#磯野真穂
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つねに不確定に時間が流れているなかで、誰かと出会ってしまうことの意味、そのおそろしさ、もちろん、そこから逃げることも出来る。なぜ、逃げないのか、そのなかで何を得てしまうのか、私と磯野さんは、折り合わされた細い糸をたぐるようにその出逢いの縁へとゆっくりと(ときに急ぎ足で)降りながら考えま��た。
宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』
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「私はずっと、子供を産んで育てる人生ではない、別の人生を望んでいました。今でも、一片の後悔もないです」という山口智子*1は、「自分で道を選び取れるということが、何よりの幸せだと感じます。YESかNOか、自分で選び取ることは、大人の嬉しい責任であり、大人ならではの特権。あれこれ悩む暇があったら、自分の心に耳を傾けて、着々と選択していけばいいんです。選び続けていれば、人生は前に進んでいく」と言う。自分で選んだからこそ胸をはり、責任をもって生きていけるのだと言う立場。 一方で「そもそも『選ぶ』って何だろう?」と問うひともいる。病に冒されながら、人類学者の磯野真穂と往復書簡をつづけた哲学者の宮野真生子は、「結局のところ、何かに動かされるようにしてしか決めることができないのなら、選ぶとは能動的に何かをするというよりも、ある状態にたどりつき、落ち着くような、なじむような状態で、それは合理的な知性の働きというよりも快適さや懐かしさといった身体感覚に近いのではないか、そして身体感覚である以上、自分ではいかんともしがたい受動的な側面があるのではないか」と言う。宮野のこの考えは癌患者としての実感に基づくものであるのみならず、長年の九鬼周造研究に裏打ちされたものである。九鬼は『偶然性の問題』において「開示された状況の偶然性に直面して情熱的に自己を交付する無力な超力が運命の場所」だと述べている。宮野の言葉を借りればそれは「偶然という自分ではどうしようもないものに巻き込まれながら、その偶然に応じるなかで自己とは何かを見出し、偶然を生きること」だ。「選ぶ」とは必然を掴み取る行為ではなく、偶然を許容する行為であり、「偶然を受け止めるなかでこそ自己と呼ぶに値する存在が可能になるのだ」と宮野は言う。
「選ぶ」ということ - さよならのあわい
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2024年8月8日

