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2019.12.31 (Tue)

来年はパン屋に向けて少しでも何か始められたら、と去年の今頃考えていたことを思い出す。ガスオーブンを買って、物件を探して、結局借りることはなかったけれど、色々自分の中で整理するきっかけになった。 一年間家でパンを作り続け、嫌になることも、もういいやと満足してしまうこともなかった。パン屋で働いていたころのように、頭をフル回転させながら思いっきり作りたい。そういう思いが膨らんだ。 エンジニアに戻って、この仕事は大好きではないし、パンのように打ち込めるものでもないけれど、何かしらのかたちで続けていきたいと思えたのは、戻ったことで気付けたこと。お金のためだけじゃない。これからの働き方を考えるようになった。

できることからとりあえずやろう。それが 2019年。 2020年は、やるしかない環境に身を置いて、本格的に始めます。 ワクワクする!!!

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2019.12.17 (Tue)

一番好きなパンは何かと聞かれたら、甘いパンではあんパンかカルダモンロール。それぐらいカルダモンロールが好き。
鼻に抜けるカルダモンの爽やかな香り、バターの芳醇な香り、少し甘い生地、ザクッとふわっとした食感。そのバランスが絶妙。
シナモンロールはよく見かけるが、カルダモンロールはあまりない。 もっと作ればいいのに。
おいしいと思ったパンは自分でも作る。この味、この食感にするにはどんな粉を使って、どういう工程なのだろう。食べながら、思い出しながら考えるのが楽しい。こういうことが好きなのだと思う。一回で上手くいくことはなかなかないけれど、だんだん試行錯誤しながら近付けていって、自分流にしながら離していく。奇抜なパンはないけれど、これがうちのパンですよと言えるように。
カルダモンロールはもう自分のレシピがあって、どの店のとも違う。これが自分のカルダモンロール。そしてどのカルダモンロールよりも一番好き。

開業するときは出したい。一番好きなパンだから。 あ、あんパンは未定です。
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2019.12.16 (Mon)

カヌレ。
店で何度も焼いたし何度も仕込んだ。だから家でも焼けると思っていたカヌレ。それが全く焼けなかった。中が詰まってネチっとしておいしくなかった。真似じゃダメなんだ、自分はまだまだなんだと痛感した出来事。
そして、粉、配合、寝かせる時間、オーブン、温度、焼き時間。色々調べて調整して、あと一歩なところまでいった。それが、去年の話。
今年はさらに粉と砂糖を変えた。出来映えは、過去最高。嬉しかった。この一年で少しずつだけど成長していると思えたから。
今年もあと少し。まだまだ焼くけれど、来年ももっともっと焼こう。食べきれる範囲で(それが一番の課題)。
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2019.12.15 (Sun)

栗と林檎。
バゲット生地にココアを練り込んで、栗の渋皮煮とキャラメリゼした林檎をたくさん。ココアの香り、栗のほっこり感、林檎の爽やかな酸味とじわっと広がる甘味。寒い季節も良いと思えるパン。
渋皮煮は秋にたくさん仕込んだもの。林檎は紅玉がなかったので今回はふじ。甘味と酸味がちょうどよくて正解。
もう少し加水率を上げたらのびのび窯伸びしてくれそう。これはこれで美味しいのだけど。
■材料(ベーカーズパーセント)
臼かおり : 40
E65 : 30
ゆめちから : 20
全粒粉(粗挽き) : 10
ココアパウダー : 8
水 : 50
牛乳 : 30 (もう少し多くても)
塩 : 2
ドライイースト : 0.2 ぐらい
栗の渋皮煮 : 3倍仕込みで 5個
林檎を5ミリの薄切りにしてきび糖と和えて軽くキャラメリゼしたもの : 3倍仕込みで林檎 1 個分
具は成形時に生地に巻くタイプ。今回はなまこ型。
ちなみにバゲットは仕込み水を全て水にして 70% ぐらい。家のオーブンだと長さがとれないので大抵はブールにする。メキメキっとクープが割れ気��ちよく焼き上がる。

