#ご飯の心配をちゃんと優先しないと騙されたまんま
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見れば見るほど普通の人 21世紀1/4経過 迷信を国家社会の基礎に置くのはそろそろやめないと
#なんちゃら制#供養#法要#お祓い#プラシーボ#呪文#痛いの痛いの飛んでけ#おまじない#成仏#笑#可視化#見えてるのに#あの世#��#どこ?#ご飯の心配をちゃんと優先しないと騙されたまんま#富#偏在#富の偏在#正当な権利笑#既得権益#既得権#中抜き#���序笑#儀式#権威#伝統#神聖
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250213 木
【2:10-6:00】
ん... 過去絵を3h以上いじってしまったのか? アホだ
私のむかしの絵はどれもTPOめちゃくちゃですが、当時は「自分のTLにこんなの流れてたらヤだなリポストせんでおこ」みたいな理性的ジャッジが発生しなかったんで非実用的なようわからんNSFW絵でも通りやすかったんです(非エロ寄りCG��介サイトやpixiv一般ランキング等で)
----------------------- 【7:20】
寄せラクガキ会 CANVA使いたての頃。懐かしすぎる。まとめ役が画像まとめずとも各々が画像をペーストして枠の中に放り込むと自動で画面がまとまるのがありがたかった。左上の日付フォントをPhotoshopで毎日配置しなくてよくなったのはマジに革命だった
結局今はCANVAという環境があまりにいろいろ出来すぎるのでそのポテンシャルを限界まで使い切って「見栄えいいログ」作りたい欲に駆られ鬼のような編集カロリー食う催しになっている
カルデラライフガード(鯖管理チーム)4人くらいから「その方向性へ進むのは(皆で足並みそろえて毎日やる朝の行事として)間違っている」と指摘されたが主宰権限振りかざして「画作り特化」の方へ舵をきった。当然ハードル爆上がりして過疎ったがいいものになってはいると思う
ただ優しいだけの馴れ合いは「誰かを楽しませる側」の筋トレとしては間違っている。毎日なにかやれてえらいね、ではなく「負荷伴う画作りをXX日間続けられたんだね、じゃあ次」を実践したログの方が参加した側も文脈知らず初見で観る側も楽しいに決まってる
むしろ私は毎日なんて全然描けてない。毎日描いている参加者に私は感謝してるし刺激もらい続けている
自分好みの「熱い空間」がどこかに存在してくれているとい��心強さってあるだろ? 私は私の魂のためにそういう場所を維持したい
----------------------- 【7:45】
ねむ。ご飯食べて寝るか
----------------------- 【8:10】
店開いた。なんか買いにいく...か
20代の頃の気持ちを今強烈に思い出している
なんなんだ。妻を失ったからか
休日。カーテン越しに感じる朝日に寝ぼけながら目覚め、静かに電源ボタンを明滅させるPowerMacG4クイックシルバーのスリープを解く
そして作りかけのゲームのスクリプトをいじり、自分のホームページのお絵かき掲示板に投稿があるかを確認し、忍者アクセス解析を観て相互リンクの他サイトの様子を見に行く
居間にはすっかり白髪になった60代の母がいる
自分の歳は21か23か...
2年後のことも、5年後のことも想像つかない
未来の自分にどんな運命が待ち受けているかなんて想像もつかないし大して興味も持ってない
あそこから随分遠くへ来てしまった感ある
けど、自分の中にはまだあの頃観ていた景色の強烈な記憶がある
「あの頃の私」は今もあの景色の中で暮らし続けている
・
子供の頃、親ってのは生まれた瞬間から中年で最初っから「親の役割担う生物」として存在しているんだと思っていた
私はいつから「おじさん」の私なんだろう
たぶん親を「子供時代を過ごした経験持つひとりの人間」として、未来の自分の姿と重ね合わせたあたりから「子供としての自分」が揺らぎ始めた
「いやふつうそんなダッサイルート進まないっしょ、カッコ悪い」と思うルートになぜ人は進むのか?
「何処へも行く覚悟決めないとオートで選択させられるルート」ってもんがあるんだ
私は同世代と比べ十分格好いいルート歩んでいると思��たのに
友人の方が2兆倍格好いい生き方してるのを見せつけられてモブ化した。私というキャラの作画が急に「いらすとや」みたいな絵柄になってしまった
自分の外側に自分より圧倒的に「主人公度が高い」存在を認めた時、人は大人になるんだと思う
けど、その友人は人気出始めた当初から「まだ生まれてすらいない子供」の話をしていた。子どもの学区を考慮して家を買うんだ、と...
そんな、この間結婚したばっかじゃん。もう子育ての話なの??
「いうてあと数年で俺らも30歳だしな」って... その時点で彼女すらほぼできたこと���ない俺はなんなんだよ、と
その時に誓ったのだ。もう、とにかく結婚だけはしよう、と
ここで怖じけて「素の自分が選びがちな選択」したらもう彼には一生顔向けできなくな��、と―
人間に興味を持つ。ゲームだけではなく人の温みに興味を持つ
一番苦手な「他者の命の責任負う」ゾーンに入るしかない、と―
ずっとずっと「ごっこ遊び」の中で苦労わかってるフリしてた「他者との触れ合い」の本番始めるしかねぇ、と...
友達に置いていかれたくなかった。先へ進む友人を見送り保育園の檻の中に戻りたくなかった
エクソダスするしかねぇ。180°違う自分になるしかねぇ
そう思った
・
後にも先にもあんな屈辱と寂しさ味わったことない
28歳のあの瞬間が自分にとって最後の勝負のチャンスだと悟った
追わないという選択肢もあったのだ。事実、私はそこから10年近く創作面において足踏みしてしまった
けど、今こうしてもう一度絵を描くことを肯定できるようになってよかった。「絵を描き続けないとドヤされる環境」に自分を閉じ込めておいてよかった
こんな事書いておきつつ私は記憶失くしてもう一度10代から人生をやり直したい
納得と満足は「退屈」の火種。ラスボス倒すと手に入るわけわからん攻撃力の武器や防具あるとどこへ行っても退屈極まりないし物語も動かない
まあ、なら所属ステージ上げろって話だがここから上のステージ行くには今の3倍レベル上げなきゃなんだわ
今がレベル20だとして60くらいまであげなきゃならん。45年生きててレベル20なんだぞ成長カーブの遅さナメんな
各々そういうハードル据えて悩んでるのは事実
偏差値みたいにスコアが可視化されてる所為で凄い人々は文字通り雲の上の存在
逆立ちしたって追いつかないって慣用表現あるが、逆立ちがそもそもなんで加速に役立つこと前提なんだよ
チート10倍したところで追いつかねぇんだよ。そんなんしたらむしろ正道とは違う変なルート入る
・
なりたいもの以上のものに、多分私はなった
けど、私には私が本当になりたかった自分ってもんがある
世界の加速がこんなにも早くなければ、自分なりのスケール感で穏当に積み上げを続けて至りたい地平があった
これは安定失わせる悪い夢だ。娘に明け渡すはずの主人公の椅子にしがみつく大人げない行為だ
妻は晩年「あなたのやりたいようにやればいい」と言っていた
私はどうしたいんだ どうあるべきなのだ
小さな目標を叶えていこ��
本来乗り越えられる筈のないデカすぎる目標は叶ってしまった
私は今、オリジナルガシャポンフィギュアが作りたい
しかし私は企画マンではなく一介のイラストレーターに過ぎない。仕事において私はただのオペレーターでありレンダリングマシーンに過ぎないのだ
マシーン側がクライアントに逆発注をかけるというメチャクチャを、やってもいいものか
まさに下剋上。なんの正当性をもってそれをしたらいいのだ
友人はまずWEB上で大人気になる事でその権限を手に入れた
今は社内政治を勝ち抜くよりSNSで人気者になった方が組織の上の人間の首を縦に振らせやすい
うん。子供はこんな事考えない。会社の仕組み、社会の仕組み、そこで運用される暗黙のルールを意識してボール投げるようになってから、私の現実は無垢さを失った
(なげーよ)
----------------------- 【9:30】
誰からも観られていなさすぎると「観られていない事実そのもの」が不信や無価値の証として扱われるのは世の常で、それはそれとしてその残酷さを取り扱った物語は人気があるというパラドクス
ガンダムのビームライフルの絵でバズっていた某イラスト紹介botアカもそういう「ザ・ノンフィクション」めいた文脈アンド価値で捉えられているのかもしれない(感動ポルノ観点において身近で困っている知人よりも遠くで困ってる他人に対しての方が同情できる現象。番組やbotというフィルターが挟まる事で不運や弱さがポルノ化される)
———
【14:55】
私、pixiv初期シーズンに描いた絵に今の時代で通用する力なんてない思ってるんですけど違うんすかね
ただ、コアな中華ドール界隈のディフォルメやらモチーフ選びのセンスはあの頃の私が追いかけていたフェチが溢れているのを感じます(中韓の流行りは昔から必ず遅れて日本に反映される)
本来流行りが回転するのにあと15年くらい必要だった筈のアレが生成AIのお陰で早まったんすかねー
つまりここ10年くらいのトレンドは生成AIが腐った結論みたいの出し過ぎて陳腐化した、だから「わけわからんモチベーションで描かれたオールドスクールな絵」の価値が上がってきている…とでも?
私は数字しか信じないが数字が出たならどんなメチャクチャな事実も一旦受け入れる
人は数字に騙されるのだから、勢いに乗った嘘の数字を発信者自身も信じることで自然と「騙す」ことができる。本当の詐欺師は嘘発見器に検出されない(嘘だというマインドセットが不要なくらい、当人が操る「虚」に「実」があるから)
いずれにせよ勝てばいい。何よりも、チンケな自分ルールに縛られコンフォートゾーンを抜け出そうとしないダサい自分に
たぶんこれ、中華思想なんす。東アジアの勢いに対抗するには昭和平成の「日本の価値観こそが世界の中心」的勝者思考捨てなきゃなんすわ
もとい、日本の強さの本質は勝者をまねぶ(学ぶの語源は真似ぶである)ことだったはず
いつから強者から素直に影響受ける事を恐れるようになった、血の希釈を恐れるようになった?
まあ、中韓の血は昭和平成世代の日本人が最も取り込みたくない血という認識なのは…
バカ。おっさんくさい人種差別を軸にした屁理屈やめろ。魅力的であれ、エネルギッシュであれ、生産的かつ改善と進化に貪欲であれ
時代が退行したならその退行に寄り添いつつ、本来辿り着くべき未来のエッセンスもブレンドしろ
例えばチューブの中を走る車や電車には合理性がある。あれはチューブ内を真空にして空気抵抗ゼロにする事で最高速度を上げる為のシステムとして考案されたもので透明なチューブを観客に見せつける為のもんじゃない(だから基本的に地下に埋めるものだ)
バカみたいに見える未来像には冷戦当時の優れた頭脳が導き出した色褪せぬ合理性が…
って、舌の根ウェットでおっさん臭いこと書いてる‼︎ やめろ。冷戦とか旧ソビエト連邦とかのワード出すな‼︎ エネルギアの熱すぎるエピソードとか語ろうとすんな
いいですか? こと科学技術のコンセプトに関しちゃ60年代70年代の方がガチで今より優れたものが多い。単にそん時ゃ精度高い工作機械が無かったのと何をするにも人間が計算するしかないから実現までにかかる時間が長過ぎた
そうこうしてるうちに大きな戦争の気配が下火になり束の間の安寧シーズンがやってきた
その呑気な空白シーズンでぬくぬく育ったのが我々絶望を知らない子供たち
平成後期アンド令和生まれは最初から絶望の下に生まれてるから絶望に対する免疫がある
我々は有り余る平和の中ですら絶望を感じていた超貧弱メンタル世代。ある種の温室育ち
だから環境の変化にはめっぽう弱い
鬱になっても死なない人間は、鬱を抱えたまま生きても許される世界に住んでいる住人だけである
強くあれ。子供の頃のリアルに縋るな。朝、優しい気持ちで目覚めたからと言って大人なりの奇跡が起こる事に期待するんじゃない
けど、まあ、目に映る全てのことがメッセージであるという観点には同意する
とりあえずカーテン開け
———
【15:55】
なになになに、何が起きてんのこの状況、っていうドタバタ感溢れるシチュエーションで身勝手なシリアス気取る。自分が平成時代にやってたのはそういうタイプのギャグ
それが今再び通る時代になったと分析した。やるかー滑稽タナトスアンドリビドー。現代版サイバーエログロナンセンス
———
【18:50】
職場戻るべき。だが家のベランダに置いた箱状テントの中で寝てる
なんでそんなとこにテントを張っているかというと虚しさと寒さを味わい、惨めさを感じたいから
以前真冬にこれをカイカイのアニメスタジオ入ってる雑居ビルでやってたらベランダに出るドアに鍵かけられて充電残り4%のスマホで埼玉のスタジオに連絡して人呼んで開けてもらったことあったな
端的に言って迷惑で異常。大人げゼロ
なんか護られてるとか居場所あるって感じしすぎるとやる気失せるんすもん
無理矢理寂しさや孤独感をでっち上げてる節はある
敗北の屈辱感こそが私に起死回生のモチベーションを与えてくれる
妻には「もっとふつうにしてて」と言われ続けたが…
普通の人は絵を描きません。エンタメを生業にしません
普通の人はピエロや料理人やアスリートにはならないの
普通の人が幸せになれるのは押し並べて親が築いた財産とインフラ利用してるから
まあ、私もそうか…
今寝たら終電逃す。だから職場戻らねば
しかし、眠い。寝るのか? 寝てしまうのか私
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今日で、四日目になる。
初めて犬を飼うということで、YouTube で、成犬を預かる心得みたいなものは頭に叩き込んでおいた。色々観る中で、すぐに一人のおじさんの動画を見つけた。とても信頼出来る人な気がした。そのおじさんから様々な飼い慣らし方を学んだ。そのおじさんは、沢山の犬を預かっている。特に暴れる犬を専門に。観ていると、たちまち狂犬が穏やかな顔になっていく。あれだけ噛み付いていた犬達が、おじさんに笑顔で並走している。あ、これや。この通りにしたら、絶対大丈夫や、思った。
僕は、八歳の雌の豆柴を飼うことになった。様々な環境を経てこの家にやって来る訳なので、優しく接し、少しずつ環境にならせていこうと思った。
でも、おじさんは、それは駄目だと言った。
初日が命。と言い切った。
初日を甘やかすと、そのあと、ずっと犬主導の生活になる。今まで辛かったこともあるかもしれない。だから、初めのうちは優しくしてみよう。これが、大間違い。
この家にはこの家のルールがあるということを教えてやらなければならない。理解してくれたら、全力で、褒めてやる。そういったことを叩き込んだ上で、信頼を築き、主従関係を結んでいく。特に柴犬は忠誠心が強く、主従関係を作ったほうが存分に甘えて来るし、むやみに噛んだりしなくなると、おじさんはたんたんと話した。
ごく稀にいらっしゃる。自分の辛かったことやアドバイスなんかを淡々と話す方。
「昨日の晩ごはん、ハンバーグ作ってみたけど、なんかあんまやってんなあ〜。」位のテンションで、死にかけた話とか、誰かに騙されて多額の借金背負ったとか、するすると話す人。聞き心地が良くて、こんな人になりたいなって思える。
おじさんは、そんな「音」を持ってる方に感じた。
まず、室内で飼う場合はゲージを全てどけること。(買ったやつ、全部どけて、今ようわからん窓の前とかに置いてる)これで、犬のストレスを軽減させる。
でも、決して自由にさせない。行ってはいけない場所に入ろうとしたり、触れてはいけない物に向かって行けば、強く低い口調で「ノー」。これを何度も繰り返し、覚えるまでやめない。
散歩の時間はわざとバラバラ。どれだけせがんできても、行かない。そうすることで、これもまた、犬主導の生活から抜ける。この時間に行くと決めてしまうことで、飼い主のストレスを軽減出来る。
だけど時間をバラバラにしようが、散歩には絶対に行ってやること。それにより、犬も、あ、この人、時間バラバラやけど散歩は絶対にいってくれるやん、てなる。生まれる信頼。
そして、散歩は、自由に歩かせない。初めのうちは、前をぐんぐん歩くから、室内で、トレーニングする。リードを繋いで、一緒に、歩く。前を歩くようなら、物凄い太めの強めのノー。藤岡弘ばりのノー。デヴィ夫人ばりに奇譚なくノー。横か後ろを歩けば、全力で、褒める。これを繰り返し、外に出た時、しっかり並走してくれる。出来上がる主従関係。
動物と共に暮らす事は、動物に捧げる事ではない。動物の生活リズムと己に折り合いを付け、出来る限りお互いのストレスを減らして、その上で全力で愛する事だと、おじさんは言った。
絶対にそうや。間違いない。すとんと胸に入ってきた。気持ちのいい音がした。
迎え入れ当日。
鼻を膨らまし、胡座をかき、目を瞑り、反芻する。
甘えて来ても散歩の時間はバラバラ。触ってはいけないものには、ノー。並走トレーニング。
おマメがやってきた。
あっかん。めっちゃかわいい。おやつあげたい。居てくれるだけでええかも。甘やかしたい。俺をめちゃくちゃにして欲しい。だ〜め!とか言わして欲しい。暴れて。そんなに怒らん感じでいくから。俺を困らせて。貢ぐから。なんでも買ってあげる。俺、白い米だけでいけるから。おかずの分とか貯めて、なんでも買ってあげる。いや、買わせて。振り回して。壁にぐちゃぐちゃに当たって血が出るくらい俺を振り回して。好きです。愛じゃないかも。好き。一方的に。
そんな気持ちが心と部屋を走り回っている。
走り回る僕の悪い心を、僕の中の冷静なおじさん魂が、首輪を付けてくれる。
深呼吸をし、気持ちをなんとか切り替え平静を装う。へぇー来たんや位の感じ。そうして、これから宜しく、となんとかクールに放つ。
ここで、甘やかしたら今後関わる。鬼の想いで垂れる目と頬を引っ張り上げる。
緊張の一瞬。
え?あれ?おマメ?
おマメは全然動かない。
おマメは全然走らない。
たまに部屋をくまなく歩くが悪いことは一切しない。
触ってはいけないものにも触れない。
散歩も行きたがらない。
行ってもうんちしたらすぐ帰りたがる。
外、でかいトイレやと思ってるらしい。
部屋の中でリード繋ぐ。
歩いてみた。
きっちり横歩く。
凄いいい子。
散歩行きたがらんの心配。
八歳。
シニア突入らしい。
めっちゃ寝る。
たまーに横来て撫でて欲しいみたいなんしてくるようになってきた。
俺よりちゃんと、距離感保ってる。
皮膚病患ってて、これから暫く週一回シャンプーするんやけど、それでも、病気のせいか身体が酸っぱい匂いしてる。
匂いは、僕敏感やから、慣れれるか不安やった。
今その匂い好きでたまらん。
おもちゃも全然欲しがらん。
投げても全無視。
シニアの女の子はそんなんらしい。
おじさん、お世話になりました。
貴方から学んだことはどれも素晴らしいものでした。
しかし、おマメは、大丈夫でした。
食事は、決められた餌しかあげれない。
病院の先生が、「恐らくこれなかなか食べないと思います。正直、これを食べてくれると有り難いんやけどね。食べない場合は、少しおマメには良くないものが入ってるまだマシなやつをあげましょう」って言われて、とりあえずあげてみた。
食べへんかったら「ノー」って言うてみてもいいんかなあ。ご飯はちゃうかあ。とか、考えながらあげる。
おマメ、バクバク食うてる。
めっちゃええ子やで!
めちゃめちゃ、寝る。
とりあえず、散歩(ほぼうんこだけやけど)終わり、玄関で足拭くとき先に部屋に入ろうとするからその時は「ノー」と言う。
ちょっとだけ、やってますよ感を自分に与えることが出来る。
マメからおマメに変更したんよ|アキナ山名|note
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NoxRika

桝莉花
朝、目を覚ますと、「もう朝か」とがっかりする。希望に満ちた新しい朝起なんてほとんどなく、その日の嫌な予定をいくつか乗り切る作戦を練ってから布団を出る。
マルクスの「自省録」を友人に借りて読んだ時、初めは偉そうな言いぐさに反感を持ったが、日々の中で些細な共感をするたびに、ちょっとかっこいいんじゃないかなどと思うようになった。嫌な予定を数えるだけだった悪い癖を治すため、そこに書いてあったような方法を自分なりに実践している。半ば寝ぼけているから、朝ごはんを食べている時には、どんな作戦だったかもう思い出せない。
ただ、担任の堀田先生に好意を寄せるようになってからは、今日も先生に会いに行こう、が作戦の大半を占めている気がする。
リビングへ出ると、食卓には朝食が並んでおり、お母さんが出勤姿で椅子に半分くらい腰���けてテレビを見ていた。
「あ、莉花。見てニュース」
言われた通りにテレビに目を凝らすと、映っていたのはうちの近所だった。
「えー、引き続き、昨日午後五時頃、○○県立第一高等学校で起きました、無差別殺傷事件の速報をお伝えしております」
全国区のよく見知ったアナウンサーの真剣な顔の下に、速報の文字と四名が現在も重体、教師一名を含む三名が死亡とテロップが出た。
「えっ、これって、あの一高?生徒死んじゃったの」
お母さんは眉根を寄せ、大げさに口をへの字にして頷いた。
「中学の時のお友達とか、一高に行った子もいるんじゃないの?」
しばらくテレビの画面を見詰めながら考えを巡らせた。お母さんは「大変大変」とぼやきながら立ち上がり、
「夕飯は冷蔵庫のカレーあっためて食べてね」
と家を出て行った。
中学の時に一緒にいた友だちはいるけれど、知りうる限り、一高に進学した子はいなかった。そうでなくても、今はもうほぼ誰とも連絡は取り合っていないから、連絡したところでどうせ野次馬だと思われる。
地元の中学校に入学して、立派な自尊心となけなしの学力を持って卒業した。友だちは、いつも一緒にいる子が二人くらい居たけれど、それぞれまた高校で「いつも一緒にいる子」を獲得し、筆マメなタイプじゃなかったために、誕生日以外はほぼ連絡しなくなった。誕生日だって、律儀に覚えているわけじゃなくて、相手がSNSに登録してある日付が私の元へ通知としてやってくるから、おめでとう、また機会があれば遊びに行こうよと言ってあげる。
寂しくはない。幼いことに私は、自分自身のことが何よりも理解し難くて、外界から明確な説明を求められないことに、救われていた。友だちだとかは二の次で、ましてやテレビの向こう側で騒がれる実感のない事件になんて構ってられない。
高校で習うことも、私にはその本質が理解できない。私の表面的なものに、名前と回答を求め、点数を与えて去っていく。後にこの毎日が青春と名乗り出るかも、私には分からない。気の早い麦茶の水筒と、台所に置かれた私の分の弁当。白紙の解答用紙に刻まれた、我が名四文字の美しきかな。
学校に着いたのは七時過ぎだった。大学進学率県内トップを常に目標に掲げている我が高校は、体育会系の部活動には熱心じゃない。緩く活動している部活動なら、そろそろ朝練を始めようという時間だ。駐輪場に自転車を停めると、体育館前を通って下駄箱へ向かうのだが、この時間だと、バスケ部の子たちが準備体操をしていることがあり、身を縮こまらせる。今日はカウントの声が聞こえて来ないから、やってないのかな。横目で見ると、女子バスケ部に囲まれて体育館を解錠する嬉しい後ろ姿が見えた。
担任の堀田先生だ。
そういえば、女子バスケ部の副顧問だったな。
背ばっかり高くて、少し頼りない猫背をもっと眺めたかったけれど、違う学年の、派手な練習着の女子たちに甲高い声で茶化されて、それに気だるげな返事をしている先生は、いつもより遠くに感じた。あ、笑ってる。
いつも通りに身を縮こまらせて、足早に玄関へ駆け上がった。
出欠を取るまでまだ一時間半もあり、校内は静まり返っていた。
教室のエアコンを点け、自身の机に座り、今日の英単語テストの勉強道具を机に広げた。イヤホンをして、好きなアイドルのデビュー曲をかける。
校庭には夏季大会を前にした野球部員たちが集まり、朝練にざわつきだす。イヤホンから私にだけ向けられたポップなラブソングを濁すランニングのかけ声を窓の向こう側に、エアコンの稼働音だけが支配する教室。
「おはよー」
コンビニの袋を提げて入って来た風呂蔵まりあは、机の間を縫い縫い私に近寄って来た。
イヤホンを外しておはよう、と返すと、彼女はそのまま私の前の席に座った。片手でくるくるとした前髪をおでこから剥がし、もう片手に握ったファイルで自分を仰ぎながら、馴れ馴れしく私の手元を覗き込んだ。
「早くない?」
「小テストの勉強今からやろうと思って」
「え、やるだけ偉くない?私もう諦めてるよ」
目の前で手を叩いて下品に笑う。
「いや、普通にやっといた方がいいと思うけど」
叩きつけるような返事をした。
手応えのないコミュニケーション。読んでいた分厚い英単語帳を勢いよく窓から放り投げ、そのまま誤魔化すように浮遊する妄想と、バットとボールが描く金属音の放物線。オーライ、オーライの声。空虚な教室の輪郭をなぞり、小さくなって、そのまま消えた。
「いやー、はは」
向こうが答えたのは、聞こえないフリをした。
まりあとは、限りなく失敗に近い、不自然な交友を持ってしまった。中学を卒業し「いつも一緒にいる子」と離れ、高校に一年通っても馴染めず焦った私は、次なる友だちを求め私よりも馴染めずにいたまりあに声をかけた。短期間で無理やり友だちを作った私は、学校へ来ることが苦手な彼女に優しく接することを、施しであり、自分の価値としてしまっていた。その見返りは、彼女のことを無下に扱っても「いつも一緒にいる」ことだなんて勝手に思い込み、機嫌が悪い時には、正���を装った残酷な振る舞いをして、彼女を打ちのめすことで自分を肯定していた。
出会ってからすぐに距離が縮まって、充分な関係性を築き上げる前からその強度を試すための釘を打っているようなものだ。しかし、人を穿って見ることのできない彼女は私を買い被り、友人という関係を保とうと自らを騙し騙し接してくる。それもまた癪に触った。要はお互いコミュニケーションに異常があるのだ。でも、それを異常だとは言われたくない、自分の法律を受け入れて友だちぶっていてほしい。それは全くの押し付けで、そのことに薄々気付きながらも、目を背けていた。
ちょっとキツい物言いで刺されても、気づかないふりするのが、私たちだったよね。あれ、違ったかな。
しかし、もともと小心者な私は、根拠のない仕打ちを突き通す勇気はなく、すぐに襲い来る罪悪感に負け、口を開いた。
「あ、ねえ…ニュース見た?一高の」
「知ってる!やばくない?文化祭で生徒が刃物振り回したってやつだよね?めっちゃかわいそう。びっくりしてすぐに一高の友達にラインしたもん」
「何人か亡くなってるらしいじゃん」
「え、そうなの、笑うんだけど」
「笑えないでしょ」
それが、彼女の口癖なのも知っていた。勘に触る言葉選びと、軽薄な声。最早揚げ足に近かった。
「あー、ごめん。つい」
片手をこめかみに当て、もう片手の掌をみなまで言うなと私に突き出してくる。この一瞬に関しては、友情なんてかけらもない。人間として、見ていられない振る舞いだった。
「ごめん」
また無視した。小さな地獄がふっと湧いて、冷えて固まり心の地盤を作って行く。
ただ、勘違いしないで欲しい。ほとんどはうそのように友だちらしく笑いあうんだから。その時は私も心がきゅっと嬉しくなる。
黙り込んでいると、クラスメイトがばらばらと入って来て教室は一気に騒がしくなり、まりあは自分の席へ帰っていった。ああ全く、心の中にどんな感情があれば、人は冷静だろう。愛情か、友情か。怒りや不機嫌に支配された言動は、本来の自分を失っていると、本当にそうだろうか。この不器用さや葛藤はいつか、「若かったな」なんて、笑い話になるだろうか。
昼休みの教室に彼女の姿は無かった。席にはまだリュックがあって、別の女子グループが彼女の机とその隣の机をつけて使っている。私は自分の席でお弁当を広げかけ、一度動きを止め片手でスマホを取り出し「そっち行ってもいい?」とまりあにメッセージを送った。すぐに「いいよ!」が返ってくる。お弁当をまとめ直して、スマホと英単語帳を小脇に抱えて、教室を出た。
体育館へと続く昇降口の手前に保健室があり、その奥には保健体育科目の準備室がある。私は保健室の入り口の前に足を止めた。昇降口の外へ目をやると、日陰から日向へ、白く世界が分断されて、陽炎の向こう側には、永遠に続く世界があるような予感さえした。夏の湿気の中にもしっかりと運ばれて香る校庭の土埃は、上空の雲と一緒にのったりと動いて、翳っていた私の足元まで陽射しを連れてくる。目の前の保健だよりの、ちょうど色褪せた部分で止まった。毎日、昼間の日の長い時間はここで太陽が止まって、保健室でしか生きられない子たちを、永遠の向こう側から急かすのだ。
かわいそうに、そう思った。彼女も、教室に居られない時は保健体育の準備室に居る。保健室自体にはクラスメイトも来ることがあるから、顔を合わせたくないらしい。準備室のドアを叩くと、間髪入れずに彼女が飛び出てきた。
「ありがとねえ」
「いいよいいよ、もうご飯食べ終わった?」
二人で準備室の中に入ると、保健室と準備室を繋ぐドアから保健医の仁科先生が顔を出した。
「あれ、二人一緒にたべるの?」
「はい」
私はにこやかに応えた。その時に、彼女がどんな顔をしていたかわからない。ただ、息が漏れるように笑った。
先生の顔も優しげに微笑んで私を見た。ウィンクでもしそうな様子で「おしゃべりは小さい声でお願いね」と何度か頷���、ドアが閉まった。準備室の中は埃っぽくて、段ボールと予備の教材の谷に、会議机と理科室の椅子の食卓を設け、そこだけはさっぱりとしている。卓上に置かれたマグカップには、底の方にカフェオレ色の輪が出来ていた。
「これ、先生が淹れてくれたの?」
「そう、あ、飲みたい?貰ってあげよっか」
「…いいよ」
逃げ込んだ場所で彼女が自分の家のように振舞えるのは、彼女自身の長所であり短所だろう。遠慮の感覚が人と違うと言うか、変に気を遣わないというか、悪意だけで言えば、図々しかった。
ただ、その遠慮のなさは、学年のはじめのうちは人懐っこさとして周知され、彼女はそれなりに人気者だった。深くものを考えずに口に出す言葉は、彼女の印象をより独り歩きさせ、クラスメイトは彼女を竹を割ったような性格の持ち主だと勘違いした。
当然、それは長くは続くはずもなく、互いの理解と時間の流れと共に、彼女は遠慮しないのではなく、もともとの尺度が世間とずれている為に、遠慮ができないのだと気付く。根っからの明るさで人と近く接しているのではなく、距離感がただ分からず踏み込んでいるのだと察した。
私は、当時のクラスの雰囲気や彼女の立場の変遷を鮮明に覚えている。彼女のことが苦手だったから、だからよく見ていた。彼女の間違いや周囲との摩擦を教えることはしなかった。
彼女は今朝提げてきたコンビニの袋の口を縛った。明らかに中身のあるコンビニ袋を、ゴミのように足元に置く。違和感はあったけれど、ここは彼女のテリトリーだから、あからさまにデリケートな感情をわざわざ追求することはない。というか、学校にテリトリーなんてそうそう持てるものじゃないのに、心の弱いことを理由に、こんなに立派な砦を得て。下手に自分の癪に触るようなことはしたくなかった。
「あれ、食べ終わっちゃってた?」
「うん。サンドイッチだけだったからさ」
彼女の顔がにわかに青白く見えた。「食べてていいよ」とこちらに手を伸ばし、連続した動作で私の手元の英単語帳を自分の方へ引き寄せた。
「今日何ページから?」
「えーっとね、自動詞のチャプター2だから…」
「あ、じゃあ問題出してあげるね。意味答えてね」
「えー…自信ないわあ」
「はいじゃあ、あ、え、アンシェント」
「はあ?」
お弁当に入っていたミートボールを頬張りながら、彼女に不信の眼差しを注ぐ。彼女は片肘をついて私を見た。その視線はぶつかってすぐ彼女が逸らして、代わりに脚をばたばたさせた。欠けたものを象徴するような、子供っぽい動きに、心がきゅっと締め付けられた。
「え、待って、ちょっと、そんなのあった?」
「はい時間切れー。正解はねえ、『遺跡、古代の』」
「嘘ちょっと見せて。それ名詞形容詞じゃない?」
箸を置いて、彼女の手から単語帳をとると、彼女が出題してきたその単語が、今回の小テストの出題範囲ではないことを何度か確認した。
「違うし!しかもアンシェントじゃないよ、エインシェント」
「私エインシェントって言わなかった?」
「アンシェントって言った」
「あー、分かった!もう覚えた!エインシェントね!遺跡遺跡」
「お前が覚えてどうすんの!問題出して!」
「えー、何ページって言った?」
私が目の前に突き返した単語帳を手に取って、彼女が嬉しそうにページをめくる。その挙動を、うっとりと見た。視界に霞む準備室の埃と、彼女への優越感は、いつも視界の隅で自分の立派さを際立つ何かに変わって、私を満足させた。
「午後出ないの?」
私には到底できないことだけど、彼女にはできる。彼女にできることは、きっと難しいことじゃない。それが私をいたく安心させた。
「うん。ごめんね、あの、帰ろうと思って」
私は優しい顔をした。続いていく物語に、ただ次回予告をするような、明日会う時の彼女の顔を思い浮かべた。
「プリント、届けに行こうか。机入れておけばいい?」
私は、確信していた。学校で、このまま続いていく今日こそ、今日の午後の授業、放課後の部活へと続いていく私こそ本当の物語で、途中で離脱する彼女が人生の注釈であると。
「うん。ありがとう。机入れといて。出来ればでいいよ、いつもごめんね」
お弁当を食べ終えて、畳みながら、彼女の青白い顔が、心なしか、いつもより痛ましかった。どうしたのかと聞くことも出来たが、今朝の意地悪が後ろめたくて、なにも聞けなかった。
予鈴が鳴って、私が立ち上がると、彼女がそわそわし始めた。
「つぎ、えいご?」
彼女の言葉が、少しずつ私を捉えて、まどろんでいく。
「うん。教室移動あるし、行くね」
「うん…��のさ、いつもさ、ありがとね」
私は、また優しい顔をした。
「え、なんで。また呼んでなー」
そのまま、準備室を出た。教室に戻ろうと一歩を踏み出した時、背中でドアが開く音がした。彼女が出てきたのだと思って足を止め振り返ると、仁科先生が保健室から顔を出して、微笑んできた。
「時間、ちょっといいかなあ?」
私が頷くと、先生は足早に近寄ってきて、私を階段の方まで連れてきた。準備室や保健室から死角になる。
「あのさあ、彼女、今日どうだった?」
「へ」
余りにも間抜けな声が出た。
「いつもと変わらなさそう?」
なんだその質問。漫画やゲームの質問みたい。
「いつもと変わったところは、特に」
「そっかあ」
少し考えた。きっと、これがゲームなら、彼女が食べずに縛ったコンビニ袋の中身について先生に話すことが正解なんだろう。
まるでスパイみたいだ。中心に彼女がいて、その周りでぐるぐる巡る情勢の、その一部になってしまう。そんなバカな。それでも、そこに一矢報いようなんて思わない。 不正解の一端を担う方が嫌だ。
「あ、でも、ご飯食べる前にしまってたかも」
「ご飯?」
「コンビニの、ご飯…」
言葉にすれば増すドラマティックに、語尾がすぼんだ。
「ご飯食べれてなかった?」
「はい」
辛くもなかったけれど、心の奥底の認めたくない部分がチカチカ光っている。
「そうかあ」
仁科先生は全ての人に平等に振る舞う。その平等がが私まで行き届いたところで、始業の鐘が鳴る。平和で知的で嫌味な響き。
「あ、ごめんね、ありがとう!次の授業の先生にはこちらからも連絡しておくから」
仁科先生はかくりと頭を下げた。「あ、ごめんね、ありがとう!」そうプログラミングされたキャラクターのように。
「いえ」
私は私のストーリーの主人公然とするため、そつのない対応でその場を去った。
こうして過ぎてゆく日々は、良くも悪くもない。教育は私に、どこかの第三者に運命を委ねていいと、優しく語りかける。
彼女の居ない教室で、思いのほか時間は静かに過ぎていった。私はずっと一人だった。
放課後はあっという間にやってきて、人懐っこく私の顔を覗き込んだ。
ふと彼女の席を振り返ると、担任の堀田先生が腰を折り曲げ窮屈そうに空いた席にお知らせのプリントを入れて回っていた。
「学園祭開催についてのお知らせ」右上に保護者各位と記されしっとりとしたお知らせは、いつもカバンの隅に眠る羽目になる。夏が過ぎれば学園祭が来る。その前に野球部が地方大会で強豪校に負ける。そこからは夏期講習、そんなルーティンだ。
堀田先生の腰を折る姿は夏の馬に似ていた。立ち上がって「あの」と近寄ると、節ばった手で体重を支えてこっちを見た。「あ」と声を上げた姿には、どこか爵位すら感じる。
「莉花、今日はありがとうね 」
「え?」
「お昼まりあのところへ行ってくれたでしょ」
心がぎゅっと何かに掴まれて、先生の上下する喉仏を見た。
絞り出したのはまた、情けない声だった。
���はい」
「まりあ、元気そうだった?」
わたしは?
