#人間関係の断捨離
Explore tagged Tumblr posts
sarasvati-benten-xxx · 1 month ago
Text
Tumblr media
昔の知り合いの人
考えてなくても頭の中にツッコミに来るし、
考えるとものが落ちて足に当たったり、
ファンデーションが割れていたり、
コップが割れたり、頭痛がするので
どんなにその人が
自身を光の人だと自称しても
信じられない。
もう信用できない。
さよならだけが、人生だ。
一時のご縁をありがとう。
オポノポノ。
さようなら。
0 notes
yutakayagai · 5 months ago
Text
連休二日目、大平は厨房職員の出勤前に開錠し、再び床に入った。昨日の母親とのやり取りが尾を引いているらしく、布団を頭から被った。嗚呼、辛い、淋しい…。この思いを誰に吐露したらよいかと、彼は何度も寝返った。
それから一時間経った頃、ドア越しに声がした。
「大平先生、検食お願いします」
彼は寝ていた訳ではないのですぐ布団から出た。ドアを開けると、其処にいたのは管理栄養士の石川忍だった。彼女は、
「何だ、起きてたンですか。もうすぐ生徒さん来ちゃいますよ」
と言った。
「あぁ、すみません…。今行きます」
そう言って大平は食堂へ向かった。食堂には、朝食を作り終えた厨房職員が休憩をしていた。石川も、今日は日曜日で人手が足らないとの事で厨房業務をしていたらしく、
「早く厨房職員、増やしてくれないかなァ〜。アタシ、朝弱いのよ」
と言った。向かい側で食事をしている大平は、
「でも、いつも美味しいよ。助かるわ」
と話した。
「たまに、亜鉛やタウリンたっぷりの献立も考えないといけないのよ。幸田理事長が、年頃の男子はヴァイタリティがなくては勉強やスポーツに良い成績が得られないって。まァ、亜鉛は味覚を感じるのに必要な栄養素だから仕方ないかァ〜」
「たまに遊びに来るよ、ウチの生徒が」
「あら、大平先生。ビンビンなのね? 絶好調なンだ〜」
「ほらほら、朝から際どいよ」
石川も、このK高校の裏の裏も読んでいる様だった。彼女も所謂「ボーイズラヴ」系の漫画が大好きで、半年に一回は特別メニューとしてマカを含んだドリンクを付けたり、すっぽんエキスを使った鍋などを出したりもしていた。大学時代に居酒屋でのアルバイト経験があり、たまに貢が理事会を開催する時には刺身や焼き鳥も作っていた。
検食を終えると大平は、
「今度、カキ食べたいなァ」
と、検食簿を書きながら言った。
「カキ? 寒くならないとダメでしょ? 美味いけどね〜」
「だよなァ…。ご馳走様」
返却棚に使った食器を戻すと、大平は宿直室に戻った。嗚呼、今日は何をやろう…。そう思いながら彼は布団を片付けた。
午前十時過ぎ頃、寮の駐車場に一台の四WDが停まった。宿直室で保健体育の教科書を開き、連休明けの授業���準備をしていた大平は、モニターでその車を確認した。丁度、半袖のポロシャツにジーンズという格好で正美が階下にやって来たので、大平は宿直室から出て聞いた。
「ご両親とお出掛け?」
「おはようございます。否、母の幼馴染でもある中学校の恩師です」
「夕方までには帰るンでしょ?」
「はい、ちょっとドライヴです」
大平は「中学校の恩師」と「ドライヴ」という単語が意味深だなと思った。大概は家族などが迎えに来たり、逆に実家へ一時帰宅したりする場合が多いが、これまでに中学校時代の恩師というのは前例がなかった。もしかしたら、「恋仲」か?と彼は疑った。すると、車から七三分けに髪を整えたほぼ同世代の男がやって来た。彼は水色のオックスフォード生地のボタンダウンシャツに、ベージュのチノパンツという格好だった。その男は八坂だった。彼は大平に挨拶し、
「黒木正美がお世話になっております、八坂周二です。今日はドライヴも兼ねて正美君に会いに来ました。よろしくお願いします」
と自己紹介をした。大平も会釈をし、
「私は一年生の保健体育を担当しております、大平雅之です。今週は寮の宿直をしております」
と言った。正美は、
「おじさん、待ってたよ。行こう!」
と靴を履き替え、何故か手を繋ごうとした。八坂は、
「ダ、ダメだよ。そんな人前で…」
と苦笑したが、
「イイじゃん、早く行こう!」
と正美は疾る気持ちを抑えきれない様子だった。八坂は正美に急かされるまま、
「門限までには帰りますので…」
と言った。
大平は、これまであんな無邪気そうな笑顔を見せる正美を見たことがないと思った。たまに、
「セッ◯スしてぇ〜!」
と、公然と口走る印象しかなかった。しかし、あの八坂もスラッとした雰囲気でイイなァと大平は思った。
その頃、亮司は昨日と同様に刈払い機を片手に校内の除草作業をしていた。この時期は雑草が伸びるのも早く、正直「いたちごっこ」ではあった。昨年は定期的に業者が来訪してやってはいたが、単科大学の方で来年度から従来の経済学部に加え社会学部も新設されるとの事で、極力コストを抑えたいという貢の考えがあった。彼は、
「熱中症にならない程度に草取りしてね」
と、一昨日絡み合った後に言ったのだ。亮司は、
「何だ、愛してるなら手伝えよ」
と布団の中で貢の片脚に自分のものを絡ませながら訴えたが、
「理事長も大変なンだよ、休ませてよ」
と亮司に接吻しながら���びた。
昨日より日差し���強く、早くも頭の方から汗が噴き出す。亮司はペットボトルのスポーツドリンクのキャップを開け、数口飲んだ。嗚呼、この空気が何だか「あの頃」を思い起こさせるなァと、彼は再び秀一のことを想った。
亮司が顧問を務めていた陸上部に秀一が入部して三ヶ月が経過した頃、都立A高校に近い河川敷でジョギングをすることを練習メニューにしていた。未だ「根性で乗り切る」という考え方が根付いていた時代である。練習中に水分を摂ることを制限され、ギブアップしそうな生徒には「忍耐力が足らない」と叱責するのが当たり前だった。亮司もその一人で、指導するにも必ず怒鳴り声を上げていた。
そんな猛練習の中で、秀一は朝イチの新聞配達をしながら個人的に走り込みもしていた。周囲に話すことはせず亮司にも黙っていたが、たまたま犬の散歩をしに河川敷を歩いていた時に亮司は秀一がジョギングをするところを見かけていた。他の教師から秀一の家庭が火の車であることを聞いていた亮司は、そんな彼に少しずつ想いを寄せる様になっていた。
ある日の夕方、いつもの様に河川敷のジョギングをしていた時だった。普段であれば余裕の表情を見せていた秀一の足取りが徐々にペースが落ち、その場に倒れ込んでしまった。他の部員は一時的に足を止め、彼の許に駆け付けた。亮司は、
「益子!」
と身体を揺さぶった。意識はあるが朦朧とした様子だった。彼はその日の部活動を中断し、学校に戻ることにした。
保健室に連れて行った亮司は、ベッドに横たわる秀一を眺めていた。
「どうやら、睡眠不足の様ね」
と女性の養護教諭は言った。
「『睡眠不足』?」
「確か、益子君ってお母さんだけよね? お姉さんは看護婦さんで…。新聞配達もしながら成績も優秀だし、かなり頑張っている筈よ。それで部活なンだから」
「…そうか」
亮司は、秀一の学校以外の一面を知らずにいたことを悔やんだ。そもそも部活動の時にしか関わらないし、他の生徒に対しても同様だった。
秀一が目覚めた時には、とっくに夜の帳が下りていた。養護教諭もずっと残っていたが、
「とりあえず、何か美味しいものでも食べなさい。あとは無理はダメよ」
と彼に言った。
「佐々木先生、色々とありがとうございました」
亮司はそう頭を垂れ、秀一と学校を出て行った。秀一の家は河川敷近くにあったが、亮司は神田の方だった。今夜は、ずっと付き添い気持ちがあった。そうだ、駅前に食堂があるから連れて行くかと、秀一と一緒に山手線に乗って秋葉原駅前の定食屋へ向かった。カツ丼は大盛り、その他に秀一はカレーも注文した。あまりの食い込みのよさに亮司は驚き、
「普段、何食べてるの?」
と聞くと、
「普通に食べてますよ。でも、すぐお腹空いちゃう」
と秀一は話した。
「今日は沢山お食べよ」
まるで息子を一人持った様な感覚に、亮司は陥った。嗚呼、何とかしてあげたいと思いながら。その日は、秀一とは秋葉原駅で別れたが、回数を重ねるごとに逆に亮司が彼のところまで送って行く様になった。時折、無意識のうちに手を握り合うことも多くなり、互いに教師と生徒という関係を越えつつあった。
そんな二人の想いが通い合ったのは、夏休みが近づいた七月の中旬のある夕方だった。いつもの様に秋葉原駅前の食堂で食事をした後、西日暮里駅を下りて秀一をアパートまで送るその矢先だった。亮司はこれまで押し殺してきた彼に対する想いを河川敷の橋桁で告白した。突然唇を奪われた秀一は、最初は何が起きたのか理由が解らない状態だったが、
「…先生、僕も好き」
とおのずと舌を絡ませてきたのだ。一瞬、唇を離すと二人の唾液が一筋の糸でつながっていた。亮司はそのまま秀一を叢に横たわらせ、
「申し訳ない…。でも、秀一が好きなンだ。愛してるンだ。オレ、お前が欲しいンだ」
と、ワイシャツの第二ボタンを外しながら未だ十六歳になったばかりの「やわ肌」に手を忍ばせ、同時に首筋に唇を押し付けた。
「せ、先生。そんな、あぁ、あん…」
初めて経験するエクスタシーに忽ち秀一は酔い、今度は彼自ら亮司のネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外し、ランニングシャツの片側を肩からずり下げた。日焼けした肌に黒々と浮き出た乳房を弄った。
「し、秀一! オ、オレ、そんなつもりじゃ、あぁぁ…」
叢の上で、二人の体位は逆転した。周囲はすっかり暗くなっていた。人気もない。橋桁の上なので、たとえ声を上げても車の往来でガタガタという雑音でかき消された。スラックスを互いに脱ぎ捨て、二人はブリーフを片脚に絡ませた状態で肉棒を咥え合った。秀一は、銭湯でしか他人様のチ◯ポを見たことがなかったが、微かに小便の「匂い」がしつつも抵抗なくその裏側を舌の先でなぞったり、また先端を口の中で弄んだ。あまりに気持ちよく遊戯してくれていることに亮司は、
「し、秀一! 気持ちイイ! イイ!」
と歓喜を上げ、そのまま愛液を秀一の口の中に放出した。
「あッ、あん! あぁん! あん!」
亮司は頬を赤らめながら、うっすら涙を浮かべつつ、全身を震わせた。一方、あまりに卵白の様にヌルッとした感触だったからか、オルガズムが終わると秀一はすぐその場に亮司の愛液を吐き出��た。
彼は、
「…先生、僕、我慢できない」
と訴えた。
亮司は、秀一に「お前の愛液を顔にかけて欲しい」と求めた。言われた通りに、秀一は亮司の顔の目前に下半身をさらけ出し、今にも多量に噴き出しそうにいきり勃った秀一の肉棒を亮司はしゃぶったりしごいたりした。そして、
「嗚呼、 イク!イッちゃう! 出ちゃう!」
と、見事なほどに熱く粘度を含んだ乳白色の愛液が亮司の顔面に飛び散った。「シャワー」の様に浴びた亮司は、うっすらと微笑を浮かべた。
初めてにして変態的な「痴情」を経験した二人は、それからこの様な濡れ事を重ねに重ねた。間もなく夏休みを迎えたが、すぐに亮司は仮住まいとして、西日暮里駅と都立A高校の間にアパートを借り、其処を「愛の棲家」とした。週二、三回は部活動の後、亮司自ら夕食を振る舞い、一緒に近くの銭湯へ行っては愛し合ったのだ。
『嗚呼、若かったよなァ。オレも』
木陰から漏れる日差しを時折見上げながら、もう一口スポーツドリンクを飲み、亮司は再び刈払いを始めた。
11 notes · View notes
mayimkjs · 9 months ago
Text
The Writhing of the Weak (弱者の蠕動) Japanese Transcription
Feel free to use this how you like with no credit to me required. Credit should go to Yamanaka.
エス: Es
ハルカ: Haruka
1|ミルグラム監獄内
尋問室薄暗い尋問室の中。
不安そうに椅子に座っているハルカ。
扉の外からコツコツと足音。
ハルカ 「......ぁ」
ガシャンと乱暴に扉が開く。
ハルカ 「......っ」
びくっと怯えるハルカ。
扉を開けたエスは気にすることもなく、座っているハルカの前に立つ。
エス 「さて、尋問を始めよう。囚人番号1番、ハルカ」
ハルカ 「は、はい......。ご、ごめんなさい」
エス 「......?何を謝ることがある?」
ハルカ 「あ、あ、いや......ごめんなさい」
ハルカの態度を不思議がりつつも話を続けるエス。
エス 「ふむ。ミルグラムはお前たち囚人の罪を明らかにし、適切な判断をくだすために存在している。そのためにいくつか話をしよう」
ハルカ 「はぁ」
エス 「なに、尋問といっても現段階では手荒な真似をするつもりはないから安心しろ。ちなみに、虚偽も黙秘も認めている」
ハルカ 「きょぎ、もくひ......」
エス 「言いたくないことは言わなくても構わないし、嘘をつきたければついても構わない」
エスの言葉に意外そうに口を開くハルカ。
ハルカ 「そうなん、ですか......」
エス 「あぁ、ミルグラムはお前の記憶から直接歌を取り出すからだ。僕はそれを見てお前の罪を判断する」
ハルカ 「......」
エス 「つまりお前がどんな主張をしようと大きな問題はなむしろ黙秘をした “嘘をついた” ということ自体がお前が自分の罪に対してどういう意識を持っているかを示すことになる」
ハルカ 「はぁ......」
エス 「そもそも、罪に対して反省しているかどうか、それを判決の基準にするかすら僕次第なのだがな。わかるな?」
少し困ったように考えるハルカ。
ハルカ 「えっと......わかりません」
エス 「は?」
ハルカ 「え?」
エス 「ん?」
ハルカ 「あ、え、あの何言っているかわかりませんでした。むずかしくて」
エス 「......うん?」
ハルカ 「あの、ごめんなさい僕あたまがあまり......」
軽く頭痛を覚えながら、言葉を続けるエス。
エス 「......ハルカ、お前歳はいくつだ」
ハルカ 「えっと777だったと思います」
エス 「......思います?」
ハルカ 「あ、いや、自分の年齢に興味なくて......ごめんなさい」
エス 「......調子狂うな」
おもわずこぼすエス。
エス 「......続けようか。ミルグラムでの生活はどうだ?」
ハルカ 「あ、あの最初はわけわからないしちょっと怖かったんですけどみんな良い人なんで、大丈夫です......」
エス 「みんな、とは。他の囚人連中か?」
ハルカ 「あ、はいあの、ユノさんとかマヒルさんとか優しく、てくれます......」
少し考えたのち、改めてハルカをじっと見つめる
エス 「......少し興味があるな。ハルカの目に他の囚人はどう映っている」
ハルカ 「あ、え、いや。ぼ、僕なんかがみんなのことを喋るの、わるいです」
エス 「安心しろ。この部屋でのことを他の囚人に漏らすことはない」
ハルカ 「えっと......は、はい......何を話せばいいんでしょうか
エス 「そうだな。誰とよく話すんだ?」
ハルカ 「あ、よく話しかけてくれるのはユノさんと、マヒルさんと、えっとミコトさん......フータくんも、少し怖いけど、かまってくれます。ムウさんとも、たまに話します......」
エス 「ふむ、カズイやシドウは?」
ハルカ 「あ、あの大人なんで、少し怖いんですけど二人とも優しい人だと思います......」
エス 「コトコは?」
ハルカ 「あ、ちょ、ちょっと怖いです」
エス 「まぁ予想通りだ。あとは名前が出てないのはアマネか」
アマネの名前が出て、少しトーンが落ちるハルカ。
それとは裏腹に落ち着かず細かい手の動きが増える。
ハルカ 「ア、アマネちゃん......」
エス 「どうした」
ハルカ 「に、苦手なんです......あれくらいの、子供......あ、あ、アマネちゃんは良い子なんですけどい、いや、い、いやなことを、思い出すんで......」
顔を下げ、頭を抱えるハルカ。
エス 「大丈夫��?随分顔色が悪いな」
ハルカ 「そもそも、あまり僕は人と関わっちゃいけないんです......し、囚人のみんなとも......勘違いしちゃだめなんだ」
エス 「なぜだ。好きにすればいいじゃないか。僕は他者との関係の中でこそその人間の本質が見えると考えている」
バッと顔を上げ、エスに対して前のめりになるハルカ
ハルカ 「かっ......看守さんにも言えることなんだ」
エス 「僕にも?」
ハルカ 「......あまり僕に近づかない方がいい。生まれつき人を不幸にすることは得意なんです......僕を知ろうとすればするほどきっと看守さんも不幸になる......」
エス 「ハルカ......」
ハルカ 「だって、だって......あぁ、ごめんなさい、一人でずっとしゃべって......」
エス 「......続けろ」
ハルカ 「い、いつだってそうなんだ。僕が、僕は、ただ普通にしてるだけなのにぜんぶ、だめにしてしまう......」
ハルカ 「看守さんだって、みんなだって僕のことを知ったら......僕のしたことをすべて知ったら」
ハルカの目に浮かぶ涙。
ハルカ 「僕を、見捨てるに決まってる......」
頭を抱え、震えるハルカ。
ハルカ 「ぼくは身勝手な “ヒトゴロシ” だから......」
しばらくハルカを見つめたあと一息をつき話始めるエス。
エス 「......ハルカ」
ハルカ 「はい......」
エス 「顔をあげろ」
ハルカ 「はい......」
エス 「......ふんっ!」
ハルカ 「ぎゃん!」
ハルカの顔面を思いっきりビンタするエス。
思い切り後ろに椅子ごと倒れるハルカ。
床に尻もちをつき、頬を抑えるハルカ。
ハルカ 「い、いたい......な、何をするんですか......」
ハルカを見下ろし、冷たく言い放つエス。
エス 「僕は看守だ。今のは囚人に対しての教育的指導だ。赦される」
ハルカ 「うっ......」
ハルカの襟首をつかむエス。
顔をぐっと近づけ威圧的に話しかける。
エス 「いいか、よく聞け囚人番号1番。何度でも言おう、僕は看守だ。お前の本性を知るのが僕の仕事だ。お前が何者だろうと、お前がどんな非道を働いていようとすべて見届け判断するのが僕の仕事だ」
静かに怒りを押し殺しながら言葉を続ける。
エス 「それを言うに事欠いて、見捨てるだと......?あまり僕をナメるなよ......」
ハルカ 「あ......あぁ」
エス 「お前の罪を知り、お前の罪を赦すか赦さないか判断し終えるまで、お前は僕の管理物だ。逃してもらえるなどと思うな」
ハルカ 「か、看守さん......」
エスの威圧感に呆然としていたハルカ。自然と口角があがっていく。
ハルカ 「ふ、うふ......」
エス 「ちょっと待てハルカ。何をニヤニヤしている」
