#色絵九谷それぞれの世界
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misoyo-happy · 9 months ago
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会社帰りに行ってきました。歩いて行けるの。
どれも素敵で幸せ空間でした╰(*´︶`*)╯♡
食器なんだけど伝統文化でもあり芸術品でもあり、たくさん使いたい気もするし、飾っておきたい気もする。
伝説の怪獣!魅力的♪
Voyageってタイトルがついてる壺をグルリと回って見たり。
家守の絵とかお守りになりそう!
そして
@touboutetsu さんの作品は、緻密で大胆で、余白が素敵だったりびっしりだったり、手が震えそう。
うちにあったらって想像した時に、ダメだ。片付けよう。って思いました(^_^;)
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u-wolf-kansou · 1 year ago
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不可逆怪異をあなたと2/古宮九時
感想です。前回から一年も経ったんですか? 早すぎませんか?
こちらは古宮先生作品であるUnnamed Memoryとその続編であるafter the end、Babelなどのシリーズを読んでいるものの感想です。ネタバレなどはご容赦ください。
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〇、血汐事件
血汐事件の裏、一妃ちゃん視点での描写。
夢見さんとの別れがしんどい。そしてその別れと出逢いの繰り返しを受け入れている一妃ちゃんもしんどい。
『ああ──あと少しだったのに』
↑普通に怖いです。よくあるけど一番怖いよね。
一、境縄
読めないんだけど「けいじょう」かな。
普通に縄と戦うのおもしろいです。あいかわらず蒼汰くんはあまり動じてなくて読者もそこまで恐怖を感じなくて済んでるのでは?
その後転校先で黒墨雨さんと会い、挨拶を済ませる蒼汰くん。監徒の人たちが多いというのは少しいいことか、巻き込まれる前兆か。
異郷の話は気になっていたので一妃ちゃんが話してくれて良かった。もっと知りたいことはたくさんありますが。巻頭口絵だけ見ちゃったけどそこが薄ピンク〜紫なのと、表紙がピンクっぽいのは何か関係あるのかな。
「それ学校の感想なの?」
↑二回言った。
俺がちゃんと俺であるうちに結果を出したい。地柱のことも、一妃のことも。
↑いろんなことに責任感がある蒼汰くん、推せます。まぁやはり花乃ちゃんは大事なんだけど、その大事な物の中に一妃ちゃんも含まれていそうだなということがわかる一文、好きです。
二、連絡網
自由な校風、いい。でも蒼汰くん宿題はやって欲しい。家族二人にも言われていただろ、、、宿題やっとけば理解しやすいんだからテスト勉強も復習で済むことが多いんだぞ。
隣の席の山上くんから唐突に地柱だよねって言われるの笑う。予測変換で出てこなかった地柱がようやく出てくるようになりました。ありがてぇ。
「学校に通いたい地柱さまなんだろうな、くらい」
↑は結構軽すぎるのでは? 山上くん大丈夫? でも蒼汰くんにとっては居心地良さそう。
薄緑の鹿、現物見たい。ちゃんと力を込められる蒼汰くん流石です。そして、白線がこのタイミングで出てくるの、踏んだり蹴ったりだけど二人とも冷静さを失わずに対処してるのがすごい。
やっぱり人外描写が上手い。一妃ちゃん、『話が通じるかどうか』じゃなくて『友達か違うか』で見てるっての、すごい腑に落ちた。
黄昏から夜へとページがめくられていく時間。
↑この表現すごく好きです。
こわいよ家電〜!そんな機能ない��〜!読谷紀子さんは誰なの〜!?
三、相談箱
禁忌破り普通によくないですよね。でもこうやってクラス内カーストがあるとなかなか難しい。床辻市民は怪異という同じ敵(?)があるんだからそこは協力して欲しい。
……読谷紀子さん?
墨染雨さん、ちゃんとおにぎり食べてちゃんと白線対策教えてくれるのいい。このおにぎり古宮先生好きなんだなきっと。このまえご飯の上に乗っけて食べたりはしたけど今度やってみます。
墨染雨さんからの一妃ちゃんは人間ではない、人の心がないということの忠告、よくわかるし一巻で出てきた人の心がない描写は怖かったです。だけどそれを受け入れて家族と言い切る蒼汰くん、推せる。
連絡網、怖すぎ。
四、彼岸渡し
せっかく穏やかな気持ちで過ごせるようになってた花乃ちゃん、連絡網でまた怯える生活になってしまったの心が痛すぎる。
人の在り方を愛でるまなざし、人が家族同然に動物を愛するのときっと似ているという描写、まさにそうなんだろうけどその愛に救われている花乃ちゃんの安らぎはきっと本物だから、二人には一緒にいて欲しいと思う。
途中でおばあちゃんが出てきて禁忌破りが中断されたの、良かったねとは思うけど結局みんな昏睡状態なのよくないな?
色々説明してくれる墨染雨さん。ずっとリーフレットの話してる。大事なことを隠した広告は良くないですな。今回のように何も知らない相性の悪い住人が入ってきちゃう。
というわけで市役所燃えました! え?
そして読谷紀子さんも確保される。実体あるんか、、、話はどんどんすすんでいきます。
五、捧げもの
どうやら読谷紀子さんは本人だということがわかる。花乃ちゃん実は的を得た発言なのでは?
邪魔になるタイミングで夏宮さんがやってくる。怪異じゃないんかい。まぁ人外ではありますが。
ここの挿絵の一妃ちゃんめっちゃかわいくないですか? 二色先生本当に絵が上手い。夏宮さんは俯瞰で立ち絵しかも地面もあって、後ろにコマが二つってなかなかやらないでしょ。空間の取り方が神。ほんとにすきです。
六、追憶
地柱として生きてきた墨染雨さんの読谷紀子さんへの想い、それは一言で言えば愛じゃないですか……うっ
夏宮さんついてきてくれるんか〜相変わらず話し合いで解決しようとする蒼汰くん好き。
七、回帰
墨染雨さんの所突入! 緑に光ってるって草だったんかい。草。
人外になってもなお人を愛する心を持ち、読谷紀子さんを助けようとする墨染雨さん、すき。
グレーティアさんと墨染雨さんの気まずいやりとりについて蒼汰くんが責任感じるの全然違うんだけどいい人だなぁとは思う。そこまで責任感じなくていい。
紀子さんの記憶もどって���かった!!! なんだけど、やっぱり白線の内側に居たのかな。異郷の情景のようなものが少し出てきた感じする。
八、開門
加護……?
手に空いた穴絆創膏つけておけば塞がるかな!?本当に言ってるの!?!?!?こわ
風呂で寝るな! それは失神だ!
一妃ちゃんが急に来て大変!ってなるのかわいいんだけどそのあとが不穏。作り直されたとかやめてよ……おねがいだから。
見逃した白線大丈夫? とは思ってたけどやっぱり伏線だったか、、、やだ〜
え、紀子さん自身も送り込まれたってのに気づいているのか。ちょっと待ってバッドエンドしか見えないんですが。
二人で終わらせようとしてたのに邪魔しないでくださいよ!!!国なんて最近できたばかりのものでしょう!!!!!!!!!ばか!
九、加護
加護をつけていたのは意味なかったのかなと思っていたらまさかのそれでこちらに侵攻してくるアンカーとしての機能を果たせるようになったって皮肉すぎる。ほんとなに? 人の心ありますか?
一妃ちゃんのお姉ちゃん、双華っていうんですね、名前綺麗。超怖いけど。ピンク色のゼリーにはなりたくない、、、
一妃ちゃんが蒼汰くんの近くにいるってことを悟らせてしまったって責任感じてるけど何でもかんでも背負い込みすぎやねん!!!
ぼろぼろになりながらも奮闘して蒼汰くんたちを逃がしてくれた墨染雨さん、ほんとに……ほんとに……
十、侵攻
一妃ちゃんが持ってる性質がすごく独裁者っぽいのうわ〜ってかんじ。
珍しく二人を巻き込んでしまったって落ち込んでいる一妃ちゃんに対する蒼汰くんと花乃ちゃんの返答、すごくいい。それに対する一妃ちゃんの反応も。ああ〜。
「人が自分の力でできてる限りは手出ししない方がいいんだよ。じゃないと在り方が曲がっちゃうでしょ」
↑は古宮先生作品に割と共通する考え方だと思う。ティナーシャちゃんもよくこういうこと言うよね。
「一緒にいる時は助けるし、離れていても力になる。相手を尊重する。理解に努める。それが及ばなくても、粗末には扱わない。」
ずんとくる言葉。
挿絵、ああああああああ!!!
約束した、したな!?ちゃんと戻ってくるからな三人で!!!!!!!
十一、拒絶
一妃ちゃんと双華さんの相容れない性質。うーん。気になってたんですけど、姉が2で妹が1なのはなんでなんですかね? 実は双子で先に生まれた子を姉とするが名前はあとにする風習とかある?
石灯籠の辺りを通ったのはなんだろ八尺様みたいなやつ? 双華さんが怪異と遭遇してんの笑うな。
メンタルで攻撃していく蒼汰くん。相変わらず強い。
ついにメンタル強化だけじゃなくて物理で殴り始めた。やっぱり力isパワー。
棒状にしちゃったら本当にキャンディだろ、可愛いってこと
↑の流れずっと笑ってました。このままシリアスに戻れなかったらどうしようと思って読んでた。
翅かっこいい〜!
十一、羽化
一妃ちゃんがこちらの世界に来てからの話、この一節がとても好き。自分と共に生きる娘たちを愛した一妃ちゃんの愛が伝わってくる。
花乃ちゃんの電話……。
裏返して彼岸にしちゃうの本当すごい。加月くん天才じゃない?
夢見さん、、、、、、
【境縄】、この世とあの世……此岸と彼岸の境界を動かすもの。
↑答え ↓一、境縄の記述
【境縄とは■■と■■の■界を動かすものであり、すみやかに送り返さねばならない】
ここで出てくんの天才ですよね! まさか伏線にしてるとは思ってなかった。無駄がない。本当に。
「なんで……ひとりで、出て行ったの?」
この言葉に姉妹としての何かがあるような気がして胸がキュウっとなりました。
そうして彼女は、長い遊びの終わりを宣言する……からの花乃ちゃん……わぁ
「わたしは、その世界を見てみたい。そこで生きてみたい」
↑本当にしんどいんだけど、でもそれがお互いにとって適任というかしたいこと、やりたいこと、いたい環境なので、頷くしかない。
「俺は、花乃がやってみたいっていうならそれを尊重する」
↑ここでこれを思い出すんですよ。 「一緒にいる時は助けるし、離れていても力になる。相手を尊重する。理解に努める。それが及ばなくても、粗末には扱わない」
ハァー……家族
花乃ちゃん美しすぎます、二色先生は神。
「わたしを選んでくれてありがとう。すごく幸せだった。ずっとずっと愛してる」
「お兄ちゃんが、わたしのお兄ちゃんでよかった」
花乃ちゃんのまっすぐな愛の言葉、1回目は大混乱してたけど2回目読んで……うう
ワァン
十三、思い出
語ることはないでしょう。
感想
これは家族の話だ。在り方が変わっても、どこにいても、尊重し思いやり気にかける。そして時には愛していると伝える。
誰かを尊重するってとっても難しいことだと思います。どんなに仲が良くて信頼していてもどこかしらで甘えが出てしまう。そんな甘えをよしとしてくれる関係もあるでしょう、しかし寄りかかりすぎると寄りかかられ続けた人は壊れてしまうかもしれない。それは尊重していると言えるか? と。
お互い自立した人間がその人の自己を尊重し否定せず、されどきっと噛み合わない意見を擦り合わせて時には譲り合って生きていくこと、そういう関係性を構築できる人間でありたいなと常々思います。
主人公の蒼汰くんは特に意識をしなくてもそういうことができてしまうキャラクターで、特に責任感が強すぎる。どこ歩いてても困ってる人に声をかけてしまう、そんなひと。
妹の花乃ちゃんはわからないものが怖くて、怯えていても、芯が強くて優しい子。自分を支えてくれた、救ってくれた二人を心底愛していて、力になりたいと思ってる。
そして一妃ちゃんはたくさんの共に生きた娘たちとすごして、そのどれもを愛して。そして蒼汰くんと花乃ちゃん二人のことも愛した、人の心がわからなそうに見えるけれど、自分なりに愛を注いでいる愛情深い人外。
この三人が家族でいること、お互いを尊重し、理解しようとしたこと。その尊さに心からの拍手を送りたい。
【不可逆怪異をあなたと 2】 この本はただのホラーではない。お互いを尊重し愛し合う、家族の話だ。
この物語に出会わせてくれた古宮先生、素晴らしいイラストで世界を広げてくれた二色先生。このコンビのお話をぜひまたどこかで読めたら嬉しいです。大好きな作品になりました! 本当にありがとうございました!
P.S.
メロブ特典の9、怖かったですよ普通に。ヒュッてなりました。いろんなところに分散させてるのかと思ったらあの一点だけだし、目について離れないように場所も考えてあるんだろうなとは思いますけど。あれをみた瞬間からその後の文字列が頭の中に入らなくなりました。ゲマ特典の7も今頃家に届いているでしょう。こわ。
届いたらまた追記します。
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kachoushi · 3 years ago
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各地句会報
花鳥誌 令和4年3月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和3年12月2日 うづら三日の月句会 坊城俊樹選 特選句
しとしとと雨しとしとと冬近し 喜代子 護りうけ思ひ絡まる毛糸編む さとみ 冬河や網打つ人は何を漁る 都 冬怒濤雄島は人を寄せ付けず 同 寂聴の過去は激しく榾燃える 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月2日 花鳥さゞれ会 坊城俊樹選 特選句
秋風や消えゆく物にますほ貝 雪 蓑虫の纏へる物の哀れさよ 同 亡き友の顔をかぞへて師走かな 匠 裘かくしに去年の映画の券 同 なんとなく交はす言葉にある師走 かづを こころして願掛けをせむ神還り 数幸 恋多き尼の死悼む歳の暮れ 清女 仲よしの三人の婆おでん酒 啓子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月4日 零の会 坊城俊樹選 特選句
枯葉積む蝶のむくろを嵩として はるか 乃木将軍の墓ひとりぼち冬の蠅 佑天 枯葉舞ふ異人の墓は仰向けに 伊豫 赤信号ぬるき懐炉は胸の奥 ゆう子 冬霞あふひの墓の見つからず 佑天 黄落にころんと転び笑ひをり ��� 坊城雀冬晴を祓ひに来 順子 十字墓影を寝かせて冬ぬくし 秋尚 冬の日に白装束の透きとほる きみよ
岡田順子選 特選句
百度石在らば祈らむ冬空に 炳子 墓一つ極月一つあるごとし 伊豫 冬晴や絵画館やや浮かみたり 佑天 塋域は枯野とならむ魂の黙 ゆう子 元勲の墓冬帝の貌をして 俊樹 極月の指墓碑銘を愛しみ 千種 冬晴や虚子の見守る墓一基 三郎 懐旧の情とは極月の男 千種 抱擁すマリアは寒き手を拡げ 俊樹 蝶も無き冬の墓標となりしかな 同 けふあたり上へと魂の日向ぼこ 慶月
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月10日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
面影山に半襟掛けて時雨虹 美智子 冬ぬくし赤子を丸く抱いてをり 栄子 冬ざれや修築の碑は沖を見て すみ子 ざらざらの風紋壁画冬日吸ふ 悦子 色鳥の木戸を飾りて飛び去りぬ 宇太郎 黄落の色に染まりて町の風 和子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月11日 札幌花鳥会 坊城俊樹選 特選句
冬日落つ老いのひと日の終りけり 独舟 ペーチカやレコード針の飛ぶところ 晶子 君知るや時空を超える除夜の鐘 同 悴みて錠剤一つ転がりぬ 寛子 樽前山を背負ひ堂々たる雄鹿 のりこ 魔女の口笛かも知れぬ虎落笛 岬月 天空の乱れし夜の虎落笛 同 クロークに寒さ預けて席に着く 同 恋心捨てしを叱咤虎落笛 同 五稜郭兵を鎮める雪しきり 雅春 冬虹を翔け上らんと鳥一羽 同 榾爆ぜる音にも温みありにけり 慧子 故郷は遠し一夜の雪二尺 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月11日 ますかた句会 栗林圭魚選 特選句
みちしるべなき分かれ径枇杷の花 秋尚 中子師と歩みし坂ぞ枇杷の花 三無 杉樽に醤油の香り枇杷の花 ゆう子 新聞の折り目ずれなく漱石忌 同 枇杷の花不穏なること無き日々よ 同 布団干す母手作りの重さかな 多美女 立ち止まり見る人もなく枇杷の花 白陶 いぶかりつ人恋ふ猫や漱石忌 百合子 烏瓜色仕上りて句碑頭上 三無 日を回しながらゆつくり紅葉散る 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月13日 武生花鳥俳句会(十二月十三日) 坊城俊樹選 特選句
色鳥の風と光に遊びをり 中山昭子 色足袋をはいていよいよ籠りけり 上嶋昭子 落つるもの大地に還し山眠る みす枝 一灯のともる社や神の留守 英美子 極月にして捨つるべきもの何もなし 世詩明 冬麗やこの郷土にて生かさるる 信子 吾町に煙突のなきクリスマス ただし 時雨るるや振子時計の重き音 信子 天界の星座の見ゆる大枯木 みす枝 妻が留守する小春日でありにけり 世詩明 天帝の光射す庭冬の蝶 錦子 誰かれと言はず着ぶくれ句座にあり 英美子 身籠りてふくらむ夢や毛糸編む 同 街路灯夜霧のうるむ一直線 一枝 外套の襟立て警邏街の辻 三四郎 外海も内海も凪石蕗の花 中山昭子 何処見るでなき見つめゐる日向ぼこ 英美子 鴨一羽急に羽搏き黙破る みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月13日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
金色の曙杉や冬日向 美貴 お喋りは徐々に大声冬日向 あき子 松籟に静けさつのる炭手前 同 冬日向旧姓残る裁縫箱 美貴 山寺の燃える紅葉に冬日差し 迪子 ひと畝の冬菜を残し寺の畑 秋尚 彩りに冬菜を入れて中華粥 迪子 尉もまたかぐはしきもの桜炭 三無 晴れし日は富士仰ぎ見ゆ冬菜畑 貴薫 黒糖の飴舐め冬菜畑入る 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月14日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
乾きたる白杖の音や枯木道 登美子 初めての柚子湯子の手に一つづつ 裕子 冬タイヤ着け替へる音響く町 紀子 根深持ち友わが家を探し来る 令子 母と娘のふところ温め根深汁 同 甥つ子の来福めがけ霰降る 紀子 冬夜空指輪のやうな月蝕を 光子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月14日 萩花鳥句会
リハビリの迎へ待つ間や著ぶくれて 祐子 月蝕や三代並び膝毛布 美恵子 姿変へ伏兵地球を凍らせる 健雄 交差点スマホの生徒息白し 吉之 句仲間の声懐かしや忘年会 陽子 けたけたと笑ふみどり児日向ぼこ ゆかり まつしろな書類重ぬる年の暮 明子 彼の宿の達磨火鉢を懐かしむ 克弘
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月16日 伊藤柏翠俳句記念館 坊城俊樹選 特選句
竜胆の花がこんなに似合ふ墓 雪 考へのあるとも見えぬ懐手 同 木犀の香にほころびの見えそめし 同 機嫌よく水の軽さや紙漉女 眞喜栄 音のなき竹百幹の霜の声 同 枯菊をくべ足し仕舞ふ畑仕事 同 マスクして美人の顔を半分に 清女 丸太棒の如き大根もて余す 同 嘗つて僧と梅見の宿の河豚料理 ただし 渡来仏残る若狭に牡蠣筏 千代子 越に棲み訛は二つ石蕗の花 同 青空に別れに来たか赤とんぼ 輝子 冬帝の足音もなく来る越路 かづを 黒手帳終へし師走の赤手帳 高畑和子 ふぐと汁喰べて睡むたくなりにけり ただし 鴨浮寝何れか父やら母子やら 玲子 酔漢の愚痴の繰り言忘年会 みす枝 大根を抜きて土の香漂へり 富子 虎落笛白きもの皆吹き飛ばす 山田和子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月19日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
重力の強くなりたる冬至前 久 遥か行く貉の怪や枯野径 三無 裸木の一木領す群れ鴉 菟生 寒鴉鳴くまだ釣果なき釣人に 佑天 神鈴を鳴らす冬帝鎮むまで 慶月 冬木立天は奪へるもの奪ふ 慶月 冬ざれの谷戸田貫く風太し 三無 径を問ふ人にやさしき頰被 亜栄子 むじな池人惑はせて氷りけり 久 焚火の香まさをな空へ消えゆけり 眞理子 古鏡なす日輪弾く冬の沼 菟生 燃えつきの悪き焚火やむじな池 千種
栗林圭魚選 特選句
痛きほどの青空尖る冬芽かな 斉 初霜の葉脈白く浮き立たせ 貴薫 霜枯の行く手阻みし杭一つ 炳子 女坂とても険しき水仙花 芙佐子 朝霜を畦の日蔭に消し忘れ 秋尚 田の氷罪あるごとく割られけり 千種 径を問ふ人にやさしき頰被 亜栄子 むじな池人惑はせて氷りけり 久 烏瓜空眩しみて破れけり 久子 霜光る崩るるままの藁ぼつち 炳子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月21日 鯖江花鳥俳句会
新米を上り框にどさと置く 上嶋昭子 難儀やなあと呟きて懐手 同 真砂女の句厨に貼れば時雨くる 同 実印を押して腕組む冬座敷 同 寒雀あやとりの子に近づきぬ 同 秋霜や左近の陣に残る石 同 床の間の螺鈿煌めき冬座敷 中山昭子 暖炉燃ゆ三重奏の楽豊か 同 蓑虫の蓑の衰へ如何にせん 雪 炉話や若き日の恋爆ぜてをり みす枝 船頭の笑はせ上手冬日焼 洋子 奈落とも思ふ夜更けの雪起し 一涓
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月22日 第四十四回近松忌記念俳句大会 坊城俊樹選 特選句
お歯黒をつけし女の近松忌 世詩明 男云ふ今際の言葉近松忌 雪 心中はむかしがたりや近松忌 遊子 近松忌雨の鳥語を供華として かづを 忍び泣くお初時雨や近松忌 ただし 近松忌盗人被りの成駒屋 道夫 南座の木戸に盛塩近松忌 同 あでやかな傘をすぼめて近松忌 上嶋昭子 しぐるるや胸のほのほは消えもせず 同 近松忌今も名残の七曲り 節子 許されぬ恋の道行き雪深し 同 近松忌皆口紅の濃かりけり 匠 日野山の晴れて時雨れて近松忌 同 手枕の味を忘れて近松忌 千代子 恋に燃えし寂聴逝けり近松忌 みす枝 人情の深まる里や近松忌 同 近松忌お初の恋はありのまま 千加江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年12月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
棘の威の死して残れる枯茨 洋子 クリスマス会果てまこと神の闇 古賀睦子 山の端にしたたる銀河神楽宿 佐和 独り三味線せめて一手間熱燗に 勝利 熱燗に火宅を忘れおほほほほ 美穂 棋士決めの王手の響き冬座敷 吉田睦子 スイミング二秒縮めて聖夜の灯 桂 北窓を塞ぎて画布の静かな絵 朝子 お尻立て鳰はするりと異次元へ 勝利 胴長と漁網干しゐる舟小春 由紀子 熱燗や三巡目なるあの話 成子 音楽会敢へて師走を忘れたく さえこ かりそめに置く一本の冬の薔薇 由紀子 凍星や阿修羅は泪とどめたり 久恵
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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misasmemorandum · 3 years ago
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『恋する日本史』 『日本歴史』編集委員会 [編]
古代から近現代までの恋愛に関してそれぞれの時代を専門とする学者さん達が書いた小論文集。一つ一つが短めで簡潔に書いてあってとても読みやすかった。
付箋を貼ったところを下に。
肖像恋慕なるものがあるそうだ(「古代にみる肖像恋慕の心性(三谷芳幸)」)。読んで字の如く、絵画や彫刻の肖像に恋すること。で、平安時代には「専門の画師が正当な技法で描いた」男絵と、「専門の画師ではない貴族の男女が手すさびに描いた」女絵があったそうだ。で、男絵は「公的な場で鑑賞されるもの」で、反して女絵は「プライベートな空間で鑑賞されるもので、特に貴族女性の無聊をなぐさめる賞翫品として人気」だったそうだ。(p57)
戦後の純血教育(「純潔教育のゆくえーー一九五〇年代前半における文部省の考え方ーー(小山静子)」)。
戦後、文部省が率先した「正しい」異性とのおつきあい方法。清純な異性交遊ってやつやろね。こう言うのが始められた理由は、戦後に男女共学にする学校が増えたからだそうで。戦前は男女の交流や接触は男女別学だったしで回避されてたが、戦後は「『正しい』男女交際や男女共学と通して純潔実現しようとしていた」のだそうだ(pp213−214)。そもそも純潔教育というものは、「もともとは、敗戦後の社会的混乱のなかで生じていた、『闇の女』と呼ばれた街娼への対策の一環として登場し」たのだって(P213)。売春を商売とする女性(男性)は戦前からいただろうけど、敗戦後の混乱期にはかなり増えてたんだろうな。で、この純潔教育では、「性的関係を結婚している当事者にしか認め」ず、「性を生殖の手段として捉え、純血と優生とを何よりも重視」したのだって(p214)。で、ここでの純血は「血統の純粋」を意味し、優生は「形質の優良化」を意味するそうなんだが、私にはもう全く意味不明だったりする(苦笑)。
「男女共学は、『男尊女卑のもとに成立していた道徳を、男女平等を基礎とした新道徳に堅確するという大きな使命を持っていた」(『男女の交際と礼儀 純潔教育シリーズ4』一四一ページ」だそうです。(p214)