昼も脳裏に描いたシナリオを、口の中で反芻する。
「普通でした、割と」
先生は次の言葉を待ちながら、空になったまりあの椅子を引き寄せて腰掛ける。少し嫌だった。目線を合わせるなら、私のことだって、しっかり見てよ。
「でもお昼ご飯、買ってきてたのに、私が行ったら隠しちゃって」
「どういうこと?」
「ご飯食べてないのにご飯食べたって言ってました。あんまりそういうことないかも」
「あ、ほんと」
私を通じて彼女を見ている。
まりあが、先生のことを「堀田ちゃん」と呼んでる姿が目に浮かんだ。私は、そんなことしない。法律の違う世界で、世界一幸せな王国を築いてやる。
「先生」
「私、まりあにプリント届けに行きます」
「ほんと?じゃあお願いしようかな、莉花今日は吹部は?」
「行きます、帰りに寄るので」
「ねえ、莉花さんさ、まりあといつから仲良しなの」
「このクラスになってからですよ」
「そうなんだ、でも二人家近いよね」
「まりあは幼稚園から中学まで大学附属に行ってたと思います。エスカレーターだけど高校までは行かなかったっぽい。私はずっと公立」
「あ、そうかそうか」
耐えられなかった。
頭を軽く下げて教室を出た。
上履きのつま先が、冷たい廊下の床だけを後ろへ後ろへと送る。
私だって、誰かに「どうだった」なんて気にされたい。私も私の居ないところで私のこと心配して欲しい。そんなことばっかりだよ。でもそうでしょ神様、祈るにはおよばないようなくだらないものが、本当は一番欲しいものだったりする。
部活に行きたくない、私も帰りたい。
吹奏楽部のトランペット、「ひみつのアッコちゃん」の出だしが、高らかに飛んできて目の前に立ちふさがる。やっぱり行かなくちゃ、野球部の一回戦が近いから、行って応援曲を練習しなきゃ。ロッカー室でリュックを降ろし楽譜を出そうと中を覗くと、ペンケースが無かった。
教室に戻ると、先生はまりあの椅子に座ったまま、ぼんやりと窓を見ていた。
私の存在しない世界がぽっかりと広がって、寂しいはずなのに、なにを考えてるのか知りたいのに、いまこのままじっとしていたい。自分がドラマの主人公でいられるような、先生以外ピントの合わない私の画面。心臓の音だけが、後から付け足した効果音のように鳴っている。
年齢に合った若さもありながら、当たり障りのない髪型。 短く刈り上げた襟足のせいで、長く見える首。そこに引っかかったUSBの赤いストラップ。薄いブルーのワイシャツ。自分でアイロンしてるのかな。椅子の背もたれと座面の隙間から覗くがっしりとしたベルトに、シャツが吸い込まれている。蛍光灯の消えた教室で、宇宙に漂うような時間。
私だって先生に心配されたい、叱られたい。莉花、スカート短い。
不意に立ち上がってこちらを振り向く先生を確認しても、無駄に抵抗しなかった。
「うわびっくりした。どうした��」
「あ」
口の中で「忘れ物を…」とこぼしながら、目を合わせないように自分の席のペンケースを取って、教室から逃げた。
背中に刺さる先生の視線が痛い?そんなわけない。
十九時前、部活動の片付けを終えて最後のミーティングをしていると、ポケットに入れていたスマートフォンの通知音がその場に響いた。
先輩は「誰?」とこちらを見た。今日のミーティングは怒りたがらない先輩が担当で、こういう時には正直には言わない、名乗り出ない、が暗黙の了解だったから、私は冷や汗をかきながら黙っていた。
「部活中は携帯は禁止です」
野球部の地方大会の対戦日程の書かれたプリントが隣から回ってきた。配布日が昨年度のままだ。去年のデータを使い回して作ったんだろう。
そういえば、叱られたら連帯責任で、やり過ごせそうなら謝ったりしちゃだめだと知ったのも、一年生の時のちょうどこの時期だった気がする。ただ、この時期じゃ少し遅かったわけだが。みんなはとっくに気付いていて、同じホルンパートの人たちに迷惑をかけてから、人と関わることはこんなにも難しいのかと、痛いほど理解した。
昔、社交には虚偽が必要だと言った人が居たけれど、その人は羅生門ばっかりが教材に取り上げられて、私が本当に知りたい話の続きは教科書に載っていなかった。
「じゃあ、お疲れ様でした。明日も部活あります」
先輩の話は一つも頭に入らないまま、解散となった。
ぼんやりと手元のプリントを眺めながら廊下へ出た。
堀田先生は、プリントを作る時、明朝体だけで作ろうとする。大きさを変えたり、枠で囲ったり、多少の配慮以外はほとんど投げやりにも見える。テストは易しい。教科書の太字から出す。それが好きだった。
カクカクした名前も分からない書体でびっしりと日程の書き揃えられた先輩のプリントは、暮れかかった廊下で非常口誘導灯の緑に照らされ歪んだ。
駐輪場でもたもたしていると、「お疲れ」と声をかけられた。蛍光灯に照らされた顔は、隣の席の飯室さんだった。
ちょっと大人びた子で、すごく仲がいいわけではなくても、飯室さんに声をかけられて嬉しくない子はいないと思う。
「莉花ちゃん部活終わり?」
「うん、飯室さんは」
「学祭の実行委員になっちゃったんだ、あたし。だから会議だったの」
「そっかあ」
「莉花ちゃん、吹部だっけ?すごいね」
「そ、そんなことないよ。それしかやることなくて」
自転車ももまばらになった寂しい駐輪場に、蒸し暑い夕暮れが滞留する。気温や天気や時間なんて些細なことでも左右される私と違って、飯室さんはいつもしっかりしていて、明るい子だ。ほとんど誰に対しても、おおよそ思うけれど、こんな風になりたかったなと思う。私の話を一生懸命聞いて、にこにこしてくれるので、つい話を続けてしまう。
飯室さんとの距離感は、些細なことも素直にすごいと心から言えるし、自分の発言もスムーズに選べる。上質な���交のように、友達と上手に話せているその事実もまた、私を励ます。友だちとの距離感は、これくらいが一番いい。
ただ、そうはいかないのが、私の性格なのも分かっている。いい人ぶって踏み込んだり、自分の価値にしたくて関係を作ったり、なによりも、私にも無条件で踏み込んで欲しいと期待してしまう。近づけばまた、相手の悪いところばかり見えてしまうくせに。はじめにまりあに声をかけた時の顔も、無関心なふりをして残酷な振る舞いをした時の顔も、全部一緒になって煮詰まった鍋のようだ。
また集中力を欠いて、飯室さんの声へ話半分に相づちを打っていると、後ろから急に背中をポン、と叩かれた。私も飯室さんも、軽く叫び声をあげた。
「はーい、お嬢さんたち、下校下校」
振り返ると、世界史の細倉先生が長身を折り曲げて顔を見合わせてきた。私が固まっていると、飯室さんの顔が、みるみる明るくなる。
「細倉センセ!びっくりさせないで」
「こんな暗くなった駐輪場で話し込んでるんだから、どう登場しても驚くだろ。危ないからね、早く帰って」
「ねえ聞いて、あたしさ、堀田ちゃんに無理やり学祭実行委員にされたの」
「いいじゃん、どうせ飯室さん帰宅部でしょ。喜んで堀田先生のお役に立ちなさい」
「なにそれー!てかあたし、帰宅部じゃないし!新体操やってるんですけど」
二人の輝かしいやりとりを、口を半分開けて見ていた。たしかに、細倉先生は人気がある。飯室さんが言うには、若いのに紳士的で振る舞いに下品さがなくて、身長も高くて、顔も悪くなくて、授業では下手にスベらないし、大学も有名私立を出ているし、世界史の中で繰り返される暴力を強く念を押すように否定するし、付き合ったら絶対に大切にしてくれるし幸せにしてくれる、らしい。特に飯室さんは、細倉先生のこととなると早口になる。仲良しグループでも、いつも細倉先生の話をしていると言っていた。
イベントごとでは女子に囲まれているのは事実だ。私も別に嫌いじゃない。それ以上のことはよく知らないけれど、毎年学園祭に奥さんと姪っ子を連れてくると、クラスの女子は阿鼻叫喚する。その光景が個人的にはすごく好きだったりする。あ、あと、剣道で全国大会にも出ているらしい。
私はほとんど言葉を交わしたことがない。世界史の点数もそんなに良くない。
「だから、早く帰れっての。見て、桝さんが呆れてるよ」
「莉花ちゃんはそんな子じゃないから」
何を知っていると言うんだ。別にいいけど。
「もう、桝さんこいつどうにかしてよ」
いつのまにか細倉先生の腕にぶら下がっている飯室さんを見て、なんだか可愛くて思わず笑ってしまった。
「桝さん、笑い事じゃないんだって」
私の名前、覚えてるんだな。
結局、細倉先生は私たちを門まで送ってくれた。
「はい、お気をつけて」
ぷらぷらと手を振りながら下校指導のため駐輪場へ戻っていく先生を、飯室さんは緩んだ顔で見送っていた。飯室さん、彼氏いるのに。でもきっと、それとこれとは違うんだろう。私も、堀田先生のことをこんな感じで誰かに話したいな。ふ���まりあの顔が浮かぶけれど、すぐに放課後の堀田先生の声が、まりあ、と呼ぶ。何を考えても嫉妬がつきまとうな。また意味もなく嫌なことを言っちゃいそう。
「ね、やばくない?細倉センセかっこ良すぎじゃない?」
興奮冷めやらぬ飯室さんは、また早口になっている。
「かっこ良かったね、今日の細倉先生。ネクタイなかったから夏バージョンの細倉先生だなと思った」
「はー、もう、なんでもかっこいいよあの人は…。みんなに言おう」
自転車に跨ったまま、仲良しグループに報告をせんとスマートフォンを操作する飯室さんを見て、私もポケットからスマートフォンを出した。そういえば、ミーティング中に鳴った通知の内容を確認してなかった。
画面には、三十分前に届いたまりあからのメッセージが表示されていた。
「莉花ちゃんの名字のマスって、枡で合ってる?」
なんだそりゃ、と思った。
「違うよ。桝だよ」
自分でも収まりの悪い名前だと思った。メッセージはすぐに読まれ、私の送信した「桝だよ」の横に既読マークが付く。
「間違えてた!早く言ってよ」
「ごめんって。今日、プリント渡しに家に行ってもいい?」
これもすぐに既読マークが付いた。少し時間を置いて、
「うん、ありがとう」
と返ってきた。
「家についたら連絡するね」
そう送信して、一生懸命友達と連絡を取り合う飯室さんと軽く挨拶を交わし、自転車をこぎ始めた。
湿気で空気が重い。一漕ぎごとにスカートの裾に不快感がまとわりついてくる。アスファルトは化け物の肌みたいに青信号の点滅を反射し、黄色に変わり、赤くなる。そこへ足をついた。風を切っても爽やかさはないが、止まると今度は溺れそうな心地すらする。頭上を見上げると月はなく、低い雲は湯船に沈んで見るお風呂の蓋のようだった。
やっぱり私も、まりあと、堀田先生の話題で盛り上がりたい。今朝のこと、ちょっと謝りたい。あと、昨日の夜のまりあが好きなアイドルグループが出た音楽番組のことも話し忘れちゃったな。まりあは、堀田先生と細倉先生ならどっちがタイプかな。彼女も変わってるから、やっぱり堀田先生かな。だとしたらこの話題は触れたくないな。でもきっと喋っちゃうだろうな。
新しく整備されたての道を行く。道沿いにはカラオケや量販店が、これでもかというほど広い駐車場と共に建ち並ぶ。
この道は、まっすぐ行けばバイパス道路に繋がるが、脇に逸れるとすぐ新興住宅地に枝分かれする。そこに、まりあの家はある。私が住んでいるのは、まりあの住むさっぱりした住宅街から離れ、大通りに戻って企業の倉庫密集地へと十分くらい漕ぐ団地だ。
一度だけまりあの家に遊びに行ったことがある。イメージと違って、部屋には物が多く、あんなに好きだと言っていたアイドルグループのグッズは全然なかったのに、洋服やらプリントやら、捨てられないものが積み重なっていた。カラーボックスがいくつかあって、中身を見なくても、思い出の品だろうと予想がついた。
まりあには優しくて綺��なお姉さんがいる。看護師をしているらしく、その日も夜勤明けの昼近くにコンビニのお菓子を買って帰って来てくれた。お母さんのことはよく知らないけれど、まりあにはお父さんが居ない。お姉さんとすごく仲がいいんだといつも自慢げにしている。いいなと思いながら聞いていた。
コンビニの角を曲がると、見覚えのある路地に入った。同じような戸建てが整然と並び、小さな自転車や虫かごが各戸の玄関先に添えられている。風呂蔵の表札を探して何周かうろうろし、ようやくまりあの家を見つけた。以前表札を照らしていた小さなランタンは灯っておらず、スマートフォンのライトで照らして確認した。前に来たときよりも少し古びた気がするけれど、前回から二ヶ月しか経っていないのだから、そんなはずはない。
スマートフォンで、まりあに���ッセージを送る。
「家着いた」
既読マークは付かない。
始めのうちは、まあ気がつかないこともあるかと、しばらくサドルに腰掛けスマートフォンをいじっていた。次第に、周囲の住人の目が気になり出して、ひとしきりそわそわした後で、思い切ってインターホンを押した。身を固くして待てども、返事がない。
いよいよ我慢ならなくて、まりあに「家に居ないの?」「ちょっと」と立て続けにメッセージを送る。依然、「家着いた」から読まれる気配がない。一文句送ってやる、と思ったところで、家のドアが勢いよく開いた。
「あ、まりあちゃんの友だち?」
サドルから飛び降り駆け寄ろうとした足が、もつれた。まりあが顔を出すと思い込んでいた暗がりからは、見覚えのない、茶髪の男性が現れた。暗がりで分かりにくいけれど、私と同い年くらいに見える。張り付いたような笑みとサンダルを引きずるようにして一歩、一歩とこちらへ出てくる。緊張と不信感で自転車のハンドルを握る手に力がこもった。
ちょっと、まりあ、どこで何してるの?