ハルカ 「えっ......あ、あ、ごめんなさい。きもちわるいですよね......へ......へ......」
エス 「きもちわるい」
掴んでいた襟首を離すエス。
床に正座するハルカ。
ハルカ 「あっ、あっ......ちがくてへ、へんなはなしなんですけどちょっと、うれしくて......」
エス 「......嬉しい?」
ハルカ 「はい......」
エス 「おかしな話だな。僕が言うのも難だが監禁され、拘束され、こうして尋問されている。この状況に対して怒りや恐れを覚えるのが自然だろう」
顎に手を当て考える様子のエス。
エス 「......そういえばお前は最初からずっとそう��。ふさぎ込んではいるがミルグラム自体への混乱を感じない。その点はフータやムウの反応の方が腑に落ちるというものだ」
ハルカ 「そ、そうですね......フータくんはすごく怒ってますね......こわいじゃ、じゃなくていや、あの僕はこのミル、グラムでしたっけ。何のためにあるのかとか、よくわかってないんですけど看守さんが自分に興味を持ってくれて、色々聞いてくれるのは、なんだか嬉しかったりします」
床に正座するハルカ。
ハルカ 「あっ、あっ......ちがくてへ、へんなはなしなんですけどちょっと、うれしくて......」
エス 「......嬉しい?」
ハルカ 「はい......」
エス 「おかしな話だな。僕が言うのも難だが監禁され、拘束さ れ、こうして尋問されている。この状況に対して怒りや恐れを覚えるのが自然だろう」
顎に手を当て考える様子のエス。
エス 「......そういえばお前は最初からずっとそうだ。ふさぎ込 んではいるがミルグラム自体への混乱を感じない。その 点はフータやムウの反応の方が腑に落ちるというものだ」 
 ハルカ 「そ、そうですね......フータくんはすごく怒ってますね ......こわいじゃ、じゃなくていや、あの僕はこのミル、 グラムでしたっけ。何のためにあるのかとか、よくわかっ てないんですけど看守さんが自分に興味を持ってくれて、 色々聞いてくれるのは、なんだか嬉しかったりします......」
エス 「......」
ハルカ 「そ、それがおしごとでも僕のやったわるいことをあきらかにするためだったと、しても......です」
エス 「......ふむ」
ハルカ 「......」
エス 「変なやつだな」
ハルカ 「あう......」
正座のままびくびくしているハルカ、遠い目をするエス。
エス 「一人目から特殊すぎる。お前は七人目くらいでくるべきだ。この仕事の大変さを今はっきり理解した」
ハルカ 「ご、ごめんなさい......」
エス 「ふむ。まぁ良い。 反抗的な囚人よりはいくらかマシだな......」
ハルカ 「......ほっ」
安堵のため息をこぼすハルカ。
エス 「ただし! あまり勘違いをするなよ、ハルカ。僕はお前 と仲良くしたくて話を聞いているわけではない僕の目的 はあくまでお前の犯した罪を知ることだ。お前が何をし たのか、なぜ“ヒトゴロシ〟となったかを知るためだ」
ハルカ 「は、はい......」
エス 「まだニヤニヤしている」
ハルカ 「ごっ、ごめんな��ゃい」
頬を手で抑えて笑みをごまかすハルカ。
エス 「緊張感のない男だ。僕がお前を赦さないと判断するだけでお前の身にどんなことが起きるか......」
ハルカ 「何がおきるんですか?」
エス 「......」
突如出来た無言の時間にあわてるハルカ。
ハルカ 「......えっと」
エス 「さぁな。お前は考える必要はない......きっと僕にもな」
ハルカ 「......」
エス 「そうだ、あとひとつ言いたいことがある。お前は自分が身勝手なヒトゴロシだから周りと関わってはいけないといったな」
ハルカ 「はい......」
エス 「囚人どもは皆”ヒトゴロシ”だ。何を遠慮することがあるあいつらにくらい好きに振る舞えばいい」
ハルカ 「......えっと」
わずかに口角のあがるエス、
エス 「お前にもわかりやすく言おうか。 お前ら全員ダメ人間だ。 だから気にするな」
ハルカ 「......は、はは ......それも、そうですね」
エス 「ふっ」
突如部屋にある時計から鐘の音がなる部屋の構造が変化していく。
ハルカ 「え......」
エス 「おしゃべりの時間は終わりのようだ。恐れることはない。ただお前の記憶をのぞかせてもらうだけだ」
怯えるハルカの肩に手を載せるエス。
エス 「囚人番号1番、ハルカさぁ。お前の罪を歌え」
13 notes · View notes
yoooko-o · 1 year ago
Text
02/05/2024 part2 (人は変わる、私も変わる)
Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media
先日、自宅に届いたフェスタリアのオリジナルプレミアムカット"Wish upon a star"のダイヤモンド✨ 何度か店舗で見せて貰い、このシリーズが欲しかったのですが値段が…と思って諦めていましたが、ちょうどのタイミングで半額、そしてタイムバーゲンでさらに10%オフというのもあって、思い切って購入しました。 ネックレスは悪目立ちしないサイズなので職場につけて行きます。
*一番下の写真は公式サイトより抜粋した画像です。
今日の夕方、徳丸屋さん訪問後、約1年ぶりに父方の祖父母の墓参りに行ってきましました。 以前も記載しましたが、お墓があるのは2年前にハラスメント被害で退職した町にあります。
✄✄✄
家族も親戚も全員、ハラスメントで退職した事情を知っているので 「無理してこの町に来なくて良いよ」 と言ってくれるので、近付かないようにしていました。 私以外の家族は毎年、お盆・正月には必ず墓参りに行きますが、私だけは行きません。 ただ、今度の職場は遠方ということで、次に墓参りに行くのは何年後になるのか分からない状態。意を決して墓参りに行くことにしました🚶🏻‍♀️平日ということで誰にも会わずに済みましたが、やっぱり疲れました。
帰りにその役場で在職中にお世話になった人の元へお忍びでご挨拶。 久しく会っていなかったこともありますが、その方の性格がすっかり別人に変わってしまっていました。
今の職場の人員不足の愚痴から始まり、他の会社に勤務しているママ友の職場の時給と待遇が良さから始まり、あの職場の方が良い、働きやすそうなどなど。日本の地方では非現実的な時給ではないと満足しないそうです。以前だったら「大変ですね」って共感する言葉を言っているところですが、表向きはそう言いながら心の中では凄くモヤモヤ。
彼女たちの不満の原因は私のときのような人間関係ではなく、時給の悪さと人員不足です。 公的機関の財源は税金なので、人員を増やすのは容易ではないですが、業務が円滑に進まない、日常生活に支障をきたしているいるなら、上司に相談、提案すべきだと思います。 あの役場なので、モラルはさておいても福利厚生は整っているし、近隣市町村の中では給料の待遇は良い方です。彼女の不満の対価として給料に反映されているはずなんですが(実際同じ役場でも彼女たちの職種は時給は良いです)、数少ない良い所には目を向けることはなく。 そこまでの時給を言われたら、東京の最低賃金にも達していません。ドイツやフランスなど、日本よりも最低賃金の高い西ヨーロッパに引っ越さないと無理ですよ笑 完全に現実逃避の発言に嫌気がさしている自分がいました。
そして、そんなに不満なら転職活動すればいいのに。
私がこの役場を辞めるときはハラスメントということで退職を余儀なくされましたが、退職して切れたご縁以上に、新しいご縁がたくさん出来たので、今は退職して良かった!って思っています。特に私の場合、ハラスメント被害による退職を国と県が認め、ハラスメント被害に理解してくれる方もたくさんいました。 失業保険の認定日翌日にはチュニジアに長期滞在できましたし🇹🇳
退職後に新しく出会った人たちがいつも活き活きと頑張っている姿を見ているだけに、 「解決しないから愚痴、だからと言って上司には相談・進言しない」 のような進歩の無い話を延々と聞かされて物凄く疲れました。 相手が変わったというよりも、私が変わったのが正解なのかもしれません。
でも在職中の大変な時期に助けてくれたのも事実。在職当時の感謝の気持ちは持ちつつも、今後もう会うことは無いだろうと、徳丸屋さんで買った差し入れのお菓子を置いてその場を離れました。
さて来週はいよいよ新しい職場での仕事📚
Tumblr media
社労士事務所の仕事を辞めてから法律もかなり変わったので、急いで本を買って読んでいます👀
去年の暮れは神社に恐ろしい勢いでの断捨離がマイブーム。 現在も減量が順調に進んでいるせいか、リングにドはまり、最近はネックレスにも手を出す私。 私の行きつく先はどこへやら…です汗
48 notes · View notes
moko1590m · 26 days ago
Text
サイコパスの概要
「サイコパス」は、冷酷で���心の呵責を感じにくく、他者を操る傾向のある人物像を指す通俗的用語。
精神医学的には正式診断名ではなく、「反社会性パーソナリティ障害(ASPD)」や「ダーク・トライアド(サイコパシー、ナルシシズム、マキャヴェリアニズム)」の一部として扱われる。
人口の約1~2%がサイコパス的特性を持つ(Hare Psychopathy Checklist)。男性に多く、刑務所人口では15~20%。
サイコパスの主な特徴
感情の浅さ: 共感や罪悪感が乏しく、他者の痛みや悲しみに無関心。例:友人が悩みを打ち明けても無反応、または表面的な同情を装う。
表面的な魅力: カリスマ性、流暢な話術、魅力的な外見で初対面の印象が良い。例:営業やプレゼンで人を惹きつけるが、親密な関係では冷淡。
自己中心的: 自分の利益や快楽を最優先し、他者を道具として利用。例:目的達成のため嘘や裏切りを平気で行う。
衝動性・無責任: 長期的な計画性がなく、衝動的に行動。責任を他者に転嫁。例:約束を破る、借金を放置、失敗を部下のせいにする。
他者操作: 巧みな嘘やマニピュレーションで他人をコントロール。ガスライティング(相手の現実認識を歪め、自己不信に陥らせる心理的虐待)も。例:職場で同僚を操り、自分の評価を上げる。
冷淡で恐れがない: 危険やリスクに動じない高いストレス耐性。例:高リスクな投資や交渉で大胆な決断。
攻撃性と無慈悲: 必要なら冷酷な行動や報復を取る。例:競争相手を徹底的に排除。
社会規範の無視: 法律や倫理を軽視し、自分のルールで行動。例:詐欺や不正行為を正当化。
高い知能(一部): 一部のサイコパスは高知能で、計画的な行動を取る(例:詐欺師や企業リーダー)。
嫌がられる点
嘘や裏切り: 約束を破り、虚偽の情報で他人を騙す。例:パートナーに浮気を隠し、発見されても開き直る。
共感や反省の欠如: 他者の感情を無視し、傷つける発言や行動。例:同僚の悩みを「そんなの関係ない」と一蹴。
冷酷な関係��切り捨て: 自分に不利と判断すれば、親しい関係でも即座に切る。例:ビジネスパートナーを突然切り捨て、利益を独占。
ストレスや恐怖の誘発: 威圧的な態度や予測不能な行動で周囲を不安にさせる。例:部下に過度なプレッシャーをかけ、恐怖を植え付ける。
対話の困難: 感情的共感や誠実な対話ができないため、関係が表面的。例:議論で自分の意見を押し通し、相手の話を聞かない。
信頼の破壊: 繰り返される不誠実な行動で、家族や同僚の信頼を失う。例:金銭の横領や機密情報の漏洩。
搾取的行動: 他者を自分の目的のために利用し、搾取する。例:友人から金を借りて返さない。
尊敬される点
カリスマ性と説得力: 魅力的な話し方や自信でリーダーシップを発揮。例:投資家や従業員を惹きつけるプレゼン。
危機的状況での冷静さ: ストレスや危険に動じず、迅速な判断が可能。例:緊急時に的確な指示を出す。
合理的・戦略的思考: 感情に流されず、利益や目標に焦点を当てる。例:リストラや投資で冷徹な決断。
高いストレス耐性: プレッシャー下でもパフォーマンスを維持。例:外科医や軍事指揮官として冷静に任務遂行。
独自のビジョン: 社会規範にとらわれず、大胆な目標を掲げる。例:革新的なビジネスモデルを構築。
決断力: リスクを恐れず大胆な行動を取る。例:スタートアップで市場を切り開く。
注意点: 「尊敬」は「恐れ」や「利用価値の認識」に近い場合が多く、長期的な信頼を損なうリスクがある。
有名人の具体例
サイコパスは正式診断が難しいため、以下は「サイコパス的傾向が指摘される」人物やフィクションの例です。診断は推測に留まります。
フィクションの例
ハンニバル・レクター(『羊たちの沈黙』): 高知能、表面的魅力、冷酷な殺人行為、共感の欠如。心理操作の達人で、冷静で計算高い。
パトリック・ベイトマン(『アメリカン・サイコ』): 成功した投資銀行家だが、裏で残忍な殺人鬼。表面的な魅力と極端な自己中心性が特徴。
ライト・ヤガミ(『DEATH NOTE』): 高知能で自己の正義を押し通す。他者を道具として利用し、共感や罪悪感が乏しい。
ジョーカー(DCコミック): 混乱を楽しみ、倫理や社会規範を無視。予測不能な行動と感情の希薄さがサイコパス的。
エイミー・ダン(『ゴーン・ガール』): 巧妙な操作と計画性、共感の欠如。他者を操るマキャヴェリアニズムとサイコパシーの融合。
シャーロック・ホームズ(一部の現代版): BBC版『シャーロック��では、高知能だが共感に乏しい描写がサイコパス的とされる(ただし、倫理的行動を取る)。
歴史上・現実の人物(推測)
アドルフ・ヒトラー(政治家): カリスマ性、冷酷な大量虐殺、自己中心的な世界観。プロパガンダの巧妙さがサイコパス的。
ジョセフ・スターリン(政治家): 大粛清や恐怖政治、感情の希薄さ。目的達成のため無慈悲に他者を排除。
テッド・バンディ(連続殺人犯): 魅力的な外見、巧妙な嘘、残忍な殺人。典型的な臨床的サイコパスとして研究対象。
スティーブ・ジョブズ(起業家): 冷酷な経営判断、共感の欠如、カリスマ性。過酷な職場環境が議論に(『Steve Jobs』伝記)。
エリザベス・ホームズ(Theranos創業者): 投資家や従業員への虚偽、表面的な魅力、自己中心性。詐欺的行為で2022年に有罪判決。
バーナード・マドフ(投資家): 史上最大のポンジスキーム詐欺。表面的な信頼性と無慈悲な搾取が特徴。
ジャック・ウェルチ(GE元CEO): 冷徹なリストラ(「ニュートロン・ジャック」)とカリスマ性。諸説あり。
心理学的補足
サイコパス vs ソシオパス:
サイコパスは先天的(遺伝的・脳構造的)要因が強く、感情の希薄さが特徴。冷徹で計画的。
ソシオパスは環境的要因(虐待、貧困)が影響。衝動的で感情的反応が強い。
両者ともASPDの診断基準に含まれるが、サイコパスはより冷淡。
ダーク・トライアド= サイコパシー(共感欠如)、ナルシシズム(自己愛)、マキャヴェリアニズム(操作性)の3特性。サイコパスは他者への無関心が顕著。
脳科学的背景: 扁桃体の活動低下(感情処理の障害)、前頭前皮質の異常(衝動制御や倫理的判断の欠如)が関連(Blair, 2013)。fMRI研究で、サイコパスは他者の痛み映像に反応しない。
発生率: 一般人口の1~2%、企業幹部の約4%、刑務所人口の15~20%がサイコパス的特性を持つ(Babiak & Hare, 2006)。
診断ツール: Hare Psychopathy Checklist-Revised (PCL-R)で、共感欠如、衝動性、操作性などを評価。20項目中30点以上でサイコパスと診断。
ドゥルーズ=ガタリ的視点
サイコパスは、ドゥルーズとガタリの哲学(『アンチ・オイディプス』『千の台地』)で「欲望マシン」と解釈可能。社会規範や倫理(コード)に縛られず、欲望を無限に追求。
脱コード化の行き過ぎ: 社会のルールを「脱コード化」するが、他者との関係性(集合的配置)を無視し、破壊的な「戦争マシン」に。
逃走線との違い: ドゥルーズ=ガタリの「逃走線」は創造的解放を意味するが、サイコパスは自己中心的な「自己破壊的パターン」に陥る。
例: サイコパス的経営者は、短期的な利益追求(欲望マシン)で成功するが、従業員や社会との関係を破壊し、長期的崩壊を招く。
企業・経営におけるサイコパス的リーダーの功罪
功績:
大胆な決断で短期的な成果(例:ジョブズの製品開発、ウェルチのGE成長)。
カリスマ性で投資家や従業員を惹きつける(例:ホームズのTheranosプレゼン)。
危機管理での冷静さ(例:緊急時の迅速な意思決定)。
罪:
過酷な職場環境(例:ジョブズの部下への苛烈な要求)。
不正リスク(例:ホームズの詐欺、マドフのポンジスキーム)。
長期的不信と士気低下(例:離職率上昇、チームの崩壊)。
データ: 企業幹部の4%がサイコパス的特性を持ち、一般人口(1%)より高い。短期成果を上げるが、持続可能性を損なう(Babiak & Hare, 2006)。
AIとサイコパスの倫理的比較
共通点:
感情的共感の欠如(AIはプログラム、サイコパスは脳機能)。
論理的・目的志向的な行動(AIはアルゴリズム、サイコパスは自己利益)。
相違点:
AIは人間が設定した倫理ガイドラインに従うが、サイコパスは自己ルールで行動。
AIの行動は予測可能だが、サイコパスは衝動性や操作性で予測困難。
課題:
サイコパス的傾向の人間がAIを悪用するリスク(例:2025年のディープフェイクによる偽情報拡散)。
AIの倫理的設計が進む中���サイコパス的行動の統制が課題。
サイコパスと仏教的慈悲の対比
仏教的慈悲(メッタ・カルナ):
他者への無条件の愛や共感を重視。輪廻転生で全ての生命が繋がると考える。
例:瞑想で他者の苦しみを理解し、利他的行動を促す。
サイコパス:
共感や罪悪感が欠如し、他者を道具化。「無我」や「縁起」と対極的。
例:自己中心的な欲望が輪廻の苦しみを増幅(仏教的「業」の蓄積)。
対比の意義:
仏教はサイコパス的傾向を「無明」や「貪瞋痴」とみなし、修行で克服可能と説く。
脳科学的要因が強いサイコパスへの瞑想の効果は限定的(研究では効果低い)。
結論
サイコパスは、感情の浅さ、表面的魅力、自己中心性、冷淡さなどの特徴を持ち、嘘や裏切りで嫌われる一方、カリスマ性や冷静な判断力で一部尊敬される。フィクション(ハンニバル、ジョーカー)や歴史・現代人物(ヒトラー、ジョブズ、ホームズ)に見られる傾向は、サイコパス像を誇張する場合が多い。脳科学的・遺伝的要因が関与し、企業リーダーシップでは功罪両面を持つ。ドゥルーズ=ガタリ的には「欲望マシン」だが破壊的、AIとの比較では倫理的制御が課題、仏教では共感欠如が対極的。特定の視点(例:企業、AI、仏教)を深掘りしたい場合、教えてください!
