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WordPressに移行します
tumblrでブログを書くことに限界を感じたため、WordPressに移行する事にしました。
昔はtumblrでブログを書くのは悪くない選択肢だったのですが、テキスト編集画面のバグや、強制的な画像サイズ縮小といった裏側の仕様変更など、文章を書くには適さない場所になってしまいました。
このブログは2012年に開���していたらしく、あと少しで10年だったようです。流石に愛着があり、ここを離れるのは名残惜しいですね…。
移住先は以下になりますので、興味のある方はRSS登録やブックマーク変更をお願いします。
https://ainamoor.com/gametext/
ヘッダーを見ての通り、同一ドメインのサイトに複数のブログがぶら下がるという特殊な構成になっています。(もう一つははてなブログでやっていた日常ブログです)
突然自由に使えるスペースを手に入れてしまったので、どう使っていくかはこれから模索していこうと思います。 それでは。
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私的GOTY2020
今年は巣ごもり需要による『あつ森』の大ヒットなど、世間的にビデオゲームが再評価されるような流れがあった。あの美術手帖も同じようなまくらで始まるゲーム特集を出した。でもそんなのはごく一部の側面で、『ノーモア3』や『テイルズ新作』など自分が楽しみにしていたゲームは殆どが影響を受けて来年に延期になってしまった。そんなわけで、積んでいたゲームを崩したり、リマスターに手を出したりと、時世通り休息モードで過ごした2020年でした。
プレイしたゲームは以下。
PC
BABA IS YOU
CyberPunk 2077
DARK SOULS REMASTERD
DARK SOULS 2
DARK SOULS 3
Haven
Helltaker
HUMAN fall flat
HALF-LIFE1
Katana Zero
LEFT 4 DEAD 2
My Exercise
Necrobarista
PHASMOPHOBIA
TICK TOCK
VALORANT
WE WERE HERE
WE WERE HERE TOO
THE WILD EIGHT
スマガ
ドーナドーナ
虚ノ少女
天ノ少女
天穂のサクナヒメ
Switch
Deadly Premonition 2
NO MORE HEROES
NO MORE HEROES 2
SUPER MARIO BROS. 35
あつまれどうぶつの森
グノーシア
スーパーマリオ 3Dコレクション
デスカムトゥルー
PS5
Demons Souls
PS4
FF7 Remake
Fall Guys
Ghost of Tsushima
The Last of Us Part II
Dishonored: Death of the Outsider
スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー
PS2
真女神転生Ⅲ
ROOMANIA#203
特に印象に残ったものについてコメントする。
Demon’s Souls リメイク

PS5手に入れた自慢です。というのは冗談として、このリメイクはオリジナルにあったバグについて"残すものと残さないものをトリアージする"という事をしており本気で驚愕させられた。例えば致命攻撃のモーション中に回復アイテムを使用することが出来る"草食い致命"などのバグが、オリジナルを尊重するという意図でそのまま残されている。勿論これはフロムソフトウェアが意図する仕様ではないので、オリジナルのプレイフィーリングを愛するプレイヤーへ向けた配慮だ。Bluepoint Gamesは丁寧な仕事をするスタジオというイメージだったけれど、ここまで行くと狂気に見え��しまう。ソースコードレベルでオリジナルと一致させているように見える完璧に再現された手触りに感心しながらも、「正しいリマスターとは何か?」について考えさせられたゲームだった。
VALORANT
なんだかんだ今年一番プレイしたタイトル。確かサービス開始してからキルジョイが参戦するまでの間は、ほぼ毎夜ボイスチャットを着けてフレンドとプレイしていたと思う。『カウンターストライク』型のFPSをプレイするのは初めてで、チームのシナジーを高める事でしか勝てない(キルレートが高いエースがいるだけではダメな)デザインが新鮮だった。ただプレイした後の疲労感が凄まじく、ある日緊張感がプツリと切れてからは全く起動しなくなってしまった。
自分は対戦型ゲームなら格闘ゲームの方がまだ専門なのだけど、やっぱりキャラクター制度があるだけで遊びやすくなる。試合に勝てなくても使っているキャラクターらしい動き方を習熟すること自体が楽しいし、勝ち方もその過程で分かってくるから。『グラブル』が格闘ゲーム化するのもそうだけど、むしろキャラクターゲームとしてこの手のゲームを楽しんでいるプレイヤーも少なくないと思う。そういえば以前『ペルソナ4』の格闘ゲームが発売された時、橋野桂氏が「格闘ゲームは対戦ツールであるのみでなく、キャラクターに没入するためのフォーマットとしても有効である」みたいなコメントを出していて、関心した記憶がある。(今調べたらソースが見つからなかったので自分の勘違いの可能性もあるかも)
Necrobarista
正直完成度はあまり高いと思わないものの、印象に残ったという意味で選出。昨今では『凍京ネクロ』や『AI: ソムニウム ファイル』などAAAでは無いデベロッパーによる3Dモデルを使用したADV作品が次々に出ており、3Dモデルの活かし方は作品ごとで全く異なっている。本作では、陰影がパッキリと見える『Killer7』時代のGHM作品のようなグラフィックの3Dモデルに、テキストをタイポグラフィのように重ねていくスタイリッシュな画作りに独自性がある。例えるならシャフトの尾石達也(『傷物語』の監督やシャフト作品のOP/EDを担当している人)の映像を見ている感覚に近い印象がある。制作陣はAMV好きのメンバーで構成されているらしく、発想が既存のADVの文脈からずれているのはそこからの影響があるかららしい。
本作には、キーアニメーションに合わせてタイミング良くタイポグラフィを出していく、MADかAMVのような演出で進行するADVを期待していたが、実際は殆どのシーンでキャラクターの3Dモデルは静止しており、『ベヨネッタ』の中間ムービーのような紙芝居的なものに近かった。しかし、アニメ調のグラフィックから想像��辛いが、展開されるストーリーは非常にビターな内容であり、強く印象に残った。
虚ノ少女 RE
『虚ノ少女』はイノセントグレイによる連作ミステリADV『殻ノ少女』シリーズの2作目。この文章を書いている時点で3作目かつ最終作である『天ノ少女』もクリアしているけれど、あえてこちらを選んだ。
イノグレは大好きなデベロッパーなのだけれど、実はシリーズを通して大きな物語を描くのがあまり得意ではないと思う。例えば過去作である百合ADV『flowers』シリーズは全4作の大長編で、各作ごとに異なるカップルにフォーカスを当てる構成になっているが、1作目のカップルのみ単独で物語が完結せず、最終作である4作目で続きが語られることで真に完結する。しかし、そもそも1~3作目の独立性が強いため、4作目はシリーズを通してのプロットを回収することに終始してしまい、印象に残る場面が無いという弱点があった。そして正直なところ、『殻ノ少女』シリーズでもこの弱点を引き継いでしまっていると思う。逆に言えば、イノグレ作品はシリーズの間に当たる作品こそいつも豊潤で、『flowers』では夏編、秋編がお気に入りなのだけど、『殻ノ少女』では『虚ノ少女』が好きになった。
『虚ノ少女』は前作をプレイした人ほど驚かされる作品で、雛神理人という前作に居なかったキャラクターの長い長い幼少時代を語るという、プレイヤーにストレスをかける導入から始まる。本作はこの雛神理人を中心に、とある集落を支配する雛神一族にまつわる物語が、現在編と過去編を行き来しながら語られていく。このザッピングする構成により盛り上がりを迎えるまでの時間が非常に長くなってしまっているが、その代わりシリーズ屈指の重厚さを獲得している。これはシリーズの繋ぎというある種選ばれたプレイヤーが集まったタイミングを狙って離脱者の出やすい重い構成の物語を採用したように見え、うまい戦略だと思う。
また、前作では本格的なミステリをやれている故に、18禁ゲームのお約束的に挿入される濡れ場が雰囲気を壊していたのが気になったが、本作では2つの時代を繋ぐ血の流れを描くための演出としてうまく消化していて、没入を切らさずプレイすることが出来た。
もしおすすめのイノグレ作品を1作選んでくれと言われたら、この『虚ノ少女』を選ぶと思う。
少し余談。昨今のニトロプラスとかを見ても思うけど、濡れ場が不可分でない18禁ADVは没入を切らすという理由でこれから長い時間をかけて少しずつ消えていく気がする。少なくとも『ととの』の下倉バイオ氏は、自身のディレクションする作品ではその辺りをかなり意識していると思う。(脚本だけ担当した『凍京ネクロ』は全年齢版が後から出たけど。)『天ノ少女』も既にその流れに乗っていて、とある登場人物が特定の選択肢を選ぶと突然倫理観がガバガバになるといった、作品世界が壊れるような展開は避けているみたいだった。
Cyberpunk2077
自分が初めて触ったCD PROJEKT REDのゲームは例によって『ウィッチャー3』で、メインとサブの区分けが付かないほど練り上げられたシナリオ群が生み出す匂い立つ世界にいい意味でやられてしまった記憶がある。『Cyberpunk2077』はそんなチームの新作ということで事前情報も入れずにプレイしたのだけど、中身が素直な"都市型オープンワールドゲーム"であったことにまず驚いた。
このジャンルはRockstar以外つくづく勝てないと思う。マップにピンが置かれて、プレイヤーがミニマップを注視し始めた瞬間、ゲーム世界は死んでしまう。その先にあるミッションが「x地点に行ってyを殺せ」の繰り返しだといよいよ救われない。『BotW』、『Fallout』、『The Elder Scrolls』のような広大な土地を歩く作品は、オブジェクトやイベントをマップにばら撒き、プレイヤー自身の興味で寄り道させることで自然に間を持たせることができる。これが舞台が都市になるとプレイヤーが"目視"で何かを見つけるというシチュエーションは作り辛くなり、ゲームに慣れるほどガイドの奴隷として行動する時間が増えていき作業感が出てしまう。GTAがなぜ成功しているかと言えば、ディテールを無限に積み上げることで街の存在が感じ取れるまで高めているからであり、王者にしか出来ないアプローチだ。
『Cyberpunk2077』はこの問題に対し、何の解決策も用意していないことに驚いた。縦方向の視線を引くナイトシティのビジュアルは素晴らしい出来だけれど、慣れと共にミニマップを見つめ続けることになるのは変わらない。
これは恐らく、都市型オープンワールドへの素直な憧れが本作を制作するモチベーションになっているからなのだと思う。でも結果的にアプローチは『GTA』からうまくずれている。『GTA』はVで主人公が3人に分かれたように、俯瞰的というかクレバーな態度で街そのものを描こうとする。それに対して『Cyberpunk2077』は、『ウィッチャー3』から引き継がれた妥協のないシナリオと魅力的なキャラクターによって、血の通った世界が描かれている。CD PROJEKT REDの真摯な作り込みによって、本作は凡庸さから抜け出すことができていると思う。
『Cyberpunk2077』には、縦方向に情報を詰められるサイバーパンクという題材を利用した、全く新しい引力でプレイヤーを歩かせる世界を期待していた。これに関しては残念ながら裏切られたものの、久しぶりにサイドジョブが出涸らしになるまでオープンワールドゲームを遊ぶことが出来て満足だった。
以上。
今年は自宅で過ごす時間が長かったため、ダークソウルシリーズをフレンドと全編ボイスチャットを着けた状態で遊ぶというのをやってみたのだけど、コミュニケーションを取りながら「あっちへ行こう」「こっちへ行こう」と進めていると、まるでTRPGをやっているみたいだなと感じた。実際、宮崎さんのインタビューでもゲームブックやTRPGからの影響は認めているし、自由度の高すぎるマルチプレイや、細部まで作りこまれた美しいステージにベタベタとポストイット(メッセージ)を置く事を許可する態度は、まさにTRPGから影響を受けているからこそできた事だと思う。『デモンズソウル』時代からそういった指摘は挙がっていたものの、改めてWebを検索したところ誰もまとまった文章を書いていなかったので、自分で書いてみたのが以下の記事だった。
ソウルシリーズ振り返り 宮崎GMとのセッションログ
また、自分は運良く『デモンズソウル』からこのシリーズの変遷をリアルタイムに見てきたこともあって、シリーズ全体から見た各作の変遷についても書いてみた。ちなみに『SEKIRO』の振り切れ具合を見る限り、『ELDEN RING』は世界観こそファンタジーであれど、ソウルシリーズからほぼ完全に断絶された新しいメカニクスのゲームになるのではないかと予想している。
2021年は今度こそ『ノーモア3』、『テイルズ新作』、そして『DEATHLOOP』に期待しています。
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ソウルシリーズ振り返り 宮崎GMとのセッションログ
ここの所、PCでダークソウルシリーズをやり直していた。特に『ダークソウル1』は学生時代にかなりの時間をかけてやり込んだゲームなのもあり、地元に帰ってきたような感慨深さがあったのだけれど、同時にプレイヤーの数が減ったことで一部の体験がオミットされている事が気にかかった。一応ソウルシリーズはシングルプレイのゲームとして成立するように作られており、それに加えてマルチプレイも出来るという体で設計されている。しかし、マルチプレイ要素への距離感はタイトルごとの違いがある。最も離れたのが『SEKIRO』であれば、最も近づいたのが『ダークソウル1』だったと自分は感じている。なまじシングルプレイが出来てしまう分、プレイヤーが意識して口伝しないとこの辺りはどんどん見えなくなってしまうのかもしれない。そこでという訳ではないけれど、次回作である『ELDEN RING』まで暫くかかりそうであるし、このタイミングで自分なりのソウルシリーズの史観をまとめてみようと思う。
『デモンズソウル』モチベーション管理とロールプレイ
シリーズ1作目である『デモンズソウル』の核は2つある。1つは徹底的なプレイヤーのモチベーション管理であり、もう1つはロールプレイ要素だ。
『デモンズソウル』は高難易度で達成感のあるクラシックなゲームプレイを目指した作品だったが、このコンセプト自体は当時珍しいものではなかった。家庭用ゲーム機がDL専用ゲームを扱うようになり、小規模チームにより開発された『ロックマン9』や『Super Meat Boy』が登場するなど、古き良き時代へ戻ろうとする流れがあった。そんな中で本作が新鮮に受け止められたのは、あくまで最新の技術を使いつつ、プレイヤーがゲームをリトライするモチベーションを維持できるようなゲームデザインを施すことで、クラシックなゲームプレイを現代風に再現させたことにあったと思う。
例えば、『キングスフィールド』などとは違い、手触りのレベルではあくまで三人称のアクションとすることで、多くのプレイヤーが受け入れやすい土壌を持たせていた。その先にあるリトライ前提の難易度についても、プレイヤーの死をメタ的に取り込んだゲームデザインによって進行感が途切れないような工夫がなされていた。死亡するとその場に経験値を落としてしまう血痕システムなどがそうだ。また、他のプレイヤーとヒントを共有する非同期オンラインシステムは、孤独感を軽減しつつ、厳しい世界を攻略するためのインフラを共同で育てていくという、新しいゲームの楽しみ方を提供していた。このようにプレイヤーのモチベーションを継続させるための様々な仕組みが動いている。

