#(小恥ずかしいからいつもの人格タグはちょーっと内緒)
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嬉し涙で枕びしょびしょにして就寝……😇️
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無題
2735 グラム、――掃除中、ふいに出てきた写真を眺めているうちに思い出した数字である。写真の中にはまだ生まれて間もない女の子の姿が写っており、これがまさかあんなに可愛らしい少女へと育つのだと思うと、感慨深くもあり、懐かしくもあり、愛しくもある。彼女は物凄く活発な子で、俺のお下がりの遊び道具をめちゃくちゃにしては母親に怒られ、幼稚園で誰それを泣かせたとか何やらで先生に怒られ、話によると幼少期の俺よりも手がつけられなかったらしく、本当に今の姿と当時の姿を比べると唖然とする他ない。まだ彼女が物心もつかない頃には、俺もしばしば近くにある公園へ引っ張られたものであったが、目一杯暴れまわるものだから彼女の体は帰る頃にはすっかり砂と泥にまみれてしまい、いじめられたのではないのかとよく疑われていたものである。
妹とはもうその頃から何をするにも一緒であった。三才違いだから小学校へは三年間一緒に通ったし、中学校もほとんど小学校の横にあるようなものだからその後も手をつないで一緒に通学した。違う部屋を割当られていたけれども、家の中ではずっと一緒に居た。寝る時も、彼女が小学四年生に上がる頃までは一緒の布団に潜り込んで、何をするわけでもなく思い思いの体勢で夜を過ごしていた。
思えば妹が落ち着き始めたのも、若干距離が離れ始めたのも彼女が高学年へ上がってからである。先の一緒に布団に入らなくなったのは一つの例で、実はお風呂も一緒に入っていたのであったが、急に恥ずかしがるようになったかと思えば、それも直に無くなっていった。
だが、もしかすると当然かも知れない。というのも思春期特有の問題として、成熟し始めた体に心が追いついていなかったのであろう。特に問題だったのは彼女の胸であった。妹は昔からの習慣で自分の部屋で着替えをせず、わざわざ制服をこちらの部屋にまで持ってきて、寝ぼけ眼の目をこすりながら、
「んっ」
と言って、手をバンザイしてパジャマを脱がせようとしてくるのであるが、その時ジュニアブラを通して見えてくる膨らみがどんどん日を追うに連れて大きくなっていくのである。小学五年生に上がる頃にはぷっくりと先端の突起が現れていたし、小学六年生に上がる頃にはもはやジュニアブラでは覆いきれなくなったのか、可愛らしい刺繍の編み込まれた普通のブラジャーをつけるようになっていた。恐らくすでに彼女の握りこぶしぐらいの大きさであったかと思われる。
妹が自身の胸元をどんな思いで俺に見せていたのかは分からない。思うに単に寝ぼけていただけであろう。手をバンザイして来た時にそのまま放っておくと、パタンと布団の上に倒れ込んですうすうと寝息を立ててしまうほどに、妹は朝が弱いのである。何にせよ彼女の胸は、同年代はもとより大人の女性と比べても遜色ないほど、小学生にして大きくなっていた。
正直に言って男の俺からするとたまったものではない。手が伸びたことの一度や二度は当然ある。だが妹が小学生の頃に、実際に触れたのは一度だけである。確か大晦日の夜のことで、おせちやら何やらの準備で気の立った母親が、時間の節約と言う名目で、
「もう二人してダラダラするならさっさとお風呂入って来なさい、ほら、行った行った」
と言ってくるので仕方なしに立ち上がると妹も渋々立ち上がっている。トイレに行ってくると言う彼女を残して先に浸かっていると、ちょっとしてガラガラと音がして入ってくる。手で胸元を隠しながらかけ湯をして、そっと水面を波立たせないように足から浴槽に入って来て、こちらに背を向け、そのまま俺の足と足のあいだに体を潜り込ませ、ゆっくりと体を倒してくる。
しばらくは無言で互いの鼓動を聞き合うだけであったが、鼻に当たる彼女の柔らかい髪の毛がこそばゆくて、ついくしゃみをしてしまって以来、一年の終わりともあって色々と話がはずんだ。そうこうしているうちにすっかりリラックスした妹は、手も足も体もだらけさせて��まったので、溺れないよう俺は彼女を支えてあげていたのだが、うっかり手が彼女の胸に触れてしまう。――が、妹はピクッと体を震えさせてこちらを見てくるだけだった。そこには嫌悪感はなく、びっくりしただけだったようである。俺はさわさわと撫でるように触り続けた。手のひらにちょうど収まるおっぱいの心地よさは何物にも比べ難く、このままずっと触っていられそうであった。彼女は俯いて声が出るのを抑えているようで、時おりひどく色っぽい鼻息が漏れ聞こえてくる。思い切って先端にある可愛らしい突起を摘んでみると、
「お兄ちゃん、そこはダメ、……」
と言って弱々しい力で手を取ってくるが、やはりそこには拒絶はない。むしろ迷っているような手付きであった。だがその時、あまりにもお風呂の時間が長かったために痺れを切らした母親の怒号が飛んできて、ドスドスと中にまで入って来てしまった。それきり俺たちは大人しく体を洗い、もう一度だけ一緒に浴槽に浸かると、お互い恥ずかしさのあまり静かに新年を迎えた。
妹は俺と同じ中学には通わず、区内にあるお嬢様学校に進学することになった。あの大晦日の日以来、俺と妹との関係がどのように変わったのかは分からない。お風呂を一緒に入ると言うのもそれ以降しばらくなかった。はっきりと言えるのは会話が増えたことと、妹がどんどんお淑やかになっていくことと、逆に二人きりだとどんどん無防備になっていくことである。朝の着替えはもちろんのこと、お風呂から上がるとタンクトップ一枚になったり、バスタオル一枚をちょうど谷間が見えるように体に巻き付けたり、そもそも妹が中学校に上がってからというもの、お風呂に一緒に入ろうと誘われることが多くなった。しかもそれが机に向かっている最中に後ろから抱きついて、
「おにーちゃん! 今日こそ一緒にお風呂に入りましょ? んふふ、隠しても無駄だよ。ほら、行こう?」
と指を顔に這わしながらささやくものだから、頭を包み込んできそうなおっぱいの感触と、耳元のこそばゆさで俺はどうにかなってしまいそうだった。妹は兄である俺を誘っているようであった。そしてそれが実際に誘っていることは追々分かることになる。
しかし、今はそれよりも彼女のおっぱいについて語ることにしよう。中学生になっても成長の止まらない妹のおっぱいは、一年生の時点で俺の手では包みきれないぐらい大きかったと記憶している。当時俺は高校生であったが、同学年でも上級生にも妹より大きいおっぱいの持ち主は居なかった。時々本屋で目に飛び込んでくるグラビアモデルなぞも妹には敵わない。日々洗濯物としてベランダで干されて居るブラジャーは、もはや俺の顔を包めるほどに大きく、装飾は同年代の女の子のそれと比べると地味で、時々三段ホックのものが干されている時なぞ���、彼女の兄であるにも関わらず心が踊った。妹はバスケットボールを部活でやっていたようだが、体操服にやっとの事で収めたおっぱいが走る度に揺れに揺れてしまい、手で押さえつけていないと痛くてしょうがないと言う。そもそも成長痛で始終ピリピリとした痛みが走っているらしく、俺と話している途中にも幾度となく胸元に手をやって、ストラップとかカップの位置を調整する。最も文句の多かったのは階段の上り下りで、殊に激しく降りてしまうとブラジャーからおっぱいが飛び出てしまうから一段一段慎重に降らなければならない。そういう時にはさり気なく手を差し伸べてエスコートしてやるのだが、失礼なことに妹はそうやっていたわってやると、
「えっ、やだ、お兄ちゃんがそういうことをするなんて、全然似合わないんだけど」
としごく嬉しそうに笑って、手すりから手を離してこちらにもたれかかってくる。その時すごいと思ったのは、上からチラリと見える谷間よりも下に広がる彼女の視界で、足先はかろうじて見えるけれども、階段の段差などは全く見えないのである。
「苦労してるんだなあ」
と呑気に言うと、
「ようやくお分かりになりまして?」
と澄ました顔で言うので、つい笑ったら頬を突かれてしまった。
さて、話を妹が俺のことを誘う誘わないの話題に戻そう。ある日のことである。彼女が中学二年生に上がって何ヶ月か経った頃、家族でどこか温泉でも入りに行こうと中々渋い提案を父親がするので、そっくり乗った母親と何やら良からぬことを企んでいそうな妹に流されて、家族総出でとある山の中にある温泉地へと向かうことになった。旅行としては一泊二日の極々普通な旅であったが、事が起きたのは夜も更けきって、良くわからない蛙だとか、良くわからない鳥とか、良くわからない虫が大合奏をし始めた時のことである。
泊まることになったペンションと言うのが中々豪勢で、温泉地の中にあるせいか各部屋ごとに備え付けの露天風呂があり、夜中に目を覚ました俺は、せっかくだしもう一回入っておこうと唐突に思うや、気がついた時にはもう温泉に浸かっていた。深夜に自然の音を聞きながら入る露天風呂はかなり良い。大学生になったら温泉巡りなども趣味に入れようかと思いながら、小難しいことを考えていると、カラリと言う扉の開く音が聞こえてきた。一応これほどにないまでこっそりと露天風呂にやってきて、かけ湯も極力音を立てないようにしたのに、家族の誰かが聞きつけたらしい。その者はそっと音も立てずにこちらにやってくると、まだあどけなさの抜けない顔をこちらに向けてしゃがみこむ。
「なんだ里穂か」
と言ってみると、
「なんだとは何です。お兄ちゃん愛しの里穂ちゃんですよ。となり良いですか」
彼女が裸になっていることに気がついたのはこの時であった。いつものように遠���しようにも時すでに遅く、妹はするすると足から湯に浸かると、隣ではなく背を向けて俺の足の間に入って来る。――
しばらく無言が続いた。この時のことはよく憶えている。眠いのか船をこぐ妹を支えつつ耳を澄ませて山の音色を聞く。――それは何とも幻想的で桃源郷にいるような印象を抱いた。この時俺は彼女のお腹を抱きしめるようにして、彼女の体を支えてあげていたのだが、ちょっとでも腕を上へ滑らせると、ふわりと浮いているおっぱいに手が当たるのである。これが桃源郷でなくて何なのか。文字通り桃のような妹の膨らみは、最高としか言いようがなく、彼女が寝そうになっていることに調子付いて、何度も上へ下へ浮き沈みさせてその感触を楽しんだ。
するとのぼせそうになった頃合いに、突然目の覚ました妹がお尻をぐりぐりと動かして来た。しまったと思って手を引っ込めたけれども、途中で掴まれてしまった。
「んふふ、……いまさらどこに逃げようとしてるです?」
と、彼女は俺の手を自身の豊かな胸元へ。
「毎回毎回、ちょこちょこ触って来ては、こんなに固くして。……もう、お兄ちゃんのために大きくなったようなものなんですから、もっと触って良いんですよ? あ、でも、ちゃんと言ってからにしてくださいね」
そう言っているうちにも、妹はもにもにと俺の手を思いっきり動かして、自身のおっぱいを揉ませてくる。当然、ものの数秒で彼女の手は添えるだけになり、俺の手は自分の力で彼女の胸を揉みしだいていた。
この時聞かされたのだが、妹は全部知っていた。意外とうぶな彼女はあの大晦日の夜、俺がしたことをいまいち理解していなかったようだったけれども、今となってはそういうことだったのだと理解してしまっており、俺に逃げ道はもう残されていなかった。彼女の質問に頷きつつ、彼女のおっぱいを揉みしだき、彼女のお尻に大きくした〝ソレ〟を刺激される。最後から二番目の質問は、
「うわぁ、……ほんとうの変態さんだ。……じゃあ、こういうこともされたかったんだ?」
この言葉を言うや、妹はするりと拘束から逃れて、俺を温泉の縁にある岩場に座らせるよう促す。次に何が起きるのかはもはや分かりきっていた、彼女はすっかり大きくなった俺のモノを、ずっと大きな自身のおっぱいですっぽりと包むと、体を使ってずりずりと刺激してくる。行為の最中俺のモノは一切見えず、あの蠱惑的な谷間と頭の中がとろけそうな色っぽい声に、俺は一瞬で果ててしまった。
肉棒をずるりと抜き取ると妹は、
「気持ちよかった?」
と最後の質問を言ってきて、精液でドロドロになった谷間をゆっくりと広げていく。その顔には中学生の女の子のものではない、何か微醺を帯びたような一人の成熟した女性の持つ色香が確かにあった。
こうして俺は妹の虜になり、果ては彼女の胸の中で種を放ってしまったのである。旅行の次の日には俺と妹は昔のように引っ付き合っていた。親から笑われようとも、帰って来ても、ずっと離れることはなく、久しぶりに夜をとも��した。
