#枡田幾二
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kachoushi · 1 year ago
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各地句会報
花鳥誌 令和6年7月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和6年4月4日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
受験の子送りてしばし黙す父母 喜代子 うつうつも待つこと楽し花便り さとみ 初桜幾歳月や句座の道 都 野遊びのノスタルジーを胸に秘め��同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年4月6日 零の会 坊城俊樹選 特選句
野遊の一人は高きハイヒール はるか 春愁の長き耳垂れ犬来たる��光子 譲ること大嫌ひなの半仙戯 同 ボール蹴る子に一瞬の花吹雪 美紀 ぶらんこを替つてくれず漕ぐばかり 瑠璃 花いつもさびしきところより散りぬ 緋路 大使笑ふ南麻布の花の昼 佑天 花冷のベンチに花冷のお尻 緋路 群青の絵の具は春の水に溶け 同 教会の桜は透けるほど白く 小鳥
岡田順子選 特選句
花に息ととのへてゐる太極拳 光子 鞦韆の蹴り寄せてゐる桜色 三郎 純白の肌着吊られて花曇 同 皆遠き目をしてをれば桜かな 和子 花いつもさびしきところより散りぬ 緋路 子の声は残響となり連翹黄 同 花は散るべしと笛吹く裸体像 俊樹 春の野の児らしか知らぬものがたり 軽象 花すみれ遠くの空に戦闘機 美紀 春光の鳩はみどりの首見せに きみよ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年4月6日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
夕日落つ別離の駅の古巣かな 朝子 冴返る齢八十骨の音 成子 仔犬抱き遅日の船を見送りぬ かおり 菜の花や千の􄼫棺より生るる 睦子 枝枝に声転がせて鳥交る たかし いつせいに揺るゝ吊革鳥帰る かおり 煙草屋は古巣残して店仕舞ひ 久美子 陽炎の消えて居座る陰陽師 美穂 地に古巣天に野鳥の窓があり 修二 我先に舫ひ綱解き鰆東風 たかし 朧月十二単衣に逢へさうな 同 しつけ糸解くおぼろ夜の京友禅 美穂 待つといふうれしさ人も桜にも 孝子 永遠の未完でありぬ桜かな たかし
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年4月8日 なかみち句会
春の海ばかりの駅に途中下車 秋尚 つれづれに雨音聞いて日永かな 廸子 鎌倉や角曲がるたび春の海 三無 石楠花や参道狭し奥の宮 史空 お別れの日に石楠花の紅の濃く 貴薫 また元の話に戻る母日永 美貴 小刻みにきらめく春の海まどか のりこ 寺領にも石楠花紅く小糠雨 ます江 ………………………………………………………………
令和6年4月8日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
娘良し妻さらに良し春日傘 三四郎 母の忌を迎へし朝の春の雪 ただし 風光���千年超えし物語 みす枝 春浅し耳朶柔らかなイヤリング 世詩明 天空へ光を返す白木蓮 三四郎 愛猫に愚痴こぼしをり四月馬鹿 みす枝 初蝶の二つ行先定まらず 英美子 貝の紐噛んでひとりの春炬燵 昭子 ほろ酔ひを名妓支へて大石忌 同 校庭の鉄棒に触れ卒業す 時江 薔薇一本くれる夫ではなけれども 昭子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年4月9日 萩花鳥会
春一番濁りし川の鯉めざめ 祐子 春愁の情緒一新晴衣着る 健雄 春の宵椿徳利の矢の根寿司 俊文 四月空総出で迎える娘の帰国 ゆかり 遊覧の舟に続くや花筏 明子 教科書に漢字で名前進級す 美恵子 ………………………………………………………………
令和6年4月12日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
山笑ふ札所巡りに􄼺の急き 宇太郎 一歩づつ眼下となつてゆく桜 美智子 渡船場に飯蛸釣りて島土産 宇太郎 桃咲いて捨て犬たちの誕生日 都 杖を曳き混じりて遊ぶ花筵 悦子 囀を総て抱へてゐる大樹 史子 初燕無音の青を切り分けて 宇太郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年4月13日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
としあつ忌修す爛漫卓の上 百合子 信濃路は薄紅に花杏 和代 里は今杏の花に溺れたる 白陶 想ひ出のとしあつ談義飛花落花 亜栄子 竹秋の風を聞かむと句碑に佇ち 三無 白寿なる母満開の花と散る 多美女 句碑古りて若さ溢るる花楓 文英 雨上り杏の花の山家かな 幸風 ふんはりと包みたる香の花通草 秋尚 白き卓都忘れの彩映えて 恭子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年4月13日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
対岸に人の流れてゆく花見 あけみ 軽貨物春の泥付け走る町 紀子 犬ふぐり自転車の子は風のやう 裕子 烏ども引き連れてゐる田打ちかな 紀子 障子開け全て我が世の花見なり みえこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年4月13日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
余生をば貪る朝寝でありにけり かづを 一穢なき姿のままの落椿 同 落ちてなほ華やぎ続けゐる椿 同 春風に仰ぎて凜と左内像 同 板木打つ仕草秘かに春そこに 和子 朝寝して咎める人も無き自在 泰俊 春愁や錆びし火の見の鉄梯子 同 蛇穴を出づと云ふ世の一大事 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年4月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
咲き満ちし花に静けきある古刹 かづを 芽柳に縁なる風棲み初めし 同 沈丁の闇をつないでゆく香り 同 九頭竜に吐息とも見る春の雲 同 此の花に幾春秋を共にせし 雪 花を見に一人で行ける所まで 同 春休み児ら自転車で飛び廻る 富子 鴬のしきりに啼く日啼かざる日 英美子 川幅を歪めて流る花筏 真喜栄 夜ざくらやいつも􄼴打つ寡婦暮し 世詩明 筍や十二単の皮を剥ぐ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年4月17日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
哀愁の容姿あらはに紫木蓮 数幸 徐に白を極めて花水木 千加江 流されて留まり忘る花筏 同 春場所やふるさと力士負け多し 令子 唐門の昔を語る桜かな 啓子 紫の夜空の中に桜散る 同 二人で見いつしか一人花の道 希子 仮の世にしては見事な花吹雪 泰俊 無住寺は無住寺のまま桜咲く 同 愛子忌やせめて初蝶見たること 雪 落椿踏まるるをもて瞑すべし 同 和尚来たかと散る花に酌まるるや 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年4月19日 さきたま花鳥句会
たまゆらの時を浮遊し石鹸玉 月惑 春愁や己を鼓舞し逝く句友 八草 花篝名残りの片のうらおもて 裕章 脱ぎ捨てし靴下にある花疲 紀花 掛茶屋へたどりつきたる花疲 孝江 花吹雪渋沢像の頭に肩に ふゆ子 腰痛の愚痴ふき飛ばす芝桜 としゑ 楤の芽の口にひろごる大地の香 康子 春炬燵夫の座椅子のたばこ臭 恵美子 藤棚の真中を風の通り抜け みのり 待ちかねた早朝よりの花見客 彩香 十字架の隣に読経山笑ふ 良江
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令和6年4月21日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
メタセコイアむんずと掴む春の雲 三無 今日も来て舞ひを見せたる春の蝶 ます江 佐保姫を見送る空の雲白く 軽象 蒲公英の真白き絮は飛ばず揺れ ます江 一山をより高くみせ桐の花 斉 僧一人花韮咲かす露地に消ゆ 久子 牡丹の重たく崩れかけてをり 秋尚 桜蘂降つて大地に横たはる 斉 春草の足裏くすぐる田圃道 経彦 観音の御手のやさしく著莪の花 芙佐子 ゆつくりと翅を広げて蝶生まる 斉
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年4月22日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
昨夜爪を切りたる指に草を引く 雪 十一面千手千眼像朧 同 瞑すべし柏翠踏みし落椿 同 この椿もんどり打つて落ちたるか 同 初蝶や昨日は森田愛子の忌���同 不器用を誰憚からず針供養 同 春愁や文箱に封じたる手紙 同 春愁や此の髪に手を置きし人 同 昭和人昔語らず花の下 昭子 本気度を探るお見合亀鳴けり 同 久々に手に取る修司五月来る 同 しなやかにそしてしたたか単帯 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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0shoyamane0 · 8 years ago
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戯曲「メタ・インキ」
六久舟 それにしても山根先生が絵本を描くなんてね。 枡田幾二 ええ、びっくりしたもんですよねぇ。何しろあの山根先生が絵本なんて。春だからって、気でも触れたのかななんて思ひましたけど、本当のところはどうなんでせうね。 武田興味 まぁ、少し考へてみようぢゃあないですか。山根先生も今日はゐないことですし。それに今日は演出家で能楽師の岩本慇懃さんと写実主義者でディジタルタトゥ研究がご専門の土手章史先生にも来てゐただいてゐることです。 岩本慇懃 今日はぼくの遅刻で開始が遅れてしまったことをまず謝罪します(※岩本はこの日、青森出張から広島までの移動に遅れ、当初の予定から二十九時間と三十七分の遅刻といふ過ちを犯した。けれどその他の参加者は、岩本の到着するまで、私語をするでもなく、ただバアボンをすすって、時計にさへ一瞥くれなかった)。ところで、山根先生の絵本作家デビュウについてなのですが、みなさんもご存知なかったのですか? 土手章史 少なくともぼくは知らされてゐませんでした。けれど、山根がヘラジカのスケッチや、出版予定のない漫画の原稿を残してゐたことは今では有名な話です。
(皆、第一声を終へた)
六 確かに、あの原稿やスケッチで溢れたノートは今どこにあるんでせうね。あれは非常に価値の高いものです。 土手 A4版のノート、それも薄い桃色の表紙のノートを今でもよく覚へてゐます。 武田 あの頃の他の作品を見てみると、詩が多い。二〇一六年の二月にもそのやうな時期があります。生活に変化が見えたり、変化が予測される時期に山根が詩を多くかくといふのは今までの通説ですが、絵といふのは考へてみればあまりありませんでしたね。 岩本 確か、はじめに公開された山根の絵は「無題(2012)」といふもので、当時の紹介文には「山根がクレヨンを好んでいたことを知る者は意外に少ない。時間を見つけては紙切れなどに絵を描いていた。彼の描く絵はどれもカラフルであるという特徵がある。また本人曰く絵はメッセージ性や藝術性などは考えてないという。」とあります。今改めて見てみるとどこかタローオカモトのやうな色彩を感じることができます。 六 あれから五年近くの間、純粋に絵といふものを発表したことはありませんね。 土手 ええ。ある種特殊な例を出しますと「大正ネコナヤミイ」です。あれはB5版のノート紙中央に大きな猫の絵があり、その周辺に本文が描かれてゐて、あれ自体が山根のピクチュアでもあり、テクストにもなってゐる。あれはディジタル的にとても哲学的で興味深い。 武田 画像の中の文字はテクストか、といふ点についてですか? 土手 まさしくさうです。先程私はそれが哲学の問題とうそぶきましたが、もしかするとそれは本当のところでは、とても記号論を扱ったトピックなのかもしれません。文字をどう認識するか。あるいはそれは文字である必要があるか。 岩本 インタアネッツの中には、特に最近、様々な人間が写真を共有してゐます。その中には新聞記事をのせて不特定多数と意見を公開したりしてゐる。この時に、考へさせられるのはこれは写真でもあり、文字通りの「文字」でもある。つまりそこでの問題は「.txt」や「.jpg」などの拡張子の問題ではなくて、受け手が文字として受け取ることができるかどうかであります。さらに言へば、文字として受け取れる場合、人はそんなことを意識などしません。 枡田 確かに、この会話もいづれ文字起こしされますね。そして山根正研究会のサイトで文字として表示されるでせう。けれどそれも印刷された文字と異なり、HTMLで表示されたピクセルの集合体でしかありません。このピクセルの集合体といふ点に於いては画像と文字に違ひがあると言へるでせうか。 六 記号を認識するとは何か、といふことですね。 土手 私はその点においてはとても写実主義的な価値観を持ってゐます。例えば認識は輪郭であることです。私達は画像の中の人物も文字も、それらを輪郭によって判断し、認識してゐるのだといへます。 岩本 さうでせう。存在は境界によって定義されますからね。 六 それでは、さうした認識論あるいは記号論を踏まえた上で本題に戻りませう。さうした文字と文字でないものの境界が曖昧になりつづける中で、文字ベースの表現を行ってゐた山根が、なぜ絵本なのか。 枡田 はじめに、山根は「目の人」だといふことができます。これは山根の、容姿に関する思想に一致します。 土手 人は見た目が何割だとかあァいふ話ですね。 枡田 それもあります。つまり山根は容姿至上主義者であり、差別主義者であり、卓越した美意識の持ち主であり、貧しい三流絵描きでもあるといふことです。 六 なるほど、最後が解らない。山根の三流絵描きである理由はどこにありませう? そして貧しいといふ点においても。 枡田 これは私の持論ですが。貧しいといふのは金銭だけを表してゐるわけではありません。 岩本 ちょっと待ってください、話が冗長過ぎます。これでは本を作る都合のために文字を水増しするのと何も変はらないではないですか。
(閑話休題をしてゐる)
武田 ここで話す目的は何か、山根がなぜ今絵本を描くか。それが何かまず答へを言ひませうよ。 六 けれどあなたは三十時間近くも遅刻しました。その為に説得力は薄いですが、発言してゐる内容は本質を突いてゐます。私たちは山根の「文章を長く延ばす必要はあるか」の精神を思ひださなければいけません。私は山根が絵を描くことを無脳化だと思ひます。もしも何かしらの矯正具が登場し、目の前の問題が既に解かれた状態で表されたとしたとき、果たして脳は必要かといふことが問はれます。これを絵でいふと、山根の思想が絵で表現され、とてもクリアに表現された場合、文字で冗長に説明する必要がいるかといふ問題なのだとおもひます。 枡田 六さん、さうであるならば、無脳化は山根が絵を描くことではなくて、絵を見る人のことでせう。それは言ってみれば観客です。山根はよく、自分の作品は吐瀉物だと言ひますよね。けれどそれと同時に読者のことをその嘔吐の観測者だとも言ってゐる。山根は常に観測者=観客を意識して作品を発表してゐるのです。だから「文字から絵へ」の飛躍の中にある、山根の「演技的」なもの、絵本作家を「演じる山根」の意味について考へることが重要なのではないでせうか。 岩本 確かに、絵本作家に「成る」のではなく絵本作家を「演じて」ゐるといふのだったら筋が通ります。私も演劇の人間ですからそれについては慎重に考へたい。これまで山根は様々な表現をしました。それは文字の形態だけでも、小説家、随筆家、戯曲作家、音楽家など様々です。しかも去年の暮に出された『山脈 二〇一六年十二月二十八日号』の最後では「ハイパーメディアクリエイター」と記されてゐます。あの雑誌の編集長は山根自身でありますので、自らその肩書を記したことになります。彼は自覚的に自分の職種を広げてゐるのです。もっといへば、何かの職種に限定��れるのをすごく嫌がってゐる感じがするのです。だからこそ「演じる」のかもしれない。それはとても子供のやうな、ある種の「強がり」のやうなものを感じてなりません。 土手 山根の根本にあるのは演技であることは間違ひないでせう。初期作品の中でも著名な「めくら演者」はその題名からも解るとおり、田舎者が都会で都会人を演じることへの風刺をこめた作品です。けれど執筆当時の山根は、それを批評する人間自体を「演じて」ゐた。今でこそ批評家としての山根を知る人が多いですが、そもそも山根といふのは地方都市出身の一学生に過ぎません。それが「戦後思想の巨人」とまで称されるやうになったのは一重に山根が「戦略的」にひたすらに「演じ」つづけたこと、そしてそれを完全に「信じ込んだ」私達の、ある種の過失ではないでせうか。 六 山根がよくいふ「自己同一性は外在によってしか成り立たぬ」といふのは、悪く言へば「信者が作り出した虚像」こそが本当の山根であるといふことにほかなりません。山根自身は山根ただ一人であるのに対して、山根を認識するのは山根以外の全ての存在です。山根がいかにして虚像となったか、今回の絵本作家といふ山根の表現拡大の中にヒントがあるのかもしれません。 枡田 ここで一度、山根をめぐる記号について話を戻します。先程、山根の書いた手書き文字と、同じペンを使って描かれた猫の絵が同時に同じ紙面上にあり、なおかつそれが一枚の写真としてディスプレイ上に表示されてゐる状況についての話がありました。そこからどちらも記号として存在してをり、重要なのはその記号の受け手の問題=技量である、といふことでした。ここに「絵文字」といふ傍点を放り込むとどうでせう。「絵文字」といふのは文字でせうか、絵でせうか、それとも新しい何かなのでせうか。 岩本 平成といふ時代の中で「絵文字」について考へることはもはや避けることができません。特にここに集まってゐる人はみな文字と密接に関はった仕事をしてゐる人たちばかりです。けれどその中で皆さんは仕事に絵文字をつかったことがありますか? おそらく無いはづです。それはなぜでせう。 六 山根の本文の中にも絵文字は存在しません。けれど本文のなかに埋没した「猫の絵」はどうでせう。『大正ネコナヤミイ』の猫は絵文字といふことができるでせうか。 枡田 それをいへば、文字とは何かといふ問になります。突き詰めていけば文字といふものは、「おおよその意味がある輪郭」の総体ではないかと思ひます。古代のヒエログリフなどは絵文字との共通点がある。しかもヒエログリフは情報の再現、記録の機能も実装してゐます。それは絵でも写真でも可能なのかもしれません。 土手 ちょっと待って下さい。それでは絵と文字は何がちがふのでせう。確かに漢字のなかには象形文字など、絵由来の文字があります。けれどアルファベットなどの抽象的な記号は絵とは言へないでせう。 枡田 けれど子供向け絵本の中に装飾されたり、キャラクタライズされたアルファベットのイラストを見たことがありませんか? あれもアルファベットとして認識することは可能です。 岩本 確かにアラビア書道などの文字は、一見するともはや文字には見えない。ロゴのやうにも見えます。言ふなれば模様です。 六 では、山根の絵は突き詰めていけば文字の延長であり、そもそも山根が行ってゐる表現は「文学」とは言へなくなるのではないでせうか。
