#マジック種明かし空中浮遊
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【マジシャン全員に読んで欲しい】あなたのマジックには、論理的解釈があるか。




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【種明かし】意外に簡単!お札が浮く!空中浮遊マジック! | Floating Bill Magic Trick revealed
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今週末は初夏を思わせる陽気となりそうです。桜の花びらが散るなかを散歩したり、カップ状に開いたチューリップの間を蝶々が舞っている姿を見かけたり、ツツジの花の鮮やかな姿を楽しんだりしながら、太陽のエネルギーを享受しています。ベランダのバラたちもぐんぐん成長していますし、メダカたちの食欲も旺盛です。
私たちの周りで繰り返されるこうした自然の営みはごく当たり前の姿のように見えますが、それは私たちが『原因』と『結果』というカルマの法則を魂のどこかで理解しているからだと思います。文字通り、種を蒔けば花が咲く、という『タネ』や『仕掛け』があることも経験上、知っているからなのでしょう。
最近の私の寝る前のお楽しみは、NETFLIXの『人生はマジック』というシリーズを観ること。今時のユーチューバーのような風貌のマジシャン、ジャスティン・ウィルマンが予想を超えたエンターテイメントを見せてくれます。今まで何度も目にしてきたマジックおなじみの『タネ』や『仕掛け』も、オリジナリティ溢れる斬新な演出と彼の巧みな話術でアップデートされていますし、なんと言っても彼の使うトリックには愛とユーモアと優しさと癒しがたっぷり込められていて、思わず涙…となってしまうのです。このショーの素敵なところは、マジックというものが『タネ』や『仕掛け』を介在とした心の中に起こる不思議な現象のことだと気付かされることです。そして、その現象は時として素晴らしいメッセージへと変化するのです。
その点では、ミディアムシップもある種のマジックだと言えるかもしれません。その昔、近代スピリチュアリズムの黎明期にミディアムたちが空中浮遊をしたり、エクトプラズムなどの物質化現象や霊言を伝えていた頃、ハリー・フーディーニをはじめとする一流の奇術師たちがミディアムたちのトリックを暴き出そうとしました。中にはトリックを使ったイカサマもあったでしょうが、本物の霊現象にも、実は『タネ』や『仕掛け』があります。
何故ならば、霊界通信は霊界、スピリットたちがもたらすエネルギー、メッセージという『タネ』と、ミディアムシップのメカニズム、『仕掛け』によってもたらされるからです。奇術と異なる点は、ミディアム自身は『仕掛け』自体は理解していても、『タネ』がどこから来るのか、どのようにそのミディアムシップというマジックが成立するのかを予め知らされていない、即興だというところです。
この『人生はマジック』の中のエピソードの中で、ミディアムシップの仕組みに似たマジックがありました。初デートの場面で、あるカップルがレストランのテーブルを挟んで座っています。男性の後ろにはジャスティン(マジシャン)が隠れて座り、両手だけを使って二人羽織の要領で目の前に座っている女性にマジックを見せるのです。もちろん女性にはマジシャンの姿は隠れていて見えませんので、目の前の男性がマジックを披露しているように映ります。また、男性には予めどんなマジックをするのか知らされません。そして、言うべきセリフもその都度ジャスティンから小声で指示されますから、男性は全くの即興で振る舞わなければなりません。
春学期のクラスで、生徒さんから私のブログからリンクしていたアイイスのYouTube動画やサーモン、霊界通信のデモンストレーション原稿などが見られなくなっていると教えていただきました。どうやら、アイイス事務室がなくなったのと同時にアイイスのYouTubeアカウントと事務室ブログが閉鎖されたようです。その代わりといってはなんですが、デモの動画が一つだけ私のファイルに残っていたので先日YouTubeにアップいたしました。2017年の夏、私がアイイス認定ミディアムになって、一年未満の頃のデモです。途中、他の方の顔が映っている場面はカットしています。今とは違って初々しい〜(自分で言う?)。私の周りで二人羽織のようになって一緒に働いてくれているスピリットの存在、感じられますか?
youtube
明日はアイイスのスプリングフェスティバルが開催されます。残念ながら私は都合があって参加できませんが、アイイス認定ミディアムの皆さまの素晴らしいデモンストレーションのメドレーをぜひ楽しんでください!ご参加はこちらからどうぞ。
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4月21日・22日に開催するワークショップ『ALL ABOUT ミディアムシップ』ではミディアムシップがもたらす素敵なマジックに触れ、霊界の『タネ』や『仕掛け』について学びながら、さらにスピリットたちの光に近づいていただきたいと思っています。多分、今回もあっという間に時間が過ぎてゆくでしょう。皆さまのご参加をお待ちしています💕
All About ミディアムシップ
4月21日(日)10:00~17:00(1時間のお昼休憩あり)
4月22日(月)10:00~17:00(1時間のお昼休憩あり)
料金:1回 8,000円(アイイス会員・税込)・10,000円(非会員・税込)
両日共に同じ内容です
どなたでもご参加いただけます
最少催行人数:3名
ミディアムになりたいと思っている人、ミディアムの役割について知りたい人のための6時間ワークショップです。アイイスでの講師歴9年、ミディアム歴8年、イギリスのアーサー・フィンドレイ・カレッジにて数回に渡って講師・プロの為のミディアムシップ、サイキックアート、トランス、シャーマニズム等のワークショップに参加し、海外のミディアムとも交流のある講師による最新の情報を含めたレクチャーとゲーム感覚で楽しめる実習を通じて、あなただけの唯一無二のミディアムシップを作り上げていく過程を経験していただきます。
あなたの中に潜在する本来の能力を知り、それを呼び覚まし、育み、特化した分野をさらに伸ばして磨き上げましょう。そして同時に自分の苦手な分野を知り、それを伸ばす方法も試してみましょう。
ミディアムシップは決して完成することのない、永遠に学び、伸ばし、育むことのできる能力です。その過程を指導霊の応援と協力のもと、楽しみながら一歩一歩着実に進んでゆきましょう。大切なのは、自分に期待しながら挑戦し続けること、自分を信じて諦めないことです。練習すればするほど、そして失敗を重ねるほど感覚が研ぎ澄まされ、あなたは素晴らしいミディアムになれるでしょう。
レクチャー内容
・ミディアム、ミディアムシップとは
・ミディアムシップの種類とその役割
・良いミディアム、ミディアムシップとは
・霊能力はなぜ与えられ、なぜ失効するのか
・ミディアムとサイキック
・想像と霊感の違い
・デモンストレーションとカウンセリング
実習
・シッティング・イン・ザ・パワー
・ミディアムシップクイズ・30問に挑戦!解説付き
・サイキック、ミディアムシップ、トランス各実習
・直感と指導霊により深く繋がるための各実習
このワークショップは以下のような方に向いています
・ミディアムシップついての理解を深めたい
・ミディアムシップの練習、経験をしてみたい
・ミディアムという役割に興味がある
・ミディアムになりたい
・指導霊との繋が��を深めたい
・本当の自分の人生の目的を探りたい
・自分自身の可能性や能力を探りたい
・霊性開花を通して人の役に立ちたい、社会に貢献したい
このワークショップは2019年4月17・21日に開催した同タイトルのワークショップの内容と同様ですが、一部を加えたりアレンジしてアップデートしています
詳細・お申し込みはこちらからどうぞ。
ショップからも直接お申し込みいただけます。
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サンデー・サービス(日曜 12:30〜14:00)詳細はこちらから。
5月19日 担当ミディアム:澤輪・森
6月30日 担当ミディアム:ゲスト・森
ご参加は無料ですが、一口500円からの寄付金をお願いしています。
当日は以下のリンクよりご参加ください。
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ドロップイン・ナイト 木曜日 19:00〜20:00
5月23日(木)指導霊(スピリット・ガイド)のサイキックアート
詳細とお申し込みはこちらからどうぞ。
過去の開催の様子はこちらからご覧ください。
夏学期クラスのスケジュールが決定いたしました。サイトとショップにてお申し込みを受付中です。(アイイスのサイトでも告知されています)
春学期に蒔いた霊性開花という名の種を、眩しい太陽と清らかな水、豊かな土壌、そして爽やかな夏の風のエネルギーを享受しながら、共に大切に育んでゆきませんか?皆さまのご参加をお待ちしています!
アウェアネス・ベーシック前期 Zoomクラス
月曜日:10:00~12:00 日程:5/13、5/27、6/10、6/24、7/8
火曜日:13:00~15:00 日程:5/7、5/21、6/4、6/18、7/2
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アウェアネス・ベーシック後期 Zoomクラス
土曜日:19:00~21:00 日程:5/11、5/25、6/8、6/22、7/6
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アウェアネス・ベーシック通信クラス
開催日程:全6回
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アウェアネス・オールレベルZoomクラス
火曜日:19:00~21:00 日程:5/14、5/28、6/11、6/25、7/9
木曜日:10:00〜12:00 日程:5/9、5/23、6/6、6/20、7/4
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アウェアネス・マスターZoom クラス
火曜日:19:00〜21:00 日程:5/7、5/21、6/4、6/18、7/2
金曜日:19:00〜21:00 日程:5/17、5/31、6/14、6/28、7/12
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サイキックアートZoomクラス
日曜日:17:00~19:00 日程:5/12、5/26、6/9、6/23、7/7 水曜日:16:00~18:00 日程:5/15、5/29、6/12、6/26、7/10
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インナージャーニー 〜瞑想と内観〜 Zoomクラス
月曜日:16:00~17:00 日程:5/20、6/3、6/17、7/1、7/15
土曜日:10:00~11:00 日程:5/11、5/25、6/8、6/22、7/6
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マントラ入門 Zoomクラス
土曜日:13:00~15:00 日程:5/18、6/1、6/15、6/29、7/13
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トランスZoomクラス
土曜日:19:00~21:00 日程:5/18、6/1、6/15、6/29、7/13
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サンスクリット・般若心経 Zoomクラス
月曜日:13:00~15:00 日程:5/20、6/3、6/17、7/1、7/15
水曜日:19:00~21:00 NEW! 日程:5/15、5/29、6/12、6/26、7/10
サイトのクラス紹介ページはこちらです。