また、本作では他のプレイヤーとマッチングして協力・敵対プレイを行うこともできるが、その内容はとても奇妙だ。
協力者の目標はホストプレイヤーと共にエリアの最��に待ち受けるボスを倒すことだが、ホストは一直線にボス戦に向かうこともあれば、じっくりとエリアの探索を始める場合もある。目的別マッチングなどの機能はないため、ゲームがどのように進行するかは完全にホストの意思に任されている。それこそ初見のプレイヤーの探索に付き合うことになれば、1時間弱のセッションになってしまうこともある。
それに対して、敵対者の目標はホストプレイヤーがボス戦に突入する前に倒してしまうことだ。しかし、相手プレイヤーが協力者を呼び出している場合は、1人で複数人を相手取ることになってしまう。この不利な状況で勝つためには、味方である周囲の敵モンスターを利用しながら戦うのがセオリーとなる。敵対者とは、敵モンスターの1人をプレイヤーが担当するかのような位置づけにあるのだ。
このように、本作のマルチプレイは徹底してシングルプレイの延長となるよう構築されたことで、他のゲームでは見たことのないようなものになっていた。シングルプレイとマルチプレイを融合させる試みは後に『ウォッチドッグス』や『メタルギアソリッドV』などが追従するが、限られたエリアの中で対戦させられるなどマルチプレイ用のルールが展開されるものであり、本作ほどの自由度は無かった。プレイヤーに大きく手綱を渡したこのマルチプレイは当時とても新鮮であり、それこそ目標を達成することで得られる報酬のことを忘れて、協力や対戦を何度も繰り返したのを覚えている。
この奇妙なマルチプレイの正体はなんだろうか。一つの仮定として、協力者も敵対者も等しくホストプレイヤーのゲームを彩るためのゲストであり、つまりロールプレイをさせられているのだと考えられないだろうか。与えられた役割の中で自由に行動するプレイヤーらによって様々な展開が起きるこのゲームプレイは、まるで一つの卓を囲んでゲームマスターとプレイヤーらが対話しながらシナリオを作り上げていくテーブルトークRPG(以下、TRPG)の楽しさを、ビデオゲームの中で再現しているのではないだろうか。
『デモンズソウル』の感想に他のプレイヤーとの冒険中に起きた出来事を回想するようなものが非常に多かったり、また動画投稿サイトに自身のゲームプレイを紹介する動画が活発に投稿されるといった反応があったのも、このゲームがTRPG的な楽しさを持っている事と無関係ではないと考える。
TPRGとソウルシリーズの関係
いきなりTRPGを引き合いに出したので、概要を簡単に説明する。TRPGとはアナログゲームの一つで、ゲームマスターと役割を与えられたプレイヤーらが対話しながら、ルールブックに従ってシナリオを進めていくゲームのことだ。我々が普段ビデオゲームで遊んでいるRPGはコンピュータRPG(以下、CRPG)と呼ばれており、これはTRPGにおけるゲームマスターの役割をコンピュータに肩代わりさせる形で生まれたものだという。
ソウルシリーズのディレクターを務める宮崎英高氏のインタビューによると、幼少期は家庭内でビデオゲームが禁止されており、代わりにTRPGやボードゲームといったアナログゲーム���遊んでいたらしい。また、2017年には『ダークソウル』を基にしたTRPG本がグループSNEから発売されることになるが、これは宮崎D自身が多くのゲームブックを出版してきたグループSNEの長年のファンであり、オフィスを訪問してスタッフと交流するようになったことから始まった企画であるという。
youtube
実際にダークソウルTRPGをプレイする様子
前述した要素以外にも、TRPGを意識したと思われる要素をソウルシリーズは多く含んでいる。例えば、ゲーム内の各種アイテムに付属する饒舌なテキストは、一見多くのゲームで採用されている環境ストーリーテリング的なものに見える。しかし、環境ストーリーテリングがそこで過去に起きたことを描く手法であるのに対して、ソウルシリーズのテキストで描かれるのはどちらかといえば世界の広がりを感じさせるための設定のようなものであることが多い。それを踏まえると、これらはTRPGの分厚いルールブックの多くを占めることもあるという世界観の設定資料を読み込む体験を再現したもののように見えてくる。
また、他のCRPGでも見られる、レベルアップ時に任意のステータスを成長させ自分なりのキャラクターを構築していくシステムは、TRPGのキャラクター作成から引き継がれたものだ。これがソウルシリーズではネットワーク機能によるマルチプレイにより、自分とは異なる方向性で育成された他のプレイヤーのキャラクターと共に冒険できるという仕組みも用意されている。これは、CRPGがプレイヤーとコンピュータが1対1で対話する形式を前提とする中で切り捨てた要素を拾いなおし、ビデオゲーム上で再現できるTRPGのゲームプレイを再定義しているようにも見え、面白い。
本筋から逸れるが、近年は人狼とビデオゲームを融合した『Project Winter』や『Among Us』のような作品も登場しており、アナログゲームとビデオゲームの関係が今度どう変化していくかは興味深いものがある。
『ダークソウル』本格的な人間中心主義へ

『ダークソウル』の発売日が近づいていた頃、『デモンズソウル』のファンの間で1週目をオフラインモードでプレイするべきか否かという話題があったのを覚えている。それは、前作において安易に協力者を呼び出してしまったことで、攻略方法のネタバレを見てしまったり、苦戦すべきボス戦をあっさりクリアしてしまうなど、本来の楽しさを味わい損ねるような経験を多くのプレイヤーがしていたからだ。これはコアなファンによる過剰なリアクションという訳でもなく、マルチプレイ要素がプレイヤーへ一意の体験を届けることを阻害してしまうという問題は、今後のソウルシリーズにも続く大きな課題だった。
また、『デモンズソウル』は非同期オンラインの仕様に顕著だが、ユーザ間でのコミュニケーションを要求しない緩く繋がる遊び方を提案しようというコンセプトがあった。しかし、一部のプレイヤーは自身のゲームを進めることを放棄してひたすら他のプレイヤーの世界で協力・敵対プレイに勤しむようになるなど、マルチプレイ要素は制作側の想定を超えて過剰に楽しまれた部分があったと思う。これに対して『ダークソウル』がどのような反応を返したかと言うと、こういった積極的なマルチプレイを肯定する側にゲームデザインを振り直した。

まずゲームを起動してすぐに気付く前作との違いは、UIの左上に追加されたカウンターだ。このカウンターは自身のゲームでボスを撃破することで上昇するほか、マルチプレイにより他のプレイヤーを手助けしたり、逆に敵対者として他のプレイヤーを倒することでも上昇する。前作ではマルチプレイのみを遊び続けることにシステム上のメリットは無かったが、カウンターが設けられたことでゲーム側がプレイヤーにモチベーションを与えてくれる。このカウンターは「人間性」という意味深な名前が付けられている。
『ダークソウル』はこの人間性を代表に、ゲームデザインや世界観をマルチプレイを前提とした形に再構築した。特に大きな追加要素が誓約システムだ。これは、世界に存在する様々な思想を持った派閥とプレイヤーが契約を結び、それによって特殊な能力を授かることができるというものだ。例えば、他のプレイヤーを殺害した経験のあるプレイヤーのみを対象にPKを仕掛けられる"暗月の剣"や、同じエリアを攻略しているプレイヤーを呪いゲーム難易度を上昇させる"墓王の眷属"などがある。このように様々な役割を持ったプレイヤーがネットワークで繋がることで、シングルプレイとは別の、人対人の関係によるドラマが生まれる仕組みになっている。
また、前述したようなゲームをプレイヤーに解放する態度を踏まえて『ダークソウル』の世界観を見てみると興味深いものがある。『ダークソウル』の世界には明確に人間と異なる種族として神々が存在しており、プレイヤーはグウィンと呼ばれる神の意思を継いで、世界を延命させるための火継ぎの儀式を行うというのが本作のプロットになる。しかし、設定を読み解いていくと、どうもこのグウィン王は人間の存在を恐れて管理したがっていたことが分か��。火継ぎが必要であるのは神々の方であり、むしろ火が失われることによって、闇から生まれた種族である人の時代が来るのだという。これはまさに、プレイヤーに一意の体験を与えようとする制作側と、マルチプレイから生まれる二次的なドラマに没頭するプレイヤーという、本作におけるある種の対立構図を神話にしたものではないだろうか。『デモンズソウル』の頃からゲームプレイと世界観を一致させることでプレイヤーに没入感を与える試みはあったが、『ダークソウル』ではそれが更に一段高いレイヤーで行われている。
プレイヤーにより自由度を与えながらも、世界観との齟齬を発生させないよう立ち回って見せる宮崎Dのゲームマスターとしての能力は、本作において一つの到達点を迎えたと言える。
ソウルシリーズの拡大とフロム・ソフトウェア

2014年は『ダークソウル2』の発売と共に大きな出来事があった。フロム・ソフトウェアが角川の子会社となり、また社長を務めていた神直利氏が相談役に就任し、宮崎英高氏がその後を継いだ。これは宮崎氏が経営層へシフトするという意味ではなく、フロム・ソフトウェアは神氏の時代から社長自身がゲーム開発にも参加する経営と開発を切り離さない社風がある。むしろこの体制変更は宮崎氏がよりディレクターとしてのポテンシャルを発揮できる環境を作るためのものであり、またソウルシリーズへの期待の大きさを示している。
『ダークソウル2』はディレクターを渋谷知広氏に交代したというアナウンスがあったが、裏では宮崎Dは『ブラッドボーン』の準備に取り掛かっていた。この時からソウルシリーズは複数ラインで開発されるようになり、1年に1本新作が発売されるという過剰な時期を迎える。2016年に発売される『ダークソウル3』までが神直利氏体制で立てられた企画であり、多大な影響力を持ったソウルシリーズにより基盤を固め、会社を次のステージへ進める狙いがあったと推測される。2015年には開発力の向上を目的に「フロム・ソフトウェア 福岡スタジオ」が開設された。
『ダークソウル2』拡張されるソウルシリーズ

『ダークソウル2』は一見では前作を基盤に拡張された正統な続編だ。初期のキービジュアルに松明を持った騎士が歩いているというものがあったが、これは実際に新規システムとして組み込まれており、フィールド内にある種火を松明で拾い、真っ暗なフィールドを進み、また新しい燭台に灯していくというゲームプレイがある。これは本作で新たにディレクターを務めた渋谷知広氏(後に谷村唯氏に交代)による『ダークソウル』の再解釈であろう。
ただ本作の位置づけが難しいのは、ソウルシリーズはこれまでコンセプトに合わせて作品世界を作り直すやり方を取っており、続編を作る事自体が亜流という事だ。そもそも「ダークソウル」とはゲーム内の設定を読み解くと人間性と近しいものである事が分かり、つまり前述したようにマルチプレイ路線に切り替えたことを象徴するタイトルだった。前作は重厚な世界観を作り込みバックボーンに多くの神々を登場させながらも、「ダークソウル」という概念によって最終的に焦点が人間に帰ってくるのがユニークだったし、それがゲームプレイと一致する美しさがあった。それを踏まえて松明システムを見ると、これは見えない物に対する畏怖を呼び起こすことで世界の広がりを感じさせるためのギミックであり、探索型の3Dアクションゲームに実装するアイデアとしては非常に魅力的ながらも、むしろコンセプトとしては前作と真逆を向いている事が分かる。ビデオゲームを問わず多くの続編でありがちな緩みが、ソウルシリーズにおいても発生している。
厳しい言い方をしたが、勿論これは続編を作るための意図的なずらしだろう。実際のところ、本作はうまく過去作との差別化を行い、独自の魅力を引き出すことに成功している。
『ダークソウル2』は先に挙げた松明システムを代表に探索面を中心に強化した作品だ。最も大きな過去作との違いは、前作よりも更にマップが枝分かれしており、それらを自由な順で攻略できるようになったことだろう。それに加えて、探索によって得られたアイテムにより以前は通れなかったルートが解禁されていくなどの要素により、ダークソウルにメトロイドヴァニアをミックスしたかのようなゲームプレイを実現した。これは高難易度故に閉塞感が���くなりがちであったソウルシリーズに風通しの良さを与えるといった相乗効果もあった。
ただし、本作は基本的には優等生であった故に、宮崎Dの属人性によって支えられていた部分を露わにしたと思う。世界観を探索に特化したゲームプレイと一致させるような拘りは見られなかったし、アイテムに付属するテキストからは饒舌さが失われていた。アクションの作り込みが甘いこともその一つに加えて良いかもしれない。シリーズを追ってきたファンにとっては、どこか物足りない内容であったのも確かだった。
『 ブラッドボーン 』シングルプレイへの目覚め