この論文の「おわりに」が要約もしているので下に写す。
 純潔教育委員会や純潔教育分科審議会が考える純潔教育とは、男女交際を通して男女平等にもとづいた道徳心を培うこと、性に関する認識と理解を通して性欲をコントロールすること、性を生殖の手段として捉え、純血や優生の観点から、性的関係性を結婚している者のみに限定することを意味していた。それに対して文化省は、青少年の「性の乱れ」が社会問題化する中で、純潔教育や男女共学、男女交際に対して消極的な態度に終始し、もっぱら女性にのみ貞操観念を保持させることで「性の乱れ」に対処しようとしていたことがわかる。そういう意味では、中等教育の男女共学化という文脈に置いて登場してきた男女交際や純潔教育の新しさは後退したといわざるをえないし、女性に対してのみ純潔という価値が強調されていったのである。(p219)
一般的な知識として、よ論とせ論の違い。元々はよ論は「輿論」と書かれていて public opinion の訳語絵、「社会の取り決めの根幹をなし、尊重すべき『多くの人たちの意見』を意味」し、せ論は世論で popular setiments(国民感情)で「世に出回る風説(噂)や雰囲気を指し、時に「根拠のない噂」として否定的に捉えられるもの」なのだそうです。(p224) 今はどっちも世論と書くのでごっちゃになってしまってるよね。
最後にある論文、「同性愛と近代(三成美保)」で、日本の同性愛に対する差別もしないが擁護もしない風潮があるのが何故か書いてある。
 日本には性行為の目的を生殖に限定するといった厳しい性規範はない。ソドミー罪のように同性間性行為を処罰する宗教的背景はなく、性愛を回避する伝統もない。生殖と性行為が分離可能である一方、性行為と聖愛は強いて区別されなかった。日本では、同性間の性的関係は「性行為を含む性愛(男色など)」としてゆるやかに捉えられる傾向が強かった。同性間性行為を断罪もしないが、同性愛者の権利保護にも無関心という風潮の淵源はここにある。(p235)
家を保つために「妻妾制をとる日本では、男系継承に資する生殖を脅かさない聖愛は男女とも必ずしも抑制されなかった。女性同性愛は性行為と切り離され「無害化」された状態で、少女小説の格好のテーマとなった。(p241)」少女や女性の間での聖愛が大きく問題視されなかったのは、女性同士の性行為では身体的な処女が保たれる、処女膜が保たれるからもあるだろうなと思う。
近代日本の「同性愛」は、男女の同性愛者もろともほぼ文学と雑誌・新聞の言説のなかに閉ざされたと言ってよい。軍隊や学校、政治・経済の世界で男性同性愛はスキャンダルにならず異性愛と併存していた。女性同性愛は女学校と少女文学にとどめられて、男系継承の生殖を脅かさないようコントロールされた。同性カップルの多くが望む共同生活は、成人間の養子縁組という欧米にはない制度によって保護された。(p243)
あと、憲法24条で婚姻は「良性の合意」に基づくとあるのは、明治民法が定めていた婚姻に際する「戸主の同意」を否定した文言なのだそうだ(p244)。なるほどね。法律って、作られた時代に与えられた意味と、その後の時代に合わせての解釈とに違いが出て難しいんだな。
楽しく読みました。 
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kurihara-yumeko · 4 years ago
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【小説】The day I say good-bye (1/4) 【再録】
 今日は朝から雨だった。
 確か去年も雨だったよな、と僕は窓ガラスに反射している自分の顔を見つめて思った。僕を乗せたバスは、小雨の降る日曜の午後を北へ向かって走る。乗客は少ない。
 予定より五分遅れて、予定通りバス停「船頭町三丁目」で降りた。灰色に濁った水が流れる大きな樫岸川を横切る橋を渡り、広げた傘に雨音が当たる雑音を聞きながら、柳の並木道を歩く。
 小さな古本屋の角を右へ、古い木造家屋の住宅ばかりが建ち並ぶ細い路地を抜けたら左へ。途中、不機嫌そうな面構えの三毛猫が行く手を横切った。長い長い緩やかな坂を上り、苔生した石段を踏み締めて、赤い郵便ポストがあるところを左へ。突然広くなった道を行き、椿だか山茶花だかの生け垣のある家の角をまた左へ。
 そうすると、大きなお寺の屋根が見えてくる。囲われた塀の中、門の向こうには、静かな墓地が広がっている。
 そこの一角に、あーちゃんは眠っている。
 砂利道を歩きながら、結構な数の墓の中から、あーちゃんの墓へ辿り着く。もう既に誰かが来たのだろう。墓には真っ白な百合と、あーちゃんの好物であった焼きそばパンが供えてあった。あーちゃんのご両親だろうか。
 手ぶらで来てしまった僕は、ただ墓石を見上げる。周りの墓石に比べてまだ新しいその石は、手入れが行き届いていることもあって、朝から雨の今日であっても穏やかに光を反射している。
 そっと墓石に触れてみた。無機質な冷たさと硬さだけが僕の指先に応えてくれる。
 あーちゃんは墓石になった。僕にはそんな感覚がある。
 あーちゃんは死んだ。死んで、燃やされて、灰になり、この石の下に閉じ込められている。埋められているのは、ただの灰だ。あーちゃんの灰。
 ああ。あーちゃんは、どこに行ってしまったんだろう。
 目を閉じた。指先は墓石に触れたまま。このままじっとしていたら、僕まで石になれそうだ。深く息をした。深く、深く。息を吐く時、わずかに震えた。まだ石じゃない。まだ僕は、石になれない。
 ここに来ると、僕はいつも泣きたくなる。
 ここに来ると、僕はいつも死にたくなる。
 一体どれくらい、そうしていたのだろう。やがて後ろから、砂利を踏んで歩いてくる音が聞こえてきたので、僕は目を開き、手を引っ込めて振り向いた。
「よぉ、少年」
 その人は僕の顔を見て、にっこり笑っていた。
 総白髪かと疑うような灰色の頭髪。自己主張の激しい目元。頭の上の帽子から足元の厚底ブーツまで塗り潰したように真っ黒な恰好の人。
「やっほー」
 蝙蝠傘を差す左手と、僕に向けてひらひらと振るその右手の手袋さえも黒く、ちらりと見えた中指の指輪の石の色さえも黒い。
「……どうも」
 僕はそんな彼女に対し、顔の筋肉が引きつっているのを無理矢理に動かして、なんとか笑顔で応えて見せたりする。
 彼女はすぐ側までやってきて、馴れ馴れしくも僕の頭を二、三度柔らかく叩く。
「こんなところで奇遇だねぇ。少年も墓参りに来たのかい」
「先生も、墓参りですか」
「せんせーって呼ぶなしぃ。あたしゃ、あんたにせんせー呼ばわりされるようなもんじゃございませんって」
 彼女――日褄小雨先生はそう言って、だけど笑った。それから日褄先生は僕が先程までそうしていたのと同じように、あーちゃんの墓石を見上げた。彼女も手ぶらだった。
「直正が死んで、一年か」
 先生は上着のポケットから煙草の箱とライターを取り出す。黒いその箱から取り出された煙草も、同じように黒い。
「あたしゃ、ここに来ると後悔ばかりするね」
 ライターのかちっという音、吐き出される白い煙、どこか甘ったるい、ココナッツに似たにおいが漂う。
「あいつは、厄介なガキだったよ。つらいなら、『つらい』って言えばいい、それだけのことなんだ。あいつだって、つらいなら『つらい』って言ったんだろうさ。だけどあいつは、可哀想な��とに、最後の最後まで自分がつらいってことに気付かなかったんだな」
 煙草の煙を揺らしながら、そう言う先生の表情には、苦痛と後悔が入り混じった色が見える。口に煙草を咥えたまま、墓前で手を合わせ、彼女はただ目を閉じていた。瞼にしつこいほど塗られた濃い黒い化粧に、雨の滴が垂れる。
 先生はしばらくして瞼を開き、煙草を一度口元から離すと、ヤニ臭いような甘ったるいような煙を吐き出して、それから僕を見て、優しく笑いかけた。それから先生は背を向け、歩き出してしまう。僕は黙ってそれを追った。
 何も言わなくてもわかっていた。ここに立っていたって、悲しみとも虚しさとも呼ぶことのできない、吐き気がするような、叫び出したくなるような、暴れ出したくなるような、そんな感情が繰り返し繰り返し、波のようにやってきては僕の心の中を掻き回していくだけだ。先生は僕に、帰ろう、と言ったのだ。唇の端で、瞳の奥で。
 先生の、まるで影法師が歩いているかのような黒い後ろ姿を見つめて、僕はかつてたった一度だけ見た、あーちゃんの黒いランドセルを思い出す。
 彼がこっちに引っ越してきてからの三年間、一度も使われることのなかった傷だらけのランドセル。物置きの中で埃を被っていたそれには、あーちゃんの苦しみがどれだけ詰まっていたのだろう。
 道の途中で振り返る。先程までと同じように、墓石はただそこにあった。墓前でかけるべき言葉も、抱くべき感情も、するべき行為も、何ひとつ僕は持ち合わせていない。
 あーちゃんはもう死んだ。
 わかりきっていたことだ。死んでから何かしてあげても無駄だ。生きているうちにしてあげないと、意味がない。だから、僕がこうしてここに立っている意味も、僕は見出すことができない。僕がここで、こうして呼吸をしていて、もうとっくに死んでしまったあーちゃんのお墓の前で、墓石を見つめている、その意味すら。
 もう一度、あーちゃんの墓に背中を向けて、僕は今度こそ歩き始めた。
「最近調子はどう?」
 墓地を出て、長い長い坂を下りながら、先生は僕にそう尋ねた。
「一ヶ月間、全くカウンセリング来なかったけど、何か変化があったりした?」
 黙っていると先生はさらにそう訊いてきたので、僕は仕方なく口を開く。
「別に、何も」
「ちゃんと飯食ってる? また少し痩せたんじゃない?」
「食べてますよ」
「飯食わないから、いつまでも身長伸びないんだよ」
 先生は僕の頭を、目覚まし時計を止める時のような動作で乱雑に叩く。
「ちょ……やめて下さいよ」
「あーっはっはっはっはー」
 嫌がって身をよじろうとするが、先生はそれでもなお、僕に攻撃してくる。
「ちゃんと食わないと。摂食障害になるとつらいよ」
「食べますよ、ちゃんと……」
「あと、ちゃんと寝た方がいい。夜九時に寝ろ。身長伸びねぇぞ」
「九時に寝られる訳ないでしょう、小学生じゃあるまいし……」
「勉強なんかしてるから、身長伸びねぇんだよ」
「そん��訳ないでしょう」
 あはは、と朗らかに彼女は笑う。そして最後に優しく、僕の頭を撫でた。
「負けるな、少年」
 負けるなと言われても、一体何に――そう問いかけようとして、僕は口をつぐむ。僕が何と戦っているのか、先生はわかっているのだ。
「最近、市野谷はどうしてる?」
 先生は何気ない声で、表情で、タイミングで、あっさりとその名前を口にした。
「さぁ……。最近会ってないし、電話もないし、わからないですね」
「ふうん。あ、そう」
 先生はそれ以上、追及してくることはなかった。ただ独り言のように、「やっぱり、まだ駄目か」と言っただけだった。
 郵便ポストのところまで歩いてきた時、先生は、「あたしはあっちだから」と僕の帰り道とは違う方向を指差した。
「駐車場で、葵が待ってるからさ」
「ああ、葵さん。一緒だったんですか」
「そ。少年は、バスで来たんだろ? 家まで車で送ろうか?」
 運転するのは葵だけど、と彼女は付け足して言ったが、僕は首を横に振った。
「ひとりで帰りたいんです」
「あっそ。気を付けて帰れよ」
 先生はそう言って、出会った時と同じように、ひらひらと手を振って別れた。
 路地を右に曲がった時、僕は片手をパーカーのポケットに入れて初めて、とっくに音楽が止まったままになっているイヤホンを、両耳に突っ込んだままだということに気が付いた。
 僕が小学校を卒業した、一年前の今日。
 あーちゃんは人生を中退した。
 自殺したのだ。十四歳だった。
 遺書の最後にはこう書かれていた。
「僕は透明人間なんです」
    あーちゃんは僕と同じ団地に住んでいて、僕より二つお兄さんだった。
 僕が小学一年生の夏に、あーちゃんは家族四人で引っ越してきた。冬は雪に閉ざされる、北の方からやって来たのだという話を聞いたことがあった。
 僕はあーちゃんの、団地で唯一の友達だった。学年の違う彼と、どんなきっかけで親しくなったのか正確には覚えていない。
 あーちゃんは物静かな人だった。小学生の時から、年齢と不釣り合いなほど彼は大人びていた。
 彼は人付き合いがあまり得意ではなく、友達がいなかった。口数は少なく、話す時もぼそぼそとした、抑揚のない平坦な喋り方で、どこか他人と距離を取りたがっていた。
 部屋にこもりがちだった彼の肌は雪みたいに白くて、青い静脈が皮膚にうっすら透けて見えた。髪が少し長くて、色も薄かった。彼の父方の祖母が外国人だったと知ったのは、ずっと後のことだ。銀縁の眼鏡をかけていて、何か困ったことがあるとそれをかけ直す癖があった。
 あーちゃんは器用だった。今まで何度も彼の部屋へ遊びに行ったことがあるけれど、そこには彼が組み立てたプラモデルがいくつも置かれていた。
 僕が加減を知らないままにそれを乱暴に扱い、壊してしまったこともあった。とんでもないことをしてしまったと、僕はひどく後悔��てうつむいていた。ごめんなさい、と謝った。年上の友人の大切な物を壊してしまって、どうしたらよいのかわからなかった。鼻の奥がつんとした。泣きた���のは壊されたあーちゃんの方だっただろうに、僕は泣き出しそうだった。
 あーちゃんは、何も言わなかった。彼は立ち尽くす僕の前でしゃがみ込んだかと思うと、足下に散らばったいびつに欠けたパーツを拾い、引き出しの中からピンセットやら接着剤やらを取り出して、僕が壊した部分をあっという間に直してしまった。
 それらの作業がすっかり終わってから彼は僕を呼んで、「ほら見てごらん」と言った。
 恐る恐る近付くと、彼は直ったばかりの戦車のキャタピラ部分を指差して、
「ほら、もう大丈夫だよ。ちゃんと元通りになった。心配しなくてもいい。でもあと1時間は触っては駄目だ。まだ接着剤が乾かないからね」
 と静かに言った。あーちゃんは僕を叱ったりしなかった。
 僕は最後まで、あーちゃんが大声を出すところを一度も見なかった。彼が泣いている姿も、声を出して笑っているのも。
 一度だけ、あーちゃんの満面の笑みを見たことがある。
 夏のある日、僕とあーちゃんは団地の屋上に忍び込んだ。
 僕らは子供向けの雑誌に載っていた、よく飛ぶ紙飛行機の作り方を見て、それぞれ違うモデルの紙飛行機を作り、どちらがより遠くへ飛ぶのかを競走していた。
 屋上から飛ばしてみよう、と提案したのは僕だった。普段から悪戯などしない大人しいあーちゃんが、その提案に首を縦に振ったのは今思い返せば珍しいことだった。そんなことはそれ以前も以降も二度となかった。
 よく晴れた日だった。屋上から僕が飛ばした紙飛行機は、青い空を横切って、団地の駐車場の上を飛び、道路を挟んだ向かいの棟の四階、空き部屋のベランダへ不時着した。それは今まで飛ばしたどんな紙飛行機にも負けない、驚くべき距離だった。僕はすっかり嬉しくなって、得意げに叫んだ。
「僕が一番だ!」
 興奮した僕を見て、あーちゃんは肩をすくめるような動作をした。そして言った。
「まだわからないよ」
 あーちゃんの細い指が、紙飛行機を宙に放つ。丁寧に折られた白い紙飛行機は、ちょうどその時吹いてきた風に背中を押されるように屋上のフェンスを飛び越え、僕の紙飛行機と同じように駐車場の上を通り、向かいの棟の屋根を越え、それでもまだまだ飛び続け、青い空の中、最後は粒のようになって、ついには見えなくなってしまった。
 僕は自分の紙飛行機が負けた悔しさと、魔法のような素晴らしい出来事を目にした嬉しさとが半分ずつ混じった目であーちゃんを見た。その時、僕は見たのだ。
 あーちゃんは声を立てることはなかったが、満足そうな笑顔だった。
「僕は透明人間なんです」
 それがあーちゃんの残した最後の言葉だ。
 あーちゃんは、僕のことを怒ればよかったのだ。地団太を踏んで泣いてもよかったのだ。大声で笑ってもよかったのだ。彼との思い出を振り返ると、いつもそんなことばかり思う。彼はもう永遠に泣いたり笑ったりすることはない。彼は死んだのだから。
 ねぇ、あーちゃん。今のきみに、僕はどんな風に見え��いるんだろう。
 僕の横で静かに笑っていたきみは、決して透明なんかじゃなかったのに。
 またいつものように春が来て、僕は中学二年生になった。
 張り出されていたクラス替えの表を見て、そこに馴染みのある名前を二つ見つけた。今年は、二人とも僕と同じクラスのようだ。
 教室へ向かってみたけれど、始業の時間になっても、その二つの名前が用意された席には、誰も座ることはなかった。
「やっぱり、まだ駄目か」
 誰かと同じ言葉を口にしてみる。
 本当は少しだけ、期待していた。何かが良くなったんじゃないかと。
 だけど教室の中は新しいクラスメイトたちの喧騒でいっぱいで、新年度一発目、始業式の今日、二つの席が空白になっていることに誰も触れやしない。何も変わってなんかない。
 何も変わらないまま、僕は中学二年生になった。
 あーちゃんが死んだ時の学年と同じ、中学二年生になった。
 あの日、あーちゃんの背中を押したのであろう風を、僕はずっと探してる。
 青い空の果てに、小さく消えて行ってしまったあーちゃんを、僕と「ひーちゃん」に返してほしくて。
    鉛筆を紙の上に走らせる音が、止むことなく続いていた。
「何を描いてるの?」
「絵」
「なんの絵?」
「なんでもいいでしょ」
「今年は、同じクラスみたいだね」
「そう」
「その、よろしく」
 表情を覆い隠すほど長い前髪の下、三白眼が一瞬僕を見た。
「よろしくって、何を?」
「クラスメイトとして、いろいろ……」
「意味ない。クラスなんて、関係ない」
 抑揚のない声でそう言って、双眸は再び紙の上へと向けられてしまった。
「あ、そう……」
 昼休みの保健室。
 そこにいるのは二人の人間。
 ひとりはカーテンの開かれたベッドに腰掛け、胸にはスケッチブック、右手には鉛筆を握り締めている。
 もうひとりはベッドの脇のパイプ椅子に座り、特にすることもなく片膝を抱えている。こっちが僕だ。
 この部屋の主であるはずの鬼怒田先生は、何か用があると言って席を外している。一体なんの仕事があるのかは知らないが、この学校の養護教諭はいつも忙しそうだ。
 僕はすることもないので、ベッドに座っているそいつを少しばかり観察する。忙しそうに鉛筆を動かしている様子を見ると、今はこちらに注意を払ってはいなそうだから、好都合だ。
 伸びてきて邪魔になったから切った、と言わんばかりのショートカットの髪。正反対に長く伸ばされた前髪は、栄養状態の悪そうな青白い顔を半分近く隠している。中学二年生としては小柄で華奢な体躯。制服のスカートから伸びる足の細さが痛々しく見える。
 彼女の名前は、河野ミナモ。僕と同じクラス、出席番号は七番。
 一言で表現するならば、彼女は保健室登校児だ。
 鉛筆の音が、止んだ。
「なに?」
 ミナモの瞬きに合わせて、彼女の前髪が微かに動く。少しばかり長く見つめ続けてしまったみたいだ。「いや、なんでもない」と言って、僕は天井を仰ぐ。
 ミナモは少しの間、���も言わずに僕の方を見ていたようだが、また鉛筆を動かす作業を再開した。
 鉛筆を走らせる音だけが聞こえる保健室。廊下の向こうからは、楽しそうに駆ける生徒たちの声が聞こえてくるが、それもどこか遠くの世界の出来事のようだ。この空間は、世界から切り離されている。
「何をしに来たの」
「何をって?」
「用が済んだなら、帰れば」
 新年度が始まったばかりだからだろうか、ミナモは機嫌が悪いみたいだ。否、機嫌が悪いのではなく、具合が悪いのかもしれない。今日の彼女はいつもより顔色が悪いように見える。
「いない方がいいなら、出て行くよ」
「ここにいてほしい人なんて、いない」
 平坦な声。他人を拒絶する声。憎しみも悲しみも全て隠された無機質な声。
「出て行きたいなら、出て行けば?」
 そう言うミナモの目が、何かを試すように僕を一瞥した。僕はまだ、椅子から立ち上がらない。彼女は「あっそ」とつぶやくように言った。
「市野谷さんは、来たの?」
 ミナモの三白眼がまだ僕を見ている。
「市野谷さんも同じクラスなんでしょ」
「なんだ、河野も知ってたのか」
「質問に答えて」
「……来てないよ」
「そう」
 ミナモの前髪が揺れる。瞬きが一回。
「不登校児二人を同じクラスにするなんて、学校側の考えてることってわからない」
 彼女の言葉通り、僕のクラスには二人の不登校児がいる。
 ひとりはこの河野ミナモ。
 そしてもうひとりは、市野谷比比子。僕は彼女のことを昔から、「ひーちゃん」と呼んでいた。
 二人とも、中学に入学してきてから一度も教室へ登校してきていない。二人の机と椅子は、一度も本人に使われることなく、今日も僕の教室にある。
 といっても、保健室登校児であるミナモはまだましな方で、彼女は一年生の頃から保健室には登校してきている。その点ひーちゃんは、中学校の門をくぐったこともなければ、制服に袖を通したことさえない。
 そんな二人が今年から僕と同じクラスに所属になったことには、正直驚いた。二人とも僕と接点があるから、なおさらだ。
「――くんも、」
 ミナモが僕の名を呼んだような気がしたが、上手く聞き取れなかった。
「大変ね、不登校児二人の面倒を見させられて」
「そんな自嘲的にならなくても……」
「だって、本当のことでしょ」
 スケッチブックを抱えるミナモの左腕、ぶかぶかのセーラー服の袖口から、包帯の巻かれた手首が見える。僕は自分の左手首を見やる。腕時計をしているその下に、隠した傷のことを思う。
「市野谷さんはともかく、教室へ行く気なんかない私の面倒まで、見なくてもいいのに」
「面倒なんて、見てるつもりないけど」
「私を訪ねに保健室に来るの、――くんくらいだよ」
 僕の名前が耳障りに響く。ミナモが僕の顔を見た。僕は妙な表情をしていないだろうか。平然を装っているつもりなのだけれど。
「まだ、気にしているの?」
「気にしてるって、何を?」
「あの日のこと」
 あの日。
 あの春の日。雨の降る屋上で、僕とミナモは初めて出会った。
「死にたがり屋と死に損ない」
 日褄先生は僕たちのことをそう呼んだ。どっちがどっちのことを指すのかは、未だに訊けていないままだ。
「……気にしてないよ」
「そう」
 あっさりとした声だった。ミナモは壁の時計をちらりと見上げ、「昼休み終わるよ、帰れば」と言った。
 ���度は、僕も立ち上がった。「それじゃあ」と口にしたけれど、ミナモは既に僕への興味を失ったのか、スケッチブックに目線を落とし、返事のひとつもしなかった。
 休みなく動き続ける鉛筆。
 立ち上がった時にちらりと見えたスケッチブックは、ただただ黒く塗り潰されているだけで、何も描かれてなどいなかった。
    ふと気付くと、僕は自分自身が誰なのかわからなくなっている。
 自分が何者なのか、わからない。
 目の前で展開されていく風景が虚構なのか、それとも現実なのか、そんなことさえわからなくなる。
 だがそれはほんの一瞬のことで、本当はわかっている。
 けれど感じるのだ。自分の身体が透けていくような感覚を。「自分」という存在だけが、ぽっかりと穴を空けて突っ立っているような。常に自分だけが透明な膜で覆われて、周囲から隔離されているかのような疎外感と、なんの手応えも得られない虚無感と。
 あーちゃんがいなくなってから、僕は頻繁にこの感覚に襲われるようになった。
 最初は、授業が終わった後の短い休み時間。次は登校中と下校中。その次は授業中にも、というように、僕が僕をわからなくなる感覚は、学校にいる間じゅうずっと続くようになった。しまいには、家にいても、外にいても、どこにいてもずっとそうだ。
 周りに人がいればいるほど、その感覚は強かった。たくさんの人の中、埋もれて、紛れて、見失う。自分がさっきまで立っていた場所は、今はもう他の人が踏み荒らしていて。僕の居場所はそれぐらい危ういところにあって。人混みの中ぼうっとしていると、僕なんて消えてしまいそうで。
 頭の奥がいつも痛かった���手足は冷え切ったみたいに血の気がなくて。酸素が薄い訳でもないのにちゃんと息ができなくて。周りの人の声がやたら大きく聞こえてきて。耳の中で何度もこだまする、誰かの声。ああ、どうして。こんなにも人が溢れているのに、ここにあーちゃんはいないんだろう。
 僕はどうして、ここにいるんだろう。
「よぉ、少年」
 旧校舎、屋上へ続く扉を開けると、そこには先客がいた。
 ペンキがところどころ剥げた緑色のフェンスにもたれるようにして、床に足を投げ出しているのは日褄先生だった。今日も真っ黒な恰好で、ココナッツのにおいがする不思議な煙草を咥えている。
「田島先生が、先生のことを昼休みに探してましたよ」
「へへっ。そりゃ参ったね」
 煙をゆらゆらと立ち昇らせて、先生は笑う。それからいつものように、「せんせーって呼ぶなよ」と付け加えた。彼女はさらに続けて言う。
「それで? 少年は何をし、こんなところに来たのかな?」
「ちょっと外の空気を吸いに」
「おお、奇遇だねぇ。あたしも外の空気を吸いに……」
「吸いにきたのはニコチンでしょう」
 僕がそう言うと、先生は、「あっはっはっはー」と高らかに笑った。よく笑う人だ。
「残念だが少年、もう午後の授業は始まっている時間だし、ここは立ち入り禁止だよ」
「お言葉ですが先生、学校の敷地内は禁煙ですよ」
「しょうがない、今からカウンセリングするってことにしておいてあげるから、あたしの喫煙を見逃しておくれ。その代わり、あたしもきみの授業放棄を許してあげよう」
 先生は右手でぽんぽんと、自分の隣、雨上がりでまだ湿気っているであろう床を叩いた。座れと言っているようだ。僕はそれに従わなかった。
 先客がいたことは予想外だったが、僕は本当に、ただ、外の空気を吸いたくなってここに来ただけだ。授業を途中で抜けてきたこともあって、長居をするつもりはない。
 ふと、視界の隅に「それ」が目に入った。
 フェンスの一角に穴が空いている。ビニールテープでぐるぐる巻きになっているそこは、テープさえなければ屋上の崖っぷちに立つことを許している。そう。一年前、あそこから、あーちゃんは――。
(ねぇ、どうしてあーちゃんは、そらをとんだの?)