ドナルド・トランプも、サイコパスの一例と言われることがありますが、政治的リーダーとしての今までの彼の言動で、サイコパスの特徴に当てはまる点や、当てはまらない点をできるだけたくさん教えてください。
ドナルド・トランプ(Donald Trump)がサイコパスの一例として語られることは、心理学や政治学の議論でしばしば見られますが、正式な診断なしに「サイコパス」と断定することはできません。以下では、トランプの政治的リーダーとしての言動を、サイコパスの特徴(前述の定義に基づく)と照らし合わせ、当てはまる点と当てはまらない点をできるだけ多く整理します。2025年現在の情報(特に47th大統領としての再選後)やウェブ上の資料、Xの投稿を参考にしつつ、客観的かつ批判的に分析します。なお、サイコパス診断は精神医学的評価を要するため、ここでは「傾向」の観点から考察します。
サイコパスの特徴とトランプの言動
感情の浅さ(共感や罪悪感の欠如) 当てはまる点:
敵対者への冷淡な攻撃: トランプは選挙演説やSNSで、相手候補(例:ヒラリー・クリントン、カマラ・ハリス)に対し、「IQが低い」「バカ」など個人攻撃を繰り返し、共感や配慮を示さない。例:2024年選挙でのハリスへの「みじめな失敗者」発言は、感情的共感の欠如を思わせる。 政策の影響への無関心: LGBTQや移民コミュニティへの政策(例:トランスジェンダー保護の撤回、ムスリム入国制限)が精神的苦痛を引き起こしたとの報告があるが、トランプはこれに対する反省や謝罪を示さない。 虚偽の主張の繰り返し: 選挙詐欺の主張(2020年)や「史上最大の就任式観衆」発言(2017年)など、事実と異なる主張を繰り返し、訂正や罪悪感を示さない。 家族関係の冷淡さ: 姪のメアリー・トランプ(臨床心理学者)は、トランプの母が自己中心的で不在がち、父が感情や共感に欠けていたと述べ、トランプ自身の共感欠如が育まれた可能性を指摘。 当てはまらない点:
感情的反応の存在: トランプは批判に過敏で、感情的な反応を示す(例:「フェイクニュース」とメディアを攻撃)。サイコパスは通常、批判に無関心だが、トランプの反応は感情的でナルシシズム的。 支持者への共感: 支持者集会で感情的な結びつきを強調し、「アメリカを再び偉大に」とのスローガンで共感を模倣。サイコパスの完全な感情欠如とは異なり、戦略的共感を示す。 家族への配慮: 娘イヴァンカや息子たちとの関係では、ビジネスや政治で積極的に登用し、一定の忠誠心や感情的関与を示す。これはサイコパスの完全な冷淡さとは異なる。
表面的な魅力 当てはまる点:
カリスマ性とメディア活用: 『アプレンティス』(2004-2015)のホストやSNSでの大胆な発言で、強烈なカリスマ性を発揮。支持者からは「率直で魅力的」と評価される。 演説の魅力: 短く簡潔で攻撃的な修辞(例:「アメリカを救う!」)は、大衆を惹きつける。心理学研究では、トランプのスピーチは��代大統領と比べ独特で、分極化を促進。 自己演出: ゴルフクラブ選手権での「18回優勝」主張(実際は虚偽)など、成功者としてのイメージを誇張。 当てはまらない点:
不快感を与える側面: 一部の有権者(特に民主党支持者)には、トランプの攻撃的・下品な言動(例:女性やマイノリティへの侮辱)が魅力的でなく、反発を招く。サイコパスの「万人に好かれる魅力」とは異なり、支持は分極化。 一貫性の欠如: サイコパスは計算された魅力で一貫性を保つが、トランプの発言は衝動的で矛盾が多い(例:コロナ政策の翻意)。
自己中心的 当てはまる点:
利益優先の行動: X投稿で指摘されるように、トランプの原則は「自分の利益が全て」で、正義や倫理は二の次。例:ビジネスでのブランド名ライセンスや税務戦略。 自己称賛: 「私が大統領になればアメリカは完璧になる」などの大言壮語。選挙演説で政策より自己の成功を強調。 政策の自己投影: 「アメリカ・ファースト」は、トランプ自身の価値観(富、権力、支配)を国家に投影。 家族企業の優先: トランプ・オーガニゼーションを家族で運営し、娘や息子を政治的役割に登用。自己と家族の利益を優先。 当てはまらない点:
支持者への忠誠: 支持者集会やSNSで「MAGA」運動を強く推進し、支持者基盤の維持に努める。これは純粋な自己中心性より、集団的アイデンティティの構築を含む。 大衆への訴求: サイコパスは個人利益のみ追求するが、トランプはポピュリズムで大衆の不満(例:反エリート感情)を代弁し、自己利益を超えた政治的影響力を求める。
衝動性・無責任 当てはまる点:
衝動的な発言: ツイッター(現X)での即興投稿や、2020年選挙後の「選挙詐欺」主張は、計画性より衝動性が目立つ。 政策の不安定さ: コロナ対策(例:マスク着用への矛盾発言)や貿易政策(関税の急変)で一貫性欠如。 責任転嫁: 2020年選挙敗北を「不正選挙」のせいにし、自身やキャンペーンの責任を回避。 ビジネス破綻: 1990年代~2000年代に6回の事業破産を経験。無責任な経営が指摘される。 当てはまらない点:
戦略的行動: 2024年選挙での勝利や共和党内の支配力確立は、衝動性より戦略的計画性を示す。例:中間選挙での候補者支援。 長期的政治基盤: MAGA運動や党内の影響力維持は、サイコパスの短期志向とは異なり、長期的な政治的野心を示す。
他者操作 当てはまる点:
ガスライティング: 「フェイクニュース」主張でメディアや事実を否定し、支持者の現実認識を操作。例:ロシアの2016年選挙干渉を「偽情報」と否定。 支持者の心理操作: 選挙詐欺の虚偽主張で支持者の忠誠心を強化。「アイデンティティ融合」が支持者の信念を固め、法的問題を無視させる。 敵対者のレッテル貼り: 政治的敵を「国内の敵」「裏切り者」と呼び、支持者の敵意を煽る。 メディア利用: 自身のイメージを強化する��め、テレビやSNSを戦略的に活用。例:『アプレンティス』での成功者イメージ構築。 当てはまらない点:
操作の露骨さ: サイコパスは巧妙で隠密的だが、トランプの操作は公然かつ攻撃的(例:SNSでの直接的非難)。計算されたマキャヴェリアニズムより衝動的。 失敗例: 一部の操作(例:2020年選挙後の訴訟)は法廷で却下され、効果が限定的。サイコパス的な「完璧な操作」とは異なる。
冷淡で恐れがない 当てはまる点:
リスクへの大胆さ: 2回の暗殺未遂(2024年)や34件の重罪有罪判決(2024年)を経ても、選挙戦を強行。恐れの欠如を示す。 強権的姿勢: 軍を国内の政治的敵対者(「国内の敵」)に動員する提案や、憲法の一時停止を示唆する発言。サイコパス的無畏さ。 危機での冷静さ: 経済危機やコロナ禍で、自己のイメージ維持に注力し、パニックを示さない。 当てはまらない点:
批判への過敏さ: サイコパスは批判に無関心だが、トランプはメディアや反対派の批判に激しく反応(例:「フェイクニュース」と反発)。 感情的反応: 怒りや不満を公に表現(例:記者会見での攻撃的態度)。サイコパスの冷淡さより、感情的ナルシシズムに近い。
攻撃性と無慈悲 当てはまる点:
攻撃的修辞: ハリスへの人種差別的・性差別的発言や、移民を「犯罪者」と呼ぶ過激な表現。分極化を促進し、憎悪犯罪を助長したとされる。 報復的行動: 政治的敵(例:ジョン・ケリー元首席補佐官、マイク・ペンス元副大統領)への非難や、メディアへの敵対(「報道の自由の制限」提案)。 強権的政策: 移民家族の分離政策(2018年)や、2024年キャンペーンでの「敵の排除」公約は、無慈悲な姿勢を反映。 当てはまらない点:
支持者への配慮: 支持者集会では激励や賞賛を示し、敵対者への攻撃に比べ無慈悲さが少ない。サイコパスは全ての関係で冷酷だが、トランプは支持者に温かみを見せる。 政策の限界: 強権的提案(例:軍の動員)は実行に至らず、制度的制約に直面。サイコパス的な「無慈悲な実行力」は制限される。
社会規範の無視 当てはまる点:
法的規範の軽視: 2024年の34件の重罪有罪判決(ハッシュマネー事件)や、機密文書持ち出し疑惑(2020年)など、法的問題を無視。 選挙規範の破壊: 2020年選挙結果を認めず、議事堂襲撃(2021年1月6日)を間接的に扇動。民主主義の規範を無視。 虚偽の誇張: ゴルフ選手権の虚偽主張や、経済実績の誇張(例:「史上最高の経済」)は、社会的信頼を軽視。 強権的発言: 憲法の一時停止や報道機関への報復提案は、民主的規範への挑戦。 当てはまらない点:
制度的順守: 大統領としての行動は、裁判所や議会の制約を受ける(例:選挙訴訟の却下)。完全な規範無視とは異なる。 支持者の規範重視: MAGA支持者の価値観(例:伝統的家族観、反グローバリズム)に訴え、特定集団の規範を尊重。 総合的評価 サイコパス的傾向の強さ 当てはまる傾向: トランプの言動は、表面的な魅力、自己中心性、他者操作、社会規範の軽視、冷淡さでサイコパス的特徴に部分的に一致。特に、虚偽の主張、敵への攻撃、法的問題への無関心は、サイコパシーの「共感欠如」や「無責任」に符合。心理学研究(例:ScienceDirect, 2020選挙分析)では、トランプはナルシシズムやサイコパシーの「ダーク・テトラッド」特性が高いと評価される。 政治的文脈: トランプの行動は、ポピュリズムや分極化戦略と結びつき、サイコパス的傾向が政治的成功(2016年、2024年選挙勝利)に寄与。例:「恐れを知らない支配(Fearless Dominance)」がリーダーシップに有利(Lilienfeld, 2012)。 当てはまらない理由 ナルシシズムとの混同: トランプの行動は、サイコパシーよりナルシシズム(自己愛性パーソナリティ障害)に近く、批判への過敏さや感情的反応が特徴。X投稿でも「演出型ナルシスト」との指摘。 戦略的計算: 衝動性は見られるが、選挙勝利や党支配の成功は、サイコパスの無計画性より戦略性を示す。 支持者との関係: サイコパスは全ての関係で冷淡だが、トランプは支持者との感情的結びつきを重視し、アイデンティティ融合を促進。 診断の限界: 精神医学者アレン・フランシス(DSM-5作成者)は、トランプの行動は政治的動機によるもので、サイコパス診断には苦痛や機能不全が必要と主張。トランプは機能不全を示さず、成功している。 補足:ダーク・トライアドとの関連 研究(ScienceDirect, 2020選挙)では、トランプはナルシシズム、サイコパシー、サディズムで高く評価されるが、マキャヴェリアニズムはバイデンと同程度。民主党支持者はトランプに強いサイコパス的特性を、共和党支持者は少ない特性を見る(政治的バイアス)。 X投稿でも、トランプのナルシシズムやサイコパシー傾向が議論されるが、支持者は「アメリカを代表する性格」と肯定的に評価。 最近の具体例(2024-2025年) 当て��まる例: 2024年選挙キャンペーン: ハリスへの人種差別的・性差別的攻撃(「低IQ」など)、虚偽の移民犯罪主張で分極化を促進。サイコパス的攻撃性と他者操作。 議事堂襲撃の影響(2021年): 選挙詐欺の虚偽主張が暴力を煽り、共感や反省の欠如を示す。研究では、トランプのツイートが暴力のエスカレーションと相関。 重罪有罪判決(2024年5月): 34件の重罪(ハッシュマネー事件)にも動じず、選挙戦を継続。恐れの欠如と規範無視。 当てはまらない例: 支持者集会(2024-2025年): フロリダでの勝利演説で、支持者に感謝と団結を強調。サイコパスの完全な冷淡さとは異なり、戦略的共感を示す。 共和党支配: 2022年中間選挙での候補者支援や、2024年選挙での党内結束強化は、衝動性より計画性を示す。 結論 トランプの政治的言動は、サイコパスの特徴(感情の浅さ、表面的魅力、自己中心性、他者操作、社会規範の無視、冷淡さ、攻撃性)に部分的に当てはまる。特に、虚偽の主張、敵への攻撃、法的問題への無関心は、サイコパシーやダーク・トライアド特性と一致。ただし、批判への過敏さ、支持者との感情的結びつき、戦略的計画性、ナルシシズム的行動は、純粋なサイコパスとは異なり、自己愛性パーソナリティ障害やポピュリズム戦略に起因する可能性が高い。研究やX投稿では、トランプのサイコパス的傾向が政治的成功に寄与する一方、診断には限界があるとされる。特定の行動や時期(例:47th大統領期の政策)について深掘りしたい場合、教えてください!