『デモンズソウル』に引き続きSCE(現SIE)とタッグを組んだ本作は、世界観を一新しヴィクトリア朝をモチーフとしている。舞台となるファーナムは人が獣と化す疫病が蔓延しており、猥雑で陰鬱としたゴシックホラーのような雰囲気になっている。また時代設定が19世紀となったことで、左手には盾ではなく銃を持つようになった。防御を行わない、より激しいアクションを求める方向性だ。
しかしソウルシリーズの過去作からの遷移として気になるのは、多くの要素がシングルプレイに寄っていることだろう。
ゲームを開始すると何故かプレイヤーは輸血を受けており、その最中怪しい幻覚を見る。街へ出ると病に感染した人を焼く集団に遭遇するが、彼らはプレイヤーを獣とみなし攻撃を加えてくる。プレイヤーからすれば彼らの方が狂っているようにしか見えないのだが、そう言い切ることができないという、信頼できない語り手のような物語構造を本作は採用している。しかし、これは本来一人称で物語を完結できるシングルプレイのゲームで用いられるべきストーリーテリングではないだろうか。
それでは、本作からマルチプレイ要素が無くされたのかというと、これまで通り協力・敵対プレイが可能だ。しかし、過去作との決定的な違いとして、他プレイヤーとの協力プレイを行わない限り、敵対プレイが発生しなくなった。ヤーナムの住人��病を恐れて扉を固く閉ざしているが、本作のマルチプレイは、友を招き入れるために扉を開くことで悪しきものも呼び込んでしまうというシステムになっている。これは、今作では他者からの干渉を気にせずに作品世界に浸って欲しいというメッセージでもあるだろう。
宮崎Dの狙いとしては、前作『ダークソウル』がマルチプレイ要素を肯定した内容であったため、それと対になる立ち位置としてシングルプレイに寄せた 『ブラッドボーン』 を制作したのだと思われる。
また、ソウルシリーズは多くのフォロワーを生み出すなどの多大な影響力を持ちながらも、どこか決定的な評価を得られなかった部分があった。それはシングルプレイとマルチプレイが棲み分けされないことにより、一意の体験をプレイヤーに与えてくれないことが評価を難しくしていたのだと考える。そういった意味でもシングルプレイ寄りのゲームを制作して欲しいという要請もあったと思う。
最後に余談だが、『ブラッドボーン』のストーリーは最終的にラブクラフトのクトゥルフ神話を思わせる展開を見せる。クトゥルフ神話といえばTRPGであり、ここでもアナログゲームからの影響を思わせる。『ブラッドボーン』では人間性の代わりに"啓蒙"というパラメータがあり、これを上昇させることでステージの背景を蠢く魔物のような存在が見えるようになってしまう。これはクトゥルフ神話TRPGにおける"クトゥルフ神話技能"を思わせる。
『ダークソウル3』収束するソウルシリーズ

『ダークソウル3』のディレクターを宮崎氏が務めると聞いたとき、どんなゲームになるのかうまく想像できなかった。先に述べた通り、宮崎氏はコンセプトから逆算して作品世界を作ることを徹底してきた人であり、それゆえ続編を作るという発想になりにくいからだ。実際のところ、インタビューによると元々他のディレクターが担当していたがあまり上手くいかず、神社長の指名で引き取ったプロジェクトであるらしい。では、完成したものがどのような内容であったかというと、シリーズ屈指の異色作に仕上がっていた。
本作ではロスリックと呼ばれる新しい土地を舞台にしており、一見新規のプレイヤーでも楽しめるよう配慮された、独立性のある作品のように見える。実際それは嘘ではなく、過去作をプレイしたことが無くても最新の技術で制作されたソウルシリーズの新作として十��楽しむことができるだろう。けれども、それだけでは本作の裏側にあるコンセプトに気付くことができない。
ゲーム開始後最初の山場となる、ファランの城壁と呼ばれるエリアがある。全体が毒沼に沈んでおり、所々に残った建築物を足がかりに進んでいく陰鬱とした場所だ。しかし、登場するモンスターの風貌や、取得できるアイテムのフレーバーテキストなどの断片的な情報を繋ぎ合わせていくと、この場所は『ダークソウル1』に登場したウーラシールという緑豊かな土地が、経年変化の末に変貌した姿なのではないかという疑惑が浮上するようになっている。
つまりロスリックとは『ダークソウル1』の舞台であったロードランが面影が失われるまで擦り減った場所であり、『ダークソウル3』は全編を使った環境ストーリーテリングによって滅びゆく世界を描いたゲームだ。
これまでもソウルシリーズは廃墟のような場所を舞台にしてきたが、今作では以前の姿を知っている故に、何が損なわれたのかをプレイヤーが気付けてしまう。例えば、前述した『ダークソウル1』の文章で神々と人の対立構造について触れたが、『ダークソウル3』の世界では神の姿が見当たらない。グウィン王が懸念していた、火が失われた後の時代がほぼ実現している。しかもそれで人が繁栄したのかというと、失敗し狂気に堕ちた姿を見せつけられる。
また、『ダークソウル3』は様々なアプローチでシリーズを集約しようとする。ゲームを進めていると、『ダークソウル1』に登場したアイテムが本来の教えを失い異なる用途で使われている姿を見ることがある。これは穿った見方かもしれないが、会社の要請で続編を作り続けたことで発散したダークソウルシリーズの歴史を振り返っているかのようだ。
さらに、集約の対象はダークソウルシリーズのみに留まらず、『デモンズソウル』にあった要素がイースターエッグ的に仕込まれている。しかしこの手法は、プレイヤーを喜ばせるファンサービスかもしれないが、同時に『ダークソウル3』の世界の広がりを感じにくくさせる効果が出ている。極めつけに、ゲームのエンディングを飾る最終ボスは、プレイヤーと同じ技を使ってくる人型のボスであり、過去作のエンディングで世界の火を継いだ我々プレイヤーをモチーフにしている。個人的な感想だが、これはモニタに映り込んだ自分を見てしまった時のような居心地の悪さを感じた。
『ダークソウル3』は、序盤から熱の無い世界が横たわっているかのような荒涼とした印象をプレイヤーに与え続ける。そしてその世界すらもエンディングへ向けて徐々に終息していく。その姿が倒錯的な美しさを生んでいる異質な作品だ。
ダークソウルシリーズは本作をもって一旦の幕を閉じることがアナウンスされた。神社長時代の企画はこれで終わり、ここから宮崎氏体制下のゲーム制作が進められていく。
宮崎氏体制のフロム・ソフトウェア

宮崎氏体制に移行してからは過剰なリリースは一旦落ち着き、しばらくして『Déraciné』や『SEKIRO』などの完全新規タイトルが発表されていく。フロム・ソフトウェアの開発ラインが一時ソウルシリーズで埋め尽くされたことは、宮崎氏の望むところでは無かったのだろう。
特に『Déraciné』は古典的なアドベンチャーゲームをVRで描くという、近年のフロム・ソフトウェアに求められてきた方向性から外したタイトルであり、多様性を取り戻そうという意思が感じられる。
また、コアなファンにとって宮崎氏の制作するADVは待望だったと思う。過去のインタビューで座右の銘は「ナナハンで首都高」(恐らく『臭作』の名言)と答えたり、『Fate/stay night』の15周年記念でコメントを出すなど、ADVへの造詣の深さを見せていたからだ。事実、『Déraciné』はプレイヤーとゲームの関係を問いかけるADVの王道のギミックを用いた傑作だった。
『SEKIRO』一意の体験

ソウルシリーズの遷移について触れてきたこの文章では、『SEKIRO』について語ることはあまり無い。鉤縄で空中を飛び回るゲームプレイが象徴するように、『SEKIRO』はソウルシリーズのルールから完全に自由になっているからだ。TRPGからの影響はもはや無く、3D空間を自在に動き回るアクションゲームの根本的な快楽に従って設計されている。プレイヤーは分身となるキャラクターを作成したりはせず、強敵の苛烈な攻撃を受け流しながら主人公の狼にシ��クロしていく。『ブラッドボーン』ではキャラクタービルドの影響を受けにくい最序盤のボスであるガスコイン神父戦の話題が多かったが、『SEKIRO』ではゲーム中盤の壁となる弦一郎戦がハイライトとして語られていたのは痛快だった。ついに全てのプレイヤーが一意の体験について語り合う事ができたのだ。
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私的GOTY2019
2019年は稀に見る豊潤の年で、懇意のデバロッパーの新作が出続けた上に、DevotionやFLOWERSなど素晴らしい新規タイトルとの出会いもあった。自分はつなぎ的にゲームを買わないので興味のあるタイトルをクリアしたら可処分時間は他の趣味に割くのだけれど、良くも悪くも今年はゲームをしていた記憶しかない。
プレイしたゲームは以下。
PC
ANTHEM
APE OUT
BELOW
Braid
Devotion
My Friend Pedro
Project Winter
Sekiro:Shadows Die Twice
Travis Strikes Again: No More Heroes
Wattan
Zero Escape: The Nonary Games
殻の少女HD
PS4
ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN
Borderlands3
DEATH STRANDING
Devil May Cry 5
FLOWERS 四季
KINGDOM HEARTS Ⅲ
Sayonara Wild Hearts
サムライスピリッツ
新サクラ大戦
13機兵防衛圏
Switch
AI:ソムニウムファイル
アストラルチェイン
ファイヤーエンブレム風花雪月
リングフィット アドベンチャー
熱血硬派くにおくん外伝 River City Girls
Arcade
星と翼のパラドクス
例年の基準であれば取り上げるべき良作だらけだが、特に印象に残ったものについてコメントする。
星と翼のパラドクス
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『スペースハリアー』のような可動型筐体にツインスティックとペダルを装備して、ロボットのコクピットを再現するというド直球の発想で作られたであろうアーケードゲーム。制作は『ガンスリンガーストラトス』のバイキングが担当しており、ゲーム内容も8on8のチーム対抗戦になっているなど、下地は確立されたものを流用しているため、見た目の奇抜さに反してゲームセンターによく馴染んでいる不思議な新規タイトル。
『星と翼のパラドクス』が素晴らしいのは、ロボット的なアクションと、マルチプレイヤー型対戦ゲームのルールがうまく紐づいていること。
本作はキル数を競う純粋な対人アクションではなく、フィールドに点在する拠点を奪い合うもの。このためロボット同士でチャンバラをするのみでなく、戦況を把握して適時移動する必要がある。そこで重要となるのがロボットを変形して高速移動する「フルドライブ」と呼ばれるアクションで、ハイパードライブで窮地の戦場に駆け付けるような体験が味わえる。この戦闘と移動を激しく繰り返すゲーム進行によって、プレイヤーは高機動変形ロボットを操っているかのような感覚に浸ることができる。
余談だが、本作と並行でプレイしていた『ANTHEM』は、あのアイアンマンスーツをハクスラFPSにどう結び付けるかというアイデアが出ないままリリースされたかのような残念な出来で、この2作は対照的だなあと見ていたりした。
Travis Strikes Again
ノーモアヒーローズのスピンオフ作。実のところ前情報からは惹かれないどころか拒否反応すらあったタイトルで、初報がインディーゲームを紹介するNINDIES SHOWCASEでの発表だったり(あのGHMがインディーゲームデベロッパーを名乗るの?)、トラヴィスが架空のビデオゲームの世界に迷い込むというどこまで本気なのか分からないストーリーなど気に食わない部分が多かった。しかし、実際にゲームをクリアしての結論としては、須田剛一作品の中でもトップクラスで好きな一本になった。
本作で最初に違和感を感じるのは、殺したゲームソフトの主人公に対するトラヴィスの奇妙なほどに強い敬意だ。彼らのバックボーンはほぼ語られないため、プレイヤーはどこ���置いてきぼりにされた印象を覚えるだろう。ゲームを進めることでうっすらと分かってくるのは、本作は世に送り出すことが出来なかったゲームにまつわる話だということだ。そもそも本作の舞台となるゲームソフトは架空のゲームハード「デスドライブMk-Ⅱ」の専用ソフトウェアであり、このハードもろとも発売されなかった。
ゲーム制作における苦悩なんてテーマは、フリーゲームやインディーの世界では散々扱われてきた手垢の付いたものでもある。では須田剛一がどう調理したかというと、湿っぽい開発側の物語などには触れず、トラヴィスが発売されなかったゲームの主人公らを殺してケリをつけていくという内容になった。多くのプレイヤーがこの構図に気付く頃に、GHMが実際に手がけたソフトである『シャドウオブザダムド』の存在しないはずの続編が登場し、緊張感はピークを迎える。
本作はコンソールのフィールドで活躍してきたクリエーターがこのテーマを扱った故の主題に対しての語られなさが目立つ。しかし、その迂回具合が事の深刻さ、複雑さを強く刻み付けておりそこに唯一無二の魅力があると思う。それは『シャドウオブザダムド』の原案となったカフカの『城』みたいな語り口だし、そういえば須田剛一は『Travis Strikes Again』の発売直前に行われたインタビューで「好きな小説は?」という質問に咄嗟にカフカの『城』を上げていた。
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余談だが、最近はsteamの「Remote Play Together」を使って2週目を2人プレイで楽しんでいる。1人プレイ時は知る由もなかったが、本作は味方にも当たり判定がある『くにおくん』みたいな仕様になっていて、適度にちょっかいを出したりできるのが楽しい。ただし、第2ステージの「Life is Destory」で2人でマップ回転をしていると簡単に進行不能状態に陥るのは設計甘いと思うよ!
13機兵防衛圏
『13機兵防衛圏』はあらゆる点で自分と相性の良いタイトルだった。タイトルこそロボット物のようだが、SF色を前面に押し出した内容で『ゼーガペイン』のようなストーリーが展開される。それに複数主人公による群青劇やアーカイブを用いた断片的なストーリーテリングで膨大なサブカルネタを盛り込むっていうのは自分のオールタイムベストである『SIREN』と同じアプローチだし好きにならない訳がない。取り扱っているSFネタは広く、HGウェルズなどの超古典から、ダンカン・ジョーンズなどの最近の作品までフォローされている。(緒方捻二シナリオはまんま『SOURCE CODE』だよね!)
実のところこれまでのバニラウェア作品との相性はあまり良くなくて、ビジュアルは最高だがアクションで大事なところを落としているなと素直に楽しめないことが多かった。(例えば『ドラゴンズクラウン』ならベルトスクロールアクションなのに緊急回避ができるせいで間合いの遊びがないとか)そういった意味でも、ADVである『13機兵防衛圏』はずっと待ち望んでいたゲームだった。
アストラルチェイン
『ニーア オートマタ』でゲームデザイナーを務めた田浦貴久がディレクションを担当した新作アクションゲーム。『ニーア オートマタ』で不思議だった"緊急回避後に出せるカウンター攻撃に無敵判定がなく打ち負ける"という仕様が継承されていて「あれ、わざとやっていたのか!」という感動があった。プラチナらしいアクションとか、そういう枠にとらわれたりしない、独自の哲学を持っている人なのかなと思う。
『アストラルチェイン』が面白いのは、90年代のPS1のRPGみたいに本筋と関係ない遊びがごった���になっているところ。メインストーリーは戦闘のみでなく捜索パートと半々になっているし、それらも無視して空き缶集めやアイスクリーム運びなどのサイドクエストに勤しむこともできる。プレイ開始直後こそ「いいから戦わせろ!」ともどかしく感じていたが、最近では見なくなった間の抜けたリズムがだんだん心地よくなってくる。表層はプラチナゲームズ謹製のバリバリのアクションゲームなのに、手触りは懐かしのRPGという奇妙すぎる体験がある。
ちなみに、そんな内容に呼応してかゲーム後半では舞台がスタイリッシュな都市から混沌とした中華街へ移ったり、エヴァンゲリオンのような90年代末な物語が展開されたりする。
『13機兵防衛圏』とあわせて、2010年代の終わりにレトロスペクティヴなタイトルが出てきたという点も面白かった。
以上。
『DEATH STRANDING』、『flowers』も素晴らしかったが、これらは個別に記事を書いたのでそちらをどうぞ。
ジャンル名「百合系ミステリィADV」とは『flowers』レビュー
オブジェクト指向で世界のことを考える デス・ストランディングと蓮沼執太について
Goty記事を書くだけの場所となりかけているこのブログだけど、今年は多少更新できてよかった。『flowers』はゲーム内容につられて実直に、『DEATH STRANDING』はその真逆で欲求のままに書き殴った。
デスストの記事はちょっと唐突だったけど、これは最近よく考えている蓮沼執太のアート方面の視点はゲームに転用できるのではないかというアイデアを使ってみたものになっている。蓮沼執太が音楽を使って世界を微分してみせる活動をしているのならば、ゲームはその逆で、最小の情報の組み合わせを積分にかけて世界を表現するものであるから。蓮沼執太フィルの『4O』なんて実はオブジェクト指向存在論(Object Oriented Ontology)の略らしく、プログラマーならすっと身体に入ってくる考え方だと思う。
今年は『NH3』、『Cyberpunk 2077』、テイルズ新作あたりを楽しみにしています。
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オブジェクト指向で世界のことを考える デス・ストランディングと蓮沼執太について
小島監督作品ではお馴染みの要素だが、デス・ストランディングには実在するアーティストの楽曲がゲーム内で使用されている。日本人では唯一、星野源の「Pop Virus」が収録されているが、本作をプレイしていて自然と頭の中に浮かんだのは蓮沼執太の楽曲だった。それは両者に体験レベルで共通する部分があるからだと思う。