継続受講の方は直接ショップからお申し込みください。
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二人の好物がコロッケになった話
タイトルの通りです。二人のコロッケ好きという共通点、偶然なのかどちらかの布教なのか、色々なパターンが考えられますが、どちらも別に好物ではなかったというパターンをつらつら考えた結果です。ネタ被りあったらすみません。
こんなに自分が奥手だったなんて、知らなかった。そういえば、まともに恋愛もしたことがないんだった。 そんな気づきを得たのは、ひとえに最近新しく部下になった3つも年下の少年のせいだった。 もう少し一緒にいたいな、と思ったとき。笑ってほしいな、と思ったとき、とりあえず模擬戦を申し込んでる。そう打ち明けたとき、先輩諸氏はちょっと見たことがないくらい絶望的な顔を晒した。 そんな気は、俺だってしていたんだ。ああ、これたぶん「一般的」ってやつじゃないなって。でも俺と出水で、二人とも「一般的」とはかけ離れた人間なんだから、別にこれでも良くない? そう言い訳したら、「何が『俺と出水』だ」と諏訪さんに怒られた。「まだ『俺と出水』なんてくくれるような関係でもないくせに」というちょっと難しい言い回しで、風間さんに視線で助けを求めたら「付き合ってから言え、ってことだ」とどうでも良さそうに説明してくれた。 まあ、それは確かに。このままじゃ、たぶん「上司と部下」以上にはなれないんだろうな。ただ、強くて、一緒にいると楽しいだけの隊長になって、それじゃやっぱり満足できないと思ったから、俺は出水��こと好きなんだ。恋愛的な意味で。 でも実際のところ模擬戦に誘うのが一番出水が喜ぶんだけど、どうしたらいいんだろう。
作戦室のソファで寝っ転がって私物のスマホをなにやらいじっている出水は、特に用事も無さそうで、ただなんとなく帰るのが億劫なんだろうなって見ていてわかった。そろそろ夕食時で、これを過ぎてしまえば任務もない未成年の隊員が本部をうろうろしているとあまり良い顔をされない時間帯になる。俺もいい加減帰るかと、腰をあげたところだった。 「出水」 「はーい?」 スマホからいとも簡単に目線をはずし、上向いて逆さまにこちらを見上げる。無防備に晒された喉元が真っ白で、手をのばしてくすぐってやりたくなった。もちろんそんなこと、しないけど。できないけど。 「俺、帰るけどお前は?」 一緒に帰るか、という一言には至らなかった。断られたら、寂しい家路になる。 「あれ、もうそんな時間ですか?」 握りしめたままだったスマホに目を向け、それからすっかり帰り支度を整えた俺をもう一度見て、「太刀川さんが帰るならかーえろ」と歌うみたいに言って立ち上がった。 なんだこいつ、かわいいな。 本人にとっては大したことないフレーズにまで(それこそ「カラスが鳴くから」レベルに意味がなくても)ちょっと嬉しくなる俺は本当に単純で簡単だった。 ろくに荷物もない高校生はすぐに身支度を整えて俺の隣に並ぶ。「さ、帰りましょ」と一緒に帰るのを当然のように言った。 互いの家の位置くらいは知っていた。行ったことはないけど。ボーダーの秘密の連絡通路を使って外に出て、それから500mくらい歩いたらもう俺たちの帰り道は別々になる。本部に近い方がいいや、と警戒区域の近くに部屋を借りたこと、特に後悔はないけど、こういう時ちょっと損した気分になる。もう少し遠ければ、出水とそれだけ歩けたのに。うちまで送るって言ったらちょっと過保護だろうか。でも、出水の家はわりと街の中心部に近くて賑やかなとこだし、高校生男子を送るほどの距離でもない。でもまがりなりにも部下だしな。そんな打算を頭で巡らせながら、出水と歩くほんの少しの距離。 古い商店街は、半分くらいシャッターが降りていて、店の明かりよりも古めかしいデザインの街頭の方が煌々と地面を照らしていた。時間も時間だけど、それより警戒区域に近いこの場所を嫌って店を閉じた人が多いからだろう。それでもなおこの場所にとどまろうという店主たちは逆に図太い人間が多い。同じように図太くこの辺りに住み続ける地元住民やボーダーの人間に、こ��商店街は重宝されていた。俺も生活用品の買い物はたいていここですませている。 この商店街を抜けたところが、俺と出水の帰り道の分岐点だった。出水と他愛のない話をするこの時間が名残惜しくて、だけど今更この状況で模擬戦に誘うこともできない。「家、寄ってく?」なんてちょっとまだ早い。そもそも人を呼べるようなーーしかも気になる相手を初めて呼ぶような、そんな状態の部屋じゃない。そろそろ洗濯しないと限界だな、と太刀川をして思わせる、そういう惨状だった。 「それで、二宮さんがー……」 二宮の話なんて全く頭に入って来なかったが、話しながら出水の歩調が自然と弱まるのはわかった。もう少しで分かれ道だ。 あー残念だな、でもまぁ、明日どうせ会うんだし。 そう思って、話の区切りがついたあたりでじゃあな、と別れる準備をした、その時。 唐突に思い出した。そういえば、こいつら明日からテスト週間じゃないか? 明日からしばらく大学生中心の編成になると、風間さんから編成表を受け取ったばかりだった。テスト週間だって構わず本部で遊んでる米屋と違って、出水は食堂で勉強していることはあっても隊室に来る頻度はぐっと下がる。それに今日見た編成の感じだと、俺の方が任務についていてほとんど本部の中にはいないだろう。そう思ったらつい、何も考えずに口が開いていた。 「ちょっと待て」 おつかれっしたー、と何の未練も無さそうに爪先を俺と別の方向に向けようとする出水の腕をつかむ。 「はい?」 といっても特に用事はないんだった。 あー、と無意味に誤魔化して、そうしてふっと鼻先をくすぐったのは、胃を刺激する油の匂い。身体に悪そうなものに、人は無条件で引きつけられる。食べ盛りの想い人を引き留めようとしている、俺みたいな人間は特に。 「──腹、空かね?」 出水は一瞬理解が追いつかなかったようだった。口をぽかりと開けて、だけどすぐににやりと笑って「空きました!」と腹に手を添えて良い返事。よしよし、と思惑通りの答えに満足する。 錆び付いたシャッターの降りた隣の洋品店に対して、その総菜屋は未だに裸電球が店頭で明々としていた。保温器のオレンジの光も相まって、商店街の終点にしては視覚的に賑やかだ。中を覗いてみるとさすがにこの時間にトレーの上に残っている品は普通のコロッケ一種類。ガラスケースの上には、段ボールに「半額!!」とマジックで大きく書かれた看板が立てかけられている。 「これでいい?」 指さして聞くと、「もちろん」と出水は目を細めて大きく一つ頷いた。 「おばちゃん、コロッケ2個ちょうだい」 店の奥で隅っこに置��れた小さなテレビに目をやっていた総菜屋のおばちゃんは、そこで初めて俺たちに気が付いたように「はいはい」とリズミカルに言ってこちらにやってくる。 「あんたたち、ボーダーの子かい?」 にこにこ笑いかけられて、思わず大きく一つ頷けば、「いつもありがとね。お疲れさま!」とちょっとびっくりするくらい大きな声で言われて、形が崩れたコロッケをもう一つおまけしてくれた。 「わ、ありがとうございまーす!」 すかさず礼を言う出水は要領が良くて、俺も続けて「ありがとうございます」と頭を下げる。やっぱり年上だし、隊長だし、落ちついて聞こえるように意識して。 そのまま出水を見たら、ちょうど目があって思わずふたりで笑ってしまった。おばちゃんに労われたことも、コロッケをおまけしてもらったことも、出水と目があって、それから二人で笑えたことも、出水と二人で共有することが、一つずつ増えていくのが嬉しくておかしい。 「うわ、うまそ」 四つ辻の斜向かいにある小さな公園の、ブランコに腰掛けてビニール袋を広げると、むわっとかぐわしい油の匂いが広がった。 「ほら、落とすなよ」 「太刀川さん、おれのこと相当子どもだと思ってるよね」 拗ねるような台詞なのに、どこかくすぐったそうにするから、そうできるうちは思いっきり甘やかしてやりたくなる。それほど遠くない未来に、甘やかすだけで収まらなくなるだろうけど。 少し離れたブランコの間。コロッケの挟まれた紙包みを、手を伸ばして出水に差し出す。出来立てというわけではなかったけれど、しっかり保温さ���ていたコロッケからは十分熱が伝わってきて、掌は熱かった。 受け取ろうとした出水の指先が袋に触れて、小さく「あつ、」と漏らしたのが、俺の手のことだと一瞬勘違いしそうになった。慌てて手を引こうとして、袋を取り落としかけたのを、出水が立ち上がって、俺の手ごと両手で掴んで事なきを得る。 「あ、ぶなー」 おれに落とすなって言っといて!って抗議されて、全然、年上の威厳なんて無くてちょっと情けないけど、全面的に俺が悪いから「すまん」と素直に謝る。出水は、 「うそうそ、おれも、ちょっとびっくりして、受け取りそこねちゃったから」 すみません、と、俺の手を両手で包んだまま、前髪の触れそうな至近距離で笑った。
コロッケは魅惑の匂いに違わず、残り物とはいえ衣はさくさく、中はほくほく実にうまかった。コロッケってのは、作るのは面倒なわりに子どもにはさほど喜ばれないので、家庭で作るにはいまいちハードルが高いらしい。所謂「和食」が食卓に上ることが多かったうちでは、余計にコロッケが食事のメニューに取り入れられるのは稀だった。 「コロッケなんて、久しぶりに食べたかも」 「うちも。母さん油使うの嫌がるし、姉ちゃんも揚げ物ヤダっていうから」 母さんと姉ちゃんがそうなった���もう、おれと父さんの意見とかないも同然なんですよね、と出水は大げさに肩をすくめてみせた。 「久しぶりに食べると、こんなうまかったっけってなるよな」 「はい」 話しながら、その合間に出水は少しずつコロッケをかじっていく。コロッケはそれなりにボリュームがあったけど、俺の口なら三口くらいで食べ終えてしまえる。だけど出水の口だと、その三倍くらいかかりそうだった。まだできあがっていない薄い身体と同じように、薄い唇と真珠みたいな小さめの歯の向こうに少しずつコロッケがかじられて消えていく。早々に自分の分を食べ終えたおれはその様子をリスみたいだな、と思いながら見守っていた。 ようやく出水が一つ食べ終わったとこで、おまけにもらったもう一つを半分にして二人でわけた。ちょうどその時、商店街で唯一未だ明かりの点っていた例の総菜屋の明かりが消えて、残されたのはアーケードの上に掲げられている街灯だけになった。そこからも距離のあるこの公園はいっそう暗くなる。その薄暗がりの中で、出水の明るい髪色と白い肌が幽霊みたいに浮き上がって見えた。だけどその、幽霊みたいに色彩の薄い後輩が、俺の手元にあるコロッケの片割れをもぐもぐ小さな口で、機嫌良さそうに頬張っている。その姿にギャップがありすぎて、だけどこういうとこも好きだな、とひそかに思った。そんなことをぼんやり考えながら、自分の分を口に入れる。一口で食べてしまえるサイズだった。
ようやく出水の試験期間が終わり、日常が戻ったその日の夜。やはりだらだらと居残っていた俺たちは、同じタイミングに本部を出て、俺はやっぱり進歩なく、出水を引き留める算段を頭の中でしていた。同じ手を使うのは、ちょっと芸がないかな、と思いつつ、それでも商店街を抜けるあたりで隣歩く出水を窺うように歩調を緩めるのを止められなかった。今日は昼飯、何食べてたっけ。国近の持ってきたおやつを、どのくらいつまんでた? 気分じゃないとか断られたら、しばらく立ち直れないかもしれない。 「太刀川さん」 そんなふうに頭を悩ませている俺の上着の袖を、出水が控えめに引っ張ってへらりと笑った。その人差し指が指さす先には、商店街の終着点、煌々と光を宿した例の総菜屋。 「お腹、減りません?」 「──減った、減ってる」 「こないだのお礼に、奢るから食ってきましょ」 ああ、ほんとうに、出水ほど俺のことをわかってるやつはいない。