男の子は目の前まで来ると肘を郵便受けに軽く引っ掛け、「にこにこ」を貼り付けたまま目を細めて私を見た。
「あ、俺ね、まりあちゃんのお姉さんとお付き合いをさせて頂いている者です。いま風呂蔵家誰も居なくてさ。何か用事かな」
見た目のイメージとは違った、やや低い声だった。街灯にうっすらと照らされた顔は、子供っぽい目の下に少したるみがあって、確かに、第一印象よりは老けて見える、かな。わからない。大学生くらいかな。でも、まりあのお姉さんって、もうすぐ三十歳だって聞いた気がする。
恐怖を消し去れないまま目をいくら凝らしても、判断材料は一向に得られず、声の優しさを信じきるか、とりあえずこの場を後にするか、戸惑う頭で必死に考えた。
「あの、私、まりあと約束してて…」
「えっ?」
男性の顔から笑顔がすとんと落ちた。私の背後に幽霊でも見たのか、不安に強張った表情が一瞬覗き、それを隠すように手が口元を覆った。
「今?会う約束してたの?」
「いや、あの」
彼の不安につられて、私の中の恐怖も思考を���迫する。言葉につっかえていると、ポケットからメッセージの通知音が響いた。助かった、反射的にスマートフォンを手にとって、「すみません!」と自転車に乗りその場から逃げた。
コンビニの角を曲がり、片足を着くとどっと汗が噴き出してきた。ベタベタの手を一度太ももの布で拭ってから、スマートフォンの画面を点灯した。メッセージはまりあからではなく、
「家に帰っていますか?今から帰ります。母さんから、夕飯はどうするよう聞いていますか」
父さんだった。大きいため息が出た。安堵と苛立ちと落胆と、知っている言葉で言えばその三つが混ざったため息だった。
「今友だちの家にプリント届けに来てる。カレーが冷蔵庫にあるらしい」
乱暴に返事を入力する。
一方で、まりあとのメッセージ画面に未だ返事はない。宙に浮いた自分の言葉を見ていると、またしても不安がじわじわと胸を蝕んでいく。
もしも、さっきのあの男が、殺人鬼だったらどうしよう。まりあのお姉さんも、まりあももう殺されちゃってたら。まりあに、もう二度と会えなかったら。あいつの顔を見たし、顔を見られちゃった。口封じに私も殺されちゃうかも知れない。まりあのスマートフォンから名前を割り出されて、家を突き止められて、私が学校に行ってる間に、家族が先に殺されちゃったら。
冷静になればそんなわけがないと理解出来るのだけれど、じっとりとした空気は、いくら吸っても、吐いても、不安に餌をやるようなものだった。冷たい水を思いっきり飲みたい。
とりあえず家に帰ろう、その前に、今一一〇番しないとまずい?いや、まだなにも決まったわけじゃない。勘違いが一番恥ずかしい。でも、まりあがそれで助かるかも知れない。なにが正解だろう。間違えた方を選んだら、バッドエンドは私に回って来るのかな。なんでだ。
コンビニ店内のうるさいポップが、霞んで見える。心細さで鼻の奥がツンとする。スカートを握って俯いていると、背後から名前を呼ばれた。
「莉花ちゃん?」
聞きたかった声に、弾かれたように振り返った。
「まりあ!」
まりあは制服のまま、手にお財布だけを持って立ち尽くしていた。自分の妄想はくだらないと、頭でわかっていても、一度はまりあが死んだ世界を見てきたような心地でいた。ほとんど反射的に、柄にもなくまりあの手を握った。柔らかくて、すべすべで、ほんのり温かかった。まりあは、口角を大きく上げて、幸せそうに肩を震わせて笑った。
「莉花ちゃん、手汗すごいね」
「あのさあ、結構メッセージ送ったんですけど」
「うそ、ごめん!気づかなかった」
いつもみたいに、なにか一言二言刺してやろうと思ったけれど、何も出てこなかった。この声も、全然悪びれないこの態度も、機嫌の悪い時に見れば、きっと下品で軽薄だなんて私は思うんだろうな。でも今は、あまりにも純粋に幸せそうなまりあの姿に釘付けになるしかなかった。もしかして、私の感情を通さずに見るまりあは、いつもこんなに幸せそうに笑っているのかな。
「本当だ、家に行ってくれたんだね、ごめんね」
「そう言ったじゃん!て言うか、何、あの男の人」
「あ、柏原くんに会った?」
「柏原くんって言うの」
「そう、声が低い茶髪の人。もうずっと付き合ってるお姉ちゃんの彼氏」
「そ、そうなんだ」
やっぱり、言ってることは本当だったんだ。盛り上がっていた様々な妄想が、全部恥ずかしさに変換され込み上げてくる。それを誤魔化すように次の話題を切り出す。
「どこか行ってたの?」
「一回、家を出たの。ちょっとコンビニ行こうと思って。今お財布取りに戻ったんだけど、入れ違っちゃったかも、ごめん」
「普通、私が家行くって言ってるのにコンビニ行く?」
「行きません」
「ちょっとくらい待ってくれる?」
まりあは、
「はあい。先生かよ」
ちょっと口を尖らせて、すぐに手を叩いて笑った。
いくら語気を強めても、仲良しで包みこんで、不躾な返事が返ってくる。それがなによりも嬉しかった。怖がることなく、私と喋ってくれる。欲しかったんだ、見返りとか、自分の価値とかルールとか全部関係なく笑ってくれる友だち。あんなに癪に触ったその笑い方も、今はかわいいと思う。
「先生といえばさ、柏原くんって、堀田ちゃんの同級生なんだよ。すごい仲良しらしい」
「え!」
柏原くんって、さっきの男の人のことだ。堀田先生が三十前後だとして、そんな年齢だったのか。というか、堀田先生の友だちってああいう感じなんだ。ちょっと意外だ。
「大学時代の麻雀仲間なんだって。堀田ちゃん、昔タバコ吸ってたらしいよ、笑えるよね」
「なにその話、めちゃめちゃ聴きたい」
飯室さんが仲良しグループと喋っている時の雰囲気を、自然と自分に重ねながら続きを促すと、まりあは嬉しそうに髪をいじりだした。
「今もよくご飯に行くみたいだよ、写メとかないのって聞いたけど、まだ先生たちが大学生の頃はガラケーだったからそういうのはもう無いって」
「ガラケー!」
私も手を叩いて笑った。
「莉花ちゃん、堀田先生好きだよね。いるよね、堀田派」
「少数派かなあ」
「どうなんだろう。堀田ちゃんが刺さる気持ちは分からなくはないけど、多分、細倉先生派の子のほうが真っ当に育つと思うね」
「わかる。細倉先生好きの子は、ちゃんと大学行って、茶髪で髪巻いてオフショル着てカラコンを入れることが出来る。化粧も出来る。なんならもうしてる」
コンビニのパッキリとした照明に照らされ輝くまりあ。手を口の前にやって、肩を揺らしている。自分の話で笑ってもらえることがこんなに嬉しいのか、と少し感動すらしてしまう。
「今日もムロはるちゃんの細倉愛がすごかったよ」
「ムロはる…?」
まりあが眉をしかめた。
「飯室はるなちゃん、ムロはるちゃん」
本人の前では呼べないけれど、みんながそう呼んでいる呼び方を馴れ馴れしく口にしてみた。ピンときたらしいまりあの「あー、飯室ちゃんとも仲良しなんだ」というぎこちない呟きをBGMに、優越感に浸った。私には友だちが沢山いるけれど、まりあには私しか居ないもんね。
コンビニの駐車場へ窮屈そうに入っていく商品配送のトラックですら、今なら笑える。
「最終的には細倉先生の腕にぶら下がってた」
「なんでそうなるの」
「愛しさあまって、ということなんじゃないかな」
「莉花ちゃんはさ、堀田ちゃんの腕にぶら下がっていいってなったら、する?」
「えー、まずならないよ、そんなことには」
「もしも!もしもだよ」
「想像つかないって」
「んー、じゃあ、腕に抱きつくのは」
「え、ええ」
遠くでコンビニのドアが開閉する���び、店内の放送が漏れてくる。視線を落として想像してみると、自分の心音もよく聞こえた。からかうように拍動するのが、耳の奥にくすぐったい。
細倉先生はともかく、堀田先生はそんなにしっかりしてないから、私なんかが体重を掛けようものなら折れてしまうのではないか。「ちょっと、莉花さん」先生は心にも距離を取りたい時、呼び捨てをやめて「さん」を付けて呼ぶ。先生の性格を見ると、元から下の名前を呼び捨てにすること自体が性に合っていないのだろうとは思うけれど。
そもそも、「先生のことが好き」の好きはそういう好きじゃなくて、憧れだから。でも、そう言うとちょっと物足りない。
「莉花ちゃん」
半分笑いながら呼びかけられた。まりあの顔をみると、なんとも言えない微妙な表情をしていた。引かれたのかな。
「顔赤いよ」
「ちょ、ちょっと!やめてよ」
まりあの肩を軽く叩くと、まりあはさっきよりも大きな声で笑った。よろめきながらひとしきり笑って、今度は私の肩に手を置いた。
「でも、堀田ちゃん、うちのお姉ちゃんのことが好きらしいよ」
「え?なにそれ」
「大学同じなんだって、お姉ちゃんと、柏原くんと、堀田先生。三角関係だって」
返事に迷った。自分の感情が邪魔をして、こういう時に飯室さんみたいな人がどう振る舞うかが想像できない。
本当は、堀田先生に好きな人がいるかどうかなんて、どうでもいいんだけど、そんなこと。それよりも、まりあから、明確に私を傷つけようという意思が伝わってきて、それに驚いた。相手がムキになっても、「そんなつもりなかったのに」でまた指をさして笑えるような、無意識を装った残酷さ。
これ、私がいつもやるやつだ。
そのことに気付いて、考えはますます散らばってしまった。
「そんなの、関係無いよ」
しまった。これだから、重いって思われちゃうんだよ、私は。もっと笑って「え、絶対嘘!許せないんですけど」と言うのが、飯室さん風の返し方なのに。軽やかで上手な会話がしたいのに、動作の鈍いパソコンのように、発言の後に考えが遅れてやってくる。まりあの次の言葉に身構えるので精一杯だった。
「あはは」
まりあは、ただ笑って、そのあとは何も言わなかった。
今までにない空気が支配した。
「私、帰るね」
なるべくまりあの顔を見ないようにして、自転車のストッパーを下ろした。悲鳴のような「ガチャン!」が耳に痛い。
「うん」
まりあは、多分笑っていた。
「また明日ね」
「うん」
漕ぎ出す足は、さっきよりももっと重たい。背中にまりあの視線が刺さる。堀田先生の前から去る時とは違って、今度は、本当に。
遠くで鳴るコンビニの店内放送に見送られ、もう二度と戻れない、夜の海に一人で旅立つような心細さだった。
やっとの思いで家に着くと、二十時半を回っていた。父さんが台所でカレーを温めている。
「おかえり、お前の分も温めてるよ」
自室に戻り、リュックを降ろして、ジャージに着替える。また食卓に戻ってくると、机の上にカレーが二つ並んでいた。
「手、洗った?」
返事の代わりにため息をついて、洗面所に向かう。水で手を洗って、食卓に着く。父さんの座っている席の斜向かいに座り、カレーを手前に引き寄せる。
「態度悪い」
���別に悪くない」
「あっそ」
箸立てからスプーンを選んで、カレーに手をつける。
「いただきますが無いじゃん」
「言った」
「言ってねえよ」
私は立ち上がって、「もういい」とだけ吐き捨て、自室に戻った。
父さんとはずっとこうだ。お母さんには遅い反抗期だな、と笑われているけれど、父さんはいつもつっかかってくる。私が反抗期だって、どうしてわかってくれないんだろう。
まりあの家は、お父さんが居なくて、正直羨ましいと思う。私は、私が家で一人にならないよう、朝はお母さんが居て、お母さんが遅くなる夜は父さんがなるべく早く帰ってくるようにしているらしい。大事にされていることがどうしても恥ずかしくて、次に母親と会える日を楽しみだと言うまりあを前にすると、引け目すら感じる。勝手に反抗期になって、それはを隠して、うちも父親と仲悪いんだよね、と笑って、その話題は終わりにする。
せめて、堀田先生みたいな人だったら良かった。
そう思うと心がチクッとした。あんなに好きな堀田先生のことを考えると、みぞおちに鈍い重みを感じる。先生に会いたくない。それがどうしてそうなのかも考えたくない。多分、まりあが悪いんだろうな。まりあのことを考えると、もっと痛いから。
明日の授業の予習課題と、小テストの勉強もあるけど、今日はどうしてもやりたくない。どうせ朝ちょっと勉強したくらいじゃ小テストも落ちるし、予習もやりながら授業受ければどうにかなる。でも、内職しながらの授業は何倍も疲れるんだよな。
見ないようにしてきた、ズル休みという選択肢��視界に入った。スマートフォンを握りしめたままベッドに寝転がって、SNSを見たり、アイドルのブログをチェックしていると、少しづつ瞼が重くなってくる。
瞼を閉じると、今度は手の中に振動を感じる。まどろみの中で、しばらくその振動を感じ、おもむろに目を開けた。
画面にはまりあの名前が表示されている。はっきりしない視界は、うっすらとブルーライトを透かす瞼で再び遮られた。そうだ、まりあ。
私、まりあに文化祭のプリント渡すの、忘れてた。
目が覚めた。歯を磨くのも、お風呂に入るのも忘れて寝てしまったらしい。リビングを覗くと、カーテンが静かに下がったままうっすらと発光していた。人類が全て滅んでしまったのか。今が何時なのか、まだ夢なのか現実なのか曖昧な世界。不安になって、急いで自分の部屋に戻りベッドの上に放りっぱなしのスマートフォンの画面を点けた。
「あ…」
画面に残る不在着信の「六時間前 まりあ」が、寂しげ浮かんでくる。今の時刻は午前四時、さすがに彼女も寝ている時間だ。すれ違ってしまったなあ、と半分寝ぼけた頭をもたげながらベッドに腰掛ける。髪の毛を触ると、汗でベタついて気持ち悪い。枕カバーも洗濯物に出して、シャワーを浴びて…。ああ、面倒だな。
再びベッドに横になると、この世界の出口が睡魔のネオンサインを掲げ、隙間から心地いい重低音をこぼす。
あそこから出て、今度こそ、きちんとした現実の世界に目を覚まそう。そしてベッドの中で、今日を一日��張るための作戦を立てて、学校へ行くんだ。いいや、もうそんな力はないや。
嫌になっちゃうな、忙しい時間割と模試と課題と、部活と友達。自律と友愛と、強い正しさを学び立派な大人になっていく。私以外の人間にはなれないのに、こんなに時間をかけて、一体何をしているんだろう。何と戦ってるんだ。本当は怠けようとか、ズルしようとか思ってない。時間さえあれば、きちんと期待に応えたい。あの子は問題ないねと言われて、膝下丈のスカートをつまんで、一礼。
勉強なんて出来なくても、優しい人になりたい。友達に、家族に優しくできる人になりたいよ。わがまま言わない、酷いこともしたくない。でも、自尊心を育ててくれたのもみんなでしょ。私だって、画面の向こう側のなにかになれるって、そう思ってる、うるさいほどの承認欲求をぶちまけて、ブルーライトに照らされた、ほのかに明るい裾をつまんで、仰々しく礼。鳴り止まない拍手と、実体のない喜び。
自分を守らなくちゃ。どこが不正解かはわからないけれど、欲求や衝動に従うことは無謀だと、自分の薄っぺらい心の声に耳を傾けることは愚かだと、誰かに教わった気がする。誰だったかな、マルクスかな。
今の願いは学校を休むこと。同じその口から語られる将来の夢なんて、信用ならない?違うね。そもそも将来の夢なんてなかった。進路希望調査を、笑われない程度に書いて、それで私のお城を築く。悲しみから私を守ってね。
目を開けると目前のスマートフォンは朝の六時を示していた。
「うそだあ」
ベッドから転げるように起き上がると、枕カバーを剥がして、そのまま呆然と立ち尽くす。今からシャワー浴びたら、髪の毛乾かしてご飯食べて、学校に着くのは朝礼の二十分前くらい。予習の課題も小テストの勉強もできない。泣きそうだ。
力なく制服に着替えると、冴えない頭でリュックサックに教科書を詰め込み部屋を出た。肩に背負うと、リュックの中で二段に重ねた教科書が崩れる感触がした。
続く
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呑まれる
ギタリストの指先は、本当に硬いんだろうか。 スタジオの鍵をまわしつづける夏紀の指が目線の先にみえかくれすると、ふとそんな話を思い出す。ペンだこが出来たことを話す友人のことも。肩の先にぶらさがったなんでもない手を目にやっても、そこに年季のようなものはうかんでこない。どうやら、私はそういうものに縁がないらしい。 夏紀の予約した三人用のスタジオは、その店の中でも一番に奥まった場所にあった。慣れた様子で鍵を受け取った夏紀のあとを、ただ私は追いかけて歩いている。カルガモの親子のような可愛げはそこにはない。ぼんやりと眺めて可愛がっていたあの子どもも、こんな風にどこか心細くて、だからこそ必死に親の跡を追いかけていたんだろうか。なんとなく気恥ずかしくて、うつむきそうになる。 それでも、しらない場所でなんでもない顔をできるほど年をとったわけじゃなかった。駅前で待ち合わせたときには開いていた口も、この狭いドアの並ぶ廊下じゃ上手く動いてくれない。聞きたいことは浮かんでくるけれど、どれも言葉にする前に喉元できえていって、この口からあらわれるのはみっともない欠伸のなり損ないだけだ。 「大丈夫?」 黙り込んだ私に夏紀が振り向くと、すでに目的地にたどり着いていた。鍵をあける前の一瞬に、心配そうな目が映る。なんでもないよ、と笑ったつもりで口角を上げた。夏紀が安心したようにドアに向き直ったのを見て、笑えてるんだとわかった。少し安心した。 ―――――― 「ギターを、教えてほしいんだけど」 「ギターを?」 「うん」 あのとき私がねだった誕生日プレゼントは、夏紀のギター教室だった。 その言葉を口にしたとき、急にまわりの席のざわめきが耳を埋めた。間違えたかな、と思う。あわてて取り繕う。 「無理にとは言わないし、お金とかも払うから」 「いや、そういうのはいいんだけど」 私の急なお願いに、夏紀は取り残されないようにとカップを掴んだ。言葉足らずだったと反省する私が続きを投げるまえに、夏紀は言葉を返してくる。前提なんだけど、と、そういう彼女に、私はついにかくべき恥をかくことになると身構えた。 「希美、ギター、持ってたっけ?」 「この前、買っちゃって」 「買っちゃって?」 夏紀の眉間の皺は深くなるばかりだった。一緒に生活していると、こんなところも似てくるのかと思う。今はここにいない友人の眉間を曖昧に思い出しながら、たりない言葉にたしあわせる言葉を選びだす。 「まあ、衝動買いみたいな感じで」 「ギターを?」 「ギターを」 私が情けなく懺悔を――もっと情けないのはこれが嘘だということなのだけれど――すると、夏紀はひとまず納得したのか、命綱のようににぎりしめていたカップから手をはなした。宙で散らばったままの手は、行き場をなくしたようにふらふらと動く。 「なんか、希美はそういうことしないと思ってたわ」 「そういうことって?」 「衝動買いみたいなこと」 夏紀はそういうと、やっと落ち着いたかのように背もたれに体を預けなおした。安心した彼女の向こう側で、私は思ってもいない友人からの評価に固まる。 「え、私ってそういう風にみえる?」 「実際そんなにしたことないでしょ」 「まあ、そうだけど」 実際、あまり経験のないものだった。アルコールのもたらした失敗を衝動買いに含めていいのかはわからないけれど、今まで自分の意図しないものが自分の手によって自分の部屋に運び込まれることは確かになかった。 そういう意味でも、私はあのギターを持て余していたのかもしれない。ふとしたことで気がついた真実に私は驚きながら、曖昧に部屋の記憶を辿っていく。社会に出てから与えられることの多くなった「堅実」という評価を今まで心の中で笑い飛ばしていたけれど、こういうところなのか。ちっとも嬉しくない根拠に驚く。 一度考え始めると、それは解け始めたクロスワードパズルのように過去の記憶とあてはまっていく。私が埋めることの出来ない十字に苦戦している間に、夏紀はとっくに問題から離れて、いつものあの優しい表情に戻っていた。 「教えるぐらいなら、全然構わないよ」 拠り所のようなその笑顔に、私は慌てて縋る。答えのない問に想いを馳せるには、この二人掛けはあまりにも狭すぎた。 「ありがと。買ったはいいけど、どう練習すればいいのかとかわからなくて」 「まあそういうもんだよねぇ」 こういうところで、ふと柔らかくなった言葉の選び方を実感��るのだ。それはきっと過ぎた年月と、それだけではない何かが掛け合わさって生まれたもので。そういった取り留めのない言葉を与えられるだけで、私の思考は迷路から現実へ、過去から今へと戻ってくる。 スマートフォンを取り出して予定を確認していたらしい夏紀から、幾つかの日付を上げられる。 「その日、みぞれと優子遊びに行くらしいんだよね」 「そうなの?」 「そう、で、夜ご飯一緒にどうかって言われてるから、土曜の午後練習して、そっから夜ご飯っていうのはどう?」 日本に戻ってくるとは聞いていたけど、その予定は初耳だった。年末年始はいつもそうだということを思い出す。いつの間にか、そうやってクリスマスやバレンタインのようになんでもない行事のようになるかと思うと、ふと恐ろしくなった。 「大丈夫」 「オッケー。じゃあ決まりね」 ―――――― 「そういや、ギター何買ったの?」 「ギブソンレスポールのスペシャル」 「えっ」 いつ来るかと待ち構えていた質問に、用意した答えを返した。準備していたことがわかるぐらい滑らかに飛び出したその言葉に、なんだか一人でおかしくなってしまう。 私の答えに、夏紀は機材をいじる手を止めて固まった。ケーブルを持ったままの彼女の姿におかしくなりながら、黒いケースを剥がして夏紀の方に向けると、黄色のガワはいつものように無遠慮に光る。 「イエロー、ほらこれ」 「えっ……、いい値段したでしょ。これ。二十万超えたはず」 「もうちょっとしたかな」 「大丈夫なの?衝動買いだったんでしょう?」 「衝動買いっていうか、うん、まあそうね」 私の部屋にギターがやってきた真相を、夏紀の前ではまだ口にしていない。どうしようもなさを露呈する気になれなかったのもあるけれど、酷くギターに対して失礼なことをしている自覚を抱えたまま放り出せるほど鈍感ではいられなかったから。結局嘘をついているから、どうすることもできないのだけど。一度かばった傷跡はいつまでも痛み続ける。 「あんまこういう話するの良くないけど、結構ダメージじゃない?」 「ダメージっていうのは?」 「お財布っていうか、口座に」 「冬のボーナスが飛びました」 「あー」 「時計買い換えるつもりだったんだけど、全部パー」 茶化した用に口に出した言葉は、ひどく薄っぺらいものに見えているだろう。欲しかったブランドの腕時計のシルバーを思い出していると、夏紀にアンプのケーブルを渡された。 「じゃあ、時計分ぐらいは楽しめないとね」 そういう夏紀が浮かべる笑みは、優しさだけで構成されていて。私は思わずため息をつく。 「夏紀が友達で本当に良かったわ」 「急にどうしたの」 心から発した言葉は、予想通りおかしく笑ってもらえた。 夏紀がなれた手付きで準備をするのを眺めながら、昨日覚えたコードを復習する。自分用に書いたメモを膝に広げても、少し場所が悪い。試行錯誤する私の前に、夏紀が譜面台を置いた。 「練習してきたの��」 「ちょっとね」 まさか、昨日有給を取って家で練習したとは言えない。消化日数の不足を理由にして、一週間前にいきなり取った休暇に文句をつける人間はいなかった。よい労働環境で助かる。 観念して取り出したギターは、なんとなく誇らしげな顔をしているように見えた。届いたばかりのときのあのいやらしい――そして自信に満ちた月の色が戻ってきたような気がしたのは、金曜の午前中の太陽に照らされていたからだけではないだろう。 ただのオブジェだと思っていたとしても、それが美しい音を弾き出すのは、いくら取り繕っても喜びが溢れる。結局夜遅くまで触り続けた代償は、さっきから実は噛み殺しているあくびとなって現れている。 「どのぐらい?」 「別に全然大したことないよ。ちょっと、コード覚えたぐらいだし」 幾つか覚えたコードを指の形で抑えて見せると、夏紀は膝の上に載せたルーズリーフを覗き込んだ。適当に引っ張り出したその白は、思ったより自分の文字で埋まっていて、どこか恥ずかしくなる。ルーズリーフなんてなんで買ったのかすら思い出せないというのに、ペンを走らせだすと練習の仕方は思い出せて、懐かしいおもちゃに出会った子どものように熱心になってしまった。 「夏紀の前であんまりにも情けないとこ見せたくないしさ」 誤魔化すようにメモを裏返すと、そこには何も書かれていなかった。どこか安心して、もう一度元に戻している間に、夏紀は機材の方に向き合っている。 「そんなこと、気にしなくてよかったのに」 そういう夏紀はケーブルの調子を確認しているようで、何回か刺し直している。セットアップは終わったようで、自分のギターを抱えた。彼女の指が動くと、昨日私も覚えたコードがスタジオの中に響く。 「おおー」 「なにそれ」 その真剣な目に思わず手を叩いた私に、夏紀はどこか恥ずかしそうに笑った。 「いやぁ、様になるなぁって」 「お褒めいただき光栄でございます。私がギター弾いてるところみたことあるでしょ」 「それとは違うじゃん。好きなアーティストのドキュメンタリーとかでさ、スタジオで弾いてるのもカッコいいじゃん」 「なにそれ、ファンなの?」 「そりゃもちろん。ファン2号でございます」 「そこは1号じゃないんだ」 薄く笑う彼女の笑みは、高校生のときから変わっていない。懐かしいそれに私も笑みを合わせながら、数の理由は飲み込んだ。 「おふざけはこの辺にするよ」 「はぁい」 夏紀の言葉に、やる気のない高校生のような返事をして、二人でまた笑う。いつの間にか、緊張は指先から溶けていた。 ―――――― 「いろいろあると思うけど、やっぱ楽器はいいよ」 グラスの氷を鳴らしながらそう言う夏紀は、曖昧に閉じられかけた瞼のせいでどこか不安定に見える。高校生の頃は、そういえばこんな夜遅くまで話したりはしなかった。歳を取る前、あれほど特別なように見えた時間は、箱を開けてみればあくまであっけないことに気がつく。 私の練習として始まったはずの今日のセッションは、気がつけば夏紀の演奏会になっていた。半分ぐらいはねだり続けた私が悪い。大学生のころよりもずっと演奏も声も良くなっていた彼女の歌は心地よくて、つい夢中になってしまった。私の好きなバンドの曲をなんでもないように弾く夏紀に、一生敵わないななんて思いながら。 スタジオから追い出されるように飛びてて、逃げ込んだように入った待ち合わせの居酒屋には、まだ二人は訪れてなかった。向かい合って座って適当に注文を繰り返している間に、気がついたら夏紀の頬は少年のように紅く染まっていた。 幾ら昔に比べて周りをただ眺めているだけのことが多くなった私でも、これはただ眺めているわけにはいかなかった。取り替えようにもウィスキーのロックを頼む彼女の目は流石に騙せない。酔いが深まっていく彼女の様子にこの寒い季節に冷や汗をかきそうになっている私の様子には気づかずに、夏紀はぽつりぽつりと語りだした。 「こんなに曲がりなりにも真剣にやるなんて、思ってなかったけどさ」 そうやって浮かべる笑いには、普段の軽やかな表情には見当たらない卑屈があった。彼女には、一体どんな罪が乗っているんだろう。 「ユーフォも、卒業してしばらく吹かなかったけど。バンド始めてからたまに触ったりしてるし、レコーディングに使ったりもするし」 ギターケースを置いたそばで管楽器の話をされると、心の底を撫でられたような居心地の悪さがあった。思い出しかけた感情を見なかったふりをしてしまい込む。 「そうなんだ」 窮屈になった感情を無視して、曖昧な相槌を打つ。そんなに酔いやすくもないはずの夏紀の顔が、居酒屋の暗い照明でも赤くなっているのがわかる。ペースが明らかに早かった。そう思っても、今更アルコールを抜いたりはできない。 「まあ一、二曲だけどね」 笑いながら言うと、彼女はようやくウィスキーの氷を転がすのをやめて、口に含んだ。ほんの少しの間だけ傾けると、酔ってるな、とつぶやくのが見えた。グラスを置く動きも、どこか不安定だ。 「まあ教本一杯あるし、今いろんな動画あがってるし、趣味で始めるにはいい楽器だと思うよ、ギターは」 「確かに、動画本当にいっぱいあった」 なんとなくで開いた検索結果に、思わず面食らったのを思い出す。選択肢が多いことは幸せとは限らない、なんてありふれた言葉の意味を、似たようなサムネイルの並びを前にして思い知った気がしたことを思い出す。 「どれ見ればいいかわかんなくなるよね」 「ホントね。夏紀のオススメとかある?」 「あるよ。あとで送るわ」 「ありがと」 これは多分覚えていないだろうなぁと思いながら、苦笑は表に出さないように隠した。机の上に置いたグラスを握ったままの手で、バランスをとっているようにも見える。 「まあでも、本当にギターはいいよ」 グラグラと意識が持っていかれそうになっているのを必死で耐えている夏紀は、彼女にしてはひどく言葉の端が丸い。ここまで無防備な夏紀は珍しくて、「寝ていいよ」の言葉はもったいなくてかけられない。 姿勢を保つための気力はついに切れたようで、グラスを握った手の力が緩まると同時に、彼女の背中が個室の壁にぶつかった。背筋に力を入れることを諦めた彼女は、表情筋すら維持する力がないかのように、疲れの見える無表情で宙に目をやった。 「ごめん、酔ったっぽい」 聡い彼女がやっと認めたことに安堵しつつ、目の前に小さなコップの水を差し出す。あっという間に飲み干されたそれだけでは焼け石に水だった。この場合は酔っぱらい��水か。 くだらないことを浮かべている私を置いて、夏紀は夢の世界に今にも飛び込んでいきそうだった。寝かせておこうか。そう思った私に、夏紀はまだ心残りがあるかのように、口を開く。 「でも、本当にギターはいいよ」 「酔ってるね……」 「本当に。ギターは好きなように鳴ってくれるし、噛み付いてこないし」 「あら、好きなように鳴らないし噛み付くしで悪かったわね」 聞き慣れたその声に、夏紀の目が今日一番大きく見開かれていくのがわかった。恐る恐る横を向く彼女の動きは、スローモーション映像のようだ。 珍しい無表情の優子と、その顔と夏紀の青ざめた顔に目線を心配そうに行ったり来たりさせているみぞれは、テーブルの横に立ち並んでいた。いつからいたのだろうか、全く気が付かなかったことに申し訳なくなりながら、しかしそんなことに謝っている場合ではない。 ついさっきまで無意識の世界に誘われていたとは思えない彼女の様子にいたたまれなくなりながら、直視することも出来なくて、スマートフォンを確認する。通知が届いていたのは今から五分前で、少し奥まったこの座席をよく見つけられたなとか、返事をしてあげればよかったかなとか、どうにもならないことを思いながら、とにかく目の前の修羅場を目に入れたくなくて泳がしていると、まだ不安そうなみぞれと目が合った。 「みぞれ、久しぶりだね」 前にいる優子のただならぬ雰囲気を心配そうに眺めていたみぞれは、それでも私の声に柔らかく笑ってくれた。 「希美」 彼女の笑みは、「花が咲いたようだ」という表現がよく似合う。それも向日葵みたいな花じゃなくて、もっと小さな柔らかい花だ。現実逃避に花の色を選びながら、席を空ける準備をする。 「こっち座りなよ」 置いておいた荷物をどけて、自分の左隣を叩くと、みぞれは何事もなかったかのように夏紀を詰めさせている優子をチラリと見やってから、私の隣に腰掛けた。 「いや、別に他意があるわけじゃ、なくてですね」 「言い訳なら家で聞かせてもらうから」 眼の前でやられている不穏な会話につい苦笑いを零しながら、みぞれにメニューを渡した。髪を耳にかける素振りが、大人らしく感じられるようになったな、と思う。なんとなく悔しくて、みぞれとの距離を詰めた。彼女の肩が震えたのを見て、なんとなく優越感に浸る。 「みぞれ、何頼むの?」 「梅酒、にする」 ノンアルコールドリンクのすぐ上にあるそれを指差したのを確認する。向こう側では完全に夏紀が黙り込んでいて、勝敗が決まったようだった。同じようにドリンクのコーナーを覗いている優子に声をかける。 「優子は?どれにする?」 「そうねえ、じゃあ私も梅酒にしようかしら」 「じゃあ店員さん呼んじゃおうか」 そのまま呼び出した店員に、適当に酒とつまみと水を頼む。去っていく後ろ姿を見ながら、一人青ざめた女性が無視されている卓の様子は滑稽に見えるだろうなと思う。 「今日はどこ行ってたの」 「これ」 私の質問に荷物整理をしていた優子が見せてきたのは、美術館の特別展のパンフレットだった。そろそろ期間終了になるその展示は、海外の宗教画特集だったらしい。私は詳しくないから、わからないけど。 「へー」 私の曖昧な口ぶりに、みぞれ��口を開く。 「凄い人だった」 「ね。待つことになるとは思わなかったわ」 「お疲れ様」 適当に一言二言交わしていると、ドリンクの追加が運ばれてくる。小さめのグラスに入った水を、さっきから目を瞑って黙っている夏紀の前に置く。 「夏紀、ほらこれ飲みなさいよ」 優子の言葉に目を開ける様子は、まさに「恐る恐る」という表現が合う。手に取ろうとしない夏紀の様子に痺れを切らしそうになる優子に、夏紀が何か呟いた。居酒屋の喧騒で、聞き取れはしない。 「なによ」 「ごめん」 ひどくプライベートな場面を見せられている気がして、人様の部屋に上がり込んで同居人との言い争いを見ているような、そんな申し訳のなさが募る。というかそれそのものなんだけれど。 「ごめんって……ああ、別に怒ってないわよ」 母親みたいな声を出すんだなと思う。母親よりもう少し柔らかいかもしれないけれど。 こういう声の掛け方をする関係を私は知らなくて、それはつまり変わっていることを示していた。少しだけ、寂しくなる。 「ほんと?」 「ほんと。早く水飲んで寝てなさいよ。出るときになったら起こしてあげるから」 「うん……」 それだけ言うと、夏紀は水を飲み干して、テーブルに突っ伏した。すぐに深い呼吸音が聞こえてきて、限界だったのだろう。 「こいつ、ここ二ヶ月ぐらい会社が忙しくて、それでもバンドもやってたから睡眠時間削ってたのよ」 それはわかっていた。なんとなく気がついていたのに、見て見ぬ振りをしてしまった。浮かれきった自分の姿に後味の悪さを感じて、相槌を打つことも忘れる。 「それでやっとここ最近開放されて、休めばいいのに、今度はバンドの方力入れ始めて。アルコールで糸が切れたんでしょうね」 グラスを両手で持ちながら、呆れたように横目で黙ったままの髪を見る彼女の声は、どこかそれでも優しかった。伝わったのだろうか、みぞれも来たときの怯えは見えなかった。 「希美が止めてても無駄だったから、謝ったりする必要ないわよ」 適切に刺された釘に、言葉にしようとしていたものは消えた。代わりに曖昧な笑みになってしまう。 「そういえば、夏紀のギター聞いたのよね?」 「うん、まあね」 「上手かった?」 「素人だからよくわからないけど、うまいなと思ったよ」 「そう」 それならいいんだけど、と、明らかにそれではよくなさそうに呟いた彼女の言葉を、私はどう解釈していいのかわからなかった。曖昧に打ち切られた会話も、宙に放り投げられた彼女の目線も、私にはどうすることも出来なくて。 「そういえばみぞれは、いつまでこっちにいるの?」 考え込み始めた優子から目線をそらして、みぞれに問いかける。さっきからぼんやりと私達の会話を聞いていたみぞれは、私の視線に慌てる。ぐらついたカップを支えながら、少しは慣れればいいのに、なんて思う。 「え?」 「いつまでこっちにいるのかなって」 アルコールのせいか、少しだけ回りづらい舌をもう一度動かす。 「1月の、9日まではいる」 「結構長いね、どっかで遊び行こうよ」 何気ない私の提案に、みぞれは目を輝かせた。こういうところは、本当に変わっていない。アルコールで曖昧に溶けた脳が、そういうところを見つけて、安心しているのがわかった。卑怯だな、と思った。 ―――――― 「それじゃあ、気をつけて」 優子と、それから一応夏紀の背中に投げかけた言葉が、彼女��ちに届いたのかはわからない。まさにダウナーといったような様子の夏紀はとても今を把握出来てい���いし、優子はそんな夏紀の腕を引っ張るので精一杯だ。 まるで敗北したボクサーのように――いや、ボクシングなんて見ないけれど――引きずって歩く夏紀は、後ろから見ると普段の爽やかさのかけらもない。あのファンの子たちが見たら、びっくりするんだろうな。曖昧にそんなことを想いながら、駅の前でみぞれと二人、夏紀と優子の行く末を案じている。 その背中が見えなくなるのは意外と早くて、消えてしまったらもう帰るしかない。隣で心配そうに眺めていたみぞれと目があう。 「帰ろっか」 「うん」 高校時代とは違って、一人暮らしをし始めた私とみぞれは、最寄り駅が同じ路線だ。こうやって会う度に何度か一緒に同じ列車に乗るけれど、ひどく不自然な感じがする。改札を抜けた先で振り返ると、みぞれが同じように改札をくぐっているのが見えるのが、あの頃から全然想像出来なくて、馴染まない。 少しむず痒くなるような感触を抑え込んで、みぞれが横に立つのを待つ。並んで歩くふりくらいなら簡単にできるようになったのだと気付かされると、もうエスカレーターに乗せられていた。 「なんか、アルコールってもっと陽気になるもんだと思ってたよね」 寒空のホームに立つ私のつぶやきを、みぞれは赤い頬で見上げた。みぞれは人並みに飲む。人並みに酔って、人並みに赤くなる。全部が全部基準値から外れてるわけじゃない。そんなことわかっているのに、なんとなく違和感があって。熱くなった体がこちらを向いているのを感じながら、もうすぐくる列車を待つ人のように前を向き続けた。 「忘れたいこととか、全部忘れられるんだと思ってた」 口が軽くなっていることがわかる。それでも後悔できなくて、黙っている方がよいんだとわかった。塞いだ私のかわりに口を開きかけたみぞれの邪魔をするように、急行電車はホームへと滑り込む。 開いた扉からは待ち遠しかったはずの暖かい空気が、不快に顔に飛び込んできた。背負い直したギターケースに気を遣いながら、一際明るい車内に乗り込んでいく。空いてる端の座席を一つだけ見つけて、みぞれをとりあえず座らせた。開いた目線の高さに何故か安心している間に、電車はホームを離れていた。 肩に背負ったギターを下ろして、座席横に立て掛けた。毎朝職場へと私を運ぶこの列車は、ラッシュとは違って人で埋め尽くされてはいない。だから、みぞれの後ろ姿が映る窓には当然私も入り込んでいて、いつもは見えない自分の姿に妙な気分になる。酔いはまだ抜けていないようだ。 「みぞれはさぁ」 口を開くと言葉が勝手に飛び出していた。降り掛かった言葉にみぞれが顔を上げる。 「オーボエ以外の楽器、やったことある?」 私の問いかけに、彼女は首を振った。 「そうだよね」 それはそうだ。プロの奏者が他の楽器に手を出してる暇なんてないんだろう。いろんな楽器を扱える人もいるわけだけど。その辺の話がどうなっているのかは、私にはわからない。プロではないし。 どうやっても違う世界の人と話すのは、取材をしているような感触が抜けきらない。私達の他の共通点ってなんだろう。毎度手探りになって、別���たあとに思い出す。 「ギター、楽しい?」 何故か話題を探そうとしている私を、引き戻すのはいつも彼女の問いかけだ。 どう答えるべきか、わからなかった。何を選ぶのが一番正しいのか、見つけるのにはそれなりに慣れているはずなのに、そういう思考回路は全く動かなくて、だからありのままの言葉が飛び出す。 「楽しい、よ」 それは本心からの言葉だった。本当に楽しかった。それを認めてしまうということが、何故か恥ずかしくなるほど。 つまりこのまま何事もなく過ぎていくはずの人生に現れたギターに、ひどく魅了されてしまったということだ。認めたくなかった退屈な自分をさらけ出しているようで。年齢のせいか生活のせいか、頭にふと過る自問自答が、ギターの前ではすっかり消え失せていることに気が付かないわけにはいかなかった。 (まあでも、このまま死ぬまでこのままなのかなとか、みぞれは考えなさそうだな) そう思うと、ずるいなと思った。 「楽しかった。新鮮だし」 私の答えに、みぞれは言葉を口に出さなかった。ただ笑顔ではない表情で、私のことを見つめている。どこか裏切られたかのように見えた。どこか寂しそうにも見えた。見ないふりをして、酔ったフリをして、言葉を続ける。 「ギターって奥深いね」 そんな大学生みたいな感想を並べて、目の前のみぞれから目を外す。どんな表情になっているのかは想像がついた。 「面白い音なるしさぁ」 確かめたくなくて言葉を繋げる。この悪癖がいつまでも治らない自分に辟易しながら、結局逃げるために言葉を選び続けている。そうやって中途半端に取り出した言葉たちの中に、本当に言いたいことは見えなくなってしまうって、わかっているはずなのに。 「夏紀の演奏が本当に上手くてさぁ」 「フルートは」 「っ」 遮られた言葉に思わず黙ってしまったのは、それが痛い言葉だったからなのか、言葉の切実さを感じ取ったからなのか。目を合わせてしまう。耳を塞ぎたくても、無気力につり革にぶら下がった手は離す事ができない。 「フルートは、続けてるの?」 みぞれの声は、どこか張り詰めていて、ざわついた電車内でも通った。隣の座席の男性が、こちらを盗み見ているのがわかる。ひどく晒し者にされているような、そんな気分になった。 やめるわけないよ、まあそれなりにね、みぞれには関係ないでしょ。なんて言ってやろうか。 「やめたって言ったら、どうする?」 選んだ言葉に、すぐに後悔した。 なぜ人のことなのに、そこまで泣きそうな目ができるんだろうか。子供がお気に入りのぬいぐるみを取られたみたいな、そういう純粋さと、どこかに混じった大人みたいな諦めの色が混じり合って心に刺さる。 「冗談だよ」 言い繕っても、彼女から衝撃の色は消えない。そんなにショックだったのだろうか。私に裏切られたことなんて、いくらでもあるだろうに。 「前からやってたサークルがさ、解散になっちゃって」 「解散」 「そう。だから、ちょっと吹く機会がなくなってるだけ」 それだけ。それだけだった。だからみぞれが悲しむことはないし、気に病んだり必要もないんだよ。そう言おうとした。言えるわけがないと気がついたのは、みぞれの表情に張り付いた悲しみが、そんな簡単な言葉で取れるわけじゃないとわかったからだ。 「大丈夫だから」 結局言葉にできたのは、そんな頼りない、どこをf向いてるのかすらわからないような言葉だった。みぞれは私の言葉に���っくりと頷いて、それだけだった。 逃げ出したくなる私をおいて、電車は駅へと滑り込む。みぞれが降りる駅だ。 「みぞれ、駅だよ」 「うん」 目を逸らすように声を上げると、みぞれは小さく頷いた。何を話せばいいのかわからないような、その目は私を傷つけていった。降りていく後ろ姿に声を掛ける事もできずに、私はただ彼女を見送った。 そういえば結局遊ぶ約束をし忘れたな。動き出した電車の中で、空席に座る気にもならないまま思い出す。ギターは何も知らないような顔で、座席の横で横たわってる。さっきまであったことなんて何も知りませんよって、言ってるみたいだった。 このまま置いていってやろうか。そう思った。
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RDR2:6:西部暮らし&白アラブ
拠点で水汲みの雑用ができる場所を探していて見つけてしまった一枚の紙切れ。
……ダッチ……(ㅍ_ㅍ) 前回だかに、ダッチの演説には”実”がない、とか書きましたけど、これはまさにその証拠ではないかなと思ってしまいました。わざわざ原稿用意してるww しかも、「そうすることで俺は人間に、天使になれる」とか、えーっと、これはウケ狙ってるわけじゃなく?? 実際には天使だなんだは言っていなかったと思いますが(ヒアリングでも)、なんかこう、自己陶酔した文面だし、こんなもの用意して効果を狙うにも程があるだろうと。 真に心の中にある強い思い、いつも、何度も考えてることなら、言葉はたどたどしくなっても、原稿なしで言えるはず。 相手を動かすためにより効果的な演説になるように言葉を選ぶ、というのはプレゼンとしては当然ですけど、これは、自分をいかに偉大に見せるかに腐心しているように思えますね。 ただ、そういうダッチの卑小な自尊心みたいなものは、人間としてよく分かる……というか、自分にもあるものなので、ただ笑って馬鹿にはできません。むしろ身につまされる……:( •ᾥ•): ちなみに水汲みというか、水運びのお仕事は、干し草とか食料袋と同じ場所でした。水と食料はどっちもピアソンの馬車の傍に運ぶので、両方やろうとすると二往復。朝の日課にするなら、干し草→水・食料→薪という流れがスムーズかなぁ。
日課を済ませて町に出たアーサー。声だけは聞いていた、物乞いの退役軍人に話しかけてみました。小銭あげるのかなと思えば、ただ話を聞くだけ。しかも途中で、ハグしていいかと言われて、ちょっと引き気味ながらもOKしたのがこちらw 片腕ないし、苦労したんだろうなこのおっさんも(´・ω・`)
今日は薬屋さんを訪問。……なんなんや、この挿絵(;ತಎತ) つーかこの時代のカタログみたいなものに、ほんとにこんな挿絵あったのか?