(文学に文字は必要か)
土手 よく読書を趣味としてゐる人は、といふよりも社会不適合のきらひが多い人達の多くは文字でないものに対しても「文学的だ」などと囃し立てることがあります。私はあれが不思議でなりません。 岩本 文学的な表現といふものはありますが、あれは「文学世界的」なニュアンスを指してゐるのだと思ひます。つまり「文学」は決して文字を必要とはしてゐない。 枡田 それはどうでせう。今岩本さんは「文学世界的」と言った。けれど文学世界は文字でしか構築することができません。文字と読者によるこれまでの知識の蓄積から構築された世界こそが文学世界なのであって、文字なき文学世界は、どだいありえないのです。 岩本 枡田さんのいふのは文学世界の興りの話です。私がいふのは文学世界の共有の話です。そこで食ひちがったのでせう。もちろん、私も文学世界の構築には文字が必要だと思ひます。 六 この際、文字の起源がピクトグラム=絵文字であることなど重要ではありません。問題は山根の書いた絵本は文学と呼べるか、といふところです。 土手 それについて考へるためには絵本の構造について考へる必要があります。ほとんどの絵本といふのはメインとなる絵があり、それほど多くない文字がありますね。文字が存在するのであればそれを文学と定義することは十二分に考へられます。 枡田 そもそも絵本といふのは流通の面でみても一般的にみても「児童文学」に含まれます。しかしそこで触れられる絵本といふのは対象読者が児童であるからです。山根の描く絵本が児童のみを対象とした内容になるとは到底思へません。 岩本 けれどその可能性が全くないとは言ひきれません。これまでの作品をみても、児童が読んでも有害でないものが、ごく少数ですがあります。例へば『春』です。 六 岩本さん、それはおかしい。『春』は現在では心中を図る老夫婦の最後の会話とみられるのが研究者たちの間の通底です。子供向けとはお世辞にもいへない。 岩本 私は『春』を胎児と老婆の恋愛小説だと読んでゐます。老夫婦であると判断してしまふのは閉鎖的な研究社会の弊害なのではないでせうか。 枡田 ちょっとまってください。胎児と老婆の恋愛など、老夫婦の会話よりもはるかに児童向けではありません。大体、それをあの一往復の会話から読み取るのはあまりに誤読が過ぎます。第一、作品を絵本化する際にも『春』を選ぶのはあまり褒められたものではありません。 土手 『春』に関して私はまた別の解釈を持ってゐます。そしてその誤読こそが文学の、文学たる所以なのではないでせうか。そしてそこから敷衍するととてもメタ的な結論に達します。最近の山根が「余白」について言及してゐることは研究者たちの間でとても注目されてゐます。 岩本 さうですね。『余白四行詩』では詩を書くことによって同時に余白を生み出すといふ実験的な表現もしてゐます。それに自覚的であること自体が表現になってゐます。 土手 つまり、これまで山根が公開してきた文章は文学のやうに見えて、その実、��明な絵を描き続けてゐた、と考へてみるとどうでせう。インキをつかふことをしないで絵を描いてゐたのです。いふなれば「メタ・インキ」です。 枡田 まるで中島敦の『名人伝』のやうですね。つまり、山根は絵を描かないことでそれ以外の全てを同時に描いてゐたといふことですね。それもインキを一滴も必要としないで。 六 それならば、様々な点で納得がいきます。先程の『春』に於ける誤読の数々も本文に表現された以外の全存在も同時に表現してゐたからこそ、誤読が生じたのですね。 土手 おそらく、さう捉へてしまってもよいでせう。 岩本 様々なことに合点がゆきました。けれどそれなら、なぜ、山根はここで絵本を描かうと思ったのか。それについてはどうでせう。 六 それはかうした議論を我々が行ふやうにするためではないでせうか。今度は山根先生本人を交へてそれらについて議論したいものです。 枡田 確かに、さうですね。これだと山根先生の思惑どおりですし、まるでマリオネットのやうです。 土手 全くその通りです。 武田 それでは皆さん、今日は短い時間でしたがありがとうございました。
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脚本・山根正
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kachoushi · 28 days ago
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各地句会報
花鳥誌 令和7年6月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和7年3月1日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
貝寄風や龍馬の夢は明治へと 睦子 菜の花忌雲を目指した明治人 修二 春の小川そは大正を恋ふしらべ 美穂 竹馬の上手はヒーロー昭和の子 睦子 春炬燵昭和歌謡の流れ来る 光子 甘党のウィスキーボンボン春微醺 睦子 春雨に昭和の唄を口遊む 光子 田楽や女将昭和の割烹着 修二 罅に添ふ金継ぎ細し光悦忌 睦子 暖かや昭和演歌の七五調 久美子 春泥や流離のごとく就活す 朝子 翠眉濃く昭和の春を踊り来し かおり 逆上がり出来ず砂場の春寒し 成子 野火走る地下に鍾乳洞深く 光子 雛段に祖母の鼈甲化粧箱 美穂 しやぼん玉飛んで昭和の家並まで かおり ふらここや漕げば昭和の雲浮けり 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月1日 零の会 坊城俊樹選 特選句
梅の香に惑ふ純情男坂 きみよ アメ横にもの喰ふ人や鳥雲に 要 通り抜け出来ぬアメ横春の闇 同 囀を上野大仏瞑りて 順子 累々と上野の山の落椿 要 混雑猥雑アメヤ横丁うかれ猫 風頭 卒業や銅像の頰撫でて去る 佑天 整然と立つ春愁のチョコバナナ 緋路
岡田順子選 特選句
鳥帰る露店あらゆる色を持ち 緋路 霾や上野の店の読めぬ文字 軽象 春の人スワンボートの胎へ還る 緋路 アネモネを咲かせ丸永商店に 和子 アメ横に日本一の目刺売る 俊樹 夢をみるらむ囀の劇場に きみよ アメ横���出て薄墨のかひやぐら 要 服を脱ぐやうに傾げて春日傘 和子 こんなにも人ゐて蝶のただひとつ 千種 春光に位牌並べる仏具店 佑天 不忍の水の濃厚蓮芽吹く 千種
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月3日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
露座仏も眠気に在す春の宵 かづを 一穢なき姿のままに落椿 同 老梅やこゝに学舎の有りし村 匠 そここゝの汚れし雪や二月尽 同 幼な子の雛とかたこと話しをり 希子 春泥に躊躇の一歩踏み出せり 千加江 如何な人此の樏を履きたるは 雪 幾年を経し雪沓ぞ懐かしき 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月6日 うづら三日の月句会 坊城俊樹選 特選句
四姉妹雛の思ひでそれぞれに 喜代子 笑ふとも泣くとも見える雛の顔 同 雛祭四人姉妹を守りこし 同 ひな飾る時のかなたの幼な顔 さとみ 晴れてまた吹きすさびたる春の雪 都 かの山に未練残して鳥帰る 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月8日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
鳥の景佇む友と卒業す 多美女 卒業やスポーツ刈りの髪伸びて 三無 卒業生弾む声なり胸の花 文英 幼子も律々しくなりて卒業す 亜栄子 二ケ領鯉と親しき残り鴨 文英 恥ぢらひのコサージュピンク卒業す 和代
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月10日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
仄かなる潮の香させて目刺し焼く 三無 海の色焦がし目刺の焼き上がる 秋尚 建て替への常宿偲ぶ木の芽時 のりこ 新幹線窓一面に山笑ふ ことこ 目刺盛る器は旧き伊万里焼 貴薫 宿り木の浮かぶ大樹や木の芽風 のりこ 山椒の芽とげとげしくも初々し 怜
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月11日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
供養雛四十体のピラミッド みえこ 通学路思ひ出連れて忘れ雪 裕子 雪解水溢れ雨樋外れをり 実加 河津桜供養帰りに家族して みえこ 山笑ふあの人の家目指し行く 裕子 古民家を曲がつた先の母子草 実加
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月11日 萩花鳥会
春の陽の沈むを惜しむ軒の下 俊文 古雛美し老いは人の世苔の一つ 健雄 雛飾り還らぬ人を懐しむ 綾子 椿見て素敵ですねと友は言ふ 健児 細面どこか母似の古雛 美恵子
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令和7年3月14日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
いつよりか鳴らぬカリヨン街朧 美智子 音もなく雪の吸取る吾の時間 佐代子 蛇出づる根の国を見た面をして 都 引ききらぬ浅瀬で始む潮干狩 宇太郎 貼紙に差し上げますとさくら草 都 鶯や漢詩の先生の庭に 悦子 船音は蛍烏賊なる賑はひに すみ子 生きめやも水栽培のヒヤシンス 佐代子 涅槃西風煽り塒へ群鴉 宇太郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月16日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
雨含む三椏の花闌ける寺 亜栄子 諍ひをちと春の嵐の中へ 慶月 女坂血の色に染む落椿 三無 喬木に百囀りの古刹かな 幸風 観音の飲んでゐさうな春の水 三無 堂の灯の漏れくる扉寺彼岸 亜栄子 春雨や道祖神なほ睦まじく 慶月 佐保姫に向けて墓標や波の音 幸風 奥津城をそつとなでよと木の芽風 同 猫柳蒼き雨だれ含みたる 久 春雨や煤け火のなき自在鉤 久子 観音の嘆きの紅き落椿 慶月 無縁仏修羅のごとくや落椿 亜栄子
栗林圭魚選 特選句
春禽や幼子パ行の語を並べ 久 晩鐘の磧にとよむ雉のこゑ 幸風 快晴や北窓開く藍染館 経彦 曇天に沸き立つ色の花ミモザ 文英 SLに駆け込む児らや春の雷 経彦 天象儀出でて見上ぐる春の星 同 春の雨やさしく撫でて陽子墓碑 文英
飯川三無選 特選句
雨含む三椏の花闌ける寺 亜栄子 百条のメタセコイアや木の芽雨 久 肌を打つ重たき雨や茨の芽 亜栄子 曇天に沸き立つ色の花ミモザ 文英 春雨に電車やさしくカーブする 慶月 観音の嘆きの紅き落椿 同 山寺に涅槃の日の雨降りやまず 久子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月18日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
化粧して草餅食べて身繕ひ 世詩明 加賀様の世を垣間見る雛かな かづを 古雛と言へど凜しさありにけり 同 はい〳〵と小言聞く朝鳥雲に 清女 一瞬のきらめきつれて初蝶来 笑子 黒髪の女雛の裾へ灯り揺る 同 吊雛や鹿の子絞りの緋の小袖 希子 涅槃西風受けて文殊や靄の中 同 針供養姉ささやかな針収入 令子 土雛の眼差し今も穏かに 千加江 ランドセル背に跳ねてゐる雪つぶて 雪 浪の花見るに一人は淋しきと 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月21日 さきたま花鳥句会
雲梯に縋る縄目や春の雪 月惑 ふる里の農事ごよみや辛夷咲く 八草 春泥に惹かれ園児の列乱れ 裕章 雨だれの音の春めく奥の院 孝江 こじんまり昔農家の花杏 としゑ 点々と摘草はばむもぐら塚 康子 黙祷の奥に囀り蒼き空 恵美子 竹林の天使の梯子より初音 みのり 花巡り母の形見の指輪して 彩香 混み合へる甲斐の隠し湯山笑ふ 良江
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令和7年3月16日・21日 柏翠館・鯖江花鳥合同句会 坊城俊樹選 特選句
瓢の笛最も聞かせたき人に 雪 母偲ぶ一日を以て針供養 同 荒磯には荒磯の情浪の花 同 打てば鳴る如大寒の青き空 同 当たつても当らなくても雪礫 同 蟷螂の続々生まれ子ら津々 みす枝 能登の地に佐保姫早く出でませり 同 災難の能登を俯瞰し鳥帰る 同 軒下をあちらこちらと初燕 嘉和 比良八講けむり荒ぶる湖白し 同 起立礼みごとに揃ひ卒業す 同 ��らここを蹴り上げてみる空の青 真嘉栄 陽炎や遠く電車の過ぐる音 同 蒼天や正座を崩す春の山 同 学ぶ程学ぶこと増え大試験 世詩明 雛飾り大戸開けば犇めける 同 冬籠父の日記を盗み読む 同 小春日や老婆二人の長話 和子 中学生進路定めて卒業す 紀代美 ひとしきり春の雪舞ふ涅槃寺 ただし 春炬燵守り長生きを疎みをり 清女
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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kachoushi · 2 months ago
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各地句会報
花鳥誌 令和7年5月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和7年2月1日 色鳥句会
おのづから一幅の絵に冬木立 成子 すれ違ふ白秋の歌水の春 朝子 切り口は春へ向きたる粉砂糖 かおり 春隣夫あしらひに慣れもして 光子 春場所や塩撒く胸の真つ赤なり 睦子 ランドセルに入れては出して春を待つ 修二 豪快で情ある人の初便り 孝子 春の日を包みくるりと鉋屑 成子 個室へと移りし看取り寒に入る 朝子 背ナを向け手を振る別れ春の人 久美子 体温の抜けて重たき裘 かおり 雪降り込む家に育ちてつつましく 光子
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令和7年2月1日 零の会 坊城俊樹選 特選句
愛憎のかたちにねぢれゐて盆梅 和子 冬菫ボクシングジムある街に 美紀 春を呼ぶものにナショナルマーケット はるか うかれ猫仙台坂を駆け上る 六甲 十字架に最も遠き冬すみれ 和子 ポケットにテディベアちよこん春を待つ 美紀 春待つとカットモデルを募集中 はるか 少年の英語四温の池すべる 慶月 六階の麻布の蒲団干されをり 三郎 梅の香の白き流れとすれ違ふ 同 極楽を麻布で迎へ鳴雪忌 佑天
岡田順子選 特選句
十字架に最も遠き冬すみれ 和子 滿つること散りぬることもあたたかく 光子 三味線の糸道深しはん女の忌 佑天 水鏡のなかに春待つ木と空と 光子 ブランコの声讃美歌の声包む 俊樹 蝋梅の香を置きざりにこぼれゐて 季凜 野の起伏あたたかに飛び越ゆるなり 光子 ひかりとは蝋梅ふふみゆくことと 緋路
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月3日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
うす紅をちらり零して梅の花 笑子 風花の舞ひて揺蕩ふ思案橋 同 もてなしの干菓子の薄紙女正月 希子 白梅のふふめる蕾覚めやらず 同 水子観音野路に御立ちて鬼は外 数幸 青空を暫し塗り替へ春時雨 千加江 握手する手を手袋に温めて 雪 今はただ凍つる他なき蝶一つ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月8日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
風よ波尖るふるさと雪ごもり 百合子 頰なでる潮香近しき島の春 多美女 若布拾ふ旅の途中の相模湾 亜栄子 枡形は青春の地よ春間近 教子 鐘響く二月礼者の読経漏れ 亜栄子 観音の背ナ汚れなき白椿 三無 寒明けの陽射し従へ野を歩せり 和代 笹鳴きの途切れ途切れに囁き来 秋尚 潮の香の雫を砂へ若布干す 同 早春の軽き足音追ひ越され 亜栄子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月10日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
蕗の薹摘み来て地酒封を切る 三無 やはらかな色に膨らむ蕗の薹 秋尚 海���干し場幾重に並び磯の風 ます江 引き締まる水に色濃き海苔を摘む 聰 景一変黄沙を喰らふ春一番 同 船べりに海苔の色付け戻りけり 秋尚 往診の医者にふるまふ海苔むすび 美貴 隠沼の水面の騒ぐ春一番 秋尚 海苔粗朶を育てる人に朝日さす ます江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月10日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
節分の夜も護摩火は衰へず あけみ 滑稽な鬼のお面へ豆撒かれ 実加 自転車の小さく見えて浅き春 裕子 過疎町に子等の声あり草青む 紀子 春の風邪流行の服を選りてをり 裕子 雪原を駆けづる犬の尾の黒き あけみ 生きること教へてくれる葱坊主 令子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月11日 萩花鳥会(二月十一日)
迷ひつつ卵焼く子や春隣 吉之 小春日や豆の蔓伸び膝の上 俊文 豪雪の屋根は死の渕雪をんな 健雄 枯れて見ゆ老木なれど梅ひらく 恒雄 恙無い日々願ひ食む恵方巻 綾子 父は言ふ運動後には梅干しを 健児 一点前終へれば消ゆる春の雪 美恵子
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令和7年2月13日 うづら三日の月句会(二月十三日) 坊城俊樹選 特選句
春立ちて夫生き生きと畑に出る 喜代子 艶話榾燃え尽きて夜も更けて 都 如月の老舗のポスター江戸火消し 同 寒戻る木々の梢の震へたり 同 窓辺にて春待つ唄を繰り返し 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月14日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
万両の姿万両外連なく 宇太郎 記憶より小さな橋よ蕗の薹 都 ポストにも小さな庇雪解風 美智子 浅利汁一人なれども音立てて 悦子 上京や春セーターと乗る列車 美紀
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月16日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