デス・ストランディングで最も感銘を受けたのは、配送というルールによって全てのオブジェクトをインタラクション対象に変えてしまうゲームデザインだ。アクションゲームのプロトタイプはキャラクターや地形を真っ白な箱で代用して作られるというくらいには、ビジュアルよりもその空間の中でプレイヤーに何をさせるのかが重要になる。本作でプレイヤーがすることと言えば荷物を抱えてただ歩くだけだが、身体の向きを変えたり、傾斜のある道を歩くと、身体のバランスを崩し転倒するというシステムが用意されている。転倒を回避するためにプレイヤーは身体の重心をコントローラの左右のトリガーで調整することができ、これはごつごつとした地面の上を歩いている感触をコントローラ越しに伝えてくれる。そして何よりも、足元の小石から、遠くにそびえたつ山まで、ゲーム内に存在する全てのオブジェクトがインタラクション可能な「そこにある」存在として生き生きと立ち上がってくる効果がある。この目に見える物を虚飾でなくそのまま受け入れて良いと感じさせてくれる体験は、今後のアクションゲームの在り方を変える革新的なものだと思う。本作のストーリーは配達人であるサムが大陸を横断し関係が分断された人々を繋ぐというものだが、これに呼応するのは荷物を運ぶという行為のみでなく、オブジェクトが密に結び付き合うようデザインされた世界の中でプレイヤーが遊ぶことそのものに効いているのだと主張してみたい。

蓮沼執太は東京出身のミュージシャンで、フィールドレコーディングや、大学での環境学の専攻を経て音楽活動を始めたという経歴を持つ。楽曲に環境音を取り入れるミュージシャンは珍しくないが、彼の特徴はフィールドレコーディングによって培った「あらゆる場所に音が存在する」という感覚を楽曲に刻印しようする点であり、そのアプローチも独特だ。一つ例を挙げると、彼が親交のあるミュージシャンを集めて結成した蓮沼執太フィルと呼ばれるアンサンブルでの活動がある。フィルのライブにおいて、彼は自身の担当パートが終わると突然立ち上がり、演奏をしているメンバーの間をウロウロと歩き始めることがある。恐らくこの時、彼は一人一人が演奏する音が重なって音楽が出来上がっていることを実感しながら、場所ごとの音の聞こえ方の違いを楽しんでいる。ソロではアンビエントというジャンルで活動する彼がアンサンブルを立ち上げたのは、「そこにある」物や人の関係により音楽が現れるという思想から来ている。その思想は言葉でなく、作曲方法や発表方法など行為そのものを介して伝えられる。因みに彼は音楽のみでなくアーティストとしても活動しており、その手段としてインスタレーションを積極的に採用していることも示唆的だ。
デス・ストランディングと蓮沼執太が共通するのは、ゲーム世界が、音楽が、多数のオブジェクトが関係し合うことで成り立っているという思想である。そしてそれは押し付けがましくなく、例えるなら高度にデザインされた建築物を用意しその中で観客が時間を過ごすような体験を通じて伝えられる。
元々小島監督の作品は、メタルギアソリッドが顕著だがプレイヤーに伝えたいメッセージを登場人物がそのまま言葉で説明してしまうお説教のようなスタイルだったはずだ。それが近年の環境ストーリーテーリングの発達によってゲームの演出の流行は映画的なものから建築的なものに変わった。MGSVはビッグボスの過酷な経験をプレイヤーにそのまま体験させる語り口になり、ついにデス・ストランディングではサム自身にまつわるドラマはほとんど描かれなかった。両者が重なったのはゲームの建築化が大きく進行しているいまこのタイミングだからであり、コジマプロダクションの二作目が出た頃にはまた違う感想になるだろう。
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ここからは余談だが、デス・ストランディングと蓮沼執太には他にも共通する要素がある。折角なので以下に並べてみる。
涙について
デス・ストランディングが初めて発表された際のトレーラーにも存在していた要素だが、本作では登場人物たちが不自然なタイミングで涙を流す。これは作中でカイラル・アレルギーと呼ばれる生理現象で、悲しいから泣いてる訳ではない。しかし、成熟した大人が涙を流す姿は内面の想像を喚起させる強烈なビジュアルだ。
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蓮沼執太フィルの「ZERO CONCERTO」のMVでは、フィルのメンバーが涙を流す。しかしその理由は映像の上では描かれず、映像の上に流れるテキストには「始発電車が到着するまでの何もない時間があったので涙を流してみた」と記されている。(4:30から)
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オブジェクトが発する気配/音について

デス・ストランディングではプレイヤーを手助けする建築物を建てて、他のプレイヤーと共有できるネットワーク要素がある。オープンワールドらしくこれらの建築物は遠くからも見えるように背の高い形状になっている。充電器などはまるで360度スピーカーのような見た目であるし、実際に好みの音楽をセットして鳴らすこともできる。荒野を長く一人で歩いている時に建築物が見えると、他者の痕跡を感じてほっとする。
蓮沼執太のライブでは全方位型と呼ばれるスタイルが採用されることがある。これは会場の中央に演者が陣取り、観客はその周りを自由に移動しながら音の聞こえ方の変化を楽しんでもらうというものだ。
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創発性の喚起について
ゲームは多くの場合、制作側が提示する課題をプレイヤーが解決することで進行するため、本当の意味でプレイヤーから能動的に行動してもらうのは難しい。それは比較的自由に行動できるデス・ストランディングでも同じで、やはり荷物を目的地まで運ぶという目標を達成するための多くの選択肢があるというけだ。しかし建築物を他者と共有できるソーシャルストランドシステムは、「どうせこの建築物を建てるならもっと人通りの多い場所にしよう」といった発想の余地を与えるため、純粋に自分の利益だけを考えて行動するのは逆に難しい。これにより、この世界ではプレイヤーのあらゆる行動は能動的なものに変換させられる。
前述した全方位型ライブのように、蓮沼執太のライブは観客が自分の意思で参加できる余白が用意されていることが多い。2014年に開催された「作曲|ニューフィル」はもっと直接的で、観客が指揮者や演奏者になり、即興で演奏を行うというものだった。勿論純粋な作曲活動とは異なるものだが、音楽の構成要素の一つとなって音楽が成立する過程をその身で体験することができた。
時代への問題喚起について
小島監督はメタルギアソリッドシリーズでは核兵器やゲノム編集などの社会問題を扱ってきた。デス・ストランディングでは、日に日に世界が悪くなっているかのような今の時代の空気をビジュアル化しようとしたためか、時雨、BTといった自然現象が人間に牙をむくという設定となった。
蓮沼執太フィルの2ndアルバムの名前は「アントロポセン」という。これは新しい地質時代として提案された新造語で、人類の活動が地球の生態系に影響を及ぼすところにまで進んでいるという考えから生まれた。蓮沼執太はアルバム発売時のインタビューにおいて、「現代では詩的なアプローチもどこかユーモアを感じ取ってもらえない���潮を感じますし、物事を直接的に発言しないと、しっかり伝わらない気もして、敢えてこの『アントロポセン』と名付けています。」と語っている。
インフラを支える人々へのフォーカスについて
デス・ストランディングの主人公はAAAゲームの主人公としては地味すぎる配達人だ。
「アントロポセン」に収録された「Juxtaposition with Tokyo」のMVでは、解像度も撮られた場所もバラバラな掃除人の映像が並べられている。
両者とも称賛されることはないが、人が快適に暮らすために必要なインフラを支える人々だ。
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両面性について
デス・ストランディングでは人の繋がりがテーマになっている。しかし、主人公のサムは接触恐怖症を患っているなど、相反する価値観も提示される。それどころか、本作はソーシャルストランドシステムという他者と協力する仕組みを実装しながらも、物語のクライマックスで活用されなかったくらいには信用されていない。小島監督自身「SNSはしんどい」と公言しているし、忘れられているかもしれないが、かつて彼はTwitterで連日若者へのお説教を披露して棒でつつかれ続けていたのだ。
蓮沼執太は中学生の頃、ヒップホップを爆音で聞くことで東京の満員電車をやり過ごしていたという。それはフィールドレコーディングを重要視する彼のスタンスとは一見一致しない。しかしフィールドレコーディングで取れる音というのは余計な情報が削ぎ落とされるため、実際のその場所の印象とは異なる、洗練された音が録れるものだ。これはカメラで撮った写真が目に見たままの風景と異なる印象を受けるのと同じで、カメラやレコーダーといったデバイスが解釈した世界が写っているのであり現実を写し取っている訳では無い。「アントロポセン」のジャケットは飛行機の窓から見た街の風景が描かれている。そこからは人々の生活感までは感じ取れず、建築物や自然の美しい輪郭だけが見える。