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2019.11.17 (Sun)
秋から冬に変わっていくこの時期は、パン屋が一番忙しい時期。作る量も増えるし季節ものもあるので種類も増える。そして、シュトレンが始まる。
初めて食べたシュトレンは、ものすごく甘くて重くて洋酒も効いていて、好きではなかった。砂糖のド直球の甘味は苦手。それが数年前。
最近はどこのパン屋も出していて、それぞれの個性があって楽しい。素材にこだわったもの、卵・バター・砂糖不使用のもの、和風に仕上げたもの。どこのを買うか悩むのもこの時期の楽しみの一つになった。
これまで食べて一番好きだったのは、ルヴァンのシュトレン。華やかさはないけれど、無骨でドライフルーツと生地の旨味をしっかりと感じられて、シンプルでおいしかった。
働いていたパン屋は、シナモンを効かせて、ゆずピールがアクセント。仕上げは溶かしバターにくぐらせて、たっぷりの粉糖で覆ったパンみたいなシュトレン。残念ながら、自分は好きにはなれなかった。まず、シナモンが苦手(笑)
今年は自分で作ってみようと思う。フルーツをたくさん入れて、甘さは控えめ。ライ麦と全粒粉をベースにして、サワー種で発酵。少しの酸味と甘味、ほろほろと崩れる。
というような感じにしたくて試作中。

蜜柑と杏のシュトレン。
蜜柑、杏、河内晩柑ピール、レモンピール、ジンジャー、ローズマリー。
キルシュに漬けたドライフルーツとピールをローズマリー香る生地に混ぜて。柑橘好きなので、柑橘が主。もう少し甘さを抑ても良いかも。 次は栗入りのショコラシュトレンに挑みます。
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2019.10.19 (Sat)

ディンケル小麦のパン。ナッツのような香りと、噛むほどに感じる複雑な味。そのままでも美味しいけれど、チーズや食事と一緒に食べると、どちらもより美味しくなる気がする。
■材料(ベーカーズパーセント)
湯種
ディンケル小麦全粒粉 : 20
熱湯 : 40
本捏ね
ディンケル小麦全粒粉 : 60
全粒強力粉(細かいもの) : 20
水 : 40
塩 : 2.5
サワー種 : 20
湯種を作って一晩冷蔵庫で寝かす。
粉と湯種と水を全て混ぜ、粉気がなくなったら常温で 30分オートリーズ。
塩を混ぜ、その後サワー種を混ぜる。ざっと混ぜたら作業台に出し捏ねる。最初は台にこすりつけて材料が混ざるように。その後は叩きつける。捏ね上がりは軽く膜が張るぐらいまで。捏ね方は叩きつける感じ。全粒粉 100% なので、たくさん捏ねても薄い膜にはならない。最初のボソボソの状態から脱せられれば捏ね上がり。表面を張らせるように丸めてボールに入れて、常温で 45分ぐらい。
生地を持ち上げて、四方向から折り畳むようにしてパンチ。さらに 45分ほど常温で発酵させる。
1.5倍ぐらいに膨らんだら、長方形に分割。表面を張らせるように優しく巻いて丸める(手前から2回折るイメージ、ガスを抜きすぎないように)。
30~40分休ませて、少し生地が緩んだなと思ったら成形。生地を裏返して、優しく叩いてガスを抜く。奥から中心に 1回折り、それを芯にするイメージでもう 1回折る。とじ目を手の腹でしっかり綴じ、俵形にする。粉をしっかり振ったキャンパス地に綴じ目を上にして乗せ、乾燥しないようにビニールを被せて冷蔵庫(野菜室)で 20〜24時間。
オーブンを天板(浅め、深めの 2枚)と共に 300℃に予熱。生地を冷蔵庫から出し、板などを使ってオーブンシートへ移す。綴じ目は下。表面に軽く粉を振り、クープを一本入れる。予熱が終わった終わったオーブンから浅めの天板を取り出し、オーブンシートごと移す。深めの天板を上から被せ蓋にする。天板を持ち上げ、生地にかからないように霧吹きをたっぷり投入。オーブンへ戻し、280℃で 10分。蓋にしていた天板を外し、オーブンに戻し、220℃で 20分。反転して焼き色を見て、追加で 5〜10分。温度は調節する。
どんなパンでもそうだが、分割のときから完成の形を意識することが大事。成形が上手くいかないなら、分割を見直してみると良いかもしれない。俵形や楕円形なら正方形に近い長方形、細長い形なら幅広な長方形。ラグビー型や丸なら正方形。分割が全く違う形だと、丸めや成形で無理矢理その形にしなければならない。生地が傷むし、必要以上にガスが抜けて膨らまなかったり、発酵時間が長くなって味が抜ける。重さだけを意識しがちな分割だが、その後の工程も含め、生地に触るのを最小限にすることを考え分割する。
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2019.10.14 (Mon)

