#玄関框
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umifani · 9 months ago
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大工仕事。L型の玄関框を作っています! #職人技
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yutakayagai · 1 year ago
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『我が麗しき恋物語』ーMa plus belle histoire d'amour
佐伯浩志は、急性心筋梗塞で七十四歳の人生に幕を閉じた。行き付けのバーで明け方まで飲み、泥酔した状態で玄関の上がり框に座り込み、そのままあの世へ逝ってしまった。その日は日曜で、次男の浩二は起きて新聞を取りに来た際に気付き、いくら声をかけても覚醒しなかったので動転し、慌てて救急車を呼んだのだった。
幸いにも、かかりつけでもあった市街のK病院に搬送され心肺蘇生も試みたが、時すでに遅し、そのまま還っては来なかった。一緒に救急車に乗った浩二は、
「昨夜まであんなに元気だったのに…!」
とパニック状態になった。その場にたまたま、後に額田大樹と言う一人息子と浩二が肉体関係になる、その母・利江子もK病院で看護師をしていたが、
「えッ、佐伯先生が!?」
と病棟の方で夜勤中だったが、駆け付けた。彼女も、
「先生〜!!」
と泣き出してしまった。それでも彼女は冷静さを失わず、
「今すぐ…お兄さんと葬儀屋さんに電話してください」
と浩二に話した。
利江子は、止まらない涙をハンカチで拭いながら病棟に戻って行った。浩二は、M銀行の本店で勤めている兄・美津雄の家に電話をした。未だ寝起きだったのか、
「…何だ、浩二か。どうしたの?」
と呂律が回らない状態だったが、父の訃報を聞くと、
「マジで!? 今から行くよ!」
と慌てて受話器を置いた様だった。
美津雄が妻・小百合と一緒に戻って来たのは、正午前だった。霊安室に移動した浩志の亡骸を目前に、二人は呆然とした。浩二は、泣き疲れた様子で言った。
「今朝、新聞を取りに玄関に行ったら座り��んでて…。すでに意識はなかった」
この言葉にようやく現実に戻った美津雄は、
「お、親父ぃぃぃぃぃ!」
と浩志の顔にかかった白布を取り、数回叩いた。無論、反応はない。やっぱり死んだのだと、
「な、なんで死んだンだよ! あんなに酒と男を取っ換え引っ換えしてたドすけべド変態だった親父が…」
と浩二に訴えた。
「知らねぇよ! オレも聞きたいわッ!」
「お義父さん、いつも違う男の人と旅行してたね…」
「いつも黒猫褌やらTバックやら、スッケスケのパンツ穿いてさァ…。『ろくな男いなくてつまンねぇよ!』って悪態ついてさァ…」
「お義父さん、東京に来ると必ず浅草のゲイバーに寄って…。本当にスケベだけが取り柄だったのに」
次から次へと、浩志にまつわる逸話がすすり泣きの傍らで色々出ていた。そんな三人を見つめながら、肉体から離れた浩志はイライラしていた。
“何だよ! 美津雄も小百合も言いたい放題じゃねぇか! 浩二も何だ! 嗚呼、畜生! オレだって未だ死にたくなかったわ! 今日は鶯谷の「Iサウナ」でケツ堀りワンワンしたかったのに…。嗚呼、畜生!”
浩志は何度か自分の肉体に戻ろうと試みたが、スルッと抜けてしまう。嗚呼、もし黄泉がえったら三人をびっくりさせてやろうと思ったが、無謀だった様だ。彼はますますイライラした。
“キィィィィィ! 畜生!”
仕方なく、四十九日まではこの世を彷徨うことにした。
午後になり、ようやく葬儀屋が来て浩志の亡骸は備前町の実家に運ばれた。浩二はもう一台の軽自動車に乗り、浩志が来ていた衣類の入ったK百貨店のショッパーを抱えていた。未だ頭の中が混乱していた。嗚呼、明日から一週間は落ち着かない。兄さんも、恐らく���社を休むだろう。先刻の、江利子さんや旦那の広樹さん、父さんの職場だった私立S高校にも連絡しなければならない。新聞の「お悔やみ」には、何社掲載してもらおうか? 
気付くと自宅の前に来ていた。葬儀屋は仏間に浩志の亡骸を横たわせる布団を敷き、あちこちにドライアイスを挟んだ。後から駆け付けた美津雄と小百合は、すっかりこの世の者でなくなった父親を前に、
「うぇぇぇぇん!」
と泣きじゃくった。美津雄は、
「やっぱり死んじまったンだな!? 親父、先刻は引っ叩いて御免な!」
と頭を下げた。小百合も、
「昨年のお歳暮に、もっと高めのウィスキー送ればよかった…」
とハンカチで目頭を押さえた。
その間、フラフラと浩二は洗面所へ行き、玄関でたどり着くまで身に付けていたワイシャツや下着を洗濯機に入れた。嗚呼、遺品整理もしなければならないか? でも、しばらく弄らない方がイイかもしれない。彼は、背広とネクタイをハンガーにかけ、仏間の衣裳ラックに引っ掛けた。相変わらず美津雄と小百合は泣いている。浩二は、葬儀屋にお礼を言い、翌日葬式の段取りを決めると話した。
葬儀屋を見送ると、フラフラと浩二は応接間へ向かい、ソファに座り込んだ。どっと疲れが出て、彼はそのまま横になった。
『父さん、本当は爆睡しているだけなンじゃ…』
未だに浩志が死んだのを現実として受け入れられずにいた。しかし、死亡診断はしてもらったし、確かに脈もなかった。死に化粧もされた。やっぱり死んだのだ。
そのまま浩二は眠ってしまった。かなり深い眠りだった。二時間は寝ていただろうか? 小百合の声で目が覚めた。彼女は、
「浩二さん、何か作りますか?」
と聞いた。
「…寝ちゃった。確か、冷蔵庫に鶏肉が入ってるので、何でも」
「まァ、サッパリしたものでも。美津雄さんはやけ酒したいみたいだけど…」
「酒はご覧の通り、いくらでもあるので」
サイドボードの中には、浩志が趣味で集めた高級そうな洋酒がズラリと並んでいた。グラスも日本橋のM百貨店で買い求め、中には一度も使っていないものもあった。
小百合が台所へ向かうと、浩二は洗濯機の中に浩志が着ていたワイシャツや下着が入っていたのを思い出した。脱衣所へ行き、洗濯機からそれらを取り出すと仏間に置いてあった洗濯干しに一つひとつ干した。ワイシャツは青い縦縞のレギュラーカラーで、下着はリブ編みの白いタンクトップ、透け感のある水色のビキニだった。浩志の亡骸から離れずにいた美津雄は、
「親父、あんなスケベなパンツ穿いてたのか?」
と聞いた。浩二は苦笑しながら、
「トランクスなんて、穿いたところ見たことないよ。これは未だ序の口」
と���った。
「そんなスケスケじゃ、小便ちびったら大変だろ?」
「まァ、それは判らないけど」
「嗚呼、やっぱり親父はむっつりスケベだな!」
天井から二人のやり取りを見ていた浩志は、
“トランクスなんてちっとも色気がねぇ下着穿けるか!? 終わったオヤジみてぇな美津雄とは違うンだよ!”