以来、俺は妹のおっぱいを事あるごとに揉んだ。二人きりで居る時はもちろんのこと、外に出かけた時も周りを見計らって揉んだし、登下校中にも彼女が良いよと言ってくれたら隠れて揉んだ。そこから次の段階に発展するようなことはあまりないようなものの、胸でしてくれたり、手でしてくれたりするのはよくあることであった。
中学二年の終わり頃には、妹のおっぱいは世間では全く見られないような大きさに達しており、俺も驚けば本人も驚き、時々来る彼女の友達も私服姿を見てびっくりするなどしていた。ベランダで干されているブラジャーの大きさもどんどん大きくなっていき、とうとう俺の顔が余裕で包めるほどの大きさになっているのであるが、俺には女性の下着をどう見たら良いのか分からないからこの辺にしておくことにする。ただ言えることはめちゃくちゃ大きい。本当にこんなブラジャーがあるのかと信じられないぐらい妹のブラジャーは大きい。……
そう言えば中学三年の春、彼女がそのめちゃくちゃ大きいブラジャーをくれたことがあった。というのも、
「私が修学旅行に行っちゃうと、お兄ちゃん寂しがると思いまして。ですので、――はい、これ、プレゼントです。もう合わないから、お兄ちゃんの好きなようにしてください」
そんな馬鹿げた理由だったのだが、実のこと、この時くれたブラジャーは大学生になった今でも下宿先に持って行って、時おり寂しさを紛らわせているのは確かである。タグには32K と書かれているけれども、俺には良くわからないので、当時中学3年生だった妹のおっぱいがどれほどの大きさだったのかは聡明な読者のご想像にお任せする。
ただ彼女の大きな胸が、残酷な現実を呼び寄せてしまっていたことは伝えねばならない。まず痴漢は日常茶飯事であった。電車に乗れば四方八方から胸はもちろん、案外豊満なお尻にも手が伸びてくるので、必ず俺が壁となって彼女を守らなくてはならない。そもそもの話として男の視線そのものが嫌だと言っていた。そして一人にしておくと何かしら知らない男が近寄るので、おちおちトイレにも行けない。機嫌が良ければ、
「あの人、お兄ちゃんよりかっこよかった」
と言ってケロリとしているのであるが、そうでない場合はひどく面倒くさいことになってしまう。痴漢と言えば学校でもあるらしく、これは男よりも同性同士のじゃれあいで触られると言う。そして彼女が一番心を病めるのは同級生からの妬みであった。当然あんなに大きなおっぱいをしているものだから、妹はしばしば泣きはらした目で帰ってくることがあり、それとなく話を聞いてみると、
「今日も詰め物をしているんじゃないかと言われて激しく揉まれた、私だって好きでこんなに大きくしたんじゃない、あの子たちには全然おっぱいが無いから私の苦労をわかってもらえない、私の半分でもいいから分け与えてみたい」
と、ひとしきり文句を言って最後には、
「でもお兄ちゃんが満足してくれるなら何でもいいんだけどね」
と笑いながら言うのであった。
しかしこれらは彼女にとっては大したことではないかもしれない。妹が本当に心の底から泣きはらしたのは、彼女が中学三年の夏真っ盛りの頃、あれほどに悔しそうにしている我が妹は後にも先にも見たことはなく、恐らくずっと先の将来に渡ってもあの姿を見ることはもう無いだろう。先に彼女はバスケットボールを部活としてやっていたと言ったが、中学3年生の夏頃にもなると、胸が痛くてもはや激しく体を動かすことなんて出来なくなっていた。聞けば試合に出ては足を引っ張り、自分のせいで負け、幾度となく涙を流していたと言う。
彼女の最後の試合は見に行った。常に胸に手をやり、動いては胸を抑えて痛がるものだから、ボールが来ても反応が一瞬遅れてしまって折角のチャンスをものにできていない。兎に角ひどい動きだった。だが、当然とも言えよう、何と言ってもバスケットボールとそれほど遜色ない大きさで、バスケットボールとは比較にならないほど重たい膨らみが胸に二つも付いているのだから、むしろそれで試合に出て、あれほどまで体を動かせると言うのは、かつてやんちゃだった妹だから出来るのであろう。誰が称賛せずに居られようか。
迎えに行った時、彼女はバスケ部の同期後輩に囲まれて声を上げて泣いていた。意外とあっさり引き渡してくれた理由は考えたくもない。彼女にとっては最後だったけれども、三年生の試合としてはまだまだこれからという事実はさぞかし悔しかったであろう。その日は一晩中隣に居て、頭を撫でてやった。
そんな妹であったが、明くる日の朝には早くも復活して、
「次は受験だねー」
と飼っている猫に向かって呑気に言っていた。この時妹はボケててこんなことを言っていたけれども、彼女の通う中学校は中高一貫校なのだから何も心配はいらない。むしろ受験で大変なのは俺の方で、今度は俺が妹に頭を撫でられる羽目になろうことは目に見えていた。だが、彼女の危惧はそちらではなく、この一年間を終えると俺は地元を離れてしまうと言うことが、殊更気にかかっているようであった。何せ、
「実は合格してほしくないって思ってる。お兄ちゃんが居ない生活なんて私、嫌」
とまで言ったのだからよっぽどである。それでも俺は頑張った。決して妹を蔑ろにしたわけではないけれども、兎に角頑張った。気がついた時には彼女もまた応援してくれるようになっていた。
だから受験は上手く行って、俺は別に泣きはしなかったけれども、妹は泣いて喜んでくれた。その涙がどこから出来たのかは分からない。だが俺の顔をあの巨大な胸の谷間にすっぽりと入れて、何度も何度も背中を擦ってくれる。それはかなり息苦しかったけれど、これほどにないまで気持ちの良い抱擁であった。
そして実家で暮らす最後の日、俺たちは前々から約束していた通り次のステップに進んだ。自分以外何者の音も聞こえない深夜、彼女は震えながら俺の部屋へ来ると、まずはキスをせがみ、ゆっくりと服を脱いでいった。合う下着がないからと言って、おっぱいの溢れかえるブラジャーを取っ払い、綺麗に畳んで一糸ま��わぬ全身を俺に見せる。――もはやそこには今まで見てきた妹は居なかった。よろしくおねがいしますと彼女は言った。俺も彼女の要求に答えて、手をしっかりと繋いでから、秘部に自分のモノを出来るだけ優しく入れた。これ以上は何も言うまい。最後に妹は目に涙をためながらこう言った。
「お兄ちゃん、どうか私のことを忘れないでください」
と。――
ところで、ここまで言っておいて何であるが、妹はその後何事もなく高校生活を歩んでいるようである。そして俺は突然初めた片付けが終わらずに嘆いているところである。妹の写真やらブラジャーやらを見つけて以来全く進まぬ。少し前に連絡が来た時には、彼女はあと15分くらいで着くからと言っていた。ならもうすぐである。俺は片付けの途中でむしろ汚くなった部屋を眺めてどう言い訳したらいいのか考え始めたが、あのしっかり者の妹のことだから言い訳なぞ通じないであろうと思うと、ベッドに横たわってさらに大きくなった胸元を頭に描きながら彼女の訪れるのを待つことにした。
(終わり)
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傲慢な女
創作BL・創作百合
わたしが家としている、安い宿は壁が薄いので、隣の人間がどのような者か、なんとなくわかってくるのだが、その日泊まった人間は、どうにも奇妙であった。 男は、彫りが深いが外人とはいえないくらいの顔立ちで、髪が長かった。なにか作業するには、髪を結ばなくては鬱陶しいだろう。見目の悪くない男だった。 「二泊三日、ふたり部屋で」 「後からお連れさまが?」 「いいえ」 従業員は不可解な顔をしたが、男が重ねて「ふたりぶん払いますので、もちろん」といったので、頷いた。このころは繁忙期とは程遠いゆるやかな時期で、融通がきいたのだった。鍵を渡されると男は大層でかいスーツケースを引っ張って部屋に向かっていった。 「さきさん、あんまりお客さんのことじろじろ見ちゃあ、駄目よ」 カウンターから出てきた女子高生が声を潜めてわたしにいった。 「見てないよ」 「見てたよ」 そういいながら女子高生は、従業員の証である緑色のエプロンを脱いでわたしの膝に乗せた。白きタートルネックに緑色のエプロンは映えていたのに。 「これから映画観に行くの、さきさん、よろしくね、お土産買ってくるからね」 女子高生は、5度目の万引きをする中学生の顔でいった。最近悪い男と悪い遊びを覚えた女子高生は、よく宿の仕事を抜け出して遊びに行く。その時仕事を押し付けてくるのは、わたしがもう数年ここに住み着いていて、殆ど従業員と変わらないのだとでも考えているのかもしれない。 「わかったよ」 可愛い子に弱い。わたしが緑色のエプロンを着てカウンターに立つと、「私より似合うよ、さきさん」と笑った。それから、青い唇を誤魔化すように口紅を塗り「さっきのお客さん、お隣だけど、変なこと��ちゃ駄目だからね」と失礼な忠告してくる。わたしは答えなかった。女子高生は笑う。すると長い髪が揺れた。あれは偽物の髪だ。可愛いボブだったのに、ウイッグというのか、最近では、かつらをかぶっているようになったので、胸まであるロングストーレトを気取っている。女子高生は、長い髪を、首に巻きつけるような仕草をしながら従業員専用出口に向かっていった。風で髪が飛ばされて、タートルネックから覗く肌を見せるのを怖がるように。
数時間も働いていると、他に見つかってしまって、わたしは緑色を剥奪される。 「安津子ッたら! ねえ、さきさんも甘やかさないで下さいな。あの子ったら……」 女子高生の母親は頭の上から湯気を漂わせながら、泡をひとつひとつ潰すように愚痴をこぼす。あんまり一緒にいると、矛先がこちらに向いてしまうので(わたしは女子高生の共犯者なのだから)、早々に自室へ戻った。
宿の壁は薄い。寝台に寝転んで目を閉じると、隣の部屋の様子が脳内に浮かんでくるほどだ。音で全てが再生される。 わたしはその瞬間、大きいスーツケースと、一人なのにふたり部屋をとった男が妙に気になった。そうなるとどうしようもなくなって、無意識に、息をほとんど止めるようにして、いた。隣の音はより鮮明になる。
ぎし、ぎ、ぎい、ぎし、ぎし、 ぼふ、かつん、ぎ、ぎ、ばふん、すー、すう かち、かち、かちかち、ぱっちん
男が歩いて寝台に向かう。(隣の部屋は寝台周りが一層酷いので、床が鳴る音でどこを歩いているかなんとなくわかる。)乱雑な仕草で寝台に座ると、部屋に置いてある、サービスのビール瓶一本、サイドテーブルに置いたあと、寝台の足元に置いてあったあの馬鹿でかいスーツケースを寝台にのせる。重みのあるそれで、寝台は揺れただろう。それから手元か、具合のいい場所まで引っ張って、シーツとこすれる音がした。 わたしには、その後の、軽い、カチカチとした音の正体が掴めなかったが、おそらくスーツケースの、ダイヤル式の鍵を開けている音だとわかることにはばこん、とスーツケースが開けられていた。
「…………、……」 「………………」 「………………」 その間、なんの音も声もしなかった。じいっと、あの男がスーツケースを見つめて動かない様を思うとなんだか不気味だった。わたしが、その、背筋の寒くなるような雰囲気に耐えられず、起き上がろうとした時、咳が一つ聞こえた。わたしは思わず動きを止めた。
「ほこり、ほこりが酷い」 「安いところですから」
ひとりのはずの部屋からは、もうひとり、男の声が聞こえた。きっと咳の主だ。男は驚かずに言葉を返す。まさか、スーツケースのなかに人を隠していたというのか? なんのために? 宿代を誤魔化すためならば、男はふたり部屋なんて頼まないだろう。男たちの真意が見えず、わたしは音がならない程度に喉を鳴らした。
「腹が減ったんだけど」 「何かルームサービスでも」 「こんなところにそんなサービスあるかよ」 「ありますよ」 「へえ、でもヤだ」 「どうして」 「もう、スーツケースに入るのは嫌だ」
男は答えないで黙った。しんとしたなか、不意にビール瓶を開ける音と、呑む音が聞こえた。
「なんか買ってこいよ」 「どこに?」 「ここに着く前、パン屋があった。そこで甘くないの、買ってきて」 「なんでわかったんですか」 「匂い、あと、穴が空いてたからそこから見てた。アレ、もう壊れかけてる」 「そんなはずありませんよ」
咳の主の最後の言葉は、男を嘲笑する色合いが濃く、こちらがいたたまれなくなるような、苛立ちを覚えるような、具合だった。男はその言葉を否定する。それから、ごそごそと何かを探ったあとに、立ち上がり、部屋の扉の前まで来た。 「部屋からは」 「出ない。わかってるよ。愛してる」 「ええ、僕も」 扉が閉じて、足音がわたしの部屋の前を通る。階段あたりまで行くとさすがに音は聞こえなくなって、静謐が下りた。咳の主の呼吸音が聞こえる。アレは生きているのだろうか?