 僕の脳裏を、いつかのひーちゃんの言葉がよぎる。
(あーちゃん、かえってくるよね? また、あえるよね?)
 ひーちゃんの言葉がいくつもいくつも、風に飛ばされていく桜の花びらと同じように、僕の目の前を通り過ぎていく。
「こんなところで、何をしていたんですか」
 そう質問したのは僕の方だった。「んー?」と先生は煙草の煙を吐きながら言う。
「言っただろ、外の空気を吸いに来たんだよ」
「あーちゃんが死んだ、この場所の空気を、ですか」
 先生の目が、僕を見た。その鋭さに、一瞬ひるみそうになる。彼女は強い。彼女の意思は、強い。
「同じ景色を見たいと思っただけだよ」
 先生はそう言って、また煙草をふかす。
「先生、」
「せんせーって呼ぶな」
「質問があるんですけど」
「なにかね」
「嘘って、何回つけばホントになるんですか」
「……んー?」
 淡い桜色の小さな断片が、いくつもいくつも風に流されていく。僕は黙って、それを見ている。手を伸ばすこともしないで。
「嘘は何回ついたって、嘘だろ」
「ですよね」
「嘘つきは怪人二十面相の始まりだ」
「言っている意味がわかりません」
「少年、」
「はい」
「市野谷に嘘つくの、しんどいのか?」
 先生の煙草の煙も、みるみるうちに風に流されていく。手を伸ばしたところで、掴むことなどできないまま。
「市野谷に、直正は死んでないって、嘘をつき続けるの、しんどいか?」
 ひーちゃんは知らない。あーちゃんが去年ここから死んだことを知らない。いや、知らない訳じゃない。認めていないのだ。あーちゃんの死を認めていない。彼がこの世界に僕らを置き去りにしたことを、許していない。
 ひーちゃんはずっと信じている。あーちゃんは生きていると。いつか帰ってくると。今は遠くにいるけれど、きっとまた会える日が来ると。
 だからひーちゃんは知らない。彼の墓石の冷たさも、彼が飛び降りたこの屋上の景色が、僕の目にどう映っているのかも。
 屋上。フェンス。穴。空。桜。あーちゃん。自殺。墓石。遺書。透明人間。無。なんにもない。ない。空っぽ。いない。いないいないいないいない。ここにもいない。どこにもいない。探したっていない。消えた。消えちゃった。消滅。消失。消去。消しゴム。弾んで。飛んで。落ちて。転がって。その先に拾ってくれるきみがいて。笑顔。笑って。笑ってくれて。だけどそれも消えて。全部消えて。消えて消えて消えて。ただ昨日を越えて今日が過ぎ明日が来る。それを繰り返して。きみがいない世界で。ただ繰り返して。ひーちゃん。ひーちゃんが笑わなくなって��泣いてばかりで。だけどもうきみがいない。だから僕が。僕がひーちゃんを慰めて。嘘を。嘘をついて。ついてはいけない嘘を。ついてはいけない嘘ばかりを。それでもひーちゃんはまた笑うようになって。笑顔がたくさん戻って。だけどどうしてあんなにも、ひーちゃんの笑顔は空っぽなんだろう。
「しんどくなんか、ないですよ」
 僕はそう答えた。
 先生は何も言わなかった。
 僕は明日にでも、怪人二十面相になっているかもしれなかった。
    いつの間にか梅雨が終わり、実力テストも期末テストもクリアして、夏休みまであと一週間を切っていた。
 ひと夏の解放までカウントダウンをしている今、僕のクラスの連中は完璧な気だるさに支配されていた。自主性や積極性などという言葉とは無縁の、慣性で流されているような脱力感。
 先週に教室の天井四ヶ所に取り付けられている扇風機が全て故障したこともあいまって、クラスメイトたちの授業に対する意欲はほぼゼロだ。授業がひとつ終わる度に、皆溶け出すように机に上半身を投げ出しており、次の授業が始まったところで、その姿勢から僅かに起き上がる程度の差しかない。
 そういう僕も、怠惰な中学二年生のひとりに過ぎない。さっきの英語の授業でノートに書き記したことと言えば、英語教師の松田が何回額の汗を脱ぐったのかを表す「正」の字だけだ。
 休み時間に突入し、がやがやと騒がしい教室で、ひとりだけ仲間外れのように沈黙を守っていると、肘辺りから空気中に溶け出して、透明になっていくようなそんな気分になる。保健室には来るものの、自分の教室へは絶対に足を運ばないミナモの気持ちがわかるような気がする。
 一学期がもうすぐ終わるこの時期になっても、相変わらず僕のクラスには常に二つの空席があった。ミナモも、ひーちゃんも、一度だって教室に登校してきていない。
「――くん、」
 なんだか控えめに名前を呼ばれた気はしたが、クラスの喧騒に紛れて聞き取れなかった。
 ふと机から顔を上げると、ひとりの女子が僕の机の脇に立っていた。見たことがあるような顔。もしかして、クラスメイトのひとりだろうか。彼女は廊下を指差して、「先生、呼んでる」とだけ言って立ち去った。
 あまりにも唐突な出来事でその女子にお礼を言うのも忘れたが、廊下には担任の姿が見える。僕のクラス担任の担当科目は数学だが、次の授業は国語だ。なんの用かはわからないが、呼んでいるのなら行かなくてはならない。
「おー、悪いな、呼び出して」
 去年大学を卒業したばかりの、どう見ても体育会系な容姿をしている担任は、僕を見てそう言った。
「ほい、これ」
 突然差し出されたのはプリントの束だった。三十枚くらいありそうなプリントが穴を空けられ紐を通して結んである。
「悪いがこれを、市野谷さんに届けてくれないか」
 担任がひーちゃんの名を口にしたのを聞いたのは、久しぶりのような気がした。もう朝の出欠確認の時でさえ、彼女の名前は呼ばれない。ミナモの名前だってそうだ。このクラスでは、ひーちゃんも、ミナモも、いないことが自然なのだ���
「……先生が、届けなくていいんですか」
「そうしたいのは山々なんだが、なかなか時間が取れなくてな。夏休みに入ったら家庭訪問に行こうとは思ってるんだ。このプリントは、それまでにやっておいてほしい宿題。中学に入ってから二年の一学期までに習う数学の問題を簡単にまとめたものなんだ」
「わかりました、届けます」
 受け取ったプリントの束は、思っていたよりもずっとずっしりと重かった。
「すまんな。市野谷さんと小学生の頃一番仲が良かったのは、きみだと聞いたものだから」
「いえ……」
 一年生の時から、ひーちゃんにプリントを届けてほしいと教師に頼まれることはよくあった。去年は彼女と僕は違うクラスだったけれど、同じ小学校出身の誰かに僕らが幼馴染みであると聞いたのだろう。
 僕は学校に来なくなったひーちゃんのことを毛嫌いしている訳ではない。だから、何か届け物を頼まれてもそんなに嫌な気持ちにはならない。でも、と僕は思った。
 でも僕は、ひーちゃんと一番仲が良かった訳じゃないんだ。
「じゃあ、よろしく頼むな」
 次の授業の始業のチャイムが鳴り響く。
 教室に戻り、出したままだった英語の教科書と「正」の字だけ記したノートと一緒に、ひーちゃんへのプリントの束を鞄に仕舞いながら、なんだか僕は泣きたくなった。
  三角形が壊れるのは簡単だった。
 三角形というのは、三辺と三つの角でできていて、当然のことだけれど一辺とひとつの角が消失したら、それはもう三角形ではない。
 まだ小学校に上がったばかりの頃、僕はどうして「さんかっけい」や「しかっけい」があるのに「にかっけい」がないのか、と考えていたけれど、どうやら僕の脳味噌は、その頃から数学的思考というものが不得手だったようだ。
「にかっけい」なんてあるはずがない。
 僕と、あーちゃんと、ひーちゃん。
 僕ら三人は、三角形だった。バランスの取りやすい形。
 始まりは悲劇だった。
 あの悪夢のような交通事故。ひーちゃんの弟の死。
 真っ白なワンピースが汚れることにも気付かないまま、真っ赤になった弟の身体を抱いて泣き叫ぶひーちゃんに手を伸ばしたのは、僕と一緒に下校する途中のあーちゃんだった。
 お互いの家が近かったこともあって、それから僕らは一緒にいるようになった。
 溺愛していた最愛の弟を、目の前で信号無視したダンプカーに撥ねられて亡くしたひーちゃんは、三人で一緒にいてもときどき何かを思い出したかのように暴れては泣いていたけれど、あーちゃんはいつもそれをなだめ、泣き止むまでずっと待っていた。
 口下手な彼は、ひーちゃんに上手く言葉をかけることがいつもできずにいたけれど、僕が彼の言葉を補って彼女に伝えてあげていた。
 優しくて思いやりのあるひーちゃんは、感情を表すことが苦手なあーちゃんのことをよく気遣ってくれていた。
 僕らは嘘みたいにバランスの取れた三角形だった。
 あーちゃんが、この世界からいなくなるまでは。
   「夏は嫌い」
 昔、あーちゃんはそんなことを口にしていたような気がする。
「どうして?」
 僕はそう訊いた。
 夏休み、花火、虫捕り、お祭り、向日葵、朝顔、風鈴、西瓜、プール、海。
 水の中の金魚の世界と、バニ��アイスの木べらの湿り気。
 その頃の僕は今よりもずっと幼くて、四季の中で夏が一番好き���った。
 あーちゃんは部屋の窓を網戸にしていて、小さな扇風機を回していた。
 彼は夏休みも相変わらず外に出ないで、部屋の中で静かに過ごしていた。彼の傍らにはいつも、星座の本と分厚い昆虫図鑑が置いてあった。
「夏、暑いから嫌いなの?」
 僕が尋ねるとあーちゃんは抱えていた分厚い本からちょっとだけ顔を上げて、小さく首を横に振った。それから困ったように笑って、
「夏は、皆死んでいるから」
 とだけ、つぶやくように言った。あーちゃんは、時々魔法の呪文のような、不思議なことを言って僕を困惑させることがあった。この時もそうだった。
「どういう意味?」
 僕は理解できずに、ただ訊き返した。
 あーちゃんはさっきよりも大きく首を横に振ると、何を思ったのか、唐突に、
「ああ、でも、海に行ってみたいな」
 なんて言った。
「海?」
「そう、海」
「どうして、海?」
「海は、色褪せてないかもしれない。死んでないかもしれない」
 その言葉の意味がわからず、僕が首を傾げていると、あーちゃんはぱたんと本を閉じて机に置いた。
「台所へ行こうか。確か、母さんが西瓜を切ってくれていたから。一緒に食べよう」
「うん!」
 僕は西瓜に釣られて、わからなかった言葉のことも、すっかり忘れてしまった。
 でも今の僕にはわかる。
 夏の日射しは、世界を色褪せさせて僕の目に映す。
 あーちゃんはそのことを、「死んでいる」と言ったのだ。今はもう確かめられないけれど。
 結局、僕とあーちゃんが海へ行くことはなかった。彼から海へ出掛けた話を聞いたこともないから、恐らく、海へ行くことなく死んだのだろう。
 あーちゃんが見ることのなかった海。
 海は日射しを浴びても青々としたまま、「生きて」いるんだろうか。
 彼が死んでから、僕も海へ足を運んでいない。たぶん、死んでしまいたくなるだろうから。
 あーちゃん。
 彼のことを「あーちゃん」と名付けたのは僕だった。
 そういえば、どうして僕は「あーちゃん」と呼び始めたんだっけか。
 彼の名前は、鈴木直正。
 どこにも「あーちゃん」になる要素はないのに。
    うなじを焼くようなじりじりとした太陽光を浴びながら、ペダルを漕いだ。
 鼻の頭からぷつぷつと汗が噴き出すのを感じ、手の甲で汗を拭おうとしたら手は既に汗で湿っていた。雑音のように蝉の声が響いている。道路の脇には背の高い向日葵は、大きな花を咲かせているのに風がないので微動だにしない。
 赤信号に止められて、僕は自転車のブレーキをかける。
 夏がくる度、思い出す。
 僕とあーちゃんが初めてひーちゃんに出会い、そして彼女の最愛の弟「ろーくん」が死んだ、あの事故のことを。
 あの日も、世界が真っ白に焼き切れそうな、暑い日だった。
 ひーちゃんは白い木綿のワンピースを着ていて、それがとても涼しげに見えた。ろーくんの血で汚れてしまったあのワンピースを、彼女はもうとっくに捨ててしまったのだろうけれど。
 そういえば、ひーちゃんはあの事故の後、しばらくの間、弟の形見の黒いランドセルを使っていたっけ。黒い服ばかり着るようになって。周りの子はそんな彼女を気味悪がったんだ。
 でもあーちゃんは、そんなひーちゃんを気味悪がったりしなかった。
 信号が赤から青に���わる。再び漕ぎ出そうとペダルに足を乗せた時、僕の両目は横断歩道の向こうから歩いて来るその人を捉えて凍りついてしまった。
 胸の奥の方が疼く。急に、聞こえてくる蝉の声が大きくなったような気がした。喉が渇いた。頬を撫でるように滴る汗が気持ち悪い。
 信号は青になったというのに、僕は動き出すことができない。向こうから歩いて来る彼は、横断歩道を半分まで渡ったところで僕に気付いたようだった。片眉を持ち上げ、ほんの少し唇の端を歪める。それが笑みだとわかったのは、それとよく似た笑顔をずいぶん昔から知っているからだ。
「うー兄じゃないですか」
 うー兄。彼は僕をそう呼んだ。
 声変わりの途中みたいな声なのに、妙に大人びた口調。ぼそぼそとした喋り方。
 色素の薄い頭髪。切れ長の一重瞼。ひょろりと伸びた背。かけているのは銀縁眼鏡。
 何もかもが似ているけれど、日に焼けた真っ黒な肌と筋肉のついた足や腕だけは、記憶の中のあーちゃんとは違う。
 道路を渡り終えてすぐ側まで来た彼は、親しげに僕に言う。
「久しぶりですね」
「……久しぶり」
 僕がやっとの思いでそう声を絞り出すと、彼は「ははっ」と笑った。きっとあーちゃんも、声を上げて笑うならそういう風に笑ったんだろうなぁ、と思う。
「どうしたんですか。驚きすぎですよ」
 困ったような笑顔で、眼鏡をかけ直す。その手つきすらも、そっくり同じ。
「嫌だなぁ。うー兄は僕のことを見る度、まるで幽霊でも見たような顔するんだから」
「ごめんごめん」
「ははは、まぁいいですよ」
 僕が謝ると、「あっくん」はまた笑った。
 彼、「あっくん」こと鈴木篤人くんは、僕の一個下、中学一年生。私立の学校に通っているので僕とは学校が違う。野球部のエースで、勉強の成績もクラストップ。僕の団地でその中学に進学できた子供は彼だけだから、団地の中で知らない人はいない優等生だ。
 年下とは思えないほど大人びた少年で、あーちゃんにそっくりな、あーちゃんの弟。
「中学は、どう? もう慣れた?」
「慣れましたね。今は部活が忙しくて」
「運動部は大変そうだもんね」
「うー兄は、帰宅部でしたっけ」
「そう。なんにもしてないよ」
「今から、どこへ行くんですか?」
「ああ、えっと、ひーちゃんに届け物」
「ひー姉のところですか」
 あっくんはほんの一瞬、愛想笑いみたいな顔をした。
「ひー姉、まだ学校に行けてないんですか?」
「うん」
「行けるようになるといいですね」
「そうだね」
「うー兄は、元気にしてましたか?」
「僕? 元気だけど……」
「そうですか。いえ、なんだかうー兄、兄貴に似てきたなぁって思ったものですから」
「僕が?」
 僕があーちゃんに似てきている?