と悪態をついた。嗚呼、浴衣を無理矢理着させられたが、あんな格好じゃ極楽浄土なんてできやしない。できれば背広を着せてもらえないかなァ? 下着はあのビキニでもイイ。何とか誰かの夢の中に出て来れないものか? 浩志は、何とか自分らしい葬式をして欲しいと渇望していた。
仏間隣の居間で三人は夕飯を食べた。小百合は給食センターの栄養士をしており、最近は美津雄が肥満気味なので余分な脂質を除いた食事作りに心掛けていた。それでも、
「嗚呼、豚の角煮が食いたいなァ〜」
と、片手に日本酒が入った「ちろり」を持ちながら訴えた。小百合は、
「この間だって、銀座で中華料理を堪能した後にビヤホールやバーで飲んで来たでしょ? あなた、動脈硬化進んでるンだから」
と言った。
そもそも食事に日本酒を付けた時点でアウトだろうと、浩二は思った。佐伯家の男たちは酒好きで、所謂「生活習慣病」が原因で皆「お陀仏」になっていた。彼は、できる限り長生きしようと最近は酒飲みを自粛していた。今回は、だが、今日は飲まずにはいられないと、応接間のサイドボードに入っていた「バレンタイン十二年」を持ち出し、ロックで飲んでいた。
こうして、浩志が死んだ一日目は終わった。美津雄はかつて使っていた自分の、小百合は浩二の部屋で休んだ。一方、浩二は居間に布団を敷いて寝ることにした。
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anohinokimochi2 · 21 days ago
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初めて義実家の法事に参加。
初めての親戚付き合い。
お経が終わってそのまま義実家で食事会。
食べ始めはよかったけど、おっとがお酒を注ぎに回った時に今日唯一いた子供の、親戚の5歳の女の子になぜかおっとが気に入られてしまって、おっとにかまってほしくてしょうがない女の子。
おっとがトイレに行ってもどこ行った?って探すほど。
そんでおっとはご飯もほとんど食べずに違う部屋でその子とずっと遊んでて。(まじその子の親放置しすぎやろイライラ)
義母に面白いから様子見てきたら?って言われて別に見に行きたくもないけど行ったら
おっととその女の子とおっとのお姉さん3人で遊んでて、
だるっと思いながらも笑いながら口挟みながら3人が遊んでるところ見てたら(いま妊娠8ヶ月で動くのしんどいから見てるしかできない)
その女の子に突然指差されて(この人遊びに参加しないけどなに?みたいな感じで)
そしたらおっとが「このお姉ちゃんは大人しいからね」って言ってきて。
大人しいって言われるの昔からコンプレックスで1番言われたくないほどのワードで。
その瞬間学生時代に遊びの輪に入れなかった自分と重なって仲間に入れない疎外感で惨めな気持ちになって。むかつきもしたし。
泣きそうになったからその場から離れてとりあえずトイレに入ったけど涙止まんなくて。
おっとがマズいこと言ったかもって思ったからか、トイレから出たら私のとこに来てて、泣き顔に気づいたみたいで大丈夫?ひどいこと言ってごめんって言ってきたけど。
涙は止まんないし、他の人が来たら困るからおっとには「構わんであっち行って」って言って。
(その間も女の子がおっとを探してる。こわすぎ)
大人に「〇〇ちゃん探してるよ!」って遠くから声かけられてもおっとは「ちょっと今無理」って私のところにいようとするけど泣いてるのが他の人にバレたら恥ずかしすぎるからおっとに「あっち行って」ってとにかく言って。
そのあと洗面台で落ち着いてから席に戻ったけど、1人でポツン。少しして義父が席についたから1人じゃなくなったけど、少し話すも会話は続かず。涙目気づかれてないかなってドキドキ。
その後ようやくおっとが戻ってきて食事を始めながら父親と話してるの横で聞いてるけど、また涙出そうになって。涙我慢しても鼻水はめっちゃ出てきて。急いで残りの物食べて早々にマスクして泣いてるのを誤魔化す。
お開きになっ��その親戚一家が帰る時に、もう渡してあった子供用のお菓子が入った袋をなぜかその家族の誰かが「〇〇くん(おっとのこと)から渡したら喜ぶんじゃない?」って言ってきて、おっとがまた女の子のところに付きっきりになる。
全員でお見送りのために外に出ないと行けなくておっとはすでに外で女の子と一緒にいて。
玄関でまたイライラすること発生。
義実家に来た時にわたしの靴をおっとが自分の靴と一緒に遠いところに並べてて、その時わたしは「常に一緒にいるかな?私が外出たい時一緒にいるかな?」って遠くに置かれたら妊婦の私は困るってことを言ってみたけどおっとは大丈夫って感じで上り框から離れたところに置いて。
でその親戚一家のお見送りの時案の定おっとは先に外に出て女の子に付きっきりだから、私もみんなと一緒に外にお見送りに出る時やっぱりいないじゃん一緒にってイライラ。ムカつきながら仕方ないから汚いけど床を歩いて自分の靴まで行く。
お見送り終わった後に玄関に戻ってきた時にもう私ら家族しかいないのになぜかまた私の靴を1番離れたところに置こうとして、イライラのボルテージが頂点に到達。「近くに置いといてよ!」って怒る私。
そのあとはお互い喋らずに、後片付けを義両親と義姉夫婦と6人でしてお開きに。
帰りの車で「ひどいこと言ってごめん」って言われたけどそれだけじゃなくて初めての親戚付き合いで心細い中ほとんどずっと1人だったこと。長男のおっとがお寺さんの相手とか他の大人の相手してて1人なら仕方ないことだから我慢できるけど、なんで女の子とずっと遊んでる訳?!今は食べる時間なんだから子供の言いなりにならずに頃合い見て女の子と一緒に戻ってくるべきやろ!せんなんことは女の子の相手じゃなくて妊婦の私のサポートやろ!(鬼嫁発言。笑)って泣きながら思ってること伝えて。
そもそもその子の親もおっとに任せっきりにするんどうなん?!って思う。おっとほとんどご飯食べてないじゃんっておっとがいない時に話に出たのにそれでも女の子の相手しに行かずに自分たちは食べながら会話楽しんでて人任せすぎじゃない?!
その家族が帰る時も車に大人全員乗り込んだのに女の子が地面に寝そべって動かなくて、そしたらその子の親じゃなくてその子のおばあちゃんがその子のところまできて抱き上げて車に乗ってる母親に渡して母親は「ありがとうございまーす」って。いやお前が動けよ。なんで見てるだけなんよ。そもそもコンクリートの地面に自分の子が仰向けに寝る時点でやばいってならんのかい親は。
とにかくおっとは2度とこんなことにならんように気をつけるって言ってきたけど、許せない。一生忘れないこの日のこと。
4年後に今度はおっとの祖父の17回忌あるけど、行きたくない。自分の子供をあんな女の子と遊ばせたくない。
仮病使って絶対に欠席してやる。この日のことは絶対に忘れないからなおっとよ。
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takashimatsui1960 · 2 years ago
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2023-11-09
医院へ行って医者に「いかがですか」と聞かれると、食ってます寝てますと答えるが、半分嘘で毎日3時間くらいしか寝てない。なぜかはわからない。また微妙に頭が痛いというのも嫌な感じ。
今日は夕方から神保町で落語をうかがう。ついでに矢口書店の店外棚にあった新潮日本文学の「永井龍男集」を買おうとするがなくなっていた。最近文学書にそれほど執着もないし、家に古書を増やすのはよくないのでこれはこれでよし。近々また本を処分する。帰宅後むやみに疲れる。玄関の上がり框にへたりこんでしまった。鈍い頭痛もさらに続く。また頭皮の具合悪くなるのか。考えてもしょうがない。もう寝る。
社会人野球日本選手権も始まってる。毎日新聞のサイトでライブが観られる。六大学も実況音声不要だとおもう。BIG6はアナウンサー嫌々やってる感じで辛そうだし。
東芝、大ガスに屈する。
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kazuya-ikezoi · 2 years ago
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モルタル土間の玄関の事例です すっきり浮かせた框と透かしたのガラス戸 足元を抜いた鉄骨階段で、軽快な 印象に統一 全体をまとめています 他にも事例を紹介しているので@kazuya_ikezoi からとんでみてください よかったらフォローもお願いします #家づくりのアイデア #家づくり #マイホーム #ナラ #オーク #無垢材 #床材 #斜め框 #玄関デザイン #モルタル土間 #モルタル土間 #鉄骨階段 #ガラス戸 #アイアン手摺 #ペンダント照明 #玄関照明 #観葉植物 #設計士とつくる家 #コラボハウス https://www.instagram.com/p/CoUzNQVPjgq/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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koshimemo · 4 years ago