南海トラフ地震の想定震源域と今回の震源
南海トラフ地震臨時情報の対象の1都2府26県707市町村はこちら(朝日新聞)
気象庁は8日、初となる「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表した。対象となった1都2府26県707市町村は次の通り。同庁は今後1週間程度、地震や津波への注意を呼び掛けている。(内閣府の資料から)
茨城県 水戸市、日立市、ひたちなか市、鹿嶋市、神栖市、鉾田市、東茨城郡大洗町、那珂郡東海村
千葉県 銚子市、館山市、旭市、勝浦市、鴨川市、富津市、南房総市、匝瑳市、山武市、いすみ市、大網白里市、山武郡九十九里町、同郡横芝光町、長生郡一宮町、同郡長生村、同郡白子町、夷隅郡御宿町、安房郡鋸南町
東京都 大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ケ島村、小笠原村
神奈川県 横浜市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ケ崎市、逗子市、三浦市、秦野市、厚木市、伊勢原市、海老名市、座間市、南足柄市、三浦郡葉山町、高座郡寒川町、中郡大磯町、同郡二宮町、足柄上郡中井町、同郡大井町、同郡松田町、同郡山北町、同郡開成町、足柄下郡箱根町、同郡真鶴町、同郡湯河原町
山���県 甲府市、富士吉田市、都留市、山梨市、大月市、韮崎市、南アルプス市、北杜市、甲斐市、笛吹市、上野原市、甲州市、中央市、西八代郡市川三郷町、南巨摩郡早川町、同郡身延町、同郡南部町、同郡富士川町、中巨摩郡昭和町、南都留郡道志村、同郡西桂町、同郡忍野村、同郡山中湖村、同郡鳴沢村、同郡富士河口湖町
長野県 岡谷市、飯田市、諏訪市、伊那市、駒ケ根市、茅野市、南佐久郡川上村、同郡南牧村、諏訪郡下諏訪町、同郡富士見町、同郡原村、上伊那郡辰野町、同郡箕輪町、同郡飯島町、同郡南箕輪村、同郡中川村、同郡宮田村、下伊那郡松川町、同郡高森町、同郡阿南町、同郡阿智村、同郡平谷村、同郡根羽村、同郡下條村、同郡売木村、同郡天龍村、同郡泰阜村、同郡喬木村、同郡豊丘村、同郡大鹿村、木曽郡上松町、同郡南木曽町、同郡大桑村、同郡木曽町
岐阜県 岐阜市、大垣市、多治見市、関市、中津川市、美濃市、瑞浪市、羽島市、恵那市、美濃加茂市、土岐市、各務原市、可児市、山県市、瑞穂市、本巣市、郡上市、下呂市、海津市、羽島郡岐南町、同郡笠松町、養老郡養老町、不破郡垂井町、同郡関ケ原町、安八郡神戸町、同郡輪之内町、同郡安八町、揖斐郡揖斐川町、同郡大野町、同郡池田町、本巣郡北方町、加茂郡坂祝町、同郡富加町、同郡川辺町、同郡七宗町、同郡八百津町、同郡白川町、同郡東白川村、可児郡御嵩町
静岡県(全域)静岡市、浜松市、沼津市、熱海市、三島市、富士宮市、伊東市、島田市、富士市、磐田市、焼津市、掛川市、藤枝市、御殿場市、袋井市、下田市、裾野市、湖西市、伊豆市、御前崎市、菊川市、伊豆の国市、牧之原市、賀茂郡東伊豆町、同郡河津町、同郡南伊豆町、同郡松崎町、同郡西伊豆町、田方郡函南町、駿東郡清水町、同郡長泉町、同郡小山町、榛原郡吉田町、同郡川根本町、周智郡森町
愛知県(全域)名古屋市、豊橋市、岡崎市、一宮市、瀬戸市、半田市、春日井市、豊川市、津島市、碧南市、刈谷市、豊田市、安城市、西尾市、蒲郡市、犬山市、常滑市、江南市、小牧市、稲沢市、新城市、東海市、大府市、知多市、知立市、尾張旭市、高浜市、岩倉市、豊明市、日進市、田原市、愛西市、清須市、北名古屋市、弥富市、みよし市、あま市、長久手市、愛知郡東郷町、西春日井郡豊山町、丹羽郡大口町、同郡扶桑町、海部郡大治町、同郡蟹江町、同郡飛島村、知多郡阿久比町、同郡東浦町、同郡南知多町、同郡美浜町、同郡武豊町、額田郡幸田町、北設楽郡設楽町、同郡東栄町、同郡豊根村
三重県(全域)津市、四日市市、伊勢市、松阪市、桑名市、鈴鹿市、名張市、尾鷲市、亀山市、鳥羽市、熊野市、いなべ市、志摩市、伊賀市、桑名郡木曽岬町、員弁郡東員町、三重郡菰野町、同郡朝日町、同郡川越町、多気郡多気町、同郡明和町、同郡大台町、度会郡玉城町、同郡度会町、同郡大紀町、同郡南伊勢町、北牟婁郡紀北町、南牟婁郡御浜町、同郡紀宝町
滋賀県(全域)大津市、彦根市、長浜市、近江八幡市、草津市、守山市、栗東市、甲賀市、野洲市、湖南市、高島市、東近江市、米原市、蒲生郡日野町、同郡竜王町、愛知郡愛荘町、犬上郡豊郷町、同郡甲良町、同郡多賀町
京都府 京都市、宇治市、亀岡市、城陽市、向日市、長岡京市、八幡市、京田辺市、南丹市、木津川市、乙訓郡大山崎町、久世郡久御山町、綴喜郡井手町、同郡宇治田原町、相楽郡笠置町、同郡和束町、同郡精華町、同郡南山城村
大阪府 大阪市、堺市、岸和田市、豊中市、池田市、吹田市、泉大津市、高槻市、貝塚市、守口市、枚方市、茨木市、八尾市、泉佐野市、富田林市、寝屋川市、河内長野市、松原市、大東市、和泉市、箕面市、柏原市、羽曳野市、門真市、摂津市、高石市、藤井寺市、東大阪市、泉南市、四條畷市、交野市、大阪狭山市、阪南市、三島郡島本町、豊能郡豊能町、泉北郡忠岡町、泉南郡熊取町、同郡田尻町、同郡岬町、南河内郡太子町、同郡河南町、同郡千早赤阪村