「顔のつくりとかは、もちろん違いますけど、なんていうか、表情とか雰囲気が、兄貴に似てるなぁって」
「そうかな……」
 僕にそんな自覚はないのだけれど。
「うー兄も死んじゃいそうで、心配です」
 あっくんは柔らかい笑みを浮かべたままそう言った。
「……そう」
 僕はそう返すので精いっぱいだった。
「それじゃ、ひー姉によろしくお伝え下さい」
「じゃあ、また……」
 あーちゃんと同じ声で話し、あーちゃんと同じように笑う彼は、夏の日射し��中を歩いて行く。
(兄貴は、弱いから駄目なんだ)
 いつか彼が、あーちゃんに向けて言った言葉。
 あーちゃんは自分の弟にそう言われた時でさえ、怒ったりしなかった。ただ「そうだね」とだけ返して、少しだけ困ったような顔をしてみせた。
 あっくんは、強い。
 姿や雰囲気は似ているけれど、性格というか、芯の強さは全く違う。
 あーちゃんの死を自分なりに受け止めて、乗り越えて。部活も勉強も努力して。あっくんを見ているといつも思う。兄弟でもこんなに違うものなのだろうか、と。ひとりっ子の僕にはわからないのだけれど。
 僕は、どうだろうか。
 あーちゃんの死を受け入れて、乗り越えていけているだろうか。
「……死相でも出てるのかな」
 僕があーちゃんに似てきている、なんて。
 笑えない冗談だった。
 ふと見れば、信号はとっくに赤になっていた。青になるまで待つ間、僕の心から言い表せない不安が拭えなかった。
    遺書を思い出した。
 あーちゃんの書いた遺書。
「僕の分まで生きて。僕は透明人間なんです」
 日褄先生はそれを、「ばっかじゃねーの」って笑った。
「透明人間は見えねぇから、透明人間なんだっつーの」
 そんな風に言って、たぶん、泣いてた。
「僕の分まで生きて」
 僕は自分の鼓動を聞く度に、その言葉を繰り返し、頭の奥で聞いていたような気がする。
 その度に自分に問う。
 どうして生きているのだろうか、と。
  部屋に一歩踏み入れると、足下でガラスの破片が砕ける音がした。この部屋でスリッパを脱ぐことは自傷行為に等しい。
「あー、うーくんだー」
 閉められたカーテン。閉ざされたままの雨戸。
 散乱した物。叩き壊された物。落下したままの物。破り捨てられた物。物の残骸。
 その中心に、彼女はいる。
「久しぶりだね、ひーちゃん」
「そうだねぇ、久しぶりだねぇ」
 壁から落下して割れた時計は止まったまま。かろうじて壁にかかっているカレンダーはあの日のまま。
「あれれー、うーくん、背伸びた?」
「かもね」
「昔はこーんな小さかったのにねー」
「ひーちゃんに初めて会った時だって、そんなに小さくなかったと思うよ」
「あははははー」
 空っぽの笑い声。聞いているこっちが空しくなる。
「はい、これ」
「なに? これ」
「滝澤先生に頼まれたプリント」
「たきざわって?」
「今度のクラスの担任だよ」
「ふーん」
「あ、そうだ、今度は僕の同じクラスに……」
 彼女の手から投げ捨てられたプリントの束が、ろくに掃除されていない床に落ちて埃を巻き上げた。
「そういえば、あいつは?」
「あいつって?」
「黒尽くめの」
「黒尽くめって……日褄先生のこと?」
「まだいる?」
「日褄先生なら、今年度も学校にいるよ」
「なら、学校には行かなーい」
「どうして?」
「だってあいつ、怖いことばっかり言うんだもん」
「怖いこと?」
「あーちゃんはもう、死んだんだって」
「…………」
「ねぇ、うーくん」
「……なに?」
「うーくんはどうして、学校に行けるの? まだあーちゃんが帰って来ないのに」
 どうして僕は、生きているんだろう。
「『僕』はね、怖いんだよ、うーくん。あーちゃんがいない毎日が。『僕』の毎日の中に、あーちゃんがいないんだよ。『僕』は怖い。毎日が怖い。あーちゃんのこと、忘れそうで怖い。あーちゃんが『僕』のこと、忘れそうで怖い……」
 どうしてひーちゃんは、生きているんだろう。
「あーちゃんは今、誰の毎日の中にいるの?」
 ひーちゃんの言葉はいつだって真っ直ぐだ。僕の心を突��刺すぐらい鋭利だ。僕の心を掻き回すぐらい乱暴だ。僕の心をこてんぱんに叩きのめすぐらい凶暴だ。
「ねぇ、うーくん」
 いつだって思い知らされる。僕が駄目だってこ��。
「うーくんは、どこにも行かないよね?」
 いつだって思い知らせてくれる。僕じゃ駄目だってこと。
「どこにも、行かないよ」
 僕はどこにも行けない。きみもどこにも行けない。この部屋のように時が止まったまま。あーちゃんが死んでから、何もかもが停止したまま。
「ふーん」
 どこか興味なさそうな、ひーちゃんの声。
「よかった」
 その後、他愛のない話を少しだけして、僕はひーちゃんの家を後にした。
 死にたくなるほどの夏の熱気に包まれて、一気に現実に引き戻された気分になる。
 こんな現実は嫌なんだ。あーちゃんが欠けて、ひーちゃんが壊れて、僕は嘘つきになって、こんな世界は、大嫌いだ。
 僕は自分に問う。
 どうして僕は、生きているんだろう。
 もうあーちゃんは死んだのに。
   「ひーちゃん」こと市野谷比比子は、小学生の頃からいつも奇異の目で見られていた。
「市野谷さんは、まるで死体みたいね」
 そんなことを彼女に言ったのは、僕とひーちゃんが小学四年生の時の担任だった。
 校舎の裏庭にはクラスごとの畑があって、そこで育てている作物の世話を、毎日クラスの誰かが当番制でしなくてはいけなかった。それは夏休み期間中も同じだった。
 僕とひーちゃんが当番だった夏休みのある日、黙々と草を抜いていると、担任が様子を見にやって来た。
「頑張ってるわね」とかなんとか、最初はそんな風に声をかけてきた気がする。僕はそれに、「はい」とかなんとか、適当に返事をしていた。ひーちゃんは何も言わず、手元の草を引っこ抜くことに没頭していた。
 担任は何度かひーちゃんにも声をかけたが、彼女は一度もそれに答えなかった。
 ひーちゃんはいつもそうだった。彼女が学校で口を利くのは、同じクラスの僕と、二つ上の学年のあーちゃんにだけ。他は、クラスメイトだろうと教師だろうと、一言も言葉を発さなかった。
 この当番を決める時も、そのことで揉めた。
 くじ引きでひーちゃんと同じ当番に割り当てられた意地の悪い女子が、「せんせー、市野谷さんは喋らないから、当番の仕事が一緒にやりにくいでーす」と皆の前で言ったのだ。
 それと同時に、僕と一緒の当番に割り当てられた出っ歯の野郎が、「市野谷さんと仲の良い――くんが市野谷さんと一緒にやればいいと思いまーす」と、僕の名前を指名した。
 担任は困ったような笑顔で、
「でも、その二人だけを仲の良い者同士にしたら、不公平じゃないかな? 皆だって、仲の良い人同士で一緒の当番になりたいでしょう? 先生は普段あまり仲が良くない人とも仲良くなってもらうために、当番の割り振りをくじ引きにしたのよ。市野谷さんが皆ともっと仲良くなったら、皆も嬉しいでしょう?」
 と言った。意地悪ガールは間髪入れずに、
「喋らない人とどうやって仲良くなればいいんですかー?」
 と返した。
 ためらいのない発言だった。それはただただ純粋で、悪意を含んだ発言だった。
「市野谷さんは私たちが仲良くしようとしてもいっつも無視してきまーす。それって、市野谷さんが私たちと仲良くしたくないからだと思いまーす。それなのに、無理やり仲良くさせるのは良くないと思いまーす」
「うーん、そんなことはないわよね、市野谷さん」
 ひーちゃんは何も言わなかった。まるで教室内での出来事が何も耳に入っていないかのような表情で、窓の外を���めていた。
「市野谷さん? 聞いているの?」
「なんか言えよ市野谷」
 男子がひーちゃんの机を蹴る。その振動でひーちゃんの筆箱が机から滑り落ち、がちゃんと音を立てて中身をぶちまけたが、それでもひーちゃんには変化は訪れない。
 クラスじゅうにざわざわとした小さな悪意が満ちる。
「あの子ちょっとおかしいんじゃない?」
 そんな囁きが満ちる。担任の困惑した顔。意地悪いクラスメイトたちの汚らわしい視線。
 僕は知っている。まるでここにいないかのような顔をして、窓の外を見ているひーちゃんの、その視線の先を。窓から見える新校舎には、彼女の弟、ろーくんがいた一年生の教室と、六年生のあーちゃんがいる教室がある。
 ひーちゃんはいつも、ぼんやりとそっちばかりを見ている。教室の中を見渡すことはほとんどない。彼女がここにいないのではない。彼女にとって、こっちの世界が意味を成していないのだ。
「市野谷さんは、死体みたいね」
 夏休み、校舎裏の畑。
 その担任の一言に、僕は思わずぎょっとした。担任はしゃがみ込み、ひーちゃんに目線を合わせようとしながら、言う。
「市野谷さんは、どうしてなんにも言わないの? なんにも思わないの? あんな風に言われて、反論したいなって思わないの?」
 ひーちゃんは黙って草を抜き続けている。
「市野谷さんは、皆と仲良くなりたいって思わない? 皆は、市野谷さんと仲良くなりたいって思ってるわよ」
 ひーちゃんは黙っている。
「市野谷さんは、ずっとこのままでいるつもりなの? このままでいいの? お友達がいないままでいいの?」
 ひーちゃんは。
「市野谷さん?」
「うるさい」
 どこかで蝉が鳴き止んだ。
 彼女が僕とあーちゃん以外の人間に言葉を発したところを、僕は初めて見た。彼女は担任を睨み付けるように見つめていた。真っ黒な瞳が、鋭い眼光を放っている。
「黙れ。うるさい。耳障り」
 ひーちゃんが、僕の知らない表情をした。それはクラスメイトたちがひーちゃんに向けたような、玩具のような悪意ではなかった。それは本当の、なんの混じり気もない、殺意に満ちた顔だった。
「あんたなんか、死んじゃえ」
 振り上げたひーちゃんの右手には、草抜きのために職員室から貸し出された鎌があって――。
「ひーちゃん!」
 間一髪だった。担任は真っ青な顔で、息も絶え絶えで、しかし、その鎌の一撃をかろうじてかわした。担任は震えながら、何かを叫びながら校舎の方へと逃げるように走り去って行く。
「ひーちゃん、大丈夫?」
 僕は地面に突き刺した鎌を固く握りしめたまま、動かなくなっている彼女に声をかけた。
「友達なら、いるもん」
 うつむいたままの彼女が、そうぽつりと言う。
「あーちゃんと、うーくんがいるもん」
 僕はただ、「そうだね」と言って、そっと彼女の頭を撫でた。
    小学生の頃からどこか危うかったひーちゃんは、あーちゃんの自殺によって完全に壊れてしまった。
 彼女にとってあーちゃんがどれだけ大切な存在だったかは、説明するのが難しい。あーちゃんは彼女にとって絶対唯一の存在だった。失ってはならない存在だった。彼女にとっては、あーちゃん以外のものは全てどうでもいいと思えるくらい、それくらい、あーちゃんは特別だった。
 ひーちゃんが溺愛していた最愛の弟、ろーくんを失ったあの日。
 あの日から、ひーちゃんの心にぽっかりと空いた穴を、あーちゃんの存在が埋めてきたからだ。
 あーちゃんはひーちゃんの支えだった。
 あーちゃんはひーちゃんの全部だった。
 あーちゃんはひーちゃんの世界だった。
 そして、彼女はあーちゃんを失った。
 彼女は入学することになっていた中学校にいつまで経っても来なかった。来るはずがなかった。来れるはずがなかった。そこはあーちゃんが通っていたのと同じ学校であり、あーちゃんが死んだ場所でもある。
 ひーちゃんは、まるで死んだみたいだった。
 一日中部屋に閉じこもって、食事を摂ることも眠ることも彼女は拒否した。
 誰とも口を利かなかった。実の親でさえも彼女は無視した。教室で誰とも言葉を交わさなかった時のように。まるで彼女の前からありとあらゆるものが消滅してしまったかのように。泣くことも笑うこともしなかった。ただ虚空を見つめているだけだった。
 そんな生活が一週間もしないうちに彼女は強制的に入院させられた。
 僕が中学に入学して、桜が全部散ってしまった頃、僕は彼女の病室を初めて訪れた。
「ひーちゃん」
 彼女は身体に管を付けられ、生かされていた。
 屍のように寝台に横たわる、変わり果てた彼女の姿。
(市野谷さんは死体みたいね)
 そんなことを言った、担任の言葉が脳裏をよぎった。
「ひーちゃんっ」
 僕はひーちゃんの手を取って、そう呼びかけた。彼女は何も言わなかった。
「そっち」へ行ってほしくなかった。置いていかれたくなかった。僕だって、あーちゃんの突然の死を受け止めきれていなかった。その上、ひーちゃんまで失うことになったら。そう考えるだけで嫌だった。
 僕はここにいたかった。
「ひーちゃん、返事してよ。いなくならないでよ。いなくなるのは、あーちゃんだけで十分なんだよっ!」
 僕が大声でそう言うと、初めてひーちゃんの瞳が、生き返った。
「……え?」
 僕を見つめる彼女の瞳は、さっきまでのがらんどうではなかった。あの時のひーちゃんの瞳を、僕は一生忘れることができないだろう。
「あーちゃん、いなくなったの?」
 ひーちゃんの声は僕の耳にこびりついた。
 何言ってるんだよ、あーちゃんは死んだだろ。そう言おうとした。言おうとしたけれど、何かが僕を引き留めた。何かが僕の口を塞いだ。頭がおかしくなりそうだった。狂っている。僕はそう思った。壊れている。破綻している。もう何もかもが終わってしまっている。
 それを言ってしまったら、ひーちゃんは死んでしまう。僕がひーちゃんを殺してしまう。ひーちゃんもあーちゃんみたいに、空を飛んでしまうのだ。
 僕はそう直感していた。だから声が出なかった。
「それで、あーちゃん、いつかえってくるの?」
 そして、僕は嘘をついた。ついてはいけない嘘だった。
 あーちゃんは生きている。今は遠くにいるけれど、そのうち必ず帰ってくる、と。
 その一週間後、ひーちゃんは無事に病院を退院した。人が変わったように元気になっていた。
 僕の嘘を信じて、ひーちゃんは生きる道を選んだ。
 それが、ひーちゃんの身体をいじくり回して管を繋いで病室で寝かせておくことよりもずっと残酷なことだということを僕は後で知った。彼女のこの上ない不幸と苦しみの中に永遠に留めておくことになってしまった。彼女にとってはもうとっくに終わってしまったこの世界で、彼女は二度と始まることのない始まりをずっと待っている。
 もう二度と帰ってこない人を、ひーちゃんは待ち続けなければいけなくなった。
 全ては僕のついた幼稚な嘘のせいで。
「学校は行かないよ」
「どうして?」
「だって、あーちゃん、いないんでしょ?」
 学校にはいつから来るの? と問いかけた僕にひーちゃんは笑顔でそう答えた。まるで、さも当たり前かのように言った。
「『僕』は、あーちゃんが帰って来るのを待つよ」
「あれ、ひーちゃん、自分のこと『僕』って呼んでたっけ?」
「ふふふ」
 ひーちゃんは笑った。幸せそうに笑った。恥ずかしそうに笑った。まるで恋をしているみたいだった。本当に何も知らないみたいに。本当に、僕の嘘を信じているみたいに。
「あーちゃんの真似、してるの。こうしてると自分のことを言う度、あーちゃんのことを思い出せるから」
 僕は笑わなかった。
 僕は、笑えなかった。
 笑おうとしたら、顔が歪んだ。
 醜い嘘に、歪んだ。
 それからひーちゃんは、部屋に閉じこもって、あーちゃんの帰りをずっと待っているのだ。
 今日も明日も明後日も、もう二度と帰ってこない人を。
※(2/4) へ続く→ https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/647000556094849024/
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shunsukessk · 5 years ago
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あるいは永遠の未来都市(東雲キャナルコートCODAN生活記)
 都市について語るのは難しい。同様に、自宅や仕事場について語るのも難しい。それを語ることができるのは、おそらく、その中にいながら常にはじき出されている人間か、実際にそこから出てしまった人間だけだろう。わたしにはできるだろうか?  まず、自宅から徒歩三秒のアトリエに移動しよう。北側のカーテンを開けて、掃き出し窓と鉄格子の向こうに団地とタワーマンション、彼方の青空に聳える東京スカイツリーの姿を認める。次に東側の白い引き戸を一枚、二枚とスライドしていき、団地とタワーマンションの窓が反射した陽光がテラスとアトリエを優しく温めるのをじっくりと待つ。その間、テラスに置かれた黒竹がかすかに揺れているのを眺める。外から共用廊下に向かって、つまり左から右へさらさらと葉が靡く。一枚の枯れた葉が宙に舞う。お前、とわたしは念じる。お前、お隣さんには行くんじゃないぞ。このテラスは、腰よりも低いフェンスによってお隣さんのテラスと接しているのだ。それだけでなく、共用廊下とも接している。エレベーターへと急ぐ人の背中が見える。枯れ葉はテラスと共用廊下との境目に設置されたベンチの上に落ちた。わたしは今日の風の強さを知る。アトリエはまだ温まらない。  徒歩三秒の自宅に戻ろう。リビング・ダイニングのカーテンを開けると、北に向いた壁の一面に「田」の形をしたアルミ製のフレームが現れる。窓はわたしの背より高く、広げた両手より大きかった。真下にはウッドデッキを設えた人工地盤の中庭があって、それを取り囲むように高層の住棟が建ち並び、さらにその外周にタワーマンションが林立している。視界の半分は集合住宅で、残りの半分は青空だった。そのちょうど境目に、まるで空に落書きをしようとする鉛筆のように東京スカイツリーが伸びている。  ここから望む風景の中にわたしは何かしらを発見する。たとえば、斜め向かいの部屋の窓に無数の小さな写真が踊っている。その下の鉄格子つきのベランダに男が出てきて、パジャマ姿のままたばこを吸い始める。最上階の渡り廊下では若い男が三脚を据えて西側の風景を撮影している。今日は富士山とレインボーブリッジが綺麗に見えるに違いない。その二つ下の渡り廊下を右から左に、つまり一二号棟から一一号棟に向かって黒いコートの男が横切り、さらに一つ下の渡り廊下を、今度は左から右に向かって若い母親と黄色い帽子の息子が横切っていく。タワーマンションの間を抜けてきた陽光が数百の窓に当たって輝く。たばこを吸��ていた男がいつの間にか部屋に戻ってワイシャツにネクタイ姿になっている。六階部分にある共用のテラスでは赤いダウンジャケットの男が外を眺めながら電話をかけている。地上ではフォーマルな洋服に身を包んだ人々が左から右に向かって流れていて、ウッドデッキの上では老婦が杖をついて……いくらでも観察と発見は可能だ。けれども、それを書き留めることはしない。ただ新しい出来事が無数に生成していることを確認するだけだ。世界は死んでいないし、今日の都市は昨日の都市とは異なる何ものかに変化しつつあると認識する。こうして仕事をする準備が整う。
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 東雲キャナルコートCODAN一一号棟に越してきたのは今から四年前だった。内陸部より体感温度が二度ほど低いな、というのが東雲に来て初めに思ったことだ。この土地は海と運河と高速道路に囲まれていて、物流倉庫とバスの車庫とオートバックスがひしめく都市のバックヤードだった。東雲キャナルコートと呼ばれるエリアはその名のとおり運河沿いにある。ただし、東雲運河に沿っているのではなく、辰巳運河に沿っているのだった。かつては三菱製鋼の工場だったと聞いたが、今ではその名残はない。東雲キャナルコートが擁するのは、三千戸の賃貸住宅と三千戸の分譲住宅、大型のイオン、児童・高齢者施設、警察庁などが入る合同庁舎、辰巳運河沿いの区立公園で、エリアの中央部分に都市基盤整備公団(現・都市再生機構/UR)が計画した高層板状の集合住宅群が並ぶ。中央部分は六街区に分けられ、それぞれ著名な建築家が設計者として割り当てられた。そのうち、もっとも南側に位置する一街区は山本理顕による設計で、L字型に連なる一一号棟と一二号棟が中庭を囲むようにして建ち、やや小ぶりの一三号棟が島のように浮かんでいる。この一街区は二〇〇三年七月に竣工した。それから一三年後の二〇一六年五月一四日、わたしと妻は二人で一一号棟の一三階に越してきた。四年の歳月が流れてその部屋を出ることになったとき、わたしはあの限りない循環について思い出していた。
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 アトリエに戻るとそこは既に温まっている。さあ、仕事を始めよう。ものを書くのがわたしの仕事だった。だからまずMacを立ち上げ、テキストエディタかワードを開く。さっきリビング・ダイニングで行った準備運動によって既に意識は覚醒している。ただし、その日の頭とからだのコンディションによってはすぐに書き始められないこともある。そういった場合はアトリエの東側に面したテラスに一時的に避難してもよい。  掃き出し窓を開けてサンダルを履く。黒竹の鉢に水を入れてやる。近くの部屋の原状回復工事に来たと思しき作業服姿の男がこんちは、と挨拶をしてくる。挨拶を返す。お隣さんのテラスにはベビーカーとキックボード、それに傘が四本置かれている。テラスに面した三枚の引き戸はぴったりと閉められている。緑色のボーダー柄があしらわれた、目隠しと防犯を兼ねた白い戸。この戸が開かれることはほとんどなかった。わたしのアトリエや共用廊下から部屋の中が丸見えになってしまうからだ。こちらも条件は同じだが、わたしはアトリエとして使っているので開けているわけだ。とはいえ、お隣さんが戸を開けたときにあまり中を見てしまうと気まずいので、二年前に豊洲のホームセンターで見つけた黒竹を置いた。共用廊下から外側に向かって風が吹いていて、葉が光を食らうように靡いている。この住棟にはところどころに大穴が空いているのでこういうことが起きる。つまり、風向きが反転するのだった。  通風と採光のために設けられた空洞、それがこのテラスだった。ここから東雲キャナルコートCODANのほぼ全体が見渡せる。だが、もう特に集中して観察したりしない。隈研吾が設計した三街区の住棟に陽光が当たっていて、ベランダで父子が日光浴をしていようが、島のような一三号棟の屋上に設置されたソーラーパネルが紺碧に輝いていて、その傍の芝生に二羽の鳩が舞い降りてこようが、伊東豊雄が設計した二街区の住棟で影がゆらめいて、テラスに出てきた老爺が異様にうまいフラフープを披露しようが、気に留めない。アトリエに戻ってどういうふうに書くか、それだけを考える。だから、目の前のすべてはバックグラウンド・スケープと化す。ただし、ここに広がるのは上質なそれだった。たとえば、ここにはさまざまな匂いが漂ってきた。雨が降った次の日には海の匂いがした。東京湾の匂いだが、それはいつも微妙に違っていた。同じ匂いはない。生成される現実に呼応して新しい文字の組み合わせが発生する。アトリエに戻ろう。
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 わたしはここで、広島の中心部に建つ巨大な公営住宅、横川という街に形成された魅力的な高架下商店街、シンガポールのベイサイドに屹立するリトル・タイランド、ソウルの中心部を一キロメートルにわたって貫く線状の建築物などについて書いてきた。既に世に出たものもあるし、今から出るものもあるし、たぶん永遠にMacの中に封じ込められると思われるものもある。いずれにせよ、考えてきたことのコアはひとつで、なぜ人は集まって生きるのか、ということだった。  人間の高密度な集合体、つまり都市は、なぜ人類にとって必要なのか?  そしてこの先、都市と人類はいかなる進化を遂げるのか?  あるいは都市は既に死んだ?  人類はかつて都市だった廃墟の上をさまよい続ける?  このアトリエはそういうことを考えるのに最適だった。この一街区そのものが新しい都市をつくるように設計されていたからだ。  実際、ここに来てから、思考のプロセスが根本的に変わった。ここに来るまでの朝の日課といえば、とにかく怒りの炎を燃やすことだった。閉じられた小さなワンルームの中で、自分が外側から遮断され、都市の中にいるにもかかわらず隔離状態にあることに怒り、その怒りを炎上させることで思考を開いた。穴蔵から出ようともがくように。息苦しくて、ひとりで部屋の中で暴れたし、壁や床に穴を開けようと試みることもあった。客観的に見るとかなりやばい奴だったに違いない。けれども、こうした循環は一生続くのだと、当時のわたしは信じて疑わなかった。都市はそもそも息苦しい場所なのだと、そう信じていたのだ。だが、ここに来てからは息苦しさを感じることはなくなった。怒りの炎を燃やす朝の日課は、カーテンを開け、その向こうを観察するあの循環へと置き換えられた。では、怒りは消滅したのか?
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 白く光沢のあるアトリエの床タイルに青空が輝いている。ここにはこの街の上半分がリアルタイムで描き出される。床の隅にはプロジェクトごとに振り分けられた資料の箱が積まれていて、剥き出しの灰色の柱に沿って山積みの本と額に入ったいくつかの写真や絵が並んでいる。デスクは東向きの掃き出し窓の傍に置かれていて、ここからテラスの半分と共用廊下、それに斜向かいの部屋の玄関が見える。このアトリエは空中につくられた庭と道に面しているのだった。斜向かいの玄関ドアには透明のガラスが使用されていて、中の様子が透けて見える。靴を履く住人の姿がガラス越しに浮かんでいる。視線をアトリエ内に戻そう。このアトリエは専用の玄関を有していた。玄関ドアは斜向かいの部屋のそれと異なり、全面が白く塗装された鉄扉だった。玄関の脇にある木製のドアを開けると、そこは既に徒歩三秒の自宅だ。まずキッチンがあって、奥にリビング・ダイニングがあり、その先に自宅用の玄関ドアがあった。だから、このアトリエは自宅と繋がってもいるが、独立してもいた。  午後になると仕事仲間や友人がこのアトリエを訪ねてくることがある。アトリエの玄関から入ってもらってもいいし、共用廊下からテラス経由でアトリエに招き入れてもよい。いずれにせよ、共用廊下からすぐに仕事場に入ることができるので効率的だ。打ち合わせをする場合にはテーブルと椅子をセッティングする。ここでの打ち合わせはいつも妙に捗った。自宅と都市の両方に隣接し、同時に独立してもいるこのアトリエの雰囲気は、最小のものと最大のものとを同時に掴み取るための刺激に満ちている。いくつかの重要なアイデアがここで産み落とされた。議論が白熱し、日が暮れると、徒歩三秒の自宅で妻が用意してくれた料理を囲んだり、東雲の鉄鋼団地に出かけて闇の中にぼうっと浮かぶ屋台で打ち上げを敢行したりした。  こうしてあの循環は完成したかに見えた。わたしはこうして都市への怒りを反転させ都市とともに歩み始めた、と結論づけられそうだった。お前はついに穴蔵から出たのだ、と。本当にそうだろうか?  都市の穴蔵とはそんなに浅いものだったのか?
