#やがて近���いてくる霧が私たちの心を曇らせ、
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Kohane sits at her usual spot, near the train station, feeding the pigeons. Winter is approaching, the sky getting darker by the second. Sigh...
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2024.10.13
映画『HAPPYEND』を見る。父の時代の学生運動のような雰囲気と、街の風景のクールな切り取り、存在感があり重厚な音楽の使い方から愛しいものとしてのテクノの使い方まで大変気に入り、今度会う人に渡そうと映画のパンフレットを2冊買う。その人と行った歌舞伎町時代のLIQUIDROOM、どんどん登らされた階段。小中学生の時に自分がした差別、あの分かっていなさ、別れた友人、まだ近くにいる人たち。
2024.10.14
銀座エルメスで内藤礼『生まれておいで 生きておいで』、ガラスの建築に細いテグスや色のついた毛糸が映える。日が落ちて小さなビーズが空間に溶けていくような時間に見るのも素敵だと思う。檜の「座」で鏡の前にいる小さな人を眺める。「世界に秘密を送り返す」を見つけるのは楽しい。黒目と同じだけの鏡、私の秘密と世界の秘密。今年の展示は上野・銀座ともに少し賑やかな雰囲気、外にいる小さい人たちや色とりどりの光の色を網膜に写してきたような展示。でも相変わらず目が慣れるまで何も見えてこない。銀座にはBillie Eilishもあったので嬉しくなる。
GINZA SIXのヤノベケンジ・スペースキャットと、ポーラアネックスでマティスを見てから歩行者天国で夜になっていく空を眺めた。小さい頃は銀座の初売りに家族で来ていたので、郷愁がある。地元に帰るよりも少しあたたかい気持ち、昔の銀座は磯部焼きのお餅を売っていたりしました。東京の楽しいところ。
2024.10.18
荷造り、指のネイル塗り。足は昨日塗り済み。年始の青森旅行時、2泊3日の持ち物リストを作成し、機内持ち込み可サイズのキャリーに入れ参照可能にしたところ、旅行のめんどくさい気持ちが軽減された。コンタクトや基礎化粧品・メイク用品のリスト、常備薬、安心できる着替えの量。持ち物が少ない人間にはなれそうにない。日常から多い。部屋に「読んでいない本」が多いと落ち着くような人間は持ち物少ない人になれない。
2024.10.19
早起きして羽田空港。8:30くらいに着いたらまだ眺めのいいカフェが開いておらず、とりあえず飛行機が見える屋上に行く。このあと雨が降るはずの曇り空からいきなり太陽が照り出して暑くなり、自販機でマカダミアのセブンティーンアイスを買い、食べる。突然の早朝外アイス。飛行機が整列し、飛び立つところをぼんやりと眺める。飛行機は綺麗。昨夜寝る前にKindleで『マイ・シスター、シリアルキラー』を買って「空港ではミステリー小説だろう」と浮かれて眠ったのに、100分de名著のサルトルを読み進める。実存主義を何も分かっていないことをこっそりとカバーしたい。すみませんでした。
10:15飛行機離陸。サンドイッチをぱくぱく食べたあとKindleを手に持ったまま眠ってしまい、11:55宇部空港着。
宇部空港、国内線のロビーは小さく、友人にすぐ会う。トンネルを抜ける時、窓が曇り、薄緑色の空間に虹色の天井のライトと車のライトがたくさん向かって来て流れる。動画を撮影しながら「綺麗くない?」と言うと「綺麗だけど本当は危ない」と言われる。かけるべきワイパーをしないで待っていてくれたんだと思う。
友人のソウルフードであるうどんの「どんどん」で天ぷら肉うどん、わかめのおにぎりを食べる。うどんは柔らかく、つゆが甘い。ネギが盛り放題。東京でパッと食べるうどんははなまる系になるので四国的であり、うどんのコシにもつゆにも違いがある。美味しい。
私は山口市のYCAMのことしか調べずに行ったので連れて行ってもらう。三宅唱監督の『ワイルドツアー』で見た場所だ。『ワイルドツアー』のポスターで見た正面玄関を見に芝生を横切ったが、芝生は雨でぐずぐずだった。でも全部楽しい。
広くて静かで素敵な図書館があり、心の底から羨ましい。小さな映画館もあり、途中入場できるか聞いたおじいちゃんが、「途中からだからタダにならない?」と言っていたがタダにはなっていなかった。一応言ってみた感が可愛らしい範囲。
YCAM内にあるのかと思っていたら違う倉庫にスペースのあった大友良英さんらの「without records」を見に行く。レコードの外された古いポータブルレコードプレーヤーのスピーカーから何がしかのノイズ音が鳴る。可愛い音のもの、大きく響く音のもの。木製や黄ばんだプラスチックの、もう存在しない電機メーカーの、それぞれのプレーヤーの回転を眺めて耳を澄ませてしばらくいると、たくさんのプレーヤーが大きな音で共鳴を始める。ずっと大きい音だと聞いていられないけれど、じっと待ってから大きな音が始まると嬉しくなる。プログラムの偶然でも、「盛り上がりだ」と思う。
山口県の道路はとても綺麗で(政治力)、道路の横は森がずっと続く。もとは農地だっただろう場所にも緑がどんどん増えている。私が映画で見るロードムービーはアメリカのものが多く、あちらで人の手が入っていない土地は平らな荒野で、日本の(少なくとも山口県の)土は放っておくとすぐに「森」になるのだ、ということを初めて実感する。本当の森の中にひらけた視界は無く、車でどんどん行けるような場所には絶対にならない。私がよく散歩をする所ですら、有料のグラウンドやイベント用の芝生でない場所には細い道を覆い隠す雑草がモコモコと飛び出して道がなくなってゆく。そして唐突に刈られて草の匂いだけを残す。私が「刈られたな」と思っているところも、誰かが何らかのスケジュールで刈ってくれているのだ。
山口県の日本海側の街では中原昌也と金子みすゞがそこかしこにドンとある。
災害から直っていないために路線が短くなっているローカルの汽車(電車じゃない、電車じゃないのか!)に乗って夜ご飯へ。終電が18:04。霧雨、暴風。一瞬傘をさすも無意味。
焼き鳥に挟まっているネギはタマネギで、つきだしは「けんちょう」という煮物だった。美味しい。砂肝、普段全然好きじゃないのに美味しかった。少し街の端っこへ行くとたまに道に鹿がいるらしく、夜見ると突然道路に木が生えているのかと思ったら鹿の角、ということになり怖い���しい。『悪は存在しない』のことを思う。
2024.10.20
雨は止んでいてよかった。海と山。暴風。人が入れるように少しだけ整えられた森に入り、キノコを眺める。
元乃隅神社、123基の鳥居をくぐり階段を降りて海の近くへ。暴風でiPhoneを構えてもぶれて、波は岩場を越え海の水を浴びる。鳥居の上にある賽銭箱に小銭を投げたけれど届くわけもない。車に戻ると唇がしょっぱかった。
山と海を眺めてとても素敵なギャラリー&カフェに。古い建物の改装で残された立派な梁、屋根の上部から太陽光が取り込まれるようになっていて素晴らしい建築。葉っぱに乗せられたおにぎりと金木犀のゼリーを食べる。美味しい。
更に山と海を眺めて角島へ。長い長い橋を通って島。古い灯台、暴風の神社。曇天の荒れた海も美しいと思う、恐ろしい風や崖を体感としてしっかりと知らない。構えたカメラも風でぶれるし、油断すると足元もふらつく風、窓につく塩の結晶。
山と海を眺めて香月泰男美術館へ。友人が見て良い展示だったからもう一度来て見せてくれたのだ。
全然知らなかったけれど、本当に素晴らしい絵だった。油彩なのだけど、質感が岩絵具のようで、フレームの内側に茶色のあやふやな四角が残っているのがとても良い。
フレーミングする、バチッと切り取ってしまう乱暴さから離れて、両手の人差し指と親指で四角を作って取り出したようなまなざしになる。
山口県の日本海側の山と畑と空の景色、荒い波、夜の静けさや月と雲、霧の色を見てから美術館へ連れて来てもらえたから色と色の境目の奥行きを知る。柿はずっしりと重く、花は鮮やかだ。香月泰男やシベリア抑留から帰ってきた画家で、この前読んだ『夜と霧』の暗さと冷たさを思い返した。絵の具箱を枕にして日本へ帰る画家が抱えていた希望、そのあとの色彩。
夕飯は友人の知り合いのハンバーガー屋さんへ。衝撃のうまさ。高校生の時に初めて食べたバーガーキングの玉ねぎの旨さ以来の衝撃、20年ぶりだ。そんなことがあるのか。
2024.10.21
晴天。海は穏やかで、深い青、テート美術館展で見たあの大きな横長の絵みたい。初めて見た海の光。
海と山を眺めて秋吉台へ。洞窟は���間がかかるので丘を散策、最高。
風光明媚な場所にしっかりとした情熱が無かったけれど、「好きな場所だから」と連れていってもらえる美しい場所は、友人が何度も見るたびに「好きだなぁ」と思っただろう何かが分かり、それは私が毎日毎日夕陽を眺めて「まだ飽きない」と思っている気持ちととても近く、感激する。
今までの観光旅行で一番素敵だった。
道々で「このあと窓を見て」と教えてもらい、味わう。
ススキが風に揺れて、黄色い花がずっとある。山が光で色を変え、岩に質感がある。
山口市、常栄寺、坂本龍一さんのインスタレーション。お寺の庭園が見られる場所の天井にスピーカーが吊るされ、シンセサイザーの音を演奏しているのは色々な都市の木の生体信号だ。鳥の声や風の音と展示の音は区別されない。砂利を踏む音、遠くから聞こえる今日の予定。豊かなグラデーションの苔に赤い葉っぱが落ちる。
宇部空港はエヴァの激推しだった。庵野さん、私も劇場で見届けましたよ。
行きの飛行機は揺れたけれど、帰りは穏やかに到着、家までの交通路がギリギリだったため爆走、滑り込む。
東京の車の1時間と山口の1時間は違う。
何人かの山口出身の友人が通った空と道と海と山の色を知ることができてとても嬉しい。
「好きな場所」「好きな風景」ってどういうものなんだろう。
私が通う場所、好きな建築、好きな季節と夕陽。あの人が大切にしている場所に吹く風、日が落ちる時刻が少し違う、友人のいる場所。
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石の言葉
名古屋を巡る車の中で、静岡に砂丘があることを友人から教わった。鳥取以外に砂丘が存在することは意外だったが、私はちょうど、ぼうっと眺めるだけで済む単調な風景を欲していたところだった。というのも、このところ雑事に追われていたせいで、精神は干された雑巾のように疲弊しきっており、何事に関しても乾いた考えしか浮かばなくなっていたからだ。友人に請うて予定を変更し、翌日足を伸ばしてみることにした。
三月某日。朝から曇天。連休の中日であるせいか車道はしばしば滞った。昼過ぎにようやく浜名湖に着き、そばにある店で鰻を食べつつ、私は植田正治が撮影した写真を思い出していた。白い空と白い砂に二分された画面の中央に、黒い服を着た人物が立っている。現実から遊離した夢のような断片。まるでタンギーの時空にぽつんとある、マグリットのオブジェ。新しいのにどこか懐かしい、シンプルで強烈なイメージだ。そんな不思議な光景が、この先で待っているだろうか。重箱の蓋を閉め、肝吸いをすする。椀のなかにある黒い背景と白い肝のネガポジを反転すれば、近くて遠い異世界が現れるだろう。思いもよらぬ効果は、そのように簡単な操作で得られるのかもしれない。携えたカメラで何かを撮ってみよう。
中田島砂丘は浜松の南部に位置し、遠州灘に面している。砂は、その東端が接する天竜川の上流から運ばれてくるそうだ。駐車場に車を停め、滑り止めが敷かれた小道を歩いて登って行く。林を抜けると視界が開けた。友人が声を上げる。空と、一面の砂が広がっていた。砂原へと続く急斜面を、足を取られながら興奮ぎみに降りる。すると、不意に下方から視線のようなものを感じ、私は立ち止まった。目を凝らすとそれは人でも動物でも虫でもなかった。石であった。坂の下に、じっとこちらを見つめている石があったのだ。遠ざかる友人をよそに、砂に顔を打たれながら、私はそれを見た。あたりにごろごろ転がる石とは何かが違う。風と波の果てしない響きのなかで、その石は白くきわだち、寂しそうだった。
私たちにはどこか通じ合うものがあった。ルートを外れ、靴にざばざばと砂が入り込むのも構わず、石のもとまで無心で下って行った。拾い上げると、それは花崗岩であった。美しい卵型をしており、側面に少し平べったい部分がある。表面はチョコチップアイスを思わせる、白にわずかな黒のまだら模様。握ってみるとたしかな重みがあり、旧知の仲でもないのに、手にしっくりとなじんだ。持ったまましばらく考え、その石を散策の相棒にすることに決めた。
石は、大人しい。しかしその性質はなかなか気難しい。浜を東へ歩いていく途上、こいつをどう扱おうかと悩んだ。ぐっと握りしめたり、持ち上げたり、掲げたり。ときに置いたり、立てたり、回したり。はたまた投げたり、落としたり、転がしたり。その全面が顔ともいえる、しかしいっさい動いてくれないカタブツをなだめすかしながら、何枚も写真を撮った。そのうち何やら、石の言葉が聞こえてくるような気がした。しかしその言葉とはいったいどんなものだろう。
雨に濡れて。/独り。/石がゐる。/億年を蔵して。/にぶいひかりの。/もやのなかに。
そう書いたのは詩人草野心平だが、なんでもない石について、石そのもののごとく簡潔に、そこに秘められた歴史と存在の必然性を言い表している。なおかつ映像的でもあり、事物を外部から見た限界ぎりぎりのところを巧みに描写している。とはいえ、それは石の発した言葉ではなく、あくまで人間から見た石の姿にすぎない。最終的にその主張を想像して汲み取るのは我々読者だ。詩人石原吉郎によれば、詩とは「沈黙を語るための言葉」だという。結局、我々が読めるのは「書かれた詩」でしかない。ほんとうの詩は事物と感興との沈黙の関係にあり、口にしたとたん霧消してしまうたぐいのものなのだ。ただしその意味で、カメラは言葉と同等に詩をつかみ得る道具となる。
石の言葉の意味は石にしかわからないが、聞くことはできる。それは生成と漂着の場所にこだまする音に根ざしているはずだ。ここは砂丘。海と空と砂と風がある。それらを組み合わせて固めた言語が質量となって、いま手のなかにある。石の組成、つまりこの風土の中心に改めて石を据えてみようと思った。空へと放り投げて、あるいは、太陽と重ね合わせたシルエットに向けて、シャッターを切る。一連の試行錯誤の末、徐々に一個の石の多様な側面が見えてきた。浜にある無数の石の中、風紋を斜めに切る光彩と陰影の間、人の足のような流木の上、それぞれの関係性の中で石は表情を変え、異なる何か訴えかける。それは静かだが、熱のこもった対話であった。
石のようになかなか動こうとしない私に友人はやきもきし、途中からどんどん先に進んでいった。帰りがけに走って追いついたところ、持って帰るつもりかと聞かれた。私は黙って首を振り、堆砂垣の向こうにそっと転がした。ホテルに戻ると、お気に入りを見つけたと言って、友人はポケットから���さな黒い石を取り出してみせた。彼は彼で写真を撮っていたらしい。そうしてにやりとしながら差し出されたカメラの画面には、私と石の出会いが切り取られていた。少し笑うと、名残惜しさが込み上げてきた。ふたたび永遠の海亀の卵へと還った石は、満月とともに夜を語り明かすにちがいない。ここちよい疲労に包まれてほんとうの石となった私は、夢幻のなかでその会話を聞いただろうか。








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2022/10/29〜

10月29日 いろいろ疲れているので、日記も写真も今日の予定もすっぽかそう!の気持ちでいちにちを始めたら、全てまずまずやり遂げてしまった。
3ヶ月に一度の歯科検診へ。 前回、黒ごまラテの着色いじりへ不服を態度で伝えることができた、と思っていたのは勘違いで、今回も黒ごまラテから始まった診察。黒ごまラテは飲んでないけれど着色汚れがある。お茶をやめて水にしろ、言われたこともあったけれど、それは無理なので、コンクールジェル、シュミテクトホワイトニングの2回磨き+コンクールマウスウォッシュの消毒+ホワイトニングマウスウォッシュ、で術を尽くしていた口内事情。それを伝えると、シュミテクトホワイトニング以外やめてみましょう!と、新商品のシュミテクトホワイトニングの試供品をくれた。 シュミテクトって海外では違う商品名らしい。 とにかく歯が白くなって嬉しい。 でも口を開けっぱなしだったからか、喉を痛めてしまった。それと、毎度のことながら歯医者さんの後はお腹を壊している。

都写美で野口里佳の“不思議な���”を鑑賞。 ほとんど観たことのある作品だった。作品展の空間に居られることがとても幸せに感じた。心地よい展覧会で幸せ。 撮っているものは、キュウリやヤシの木やコップなど、シンプルで一瞬で認識することができる写真。でも、じっくり落ち着いて観ていたくなるようにさせてくれる写真たちだった。 潜水して撮影したり、胃カメラを使って撮影したり、思っていたよりへんなことをしているのに、写真はシンプルで美しいのが不思議。 “夜の星に”のデジタル映像とコンタクトシートの展示を観て泣きたくなった。 昔、平日の曇天の昼の品川のキャノンギャラリーで観たことがある作品。会社員たちと、昼食にテイクアウトした商品を入れた緑の袋が、モスバーガーの店舗からどんどん出てくるシーンに、わ〜〜〜となった記憶。
何となく街のちょっとした陽の当たるところとか、そうゆう写真を撮っても良いんだね、と思い出して、まんまと写真をたくさん撮って恵比寿駅まで戻った。
アトレの無印良品で冬のお部屋のものなどを買い込んだ!
夜お部屋で花火が打ち上がる音を聞く。

10月30日 今日の日はもうないものとして過ごしていたので、少しの家事や用事を済ませることができただけで大満足な日だった。
体の調子は変わらずに良くなく、体力を余分に消耗している体感でソワソワしながら日中を過ごした。
スーパーで年末年始っぽい音楽が流れている。駅前の歯医者にはツリーがあって、ショッピングモールにはカボチャのアイテムを身に付けた子供がたくさんいた。

10月31日 昨晩、渋谷と京都のライブカメラ配信を見ていたら、渋谷はハロウィン前日の人の多さで、警察も出動していた。予定していたライブは、渋谷のライブハウスが会場だったので行けなくてよかったかも。
風邪薬が効きすぎているのか、エネルギーが勢いだけ有り余り、でもチャージはされていないのでスカスカの身体が、今日もずっとソワソワしている。 朝、一応体調が戻った気がして出掛けてみた。 途中で抗原検査キットを処方してもらう。 フィルム現像を出しに写真屋さんへ行くと、年賀状の注文をしている人がいた。

平日の昼間のオフィス街がやはり大好き。 大手町から日比谷までの丸の内を歩いて歌って、ショーウィンドウを眺めて写真を撮っている時が一番楽しい!と思った。 みんなが働いているのに休んでいる優越感なだけ?と考えたけれど、みんな働いているのを知らない大学院生時代からこの通りを歩くのが大好きだった。 東京駅は外国の方が増えた。
日比谷のTOHOシネマズで映画を鑑賞。 うん、少しずつ映画館恐怖症?が治ってきている…はず。今日は2時間超の作品で、途中、とてつもなく気持ち悪くなりかけたけれど、足をゆさったり深呼吸をして凌げた。 鑑賞したのは趣里ちゃんが出演し、根本宗子が脚本の“もっと超越したところへ。” いろいろすごかったし、音が大きくて何度か酔っていた。趣里ちゃんの動き方や身体のバランス感がとても好き。 こないだyoutubeで予告を見た三浦透子ちゃん主演の映画にも、あっちゃんと元乃木坂の子が出演していたな〜、と思い出す。 映画は、後半からエンドロールまでが、演劇っぽい作品!と何も映画にも演劇にも詳しくないのに、なんとなく思っていた。

映画の後、大丸のパパブブレでラスト1つのハロウィンキャンディセットを購入し、大学の研究室へ持っていくことにした。
駅から大学まで、都会特有の長い信号待ちの横断歩道を2回渡りながら、1つ目を渡った後、とっても走れば2つ目の青信号に間に合うことなどを思い出した。 結局、大学まで行って、何か怖気付いてしまい神保町古本祭りを眺めて帰宅した。
東京の平日の昼間って、たくさん撮りたくなるシーンがあって貴族の遊びが捗ってしまう。
丸の内のショーウィンドウの中のものたちが、どれもキレイで、それを欲して入店する人達も気品があるので安心する。 平日に、北関東のスーパーやディスカウントストアやショッピングモールやファミレスばかり見ていると、インターネットで欲しくないものばかり買ってしまうので、精神衛生的にも金銭的にも良くない。

11月1日 朝起きて、これはだめなやつ!な身体だったのでお休みをすることにした。 けれど、このままずっと休んでしまうのでは?と、午前休にする。8時の電話をかけるまでの時間、いろいろな言い訳を頭の中でし続ける。 連絡をした後も、この午前休を何か有効的に使わなくては…!と眼科を予約。 身支度を済ませた時に、身体が本当に空っぽで薬の効果で駆動力だけ湧き上がっているのに気が付き、予約まで1時間以上あるのに家を出てしまう。

