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人工知能は人の精神にどれくらい近づいている?

イーロン・マスク氏が新たなスタートアップ企業、ニューラリンク社を立ち上げたように、「ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)」はテクノロジー業界でホットな話題。何が科学で、何が現在まだフィクションなのか?ワシントン大学の研究者たちの寄稿をご紹介します。
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古代ギリシャ人が空高く飛ぶことを夢見たように、現代人は人を死に追いやる厄介な病気の治療のために、精神とマシンを融合することを夢見ています。ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)技術によって人の精神を人工知能やロボット、他者の精神と直接つなげることで、人間の限界を打ち破ることはできるのでしょうか。
過去50年以上、世界中の大学や企業に在籍する研究者たちは、こうしたビジョンの達成に向けて目覚ましい進歩をもたらしてきました。最近では、イーロン・マスク氏(ニューラリンク社)やブライアン・ジョンソン氏(カーネル社)といった著名な起業家が新たなスタートアップ企業の設立を発表し、BCIによって人の能力を増強することを模索しています。
人の脳とテクノロジーの適切な接続は実際どこまで近づいているのでしょう?また、私たちの精神がコンピューターにプラグインされると、どんな影響が出てくるのでしょうか。

ラジェシュ・P.N.ラオ氏|ワシントン大学@シアトル 感覚運動神経工学のための全米科学財団(NSF)センター 所長 コンピューターサイエンスおよびコンピューター工学部教授、電気工学(EE) およびバイオエンジニアリング学部非常勤教授、神経科学専攻博士課程教授を務める

James Wu氏|ワシントン大学 博士課程在学 バイオエンジニアリングを専攻、感覚運動神経工学センターの研究員
発端:リハビリと機能回復 感覚運動神経工学センター(CSNE)の科学者、Eb Fetz氏はマシンと人の精神の接続を最も早期に試みた先駆者のひとり。同氏はパソコンさえ誕生していない1969年に、サルが脳信号を増幅させて、測定器の目盛盤上を動く針をコントロールできることを示しました。
BCIに関する最近の研究の多くは、麻痺症状や重度の運動障害がある人の生活の質を向上させることを目的としています。最近の成果のいくつかは、ニュースでご覧になったことがあるかもしれません。ピッツバーグ大学の研究者たちは脳内に記録された信号を利用して、ロボットアームをコントロールすることに成功しました。また、スタンフォード大学の研究者たちは、麻痺症状がある人の脳信号から動作の意図を読み取り、無線でタブレットを使えるようにしました。
同様に、脳内や脳表面に電流を流すことで、限定的ではあれ幾らかの仮想感覚を脳に送り返すことも可能になっています。
では、主要な感覚である視覚と聴覚についてはどうでしょう?重度の視覚障害のある人のために作られた人工眼は、かなり初期のタイプはすでに製品化されており、その改良版も、いま人による臨床試験が進められているところです。一方で、人工内耳は最も成功し、普及が拡大している生体インプラントのひとつで、世界中の30万人を超える利用者がこのインプラントで音を聞いています。

双方向性ブレイン・コンピューター・インターフェース(BBCI)は 脳信号を記録することも、刺激によって脳に情報を送り返すことも可能 感覚運動神経工学センター(CSNE) CC BY-ND
ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)の中で最も高度なのが「双方向性」BCI(BBCI)で、神経系からの信号を記録することも、神経系に刺激を与えることもできる、というもの。ワシントン大学では、脳卒中や脊髄損傷の患者さんのためのまったく新しいリハビリツールとしてBBCIを研究しています。私たちはBBCIを使用して、2つの脳領域のつながり、あるいは脳と脊髄のつながりを強化したり、疾患領域周辺を通らないルートで情報を送ることによって、手足の機能回復が図れることを明らかにしました。
こうしたこれまでの成功例から、BCIが消費者にとって必須の次世代ツールになりつつあると思われるかもしれません。
まだ初期段階にあるBCI とはいえ、現在行われているいくつかのブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)のデモをじっくり観察すると、まだまだやるべきことがあると分かります。BCIが生成する動作は、ふだん健常者が手足を使って簡単に行う場合と比べると、その速度は非常に遅く、正確性や複雑性も劣ります。人工眼の視力は解像度も非常に低く、人工内耳は限られた語音情報を電子的に伝達することはできるものの、音楽を聴く場合には歪みを生じさせます。しかも、こうしたテクノロジーをすべて機能させるためには、手術によって電極を埋め込むことが必要になりますが、その結果どうなるかという見通しについては、今のところほとんどの人が考慮できていません。

脳表面の電位変化を検知するために使われる皮質脳波記録用グリッドに 電気特性のテストを行っている様子 感覚運動神経工学センター(CSNE) CC BY-ND
とはいえ、すべてのBCIが侵襲的というわけではありません。もちろん、手術を必要としない非侵襲的なBCIもあります。こうしたBCIは一般的に、頭皮上から電位を記録する脳波記録(EEG)に基づいていて、カーソル、車椅子、ロボットアーム、ドローン、人型ロボットを制御するデモや、なんと脳から脳への意思疎通をコントロールするデモに用いられています。
しかし、これらのデモは研究室で行われたものばかり。部屋は静かで、被験者は気持ちを集中させていて、技術的工程は時間をかけて整然と進められ、実験はそのコンセプトが可能であると判明するまで十分に続けることができます。こうしたシステムを実用化できるほど迅速かつ強固なものにするのは、非常に困難です。
たとえ電極を埋め込んだとしても、脳の構造上、精神を読み取る試みには別の問題が生じます。各神経細胞は、隣接する何千もの神経細胞とつながり合い、想像を絶するほど巨大で絶えず変化するネットワークを形成していることは知られていますが、神経工学者にとってこれは何を意味するのでしょう?
たとえば、大勢の友達が複雑なテーマについて会話しているときに、あなたはその内容を理解しようとしているのですが、ひとりの意見にしか耳を傾けられない場合を想像してみてください。かなり大ざっぱになら全体の会話のテーマを把握することができるかもしれませんが、会話全体の詳細やニュアンスをすべて知ることは当然できません。つまり、たとえ最高のインプラントを使っても、1度に聴き取れるのは脳に付けた数個の小さなパッチから送られる信号だけ。時には素晴らしい成果を導くこともありますが、すべての内容を理解するにはほど遠い状態なのです。
さらに、言葉の壁と考えられる問題もあります。神経細胞は電気信号と化学反応の複雑な相互作用によって、互いに意思疎通しています。母語にあたる電気化学的言語が電気回路を通って解釈されるわけですが、これは簡単なことではありません。同様に、電気刺激を利用して脳に話しかける場合には、電気による「アクセント(なまり)」が強く出てしまうため、刺激で伝えようとしている内容を、他のあらゆる神経活動の最中に神経細胞が理解することは困難になってしまいます。
最後に、損傷の問題があります。脳組織は柔らかくしなやかですが、大半の導電性材料、つまり脳組織をつなぐワイヤーは非常に硬いものが多いので、埋め込まれた電子装置が瘢痕化や免疫反応を発生させることもよく起こり、時の経過につれてインプラントの効果は薄れてしまいます。この点については、柔軟性と生体親和性を兼ね備えた繊維と電極アレイが最終的に役立つようになるかもしれません。
共適応と共生 このようにさまざまな課題はあるものの、私たちは生体工学の未来を楽観視しています。BCIは完璧でなければいけないものではありません。脳には驚くほどの適応性があり、BCIの使い方を学習することができます。これは自動車の運転やタッチスクリーン・インターフェースの使用など、新たなスキルを身につける場合に似ています。同様に、脳は新たな種類の感覚情報を解釈することも学習できるため、例えば磁気パルスのように非侵襲的に伝達された情報を利用する場合でも対応することができます。
結局のところ、私たちは学習プロセスにおいて電子装置が絶えず脳とともに学習し、脳に情報を送り返す「共適応型の」双方向性BCIが、神経の架け橋を構築するうえで不可欠な手段であると確信しています。このような共適応型の双方向性BCIを構築することが当センターの目標です。
私たちはまた、最近成功が報じられた「電気薬学」を用いた糖尿病などの病気の標的治療についても大変注目しています。これは実験用の小型インプラントを利用して、内臓器官に直接指令を伝達することによって薬を使わずして病気を治療する方法です。
さらに、電気と生化学の間の言葉の壁を克服する新たな方法も研究者によって考案されています。例えば埋め込み型の「ニューラル・レース」は、神経細胞が埋め込まれた電極を拒絶するのではなく、電極と共存しながら徐々に成長できるようにする有望な方法となるかもしれません。柔軟性のあるナノワイヤーを用いたプローブ、柔軟性のある神経細胞の足場(培養基材)、ガラス状炭素を用いたインターフェースによって、将来的には生物学的コンピューターと、デジタルなコンピューターが私たちの体内で仲良く共存するようになるかもしれません。
脳の支援から、能力の増強まで イーロン・マスク氏の新たなスタートアップ企業、ニューラリンク社は、人と人工知能(AI)の間で繰り広げられている激しい競争において、BCIによって脳を支援し、人の能力を増強するという最終目標を定めています。同氏はテクノロジーを結合する能力を活用して、人の脳が自ら能力を増強できるようにすることを目指しており、これが実現すれば、AIの能力が人の持って生まれた能力をはるかに上回ってしまうような��惨な未来を招く可能性を回避できるかもしれません。このようなビジョンは、まだずっと先の話だとか、架空のことだと思えるかもしれませんが、違和感だけでアイデアを切り捨てるべきではありません。なにしろ、15年前はSFの世界に分類されていた自動運転車も、今では実際に道路を走っているのですから。

多角的に変化するBCI 末梢神経系(神経)と連動することもあれば中枢神経系(脳)と連動することもあり、 侵襲的なものもあれば非侵襲的なものも。 失われた機能の回復を支援することもあれば、能力を増強することもある James Wu氏、出典:Sakurambo CC BY-SA
近い将来、BCIが障害のある人の機能回復にとどまらず健常者の能力を増強し、本来の人の能力を超えることまで実現できるようになったら、同意やプライバシー、アイデンティティー、エージェンシー、不平等感に関する多くの課題をしっかりと認識することが必要になるでしょう。当センターでは哲学者、臨床医、エンジニアで構成されたチームが積極的な取り組みを進めており、こうした倫理的・道徳的課題や社会正義の問題に対処したり、この研究分野が行き過ぎた進歩を遂げないように脳神経倫理学のガイドラインを提供しています。
脳をテクノロジーと直接結合することは、結局のところ、二足歩行の限界を克服するために車輪を活用することから、記憶を増強するために粘土板や紙に記録を残すことまで、長年にわたりテクノロジーを活用して自ら増強に取り組んできた人類の自然な成り行きなのかもしれません。現在のコンピューターやスマートフォン、VR(仮想現実)ヘッドセットと同じように、増強型BCIが消費者市場についに登場することになれば、楽しみや苛立ち、リスクとともに、大きな可能性ももたらしてくれるはずです。
※この記事はThe Conversationに掲載されたものをベースにしています ※最上部の画像:Getty Images ※本記事に掲載した見解は著者個人によるものです
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「風の秋田」を創る(1) - 秋田を消滅の危機から救え
「風の秋田」を創る(1) - 秋田を消滅の危機から救え 「風の秋田」を創る(2) - 地域創生に人生を賭ける 「風の秋田」を創る(3) - 新しい挑戦から活路を見出す
秋田で建設が始まった、県下最大の風力発電所「秋田潟上ウインドファーム」。男鹿半島の南側6キロにわたって、GE製の3.2MW型大型風力タービンが22基立ち並ぶ計画です。運転開始は2020年5月(予定)、総出力は、一般家庭約4万世帯分の電力を賄える規模の6.6万キロワット。総事業費200億円超というこのプロジェクトを手がけるのは、秋田潟上ウインドファーム合同会社(SPC:特定目的会社)――出資社の筆頭は秋田の地元企業、ウェンティ・ジャパンです。

秋田潟上ウインドファーム 完成予想図 (画像提供:清水建設)
秋田の風力発電導入量は、単年では3年連続で全国1位。総量でもまもなく青森を抜いて全国トップに躍り出ようという、驚くべき勢いを見せています。単にクリーンエネルギーを作ろうということではありません。衰退しきった地域をいかに再生させられるか。消滅危険地域として警告を受ける(※1)ほどの危機に瀕した秋田を新産業創出によって再生してみせるーー地元住民の決意のプロジェクトなのです。
取り組みを始めて数年。産官学の歯車がしっかりと噛み合い、いま、秋田を未来に繋ぐエンジンが回り始めています。GEもここに関わる企業として、秋田の「地域創生の実際」を紹介すべく現地を取材してきました。
突き動かすのは「危機感」 取材でお会いした全ての人が口にしたのは「危機感」。秋田の人口は今年100万人を切りました。かつて地元を支えた石油産業と非鉄鉱業は時代の変化とともに縮小、目立った産業がない状態に。負のスパイラルに、歯止めが必要でした。今ある資源のなかから産業振興を図り、雇用拡大に繋げようーー県は、東日本大震災が起きる以前から新エネルギー産業戦略を練り、2011年5月に発表しました。
「秋田の再生に何よりも大事なのは、質のよい雇用の創出。いくら子育て支援をしたところで、十分な給与水準が期待できないところには誰も残りません。リーマンショック後、有効求人倍率は0.28にまで落ち込みました。アルバイトも含めて、4人に1人、仕事があるかどうかという状況です。現在は1.3近くに回復したものの、県はとてつもない危機感に直面しました。何に対する危機か。自分たちの子や孫が地元に残れる環境が欲しい、という想いです」――中島英史副知事はこう話します。

秋田県 中島英史 副知事(2015年4月~) 経済産業省でエネルギー、資源、環境分野の多数の業務に携わった経験を持つ
東日本大震災のあと、社会の目が新エネルギーへ向いたとき、地元企業や銀行も、改めて秋田の環境を見直しました。日本でも屈指の強風が吹き、海岸線には平地がある。そんな特性もあって、秋田にはその頃すでに約100基の風車があり、風力発電は全国4~5位の導入量がありました。しかし、蓋を開けてみると、そのほとんどは県外資本によるものでした。
「資源はあるが、資本は外からやってきて、吸い取られていく。まるで植民地だった」 ――北都銀行の斉藤永吉頭取は、こう振り返ります。「秋田の強みを活かして、とにかく産業を創出する必要があった。そして、そこから生み出す利益を、県内に還元できる仕組みが必要だったんです」
風を秋田の新産業にしよう。「人口が減る、雇用がなくなる、若者が県外へ出ていってしまう。これではどうなる・・・!」 切迫した危機感と共に出発した、と斉藤頭取は言います。地方銀行が成長するのは地方の成長があってのこと。北都銀行は、風力を秋田の中心的産業に育てようというアイデアを練りました。
斉藤頭取は、銀行の仕事はかつてとは大きく変わった、と言います。人口減少、マイナス金利、バーゼルⅢ。「金融機関を取り巻く環境は厳しいものの、そ��した時代の変化をチャンスとして捉えていかなければなりません。地域のリスクはとる。自分たちがディベロッパーとなって事業を興し、そこに資金ニーズを作る。マッチングを仕掛けて中小企業に事業機会をつくっていく。裾野を広げていかなければならない、と動き始めました」