わたしはその時、隣の扉をこじ開けてしまいたいという衝動に駆られた。今まで、どんな奇抜な人間が隣に泊まっても、こんなに興味が惹かれるということはなかった。 隣の部屋がわの壁を見る。真っ白だが、ところどころ茶色いシミで薄汚い。もう何十年も営業しているこの宿は、年相応の姿だ。 壁の前に立つと、もういよいよという気持ちのみに支配される。とうとうわたしは壁を叩いて見ることにした。 コンコン、よりは、カッカッ、に近い音で壁を叩く。 咳の主は答えない。わたしはもう一度叩く。カッカッ。これで応答がなければ諦めるつもりでいた。 「開いてるよ」 咳の主は答えた。わたしは部屋を出て、隣に向かった。
隣の部屋は、わたしの部屋を全く同じ作りだ(それは当たり前のことだが)。見慣れた内装のなか、寝台の上だけが異質だった。 寝台には、あの男が持っていたスーツケースが、開いて置かれている。中は黒々としていて、どこか艶を帯びていた。そして、わたし側から見て右側、そこが最も異様、現実離れしている。スーツケースの右側からは、男の上半身までが、生えていた。ちょうどへその上あたりまでが見えている。腰や尻、足はどこにもみあたらない。折りたたんでしまえるような場所もない。
「驚いた?」 咳の主は茶目っ気がたっぷりのった声で聞く。わたしは声を出すことも、首を縦に降ることもできなかった。 「驚くに決まってる、俺も最初は驚いた」 咳の主は自分の問いに自分で答え、ひとつ、あくびをした。口のなかは濡れていて艶かしく、彼が生きているんだということを証明している。 わたしはいくらか衝撃から抜け出せていたので、じっくり咳の主を眺めることができた。連れの男よりもだいぶ若い。男は二十代後半あたりの、出来上がった精悍さがあったが、咳の主はまだ若い。20代前半、いや、20歳になったばかりのような若々しさだ。まだ大人になりたての、純朴さがあった。しかし、この内、例えば咥内だとか、言葉遣い、目つきなどは、男と同年代のようにも感じる。見た目と中身が不一致だ。 「鞄から生えてる人間は珍しいさ、おい、姉ちゃん、アメリカにでも連絡するか? 見世物小屋か? それともどこかの研究所? あの、もしもし、鞄から生えてるビックリ人間を発見したんですが、おいくらで買い取っていただけます? ……くるのは金じゃなくて救急車だな、うん」 咳の主はまくしたてたあと、一気に消沈して肩の力を抜いた。それから、わたしのつま先から頭のてっぺんまでじっくり見て、「あんたは金に困ってなさそうだから、俺を売らない」と呟いた。その通りだった。 「でもあんたは欲しいものがある。金じゃあ手に入れられないものだ。そのためにこの鞄がいる。違うか?」 それは初耳だった。わたしにはもう欲しいものなんてない。あと手に入れるべきなのは天国への片道切符だけ。安寧な生活以外望むものはなかった。 「そんなものないって顔してるな。え? アンタはあれだ、受付にいた女……あの長い髪の……あの女! あれが欲しい」 「ちがう、彼女が欲しいなんて考えたことなんかない。」 「違う、違う。アンタが欲しいのはあの女自身じゃなくって、あの女の幸せな生活だ。男運がなさそうな顔してるもんなア。首の傷に気づかないのは間抜けだけ。ここの客は間抜けばっかりみたいだけど」 わたしは否定できなかった。女子高生が、悪い男にあそばれていて、暴力を振るわれているんだろうということは、事実だったからだ。ロングヘアーのウイッグは傷を隠すためで、タートルネックも同様、赤い目はよく泣いているからだ。彼女は現状から抜け出せないでいる。地獄の生活から。わたしはすくいだしたかった。しかしはわたしは何も持っていない女だった。 「当たりだな」 「どうして分かるの?」 「この鞄はもう壊れかけなんだ。だから外のことが漏れてきて、見える。俺の体はもう成長を止められない。それに、もうこの鞄に相応しくない。」 咳の主の言葉の意味がちっともわからない。しかし、彼は気にせず言葉を続ける。 「あんたは鞄が欲しい。俺は鞄から出て生きたい。ウィンウィンだろ」 スーツケースの口をコンコンと叩くと、咳の主は笑った。わたしは聞きたいことがあった。 「それであの子は救われる?」 「全てから隔離される。全部見なくてよくなるし、暗い鞄の中は居心地よくて眠りやすい」 わたしは女子高生の目の下の隈を思い浮かべた。化粧でごまかせない不眠の証をみていつも心を痛めていた。 「どうして外を出たくなったの?」 「セックスしたくなったから」 明け透けに咳の主はいった。真顔で言ったので、それが本当のことだと、思わせる。 「下半身はどうやったって出てこない。おれは間抜けにも上半身しかこんにちはできないんだ、セックスもクソもない」 わたしは何の言葉も返せなかった。咳の主はハッとした顔をした後、嫌な顔で「処女には刺激的な話だった」と、笑う。わたしはそれを無視して、「あの子の幸せが欲しい」と願った。 「願えばいい���明日目が覚めたらお望みのものが隣にあるだろうさ」 咳の主は、目的の会話は終わった、とばかりに口を閉じる。 わたしは、咳の主のような格好ですごす女子高生の姿を思い浮かべ、それでも愛らしさは変わらないな、と思った。平和に生きられる生活を送らせたい。わたしの願いはただひとつだった。それが彼女の求めていない形だとしても。 「安心しろよ、願いが叶ったら、鞄から抜けだせる。永遠じゃない。あんたの場合はそうだな……、女が、外でも平和に生きられるところに到達したら、女自身が自覚するだろ、きっと。出るべき時は本人しかわからない、おれみたいに。」 「君はなんで鞄に閉じ込められたの?」 咳の主は一瞬、口を閉じて固まった。それから緩やかに糸を吐くか細さで息を吐いた。 「おれはひどい浮気性だった。國弘……恋人はそれに耐えきれないと何度も言った。おれはそれを無視して、女とも男とも寝た。ある日目が覚めたら、俺は鞄の中だった。あいつは長い旅になると言った」 それから咳の主はすこし恥ずかしそうな顔になる。 「あいつの願いはきっと"浮気をやめて欲しい"ってやつだ。その通りになった。もう他に目移りなんでできっこない。だから鞄から出られる」 わたしが何かを言う前に、咳の主は壁に掛けてある時計をみて、少し大きい声で「もう戻れ」と言った。 「もうあいつが帰ってくる。あんたがいるのをみられたら面倒だ。俺はもう浮気しないんだからな。変な疑いかけられて喧嘩したくない。安心しろ、鞄はあんたのものになる」 咳の主に追い出されるような形でわたしは部屋の扉のノブに手をかけた。最後に聞きたいことがひとつあった。わたしはできるだけ早口で、簡潔に聞いた。 「あの子はわたしを恨むかな?」 「最初はな。でも時間が解決する。ストックホルム症候群なんて外野のヤジだから気にするな。もう行けよ」 扉を閉めて、自分の部屋に飛び込むと、ちょうど階段の方から音がした。革靴の音は、あの隣人の男のものだった。わたしは男が部屋に入ったのを聞き届けてから、部屋を飛び出して一階のロビーに向かった。ふたりの会話をこれ以上聞くのは、なんだか気が引けた。
深夜を見計らって部屋に戻ると、隣はしんとしていたが、それもつかの間の出来事だった。しばらくすると鳴き声が聞こえた。震えていて、濡れていた。國弘という名前の男が、咳の主の名前を呼んでいる。はるかと呼んでいた。名を呼ばれるたび、咳の主は必死に、うん、うん、と答えている。泣き声交じりだった。 わたしはヘッドホンをして、クラシックをかけた。目を閉じて、あの子のことを考えた。あの子の幸せを。 * * *
「あら、さきさん、おはようございます」 「おはようございます」 「その鞄、さっきのお客さんの忘れ物かしら?」 「いいえ、いただいたんです」 驚く母親に、わたしはタグを見せた。「親愛なる隣人へ」おそらくはるかさんの字だろう。確かな重量のあるそれをわたしは大事にもつ。 「へんなひと」 「ええ、本当に。それからわたし、今日から、他を回ろうと思って」 「えっ、そんな、急に」 「ええ、急に。突然沖縄に行きたくなったんです」 「そうな���……、」 母親は残念そうな、どこか縋るような目でわたしをみたが、曖昧に微笑んで、目をそらす。誤魔化すように、わたしは尋ねた。 「この、スーツケースのひとなんですけど」 「ああ、連れは後から来ませんなんて言っておいて、チェックアウトの時には知らん顔でひとり増えてたの、まあ、あの方は、ちょっと困ったような顔をしてた気がしたけど……変な人」 母親は繰り返してそう言った後、はっとして、「ごめんなさい、彼が何か?」と問う。わたしは「いえ、それが聞きたかったんです」とだけ答えた。 「それでは。長い間お世話になりました」 「こちらこそ。アッそうだわ、安津子を見かけたら声をかけてくださる?昨日出ていったっきりなの」 「ええ、見かけたらかならず」 「お願いしますね」
鞄が泣いている。わたしにはどうすることもできない。それがすこし、悲しかった。 「さきさん、さきさん」 すすり泣くような声はあの時の、隣人の声のような艶かしさを持っていた。 「あこちゃん、苦しくない?」「ええ」「何か見える?」「いいえ」「匂いはする?」「なにもしないわ」 「ねえ、さきさん、わたし怖いのよ」 「大丈夫、あこちゃんは幸せになれるから。もう少しの辛抱だから」 鞄はそれきり黙り込んだ。はるかさんもかつてそうだったのだろうか? それを知るすべはない。 わたしは夢想する。彼女が鞄から抜け出す日々を。この鞄が別の、誰かに譲渡される瞬間を。
了
國弘 くにひろ 浮気性な恋人に悩んでいたところフィリピン人に件の鞄をもらった。 帰って来たある日恋人が鞄から抜け出していて焦ったが恐れていた事態は起こらず。旅行は続行。黒髪。攻め。
遙 はるか 浮気性。性格も良くない。口がよく回る。鞄事件で浮気性は治った。鞄にいる間は成長が遅れるので、國弘とは微妙に年の差があるように見える。受け。
さき 金持ち。安津子な幸せを願っている。傲慢。自分だけが安津子を救えると思っている節がある。
安津子 割とやばかった。ヤバイ男に捕まりヤバイことに手を染めかけていた。近々風呂に沈められる羽目になっていたのでセーフ。母親は継母。でも関係は良好だった。心残りはそこ。
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傲慢な鞄
創作BL GL
わたしが家としている、安い宿は壁が薄いので、隣の人間がどのような者か、なんとなくわかってくるのだが、その日泊まった人間は、どうにも奇妙であった。
男は、彫りが深いが外人とはいえないくらいの顔立ちで、髪が長かった。なにか作業するには、髪を結ばなくては鬱陶しいだろう。見目の悪くない男だった。
「二泊三日、ふたり部屋で」
「後からお連れさまが?」
「いいえ」
従業員は不可解な顔をしたが、男が重ねて「ふたりぶん払いますので、もちろん」といったので、頷いた。このころは繁忙期とは程遠いゆるやかな時期で、融通がきいたのだった。鍵を渡されると男は大層でかいスーツケースを引っ張って部屋に向かっていった。
「さきさん、あんまりお客さんのことじろじろ見ちゃあ、駄目よ」
カウンターから出てきた女子高生が声を潜めてわたしにいった。
「見てないよ」
「見てたよ」
そういいながら女子高生は、従業員の証である緑色のエプロンを脱いでわたしの膝に乗せた。白きタートルネックに緑色のエプロンは映えていたのに。
「これから映画観に行くの、さきさん、よろしくね、お土産買ってくるからね」
女子高生は、5度目の万引きをする中学生の顔でいった。最近悪い男と悪い遊びを覚えた女子高生は、よく宿の仕事を抜け出して遊びに行く。その時仕事を押し付けてくるのは、わたしがもう数年ここに住み着いていて、殆ど従業員と変わらないのだとでも考えているのかもしれない。
「わかったよ」
可愛い子に弱い。わたしが緑色のエプロンを着てカウンターに立つと、「私より似合うよ、さきさん」と笑った。それから、青い唇を誤魔化すように口紅を塗り「さっきのお客さん、お隣だけど、変なことしちゃ駄目だからね」と失礼な忠告してくる。わたしは答えなかった。女子高生は笑う。すると長い髪が揺れた。あれは偽物の髪だ。可愛いボブだったのに、ウイッグというのか、最近では、かつらをかぶっているようになったので、胸まであるロングストレートを気取っている。女子高生は、長い髪を、首に巻きつけるような仕草をしながら従業員専用出口に向かっていった。風で髪が飛ばされて、タートルネックから覗く肌を見せるのを怖がるように。
数時間も働いていると、他に見つかってしまって、わたしは緑色を剥奪される。
「安津子ッたら! ねえ、さきさんも甘やかさないで下さいな。あの子ったら……」
女子高生の母親は頭の上から湯気を漂わせながら、泡をひとつひとつ潰すように愚痴をこぼす。あんまり一緒にいると、矛先がこちらに向いてしまうので(わたしは女子高生の共犯者なのだから)、早々に自室へ戻った。
宿の壁は薄い。寝台に寝転んで目を閉じると、隣の部屋の様子が脳内に浮かんでくるほどだ。音で全てが再生される。
わたしはその瞬間、大きいスーツケースと、一人なのにふたり部屋をとった男が妙に気になった。そうなるとどうしようもなくなって、無意識に、息をほとんど止めるようにして、いた。隣の音はより鮮明になる。
ぎし、ぎ、ぎい、ぎし、ぎし、
ぼふ、かつん、ぎ、ぎ、ばふん、すー、すう
かち、かち、かちかち、ぱっちん。
男が歩いて寝台に向かう。(隣の部屋は寝台周りが一層酷いので、床が鳴る音でどこを歩いているかなんとなくわかる。)乱雑な仕草で寝台に座ると、部屋に置いてある、サービスのビール瓶一本、サイドテーブルに置いたあと、寝台の足元に置いてあったあの馬鹿でかいスーツケースを寝台にのせる。重みのあるそれで、寝台は揺れただろう。それから手元か、具合のいい場所まで引っ張って、シーツとこすれる音がした。
わたしには、その後の、軽い、カチカチとした音の正体が掴めなかったが、おそらくスーツケースの、ダイヤル式の鍵を開けている音だとわかることにはばこん、とスーツケースが開けられていた。
「…………、……」
「………………」
「………………」
その間、なんの音も声もしなかった。じいっと、あの男がスーツケースを見つめて動かない様を思うとなんだか不気味だった。わたしが、その、背筋の寒くなるような雰囲気に耐えられず、起き上がろうとした時、咳が一つ聞こえた。わたしは思わず動きを止めた。
「ほこり、ほこりが酷い」
「安いところですから」
ひとりのはずの部屋からは、もうひとり、男の声が聞こえた。きっと咳の主だ。男は驚かずに言葉を返す。まさか、スーツケースのなかに人を隠していたというのか? なんのために? 宿代を誤魔化すためならば、男はふたり部屋なんて頼まないだろう。男たちの真意が見えず、わたしは音がならない程度に喉を鳴らした。
「腹が減ったんだけど」
「何かルームサービスでも」
「こんなところにそんなサービスあるかよ」
「ありますよ」
「へえ、でもヤだ」
「どうして」
「もう、スーツケースに入るのは嫌だ」
男は答えないで黙った。しんとしたなか、不意にビール瓶を開ける音と、呑む音が聞こえた。
「なんか買ってこいよ」
「どこに?」
「ここに着く前、パン屋があった。そこで甘くないの、買ってきて」
「なんでわかったんですか」
「匂い、あと、穴が空いてたからそこから見てた。コレ、もう壊れかけてる」
「そんなはずありませんよ」
咳の主の最後の言葉は、男を嘲笑する色合いが濃く、こちらがいたたまれなくなるような、苛立ちを覚えるような、具合だった。男はその言葉を否定する。それから、ごそごそと何かを探ったあとに、立ち上がり、部屋の扉の前まで来た。
「部屋からは」
「出ない。わかってるよ。愛してる」
「ええ、僕も」
扉が閉じて、足音がわたしの部屋の前を通る。階段あたりまで行くとさすがに音は聞こえなくなって、静謐が下りた。咳の主の呼吸音が聞こえる。アレは生きているのだろうか?
