を終える準備をしていたが、ノスラムスは言った。 「私はすっかりこの豊かな大自然が気に入ったよ」 「そうか?私はもううんざりだ。朝も夜も騒がしくて、慣れない文化と気候に心身ともに疲労が溜まっている。研究所に戻ってヴィヌシュカについて本にまとめる」 「なら、ここにブラッドポータルを開くから、先に帰ってていいよ」 「…………」 「寂しいかい?大丈夫、すぐ帰るから。ただね、この美しい景色が、いずれ人間の営みによって失われる前に、少しでもこの中にいたいんだ」 「ここでは"あそこ"と違って自由に呪文は使えない。道具もないし、魔導書も限られたものしか持ち込んでいない」 「分かってるよ」 「本当に分かっているのか。身を守る手段がないと言っているんだ。大蛇や猛獣に襲われでもしたら、流石の貴様でも……」 「心配してくれてありがとう。君、思ったよりも私を気に入ってくれていたんだね。嬉しいよ」 「やかましい。そんな話をしているんじゃない」 いくら言っても彼には帰る気がないように、私もこれ以上長居するつもりはない。スキンバイブルに締め切りはないが、恐怖と飢餓の神の支配がどれほどの勢いで広まるのかは誰にも予想がつかない。私は速やかに執筆に取り掛かりたい。だが、彼の目には強い覚悟があった。 「…………分かった。私は戻る、貴様は好きなだけここに留まればいい」 「安心して、気が済んだらすぐ帰るよ」 簡素な小屋を建てると、床板の上にオールマーの魔法陣を描く。空間が歪み、黒い穴が開く。 私は彼を残して研究所へと帰った。
何世紀もの間、神の座を否定したことを糾弾され、あの暗い穴底に一人で閉じ込められていた男が、外に出て喜んでいるところを再び闇の底に引きずり落とすなんてことはできなかった。彼は自分で自分を罰し続けていたが、無限に続く孤独な人生に明るい日が差して、そこへ手を伸ばしたことを咎める権利は誰にもない。 私は、あの旅を後悔していない。彼を置いて帰ってきたことは間違いではない。彼はようやく穴から抜け出した。私が井戸から生まれた日、すぐさま誰かがもう一度井戸の底に突き落としたとしたら、私はそのまま井戸で死んでいただろう。 姉は自由を手にしながら、それをどうやって使うべきか分かっていなかった。ノスラムスは分かっている。有り余るほど長い時間を無限に浪費する天才だ。
旅から帰ると、魔法陣の基礎知識や魔術の基本を記した魔術概論と、各神ごとの詳細を記したスキンバイブルを完成させる。神の理論、神の言葉、神の知識は並大抵の人間には理解できず、無理やり理解しようとした瞬間に狂ってしまう。だから、人間の言葉と人間の理論で翻訳した。読み方や考え方を先に教えることで、概論は神の言葉に関係のない、ただの人の言葉となる。 装丁は、神へ捧げるためではなく、"人間でできた神の本"という意味で、人革で製本した。よって美しい傷ひとつない皮膚ではなく、わざと穴の空いた「顔の皮」で製本した。人間の頭脳を模した本だからこそ、人間に理解可能なまま保存されるはずである。
神の歴史を紐解き、神を分析し、私の力で、神を人間の"道具"に仕立て上げた。もちろん、人間には到底使い道のない神の力も存在する。だが、人の身のまま昇天することを、私やノスラムス以外にも実現可能にした。彼が私にソウルアンカーを渡して、私は神の座を降りたように、私の本で、今後の人間は神の座に登ろうなんて考えるのをやめるだろう。欲しいのが力や支配だけならば、人間のままでいいからだ。神を討ち滅ぼす必要なんてない。恐怖と飢餓の神は道具として求められる存在となり、人間と共存可能になる。
愚かな慣習により断絶された我が一族の名を再び名乗る。彼らによってアレスが生まれ、アレスは闇の中で新たなる啓蒙者エンキとして生まれ変わった。出来上がったスキンバイブルに、呪いと祝福を込めてエンキ・アンカリアンとサインした。 忌まわしき一族を伝説の魔法使いに書き換える。新たなアンカリアン家は血筋ではなく知識により再び継承される。
帰ってきてから、執筆中も毎日欠かさずブラッドポータルの様子を見ていた。しかし、何日も、何週間も、何ヶ月も、何年も、彼が帰ってくることはなかった。ある日、ブラッドポータルを調べたら、いつのまにか「通路」がもう塞がっていることに気がついた。変化の激しい環境により小屋が壊れたのか、野生動物たちが出入りして魔法陣がかき消されたのか、あるいは無関係な第三者が、この闇の中に吸い込まれるのを案じたノスラムスがわざと塞いだ可能性もある。
私はやるべきことをやった。私にしかできないことを達成したことに満足している。完成した本は然るべき場所に届けた。悍ましい知識を、神の秘密に触れたいと願う多くの人々の手に渡るはずだ。 あとは、友人の帰りをここで待つだけ。
井戸の底から生まれ、井戸の底で眠る。ノスラムスが今どこで何をしているのかは分からないが、少なくとも外の世界にまだ大自然が残されおり、世界が闇に閉ざされていない証拠である。それだけで私の心には光が差し込む。彼を通して私の闇は照らされる。ノスラムスをここに閉じ込めておく必要があるならば、私が代わりになろう。私はもう世界を見終わった。 いつかノスラムスが世界を見終わって帰ってきたら、終末に到達するまでの間、彼が見聞きした外の出来事を沢山聞かせてもらおう。ヴィヌシュカのスキンバイブルの感想も聞きたい。あれは唯一、ノスラムスのために書いたバイブルである。そんなことを言ったら調子に乗る気がするが、喜んで欲しいのは確かだ。
研究室のベッドに横たわると、ゆっくり瞼を閉じた。 ずっと、この瞬間を待っていた。 運命は綴じられる。
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あけましておめでとうございます。
地震発生当時、金沢の自宅におりまして半年ぶりにお酒を飲もうとしたところに大地震のサドンストライクでございました。
(金沢であれだけ揺れたので、能登では尋常じゃなかっただろう)
夕暮れの空を見上げれば「かりんとう」のような形をした巨大な自衛隊のヘリコプター何機も行ったり来たり。
(確かにかりんとうに見える)
映画「プラトーン」のような世界・・。
輪島には日頃、やせの断崖とか、千枚田とか、千里浜なぎさドライブウェイとか、日本小貝三名所のひとつで、日本最大級のキャンプ場がある能登リゾートエリア増穂浦海水浴場とか、七尾の野生のイルカとか、イケテル寺社仏閣鑑賞とか、牡蠣を食べに行ったついでに時々立ち寄っていました。
(とかが多い)
小学生の時、初めて友達と鉄道三人旅をしたのも輪島と珠洲で、以前飼っていた猟犬のイングリッシュ・ポインターが亡くなって数年後に同じく猟犬のルーエリン・セッターを貰いに行ったのも能登の田鶴浜で能登は山ほど思い出がたくさんあります。
(人も優しい)
車で行ったことのある人はわかると思うけど国道で、あの水面と同じ高さの道路の海岸沿いをドライブするスリル感とファンタスティック感は能登でしか楽しめません。
(のと里山海街道が使えないのが辛すぎる)
写真は以前撮った朝市とかがある輪島のメインストリート。
木造菩薩面(重文)で知られ、1300年の歴史を誇る重蔵神社は大丈夫だったそうですが、もうこの街中の建物群は跡形もなく消滅してしまいました。
復活の暁には、また能登に出かけに行きますので、何とか今を耐えて頑張ってほしいものです。
(※後日、重蔵神社も壊滅的な被害とSNSで確認、無念・・。)
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秀一が七瀬に案内されたのは、一年二組の教室だった。大概、一組あたり三十名の生徒が学んでいるらしく、これまで男子校とは無縁だった秀一には「未知の世界」だった。やはり「むさ苦しい」のだろうか?と、彼は色々と想像を膨らませた。教室内から賑やかな声が聞こえ、一瞬「学級崩壊」しているのでは?と七瀬に聞いた。
「一応、国公立大学への進学率は高いって聞いてますけど…」
「まァ、本当だけど、休み時間は何処もこんな感じですよ」
「何やってるンですか?」
「う〜ん、何やってるンでしょうね」
流石に休み時間のことまでは解らない様だった。七瀬は教室の引き戸を開けると、何故か急に静かになった。談笑をしているだけだったのか、散り散りになっていた生徒らが一斉に着席した。K高校の制服は、紺色の詰め襟にサイドベンツが入ったものだった。七瀬が教壇に立つと、生徒の一人が起立の声かけをした。まるで防衛学校の様な号令である。七瀬は挨拶をすると、秀一の紹介も含めて話し始めた。
「今日から、一年生の現代文を担当することになった、益子秀一先生です。益子先生、皆に自己紹介してもらってイイですか?」
突然促されたので、少々慌てた様子を見せたが、
「はじめまして。益子秀一です。都内の���立高校で担任も受け持っていた経験もあります。早く皆と仲良くできるよう頑張りますので、よろしくお願いします」
と会釈した。生徒の中には、目を大きく見開いて興味を示す者もいた。一瞬どよめいたが、
「はいッ、授業を始めますよ!」
と七瀬は声を上げた。
授業の合間、秀一は教室の後ろで見学をしていた。その最中にも一部の生徒が振り向いてはヒソヒソと話し、落ち着かなかった。そんな生徒に秀一は、
「授業中だから、ヒソヒソ話は止めようね」
と小声で言った。
授業が終わり、廊下に出ると七瀬は溜息をつき、
「…実は、一年二組は一番やりずらいンです。ウチは特別進学コースと大学進学コースと分かれているンですけど、先刻のクラスはあまり出来がよくなくて…」
と話した。まァ、見りゃ判るよと秀一は割り切っていたが、
「恐らく、初めてだからかなァ?」
と言うと、
「何人か、益子先生に好意を持った奴がいたと思うンで、注意した方がイイですよ」
と強調した。
その後もクラスを転々とし、授業が終わる都度、七瀬はめいめいのクラスの特徴を話した。一環して共通しているのは、
「益子先生に好意を持った生徒がいる」
という言葉だった。秀一は、七瀬には「解りました」と言ったが、内心は「まァ、面白可笑しくやってやれ」と思っていた。
理事長室では、岩崎が秀一の様子を貢に報告していた。向かい合うソファに座り、貢自ら淹れたコーヒーを片手に岩崎は、
「七瀬先生からは、さっそく一部の生徒からモーションかけられたみたいです」
と話した。貢は『モーション』という言葉に反応した。
「それって…惚れられたって事?」
「う〜ん、何だか解ンないけど、そう言ってたヨ」
「そうなンだ…」
「そうそう、益子先生って白いビキニブリーフを穿いてるみたいよ」
「あら、やだ」
「あんな色黒な肌に…鼻血が出そう!」
「前立腺、うずいた?」
「でも、案外用心深いかもよ」
「そうかァ〜」
貢はカップアンドソーサーをローテーブルに置くと、岩崎の隣に腰を下ろした。内腿に触れながら、
「相変わらず、カワイイね」
と囁いた。
「な、何ッ!? 仕事中なのに、ダメよ」
「相変わらず、不安定なの?」
「…うん、ダメ。急に淋しくなっちゃうの」
「相変わらず独りでオ◯ニーしてるの?」
「だって、『セフレ』いないし…」
「今夜、亮ちゃんのところに晩酌しに行くけど、どう?」
「『亮ちゃん』って、用務員の?」
「『メチャクチャに抱いてやるからな』って…」
「乱暴はイヤ」
「淫乱パーティーやろうよ」
「う〜ん、考えてとく」
そんなやり取りの合間に貢は岩崎の唇を奪い、彼の股間を弄った。早くもスラックスの中で硬くなっている様だった。耳の方も息をかけられ、岩崎は貢を堅く抱擁した。彼は言った。
「…早く更年期終わって欲しいナ」
「淋しい時は、いつでもおいで」
実は、貢は岩崎とは彼がやはり上野のゲイバーで知り合い、そのまま意気投合した情人(アマン)の一人だった。妻子とは所謂「中年離婚」し、自暴自棄になっていたのを隣に座っていた貢が声をかけ、連れ込み宿に連れ込んだのだ。岩崎は妻子がいる頃にゲイビデオのモデルをやっていた程だった。一見ノンケっぽい雰囲気がある様子に貢は惚れ、しかも若いながら主任までやったことがあると言うものだから校長にしてやると誘ったのだ。
岩崎は貢の接吻と抱擁に満足すると残りのコーヒーを飲み干し、カップアンドソーサーをローテーブルに置いた。微かに涙がこぼれたのか、
「顔洗わなきゃ…」
と立ち上がった。貢は彼の方を見詰め、
「申し訳ない、仕事中に…」
と自分の行動を反省した。岩崎は、
「…貢クン、優し過ぎるのよ」
と振り向かずに言ったが、微笑は浮んでいた。何となく自分自身に優しくなれた様だった。ただの欲求不満だった様だ。彼は、
「失礼します」
と平然を装いながら理事長室を後にした。貢は、
「…だからアイツはカワイイんだよ」
と笑った。
一年二組では、生徒の一人がぼんやりと窓の方を見上げていた。背後から、
「おい、諸井!」
と同級生に呼ばれるも気付かなかった。うわの空の様だ。その同級生が再び、
「諸井、何ボ〜ッとしてるンだよ!」
と、今度は背中を叩いた。流石に、
「痛ッ、何するンだよ!」
と振り向いた。彼は諸井翔と言った。同級生の黒木正美は、
「もしかしたら、お前、あの益子先生に惚れちゃったのか!?」
とからかった。翔は、
「ち、違うよ!」
と顔を赤らめた。
「嘘つくンじゃねぇよ! 顔真っ赤だそ!」
「ち、違うよ! バカ!」
翔は、額がかかるぐらいの前髪を垂らし、中肉中背だった。中学生の時は、精通は経験したが未だオ◯ニーはしたことがなかった。母親が勉強しろとやかましく、しかも過保護だった。自分の下着もこれまで買ったことがなかった。
一方、正美は髪を真ん中で分けた、細めの黒縁メガネをかけた中肉中背である。父子家庭だが殆んど仕事で、祖父母が面倒をみていた。母親は彼が幼い頃に病死し、再婚もせずに海外赴任が多かった。K高校には、彼自ら入学を希望した。父親に心配されなくてもイイ様に、との考えからだった。
翔は、秀一が私語を慎むよう他の同級生に声をかけていた様子を見た時、その距離が短いことに気付いた。耳元で囁く様に言われ、その同級生はドキドキしたと授業の後に周囲に話していた。日焼けした肌に冴える水色のワイシャツが残像として残り、微かに透けてみえたタンクトップに男らしさを感じた。彼はこれまでにない憧れを抱いた。また、性衝動も起き、授業の後にトイレへ行って個室の中でスラックスを下ろすと、ブリーフから先走り汁が沁み出ていた。未だオ◯ニーをした経験もないので、とりあえずトイレットペーパーで包皮を剥いて拭き取った。いよいよオ◯ニー「デビュー」か?と彼は思った。