向かいには、お店ってわけじゃないけど、LAW OFFICE。法律事務所かな。その奥側は銀行です。……時期によっては大金があるって噂のあれだな。で、その奥はホテル。 ホテルはこの間入ったし、まだそんなに汚れてないはずなので、酒場にあるハサミマークが気になり、覗きに行くことにしました。
たぶん、今の長さに応じて選べる・選べない髪型がある感じ。 まあ、スキンヘッドならいつでもできるよなw スポーツ刈りも意外に似合っていましたが、オールバックの刈り上げをチョイス。ただ、この理髪って自分のテントでもできるとしたら、お金を払う理由はないんですけど、どうなんだろ。自分でできる髪型には制限がある、とかなのかな。 たしかに髭は、長さが足りないので選べなかったものの、カイゼル髭みたいなのがリストにありました。テントではただ剃ることしかできなかったので、髪型もそんな感じなのかも? あと、もしかして自分で剃ると、ムラがあってちゃんと整わないのか?
カウンターではビールを一杯。 飲んでる最中に変な男が寄ってきて、儲け話みたいなの勝手にしゃべってましたけど、無視して黙々と飲むアーサー。そしたら「興味ないならいいよ」と立ち去っていきました。 途中で話しかけると、なにかクエストになったんじゃないかと思いますが、変な話に首突っ込んでドンパチやらかしたり騙されたりするのは御免でござる。首突っ込むなら、本当に自分が興味を持って、首突っ込んだ結果がどうなろうと受け入れようと思えるものだけにしときます。堅実アーサーです。
ちなみに酒場の外観。俺がトミーとかいう奴に投げ飛ばされて突き破った窓、ちゃんと修理されてるな。 ちなみに、トミーの友人みたいなのが文句言ってきたりもしました。半殺しにされておかしくなっちまったとかなんとか。けどあれ、俺は巻き込まれて押し付けられただけでな。喧嘩する以上、必ずしも自分が勝つわけじゃないし、その覚悟あって用心棒みたいなこととかしてるんじゃないのか? 負けてズタボロにされることもある、その覚悟がないなら、喧嘩なんかやめとけ?( ・ὢ・ )
それから雑貨店でおようふく選び。ちょっとアーバンな感じのがほしいなぁ。コートはこれ買うとして、ベストは……このペイズリーはちと派手だからやめよう。ジーンズか作業ズボンで無難なブルーのを一本買っておこうか。 帽子もシックなのほしいけど、マスクつきじゃないのはちょっと困るんだよな。今のこのギャンブラーハットも気に入ってるし……。 金塊をまだ売れないので、乏しいお小遣いと相談で3点ほど購入しました(´ω`*)ホクホク ちなみに服装のバリエーションは大事らしいです。 指名手配されたりすると、「そのとき身につけていた服装」で覚えられるとか。つまり通報する人は、「紺色のコートで、こんな帽子かぶってた長髪の大柄な男。シャツはたしか青だったかな」とか、そんなふうに話してて、それをもとに追跡される、怪しまれるって感じ? なので、犯罪をおかして指名手配されたとき=なんらかの形で目撃されて通報されたら、そのときと同じような格好で付近をうろつくのはやめたほうがいいってことですね。 更に言えば、お気に入りのコーデで指名手配されてしまうとしんどいので、明らかに犯罪に関わるとわかってるときには、どうでもいいようなコーデにしておいたほうが良い、とw
そんでもって、日暮れ前にレオポルドから頼まれた、借金の回収にGO。 アーサーの日記読むと、回収係はいつものことだけど、取り立てる相手ってのが大抵は弱者で、それを食い物にしてる感のある金貸し業を嫌ってるみたいです。 借りるほうが悪い、とは言っても、天災や不作なんかで困窮した相手の弱みに付け込んだ商売、てあたりが嫌い���のかな。しかし暴力で奪うのとどっちもどっちじゃね?( ತಎತ) ポーランド人らしきロベルとかいうおっさんを脅し、痛めつけ、金はないから代わりに物を持って行ってくれ、というところで談合。その気になれば必要以外のものを全部あさったり、おっさんがよりかかってる机も調べられたので、殴るなり殺すなりしてどかせば貴重品でも入っていたのかもしれません。 しかし、金貸しを嫌ってるアーサーの取る行動としては、そんなふうに「借金返済」以上のものをごっそり奪うのはおかしいんじゃないかな。タバコだけは失敬しちゃったけどね。 それに、傷めつけてもいいけど殺すなよ、ていうのはレオポルド���言ってるし。客が減るからってだけでしょうが。 しかしこれ、今回はできるだけ穏健なアーサーで行くことにしてるのでこのまま帰って終わりにしますが、極悪アーサーとして振る舞うなら、私なら、「あいつがよりかかってた机怪しいな」と思ったら、その場では帰って改めて夜に強盗します。普通に顔見せて取り立ての仕事しておいて、夜中に服装変えて顔もマスクで隠して押し入る、ていう。その場で襲わない分だけタチが悪いかも?w そういう、できるだけ冷酷な、ただ乱暴で短絡的な馬鹿ではない、他人の命なんて屁とも思ってないようなプレイも面白いかもなぁ。
借金、あるいはそれ相応の物品を回収したら、キャンプの寄付箱に入れればOKとのこと。なので戻ってきてビルに挨拶したら、「赤は似合わん。その血を落とせよ」とからかわれました(´ω`*) ビルって酒場の乱闘のきっかけになってる乱暴者だけど、こういう応酬に嫌悪とか敵意は感じません。キーランの一件で同行したとき、いがみ合う様子とかがまったくなかったからかな。口は悪いけど、気安いからあれこれ言うだけ、内心では、もし好きではなかったとしても仲間としては認めてる、みたいな印象です。
レオポルドの借金回収、頼まれたのは3人でしたが、1人でもこなすと、帳簿がオープンするみたいです。これで誰がなにを寄付してるかが一目瞭然w チャールズって狩りは得意なはずなのに、なんにも納品してないなぁ。つーか俺が一番こまごま納めてるじゃん。 あと、この帳簿から、お金でできる施設拡張もオープン。自分とこの寝床で弾薬とか補給できるようにするくらいが精一杯かな。これ以上は、もっとお金稼いでから、あるいは、金塊を換金してからだな。 そんなことしてたら、たしかスーザンからだったっけ? 手紙が来てると教えられました。私はあの女嫌い」みたいなこと言ってますが、どうやらアーサーの元カノです。 助けてほしいことがあると、居場所を知らせてきました。 しゃーない、見に行くか……。
と向かってた最中、この段差で盛大にコケた馬(´・ω・`) たぶん、ある程度の速度でまっすぐ突っ込めば、馬が自分でジャンプしたんでないかと思います。しかしぽくぽくかなりゆっくり歩かせてたら、がくっ、ずこっ、どてっ! ぶっちゃけアーサーはそんなことでどうにかなるわけもなしどうでもいいけど馬の脚折れてたりしないよな!? とすげー慌てました。幸い何事もなく立ってくれたので良かった~ε-(´∀`*) 馬用のお薬、1個くらいは持ってたほうがいいかなぁ。 元カノの頼みは、弟が変な新興宗教に走ったから連れ戻してくれってものでした。 どうやらアーサーとは深い仲だったんだけど、しょせんはギャング。そんな相手との付き合いを家族が許すはずもないし、そんな男と結婚したってろくな人生にならないのは明白で、メアリーは別の男と結婚。アーサーとは破局。 ギャングなんて生き方してる以上は自業自得みたいなもんですが、たとえそうでも、捨てられた男として二つ返事で元カノ助けるのも業腹って感じですね。ただ、助ける相手の弟ジェインはアーサーになついてたようで、「貴方の言うことなら聞いてくれる」と。 助けない、という選択肢もありましたが、―――アーサーがどう考えたのかはさておき、プレイヤーとしては、わだかまりがあって快く引き受ける気にはならないとしても、フラれた恨みで見捨てるのもカッコ悪いじゃないかと。
そしてここで、急に思い立ったのは別のこと。 白アラブです。 RDR2の情報をネットでつらつら見ていれば、必ず出てくる「性能のいい馬・白アラブ」。単純なスピードではサラブレッドのほうが上だとか、いずれ馬屋で買える別の色のアラブのほうが性能いいとか、つまり最強一択の馬ではないものの、2章開始とほぼ同時に手に入れられる最強クラスの馬として、どんなサイトでもスレでも強くオススメされています。 正直なところ私は、テネシーの速度ですら満足してたくらいだし、テネシーに乗っていてさえ通行人とか馬車避けるのに気を遣ってたくらいなので、速度なんかまったく必要じゃありません。なにもない草原、高原を長距離、できるだけ速く移動したい、みたいなシチュに、まだなってないのです。 だから、白アラブの性能はどーでもいい。 真っ白な馬体が美しいというのも推しの理由ですが、人工物みたいな白で実はそれほどいいとは思わなかったりもする。 あと、ネットでの書き込みあれこれ見ていると、「小さいから、体格のいいアーサーが乗るとポニーみたいだ」という意見にも、なるほどと思う。 つまり、白アラブという性能のいい美しい馬がほしい!! というわけでは、まったくないのです。 ただ、それを理由にして雪山方面にまで遠出、冒険に出掛けて、噂のその馬に会えるかどうか、もし会えたらうまく乗りこなして手に入れられるかどうか、試してみたい! それが動機でした。 だから、会えなくてもいいし、下手くそなせいで捕まえられなくてもいい。ただ、買って間もないアメスタのコージーを死なせるような結果にさえならなければいい。 そんなゆる~い気持ちで、向かうことにしました。
場所は北西。バレンタイン近くの拠点からはだいぶあります。しかも山の中なので、まっすぐは近づけない感じ。無理をすれば行けなくもないとしても、初心者としてはちゃんと道を辿りたいチキンハート:( •ᾥ•): 雪山はかなり寒くて、防寒できる衣類じゃないと体力削られるそうなので、自分のテントで、どうやって登録すればいいんだ? とおろおろしながら、どうにか馬に防寒コーデを積み込みます。(コーデ登録して、そのコーデを「馬に積む」でいけるのですな) それから念のために拠点でセーブもしておきます。だってチキンハートっ。 そうしてぽくぽく向かったら……
これ、そういえば前にもちらっと見かけてた。あのときは立ち止まらなかったんだけど……人間の足、ですな:( •ᾥ•):
血痕を辿ったら、街道のほうではすぐ途切れていたけど、逆側にこんなものが。「俺の仕事(あるいは”作品”か)を見な!!」みたいなメッセージとともに、吊られた死体。 でもこいつ、足あるよな……。
と思ったら、足はこいつのか!!((((;゚Д゚)))) 口に突っ込まれてた紙を取ると、どうやら手がかりの一部みたいです。他の紙も集めると、この殺人鬼の居場所が分かるみたい。 たぶん、そんなに遠い場所に散らばってはないと思うけど、他に手がかりないし……。またどこかでたまたまでも見かけるかもしれないな。
道中では更に、「イカれた詐欺師」なる男が、川の中でぶつぶつ言ってました。しばらく聞いてたけど、話しかけられるでもなく、やがて川から上がって、すぐ傍の寝床にごろん。なんなんだこいつは。 すべての出来事に答えや結末があるわけでもなし。なにかあるのかもしれないけれど、「なんだったんだあれ……」と思いつつ離れて二度とかかわらないというのも、このアーサーのドラマの一部でしょう。
川沿いの細い道をぽくぽく進みます。けっこうな急流。 道が狭いので���ートランにしたほうがラクなのですが、だからこそ、ゆっくりぽくぽく自分で進ませたい! シネマにするとカメラが何パターンかの固定になってしまって、好きに景色は見られませんしね。
雪がちらほら見えてきたので、積んできた防寒服に着替えました。と言っても、コートと手袋だけで、「暑い場所に向いてる」から、「かなりあたたかい」へと十分変化します。 ……俺はこれでいいが、おまえは寒くないか、コージー? 興奮してたりしないかぎり特別な効果はないんだけど、L3押し込みでぽんぽんしてあげよう。
暗くなってきたのでキャンプを設営しました。 小動物くらいなら、馬が蹴るだけで死ぬので、良質な素材がほしいとかでなく、ただ肉がほしいだけだと移動のついでにちょっと手に入ったりします。 それに、オートエイムがかなり優秀なので、馬上から弓でリスとか狙うのさえ簡単。良質な毛皮とかほしいなら、こういう小さな動物は専用の矢でないといけないみたいですね。銃はもちろん、普通の矢でも「大きな傷がある」という説明になってしまいます。 コージーにも飯をやって、俺も飯だ。そしてたっぷり、朝まで8時間睡眠。明日に供えんとな。
だいぶ雪が深くなってきました。ちょっとオートラン中。 なんか白っぽい生き物いた!? と思ったけれど、地図開いてみると、東にある小さな湖のほうです。そーっと近づいてみてみると、エルク……雄鹿ですね。かなり大きいので、こんなしょっぱい弓で仕留められるのかな。それに、どうなるか分からない行きの道で大きな荷物を作るのは、賢明とは言えますまい。このあたりに動物がいるってことだけ覚えて、先に進みます。
がんばれコージー。雪が深いから大変だろうが、あとでおやつもやるからな。
ううむ、なかなかの絶景。ちなみに奥側(左手側)は崖です。崖だからこそ絶対安全なオートランでなく、慎重に自分で操作したいというこのおかしな感覚。 なんというか……自分の命だけでなく馬の命もかかった道だから、その責任をきちんと自分で背負って、緊張しながら進みたい、みたいな。 いやまあ万一落ちたらロードすると思いますけどw それはそれとして、「ゆっくり行くぞ、コージー」ていう気分を味わいたいんですよ!! それにやっぱ、シネマではこうやって景色を見渡すこともできませんしね。 あ、ちなみにすごくどうでもいいことですが、気がつけば私、なつかしの「モンハン持ち」みたいなことになってますw カメラが勝手に高度(上下)調整されて低い位置に行くため、馬の足元が見えないんですよ。危なくて仕方ない。だから、右手の親指は×ボタン押しながら、人差し指でRスティック操作してます。 このカメラの勝手な移動、設定でどうにかできないのかな。 あと、人とすれ違ったときにL2押して挨拶しようとすると、カメラまで横向いてしまって危ないったらありゃしない。これも、カメラ動かないようにできないのかな。L2押したらどうしたって注目しちゃうのかな。 とか、そんなこんなでやってきた目的地。
マーカーをつけたのはここです。 白アラブを捕まえたよって報告は、この湖の西岸から北部全体に広がっています。 なので私はこのへんをまず目的地にして、ここから素直に道を北上して行くことにしました。 白アラブが見つけにくいのは、出現地が広範囲であるとことの他に、雪に溶けこむ白い馬体をしているせい。なのでまずは、ゆっくりあたりを眺めながら、のんびーり進んでいくのが第一です。 道沿いと、湖の北側のえぐれたとこ、その雪原あたりを見てみていなかったら、セーブ&ロードしてまで粘りたいわけでもないから、またゆっくり引き返しながら探して、それでも見つからなかったら、帰り道ではあの鹿だかを狩れないか挑戦してみようと決めました。 伝説バイソンの痕跡1個見つけましたけど、そんなもんはおよびでない:( •ᾥ•):コワイ というわけで、コージー、ぼちぼち行こうか(๑•̀ㅂ•́)و✧
って、 イ タ ― ― ― ッ!? Σ⊙ ⊙ﻌﻌﻌﻌ( Д )
なんなんだ、このラッキーは……。まとめ見てると、数時間探しても見つからないとか、セーブ&ロード繰り返しても出てこないとか、一度離れて戻るといいとか、かなり苦労してる人たちばかりだから、まさか道沿いで、一発目で見つけられるとは思っていませんでした……。 よ、よし、コージー、ちょっとここで待ってろよ。 ドキドキ……。しゃがみ移動でこそこそ近づいて、呼びかけられる範囲に入ったら□で注意を引いて……。 む? コントローラーのブルブルは、どうやら白アラブの鼓動だな? つまり、これが速くなってきたら緊張状態。逃げ出す前に□ボタンで宥めないとダメ。緊張が一定レベル超えると、右下のゲージが急速に減り始めます。これがなくなる前に□を押して声をかければキャンセルできるので、……って、ブルブルあるとめっちゃ簡単です。ブルブルが激しくなったら右下に注目していればいいんだもん。 アラブの鼓動に気をつけながらじりじり近づいて、十分近づいたら、撫でることさえできました。もちろん、その距離なら乗れます。 そして乗ったらロデオ開始! L3を押し込んだまま、馬が進むのとは逆にスティックを倒せばいいとのこと。前に進んでるときは後ろでいいのかな。左右なら逆サイドなのは間違いないだろうけど。 一発振り落とされてる動画なんかも見たので、難しいのかなと思ってましたけど、いい感じに乗り続けていられます。あたりに木々があんまりない場所なのも幸いですね。 そして!!
やった!! 白アラブ、ゲットだぜーッ!!٩(ˊᗜˋ*)و
あとはてくてくそのあたり歩きつつ、いなないたりしたらぽんぽんして宥め、親密度を1段階上げて完了! それにしても小さいな……w アメスタは、テネシーよりちょっと大きいくらいなので、小型の馬ではないと思います。競走馬だし。それと比較すると、体高も少しだけ低いし、首が意外に短い? 顔は丸いし。 アーサーが乗るには、たしかに一回りくらいがちょっと小さい感じですねw
アメスタのコージーくんは、ちゃんと口笛で追従させて連れて帰ります。 放置すれば馬屋に現れる、という書き込み見たことがあるのですが、今は、ちゃんと苦労をしたいのです(´ω`*) コージーがついてきてることを確認しながら、ゆっくり道を引き返すアーサー。人とすれ違うときとか、「馬泥棒されないよな??」とかすげードキドキしたりw あと、こうやって帰る途中に獣に襲われるとか、賞金稼ぎに絡まれるなんてことになった人もいるようで。 そういえばここ、狼がいるからそれが邪魔だとも見ていたのですが、行きの道中で誰かが襲われているのを聞いたくらいで、見てないなぁ(← え? いやぁ、だって、カッコつけて助けに入ってころころされたら目も当てられないじゃん?( ತಎತ) 考えたことなんて、この帰り道、あの哀れな男食い殺した狼が出てこないといいなぁ、くらいでしたよ? 可哀想だが、俺も命は惜しいしな。目当てのものが幸運にも手に入れば、当然セーブして確保する程度のセコさも持ってるわけで、うむ、俗物バンザイ。
無事にバレンタインに辿り着いたので、コージーは馬屋に預けて、白雪と名付けたアラブの毛色を灰色にしました。こうして見ると、馬屋の中で見ていたよりも色が濃い……。白一色もなんか変だなぁと思ったけど、こんなに色が違うとなると、うーむ。ローズ・ピンクっぽい色か、金にでもするかなぁ。まあ、タダじゃないので、また少し稼いでからになるが。 つーかほんと小さいな。プレイヤーの好みとしては、黒王号w やっぱあの黒馬、売らずに自分のものにすれば良かったかなぁ。綺麗な黒だったし、太すぎないいいガタイしてたし。 白雪の親密度2まで上げたら、初回特典の軍馬にも乗ってみよっと。 そう、せっかく白アラブ手に入れたとはいえ、全力疾走させられるような場所にいないし、今のところそんなスピードが必要とも感じないので、だったら尚更今のうちに、スローな馬を楽しんでおきたいですね。 この後、プレイが作業的になれば否応なく、最速での移動ってのを求めるのかもしれません。そうなったら、スローな馬なんて乗らなくなるかもしれないし。だったらアラブに乗るのは、もっと後でもいいんじゃないかなって。
ま、こうして無事に拠点に帰ってきたことだ。野生馬だけあってブラッシングマークが点滅してたので、ごはんあげて、ブラッシングして、なでなで。 白・黒の馬体は汚れ目立つのも難点ですね。テネシーとかアメスタのコージーは、「うわっ、汚れてんなぁ」って思ったことないのですが、売っちゃったあの黒い子は、バレンタインまで乗って行くだけで、肌が白っぽいホコリまみれになってました。こんな斑だったっけ? て思うくらいに。そして白アラブの白雪も、足先真っ黒、馬体は灰色の埃だらけ。 ただ、こうして目立つからこそ、マメにブラッシングできるとも言えます。汚れが目立たないと、マークが点滅するまで放置になりかねないし。 けど一番いいのは、毎朝ちゃんとごはんあげて、ブラッシングもすることかなw 汚れてるからとかいうより、マッサージも兼ねてね。幸い、やりすぎるとマイナスになるなんてこともないみたいだし。 清潔を保つというと、アーサーのお風呂がどれくらいの周期で必要になるのかが気になってます。汚くなると町の人に引かれるそうですw 25¢で入れるということは、やっすい毛皮と肉売るだけでも十分。それくらいの小銭で入浴できるなら、毎日とはいかずとも、3日に一度くらいは入ってもいいかなぁ。
ともかく、前作を中盤まで行く前、10時間も遊ばずに投げ出してるので、楽しめるかどうか心配でしたが、RDR2、買って良かった!(´ω`*) 明日は、借金取り立ての続きに行くか、ジェインを連れ戻しに行くか……え? ホゼアが一緒に仕事したいって? 拠点でスーザンから言われ、マップについたホゼアのマークを見てみると……これか! 盗品商出すためのクエストです。 しかしこれ、駅馬車襲撃というモロにギャングな仕事。いい人っぽくても、ホゼアもやっぱし熟練のギャングなんだなぁ(´・ω・`) うーん、明日はどうしよっかなぁ。他にやりたいゲームもあるし。 と悩みつつ、本日はここまで!