小流れの淵に盛られし春の泥 久子 篁を音なく撫でる春の風 秋尚 暗渠より出づるまぶしさ春の川 千種 薄紅梅枝垂れて空を深くせり 三無 星あまた大地に散らし犬ふぐり 芙佐子 園児らを森に攫ひし蜆蝶 経彦 石仏の陰から影へ猫の恋 月惑 閼伽桶を飛び出し春の水となり 三無 下萌や蹴上げしボール子に逸れて 久子 陽の中の砦の武士の春愁ひ 軽象
栗林圭魚選 特選句
輪になつて体操の声草青む ます江 句碑の辺に師の気配満ち梅開く 三無 記念樹の梅香拡げて年尾句碑 亜栄子 春の川翡翠の色映したる 久 蒲公英の黄の輝きて母の塔 文英 土ほこと梅見の客を迎へ入れ 千種 園児らを森に攫ひし蜆蝶 経彦 励めよと句碑の真白きしだれ梅 千種 富嶽より枡形山へ雪解風 月惑 鳥寄せて何処か揺れをり藪椿 芙佐子 句碑裏の蕗の薹三つ初々し 文英 梅林の香りの仄と径険し 斉
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月19日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
数多なる柚子も生家も売られけり 世詩明 此の路地に名も無く老いて冬籠 雪 それなりに良き事あり��古暦 同 水仙やかつて柏翠町春草 同 猫の恋北斗七星輝けり かづを しろがねの波砕け散る冬怒濤 笑子 ほうほうと訪ひ来る黒衣寒修行 同 大地より膨らむ兆し蕗の薹 希子 天空の霞流れて城遥か 同 紅椿あの人の地に咲いたろか 令子 早春の風やふんはり髪を梳く 千加江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月21日 さきたま花鳥句会 紀元選 特選句
畑打や夕日に長き鍬の翳 八草 冴返る秒針のなき外時計 紀花 春泥を跨ぐに足らぬ我が歩幅 久絵 揉みほぐし叩きほぐして春の土 順子 馬の目が笑つてゐたり春の蝶 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年2月16日・21日 柏翠館・鯖江花鳥合同句会 坊城俊樹選 特選句
胸中に温石と言ふ石一つ 雪 力瘤これ見よがしの冬木立 同 父の膝覚えて居りしお年玉 同 雪に生れ雪に老い行くだけの事 同 己が色使ひ果して枯るる草 同 口髭に豆撒く父の男振り 同 不器用を父の所為にしちやんちやんこ 同 初雀話はづんでゐるらしき 同 浅き春乗せ九頭竜は流るのみ かづを 風と来て風花風と去りゆけり 同 神の森三日三晩の大焚火 洋子 土の面ひたすら見たく雪を掻く 同 日脚伸ぶ硯の海に気を満す 真喜栄 樹には樹の忍ぶ月日や春の雪 同 野仏のやはらぐ笑みや水温む 同 道の辺の一花一仏風花す ただし 雑巾の縫目千鳥に針供養 嘉和 雪解水堰音荒き橋の下 英美子 ちらちらと降りて重たき雪の嵩 みす枝 雪地獄なる山からも海からも 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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kachoushi · 1 year ago
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各地句会報
花鳥誌 令和6年2月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年11月1日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
星の出るいつも見る山鳥渡る 世詩明 人の世や女に生まれて木の葉髪 同 九頭竜の風のひらめき秋桜 ただし 太陽をのせて冬木の眠りけり 同 生死また十一月の風の音 同 朝湯して菊の香に上ぐ正信偈 清女 懸崖の赤き菊花の流れ落つ 誠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月2日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
秋空の深き水色限りなし 喜代子 故里は豊作とやら草紅葉 由季子 菊花展我等夫婦は無口なり 同 しぐれ来る老舗ののれん擦り切れて 都 狛犬の阿吽語らず冬に入る 同 謎々のすつきり解けた小春の日 同 杣山の織火となりぬ紅葉山 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月4日 零の会 坊城俊樹選 特選句
綿虫と彼女が指せばそれらしく 瑠璃 梵鐘のはらわたに闇暮の秋 緋路 逝く秋をくづれゝば積み古書店主 順子 綿虫や浄土の風が抜けるとき はるか 太き棘許してをりぬ秋薔薇 和子 弥陀仏の慈顔半眼草の花 昌文 綿虫のうすむらさきや九品仏 小鳥 参道で拾ふ木の実を投げ捨てる 久 綿虫は仏の日溜りにいつも 順子 香煙はとほく菩提樹の実は土に 小鳥
岡田順子選 特選句
腰かける丸太と秋を惜しみけり 光子 九品の印契結ぶや冬近し 眞理子 古に大根洗ひし九品仏 風頭 綿虫や浄土の風が抜けるとき はるか 奪衣婆の知る猿酒の在り処 光子 神無月ならば阿弥陀も金ぴかに 俊樹 蚤の市に売る秋風と鳥籠と 和子 下品仏とて金秋の色溢れ 俊樹 綿虫と彼女が指せばそれらしく 瑠璃 梵鐘のはらわたに闇暮の秋 緋路
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月4日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
ありきたりの秋思の���を畳みをり かおり 秋日入む落剝しるき四郎像 たかし 返り花ままよと棄つる文の束 美穂 凩や客のまばらな湖西線 久美子 凩のやうな漢とすれ違ふ 睦子 小鳥来る小さなことには目をつむり 光子 流れ星キトラの星は朽ちてゆき 修二 凩に雲や斜めにほどかれて かおり 人肌を知らぬ男のぬくめ酒 たかし 老人が老人負うて秋の暮 朝子 冬の日や吾が影長く汝に触れて 同 身に入むや妣の財布の一セント 久美子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月10日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
秋思消ゆ「亀山蠟燭」点せば 悦子 この町へ一途に滾り冬夕焼 都 新蕎麦を打つ店主にも代替はり 佐代子 添ふ風に方位はあらず狂ひ花 悦子 HCU記号音満つ夜の長し 宇太郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月11日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
トランペット響く多摩川冬に入る 美枝子 竹林の風音乾き神の留守 秋尚 公園の隣りに棲みて落葉掃く 亜栄子 句碑の辺の風弄ぶ式部の実 同 新のりの茶漬に香る酒の締め 同 歩を伸ばす小春日和や夫の癒え 百合子 朔風や見下ろす街の鈍色に 秋尚 ぽつぽつと咲き茶の花の垣低き 同 リハビリの靴新調し落葉ふむ 多美女 濡れそぼつ桜落葉の華やぎぬ 文英 露凝りて句碑に雫の朝かな 幸風 大寺の庭きりもなや木の葉散る 美枝子 山寺の風の落葉を坐して聞き 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月13日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
風除の日だまりちよっと立ち話 和魚 風除の分厚き樹林影高き 秋尚 揚げと煮し切り干やさし里の味 あき子 薄日さす暗闇坂に帰り花 史空 渦状の切干甘き桜島 貴薫 切干や日の甘さ溜め縮みたる 三無 風除けをせねばと今日も一日過ぎ 怜 切干や少し甘めに味継がれ 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月13日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
確かむる一点一画秋灯下 昭子 幽玄な美女の小面紅葉映ゆ 時江 釣り糸の浮きは沈みし日向ぼこ 三四郎 六地蔵一体づつにある秋思 英美子 赤い靴なかに団栗二つ三つ 三四郎 着飾りて姉妹三人千歳飴 ただし 正装で背中に眠る七五三 みす枝 雪吊の神の恐れぬ高さまで 世詩明 七五三五人姉妹の薄化粧 ただし トランペット音を休めば息白し 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月14日 萩花鳥会
夜鴨鳴く門川住居六十年 祐子 捨てられて案山子初めて天を知る 健雄 ゴルフ玉直ぐも曲るも秋日向 俊文 山茶花や現役もまた楽しかり ゆかり 舟一艘ただぼんやりと霧の中 恒雄 献茶式津和野城下や朝時雨 美惠子
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令和5年11月14日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
秋の暮��均で買ふ髪飾 令子 虫食ひの跡そのままに紅葉かな 紀子 背の丸き鏡の我やうそ寒し 同 小春日や杖つく母を見んとする 令子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月15日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
小春日や日々好日と思ひたり 世詩明 禅林を通り来る風秋深し 啓子 何事も無き一日や神の旅 同 炉開きの一花一輪定位置に 泰俊 一本の池に煌めく櫨紅葉 同 三猿を掲ぐ日光冬日濃し 同 立冬こそ自己を晒せと橋の上 数幸 小六月笏谷石は饒舌に 同 如何にせん蟷螂は枯れ僧恙 雪 猫じやらしもて驚かしてみたき人 同 一匹の枯蟷螂に法の庭 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月17日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
小鳥来る赤き実に又白き実に 雪 幽霊の出るトンネルを抜け花野 同 おばあちやん子で育ちしと生身魂 同 見に入みぬ八卦見くれし一瞥に やす香 時雨るるやのつぺらぼうの石仏 同 近松忌逝きし句友の幾人ぞ 同 季は移り美しき言葉白秋忌 一涓 菅公の一首の如く山紅葉 同 落葉踏み歩幅小さくなる二人 同 冬ざれや真紅の句帳持ちて立つ 昭子 今日の朝寒む寒む小僧来たりけり やすえ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月17日 さきたま花鳥句会
からつぽの空に熟柿は朱を灯し 月惑 白壁の色変へてゆく初時雨 八草 六切の白菜余すひとり鍋 裕章 一切の雲を掃き出し冬立ちぬ 紀花 小春日や草履寄せある躙口 孝江 柿を剥く母似の叔母のうしろ影 ふゆ子 いわし雲よせ来る波の鹿島�� ふじ穂 鵙たける庵に細き煙たつ 康子 雲切れて稜線きりり冬日和 恵美子 水鳥の羽音に湖の明けにけり 良江
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令和5年11月18日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
紫のさしも衰へ実紫 雪 蟷螂の静かに枯るる法の庭 同 二人居て又一人言時雨の夜 清女 母と子の唄の聞こゆる柚子湯かな みす枝 還りゆく地をねんごろに冬耕す 真栄 帰省子を見送る兄は窓叩く 世詩明 人に無く芒にありし帰り花 同 香水の口よりとどめさす言葉 かづを 時雨をり故山の景を暗めつつ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月19日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
浮寝鳥日陰に夢の深からむ 久子 呪術にも使へさうなる冬木かな 久 無敵なる尻振り進む鴨の陣 軽象 冬日和弥生も今も児ら走る 同 冬蝶の古代植物へと消えぬ 慶月 谿の日を薄く集める花八手 斉 冬天へ白樫動かざる晴れ間 慶月 青空へ枝先細き大枯木 秋尚 旋回す鳶の瞳に冬の海 久 冬の蜂おのが影這ふばかりなり 千種 水かげろうふ木陰に遊ぶ小春かな 斉
栗林圭魚選 特選句
竹藪の一画伐られ烏瓜 千種 遠富士をくっきり嵌めて冬の晴 秋尚 白樫の落葉急��せる風のこゑ 幸風 切り株に鋸の香遺る冬日和 久子 四阿にそそぐ光りや枯れ芙蓉 幸風 白樫の木洩れ日吸ひて石蕗咲けり 三無 小春の日熊鈴つけしリュック負ひ 同 青空へ枝先細き大枯木 秋尚 寒禽の忙しく鳴ける雑木林 貴薫 草の葉を休み休みの冬の蝶 秋尚 逞しく子等のサッカー石蕗咲けり 亜栄子 甘やかな香放ち���紅葉散る 貴薫 あづまやの天井揺らぐ池の秋 れい
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月26日 月例会 坊城俊樹選 特選句
薄き日を余さず纏ふ花八手 昌文 耳たぶに冬の真珠のあたたかく 和子 黒松の肌の亀甲冬ざるる 要 雪吊をおくるみとして老松は 緋路 冬空を縫ふジェットコースターの弧 月惑 ペチカ燃ゆフランス人形ほほそめる て津子 上手に嘘つかれてしまふ裘 政江 嘘つつむやうに小さく手に咳を 和子 手袋に言葉のかたち作りけり 順子
岡田順子選 特選句
池一枚裁ち切つてゆく鴨の水尾 緋路 黒松の肌の亀甲冬ざるる 要 自惚の冬の紅葉は水境へ 光子 玄冬の塒を巻きぬジェットコースター 同 光圀の松は過保護に菰巻きぬ 同 ペチカ燃ゆフランス人形ほほそめる て津子 雪吊を一の松より仕上げをり 佑天 不老水涸れをり茶屋に売る団子 要 遊園地もの食ふ匂ひある時雨 俊樹
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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kachoushi · 1 year ago
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各地句会報
花鳥誌 令和6年1月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年10月2日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
日本海見ゆる風車や小鳥来る 泰俊 駅近の闇市跡に後の月 同 山門を標とするや小鳥来る 同 師の墓の燭新涼のほむらかな 匠 渡り鳥バス停一人椅子一つ 啓子 紫に沈む山河を鳥渡る 希 ひらひらと行方知らずや秋の蝶 笑 なりはひの大方終了九月尽 数幸
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月4日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
朱の色に蝋涙たれし日蓮忌 ただし コスモスのたなびく道を稚児の列 洋子 抱かれて稚児は仏よ日蓮忌 同 めらめらと朱蝋のうねり日蓮忌 同 ピストルの音轟ける運動会 誠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月5日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
友の墓秋空の下悠然と 喜代子 棟上げの終はりし実家や竹の春 由季子 菊人形幼き記憶そのまゝに さとみ 長き夜や楽し思ひ出たぐり寄せ 都 強持てに進められたる温め酒 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月6日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
蜜と恋どちらも欲しく秋の蝶 都 八幡の荘園かけて飛ぶばつた 美智子 彼岸花軍馬の像を昂らせ 都 露の手に一度限りの炙り文 宇太郎 杖の歩や振返るたび秋暮るる 悦子 露けしや既視感覚の病棟に 宇太郎 コスモスの乱れ見てゐて老いにけり 悦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月7日 零の会 坊城俊樹選 特選句
天高く誇り高きは講談社 きみよ 華やかに滅びゆく香や秋の薔薇 和子 秋冷を暗くともして華燭の火 千種 白帝は白い梟従へて きみよ 薔薇は秋その夜会より咲き続け 順子 肘掛に秋思の腕を置いたまま 光子 爽やかや罅ひとつなきデスマスク 緋路 一族の椅子の手擦れや秋の声 昌文 邸宅の秋に遺りし旅鞄 いづみ ���館に和簞笥置いて秋灯 荘吉
岡田順子選 特選句
栗の毬むけば貧しき実の二つ 瑠璃 流星を見ること永きデスマスク いづみ 正五位のまあるき墓を赤蜻蛉 小鳥 秋天の青は濃度を増すばかり 緋路 月光の鏡の中で逢ふ二人 きみよ 聖堂は銀に吹かるる鬼芒 いづみ 実石榴をロイヤルホストで渡されて 小鳥 石榴熟る女人の拳より重く 光子 秋の灯を落して永久のシャンデリア 俊樹 毬栗を踏み宰相の家を辞す 緋路
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月9日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
コスモスの島にひとつの小学校 修二 檸檬の香そは忘れざる恋なりき 美穂 嫁がせる朝檸檬をしぼりきる 朝子 母乳垂る月の雫のさながらに 睦子 タンゴ果て女は月へ反りかへる 同 護送車の窓には見えぬ草の花 成子 やはらかく眉をうごかし秋日傘 かおり 天と地を一瞬つなぐ桐一葉 朝子 流れ星太郎の家を通り過ぎ 修二 正面に馬の顔ある吾亦紅 朝子 傘たゝみ入る雨月のレイトショー かおり 幾千の白馬かけぬく芒原 成子 古備前に束ねてさびし白桔梗 睦子 糸芒戻れぬ日々を追ふやうに 愛 黒葡萄いつもの場所の占ひ師 修二
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月9日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
新生姜甘酢に浸り透き通り のりこ 風を掃き風に戻されむら芒 秋尚 足音にはたと止まりし虫の声 怜 朝露に草ひやひやと眩しかり 三無 出来たての色の重たき今日の月 秋尚 徒競走つい大声で叫びたり ことこ 秋落暉炎のごときビルの窓 あき子 秋祭り見知らぬ顔の担ぎ手に エイ子 秋霜や広がる花を沈ませて のりこ 面取ればあどけなき子や新松子 あき子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月9日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
万葉の歌碑一面に曼珠沙華 信子 金木犀優しき人の香りかな みす枝 昇る陽も沈む陽も秋深めゆく 三四郎 廃線の跡をうづめて草紅葉 信子 駅に待つ猫と帰りぬ夜寒かな 昭子 天の川下界に恋も諍ひも 同 ひらひらとバイクで走る盆の僧 同 蟋蟀の鳴く古里や母と歩す 時江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月10日 萩花鳥会
夜鴨なく門川暗くひろごれり 祐子 サムライ衆ナントで決戦秋の陣 健雄 これ新酒五臓六腑のうめき声 俊文 露の身や感謝の祈り十字切る ゆかり 虫食ひのあとも絵になる柿落葉 恒雄 すり傷も勲章かけつこ天高し 美惠子