或る同級生が、今週の宿直が体育教師の大平雅之先生だと話した。大平は、普段は全学年の保健体育を担当しているが、ラグビー部の顧問も兼務していた。コ◯ドームの付け方をこれからの時代は教えなきゃダメだと提案したのも彼であり、宿直に入ると生徒の誰かしらは男色の「洗礼」を受けていた。正美は言った。
「実はさァ、入寮したその日にあの、益子先生に注意されていた野澤、大平先生に『食われた』らしいよ」
「マジで?」
「でも、アイツ、中学生の時には付き合っていた教師がいたみたいだし、ずっと宿直室で大平先生と寝てたって」
「それって、ヤバくね?」
野澤佳憲は、スポーツ刈りで細めの容姿だったが、中学生の時は美術部に所属し、その顧問と肉体関係だったらしかった。モデルをいつも任され、ヌードが殆んどだった。彼自身も顧問だった教師のヌードをデッサンで描き、部活動が終わると必ず人気のない山林で「カーセッ◯ス」をしていた。すっかり男色癖がついている様だった。佳憲は自席から立ち上がり、正美と翔の話に加わった。
「あまりバラすなよ…。高校入学してからセッ◯スしてなかったンだから」
「お前、大平先生の何処がイイの?」
「チ◯ポがデカいンだよ。サポーターの様なビキニブリーフからはみ出る様にデカくて…しかもザー◯ンもとてつもなくて。オレ、気絶しちゃったよ」
「な! コイツ、スケベだろ!?」
二人のやり取りに翔はついていけなかった。オレはオ◯ニーすらしたことないのに…。この高校に入学してから、ずっとそんな話ばっかりだと、彼は塞ぎ込んだ。もし、大平先生が誰とでも大丈夫なら今夜宿直室に行ってみようかと思った。佳憲は言った。
「益子先生、カッコイイよなァ〜」
「あれ、大平先生はどうでもイイの?」
「否、何か違うンだよ。オーラを放ってる感じがして…」
「『オーラ』って、何だよ」
「う〜ん、何か触れてはいけない感じだな」
「そうかなァ?」
次第に、正美と佳憲の会話に翔はイライラし、ついにそれが「爆発」してしまった。彼は教室を出て行き、上履きのまま校舎を飛び出した。二人は、
「何だ、アイツ…」
と呆気にとられた。
これまで性というものに興味はあったが母親によって抑圧され、押し殺してきた翔にはどうしてイイのか解らなくなっていた。彼は山林の中に入ると絶叫し、慟哭した。バカ! バカ!と、何度も心の中で訴え、地面の上に転がった。まるで駄々っ子の様に這いずり回り、頭を抱えた。そんな彼の声に気付いたのか、「別荘」の居間でラジオを聴きながら夕食の支度をしていた亮司が出て来た。彼は泣き続ける翔に声をかけた。
「おい、大丈夫か!?」
だが、依然として地面に顔を伏せて泣き続けている。亮司は無言で翔を起こし、土だらけになった制服を手で叩きながら別荘に連れて行った。
亮司は翔に制服を脱ぐよう話し、上下とも洗濯機に入れて洗った。その間、翔はワイシャツに白いセミビキニブリーフという格好で居間のソファで塞ぎ込んでいた。亮司はコーヒーを淹れたマグカップを渡し、飲むよう言った。泣き疲れたのか先刻の様なイライラした感情はなく、ぐったりしていた。コーヒーを一口飲むと翔は口を開いた。
「…おじさんは、ここの用務員?」
「あぁ、先月から」
「こんなところがあるなンて、知らなかった」
「狂った様に泣いてどうしたの?」
「…おじさん」
そう言葉にすると翔は亮司に抱きつき、再び泣き始めた。亮司は背中を撫でながら泣くのを止めるよう促し、まずは事情を話すよう言った。翔はこれまでの経緯を伝えた。亮司は、
「つまり、お母さんの目は離れたもののなかなか性の処理をどうしてイイんだか解らないンだね?」
と聞いた。翔は涙を手指で拭いながら頷き、
「…中学生に入学して間もなくチ◯毛が生えて声変わりもしたけど、なかなか父さんも仕事で忙しくて…。母さんも勉強しろとうるさかったし、塾の先生が好きだったけどそんな思いも押し殺してきた」
と話した。
亮司は、翔の母親が彼にとって絶対的な存在で、心許して色々と相談できずに内なる思いを抱えつつ黙殺してきたのだなと分析した。大抵、両親からの愛情が希薄だと何らかの不具合が出て来るものだ。彼は、翔をベッドに連れて行った。股間を弄りながら接吻し、ワイシャツを脱がせた。突然の行動ではあったが、翔は亮司の体温に何か安らぎを感じた。唇ってこんなに柔らかいンだと、彼は亮司の背中に両腕を絡ませた。Tシャツを脱ぎ、翔はブリーフだけになった。すでに先走り汁で滴り、太く硬直していた。亮司も灰色のセミビキニブリーフだけになり、
「性は、決して怖がるものじゃない。身体が反応しているってことは、求めてるンだよ。君はおかしくなんかない、正常だ」
と、ブリーフ越しに彼は翔のチ◯ポを頬擦りした。翔は赤面しながら、
「イヤ、恥ずかしい…」
と、しかし内腿は何故か大きく開いていた。そのまま亮司は翔の身体に覆い被さり、乳房など彼の諸部位を接吻した。
「あッ、あッ、あん…」
二人はブリーフを脱ぎ、亮司はいきり勃ったチ◯ポを翔のと重ね、「兜合わせ」をした。未だ十六歳と若気の塊の様な翔は恥じらいも捨て、
「…おじさん、気持ちイイ」
と唇を求めた。すっかり接吻の虜になった様だった。
ローションを使わなくても、翔の先走り汁だけで十分にその代わりを果たしていた。包皮を剥こうと亮司は試みた。本当に童貞(チェリー)なンだなと、翔のチ◯ポは先端の付け根までは剥けなかった。そのうちに翔は全身をくねらせ、
「イヤ、あッ、あん…」
とオルガズムに達しそうだった。亮司はこのままオレもイッてしまおうとしごき、翔も彼の唇を求めた。
「あ、あぁぁぁぁん!」
接吻しつつ、翔は前屈みになりながら紅潮したチ◯ポの先端からうっすらと黄ばんだドロッとした愛液を跳ばした。続けて亮司も絶頂を迎え、
「イ、イクッ! イクッ!」
と声を上げた。全身が火照り、二人の下腹部は数多の愛液が飛沫の様に跳び散った。翔は冷めぬ欲情のままに、
「あッ、あぁぁ、あぁッ…!」
と亮司を両腕の中に引き寄せた。これまで経験したことのない欲情が、彼を狂わせていた。そんな翔に応える如く亮司は彼を堅く抱きしめ、
「嗚呼、愛おしいよ…」
と囁いた。
情事はその後も続き、翔は二度目のオルガズムを経験した。あまりの烈しさに亮司は喘ぎ、ベッドの上で大の字になって横たわった。彼は、
「…シャワー浴びよう」
と、翔と二人で浴室に入って身体を浄めた。亮司は、未だ翔が十六歳であることを忘れていた。脚や腋の毛はそれなりに生えているものの、肉付きも齢相応で肌にハリがあった。先刻まで、なかなか性の処理ができずその苦しみの故に嘆き悲しんでいたとは思えないほど、彼の表情は柔らかくなっていた。亮司は聞いた。
「どうだい、性って素晴らしいだろう?」
「…うん。これまで押し殺してきたのがバカみたい」
「おじさんで良かったか?」
「…うん」
翔はすっかり亮司を好いてしまっていた。シャワーの湯水を全身に浴びながら、二人は抱擁した。唇も重ね、離れようとしなかった。その間に洗濯機からメロディーが流れ、乾燥も終えたということを告げ知らせた。二人は浴室から出ると、寝室の床に脱ぎ捨てた下着や衣類を拾い、着た。
時計の針は、すでに午後六時半を回っていた。亮司は翔を寮まで送って行くことにした。呼鈴を鳴らすと、宿直に入っていた大平が応対した。彼は、
「彼のクラスメイトから話は聞きましたが、どうしたンですか?」
と聞いた。亮司は一応、
「実は、山林の中でドロドロになっちゃって…。取り乱してもいたンで、しばらくウチにいてもらったンですよ」
と話した。翔はうつむいたまま、
「用務員さんが話を聞いてくれて…。今は大丈夫です」
と言い、上履きに履き替えた。大平は深々と頭を下げ、
「わざわざ、ありがとうございます。明日は休みなので、様子を見ていきます」
と伝えた。
寮を出ながら、まさか「彼と濡れ事をした」なんて口が裂けても言えまいと、亮司は思った。しかし、あんな興奮したのは何年ぶりかなァ、嗚呼、そうだ、あの時以来だなと、昔を思い出した。
「別荘」に戻ると玄関先で貢が、最寄りのスーパーで買って来たのか思いっきり膨らんだビニール袋を片手に座っていた。彼は、
「亮ちゃん! ずっと待ってたンだよ!」
と唇を尖らせた。亮司は、
「あぁ、すっかり忘れてたよ。悪い」
と頭を下げた。
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💙反逆のデザイナー登場!キュアアズールの選択は彼女のもの!💙
スーツケースの中から、オレンジのくぐもった鳴き声が聞こえる。
ケイコは歩みを止め、身をよじる。
「おいおい!静かに!」彼女はしゃがみ込み、身をよじるバッグを押さえる。「もうすぐ着くけど、静かにして。学校に鳥を連れてきたなんて知られちゃいけないの!」
彼女は指で口を押さえ、彼を黙らせようとする。
その時、背後の廊下のドアが開き、別の女の子がキャスター付きのスーツケースを持って現れた。ケイコは飛び上がり、作り笑いをして、さっきの行動を隠そうとする。
女の子は目を大きく見開いてケイコを見つめ、何を見てしまったのか分からなかった。「大丈夫…大丈夫?」
「ええ!」ケイコはすぐに答える。「ただ…えーと…ステッカーを貼っていただけ。それだけよ。」
「どれ?」ケイコのピンクの布製スーツケースには、柄のないステッカーが山ほど貼られている。
「えーっと、いい加減にしときましょう」ケイコはどもりながら、質問を後ずさりし、ケイコを避けようと身をよじった。それから廊下を急ぎ足で進んだ。
ケイコは少し疑問に思いながらも、ほっと一息ついた。
ケイコは番号が書かれたカードを手に、割り当てられた寮へと急いだ。学生たちに個室が与えられていることに感謝している。特に今の自分の状況は便利だ。
「256…」ケイコはカードで部屋番号を確認する。左手の濃い紫色のドアに目を向けると、上部に金色で数字が書かれている。金色のノブに手をかけ、ドアを開ける。中に入ると、後ろ手にドアを閉めた。
少し窮屈な部屋だ。淡いベージュの床で、木の床が敷かれ、奥に窓がある。部屋の片側には白いドレッサーとベッド、反対側の隅には木製のロールトップデスクがある。
「これ…思っていたより狭くて殺風景…」ケイコはそう言いながら、その現実を実感する。
すると、ケイコの目は星空のように輝いた。「最高!!!」
ケイコは小さな部屋の中をくるくると回りながら、くすくす笑いながら、少しの間踊り明かした。
「やあ!」とケイコは声を掛けると、オレンジの声が聞こえ、ピンクのステッカーがぎっしり詰まったスーツケースがガチャンと音を立てて邪魔された。「まだここにいるよ!」
「あら!」ケイコは立ち止まり、気づいた。「ごめん、オレンジ。」
誰にも知られないようにドアに鍵をかけ、スーツケースのファスナーを開ける。
オレンジは勢いよく飛び出し、栗色のベッドカバーに倒れ込む。深呼吸をしている。
彼は疲れた声で「二度とあそこに入れないでくれ」と言い張る。
彼がそこで休んでいる間、ケイコは窓に近づき、様子を伺う。鍵がかかっていることに気づき、少し調整すると、窓がパタパタと開いた。夜空の涼しい��が部屋に入ってくる。
「窓が開くわ」ケイコは言った。「誰かが入ってきたら、外に飛んでいけばいいのよ。そうすれば隠れられるわ」
「うん…」オレンジはゆっくりと立ち上がり、翼を広げた。すると、たちまち疲れが吹き飛んだ。翼をパチパチと鳴らし、「よし!仕事だ!」と宣言した。
「え?」ケイコは驚いて振り向いた。「でも、まだ着いたばかりなのに!」と泣き言を言った。
オレンジは机まで飛んでいき、そこに着地した。「自分の力について知りたい?」と彼は尋ねた。
「ええ、そうよ!」ケイコは同意し、デスクチェアに腰を下ろした。肩にかけた鞄からプリキュアパレットを取り出した。
「私の絵がこんなものになってしまったの」ケイコは思い出した。
「あの絵はネオンペンを使ったのね」オレンジが説明した。「あれはあなたが私から拾ったペンよ」彼は翼でケイコのポケットにあるピンクのジェルペンを指差した。ケイコはそれに応えてそれを取り出し、パレットの隣の机に置いた。
「プリキュアは創造の精神によって動かされ、世界を救うために創造する力を与えられてるの。あなたが絵を見せたとき、その絵にはネオンペンの魔法が込められていたの。だから、その魔法があなたの精神を表現するのを聞きつけて、プリキュアパレットに変身したの。そして今、そのパレットとネオンペンがあれば、いつでもキュアチェリーに変身できるのよ。」
ケイコはペンをいじりながら、その情報を吸収する。「それだけ?変身させるだけ?」
「いや、もっとあるんだ。」とオレニは答える。彼は胃に勝った。「これを使った技を教えてあげるよ。」
ケイコはペンを手に取る。
「わかった。それで…長押しして、空中に何か描いて。」
「いい…?」ケイコはペンを持ち、カチッと音を立てる。ペンからピンク色の火花が散りばめられ、使うのを待っている。「何を描いてほしいんだい?」
「パパイヤ」オレニはよだれを垂らしながら、すぐに答える。
「なんでパパイヤなの?」
「お願いします!」
その懇願にケイコは肩をすくめた。「わかったわ」
彼女は空中に小さなピンクのキラキラしたパパイヤの形を描いた。
「カチッ」とオレニが指示する。
ケイコがペンをカチッと鳴らすと、絵はパパイヤに変身し、机の上に落ちた。
「え?!」ケイコは驚いて叫ぶ。
「やった!!」オレニは歓声をあげ、飢えた獣のように果物にかぶりつき始める。
「え、何だって?!」ケイコはまだ驚いている。「何もなかったのに本物の果物になったなんて!どうしてそんなことが起こるんだ!?」
「それが魔法だよ」オレニは食べながら言った。彼はすでに果物を半分食べていた。「ランチありがとう。必要だったんだ。」
「あら、魔法で食べさせるためだったの?!」ケイコは利用されたと感じて声を上げた。「お腹が空いていたら、食事が許されている場所で食べ物を買ってあげてあげられたのに!」オレンジはひどく唾を飲み込んだ。「ああ、でもそれだとペンの機能って分からないだろうね。マルチタスクって言うんだよ!」彼は得意げに微笑んでウインクした。
ケイコは言葉を失い、まだイライラしている。
「いいかい、プリキュアを探して何日も全国を放浪してたんだ。しばらく何も食べてないんだ」オレニはパパイヤを食べながら言い訳する。