兵庫県 神戸市、姫路市、尼崎市、明石市、西宮市、洲本市、芦屋市、伊丹市、相生市、加古川市、赤穂市、宝塚市、三木市、高砂市、川西市、小野市、加西市、南あわじ市、淡路市、加東市、たつの市、加古郡稲美町、同郡播磨町、揖保郡太子町
奈良県(全域)奈良市、大和高田市、大和郡山市、天理市、橿原市、桜井市、五條市、御所市、生駒市、香芝市、葛城市、宇陀市、山辺郡山添村、生駒郡平群町、同郡三郷町、同郡斑鳩町、同郡安堵町、磯城郡川西町、同郡三宅町、同郡田原本町、宇陀郡曽爾村、同郡御杖村、高市郡高取町、同郡明日香村、北葛城郡上牧町、同郡王寺町、同郡広陵町、同郡河合町、吉野郡吉野町、同郡大淀町、同郡下市町、同郡黒滝村、同郡天川村、同郡野迫川村、同郡十津川村、同郡下北山村、同郡上北山村、同郡川上村、同郡東吉野村
和歌山県(全域)和歌山市、海南市、橋本市、有田市、御坊市、田辺市、新宮市、紀の川市、岩出市、海草郡紀美野町、伊都郡かつらぎ町、同郡九度山町、同郡高野町、有田郡湯浅町、同郡広川町、同郡有田川町、日高郡美浜町、同郡日高町、同郡由良町、同郡印南町、同郡みなべ町、同郡日高川町、西牟婁郡白浜町、同郡上富田町、同郡すさみ町、東牟婁郡那智勝浦町、同郡太地町、同郡古座川町、同郡北山村、同郡串本町
岡山県 岡山市、倉敷市、玉野市、笠岡市、井原市、総社市、備前市、瀬戸内市、赤磐市、浅口市、和気郡和気町、都窪郡早島町、浅口郡里庄町、小田郡矢掛町
広島県 広島市、呉市、竹原市、三原市、尾道市、福山市、府中市、大竹市、東広島市、廿日市市、安芸高田市、江田島市、安芸郡府中町、同郡海田町、同郡熊野町、同郡坂町、豊田郡大崎上島町
山口県 下関市、宇部市、山口市、防府市、下松市、岩国市、光市、柳井市、周南市、山陽小野田市、大島郡周防大島町、玖珂郡和木町、熊毛郡上関町、同郡田布施町、同郡平生町
徳島県(全域)徳島市、鳴門市、小松島市、阿南市、吉野川市、阿波市、美馬市、三好市、勝浦郡勝浦町、同郡上勝町、名東郡佐那河内村、名西郡石井町、同郡神山町、那賀郡那賀町、海部郡牟岐町、同郡美波町、同郡海陽町、板野郡松茂町、同郡北島町、同郡藍住町、同郡板野町、同郡上板町、美馬郡つるぎ町、三好郡東みよし町
香川県(全域)高松市、丸亀市、坂出市、善通寺市、観音寺市、さぬき市、東かがわ市、三豊市、小豆郡土庄町、同郡小豆島町、木田郡三木町、香川郡直島町、綾歌郡宇多津町、同郡綾川町、仲多度郡琴平町、同郡多度津町、同郡まんのう町
愛媛県(全域)松山市、今治市、宇和島市、八幡浜市、新居浜市、西条市、大洲市、伊予市、四国中央市、西予市、東温市、越智郡上島町、上浮穴郡久万高原町、伊予郡松前町、同郡砥部町、喜多郡内子町、西宇和郡伊方町、北宇和郡松野町、同郡鬼北町、南宇和郡愛南町
高知県(全域)高知市、室戸市、安芸市、南国市、土佐市、須崎市、宿毛市、土佐清水市、四万十市、香南市、香美市、安芸郡東洋町、同郡奈半利町、同郡田野町、同郡安田町、同郡北川村、同郡馬路村、同郡芸西村、長岡郡本山町、同郡大豊町、土佐郡土佐町、同郡大川村、吾川郡いの町、同郡仁淀川町、高岡郡中土佐町、同郡佐川町、同郡越知町、同郡梼原町、同郡日高村、同郡津野町、同郡四万十町、幡多郡大月町、同郡三原村、同郡黒潮町
福岡県 北九州市、行橋市、豊前市、京都郡苅田町、築上郡吉富町、同郡築上町
熊本県 宇城市、阿蘇市、天草市、阿蘇郡高森町、上益城郡山都町、球磨郡多良木町、同郡湯前町、同郡水上村、同郡あさぎり町、天草郡苓北町
大分県 大分市、別府市、中津市、佐伯市、臼杵市、津久見市、竹田市、豊後高田市、杵築市、宇佐市、豊後大野市、由布市、国東市、東国東郡姫島村、速見郡日出町、玖珠郡九重町
宮崎県(全域)宮崎市、都城市、延岡市、日南市、小林市、日向市、串間市、西都市、えびの市、北諸県郡三股町、西諸県郡高原町、東諸県郡国富町、同郡綾町、児湯郡高鍋町、同郡新富町、同郡西米良村、同郡木城町、同郡川南町、同郡都農町、東臼杵郡門川町、同郡諸塚村、同郡椎葉村、同郡美郷町、西臼杵郡高千穂町、同郡日之影町、同郡五ケ瀬町
鹿児島県 鹿児島市、鹿屋市、枕崎市、阿久根市、指宿市、西之表市、垂水市、薩摩川内市、日置市、曽於市、霧島市、いちき串木野市、南さつま市、志布志市、奄美市、南九州市、伊佐市、姶良市、鹿児島郡三島村、同郡十島村、薩摩郡さつま町、出水郡長島町、姶良郡湧水町、曽於郡大崎町、肝属郡東串良町、同郡錦江町、同郡南大隅町、同郡肝付町、熊毛郡中種子町、同郡南種子町、同郡屋久島町、大島郡大和村、同郡宇検村、同郡瀬戸内町、同郡龍郷町、同郡喜界町、同郡徳之島町、同郡天城町、同郡伊仙町、同郡和泊町、同郡知名町、同郡与論町
沖縄県 名護市、糸満市、豊見城市、うるま市、宮古島市、南城市、国頭郡国頭村、同郡東村、島尻郡与那原町、同郡渡嘉敷村、同郡座間味村、同郡南大東村、同郡北大東村、同郡伊平屋村、同郡八重瀬町、宮古郡多良間村