わたしはその時、隣の扉をこじ開けてしまいたいという衝動に駆られた。今まで、どんな奇抜な人間が隣に泊まっても、こんなに興味が惹かれるということはなかった。
隣の部屋が��の壁を見る。真っ白だが、ところどころ茶色いシミで薄汚い。もう何十年も営業しているこの宿の壁としては、年相応の姿だ。
壁の前に立つと、もういよいよという気持ちのみに支配される。とうとうわたしは壁を叩いて見ることにした。
コンコン、よりは、カッカッ、に近い音で壁を叩く。
咳の主は答えない。わたしはもう一度叩く。カッカッ。これで応答がなければ諦めるつもりでいた。
「開いてるよ」
咳の主は答えた。わたしは部屋を出て、隣に向かった。
隣の部屋は、わたしの部屋を全く同じ作りだ(それは当たり前のことだが)。見慣れた内装のなか、寝台の上だけが異質だった。
寝台には、あの男が持っていたスーツケースが、開いて置かれている。中は黒々としていて、どこか艶を帯びていた。そして、わたし側から見て右側、そこが最も異様で、現実離れしている。スーツケースの右側からは、男の上半身までが、生えていた。ちょうどへその上あたりまでが見えている。腰や尻、足はどこにもみあたらない。折りたたんでしまえるような場所もない。
「驚いた?」
咳の主は茶目っ気がたっぷりのった声で聞く。わたしは声を出すことも、首を縦に降ることもできなかった。
「驚くに決まってる、俺も最初は驚いた」
咳の主は自分の問いに自分で答え、ひとつ、あくびをした。口のなかは濡れていて艶かしく、彼が生きているんだということを証明している。
わたしはいくらか驚きから抜け出せていたので、じっくり咳の主を眺めることができた。連れの男よりもだいぶ若い。男は二十代後半あたりの、出来上がった精悍さがあったが、咳の主はまだ若い。20代前半、いや、20歳になったばかりのような若々しさだ。まだ大人になりたての、純朴さがあった。しかし、この内、例えば咥内だとか、言葉遣い、目つきなどは、男と同年代のようにも感じる。見た目と中身が不一致だ。
「鞄から生えてる人間は珍しいさ、おい、姉ちゃん、アメリカにでも連絡するか? 見世物小屋か? それともどこかの研究所? あの、もしもし、鞄から生えてるビックリ人間を発見したんですが、おいくらで買い取っていただけます? ……くるのは金じゃなくて救急車だな、うん」
咳の主はまくしたてたあと、一気に消沈して肩の力を抜いた。それから、わたしのつま先から頭のてっぺんまでじっくり見て、「あんたは金に困ってなさそうだから、俺を売らない」と呟いた。その通りだった。
「でもあんたは欲しいものがある。金じゃあ手に入れられないものだ。そのためにこの鞄がいる。違うか?」
それは初耳だった。わたしにはもう欲しいものなんてない。あと手に入れるべきなのは天国への片道切符だけ。安寧な生活以外望むものはなかった。
「そんなものないって顔してるな。え? アンタはあれだ、受付にいた女……あの長い髪の……あの女! あれが欲しい」
「ちがう、彼女が欲しいなんて考えたことなんかない。」
「違う、違う。アンタが欲しいのはあの女自身じゃなくって、あの女の幸せな生活だ。男運がなさそうな顔してるもんなア。首の傷に気づかないのは間抜けだけ。ここの客は間抜けばっかりみたいだけど」
わたしは否定できなかった。女子高生が、悪い男にあそばれていて、暴力を振るわれているんだろうということは、事実だったからだ。ロングヘアーのウイッグは傷を隠すためで、タートルネックも同様、赤い目はよく泣いているからだ。彼女は現状から抜け出せないでいる。地獄の生活から。わたしはすくいだしたかった。しかしはわたしは何も持っていない女だった。
「当たりだな」
「どうして分かるの?」
「この鞄はもう壊れかけなんだ。だから外のことが漏れてきて、見える。俺の体はもう成長を止められない。それに、もうこの鞄に相応しくない。」
咳の主の言葉の意味がちっともわからない。しかし、彼は気にせず言葉を続ける。
「あんたは鞄が欲しい。俺は鞄から出て生きたい。WIN-WINだろ」
スーツケースの口をコンコンと叩くと、咳の主は笑った。わたしは聞きたいことがあった。
「それであの子は救われる?」
「全てから隔離される。全部見なくてよくなるし、暗い鞄の中は居心地よくて眠りやすい」
わたしは���子高生の目の下の隈を思い浮かべた。化粧でごまかせない不眠の証をみていつも心を痛めていた。
「貴方はどうして外を出たくなったの?」
「セックスしたくなったから」
明け透けに咳の主はいった。真顔で言ったので、それが本当のことだと、思わせる。
「下半身はどうやったって出てこない。おれは間抜けにも上半身しかこんにちはできないんだ、セックスもクソもない」
わたしは何の言葉も返せなかった。咳の主はハッとした顔をした後、嫌な顔で「処女には刺激的な話だった」と、笑う。わたしはそれを無視して、「あの子の幸せが欲しい」と願った。
「願えばいい。明日目が覚めたらお望みのものが隣にあるだろうさ」
咳の主は、目的の会話は終わった、とばかりに口を閉じる。
わたしは、咳の主のような格好ですごす女子高生の姿を思い浮かべ、それでも愛らしさは変わらないな、と思った。平和に生きられる生活を送らせたい。わたしの願いはただひとつだった。それが彼女の求めていない形だとしても。
「安心しろよ、願いが叶ったら、鞄から抜けだせる。永遠じゃない。あんたの場合はそうだな……、女が、外でも平和に生きられるところに到達したら、女自身が自覚するだろ、きっと。出るべき時は本人しかわからない、おれみたいに。」
「貴方はなんで鞄に閉じ込められたの?」
咳の主は一瞬、口を閉じて固まった。それから緩やかに糸を吐くか細さで息を吐いた。
「おれはひどい浮気性だった。國弘……恋人はそれに耐えきれないと何度も言った。おれはそれを無視して、女とも男とも寝た。ある日目が覚めたら、俺は鞄の中だった。あいつは長い旅になると言った」
それから咳の主はすこし恥ずかしそうな顔になる。
「あいつの願いはきっと"浮気をやめて欲しい"ってやつだ。その通りになった。もう他に目移りなんでできっこない。だから鞄から出られる」
わたしが何かを言う前に、咳の主は壁に掛けてある時計をみて、少し大きい声で「もう戻れ」と言った。
「もうあいつが帰ってくる。あんたがいるのをみられたら面倒だ。俺はもう浮気しないんだからな。変な疑いかけられて喧嘩したくない。安心しろ、鞄はあんたのものになる」
咳の主に追い出されるような形でわたしは部屋の扉のノブに手をかけた。最後に聞きたいことがひとつあった。わたしはできるだけ早口で、簡潔に聞いた。
「あの子はわたしを恨むかな?」
「最初はな。でも時間が解決する……。もう行けよ」
扉を閉めて、自分の部屋に飛び込むと、ちょうど階段の方から音がした。革靴の音は、あの隣人の男のものだった。わたしは男が部屋に入ったのを聞き届けてから、部屋を飛び出して一階のロビーに向かった。ふたりの会話をこれ以上聞くのは、なんだか気が引けた。
深夜を見計らって部屋に戻ると、隣はしんとしていたが、それもつかの間の出来事だった。しばらくすると鳴き声が聞こえた。震えていて、濡れていた。國弘という名前の男が、咳の主の名前を呼んでいる。はるかと呼んでいた。名を呼ばれるたび、咳の主は必死に、うん、うん、と答えている。泣き声交じりだった。
わたしはヘッドホンをして、クラシックをかけた。目を閉じて、あの子のことを考えた。あの子の幸せを。
*
*
*
「あら、さきさん、おはようございます」
「おはようございます」
「その鞄、さっきのお客さんの忘れ物かしら?」
「いいえ、いただいたんです」
驚く母親に、わたしはタグを見せた。「親愛なる隣人へ」おそらくはるかさんの字だろう。確かな重量のあるそれをわたしは大事にもつ。
「へんなひと」
「ええ、本当に。それからわたし、今日から、他を回ろうと思って」
「えっ、そんな、急に」
「ええ、急に。突然沖縄に行きたくなったんです」
「そうなの……、」
母親は残念そうな、どこか縋るような目でわたしをみたが、曖昧に微笑んで、目をそらす。誤魔化すように、わたしは尋ねた。
「この、スーツケースのひとなんですけど」
「ああ、連れは後から来ませんなんて言っておいて、チェックアウトの時には知らん顔でひとり増えてたの、まあ、あの方は、ちょっと困ったような顔をしてた気がしたけど……変な人」
母親は繰り返してそう言った後、はっとして、「ごめんなさい、彼が何か?」と問う。わたしは「いえ、それが聞きたかったんです」とだけ答えた。
「それでは。長い間お世話になりました」
「こちらこそ。アッそうだわ、安津子を見かけたら声をかけてくださる?昨日出ていったっきりなの」
「ええ、見かけたらかならず」
「お願いしますね」
鞄が泣いている。わたしにはどうすることもできない。それがすこし、悲しかった。
「さきさん、さきさん」
すすり泣くような声はあの時の、隣人の声のような艶かしさを持っていた。
「あこちゃん、苦しくない?」「ええ」「何か見える?」「いいえ」「匂いはする?」「なにもしないわ」
「ねえ、さきさん、わたし怖いのよ」
「大丈夫、あこちゃんは幸せになれるから。もう少しの辛抱だから」
鞄はそれきり黙り込んだ。はるかさんもかつてそうだったのだろうか? それを知るすべはない。
わたしは夢想する。彼女が鞄から抜け出す日々を。この鞄が別の、誰かに譲渡される瞬間を。
了
國弘 くにひろ
浮気性な恋人に悩んでいたところフィリピン人に件の鞄をもらった。
帰って来たある日恋人が鞄から抜け出していて焦ったが恐れていた事態は起こらず。旅行は続行。黒髪。攻め。
遙 はるか
浮気性。性格も良くない。口がよく回る。鞄事件で浮気性は治った。鞄にいる間は成長が遅れるので、國弘とは微妙に年の差があるように見える。受け。
さき
金持ち。安津子の幸せを願っている。傲慢。自分だけが安津子を救えると思っている節がある。
安津子
割とやばかった。ヤバイ男に捕まりヤバイことに手を染めかけていた。近々風呂に沈められる羽目になっていた。母親は継母。でも関係は良好だった。心残りはそこ。
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無題
えっちだから注意。テスト。
2735 グラム、――掃除中、ふいに出てきた写真を眺めているうちに思い出した数字である。写真の中にはまだ生まれて間もない女の子の姿が写っておりこれがまさかあんなに可愛らしい少女へと育つのだと思うと、感慨深くもあり懐かしくもあり愛しくもある。彼女は物凄く活発な子で、俺のお下がりの遊び道具をめちゃくちゃにしては母親に怒られ幼稚園で誰それを泣かせたとか何やらで先生に怒られ、話によると幼少期の自分よりも手がつけられなかったらしく本当に今の姿からは想像も出来ない。まだ彼女が物心もつかない頃にはしばしば家の近くにある公園へ引っ張られたものであったが、ひとしきり暴れまわるものだから体中が砂と泥にまみれてしまいいじめられたのではないかとよく疑われたものである。妹とはもうその頃から何をするにも一緒であった三才違いだから小学校へは三年間一緒に通ったし中学校もほとんど小学校の横にあるようなものだからその後も手をつないで一緒に通学した。違う部屋を割当られていたけれども家の中ではずっと一緒に居た寝る時も彼女が小学四年生に上がる頃までは一緒に布団に潜り込んで、その日学校であった事を聞いているうちに気がつけば朝になっていた。思えば妹が落ち着き始めたのも若干距離が離れ始めたのも彼女が高学年へ上がってからである先の一緒に布団に入らなくなったのは一つの例で実はお風呂も一緒に入っていたのであったが、急に恥ずかしがるようになったかと思えばそれも直に無くなっていった。もしかすると当然かも知れないというのも思春期特有の問題として成熟し始めた体に心が追いついていなかったのであろう特に問題だったのは彼女の胸であった妹は昔からの習慣で自分の部屋で着替えをせずわざわざ制服をこちらの部屋にまで持ってきて寝ぼけ眼の目をこすりながら、「んっ」と言って手をバンザイしてパジャマを脱がせようとしてくるのであるが、その時ジュニアブラを通して見えてくる膨らみが日を追うに連れてどんどん大きくなって行くのである。小学五年生に上がる頃にはぷっくりと先端の突起が現れていたし、小学六年生に上がる頃にはもはやジュニアブラでは覆いきれなくなったのか可愛らしい刺繍の編み込まれた普通のブラジャーをつけるようになっていた恐らくすでに彼女の握りこぶしぐらいの大きさであったかと思われる。妹がそれをどんな思いで見せていたのかは分からない思うに単に寝ぼけていただけであろう手をバンザイして来た時にそのままにしておくと、パタンと布団の上に倒れ込んですうすうと寝息を立ててしまうほどに妹は朝が弱いのである。