2 notes · View notes
hrkwakrtxt · 1 month ago
Text
されど遠き窓
1年同棲した恋人のリリコに去られたヒロセ。
かつての遊び仲間たちとの再会を機に、自分を見つめなおしていく。
※性的描写があります。
 
 鼓膜をつんざくようなけたたましい音で三分経過したことが告げられた。iPhoneに入っているタイマー音はどれも、うるさすぎたり間が抜けていたりで、どうもいい塩梅にいかない。かといって好きな曲を設定するというのも、気取っていてなんだか嫌だし、なんて考えている間に、麺がどんどんのびてしまう。ここ一週間食べ続けているカップラーメンの新しい味をコンビニで見かけたのでついまた買ってしまったのだった。さすがに体に悪いか、と思わなくもないけれど、仕事が繁忙期だし、怒る人ももういないし、緩やかな自傷行為はだんだんと依存性を帯びてきた。アルミの蓋をぺりぺりと開け、頼りない麺を割り箸でずるずるとすする。想像通り、うまくもまずくもない。こういうのは結局一番最初に出たプレーンな味がいちばん飽きが来ないものだ。香辛料のききすぎたスープを飲み干す気にはなれず、流しに残りを捨てた。麺の欠片や掬いきれなかった具がステンレスに散らばり、排水溝の掃除をする必要があることを思い出して煩わしくなった。ゴミの日に合わせて、明日の夜やることにしよう。ベッドでは三毛猫のミナが僕の就寝を待っているが、寝る前に一杯やりたい。食器棚からグラスを取り出そうとすると、しばらく使っていない器達が無言の圧力をかけてきたので、結局今日もまた缶ビールを開けてじかに呷ることになった。チーズを囓りながら、さっきの残像で食器を数える。ペアグラスかける幾つだ、プレートもお椀もだいたいはお揃いまたは柄違いで二の倍数分あり、だけど今僕はそれらがなくても生活できてしまっている。
 一体、この大量の置き土産を、どうしたらいいのか。リリコがいなくなってから、もう三ヶ月が経とうとしている。一ヶ月めは現実と向き合うのに精一杯で気付かず、二ヶ月めは思い出に浸るために必要で、寂しいのが普通になった今やっと、やはりこのままではまずかろうと、彼女が残していったものを、たびたび眺めてみてはいる。一年も一緒に暮らしていたので、すぐには整理しきれない。リリコは料理好きで、腕をふるった品々を毎食SNSにアップしていたほどなので、食器類は特に数が多いが、それだけではない、いま僕が踏んづけている不思議な模様のラグも、天井からぶら下がっている星のかたちをしたライトもすべて、彼女のセンスで買いそろえたものだ。ぜんぶ置いてけぼりなんて、と何度目かの小さな憤りを感じた勢いで重い腰を上げかけては明日もまた仕事だと言い訳して、ずっと後回しにしてきたのだ。まる二ヶ月。やらなきゃいけない、と思うほど頭と体がぼんやりしてきて、やがて逃げるように眠りについてしまう。この部屋の中のすべてが、彼女のかわりに呼吸しているーーそんな妄想は少々ロマンチック過ぎるにしても、たぶんいつかは断ち切らないといけないものだし、断ち切りたいと僕自身も願っている。ああ、だけど今夜も、五パーセントぶんの酩酊を言い訳にして、ミナの待つ寝床に向かう。
 やっぱ、フリマアプリじゃないっすかねえ。心底どうでもよさそうな風情で煙とともにそう吐き出したのは、新入社員で唯一の喫煙者、塩崎くんだ。僕の若いころに輪をかけてぼーっとしていて、鬱陶しがられているかもしれないけれど、ついつい話しかけたくなってしまう。
「ていうか、���瀬さんも女にふられること、あるんすね」
「そりゃあるよ、ふったことのが少ないよ」
「女になんか全然不自由しなさそうに見えるのに」
「……不自由するかどうかはまた別の話かもね」
 しまった、失言だった。話を聞く限り、塩崎くんには女性経験がないのだ。背も高いし、肌もきれいだし、顔立ちも悪くはないのに、たぶん、ぼーっとしすぎているのだ。どうフォローしようか気を揉む僕をよそに、塩崎くんは、プロの女の子、必要になったら言ってくださいね、とにやついて仕事場に戻っていった。
 取引先からそのまま帰宅すると、宅配ボックスに母から荷物が届いていた。うちは農家でもなんでもないのに、定期的に野菜やら米やらが送られてくるのだ。お礼の電話をかけると、気忙しい母の声のうしろで、子供がはしゃいでいるのが聞こえた。
「まひろ、来てるの?」
「そうそう、今日は誠二が夜勤だから、うちで夕飯でもどうー、って」
 誠二というのは僕の弟だ。僕が秀一、弟が誠二。彼は五年前、二十四で十年近く付き合っていたひとみさんと結婚して、三年前、まひろが生まれた。高卒で消防士になり、地元で気の利く嫁をもらい、実家の近くに住み、可愛い孫の顔まで見せた彼の方に、秀の字がついていたらよかったと思う。
「あんたはどうなの、うちに連れてくるかもって言ってた子は」
「ああ、別れた……」
「あらっ、そうなの」
 数秒のあいだ沈黙があり、母のため息がきこえた気がした。
「まあねえ、おかあさん都会のことはわかんないし、元気でやってればいいのよ」
 優しく慰められ、情けなくなる。両親のことを喜ばせようなどと殊勝なことを思っているわけではないが、のんべんだらりと三十路を過ぎてしまって、なんとなく申し訳ないような気持ちはある。しかし去ってしまったリリコのことはもう、どうすることもできない。たしかに母の言うとおり、都会の三十代はまだまだ若い。正月には帰るから、みんなによろしくと言って電話を切った。ミナが足元に擦り寄ってきた。そういえばミナは、まひろとほぼ同い年だ。僕が会社に行こうとしたら、マンションの植え込みで震えていたのだ。体調不良で、と当時勤めていた会社に嘘をつき、病院に連れていった。三毛猫のミケでは安直すぎるので、ミナにした。漢字で書いたら、三奈だ。まひろは、ひらがなでまひろだ。どちらがペットかわからない。猫はものすごく好きというわけではなかったが、一緒に暮らしてみるとこれほどいい同居相手はいないように思えた。普段はお互い負担にならない距離を保ちつつ、自分がそうしたいときには思いっきり甘えてきて、逆に僕が疲れていれば癒やしを提供してくれる。リリコとミナは最後まであまり馴染まなかったように見えた。彼女は実家でダックスフンドを���っていると言っていたが、猫にそこまでの思い入れはないようだった。
 ミナがキャットフードを食べている間、自分の夕飯を用意した。母と話したあとで不摂生をするのもなんだか悪い気がしたから、送られてきた野菜を適当に切って、冷蔵庫の隅にあったベーコンと炒めた。だけどそれでは足りなくて、結局買い置きしてあったカップ焼きそばを食べてしまった。ミナと戯れつつ食休みをし、風呂を沸かした。本当はシャワーだけでもいいのだが、リリコが置いていった高そうな入浴剤を入れてみたら案外よく、それから週末の夜はゆっくり湯船に浸かるようにしている。バスミルクやらソルトやらオイルやら、ひと揃い使い切ったら終わる習慣だろうけど。
 風呂から出ると、LINEが五件届いていた。三件は公式アカウントからで、一件は塩崎くんがフリマアプリのまとめ記事を送ってくれたものだった。金曜の夜なのに、暇な男だ。ざっと目を通し、とりあえず一番利用者数の多いアプリをダウンロードした。もう一件は月子さんからだった。明日、新宿で映画を観る用事があるのでそのあとお茶でもどうかという誘いだった。看護師をやっている月子さんが土日に会おうと言ってくるのは珍しかった。確かシフト制で、平日休みのときに声がかかることが多かった。いくつか年上のこの人と、どこで知り合ったかもいまいち思い出せないが、つかず離れずで長年やってきている。リリコと別れて初めての会合だった。
 伊勢丹近くの喫茶店で落ち合うことにした。雑居ビルの地下にあって、コーヒーが一杯千円もするかわり都内いち美味い。価格設定のおかげで店内が落ち着いているのもかなり気に入っているので、約束の時間よりも一時間早めに店に入った。今はナラ・レオンがかかっていて、いい具合に眠くなる。おかげで持ってきた本が全然進まなかった。あとから来た隣の席の男女がタロット占いに興じているのも、僕の気を散らした。壁側に座った髭もじゃの男が占い師らしく、ピンク色の髪をした女の子がぼそぼそと何か相談していた。髭もじゃがカードを切りはじめたころ、月子さんが現れた。とびきり短いショートカットに、真っ黒のワンピースという出で立ちだった。前に会ったときは、日本人形のように長い髪をしていた。
「髪、切ったんだね」
「そう!似合うでしょ」
「うん、すごく」
 脚本はいいのに女優の演技がひどくて興ざめだった、というのが今日の映画の感想だった。月子さんは映画や舞台がとても好きだが、誘われたことは一度もない。2人ですることといえば、セックスくらいだ。十年前からそんなふうにしてきて、でも僕がリリコと付き合っている間は指一本も触れずに関係は続いていたので、結局気が合うということなんだろう。月子さんが頼んだキリマンジャロが運ばれてきたところで、恋人が置いていったものを誰かに買ってもらうってどう、と相談してみると、悪趣味、と笑われた。
「そんなの、捨てたらよくない?ぱーって」
「結構高いものが多くて、惜しい」
「じゃあそのまま使ったら」
「いろいろ思い出されて、つらい」
 どんなのがあるの、と聞くので、iPhoneを手渡した。塩崎くんの指南のもと、出品用に写真を撮ってみたのだ。あとはアップロードをするだけなのだが、説明文を考えるのが面倒くさくてやめてしまった。月子さんが真剣な顔つきでフォルダを隅々まで眺めているあいだ、僕はタロット占いの結果が気になってしょうがなかった。タロットは漠然とした悩みというより、誰かとの相性を知りたいようなとき役に立つのだと、昔どこかの飲み屋のママに聞いた。
 すべて見終わった月子さんは、彼女、センスのいい人だったんだね、と感心した。さらに精査したあと、寝室に置いてあるスタンドライトの写真を指差して、これ生で見たい、と言った。じゃあ見にきてよ、と店を出た。新宿三丁目から、都営地下鉄に乗る。
「ヒロセの家、久しぶり」
「そうだね」
「呼んでくれなくなっちゃったもんね」
「そりゃ、呼べないよね」
 リリコとの同棲は、僕のマンションに彼女がやってくる形で始まった。子供のいない裕福な叔父から譲り受けた、4LDKの部屋だ。付き合って二ヶ月ほどで、リリコの側から、将来のことを考えるためにまずは一緒に暮らしたい、という申し出があったのだった。そう、僕はお試し期間をクリアできず、持ち家というアドバンテージをもってしても捨てられてしまったのだった。
 三十分ほど電車に揺られて、最寄り駅に到着した。月子さんは懐かしい、と言いながら駅からの道をゆっくり歩き、玄関に入るなり、ああ、と感嘆の声を漏らした。
「これは、女がいる家」
「でもいないんだ」
「かわいそうにねえ」
 月子さんは上がり框に座り込んで、金具がいっぱいついた靴を脱いだ。ぴったりとしたスカートがあまりに短く、黒いストッキングに下着が透けそうでどきまぎした。ねぼけまなこのミナが僕を出迎えにやってきたが、月子さんの姿を認めると固まり、必死に記憶の糸を手繰りよせていた。月子さんがミナちゃん久しぶり、やっぱり美人さんだね~、と話しかけると、声で思いだしたのか、上機嫌でしっぽを震わせてこちらに寄ってきたばかりか、久しぶりの客人に背中を撫でさせた。
 お茶でも出そうかと思ったが、さっきまで飲んでたしいいと断られたので、さっそくお目当ての品のもとへ案内した。このライトはアンティークで、びっくりするほど重いので部屋の外に運ぶのが億劫だったのだ。
「ああ、やっぱり欲しいこれ」
ダブルベッド��傍らに置いてあるそれは、傘のところがステンドグラスでできていて、他のところの作りもいちいち凝っていて高級感があって、実際かなりの値段がしたらしいので、捨てるのが惜しいものの筆頭だった。役所に粗大ごみとして引き取りにきてもらう連絡をするのもこの上なく面倒くさかった。
「もらってくれるなら嬉しいよ」
「本当にタダでいいの?さすがに悪い気がする」
「じゃあ、五百円くらいで」
 なかなか食い下がらないので、気が済むようにして、などと言っていたら、月子さんはてきぱきと僕のうしろのドアを閉め、カーテンを下ろし、かわりにステンドグラスのライトをつけた。長い爪を赤く塗った指先がスイッチの紐を引っ張ったのが、妙になまめかしかった。色とりどりのガラスの下に、赤みがかった光が灯る。
「すっごい、ムーディ」
「そう、寝室にしか置けないんだ」
「いつもこうして、してたの?彼女と」
「まあそういうこともあったような」
「久々にしよっか」
 マック行こっか、くらいの軽さで月子さんはそう呟いた。体で払う、ってことか。僕としてももちろん吝かではなく、僕達はまぐわった。薄ぼんやりとした明かりの中で、かつて散々貪ったはずの月子さんの体は天女みたいに神々しく見え、リリコに操を立てる前の数々の奔放な日々を思い出した。会えば挨拶みたいに体を重ねた。おっきい、と途切れる声で言う月子さんのヴァギナと僕のペニスの相性は相変わらずとてもよく、リリコとの性生活で少しずつ積み重なった消化不良に気付かされた。月子さんの細くしなやかな腰を掴み、後ろから責め立てているとき、なめらかで美しいリリコのうなじを思った。月子さんのうなじには、短く整えられた襟足の延長のように細かい産毛がびっしりと生えていて、だけどそれが生命力の強さの、淫蕩さの証に見えて、僕をますます昂らせるのだった。月子さんは僕を煽るのも上手くて、まだ足りないというように自分の性器を弄ったり、卑猥な言葉で強請ったり、この時間を最大限愉しむための努力を、決して惜しまないでいてくれる。リリコが寝転がって僕が前から入る、コンドーム越しの、正しさのかたまりみたいなセックスしか、僕たちはしなかった。リリコがそれを望んでいたから。だけど月子さんは、獣のように喘ぐ。僕も、獣のように求める。本能に駆り立てられるような行為は本当にしばらくぶりで、吐精しながらも力がみなぎってくるのを感じた。
 アキラさんのところに行こう。少し眠ったあと、月子さんが唐突に言い出した。性欲をすっかり発散させてしまったあとの変わり身の早さも、僕が月子さんを好ましく思うところのひとつだった。アキラさん。懐かしい名だった。僕たちが夜遊びばかりしていた頃知り合ったその人は、ある日突然、東京から去っていったのだった。たぶん二年くらい前のこと。僕とリリコが出会う前のこと。きれいで優しい男だった。久々に、声を聞きたい。 「いつ?」 「いまから」 「急に行って、迷惑じゃないの」 「あたしはどのみち今日、行く約束してたの」  一瞬で食べ尽くされてしまうことはわかりながら、ミナの夕飯のために置き餌をしてやり、車を出してくれると言う月子さんのマンションへ向かった。地下鉄で二駅だったので歩くことにした。こんなに近くに住んでたんだね、といまさら笑い合った。月子さんの家でしたことも、数えきれないほどあるのに。空は薄紫色で、呼気は白く曇り、冷たい空気が情事と昼寝のあとの惚けた頭をちょうど良く刺激した。日が落ちる前でも、だいぶ気温が低くなってきた。リリコが出ていったのは、夏の終わりだった。残暑が長かったから、暦の上では秋の始め、と言ってもいいかもしれないけれど。
 初めて見る月子さんの愛車は、真っ赤な外車だった。シャコタン、というのか、車体がものすごく地面に近く、こんなに華奢な女の人がオーナーだとは思えなかった。あたし運転がヘタな男大嫌いなんだよね、と言うからこわくなって、任せることにした。といっても、そもそもこれはマニュアル車らしいから僕には運転できなかった。
「看護師ってね、だいたい働きだしてすぐ高い車買うのよ」
「どうして」 「しんどい仕事やめないぞ、っていう、誓いみたいなもん」
「ローンで自分を律してるってこと?」
「そう」
「払い終わったらどうなるの?」
 月子さんはそれには答えず、ため息のような笑いを漏らした。下道でもそんな遠くなさそうだけど、もう遅いから高速で行こうね、と手慣れた様子でカーナビを操作する月子さんに、アキラさんはどこに住んでるんだっけ、と訊ねると、千葉の、山と海がある町らしい、という答えが返ってきた。地元と東京以外の地理に、僕はあまり明るくない。
 初台から首都高に乗った。到着予定時刻は十九時四十五分。なんとなく流していたラジオがあまり面白くなくて、月子さんがspotifyで音楽をかけだした。九十年代ポップスをとりあえずのBGMに、仕事の話の続きが始まった。
「ヒロセは今もまだ、自販機売ってるんだっけ」
「それは前の前で、今は太陽光発電の会社にいる」
「バナナ売ってたのはいつだっけ?」
「青果卸ね、自販機の後だよ」
 ふうん、と興味なさげに月子さんは言い、なんだかもう話すこともあまりなくなった。もともとそんなに話が弾むふたりでもないのだ。丁寧な運転のせいでだんだん睡魔の波が押し寄せてきたので、一眠りしようと目を閉じた。途切れ途切れ、薄い夢を見たが、途中で月子さんが呟いたのは、多分夢ではなかった。
 なんでこう急にいろんなことがどん詰まっちゃうんだろうな。
 聞いてはいけないような気がしてじっとしていたらまた深く眠ってしまって、次に目が覚めると、車は千葉県の国道を走っていた���何度も塗り替えた跡が見えるスーパーの看板が現れ、ああ、田舎の都会だ、と思った。僕の故郷も、こういう街だった。沿道にはチェーンの飲食店やディスカウントストアがまばらにあった。古ぼけたラブホテルもちらほら営業していて、カタカナやアルファベットをかたどったネオンが粗野に光った。シルクロードって名前のラブホテルは、全国にいくつあるんだろう。食事はどうするのかたずねようとした頃に、急に流していた音楽が途切れて、ちゃらちゃらと電話の着信音が流れた。
「え、なに」
 Bluetoothだよ、さっきまで音楽飛ばしてたでしょ、と月子さんは僕を笑い、僕に通話ボタンをタップさせた。スピーカーにして、というのでその通りにした。相手はアキラさんだった。懐かしい、懐かしい声だった。低く、優しいトーンで、ゆったりと話す。
「広瀬くんも、いるの」
「あ、います」
「久々に会えるね」
 たった一言アキラさんと言葉を交わしたら、こんなに便利な道具があるのに一度も連絡を取っていなかったことが急に薄情に思えた。だけどそれを咎めるような気色が全くなかったことにほっとした。そういうところが、アキラさんらしいのだ。
 あと五分で着くよ、と月子さんは電話を終え、次の信号で細い道に折れた。国道から離れるにつれ、民家が増え、車は住宅地に入った。「あれかな」
 月子さんが指さした先には団地が数棟立ち並んでいた。隣には打ちっ放しのゴルフ場の緑のネットが見え、まだ煌々と営業中のライトが光っていた。建物が近づいてきたのでスピードを落として進んでいると、駐車場の入り口とおぼしき辺りに背の高い男の姿があった。少し猫背で、足が長い。
 僕たちに手を振るアキラさんは、東京で最後に会った時より少し、線が細くなったように見えた。 ここ空いてるから、今日だけなら大丈夫、という言葉を信じ、白い線で区切られた駐車場の一角に車を駐めた。アキラさんはリノベーションされたこの団地の一室を買ったのだそうだ。最近は古い団地の再利用が流行っているそうで、確かに共用部分も新築のようにきれいになっていた。おれ一人ならほんとこのくらいの広さで十分、という十畳ほどのリビングには必要最低限の家具しかなく、よく整頓されていた。荻窪に住んでいた頃の部屋もいつもすっきりとしていたのを、思い出した。
 夕食には宅配のピザを取っていてくれて、酒も一通り用意されていた。パーティーじゃん、と月子さんは大喜びした。アキラさんは紙皿と紙コップを配りながら、洗うのめんどくさいからごめん、と笑っていたが、身軽な暮らしに憧れ、自分の部屋で待っている大量の食器のことを考え、うんざりした。
 酒もあまり回らないうちから、月子さんはけっこう荒れていた。仕事を辞めた、という薄々気付いていた話と、不倫をしていた、という完全に初耳の話とを、かなりの序盤で打ち明け���れた。初耳ではあったが、そこまで意外ではなかった。月子さんには、動物みたいなところがあるから。僕の同棲解消については、冒頭で少し話題に上がったもののどこかに消え、まあそれはいいとしてもアキラさんの近況は聞いておきたかった。僕が彼の方を見ると目が合ってしまって、逸らせず、やけに緊張した。彼は面白がるように僕を見ていた。とりあえず月子さんに吠えたいだけ吠えさせようと、頷き合った。
「何回かやっただけの上司の奥さんが職場に乗り込んできたの」
それで居づらくなって、もう十年勤めたし、疲れてしまったし、依願退職した、と話す月子さんは珍しく泣いていた。
「その医者のことそんなに好きだったの?」