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 いやぁ、  未来都市ですね、
 ある編集者がこのアトリエでそう言ったことを思い出す。それは決して消えない残響のようにアトリエの中にこだまする。ある濃密な打ち合わせが一段落したあと、おそらくはほとんど無意識に発された言葉だった。  未来都市?  だってこんなの、見たことないですよ。  ああ、そうかもね、とわたしが返して、その会話は流れた。だが、わたしはどこか引っかかっていた。若く鋭い編集者が発した言葉だったから、余計に。未来都市?  ここは現在なのに?  ちょうどそのころ、続けて示唆的な出来事があった。地上に降り、一三号棟の脇の通路を歩いていたときのことだ。団地内の案内図を兼ねたスツールの上に、ピーテル・ブリューゲルの画集が広げられていたのだった。なぜブリューゲルとわかったかといえば、開かれていたページが「バベルの塔」だったからだ。ウィーンの美術史美術館所蔵のものではなく、ロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館所蔵の作品で、天に昇る茶褐色の塔がアクリル製のスツールの上で異様なオーラを放っていた。その画集はしばらくそこにあって、ある日ふいになくなったかと思うと、数日後にまた同じように置かれていた。まるで「もっとよく見ろ」と言わんばかりに。
 おい、お前。このあいだは軽くスルーしただろう。もっとよく見ろ。
 わたしは近寄ってその絵を見た。新しい地面を積み重ねるようにして伸びていく塔。その上には無数の人々の蠢きがあった。塔の建設に従事する労働者たちだった。既に雲の高さに届いた塔はさらに先へと工事が進んでいて、先端部分は焼きたての新しい煉瓦で真っ赤���染まっている。未来都市だな、これは、と思う。それは天地が創造され、原初の人類が文明を築きつつある時代のことだった。その地では人々はひとつの民で、同じ言葉を話していた。だが、人々が天に届くほどの塔をつくろうとしていたそのとき、神は全地の言葉を乱し、人を全地に散らされたのだった。ただし、塔は破壊されたわけではなかった。少なくとも『創世記』にはそのような記述はない。だから、バベルの塔は今なお未来都市であり続けている。決して完成することがないから未来都市なのだ。世界は変わったが、バベルは永遠の未来都市として存在し続ける。
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 ようやく気づいたか。  ああ。  それで?  おれは永遠の未来都市をさまよう亡霊だと?  どうかな、  本当は都市なんか存在しないのか?  どうかな、  すべては幻想だった?  そうだな、  どっちなんだ。  まあ結論を急ぐなよ。  おれはさっさと結論を出して原稿を書かなきゃならないんだよ。  知ってる、だから急ぐなと言ったんだ。  あんたは誰なんだ。  まあ息抜きに歩いてこいよ。  息抜き?  いつもやっているだろう。あの循環だよ。  ああ、わかった……。いや、ちょっと待ってくれ。先に腹ごしらえだ。
 もう昼を過ぎて久しいんだな、と鉄格子越しの風景を一瞥して気づく。陽光は人工地盤上の芝生と一本木を通過して一三号棟の廊下を照らし始めていた。タワーマンションをかすめて赤色のヘリコプターが東へと飛んでいき、青空に白線を引きながら飛行機が西へと進む。もちろん、時間を忘れて書くのは悪いことではない。だが、無理をしすぎるとあとになって深刻な不調に見舞われることになる。だから徒歩三秒の自宅に移動しよう。  キッチンの明かりをつける。ここには陽光が入ってこない。窓側に風呂場とトイレがあるからだ。キッチンの背後に洗面所へと続くドアがある。それを開けると陽光が降り注ぐ。風呂場に入った光が透明なドアを通過して洗面所へと至るのだった。洗面台で手を洗い、鏡に目を向けると、風呂場と窓のサッシと鉄格子と団地とスカイツリーが万華鏡のように複雑な模様を見せる。手を拭いたら、キッチンに戻って冷蔵庫を開け、中を眺める。食材は豊富だった。そのうちの九五パーセントはここから徒歩五分のイオンで仕入れた。で、遅めの昼食はどうする?  豚バラとキャベツで回鍋肉にしてもいいが、飯を炊くのに時間がかかる。そうだな……、カルボナーラでいこう。鍋に湯を沸かして塩を入れ、パスタを茹でる。ベーコンと玉葱、にんにくを刻んでオリーブオイルで炒める。それをボウルに入れ、パルメザンチーズと生卵も加え、茹で上がったパスタを投入する。オリーブオイルとたっぷりの黒胡椒とともにすべてを混ぜ合わせれば、カルボナーラは完成する。もっとも手順の少ない料理のひとつだった。文字の世界に没頭しているときは簡単な料理のほうがいい。逆に、どうにも集中できない日は、複雑な料理に取り組んで思考回路を開くとよい。まあ、何をやっても駄目な日もあるのだが。  リビング・ダイニングの窓際に置かれたテーブルでカルボナーラを食べながら、散歩の計画を練る。籠もって原稿を書く日はできるだけ歩く時間を取るようにしていた。あまり動かないと頭も指先も鈍るからだ。走ってもいいのだが、そこそこ気合いを入れなければならないし、何よりも風景がよく見えない。だから、平均して一時間、長いときで二時間程度の散歩をするのが午後の日課になっていた。たとえば、辰巳運河沿いを南下しながら首都高の高架と森と物流倉庫群を眺めてもいいし、辰巳運河を越えて辰巳団地の中を通り、辰巳の森海浜公園まで行ってもよい。あるいは有明から東雲運河を越えて豊洲市場あたりに出てもいいし、そこからさらに晴海運河を越えて晴海第一公園まで足を伸ばし、日本住宅公団が手がけた最初の高層アパートの跡地に巡礼する手もある。だが、わたしにとってもっとも重要なのは、この東雲キャナルコートCODAN一街区をめぐるルートだった。つまり、空中に張りめぐらされた道を歩いて、東京湾岸のタブラ・ラサに立ち上がった新都市を内側から体感するのだ。  と、このように書くと、何か劇的な旅が想像されるかもしれない。アトリエや事務所、さらにはギャラリーのようなものが住棟内に点在していて、まさに都市を立体化したような人々の躍動が見られると思うかもしれない。生活と仕事が混在した活動が積み重なり、文化と言えるようなものすら発生しつつあるかもしれないと、期待を抱くかもしれない。少なくともわたしはそうだった。実際にここに来るまでは。さて、靴を履いてアトリエの玄関ドアを開けよう。
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 それは二つの世界をめぐる旅だ。一方にここに埋め込まれたはずの思想があり、他方には生成する現実があった。二つの世界は常に並行して存在する。だが、実際に見えているのは現実のほうだけだし、歴史は二つの世界の存在を許さない。とはいえ、わたしが最初に遭遇したのは見えない世界のほうだった。その世界では、実際に都市がひとつの建築として立ち上がっていた。ただ家が集積されただけでなく、その中に住みながら働いたり、ショールームやギャラリーを開設したりすることができて、さまざまな形で人と人とが接続されていた。全体の半数近くを占める透明な玄関ドアの向こうに談笑する人の姿が見え、共用廊下に向かって開かれたテラスで人々は語り合っていた。テラスに向かって設けられた大きな掃き出し窓には、子どもたちが遊ぶ姿や、趣味のコレクション、打ち合わせをする人と人、アトリエと作品群などが浮かんでいた。それはもはや集合住宅ではなかった。都市で発生する多様で複雑な活動をそのまま受け入れる文化保全地区だった。ゾーニングによって分断された都市の攪拌装置であり、過剰な接続の果てに衰退期を迎えた人類の新・進化論でもあった。  なあ、そうだろう?  応答はない。静かな空中の散歩道だけがある。わたしのアトリエに隣接するテラスとお隣さんのテラスを通り過ぎると、やや薄暗い内廊下のゾーンに入る。日が暮れるまでは照明が半分しか点灯しないので光がいくらか不足するのだった。透明な玄関ドアがあり、その傍の壁に廣村正彰によってデザインされたボーダー柄と部屋番号の表示がある。ボーダー柄は階ごとに色が異なっていて、この一三階は緑だった。少し歩くと右側にエレベーターホールが現れる。外との境界線上にはめ込まれたパンチングメタルから風が吹き込んできて、ぴゅうぴゅうと騒ぐ。普段はここでエレベーターに乗り込むのだが、今日は通り過ぎよう。廊下の両側に玄関と緑色のボーダー柄が点々と続いている。左右に四つの透明な玄関ドアが連なったあと、二つの白く塗装された鉄扉がある。透明な玄関ドアの向こうは見えない。カーテンやブラインドや黒いフィルムによって塞がれているからだ。でも陰鬱な気分になる必要はない。間もなく左右に光が満ちてくる。  コモンテラスと名づけられた空洞のひとつに出た。二階分の大穴が南側と北側に空いていて、共用廊下とテラスとを仕切るフェンスはなく、住民に開放されていた。コモンテラスは住棟内にいくつか存在するが、ここはその中でも最大だ。一四階の高さが通常の一・五倍ほどあるので、一三階と合わせて計二・五階分の空洞になっているのだ。それはさながら、天空の劇場だった。南側には巨大な長方形によって縁取られた東京湾の風景がある。左右と真ん中に計三棟のタワーマンションが陣取り、そのあいだで辰巳運河の水が東京湾に注ぎ、東京ゲートブリッジの橋脚と出会って、「海の森」と名づけられた人工島の縁でしぶきを上げる様が見える。天気のいい日には対岸に広がる千葉の工業地帯とその先の山々まで望むことができた。海から来た風がこのコモンテラスを通過し、東京の内側へと抜けていく。北側にその風景が広がる。視界の半分は集合住宅で、残りの半分は青空だった。タワーマンションの陰に隠れて東京スカイツリーは確認できないが、豊洲のビル群が団地の上から頭を覗かせている。眼下にはこの団地を南北に貫くS字アベニューが伸び、一街区と二街区の人工地盤を繋ぐブリッジが横切っていて、長谷川浩己率いるオンサイト計画設計事務所によるランドスケープ・デザインの骨格が見て取れる。  さあ、公演が始まる。コモンテラスの中心に灰色の巨大な柱が伸びている。一三階の共用廊下の上に一四階の共用廊下が浮かんでいる。ガラス製のパネルには「CODAN  Shinonome」の文字が刻まれている。この空間の両側に、六つの部屋が立体的に配置されている。半分は一三階に属し、残りの半分は一四階に属しているのだった。したがって、壁にあしらわれたボーダー柄は緑から青へと遷移する。その色は、掃き出し窓の向こうに設えられた目隠しと防犯を兼ねた引き戸にも連続している。そう、六つの部屋はこのコモンテラスに向かって大きく開くことができた。少なくとも設計上は。引き戸を全開にすれば、六つの部屋の中身がすべて露わになる。それらの部屋の住人たちは観客なのではない。この劇場で物語を紡ぎ出す主役たちなのだった。両サイドに見える美しい風景もここではただの背景にすぎない。近田玲子によって計画された照明がこの空間そのものを照らすように上向きに取り付けられている。ただし、今はまだ点灯していない。わたしはたったひとりで幕が上がるのを待っている。だが、動きはない。戸は厳重に閉じられるか、採光のために数センチだけ開いているかだ。ひとつだけ開かれている戸があるが、レースカーテンで視界が完全に遮られ、窓際にはいくつかの段ボールと紙袋が無造作に積まれていた。風がこのコモンテラスを素通りしていく。
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 ほら、  幕は上がらないだろう、  お前はわかっていたはずだ、ここでは人と出会うことがないと。横浜のことを思い出してみろ。お前はかつて横浜の湾岸に住んでいた。住宅と事務所と店舗が街の中に混在し、近所の雑居ビルやカフェスペースで毎日のように文化的なイベントが催されていて、お前はよくそういうところにふらっと行っていた。で、いくつかの重要な出会いを経験した。つけ加えるなら、そのあたりは山本理顕設計工場の所在地でもあった。だから、東雲に移るとき、お前はそういうものが垂直に立ち上がる様を思い描いていただろう。だが、どうだ?  あのアトリエと自宅は東京の空中にぽつんと浮かんでいるのではないか?  それも悪くない、とお前は言うかもしれない。物書きには都市の孤独な拠点が必要だったのだ、と。多くの人に会って濃密な取材をこなしたあと、ふと自分自身に戻ることができるアトリエを欲していたのだ、と。所詮自分は穴蔵の住人だし、たまに訪ねてくる仕事仲間や友人もいなくはない、と。実際、お前はここではマイノリティだった。ここの住民の大半は幼い子どもを連れた核家族だったし、大人たちのほとんどはこの住棟の外に職場があった。もちろん、二階のウッドデッキ沿いを中心にいくつかの仕事場は存在した。不動産屋、建築家や写真家のアトリエ、ネットショップのオフィス、アメリカのコンサルティング会社の連絡事務所、いくつかの謎の会社、秘かに行われている英会話教室や料理教室、かつては違法民泊らしきものもあった。だが、それもかすかな蠢きにすぎなかった。ほとんどの住民の仕事はどこか別の場所で行われていて、この一街区には活動が積み重ねられず、したがって文化は育たなかったのだ。周囲の住人は頻繁に入れ替わって、コミュニケーションも生まれなかった。お前のアトリエと自宅のまわりにある五軒のうち四軒の住人が、この四年間で入れ替わったのだった。隣人が去ったことにしばらく気づかないことすらあった。何週間か経って新しい住人が入り、透明な玄関ドアが黒い布で塞がれ、テラスに向いた戸が閉じられていくのを、お前は満足して見ていたか?  胸を抉られるような気持ちだったはずだ。  そうした状況にもかかわらず、お前はこの一街区を愛した。家というものにこれほどの帰属意識を持ったことはこれまでになかったはずだ。遠くの街から戻り、暗闇に浮かぶ格子状の光を見たとき、心底ほっとしたし、帰ってきたんだな、と感じただろう。なぜお前はこの一街区を愛したのか?  もちろん、第一には妻との生活が充実したものだったことが挙げられる。そもそも、ここに住むことを提案したのは妻のほうだった。四年前の春だ。「家で仕事をするんだったらここがいいんじゃない?」とお前の妻はあの奇妙な間取りが載った図面を示した。だから、お前が恵まれた環境にいたことは指摘されなければならない。だが、第二に挙げるべきはお前の本性だ。つまり、お前は現実のみに生きているのではない。お前の頭の中には常に想像の世界がある。そのレイヤーを現実に重ねることでようやく生きている。だから、お前はあのアトリエから見える現実に落胆しながら、この都市のような構造体の可能性を想像し続けた。簡単に言えば、この一街区はお前の想像力を搔き立てたのだ。  では、お前は想像の世界に満足したか?  そうではなかった。想像すればするほどに現実との溝は大きく深くなっていった。しばらく想像の世界にいたお前は、どこまでが現実だったのか見失いつつあるだろう。それはとても危険なことだ。だから確認しよう。お前が住む東雲キャナルコートCODAN一街区には四二〇戸の住宅があるが、それはかつて日本住宅公団であり、住宅・都市整備公団であり、都市基盤整備公団であって、今の独立行政法人都市再生機構、つまりURが供給してきた一五〇万戸以上の住宅の中でも特異なものだった。お前が言うようにそれは都市を構築することが目指された。ところが、そこには公団の亡霊としか言い表しようのない矛盾が内包されていた。たとえば、当時の都市基盤整備公団は四二〇戸のうちの三七八戸を一般の住宅にしようとした。だが、設計者の山本理顕は表面上はそれに応じながら、実際には大半の住戸にアトリエや事務所やギャラリーを実装できる仕掛けを忍ばせたのだ。玄関や壁は透明で、仕事場にできる開放的なスペースが用意された。間取りはありとあらゆる活動を受け入れるべく多種多様で、メゾネットやアネックスつきの部屋も存在した。で、実際にそれは東雲の地に建った。それは現実のものとなったのだった。だが、実はここで世界が分岐した。公団およびのちのURは、例の三七八戸を結局、一般の住宅として貸し出した。したがって大半の住戸では、アトリエはまだしも、事務所やギャラリーは現実的に不可だった。ほかに「在宅ワーク型住宅」と呼ばれる部屋が三二戸あるが、不特定多数が出入りしたり、従業員を雇って行ったりする業務は不可とされたし、そもそも、家で仕事をしない人が普通に借りることもできた。残るは「SOHO住宅」だ。これは確かに事務所やギャラリーとして使うことができる部屋だが、ウッドデッキ沿いの一〇戸にすぎなかった。  結果、この一街区は集合住宅へと回帰した。これがお前の立っている現実だ。都市として運営されていないのだから、都市にならないのは当然の帰結だ。もちろん、ゲリラ的に別の使い方をすることは可能だろう。ここにはそういう人間たちも確かにいる。お前も含めて。だが、お前はもうすぐここから去るのだろう?  こうしてまたひとり、都市を望む者が消えていく。二つの世界はさらに乖離する。まあ、ここではよくあることだ。ブリューゲルの「バベルの塔」、あの絵の中にお前の姿を認めることはできなくなる。  とはいえ、心配は無用だ。誰もそのことに気づかないから。おれだけがそれを知っている。おれは別の場所からそれを見ている。ここでは、永遠の未来都市は循環を脱して都市へと移行した。いずれにせよ、お前が立つ現実とは別世界の話だがな。
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 実際、人には出会わなかった。一四階から二階へ、階段を使ってすべてのフロアを歩いたが、誰とも顔を合わせることはなかった。その間、ずっとあの声が頭の中に響いていた。うるさいな、せっかくひとりで静かに散歩しているのに、と文句を言おうかとも考えたが、やめた。あの声の正体はわからない。どのようにして聞こえているのかもはっきりしない。ただ、ふと何かを諦めようとしたとき、周波数が突然合うような感じで、周囲の雑音が消え、かわりにあの声が聞こえてくる。こちらが応答すれば会話ができるが、黙っていると勝手に喋って、勝手に切り上げてしまう。あまり考えたくなかったことを矢継ぎ早に投げかけてくるので、面倒なときもあるが、重要なヒントをくれもするのだ。  あの声が聞こえていることを除くと、いつもの散歩道だった。まず一三階のコモンテラスの脇にある階段で一四階に上り、一一号棟の共用廊下を東から西へ一直線に歩き、右折して一〇メートルほどの渡り廊下を辿り、一二号棟に到達する。南から北へ一二号棟を踏破すると、エレベーターホールの脇にある階段で一三階に下り、あらためて一三階の共用廊下を歩く。以下同様に、二階まで辿っていく。その間、各階の壁にあしらわれたボーダー柄は青、緑、黄緑、黄、橙、赤、紫、青、緑、黄緑、黄、橙、赤と遷移する。二階に到達したら、人工地盤上のウッドデッキをめぐりながら島のように浮かぶ一三号棟へと移動する。その際、人工地盤に空いた長方形の穴から、地上レベルの駐車場や学童クラブ、子ども写真館の様子が目に入る。一三号棟は一〇階建てで共用廊下も短いので踏破するのにそれほど時間はかからない。二階には集会所があり、住宅は三階から始まる。橙、黄、黄緑、緑、青、紫、赤、橙。  この旅では風景がさまざまに変化する。フロアごとにあしらわれた色については既に述べた。ほかにも、二〇〇もの透明な玄関ドアが住人の個性を露わにする。たとえば、入ってすぐのところに大きなテーブルが置かれた部屋。子どもがつくったと思しき切り絵と人気ユーチューバーのステッカーが浮かぶ部屋。玄関に置かれた飾り棚に仏像や陶器が並べられた部屋。���の一部が透けて見える。とはいえ、透明な玄関ドアの四割近くは完全に閉じられている。ただし、そのやり方にも個性は現れる。たとえば、白い紙で雑に塞がれた玄関ドア。一面が英字新聞で覆われた玄関ドア。鏡面シートが一分の隙もなく貼りつけられた玄関ドア。そうした玄関ドアが共用廊下の両側に現れては消えていく。ときどき、外に向かって開かれた空洞に出会う。この一街区には東西南北に合わせて三六の空洞がある。そのうち、隣接する住戸が占有する空洞はプライベートテラスと呼ばれる。わたしのアトリエに面したテラスがそれだ。部屋からテラスに向かって戸を開くことができるが、ほとんどの戸は閉じられたうえ、テラスは物置になっている。たとえば、山のような箱。不要になった椅子やテーブル。何かを覆う青いビニールシート。その先に広がるこの団地の風景はどこか殺伐としている。一方、共用廊下の両側に広がる空洞、つまりコモンテラスには物が置かれることはないが、テラスに面したほとんどの戸はやはり、閉じられている。ただし、閉じられたボーダー柄の戸とガラスとの間に、その部屋の個性を示すものが置かれることがある。たとえば、黄緑色のボーダー柄を背景としたいくつかの油絵。黄色のボーダー柄の海を漂う古代の船の模型。橙色のボーダー柄と調和する黄色いサーフボードと高波を警告する看板のレプリカ。何かが始まりそうな予感はある。今にも幕が上がりそうな。だが、コモンテラスはいつも無言だった。ある柱の側面にこう書かれている。「コモンテラスで騒ぐこと禁止」と。なるほど、無言でいなければならないわけか。都市として運営されていない、とあの声は言った。  長いあいだ、わたしはこの一街区をさまよっていた。街区の外には出なかった。そろそろアトリエに戻らないとな、と思いながら歩き続けた。その距離と時間は日課の域をとうに超えていて、あの循環を逸脱しつつあった。アトリエに戻ったら、わたしはこのことについて書くだろう。今や、すべての風景は書き留められる。見過ごされてきたものの言語化が行われる。そうしたものが、気の遠くなるほど長いあいだ、連綿と積み重ねられなければ、文化は発生しない。ほら、見えるだろう?  一一号棟と一二号棟とを繋ぐ渡り廊下の上から、東京都心の風景が確認できる。東雲運河の向こうに豊洲市場とレインボーブリッジがあり、遥か遠くに真っ赤に染まった富士山があって、そのあいだの土地に超高層ビルがびっしりと生えている。都市は、瀕死だった。炎は上がっていないが、息も絶え絶えだった。密集すればするほど人々は分断されるのだ。
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 まあいい。そろそろ帰ろう。陽光は地平線の彼方へと姿を消し、かわりに闇が、濃紺から黒へと変化を遂げながらこの街に降りた。もうじき妻が都心の職場から戻るだろう。今日は有楽町のもつ鍋屋で持ち帰りのセットを買ってきてくれるはずだ。有楽町線の有楽町駅から辰巳駅まで地下鉄で移動し、辰巳桜橋を渡ってここまでたどり着く。それまでに締めに投入する飯を炊いておきたい。  わたしは一二号棟一二階のコモンテラスにいる。ここから右斜め先に一一号棟の北側の面が見える。コンクリートで縁取られた四角形が規則正しく並び、ところどころに色とりどりの空洞が光を放っている。緑と青に光る空洞がわたしのアトリエの左隣にあり、黄と黄緑に光る空洞がわたしの自宅のリビング・ダイニングおよびベッドルームの真下にある。家々の窓がひとつ、ひとつと、琥珀色に輝き始めた。そのときだ。わたしのアトリエの明かりが点灯した。妻ではなかった。まだ妻が戻る時間ではないし、そもそも妻は自宅用の玄関ドアから戻る。闇の中に、机とそこに座る人の姿が浮かんでいる。鉄格子とガラス越しだからはっきりしないが、たぶん……男だ。男は机に向かって何かを書いているらしい。テラスから身を乗り出してそれを見る。それは、わたしだった。いつものアトリエで文章を書くわたしだ。だが、何かが違っている。男の手元にはMacがなかった。机の上にあるのは原稿用紙だった。男はそこに万年筆で文字を書き入れ、原稿の束が次々と積み上げられていく。それでわたしは悟った。
 あんたは、もうひとつの世界にいるんだな。  どうかな、  で、さまざまに見逃されてきたものを書き連ねてきたんだろう?  そうだな。
 もうひとりのわたしは立ち上がって、掃き出し窓の近くに寄り、コモンテラスの縁にいるこのわたしに向かって右手を振ってみせた。こっちへ来いよ、と言っているのか、もう行けよ、と言っているのか、どちらとも取れるような、妙に間の抜けた仕草で。
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sandicemails · 6 years ago
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砂漠歌人と砂丘歌人
 2019年7月14日ジュンク堂池袋本店内カフェにて、千種創一『砂丘律』第4刷&𠮷田恭大『光と私語』第2刷を記念してトークイベント「砂漠歌人と砂丘歌人」が開催され、55名近くが出席しました。以下その内容です。(敬称略)
1 はじめに
2 自己紹介
3 中東との出会い
4 短歌との出会い
5 旅行詠と滞在詠
6 暮らしにまつわるあれこれ
7 影響を受けた映画作品
8 音楽と短歌
9 増版とSNS
10 それぞれの作歌法
11 『砂丘律』制作秘話
12 『光と私語』制作秘話
13 翻訳について
14 『光と私語』の魅力
15 千種からの発表
16 さいごに
1 はじめに(ジュンク堂書店池袋本店・市川真意文芸書担当)
 二〇一五年末の刊行後、異例の売行で第二刷がされた『砂丘律』。この春、砂漠を詠んだ歌がSNSで大きな話題になり、第三刷、次いで第四刷が決定。一時帰国する著者千種創一を、鳥取砂丘育ちの新鋭歌人𠮷田恭大が迎えます。
 万葉時代から命脈を保ち続け、砂漠も都市も飲み込む器、短歌。その叙情はどこに行くのでしょうか。二人が語ります。みなさま、拍手でお迎えください。(千種・𠮷田が登場)
2 自己紹介
千種:みなさま、本日は雨の中お越し頂きありがとうございます。千種でございます。一九八八年、愛知県生まれです。二〇一五年、青磁社より『砂丘律』を刊行しました。
𠮷田:𠮷田です。一九八九年生まれ、鳥取県出身です。塔短歌会所属、学生時代は早稲田短歌会にもいました。今年の3月に、いぬのせなか座より『光と私語』を刊行しました。
 二〇〇九年に千種さんが外大短歌会を設立して、その初期に私が歌会にお邪魔してからのつきあいなので、かれこれ十年以上になりますね。その間には中東短歌なんていう同人誌もありましたね。
千種:そうですね。「アラブの春」の起きた二〇一二年、僕は中東に縁のある歌人たちと同人誌「中東短歌」を創刊しました。二〇一三年に第二号、二〇一四年に第三号で終刊、そして二〇一五年に砂丘律を刊行という流れです。
𠮷田:今回のトークイベントに先立って、ネットで質問を募集しました。そのうちいくつかへの回答を交えつつ、進めて行ければと思います。
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(撮影:青磁社)
3 中東との出会い
𠮷田:ではまず、千種さんの中東への関心というのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。
千種:幼稚園がキリスト教系だった関係で地元の教会に行っていてパレスチナとかに興味があって。で中学一年生のときにNYで九・一一事件、パレスチナで第二次インティファーダ(一斉蜂起)事件が起きて、そこから更に興味が出たんです。
 だって飛行機がビルに突っ込んだり、子供が石を投げてイスラエルの戦車に立ち向かうとか、尋常ではないでしょう。何なんだこの世界は、と思って。
𠮷田:ということは、初めて知った”外国”というのはそのあたりですか。これは質問も寄せられております。
千種:はい、聖書を読んでいたので、イエス・キリストの活動していたパレスチナ、エジプト、ヨルダン、そのあたりです。小さい頃はハリーポッターみたいに架空の国だと思ってはいましたが。
4 短歌との出会い
𠮷田:これも質問が寄せられているんですが、千種さんはどうして短歌をはじめたんですか。
千種:高校まで自転車で通ってたんですけど、道中で自然に歌ができていたんです。最初は忘れるに任せていたんですけど、あるとき勿体ないと思って、高二の春からノートに書きとめ出したんです。
5 旅行詠と滞在詠
𠮷田:砂丘律の冒頭から中東の歌がありますが、詠まれた時は実際に現地に行かれていたんでしたっけ。
千種:いわゆる「アラブの春」が起こる前に、シリアとトルコを旅行しました。でもそれくらいです。大学卒業後にヨルダンに住み始めました。
𠮷田:中東に旅行してみて詠んだ作品と、中東に住み始めてからの作品というのは何か違いがありますか。
千種:砂丘律は時系列に編まれていないので、中東に住み始める前の歌もかなり入っています。そのあたりの歌はかなり想像、というか妄想です。
 妄想と現実が一致しないのはよくある話なので、実際に住み始めてから修正したり、歌集には収録しなかった歌などもあります。中東に住み始めてからは、非日常が日常になっていく感覚はありました。
 ちなみに、砂丘律を編むにあたって、もともとは一四〇〇首とか一五〇〇首とかあったものを四一〇首まで絞って収録しています。
𠮷田:削除した歌はどこかに書き留めていますか?
