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☞タンパク質のような有機的分子の形成を可能にする条件が地球の歴史の上で達成されたとき、はじめて、オートポイエーシス単体の形成のために必要な条件もそろった。あるいはこれらの十分な条件が地球の歴史において満たされたとき、オートポイエーシス・システムは不可避的に形成されることになったのだと考えてもいい、そのときこそ、生命がはじまった時点だと、ぼくらが呼ぶことのできる時だ。

地球表面でのオートポイエーシス単体の出現は、われわれの太陽系の歴史におけるひとつの里程標だ。

-ウンベルト・マトゥラーナ/知恵の樹-

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☞個人は社会から自由に振る舞うことができますが、実は社会も個人から自由です。すべての人が社会を良くしようとしたとしても、社会が良くなるか、悪くなるかは、個人には決定できません。すべての人が善意から行為しても、結果が災いでしかない可能性すらあります。

-山下和也（オートポイエーシスの世界）-

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☞歴史的にも理論的にも、すべてのインド音楽はこの国の精神生活に深く根ざしている。音楽上の原則は精神的な原則であり、音楽上の法則は精神的な法則であり、宗教性によって権威づけられている。美学と信仰はときほどきがたく結びついついる。

インド音楽の歴史の大方は、ヒンドゥー教とイスラム教の聖者たち、彼らの教えと実績のカタログである。

音楽理論書は宗教の教典と区別しがたく、音楽を扱った大量の文献はあるものの、体系化された純粋な音楽理論となるとまったくと言って良いほど存在しない。

-デレク・ベイリー-

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☞禊ぎ、潜り、籠りなどは、わが国の固有信仰においてまことに重要な要素となっているのであるが、神の森への参入は、それ自体一種の籠りであり、潜りでもある。「森林浴」という言葉をしばしば耳にするが、日本人は、神の森に参入することによって、古来、森林浴を続けてきたことになる。禊ぎ、潜り、籠りは、いずれも自己再生の手続きであり、神の森への参入もおなじ効験をもたらすものであった。

-野本寛一-

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☞エジコの中は一番下に灰、その上に藁くず、またその上には葦草を扇形に編んだものを入れ、更にその上に一枚のオシメを敷いて、赤ちゃんのお尻をその上にのっけて座らせる、そこで小便などしても葦草を伝って小便が下の灰にしみ透ってゆき、一日たった三枚のオムツでも尻がただれることもなくて、間に合うというのでした。

都市生活者は、発育に悪いという理由で無智の標本の引き合いに出されるエジコに、このような温い思いやりが忍ばされているとは全く知らずにいるのです。

エジコは農家のおっ母さんたちのおかれた立場（自分たちの生活条件）の中で、赤ちゃんを守る智慧が生み出したものなのです。

-大牟羅　良-

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☞人間の知の歴史、近代科学史は、本来、ランダムでノイズだらけで、一回性のことで満ちているこの世界の中から、再現性があるとみなした法則を取り出して、そのことによって語られるものだけが科学であり、世界を良いものにする科学の進歩だと約束してきました。しかしその反面、シグナルを切り出すことで、見失われてしまったノイズがあるわけです。

-福岡伸一-

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☞まったく目につかぬほどかすかな手がかりから獣の通った跡を読みとるアメリカインディアンや、自分の属する集団の誰かの足跡なら何のためらいもなく誰のものか言いあてるオーストラリア原住民のやり方は、われわれが自動車を運転していて、車輪のごくわずかな向きや、エンジンの回転音の変化から、またさらには目つきから意図を推測して、いま追い越しをするときだとか、いま相手の車を避けなければならないととっさに判断を下すそのやり方と異なるところはない。

-クロード・レヴィ=ストロース-

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☞それぞれの国が、それぞれの地理的、文化的特徴を生かして、個性豊かな発展への道を探る以外に、貧困と飢餓からの脱出はないであろう

それには適正規模化と分散化が重要なのだ

-市川定夫-

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☞車輪にはスポークが差し込まれているが、車輪のエッセンスを創造しているのはあいだの空間である。壺は土から作られるが、その壺のエッセンスを創造しているのは内側の空間だ。物質は有用性をもたらし、非物質はエッセンスをもたらす。

-アレクサンダー・ラウターヴァッサー-

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☞山道を登りながら、こう考えた。知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。

越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容で、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。

-夏目漱石「草枕」冒頭文-

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☞欧州や米国は、人間個人の権利を最大化しようとしたあげく、結局、「部分と全体の間」を修復できなくなってきてしまいました。個人に平等に権利を与えて、全員が良識ある判断をすると仮定して、1人一票を与えたものの、選挙をしてみたら、全員にとって価値のある判断にはなりませんでした。集団の中で個人はそんなに正しく判断出来ないのです。ポリティカルコレクトネスのひずみやポピュリズムの台頭は西洋個人主義の限界点を示しています。

-落合陽一-

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☞探検は知的情熱の肉体的表現である。

-チェリー・ガラード-

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☞端的に言えばベルリオーズは"音楽を自然に還元する"こと自体の意義を問い、それがそもそも不毛なのではないかと疑義を投げかける。

近年でもある作品の判断に"これは自然の中にあるから良い/悪い"といったフレーズが使われるが、あらゆる芸術の評価に自然の模倣を持ち出すこと以上に「馬鹿げたことはない」という。

なぜなら「自然はヴァイオリンを作らず、ヴァイオリンを作る人間を生み出す」のだから、自然は音階も和音も倍音も作らない。

-伊藤友計-

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☞あらゆるバナキュラー建築の形態は、その背景となる社会文化の価値、 経済、暮らし方に適応することで、固有の必要性を満たす結果として生 まれるものです。

バナキュラー建築の幅広い草の根の理念は、土着の、地域に根ざした 建築や民俗的建築等の建築研究分野に含まれます。そして、ちょうど 「民芸」と「芸術」との対比のように、洗練され、形式的あるいはアカデ ミックと呼ばれる、より知的な建築とは対照的な存在と言えます。

-世界バナキュラー建築大辞典-

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☞いたるところにある縄文時代の遺跡をみると、ただ食べていくだけであれば、どこでも暮らすことができたということがわかります。しかし、交易品の生産や流通に適合した立地となると、そう多くなかったようです。このような空間利用の粗密化もまた、商品化にとりこまれたアイヌエコシステムの特徴ということができる。

-瀬川拓朗-

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☞イデオロギーを論じあってみたところで、なんになるだろう？すべては、立証しうるかもしれないが、またすべては反証しうるのだ。しかもこの種の論争は、人間の幸福を絶望に導くだけだ。それに人間は、いたるところぼくらの周辺で、同じ欲求を見せているのだ。

-サン　テグジュペリ-

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☞密教の場合、自らの教えを釈尊が説いたものだとは言っていない。密教にとって、釈尊はけっして中心的な存在ではないので��る。しかし密教が見るところのほんとうの覚者（仏）が説いた教えだ、あるいはほんとうの覚者（仏）になる教えだという主張は有している。この点においては、仏教と言いうるとも言える。あるいはまた、この密教こそじつは釈尊の究極の真意・深意を明かしたものなのだと主張するに違いない。

-竹村牧男-