「だって、これは大事な話だと思ってたのに!」ケイコは反論する。「ただフルーツを作ってるだけなのに!」
「ああ、これは大事なことだよ」とオレンジが答える。「君はもうプリキュアなんだ。あの人たちが君を助けに戻ってくるよ」
「あの灰色の男の子たち?」ケイコは説明を求めて尋ねた。
「ノワールとモノ。彼らは消しゴム。インクリングを使ってこの世界の色を奪うことが目的だ」
「でも、どうして?」ケイコは自分を抱きしめながら尋ねた。「どうしてそんなことを望むの?」
「彼らは師匠の下に仕える。聖鏡師匠。これを望んでいるのは師匠だ」
「なるほど、なぜそんなことを望むのですか?」
「わからない」オレンジは言った。食べ終わった食事からゲップをするために少し間を置く。それから続ける。「現れるまで、誰も彼のことを知らなかった。彼の企みが何なのか、私には全く分からない。ただわかっているのは、彼が脅威であり、この世界の全てが生命のない荒野になるまで止まらないということだ。そして、あなたはその脅威となる。あなたの力はインクリングたちの呪いを解くことができる。」
ケイコはその情報を理解し、身震いした。「それで…つまり、イレイザーは…」
「彼らは戻ってくるよ」オレンジはうなずいた。
ケイコは心配そうに目をそらす。奴らが彼女を捕まえに来る。
「おい、こっちを見て」とオレンジが尋ねる。彼女が言うことを聞くと、彼は約束する。「大丈夫だ。奴らに連れ去らせはしない」
ケイコはそれを聞いて軽く微笑む。
「その間、俺たちは奴らより一歩先を行く!それで、お前の今の任務はこうだ!」オレンジは構える。
その時、彼の額の小さなピンク色の斑点が光る。
「な、何をしているの?」ケイコは椅子に深く腰掛ける。
鳥は咳き込み始め、何かを吐き出す。それらは鳥の唾液で覆われた机の上でガチャガチャと音を立てる。
「うわっ…」ケイコは嫌悪感を抱く。
オレンジはもう一度咳き込み、口調を直す。「ごめん。ポケットがあればいいのに」
ケイコは机を見下ろし、驚きに目を見開く。 「これ…これ…」
机の上にはネオンペンが4本ある。ケイコのペンと同じ構造だが、上部の装飾が少し異なっている。濃い青にアイスブルーの六芒星、赤い線が入った黄色、濃い緑に鮮やかな緑の四芒星、そして白い五芒星が描かれている。
「まだネオンペンあるの!?」
「これが最後のネオンペンだ」とオレンジが言う。「このネオンペンを使って、もっとプリキュアを覚醒させたいんだ」
「え、もっとプリキュア?」ケイコは疑問を口にした。
オレンジは真顔でケイコを見た。「悪気はないけど、一人では無理よ。仲間が必要なのよ」
ケイコはその言葉に肩をすくめて、納得しなかった。彼女は尋ねます。「わかりました...それで、そのペンは誰のことを考えているのですか?」
「ペンがあなたを選ぶのではありません。あなたがペンを選ぶのです。」オレンジは答える。
彼はくちばしで青いネオンペンを取り、空中に弾き飛ばす。青い輝きが物語を語る。「そのためには、君がやったように、彼らにもやってもらう必要がある。ネオンペンを自分たちのアートプロジェクトで使ってもらうんだ。そして、彼らが声に出して情熱を表現すると、そのプロジェクトはパレットとなり、彼らはプリキュアになるんだ。」
キラキラ輝くモデルのような魔法少女の姿を見て、輝きは消える。
「だから、君は君の仲間になりそうな人たちにネオンペンを使わせるように仕向けるんだ。」とオレンジは指示する。「5人のプリキュアを早く集めるほどいい。」
ケイコは消えていく輝きだけに集中している。
「ケイコ、私の言ったこと、何か聞こえた?」
「うん!」ケイコは頷く。「でも…どうして私が?」
オレンジは自分を皮肉る。「喋る鳥の話なんて、誰が聞くっていうの?」
ケイコは自分を指差す。
「あなた以外にはね。」
「まあ、そうね。私って…あの…」彼女は不安そうにくすくす笑い、胸に手を当てた。「私、人付き合いが苦手なの。みんな私から逃げちゃうの。友達だけは…ちょっと待って」
ケイコは自分の考えに息を呑んだ。
「あおいちゃんと次郎くん!私の友達!私の味方になるにはぴったりよ!」
「えっと…友達?」その考えに、オレニは意味もなく眉を上げた。
「あ、あおいちゃん、きっと気に入るわよ!」恵子はもう興奮して、とりとめもなく喋り始めた。「彼女は私が知っている中で一番賢い人の一人よ!私たちは本当に仲良しなの。仕事ももううまくいってる。私が説得してここに来たの。彼女はファッションセンスがすごくいいの!きっと最高よ!」
最後の部分で、ケイコは歓声を上げて席から飛び上がるが、椅子に寄りかかったせいで、ケイコ自身もろとも床に倒れ込む。
オレニは机の端まで駆け寄り、ケイコが床に倒れ込み、痛みに頭を掻いているのを見た。
「大丈夫か?」オレニが尋ねる。
「ええ…」ケイコは苦しそうに答え、震える親指を立てる。
オレニはため息をつく。「思ったより大変そうだな…」
—-------------------------------------------------------------
ノワールはラウンジのドアを勢いよく開け放つ。灰色の荒野の真ん中に佇む、小さな平屋建ての家だ。中は灰色で統一され、装飾はない。バーカウンターと、ゲームの箱が置かれた棚がいくつか、ソファがいくつか、そして中央にビリヤード台があるだけだ。
「信じられない!」ノワールはラウンジの中を足踏みしながら、のたうち回る。
「まさか? ずっと可能性があったんだと思うけど」モノは両腕を背中に組んで、足を引きずりながら中に入る。
ノワールは両手を振り上げ、相棒に頭を振り回す。「どうしてそんなに落ち着いてるの? ショキョ師匠に報告しなきゃいけないのに、きっと激怒するわよ!」
二人はビリヤード台に近づく。モノは整然と積み上げられたボールを全て払いのけ、スイッチを入れると、中央に小さな穴が開いた。ノワールはポールと真っ黒なビリヤードボールを取り出す。ボールを所定の位置に置き、狙いを定める。
ポールを突き上げると、ボールは中央の小さな穴に転がり落ちた。ボールはぴったりと収まった。
カチッという音が鳴り、ボールが二人の目の前にプロジェクターを出現させた。プロジェクター越しに話す人物は不具合だらけで、灰色と黒のノイズしか見えないが、低く響く声は明瞭に聞こえた。
「何が起きたんだ?」
部屋が揺れ、少年たちは緊張する。ノワールは既に自分たちの任務が失敗だったことを知っている。
「うわああああああああああああ、ノワール、教えてあげて!」モノがノワールの脇腹に肘を打ち付け、緊張した笑みを浮かべる。
「俺が!?」ノワールは身構える。「何だって?全部俺に責任を押し付けたいのか!?」
「誰が言おうと構わない!教えてくれ!!」��スターが叫ぶ。「そして、理由は良いものでなければならない!!」
二人とも緊張して震え、作り笑いは灰色の顔から流れ落ちる汗の下で揺れている。「あの、あの、マスター…」ノワールは楽観的になろうとするが、うまくいかない。「私たちが失敗した理由は…ええと、私たち、私は、うまくいっていたし、すべて順調だったんだけど、あの、あの鳥がいて、それから…それから女の子がいて…私たちは、プリキュアに止められたんです…?」
一瞬の沈黙。ノワールは緊張した笑みを浮かべる。
「プリキュア?」ショキョウ師匠は、ストイックなほど冷静に説明を求める。
「はい、承知いたしました」ノワールが早口で答える。
一瞬の沈黙。
すると、投影された映像が炎を噴き出し、建物が地震のように揺れます。
消しゴム達は後ずさりし、激怒した主人に向かって恐怖の叫び声を上げます。
ノワールは、今度は緊張を隠そうともせず、どもりながら言った。「おいおいおいおいおい!怒らないで!いいか?!知らなかった!あ、本当にこんなことになるなんて知らなかった!ただ仕事をしていただけなのに!これは…」
彼はモノを指差した。
「モノが悪いんだ!罰を与えるのは俺じゃなくてモノだ!」
「何だって?!」モノは叫ぶ。「俺のせいだって?!仕事をしたのはお前だろ!」と言い返す。
「お前に割り当てられた仕事だろ!!」ノワールは反論する。
「ピンボールでハイスコアを出すのに忙しかったんだ!」モノは反論する。
「じ���あ、来るなよ!」
「シルバートンに追い出されたんだ!」
「じゃあ、仕事中に来るなよ!」
「もし俺が来なかったら、鳥に尻を叩かれてただろうに!」
言い争いはますます激しくなるばかりだ。
「十分!!!」
炎が噴き出し、ラウンジの周囲に衝撃波が広がり、二人は吹き飛ばされ、窓ガラスは粉々に砕け散った。
床に倒れたノワールとモノは、震える腕で体を支えながら、静かに見上げている。
マスターは「プリキュアはもういない」と怒鳴ります。
「俺たちもそう思ったんだ!」モノは嘆願する。「本当にそう思ったんだ!でも、妖精がどういうわけか君の鼻先をすり抜けて、ネオンペンを持って逃げたんだ。それに…今、野生の桜が地上をうろついて、インクリングの邪魔をしてるんだ!どうしよう!」
「他に何か?」ショウキョウ師匠は声を上げて命じた。「地球に戻って別のインクリングを作れ!」
「はい、マスター」ノワールは頭を下げ、目を床に落とした。
「この新しいプリキュアをできるだけ早く倒せ。もっとプリキュアが生まれるかもしれないぞ!」
「はい、マスター」ノワールはそう断言する。それから顔を上げて、不安そうに尋ねる。「でも、聞いてしまってごめんなさい。もしまたプリキュアが目覚めたら…?」
「プリキュアを全部倒せ!! 何言ってると思ってるんだ!?」
ノワールは再び床に顔を伏せた。「私がやります、翔京様!」
「もっとしっかりしろ」と小鏡師匠は警告する。声は大きく響くものから、静かに唸り声へと変わる。「だから、手伝ってくれ。もしお前たち二人が仕事をこなせないなら、元の生活に戻してやる」
ノワールとモノは息を呑む。いや。違う。違う。違う。
「今すぐキュアチェリーを始末します、翔京様!」ノワールは断言する。
「良い。」
すると投影は消えます。
ノワールは立ち上がり、ドアに向かい始めた。そして、まだ地面に倒れているモノを指差した。「今回は来ないでほしいんだ!わかったか?」
「よかった。どうせ行きたくなかったんだ」モノは同意する。
「ああ、じゃあショキョウ様がお前を処分してもいいんだな。わかった。気にするか?」ノワールは叱る。「気にしないで」
「楓がくれたビリヤードのボールと話してたんだ。そこで言われたことは真に受けちゃダメだよ」モノは保証する。「大丈夫だ」
ノワールは嬉々として、皮肉たっぷりに言った。「ああ、ボールが足りないのか? じゃあ、小京師匠のところに行って、面と向かって罵倒してみろ!」それから皮肉を止めた。「ああ、待て! そうだ! できないんだ!」
モノは呆れたように目を回した。「俺はバカじゃない。もう分かってることなのに、わざわざ言う必要はない。」
「よし、シルバートンが戻ってくる前に、このガラスを片付けて窓を直してくれ!」ノワールはドアに向かって足音を立てながら要求する。勢いよくドアを開け、縁につかまる。モノの顔に振り返り、怒りの唾を吐きかける。「バカ!」
それから彼は後ろでドアをバタンと閉めた。
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*ビープ* *ビープ* *ビープ* *ビープ*
ケイコのベッドの上で携帯のアラームが鳴り、画面には「6:00」と表示されている。
一瞬にして、ケイコは枕から顔を背け、微笑みながらスマホに向き直った。アラームを止めようとスマホを掴むと、ベッドに飛び上がり、両腕を広げて目を覚ました。「起きた!」
もう自分の部屋ではないことに気づき、ケイコは言葉を止めた。まだ太陽は出ていない。オレニは机の上で仰向けに寝ている。寮だという事実を無視しているようだ。静かにしているべきだろう。
そこでケイコは両手を口に当て、興奮をささやいた。「初日の授業!やったー!」
すぐにベッドから出て、奥の隅にあるバスルームのドアに向かった。
数分後、ケイコは制服姿でバスルームに出た。ただ、髪に結んでいるピンクのリボンだけは別だった。
太陽はまだ昇っておらず、オレニはシャワーの音に気づかず、まだ寝ている。寝坊なのか、それともこれまでの出来事で疲れ果てているのか。ケイコの目に入ったのは、机の上の4本のネオンペンだった。彼女は自分の使命が何なのかを知っている。
みんなと同じ紫色のランドセルに、教科書とプリキュアパレットを詰め込んだ。ピンクと赤の水玉模様のペンケースには、鉛筆、色鉛筆、消しゴムを詰め込んでいる。4本のネオンペンもケースに入れる。
それから、ケイコは部屋を出て、廊下へ駆け出す。文字通り、この時間には他に誰も起きていない。ケイコは廊下の突き当たりまで行き、ドアを開けて階段を現す。そして、あおいの部屋がある3階へと階段を上る。
—-------------------------------------------------------------
その部屋で、葵はキルトの上に青い毛布を重ね、深い眠りに落ちている。机の上にはミシンが置かれ、本や糸巻きもきちんと整理されている。
バンッ!
「あおいちゃん!!」
突然のドアの閉まる音とケイコの叫び声に、死ぬほど怖かったアオイは目を見開いた。
ドアをノックする音が鳴り続ける。「あおいちゃん!あおいちゃん!あおいちゃん!起きて!起きて!!」
葵は気を取り直し、両手と膝で顔を覆い、うめき声を上げた。
ノックの音は、葵がドアを開けるまで鳴り止まない。白い縁取りと白いフリルが付いた、柔らかな青いパジャマと、疲れた瞳が露わになった。眼鏡をかけていないので、見えるのは友人のぼやけた姿だけだった。
「入学おめでとう!」恵子は嬉しそうに挨拶する。
葵は「恵子、授業は9時半から始まるのに。どうしたの?」と文句を言う。
恵子はもう葵から離れ、廊下を歩いていく。「早く着替えて!次郎を起こしに行ってくるわ!」と葵に言う。
葵はもう階段へ降りようとしていた。
葵は「…え?」としか言えなかった。
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男の子たちは建物の反対側の廊下にいて、次郎は1階の部屋にいる。彼も布団にくるまってぐっすり眠っている。
バンッ!