何にせよ彼女の胸は同年代はもとより大人の女性と比べても遜色ないほど、小学生にして大きくなっていた。正直に言って男の俺からするとたまったものではない手が伸びたことの一度や二度は当然あるだが妹が小学生の頃に実際に触れたのは一度だけである。確か大晦日の夜のことでおせちやら何やらの準備で気の立った母親が時間の節約と言う名目で、「もう二人してダラダラするならさっさとお風呂入って来なさい、ほら、行った行った」と言ってくるので仕方なしに立ち上がると妹も渋々立ち上がっている。トイレに行ってくると言う彼女を残して先に浸かっているとちょっとしてガラガラと音がして入ってくる手で胸元を隠しながらかけ湯をして、そっと水面を波立たせないように足から浴槽に入って来て、こちらに背を向けそのまま俺の足と足のあいだに体を潜り込ませ、ゆっくりと体を倒してくるしばらくは無言で互いの鼓動を聞き合うだけであったが、鼻に当たる彼女の柔らかい髪の毛がこそばゆくてついくしゃみをしてしまって以来、一年の終わりともあって色々と話がはずんだ。そうこうしているうちにすっかりリラックスした妹は手も足も体もだらけさせてしまったので溺れないよう俺は彼女を支えてあげていたのだが、うっかり手が彼女の胸に触れてしまう。妹はピクッと体を震えさせてこちらを見てくるだけだっただがそこには嫌悪感はなくびっくりしただけだったようである、俺はさわさわと撫でるように触り続けた。手のひらにちょうど収まるおっぱいの心地よさは何物にも比べ難くこのままずっと触っていられそうだった。彼女は俯いて声が出るのを抑えているようで時おりひどく色っぽい鼻息が漏れ聞こえてくる思い切って先端にある可愛らしい突起を摘んでみると「お兄ちゃん、そこはダメ、……」と言って弱々しい力で手を取ってくるが、やはりそこには拒絶はないむしろ迷っているような手付きであった。だがその時、あまりにもお風呂の時間が長かったために痺れを切らした母親の怒号が飛んできてドスドスと中にまで入って来てしまったそれきり俺たちは大人しく体を洗いもう一度だけ一緒に浴槽に浸かるとお互い恥ずかしさのあまり静かに新年を迎えた
妹は俺と同じ中学には通わず区内にあるお嬢様学校に進学することになった。あの大晦日の日以来俺と妹との関係がどのように変わったのかは分からないお風呂を一緒に入ると言うのもそれ以降しばらくなかったはっきりと言えるのは会話が増えたことと妹がどんどんお淑やかになっていくことと逆に二人きりだとどんどん無防備になっていくことである。朝の着替えはもちろんのこと、お風呂から上がるとタンクトップ一枚になったりバスタオル一枚をちょうど谷間が見えるように体に巻き付けたり、そもそも妹が中学校に上がってからというものお風呂に一緒に入ろうと誘われることが多くなったしかもそれが机に向かっている最中に後ろから抱きついて、「おにーちゃん! 今日こそ一緒にお風呂に入りましょ? んふふ、隠しても無駄だよ。ほら、行こう?」と指を顔に這わしながらささやくものだから、頭を包み込んできそうなおっぱいの感触と耳元のこそばゆさで俺はどうにかなってしまいそうだった。妹は兄である俺を誘っているようであったそしてそれが実際に誘っていることは追々分かることになる。今はそれよりも彼女のおっぱいについて語ることにしよう。中学生になっても成長の止まらない妹のおっぱいは一年生の時点で俺の手では包みきれないぐらい大きかったと記憶している当時俺は高校生であったが、同学年でも上級生にも妹より大きいおっぱいの持ち主は居なかった時々本屋で目に飛び込んでくるグラビアモデルなぞも妹には敵わない日々洗濯物としてベランダで干されて居るブラジャーはもはや俺の顔を包めるほどに大きく装飾は同年代の女の子のそれと比べると地味で、時々三段ホックのものが干されている時なぞは彼女の兄であるにも関わらず心が踊った。妹はバスケットボールを部活でやっていたやうだが体操服にやっとの事で収めたおっぱいが走る度に揺れに揺れてしまい手で押さえつけていないと痛くてしょうがないと言うそもそも成長痛で始終ピリピリとした痛みが走っているらしく、俺と話している途中にも幾度となく胸元に手をやってストラップとかカップの位置を調整する最も文句の多かったのは階段の上り下りで、殊に激しく降りてしまうとブラジャーからおっぱいが飛び出てしまうから一段一段慎重に降らなければならないそういう時にはさり気なく手を差し伸べてエスコートしてやるのだが、失礼なことに妹はそうやっていたわってやると「えっ、やだ、お兄ちゃんがそういうことをするなんて、似合わないんだけど」としごく嬉しそうに笑って手すりから手を離してこちらにもたれかかってくる。その時すごいと思ったのは上からチラリと見える谷間よりも下に広がる彼女の視界で、足先はかろうじて見えるけれども階段の段差などは全く見えないのである「苦労してるんだなあ」と呑気に言うと、「ようやくお分かりになりまして?」と澄ました顔で言うのでつい笑ったら頬を突かれてしまった。さて話を妹が俺のことを誘う誘わないの話題に戻そう。ある日のことである彼女が中学二年生に上がって何ヶ月か経った頃、家族でどこか温泉でも入りに行こうと中々渋い提案を父親がするのでそっくり乗った母親と何やら良からぬことを企んでいそうな妹に流されて、家族総出でとある山の中にある温泉地へと向かうことになった旅行としては一泊二日の極々普通な旅であったが、事が起きたのは夜も更けきって良くわからない蛙だとか良くわからない鳥とか良くわからない虫が大合奏をし始めた時のことである。泊まることになったペンションと言うのが中々豪勢で温泉地の中にあるせいか各部屋ごとに備え付けの露天風呂があり夜中に目を覚ました俺は、せっかくだしもう一回入っておこうと唐突に思うや気がついた時にはもう温泉に浸かっていた。深夜に自然の音を聞きながら入る露天風呂はかなり良い大学生になったら温泉巡りなども趣味に入れようかと思いながら小難しいことを考えていると、カラリと言う扉の開く音が聞こえてきた。一応これほどにないまでこっそりと露天風呂にやってきてかけ湯も極力音を立てないようにしたのに家族の誰かが聞きつけたらしいその者はそっと音も立てずにこちらにやってくるとまだあどけなさの抜けない顔をこちらに向けてしゃがみこむ。「なんだ里穂か」と言ってみると、「なんだとは何です。お兄ちゃん愛しの里穂ちゃんですよ。となり良いですか」彼女が裸になっていることに気がついたのはこの時であったいつものように遠慮しようにも時すでに遅く妹はするすると足から湯に浸かると隣ではなく背を向けて俺の足の間に入って来る。そしてしばらく無言が続いた。この時のことはよく憶えている眠いのか船をこぐ妹を支えつつ耳を澄ませて山の音を聞くそれは何とも幻想的で桃源郷にいるような印象を抱いた。この時俺は彼女のお腹を抱きしめるようにして彼女の体を支えてあげていたのだが、ちょっとでも腕を上へ滑らせるとふわりと浮いているおっぱいに手が当たるのであるこれが桃源郷でなくて何なのか。文字通り桃のような妹の膨らみは最高としか言いようがなく彼女が寝そうになっていることに調子付いて何度も上へ下へ浮き沈みさせてその感触を楽しんだ。するとのぼせそうになった頃合いに妹がお尻をぐりぐりと動かして来るのである、しまったと思って手を引っ込めたけれども途中で掴まれてしまった「えへへ、お兄ちゃんってほんとうにおっぱい好きですよね」と彼女は俺の手を自身の豊かな胸元へ。「毎回毎回、ちょこちょこ触って来ては、こんなに大きくしちゃって。大丈夫? 痛くないですか? お兄ちゃんのために大きくなったようなものなんですから、もっと触って良いんですよ?」妹はもにもにと俺の手を思いっきり動かして自身のおっぱいを揉ませてくる。この時聞かされたのだが妹は全部知っていた意外とうぶな彼女はあの大晦日の夜、俺がしたことをいまいち理解していなかったようだったけれども今となってはそういうことだったのだと理解してしまっており、俺に逃げ道はもう無かった彼女の質問に頷きつつ、彼女のおっぱいを揉みしだき、彼女のお尻に大きくした〝ソレ〟を刺激される。最後から二番目の質問は、「うわ、ほんとうに変態さんじゃないですか。じゃあ、こういうこともされたかった?」この言葉を言うや妹はするりと拘束から逃れて俺を温泉の縁にある岩場に座らせるよう促す。何が起きるのかはもはや分かりきっていた、彼女はすっかり大きくなった俺のモノをずっと大きな自身のおっぱいですっぽりと包むと体を使ってずりずりと刺激してくる行為の最中俺のモノは一切見えず、あの蠱惑的な谷間と頭の中がとろけそうな色っぽい声に俺は一瞬で果ててしまった。肉棒をずるりと抜き取ると妹は、���気持ちよかった?」と最後の質問を言ってきて精液でドロドロになった谷間をゆっくりと広げていく。その顔には中学生の女の子のものではない、何か微醺を帯びたような一人の成熟した女性の持つ色香が確かにあった
こうして俺は妹の虜になり、果ては彼女の胸の中で種を放ってしまったのである。旅行の次の日には俺と妹は昔のように引っ付き合っていた帰って来てもずっと離れることはなく久しぶりに夜をともにした。以来、俺は妹のおっぱいを事あるごとに揉んだ二人きりで居る時はもちろんのこと、外に出かけた時も周りを見計らって揉んだし、登下校中にも彼女が良いよと言ってくれたら隠れて揉んだそこから次の段階に発展するようなことはあまりないようなものの、胸でしてくれたり手でしてくれたりするのはよくあることであった。中学二年の終わり頃には、妹のおっぱいは世間では全く見られないような大きさに達しており、俺も驚けば本人も驚き、時々来る彼���の友達も私服姿を見てびっくりするなどしていた。ベランダで干されているブラジャーの大きさもどんどん大きくなっていきとうとう俺の顔がすっぽりと包めるほどの大きさになっているのであるが、俺には女性の下着をどう見たら良いのか分からないからこの辺にしておくことにするただ言えることはめちゃくちゃ大きい本当にこんなブラジャーがあるのかと信じられないぐらい妹のブラジャーは大きいのである。そう言えば中学三年の春、彼女がそのめちゃくちゃ大きいブラジャーをくれたことがあったというのも、「私が修学旅行に行っちゃうと、お兄ちゃん寂しがるでしょうから。はい、これ、プレゼント。もう合わないからあげます」とそんな馬鹿げた理由だったのだが実のことこの時くれたブラジャーは大学生になった今でも下宿先に持って行って時おり寂しさを紛らわせているのは確かであるタグには32K と書かれているけれども俺には良くわからないので当時中学3年生だった妹のおっぱいがどれほどの大きさだったのかは聡明な読者のご想像にお任せする。ただ彼女の大きな胸が残酷な現実を呼び寄せてしまっていたことは伝えねばならないまず痴漢は日常茶飯事であった電車に乗れば四方八方から胸はもちろん、案外豊満なお尻にも手が伸びてくるので必ず俺が壁となって彼女を守らなくてはならないそもそもの話として男の視線そのものが嫌だと言っていた。そして一人にしておくと何かしら知らない男が近寄るのでおちおちトイレにも行けない機嫌が良ければ、「あの人お兄ちゃんよりかっこよかったね」と言ってケロリとしているのであるが、そうでない場合はひどく面倒くさいことになってしまう。痴漢と言えば学校でもあるらしくこれは男よりも同性同士のじゃれあいで触られると言うそして彼女が一番心を病めるのは同級生からの妬みであった当然あんなに大きなおっぱいをしているものだから妹はしばしば泣きはらした目で帰ってくることがあり、それとなく話を聞いてみると今日も詰め物をしているのではないかと言われて激しく揉まれた、私だって好きでこんなに大きくしたんじゃない、あの子たちにはあまりおっぱいが無いから私の苦労をわかってもらえない、私の半分でもいいから分け与えてみたい。と言って最後には、「でもお兄ちゃんが満足してくれるなら何でもいいんだけどね」と笑いながら言うのであった。しかしこれらは彼女にとっては大したことではないかもしれない妹が本当に心の底から泣きはらしたのは、彼女が中学三年の夏真っ盛りの頃、あれほどに悔しそうにしている我が妹は後にも先にも見たことはなく恐らくずっと先の将来に渡ってもあの姿を見ることはもう無いだろう。先に彼女はバスケットボールを部活としてやっていたと言ったが、中学3年生の夏頃にもなると胸が痛くてもはや激しく体を動かすことなぞ出来なくなっていた聞けば試合に出ては足を引っ張り自分のせいで負け幾度となく涙を流していたと言う彼女の最後の試合は見に行った常に胸に手をやり動いては胸を抑えて痛がるものだから、ボールが来ても反応が一瞬遅れてしまって折角のチャンスをものにできていない兎に角ひどい動きだった。