猛暑のせい?広島の夏の交通事故、死者数が倍に 警察が注意呼びかけ(朝日新聞)
7月以降に広島県内で起きた交通死亡事故数が、昨年の同時期を大幅に上回っている。県警によると、連日の猛暑による集中力や注意力の欠如が原因の一つと考えられるといい、注意を呼びかけている。
県警交通企画課によると、7月1日~8月4日の交通事故死者数は12人で、昨年同時期の5人から倍以上に増えている。
このうち、バイクや自転車、歩行者の死者数は計9人。日中の事故で亡くなった人は9人で、夜間は3人だった。
同課は、気温が高くなり、運転などに集中できないことが事故につながっている可能性があると分析。運転する場合はこまめに水分補給したり休憩をとったりし、体調に異変を感じ���時は運転を控えるなどの対策が必要としている。
担当者は「交通事故を防ぐためにも、熱中症警戒アラートが発せられるような暑い日は不要な外出を控えて」と呼びかけている。
気象庁によると、広島市内では35度以上の猛暑日が8日まで10日間続いている。(遠藤花)

「1990年に天皇の戦争責任を論じ始めたとき不安はなかったか、ですか? なかったと言えばウソになります」=吉本美奈子撮影
(インタビュー)昭和天皇の戦争関与 歴史学者・山田朗さん(朝日新聞)
「昭和天皇は戦争への主体的な関与をしなかった」「最後まで対米英戦を回避しようとした」。こうした昭和天皇像に、実証的な研究を通じて見直しを迫ってきた歴史学者がいる。明治大学教授の山田朗さんだ。「天皇の戦争指導」の実態はどうだったのか。その歴史を直視してこなかった戦後日本社会とは。
――昭和天皇(1901~89)が戦争中にどう行動し、そのことを戦後にどう考えていたのか。実証的に調べる研究を30年以上も続けていますね。
「きっかけは、昭和天皇の健康が悪化し��88年から日本社会を覆った『自粛』現象でした」
「天皇が戦争にどうかかわったかについての先行研究はすでにありましたが、私には『昭和天皇には戦争責任がある』という結論ありきの研究に見えました。他方には『戦争責任などない』との意見もあったけれど、どちらも戦争中の実態を踏まえた議論とは思えなかった。史料を踏まえた実証的な研究が必要だと思いました」
――日本が米英に対する戦争を始めたのは41年12月でしたね。「昭和天皇は最後まで日米開戦を避けようとしていた」という話が広く信じられていますが、事実でしょうか。
「違います。41年9月6日に開かれた御前会議の時点までは、確かに天皇は開戦を躊躇していました。しかし側近の日記や軍の記録などから見えてきたのは、そのあと天皇が戦争への覚悟を決めていく姿でした」
「10月には宣戦布告の詔書の作り方を側近に相談しており、11月には軍の説く主戦論に説得されています。最終的には天皇は開戦を決断したのです」
――昭和天皇は戦争に主体的に関与することがなかった、という理解も広がっていますね。
「事実ではありません。大日本帝国憲法では天皇は大元帥、つまり日本軍の総司令官でした。形式的発言をするだけだったというイメージが広がっていますが、記録によれば、大元帥として出席した大本営御前会議では活発に発言しています。軍幹部への質問や注意を通じて作戦に影響を与えていた実態も、史料から見えてきました」
――昭和天皇が具体的に変えた事例を挙げてください。
「42年のガダルカナル島(南太平洋ソロモン諸島)攻防戦で、航空部隊を現地へ送るよう天皇は3回にわたって、出撃をしぶる陸軍に督促していました。3度目の督促の翌日、陸軍は派遣を決めています」
「45年の沖縄戦では『現地軍は何故攻勢に出ぬか』と言って、積極的な攻撃に出るよう要求しました。現地軍は持久戦でいくと決めていたのですが、天皇の意思が現地まで伝わったため中途半端な攻勢が行われ、無用な出血につながりました」
「天皇の言葉が作戦を左右する影響を与えた事例は、満州事変から敗戦までの間に少なくとも17件確認できます。国家意思に影響を与えていた形です」
――作戦指導だけにとどまらず「戦争指導」も行っていたと著書で主張していますね。
「ええ。戦争指導は単なる軍事作戦指導とは異なり、外交などの政治戦略と軍事作戦を束ねた、より高次の指導です」
「昭和天皇は43年のソロモン諸島などの攻防で、戦い方が消極的だと侍従武官長を厳しく叱責し、こんなことでは敵国の士気が上がって第三国にも動揺が広がってしまうと言って積極攻勢を求めました。国際情勢をにらんだ上で国家としてどう作戦を立てるかという戦争指導の領域にこのとき昭和天皇は立ち入っていたと、私は思います」
――昭和天皇はなぜ作戦指導や戦争指導をしたのでしょう。
「大日本帝国という国家の抱えていた構造的な問題が背景にあってのことだったと思います。天皇を好戦的な指導者だったとみなすのは間違いです」
――構造的な問題とは?
「ガダルカナル戦で天皇が指導に踏み込んだのは、どちらが航空機を出すかでもめていた陸軍と海軍の対立を解くためでした。大日本帝国では陸軍も海軍も天皇に直属していて、両者を統合して指揮する統合幕僚長のような指導役が不在でした。陸・海軍の対立を調整できるのは当時、天皇だけだったのです」
「軍事戦略と外交戦略の双方を統括しえたのも天皇だけでした。軍の最高指揮権にあたる『統帥権』は天皇にあり、統帥権は行政から独立していました。首相ですら軍事行動の詳細を知ることはできない構造です。外交や予算をつかさどる行政が軍部と分立していた中で、両者を架橋しえたのは実質的に天皇だけだったのです」
――「昭和天皇は戦争指導をしたのか否か」と問う以前に、「そもそも戦争指導をできる指導者は当時いたのだろうか」と考えさせられる話です。
「ええ。戦況の悪化に直面したことで昭和天皇は大日本帝国が抱えた構造的欠陥の深刻さに気づき、自らが動くしかないと考えた可能性があります。陸軍と海軍が持つそれぞれの経験値では解決できない事態があり、政治が軍事を制御できる仕組みも見当たらない。そんな状況下での戦争指導だったのです」
――昭和天皇に戦争責任はあった、と主張していますね。
「実態を踏まえれば、昭和天皇には戦争責任があったと考えるべきだと思います。あれだけの悲惨な結果を招いた戦争において、大日本帝国の軍事と政治の双方を統括できる国家指導者だったのであり、すべての重要な政策決定の場にいたのですから、およそ責任がなかったと言えるものではありません」
――連合国が戦後に日本の戦争指導者を裁いた東京裁判(極東国際軍事裁判)で、昭和天皇は訴追されませんでした。米国が占領統治のコストを下げるために見送ったとされます。
「裁判が始まる前から日本国内では、昭和天皇は平和主義者であって戦争責任を問われるべき人物ではないとのイメージづくりが、政府などによって進められました。天皇を守るためだったと語られがちですが、それだけではなかったと思います」
「戦争は陸軍の強硬派が進めたものであって天皇には止める権限がなかったというストーリーをつくることで、海軍主流派や外務省・内務省の官僚らは自らを『天皇の側にいた者』とし、責任追及を回避できました。その人たちが戦後日本の権力を担っていったのです。このシナリオを最終的に追認したのが米国主導の東京裁判でした」
――その歴史���現在に何か影響を与えているでしょうか。
「責任をとるべき人がとっていないという巨大な前例が今も生き続けています。宮内庁が編纂して今から10年前に公開された『昭和天皇実録』も、天皇は平和主義者だったというイメージを強化する内容でした」
――ウクライナ侵攻などが起きた影響もあって、今、日本政府はかつてない規模での防衛力増強に乗り出しています。
「戦争期の近代日本史が教えるのは、軍を政治的にコントロールすることの難しさです。軍事は軍事の専門家だけが理解できるものだという論理のもと、閉じられたサークルの中で『自己展開』していってしまう傾向が、軍事にはあるからです」
「昭和戦前期と違って今は一応、行政府が外交も安全保障もあわせて統括できる体制には変わっています。しかし、国民の代表である国会のチェックが安全保障政策に反映されているかといえば、答えはノーです」
――5年前に公開された新史料「拝謁記」に注目するよう訴えていますね。なぜですか。
「昭和天皇があの戦争のことを『戦後に』どう考えていたのかを、今までにない生々しさで伝えている史料だからです。拝謁記とは、初代宮内庁長官だった田島道治が昭和天皇の戦後の肉声を記録したものです」
――何が分かったのですか。
「昭和天皇の中で戦後、『誰がどうやっても戦争の流れを止められなかった』という考えが次第に強まっていった事実です。田島の耳に最後には言い訳だと聞こえてきたほどでした」
「陸軍が戦争の牽引者だったのは事実です。しかし昭和天皇はブレーキの壊れたジェットコースターの単なる乗客だったのではなく、操縦する側でした。ブレーキが壊れていたわけでもなく、実際、天皇の聖断という形で戦争は終わっています」