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ジャンル名「百合系ミステリィADV」とは『flowers』レビュー
初めにこのゲームを人から勧められた時に引っかかったのは「百合系ミステリィADV」というジャンル名だ。なぜこの二つを掛け合わせたのだろう。
「flowers」は、全四部からなる百合をテーマにした連作ADVゲームだ。各篇は季節の名前を冠しており、2014年に第一部である春編がリリースされてから一年に一本のペースで続編が公開され、2017年に完結している。
身近に本作の熱心なファンがいたため評判の良さは以前から聞いていたが、四部作というハードルの高さに後回しにしていた。そしてつい先月、全編をワンパッケージにまとめたPS4版が発売されたとのことで意を決してプレイしたのだが、仕事と食事と睡眠の時間以外全てを捧げるほどのめり込んでしまい一週間足らずでクリアしてしまった。それどころか本編だけでは飽き足らず、今では卒業アルバムのような分厚さのアートブックや関連CDの収集まで始めている。この記事はレビューという体だが、本作を布教するための文章であり、また何故私が本作にここまでのめり込んでしまったのかを整理するための文章だ。
以降の本文では、出来る限りネタバレは避けたつもりが、レビューの上で必要と判断した内容には触れるため未プレイの方は注意して欲しい。特に「flowers」は前知識の有り無しで体験の質が変わってしまう内容であり、それこそ公式HPの情報すら見ないことを推奨する。
『flowers』のコンセプト
「マリア様がみてる」に影響を受けたという本作は、ミッションスクール(キリスト教主義学校)を舞台に百合を描くという王道な設定に挑んでいる。主人公である白羽蘇芳は、家庭内のトラブルから心に傷を抱え学校へも通えなかった事から対人能力への自信を失っている。そこで、学園側が仮り初めの友人を作らせ生活を共にさせる"アミティエ"という制度のあるミッションスクール「聖アグレカム学院」へ入学することとなる。つまり、社会生活で傷を負った者が世間から離れた場所で他者とのふれあいを通して回復していくというプロットだ。ここでいう他者とは同級生、上級生、先生など学園の様々な人たちを指している。本作は白羽が人間関係を広げていく姿を描いたもので、百合としては恋愛のみにとどまらず友情も含んだ物となっている。四部作という尺の長さをうまく使い、この二つの要素は片方が蔑ろにされることもなくバランスよく描かれている。結果的に人を選ばないリーチの広い内容になっていると言えるだろう。
あえてミッションスクールを舞台としているだけあって、本作は清楚で上品な雰囲気を強く打ち出している。グラフィックは淡い色調と細い線で描かれており、キャラクターは繊細で儚げな雰囲気を纏っている。私はADVは好んでプレイする方だが、ここまで甘美的なものは初めてで、慣れるまではなかなか話に集中できなかったほどだ。もしあなたが本作のパッケージイラストやCGイラストに惹かれるものがあるならば、「flowers」と相性が良い可能性が高い。グラフィックを手掛けるのはディレクターを兼任するスギナミキ氏であり、本作のコンセプトを端的に示しているからだ。グラフィック以外でもこだわりは強く、文章は地の文の割合が多めであるし、文体も硬すぎないがカジュアルとは思われないようにバランスがとられている。キャラクター��お嬢様ばかりというわけではなく皮肉屋やひょうきん物も混ざっているが、決して露悪的にならないよう一線引かれており上品さを失わない。本作は作り手の拘りが作品の隅々まで行き渡っており、方向性に共感できるならば素晴らしい体験になるだろう。
イラストのクオリティは総じて高く印象に残るものが多い
『flowers』のゲームプレイとミステリ
ゲームプレイはADVとしてはかなりシンプルだ。プレイヤーは選択肢を選ぶことで物語を読み進めていくが、分岐は最低限に抑えられており、複雑なフラグ管理を求めるようなものではない。あくまで物語に没頭してもらうことを重視したスタイルだ。ただし特殊な点として、本作はジャンル名にミステリを含む通り、推理パートが発生することがある。
先に百合をテーマとする本作に、何故ミステリ要素が入ってくるのか説明する。それは人間ドラマを描くために「日常ミステリ」のフォーマットを使っているからだ。日常ミステリとは、犯罪事件ではなく、日常生活の中での謎を追う物語だ。このフォーマットの大きな魅力の一つとして、謎の内側に人の意外な本心を忍ばせておくことで、人間ドラマを最大限に演出することができるという点がある。「flowers」は白羽が人間関係を広げていく話であると前述したが、プレイヤーは主人公の視点で語られる物語を元に謎を解き、明かされる学友の心情と向き合い距離を縮めていく過程を共に体験することとなる。謎の内容は学園内での小さないざこざを解消するものから、学園の七不思議の正体に挑むなど幅は広い。また、その意外な真相に驚かされたり、どうしてそこまで気が回らなかったのかと後悔させられたりと、主人公の心情とシンクロして動揺してしまう場面もあった。これはゲームらしい没入度の高さをうまく使ったストーリーテリングであるし、プレイヤー自身が苦労することで白羽と周囲の人物との仲が深まっていくことに説得力を与えている。少し遠回りなコミュニケーションをしているような印象も受けるが、奥手な白羽が意を決して他人と関わろうとする感覚が出ているとも言える。
推理パートが挟み込まれるのは、一つの事件において謎を解くための手がかりが全て揃ったタイミングの一度だけになっている。このとき、事件の筋を理解できているか確認するためにいくつかの選択肢が問われるので、無事正しいものを選択できれば、また次の事件の推理パートに到達するまで一直線に読み進めることができる。いわば、ミステリ小説の「読者への挑戦状」がインタラクティブ化されたようなものだとイメージしてもらえればいい。物語の進行を頻繁に止めてプレイヤーの干渉を促すようなものではなく、あくまでもミステリ要素は演出としての利用に留めており、人間ドラマを魅力的に描くことに注力している。
最悪謎が解けなくても、四択の選択肢を連続で数回問われるようなものなので、全パターンを試してしまえば簡単に物語の続きを見ることができる
少し脱線するが、本作をプレイしながらとあるミステリ作家の「ミステリは書きやすい」という言葉を思い出すことがあった。これは、ミステリには必ず謎と解が存在していて、このフォーマットに当て嵌めて物語を作れば、必ず解が明かされる瞬間に盛り上がりが発生するし作品全体もそこへ向けて密度を高めていくことになるから、という事らしい。本作の推理パートは一作につき四回前後用意されており、その度に小さい単位の物語に決着がつくようになっている。このため、全体を通してメリハリがあり興味が牽引されやすい構成になっている。それだけでなく、シリーズ全四部を通して解明に挑む事となる大きな謎も存在する。つまり、目の前の事件、一作通しての物語、シリーズを通しての物語という三階層の物語が同時にじりじりと進行する形になっている。これは常に物語が前進している感覚を与える効果があり、私は優れた長期連載漫画を読んでいるときのように続きが気になってプレイの止め時を失ってしまった。言わば、フロー状態にプレイヤーが導かれるように物語構造によってレールが敷かれているのだ。このシリーズを通しての謎はもはや日常ミステリの規模を超えて恋愛物から乖離しかけるところまで行くが、制作側も自覚しているのかギリギリの所で留められている。しかしこの謎の存在感故、エンタメ性が高く万人に受け入れられ易い内容にまとまっており、むしろ長所と呼んでいい部分だと言えるだろう。
学園物としての『flowers』
ここまでミステリの話ばかりになってしまったが、事件が起きるのは物語が大きく展開する瞬間のみで、主に描かれるのはミッションスクールでの生活とキャラクター達の交流だ。アングレカム学院は山奥に建てられた全寮制の学院で、テレビすらないという世間から隔絶された場所だ。それゆえ、学院の生徒の娯楽は部活や趣味、しかし一番は学友とのお喋りになる。
本作の登場人物は趣味に傾倒している者が多く、会話の内容も気付くとディープな方面へ行ってしまう。一見大人しそうにみえる主人公の白羽も、書痴を自称するほどのビブリオフィリア兼シネフィルで、その手の話を語らせるとうるさい人物でもある。会話の中では実在する小説や映画の名前を挙げてキャラクター達が作品について語り合う。扱われる作品は夏目漱石などの近代文学から、「ダークナイト」といったごく最近の映画まで年代の幅は広い。恐らくよほどサブカルチャーに精通している人でなければ全ての内容を理解することは難しいだろう。しかし、本作を楽しむ上でこれらの作品を知っている必要は実はない。重要なのは、彼女らが紅茶やコーヒーを飲みながらマニアックな歓談をしている様子を眺めていると、だんだん一種の陶酔感が生まれ、まるで実在の人物であるかのように錯覚させる効果があることだ。ADVファン向けに言うなら、サイバーパンクバーテンダーシミュ「VA-11 HALL-A」において、バーに訪れた二次元のキャラクター達の世間話や明け透けのない性に関する話を聞いている際、そのギャップと共にリアリティが立ちあがってくるあの感じに似ている。こういった物語の本筋と関わらない雑談が本作は頻繁に差し込まれる。これらは一見純粋なフレーバーに思えるが、気づかぬ内にプレイヤーを作品の世界の中に引き込む効果的な演出となっている。
クリントイーストウッドについて熱弁する主人公
寮生活ということもあり、夜にはこっそり人を集めて怪談が始まることもある。これは事件への接続として使われている部分もあるが、それを差し置いても本作は怪談への拘りが強い。登場回数は多く、場合によっては専用の挿絵まで用意されていることすらある。関連グッズのドラマCDでもお約束のように毎回怪談専用のトラックが差し込まれている。ここまで触れていなかったが、本作はキャラクターに声優によるボイスが吹き込まれている。声優による演技力の高い、抑揚の効いた語り口には引き込まれるものがある。キャラクター達の親密な雰囲気を感じさせる印象的な場面の一つだが、本作で可能な表現から算出された効果的な演出でもある。
アングレカム学院は行事も多い。合唱、バレエ、演劇など様々な催しが用意されており、主人公等もこれらに参加することとなる。準備にて起こる事件や人間ドラマを超えた末に辿り着く本番シーンは、各編の最も盛り上がる場面の一つとなっている。ここではテキストボックスなどの常駐していたUIが取り払われ、制約のない特殊な演出で進行する。その内容は演目により様々だが、タイポグラフィ、イラスト、声優によって吹き込まれたボーカル曲などを組み合わせたリッチなものになっている。
学院でのイベントについて幾つかの例を挙げたが、コストがかかっている場面もそうでない場面も、ADVというジャンルの特性をよく理解した演出がされていることが分かってもらえるだろうか。本作は「YU-NO」の系譜のようなストーリー分岐を用いるストーリーテリングは退化しているが、その代わりに表層的な部分での表現は非常に饒舌だ。本作が文学や演劇への数多くのリファレンスを持っていることを踏まえると、「flowers」は伝統的なテキストアドベンチャーとしての総合芸術的な作品だと呼びたくなる。「flowers」をプレイしていて感じる芳醇さ、贅沢さはこういった所に起因する物と考える。
『flowers』のテーマ
「flowers」は、学院での日常と、謎が生む非日常とを行き来する形で進行し、その過程で白羽が周囲の人たちと交友を深めていく様子が描かれる。しかし、なぜミッションスクールを舞台にする必要があったのだろうか。また、交友関係を描くにしても、なぜあえてミステリという手法を選択する必要があったのだろうか。それは、本作全体を通して語られるテーマと関係しており、このテーマこそが私が最も心を打たれた部分になる。
端的に言えば、本作のテーマは「はみ出し者たちが他者との相互理解の末に世界との向き合い方を見出す」というものだ。
アングレカム学院はミッションスクールであり、入学してくる者は良家のお嬢様が多い。しかし、その家柄故、強固な教育方針などで個人の意思を縛られて育ったことで、自尊心を欠いていたり悩みを抱える者がいる。また、世間から離れた、空気の澄んだ山奥に建てられた学院の特色から、病を持つ者が療養を目的として入学するケースもある。問題を抱えているのは主人公の白羽のみではなく、皆どこかで社会からはみ出してしまっていて、それぞれの葛藤を抱えている。
そして、「flowers」の最も信頼できるところは、この登場人物達が抱える葛藤は徹底的に隠されていること、また、ミステリパートにおける謎解きによって直接この葛藤が明かされることはないことだ。
本作はミステリであり、物語は主人公の主観で語られる。このため他人の心の内がモノローグでプレイヤーに伝えられるようなことは基本的にない。また、ミステリパートで扱われる謎は、学院内で起こった事件で容疑者に挙げられてしまった学友の濡れ衣を晴らすなどといったもので、あくまで学友を助けることが目的であり、そこで犯人の心の内を積極的に暴くようなことは避けようとすらする。それこそ、事件の中には真実の追求を求めず、傷つく人が生まれない嘘の真実を構築しようとする話だってあるのだ。
日常ミステリは「謎の内側に人の意外な本心を忍ばせておくことで、人間ドラマを最大限に演出することができる」と前述したが、実の所これは諸刃の刃だ。ミステリはその構造上、外的な痕跡から他人の心を推測してそれが真か誤りかといったやり取りをすることになるが、そうやって他人の心の内を明け透けにさらしてしまう事は冒涜的な一面がある。こうしたところにこのジャンルへ苦手意識を持っている人は多くはないがいるのでは無いだろうか。
その点において、本作は一貫して他者の神聖な領域を侵すことを拒んでいる。私は小説やゲームにおいてもミステリは好きなジャンルでどちらかと言えばよく触れる方だが、ここまで優しい手つきのミステリは見た事が��い。
こういったスタンスを取る事で、ジャンルとしての面白さが失われているのではないかと思われるかもしれない。しかし、本作はミステリのみを主軸においた物語ではなく、推理パートは全体からすればほんの一部で、プレイヤーがインタラクションできない日常パートで充分にドラマは語られている。そして、ずっと見守って来たプレイヤーの分身である主人公が、学友を気にかけて探偵役を買って出るとき、プレイヤーは謎解きを行う事でその背を押す事ができる。これまで語られてきた物語を通して彼女らに親密さを覚えていたなら、これは非常に重要なインタラクションになる。
日常生活や事件を通して彼女らの信頼関係が構築されていき、その末に、彼女らは悩みを打ち明け互いを受ける事で、葛藤を克服し社会と向きあう力を得る。これは、一般的な百合をテーマとした物語へ回帰するように、プレイヤーの手を離れ俯瞰的な形で語られる。しかし、主人公の目を通してよく知った登場人物達が立ち直る姿には強く心を打たれるものがある。
「flowers」がミッションスクールを舞台とするのは、キリスト教の禁じる同性愛を扱う作品であるためではない。本作では自身が同性愛者であること自体に強く悩んでいる者は登場しない。しかし、他人に打ち明けられない悩みや葛藤を抱えるもの達が、密かにそれを共有しあい世界と向きあう力を獲得する場所として機能している。またミステリは、他人の心を暴くためのものではなく、むしろ他人の不可侵の領域を強調することに機能しており、尊敬を持った上で近づこうとする意思を示すためのものだ。この他者との距離感を重んじた姿勢で描かれる回復の物語こそが「flowers」の唯一無二の魅力であり、「百合系ミステリィADV」というジャンルが達成した物だ。
最後に
「flowers」は一見甘美的すぎるし、百合という題材からニッチなゲームと思われるかもしれない。しかし、描かれるストーリー、テーマは誰もが共感できる普遍的なものであるし、ミステリを通してプレイヤーを物語から置き去りにはしない。多くのADVファン、キャラクターゲームファンに手を取って欲しい一作だ。
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2018振り返り 私的GOTY
ふりかえろう。プレイしたゲームは以下です。
PC
Assault Spy
Black Bird
Euphoria
Fortnite
Getting Over It with Bennett Foddy
Hover
Killer7
Iconoclasts
La-Mulana2
Life is Strange:Before the Storm
Link:The Unleashed Nexus
THE MISSING
SEPTEMBER 1999
Space Invaders Extream
VOXSOLAR
A Way Out
みにくいモジカの子
PS4
ASTRO BOT
Detroit:Becom Human
Déraciné
Far Cry 5
Firewall Zero Hour
God of War
GUNGRAVE VR
Marvel's Spider-Man
Red Dead Redemption 2
Tetris Effect
アイドルマスター ステラステージ
Switch
LUMINES Remaster
Nintendo Labo
ファミリーコンピューター Nintendo Switch Online
返校
大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL
Web
アイドルマスター シャイニーカラーズ
Netflix
ブラックミラー:バンダースナッチ
以下に特に印象に残ったものについてコメントします。
アイドルマスター ステラステージ
数多くの派生作品が生み出されている本シリーズですが、ステラステージはアーケード及び家庭用ゲーム機で展開されてきた本家アイドルマスターの新作です。
自分にとっての本家アイドルマスターと言えば”アイドルマスター2″で、これはアニメ化に至るほどの人気を得た作品とは思えない硬派なスケジューリングを要求するシミュレーションゲームであると同時に、3Dモデルによるライブパートにインタラクティブミュージックの技術を組み込んだ”ライブバトルシステム”を筆頭とする、アイドルマスターというゲームの為だけに用意されたシステムが惜しみなく投入された唯一無二の傑作でした。しかしこの方針で制作された作品は2が最後で、以降はナンバリングの付かない、アイドルとの会話パートを報酬に所謂音ゲーを繰り返すファンディスク的なシステムの新作しか出なくなっている状況です。
特に前作プラチナスターズは、サービス型運営により常時アップデートされる”デレステ”がリリース済みであるにも関わらず、家庭用ゲームならではの魅力が乏しく苦しい内容でした。この為、それからわずか1年で発売された本作は単純なアップデート版のようなものと期待していなかったのですが、結果的にこれは大間違いでした。
まず音ゲーであるという部分に変化はありませんが、カレンダーの概念が用意され、1年間という期間、4(週)×12(ヶ月)=48回のアクション内で、6つの大会をクリアする目標が用意されました。これは家庭用ゲーム機ならではの遊びを模索する中で、ナンバリングタイトルにおけるスケジューリングを参照したものと考えられ、シミュレーションゲームとしてのアイドルマスターに思い入れのある自分としては嬉しい要素でした。しかしこれだけでは収まらず、天海春香のシナリオが「1」を意識した内容であったり、一部のミッションに「2」における地獄の特訓やアニメ版のシナリオを再現したものが含まれていたり、しまいには設定の異なるパラレル作品に登場した歴代のライバル事務所の楽曲を歌う謎の少女詩花が登場したりと、過去作品を想起させる要素が次から次へと登場するのです。
最近では「MGSV」がシリーズで初めてオープンワールドを採用した際に、過去作品を想起させる要素を積極的に取り込む試みを行っていました。これはこれまでと比較してより制限のない巨大な空間で駆動するメカニクスを構築する中で自然に発生する欲求なのかもしれません。そして今回の「ステラステージ」は、非ナンバリングタイトルの音ゲーの繰り返しのメカニクスをナンバリングタイトルのメカニクスを抽象化したものであると解釈した事で、同様の試みとなったものと考えます。
これは本来のファンディスクの在り方とも一致しているほか、ゲーム及びメディアミックスで10年以上展開してきたシリーズの歴史をゲームメカニクスの中で追体験させるという凄まじい内容であり、ナンバリングタイトルでは決してできないことを達成してみせた、自分にとってアイドルマスター2と並ぶもう一つのマスターピースとなった作品なのでした。
Assault Spy
昨今「〇〇のスタッフによる新作」という触れ込みで取り上げられる作品を度々見かけますが、一つのタイトルに大量の人員が投入される現在のゲーム開発においていまいち信用できないフレーズでもあります。
本作も元デビルメイクライ開発スタッフによるスラッシュアクションという触れ込みで話題となった作品ではありますが、ツイッターに投稿されるGIFから興味を持ち早期アクセス版を購入してみたところ個人制作とは思えない手触りの良さに驚愕させられました。開発後半にはNIS Americaがパブリッシャーについた事で外注できるようになりクオリティの底上げに成功したこともその理由の一つでしょうが、強力なボタン長押し発動技を筆頭とする各アクションへの適切なリスクとリターンの設定や、コンボ創作意欲を刺激する技仕様など、アクションのつくりの”分かっている感”が尋常ではありません。
これがきっかけで制作者であるWazen氏について調べてみたところ、カプコン入社前に「アサルとスパイ」というフリーゲームを制作しておりこれも傑作であるらしいのですがアクションゲームではなくノベルゲームなのです(!)。ここからは完全な邪推ですが、カプコンを選択した経緯はどちらかといえば逆転裁判などのADVを開発している大手企業であることが大きく、アクションのノウハウは在籍していた期間だけで吸収してしまったのではないのでしょうか。少なくとも「Assault Spy」からはジャンルの面白さを理解し、体系づけ、再現してみせるセンスの良さと開発力の高さを感じさせ、日本ならではのゲームを開発する個人開発者として今後も注目していきたい人物です。
また、本作はデビルメイクライや神谷英樹によるベヨネッタよりも優れていると思える部分すらあります。
一つは、同じスラッシュアクションでも地形を意識した立ち回りが強く求められる事です。ステージには敵を即時に処分することができる奈落や電気鉄線などのギミックや、ミサイル等の飛び道具を回避するための障害物が用意されており、環境に応じた振る舞いを求められます。これは意外に珍しい方向性と思っていて、大手デベロッパーによるアクションゲームはプレイヤー及び敵キャラクターがとれるアクションを徐々に増やし習熟してもらう事で間を持たせることが殆どではないでしょうか。
二つは、アクション以外��余剰な要素がない事です。神谷英樹作品は特に顕著ですが、合間にちょっとした謎解きが入ったり、ステージ内にミニゲームをプレイできる隠しエリアが用意されていて未クリアのまま進めるとチャプターのリザルトが満点評価にならない、といった事があります。その点本作は僅かな特殊イベントを除いてアクションパートで構成されておりテンポ良く進めていくことができます。
これらが揃っていることで、本作はまるでゲームセンターに置かれたベルトスクロールアクションのように、ゲームを起動した瞬間からクリアするまで暴力の快楽が続く高純度なアクションゲームとして完成しているのです。
FireWall Zero Hour
発売当初の盛り上がりも落ち着いてきたPSVRですが、SIEは継続して新規タイトルを投入し続けており、その中でもJapan Studioによる「ASTRO BOT」やフロムソフトウェアによる「déraciné」は、これまで培われてきたVRゲームの文法を整理して3Dプラットフォーマーへ、ADVへ見事に適用してみせた傑作でした。しかしその一方、VR立ち上げ当初の初期衝動を思わせる直球さと、実はいいところを突いてるのでは?と思わせるポテンシャルを持ったタイトルがひっそりとリリースされていました。それが「FireWall Zero Hour」です。
本作はPSVRのガンコントローラーを用いてプレイするマルチプレイヤー型のFPSで、4人1組のチームを組んで、攻撃側、防衛側に分かれて対戦します。ゲームが開始されると防衛側の陣地内にランダムでターゲットが配置されるので、攻撃側は制限時間内にターゲットを発見してインタラクトできれば勝利となります。
ここまではVRで遊べるFPSという点以外珍しくもない内容ですが、本作の特徴は一度キルされると二度と復活できないという点です。このためプレイヤーはボイスチャットを駆使してチームメンバーと連携し、誰一人死なないよう慎重に前進していく必要があります。かつマップは基本的に視界が通らない様にデザインされているため、両陣営同士で自然とかくれんぼをすることになります。屋内ステージではマルチプレイ型のFPSには珍しく可動式のドアが多数配置されており、通過した後は半開きになり痕跡が残るなんて仕組みも用意されています。
両チームが遭遇して撃ち合いが開始したものの互いに前進できず状況が硬直してしまった際は、誰かが裏をかいて別ルートから前進しなくてはならないのではないか、しかし持ち場を離れた隙に攻められてしまうのではないか、そもそも迷っている間に回り込まれているのではないか、と見えない敵に翻弄されることになります。
このように本作には「Dead by Daylight」で行動の読めない生きた人間が操作する鬼役と対峙したときの居心地の悪さをFPSに混入させたかのような新しい体験があります。PSVRとガンコンを持っているならば一度触ってみて損はないはず。
余談ですが、なぜこのようなストイックなルールになってしまったかというと、VRゲームの制限から逆算的に導かれたデザインであるためでしょう。VRゲームを制作する上でまず注意しなければならないのは、一般的な3Dゲームのようにスティックでの自由なカメラ移動を行うと強烈な酔いに襲われるという点です。この問題には一応の回避策は存在し、カメラを滑らかに回転させるのではなく、カクカクと30度ずつ動かしてやることで酔いを大幅に削減することができます。しかしこれでは激しく左右にカメラを動かすCODのようなスポーツ系FPSは成立しません。このため「FireWall Zero Hour」は、後者のカメラ操作を採用しつつ、ゲームスピードを低下させるルールを付与することで従来の自由移動型のFPSを実現しているのです。
実は前述した「ASTRO BOT」や「déraciné」も同じくVR特有の制限から逆算したゲームデザインであろう部分が垣間見えます。しかしこの制限こそがこれまでになかった新しいゲームが生まれる土壌にもなっており、これからのVRにもまだまだ期待しています。
GOTY : A Way Out
2018年度どころかオールタイムベストに入る一本です。
囚人である2人の主人公が刑務所からの脱獄を図るというアクションゲームで、ざっくり言ってしまえばCo-op版「アンチャーテッド」のようなゲームなのですが、”2人プレイ専用”であるという点が特徴です。
本作を手掛けるのは映画監督の経歴を持つジョセフ・ファレスが率いるHazelight Studioで、以前「Brothers – A Tale of Two Sons」というゲームをリリースしていました。「Brothers」は二人の兄弟が父親を救うための薬を得るために冒険するアクションアドベンチャーで、兄弟をそれぞれ右スティックと左スティックで操作する特殊な操作体系を持っています。そしてその操作体系を利用した”とある演出”により、決定的な評価を得たゲームでもあります。
ここまでの情報を知っている人ならば想像がついてしまうのですが、やはり「A Way Out」でも2人プレイ専用であることを利用した衝撃的な演出が用意されているのです。これ以上はネタバレになるため詳しくは説明できませんが、これまでのどんなゲームでも味わったことのない複雑な感情を味わうことになります(ネタの性質上過言ではないはず)。しかし、それがどんな結末であったとしても、隣に、もしくはヘッドセットの向こうに、すぐさまその感情を分かち合える相手が居るという意味では「Brothers」よりも良心的なのかもしれません。
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2017 振り返り 私的GOTY
2017年にプレイしたゲームの振り返り。
PC
Absolver
akashicforce
Life is Strange
PHRASEFIGHT
Quantum Break
SOMA
Tacoma
Undertale
VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action
大神 絶景版
PS4
BIOHAZARD 7 resident evil
Dark Souls 3
Farpoint
GRAVITY DAZE 2/重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択
GUNGRAVE VR
Horizon Zero Dawn
LET IT DIE
NieR:Automata
RUINER
Yooka-Laylee
アイドルマスター ステラステージ
アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝
この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO
ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて
ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期
フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと
ヘディング工場
Switch
ARMS
いっしょにチョキッと スニッパーズ
ウルトラストリートファイターII ザ・ファイナルチャレンジャーズ
ゼルダの伝説 Bless of the Wild
スプラトゥーン2
スーパーマリオオデッセイ
iOS
Ghostopia(EP3)
Million Onion Hotel
アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ
Arcade
電車でGO!!
下記から特に印象に残った作品についてコメントしていく。
Ghostopia #3
ゲーム制作サークル超水道による連作ADVの新エピソード。上記スクリーンショットに見られるような、”思いついてもやらない”凝りに凝った挿絵演出が連発する宝石箱のような作品。死んでも蘇る幽霊たちの街、という設定を生かした やりすぎない暴力描写が、 これまでの超水道作品になかった良きスパイスとなっていると思う。
VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action