自分の考えとか、将来の夢とか、小さい頃からあまり持っていなかった気がする。だから、夢とかやりたいこととか、そういうことを語るのは苦手だった。そんな自分が心の底からやりたいと思い、周囲に話し始めたこと。
パンを作り、それを生業にしたい。 そして、自然の中で季節を感じ、家族と語らうことを大切にするような暮らしがしたい。
そして、実現に向けて行動してきた。すると、自分が考えていたこと以上に周囲は応援してくれるし、たくさん助けてもらえることを知った。
一つは、今の職に戻れたこと。 パン屋を辞めるタイミングで前職の先輩と上司に会う機会があった。そのときに今後の計画を話したところ、それなら戻ってまた一緒に働いて欲しい。知らない職場で知らない人と働くよりも、知った仕事、仲間の方が準備がしやすいだろうと。すでにフリーランスとして働いていたが、フリーランスのままでは、こうも自由には働けていなかったと思う。本当にありがたかった。
もう一つは、作るパンのファンができたこと。 パン屋で働いていたし、自分でも作れるようになりたいし、実際にパンを作れるんだぞという周知を兼ねて、家で作ったパンを職場で配りはじめた。すると、予想以上に好評だった。持って帰って家族と食べる人もいて、家族でファンになってもらえた。今度家族と食べたいからと大��いパンをリクエストしてくれることもある。 様々なパンを頻繁に作ることができるのも、美味しいと食べてくれる人がいるからこそ。買いたいと言ってくれる人もいるが、それは食品衛生法などの理由でできない。それでも何かで返したいと、たまに材料を買ってくれたり、差し入れをくれたりする。自分が店を開くことを楽しみにしてくれている、応援してくれる人がいると思うと、心強い。
そして先日、今後の働き方や、いつまで続けられるのかという話を上司とした。そのとき、田舎でパン屋をやりたい、でも今の仕事もできるだけ続けたいと相談したところ、リモートワークをできるよう準備を進めることになった。 時代の流れがそうだからと思うかもしれないが、正直、うちの会社はリモートワークを大々的に推進しているわけではなく、している人は数人だ。やはり離れているので、コミュニケーションや勤怠管理、成果の出し方など多くの障害がある。それでもできている人は、その人の普段の働き方や成果から、この人ならリモートであってもしっかりと仕事をしてくれるという信頼があるから。今回自分ができそうなのも、辞める前や、戻ってからの仕事が認められた結果と考えている。とはいえ、できるように準備するのは自分なので、これからやらなければならないことはたくさんある。
こうやって挙げてみると、自分のことを話し、自分の夢を語る。そして、その実現に向けて行動し、現実的だと思ってもらえるよう成果を出してアピールする。それがほんとに大事なんだと実感している。 夢に向かって頑張っている人に、周囲は手を差し伸べてくれるし、色々な形で応援をしてくれる。これからも助けは絶対に必要だし、自分たちだけでやるなんて無理。移住するならなおさら。自分たちはこういうことをしたい(している)と伝え、それを応援してくれる人がいるなら、しっかりとそれに応えて、恩返しをして、一歩一歩実現していこうと思う。
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2019.10.10 (Thu)

玉葱のフォカッチャ。
■材料(ベーカーズパーセント)
キタノカオリ : 100
水 : 91
オリーブオイル : 5
蜂蜜 : 3
塩 : 2.2
ドライイースト : 0.2
全ての材料を混ぜて、まとまったら常温で 30分。 生地を持ち上げて畳む。これを四方向から。そして常温で 20分。 さらにまた四方向から畳むことを繰り返し、冷蔵庫で 12~15時間。 冷蔵庫から出し、軽く大きい気泡を潰し、四角く形を整える。四角い深めのオーブン皿に薄くオイルを塗り、生地を入れる。そのまま 28℃で4時間ぐらい。表面にオリーブオイルを塗り、指で穴を開け、岩塩などの結晶の大きい塩を振り、好きな具を乗せて、天板かアルミホイルで蓋をする。 250℃に余熱したオーブンに入れ、230℃に下げて10分。蓋を外して180℃で15分。焼き色次第で、温度や蓋を調節してさらに10分。 表面がきれいに色付いたら完成。
キタノカオリは吸水率が高い。最初から水を90パーセント以上混ぜても生地は繋がる。冷蔵庫でゆっくり吸水、発酵させ、粉の味を引き出す。フォカッチャはもちもちよりも、歯切れ良い方が美味しいので、捏ねて引きの強いパンにはしない。
シンプルにオリーブオイルと塩だけにして、食事と合わせたり具を挟んでもいい。ハーブを散らせば香り高く。季節の野菜を乗せれば、それだけで華やかで様になる。手軽で美味しい。
玉葱は甘みが引き出され、香りも食欲をそそる。少しの焦げは旨みが増す。今回はローズマリーを散らして、香りと彩りに華やかさを。止まらない美味しさ。
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2019.10.07 (Mon)