だが、当然とも言える何と言ってもバスケットボールとそれほど遜色ない大きさの膨らみが胸に二つも付いているのだからむしろそれで試合に出て、あれほどまで体を動かせると言うのはかつてやんちゃだった妹だから出来たのであろう誰が称賛せずに居られようか迎えに行った時、彼女はバスケ部の同期後輩に囲まれて声を上げて泣いていた意外とあっさり引き渡してくれた理由は考えたくもない彼女にとっては最後だったけれども、三年生の試合としてはまだ序の口であるという事実はさぞかし悔しかったであろうその日はひたすら頭を撫でてやった。そんな妹であったが明くる日の朝には早くも復活して、「次は受験だねー」と飼っている猫に向かって呑気に言っていた。彼女はこの時ボケて居てこんなことを言ったけれども、中高一貫校なのだから何も心配はいらないむしろ受験で大変なのは俺の方で今度は俺が妹に頭を撫でられる羽目になろうことは目に見えていただが彼女の危惧はそちらではなくこの一年間を終えると俺は地元を離れてしまう、そのことが気にかかっているようであった何せ、「実は合格してほしくないって思ってる。お兄ちゃんが居ない生活なんて私、嫌」とまで言ったのだからよっぽどである。それでも俺は頑張った決して妹を蔑ろにしたわけではないけれども兎に角頑張った気がついた時には彼女もまた応援してくれるようになっていた。だから受験は上手く行って、俺は別に泣きはしなかったけれども妹は泣いて喜んでくれた。その涙がどこから出来たのかは分からないだが俺の顔をあの巨大な胸の谷間にすっぽりと入れて何度も何度も背中を擦ってくれるそれはかなり息苦しかったけれどこれほどにないまで気持ちの良い抱擁であった。そして実家で暮らす最後の日、俺たちは前々から約束していた通り次のステップに進んだ。外から何者の音も聞こえない深夜、彼女は震えながら俺の部屋へ来るとまずキスをせがみゆっくりと服を脱いでいった合う下着がないからと言って、おっぱいの溢れかえるブラジャーを取っ払い綺麗に畳んで一糸まとわぬ全身を俺に見せる。よろしくおねがいしますと彼女は言った俺も彼女の要求に答えて手をしっかりと繋いで秘部に自分のモノを出来るだけ優しく入れたこれ以上は何も言うまい最後に妹は目を潤わせながらこう言った。「お兄ちゃん、私のことを忘れないでください」と。ところでここまで言っておいて何であるが、別に妹はその後何事もなく高校生活を歩んでいるようであるそして俺は突然初めた片付けが終わらずに嘆いているところである妹の写真やらブラジャーやらを見つけて以来全く進まぬ少し前に連絡が来た時には彼女はあと15分くらいで着くからと言っていたならもうすぐである。俺は片付けの途中でむしろ汚くなった部屋を眺めてどう言い訳したらいいのか考え始めたが、あの妹のことだから言い訳なぞ通じないであろうと思うとベッドに横たわって彼女の訪れるのを待つことにした
(終わり)
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逆の関係
長身女性もの。14k文字。
妻の美雪と出会ったのは高校の入学式だったろうか、出会ったというよりも姿を見た程度ではあったが、今でもあの時の衝撃を忘れることはない。スクールバスから降り立って、上級生に案内されて、体育館にずらりと並んだ生徒たちの中でひときわ突き抜けた、――周りは高校一年生の女子なのだから、遠目からでも胸から上が丸ごと見えてしまっているほどに背の高い女生徒、――もう心臓が張り裂けそうでならなかった。あまりにも現実離れしている。見間違い? それとも台に乗っている? いやいや、何度目を擦っても一人だけ浮いたように胸から上が出てしまっている。他の女子がちょっと大きめの160センチだとしても、明らかに190センチは超えている。……
残念なことに美雪とは違うクラスであったから、心配されるほどに落胆してしまったのだが、嬉しいことに彼女と声を交わしたのはそれから2、3日もしなかった。
ちょっとここで、話を分かりやすくするために説明しておきたいことがあるので、回り道を許していただきたい。私たちの高校では、クラスは分かれるけれども、実のところ授業はそれとは関係なく、選んだ先生の元に生徒が行って、そこで授業を受けると云う、要は大学みたいな授業の受け方なのである。だから毎時間、本来の教室に教科書やらを取りに戻りはするけれど、だいたいあっちへ移動して、こっちへ移動して、それが終わればここへ移動して、……と云うように、学生からすると面倒くさいだけのシステムを、私はこなしていた。
で、私は最初の週の木曜日、うっかり教室を間違��てしまって、微妙に食い違った席順に違和感を覚えながら座っていたのであるが、チャイムが鳴る少し前、目の前に黒い人の気配を感じて目を上げると、――彼女が居た。
「あ、あの、……」
と鈴のような綺麗な声が私にかかる。
「は、はい?」
ときっと変な声を出してしまっていただろう。何せ目線よりもずっと上に彼女のスカートと裾の切れ目が見えるのである。それに、天井を見るように顔を上げると、「美雪」と云ふ名にふさわしい綺麗で大人びた顔つきが見え、私は必死で歯が震えるのを抑えていた。
「もしかして、間違えてませんか? そこ私の席だと思うんですけど、……」
「あれ? えっと、もしかして、次は化学ではない?」
「そうですね。次はここ古典になってます」
ペロリと彼女が席順等々を記している紙を見せてくれる。
「えっ、あっ、ほんとうだ。……ご、ごめん。通りで変だと思った。……」
と、私は立ち上がった。――のだが、立ち上がった感覚がまるでしなかった。私の眼の前には彼女の豊かな胸元があったし、ぐいと見上げないと彼女と目が合わせられないし、私の腰と彼女の太ももの腹がだいたい同じ位置に来ているし、……要は座った状態で人を見上げる時の景色が、そこには広がっていた。――
「いや、ごめんね。どうぞ」
と足早に過ぎようとしたのであるが、焦りが顔に出てしまっていたのか、
「くすくす、……次からは気をつけてね」
と、柔らかな笑みを浮かべられた彼女に、私は手を振られながら教室を後にした。
ただただ恥ずかしかった。一目惚れをした相手に笑われて、第一印象が肝心なのにこれでは、……と思って、次の授業中泣きそうになっていた。
ところが話はこれだけではないのである。明くる日、教室を移動していると廊下に彼女の姿が見えたので、自然私は隠れるように次の授業の教室に入ったのであるが、なんとそこに彼女が、扉の上に頭をぶつけないよう身をかがめて入って来た。しかも私の横の席に座ってくるのである。私は窮屈そうに横へ放り出されている彼女の足の筋と肉の織りなす芸術に見とれつつも、教科書と、ノートと、筆記用具を取り出す彼女を眺めていた。――と、その時、ひらひらと、扇のように大きな手が右へ、左へ。
「こんにちは。今日は間違えてませんよね?」
とくすくすと笑ってくる。
「たぶんね。誰もここに来なかったら、大丈夫だろう」
この時の私はなぜか冷静だった。それでも彼女のくすぐったい笑いに顔を赤くしてはいたが、……
「ふふ、そうなってからは遅いんじゃありません?」
「ま、でも、同じ教科書を出しているあたり、間違ってはいないんだろうな」
「ですね、――」
とチラリと時計を見た。
「自己紹介、……しましょうか」
「だな。でも、その前に、俺に敬��なんて必要ないんだけど?」
いえ、これは���なので、……と云ってから彼女は自分の名前を云い出した。旧姓は笹川と云う。私はどこそこの中学校から来た者で、地元はあそこで、今はスクールバスで通っている身で、家で飼っている兎がたいへん可愛くて、……などなど意外にも自身のことをたくさん喋る。
「へえ、笹川さんはあの辺りから来たんだ。俺もお爺ちゃんがあそこらへんに住んでるから、よく行くよ」
「それなら、すれ違ってるかもしれませんね。――ところで、笹川〝さん〟はやめてください」
「笹川さんが敬語をやめたらね」
「うぅ、……橘さんのいぢわる。ひどいです。……」
とわざとらしく手を目元にやるので、私はその見た目とは反対のお茶目っぷりに声を出して笑った。
この日が契機となって、私たちは週に一度だけ、それも10分だけある休み時間のみではあるが、よく話をしたものだった。私の緊張も次第に溶けていって、一ヶ月もすれば、ごく自然に美雪の前で振る舞えるようになっていた。が、彼女の長身ぶりは半端なものではなく、毎回教室をかがんで入ってくるし、普通のボールペンやらシャーペンがミニチュアサイズに見えてしまうし、相変わらず私の頭は彼女の胸元にしか辿り着いてないし、何より足を前に伸ばせば前の席からかかとが出てしまうのには、驚きで目を見開いてしまった。すると美雪はハッとなって足を引っ込めるのであるが、その仕草がまたいじらしくて、辛抱するのも限界であったかもしれない。
当然、彼女の身長については様々な憶測が飛び交っていた。180センチだの190センチだの、はたまた2メートルは超えているだの、何度聞いたことか。一応男子で180センチはある同級生が居たから、わざと並ぶように立ってもらい、それを色々な角度から見て目算で美雪の身長を見積もると云う方法をやったことがある。が、彼女は話している時には下を向くのと、体を使って話そうとするから上手くはいかなかった。それでもなんとか見てみると、182センチの男子生徒の頭の天辺が、彼女の顎程度にしか辿り着いてないのである。ということは、彼女が小顔であることを考慮すると190センチと、もう少しあるぐらい、とにかく190センチは超えている、――という結論に至った。
私はこの話を馬鹿らしいと思いながら聞いて、その実どれほど心を踊らせていたか。たった一ヶ月前には中学生であった女子高生が、男よりも遥かに高い、190センチを超える身長を持っている。……これだけ分かれば、もう夜のおかずには困らない。しかもめちゃくちゃかわいい、奥ゆかしい、麗しい、……
より私の心を踊らせたのは、中学生時代から美雪の友達だと云う女子の話であった。聞くと彼女は小学生の時にすでに180センチ以上あり、ランドセルが背負えないからトートバッグか何かを持って通学していたと云う。それで中学に入ると、身長の伸びは鈍くはなったが、身体測定のたびに先生を驚かせていたから190センチ以上と云うのは確かだと思う。色々あるけど、すごいのはプールの授業の時で、水深1メートル10センチだったから、みんな胸元に水面が来ていたんだけど、彼女だけ股のあたり、――腰にも水面が届いてなかった。笹川は背が高いけど、本当に恐ろしいのは足の長さなんだよ。君も座ってると別にあの子があんなに背が高いとは思わないでしょ? と云うのである。
たしかにその通りである。私は当時、美雪と基本的に話をすると云えば、互いに座ったまま声を交わすことだったから、しばしば目が合ってしまって顔が赤くなるのを感じたものだった。彼女の上半身は普通の、……少し大柄かな? と思う程度、……恐らく原因は豊かな乳房にある、……裸を見ることの出来る今だから云えるが、背が高いとは云っても、少なくとも私よりは細い。……いや、やっぱり胸はちょっと大きすぎるかもしれない。……
それで、だいたい彼女の身長は190センチ台だということが分かったのであるが、あまりにもはっきりしないものだから、なぜか私に白羽の矢が立ったのであった。恐らく私があまりにも楽しげに美雪と話していたからであらう。
「あー、わかんね。たちばなー、お前聞いて来てくれよ」
「えっ、何で俺なんだよ」
「だって俺たちっていうか、1年の男子の中で、笹川と一番仲が良いのってお前じゃん?」
「それは、まあ、自負してるけど、……だけどこういうのはコンプレックスになってるかもしれないから、良くはないだろ」
「けどお前も、もっと仲を縮めたいだろう? ならいつかは聞かなくちゃいけないから、ほら、ほら、行くぞ」
「あ、ちょっと、まっ、………」
と、俺は昼休みの時間、まだ食べ終えていない弁当を尻目に連れ出されてしまった。
とは云っても、他人のコンプレックスになってるかもしれない事柄に口を出すのはご法度であるから、もぐもぐと色鮮やかな弁当を食べている美雪の前に立たされた私は、頭が真っ白になっていた。ニヤニヤと笑いながら見てくる友人には、今思い出しても腹が立つ。
「あ、……」
「うん? どうしました?」
「あ、いや、なんでもない。あー、……こ、今度の日曜にユニバでも行かないか?」
なぜ、デートの誘いになったのかは、私自身も分からない。ニヤニヤと笑っていた友人は口を開けて止まっているし、彼女の周りに居た女子数名もパントマイムのように動きが止まっているし、そもそもの話として教室中がしいんと静まりかえってしまった。なんでこんなことを云ったんだ、今すぐにでも教室から出て行きたい、……そんな思いがあって、誤魔化すように頬を爪でかいていたけれども、美雪だけは、あの柔らかい笑みを浮かべていた。嫌味も嫌悪も全くない、今でも私だけに見せるあの、純粋に好意に満ちた笑みを。