「ううん別に、出来心みたいなもん」
「割に合わないね」
「それが腹立たしいのほんと!!」
 そしてわっと大泣きしてはまた愚痴り、というのを間欠泉のように繰り返し、それをアキラさんが宥めていた。いつの間にか煙草を吸っていた。前もよく吸っていた銘柄だった。月子さんの支離滅裂な話から、医者のセックスがよかったということだけはわかったので、せめてもの救いだね、と慰めたつもりだったが、ものすごい目で睨まれた。月子さんが僕一人には甘えてくれないことを、当たり前だと思うとともに、少し情けなく感じた。僕はちびちびウイスキーを飲みながら、相槌を打った。
 泣き疲れて、酔い潰れて、月子さんはテーブルに突っ伏して眠ってしまった。実質アキラさんと二人、という状態になって、ようやくゆっくり話せそうだった。
「……アキラさん、いまはなにやってるの」
「昔のツテでデザインの仕事もらったり、FXやったり、あとはまあ、切り詰めて」
 田舎だからそんなにお金はかからない、家族も今後できることないし。淡々と話すアキラさんは十代の頃、年上の男の恋人に連れられて上京した。地元は宮城で、親は厳しくて、勘当寸前で、学校とか通ってこっちで仕事には就けたけど、その時の男とはすぐ別れちゃって、そんなことを寝物語に聞いたような気がする。
「おれもう、期待したくなくてこっち引っ越したんだ」
「期待?」
「東京、夢あるけど、夢見るのも疲れるからねえ」 
 僕はアキラさんともセックスまがいのことをしていた時期があった。好奇心なんかでは全くなかった。常連の店でいつも穏やかに店員と談笑していたこの男を、気づけば目で追ってしまっていた。仕立てのいいスーツに包まれた身体から滲み出る、どうしようもない諦めの空気が、僕を惹きつけて、不安にさせて、夢中にさせた。月子さんと3人で何度か会ったあと、僕の方から2人で会いたいと言った。やがて恋人同士のような関係になった。自分より体の大きな男に慈しまれると、言いしれぬ安心感と興奮を覚えた。僕たちは、同じ体で愛し合った。だけど男女でするようにはっきりと繋がったことはなかった。それはアキラさんの予防線だったと、今ならわかる。不誠実な僕は、そうしてい���一方で月子さんをはじめとする女の体を抱くこともあったから。月子さんは僕とアキラさんのことに気付いていたように思うが、だからといって関係が変わることはなかった。なにか言われたことも、詮索されたこともない。僕はあの頃から、自分のことがよくわからなくなっていた。恋ではない、とわかりながらも他人と肌を重ねることで、なにかがすり減っているような気もしていた。アキラさんもそうだったかもしれない。でも、その気持ちを分かち合ってどうにかするような2人にはなれなかったのだ。
「広瀬くんは彼女と別れたって聞いたけど」
 アキラさんがなんでもないことのように言うので、僕もなんでもないことのように話し始めた。こういうとき、リリコとの破局で実はさして傷ついてはいない自分に気づいて、辟易する。
「三十過ぎて、なんか焦って、婚活とかしてみたりしてさ」
 しっかりしなきゃ、と漠然と考えていた当初、運良く出会ったのがリリコだった。僕史上、いちばん礼儀正しく、理性的な交際のはじまりだった。いわゆる普通のおつきあいをうまくやれていると思っていて、自分もようやくそういう流れに乗れるのだと感慨すら抱きながら、給料三ヶ月ぶんには少し届かない指輪を買ってプロポーズもしたが、あなたと家庭を作ることは考えられない、という残酷な答えが返ってきた。数ヶ月の猶予ののちに同棲は解消され、僕たちは正式に別れた。彼女が持ち物を置いていったのは意外だったけれど、すぐに謎は解けて、そのあとわりとすぐ大企業のサラリーマンと婚約したと風の便りで聞いた。
「そういうのがいいならなんで僕と付き合ったのか不思議で」
「ふらふらしてる人の色気ってあるからねえ」
 俺もちょっとやられてたかも、とアキラさんは僕の方を悪戯っぽく見た。アキラさんのほうこそ、ちょっと痩せた肩とか、煙草を弄る長い指とか、相変わらずどうしてなかなか、と思ったけれど言わなかった。今のアキラさんに僕が触れることは失礼な気がした。
「念のため聞くけど、おれと寝てたせいじゃないよね」
「え?」
「別れたって」
「いや全然関係ないよ、知りもしないと思うし、そもそもかぶってないし」
 でも、見透かされてたんだと思う。アキラさんとっていうか、月子さんみたいな女の人たちとつるんでいたこととか、それどころか、やりまくってたこととか、職が続かないこととか、それらをそんなに駄目だと思っていないこととか、ただ自分が安心したいだけで、ほんとうはちっともリリコ自身のことなんか見ていなかったこととか。いつの間にか起きていた月子さんが、ヒロセ、いい人きっと見つかるよ、とまた泣きながら絡んできた。煙草を燻らせながらアキラさんは、人生相談室だな、きょうは、と可笑しそうに呟いた。ちょっと酔いが冷めてから順番でシャワーを借りた。月子さんは客間で、僕はソファで寝かせてもらった。アキラさんは自分の寝室に引き上げていった。
 夜中に肌寒くて目が覚め、体を起こすとベランダで一服するアキラさんのシルエットが見えた。窓を開けて、隣に立った。アルミの手すりと床板がひんやりと冷たかった。
「ねえ、煙草吸いすぎじゃない?」
「前と変わんないよ」
「前も減らしなよって言ってたじゃん」
「唯一の楽しみなんだって」
「……早死にしちゃうよ」
 いいんだよ、べつに。そう呟くアキラさんの横顔は東京にいた頃のままだった。あなたはいったい、あそこに何を捨てて来たの。
  あたりは真っ暗で、ぽつぽつと窓の明かりが見えた。こんな夜更けに活動している人間がいるのだ。風向きが変わるのか、時折、国道から車の走行音がきこえる。僕たちは黙ったまま、並んで立っている。離れていた数年をどうにかして埋めたい衝動がせり上がってきて、でもどうしたってできないから、アキラさんの左肩に、そっと凭れた。アキラさんが、囁くように僕の下の名前を呼んで、呼び終わらないうちに、やめてしまった。ためらいが、愛おしかった。
「アキラさんのこと、すごく好きだったよ」
「……わかってるよ」
     煙草を持っていない方の手が、僕の頬を撫でた。掌はすべすべしていて、冷たくて、泣けてきた。アキラさんが少しだけ身体を屈めてきて、煙たい匂いが鼻を掠めたかと思うと、かさついた唇が一瞬だけ触れた。目の前には、あの諦めたような優しい笑顔があった。
 翌朝は三人とも九時前にきちんと起きて、目が覚めちゃうなんてなんか年取った感じするな、と言いながらファミレスでモーニングセットを食べた。僕は食器のカチャカチャいう音を聞きながら、肝心のことを相談し忘れていたことを思い出した。
「恋人の置いてったものって、どうしたらいいと思う?」
 月子さんは、あたしは一個もらってあげるの、と恩着せがましくアキラさんに報告した。アキラさんは少し考えたあと、おれなら、と前置きして、こう続けた。
 全部捨てる。一回全部きれいにしてあげないと、なかなか成仏してくれないとと思うから、残留思念みたいなもんが。
 帰りもまた、月子さんが運転することになった。昨日よくわかんなかったけど、車イケてるね、とアキラさんが褒めた。乗る前にすればいいのに、乗り込んだ後で窓を開けて別れを惜しんだ。出発した後、僕たちが曲がるまでずっと手を振ってくれていたアキラさんを見て、月子さんがまた来ようね、と言った。僕は頷いた。僕だけに向けられているんじゃないとわかっていながらも、またいつでもおいで、という帰り際の彼の言葉に、甘えてしまいそうだと思った。
 日曜日の高速道路はそこそこ混んでいて、痺れを切らした月子さんの判断により途中で降りて下道を走った。
「そういえばライト、持って帰る?」
「……やっぱいいや、知らない女のザンリューシネン要らないし」
「だよねえ……あれって粗大ゴミかな」
「そりゃそうでしょ、でかいもん」
 めんどいなあ、とぼやく僕に、月子さんは、めんどいけど、向き合わなきゃだめってことでしょ、と自分にも言い聞かせるように口にした。それはたしかに人生を前に進めるために必要なステップなんだろうけど、いまの僕にとってはリリコとの二年間より、この二日間のあらゆる場面の方がつよく胸に迫ってくるのだった。
 十五時前に家に着いた。一日空けた部屋は静まりかえって、知らない匂いがした。ミナはソファのクッションの上で丸くなって寝ており、僕がただいまを言うと片方の目だけ開けてまた眠ってしまった。飼い主が一晩いないくらい、どうってことないらしい。冷蔵庫の横に貼ってあるゴミの日カレンダーを見た。年始にもらったっきり、ほとんど使っていなかった。燃えないゴミ、火金。危険ゴミ、隔週水曜。粗大ゴミ、市役所に連絡。ため息。とりあえず窓を開け、空気を入れ換える。コーヒーでも飲みたくなって、お湯を湧かす。待っている間に、アキラさんからお裾分けに持たせてくれた蜜柑をざくざく剥く。皮を受け皿に、白い筋がたくさんついたままふた房頬張った。リリコは夕食後、必ず果物を出してくれた。重たいガラスのボウルに、冷たくてきれいな水で洗って一粒ずつしっかり拭いた葡萄、その正しさは誇らしくて面白かったけれど、僕はそんなこと、ちっとも望んじゃいなかったと思う。
2 notes · View notes
kennak · 5 months ago
Quote
ビートたけし率いる「たけし軍団」の一員として、また、漫才コンビ「浅草キッド」としてテレビ・ラジオで活躍してきた玉袋筋太郎(57)。50歳を境に、順調だった芸能活動に大きな変化が起こった。尊敬する師匠との別れ、「浅草キッド」の活動休止、長く連れ添った妻から三下り半を突きつけられて……。還暦が見える年齢になった今、家族同然だった仲間、自身を支えてくれた家族との関係を問い直す日々を送っている。(取材・文:元永知宏/撮影:倉増崇史/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部) 今の俺って正体不明でしょ? 高校卒業後すぐビートたけしに弟子入りし、師匠から「玉袋筋太郎」という芸名をもらった。相方の水道橋博士とのお笑いコンビ「浅草キッド」を結成したのが1987年のこと。今年の6月で58歳になる玉袋は言う。 「昔は、師匠からもらったこの玉袋筋太郎という名前に恥じないような型破りな芸人にならなきゃと思っていたけど、そういう力みみたいなもんはもうないね」 40年近い芸歴を誇るが、玉袋が過去を振り返ることは少ない。 「よく考えてみれば、芸人としてまだ一回もブレークしてないんだよね。俺なんか、これから。まだ全然アクセル踏んでないんだから(笑)。今の俺って、正体不明でしょ? 町中華食って、競輪やって、スナックで飲んだくれて。テレビとか見てる人は『なんだ! あいつ』と思うだろうね。 この年齢になって人生の目標なんか立てないんだけど、あえて言えば『職業・玉袋筋太郎』になれればいいね。『やっ��り玉袋だからな』とか『どうせ玉袋だろ!』と言われてもいいから」 玉袋はそう言って、紫煙をくゆらせた。 昭和のテレビ界のトップランナーだった“殿”に率いられた軍団の若手、玉袋が師匠や先輩たちと離れたのが2020年のことだ。彼らとは別の道を進むことに決めた。 「はじめに、殿が『オフィス北野』から出ていったからね(笑)。そのあと、弟子たちでどうするかという話になったんだけど、俺はひとりでやることに決めたんだよ。個人事務所の社長をカミさんにして、フリーになった」 同時に、10代の頃から生活をともにしてきた相方とも別れることになった(水道橋博士は2022年7月に参議院議員になり、翌年辞職)。ひとりっきりのリスタートだ。 「師弟関係って切っても切れないもの。今でもずっとつながってるわけですよ、ハートでは。『ビートたけしの味』を知る俺たち弟子が、それぞれの道を進みながら、いろいろなところでそれを広げていく。離れ離れにはなったけど、みんな、そういうことができているんじゃないかなと思うよ」 現在は東京・赤坂に開いた「スナック玉ちゃん」の経営者として、またタレントとして活動している。 「師匠と離れ、軍団とも別れてひとりになったときはさびしくて、心細くて、不安で仕方がなかった。だけど、自分で『やる!』と決めたこと。 レギュラーのラジオ番組スタッフは『玉さんと仕事してきたんだから、これからも変わらずやりたい』と言ってくれて、そのまま続けられた。独立する前後で『町中華で飲(や)ろうぜ』(BS-TBS)みたいな企画も生まれた。本当にいろいろな人に助けてもらって、もう感謝しかない。そういう気持ちを持った人と一緒にやってきてよかったなと思う」 妻との別居の原因は俺 50歳を過ぎてからの独立に苦闘する日々、私生活で嵐が吹いた。 「おふくろが認知症になっちゃって……施設に入れなくちゃいけなくなったときはつらかったね。年をとれば誰だってそうなるとはわかってはいるんだけど、自分が思うよりも早くそのときが来てしまった。 離れて暮らしていると、夢で見ちゃうんだよね。昔の、元気な頃のおふくろが出てきて、うわーっとなって夜中に目覚めることがあるよ」 会うたびに、母の変化を目の当たりにする。 「施設に行くたんび、行くたんび、ますます“天才芸人”になっていく。こっちが考えつかないような面白いことばかり言うんだよ。あるとき、俺が最近出した本を持っていったんだよね。そうしたら、ものすごく喜んでくれた。俺が表紙になっているのを見て、『ああ、いい本だね』なんて言いながらパラパラパラパラとめくって、『で、誰の本なんだい?』って言う。会うたびに、ボケの天才になってるんだよね」 もうひとつが妻との別れだ。 「携帯電話もLINEもブロックされてるから、俺から直接連絡する手段がない。どこでどんなふうに暮らしているかはわからない」 別居の原因は玉袋本人にあるという。 「緊急の場合は息子の嫁に連絡して用件を伝えてもらってるんだよね。人を介してでないとコミュニケーションが取れない状態がずっと続いている。 さびしくないかって? そりゃあ、さびしいよ。この件に関しては俺が100%悪い。俺に原因があるから、多くは語れないな。やっぱり、女々しいんだよね、俺は」 直接的なコミュニケーションはないものの、つながってはいる。 「個人事務所の社長であることに変わりはないし、俺がいないときに我が家の掃除や洗濯なんかはしてくれる。用事があるときには俺が置き手紙をして、それをカミさんが回収する形だね。 もっと優しくしておけばよかったと思う。それを教えてくれたということでは、カミさんはある意味で師匠になっちゃったね。俺が気づくのが遅かった」 戸籍はそのまま。ふたりの現在の関係を“スプリット婚”だと玉袋は表現する。 「そういうのもありでしょ。子育てが終わって夫婦ふたりで仲良くしようといったって、煮詰まる人は煮詰まるわけだし。無理に我慢する必要はないんじゃないかな。添い遂げる美しさもあるけど、スプリットする美しさだってあるんだから。 たまにカミさんの姿を見るとき、以前よりもイキイキしているように感じるよ。だから、今の状態も悪くないのかもしれない」 血縁関係ない息子を一生懸命に育てた 玉袋は実の姉と絶縁状態にある。家族がいれば心強いが、それを断ち切らなければいけないこともある。 玉袋は続ける。 「俺は、うちの親父が死んだときに姉と縁を切ったからね。姉の金銭問題のせいで親父が自分で死を選んだことで家族がバラバラになっちゃった……だけど、家族として過ごした時間とか経験は、自分の中に、もうずっと入り込んでいるからね。 たとえ縁を切らなきゃいけないほどのことが起こっても、二度と顔を見ることがない関係になっても、俺にとって家族はものすごく大切なものだね。かけがえのない時間、かけがえのない経験だったと思う」 玉袋は、妻の連れ子だった息子を育てあげ、孫をかわいがる“おじいちゃん”だ。50歳を過ぎて、さまざまな別れを経験した今だからこそ言えることがある。 「息子とも孫とも血のつながりはない。だけど一生懸命に育ててきた。血のつながりは大事なものだけど、それがすべてでもないと俺は思うよ。 日に日に老いていくおふくろを見るのはつらい。生きること、老いることってなんだろうというモヤモヤは俺の中にあるよね。でも、まだまだ無垢な2歳の孫を見ると心が洗われるような気がする。モヤモヤを吹き飛ばしてくれるんだよ。会うたびに、『こんなにピュアな生き物があるんだなあ』と思う」 血のつながりを背負いこむこともない 職場や学校、家庭での人間関係に悩む人が多いことも、心に傷を負いながらも懸命に生きようとする人がいることも玉袋はよく知っている。 「俺は自分でもスナックをやっているし、全日本スナック連盟の会長もしている。取材でお邪魔する町中華の大将とかスナックのママは本当にタフだよね。たくましく生きている」 傷ついた経験があるからわかることがあると玉袋は思う。 「そこを切ればどのくらい血が出るか、どれだけ痛いかがママさんたちにはわかるわけ。人に優しくなれるし、人を支えるときには、上っつらの言葉だけじゃなくて、全力でやってやろうと思うんじゃないかな」 玉袋にも人間関係で悩んだ経験がある。 「人のことを考えすぎて、いろいろ世話を焼いたのに相手は俺のことを何とも思わないということもあるよな。若い頃はガックリきたもんだよ。姉貴の金銭問題もそうだった。今の俺は、見返りは求めない。孫には異常な愛情を注ぐけどね。 こんなことを言うと、『冷たいやつだ』とか『人間味がない』と言われるかもしれないけど、そういうことじゃない。ギャンブルと一緒だよ。戻ってこないと思っているものが返ってきたら、こんなうれしいことはないじゃない?」 還暦まであと2年。「自分が60歳になることなんか子どもの頃には想像できなかった」と玉袋は笑う。 「俺は断捨離という言葉は好きじゃねえけど、血のつながりがあるからとか、世話になったからといって余計なものを背負いこむこともないと思う。それは優しさとはちょっと違うかもしれない。 自分というトラックの荷台にはいろいろなものが載っているよね。長く生きていれば『こんなのもあったか?』というのもある。自分でうまく整理して、いらないものは産廃業者に預けちゃっていいんじゃねえかと思うよ。シールを貼って粗大ごみで出すとかね(笑)」 この先どれだけ芸人として活動できるかはわからないが、今、玉袋はこう考えている。 「88歳の先輩芸人、毒蝮三太夫さんに俺の本を見せたら『美しく枯れるなんて、言ってるんじゃないよ!』と怒られたよ。毒蝮さんからすれば、俺なんか、まだまだひよっこ。これからの目標は、人に迷惑をかけないで、自分勝手に生きることだね」 昨年10月、お笑いファンがざわめく出来事があった。長く活動を休止していた「浅草キッド」のふたりが同じ舞台に立ったからだ。 だが、復活までにはまだ時間が必要だ。 「ふたりは別の方向に行っちゃったから、まだ漫才できるような状況じゃない。だから、2、3年くらい経ってから漫才をやれるようになればいいと俺から言ったんだよね。俺が60歳で、あっちが65歳くらいかな。そのときまでに、お互いがいい男になれたらいいなと思っているよ」 撮影:倉増崇史 ------------------------------- 玉袋筋太郎(たまぶくろ・すじたろう) 1967年6月22日生まれ、東京都出身。高校卒業後、ビートたけしに弟子入り。1987年に「浅草キッド」として水道橋博士とコンビを結成。以来、テレビやラジオなどで活躍。一般社団法人「全日本スナック連盟」を立ち上げ、自ら会長を務める。『美しく枯れる。』(KADOKAWA)、『玉袋筋太郎の#昭和あるある』(双葉社)ほか著書多数。 「#家族とわたし」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。ひとり暮らしの単身世帯が過去最多となり、生涯未婚率も上昇するなか、家族のかたちは多様化しています。また、介護や育児、親子関係など、現代の家族が直面する問題も多岐にわたります。旧来の家族観が変化するなか、「家族」とは何なのか、どうあるべきなのか。さまざまなエピソードや課題をもとに、ユーザーと考えます。
LINEもブロックされてるから妻との連絡は置き手紙──玉袋筋太郎57歳、家族を問い直す日々 #家族とわたし(Yahoo!ニュース オリジナル 特集)
2 notes · View notes
ari0921 · 1 year ago
Text
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和六年(2024)2月5日(月曜日)
   通巻第8118号
 孫子を読まずして政治を語る勿れ。派閥解体、政治資金浄化????