「いいよ、俺上司だし、年上だし」 「いいからいいから、給料出たばっかだし、遠慮しないでください」 浮ついた声で言いながら出水の見ている保温ケースの中には前回よりも多く総菜が残っていた。コロッケに限らず、唐揚げやらメンチカツやらがいくらか残っている。店のおばちゃんに、「この間おまけしてくれたから」と出水は先に父親へのおみやげだと言って唐揚げを包んでもらっている。 「じゃあ、コロッケで」 「え、良いんですか? 遠慮してます?」 それも多少はあったけど、最初にお前と食べたコロッケの味が忘れられないからってのが本当のところだった。だけどそんなこと���まく伝えられる気もしなかったから、「前食べたらうまかったからいいんだ」と肝心なところだけ抜いて返した。 「ふーん、じゃおれもそうしよ。すみませーん、それとコロッケ2つ追加で。すぐ食べちゃうからパックじゃなくて紙でね」 出水の言葉に、総菜屋のおばちゃんは「仲良しでいいわね」なんて笑ってた。それから「また来てね」と。出水はそれに「はぁい」と、年上に甘える例のちょっと母音をのばすような発音でそう答えた。そうか、出水的にはまた次があるらしい。それなら今度はもうちょっと気軽に誘えるな、と俺は下心ばかりの頭で考えていた。これで模擬戦以外の手札が増えたぞ、と諏訪さんや風間さんに心の中で勝ち誇る。 それ以来、やっぱり諏訪さんに絶句されるくらい今度は馬鹿みたいに帰り道にその総菜屋に寄りまくった。もちろん、俺にも出水にもそれぞれの付き合いがあり、俺の会議が長引く時もあれば出水が同学年の連中とランク戦をして居残ることもあったから、そう毎日というわけでもない。だけど帰るタイミングが合った時には必ずと言っていいほどそこへ行き、二人でコロッケを頬張った。10回目くらいにあの気の良いおばちゃんが心配そうに他の総菜を薦めてくれた時にはちょっと申し訳なくなった。でもやっぱり、俺は出水と食べるときにはあの時と同じコロッケを食べたかった。
それは、ちょうど15回目のコロッケを食べた頃だった。 広報用の雑誌に載せるから、とプロフィールの記入用紙が配られたのはもう少し前の記憶で、すっかり忘れ去られていたそれを出水が積み上がった資料の中から発掘してきたのだ。その資料こそ、俺が今苦しめられているレポートに使われるはずのもので、ちなみに集めるだけで満足して放置していたせいでまだほとんど目を通し切れていない。 「太刀川さん、これまだ提出してなかったんですか」 資料の整理を手伝ってくれていた出水が人差し指と親指でつまみ上げたアンケート用紙をヒラリと揺らす。 「バッカお前、今それどころじゃないだろ、明らかに」 「いやー、でもこれ今日締切ですけど」 「見なかったことにしろ」 「うわ、さすが隊長、模範解答」 出水の皮肉に応じる時間も惜しいほど、今はせっぱ詰まっている。特に考える必要もないくらい簡単なアンケートだが、だからこそ余計に意識を割くのがもったいない。その上締切を延ばしてくれとも言いにくい。 完全にキャパシティをオーバーしている自隊の隊長を後目に、出水は申し訳程度の資料の整理も終えて暇そうにソファに横たわっていた。他人事の顔で眠そうにこちらを眺めている。この様子じゃ自分の分はとっくに提出しているらしい。 「ああ、じゃあお前書いといてくれよ」 「えええ、無理でしょ」 単なる思いつきだが、それはなかなか良いアイデアに思えた。 「いや、いける。お前、俺のことならだいたい知ってるだろ」 「そりゃまあ、それなりに?」 「最��にチェックはするから。それで、もし間違いなかったらなんか奢ってやるよ」 お前が俺のことどれだけわかってるか、テスト。 一足先に学期末のテストを終わらせた高校生への恨みも込もっていたのだけど、その部分は通じなかったらしい。「奢る」の一語を聞いて出水は途端に目を輝かせた。 「マジすか。やります」 この変わり身の早さはいっそ気持ちがいい。勢いよく身を起こして用紙に向き合った出水は、時々悩むように首をひねりながら、それでも少しずつ空欄を埋めていった。 あの公園で、互いの話をさんざんした。他愛のない話ばかりだったから、「知ってるだろ」なんて嘯いておいて本当はどれだけ出水の記憶にとどまってるか定かじゃない。それでも、今出水が俺のことを思い出そうと思って、あの公園での時間を思い返してくれているなら、それはそれで嬉しかった。 レポートも徐々にだけど進んで、完成にはほど遠いものの見通しがつき始めた頃、「できました!」と高らかな宣言が上がった。 差し出されて目を通した記入用紙にはやや右上がりで角張った出水の筆跡で、見慣れた俺のプロフィールが書かれていた。 出水の字で「太刀川」って書かれてるのが、なんか良い。 内容とは関係ない部分に浮かれつつ、「好きなもの」の欄に目が止まる。 「うん?」 「違うとこ、ありました?」 「いや、お前この『コロッケ』って」 「え? 太刀川さん、好きでしょ」 あれだけ美味そうに食べてるんだから。 何を当たり前のことを、とでも言うように首を傾げた出水の髪がふわりと揺れる。 「うーん、ちょっと違うような違わないような」 「何それ」 「いや、好きじゃないわけじゃないんだけど」 「おれも『コロッケ』って書きましたよ。だからいいでしょ」 「何が『だから』なのか全くわからん。……でもまあ、良いよ。お前がそう言うなら」 そうか、お前も好物コロッケにしたのか。同じ物が好きって、しかもそれが公表されるってちょっと良いんじゃないかと頭の沸いたようなことが過ぎってしまった。諏訪さんたちに知られたら「小学生か!」とそれこそ詰られそうな甘酸っぱいことが。 「じゃあ、せいかい?」 「正解正解」 95点くらい。付け加えると、「何だよそれ!」と不服の声が上がる。 本当は、その項目に「出水公平」と冗談でも書いてくれれば満点をやってついでに花丸もつけて、いくら奢ってやったって良いくらいだったけど。それにはまだ少し言葉が足りない。15回コロッケを一緒に食べたって、それで伝わるほど甘くはないと知っている。 でも、出水が自分の好きなものに「コロッケ」と書いた理由の中に、俺と同じ気持ちが少しでもあるなら、16回目には伝えても良いかもしれない。 俺別に、コロッケが特別好きだったわけじゃないんだよ。普段わざわざ買って食べたりしないし。あの時食べたのだって半年ぶりくらいのレベル。それでも好物だってお前が思うくらい美味そうに見えたんだとしたら、別に理由があるんだよ。なあ、なんでかわかる?
* * *
高校生は今日もやかましい。 食堂でうどんを食っている俺の背後から、耳に馴染んだ声が聞こえた。 「今日の1限の化学でさぁ、」なんて俺にはわからない学校生活の話をするのは確かに出水の声だった。どうやら俺には気がついていないようで、連れ立ってきた米屋たちとともに俺のいるテーブルから少し離れた席にガタガタと腰を下ろす音が聞こえた。ランク戦に夢中になって昼飯を逃した俺はともかく、昼食にも夕食にも半端な時間だ、任務前の腹ごしらえだろう。トレーをテーブルに置く音じゃなくて購買で買ったらしき物をビニール袋から取り出すガサガサという音が耳に入ってきた。 声をかけても良かったが、どうせこの後任務でも会うし高校生の会話に割って入るほどの用事もない。何より、太刀川隊にいる時の出水と高校生組で連んでいる時の出水には微妙な違いがあって、自分の前ではあまり見せない気軽さとか粗暴さとか、傍若無人さとか、そんなものを遠くから眺めるのが、俺はひそかに好きだった。 「ーーだから言ったじゃん、ぜってぇ無理だって」 「やーイケると思ったんだけどなぁ」 なんてだらだら続ける会話の合間にパッケージをあけて「あ、これ新作じゃん」なんて物色する声も聞こえる。興味が次から次へ移り変わって、肝心の会話の内容もおざなりになって取り留めがない。聞いてて飽きない。 「あ、アイス。いつの間に入れたんだよ。ずりぃ」 「ずるくねぇよ、お前も買えば良かったじゃん」 「あのコンビニ寒すぎて、アイスって気分にならなかったんだよな」 「そだっけ?」 「お前と違ってセンサイなの、おれは。年中半袖野郎にはわかんねーよ。でも、人が食べてんの見ると食いたくなるよな」 「こっち見んな、寄んな」 「ケチ」 「お前の一口でけぇんだもん」 「は、そんなことねぇよ」 「佐鳥いっつも泣いてんじゃん」 「人聞き悪いこと言うな」 「いや、マジで一気に半分くらい無くなんじゃん」 「そだっけ?」 「自覚ないの、タチわりぃ」 「うっせ。良いからよこせ」 一連の会話を聞くともなしに聞いていて、あれ? と思う。 俺自身が出水にねだられたことは無いが、出水の一口が大きいイメージは無かった。聞いてて、へぇそうなのか、なんて暢気に思っていたけど、ふと浮かんだ光景にぶわっと違和感が広がる。あいつはいっつもあの小さい口で、ちまちまとコロッケを啄んでいた。俺だったら三口で食べ終わってしまうようなサイズのそれを、時間をかけて、少しずつ。とっくに食べ終わった俺はいつもそれを眺めて待っていて、その分だけ一緒にいる時間が増えた。そう思っていたのに。 座る椅子がガタンと派手な音を立てるくらい、勢いよく振り返る。こちらを向いていた米屋の「あ、太刀川さん、ちっす」、なんて挨拶を意識の端っこで聞いて、だ���どそのほとんどはただ一人、こちらを背にして座る、見慣れたふわふわの頭に向けられていた。そのふわふわ頭が、米屋の挨拶につられるようにこちらを振り向く。 「あれ、太刀川さん、そんなとこにいたの」 そんなふうにこっちの動揺なんて気がつきもしない出水も、さすがにこの���黙と俺の視線を怪訝に思ったのか、自分たちの会話を反芻するように目線を上にあげ。そして「あ、」となんとも間抜けな声を漏らした。 「あは、バレちゃいました?」 悪戯が暴かれた子どもみたいに無邪気に笑う、三つ年下の高校生に問いつめたい。 お前の何が「バレた」って言うの。お前のその「ふり」の話? それともその先にある気持ちの話? 正直言って結局俺は何の確信も、まだできてない。言葉にしないと伝わらないって、自分でも反省したばっかりだ。だからはっきり言ってくれ。 何しろ恋愛初心者で、恋の駆け引きも手管も、何もわかっちゃいないんだから。
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翻訳記事:エンカウンター・オヴ・ジ・ウィーク「ハイドラ征伐」
原文はこちら (2020/6/20更新の記事となります)
注:シナリオの翻訳記事となります。DM以外が読むと大きなネタバレとなります。
訳注:文章中に登場する「ハイドラ」は「モンスター・マニュアル」掲載の「ヒュドラ(246ページ)」を指します。テーロス世界を舞台にしたシナリオであるため、「マジック・ザ・ギャザリング」の定訳に従って「ハイドラ」と表記しています。
著:James Haeck
翻訳:つくも
今週の遭遇は、古典神話に登場するクリーチャーである「ハイドラ」に着想を得ている。古典的神話は西欧のギリシャ・ローマ神話としてよく知られており、古代、つまり紀元前8世紀~紀元後6世紀までの長い期間に地中海や小アジアに存在した文化、歴史も含まれる。このような文化や神話には、エジプト、ペルシャ、フェニキア、カルタゴなどの地域が含まれる。
この遭遇は古代地球をもとにしたファンタジー世界でのゲームで使用することも、次に発売されるソースブックである「Mythic odysseys of Theros」で解説されるテーロス次元に合わせて調整して遊ぶこともできる。

テーロスのハイドラ
ハイドラはテーロスの自然領域を脅かす恐るべき獣であり、ドラゴンやクラーケンと同様に恐れられている。モンスター・マニュアルに記載されたハイドラの標準的な描写はテーロス世界を舞台にしたゲームでも十分に正確なものであるが、モンスター・マニュアル記載の沼地に棲む“一般的な”ハイドラ以外にもハイドラは存在する。それらの伝承上の大きな違いは、その起源にある。ティアマトによって殺害された竜神の血液から作られるのではなく、テーロスのハイドラは自然の生物種のひとつである。多くの場合、ハイドラたちは自然の神ナイレアの配下であるか、苦悶の神ファリカの寵愛を受けた怪物でもある。
ハイドラはしばしば、一地域の食物連鎖の頂点にある文明圏との境界を歩き回っているのが見受けられる。ハイドラは農場や辺境の集落にとって非常に危険な存在となるが、ハイドラの群れから怪物のたった一匹を仕留めることで神々の心を乱すような危険を冒す者はほとんどいない。人々が本当に絶望に捕らわれたときにのみ、彼らは危険な捕食者を倒すための英雄を求めるのだ。
この遭遇は物語のクライマックスとなる戦闘であり、単体のボス戦として使用することもできるし、この戦闘で終結するアドベンチャーを作成することもできる。このアドベンチャーについてひとつの方法を紹介しよう。
・アクロスの都市国家近くの農地を流れる川が、最近干上がってしまった。土地の農夫たちは、凶悪なハイドラが川の水源をせき止めて棲み付いてしまったしまったのだと神託者から聞いた。この集いに導かれてきた苦悶の神ファリカと自然の神ナイレアの神官たちの意見は不思議なことに一致している。異なる点は多いものの、それぞれの神官はこの苦難に挑む冒険者に、ハイドラの命を救い、都市国家から離れた別の土地へと追い立てるのみにするように熱心に訴える。