前回の続き。
パン屋になると決めてから三年が経った。今回は、パン屋を辞めてからの一年で開業に向けてしてきたことと、このあとの一年ですることについて。
パン屋を辞めてエンジニアに戻るときに自分に誓ったこと。一つは、身に���けた技術を忘れない、むしろ向上させる。もう一つは、2020年までには何かしらの形でパンを売り始める。この二つを自分に課した。
一つ目の方は、製パン理論や粉の特性などを勉強し、実践を繰り返した。今更ながら、パン屋でやっていた工程や配合の意味を知った。また、持っているオーブンレンジでは焼きたいパンを焼くのが難しいことがわかり、ガスオーブンを買った。毎日のように作るか勉強していれば、家であっても身に付くものは多い。そのおかげで、真似ではない、自分の配合で美味しいパンが焼けるようになった。店を開くとなったら、環境も機材も材料も変わる。でもこういうパンにしたければこういう材料と工程というような、自分の中で芯になるようなものができた。基礎はパン屋とこの一年で築けたと思う。
もう一つの目標、パンを売り始めること。実は4月頃に店舗物件を契約する直前までいった。最後の最後に大家さんと折り合いがつかず諦めることにはなったが。。でもこのとき色々調べたおかげで、次探すときは悩まなくて済むと思う。このことについては、追々書く予定。見切り発車だったので、もしこのときオープンしていたら結構苦労していたと思う。でも、何ができたら大丈夫なんてないし、やってみてわかることも多い。だからとりあえずやる、というのは今も変わらない。期限を決めないと動かないので、自分はもう来年やると決めた。
この一年はパン屋で働いていた頃の延長だった。これからの一年は、どうそれを活かし、どういう形で表現するか決めていく期間と考えている。
勉強は引き続きやるとして、まずは事業計画書を書く。お金を借りようと借りまいと、事業計画書は整理になるはず。どういうことをしたいのか、どうそれを伝えていくのか、現実をしっかり考えるためにも、まずはここから。
あとは場所を決める。場所が決まらないと、正直何も決められない。機材も仕入れ先も資金も商品も売り方も。決まりさえすれば、否が応でもやらなければならなくなる。
この一年は自分の中で凄く重要だった。ぼやっとしていたものが形になってきた。この一年なく始めていたら、相当苦労していたはず(それでも苦労すると思うが、、)。パン屋でそのまま働いていても、恐らく得られることはたくさんあった。でも、日々時間に追われて作業をしていくよりも、一つ一つのことを考えて作業してきたこの期間の方が、自分には必要だったと思う。もちろん、パン屋で働いて得た技術、知識、様々なことがあったからこそ。
写真はディンケル小麦のパン。味も香りも濃くて、噛むほどに味がする。
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2019.10.06 (Sun)

パン屋に転職すると決めたとき、自分の中の考え方を大きく変えた。 その一つが、「とりあえずやってみてから考える」だ。
それまでは慎重派。できるかわからないならやめておこうタイプ。日々生活していく中で、何か違うと思いながら過ごし、パンや料理を生業とする人に憧れていた。いつかいつかと先延ばしにしていた。
でも、ふとしたきっかけでこの先の人生を考えたことがあった。このままでは一生このまま。自分で飛び込んでいかなければ、チャンスなんてない、絶対変わることなんてないと思った。そして、それだけは嫌だ。やっておけば良かったなんて、人生の終盤で後悔するような生き方はしたくない。本気でそう思ってしまった。
そしたらもう元の生活になんて戻れない。何を言われようとやらないなんてない。だから、やりたいことをやる生き方に変えた。そして、これまでと全く違うことをするなら、考えたってわからない、やってみて、経験して、それで自分がどう思うかを考えれば良いと思ったのだ。
その一ヶ月後に働くパン屋を探し始め、二ヶ月後には仕事を続けながら休みの日だけアルバイトとして始めた。決意してから半年後にはエンジニアの仕事を辞め、パン屋でフルで働き始めた。我ながらすごい行動力だったと思う。
そして、今月でパン屋を辞めて一年が経った。決意してからは三年。今の仕事だけ見れば三年前と変わっていないが、そのまま続けていたのとは全く違う三年を過ごしてきた。日々の楽しさもまるで違う。そして、来年の今頃はもう何かしらの形で店を始めているはず。