大変話題となったので説明は不要かも。ベネズエラのチームが制作したADVで、バーデンダーアクションの名の通り、バーテンダーとなり客にカクテルを出すことで物語が進行することが特色となっている。しかしカクテルの作成はストーリーに大きな影響は及ぼさないため純粋にテキストを楽しむゲームといってよく、ストーリーテリングの巧みさとキャラクター達の魅力でラストまで引っ張ってくれる。ベネズエラの不安定な情勢が反映された不穏な街と、その中で市井の徒として暮らす主人公達の生活にスコープを合わせた小さな物語は、日本で暮らす自分の心にも寄り添ってくれた。
GOTY:ダンガンロンパV3

大規模なメディアミックス展開は続けられていたものの、長らく沈黙していたダンガンロンパシリーズの新作。賛否両論のEDが大きな話題となったものの自分が最も評価しているのは第1話の完成度。ゲームでやるミステリとして挑戦的なトリックを採用しているうえに、少年漫画風であるダンガンロンパであるからこそ成立する物語と、マンネリズムを感じさせるどころか更に洗練されたものを提供しようとする制作サイドの高すぎる熱量に圧倒させられた。 今年はオープンワールドのスタンダードを書き換えるポテンシャルを感じさせるブレスオブザワイルドや、大好きだったグラビティデイズの続��など期待の新作が揃っていたものの、オープンワールドという形式自体に飽きが来てしまったのか今一つ熱量が上がらないままだった。その反動か余剰な情報が極限までそぎ落とされるADV形式の作品に強く魅力を感じていた部分がある。 本年も良きゲーム体験ができますよう。
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2017振り返り ベスト映画とか
たまには映画の話でも。。
今年は東京に越したことで足を伸ばせばなんでも見れるようになったので、はしゃいで50本くらい見たと思う。
特に良かったものをピックアップして最後にベストを出す。
夜明け告げるルーのうた/湯浅政明
湯浅監督の新作は突然役者が踊りだします。やったね。
マンチェスターバイザシー/ケネス・ロナーガン

ベストとは別に一番見てほしい映画はこれ。誠実な悲劇の描き方をしていると思う。
ジョンウィック2/チャド・スタエルスキ

人を傷つけるのに最も手っ取り早い方法は車を使うこと。
スパイダーマン ホームカミング/ジョン・ワッツ

すでに実写化を経験しているスパイダーマンの新作はまさかの学生映画でした。すごいぞマーベル。
ベイビードライバー/エドガー・ライト
はぐれものたちのカーアクション映画。生存戦略、しませんか?
ELLE/ポール・バーホーベン

自分らしく生きないことのほうが罪だ (ってホドロフスキーが言ってた) 。作中で登場するゲームはStyxだろうか?
エンドレス・ポエトリー/アレハンドロ・ホドロフスキー

前作『リアリティのダンス 』 が実質ホドロフスキー父の話であったに対して、成長して父の呪縛から解放された青年ホドロフスキーが今度こそ主人公。ファンがホドロフスキーへ望むものとホドロフスキー自身の望みが共存する奇妙な物語。
はいからさんが通る/古橋一浩
ひたすら楽しい100分。へべれけ早見沙織に会いに行こう。
『花筐/HANAGATAMI 』/大林宣彦