北都銀行 斉藤永吉 頭取 「地域のリスクは、我々がとる。そうでなければ、地方銀行の生きる道はありません」
代々悩まされてきた日本海からの強風。風を原資に、県の未来につながる経済を創出できないか・・・そう考えていたのは銀行だけではありませんでした。21年前、東京から地元秋田に戻って家業を継ぎ、さまざまな事業を手がけてきた佐藤裕之氏もそのひとり。
秋田の再生への強い想いを共有していた北都銀行と佐藤氏は、2012年、ラテン語で「風」を意味する名前を冠したウェンティ・ジャパン社を設立。日本一の強風が吹く秋田にあって、風力発電事業者として名乗りを上げた初の企業となり、佐藤氏が社長に就任しました。多額の先行投資が必要となる風力発電事業は、それまで地元企業にとっては参入障壁が高すぎました。しかし、この年開始されたFIT制度がその壁を下げてくれました。
翌2013年には、民間だけでなく自治体、アカデミアからの有志とともに秋田風力発電コンソーシアム「秋田風作戦」を設立。ウェンティ・ジャパンの佐藤氏が、会長職を引き受けました。地元金融機関も中心的役割を果たしています。
北都銀行の斉藤頭取はこう話します。「風力発電は県内だけでも毎年約200億円の市場がある。中小企業でも手を出しやすい太陽光とは違って、風力発電は開発コストが大きい。我々のような小さな銀行が単独で巨額の資金提供はできなくともコーディネーションはできる、そう考えたわけです。プロジェクト・ファイナンスを勉強し、この6年間、外部からも人を招聘して体制を作ってきました。そうして今、県内の様々な発電事業者のご支援をしています」

北都銀行 プロジェクト・ファイナンス室 地銀としてプロジェクト・ファイナンスを手掛けるのは、北都銀行とほか数行のみ
「県としても身を切る姿勢を示すことが必要でした」――こう語るのは、秋田県庁産業労働部 資源エネルギー産業課の黒崎亨主査。強風が砂を運ぶため、県の保安林として松林が長く続く沿岸部。秋田県は全国に先駆けて規制緩和を実施しました。保安林解除を可能とするルールを整備したうえで、公有地を風力発電用用地として開放、2013年度には風力発電事業者の公募をおこないました。保安林における風力発電への大規模な用地提供と公募は、秋田県が初の事例に。「できるだけ地元にメリットをもたらしてくれる企業を主体としたい。県による公募であれば、そのあたりも交通整理ができます。審査基準は、いかに地域経済に還元できる可能性があるか、という点でした」と黒崎主査は説明します。
発電に足る風況があるのは、東北、北海道そして九州。これらの地域が手を抜けば、国のエネルギーミックスの実現は難しくなるでしょう。でも、現実問題として、エネルギーミックスの実現自体は、地域にとって直接的にはあまり意味がありません。「産業振興がともなって初めて、地域社会に意味が生まれます」と黒崎主査は強調します。

秋田県庁 産業労働部 資源エネルギー産業課 阿部泰久課長は「県外、海外の企業や機関にも、参加して秋田に来ていただいています。 そこに地元企業が参入していける仕組みづくりを支援するのが、県の仕事」と語る
新産業の振興というと、行政機関は多額の補助金を出すのが一般的。しかし、中島副知事は「今回の風力発電プロジェクトでは行政経費はそれほど使っていません」と話します。秋田県は補助金というよりも、規制緩和など政策で民間を支援しています。「スピードある事業展開のためには、事業環境の良さが重要です。“こうでなければならない”ではなく“県として何ができるだろうか”という姿勢で事業者の皆様からのご相談に応じています」
ウェンティ・ジャパンのメンバーは、県内の住民説明会で、反対派にあったことがありません。他県では必ず反対派が存在すると言います。「県がビジョンを明確に伝えて、シンポジウムなどでも広い層に経済効果を説明してくれているおかげで、地域再生に繋がるという認識が住民に共有されているんです。“早くやれ!”とは言われても“やめろ”と言われたことはありませんよ(笑)」
>>続き:(2)地域創生に人生を賭ける>>
※1 日本創生会議・人工原稿問題検討委員会が2014年5月に発表
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「風の秋田」を創る(2) - 地域創生に人生を賭ける

「風の秋田」を創る(1) - 秋田を消滅の危機から救え 「風の秋田」を創る(2) - 地域創生に人生を賭ける 「風の秋田」を創る(3) - 新しい挑戦から活路を見出す
建設が始まった秋田最大の風力発電所、総出力6.6万キロワットを予定する「秋田潟上ウインドファーム」。SPC(特定目的会社)の筆頭出資者である地元企業、ウェンティ・ジャパンはすでに稼働中のものを含め秋田県内外に8箇所37基の風力発電施設を開発しています。社長の佐藤裕之氏は、コンソーシアム「秋田風作戦」の会長も務める人物。秋田の地域創生に人生を賭けて取り組むひとりです。
18歳のとき、大学進学で東京へ。大学を卒業したのちも東京に留まり、外資系企業でIR(インベスター・リレーションズ)コンサルタントとして働いていた佐藤社長。「東京で働いた時代は青春でした。でも一方で、自分で企業経営をしたこともないのに、上場企業の社長に物申すなどというのは、どこか居心地が悪いところもあった」。今から21年前、父親が営む羽後設備の後継者として秋田に戻りました。「久々に見た秋田はもう、衰退しきっていた。人口減少率、高齢化率、婚姻率、出生率最低。おまけにがん死亡率日本一。どうしたことだ、と衝撃でした」。秋田の経済にどっぷりはまって21年。なんとか秋田を元気にできないか、賦活するものがないか。地域再生のための事業展開をひたすら考え取り組んできました。

佐藤裕之氏 株式会社ウェンティ・ジャパン 代表取締役社長 秋田風力発電コンソーシアム「秋田風作戦」 会長
佐藤社長が最初に風力に興味をもったのは、十数年も前でした。佐藤氏はかつて、秋田に雇用を生むために県と市と組んで東京に本社を置くコールセンターを誘致。当初200人でスタートしたそれは、今では秋田だけで約1700人のオペレーターを擁する一大コールセンターとして、いわゆるBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)を請け負っています。具体的なサービスは、損保会社の受付、クレジットカードの海外での事故や病気保険対応など。ある日、経営者からこう言われました。「事故や天変地異があったとき動いていなければならないここが、電源を喪失したらどうなる?」 ――まず、電気系統を二重化しました。ディーゼル発電機はせいぜい十数時間しかもちません。NAS電池について調べてみれば、4-5億円かけても数時間しか持たないうえに劣化してしまうことが判明。太陽光でコールセンターの電源をまかなうには巨大な用地が必要・・・。そして風力もまた、必要投資額が大きすぎて手が出るものではありませんでした。
その後、東日本大震災によって原子力発電所が止まった時、佐藤氏は考えました。「原発が止まっているあいだに、日本の電力アロケーションの一定量を秋田の風が占められるようになるんじゃないか」。同じ頃、秋田の風を県の産業にしたいと考えていた北都銀行と意気投合して2012年9月、ウェンティ・ジャパンを設立。地元企業として風力発電事業に参入する初の企業を立ち上げました。

秋田潟上ウインドファーム 建設予定地 県の規制緩和の対象となった保安林。松の木が秋田の風の強さを物語る
しかしウェンティ・ジャパンの場合、設備を買ってウインドファームを建て発電すればよい、というわけではありません。「我々のミッションは、秋田経済を再生することにあるからです」
部品点数がクルマ並みに多く、大型機械なので物流コストがかかる風力発電設備。部品供給をはじめとする製造業を県内で立ち上げられないか、と考え、北都銀行らと一緒になって2013年には秋田風力発電コンソーシアム「秋田風作戦」を設立、佐藤氏はその会長も務めています。
「県の公募で選定いただいた秋田潟上ウインドファームの企画提案には、地元の活性化や地域貢献という視点を盛り込みました。まさに、秋田に戻って以来の僕のライフワークです」 その計画は、秋田を風力発電の部品製造・供給拠点にする、というものでした。

株式会社ウェンティ・ジャパンの皆さん
秋田潟上ウインドファームを運営するSPC(特定目的会社)の設立において、三菱商事パワー(東京)、中部電力子会社のシーテック(名古屋市)と手を組んだ理由は、いずれも地域経済の再生への理解があったこと。大型風力タービンメーカーは秋田にはない。GE(アルストムと合併)を採用したのも、「日本の風況に合わせて開発された製品スペックやグローバルの実績値だけでなく、フレキシブルな姿勢が感じられたため。ただのモノ売りではなくて、タッグを組んでその先も、地域の再生に向けて一緒に何かをやっていける期待感がもてたからです」と話す佐藤社長。
県の新エネルギー産業戦略もコンソーシアムも、風力発電に関する技術力と知見を培うことで、秋田から県外、ひいては世界へと技術やサービスを提供していく存在になることを目指しています。「いわゆる“地方創生”の事例は国内に様々あるものの、しっくりくるものがありません。中央からみた“地方“ではなく、われわれは、地元秋田のためにやっている。中央資本に吸い上げられて弱体化した地域を再生させるため“外に���撃しよう”というくらいの気概で、ダイナミックな動きを仕掛けていきたいんです」
真のグローバリゼーションは、論理を植えつける“植民地化”を広げることではなく、ローカリゼーション、つまり地域のニーズに根ざし、対等に学び合い、利益を共有できるの関係作りを広げることで果たせるもの。「GEの考え方と我々の考え方は、共通しています」

清水建設 秋田潟上ウインドファーム 建設工事作業所 田中仁志所長(左)、遠藤洋介副所長(右) 今後の建設には、地元のエンジニアたちが大勢携わることになる
GEはまず、地元企業との協働で秋田県内にサービス拠点を設置することを決めています。秋田潟上ウインドファームの高稼働率を維持するために現地に風力タービンの部品をストックし、メンテナンスのためのダウンタイムを最小限に抑えます。
GEリニューアル・エナジーでプロジェクト&サービス ダイレクターを務める山本朋也は「建設からメンテナンスまで、地元企業との連携を図ることは、コストとオペレーションの両面において合理化や効率化に繋がります。実際、いま建設が進む向浜風力発電所では、風力タービンの土台作りのための部材を地元企業が製造・供給してくださっています。このように、地元企業との連携で合理化を図れるポイントでは、積極的に設計データなども提供していきたい」と話します。また、O&M(保守・メンテナンス)も稼働率保証のための重要なファクター。「たとえば、GEと地元企業とが5:5でチームを作り、GEが培ってきた風力発電のノウハウを共有していきたい。東北を中心に国内で稼動するGEの風力発電設備の高稼働率を保証するためにも、地元エンジニアのサポートが欠かせません。地域における雇用創出に繋がることも願っています」
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「風の秋田」を創る(3) - 新しい挑戦から活路を見出す

「風の秋田」を創る(1) - 秋田を消滅の危機から救え 「風の秋田」を創る(2) - 地域創生に人生を賭ける 「風の秋田」を創る(3) - 新しい挑戦から活路を見出す
「地域のリスクはとる。それがなければ地域の成長も、地方銀行の成長もない」――意を決した北都銀行が、プロジェクトファイナンスに取り組み始めて数年。
プロジェクトファイナンスとは、担保主義のコーポレート・ファイナンスではなく、特定事業に特化しその収益のみから返済を求めるもの。もとは米国で生まれた金融ソリューションです。国内で地銀が取り組む例はほとんど無いなか、北都銀行はこれまでに11件の幹事案件を手掛けました。プロジェクトファイナンスは、融資する側にも極めて専門的な事業理解が求められます。
面白いのは、地銀である北都銀行がプロジェクトファイナンスに挑戦した、ということだけではありません。プロジェクトファイナンスの構成比率は、一般にエクイティ(自己資本)20%、ファイナンス80%。しかし、プロジェクトコストが巨額に及ぶ風力発電事業において、その20%相当ものエクイティを持つ地元プレイヤーなど存在しません。北都銀行は、エクイティが1割に満たないケースまでをも取り扱っています。
「足りない部分のリスクは金融機関がとります」
なぜそんなハイリスクな融資ができるのか。同行でプロジェクトファイナンス室長を務める佐藤幸司氏はこう説明します。「この地域をお客様と一緒に発展させたいからです。その代わり、高めの金利設定もお客様に納得していただいている。それは銀行がリスクをとっているからだし、地域のためにやっているのだから、利益は自分たちと銀行、そして地域とでシェアしようというお客様の理解があるからです。これが地方版プロジェクトファイナンスの良いところ」
北都銀行が手掛けた70以上(プロジェクトファイナンスを含む)の再生可能エネルギー向けの融資案件は、すべてが順調に行っているといいます。太陽光が7割、風力が2割、残りはバイオマスなど。しかし今後、秋田が風力産業を加速していくなかで、風力案件がメジャーになると見込まれます。銀行業務が厳しさを増す中、十分な収益を稼ぎ出せる事業として足場を固めてきました。「秋田は全国一、風況に恵まれています。事業者のキャッシュフロー効率が高まるので、その分資本が少なくて済む。これはもう、秋田ならではですよね」
“風力の北都銀行”という認知も、着実に形成されてきています。太平洋側の銀行や企業からも、せめてファイナンスだけでも参加させてくれという申し入れが相次いでいる、と言います。

北都銀行 プロジェクトファイナンス室 佐藤幸司室長
そして、同行の斉藤頭取(写真:記事最上部)はきっぱりと言います。「次に目指すのは、組み立て工事やメンテナンス工事の事業機会を県内に持ってくること」
ウェンティ・ジャパンと日本製紙との合弁企業「日本製紙ウェンティ風力株式会社」は、いま、日本製紙秋田工場の隣接地でGEの3.2MW型風力タービンの建設を進めています。建設を担う三井造船に、風車の土台づくりに必要な“テンプレート”と呼ばれる大型部品を供給するのは、地元企業の三栄機械です。