千種:作った歌は全部大事にしたいので、発表できるレベルに達しなかった歌たちもWordファイルに書き溜めていますね。
 身辺整理の際にはファイルをデリートしようかなと思っています。これ死後に発掘されたら、地獄やな、思ってますので。(一同笑い)
𠮷田:千種さん、整理整頓できるほうですよね。わたし手元に全然歌を纏めていなくて。『光と私語』を出そうと思って色々掘り返したんですけど、1年くらい遅れてしまいました。
千種:あ、みなさんのために補足しますと、歌人って歌をいろんな雑誌や同人誌に書くので実は作品が散逸しやすいんです。
6 暮らしにまつわるあれこれ
千種:普段𠮷田さんとはこういう話はしないので結構緊張しています。先日も台湾に一緒に行ったのですが、どーでもいい話しかせんかったもんね。
𠮷田:そうね。暮らしの話はしないもんね。じゃあ、聞きましょう。「普段何を召し上がっていますか」(一同笑い)
千種:パン食べて生きています。安い。パンにホンムス(豆のペースト)を塗って食べています。だから日本にいるときはラーメンと寿司にどっぷりですね。
𠮷田:確かに台湾でもひたすら麺食べてたもんね。(一同笑い)
𠮷田:「日本に帰国したときに驚くのは何ですか」という質問もありますが。
千種:日本人がみんな子供に見えることですね。あとすれ違う人がみんな知り合いに見えます。
7 影響を受けた映画作品
𠮷田:千種さん、好きな映画は何かありますか。
千種:邦画で言えば、例えば『ジョゼと虎と魚たち』、『海街diary』、最近で言えば『寝ても覚めても』とか、人間のどうしようもなさを描いた映画が好きです。
 影響を受けた映画としては、ふらっと入った渋谷ユーロスペースで観たポーランド映画『エッセンシャル・キリング』(イエジー・スコリモフスキ監督、二〇一〇年)。
 中東風のテロリストが、砂漠と、そして拘束後に輸送された先の雪原をひたすら逃亡する。詳しい設定説明や台詞もなく、多くが謎のまま、ただ映像が綺麗。中身を語らずとも、枠を語ることから滲み出る美しさもあるんだな、と。
 ビジュアルというよりも、コンセプトの面で影響を受けました。
 他には森博嗣原作の『スカイクロラ』(押井守監督、二〇〇八年)。キルドレというずっと子供のまま成長しない戦闘機乗りたちの終わらない、終わらせることのできない、運命や気持ちの揺れ、諦めみたいな世界観は、砂丘律にも影響しています。
千種:𠮷田さんの好きな映画は。
𠮷田:アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『光りの墓』(二〇一五年)とか。物語も好きなんですが、それより映像と音楽で引きつけていく、みたいな映画が好きです。
8 音楽と短歌
𠮷田:じゃあ、好きな音楽は何でしょう。
千種:中学生まではバロックを中心にクラシックばかり聴いてました。でもHYという沖縄のバンドのAM11:00という曲を偶然ラジオで聴いたことがきっかけでJポップにも興味が湧きました。
𠮷田:くるりの岸田繁さんが砂丘律の推薦文を書かれてますが、くるりとの出会いは。
千種:くるりは、高校生のとき「赤い電車」のMVを観たのが最初の出会いですね。
 高校生の頃はBump of ChickenとかRadwimpsとかの切実な曲を聴きまくってました。
 でも赤い電車を聴いて、こんなゆるい曲があるんだと思って何となく気になっていたところに、進学した先の大学で友達から、聴け、といってくるりのCDを大量に貸しつけられて、聴きこむようになりました。
𠮷田:くるりをまとめて貸してくれる友人っているよね。(一同笑い) 歌人に好きな人多いです、くるり。私は早稲田短歌の先輩から布教されました。
千種:𠮷田さんの好きな音楽は。
𠮷田:あまり聴かないんですよね。舞台に使われた音楽を聴いたり、もっぱら他人から勧められたのを聴いています。最近だと空間現代とか。
9 増版とSNS
千種:今回の重版は、この春にある方のツイートに載せられたこんな歌がバズったのがきっかけでした。
 アラビアに雪降らぬゆえたた一語ثلجと呼ばれる雪も氷も /千種創一
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元URL: https://twitter.com/Ots_mh/status/1106256914915028992
𠮷田:このサルジュの歌がバズったとき、どんな気持ちでしたか。
千種:あら、それバズるんだ、という気持ちでした。
𠮷田:そうだよね、キャッチーな歌とか他にもいっぱいあるのにね。
 実は今日、会場にそのツイート主にお越し頂いております。「なんでこの歌を引いたんですか」とか、ちょっと聞いておきましょう。
(マイクを受け取りつつ)
橋本牧人:はじめまして。この歌を引いた理由ですか。僕自身が大学一年生のときにアラビア語を勉強したことがあって。学問で得た知識を詠み込んだ歌を志向していきたいなと思って、この歌を選びました。
 他にはカロリーメイトの歌とかも好きです。
 煙草いりますか、先輩、まだカロリーメイト食って生きてるんすか /千種創一
千種:ありがとうございます。
 サルジュの歌、実は過去砂漠に降った雪の写真に添えて投稿したこともあるんですが、ぼちぼち伸びたくらいです。
 今回の橋本さんのツイートがあれだけ伸びたのは何でなんでしょうね。
𠮷田:Twitter本文に表示される横書きではなくて、歌集の写真として縦書きだったことが良かったのでは。そして橋本さんがその写真を撮ったという行為がワンクッションあること、あたりも理由として挙げられると思います。
千種:橋本さんの”物語”が差し込まれているというね。
𠮷田:そうそう。しかしこれだけ伸びたのは、作者冥利に尽きるのではないでしょうか。
千種:本当に。改めて橋本さんに感謝申し上げます。
10 それぞれの作歌法
𠮷田:Twitterで拡散されやすい歌、ってあると思うんです。
 千種さんの場合は、「先輩」というような呼びかけとか、会話体を使ったキャッチーな歌が多くて、初読で印象に残りやすい。例えばこんな歌。
 あっ、ビデオになってた、って君の声の短い動画だ、海の /千種創一
 千種さん、会話体使うの得意だよね。
千種:得意というか、そうなっちゃうんだよね。和歌風に文語旧仮名で朗々と詠いあげる、みたいなのは書けと言われても書けない。
𠮷田:破調はどうですか。会話を優先するのか、定型を優先するのか、みたいな。
千種:会話優先ですね。でも歌を作るときには、寝る前とかに百回なり千回なり、ぶつぶつ口に出して繰り返して、その一行のための定型みたいなものを探します。
 𠮷田さんはどんな風に作るんですか。
𠮷田:私はスマホで作りますね。声に出すのは割と最後の段階。視覚的な収まりどころを最初に探します。そこから韻律をいじります。
 この前、地元でNHKの取材を受けたんですが、作歌風景を撮りたいというのでスマホで作っていたら「絵���に弱いから、ノート持ってきたんでこれに書いてください」と言われました。でも結局、字が汚くてボツになったというオチ付きです。(一同笑い)
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(NHK鳥取のページより)
千種:僕は気分転換で紙を使うことはあります。
 僕も記録は基本スマホなのですが、歌のいろんなバリエーションを作って、俯瞰するために紙に書き出したりします。スマホだとせいぜい三行とかしか表示できないので。
千種:𠮷田さんは音楽聴きながら歌書いたりしますか。僕はくるりの「ばらの花」とか「ワンダーフォーゲル」とかえんえんリピートで聴きながらよく書きます。
𠮷田:THE YELLOW MONKEYを聴きながら連作を組んだりした時期もありました。ありましたが、精神が不調になりますね。(一同笑い)
 最近だと落語を聴きながらが多いですね。深夜とか、人の話声が聞こえてると安心するんです。でも歌詞のある曲だと自分の書いているものに干渉してくるんで……ラジオとかポッドキャストとか、聞き流していられるようなものが丁度いいです。
11 『砂丘律』制作秘話
𠮷田:歌集にまとめる際に、改作はどの程度していますか。確か砂丘律が出た直後の批評会(二〇一六年)で、歌人の田口綾子さんが指摘されていましたが。
(批評会記録:http://dunestune.blog.fc2.com/blog-entry-4.html )
千種:はい。当初、文語の歌も少しはあったんです。でも口語の多い砂丘律の中では浮いてしまうので、改作したり、もしくは泣く泣く落とした歌もありました。
𠮷田:ではその辺の歌は、没後出てくる感じで?
千種:出ません。出させません。(一同笑い)
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𠮷田:砂丘律は装幀・デザインもかなり話題になってました。
千種:当初、出版社の青磁社には、洋書のようなシンプルなペーパーバックで、写真はこれ使って、というような何となくのイメージを伝えていました。
 割と装幀は自分で介入するつもりでした。
 でも砂丘律の原稿を読んだ、濱崎実幸という装幀家さんに”ハイジャック”されて。「やりたいこともあるから任してほしい」と言われたので、僕も「任せます!」として任せたんです。
𠮷田:背表紙がむき出しの特殊な装幀でして、なかなか費用も手間もかかっているとか。
 実は本日は砂丘律の出版元、青磁社の永田淳代表にお越し頂いております。砂丘律に関し、どのような苦労がありますでしょうか。
永田淳青磁社代表:版元の青磁社の永田です。
 砂丘律はすべて手製本です。職人さんが一冊一冊、背表紙の寒冷紗を貼って、題簽を貼っています。今は圧倒的に機械製本が多いので普通の書店には手製本はほぼないと思います。
 砂丘律は製本代だけで300円くらいかかっています。ここにさらに印刷代などがかかります。業界の人ならわかると思いますが、定価1400円の中で製本代300円という数字は、すごいコストがかかっています。
12 『光と私語』制作秘話
千種:光と私語もまた、背中がむき出しの装幀が話題となっています。第二刷もされました。
𠮷田:砂丘律と光の私語は双子のようだ、という話も言われてましたね。本日は、光と私語のデザインを担当したユニット「いぬのせなか座」主宰の山本浩貴さんにもお越し頂いておりますので、その辺の話も伺ってみましょう。
山本「いぬのせなか座」主宰:デザインを担当した山本です。光と私語と砂丘律とを二冊並べて写真をSNSに投稿した人たちもいました。
 付き合いの長い𠮷田さんと千種さんのお二人の関係性でそういう投稿が見られたのかもしれませんが。
 実は、千種さんのこと知る前のことですが、かつて本屋の歌集コーナーで一番かっこいいと感じた砂丘律をジャケ買いしていました。
 そうしたこともあって、光と私語をデザインする際には影響を受けないようにしていたのですが、結局似てしまったのが面白かったです。
 ちなみに光と私語はコデックス装という装幀です。
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𠮷田:先般増刷された堂園昌彦さんの『やがて秋茄子へと到る』なんかもそうですが、なるべく長く売っていくためには、なるべく人に手に取ってもらうようなデザインが大事だと思っています。製品としての存在感があったほうがいいのではと。
千種:一時期、電子書籍で歌集を出そうという潮流がありました。紙の本が電子書籍に勝てるところといったら装幀とかと思って、砂丘律を出す際にはこだわりたいと思っていました。
𠮷田:電子書籍のメリットは版切れのないことと、アクセスの良さですよね。
 『光と私語』については近日中にデータ版を無料公開する予定なのですが、そこをきっかけに書籍版を購入してくれる人が少しでもいればいいなと思っています。何せ紙の本にはマテリアルとしての良さがありますので。
千種:軽く言っちゃうと、本のインスタ映えとかね。
𠮷田:そうそう。重要。
13 翻訳について
𠮷田:千種さんは割と、主題制作、つまり連作の中で物語を立ち上げるという試みをされていますが。
千種:はい。砂丘律の中だと、「或る秘書官の忠誠」という連作があって、独裁者の秘書官になりかわって詠んでいます。が、すごく評判が悪い。
 あと、確か歌人の紀野恵さんが、一時期、紀貫之か何かに成り代わった連作を雑誌「短歌研究」に連載していたんですけど、まあ、なかなか難しいですよね。
 それは歌人の力の限界なのか、それとも短歌という詩型の限界というか、向き不向きのような話だと思っています。
𠮷田:単純に物語を立ち上げるだけだったら、散文に分がありますからね。
 物語といえば、千種さんはアラブ文学の翻訳もされていますよね。中東短歌にも、歌と並行していくつか翻訳を発表されてました。
千種:はい。今日のチラシには「歌人・翻訳家」と書いてあるんですが、実はまだ翻訳で本を出せていません。
 とある出版社に翻訳の持ち込みをしたのですが、アラブ文学では商業出版はなかなか難しいと却下されてしまって。
 もちろん図書館に行けば翻訳されたアラブ文学もぼちぼちあるのですが、湾岸戦争、九・一一、アラブの春、など大きな事件が起きて、読者の関心が大きくなったときに翻訳・出版されたものが多いと聞きます。
𠮷田:中東情勢が荒れると、翻訳が出るということですね。となるとあまり出ない方が世界の平和のためには良さそうですが。(一同笑い)
 私は舞台関係のマネジメントを仕事にしているのですが、演劇界隈でも、中東への関心というか、アーティストを日本に招聘したり、作品が日本で試演されたり、ということが増えている印象があります。今後、政治情勢だけではなく文化の面でもフックは増えていくのではないかと思います。
千種:そう願います。みなさまの中にアラブ文学の翻訳出版に興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひ千種にお声かけを。宣伝しちゃった。
14 『光と私語』の魅力
千種:僕が自分について喋りすぎているので、光と私語の魅力について話します。話していいですか。話しますね。
 光と私語は、「枠」の歌集だと思っています。
 まず、装幀については、プラスチックのカバーだったり、本文中に四角や長方形のボックスが差し込まれていたり、視覚的にカクカクしているのが、とても都市っぽい、枠っぽいです。
 歌について言えば、例えば一月とか「時間枠」を読んだものが多くあります。
・一月は暦のなかにあればいい 手紙を出したローソンで待つ
 他にも、枠としての建築への関心も示されています。
・恋人の部屋の上にも部屋があり同じところにある台所
 短歌では、部屋でタバコを吸う「私」の恋人とか、一月に「私」が友達と行く初詣とか、枠の中身について話すのが普通です。
 一方で、光と私語では枠ばかりについて話すことで、「私」が希釈されます。
 でもそれこそが都市のリアル、我々が見る都市の人間像でないでしょうか。とてもリアルな。
𠮷田:なるほど。なんだろう、たぶん個人的には、私自身以外のところから私性を取り出したいのですよね。あまり自分の話をしたくないというか、枠の中身はどうでもいいというか。単に自分に自信がないだけかもしれませんが。
15 千種からの発表:活動再開宣言
𠮷田:そろそろ時間だけど、告知とかしましょうか。
千種:何だっけ。
𠮷田:ほら、これからの、歌の。
千種:え、ああ、これまとめに入ってますね。(一同笑い)
(考え込んだあと)ちょっと、実は、その、第二歌集を用意しています。冬か春くらいに出せればな、と。タイトルは「千夜曳獏」。
𠮷田:ここ数年は歌からは離れてましたが。
千種:はい、そうですね。
(しばらく考えて)砂丘律を出したあとに、言葉との距離がわからなくなってしまって。
 他人に不誠実な言葉、例えば嘘、を吐いてしまうこんな自分が、歌で綺麗な言葉を使っていてよいんだろうか、って。
 言葉を単なる道具みたいに扱っているんじゃないか、って怖くて。
 もちろんその葛藤や罪悪感はまだあるんですが、書くのをやめたこの数年、病気みたいになっちゃって。僕にとって書く行為は生体リズムの一部だったというのがこの数年でわかったことです。
 書いて褒められたいとかではなくて、書かざるを得ないんです。書いちゃうんです。ほら、マグロって泳ぎ続けないと死ぬじゃないですか。あれです。
 今後、また書いていきます。良いものが創れればと思ってますので、みなさま、どうぞよろしくお願い申し上げます。
𠮷田:今日は、その言質を取れたら勝ちだと思って来たので。もう引き返せないですよ。
千種:やられたわー。みなさんこれ、打ち合わせと違う展開です。(一同笑い)
16 さいごに
𠮷田:では最後に一言、どうぞ。
千種:はい。いろんな奇跡が重なって、僕もここにいるし、みなさんもここにいると思っています。
 𠮷田さんがいなければ僕はこんなに短歌にのめり込まなかっただろうし、砂丘律は青磁社や装幀家の濱崎さんがいなければ生まれなかった本だし、橋本さんのツイートやジュンク堂さんからのお声掛けがなければこのイベントもなかったと思います。
 書き手として本当にありがたいと思っています。みなさま、今日はお越し頂き、ありがとうございました。
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thyele · 2 years ago
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2023年1月20日
共通テストの倫理に「親ガチャ」想起させる問題、なぜ出題? 予備校関係者や大学教授に聞く背景(1/3 ページ) - ねとらぼ https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2301/19/news173.html
ルーブル美術館の来館者数がV字回復 それでも入館制限する理由とは:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASR1N3V5SR1NUHBI011.html
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ヒカキン、1000万円のポケカ福袋開封で大興奮 超レアカード登場で「あぁ!」 中身の価値に驚き | ORICON NEWS https://www.oricon.co.jp/news/2264782/full/
髪がキレイだと思う芸能人は? 2位は生見愛瑠(めるる)さん、1位は「黒髪ロングヘアがステキな女優」|まいどなニュース https://maidonanews.jp/article/14817086
【速報】新型コロナ「5類」移行へ 岸田首相が検討指示 今春にもインフル並みに|FNNプライムオンライン https://www.fnn.jp/articles/-/473644?display=full
大手カレーチェーン「CoCo壱番屋」 年に2回の値上げにファンの悲鳴、深刻化するココイチ離れ | デイリー新潮 https://www.dailyshincho.jp/article/2023/01200601/?all=1
悠愛/タラればさん「4月から始まる九州ツアーと ビートステーションワンマンに向けて メンバーひとりひとりが 大切にしているもの、目標とするものが重なっています やりたいことは細かく違っても 先に見る景色は同じです 個性があって勢いがある、だけじゃない みんな巻き込んでいくぞー!🎀 https://t.co/eKKQ0Q2SXh」https://twitter.com/tarareva_yua/status/1615570590009823232
SAISEIGAさん「‼️🎫 本日21:00 チケット発売 🎫‼️ SAISEIGA presents【EVOLVING PARADE 】 4月8日(土)渋谷CYCLONE https://t.co/ZMp1BeQFOf 5月12日(金)福岡INSA https://t.co/P3RATtYR6j 5月13日(土)広島SECOND CRUTCH https://t.co/fVn6QY1mQ2 5月14日(日)松山SALON KITTY https://t.co/a1LPbNfGxm https://t.co/wUoNWAuuGf」https://twitter.com/SAISEIGA/status/1615555163477135360
宮悪戦車さん「お憑かれ様デス! ストロベリーソングオーケストラの上犯期の犯行予告が出ましたよ。 今年は鏡町を構築し25執念、節目の年となっております。 全怪場、見逃し厳禁、破壊の夜(途中で失神)になる事間違い無し! 共犯者ヨ! 暦に赤マルを憑けるのダ! https://t.co/8UsKOMkxkE」https://twitter.com/15ssozacho/status/1615544525434544128
桂 @月喰vo.さん「早くも一月半分過ぎてる:(;゙゚'ω゚'): そして既にお鼻がゆるゆるのズビズビ ……早くないか???目も痒いし…… もう少し待ってほしいところ。 こんな事言うてる間にやってきそうです ✨✨✨2月の四国2days✨✨✨ 2/18(土)@高松TOONICE 2/19(日)@今治JAMSOUNDS どちらもお見逃しなくーーー!! https://t.co/CL0ziUDHNK」https://twitter.com/keinoiz444/status/1615344930989441025
ストロベリーソングオーケストラ公式呟キ処さ���「🎌次怪ノ犯行予告🎌 2月11日(土) 『ユビキタス世界 Ver.5.0』 松山サロンキティ https://t.co/c1siDV6Gcw 2月12日(日) 『ユビキタス世界 Ver.6.0』 広島セカンドクラッチ https://t.co/mO75h6rIRO 開場17:00/開演17:30 ★シングル怨源『バースデイ』、2.11より発売‼︎ https://t.co/zBt349bzT0」https://twitter.com/15sso_official/status/1615318178220867584
GAUZESシストさん「生まれて初めてカレーうどんを食したのだが… カレーうどんのうどんってご飯代わり? それとも…カレーうどんとご飯を食べてるの? そして服になんでこんなところに… カレー付いてるの?? カレーうどんのカレーは最後まで飲み干すの? カレーうどんって不思議な食べ物だ… https://t.co/3wfDV2M2KI」https://twitter.com/sisut829/status/1615629079700725761
Always with you~to おはる ♡~さん「出演アーティスト紹介㉔ 22日出演 WITH SEXY Vo: SYO Gt: 鈴音-RINNE- Gt: 戒依 Ba: KAIKI Dr: KEI https://t.co/Z88PFAlRrE」https://twitter.com/oharuevent/status/1615702297891467269
yura 🌕new maxi single「Cherish」発売中🐈‍⬛さん「いよいよ明後日~ですね‼️ 緊張😳そしてやっと開催できるんだという嬉しい気持ち❤️ 当初は参加予定でしたが、延期を経て病気が発覚。まさか…と本当に驚いたけれどイベントへの気持ちは変わらないです👊 ご好意で【Cherish】を物販して頂けることに😹参加出来て嬉しい🙌🏻 素晴らしい3日間を祈って✨」https://twitter.com/yura44336222/status/1615695904153141248
eclipse.✩⃝ STRAY INDIVIDUALITY GROUPさん「☆。・ BUMP OF CHICKEN / ハルジオン VOCAL//Satomiyu.(@satomi3343) MIX//あつや(@TachibanaVT_mix) All eclipse. member Y : https://t.co/VmBUAyzj2h #拡散希望RT #少しでも良いなと思ったらRT #歌い手さんMIX師さん絵師さん動画師さんPさんと繋がりたい #いいねで気になった人お迎え https://t.co/wLgSrd2fRJ」https://twitter.com/eclipse01429/status/1614934033636655104