「おい、次郎!!」
「やあああ!!!!」次郎は驚いて叫び、ベッドから飛び起きた。毛布が床に落ちた。マットレスに倒れ込むと、胸が張り裂ける思いで胸を押さえた。
「おはよう!」ドアの向こうからケイコが叫んだ。「準備して!あなたとアオイにコーヒーを持ってくるわ!」
次郎は歯を食いしばり、ショックで目が震えていた。そのまま1分ほどそのままだった。
制服と眼鏡をかけ、ドアを開けると、案の定、ケイコが白い泡のコーヒーカップを2つ持って立っていた。どちらにも紫色のスプラッターロゴが描かれていた。ケイコは目が覚めたような満面の笑みで「おはよう、次郎!」と挨拶した。
次郎は「えーと…どういうこと…?」としか言えなかった。ケイコはコーヒーを手渡し、「食堂が別の建物にあるわけじゃないのよ」と説明した。
「ケイコ」制服姿の葵が近づいてきた。相変わらず朝の不機嫌さが目に見える。「そんなに早く起きると、人間じゃないんじゃないかって思えてくるわ」
「だから、私はコーヒーを飲んではいけないのよ」とケイコは答え、アオイにもう一つのコーヒーカップを差し出した。
アオイはそれを受け取り、すぐに一口飲み込んだ。すぐに後悔し、吐き気をこらえた。「これ、ラテ?」と彼女は尋ねた。
「クリーム増しで!」ケイコは嬉しそうに答えた。
アオイはケイコに目を細めた。「私はブラック派なの」
ケイコの目が虚ろになった。「どうしてそんなことが分かるの?」と、ケイコはそれを否定しようとした。
「前に言ったでしょ」とアオイはぼんやりと答えた。
ケイコは歯を食いしばり、指を鳴らした。「ごめんなさい…」
ジローはコーヒーをそっと一口飲みながら、ケイコに言った。「気分が良くなるなら言うけど、僕はラテが好きなんだ…だから…僕のは正解だよ」
「ケイコ、君が早く起きるのは分かるけど、私たちも起こさなきゃいけなかったの?」葵が尋ねる。「コーヒーを飲んでいると、少なくとも1時間は起きないんです。」
「ああ、そう!」とケイコが話を戻した。「これは一度きりだって約束するわ… いや、取り消します。約束はできないけど、でもちゃんとした理由があるって誓うわ!」
「そう願ってるよ。」とジローが付け加えた。
「あなたたち二人に一緒に来てほしいんです。大事なこと…秘密を話したいんです!」
葵と次郎は困惑したように顔を見合わせ、葵が「どんな…?」と尋ねる。
ケイコが言葉を遮った。「大きいのよ!」
—-------------------------------------------------------------
オレンジは机の上の休憩場所で寝返りを打った。窓から差し込む朝日への反応で、体がなかな��目覚めようとしない。何日も渡り歩き、行動を続けてきた彼には、この休息が必要だった。これだけの休息は、実に気持ちがいい。
彼は立ち上がり、羽を広げ、あくびをした。「おはよう、ケイコ…」と温かく挨拶する。
ケイコがいなくなった。
「ケイコ!?」
ネオンペンもいなくなった。
「な、な、ケイコ、どこにいるんだ!?」部屋中飛び回ってケイコを探したが、見つからなかった。「ああ、食べ過ぎて寝込んだらこうなるんだ。二度とあんなことしないぞ…ケイコ、おかしいじゃないか!」と呻いた。
すると窓に視線が移った。ケイコの姿が目に入った。寮の正面、花壇の真ん中に石のベンチがいくつか置かれた場所に。ベンチにはアオイとジローが座っていた。
「ケイコ、何してるんだ?」オレニは声に出して尋ね、外へ飛び降りようとした。
しかし、顔がガラスにぶつかった。
衝撃を感じ、オレニは窓枠に倒れ込んだ。ぼんやりと窓の取っ手に目をやる。飛び上がって取っ手に立つと、体重をかけて取っ手を回し、窓を開けることができた。
ようやく会話が聞き取れるようになった。最初に聞こえたのは、ケイコが嬉しそうに「ほら、プリキュアになればいいじゃん!」と言う声だった。
オレンは怒りと恐怖が入り混じった表情になった。「ええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?!?!?」
ケイコはそれを聞いていない。代わりに、得意げに「で、どう思う?」と尋ねる。
あおいと次郎はケイコを呆然と見つめる。
「プリ…何?」あおいが尋ねる。
「わからない」と次郎が言う。
ケイコのつむじが垂れる。「信じてくれないんだね」
「昨晩見た夢の話でしょ」あおいが確認する。
「違う!これは夢じゃない!」ケイコは懇願する。「わ、わ、わかった。もう一度やり直そう。そういえば、オープンハウスの時、あのイカモンスターが『ガラァァ���ァァァァ!!!』って言ってたよね。あなたたちは二人とも『ああ、ケイコはどうやって生き延びたの?あれがケイコを捕まえたのかと思った!』って感じだった。警察は『イカが突然消えた!どうしてそうなったの?』って感じだった。でも、本当のところはこう。私があのイカと戦ったのよ!」
「そうね…」あおいはコーヒーを一口飲んだ。その返事は、まだケイコの言葉を信じていないことを如実に示していた。
「わかったわ、次郎。ごめん。嘘をついたの。君のノートのせいで残ってたわけじゃないけど、目撃したって嘘はついてないわ。本当に残ってたのは、私が描いた鳥を見て、彼が戦おうとしたからよ!また別の悪者に捕まったの。そしたら、彼が喋り始めたのよ!」
「鳥が喋るの?」次郎が尋ねる。
あおいは彼の耳元で囁く。「正気を失ってるのよ」
「本当のことよ!」ケイコは懇願する。プリキュアパレットを取り出して見せる。「私の絵がこうなったの!プリキュアに変身できる!こんなにたくさんの力があって、あ、それにすごく素敵なコスプレも!あおい、コスプレ好きなんでしょ?」あおいはそれには答えず、きっぱりと言った。「ケイコ、妄想を語るのは構わないけど、それは妄想だって認めなさいよ!」
「あおいちゃん、あなたもプリキュアになれるの!今すぐ!」ケイコは明らかに必死になり、ぎこちなくネオンペンを取り出した。そしてペンを友達の顔に近づけた。「このペンをあなたのプロジェクトに使ってくれれば、私と一緒にプリキュアになれるわ!一緒に世界を救えるわ――!」
「ああああああああああああああああああああああ!」
ケイコの言葉は鳥の鳴き声にかき消された。オレンジ色の閃光が突然降り注ぎ、ケイコの顔面に叩きつけられた。
誰も反応する間もなく、オレンジ色のぼんやりとした物体はケイコに体当たりし、視界から引きずり出した。
衝撃をはっきりと見ることができなかったアオイは、何が起こったのかに驚き、立ち上がった。「ケイコちゃん!?」
オレンジはケイコを寮の反対側に押し倒し、壁の角に投げ飛ばした。ケイコは壁に叩きつけられ、羽根が体に張り付いた。ケイコはただそこに立ち尽くし、打撃で痛む頭に手を当てていた。
「奴らは何も見ていない!」オレンジは誇らしげに翼を払いながら、断言した。「さて、どこまで話したっけ?」彼は激怒してケイコの方を向き、何度も羽根をケイコの頭に叩きつけた。「何を考えていたんだ!?」
「痛い…」ケイコはそれしか言えなかった。
オレンジは叱責する。「運命で味方が誰なのか分かっていたら、私は何も言わなかったわ。でも、あなたには運命なんてない!プリキュアのことは誰にも言ってはいけないのよ!」
「彼らは私の友達よ!」ケイコは言い訳をする。「そして、私以外に友達はいないのよ。何?友達に嘘をつこうって言うの?」
「ええ!」オレンジは苛立ちを隠さない。「プリキュアのことは秘密にしなきゃいけないのよ!」
「じゃあ、どうやって味方を募ればいいの?」ケイコが尋ねる。
「彼らはあなたの友達だって言ったでしょ?守りたいの?」オレンジはその問いに答える。
「もちろん!」 「じゃあ、もし彼女たちがプリキュアになって命を危険にさらす理由が、友達だからだけなら、そんな危険にさらす理由にはならないわ!インクリングを止めるために、彼女たちがチームにどんな貢献をしてくれるの?」
「彼女たちは…」ケイコは説明しようとしたが、言葉に詰まった。「彼女たちは…」
「ケイコちゃん!」
葵の呼びかけに、ケイコは質問に答えるのを止めた。彼女はオレンジを掴んで背中に隠し、くちばしを手で塞いで口を塞ぎ、喋れないようにした。
葵が角を曲がってきて、「大丈夫?」と尋ねる。
「大丈夫よ、葵」ケイコは作り笑いで安心させる。「心配しないで」
「間違っていたら訂正して。でも、何かが空から舞い降りてきて、ケイコの顔に体当たりして、ここまで引きずり戻してきたのを見たのよ」
「ああ、あれ?」ケイコは緊張した様子で笑いながら、説明しようとした。「つまずいちゃったの」
「10メートルも後ろにつまずいたの?」
「みんなもするでしょ!」ケイコはうまく言い訳しなかった。「とにかく、私は大丈夫。それが一番大事。ねえ、朝食に行って授業の準備をしようか?」
「あの…」葵は、友人が話したくないことをすでに察した。肩をすくめて「ええと…」と言った。
ケイコの背後で、オレニは困った顔をしている。
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ケイコ、アオイ、ジローは学校の廊下を一緒に歩いている。緑色の廊下で、ヘッドライトはステンドグラスになっている。たくさんの生徒が歩き回っていて、声が混ざり合ってまるで人だかりのような音を立てている。
アオイは時間割表を出して読んでいる。「そうだな…ホームルームはこの廊下のどこかにあるはず。よく見ててね。」
ケイコは冗談を言う。「私は見たい。」
アオイとジローはケイコをぼんやりと見つめる。眼鏡をかけた二人は腹を立てる。ケイコは慌てて「ごめん」と呟く。
ケイコは話題を変え、「ねえ、午後は他にあまりないけど、少なくともホームルームは一緒だしね。選択科目は何?」と尋ねる。
「グラフィックデザイン。」ジローが答える。
ケイコは、まだ時間割表に集中しているアオイの方を向く。「アオイ?」
「ん?」と気付いた葵は慌てて答えを探した。「えーっと……『経営戦略と起業』」
恵子の笑顔が消える。「ビジネス?美大で?」
「別に私が選んだわけじゃないわ」葵は言い訳をしながら、書類をバッグにしまう。「いつか役員になるのよ」
恵子が尋ねる。「ファッションはどうなったの?」
その質問は答えられない。何人かの生徒が驚きの表情で近づいてくる。
次郎は照れくさそうにうろたえ、恵子と葵は困惑している。葵が尋ねる。「何かお探しですか?」
「幻覚ですか?」生徒の一人が驚いて言う。「もしかして、綾野葵さんですか?あ、青い髪に見覚えがあるんです」
「えっと…」葵は緊張した笑みを浮かべる以外にどう反応すればいいのか分からなかった。「ええ、私です」
「お父さんは綾野吉孝さんですよね?何の会社のCEOなのですか?」別の生徒が尋ねる。
「映画製作チェーンのCEOです」と葵は答える。「正確には『プリズムスタジオ』です」
「えっ!?」と生徒たちが叫び、さらに注目を集める。次郎は恥ずかしさで顔を真っ赤にして、本を顔にかぶせている。ケイコはずっと困惑していて、友達が注目されていることに気づいていた。それなのに…まるで幽霊になったような気分だ。
葵は次々と質問を浴びせられ、明らかに恥ずかしがり、無理やり笑顔を作った。
「家ってどんな感じ?」
「映画の上映が早いの?」
「『エレクトリック・シーズ』って知ってる?今年後半に公開される映画なんだけど」
「お父さんのお小遣いは多いの?」
「えっと…」葵は驚きながらも、優しくしようと努める。「一つずつ質問してくださいね。」
生徒の一人が「ここで何をしているの?」と尋ねる。
葵は眉を上げた。「え?」
「わからないな。君みたいな実業団の子は他の私立校に行くと思っていたんだけど。その分野の授業は他にもたくさんあるでしょ?なんでここに来たの?」
「えっと…」葵はどう答えていいか分からなかった。その時、彼女の視線は女子制服に向いた。袖の生地が一枚一枚剥がれている。「袖、どうしたの?」と葵は尋ねる。
「あら?」少女は彼女の言葉に気づいた。「私は2年生なの。直すお金がないの。」
「失礼ながら、あなたのキャラクターの邪魔になるし、悪い印象を与えてしまいますよ。」葵は厳しい口調で言った。彼女は針と糸のように両手を握りしめ、指示した。「針と透明な糸で返し縫いをしてください。ブラウスの生地はとても薄いので、細い針をお勧めします。それから、直す機会が来るまではジャケットを着てください。」
「あら!」少女は驚きのあまり目を見開いた。彼女は大きな柔らかいピンクのベビードールジャケットを取り出した。「こんな感じ?」
それを着ると、葵の目は喜びに輝いた。彼女は「ええ!とてもよく似合っています!」と喜びを隠せない。
友人の熱意と急に自信が湧いてきた様子を見て、恵子は微笑んだ。
「ありがとう!」少女は微笑んで言った。 「ファッション科に通ってるの?」と生徒が尋ねた。
「いえ、違います。」葵は我に返り、その思い込みを否定した。
「どうして?きっと合うよ!」と生徒たちは言った。「もし気が変わったら、今週末までにスケジュールを変更して登録できるんだ。」と指摘した。
葵は腕を掴み、その考えに納得がいかな��様子で目をそらした。
「さあ、ホームルームの場所を教えてあげるよ!」と生徒が言い、3人は後を追った。
歩いていると、恵子は声を上げなければならないと感じた。笑顔で手を振って挨拶した。「こんにちは!さくら恵子です!画家なんです!いつか有名なアーティストになりたいと思っているんです!」
ほとんどの生徒は彼女を無視する。一人の生徒が振り返り、「…えっと、何ですか?」と尋ねた。
恵子の笑顔が消えた。誰も彼女が誰なのか知らないし、気にしているようにも見えない。 「僕は…あおいの友達です。2年生の時に会ったんです。次郎に紹介してもらったんです。」
「あ、僕、もう一人のビジネスマンです!」次郎は注目をどう受け止めていいのか分からず、どもりながら言った。彼は話しながら手をもてあそんでいる。「僕の、僕の家族は…えっと、彼らは…僕は…」その時、彼は気を紛らわせる何かを見つけた。「ほら見て!ホームルーム!」
それは1階の教室で、反対側の壁には3つの窓があり、画材の棚が並んでいる。教室の正面にはホワイトボードと先生の机がある。机に座っている先生は、グレーのスーツに青と黄色のストライプのネクタイ、眼鏡をかけたがっしりとした体格の男性だ。
すでに数人の生徒が机を占領している。残念ながら、空いている席は3つしかない。
「ここが私たちのホームルームです!」生徒が自己紹介する。 「山田先輩は厳しいけど、授業は進歩的だから、君にぴったりかもしれないよ。」
「ありがとう」と葵は答える。生徒たちは葵を空いている机へと案内し始めた。5列で、各列に4席ずつある。葵は真ん中の列の真ん中左の席に座る。
次郎と恵子は二人とも教室の後ろへ急いで行き、次郎は最後列の真ん中左の席に座る。恵子は一番右、窓際の席に座る。恵子がもっと気になっているのは、隣に誰が座っているかということだ。
オープンハウスで会った赤毛の女の子は、片耳にイヤホンをつけて、ノートに書き込んでいる。恵子は席に着き、挨拶しようとした。
しかし、遮られる。
「秋野さん」山田先生が声をかける。レイは、先生が中身を覗いているのではないかと心配するかのように、本を閉じた。「今年は一番前の席に座ったらどう?」
レイは顔を上げて、「それは提案?」と尋ねた。
「いいえ」山田は最前列の右真ん中の席にペンを向けた。「こっちへ来なさい」
「おおおおおおおお」というからかいの声が何度か聞こえた。
レイは呆れて席を代わろうと立ち上がった。ケイコの姿は見えなかった。
「えっと…もしもし!」ケイコが手を振った。レイはケイコの声が聞こえなかった。「あ…」
「あーあ」目の前の男子生���が頷いた。彼はレイに言った。「新入生だろうな。この学校で生き残りたいなら、一つアドバイスがある。秋野レイは本当に嫌な奴で、意地悪な奴だ。大人でさえ彼女を嫌っている。身の安全が保障されているなら、彼女と関わらない方がいい」
ケイコは眉を上げた。理解できない。「どうして誰も秋野さんを好きにならないの?一体どうしたの?」
それを聞いたレイは机から振り返り、皮肉っぽく言った。「私が嫌いなのは、典型的な尖ったティーンエイジャーの典型で、怒りっぽさと誠実さに欠けるところがあるからよ。そういえば、あの子は誰にも知られたくないオンラインアカウントを持っていて、夏休みの間に露骨なクィア差別用語を連発していたの」
何人かの生徒がうめき声をあげる。一人が「黙れ、アキノ!」と泣き言を言う。
それを見たアオイは、嫌悪感に歯を食いしばり、「うわ、それは…すごい」と小声で言った。
「ひどい子ね」隣の女子生徒が耳元で「前の学校で喧嘩を売って停学になったらしい」と言う。
その噂話にアオイは目を見開く。生徒は頷きながら「彼女はタフな子よ」と付け加えた。
その時、山田が手に持っていた小さなベルを鳴らし、授業の開始を告げた。彼は立ち上がり、教室の中をうろうろ歩き回っている。
「よし、生徒たち、静かに!みんな静かに!授業が始まるぞ!」
みんなが耳を傾ける。聞こえるのは、学用品を運び出すざわめきだけだ。
先生はホワイトボードマーカーで「山田春樹です」と書きました。
「初日の授業へようこそ!週末を除いて、このホームルームが皆さんの毎日の授業になります。今年度の担任、山田春樹です。今日は一番長い授業なので、国語と数学を重点的に学びます。このクラスは1年生と2年生で構成されているので、これから説明する内容は既に皆さんの中にもご存知の方もいるでしょう。」
先生の退屈な説明の間、ケイコは机と学用品の準備に追われている。良い第一印象を与えたいのだ。
ノート。チェック。鉛筆。チェック。添削ペン。チェック。算数の教科書。チェック。
よし。ケイコ、みんな大丈夫だよ。しっかり目が覚めてる。ちゃんと聞いてる。何も忘れてない。いいスタートだ。きっと最高の第一印象を与えられるよ!
「よし。試験を始めるために、みんな机を片付けて!」
ケイコの目が真っ白になった。「え、何?」
生徒たち全員が信じられないといった様子でケイコの方を向いた。
ああ、ケイコはついに注目を集めた。猿の手だ。
「えーと…」ケイコは緊張した面持ちで笑う。「入学初日に抜き打ちテストって、ちょっと面白いよね…」
「抜き打ちテストじゃないよ」山田は明らかにがっかりした顔で言った。
「ケイコ」葵は厳しく言った。「入学書類に書いてあったんだ」
ケイコは何も言わない。
葵が付け加える。「一緒に読み上げたよ」
ケイコは何も言わない。
「3回も」
ケイコはこれ以上自分がバカだとは思えない。静かに机に倒れ込み、顔面を地面に打ち付ける。
初日なのにもうバカなことしちゃった…
試験が行われている間、オーレンジは目立たないように学校の外を飛び回っていた。ケイコがいる教室の窓を見つけ、窓辺に着地した。中を覗き込みながら、生徒たちを観察し、次のプリキュアを探そうとしていた。
今は全員が試験を受けているようで、手がかりとなるものは多くない。
次のプリキュアには、有能で、頭が良く、意志が強く、情熱的なメンバーが必要だと彼が求めるのは間違っているのだろうか?