――その歴史からどんな教訓をくみとるべきでしょう。
「戦前は天皇が国家の主権者でした。その主権者が戦後、『自分にはどうしようもなかった』という考えに至っていた。現在の日本では国民が主権者です。再び戦禍に見舞われたあとで『自分にはどうしようもなかった』という総括をまた繰り返すのか。主権者としての選択が問われていると思います」(聞き手 編集委員・塩倉裕)
やまだあきら 1956年生まれ。専門は日本近現代史。軍事史や天皇制論に詳しい。著書に「大元帥 昭和天皇」(94年)、「昭和天皇の戦争認識」(2023年)など。
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可能性とは、ルートが分岐しつつ、その行く先がわかった一本道などではなく、つねに、動的に変化していく全体でしかないのではないでしょうか。
哲学者 宮野真生子
ー宮野真生子・ 磯野真穂 著『急に具合が悪くなる』(晶文社)よりー
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2025/7/6 8:00:05現在のニュース
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ハマグチェ竜介が映画化するってんで、宮野真生子さんと磯野真穂さんの書簡集『急に具合が悪くなる』を読んでから「偶然性」への興味が再燃したため、脇坂真弥『人間の生のありえなさ』読み始める。ちなみに宮野さんの九鬼周造論であるところの『出逢いのあわい』『なぜ、私たちは恋をして生きるのか』は既読で大変感銘を受けたのだった。
『人間の生のありえなさ』では、田中美津、マイケル・サンデル、AA(Alcoholics Anonymous)、シモーヌヴェイユといった人物・トピックが取り上げられているが、まずやっぱり田中美津はかっこええ。
「一人で生れ、一人で死んでゆく個体としての人間。あなたが〈おなかイッパイ〉になったことは、私が〈おなかイッパイ〉になったことではないという限界を、あたしたちはどこまでもお互い同士もっている。」
「出会いの中でしみじみと胸にあふれて、「あんたもシンドイことだねえ」と、我が身の生き難さとを合せて、絶句する。ヒトはみな、それぞれの生き難さをかかえ、その闇を誰とも共有でき得ずして、ひとり行く。」
「ひとり行(ゆ)く。」だもんな。積読中の『いのちの女たち』に早く手をつけたい。
そして、ビルとボブの物語として非常に有名だというAA誕生の経緯が、著者の解釈と共に語られる第三章もすごく面白い。
「“私”という偶然」、言い換えるならば「ないこともあり得た」“私”という存在は、しかし「こうでしかあり得ない」“私”なのであり、そのことにとり乱し、彷徨し、その先で半ば惹き付けられるように私同様「ないこともあり得た」他者の存在へと向かっていく。
『急に具合が悪くなる』でも、最終的には宮野と磯野は「どうしてどうして僕たちは出逢ってしまったのだろう」という“リフレインが叫んでる”(ユーミン)的問いへと辿り着く。
ハマグチェはこれをどう映画にするっていうんだろうか。どうせ良い感じにするんだろうが。
店の常連のメキシコ人がテキーラをくれたので、帰りにスーパーでライムとジンジャーエールを買って、家でちびりと飲んでみる。美味いのかはよくわからない。明日彼女と部屋で乾杯する予定。
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宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』(2019, 晶文社)
ここ数年、「“選択“とか“決断“というものは、人間が生きている中に、ほんとうは無いのではないか?」とずっと思っていた。「自分で選んでいる」と思っていても、それはそう思っているだけで、本来的にはそれ以外ないだけである、というような感触。決まり文句的に使われる「運命の瞬間」や「人生を決めた決断」のようなものは、実際には存在しない(というのが私の感触であり、わたしの人生にはそういう瞬間や決断がありますという人もいるだろう)。生きている流れがあって、それだけだ、という考え。もちろん、自分で選べないからといって、人生どうでもいいやとか、自分にできることは何もない、とかいう考えではなくて(まあ人生に自分ではどうしようもないことが大量発生するというのは、疑いようのない事実ではあるが)、その流れの中でがんばったりなんやりはする。でも、「結局自分では選ばれへん��」という気持ちで暮らしていた。
いや、「どこの大学受けるかは、選んだよ」と言われたら、「そりゃそうだ」と返すしかないんだけれども。
この感じをよく話すひとに説明しようとしても、「選択とか無いよ」ということが自分の中ではあまりに自明なことになっており、さらに思慮浅薄さゆえに、なんで選択はできないのか、とかいうことをちゃんと考えずに、選択とかは無い、というその結果のみ持って生きていたので、どうも阿呆な運命論者みたいになってしまっていた。
こういうこと(選択の不可能さとか、運命論的考えとか)は他のいろんなこととおんなじように、今までに、いろんな分野のとても賢いひとがたくさん考えて来てるんやろうなあと思いつつ、怠惰さゆえに先達の思想の成果を探すことはなかった。ただ、なんかうまいこと言われへんなあ。生きる上でかなり当たり前のことな気がするが、なんか伝わらへんなあ。なんでみんな(けっこうたくさんのひとという意味)はそんな当たり前みたいに自分で自分の未来を選んでるといった様子で生きている(ように見える)のだろうと思って暮らしていた。
かなり長い自分語り乙な文章を書いてしまったが、このようなことを数年思っていた人間がさっき(ほんとうにさっき)『急に具合が悪くなる』を読んだ。以前、文化人類学の本を何冊かまとめて読んだ時期に見かけて、読みたいなあと思っていたが読んでいなくて、それで濱口竜介さんが映画にすると知って、読んだ。どういう内容か、どういう過程でできた本なのか、全く知らずに読んだ。
そしたら、数年間考えていた上に書いたようなことが(比べたり並べたりするのがおこがましすぎるが)、この本の中での重要な話題になっていた。「自分」という存在における「選択」にまつわる様々なこと(もちろんそれ以外のこともたくさん書いてある)が、著者のお二人の学問的探求の積み重ねと、病に接した状況でのお二人の関係性と切実さを通り抜けて、生きていく上でだいじに抱えていきたい言葉になって詰まっていた。
ある程度本を読んでいればきっと誰でも体験していることだろうが(それとも一般的にはそんなん思わんのだろうか)、なんというか、この本のこの言葉に今の自分が今出会えるなんてありえなすぎる凄すぎる。なんかぜんぶ書いてある、なんで? なんか、ぜんぶ、書いてある、となった(もちろん「ぜんぶ」は書いていない、でも、心象的には)。比喩ではなく文字通り身悶えて、ころげまわった。
読みはじめて割と最初のほうから、なんかめっちゃ読ませてもらいたかった本かもしれない、と思った。
「この経験を思い出すと、そもそも「選ぶ」って何だろうと思うのです。合理的に比較検討することはできるけど、私たちは本当に合理的に「選ぶ」ことなんてできる��だろうか、そんなふうに「選ぶ」ことが「選ぶ」ということなのだろうか、と。結局のところ、何かに動かされるようにしてしか決めることができないのなら、えらぶとは能動的に何かをするというよりも、ある状態にたどりつき、落ち着くような、なじむような状態で、それは合理的な知性の働きというよりも快適さや懐かしさといった身体感覚に近いのではないか、そして身体感覚である以上、自分ではいかんともしがたい受動的な側面があるのではないか、と。」(宮野さん、50頁)
「合理性に則った資本主義的な生き方の一番大きな特徴を一言で表すなら、コントロールの欲求と言えるでしょう。」(宮野さん、86頁)
自分で言葉にできてなかったけれども、「コントロールの欲求」、これを捨てたくて捨てたくて、この欲求がわずらわしくて、「自分で選んでいると思っていても、それはそう思っているだけで、本来的にはそれ以外ないだけである」という考えで暮らしていたのだと思う。
最後の最後に磯野さんが書かれていることに辿り着いたとき(その十数行前から、この先に数年間言葉にできなかったことが言葉になってるのでは?と思いはじめて、もはや焦った)、生きていく中での「選択」の捉え方をこう言葉にして本にしてくださったことに、身悶えた(それはもうさっき聞いた)。
もう、ものすごくラインが引いてあった。ラインの先に立たせてもらおうと思った。インゴルド、一章だけ読んで積んでるやつを読もう。そして九鬼周造を読もう。
1時間で読書感想文を書いたら碌なものにならないに決まっているが、このエナジーを保存しておきたくて、書いた。