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令和5年10月14日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
魁の櫨紅葉の朱句碑の径 三無 花よりも人恋しくて秋の蝶 幸子 咲き初めし萩の風呼ぶ年尾句碑 秋尚 女人寺ひそと式部の実を寄せて 幸子 豊年の恵みを先づは仏壇へ 和代 篁を透かし二三個烏瓜 三無 日の色の波にうねりて豊の秋 秋尚 曼珠沙華に導かれゆく���狭し 白陶 二人居の暮しに適ふ豊の秋 亜栄子 林檎好き父と齧つたあの日から 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月14日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
ガシャガシャと胡桃を洗ふ音なりし 紀子 秋日和小児科跡は交番に 光子 歩かねば年寄鵙に叱咤される 令子 稲の秋チンチン電車の風抜けて 実加 不作年新米届き合掌す みえこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月15日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
街騒も葉擦れも消して秋の雨 三無 大寺の風を擽る榠櫨の実 幸風 尾を引きて鵯のひと声雨の句碑 秋尚 水煙に紅葉かつ散る結跏趺坐 幸風 菩提樹を雨の宿りの秋の蝶 千種
栗林圭魚選 特選句
観音の小さき御足やそぞろ寒 三無 絵手紙の文字の窮屈葉鶏頭 要 駐在も綱引き離島の運動会 経彦 小鳥飛び雨止みさうにやみさうに 千種 秋霖や庫裏よりもるる刀自の声 眞理子 句碑の辺に秋のささやき交はす声 白陶 秋黴雨だあれもゐない母の塔 亜栄子 梵鐘の撞木の先や秋湿り 眞理子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
考へる事に始まる端居かな 雪 おは黒を拝み蜻蛉と僧の云ふ 同 道草の一人は淋しゑのこ草 同 朝霧の緞帳上がる音も無く みす枝 秋灯火優しき母の形見分け 同 役目終へ畦に横たふ案山子かな 英美子 孫悟空のつてゐるやも秋の雲 清女 穴感ひ浮世うらうら楽しくて やす香 栗食めば妹のこと母のこと 同 天高し飛行機雲の先は西 嘉和 屋根人を照らし名月たる威厳 和子 秋深し生命線の嘘まこと 清女 蜩に傾きゆける落暉かな かづを
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月18日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
枯れて行く匂ひの中の秋ざくら 世詩明 一声は雲の中より渡り鳥 同 見えしもの見えて来しもの渡り鳥 同 菊まとひ紫式部像凜と 清女 越の空ゆつくり渡れ渡り鳥 和子 秋扇に残る暑さをもて余す 雪 山川に秋立つ声を聞かんとす 同 鳥渡る古墳の主は謎のまま 同 鳥渡る古墳は謎を秘めしまま 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月20日 さきたま花鳥句会
SLの汽笛を乗せて刈田風 月惑 寝ころびて稜線を追ふ草紅葉 八草 残る海猫立待岬の岩となる 裕章 大夕焼分け行く飛機の雲一本 紀花 曼珠沙華二体同座の石仏 孝江 白萩の花一色を散り重ね ふゆ子 秋の野や課外授業の声高に ふじ穂 秋寒し俄か仕立てのカーペット 恵美子 秋空や山肌動く雲の影 彩香 爽籟や赤子よく寝る昼下り 良江
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令和5年10月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
生身魂梃子でも動かざる構へ 雪 古団扇此処に置かねばならぬ訳 同 飾られて菊人形の顔となる 同 亭主運なき一枚の秋簾 一涓 菊の香に埋り眠る子守唄 同 叱りてもすり寄る猫や賢治の忌 同 友の家訪へば更地やそぞろ寒 みす枝 叱られて一人で帰るゑのこ草 同 朝霧が山から里��降りて来し やすえ 隣家より爺の一喝大くさめ 洋子 菊師にも判官贔屓あるらしき 昭子 人の秋煙となりて灰となる 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年10月27日 月例会 坊城俊樹選 特選句
靖国の秋蝶は黄を失ひて 愛 柿に黄をあづけ夕日の沈み行く 緋路 神池の何処かとぼけた鯉小春 雅春 細りゆく軍犬像や暮の秋 愛 うらがへり敗荷の海のなほ明し 千種 英霊の空はまだ薄紅葉かな 愛
岡田順子選 特選句
秋蝶に呼ばれ慰霊の泉かな 愛 鉢物はしづかに萎れ秋の路地 俊樹 年尾忌も近し小樽の坂の上 佑天 道幅は両手くらゐの秋の路地 俊樹 秋天へ引つ張られたる背骨かな 緋路 老幹の凸凹としてそぞろ寒 政江 板羽目の松鎮まれる秋の宮 軽象 御神樹の一枝揺らさず鳥渡る かおり
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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kachoushi · 2 years ago
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各地句会報
花鳥誌 令和5年7月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年4月1日 零の会 坊城俊樹選 特選句
一葉の家へ霞の階を きみよ 春昼や質屋の硝子なないろに 小鳥 伊勢屋質店今生の花とほく 光子 菊坂に豆煎る音や花の昼 和子 一葉の質屋は鎖して春の闇 はるか 本郷の亀を鳴かせて露地住ひ 順子 おかめ蕎麦小声で頼み万愚節 いづみ 文士らの騒めきとすれ違ふ春 三郎 一葉を待つ一滴の春の水 光子 物干に如雨露干したり路地の春 和子
岡田順子選 特選句
一葉の家へ霞の階を きみよ 金魚坂狭め遅日の笊洗ふ 千種 菊坂の底ひの春の空小さし 光子 坂の名のみな懐かしき日永かな 要 赤貧の欠片も少し春の土 いづみ 本郷の間借りの部屋の猫の妻 同 質店の中より子規の春の咳 俊樹 止宿者の碑のみ残すや蝶の舞 眞理子 本郷の北窓開く古本屋 きみよ かぎろひの街をはみ出す観覧車 いづみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月1日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
花冷の背後より声掛けらるる 美穂 幾年も陽炎追ひて遊びけり 散太郎 濃きほどに影のやうなる菫かな 睦子 化粧水ほどの湿りや春の土 成子 画布を抱き春の時雨を戻りけり かおり 昼月は遠く遠くへ花満開 愛 シャボン玉の吹雪や少女手妻めく 勝利 麗かや砂金三つ四つ指の先 睦子 成り行きの人生かとも半仙戯 朝子 鞦韆の羽ばたかずまた留まらず 睦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月3日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
花吹雪卍色と云ふが今 雪 花冷に後姿の観世音 同 そぼ降りてひと夜の契り花の雨 笑 観世音御手にこぼるる花の寺 同 お精舎やこの世忘れて糸桜 啓子 逝きし友逢へないままに朦月 同 裏木戸を開ければそこに花吹雪 泰俊 御仏と咲き満つ花の句座に入る 希 愛子忌や墓にたむけの落椿 匠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月5日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
縋りつく女心や桃の花 世詩明 肌寒く母の手紙はひらがなぞ 同 啓蟄や鍬突き立てし小百姓 同 日野河原菜花の香る祭りかな ただし 菜の花や石田渡しの蘇る 同 雛祭ちらしずしそへ甘納豆 輝一 ぽつたりと落ちて音なき大椿 清女 花吹雪路面電車の停車駅 同 大拙館椿一輪のみの床 洋子 花の山遠く越��富士を抱く 同 吉野山日は傾きて夕桜 誠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月6日 うづら三日の月 坊城俊樹選 特選句
花の下天をを仰げば独り占め さとみ 春陰やおのが心のうつろひも 都 春耕や眠りたる物掘り起す 同 左手の指輪のくびれ花の冷え 同 園児等のお唄そろはず山笑ふ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月8日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
膝をまだ崩せずにをり桜餅 秋尚 登り来て本丸跡や花は葉に 百合子 葉脈のかをり弾けて桜餅 同 桜餅祖母の遺せし会津塗り ゆう子 売り声も色つややかに桜餅 幸子 木洩日の濡れてゐるやう柿若葉 三無 春愁や集ふふる里母忌日 多美女 伍しゐても古草の彩くすみをり 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月10日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
心経をとなへ毛虫に火をはなつ 昭子 マンホール蓋の窪みに花の屑 昭子 栄螺売潮の香りを置いてゆく 三四郎 金の蕊光る夕月てふ椿 時江 禅寺の読経流るる花筏 ただし 若者の髭に勢や麦青む みす枝 龍が吐く長命水の春を汲む 三四郎 花吹雪受けんと子等の手足舞ふ みす枝 土器の瓢の町や陽炎へり ただし 海遠く茜空背に鳥帰る 三四郎 紅梅のことほぐやうに枝広げ 時江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月10日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
片棒を担いでをりぬ四月馬鹿 三無 薬草園��ふ門古りて松の花 和魚 だんだんと声ふくらみて四月馬鹿 美貴 四月馬鹿言つて言はれて生きてをり 和魚 松の花表札今も夫の居て 三無 白状は昼過ぎからや四月馬鹿 のりこ 一の鳥居までの大路や松の花 秋尚 松の花昏き玄関応へなく 美貴
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月11日 萩花鳥会
京よりの生麸草餅薄茶席 祐 不帰のヘリ御霊をおくる花筏 健雄 ただ一本ミドリヨシノの世界あり 恒雄 堂々と桜見下ろす二層門 俊文 猫に愚痴聞かせて淋し春の宵 ゆかり 杵つきの草餅が好きばあちやん子 美惠子
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令和5年4月13日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
便り待つポストをリラの房覆ふ 栄子 畑打つや鍬を担ひし西明り 宇太郎 軒下の汚れし朝や燕来る 都 桜蕊降る藩廟の染まるまで 美智子 桜蕊降るももいろの雨が降る 悦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
何氣なく来て何気なく咲く花に 雪 神御座す杜の新樹に聞く鳥語 かづを 老の踏むひとりの音や落椿 ただし 野辺送り喪服の背に花の蕊 嘉和 夜ざくらのぼんぼり明り水あかり 賢一 喝采の微風を受けて花は葉に 真喜栄 生きる恋はぜる恋ととや猫の妻 世詩明 葉ざくらに隠されてゐる忠魂碑 同 眩しさを残して花は葉となれり かづを
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月16日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
極大と極小としやぼん玉宙へ 要 穴出でし蟻の列追ふ園児どち 経彦 頰􄼺をつく石仏の春愁 貴薫 酸模を噛む少年の今は無く 要 稲毛山廣福密寺百千鳥 同 瑠璃色を散��し胡蝶の羽ばたきぬ 久 春陰の如意輪仏へ女坂 慶月 棕櫚の花年尾の句碑に問ひかくる 幸風 朴の花仏顔して天にあり 三無
栗林圭魚選 特選句
蝌蚪の群突くひとさし指の影 千種 峠道囀り交はす声響き ます江 美術館三角屋根に藤懸かる 久子 こんもりと句碑へ映るも若葉かな 慶月 微かなる香りや雨後の八重桜 貴薫 朝の日に濃淡重ね若楓 秋尚 落ちてなほ紅色失せぬ藪椿 経彦
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月19日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
通勤のバスから見ゆる日々の花 あけみ 花馬酔木白き房揺れ兄の家 令子 亡き鳥をチューリップ添へ送りけり 光子 偲ぶ日の重く出たるや春の月 令子 あの頃の記憶辿って桜散る 美加
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月19日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
矢車の音きしみ合ふ幟竿 世詩明 風よりも大きく揺れて糸柳 啓子 花万朶この世忘れて花の下 同 あたたかやお守りはねるランドセル 同 甘き香の女ごころや桜餅 千加江 春場所や贔屓の力士背に砂 令子 落椿掃きゐてふつと愛子忌と 清女 春の虹待ちて河口に愛子の忌 笑子 散りそめし花の余韻も愛子の忌 同 城の濠指呼の先には花の渦 和子 花筏哲学の道清めたる 隆司 故郷の深き眠りや花の雨 泰俊 山道の明るさを増す百千鳥 同 ほころびて色つぽくなり紫木蓮 数幸 花桃に出迎へられて左内像 同 瞬きは空の青さよ犬ふぐり 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
忠直郷ゆかりの鬱金桜とぞ 雪 椿てふ呪縛の解けて落つ椿 同 春愁や言葉一つを呑み込んで 同 御襁褓取り駈け出す嬰や麦は穂に みす枝 鶯の機嫌良き日や鍬高く 同 ただならぬ人の世よそに蝌蚪の国 一涓 あの角を曲つてみたき春の宵 日登美 春の果次も女に生れたし 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月21日 さきたま花鳥句会(四月二十一日)
清冽な水は山葵を磨き上げ 月惑 連写して柳絮の舞ふを収めけり 八草 天守閉ぢ黙す鯱鉾朧月 裕章 行き先は行きつく所柳絮飛ぶ 紀花 南無大師遍照金剛春の風 孝江 揚浜に春の虹立つ製塩所 とし江 柳絮飛ぶ二匹の亀の不動なり ふじ穂 筍堀り父編むいじこ背負ひ来て 康子 花吹雪ひと固まりの風の道 恵美子 満天星の花揺らしつつ風過ぎる 彩香 夢叶へ入学の地へ夜行バス 静子 啓蟄やピンポンパンの歌聞こゆ 良江
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令和5年4月23日 月例会 坊城俊樹選 特選句
真榊はあをばの中に立つてをり いづみ 水の上の空のその上鳥の恋 順子 掌の中の春の蚊深き息を吐き 炳子 耳朶を掠めて蝶のうすみどり 緋路 仕上りの緻密なる蒲公英の絮 秋尚 手放して風船空へ落ちてゆく 緋路 ���の闇より声掛けて写真館 順子 零戦機日永の昼の星狙ふ ゆう子
岡田順子選 特選句
玉砂利の音来て黒揚羽乱舞 和子 耳朶を掠めて蝶のうすみどり 緋路 仕上りの緻密なる蒲公英の絮 秋尚 風光る誰にも座られぬベンチ 緋路 緋鯉とて水陽炎の中に棲み 俊樹 手放して風船空へ落ちてゆく 緋路 蜂唸る神の園生に丸き井戸 炳子 佐保姫は夜に舞ひしか能舞台 俊樹
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年4月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
つかまへし子亀に問へり亀鳴くか 美穂 亀鳴くや拷問石にある哀史 ちぐさ 亀鳴ける賓頭盧尊者撫でをれば 美穂 板の戸に志功の天女花朧 喜和 連子窓に卯の花腐し閉ぢ込めて かおり 大人へのふらここ一つ山の上 光子 ふらここや無心はたまた思ひつめ 同 ふらここや関門海峡見下ろして 同 さくら貝ひとつ拾ひて漕ぎ出しぬ かおり 午後一時直射にぬめる蜥蜴の背 勝利 花冷の全身かたき乳鋲かな 睦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月4日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
落城の如く散りたる落椿 世詩明 三人の卒業生以て閉校す 同 双葉より学びし学舎卒業す 同 氏神の木椅子はぬくし梅の花 ただし 鳥帰る戦士の墓は北向きに 同 草引く手こんなですよと節くれて 清女 雛あられ生きとし生くる色やとも 洋子 官女雛一人は薄く口開けて やす香 露天湯肩へ風花ちらちらと 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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0shoyamane0 · 8 years ago
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枡田幾二「ものつくり」
 山根正という男をご存知でしょうか。おそらく、多くの人は、テレビでよくみる少し頭の弱い人、あるいは、世紀末にカップラーメンを啜る音を録音する人、というようなイメージをもたれているものだと思います。けれどそれは、山根が持つ膨大な特徴のうち、あまりにも限られた一部であるのです。  この文章は、山根についてより多くの《間違いがなく本当のことでそれを知れば全体を知るに限りなく等しいこと》を皆さんに知っていただくために書いています。そして、山根を知ることで、これを読むあなた自身についての理解を深めることも、目指しています。どうか、これを読む時間と、これから得られうる理解が、あなたにより多くの恵みとなることを心より望みます  さて、はじめにブルジョワジーがプロレタリアートと接吻してしまった話からはじめましょう。それは階級の越境と言われるもので、世間的にいえば、もっともあってはならないことのひとつです。けれどなぜ、ブルジョワジーはプロレタリアートと接吻をしてしまったのでしょうか。それはとても単純な話なのです。  かつて色の白い人は色の黒い人を殺しました。けれど今は、色の浅黒い人が色の白い人をよく殺します。これは現在にいたるまでに過去が存在することによっておこります。そしてそうした一切のできごとは、ひどい下水道のように淀んでいます。私はそのような汚れた水を透明のグラスにいれました。そのグラスの中に入ったものを、私が飲んだかどうかは、その後私がトイレットから出られなくなったという事実が答えになります。(ヒント:ばい菌は私のお腹を下すのに十分)  山根、それは多面体の原石です。一見すると完全な球体をしているように見えますが、無限に拡大を繰り返すと、その処理に追いつかず、ぼこぼことしたローポリゴンのようになります。常に磨き続けなければならないのです。  ところで、それは他の様々なことについても同様にいうことができま��。無限、というものはまるでロマンのかたまりです。山根は特に、これまでの作品の中で、一貫して無限を追求している、数少ない作家です。また日曜日にはDIYで鳥の巣箱を作る器用な凡夫です。  山根はよく《意味のない文章》を書きます。それはもちろん意味を持ちます。けれど山根が表現したいのは、意味のないところにも意味が宿り得る、というありふれたことではなく、「ただ文字があり、そしてそれは読むことが出来る」という偶然に魅了された、山根の実体験そのものなのです。  ときに、山根は小説を書きます。そこには主人公らしき人がいて、主人公らしき人の架空が描かれます。ここで重要なのは主人公らしき人物自体も架空であることです。けれどそれはとても危険で不安定なものであることに注意しなければなりません。例えば今これを書いている私(枡田幾二)が本当は山根であるかもしれないからです。そしてそれは、こうして文字でしか表現できない形式の上では、反証することができません。  山根はよく、駅前の大勢の前で、三メートルほどにつみあげたチーズ(プロセスチーズ)の上にあぐらをかき、大声で「カラスが鳴いたら帰ろうか」とつぶやきます。これに驚くのは観光���くらいのもので、地元の人達はもはや、それをまるで存在しないかのように通り過ぎる力を備えています。  実は私も、高校生のとき、そうした、まるで正気ではない山根の言動を意識的に無視している一人でした。けれど、卒業式の翌日、よく晴れた日の夕方にその姿をみたとき、泣いてしまったのです。そうして、積まれたチーズの下から数えて四番目のチーズを勢い良く蹴り飛ばしました。私のイメージでは、だるま落としのように、一番上のだるま(山根正)はそのままの体勢を崩すことなく高さが減るものだと思っていました。けれど実際には、蹴り飛ばしたはずのチーズ部分は、ただ削れただけで、チーズの塔はやがて傾き、だるまは地面の上に叩きつけられてしまったのです。落下の衝撃でおでこを切ったのでしょうか。山根は顔を血で染めていました。私は申し訳なく思い、心からあやまりました。 「本当に悪いことをしてしまいました、医療費は払います」 「良いのですよ。あなたは正しいことをしました。どうです、うちで働いてみませんか」 その日から私は山根正研究会の一人となりました。ここまでお読みになった方はお気づきでしょう。そうなのです。山根は鳥の巣箱をつくるのが上手なのです。(初出:『平成工芸』三二三号)