そんな美雪だったから、当然デートには行くことになったのであるが、私としては出来るだけその時の事は思い出したくない。それまで恋愛の「れ」の字も味わったことのない小僧が、いきなり女性とデートだなんて、――しかもほとんど自分の理想と云っても良いほどの体と性格を持っているのだから、それはそれはひどい有様だった。
まず、会話が上手く続かない。彼女が頑張って話題を振ってくれるのを感ずる度に、逃げ出したくなった。実は友人数名がこっそりとついてきていたらしく、あの後かなり揶揄されたのもきつい。それに、歩幅が��いすぎて、始終小走りでなくては彼女についていけなかったのが、何よりも情けなくてつらい。
それほどまでに、彼女の足は長いのである。具体的に云えば、彼女の膝下と私の股下がおおよそ同じなのである。裸足であれば言い過ぎなのであるが、あの日美雪は底のあるブーツを履いており、並んでいる時にこっそりと比べてみたところ、足の長さが倍くらい違う。目線を落とすとすぐそこに彼女の豊満なお尻、……が見えるのはいつものことなのであるが、あの日はタイツかストッキングで包まれた彼女の膝が、ほんとうに私の足の付け根と同じ位置にあった。
デート後半になると、私が息をきらしながら遅れてついてくるので、美雪はとうとう手を繋ごうと提案した。承知した私の手を包む彼女の手の暖かさは、初夏であってもやさしく、一生忘れられない。……が、却って大変であった。彼女は意外と力が強く、疲れて足取り重くなった私の手をしっかりと握って引っ張るものだから、感覚としては無理やりマラソンをさせられているのに似る。グイグイと他の客をかき分けて行く彼女に、けれども手の心地よさを味わいたい私は、無理でもついていくしかなかった。
その様子がどんなものであったかを知ったのは次の日であった。勝手についてきた連中が写真を撮っていたと云うので、見せてもらったところ、――いや、もう忘れたい。お姉ちゃんに無理やり連れてこられた小学生の弟が、手を繋がれてやっとのことで歩いている様子が、……あゝ、今でも時折その写真は見ることがあるのだが、まさに大人と子ども、……周りの人々にそういう風に見られていたと云うだけでも、私はもう我慢できなくなる。違う写真には、私が疲れて下を向いていた時の様子が映し出されていたのであるが、それもむくれてしまった子どものように見える。……私は美雪に嫌われたと思った。せっかくデートに誘ったのに、こんな情けない男と出歩くなんてと、思っていた。
が、彼女は彼女でかなり楽しんだらしい。明くる日のお昼休みにわざわざこちらの教室にまで出向いて、昨日は楽しかったです、お誘いありがとうございました、ところで次はどこに行きましょう? 金曜日に言い合いっこしましょうか。では、ほんとうに昨日はありがとうございました。と云って、呆気にとられているうちに出ていってしまった。
美雪とはそれからどんどん心を寄せ合って行った。とは云っても、私も彼女も非常な奥手で、弁当を一緒に食べることすら一年はかかった。キスをするのには丸ごと二年はかかった。お互い奥手過ぎて告白というものをせず、自然の成り行きにまかせていたせいなのだが、だからこそ初キスの耽美さは際立っていた。それは私たちが高校3年生に上がる頃だっただろうか、すっかり寒さが和らいで、桜もほとんど散っていたから4月ももう後半と云った頃合いだらう。どうしてキスなどと云うものをしようと思ったのかは分からない、それすらも成り行きに任せていたから。だが、確かに憶えているのはどんどん近づいてくる彼女の唇である。
確か、キスをしたのは階段の踊り場であった。ベタな場所ではあるが、学校の中であそこほど気分を���めてくれる所はなかろう。奥手な私たちにはぴったりな場所である。階段を二段か、三段上がったところで美雪は私を呼び止めた。
「優斗さん、……あ、そのままで。……」
相変わらず「さん」付けはしていたが、その頃にはすっかり、私たちは下の名で互いを呼び合っていた。
「どうした?」
と云っているうちにも美雪は近づいてくる。――不思議だった。いつもは下から見上げる美雪の顔が今では、――それでも彼女は私を見下ろしてはいたが、まっすぐ目の前に見える。
「……目を閉じてください」
いつの間にか頬を、顔を、頭を彼女の大きな手で包まれていた。薄目を開けてみると、もう目の前まで彼女の顔が近づいてきている。あっ、と思った時には唇と唇が触れ合っている。……
頬から暖かい手の感触が無くなったので、目を開くと、顔を赤くしてはにかむ美雪と目が合った。きっと私も同じような顔をしていたに違いないが、その時はもう目の前に居る女性が愛おしくて愛おしくて、このまま授業をサボって駆け出したい気持ちに駆られた。
「さ、早く行きましょう。もう予鈴が鳴りましたよ」
と一息で私の居た段を飛び越すと、こっちの手を取ってくる。
「ああ、そうだな。……」
私はそれくらいしか言葉を発せられやしなかった。
それからの一年間は、美雪との勉強に費やした。もっとも私は教えられるばかりではあったが、そのおかげで、受験はお互い無事に突破できて、お互い無事に同じ大学へ通うことになった。残念ながら大学時代は一つの事を除いて特筆すべき事がまるでない。全くもって平々凡々としたキャンパスライフだった。
さて、その「一つの事」なのであるが、それは何かと云うと、ついに彼女の身長が判明したのである。大学二回生の時の健康診断の時だったのはよく憶えている。私は長い行列に並ぶのが面倒で飛ばそうかと思っていたのだが、朝方下宿先へとやってきた美雪に、それこそ姉弟のように引っ張られる形で、保健センターへと向かった。レントゲンこそ男女別だったものの、血圧身長体重を測る列に並ぶ頃には、私はまた美雪の後ろにひっついて歩いていた。
彼女は相変わらず女神のような存在だった。後ろに居る私は云うまでもないとして、列に並ぶ誰よりも頭二つ三つは突き抜けている。みんな、彼女からすれば子どもである。誰も彼女には敵わない、誰しもが彼女の弟妹でしかない。ただ私だけが彼女の恋人であった。
事が起こったのは私が身長を測り終えた時である。美雪は私を待っていてくれたのだが、ちょうど私たちの間には微妙な段差があって、胸元にあった彼女の診断結果が見えてしまっていたのである。苦い顔をしながら眺めていたから、横から来た私に気が付いていなかったのかもしれない。だが普段は気が付かなかったところで何も見えない。彼女の胸元と云えばちょうど私の頭の天辺なのだから、背伸びをしなければ、何があるのかも分からない。――が、とにかく、その時の私には���小さいカードに刻まれた下から二つ目の数字がなぜかはっきりと見えた。そこには198.8と云う数字が刻まれていた。余裕があったから私のカードを見てみると、167.4と云う数字が刻まれているからきっとそれは身長で、なら彼女の身長は198.8センチ、……もうあと2センチも大きくなれば2メートル、……2メートル、2メートル、………
胸の高鳴りは、しかし保健センターの職員に邪魔をされてしまって、その後教科書を買いに行くと云う美雪に引っ張られているうちに消えてしまった。が、その日私の頭の中にはずっと198.8と云う数字がめぐりにめぐっていた。あの時の、高校生の時の、190センチ以上は確実にあるという話は確かであった。美雪の身長は198.8センチ、多少の違いはあるとしても、成長期を終えようとしている女の子の身長が、そう違うことは無いはずである。ならば、少なくとも高校に入学した時の美雪の身長は195センチはあったはずである。なるほどそれなら182センチの男子が並んだところで、顎までしか届かなかったのも頷ける。扉という扉を〝くぐる〟のも頷ける。自販機よりも背が高いことも頷けるし、電車の荷物棚で体を支えるのも頷けるし、私の下宿先の天井で頭を打ったのも頷ける。私はとんでもない女子高校生と、あの日出会い、あの日お互いを語り合い、そして、あの日恋に落ちたようである。
結婚をしたのは私たちが特に留年することもなく、大学を卒業したその年であった。恥ずかしながら美雪と初めてしたのは初夜だった。服を脱いで、下着一枚となり、私の前であの大きな乳房を隠そうと腕をもじもじさせる彼女の姿は、いつもと打って変わって、まだ年端のいかない少女のものであった。私はゆっくりとブラジャーを取って眺めた。カップの左下にあるタグには65P と云う英数字が並んでいた。天は美雪に何もかもを与えていた。体も頭脳も美貌も境遇も、何もかもを彼女は持っていた。P カップのブラジャーは途方もなくいい匂いがした。私は実際に彼女の乳房に包まれたくなった。美雪は私を受け入れてくれた。乳房のあいだに辛うじて見える私の頭を撫でてくれた。力の入らない私の背を撫でてくれた。私は彼女の恋人でも弟でもなかった。ただの赤ん坊であった。私はいつしか彼女をこう呼んでいた。
「まま、……」
と。――
一度やってしまえば美雪も私も枷が外れたのか、週に一度とか、月に一度のペースではあるけれども、性行為に勤しんだ。殊に嬉しかったのは彼女が私の様々な要望を答えてくれることであった。もうすでにお分かりの通り、長身女性そのものを性癖として持つ私はずっと昔からそういうプレイをしたくしてしたくてたまらなかった。時には男が床でするように、彼女の太ももにモノをこすり付けたり、時には壁際で圧迫されながら素股、――と云ってもほとんど膝のあたりにしか届かなかったが、彼女の乳房の匂いを嗅ぎながら情けなく太ももで扱かれたり、時には上から押さえつけられるようなキスと手コキだけで射精に至ったり、様々な長身プレイを楽しんだ。
特に、私が気に入ったのは美雪の腕力に任せたプレイだった。先にチラリと出てきたのであるが、彼女の力は強い、……いや、強すぎる。もう何度、ひょんなことで体を浮かされたか。朝眠気にかまけて眠っていたら、ふわり。電車で倒れそうになったら、ふわり。性行為の時に「だっこ」と云ったら、ふわり。重くはないのか? と聞くと、優斗さん軽いんだもん、全然重くないよと云う。私も身長こそ167センチで止まっているが、体重は55キロあるから決して軽くは無いはずである。それを軽いと云って、ふわりと持ち上げられるのは���異的であるとしか言いようがない。
一度、遊びだからと云って、握力計を握らせたことがあった。3000円ほどの玩具のような握力計ではあったが、100キロまで測れると云うので、さすがにそのくらいあれば良いかと思って買ってきたのである。案の定、美雪は全力を全く出してくれなかった。デジタル表示を見ながら、ちょうど25キロか30キロほどで測定を止めて、手渡してくる。ちゃんとして、と云っても笑ってごまかされる。結局その日は諦めて、また機会があればと思って、それっきりになっていたのであるが、数カ月後のある日、部屋の片付けをしている時に件の握力計が出てきたので、そう云えばあの時自分が測ってなかったなと思って握ってみると、なぜかスカスカする。握力計だから、握ると手応えがあるはずだが、……? と思いながらもう一度握ると、やはりスカスカする。不思議に思って適当にボタンを押していると、100、28、31、27、……と云った数字が出てくる。2つ目以降の数字はまさにあの日美雪が出した結果であった。と、云うことは最初の100と云う数字は一体、……? あの日以来、自分はこの握力計には触っていない。それにこの壊れた取手の部分も気になる。……そこで私はある結論に至り、背筋を寒くした。美雪を怒らせてしまったら、一体どうなる。……? 本気で手を握られでもしたら、……? 私の股間は熱くなる一方であった。
だが、彼女の力の強さを実感するに従って、漠然とした物足らなさが私を襲っていた。美雪にその力を存分に発揮させて、己の無力さを味わいたい。行為に到る時、彼女はどこか一歩引いたような風采(とりなり)で私を痛めつけるのである。それは本来美雪の性癖がそっちでは無いからでもあるし、まさか夫にそういうことをするわけにはいかないと云う思いもあるのであらう。赤ちゃんごっこはそこを上手くついてはいるが、やはり彼女にはその力でもって、私を嬲ってほしい。もっともっと、私を蔑んでほしい。……
とは云っても、美雪は完璧な良妻賢母である。何時に家に帰ろうとも起きていてくれて、しかも笑顔で迎えてくれるし、ご飯は物凄く美味しいし、家事は何一つ抜かり無く行うし、夫への気遣いはやりすぎなほどである。私はとんでもない女性を嫁にもらったようであった。毎日が幸せで、毎日が楽しく、充実している。――
だが、そんな私と美雪のしあわせな結婚生活は終わりを迎えようとしていた。なぜなら、……
「パパ! パパ! 居るよね、聞いて聞いて!」
と娘の詩穂里が、〝腰を折り曲げながら〟書斎に入ってくる。全てはこの娘とのいびつな関係が原因なのである。――