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各地句会報
花鳥誌 令和7年6月号

坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
………………………………………………………………
令和7年3月1日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
貝寄風や龍馬の夢は明治へと 睦子 菜の花忌雲を目指した明治人 修二 春の小川そは大正を恋ふしらべ 美穂 竹馬の上手はヒーロー昭和の子 睦子 春炬燵昭和歌謡の流れ来る 光子 甘党のウィス��ーボンボン春微醺 睦子 春雨に昭和の唄を口遊む 光子 田楽や女将昭和の割烹着 修二 罅に添ふ金継ぎ細し光悦忌 睦子 暖かや昭和演歌の七五調 久美子 春泥や流離のごとく就活す 朝子 翠眉濃く昭和の春を踊り来し かおり 逆上がり出来ず砂場の春寒し 成子 野火走る地下に鍾乳洞深く 光子 雛段に祖母の鼈甲化粧箱 美穂 しやぼん玉飛んで昭和の家並まで かおり ふらここや漕げば昭和の雲浮けり 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月1日 零の会 坊城俊樹選 特選句
梅の香に惑ふ純情男坂 きみよ アメ横にもの喰ふ人や鳥雲に 要 通り抜け出来ぬアメ横春の闇 同 囀を上野大仏瞑りて 順子 累々と上野の山の落椿 要 混雑猥雑アメヤ横丁うかれ猫 風頭 卒業や銅像の頰撫でて去る 佑天 整然と立つ春愁のチョコバナナ 緋路
岡田順子選 特選句
鳥帰る露店あらゆる色を持ち 緋路 霾や上野の店の読めぬ文字 軽象 春の人スワンボートの胎へ還る 緋路 アネモネを咲かせ丸永商店に 和子 アメ横に日本一の目刺売る 俊樹 夢をみるらむ囀の劇場に きみよ アメ横を出て薄墨のかひやぐら 要 服を脱ぐやうに傾げて春日傘 和子 こんなにも人ゐて蝶のただひとつ 千種 春光に位牌並べる仏具店 佑天 不忍の水の濃厚蓮芽吹く 千種
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月3日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
露座仏も眠気に在す春の宵 かづを 一穢なき姿のままに落椿 同 老梅やこゝに学舎の有りし村 匠 そここゝの汚れし雪や二月尽 同 幼な子の雛とかたこと話しをり 希子 春泥に躊躇の一歩踏み出せり 千加江 如何な人此の樏を履きたるは 雪 幾年を経し雪沓ぞ懐かしき 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月6日 うづら三日の月句会 坊城俊樹選 特選句
四姉妹雛の思ひでそれぞれに 喜代子 笑ふとも泣くとも見える雛の顔 同 雛祭四人姉妹を守りこし 同 ひな飾る時のかなたの幼な顔 さとみ 晴れてまた吹きすさびたる春の雪 都 かの山に未練残して鳥帰る 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月8日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
鳥の景佇む友と卒業す 多美女 卒業やスポーツ刈りの髪伸びて 三無 卒業生弾む声なり胸の花 文英 幼子も���々しくなりて卒業す 亜栄子 二ケ領鯉と親しき残り鴨 文英 恥ぢらひのコサージュピンク卒業す 和代
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月10日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
仄かなる潮の香させて目刺し焼く 三無 海の色焦がし目刺の焼き上がる 秋尚 建て替への常宿偲ぶ木の芽時 のりこ 新幹線窓一面に山笑ふ ことこ 目刺盛る器は旧き伊万里焼 貴薫 宿り木の浮かぶ大樹や木の芽風 のりこ 山椒の芽とげとげしくも初々し 怜
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月11日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
供養雛四十体のピラミッド みえこ 通学路思ひ出連れて忘れ雪 裕子 雪解水溢れ雨樋外れをり 実加 河津桜供養帰りに家族して みえこ 山笑ふあの人の家目指し行く 裕子 古民家を曲がつた先の母子草 実加
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月11日 萩花鳥会
春の陽の沈むを惜しむ軒の下 俊文 古雛美し老いは人の世苔の一つ 健雄 雛飾り還らぬ人を懐しむ 綾子 椿見て素敵ですねと友は言ふ 健児 細面どこか母似の古雛 美恵子
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令和7年3月14日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
いつよりか鳴らぬカリヨン街朧 美智子 音もなく雪の吸取る吾の時間 佐代子 蛇出づる根の国を見た面をして 都 引ききらぬ浅瀬で始む潮干狩 宇太郎 貼紙に差し上げますとさくら草 都 鶯や漢詩の先生の庭に 悦子 船音は蛍烏賊なる賑はひに すみ子 生きめやも水栽培のヒヤシンス 佐代子 涅槃西風煽り塒へ群鴉 宇太郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月16日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
雨含む三椏の花闌ける寺 亜栄子 諍ひをちと春の嵐の中へ 慶月 女坂血の色に染む落椿 三無 喬木に百囀りの古刹かな 幸風 観音の飲んでゐさうな春の水 三無 堂の灯の漏れくる扉寺彼岸 亜栄子 春雨や道祖神なほ睦まじく 慶月 佐保姫に向けて墓標や波の音 幸風 奥津城をそつとなでよと木の芽風 同 猫柳蒼き雨だれ含みたる 久 春雨や煤け火のなき自在鉤 久子 観音の嘆きの紅き落椿 慶月 無縁仏修羅のごとくや落椿 亜栄子
栗林圭魚選 特選句
春禽や幼子パ行の語を並べ 久 晩鐘の磧にとよむ雉のこゑ 幸風 快晴や北窓開く藍染館 経彦 曇天に沸き立つ色の花ミモザ 文英 SLに駆け込む児らや春の雷 経彦 天象儀出でて見上ぐる春の星 同 春の雨やさしく撫でて陽子墓碑 文英
飯川三無選 特選句
雨含む三椏の花闌ける寺 亜栄子 百条のメタセコイアや木の芽雨 久 肌を打つ重たき雨や茨の芽 亜栄子 曇天に沸き立つ色の花ミモザ 文英 春雨に電車やさしくカーブする 慶月 観音の嘆きの紅き落椿 同 山寺に涅槃の日の雨降りやまず 久子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月18日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
化粧して草餅食べて身繕ひ 世詩明 加賀様の世を垣間見る雛かな かづを 古雛と言へど凜しさありにけり 同 はい〳〵と小言聞く朝鳥雲に 清女 一瞬のきらめきつれて初蝶来 笑子 黒髪の女雛の裾へ灯り揺る 同 吊雛や鹿の子絞りの緋の小袖 希子 涅槃西風受けて文殊や靄の中 同 針供養姉ささやかな針収入 令子 土雛の眼差し今も穏かに 千加江 ランドセル背に跳ねてゐる雪つぶて 雪 浪の花見るに一人は淋しきと 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月21日 さきたま花鳥句会
雲梯に縋る縄目や春の雪 月惑 ふる里の農事ごよみや辛夷咲く 八草 春泥に惹かれ園児の列乱れ 裕章 雨だれの音の春めく奥の院 孝江 こじんまり昔農家の花杏 としゑ 点々と摘草はばむもぐら塚 康子 黙祷の奥に囀り蒼き空 恵美子 竹林の天使の梯子より初音 みのり 花巡り母の形見の指輪して 彩香 混み合へる甲斐の隠し湯山笑ふ 良江
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令和7年3月16日・21日 柏翠館・鯖江花鳥合同句会 坊城俊樹選 特選句
瓢の笛最も聞かせたき人に 雪 母偲ぶ一日を以て針供養 同 荒磯には荒磯の情浪の花 同 打てば鳴る如大寒の青き空 同 当たつても当らなくても雪礫 同 蟷螂の続々生まれ子ら津々 みす枝 能登の地に佐保姫早く出でませり 同 災難の能登を俯瞰し鳥帰る 同 軒下をあちらこちらと初燕 嘉和 比良八講けむり荒ぶる湖白し 同 起立礼みごとに揃ひ卒業す 同 ふらここを蹴り上げてみる空の青 真嘉栄 陽炎や遠く電車の過ぐる音 同 蒼天や正座を崩す春の山 同 学ぶ程学ぶこと増え大試験 世詩明 雛飾り大戸開けば犇めける 同 冬籠父の日記を盗み読む 同 小春日や老婆二人の長話 和子 中学生進路定めて卒業す 紀代美 ひとしきり春の雪舞ふ涅槃寺 ただし 春炬燵守り長生きを疎みをり 清女
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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第5回人文知応援大会「人工知能のアラインメントにおける人文知 ~真に役立つAIのために~」@一橋講堂へ。
AIが進化していく中でのアライメント(AIが、利用者である人類の価値観や倫理観に沿って適切に行動することを保証するためはどうしたら良いかという議論や研究)と人文知= 文化を愛で、芸術に親しみ、人文学を身につけることを通じて、 人の心の中に生まれてくるしなやかで強靭な「知の力」との関係性をテーマにしたイベント。
<基調講演>
「人工知能のアラインメントにおける人文知~『IKIGAI』への反響に学ぶ~」
茂木健一郎 脳科学者、東京大学大学院 特任教授
<パネル討論>「人工知能のアラインメントにおける人文知~真に役立つAIのために~」
● ファシリテーター
茂木 健一郎 脳科学者、東京大学大学院 特任教授
● 討論参加者
池上 高志 東京大学大学院総合文化研究科 教授
磯野 真穂 東京科学大学(前・東京工業大学)リベラルアーツ教育研究院 教授
伊藤 穣一 学校法人千葉工業大学 学長
中島さち子 株式会社steAm 代表取締役 浅原 正幸 国立国語研究所 教授
パネラーの豪華な顔ぶれに惹かれたのと、AIと人文知の関係性にもタイムリーに興味があったので(ちょっと敷居が高かったのだが)勇気を出して聴きに行った。
予想以上に議論が白熱していてバチバチする瞬間もあった程。当然、その分濃密で興味深い話が次から次へと出てきて付いて行くのも大変だった。気持ち良い脳の疲労。終わってみると人文知の話ってあった?って気もしないでもなかったり。
気になったキーワードを乱雑に列挙:
・GPT4は人類のバタフライ(ジェフリーヒントン)
・知性とは?IQと収入の相関は低い
・倫理判断は評価関数で書けない?
・何かが目標になると良い基準でなくなる(グッドハートの法則)
・コミュニティーファースト、加わる事が大事、才能は後から付いてくる、相互作用が性格を作る
・AIは人間を超えるか?という議論は意味がない
・美学は最適化できない
・今の時代はこんな感じだよね、文化
・AIを作ることは社会モデル作ること、インプットは社会の相対データ)
・人間のバイアスこそが人類を進化させる
・世界の根底には物理法則が流れている!
・AI=株式会社、社長は意識、社員は無意識
・信念、行動、象徴=文化
・儀礼儀式の重要性、必要なモノを残すのが美学
・AIは道具ではない、人間こそがボトルネック
・自分で自分の好みを考える事が重要、答えを出すだけならマシーンと一��、ノーベル賞は取れない
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2025年1月29日に発売予定の翻訳書
1月29日(水)には37点の翻訳書が発売予定です。
新訳 神道神話の精神

J・W・T・メーソン/著 鎌田東二/監修 高橋ゆかり/翻訳
作品社
未来学

ジェニファー・M・ギドリー/著 南龍太/翻訳
白水社
ギリシア富豪は仮面の花婿

シャロン・ケンドリック/著 山口西夏/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
都会の迷い子

リンゼイ・アームストロング/著 宮崎彩/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
靴のないシンデレラ