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kachoushi · 3 years ago
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各地句会報
花鳥誌 令和4年2月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和3年11月4日 うづら三日の月 坊城俊樹選 特選句
小六月ぼちぼち仕舞ふ鍬と鎌 由季子 木枯や五分刈り頭分け目つけ さとみ 気にかゝる今日の運勢冬に入る 都 短冊の文字のくづしや一葉の忌 同 兄逝きて里は遠きに冬ざるる 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月6日 零の会 坊城俊樹 選特選句
江戸よりのお香に塗れ菊仏 順子 古井戸を漕ぎて船屋の冬支度 はるか 舟魂の神は留守なる佃島 いづみ 鉄を裁つ音が遠くや小六月 光子 参道は潮へつづき神の旅 同 馬鹿高きビルの月島秋日和 梓渕 菊日和ひなたのまんなかに赤子 光子 秋寂の魑魅魍魎のもんじや焼 炳子 汐風にすだれ名残の佃煮屋 はるか 冬蝶の羽根重たげに船溜り 美智子
岡田順子選 特選句
教会に貼る福音や野ばらの実 和子 離れ里紅葉且つ散り元は海 いづみ 聖ルカの曳く影長し冬近し 眞理子 もんじや屋の電球秋のエレキテル 俊樹 鉄を裁つ音が遠くや小六月 光子 参道は潮へつづき神の旅 同 聖ルカへひと声高く海猫帰る 三郎 江戸風味買ひに佃の冬浅し いづみ 佃煮を売りて一献今年酒 三郎 元漁師ばかりがゐたり報恩講 いづみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月8日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
恋しても愛してならぬ木の葉髪 世詩明 神苑の葉擦れの音や神の旅 みす枝 吹かれても土を離れぬ秋の蝶 信子 幾度も糸先舐めて一葉忌 上嶋昭子 見えねども秋を惜しみてゐる鳥語 信子 おそろしき閉館あとの菊人形 上嶋昭子 褒貶は湯気の彼方におでん酒 同 秋天にハングライダーゆつたりと 錦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月8日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
浅漬の出るおやつ時祖母の家 美貴 流れゆく綿虫瑠璃を極だたせ 三無 日輪に溶けて綿虫見失ふ 同 そば処まづは浅漬け山盛りに 迪子 浅漬の昆布のぬめりも一菜に 貴薫 大綿の行先未だ定まらず 秋尚 冬あたたかへら鮒釣りの竿の黙 三無 重力を無くし大綿さ迷ひぬ 秋尚 今もなほ冬温かき笠智衆 有有 冬あたたかベンチに鳩の忘れ羽根三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月11日 花鳥さゞれ会 坊城俊樹選 特選句
窓を打つ音傾ける古簾 雪 菩提樹は枯れ秋潮は音も無く 同 叡山の虚子碑しぐれて古り給ふ 匠 俊樹選なしと来る文そぞろ寒 清女 新米と仏に告げて供へけり 和子 手紙には里の落葉も入れもして 雪子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月12日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
峠路は叩く雨降る神の留守 あけみ か細くも白さ汚さず菊残る 紀子 白日の耳目を引いて冬の虫 登美子 まだ若き葉もありさうな柿紅葉 紀子 山間の忠霊場に木の実降る 同 干柿を吊るして揺れる風を見る 光子
(順不同特選句のみ掲載) ……………………………………………………………… 令和3年11月12日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
来ては去る鳥語の中に笹鳴も 和子 学園祭ネイルの指で大根売る 都 松茸や鉄灸の香に偲ぶ郷 宇太郎 山粧ふ電動椅子の行く田舎 同 渡し場の冬の小石に下駄乾して 悦子 鐘楼に釣鐘は無し帰り花 益恵 橡の実干す山家の縁を鉄に 美智子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月12日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
今朝の富士凜とそびえて冬に入る 和代 陽子墓碑ぬくき冬日を肩に乗せ 三無 凩の夜は読みきかすごんぎつね ゆう子 庭を掃く音の乾きや冬に入る 三無 凩や磨き上げたる鍋ふたつ ゆう子 木洩れ日の落葉の音を踏み登る 秋尚 一湾に凩の波せめぎ合ふ 美枝子 凩やくつきり浮かぶ富士の峰 白陶 茶の花や暗き葉影にぽつんと黄 三無 多摩川も富士も一望冬に入る 教子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月13日 札幌花鳥会 坊城俊樹選 特選句
秋天に知床岬盛り上がる 独�� 時雨るゝやかの花街は川向う 晶子 煙突の遺る銭湯冬の月 同 凩の夜の決断のプロポーズ 岬月 蝦夷富士の裾を踏みつけ大根引く 雅春 蝦夷富士のひつくり返る大根引 同 風花や小樽運河に舟一艘 同 (順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月16日 萩花鳥句会
茶の花やコロナの谷間吾娘来たる 祐子 畑で買ふ丹後枝豆宅急便 美恵子 初霜や名も無き草の薄化粧 吉之 庵主逝く嵯峨野路泣くや京しぐれ 健雄 茶の花や母の法要一人して 陽子 冬立つや里の浜辺は波静か ゆかり 野良猫も日向につどひ冬ぬくし 克弘
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令和3年11月16日 伊藤柏翆俳句記念館 坊城俊樹選 特選句
九頭竜の黙が募らせゐる寒さ かづを 師を偲ぶ三国時雨の中にかな 同 ひとつ付き二つ付いては秋灯る 富子 大根の畝高々と鍬を打つ 真喜栄 越前の七浦繋ぐ野水仙 みす枝 旧仮名の句集読みたる夜長かな 世詩明 高虚子を継ぐ中子忌を修しけり 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月17日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
凩の風の縺れは雨が解く 世詩明 面影はしぐれの中に去来せる 和子 木枯しに病棟の樹の揺れ止まず 昭子 木枯しに独りの髪をかき上げつ 同 夫のこと母のこととも時雨るる夜 同 黒猫も散歩してゐし小六月 啓子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月21日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
刀傷めける一すぢ蔦紅葉 千種 水音と鳥語に紅葉且つ散りぬ 三無 冬鳥の礫の黒く梢渡る 斉 大玻璃戸腕組む漢冬に入る 亜栄子 移築校舎に金の標章鳥渡る 炳子 盆栽の松へと大いなる落葉 千種 火炎立て三和土を焦がす榾火かな幸風 どの道も櫟落葉やこの径も 亜栄子 行秋や薬舗の壁に由美かおる 月惑 縄文は地下の賑はひ落葉踏む 菟生 鬼ごつこ落葉舞ひ上げ走る鬼 三無
栗林圭魚選 特選句
お醤油の焼ける匂ひのして小春 久 盆栽の松へと大いなる落葉 千種 万葉の歌碑に散りつぐ紅葉かな 芙佐子 菅公の梅に冬芽の尖り立つ 同 防人を恋ふ妻の歌碑積む落葉 眞理子 静寂なるハケの小川の冬桜 文英 梁は漆黒の蔵神の留守 亜栄子 鯉跳ねて十一月の水歪む 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月22日 鯖江花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
角取れし男の如く古団扇 雪 虚子の野菊左千夫の野菊いづれとも 同 落葉踏み思索の道となりにけり 上嶋昭子 七五三まうすまうすと祝詞かな 同 今日ばかり御座す神の子七五三 一涓 晩秋や朽ちて横たふ榧巨木 紀代美 冬空に硝子をはめる指物師 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年11月25日 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
落葉して見知らぬ空のあるばかり 美穂 天空に続く棚田や神渡 千代 冬薔薇の空の向うは眩しくて かおり 蒼穹に掛けたる稲架やかくれ里 千代 終りなき螺旋階段冬の月 愛 大根積む仏頂面の女かな かおり テーブルの日向を歩く冬の蝿 桂 手に触るる化石の時間虎落笛 喜和 山茶花やエロスを説きし比丘尼逝く 久美子 不実なる昼と夜の顔月夜茸 睦子 驛ピアノ男の指が生む小春 美穂 メレンゲの如く白鳥眠りけり 久恵 箱階段��めばみしりと冬館 かおり
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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0shoyamane0 · 8 years ago
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ジムノペディ
【登場人物】 山根正 武田興味 六久舟 枡田幾二 サベリキャオ(ワラーリキ)
(幕があがると中央だけ明るい。机と椅子がある。音楽「ジムノペディ第一番」を一分だけ流し、急に止める。ここで舞台全体明るくなる。客席に向いて二人が座ってゐる。上手に山根、下手に武田)
武田興味 この前のことなんですけど、あの、音楽の。 山根正 ああ、あれね曲順がなんとかっていふ。 武田 さうです。あれからなにか考へてくださいましたか? 山根 いやあ、まあ、どうかな。 武田 頼みますよ。来月号の『山根山』まだ何するか決まってないんですから。
*六上手から入場、音漏れのひどいイヤホンをしてゐる
六久舟 (イヤホンを外しながら)あれ、先生来てたんですか。 山根 うん、まあ。 武田 遅いですよ六さん。 六 ごめんごめん。 武田 山根先生、あれのこと何も考へてらっしゃらなかったらしいんですよ。 六 あれ…ってなんだっけ?  山根 いや、何も考へてないわけぢゃあないんだよ。 武田 ぢゃあ少しでもいいんで原稿おくってくださいよ。 山根 (もぞもぞする) 武田 なんですか。 山根 いや、指がね、かゆくて。 六 あのさキョーミ君、悪いんだけど…キョーミ君がやろうとしてた企画ってなんだったっけ。 武田 あれですよ、音楽のプレイリストみたいに、山根作品もプレイリスト単位で読んでいくっていふ、最近の音楽ストリーミングサービスと文学のコラボレーションみたいな/ 六 (武田を遮りながら)あぁはいはい、あれね。 武田 シャッフル再生みたいに、山根をランダムで読んでいくのも/ 六 (武田を遮りながら)はいはい。 武田 聞いてます? 六 聞いてるよ。 山根 この部屋絆創膏なかったっけ? 武田 なんです、急に。 山根 いや、指、掻きすぎて血が、ね。 武田 ありましたっけ、どっかに。 六 ああ、この前使ったから。確か…。
*六、本棚の方に行く。
六 あった、あった。 武田 どこに入れてるんですか。 山根 それ去年の『山脈』ぢゃない。 六 栞がはりにしてました。
*十八時の時報
山根 あ、この時報ここでも流れるんだ。 武田 え? 山根 いや、この音楽、っていふか放送っていふか。六時に流れるでせう? いつも。 武田 ああ、まあ、流れてますね。 山根 どこでも流れてるものなの? これって。 六 はい、絆創膏。 山根 ああありがとう。いや、あり《ぎゃ》とう。
*枡田上手から入場、パイプ椅子を運びながら。
枡田幾二 お疲れ様です。あ、先生来てたんですか。 山根 どうも。 枡田 さういへば先生、さっき人から聞いたんですけど「ネコマタギ」って知ってます? 山根 ねこまたぎ? 枡田 はい、あれって、ねこがまたぐから、「ネコマタギ」っていふらしいですよ、おっかしいですよね! 《………》 武田 枡田さん、聞いてくださいよ。先生また原稿延期してくれって。 枡田 またですか。来月号ってあの、音楽と文学が〜みたいなやつですよね。 武田 はい。 山根 いや、書いたんだよ、少しは、けどデータが消えたんだ。 武田 データって…先生いつも手書きでせう。 山根 いや、今回はコンピュウタでやったんだよ。そしたら消えた��� 枡田 あれ、ってどうなんですか? 実際。 武田 どうって? 枡田 いや、音楽と文学の曲順って意味……わかりますかね? 読者に。 武田 分かりますって! 今回は若者向けの企画なんです。 六 若者向けってったって、『山根山』読んでる若者なんかゐるかね。 山根 それはゐるよ。 枡田 六さん、音楽流れっぱなしですけど。 六 本当だ。 枡田 さういへば六さんって音楽何聴くんですか? 六 いろいろだよ。 枡田 今流れてたのは? 六 今のは……(確認して)ケンドリック・ラマー。 武田 六さんヒップホップ聴くんですか? 六 いやこれは先生に教へてもらって。 武田 先生はなんでも聴きますもんね。大貫妙子とか友川カズキとか、moonpools and caterpillars とか。 山根 好きだからね。さういへば枡田くんの地元ってどこだっけ? 枡田 北海道です。 山根 札幌? 枡田 帯広です。 山根 ああ。 枡田 なんです? 山根 いや、帯広でもさっきの六時の、時報みたいなやつ流れる? 枡田 時報みたいなやつ? 山根 ほら、さっき流れてたやつ。あの町中に聞こえる。 枡田 ああ。 山根 六時の。 枡田 あれ、市町村防災行政無線っていふんですよ。 山根 へえ。ちょっとトイレ。
*山根下手へ退場
枡田 あれ地域で音楽ちがふんですよ。うちはなんだっかな。確か広島は「はなぐるま」ってやつです。 武田 枡田さんなんでそんなこと知ってるんですか。 枡田 いや、好きだから。 六 枡田君はね、百戦錬磨の人だから。 武田 どういふ意味です? 六 いや、なんていふか、とにかく百戦錬磨なんだよ。 武田 全く意味がわからないですけど。 枡田 武田君は百戦錬磨なの? 武田 え? 何がですか。何が百戦錬磨なんです? 枡田 生き様だよ。生き様が百戦錬磨なのかってこと。 武田 いやもう意味がわからないですよ。 六 それより先生原稿書いてくれるかな。 枡田 どうでせうね、あの感じだとまたいいようにはぐらかされるかもですね。 武田 勘弁して下さいよ。僕、初めての企画なんですよ。 六 まあ初めてってのはさういふもんだよね。みんなさうだった。 枡田 さうさう、それを繰り返して百せん/ 武田 (遮りながら)あぁそれで百戦錬磨。 枡田 さうだよ。 武田 腑に落ちたやうな落ちないやうな……。
*サベリキャオ上手から入場
サベリキャオ すみません 武田 ?、どちらさまでせうか? 六 あぁワラーリキ、先日はどうも。 武田 もしかして《あの》ワラーリキ・サベリキャオさんですか! サベリキャオ ええ、まあ。お宅は? 武田 武田興味です。今年の四月から『山根山』の編集をしてます。 サベリキャオ さうですか。よろしくお願いします。 枡田 サベリキャオさんお久しぶりです。今お茶出しますから。 サベリキャオ いえ、おかまひなく。
*枡田下手へ退場
六 急にどうしたの。 サベリキャオ あの…山根先生ゐらっしゃらないんですか? 武田 先生は今てうどトイレットに行ってまして…すぐ戻ると思ふんですけど。 サベリキャオ さうですか。いや、ならいいんです。
*サベリキャオ上手へ退場
武田 どうしたんですかね。 六 いつものことだよ。ワラーリキらしいっちゃあ、らしいね。
*枡田下手から入場、お盆にお茶をのせて。
枡田 あれ、サベリキャオさんは? 六 いま帰ってったよ。 枡田 えぇ、いくらなんでも早すぎますよ。まぁサベリキャオさんらしいっちゃあらしいけど。
*山根下手から入場
六 あ、先生。今ワラーリキが来て��したよ。 山根 え、ワラーリキが? 六 はい、何か先生に用がありさうな雰囲気でしたけど。 山根 あぁ、さう。(お茶を飲み干す) 枡田 それ、サベリキャオさんのやつだったんですけど。 山根 あぁ、さう。(もぞもぞし始める) 枡田 どうしたんですか? 山根 いや、なんか、指がかゆくて。
(音楽「ジムノペディ第一番」流れながら照明徐々にフェード)
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0shoyamane0 · 8 years ago
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【お知らせ】『山脈』の事
 こんにちは、山根正研究会の枡田幾二です。平素より格別のお引き立てをありがとうございます。この度、現行の epub 版『山脈』と紙媒体版『山脈』の扱ひについて、いくつかの変更が行われたのでここに報告いたします。  今後、月に一回刊行される epub 版の山根正逐次刊行物を『山根山』(やまねやま)とし、十二月下旬に刊行を予定する紙媒体を『山脈』として統合��ることになりました。また、『山根山』のナンバリングに関してはこれまでの「元号・月」表示をやめ、「西暦末二ケタ・月」表記(例:二〇一七年一月号の場合『山根山 1701』)に改めます。紙媒体の『山脈』の epub 版公開を近日予定しておりますことを締めとしてお知らせを終了いたします。 Bon rêve!