すぐエネルギー切れになり、何か食べよう!と思った。 いつもは、少しの血糖値の上昇でも身体がきつく眠くぱったりしてしまうため、日中に食事はしない。でも、こうなると無理で、他のことが見えず、食物を探し彷徨ってしまうことがたまに起きてしまう。
とりあえずキレートレモンを片手に電車に乗った。 車内では秋の行楽のアナウンスが流れていて、窓の外を見て、休んでいた3日間で通勤経路の秋がどっと深まっているのを感じた。 無心で金曜から予定していた旅行をキャンセルした。 隣の席の人のスマホの画面を見ると、東博の“国宝展”のチケットを予約して、ラインで予約完了の報告をしてい���。あ!と、友人に国宝展のお誘いメッセージを送ると、なかなか予約が取れないらしい。その時、他の人からディズニーランドへ行く予定の確認が来ていて、でも今は全くディズニーランドなんて行きたくない!どちらかと言えば、有給とってでも国宝展へ行きたい気分。
下車した先のスタバの店員さんが赤いTシャツを着ていて今日からクリスマス解禁。
ここからまたコンビニというコンビニをうろつき、食物を探すけれど納得のいくものがなく、駅のちょっとした物産展へ入ってみると、こだわりプリン的なものが半額だったのでちょうど胃も辛いし咀嚼も辛いので、食べてみることにした。
広場の椅子とテーブルでは、女子高生が1人数学の問題集を解いていた。 私もそこに座りプリンを食べた。 近くではロボットが実走させられている。 プリンはカラメル以外は食べることができたし、満たされる美味しさを感じることができた。半額で190円支払ったので定価400円程する高級プリン…。
血糖値おばけになってガクガクしながら出勤して、やっぱり苦しくて虐げられて泣いたり、体調不良でワクチン接種できなかった事を笑い飛ばされたり、暇だけど何か手伝いますか?何をどうすればさらに職場環境が向上するか的なの前向きな話題を聞いたりして半日を過ごした。
すぐ泣きたくなる。すぐ、みんな良く喋るなー、ってモードになる。暇な時間をどう埋めるべきかで私の頭はとっても忙しい。そして実際に暇でもなくて、それはもう忙殺。

11月2日 うさもっちの白はamazonで既に売り切れ!
朝、霧が濃くて紅葉が白に生えていたので、何となく持って行けたカメラでたくさん写真を撮った。帰り道も何か月とか撮ろうとしたけれど、いつも撮っているよね?と自制を効かす。
ケイトはいつまでもつのかな。 お花の片付け時がわからず、1週間と決めてしまっている。 なるべく、本当は明日から旅行だったのに!と思わないように2日間は生活と自分を喜ばせる時間に充てたい。
SNS映えのためにずっと生活をしているので、なるべく“映え”がテキトーにバカにされる言葉にならないで欲しい。 (“映え”という言葉が出てきた時、私のしたかったことはこの一言で表せるのかも!と思ったりした。一瞬。) 明らかに仕組み作られてしまったインターネットの世界でなかった頃、飲み会帰りにさっきまで一緒にいたみんながするツイートをふぁぼしていた頃、そうゆう感じで、掴みどころのないツイートを仕事終わりにして、みんなでいいね!をし合うものだと思っていた頃、その頃のインターネットを知っている私は幸せだと思う。

11月3日 午後の予定まで東京駅〜銀座をお散歩した。 国際フォーラムではゴジラのイベントが開催されていた。本当に外国人の観光客が増えていて、話題の食べ物とセルカ棒で写真を撮っている。 KITTEの郵便窓口では、年賀はがきや年賀切手を60枚、70枚と大口購入されている方が多い。今年はもう年賀状をやめてしまおうと思っていたけれど、30枚インクジェット年賀はがきを購入してしまう。卯年のデザインのうさぎは、どことなくマイナンバーカードのうさぎに似ていて、うーん。 うさもっちは20体ほど残っていた! 紅しかいなかったけれど、実物はとっても可愛い。お会計してくれた局員さんは“うさもっち”と、言わないようにお会計手続きをしている感じ。 その後エルメスへ行ってみると展示が変わっていたので鑑賞。犬の粘土アニメーションが面白かった。

帰りにスーパーへ行く。 どうもずっとお腹が気持ち悪く何も食べたくないのに身体はエネルギーを欲していてあべこべな気持ちで食材を買った。レジでお会計していたら、隣のレジのおばさんが「これ使った?私は今日もう使っちゃったのであげる!」と、10%引きクーポンをくれた。「え!?あっ、ありがとう…」と、ろくにお礼も言えずに、おばさんが先に袋詰めを済ませて店を出ていく姿におじぎをしたら、振り返って手を振ってくれた。
今、少し長い地震があった。こわい。 今日は結婚する報告を受けた。こうゆう時、誰かいるとこわさが軽減されていいのかもしれない。大丈夫なきれいな人がいるといいのだと思う。
ケイトを生けていた花瓶を倒して水を撒いてしまった。ケイトはまだ元気そうだったけれど、さよならすることにした。

11月4日 1日休んで1日働くくらいが身体的にはちょうど良い。 明日から文化祭なので、広場には仮設ステージが設営されていて、朝から夜まで準備をしている人がいて、少し元気になった。 こうゆうイベントが���しずつ許されていて、元々苦手だったものは、この感染症を理由に断ったりして利用しつつ、うまくやっていければいいな。 文化祭前夜の仮設ステージと照明と雨の夜がとてもよかった。 酉の市には行けていないけれど、雨が降っているので!と行けない理由もできて大人しく帰宅できた(でも40分くらい写真を撮って遊んで貴族退勤した)。
「3年目までのメンバーで新人さんの歓迎会をやるんですけど、どうですか?」とお誘い話を受ける。ちゃんとこうゆう会を開こうって思ったり、人に声をかけたりできる人ってすごい。確かに歓迎会らしい会がなくここまできてしまったので、3年経ってもなんとなく知っていてなんとなく過ごしている人だらけ。
先週の反省として、頑張って掃除をしすぎない(体調を崩す)と言い聞かせて、いま夜を過ごしています。

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117. 少女と一角獣
(英題)Maiden and Unicorn
2023/01/28
作曲: thus(2023) 編曲: thus(2023) 歌詞: thus(2023) © 2023 thus. Composed by thus
絵: 井上カワズ (2022) © 2022 井上カワズ. Art by 井上カワズ (https://twitter.com/@InoueKawazu )
動画: thus(2023) (フォン��: 瀬戸フォント)
ニコニコ動画 https://nico.ms/sm41705651
YouTube https://youtu.be/v8nRdMNga_E
哔哩哔哩 https://www.bilibili.com/video/BV1S24y1z7M1/
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【少女(しょうじょ)と一角獣(いっかくじゅう)】
何(なん)だか知(し)らん内(うち)不和(ふわ)塗(まみ)れ 強(したた)かな声(こえ)に耐(た)えれんくなって 今日(きょう)、そっと家(いえ)を出(で)た 何処(どこ)か遠(とお)くに行(い)こうと思(おも)った けど行(い)く当(あ)てなど何処(どこ)にもない儘(まま)禁忌(きんき)とされている樹海(じゅかい)へ迷(まよ)い 出会(であ)って了(しま)った 獰猛(どうもう)と謳(うた)われている一角獣(いっかくじゅう)へと
何(なん)だか知(し)らん内(うち) どうしようと思(おも)う静寂(せいじゃく)と恐怖(きょうふ)に耐(た)えれんくなって そっと後退(あとずさ)り 何処(どこ)か遠(とお)くに逋(に)げようと思(おも)った けれど何処(どこ)か痛(いた)み哀(かな)しむよう 心寥(うらさび)しむ様子(ようす)で如何(どう)いう亊(こと)か そっと優(やさ)しくも 昧(くら)いその身(み)をゆらりと預(あず)けて来(き)た
ハララ、逋(に)げを続(つづ)け そして茲等(ここら)で出会(であ)った それは、迚(とて)もそれは 聞(き)いた話(はなし)と違(ちが)った ハヤヤ、不和(ふわ)の仲(なか)を弌(ひと)つ思(おも)い出(だ)し愁(うれ)いた それは、そうそれは 何度(なんど)も折(お)られていたんだ
悲(かな)しい時(とき)に出会(であ)った 逋(に)げる間柄(あいだがら)出会(であ)ったんだ 聞(き)いた話(はなし)と違(ちが)った 何(なに)をするでも無(な)かった
お馬(うま)に乗(の)って 微風(そよかぜ)に揺(ゆ)られて 諍(いさか)いなんて無(な)くなればいいのにという心地(ここち)を 嗚呼(ああ)、何故(なぜ)だろうね よく知(し)っている気(き)がするんだ 今日(きょう)はもう遅(おそ)い 落(お)ち着(つ)く迄(まで)居(い)なさい、少女(おとめ)よ
お馬(うま)に乗(の)って 旋風(つむじかぜ)を切(き)って 争(あらそ)いなんて無(な)くなればいいのにという心地(ここち)を 嗚呼(ああ)、何故(なぜ)だろうね よく知(し)っている気(き)がするんだ 夜明(よあ)けも近(ちか)い 落(お)ち着(つ)いたら歸(かえ)りなさい、少女(おとめ)よ
(ハーヤッ、ハーヤッ、ハーヤッパラーラッタッ、) (パーラッ、パーラッ、パカラカラッパラーラッパッ、) (ハーヤッ、ハーヤッ、ハーヤッパラーラッタッ、) (パーラッ、パーラッ、パカラカラッパラーラッ、)
やっかみがられて末(すえ)と後(あと) またそういった嫌(きら)いにも耐(た)えれんくなって 今日(きょう)も、そっと出(で)て来(き)た 吸(す)われるように樹海(じゅかい)に行(い)こうと思(おも)ったの 霧(きり)か曇(くもり)か分(わ)からんが その向(む)こう 晃晃(こうこう)と輝(かがや)く月夜(つきよ) 今日(きょう)も、そっと出(で)て来(き)た 獰猛(どうもう)と嫌(きら)われた一角獣(いっかくじゅう)から
何(なん)だか知(し)らん内(うち) どうしようと唸(うな)る静寂(せいじゃく)と恐怖(きょうふ)に潛(ひそ)む獣(けもの)たち そっと後退(あとずさ)り 何処(どこ)か遠(とお)くに逃(に)げようと見(み)つめていた 雲(くも)か霞(かすみ)か分(わ)からんが その向(む)こう しんしんと瞬(またた)く星夜(せいや) そっと昧(くら)い中(なか)特(とく)に何(なに)をするとなく時(とき)を過(す)ごした
ハララ、逋(に)げを続(つづ)け惨事(さんじ)を避(さ)けて至(いた)った 難(なん)ずる意(おも)いを知(し)らぬ儘(まま)に煙(けむ)たがられて ハヤヤ、不和(ふわ)の仲(なか)を弌(ひと)つ思(おも)い出(だ)し嘆(なげ)いた それは、そうそれは 傷跡(きずあと)が増(ふ)えていたんだ
お馬(うま)に乗(の)って 微風(そよかぜ)に揺(ゆ)られて 争(あらそ)いなんて無(な)くなればいいのにという心地(ここち)を 嗚呼(ああ)、何故(なぜ)だろうね よく知(し)っている気(き)がするんだ 貴方(あなた)も同(おな)じ思(おも)いを識(し)りますか 一角獣(いっかくじゅう)
(ハーヤッ、ハーヤッ、ハーヤッパラーラッタッ、) (パーラッ、パーラッ、パカラカラッパラーラッパッ、) (ハーヤッ、ハーヤッ、ハーヤッパラーラッタッ、) (パーラッ、パーラッ、パカラカラッパラーラッパッ、)
悲(かな)しい時(とき)に出会(であ)った (ハーヤッ、ハーヤッ、ハーヤッパラーラッタッ、) 逋(に)げる間柄(あいだがら)出会(であ)ったんだ (パーラッ、パーラッ、パカラカラッパラーラッパッ、) 聞(き)いた話(はなし)と違(ちが)って (ハーヤッ、ハーヤッ、ハーヤッパラーラッタッ、) 何(なに)をするでも無(な)かったんだ (パーラッ、パーラッ、パカラカラッパラーラッパッ、)
大(おお)きく成(な)った身(み)も心(こころ)も無事(ぶじ)に 相思(そうし)と出会(であ)い契(ちぎ)りを交(か)わしました 明日(あした)私(わたし)は操(みさお)を捧(ささ)げます もう逢(あ)えるのは最後(さいご)になりました
御馬(おうま)に乗(の)って 風(かぜ)切(き)る涼(すず)しさを 争(あらそ)いなんて無(な)くなればいいのにという心地(ここち)を 嗚呼(ああ)、何故(なぜ)だろうね。よく知(し)っている気(き)がするんだ。 もう此処(ここ)に来(こ)ず、幸(さいわ)いでいなさい、乙女(おとめ)よ。
御馬(おうま)に乗(の)って 風(かぜ)切(き)る寂(さび)しさを 平穏(へいおん)な中(なか)で揺(ゆ)られている心地(ここち)を 嗚呼(ああ)、何故(なぜ)だろうね。ずっと知(し)っていた気(き)がするんだ。 もう此処(ここ)に来(こ)ず、幸(さいわ)いでいなさい、乙女(おとめ)よ。
(ハーヤッ���ハーヤッ、ハーヤッパラーラッタッ、) (パーラッ、パーラッ、パカラカラッパラーラッパッ、) (ハーヤッ、ハーヤッ、ハーヤッパラーラッタッ、) (パーラッ、パーラッ、パカラカラッパラーラッパッ、)
(ハーヤッ、ハーヤッ、ハーヤッパラーラー、ハーヤッパラーラー、)
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Did you get vaccinated for COVID-19? My parents did. My dad got his 2nd one 2 weeks ago and mom did last week. So, their vaccination, in addition to their regular hospital visits, and mom’s pica-like problem made my last couple of weeks much more stressful than usual. I knew I needed a break. And this morning, I pampered myself with this stretching exercise workshop on the beach and a gorgeous breakfast at the nearby inn. :)
ウチの両親はコロナの予防接種受け終わりました。父が2週間前くらいに、母が先週。 で、そのワクチン接種と、普段からの通院と、母の異食事件などなどで、先週あたりには普段にましてストレス溜まったので。 ちょっと癒しを求めて、この”浜ストレッチ”に参加。もちろん、近くの民宿でのゴージャスなモーニングセットが込みです。💗

The weather was rather strange early in the morning. Look at this fog! I had never seen anything like this before. It warned me how hot and humid it was going to be toward noon. この日の早朝の天気は不思議でした。こんな場所にこんな風に海霧?が出たの初めて見ました! っこりゃぁ日が昇って、お昼に向けて気温が上がっていったら、めっちゃ蒸し暑くなるのでは... (-"-;)

Wow! Are we going to do the exercise in sauna? @@ もしやストレッチする場所はサウナ状態?


But when we got on the beach, the fog was almost gone. We had abundant sunshine... well, maybe a bit too much. LOL 浜に行ってみると、もう霧もほぼ見えなくなっていって。 ただ、太陽がさんさんと...照りすぎ。暑い。

Luckily, it got cloudy while we were doing the exercise. We were able to enjoy the last half of the workshop in nice cool breeze without worrying about getting sun-burnt. :D :D 幸運なことに、ストレッチをしてる間にどんどん曇ってきて、後半はもう涼しい風の中で日焼けの心配を忘れて気持ち良く楽しめました。^^)v

And after the workshop, this gorgeous breakfast was waiting for us on the balcony of the inn. そしてストレッチの後は、この朝食を近くの民宿のテラスで!!@▽@

I truly love their service here because it is THE opposite of mass tourism. It’s a small, family-run inn (four generations living together and the granny is 100 years old!) that provides homely service. 私ホントにここのサービスは大好きです。マスツーリズムの正に対極のような、細やかな気どらない気配りに溢れてて。4世代で一緒に住む家族(大正生まれのおばあちゃんは今年100歳!)の、家庭的な暖かい心づくしに、いつも感じ入ります。

The ingredients of this authentic breakfast were mostly from their veggie garden and even the anchovy used for the salad was homemade. This handwritten menu tells you all about it. ”Croque-monsieur with homemade sauce béchamel and 2 kinds of cheese” “Nicoise-style salad with local vegetables and homemade anchovy” “Organic (pesticide-free) corn” “Gazpacho with tomatoes grown with deep seawater” “Unbaked cheesecake with homemade strawberry sauce” “Home-roasted coffee (well-known authentic brand) ” 手書きのメニュー。手をかけ気持ちを込めてることが、食べ物を通して伝わってきて、それを受け取るというコミュニケーションが、本当に嬉しい。 日々「しなければならないこと」をこなす上で、忘れたり見えなくなってるものが、ここにはいつもある気がします。