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HUITさんの階段下は心地よいアフリカの風が吹いています🇰🇪 ・ ・ https://www.field-h.net ・ ・ #huit #ユイット #植物のある暮らし #猫のいる暮らし #観葉植物 #ハンギンググリーン #オーダーキッチン #ペンダントライト #新築 #框扉 #玄関デザイン #階段下スペース #archistudent #house #kitchen #lighting #architecturephotography #catstagram #オーク #スチール階段 #アフリカ雑貨 #ライオン #チーター #アート #川崎市 #横浜 #たまプラーザ #二子玉川 #設計事務所名古屋 #フィールドの家 (Kawasaki-shi, Kanagawa, Japan) https://www.instagram.com/p/CXyJMm6v8wc/?utm_medium=tumblr
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oharash · 2 years ago
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余花に吉兆
1.  友人あるいは恋人のようなことを始めたら、もっと分かり合えて親密な空気だとか柔らかな信頼みたいなものが生まれるかと予想していたが、俺らの空間は特段何かが変化することもなく、近すぎず遠すぎずの関係が果てなく伸びていくのみだった。  大切なものを手のひらに閉じ込めるような日々だった。彼の大きな体は存��感だけでもどこか騒々しかったが、無音より心地よかったのだ。
 うずたかく積もった瓦礫がようやく街から消える頃、俺は人生初の無職デビューを飾った。事務所は畳んだし復興支援委員会の任期も終わった。警察や公安、行政から相変わらず着信や不定期な依頼はあれど、様々な方面からの誘いを断り所属する場所がなくなった俺はぼんやりと初夏を迎えることとなった。  無職になりまして。とセントラルの定期通院の帰り、待ち合わせた居酒屋で焼き鳥をかじりながら言うと彼は呆けた顔で俺を見た。エアコンの効きが悪いのか、妙に蒸し暑くてふたりとも首筋にじんわり汗が滲んでいる。 「お前が?」 「はい。しばらくゆっくりしてから次のこと考えようと思って」 「お前にそんな発想があったとは」 「どういう意味ですか」 「休もうという発想が。いつも忙しく働いとったろーが。そもそも趣味や休みの過ごし方をお前の口から聞いたことがない」 「それ元SKたちにも言われましたわーー。人を仕事人間みたく言わんでくださいよまあその通りですけど。今までやれなかったこと全部やったろ、と思ってたんですけど10日で飽きました。福岡いるとどうしても街の様子気になっちゃうしホークスだ〜〜♡ て言われるし、どっか旅行でも行けばって言われるんすけど全然そんな気になんないんすよ。来月には引きこもりになってるかもしれねっす」  そしたら会いに来てくださいね♡ と言ったら、彼は釈然としないような、そして何かに耐えるような、そんな顔をした。  店を出ると強い風が頬を打った。まだほんのわずか残っていた春の気配が吹き飛んでいく。じゃあ、と手をあげかけたところでデカい手が伸びてきて顎を掴まれた。「飲み直すぞ、うちで」「ひゃい?」かくて俺はそのままタクシーに突っ込まれ(この人と乗る後部座席は超狭い)、轟邸へお持ち帰りされることとなった。
 暗闇の中でうずくまる恐竜みたいな日本家屋。数奇屋門と玄関の間だけで俺の1LDKがすっぽり入りそう。靴を揃えて上り框に足をかけると今度は首根っこを掴まれた。連行されるヴィランそのままの格好で俺は廊下を引き摺られ居間の隣室へ放り込まれる。今夜は何もかも展開が早い。「なになに? 俺には心に決めた人がいるんですけど⁉︎」「使え」「は?」 「この部屋を好きなように使え。しばらく置いてやる」 「もしかしてあなた相当酔ってますね⁉︎」 「あれくらいで酔わん。お前が、ヒーロー・ホークスが行くところがないなんて、そんなことがあってたまるか」  畳に手をついて振り仰ぐ。廊下から部屋に差し込む灯りは畳の目まではっきりと映し出しているけれど、彼の表情は逆光でわからない。 「俺、宵っぱりの朝寝坊ですよ」 「生活習慣までとやかく言わん。風呂を沸かしたら呼びに来てやるからそれまで好きにしてろ」  けれど俺が呼ばれることはなく、様子を見に行くと彼は居間で寝落ちていたのでやっぱり酔っていたのだと思う。デカい体を引きずって寝室に突っ込んだ。風呂は勝手に借りた。
 酔ってはいたものの彼の意思はしっかり昨晩にあったようで、そして俺も福岡に帰る気が全くおきなかったので、出会い頭の事故のように俺の下宿生活は始まった。  「うちにあるものは何でも好きに使え」なるありがたいお言葉に甘えて俺は巣作りを開始した。足りないものはAmazonで買った。徹夜でゲームしたりママチャリで街をぶらついたり(帽子をかぶってれば誰も俺に気づかなかった)ワンピース一気読みしたり豚肉ばかり使う彼からキッチンの主権を奪いそのまま自炊にハマったりもした。誰を守る必要もなく、誰かを気にかける必要もない。誰を満足させる必要もなかった。彼が出かける時間に俺は寝ていたし夕飯も好きな時間に食べていたので下宿より居候の方が正確だったかも知れない。誰かとひとつ屋根の下で暮らすことへの不安はすぐ消えた。早起きの彼がたてる足音や湯を使うボイラー音、帰宅時の開錠の音。そんな他人の気配が俺の輪郭を確かにしていったからだ。  ヒーローを引退した彼は事務所を売却したのち警備会社の相談役に収まっていたがしょっちゅう現場に呼ばれるらしく、出勤はともかく帰り時間はまちまちだった。まあわかる。治安維持に携わっていて彼に一目置いていない人間はまずない(治安を乱す側はなおさらだ)。「防犯ブザーのように使われる」とぼやいていたが、その横顔にはおのれの前線を持つものの矜持があった。どうしてか俺は嬉しい気持ちでそれを見ていた。
2.  ある夜、俺は玄関で彼のサンダルを履き外へ出た。引き戸を開けると明るい星空が広がっていて、それが妙に親しかった。縁側に腰掛けてぼんやり彼方を眺めると星の中に人工衛星が瞬いている。ほとんどの民家の明かりは消えていて、夜は少し湿りそして深かった。紫陽花だけが夜露に濡れて光っていた。  知らない街なのに、他人の家なのに、帰らんと、とは微塵も思わ��かった。俺はここにいる。知らない場所に身ひとつで放り出されてもここに帰ってくる。呼吸をするたびに心と体がぴったりと張り付いていった。  気配を感じて振り返ると、あの人がスウェットのまま革靴を引っ掛けて玄関から出てくるところだった。 「風邪をひくぞ」と言われ何も答えずにいると犬か猫みたいにみたいに抱えられ、家の中に連れ戻された。  それからほとんど毎夜、雨でも降らない限り俺は外に出て彼方を眺めた。そうすると彼は必ずやってきて俺を連れ戻した。ある夜「一緒に寝てください」と言ったら彼は呆れたように俺を見下ろして「お前の部屋でか」と言った。そうかあそこは俺の部屋なのか。「あなたの部屋がいいです」と言ったら視線がかちあい、耳の奥で殺虫器に触れた虫が弾け飛ぶみたいな音がして、目が眩んだ。 「そんで、同じ布団で」 「正気に戻ってからセクハラだとか騒ぐなよ」  彼の布団にすっぽりおさまると目が冴えた。やっぱこの人なんか変。そんで今日の俺はもっと変。分厚い背中に額をあてて深く息を吸った。おっさんの匂いがして、めちゃくちゃ温かくて、甘くて甘くて甘くて足指の先まで痺れる一方で自分で言い出したことなのに緊張で腹の奥が捻じ切れそうだった。  彼の寝息と一緒に家全体が呼吸をしている。眠れないまま昨夜のことを思い出す。俺が風呂に入ろうとして廊下を行くと、居間で本を読んでいた彼が弾かれたように顔を上げた。その視線に斥力のようなものを感じた俺は「お風呂行ってきまぁす」となるべく軽薄な声で答えた。一秒前まであんな強い目をしていたくせに、今はもう血の気の失せた無表情で俺を見上げている。妙に腹が立って彼の前にしゃがみ込んだ。「一緒に入ります?」「バカか」「ねえエンデヴァーさん。嫌なこととか調子悪くなることあったら話してください。ひとりで抱え込むとろくなことないですよ。俺がそれなりに役立つこと、あなた知ってるでしょ?」 「知ったような顔をするな」 「俺はド他人ですが、孤独や後悔についてはほんの少し知っていますよ」  真正面から言い切ると、そうだな、と素っ気なく呟き、それきり黙り込んだ。俺ももう何も言わなかった。  ここは過ごすほどに大きさを実感する家だ。そこかしこに家族の不在が沈澱している。それはあまりに濃密で、他人の俺でさえ時々足をとられそうになる。昨日は家族で食事をしてきたという彼は、あの時俺の足音に何を望んだのだろう。  いつぞやは地獄の家族会議に乱入したが、俺だって常なら他人の柔らかな場所に踏み入るのは遠慮したいたちだ。けれどあの無表情な彼をまた見るくらいなら軽薄に笑うほうがずっとマシだった。これから先もそう振る舞う。  きんとした寂しさと、額の先の背中を抱いて困らせてやりたい怒り。そんなものが夜の中に混ざり合わないまま流れ出していく。
