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<3月22日>(火) 〇せっかく今日で「まん防」が明けたというのに、首都圏は急な寒さで、しかも先日の地震のせいで東北地区の火力発電所が停止して、今日は電力危機である。いやもう、一部では雪も降っているとかで、一難去ってまた一難。まことに困ったものであります。 〇こういう状況になったら、突如として巻きあがる「なんで原発を動かさないのだ」という声。いやねえ、お気持ちはわかりますけれども、そんなに簡単な話じゃないんです。以下、ごくごく簡単にわが国の原発事情をご説明いたします。 〇原子力発電には2つのタイプがあります。BWR(沸騰水型)とPWR(加圧水型)です。BWRは東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、中国電力の5社、PWRは北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力の4社です。沖縄電力はこの際、考慮の外といたします。 〇福島第一原発はBWR型でした。ゆえにわが国における震災後の原発再稼働は、PWR型が優先されました。原子力規制庁が新しい基準に沿って再稼働を認定していくわけですが、これまでに10年と少々の時間をかけて、ようやく関電、四電、九電では原発を動かすことができるようになりました。北海道電力はまだです。泊原発が動いていれば、2018年の全道ブラックアウトは避けられた公算が大ですが、まあ、それは言っても仕方がない話でしょう。 〇さらにここに至る過程において、反原発派が再稼働差し止めを求める裁判を起こします。このことを関係者は「ロシアン・ルーレット」と呼んでおります。彼らはそこらじゅうで裁判を起こしますので、一定の確率で「差し止め判決」が発生します。これらの判決は上訴されるとだいたい否決されますが、差し止めを命じた地裁判決は一部の新聞がほめ称えることとなりますので、裁判官(その多くは定年間際の人たち)はそれで心の平安を得るのでありましょう。 〇こんなことをやっているから、再稼働は時間がかかって仕方がありません。この間、何度も国政選挙がありました。原発の是非をテーマにする政党もありましたが、「反原発政党も、原発推進政党も等しく負けた」というのが過去10年の経緯です。この問題に対しては、ハッキリしない態度を示すことが賢明な態度でありました。これでは進むことも引くこともできない。そうやって10年の月日が流れたわけです。 〇かくしてBWR型の5社は、どこもまだ再稼働の認可を受けていません。従って5社は原子力規制庁の認可を得るべく、懸命の努力をしているわけですが、規制庁は慢性的な人手不足であります。いつ、視察に来てもらえるかわかりません。だから電力会社としては、「できる限り最大限の努力をする」方針で対処します。規制庁に「駄目です。やり直し」と言われたら、次にいつ来てもらえるかわからないから。ゆえに防潮堤の高さやら非常時のディーゼル電源やら、第三者的には「ここまでやるのか?」とあきれるくらいに必死にやっているわけです。 〇なおかつ、規制庁は「万が一のテロ対策の準備もせよ」と電力会社に迫ります。そんな馬鹿な。今回のウクライナ戦争でも、原子力発電所はロシア軍が狙うところとなりました。原発の防衛は、本来、自衛隊が担うべき仕事なのではないでしょうか。「原発に北朝鮮のミサイルが落ちましたが、日本の防衛は守れました」てなことがないことは、容易に想像できますよね。それって本当に民間会社の責任範囲なんでしょうか? 〇ちなみにBWR5社のうち、どこが最初に再稼働の認可が降りるかは、もちろん電力業界内の大きな関心事です。かつては東京電力の柏崎・刈羽が最有力とされていました。ここはウクライナのザポリージャ原発よりも大きい、文字通り世界一の原発集積地です。なかでも6号機と7号機は、ABWRと呼ばれる最新鋭機です。これさえ動けば、東電の採算は一気に改善するとまで言われています。 〇ところがこの柏崎・刈羽で、規制庁の抜き打ち検査によって不祥事が発覚したために、一気にその期待はしぼんでしまいました。まあ、何があったか詳しいことは存じませんが、地元の信頼は失墜し、再稼働にはまだまだ時間がかかることになりそうです。そもそもBWR型の電力5社においては、ざっくり入社1年目から10年目までの社員は原発が動いているところを見たことがないのです。それを「電力不足だから今すぐ動かせ」というのは、無茶もいいところです。 〇さらに言えば、原子力は巨大な裾野産業を持っています。それが10年も止まったら、核燃料に関する企業もどんどん撤退していきます。ここまであからさまな「安楽死」政策を続けておいて、今になって突然「なぜ動かさないんだ?」と言われても、業界関係者にとっては不条理もいいところでありましょう。 〇他方、原発の再稼働がなければ、脱・炭素はおろか、エネルギーの脱・ロシアも不可能となることは火を見るよりも明らかです。岸田内閣は今年夏の参院選が終わったら、向こう3年かけてこの問題に正面から取り組んでほしいと思います。今の規制庁のあり方は、明らかに無理があります。なにしろ商業用の原発を相手にしているのですから。エネルギー政策は国家の安全保障そのもの。今、ここで気付いてほしいと思います。 〇BWR型の中で、再稼働の一番手となるのは意外と東北電力ではないかと言われています。女川原発、私もおととしの秋に見に行きましたけど、準備はかなり進んでいるようだし、地元の宮城県は再稼働への理解がある。それにしたって、年内は無理だろうと言われています。原発の再稼働はそれが「相場感」となります。いやはや、拙宅のエアコンを切ってこんな話を書いておりますと、文字通り身も心も凍えてしまう気がいたしますな。
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