株式会社三栄機械 本社工場(秋田県 由利本荘市) ここで作るテンプレートが、向浜の風力タービンの土台作りに役立つ

GE製3.2MW風力タービンの土台建設風景 向浜風力発電所 (日本製紙秋田工場 隣接地) 上部のボルトの位置を定めるパーツは三栄機械が製造・供給している
三栄機械は、秋田風作戦コンソーシアムのメンバーでもあります。縮小の一途を辿る秋田の産業に危機感を抱きながらも、斉藤民一社長は「秋田風作戦」には非常に大きな希望があると言います。「高度経済成長期は、機会あるものを皆で分け合っていれば十分だったんです。でも今は、それぞれが強みを自覚し、皆で何ができるかを見つけて実行に移すべき時。厳しい時こそ、差別化のチャンスですからね」。三栄機械の歴史を振り返ると、困難な時期も、あえて新たなことに挑戦することで乗り越えてきた。「挑戦をして、活路を見出すんです。だいたいほら、新しいことをやらないと楽しくないじゃない!」と笑う斉藤社長の表情は眩しいほどです。

株式会社三栄機械 代表取締役社長 斉藤民一氏 設立から46年。航空業界、自動車業界などに技術提供してきた同社の歴史は 金属加工から炭素繊維を用いた成形技術まで、常に新しいことへの挑戦だった
GEが秋田の企業とともに活動するなかでは、グローバル規模のコラボレーションの芽も根付きはじめました。たとえば、洋上風力タービン建設コストの多くを占める、発電機のマグネット。秋田を代表する企業、TDKが製造するマグネットの品質は非常に高く、GEの最新型洋上風力タービンHALIADE150-6MW(ハリアデ150-6MW)にすでに採用しています。
数年前は中央資本によって建てられた風車を横目に眺めていただけの、専門ノウハウも経験もなかった地元企業や銀行たちが、タッグを組んで風車を回しています。
「世界に誇れる風力発電のメッカを目指す。研究成果やイノベーションは秋田から起こる。研究者、開発者、事業者が世界各国から集まってくる。“風の秋田”を作るのが夢」と語る斉藤頭取。部品製造だけでなくアカデミックな仕事を増やし、若い人が生き生きと働く地域社会を目指す、との言葉を聞いて、まるでそれが実現された秋田が目に見えるかのように感じたのは、地域のプレイヤーたちが確かな手応えと自信を感じはじめているからでしょう。
GEは今後も、地元を愛し、次の世代のために邁進する秋田の皆さんのパートナーとして、この地域創生に貢献できるよう努力していきます。
<<前回:(2) 地域創生に人生を賭ける
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優れたCEOを指名する - GEシニア・バイスプレジデント兼人事責任者 スーザン・ピーターズ

6月12日、GEの取締役会はGEの次のCEOとしてジョン・フラナリーを指名しました。これに際しGEのシニア・バイスプレジデントであり人事責任者を務めるスーザン・ピーターズは、自身のLinkedInにおいて、今回のCEO指名をどのように進めたのかを人事責任者の立場から説明しています。今日はその訳文をご紹介します。
以下:シニア・バイスプレジデント 人事担当 スーザン・ピーターズのLinkedInより
GEの人事部門の責任者として、私は多様な業務をおこなっています。投資家のため、カスタマー、そして社員のため、私が責任をもつべき最も重要なことは様々な組織においてGEのリーダーを育成することだと考えています。とくにフォーカスをしているのはベテランのリーダーを育てるということ。そこで私はこれまでにリーダーシップを教育するため、キャリアの大半を注いできました。今日、私はこれまで取り組んできたなかで最も重要なプロジェクトをお知らせしました。それはGEの次のCEOを指名することです。
ジェフ・イメルトは16年にわたりGEの会長兼CEOを務めています。GEの125年におよぶ歴史のなかで私たちにはわずか10名のCEOしかおりません。一人あたりの在任期間は12.5年。一方、2001年から2015年においてS&P500社のCEOの平均在任期間は8.8年です。従ってこれは今後のGEの行く末に大いなる影響を与えるために極めて重要な決断といえます。私たちには何百万人の投資家がおり、何十万人の社員がこのリーダーを見つめることとなります。
今日、私たちが働く環境は、偉大なリーダーシップを求めています。最も影響力のあるリーダーは複数の環境や条件下で業務を推進することができ、誰が見ても混沌とした状況であっても、チャンスに変えていくことができなければいけません。これには勇気や最後までやりぬく力、そしてダメージをうけても立ち上がる力が必要です。こうした見方で私たちは次のリーダーを選ぶプロセスを構築し、取締役会は判断を下しました。GEにおけるあらゆる重要な意思決定を行うときと同様、私たちは宿題をおこないました。CEOの後継プロセスは慎重に検討されたというのは控えめな表現といってもよいかもしれません。私たちは、絶え間なく集中して、そして規律をもって後継者探しに6年以上を費やしたのです。
それではどのように私たちはおこなったのでしょう。 最初に、潜在的なCEO候補者がそのリーダーシップを発揮させることができるような立場に異動させるのには何年もかかるだろうと私たちは認識していました。そこで、私たちはこれまで以上に複雑で、かつストレッチできる新たな経験を学んでもらうよう狙いをもって主要なリーダーに異動してもらいました。
2012年までに私たちはジョブディスクリプション(業務仕様書)を用意し、継続的にブラッシュアップさせました。私たちが知りうるこの世の中の環境、GEの戦略とカルチャーに基づき、次のCEOに求められる態度、スキル、経験は何かを考え抜いてきました。100名を超える、社外のリーダーについてリサーチもおこない、さらに、今日において必要とされる属性の理解を学ぶために研究をしました。私たちは、社内・社外の研究成果をまとめ、次の偉大なるCEOにとって本質的なコンピテンシーである「企業において必要とされるリーダーシップ」をリスト化しました。私たちは、自身がすでに知っていることを実行することではなく、いかに早く学び、どのような経験をし、打ち克ってきたのかが、CEOの成功においてより重要だという理解をしていました。
2012年には、GEの取締役会は社内の候補者を観察し、私たちの判断基準や複数のデータソースを活用して社内、社外両方の候補者を評価しました。私たちのデータは、数年分遡ることができ、グローバルでビジネスや組織を率いた実績や、その事業の具体的な成果、エグゼクティブレビュー、リーダーシップの内容、そして一緒に仕事をしているメンバーからのフィードバックなどに基づくものです。こうした慎重な検討の後、取締役会は、最も優れていると思われる後継者候補達を社内で選定しました。CEO候補者達はより大きく、より複雑な役割をリーダーシップをもって対応するよう継続的に付与され、CEOのようにGEにおいて最もリーダーシップを必要とされるポジションのためにトレーニングを重ねてきたのです。
2013年、移行の時期が慎重に検討されました。私たちは事業の策定プロセスを検討し、事業ポートフォリオについて考慮をし、新たに任命されるCEOと退任する会長兼CEOとの間での適切な重複期間などについて検討を重ねました。この結果、4年前、GEの取締役会とジェフ・イメルトは、CEO交替の適切な時期として2017年の夏を目標とすることに合意したのです。
最終プロセスは何であったか?それは面談でした。過去何ヶ月にわたって、GE取締役会は候補者達から直接、CEOの役割をどうみているのか、GEのこれからのビジョンをどう考えているのかをヒアリングをおこないました。候補者に困難な質問を投げかけ、彼らの考えにじっくりと耳を傾けました。例えば
あなたのリーダーシップチームは、あなたがチームをリードする方法についてもっとも評価できる点を、どのように説明するでしょうか?
現在の環境で勝つためにはGEをどのようにポジショニングするのがよいと思いますか?
資本の配分見直しや事業ポートフォリオの見直しを含め、あなたはどのような戦略的な変化を企てますか?
あなたにとって継続することが必要と思われるGEのカルチャーの、最も有益な側面は何だと考えますか。逆に、何を変えようと思いますか?
これまでに受け取った最も厳しいフィードバックは何でしたか?
仕事上あるいは個人的な経験のどのようなものが、あなたのグローバルな視点の形成を助けていますか?
あなたはどのように学びますか?
取締役会は、次のCEOであるジョン・フラナリーはグローバルの経験を備え、学び続けることができ、強力な実行力を持っていると判断しました。ジョンはリーダーとして、力を与え、鼓舞するために必要な能力を備えていました。GEで30年以上にわたって、彼は大きく、じっくりと考え、適応力と弾力的な側面の両方を備え発揮していることを示していました。ジョンの美点のひとつはどのように人とエンゲージし、どのようにチームをリードしているかです。
本日のアナウンスによって、大きな変化がおきますが、これはGEの取締役会とジェフ・イメルトが6年以上にもわたってきわめて慎重かつ綿密に計画をしてきた変更です。これまでの計画のプロセスを詳細に示している、こちら記事のインフォグラフィックをご覧ください。
終わりに、この決定は株主のためのリーダーそして成果を提供することについておこなわれたいうことをご理解ください。ジェフ・イメルトはGEにとって、そしてこの一連のプロセスにおいて驚異的なCEOでありリーダーでした。
株主のため、カスタマーやチームそして世界のために、シームレスな移行をし、事業成長を確保し、次世代のGEのリーダーと一緒に成長を必ず遂げることはとても重要なことですし、その一端を担うことができるのは大変な名誉だと考えています。
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GEの会長&CEOにジョン・フラナリーを指名

6月12日、現職においてGEヘルスケアの社長兼CEOを務めるジョン・フラナリーは、2017年8月1日付けで就任することとしてGEのCEOに任命されました。現・会長兼CEOのジェフ・イメルトは、2017年12月31日まで会長職にとどまり、2018年1月1日からは、フラナリーがGEの会長兼CEOを務めることになります。
「ジョンは、今日のGEを率いるのにふさわしい人物です」とイメルトは言います。「彼は複数の事業やビジネスサイクル、様々な国や地域において幅広い経験を培っており、数多くの成功をおさめた実績があり、重要な事業を数多くリードしてきました。最も重要なこととして、彼の特徴は力強いリーダーシップで、正しい決断、困難に打ち克ち、常に学び続け、チームを統率し、タフな精神と競争意識を備えています。彼は投資家やカスタマー、そしてGEの従業員に信頼される人物です」
「ダイナミックに変化するグローバル・マーケット、そしてテクノロジーや卓越した事業オペレーションへの苛烈なまでのフォーカス。そうした時期にあって、GEを率いるのに、彼ほどふさわしい人はいないでしょう」。GE取締役会の社外取締役であるジャック・ブレナンはフラナリーをこう評します。「彼はユニークな経験と強力なスキルセットを持ち込んでこの仕事に当たってくれます」。 フラナリーの任命にともない、GEのCFOであるジェフ・ボーンスタインはGE副会長に、GEの社長でありGEヘルスケア・ライフサイエンスのCEOを務めるキーラン・マーフィーはGEヘルスケアの社長兼CEOにそれぞれ就任することとなりました。
ジョン・フラナリーは、現在55歳。1987年、彼のGEにおけるキャリアは財務部門から始まりました。以来、キャリアの約半分を米国以外で過ごすことになります。その間、GEヘルスケアや、GEインド、アルストムのエネルギー・送配電事業部門の買収を成功させたビジネスディベロップメント部門などを含む、多くの事業を率いて来ました。また、GEキャピタルの2000億ドルにも上るエグジット戦略を手がけ、2014年にはシンクロニー・ファイナンシャルのIPOを果たしたほか、2016年にクローズしたGEアプライアンスの売却も彼の手によるものです。
2005年、フラナリーはアジア太平洋地域におけるGEキャピタルを率いて日本での売上を2倍にしたほか、韓国は30%、オーストラリアでは25%の売上アップを実現しました。2009年にはインドに移って同国におけるGEのプレゼンス形成をリードし、リーダーシップチームの刷新や企業文化の確立に尽力しました。2011年にはインドにおけるインダストリアル事業の売上高を50%伸ばしました。
2014年からは、GEヘルスケアの戦略転換を推し進め、コア・イメージングやデジタル・プラットフォームとデジタル・ソリューション、ライフサイエンスおよび細胞治療などの分野におけるテクノロジー・リーダーとしての位置づけを固めるとともに、新興市場のヘルスケア・プロバイダー向けに破壊的技術を提供する「サステナブル・ヘルスケア・ソリューションズ」を立ち上げました。これらの活動により、2016年には内部成長にて売上を5%、マージンを100ベーシス・ポイント(1bp=0.01%)向上させました。
「今日のこの発表は、私のキャリアの中で最も光栄なものです」と、フラナリーは述べています。「この時代の最も優れたビジネスリーダーの一人であるジェフのもとで16年間を過ごすなど大変恵まれてきました。ジェフは事業を変革し、グローバル化し、デジタルとアディティブ・マニュファクチャリング分野を率いる会社としてGEを位置づけることでGEの将来ビジョンを作り上げてきました。今後2,3ヶ月間において、私は投資家やカスタマー、従業員の声に耳を傾け、この会社のためのネクストステップを策定していくことに注力をしてまいります。」。
ジェフ・イメルトは、電力、航空、輸送、ヘルスケア、オイル&ガスといった主要市場にそれまで以上に沿って、シンプルで力強いデジタル・インダストリアル・ポートフォリオへと、GEの事業を転換することに成功しました。彼のリーダーシップのもと、GEは、2015年以降2600億ドルにのぼるGEキャピタルの売却を完了。グローバルなエネルギー・リーダーであるアルストムを買収し、さらにGEオイル&ガスとベイカー・ヒューズの提携を発表する一方で、GEアプライアンスやNBCユニバーサル、GEプラスチックなど伝統的な事業の売却を行いました。加えて、受注残を3,200億ドルにまで拡大。各部門の成長力を他部門にも活かす「GE Store(GEストア)」という新しい概念を導入した結果、グローバル市場からの受注は700億ドルに達し、サービス事業の受注は550億ドルを超える規模へと拡大しました。在任期間を通じて、インダストリアル事業による利益をおよそ2倍に、オペレーティングEPS(1株あたりの利益)を約50%上昇させました。CEOの間に、過去のGEの配当合計額を上回る1,430億ドルの株主配当を実施してきました。
9.11の悲劇や、電力および年金バブル、金融危機、原油価格の変動などが起こる中、イメルトはGEの事業ポートフォリオ改革を推し進めてきました。イメルトのビジョンはGEの将来を位置づけ、GEのカルチャーを大いに強力なものとしました。今日、GEはインダストリアル領域における最も重要な2つのイノベーション、すなわち、インダストリアル・インターネットとアディティブ・マニュファクチャリングのリーダーです。GEはインターブランド「グローバルのブランド評価ランキング」では第10位、Fortune「世界で最も賞賛される企業ランキング」では第7位、「リーダーのためのベストカンパニーランキング」で第1位です。
CEOとして、イメルトは世界中の何千人というGE社員と出会い、企業文化を徹底してシンプルなものへと作り替え、GEの起業家精神を解き放ちました。「ジェフは未来のためにGEを見事にポジショニングしてくれました」。ジャック・ブレナンは言います。「CEOの交代プロセスのための計画が策定されたのは2011年のことでした。GEキャピタルに関する戦略転換を行いながら、ボストンへの本社移転を実行し、いまがこのアナウンスのための最適な時期となりました。GEの投資家や従業員らは、ジェフの献身的な仕事から大いなる恩恵を受けるときが間違いなく来ると取締役会は確信しています。」。
なお、GEの2017年の事業構想に変更はありません。