・キャラクターたちは、ナイレアによってハイドラの守護のために力を増したダイアウルフや他のニクス生まれの獣たちに悩まされながら自然の中を旅していく。
・キャラクターたちが川の源流へとたどり着くと、木々が根こそぎ倒れて川の細いところに埋もれ、いくつもの小さな小川が水を注ぐ深い溜池を作っているのを見つける。周囲の風景は分断された川によって湿地に変わってしまっている。キャラクターたちが勝利するには、自分の縄張りでハイドラと戦わなければならない(これについては後述の遭遇で詳述する)。ハイドラに勝利��たならば、キャラクターたちはアクロスの郊外に戻り、農民たちが集めたささやかな報酬を受け取るだろう。
・もし彼らがハイドラを生かして問題を解決したのであれば、ナイレアの神官からより大きな報酬が支払われることになる。神官はアクロスのナイレア神殿でより大きな、より大きな報酬を得られる仕事をしないかと冒険者に勧めることもあるだろう。
戦闘遭遇:ハイドラ征伐
この戦闘は8レベルのキャラクターのパーティに適している。この戦闘に登場するハイドラを『Mythic Odysseys of Theros』に掲載された鉄鱗のハイドラ(Ironscale Hydra)に置き換えることで、12レベルキャラクターのパーティに適した戦闘に変更することもできる。
遭遇の戦場:
この遭遇は、水中にあるハイドラの巣で行われる。このハイドラは天然の泉の周りの木をなぎ倒し、泉が流れ込む川の河口をせき止めた。これにより泉は濁った湖に変わり、無数の小さな支流が周辺を草生した沼地へと変えた。
広さ:
ハイドラのダムによって作られた湖は、長さ約120フィート、幅200フィートの楕円形の空間を満たしている。湖の最も深いところは水面から60フィートあり、湖岸から浅い土手が約5フィートあり、そこから急激に深くなる。湖底には巨大な岩がいくつかあり、湖底で戦闘を行う場合には、クリーチャーはそれを遮蔽として使用できる。川の源流は岸側にある湧き水で、滝として湖に流れ落ちている。
ダム:
河口は幅約30フィートの水路で、二つの岩に挟まれている。今のところ河口は湖の南端にあり、石や瓦礫、十数本のなぎ倒された樹木によってせき止められている。このダムは、湖の東西を結ぶ全長30フィートの橋にもなっている。キャラクターたちはダムの端からでは効果的なダメージを与えることはできないが、側面にある二つの岩を押し出すことでダムを不安定にさせることができる。5フィートの岩を押し動かすには、アクショ���として難易度20の【筋力】〈運動〉判定に成功する必要がある。両方の岩が少なくとも5フィート動かされたならなば、ダムは崩壊して川は氾濫を始める。湖は2d10時間かけて排水されることになる。
別の方法として、キャラクターがダムの上に立ってダムそのものに攻撃を行うこともできる。ダムはAC13、hp75を持ち、[毒][精神]ダメージを無視する。ダムの上に立っているキャラクターが攻撃や呪文によるダメージを受けるたびに、難易度15の【敏捷力】セーヴに成功しないかぎり、詰まれた樹木から滑り落ちて湖に落下してしまう。
ひとたびダムが決壊したならば、湖にいる各クリーチャーはそのターンの開始時に難易度20の【筋力】セーヴに成功しなければ、7(2d6)点の[殴打]ダメージを受けるとともに、川の流れが元に戻る際に南に120フィート流されてしまう。激流に飲み込まれたクリーチャーは各ターンの開始時にこのセーヴを繰り返さなければならず、成功することで脱出することができる。このセーヴの難易度は各ターンの開始時に2点ずつ減少し、最低で10まで低下する。
ハイドラの行動:
ハイドラが起きている間、魚を捕らえるために湖の中に潜んでいる。ハイドラは1時間の間呼吸を止めることができ、その後水面に出て湖の日当たりのよい海岸で日光を浴び、周囲の沼地で狩りを行うか、水の中に戻る。
キャラクターがハイドラの巣に到着したのならば、ハイドラは湖で魚を探している。難易度15の【判断力】〈知覚〉判定に成功したキャラクターは、湖の暗い深みにその影を見つけることができる。水中でハイドラと戦うのは容易ならぬことであり、キャラクターたちは陸上でハイドラと戦う方法を探すかもしれない。難易度15の【知力】〈自然〉判定に成功したキャラクターは、ハイドラが1時間しか息を止められないという話を思い出す。彼らはこの情報を使用して、クリーチャーが呼吸のために浮上する隙を狙って待ち伏せをする計画を立てるかもしれない。
ハイドラの戦術:
ハイドラは水中にいる間は人間たちから最も安全であることを知っている。湖の濁った水中にいる間、それは湖の外からの攻撃に3/4遮蔽を得ている。可能であれば、それは湖岸にいるクリーチャーに噛みつき攻撃(間合い10フィートを持つ)��攻撃を行う。それができない場合にはキャラクター1人に十分近づくまで浅瀬や湖岸を移動し、すべての頭でそのキャラクターを攻撃したあと残りの移動力で水中に滑り込む(これは機会攻撃を誘発しない)。
ハイドラは水中で戦うようにキャラクターを誘導しようとするが、水中ではハイドラが有利であることが明らかである。キャラクターが水中へ行こうとしない場合、ハイドラは最後の手段として重層鎧のキャラクターをつかまれた状態にしようとする可能性がある。
ハイドラは気絶しているか、魔法や別の方法によって無力状態になっていない限り死ぬまで戦う。例えばダムが壊れたときにハイドラが流されてしまった場合、それはその巣から流され激流から脱出したあと、別の場所で新しい狩場を求めて去っていく。
ハイドラによるつかまれた状態に関する注意点:
ハイドラが複数回攻撃のアクションを行った場合、ハイドラの頭の数に等しい回数の攻撃を行うことができる。戦闘開始時点のハイドラの頭は5つである。ただし、ハイドラがアクションを使ってクリーチャーをつかもうとする場合には、複数回攻撃は使用しない。つまり、ハイドラは1ターンに1回のみつかみかかりを試みることができる。
水中での戦闘:
ハイドラは水泳移動速度を持っているので、水中でも通常通り戦闘を行うことができる。水中にいる場合、ハイドラは[火]ダメージへの抵抗を持つが、いぜんとしてあらゆる[火]ダメージは複数の頭部の特徴により新しい頭が生えることを防ぐ。
宝物:
野生の獣であるハイドラは宝物を集めることに興味がない。しかし、湖の底を10分間探索したキャラクターは難易度15の【知力】〈捜査〉判定を行うことができる。成功したならば折り畳み式の小舟と、水色のガラス玉が10個入った密封性の低い素焼きの壺を発見する。これらのガラス玉は水分を吸収したダスト・オヴ・ドライネス(DMG174ページ)である。
****** ギリシャ神話とマジック・ザ・ギャザリングのテーロス次元にインスパイアされた神話的な設定での冒険をもっと楽しみたい方は、2020年6月2日にデジタル版が発売されるD&D Beyond Marketplaceで『Mythic Odysseys of Theros』をプレオーダーしよう! お近くのゲームストアで『Mythic Odysseys of Theros』をいち早く予約注文された方には、D&D Beyondのデジタル版が50%オフになるコードをプレゼントします!(訳注:日本では開催されていないキャンペーンです。残念ながら)
この遭遇は気に入りましたか? 「エンカウンター・オヴ・ザ・ウィーク」シリーズの遭遇をチェックしてみてください。また、私がDMs Guildで書いた冒険、例えば、マインドフレイヤーの悪役が登場するサスペンスフルな異界ミステリー『The Temple of Shattered Minds』などを見つけることができるでしょう。私の最新のアドベンチャーは、プラチナ・ベストセラー『Encounters in Avernus』に収録されています。これは、ギルドの達人たちによって作成された60以上のユニークな遭遇を集めたもので、アヴェルヌスや九層地獄の他の場所でのキャンペーンを強化するために使用できます。プラチナベストセラーのタクティカルマップもチェックしてみてください。これはギルドの達人たちが作成した88のユニークな遭遇のコレクションで、『Tactical Maps: Adventure Atlas』の美しいポスターバトルマップと組み合わせて使用することができます。
著者紹介:James HaeckはD&D Beyondのリードライターであり、Waterdeepの共著者でもあります。Dragon Heist, Baldur’s Gate. Guild Adeptsのメンバーであり、Wizards of the Coast、D&D Adventurers League、その他のRPG会社のフリーライターでもあります。ワシントン州シアトルに婚約者のハンナと動物の仲間のMeiとMarzipanと一緒に住んでいます。Twitterでは、@jamesjhaeckで時間を潰している彼の姿を見ることができます。
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2020年3月25日 OLYMPICNIC in KOGANEI
11時過ぎに集合。武蔵小金井駅改札前に置いてある、オリンピックパラリンピックまでのカウントダウン時計(?)がちょっと寂しい。(まだ今年やる設定のまま動いていた)
延期になったねー、という話をしながらドンキへ買い出しに。明治がオリンピックの公式キャラクターとコラボした商品を出していたので、それらを数種類、それとコロナビール(小)を6本。
フェスティバルコートでお昼を食べる。座れる場所もあるし、一応憩いの場っぽさはあるけど、ほとんどの人はせわしなく通り過ぎてくのが印象的だった。目の前に新しく建つタワーマンションの圧がすごい。晴れてて暖かく、ふつうにピクニックぽかった。
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〈ダンボールハウス作り〉
集めておいたダンボールを上の原公園へ運ぶ。公園の中でもあまりこどもたちが遊んでいない、ちょうど桜が綺麗に見えるスペースで、早速ダンボールハウスを作り始める。まずは自分たちで新国立競技場型のダンボールハウスを作ろうと試みた。理想的なゼロ型(?)にするまで少し時間がかかった。
わちゃわちゃしているうちに子供達やお母さんが集まってきた。マジックでひたすらダンボールの外壁を塗る男の子、元々公園内の林を使ってお家ごっこをしていたが、友達にお家を追い出され、ならばダンボールで自分の家を作る!と意気込む女の子、娘の描いたお城のデザイン画を忠実に再現しようと工夫を凝らすお母さん。
最終的には国立競技場ぽいやつ、ふうちゃんデザインのお城、みーちゃんのおうち(煙突つき)、電車、タワーマンション、といったかんじのものが並んだ。最初の方は親子連れが多かったが、近くに学童がある公園で、途中その学童のこどもたちが急に増えてかなり賑わう。年齢もさまざま。ダンボールが足りなくなり、駅前のニトリに補給しに行くなどした。あっという間に時間が過ぎた。
最終目標はフェスティバルコートまで作ったダンボールハウスを運ぶ事。大人3人こども1人、手で運ぶ(+自転車1台)ので、全部は運べず、泣く泣く選別する。ダンボールハウスを運ぶ様子はかなりシュールだった。ダンボールハウス搭載した強そうなママチャリが先頭を切り、ダンボールハウスを被った2人がヨロヨロと後に続く。(運びやすさとモチベーション維持のため、かぶった方が良いと判断。)それを両手にダンボールを持ったカメラマンが追い回す。花に水をあげているおばさんが落ちたダンボールを拾ってくれたり、警備のおじさんが(ダンボールの窓越しに)話しかけてくれたり、、車がなくて逆に良かったと思う(疲れたけど)。かなり面白い行列、珍道中だった。フェスティバルコートについた時も、通りすがりのこどもが近づいてきた。フェスティバルコートの中にある、旧星野邸の庭の名残である三本の木の下にダンボールハウス群を設置。何か言われるんじゃないかとヒヤヒヤしながら、急いで写真撮影。今年完成(予定)のタワマンと一緒にダンボールタワマンの写真をパシャリ。
〈CAFE〉