I sat with a girl from outside of Muroto who came to join this workshop to be healed and recharged. She made me re-realize how abundant the resources here are to heal people. 私は室戸外からはるばる来てくれた若い女性といっしょにテーブルについたんですが。いろいろ話してると、彼女もいろんなストレスをかかえて、癒しを求めて来てました。(これ以外にも、何度か室戸に来てくれてる人でした。)話してると、この地が、人を癒せるものをたくさん持ってる場所だと再認識します。 Yeah, this place has a lot to offer. And constant efforts are going on to vitalize this depopulating countryside with its strengths and weaknesses. そう。本当にここには、たくさんのものがある。 そして、田舎ならではの強みも弱みもあるこの過疎地域で、そこを元気にしようとする頑張りは絶えず続いているんです。
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賽は投げられた
ヒュー、ヒュイー。
口笛を吹くような音を立てながら入ってくる隙間風。寒くて布団の中に入り包まる。もう一眠りしようかと思ったが、なかなか寝付けず目の前にある温もりに顔をくっつける。するとそれに気づいた彼が、そっと腕で私の体を寄せた。
トモエの家に泊まったあの日から何日が経っただろうか。随分と冷え込むようになり、色付いた葉は地面を赤色や黄色に飾った。
―—時は既に、秋が終わる頃だ。
いつも通りの朝だった。起きた後、私たちは普通に朝食を摂り、今日は寒いからとサクの所の近侍さんから頂いた茶葉で茶を淹れ、二人で他愛のないことをぼそぼそと話していた。そろそろ薩摩芋が美味しくなるだろうな、いつ食べようか、とか、そういう取り留めのない話だ。
暫く話していると、ヒナギは朝食の片づけをする、と土間の方へ行った。因みに私は以前土間で手伝いをしようとしたが、危なっかしくて見ていられないという理由で部屋に返されたことがある。遺憾の意。
暫く土間の方で洗い物をするヒナギを見ながら、足をパタパタと揺らした。この足も随分と良くなった。最近は杖なしでも歩けるほどだ。
つまり決断の時期はもうすぐそこまで来ているという事で。
随分と悩んだが、私は出来うることならヒナギの側にいたい。隣で、今までの恩を返していきたい。そして記憶も戻れば万々歳だ。
……正直、記憶に関しては諦めかけている。でも、こうして彼と、そして里の友人たちと他愛もない話をしたりしてのんびり過ごせるのなら、記憶なんぞ戻らなくてもいいのではないかと考えてしまう自分がいる。
実際私は今、幸せを感じているのだから。
かさかさと枯葉を踏みこちらへとやってくる人の音が聞こえた。軽いがしっかりとした歩み。それがツグモネのもの��あると分かった私は、部屋を出て玄関の戸を開ける。すると彼女は戸を叩こうとしたのか腕を若干あげ、こちらを少し驚いた様子で見ていた。
ヒナギも丁度洗い物が終わったらしく、私の方へ近寄り、誰が来たんだと、戸の方を向く。
「ツグモネじゃないか。突っ立ったままで何をしているんだ」
「……いえ、戸も叩いてないというのにヤスヒコくんが戸を開けたものですから」
では、お邪魔しますよ、と再びにこりとした笑みを浮かべて家に足を踏み入れた。
「ヤスヒコくん、元気でしたか?あの日以来ですねぇ」
そろりと頷けば、足の方をちらと見て、またその笑みを深くする。久しぶりのツグモネの笑みは中々なんというか、やはり胡散臭い。
「随分と久しぶりじゃないか、何をしていたんだ」
「なに、少し野暮用でここを離れていたのですよ。それに、ヤスヒコくんの傷はすでにあの時にはふさがっていましたしねぇ、残すは歩く訓練だけでしたので」
「それにしちゃあ挨拶もなしに」
「おやまぁ、私が挨拶もなしに消えることなんぞ一度や二度じゃないでしょうに」
それもそうか、とヒナギは軽くため息を吐き、ツグモネと私を部屋に上がらせた。
慣れたように座布団を引き寄せそこに座り、重たげな大きな薬箱をいそいそと降ろした彼女は、部屋の入り口で突っ立っている私を手招きし、自分の前に座るように言った。
もしかしたらこれが最後の診察になるかもしれない。緊張してヒナギの着物の裾を握ったが、ヒナギはその裾をゆるりと解いて私の背を押した。
不安になって顔を見上げたが、ヒナギはいたっていつも通り、凪いだ表情をしていた。
「ヤスヒコくん、おいでなさいな」
痺れを切らしたように私を呼んだツグモネに、私は渋々と歩み寄り、目の前に座った。
ツグモネは以前のように私の足を触ったり、少し押してみたりして診察をしている。ひとしきり触って、私に部屋の中を歩いてみてください、だとか、その場で跳ねてみてください、だとか言い、その通りに私が難なく動くのを確認すると、大きく一つ頷き、弓なりに瞳を細めて笑った。
「もう問題なさそうですねぇ、言う事なしの完治ですよぉ」
「そうか。よかったな、ヤスヒコ」
ふっと安心したように笑うヒナギに、私はそのまま勢いよく抱き着いた。そんな私をぎゅっと抱きしめた彼。しかし、その体はいつもより堅く、ぎこちないような気がした。
「それでは、約束通りですよ、ヒナギさん」
「……あぁ」
そういうと、ヒナギは私をそっと自分の体から引きはがして、ツグモネの方へ背を押した。
なぜ、と思い彼の方を振り向く。やはりいつも通りの凪いだ表情だ。でも、いつもより表情が読めない。
「どういう、こと」
「ヒナギさんとお話してですねぇ、怪我が治り次第私がヤスヒコくんを安全に過ごせる場所へと案内するという事にしたのですよ」
「そ、んな、知らない���
「すまないな、ヤスヒコ。でも決まったことなんだ」
「大丈夫ですよヤスヒコくん、私がちゃぁんと手配しましたし、実際に行ってみて安全性は確かめてますので」
「そういうことじゃない!」
私はいつもよりも大きな声でそう反論すれば、驚いたようにその見開いた眼で二人は私を見た。
「わたしは、わたしはヒナギといっしょにいたい! どうして、どうしてわたしには何も言わずにそんなこと……!」
私が堪え切れずそう口に出すと、ヒナギはさらに大きく目を見開き、そして俯き、私に背を向けた。
「ヤスヒコ、ここは危険だ。サクの所でこの山の事は少し調べたろう。神、あるいは主という管理者がいない霊峰とその周りは何が起こるか分からない。里を見てきたお前さんならわかるだろう。ここに未来はない」
「だけど、ここにはトモエやロクだっている!それにあたらしい友達だって……!」
「遠い地で生きたほうがいい。ここにいた事は忘れなさい。あの子たちには私が上手く言っておく」
「でも!」
「ヤスヒコ!!」
彼の怒声で、部屋がビリビリと唸った。初めて聞くヒナギの怒鳴り声に私は体をこわばらせ、未だ背を向ける彼を見た。
「怪我が治るまで、だったはずだ、お前さんを見るのは。その傷が治った以上、私がお前さんの面倒を見てやる義理はない」
言葉を失い、私はその場に立ち尽くした。完全なる拒絶だった。ヒナギはこちらに目も向けず、ずっと背を向けたままだ。
何も考えられない。心に穴が開いた気分だった。ただただ、彼を呆然と眺めることしかできなかった。
気づいたら、ツグモネが私の手を引いて、外に出ていた。
ヒナギの背中が目にこびりついて、離れなかった。
ツグモネに手を引かれ、山道を歩く。足元を見ながら俯いて歩いていると、彼女がふと、休憩を挟もうと提案してきた。力なく頷き、くたりと地面に座った。ふと空を見上げたが、どんよりとした曇り空で何とも気が滅入る。そんな中でも精霊たちはふわふわと光りながら空中を漂っていて、私はぼうっとその光を眺めた。
――面倒を見てやる義理はない、か。確かに彼の言う通りかもしれない。取り合えず怪我が治るまで、という話だったのだ。知らない間にもしかしたら私が彼に迷惑をかけてしまったのかもしれない。
でもそれにしては急じゃないか。今日の朝までは普通だったのだ。今まで通りの、変わらない日常だったのだ。
何かが、引っかかる気がしてならない。
「ヤスヒコくん、そろそろ行きましょうか。山を越えたらすぐですよ」
そう言ってツグモネは私の手をひっぱる。拍子に歩みを進める。どこか有無を言わせないような、そんな態度だ。
暫く彼女に手を牽かれ歩きながら思考を巡らせる。あの日、彼に拾われた日から何が変わったか、気になることはなかったか。
まず、身体的な事。怪我はほぼ既に完治している。傷は残ってしまったが、問題なく歩けるし、なんなら走ることもできるようになった。そして、怪我が治るにつれて、目も、耳も、鼻もよくなった気がする。見えなかった精霊やお隣さんが見えるようになった上、足音で誰か分かるようになったし、微かな匂いも嗅ぎ分けられるようになった。元々鋭くて、怪我をした拍子に鈍くなり、それが治ったのか、それとも怪我やツグモネの言った通り、山神の影響でそうなったのかは定かではないが。
そして、肝心な記憶と、そして自分と山神の関係について。これにしてはもうさっぱりだ。そもそもの話私はこの短期間で文字を読み書けるようにはなったが所詮習いたてでサクが読むような書物は読めるはずもない。分かったのはここの山神のほんの少しの情報と、そしてヤスヨリから聞かされた悲惨な日の話だけ。情報だよりに思い出そうとしても、私がヒナギに拾われたその前の記憶は延々と走っていることしか思い出せず、他はやはり分からない。
……そう、読めるはずがない。皆知っていたはずだ。私は文字が読めない。読めたとしてもとても遅い。ではなぜあの日を経験したヒナギもトモエもサクもロクも私に口頭で何も言わなかったのだろうか。ヒナギに聞けばはぐらかされ、トモエに聞けばそのころの書物を持ってくるだけ、ロクはすさまじい日だったとしか言わないし、サクはにやにやと笑うだけだ。ツグモネだってそうだ。私と初めて会ったあの日、私と山神の関係性を示唆した以降は何一つ教えてくれやしない。彼女は何かを知っているはずなのに。今まで口であの日の事を詳しく教えてくれたのはヤスヨリたった一人だ。
そして今日の突然の拒絶。ヒナギの性格ならあんな強い拒絶はしないはずだ。あの人は、酷く優しい人だから。
よもや、皆は何かを私に隠しているのではないか。それも、私の記憶に関する何か良くないことを。
そこまで考えた私は歩みを止め、掴まれた手首を思い切り下に振り下げた。
あまり強い力で握られていなかったそれは簡単に外れ、そして前を歩く彼女がこちらに振り替える。
「ヤスヒコくん?どうしたのです。手をつながないと迷子になりますよ」
「ツグモネ、話をしよう」
「なんの話です?話すことなどないでしょう」
「ツグモネは、いや、あなたたちはわたしに何をかくしているの」
瞬間、彼女から漂う空気が変わった。
大きく目を見開きこちらを見る彼女。灰色に濁った空色の瞳を再び弓なりに細めれば私の手を掴もうと寄ってくる。
後ろに一歩進めば、彼女も前へ一歩近づく。繰り返せばついには木に道を塞がれ、逃げられなくなった。
彼女はいつのまにか笑みを浮かべることを止めていた。こちらをじっと見つめている。
「何故逃げるのです。ヤスヒコくんは今から安全な地へ向かうというのに、なぜそんなにも躊躇いがあるのです」
「質問に答えてない」
「その質問に答える意味などありません。あなたはこの地を去るのだから」
「わたしがこの土地にいることで何か良くないことでもあるの。ヒナギもツグモネもヒスイのとこもロクも、ツグモネだってそうだ。わたしのきおくをさがすふりはするけど、明白なじょうほうは絶対にわたしてくれない。まるで、わたしがきおくを思い出すことは、この土地にずっといすわることはきんきなんだと���わんばかりに。 わたしに、なにを、かくしてるの」
彼女はついに、目に見えてわかるように顔をゆがめた。そして吐き捨てるようにして言い放った。
「そうよ、私たちはあなたに隠し事をしている。私たちは、特にヒナギはあなたがどうして記憶を失ったのか、どうしてこんな現状に陥ったのか全てを知っている」
「じゃあどうしてそれをッ」
「言わなかったかって? 言ったでしょ、知る必要がないからよ!」
彼女の顔が次第に険しくなる。いつものあの優しい声色はいずこへ、厳しく、そして今までの鬱憤を吐き出すかのように声を荒げ、鋭い犬歯をむき出しにし、こちらを睨みつける瞳は次第に人外のような、縦に割れた瞳孔へと変わっていく。
「そもそもの話私は彼が貴方を自分の元に暫く置くという事自体賛成しなかったわ。 あの時あなたをあちらへ送ってしまえばよかったのに、怪我が治るまでは面倒を見たいだなんて我儘を言って事態をややこしくしたのよあの愚か者は!」
「ヒナギのことをわるく言うな!」
「悪く? 悪くですって?! 私は事実を言ったまでよ。 そうすれば貴方は記憶に悩まされなくて済むし、ここまで人外化することもなかった! ヒナギはあなたの代理として山に還る筈だったのに、これじゃあ元の子もないわ!」
「どう、いうこと」
私の代理? ヒナギが?
私がしどろもどろとしていると、彼女は私に大きく詰め寄り、獣化した手で私を大木に押し付けた。胸を押され軽くせき込む。目の前を見ると、恐ろしい形相をしたツグモネが私を射抜いていた。
「そんなに知りたければ教えてあげるわよ。あなたは山主様に育てられた人間、そして奇しくも主の適正があり、山に生を捧げなばならない者。それを哀れんだあなたの本当の父であるヒナギが身代わりとして、主の力を請け負ったのよ」
「彼はこの山を立て直したら命をもって力を返上して新しい主様を迎えるはずだったのに、久しぶりに見る自分の子に目が眩んで匿うだなんて! 元々神域で暮らしていたせいで妖に近いあなたがあの均衡が崩れた霊峰にいては、いくらあの方の力をもってして記憶を封じて人間にいくら近づけさせたとしてもあちらに引っ張られて人外化するだけなのに! 人間として生きて欲しいあの方の願いはあの愚か者によって壊されたんだ!」
あまりの情報量の多さにだんだんとツグモネの声が遠くなる。
私が山主に育てられた人間で、でも妖に近い存在になってて、ヒナギは私の本当の父親で、そして私がしなければいけないことをヒナギがしていて、そしてヒナギは、ヒナギは、
ヒナギは死ななければならない?
「――はなせ!!」
私は思い切り彼女の腕をひっかいた。すると、反抗するとは思っていなかったのか力が少し緩んだ。その隙にすり抜けようとしたが、今度は頭と背中を地面に押し付けられた。肺の空気がすべて出されて苦しいし、地面に強打した頬が擦れて痛い。
「こうなったら無理矢理にでも……!!」
唸るように言ったツグモネの手がだんだんと重く、大きくなるのを感じた。恐らく変化が始まったのだろう。彼女は本気だ。変化が終わったら私を咥えるなりなんなりして連れ去るだろう。そうなってはもう遅い。
圧迫されて膨らみ切れない肺に精一杯空気を入れ、思い切り叫んだ。
「おとなりさん!!」
そして、暗転。
目を開けると、霧がかったあの場所にいた。以前より精霊が増えただろうか、地面には天の川が流れているような光が溢れ、まるで星空の中にいるような気分になる。
「危ない危ない、もう少し離れてたら連れてこれなかったよ」
耳元で突然幼い子供の声が聞こえた。振り向くと、にこにこと人のよさそうな笑みを浮かべてこちらを見るお隣さんの姿があった。
思わず彼女に抱き着く。彼女はそんな私をぎゅっと抱き留めると、優しく髪を撫でた。そしてゆっくりと体を離して私の頬をその小さい手で包んだ。
「可哀そうに、私たちの山の子がこんなにも傷ついて……」
「おとなりさん、ヒナギが、ヒナギが死んじゃう!」
「あの人の元に行きたいんだね、そうだねぇ、どうしようかなぁ……」
彼女はそう言うと私の顔をじっと覗き込んだ。真っ赤な夕焼けの様な瞳が私を射抜く。その妖しさに目を奪われるも、ぐっと目を瞑り、そしてまた見つめ返すと、彼女は本当に嬉しそうに笑った。
「やっぱり私たちの山の子は本当に可愛い! このまま連れて行ってしまいたいくらい! でも今そんなことしたらあなたは怒っちゃうものね、そうだよねそうだよね!」
私から離れてくるくると空中を踊るように回ると、再び近づいて私の手を取った。
「本当ならすぐ対価を貰うんだけど、今回は特別! 近道を教えてあげる!」
「ほんとうに……?!」
「うんうん勿論! ほら、こっちだよ!」
そうして私の手を牽く彼女を追いかけた。
星降る夜を駆けて行く。光の中を掻き分けていく。無我夢中だった。少しでも早くヒナギの元に辿り着きたい一心だった。
やがて辿り着いたのは樹齢何百年とありそうな大きな杉の木の元。太い根を張り、何千もの枝と葉を天へ伸ばしているそれは、雄々しく強かで、生命感溢れる姿のように見えた。
圧倒される私の隣に立ち、彼女は木の幹をそっと撫でた。
「この木はね、私たちの木。私たちを生んだ木。この山の源。あの人は今ここの近くにいるよ」
「どうやってそこに行けば」
「こっちにおいで、幹に触れればいい。その時にあなたの会いたい人の事を思い浮かべるの」
そう言われ、恐る恐る近づき、大木の幹に触れる。固い幹の奥から、トクトクと、まるで心臓が脈打つかのような感覚がして目を見開いた。
そのままもたれ掛かるように全身を幹に寄せ、耳をぐっと押し付けて、そっと目を閉じる。その静かな鼓動を耳で、肌で、全身で感じる。大きく息を吐き、そしてヒナギの事を頭に思い浮かべた。
――お願いします、あの人の元へ私を届けてください。
酷い立ちくらみがして、ズルズルとそのまま地面に座り込んだ。感覚が遠くなり、寸秒で徐々に戻ってきたかと思えば、あの���い静かな鼓動の音色は既に無く、変わりに小鳥の囀りが、枯葉の掠れる音が、澄んだ水の匂いが、そしてかぎ慣れない――血の臭いした。
はっと目を開ける。そこは随分前ツグモネと一緒にヒナギを見つけたあの泉に浮かぶ孤島だった。後ろには杉の大木。ここに繋がっていたのか。
ふらっとする体を木を支えにして無理矢理立たせた。血の臭いが濃い。彼の匂いもする。
ドクドクと自分の心の臓が耳に残るほど大きく脈打っていて苦しい。臭いを辿り、孤島の裏側へまわる。
でもそれを見た瞬間、何も聞こえなくなった。
風で揺れる緋い髪。静かに閉じられた瞳。乾いた唇。土色になった肌。そして大きく裂かれた腹から溢れ出る、泉の水さえも染め上げんばかりの大量の赤と、彼を飲み込まんとする程に群がる蔓植物。
殆ど飛び込むかのようにしてヒナギの元へ勢いよく駆け出した。血で汚れるのもお構い無しに彼に抱きつき、頬を触った。酷く冷たい。朝はあんなに暖かかったのに!
顔を近づけると微かに息をする音が聞こえた。
「ヒナギ……!! ヒナギ、ヒナギヒナギ!!」
何度も呼びかける。肩を揺らし、必死に彼の名を呼ぶ。もしかしたらまだ助かるんじゃないか。淡い期待と共に続ければ、ふるりと彼の睫毛が揺れ、瞼がそっと開いた。
しかしその奥にあるのは琥珀色の瞳。
思わず息を飲んだ。あの時の瞳だ。光を孕んだ目だ。
虚ろな彼の瞳と私の瞳がゆっくりと交わり、乾いた唇が微かに開いた。殆ど囁くような弱々しい声が私の鼓膜を震わせる。
「迎えに来て、くれたのか……キョウカ」
「……ひな、ぎ?」
「あの子は随分と大きくなっていた……お前にそっくりだよ」
「ヒナギ、わたしキョウカじゃないよ」
「あぁ、でも目の色は私そっくりだったな……緋い、紅玉のような……」
「ヒナギ、ヒナギ、わたしだよ、ヤスヒコだよ、ねぇ」
「あの時、あの子のすがたを見て、よくが出たんだ……そばでみていたかった……ずっと、ずっと……いつまでも……」
瞳が濁る。光が消える。鼓動が弱くなる。呼吸が小さくなる。瞼が閉じていく。あぁ、だめだ、まだ、まだ、もう少しだけ!
「あのこを、ただ、みていたかった」
蝋燭の炎が消えるようだった。
彼はもう私を呼んでくれない。その大きな体で抱きしめてくないし、大きな手で撫でてくれない。
もう、私を見てくれない。
酷い人だ。聞きたいことが沢山あるのに、勝手に1人で逝ってしまった。なんて身勝手で、不器用で、酷い親だ。
目の前が涙で霞む。、込み上げる感情、酷く痛む目の奥と軋む心。もう、止まれない。
彼の亡骸を抱いて号哭する。荒い獣のような泣き声は、私の声じゃないようで。でもどうすることも出来ない。
全てが遅かったのだ。 ← →
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続・ひろみと遊ぼうぜ!の巻。

人妻と滑ろう会、二日目。ディープなヤツ召し上がってまいりましたわよ。

本日は満員御礼。ひろみさんの人気が伺い知れます。そして我々が選んだルートも満員御礼。少ない駐車スペースもいっぱいになっていました。
最近このルートでの駐車スペースのマナーの悪さが目立つらしく、最終民家の方が迷惑してるらしいです。皆さん、なるべく乗り合って車を減らすのはもちろんのこと、節度ある行動をお願い致します。

ほんじゃあ行ってみるめいかー!

大賑わいだけありトレースはバッチリ。恐らく昨日の青崖のシバちゃんのトレースがオリジナルと思われ大変快適なトレースでした。有難や〜。

大人数でワイワイガヤガヤ。ピーチクパーチク。ニッシーコラボの時の毎度おなじみの止まらないトーク。まるで大阪のおばちゃん。小鳥のさえずり。

人一倍、高気圧ガールな彼女。真冬の寒さの中、滴るほどの汗をかき遂には髪の毛が霧氷に。女豹ならぬ霧氷ポーズをとってもらいました。

最後の最後の急斜面で苦戦。あともーちょい!頑張って!

人妻の個人レッスンを受ける、スプリット初心者の若手。

遂に登頂!!
せっかくみんなスプリットなんだから、なんかスプリットらしいポーズしてください!

はいチーズ!!
あれ?まあいいか。

頂上に着くと同時にさっきまでのガスが消え、麓が見えるようになりました。誰ですか行いがいいのは。

ひろみさんのお客さんだけありKANG POLES を愛用してる方もちらっといらっしゃり、この豊富なカラーバリエーションを使った新たな組み合わせを考案してみました。いかがかしら?

さっきまで曇っていて、更に低温だったため全方位��好な雪質のミラクルコンディション!
しかし、ラッセルを全然していなかったのでドン深だって事を忘れちゃいけないぜ奥様。最初はなせ(緩斜面)な斜面に入ろうとしたけど、思い直してきょんたて(急斜面)をチョイス!

頂上直下にストームスラブの雪崩を発見。恐らくSa。サイズこそ1くらいだけど今回の降雪分50cmくらい全部落ちてました。巻き込まれて木にでもぶつかったら簡単に逝けそうです。

スキーカットして反応はなかったのでひろみさんがドロップ!!

まあいわゆるひとつのバフバフってやつです!

自撮りでもバフバフ感のある映像が撮れたのではないでしょうか。

登りで苦労していたスプリット初心者の彼の頑張りが報われた瞬間です。

きょんたてを選んで正解でした。

ドン深×きょんたて=昇天。

でもちょいと板の操作を誤ると余裕でスタックできる深さです。
斜度が緩んでからはパーティーラン!!
ハッピーターンでした!!

気持ちいいぞーーーー!!

まあまあいい時間になっていたので、このまま帰っても良かったのですが『私をほうてい連れてってYo!』って言う人多数だったのでおかわりする事に。

ひろみ氏の差し入れのいちご食って頑張るかー!

西日が入ってきていい感じ。

おお、西日が気持ちいからまどろんじゃったよ。ほんじゃ行きますか。
短いながらも気持ちのいい一本でした!!

なかなかいい時間まで楽しんじゃいましたね!!バフバフ気持ちよかった〜!!山遊びボンボリーコラボツアー、二日間とも大成功!!
みなさま、お疲れ山でした!!&おしょっ様でした!!
俺っち、明日からしばらく東北の旅に行ってまいりますー!!

P.S.ツアー終了後にゲットしたわたほてステッカーを早速車に貼るゲスト。
だ、だせ〜😂
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#15 1/15 【発表会!】

(SAのもっちー先輩が撮ってくれました。こんなかっこつけて構えてますけど私は一発も撃たない笑笑 目がめっちゃ笑ってます。めちゃくちゃこの1日を楽しみました!!!!)
【やったこと】
発表会の会場設営など準備
発表会での親子への応対!!!!
会場や廃棄物の片付け
今日はいよいよ発表会!!
ワースペから重い重いと言いながら荷物を運ぶ……
机もめちゃくちゃ重かったが、設営完了!

科学館の方々から設備をお借りすることができ、すぐ近くに水源確保!これは嬉しい!

整えたくなる私。一式をこんな感じでキッチリ並べてみた。
なんか整ってると「ああここ客として座っていいんだな」っていうアフォーダンスみたいなの生まれません?
今日の天気は曇りのち霧雨!屋外勢にとってはなかなかに条件が悪い!
ウチのおもちゃも、途中で使うキッチンペーパーが一部濡れてしまったり、机とイスを拭く布巾が常にビタビタだったり、ちょっと大変だった!特に、常に使用後の『からつるりん』と水槽を洗って拭いて置いといてくれた他メンバーは大変だったろう。
私はというと、そういう掃除作業を他のメンバーに任せっきりになってしまって、自分は5時間子どもたちの対応だけやって楽しんでいたのだ!!
他メンバーは、子どもたちの対応のほうが大変だから助かったと言ってくれたが、正直一番楽しくておいしいところをかっさらちゃったな感もある。しかし「一番楽しくておいしいところ」と言えるほど、子どもたちの対応は本当に楽しかった!!