ジェニー・ルーカス/著 萩原ちさと/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
夢の公爵と最初で最後の舞踏会

ソフィア・ウィリアムズ/著 琴葉かいら/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
あの夜の代償

サラ・モーガン/著 庭植奈穂子/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
雪の夜のダイヤモンドベビー

リン・グレアム/著 久保奈緒実/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
コテージに咲いたばら

ベティ・ニールズ/著 寺田ちせ/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
伯爵と別人の花嫁

エリザベス・ロールズ/著 永幡みちこ/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
遅れてきた愛の天使

JC・ハロウェイ/著 加納亜依/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
一人にさせないで

シャーロット・ラム/著 高木晶子/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
アリストパネスは誰も愛さない

ジャッキー・アシェンデン/著 中野恵/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
結婚の過ち

ジェイン・ポーター/著 村山汎子/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
水仙の家

キャロル・モーティマー/著 加藤しをり/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
赤毛のアデレイド

ベティ・ニールズ/著 小林節子/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
イギリス的国民性
ラルフ・ウォルドー・エマソン/著 高橋昌久/翻訳
風詠社
ブロンドのエックベルト 人生の余剰
ルートヴィヒ・ティーク/著 高橋昌久/翻訳
風詠社
短編繍
アルフォンス・ドーデ他/著 高橋昌久/翻訳
風詠社
亡命に寄せる省察
初代ボーリングブローク子爵/著 高橋昌久/翻訳
風詠社
ミルトン伝・スウィフト伝
サミュエル・ジョンソン/著 高橋昌久/翻訳
風詠社
女について、心理学的注釈 他四篇
アルトゥール・ショーペンハウアー/著 高橋昌久/翻訳
風詠社
コロンバ
プロスペル・メリメ/著 高橋昌久/翻訳
風詠社
大地の糧
アンドレ・ジッド/著 高橋昌久/翻訳
風詠社
はじめてのファッションスケッチ
ジュスティーヌ・ルクフ/著 クロエ・タカハシ/著 和��侑子/翻訳
ビー・エヌ・エヌ
聖書の基礎知識 新約・旧約外典篇
C・ヴェスターマン/著 F・アーヒウス/著 J・ヴェーネルト/著 吉田忍/翻訳
日本キリスト教団出版局
真冬の訪問者
W・C・ライアン/著 土屋晃/翻訳
新潮社
うしろにご用心!
ドナルド・E・ウェストレイク/著 木村二郎/翻訳
新潮社
ナルニア国物語3 夜明けのぼうけん号の航海
C・S・ルイス/著 小澤身和子/翻訳
新潮社
色の歴史図鑑
ニール・パーキンソン/著 百合田香織/翻訳
ビー・エヌ・エヌ
UXデザインの法則 第2版
Jon Yablonski/著 相島雅樹/翻訳 磯谷拓也/翻訳 反中望/翻訳 松村草也/翻訳
オライリー・ジャパン
子ねずみウォルターはのんびりや
マージョリー・フラック/著 おびかゆうこ/翻訳
徳間書店
ウクライナ わたしのことも思いだして : 戦地からの証言
ジョージバトラー/著 原田勝/翻訳
小学館
色の物語 ゴールド
ヘイリー・エドワーズ=デュジャルダン/原著 丸山有美/翻訳
翔泳社
日本語と英語でわかる!もっと知りたくなる日本 相撲
西尾克洋/著 中村知之/翻訳
秀和システム
富者の思考 お金が人を選んでいる
ケリー・チェ/著 小笠原藤子/翻訳
CCCメディアハウス
プロフェッショナルアジャイルリーダー : 組織変革を目指すトップとチームの成長ストーリー
長沢智治/翻訳
丸善出版
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「列」 [著]中村文則
列から逃れられる者はいない。いま並んでいる列から離れても、人はまた別の列に並ぶことになる。ならば、「いま」を生きることを見つめたい。(…)問いが宙に浮かび、何者かが地面に書きつけた〈楽しくあれ〉という言葉が胸に響く。(稲泉連)






「マルクス解体 プロメテウスの夢とその先」 [著・訳]斎藤幸平
著者は、ルカーチ流の「方法論的二元論」に立つ。そして、具体的な実践の手がかりを、古い社会にあった「協同的富」の回復が「ラディカルな潤沢さ」につながるというマルクスの考えに求める。それが「物質代謝の亀裂」を修復する道なのである。(福嶋亮大)