CAFE CHILLのお店をお借りして、オリンピック関連の映像上映とコラージュをそれぞれ。コロナビールやカフェの飲み物を飲みながら。コラージュは今年・過去のオリンピックのポスターや、その時代の記事などを集めたものからの切り抜きを、それぞれ思い思いにA3の紙に貼り付けていった。意外とコラージュもこだわり始めると時間がかかった。途中すごろく(ふうちゃん作)でみんなで遊ぶ。オリンピクニックシールを一人一枚ずつ配布。映像も、完全にながら見だったけど、それを見ながら話すなどした。ぽつぽつお客さんが来ては帰る。ちょうど今年のオリンピック延期発表の翌日だったこともあり、話は尽きなかった。
After OLYMPICNIC▶︎
美味しい坦々麺を食べに行こう!と思ったらまさかの定休日でした。「絶望のパスタ」という文字に惹かれた別のお店へ(坦々麺が食べられなくてまさに絶望してた)今後やりたいことなどについて話す。手榴弾投げをどうするかとか、みんなでオリンピック憲章を演奏したいとか、上映会したいとか、、、オリンピックは延期になったけど、やりたいことは尽きない。 〈感想〉
ダンボールハウス作りは、もっと「怪しい(見知らぬ)大人がなんか作ってる・・」という感じで怪しい目で見られるかなと思ったけど、そんなことは気にせず興味ある子はめっちゃ興味津々で面白かった。こどもたちの反応はそれぞれ違って結構おもしろい。そしてダンボールハウスを運���だのも結構楽しかった。警察の前とかを通るときはヒヤヒヤしたけど、通りすがりのみなさん暖かく見守ってくれた(と勝手に思うことにした)。コラージュは、素材探しの時に結構案が浮かんで、もっといろんなパターンを改めて作りたいと思っている。映像は全然ちゃんと見れてないので、今後も何かやるときに流したい。シチュエーションによっても感想変わるかもしれないと思った。そして新型コロナとか、オリンピック延期とか、本当に今後どうなるかわからない状況になりつつあるときに、こういうただ楽しくやりたいことをやること(OLYMPICNIC)があって良かったなと思った。(t)
ダンボールハウス作りは、いきなり何の前触れもなくそこでやったので、うざがられるというか、侵略者、みたいに感じになっちゃうかな、と思ったけど、わりと自然にみんな寄ってきてくれた。元々林でお家ごっこをしてたけど、友達に追い出された女の子(みーちゃん)が、ここにみーちゃんのお家建てる!と作り始めてくれた。お母さんも結構ノリノリだった。もう一人のお母さん、「今家に子供も大人も篭ってて、ストレスたまってて。いくとしても近くの公園しかないでしょ。だからこういう事やってくれるのはありがたいです。」と感謝された。お母さんとかに、何をやっているんですか?と聞かれた時、なんと答えれば良かったんだろう。ダンボールハウス作りたくて作ってます、と言っちゃったけど。OLYMPICNICの説明も丁寧にした方が良かったのだろうか。カフェのあの空間はすごく良かったと思う。みんなそれぞれがやりたい事やってる感じが。映像もバックグラウンドで流れていて良かったなと思う。ちゃんとみる時間もあれば良かったけど。次やるときはすべてがもう少しゆったりしたタイムスケジュールでもいいかも。コラージュは楽しかった。もう少し時間をとって埋めて行きたかった。(m)
#オリンピック#延期#小金井#ロボット公園#上の原公園#フェスティバルコート#ダンボールハウス#ダンボール国立競技場#旧星野邸#CHILL#コラージュ#オリンピクニックシール#コロナビール#すごろく#オリンピックの映像#オリンピクニック#OLYMPICNIC
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沖をゆく青い舟
※大昔に出した本の、短編を中途半端に再録です。 夏合宿の前に、一日だけ実家に戻った。 母が物置をひっくり返して大騒動をしているので何かと思えば、遺品の整理をしているのだと言う。 「来年はお父さんの十三回忌でしょう?久しぶりに、色々片付けようかと思って」 そう言いながらも、母が何一つ父に関わるものを捨てる気が無いのを知っている。七回忌の時もそうだったからだ。 仕舞い込まれていたものを取り出しては並べ、天日に干して、また元通りに収める。 各種大会で取ったメダルや額入りの賞状。トロフィー。くたびれた皮のジャケットやジーンズ、ぼろぼろのスニーカー。色あせた大漁旗。古びたランタン。 とりとのめのない、父を思い起こさせる物ものたち。 それらは、普段は目のつかないところに収められているけれど、その物ものたちの存在を忘れることは決してない。母は特にそうだろう。普段の食事や、居間で和んでい る時、ふとした会話の端々に、父の存在を滲ませる。父がいたこと、父が今はもうこの世にはいないこと、そのどちらも当たり前にしている。母はそんな話し方をする人だ った。 「このTシャツなんか、もうあんたにぴったりじゃない?」 時代を感じさせるスポーツメーカーのTシャツを、背中にあてがわれる。靴を脱ぎ終わらないうちから、母が玄関に飛んできてそんなことを言うのだ。 江は、居間にテーブルにアルバムを広げて、色あせた写真を眺めていた。 「いっつも思うんだけど、私もお���ちゃんも、ちっともお父さんに似てないのよね。花ちゃんのとこは、みんなお父さんに似てるのよ。娘は父に似るって言うけどうちは違 うわね。全部、お母さんに寄っちゃったみたい」 などと、一人で何やら分析している。 そこへ母が戻ってきて「ほら、このTシャツよ。みんなで海へ出かけた時に着てたのよ」と手にしていたTシャツとアルバムの写真を交互に見ながら言う。どちらも見比 べてみた江が、ほんとだ、と感激する。 以前は、このやり取りを見ているのが苦痛だった。二人が、父の話を和気あいあいとする中に、うまく混ざることができなかった。父の写真を持ち歩きながらも、本当は 写真の中の父と目を合わせるのはこわかった。母に会えば、父の思い出や存在に嫌でも向き合わなければならなくなる。あからさまに避けていたわけではないけれど、あれ これと理由を付けて帰らなかったのは事実だ。 それなのに母は、いつも子ども部屋を出て行ったままにしておいてくれた。小学生の時に使っていた机も椅子も本棚も洋服箪笥も。そう広くもない平屋住まいなのだから 、ほとんど帰らない息子の部屋を物置にするぐらいのことをしても誰も咎めやしないのに。 荷物を自分の部屋に置いて居間に戻った。 アルバムを熱心に覗き込んでいる姉妹みたいな二人に自分も加わる。 どれどれ、と覗き込むと、 「お兄ちゃんは見ないで。この頃の私、太っててやだ」 と江がアルバムの左上のあたりを手のひらで覆い隠した。写真は見えなかったが、指の間から書きこまれた文字だけはなんとか読めた。日付からして、江が二歳、凛が三 歳の頃の写真が収められたページのようだ。 「お前、食っては寝てばっかだったもんな」 「そうね、江はおっとりしていてまったく手がかからなかったわ。おやつをあげればご機嫌で、あとはすやすや寝てたもの。お兄ちゃんがちょこまか動いて忙しかった分、 助かったものよ」 「そうだっけ」 おやつを食べかけたまま寝こける江の姿は記憶にあるのに、自分がどうだったかなんて、まるで覚えていない。 「そうよ。走り回るあんたをおっかけて、ご飯を食べさせるの大変だったんだから。一時もじっとしてなかったのよ」 ふうん、と頷きながら、するりとアルバムに置かれた江の手をスライドさせる。 「あっ、お兄ちゃんだめったら」 露わになった写真に写っていたのは、浜辺に佇む家族の姿だった。祖母の家があるあの町の海岸かもしれない。母に抱えられた江はベビービスケットを頬張っている。腕 はふくふくとしていて、顔はハムスターの頬袋のようにまるい。とてもかわいらしい赤ん坊だと思うのに、江は顔を真っ赤にして「見ないでよ」と憤慨している。 同じく写真に写っている自分はというと、父の肩にまるで荷袋のように抱えられて笑っている。浅黒く日焼けした父も笑っている。こうして顔が並んでいるところを見れ ば、つくりは多少違うけれど笑い方は似ている気がする。 「これ、お父さんが外海に出る前に撮った写真ね」 「全然覚えてないわ」 「おれも」 「まだ小さかったもんね。外に出れば一ヶ月は戻れないから、大変だったのよ。お父さんが」 「大変って?」 「離れてる間にあんたたちに忘れられちゃうんじゃないかって、不安がるのよ。お見送りの時はいっつもさめざめと泣いてたわ」 お父さんかわいい、と江が小さく噴き出した。 中にはいくつか風景写真もあった。眺めているうちに、見覚えのある海岸線が写っているものを見つけた。 「これは、おとうさんの船で島まで渡った時のものね」 「あ、ほんとだ」 母と江がそろって覗き込んで来る。小さいながらも、父は自分の船を持っていた。青い船体に赤い縁取りの漁船。普段は大型漁船の乗組員として沖合や外洋に出ていたが 、禁漁で船が出せない期間は、よく自分の船に乗せて近海に連れ出してくれたものだ。小島を渡って、釣りをしたり、磯で生き物を探したりした。 小学生の時も、オーストラリアにいる時も、父を思わない日は無かった。けれどそれは、こうして思い出に浸るようなものとは少し違っていた。自分が何のために泳ぐの か、今なぜここにいるのかを確かめるための座標のようなものだった。そこに、感傷はあるようで無かった。感傷を背負い込む余裕すらなかったのだ。 「今度、江も凛もここに合宿に行くんでしょ?」 「うん」 「まさか、またあのコーチに船出してもらうのか?」 「いいじゃない!結構楽しいよ」 「お父さんが生きていたら、喜んで船を出してくれたでしょうねえ」 ゆっくりと母が言った。 昨年の夏、あれほどの問題を起こしたのに、鮫柄高校水泳部と岩鳶高校水泳部は頻繁に合同練習を行い、大会前は対抗試合を行うほど親交が深まった。 許してくれる人間もいればそうではない人間もいる。部内には、凛に対して風当たりの強い部員も当然いる。岩鳶高校と交流を持つことをよく思わない部員もいる。そん な中でも、御子柴部長は率先して岩鳶高校を自校へ招待したし、自分たちも岩鳶へ遠征した。今春から後を引き継いだ新しい部長が今回の合同夏合宿を持ちかけたのも、O Bの意見を取り入れたからだ。 彼の言動というよりも人柄が、凛が水泳部に居座ることを不快に思う部員たちの意識を変えていった。 「だって、江くんと会える絶好の機会じゃないかあ」 などと茶化してはいたが、彼がどれだけ気を遣い、部内の雰囲気を良好に保つために力を割いてくれたのか、側で見ていた凛には痛いほどよく分かる。 自分にできることと言ったら、泳ぐことしかなかった。御子柴の厚意に甘えるばかりでは、何も示せない。ひたすら、どんな時も、誰よりも真剣に泳いで見せた。泳ぐこ との他には、先輩に礼を尽し、後輩を支えた。それは部員として当たり前のことばかりだったが、その当たり前を一心にやり通すこと。それが素直にうれしくもあった。 六月末、島へ渡り、例年通り屋内プールを貸し切っての合宿が始まった。昨年と異なるのは、岩鳶高校と合同だという点だ。 合宿の中日は、午前中のみオフタイムとなり自由行動が与えられた。五日間のうち、四日間は泳ぎっぱなし。合宿後はすぐに県大会に向けて最終調整に入る。ではここぞ とばかりに休もう、ではなく、遊ぼう、と考えるのは、まさに渚らしかった。 「ねえねえ、凛ちゃん。明日のお休み、みんなで海で遊ぼうよ」 合宿二日目、専門種目の練習の最中、隣のコースに並ぶ渚がのん気に話しかけてきた。そういう話は後にしろ、とたしなめても、彼はにこにこしながらなおも言った。 「絶対行こうよ。おもしろい景色、見せてあげるから!怜ちゃんが!」 そんなことを大声で言うので、やや離れたところでフォームのチェックをしてもらっていた怜がぎょっとしていた。 渚の言う「おもしろい景色」とは、まさにおもしろい景色だった。 「お前、なんだそのナリは」 晴天の下、焼け付く白砂の上に降り立った怜を見て、凛は顔をしかめた。 「し、仕方ないでしょう。これがないと、ぼくは海へ出ちゃいけないって、真琴先輩が…」 しどろもどろな怜の腰、両方の上腕にはヘルパーが取り付けられ、腕には浮き輪を抱えている。浮き輪はピンクの水玉模様。先日、江が押入れから取り出して合宿用の荷 物の中に加えているのを確かに見た。まさか、怜のためのものだったとは。 「おもしろいでしょ?怜ちゃんてば、去年色々やらかして大変だったんだから、まあしょうがないよね」 何をやらかしたかについては、大体聞いている。夜の海に出て溺れかけたらしい。一歩間違えれば大変なことになっていた危険な行為だ。だからと言って、これはあんま りだろう。 