(SAさんのお写真お借りしました。個人が特定できないレベルにしたほうがいいのかな〜と気になっちゃって後ろ姿だけどぼかしかけてみたら……せっかくの躍動感あるエエ感じの写真がちょっとおかしくなっちゃったかな…とも思いつつ)
ひとりひとり反応が違いすぎて興味深いし、あんまり言葉を発しない子も、表情や遊び方で楽しんでいることがわかった…うれぴい。
学びや意外な気付きは後半で詳細に述べるが、本当に学びの豊富な1日だったと思う。

(かなり楽しくて、少し親子の来訪が落ち着いた時に調子ぶっこいてもっちー先輩に撮ってもらったキメ顔の私。この1日をすげえ楽しんでいる。)
ちなみに1月にしてはかなり薄着かもしれないが、子どもたちの対応をずっとやってて体動かしてたのと、この水色のモンベル上着が優秀だったので全然平気だった。とにかく楽しかった。

(大粒ラメやラメ油を使ってもらう場面では、どっちの色が好き?どの色が好き?と聞いて、子どもたちがさらにノリ気になることを促してみた)
【子どもたちの反応で意外だったこと、学び】
1. 意外だったこと「コンテクストの少なさ」
あんまり本筋の学びと関係なさそうだが、子どもたちの反応でとても意外だったことがある。
それは、私が勘違いして「あれっさっきも来てくれた?」と話しかけた時、子ども側が、すぐ会話の内容を純粋にそのまま理解して「ううん、初めて来たよ!」と即答したことである。
というのも、普通初めて来る側からしたら、さっきも来た?なんて問いは想定外であり、一瞬でも何言ってんのこの人みたいな怪訝な表情になりそうなものだと思ったのだ。しかし子どもたちは、そういった反応はなく、ノータイムで初めて来た!と問いの答えをそのまま言った。
これは、「その子がめちゃくちゃ頭の回転が早い」か、「まだ子どもだから普通こんな質問はされないだろう、という『想定しない領域のコンテクスト(情況)の知識』がなく、その時その時の会話の内容を純粋に解釈し、質問に答えた」かの2択だと思っていて、さらに言えば私は後者じゃないかなと思っている。
大人みたいな「頭が凝り固まった状態」だとか「自分が絶対常識人だと思ってる状態」とかじゃないんだろうな〜と勝手に考察してみた。そして会話をその場その場で純粋に解釈できる子どもたちっていいなあと思うなどした。いや、情況や知識の蓄積があるからこそ当人たちにとっては会話がしやすく、生きやすくなっていくところもあるのだが、私からするとこの会話が新鮮で楽しかったのだ。若い人と話したがる年配の方の心情ってこういう感じなのか?
2. 学び「どんな?(How)に答えられるのは、ある程度成長してから」
我々のブースでは、
まず「カタツムリってどんな生き物だと思う?」という問いで自由な意見を引き出し、
次に本題に近づけるために「カタツムリって綺麗な生き物?それとも汚い生き物?」という問いを投げかけていた。
学童の時よりも年齢層が下の傾向があるためか、1つ目の問いがまだ難しい子も意外とけっこういたのだ!
どっち?なら答えられるけど、どんな?はまだ難しい子もいるんだなあと、実際のコミュニケーションを通して理解した!
3. 学び「最後の説明、図解したパネルで見せられればよかったなあ」
遊び切ってまったく説明聞いてない…いやそうだろうなとは思うが、我々は授業として「”カガク”おもちゃ」を作っているので、カガク的であることを伝えなくてはならない。
一番いいのは、遊んでいる途中に体感的に理解できること!
しかしそうできなかった・仕組みが複雑で言葉の説明が必要だったならば、そしてさらに、子どもたちがまったく話聞かねえだろなというのが想定できていたのであれば、「カタツムリのカラの表面の図解パネルみたいなのを作って、少しでも言語的な説明から離れ、視覚的に理解できるようにする」って工夫ができたんでないかな…親御さんもその方がわかりやすかったろうな……
ここは私あ〜〜〜………って思った。もっと徹底していればよかった。

(楽しんでいる私。SAさん撮影)
【その他学んだこと】
1. ちょっと「正解か不正解か」な考えに寄せすぎたか?
我々のブースでは、「カタツムリは実は綺麗な生き物で」あるいは「カタツムリのカラは汚れをスルンと落とすことができて」と、カタツムリに関する「正解」が存在していて、その根拠を遊びの中で明らかにする構成になっていた。
ちょっと試行錯誤的要素や、正解も不正解もない要素から外れてしまってたかも…?と思った。第3回のワークショップが思い出される……
しかし、子どもたちの「もっと試行錯誤してみたい!」というエネルギーに助けられた場面があった。それは、射的後の油汚れを浮かす段階で、「もう一回浮かべてみたい」と、何回もラメ油のたらし方を変えて遊んでくれた子どもが何人もいた。いや〜〜〜ありがたい。
私たちも、積極的に「もう一回浮かべてみる?」「こんどは(ラメ油)の色変えてみる?」と聞いて乗り切った。
私たちが「完全なる与える側」になるのではなく、積極的な子どもたちと相互にこのブースを作り上げられた感があって、授業的にはいいのかわからないが、私としてはめちゃくちゃ楽しかった。
2. 他メンバーの対応参考になるぜ!
他メンバーは、子どもたちに「お名前なんていうの?」と聞いて、親しみを持って対応していた。めっちゃいいと思ったのでそれいいね!つったのちパクった。
自分視点だけだと、特に私は真面目というのもあって、目的に沿ったことだけをやろうとしてしまって面白みが欠けてしまいがちだ。他者のやり方は非常に参考になった。