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Predixで"ものづくり"の無駄をなくせー宇宙の原子数を超える作業パターンをシミュレーション
ヂャク・ヲゥドゥ氏はフランス南東部で大型金属加工の工場を経営しています。決してソフトウェアに精通しているタイプではありません。それゆえ、GEのデジタル・ファウンドリー(産業データを解析するソフトウェアの開発や、デジタル技術活用のための斬新なアイデアを生み出すためのGEデジタルの施設。在パリ)からデータ・サイエンティストとソフトウェア開発者らから成るチームが会いに来たとき、彼らが使う技術的な専門用語を理解するのに四苦八苦しました。その逆に、ヲゥドゥ氏が機械の使い方を説明しようとしたときには、GEデジタルのチームの方が苦労することになりました。しかし今となってみれば「この時のGEデジタルとの話し合いが過去数年のなかで最も実りある話し合いだった」と同氏は言います。昔ながらの製造業とデジタル・・・まったく異なる世界に身を置く両者が集結し、“ものづくり”のあり方を変えようとしたのです。
温泉があるフランスの美しい町、エクス=レ=バンにある同氏の工場では、送電網を流れる高電圧電気を変換するための「ガス絶縁変電所」と呼ばれる施設向けに、部品を製造しています。工場のタスクのひとつに、世界中の変電所で利用されているアルミニウムパイプの切断や組立てがあります。パイプのサイズは、全長9mと11mの2種類。年間合計にすると実に20km相当ものパイプを製造しています。
ヲゥドゥ氏が抱えていた課題は、数学的な問題でした。パイプを切断する少人数のチームは、注文をこなすために毎月平均で約600本、つまり毎週150本のパイプを切り分けなければいけません。しかしここ数年、パイプの約10%は最終的にムダにしてしまっていたのです。作業ミスによるものではありません。材料を余らせずに、規格サイズのパイプを正確に切り出すための計算が難題だったのです。別の仕事に例えるならば、部屋に床板を敷き詰めるのに必要な枚数を正確に算出し、材料をムダなく使い切る最良の断裁法を探すような時。こうしたケースでも、同様の問題に直面するでしょう。余ったパイプ片は“くず鉄“として売ることもできますが、価格は卸値の30%さえも満たしません。
ヲゥドゥ氏によると「以前の作業工程はすべて手動だった」ため、パイプを切り分けられる本数、サイズ、その日のうちに必要な数量などを、個々の作業員が少なくとも1時間かけて計算し、切断手順を最適化していたとか。同氏は「30年このやり方でやってきたし、改善も試みてきましたよ」と言います。

「工場経営者というのは常に生産性向上に努める必要があります。 そして、今回のように、すぐに結果を出せるツールを導入したいんです。 鍵は“デジタル”という自分たちにはない専門知識を作業工程に取り入れたことでした」――ヂャク・ヲゥドゥ氏 最上部画像:GEデジタルのチームは、毎月600本のパイプを切り分ける方法は、 宇宙に存在する原子の数よりも多くパターンがある(つまり、およそ4×1079通りもの可能性がある)ことを突き止めた (画像ともに:GEデジタル)
2016年後半、「デジタル・ファウンドリー」ではソフトウェアで製造業の生産性向上を図れるかどうかを検証するためのパイロット・プロジェクトが進められていました。担当チームは、その一環でヲゥドゥ氏にコンタクトしました。ファウンドリーのゼネラル・マネージャーを務めるビンセント・シャンペインは、今年1月、4人のデジタル・エンジニアを伴ってパリを出発し、問題解決のための大がかりなプランを用意して工場を訪ねました。しかし、製造業とソフトウェアという2つの世界が互いに意思疎通するのは大変なことでした。「私のチームのスタッフ達は、彼らに向かって『こんなんじゃダメだ』って言ったんです」とヲゥドゥ氏は振り返ります。
理解が得られたのは、両チームが一緒にヘルメットと安全ゴーグルを装着し、作業員がアルミニウムパイプを切断・溶接する工場の作業現場へ移動してからでした。デジタル・チームの中には、製造現場に実際に足を踏み入れるのは初だという者もいました。ファウンドリーでアプリ開発のプロジェクトマネージャーを務めるイーゴリ・ドニエストロウスキーは「とにかくすごかった」と言います。「実際の現場や生産工程、作業に専念する姿を目の当たりにした瞬間でした。コンセプトが本物のデジタル・インダストリアル・アプリケーションになったのはこの時です」
たとえば、パイプがどれほど重くて、それが山積みにされた中から取り出し製造現場の別の場所へ移動させるのがどれほどに大変かということを自分の目で確かめられたことは、パイプ切断工程の改善のためのソフトウェア設計に着手するうえで役立ちました。
最も効率的なやり方は実行可能な解決策をまずすべて試してみることでしょう。しかし、それはどんなコンピューターであれ膨大な時間と処理能力を求められます。シャンペインのチームは、月に600本のパイプを切り分ける方法は、宇宙に存在する原子数よりも多い(つまり、およそ4×1079通りもの可能性がある)ということを突き止めました。
ここ数年の問題は、切断したパイプの約10%は最終的���スクラップ対象になっていたことだった (GIF:GEデジタル)
クラウドコンピューティングとGEの産業向けデジタル・プラットフォーム「Predix」は、そのすべてのパターンをシミュレーションして検討することができました。工場を視察したあと、GEデジタルのメンバー達はパリのオフィスに戻り、わずか4週間たらずで、パイプをどこからどのように切断すれば、エクス=レ=バンの工場効率を最大化できるのかを描出できるアプリを開発しました。
今では、その日に切断するパイプの要件をアプリにアップロードすれば「Predixがたった数秒で結果をはじき出してくれる」とヲゥドゥ氏。特筆すべきは、このアプリがスクラップ対象を10%から4%に減らし、今年一年だけでも推定20万ドル(約2,200万円)ものコスト削減を叶えてくれる可能性があることです。
このアプリは今後、同工場の他のタスクについてもムダを減らせるよう、発展させる予定です。GEのデジタル・ファウンドリーの開発者たちはいま、仕上がったパイプを出荷用木箱に最も効率的に詰める方法を提案するアルゴリズムを研究しています。ドニエストロウスキーは「アプリをアップグレードするには1カ月ほどかかる」と話していますが、ヲゥドゥ氏はパイプを切り分けるこのアルゴリズムによって、年間コストを2倍、もしかしたら3倍削減することもできるのではないかと見込んでいます。
同氏は次のように説明しています。「工場経営者というのは常に生産性向上に努める必要があります。そして、今回のように、すぐに結果を出せるツールを導入したいんです。鍵は“デジタル”という自分たちにはない専門知識を作業工程に取り入れたことでした」
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この勢いは止められない:黄金時代の入口が見えた再生可能エネルギー

トランプ米大統領がパリ協定からの離脱表明をしたことを受けて、GEのCEOであるジェフ・イメルトは昨日、ツイッターで次のように発言しました。
「パリ協定に関する政権が下した決定には失望した。気候変動は現実に起こっている。もはや政府に任せるのではなく、産業界が主導しなければならない」
“Disappointed with today’s decision on the Paris Agreement. Climate change is real. Industry must now lead and not depend on government.”
科学的に見ても、地球温暖化(気候変動)は現実の問題です。電力需要は今後も高まっていくでしょう。発電から送配電に至るまで、クリーンエネルギーには引き続き強いニーズがあるとGEは確信しています。十分な電力を生みながらも、効率を高め、排出ガスを抑制し、エネルギーコストを下げること。クリーンエネルギーへの投資は、環境の観点だけでなく、経済や雇用創出の観点でも重要です。現にGEの世界中の顧客企業はこの領域への関心を強めており、いっそうのスピードと行動を求めています。私たちは今後も、顧客企業やパートナー企業、政府関連機関との協力を図り、クリーンエネルギーのためのイノベーション、技術開発そしてビジネスモデルの創出を続けます。
クリーンエネルギーの実現が必要なのは化石燃料、再生可能エネルギーのいずれもですが、今日のGE REPORTS JAPANでは、いま目を見張るべき進展を見せる再生可能エネルギーの実態をご紹介します。
本格的な再生可能エネルギーの時代はすでに始まった 十分な電力を得ながらも排出ガスを抑え、そして、エネルギーコストを下げ続けること。気候変動が現実に起こっている以上、これは21世紀における人類最大の課題のひとつです。GEが昨年発行したecomaginationレポートでは、世界中で再生可能エネルギー利用や技術が劇的な発展を遂げている事実を調査、報告しました。そして今こそイノベーションをさらに加速させ、新たなソリューションを確立し、地球、人類、世界の経済にとって真に持続可能なエネルギー・エコシステムを構築すべきチャンスだと各方面に呼びかけました。それからの1年を見ても、再生可能エネルギーは極めて大きな進歩を見せました。特に顕著なものをここに挙げてみましょう。
2016年、風力と太陽光への投資は化石燃料投資の2倍に達した
世界の総発電容量は昨年も増え続け、米国では増加分の60%を再生可能エネルギーが占めた
ポルトガルは連続4日間、再生可能エネルギーのみで電力を賄った
ドイツは丸1日、クリーンエネルギーのみで電力需要を満たした
デンマークは風力発電によって国内の電力需要を賄うとともに、ノルウェーやドイツ、スウェーデンへ輸出できるほど十分な電力を確保した
英国では風力が石炭の発電量を上回った。年間発電量で風力が石炭を上回るのは英国初となった
2016年は水力発電(のダム)が蓄電ソリューションとして頭角を現し、風力や太陽光による発電エネルギーを水力発電システムに統合する動きも見られるようになった
米国エネルギー省は、2016年に発表したレポートで「米国の水力発電量は2050年までに現在の101GWから150GW程度にまで増加する」と見込んだ
再生可能エネルギー産業の十分すぎるポテンシャル 世界のイノベーションの努力、各国政府のコミットメントなどによって、再生可能エネルギーは環境成果を発揮するだけでなく、産業としての発展を着実に果たしてきています。投資やイノベーションを続ければ、再生可能エネルギーはこれからも有力産業であり続けられるはずです。
その理由の1つは、多くの国で再生可能エネルギーの発電コストが在来型エネルギーと同等、またはそれ以下になっている事実。たとえば米国では、陸上風力発電はすでに新型の天然ガス火力発電と十分競合できる水準になりました。GEの研究パートナーであるJoint Institute of Strategic Energy Analysis(JISEA)は、これまでのペースで投資が進めば2025年までに風力発電のコストは現在より29%、太陽光発電のコストは最大44%も低下すると予測しました。また、世界的に見ると、水力発電は最も高いコスト競争力を持っています。
もうひとつの理由は、再生可能エネルギー産業は世界の雇用拡大の原動力であること。同産業の従事者数は世界で950万人に達し、年間5%の割合で増加しています。つまり、毎年約475,000人もの新規雇用が生み出されている計算に。これらの雇用を実際に生み出してきたのは、米国、中国、ブラジル、インド、日本、ドイツなどの国々です。
技術革新や各国政府のコミットメントが伴えば、今世紀半ばまでに世界の発電量の3分の1を風力が占めるようになるという見方もあります。この予想は「絵に描いた餅」ではなく、イノベーションのペースが続くと仮定した場合の、実現可能な範囲を示しています。GEグローバル・リサーチ・センターの科学者たちは、風力発電のコストを3セント(約3.34円)/kWhまで引き下げる技術の開発に成功しました。こうした技術イノベーションは、市場拡大に拍車をかけてくれます。
風力や太陽光に限らず、水力発電においても、イノベーションによって世界中の発電施設の効率性が高まる可能性が十分に見込めます。たとえば、GEのデジタル・ハイドロ・プラントは水力発電のソフトウェアとハードウェアをGEならではの方法でユニークに組み合わせたもので、データ解析に基づいて、水力発電用タービン、施設、機器のパフォーマンスを正確に把握し、コスト管理や発電量コントロールに役立てることができます。
環境課題の解決のためだけでなく、再生可能エネルギー産業は新たな経済や雇用拡大のための可能性を秘めるものだということを忘れてはなりません。風力と太陽光、水力を組み合わせることで、従来のエネルギーモデルを根底から変えることも可能であり、今までにない、新たなビジネス機会が生まれています。
100年ほど前、科学雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』の誌上広告で、GEは人間が太陽、風、海を巧みに利用して電力を生める世界を描きました。こうしたビジョンは今まさに現実のものとなろうとしているのです。GEはこれからも、世界中の企業や政府機関と協力し、真に持続可能なエネルギー・エコシステムの構築に努力を続けていきます。
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手を使って作業するロボットの開発が想像以上に難しいワケ

ノースイースタン大学のTaskin Padir教授によれば、ロボットが人と一緒に稼動して最も役立つ存在になるために必要なのは、人の手が2つでは足りないときに、ロボットが文字どおり“手を貸せる”ようにする方法を見つけることだとか。今日はTaskin Padir教授の寄稿をご紹介します。
***
人にとって、なかでも製造業に携わる人にとっては、結び目を作ったり、ケーブルの皮を剥いたり、穴にピンを差し込んだり、ドリルのような工具を使用することも日常茶飯事です。こうした作業は単純作業に思えるかもしれませんが、実はとても複雑で、指と手の非常に細かな動作が関わっています。
ロボットは工場以外にも、サービス産業やヘルスケア産業など多種多様な仕事にどんどん利用されるようになってきていますが、ロボットの器用さはというと、手放しで褒めるにはほど遠い状態。ロボットが自動車工場に初めて導入された50年以上前から、溶接や塗装、パーツの組立が得意なロボットは製造され続けてきました。今日の最高レベルのロボットハンドは馴染みのあるモノを取ってきて、別の場所に移すことができます。たとえば、倉庫の置き場から製品を取って箱詰めする、といった具合です。
でもまだ、ロボットは手工具の適切な使用、つまりプラスドライバーをねじ溝に合わせたり、金槌で釘を打ったりすることはできませんし、リモコンの電池交換のように両手を同時に細かく動かす作業には全く対応できていません。
人の手はこうした作業だけでなく、さまざまな用途で素晴らしい働きをします。人の手なら簡単にできることでも、ほぼ同程度にこなそうとすると、ロボットハンドの場合は俊敏性や信頼性、強度をさらに向上させなければなりません。そして、より正確な感知や今よりもっと細かな動作を可能にして、掴んでいる物や、もっとも適切な掴み方を把握させる必要があります。ロボットを人のそばで稼働させるためには、私たちの2つの手では足りないときに、ロボットが文字どおり手を貸せるようにする方法を見いだす必要があるのです。