3.  涼しい夜にビールを飲みながら居間で野球を眺めていたら、風呂上がりの彼に「ホークス」と呼ばれた。 「その呼び方そろそろやめません? 俺もう引退してるんすよ。俺はニートを満喫している自分のことも嫌いじゃないですが、この状態で呼ばれるとホークスの名前がかわいそうになります、さすがに」「お前も俺のことをヒーロー名で呼ぶだろうが」「じゃあ、え……んじさんて呼びますから」「なぜ照れるんだそこで」「うっさいですよ。俺、けーご。啓吾って呼んでくださいよほら」「……ご」「ハイ聞こえないもう一回」「け、けいご」「あんただって言えないじゃないですかあ!」  ビールを掲げて笑ったら意趣返しとばかりに缶を奪われ飲み干された。勇ましく上下する喉仏。「それラスト一本なんすけどお」「みりんでも飲んでろ。それでお前、明日付き合え」「はあ」「どうせ暇だろ」「ニート舐めんでくださいよ」  翌日、俺らは炎司さんの運転で出かけた。彼の運転は意外に流れに乗るタイプで、俺はゆっくり流れていく景色を眺めるふりをしてその横顔を盗み見ていた。「見過ぎだ。そんなに心配しなくてもこの車は衝突回避がついている」秒でバレた。 「そろそろどこいくか教えてくださいよ」 「そば屋」  はあ、と困惑して聞き返したら、炎司さんはそんなに遠くないから大丈夫だ、とまたしてもピンぼけなフォローで答えた。やがて商業施設が消え、国道沿いには田園風景が広がり出した。山が視界から消え始めた頃ようやく海に向かっているのだと気づく。  車は結局小一時間走ったところで、ひなびたそば屋の駐車場で止まった。周りには民家がまばらに立ち並ぶのみで道路脇には雑草が生い茂っている。  テレビで旅番組を眺めているじいさん以外に客はいなかった。俺はざるそばをすすりながら、炎司さんが細かな箸使いで月見そばの玉子を崩すのを眺めていた。 「左手で箸持つの随分上手ですね、もともと右利きでしょ?」 「左右均等に体を使うために昔からトレーニングしていたから、ある程度は使える」 「すげえ。あなたのストイックさ、そこまでいくとバカか変態ですね」 「お前だって同じだろう」  俺は箸を右から左に持ち替えて、行儀悪く鳴らした。 「んふふ。俺、トップランカーになるやつってバカか天才しかいねえ、って思うんすよ。俺はバカ、あなたもバカ、ジーニストさんも俺的にはバカの類です」 「あの頃のトップ3全員バカか。日本が地図から消えなくてよかったな」  そばを食べて店を出ると潮の匂いが鼻を掠めた。「海が近いですね?」「海といっても漁港だ。少し歩いた先にある」漁港まで歩くことにした。砂利道を進んでいると背後から車がやってきたので、俺は道路側を歩いていた炎司さんの反対側へ移動した。  潮の��りが一層強くなって小さな漁港が現れた。護岸には数隻の船が揺れるのみで無人だった。フードや帽子で顔を隠さなくて済むのは楽でいい。俺が護岸に登って腰掛けると彼も隣にやってきてコンクリートにあぐらをかいた。 「なんで連れてきてくれたんですか。そば食いたかったからってわけじゃないでしょ」  海水の表面がかすかに波立って揺れている。潮騒を聞きながら、俺の心も騒がしくなっていた。こんな風に人と海を眺めるのは初めてだったのだ。 「俺を家に連れてきたのも、なんでまた」 「……お前が何かしらの岐路に立たされているように見えたからだ」 「俺の剛翼がなくなったから気ィ使ってくれました?」  甘い潮風にシャツの裾が膨らむ。もう有翼個性用の服を探す必要も服に鋏を入れる必要も無くなった俺の背中。会う人会う人、俺の目より斜め45度上あたりを見てぐしゃりと顔を歪める。あの家で怠惰な日々を過ごす中で、それがじわじわ自分を削っていたことに気づいた。  剛翼なる俺の身体の延長線。俺の宇宙には剛翼分の空白がぽっかり空いていて、けれどその空白にどんな色がついているかは未だわからない。知れぬまま外からそれは悲しい寂しい哀れとラベリングされるものだから、時々もうそれでいいわと思ってしまう。借り物の悲しさでしかないというのに。 「俺より先に仲間が悲しんでくれて。ツクヨミなんか自分のせいだって泣くんですよかわいいでしょ。みんながみんな悲壮な顔してくれるもんだから、正直自分ではまだわかんなくて。感情が戻ってこない。明日悲しくなるかもしれないし、一生このままかも。  あなたも、俺がかわいそうだと思います?」 「いいや」  なんのためらいもなかった。 「ないんかい」 「そんなことを思う暇があったら一本でも多く電話をして瓦礫の受け入れ先を探す。福岡と違ってこの辺はまだ残っとるんだ。それから今日のそばはおれが食いたかっただけだ」 「つめたい!」 「というかお前そんなこと考えとったのか。そして随分甘やかされとるな、以前のお前ならAFOと戦って死ななかっただけ褒めてほしいとか、ヒーローが暇を持て余す世の中と引き換えなら安いもんだと、そう言うだろう。随分腑抜けたな。周囲が優しいなんて今のうちだけだ、世の中甘くないぞ、きちんと将来のことを考えろ」 「ここで説教かます⁉︎ さっきまでの優しい空気は!」 「そんなもの俺に期待するな」  潮風で乱れる前髪をそのままにして、うっとり海に目を細めながらポエムった10秒前の自分を絞め殺したい。  彼は笑っているのか怒っているのか、それともただ眩しいだけなのかよく分からない複雑な顔をする。なお現在の俺は真剣に入水を検討している。 「ただ、自分だけではどうしようもないときはあるのは俺にもわかる。そんな時に手を……  手を添えてくれる誰かがいるだけで前に進める時がある。お前が俺に教えてくれたことだ」 「ちょ〜〜勝手。あなたに助けてもらわなくても、俺にはもっと頼りたい人がいるかもしれないじゃないですか」 「そんな者がいるならもうとっくにうちを出ていってるだろう。ド他人だが、俺も孤独や後悔をほんの少しは知っている」  波音が高くなり、背後で低木の群れが強い海風に葉擦れの音を響かせた。  勝手だ、勝手すぎる。家に連れてきてニートさせてあまつさえ同衾まで許しといて、いいとこで落として最後はそんなことを言うのか。俺が牛乳嫌いなのいつまでたっても覚えんくせにそんな言葉は一語一句覚えているなんて悪魔かよ。  俺にも考えがある、寝落ちたあんたを運んだ部屋で見た、読みかけのハードカバーに挟まれた赤い羽根。懐かしい俺のゴミ。そんなものを後生大事にとっとくなんてセンチメンタルにもほどがある。エンデヴァーがずいぶん可愛いことするじゃないですか。あんた結構俺のこと好きですよね気づかれてないとでも思ってんすか。そう言ってやりたいが、さっき勝手に演目を始めて爆死したことで俺の繊細な心は瀕死である。ささいなことで誘爆して焼け野原になる。そんなときにこんな危ういこと言える勇気、ちょっとない。 「……さっきのそば、炎司さんの奢りなら天ぷらつけとけばよかったっす」 「その減らず口がきけなくなったら多少は憐れんでやる」  骨髄に徹した恨みを込めて肩パンをした。土嚢みたいな体は少しも揺らがなかった。  
 車に向かって、ふたりで歩き出す。影は昨日より濃く短い。彼が歩くたびに揺れる右袖の影が時々、剛翼の分だけ小さくなった俺の影に混じりまた離れていく。 「ん」  炎司さんが手でひさしを作り空を見上げ、声をあげる。その視線を追うと太陽の周りに虹がかかっていた。日傘。 「吉兆だ」
4.  何もなくとも俺の日々は続く。南中角度は高くなる一方だし天気予報も真夏日予報を告げ始める。  SNSをほとんど見なくなった。ひとりの時はテレビもつけず漫画も読まず、映画だけを時々観た。炎司さんと夜に食卓を囲む日が増えた。今日の出来事を話せと騒ぎ聞けば聞いたで質問攻めをする俺に、今思えば彼は根気よく付き合ってくれたように思う。  