(SAさん撮影…のをトリミングさせていただいた。子どもたち、かなり射的がうまい。)
【まとめると】
反省点も、意外な気付きも、有意義な学びもどっさりと手に入った1日だった。すごいなコンテンツデザイン。3年生でもこっちに来てみてよかったぜ。
さて、まだ明日の授業があるし、残りの課題もあるだろうから、もうひとふんばり。
ポスターのイーゼルが疲れた腕に重い帰り道であった。
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ひとみに映る影シーズン2 第六話「どこまでも白い海で」
☆プロトタイプ版☆ こちらは無料公開のプロトタイプ版となります。 最低限の確認作業しかしていないため、 誤字脱字誤植誤用等々あしからずご了承下さい。 尚、正式書籍版はシーズン2終了時にリリース予定です。
(シーズン2あらすじ) 私はファッションモデルの紅一美。 旅番組ロケで訪れた島は怪物だらけ!? 霊能者達の除霊コンペとバッティングしちゃった! 実は私も霊感あるけど、知られたくないなあ…… なんて言っている場合じゃない。 諸悪の根源は恩師の仇、金剛有明団だったんだ! 憤怒の化身ワヤン不動が、今度はリゾートで炸裂する!!
pixiv版 (※内容は一緒です。) ☆キャラソン企画第六弾 金城玲蘭「ニライカナイ」はこちら!☆
དང་པོ་
アブが、飛んでいる。天井のペンダントライトに誘われたアブが、蛍光灯を囲う四角い木枠に囚われ足掻くように飛んでいる。一度電気を消してあげれば、外光に気がついて窓へ逃げていくだろう。そう思ったのに、動こうとすると手足が上がらない。なら蛍光灯を影で覆えば、と思うと、念力も込もらない。 「一美ちゃん」 呼ばれた方向を見ると、私の手を握って座っている佳奈さん。私はホテルの宴会場まで運ばれて、布団で眠っていたようだ。 「起きた?」 障子を隔てた男性側から万狸ちゃんの声。 「うん、起きたよ」 「佳奈ちゃん、一美ちゃん、ごめん。パパがまだ目を覚まさなくて……また後でね」 「うん」 佳奈さんは万狸ちゃんとしっかり会話出来ている。愛輪珠に霊感を植え付けられたためだ。 「……タナカDはまだ帰って来ないから、私が一美ちゃんのご両親に電話した。私達が千里が島に連れてきたせいでこんな事になったのに、全然怒られなかった。それどころか、『いつか娘が戦わなければいけない時が来るのは覚悟していた。それより貴女やカメラマンさんは無事なのか』だって……」 ああ。その冷静な受け答えは、きっとお母さんだ。お父さんやお爺ちゃんお婆ちゃんだったらきっと、『今すぐ千里が島に行って俺が敵を返り討ちにしてやる』とかなんとか言うに決まってるもん。 「お母さんから全部聞いたよ。一美ちゃんは赤ちゃんの時、金剛有明団っていう悪霊の集団に呪いをかけられた。呪われた子は死んじゃうか、乗り越えられれば強い霊能者に成長する。でも生き残っても、いつか死んだら金剛にさらわれて、結局悪い奴に霊力を利用されちゃう」 佳奈さんは正座していた足を崩した。 「だけど一美ちゃんに呪いをかけた奴の仲間に、金剛が悪い集団だって知らなくて騙されてたお坊さんがいた。その人は一美ちゃんの呪いを解くために、身代わりになって自殺した。その後も仏様になって、一美ちゃんや金城さんに修行をつけてあげた」 和尚様……。 「一美ちゃんはそうして特訓した力で、今まで金剛や悪霊と戦い続けてた。私達と普通にロケしてた時も、この千里が島でもずっと。霊感がない私やタナカDには何も言わないで……たった一人で……」 佳奈さんは私から手を離し、膝の上でぎゅっと握った。 「ねえ。そんなに私達って信用できない? そり���さ。私達は所詮、友達じゃないただの同僚かもしれないよ。けど、それでも仲間じゃん。幽霊見えないし、いっぱい迷惑かけてたのかもしれないけど」 ……そんな風に思った事はない、と答えたいのに、体が動かなくて声も出せない。 「いいよ。それは本当の事だし。てかだぶか、迷惑しかかけてこなかったよね。いつもドッキリで騙して、企画も行先も告げずに連れ回して」 そこは否定しません。 「だって、また一美ちゃんと旅に出たいんだもん。行った事のない場所に三人で殴り込んで、無茶して、笑い合って、喧嘩して、それでも懲りずにまた旅に出るの。もう何度も勝手に電源が落ちるボロボロのワイヤレス付けて、そのへんの電器屋さんで買えそうなカメラ回してね。そうやって互いが互いにいっぱい迷惑かけながら、旅をしたいんだよ」 …… 「なのに……どうして一人で抱えこむの? 一美ちゃんだって私達に迷惑かければいいじゃん! そうすれば面白半分でこんな所には来なかったし、誰も傷つかずに済んだのに!」 「っ……」 どの口が言うんですか。私が危ないって言ったって、あなた達だぶか面白半分で首を突っ込もうとする癖に。 「私達だって本当にヤバい事とネタの分別ぐらいつくもん! それとも何? 『カラキシ』なんて足手まといでしかないからってワケ!?」 「っ……うっ……」 そんな事思ってないってば!! ああ、反論したいのに口が動かない! 「それともいざという時は一人でどうにかできると思ってたワケ? それで結局あの変態煙野郎に惨敗して、そんなボロボロになったんだ。この……ダメ人間!」 「くっ……ぅぅうううう……」 うるさい、うるさい! ダメ人間はどっちだ! 逃げろって言ったのにどうして戻ってきたんだ! そのせいで佳奈さんが……それに…… 「何その目!? 仲間が悪霊と取り残されてて、そこがもう遠目でわかるぐらいドッカンドッカンしてたら心配して当然でしょ!? あーそうですよ。私があの時余計な事しなければ、ラスタな狸さんが殺されて狸おじさんが危篤になる事もなかったよ! 何もかも私のせいですよーっ!!」 「ううう、あああああ! わああぁぁ!」 だからそんな事思ってないってば!! ていうか、中途半端に私の気持ち読み取らないでよ! 私の苦労なんて何も知らなかったクセに!! 「そーだよ! 私何もわかってなかったもん! 一美ちゃんがひた隠しにするから当たり前でしょぉ!?」 「うわあああぁぁぁ!! うっぢゃぁしいいいぃぃ、ごの極悪ロリーダァァァ!!」 「なん……なんだどおぉ、グスッ……この小心者のっ……ダメ人間!」 「ダメ人間!」 「ダメ人間!!」 「「ダメ人間ーーーっ!!!」」 いつの間にか手足も口も動くようになっていた。私と佳奈さんは互いの胸ぐらを掴み合い、今まで番組でもした事がない程本気で罵り合う。佳奈さんは涙で曇った伊達眼鏡を投げ捨て、私の腰を持ち上げて無理やり立たせた。 「わああぁぁーーっ!」 一旦一歩引き、寄り切りを仕掛けてくる。甘いわ! 懐に入ってきた佳奈さんの右肩を引き体勢を浮かせ、 「やああぁぁぁーーっ!!」 思いっきり仏壇返し! しかし宙を回転して倒れた佳奈さんは小柄な体型を活かし即時復帰、助走をつけて私の頬骨にドロップキックを叩きこんだ!! 「ぎゃふッ……あヤバいボキっていった! いっだあぁぁ!!」 「やば、ゴメン! 大丈夫?」 「だ……だいじょばないです……」 と弱った振りをしつつ天井で飛んでいるアブを捕獲! 「んにゃろぉアブ食らえアブ!」 「ぎゃああああぁぁ!!!」 <あんた達、何やってんの?> 「「あ」」 突然のテレパシー。我に返った私達が出入口を見ると、口に血まみれのタオルを当てて全身傷だらけの玲蘭ちゃんが立っていた。
གཉིས་པ་
アブを外に逃がしてやり、私は玲蘭ちゃんを手当てした。無惨にも前歯がほぼ全部抜け落ちてしまっている。でも診療所は怪我人多数で混雑率二〇〇%越えだという。佳奈さんに色んな応急手当についてネットで調べてもらい、初心者ながらにできる処置は全て行った。 「その傷、やっぱり散減と戦ったの?」 <うん。口欠湿地で。本当に口が欠けるとかウケる> 「いや洒落になんないでしょ」 <てか私そもそも武闘派じゃないのに、あんなデカブツ相手だなんて聞いてないし> 「大体何メートル級だった?」 <五メートル弱? 足は八本あった> なるほど。なら牛久大師と同じ、大散減の足から顕現したものだろう。つまり地中に潜む大散減は、残りあと六本足。 <てか一美、志多田さんいるのに普通に返事してていいの?> 「あ……私、もうソレ聞こえてます」 <は?> 私もこちらに何があったかを説明する。牛久大師が大散減に取り込まれた。後女津親子がそれを倒すと、御戌神が現れた。私は御戌神が本当は戦いたくない事に気付き、キョンジャクで気を正した。けど次の瞬間金剛愛輪珠如来が現れて、御戌神と私をケチョンケチョンに叩き潰した。奴は私を助けに来た佳奈さんにも呪いをかけようとして、それを防いだ斉二さんがやられた。以降斉一さんは目を覚まさず、タナカDと青木さんもまだ戻ってきていないみたいだ、と。そこまで説明すると、玲蘭ちゃんは頭を抱えて深々とため息をついた。 <最ッ悪……金剛マターとか、マジ聞いてないんだけど……。てか、一美もたいがい化け物だよね。金剛の如来級悪霊と戦って生きて帰れるとか> 「本当、なんで助かったんだろ……。あの時は全身砕かれて内臓ぜんぶ引きずり出されたはずなんだけど」 <ワヤン化してたからでしょ> 「あーそっか……」 砕けたのは影の体だけだったようだ。 「けど和尚様から貰ったプルパを愛輪珠に取られちゃって、今じゃ私何にもできない。だってあいつが、和尚様の事……実は邪尊教の信者だとか言い出すから……」 <は!? 観音和尚が!? いや、そんなのただの侮辱に決まってるし……> 「…………」 <……なに、一美? まさか心当たりあるの!?> 「あの」 佳奈さんが挙手する。 「あの。何なんですか? そのジャソン教とかいうのって」 <ああ、チベットのカルト宗教です。悪魔崇拝の仏教版と言いましょうか> 「じゃあ、河童の家みたいな物?」 とんでもない。 「テロリストですよ。ドマル・イダムという邪尊の力を操ってチベットを支配していた、最悪の独裁宗派です」 「そ、そうなの!?」 ドマル・イダム。その昔、とある心優しい僧侶が瀕死の悪魔を助け、その情け深さに心打たれた悪魔から不滅の心臓を授かった。そうして彼は衆生の苦しみを安らぎに変える抜苦与楽(ばっくよらく)の仏、『ドマル・イダム(紅の守護尊)』となった。しかしドマルは強欲な霊能者や権力者達に囚われて、巨岩に磔にされてしまう。ドマルには権力者に虐げられた貧民の苦しみや怒りを日夜強制的に注ぎ込まれ、やがてチベットはごく少数の貴族と無抵抗で穏やかな奴隷の極端な格差社会になってしまった。 「この事態を重く見た当時のダライ・ラマはドマル信仰を固く禁じて、邪尊教と呼ぶようにしたんです」 「う、うわぁ……悪代官だしなんか罰当たりだし、邪尊教まじで最悪じゃん……」 <罰当たり、そうですね。チベットでは邪尊教を戒めるために、ドマルの仏画が痛々しい姿で描かれてます。まるで心臓と神経線維だけ燃えずに残ったような赤黒い体、絶望的な目つき、何百年も磔にされているせいで常人の倍近く伸びた長い両腕……みたいな> 「やだやだやだ、そんな可哀想な仏画とか怖くて絶対見れない!」 そう、普通の人はこういう反応だ。だからチベット出身の仏教徒にむやみに邪尊教徒だと言いがかりをつけるのは、最大の侮辱なんだ。だけど、和尚様は……いや、それ以上考えたくない。幼い頃、和尚様と修行した一年間。大人になって再会できた時のこと。そして、彼に授かった力……幸せだったはずの記憶を思い起こす度に、色んな伏線が頭を過ぎってしまう。 <……でも、一美さぁ> 玲蘭ちゃんは口に当てていた氷を下ろし、私を真正面から見据えた。 <和尚にどんな秘密があったのか知らないけど、落ちこむのは後にしてくれる? このまま大散減が完全復活したら、明日の便に乗る前に全員死ぬの。今まともな戦力になるの、五寸釘愚連隊とあんたしかいないんだけど> 「私……無理だよ。プルパを奪われて、影も動かせなくなって」 <それなら新しい武器と法力を探しに行くよ> 「!」 <志多田さんも、来て> 「え? ……ふええぇっ!?」 玲蘭ちゃんは首にかけていた長い数珠を静かに持ち上げる。するとどこからか潮騒に似た音が聞こえ、私達の視界が次第に白く薄れていく。これは、まさか……!
གསུམ་པ་
気がつくと私達は、白一色の世界にいた。足元にはお風呂のように温かい乳白色の海が無限に広がり、空はどこまでも冷たげな霧で覆われている。その境界線は曖昧だ。大気に磯臭はなく、微かに酒粕や米ぬかのような香りがする。 「綺麗……」 佳奈さんが呆然と呟いた。なんとなく、この白い世界に私は来たことがある気がする。確か初めてワヤン不動に変身した直後だったような。すると霧の向こうから、白装束に身を包む天女が現れた。いや、あれは…… 「めんそーれ、ニライカナイへ」 「玲蘭ちゃん!?」「金城さん!?」 初めてちゃんと見たその天女の姿は、半人半魚に変身した玲蘭ちゃん。肌は黄色とパールホワイトのツートーンで、本来耳があった辺りにガラスのように透き通ったヒレが生えている。元々茶髪ボブだった頭も金髪……というより寧ろ、琉球紅型を彷彿とさせる鮮やかな黄色になっていた。燕尾のマーメイドドレス型白装束も裏地は黄色。首から下げたホタル玉の数珠と、裾に近づくにつれてグラデーションしている紅型模様が美しく映える。 「ニライカナイ、母なる乳海。全ての縁と繋がり『必要な物』だけを抜粋して見る事ができる仮想空間。で、この姿は、いわゆる神人(かみんちゅ)ってやつ。わかった?」 「さっぱりわかりません!」 私も佳奈さんに同じく。 「よーするにここは全ての魂と繋がる母乳の海で、どんな相手にもアクセスできるんです。私が何か招き入れないと、ひたすら真っ白なだけだけど」 母乳の海。これこそまさに、金剛が欲しがってやまない『縁の母乳』だ。足元に広がる海水は、散減が吐く穢れた物とはまるで違い、暖かくて淀みない。 「今からこの海で、『マブイグミ』って儀式をする。一美の前世を呼んでパワーを分けて貰うってわけ。でもまず、折角だし……志多田さんもやってみますか?」 「え、私の前世も探してくれるんですか!? えーどうしよ、緊張するー!」 「アー……多分、思ってる感じと違いますよ」 玲蘭ちゃんは尾ビレで海水を打ち上げ、飛沫から瞬く間にススキの葉を錬成した。そして佳奈さんの背中をその葉でペンペンと叩きながら、 「まぶやー、まぶやー、うーてぃくよー」 とユルい調子で呪文を唱えた。すると佳奈さんから幾つもの物体がシュッと飛び出す。それらは人や動物、虫、お守りに家具など様々で、佳奈さんと半透明の線で繋がったまま宙に浮いている。 「なにこれ! もしかして、これって全部私の前世!? ええっ私って昔は桐箪笥だったのぉ!?」 「正確には箪笥に付着していた魂の欠片、いわゆる付喪神です。人間は物心つくまでに周囲の霊的物質を吸収して、七歳ぐらいで魂が完成すると言われています。私が呼び戻したのは、あなたを構成する物質の記憶。強い記憶ほど鮮明に復元できているのがわかりますか?」 そう言われてみると、幾つかの前世は形が朽ちかけている。人間の霊は割と形がはっきりしているけど、箪笥や虫などは朽ちた物が多い。 「たしかに……このおじさん、実家のお仏壇部屋にある写真で見たことあるかも。写真ではもっとおじいさんだったけど」 「亡くなった方が必ずしも亡くなったご年齢で現れるとは限らないんですよ」 私が補足した。そう、有名なスターとか軍人さんとかは、自分にとって全盛期の姿で現れがち��んだ。佳奈さんが言うおじさんも軍服を着ているから、戦時中の御姿なんだろう。 すると玲蘭ちゃんは手ビレ振り、佳奈さんの前世達を等間隔に整列させた。 「志多田さん。この中で一番、あなたにとって『しっくりくる』者を選んで下さい。その者が一つだけ、あなたに力を授けてくれます」 「しっくりくるもの?」 佳奈さんは海中でザブザブと足を引きずり、きちんと並んだ前世達を一つずつ見回っていく。 「うーん……。やっぱり、見たことある人はこのおじさんだけかな。家に写真があったなら、私と血が繋がったご先祖様だと思うし……あれ?」 ふと佳奈さんが立ち止まる。そこにあったのは、殆ど朽ちかけた日本人形。 「この子……!」 どうやら、佳奈さんは『しっくりくる前世』を見つけたようだ。 「私覚えてる。この子は昔、おじいちゃん家の反物屋にいたお人形さんなの。けど隣の中華食堂が火事になった時、うちも半焼しちゃって、多分だからこんなにボロボロなんだと思う」 佳奈さんは屈んで日本人形を手に取る。そして今にも壊れそうなそれに、火傷で火照った肌を癒すように優しく海水をかけた。 「まだ幼稚園ぐらいの時だからうろ覚えだけど。家族で京都のおじ��ちゃん家に遊びに行ったら、お店にこの子が着てる着物と同じ生地が売ってて。それでおそろいのドレスを作ってほしいっておじいちゃんにお願いしたんだ。それで東京帰った直後だよね、火事。誰も死ななかったけど約束の生地は燃えちゃって、お人形さんが私達を守ってくれたんだろうって話になったんだよ」 佳奈さんが水をかける度に、他の魂達は満足そうな様子で佳奈さんと人形に集約していく。すると玲蘭ちゃんはまた手ビレを振る。二人を淡い光が包みこみ……次の瞬間、人形は紺色の京友禅に身を包む麗しい等身大舞妓に変身した! 「あなたは……!?」 「あら、思い出してくれはったんやないの? お久しぶりどすえ、佳奈ちゃん」 それは見事な『タルパ』だった。魂の素となるエクトプラズム粒子を集め、人工的に作られた霊魂だ。そういえば玲蘭ちゃんが和尚様から習っていたのはこのタルパを作る術だった。なるほど、こういう風に使うために修行していたんだね。 佳奈さんは顕現したての舞妓さんに問う。 「あ、あのね! 外でザトウムシの化け物が暴れてるの! できれば私もみんなと一緒に戦いたいんだけど、あなたの力を貸してくれないかな?」 ところが舞妓さんは困ったような顔で口元を隠した。 「あらあら、随分無茶を言いはりますなぁ。うちはただの人形やさかい、他の方法を考えはった方がええんと違います?」 「そっかぁ……。うーん、どうしよう」 「佳奈さん、だぶか霊能力とは別の事を聞いてみればいいんじゃないですか? せっかく再会できたんだから勿体ないですよ」 「そう? じゃあー……」 佳奈さんはわざとらしいポーズでしばらく考える。そして何かを閃くと、わざとらしく手のひらに拳をポンと乗せた。 「ねえ。童貞を殺す服を着た女を殺す服って、結局どんな服だと思う? 人生最大の謎なんだけど!」 「はいぃ???」 舞妓さんがわかっていないだろうからと、玲蘭ちゃんがタルパで『童貞を殺す服』を顕現してみせた。 「所謂、こーいうのです。女に耐性のない男はこれが好きらしいですよ」 玲蘭ちゃんが再現した童貞を殺す服は完璧だ。フリル付きの長袖ブラウスにリボンタイ、コルセット付きジャンパースカート、ニーハイソックス、童話の『赤い靴』みたいなラウンドトゥパンプス。一見露出が少なく清楚なようで、着ると実は物凄く体型が強調される。まんま佳奈さんの歌詞通りのコーデだ。 「って、だからってどうして私に着せるの!」 「ふっ、ウケる」 キツキツのコルセットに締め付けられた私を、舞妓さんが物珍しそうにシゲシゲと眺める。なんだか気恥ずかしくなってきた。舞妓さんはヒラヒラしたブラウスの襟を持ち上げて苦笑する。 「まあまあ……外国のお人形さんみたいやね。それにしても今時の初心な殿方は、機械で織った今時の生地がお好きなんやなあ。うちみたいな反物屋育ちの古い人形には、こんなはいからなお洋服着こなせんどす」 おお。これこそ噂の京都式皮肉、京ことば! 要するに生地がペラッペラで安っぽいと言っているようだ。 「でも佳奈ちゃんは、『おたさーの姫』はん程度にならもう勝っとるんやないの?」 「え?」 舞妓さんは摘んでいたブラウスを離す。すると彼女が触れていた部分の生地感が、心なしかぱりっとした気がする。 「ぶっちゃけた話ね。どんなに可愛らしい服でも、着る人に品がなければ『こすぷれ』と変わらへん。その点、佳奈ちゃんは立派な『あいどる』やないの。お歌も踊りもぎょうさん練習しはったんやろ? 昔はよちよち歩きやったけど、歩き方や立ち方がえろう綺麗になってはるさかい」 話しながらも舞妓さんは、童貞を殺す服を摘んだり撫でたりしている。その度に童貞を殺す服は少しずつ上等になっていく。形や色は変わらなくても、シワが消え縫製が丁寧になり、まるでオーダーメイドのように着心地が良くなった。そうか、生地だ。生地の素材が格段にグレードアップしているんだ! 「うちらは物の怪には勝てへんかもしれんけど、童貞を殺す服を着た女に負けるほど弱い女やありまへん。反物屋の娘の誇りを忘れたらあかんよ、佳奈ちゃん」 舞妓さんは童貞を殺す服タルパを私から剥がすと、佳奈さんに当てがった。すると佳奈さんが今着ているサマーワンピースは輝きながら消滅。代わりにアイドルステージ上で彼女のトレードマークである、紺色のメイド服姿へと変身した。けどただの衣装じゃない、その生地は仙姿玉質な京友禅だ! 「いつものメイド服が……あ、これってもしかして、おそろいのドレス!?」 舞妓さんはにっこりと微笑み、輝くオーラになって佳奈さんと一体化する。京友禅メイド服とオーラを纏った佳奈さんは、見違えるほど上品な風格を帯びた。童貞やオタサーの姫どころか、全老若男女に好感を持たれる国宝級生人形(スーパーアイドル)の誕生だ!
བཞི་པ་
「まぶやー、まぶやー、ゆくみそーれー」 またしても玲蘭ちゃんがゆるい呪文を唱えると、佳奈さんの周囲に残っていた僅かな前世残滓も全て佳奈さんに吸収された。これでマブイグミは終了だ。 「金城さんごめんなさい。やっぱり私、バトルには参加できなさそうです……」 「お気になさらないで下さい。その霊的衣装は強いので、多少の魔物(マジムン)を避けるお守り効果もあります。私達が戦っている間、ある程度護身してて頂けるだけでも十分助かります」 「りょーかいです! じゃあ、次は一美ちゃんの番だね!」 いよいよ、私の前世が明らかになる。家は代々影法師使いの家系だから、力を取り戻してくれる先代がいると信じたい。 「まぶやー、まぶやー、うーてぃくよー」 玲蘭ちゃんが私の背中を叩く。全身の毛穴が水を吹くような感覚の後、さっき見たものと同じ半透明の線が飛び出した。ところが…… 「あれ? 一美ちゃんの前世、それだけ??」 佳奈さんに言われて自分から生えた前世達を見渡す。……確かに、佳奈さんと比べて圧倒的に少ない。それに形も、指先ほど小さなシジミ蝶とか、書道で使ってた筆とか、小物ばっかり。玲蘭ちゃんも首を傾げる。 「有り得ないんだけど。こんな量でまともに生きていけるの、大きくてもフェレットぐらいだよ」 「うぅ……一美ちゃん、可哀想に。心だけじゃなくて魂も小さいんだ……」 「悪かったですね、小心者で」 一番考えられる可能性としては、ワヤン不動に変身するためのプルパを愛輪珠に奪われたからだろう。念力を使う時、魂の殆どが影に集中する影法師の性質が仇となったんだ。それでも今、こうして肉体を維持できているのはどういう事か。 「小さくても強いもの、魔除けとか石とか……も、うーん。ないし……」 「じゃあ、斉一さんのドッペルゲンガーみたいに別の場所にも魂があるってパターンは?」 「そういうタイプなら、一本だけ遠くまで伸びてる線があるからすぐわかる」 「そっか……」 すると、その会話を聞いていた佳奈さんが私の足元の海中を覗きこんだ。 「ねえこれ、下にもう一本生えてない?」 「え?」 まじまじと見ると、確かにうっすらと線が見えなくもない。すると玲蘭ちゃんが尾ビレを振って、私の周囲だけ海水を退けてくれた。 「あ、本当だ!」 それは水が掃け、足元に残った影溜まりの中。まるで風前の灯火のように薄目を開けた『ファティマの目』が、一筋の赤黒い線で私と繋がっている。そうか。行きの飛行機内で万狸ちゃんを遠隔視するのに使ったファティマの目は、本来邪悪な物から身を守る結界術だ。私の魂は無意識に、これで愛輪珠から身を守っていたらしい。 「そこにあったんだ。やっぱり影法師使いだね」 玲蘭ちゃんがファティマの目を屈んで掬い取ろうとする。ところが、それは意志を持っているように影の奥深くに沈んでしまった。 「ガード固っ……一美、これどうにかして取れない?」 参ったな。念力が使えれば影を動かせるんだけど……とりあえず、影法師の真言を唱えてみる。 (ナウマク・サマンダ・バザラダン・カン・オム・チャーヤー・ソワカ) だめだ、ビクともしない。じゃあ次は、和尚様の観世音菩薩の真言。 (オム・マニ・パドメ・フム) ……ん? 足の指先が若干ピリッときたような。なら和尚様タイプⅡ、プルパを発動する時にも使う馬頭観音真言ならどうか。 (オム・アムリトドバヴァ・フム・パット!) ピクッ。 「あ、今ちょっと動いた? おーい、一美ちゃんの前世さーん!」 佳奈さんがちょんちょんと私の影をつつく。他の真言やお経も試してみるべきか? けど総当りしている時間はないし…… —シムジャナンコ、リンポチェ……— 「!」 —和尚様?— —あなたの中で眠る仏様へ、お休みなさい、と申したのです。私は彼の『ムナル』ですから……— 脳裏に突然蘇った、和尚様と幼い私の会話。シムジャナンコ(お休みなさい)……チベット語……? 「タシデレ、リンポチェ」 ヴァンッ! ビンゴだ。薄目だった瞳がギョロリと見開いて肥大化し、私の影から飛び出した! だけどそれは、私が知っているファティマの目とまるで違う。眼球ではなく、まるで視神経のように真っ赤なエネルギーの線維が球体型にドクドクと脈動している。上下左右に睫毛じみた線維が突き出し、瞳孔に当たる部分はダマになった神経線維の塊だ。その眼差しは邪悪な物から身を守るどころか、この世の全てを拒絶しているような絶望感を帯びている。玲蘭ちゃんと佳奈さんも堪らず視線を逸らした。 「ぜ、前世さん、怒ってる?」 「……ウケる」 チベット語に反応した謎のエネルギー眼。それが私の大部分を占める前世なら、間違いなく和尚様にまつわる者だろう。正直、今私は和尚様に対してどういう感情を抱いたらいいのかわからなくなっている。でも、たとえ邪尊教徒であろうとなかろうと、彼が私の恩師である事に変わりはない。 「玲蘭ちゃん、佳奈さん。すいません。五分だけ、ちょっと瞑想させて下さい」 どうやら私にも、自分の『縁』と向き合うべき時が来たようだ。