詩穂里が生まれたのは結婚してすぐのことであった。まさかこんなに大きな女性から生まれたとは思えない、小さな可愛らしい存在に、私たち夫婦は胸を打たれた。授乳のためにさらに大きくなった美雪の乳房から母乳を飲む姿は、天使のようにも思える。
詩穂里はすくすくと成長した。それこそ退院時にはすでに同年代の子よりも一回りほど���きかったのだが、美雪が痛がっても母乳を求め続けた結果、離乳期はもとより幼稚園に入る頃には、一人だけ小学生が紛れたかと思うほど、娘は大きくなっていた。妻は、私もそんな感じだったから、別にいじめられていなければ気にするでもない、と云うので見守っていたのであるが、詩穂里とその組の集合写真を見てあろうことか、私は明らかに娘に、――それもまだ小学生にも至っていない女の子に向けるべきでない欲望が芽生えるのを感じた。美雪が撮って見せてくれる写真や動画もまた、かわいいかわいいとは口で云いながらも、その実私はその、他の子と比べて倍はあろうかと云う体格をした娘に股間を固くしていた。
小学生に上がった娘は相変わらず大きかった。他の子と比べるのは云うまでもないが、小学三年生になる頃には男の先生と比べても遜色なくなっていた。その時にはもうすでに身長160センチ近かったであろうか、気がついた時には私も詩穂里に背の高さで追いつかれつつあった。小学生のまだあどけない顔つきが日を追う毎に高くなって行く。……私はこの年になって久しぶりに、負けて悔しいという感情を抱いていた。
結局負けたのは詩穂里が小学四年生のときであっただろうか、立った時にやたら目線が合うかと思いきや、次の週には少し上から、次の月には娘ははっきりと私を見下ろしていた。そしてあろうことか、
「あれ? パパなんか小さくない?」
と云って、自身の頭から手をすっと横へずらしてくる。その手は明らかに数センチは私の上をかすめていった。
「ふふん。パパに勝っちゃった。ほめてほめて!」
「あ、あぁ、……よくやった。……」
私の声はかすれ声となっていた。
「ダメよ。そういうことしちゃ。パパだって意外と気にしてるんだから。ほら、ごめんなさいは?」
「あ、……えと、ごめんなさい」
詩穂里は美雪の云うことは聞くと云った風で、そこには妻の背の高さに対する尊敬の念が含まれているらしかった。
次の年、つまり詩穂里が小学5年生となった時、娘の身体測定の結果を見た私は愕然とした。そこには182.3センチという数字が並んでいた。180センチオーバーの小学5年生、……それが我が娘だなんて信じられやしなかった。
もうその頃には詩穂里は私よりも頭一つ以上は大きく、親子三人で出かけると決まって間に挟まることになる私のみすぼらしさは計り知れなかったことであろう。方や2メートルまであと一歩の美女、方や小学5年生にして180センチを超えた美少女。しかもヒールのあるブーツを履くので、外では二人の身長差はなくなる。……私は小人になった気分で、両者に手を引かれてついていくしかなかった。いや、小人と云うよりは囚われた宇宙人と云った方が正しいか。ある時、公衆の面前で、いきなり詩穂里が手を上げて、
「ほら、お母さんも」
と云うので、美雪も手を挙げる。私はあっさりバンザイの格好になったのであるが、肩に痛みを感じるや、次第に地から足が浮く感覚がする。――
そういう時がもう何度もあった。それに、二人とも、私の耳が自分たちの口の30センチは下にあることを利用して、コソコソとこちらをチラリと見つつ話をするのである。そして大概の場合、私は二人に挟まって、前からは美雪が、後ろからは詩穂里がという風にどんどん圧迫してくるのである。二人の長身美女に挟まれて身動きの取れない男、……想像したくもないが、一体どのように傍からは映っているのであろう。
そんな娘との関係が歪になり初めたのは、このペースで身長が伸び続ければ190センチも軽いと思っていた矢先のことであった。これは私たち夫婦の落ち度なのであるが、どうも夜の営みと云うものを見られたらしい。とは云っても、そんなに重いものではなくて、ただ妻に持ち上げられて背中をぽんぽんと、……要は赤ちゃんをあやすように抱っこされていた光景を見られたらしかった。
だが、小学5年生の女の子にとっては衝撃だったのであろう。明くる日、ちょうど折り悪く土曜日だったから、昨晩の余韻に浸りつつ、ソファに寝転がって本を呼んでいたところ、突然、
「パパ」
「ん? どうした?」
「ちょっと立って」
とニヤニヤと笑いながら云ってくる。手を伸ばして来ていたので、掴んで立ち上がると、
「そのまま立っててね」
と云われる。相変わらず小学生らしからぬ圧倒的な体つきであった。私の背は娘の肩までしか届いていなかった。目線は彼女の胸元であった。神々しさを感じていると、詩穂里は唐突に脇の下に手を入れてきた。そして、気がついた時には、――私は彼女と目が合っていた。
「え、……うわ! しほ、下ろしてくれ!!」
とジタバタと、地につかぬ足を動かすが、娘には何の抵抗もなっていないようである。そもそも私を持ち上げるのに全然力を使っていないようであった。無邪気な声で、
「あははは、パパかるーい」
と私を上下させながら云う。
「や、やめてくれ!!」
「ふふふ、わたし昨日見ちゃったよ。たかいたかいしてあげよっか」
「やめろ、たのむ、詩穂里!!」
「えー? やだ」
私の叫び声を他所に、詩穂里はさらに手を上へ。
「ほーら、たかいたかーい」
「うわああああああ!!!」
脇腹に感じる激しい痛みもあったが、それ以上に、天井に頭をぶつける恐怖の方が強かった。私はとにかく手も使って暴れたが、妻譲りの怪力を持つ娘には全くもって通じていない。
「ふふん、どう? もう一回?」
「や、やめて、……やめてくれ」
「やだ。それ、たかいたかーい!」
それが幾度となく繰り返された。小学生の娘にたかいたかいをされる恐怖と屈辱に私は涙を流しそうにもなっていた。――と、その時、折良く野暮用から美雪が帰ってきたらしく、部屋に入ってくる。
「あら? 二人とも何やってるの?」
「パパにたかいたかいしてあげてるの!」
「そう、ならもっとしてあげてね」
「美雪、……助けてくれ。……」
「優斗さん、実は楽しんでるでしょう? 私はまだやらないといけないことがあるから、もうちょっとしほの相手をしてあげて。大丈夫、怪我しないように手加減はしてくれるから、ね? しほちゃん?」
「うん! じゃあパパ、もう一回行くよー?」
――全く、私はとんでもない女の子を娘に持ってしまったようである。小学生なのに、背は私よりもう30センチ近くは高い、顔は可愛い、力は怪力、……それに生まれつきのサディスティックな性質。……この時、詩穂里にたかいたかいをされながら、私は美雪では満たされ得なかった何かが自分のなかに満ちていくのを感じた。
そして、その感覚は以来、続くことになった。と、云うのも、詩穂里はこの日以来、しばしば私を相手にたかいたかいやら、美雪のように抱っこをして背中をぽんぽんと叩いてくれたりするのである。彼女からするとごっこ遊びの一���なのであろう。体つきこそ大人顔負けなのに、心は小学生のままである。
そう云えば、家族三人で海に出かけた時は特にひどかった。私は沖に出る二人について行ったのであるが、あっという間に足が底につかなくなってしまった。見かねた美雪に引っ張られて抱きかかえられたものの、それに嫉妬した詩穂里に、
「ほら、パパおいでおいで」
と無理やり妻の柔らかい体から引き剥がされる。そして、
「もう、小さいのに無理して出てきて、溺れたら困るでしょ?」
と云う。もはや子供扱いだったが、さらに、
「なら、溺れないように詩穂里お姉さんと一緒に特訓しよう! ほら、まさとくん、手は離さないからゆっくりと浮いてごらん?」
と、本当に泳ぎの練習が始まってしまった。極めつけには、妻と娘よりも私が先にバテてしまって、注目を浴びる中、詩穂里の胸に抱きかかえて海から上がったのである。
公衆の面前で、小学生の娘に抱きかかえられる父親、……もうたまらなかった。私は妻よりも娘の方にすっかり好意が移ってしまった。まだ未発達な詩穂里の乳房を感じながら、その力強さと、その優しさに酔いしれていた。この時はまだ、あんなことになるとは思ってはいなかった。
あんなこと、と云うのはそれから実に一年が経った頃合いの出来事である。詩穂里は小学6年生、春の身体測定では身長はほとんど妻と変わらない193.4センチだと云う。顔つきもどこか妻に似て、おしとやかである。もう私では背伸びをしても娘の肩に届かない。寝る時は湯たんぽにしかなっていない。普段はほとんど子供をあやすような甘い声しかかけられない。
そんな中、私はある日曜日、大学の同級生とちょっとした遊びに出かける予定があって、支度をしていたのであるが、いざ出かけようと自室の扉を開こうとした時、向こう側から勢いよく詩穂里が入ってきた。当然、屈んで扉をくぐる。
「パパ、どこへ行こうとしてるの?」
いつもとは違うトゲトゲしい調子に、私は相手が娘だと云うのに怖かった。
「いや、ちょっと友達とな。……」
「へえ、そう」
「あ、遊びに行くから、……」
「ふぅん? そうなんだ。わたしとの約束よりもパパは友達との遊びを優先させちゃうんだ」
約束、……たしか先週か先々週に詩穂里と一緒に、――思い出した時には遅かった。私は壁際に追い詰められていた。
「ま、まって、それはまた来週、来週に行こう、な?」
「パパ」
「だ、だから今日は、家でおるすば、……」
「パパ?」
「は、はい」
私を追い詰めた詩穂里はどんどんと近寄って来て、一人の小さな男をその体でもって潰そうと云わんばかりに密着してくる。彼女の胸と壁に挟まれた頭に激痛が走り、私は呻き声をあげる。
「やっぱいいや、行ってもいいよ。許してあげる。でもそのかわり、わたしはずっとこうしてるから」
「うがああああ!!」
「あ、思いついた。じゃあ、こうしよう。このままパパがわたしから逃げられたら、約束のこと無しにしてあげる。でも、出来なかったら。……」
「あ、ひっ、うああ!!!」
と私は詩穂里の体を跳ね除けようとしているのであるが、それは約束云々と云うよりも、この激痛から逃れられたい一心からであった。
「ふふふ、よわいよわいパパ。小学生の娘にも勝てないなんて、……ほら、頑張って、頑張って」
と詩穂里は馬鹿にしたように云う。そのうちにもどんどん彼女の力は強くなっていく。
「ね、パパ、今日はさ、わたしと一緒にいけないことしようよ。お母さんには内緒で。あと10分で逃げられなかったら、そうしようね」
と、その「いけないこと」を暗示するように、太ももを私の股間にこすりつける。
もうどうしようもなかった。気がついた時には私は手を取られてバンザイの格好をしていたし、娘の太ももに座るようにして足は宙に浮いていた。抵抗する気なぞ、とうに消えていた。
結局、その日は本当に美雪には適当を云って、大学の友人には子どもが熱を出したと云って、詩穂里とホテルへ向かった。……この先は云うまでもなかろう。彼女の初めてとは思えない手付きや言葉遣いで、私の娘に対する長年の欲望は全て搾り取られてしまった。行為の最中、私に主導権はなかった。ただひたすら、歳の離れた実の娘のなすがまま、存分に嬲られ、痛めつけられ、挙句の果てにはその余りの神々しさに彼女をこう呼んだ。
「まま、……」
と。――
「パパー? 聞いてるー? 今日ねー、――」
と詩穂里は私の眼の前に腰掛けた。つい数週間前に中学生になったばかりの彼女はもう妻よりも大きい。私からすると二人とも巨人のように見えるのであるが、明らかに詩穂里の頭の方が、美雪よりも高い位置にある。少し前に、とうとうお母さんよりも大きくなっちゃった! と、はしゃいでいたのは記憶に新しい。
――その時、嬉しいことを思い出した。娘は今日、身体測定だと云って家を出ていっていた。
「久しぶりに身長測ったんだよ! 聞きたい?」
「あ、ああ。……」
グイと近づいてくる、詩穂里は、誰にも聞こえぬと云うのに、私だけに伝わるよう耳打ちをする。
「2メートルと、7センチ、……だよ!」
「2メートル、2メートル、7センチ、……2メートル、2メートル。……」
「そんな何度も云わなくていいじゃん。もう、パパはお馬鹿さんだねぇ」
と、云いながら詩穂里は私の体を抱きしめる。
「ね、約束、覚えてる?」
「も、もちろん」
「良かった。ほら、おいでまさとくん」
と私の顔を豊かになりつつある胸元に抱き寄せる。私は彼女に体をすっかり預けて、その甘い匂いに頭をとろけさせた。
「まま、……」
「んふふ、また今夜しようね、まさとくん」
だらりと垂れた私の体を愛おしく抱きしめながら、詩穂里は子守唄を歌った。それは鈴のように美しく、よく通る音色だった。
(おわり)
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