残念ながら、彼が監視している窓はケイコの隣の窓と同じだった。ケイコは彼を視界の隅で捉え、彼を見た。彼女は驚いて目を見開き、手を振って彼を立ち去らせた。
おレンジは「次のプリキュアを探して!」と口パクで言います。
ケイコは「わかってる!」と口パクで返します。
「さくら?」先生が机から気づき、「何か問題でも?」と尋ねる。
ケイコは立ち止まり、先生のほうを向く。「いいえ」と頷く。
「勉強に戻ってください」
オーレンジは飛び去るしかなかった。「このままじゃ、プリキュアはいつまでたっても集まらないぞ!!」と心の中で呟く。
試験の結果、そして授業の終わりは、ケイコの予想通り、恥ずかしさのあまり机に頭を突っ込んだまま終わった。
「30%」
目の前の男子生徒が言う。「少しでも安心するならいいけど、毎年必ず一人は細かい字を読まない人がいるんだ…」
それでも気分は晴れない。
「あらまあ!」山田は突然驚きの声を上げた。嬉しい驚きだ。彼はあおいの机に向かい、テスト用紙を返した。「新入生。初日。満点。気のせいかな?」
あおいはテスト用紙を受け取る。優しく「私、もっと難しい試験を受けたことがあるの」と言う。
山田は彼女の机に手を置き、微笑む。誇らしげに「見張ってるよ」と言う。
周りの生徒たちは身を乗り出して見守る。誰がクラスのトップか、目撃者になったと、ざわめき始める。
一方、誰が最下位かは一目瞭然だ。彼女は友人への誇りと、自分への失望が入り混じった気持ちで、その状況を見つめていた。少なくとも今回は誰も彼女をいじめていない。
チャイムが鳴り、皆が荷物をまとめて出発し始める。ケイコもそろそろ帰ろうとしたその時、先生が「さくら、ちょっと話がある」と言うのが聞こえた。
ケイコは先生の机に近づき、自分の答案を見せた。
先生はケイコを安心させた。「別に問題ないよ。ただ心配しているだけだよ。勉強しなかった理由があるんだろう?」
ケイコはケイコの腕を掴み、恥ずかしそうに目をそらした。「忘れたのよ」
「じゃあ、答案を読んでなかったの?」
「読んでたのよ!」ケイコは両手を差し出し、懇願するように言った。「本当に読んでたのよ!ただ…忘れてただけ…」
「正直に言うけど、君のことは分かっていたわ」
ケイコの顔が恐怖で引きつった。「まさか…まさか?」
「転校する前は落第生だったんだね」先生は説明した。「だから、そんな評判の子にとって初日が大変になるのも無理はない」
だから先生は最初から私が不合格になると思っていたんです…
「あら、先生?」あおいは部屋を出ようとしたが、立ち止まり、戻ってきて話に加わった。バッグから書類の束を取り出した。「さくらさんの友達なんです。さくらさんのご両親から、先生に診断結果の書類をお渡しするように頼まれました。」
書類を手渡しながら、ケイコは疑問を抱いたようにアオイを見つめる。アオイはケイコの方を向いて、「だって、あなたに任せられなかったんだから」と付け加えた。
「まあ、そうね」とケイコは肩をすくめて認めた。彼女もきっと忘れていただろう。
山田は紙をざっと読み、太字で書かれた診断名に指を触れた。
「注意欠陥多動性障害」
「なるほど…少しは状況が明るくなりましたね」山田は書類を脇に置き、「ええと、そうですね、確かに障害のある生徒の対応は苦手ですが、頑張ってみます。その間、家庭教師をつけましょうか?」と言った。
「よろしければ」と葵が口を開いた。優しく穏やかな笑顔で、「お手伝いできます」と答える。
山田は明らかに驚いた表情を浮かべ、「え、大丈夫ですか?」と尋ねる。
「大丈夫だと思います」と葵は安心させる。「私は彼女のことを知っていますし、あなたもご存知の通り、私は自分の勉強は十分にできます。彼女は一人で何もする必要はありません」
ケイコの顔が恥ずかしさから温かい気持ちに変わった。彼女は感動した。
そして、オレンジが一人ではできないと言ったことを思い出した。
「あおい、負担をかけられないわ…」と彼女は懇願する。
「もしあなたが私��とって負担だったら、何年も前に友達をやめていたわ」あおいはそう言って安心させる。
ケイコは微笑む。「私はあなたにふさわしくない」と認める。
「あおい綾乃、君のおかげで私のクラスはすごく良くなったと言ってもいいよ」と山田は言う。
ケイコは、あおいが先生のお気に入りになったことを確信した。
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その夜遅く、ケイコとアオイはアオイの寮の部屋に泊まりました。ケイコはベッドに座り、ノートと鉛筆を手に持っていました。アオイは彼女の前に立ち、家庭教師役を務めていました。
「さて、簡単なことから始めましょう。」アオイは指示しました。「半分は何パーセントに相当するか教えてくれますか?」
「えーと…」ケイコは考え込む。「50?」
「50って何?」
「50パーセント。」
「ほらね。じゃあ、4分の1を言ってくれる?」
「20…5…?たぶん…?」
「うん。」アオイは頷く。「わかった。それを足して、何の分数になるか言って。」
ケイコは言葉に詰まる。「アオイ…」と弱音を吐く。
「一歩ずつ、ケイコ、頑張れよ。」アオイは手を叩いてケイコを励ます。
「えーと…2分の1と4分の1って、違うよね…」ケイコは明らかに混乱している。「何もないの?」
アオイはため息をつく。ケイコに近づき、紙を取り出して書いてあげる。
「2を4に割るの。合成数だから。4分の2と4分の1。答えは4分の3よ。」
ケイコは呆然とした顔で言う。彼女は机の上の糸巻きに目を向け、指差して尋ねた。「そんなにたくさんの糸巻きをどこで買ったの?」
葵は困惑したように糸巻きの方を向く。「無印良品よ。とにかく、仕事に戻ろう――」
「ちょっと待って、つまりプロジェクトは君にあるってこと?」
「集中して」葵は静かに問いかける。
オレンジは葵の部屋の窓辺に近づき、中を覗き込むと、二人がセッションの最中だった。ガラスに頭をもたせかけると、かすかに二人の声が聞こえてくる。
葵は本を手に部屋の中を歩き回りながら、「必要な寸法を理解するには、まず計算してみるのが一番よ。そうしないと後悔するわ」と説明した。
ケイコはずっと椅子で身をよじりながら、ノートに走り書きしていた。
葵は説明を続ける。「例えば、長さが30センチ、幅が22センチの紙があるとしたら、作業スペースを念頭に置く必要があります。それを考慮するには、面積、つまり長さと幅の積を知る必要があります。私の例では、30に22を掛けて660センチになります。」
ケイコは顔を上げて尋ねる。「もう少し数字を控えめにしてもらえませんか?よくわかりません。」
葵はケイコをちらりと見る。明らかに少しイライラしている。机の小さなランプのせいで、ケイコの上に暗い影が落ちている。
彼女は明かりに向かって手を挙げ、影に気づいた時に、そのことに気づいた。表情を和らげ、深呼吸をして、状況へのアプローチを変えた。「よし、やってみよう。」と彼女は決心する。彼女は影を消すように光を避け、ケイコの隣にベッドに腰掛けた。二人は光を浴びていた。アオイは鉛筆でケイコのノートをそっと押し下げ、「定規がなくてもフレームを測れます。指先で測ってください」と説明した。
アオイは自分の指先を掲げた。彼女の手には青から水色のグラデーションのネイルポリッシュが塗られている。もう片方の手で人差し指を指し示した。「ほとんどの指先は1センチメートルと同じ長さです。だから、フレームを測りたいのにメジャーが���い場合は、端に沿って指を動かしてください」
アオイはケイコのノートの端に沿って、2本の人差し指で動かして実演した。「1、2、3…」
少し指を動かした後、彼女はこう結論づけた。「あなたのノートの幅は28センチですよ。」
「へえ。」ケイコは微笑んで頷き、自分の印象を述べた。「どこでそれを習ったの?」
「こういう試験に受かるコツは…膨大な数字から学んだの。」アオイはそう答えたが、友人のために言葉を戻した。「でも、このコツはお母さんから教わったの。」
ケイコの笑顔が消えた。「ああ…」
アオイは立ち上がり、自分のスケッチブックを取り出した。古くて擦り切れているが、まだ無傷だった。表紙には、どっしりとした青いドレスを着た女の子の棒人間が描かれている。まるで幼児が描いたような見た目だけでなく、手が端から切り取られていて、あまりにも大きすぎる。
「あれは…母がいつも持っていたファッションモデルのコンセプトアートを自分で描こうとした、下手な試みだったの。どうしても、自分のは大きすぎるものばかりだった。」葵の目は悲しげだったが、思い出したように微笑んでいた。「お母さんに教わったの、スケッチの構図をうまく決められるように、この測り方を教えてもらったの」
彼女はこの本に載っている最新のスケッチをめくる。それはドレスのファッションモデルスケッチだった。白い着物の上に紺色の縁取りがあり、袖は肘までしか伸びていない。ベルトはサイドに紺色のフリル生地、後ろには大きなリボンがついている。スカートの残りの部分は膝丈で、スタイル的にも模様的にもウェーブがかかっている。後ろのリボンからは半透明の青い生地が伸び、モデルのすねまでドレープしている。モデルはすねを完全に覆う紺色のブーツを履いており、髪には銀色の縁取りのサファイアがついたセルリアンブルーのリボンが飾られている。何よりも、このスケッチはプロフェッショナルな印象を与え、サイズバランスも完璧だ。
「私…彼女はきっと気に入ると思う…」
ケイコは何も言わない。オレニもそう思う。それを聞いたオレニは、少し悲しげに目を見開いた。ケイコは、アオイが手首に着けているものに気づいた。ジャケットの袖口で少し隠れているのだ。銀色の宝石があしらわれた、派手な濃紺の腕時計で、時計自体には小さなボタンが付いていて、開けるようになっている。
「きっとそうするわ」ケイコは言い張る。「きっとそうするわ」
アオイは本を置き、ようやく「さっき私のプロジェクトについて話されたけど…」と認めた。
机の脚の横に箱が置いてある。開けると、マネキンの胴体部分が現れた。その上にはゆったりとした青いシルクのジャケットが載っていて、肘までゆったりとした波打つ袖が付いていて、襟の縁には小さな宝石がいくつか付いている。
オレニは見たものに驚いた。
ケイコの目が星のように輝き、笑顔が広がる。「そんなにできたの?!」
「厳密に言うと、まだ終わってないわ」アオイは認めた。ジャケットの裾を引っ張りながら、彼女は言った。「裾はまだちゃんと縫ってなくて、自分で着てみたんだけど、宝石と大きな袖で上半身が重すぎるのが問題なの。裾には何もないの。それに、私が目指しているスタイルには大きすぎるの」
「ベルトを付けてみた?」とケイコが尋ねる。
「実は付けてみたの」アオイは、無地の銀色のベルトバックルが付いた無地の白い帯を取り出す。マネキンに巻き付ける。見た目からして、彼女は頬を噛む。「どうだろう、問題は解決するんだけど、ただ…まあ…邪魔なだけ。もちろん、まだ完成じゃないけど、邪魔なのは確かよ」
「ちょっと何か付け足す必要があるだけ」ケイコは立ち上がってよく見る。「例えば…ベルトのバックルを自分で作るとか、素敵なトリム模様を描いてみたらどうかしら。それか…」
ケイコはチャンスだと悟った。ベッドの上の自分のペンケースに視線を向ける。青いネオンペンが突き出ている。
ケイコはそれを拾い上げ、戸惑った様子でケイコを見つめるアオイに見せる。「ラメ入りのペンだと思う。うまくいくと思うなら、貸してもいいわよ」とケイコは言う。
窓の外にいたオレンジは、ジレンマを抱えながらその状況を見つめている。止めるべきか? 放置すべきか? これまでの状況からすると…もしかしたら、間違っていたのかもしれない。
アオイは手に渡されたペンをそっと受け取る。ペンの繊細な輝きに見とれながら、じっと見つめる。
その時、視界の端に窓からオレンジ色の光が見える。
二人は窓の方を向く。オレンジはパニックに陥り、窓枠をつついて飛び去ることで平静を装おうとする。
「ただの鳥よ」ケイコは怪訝な顔をしないようにしながらそう言う。
ペンを握りしめた葵は、こう告白した。「あのね、今朝から…あなたの言ってたこと、本当のことだったような気がするの」
「えっと…本当に?」ケイコは疑わしい態度を取ろうとするが、うまくいかない。
「あなたが本当に言っている通りの人だと仮定して」葵は冗談を言いながらも、少しだけ本気を込めて言った。「正直に言うと、その高級ペンは他の人にあげた方がいいと思うわ。私は美術の授業にも出ていないし。私には向いてないと思う」
「ええ、そうよ!」ケイコは友人の手を握りながら主張した。「そうよ!今日、あなたは十分すぎるほどの実力を見せてくれたわ!あなたは有能で、頭が良く、意志が強く、それにファッションに情熱を注いでいる!どうしてファッションの授業を受けないの?」
「理由は分かってるでしょ!」葵は手を離し、ペンを胸に押し当てた。 「お父さん!お父さんは…運命の人なのよ。ケイコ、お父さんの陰口を言うわけにはいかないわ!ファッションの道に進むなと厳しく命じられたのよ!私…なんて悪い娘なの。」
「でも、あなたはいい子よ!」ケイコはためらうことなく反論する。「友達だからこの学校を選ばせたんじゃない。あなたが本当にやりたいことを知っていたから、ここに来るように誘ったの。あなたも分かっているでしょう?あなたが経営者になりたくないのは。」
「父の言うことは絶対よ。」アオイは言う。「私が選ぶことじゃない。」
「そうよ!」ケイコはアオイを安心させる。「あなたの人生、そして情熱をどう追求するかは、あなた以外の誰にも決められないわ!アオイ、あなたの選択よ。ファッションデザイナーになりたいなら、自分でやりなさい!その選択は永遠にあなたのものよ!」
アオイの手が腕時計に触れる。指が時計の縁をなぞる。
そして彼女は時間に気づく。 「あら!もう出て行った方がいいわよ!」
「え?」ケイコは戸惑っている。
アオイは少し慌てた様子で説明する。「この時間にお父さんに毎日電話するって約束したの!電話しないといろいろ疑われるわ!明日またね!」
「え、えっと…わかった…」ケイコは仕方なくアオイにドアまで押し出される。
アオイはドアを開け、ケイコを押し出すと、慌てた様子で「ありがとう!明日は家庭教師ね!じゃあね!」と言い、ドアを勢いよく閉める。
ケイコは廊下に立ち尽くし、どうしたらいいのか分からず途方に暮れている。
階段脇の窓から何かが鳴いているのが聞こえる。振り返るとオレンジがいた。窓まで歩いて行き、開けて彼を迎え入れる。
彼は真剣な表情で彼女に言った。「全部聞いたよ…正直に言うと、気になっているんだ。僕が知らない彼女について、君はどんなことを知っているんだい?」
「実は、かなりたくさん知ってるよ」ケイコは腕を差し出しながら言った。彼は彼女の腕の上に立った。「彼女は芸術のためにここに来たわけじゃないけど…もし彼女がそう望んでいたなら、そうしていただろうってことは分かってるんだ」
「なぜ?」と彼は尋ねた。
「彼女の母親が亡くなってからもう5年近く経ちます…ええと…亡くなってから…彼女の父親は…理想的とは言えない状態になって…」
葵は携帯を取り、番号をダイヤルする。電話が通じると、彼女は無理やり笑顔を作り、明るい声で言った。「あ、お父さんだ!」
「調子はどうだい?」その声は厳しくて冷たい。
「すごく調子いいよ!」葵は無理やり楽観的に言った。「今、寝る準備をしてるところなんだけど…」
「学校での君の成績のことを言っていたんだよ」と彼女の父親は説明した。
「ああ…まあ、それは持ち越しです。試験も完璧に合格して、先生もすごく感心してくれています。みんな本当に優しくて、いい方向に進んでいるって実感しています。」
「あれは私の彼女よ。」
葵はくすくす笑う。「分かってるでしょ。」
「この学校にはかなり迷っていたけど、うまくいっているみたいだね」と父親は言った。「友達がどうしてあんなにくだらないことを言っていたのかは分からないけど、少なくとも君の思い込みじゃないんだ。このまま続ければ、来年にはちゃんとしたビジネススクールに編入できるかもしれない。綾乃にとって、それは素晴らしいことだね」
葵はもう笑顔を偽ることができない。父親はすでに彼女を転勤させようとしている。だが、彼女は驚いていない。父親は娘に自分の跡を継いでほしいと思っているのだ。高給の仕事だ。娘のファッションデザインへの情熱に、父親は強く反対していることを隠そうとしない。
「葵?」彼の声で現実に引き戻される。
「あ、うんうん、まだここにいるよ」あおいはそう保証する。
「頑張ってくれ」と父親は指示する。「少しでもミスをしないように気をつけろ。お前はそんなことはないはずだ。」
「もういいですか?」できるだけ早く電話を終わらせたいと思い、あおいは尋ねた。
「もちろんだ」父親が命じた。
「愛してる」葵は優しく、心からの笑顔で彼に告げる。
彼女は返事を待つ。
返事は、彼が電話を切ることだった。
葵の笑顔が消える。彼に愛していると言われてから、もう5年近く経っていた。
葵は電話を置き、ベッドに向き直り、背中から倒れ込む。息苦しそうに息を吐き出す。頭の下から枕を掴み、顔に当てて、枕の中で叫ぶ。
息をしたい時だけ枕を顔から離し、ぎゅっと抱きしめる。
彼女は閉じ込められている。自分の人生をコントロールできていない。ビジネスマンの娘になることを望んだわけでもない。死んだ母親になることを望んだわけでもない。冷酷で魂のない、強欲な経営者になる道を歩むことを望んだわけでもない。優秀な学生になることを望んだわけでもない。先生のお気に入りになることを望んだわけでもない。こんなに惨めになることを望んだわけでもない。
彼女は他の人の前では、気にしていないふりをすることができます。
少しの愛とサポートを求めるのは間違っているのでしょうか?