写真は葡萄と無花果のカンパーニュ。セミドライにした葡萄と無花果を白ワインに漬けてカンパーニュに。溢れる葡萄の果汁と、白ワインのほのかな風味がカンパーニュの優しい酸味と香ばしさに合う。
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2019.09.28 (Sat)

作りたいパンを作れる。それは家で作るパンの良いところだと思う。原価とかそういうこともあるけど、一番は自分が食べたい、作りたいと思ったものを作れること。でも店としてやるならそれでは難しい。
パン屋で働いているとき、試作したパンをシェフに持っていって、試食してもらう一部始終を見ていた。
スタッフ「試作したので食べてもらっていいですか?」 シェフ 「これは何を考えて作ったの?」 スタッフ「春なので春っぼい感じで苺のソースを...」 シェフ 「そうじゃない」
このあとシェフが言っていたことを要約すると、
いつどんな人にどう食べてもらって、どう感じて欲しいのか。これを考えたうえでパンを作らなければ、お客さんには届かない。 こんなものだろうとか、自分が作りたいからではなく、そこに住む人のことを考え、それに合わせ、受け入れてもらえるようなパンを作れ。
これを聞いて、そうだよな、、と思った。作り手がいて、それを買ってもらう、食べてもらう、使ってもらう。相手がいるなら、相手にどう感じて欲しいかを考えて作らなければ伝わらない。作りたいものを作っても、暮らしとあっていなければ、受け入れてもらえない。
エンジニアの仕事でいうなら、わかりやすいのはアプリの UI/UX だろうか。便利な機能を入れたって、手順が複雑だったり、そもそも使う場所にたどり着けなかったら意味がない。どう使うかを考えて作らなければ、ユーザは付かず、すぐ廃れてしまう。
作り手の仕事は、作りたいものを作りつつも、それを受け入れてもらえる形にしていくこと。
自分が店をやるときは、作り手が作りたいものの方を少し強く出していきたい。そこにこそ個性があり、面白さがあり、また食べたい、また行きたいとなるはず。さらには、店を訪れたことで新たに好きなものができたり、新たな自分の一面に気付けたら、素晴らしいことだと思う。
写真はスコーン。全粒粉入りのザクザクタイプ。発酵バターを使い、香り豊かに。���ジャムをつけて食べるのが好き。
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2019.09.22 (Sun)

エンジニアからパン屋になるとき、周囲からかなり驚かれた。妻は友人から「よく許したね」と言われるらしいし、自分もまあ色々言われた。 確かに、今でも信じられないぐらい大きな決断だったと思う。あのときは上手く理由を説明できなかった。フワフワしていて、現実味がなかったから。でも今は形が見えてきたので、言葉にしてみる。
30歳になったとき、この先の暮らしを考えた。 どういう働き方をしたいのか。どういう暮らしをしたいのか。
そして、お金のために仕事をする。プライベートのために仕事をする。そういう働き方はしたくない。暮らしを楽しむ延長が仕事であるような働き方をしたい。そう思った。 普段することで楽しいのは、料理。そしてパン作り。パン屋になりたいわけじゃない。パン屋はエンジニアより、理想の暮らしに近い気がした。だから転職した。
実際働いてみて、楽しかった。大変なこともたくさんあったけれど、パンを作って、それを手にしたお客さんが喜ぶ。自分の作ったパンでそれができたら、どんなに楽しいだろう。パン屋は、理想の暮らしをするための手段の一つになった。 そして、その夢を実現させるために、必要なことを考えた結果、時間、お金など、今のままでは難しいという結論に至り、一旦エンジニアに戻ることにした。
パン屋から離れること、エンジニアに戻ること、どちらも抵抗はなかった。手段が一つできたことで、現実味を帯びたし、なにより自分に自信が持てた。
エンジニアからパン屋、パン屋からエンジニア。周囲からは、いつか自分のパン屋を開くために転職したと思われているかもしれない。でも、自分の中ではあくまでも基準は理想の暮らし。だから、とりあえずそれに近付けそうなことをやってみて、そこでまた考えて、またより近付けそうな方へ進む。
それで食べていけるのかという意見もあるし、自分も不安はある。それでも自分はやってみたいし、今はそれに近付いてみようと思う。
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2019.09.19 (Thu)