Taskin Padir氏 ノースイースタン大学電気・コンピューター工学部准教授
ノースイースタン大学の私の研究グループはまさにこうした研究を進めていて、特に米航空宇宙局(NASA)のヴァルキリーのようなヒト型ロボットを対象にしています。このロボットの手にはそれぞれ3本の指と親指があります。各指には指関節のような節があり、手には簡単に回転する手首が付いています。私たちは現在、腕、手首、親指、それ以外の指の動きを組み合わせた動作の生成に取り組んでいます。ボルトを締めるためにスパナを回したり、ある場所から別の場所へカートを引っ張るような作業を行うための一連の動作です。
手の重要性 私たちは個々のロボットを特殊作業向けにカスタマイズするのではなく、多目的ロボットや、ありとあらゆる作業に対応できる「汎用」ロボットと呼べるような優れたマシンを設計することを目指しています。こうしたロボット開発の成功の鍵のひとつは、高機能なロボットハンドでしょう。
私たちの研究では、正確で細かい動作をする能力や自立的に物を掴む力を備えた、適応力のある新タイプのロボットハンド設計に注力しています。釘を打ったり、電池を交換したり、これらの動作を行うことは、人にとっては簡単ですが、ロボットにとっては複雑な作業。ロボットにこうした作業が可能となれば、人間並みの器用さを持つロボットハンド開発が軌道に乗った、と言えるでしょう。
この目標を達成することは、硬い物と柔らかい物の要素を兼ね備えた新たな設計の考案にもつながります。物をつかむとき人の骨には力が入りますが、皮膚が圧力を分散させてくれるのでワイングラスが割れることはありません。このしくみを、設計に取り入れるのです。
開発とテストを加速させる 近年の技術進歩によって、開発プロセスは以前より容易になっています。3Dプリンティング技術のおかげでプロトタイプ(試作品)を非常に早く制作できるようになり、低価格で使い捨ての部材を作ることまで可能になったため、単純なピック・アンド・プレース(物をつかんで決められた位置に置く)作業向けの2本指や3本指のグリッパーや、より繊細な作業のための人の手に似たロボットハンドなど、さまざまにアレンジした構造を試すこともできるようになりました。
デジタルカメラやデジタルセンサーがより小型化されれば、それらを新たな方法で内蔵することができます。例えば、圧力センサーとカメラをロボットハンドに内蔵すれば、安全に掴めている場合はもちろん、もし何かが滑り落ち始めた場合にも、ロボットの制御装置(人が担うにしろ、自動化するにしろ)にフィードバックすることができます。ロボットが物の滑った方向を感知して、キャッチできるようになる日だって、そのうち来るかもしれません。
人はこうした能力を視覚や固有受容(見たり考えたりすることなく、体の部位の相対位置を感知する能力)を通して自然と身に備えています。もし、これをロボットに実装できれば、掴む力が強すぎる場合や、物に圧力をかけすぎた場合にそれを検知する、といったことが可能になるでしょう。
協調性ある動作を計画する 新たなマイルストーンによって、各瞬間にロボットハンドで起きていることを感知させるなど、必要な動作をリアルタイムでロボットに把握させる方法が開発されることもあるでしょう。ロボットハンドが処理している物の変化を検知したり、物を掴みながら操作できるようになれば、結び目を作ったり、ケーブルの皮を剥くといった一般的な手作業にも活用できるようになるかもしれません。
ロボットが両手で同時に作業を行えるようになるのはまだずっと先の話ですが、実現すればとりわけ製造業に大きな進展をもたらすでしょう。ロボットが両手でドリルを操作したり、機械部品を一方の手からもう一方の手に移動させることができるようになれば、大幅な(生産性の)改善につながりますし、工場ではより複雑な作業工程でも自動化することが可能になります。
私たち人間はまだこうしたシステムを開発できていません。ロボットに人間並みの自立した器用さを持たせるために、ロボット研究者や技師、イノベーターは当面、奔走することになるでしょう。しかしこれは、製造業で進むロボット革命を失速させるものではありません。現在のプロセスには安全性やスピード、品質の向上を自動化する余地がまだたくさん残されているからです。しかし、私たちがロボットをさらに優れたものにできれば、そのロボットたちに手を貸してもらえるようになるはずです。
※最上部の画像:Getty Images ※この記事はThe Conversationに掲載されたものをベースにしています。 ※本記事に掲載されている見解は著者個人によるものです。
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2050年の都市:データとテクノロジーが扇動する、未来のメガシティ形成

インフラ設計に関してひとつ確かなことは、2050年の大都市が成長するうえではIoT(モノのインターネット化)が収集するビッグデータが重要な役割を果たすようになること。これには、人の動きを観察するデータを活用することや、より優れたスマートモビリティ(スムースで快適な移動)の実現も含まれます。でもスマートシティは、IoT技術を用いてサービスを最適化したり、生活者により多くの情報を提供することだけで築き上げられるものではありません。都市の変革をめぐる自治体の意思決定力の確立も必要です。今回は、オートデスク社の都市インフラ産業担当 シニアストラテジスト、テリーD.ベネット氏のエッセイをご紹介します。
***
2050年の都市はどんな姿をしているでしょう?韓国のように、既存社会をベースにしつつ集中的にデジタル化しネットワーク化する改良を施したものになるでしょうか。それとも、ドバイやシンガポールのようなピカピカの新型都市?あるいは、地下や海底にも移設可能な都市でしょうか・・・!?
いま、ブラジルのクリチバ市をはじめとする革新的都市では、クルマの自動運転やドローンのビジョンについて議論しながら、都市機能における全体の交通戦略を包括的に見直しています。インフラに対するニーズの最も基本的なものはいつの時代も、どう暮らし、どう動き回りたいかに関わっています。
これにはモノの移動手段も含まれます。フェデックス社の想定では、世界のeコマース利用額は2016年から2018年までに26%増加し、2兆4,000億ドルになるとか。この見込みは、車両(自動運転車かどうかは別として)が利用する一般道や幹線道路、港や空港のインフラ整備の検討を迫るものでもあります。
これに加え、センサーやビッグデータ、IoTなどの破壊的技術が数限りなく融合すれば、隣接する都市は大型機械の歯車のように連携することが可能になります。
・・・ところで、どうしてそれが重要なのでしょう?都市計画の専門家たちはこれまでも、建築容量の増量やインフラ能力を高める余地のない様々なエリアが直面する都市化圧力について検討してきました。データを収集・解析して近隣する都市との交通経路の人口密度を高める方法を探り、大量移送できる交通手段を活用することでさらに数百万の住人を受け入れられるような“メガ・リージョン”を形成できれば、ひとつの代替案になり得ます。
世界中の都市が抱える課題は「どのように成長するか」ということ。機能と変革を両立するには、どうすればよいでしょうか。
データと未来のメガシティ 都市というものは、近隣の都市と一緒にインフラや経済への作用を共有しています。電力網、道路、輸送、水道システム、治安は都市の枠を超えた要素。そして、今日の自治体は前例のないペースでの変革を迫られています。そうした状況下で、今後の方針を誰が決定し、その取り組みがどのようなものになるかについて、多くの議論が行われています。
2050年の大都市にとって、ビッグデータが重要な役割を果たすようになることは間違いありません。ブラック・アンド・ビーチ社のスマートシティ事業開発責任者、Steph Stoppenhagen氏はこう言います。「ビッグデータとはさまざまなシステムで収集される身の回りのあらゆる情報のことです。地下鉄に乗るためにメトロカードを使えば、どこから乗って、どこへ行き、どのような経路を使ったかシステムが認識します。これは、地下鉄サービスが機能したかどうかを評価するのに役立ちます。うまく機能したと評価されれば、繰り返し使用されることになるでしょう。データを活用して人の動きを観察し、スマートモビリティを実現するための一例です」
とはいえ、すべてのデータが有益で実用的な情報に簡単に置き換わるわけではありません。変わりゆく都市の状況に対処するためには、情報そのものもインフラの一部として捉え、より大きなシステムのもとで都市連携を果たすための優れた都市計画の一助になるのだということを認識する必要があります。
出発点はあくまで「人」であって、テクノロジーではありません。都市計画の策定、設計、投資の決定や、協力的な政策を立案する場合には、インフラの視覚化、シミュレーション、分析を通じて情報提供したり、スピード向上を図ることができます。ビッグデータや先進のモデリング技術の出現によって、優れた洞察に基づいてインフラ投資の立案や優先順位づけをしたり、予測される結果の情報提供を徹底したり、より大きな成果を目に見えるかたちで導き出すことも可能になっています。
スマートシティを創ることは、都市変革をめぐる意思決定力を確立するという意味でもあります。2050年はずいぶん先のことに思えるかもしれませんが、機能を果たし、変革し、新しい都市との競争を強いられる既存都市にとっては目前の課題です。都市は持続成長のための革新が求められており、強靱性を高めるとともに、市民の膨らむ期待に応え、投資や新規ビジネス、人材を惹きつけていく必要があります。幸いなことに、データやテクノロジーはコミュニティの連携強化を促進してくれます。そのことが人々の仕事と生活をよりよいものにしてくれるはずです。
都市計画の策定には、優れた投資と政策決定が不可欠。助成金とは対照的な「長期投資」への移行が鍵となります。これを達成するために、都市は以下を結びつける必要があるでしょう。
プロジェクト: 統一された都市構想を構築し、アクセシビリティ(情報やサービスの利用しやすさ)、雇用、手頃な価格の住宅、健全な環境など、より広範な経済目標を達成する開発努力
チーム: 官民のインフラ投資を解放し、ビッグデータを活用してインフラ性能をトラックするために、行政機関のあらゆる階層を機能させる協力的な取り組み
インサイト(洞察): プロジェクトの計画当初からあらゆる立場の関係者を連携させることでインサイトを導き出し、都市計画の策定、機能、経済成長の手法を一変させる斬新なテクノロジー
成果: 都市計画に沿っており投資対効果検討をクリアするもので、費用対効果分析を用いながら経済的目標を達成しうるプロジェクト

テリー D. ベネット氏|オートデスク社 都市インフラ産業担当シニアストラテジスト 氏は、LS、LPF、英国王立チャータード・サベイヤーズ協会会員(MRICS)、 Envision Sustainability Professional(ENV SP)、LEED公認専門家(LEED AP)の資格保持者でもある
都市計画策定の未来は3Dにある 「ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)」は膨大な情報に意味を与え、建築士やエンジニア、住民、意思決定者などが活用できるものにしてくれます。先進の3Dモデリング技術は、システムと資産を対比したうえでのリスクや課題など、複雑な情報分析を可能にします。つまりこれは、インフラシステム全体で達成しようとしていることと、団体や個人が個々に達成しようとしていることを対比する考え方。建築士やエンジニアはこの情報を活用して設計を向上させることができ、個人、企業、都市は「スマートに」連携したり繋がるための目標をそれぞれに達成することが可能になり、近隣都市との一体化も実現されます。
一定の方針のもとで作成した3Dモデルをシミュレーションソフトウェアと組み合わせて一貫して使用することで、物理的なインフラ性能について、仮説ながらも現実的なシナリオを描くことができます。3Dで具体的なビジョンを構築して、誰もが理解できる目標や性能の評価基準を議論できる状況が作り出されるわけです。
このテクノロジーのおかげで、私たちは、全体と奥行きを捉えられるようになります。それは、片目でしか見られないときに「全体は把握できても奥行きは掴めない」という事態に陥らずに済むということ。奥行きは、テクノロジーが持ち込んでくれる大量の情報によって形成されます。情報豊富なモデルは、設計・建設の全ての段階でインフラ投資効果を増加させてくれます。
絶えず変化する3Dの現実世界。そこに2Dの設計を用いても、これからは通用しません。3DのBIMプロセスを駆使することは、未来のメガシティに適したインフラを構築するうえで不可欠なスキルになるでしょう。
みんなでスマートな基盤を創る 都市運営に関わる人や組織は、しばしば“ビッグデータ”に圧倒されたり、情報を実用化するスキルに欠けていることがあります。BIMのメリットは、ミクロからマクロまで、複雑な都市設計プロジェクトに役立つあらゆるデータのつながりを管理することができる点です。
“没入型コラボレーション”技術を活用すれば、一般の人でもインフラ設計の未来をより深く理解できるようになります。今や、VR(バーチャル・リアリティ)によって仮想インフラ内に足を踏み入れ、一周して見て回るといった方法まで当たり前になってきているのですから。これは設計コンセプトの構築や審査、承認を速めるのに役立つだけでなく、反対勢力を抑えることにも繋がります。
BIMで繋がれた時代には、人工システムや自然システムの計画、設計、維持管理のためのインフラを形成するのは情報で、統合的で強靱なインフラ構築が目標となります。したがって、都市は自然災害や人的災害への耐性を強化し、素早く復旧することも可能になり、未来を支える成長も促せるようになります。
たとえば土木技師は、より多くの情報を収集・分析することによって橋や道路、その他のインフラ資産の管理に必要なものをより適切に予測可能になるため、インフラ寿命は向上します。人口が増加し、インフラ需要が増えるにつれ、将来性ある資産の正確なライフサイクル・コストを考慮する必要も出てきます。
テクノロジーに裏打ちされたスマートなインフラを個人、コミュニティ、大都市、場合によっては国レベルまで繋げることによって、モニタリング能力や評価能力が醸成されます。そして、データのフィードバック分析によって、課題に対処するための前向きな一歩が踏み出せるようになります(人であろうと機器であろうと!)。
これが都市構想に変化を与え、より包括的な都市計画策定のための基盤をもたらします。有機的に繋がった2050年の都市は、エネルギーや水、輸送、建物、管理など、あらゆる種類のインフラが互いに「話し合って」、ニーズに優先順位をつけたり、性能を最適化したり、エネルギー利用を抑えたり、市民や都市���を移動する人のために、より楽しく、生産的な生活を提供するようになるでしょう。
※最上部の画像:Getty Images ※本記事の見解は著者個人によるものです ※この記事はオートデスク社がデザイナー、エンジニア、建設業者、メーカー向けに情報発信するウェブサイト「レッドシフト」に掲載されたものをベースにしており、GEはオートデスク社とマーケティング協調しています。
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機器どうしが「会話」する世界へーGEとボッシュが協働する“IoTの国際共通語”

インダストリアル・インターネット、つまり産業用インターネットが普及・真価を発揮していくためには、機器同士の「会話」が必須です。では、機械はどんな言葉をつかって会話するのでしょう?人間の感覚で言えば、ドイツ車がアメリカの交通標識を認識できるとは思えないし、シンシナティで製造されたジェットエンジンが中国のメンテナンスショップに持ち込まれたら不安になってしまいますよね。
GEデジタルは、ボッシュ・グループ内でソフトウェアとシステムを扱うボッシュ・ソフトウェア・イノベーションズ社と協働し、共通言語を開発することで相互理解できる機械や装置の制作に取り組んできました。
標準化を避けて通ることはできません。なにしろ2020年までにはインダストリアル・インターネットに接続する装置が500億台以上にのぼると言われ、何ペタバイトもの大量のデータを生成していくと予測されているのです。にもかかわらず、あまりに多種の技術が競合してしまっているのが現状。ボッシュ・ソフトウェア・イノベーションズ社の最高経営責任者、ライナー・カレンバッハ氏はこう指摘しています。「GEとボッシュの協働は、大いに期待していただけるものです。IoT(モノのインターネット化)がその真価を発揮したくても、120を超える独立したプラットフォームがあるような状況では話になりません。それらのプラットフォームをつなげられなければ、結局、それぞれが孤立した状態でビジネスを行うだけに過ぎないからです」