 気温もほどよい夕方。庭に七輪を置き、組んだ木炭に着火剤を絞り出して火をつける。静かに熱を増していく炭を眺めながら、熾火になるまで雑誌を縛ったり遊び道具を整理した。これは明日の資源ごみ、これは保留、これは2、3日中にメルカリで売れんかな。今や俺の私物は衣類にゲーム、唐突にハマった釣り道具はては原付に及んでいた。牡丹に唐獅子、猿に絵馬、ニートに郊外庭付き一戸建てだ。福岡では10日で暇を持て余したというのに今じゃ芋ジャージ着て庭で七輪BBQを満喫している。  炭がほの赤く輝き出すころに引き戸の音が聞こえ、俺は網に枝豆をのせた。 「今日は早いですね〜〜おかえりなさい」 「お前、無職が板につきすぎじゃないか?」 「まだビール開けてないんで大目に見てください」  家に上がった彼はジャージ姿でビールを携えて帰ってきた。右の太ももには「3-B 轟」の文字。夏雄くんの高校ジャージだ、炎司さんは洗濯物を溜めた時や庭仕事の時なんかにこれを着る。そのパツパツオモシロ絵面がツボに入り「最先端すぎる」と笑ったら「お前も着たいのか?」とショートくんと夏雄くんの中学ジャージを渡され、以来俺はこの衣類に堕落している。遊びにきたジーニストさんが芋ジャージで迎えた俺たちを見てくずおれていた。翌々日ストレッチデニムのセットアップが届いた(死ぬほど着心地がよかった)。  焼き色のついた枝豆を噛み潰す。甘やかな青さが口の中に広がっていく。 「福岡帰りますわ、ぼちぼち」  彼の手からぽとりとイカの干物が落っこちた。砂利の上に不時着したそれにビールをかけて砂を流し、網の上に戻してやる。ついでにねぎまを並べていく。 「……暇にも飽きたか」 「いや全然、あと1年はニートできます余裕で」  ぬるい風と草いきれが首筋をくすぐり、生垣の向こうを犬の声が通り過ぎていく。いつも通りのなんでもない夕方だ。そんななんでもなさの中、現役の頃は晩酌なんてしなかっただろう炎司さんが俺とビールを開けている。俺らはずいぶん遠くまで来た。 「福岡県警のトップが今年変わったんですけど、首脳部も一新されて方針も変わったらしくて、ヒーローとの連携が上手くいってないらしいんすよね。警察にもヒーローにも顔がきいて暇な奴がいると便利っぽいんで、ちょっと働いてくるっす。そんで、俺のオモチャなんですけど」整理した道具たちに目をやる。「手間かけて悪いんですが処分してくれませんか?」 「……どれも、まだ使えるだろう」 「はあ。リサイクルショップに集荷予約入れていいです?」 「そうじゃない。処分する必要はないと言ってるんだ」  的外れと知っていてなお、真っ当なことを言おうとする融通のきかなさ。その真顔を見て俺この人のこと好きだな、と思う。子どものまま老成したような始末の悪さまで。 「それは荷物置きっぱにしてていいからまたいつでも来いよってことでしょーーか」 「……好きにしろ」  唸るような声はかすかに怒気をはらんでいる。さっきまで進んでたビールは全然減ってないしイカはそろそろ炭になるけどいいんだろうか。ビール缶の汗が彼の指をつたい、玉砂利の上にいびつな模様をつくっていく。 「じゃあお言葉に甘えて。それとツクヨミが独立するってんで、事務所の立ち上げ手伝ってほしいって言われてるんすよ、なんでちょくちょくこっちに滞在するので引き続きよろしくお願いします具体的には来月また来ます♡」 「それを先に言え‼︎」  今度こそ本物の怒りが俺の頬を焦がした。具体的には炎司さんの首から上が燃え上がった。七輪みたいに慎ましくない、エンデヴァーのヘルフレイム。詫びながら彼の目元の皺を数えた。青い瞳にはいつも通りに疲労や苛立ち、自己嫌悪が薄い膜を張っている。今日も現場に呼ばれたんかな。ヒーロースーツを着なくなっても、誰かのために走り回る姿は俺の知ったエンデヴァーだった。腕がなくなろうが個性を使わなかろうが、エンデヴァーを許さぬ市民に罵倒されようが。だから俺も個性なくてもできることをやってみっかな、と思えたのだ。ここを離れ衆目に晒されることに、不安がないわけではないけれど。  疲れたらここに帰ってまたあの部屋で布団かぶって寝ればいい。家全体から、やんわり同意の気配が響くのを感じる。同意が言いすぎだとしたら俺を許容する何か。俺のねぐら、呼吸する恐竜の懐の。 「その……なんだ、頑張れ」 「アザーース」  帰属していた場所だとか、背にあった剛翼だとか。そんなものがごっそりなくなった体は薄弱で心もとない。だから何だ、と思う。俺はまだ変わる。  空があわあわと頼りない色合いで暮れていく。隣にしゃがんだ炎司さんの手が俺の背に添えられた。翼の付根があったあたりにじわりと熱が広がり、そのまま軽く背を押されて心臓が跳ねる。 「来月はそば打ちでもしましょうね」  短い肯定が手のひらの振動から伝わる。新たな命を吹き込まれる俺の隣で、炭がぱちりと爆ぜた。
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citrusgraceblog · 4 years ago
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橘品女子・新企画収納商品・おしゃれな女子用アイテム&折りたたみ下駄箱のおすすめ
|https://ameblo.jp/yinluokyoto/entry-12691138906.html
【折りたたみシューズキャビネット・下駄箱】
工具が不要で簡単に組み立てできるシューズキャビネット。折りたたみ式なので、フレームを広げるだけで素早く設置できるため、ねじやビスを使う必要がありません。細かい作業が苦手な方や組み立てに労力をかけたくない方におすすめです。
靴を収納させたり整理したりする際に便利。大容���タイプのモノを探している方におすすめの製品です。
スキスムシューズボックス
間取りやスペースにあわせて、多彩なオプションと豊富なプランをラインナップ。レスフラット/フルフラット/四方框デザインよりお選びいただけます。他のスキスム製品とカラーコーディネートできます。
靴をすっきり収納できるシューズキャビネット。スリムタイプやつっぱりタイプは、狭い玄関にも設置しやすいのが魅力。オープンタイプのシューズラックは通気性や出し入れの面でも便利ですが、半透明の扉やカバーが付いているタイプなので、靴が丸見えではないのがあまり気にならないです。
上下段に分かれている、12足分の靴を入れられるシューズキャビネット。上段にスリッパ、下段に靴を入れられるため、来客時に靴を整理できます。自宅で個人事務所やクリニックを経営している方にもおすすめです。
部屋の中やウォークインクローゼットに靴をたっぷり収納したい方にもおすすめの製品。扉付きでリビングなどの人目がある場所にも置けるのが魅力です。カバーの色は茶色があり、インテリアにあわせて選べます。
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kkagneta2 · 5 years ago
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ボツ3
長身女性。これも最後まで書いてるけど個人的に好きじゃないので途中まで投稿してお蔵入り。
麻耶が昼の弁当を忘れたから届けてくれ、と白羽の矢が立ったのは、先週水曜日の午前10時34分。僕が、………じゃなくて俺が昼からの講義にそろそろ赴こうかとぼんやりしている時だった。
「なんだ、あいつが弁当を忘れるなんて珍しいじゃないか」
呆れつつも、別に弁当を届けるくらい訳ないし、久しぶりに母校に入れるかと思うとちょっとウキウキして、俺は赤い綺麗な風呂敷に包まれたそれをいそいそとリュックに入れた。食の細い俺とは違って、バレーで多くのエネルギーを使う彼女の弁当箱は大きくて、リュックはすっかり重くなってしまった。
麻耶が通う中学校とは、歩いて15分ほどの距離がある。俺はその15分の道のりを、普段の倍くらい重いリュックを背負って、冬の寒さに凍えながら歩き、やがて見えて来た懐かしの校門をくぐった。卒業してからこれで3回目なのだが、ここに身内が入学してからは初めてであった。校門があって、校庭があって、校舎があって、右手に体育館、左手に駐輪場やらゴミ捨て場やら何やらがある、………この光景は10年近く経った今でも変わっていない。俺は、あの麻耶がこの校舎の中で黙って授業を聞いている所を想像して、吹き出しそうになったけれども、そのまま校庭を突っ切って、靴箱、―――に向かいそうになる足を職員玄関へと向けた。
入って直ぐ近くにある事務室の人たちに妹の忘れ物を届けに来た旨を伝えると、もうすぐで休み時間ですので本人に直接手渡してくださいと言われ、少々手持ち無沙汰になった。10分ほどしてチャイムが鳴ると同時に麻耶はやって来て、まずはありがとうと言って弁当箱を受け取った。
「お母さんが来るのかと思ってた」
「なんか用事があるんだって」
「ふーん、それで暇なお兄ちゃんが来たって訳なんだ」
「暇とはなんだ、暇とは。俺だってこれから、―――」
「はいはい」
と伸び上がって今にも突っかかりそうな俺を制してから、少し後ずさって考え込む様子。なんとなく良くない予感がしたから固まって、
「どうしたんだ、………?」
と聞いた。すると手を打つ代わりに眉をパッと上に吊って、
「お兄ちゃん、ちょっと待っててくれる?」
