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危機的な水不足により、インドで緊張感が高まる
先月、インドのリゾート地であるシムラーで深刻な水不足が発生した際、各地域への水供給用バルブを開閉するインダール・シン氏のような“キーマン”達は、住民の怒りを肌で感じていた。「仕事に行こうとしたら、数十人に襲われてしまうだろう」とシン氏は言う。 Saumya Khandelwal for The New York Times
The New York Times By Maria Abi-Habib and Hari Kumar June 17, 2018
シムラー、インドにて ― 近頃、シムラーの住民たちの間では争いが絶えない。このヒマラヤのリゾート地では、干ばつの原因として農民や観光業、果てにはお互いを責め合う状況となっている。
そして、全員が「キーマン」達に対し怒りを抱いているのだ。 70年以上前の英国統治時代に建設されたシムラーの水道管は老朽化しており、その運用は、各地域への水供給を行うバルブの開閉を行うキーマンたちが担っている。直近の水不足では、一部家庭で20日間の断水が発生したのだが、キーマンたちが各地域へのシェアを奪っているという住民の怒りを増幅させた。裁判所がキーマンたちへの警察による保護を指示した程だ。
「夜中の1時や2時に、私を「バカ」や「ろくでなし」と侮辱する電話が掛かってきます」21年キーマンとして働くインダール・シン氏(44)は言う。「仕事に行こうとしたら、数十人に襲われてしまうでしょう」バルブを開く鍵を差し込みながらシン氏は重ねた。
この地域の経済は観光業に大きく依存している。英国統治時代に統治者達がニューデリーの猛暑を避け、この地を夏の首都とした為だ。しかし、干ばつに加え気温が32度を超える歴史的猛暑となった5月には、地域住民の水を確保する為にこの地での休暇を避けるよう観光客へツイッターで呼びかける住民が出たほどだ。シムラーの住民の多くは過去最悪の水不足であったと口を揃える。
北インドにあるホテル・レストランチェーン協会の代表であるサンジェイ・スード氏によると、水不足への懸念からここ1カ月でのホテルのキャンセル率は30%にも上った。一部は観光客自身によるキャンセルだが、ホテル側が予約を辞退することもあったほどだ。
給水車がシムラーの山道にあるホテル際に停まっている。その中には「水があれば、明日がある」とスローガンがあった。
インド政府が木曜日に出したレポートによると、インドは過去最悪の水不足に直面しており、数百万人の生活が脅かされている。国民の半数にも上る6億人が極度の水不足に悩まされており、毎年約200,000人が安全な水へのアクセスが無い為亡くなっていく。2030年までにはインドの水需要は供給量の2倍にも達するとみられている。 シムラーでは、年々上昇していく気温と減少していく降水・降雪量が水不足の主な原因となっている。
シムラーの人口は夏の間には通常の2倍にもなり、需給逼迫に更なる拍車をかける。 Saumya Khandelwal for The New York Times
「インド全土で地球温暖化の影響が見られ、シムラーも例外ではありません」シムラーが州都であるヒマーチャル プラデーシュ州長官のヴィニート・チョードリー氏は言う。
しかし、チョードリー氏によれば、老朽化したシムラーの水道管では年間500万リットルもの水が漏れ出ているのだ。世界銀行によって支援されている1億500万ドルの改修工事は、2023年までかかる見込みだ。
水不足は人口が2倍にもなる夏の観光シーズンに特に顕著となる。チョードリー氏によれば、夏場に必要な水は1日に4500万リットルに上る。現状の供給量は1日当たり3100万リットルであり、5月の干ばつ時には2200万リットルまで落ち込んだ。
水不足が深刻なのはシムラーだけではない。インド地球科学省によると、昨年は1901年の統計開始以来4番目の酷暑となった上、2016年と比較して6%も降水量が少なかった。