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kachoushi · 3 years ago
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各地句会報
花鳥誌 令和4年8月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和4年5月7日 零の会 坊城俊樹選 特選句
金剛の粒となりけり薔薇の雨 和子 鍵穴を覗けば明治聖五月 きみよ 薔薇園のクレオパトラはまだ蕾 秋尚 ひざまづく職人の手に朽ちし薔薇 久 華やかに薔薇から離れゆく女 順子 旧家とは黴の匂ひと薔薇の香と 久 ダイアナと言ふ白薔薇にさみだるる きみよ 避雷針錆びて眠りし夏館 いづみ セルを着て館の手すり撫でてをり 季凜 棕櫚の花待つ洋館の灯は昏く 和子 この薔薇も名の幻を抱き続け 順子 罪深き身をつつみたる薔薇の風 和子
岡田順子選 特選句
セピア色かな夏炉の上の写真 光子 父と子の聖霊が触れバラ白に いづみ 緞通の褪せし撞球室に夏 光子 大滝の水のふたつの光る芯 三郎 裏木戸を守る閂とめまとひと 久 黴の世や蔵に遺作の絵が少し 同 薔薇の夜に抱かれて園の鳥となり いづみ いくつもの薔薇の名を呼びゐたりけり 光子 薔薇を売る男はそつと跪く 小鳥 金剛の粒となりけり薔薇の雨 和子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月9日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
観音の慈悲の眼差し春の雨 中山昭子 春愁や逝きたる友と病む友と ミチ子 奥院に鎮もる神や祭果つ 昭中山子 渓水の音も卯の花腐しかな 時江 田植機の通りて泥の日曜日 久子 幾何学も知らず蜘蛛の囲かけてをり 中山昭子 代掻くや鉄塔揺らし雲揺らす みす枝 仏壇の母と語りし母の日よ 信子 無人駅菜の花一輪挿しの卓 英美子 海色の風を運びて夏来る 時江 とりどりの駄菓子買ひ込み昭和の日 上嶋昭子 粽解く香りの中に母の顔 みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月9日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
北信の山々を背に鯉幟 貴薫 風を呑む園児手作り鯉のぼり 三無 新茶淹れ母と語らふ京都旅 せつこ そこはかと由緒ある家鯉幟 美貴 嫌なことすうと消えゆく新茶の香 美貴 故郷の新茶届きて長電話 史空 鯉幟男児誕生高らかに せつこ 新茶汲む最後の雫ていねいに 美貴 新茶の香部屋にすつきり立ち昇り せつこ 五人目にたうたう男の子鯉幟 あき子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月9日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
奥越の麻耶姫目覚め山若葉 令子 子どもの日少年その日句を作る 同 書き込みの多き譜面や夏浅し 登美子 駆け足も卯月の雨に追ひつかれ 紀子 肩ぐるま手を伸ばしをり藤の花 実加 二輪車のオイル残香夏に入る 紀子 菓子のやう小さなトマト頰張りし あけみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月10日 萩花鳥句会
句友とも会へぬコロナや夏に入る 祐子 育つ子に未来の風を鯉のぼり 健雄 ひとけなく今は昔の多越の藤 恒雄 葉桜や母と集ひしこのホテル ゆかり 甘夏の里は潮風吹くところ 陽子 葉桜を揺らす影なし廃校舎 明子 葉桜の土手お揃ひのユニホーム 美恵子
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令和4年5月12日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
ウクライナいつまで続く五月闇 由季子 母の日に思ふ後に父もゐて さとみ おしやれする気持ちかき立て更衣 同 麦秋や大河一筋地を分ける 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月12日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
湯の句会 第一回
ご機嫌の鶯老を鳴きにけり かづを 若葉風光となりて消えゆけり 同 雨意去りし故山に鶯老を鳴く 同 問ひかけに長い返事や暮れの春 和子 黄金の麦田後へ三国線 同 絹ずれの音や女将の裾捌き 雪子 群青の海深くして沖朧 希
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月13日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
湯の句会 第二回
境内に浄土思はす白牡丹 希 巫女が舞ふ白きうなじの祭髪 同 日本海見えゐる岬卯波寄す 同 夏立つや虹物語ある町の 匠 雑談に疎き耳なり宿浴衣 清女 宿の名に謂のありて花菖蒲 千代子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月13日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
チューリップ幼き我に連れ戻す 佐代子 海彦へ浜の茅花野風に伏す 都 廃線の駅名標に花菜雨 宇太郎 風を待つ鯉幟眼を天に向け 佐代子 葉がくれに花見つけたり朴散華 すみ子 虞美人の涙のかたち芥子坊主 美智子 配膳車筍飯の香を乗せて 悦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月14日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
野仏の錫􄼺の錆姫女菀 亜栄子 木陰抜け風の広ごる麦の秋 秋尚 枡形はなべて大樹や寺若葉 百合子 竹林を暗め卯の花腐しかな 秋尚 鯉のぼり色塗り分けて切り抜いて 白陶 母の日は父の寡黙の思ひ出も ゆう子 母の日の遺影の母は凜として 多美女 雨に濡れ向きそれぞれの竹落葉 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月15日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
頰杖の墓美しく新樹光 慶月 木の朽ちて大蛇めきたる翳り沼 文英 あぢさゐの色ととのはず人逝けり 葉月 黒南風や樹霊を浸す水の音 千種 蜘蛛の糸聖観音の背中より 慶月 鎌倉へ羽蟻を運ぶ蟻一つ 久子 青梅の転がる坂の下に句碑 要
栗林圭魚選 特選句
朴の花真白き命天に置き 三無 大空を水馬飛ぶ池の面 軽象 ひとつづつ落つる準備のえごの花 秋尚 稲毛氏の寺門はひそと朴の花 芙佐子 錆びゆくを天へ曝して朴の花 要 母の塔新樹の風に集ふ人 ます江 翡翠の帰りを待たず水流る 久
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
口笛の鳴る子鳴らぬ子揚げ雲雀 清女 一匹の蟻に従ふ千の蟻 英美子 魚釣る女子学生の夏帽子 千代子 三代も待ちし男の子や鯉幟 みす枝 新緑を塗り重ねたる昨夜の雨 かづを 金色の観音像や夏近し 和子 ロシアより卯波来るかと若狭湾 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月18日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
母の日や吾子は二人の母となり 千加江 葉桜や葉室麟よむ木陰あり 令子 早逝の友かと思ふ春の虹 淳子 母と子の二人だけなる鯉幟 同 花衣母の手を借り着たる日も 清女 麦秋の夕陽をあびて波立ちぬ 笑子 ぜんまいの萌ゆのけぞつてのけぞつて 雪 髢草少し癖毛でありし母 同 春日あまねし万葉の流刑地に 同 鶯や万葉の野を席巻す 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
一輪は少し小さく二輪草 雪 咲き倦みし十二単の紫も 同 人淋し二人静の花の名に 同 新しき鋏で薔薇の手入かな 同 人乗せてふらここと云ふ揺れ様に 同 永き日や動かして見る石一つ 同 人の世に二人静の花として 同 花冷と云ふ美しき夜の色 同 蝶知るや初蝶として待たれしを 同 虹立ちぬ私雨に軒借れば 一涓 町中の道に横切る蛇に遇ふ 中山昭子 羅やピアスに及ぶ愁ひあり 上嶋昭子 噴水のみどりの風に穂を揃へ 世詩明 風鈴を吊りて孤独を紛らはし 同 妊れる女片影寄り歩く 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月22日 月例会 坊城俊樹選 特選句
十字架はエルサレムへ向け風光る いづみ 青葉蔭ひそと風神育ちつつ 千種 砲口は二度と開かず夏の雲 月惑 風見鶏よりゆらゆらと夏の蝶 炳子 ジーパンへ真夏の脚をとぢこめる 光子 白鳩は夏雲の綺羅として零れ 小鳥 肩上げて走る少��夏の雲 和子 行く先へ一瞬止まる瑠璃蜥蜴 政江
岡田順子選 特選句
花に棲む木霊らしきへ黒揚羽 俊樹 夏霞海峡の橋空に架く 裕章 ジーパンへ真夏の脚をとぢこめる 光子 磔刑のイエスへ舞はぬ黒揚羽 俊樹 舞殿の鈴の鳴るかにユッカかな 圭魚 蓮の葉はいまだ小人が乗る程度 俊樹 靖国の同期のさくらんぼ揺るる いづみ 􄑰􄑰を緋鯉呑みては金色に 俊樹 衛士は今休めの姿勢木下闇 梓渕 教会や十字架雲の峰を生む 和子
栗林圭魚選 特選句
桜の実踏み研修のバスガイド 順子 病葉を掃き寄せ森に戻しけり 梓渕 炎昼の影を小さく警邏立つ 光子 新樹萌え茶室を闇に誘へり 梓渕 万緑の闇に鎮みし八咫鏡 いづみ 山姥の齧り捨てたる桜の実 要 葉桜や雑念払ひ切れずをり 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年5月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
兵の死へ怒濤のごとき冬銀河 佐和 潮の香の茅花流しに出会ふ道 久美子 茅花流しみすゞの海の鯨墓 美穂 捩花や後ろの正面だあれ ひとみ 苺この光沢ベネチアングラス 勝利 夏潮の夕餉にぎあふ漁師飯 喜和 薬玉に風は平城宮より来 愛 茅花流し川向うより蹄音 成子 ビルの窓アルミホイルのやうな夏 ひとみ 離れ難くて飛ばしたる草矢かな 美穂
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月6日 立待俳句会 坊城俊樹選 特選句
筍が十二単を纏ひつつ 世詩明 南方に行けば散りたる渡り鳥 同 巣つばめに留守を預けし駐在所 同 風立ちて赤き炎の野火走る ただし 霾るや大名町も片町も 清女 小屋の前若芽探るや茗荷汁 輝一 猫寺に春待ち顔の猫ばかり 洋子 三つ編の少女三人ふらここに 同 蕗の薹仏秘観音在す寺 やす香 乱心の如くさまよひ梅雨の蝶 秋子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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kachoushi · 3 years ago
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各地句会報
花鳥誌 令和4年7月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和4年4月2日 零の会 坊城俊樹選 特選句
花の舞ふ五叉路に迷ふ女かな きみよ 蛇穴を出て街中に紛れたる 梓渕 大江戸も春や二の橋三の橋 荘吉 ハワイアンたらたら流れ逝く春ぞ いづみ 大銀杏とは崩れつつ芽吹くもの 光子 散る花も散らざる花も手に遠く 和子 春の地上へとエスカレーターエスカレーター 炳子 六本木ヒルズの方へ茎立ちぬ いづみ 小津映画ほどの間合や春の昼 美紀 春爛漫東洋英和女学院 梓渕
岡田順子選 特選句
女学館へとまやかしの蜃気楼 俊樹 道路鏡に真昼の空や鳥交る 炳子 花衣抱かれて泣く真昼かな 光子 花盛り帝都の地下を逝く列車 久 骨董を異人売りをり春市場 季凜 花衣とて親鸞のわらぢ履き 千種 散る花も散らざる花も手に遠く 和子 開山堂椿は白に額は朱に 季凜 老酒の壺の箆跡風光る 和子 手のひらが日を受くやうに飛花落花 小鳥
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月7日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
春光やコロコロコロと猫たはむ 喜代子 制服も夢も大きな一年生 由季子 ぶらんこや少し揺らぎて誰を待つ 同 遠い国桜咲くよな和みあれ さとみ 春灯や逝きし人宛文を書く 都 九頭竜に影を流して春の雲 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月7日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
鳥曇東尋坊に句碑幾つ 匠 日本海敦賀も能登も鳥曇 同 お精舎は花の宇宙となりにけり 笑 花見舟鳩も雀も乗りたかや 希 白猫も潜めし花の堤かな 天 空
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月8日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
花の昼一本の棒の如く臥す 悦子 野遊やゴム動力機風に乗せ 宇太郎 落花また落花画布まだ白きまま 栄子 少女らに余る日溜り菫濃く 都 戻りにも居るふらここの独りぼち 栄子 風光る雲に届けと竹蜻蛉 宇太郎 しやぼん玉橋の上から彼の世まで 栄子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月9日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
陽子墓碑追慕にしばし桜舞ふ 文英 鶯の息継ぎ長きとしあつ忌 百合子 たえまなく組んでほぐれて花筏 ゆう子 ふらここや立ち去る子等に揺れ残る 多美女 ふらここの空へ空へと蹴る愁ひ 百合子 チューリップ南部鉄器の壺の中 節子 ぶらんこや引つ越す友と風をきり 三無 天からの風に舞ふ花としあつ忌 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月11日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
鄙里の相聞歌碑や青き踏む 時 江 干鰈の骨透きとほる越の町 ただし 思案橋ゴルフボールは朧にて 三四郎 仏生会寺の柱に凭れけり 世詩明 花吹雪手に掬ひても停まらず 同 うららかや猫と話すは妻のこゑ 三四郎 家刀自の納戸色てふ花衣 昭上嶋子 花吹雪しの字への字と風に乗る みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月11日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
遠足の列に割り込む仔犬かな 史空 縋るものあれば絡みて豆の花 三無 豆の花叱られるのはいつも姉 美貴 遠足や新任教師もみくちやに 三無 遠足の思ひ出母の味噌にぎり 貴薫 遠足やほんのり甘き玉子焼 美貴 春風に心放たれ一歩かな せつこ 遠足の列笛の音に伸び縮み 三無 豆の花剪定の音惜し気なく 有有 遠足の信号待ちの列乱れ ます江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月12日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
椿咲く日々つがひ鳥顔うづめ みえこ 高架下電車の音も東風に乗り 紀子 病床の闇を香らせ沈丁花 令子 満開の花や背景埋め尽くす 裕子 暮遅し残業の無き日の余裕 紀子 完璧に弾けぬピアノや花の雨 登美子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月12日 萩花鳥句会
乱鶯や競ふ息吹に山びこに 祐子 啓蟄や地下で避難す命あり 健雄 霧かかる山なみのぞむ花見バス 恒雄 病む体不安ばかりや春の闇 ゆかり 先々のことは預けて花見かな 陽子 初蝶を追ふ子の網に花ひらり 美恵子
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令和4年4月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
初蝶と云ふ前触れも告げぬ使者 雪 猩々と云ふ程もなき花の色 同 落ちさうで落ちかねてゐる白椿 同 花筏墨絵のごとく流れゆく 和子 森羅万象春の息吹の謳歌あり 同 花影やひとりで修す愛子の忌 眞喜栄 寺町へ路地幾曲がり鐘朧 英美子 百千鳥今極楽と鳴き交す 玲子 入院の衣裳としたる花衣 千代子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月17日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
桜蘂降る城攻めの骸積み 斉 メタセコイア芽吹きの森に小さくゐる 要 供養する人に緋牡丹浄土なる ます江 蒲公英をたどりたどりて母の塔 久 鬨上げて城山囲む芽吹きかな 兎生 たんぽぽに膨らむ丘や母子像 斉 桜蘂まみれの犬とすれ違ふ 久 山吹に肩抱かれて石仏 三無 新しき柔道着の児葱坊主 亜栄子 梵鐘は鳴らず蜜蜂ぶんぶんと 慶月 稲毛三郎春風抱きて丘に立つ 佑天 陽炎や乳白の塔膨らみぬ 久
栗林圭魚選 特選句
春林の足音ふつとたしかめり 幸子 そぞろ来て鶯を聞きノラを撫で 炳子 蒲公英をたどりたどりて母の塔 久 紅牡丹美しき重さを競ひたる 三無 切口を曝し菩提樹芽立ち初む 眞理子 城山の谷間隠れの遅桜 兎生
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月20日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