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香川旅行記
ゴールデンウィーク後半を使って香川を旅行した。計画したのは出発前日の夜中で、今回のテーマはうどん巡りと温泉だ。私は昨年末に二泊三日で高松、琴平、直島、豊島を巡り、うどん7杯を食べて大満足で帰ったのだが、以来香川のことが忘れられず、また行きたいと思っていたところだった。
1日目(5月2日)
午前4時という、朝がひどく苦手な私にとっては信じがたい時刻に友人の車で出発。9時ごろ善通寺に到着し、食べログ一位のうどん屋、長田 in 香の香へ。巨大な駐車場と50mにも及ぶ行列を目の前にして一軒目ながら若干ひるむ。待ち時間を使って宿探しをするも、さすがGWだけあってどこも満室。無計画な私たちも悪いが、10軒ほど電話して空いていたのは一室のみだった。しかし結局宿泊料があまりにも高かったため断念し、並んでいた他のお客さんに健康ランドに泊まれることを教えてもらったので、最悪の場合そこにすることに。一時間弱待った後入店し、釜揚げ大と冷やし大を一杯ずつ注文。各1.5玉で350円だ。つゆはいりことかつおのダシがよく利いており、もちもちの麺からは小麦の香りが強く感じられたいそう美味かった。皆うどんだけ食べてさっさと出るおかげで回転率がかなり良く、11時ごろには食べ終えることができた。
続いて二軒目のはなや食堂へ。地元に愛されるおばあちゃんのお店といった印象。冷やしとタコ天を注文。うどんは200円、天ぷらは300円と安い。小ぶりなタコを丸々一匹揚げた天ぷらは衣が黄色くふわふわの食感。うどんも無論美味い。食後に宿探しを再開し、栗林公園近くのところに電話するとあっさりOKが出た。電話口の主人の対応が少し気になったが、一人一泊2600円、ガッツポーズだ。せんべい布団でも座布団でも部屋でゆっくり寝られるだけありがたいので、即座に予約した。
腹ごなしがてら金蔵寺(こんぞうじ)を覗く。お遍路さんが多くおり、皆お堂の前で一心に真言を唱えていた。友人曰く「水曜どうでしょう」に出ていた寺とのことで、ファンである彼の記念写真を撮った。ここに至るまでの道端の電柱には、八十八か所巡りの巡礼者を図案化した標識があった。小さなところにご当地感があってほんわか��た。
次はこんぴらさんにお参りすることに。 暖かくなったのと休暇も重なったことで人がごった返している。登り口にあるアカボシコーヒーで一服してからほぼ休みなしで駆け上がる。中腹では神馬2頭を見た。その隣には大型船のスクリュー(直径6m)とアフリカ象の像があった。前者は94年に今治造船が奉納したそう(今治造船HPより)で、当社が海の神を祀っていることやお座敷遊びのこんぴらふねふねでお馴染みの金比羅船に因むことが予想できたが、後者の意図はわからず、奉納品であれば何でも良いのかと思った。関連するとすれば、この山の名が象頭山であることぐらいか。
程なくして本宮へ到着し、参拝の列に並ぶ。普段神社で手を合わせる時は何も祈らないようにしているが、今年に入ってからずっと精神が低調なままので、久しぶりに願をかけてみた。神様はこういう時の心のよりどころなのでありがたい。どうか届きますように。今回は、前回その存在を知らなかった奥社まで行こうとしていたが、道が閉鎖されていたためあえなく断念、またまた次回への持ち越しとなった。さて、全785段の石段往復は少々足に応え、途中で石段籠を見かけた時には思わず乗せてくれと言いそうになるくらいだったが、良い運動になったと思えば悪くはない。籠は参拝客の会話によれば片道3000円程だそうだ。乗っていたのはお婆さん、担いでいたのはお爺さんだった。
麓に下りてから、こんぴらうどん参道店でとり天ぶっかけを食べる。一杯690円だ。二人とも腹が限界で、なぜここまでしてうどんを食べているのかわからなくなっていた。最早それはこの旅のテーマとして設定したうどん巡りの義務感からでしかなかったと言える。満腹中枢が刺激される前に片付けねばならないと、タケル・コバヤシ(※フードファイター)並みの速度でかき込んだ。とり天はジューシーで、麺にはコシがあって美味かったが、胃の圧迫で心臓が止まりそうになり、「うどん死(デス)」という言葉が頭をよぎった。
疲労が甚だしかったため、喫茶店でまたも一服。琴平駅周辺には、「カキ三(さん)コーヒー使用」を看板に掲げた店が多くあり、前回の旅行でもそのオタフクソースのパッケージのようなオレンジと黒の色合いに親近感を覚えつつずっと気になっていた。おそらくそのカキ三を使ったであろうアイスコーヒーで意識を保ちながら、風呂にでも入ってリフレッシュしようということに話がまとまり、近くにあったこんぴら温泉湯元八千代へ。屋上に市街が一望できる露天風呂があるのだ。塀が低く、少しでも浴場のへりに近づけば周囲からは丸見えとなる(といっても建物より標高が高い所からだけだが)ため、内心ヒヤヒヤしていたが、やはり最高に気持ち良かった。受付で混浴と聞いて下品な期待もしていたが、二人組の女の子が少し覗いて引き返していったくらいで、終始客は私たちだけであった。なお、内風呂はごく普通の湯船がひとつあるだけだった。
体力をわずかばかり回復し、瀬戸内の眺望を求めて五色台を目指す。16時半頃、大崎山の展望台に到着し、青空から海へと沈む夕日を眺めた。なんとも雄大なパノラマだ。遠くを見やると、薄水色の瀬戸大橋があやとりの糸のような慎ましさで陸地を繋いでいる。カメラで何枚も写真を撮った。ふと、ここ数日間で覚えた個人的な悲しみに対して、目の前に開けた海は、その豊満な胸で以て私を迎え、倒れ掛かる身体を圧倒的な光景によって生に押し戻してくれているような気がした。そうして下を見れば、山と山に挟まれた湾内の湿地に、草の生い茂る田んぼのようなものが広がっていた。これは木沢塩田跡地といい、秋頃にはアッケシソウという好塩性植物が紅葉することで一帯が赤く染まるそうだ(大崎山園地の説明看板より)。一度そんな不思議な絵を見てみたいと思った。この日は風が非常に強かったため、目だけでなく全身で自然を感じられて嬉しかったが、そのせいで体が冷えたのと日没直前に雲がかかったため、18時半頃に引き上げた。
高松市内中心部に車で乗り入れ、今宵の宿へ。見るからに怪しげな建物に三友荘という傾いた看板がかかっている。隣の広東料理屋の前に中華系とみられる男が3、4人たむろしており雰囲気が悪い。中に入ると、フロントというよりは雑然と物が置かれた生活スペースが大きく広がっており、その山の中から主人が顔を覗かせて、一言いらっしゃいと言った。それから、かなり雑な態度で駐車場を案内され、やべーところに来てしまった、と思う間もなく会計を済ませて鍵を受け取り3階へ。廊下は廊下で床がはがれていたり、アメニティが散乱していたりとさながらお化け屋敷に入ったような気分になる。部屋に入ると、これまた昭和から時間が止まっていると思われるほど古くカビ臭い和室で、その異様さに一瞬たじろいだ。とにかく寝られれば良いのだと割り切ることにして、外へ風呂に入りに行った。
車を20分ほど走らせて向かったのは、市内中部にある仏生山温泉だ。前回も訪れて、その泉質と洗練された建築様式が気に入っていた。町の歴史が古いため、ここも昔からあるのかと思いきや、2005年開業と比較的新しい温泉らしい(仏生山温泉FBより)。入浴施設とは思えない白い箱のような建物入り口の外観が特徴だ。中に入ると、ドーンと奥行きのあるシンプルな休憩スペースがお出迎え。端には小洒落た物産品が並んでおり、また壁伝いには文庫本の古本が並べられている。客がひっきりなしに出入りし、脱衣場と浴場はまさに芋の子を洗うような状態であった。なんとか湯船の空いたスペースに身体を沈め、一日で溜まったとは思えないほどの疲れを癒す。とろりとした湯で肌がツルツルになり気持ちが良い。露天風呂のある広い空間は現代的な中庭といった印象で、入浴体験を一段上のものへ引き上げてくれる。インスタレーション的な、「空間そのものに浸かる」といった感じだろうか。内部はそのように隅まで配慮が行き届いており、とても面白く楽しめた。
さっぱりした後、宿に車を停め、土地の名物である骨付鳥を食べるために歩いて片原町近くの居酒屋蘭丸へ。本当は一鶴という店に行きたかったのだが、長蛇の列を目の前にして断念、ここに並ぶこととした。小一時間ほど待って入店し、とりあえずビールと親鳥・若鳥、それから鰆のタタキ、造り4種盛り、サラダを注文、香川の味覚に舌鼓を打った。特に親鳥は肉がぶりんぶりんの食感で旨味が凝縮されている。スパイシーな和風ローストチキンといった感じで、下戸なのに否が応でもビールが進む。皿にはたっぷりと鶏油が溜まっているが、それにキャベツをつけて食べるとまた美味いのだ。この骨付鳥の他にうどんと言い今日の行程と言い、なかなか歯応えのある旅だと思った。最後に親鳥をもう一皿と焼酎水割り、注いだ先から凍る日本酒を追加し、11時半頃ほろ酔いで宿に戻った。部屋では撮った写真を整理した後、もう一杯酒を飲んでから眠りについた。夜通し風がごうごうと窓を揺らしていた。
2日目(5月3日)
7時半、なぜか小学校の廊下でスーフィーの集団と象に追われるという夢を見て飛び起きた。昨日神馬の横で象の像を見たせいか。しかしスーフィーは全くわからない。2か月ほど前に蠱惑的なズィクル(※スーフィズムの修行)の動画を見たからなのか。とにかく旅にはふさわしくない目覚め方だ。最近何かに追われる夢をよく見るのだが、おそらく疲れているのだろう。今日もよく眠れなかったようだ。他の理由としては強風もそうだが、宿が高架下にあるため電車が通るたび振動で部屋が揺れるのだ。夜中と朝方に何度か覚醒した気がする。昨日20時間近く活動した身体は、子供騙しのような睡眠では回復しきれなかったようだ。
さて、今日は9時出発の船に乗り、犬島へ渡る予定だ。重い身体を叩き起こし、さっさと準備を済ませて高松築港へ。船の時間が近づいている。車を停めてから本気ダッシュで駅のそばにあるうどん屋味庄へと向かうも��休日だったため、近くにあったさぬきうどんめりけんやに入る。待ち時間にやきもきしながら冷肉ぶっかけ小を注文。430円だ。しっかり美味い。ここでも前日のごとくモリモリ腹に押し込み約3分で退店。ひょろい男の異常な食いっぷりに他の客は少なからず引いていたことだろうが、そんなことには構っていられない。再度、悪心を催すほどの全力疾走でフェリーの切符売り場へ。出航3分前、なんとか間に合うことができた。やる時はやる男なのだ、私たちは。などという安堵感も束の間、ここで無情にも定員オーバーが告げられる。肩で息をしながら愕然とする私たち。あーやってもうた、としか言えず、無意識に抑え込んでいたであろう胃の中で暴れるうどんに気付き普通に吐きそうになる。ただ次の便でも行けることが判明したことで難を逃れた。そうでなければ危うく待合所の床にBUKKAKEするところであった(読者よごめん)。そんなこんなで泣く泣く次便のチケットを買い、待つ間しばしの休憩タイムとなった。負け惜しみを言わせてもらえば、朝の海を見ながら飲んだコーヒーと吸ったタバコは格別に美味かった。これも良い思い出だ。
10時過ぎの便に乗り込み、豊島の唐櫃港に到着。レンタルサイクルを借り、次便の出航する家浦港まで急ぐ。豊島美術館に寄ろうとしたが、1時間待ちと聞きパスした。せっかくの機会にもかかわらず無念だ。前回は誰も客がいなかったというのに、やはりGWは恐ろしい。立ち漕ぎで先を急ぐ。山のてっぺんまではギアなしの自転車と寝不足のエンジンにはかなりきつい坂が続いたが、なんとか越えることができた。途中、唐櫃聖水という空海伝説もある井戸に沸く、不思議なほど青々とした水を拝んでから家浦へ。初便に乗ることができていればこのように複雑な乗り継ぎも必要なかったが、私の性格上致し方ない。人生はエクササイズだと考えれば万事ハッピーだ。そうして無事チケットを買い、物産品店を冷かす。豊島の民謡集に熱を感じ、買おうか迷って結局やめた。そしてしばらくして船に乗った。
13時前に犬島着。昼飯に港すぐの在本商店にて犬島丼なるものを食べた。白飯に甘辛く煮た大根や人参とともに舌平目のミンチを乗せ、甘めの汁をかけた瀬戸内の家庭料理だ。これに舌平目のフライと犬島産テングサを使用したコーヒーゼリーが付いたセットで1000円。どれも田舎風の優しい味わいで満たされた。出てから他の店も覗いてみたが、どこもコーヒーゼリーを出していた。単にさっきの店のデザートというわけではなく、これもご当地グルメのひとつのようだ。
そしてようやく楽しみにしていた犬島精練所美術館へ。ここはかつて銅の精錬を行っていた跡地で、美術館内部は入り口から出口まで一定方向に自然の風が流れるように設計されているという。詳細は省くが、三島由紀夫の作品がモチーフになっており、意表を突くような仕掛けが多く、かなり強烈な印象を受けた。しかしその中でも悔しかったのが、便器の枯山水と銅製の文字が文章となってぶら下がる部屋があったことだ。この二つは自分の内に展示のアイデアとして全くと言っていいほど同じものを密かに温めていたのに、こんなにも堂々かつ易々と先を越されていた。やはり所詮は人が考えること、どんなにオリジナリティを確信していたとしても結局は似てしまうのだ。しかしちゃんと形にした人はすごいし、その点素直にあっぱれと言いたい。やや興奮した状態のまま外に出て周辺を散策する。レンガ造りの廃墟にノスタルジーを感じ、その歴史を想像した。少し歩いて砂浜へ行き、海を眺める。風が強いので瀬戸内の海といえど波が高く荒れていた。夏に来て本来の穏やかさを取り戻した海を一度泳いでみたい。その後、定紋石や家プロジェクトという名のギャラリー数軒を見て回る。F邸にあった名和晃平「Biota (Fauna/Flora)」が個人的にグッと来た。発生は常に見えない、と私は詩に書いたことがあるが、言いたいことがそのまま形になっていた。2つの小部屋にはそれぞれ植物相と動物相のバイオモーフィックなモニュメントが数点あった。シンプルな発想ながらそこから湧き出す観念とイメージ喚起力の豊かさに驚かされた。創作において見習いたい点だ。
船の時間が迫っていたため、港まで早歩きで向かった。全体的に時間の流れがゆるやかで静かな島であった。ここからは直島を経由して高松まで戻る。船内では景色も見ずに二人で眠りこけていた。直島に着くぞ、との声で飛び起き、本村港のチケット売り場へ猛然と走る。乗り継ぎ便が10分後に出るためだ。しかしここでも昨日と同じく定員オーバー、30分後に出る次便を待つこととなった。大型フェリーの前にはゆうに200mを超える列ができており、この島の人気の高さが伺える。そうして、ふと並んでいる時に自分のカバンが思ったより軽いことに気が付いた。はてなと思い中を探るとカメラがない。目の前が真っ白になった。置いてきたのは犬島か、船の中か、それとも盗られたか。考える間もなく、カメラ忘れた! と友人に叫びながら乗ってきた高速船乗り場へとダッシュした。出航していたらどうしようかと思ったが、一条の光が見えた。まだ停泊したままだったのだ。息も絶え絶えに駆け寄る私を見た人民服風の上下を着た船員が、カメラの忘れ物ですかあと声を上げる。良かった。あったのだ。すみませんでしたあ! と謝って相棒を受け取る。ほっと胸をなでおろした。どうやら寝ぼけて置き去りにしていたようだ。私は普段あまりものをなくさないので、こういう時必死に探して見つからなければひどく狼狽してしまう。特にカメラのような高価なものだとその後の旅に影響が出るほどだったのではないかと思う。今回は本当にラッキーだった。友人に詫びてから並び直し、島を後に。航行中は展望デッキからモノクロで日を撮った。夜のような昼の写真が撮れた。
16時頃高松に着いた。後は帰るのみだ。最後にご飯を食べようということで、屋島を過ぎたところにあるうどん本陣山田屋本店へ。大きな屋敷を改築した店構えは壮観だ。本陣と名付くのは屋島の合戦ゆえか。前回の旅で、仏生山で終電を亡くした時に乗ったタクシーの運転手が、うどんならここらが本場だと言っていたため期待度が高まる。ざるぶっかけと上天丼を注文。うどんは570円、丼は720円だ。麺はもちもちとしており、良い塩梅にダシの利いたつゆと絡んですこぶる美味い。天丼にはサクサクの天ぷらがこれでもかと乗っており、ご飯が足りないほどだ。今流行りのロカボの逆を行く、ハイカーボダイエットにより思考が停止するほどの満腹感が得られた。これでコシの強いうどんともお別れかと思うと寂しい。京都の柔いうどんも薄味のダシがしみて美味いのだが、やはり一度讃岐のものを食べると物足りなく感じる。またすぐにでも来よう。次はざっくりと計画を立てて。それでは、さようなら香川。
高速道路は予想通りところどころで渋滞が起こっていた。運転は最初から最後まで友人に任せっぱなしだったため大変な苦労を掛けた。ここに感謝したい。約5時間かけて京都に到着。0時半頃に岡崎で蛸安のたこ焼きを食べた。京都の味だ。ようやくカーボ地獄から抜け出すことができたと二人して喜んでいたが、よく考えなくともたこ焼きは炭水化物であった。うどんのオーバードーズのせいで腹だけでなく思考能力さえもやられてしまったようだ。喫茶店はなふさでマンデリンを飲み、旅費の精算をして解散となった。
今回の旅も、弾丸(もはや散弾)にしてはうまくいった方ではないだろうか。休みに行ったのか疲れに行ったのかわからないが、気を紛らわすには最適な強行軍であった。うどんは5杯も食べられたし、その他のグルメも満喫できた。全ては偶然尽くしだったが、無計画だからこそ楽しめたものもある。私の場合は、ある程度見たいところを決めるだけで、そこに行っても行かなくても良いのだ。というよりはその方が楽だから、皆そうすればいいのにと思う。そこには予想もしない出会いがきっと多くあるはずだ。ただ、GWの人出を完全に舐めていたため、宿に関してだけは事前予約の必要性を痛感した。あと、食べ過ぎは単純に苦しいのであまりおすすめない。今回の旅でもうしばらくうどんは結構だ。などと思いつつ、翌日の昼には冷凍うどんを食べていた。どうやら脳までうどんになっていたようだ。しかし季節はそろそろ梅雨(つゆ)に入るので、ある意味おあつらえ向きなのかもしれない。
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------------------------------------------------------ 『きみと白々しい夜に』 ------------------------------------------------------
あの子が気に入りそうなカフェを必死で探して、思い切って誘った時が人生で一番緊張した瞬間だった。あの日以来、あの子と会うたびに『人生で一番緊張した瞬間』を更新し続けている。
今日も待ち合わせは昼下がりのカフェだ。いつしかあの子の方から、行きたいカフェを教えてくれるようになった。3時間並ぶ人気店なんてのもザラにあって、そういう時は僕が朝早くから並んでおく。入店できそうな時間が分かったらあの子に連絡すると、彼女はなんの苦労もなく人気のカフェでくつろげるというわけだ。僕はあの子に負担をかけないことに幸せを感じている。 けれど、あの子の彼氏はそういう人じゃないらしい。 「朝ふたりで食べようねって、パン屋さんでパン買ってたの。インスタでみんなが食べてるやつ。猫の形のね、すっごい可愛くて。それなのに、バイトの時間だからって、朝ごはん食べずに出て行っちゃったの。インスタにアップするから、ふたりぶんの朝ごはん写したかったのにぃ。ひどくない?」 「ひどいね」 そうだよ、ひどい男だ。僕ならもっと大事にするのに。いつでも最優先で考えてあげるのに。 「朝からほんと病んでたけど、今はすっごくうれしいー! ほら見て、このクマさんモチーフのケーキ、めっちゃ話題なの! 彼くん並ぶの嫌いだから、全然こういうとこ一緒に来てくれなくてぇ。ほんとありがとっ」 「いいよ、全然。喜んでもらえて嬉しい」 「ほんっと優しいよねぇ。彼くんも君くらい優しかったらなぁ」 「はは……」 そんなに言うなら、別れちゃえばいいのに。なんて、言わないけど。 僕にとっては、彼女の幸せが一番で。それ以上の何かを求めるなんておこがましい。 「てか聞いて。昨日の夜ね、彼くんのスマホで一緒にYouTube見てたの。そしたら地下アイドルのチャンネル観てた履歴すごい出てきてぇ。ひどくない? まい、地下アイドルの子たちより魅力ないかなぁ……なんか自信なくすし……めっちゃやむ……」 「落ち込む必要ないって。まいちゃんが世界で一番可愛いよ」 「ほんとぉ?」 「うん、本当。まいちゃんより可愛い子とか、見たことないし」 「うそだよ、大学に可愛い子いっぱいいるもん」 「そんなことないって。まいちゃんが一番だよ!」 カタン、とテーブルが揺れた。思わず身を乗り出してしまっていた。 「……ぷっ。すごいね」 彼女はくすくす笑って、それから世界一可愛い笑顔で僕を見つめた。 「でも、ありがと。元気でた。一番って言ってもらえるの、すごい嬉しい」 それなら、そんなの、いくらでも言うのに。毎日、毎時間、毎秒、いつだって君のことを考えている僕なら、気持ちを込めて言葉を紡ぐなんて光栄ですらある事なのに。
夕方、彼氏のバイト先まで迎えに行くというあの子のことを駅まで送ってから家路についた。途中のコンビニで、晩飯用の塩おにぎりを二つ買った。本当は節約は大事だ。次のお誘いがいつで、どんな店なのか分からないから、貯金は大事だ。いつだってあの子の希望に沿いたいから。あの子の願いを叶えたいから。 六畳一間の自分の部屋は、狭く息苦しかった。灰色に淀んだ光景は、見ているだけで気が滅入った。そこが僕の唯一の居場所なんだと思うと、自分自身がひどくみじめに思えた。あの子と一緒にいる時は、世界中がキラキラして見えたのに。すべてが柔らかくて温かな、春の日差しのような明るさを放ち、鮮やかな色彩でもって僕の心を慰めてくれていた。そんな爽やかで清らかな世界の中で、あの子は一番の輝きを放っていた。この世界を構成する、どんあものよりもあの子は僕のことを幸せな気持ちにさせてくれる。あの子を見ているだけで、自分の中にまで明るい色彩が芽生えたような気持ちになれる。 今ごろあの子はきっと、あの子に優しくない彼氏の家に遊びに行っているんだろう。もしかしたら、泊まりかもしれない。朝の件で少し喧嘩して、優しいあの子は彼氏を許して、二人ですてきな晩ごはんを食べて、ひとつのベッドで寝るんだろう。吐息が頬を撫でる距離で、その日あったことを話したりするだろう。あの子は僕のことを話したりするんだろうか。彼氏は少しくらい焼きもちを妬くだろうか。話すことがなくなったら、きっと二人はキスをして、それから。それから…… 僕はそれ以上考えるのをやめて、風呂に入ることにした。食欲はすっかりなくなっていた。
大雨が降った日の翌日、僕は朝から大学にいた。一日中必死に授業を受けて、図書館で資料を漁っているうちにすっかり日が暮れていた。夜ごはんをどうするか悩んで、とりあえず学食まで向かったところで友人に出会った。 「相変わらず顔色悪いね」と友人は顔をしかめた。「ちゃんと食べてる?」 「これから食べようと思ってたところだよ。君こそ、相変わらず母親みたいなことを言うね」 「しょうがないでしょ、心配なんだから。せっかくだし、一緒に食べる?」 「そうだね。それなら学食でも外でも……」 時間を確かめようとスマホを見ると、一件メッセージが届いていた。あの子からだ。無意識に僕はそのメッセージを開いていた。あの子のことはいつだって最優先で、その制約は魂に刻み込まれているみたいに条件反射的に僕を行動させる力を持っていた。 あの子からの呼び出した。僕は目の前で怪訝な顔をしている友人に弁解する余裕もなく、あの子に返信した。 「どうしたの?」 「ごめん、ちょっと急用ができた。今度埋め合わせするよ」 「別にいいけど……例の子からの連絡?」 「うん、そう」 「ふーん……」 「それじゃ、行くから」 友人を置いて、僕は大学を飛び出した。
僕が向かったのは、あの子の彼氏のバイト先近くにあるダイニングバーだった。彼女は店の前でしゃがんで、膝に両手を載せて、手の甲に額をつけて丸くなっていた。ショーツが見えそうなそのポーズに一瞬ドキッとしたものの、僕は慌ててあの子に駆け寄った。 「大丈夫、まいちゃん」 僕が声をかけると、彼女はうつむいたまま左右に首を振った。 「どうしたの? 何かあった?」 ぴた、と首を振るのをやめると、彼女はゆっくりと顔を上げた。可愛らしいアーモンド形の瞳はうるうると潤んでいた。頬は涙の乾いた跡があ��、鼻頭は痛々しいほど赤くなっていた。 泣いている女の子の励まし方なんて知らなかった。 「とりあえず、お店に入ろうか。何か美味しいものを食べたら、元気が出るよ」 「うん……」 か細い声を漏らして、わずかにうなずく。僕はホッとしつつ身を起こして、彼女が立ち上がるのを待った。すると彼女はしゃがんだまま、可愛らしく僕を見上げている。 「立たせて?」 さっきまで泣いていたからなのか、やたらに庇護欲を誘う甘い声だった。どきどきしてしまう自分を胸中で諫めながら、おそるおそる彼女の手を握る。華奢で、少しでも力の籠め方を間違えば折れてしまいそうだった。緊張しながら引っ張り上げると、彼女はふわりと天使が舞い降りるような軽やかさで立ち上がった。 「ありがと」 泣いた余韻が残る痛々しい笑顔ですら、彼女は世界一可愛かった。
「彼くんから3日もラインの返信が来ないの」と彼女は言った。 「忙しいんだよ、きっと」 「そんなことない。だってインスタは見てるっぽいもん。他の子の投稿にいいねしてたもん」 彼女は「ほら」と言って、インスタの画面を見せてきた。彼氏のアカウントらしきものが表示されていて、「いいね」ボタンを押した履歴が一覧になっていた。最新のものは1時間前だった。 「不安になったから、バイト先に行ったの。今日、シフト入ってるって分かったから。そしたら、レジのとこで女の人と楽しそうに喋ってるのが見えて……バイト先の先輩の話、最近よくするなって思ってたけど、美人な人だからだったんだ……まいよりあの人の方がよくなっちゃったんだぁ……」 彼女の瞳がまたうるうるしだす。店内の抑え目な照明の光が彼女の大きな瞳に反射して、キラキラと光っている。彼女の弱さを目の当たりにして、僕の中に様々な感情が生まれていた。彼女の弱さを受け止めたい、という願望や彼女の弱さを受け入れることができるのは僕だけだという自負、彼女への愛、彼女への同情、彼女への庇護欲。感情の激しい奔流を必死で抑えようとする。うかつに口を開けば、どんな言葉が飛び出るのか予想がつかなかった。 「……とりあえず、飲み物追加で頼もうか」 僕は言って、ドリンクメニューを開く。彼女は頷き、ごく自然なそぶりでアルコール類のページからキールを指差した。店員さんを呼びつつも、心配になって彼女に尋ねる。 「強そうだけど大丈夫?」 「いいの。今日は酔いたい気分だから」 安っぽいドラマみたいなセリフも、彼女の口からこぼれると自分でも信じられないくらいドキドキさせられる。邪な期待を抱くつもりはないのに、今までずっと、ただ純粋に彼女のことを好きでいたのに、さっきから鼓動が早くなったままだ。あらゆる感情に思考がかき乱され、頭がずきずきと痛む。 うやうやしく運ばれてきた淡いピンク色のカクテルを、彼女はどこかうっとりした瞳で見つめる。その色っぽさは初めて見るもので、僕は落ち着かない気持ちになった。今日の彼女は、いつもと違って――どこか危うげな艶めきがあった。 「写真、撮ってくれる?」 彼女は言って、僕にスマホを差し出してきた。僕は頷いてそれを受け取り、なるべく彼女が綺麗に写るようにと必死になって構えた。 グラスを口元近くに持って、小首をかしげる彼女はスマホのカメラでは表現しきれないくらい可愛らしかった。僕が撮った写真を彼女が確認し、2、3回撮り直しが行われた。僕の注文したジンジャエールのグラスをどうにか画面の端に映りこませると、彼女は満足げにその写真をアプリで加工しはじめた。 「加工しなくても可愛いのに」と思わず言うと、彼女は楽し気に笑った。 「ありがと。優しいんだね」 彼女はいつもの調子で明るく言ったつもりだったのかもしれないけれど、ずっと見てきた僕には分かった。その声には、少しだけ寂し気な響きがあった。彼氏が他の女に目移りしているという可能性は、彼女にとって想像以上に重たい事実のようだった。 「君だったら、まいの連絡無視したり、他の女の人と楽しそうにしてまいを不安にさせたりしないんだろうな」 甘い香りのするカクテルをひと口飲んだ後、彼女が言った。 「もし君と付き合ったとしたらどんな風なのかなって、たまに考えるの。きっと君だったら、彼女のこと大切にするんだろうな。君と付き合った方が、まいは幸せなのかもって」 「あ……そ、そう、なんだ」 「ねえ。もし、まいと付き合うことになったら……大切にしてくれる?」 彼女がどういう考えで僕にこんな質問をしてきたのかわからなかった。 「もちろん、大切にするよ」 緊張にかすれた声で、僕は返した。慎重に声を出さなければ、今にも店内中に響く声で言ってしまいそうだった。『僕は君の��とが大好きなんだ』なんてことを。 「ふふ、断言しちゃうんだ?」 彼女はからかうように言った。自分が前のめりになっていたことに気付いて、必死さを自覚して僕も笑った。 「優しくされたら、まい、すぐ勘違いしちゃうんだよ」彼女は微笑みながらそう言って、ささやくように付け足した。「……ねえ、今好きな人いるの?」 「いないけど……」 それ以外になんて答えればいいのかわからなかった。彼女には彼氏がいるのに。 「そうなの? すっごく意外」 彼女は心から驚いた様子で、無邪気に目をぱちくりさせる。その無垢さにどうしようもなく胸がかき乱されて、もう気持ちが抑えられなくなった。 「僕は、だって、まいちゃんが好きだから」 口に出すと、鼻の奥がツンと痛んだ。 「え……?」 「ずっとまいちゃんのことだけが好きだったから。他の子なんて、考えられなくて。だから、彼女なんていないよ」 僕の言葉に、彼女は目をしばたたかせた。冗談なのか本気なのかを見極めようとしているかのような、どこか冷静な雰囲気すら感じられた。僕の方はといえば、言うつもりのなかった思いを吐露してしまったことに自分自身でも戸惑って、心臓がバクバクと激しく鳴っていた。僕たちの沈黙を埋めるかのように、周囲では楽し気な会話が交わされていた。それはどこか遠い出来事のように、ぼんやりとくぐもって聞こえた。 「……そっか」 彼女は小さくつぶやくと、テーブルの上で硬く握りしめられた僕の手にそっと手を添えた。柔らかくて少し冷たい、華奢な手だ。 「ありがとう、こんなまいのこと、好きって言ってくれて」 「お礼を言われるようなことじゃ……僕が勝手に、好きでいただけで」 「ううん、嬉しい。君みたいに優しい人と付き合える人は幸せだろうなぁって思ってたの」 どこまでも優しい声だった。 「君を好きになれたら、きっと毎日楽しいよね」 彼女は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。重ねた手を見つめていたかと思うと、不意に僕の顔を覗き込む。 「ずっとずっと、まいのこと大切にしてくれる? 他の子に目移りして、不安にさせたりしない?」 一語一語区切るように、まるで催眠術にかけるかのように、静かに彼女が言う。 「大切にするよ。だって僕はずっと、君が好きだったんだから」 「ふふ、嬉しい」 目を細めて、優しく微笑んだ彼女は、僕を見つめたまま小さな声で言った。 「ねえ……今夜は、ずっと一緒にいたいな」