確かに、ケイコとジローはそう思っている。二人はありのままの彼女を受け入れてくれる。でも…実の父親から受け継いだものとは違う。
その時、アオイはネオンペンがまだ自分の手に握られ、指で弄んでいることに気づいた。
「私は良い選択じゃないわ。」
「そうよ!そうよね!」
頭の中で声が流れる。
あおいは机の上のジャケットの作品に視線を向ける。ペンを手に押さえる。確かに、青いラメだ。手のひらにラメで波打つ線を描く。片方の目に、もう片方の目をジャケットに当てる。
彼女は夢を見る。
パジャマに着替えると、あおいは机に座り、作業に取り掛かる準備を整える。
あおいはすっかり自分の世界に浸り、完全に集中すると、頭の中のあらゆる音や背景が���え去る。彼女の背後にあるものはすべて、青と紫の魔法のゾーンだ。
あおいはマネキンからジャケットを外し、机の平らな面に置いて採寸する。二本の指を使って、端から5センチほど上に伸ばすことを決める。まっすぐな木の板を取り出し、まっすぐに伸ばす。
ハサミで端を切り落とし、ジャケットを短くしていく。残骸は気にも留めず床に落ちる。
そこから、葵はジャケットの裁断した端を折り畳み、よりプロフェッショナルなジャケットの端を作り始めます。彼女はキットから小さな針と灰色の糸巻きを取り出します。片目を閉じて焦点を合わせ、慎重に糸を針の穴に通します。
彼女は端を縫い合わせます。針は布地をスムーズに通り、反対側から針を取り出し、再び前面に突き出します。ジャケットの端全体が織り込まれるまで、これを何度も繰り返します。端まで来たら、糸を切ります。
マネキンにジャケットを再び着せると、ベルトを外して作業を開始します。淡いセルリアンブルーの布を切り、無地のベルトに巻き付けることで、ベルトに新たな色と質感を与えます。太めの針に糸を通し、この布をベルトの上に縫い付けます。バックルの端は慎重に切り落とし、端を完璧に縫い合わせます。布の四辺を縫い合わせ、落ちないように注意します。
彼女は机の下にもう一つ箱を置いて開けると、プラスチックの宝石とパイプクリーナーがいくつか入っていた。青い宝石を一つ取り、ベルトのバックルの前にかざす。小さすぎる。別のものを試してみたが、バックルが完全に隠れてしまう。パイプクリーナーを取り、毛羽を削り始める。彼女が欲しいのは、傷んだ部分だけだ。
パイプクリーナーを削り終え、完全に毛羽がなくなると、彼女は時間をかけて青い宝石を中心に、花の形を丁寧に形作る。ループ状の端を上に押し上げて、より立体的なブローチに仕上げる。
今度は極太の糸をもう一つ取り、ワイヤーで編んだ花に巻き付けていく。花が太く、白く見えるようになる。この作品には、意図的に交差するループ模様が描かれている。
芸術作品を作る過程では、アーティストが自分の要素に没頭し、この小さなファッションプロジェクトに情熱を注ぐこと以外に何も重要ではない。
葵はペンを手に取り、糸の上をなぞり始める。花のブローチにグリッターがくっつき、輝きを放つ。花びら2枚ごとに丁寧に作業することで、グリッターが繊細に散りばめられているように見える。次に、ベルトにペンで緩やかな波模様を描き、できるだけゆっくりと丁寧に作業を進める。
作業が終わると、別のパイプクリーナーを花のブローチとベルトのバックルの留め具として使う。しっかりと締める。
マネキンにベルトを装着すると、ジャケットに新たに生まれた輝きと完成された表情が現れる。
葵は自分の作品に感嘆し、出来栄えに微笑みを浮かべる。
ある意味、芸術的な領域が終わってしまうのは残念だが、最終的な結果は必ず報われる。
正気に戻った時には、辺りは真っ暗だった。スマホを見る。「午前5時」
コーヒーが飲みたい…
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翌朝、葵は寮の外を歩いていた。手に深い青色のリボンがついたラベンダー色の箱を持って。丘の方へ歩き、恵子を探していた。
「葵ちゃん!」恵子は提灯の柱から手を振った。橙二は提灯の頂上に座り、近づいてくる二人を見下ろしていた。
「持ってきてくれたの?」恵子は興奮して尋ねた。
「ええ、そうよ」葵は箱を見せながら言った。少し心配そうに「ファッション教室に見せるの、本当にいいことなの?」と尋ねる。
「参加したいんでしょ?」とケイコが尋ねる。
「えっと…わからない…」葵はまだ疑念を抱いている。
それから顔を上げた。もう彼を隠せない。
鳥を見ると、葵はケイコにぶっきらぼうに尋ねる。「本当のことを言ってたでしょ?」
「えっと…えっと…」ケイコは両手を合わせ、どもりながら言った。正直に言うべきかどうか迷う。「え、ほら…」
「あそこにいるのはコンゴウインコ?」と葵はオレンジを指差して尋ねる。
それがオレンジの衝動を刺激する。「何て呼んだんだ!?」
彼は覆いを全部吹き飛ばし、オレンジ色だった顔が真っ赤になった葵の顔に飛びかかる。彼は怯えた少女に怒りをぶちまける。「失礼!僕はコンゴウインコなんかじゃない!」
葵は襲われたことに怯え、悲鳴を上げて顔を覆い、箱を地面に落とした。
「オレンジ!」ケイコが彼を呼ぶ。彼は立ち止まり、ケイコの方を見る。ケイコは彼に落ち着くように合図する。「この話はもうしたでしょ。葵はいい子よ。」ケイコは照れくさそうに微笑み、葵に言った。「彼のことでごめんなさい。こっちはオレンジ。だいたい、僕を助けてくれた子なの。これで分かったわね。」
「ああ。なんとなくわかった。」葵は安心するように両手を下げながら認める。「いい子なの?」
「コンゴウインコなんかじゃない。」オレンジは叱る。「僕は妖精なの。」
葵は呆然と彼を見つめる。「なんてこと…」「質問。」と短く答えるしかなかった。ケイコは「ペンを使ったの?」と聞かざるを得ない。
アオイは答えない。
叫び声が返答を阻む。
二人は振り返ると、別の丘にいる生徒たちの集団が目に入った。そのうちの一人が石に変わっていた。昨日のベビードールジャケットを着ていたあの子だ。
フィールドの色が消えていく。
ノワールが黒い折り紙を片手に、ベビードールジャケットをもう片手に、二人に近づいてくる。彼は一瞬、声に出して嫌悪感を漏らした。「どうしてこんな色の服を着るんだ?気持ち悪い」
「また来たの!?」ケイコは胸に拳を突きつけて叫ぶ。
「何だって!?」アオイは何を信じていいのか分からず、他の生徒たちに何度も頭を振る。
ノワールはようやく二人と向き合い、ニヤリと笑う。「ああ、キュアチェリー。見つけたぞ」
アオイはケイコと向き合うべきだと決意する。ノワールが言及しているのは、ただ一人しかいない。
「戻ってくるって言ったでしょ!」オレンジが心配そうに言う。
ノワールはアオイに視線を向ける。アオイはノワールの視線を感じ取る。彼女は彼の方を向き、恐怖の視線を向ける。彼は得意げに「あら、君の可愛い友達は誰?」と尋ねる。
ケイコはアオイの前に立ち、彼女を守るように腕を前に出す。
「ええ、構いません。今日が彼女に会う最後の日です。そして、あなたにとって��最後の日です。」ノワールは宣言する。
ノワールは手と折り紙を頭上に掲げた。「見よ!インクリング!」
折り紙は辺り一面に黒魔術を噴き出す。ジャケットにも反応し、黒魔術を噴き出す。
ふわふわの白い毛糸と黒い雄羊の角を持つ、巨大な黒羊に変身する。
恐怖で体が硬直したあおいは、戦慄しながら尋ねた。「あれは…何…?」
「オープンハウスで見たの覚えてる?あのイカモンスターは何だったの?」ケイコは慌てて答えた。
ケイコはプリキュアパレットを取り出して差し出した。そして、決意を固めて指示した。「おレンジ、あおいを守りなさい。私が守るわ!」
ピンクネオンペンのクリック音とともに、背景はピンク色の魔法の空間へと変化した。
全身がピンク色に染まったさくらけいこは、ペンを頭上に高く掲げている。もう片方の手でプリキュアパレットを持ち、それを開く。
「プリキュア、クリエイティブチャージ!!」
ペンでパレットのピンク、赤、緑の点を軽く叩く。3つの点が光り、中央にキラキラと輝くチェリーピンクが現れる。ペンをパレットに浸すと、ペンがペンで満たされる。
けいこはペンを持って飛び跳ね、ペンをこぼしまくり、背景は緑と赤のペンの斑点で覆われる。けいこ自身の腕、脚、頬にもペンの斑点が散らばっており、彼女はそれを目に見えて認識している。
ペンを手首に回し、魔法のペンで円形の白い腕章を作る。
ペンを足にも回す。それから彼女はペンを広げ、地面を踏み鳴らして、深いピンクのつま先とヒールが付いた、膝丈の長い丸い白いブーツを作り上げた。
ペンを差し出し、全身を回転させると、渦巻くインクが彼女の胴体に当たり、フリルのついたピンクのスカート、太い赤いベルト、そして薄緑の縁取りと花のような白い肩パッドが付いたゆったりとした薄ピンクのジャケットができた。
彼女はペンを掲げて微笑んだ。もう一度カチッと音がすると、ペンはピンクの絵の具のしみで燃え上がった。彼女はペンを投げ、回転して絵の具を四方八方に飛ばした。
絵の具は彼女の胸に落ち、薄緑のブローチが付いた大きな赤いリボンができた。
絵の具は彼女の耳に落ち、赤い桜のイヤリングができた。
絵の具は彼女のベルトの後ろに落ち、淡い半透明のピンクのリボンと、スカートの後ろから垂れ下がった厚手の布地ができた。
絵の具の飛び散りが彼女のスカートに落ち、赤と緑の絵の具のしみとなった。ペンキがリストバンドに落ち、赤いリボンが浮かび上がる。腕を前に伸ばしたままにしておくと、ペンがリストバンドに落ち、それを振り払うとリボンがほどけ、赤いリボンがリストバンドから垂れ下がる。
再びペンを手に取り、頭の上をなぞると、赤いチェリーが飾られた薄緑色のヘッドバンドが現れた。ヘッドバンドから魔法が漏れ出し、かつてブロンドだった彼女の髪はマゼンタ色のペンキで覆われる。
ケイコはお団子ヘアを持ち上げ、手を放すと、ペンキが光り輝き、髪に溶け込む。髪は濃いピンク色になり、後ろまで届く長い毛束と大きなトップのお団子ヘア、そしてチェリーの茎のような大きなつむじが特徴的になった。
彼女はペンを顎に当て、歯を見せて笑う。そして、ばつの悪そうに親指で顎についたペンキをはじく。彼女の目は、髪の色と同じピンク色に輝いている。
彼女は空中に飛び上がり、ピンク色の魔法が噴き出す。
ジャンプの頂点に達すると、ピンク色の魔法は背後で爆発し、ペイントのように広がる。彼女は四肢を大きく広げてポーズをとる。
ネオンペンとパレットがベルトに取り付けられる。
ヒロインは落下し、上からさらにピンク色の魔法が噴き出す。
「筆で情熱と命を世界に広げる!」
彼女はぎこちなく着地し、倒れそうになるが、なんとか体勢を立て直す。そして最後のポーズを決める。片足を上げ、反対側の腕を頭上に上げてピースサインを作る。
「ピンクのペインター!キュアチェリー!」
チェリーは一瞬の間をおいて、顔にかかる髪の毛を吹き飛ばした。「この髪にはまだ慣れなきゃ…」と呟きながら、気を取り直してインクリングを倒すべく駆け出す。
アオイ���それを見ながら、「何…?」と尋ねようとした。
インクリングが地面を踏み鳴らし、地面が揺れてあおいはつまずいてしまった。オレンジが「どけ!」と叫んだ。
あおいは二度言われるまでもなく、一目散に立ち上がり、隠れるために走り出した。オレンジも一緒にいた。
箱を忘れたのだ。
キュアチェリーの疾走は揺れる地面の影響を受け、つまずいてしまうが、バランスを取って転倒を防いだ。ぎこちなく、あおいはぴょんぴょん跳ねて回避しようとする。インクリングはゆっくりと足を踏み鳴らし、あおいの方向を向いた。
一歩踏み鳴らしただけで地面が持ち上がり、チェリーはそれが来るのを察知した。チェリーは跳ね返り、蹴りを入れようとした。
インクリングの体がウールであることに気づかなかった。あおいの足はウールに引っかかってしまった。
インクリングに蹴り飛ばされ、キュアチェリーは何もする暇がなかった。彼女は両手と自由な足でなんとか踏ん張ろうとした。
しかし、何かがおかしい。下を見ると、毛糸がまだ脚に絡みついていて、それを包み込んでいることに気づいた。膝を曲げることもできない。驚いたように「え、何?」と声を出すことしかできなかった。
はい…羊を物理的に攻撃しないでください!
チェリーはかろうじて、頭上に迫りくる影に気づいた。インクリングが彼女の上に覆いかぶさり、両前脚で踏みつけようとしていた。チェリーはかろうじて片足でジャンプして避け、今度は倒れ込んだ。
しかし、その隙にアオイの箱を見ようと振り返った。中にはジャケットが入っていた。蓋がきしむ音で開いた。
チェリーはその驚きに息を呑んだ。インクリングが貪欲な目でその品物に目をやり、ノワールがニヤリと笑うのを見て、さらに息を呑んだ。
いや。もう二度と。こんなことは許さない!