作風がヤバくなり続けている大林監督の新作は奇しくもホドロフスキーと同じく青春映画。近づく戦争による死の気配に狂う人々と前衛的な演出が見事に結合する。酔い止めを持って挑みたい一本。
2017ベスト作品
エンドレス・ポエトリー
今回は選外としたムーンライトやスターウォーズEP8を含め、他人や世間の抑圧からの解放をテーマにした作品が光る年でした。(ドラマってそういうものかもしれないけど)
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私的Goty2016
2016年にプレイしたゲームをまとめてみた。年末はバタバタしてたせいで紹介文は書けてない。
PC
Back in 1995
DARIUSBURST Chronicle Saviours
Dishonored
Don't Starve Together
HaloclineSystems
INSIDE
Momodora Ⅲ
The Siver Case
Undertale
The Witness
四季の狂剣
凍京NECRO
PS4
Dishonored2
Fallout4
FF15
Furi
INVERSUS
Overwatch
Pixel Junk Shooter Ultimate
Rocket League
Super Time Force ULTRA
The Tomorrow Children
Watch_Dogs2
アイドルマスター プラチナスターズ
アンチャーテッド4
ストリートファイターV
テイルズオブベルセリア
バウンド
ペルソナ5
ルートレター
人食いの大鷲トリコ
PSVR
Eagle Flight
Rez Infinite
Rigs
Thumper
サマーレッスン
デレステVR
つみきVLOQ VR
iOS
Ghostpia
Mario Run
Mini Metro
Pause
PlayGround
Pokemon Go
TouchTone
Verreciel
スバラシティ
デレステ
ローグHEX
Arcade
CHUNITHM AIR
THE IDOLM@STER
電車でGO!
GOTY
RezInfinite(Area X)
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デジゲー博2016
今年も行ってきたので何点か紹介。
Merkava Avalanche / winter clown works
アーマードコアやタイタンフォールとは違う、バイク形状のロボットアクションゲーム。ワイヤーをひっかけたりすれ違いざまに斬撃を入れることで敵を転倒させ、最後に接近してとどめを刺す二段シークエンスのらしさがカッコいい。
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Spring Crisis 2 / ほわいとふれあ
地面から野菜を引っこ抜いて戦うシステムが特徴の2Dアクションゲーム。任天堂好きならピンとくる方��らっしゃると思いますが、スーパーマリオUSAのリスペクト作品とのこと。強制スクロール、ツララ、電撃罠などステージごとの固有ギミックにも富んでいて最後まで飽きませんでした。
【ニコニコ動画】【紅楼夢12】Spring Crisis 2 PV【秋季例大祭3】
「空棲精神性 レゾナンス / コンフリクタ」 / Reminisce
驚くべきことに正統なRezのフォロワー作品です。3D空間を飛び回りながらロックオンを駆使して敵を撃破していくことが目的ですが、ロックオンと撃破のSEは完全にRezを再現することに成功しています。また高速移動や近接攻撃といった行動すべてがインタラクテ��ブミュージックになっており、何をしていても気持ちいい驚異の設計となっています。まだプレイヤーの動きと音楽との連携を作りこんだ段階のようでゲームの全容は見えてきませんが、今後が非常に楽しみです。
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惑星まりも
謎の新作を購入しました。なぞー。
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Halocline.Systems / PostHumanWanderings
謎です。システムはMystなどのPS1時代の3Dアドベンチャーですが、クリアの概念はなく、部屋からアクセスできる映像コンテンツを閲覧したり、惑星を散策することを楽しむゲームです。3Dグラフィック創世記に戻りたくなったときのために、このデモディスクは大切にとっておくことにします。
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私的GOTY 2015年のオススメゲーム
今年プレイしたゲームで特に印象に残った作品を紹介していきます。また最後に2015年のベスト作品を一本選出します。
テイルズオブゼスティリア
思えば2015年はテイルズから始まった年でした。TOZの優れている点は、戦闘システムが3D化(マルチライン化)した時からずっと付き纏っている、後衛キャラの防衛問題に解答を出したことにあります。
2D時代のテイルズの戦闘システムは、前線を守るゲームでした。近接攻撃キャラが敵を前線に押し留め後衛キャラを守ることで、攻撃魔法や回復魔法が機能し戦闘を有利に進められるようになります。2003年に発売されたテイルズオブシンフォニアでは初めて全編3Dでの制作が行われ、これは見た目の進化だけでなく、戦闘フィールドが3D化されたことで水平方向への広がりが生まれ、より複雑な戦闘を楽しむことができるようになりました。しかし同時に2Dではあった前線という概念がなくなったことで、後衛キャラがボコられやすくなるという問題も生まれました。
それから10年以上経った現在、TOZはこの問題の解答として「神衣」システムを実装していました。これはボタンひとつで近接攻撃キャラと後衛キャラが「合体」し、強力な範囲攻撃を繰り出せる1キャラになるという冗談のようなシステムです。しかしこれによりTOZは3D化以降、最も欠点のない戦闘システムを持った作品となったのでした。
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△初めて見たときは面食らいましたが、プレイしてみると本当に快適なのです。
D4 season1
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D4はレッドシーズプロファイルのディレクターを務めたSWERY氏によるアドベンチャーゲームです。レッドシーズプロファイルはドラマ「ツインピークス」の影響を受けたオープンワールド形式のアドベンチャーゲームで、ケレン味の強い世界観やツインピークス風では終わらせない巧みなゲームデザインが光る作品でした。しかしアクションパートの完成度が低く地獄の仕上がりであったことから、最も評価が割れたゲームとしてギネスに認定された経歴を持ちます。本作はSWERY氏の作風はそのままに、広大なオープンワールドからは打って変わり、部屋の一室や飛行機の内部といった閉ざされた空間で様々なオブジェクトにインタラクトすることで謎を解いていくという、アクション要素の低い、レッドシーズプロファイルのいいとこ取りな内容となっています。
SWERY氏のゲームをプレイしていると小島監督の作品を思い出させられます。それは映画・ドラマなどの映像作品からの影響を受けていることや、また表現したいものとそのために必要なゲームデザインを構築できる手腕を持っているという点です。その巧みなゲームデザインゆえに、二人の作品はプレイヤーとゲームの関係をあぶり出すような演出が度々出現し機能します。すでに名作を連発しているSWERY氏ですが、この先さらにとんでもない何かを作ってくれるのではないかという予感をひしひしと感じています。
D4でSWERY氏の世界に触れ、もし興味が湧いたならばレッドシーズプロファイルもプレイしてみるのをお勧めします。
The Beginner's Guide
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The Beginners Guideは複雑な物語構造を持った作品です。このゲームはアマチュアのゲーム製作者であるCodaの作成したプライベートなゲーム群を、その知人であるDaveyが編集を加え一繋ぎの作品にしてネット上に公開したもの、という設定になっています。そして実際にこのゲームをSteam、Humble Storeで配信している人物こそ、「The Stanley Parable」の製作者でもあるDavey Wredenなのです。
「製作者による解説を聞きながらプレイできるゲーム」は、すでに存在しているものとしてはMGS4にて行われた「Guns of The HIDECHAN!Radio.」企画があります。しかし本作は純粋なドキュメンタリーではなく、ゲームプレイを通して、他人に公開する予定のなかったCodaの作品をなぜDaveyは勝手に編集して公開したのか?公開したことで二人に何が起こったのか?について物語られるフィクションです。コントローラーを握れば、Davey Wredenの仕掛けた秀逸な演出があなたを彼らの物語の中に投げ込んでくれるでしょう。
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△「Guns of The HIDECHAN!Radio.」はゲーム内BGMを変更できるアイテムiPodを使用してオーディオコメンタリーをやろうという企画でした。
2015ベストゲーム
四季の狂剣・神無絶景
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神無絶景とは、ゲームをプレイしている最中にふと音楽と演出が絶妙にかみ合った瞬間やゲーム内のキャラに完全に自己投影できてしまった瞬間に不意に涙を流してしまった時…神の介在しない絶景すなわち神無絶景を垣間見た瞬間と名付けたものである
2015年のベストゲームは四季の狂剣・神無絶景です。四季の狂剣・神無絶景は、サークル「みょふ~会」によるアクション&ノベルゲームで、江戸時代の日本をモチーフにした日常的に真剣勝負が行われる世界を舞台に、多数のキャラクター達の群青劇が描かれます。
まず驚かされるのが極限まで要素を削ぎ落とした一次元ゲージで表現されるバトルシステムです。基本的な操作もZキーによる「前進」(後退すら存在しない)とXキーによる「攻撃」の2パターンのみで、あとは補助的に使用されるキーが2つ存在するのみです。しかしながらキーの長押しによる細かい挙動制御や、一定��件で発動する特殊状況、そして画面の8割を埋めるflashで演出されるキャラクターアニメーションが奥深い戦闘を演出しています。これは個人製作による省力化思考から逆算して生み出されたものであるのは確かだとは思うのですが、Zキーの「前進」は本作の半分を占めるノベルパートを読み進めるためのZキーでもあり、ノベルパートと戦闘パートを違和感なく接続するための装置ともなっています。(キラー7の◯ボタンによる移動なんかを思い出したりします)
戦闘システムの練度もさることながら、本作の最大の魅力は、個人製作作品、商業作品含めて見渡してもまず目にかかれないほどの「キャラ」の立ったキャラクター達です。彼らはその強烈なキャラゆえに、己の信念のもと真剣勝負を挑み次々と散っていきます。そしてその中で「俺は死ぬわけにはいかないんだ」と叫ぶ主人公、緋夕絶機がEDへと走り続けます。Zキーを押し続け、多くの喪失を共にした緋夕絶機と共に迎えるEDには神無絶景が広がっていることでしょう。
以上2015年のオススメゲームでした。それでは良いお年を。
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デジゲー博2015へ行ってきた
今年も行ってきましたので簡単にレポ。デジゲー博は展示会であり即売会であるため、ゲーム関係の何かなら何を持ち込んでも良いというところが気に入っています。あとはTIFのようにインディーなドレスコードを持ったゲームがもっと参戦すると面白いのですが、難しいですよね。
プラモウォーズ/電通未踏組
巨大スクリーンに戦艦フィギュアを設置して戦うゲームセンター顔負けの海戦タワーディフェンスゲーム。フィギュアを設置するとその位置から索敵エリアが展開され、エリア内に侵入した敵を自動で攻撃する。フィギュアの裏にはパターン画像が印刷されていて、これをスクリーンが認識するという仕組みだそう。野生の男氏の乗馬マシーン×oculus riftに並ぶインパクトでした。


チート性能のほむほむの図
アトの跡/ほしさらい
「孤高のアオイロ」のほしさらいの新作。トップビュー視点のアクションゲームだが、体力の概念がほぼ廃止されており、代わりに主人公の後ろをついてくるヒロインを守ることが重要になる。ヨッシーアイランドやICOのような感じ。アクション面では攻撃行動に「反射」機能が付いている点が特殊で、敵の撃ってくる弾を攻撃すると打ち返して逆に相手を倒すことできる。ちなみにマップに転がっているオブジェクトを攻撃しても敵の方へ飛んでいくのでなんでもボコるのが正解。反射アクションの気持ちよさは充分確認できたので、完成版ではヒロインとのストーリーがどんなものになるか気になる。
VOXQUARTER/No Mark Games
昨年もプレイさせてもらったVOXQUARTER。最新版は戦闘バランスがよりシビアになったほか、各コマンドに経験値を振って強化できるシステムが追加され、戦闘前のビルドでうんうん悩む楽しみ方ができるようになりました。あまりにも楽しいのでついついラスボス戦までやってしまいましたが占有しすぎて少し申し訳なかった。
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あとゲームデザインの魔導書も購入。あとでゆっくり読む。
みょふー会
夏コミで手に入れた四季の狂剣 神無絶景が最高の出来だったので、無印版神無絶景を購入。四季の狂剣 神無絶景はDL版が出ているのでオススメしておく。
これからの同人ショップのあり方についての同人誌/三月兎
秋葉原の同人ゲーム専門店三月兎による同人誌。三月兎の品揃えは凄まじく、同人ゲームで欲しいものがあればとりあえずこの店に行くようにしています。この本はそんな同人専門店を経営する中で得られた知見について書かれた貴重な資料なのです。きっと。(これから読む)
伊 for Arduboy/惑星まりも
ソナーで敵を察知して登場する前に魚雷で殺すSTG、伊のArduboy版の展示を見に行った。ArduboyはAuduinoベースで動く小型ゲームマシンで少し前にkickstarterをやってました(僕もBackしました)。まだ出荷されていなかったはずなので、開発者向けの先行版か何かを使っているのだと思います。実物は写真で見た印象よりも小さかったですが、PC版伊の面白さがしっかり再現されていました。
獣の花/MUJINA NEST
昨年も取り上げた獣の花。簡単に解説すると初心者向けにルールをリセットしようという思想の格闘ゲーム。結構気になっているのですが、正直展示物は去年とあまり変わってない感じ。基盤固め中なのだと勝手に想像してます。来年に期待!