  吉田松陰の代表作は、じつは孫子の研究書(『孫子評註』)だった
*************************
 自民党の派閥解消を聞いて、日本の政治家は政治の本質を理解していないことに唖然となった。派閥はまつりごとのダイナミズムを形成する。パワーの源泉である。それを自ら解体するのだから、政治は星雲状態となる。となると欣喜雀躍するのは中国である。国内政治にあっては、その「代理人」たちである。
 孫子が言っているではないか。「謀を伐ち、交を伐つ」(=敵の戦略を見抜き、敵戦力を内訌させ、可能なら敵の一部を取り込め、それが戦争の上策である)。そうすれば、闘わずして勝てる、と。
 高杉晋作も久坂玄瑞も、松下村塾で吉田松陰の孫子の講議を受けた。松陰亡き後の門下生だった乃木希典は、師の残した『孫子評註』の私家版を自費出版し、脚注もつけて明治天皇に内奏したほど、心酔していた。世にいう松陰の代表作はその辞世とともに有名な『講孟余話』と『留魂録』だが、現代人はすっぽりと『孫子評註』を忘れた。これは江戸時代の孫子研究の集大成である(『吉田松陰全集』第五巻に収録)。
松陰は山鹿素行を師と仰ぐ兵法家から出発している。毛利長州藩の軍事顧問だったのである。
 
もとより江戸の学問は官学が朱子学とは言え、新井白石も山鹿素行も荻生徂徠も山崎闇斎も、幕末の佐久間象山も西郷隆盛も孫子は読んだ。しかし江戸時代の二百数十年、太平の眠りにあったため、武士には、読んでもその合理的で非情な戦法に馴染めなかった。
その謀(はかりごと)優先という戦闘方式は、日本人の美意識とあまりに乖離が大きく、多くの日本人は楠正成の忠誠、赤穂浪士らの忠義に感動しても、孫子を座右の書とはしなかった。
明治以後、西洋の学問として地政学が日本に這入り込み、クラウゼウィッツは森鴎外が翻訳した。戦後をふくめてマキャベリ、マハンが愛読され、しかし誤読された。吉田松陰の兵法書はいつしか古書店からも消えた。
しかし戦前の指導者にとっては必読文献だった。
 
 吉田松陰が基本テキストとしたのは魏の曹操が編纂した『魏武註孫子』で、考証学の大家といわれた清の孫星衍編集の平津館叢書版を用いた。そのうえで兵学の師、山鹿素行の『孫子諺義』を参考にしている。
もともと孫子は木簡、竹簡に書かれて、原文は散逸し、多くの逸文があるが、魏の曹操がまとめたものが現代までテキストとなってきた。
 ▼孫子だって倫理を説いているのだが。。。
 孫子はモラルを軽視、無視した謀略の指南書かと言えば、そうではない。『天』と『道』を説き、『地』『将』『法』を説く。
 孫子には道徳倫理と権謀術策との絶妙な力学関係で成り立っているのである。
 戦争にあたり天候、とくに陰陽、寒暖差、時期が重要とするのが『天』である。『地』は遠交近攻の基本、地形の剣呑、道は平坦か崖道か、広いか狭いかという地理的条件の考察である。戦場の選択、相手の軍事拠点の位置、その地勢的な特徴などである。
『将』はいうまでもなく将軍の器量、資質、素養、リーダーシップである。『法』とは軍の編成と将官の職能、そして管理、管轄、運営のノウハウである。『道』はモラル、倫理のことだが、孫子は具体的に「道」を論じなかった。
日本の兵学者は、この「道」に重点を置いた。このポイントが孫子と日本の兵学書との顕著な相違点である。
 「兵は詭道なり」と孫子は書いた。
従来の通説は卑怯でも構わないから奇襲、欺し、脅し、攪乱、陽動作戦などで敵を欺き、欺して闘う(不正な)行為だと強調されてきた。ところが、江戸の知性と言われた荻生徂徠は「敵の理解を超える奇抜さ、法則には則らない千変万化の戦い方だ」と解釈した。
 吉田松陰は正しき道にこだわり、倫理を重んじたために最終的には武士として正しい遣り方をなすべきとしてはいるが、それでいて「敵に勝って強を増す」とうい孫子の遣り方を兵法の奥義と評価しているのである。
 つまり「兵隊の食糧、敵の兵器を奪い、そのうえで敵戦力の兵士を用いれば敵の総合力を減殺させるばかりか、疲弊させ、味方は強さを増せる」。ゆえに最高の戦闘方法だとし、これなら持久戦にも耐えうる、とした。
 江戸幕府を倒した戊辰戦争では、まさにそういう展開だった。
 「孫子曰く。凡そ兵を用いるの法は、国を全うするを上と為し、国を破るは之れに次ぐ。軍を全うするを上と為し、軍を破るは之れに次ぐ。旅を全うすると上と為し、旅を破るは之れに次ぐ。卒を全うするを上と為し、卒を破るは之に次ぐ。伍を全うするを上と為し、伍を破るは之れに次ぐ」
 つまり謀を以て敵を破るのが上策、軍自作戦での価値は中策、直接の軍事戦闘は下策だと言っている。
 ▼台湾統一を上策、中策、下策のシミュレーションで考えてみる
 孫子の末裔たちの国を支配する中国共産党の台湾統一戦略を、上策、中策、下策で推測してみよう。
 上策とは武力行使をしないで、台湾を降伏させることであり、なにしろTSMCをそのまま飲みこむのだと豪語しているのだから、威圧、心理的圧力を用いる。
 議会は親中派の国民党が多数派となって議長は統一論を説く韓国瑜となった。
宣伝と情報戦で、その手段がSNSに溢れるフェイク情報、また台湾のメディアを駆使した情報操作である。この作戦で台湾には中国共産党の代理人がごろごろ、中国の情報��作員が掃いて捨てるほどうようよしている。軍の中にも中国のスパイが這入り込んで機密を北京へ流している。
軍事占領されるくらいなら降伏しようという政治家はいないが、話し合いによる「平和統一」がよいとする意見が台湾の世論で目立つ。危険な兆候だろう。平和的統一の次に何が起きたか? 南モンゴル、ウイグル、チベットの悲劇をみよ。
 中策は武力的威嚇から局地的な武力行使である。
台湾政治を揺さぶり、気がつけば統一派が多いという状態を固定化し、軍を進めても抵抗が少なく、意外と容易に台湾をのみ込める作戦で、その示威行動が台湾海峡への軍艦覇権や海上封鎖の演習、領空の偵察活動などで台湾人の心理を麻痺させること。また台湾産農作物を輸入禁止したりする経済戦争も手段として駆使している。すでに金門では廈門と橋をかけるプロジェクトが本格化して居る。
 下策が実際の戦争であり、この場合、アメリカのハイテク武器供与が拡大するるだろうし、国際世論は中国批判。つまりロシアの孤立化のような状況となり、また台湾軍は練度が高く、一方で人民解放軍は士気が低いから、中国は苦戦し、長期戦となる。
 中国へのサプライチェーンは、台湾も同様だが、寸断され、また兵站が脆弱であり、じつは長期戦となると、中国軍に勝ち目はない。だからこそ習近平は強がりばかりを放言し、実際には何もしない。軍に進撃を命じたら、司令官が「クーデターのチャンス」とばかり牙をむくかも知れないという不安がある。
下策であること、多大な犠牲を懼れずに戦争に打って出ると孫子を学んだはずの指導者が決断するだろうか?
 ▼孫子がもっとも重要視したのはスパイの活用だった
  『孫子』は以下に陣形、地勢、用兵、戦闘方法などをこまかく述べ、最終章が「用間(スパイ編)」である。敵を知らず己を知らざれば百戦すべて危うし」と孫子は言った。スパイには五種あるとして孫子は言う。
『故に間を用うるに五有り。因間有り。内間有り。反間有り。死間有り。生間有り。五間倶に起こりて、其の道を知ること莫し、是を神紀と謂う。人君の宝なり』
 「因間」は敵の民間人を使う。「内間」は敵の官吏。「反間」は二重スパイ。「死間」は本物に見せかけた偽情報で敵を欺し、そのためには死をいとわない「生間」は敵地に潜伏し、その国民になりすまし「草」となって大事な情報をもたらす。
 いまの日本の政財官界に中国のスパイがうようよ居る。直截に中国礼賛する手合いは減ったが、間接的に中国の利益に繋がる言動を展開する財界人、言論人、とくに大手メディアの『中国代理人』は逐一、名前をあげる必要もないだろう。
 アメリカは孔子学院を閉鎖し『千人計画』に拘わってきたアメリカ人と中国の工作員を割り出した。さらに技術を盗む産業スパイの取り締まりを強化した。スパイ防止法がない「普通の国」でもない日本には何も為す術がない。
 (十年前の拙著『悪の孫子学』<ビジネス社>です ↓)
15 notes · View notes
yomogite · 7 months ago
Text
Tumblr media
金カムにもどハマり中です
ラクガキです。鯉月本当にすごい。
光属性の攻めと闇属性の受けってすごい。
すごい…………毎度読む度すごい…となる。
今回使用したブラシ
全部クリスタのブラシです。
線画・Mameoペン
塗り・Mameoペン・アナログ風インクペン(鯉登の頬部分のみ使用)・桜ブラシ 小まとまり
加工・グラデーションマップ漫画雑誌風の(黒)通常レイヤーで33%置くのみ
めちゃめちゃズームしたら分かるのですが、Mameoペンの塗り後がすごく面白くて…描きやすかったのでこれもペン入れ候補にしたいなと。
Tumblr media
こうやってあれやこれや…といろんなペン試すと楽しいのですが、種類が多くなりすぎても不便になりそうだし、少しずつでいいから断捨離していけたらと思います。
今回の絵は原稿描く時の練習も兼ねてのラクガキなので、次は漫画でこのペンを使って線画を描けるよう努めます。
あと、これは単純に悩みなのですが…ちょくちょく耳の絵柄が特徴的だねと言われることが多いので、どうにかして人間の耳に似せていかねばと思いました……
イラストにおいて耳が特徴的ってすごい嫌なものだと思っていて、例えば目の絵柄が特徴的だね!であれば、褒められている気がします。私にとって目は、カッコ良さや可愛らしさといった「キャラクター性を表現するに必要かつ重要なパーツ」であり、1番個性がでる点だと認識しているので。
でも耳………耳かぁ…………。耳ではキャラクター性を濃く表せない、つまり耳が特徴的って絶対褒め言葉でないでしょう…と落ち込んだりラジバンダリ…
形が変なのか?耳の穴の造形があっていない?大きさの問題?
なんでも絵柄、絵柄、で済まされる話ではないので試行錯誤しています。😔似せていくべきところは、きちんと似せていきたい。
「ここのパーツが変?だって絵柄だもん、変じゃない。」そんな考えは一切いらないので、とにかくちゃんと本家に似せて、パーツも正しい形にしていかないといけないです………精進します。
ついでに絵を褒める時も言葉に気をつけよう、相手にとってはちっとも褒め言葉では無い時がある、と改めて思いました。
あとヒプ🎤公式が……大分無理すぎて…………!!
キャラのことをおもれー男としか考えていないのか?おもろいことでさらに人気になると思うのか?あの運営会社を信じちゃダメだった。
…等々思いまして、先日そのままXのアカウント削除しました。こことpixivはそのまま残しておく予定ですが、生成AIの件もありますし、否定的な意見も寄せられたため、ジャンル関係なくXそのものに絵を載せることはもう無いです。
今後ネットに絵を載せるとしたら、
・pixiv📦
⇒ https://www.pixiv.net/users/116145509
・Bluesky🦋‪
⇒ https://bsky.app/profile/pamkitty.bsky.social
・Tumblr(🈁)
のみだと思います。今年描いたじゅしひとの絵は、年末にpixivにてログを載せる予定です〜。
イラストを見てくださった方々、お話たくさんしてくださった方々、本当にありがとうございました🙇‍♀️
2 notes · View notes
zdlmlq · 8 months ago
Text
「お兄さん背高いね」と友だちが飲み屋で言われていて、その人の背がとても高いことに気がついた。たずねたら182cmと返されてとても驚いたのには理由が二つあって、わたしの視界に入るその人はいつも上目遣いをしていたし、わたしはおおきな身体をしている人と距離が近いと相手に関係なくかなり緊張するというか、身体が強張ってしまうことが多いのにその人とは初めて会った時からずっと近くてなにもこわくなかったから。わたしにとって豚小屋さん以外にそんな人が現れ得るんだ、と思いながら驚くわたしにたぶん彼はもっと驚いていた。そうやって初めてその人の身体の在り方を思い返してみると、確かに彼はいつもとてもかがみ込むようにわたしに話しかけているか信じられないくらい腰を丸めている。折りたたむように。そのくらいの背の人が体を折りたためば強く印象に残りそうなものだけど華奢なせいか身長のわりには随分低い座高のせいか、単にわたしがその人の身体の在り方を全くまともに見ていなかったせいか、気が付かない理由はいくつか思いついたけどやさしい人なんだろうな、と思った。やさしい人には身体が強張らない。このやさしいという言葉の選択はとても雑なもので、なんというか心根のきれいな、他者を思いやる人という意味でわたしが誰かをやさしい、あるいはいい子だということはほとんどない。それはわたしに興味や関心のない人たちに使うことが多い。
だらだらと歩きながら初めて数字として立ち上がった身長差に伴って記憶の答え合わせをしている時に(そういえば、には他にもいくつかならぶことがある)「あなたは人の何を見てひとをすきになるの?すきなタイプとか」という質問をされて、おそらくわたしが彼の何も見ていなかったことを暗に責める意味が込められていたのだけど、こういう時返す言葉として何か面白いものはないかなと最近は思っています。
なんというか、実感の伴った、適当ではなくて腑に落ち��すきな人びとの共通点ということです。だって質問があまりにも陳腐だから、その陳腐さにやさしい人、面白い人、あるいは手がきれいな人なんていう陳腐な答えのショーケースをならべてみせたら会話が腐り落ちてしまう。ただその人との会話はいくら腐り落ちてもよかったので(いい意味です)、本当に適当な言葉を返した、ほとんど嘘のような、そしてもはやなんて言ったのかもおぼえていない。
ルッキズムがくだらないものだと認められてきたいまの時代に、わたしはまだひとめみて(この人のことがすきだな)と思うことがかなりあるしその印象が覆されることはものすごく少ない(逆はよくある)。それは所謂整った造形、みたいな話では全くなくて身体の在りようの話だと最近何となく思い始めてるんだけどまだ的確な言葉が見つかっていない。気にいる/気にいらないの話ではなくて単純に自分の身体に慣れている人がすきなのだと思う。それには自信が含まれていることもあるし、でも大体諦めが伴っている。諦めに慣れて折り合いがついた時人は身体に馴染む。折り合いがついたからといって開き直れるわけでもないしままなるならどうにかしたいと大体の人は思うのだろうけど、ままならなさを抱えたままでも馴染むことはできて、それに至るまでの過程には葛藤の蓄積があるから、その蓄積の時間が見える人がすき。
身体の話ってルッキズムへの否定と共にどんどんタブー化されているしそれは正しいことだと思う。でもそれが他者からまなざされるものとしてどうしようもなく在る中でそれを語る言葉を禁じるのはままならなさと折り合いをつけていく方法を損なうことでもある。語ればそれは聞く人に感想を持たせるし、感想は判断を伴うことがあるから判断を許さないのであればわたしたちはどんどん言葉を失っていく。ただ聞く、受け入れる、が全くできないとは言わないけどみんな違ってみんないいよねと言い合うのはそれぞれの葛藤してきた過程をあまりにもぞんざいに扱う振る舞いにも思える。その雑さが場面によってはすくいになることももちろんあるけど、暴力的な透明化になる可能性だって含まれる。雑な明るさで単純化するなら結局それはいままでの規範の強化とそう変わらない。
長谷川白紙のjudge me if you canという言葉は確実に挑発を含んだものとして聴いているし少なくともわたしはその意味で使ってきた。だけどわたしたちはもっとあたらしくて複雑な判断ができるようになる必要がある気がしていて、わたしたちは身体を捨てられないから、それを語る言葉を失うわけにはいかないし、むしろもっとたくさん手に入れた方がいい。優劣や善悪じゃない判断だってわたしたちにはできる。たぶん、おそらく。
冒頭の友だちと初めて話した日、「本屋さんって大体なんか書いたことある人なんじゃないの?俺のこと書いてよ」と言われたことを思い出して書き始めた日記だったのにずいぶん遠ざかってしまった。そしてきっと日記なんかではなく何か、創作物のようなものに登場させるべきだったことはもちろんわかってる。でもわたしは創作をしない。彼がこれを読むこともない。
Tumblr media
これはバーベキューの日買い出しに行ったスーパーのロゴがかっこよくて撮った写真です。
5 notes · View notes
highvoltg · 1 year ago
Text
機動武闘伝Gガンダム第45話「さらば師匠!マスター・アジア、暁に死す」がいかに素晴らしいかを事細かに説明したい(前編)
あらすじ・・・兄の犠牲の末、デビルガンダム(この話のラスボス)を撃破したドモン。かつてはドモンと師弟関係であったが今は対立している東方不敗マスター・アジアは、デビルガンダムを利用してある目的を果たそうとしていた。デビルガンダムが破壊されてしまったことにより絶望し、ドモンに激怒する。マスターがなぜデビルガンダムを必要としたのか。その理由が二人の拳による対話で語られる。
Tumblr media Tumblr media
このシーンではドモンは向かって右側、東方不敗は左側を向いている。人間の視線は左から右に動くので、左側を向いている人物はこちら側に対して何かを語る役割であることが多い。今まで行動の真意が見えなかった東方不敗が語るのだということ���意識させる構図。
Tumblr media Tumblr media
いきなりバトルシーンを描くのではなく、遠景から、そしてドモンの仲間の視線を通してカメラが寄っていく。このへんも単にバトルを描くのが目的ではなく、視聴者も含めて東方不敗という人物に近づいていく(フォーカスをあてる)という意図が感じられる。非常に立体的。
Tumblr media Tumblr media
ガンダムファイトの裏側で、地球の荒廃した姿を見なかったのかとドモンに問い掛ける東方不敗。ガンダムファイトはそもそも地球を離れた人類の覇権争いのために定期的に開催される代理戦争でその舞台はかつての居住地である地球。地球はガンダムファイトの舞台にされ、大会があるたびに自然も建造物も破壊され、ダメージが蓄積していく。これは1話から描写されていたことなので、長い伏線がいま回収されようとしていることが分かる。
Tumblr media Tumblr media
荒廃した地球の姿を目にした東方不敗は、どんな手を使っても地球を元の姿に戻すという決意をする。ここでの東方不敗はロールとしては悪役なのだが、わかりやすい悪役のような表情はしていない。真面目に考えた末に今のロールを演じているということを真摯に描いている。
Tumblr media Tumblr media
デビルガンダムはもともとアルティメットガンダムという名前で、地球再生のために作られたものだったが、バグを起こした末に自律思考した結果、人類を抹殺するべきだという判断を下した(人間がいなければ地球は荒廃しないという論理)。それに呼応した東方不敗はデビルガンダムを使って人類を抹殺しようとしていたことが明らかになる。
さっきと同じ構図だが、「人類の抹殺」と口にしているマスターは影が濃くなっている。その狂気を受け止めきれないドモンの表情(半開きの口)の演技は細かい。
Tumblr media
ガンダムそのものにマスターの身体がオーバーラップする演出。ガンダムシリーズではパイロットがガンダムを「操作している」という演出が普通だが、Gガンダムでは「ファイターの身体の延長」という思想で描写がずっとされている。ここでのマスターは乗機であるマスターガンダムのスタイルもあって本当に大きく見える。
Tumblr media Tumblr media Tumblr media
デビルガンダムがいれば、人間は地球にいれなくなって地球はいずれ蘇る。だから「人類など滅びてしまえ」と高笑いする東方不敗。ここまでフォーカスすることで内面を描いてきたのに対して���横顔から背景に移動することで、表情が読めなくなり、ここにきて再度真意がわからなくなってしまう(話が通じる相手ではなく、狂っているのかもしれない、という演出)。
また、東方不敗はガンダムシリーズの「人類を滅ぼそうとする悪役」の中で本当に自分の信念で人類を滅ぼそうとしている珍しいキャラクターだと思う。シャアをはじめとした他の悪役は、大体の場合自身と他者との関係性の問題を正面から認めることができず、「自分を理解しない他人など消えてしまえ」という本音を利用できる大義名分にすり替えて人類抹殺を企てる。東方不敗の人類抹殺の動機にはそういう他人との葛藤みたいなものはなく、純粋に地球を荒らしてしまった罪悪感から行動している。 根本的に悪い人ではないので、人類を滅ぼすにあたってドモンと対立すると心が揺らいだりはしているのだが、そもそもの決心の部分に迷いがなかった(迷った末の決断ではなかった)というのがガンダムシリーズの中では新しかったように思う。そういう意味では、普段から自然を慈しんだりかつての地球を懐かしむような描写が本編中にあってもよかった気がするが・・・。
Tumblr media Tumblr media
ここは演出が細かい。ガンダムファイトが代理戦争であり、地球を捨てた人類のゲームだと批判するマスターに対してドモンは「むやみに人が死ぬよりはいい」と立ち向かうが、ドモンはガンダムのまま描かれ、マスターはガンダムと一体化した形で描かれる。ドモンは正論を言っているがあくまでそれはガンダムファイターとしてであって、マスターは一個の人間としてそれに反論している。主人公であるはずのドモンの正しさがゆらぐ。
Tumblr media
拳を交わす二人。そこでドモンはあることに気づく。
Tumblr media Tumblr media
(こ、これは!拳から深い哀しみが伝わってくる!東方不敗の拳が……拳が泣いてる!?) 「な、何故だ!」 「うるさい!」 (俺の心に、悲しみが響く…そうだ、己の拳は、己の魂を表現するものと教えてくれたのはこの人だ!ならばこれが東方不敗の魂の響きなのか!)