「ヒトは生成AIとセックスできるか 人工知能とロボットの性愛未来学」 [著]ケイト・デヴリン
「セックス」と言われれば、大半がペニスの挿入を考えるはず。でもそもそもそれは必須なのか?(…)著者はその当たり前を次々解体し、セックスを「興奮の感覚をともない、なおかつ互いの同意のもとで交わされる行為」と定義する。そうすると、セックスロボットは人間を模す必要はないという発想が現れ、おもちゃとロボットの境界が融解し始める。(磯野真穂)
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私は「里見八犬伝」(1983年公開。以降は角川版と表記)世代なので 「虚の世界」のパートでの比較は避けられず、JACスター勢揃いの角川版からのパワーダウンが半端ないのだ。 ちなみに、2作はどちらも馬琴の書いた八剣士の物語ではあるものの、ストーリーが大きく異なっている。 それについては本記事の後半で紹介するが、ひとまず本題に戻そう。 角川版の八犬士がヘビー級なら、本作の八犬士はミドル級にも程遠く、せいぜいライト級かフェザー級といったところ。 敵役も玉梓が夏木マリから栗山千明では勝負にならない。 浜路の河合優実も、全く彼女の良さが出ていなかった。 角川版では八剣士の中心人物であった親兵衛は本作ではほぼ空気。 ちなみに演じている藤岡真威人は藤岡弘の息子で、2020年にセガ創立60周年を記念して せがた三四郎の息子・せが四郎としてメディアデビュー。 先日から始まった実写ドラマ版「ウイングマン」では主演を務めている。 原作が違うのだからストーリー展開が異なるのは仕方ないとはいえ 演者も演出も外連味の塊とも言える角川版に比べると芝居が圧倒的に軽く、演出もVFX頼みで迫力に欠ける。 旬の俳優を集めた超豪華な2.5次元舞台、と書くとその筋のファンの方に怒られるだろうか。 唯一頑張ったのは、犬坂毛野を演じた板垣李光人。 角川版でも登場した暗殺シーンは、志穂美悦子の見惚れる剣術とはまた違ったアプローチでなかなか良かった。 皆がああいった形で角川版とは違う魅力を見せてくれていれば印象は随分と変わっていたはず。 ここまで「実の世界」のキャストを実力派で固めるのであれば 「虚の世界」は「キル・ビル」のように、いっそアニメで作っても良かったのではないだろうか。 「平家物語」「犬王」のサイエンスSARUあたりに頼めていれば...。 「実の世界」は、物語進行と同時に馬琴の作家としてのプライドの高さやへんくつさ、 良き父・良き夫ではなかった部分を浮かび上がらせていて見応えは抜群。 特に北斎と連れ立って芝居を観に行く場面での立川談春とのヒリヒリするやり取りこそが 本作の最大の見所とも言える。 辛い現実が多い世の中で、せめて物語の中ぐらいは最後に正義が勝つ物語を作りたいと主張する馬琴と 空蟬に漂う毒を露悪的に舞台に取り入れる南北は、まさに水と油。 しかしどちらかが言い負かすまでは続けず、わだかまりを残したまま剣を収め、互いの信じる日常に戻っていく。 この場面を見れただけでも、149分付き合って良かったと思える。 反面、馬琴の妻の寺島しのぶは最初から最後までヒステリックに悪態をついているだけで、 息子の磯村隼斗もいつの間にか病に倒れてしまい、チラリと登場した息子以外の子もほとんど出て来ない。 『ここを描きたい』という監督の思いにムラがあり過ぎる。 光を失った馬琴の代わりに無学だったお路(黒木華)が筆を取り、 叱責されながらも教えを乞い続けてついに作品を完成させた偉業すら エンドロール直前に文章でつらつらと表示して終わりではあまりにも軽い。 本作が馬琴の物語ならばそこは端折るべきではなかったし 八犬士の物語をしっかり描くなら、和風ハムナプトラのような安いCGでお茶を濁すべきではなかった。 思い入れのある作品なので何もかも自分でやりかたったのかも知れないが、脚本は別の人に任せた方が良かったように思う。 散々あれこれ書いてきて何だが、「里見八犬伝」世代だから気になる箇所がたくさんあっただけで 149分間一度も退屈だと感じることはなかったので、予備知識のない方のほうが素直に楽しめそう。 本作を見て楽しかったなら、鑑賞後に補完のつもりで角川版も見て欲しい。 (そもそも今作には出てこない)静姫と親兵衛の恋愛を軸にした大胆なアレンジは 一流の役者陣による本気のごっこ遊びとして、また違った楽しさを得られるはず。
映画「八犬伝」虚と実の重量感の差が惜しい|「南総里見八犬伝」「里見八犬伝」との違いも解説 - 忍之閻魔帳
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2023/07/03
BGM: Billie Eilish - Getting Older
今日、晴れて48歳になった。休みだったので朝、総合病院に行く。そして先生に会い、自分の精神状態について話す。この「ドクターとの信頼関係をいかにして結ぶか」という問題についても自分は苦労してきたことを思い出す。かつて、ぼくは先生に対して過大に期待していたフシがあったとも思う。「とにかくドカンと薬を出してくれ、そしてぼくを救ってくれ」というように。その一方で「どうせどんなにこちらが悩みを言っても、あなたは『ハイハイ』と『仕事』で処理するんでしょ」「1度も生活費に困ったことなんてないんでしょ。医者はサラリーもいいだろうし」なんてことを心のどこかで(いや、「心のド真ん中」で)考えていたとも思う。そう思うと実に自分はひねた、いやらしい患者だったなと思ってしまう。薬を出すにせよアドバイス(効く言葉)を出すにせよ、医師ができるのは患者をサポートすることがメインだ。そこから先、つまり「人生を実際に生きる」のは患者の役目なのだ。そう思うと過去に甘ったれていた自分を思い出す。実に汗顔の至りだ。薬をもらった後、LINEなどでお祝いのメッセージをたくさんいただく。涙がこぼれそうになった。綾波レイみたいだ。こんな時どんな顔をしたらいいのかわからない……。
マイルス・デイヴィス『クールの誕生』を聴きながら(分かる人だけこのチョイスというかタイトルにニヤッとして下さい)、今日の読書は磯野真穂・宮野真生子『急に具合が悪くなる』を読んだ。この本はガンで闘病を続けた哲学者・宮野とその彼女に真摯に答える人類学者の磯野の往復書簡で、実に読ませる1冊だった。ガンに侵されるというのはもちろん、「不運」な出来事である。だが、宮野はその運命を「不幸」とは思っていないと記している。これは実に毅然とした、「闘争」の「宣言」ではないかと思った。「不運」な出来事は確かに誰の身にも起こりうる。ぼくの話をするなら、ぼくが発達障害者として生まれてきたことも多分に「不運」な出来事であるだろう。だが、それを「不幸」な出来事として位置づけるかどうかはぼくが決められること、ぼくの解釈や考え方に由来/依存することである……と書くとなんだか自己啓発/セルフヘルプの書物が教えるポジティブ・シンキングに似ているかもしれない。確かにこの本はそうしたポジティブ・シンキングに導いてくれる本だが、同時に「コクのある」深みをも備えていると思った。
それはどうしてなのか考えるのだけれど……まだ1度だけ読んだきりなので見つからない。この本はぼくが一生かけて読み込むべき本ではないかと思う。だけど、この本から学んだのは確率的に「不運」に陥ることがあるとしてもぼくは(村上春樹的な命題/テーマになるけれど)、そこから何かを学ぶことはいつだって可能だということだ。そして、そうして学んだことを手がかりに言葉を紡ぐことも確たる軌跡/ラインを描いて生きることだって可能だということも。現在では発達障害者の割合は10人に1人くらいらしいけれど、そうしたことがわかっても「じゃ、何でよりによってこの『ぼく』がそう生まれたんだ?」という疑問・苦悩は消えやしない。かつてのぼくならそうした「不運」を嘆き、そこから「ぼくは発達障害者としてこの生を絶望とともに生きるしかないのだ」といじけて、自ら「不幸」に陥っていたと思う。この本でも指摘されているけれど、起きた出来事を消化する際にそうしていじけてしまうことが不幸の始まりなのだろうと思う。でも、そうしていじけずに前を向いて歩くのもしんどい。どうしたらいいのだろうか。これもぼくにとって「永遠のテーマ」になりそうだ。
いつもぼくはこの日記で「BGM(つまり『今日の1曲』)」を思いつくのに苦労しているのだけど、今日はふとビリー・アイリッシュを聴いてみたくなってこの曲「Getting Older」にたどり着いた。この曲の中でビリーは辛辣に、トラウマ的な過去を語りすぎることの愚を撃っている。「And maybe that's the reason every sentence sounds rehearsed(多分それが原因ね、何もかもがまるでリハーサルみたいなの)」。つまり、語れば語るほど「トラウマ語り」は洗練されていき本番前の予行演習になり、したがって嘘くささを増していくということだ。もちろん、それは一方では致し方ないところもある。語り続けることがそうして「リハーサル的」になりその人だけの力強い「ライフストーリー」「自叙伝」を形成することになるのなら、明らかな嘘が紛れ込まない限りにおいて「いいこと」「なすべきこと」とさえ言えるのかもしれない。だが、このビリーの辛辣な視点、つまり「求められるからそれに応じて嘘をついてしまう」「自分の嘘に慣れてしまいよりいっそう話を盛ってしまう」「自分のトラウマ語りが『芸』になってしまう」ことへの危惧の意識は心のどこかで(いや、これも「心のド真ん中」で?)保っておきたいと思った。ビリーのこの曲の歌詞と対訳はこちらのブログが参考になる。
http://oyogetaiyakukun.blogspot.com/2021/09/getting-older-billie-eilish.html
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偶然と運命を通じて、他者と生きる始まりに充ちた世界を愛する。
これが、いま私がたどりついた結論です。
哲学者 宮野真生子
ー宮野真生子・ 磯野真穂 著『急に具合が悪くなる』(晶文社)よりー
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2025/5/4 19:00:21現在のニュース
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