2020年までには、インダストリアル・インターネットに接続された装置は500億台以上となり 何ペタバイトもの莫大なデータを生成していると見込まれる (画像:シャッターストック) (記事最上部のイラスト:ゲッティ イメージズ)
昨年、ハーバード・ビジネス・レビュー誌にインダストリアル・インターネット上でどれだけ多くのプレイヤーやプラットフォームが競合しているかを描いた図が掲載されました。この、エンジニアリングの図というよりも蜘蛛の巣に見える複雑な図を、GEデジタルのチーフ・テクノロジー・オフィサーを務めるハレル・コデシュは1920年代の自動車産業になぞらえました。多くの専門部品のサプライヤーに支えられたアメリカの自動車メーカーが、現在わずか数社になっている現状に触れながら、「どんな新しい市場も、はじめは過度に細分化されてしまうものです。優れたクルマを創るのにいっそう多くの資本が必要とされていった結果、1908年に253社あった自動車メーカーは1929年には44社にまで減っていました」とコデシュは言います。インダストリアル・インターネットも似た道をたどって発展していくだろう、と彼は予測しています。
ボッシュとGEの提携は、ネット接続された産業用アプリ市場が成長しているヨーロッパにおいて大きなインパクトを及ぼす可能性があります。というのも、ボッシュはIoTの標準化に関わるヨーロッパのグループの一つで、ドイツの官民連携のイニシアチブ「プラットフォーム・インダストリー4.0」のメンバーを務めるとともに、GEが創設メンバーであるアメリカの「インダストリアル・インターネットコンソーシアム」にも、一昨年から運営委員会メンバーとして参加し、米国とドイツのイニシアチブを連結するために尽力しているからです。
一方GEもまた、ボッシュ社が戦略メンバーを務める開発者向けのオープンソースの統合開発環境「エクリプス・ファンデーション」に参加しています。オープンソースである「エクリプス」上のIoTコンポーネントは、GEのソフトウェア開発施設のひとつ、デジタル・ファウンドリーに持ち込まれ、コーディング技術者やデータサイエンティスト、アプリ開発者は、新しいアプリ開発のためのスタートアップを作ったり、顧客と協働したりすることができようになります。
GEデジタルとボッシュ・ソフトウェア・イノベーションズが交わした基本合意では、両社が持つクラウドベースのGEの「Predixプラットフォーム」と「ボッシュIoTスイート」を組み合わせ、相互操作が可能なエコシステムを確立するため、新しいインダストリアル・インターネット向けソリューションを協働で模索していきます。これはつまり、橋やトンネルを建設し、2つの島を効率よく一つのテリトリーにしていくことを、コンピューター上で行うことに他なりません。
GEのPredixやボッシュのIoTスイートといったシステムを使えば、機器に搭載されたセンサーが分析用の膨大なデータを収集することが可能になります。例えば、ジェットエンジンに積まれたセンサーはフライトのたびに膨大なデータを収集します。このデータを分析することで、交換が必要な部品を技術者に警告したり、エンジン効率を向上させたりすることができ、航空会社のコストを削減できるようになります。つまり、機器の生産性をアップすると共に、パフォーマンス向上のために機器が経験から学ぶことが可能になるのです。その一方で、ソフトウェア企業もまた、Predixを活用したアプリ開発を行っています。ボッシュのIoTスイートはすでに500万台を超える機器をつなげており、産業、モバイル、スマートグリッド、都市・建築装置向けのアプリを通じています。
GEは、2020年までにPredixとその関連ソフトウェアによって150億ドルの収益をあげたいと考えています。
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再生可能エネルギー拡大の新たな秘策|蓄電池とジェットエンジンのハイブリッド

3月23日の午前11時19分――カリフォルニア州にある、ソーラーパネルと風力発電プラントからの電力供給量が、一時的とはいえ初めて、同州の電力需要の49.2%ほどの規模に達しました。アメリカ最大の人口を抱え、2030年までに必要な電力の半分を再生可能エネルギーで賄うことを目指すカリフォルニア州にとって、この記録��非常に良い知らせでした。
しかし、カリフォルニア州が掲げるこの目標にはいくつかの課題があります。電力は常に必要とされています。でも、風は止むこともあるし、あのカリフォルニアでも太陽が雲に隠れることだってあります。GEパワーのエアロデリバティブ(航空機エンジン転用型)タービンのチームを率いるセルマ・キブランは「再生可能エネルギーを組み合わせた発電の場合、常に全需要に対応しきれるわけではありません。不足を補う『ほかの何か』が必要になります」と言います。
※エアロデリバティブ・・・・ジェットエンジン用部品を転用した高速回転タービンのこと
非常に高価で用途も限られるために、まだグリッドスケール蓄電池に頼ることができない現状では、これまでその「ほかの何か」はピーク供給電源でした。再生可能エネルギーの電力供給量が落ち込んだ時、天然ガスを燃料とするガスタービンなら、急速起動して不足分の電力を補うことができます。とはいえ、最も起動の速いピーク供給電源でもゼロ出力から最大出力に達するまでに数分かかります。発電事業者はいつでもすぐに対応するためにピーク供給電源を最小負荷で稼動させ続け、天然ガスを余分に消費し、機器を消耗させざるを得ませんでした。「この燃焼は非効率です。燃やさなくてよいはずの燃料を消費し、無駄にコストをかけて、必要以上の温室効果ガス排出も引き起こしているわけです」とキブランは言います。「理想の解決策でも唯一の解決策でもありません」
そこでキブランは、GEエナジーコネクションのメンバーとともに、高性能な電力管理ソフトウェアを使ってピーク供給電源と蓄電池とを一体化することにしたのです。このハイブリッド・システムでは、普段はガスタービンを停止しておくことができ、必要時にはすぐに蓄電池が対応します。世界初となるこの仕組みを、サザン・カリフォルニア・エジソン社がロサンゼルス近郊の二ヶ所に採用します。「これは二つの世界のハイブリッドです」とGEエナジーコネクションのグリッドソリューション事業部でスマートグリッドを担当する本部長、ミルコ・モリナーリは言います。「速くてクリーンな蓄電池と、必要な電力を十分に供給できるガスタービン。いつでも使える信頼性に加えて、環境的にも利点をもたらしてくれます」

LM6000ハイブリッド蓄電ガスタービン アメリカ大統領専用機や多くのBoeing 747型機にも搭載される 実績豊かなGE製航空機エンジン「CF6」の地上版 (画像提供:GE ReportsおよびGEアビエーション)
記事上部の写真:二つの世界のハイブリッド。 「速くてクリーンな蓄電池と、必要な電力を十分に供給できるガスタービン。 いつでも使える信頼性に加えて、環境的にも利点をもたらしてくれます」
経済的利益もまた重要です。モリナーリはこう言います。「自動車の世界と同じです。世の中が電気自動車だらけになれば素晴らしいですが、実際のところ、許容できるコスト範囲での蓄電容量はさほど大きくないため、航続可能時間は非常に限定的です。電池の価格は下がり続けているものの、現時点ではハイブリッド車が次善の選択肢となっています」
カリフォルニアに設置されたGEのグリッドスケール・ハイブリッドは、わずか5分で出力50メガワット(MW)に達するジェットエンジン技術を中核とした高速ピーク供給電源であるLM6000ガスタービン、そして30分間にわたって出力10MWを維持できるリチウムイオン式の蓄電池で構成されています。風力発電プラントからの電力供給量が急落すると蓄電池が直ちに放電を開始し、送電の維持を担保しつつ、ガスタービンが定格出力に達するまでの時間的猶予を作ります。
GEのエンジニアたちは、蓄電池の放電速度や、完全停止状態のガスタービンをどれくらい急速に起動させる必要があるのかなどを発電事業者が管理できるソフトウェアを開発しました。モリナーリは「タービンの隣に蓄電池を置くことなら誰にだってできますよ。制御を統合することが、肝なんです」と言います。
モリナーリによれば、カリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)は既に送電ネットワークを常時監視するソフトウェアを持っています。電源周波数の低下を検知すると、このソフトウェアがハイブリッド蓄電ガスタービンに“起動準備をするように“と信号を送ります。同時に電力会社の中央制御室にも信号が送られます。さらに、再生可能エネルギーの発電が休止した後でも、送電量が変わらないよう制御します。「ハイブリッド車を運転しているとき、アクセルを踏み込んでも、その動力の何割がガソリン・エンジンからで何割が蓄電池からかなんて、分からないですよね」とモリナーリ。「このシステムが消費者に対してしているのも、同じことなんです」
新システムは、再生可能エネルギーによる一時的な発電量低減への対策としてだけでなく、「カリフォルニアのアヒル」と呼ばれる対策としても役立つかもしれません。「カリフォルニアのアヒル」とは、同州の有り余るほどのソーラーパネルが一斉に発電を終える日没後に電力需要ピークが来るために生じる需要と供給の顕著な差を示したグラフのことで、それがまるでアヒルのシルエット状なのです。 キブランは言います。「このシステムは拡張可能です。現時点の蓄電容量は希望のコスト範囲に合わせて設定されていますが、モジュールとしてデザインされているので、100MWあるいはそれ以上に対応できない理由はありません」
キブランはこうも言います。「カリフォルニア州が再生可能エネルギー利用のさらに高い目標を掲げて前進すれば、アヒル曲線はもっと顕著になるでしょう。再生可能エネルギー利用率の拡大を支えるには、このシステムのようなソリューションがもっと必要になります」

「タービンの隣に蓄電池を置くことなら誰にだってできますよ。制御を統合することが、肝なんです」 (画像:GE ReportsおよびGEエナジーコネクション)
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風をもっと掴まえよう:GE、世界最大のタービンブレードメーカー買収を完了

12月、アメリカのロード島沖のブロック島で5基の巨大な風力タービンがそよ風を受けて勢いよく回転し始めました。いずれも高さは自由の女神と同じくらい。デンマークの企業LMウィンドパワー製、長さ73メートル超(240フィート)のブレードをもつタービンが存分に受ける風を、GEリニューアブル・エナジーのフランス工場で製造された6メガワット型発電機『Haliade(アリアッド)』がエネルギーに変えています。この洋上風力発電所が操業を開始する2ヵ月前、GEはLMウィンドパワーを16億5,000万ドルで買収すると発表。そして、この4月に買収取引を完了しました。
洋上発電所としては米国初となった、ブロック島の風力発電所。規模こそ大きくはありませんが、これは世界の大きな流れに乗っています。世界における再生可能エネルギーへの投資は、2015年に2,860億ドルという新記録を樹立。同年中、新規に建設された全ての発電能力の半分は再生可能エネルギーによるものでした。IEA(国際エネルギー機関)は、今後25年以内に再生可能エネルギーが世界の総発電量の最多を占めるエネルギー源になると推定しています。

米国家庭17,000世帯に電力を供給できる能力をもつ、ブロック島風力発電所の5基のタービン (画像:GE Reports) 最上部の写真:昨年、ブロック島へと運搬されたLMウィンドパワー製ブレード (画像:LMウィンドパワー)
GEとLMウィンドパワーは、この流れの先端にあります。GEは15年前の市場参入以来、30,000基の風力タービンを出荷してきました。LMウィンドパワーは、業界で標準的な1.5および2メガワットの風力タービン用ローターブレードに加え、8メガワットという巨大な風力タービン用のローターブレードを製造しています。ローター径は180メートルにも及び、その長さはサッカー場のタッチラインのおよそ2倍。アメリカ、デンマーク、スペイン、ポーランド、カナダ、インド、中国、ブラジルに工場を持つLMウィンドパワーのシェアは、世界のタービンのおよそ5基に1基という割合。GE傘下となっても、GEの旧来の顧客企業以外の企業とLMウィンドパワーとの間の取引に変更はありません。
GEリニューアブル・エナジーの社長兼CEOのジェローム・ぺクレスは「LMウィンドパワーを傘下に収めたことで、より多くの市場で地域に寄り添った対応ができるようになります。タービン設計と供給における柔軟性を高め、製品コストは下げられるようになります。これらによって自社の競争力を高められるだけでなく、風力発電産業の発展にも寄与していきます」と言います。

LMウィンドパワーは、業界で標準的な1.5および2メガワットの風力タービン用ローターブレードに加え、 8メガワットもの巨大風力タービン用のローターブレードも製造する ローター径は約180メートル、その長さはサッカー場のタッチラインのおよそ2倍 (画像:LMウィンドパワー)
これまでGEは、大手風力タービンメーカーとしてブレード製造能力を持たない最後の企業でした。ブレードとタービンの設計を緊密に連携させてタービン性能を向上するとともにエネルギーコストを低減し、GEの再生可能エネルギー事業を90億ドル伸長させられると考えています。ブレードが長くなればより多くの風を受け止めることができ、エネルギーコストを下げることが可能になるからです。
LMウィンドパワーの風力タービンブレードはカーボンファイバーとグラスファイバー、その他の素材をブレンドした材料で製造されており、世界で最も軽量です。ラインナップのうち最長の300フィート(88.4m)のものは、世界最大でもあります。8メガワットタービン用に作られたこれらの特大ブレードは、洋上風力タービンとして最大の年間発電量(AEP)を誇っています。25年前、デンマークで世界初の洋上風力発電所が運転を開始したときから、LMウィンドパワーは重要な役割を担ってきました。「私たちのハイブリッド・テクノロジーは、カーボンだけを用いるブレードよりもコスト的に有利で、また、製造時の欠陥にはるかに強い特性があります。これは信頼性の高いブレードを作るうえで重要なことなんですよ」と話す、LMウィンドパワーのCEOのマーク・ドゥ・ジョン。「私たちのブレードは高い品質と耐久性が自慢です。世界一厳しい気象条件と、世界一荒い海域の洋上で四半世紀の間、問題なく稼働してきています」
LMウィンドパワーは、1978年以来185,000本以上のブレードを生産しており、77ギガワットの風力発電能力を具現化してきました。年間1億4700万トン以上の二酸化炭素の発生を抑えている計算になります。同社はまた、160の個別の発明をカバーする669件の特許権を保有しており、毎年27件の新たな特許出願を行っています。
前出のペクレスも「LMウィンドパワーの買収により、エネルギー業界で最も成長が速い領域における競争力を強化することができる」と自信を示しています。
LMウィンドパワーは、GEのインダストリアル・インターネットのソフトウェアを利用できる恩恵を受けることになります。「LMウィンドパワーに投資する一方で、私たちは“デジタル・インダストリアル“の能力をまとめ、LMウィンドパワーの製品やサービスを向上させる計画です。我々は新しい”デジタル・インダストリアルな“GEにとって今後のビジネスの型のようなものとなり、成長のエンジンにもなっていきますよ」とペクレス。
GEのソフトウェア「デジタル・ウィンドファーム」とソリューションを活用すれば、既存の風力発電所でもさらに20%もの電力をひねり出すことができます。「最終目標は、風力発電所をトータル・パッケージとして提供すること。これにより、地域の電気コストを下げつつ、エネルギー出力は最大にすることが可能になります」とペクレスは言います。「お客様のために新たな価値を創造すれば、GEの企業価値も高まります。デジタル・テクノロジーとアドバンスト・マニュファクチャリング技術を統合して、インドや中国、ブラジル、ヨーロッパなど、風力発電の成長が見込まれる重要地域に進出することを計画しています」