「?」
「ちょっと回ってくるから、そこに居てね!」
「ちょ、ちょっと、―――」
さて弁当箱ごと廊下の奥に消えた彼女は、それから1分か2分くらい経ってから、職員玄関から入ってきたのであった。
「おまたせ」
「一体��うしたんだ、わざわざそっちから来て」
「折角届けてくれたんだもん。いくらお兄ちゃんだからって、見送らないと、こう、………良心がね、………」
などと胸を抑えて心にも無いことを言う。そして飛び跳ねるように背筋を伸ばして、
「さ、そういうことだから、お兄ちゃんほら、靴履いてよ。これから大学あるんでしょ?」
と、兄である俺を見下ろしながら言った。
この時俺は上り框、麻耶は土間に立っていたから、見下ろすと言ってもまだ顔と顔を突き合わせられていた。が、ストンと降り立った時にはすっかり見上げる形、もう慣れた光景に眉間にシワを寄せていると、その頭の上に手を置いて、
「あれ? さっきまでここに顔があったのに。どこ行ったんだろう、………」
と不思議そうにキョロキョロする。
「うるさい。お前が高すぎるんだ」
「え~、お兄ちゃんが低すぎるんだってば。147って何、女の子じゃん」
「お前こそ178とは何だ。いや、何なんだちくしょう、………」
「何なんだろうねぇ、どうしてお兄ちゃんはお兄ちゃんなのに、こんなに小さいんだろうねぇ」
と、今度は肘を乗せて来たから払い除けた、そのまま歩きだして、
「休み時間終わるぞ」
「大丈夫だよ。次は高杉先生だから、―――お兄ちゃんも知ってるでしょ?」
「知ってるけど、俺はお前のお兄ちゃんなんだから、見過ごしちゃいけないだろ」
わざと「お兄ちゃん」の部分を強く言ってのけると、麻耶は突如として腹を抱えた。
「お、お兄ちゃん、………お兄ちゃん、お兄ちゃん、………お兄ちゃんだって、………くっ、笑っちゃ、………あはははは!」
「………もう、何だよ。早く教室に戻れよ。………はぁ、やっぱり来るんじゃなかった。………」
「あっ、ひどいお兄ちゃん、わたしに餓死しろと?」
余程俺が「お兄ちゃん」を強調したのがツボに入ったと見える、目元を拭って、その屈託ない笑みを浮かべたまま、こっちに駆けてきて、
「ま、可愛いお兄ちゃんに免じて許して差し上げましょう」
と言いつつ俺の手を取る。
「誰が可愛いお兄ちゃんだ」
「だって可愛いんだもん。こんなちっちゃなお手々して、生意気な事ばっかり言うんだもん。お兄ちゃんは可愛いね」
「お前もな」
「えっ、やだ、照れる」
「生意気なところだ!」
そうして俺は、取られた手を取られたまま、引きずられるようにして校門まで麻耶と歩いて行った。やはり休み時間はもう終わりだったらしく、すれ違う生徒たちはみな反対方向に進んでおり、みながみな見慣れぬ来訪者を一瞬間不思議そうな顔で見つめてから、微笑ましい笑みを顔に浮かべつつ通り過ぎる、………俺はそれではっと気がついて、麻耶の手を振りほどこうと何度も藻掻いたけれども、そうすればするほど妹は握った手に力を込めてきて、来た時には一歩のように感じられた校庭が果てしなく広いように感じられた。
「お兄ちゃん、お弁当ありがとね」
「礼はいいから、お兄ちゃんは早くこの手を離してほしいな。お前、力入れすぎで痛いんだよ」
やっとの思いで校門に辿り着いても、俺の手はしっかりと握られたままだった。
「えー、やだ」
「やだ���ゃありません。………いや、ほんとにお願い、後で何か買ってあげるから、………その、頼むよ。………」
時にチャイムがカーンと鳴って、校庭には俺達2人だけがぽつんと居るようになっていたから、教室という教室から視線を集めているような気がして堪らなかった。麻耶はニッと笑って、
「そんなに必死にならなくてもいいじゃん。お兄ちゃんはほんとに可愛いね」
と力を緩めて、その手で俺の頭を撫で、頬を撫で、顎を撫で、外れかかったマフラーを掛け直す。俺はムッとして何も言わず。ずっと近くなった我が妹の顔を見つめるのみ。
「もっと可愛い柄のを買えばよかったのに。お兄ちゃんはこんな大人っぽいの似合わないよ。………よし、できた!」
「その時一番気に入ったのがこれだったんだ。多少似合わなくても別にいいだろ」
「今度わたしのを貸してあげよっか」
「いいから、いいから、もう早く授業に行けって」
と、無理矢理校舎の方へ押しやると、
「もう、可愛いお兄ちゃんと一緒に居たい妹の気持ちを分かってくれてもいいじゃんかー」
と文句を言つつも、しぶしぶ麻耶は踵を返して手を振った。
「ばいばい、お兄ちゃん」
「ああ、ばいばい」
と、俺も踵を返した時だった、
「そうだ、お兄ちゃん、―――」
振り返ると、麻耶は無邪気な顔をこちらに見せていた。
「次は制服で来てみてよ。―――」
聞いて愕然とした。未だに頭にこびり付いて離れないその言葉、彼女からしてみれば単なる思いつきだったのに、………と思っても今は遅い。この時なぜか俺は、制服を着て、妹の通うこの学校を訪れたくて堪らなかった。
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yutakayagai · 2 years ago
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翌日、彰は目を覚ました。傍らに千明がいたのにいないと気付き、彼は床に脱ぎ捨てた寝間着や下着を着て階下に行った。台所から物音がするので覗くと、千明が朝食の準備をしていた。きちんと、恐らく彰がホームセンターで買ったと思われる、デニム生地のエプロンをまとい、味噌汁の具材を切っていた。嗚呼、これまでに経験したことがない光景だなと、彰は思った。そのまま彼は浴室に向かい、シャワーを浴びた。
出勤する格好で台所に戻ると、朝食がすぐ食べられる状態になっていた。千明は笑顔で、
「おはよう」
と挨拶した。彰も、
「おはよう」
と言った。
何なのだろう、この気持ちは…。彰は味噌汁を飲みながら、昨日は喜劇の様にバタバタと家を出てしまったが、何故だろう、照れくさかった。きっと新婚夫婦って、こんな感じなのだろう。二人は一言も交わさず、黙々と朝食を摂った。
千明が後片付けをしながら、彰はコーヒーを飲みながら新聞を読んだ。今日はゆとりがある。時間がゆっくりと流れている気がした。洗い物を済ませると、千明は右側に掛けてある時計を見た。午前七時を過ぎていた。エプロンを取り、簡単に畳んでイスに座った。彼は話しかけた。
「彰さんって、何時に出勤してるの?」
新聞から視線を反らし、天井を見上げながら、
「いつも自転車で行くから、七時十五分ぐらいかな?」
と言った。
「でも、今日から車で行こうかな?」
「え、どうして?」
「…事故ったらイヤだもん」
「事故」と言う二文字を聞き、千明は最初はパッとしない感じだったが、次第に表情が暗くなった。聡のことを思い出した様だ。その様子に彰は彼の両手を握りしめた。
「万一と言うことがあるじゃん。オレだって嫌だし、千明君だって嫌じゃん?」
この言葉に千明は目頭が熱くなった。嗚呼、彼は聡の二の舞を踏まないようそう決めたのだな。そう思うと、
「…彰さん、優し過ぎるよ。そんなにオレのこと思ってくれるなんて」
と、頬をつたう涙を手指で払い除けた。彰は近くに置いてあったティッシュ箱から一枚取り出し、
「ダメダメ、泣いちゃ。シャルマンな朝が台無しじゃないか」
と言った。
出勤する時間になり、彰は「行って来ます」と言った後に千明と接吻した。唇と唇を重ねるだけだったが、千明は嬉しかった。
彼は聡を亡くした悲しみから早く立ち直ろうと誓った。
この日も、聡の部屋のライティングビュローから日記を手に取り、読んでいた。昨日洗濯した衣類等が室内では乾かず、今日は晴れたのでベランダに干した。彰の着ていたワイシャツが風に揺れている。
千明は、彼の父が「認知症」になった頃の日記を読み始めた。日付は「六月二十日」である。
“彰が学校から戻って来た夕方、お袋が台所で倒れているのを発見してくれた。親父は会社関係の人たちと旅行に出掛け、その日の夜にならなければ帰れなかった。
オレもこの日は忙しく、水戸にはすぐ駆け付けられなかった。何度も携帯電話のショートメールで、彰にお袋の安否を確認していた。
そして、ようやく仕事に片が付いた午後七時に彰から電話があった。電話越しの彰の声は、感情を抑えられずに震えていた。
「あ、兄貴ぃ〜。お袋が、お袋が…」
そう言うと号泣する声が聞こえた。
オレは死んだのだなと解釈した。それ以上のことは聞かず、
「今から特急で帰えるから、しっかりしろよ!」
と急いで上野に向かった。
急搬されたのは市街にあるK病院だった。以前から血圧が高く、かかりつけにしていたからだ。病室に通されると、傍らには涙でぐしょぐしょにさせた彰が丸イスに座り、ベッドには顔に白い布を被せたお袋の亡骸があった。オレは言葉を失った。力が抜け、その場に座り込んでしまった。彰はオレにしがみ付き、
「兄貴ぃ〜。帰って来たら台所で倒れてて…。『脳幹出血』だって…」