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……釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩……。座して目を閉じ、自分の影が十三仏を象る様を心に思い描く。本来影法師の修行で行う瞑想では、ティンシャやシンギング・ボウルといった密教法具を使う。けど千里が島には持ってきていないし、今の私にそれらを使いこなせる力もない。それでも、私は自らの影に佇むエネルギー眼と接続を試み続ける。繋がれ、動け。私は影。私はお前だ。前世よ、そこにいるのなら応えて下さい。目を覚まして下さい…… 「……ッ……!」 心が観世音菩薩のシルエットを想った瞬間、それは充血するように赤く滲んだ。するうち私の心臓がドクンと弾け、業火で煮えくり返ったような血が全身を巡る。私はその熱量と激痛に思わず座禅を崩してしまうが、次の瞬間には何事もなかったかのように体が楽になった。そしてそっと目を開けてみると、ニライカナイだったはずの世界は見覚えのある場所に変わっていた。 「石筵観音寺……!?」 玲蘭ちゃんが代わりに呟く。そう。ここは彼女も昔よく通っていた、私達の和尚様のお寺だ。けどよく見ると、記憶と色々違う箇所がある。 「玲蘭ちゃん、このお御堂、こんなに広かったっけ……?」 「そんなわけない。だってあの観音寺って、和尚が廃墟のガレージに張って作ったタルパ結界でしょ」 「そうだよ。それにあの外の山も、安達太良山じゃないよね? なんかかき氷みたいに細長いけど」 「あれ須弥山(しゅみせん)じゃん。仏教界の中心にある山。だぶか和尚はこの風景を基に石筵観音寺を作ったんじゃない? てーか、何よりさ……」 「うん。……いなくなってるよね、和尚様」 このお御堂には、重大な物が欠けている。御本尊である仏像だ。石筵観音寺では和尚様の宿る金剛観世音菩薩像がいらした須弥壇には、何も置かれていない。ここは、一体……。 「ねーえ! 一美ちゃんの和尚さんってチベットのお坊さんなんだよね? ここにいるよ!」 「「え?」」 振り返ると、佳奈さんがお御堂の奥にある扉を開けて中を指さしている。勿論観音寺にはなかった扉だ。私と玲蘭ちゃんが中を覗くと、部屋は赤い壁のシンプルな寝室だった。中心に火葬場の収骨で使うようなやたらと背の高いベッドが一つだけ設置されている。入室すると、そのベッドで誰かが眠っていた。枕元にはチベット密教徒特有の赤い袈裟が畳まれている。佳奈さんがいて顔がよく見えないけど、どうやら坊主頭……僧侶のようだ。不思議な事に、その僧侶の周りには殆ど影がない。 「もしもーし、和尚さん起きて下さい! 一美ちゃんが大ピンチなんですーっ!」 佳奈さんは大胆にも、僧侶をバシバシと叩き起こそうと試みる。ただ問題がある。彼は和尚様より明らかに背が低いんだ。 「ちょ、佳奈さんまずいですって! この人は和尚様じゃないです!」 「え、そうなの? ごめんごめん、てへっ!」 「てへっじゃないですよ………………!!?!?!??」 佳奈さんが退き僧侶の顔が見えた瞬間、私は全身から冷や汗を噴出した。この……この男は……!!! 「あれ? でも和尚さんじゃないなら、この人が一美ちゃんの前世なんじゃない? おーい、前世さムググム~??」 ヤバいヤバいヤバい!! 佳奈さんが再び僧侶をぶっ叩こうとするのを必死で制止した。 ���一美?」 玲蘭ちゃんが訝しんだ。面識はない。初めて見る人だ。だけどこの男が起きたら絶対人類がなんかヤバくなると直感で理解してしまったんだ! ところが…… ༼ ……ン…… ༽ 嘘でしょ。 「あ、一美ちゃん! 前世さん起きたよ! わーやば、このお坊さん三つ目じゃん! きっとなんか凄い悟り開いてる人だよ!」 あぁ、終わった……。したたび綺麗な地名の闇シリーズ第六弾、千里が島宝探し編終了。お疲れ様でした。 「ねー前世さん聞いて! 一美ちゃんが大ピンチなの! あ、一美ちゃんっていうのはこの子、あなたの生まれ変わりでー」 ༼ えっ、え?? ガレ……? ジャルペン……?? ༽ 僧侶はキョトンとしている。そりゃそうだ、寝起きに京友禅ロリータが何やらまくし立てていれば、誰だって困惑する。 「じゃる……ん? ひょっとして、この人日本語通じない!?」 「一美、通訳できる?」 「むむ、無理無理無理! 習ってたわけじゃないし、和尚様からちょこちょこ聞いてただけだもん!」 「嘘だぁ。一美ちゃんさっきいっぱいなんかモゴモゴ言ってたじゃん。ツンデレとかなんとか」 「あ、あれは真言です! てか最後なんて『おはようございます猊下(げいか)』って言っただけだし」 私だけ腰を抜かしている一方で、佳奈さんと玲蘭ちゃんは変わらずマイペースに会話している。僧侶もまだキョトン顔だ。 「他に知らないの? チベット語」 「えぇー……。あ、挨拶は『タシデレ』で、お休みなさいが『シムジャナンコ』、あと印象に残ってるのは『鏡』が『レモン』って言うとか……後は何だろう。ああ、『眠り』が『ムナル』です」 ༼ ! ༽ 私が『ムナル』と発音した瞬間、寝ぼけ眼だった僧侶が急に血相を変えて布団から飛び出した。 ༼ ムナルを知っているのか!? ༽ 「ふわあぁ!?」 僧侶は怖気づいている私の両腕をがっしと掴み、心臓を握り潰すような響きで問う。まるで視神経が溢れ出したような紅茶色の長い睫毛、所々ほつれたように神経線維が露出した肌、そして今までの人生で見てきた誰よりも深い悲壮感を湛える眼差し……やっぱり、間違いない。この僧侶こそが…… 「え? な、なーんだ! お坊さん、日本語喋れるんじゃん……」 「佳奈さん、ちょっと静かにしてて下さい」 「え?」 残酷にも、この僧侶はムナルという言葉に強い反応を示した。これで私の杞憂が事実だったと証明されてしまったんだ。だけど、どんな過去があったのかはともかく、私はやっぱり和尚様を信じたい。そして、自分の魂が内包していたこの男の事も。私は一度深呼吸して、彼の問いに答えた。 「最低限の経緯だけ説明します。私は一美。ムナル様の弟子で、恐らくあなたの来世……いえ、多分、ムナル様によって創られたあなたの神影(ワヤン)です。金剛の大散減という怪物と戦っていたんですが、ムナル様が私の肋骨で作られた法具プルパを金剛愛輪珠如来に奪われました。それでそこの神人にマブイグミして貰って、今ここにいる次第です」 ༼ …… ༽ 僧侶は瞬き一つせず私の話を聞く。同時に彼の脳内で凄まじい速度で情報が整理されていくのが、表情でなんとなくわかる。 ༼ 概ね理解した。ムナルは、そこか ༽ 僧侶は何故か佳奈さんを見る。すると京友禅ロリータドレスのスカートポケットに、僧侶と同じ目の形をしたエネルギー眼がバツッと音を立てて生じた。 「きゃあ!」 一方僧侶の掌は拭き掃除をしたティッシュのようにグズグズに綻び、真っ二つに砕けたキョンジャクが乗っていた。 「あ、それ……神社で見つけたんだけど、後で返そうと思って。でも壊れてて……あれ?」 キョンジャクは佳奈さんが話している間に元の形に戻っていた。というより、僧侶がエネルギー眼で金属を溶かし再鋳造したようだ。綻んでいた掌もじわじわと回復していく。 「ど、どういう事? 一美。ムナルって確か、観音和尚の俗名か何かだったよね……そのペンダント、なんなの?」 僧侶の異様な力に気圧されながら、玲蘭ちゃんが問う。 「キョンジャク(羂索)、法具だよ。和尚様の遺骨をメモリアルダイヤにして、友達から貰った���守りのペンダントに埋め込んでおいたんだ」 ༼ この遺骨ダイヤ、更に形を変えても構わんか? ༽ 「え? はい」 僧侶は私にキョンジャクを返却し、お御堂へ向かった。見ると、和尚様のダイヤが埋まっていた箇所は跡一つなくなっている。私達も続いてお御堂に戻ると、彼はティグクという斧型の法具を持ち、装飾部分に和尚様のダイヤを埋め込んでいた。……ところが次の瞬間、それを露台から須弥山目掛けて思い切り投げた! 「何やってるんですか!?」 ティグクはヒュンヒュンと回転しながら須弥山へ到達する。すると、ヴァダダダダガァン!!! 須弥山の山肌が爆ぜ、さっきの何百倍もの強烈なエネルギー眼が炸裂! 地面が激しく揺れて、僧侶以外それぞれ付近の物や壁に掴まる。 ༼ 拙僧が介入するとなれば、悪戯に事が大きくなる…… ༽ 爆風と閃光が鎮まった後の須弥山はグズグズに綻び、血のように赤い断面で神経線維が揺らめいた。そしてエネルギー眼を直撃したはずのティグクは、フリスビーのように回転しながら帰還。僧侶が器用にキャッチすると、次の瞬間それはダイヤの埋め込まれた小さなホイッスルのような形状に変化していた。 ༼ だからあなたは、あくまでムナルから力を授かった事にしなさい。これを吹けばティグクが顕現する ༽ 「この笛は……『カンリン』ですか!?」 ༼ 本来のカンリンは大腿骨でできたもっと大きな物だけどな。元がダイヤにされてたから、復元はこれが限界だ ༽ カンリン、人骨笛。古来よりチベットでは、悪い人の骨にはその人の使っていない良心が残留していて、死んだ悪人の遺骨でできた笛を吹くと霊を鎮められるという言い伝えがあるんだ。 ༼ 悪人の骨は癒しの音色を奏で、悪魔の心臓は煩悩を菩提に変換する。それなら逆に……あの心優しかった男の遺骨は、どんな恐ろしい業火を吹くのだろうな? ༽ 顔を上げ、再び僧侶と目が合う。やっぱり彼は、和尚様の事を話している時は少し表情が穏やかになっているように見える。 ༼ ま、ムナルの弟子なら使いこなせるだろ。ところで、『鏡』はレモンじゃなくて『メロン』な? ༽ 「あっ、そうでしたね」 未だどこか悲しげな表情のままだけど、多少フランクになった気がする。恐らく、彼を見た最初は心臓バクバクだった私もまた同様だろう。 「じゃあ、一美……そろそろ、お帰ししてもいい……?」 だぶか打って変わって、玲蘭ちゃんはすっかり及び腰だ。まあそれは仕方ない。僧侶もこの気まずい状況を理解して、あえて彼女と目を合わさないように気遣っている。 「うん。……リンポチェ(猊下)、ありがとうございました」 「一美ちゃんの前世のお坊さん、ありがとー!」 ༼ 報恩謝徳、礼には及ばぬ。こちらこそ、良き未来を見せて貰った ༽ 「え?」 ༼ かつて拙僧を救った愛弟子が巣立ち、弟子を得て帰ってきた。そして今度は、拙僧があなたに報いる運びとなった ༽ 玲蘭ちゃんが帰還呪文を唱えるより前に、僧侶は自らこの寺院空間を畳み始めた。神経線維状のエネルギーが竜巻のように這い回りながら、景色を急速に無へ還していく。中心で残像に巻かれて消えていく僧侶は、最後、僅かに笑っていた。 ༼ 衆生と斯様にもエモい縁を結んだのは久しぶりだ。また会おう、ムナルそっくりに育った来世よ ༽
ལྔ་པ་
竜巻が明けた時、私達はニライカナイをすっ飛ばして宴会場に戻っていた。佳奈さんは泥だらけのサマードレスに戻っているけどオーラを帯びていて、玲蘭ちゃんの口の怪我は何故か完治している。そして私の手には新品のように状態の良くなったキョンジャクと、僅かな視神経の残滓をほつれ糸のように纏う小さなカンリンがあった。 「あー、楽しかった! 金城さん、お人形さんと再会させてくれてありがとうございました! 一美ちゃんも、あのお坊さんめっちゃ良い人で良かったね! 最後エモいとか言ってたし、実はパリピなのかな!? ……あれ、金城さん?」 佳奈さんが振り返ると同時に、玲蘭ちゃんは焦燥しきった様子で私の首根っこを掴んだ。今日は色んな人に掴みかかられる日だ。 「なんなの、あの前世は」 その問いに答える代わりに、私は和尚様の遺骨(カンリン)を吹いてみた。パゥーーーー……決して癒しの音色とは言い難い、小動物の断末魔みたいな音が鳴った。すると私の心臓に焼けるような激痛が走り、全身に煮えたぎった血が迸る! それが足元の影に到達点すると、カセットコンロが点火するように私の全身は業火に包まれた。この一連のプロセスは、実に〇.五秒にも満たなかった。 「そんなっ……その姿……!!」 変身した私を、玲蘭ちゃんは核ミサイルでも見るような驚愕の目で仰いだ。そうか。彼女がワヤン不動の全身をちゃんと見るのは初めてだったっけ。 「一美ちゃん! また変身できるようになったね! あ、前世さんの影響でまつ毛伸びた? いいなー!」 玲蘭ちゃんは慌ててスマホで何かを検索し、悠長に笑っている佳奈さんにそれを見せた。 「ん、ドマル・イダム? ああ、これがさっき話してた邪尊さん……え?」 二人はスマホ画面と私を交互に三度見し、ドッと冷や汗を吹き出した。憤怒相に、背中に背負った業火。私は最初、この姿は不動明王様を模したものだと思っていた。けど私の『衆生の苦しみを業火に変え成仏を促す』力、変身中の痛みや恐怖に対する異常なまでの耐久性、一睨みで他者を黙らせる眼圧、そしてさっき牛久大師に指摘されるまで意識していなかった、伸びた腕。これらは明らかに、抜苦与楽の化身ドマル・イダムと合致している! 「……恐らく、あの前世こそがドマルだ。和尚様は幼い頃の私を金剛から助けるために、文字通り彼を私の守護尊にしたんだと思う。でもドマルは和尚様に『救われた』と言っていた。邪尊教に囚われる前の人間の姿で、私達が来るまで安らかに眠っていたのが何よりの証拠だ。観世音菩薩が時として憤怒の馬頭観音になるように、眠れる抜苦与楽の化身に代わり邪道を討つ憤怒の化身。それが私……」 「ワヤン不動だったってわけ……ウケる」 ウケる、と言いつつも、玲蘭ちゃんはまるで笑っていなかった。私は変身を解き、キョンジャクのネックレスチェーンにカンリンを通した。結局ドマルと和尚様がどういう関係だったのか、未だにはっきりしていない。それでも、この不可思議な縁がなければ今の私は存在しないんだ。この新たな法具カンリンで皆を、そして御戌神や千里が島の人々も守るんだ。 私は紅一美。金剛観世音菩薩に寵愛を賜りし紅の守護尊、ワヤン不動だ。瞳に映る縁無き影を、業火で焼いて救済する!
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ウォーキングの頻度が落ちてきている。
5時に目が覚めなかった日にはもういけない。だって暑すぎる。
しかし痩せてはいるのでなんでかな。清掃の仕事が案外効いているのか。
それとも体重計を買い替えたからだろうか。
前の体重計は何をしても頑なに同じ数字を映し出していたのだけど、新しいタニタの体重計にした途端あからさまに表示される数値が変わった。壊れとったんかいワレ。
もっともタニタが優しい嘘をついている可能性もなきにしもあらずだが。
コーネリアスの炎上から、自らのいじめに関する記憶の扉がひらく。
とは言っても私が受けた嫌がらせなんてあんな壮絶なものではなく、最高に嫌だったのが文字通り顔に泥を塗られる程度のことだったから、被害者なんて大袈裟な言葉は使いはしないけど。
小学校、中学校が結構はっきりいじめと呼んで差し支えないことをされて、高校では一部の生徒に何かされるわけではないけど睨まれていたので、いや〜に思いつつなんでいつもこうなんだろう、と思っていた。
その答えは成人してから出ることになり、通っていた心療内科から受けるよう言われたテストの結果、アスペルガー混じりのADD(多動のないADHD)だとかで、霧で曇っていた眼前が急に開けた感じ。
納得できるわけではないけど腑には落ちた。
そこから注意深く生きるようになり、多分20代の頃には尻尾を隠せずいろんなとこにぶつかって相変わらず煙たがられていたが、ここ最近、30代になって割と尻尾を隠すことが上手くなったような気がする。ただ年齢的に落ち着いてきただけかもしれないけど。体力も無くなってきたしな。
10代20代ずっとしんどかったが、30代の楽さがすごい。俺の人生はこれからだ!(躁かもね)
最近アイスばっかり買っていて、しかしダイエット中なので食べずに置いておいて何をしてるんだろうという感じ。アイスを買うという趣味。
それで今日はええやろ…という日を選んで一つずつ食べてるんだけど、生まれて初めて食べたけど白熊って美味いねえ…。
練乳部分が本家の練乳アイスより全然うまい。なんてことだ。
これからうちのスタンダードにしよう。森永のラムネバーもコンビニから消えたことだし。
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2021/7/11
朝、夢の対話から目が覚める。外在的な真実についての対話をガネーシャみたいな神様と交わしている。窓からの日差しは希薄、窓辺の観葉植物たちに霧吹きをする。どれも新芽の成長が著しい。
午後イチ、外に出ると思っているより空気がモワッとしている。両肩の辺りから、このからだがいまここにあるということ、このからだの外在性を感じている。曇の薄いところからぽたぽたとした淡い水色の空が見え、まもなく薄い影が控えめに街のそこここに濃淡の色合いを落としはじめる。小さな公園に入ると、逆上がりでくるっと回転してちょうど正面を向いた小学生の女の子と目が合う、笑っている。並木道は静けさの空洞に満ち充ちている。
地下鉄を乗り継いでP店へ。駅が近づいてくると、からだがソワソワとしはじめ、口のなかでは唾液が果敢に出てきている。着席するなり、おばちゃんにカントリーを注文。プリックナンプラーの匂いを嗅ぎながらカリーの到着を待つ。豚肉、インゲン、キャベツ、茄子、生姜、パクチー、ふくろたけ、えのき等の活きた食材が個々にそれぞれに口のなかでハーモニーを奏でる。プリックナンプラーが口のなかで弾ける。重層的なスパイスのセリー……。おお神よ、ごちそうさまでした。
散髪の時間までK公園を散歩する。熱気球の膨らんでいるのを感じる。いつの間にか空はよく晴れ、早くも積乱雲が発達しかけている。上昇する夏のイマージュ。深緑と鉄塔、多種多様な形質の植物たち、ランナーにサイクリングにピクニック、吹き抜ける太い風が一様に草木を揺らしてゆく。体育館の上の大広場に出る。遠くのビル群の上空に青みがかった巨大な積乱雲が渦を巻いている。上裸の男どもが円になってバレーボールをしている。別のところではフリフリのワンピースを着たガールズがバレーボールをしている。バスケットボールのリングには男女ともに大勢のひとが集まって汗を流している、なかには上裸の男子もいる。ダブルタッチをしながらアクロバティックなダンスを踊るひとたち、あんまりにも凄すぎて見惚れてしまう。バック転や宙返りなんかを平然と交えながら、しかも、数人でぴったり動きをキレよくそろえながら、それでいて高速回転する縄跳びの縄にも引っ掛からない。あきらかに池の方向にボールを蹴って、案の定、ボールは池を目掛けてひとっ飛び、ボール蹴ったおバカさんがヤッベーって言いながら走ってゆく、ポチャン、大爆笑。大広場の中央あたりで、くるっと広場の全体を見渡してみる。熱気球の存在を傍らに感じながら、最高だなぁって一言が思わず口をついてでる。体育館のトイレに行くと、トイレの前でうんこ座りしているクソガキどもに凄まれる、つい笑顔になっちゃう。トイレには冷房がきいていて、ちょっと肌寒いくらい。体育館の外にでると、冷え込んでいたからだがその肌の表面からあっという間に熱気に融解してゆく、意志とは無関係に鳥肌が立つ。
名残り惜しさを感じながら、そろそろお店に行く時間が近づいてきている。そしたらUさんからメールが来ている「Jちゃんのカラーが押してるから、一時間後でもいい?」「ぜんぜんだいじょうぶ!!!」って返信する。蝉の鳴声に感極まりながら深緑の下を歩いていると、カーーーーンッと打球音のようなのがきこえてくる。音のほうへ走っていくと、なんと、なんと、硬式野球場で夏の甲子園の予選が行われている! はじめて生で観る高校野球の公式戦。スコアボードを見ると、試合は9回の裏、16-17という壮絶な乱打戦の模様。この裏にも2点がすでに入っていて、1点を追いかけるチームは押せ押せの雰囲気。ここでピッチャーの交代、1番をつけるエースがショートの守備につき、6番のショートがマウンドに上がる。投球練習、右のサイドスロー。ノーアウト走者一塁から2つの四球を与えて満塁に。続くバッターをレフトフライ、タッチアップのスライディングを好返球で本塁死に仕留めて首の皮が一枚つながる、というより潮目が変わったような。続くバッターが三遊間のゴロ、エースが捌いてギリギリのタイミングで一塁をアウトにする。守り切ったチームは大歓喜、負けたチームはけっこうな人数が泣いている。その刹那、球場のサイレンが響き渡る、涙がはらはらと止まらなくなる。
次の対戦のアップを眺め、一回の表が終わったところでタイムリミットがくる。いつの間にか空がおそろしく黒くなっていて、鈍い雷鳴が頻りに轟いている。お店を目指して急ぎめに歩いていると、四方八方からとてつもない湿った強風が押し寄せてくる。来たきたきたーっと気持ちが盛り上がってくる。いかんせん気持ちが盛り上がっているから、チィーーッスっと派手なアクションでガラス張りのドアを開ける。すると、UさんもJちゃんもそんなのを完全に無視して外の様子を窺っている。HA? と振り返ると、ちょうどその瞬間にも堰が切れていてバカみたいなゲリラ豪雨が地上に殺到している。上昇する夏のイマージュが下降するゲリラ豪雨のイマージュとして顕在化している。UさんもJちゃんもホゲーーーッとして信じられないような顔をしている。Jちゃんが「すごい、完全に同時でした。心配してたんですよ」「え、あ、あ、結婚おめでとう」。UさんとJちゃんに時間のことで平謝りされる。夏大好きだから逆に遅らせてもらってよかったと大感謝する、ゲリラ豪雨も大好きって。Jちゃんは黒髪に青のカラーを入れていて、めっちゃいいねって心底羨ましく思う。シャンプーされながら三人で雑談、Jちゃん「Rさんって全然変わらないですよね、たぶん一年ぶりくらいですかねぇ、久しぶりに会うたびに淡々としてるっていうか、飄々としてるっていうか。私なんか最近はコロナでDJもしてないし、みんなに忘れられたらどうしようって不安に思うのに、Rさんはコロナとか関係なしにどこにも姿を現さないし、幻獣なんてみんなに言われてるのに、いきなり当時と変わらない感じで平然と現れるから不思議」って言われる。よくわからんが、Jちゃんがパンツ丸出しで酔い潰れてフロアの端で寝そべっていたエピソードを引き合いに出して、そんなん忘れられるわけないじゃんって言う。Jちゃん、いますぐに記憶から抹消してくださいって。まもなくJちゃんの旦那がゲリラ豪雨のさなかにワゴンを横づけして、Jちゃんと旦那に手を振る。カットをしながら今日も今日とてUさんからみんなの動向を聞く。誰それが結婚したとか、離婚したとか、付き合ったとか、破局したとか、Sボーイは相変わらずでぜったい結婚できないね、顔はイケメンなのにねって。ワクチン接種の副反応のはなしから、歳をとったよねってはなしにもなる。Uさん「私も子供ができたし、あの当時の無茶苦茶で無軌道な感じって、もうきっと体験できないんだろうなぁって思うとちょっと切ないよね。遠い出来事になっちゃったなぁ。でもさ、もし、あの感じを体験してこなかったと思うとぞっとするよね。いまの私からはまったく想像もできないもん」ほんとうにバカだったよね~って笑い合いながら、Uさんのエピソードも持ち出す。酔いすぎてそこらへんの土を食べていたこととか、トイレのドアをぶち破って破壊したこととか、全然知らないひとに浣腸してボコボコされたこととか、こんなの一生忘れるはずがないよって。Uさんはよく憶えてるよね~って感嘆して、うれしい、一生忘れないでねって大笑いする。それから、やや深刻な面持ちで我らがボスのKさんのはなしになる。数年に渡る失踪のわけが遂に明らかになる。いわく、ある犯罪行為に加担して服役していたらしい。なんだぁ、そうだったのかぁ、どうせドラッグだろうと落胆と同時に安心していたら、どうやらそうではないらしくホンモノの犯罪行為に身を染めていて大爆笑する、さっすがKさんだなぁ!! その反応をみて、Uさんも安心したようにやっぱりそういう反応だよねって大笑いする、大したもんだよって。だっ��、Kさんは弱者にめっちゃ優しいからね、いくら犯罪だからって弱者をさらに蹴落とすような類いのことはぜったいにやんないよ、さっすがなぁ、頼もしさすら感じるよ、期待を裏切らないねって。そしたら、さらに大ウケなことにKさんは模範囚で5年のところを3年で出てきたらしい。カットが終わって、帰る手筈が整って、ちょうどそのとき豪雨が嘘のように上がる。Uさん「えええ! マジで凄いんだけど、夏と相思相愛じゃん!」。
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【JCCoC】コックリチョコレヰト
【始めに】
このシナリオは「ティーンエイジ・サイコプレイス」の前日譚となります。 ティーンエイジ・サイコプレイスを通過済の方もそうでない方も、プレイ可能です。
【概要】
当シナリオは、現代日本、女子中学校を舞台としたものになります。 PLは中学一年生の女子と言う前提で、クトゥルフ2010の学生探索者作成手順に従って探索者を製作してください。
(ティーンエイジサイコプレイスを通過済の探索者の場合、能力値はそのままで構いません。SAN値や成長分の値は無しでお願いします。このシナリオの後に結果の増減をプラスして下さい)
また、このシナリオには推奨技能はありません。KPは推奨技能を提示せず、JC作成を見守って下さい。 もしこの値は女子中学生らしくないと言う内容であれば、修正を促して下さい。
推奨技能:なし プレイ人数:二人 プレイ時間:1~2時間
【シナリオ内容】
好奇心旺盛な所のある中学一年生、渡木二那(わたしきにな)は、こっくりさんで自分の好きな相手に恋人がいるかどうかをバレンタイン前に知ろうとしている。しかし、普段から行動が読めず、突き進む幼馴染に不安を抱いていた長名なじみ(おさななじみ)はハンと関わったことにより、こっくりさんが失敗、二那が乗っ取られ暴走する未来を知っていた。
なんとか止めたいと最終手段の忘却呪文も手に入れたなじみだったが、こっくりさんをやろうとしていた前日、正気を失う予知夢を幾度も見ていた所為で起き上がれないほどの高熱を出してしまう。無意識に助けを求めた先は、二那に誘われていた探索者たちだった。