この前は美味しくできたのに、今回はいまいち。。
慣れていないものを作るときによくある話。レシピ通りに作っても、毎度同じにはならない。料理もそう、パンもそう。
自分もそうだった。プロであろうとなかろうと、料理が上手い人は、いつも美味しい。才能だろうか。経験だろうか。
もちろんどちらもあるだろうが、上手い人に共通しているのは、味見だと思う。完成前の味見もそうだが、ここで言いたいのは、普段から味見をしているということ。
考えてみて欲しい。使っている材料は、全く同じだろうか。同じ野菜でも、大きさ、味、固さ、色、同じものなんてないはずだ。素材の味を確かめて、理想とする味に近づけていく。使う調味料は同じでも、そのときの素材に合わせて、微妙に調整している。
パンも同じ。粉は成分が微妙に変わるし、温度や湿度には大きく影響される。だから水分量や時間、工程で調整する。量も時間も何も考えずに同じように作っていたら、とても同じパンにはならない。
飲食店で働いて衝撃だったのは、しょっちゅう味見をすること。まあ、、つまみ食いもあるだろうが。そんなに食べていいの?と思うぐらいしていた。
出来上がったもの、作り途中はもちろんだが、材料も生で食べられるなら生でする。野菜、果物なら、今回のは固いから細かくしようとか、味が薄いから少し味付けを濃いめにしようとか。
そして生地も味見していた。捏ねあがり直後が一番美味しい。発酵は糖が消費されていくので、味は徐々に薄くなっていく。生地の味が美味しいかは、なんともいえない。。成形前にも味見して、焼き上がりも味見して、どれぐらい変わるのかを知っておく。調整だけでなく、いつもと違うこと(異変)に気付けるのも、味見の理由の一つ。
素材一つ一つの味、時間や作業による変化を知っておくと、作ったことなくても、頭の中の完成イメージから工程も材料も決められる、らしい。私はまだそのレベルではない。
味見をするということは、味を知るということ。
それは外食にも言えると思う。自分では思いつかない組み合わせ、初めて食べる食材。家で作っているだけでは得られないような発見が外食にはある。だから、これも味見の一つ。(そのつもり)
知っているから変化に対応できる。知っているから想像もしない組み合わせを思いつく。
つまり、味見とは意識して食べること。いつでも、どこでも、誰でも始められる料理上達方法だと思う。手軽だし、作っているときも楽しいし。ぜひお試しあれ。
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2019.09.18 (Wed)