首都ニューデリーも、恒常的な水不足に悩まされている都市のひとつだ。Wazirpur地区では昨年、給水車を待つ人々の間で勃発した乱闘により父子が亡くなる事態となった。 Saumya Khandelwal for The New York Times
インドの水道管の多くは時代遅れであると保護団体Tarun Bharat Sanghの設立者であるラジェンドラ・サン氏は指摘する。サン氏によれば、インドには雨水や雪解け水を利用する技術も不足している。
「インドには水不足に直面している都市が90ほどあります。住民は、今日だけでなく明日・明後日と続く危機に面しています」とシン氏は言う。「メディアに注目されているのはシムラーですが、ほかの都市も同様に苦しんでいるのです」 首都ニューデリーも例外ではない。恒常的な水不足に直面しているWazirpur地区では、昨年、給水車を待つ人々の間で勃発した乱闘により父子が亡くなる事態となった。
深刻な熱波となった3月には、給水車を待つ列で割り込みをしたとして近隣住民に責められたラフール・クマール氏(18)が、乱闘の中で致命傷を負い、ラフールの父親のラル・バハドゥール氏(60)は喧嘩を仲裁しようとして心臓発作で亡くなった。
水を運ぶシムラーの住民。先月に比べると、危機的な状況は脱した。 Saumya Khandelwal for The New York Times
クマール氏の母スシーラ・デヴィ氏によれば、Wazirpur地区は例年より早い1月に水不足となった。奇跡的に水道を捻って水が出た場合でも、その水質は飲めたものではないと住民は言う。
「夫と息子は水のせいで亡くなったのです」デヴィ氏は言う。
最近のWazipurでも、空ボトルを手に政府の給水車を待つ人々の列が見られる。今回は給水車が到着するや否や、混乱を避ける為年配の男性が住民を誘導していた。
「地域の為です。乱闘の後、私たちは一丸となり、このシステムを取ることにしたのです。」と男性は言う。
しかし、緊張感が高まる瞬間は未だにある。「どうしてあなたのボトルはそんなに大きいの?大きすぎるわ!」とある女性が叫ぶ。「問題ないわ」もう一人が言い返す。
ヒマーチャル プラデーシュ州の給水車。「メディアに注目されているのはシムラーですが、ほかの都市も同様に苦しんでいるのです」とラジェンドラ・シン氏は言う。 Saumya Khandelwal for The New York Times
シムラーでは、先月と比べて危機的な状況は脱した。5月末には州政府がシムラーを3つの地域に分け、2日以上水のない状況が続かないよう、交互に給水する方法を取り始めたからだ。州政府の動きが遅すぎると住民は感じているが、それでも地域に広がる緊張感は緩和された。
最近では、業務を行うキーマンのシン氏に向かって、バルコニーから住民が「ナマスカ!」と元気に呼びかける姿も見られる。シン氏は挨拶を返しながらも、住民はいつも友好的だったわけではないとつぶやく。
シン氏は言葉で侮辱されることはあれど身体的に危害を加えられることはなかったと言うが、警察によるとシムラーの他のキーマン達61人は暴徒によって取り押さえられ、バルブを開けっぱなしにさせられた経験がある。
この混乱がシムラーの高等裁判所を動かしたのだ。裁判所はキーマンたちがホテルやVIPを優遇しないよう管理の徹底を指示した。裁判長代理自身が街に出てキーマンたちの働きを見回る事もあった。
「キーマンは単なる鍵以上のものをもっている。町全体を人質にとる事ができるだけの力があるのだ。」と裁判所は今月の判決時に述べた。
また、裁判所は各キーマンの業務中には、安全確保の為2人ずつ警察の護衛をつけるようにも指示した。あるキーマンは、側近に囲まれた今ほど重要視されている感じたことは人生でないと言う。
A version of this article appears in print on June 18, 2018, on Page A4 of the New York edition with the headline: Temperatures and Tensions Rise as India’s Water Supply Runs Low.
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