ジローは前回の攻撃でノートを失くした。消しゴムがそれを破壊したのだ。もう一人の友達の作品まで失くさせるわけにはいかない!
「そんなはずないでしょ!」インクリングを無視して、チェリーは箱を掴もうと駆け寄った。インクリングは黒いペンキを彼女に吐きかけたが、チェリーはそれを避け、背を向けて箱を守った。
あおいはそれを聞くと、走るのをやめる。まだ視界と聴覚の範囲内にいる。「ケイコ!?」と叫ぶ。
それを見ているオレンジが叫ぶ。「何をするんだ!」
チェリーは、踏みつけられる音から飛び退きながら答える。「プリキュアとして、みんなが情熱と愛情を込めて作ったこの大切な作品を守ると誓ったのに!前回は失敗した。またか!」
チェリーは木の枝に登り、木に退く。足はまだ毛糸に覆われていて、動きが制限されている。毛糸を殴って剥がそうとするが、手に付いてしまい、急いでこすり落とさなければならない。しかし、うまくいかず、関節のない前腕に毛糸を乗せる。彼女は苛立ちのあまり、「この毛糸、呪ってやる!」と罵る。
インクリングが木に唾を吐きかけ、チェリーはインクまみれになる前に飛び退かざるを得なくなる。彼女は手にピンク色のペイントの球体を作り、インクリングに投げつけて攻撃します。
ペイントは吸収されてしまうため、何も起こりません。
この獣を攻撃できない!
インクリングはチャンスを逃さず、キュアチェリーに突進する。しかし、攻撃を耐え、木に叩きつけられる。
その場に立たされたまま、彼女は起き上がろうとする。目が自分の脚と前腕に合う。自分だけだろうか、それとも毛が広がっているのか?
確かに。ゆっくりと広がり、腕と脚を這い上がってくる。「脚の感覚がない!」と気づき、彼女は少しパニックになり始める。彼女は二の腕を掴み、手を動かそうとする。厳密には覆われていないが、静脈の流れが遮断されている。「どうして手が痺れるの?!」
このインクリングを一刻も早く始末しなければ、毛で窒息してしまうかもしれない。それはまずい。
指を動かすのも一苦労だが、彼女はネオンペンを取り出す。目の前にインクリングが突進してくるのが見えた。彼女は「よし、これに対処しましょう!」と命令します。
ピンクネオンペンのクリック音とともに、背景がピンク色の魔法の空間へと切り替わる。
「ピンクネオンペン!私の翼を創って!」
彼女はパレットのピンクのボタンにペンを押す。中央のスペースにピンクの絵の具が現れ、ペンを浸すと、ペンがペンで満たされる。
キュアチェリーは魔法の絵の具をくるくると回し、激しく飛び跳ねる。
回転が遅くなると、魔法の絵の具が彼女の周りを回り、背中に降り注ぎ始める。
ピンクの光が瞬き、彼女の姿が完成する。チェリーは足を外側に蹴り上げ、頭上にピースサインを描いてポーズをとる。
チェリーは驚いて背中を見つめる。「これは…」言葉では言い表せない。
背中には、丸いピンクの妖精の羽があり、濃いピンクの縁取りが施されている。
チェリーは両手を握りしめる。両手を広げると、赤いペンキがこぼれ、赤い球体の形になった。
「ゴー・ワイルド・チェリーズ!」
球体はいくつかの小さな球体に分かれ、彼女の体の周りを回転した。
「プリキュア…」
彼女は頭上に手を挙げた。球体はすべて合体し、大きな赤い球体になった。彼女は手を後ろに引いた。彼女は標的をじっと見つめた。
「チェリー…スプラッター!!!」
彼女は球体を投げた。それはいくつかの球体に分かれた。そして…
爆弾はインクリングを完全に避け、空へと消えていった。
チェリーは驚きで目を見開いた。痺れた手でぐちゃぐちゃになっていた。
「冗談でしょ…」オレンジは怯えながら呟き、チェリーの方へ飛びかかった。
ノワールは笑いすぎて、涙を拭わざるを得なくなった。そして、無理やり言葉を絞り出した。「難しいかと思ったよ。でも、意外と簡単だった!君って本当にバカだね!」
チェリーは歯を食いしばり、激しく憤慨した。
インクリングはチェリーを轢こうとする。チェリーはかろうじてもう片方の足でよけようとするが、うっかり箱を手放してしまい、箱はチェリーの隣の地面に落ちてしまう。
インクリングはそれを受け止め���奪われたおやつによだれを垂らす。片足を差し出すが、チェリーは箱を掴み、胸に抱きしめ、背中を向けて代わりに受けようとする。
チェリーは地面に蹴り倒され、痛烈な一撃を受ける。かろうじて膝立ちになり、片方の手でペンを取り出す。ペンからピンク色のペンキが噴き出し、黒い唾の攻撃を防いだ。唾はペンキに圧倒され、消えてしまう。
「チェリー!」オレンジーがチェリーの上を飛び越える。「全部食べなきゃダメだよ!!」
チェリーは「私がやるわ!」と彼に保証する。
ピンクネオンペンをクリックするだけで、背景がピンク色の魔法の空間へと変化します。
「ピンクネオンペン!私の翼を創って!」
彼女はパレットのピンクのボタンにペンを押し当てます…
何も起こらない。
インクリングも混乱して止まる。
チェリーはパレットの上でペンを連打し続ける。何も起こらない。「な、な、なんで効かないんだ!前は効いたのに!」
オレンジは顔が恐怖で歪んで気づき、驚く。「やばい…」彼は叫ぶ。「まだ新人のプリキュアなんだ!パワーアップしてないんだ!だから変身モードは1回につき1回しか使えないんだ!言うの忘れてた!」
チェリーは叫び返す。「どうして忘れるの!?」
チェリーは気づかず、羊の毛で叩きつけられる。また地面に押し倒される。羊毛がお腹を覆っている。チェリーは膝をつき、呼吸が苦しくなる。慌てて尋ねる。「どうすればいいの! オレンジ!?」
「え、えっと…えっと…」 オレンジはパニックでどもりながら言う。彼には理由がわからない。彼はこう言いました。「慌てるな!何か考えよう!」
考える暇などない。チェリーは地面からの攻撃に巻き込まれ、制御不能に陥って宙を舞い、インクリングは毛糸を使ってチェリーの体を背中から振り落とす。
今度は地面に着地すると、毛糸に完全に閉じ込められ、出ているのは頭と片腕だけだった。
箱はチェリーの腕から遠くへ飛んでいき、届かない。丘の反対側、あおいのいる場所へと落ちていった。
「ケイコちゃん!!」あおいは叫びながらケイコに手を伸ばした。相変わらず友達のことが怖くて、どうしたらいいのか分からなかった。パニックのあまり、膝から崩れ落ち、両手を胸に抱えた。呼吸が乱れ、視界が揺れ始めた。
「だめだめだめだめ、お願いだめだめ…」おレンジもパニックだ。何もできない。プリキュアを失いそうだった。
キュアチェリーは毛糸の罠から抜け出そうともがくが、動けない。彼女もまたパニックに陥っており、呼吸困難によるものかもしれない。
チェリーのパニックは、箱とアオイに目を留めた瞬間に収まった。
彼女は思わず微笑んでしまった。やった甲斐があった。
インクリングが視界を遮り、目の前にはノワールも浮かんでいる。得意げな笑み。腕を組んでいる。彼は嘲るように言う。「ほら、こんな役立たずを救うためにあんなに努力していなければ、こんな状況にはなっていなかったんだ。最期の瞬間に、それに気づいてほしいんだ。」
そしてチェリーが笑っていることに気づき、彼の表情は困惑へと変わる。「どうして笑ってるんだ? 綿毛で窒息しそうだよ。」
「友達のプロジェクトを救ったんだ。やった甲斐があった。」チェリーは息を呑む。 「だからこの役を選んだんです…そして、その選択に後悔は全くありません!私のものだったんですから!」
葵の目に輝きが宿る。
「選択…」
あなたの人生、そして情熱をどう追求するかは、他の誰にも決められるべきではありません!それはあなたの選択です、葵。ファッションデザイナーになりたいなら、自分で決めなさい!その選択は永遠にあなたのものなのです!
あおいは再び集中し始めた。「ケイコ…」
あおいは下を向くと、蓋が外れて、自分で作ったジャケットが露わになった箱を見た。感情がこみ上げてきて、彼女は体を抱きしめ、震えた。
インクリングとの戦いを見上げ、そして再び箱を見下ろした。
ブルーネオンペンを取り出し、顔に当てた。
少し考えた後、あおいは眼鏡を外し、表情を強張らせた。「私が彼女を助けてあげよう。」
ノワールはチェリーを挑発する。「それなら、布を節約する方が命が助かるわね。」彼は視界から外れながら指示を出す。「インクリング、仕事を終わらせろ。」
インクリングは二本の前脚を掲げ、チェリーを踏みつけようとした。チェリーは恐怖に震えた。
「だめだ!!」脚が下ろされると同時に、オレンジが叫ぶ…
しかしインクリングは立ち止まる。痛みに目を見開き、横に倒れる。
あおいはそこに立っていた。足に太い針を刺して気絶させ、ジャケットを着ていた。
チェリーはそれに気づき、「あおい…?」と呟いた。
あおいはすかさずキュアチェリーのもとへ駆け寄った。あおいはチェリーの自由な腕を掴み、引きずり出そうとするが、うまくいかない。「さあ、ここから出そう!」と懇願する。
インクリングが唸り声をあげ、あおいの注意は再び立ち上がったインクリングへと向けられる。
あおいはチェリーを放し、両腕を広げてチェリーの前に立つ。その表情は決意に満ちている。
「おい!」ノワールが文句を言う。「お前は関わるな!」
「やめてやる!」あおいが叫び返す。
チェリーは怯え、「あおい、出て行って!!」と懇願する。
友人の返答に、葵はわずかにがっかりしたように頭を下げた。「価値があったって言ったでしょ? 価値なんてどうなってるの? あの精霊がいなかったら、私はこの学校にもいなかったし… 本当にやりたいことを追求する選択肢もなかったのに…」
葵は再び頭を上げ、叫んだ。
「私はデザイナーだ!それが私の選択だ!!」
フラッシュ
あおいのジャケットからまばゆい青い光が放たれる。
インクリングが後ろに倒れ、ノワールの目がくらむ。今度は、ノワールは身を守るために片腕を顔に当てる。何が起こっているのかに気づき、叫ぶ。「だめ!」
チェリーは、畏敬の念を抱きながら光を見つめ、「やったね…」と呟く。
青い光が魔法のようにあおいの周りを巡り、彼女を守った。ジャケットが彼女の体から剥がれ落ち、形を変え、何か別のものへと歪んでいくのを、彼女は見守る。
「え…何が起こっているの?」あおいは驚き、辺りを見回す。「ケイコ!?」
「アヤノさん!!」オレンジは笑顔で彼女に駆け寄り、嬉しそうに告げる。「ネオンペンを受け入れた!プリキュアだ!」
「僕…プリキュア?」あおいは悟る。
「キュアチェリーと同じだ!」オレンジは答える。 「まるで…」その時、あおいの顔がぱっと明るくなった。「え、私もコスチュームもらえるの?!」
「え…ええ?」その返事に、オレンジジーの顔は真っ白になった。「なんでそれが一番気になるの?」
ジャケットが新しい形に変形し終えた。あおいの目の前に現れたのは、パレットのようなものだった。ピンクの縁取りが宝石で飾られた、きらきらと輝く派手なパレットで、ガラスの蓋があり、真ん中に空いている。周りの空いている部分には、黄色、オレンジ、赤、ピンク、紫、青、緑の順に色が描かれている。
「それってコスチュームじゃない…」あおいは、デバイスが手の中で浮かんでいるのを見ながら言った。
「ペンをクリックして、パレットの好きな色を3色タップして、空いているスペースで混ぜて、『プリキュア クリエイティブチャージ!』と叫ぶだけで、あとは任せてください!」
「それでいいの?」あおいは尋ねた。彼女は自分の質問にこう答えます。「いずれにせよ、ケイコがあなたを信頼しているのなら、私もそうすべきだと思います!」
ブルーネオンペンのクリック音とともに、背景は青い魔法の空間へと変化する。
全身を青く染められた綾乃あおいは、ペンを胸に当てている。もう片方の手でプリキュアパレットを持ち、それを開く。
「プリキュア、クリエイティブチャージ!!」
彼女はペンでパレットの青、ピンク、黄色の点を叩く。3つの点が光り、中央にきらめく紺碧の色が浮かび上がる。ペンをその色に浸すと、ペンが満ちていく。
あおいはペンを縦に振り、こぼれた絵の具がカーテンのように広がる。彼女はそのカーテンをくぐり抜け、ペンを頭に当て、ファッションモデルのように歩みを進める。背景は深い藍色とピンクの絵の具の波に覆われる。波のしぶきで、葵の腕や脚はペンキの飛沫で覆われる。彼女はモデルのように足を踏み鳴らし、くるりと回る。
ペンキの波が彼女に向かってくると、彼女はそれを両手で掴み、くるくると回して胴体に巻き付ける。波は布に変わる。ペンで一刀両断すると布が切れ、ピンクの縁取りが入った無地の青い着物だけが残る。
両手を上げてポーズをとると、両手首から氷のような青い半透明の腕章がキラキラと輝く。
両手を腰に下ろし、足を前に踏み出す。足首からキラキラと輝きが消え、氷のような青い半透明の靴下と、ピンクの縁取りが入った折りたたまれた青い足首丈の靴が現れる。
彼女はペンを胸に抱き、微笑む。もう一度カチッと音がすると、ペンから青いペンキが糸のように燃え上がる。彼女はくるくると回り、糸が彼女の周りを漂う。ペンは縫い針の役割を果たす。
ペンを両肩に縫い付けると、糸が肩の周りを回転する。両腕を広げると、着物の袖が両方とも落ち、半透明の短い袖に変わる。
ペンを胸の脇に縫い付けると、水色のリボンと金色のブローチ、そしてアイスブルーのネクタイが現れる。
ペンをドレスのスカート部分に縫い付けると、布地が彼女の脇まで上がり、その下に水色のスカートが見える。
ペンをベルトの反対側に縫い付けると、サファイアの宝石のブローチが現れる。
ブローチから二つの火花が散り、彼女はくるくると回ってつま先を叩くと、ブーツにも同じサファイアのブローチが現れる。
ペンを頭の上でなぞると、サファイアのついた金色のティアラが現れる。彼女はペンを頭の両側に軽く叩きつけ、金の鎖でバレッタを作る。鎖からは魔力が漏れ、かつては深い青だった髪は、より鮮やかな青い塗料で覆われる。
あおいは丁寧に髪を撫で、耳の上にペンを移す。そっと手を離すと、ペンが閃光を放ち、彼女の髪に溶け込む。髪は肩まで届くストレートカットになり、鮮やかな紺碧の青に染まっている。
彼女はペンを目に当て、柔らかな笑みを浮かべる。ペンを顔に滑らせると、彼女の瞳は髪の色にマッチした青く輝く。
彼女は空中に飛び上がり、彼女から青い魔法が流れ出す。
ジャンプの頂点に達すると、青い魔法は背後で爆発し、水へと変わり、彼女は膝を胸に抱え、両手で額縁を作って目を覆うポーズをとる。
ネオンペンとパレットがベルトに取り付けられる。
ヒロインは落下し、上からさらに青い魔法が降り注ぐ。
「縫い目を通して、情熱と生命を世界に広げる!」
片足で着地し、もう片方の足もカチッと音を立てて着地する。そして、腕を背中で組み、片足を前に出すという最後のポーズを決める。
「ブルーデザイナー!キュア・アズール!」
「キュアアズール!!」オレンジは興奮気味に叫び、青い光が消えて新たなヒロインが現れると、畏敬の念を抱きながら見つめた。
アズールは青い目を見開き、驚きのあまり自分の姿に目をやった。ドレスの裾を掴み、「これは…普通じゃない…」と呟いた。しかし、彼女は微笑んだ。「でも、すごくかっこいい!」
「キュアアズール!!」チェリーは新たな仲間に歓喜の叫びを上げた。立ち上がろうとするが、まだ毛糸に絡まっていることに気づく。
「冗談でしょ…またか?」ノワールは軽蔑の表情を浮かべた。
「危ない!」チェリーが叫ぶ。
アズールは振り返ると、インクリングが回復し、踏みつけようとしていることに気づいた。
アズールは飛び退き、空中でスーパージャンプした。畏敬の念を抱きながら地面を見つめ、彼女は理解した。「ああ、なるほど。変身すると超人的な能力が身につくのね…」
「それでインクリングを倒せるのね!」オレンジが言い終える。
アズールはインクリングの角を掴みながら飛び降りる。羊が彼女を振り落とそうとするが、アズールはしっかりと掴み続ける。「羊毛に触っちゃだめ、羊毛に触っちゃだめ、羊毛に触っちゃだめ…」と、彼女は独り言のようにつぶやく。
彼女はぶらぶらした足で羊の顔面を何度も蹴る。しかしインクリングは悲鳴を上げて、さらに強い力で彼女を振り落とそうとする。彼女は落ちて片膝をついた。自分の手を見て、「どうすればいいの?」と自問する。
インクリングはアズールに突進し、唾を吐きかけます。アズールは叫び声をあげ、両手を前に突き出します。
その時、目の前に鮮やかな青い盾が現れ、唾の攻撃を防いでくれます。
アズールは自分が繰り出している魔法を見て、困惑して見上げます。
インクリングが盾に体当たりをします。十分な威力で盾が閃き、アズールを吹き飛ばし、丘に墜落します。
アズールは両手を離すと、盾は消えます。彼女は自分の手を見て気づきます。「私は防御戦士だ…」
回復するインクリングを見て、彼女は何かを悟ります。「押すような感じだ!」
アズールは突進し、羊の前に飛び出します。まるで羊毛を殴ろうとしているかのようですが…
その代わりに、羊毛を打つために盾を前に出し、羊毛を羊の体の奥深くまで押し込みます。代わりにその攻撃を吸収すると、インクリングはスタン状態に陥る。
アズールは両手を離し、盾の上に立つ。インクリングの尻に立っているので、盾に守られながら頭まで歩けばいい。
一歩ごとに、盾は布のようにインクリングの周りに広がる。彼女は声を出して足音を数える。「一、二、一フィート、三、四は二フィート、三フィート、四、五…」
インクリングは彼女を振り払おうとする。彼女はバランスを保ち、集中力を失わないように努める。羊の上に青い魔法がかかっているのに気づく。彼女は素早く数える。「一、二、三、四、五、六…八?! あなたって大きいのね!」
彼女は走り続ける。「八、十、十二、十四!」