パン屋では、一つの粉だけで作るパンは少ない。その粉の味を存分に味わってもらいたい場合はそれだけで使用することもあるが、大体は複数の粉を混ぜて使っている。なぜブレンドするのか。そして配合や割合は何を以て決めているのか。今回は粉のブレンドの話。
まずはブレンドする理由。
それは、粉には個性があるから。小麦の風味が強いヤツがいれば、甘みが強いヤツもいる。しっかり膨らむのが得意なヤツがいれば、ほろほろと口で溶けるのが得意なヤツもいる。一人ではクセが強すぎたり、できることは限られている。だから皆で協力しあって美味しいパンになってもらうのだ。すでにブレンドされている粉も使うが、やはりそれにも足りないところ、もっと伸ばしたいところはある。だからそれを補うためにさらにブレンドする。一つのパンで大体 2~3種類。多くても 4種類ぐらいをブレンドして使う。
次に配合や割合の決め方。
それは、まずどういうパンにしたいのかを考え、工程、材料を逆算して決めていく。
甘みが強く、バターの香りがして、ふわふわもちもち、口どけのよい食パンを作りたいなら、ベースにするのは粉の甘みの強い粉だろう。もしその粉がタンパク質が少なくグルテンが形成されにくいなら、骨格としてグルテンが形成されやすい粉を持ってくる。グルテンは出し過ぎると口どけが悪くなるし、消化もよくないので、量は 20%ぐらいにして、捏ね時間やバターの量を調整したり、足し水でグルテンをほぐしたりする。あまり捏ねずにゆっくり発酵させる工程なら、ゆっくりグルテンが形成されるので、骨格とする粉の量はもっと減らしても良い。
さっくり歯切れ良く、粉の味をしっかり感じる香ばしいハード系のパンを焼きたければ、ベースの準強力粉を食感、味など重視したいところから決め、灰分の多い粉、灰色めな粉で味に深みを加える。さらに全粒粉を入れれば香ばしさが増し、歯切れもよくなる。そして、どういう内層や見た目にするかによって、水分量、捏ね度合い、発酵時間を変えていく。
考え方は色々あると思うが、自分はそうやって決めている。
ちなみに、使う粉の個性は、粉の説明や成分、色を見れば大体わかる。さらに実際に使ってみて、どれぐらい水分が入るかとか、どんな味がするとか、粉をより知っていく。その上で、季節、気温、時間、環境、機材など色々な条件と合わせて、配合を決めるのだ。
私が家で作るときにメインで使っているのは次の粉。( ) 内は、自分の中での粉の位置付けやイメージ。
E65 (ハード系のベース)
ゆめちから (骨格、もっちもち)
南のめぐみ (あっさりで主張弱め、引きは弱い)
キタノカオリ (甘い、ミルキー、もちもち)
臼かおり (粉の風味、適量でさっくり)
全粒粉(風味、香ばしさ、粒感、歯切れ)
ライ麦
最近は作るパンの系統毎に大体配合は同じにし、調味料や具などの副材料でバリエーションを持たせている。家で作る場合は数も作れないし、粉の種類もそんなに多くは揃えられない。できるだけ個性が被らない粉を揃えているつもり。
全て国産小麦なのは、働いていたところが国産小麦にこだわっていて、美味しかったから。外国産も良い粉はたくさんあるのだろうけど、できるだけ身近なものを使いたい。
パン屋では、この農家さんの粉を使い、それを活かすように考えたパンもあった。自分はまだ作ったことないが、店をやるときは、そういう作り方もしていきたいと思う。
写真はロデヴ。配合は以前の投稿のもの。小麦の香りと味がしっかり感じられつつ、うるうるの生地が本当に好き。初めてロデヴを食べたときに、こんなパンがあるのかと衝撃を受けたのを今でも覚えている。食事に合うパン。
・配合 : https://hidekunibaker.tumblr.com/post/187412871096/20190901-sun
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2019.09.15 (Sun)

家でパンを作る。パン屋になる前も、なってからも、辞めてからも作っている。昔と今とでは、出来上がりは雲泥の差。でもそれは、パン屋働いたからだけではないと感じている。
パン屋になる前は、本を見てその通りに作っていた。それが当たり前だと思っていた。でも、上手くいくときもあれば、いかないときもある。上手くいったときも、家で作った感は拭えない。見た目も味も家で作ったパンなのだ。 パンを作ることを生業にしたいと考えたとき、店と家の違いの理由がわからないままでは、自分だけではパン屋レベルのパンは作れない。わかるようになるにはパン屋で働いてみるしかないと思ったのだ。
では、今は違いの理由はわかったのか。そして店のレベルのパンは焼けるようになったのか。答えは、イエス。店で作るのと比べるとあと一歩だが、家で作るパンとしてはレベルは高いはず。自分でも美味しいと思うし、人にあげても好評である(お世辞かもしれないが)。
だが、ここまで来るのは簡単ではなかった。パン屋で働いて、店で美味しいパンが作れるようになれば、家でも上手く作れるようになると思っていた。しかし、現実は違った。店で上手くできても、家では全くできない。例え同じ粉、同じ発酵具合のつもりでも、別物。自分でも驚いた。
理由は簡単。店はパンを作る環境が整っているが、家は整っていない。家庭の設備、環境で上手く作るには、各工程の意味、理論を知り、状況に対応し、工夫しなければ、同じようにはできない。 例えば生地作り。店はミキサーだが、家は手捏ねだ。捏ねる力も速度も違う。同じタイミングで材料を入れても、時間のかかる手捏ねは同じには捏ねあがらない。水やバターなどの材料を入れるタイミング、混ぜ方、量、生地温。全てを手捏ね用に変更しなければならない。そしてオーブン。家庭用のオーブンは店とは別物。かなり工夫しないと同じようには焼けない。
結論、店と家の違いは、設備。 だが、家でも工夫次第で店に近づける。 その工夫ができるようになるには、各工程の意味を知り、状況に対応するだけの知識、経験、勘が必要である。
もちろんテクニックも絶対に必要だが、一番パン屋で働いてよかったと思ったのは、鵜呑みにしがちがな工程の意味の掘り下げ方を体感できたことだと思う。そのおかげで店を離れた今でも、様々な調整、工夫ができるようになった。