「お前、ほんとに水泳部員かよ」 「どこからどう見ても、水泳部員です!昨日見ましたか、ぼくの美しいバッタを!」 「あ?全然なってねえ。せっかく俺がじきじきに教えてやってるのに、もうちょっとましになったらどうだ」 「知識・理論の習得と実践の間には時間差があるものです。だから昨日あなたに教わったことはですね…」 「もうまた始まった!バッタの話になると長いんだからやめて、二人とも!」 そうして三人で波打ち際で騒いでいると、 「まあまあ、三人とも、とりあえず泳ごうよ」 やわらかい声がすんなりと差し込まれた。真琴がにこにこしながら海を指差す。 「ハル、待ちきれずにもう行っちゃったよ」 見れば、遙が波打ち際から遠く離れた場所をすいすいと気持ちよさそうに泳いでいた。 「なんて美しい…海で泳ぐ姿は、本当にイルカや人魚のようですね」 怜がうっとりした顔をしていた。男のくせになんつう比喩だ、と毒づきたくなるが、あなが��外れてもいない。 「僕もあんな風に海で泳ぎたいものです」 怜が唯一泳げるのはバッタのみで、他の泳法は壊滅的にだめなのだそうだ。一年をかけて少しずつ特訓してきたが、どうしても上達しない。合同練習で会えばバッタの練 習しかしないので、遙と同じく「ぼくはバッタしか泳ぎません」というスタンスなのかと思っていたが、違うらしい。 「鮫柄の皆さんにカナヅチがばれてしまうのも時間の問題です」 「いや、ばれてるよ、怜ちゃん」 「怜…残念ながら」 渚と真琴がそろって悲しげな顔を作った。 「諦めんなよ。練習しろ」 とりあえず励ましておくことにすると、怜は「でも…」と暗い顔で俯いてしまった。その背中を渚が押して、「そうそう、練習しよう!」と無理やり水辺へと引っ張って 行く。 「さあ、特訓だ!松岡教室開講~!」 「いやです!今はオフです!」 「秘密の特訓をして、みんなを驚かせたくないの?」 「それは…」 「いいから来いよ、怜」 腰が引けているその手を取ると、怜は恐る恐る波に足を浸けた。 「やさしくしてください…」などと、目を潤ませ、怯えた小鹿のように言うので、笑いをこらえるのがやっとだった。 「たぶん大丈夫だろうけど」と言いつつ遙を一人で泳がせておくのが心配になったらしい真琴は、遙の後を追って沖へと泳いで行った。遙の姿はもう小さな点にしか見えな いくらい遠のいていた。一人で遠泳でもするつもりなのだろうか。 そういえば、遙とは昨日も今日もろくに言葉を交わしていないことに気付いた。練習中は専門種目が違うのでウオーミングアップやリレーの練習の時ぐらいしか接点がな い。オフだからと浜辺に集まった今朝は、黙々と一人で体をほぐしていた。 小島まで泳いで渡るつもりなら自分も行きたい。前もって伝えておけばよかったな、と思った。別に、必ず遙と一緒でなければならない理由ではないのだけど。 胸のあたりまでの深さのところで、怜の特訓が始まった。 潜ることは抵抗なくできるというので、とりあえずヘルパーを外して自分の体だけで楽に浮く練習から始めた。だるま浮きだの大の字浮き���の初心者向きの手ほどきは散々 やって来たことらしいのだが、それすら怪しいのだと言う。 「海水は水より浮力があるからな。少しは浮くんじゃねえの」 本当は波のないプールの方が断然初心者には向いているし、浮力が問題ではないと思われた。けれど、慰めにそう言ってみると、怜は「なるほど」と素直にうなずいてい た。なんだかすっかりその気のようだ。 怜はすう、と大きく息を吸って水に潜った。だるま浮きから水面近くに浮いて来たところでじわじわと手足を伸ばす。水面下10cmあたりのところで怜の体がゆらゆら と揺れる。 「わあ、海水マジック!浮いてるよ怜ちゃん!プールの時よりもずっと!」 渚が歓喜して大げさに拍手する。とても浮いているうちには入らないような気がするのだが。 次、��タ足を付けてみろよ、と指示を出すと、怜は恐る恐る水を蹴った。ぱちゃぱちゃとバタ足を数回繰り返したところでその体がずぶずぶと沈んでいく。 「おいおい」 掌を掬い上げて浮力を助ける。ぶはあ、と怜が苦しげに息を吐いて体を起こした。 「はあ…途中まではいい感じだったんですが」 「うんうん、進んでたよ」 「潜水艦みたいにな。もう一度やってみろ」 再度バタ足にチャレンジする怜に「もうちょっと顎を引け」と伝えると、すぐに言われたとおりにしてみせた。怜は理屈っぽいところがあるが、素直だ。力を伸ばすのに はそれは大切な要素だ。 顎を引いた分だけ浮力を得て、わずかなりとも浮きやすくなるはずだ。しかし、怜の場合は逆効果だった。頭の方から斜めに沈んでいく。まさに、潜水艦のごとくだ。 「わあ、頭から沈んでいく人、初めて見たあ」 渚の遠慮のないコメントに笑ってはいけないのに、こらえきれずに小さく噴き出してしまった。 「ちょっと!笑わないでください!ひどいです!」 びしょびしょに濡れた髪を振り乱して怜が喚く。 「わりい…いや、ちょっとした衝撃映像だったから」 「動画、とっとけばよかったね!」 渚と二人で笑い合っていると、怜はもう泣きそうな顔をしていた。 「しょうがねえよ。体質だ」 怜の肩に軽く手を置いて慰めた。 「体質?」 「お前、陸上やってたんだろ?」 「はい」 「筋肉質で体脂肪が少ない上に、骨が太くて重いんじゃねえの。ついでに頭も」 「怜ちゃん、頭いいもんね。脳みそ重いんだね」 「なるほど…」 「もうどうしようもなく浮くようにできてねーんだよ。そういうやつ、たまにいるぜ」 「そうなんですか?僕だけじゃなく?」 凛はしっかりと頷いて見せた。 「極端に痩せた人はもちろん、筋肉をがちがちに鍛えた人も当然浮きにくいよな」 「物理の法則からするとその通りですね。僕の体は、そもそも水に浮くようにできていない…」 しょんぼりと肩を落とす怜を、渚が心配そうに覗き込む。 「怜ちゃん…楽に浮けるようになりたかったら、脂肪を蓄えるしかないね。ドカ食い、付き合うよ」 「いや、脂肪は付きすぎると水泳にとっては邪魔なものです」 「そうだっけ?」 「ようはバランスだな」 「カロリー、体脂肪率、筋肉の質…僕の体にとってのこれらの黄金律を導き出さなければ…!」 怜はかけてもいない眼鏡のツルを押し上げる身振りをして、ぶつぶつとつぶやき始めた。 「ま、でもバッタが泳げりゃいいんじゃね?」 あまり思いつめるのもどうかと心配になったのでそう軽い調子で言うと、怜は切実そうに訴えた。 「あなたまで皆さんと同じことを。ここまで焚きつけておいて」 「だってよ、ここまでとは思わなかったからな」 「ひどいです。僕だって、みなさんと同じように泳げるようになりたい」 顔をくしゃりと崩す怜を見ていると、ふと幼いころを思い出した。こんな風に、父と海で泳ぐ練習をした覚えがある。海育ちは、潜るのは得意だが、わざわざフォームを 整えて浮いたり泳いだりはしない。潜って魚を捕ったり、磯で生き物をいじって遊んだりするのがほとんど��った。だから、幼稚園のプールでいざ泳いでみて、ショックだ った。潜水したままプールの床底を進む凛に、友だちが「それ泳ぐのと違うんじゃない」と言ったのだ。スイミングスクールに通っている同じ年の子どもが、それなりに様 になったクロールを披露してくれた。水の中にいるのなんて息を吸うように当たり前にできるのに、あんな風に泳ぎ進む、ということがどうやったらできるのかわからなか った。 しょげかえる凛を見かねて、父が特訓してくれた。当時は祖母の家の隣の長屋に住んでいて、目の前は海だった。幼稚園から帰ってすぐに海へ駆け出して行って、ひたす ら泳いだ。「がんばれ」と両手を広げる父まで、辿り着こうと必死で水を掻いた。毎日練習を繰り返して泳げるようになったとき、父はうれしそうに笑っていた。 もうずっと昔のことが鮮明に思い出されて、懐かしさで胸がいっぱいになった。 だからなのか、肩を落とす怜に思わず言っていた。 「わかった。とことん付き合ってやるから、がんばれよ」 怜が顔を上げて、その目を輝かせた。ええもう遊ぼうよお、と渚が後ろに倒れ込みながらぼやいた。 それから小一時間練習して、休憩に入った。 怜は、沈みがちではあったが、バタ足で10mほど進めるようになった。クロールのストロークはもとより様になっていたので、特に言うことは無かった。推進力はある のだから、ブレスでなるべく浮力とスピードを落とさないようにすれば、それなりに泳げそうだった。あくまでも、それなりにだったが。 三人で丸太のように木陰に転がり、ほてった肌を冷ました。 「感動です…ぼくでも何となく形になりました」 「怜ちゃん、感動したよぼくも!」 わざわざ凛を挟んで、渚と怜が会話する。凛は浮き輪を枕にして、二人のやり取りを聞いた。 「渚くんは、途中から変な顔をして僕を笑わせようとしていたでしょう!手伝っているのか邪魔しているのかわかりません!」 「心外だなあ。リラックスさせようと思ってやったんだよ。緊張したら体が硬くなるでしょ?怜ちゃんぷかぷか作戦の一つだったのに!」 「そ、そうだったんですか」 「なんてね」 渚はそう言うや、跳び起きて海へと駆けだして行った。怜からの反論を見越していたのか、見事な逃げっぷりだった。 「ぼくも、向こうの島まで行って来るねー!」 ぶんぶんと手を振り、あっという間に波間に消えて行った。 「あの人は、いつもああなんです」 「楽しそうだな」 「疲れます」 それには頷くしかない。 「あなたも、泳ぎに行かなくていいんですか?」 「ああ、いいんだよ。ちょっと、疲れも溜まってるし」 「…すみません。オフなのに疲れさせてしまって」 怜が顔を曇らせる。 「いや、お前のせいじゃねえよ。ついオーバーユースしちまうから、オフの日はなるべく休めってコーチに言われてんだよ」 本当は島まで遠泳できるならしてみたかったが、心残りになるほどでもなかった。ひんやりとした木陰の砂の上に転がって、潮風を受けていると、とても気持ちがいい。瞼 の裏に枝葉をすり抜けてきた光が差して、まだらにかぎろった。 「あなたが、ぼくに泳ぎ方を教えてくれる���は、昨年のことを気にしているからですか?」 まるで独り言のような小さな呟きが耳に届いて、凛は瞼を起こした。 怜が生真面目な顔でこちらを見ていた。 「なんだよ急に」 「すみません、確かめておきたくて」 怜が言っているのは、昨年の地方大会のことに違いなかった。彼を差し置いて、岩鳶高校の選手としてリレーに出た。彼らの厚意に乗っかって、大事な試合をふいにして しまった。得ることの方が大きかったけれど、負い目を感じないわけがない。しかし、負い目があるから怜に泳ぎを教えているのではない。それははっきりと、違うと言え る。 「あなたがいつまでも、ぼくに負い目を感じる必要はありません。ぼくが決め、あなたたちが選んだ。それだけのことです。そりゃあ、問題になりましたが、いつまでも引 きずっていても…」 「待て待て、怜」 怜の言葉をやんわりと止めて、上半身を起こした。乾いた白い砂の粒が、はらはらと肌の上を滑って落ちる。怜も体を起こして凛と向き合った。きちんと居住まいを正す ところが、怜の真面目で誠実なところだ。 「負い目って言われるとどうかと思うけど、それは一生無くならない。失くせって言われても無理だ。そういうもんなんだ。でも、罪滅ぼしのために、お前に泳ぎを教えて んじゃねえよ」 「ではなぜですか」 面と向かって問われると、答えざるを得ない空気が漂う。凛はがしがしと後ろ頭を掻いた。 「お前が一生懸命だからだ」 「一生懸命?」 「一生懸命練習しているやつがいたら、手伝いたくなるだろ。そういうもんだ」 「敵に塩を送ることになっても?」 「一人前なこと言うな、お前」 「だって、そうでしょう」 凛は口端を上げた。自然に笑みが湧いた。 「一にも二にも努力努力っていうけどよ。努力すらできないやつだって、ごまんといるんだよな。努力する才能ってやつも必要だ。お前にはそれがある。それは…すごいこ となんだ。そういうやつを、俺は尊敬してる」 「尊敬、ですか」 怜がしみじみと噛みしめるように言った。 「あんだけ見事な潜水艦だったのに、さっきの特訓では一度も音を上げなかったしな。俺だったら三分で逃げ出してる」 潜水艦って言わないでください、と怜はむっとした顔を作った。けれど、すぐにそれを解いて微笑んだ。 「ぼく、とても楽しみなんです。今度は、ぼくもあなたたちと一緒に泳げる。いつだってこうして楽しく泳ごうと思えば泳げるけど。試合で泳ぐのは、特別な気がします」 「確かにな」 「緊張もするけれど、わくわくします」 わくわくします。それはいい言葉だった。長らく自分が見失っていた感情に近い気がした。 