1978年以来、LMウィンドパワーは185,000以上のブレードを生産しており 77ギガワットの風力発電能力を具現化してきた(画像:LMウィンドパワー)
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IoTで切り拓く、丸紅の電力事業の新たなチャプター

時代の潮目を迎えたいま、多くの企業にとって経営の鍵のひとつになるのが「デジタル・トランスフォーメーション」。世界のトレンドを先読みする力に優れた総合商社は、やはり、IoTやAI領域への投資の動きも他に先んじています。
IoT・ビッグデータを用いた総合商社としての経営変革 日本を代表する総合商社のひとつで、電力事業が強いことでも知られる丸紅。IoTやビッグデータに関する数年間のスタディを経て今月「IoT・ビッグデータ戦略室」を新設した同社は、経営トップの強いコミットメントのもとで、デジタル技術を活用した経営変革に動き出しました。戦略室の副室長、福村俊宏(ふくむらとしひろ)氏は「商社としての長い歴史のなかで、いま当社は第3のターニングポイントを迎えています」と言います。最初のターニングポイントは80年代。円高や輸出貿易の低迷を受け、丸紅は貿易から海外の事業投資へと事業を拡張しました。次のターニングポイントは2000年代。資源価格の高騰や新興諸国が牽引したグローバルな経済成長の波に乗り、投資収益の拡大に注力しました。そして現在、資源価格の低迷や新興国の失速に見られるように、世界のあらゆる側面の成長が鈍化しています。政治や地政学的リスクからも、世界経済の不確実性は拭えそうにありません。「この、第3のターニングポイントにおいては、規模の追求だけでなくコストを抑え収益性を向上させる必要があります。IoTやAIが大きな市場になることは間違いありません。しかし当社の場合、それを商材にして新規ビジネスを興すよりも、既存事業における価値創造に活かすことを重視します。まず自社のデジタル・トランスフォーメーションによる経営革新で、既存事業体の競争力と差別化を図ろうというのが、当社の考え方です」
IoT技術を活用した発電オペレーションの効率化、国内を皮切りに世界へ 食品や衣料品から化学品や航空・船舶まで16の営業本部を持つ丸紅において、安定収益を支えているのが電力本部。日本では"丸紅新電力"ブランドによる小売のイメージが目立っていますが、じつは同社はアジア、中東、欧米、オセアニアなど世界中に発電所を持つ、グローバルな発電事業者。全世界の持分発電容量は1180万kw(キロワット)にも及び、例えるならシンガポール1国の発電容量の9割近くに相当する発電量をもつ、一大事業者です。

「これだけの発電を行うのに、年間2000億円ほどのコストがかかっています。発電所の運営プロセスや現場作業は常に見直しを図り、改善を重ねてきました。それでももし、さらに1%でも運営効率を上げられれば20億円規模のコスト削減になる。電力事業者にとっては安全で安定的な電力を供給することが最大の使命ですが、そのうえで、低廉な電力をお届けできるかどうかが競争力を決めます。当社はIoT・ビッグデータの活用で、次なる効率化と差別化を図っていきます」と話すのは、電力本部におけるIoT・新エネルギーソリューション事業の推進部長を務める栗原聖之(くりはらまさゆき)氏。同社はまず、千葉県袖ヶ浦市に構える天然ガス焚きの複合火力発電所、中袖クリーンパワーの設備をGEの産業向けIoTクラウド・プラットフォーム『Predix』に接続し、信頼性と生産性の向上を図ることを決めました。
信頼性向上には、Predix上で動くアプリケーションであり、GEの物理・エンジニアリングモデルや経験的知見を活かした高度な分析力をもつ「Asset Performance Management(以下、APM)」を活用します。ガスタービンやボイラーなどの機器に取り付けられたセンサーは、機器内の温度、振動、液体やガスの圧力レベルなど様々な状態を感知。そこからPredix上に集められたリアルタイム・データは、APMによって解析され、従来の人手による点検では見抜けなかったような小さな異常さえトラブルへの可能性が生まれた初期段階のうちに検出して、性能低下や故障、計画外の設備停止を未然に防ぎます。各パーツの健康状態を正確に把握できるようになると、電力需要が高い時期を避けたメンテナンス計画が可能になるほか、保守作業のためのダウンタイム(電力生産ができなくなる稼動停止期間)を最小化してくれるため、大幅な収益改善に繋がります。

GEのアセット・パフォーマンス・マネジメント|powered by Predix YouTubeでの視聴(2:29)はこちら
発電所の生産性向上には、同様にPredix上で動作するアプリケーション「Operation Optimization(以下、OO)」を適用。経営的側面から資産管理運用レベルまで、助言的解析結果を示してくれるこのツールは、燃料価格や天候に応じた需要トレンドなどの変動要因や排出規制に照らした最良の発電計画を支援します。また、各KPI達成に必要な情報を単一ダッシュボード上に示すことができ、管理者やエンジニアに変動要因を踏まえたインサイトを提供することで、意思決定をスピードアップし生産性向上に貢献します。
中袖クリーンパワーにおけるPredixの本格稼動開始は2018年3月を予定。栗原氏は「日本を皮切りに全世界にもつ他の発電所にもIoT技術適用を進める考えで、準備に当たっています」と言います。
GE側でプロジェクトリーダーを務める関 真(せき まこと)も「発電事業におけるIoTは、センサーやソフトウェア技術を投入すれば"ポン"と結果が出る、というものではありません。データやアナリティクスが示してくれるインサイトを最大限に活かすには、現場の働き方や業務プロセスの改善など、人による変革の努力が必要です。改善や変革に非常に熱心な中袖クリーンパワーの皆様は、同社の電力事業の変革の中核的役割を担うにふさわしく、当社チーム一同、全力でご支援する決意です」と意気込みを語っています。

丸紅 中袖クリーンパワー|千葉県 天然ガス焚き複合火力(コンバインドサイクル)形式で100MWの発電能力をもつ
やるべきことを徹底してやってきた事業だからこそ、IoT投資の時機 全事業を見渡す立場にある福村氏が指摘するのは「IoTやAIがフィットしない事業もある」ということ。「IoT技術はあくまで手段であって、目指しているのは、価値創造を通して差別化し競争力を高めることです。そのためには、データ活用ではなく、まず先にプロセス改善や社員教育など別の施策を講じた方が良いこともあります。そんな中で、電力事業はまさにIoT技術を活用するに適した好機を迎えていると言えます」
電力事業とともに歩んできた栗原氏はこう話します。「やるべきことを徹底してやってきた電力事業は、次なる打ち手を求めていました。GEと進めたIoT導入の計画は、非常に速やかに進みました。考え方やプロセスが成熟した基盤があるところでは、データの力で成果を搾り出すべきポイントが明確です。また、匠の技のような技術者の工夫をモデル化し、横展開していくことも出来るでしょう」
もともとは、貿易商社としてプラントの輸出入を手がけていた丸紅。新興国での商機が加速度的に拡大した時代にはEPC(設計、調達、建設)事業を手がけ、さらにはIPP事業者として発電事業を、そして日本や欧州では小売を行っており、電力に関して垂直的な事業力を有するまでに発展しました。「電力の世界におけるIoTは、最終的には"(電力を)作る側の最適化"と"使う側の最適化"との双方をつないだ全体の最適化を果たすことになるでしょう。そんな未来の実現をリードしていきたいーーそう思っていますよ」と抱負を語る栗原氏。
多くの同僚がそうであったように、栗原氏もかつて「東南アジアの小さな村に発電所を作るために村長の家に毎日足を運び、初めて口にする食材ばかりの晩餐で酒を交わして」発電所建設を進めてきた一人です。そしていま、丸紅の電力本部は新たなチャプターに足を踏み入れました。IoTの経験を培って体系化し、ゆくゆくは国内外のパートナー企業のIoT活用を支援することも視野にあります。一方では、たとえば丸紅が手がける船舶もまた発電所と似た機構で洋上の推力発電をしており、ノウハウは容易に転用できるでしょう。電力本部が培うIoT活用の知見と経験は、丸紅全体の経営革新のエンジンにもなりそうです。
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軽くて強い3Dプリンター製部品、航空機エンジン実用化までの軌跡
航空機エンジンは大きくて複雑ですが、驚くほど小さな部品がその性能に大きな違いを生み出すこともあります。今からさかのぼること、10年。GEアビエーションとフランスのサフラン・エアクラフト・エンジンの合弁企業であるCFMインターナショナルは、燃費効率の良い新型エンジンの開発に着手しましたーーこれが昨年夏から商業運転を開始したエアバスA320neoに搭載されているLEAPエンジン開発のはじまりです。CFMインターナショナルが手掛けるエンジンは単通路型のナローボディー機用エンジンが主流で、このマーケットは規模が大きいため収益が期待できる一方、燃料消費と排気ガスを劇的に低減させる必要性に直面していました。
そんな中、カギとなったのは燃料ノズルでしたーーGEアビエーションは、試行錯誤の末、効率的にエンジンの燃焼器に燃料を噴射できる燃料ノズルの設計に成功したのです。最近までGEアビエーションでエンジニア部隊を率いていたムハンマド・エフテシャミーは「なんとまぁ、これはスゴイ設計だ、と思いましたよ」と振り返ります。ただ、一つ問題がありましたーー内部構造が非常に複雑な燃料ノズルの先端部には溶接やロウ付けが必要な部品が20点以上もあり、設計通りに製造するのはほとんど不可能だったのです。「8回も鋳造を試みたけど、ことごとく失敗してしまったんだ」とエフテシャミーは続けます。

ムハンマド・エフテシャミー 現在はGEアディティブの責任者として3Dプリンター事業の拡大を進める
一方で、シンシナティを拠点とするGEアビエーションのエンジニアたちは、1990年代から3Dプリンター技術のパイオニアであるグレッグ・モリス氏が創設した地元企業のモリス・テクノロジーズと協働してきました。モリス氏は人間のものづくりの手法を静かに変えてきましたーー材料を切削するのではなく、レーザーを使って髪の毛ほどの厚さの金属粉末層を溶接して積層することで、コンピュータ上にあるファイルをもとに複雑な部品を3Dプリンターで造形するのです。この一連の製造技術は、材料を切削するのではなく積層するため「アディティブ(積層)」と呼ばれています。
GEのエンジニアたちは、長年、モリス氏の工場にある特注の機械で新型エンジン部品の試作品を造形し、新しい設計を何度も繰り返し試してきました。しかし、エフテシャミーをはじめとするプロジェクト担当者にとって、最も関心があったのは3Dプリンター技術を用いて複雑な部品を大量生産することができるかどうかでした。なぜなら、これはまだ誰も挑戦していなかった試みだったからです。
彼らはモリス氏と秘密保持契約を結び、複雑なノズル先端部の設計図を共有しました。モリス氏は3Dプリンター技術を使ってニッケル合金でこれを造形し、数日後にチームを招きました。「あの日のことは今日のことのようによく覚えています」とエフテシャミーは振り返ります。「興奮と不安が交錯した心境でした。解決策を見出せたと思った反面で、この技術は過去何年にもわたる努力を水の泡にし、また、我々の財務モデルにも大きな変化をもたらすだろうと思いました」