夢のようだった。 ふわふわとした気持ちで支払いを済ませて店を出ると、彼女がそっと寄り添ってくる。僕の腕に体をもたせ掛け、ゆっくりと歩きながら、少しずつ人通りの少ない通りへと向かっていく。大学のカースト上位、よくモテる人たちが時々話題にしている通り。どちらからともなくその通りへと入って行く。ひと際おしゃれで、心理的なハードルが低そうな店構えのラブホテルの前でお互いの歩みは遅くなり、そして止まった。 問いかけるような瞳で見つめてくる彼女に頷きを返して、自動ドアの前に立つ。フロントは甘ったるい香りが充満していた。彼女が最後に注文したカクテルのように、薄ピンク色を予感させる甘さの香り。嗅いでいるだけで意識が遠のきそうで、くらくらした。 夢うつつで、自分がどうしたかもわからないまま提示された通りの部屋代を払い、エレベーターに乗って、そしてとうとう、彼女と二人きりの空間に足を踏み入れる。初めてのことだった。いつも大学の教室や、中庭や、大学外で会うとしたらカフェや映画館で、他人の目は常にあった。それなのに、今は、世界の誰にも僕たちのやり取りを知られない、ラブホテルの一室に、二人きりでいる。 「こんなこと……他の人にはしないよ?」 入り口に呆然と立つ僕から少し離れて、彼女が恥ずかしそうに言う。「いつもまいに尽くしてくれて、優しくて、好きって言ってくれる君だから……」 「分かってるよ」 僕は言って、震える手を彼女の肩に添えた。彼女は僕を見上げて、長いまつ毛に縁どられた綺麗な瞳をまっすぐに向けてくる。たまらなくなって、思わずぎゅっと彼女を抱きしめた。 「きゃっ」 小さい声をあげて彼女がよろめく。そのままベッドへ倒れ込んでしまった。二人分の体重が一気にかかって、ベッドはギシ、と生々しい音を立てた。 「まいちゃん……」 ベッドに倒れ込んだ体勢のまま、彼女を見つめているうちに、たまらなくなってくる。彼女の服の裾に手を伸ばそうとすると、手の甲をつねられた。 「だめだよ」 「あ……ご、ごめん」 勝手に盛り上がってしまった自分が恥ずかしくなって、身体を離そうとする。けれど彼女は、逆にいっそう身体を近づけてきた。 「……もう一回、ちゃんと言って? まいのこと……好き?」 「うん、好きだよ。ずっと好きだった」 「ふふ……ありがと」 彼女は僕の手を自分の胸元へと添えさせた。 「嬉しくて、ドキドキしてる」 至近距離でも、彼女の瞳はどこまでも澄んでいて、綺麗だった。 それは本当に、本当に――夢のような時間だった。 あの電話がかかってくるまでは。
二時間ほど経ったころ、彼女のスマホが鳴った。最初はメッセージが届いたような、短い音。それが数回続いた後、電話に変わった。添い寝の状態で休んでいたから、その音はやたらと耳についた。 「出るね」 起き上がった彼女が、スマホを耳に当てる。 「もしもし? うん……うん……」 彼女の声は、今日聞いたどんな声よりも甘えて聞こえた。僕は嫌な予感がした。洩れ聞こえてくる電話口の声はまぎれもない男の声だった。彼女の様子から見て、��の相手が誰かは想像に難くない。まず間違いなく、彼女を翻弄して傷つけた、例の彼氏だった。 「インスタ? うん、今日撮った写真……別に、友達……なんで? そっちこそ、バイト先の人と……うん……ただの先輩? そんなこと、信じられないよ」 諫めるような言葉を並べ立てているにも関わらず、彼女の声はどこか子供が構ってほしくて拗ねたふりをしているような、甘えが混じっている。さっきまで感じていた幸福感や、充足感はとうに消え去っていた。今はただ、胃のあたりがキリキリと痛んでいる。 「本当に、まいだけ? もっかい言って……うん……うん、まいも、直接会いたい」 彼女は電話を切ると、息つく暇もなくベッドを降りた。 「どこに行くの?」 「彼くんのとこ。まいが一番大好きって、謝ってくれたの」 「えっ? でも……」 いそいそと服を着る彼女の姿が、どこか遠く感じられた。現実味がなかった。この部屋に入ってからずっと夢見心地ではあったけれど……今は悪夢を見ているような気分だ。 「好きって言ったよね、僕。だから君も……」 「うん。好きになってくれてありがとうって、お礼を言ったよね」 僕の戸惑いを封じ込めるように、妙に事務的で強い口調で、彼女が言った。 「嬉しい。まいも、友達として君の優しさが嬉しいの。まいたち、きっと、ずっとすてきなお友達でいられるよね」 「……友達?」 「これからも、優しい君でいてね」 彼女は身支度を終え、ひらりと部屋を飛び出して行った。 僕は呆然としたまま、ベッドに取り残される。それ以外にできることなど、何もなかった。
――現実味に欠けたその一夜を超え、数日後。 僕は友達と、駅前にあるチェーン店の居酒屋で晩ごはんを食べていた。 「何それ。結局遊ばれたってこと?」 かいつまんで事情を話し、相談した僕を心底呆れた表情で見つつ、友達は深いため息をついた。 「遊ぶって……あの子はそんな子じゃないよ。ただ、あの日はほら、きっと混乱してて……」 「人がいいにもほどがあるよ。分かりなよ。二人で食事してるっぽい匂わせ写真投稿して彼氏の嫉妬煽って、彼氏が浮気してるかもって疑惑だけで仕返し決意したあげく、手ごろなあんたを利用したんだよ。そういう子なんだよ、あんた絶対騙されてるって」 いつも苦笑しつつも僕の恋愛相談を聞いてくれる友達なのに、今日はやたら厳しかった。特に彼女に対しての言葉が辛らつだ。 「そんなこと……ないって。女の子が、そんな理由で……彼氏の嫉妬を煽りたいだけで、他の男とデートしたりするわけないだろ」 全部を知らないからそんなことが言えるんだ。あの子と直接話せば、どんなにいい子かすぐに分かるのに。 「……あんたはほんとに、お人よしすぎなの。気を付けてないと、絶対また騙されるよ」 友達は深い深いため息をついた。その表情はひどく悲し気で、本当に僕を心配してくれていることが分かった。 「ありがとう。でも、あの子はいい子だから」 それだけしか返せない僕に、友達はますます悲し気に表情を曇らせた。
友達と別れ、アパートの自分の部屋に帰ると、また閉塞感が僕を襲った。 あの子に対するあらゆる感情を閉じ込めておくには、この部屋は薄暗く、色あせて、窮屈すぎる。みじめさに吐き気がした。 疲労感から倒れ込むように床へ寝転がり、言いようのない倦怠感を覚えつつスマホをいじる。さきほどまで一緒だった友達から一件、心配してくれているメッセージが届いているほかは何も連絡がきていなかった。惰性でインスタを開き、あの子のアカウントを見る。最新の投稿は2分前だった。すごい偶然だ。 『彼氏とペアリング選んできた! 試着した時二人でこっそり写真撮っちゃった』 そんなキャプションが付いた写真には、男らしいごつごつした手と指を絡め合っている、幸せそうな笑顔のあの子が映っていた。
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ドストエフスキーの『白夜』があまりにも色褪せなさすぎて感動したので 思わず書きたくなった話です。
>写真をお借りしています。
Bernadette WurzingerによるPixabayからの画像
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Mother Complex 8(-1)
リビングを開ければぐぅぐぅと鼾をかくのが聞こえてきた。部屋が少し酒臭い。テレビをつけて、パタパタと支度をするのに動き回っても全く起きる気配すらない。家を出る直前、ソファで綺麗な顔をして鼾をかく一護の傍にしゃがみこみ顔を見つめた。
ルキア大好き
なぁんて、甘い声を出して手を握ってきた昨日の夜のコイツは一体何なのだ。なんて狡い甘えん坊だったことか。
内緒の彼女とは誰なのだろう?なんとなく、井上ではないような気がした。でも昨日あの店にいたのは井上だった。
一護は
そんなに難しい子でも狡賢い子でも無い気がするのは私の欲目なのだろうか
私に「彼女」の存在を隠すのは何故だろうかそん��存在を感じさせたことなどなかったように思う。というか学生だった頃は女の子と遊ぶのを隠してなどいなかったように思う。どちらかと言えばいろんな女の子と遊んでいなかっただろうか。少しがっかりするくらいに。
でもそれは私が鈍いのかもしれないし
一護がどうしても隠したかったのかもしれないけれど
そうだとして何故そこまで隠すのか
私にそんなに気をつかっているのか
それともー
それとも、なんて考えは思うことすら許されることでは無い気がして頭から追い出した。
ばか息子
起こさぬよう小さく声をかけて
鼻を指で弾いて家を出た。
◾◾◾
土曜日は顧問をしている合唱部の為だけに学校に行くだけなので、5時には家に帰ることができたが帰りたくなかった。
《何時に帰る?》
スマホを見れば一護からいつもと同じメッセージがきていて、いつもならふわっとした気持ちになるはずなのに今日は何故かその言葉がとても煩く感じてしまった。
彼女が、来てるのだろうか
そう思ってしまえばモヤモヤとして少し意地悪な気持ちにもなる。
《今日は桃の家に遊びに行く。ご飯も桃と食べる。夜中まで帰らぬから》
それまでどうぞご自由に、というのは消してから返信した。そこまで書いたらいやらしいし惨めな気がした。
何時に帰る?とか今どこ?とか、一護は毎日のように聞いてきてそれを可愛く感じていたなんて本当に自分は間抜けだ。
《やべ、7時に帰ってくるみたいだ》
《じゃあ帰るね》
《ごめんな、また今度な》
なんて、きっと本当はそんな会話をしていたのだろうかと思うと、騙されていたわけでもないのに悔しいような寂しいような気持ちになる。もちろん一護は悪くない、そんなことも頭では理解しているのに心がついていかない。
お年頃だしな
息子は母親を嫌いじゃなくても疎ましいものなんだろうし
というか私を母親としてみてくれてたのかな
でも一護はたくさん���ってくれるし自分から買い物にもついてくるし仲は良いと思うのだが
……私と一護はなんなのだろう
兄様や空鶴さんの言うことはわからなくなかった。多分いい環境ではないのだろう、他人から見て私と一護は。
でも私は、そういう意味で一護に海燕殿を重ねて見たりしたことはなかった。彼等が心配している事は的はずれではなくても根本的に間違っている。
そしてそれは誰もわからない
その間違いを正しく知っているのは私だけなのだ。
それでも狡い私は今のままを望んでいた。このままでいたかった。
でも一護に彼女がいるのなら
兄様達の言うように
私はあの家を出たほうがいいのかもしれない
まとまらない頭は鉛のように重く、考えることを放棄したがり足はどうしても家に向かうことを拒否した。今日は土曜日だから彼が来てるだろうなと思うと申し訳ない気持ちになりながら、それでも親友の家にと向かった。
「よぅ」
と玄関を開けて出迎えてくれたのは日番谷君だった。やはり来ていたか、と思ったまま言葉にしてしまえば日番谷君はなんだよ、と少しムッとした顔をした。
「いや、邪魔して悪いなと思ったのだ」
「別に。アイツ朽木来るって喜んでるし」
「ちょっと桃と話したら早々に帰るよ」
「…今日は鍋にしようって喜んでるから夕飯も一緒に食ってけよ」
唇を尖らしながらストレートな言葉を伝えてくるこの子はやはり可愛い、と思う。ありがとう、では夕飯もご一緒させてもらうかなと礼を言えばこくんと頷いた。
「こらぁ!シロちゃんてばまた呼び捨てにしてぇ」
パタパタとスリッパを鳴らしながら桃が鍋つかみをしたまま現れた。日番谷君はいーじゃん今更さん付けでなんて呼べるかよとブツブツ言って、桃に鍋つかみをした方の手でポカッと柔らかく叩かれた。たいして痛くもないだろうに、いてぇ!と声を上げる日番谷君をスルーして桃は私に顔を向けるといつもの柔らかい笑顔をみせた。
「ルキア久しぶりだねぇ~今日はルキア来るって言うから嬉しくて奮発してすき焼きにしたんだぁ」
「おぉ、それは嬉しいな。とりあえずビールとそれから日番谷君用にコーラも買ってきたぞ」
「おいなんだよその馬鹿にした言い方は…俺、最近飲めるようになったんだけど」
「なぬ?本当か?」
「そーなの、飲みの席でコーラを飲む自分がカッコ悪くて嫌だったみたいでね~シロちゃんお酒呑むようになったんだけど、そしたら全っ然酔わないの。実は強いみたいでつまんなぁい」
「いいではないか、桃が弱いのだから。安心して一緒に外で飲めるではないか」
「だろ?心配なんだよコイツ。ってもやっぱコーラのが好きなんだけどさ」
お子様め、と呟くとうるせぇチビと悪態をついては「こら!」とまた桃に叩かれている。
大学からの友人の桃とその彼氏の日番谷君の二人は、いつでも仲良くて可愛らしくて何とも和む。この二人の間にいても、居場所が無いなんて拗ねることも気を使うこともないのは二人ががきちんと周りをも気を使っているからなのだと思う。
最初は驚いた、桃が「彼氏ができたの」と言ってきた時は。
音大を出て、同じく音楽教師となった桃の赴任先は男子校だった。日番谷君はそこの生徒だったのだ。素行の悪い生徒でも真面目というわけでもリーダー的でもないのに、目立つ子だというのは後に彼と会ってすぐに理解した。とてつもなく小さく(私に言われたくはないだろうが)とてつもなく綺麗な顔をしている日番谷君は、桃に一目惚れをしたのだと言う。
桃は最初、私にも誰にも日番谷君のことを相談出来なかったと笑いながら後から言っていた。
「いけないことのような気がして、誰にも言えなかったの」
わからなくはない、いやとてもよくわかると思った。自分より6つも年下のそれも生徒という立場の少年に、そんな気持ちを抱くのはおかしいようないけないことのような気持ちになるのは当時の私にとても理解はできた。
それを貫いても「シロちゃんとずっといたいと思ったから」と言った桃は自分の気持ちに正直で、どこか尊くさえ感じた。
「雛森も飲む?」
「うん、今日はあたしも飲もうかな」
狭いキッチンで残りのビールを冷蔵庫にしまいながら聞く日番谷君とてきぱきと葱を切る桃を炬燵に入りながらぼんやりと眺める。
「そういえば未だに雛森と呼ぶのだな」
「あ?」
「いや、名前で呼ばないのかなと」
「最初から雛森だったからな」
「そーなの、シロちゃんてば雛森先生とも呼んでくれなかったんだよねー」
「へぇ。でももう何年もつきあってるのになぁ」
「あ、でもシロちゃん甘えてくるときはね、桃って呼ぶんだよ」
「うるせぇな!余計なこと言うなよバカ森!」
「ほ~ぉ?」
朽木もやらしー顔するなと赤くなる日番谷君とバカ呼ばわりされても何ともなく笑っている桃がおもしろくてスマホが振動していたのは気がついていたが取り出さなかった。
一護だろうとは思ったが、今は一護のことを忘れたかった。
本音を言えば、桃に胸のうちを話したくて会いに来たが、すき焼きのいい匂いや日番谷君と桃と話していると何だかどうでもいいような、話すほどのことでもないような気持ちになっていた。
きっと、大丈夫
なんでもない、とるにたらないことなのかもしれない
ぼんやりとそんなことを思いながらも、笑いながら二人と食べるすき焼きは美味しくて、出されたスパークリングワインも美味しくて気がつけばかなり飲んでしまったらしい。カチャカチャと洗い物をする気配を感じても、炬燵に寝転んで起き上がれなくなってしまっていた。
「なんか、あった?」
「ん……」
隣から桃の優しい声が聞こえてくる。
ということは洗い物をしているのは日番谷君なのか。
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ご飯の心配をちゃんと優先しないと騙されたまんま
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日記、ゲッベルス、タチカンツバキ
お昼を王将でオーダー。 例のごとく天津チャーハン。王将にいくと天津飯か天津チャーハン。 あと餃子一人前。 お腹いっぱいになる。 880円ちょいと値段的には大して食ってないが腹一杯になる。 とおもったが牛丼大盛りとミニサイズを食べてるようなものと思えばこれくらいはいくか。 毎度毎度想像力が欠如しているのか予想外の膨満感に苛まれることになる。 予想外もなにもない。まあお腹が膨れることは悪い気はしないけど。でも苦しいなあ…。 腹が減るたびにこの苦しみを求めてしまうのは何故だ? 食性生物は快楽を中継して痛みから痛みに行くことしかできないマゾ体質なのだと思われます。 永劫回帰であります。 もぐもぐ。うまい。 ゲッペルスの思想について再考。 嘘も100回繰り返せば真実になるとはゲッベルスの思想として語られるが、これ自体が名言なのは当然。 しかしながらナチスは現状報告を国民に怠ったりしているものの政略面で国民の支持を得る際には虚偽を謳っていない。 ユダヤ人の作る映画にはナチスは間違いだらけと言う描写しか出て来ませんが、少なくともドイツ国民がナチスを支持した理由は第一次世界大戦の敗戦国たる雪辱、ベルサイユ条約で課せられた負担に対する怒りがあるんですね。 その不満を上位搾取層を占める資本家・ユダヤ人たちに向けたのがナチスだったわけですが、これも社会主義が台頭して来た頃合いで資本家に市民や知識人の怒りが向くのは当然といえば当然だったわけです。 そうやって市民の心をうまいこと掴んだナチスは順繰りにドイツを支配していきました。 それだけならまだいいんですが、こうした急進派にありがちなことにナチスの思想は絶滅政策やらゲルマン人によるヨーロッパ支配やらとどんどん過激な方に向かっていきました。 まずもってこの時代は占領支配の思想が何よりも重視されましたので、各々の国がどう歴史観を最新の侵略論と結びつけようかと必死だったわけです。 日本の場合は、せっかく開国したわけだしどうせならアジア全域を牛耳ってアメリカやヨーロッパと対等にやってやろうか。ロシアは前に倒したし、ドイツもww1でやっつけたし、いけるだろ多分、という方向でうまくまとまりまして。 手始めに国王の溥儀が持ち込んで来た満州国を実験場及び拠点とし、植民地支配というやつをやってみようということになりまして。 この発想に白人のみなさんは大層お怒りになりまして。アメリカは手始めに貿易を妨害しまして、これに日本が切れまして。 めでたく第二次世界大戦へと相成るわけです。 そんな中でドイツが国民をまとめ上げるために他の民族の絶滅思想を流布しようと考えるのは、当時にしてみればそんなに不自然なことではないわけです。 なんせドイツは世界的な敗戦国でいじめられまくってましたし、誇りを取り戻すためならなんでもやるのが人間です。 よそ者のユダヤ人たちが豊かで自分たちが惨めな貧乏人だったらさすがに腹も立ちましょう。 そして都合良いことにドイツは職人層や技術者層が厚かった。ナチを支持する人々には高度な技術をもちなおかつ戦勝国にうんざりする労働者層が多かったんですね。 これが彼らの敗因ともなりました。 まず技術が高く、侵略行為も過剰であったため、兵站線を『延ばせすぎた』のです。 物資や兵の流通が叶わず本土と断絶した部隊が多かったことが敗北の主な原因として挙げられます。 技術と誇りがあっても物がなければ負けるのが戦争というわけですね。 そういうわけでドイツはww1、ww2と連続して負け、おまけに東西分裂するという日本より残念な敗戦国になってしまったわけです(原発投下を被ることは回避できましたが)。 当然いまは盛り返してきてますし、日本と同じく立派な技術国です。 僕はディーゼルエンジン好きですね。スターリングエンジンの次に好きなエンジンです。 余談ですが、 日本がGDP世界二位とかいうのはアメリカの威光が影響してる部分もあるので単なる国力としては語れませんが、もののない技術国としては国際的にかなり上位なのは間違いないです。 日本はこれから物量で中国に押し負けることが決まってるので残念ながら世界二位という日の目はもう見ることができないでしょうが、常に破裂寸前の中国のように国ごとぶっ潰れるような事態に陥ることもまあありませんのでそこそこでやって行くぶんには大丈夫でしょう。それこそドイツくらいのね。 下手なことせずに防衛力だけ維持して半鎖国状態で技術を提供しとけばいいわけです。 目障りなのは中国と北朝鮮とロシアでしょうか。 そのうち中国が周辺国の反撃でも食らって潰れてくれればいいんですけどね。難民は一切受け入れず既存の在日外国人を安い労働力として使えばいいわけです。 その時はアメリカの犬になる必要があるのでそれはそれで嫌ですけど。 まあ国と国の関係なんてそんなもんですけどね。日本も当然ながら防衛力としてアメリカを利用してるわけですから。 さて余談は終わり。 そんなこんなで宣伝に成功し戦争で負けたドイツですが、ゲッベルスがやったプロパガンダ戦略とはなんだったのかと言いますと、「国民に情報を与えて不安と不満を煽り、それに答えを提示する」のが骨子だったわけです。 嘘八百をでっちあげてコントロールするわけでもなんでもなく、単にムカついてる人たちに武器を与えて戦わせたというそれだけです。 それこそがプロパガンダの真価だとゲッベルスは言っています。 国民は決してバカではないのです。 子供が大人の嘘に案外気がついてるように、隠し事には気づくし、騙されたら怒ります。 騙してはいけないのです。真実を受け入れさせてからこっちの来て欲しいところに来てもらうのがプロパガンダなのです。 そして、そういう事実を利用したプロパガンダは批判しようにもなかなかできないもんなのです。 正しいことに量を与えたらスピードを伴ったエネルギーになります。 プロパガンダを否定するためには確固たる情報と理念信念を持たねばなりません。そして、往々にしてそうあることができるのは国民とか市民とかそういう民草単位ではなく、個人だけなのです。 政治家と知識人の最大の違いはここにあります。政治家は公人で、知識人は個人です。国という公の場で個人は公人に対抗できません。できっこありません。 ドイツ国民には表面上の薄っぺらな敗戦国思想よりも血統を拠り所にする誇りある国政が欲しかった。それがナチスです。 アメリカ人にとっても、本音を言えば英語も話せないわけのわからない国の連中は切り捨てたい。 なんならオバマ大統領というポリティカルコレクトが働いた結果の有色人種大統領の直後にトランプ大統領というゴリゴリの保守派を連れてきたのも彼らの本音です。 国民全員の本音ですね。 そりゃそうですよ。だって言葉の違いってイライラするし。それは当たり前なんですよ。そこをどう維持するかに頭を悩ますのが普通なわけでして、アメリカも百点満点の答えなど出せるわけもなくいろいろ間違えてきました。 そしていまアメリカという大いなる偽善の国に国民が限界を感じ始めてる。 なんだかんだ言いながらビンラディ��を射殺して喜んでるオバマとブッシュとなにか違いがあるのだろうかと。 そもそもアメリカ自体銃を手に取り先住民を襲い殺し奪うことでできた国なのに。 国民を騙すことはできません。 だから騙そうとしなかったトランプが勝ったわけです。ゲッベルスならそれが当然だというでしょう。 人は勝利を選ぶとき社会倫理を超越するもんです。 そういうわけで、もういまの時代ナチスはともかくゲッベルスの宣伝戦略思想を否定する人もいないでしょうね。 ヒトラーの我が闘争は規制本ですけどゲッベルスの本は普通に出とるので。 彼にはまだまだ学ぶところが多いなと感じた次第です。 帰りにスーパーですじこの醤油漬けとフリーズドライの雑炊を買う。 ここのところ宇宙食に興味がありましてなにか欲しかったのですが、ふとスーパーでセブン&アイ・ホールディングスのフリーズドライを目にしまして。業務提携してるんでしょうね。入り口のところにセブン銀行あったし。 宇宙食といったらフリーズドライをさらに厳しい環境に晒して、なおかつ液体がパッケージの外にこぼれないように工夫されたものなわけです。 ということは。 単なるフリーズドライの食品を不可視の入れ物でパッキングしてジュルジュルすすったら特殊宇宙食っぽくなるんではないでしょうか。 要は乾燥してて味気なくて無菌なら宇宙食っぽいわけです。 そういえば普通のレトルトカレーを国際宇宙ステーションに持ち込んだ海外のクルーの話もありました。 宇宙食ってそんな変なもんではないかも、ということで夕飯に試してみたく思います。 すじこはふつうに好物です。 スーパーの帰り道、近所の小学校の垣根に『タチカンツバキ』と札があった。 タチカンツバキ。 ツバキはわかるがタチカンとはなんだろう? 疑問がムクムク湧いてきまして、調べたらでました。 まず椿の一種ということで、寒椿(カンツバキ)というものがさきにあるそうです。 ツバキと同様日本固有種だそうですが、カンツバキが純粋にツバキを祖とする植物なのかどうかははっきりせず、中国由来のユチャとツバキの交配種だとか、サザンカの変異種だとかいろんな説があります。 実際ツバキとサザンカ両方の特徴を併せ持つ種らしいです。 寒椿ということで椿より寒い時期に咲く花なのかなと思いきや、ツバキ自体寒い季節の花なのでこれは当たらない。 というよりツバキは9月から5月ごろまで長いこと花期を経るわけですが、カンツバキは11月から2月ごろまで。 短いんですよ。 確かに寒い時期に集中して咲く花という意味でカンツバキとは当たってるかもしれませんが、寒さのトータルでいえばふつうにツバキの方が勝ってる気がして腑に落ちない感じもある。 そんななんだかもやもやするカンツバキのさきにタチカンツバキがあるのです。 立寒椿(タチカンツバキ)はカンツバキの中でも特に背が高いもののことを言うらしいです。 たしかに垣根になってるわけですからこれは納得ですね。 カンツバキの背の低いものを獅子頭(シシガシラ)といいます。 まあ椿の花はたてがみっぽく見えないこともないので当たりでしょう。 ところでシシガシラという名前は同名のシダ植物がありまして、こちらの方がポピュラーだという方も多いのではないでしょうか。 山菜採りとかいくと山の斜面に生えてるやつです。僕はどっちかといえばこっちのシシガシラの方が好きですね。 シダ植物シシガシラ科ヒリュウシダ属シシガシラというシシガシラの中のシシガシラであります。 シダ植物といいますとコケなんかの生える湿った森の中に鬱蒼としていて、葉の上に常に水滴をつけてて、特に鋭くもなく毒もない、かといって食べられもしない毒にも薬にもならない優しい植物というイメージがあります。 もののけ姫やナウシカのイメージですね。 森の中にコケやシダ植物が生えてるともののけ姫感が増しますよね。 神秘的で好きなんです。 植物のなかでも由緒ある方ですしね。 そういえば動物が滅ぶ時はまず広葉樹が絶滅して小動物が消え、済し崩しに大型動物が消え、次にわずかに残った小動物と共に針葉樹林が消え、最後に昆虫と一緒にシダ植物が消えるそうですよ。 シダ植物の環境下ではデボン紀以降に出てきた爬虫類や両生類だのといった通常の動物は生きていけないそうです。たしかにコケと虫とシダしかない環境下でどう生きればいいんでしょうね。虫をだんごにして食べますか。うおえっ。 でも、言われてみればたしかに昆虫とシダ植物はシルル紀に最初に陸地へ出てきたチャレンジャー二人組ですのでそれぐらいの優位はあっていいと思いますね。 たとえ軍事戦争の果てに核の炎で人類が滅びたとしてもタチカンツバキ含む広葉樹や動物は生き残ってくれるでしょう。 またもしタチカンツバキ含む広葉樹や大型動物が滅びても針葉樹林は残るだろうし、哺乳類や爬虫類が滅びたあとの世界でも昆虫とシダ植物とコケは残ってくれるだろうことを祈ってます。 核の炎で世界が滅びるリアリティってのも時代遅れ感ありますが、怖いもんはいつまで経っても怖いもんです。 それではまた。
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10280135-4
「鴻神と貴女たちの関係は私の知るところではありませんが、少なくとも彼は、事件発生から貴女を気にかけ、事件解決に奔走していた、と言うことだけは、分かっていただけると幸いです。」
「あの、吉沢さん。」
護衛の警察官に声をかけ、去ろうとする吉沢警部を呼び止めた私は、一つだけ、引っ掛かっていた事を質問した。
「篠宮、今病室に入っていった彼を、最初にお知りになったのは、いつですか。」
「そうですね、私の記憶が正しければ、あれはもう、10年以上前、12年ほど前じゃなかったかな。」
「ありがとうございます。」
去って行った男、吉沢に、「鴻神が犯人確保の際に刺されて、今治療中だ。」と言われた時、真っ先に思い出したのは、最後、鴻神から篠宮へ電話をさせた時のことだった。