この写真のカンパーニュはパン屋になる前に作ったもの。美味しかったけど、ぎゅっと詰まっていて、ボソボソしていた気がする。 最初の写真は最近作った蕎麦粉のカンパーニュ。形はいびつだけど、ほのかな酸味と香ばしい蕎麦の香り。そして噛むたびに感じる旨み。こういうパンをたくさん作りたい。
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2019.09.07 (Sat)

夏から秋へ。転職の季節。去年はパン屋から元の業界に戻るときだった。3年前はパン屋へ転職しようと決めた頃だった。
エンジニアからパン屋に転職するときは、文字通り全く別の業界への転職。飲食業はアルバイトもしたことないし、完全に未知。楽しみではあったけど、やはり不安だった。実際どうだったか。
一番感じたのは、作業は違えど求められるものは同じ��いうこと。例えば、作業の仕方。道具、材料を揃えてから始める。自分の作業スペースは天板一枚分だけ。ダスターは必ず用意し、汚れたらすぐに拭き取る。常に周りはきれいに。それだけのことだけれど、料理本には書いてないこと。周りを見てみれば、作業が早くて仕上がりがきれいな人は散らかっていない。実感したし、家で料理するときも意識するようになった。でも、これは料理に限った話ではない。仕事ができる人は机がきれいだったし、デスクトップにファイルは散乱していない。一般論だが、飲食業でも同じだった。
あとは、無駄な動きをなくすこと。生地の分割を一発でできなければ数秒のロス。それを何百回と繰り返していたら、積み重ねで 5分のロス。たかが 5分だが、その 5分で洗い物ができれば流しが空き、他の人が流しを使える。道具がきれいになっていれば、それを使って別の仕込みができる。その連鎖で全体の終わる時間が何十分も変わる。秒で意識する世界とは知らなかった。なんてシビアな世界なのだろう。でも、考えてみるとパソコンの作業も同じ。ショートカットキーを多用し、マウスは極力使わない。それだけで作業スピードは雲泥の差である。
つまり、作業は違うが同じことだった。それがわかると意識も変わる。理解も早くなるし、慣れるスピードも違うはず。とはいえ素人。最初の頃はきれいとは言えないし、分割だって一発でできたら奇跡。難しいものは難しい。でも、前職と結び付けられたことで 理解は早くなったと思う。そういう意識を持ち、より楽しくなっていった。
写真はこの夏作った、トマトとクルミとカシューナッツ。 トマトで生地がきれいなオレンジ色に染まり、酸味が少しとナッツの香ばしさを感じるパン。夏の一品。
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2019.09.03 (Tue)

そろそろ辞めて 1 年が経つ。忘れないうちにパン屋時代を振り返ってみる。
働いていたのは個人店。夕方には売り切れることもある人気店。その店を知ったのは雑誌だった。特集が組まれていて、その中で生地も餡もカレーもハムもそこで作っているとあり、色々と学べると思ったから。あとは、見て覚えろではない、ちゃんと教えるべきとあったからだったと思う。
実際入ってみてもそうだった。マニュアルがあって、ある程度はそれを見ればできる。それを自分で咀嚼してスピードや精度を上げていく。個人店で口伝ではなくマニュアルがあるのは珍しいと思う(たぶん)。働いている人は経験が浅い人がほとんど。それであのクオリティのパンを提供できているのは、マニュアルとマニュアルにできるほど簡単にした工程が大きいのだろう。
その人しかできない技術はウリになる、丁寧に時間をかけて細かいことをすれば見た目も映える。それも一つのカタチだと思うけれど、自分のような新参者には難しいのは当然。少ない時間で誰がやっても同じ品質でできるようにしていた勤め先は、自分には有り難かったし、こういう店のカタチもあるのかと知れた良い経験だった。品質を下げず誰もが簡単にできる技術。働いて色々経験させてもらって、自分も少しは身に付いたと思っている。
写真は粒あんぱん。粒感を残した甘さ控えめのあんは、店で身につけた炊き方。
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