東方不敗の拳から感情を読み取るドモン。ドモンの視点を通して東方不敗という人物を描写している。視聴者もまたそこに感情移入してふたたび東方不敗にフォーカスがあたっていく。
Tumblr media Tumblr media
東方不敗は病に冒され、デビルガンダムのパイロットにはなれないことが明かされる。そんなことを言いつつかつての弟子と回転しながらぶつかり合っているのは意味がわからないが、これまでの流れがあるのでギャグシーンにはなっていない。シリアスなノリが続けられる限界を攻めていると思う。
長くなってきたので、続く。
6 notes · View notes
tokyomariegold · 9 months ago
Text
2024/3/23〜
Tumblr media
3月23日 11月23日の日記を文字起こししながら出かけた。
なかなか起き上がれなくてかなり遅くまで寝てしまった。14時に近美で待ち合わせだったので、その前に昨日一期下の方と帰りながら話に上がった人形町へ行ってみることにした。 半蔵門線と日比谷線の地上乗り換えの際に降り立った時に気になっていた街。
Tumblr media
人形焼屋さんは二店舗見つけた。 一つはとても行列ができていて、もう一つはそうでもない感じ。行列のお店に人形町のガチャガチャがあり思わずやってみる。中身が見えないタイプのカプセルだったので、週明けに一期下の方と中身を楽しもうと思ってまだ開けていない。
Tumblr media
水天宮を眺めて、明治座こんなところにあったんだ〜と、確認して、甘酒横丁は甘酒屋さんよりもなぜか潰れない婦人服屋さん、がたくさん並んでいた。 行列のたい焼き屋さんがあった。 鶏ものを売っているお店で厚焼き卵が焼かれる様子がほかほかしていてよかった。
Tumblr media
そのまま日本橋から大手町まで歩いて、知らない街と知っている街を繋げることができて充実感。 あまり写真は撮れなかった(撮りたくなかった)。
和菓子屋さんはたくさんあって、なんとなく入ったお店にすはまだんご(!)があり嬉しくて写真を撮ってしまった。あとギンビスの建物があった。
Tumblr media
友人と合流して、中平卓馬の展示を鑑賞。 夏に葉山館で観た展示に上書きする様な感覚で鑑賞していた。
その後竹橋のパレスサイドビルのスターバックスコーヒーでお茶を少しして別れた。 パレスサイドビルから出た時に、学生時代に毎日見ていた風景があって、雨上がりのやたら明るい空と春の感じに、はっ!となった。
お茶の席で友人と話した話、彼女から「日記には書かないでほしい」と言われ、私の日記に登場するかもしれない、と思ってもらえたことが嬉しかったり、日記を書かなくてもいいのか、とほってしてしまったり、彼女の話そっちのけで他人をしてしまってひとでなしだと思っている(そして少し誇っている)。
今日はこの出来事の間中、ずっとずっとめまいと吐き気がひどくて、途中何度かもう帰ろうと思っていて、でも一日過ごして、帰宅して掃除や日記の更新をしてしまった。
Tumblr media
掃除をするのは別に過度に脅迫的な行為ではない気がしてきた。 掃除をして綺麗になるのは嬉しい。でも今はちょっとした日常の生活行為をする体力すらない状態なのだと思う。 掃除をするのが悪いのではなく、体調が良くない。
スーパーに行こうと外に出たら、明後日の満月を控えた月が出ていた。 見切り品の野菜コーナーでズッキーニに出会ってしまいなんとなく買ってみる。お味噌汁に入れたら美味しいかな。この数日売れ行きを観察していたちいかわのランチパックは値引シールが貼られていた。
写真を見返してみたら前世はきつねなのかもね、とか可愛いことを言いたくなるくらい、最近油揚げばかり食べているみたいだった。
とにかく足がおぼつかなくなってきたので終わり!
Tumblr media
3月24日 心が無になる1週間を目の前に、昼過ぎから出かける予定もあったので、朝一のヨガを受けて開店したばかりのスーパーでスパイスカレーの材料を買って先に作っておく、という初めての試みをした。
野菜の見切り品コーナーにホワイトマッシュルームがいたので買ってみたけれど、なんか黒っぽくて弾力がない気がして、半分くらいは使わずに捨ててしまった。 使った分も悪くなっていないのか不安になりながら、後で調べたら断面が黒いのは通常らしい。でも弾力がなくなっていたのもあって不安(だけど調理してしまったので、食べてしまうと思う。人体実験。)。 そもそもきのこは水洗いしない?らしく、洗ってしまったから弾力がなくなってしまったのかな、とか今日はマッシュルームのことばかり考えていた気がする。
カレー作って冷蔵保存するために粗熱をとる間でお掃除などをして、初めての試みだったので出かけ��までの逆算がうまくできずにタイムトライアル的でとてもとても疲れてしまった。
最近は前より料理(っぽいこと)をしていて、でもそれは全く写真にならないな、と今日改めて思った。 CONTAXに入れたフィルムを撮りきれず、昨日から1日レンタルの期間を延長して、料理の写真でも撮ろうか、とそばにカメラを置いていたけれど、カメラとかiPhoneとかの衛生レベルが料理の現場もかけ離しておきたい気持ちが強くて無理でした。
Tumblr media
料理も衛生面や食材の鮮度の面で不安なことばかりだしやめたほうがいい気がする。 とにかくしなくてはいけない生活のタスクが増えるだけのような気がする。
午後の予定で会った方は昨日まで金沢と富山に行ってきたとのこと。今は金沢もちょっといいビジネスホテルは一泊20,000円くらいしてしまうらしい。 北欧に行きたい話やタイとベトナムの国民性の違いの話(タイはいつも笑顔で迎え入れてくれて、ベトナムはわりと無愛想。でもシャイ故らしい。)をした。 いま割と一番したいことは北欧に旅行に行くことかもしれない。 行った方がいいかもしれない。 パートナーと旅行に行ったその方は「やっぱりそろそろ一人旅をしないだめだ…」と言っていた。
好きなひとを好きなままでいるためには、一緒に仕事をしない、家族にならない、が、今のところの人生で私が見つけた人間関係で気をつけたいこと。
これからカレーを食べます。 お腹痛くなりません様に。
Tumblr media
3 notes · View notes
patsatshit · 2 years ago
Text
「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて2018年14号から連載中の『呪術廻戦』が面白い。人間の負の感情から生まれる化け物・呪霊を呪術を使って祓う呪術師の闘いを描いたダークファンタジー。読者の予想を裏切りまくる展開で、数多の考察系YouTuberを幾度となく地獄に叩きつける作者のイヤラシイ才能に惚れ惚れする。ストーリー、人物造形、魅力的な術式の数々、どこをとっても見どころ満載で語り始めたらそのまま夜を駆けて呪いに転じてしまいそうなんだけど、特筆すべき点をひとつ挙げるとすれば、主要なキャラクターのひとりである羂索という呪詛師の存在。他人の身体を乗っ取り、永い時を越え自らの野望を叶えるために存在する人物。この羂索が物語を牽引するから本作は特別なものになっている。どこまでも純粋に面白いことを追求する奴が真に面白いと思ったことだけを次々に実践していく訳だから、その内容が面白くならない筈がない。
Tumblr media
彼が目指すのは「呪力の最適化」である。 呪霊のいない世界でも牧歌的な平和でもなく、自らの生み出すもの以上の可能性を見つけること、つまりは呪術の力で新たな世界を創造しようとしている。 呪術師・呪霊・非術師、これらは彼曰く「人間という“呪力の形”の可能性の一つ」に過ぎないらしく、さらなる呪力の可能性の探求の為に、1000年もの間、様々な術師の身体を渡り歩いて暗躍を続けていた。 そして最終目標は日本全土を対象に人類への強制進化を成すため、人類と天元を同化させることである。 おまけに乗っ取った人物の身体能力、特徴だけでなく術式等の能力をもそのまま引き継ぐことができるのだが、本人の年齢及び本来の顔、性別も未だに不詳。ここまで書けば勘の鋭い方なら既にお気づきだろう。そう、これは完全にドゥルーズの生成変化である。生成変化とは他なる物事への複数の「外在的」な「関係」の付置それ自体としての、言うなれば「関係束」としての「自他」が組み変わることである。それは万象の渾然一体ではなく、互いに区別される関係束の多様な組み変わりである。ドゥルーズの動物論は、スピノザ的「生態学的倫理」として解釈されることが多い。要するに自己の「身体の能力」を開発し、他者のそれと絡み合わせ、自他が一緒に活力を増していく「強度の共同性」を拡大することである。まさに「闘争領域の拡大」というやつだ。そしてそれは数々の漫画作品からの場面引用と構図、展開等の組み合わせで『呪術廻戦』を構築する作者の意図としても汲み取ることが可能である。
Tumblr media
つまりは羂索≒芥見下々であると、わざわざ声を大にして僕は言いたい訳だが、これは世界とは、断片的な物事のあらわれを「想像」に於いて「連合」した「結果=効果」であり、そして世界のいたるところに、互いに分離した想像する「精神」があるというヒューム主義を独自に咀嚼した庵野秀明原作・監督によるオリジナルアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の概念を字義どおりに渡り歩いた芥見下々の巧みな筆捌きからも察することは容易い。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』で作中人物の碇ゲンドウが目論んだ「アディショナルインパクト」をゲンドウ自身の言葉で要約すると「セカンドインパクトによる海の浄化。サードによる大地の浄化。そしてフォースによる魂の浄化。エヴァインフィニティを形作るコアとは魂の物質化。人類という種の器を捨てその集合知をけがれなき楽園へといざなう最後の儀式だ」ということであるが、これは羂索の最終目標である日本全土を対象に人類への強制進化を成す為、人類と天元を同化させようとする「超重複同化」と思想的にもかなり近しいものがある。『新世紀エヴァンゲリオン』は言わずもがな、他作品へのオマージュをふんだんに散りばめる『呪術廻戦』そのものが芥見下々なりの「アディショナルインパクト」であり「超重複同化」であり「生成変化」の一端であると言い切ってしまうのは、いささか暴論に過ぎるだろうか?
Tumblr media
『呪術廻戦』と同じく「週刊少年ジャンプ」で連載中のギャグ漫画『僕とロボコ』の第156話「オマージュとロボコ」と題された一話にはオマージュを最大の武器としている作者・宮崎周平の意図を盛り込んだ内容で、そのあまりにも大胆かつバカバカしい試みに失笑を超えて思わず仰け反った。「パクりはもう卒業しました!」と切り出す主人公ロボコは「複数の作品の良いトコロを参考にすれば、それはオリジナルになりうる!」と豪語する。そして数え切れないほどの他作品の「良いトコロ」をつまみ食いしてオリジナル漫画を描き上げては周囲を唖然とさせるも、本人は至って冷静に「オマージュの範囲内ですね」と嘯く。そしてキャリア2年目の編集者が編集長の目を盗んで本誌掲載に踏み切り、結果、見事に大炎上するという極めてメタメタで知的な内容だった。オマージュについては『リズム・サイエンス』(青土社)という書籍にも深い洞察が垣間見える。本書はヒップホップやジャズなどのブラック・ミュージックから現代音楽、果てはメタルまでを往還する境域のミュージシャンDJスプーキーが本名ポール・D・ミラー名義で上梓した渾身の音楽論である。前述のロボコが描いたオリジナル漫画のタイトルが『ドキ♡孫・D・炭太郎の青春‼︎大秘宝‼︎』であったことを鑑みれば、宮崎周平の目論見は明確である。ミドルネームの「D」それは単なる偶然にしては出来すぎた話ではないか。近/現代思想を核に、音楽、映画、小説、詩をサンプリングしながらも、「他人の思考を自分のものにするのは発明するのと同じくらい難しい」と天を仰いだその真意とは。彼の試みは確実にイギリスの批評家マーク・フィッシャーに受け継がれ、氏の没後は言うまでもなく……。
Tumblr media
東京を拠点に活動するラッパー、J.COLUMBUSが長野県松本市のトラックメーカーMASS-HOLEをプロデューサーに迎え、制作したアルバム『On The Groove, In The City』は、幾つもの言葉の断片が虚実の被膜ではなく、自己/他者の被膜をねっとりと愛撫するように言葉が置かれる。しかもそれらは決して打点を刻むことなく、じわじわと地中に溶解する。もはやJ.COLUMBUSの言葉とPAUL AUSTERの言葉に差異はない、否、具体的には決して交わらない他者と自己の言葉が混ざり合うことも溶け合うことも拒絶して地表に吐き捨てられる。これはストリートの詩情などという陳腐な戯れではなく、現前する意志を喪った風景を浮かび上がらせようとする稀有なる試みだ。因みに芥見下々は「パロディやオマージュの線引きは、自分の中では明確な基準がある」と明言している(コミックス16巻を参照)。ここまで記してきた僕の文章自体もWikipedia、ピクシブ百科事典、千葉雅也の論文「ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学」を渡り歩いたものに過ぎず、無論、オリジナリティは皆無である。
youtube
10 notes · View notes
toshimasa-kobayashi · 1 year ago
Text
バイト、サボり、逸脱
コンビニの店員同士がレジでなにやら話し込んでいる。若い男女の店員。炭酸飲料を手にした自分がレジに向かうと、会計するために会話は中断された。商品のバーコードを読み取り、クレジットカードの決済を済ませる。会計が終わるや否や、矢継ぎ早に「それでさ」とすぐに会話は再開された。女はストーリーを続け、相手の男は聞き役に徹している。断片でしかない話が、だんだん輪郭を成していく。自分はすぐに立ち去ったのだけど、なんだかすごくよかった。
アルバイト勤務の最中、シフトがいっしょになった相手と他愛もない話をする。それはちょっとした息抜きであり、ささやかな”サボり”だ。仕事から逸脱し、勤務時間が離散していく。労働という一義的な意義が、そこでは溶解し、変容する。こうした逸脱が自分の生活には足りてないなあ、とふと思った。
コスパ至上主義が度々批判される。批判する際、もっとも留意すべきは、この逸脱や離散のことではないだろうか。コスパ至上主義には、逸脱も離散もない。つまり変容がない。アルバイトの勤務中に、ただひとつの私語も禁じて業務に徹するような退屈さが、そこにはある。ときに役割を放棄し、正しさを投げ捨てること。そんなとき人は空白に立つ。自由というのは、本質的にはそうした空白への転落ではないだろうか。意味からも意義からも離脱し、その余白で宙づりになる。そうした空白に耐えられないから、人は合理性やコスパを要求する。
多かれ少なかれどんな人も、合理性やコスパに支配されている。一定程度のルーティン的な秩序がなければ、生きていくことは不可能だ。そうした秩序の一群は行進を成している。一方、そこから離脱する時間があり、人間がいる。その”まだら”こそが多様性だ。”多様”とは、イデオロギーの相違のことではない。それは美学のような個人的問題でもないし、倫理のような普遍的問題でもない。多様とは、そうしたあなたのイデオロギーも美学も倫理も、露ほどにも感知しない他人がそこかしこにいるということ。あなたのゲームボードに、ほとんどのプレイヤーは参加していないということ。
ふいに時間が途切れる。スイッチが切り替わる。そうした契機は、寛容さを担保するための条件でもある。集中や注視は、継続にしか与しない。議論が問題を解決することはないと経験的に知っていながら、議論を続ける。そんなプールは窮屈で、泳ぐに十分ではない。このことをよく肝に銘じておこうと思う。
ギターの練習をしていると度々あることなのだけど、どれだけ練習しても指先の覚束なかった演奏が、忘れたころにふとマスターできていることがある。ひとつの課題から時間的に離脱し、それによって脳神経のマッピングが再配置され、スムーズに演奏できるようになる。そうした飛躍は集中からは起こらない。離脱や分散から起こっている。ひとつの時間に執着するかぎり、変化は望めない。関係のないものが関係を持ち、まったく別々の対象が類似をなしていく。そのためには時間的な分散が不可欠になる。
先日こんなことがあった。東京ディズニーランドを訪れた際の妙な居心地の悪さが、しばらく心に滞留していた。それでそんな心持ちもすっかり忘れたころ、沖縄の米軍基地についてのニュースを読んだ。ディズニーランドと米軍基地。まったく異なるふたつの位相が、なぜか心中で響き合う。敗戦国の駐屯地としてのディズニーランド。そんな見立てがふいに生まれる。そうした脳神経のマップを新たに生み出すためには、時間的な分散が不可欠だった。新たな視点を生み出すための鍵は、いまこの場からの離脱にこそある。このことを肝に銘じようと思う。
2 notes · View notes
moko1590m · 1 month ago
Text
ニーチェ的「末人(おしまいの人間)」の特徴と、現代的類似形態の詳細
1. 適応過剰性と主体性の喪失
権威(国家、企業、上司など)に従順で、自発性に乏しい。
社会制度や通念に対して疑問を持たず、内面化して生きる。
安全・安定を最優先にし、挑戦や創造には消極的。
自己決定を恐れ、他者の評価やルールに依存。
2. 上下関係の内面化
上には媚び、下には高圧的になる傾向(権威主義的性格、アドルノらが論じた)。
上下関係を自然なものとみなし、抑圧を再生産。
弱者に対して連帯せず、むしろ攻撃する(スケープゴートを求める)。
3. 形骸化した美意識
形式や規範に固執し、本質を見失う。
個性や創造性よりも、既存の「正しさ」「整い」に価値を置く。
「美」はファッションやマナー、インテリアなどの型に還元されがち。
4. 表面的なポリコレ(政治的正しさ)の遵守
内発的な倫理観ではなく、外的規範に合わせるためのポリコレ実践。
その遵守自体が自己肯定感や優越感の源となる(道徳的ナルシシズム)。
他者にもその規範を強制し、逸脱者を排除する傾向。
5. 希望の喪失と抑圧的自己認識
世界を変える可能性や自己変容の可能性を信じない。
自虐的・自己卑下的な語りをするが、そこに妙な誇りがある。
抑圧された自我を正当化する言説(「これが現実」「大人になるってそういうこと」)を反復。
6. 不自由なプライドと支配欲
無内容な「正しさ」や「常識」を盾にプライドを保つ。
自身の狭い経験や価値観を普遍化し、他者に押し付ける。
教訓・説教・忠告の形式で他人を支配しようとする。
7. 快楽の均質化と怠惰な幸福
「心地よさ」「無難さ」「便利さ」が幸福の基準。
不快や混乱、対話や変化を避ける。
消費社会的な快楽(娯楽、買い物、SNS)に閉じこもる。
8. 過剰な自己保存本能
生命や社会的立場の維持が最優先で、「生の昂揚」は軽視される。
ニーチェがいう「生の意志(Wille zum Leben)」に従っているが、「力への意志(Wille zur Macht)」を欠く。