彼女はインクリングの顔にダブルストンプで仕留める。
彼女は手に持った青い魔法を持ち上げながら、飛び降りる。彼女は宣言する。「確かに、672フィートの毛糸よ。」
もう片方の手をハサミのように使い、指を切り裂く。魔法が圧縮され、インクリングは閉じ込められる。毛糸は圧縮され、締め付けられる。
「どうして止める方法を知っていたの?」オレンジは驚いて尋ねる。
アズールは指を高く挙げて誇らしげに説明する。「ウールをデザインに使うと、ふわふわして吸水性が高いので、扱いにくい素材になるんです。だから、たいていの対処法は、布を折り重ねて押さえつけることなんです。」
チェリーは微笑みながらオレンジに言う。「彼女は賢いって言ったでしょ!」チェリー自身、明らかにこのことを知らなかった。
「おい!そんなの不公平だ!」ノワールがアズールの背後から小声で叱責する。彼のパチンという音にアズールは気づき、振り返る。ノワールは手を差し出し、暗い光線をアズールに放とうとする。
アズールが手首を軽くひねるだけで、小さなシールドが現れて攻撃を反射し、ノワールの顔面に命中させる。
彼はすぐに意識を取り戻し、傷ついた顔に手を当てる。彼の視線はアズールに釘付けになる。
深く沈み込みそうな青い瞳を持つ、きらめく青いヒロイン…
顔の赤みは怒りに変わり、尖った耳からは蒸気が噴き出すほどの激しい怒りがこみ上げてくる。
「どうすればこれを止めることができるの?」とアズールが尋ねる。
「クリエイティブウィング!」とオレンジが説明する。「プリキュアパレットを手に取り、ネオンペンで青いボタンを押して、クリエイティブウィングを塗るんだ。パワーアップして、インクリングに好きな攻撃を大量に繰り出せるようになるよ!」
チェリーが叫ぶ。「ちょっと待って、私のはピンクだって言ってたけど…」
ブルーネオンペンのクリック音とともに、背景が青い魔法の空間へと変化した。
「ブルーネオンペン!私の翼を創って!」
彼女はパレットの青いボタンにペンを押し当てた。中央のスペースに青い絵の具が現れ、彼女が使えるようになる。ペンをそのペンに浸すと、ペンは絵の具で満たされた。
キュア・アズールは、彼女の四方に魔法の絵の具を振り回した。
四方に散らばった絵の具は、魔法の灯台へと変化し、彼女の周りを回転してから彼女の体を飲み込んだ。
青い光の閃光とともに彼女の姿が作られ、アズールは泳ぐようなポーズをとった。
彼女の背中には、縁に濃い青色のダイヤモンドがあしらわれた、ダイヤモンド型の青い妖精の翼が生えていた。
アズールは両手を胸の前で組み、アームバンドの縫い目をほどく。青い布が彼女の体の周りを渦巻く。
「縫い目を縫って!」
アズールは指を鳴らして小さな針を作った。
「プリキュア…」
彼女は目の前の糸に針を突き刺す。糸が針に引っ掛かり、彼女は慎重に標的へと狙いを定める。
「アズール…お針子さん!!!」
彼女は糸を弾き、インクリングへと送る。糸はインクリングの体に巻きつき、何度も何度もループし、ついには縫い目の網に捕らえられる。
アズールはペンを手に振り向く。ペンを閉じると、翼が消える。サングラスをかけ、腕を組む。「できた!」
魔法のハサミが空中で糸を切る。残った糸は青い光とキラキラをインクリングに浴びせる。
「カラフル…」インクリングは呟くと、その体が反応して光る。青い光の中、インクリングの体は消える。白い色に浄化された、宙に浮いた折り紙だけが残る。
折り紙はベビードールジャケットの少女のもとへ飛んでいく。折り紙は形を失い、鮮やかな魔法へと変わり、少女の体に流れ込む。
石が彼女の体から砕け、彼女の色彩が戻り、彼女は膝をつく。
野原の色彩が戻る。
キュアチェリーの毛が消え、彼女は起き上がり、再び手足を掴む。満面の笑みで、彼女は「足の感覚が戻ったわ!」と叫ぶ。
ノワールは顔を押さえたまま考え込む。「つまり、増殖して、ものすごく方向感覚が狂うのね?」彼は笑顔と赤面を隠そうとする。「笑っていいのか泣いていいのかわからない。」
彼は空中に消え、後ずさりする。
アズールは疲れたように頭を抱え、疲れた笑みを浮かべる。
「キュアアズール!!」チェリーはすかさずアズールの体を抱きしめる。「本当に嬉しいわ!」
アズールは、友達にぎゅっと抱きしめられて、思わず照れくさそうに笑ってしまった。アズールもアズールを抱きしめた。
二人が別れると、オーレンジが飛んできて、「キュアアズール。プリキュアへようこそ」と挨拶した。
「えっと…ありがとうございます?」アズールは、どう反応していいのか分からなかった。
オレンジは認める。「チェリー…認めざるを得ない。この子は優秀だ。チームに頭脳があってよかった。それに、もう学習も速いし。」
「で、私がこれを着られるの?」アズールは、もうすでに自分の服を見つめて感嘆しながら尋ねる。「これが魔法で作られたって、すごいわ!まるで着物をアレンジしたみたい。より…大胆になった。この表現でいいかしら?」
チェリーとオレンジは、二人とも涙がこぼれそうになるのを感じた。「まあ…」チェリーは微笑んで言う。
アズールは立ち止まり、あることに気づく。「あ!そういえば!手遅れになる前に…」
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学校の廊下で、先生が葵に紙を渡している。「変更通知です。良い一日をお過ごしください。」
「ありがとうございます!」葵は嬉しそうに紙を胸に抱きながら言う。
「ファッションクラスへようこそ。」と葵は言う。
先生が教室に戻ると、葵は紙を見つめながら廊下を歩いていく。
「葵!」葵は顔を上げると、そこに恵子が手を振っているのが見えた。恵子はコーヒーを手に持っていた。
葵は近づき、コーヒーを受け取る。「ありがとう。今日はこれが必要だったの。」
葵がコーヒーを飲む前に、恵子は「もう済んだの?」と尋ねる。
葵は紙を見せる。「私の希望は通ったの。ビジネスクラスはキャンセル。ファッションクラスは追加。変更の通知をもらったの。」
恵子は満面の笑みを浮かべる。「すごい!」しかし、ふと気づいた途端、笑顔が消える。「え、お父さんはどうしたの?」
葵の笑顔が消えた。彼女は説明する。「あなたのご両親とは違って、父は私が学校の書類を管理することを全面的に信頼してくれているの。私は書類に対してとても責任感があり、内容についても父にはすべて正直に伝えてきた。私が言わない限り、父は今回の変更について知ることはないわ…」
それから彼女は書類をバッグにしまった。「だから、これは渡さないわ」
「嘘でしょ!?」恵子は驚いた。それは彼女の考えとは全く違っていた。「葵…」
「わかってる、わかってる。お父さんには絶対嘘つかないから」あおいはため息をついた。自分でも受け入れがたい。「でも…私はプリキュアだから、どっちにしても秘密は守る。それに…」眼鏡のレンズが目を覆っている。「もしお父さんに、私がビジネスじゃなくてファッションの道に進んでいるって知られたら、この学校だけじゃなく、友達も、人生に残された良いものも全部失っちゃう」彼女は作り笑いでその気持ちを振り払おうとする。「だから、プレッシャーは感じないで」
ケイコはどう答えていいのか分からなかった。確かにあおいに夢を追いかけるように励ましたけれど、あおいが父親に嘘をつくとは思っていなかった。証拠もなしに疑うはずがない。ましてや、あおいを育てた娘として、そんなことはありえない。
ケイコにできるのは「まあ…あなたが選ぶことよ」と言うことだけ。
「ケイコ、元気出して!」あおいはケイコの肘を突き、二人の不安を晴らした。彼女は微笑んで事実を受け入れた。「芸術を称える寄宿学校よ!私のようなビジネスウーマンが、芸術への夢のためにここにいるんじゃなかったら、何のためにここにいるの?」
ケイコはそれを受け入れ、微笑んだ。
しかし、アオイがコーヒーを一口飲むまでは。驚きのあまり目が輝き、ケイコを厳しい目で見つめた。「ラテ?」
ケイコの顔は真っ白になった。彼女は気づいた。「しまった…」
またしくじってしまった。
するとアオイの顔が和らぎ、もう一口飲んだ。「あら、どうしたの? いずれにしても、コーヒーの視野を広げた方がいいかしら。」
そうだ。十代の反逆者としての人生を受け入れる時が来たのだ。
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Legends and myths about trees
Celtic beliefs in trees (23)
Ng for Ngetl (Broom) - October 28th - November 24th
“Entering into dormancy – The Celtic Tree Calendar (Ref), Twelfth Month”
colour: blue; Star: moon; Gemstone: opal; Gender: male; Patron: Mercuris, Morpheus, Bacchus; Symbols: dignity, purity, healing, spiritual protection, soul journey
The common broom is ubiquitous in European wetlands. It grows unmindful from alpine peaks to lowland scrub and wilderness, providing temporary shelter from the wind and rain on rugged, bare ground. Although delicate in looks, its long, straight stems are strong and flexible and will not break in the wind. As its name suggests, it is used to make brooms. The broom has also been valued as a medicinal plant since ancient times. In medieval England, it was used by the royal family as a remedy for after drinking and singing parties and debauchery. The reason was that in November, when it was cold and people spent a lot of time indoors, there was nothing else to do but to be merry and boisterous.
The efficacy of medicinal herbs is corroborated in ancient Celtic literature. The ogham form of the word Ngetl represents from a word panacea, meaning 'physician's power'. The most important constituent of the broom plant is sparteine (an alkaloid). Some people associate the broom plant with witches because large doses of sparteine can cause extreme excitement or hallucinations. It is also said to be the reason why witches are flying astride broomsticks.
Beer is now made from hops, but in the olden days young, supple broom plants were used to flavour the beer and enhance the tipsy mood. Tea made from the yellow flowers was often used as a diuretic. In esoteric rituals, the broom plant is used for purification and prayers for personal safety, and is said to be particularly powerful against poltergeists. It is also said that throwing the branches of the broom plant causes wind, while burning them and burying them in the earth quiets the wind.
The spirits leave their bodies and embark on a journey. Druids (Ref2) and shamans call this 'the journey to the underworld', and the broom plant is a symbol of such a journey. Anyway, with its remarkable healing properties and narcotic-like effects, the broom plant has long been associated with healers, sorcerers, witches and shamans.
For the Celts, the month that the broom plant governs, which marks the end of the year, is a time to store up for the winter, sweep the house clean and hope that miscellaneous thoughts and bad habits will leave the house. In a nutshell, the enithid symbolises the virtue of keeping one's behaviour clean. It also teaches us to pay close attention to the dreams we have while sleeping at night.

木にまつわる伝説・神話
ケルト人の樹木の信仰 (23)
NはNgetl (エニシダ) - 10月28日~11月24日
『休止への入り口 〜 ケルトの木の暦(参照)、12番目の月』
色: 青; 星: 月; 宝石: オパール; 性: 男性; 守護神: メルクリス、モルフェウス、バッカス; シンボル: 尊厳、清浄、癒し、精神の保護、魂の旅
普通種のエニシダ(英:ブルーム) はヨーロッパの湿地帯ではどこにでも生えている。高山の山頂から低地の低木林や荒野まで、荒々しいむきだしの大地に雨風をしのぐ仮の宿を提供しながら平然と生育している。見た目は繊細だが、長くまっすぐな茎は丈夫でしなやかで、風で折れることはない。その名が示すように、ほうき(英:ブルーム)の材料として使われる。また、エニシダは古くから薬草としても重宝されてきた。中世のイギリスでは、王族が酒を飲んで歌い騒ぎ、放蕩した後の薬として使っていた。寒さが厳しく室内で過ごす時間の長い11月は浮かれ騒ぐよりほかになかったからだ。
薬草の効能については、古代ケルトの文献にもそれを裏書きする記述が見られる。そもそもオガム表記のNgetlは「医者の力」を意味するパナケア(panacea) を表しす。エニシダの最も重要な成分はスパルテイン(アルカロイド)である。スパルテインを大量に摂取すると、極度の興奮や幻覚を引き起こすことがあるため、エニシダを魔女と結びつける人もいる。また、魔女がほうきにまたがって空を飛ぶのもこのためだと言われている。
現在、ビールはホップから作られているが、昔は若くてしなやかなエニシダがビールの風味付けやほろ酔い気分を高めるために使われていた。黄色い花で入れたお茶は利尿剤としてよく使われた。密教の儀式では、エニシダは浄化や身の安全を祈願するために使われ、特にポルターガイストに対して威力を発揮すると言われている。また、エニシダの枝を投げると風が吹き、燃やして土に埋めると風が静まると言われている。
魂は肉体を離れ、旅に出る。ドルイド(参照2)やシャーマンはこれを「冥界への旅」と呼び、エニシダはそうした旅の象徴である。いずれにせよ、エニシダには驚くべきヒーリング (癒し) 作用と麻薬のような効果があるため、長い間、ヒーラー、魔術師、魔女やシャーマンと縁の深い植物なのだ。
ケルト人にとって1年の締めくくりにあたる、エニシダがつかさどる月は、冬に備えて貯え、家の中を綺麗に掃き清め、雑念や悪習に退場を願う時期に当たる。一言でいえば、エニシダは自分の行動を綺麗に保つことの美徳を象徴している。そして、夜寝ている間に見る夢に細心の注意を払うようにという教えでもある。
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