鴻神は私に、「万が一自分が怪我したと知っても、篠宮には知らせるな。絶対病院に来させるな。」と釘を刺した。理由を聞いてもはぐらかすばかりで、心底嫌な奴だと、その時は嫌悪感しか抱いていなかった。実際鴻神は無茶をするタイプではなかったし、サヨナラを告げてから定期的に伝えていた彼についての連絡は滞りなく、事務的なやり取りだけで終わっていた。鴻神が黙っていた可能性も否定できないが。
私は結局、篠宮に連絡した。なぜか。問われると、明確な答えはない。ただ、知らせるべきだと、思った。それについて鴻神に怒られたところで別に、何の支障もない。
当然、血相を変えた彼は仕事帰りの私を拾ってから病院に直行した。出会ってからそれなりの年月が経ったが、彼の取り乱す姿を初めて見た。
「2年ぶり、か。」
鴻神は、18歳の私を覚えているだろうか。24歳になった私を見て、どう思うんだろう。扉の向こうは沈黙を貫いていて、何も分からない。私はそっとドアに手をかけ、扉を開いた。
「こ、鴻神、さん、」
彼女からの知らせに、頭が真っ白になった。僕と彼の間に死、と言う言葉が浮かんで、むしろ警察官でありながら、今までその匂いを感じさせずに来たことの方が凄いのかもしれない、と他人事のように思う。
ベッドで横たわる彼に声を掛けても、勿論反応はない。目を閉じ、静かに眠るその頭には包帯が巻かれており、彼1人が眠る病室にはぷん、と薬の匂いと、そして微かな血の匂いがする。
口元に手を翳せば、微かに空気が動くのを感じて安堵した。当然か。当然なんだろうが、安心する。
もう、何年顔を見ていなかっただろう。連絡すらもろくに取れないまま、彼は一体どこで、何を。僕はそばに置いてあった椅子に腰掛け、彼のいつもに増して白くなった顔をそっと撫で、そして、力なく投げ出されていた手を握った。
「鴻神さん、」
その瞬間、ザ、ザ、と、どこかからノイズが聞こえた気がして、顔を顰めた。何だ、今の感覚は。すん、と無意識に鼻を鳴らして何かの香りを探す。漂っていたのは、ほんの微かな、これは、甘苦い、特徴的な何かの匂い。僕はこの香りを、どこかで確かに、知っている。のに、思い出せない。どこだ。朧げすぎて、面影を追うことすら出来ない。
「この、匂い、どこかで...」
ベッドサイドの白熱電球が照らす部屋で、手を握り、無事を祈る姿を、僕は、どこかで、確かに、見た。
『燎、』
ノイズの向こう側で、僕を呼ぶのは、誰だ。分からない。ベッドに預けた頭に、暖かな、何かの感触がする。抗えない眠気に誘われるようにして、そっと、落ちる瞼。
ナイフが腹に刺さる瞬間がスローモーションのように見えた時、後ろ手に庇って抱きしめた子供にせめて何も見えないよう、スーツの前を掻き抱いて犯人の首に蹴りを入れた。肉体派ではないものの、我ながら良い動きをした、と思う。気を失いぶっ倒れた犯人を見下ろし、女の子の手を引いて婦警へ引き継ぎ、女の子が俺に手を振って、そして、姿が見えなくなった瞬間、意識がブラックアウトした。
左手が暖かい何かに包まれていた。だからこそ見せた、幸せな夢だったんだろうか。ゆるり、と開いた目に映った世界は、薄暗く、味気のない世界だ。腹が重い。何故。軋む身体を極力動かさないよう首だけを曲げると、ここにいるはずのない男が、俺の手を握り、微睡んでいる。これも、夢なのだろうか。
「......この、匂い、」
ぼそぼそと呟く声に、嫌な予感がじわじわと正解になっていく予感がして、俺は昔なかなか眠らない彼を寝かしつけていた時のように名を呼び、頭を撫でた。頼む。起きてくれるな。
「.........燎、」
ぎゅっ、と手を握り直した彼、篠宮が穏やかな寝息を立てはじめ、俺は状況把握と、考え得る最悪の展開を想定した。あぁ、ついていない。よりによって今日の相棒は、吉沢だ。こういう時の勘は、嫌というほど当たってしまう。
あまりに静かで、心配になった私はそっと扉を開き、部屋の中へと歩み寄った。酷く血生臭い。ベッドの脇、彼が布団に突っ伏すように頭を下げている。安心して、寝てしまったのだろうか。
肝心の鴻神は、と顔を覗き込む。と、瞼をゆっくり開いて、私の目を覗き込み、そして、空っぽの真っ黒な目に、じわじわと生気が満ちていく。ああ、この男、随分と乾いている。
周りに漂っていた黒いシャボン玉も随分と数が増えて、何か違和感が、と、私は漸く気付いた。部屋に漂うむせ返るほどの血の匂いが現実の血液じゃなく、鴻神を縛り付けるように巻き付いていた有刺鉄線が食い込み、身体中から流れ続けている、私にだけ見える深紅によるものだと。湧き上がるこの感情の名前は何なのだろう、嫌悪でも、憎悪でも、恐怖でもない。
「あ、なた...」
「...俺、言うたよな。来さすな、て。」
「......」
「......ちょっと、上着、内ポケット、取ってくれへんか。」
不思議と、篠宮を起こそう、とは思わなかった。きっと目覚めて軽口を叩き合う事を誰よりも待ち望んでいたのは篠宮だったはずなのに、どうしてだろう。眠る篠宮を避けるようにぼこりぼこりと現れては破れる黒いシャボン玉にも、不思議とあの頃のような怒りが、湧かなかった。
傍の椅子に折り畳まれて掛けられていた鴻神のスーツは随分と彼の血を浴びたらしい。腹側の黒い裏地が一段とどす黒く染まっていた。持ち上げた時に香ったのは、あの日鴻神が吸っていた、独特な煙草のフレーバー。内ポケットを探ると、小さな、ガラスの何かが指先に触れた。取り出すと、それは掌に収まるほど小さな、長方形の小瓶だった。装飾も何もないシンプルな鈍色の液体が容器の7割ほどを満たしていた。
なんて、哀しい色。私は、未だかつて彼の周りに、彩度の高い色を見つけられていない。
「...これ、?」
「おん、」
怪我人に対して強く当たるほど、私はもう子供じゃない。小瓶の蓋を外して自由な左手にそっと置いてやれば、彼はそれをしゅっ、と、篠宮に降り注ぐように何度か放って、そして、私に目配せした。私は少しだけそれを眺めた後、鴻神から瓶を受け取り元あった場所に戻した。数秒経ってふわりと香ったのは、私の目に映った色は。一言で表すなら。喪失感。
「...これ、貴方の香水?どうして突然、振り撒いたの。」
「タバコ臭いの、好かんやろ。」
「嘘ついても、バレるの忘れた?」
目の前の男が耄碌したのか弱っているのか、判別は出来なかった。ただ吐き出される真っ黒になりきれていないマダラ模様のシャボン玉を見ると無性に喉を掻きむしりたくなるような焦燥感に駆られてしまうから、私は目を伏せ、すやすやと眠る篠宮を見下ろした。
「久しぶりね。」
「せやな。」
「もう、あれから2年経ったわ。...少しは、大人になったかしら。私も、貴方も。」
「なぁ、もう、帰ってもろてええかな。」
抑揚のない声。天井をただ見つめる、真っ黒な瞳。鴻神の感情は読めない。ナハハ、と耳障りなほど明るく笑う鴻神は、彼を守る鎧だったのかもしれない。6年前の私は彼を、見ていたのだろうか。どこまで、見ていたのだろうか。
「...分かったわ。ただ、無事だってことくらいちゃんと自分の口で伝えて。」
「ん、分かった。」
「...篠宮さん、篠宮さん。起きて。」
「ん......あれ、僕、寝ちゃって、た、?」
肩をゆすると流石に気付いたのか、寝ぼけ眼を擦りながら顔を起こした篠宮を見て、"鴻神さん"はへらり、と笑い、繋がったままの手を挙げて、ゆらゆらと揺らした。
「篠宮ァ。」
「こっ、こ、鴻神さん!!目、覚ましたの!?」
「覚ましたも、何もお前、刺されたとこ、枕にされとったら、誰でも起きるやん。」
「えっ!?ご、ごめんなさい...痛む?大丈夫?」
「かすり傷やから、明日には、もう退院や。」
「そうなの?本当?」
「...えぇ。さっき鴻神さんの上司の方が来られて、そう言ってたわ。」
「よかったぁ......」
平然と出てきた嘘に素直に騙された篠宮に、罪悪感が少しだけ湧き出てすぐに消えた。嘘が全て悪い、なんて、子供の考えだ。鴻神は繋がった手をさりげなく離し、私と篠宮を見て、糸目を細めて笑う。
「おおきにな、二人とも。」
「ん?鴻神さん、...あ、僕の香水、まだ使ってくれてたんだ。嬉しい。無くなったらまた作るから、教えてね。」
「ほら、帰りましょう。篠宮さん。」
「え、あ、うん。鴻神さん、ちゃんとご飯食べてね、無理しちゃダメだよ、」
「オカンか。はいよ、気ぃつけて、帰りや。」
「...お大事に。」
そして私は翌日、また鴻神の元へと出向いた。会社へは有給を出した。当日の朝に言い出すなんて、と小言を言われたが、知人が入院した。といえば流石に人の心があるのか、気にせず休め、と嫌々言った上司に口ばかりの感謝を述べた。
病室の前、見張りの警察官に止められ、吉沢の名前を出したら、簡単な身体検査をされた後あっさり通された。恐らくあの警部の計らいが何かしらあったんだろう。警察官、つくづく敵に回したくない相手だ。昔はあれほど無能だと、嫌っていたのに。
ベッドを少し起こして、寝そべった鴻神は静かに外を眺めていた。呼び掛けるとくるり振り向いて、彼が動くたび香る、錆びた鉄の匂い。
「鴻神さん。」
「......ナハハ、自分、暇やなぁ。」
「別に私は来るな、って言われてないわ。そうよね。」
「可愛子ちゃんが厳ついオカンになってもうたなぁ。」
病院の下のコンビニで買ってきた大量のロリポップを袋ごとがさりと雑に机へと置いて、私は昨日篠宮が座っていた椅子へと座った。昨日と変わらず白い顔に、昔と変わらないへらへらと軽い笑顔を貼り付けた鴻神は寝たまま袋の中から飴をいくつか取り出し、葡萄味のそれを私に手渡した。自身はイチゴミルク味を選んだらしい。部屋に甘ったるい乳の香りが漂う。
「本当は煙草にしようとしたんだけど、貴方の吸っていた銘柄探しても、コンビニに無かったわ。私詳しくないから、分からなくて。」
「あぁ。ポールモールなぁ、もう日本��と、廃盤やねん。飴ちゃん好きやし、嬉しいよ。」
「知ってるわ。あの時も、私に渡したのは葡萄味だった。」
「そーやったかなぁ。」
さすがにバリバリ噛み砕いて食べるのは無理なのだろう、静かにそれを舐める姿に違和感を感じて少し笑えば、鴻神は驚いた表情で私を見た後、ふいっと目を背けて窓の外へと顔を向けた。
「...どこから話せば、貴方は話してくれるのかしら。」
「そもそも自分、男と二人っきりで会うてええの。」
「...そう、貴方、いつも私の名前を呼ばなかったわ。私も一度も名乗ってない。」
「そうやったっけ。」
「昨日、貴方の携帯に電話したら、吉沢警部が出たの。私驚いたわ。『塚本澪さんですか、』なんて、いきなり言われるんだもの。」
鴻神は分かっていたのだろう、恐ろしく察しのいい男だ。表情を変えることもなく飴に歯を立て、カツカツと鳴らしながらぼそり、悪態を吐いた。
「...あのポンコツ爺、」
「...どうして、教えてくれなかったの。」
「誰が捕まえても、犯人がどうなっても、あの頃の自分には、気休めにもならんかったやろ。」
「...それは、そうだけど。」
「そんな中で、歩み寄ったところで、ただの自己満足や。」
言っても無駄だと、軽くはぐらかされるたび、適当に返されるたび、思っていた。それが積もり積もった上での決別だった。でも、彼は、もしかしたら誰よりも、至極単純な何かが、欲しかったのかもしれない。一回り上の大人が、こんなにも遠い。
「篠宮さんが遭った事故、新聞の写真には、確かに彼が"乗っていた"大破した車が映ってた。事故があったことも、彼の記憶が消えたことも、嘘じゃない。」
「何を今更、」
「彼は、"事故現場に偶然居合わせた鴻神さんが助けてくれた"って言ってたわ。」
「......」
「その事故は、車3台が絡む大きな事故だった。記事によれば、その3台は、崖下に落ちた大型車、ガードレールに突っ込んで運転席が潰れた軽、そして大破した普通車。写真に映った大破した普通車から溢れた、煙草の吸い殻が道路に散らばってたの。」
「誰かが吸うてたんちゃうの。」
「名前は伏せられていたけど、軽にはクリスチャンの夫婦と女の子が乗ってた、と書いてあったわ。そして、普通車には、男性が二人。」
「.........」
「事故を担当した警察官を探して、話を聞いたわ。捜査情報だからってほとんど教えてもらえなかったけど、でも、一つだけ、教えてもらったの。散らばってた煙草が、ポールモールだって。」
そして昨日の吉沢の発言が、私の中で燻っていた疑惑を、確信へと変えた。それに、何よりも、彼と過ごしてきた時間が、答えだった。悔しいけれど、でも。
「篠宮さんは優しいわ。どんな時も他人の心を慮ることの出来る、優しい人よ。だからこそ、私に応えよう、としてくれた。それは分かってた。嘘はなかったし、彼だって、ちゃんと私を見て、私を大切にしてくれてた。」
「そんなら、なんで、今更...」
「彼はずっと、何かを探してた。私にも見えない、彼にも分からない、でも確かに、私を通して何かを探してた。上手く言えない、けど、今なら分かる。」
「やめよう、なぁ。この話、もうええやんか、」
「...忘れられた側だけが、辛いと思ってる?鴻神さん。」
人の核心を突くのは、あまり得意じゃない。と、その時私は初めて身に染みて思った。人を壊しかねない、と、恐怖すら覚えた。鴻神は私の言葉を聞いた瞬間飴をガリッ、と噛み締めて、そして、窓に向けていた視線を私へと向けた。その目は、迷子の子供のようにふらふらと戸惑い揺れる不安定を表していて、無作法に手を伸ばしたことを少しばかり、後悔すらさせた。あの掴みどころのない、いつでも平静を保っていた男が、こんなにも簡単に揺れるのか。私が開いたのは迷宮からの出口なのか、もしくは、パンドラの箱だったのか、分からない。が、後者だとすれば、一欠片の希望が残っていて欲しい、と、無責任にも祈ってしまった。
鴻神の手は腹に掛かった布団を痛いほど強く掴んでいて、指の先は白くなっている。その気持ちは、私には計り知れない。そうやって、私も、そして彼の周りの人々も、彼を、一人にしてきたのだろうか。そっと、何の意図も込めずに手を重ねた。彼は俯き、混ざらない異なる温度の共存する手を見下ろしていた。
「私は、篠宮さんのおかげで、大切な記憶を取り戻すことが出来た。報いたい、恩を返したい。そう思ってきた。記憶がないまま、思い出せないまま過ごす苦しさは、きっと同じじゃないけど、少しは、分かる。」
「...やめてくれ、」
「もう十分すぎるほど、彼は、私を救ってくれた。真っ暗だった世界に、一筋だけでも光をくれた。彼も、貴方も、私にとって英雄だった。だから...」
「もういい!...もう、いいんだ。このままで、君と燎が、幸せであれば俺は、」
ぱん、と小気味良い音が響いた、と認識したのは、すでに手が動いてからのことだった。昼下がりの明るい病室に、重たい沈黙が広がる。じんじんと脈動する己の右掌が、痛い。手も、心も、痛い。その痛みは私自身のものではなく、目の前の彼の痛みだと、そう思えた。
「もう、黒いシャボン玉吐くの、やめてよ。本当は、気付いてるんでしょ。鴻神さん。ねぇ。私、自力で沢山調べたの。篠宮さんの大学に、時々迎えにきていた男の人がいたことも、篠宮さんが、憧れてる人がいる、って警察官を目指していたことも、事故に遭った普通車の中に、ペアの指輪があったことも、全部、知ってるの、」
「......よう、調べたなぁ、警察向いてんちゃう?」
この期に及んで茶化そうとするその薄っぺらい顔が無性に腹が立つ。諦めこそが最善だと信じてやまないその姿はむしろ、宗教に近いとすら思う。私は目の前の男を真っ直ぐ見つめ、まとまらない言葉をそのまま吐き出す。
「私は人に見えないものが見える分、人が察するべき言葉の裏の意味とか、表情を曇らせた理由とか、そういうものが見えてなかった。だから、篠宮さんと出会って、貴方と出会ってから、見続けた。」
「......」
「ねぇ、鴻神さん。きっと貴方は、自分ごと忘れてしまった篠宮さんを、もう一度幸せにしよう、って、思ったんでしょ。だから真実を隠して、空白の期間に目を伏せて、やり直させたの?」
「...そんな、大層なもんとちゃうよ、ただの、エゴや。」
「そうね。...消えた4年分の記憶の中の篠宮さんは、ずっと、貴方を探してる。扉に外から鍵がかけられたことなんて知らずに、ずっと、日の目が当たる日を待って出口を探してるはずよ。だって...貴方が会いたいように、きっと、篠宮さんも、貴方に会いたいって、思ってる。」
上手く言葉が出てこない自分がもどかしく、それでも、私は口を止めてはいけないと、ただ、心から溢れ出るそのままを話し続けた。鴻神は俯いたまま、その表情は見えない。
「貴方が過去を捨てる、ってことは、篠宮さんの過去も同じように捨てる、ってことになるんじゃないの。篠宮さんを、捨てないで。」
「......何が、正解なんか、自分でもよう、分からんくてなぁ。でも、正しい道に、誘うことが最善やと、そう考えて、色々してたんやけど、俺、格好悪いなぁ。全部バレてもうた。なはは、」
ぽた、ぽた、と布団にシミが落ちて模様が生まれる。裏腹にどこか肩の荷が降りたようなその声に、私はなんだか泣きそうになって、確かに私は篠宮さんが好きで、恩を返したい、とずっと思っていたけど、幸せになってほしい、と、目の前の男がエゴだと自嘲したその願いを、同じように抱いていた。篠宮の、漠然とした何かを追い求める焦燥感を、鴻神の、ぱちんぱちんと弾けては砂のようにサラサラと消えていく黒いシャボン玉を、全部抱きしめたくなる。
「...それに、篠宮さん、昨日帰ってからずっと、色んな銘柄の煙草買い込んで、店に篭りっきりよ。どうしてだと思う?」
「.........はぁ...」
「病院に来させるな、っていうのは、事故の時と同じ状況になって、記憶が戻るのを避けたかったからでしょ。貴方も案外間抜けね。」
「皆まで言わんといてくれ、人払いする前に、意識飛んだんや。」
「靄のかかった幸せなんて、誰も望んでない。全て見た後に自分で選ぶ道を、幸せって呼ぶんだって、私は母に教わったわ。」
鞄から小箱を取り出して鴻神の手に乗せると、鴻神はすん、と柄にもなく鼻をすすって、その箱を不思議そうに眺めたあと、何も言わない私に察して蓋を開け、そして、いつもの嘘臭い笑顔じゃない、綻ぶような笑みを見せた。
あの日、ビルの上から降ってきた、Rのイニシャルを刻んだネックレス。裏に小さく刻まれた、「r to r」の文字。あの時の私が今ここにいたとしても、私の選択を、正しいと言うだろう。
「彼が先に見つけるか、貴方がその傷治して押しかけるか、どっちが先かしらね。」
「......ありがとう、澪ちゃん。」
ふふん、と得意げに笑ったはずの声は出ないまま、鴻神の手が、私の頬をそっとなぞって、しっとり濡れたその感触に、あぁ、私、泣いてるのか。と気付く。悲しいのか。いや、違う。寂しいのか。それも違う。ただ、彼らが、あるべき形を取り戻すことが、嬉しいんだ。
「...こちらこそ。私の家族を殺した犯人を、捕まえてくれて、ありがとう。篠宮さんを、助けてくれてありがとう。私は大丈夫よ。未来がどうなったって、過去も今も全部抱きしめて、私として生きていける。」
それが、篠宮さんに貰った、私の宝物だから。あの薄紅の香水瓶は、結局中身を使い切って、満たされることのないまま家族の遺影の隣に並べて置かれている。
話している最中何度か鳴っていたスマートフォンの画面をチラリと確認すると、数十分前にSNSメッセージが連続で届いていた。
『澪ちゃん!ごめん!僕ちょっと、鴻神さんのところに行ってく��!』
『間に合うかな、もう退院してるかも、でも、会いに行かないといけないんだ。』
『もし、全部片付いたら、僕の話を聞いてくれないかな。』
『無くしてたものが、見つかったんだ。』
私はそっと画面を閉じ、目の前の、まっさらになった鴻神の肩を叩き、情けない顔を笑ってやった。
「ほら、しゃんとして。鴻神誄。めそめそしてるのは貴方らしくないわ。どんな過去が帰ってきたとしても目一杯抱き締めて、もう離しちゃダメよ。」
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夏のせい
副題:初恋拗らせ童貞坊やは幸せな夢を見ない
葉を隠すなら森の中。
人を隠すなら人混みの中。
死体を隠すなら墓の下。
ミーン、ミーン、なんて鳴き声が七月に入ってから休みなく四六時中ずっと聞こえてくる。八つ当たりで手に持っていたスマホを床に叩きつけると、ぴたりと全ての音が止んだ。
これ幸いと、寝室へ向かえば小さな寝息が聞こえる。眉を潜め、膨らんだベッドに向かうと不健康そうな顔色をした司が気持ち良さそうに眠っていた。
人差し指を伸ばして、痩せた頬を突っつくと言葉になってない意味不明な寝言が返ってきた。日本語でも外国語でも出来損ないの音。勝手に翻訳してみよう。なるほど。どうやら、彼は自分のことを愛しているらしい。
大変だ、愛の告白ではないか。
こはくは慌てて、台所まで走った。シンクもコンロも、新品未使用のように綺麗だ。それなのに棚を開けると、使い古した料理器具が溢れだして雪崩を起こして出てくる。
ハンドミキサー、フードプロテッサー、ヘラ、おろし器。どれもいまいちだ。
悩みあぐねていると、電子レンジから音がした。チン、という音があまりにも心地いいので、コッコッコッと笑ってしまった。レンジはチン。こはくはコッコッコッ。設定音声には、従わないといけない。
電子レンジの中を開けて覗けば、そこには熱々の電動ノコギリがあった。きっと、時限タイマー式で調理されたのだ。ミトンを両手にはめて、電源を入れる。音はうるさかったが、先程まで合唱していた虫けらたちとは違い上品なものだ。
新曲を口ずさみながら寝室に戻ると、愛しの坊は寝相を悪くしていた。ちゃんと被っていた布団を床に蹴飛ばし大の字の体勢でいる。まったく、風邪をひいたらどうするのか。クーラーのリモコンを探して、温度を上げておいた。
こはくはスリッパを脱いでベッドの上にお邪魔すると、何等分にして分けるか首を傾け視線の角度を変えて観察する。オーソドックスなのは首、右腕、左腕、右足、左足、胴体の六個の小分けだろう。
首を落とさなければエグゾディア分けという名称になると天城燐音が言っていたが、恐らく絶対にホラだろう。その横でニキが、カードゲーム原作アニメの世辞辛さを語っていたから、元ネタはそれかもしれないが。
こはくは、司の顔が好きだ。怒った顔も、笑った顔も、憎しみを堪える顔も、悲しみを悟らせないとする顔も、どれもこれも甘美で魅力的でヨかった。自分だけで独り占めしたい。それだけだった。
電動ノコギリの回転する速度が上がっていき、勢いよく手元から離れた。ノコギリはステップを踏みながらリズムを取ってベッドの上を跳ねる。ぴょんぴょんと、跳び跳ねそのまま司の首に刃を立ててしまった。
「こら!なんてことするんじゃ!」
怒鳴り付けたのに、ノコギリは話も聞かずにどんどん司の腕や足にも纏わりついていく。暴れん坊め。反抗期の子供を持った親の気持ちがわかった。
枕を強く投げつけば見事に当たり、おとなしくなった。
─やっぱり、こうするんが手っ取り早い。
こはくは、身体の一部が欠けた司を見下ろした。
そういえば、この不完全な司は、本当に司なのかと疑問が沸く。
人の魂が脳に宿るなら、頭と切り離された司の体は既に司ではないことになるだろう。じゃあこれは何だ? 不要品、すなわちゴミだ。
こはくはサイドテーブルに置かれていたゴミ袋を手に取った。透明なそれに、ぎゅうぎゅうと欠陥品を詰める。でも大きなそれは綺麗には収まらずに、飛び出してしまった。
切って小分けにしようと考え付いても、実行するための道具は先程自分が壊してしまった。枕で壊れるなんて軟弱なやつだ。
仕方がないから、ねじ曲げてコンパクトにするしかない。動かす度に音がして、液体も漏れるのが厄介だったが試行錯誤の末にきちんと袋に詰めることができた。
────。
耳鳴りのような、着信音がする。電波が届くことに驚いて、電話に出る。もし、もしよ。
あれ、電話は壊したはずなのに。なんで動くのだ。
振り向けばほら、かわいい声がする。
「ここですよ」
窓の外に、無表情な彼が張り付いていた。
◆
「付き合ってるんですよ、私と桃李くん」
冷房で冷えきった体が、更に温度を無くしていった。
「付き合ってるって…それって」
どういう意味の、なんて続けなくともわかった。紅がないのに頬を赤くした彼が、目線を迷子にさせて困っていたから。そんなのもう、答えを口にしてるようなものだ。
「真剣交際…だと、思います…」
繁華街のわかりにくい場所にある喫茶店は、平日の昼過ぎなら客入りも少なく内緒話には持ってこいだ。
こはくは理解した。おすすめのスイーツがある店というのは建前で本題はこちらだったと。何が二人だけのスイーツ会活動だろうか。甘いのはぬしはんだけやと怒鳴り散らしたくなる。
「へぇ。知らんかったわ。それで、何で隠しとったことをわざわざわしに?」
「隠し事ができなくなるからですかね」
「隠し事?」
なんでもないようなふりをして、繰り返し聞く。司は先程の吐露で度胸がついたのだろう、なんて事ないように言ってのけた。
「私、寮を出て家を借りようと思ってるんです」
「…なんやそれ」
「集団生活も面白くて為になりますが…まぁ、お互いの都合が悪いといいますか…」
「ああ。共同生活やとしにくいもんな」
髪の色と同じく、桃色な事を想像して口にするこはくに、司は顔を熱く燃え上がらせて黙り込んでしまった。
暑そうで可哀想に。こはくは、司との温度差を感じながらメニューを開いた。
目に留まるのは、ホットコーヒーの項目だ。
◆
同室のジュンが仕事で不在のおかげか、お泊まりイベントが発生したこはくは小躍りしていた。振り付けは最近練習している新曲のものだ。彼もまた、アイドルなのだ。
「最近、眠れないらしいですね」
「藪から棒になんや?」
坊だけに、との中で付け足した筈なのに冷めた目線をプレゼントされる。暑かったからちょうどいいと開き直りたくなるのも許さない、律した瞳だ。
「眠れないというよりかは、眠りが浅いのでしょうか?」
なんでそんなこと知ってる、と問うだけ無駄だろう。同室のジュンが心配して、世間話ついでで司に進言したのは想像に難くない。
「まぁな…多分、疲れが溜まっとるんやろ。わし、ユニット兼任しとるから最近忙しいんじゃ」
「本当ですか?」
「ほんまや」
嘘だ。夢見が悪いせいだが、専門家でも医療関係者でもない司に、そんなことを話して何になるのか。ただ悪戯に心配をかけるくらいなら、こはくは司を騙してでも安心させる道を躊躇なく選ぶ。
「じゃあ、これを見てください」
そう言うと司は、こはくのベッドに腰をかけてゆっくりとベルトを外していく。
「は、え、ま、坊!?」
慌てて動きを止めようと押さえ込もうとしたらひょいと避けられた。言い訳させて貰うと、こはくも思春期の男なので好きな人が自分の部屋で脱ぎ出すというシチュエーションには興奮する。そのため、理性を総動員させるためには目線を彼から背けるしかないのだ。ああ、無情。
「こはくん、よく見てくださいね」
「うぇ、あ…」
そういえば、今日の司は普段とは違う服装をしていた。いつもの半袖シャツではなく、黒いタートルネックのノースリーブのセーターを身に付けている。サマーセーターとわかっていても、暑苦しい格好をしているが、正直えっちという感想以外浮かばない。
司が首を覆っている布を焦らすようにゆっくりとずりおろす。それは、ストリップショーのような視る快感というのこちらに与えてくれる。無性にチップを挟みたくなる。生唾を飲み込んだところで、こはくは目を見開いた。
正面にいる司の喉仏の下には、赤い線がくっきりと浮かんでいた。切り傷などではない、一時的な痣のようだが、それは切り取り線のようにも見える。
「こはくん。あなた、私に何をしたんですか?」
こはくは呼吸の仕方がわからなくなった。息を吸って吐くという動作ができず、体の体温をコントロールする発汗作用もおかしくなった。運動したわけでもないのに、汗が流れ出していく。
「あっ…わし、ちが、っぁ…」
歯がカチカチ鳴る。カスタネットような口内は喧しく、声を発する邪魔になる。
「こはくんの、すけべ」
気付いたら、肌色が視界いっぱいに広がっていた。
◆
深夜三時になると、隣にいるかわいいあの子は目を覚ます。
熱帯夜の外を遮断する室内は、一定の冷気で保たれて暑くない筈なのに起き上がる彼はいつも汗でぐっしょりだ。
「坊。アイス食べる?」
「…ガリガリしてるほう食べたい」
「ほいほい」
望みのものを取ってきてやろうとこはくがベッドから降りると、司もついてきた。行儀悪く寝台の上で飲食と洒落込もうと思ったが、居間でまったりするのも悪くないのかもしれない。
毎日掃除されている清潔なフローリングから、ぺたぺたと裸足の音を立てる。見ないで手を伸ばして、電気プレートの感触を確かめて二つ目のものを押す。暗い部屋が明るくなるのに、何故かほっとした。
「あ。ここまで来といてなんやけど、ガリガリしたアイスないかもしれん」
「今朝残ってるの見ましたよ?」
「んーそやっけ?」
冷蔵庫を前にしてそんな問答を行う。さっさと中を確認すればいいではないかという思考は、野暮だ。
「まあ、見てみるか」
こはくが下から二段目の冷凍ボックスを開く。氷と種類豊富なアイスクリームに手を突っ込み漁る。がさごそ掘り起こしたりしてみるが、目当ての物はなかった。
「ごめんな坊。やっぱりなかったわ」
「いいですよ。他ので我慢します」
「ええこやなぁ」
こはくが頭を撫でると、司は無図痒そうに体を動かすがされるがままにしていた。昔とは異なる態度が無性に嬉しくて、そのまま抱きしめる。互いに背中に手を回して、そっと唇に触れる。人肌が生々しく、背筋に甘い痺れを起こす。
「なぁ坊。今度はどんな夢見たんや?」
優しく、幼い子をあやすように声を落とす。
「…こはくんが、可哀想な夢です」
自分が可哀想。新しいパターンだと、こはくは表には出さす動揺した。これまでの司の悪夢には法則性があったしテンプレートがあった。大まかに分けて、学院と家とアイドル。この三つで、司を苦しめていく。
「わしがどう、可哀想なんや?」
「私に酷いことされて、酷いことするんです」
「そっか」
要領を得ないが、それでいい。別にこはくは探偵志望のストーリーテラーではない。全ての全貌を解き明かそうなんて考えは持ち合わせていない。
