#ファーミ・ファジール
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theatrum-wl · 6 years ago
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【連載】帰って来た、こまばアゴラ観劇隊Alone(2019年4月)
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本年度あのこまばアゴラ観劇隊を復活させようと思います。今回は一人でやります。2015年の経験からも容易にできることではないのですが、それに取り組む理由はこれから少しずつお伝えできればと思っています。
4月の報告は以下の3作品です。
「憧れた東京で見た光と影と」 うさぎストライプ『ハイライト』
「現代の日本の片隅に」 ホエイ『喫茶ティファニー』
「マレーシアと日本、2つの国の選挙を踊る」 ファーミ・ファジール&山下残『GE14 マレーシア選挙』
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theatrum-wl · 6 years ago
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【劇評】マレーシアと日本、2つの国の選挙を踊る
ファーミ・ファジール&山下残『GE14 マレーシア選挙』 小泉 うめ
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[撮影:Miki Kanai]
マレーシアのアーティスト、ファーミ・ファジールが国会議員になったというニュースを聞いた時はいささか驚いた。だがマーク・テの『Baling』などで観た彼のパフォーマンスを思い出し鑑みれば、そのルックス、思想、そして圧倒的なプレゼンテーションスキル、どこを取っても極めて政治家に向きの人物であると納得した。芸術と政治はしばし��相反するものとして考えられがちだが、ファーミはこの2つには強い親和性があり、自身が政治家になることも自然な流れだったと主張する。
周知の通りGE14とは2018年5月に行われたマレーシアの第14回総選挙(General Election 14)のことで、この選挙はマレーシアに独立後60年間継続していた政権の初めての交代をもたらしている。ファーミは与党に対抗する野党連合のPakatan Harapanの党員として出馬してこれに当選した。山下はファーミの友人でコラボレーターでもあり、この選挙活動に同行取材をしている。この作品はその活動をパフォーマンスとしてまとめた演劇でありダンスである。
この作品は今年のTPAMでも上演されており、その際は2部構成で上演されたが、今回は冒頭にファーミと山下が語り合うパートが置かれて3部構成に膨らんでいた。追加された第1部は導入的に松田弘子の通訳によってファーミと山下が語り合う。話題はちょうど公演の前週に日本で行われた統一地方選挙のことから始まり、マレーシアと日本の選挙の違い、また国家において政権交代することの意義やその可能性などについて2つの国を対比しながら質問を交わし合う。
このパートを置いたことで、ほぼドキュメンタリーだった作品はファンタジー性も帯びて演劇的な変化を生んでいた。ファーミのスキルがあれば英語理解のためだけなら通訳は無くても良かったかもしれないが、絵本でも読むかのようにファーミの言葉を日本語に置き換える松田の声は別の働きでこのパートの効果を後押ししていた。
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[撮影:Miki Kanai]
第2部はTPAMでは最後に行われたパフォーマンスだが、ファーミが1人で登場してこの公演の機会が与えられたことに感謝し、選挙で行った演説を再現する。先ずは旧約聖書のサムエル記を引用して、敵対する巨大与党をゴリアテになぞらえ、自らダビデとなって戦おうとした立候補時の心境を語る。だが続いてそれは誤りだったと自らを否定して、本当のダビデは彼を支持する有権者であって自分自身はダビデの投げる石にすぎない、だから私を投げてくれ、と宣言して民衆を煽る。 
その言葉自体は演説としてもウェル��イドなものだが、この時のファーミの所作、表情、発声など、そのパフォーマンスは演説するダンスとして観ても高い再現性を持っており完成されたものだった。実際に選挙序盤では苦戦を強いられていたファーミだが、様々な支援にも支えられ、劇的な逆転でこの選挙に勝利している。
TPAMでのファーミの演説は横浜の日本大通りの路上に出て行われ、更にリアリティーのあるものだった。それが叶わなかった本公演では、転換で屋台崩しならぬ屋台建てとでもいう感じで、マレーシアの選挙陣営風のテントを舞台上に立ち上げるという仕掛けが用意されていた。虚構性を施し演劇的で、追加された第1部と相乗的に効果を発揮していた。
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[撮影:Miki Kanai]
最後に第3部ではファーミが戦った選挙の記録映像を流しながら、山下が弁士となってそれを語る。ファーミは負ければあらぬ罪を着せられ牢獄に入れられるかもしれないというまさに命がけの選挙を戦っていた。一方それを見守る山下は実に能天気な感じで、時にライバル陣営に迷い込んだり、またある時は別の陣営でTシャツをもらったり、祭りとも言えるマレーシアの選挙を堪能しながらそこで起きた事実をレポートする。 
演出意図でもあると思われるが、この時の山下の身体動作がファーミの演説と対比的なダンスとして成立している。またそれはそれぞれの国の選挙行動を表現したダンスであるとも言えるだろう。山下の語りは、どんなに熱弁をふるっても空回りする日本の立候補者の街頭演説にも少し似ていた。それを観ていて起こる客席の笑いも、多くの日本人が政治に対して持っている諦めに繋がって聞こえた。
余談ではあるが、この公演の少し前に下北沢の街角で偶然ファーミに出会った。彼はベビーカーに乗せた子どもと一緒にそこを歩いていた。少し言葉を交わしたが、笑顔が印象的でとても穏やかな人柄を感じた。それは日本ではごく普通の何気ない親子の休息のようだったが、彼がこの選挙を通して晒されていた危機を知っていれば奇跡のようなワンシーンに映った。私にとっての「GE14・第4部」である。
 ・小泉 うめ 観劇人。観客発信メディアWLスタッフ。
演出:山下残 出演:ファーミ・ファジール&山下残 舞台監督:浜村修司 音響:島崎健史 照明:��辺佳奈 舞台美術:坂紀秀 演出助手・映像:西本春佳 制作:金井美希 フライヤーデザイン:京(kyo.designworks) フライヤーイラスト:宮北温夫 通訳:松田弘子 会場:こまばアゴラ劇場 日程:2019年4月26日(金)~29日(月・祝) 料金: 予約 一般 2500円 / U25 2000円 当日 一般 3000円 / U25 2500円 高校生以下一律 1000円
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