と嗚咽を上げた。
オレは未だ現実を受け止められずにいた。しばらくお袋の亡骸を前に座っているしかなかった。
午後十一時になり、何とか冷静を取り戻した彰は葬儀屋に連絡を取った。次第にお袋が死んだのを現実として受け止める様になり、オレの両目からは大粒の涙がこぼれた。あまり感情を露にすることがないオレには珍しかった。
「お、おくろぉ〜!」
と慟哭したのだ。丸イスから滑り落ち、床に転がって泣いた。その様子に、葬儀屋と連絡をし終えた彰が駆け付け、
「あにきぃ〜!」
と、彼は再び号泣した。オレたちは抱き合いながら泣いた。
葬儀屋がお袋の亡骸をワゴン車に移し、���師と看護婦が見送る中、オレたちは家に帰った。玄関には親父が立っていた。鍵を持たずに出掛けてしまったからだ。
変わり果てたお袋の様子に、親父は何も言葉が出ず、しばらく玄関の上がり框に座っていた。お袋の亡骸が布団に移され、北枕の状態に寝かせれると、翌日に葬儀等の日程をうかがいますと、この夜は帰って行った。彰が見送り、仏間に戻ると親父は正座をしたまま動かず、声をかけるが、
「彰、お母さんと二人っきりにさせてくれ…。頼む」
と言った。オレたちは先に寝ることにした。
日付が替わって間もなく、突然階下から慟哭する様な声が聞こえた。オレも彰も仏間に来ると、畳の上で大の字になり、顔を両手で押さえながら号泣する親父がいた。
「み、みどりぃ〜!翠ぃ〜!あああああ!」
オレたちは親父を介抱した。生まれて以来、こんなにも大声で泣いた親父を見たことがなかった。顔を真っ赤にさせ、鼻水と涎を垂らし、まるで子どもの様だった。彰にしがみつき、
「なんで母さんがァ…、オレの翠が先に逝かなきゃならないンだ…、オレはどうやって生きていきゃイイんだ…」
と声を上げた。
彰は、
「親父!お袋だって好きに死んだンじゃない!オレも兄貴だって…」
と泣き続ける親父をなだめた。
この夜は、親父はずっと彰の懐で泣いていた”
千明は、母が目前で死んでいるのを発見した時から父がショックで取り乱していた時も、彰が二人を支えていたのかと、改めて彼の優しさを知った。日記は、告別式が執り行われた二、三日後から続いている。
“親父のショックがあまりに大きいことにオレたちは驚いた。お袋の亡骸の前で色々と話しかけ、かと思えば鏡台の上に置かれた化粧品一つひとつを眺めたり、衣裳ダンスに仕舞ってある訪問着を広げたりと、親父はお袋が愛してきた物一つひとつ手に取っては涙を流していた。食事も摂らず、ようやく告別式の前日になって彰が作った梅粥と、ごぼうと牛肉のしぐれ煮を食べた感じだった。日本酒も一合飲めば、
「後は聡が飲んでくれ…」
と終わりにしていた。
通夜は一応執り行ったが、親父は参列せずに別室で過ごしていた。未だお袋が死んだのが受け止められない様だった。そんな様子に、
「明日の火葬、大丈夫かなァ?」
と彰が心配した。オレも、
「気がおかしくなったら…」
と、今後の親父が不安だった。
そして、翌日になり、予感は的中した。お袋の棺の蓋に釘を打つことになり、オレたちも涙を流したが、昨夜同様、別室にいた親父が走って来て、
「み、翠は!?」
と探し回った。視界に棺が入ると血相を変え、
「お前ら、何やってるンだ!」
と、斎場のスタッフに殴りかかろうとした。
「親父!」
と彰が取り押さえたが、
「彰、母さんは眠っているだけだ!未だ間に合う!お前も引き止めろ!」
と聞かず、
「もう止めてくれ!」
と、彰は親父を平手打ちした。オレすら親父を殴ったことはないが、この時の彰はやむを得なかったのかもしれない��叩かれた頬を押さえながら、
「お前、親に対して手を挙げるとは…。この親不孝者が!」
と彰に対して拳を見せた。流石にオレも黙っては見てられず、
「親父、お袋が悲しむぞ!止めてくれ!」
と叫んだ。その時だ、釘を打ち終えた棺が火葬場に送られていく。周囲が合掌する中、オレたちは親父にしがみついていた。このまま一緒に行ってしまいそうだったからだ。
「翠!みどりぃ〜!」
扉が閉まった。それでも親父はお袋の名前を叫び続け、慟哭し、気を失った。
喪主は親父だったが、告別式には参列できなかった。骨となったお袋の骨壺をオレが抱えた。最後の挨拶も、
「父の努が喪主ではありますが、大変気を落としておりまして、急きょ私、長男の聡が代わりにご挨拶いたします」
とオレがやった。参列した方々は皆、お袋が教師をしていた頃の関係者か教え子や保護者だった。
こうしてオレたちは家路に着いた。早めに「お斎」も終わりにし、ぐったりと疲れ果てた親父を介抱しながらタクシーから降りた。
この日は香と隆や彩も家に泊まったが、夕飯は彰が作った。親父は食べなかった。
この時から、親父は「親父」でなくなったのかもしれない”
嗚呼、自分と出会う前にこんな事になっていたとは…。聡も大変だったンだなと、彼は同情した。
その後も、千明は日記を読み続けた。聡の父が引きこもりになり、次第に物忘れがひどくなり、終いには亡き妻を探し求めて徘徊して警察沙汰になったこと、彰が母の遺品には殆んど手を付けていないのに盗られ妄想の対象になったり、目前で大小限らず失禁したりと、聡の父は完全に人格が崩壊していった。
千明と出会い、それでも週末になれば一緒にいることを許されず、水戸に戻って父の介護をしなければならなかった聡を、彼は大変だったなと深く思った。
結局、聡の父は寝たきりとなり、仙骨部に褥瘡ができ、敗血症により他界した。その時も、彰が仕事の合間を見て体位交換をしに一時的に家に帰ったりオムツ交換をしたりしていた。介護保険法が制定される前で、現在の様に気軽にホームヘルパーのサービスを受けられる時代ではなかったから、大変だったに違いない。
千明は、数年のうちに母と父、兄である聡を亡くした彰のことを思った。彼も祖父母は他界したが、いずれも老衰だった。それから比べれば、彼の方が不運である。彼は、聡が亡くなっただけでずっと立ち直れずにいる自分自身を恥じた。
昨日同様、千明は日記をぎゅっと抱きしめた。
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pitatmatsydo6 · 2 years ago
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6bfok · 2 years ago
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2023年03月27日月曜日笠原裕介はこんなことをしていました
7:10~:20 笠原裕介は...食事飲食をしました(白御飯一杯盛膳、大根味噌汁、ほうれん草のお浸し) 飲食後に茶碗や汁椀や箸をソフトスポンジで洗った、飲食後にサワイ製薬リスペリドンOD錠3mg飲んだ服薬した 7:20~:28 笠原裕介は...8分間歯磨きした
9:54~:58 笠原裕介は...北側トイレ室でお尻拭き紙3切1枚5組で排せつ大便の用をした。本日はいっぱいうんち 9:59~10:00 笠原裕介は...洗面台で手洗いすすぎ、フェイスタオルで手の拭き取りした
10:15~11:33 笠原裕介は...2週間で僕が使うトイレットペーパー、お尻拭き紙の3切1枚44組のために44組をちぎり取り折り畳んだ、 スキンケア・その他2切1枚54組のために49組をちぎり取り折り畳んだ、鼻ほじり用1切1枚12組のために7組をちぎり取り折り畳んだ。 浄化槽フタ取っ手拭き取り用の為に、2切1枚100組をちぎり取り折り畳んだ。 作業前に1切1枚のトイレットペーパーで鼻ほじりをした。芯がないトイレットペーパーやわらかコアノンロール使用。
13:58~14:12 笠原裕介は...母上が先週土曜日に利用し、2枚天日干し乾燥の床掃除���雑巾2枚を家屋内脱衣所置きのバスケットの上に積み、 1枚の床掃除用雑巾を浴室でマツキヨ7.5Litreポリバケツに1Litreの水を浸けてすすぎ洗い絞りして、品名:住宅・家具用合成洗剤 花王かんたんマイペット(R)を使い、上がり框畳の部屋の畳4.5帖や仏前部屋の畳1帖1枚の都合6枚をトリガー10プッシュ で拭き取り5回して、タオルの使った汚れ色垢は浴室で2度すすぎ洗いして、次に正面玄関の無線機器の呼出しベルパネルスイッチ や郵便ポスト1コの全面、上がり框の木面を拭き上げ、使ったタオルを浴室で2度すすぎ洗いして、テラス下位に留めて天日干し乾燥 14:13~:17 笠原裕介は...天日干し乾燥の洗濯ものを家屋内に取り込み、陰干しや取り込みした足拭き置きマットを敷き詰めたりしました
17:17~:23 笠原裕介は...浴室浴槽掃除(CAINZお風呂ブーツ,スコッチブライトtmバスシャインtm,ライオンバスルック7trigger,すすぎ水3gallon) 浴室ふろいす1コを水抜き台座や台座裏側面や脚下を右手でスポンジで洗い流し,サッシカバー1枚を右手でスポンジでカバーと床洗い流し、バスタブユニットを洗い流しした,使ったバスシャインtmスポンジ1コは固定シャンプー棚で洗面器に水を張りゆすぎ洗いをして洗ったスポンジをタオルバーに挟み後片付けをした