yura 🌕new maxi single「Cherish」発売中🐈‍⬛さん「KAIKIさん、yuraのメンバー、覇叉羅のみなさん…本当に優しいな。 ソレイユに居られたこと誇りに思う。若くて至らなかったから辛く思ったこともあったけど、あの居場所を作ってもらえて良かった。 たからもの。 泣けてきた。止まらなくなってきた。 見守ってきて下さった皆さんもありがとう。」https://twitter.com/yura44336222/status/1615709572752343043
yura 🌕new maxi single「Cherish」発売中🐈‍⬛さん「yura  New Maxi Single 「Cherish」8/4(水)発売決定!! 約20年ぶりのリリース!! New Maxi Single「Cherish」の発売が8/4(水)に決定しました! 活動当時のメンバーが再結集! 未発表曲を再アレンジ、新レコーディング!! 収録曲 1. 猫 2. ルナエクリプス 3. 蜉蝣と墜ちた月 https://t.co/nsNjuRKBlU」https://twitter.com/yura44336222/status/1407879685107707906
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センさん「2年前からこのメンバーで確定していたSymptom Clusterが激アツ過ぎます!この日どうしても行けなくて残念に思いながら「何の曲をやるのだろう?」と勝手な想像しています。配信ライブという形で参加させていただきますが本当に楽しみです。」https://twitter.com/senazarupnoy/status/1615914695810252803
Always with you~to おはる ♡~さん「おはるさんから皆様、出演者様、関係者様への感謝の言葉です。最高の3日間にしましょう。 ↓おはるさんより(続きます) いよいよ明日になりました。みんなの愛が、いっぱい詰まったイベントです。私は癌になり絶望の中でカイキや多くのバンドマンの暖かい心を知りました。 https://t.co/EIgMtGaYMO」https://twitter.com/oharuevent/status/1615893228678680576
Always with you~to おはる ♡~さん「金銭面でも心のケアも、みんなに助けられて今が有ります。バンドだけでなく多くのファンの人達にも助けられました。一つ一つ言ったら切りが無いほど多くの人達に助けられました。明日からの3日間みんなの中で私は幸福に包まれるでしょう。ありがとう この言葉につきます。宜しくお願いします。」https://twitter.com/oharuevent/status/1615893421276925957
KINGRYOさん「KING NEW ALBUM 【CRY OUT TO HEAVEN】info 2023.2 DROP 皆様よろしくお願いします👑 https://t.co/odHAXPB7Pl」https://twitter.com/kingryoworld/status/1615671407383543811
Gods of Decay (NEW SINGLE OUT NOW!!)さん「Gods of Decayのラジオ番組 "Blackout with Gods of Decay" お聴きいただきありがとうございました! 次回放送は1月25(水)深夜24時! 新コーナー「リクエスト紹介」開始! アシスタントSaraの芸術旅浪漫コーナーやFrost独り言コーナーも! 皆様ご期待下さい! ラジオ川越 https://t.co/eU26QQTeCI https://t.co/VDFeLNzK1b」https://twitter.com/gods_of_decay/status/1615865816859410432
FarEastRadioさん「Blackout with Gods of Decay -速報- Frostさん推し猫「猫の直哉」くん https://t.co/tjf5zwbVPU サラの芸術旅浪漫 ボッティチェリ特別展《美しきシモネッタ》 https://t.co/ftRufwnVQV #GodsofDecay #ラジオ川越」https://twitter.com/FarEastRadioJ/status/1615733855172034560
けいぢゅさん「アルバムも良いけどこっちも聴いて! https://t.co/xe3HvtT7rt」https://twitter.com/ungloudrock/status/1592824581618044930
けいぢゅさん「みんなからの匿名質問を募集中! こんな質問に答えてるよ ● 昔のお客さんの事どう思ってます… ● 今度既婚者が私の家に泊まりに来… ● お子さん何歳ですか? ● CDは物販以外でも買えますか? #質問箱 #匿名質問募集中 https://t.co/EyNVBTPDSU」https://twitter.com/ungloudrock/status/1615676729632391169
KINGRYOさん「みんなのヘドバンがカッコ良すぎて✨ https://t.co/yh9VWFFj8O」https://twitter.com/kingryoworld/status/1615929815181455363
out of datesさん「突然ですが!明日の1月20日(金) Facebookでトークライブ配信やります! 演奏はしない予定です(笑) どうなるか分かりませんが、アカウントある方は、見に来てくださいね🎶 Facebookはこちらから https://t.co/NZz6cpiagE #ライブ #トーク #演奏無し https://t.co/8eFbsoKRMo」https://twitter.com/out_dates/status/1616025709583163392
out of datesさん「ライブ出演が決まりました‼️ 見に来て頂ける方、DMでご一報頂けると嬉しいです✨ 日時: 2022年1月22日(日) 13:10 -𝙊𝙋𝙀𝙉-(変更可能性あり) 会場: 池袋Red Zone Aneris https://t.co/zySPsnqyaL 出演バンド⬇ The Three Amigos Out Of Dates Newest Subway Terror and Friends ゲスト(プロ) https://t.co/fJedSjQw6K」https://twitter.com/out_dates/status/1604407907893661697
Music For Isolationさん「. NEW RELEASE . ✼--┈┈┈┈--✼--┈┈┈┈--✼ On Christmas Day It Happened So ~ Special Edition ~ ✼--┈┈┈┈--✼--┈┈┈┈--✼ LISTEN NOW https://t.co/haOxNXoir3 #BandcampFriday」https://twitter.com/Music4Isolation/status/1588425814642655232
坪本伸作 arrival artさん「そうなると面白いですね!」https://twitter.com/tsubo3shinsaku3/status/1615672810080473088
坪本伸作 arrival artさん「千鳥ノブにそっくりすぎてここの部分何回もリピート出来る気持ちよさがある 昔対バンしたことあったなーとかしみじみ。。 #石崎ひゅーい #千鳥ノブ https://t.co/gxSAD4Uhti」https://twitter.com/tsubo3shinsaku3/status/1615719967546298369
杉本善徳さん「スタジオ用のコンテッサくん届いた。 自宅とは色違い。 https://t.co/LeItZFluJ6」https://twitter.com/ys1126/status/1616011517434155008
坪本伸作 arrival artさん「注文したギターの弦が届かねー、、、」https://twitter.com/tsubo3shinsaku3/status/1616062890976636930
eisukeさん「アーカイブ期間中、是非ご視聴ください💁‍♂️👍」https://twitter.com/eisuke_gp/status/1615665300422397952
ヴィジュアル博士のる@監修オムニバスCD2種発売中さん「【月光/ノベルティ】 名古屋発の新バンド、ノベルティの初音源。 荘厳さを持つ楽曲で、クラシックの名曲であるピアノ・ソナタ第14番「月光」の引用を随所で効果的に使用することにより、バンドサウンドの重厚感と悲哀感に満ちたエネルギーを融合させ見せてくれる。バンドの方向性も楽しみになる一曲。 https://t.co/36nCTEINC7」https://twitter.com/vr_noru/status/1615668028892647424
魚住 英里奈(独唱)さん「明日から名古屋京都大阪公演。 人生で一番でかいニキビができた………」https://twitter.com/erina_chas/status/1615670962099482624
nao 首振りDollsさん「アイリフドーパがほんとにかっこよかったのであれからよく聴いてる。 同世代のバンドはどんどん居なくなってしまったけど、生き抜いてるバンドはやっぱり強いよな。 ギラギラも経験値もいいバランスで持ってて刺激が強い。 衝撃的な出会いでした。」https://twitter.com/kubihuri_nao/status/1615675600148254725
RYUICHI KAWAMURA INFOさん「【Home#26 “Complete Album Ⅱ〜Fantasia〜” 公演日変更のお知らせ】 2/9(木)に開催を予定しておりました配信公演は諸般の事情により公演日を変更させていただきます。 【振替配信日程】 2023年2月9日(木) → 2023年2月14日(火) https://t.co/roYG0TGYlZ」https://twitter.com/RYUICHIofficial/status/1615676061584592897
横山企画室さん「今日は濃密なH.U.Gスペシャルデーでした♪ この日の成果をお楽しみに^^/」https://twitter.com/yokodile01/status/1615681525533794304
横山企画室さん「元気に素敵な歳を経て下さい🎂 そうそう! お祝いに3/24のチケットヨロシクお願いします^^b」https://twitter.com/yokodile01/status/1615681934348386307
こもだまり|昭和精吾事務所さん「「あなたが地球〜」で共演した為永祐輔さん所属の劇団文化座 『#炎の人』へ。創作者同士の共感からか三好十郎がゴッホの半生に寄り添うように描いた3時間。俳優が色とりどりで飽きさせない。悲劇的な展開だがゴッホ役を筆頭に陽の声で会話していて見やすい。音楽はManhattan96でご一緒した高崎真介氏。 https://t.co/O9om4aHUfJ」https://twitter.com/mari_air/status/1615684913046630401
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yjgmhrmht-wrks-gen · 5 years ago
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短い評
2020/06/21 転々載ですが、多少書き直しました。この稿については新たな作家さんの追加はしなかったので、140字以内のほうにのみ載っているかたもいらっしゃいます。 //////////
2018/07/31 ブログからの転載です。末尾に追記があります。
わたしの好きな漫画家のかたがた(2017-08-15時点)。 推薦文(感想)は、同年代の方に語りかけるつもりで書きました。
【順不同・敬称略】 長谷川町子、水木しげる、藤子・F・不二夫、 萩尾望都、諸星大二郎、高橋留美子、 五十嵐大介、冨樫義博、佐々木倫子、 今市子、杉浦日向子、尼子騒兵衛、 水沢めぐみ、谷川史子、安倍夜郎、 真造圭伍、高尾滋、羅川真里茂、 望月花梨、津山ちなみ、九井諒子、などなど。
◇長谷川町子 代表作は、言わずと知れた『サザエさん』。 小さい頃、家に姉妹社(長谷川先生ご姉妹が作られた会社)の原作がたくさん揃っていて、よく読んでいました。総じて表情や動き、そして勿論オチも実に秀逸です。人をよく見ているんだなぁ、と感じる。初期、中期、後期で、画も作風も変遷していくのがまた面白い。新聞漫画だけに、時代・世相を映した話題も興味深いです。
◇水木しげる 『ゲゲゲの鬼太郎』が一番有名かな。 絵がうまい!!! 本当に。妖怪漫画を描かせたら、やはり、この方の右に出る人物はなかなか出ないのではないかなぁ。鬼太郎シリーズも、シリーズによって鬼太郎の性質が違ったりしておもしろい。自由な時代��なぁ。いいなぁ。先生のものの見方、人生観とでもいうのか、強いメッセージを全作品を通して感じます。戦争の悲惨を描いたものも出版されています。
◇藤子・F・不二夫 『ドラえもん』! 原作は、ときに、登場人物のものの言い方が辛ラツだと見る向きもあるようですが、わたしはとくにそうは感じません。漫画ならではの、親しみ深くジョークを交えた物言いだと思って読んでいます。時代もあるかもね。ともかく面白い。涙が出ることも。大長編ドラえもんは、途中まで藤子先生ご本人が描かれています。その後は、たぶん没後にアシスタントさんたちが描かれたものかな。子ども向け漫画だけを描いていらしたわけではないようですが、わたしはやっぱりドラえもんが一番好き。
◇萩尾望都 代表作はたくさん。 出会いは『ポーの一族』でした。美しい世界に陶酔したね……。『トーマの心臓』、『11人いる!』、『スター・レッド』などなど、文庫になっているものは殆ど持っている、筈。SF、日常、ファンタジックなものまで、心揺さぶる世界を楽しませてくれます。いつも全力で、真摯に打ち込んでいらっしゃるのだろうと感じます。最近、『ポーの一族』の続編がそりゃもう何と40年ぶりに刊行されて、大歓喜。この続きも出そうだから、楽しみにしています。
◇諸星大二郎 代表作、たくさん。 本当、ほぼ何を読んでも面白い。出会いは小学館の『諸星大二郎特選集』シリーズです。4集まで出ているかな。『西遊妖猿伝』も面白いし、『妖怪ハンター』シリーズも面白いし。他にも。今は、『BOX』という箱にまつわるお話を描かれていて、新刊が待ち遠しい。専ら、不可思議なものを描かれる方です。考えさせられ、ものの見方が変わりました。
◇高橋留美子 代表作、たくさん。 『らんま1/2』が、新装版で出ていて集めています。可愛い、面白い、そしてメリハリがあるというか……、落とすところは落とすし、〆るところは〆るという感じが気持ちいい。テンポも軽快で、笑わせてくれるし、泣かせてくれる。他にもほしい作品あるんだよな~~。『境界のRINNE』も集めています。愛情深いかたなのだろうかと想像しています。
◇五十嵐大介 『海獣の子供』は完結している。 絵にまず引き込まれます。そして、作者の方の世界観の水深と奥ゆきの広さ。それに尽きる。熱を出したときに、ねどこで一気読みしました。光は光って見えるし、水は濡れて見える。音が聞こえる。紙面に描かれていないものを感じる。それは筆致の為もあるのだけれど、何かがこう……、入っていて。インクだけじゃなくて。今は『ディザインズ』が連載されているようです。わたしはコミックス派。これも面白い……!!
◇冨樫義博 『幽☆遊☆白書』、『HUNTER×HUNTER』 幽☆遊☆~ のほうは、原作を読んだことがなく、登場人物を一部知っているだけだけれど、読んだらとても面白いだろうな~~~、すっげーーー面白いだろうな!!! で、HUNTER~ は、集めていて、いやー、うんうん、面白い。この先生、知性派なのは言を俟たないとして、凝り性なのだろうなぁ……。ところで、わたしは何年も、何かしらについて明確な恐怖を感じた記憶がありませんでした。が、HUNTER~ の作中に、とあるキャラクターが登場した時、その底知れなさにゾッとなり、恐ろしくて先を読み進める手を止めてしまいました(続きが気になる気持ちとやじろべえでしたが、暫くしておぞ気が収まってからドキドキしながらもバッチリ読みました。とりあえず意外と可愛いキャラでした)。ナで始まるキャラクターなので、ぜひ探してみてください。こわいぞ!
◇佐々木倫子 『動物のお医者さん』など。 何作か持っていますが、楽しく明るく読めるのは『動物のお医者さん』! 登場人物が個性的で、動物もオモシロイ、可愛い。いつの間にかでてくる皆んなのことが大好きになっています。テンポがくせになる。ほのぼのする。
◇今市子 『百鬼夜行抄』など。 『百鬼夜行抄』は、夜に読むのがオツ。人間のおそろしさ、そしておそろしさ、アンドおそろしさ、それから未熟ないとけなさ、それゆえのかわいらしさ、愛おしさなどに思いを馳せるきっかけになります。妖魔が出てきますが、それも含めて人間の心を描いた群像劇という感じです。カラー絵の美しさは必見。ほかにも、ファンタジーものや、愛鳥との日々、BL等も描いていらっしゃいます。どれも面白い。それらのすべて詰まった短編集『懐かしい花の思い出』もおすすめ。
◇杉浦日向子 『百物語』など。 若くして亡くなられたのが、何とも、惜しい。江戸風俗の研究家としても知られているそうです。NHK「お江戸でござる」という番組で、ご本人をご覧になった方もいらっしゃるのでは。『百物語』は文字の通り、怪談や奇談を、ひとつひとつと描いてゆく形式の漫画です。絵は美しいし、内容も驚くほど面白いから、現代のわれわれには、ノスタルジックとも、いっそエキゾチック(!)とも思えるくらいの濃厚な江戸をご堪能あれ。きっと、一気に最後まで読んでしまうよ。海外のかたにもおすすめしたい逸品。
◇尼子騒兵衛 『落第忍者乱太郎』 アニメ「忍たま乱太郎」から入って、ごぞんじの方もいらっしゃろう。時代考証をシッカリとしつつ、ギャグ、冗談を織り交ぜて、小さいお友達にも、大きいお友達にも人気の漫画です。要するに笑って泣いて、お勉強にもなる。昔からある「漫画調」の絵だけれど、登場人物が大層かっこよく見えること必至。小さい頃は、朝日小学生新聞で連載されているのを読んでいました。
◇水沢めぐみ 代表作は色々。 『チャイム』だとか、きょうだいと読んでいた世代なんです~~。姉の買ってくる「りぼん」を読んでいました。でも、やはりここは『姫ちゃんのリボン』ですね。絵が可愛い~~、そして話も可愛い! 元気いっぱいの登場人物たちに元気を分けて貰えます。
◇谷川史子 代表作はたくさん。 今は、初期作品は文庫版のほうが手に入りやすいので、『きみのことすきなんだ(傑作選)』、『きもち満月/くじら日和(長編集)』、『君と僕の街で(オムニバス集)』あたりから是非。絵がとても可愛い。そして、お話も切なかったり可愛かったり、これぞ王道少女漫画! という感じです。今は登場人物の世代が大人にシフトしてきている模様。絵が少し華やかになって、相変わらずかわいい。あ、あと、『告白物語おおむね全部』もおすすめです! 単行本のあとがき(告白物語)を集めたものです。
◇安倍夜郎 『深夜食堂』など。 食堂だけに、食べ物にまつわる人間模様を描いたお話です。えがかれている食べ物がおいしそう! 登場人物の面々(常連のお客さんなど)と次第に、自分も顔見知りになっているような気持ちになります。人情話とでもいうのかな。絵もカドがないというか、にくめない表情がうまい。『生まれたときから下手くそ』という、作者さんの幼少からの身の回りのこまごまを描かれた作品もおすすめ。
◇真造圭伍 『ぼくらのフンカ祭』など。 こんな友達ほしかった!
◇高尾滋 代表作はいろいろ。 初期作品『人形芝居』の頃からのファンです。読み易いおすすめは『ディアマイン』という作品。絵が可愛いのなんのって。主人公の少女に好感が持てます。ところで作者さんのカラー絵は、日を増すごとに見事になっていくなぁ……。
◇羅川真里茂 初期の代表作は『赤ちゃんと僕』。 笑いと感動とほのぼのと、ぎゅっと詰まったお買い得品。登場人物のひとりひとりが頑張って生きていて、時にきれいごとだけでは終わらないけど、でも最後はにこっと笑える。ほっとする。そんな仕上がりの作品群です。シリアスな場面もあるけれど、全体的に笑えるところが多い……、人間、泣いてばかりじゃ暮らせないなと思えてきます。作者さんはきっと、観察の得意な方なんだろうなぁ。
◇望月花梨 どれも同じくらい代表作。 『コナコナチョウチョウ』、『チョコレートダイアリイ』を読んだ時の衝撃。何だか変な、絵の具を洗った濁りミズのような、何とも言えぬ――。でも、ぐいぐいと惹き込まれて、最後まで読んでしまうのです。当時は腑に落ちず、ざりっとしたようなどろっとしたような触感を持て余していましたが、後で読むと、過敏なほどの思春期の活写だなと思った。作品は次第にまろやかになってゆきます。全作品を集めたいなぁ。『鍵』もよかった。
◇津山ちなみ 『HIGH SCORE』 ギャグ漫画家さんです。内容がブットビで、不謹慎! とお怒りになる方もあるのではと思いますが、しっかり読むと、筋が通っていて、作者さんはとても平衡感覚(比喩です)の優れた方なのだなとつくづく伝わってきます。オチで、はぁ~~~、なぁる、してやられたぜっ! と思うこと多々。中学生の頃から20年以上も『HIGH SCORE』を描いていらっしゃるという、天才でもあられる。そして、その試行錯誤の年月こそが今の面白さに繋がっています。作中漫画の『HIGE SCORE』もスンゲェ面白い。
◇九井諒子 『ダンジョン飯』 今まさに人気を博している漫画。絵はしっかりと骨肉を感じさせます。苛烈に過ぎる筆致でなく、淡々とした絵なのですが、お話は中々に凄い。違う人がおなじ筋で描いたら、また全くことなるものになりそうです。今まで(~H29/08/15。コミックス派)のところ、シリアスになりすぎず、いつも理性を欠かず、笑いを交えてお話が進行します。こういう世界で、こういう人間のふるまいって、こうかもしれない……、と、思わせてくれます。ファンタジーのそれらしさの演出や話の組み方、そして豆知識に至るまで、知的なかたなんだなと察せられます。「ダンジョン飯」の前に、3作、短編集も出版されています(『竜の学校は山の上』、『竜のかわいい七つの子』、『ひきだしにテラリウム』)。わたしはひきだし~ から入ったファンです。こちら3作もとても面白いのでお勧め。
現在好きな漫画家さんは、大まかにこのくらいです。 作中の内容には敢えてできるだけ触れていません。 気になる方がいらしたら、検索してお買い上げになってみてくださいね!
////////// 当時、書店に勤めており、新刊や色々な本の情報が入ってきていました。今では本屋が周りにないため、疎くなってしまいました。
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mazotive · 6 years ago
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Sekiroの感想ツイート
SEKIRO: SHADOWS DIE TWICEの感想妄想ツイートまとめ
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古いやつから
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Dec 12 オブジェクト壊せないゲームばかりしているので破壊の限りを尽くせることに戸惑いを隠せない.......................