9. 規範の内面化による監視社会的性格
自分の内に「監視者」を住まわせて、自己検閲・自己管理を行う。
他者の逸脱に敏感で、それを咎めることで自我を保つ。
「世間的正しさ」を無自覚に武器化する。
10. 意味の貧困と深みの喪失
深い問いや形而上学的関心を「非生産的」として切り捨てる。
宗教・哲学・芸術が、単なる趣味や装飾に矮小化される。
内的対話が失われ、自己の深みに潜る能力が減退する。
近代批判の系譜との関連
フロムの「自由からの逃走」:自由を恐れ、権威に服従する性格傾向。
マルク��ゼの「一元的思考」:技術的合理性が全てを覆い尽くし、対抗的想像力を失う。
アドルノの「権威主義的パーソナリティ」:ナチズムを可能にした心理的傾向として分析。
ライヒの「性の抑圧とファシズム」:リビドーの抑圧が支配構造に適応的性格を生む。
現代の「末人」的傾向を加速する社会的要因
SNSによる承認欲求の制度化(「いいね」による快楽回路)
教育における標準化と評価主義(偏差値、就職偏重)
経済的不安定さと過剰労働(自発性・余白の欠如)
文化の商業化と表層化(深層的意味への関心の喪失)
規範の過剰供給と自己責任論の蔓延
このような人間像は、ニーチェが超人(Übermensch)という概念で対比的に語るように、**「生の肯定」「創造的価値の創出」「自己変容」**という方向性とは真逆の位置にあります。
必要であれば、こうした「末人」状態からの脱出のヒント(例:生成変化、アセンブリックな生のあり方、東洋思想との接続など)についても整理できます。ご希望があればお知らせください。
4o
You said:
ニーチェの「末人」と同様の分析を行った思想家・学者など、できるだけ多数教えてください。
ChatGPT said:
ニーチェの「末人(der letzte Mensch)」という概念に類する人間像の分析や批判を行った思想家・学者は、20世紀以降の哲学、社会思想、精神分析、文化批評において多数存在します。以下に代表的な人物をジャンルごとに整理し、簡単な解説を添えてリスト化します。
◆ ニーチェの「末人」的主題を引き継ぐ思想家・学者リスト
1. 実存主義・ニヒリズム批判の系譜
思想家   主な概念・著作   関連する「末人」的分析
マルティン・ハイデガー『存在と時間』「ダス・��ン(世人)」=平均化された匿名的存在としての人間像。自己を生きる代わりに他者の視線や世間に流される。
ジャン=ポール・サルトル『嘔吐』『存在と無』「実存は本質に先立つ」:自由から逃れ、役割や肩書きに安住する人間への批判。
アルベール・カミュ『異邦人』『シーシュポスの神話』不条理を直視せず、習慣の中に逃げる人間の姿(=末人的)を描く。
2. フランクフルト学派・社会心理の批判
思想家    主な概念・著作    関連する「末人」的分析
テオドール・アドルノ『権威主義的パーソナリティ』『否定弁証法』権威に従順で他者に攻撃的な性格構造=ファシズムを支える「末人的」性格。
マックス・ホルクハイマー『道具的理性の批判』理性が自己保存と効率だけを目的とするようになった現代人=末人。
エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』『生きるということ』自由に耐えきれず権威に逃げ込む「逃走する人間」=末人の心理。
ハーバート・マルクーゼ『一次元的人間』消費社会が人間の欲望や想像力を均質化し、批判精神を失わせる。
3. ポスト構造主義・現代思想系
思想家    主な概念・著作    関連する「末人」的分析
ギー・ドゥボール『スペクタクルの社会』実体なき「イメージの支配」に取り込まれる人間像=自己喪失型の末人。
ジャン・ボードリヤール『消費社会の神話と構造』『シミュラークルとシミュレーション』現実よりもコピー(シミュラークル)を消費する人間=意味喪失の末人。
ジル・ドゥルーズ & フェリックス・ガタリ『アンチ・オイディプス』など欲望をコード化され、定型的な役割を演じる主体=脱創造的「末人」。
スラヴォイ・ジジェクポストマルクス主義・ラカン理論消費社会における「空虚な欲望」と「享楽の命令」に従う主体=「末人」的存在。
4. 宗教・倫理・東洋思想との関連
思想家    主な概念・著作    関連する「末人」的分析
シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』形式的信仰や制度に埋没し、本質的な魂の渇望を見失った人間への批判。 
梅原猛『仏教大学講義』など経済的合理性や制度に埋没する現代人=仏教的な意味での「迷い」の極致。
中村雄二郎『術語集』『共通感覚論』技術的合理性に染まる現代人が、感性・共感を失う危険性を示唆。
5. 精神分析・文化批判・社会理論系
思想家    主な概念・著作    関連する「末人」的分析
ヴィルヘルム・ライヒ『ファシズムの心理構造』性の抑圧が支配体制に順応する性格を生み出す=「末人」的心理の構造分析。
アーサー・ケストラー『機械の中の幽霊』科学文明の発達と人間性の崩壊の乖離を批判。
ノーム・チョムスキー『メディア・コントロール』マスメディアによる認識の管理に無自覚な現代人=末人型の大衆。
6. 日本の思想家・文化批評家
思想家    主な概念・著作    関連する「末人」的分析
柄谷行人『マルクスその可能性の中心』『探求』資本制の内部に無自覚に同一化する主体の批判。
宮台真司『14歳からの社会学』など「終末的社会」の中で思考停止する大衆=末人化した現代人の診断。
中沢新一『野生の科学』『芸術人類学』近代的合理主義に押しつぶされた、野生的感性や創造性の喪失=末人的。
栗本慎一郎『意味と生命』『パンツをはいたサル』「意味への感受性」の衰退を嘆く。脳の変容と社会構造との関係を指摘。
補足:文学・芸術における「末人」的表現者
フョードル・ドストエフスキー(『地下室の手記』の主人公)
カフカ(『変身』『審判』などの不条理で抑圧的な主人公像)
三島由紀夫(『豊饒の海』など、戦後日本人の精神的空洞化への批判)
村上春樹(空虚で自閉的な語り手たち)
必要であれば、特定の思想家の議論を掘り下げたり、比較表にしたり、また「末人」から脱却する思想や実践(生成変化・スピノザ・仏教思想など)との接続も可能です。お知らせください。
3 notes · View notes
jinsei-pika-pika · 1 year ago
Text
流動しながら個として見つめ、判断する。 北村道子の仕事の向き合い方。
#01
北村道子
衣裳デザイナー/スタイリスト
Tumblr media
40年以上にわたり、映画、広告、雑誌など、さまざまなメディアで活躍する衣裳デザイナーの北村道子さん。キャストやスタッフと真正面に向き合い、ときに衝突することも恐れず、信念を持ってスタイルを貫く。そんな彼女の個性はどのように育まれ、いかにして磨かれたのだろう。仕事場としてたくさんの時間を過ごしてきたフォトスタジオという空間で、コーヒーを片手に彼女が歩んできた半生と仕事について語ってもらった。
Apr.19.2023
Michiko Kitamura
photography:Mai Kise interview & text:Tomoko Ogawa edit:Shigeru Nakagawa
Tumblr media Tumblr media
家を飛び出し、世界を分解して見る癖をつけた少女は、映画の中の洋服に出合う
— ご自身の10代、20代を振り返って、その後の人生に影響した出合いについて聞かせてください。
私は寺山修司の影響が大きいんですよ。『書を捨てよ、町へ出よう』、「親を捨てよ」を実行した人だよね。私は16歳で実家の金沢から出て、サハラ砂漠やアメリカ、フランスを放浪しましたけど、18歳になっても、30歳を越えても実家にいる人もいますよね。親だって子離れしてないじゃない。これが今の日本という文化、社会を育んでいるんじゃないかと思う。だから、自然と政治も家父長制に、政治家も世襲で引き継がれるようになってますよね。なぜ出ていくか。それは自分のアイデンティティを知るためです。知るっていう行為は、過去を見つめるしかないということなんだよね。
— たしかに、経験からしか何かを知るということはできませんもんね。
今の瞬間、何秒間という現在点で、目の前にいる他者と自分には大きなギャップがある!と思ったときに、自分のアイデンティティを知る。特に外国に出ると、相槌打って微笑んでいるだけじゃ会話は進まないじゃない。日本みたいに、同調圧力が強くないから。つまり、実家にいるということは、母親のお腹で守られている状況と近いんです。そこから出ることによって、初めて世間にさらされる。そこで、世の中を自分で分解してみる癖を持つようになる。私の場合、子どもの頃から英和、和英辞典と広辞苑を持ち歩いてたから、誰かの発言に対して、「この人の言ってることはなんだろう?」と思って全部つぶさに見るんです。そこから、言葉はこうやって進化してるのか!と発見する。もっと言えば、ブランド力にとらわれず、自分の力で学びたい高校や大学を選んでいくこと。そうすると、一人の有権者として、政治と経済とアートがどう自分の仕事と人生と結びついてるかを分析して、議論できるようになっていくんですよね。
— もともと彫刻家を目指されていて、洋服に興味はなかったそうですが、何がきっかけで衣裳の世界に入られたんでしょうか?
なぜ私が洋服をスタイリングすることになったかというと、〈シャネル〉がきっかけなんです。当時のパートナーと外国を回っていた20歳の頃、シャネル本店でスーツをオーダーしたんです。なぜかというと、(ルキノ・)ヴィスコンティの映画『ボッカチオ’70』を観て、こんなストーリーなのに、こんないい服が出てくるんだ!と思って(笑)。お金もなかったから、モリエールの銅像の前で似顔絵を描いたり、その辺に捨てられたもので立体を作ったりしていたら、お金を置いていく人がいるんですよ。フランスは、そもそもアートに対してお金を恵むという文化があるよね。2カ月くらい経つと、そこそこお金が貯まってくるんですよ。それで、一番いい服を着てシャネルに行ったら、らせん階段の上からなんか貧しい子が来たぞっていう感じで見られて、クチュールのスタッフに全身を採寸されてね。スーツ自体が欲しいというよりは、あの機能美を兼ね備えたスーツにどう辿り着くんだろう、とその過程を見たくて。今日着ている〈メゾン マルタン マルジェラ〉の初期のワンピースも、マルタンはヴィンテージファブリックを使っているから、これは私しか持ってないんです。多分、それが洋服の原点ではないかと思う。究極、ファッションも映画も、この1点の洋服が、誰に似合うのかを考えるのが面白いんです。だから、着こなしの作法をつかんで服を着ている人にはついていきます!となるよね、私としては。
— 作法をつかむには、その人の生き様が関係してきますよね。
映画の見方にも視点があるように、着る人の視点が見えるかどうか。例えば、海外の俳優で、普通のデニムをはいてるだけなのに、かっこよく見えることがあるじゃないですか。よくよく見てみると〈ギャップ〉のものだったりするんだけど、それがなぜおしゃれに見えるのか、そこに、その着こなしにおのずとその人らしさが出てくると思うんだよね。
— 北村さんが考える「良い仕事」の定義とは?
私がチョイスしたものは良い仕事、というのは冗談だけど(笑)、興味や好奇心が向かう、面白いなと思える人と仕事をすることですよ。その人が心から出てくる言葉を使っているか、誰かから借りている言葉を使っているかは、この年になるともう、すぐにわかるんです。だから、自分の言葉を使って、馬鹿馬鹿しいことを本気でやっている人に興味があるんだよね。 私は長く、社会思想、政治学、社会学、哲学の本を読み続けているんだけれど、そうすると、道草をたくさんしなくちゃいけなくなる。そこに新たな興味が出てきて、あれもこれも読まなくちゃとなることが楽しいんです。だから、何か新しいことを学ぼうとすると、なんとなくつかめるようになるまで、少なくても10年はかかっちゃうんだよね。
Tumblr media
他人に委ねず、自分自身でジャッジするという強さ
— 仕事の際に、自分自身に課しているルールは?
自分自身でジャッジすること。周りはダメと言うだろうと思っても、自分がいいと思うことを提案してみると、意外とオッケーが出たりして、できたものをすごく喜ばれたりもするんですよ。なぜだかはわからないんだけど。昔、平山景子さんが編集長をしていた時代の『花椿』※1 で2年間仕事させてもらえたのも、そういう私の発想を面白がってもらえたからなんだよね。子どもが行水しているようなビニールプールの素材あるじゃないですか。あれをそのまま生かして洋服にしませんか?とか、油揚げを1メートルぐらい縫い合わせて、お稲荷さん洋服にしたらどうですか?とか(笑)、捨てられた手袋を全部寄せ集めたら、ベストにできるんじゃない?とかね。それは、資生堂にはない発想だったんじゃないですか。 ※1 1937年に創刊した資生堂の企業文化誌。
— 長く活動する秘訣があれば教えてください。
やめたら生活できないから続いただけで、若い頃からそんなに仕事してないんですよ、私。目立った仕事はしていたかもしれないけれど、1年のうち3カ月は外国に出ていた時期もあったし。しかも、私、結構喧嘩してるんですよね、編集者やメイクアップアーティストと。クライアントに対しても意見しちゃうんで(笑)。我慢して黙っている持久力がないんです。自分は労働者階級だと思ってるから、偉ぶる人や権力が大嫌いなんですよ。だから、広告代理店の大げさな儀式が嫌になっちゃって、70歳でもう広告はやめました。今は、一緒に仕事したい人に頼まれたら引き受ける、という感じでやってますね。
— 師弟制度を取り入れていた時期もあったのでしょうか?
以前、マネージャーをやりたいと名乗り出てくれた人がいて、勝手にアシスタント志望という子に数人声をかけて職場に呼んでいたんです。私は好きにやりたいからとその人のオファーは断ったんだけど、アシスタントをしたいという子はもうそこに来てしまっていたから、「しょうがない。5カ月は面倒みる!」と言って。当時、私はよく免停になってたのね。それで、運転手として手伝ってもらっていました。そうしたら、いつの間にか「北村道子のアシスタントをやっている」が一人歩きして、そう言っているスタイリストが十何人になってたんです。悪いうわさの多い私の名前だった��ら、出すと響くらしいんだよね(笑)。自分から口説いて手伝ってもらっていた美大の学生たちは、私が留学を勧めたこともあって国外に出てしまい、それから戻ってきてないですね。
Tumblr media
— 創作のリソースとして、どこからインプットする機会が多いのでしょうか?
映画と本ですね。小説は眠くなるからあまり読まない。今、一番学びたいのは、古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスなんです。ニーチェについて読んでいたときに、ヘラクレイトスは偉大だと思って。ソクラテス以前のギリシャを唯一学んだのが、「神は死んだ」を主張したニーチェなんですよ。つまり、それ以前は、神を作っていたとも解釈できるじゃないですか。ワインも蒸造して、ドラッグもやって、錬金術で実験してたとされているから、多分、既存の価値観で振り返ると、ものすごく壊れてるんじゃないかと思うよね(笑)。あとはね、事実、行動、現実性を重視する「プラグマティズム」を日本に紹介した鶴見俊輔の本も全部読み返してますよ。彼は16歳でハーバードに入学して、プラグマティズムを学び、“人は矛盾してる。その矛盾こそが人間なんだ”という生き方をするんです。
— 北村さんも、“矛盾こそが人間である”を体現していらっしゃいますよね。
私、「明日になったら、同じこと言ってるかはわかんないけどね」って、よく言うんです(笑)。今日は、このインタビューに対して思ったことを答えてるだけ。取材なんかで話をするときも、言いたいことだけを言う。都合が悪い部分はどうせカットされるわけだし、口に出さないと、その瞬間のリアルな言葉にならないじゃないですか。身も蓋もないことを言ってしまえば、面白いことって活字にできないのよ。活字にしたら、固定化されちゃうから。このままの空気で、世の中の悪口を言いたい放題言ってるのが面白いわけじゃない。それを、私は風流だと思う。繰り返しになるけど、人間は十月十日、女性の子宮に閉じ込められているわけだから、そこからポンと外へ出て行かないと。閉じ込める、というのは人間をダメにする。昆虫だって、閉じ込めても外へ出ていくでしょう。人間の一番の罪は、脳が発達していることだよね。今は、デジタル化も都市設計も脳化社会が生み出しているわけじゃないですか。そこに入りたくないけど、家賃は上がっていくし、一生懸命、白井聡の『マルクス 生を呑み込む資本主義』を読みながら、どうしようかなと考えてます。
Tumblr media
本日のコーヒー
UCC GOLD SPECIAL
PREMIUM 炒り豆 フルーティウェーブ 150g
『発見のあるコーヒー』をコンセプトに、UCCのロースティングとブレンド技術で、コク、苦み、酸味の奥にある特別な香りと味わいを表現したブレンド。口あたりは柔らかく、余韻にはブラックベリーやブルーベリーのような甘みのあるコクが感じらる。
『UCC GOLD SPECIAL PREMIUM』ブランドサイト
UCC公式オンラインストア
個人の愉しみとしてコーヒーのある場所に行く
— 最後に、日常におけるコーヒーがどんな存在か、教えていただけますか?
コーヒーは外で飲むものというのが私の概念です。ヨーロッパだと、近くのバールでエスプレッソを一杯カッと飲むじゃないですか。そういう感じ。なので、私は美味しいコーヒーが飲める店がある場所の近くに引っ越す。そこで、バリスタが淹れたエスプレッソを飲む。あれが本来のコーヒーの旨味なので。映画も一人で観ますし、あまり人とつるまないので、個人の愉しみとしてコーヒーを飲みに行きます。ドリップコーヒーを飲むときは、バリスタが「今日はこれがいいよ」とお薦めするもの��チョイスします。対面だから、店に入ってきた瞬間から人を見て、豆を挽いて、淹れる。どんな豆をどの水で、温度で、どのタイミングで、どんなカップで、ロジックがちゃんとある。そういうバリスタのセンスを感じさせる店に通う。誰かに一杯のコーヒーを淹れるのも、その人に合う一着の服を着せるのと同じような哲学がある、と私は思うんですよね。
Tumblr media
北村道子
衣裳デザイナー/スタイリスト
きたむら・みちこ|1949年、石川県生まれ。10代でサハラ砂漠、アメリカ大陸、フランスを放浪し、30歳頃から、映画、広告、雑誌などで衣裳を務める。1985年公開『それから』以降、数々の映画作品に携わり、2007年には『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』で、第62回毎日映画コンクール技術賞を受賞。昨年、人気シリーズ待望の第3弾となる著作『衣裳術3』(リトルモア)を上梓。第40回毎日ファッション大賞にて、鯨岡阿美子賞を受賞。
3 notes · View notes