25%もの軽量化を実現した、LEAPエンジンの3Dプリンター製ノズル
完成した燃料ノズルはチームの大きな期待に応える仕上がりでした。20部品すべてが一体化されていただけでなく、これまでの燃料ノズルに比べ25%の軽量化と4~5倍の耐久性を実現していたのです。「信じられないくらい素晴らしいテクノロジーだと思いましたよ。航空機エンジンの設計は複雑ゆえにコストがかかります。でも、この技術は洗練とコストダウンを両立できるんです。これはまさにエンジニアの夢で、こんなことが可能になるとは思ってもみませんでした」とエフテシャミーは話します。
GEアビエーションは2012年にモリス・テクノロジー社を買収しました。その後すぐにアディティブの限界についてテストをし、新たな適用先について模索し始めました。エフテシャミーとチームは、数台の3Dプリンターをメイン拠点から殺風景なビルへと運び出し、古い商用ヘリコプターのエンジン部品を造形する試みを密かに開始しました。「私たちは6人のエンジニアを連れて行き、エンジン全体の何割を3Dプリンターで製造できるか確認しようと伝えました。予算を削られたくなかったので、この動きを財務管理担当に気付かれないようにしながらね」とエフテシャミーは苦笑します。
そして、ついに極秘の取り組みは報われました。チームは18カ月の間にエンジンの半分を3Dプリンターで製造できるようになり、900点の部品をたった16点に減らしました。この中には従来300の部品でできていたものもあります。これらの部品は従来品より40%軽く、60%安く仕上がりました。「これまでのやり方でこれらの部品を作ろうとすれば、だいたい10~15社のサプライヤーが必要で忍耐力も求められます。ナットやボルトを準備し、溶接したり締め金を取り付けたりもしなければいけません。でも、それらはすべて不要になったんです」とエフテシャミーは説明します。
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2014年までに、エフテシャミーのチームは上司であるGEアビエーションの社長兼CEOデイビッド・ジョイスに報告するに足る成果を得た実感を得たといいいます。ただ、ジョイスはCEOに就く以前、エフテシャミーと同様に何十年もGEのエンジニアとして働いており、誰よりも厳しい評価をするだろうと覚悟していました。彼に成果を報告し、まだ胸に留めておいてくれと頼んだところ「そんなことはありえない。ジェフ(GE会長兼CEOのジェフ・イメルト)に伝えたいし、取締役会でも報告したい」とジョイスは答えました。
ジョイスとのミーティング後、事態はどんどん進展し始めます。3Dプリンター製の燃料ノズルを大量生産するための体制を整える専任チームも発足しました。この燃料ノズルはCFMインターナショナルの歴史のなかでもベストセラーのエンジンであるLEAPに組み込まれています。CFMインターナショナルはこれまでに12,200台以上のLEAPを受注、リストプライスでの受注額は1,700億ドルを上回っています。今では、米国アラバマ州オーバーンに燃料ノズルを製造するための工場も設けています。
その間、別のエンジニアチームは次なるチャレンジに取り組んでいましたーーまったく新しい先進的なターボプロップエンジン(ATP)の開発を決めたのです。このチームは、アディティブ・マニュファクチャリング(積層造形)を活用することで855の部品をわずか12点にまで集約することに成功、設計がよりシンプルになったことで軽量化に加えて、20%もの燃費改善や10%の出力アップを実現しました。また、3Dプリンターを使って素早く試作品を作り出すことが可能になったおかげで、開発期間は3分の1に短縮しています。テキストロン・アビエーション社は、昨年の夏、新型のビジネスジェット機であるセスナ・デナリにこのエンジンを採用することを決めています。
GEは、アディティブ事業のポートフォリオ拡充を進めており、昨年には10億ドル以上を投じて産業用3Dプリンター製造の分野で業界をリードする二つの企業、スウェーデンのアーカム社とドイツのコンセプト・レーザー社の株式の過半数を取得しました(コンセプト・レーザー社は完全子会社化)。コンセプト・レーザー社は金属粉末から部品を積層するレーザープリンター、アーカム社は電子ビームのプリンターを製造しています。電子ビームの機械はより速い造形、厚さ100ミクロンの層の溶融、レーザープリンターの2倍の照射幅を実現します。また、鋼の半分の軽さでありながら、成形が極めて難しいチタンアルミのような素材からも部品を積層することができるのも特徴です。実際、イタリアのカーメリにある工場では、GE90よりさらに大きい航空機エンジンGE9X向けのチタンアルミ製低圧タービンブレードをすでに製造しています。
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GEのアディティブに関する取り組みは始まったばかりです。GEの会長兼CEOのジェフ・イメルトは毎年恒例の株主の皆様への手紙の中で、「アディティブ・マニュファクチャリングの長期的なマーケットポテンシャルは非常に高く、750億ドル規模に達する」と確信していて「現在は3億ドルほどの収益規模だが、2020年までには10億ドルのビジネスを作り上げていく」と述べています。アーカム社とコンセプトレーザー社への投資は、3Dプリンター事業をGEの社外のさまざまな産業を対象に展開するための第一歩で、両社のマシンは航空宇宙や自動車産業をはじめ、医療インプラントやジュエリーなどの産業でも活用されるようになるだろうとエフテシャミーは言います。
アディティブ・マニュファクチャリングはすでにGEアビエーションを筆頭にGEオイル&ガス、GEパワー、GEヘルスケアなど複数の事業部門で成果を挙げています。GEアディティブは、最近、シンシナティ近郊にアディティブ・トレーニング・センター(ATC)をオープンしました。その施設には金属材料を積層するプリンターが約30台、プラスチック材料を積層するプリンターは約40台設置されています。ここは、GEの中央研究所であるGEグローバル・リサーチーー1990年代初頭に世界で初めて3Dレーザープリンターの一つを開発したーーのエンジニアと緊密に協働しながら開設に至りました。なお、GEは、ピッツバーグ近郊にもアディティブ・テクノロジー・アドバンスメント・センター(CATA)と呼ばれる同様の施設を持っています。

アディティブ・テクノロジー・アドバンスメント・センター ピッツバーグ近郊のこの施設でもアーカム社製3Dプリンターが稼動している
ATCは年に数回、「マニュファクチャリング・ブート・キャンプ」を開催、数百人のエンジニアが研修に参加しています。そして、研修を終えたエンジニアたちが習得したアディティブの知識を各事業部門に浸透させるのです。エフテシャミーは次のように述べています。「マシンの使い方を習得させたら、実践的な課題を与え、エンジニアたちに言うんですーー解決策を見つけてそれを3Dプリンターで造ってみろってね」 ATCでは、ものづくりに携わるエンジニアたちにプリンターの使い方をマスターさせるだけでなく、材料の専門家を訓練してサプライチェーンの再構築も図っています。「今、何百機もの大きな航空機が世界中を飛び、機械部品を運んでいます。でも近い将来そんなことは全部不要になって、必要なものは3Dプリントするだけで済むようになるかもしれません」
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いま考古学者たちに人気のソフトウェアとGE製CTスキャナーとは?

2012年、ベルリンで活動する美術品保存修復家のKatrin Lück氏は、腐食の激しい鉛製の小さな巻物を、ドイツ北部ヴンストルフ市にあるGEのテクニカル・ソリューション・センターへ持ち込みました。
長さ3.6cm、直径1.5cmしかなくて、聖書の一部がマンダ語で綴られた鉛がロール状に巻かれたこの書物。Lück氏は1600年前の貴重な遺物であると確信していました。ちなみにマンダ語は古代宗教のひとつ、グノーシス派で用いられた言語で、その歴史はキリストの誕生にまで遡ります。巻物の内容を解読したかったものの、広げれば壊れてしまう可能性が。そこでLück氏は、テクノロジーの力を借りることにしました。ヴンストルフ市にあるGEテクニカル・ソリューション・センターは、医療現場で使われるCTスキャナー(コンピューター断層撮影装置)の技術を産業向けに利用するための技術開発を手がけています。ここでLück氏はGEの技術者と共に産業用CTスキャナーで巻物をバーチャル空間上に「広げ」、マンダ語で記された41行の文章を解読したのです。

長さ3.6cm、直径1.5cmしかないこの金属性の巻物には聖書の一部がマンダ語で記されていた (写真:GEオイル&ガス・デジタル・ソリューション)

GE製の工業用CTスキャナー(非破壊検査装置)「v|tome|x」とボリュームグラフィックス社製ソフトウェアで “バーチャルに”広げて解読された巻物。 描出されたのは「悪魔」「呪文」「魔術」などミステリアスな言葉たち。
一般的な医療用CTスキャナーは通常、低エネルギーX線を用いて体内を撮影します。CTによって臓器をさまざまな角度で画像化することで、医師たちは体内の様子を詳細な3D映像として見ることもできます。一方で、ヴンストルフで製造されている産業用CTスキャナーはさらにパワフル。GEはもともと、航空宇宙産業や自動車産業で使われる部品を検査・測定するためにこのスキャナーを開発しました。実際、GEの顧客企業は金属内部を観察したり、タービンブレードや3Dプリンター製部品、その他ハイテク部材の欠陥を検出するのに産業用CTスキャナーを役立てています。
病院で使われる人体用のCTスキャナーとは違い、産業用CTスキャナーは対象標本をより詳細に観察することができ、はるかに高解像度の3D映像として再現できます。高密度の物質や金属体に対するX線管の透過力も高まっており、GE製の産業用CT装置は、医療用CTスキャナーと比較して数百倍もの観察能力を持っています。
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この高性能ゆえに、産業用CTスキャナーは現代のインディ・ジョーンズたちにも��用されています。たとえば2011年、ドイツのある建設作業チームは、ヴィスベクの新興住宅地を興すときにもこれを活用しました。ドイツ北部に位置する小さな街、ヴィスベクは、サクソン人にキリスト教を広めた古い大修道院があることで知られています。
住宅予定地の地盤から古代墓地が出現した途端、建設現場のルーチン作業はアドベンチャーに一転しました���その遺跡からは、剣かと思われる錆びた武器の一部のようなものが出現。考古学者たちは土の塊に覆われた金属片を掘り起こし、調査・保全のため状態保存できるよう、石膏で塗り固めました。
ヴンストルフのGEの施設に運ばれた出土品をCTでスキャンすると、飾り鋲(びょう)があしらわれた約76cm長の中世の剣が現れました。この剣は裕福なサクソン人が所有していたものだろう、と見られています。

掘り起こされた土の塊に覆われた金属片は、調査・保全のためにすぐさま石膏で塗り固められ、運ばれた (写真:GEオイル&ガス デジタル・ソリューション)
産業用CTスキャナーはさらに予想外の発見をもたらしてくれました。サクソン兵が小規模で私的な武器庫とともに埋葬されていることを示す、一揃いの武器のひとつ、短剣も見つかったのです。GEオイル&ガスのデジタル・ソリューションの広報を担当するDirk Neuberは「CTは目視できない部分を把握するうえで優れているというだけでなく、考古学的遺物をそのままの状態で記録に残すことができるんです。保全や調査をしたくても、壊れやすい布や材木のような有機質の遺物は、触れただけで粉々になってしまうこともあるんですよ」と話しています。
科学者たちは過去数十年にわたり、医療用CTスキャナーとX線機器を使ってエジプトのミイラの秘密を解き明かそうとしてきました。でも、産業用CTのテクノロジーを活用すれば、まったく新しいレベルの、はるかに詳細な発見が可能になるでしょう。

CTスキャンで復元したヴィスベクから出土した剣 (写真提供: Lower Saxony State Service for Cultural Heritage @ドイツ・ハノーバー)
バーチャル上で石膏と土を取り除いて可視化された、飾り鋲があしらわれた75cm長の剣 中世初期、裕福な上流階級のサクソン人が所有していたものとみられる
こうした産業用CTスキャナーは非破壊検査装置とも呼ばれ、ふだんは工業用途に活用されています。飛行機の安全運航や車・電車の安全走行のため、また、プラント設備の安全稼動のため…保守管理やそこにかかるコスト削減に、役立てられています。
※最上部の写真:産業用CTスキャナーの前でマンダ語で記された巻物を手にするKaren Lück氏(写真:GEオイル&ガス・デジタル・ソリューション)
CTスキャンによって予想外に発見された、小さなナイフ サクソン兵が戦いに用いた一揃いの武器のひとつと見られる
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チャージ完了:GEのエネルギー事業の成長に向けたシナリオ

GEのCFO、ジェフ・ボーンスタインは、GEパワーとGEリニューアブルエナジーが3月にニューヨークで開催したカンファレンスにおいて、重電大手アルストムのエネルギー資産買収に伴う2016年のシナジー効果が2016年には15億ドルに達し、GEが当初掲げていた5年間の目標を3億ドル上回ったことを報告しました。アルストムがGEの競争力をいっそう高め、サービス基盤の拡大と長期的な企業価値の向上をもたらしています。
同様に、いまGEオイル&ガスは現在、石油・ガス大手ベーカー・ヒューズとの統合計画を進めています。両社の事業は補完関係になり、その2020年までの事業統合効果は、昨年10月に統合を発表した際に掲げた16億ドルをはるかに上回るものと見込んでいます。

世界最大のジェットエンジンを転用したガスタービン LM9000 (写真:GEオイル&ガス)
最近の買収や統合はGEのグローバル市場における実績を拡げています。GEのグローバルにおける発電能力は、アルストムとの統合によって1,500GWに達し、いまGEの発電用機器は世界の電力の30%を生んでいます。また、統合によってアルストムの事業ポートフォリオが加わったことで、タービンだけでなくボイラーや発電機、その他関連設備の製造も手がけるようになったGEは、ガスタービン事業を超えた「パワーアイランド」事業を展開できるようになりました。
デジタル技術がエネルギー・ビジネスを変革する そして、GEのエネルギー事業に最も急速な変化をもたらしているのが、IoT技術です。GEパワーは現時点で約92,000台の設備資産をデジタルネットワークを介してGEの産業用ソフトウェア・プラットフォーム「Predix」に繋いでいますが、その設備のすべてがGE製というわけではありません。米国のエクセロン社、パキスタンのHubco社などは、すでにPredixベースのアプリやその他のソフトウェ���を活用して資産活用を最適化しています。日本でも東京電力フュエル&パワー社が、富津火力発電所における運用効率向上にむけたPredixの活用に乗り出しています。GEはPredixによってガスと蒸気を用いた発電システムの性能とサービスを向上させれば、今後10年あまりのうちにHubco社単独だけでも2億4000万ドルの価値を創出できるようになると試算しています。
GEパワーのCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)ガネッシュ・ベルは、デジタル・テクノロジーは「(顧客企業が)引くことのできる最大のレバー」だと言い、2016年はデジタル技術がもたらした電力産業の一大転換点だったと言います。GEは、設備がGE製であるかどうかに関わらずあらゆる環境で動作するソフトウェアの開発に励み続けています。
とはいえ、一方では課題も山積しています。発電施設のダウンタイムの70%はデータ分析によって予測することができますが、実際に大半の発電事業者が収集しているデータは、発電施設で1日あたりに生み出される2テラバイトのデータ量のわずか2%にすぎません。世界経済フォーラムのホワイトペーパーによれば、デジタル・システムを採用することによって、電力産業は1兆3,000億ドルの価値を生み出す可能性があるとのこと。大きな効果を得るためには、多くのデータを活用することが必要です。ベルが率いるGEパワーのデジタル部門は大幅な受注増を予想しており、昨年5億ドルだった受注金額が2017年は9億ドルに達すると見込んでいます。
デジタル技術は、GEがより優れたハードウェアを作り出すうえでも役立ちます。例えば、最新世代のHクラス・ガスタービンは、温度、圧力、振動、その他の特性を測定するために6,000個ものセンサーを搭載しており、センサーによって得られたデータを活用して性能にさらに磨きをかけています。Hクラス・ガスタービンを採用したフランスのブシャン発電所の発電効率は62%を達成し、昨年ギネス世界記録にも認定されましたが、開発チームはすでに64%の効率を実現するマシンのテストを開始しています。「物理的には何も変わっていませんが、効率化は何百万ドルもの価値を生み出します」とは、GEパワーのCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)ジョン・ラマスの言。世界中の電力会社がこの動きに注目しており、中国においても哈爾浜電気集団公司(ハルビン電気)がGEと契約を締結。来年後半には中国初のHクラス・ガスタービンが導入される予定となっています。

Hクラス・ガスタービンが稼働するフランス・ブシャンにある世界最高効率のコンバインドサイクル発電所 (写真:GE Reports)
GEリニューアブルエナジーにも同様のシナリオが当てはまるでしょう。アルストムとの事業統合効果により、急成長を遂げている洋上風力発電と水力発電の市場で、同事業部門は着実に地歩を固めています。GEパワー同様、GEリニューアブルエナジーでも米国内に設置されている全13,000 基のGE製風力タービンがPredixにつながっており、1カ所の管理センター��らすべての設備を遠隔監視することができるなど、デジタル化が効率的な運用を可能にしています。
スイスアルプスの小さな街、リンタールを見下ろす場所に設置された水力発電施設。 原子力発電所並みの莫大な電力を作り出すことができる (動画:GE Reports)
いま、世界では新たな発電能力の50%は再生可能エネルギーが占めるようになると見られています。GEがタービンブレードメーカーのLMウィンドパワー社の買収を計画したり、サウジアラビアやロシアなどの新市場に進出しているのはそのためです。
デジタル技術の波は、歴史あるエネルギー産業のビジネスのあり方をも大きく変えようとしています。成功のシナリオは、今まさに書き換えられようとしているのです。
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