「あなたは勝ち負け以外の何があるんだって、言っていましたが」 「どうしたって、勝ち負けはあるんだぜ」 「知っています。でも、ぼくはわくわくするんです。勝つかどうかもわからない。勝ったらどんな感情を抱くのか。負けたらどんな自分が出て来るのか。それは理論では計 り知れない。そういう未知なる気配が、おもしろいと思えるようになったんです」 「俺もそう思う」 「わくわくしますか」 「ああ、する」 「一緒ですね」 怜がふわりとはにかむ。隙だらけのあどけない顔をするので、思わずその頭をわしわしと撫でまわしてしまった。 「なんだよお前。ガキみたいな顔しやがって�� 「だって」 怜は泣き笑いのように顔をくしゃくしゃにした。 「僕にも、皆さんと同じ景色が見られるんじゃないかって、今、すごく思えたから」 「そうかよ。楽しみにしてろよな」 「はい」 「怜、ありがとな」 「はい…えっ?」 まさか礼を言われるとは思っていなかったらしい怜は、戸惑っていた。妙に照れくさくなってしまって、そんな怜を置いて弾みをつけて立ち上がった。 「やっぱ泳ぐかあ。あいつら、どこまで行ったんだ?」 木陰から一歩踏み出ると、目が眩むほどの強い日差しに、何度か瞬きをした。 そこへ「せんぱあーい!」と似鳥の甲高い声が聞こえてきた。防風林の向こうから駆けて来る姿があった。 「自主練終わりました!ぼくも仲間に入れてください!」 そういえば、似鳥も海水浴に行きたいと言っていた。わざわざ断ってくるところが彼らしい。 「愛ちゃんさん、自主練をしていたんですね。見習わなければ」 「お前も自主練みたいなもんだろ」 似鳥はあっという間に、なだからかな浜を駆け下ってきた。 「御子柴ぶちょ…あ、元部長が差し入れにいらしてましたよ」 「暇なのか?あの人」 「そんなこと言ったら泣いちゃいますよ。ちゃんと後であいさつしてくださいね」 「わかってるよ」 怜を連れ出して沖まで行くか、と相談しているところに、今度は「おにいちゃーん!」と江の声が届いた。 見れば、ビニール袋を提げた両手をがさがさと振っている。言わずもがなのアピール。 「手伝います」という後輩たちを置いて、パーカーを羽織ると江のもとへ浜を駆けのぼった。怜は真琴の言いつけ通りの完全防備で、似鳥に浮き輪ごと曳航されて沖へと 出て行った。 「のんびりしてたのに、ごめんね」と江は詫びつつも、しっかり凛に重い荷物を譲り渡した。買い出しのために顧問に車を出してもらおうとしていたら、鮫柄の顧問から呼 び出しがかかってしまったらしい。 「ったく、買い出しくらいあいつらにさせろ。それか、マネ増やせ」 「そうね、マネも増やしたいなあ。時々、花ちゃんが手伝ってくれるんだけどね」 麦わら帽子をちょんと被りなおした江が、それにしても暑いねえ、とのんびり言う。 岩鳶高校が宿にしている民宿は、浜からそれほど遠くない。ビーチサンダルで砂利を踏みながら、江と並んで歩いた。太陽はますます高く、縮んだ濃い影が、舗装された 白い道に焼き付いてしまいそうだった。 「あ、ねえ、お兄ちゃん、見て」 江が白い腕を伸ばし、海のかなたを指した。 「あの船、お父さんの船に似てるね」 見れば、はるか沖を行く船たちの姿が、ぽつぽつとあった。マッチ箱ほどの小さな船影の中に、確かに、父の船と似ているものがあった。青い船体に、白い縁取りの漁船 だ。青い船は、白波を立てて水平線を滑るように進んでいく。やがてその姿は、小島の向こ���に消えて見えなくなった。 二人で船を見送ったあと、わたしね、と江が言った。 「一つ、思い出したことがあるの」 「何を?」 「お兄ちゃん、お父さんが死んじゃったあと、よく海に出かけて行ってたでしょ?ひとりで」 「そうだったか?」 「そうだったよ。お母さんが、夜になっても戻��ないって、すごく心配してたの。あの時、お兄ちゃんは、何をしに行ってたのかなあって」 「海に行くのは、いつものことだっただろ」 「そうなんだけど。お父さんが死んだあとのことよ。毎日、毎日、お兄ちゃんが帰って来ないって、お母さんが玄関の前でうろうろしてた。それを見て、わたしはすごく不 安だったことを思い出したの」 突然、遠い昔の話を出されて困惑してしまう。確かに、父が亡くなったあと、毎晩のように浜辺へ通っていた覚えがある。けれど、何のためにそうしていたのか、よく思 い出せない。 「でもね、お兄ちゃんは、ちゃんと帰って来た。お兄ちゃんが海から家に帰って来たら、ああ、よかったあ、ていつも思うの。待つことしかできなくて、とっても不安だっ たけど、ああよかった、お兄ちゃんは、どこへも行かずにちゃんと帰って来てくれて、って安心するの。そういう記憶」 沖をじっと見つめていた江が、また歩き始めた。歩調を合わせてゆっくり歩いた。 「お父さんが死んだとき、私はまだ小さかったから記憶はおぼろげなんだけど、最近は、よく思い出すんだ。お父さんが死んだ時の、お母さんの顔とか、海に出て行ったお 兄ちゃんが庭に放りだした自転車とか、お父さんの大きな手とか、声の感じとか、色々、ごちゃまぜに」 「そうか」 「なんでかな、今まで忘れてたわけじゃないんだよ。毎日、仏壇にお線香上げるし、お花の水も換えるし、お祈りもする。けど、そういう決まったことのように亡くなった 人のことを思うんじゃなくて、勝手に湧いてくるの。ふとした時に、お父さんの気配みたいなものが」 それは、凛にもわかるような気がした。さっきだって、怜に泳ぎ方を教えながら、それを感じたばかりだからだ。もう形を持たないはずの父が本当にそこにいるかのよう な感覚。五感のどこかに残っている父の記憶のかけらが、不意に集まって形作るような。 「海にいるからかな」 「そうかもな」 「お兄ちゃんが、お父さんの話をするようになったからかもしれないよ」 「どっちだよ」 「どっちもよ」 江がそう言うのなら、そうなのだろう。 並んで歩きながら、沖を行く船の姿を探した。けれど、もうあの青い船の姿は見えなかった。その名残のように、小さな白波がいくつもいくつも、生まれては消えた。太 陽の高度はますます上がり、水面に踊る光の粒がまばゆく目を刺した。 江を送り届けて海岸に戻ると、遙がぽつんと遊歩道に立っていた。もう海から上がっていたらしい。 江から、あと小一時間ほどしたら宿に戻って食事を摂り、午後からの練習に備えて休むように言ってほしい、と頼まれていた。それを伝えようと軽く手を振ると、遙はふ い、と顔を背けて再び浜へ下りて行ってしまった。なんだよ、とつい零したくなるような態度だ。迎えに来てくれていたわけではないのは分かっていたが、あまりにも素っ 気ない。まあ彼としては珍しくもない振る舞いなので、まあいいかとすぐに思い直した。 真琴や渚たちも沖から戻っていた。彼らは屋根付きの休憩所で水分補給をしていた。 「怜がちょっと泳げるようになってたから、俺、感動しちゃったよ」 真琴が声を弾ませて言う。怜はその隣ですっかり得意げな顔だ。 「浮く練習なら深いところがいいって愛ちゃんさんが言うから、やってみたんです。そしたらできました」 「へえ、やるじゃねえか」 「はい。…しかしまあ、愛ちゃんさんがすごく怖くて。ヘルパーも浮き輪も容赦なく外してしまうし」 「愛ちゃん、スパルタだったよ!」 渚の隣で、似鳥は恐縮したように肩をすくめた。 「凛先輩ほどじゃありませんよう」 「いや、おれよりお前の方がえげつない練習メニュー考えるよな。この合宿のメニューだってさ、一年が、青ざめちまってたもんな」 「え、そうですかあ?ぼく、もしかして、後輩にびびられてますか?」 似鳥が困惑顔で腕に縋り付いてくる。いや、それはない、とすぐに否定しておく。童顔な彼は、どうかすると後輩に舐められてしまいがちだが、面倒見が一番いいのでよ く頼られている。 「似鳥、俺たちはそろそろ戻るか」 「もうですか?」 「午後連の前にミーティングと、OBに挨拶があるんだろ?」 「そうですね…。もうちょっと、皆さんと泳ぎたかったですけど」 「え~、愛ちゃんも凛ちゃんも行っちゃうの?」 似鳥の縋った腕とは反対の腕に、渚がぶら下がる。重い。 「しょうがねえだろ。OB様は、大事にしておかねえとな」 残念がる似鳥を促して、荷物の整理をしていると、それまでベンチの隅にしゃがんでいた遙が、急に立ち上がった。もの言いたげにこちらを見るので、「なんだよ」と思 わず言ってしまう。そのくらい、視線が重い。何か機嫌を損ねるようなことをしただろうか。 「なんか言いたいことあるなら言えよ、ハル」 「別に」 何もない、と遙はまたそっぽを向く。明らかに何もないわけがない態度だったが、もう放っておくことにした。 「お前らもぼちぼち戻れよ。江が、メシ作ってるって」 ちえ、バカンスは終わりかあ、と渚は盛大にこぼし、真琴は部長らしく「手伝いに戻ろっか」とお開きのひと声を発した。まるでそれを待っていたかのように、ぷしゅ、 と空気の抜ける音がした。遙が水玉模様の浮き輪の空気を抜く音だった。無言のまま、ぎゅうぎゅうと体重をかけて押しつぶしている。むっと口を結んでいるところを見る と、やはりご機嫌ななめらしい。 ほんと、よくわかんねえやつ。 手伝うよ、と真琴が遙に歩み寄る。その様を見ているのがなんとなく癪で、凛は「帰るぞ」と似鳥を連れて宿に向かって歩き始めた。 明け方の白砂は、潮を含んで重かった。 少し足を取られながらも、波打ち際を流すようにゆっくりと走った。連日の猛練習の疲れは残っているが、だらだらと眠るよりも、こうして体を動かしている方がすっき りする。 夜の間に渡って来たらしい雲が、東の空から羽を広げるようにたなびいている。それを、水平線に覗いた朝日がうっすらと赤く染めている。波も、同じ色に染まっている 。 朝日の中を行く船があった。まばゆい光の中にあって、色はわからない。 ゆるやかな海岸線の中ほどで、凛は足を止めた。上がった息を鎮めながら、沖合に目を凝らした。 なぜ、父が亡くなった後、毎日海へ出かけたのか。 昨日、江にたずねられたことを改めて考えているうちに、あることを思い出した。昨夜、眠りに落ちる前に、ふとおぼろげな記憶の中から浮かび上がってきた。 父は、凛が五歳の時に亡くなった。夏の終わりの大時化で、船と共に沈んでしまった。船そのものも、遺体も上がらなかった。何日も捜索が続き、母は毎日、港に通った。 何かしら知らせが来るのを待ち続けたけれど、ついに父は戻らなかった。船長を含めた十数人が行方不明のまま、捜索は打ち切られてしまった。だから今も、墓の下に父の 骨は無い。墓石や仏壇に手を合わせる時、どこか空虚な気がするのは、そのせいかもしれなかった。 飛行機に乗って世界中のどこへでも行けるし、ロケットに乗って月へも行けるのに、たった沖合3kmのところに沈んだ船を見つけることができないなんて、おかしな話だ 。捜索を打ち切って、浜から上がって来るゴムボートを眺めながら、そんなことを思っていた。 父が戻らないことを凛と江に告げる母は、やつれて生気を失ったような顔をしていたが、どこかほっとしているようでもあった。何か一つの区切りを迎えなければ、母は限 界だったのだろうと思う。毎晩、祖母に縋り付いて泣いているのを、凛は知っていた。江と一緒に仏間の布団に寝かされ、小さくなって眠る振りをしながら、母の細い嗚咽 を聞いた。母は、泣いて泣いて泣き伏すうちに、いつか細い煙になって消えてしまうんじゃないかと心配だった。朝になると、母は気丈に振る舞っていたので、その不安は 消えるのだけど、夜になって母のすすり泣きが聞こえてくると、家全体が薄いカーテンの中に包まれて、そこだけが悲しみに浸かっているような気がした。 捜索が打ち切られた数日後、形ばかりの葬儀が行われた。遺体の上がらなかった何世帯が一緒に弔いをすることになり、白い服を着た大人たちに連なって、海沿いを延々と 歩いた。波は嘘のように穏やかだった。岬で読経を上げる時、持たされた線香の煙がまっすぐに天へ昇っていったのをよく覚えている。 葬儀が終わると、生活のすべてがもとに戻り始めた。母には笑顔が戻った。友だちと外で遊び、お腹が空いたらつまみ食いをした。江は勝手に歌を作って歌い、ちょっと 転んだだけで泣いた。いつもと同じ毎日だった。 けれどもそれは、凛にとっては、大きく波に揺り動かされて、遠くへ投げ出されてしまったかのように強引で、拭いようのない違和感に満ちていた。誰もかれも、日常の 続きを演じているような奇妙さがあった。 四十九日が済むと、海辺の家を離れて、平屋のアパートを借りてそこで三人で暮らすことになった。父の船は、知り合いに引き取ってもらうことになった。新しい家も、 父の船が人の手に渡ってしまうことも、嫌だった。