二人で逃げるようにこのマンションを借りてからは、司は幸福になったとこはくは信じていた。だから、彼を悩ませるものを無理に知ろうと思っていない。この暮らしがあれば、それ以上は望まない。
「こはくん、寒い」
冷凍庫を開けっ放しにしてた。冷気が漏れだして確かに冷たかったと閉めるが、司は相変わらずしがみついたままだ。
「こはくん。あたためて」
ほぅ、と吐く息が熱い。寝室に行くのも勿体なく感じて、司の手を引いて居間のソファーベッドに押し倒す形で横にした。パジャマを床に落としていくと、ごめんなさいと謝罪が聞こえた。
「私知ってました。ガリガリしたアイスがないの、知ってたんです」
誘い上手になったものだ。こはくは、司の額に口づけして悪い子だとからかって戯れでくすぐって笑わせた。
何も泳いでない水槽から、ポチャンと音がした。
◆
蝉の鳴き声がする。
異臭がする。
彼がここにいる。
どこにいる。
冷蔵庫の中だったか。ベッドの下だったか。浴槽の底だったか。プランターに植えたか。水槽に沈めたか。
料理した、寝た、入浴した、菜園した、飼育した。
彼と一緒にしたのか、いや、彼にそうしたのか。
「ここですよ」
ゴミ箱から、声がする。
◆
寮の食堂では、お残しは許しまへんでぇ!という声が響いていた。
こはくは共同の冷蔵庫に向かい、自分の名前が書かれてあるコンビニのざるそばを取り出す。値段もそこそこでうまいのだから、昼食にはもってこいである。
適当な席についてずるずる音を立てて食事をすると、隣の椅子が動いた。
「こはくん。それだけじゃ足りませんよ」
「坊はわしの胃袋の大きさなんてしらんやろ」
「反抗的! 心配してるんですよ!」
そのままこはくの隣に座った司は、持っていたトレイをテーブルに降ろした。
おにぎり、漬物、煮物、チキンソテー。最後だけ西洋かぶれなんかいとツッコミするのを抑えてそっぽ向く。そんなこはくに怒りはしないが呆れているのか、柔らかく笑った。
「もう。困った子ですね」
ことん、とこはくの側に皿が置かれる。見ると、綺麗に握られて海苔が巻かれたおにぎりが二つ鎮座している。
「…なんやこれ」
「おにぎりです」
「見ればわかるわ」
「おかかと梅です」
「具のことは聞いてないんじゃ」
段々と半目になるこはくとは反対に、司は目を丸くしている。すっとぼけているのか素なのか、こはくでさえも判断つかない。
「でもこの握り飯、坊の分やろ」
おかずだらけの食膳に主食の米がないのはきついだろう。しかも味も薄いとは言い難いラインナップときてる。
こちらは蕎麦のみだが、それだけで十分ちゃんとした一食になるからいいと遠慮しているのに、司は譲らない。
「いいからお食べなさい。いっぱい食べて大きくなりなさい」
「身長がわしと同じ坊に言われても…」
「くあぁ! い、いいから年上からの好意には黙って受け取りなさい! それに私はこれ以外にもたくさん作ってありますから!」
ムキになった司は手にしていた鞄の中身を開けて見せてきた。確かに、中には綺麗なシートで包装されたおにぎりがある。あるのだが、今度は多すぎる量だった。
「坊そんなに食べきれるんか?」
「これは…まぁ、食生活がなってない先輩方とかにお裾分けしたりするので」
「ふぅん。大変やなリーダーちゅうのも」
こはくは口にしてから思った。いや、うちのリーダーはそんなことしてないな。
「だからほら、こはくん遠慮せず食べてくださいよ!」
「わかったわかった。近いわもう」
こはくは手前にあった方を手にする。空腹でも満腹でもないので、別に食べる必要はないのだが、期待した顔を向けてこちらを見つめるかわいい兄はんが喜ぶというのなら、こはくの選択は一つだ。口を大きく開いて、かぶりつく。
「…んっ、おいしいわ」
「本当ですか!?」
「だから近い! …最初は坊が自炊なんて信じられんかったけど、大した腕やな」
「ふふん。そうでしょう。ちゃんとレシピ通りにすれば不味くなることは有り得ないんですよ。だから材料と下拵えの準備も万全にしておけば…」
「ご馳走さん」
「早いですね!? 早食いは体に悪いですよ!」
満足感を得た腹を撫でながら、冷えた麦茶で喉を潤す。司は、こはくの親以上にこはくに対して心配するし世話を焼こうとする。こはくにとって、愛されるという感覚はよく���からない。だが、こうやって自分を気に掛ける司を守りたいという思いが愛ならば、それはどんなにいいことだろう。
「聞いてますかこはくん?」
「聞いとるよ。それより坊、時間は大丈夫なんか?」
こはくは自分の付けてる腕時計を司の目線に合わせる。
司はパチパチまばたきを繰り返すと、すっとんきょうな声をあげて慌てて食事を再開した。下品では所作で急いで皿を空にしていくのには素直に感心を覚える。こはくは早食いは体に悪いというお小言を止めて、司に渡すために麦茶をいれたコップを構えて待機した。
最後になった漬物を口にした司は、それを噛むと素早く噛んで飲み込んだ。そのタイミングでお茶を差し出せば、すぐ受け取って飲み干された。こはくは小さく拍手した。
「ふぅ…ありがとうこはくん」
「お粗末さま。ほら坊、わしが食器片付けたるから早う行け」
「えっでも…いえ、今日のところはお願いしますね」
簡潔に頭を下げて小走りで食堂を出る司を見送る。さて、食器を洗おうと立ち上がって、あることに気付く。今まで意識になかったが、食堂には自分たち以外の誰もいなかった。最初にきたときは騒がしく、そこそこの人数がいたのだが。
「…疲れてるんかな」
溜め息を吐く。
蛇口を捻って水を出して暫く眺める。節水しないと、とは考えるが滝のように一直線に流れ落ちる水はなんだか落ち着く。
そのとき、こはくのズボンのポケットが震えた。正確には、ポケットの中にあるスマホなのだが。
はっとして蛇口を閉めて、ポケットに手を突っ込む。取り出したスマホの画面には『ラブはん』と書かれており、彼からのメッセージの知らせのようだった。
ヒビが入っていて触り心地が悪い液晶を軽く指で叩いて中を見るとなんてことはない内容だった。下世話なアイドルの恋愛事情だ。でも残念なことに、それはゴシップ雑誌とは違い信憑性がある。そして、自分たち身内のことであり、新鮮な情報だった。
デートするらしい。誰と誰が。門の前で待ち合わせていた姫宮と朱桜が。
そうか、デートなのか。お互いの仕事の目的で水族館に行くだけだろう。でも、だって。
自分は知ってるじゃないか。彼らが他人同士でないことを。
冷蔵庫から音がした。
氷のできる音がガタガタする。
「もうええよ」
呟いた言葉を合図に、蝉が音楽会を始めた。
夏は、終わらない。
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2018.02.19 スウェイする
毎週月曜日は渋谷のラジオ。16:10から日本気象協会 tenki.jpさんによる『渋谷のお天気』をお届けした後、MCカワムラユキさんの『道玄坂爆音部』にレギュラー出演させていただいております。
19日も、お天気予報爆読みに続き、いろいろとおしゃべりさせていただきましたが、その中で、先週はドラマや映画を観たり、本を読んだりするインプット一辺倒週間であったと申し上げるくだりがありまして。そのチョイスが、ざっくばらんなようでいて関連性があったり、ぜんぜん関係なかったり。そもそもチョイスの軸となるのがポルノに食い物にされた女優トレイシー・ローズと俳優の松重豊氏ですからね。およそ何の接点もなさそうですが、私が同時期に気になっちゃった事実こそが唯一の接点というわけで諦めていただいて、改めて、インプット大会の推移をメモ的にまとめてみようかなと。
*
まず、先週は昭和の女の表現するところの玉姫様ご乱心につき、心身ともに調子が極悪で、何もできずに寝そべりながらSNSを眺めていたところ。このところ盛んな #metoo 運動関連のハラスメント事例、性暴力、HIPHOPと男尊女卑、AV強要被害、ポルノにおける表現の自由などなど、女性の人権を蔑ろにする事例への怒りが、我がTLに噴出しておりまして。私は映像以外にも、女性性やジェンダーにまつわるコラムも書いているので、フェミニズムも含めて気になるトピックスが自ずとTLに浮上するわけです。
そのトピックの1つ1つについては、個人的に強い思い入れもありますし、まだまだ勉強不足な点もあるので、言及の機は改めます。が、AV強要問題についての情報を読むにつれ、「そういえばトレイシー・ローズの自伝『トレイシー・ローズ 15歳の少女が、いかにして一夜のうちにポルノスターになったのか? 』がうちにあったな」と思い出して、再読することにしたんです。
本書は、子供の頃に性暴力を受け、15歳にしてヌードモデルからポルノ出演へとなだれ込み、麻薬中毒になりながら3年間でポルノクイーンと呼ばれるまでに至った壮絶な半生と、以降、拭えないポルノクイーンのレッテルと戦いながら女優や音楽制作やDJに挑戦する彼女のチャレンジングな後日談によって構成されている自伝です。かなり有名な本なので、一度は読んだことがある方はたくさんいるのではないでしょうか。本の文体は、彼女自身が自分のその時々の感情を克明に表現する語り口で、その繊細さ、冷静な分析力に、胸がえぐられます。若い女性が性暴力や性産業の餌食となる状況を「なぜ防げないのか」。本書には、被害者の感情や心の拠り所のなさについての描写が克明に登場します。気になる方はぜひご一読ください。
と、おすすめがてら amazonの本書のリンクを貼ろうとしたら、アダルトコンテンツ扱いで18歳未満は買えないって。ムカついたのでツイ。
トレイシー・ローズ自伝 15歳の少女が、いかにして一夜のうちにポルノスターになったのか? 』を再読して。若年女性が性暴力やポルノに際した感情描写が壮絶かつ克明で、10代の若者に読んでほしいと思いamazon検索したら、アダルトコンテンツ扱いで18禁だって。何の冗談だよ。@snacknagako
若年層ならではの繊細な感情、足りない知恵、力、金、心の拠り所のなさ、彼女の心に定着しなかった両親の愛情、男や恋愛への依存、欠落を埋める酒や麻薬。子供を騙し搾取する大人の醜さ。15歳の女の子が「こんな目に合わないための教訓」満載なのに、同年代の若い子が読めないなんてもったいない。@snacknagako
他のサイトか書店でどうぞ。
*
このトレイシー・ローズの自伝には、彼女が出演したジョン・ウォーターズ監督のミュージカル映画『クライ・ベイビー』の話題も登場します。久しぶりに「みたいな」と思うと同時に、自伝とは異なる超個人的レイヤーの疑問がふいっと浮上しまして。
実は私、ミュージカルが嫌いなんです。子供の頃、何かの舞台を観て、「舞台上の人が、全員満面の笑みで、全員足並みを合わせ、こちらに向かって迫り来る」という増殖状況が気持ち悪くて、吐いたことがあるんですね。ミュージカル映画は、リアル舞台よりは冷静に観れるのですが、今度は「意味がわからない」。なぜ、この人たちは、急に歌い始めたのか。踊る必然性はあるのか。1人ではなくて、集団で踊るのはなぜか。どうして、人体や車や書き割りや小道具が音に合わせて軽妙に動くのか。
理屈がさっぱりわからない。いや、音楽とダンスとヴィジュアルのリズミカルなシンクロニシティが、最高に気持ちの良い感覚の快楽をもたらしてくれることは、MVをこよなく愛する者として人一倍理解しているつもりです。そう、それが、オーディオとヴイジュアルの感覚信号を用いて出来うる表現の限りを尽くすMVであるならば理解できるのです。実際に、MVにおけるオーディオとヴィジュアルのシンクロニシティーの快楽には溺れ放題なわけですが、それはMVとしての理に適っているから受容できるというものです。
どうも私の頭の中は、聴覚野や視覚野よりも、言語野が幅を利かせているようで、万事何事も理屈と説明を求める悪癖があります。映画は、人間の感情の機微や言動の意図など、言語野の想像を駆り立てるような画音作りについ期待してしまいますし、台詞回しや脚本の筋道の魅力にも耽溺したいです。もちろん、テーマを突き詰めたうえで、ミュージカルという仕様を選択するに至った必然性やその意図を演出に盛り込んでいる作品については何の文句もないんです。ただし、確固たる根拠もステイトメントもなく感覚表現に頼っているように見える作品については「だから、なんで急に歌い出したのか」と問い詰めてしまうのです。理屈病でしょうね。ミュージカルや、オープニング5分で飽きた『ラ・ラ・ランド』が悪いのではなく、私の脳が理屈を愛で過ぎているのかもしれません。この常に意味を問い続ける理屈屋の頭が真っ白になるくらいのスピード感で、圧倒的な熱量で、ミュージカルに没頭したいものです。
また、もしかしたら、約5分間に濃厚凝縮されたMVシンクロを見すぎて、緩慢な長尺シンクロに退屈する脳になってしまっている可能性もあるかなと。普段、映画をみる時に一番注意しているところが「音の使い方」なのですが、必然性ありきで楽曲や音響を使うのは当たり前として、画だけではもたない、台詞を入れてももたない、だから楽曲や音響を入れて雰囲気を充実させようと企む演出も散見されます。これが私には気持ち悪い。かえって無音を効果的に扱う演出の技に出会うと惚れ惚れします。
この音の雰囲気ちょろまかしスタイルですが、いわゆるごまかしではなく、ド派手な美術とテロップと拍手と笑い声がモリモリのテレビ番組や、音数も文字数も膨大なアニメーションソングや、デザイン無視でバナーを貼りまくるインターネットのサイトのような「情報量過多コンテンツ」を大量に甘受している現代人を満足させるためには、無駄な音でもガンガン足しまくるエンタメ采配が必要なのかもしれません。これを下手な人がやると公害となり、上手な人が捌くと作品となる。というのはミュージカルとか映画とかMVに限ったことではないですね、失礼しました。
さて、ミュージカル映画に対していろいろと難癖をつけがちな私ですが、そもそもMVの一部はミュージカルの作りを踏襲して来た歴史があるので、先人の表現には敬意を評します。ミュージカル表現を踏襲するMVやCMも大好きですし、ミュージカル映画の中でも大好きな作品、監督がいます。その代表例がジョン・ウォーターズ監督で、『ヘアスプレー』『クライベイビー』は好きです。
なぜ、私はミュージカル映画は苦手なのに、ジョン・ウォーターズ作品は好きなのだろうか。勢い自問しても、かえってくる答えは「ジョン・ウォーターズが好きだから」というシンプルな理由のみ。ミュージカルが大好きな児玉裕一監督の作品は大好きなのに、ミュージカルそのものは苦手なのはなぜかと問うても、「児玉裕一が好きだから」以上。この調子で、映像ライターとして大丈夫でしょうか。不安になって来たので、もう一度ウォーターズ作品を観て、考えてみようと思うに至りまして。
*
同時に、今月より、テレビ東京で始まったドラマ『バイプレイヤーズ 〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら』の録画を観ていて、黒沢清監督作品をいくつか見返そうとも思いまして。
というのも、私は同作の前シリーズ『バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』のファンで。先月はセカンドシリーズの番宣のため数話をGYAOで無料公開していたので、一気に見返したところ、主演のバイプレイヤーズの1人である松重豊氏の映画デビュー作が黒沢清監督の『地獄の警備員』であるという情報に改めて遭遇し、「あ、みなきゃ」と。
余談ですが、私はそもそも松重氏主演の深夜の飯テロでおなじみ『孤独のグルメ』も大好きで、原作:久住昌幸氏、作画:谷口ジロー先生による原作漫画はもちろん、同じく久住氏原作の『花のズボラ飯』(漫画:水沢悦子先生)、『野武士のグルメ』『荒野のグルメ』(画:土山しげる先生)、泉昌之氏(原作:久住氏+作画:和泉晴紀先生)名義の『食の軍師』『最後の晩餐』『昼のセント酒』(コミカライズ版は魚乃目三太先生)なども全部チェックしております。以上の漫画の気になるレシピを実際に真似て調理するのみならず、ドラマ主演の松重氏のファンになってしまい、今期は『バイプレイヤーズ』と『アンナチュラル』(TBS系)が楽しみでしかたありません。
その松重氏のみならず、バイプレイヤーズのリーダーである大杉漣氏や、ゲストで登場した役所広司氏は黒沢清監督作品の常連です。黒沢作品はかつて何本も拝見しておりますが、改めて再見した後『バイプレイヤーズ』をみるとまた味わいが変わるのではないかと期待して、作品についていろいろ調べたところ、たまたま10日にBSにて黒沢監督初ドラマ作品で西島秀俊氏が主演の『ニンゲン合格』(1999年)が放映されることがわかり、録画チェック。
かくして16日、『地獄の警備員』含め、ネットで閲覧できない黒沢作品とウォーターズ作品を借りるべく、うちの近所のささやかな規模のTUTAYAに出向いたところ、『地獄の警備員』も『クライベイビー』もない。うちは東京都下の郊外にあるのですが、だいたい郊外都市ってユニクロも西松屋もニトリもでかいはずなのに、どうしてTUTAYAだけ小規模なのかと、デビュー時の松重氏やポルノ卒業後のトレイシー嬢をみれなかった無念をTUTAYAにぶつけながら、『ヘアスプレー』と『CURE』と『岸辺の旅』など合計8本借りまして。
そして、3日くらい外に出なくて食いしのげる程度の食材や、趣味のジャンボ数字クロスワーと��誌と書籍7冊を買い込み、帰宅。DVDパッケージを開けたら、『ヘアスプレー』がジョン・ウォーターズじゃなくて、2007年にリメイクされたアダム・シャンクマン監督の方で、虚脱。いやでも、久しぶりに観ましたけど、やっぱりジョントラボルタのお母さん役はすごい。オリジナルのディヴァインの方が好きですが、いや本当にすごい俳優さんだなと改めて度肝を抜かれました。
黒沢監督作品については、人間の実在と不在という大きな命題について考えさせられる一方です。私は、私の生は私の夢で、私の死は世界の終わりで、死後の世界などないと思う主観的な人間なのですが、生死の狭間や人間の意識の持ち用や肉体と精神ののりしろのような曖昧な境界線に寄り添おうとしている(ように見える)黒沢監督はとてもロマンティストで、ホラー表現はその優しさや救いや祈りの潜在性を顕在化するために必要な呼び水ではないかと、月並みながら想像しました。
*
その他、様々な場で興味の対象を見つけては、あっちに行ったりこっちに行ったりスウェイする毎日を送っています。仕事で作品をみたり、資料を読んだりする時は、筋道立てて確認しますが、普段は行き当たりばったり、思いもよらない作品や情報に事故的に遭遇したり、これまでの自分が想像もしてこなかった思考のヒントを賜ると、嬉しくて仕方がありません。こんな感じでスウェイ生活を楽しみたいと思います。今週こそは、ジョン・ウォーターズの『ヘアスプレー』を間違いなく借りてこられますように。
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追記:このブログを更新した二日後に、大杉漣さんが急逝されたとのことで驚きました。自分のブログと結びつけるのはあまりにも恐縮ながらも、『ニンゲン合格』の難しい役所、『CURE』の変な髪型、『バイプレイヤーズ』の厄介なリーダーなどなど、様々な役柄の大杉さんを立て続けに拝見したばかりだったのでびっくりしました。
バイプレイヤーズのメンバーに見守られて息を引き取られたとのことで、それが実際の最期なのか、ドラマの最終回のシーンなのか、虚実が混同する状況に胸を突かれてしまいました。急逝の報が出た直後のオンエアでは、グループLINEのくだりが寂しかったですね。その翌日のぐるぐるナインティナインの『ゴチになります』スペシャルでは、きっちりビリですからね。ただの偶然か、生の自然か、諸々は神様の演出か、いずれであっても、その死やフィルムが、多くの人々の胸に深い味わいをもたらしたことと存じます。
これからも旧作をどんどん見ます。ご冥福をお祈りいたします。
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私ひとりを呼び出すために、監督はわざわざ部員全員のグループチャットを使う。
ふたりのスマホが同時に通知を知らせ、同室の瑞穂が息を飲むのが分かった。
寮のあちこちでそれぞれに時間を過ごしていただろう仲間たちにも、同様の表情が浮かんでいるのがたやすく想像できる。
「あー、ここのところ続くなぁ。き、昨日もあんなにしてあげたのに」
精一杯おどけた風に言って立ち上がる。
どうせ来るのだろうと練習着から着替えずにいたので、そのままでも出かけられる。
もう、鍛練の汗とはまるで違うもののしみこんでしまったジャージウェア。
「じゃ、行ってくる。どうせ朝帰りだから、待ってなくたっていいからね」
「アリサ!」
ドアに手をかけたところで、感極まった様子で瑞穂は叫んだ。
「あの、みんな、ちゃんと分かってるからね、アリサの気持ちは」
「うん、大丈夫。負けないから」
「ごめん、私たちがもっと強ければ」
「大丈夫だったら!」
彼女から目をそらし、突き放すように言った。
両の瞳を潤ませる瑞穂を見ていると、自分も心がくじけてしまいそうだった。
「私が自分で選んだことだもの。それよりもチームのことはしっかりね、キャプテン」
まだ何か言い募ろうとする前に、逃げるように廊下へ駆け出した。
私たちの監督は最低の下衆男だ。
本当は監督と呼ぶのさえためらわれるが、名前を口にするのはもっと汚らわしい。
指導者としての手腕は誰もが認めるしかないだろう。
わが校に三顧の礼で迎えられて10年、それ以前の低迷が嘘のような全国大会常連校に躍進させ、優勝も二度果たした実績はまぎれもない。
私だって、テレビでこの学校の活躍を見て憧れたクチだ。
スポーツ推薦枠で入学を認められ、天にものぼる思いだった。
メディア向けの外面に騙されて、あの男に幼い恋心を抱いてさえいたかもしれない。
それもあの男の本性を知るまでのことだ。
まったくの性犯罪者、少女虐待者だった。
指導にかけこつけて、あるいはもっとあからさまに、どれだけの選手たちが毒牙にかかってきたか知れない。
練習中、いきなり名指しで呼びつけられ、下着姿や裸になるよう命じられることなど、日常茶飯事だった。
いかにもトレーニングの成果、肉のつきかたや各所のバネを確かめるような顔をして、私たちの身体を見つめまわし、手でもてあそんだ。
指導者としての手腕は確かに一流だ。
そのようにして部員の肉体を味わったあとで提示される個人メニューには、目をみはる効果があった。
そのことは、私も認めないわけにいかない。
どうしてあれほどの知識と論理性が、愚劣な人間性と共存できるものなのか。
狡猾だったのは、ある一線は徹底して守ったことだろう。
選手たちにしてみたら、約束された成長と勝利と引き換えに、なんとか耐えられるレベルぎりぎり。
学校にとっても全国区で名を売ってくれる指導力と秤にかけて、目をつぶってしまえる「たかがセクハラ」というわけだ。
ふざけてる。
一階に降りると、数人の1年生が玄関前広場に集まっていた。
ラウンジで話し込んででもいたのだろうか。
私が近付くと、誰もみな気まずそうにうつむいたり、顔を背けたりした。
私の立場はもう彼女たちにも知れわたっている。
どう対していいか戸惑っているのは知っていたが、それにしてもいつも以上に腫れ物扱いだった。
何かあっただろうか。
いぶかしんでいると、ひとり、図抜けて背の高い、私とそう変わらないくらいの娘が意を決したように進み出た。
確か、林野さん。
林野カナ。
一年生の中のリーダー格だったはずだ。
「い、行ってらっしゃい、ビッチ先輩!」
私を直視はできないまま、林野さんは真っ赤になって叫んだ。
あまりのことに唖然としていると、彼女の後ろから他の1年生たちも続いた。
「配信楽しみにしていますから」
「いっぱいいやらしいところ見せてくださいね」
「もう女の子として最低っていうような」
「エロエロのメス顔で」
淫語をまじえた嘲笑とも煽りともつかない言葉を必死の形相でぶつけてくる。
どうしていいか分からず、私はしばし固まった。
ほんの3分足らずのことだったと思うが、ずっと長い時間のことに感じた。
「すいません! すいません! 監督にこう言えって」
同じような必死さで、林野さんが頭を深々とさげ、他の娘たちも続く。
そのまま土下座でもしそうな子、先輩に対して言ってしまった言葉に恐れおののく子、もう涙で顔中くしゃくしゃにしてしまっている子もいる。
「わ、分かったから」
あの男の差し金なのは、言われなくても察しがつく。
そうでなくても、恐縮しきった後輩たちに怒りも悲しみもぶつけられたものではない。
うすら笑みを浮かべる監督の顔を思い出し、歯を食いしばりながら、やはり考えずにはいられない。
今の言葉のどれくらいが彼女たちの本音だろう。
監督と愛人契約を交わし、夜な夜な肌を重ねに出かけていく3年生のことを、正直なところどう思っているのか。
胸に芽生えた疑問を打ち消す。
身を犠牲にしても守るべき彼女たちを疑ってしまったら、何のためにこんなことをしているか、見失ってしまう。
「あ、あの、キャプテン」
「キャプテンは瑞穂だよ」
できるだけ軽い調子を心がけながら言って、振り切るように玄関から飛び出した。
「私たち、キ���プテンには感謝しています。本当です!」
鳴き声のような誰かの叫びが背中から追ってきた。
昨年夏。
チームのキャプテンとなった私は、部員たちの総意をとりまとめ、監督の解任要求を学校につきつけた。
どれだけの勝利と引き換えにだろうと、もうこれ以上あの男に好きにさせておくわけにはいかないと思ったから。
結果を言ってしまえば、私たちは敗れた。
学校も保護者会もOG会も、あの男を擁護するばかりだった。
廃部まで賭けてもと思い固めていたのは結局私ひとり、みなをまとめきる力はなかったということなのだろう、仲間たちもひとりふたりと脱落していった。
それでもただひとつ、あの男は譲歩案を出してきた。
それが今のこの愛人契約だ。
私が従順に奴に従うかぎり、他の部員には一切手を出さないからと。
私はそれを飲んだ。
何もかも元の木阿弥にするよりはと。
せめて他のチームメイトたちを守りたくて。
その決断を悔いはしない。
今も、これからも。
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#ふぁぼいただいたお子さんの印象をウチの子が答える
#ふぁぼいただいたお子さんの印象をウチの子が答える #ふぁぼくれた人のお子さんの名前をうちの子が呼ぶ はせおでやらせていただきましたコンコン! ※敬称略!
◆ロランジュ@トモ ロラ、川で溺れてたんだよなあ。それめっちゃ覚えてる。 水苦手って結構不便じゃね?なんかあったら言ってくれよな 勉強熱心だよな
◆シュラフ@斗影 不思議な人だよな〜人?人だよな… 道具かあ。でも俺に合うのまだ何かわかんねーや。 今度シュラフさんにみつくろってもらおっかな
◆シャム@水堵 シャムさんは〜…そうさなあ、イケメンだよな。 魔法で作った仮面、かっけーし俺は造形すきだ。 マァ〜あれで攻撃一回無効化…みたことあるけどスゲェよな
◆ニコラ@れお ニコラはトマと仲良しだよな。よく喋ってるの見かける。 目、左右で色がちげーんだよ、綺麗だよな。 ワケアリそーだし、ま、深くは知らんことにするけどおしゃべりが息抜きになってればいいな
◆シリウス@はこのえ シリウス、金髪の髪がさ、太陽に当たってると光って綺麗だよな。 あの傭兵のカッコも結構サマになってるじゃん。 …俺はさ、雨の日もけっこー好きだ
◆ネチェルカ@シギ ネチェさんはマジでいい人。たまに心配になっちゃうくらい! あの持ってるやつも、俺は結構気になってるけどあんま困った顔されるのもやだから今はやめとこっかな
◆マリー@六月 あぁ、たまに見かける騎士団の人だ。挨拶もしてくれる。良い人だよな いやー騎士団の人って五分五分なんだよな。 イイ感じのイメージ持ってもらえてるといいんだけど。なんちゃって。
◆ドゥ@さとむ ドゥさん!おーい!!!!俺の右頬今日はフリーだぜー!なんちゃって。 ケッコー先輩なんだけど割と色々構ってくれて優しい。 なんか困ってることあったらこの青二才にドンドン言ってほしいな!
◆フゲン@リョーキ 前に一回闘技場いったときに見たことある。フゲン…だっけ、名前。 いや〜すごい強いよな、フツーに戦ったらまけそー。
◆ウォーレン@麗夜 アァ、ウォーレンさんCoMに居たことあって…ちょこっと被ってた。 あの人に頭ぽんぽんされるの、スゲー好きだった! ってまぁ…覚えてるのこっちだけかもしんないけど
◆アーロン@陽 この人も騎士団の人だ、多分良い人だ…見た目判断だけど。 なんか騙されやすそうな感じするからお気をつけを…なんちゃって。
◆ベルゼ@シチヤ ベルゼはよくご飯食べてるとき横で食べてたりする! イイお兄ちゃんみたいなかんじ。っても俺上いないからイメージだけど。 魔法…についてはどう思ってるかな〜俺としてはやな印象もたれてたらカナシー…なんてな
◆シューベル@のぞみ シューくんは初めて手で任務した時の相手だった! 気遣いもできるし?甘いマスクだし?はは、いいすぎ? 俺の気づかないとこまあ〜気づいてくれていつも���かってるよ
◆トマリ@くこ トマはなあ、ちょっとほらあんな感じだけどスッゲー優しくて良い子なんだぞ。 ちっちゃいときは俺だけでどーしよっかなあって思ってたんだけど まぁそんな俺の心配なんか全然関係ナシで強くなっちゃったよなあ
◆アルベルト@めつ アルは話してみると意外と…なんだろうギャップあるよな。 初見はもっとこう…触るもの斬るぜ的な感じかと思った…ごめんごめん。 魔法については…どうかな、アルには魔法のこと好きになってほしいなって俺は勝手に思ってんだけど! ◆テレサ@ルーカス テレサさん、強い人だよなあ。 色々思うところもなんもかんもあったと思うけどとりあえず楽しくしてくれりゃいいなとおもうよ。って青二才の独り言。 息子さんめっちゃそっくりだよな。まっすぐなとこも!
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