花馬酔木少年指で句をつくる 令子 洗ひ髪束ねるまでにまだ遠く 清女 花衣杉田久女に想ひ馳せ 同 越前の土の臭ひも筍の里 笑子 暮六つや花雪洞に灯も入りて 希子 ふらここに心残りの揺れてをり 雪 落椿踏むには淋し過ぎる白 同 涅槃図の嘆き洩れ来る荒格子 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
花仰ぎ空の蒼さを仰ぎけり 雪 初蝶と呼ばれ初蝶らしく飛ぶ 同 万葉の古歌の如くに散るさくら 同 目借時弁財天も琵琶重し 一涓 糸遊や虚子に中子師汀子師か 同 天金の蔵書ひもどく朧月 同 菜の花や浄土と思ふ茜雲 ただし 父の歳三倍生きて日脚伸ぶ 同 競ふごと囁くごとく木の芽吹く みす枝 若緑むくりむくりと故山かな 同 子を抱きてくるりくるりと花吹雪 洋子 鈍重か威厳か蟇動く 昭上嶋子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年4月24日 月例会 坊城俊樹選 特選句
姫女菀いつもどこかが欠けゐたる 和子 竜天に登る気配や神の池 幸風 蒲公英の絮の宇宙を壊しけり 和子 蠅生まる日をぎらぎらに絡ませて 光子 行春やゆつくりゆがむ田安門 千種 青き眼の鯉にまぶたや春の水 和子 招魂祭終へてふつくら大鳥居 三郎 亀の鳴く朝はほあんと白き月 炳子
���田順子選 特選句
ものの影泛ぶ水面や春暮るる 三郎 著莪の雨ふり向けば立つ憲兵碑 和子 蝶生る斎庭に黒き翅濡れて 光子 金鳳花神宿るかに咲き満ちて はるか 春の鴨ひなたの石の色をして 光子 ラジオより小さき時報や囀れる 炳子 九段坂小さき登攀草芳し ゆう子 蓮巻葉かそけき光恃みとし はるか 二の丸は淡き襲の若葉かな 千種 石燈の幾柱立てば母の日に 慶月
栗林圭魚選 特選句
蓮巻葉かそけき光恃みとし はるか 春の鴨ひなたの石の色をして 光子 春陰や誰か在する橋懸 眞理子 水底の黙を脱ぎつつ蓮巻葉 順子 この坂は静謐な風ライラック 同 惜春の人へ神池水の音 政江 尚残花ありけり杜の静けさに 同
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令和4年4月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
長閑けしや纜ひと日軋みをり 志津子 永劫の城は動かず飛花落花 朝子 着て立ちてしつけ糸抜く花衣 佐和 大切なこと話せずに花あけび 光子 古代魚の飄々として春深し 久恵 海越えて来るやも知れぬ柳絮かな 愛 密漁区抜けだす船に雲の峰 佐和 演歌歌手の草履飛んだり花􄼪 美穂 青柳のたそがれの道夫を追ふ 朝子 亀鳴けりここが潮時じやんけんぽん ひとみ 三打目の筍傷に香を放つ 久恵 姿見に春の日射しのもうひとつ 桂 心空にして飛べさうな春の空 睦古賀子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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kachoushi · 4 years ago
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各地句会報
花鳥誌令和3年2月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和2年11月4日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
柿の村皆同姓の十戸かな 世詩明 時雨るや鯖江は橋の多き町 ただし 脱がされし菊人形の薫りけり 同  紅の雲の棚引く崩れ簗 同  ここからは一人でゐたい十三夜 秋子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月5日 うづら三日の月句会 坊城俊樹選 特選句
最果ての北の海より冬に入る 喜代子 秋晴に喜寿の体背伸びせん 同  落葉焚き黒き煙りの後白く 同  冬めくや手に息かけて背をまるめ さとみ 雨音もそれらしき音冬に入る 都   良き日よと地蔵微笑む小春かな 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月5日 さざれ会
木の葉髪お粥嫌ひは母似とも 雪   月上り来て万葉の月見石 同  四方の風四方にみだれて秋桜 匠   花の守る岩佐又兵衛墓に石蕗 数幸 園児等の声に色づく榠樝の実 和子 巫女一人ぽつんと座る神の留守 啓子 行く秋や足羽に眠る夫の墓所 笑
………………………………………………………………
令和2年11月6日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
鴨来たる巡礼のごと湖に下り 都   露天湯の頭上ゆらりと初紅葉 すみ子 遠巻きに棕櫚剥ぐを見る車椅子 幸子 木洩れ日を残して発たれ神の旅 悦子 此処もまた日溜りの椅子黄落期 都   どんぐりの打つ音の善し帽の縁 宇太郎 遠山にあえかなる日や初時雨 美智子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月7日 零の会 坊城俊樹選 特選句
海猫帰るために汽笛の響くかな 三郎 瓦斯燈の昔へ落葉踏みながら 光子 万国旗揺らさぬやうに神渡  久   朱雀門肌やはらかく神迎へ 三郎 赤いバス白い巨船も冬帝の遊び 順子 冬帝の過ぎるや小船きしませて 小鳥 麗人よ冬靴大きすぎはせぬか 公世 纜の過去を流して冬に入る 三郎 浜風の手首に触れて冬に入る 小鳥 フィアットを皮手袋で埠頭まで いづみ
岡田順子選 特選句
港町初凩の吹く番地 荘 吉 海月とも舎利とも沈む今朝の冬 俊樹 啄木鳥やわが郷愁の奥処より 公世 標的は船首に立てる皮ジャンパー いづみ タグボートの波にて洗ふ冬の岸 眞理子 冬浅きナイフの音を立てし皿 久   冬鴉とは姑娘を嫉妬せり 俊樹 枯蔦へ古き楔へとほり雨 光子 冬が来し港に船を見送れば はるか 汽笛吸うて海黒々と冬に入る 眞理子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月9日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
見据ゑたる鷹の視点の空遠き 秋尚 枯葉舞ふ径学食へ急ぐ径 あき子 枯葉舞ふこの先通り抜け禁止 有有 急降下一直線に鷹の影 秋尚 残照にしがみつきたる枯葉かな 有有 獰猛と記さる鷹の淋しき眼 三無 冬構大仰なほど周到に あき子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月9日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
信州の雲の中より林檎落つ 世詩明 天に星地に満天星つつじ燃ゆ 信子 小春日や臍見せ給ふ観世音 世詩明 庭下駄をあたためてゐる冬日かな 昭子 少年と岬鼻に舞ふ鷹仰ぐ 同  松手入れして青空へ引き渡す 信子 神の留守拍手の音の虚ろなる みす枝 行く秋の沖を指す舟帰る舟 清女 秋愁に横たふ夫は卒寿なる さよ子 霜月や日本海の色鈍し 久子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月10日 萩花鳥句会
秋惜しみ老後を惜しみ苦吟の夜 祐子 ボール蹴り落葉と遊ぶスニーカー 美恵子 落葉掃く心の荷物はふり投げ 陽子 久々に子と過ごす日々冬ぬくし ゆかり 苔むしし石灯籠や石蕗の花 克弘
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令和2年11月10日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
落涙も乾きたるかな小鳥来る 紀子 小春日や見返り阿弥陀拝観す みえこ 日本海黒光りして冬立てり 令子 黄昏や背中寂しき落葉道 実加 眠る子の時間ゆつくり小六月 同  静かなる朝さくさくと落葉踏む 紀子 早起きの母を手助け冬菜畑 登美子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月13日 芦原花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
柱時計止つたままに冬きざす 孝子 鰤起こし息子買ひきしカップ酒 寛子 ぬきん出て躑躅の奥の冬薔薇 よみ子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月14日 札幌花鳥会 坊城俊樹選 特選句
初雪に老いの決意のあらたなる 独舟 水底に青空沈め冬たてり 同  蔦紅葉めらめら大樹登りゆく 美江 小春日や誘ひ出したき車椅子 同  冬に入る暗さの雲となりにけり 清   晩年をさらに孤独にマスクして 同  バスを待つ親子を包む木の葉雨 晶子 海光を宥め賺して冬耕す 岬月 風除を突き破りたる怒濤かな 同  冬眠の噴水かこむベンチかな 豊作 小春日や膝に針穴写真集 慧子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月14日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
雲幾重風のきままよ芭蕉の忌 美枝子 俳句の目持ち旅に出で芭蕉の忌 瑞枝 蒼穹の臍となりける木守柿 光子 茎漬や茶は熱く濃く夜半の飯 同  熟る郁子の紫映ゆる玻璃戸かな 三無 耳動く猫と小春を頒け合ひぬ ゆう子 句碑温め遍し多摩の小���月 百合子 散りゆけるものに紛れて冬の蝶 光子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月15日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
神の旅見送る西に消ゆるまで 久子 だるまさんがころんだ銀杏散りつづく 千種 剥落の幹に小春の水かげろふ 斉   元禄の立膝仏へ落葉積む 慶月 綿虫の朝日散らしてさ迷へる 秋尚 泣き声の遠くにありて空高し 幸子 その下に影を吊して吊し柿 千種 朴落葉蹴りて砕きし罪重し 三無
栗林圭魚選 特選句
神の旅見送る西に消ゆるまで 久子 黄落の激しき静寂くり返す 千種 空と樹の十一月がやはり好き 幸子 冬ぬくし髪に宿りし日の砕片 ゆう子 山茶花や噂話が通り過ぐ 千種 機関車の缶に冬蝶縋りをり 幸風 冬の蜂如雨露の口に来て休む 久子 落葉道抜けて燿ふ母の塔 幸風
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月16日 伊藤柏翠俳句記念館 坊城俊樹選 特選句
曼珠沙華咥へて君を驚かす 雪   北風吹く越前岬海猫帰る ただし 雲水の跣足で駆ける初時雨 同  花八ツ手雨戸締めたるままの家 清女 日和得て足長く翔つ冬の蜂 同  うかつにも短き秋を逃しけり 和子 内蔵に何か貯め込み暮の秋 同  冬めくや北前船の大錨 月惑 秘め事の一つや二つ木の葉髪 英美子 時雨雲はりつき初める日本海 かづを
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月18日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
クリームをつけて大根洗ひたる 世詩明 大根を洗ふ女ら尻向けて 同  能登半島かき消す時化や神の旅 千代子 和紙を貼り手遊びの箱小六月 昭子 マント着て父は時をり夢にくる 令子 犬の声重くて遠し冬の夜 同  亡き人をなつかしみゐるつはのはな 同  うかうかと道にまどふも小六月 よしのり 墓訪へば石蕗の浄土に入りにけり 数幸 黄を尽くし紫尽くし枯るるもの 雪   待ち人の訪るるごと初時雨 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月21日 鯖江花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
死ねばそれ迄の事よと螻蛄の鳴く 雪   蓬けたる芒を風の素通りす 同  石蕗の花より生れきし番蝶 信子 今日一と日神の子となる七五三 同  露の世の日光月光菩薩かな ただし 黄落やピンヒール行く音楽堂 上嶋昭子 愛すべき俗物集ひ薬喰ひ 同  白といふ豊かなる色菊人形 中山昭子 晩学や粧ふ山を範として 一涓 闇汁の何とらへしや女の座 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月25日 花鳥月例会 坊城俊樹選 特選句
神木の銀杏落葉の無尽かな 政江 黄落の骨董市の調べかな みもざ セーターに黒いクルスの祈り架け 順子 ハシビロコウの直立不動憂国忌 公世 歳市のいかがはしさを売る子供 公世 冬帝の指呼に配られたる香具師ら 順子 音深き方の落葉を踏みにけり 秋尚 帯解やわづかに父を遠くして 千種 何も無き冬空やがて白き鳩 和子 朴落葉大往生でありにけり 公世
岡田順子選 特選句
蓮枯れて水漬くかたちを晒したる 要 歳市のいかがはしさを売る子供 公世 根の国に恋ふ人ありや紅葉落つ 圭魚 手触れたきかの狼のたなごころ 公世 小春日や得体の知れぬ骨董屋 月惑 裏門の無垢の落葉を衛士の踏む はるか 花八手見ゆる一ト間に巫女の昼 梓渕 あの空に触るる銀杏は黄葉せり 俊樹 黄落や黄色だらけと子が父に 和子
栗林圭魚選 特選句
神木の銀杏落葉の無尽かな 政江 すずしろの首の蒼白一葉忌 公世 大綿や土の匂ひを纏ひつつ 炳子 黄の帽子冬を掴みて走り出す ゆう子 帯解やわづかに父を遠くして 千種 祀らるる兵の数ほど銀杏散る 梓渕 黄落にセーラー服のひるがへる はるか
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年11月26日 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
幸せの皺を増やして木の葉髪 喜和 杣人に神の高さの銀杏散る 成子 ふつくらと媼座はりて胡麻叩く 佐和 まだ熱を蓄へ普賢岳眠り初む 洋子 根深提げ鞄を持たぬ暮しかな 伸子 黄落を踏みゆく人と掃く人と かおり 北窓を塞ぎ夜明けは訪れず 愛   木の葉髪家居の好きで遊び下手 光子 本屋の灯また一つ消ゆ獺祭忌 千代 海哭きて榾火に明かき老の顔 桂   木偶の衣の一糸ほぐれし寒さかな 洋子 霜夜更く鬼も天女も鬼子母神 伸子 罪人の離島へクリスマスローズ 愛   マスクしてうはさ話をする女 ひとみ 前衛の画風守りて木の葉髪 かおり 手品師のやうな黄落きりもなく 久美子 北塞ぎては鳴り止まぬ古時計 愛   人住まぬ生家に灯る返り花 由紀子 文化の日誉められしこと在りや無し 豊子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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kachoushi · 5 years ago
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各地句会報
花鳥誌令和2年5月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
令和2年2月1日 零の会
坊城俊樹選 特選句
街に立つ師は冬帝の黒纏ひ 光子 福豆売る絶対秘仏背に負ひ 千種 黒マスクをんなおそろし御徒町 いづみ 男坂即かず離れず雪女郎 佑天 きさらぎのくづし文字かな恋みくじ 光子 麗人と佳人出くはす梅の下 千種 幾重にも幾重にも絵馬ぬくくあり 季凜 天神下の鮮魚よろづ屋空つ風 梓渕 不忍のボートを漕ぐや落第子 順子 寒雀今日はめでたき貌をして 久
岡田順子選 特選句
永久の灯をもつ瓦斯燈も春を待つ 俊樹 福豆売る絶対秘仏背に負ひ 千種 絵馬に書く文字の細きへ冬の蜂 和子 白梅を背負へば空の青さ知る 久 きさらぎのくづし文字かな恋みくじ 光子 射的屋は夜まで閑で梅の宮 梓渕 飴玉を頰張りしまま春を待つ 久 街に立つ師は冬帝の黒纏ひ 光子 如月のこのひかりごと攫はれむ 美紀 ピアス挿し吾妹の梅に遊びゐる いづみ 古井戸を守り湯島の冬囲ひ はるか
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月5日 立待花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
風折れの水仙畑の先に岬 世詩明 水仙の花盗人を見て逃がす 同 余所者も馳せ参じたるどんど焼 同 寒雷の激しき音よ玻璃を打つ 誠 寒明の祝杯とてや大吟醸 輝一
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月6日 うづら三日の月句会
坊城俊樹選 特選句
華やぎの面影少し枯菊に 喜代子 春風やひもとく本と束ね髪 さとみ おうおうと神を呼び込みどんど燃ゆ 都 物言はぬ星のまたたき寒の明け 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月6日 さゞれ会
北風すさぶ神の島へと打つ怒濤 かづを 潮騒を春立つ音と聞いてをり 同 水仙の香と荒磯の香競ひをり 同 灯籠にあかり灯され冬の宿 啓子 山頂に横一列に冬の雲 同 鬼やらひ芸妓乗り出す成田山 笑 三句碑へ怒濤となりて春の海 同 丹の橋にくだける怒濤寒の海 清女
令和2年2月6日 さゞれ会
なんとなく聞く待春の鳥語かな かづを 坪庭の苔青々と春を待つ 清女
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月7日 鳥取花鳥会
岡田順子選 特選句
出雲より春の使者とも旅神楽 益恵 走り根の猛り濡らして寒の雨 都 雪降つて少し軽めになりし雲 史子 春愁や泪の乾くまでのこと 幹也 鬼は外木霊となりし遠明り 宇太郎 梅盛り炭屋に宿を取りし頃 悦子 凩や薬缶の笛を織り交ぜて 幸子 鴨引きて瀞長々とがらんどう 益恵 星冴ゆる電飾解かれゐし枝に 都 畦を焼く匂ひは朝の教室へ 宇太郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月8日 枡形句会
栗林圭魚選 特選句