キャラデザ良いですよね。早く動かしたい。
箱庭の彼女/ふりかけ屋本店
zip zap bot(ごめんなさいタイトルうろ覚えです…)/デリハリゲーム開発ゼミ総合
この二作品は同時に紹介したい。両作は二つの共通点があって、一つはoculus rift用のVRコンテンツである事。もう一つはVRに監視カメラネタを絡めている事です。箱庭の彼女はRepubliqueのように監視カメラを通して少女を視認しながら基地の最深部へと侵入していくゲームです。せっかくのVRゲームなのに主観視点ではないのかと思われるかもですが、少女の存在感が濃く出ていてこれがなかなか良いのです。そして最深部へ到達すると少女は銃口をこちらへ向けて…とカッコイイオチが用意されています。次にzip zap bot(名前違うかも。指摘下さい)は下半身を無くし動けなくなったロボットが、監視カメラや他のロボットの視界をハックして復活を目指すという内容。システムは完全にWatchDogsのハックと同じものですが、oculus riftで遊ぶと部屋の立体感が感じられてこれまた良い。僕の中でデジゲー博は最新のoculusゲームの体験会の側面が強くなってきていますが、VRネタの最前線はここなのでは!と静かに興奮していたのでした。
以上。
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M3で購入したもの達
M3とは?
音系オンリー即売会があったらいいのになぁ、と思ったことはありませんか? 実は私たちも思いました。 「ないなら作っちゃえ」というわけで、賛同してくださる方を募って、M3準備会を発足することにしました。 現在M3は、音系・映像・マルチメディアを中心とした専門即売会を開催し、送り手と受け手のより密接な出会いの場を作ることを目標に活動しています。 http://www.m3net.jp/about/index.html
という訳でM3に行ってきたので購入したCDを雑に公開してみる。たまにはゲーム以外のネタもいいよね。
1. Pastelphonic/Ymajet
Yamajet氏を知ったのは実はM3の一日前で、たまたまイベントでDJを見たのでした。Cytusなどなどの音ゲーに楽曲を提供されているそう。ゲーム好きなのか分からないけどイベントではマイティースイッチフォースの楽曲を流してくれたりした。
2.不思議の国のアリス/Bitplane
youtube
http://bitplane.info/special/alice/
アメリカン・マギーやヤン・シュヴァンクマイエルの作品みたいなイヤ~なアレンジされたアリスが好きなんだけど、音楽でそれに該当するものは意外と少ない(Nine Inch Nailsはマギーアリスのサントラなので除く)。が、俺たちのBitplaneがやってくれた!ありがとうBitplane!
3.Singular Edits/Bitplane
youtube
http://bitplane.info/special/singular_edits/
Bitplaneの単発発表曲を寄せ集めたアルバム。限定300枚生産のレア品。
4.Reincarnation/Veneo Isrugi
視聴コーナーで聞いて気になったので買い。特典で1時間超の過去作ミックス曲?が付いてきたんだけどこっちも良かった。
5. archive001: reworks+/kamome sano
Yamajet氏を知ったきっかけというのがこのkamome sano氏のリリースパーティ。DJイベントって初めて行ったけどバンドのライブとそんな変わらんのね。
6. ポンコツ・オデッセイ/椎名もた
【ニコニコ動画】【クロスフェード】ポンコツ・オデッセイ/椎名もた
先日「生きる」をリリースしたばかりだったのでこんなに早く新譜が出るとは想定外だった。「生きる」の裏盤的な立ち位置っぽい。
7.日常ニ溺レル / RocketeerTracks
視聴アンドジャケ買い。紙ジャケでもダンボールジャケなのだ。
8. 大吉音13/吉田音楽製作所
http://kitchonofficial.web.fc2.com/disc/daikichi.html#13
こちらも視聴買い。京大の作曲サークルの作品らしい。
以上。
M3は初参加だったんだけどデジゲー博の規模を予想して行ったらその4倍くらいで冷や汗をかいた。ただ人を動かすためのルールの作り方をよく分かった人達が運営しているらしく会場の移動は非常にスムーズに行えた。これがプロの仕事・・・。
特に素晴らしいと思ったのは販売場とは別にある視聴コーナー。この部屋では机の上に参加サークルから提供されたCDがずらーっと並べてあっていて、貸し出してるポータブルCDプレイヤーで自由に試聴することができる。売り場でも視聴コーナーはあったけど売り子さんが自主的に用意したものだし、曲作った本人の前で聞いた後にやっぱり買いませんとは言い辛い。
非常に楽しいイベントだったのでアンテナ広げて次のM3を待とう。
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私的GOTY 2014年のオススメゲーム
今年もやります。私的GOTY記事です。PC、コンシューマ、スマートフォン、アーケード等プラットフォーム問わずオススメしたいお気に入りのタイトルを選出しました。また最後には個人的な趣味で選んだ3つの作品をランキング形式で紹介します。ホリデーセールで安くなっているものやフリーで公開されているものも多いので、年末年始のお供にいかがでしょうか。
I.R.P.2
あの悪夢が帰ってきました。前作I.R.P.は初心者向けプログラミング言語であるHot Soup Processorを用いて制作されたゲームを募集するHSPプログラムコンテストの2008年優秀賞受賞作品です。プログラミングの技術の優劣に関わらず多くの人に作品を発表する機会を提供したいという大会の目的からか、初心者の習作のようなものから個人制作とは思えない本格的な3Dアクションまで多様な作品が投稿されています。そんな中賞を勝ち取ったI.R.P.は、高い技術で勝負するタイプの作品ではなくアイデアと演出力で圧倒していくタイプの作品でした。
作者のKanoguti氏はネット上に多くのフリーソフト、イラスト、音楽などを公開していますが、ネガティブかつ内向的な内容のものが多く、I.R.P.もその一つです。ゲーム内容としては短編のゲームを連続でプレイしていくというもので、マップチップで構成された空間を俯瞰視点で歩くようなものから、3D映像、音楽プレイヤー、キー入力すると反応するもの(?)など様々です。シュールな世界を不条理なルールに基づいて冒険するゲームには「LSD」や「ゆめにっき」といった先人達がいますが、明確な目標を設定しないという斬新さは快楽の薄さにも繋がっていました。こういった特性からこの手のゲームはアートとして扱われることが多いですが、I.R.P.は異なるタイプのゲームを短いスパンで提供することでプレイヤーに飽きを感じさせないことに成功しています。さて、I.R.P.2ですが大きくシステムは変わずより洗練された表現で描かれる精神世界を旅することが出来ます。
ちなみに正式名称はI.R.P.2ではなく「I.R.P. Intelligent-Rackety-Paradise」です。前作は「I.R.P. Imagination-Reality-Paradise」、ややこしいですね。両作ともフリーで公開されているので気になった方は今すぐどうぞ。
I.R.P.2 I.R.P.
SPACE TO GO
むかしむかし、ノベルゲームは果たしてゲームと言えるのか?という議論がなされていた時代がありました。これに対して明確な答えを出そうという気はありませんが、自分の好きなタイミングで文章を読み進めるインタラクティブ性がノベルゲームをゲームたらしめていると僕は考えます。このSPACE TO GOはノベルゲームに音楽を融合することでそのインタラクティブ性を強調しようという試みがなされています。
ゲーム内容は非常にシンプルです。スペースキーを押すとBGMと共に画面奥からテキストが流れくる、以上です。重要なのは流れるBGMがテキストと同様に細切れになっており、ボタンを押してテキストを読み進めるのと同期して音楽が展開していくという点です。タイミングよくスペースキーを押せば綺麗にひと繋ぎの曲が流れますし、ゆっくり進めたり早く進めることも可能です。リズムゲームは楽器を演奏する楽しさを教えてくれましたが、SPACE TO GOはそれとは異なる新しい体験を与えてくれるでしょう。
本作品はブラウザ上で公開されているので興味のある方は今すぐどうぞ。
SPACE TO GO(日本語版) | UnityGameUploader
英語版もあります。文章が英語表記になっただけですが、言語の性質の違いがゲーム体験にも差異を与えているように感じます。
SPACE TO GO (LD29)
Oquonie
OquonieはiOS向けに配信されているアドベンチャーゲームです。プレイヤーはたくさんの部屋が連なって構成される世界を旅することになります。作者のAliceffekt氏はゲームだけでなく音楽やスマートフォン向けアプリなど様々な形態で作品を発表しています。僕が初めて知った彼の作品はHiversairesで、これは弐瓶勉(シドニアの騎士の作者だよ)の漫画のような世界をポイント&クリックで進むアドベンチャーゲームでした。同時期に発表されたアルバムも二瓶氏風です。
<a href="http://aliceffekt.bandcamp.com/album/genesis-iii-20-ov-idyllic-miners" data-mce-href="http://aliceffekt.bandcamp.com/album/genesis-iii-20-ov-idyllic-miners">Genesis III.20 'Ov Idyllic Miners by aliceffekt</a>
その他の作品も無機質で静寂な印象を受けるものが多いですが、本作は新しい表現に挑戦していて手書き調のグラフィックに木や石で作られた部屋など温かみのある世界を描いています。部屋にはちゃぶ台やふすま、コピー機に木目ダンスなどがあり、やはり日本文化からの影響を受けているように思えます。本作の世界は3×3マスに綺麗に収まる部屋が連なる形をしていますが、異文化から見た日本家屋ってこんな感じなんでしょうか。
Aliceffekt氏のゲームの魅力はやはり圧倒的な世界観だと思いますが、美しいアートを持ったゲームは世に溢れています。その中で埋もれない魅力を放っているのはアートをしっかり支えるメカニクスを構築しつつ、デバイスの性質とのすり合わせまでも完璧にやってのけるという点でしょう。Hiversairesでは操作方法としてポイント&クリックを採用しています。スマートフォンやタブレットでは「Aボタン」や「Zキー」のような物理ボタンを持たないため、バーチャルパッドで対応するようなやり方では手触りが悪く、体験を損ねてしまうという問題があります。そういった中でポイント&クリックはタッチパネルと親和性がいいです。Oquonieに関してもスワイプとタッチのみで全ての操作が可能です。
他にもスマートフォンのゲームで地味に効いてくる問題としてセーブデータの扱いというのがあって、電話やメールの対応でアプリを閉じられると進行状況は消えてしまいます。この問題に関してもOquonieとHiversairesの二作はクリアしており、進行状況が飛んでもダメージが小さくなるようなゲーム構造になっています。
そもそもAliceffekt氏はゲームだけでなく歩数に合わせてグラフィックが変化していく万歩計や、独自表記の時計といったスマートフォン向けアプリを過去に発表しており、デバイスの機能を意識したつくり方をしています(しかもどれも完成度が非常に高い)。スマートフォン向けゲーム制作の手法はまだ完成されていない部分が多いですが、そういった中で適切なメカニクスを選択できる美的感覚の持ち主であるAliceffekt氏の作品には強い説得力があります。
余談ですが、個人的には奇妙な住人たちで溢れる世界やモノトーンなデザインはflashゲームのforgetシリーズを思い出します。
▲かつてのflash黄金期に生み出されたforgetシリーズ。個性溢れる住人達と会話することでゲームが進行していきます。
ではここからランキングへ。
3位 君と彼女と彼女の恋。

まさかの18禁枠です。サウンドノベルが好きだ!という人でも美少女ゲームとなると把握できていないという人は多いと思います(かく言う自分もその一人です)。近年のテキストアドベンチャーを表舞台から牽引したタイトルと言えばシュタインズゲートや428になるのでしょうが、本作を開発したニトロプラスもスマガ、アザナエルといったゲームでしか語れないストーリーを追求したタイトルを発表してきました。君と彼女と彼女の恋。もその流れの中にある作品ですが、残念なことに話題性がありすぎる仕掛けだったせいかネタバレが蔓延してしまっています。ここで触れたいのは本作のゴールは上の広告ショーケースのようなドッキリを体験させることにあるわけではないということです。

テキストアドベンチャーは選択肢によってストーリーが変わるフローチャート構造になっていますが、プレイヤーからすれば全ての展開を見たくなるのが自然です。これが美少女ゲームとなると、本命キャラと結ばれたなら2周目は別のキャラを攻略したいという風になってしまいます。この問題意識を多少なり含んでいる作品としてはシュタインズゲートがそうで、あのストーリーは映画バタフライエフェクトのように誰かを幸せにすることで他の誰かが不幸を被ってしまうことを主人公が体験する形になっています。本作はこの問題に真っ向から立ち向かっており、その結果美少女ゲームという枠を超えテキストアドベンチャーというジャンルの二者択一性を強くあぶり出すことに成功しています。選択肢に真剣に悩んだあの頃の気持ちを取り戻したい、という方は是非どうぞ。
(本作は2013年のゲームですが、DL版の発売日が今年ということで許して下さい)
2位 サイコブレイク

サイコブレイクはバイオハザードシリーズの生みの親である三上真司氏率いるタンゴによって開発されたサバイバルシューターです。
本作では海外のAAAタイトルに見られるような没入感を高めるための演出を取り入れつつ、濃密なゲーム体験を提供することで差別化を図っています。4以降のバイオハザードのルールはそのままに、偏執的なまでにこだわられたであろうステージ構成は、アクションゲームにも関わらずパズルを解いているような気分にさせられます。弾薬制限も厳しくハンドガンの弾一つが貴重です。
また今回はウイルスパニック物では無く、とある事件に関わってしまった人物達が揃って悪夢のような世界へ迷い込んでしまうという映画ジェイコブス・ラダーのようなストーリーを採用しています。この設定はホラー要素を与えるだけでなく様々なシチュエーションを強引に繋ぐための理由付けとしても機能しており、空へ吸い込まれたと思ったら知らない街だった・・・なんて調子で病院、下水道、村、洋城、洋館、ビル、ハイウェイなど様々な場所を旅することが出来ます。
強固なレベルデザインと次���に移り変わるシチュエーションは濃密なゲーム体験を与えることに成功しています。最近ゲームをしていても時間を無駄にしてしまっている気がして集中できないよ、なんて悩みを持つ現代人にオススメのタイトルです。
しかしあえて触れると最も惹かれたのは完成し切れなかった歪な部分だったりします。例えば近代ゲームらしく没入感を高める作り込みがされている一方で、木箱を素手攻撃で壊してアイテムを取得するといったゲームらしい部分が残されています。敵デザインにしても初公開PVに登場したキーパーのようなオシャレな奇形頭ボスもいればジャパニーズホラーからやって来たような貞子風のボスもいたりと統一感がありません。面白くなりそうならなんでも取り込んでしまおうという貪欲な思想で作られた本作は、とっ散らかってはいますがそれを含めて面白がれるならば特別な一本になるでしょう。

▲本作のアイコン的キャラクターであるキーパーとの戦いは、映画的演出とゲームプレイが融合した見事なものとなっています
1位 The Vanishing of Ethan Carter

1位に輝いたのはポーランドの開発スタジオThe Astronautsによる一人称アドベンチャーゲーム、The Vanishing of Ethan Carterです。プレイヤーは探偵ポール・プロスペローとなって、依頼主であるイーサン・カーター少年を探しにレッドクリークバレーへと訪れます。
本作は発売前からその美麗なグラフィックが話題になっていました。ゲームの画作りはハードウェアのスペック向上により近年大きく発展していますが、あくまで雛形から生成されるオブジェクトの集合体であり限界があります。その点巧みな配置と作り込みにより構築されるレッドクリークバレーは現実に近い存在感があります。
本記事ではあえて内容について深く触れないこととします。プレイする中で得られる情報からプレイヤーの目的やこの地で起きたことについて少しずつ理解していって下さい。
以上2014年のオススメゲームでした。引っかかる作品があれば幸いです。それでは皆さん、良いお年を。
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