19:08~:25 笠原裕介は...バスタイム入浴した(紳士ユニクロタータンチェックパンツ、ハーフ丈セットアップ、スウェットロングパンツとスウェットプルファスナーハイネック、 紳士とうがらし厚地ゆったり靴下) 19:26~:30 笠原裕介は...居室でクリーム、ヘアトニック、綿棒耳ほじり
19:40~:50 笠原裕介は...食事飲食をしました(両手鍋のアカオアルミで煮込んだ釜揚げうどんを590Gramとかに風味かまぼこや長ねぎ刻みを薬味に おしょうゆソースでお箸でいただいた、カットフルーツ赤りんご、ほうじ茶250ml飲用)飲食後に汁椀食器や配色ぶどう小鉢皿や箸をスポンジで洗った 飲食後にダイニングテーブル上に深型丸形配色ぶどうエナメル素材皿に3コの残り赤りんごをNewポリラップで封ししました 飲食後にサワイ製薬リスペリドンOD錠3mg飲んだ服薬した 19:51~:59 笠原裕介は...8分間歯磨きした 20:12~:13 笠原裕介は...居室で布団に仰向けになり、ロート養潤水Aを両目に1滴ずつ点眼した
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jyokouji · 2 years ago
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内陣と外陣
お寺の本堂は中央で黒い框(かまち)によって仕切られている。その上段半分は「内陣(ないじん)」と呼ばれ、その内陣一番奥の中央にはご本尊の阿弥陀如来が安置されており、その右側には宗祖親鸞聖人の御影が掲げられている。
黒い框の外は「外陣(げじん)」と呼ばれ、ご門徒が着席し、仏法聴聞する場所と定められている。さて玄関・外階段・外界は世間を表し、外陣・内陣は出世間を表している。多くのご門徒の皆様は玄関を通過して外陣に入ってこられるけれども、この外陣への入堂によって、人々の心は二回転換すべきなのである。
第一回の変転は、日常的世界(世間)から超越的世界(出世間)への転入である。政治・経済・科学等々は我々に親しい日常的世界(内在)であり、出世間とは非日常的世界(超越)の領域である。ここにおいて自身が曠劫以来六道を輪廻してきたことが明らかになる。参詣者は何気なく入堂してこられるが、かかる内在から超越への転換は極めて難しい。
第二回目の変転は、一般仏教の自力聖道門より、他力浄土門への転入である。輪廻からの解脱が自力によっては不可能であることから、この罪業の私を救わんがために阿弥陀仏の本願が建てられたのであり、それに基づいて名号「南無阿弥陀仏」に込められた信心を聞き得て救われるのである。この信心決定の時点において浄土往生は定まり、真宗においては「臨終のお迎え」を待つことはないとされる。こうしてめでたく獲信した人は、外陣でも最前列に着席し、念仏の声も絶えないであろう。このように「正定聚不退転」となれる人は「妙好人」とも呼ばれる。
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kazuya-ikezoi · 3 years ago
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すっきり浮かせた框とモルタル土間の 玄関の事例です。 浮かせた框と透かしたのガラス戸、 足元を抜いた鉄骨階段で、軽快な 印象で全体をまとめています。 気になる点や質問があれば、気軽にコメント、 DMお願いします! 他にも様々なお家をHPで紹介しているので @kazuya_ikezoi からとんで見てみてください。 よかったらフォローもお願いします。 #家づくりのアイデア #家づくり #マイホーム #ナラ #オーク #無垢材 #床材 #斜め框 #玄関デザイン #モルタル土間 #モルタル土間 #鉄骨階段 #ガラス戸 #アイアン手摺 #ペンダント照明 #玄関照明 #観葉植物 #設計士とつくる家 #設計事務所とつくる家 #建築士とつくる家 #香川 #愛媛 #徳島 #大阪 #コラボハウス https://www.instagram.com/p/Cg1mU5vLr_K/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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unicodesign · 2 years ago
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尾山台コーポラ確認会
昨年12月に上棟上棟した尾山台のコーポラは、1階から間仕切り工事が進んでいます。
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お客様が現場を確認する唯一の機会である現場確認会が今日からスタート。
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壁や天井のボードが張られる前の状態で、間取りの感じや窓からの見え方を確認していただき、コンセントやスイッチの位置などを確認する会。
実際の床の高さにあった踏み台に乗って、実際の窓からの見え方などを体感していただきます。
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窓の具合も確認します。
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前回の打ち合わせで依頼していた色サンプルから、建具、キッチン、玄関框などの塗装色を決定。
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一通りの確認をして終了。設計が終わってからだいぶ時間も経過していたので、設計内容のおさらいをする形になりました。
ちなみに3週間後に確認会を行う2階は、電気配線が進行中。
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このあと、間仕切りがたち、設備の配管まで進みます。設備業者さんと細かい部分をを確認しました。
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最上階の4階はこれからサッシュを取り付けていきます。吹抜けからの光が良い感じ。鉄骨階段の詳細を詰めなくては。
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始まると立ち止まれない現場、次々の確認事項は、わんこそばならぬ、わんこタスクですが、とにもかくにも現場が滞らぬよう気を引き締め直した確認会でした。
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aa-labo · 2 years ago
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おはようございます。 畑田の家|愛知県名古屋市 玄関の上り框は上り下りしやすいように高低差を付けています。大きな段差は腰掛けて靴を履く時のベンチ代わりにもなります。 【クライアントの声】 Q3.家で気に入っているところはどこですか? A.シアタールームがお気に入りではあるんですが、他に挙げるとすれば玄関の木製引戸や(主寝室の)畳コーナー、無垢の桧のフローリングとか色々出てきてしまいますね(笑) 中でも玄関は工夫していただいて木製引戸が実現しました。 Q4.青木昌則建築研究所に依頼して良かったと思う点はどこですか? A.色々と相談しやすい事!これは重要だと思います。 私は結構面倒くさがりなので、メールで問い合わせれば良い案件なども電話してしまう事も多いのですが、ちょっとした事でも丁寧に答えてくれます。 #玄関 #造作靴箱 #造作手すり #桧フローリング #クライアントの声 #青木昌則建築研究所 #マイホーム #新築一戸建て #注文住宅 #新築 #家づくり #建築家 #建築家と建てる家#建築士とつくる家 #設計事務所 #設計事務所愛知 #設計事務所岐阜 #設計事務所三重 #建築士 #建築 #設計 #住宅設計 #木の家 #シンプルモダン #無垢材 #自然素材 #丁寧な暮らし https://www.instagram.com/p/CnVOwCoSCm9/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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