【導入】
探索者たちは、私立織塚女子中学校に通う中学一年生である。
2月12日、探索者たちが放課後帰ろうとしていると「ねぇ、明日の放課後ひま?」と教室後方のロッカールームで少女が尋ねて来る。彼女の名前は「渡木二那(わたしきにな)」といい、活発で好奇心が旺盛なクラスメイトであることを知っていてよい。
渡木は「こっくりさんやろうって言ってるんだ」「なじみと一緒にやろうって言ってて声かけてるんだけど、中々あと二人、捕まえようと思ってもやらないって断られちゃって。〇〇ちゃんと〇〇ちゃん、よかったら一緒にやろうよ」と話しかけられる。なじみ、とは、渡木と仲のよい「長名なじみ(おさななじみ)」のことである。アイデアに成功すれば、この二人は幼稚園の頃から一緒に過ごしていることを知っていてよい。また、長名は渡木とは逆に、物静かで引っ込み思案なクラスメイトであることもわかる。
探索者が肯定の返事をすれば喜び、断れば残念そうに渡木は返事をする。
その時、ちょうど長名が近寄ってくる。彼女は迷いながらも「…ねぇになちゃん、やっぱりこっくりさん、やめようよ」と言うだろう。「えーなんで、大丈夫だよ」「…ダメだって、あんまりよくないと……おもう、よ…」この様なやり取りをしながら二人は帰って行く。
もしここで心理学に成功すれば、長名が何か怯えている様な表情であることが分かってもよい。しかしその事を聞いても長名はためらうような表情で押し黙るだけだろう。その日は探索者たちも家へ帰ることとなる。
夜、いつも通り布団に入り、眠りについた探索者はふと目を覚ます。気が付けば帰ったはずだというのに何故か自分の教室の黒板の前に立っており、夢にしてはやたらと鮮明なその景色にうっすらと寒気すら覚えるだろう。黒板にはびっしりと、写真が貼られている。また、机の所で二人の生徒が突っ伏すように寝ており、それが渡木二那と長名なじみであること、そして、目の前の教卓にラッピングされたチョコレートと、一枚の紙が置かれていることが分かる。
教室のドアや窓には鍵がかかっているのか、開けようとしても一切開かない。
窓の外は暗く、夜のようである。
◎紙
「目覚めれば 三百を数える間に朝へ」と書かれている。
◎チョコレート
よく見てみれば何か棒状のものにチョコが掛けられており、近くで見た探索者はその正体に凍り付く。かわいらしいラッピングが施されているその中にあるのは、チョコレートをかけられた人の指だった。SANチェック1/1d3。
◎教卓の引き出し 鍵がかかっている。渡木のロッカーにある鞄に入っていた鍵で開けることが出来る。中には明らかに血塗れと分かるカードが入っており、そこには「 先生へ 多分何度でも好きになると思います。先生が誰かの人であっても 」と書かれている。SANチェック0/1d2。
◎写真
どの写真にも大体渡木の姿が写っている。
目星:一枚だけ、手だけが四つ写っている写真がある。それはこっくりさんをやっており、一本の指が十円玉から離れていることがわかる。
アイデア:大人の女性も写っているが、そのどれもがどことなく渡木に似ていると思う。また、渡木に似た女性が病院のベッドにいる写真もいくつか見受けられる。
もし写真を手に取り裏を見てみれば、どれにも四桁の数字がそれぞれ記載されていることがわかる。手だけ写っている写真の数字は「0213」である
◎渡木二那
近寄ってみれば彼女は机に突っ伏してぐっすり寝ているようだ。
また、その耳に耳栓がされていることも分かる。揺さぶっても起きることは無いが、栓を外すと目を覚ます。
目星:口元に茶色の乾いた汚れがついている。そして爪が人ではあり得ない形に、不気味に���びていることにも気付く。SANチェック0/1d2。
生物学:これは動物の爪ではないか、と思う。
医学:彼女の口元の汚れが血であることが分かる。SANチェック0/1d2。
引き出し:体を少し動かして彼女の机の引き出しを開ければ、こっくりさんのやりかたの書かれた紙が出てくる。
☆こっくりさんのやり方
白い紙に五十音と数字、はい、いいえ、それから鳥居を書く。
四人で机を囲み、鳥居に十円玉を置く。全員で十円玉に人差し指を置き、聞きたいことを質問すると十円玉が動く。一つ質問が終わるごとに「鳥居の位置までお戻りください」と言って十円玉を鳥居まで戻す。
こっくりさんを終わらせるには、「こっくりさん、こっくりさん、どうぞお戻り下さい」とお願いして、十円が「はい」に移動した後、鳥居まで戻っていく。戻ったら「ありがとうございました」と礼をいうこと。なお、終わらせるまでは決して指を離してはいけない。こっくりさんに憑りつかれてしまうので、気をつけること。
◎長名なじみ
こちらもぐっすり眠っている。同じように耳栓をしており、彼女の体にもし触れてみるならば、熱を出しているように熱いことにも気付く。
目星:手に何か握られている。開いてみればそれはくしゃくしゃに丸まった紙で「記憶を曇らせる呪文」と書かれている。 「記憶を曇らせる呪文」 この呪文の対象になったものは意識的にある特定の出来事を覚えれいられなくなる。五分ほどの呪文を唱えれば効果は即現れる。呪文の使い手は対象が目に見えていなければならず、対象は呪文の使い手の指示が受け取れる状況でなければなれらない。 呪文の使い手は呪文をかけようとしている出来事を知っていなければならない。すなわち「お前のやったことは忘れろ」というあいまいな命令をだすことはできない。「モンスターに襲われたことを忘れろ」というように、具体的なものでなければならない。 ※呪文の詳細は基本ルールブックP255。少し改変したものになります。
※呪文のMP対抗ロールだが、渡木、長名両者は空間の生成にMP消費を既にしている状態とし、現在のMP現在値を「1」とした状況で対抗ロールをさせること。ほぼほぼ自動成功で構いませんが、プレイヤーにはNPCのMPは伏せた状態でお願いします。
引き出し:体を少し動かして彼女の机の引き出しを開ければ、一枚のルーズリーフが出てくる。「になちゃんはすごい。何でもできるし、何でもやろうとする。でも時々なにをするかわからなくて、怖くなる。になちゃんは今度は、何をするんだろう。私と何をするんだろう」
◎ロッカールーム
☆渡木のロッカー
一枚のルーズリーフと鞄が出てくる。ルーズリーフには「なじみはすごい。私なんかよりとっても真面目で、努力家。でも、最近眠れていないのか、青い顔をずっとしている。心配だからどうしたのって聞いてみるけど、何も教えてくれない。一体あの子は何をして、何を考えてるんだろう」
鞄には携帯と手帳、小さな鍵が入っている。手帳には「沢谷先生カッコイイな~、好きな人いるのかな、こっくりさんに聞いてみよっかな」という淡い思いが綴られている。
携帯にはなじみとのやり取りがある。「こっくりさんなんて絶対よくないよ、やめようよ」「なんで。大丈夫だよ、なじみも聞きたいことないの?やってみよ?」
☆長名のロッカー
開けてみると、一つの箱と一冊の本が入っている。
箱:箱は木製の箱である。錠前がかけられており、四桁の数字で開く仕組みになっている。また、もし鍵開けで試すのなら「この鍵はあらゆる番号で開きそうである」ことが分かる。
※この箱は「日付に該当すればその数字でも開く」ようになっており、開くとその日の「渡木二那の写真」が入っている仕組みになっている。
0213と入れた場合:渡木が出欠名簿を見ている写真や、こっくりさんを行う渡木の写真が大量に入っている。その中で渡木が指を離してしまい、慌てた表情をしているものもある。また出欠名簿では、長名が高熱で休んでいる旨も記載されている。
0214と入れた場合:男性教師に襲い掛かる渡木の写真が大量に入っている。渡木の瞳孔は気味が悪いほどに開いており、その爪は先ほどの見たのと同じく鋭く長い。写真の中で渡木が「教師に襲いかかり」「指を噛みちぎり」「四つ足で走り去る」といった流れが確認できる。SANチェック1/1d3。教師は理科の教師である「沢谷海人(さわやかいと)」であると探索者たちは知っている。
本:「予知」と言うタイトルの本には付箋が貼ってある。その付箋の部分には黒い霧の様な何かが描かれている。「この存在は、厚い霧のとばりに隠されて出現する。初めは霧が立ち込め始め、数秒以内に視界が2~3メートルになるほど霧が濃くなる。冷たい霧の中にいるすべての者は、不気味な遠吠えとうめき声を聞き、怪しげな、ぼんやりとした顔と奇妙な姿を見る。この霧の中心に、それはいる。ハンの姿は霧に遮られ、見えるのは身長およそ3メートルの、フード付きの外套をはためかせた、人間とも生霊ともつかない姿である。崇拝の見返りとして、ハンは未来を占う能力を信者に与える。予知は幻視、夢などの手段を通じて行われる」この奇妙な記事を読んだ探索者は、背筋がぞわりとするような、気味の悪い感覚を覚え一歩後ずさるだろう。SANチェック1/1d4。
【脱出方法】
耳栓を外し渡木か長名を、もしくは渡木と長名を同時に起こすと、彼女たちは目が覚めればぼんやりとした表情で探索者を見つめるだろう。どちらかが、またはどちらもが目を覚ました約五分後に、急に辺りが真っ白になり、気付けば探索者は自室のベッドの中にいる。
NPCを起こした後に取る行動でエンディングが変わる。詳細は後述。
エンド1:五分間の間で、探索者二人が一人ずつにつき、同時に「渡木にこっくりさんを忘れさせる様に呪文をかける」「長名に未来予知(ハン)のことを忘れさせる様に呪文を掛ける」。
エンド2:五分間の間で、「渡木にこっくりさんを忘れさせる様に呪文をかける」。
エンド3:起こしてからの五分間、何もしない。
※教師のことを忘れさせても、今後出会えばまた彼女は恋に落ち、こっくりさんに真実を聞いては暴走するだろう。またこの呪文は「事象やモノ」を忘れさせるものであって、「気持ち」などの忘却はできないものとする。探索者が迷っていれば、アイデアを振らせてもよい。
【エンド分岐】
エンド1「双方に呪文を掛ける」
翌日、目を覚まし学校に行けば渡木に出会い、今日の放課後、ハンバーガーを食べに行かないか誘われるだろう。彼女の口からこっくりさんという単語が出てくることは一度もない。
また、その日長名は欠席しているが、14日には登校してくるだろう。彼女は一昨日よりも顔色がよく、皆を見ればふわりと笑って「おはよ」と声をかけてくるだろう。憑き物が落ちたかの様な彼女は仲良く渡木と話し始める。 その数日後、想い人が既婚であることを知り号泣した渡木だが、泣くだけで済んだ様だ。彼女は長名に慰められながら青春の小さな傷を癒していくことだろう。織塚女子中学校の「最悪な未来」は防げたのかもしれない。トゥルーエンド。
エンド2「渡木に呪文を掛ける」
翌日、目を覚まし学校に行けば渡木に出会い、今日の放課後、ハンバーガーを食べに行かないか誘われるだろう。彼女の口からこっくりさんという単語が出てくることは一度もない。
また、その日長名は欠席しているが、14日には登校してくるだろう。彼女はこっくりさんを昨日やったのか、ということをまず探索者に聞いて来る。やってないと言えば彼女は安心したような表情を一瞬見せるが、それ以降も顔色が悪く徐々に休みがちになるだろう。
中学二年の始業式、長名の姿を見かけることはない。誰かに尋ねれば彼女は転校していったと聞く。それを隣で聞いていた渡木は持っていたカバンを取り落とす。
「……きいて、ないよ。そんなの」彼女はそう言うと、らしくなくぼろぼろと泣き出すだろう。カバンには二人で買ったお揃いのキーホルダーが寂しく揺れていた。ノーマルエンド。
エンド3「何もせず朝を迎える」
翌日、渡木は放課後、予定通りこっくりさんに誘ってくる。探索者が誘いに乗らなければ他の人を誘うだろう。長名は高熱で休んでいるようだ。
こっくりさんを開始し幾つか質問をした後、渡木は「沢谷先生に好きな人はいますか」と尋ねる。十円玉はするりと、はい、と言う方向に動いたあと「け つ こ ん し て ま す」と言う文字を指す。次の瞬間「え?」と声を上げて指を離したのは渡木だった。もしその場に探索者がいれば、見覚えのある、先日夢で見た写真の様な光景に嫌な予感を覚えるだろう。
こっくりさんはきまずい雰囲気で再開され、終わった後に渡木はどこか虚ろな目で帰宅する。
そしてその翌日、廊下で悲鳴が響き渡る。探索者たちが目にしたのは、沢谷に襲いかかり、薬指を噛みちぎる豹変した渡木の姿だった。SANチェック1d3/1d6+1。
そのまま警察が呼ばれ、渡木は連れていかれる。長名も登校して来ず、中学二年に上がれば、二人の名前は名簿から消えていた。バッドエンド。
※もしティーンエイジ通過者で、探索者の関係性に齟齬が生じる場合、目が覚めた時に夢の内容を全て忘れていても構わない。
【報酬】
渡木に呪文をかけこっくりさんを阻止する:SAN1d4
長名に呪文をかけハンのことを忘れさせる:SAN1d4
※SANは元の値を超えて回復しないようにお願いします。
【最後に】
ここまで楽しめて頂けましたら幸いです。
もし気になりましたら後日譚「ティーンエイジ・サイコプレイス」の方もよろしくお願い致します。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11876150
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Page 112 : 変移
育て屋に小さな稲妻の如く起こったポッポの死からおよそ一週間が経ち、粟立った動揺も薄らいできた頃。 アランは今の生活に慣れつつあった。表情は相変わらず堅かったが、乏しかった体力は少しずつ戻り、静かに息をするように過ごしている。漠然とした焦燥は鳴りをひそめ、ザナトアやポケモン達との時間を穏やかに生きていた。 エーフィはザナトアの助手と称しても過言ではなく、彼女に付きっきりでのびのびと暮らし、ふとした隙間を縫ってはブラッキーに駆け寄り何やら話しかけている。対するブラッキーは眠っている時間こそ長いが、時折アランやエーフィに連れられるように外の空気を吸い込んでは、微笑みを浮かべていた。誰にでも懐くフカマルはどこへでも走り回るが、ブラッキーには幾度も威嚇されている。しかしここ最近はブラッキーの方も慣れてきたのか諦めたのか、フカマルに連れ回される様子を見かける。以前リコリスで幼い子供に付きまとわれた頃と姿が重なる。気難しい性格ではあるが、どうにも彼にはそういった、不思議と慕われる性質があるようだった。 一大行事の秋期祭が催される前日。朝は生憎の天気であり、雨が山々を怠く濡らしていた。ラジオから流れてくる天気予報では、昼過ぎには止みやがて晴れ間が見えてくるとのことだが、晴天の吉日と指定された祭日直前としては重い雲行きであった。 薄手のレースカーテンを開けて露わになった窓硝子を、薄い雨水が這っている。透明に描かれる雨の紋様を部屋の中から、フカマルの指がなぞっている。その背後で荷物の準備を一通り終えたアランは、リビングの奥の廊下へと向かう。 木を水で濡らしたような深い色を湛えた廊下の壁には部屋からはみ出た棚が並び、現役時代の資料や本が整然と詰め込まれている。そのおかげで廊下は丁度人ひとり分の幅しかなく、アランとザナトアがすれ違う時にはアランが壁に背中を張り付けてできるだけ道を作り、ザナトアが通り過ぎるのを待つのが通例であった。 ザナトアの私室は廊下を左角に曲がった突き当たりにある。 扉を開けたままにした部屋を覗きこむと、赤紫の上品なスカーフを首に巻いて、灰色のゆったりとしたロングスカートにオフホワイトのシャツを合わせ――襟元を飾る小さなフリルが邪魔のない小洒落た雰囲気を醸し出している――シルク地のような軟らかな黒い生地の上着を羽織っていた。何度も洗って生地が薄くなり、いくつも糸がほつれても放っている普段着とは随分雰囲気が異なって、よそいきを意識している。その服で、小さなスーツケースに細かい荷物を詰めていた。 「服、良いですね」 「ん?」 声をかけられたザナトアは振り返り、顔を顰める。 「そんな世辞はいらないよ」 「お世辞じゃないですよ。スカーフ、似合ってます」 ザナトアは鼻を鳴らす。 「一応、ちゃんとした祭だからね」 「本番は、明日ですよ」 「解ってるさ。むしろ明日はこんなひらひらした服なんて着てられないよ」 「挨拶回りがあるんですっけ」 「そう。面倒臭いもんさね」 大きな溜息と共に、刺々しく呟く。ここ数日、ザナトアはその愚痴を繰り返しアランに零していた。野生ポケモンの保護に必要な経費を市税から貰っているため、定期的に現状や成果を報告する義務があり、役所へ向かい各資料を提出するだの議員に顔を見せるだの云々、そういったこまごまとした仕事が待っているのだという。仕方の無いことではあると理解しているが、気の重さも隠そうともせず、アランはいつも引き攣り気味に苦笑していた。 まあまあ、とアランは軽く宥めながら、ザナトアの傍に歩み寄る。 「荷造り、手伝いましょうか」 「いいよ。もう終わったところだ。後は閉めるだけ」 「閉めますよ」 言いながら、辛うじて抱え込めるような大きさのスーツケースに手をかけ、ファスナーを閉じる。 「あと持つ物はありますか」 「いや、それだけ。あとはリビングにあるリュックに、ポケモン達の飯やらが入ってる」 「分かりました」 持ち手を右手に、アランは鞄を持ち上げる。悪いねえ、と言いつつ、ザナトアが先行してリビングルームに戻っていくと、アランのポケモン達はソファの傍に並んで休んでおり、窓硝子で遊んでいたフカマルはエーフィと話し込んでいた。 「野生のポケモン達は、どうやって連れていくんですか?」 ここにいるポケモン達はモンスターボールに戻せば簡単に町に連れて行ける。しかし、レースに出場する予定のポケモン達は全員が野生であり、ボールという家が無い。 「あの子達は飛んでいくよ、当たり前だろ。こら、上等な服なんだからね、触るな」 おめかしをしたザナトアの洋服に興味津々といったように寄ってきたフカマルがすぐに手を引っ込める。なんにでも手を出したがる彼だが、その細かな鮫肌は彼の意図無しに容易に傷つけることもある。しゅんと項垂れる頭をザナトアは軽く撫でる。 アランとザナトアは後に丘の麓へやってくる往来のバスを使ってキリの中心地へと向かい、選手達は別行動で空路を使う。雨模様であるが、豪雨ならまだしも、しとしとと秋雨らしい勢いであればなんの問題も無いそうで、ヒノヤコマをはじめとする兄貴分が群れを引っ張る。彼等とザナトアの間にはモンスターボールとは違う信頼の糸で繋がっている。湖の傍で落ち合い、簡単にコースの確認をして慣らしてから本番の日を迎える。 出かけるまでにやんだらいいと二人で話していた雨だったが、雨脚が強くなることこそ無いが、やむ気配も無かった。バスの時間も近付いてくる頃には諦めの空気が漂い、おもむろにそれぞれ立ち上がった。 「そうだ」いよいよ出発するという直前に、ザナトアは声をあげた。「あんたに渡したいものがある」 目を瞬かせるアランの前で、ザナトアはリビングの端に鎮座している棚の引き出しから、薄い封筒を取り出した。 差し出されたアランは、緊張した面持ちで封筒を受け取った。白字ではあるが、中身はぼやけていて見えない。真顔で見つめられながら中を覗き込むと、紙幣の端が覗いた。確認してすぐにアランは顔を上げる。 「労働に対価がつくのは当然さね」 「こんなに貰えません」 僅かに狼狽えると、ザナトアは笑う。 「あんたとエーフィの労働に対しては妥当だと思うがね」 「そんなつもりじゃ……」 「貰えるもんは貰っときな。あたしはいつ心変わりするかわかんないよ」 アランは目線を足下に流す。二叉の尾を揺らす獣はゆったりとくつろいでいる。 「嫌なら返しなよ。老人は貧乏なのさ」 ザナトアは右手を差し出す。返すべきかアランは迷いを見せると、すぐに手は下ろされる。 「冗談だよ。それともなんだ、嬉しくないのか?」 少しだけアランは黙って、首を振った。 「嬉しいです」 「正直でいい」 くくっと含み笑いを漏らす。 「あんたは解りづらいね。町に下るんだから、ポケモン達に褒美でもなんでも買ってやったらいいさ。祭は出店もよく並んで、なに、楽しいものだよ」 「……はい」 アランは元の通り封をして、指先で強く封筒を握りしめた。 やまない雨の中、各傘を差し、アランは自分のボストンバッグとポケモン達の世話に必要な道具や餌を詰めたリュックを背負う。ザナトアのスーツケースはエーフィがサイコキネシスで運ぶが、出来る限り濡れないように器用にアランの傘の下で位置を保つ。殆ど手持ち無沙汰のザナトアは、ゆっくりとではあるが、使い込んだ脚で長い丘の階段を下っていく。 水たまりがあちこちに広がり、足下は滑りやすくなっていた。降りていく景色はいつもより灰色がかっており、晴れた日は太陽を照り返して高らかに黄金を放つ小麦畑も、今ばかりはくすんだ色を広げていた。 傘を少しずらして雨雲を仰げば、小さな���れが羽ばたき、横切ろうとしていた。 古い車内はいつも他に客がいないほど閑散たるものだが、この日ばかりは他に数人先客がいた。顔見知りなのだろう、ザナトアがぎこちなく挨拶している隣で、アランは隠れるように目を逸らし、そそくさと座席についた。 見慣れつつあった車窓からの景色に、アランの清閑な横顔が映る。仄暗い瞳はしんと外を眺め、黙り込んでいるうちに見えてきた湖面は、僅かに波が立ち、どこか淀んでいた。 「本当に晴れるんでしょうか」 「晴れるよ」 アランが呟くと、隣からザナトアは即答した。疑いようがないという確信に満ち足りていたが、どこか諦観を含んだ口調だった。 「あたしはずうっとこの町にいるけど、気持ち悪いほどに毎年、晴れるんだよ」 祭の本番は明日だが、数週間前から準備を整えていたキリでは、既に湖畔の自然公園にカラフルなマーケットが並び、食べ物や雑貨が売られていた。伝書ポッポらしき、脚に筒を巻き付けたポッポが雨の中忙しなく空を往来し、地上では傘を指した人々が浮き足だった様子で訪れている。とはいえ、店じまいしているものが殆どであり、閑散とした雰囲気も同時に漂っていた。明日になれば揃って店を出し、楽しむ客で辺りは一層賑わうことだろう。 レースのスタート地点である湖畔からそう遠くない区画にあらかじめ宿をとっていた。毎年使っているとザナトアが話すその宿は、他に馴染んで白壁をしているが、色味や看板の雰囲気は古びており、歴史を外装から物語っていた。受付で簡単な挨拶をする様子も熟れている。いつもより上品な格好をして、お出かけをしている時の声音で話す。ザナトアもザナトアで、この祭を楽しみにしているのかもしれなかった。 チェックインを済ませ、通された部屋に入る。 いつもと違う、丁寧にシーツの張られたベッド。二つ並んだベッドでザナトアは入り口から見て奥を、アランは手前を使うこととなった。 「あんたは、休んでおくかい?」 挨拶回りを控えているのだろうザナトアは、休憩もほどほどにさっさと出かけようとしていた。連れ出してきた若者の方が顔に疲労が滲んでいる。彼女はあのポッポの事件以来、毎晩を卵屋で過ごしていた。元々眠りが浅い日々が続いていたが、満足な休息をとれていなかったところに、山道を下るバスの激しい振動が堪えたようである。 言葉に甘えるように、力無くアランは頷いた。スペアキーを部屋に残し、ザナトアは雨中へと戻っていった。 アランは背中からベッドに沈み込む。日に焼けたようにくすんだ雰囲気はあるものの、清潔案のある壁紙が貼られた天井をしんと眺めているところに、違う音が傍で沈む。エーフィがベッド上に乗って、アランの視界を遮った。蒼白のままかすかに笑み、細い指でライラックの体毛をなぞる。一仕事を済ませた獣は、雨水を吸い込んですっかり濡れていた。 「ちょっと待って」 重い身体を起こし、使い古した薄いタオルを鞄から取り出してしなやかな身体を拭いてくなり、アランの手の動きに委ねる。一通り全身を満遍なく拭き終えたら、自然な順序のように二つのモンスターボールを出した。 アランの引き連れる三匹が勢揃いし、色の悪かったアランの頬に僅かに血色が戻る。 すっかり定位置となった膝元にアメモースがちょこんと座る。 「やっぱり、私達も、外、出ようか」 口元に浮かべるだけの笑みで提案すると、エーフィはいの一番に嬉々として頷いた。 「フカマルに似たね」 からかうように言うと、とうのエーフィは首を傾げた。アメモースはふわりふわりと触角を揺らし、ブラッキーは静かに目を閉じて身震いした。 後ろで小さく結った髪を結び直し、アランはポケモン達を引き連れて外へと出る。祭の前日とはいえ、雨模様。人通りは少ない。左腕でアメモースを抱え、右手で傘を持つ。折角つい先程丁寧に拭いたのに、エーフィはむしろ喜んで秋雨の中に躍り出た。強力な念力を操る才能に恵まれているが故に頼られるばかりだが、責務から解放され、謳歌するようにエーフィは笑った。対するブラッキーは夜に浮かぶ月のように平静な面持ちで、黙ってアランの傍に立つ。角張ったようなぎこちない動きで歩き始め、アランはじっと観察する視線をさりげなく寄越していたが、すぐになんでもなかったように滑らかに隆々と歩く。 宿は少し路地に入ったところを入り口としており、ゆるやかな坂を下り、白い壁の並ぶ石畳の道を���っすぐ進んで広い道に出れば、車の往来も目立つ。左に進めば駅を中心として賑やかな町並みとなり、右に進めば湖に面する。 少しだけ立ち止まったが、導かれるように揃って湖の方へと足先を向けた。 道すがら、祭に向けた最後の準備で玄関先に立つ人々とすれ違った。 建物の入り口にそれぞれかけられたランプから、きらきらと光を反射し雨風にゆれる長い金色の飾りが垂れている。金に限らず、白や赤、青に黄、透いた色まで、様々な顔ぶれである。よく見ればランプもそれぞれで意匠が異なり、角張ったカンテラ型のものもあるが、花をモチーフにした丸く柔らかなデザインも多い。花の種類もそれぞれであり、道を彩る花壇と合わせ、湿った雨中でも華やかであったが、ランプに各自ぶら下がる羽の装飾は雨に濡れて乱れたり縮こまったりしていた。豊作と とはいえ、生憎の天候では外に出ている人もそう多くはない。