けれど、決まったことなのよ、と母に泣きそうな顔をされると、何も言えなかった。 引越しをする少し前から、毎日海へ通うことになった。 行き慣れた海岸は、潮が引くと、磯を渡って沖まで行くことができた。ごつごつとした岩場を歩き、磯の終わるところまで足を運ぶと、そこに座り込んで海を眺めて過ご した。 せり出した磯は、ずいぶん海の深いところまで伸びていて、水面から覗き込んでも海底は見えない。もっと小さい頃は、一人では行くなと言われていた場所だった。磯か ら足を滑らせれば、足の着かない深みにはまって危険だからと。 しかし、磯の岩場には、釣り人もいたし、浜辺には船の修理をする近所の大人の姿もあったので、凛は構わず出かけた。 手にはランタンを提げて行った。父が納屋で網を繕う時に、手元を照らすためにいつも使っていた、電池式のランタンだ。凛は、暗くなるとそれを灯して、いつまでも磯 にいた。 父が戻らないことは、幼心にもわかっていた。これから、父のいない生活を送らねばならないことも。 もう二度と、あの青い船に乗せてもらえないこと。泳ぐのが上達しても、大げさなくらい喜んで、頭を撫でてもらえないこと。大きな広い背中に抱き付いて、一緒に泳ぐ こと。朝霧の中を、船で進む父に手を振ること。お帰りなさい、と迎えること。そんなことは、もう、ないのだとわかっていた。 わかっていたけれど、誰も父を探そうとしてくれないことが、誰もが当たり前の顔をして日常に戻ってしまうことが、悔しかった。かなしかった。 海へ通い続けたのは、ぶつけどころのない感情を、なんとか収めようとしていたからなのかもしれない。海はただそこにあるだけで、凛に何も返さない。何を投げても、 すべてを吸い込み、飲み込み、秘密のままにしてくれる。父を飲み込んだ海なのに、憎いとか恨めしいとか、そんな感情は浮かばなかった。むしろ、誰よりも、そばにいて くれている気がしていたのだ。 ある風の強い日だった。その日も、いつものように海へ出かけた。波は荒く、岩にぶつかっては白い泡になって弾けていた。大きな雨雲の船団が、どんどん湧いては風に 押し流されていた。空は、黒い雲と青い晴れ間のまだら模様で、それを移す海も同じ模様をしていた。 嵐の日と、その次の日には海へ行くなと言われていた。嵐の後には、いろんなものが流れ着くからだ。投棄されたごみならよくあることだが、時に死体が流れ着くことが ある。入り組んだ海岸線が、潮の吹き溜まりを作っていたのだ。 父と海に出かけた時に、一度だけ水死体が岩場の端に引っかかっているのを見つけたことがあった、凛は離れているように言われたので、遠目にしか見えなかったが、白 くてふくふくとした塊を、父や漁協の仲間が引き上げていた。あとで父は、凛に諭すように言った。 「嵐の後の海には、こわいものがいる。海に引きずり込まれるかもしれないから、近寄ってはいけない」と。 あの時の教えを忘れたわけではなかったけれど、凛は横風に煽られながら磯の際を歩いた。いかにも子どもらしい発想だ。本当に見つけたとして、どうしていいのか何も わかっていなかったというのに。 雨雲の隙間から、光が差していた。波に洗われて、日に照らされた岩肌は、滑らかに光っていた。海面にはスポットライトのようにまるく光が差し込み、まるで南海のよ うにエメラルドグリーンに透き通って見えた。雨上がりの海の景色の美しさにすっかり心を奪われた。深い深い海の底に、何かもっと美しい景色や生き物がいるのではない か。凛は、父を探すのも忘れて、磯の際に手と膝をつき、夢中で覗き込んだ。きらきらと光のかぎろう碧が美しくて、ため息が漏れた。鼻先が海面に付くかつかないかとい う��ころで、びゅう、と背中から風が吹いた。ど、と勢いよく押されて、体が前に倒れ込んだ。あぶない、���気付いた時には遅かった。頭から海に落ちてしまう。海にはこ わいものがいる。引きずり込まれるかもしれない。近寄ってはいけない。あれほど言われていたのに。恐怖に体の自由を奪われて、抗えないまま海へ落ちてしまう寸前、後 ろから、ぐい、と強く腕を引っぱられた。 「危ないよ」 と声がした。 慌てて振り返ってみたが、誰もいなかった。ただ、小雨に濡れて黒々とした岩場が広がっているだけだった。 少し遅れて、心臓がばくばく鳴り始めた。 たった今、海に引きずり込まれそうになったこと。それを誰かが助けてくれたこと。その誰かの姿は、どこにも見当たらないこと。 なにか、今、不思議なことが起きたのだ。 凛は泣きそうになりながら、家へ駆け戻った。とにかく、怖かったのが一番。次には、懐かしいようなうれしいような気持ちでいっぱいだった。 危ないよ、という声が、父の声のように思われたからだ。 不思議な出来事は、その一度きりだった。二度と海が不思議な光を放つこともなかったし、助けてくれた声の主と出合うこともなかった。 海辺の家を離れて、母と江と三人で暮らし始めると、そんなことがあったことすら忘れていた。 あれはなんだったのだろうと思う。海面が光って見えたのは見間違いかもしれないし、引きずり込まれそうになったと感じたのは、ただの風のせいだったのかもしれない 。本当はあの時、通りすがりの釣り人がいて、海に落ちそうになっている子どもに声をかけただけかもしれない。 とにかく、奇妙な体験だった。海では不思議なことが起こるものだと感覚で知っている。言い伝えや昔話も多くあり、それを聞いて育つからだ。でも、自分の体験したこ とをどう片付ければいいのか、わからない。 今は、朝日を浴びて美しいばかりの海は、暗くて深い水底を隠し持っている。この海は、父の命を飲み込んだあの海とつながっている。このどこかに、今も父がいるのだ 。 「凛」 不意に声をかけられて、身をすくめる。 気づけば、足元を波にさらわれていた。慌てて、波打ち際から離れる。 「そのままで泳ぐつもりだったのか?」 遙だった。凛と同じようにロードワークに出ていたのか、汗ばんだTシャツが肌に貼り付いていた。 返事ができずにいる凛を、遙は不審そうに見ている。 「いや、泳がねえよ」 首を振ってこたえると、遙の視線が凛の足元に落ちた。 「濡れちまった」 波に浸かってぐっしょりと重くなったランニングシューズを脱いで、裸足になった。砂の付いたかかとを波で洗う。 「どこまで走るんだ?」 気を取り直すようにたずねると、遙は「岬の方まで」と答えた。答えたものの、凛の顔をじっと見つめたまま走り出そうとしない。 昨日は、午後練になってもろくに口を利かなかったからか、どこか気まずい。 「何を見ていたんだ」 遙が言った。 「何って…海しかないだろ」 凛の答えに納得したようではなかったけれど、遙は海を向いた。 「お前も、真琴みたいに海がこわいのか」 「そんなわけねえだろ。俺は海育ちだぞ」 「そうか。真琴みたいな顔をしてた」 相変わらず言葉足らずで要領を得ないやりとりだったが、どうやら心配してくれているらしい。 遠くから霧笛が響いた。大きなタンカーが沖へ向けて港を出て行く。 「船が…あっちの方に、船がいたから、見てた。それだけだ」 そう付け足すみたいに言うと、遙は船の姿を探して、沖合に目を凝らした。潮風にあおられて、彼のまっすぐな黒髪がさらさらと揺れた。遙の目は、「本当にそうか?」 と不思議そうにしていた。遙の目は雄弁だ。誤魔化さずに本当のことを言わなければならないような、そんな気がしてくる。だから、というだけではないけれど、凛はほと んど独り言をつぶやくみたいに、小さく言った。 「船、見てたらさ。俺、思い出したことがあんだよ。昔のことなんだけどさ」 遙を見ると、彼はまだ遥かな沖合に目を向けていた。凛の話を聞いているようでもあるし、波音や風の音に耳を澄ましているようでもあった。 「親父が死んだあと、毎日海に行ったんだ。何をするのでもなかったんだけど。ランタンなんか提げてさ。暗くなるまで海にいた。それで…嵐が来た次の日にも海に行った らさ、おかしなことがあったんだ」 遙がこちらを見ないことをいいことに、一方的に語った。昨夜ふと蘇った、海での不思議な出来事の記憶を。 遙にこんなことを話しても仕方がない。誰かに聞いてほしかったわけでもない。でも、船の姿を探しているような遙の横顔を見ていると、ほろりと漏れだしてしまったの だ。 彼にとってはどうでもいい話。きっと聞いたからといって、何をどうしようとも思わないだろう。 そういう気楽さがもどかしい時もあれば、救われることもあることを知っている。 「あれは、一体なんだったんだろうな」 話終えると、心の中も随分片付いていた。昔のことだから、記憶はおぼろげだし、端から消えていくように心もとない。事実とは異なるところもきっとあるのだろう。 けれど、あの時、海に落ちそうになった自分を助けてくれたのは父だったと思いたがっている自分がいる。 どうしようもない、独りよがりの感傷かもしれないけれど。 「俺も、見たことがある」 遙がふと口を開いたのは、いくらか時を置いてからだった。ごくごく小さく呟くので、凛が語ったことへ返されたものだとはすぐに気が付かなかった。 「見たって、なにを?」 たずねると、遙は、「海が光るのを」と言った。 「一人で遊んでいる時に。海が、とても美しい碧色をしていて、水底まで透けそうだった。子どもの頃の話だ。あの頃はまだばあちゃんが生きていて、話したら、近づくな って言われた」 「どうしてだ」 遙は少しだけ横目でこちらを見て、すぐにまた海へと視線を戻した。 「死は、時々美しい姿で扉を開くんだって言ってた。小さかったから、よくわからなかったけど」 「そんなの…迷信かなんかだろ」 「そうかもな」 でも、と遙は言い添えた。 「お前の親父さんだったかもな」 不意に父の話に繋がって、けれども相変わらずタイミングはちぐはぐで、理解するのにひと呼吸、必要だった。けれど、遙が言おうとしていることは分かった。凛の気持 ちを汲んで、そう言ってくれたことも。 あの海での不思議な体験は、幼かったので、本当はどうだったかわからない。けれど、それでいいのだと思えた。父が、海に落ちそうになった凛を助けてくれた。そう思 いたければ思えばいい。遙のまっすぐな言葉が、不確かだった記憶をすとりと凛の中に収めてくれる気がした。 「…んじゃあ、そういうことにする」 素直にうなずくと、遙はちらりと意外そうな顔をした。朝の美しい海を前に、わざわざ意地を張る必要もない。 凛は頬をゆるめて、遙かに向かって言った。 「あっちまで走るつもりだったんだろ。行って来いよ」 「お前は?」 「俺は、足、こんなだし。散歩でもして戻るわ」 「じゃあ、俺も散歩する」 一緒に波打ち際を歩き出しながら凛は言った。 「ハル、お前、昨日はなんで怒ってたんだよ」 「べつに、怒ってない」 遙が小さな波をぱしゃりと蹴り上げる。その態度が、すでに、なのだが。 「いーや、むすっとしただろ。言いたいことがあんなら言えよ」 「べつにない」 「べつにって言うのやめろ」 「べつにって言っちゃいけない決まりなんかないだろ、べつに」 ついさっきまで、たどたどしくも心がつながったような、そんな気がしていたのに、もういつもの言い合いが始まってしまった。陸に上がると大概そうなってしまう。 はあ、とわざとらしく長いため息をついて見せると、遙はやや口を尖らせて、ぼそりと言った。 「…島に、行きたかったのに」 「行っただろ、真琴たちと」 「いや、行ってない。泳いだけど、すぐに引き返した」 「行けばよかったじゃねえか」 そんなに行きたい島があったのだろうか。 「お前も、連れて行きたかったのに」 ※このあと、二人で海辺を散歩して、微妙ななんだかそわそわする雰囲気に雰囲気になって、宿の手前で、みんなに会う前にハルちゃんが不意打ちでチューをかまして・・・みたいな展開でした。中途半端な再録ですみません・・・
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空中浮遊マジックをレゴで表現 種明かしもありますw レゴって何でもできるな。 Source: Hiroiro
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【完全解説】なぜ上手いマジシャンは、手がキレイなのか?


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お札が浮く。空中浮遊マジックの最高傑作2種類です【種明かし】
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