句碑裏に昼の日差しや蕗の薹 亜栄子 紅椿大樹に日差し別れ道 文英 瀬の音のとみに弾みて猫柳 三無 水仙の白に翳ありうすみどり ゆう子 摘む指に匂ひ絡めて蕗の薹 三無 迂回して緋寒桜の峠道 教子 一瞬に緑走りし和布かな 三無 感触を確めたくて猫柳 教子 流れ沿ひ会話訥訥猫柳 ゆう子 まんさくの黄が野を覚ます風のいろ 美枝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月10日 武生花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
冬の夜は石を枕のヤコブかな 利榮 待つ春は道草しつつ来るらしき みす枝 奥越の高嶺颪や頰凍つる 一枝 人住まぬままの離れに初暦 昭女 初茶会金塗り椀に虚子の軸 みす枝 どことなくゆとりのもてて日脚伸ぶ 信子 橋脚を濡らして寒の水ぬるむ 世詩明 天空を星の抜けゆく霜の夜 時江 大嚏して線香の灰飛ばす さよ子 春炬燵潜りて跳んで遊ぶ児ら みす枝 バレンタイン義理チョコにして片思ひ 世詩明 七尾線枯れ一色の中を行く 昭女 すぽつすぽつと鳰潜る音 時江 帰宅して窓にはりつく寒北斗 世詩明 鍛冶音の響くばかりや星冴ゆる 時江 寒の水十指絡ませ水を飲む さよ子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月10日 なかみち句会
栗林圭魚選 特選句
天城嶺の残雪映す山の湖 怜 鶯の静寂誘ふ余韻かな 聰 春菊を入れていよいよ箸動く あき子 眺めゐる山々遥か初音かな 史空 咲きそめし白梅一枝句碑に添ひ 迪子 雪残る医院の花壇主亡く 美貴 山道の疲れ忘るる初音かな 史空 うぐひすや門柱細き尼の寺 和魚 初音せり無名戦士の墓に来て 美貴 竹林に一筋の日や雪残る 貴薫
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月11日 萩花鳥句会
はからずも吾娘と豆撒くひと夜かな 祐子 梅林園目白と遊ぶケンケンパ 美恵子 まごころの色のごときや梅白し 吉之 裁かれるいのちに甲乙春寒し 健雄 咲き誇る梅見守りし主なく 明子 光琳の紅白梅図のごとき梅 克弘
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月14日 芦原花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
白梅の一枝二枝の朝日受け 寛子 こけし等の夫婦寄り添ふバレンタイン 依子 早春の対岸をゆく押し車 孝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月14日 さくら花鳥会
岡田順子選 特選句
節分の豆煮てゐるや福の神 実加 山眠る垂水の音の澄んでゆく 政隆 坊守や母の手を取り寺の冬 登美子 薄墨の宛名の滲む寒夜かな 同 身籠りて薄味で食ぶはうれん草 実加 朝空や雀の散らす春の雪 光子 荒れゆくも自生水仙越前に 紀子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月15日 鯖江花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
それぞれを生きそれぞれに木の葉髪 雪 退屈なスコップ並び雪降らず 同 大仏に伍して漢の豆を撒く 一涓 寒月やなべて牛舎の静かなり 同 褪せてなほ威儀を崩さず古代雛 みす枝 春の雪重ねて山を新たにす 信子 沈丁に激しく降りて匂ひ立つ 直子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月16日 伊藤柏翠俳句記念館
坊城俊樹選 特選句
裸木となりおほせたる静けさよ 雪 注連をもて神となしたる大冬木 同 ひそむるはひそむる蒼さ竜の玉 同 衝立は志功の菩薩春灯 同 春宵の星の愛子を探さばや 省吾 春炬燵問はず語りに聞く出自 清女 谷深くして水仙の浜辺まで 紀之 白山の此の美しき雪地獄 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月16日 風月句会
坊城俊樹選 特選句
鬨の声なき城址の遅日かな 炳子 春めくや菩提樹の抱く石仏 眞理子 観音の肌清らかに春の雨 佑天 遠からず近からず置き落椿 秋尚 み仏の足裏くすぐる春の雨 佑天 まくれなゐ椿時々山鴉 炳子 空蒼を梅紅をゆづらざり 千種 春雨に濡れ肌色の陽子墓碑 圭魚 白梅の枝垂れて傘の色いろいろ 同
栗林圭魚選 特選句
しめやかな雨白梅の白の濃く 貴薫 見上げれば万の輝き紅椿 ます江 ぽつてりと塀の上より白椿 佑天 書きかけの反故増えゆけり獺祭 千種 雨に色連らねつ馬酔木咲きはじむ 秋尚 やはらかく雨にほぐるる牡丹の芽 秋尚 春光へ諸手を挙げて母子像 芙佐子 豊饒に咲かせ大樹の玉椿 淸流
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月19日 福井花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
天よりの悲鳴の如き初音聞く 世詩明 蜜柑剥く伊予の祖父似の太き指 千代子 何となく聞く待春の鳥語かな 雪子 春泥を駆け来し犬が膝頭 清女 凍ゆるみ老杉雪を落としけり よしのり 臘梅や新羅の鐘を伝ふ宮 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月26日 九州花鳥会 寺まち句会
坊城俊樹選 特選句
地獄より戻り来してふ春夕べ 光子 頰つぺたの体温となる春の雪 愛 戸を鎖して春の闇へと僧祈る 光子 春の夕浅き縁の人とゐる 久美子 石庭の波くねくねと春の夕 千代
岡田順子選 特選句
頰つぺたの体温となる春の雪 愛 釈迦の慈悲広ごる社梅の花 睦子 恋猫のかさぶた落つる夕明り 愛 結界の奥草の芽を啄みぬ 光子 啓蟄や髪を刈り上げホームレス 勝利 夕さりの春の博多は好いとうよ 志津子 六道の闇とき放つ春の鐘 かおり 雛飾る段に灯の入る夕べかな 光子
令和2年2月27日 九州花鳥会 定例句会
坊城俊樹選 特選句
潮の香の堂に絵踏の遠き日々 久美子 栄華の日まなうらに秘め古雛 かおり 信仰の別けても冥き絵踏かな 豊子 右足の形に減りしや板踏絵 志津子 塩壺に塩ある白さ春浅し 成子 海あをし絵踏の罪をかい抱いて かおり 霞野に均し朱鳥の病舎跡 順子 少年の浅き溜息雛まつり 成子 一寸の針の重さや針供養 睦子 草萌ゆるサーカス小屋の杭打てば 順子
岡田順子選 特選句
三椏の咲くや櫛田の鬼の数 由紀子 シスターの授業絵踏のこともあり 愛 蝶生まる兜太句碑ある爆心地 寿美香 島人の数ほど絵踏物語 豊子 輪郭の緑青乾ぶ踏絵かな 愛 春愁の目覚めに浅き夢つづき 光子 海あをし絵踏の罪をかい抱いて かおり 淋しらに灯るサーカス春浅し 久美子 遊女踏む赤き椿の踏絵かな 喜和 絵を踏んで転ぶ転ぶと吐く木霊 さえこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年1月8日 立待花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
抽斗の寒紅をさす夫の留守 世詩明 初詣巫女は緋袴束ね髪 同 巻き癖の直らぬままに初暦 清女 セメントを詰めし背骨に年新た 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年1月16日 芦原花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
寒鮒漁網引く漁師のしたり顔 けんじ 三ケ日校門かたく閉ざされし 孝子 台所を浄めて除夜の鐘遠く 同 小屋はねて暗き野道の雪女郎 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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kachoushi · 5 years ago
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各地句会報
花鳥誌 令和2年3月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
令和元年12月5日 うづら三日の月句会
坊城俊樹選 特選句
満百歳三年続きの日記買ふ 柏葉 大晦日出来ずじまひの事ばかり さとみ 榾の燃え老の情念湯は激る 都 おでん屋に二胡を奏でる異邦人 同 着ぶくれも粋に見せたく背伸びせる 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年12月5日 花鳥さゞれ会
炉話に明智が妻の髪のこと 千代子 炉話に韃靼漂流の謂れ聞く 同 外人に服をもらつたクリスマス 同 花鋏音して露のこぼれけり 匠 神の旅飛行機雲とすれちがふ 同 街師走見えざるものが背を押せり かづを 句作りに夢のお告げや十二月 数幸 手を取りてさざんかの径母と行く 雪子 山茶花やピアノの音のはたと止む 啓子 沈下橋渡る三人川の秋 天空
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令和元年12月7日 零の会
坊城俊樹選 特選句
着ぶくれて今半覗き玉ひでへ 和子 極月を歩すみごもれる子のために ゆう子 玉子酒間口小さく灯の白し 三郎 電線のゆるき横丁冬の雨 和子 寒紅を差すつづら屋の老婆かな あおい 愛人宅らしき貌してひめ椿 三郎 明治座の稲荷に小さき狐火が 公世 花街は雨山茶花をこぼさぬやう 光子 浜町や三味の音にも似て時雨 秋尚 つづら編むつめたき指と思ふかな 和子 千住葱入れる裏口しぐれをり 梓渕
岡田順子選 特選句
極月を歩すみごもれる子のために ゆう子 寒き鳩寒き雀を蹴散らせり 佑天 狛犬は狛犬として師走神 俊樹 裘着てマヌカンは服並べ 小鳥 指先のうづき熱燗触れてをり あおい 綿虫の無のただよへる漱石忌 公世 極月や金の屋号でくじを売る 和子 人形町しぐれを宿る軒もなし 千種 幼帝の都にみぞれ海遠く ゆう子 人形焼の顔に降りたる冬の雨 俊樹 冬の灯は競ひて狭き照明屋 小鳥
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
なかみち句会
栗林圭魚選 特選句
炉に集ふ顔の火照りと伊豆訛り 怜 放られてぶるんと跳ねる河豚太く 美貴 中子師と話弾んで冬一日 迪子 枯芝に影を写して背比べ 史空 枯芝や流るる雲の影速し 史空 河豚刺身白菊の如清楚なり エイ子 師の笑顔逢うてかはらぬ冬の日に ます江 暁闇に囲炉裏の熾火搔きし父 三無 枯芝のところどころに青むもの 怜 枯芝の小径真つ直ぐ細くあり ます江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年12月10日 萩花鳥句会
世のためと我が五十年いま枯木 小勇 萩花鳥必死で守り年忘 祐子 手燭置く躙り口より冬の月 美恵子 両の手で温もりすくふ冬日向 吉之 ほつこりと藪の笹鳴き聞く朝は 陽子 陽は沈み医師アフガンで冬の星 健雄 冬籠ラフマニノフと赤ワイン ゆかり 師を偲び句友をしのび年忘 克弘
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令和元年12月11日 鳥取花鳥会
岡田順子選 特選句
接待の大根厚く切りて炊く 立子 をさな去り小春日和の香の残る 都 遠峰々に初雪らしき光かな 益恵 亡き夫のセーター着込み雑踏へ 佐代子 小春日や寮生握手に寄り来る 幸子 鳥待つは熟し切つたる真葛 史子 初雪や望郷の念俄かにす 幸子 喚鐘の音を響かせて報恩講 幹也 仮の世の恙は言はず葛湯吹く 悦子 冴ゆる夜脳に木霊す蹄鉄の音 宇太郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年12月13日 さくら花鳥会
岡田順子選 特選句
寒鰤の刺身で交す回顧談 実加 際やかに鰤競る声や市の朝 登美子 寒桜賓日館を高貴にす 令子 笏谷の石切跡や冬ざるる 寿子 身籠れる体を温む葛湯かな 実加 日短ラストシーンも観て帰る 登美子 朝風に藁ごと揺れる吊し柿 光子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年12月14日 枡形句会
栗林圭魚選 特選句
遠き日の焚火の香する師走かな 恭子 句の出来るまで柚風呂に浸りをり 多美女 重ね着て背の不安を落ち着かす 百合子 国訛滾る湯豆腐つつき合ひ 三無 禅寺の幾年けふの冬紅葉 百合子 石仏の頰杖解かぬ十二月 同 重ね着をお洒落にこなす首回り 清子 控へ目な彩に追慕の納め句座 百合子 冬帝や鉾杉の秀を研いでをり 三無 隊列のV 字なす旅鳥渡る 和代
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年12月15日 風月句会
坊城俊樹選 特選句
鼻水をすすり枡形山迷ふ 政江 片頰に冬日浴びつつ句碑拝す 三無 冬帝へ青銅の像両の手を 政江 寒禽の高らかに空呼んでをり 斉 獣道へと冬の影法師行く 政江 仏足石の親指あたり柿落葉 佑天 冬帝の富士拝まんと塔上る 圭魚 観音の結印の美し冬うらら 佑天 母の塔北風の子を懐に 久子 冬紅葉裳裾ゆるやか観世音 三無 冬帝の蔭長くして母の塔 眞理子
栗林圭魚選 特選句
笹鳴きへ耳傾けて磴半ば 芙佐子 冬芝に蔭を延ばして母子像 亜栄子 寒禽の高らかに空呼んでをり 斉 鳥寄せてをり山門の冬椿 芙佐子 木の葉散る森の大きく息を吐き 千種 笹鳴が景を小さくしてをりぬ 斉 養生の辛夷大樹の冬芽かな 芙佐子 泥葱を並べて森のマルシェかな 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年12月16日 伊藤柏翠俳句記念館
坊城俊樹選 特選句
風に裏表ある如落葉舞ふ かづを ほろ酔ふが如く冬蝶飛びゆけり 同 大冬木産土の宮守りをり 同 まなかひに越の中山眠り初む 文子 泣きむしのこけし飾りし終ひ句座 たゞし 美人画の古暦とて捨てがたし 英美子 かの日々の遠ざかりたる師走かな 和子 白鳥来休耕田の光り合ふ みす枝 木枯しに鐘を鳴らして消防車 輝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年12月18日 福井花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
近松忌付かず離れずてふ縁 雪 枯尾花吹かれて綺羅を飛ばしけり 啓子 遠くまで信号は青街師走 和子 人生の話し相手に日記買ふ 千加江 冬薔薇を見つめる母はもう居ない 淳子 冬薔薇眺める椅子に主無し 同 街騒も師走のものとなつて来し よしのり 小春日の窓いつぱいの中眠る 美代
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年12月19日 九州花鳥会
坊城俊樹選 特選句
顔見世の口上粋に申し候 美穂 罪人も重荷を解いて聖夜の灯 かおり 枯菊を焚きてしばらく胸ひそか 佐和 美しき切口みせて炭熾る 孝子 信心のやうに潜るや鳰 豊子 水鳥のこぼす薄紙ほどの息 寿美香 顔見世や四条大橋風痛く 久美子 顔見世や出雲阿国の遊び足 寿美香 懸大根鳶と青空奪ひ合ふ 同 名優の顔見世幟はたはたと 和子 枯野ゆく心の中のほむらかな 美穂 白足袋や紅き蹴出の華やぎて 豊子 遅く着く信濃の宿の雪の華 久美子 山あれば山呻らせて虎落笛 豊子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年12月21日 鯖江花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
石臼の飛び石三つ竜の玉 雪 声を聞くだけの電話を掛け夜寒 同 信楽の狸提げしは新走 同 大津絵の鬼と酌まんか新走 同 短日の手を振り合ひて別れけり みす枝 終ひ湯や外に寒柝遠ざかる 同 着膨れにエレベーターの重くなる 同 花八手かはたれ時の白極む 昭子 歳晩の奏楽堂の椅子にゐる 同 野水仙後の怒濤昏れて海 信子 灯台まで歩くつもりや野水仙 同 白山の雪の白さの大根かな たゞし 火の海となりし根榾を裏返す 同 九頭竜の波を母とし霰魚 一涓 老犬の紐解き放つ芒原 世詩明 着膨れて温もり増せる乳房かな 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年12月23日 武生花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
谷を駆け息する風や紅葉散る 三四郎 鴨数多小さき湖の重くなる みす枝 干布団霊峰白山隠しけり 昭女 雪吊や三角錐に引き絞る 信子 樹木希林最后の映画観る師走 清女 流星群来れど炬燵の離れ難 久子 水仙の天まで届きさうな畑 時江 銀杏散る藁葺き屋根を黄に染めて 三四郎 黄昏て峰といふ峰冬茜 同 ずわい蟹無念か泡を吹いてをり みす枝 一乗寺奈落の如し銀杏散る ただし 瀬の香もそえて売らるる野水仙 錦子 風花の影消ゆ城の野面壁 時江 枯葎この身消したき日もありぬ ミチ子 おでん鍋同じ佗しさ持ち寄りて ただし 百選の冬の男滝の爆しけり 世詩明 獣抱き母の如くに山眠る みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年11月22日 第42回近松忌記念俳句大会
坊城俊樹選 特選句
小江戸てふ在所に祀る近松忌 和子 黒を着し女人の一途近松忌 同 雁渡る吉江の里に一忌日 同 近松の女悲しや今の世も 同 紅引いて嫉妬に狂ふ近松忌 信子 燭揺るるだけの華やぎ近松忌 同 簪が凶器となりし近松忌 同 忌を修す館に淡き冬薔薇 ミチ子 奥付に花の一句や近松忌 同 近松像撫で光りして小春の日 昭子 近松忌通りに響く下駄の音 誠 近松忌糺野界隈恋の道 一豊 炉びらきや吉江に住みし浄瑠璃師 令子 その漢別れ上手や近松�� 千代子 近松忌有縁ばかりの世でありし 洋子 来る筈のなき師を待ちて近松忌 英美子 冬晴れや碑文読みゐる一佳人 同 近松忌消せざるものに心の火 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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