白壁が並ぶ町を飾る様はさながらキャンバスに鮮やかな絵を描いているかのようだが、華やかな様相も、雨に包まれれば幾分褪せる。 不揃いな足並みで道を辿る先でのことだった。 雨音に満ちた町には少々不釣り合いに浮く、明るい子供の声がして、俯いていたアランの顔が上向き、立ち止まる。 浮き上がるような真っ赤なレインコートを着た、幼い男児が勢い良く深い水溜まりを踏みつけて、彼の背丈ほどまで飛沫があがった。驚くどころか一際大きな歓声があがって、楽しそうに何度も踏みつけている。拙いダンスをしているかのようだ。 アランが注目しているのは、はしゃぐ少年ではない。その後ろから彼を追いかけてきた、男性の方だ。少年に見覚えは無いが、男には既視感を抱いているだろう。数日前、町に下りてエクトルと密かに会った際に訪れた、喫茶店の店番をしていたアシザワだった。 たっぷりとした水溜まりで遊ぶ少年に、危ないだろ、と笑いながら近付いた。激しく跳びはねる飛沫など気にも留めない様子だ。少年はアシザワがやってくるとようやく興奮がやんだように動きを止めて破顔した。丁寧にコーヒーを淹れていた大きな手が少年に差し伸べられ、それより一回りも二回りも小さな幼い手と繋がった。アシザワの背後から、またアランにとっては初対面の女性がやってくる。優しく微笑む、ほっそりとした女性だった。赤毛のショートカットは、こざっぱりな印象を与える。雨が滴りてらてらと光るエナメル地の赤いフードの下で笑う少年も、同色のふんわりとした巻き毛をしている。 アランのいる場所からは少し距離が離れていて、彼等はアランに気付く気配が無かった。まるで気配を消すようにアランは静かに息をして、小さな家族が横切って角に消えるまでまじまじと見つめる。彼女から声をかけようとはしなかった。 束の間訪れた偶然が本当に消えていっただろう頃合いを見計らって、アランは再び歩き出した。疑問符を顔に浮かべて主を見上げていた獣達もすぐさま追いかける。 吸い込まれていった横道にアランはさりげなく視線を遣ったが、またどこかの道を曲がっていったのか、でこぼことした三人の背中も、あの甲高い声も、小さな幸福を慈しむ春のような空気も、まるごと消えていた。 薄い睫毛が下を向く。少年が踊っていた深い水溜まりに静かに踏み込んだ。目も眩むような小さな波紋が無限に瞬く水面で、いつのまにか既に薄汚れた靴に沿って水玉が跳んだ。躊躇無く踏み抜いていく。一切の雨水も沁みてはいかなかった。 道なりを進み、道路沿いに固められた堤防で止まり、濡れて汚れた白色のコンクリートに構わず、アランは手を乗せた。 波紋が幾重にも湖一面で弾け、風は弱いけれど僅かに波を作っていた。水は黒ずみ、雨で起こされた汚濁が水面までやってきている。 霧雨のような連続的な音。すぐ傍で傘の布地を叩く水音。 全てが水の中に埋もれていくような気配がする。 「……昔ね」 ぽつり、とアランは言う。たもとに並ぶ従者、そして抱きかかえる仲間に向けてか、或いは独り言のように、話し始める。 「ウォルタにいた時、それも、まだずっと小さかった頃、強い土砂降りが降ったの。ウォルタは、海に面していて川がいくつも通った町だから、少し強い雨がしばらく降っただけでも増水して、洪水も起こって、道があっという間に浸水してしまうような町だった。水害と隣り合わせの町だったんだ。その日も、強い雨がずっと降っていた。あの夏はよく夕立が降ったし、ちょうど雨が続いていた頃だった。外がうるさくて、ちょっと怖かったけど、同時になんだかわくわくしてた。いつもと違う雨音に」 ���郷を語るのは彼女にしては珍しい。 此度、キリに来てからは勿論、旅を振り返ってもそう多くは語ってこなかった。特に、彼女自身の思い出については。彼女は故郷を愛してはいるが、血生臭い衝撃が過去をまるごと上塗りするだけの暴力性を伴っており、ひとたびその悪夢に呑み込まれると、我慢ならずに身体は拒否反応を起こしていた。 エーフィは堤防に上がり、間近から主人の顔を見やる。表情は至って冷静で、濁る湖面から目を離そうとしない。 「たくさんの川がウォルタには流れているけど、その一つ一つに名前がつけられていて、その中にレト川って川があったんだ。小さくもないけど、大きいわけでもない。幅は、どのくらいだったかな。十メートルくらいになるのかな。深さもそんなになくて、夏になると、橋から跳び込んで遊ぶ子供もいたな。私とセルドもよくそうして遊んだ。勿論、山の川に比べれば町の川は澄んではいないんだけど、泳いで遊べる程度にはきれいだったんだ。跳び込むの、最初は怖いんだけどね、慣れるとそんなこともなくなって。子供って、楽しいこと何度も繰り返すでしょ。ずっと水遊びしてたな。懐かしい」 懐古に浸りながらも、笑むことも、寂しげに憂うこともなく、淡々とアランは話す。 「それで、さっきのね、夏の土砂降りの日、レト川が氾濫したの。私の住んでた、おばさん達の家は遠かったし高台になっていたから大丈夫だったけど、低い場所の周囲の建物はけっこう浸かっちゃって。そんな大変な日に、セルドが、こっそり外に出て行ったの。気になったんだって。いつのまにかいなくなってることに気付いて、なんだか直感したんだよね。きっと、外に行ってるって。川がどうなっているかを見に行ったんだって。そう思ったらいてもたってもいられなくて、急いで探しにいったんだ」 あれはちょっと怖かったな、と続ける。 「川の近くがどうなってるかなんて想像がつかなかったけど、すごい雨だったから、子供心でもある程度察しは付いてたんだと思う。近付きすぎたら大変なことになるかもしれないって。けっこう、必死で探したなあ。長靴の中まで水が入ってきて身体は重たかったけど、見つけるまでは帰れないって。結局、すごい勢いになったレト川の近くで、突っ立ってるセルドを見つけて、ようやく見つけて私も、怒るより安心して、急いで駆け寄ったら、あっちも気付いて、こうやって、二人とも近付いていって」アランは傘を肩と顎で挟み込むように引っかけ、アメモースを抱いたまま両手の人差し指を近付ける。「で、そこにあった大きな水溜まりに、二人して足をとられて、転んじゃったの」すてん、と指先が曲がる。 そこでふと、アランの口許が僅かに緩んだ。 「もともと随分濡れちゃったけど、いよいよ頭からどぶにでも突っ込んだみたいに、びしょびしょで、二人とも涙目になりながら、手を繋いで帰ったっていう、そういう話。おばさんたち、怒ったり笑ったり、忙しい日だった。……よく覚えてる。間近で見た、いつもと違う川。とても澄んでいたのに、土色に濁って、水嵩は何倍にもなって。土砂降りの音と、水流の音が混ざって、あれは怖かったけど、それでもどこかどきどきしてた。……この湖を見てると、色々思い出す。濁っているからかな。雨の勢いは違うのに。それとも、さっきの、あの子を見たせいかな」 偶然見かけた姿。水溜まりにはしゃいで、てらてらと光る小さな赤いレインコート。無邪気な男児を挟んで繋がれた手。曇りの無い家族という形。和やかな空気。灰色に包まれた町が彩られる中、とりわけ彩色豊かにアランの目の前に現れた。 彼女の足は暫く止まり、一つの家族をじっと見つめていた。 「……あの日も」 目を細め、呟く。 「酷い雨だった」 町を閉じ込める霧雨は絶えない。 傘を握り直し、返事を求めぬ話は途切れる。 雨に打たれる湖を見るのは、アランにとって初めてだった。よく晴れていれば遠い向こう岸の町並みや山の稜線まではっきり見えるのだが、今は白い靄に隠されてぼやけてしまっている。 青く、白く、そして黒々とした光景に、アランは身を乗り出し、波発つ水面を目に焼き付けた。 「あ」 アランは声をあげる。 見覚えのある姿が、湖上を飛翔している。一匹ではない。十数匹の群衆である。あの朱い体毛と金色の翼は、ほんの小さくとも鮮烈なまでに湖上に軌跡を描く。引き連れる翼はまたそれぞれの動きをしているが、雨に負けることなく、整然とした隊列を組んでいた。 ザナトアがもう現地での訓練を開始したのだろうか。この雨の中で。 エーフィも、ブラッキーも、アメモースも、アランも、場所を変えても尚美しく逞しく飛び続ける群衆から目を離せなかった。 エーフィが甲高い声をあげた。彼女は群衆を呼んでいた。あるいは応援するように。アランはちらと牽制するような目線を送ったが、しかしすぐに戻した。 気付いたのか。 それまで直線に走っていたヒノヤコマが途中できったゆるやかなカーブを、誰もが慌てることなくなぞるように追いかける。雨水を吸い込んでいるであろう翼はその重みを感じさせず軽やかに羽ばたき、灰色の景色を横切る。そして、少しずつだが、その姿が大きくなってくる。アラン達のいる湖畔へ向かっているのだ。 誰もが固唾を呑んで彼等を見つめる。 正しく述べれば、彼等はアラン達のいる地点より離れた地点の岸までやってきて、留まることなく堤防沿いを飛翔した。やや高度を下げ、翼の動きは最小限に。それぞれで体格も羽ばたきも異なるし、縦に伸びる様は速度の違いを表した。先頭は当然のようにリーダー格であるヒノヤコマ、やや後方にピジョンが並び、スバメやマメパト、ポッポ等小さなポケモンが並び、間にハトーボーが挟まり中継、しんがりを務めるのはもう一匹の雄のピジョンである。全く異なる種族の成す群れの統率は簡単ではないだろうが、彼等は整然としたバランスで隊列を乱さず、まるで一匹の生き物のように飛ぶ。 彼等は明らかにアラン達に気付いているようだ。炎タイプを併せ持ち、天候条件としては弱ってもおかしくはないであろうヒノヤコマが、気合いの一声を上げ、つられて他のポケモン達も一斉に鳴いた。それはアラン達の頭上を飛んでいこうとする瞬きの出来事であった。それぞれの羽ばたきがアラン達の上空で強かにはためいた。アランは首を動かす。声が出てこなかった。彼等はただ見守る他無く、傘を下ろし、飛翔する生命の力強さに惹かれるように身体ごと姿を追った。声は近づき、そして、頭上の空を掠めていって、息を呑む間もなく、瞬く間に通り過ぎていった。共にぐるりと首を動かして、遠のいていく羽音がいつまでも鼓膜を震わせているように、じっと後ろ姿を目で追い続けた。 呆然としていたアランが、いつの間にか傘を離して開いていた掌を、空に向けてかざした。 「やんでる」 ぽつん、ぽつりと、余韻のような雨粒が時折肌を、町を、湖上をほんのかすかに叩いたけれど、そればかりで、空気が弛緩していき、湿った濃厚な雨の匂いのみが充満する。 僅かに騒いだ湖は、変わらず深く藍と墨色を広げているばかりだ。 栗色の瞳は、アメモースを一瞥する。彼の瞳は湖よりもずっと深く純粋な黒を持つが、輝きは秘めることを忘れ、じっと、鳥ポケモンたちの群衆を、その目にも解らなくなる最後まで凝視していた。 アランは、語りかけることなく、抱く腕に頭に埋めるように、彼を背中から包むように抱きしめた。アメモースは、覚束ない声をあげ、影になったアランを振り返ろうとする。長くなった前髪に顔は隠れているけれど、ただ、彼女はそうすることしかできないように、窺い知れない秘めたる心ごとまとめて、アメモースを抱く腕に力を込めた。
夕陽の沈む頃には完全に雨は止み、厚い雨雲は通り過ぎてちぎれていき、燃え上がるような壮大な黄昏が湖上を彩り、町民や観光客の境無く、多くの人間を感嘆させた。 綿雲の黒い影と、太陽の朱が強烈なコントラストを作り、その背後は鮮烈な黄金から夜の闇へ色を重ねる。夜が近付き生き生きと羽ばたくヤミカラス達が湖を横断する。 光が町を焼き尽くす、まさに夕焼けと称するに相応しい情景である。 雨がやんで、祭の前夜に賑わいを見せ始めた自然公園でアランは湖畔のベンチに腰掛けている。ちょうど座りながら夕陽の沈む一部始終を眺めていられる特等席だが、夕方になるよりずっと前から陣取っていたおかげで独占している。贅沢を噛みしめているようには見えない無感動な表情ではあったが、栗色の双眸もまた強烈な光をじっと反射させ、輝かせ、燃え上がっていた。奥にあるのは光が届かぬほどの深みだったとしても、それを隠すだけの輝かしい瞳であっ��。 数刻前、ザナトアと合流したが、老婆は今は離れた場所でヒノヤコマ達に囲まれ、なにやら話し込んでいるようだった。一匹一匹撫でながら、身体の具合を直接触って確認している。スカーフはとうにしまっていて、皮を剥いだ分だけ普段の姿に戻っていた。 アランの背後で東の空は薄い群青に染まりかけて、小さな一等星が瞬いている。それを見つけたフカマルはベンチの背もたれから後方へ身を乗り出し、ぎゃ、と指さし、隣に立つエーフィが声を上げ、アランの足下でずぶ濡れの芝生に横になるブラッキーは、無関心のように顔を埋めたまま動かなかった。 膝に乗せたアメモースの背中に、アランは話しかけた。 「祭が終わったら、ザナトアさんに飛行練習の相談をしてみようか」 なんでもないことのように呟くアランの肩は少し硬かったけれど、いつか訪れる瞬間であることは解っていただろう。 言葉を交わすことができずとも、生き物は時に雄弁なまでに意志を語る。目線で、声音で、身体で。 「……あのね」柔らかな声で語りかける。「私、好きだったんだ。アメモースの飛んでいく姿」 多くの言葉は不要だというように、静かに息をつく。 「きっと、また飛べるようになる」 アメモースは逡巡してから、そっと頷いた。 アランは、納得するように同じ動きをして、また前を向いた。 ザナトアはオボンと呼ばれる木の実をみじん切りにしたものを選手達に与えている。林の一角に生っている木の実で、特別手をかけているわけではないが、秋が深くなってくるとたわわに実る。濃密なみずみずしさ故に過剰に食べると下痢を起こすこともありザナトアはたまにしか与えないが、疲労や体力の回復を促すのには最適なのだという。天然に実る薬の味は好評で、忙しなく啄む様子が微笑ましい。 アランは静寂に耳を澄ませるように瞼を閉じる。 何かが上手くいっている。 消失した存在が大きくて、噛み合わなかった歯車がゆっくりとだが修正されて、新しい歯車とも合わさって、世界は安らかに過ぎている。 そんな日々を彼女は夢見ていたはずだ。どこかのびのびと生きていける、傷を癒やせる場所を求めていたはずだった。アメモースは飛べないまま、失われたものはどうしても戻ってこないままで、ポッポの死は謎に埋もれているままだけれど、時間と新たな出会いと、深めていく関係性が喪失を着実に埋めていく。 次に瞳が顔を出した時には、夕陽は湖面に沈んでいた。 アランはザナトアに一声かけて、アメモースを抱いたまま、散歩に出かけることにした。 エーフィとブラッキーの、少なくともいずれかがアランの傍につくことが通例となっていて、今回はエーフィのみ立ち上がった。 静かな夜になろうとしていた。 広い自然公園の一部は明日の祭のため準備が進められている出店や人々の声で賑わっているが、離れていくと、ザナトアと同様明日のレースに向けて調整をしているトレーナーや、家族連れ、若いカップルなど、点々とその姿は見えるものの、雨上がりとあってさほど賑わいも無く、やがて誰も居ない場所まで歩を進めていた。遠い喧噪とはまるで無縁の世界だ。草原の騒ぐ音や、ざわめく湖面の水音、濡れた芝生を踏みしめる音だけが鳴る沈黙を全身で浴びる。 夏を過ぎてしまうと、黄昏時から夜へ転じるのは随分と早くなってしまう。ゆっくりと歩いている間に、足下すら満足に見られないほど辺りは暗闇に満ちていた。 おもむろに立ち止まり、アランは湖を前に、目を見開く。 「すごい」 湖に星が映って、ささやかなきらめきで埋め尽くされる。 あまりにも広々とした湖なので、視界を遮るものが殆ど無い。晴天だった。秋の星が、ちりばめられているというよりも敷き詰められている。夜空に煌めく一つ一つが、目を凝らせば息づいているように僅かに瞬いている。視界を全て埋め尽くす。流星の一つが過ったとしても何一つおかしくはない。宇宙に放り込まれたように浸り、ほんの少し言葉零すことすら躊躇われる時間が暫く続いた。 夜空に決して手は届かない。思い出と同じだ。過去には戻れない。決して届かない。誰の手も一切届かない絶対的な空間だからこそ、時に美しい。 ――エーフィの、声が、した。 まるで尋ねるような、小さな囁きに呼ばれたようにアランはエーフィに視線を移した、その瞬間、ひとつの水滴が、シルクのように短く滑らかな体毛を湿らせた。 ほろほろと、アランの瞳から涙が溢れてくる。 夜の闇に遮られているけれど、感情の機微を読み取るエーフィには、その涙はお��通しだろう。 闇に隠れたまま、アランは涙を流し続けた。凍りついた表情で。 それはまるで、氷が瞳から溶けていくように。 「……」 その涙に漸く気が付いたとでも言うように、アランは頬を伝う熱を指先でなぞった。白い指の腹で、雫が滲む。 彼女の口から温かな息が吐かれて、指が光る。 「私、今、考えてた、」 澄み渡った世界に浸る凍り付いたような静寂を、一つの悲鳴が叩き割った。それが彼女らの耳に届いてしまったのは、やはり静寂によるものだろう。 冷えた背筋で振り返る。 星光に僅かに照らされた草原をずっとまっすぐ歩いていた。聞き違いと流してもおかしくないだろうが、アランの耳はその僅かな違和を掴んでしまった。ただごとではないと直感する短い絶叫を。 涙を忘れ、彼女は走っていた。 緊迫した心臓は時間が経つほどに烈しく脈を刻む。内なる衝動をとても抑えきれない。 夜の散歩は彼女の想像よりも長い距離を稼いでいたようだが、その黒い視界にはあまりにも目立つ蹲る黄色い輪の輝きを捉えて、それが何かを察するまでには、時間を要しなかっただろう。 足を止め、凄まじい勢いで吹き出す汗が、急な走行によるものか緊張による冷や汗によるものか判別がつかない。恐らくはどちらもだった。絶句し、音を立てぬように近付いた。相手は元来慎重な性格であった。物音には誰よりも敏感だった。近付いてくる足音に気付かぬほど鈍い生き物ではない。だが、ここ最近様子が異なっていることは、彼女も知るところであった。 闇に同化する足がヤミカラスを地面に抑え付けている。野生なのか、周囲にトレーナーの姿は無い。僅かな光に照らされた先で、羽が必死に藻掻こうとしているが、完全に上を取られており、既に喉は裂かれており声は出ない。 鋭い歯はその身体に噛み付き、情など一切見せない様子で的確に抉っている。 光る輪が揺れる。 静かだが、激しい動きを的確に夜に印す。 途方に暮れる栗色の瞳はしかし揺るがない。焼き付けようとしているように光の動きを見つめた。夜に照るあの光。暗闇を暗闇としない、月の分身は、炎の代わりになって彼女の暗闇に寄り添い続けた。その光が、獣の動きで弱者を貪る。 硬直している主とは裏腹に、懐から電光石火で彼に跳び込む存在があった。彼と双璧を成す獣は鈍い音を立て相手を突き飛ばした。 息絶え絶えのヤミカラスは地に伏し、その傍にエーフィが駆け寄る。遅れて、向こう側から慌てた様子のフカマルが短い足で必死に走ってきた。 しかし、突き放されたブラッキーに電光石火一つでは多少のダメージを与えることは叶っても、気絶させるほどの威力には到底及ばない。ゆっくりと身体をもたげ、低い唸り声を鳴らし、エーフィを睨み付ける。対するエーフィもヤミカラスから離れ、ブラッキーに相対する。厳しい睨み合いは、彼等に訪れたことのない緊迫を生んだ。二匹とも瞬時に距離を詰める技を会得している。間合いなどあってないようなものである。 二対の獣の間に走る緊張した罅が、明らかとなる。 「やめて!」 懇願する叫びには、悲痛が込められていた。 ブラッキーの耳がぴくりと動く。真っ赤な視線が主に向いた時、怨念ともとれるような禍々しい眼光にアランは息を詰める。それは始まりの記憶とも、二度目の記憶とも重なるだろう。我を忘れ血走った獣の赤い眼。決して忘れるはずのない、彼女を縫い付ける殺戮の眼差し。 歯を食いしばり、ブラッキーは足先をアランに向ける。思わず彼女の足が後方へ下がったところを、すかさずエーフィが飛びかかった。 二度目の電光石火。が、同じ技を持ち素早さを高め、何より夜の化身であるブラッキーは、その動きを見切れぬほど鈍い生き物ではなかった。 闇夜にもそれとわかる漆黒の波動が彼を中心に波状に放射される。悪の波動。エーフィには効果的であり、いとも簡単に彼女を宙へ跳ね返し、高い悲鳴があがる。ブラッキーの放つ禍々しい様子に立ち尽くしたフカマルも、為す術無く攻撃を受け、地面を勢いよく転がっていった。間もなくその余波はアラン達にも襲いかかる。生身の人間であるアランがその技を見切り避けられるはずもなく、躊躇無くアメモースごと吹き飛ばした。その瞬間に弾けた、深くどす黒い衝撃。悲鳴をあげる間も無く、低い呻き声が零れた。 腕からアメモースは転がり落ち、地面に倒れ込む。アランは暫く起き上がることすら満足にできず、歪んだ顔で草原からブラッキーを見た。黒い草叢の隙間から窺える、一匹、無数に散らばる星空を背に孤高に立つ獣が、アランを見ている。 直後、彼は空に向かって吠えた。 ひりひりと風は絶叫に震撼する。 困惑に歪んだ彼等を置き去りにして、ブラッキーは走り出した。踵を返したと思えば、脱兎の如く湖から離れていく。 「ブラッキー! 待って!!」 アランが呼ぼうとも全く立ち止まる素振りを見せず、光の輪はやがて黒に塗りつぶされてしまった。 呆然と彼等は残された。 沈黙が永遠に続くかのように、誰もが絶句し状況を飲み込めずにいた。 騒ぎを感じ取ったのか、遅れてやってきたザナトアは、ばらばらに散らばって各々倒れ込んでいる光景に言葉を失う。 「何があったんだい!」 怒りとも混乱ともとれる勢いでザナトアは強い足取りで、まずは一番近くにいたフカマルのもとへ向かう。独特の鱗で覆われたフカマルだが、戦闘訓練を行っておらず非常に打たれ弱い。たった一度の悪の波動を受け、その場で気を失っていた。その短い手の先にある、光に照らされ既に息絶えた存在を認めた瞬間、息を詰めた。 「アラン!」 今度はアランの傍へやってくる。近くでアメモースは蠢き、アランは強力な一撃による痛みを堪えるように、ゆっくりと起き上がる。 「ブラッキーが」 攻撃が直接当たった腹部を抑えながら、辛うじて声が出る。勢いよく咳き込み、呼吸を落ち着かせると、もう一度口を開く。 「ブラッキー、が、ヤミカラスを……!」 「あんたのブラッキーが?」 アランは頷く。 「何故、そんなことが」 「私にも、それは」 アランは震える声を零しながら、首を振る。 勿論、野生ならば弱肉強食は自然の掟だ。ブラッキーという種族とて例外ではない。しかし、彼は野生とは対極に、人に育てられ続けてきたポケモンである。無闇に周囲を攻撃するほど好戦的な性格でもない。あの時、彼は明らかに自我を失っているように見えた。 動揺しきったアランを前に、ザナトアはこれ以上の詮索は無意味だと悟った。それより重要なことがある。ブラッキーを連れ戻さなければならない。 「それで、ブラッキーはどこに行ったんだ」 「分かりません……さっき、向こう側へ走って行ってそのままどこかへ」 ザナトアは一度その場を離れ老眼をこらすが、ブラッキーの気配は全く無い。深い暗闇であるほどあの光の輪は引き立つ。しかしその片鱗すら見当たらない。 背後で、柵にぶつかる音がしてザナトアが振り向く。よろめくアランが息を切らし、柵に寄りかかる。 「追いかけなきゃ……!」 「落ち着きな。夜はブラッキーの独壇場だよ。これほど澄んだ夜で血が騒いだのかもしれない。そうなれば、簡単にはいかない」 「でも、止めないと! もっと被害が出るかもしれない!」 「アラン」 「ザナトアさん」 いつになく動揺したアランは、俯いてザナトアを見られないようだった。 「ポッポを殺したのも、多分」 続けようとしたが、その先を断言するのには躊躇いを見せた。 抉られた首には、誰もが既視感を抱くだろう。あの日の夜、部屋にはいつもより風が吹き込んでいた。万が一にもと黒の団である可能性も彼女は考慮していたが、より近しい、信頼している存在まで疑念が至らなかった。誰も状況を理解できていないだろう。時に激情が垣間見えるが、基は冷静なブラッキーのことである。今までこのような暴走は一度として無かった。しかし、ブラッキーは、明らかに様子が異なっていた。アランはずっと気付いていた。気付いていたが、解らなかった。 闇夜に塗り潰されて判別がつかないが、彼女の顔は蒼白になっていることだろう。一刻も早く、と急く言葉とは裏腹に、足は僅かに震え、竦んでいるようだった。 「今はそんなことを言ってる場合じゃない。しゃんとしな!」 アランははっと顔を上げ、険しい老婆の視線に射止められる。 「動揺するなという方が無理だろうが、トレーナーの揺らぎはポケモンに伝わる」 いいかい、ザナトアは顔を近付ける。 「いくら素早いといえど、そう遠くは行けないだろう。悔しいがあたしはそう身軽には動けない。この付近でフカマルとアメモースと待っていよう。もしかしたら戻ってくるかもしれない。それに人がいるところなら、噂が流れてくるかもし��ないからね。ここらを聞いて回ろう。あんたは市内をエーフィと探しな。……場所が悪いね。あっちだったら、ヨルノズク達がいるんだが……仕方が無いさね」 大丈夫、とザナトアはアランの両腕を握る。 「必ず見つけられる。見つけて、ボールに戻すことだけを考えるんだ。何故こうなったかは、一度置け」 老いを感じさせない強力な眼力を、アランは真正面から受け止めた。 「行けるね?」 問われ、アランはまだ隠せない困惑を振り払うように唇を引き締め、黙って頷いた。 ザナトアは力強くアランの身体を叩き、激励する。 捜索は夜通し続いた。 しかしブラッキーは一向に姿を見せず、光の影を誰も見つけることはできなかった。喉が嗄れても尚ブラッキーを呼び続けたアランだったが、努力は虚しく空を切る。エーフィも懸命に鋭敏な感覚を研ぎ澄ませ縦横無尽に町を駆け回り、ザナトアも出来る限り情報収集に励んだが、足取りを掴むには困難を極めた。 殆ど眠れぬ夜を過ごし、朝日が一帯を照らす。穏やかな水面が小さなきらめきを放つ。晴天の吉日と水神が指定したこの日は、まるで誰かに仕組まれていたように雲一つ無い朝から始まる。 キリが沸き立つ、秋を彩る祭の一日が幕を開けた。 < index >
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