Dec 12 竜咳のことでエ”ェエェ”となった後にしなずハンベーちゃんに会ったのでハンベーちゃん好き好きになった(いくら戦っても死なないため)
Dec 12「ここで降りて即E押せばこの直下の石垣の出っぱりにも掴まれるのでは」→死 ※ポータルガンじゃねんだぞ💢
Dec 12おおかみちゃん思ったより声が渋くない 40後半か50代だと思っていたが30代のイメージになった
Dec 12吸引して歩き回る狼ちゃん、ルンバ
Dec 12おおかみちゃんロクなもの食べてなさそうなのにホッペもちもちで可愛いナァ……
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Dec 12後戻りできないかと思ってたじゃん…… ※落ちた部分踏めないと思っていた
Dec 13竜咳ばらまきおじさんになっちゃう……… ※こんな序盤でも途方に暮れるほど死んでいるため
Dec 13火矢撃ってくるやつに向かってジグザグに走って突進していくのメチャクチャ頭悪い忍者やってるな感あるけど疾走感だけは好き
Dec 13KatanazeroのテンションでSekiroをやっているので陶石投げる向きがメチャクチャすぎて笑ってしまう ※逆にSekiroやっててK0やったことない人はゼロの投げが的確すぎて驚くと思うので是非やってくれよな http://katanazero.com
Dec 13ダッシュじゃなくて普通に歩いてるだけでも物をとっ散らかす狼、忍びとしての心が足りない
Dec 13Sekiro、斬った人の首や手足が飛ばないので良心的 ※Katanazeroや無限の住人を見ているとまあそう思う
Dec 13飛び降りニンサツで狼の背中ともんどり打ってる敵の足と飛び散る血だけが映る構図、死ぬほど好き ※これね↓
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Dec 13ニンサツの時だけ一歩退いてくれる敵の皆様には感謝しかない
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Dec 13これは何故か銀色になった狼 ※油
Dec 13乱戦中にスクショボタン押しまくってゲーミング戦場カメラマンになっていこうな
Dec 13Sekiroの死亡画面を「いや…これじゃうまくいかない」に差し替えるMod
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Dec 13勝ち目ZEROじゃん(※クソコラ
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Dec 13? ※せっ��く入れ替えたので
Dec 13死亡画面の「そのまま死ぬ」の文言、ちょっとじわじわきてしまうんだよな そのまま死ぬって何だよ…wと思いつつ今回生しても無駄だしそのまま死んどくか…つって死ぬ
Dec 13赤いおサムライ戦でサムライが去ってから回生しようかなとか思っていたら近くのバリケードに引っかかって数秒停滞し蹴飛ばして帰るタイミングで時間切れになって死んだ
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Dec 14下のコマやる気力が無くなったので死
Dec 15狼ちゃん間近で見てみると人殺しとは無縁のような顔してるな……… ※パッケージ画が一番かっこよい顔してるよね
Dec 15侍というと世間では甲冑と兜を身に着け馬にまたがるそれのことを言うのかもしれないけど一部界隈での侍はそれっぽい和服を纏って貧相な暮らしと適度な剣戟を行う奴の事を指す ※創作混じりの話
Dec 15ヒョウタンの中身ないのに飲もうとすると一応振るアクションあるの可愛いな
Dec 15人殺しを目撃しているのに止めようとしない割には仏に向かって祈ってる間は容赦なく襲ってくる葦名の兵、常識がない
Dec 15やっとあの蛇の谷の前にいる赤い将軍さんたおした()序盤でこれだと先が思いやられるな…
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Dec 16そこそこ嬉しい重さ
Dec 16そこそこ嬉しい重さ、開けてみたらほんとにそこそこ嬉しい額なので笑う(死ぬので)
Dec 16出会って一秒で竜咳
Dec 16赤い将軍さん倒した後に供養衆の存在を見つけたんですけど将軍でしこたま死んでいるので供養衆出会って1死で竜咳になった すまぬ
Dec 16この勢いで出会った敵も全員竜咳におなり
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Dec 16いっけな〜い!忍殺忍殺!(ここで曲がり角でぶつかるはずの人を殺す)
Dec 16江戸時代あたりのところ(頭の悪い時代指定)、医療がポンカスだから不死キャラを作る時に深い理由をつけなくても大丈夫っていうのがいいよね ※創作混じりの話
Dec 16隻狼のことガチリアルなステルスゲーだと思っていたので敵から距離3mのところで派手に物音立てても気付かれないとか陶石ブチ当てても赤マークにすらならないとかいう部分でいちいち笑ってしまう
Dec 16狼ちゃんもしかして子供の時から同じ服着てる感じか かわいいな
Dec 17狼ちゃんわりとヒモぐる巻きしとけばいっか!wみたいな部分が多くて安心した(は?) テクノロジの少ない時代に感謝 ※冒頭の絵を描いてる時
Dec 17MZさんの葦名弦一郎10連ガチャ [N]  はずれ [N]  はずれ [N]  はずれ [N]  はずれ [N]  はずれ [N]  はずれ [N]  はずれ [N]  はずれ [N]  はずれ [N]  はずれ #弦一郎ガチャ #shindanmaker https://shindanmaker.com/891178 ???
Dec 17なんか普通に絵や攻略を流し見するだけでも思わぬネタバレを食らいそうなので控えねばならぬ ※3回くらい食らった
Dec 17e? 御子ちゃん男の子だったんですか????
Dec 17九郎という名前はなんか二次創作で知ったのだけど「女の子として生まれたけど跡継ぎとかそういう問題で男として育てられた(ので九郎という名前になった」みたいなもんかと思っていた‥‥
Dec 17なんかの拍子で御子ちゃんが大衆温泉に行くことになって狼も一緒に来てと言うのに対して「(女湯に入るなど…)」とか躊躇ってる性別勘違い狼
Dec 17隻狼くん飯たべる時にモンハンのハンターみたいにガツガツ食うタイプか僧侶みたいに合掌してから無音で食べるタイプか どっちなんだ
Dec 17サムライのキャラはみんな飯どきに奇襲を受けても箸で白刃取りするってマゾティブ条約で定められてるから
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Dec 18殺伐ジャンルの絵で見た目パッとしないなと思ってすぐ血だらけにする癖をやめろ
Dec 18めちゃくちゃにリンチされたか何かした後に狼くんの顔みたら鼻血めちゃくちゃに流してて鼻血クラスタじゃない僕でもちょっとグッと来てしまったよね 偶然血しぶきの跡がそこにあっただけかもしれないけど
Dec 18回生
Dec 18飛び降り忍殺したかったのに屋根から遠すぎてただ敵の後ろに着地するだけして大乱闘スマッシュセキローズを始める侍
Dec 20呻き声愛好家なので隻狼で死んでいく人みんなウギャーウワアァーじゃなくて痰吐き人間の予備動作の時の音みたいなきたねえ断末魔でよく分かってるナァとなった
Dec 20木造の家屋で壁に張り付いて敵の動向を窺うというのはそのまま相手の無理やり突発壁貫通刺突攻撃を受けるまでがセットだというのがよ〜くわかる ※Sekiroと無限の住人の話
Dec 21ダクソッソやブラボッボでもあるのか分からないけど隻狼で棒立ちした時に地形に合わせて膝曲げてる���スゲエね……こまかい配慮 ※こういうこと↓
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Dec 21大手門の鼠なんだ思ったより小さいな…って思っていたら首折られて死んだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Dec 21お父さん「この火の手じゃ正面からは入れぬ」僕「ここに隙間があるな(Portal並感」→死
Dec 22攻め力はあっても受け力は無いんですね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(?
Dec 22興味本位でうわばみ太郎くんの前にいる味方のオサムライさん斬ったら復活しなくて泣いた
Dec 23Sekiroほんとおっかねえ敵しか出てこないなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww ※寄鷹衆
Dec 23忍びとしての警戒心が足りないのでドドン!て莫大な視線を浴びてから行動してしまう ※寄鷹衆
Dec 23よくよく見たら狼ちゃん半兵衛くんより背低いし一体この世界の身長平均っていくつなんだ ※ひょろひょろの幼少期もあって栄養失調でデカくなれなくなったのでは
Dec 23冥助9%くらいしかないのに15%くらいあった時より冥助受けてる
Dec 23隻狼、理不尽なくらい唐突に死ぬし死んだ地点までリトライするのにやや手間がかかるけど俺上手くなったな感だけはすごく感じる
Dec 23葦名城、適当にFを連打していればどこかに縄引っかかるだろと思っているのでシノビの素質がない
Dec 23お願い死なないで狼!あんたが今ここで死んだら義父上や御子様との約束はどうなっちゃうの?回生はまだ残ってる、ここを切り抜ければ御子様を取り戻せるんだから!次回
Dec 23今朝に現代版Sekiroみたいな夢をちょっと見たり…した…
Dec 23ほぼ一人称視点だった気もするけど刀じゃなくてダガーで誰か忍殺しててそのまま人混みのなかを抜けてどっかに行くんだけど、なんか疑われ体質なとこは残っていて病気で倒れた少年の側にいただけで「お前が殺した」扱いされて追いかけられるみたいな でもこれ忍具もなかったしただの犯罪の夢……
Dec 23江戸時代とかの世界線だと髪ボッサボサというか無造作に扱いすぎてるの人間が跋扈しているので最高 現代じゃ中々そうは行かない ※創作寄りの話
Dec 23体格や顔つきからして身長が高そうに見えて実はそこまで高くない男性主人公というキャラクタージャンル、かなり好きかもしれない
Dec 232019年はサムライを摂取しすぎた年だったなと思う ※これと∞住人と妖奇士と刀零
Dec 24echo "葦名弦一郎「$(ojichat 忍び)」" # シェル芸
シェル芸bot@minyoruminyon·Dec 24葦名弦一郎「忍びちゃん、愛しいなぁもうこんなに可愛くなっちゃったら女優さんみたいでオイラ困っちゃウヨ(^▽^;)(^_^;」
Dec 24@abnormalTL 捕食のシーンが好きなのでSekir0で命の呼吸取った時なんか吸血鬼みたいでGood‥‥‥と思ってしまう
Dec 24@abnormalTL 実際ニンサツが息継ぎだって書いてあるし束の間の休息という意味なら実質捕食では(早合点)
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Dec 24@abnormalTL この刺し方してる時が一番顔と傷口が近いので最高(図説をするな)
Dec 24Sekiro終わったらポケモン剣盾買おうかな!^とか思ってたのに思ったより中身の物量が多すぎてアシナ地方のワイルドエリアから永遠に抜け出せない
Dec 24ポケモンセンター(鬼仏)
Dec 24ポケモンもお命ゲットするために望んで草むらに入っていくわけだしSekiroだってお命ゲット()するために望んで草むらに入っていくんだし実質一緒
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Dec 24隻狼くん葦笛の吹き方忘れてたらどうしてたんだろというクソ4コマ
Dec 24誠に申し訳ございませぬ……つって土下座するけど「狼という名で本当に良かった、これも何かの運命だ」って屈託のない笑顔を向けられてはっぴゐゑんど
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Dec 26犬
Dec 26東 彰一とかいう人のせいで「ストイックそうな顔をしているが金を見ると内心ウキウキしてる」人間が好きになる病にかかった
Dec 26PSO2でブレイバー狼を作りサポパに九郎様を作ることでオラクルを葦名にすることができる 失敬にあたるので手伝いはさせない
Dec 26思ったんだけどイントロのイヌチャンが10代だとすると稽古というかフクロウ様のもとで過ごしたの30〜40年もあるってこと? 成長過程が見たいよ 飛躍は禁物ですよ
Dec 26反抗というカタチの反抗期は来ない(フクロウ様がめちゃくちゃ強いので)けど今日は稽古する気が起きないな程度の反抗だったら1%くらいあるのでは ないか ないな ないわ
Dec 26顔が良くてアクションも格好いいのに事あるごとに無様に死ぬ40〜50代の主人公が10代だった頃の姿をイントロで見させられるゲームなんてSekiroが初めてだよ
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kachoushi · 5 years ago
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各地句会報
花鳥誌令和2年5月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
令和2年2月1日 零の会
坊城俊樹選 特選句
街に立つ師は冬帝の黒纏ひ 光子 福豆売る絶対秘仏背に負ひ 千種 黒マスクをんなおそろし御徒町 いづみ 男坂即かず離れず雪女郎 佑天 きさらぎのくづし文字かな恋みくじ 光子 麗人と佳人出くはす梅の下 千種 幾重にも幾重にも絵馬ぬくくあり 季凜 天神下の鮮魚よろづ屋空つ風 梓渕 不忍のボートを漕ぐや落第子 順子 寒雀今日はめでたき貌をして 久
岡田順子選 特選句
永久の灯をもつ瓦斯燈も春を待つ 俊樹 福豆売る絶対秘仏背に負ひ 千種 絵馬に書く文字の細きへ冬の蜂 和子 白梅を背負へば空の青さ知る 久 きさらぎのくづし文字かな恋みくじ 光子 射的屋は夜まで閑で梅の宮 梓渕 飴玉を頰張りしまま春を待つ 久 街に立つ師は冬帝の黒纏ひ 光子 如月のこのひかりごと攫はれむ 美紀 ピアス挿し吾妹の梅に遊びゐる いづみ 古井戸を守り湯島の冬囲ひ はるか
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月5日 立待花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
風折れの水仙畑の先に岬 世詩明 水仙の花盗人を見て逃がす 同 余所者も馳せ参じたるどんど焼 同 寒雷の激しき音よ玻璃を打つ 誠 寒明の祝杯とてや大吟醸 輝一
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月6日 うづら三日の月句会
坊城俊樹選 特選句
華やぎの面影少し枯菊に 喜代子 春風やひもとく本と束ね髪 さとみ おうおうと神を呼び込みどんど燃ゆ 都 物言はぬ星のまたたき寒の明け 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月6日 さゞれ会
北風すさぶ神の島へと打つ怒濤 かづを 潮騒を春立つ音と聞いてをり 同 水仙の香と荒磯の香競ひをり 同 灯籠にあかり灯され冬の宿 啓子 山頂に横一列に冬の雲 同 鬼やらひ芸妓乗り出す成田山 笑 三句碑へ怒濤となりて春の海 同 丹の橋にくだける怒濤寒の海 清女
令和2年2月6日 さゞれ会
なんとなく聞く待春の鳥語かな かづを 坪庭の苔青々と春を待つ 清女
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月7日 鳥取花鳥会
岡田順子選 特選句
出雲より春の使者とも旅神楽 益恵 走り根の猛り濡らして寒の雨 都 雪降つて少し軽めになりし雲 史子 春愁や泪の乾くまでのこと 幹也 鬼は外木霊となりし遠明り 宇太郎 梅盛り炭屋に宿を取りし頃 悦子 凩や薬缶の笛を織り交ぜて 幸子 鴨引きて瀞長々とがらんどう 益恵 星冴ゆる電飾解かれゐし枝に 都 畦を焼く匂ひは朝の教室へ 宇太郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月8日 枡形句会
栗林圭魚選 特選句
句碑裏に昼の日差しや蕗の薹 亜栄子 紅椿大樹に日差し別れ道 文英 瀬の音のとみに弾みて猫柳 三無 水仙の白に翳ありうすみどり ゆう子 摘む指に匂ひ絡めて蕗の薹 三無 迂回して緋寒桜の峠道 教子 一瞬に緑走りし和布かな 三無 感触を確めたくて猫柳 教子 流れ沿ひ会話訥訥猫柳 ゆう子 まんさくの黄が野を覚ます風のいろ 美枝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月10日 武生花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
冬の夜は石を枕のヤコブかな 利榮 待つ春は道草しつつ来るらしき みす枝 奥越の高嶺颪や頰凍つる 一枝 人住まぬままの離れに初暦 昭女 初茶会金塗り椀に虚子の軸 みす枝 どことなくゆとりのもてて日脚伸ぶ 信子 橋脚を濡らして寒の水ぬるむ 世詩明 天空を星の抜けゆく霜の夜 時江 大嚏して線香の灰飛ばす さよ子 春炬燵潜りて跳んで遊ぶ児ら みす枝 バレンタイン義理チョコにして片思ひ 世詩明 七尾線枯れ一色の中を行く 昭女 すぽつすぽつと鳰潜る音 時江 帰宅して窓にはりつく寒北斗 世詩明 鍛冶音の響くばかりや星冴ゆる 時江 寒の水十指絡ませ水を飲む さよ子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月10日 なかみち句会
栗林圭魚選 特選句
天城嶺の残雪映す山の湖 怜 鶯の静寂誘ふ余韻かな 聰 春菊を入れていよいよ箸動く あき子 眺めゐる山々遥か初音かな 史空 咲きそめし白梅一枝句碑に添ひ 迪子 雪残る医院の花壇主亡く 美貴 山道の疲れ忘るる初音かな 史空 うぐひすや門柱細き尼の寺 和魚 初音せり無名戦士の墓に来て 美貴 竹林に一筋の日や雪残る 貴薫
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月11日 萩花鳥句会
はからずも吾娘と豆撒くひと夜かな 祐子 梅林園目白と遊ぶケンケンパ 美恵子 まごころの色のごときや梅白し 吉之 裁かれるいのちに甲乙春寒し 健雄 咲き誇る梅見守りし主なく 明子 光琳の紅白梅図のごとき梅 克弘
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月14日 芦原花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
白梅の一枝二枝の朝日受け 寛子 こけし等の夫婦寄り添ふバレンタイン 依子 早春の対岸をゆく押し車 孝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月14日 さくら花鳥会
岡田順子選 特選句
節分の豆煮てゐるや福の神 実加 山眠る垂水の音の澄んでゆく 政隆 坊守や母の手を取り寺の冬 登美子 薄墨の宛名の滲む寒夜かな 同 身籠りて薄味で食ぶはうれん草 実加 朝空や雀の散らす春の雪 光子 荒れゆくも自生水仙越前に 紀子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月15日 鯖江花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
それぞれを生きそれぞれに木の葉髪 雪 退屈なスコップ並び雪降らず 同 大仏に伍して漢の豆を撒く 一涓 寒月やなべて牛舎の静かなり 同 褪せてなほ威儀を崩さず古代雛 みす枝 春の雪重ねて山を新たにす 信子 沈丁に激しく降りて匂ひ立つ 直子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月16日 伊藤柏翠俳句記念館
坊城俊樹選 特選句
裸木となりおほせたる静けさよ 雪 注連をもて神となしたる大冬木 同 ひそむるはひそむる蒼さ竜の玉 同 衝立は志功の菩薩春灯 同 春宵の星の愛子を探さばや 省吾 春炬燵問はず語りに聞く出自 清女 谷深くして水仙の浜辺まで 紀之 白山の此の美しき雪地獄 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月16日 風月句会
坊城俊樹選 特選句
鬨の声なき城址の遅日かな 炳子 春めくや菩提樹の抱く石仏 眞理子 観音の肌清らかに春の雨 佑天 遠からず近からず置き落椿 秋尚 み仏の足裏くすぐる春の雨 佑天 まくれなゐ椿時々山鴉 炳子 空蒼を梅紅をゆづらざり 千種 春雨に濡れ肌色の陽子墓碑 圭魚 白梅の枝垂れて傘の色いろいろ 同
栗林圭魚選 特選句
しめやかな雨白梅の白の濃く 貴薫 見上げれば万の輝き紅椿 ます江 ぽつてりと塀の上より白椿 佑天 書きかけの反故増えゆけり獺祭 千種 雨に色連らねつ馬酔木咲きはじむ 秋尚 やはらかく雨にほぐるる牡丹の芽 秋尚 春光へ諸手を挙げて母子像 芙佐子 豊饒に咲かせ大樹の玉椿 淸流
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月19日 福井花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
天よりの悲鳴の如き初音聞く 世詩明 蜜柑剥く伊予の祖父似の太き指 千代子 何となく聞く待春の鳥語かな 雪子 春泥を駆け来し犬が膝頭 清女 凍ゆるみ老杉雪を落としけり よしのり 臘梅や新羅の鐘を伝ふ宮 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年2月26日 九州花鳥会 寺まち句会
坊城俊樹選 特選句
地獄より戻り来してふ春夕べ 光子 頰つぺたの体温となる春の雪 愛 戸を鎖して春の闇へと僧祈る 光子 春の夕浅き縁の人とゐる 久美子 石庭の波くねくねと春の夕 千代
岡田順子選 特選句
頰つぺたの体温となる春の雪 愛 釈迦の慈悲広ごる社梅の花 睦子 恋猫のかさぶた落つる夕明り 愛 結界の奥草の芽を啄みぬ 光子 啓蟄や髪を刈り上げホームレス 勝利 夕さりの春の博多は好いとうよ 志津子 六道の闇とき放つ春の鐘 かおり 雛飾る段に灯の入る夕べかな 光子
令和2年2月27日 九州花鳥会 定例句会
坊城俊樹選 特選句
潮の香の堂に絵踏の遠き日々 久美子 栄華の日まなうらに秘め古雛 かおり 信仰の別けても冥き絵踏かな 豊子 右足の形に減りしや板踏絵 志津子 塩壺に塩ある白さ春浅し 成子 海あをし絵踏の罪をかい抱いて かおり 霞野に均し朱鳥の病舎跡 順子 少年の浅き溜息雛まつり 成子 一寸の針の重さや針供養 睦子 草萌ゆるサーカス小屋の杭打てば 順子
岡田順子選 特選句
三椏の咲くや櫛田の鬼の数 由紀子 シスターの授業絵踏のこともあり 愛 蝶生まる兜太句碑ある爆心地 寿美香 島人の数ほど絵踏物語 豊子 輪郭の緑青乾ぶ踏絵かな 愛 春愁の目覚めに浅き夢つづき 光子 海あをし絵踏の罪をかい抱いて かおり 淋しらに灯るサーカス春浅し 久美子 遊女踏む赤き椿の踏絵かな 喜和 絵を踏んで転ぶ転ぶと吐く木霊 さえこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年1月8日 立待花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
抽斗の寒紅をさす夫の留守 世詩明 初詣巫女は緋袴束ね髪 同 巻き癖の直らぬままに初暦 清女 セメントを詰めし背骨に年新た 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年1月16日 芦原花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
寒鮒漁網引く漁師のしたり顔 けんじ 三ケ日校門かたく閉ざされし 孝子 台所を浄めて除夜の鐘遠く 同 小屋はねて暗き野道の雪女郎 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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konyokoudou-sk · 6 years ago
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C97 咲サークルおしながき
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コミケが近くなってきたのでいつものこれを載せておきます 価格などはあくまで予定価格です 特に記載がなければ全年齢本です
一日目(土曜日) 西34ホール
西K01a pm02:00 若鶏にこみ
新刊 point 22P・宮永照と本の話 300円
既刊 sumireteruR18  R-18・56P・菫照合同本? 500円 (サークルpichim02からの委託) gunumind R-18・28P・照菫レズセックス本 400円
今回は一人での運営なのでスケブはお断りとのことです。 当日の状況次第でお声かけください。
西K01b 池田スピリット えお
新刊 智葉さんvs親切な人 B5・16P・菫照智葉本 200円
既刊 鏡でも気付かないこと B5・24P・C90淡照菫本 300円 きっかけ 32P・B5・照菫本 500円 恋にわずらう B5・36P・菫照本 500円
西K02a みずときかたくりこ 超々よしてる。
新刊 明日、世界が滅びますように 菫尭深本 300円
既刊 渋谷尭深ちゃんと弘世菫様がデートする本。 尭深菫本 100円
西K02b 華奢帝国 鳥飼
新刊 大星淡が亦野誠子に。 淡誠本 300円
既刊 宮永咲in白糸台 白糸台咲本 400円
西K03a はてななぞなぞアイランド にゃおP
新刊 今日の白糸台 ~菫のクセを見つけ隊~  菫照本 300円 今日までのなんちゃら まとめ本 1000円
既刊 今日の白糸台 Po!(ぽ) 白糸台ゆるゆるギャグ本 300円 今日の白糸台 照菫 春のパンケーキ祭り 白糸台ゆるふわギャグ・8P 100円 今日の白糸台 菫さんお大事に 20P・白糸台本 300円 今日の白糸台 白糸台本 400円
西K03b フルミナンス おろ
新刊 あちが☆マギカ B5・28P・魔法少女咲本 500円 とらのあな メロンブックス
既刊 爆乳淡ちゃんを守護る本 B5・24P・爆乳大星淡本 400円 プロ麻雀せっくす R-18・はやしこ3P本 400円
西K04a CLOSER VRI
新刊 宮永照と照魔の鏡 フルカラー・B5・8P 500円 メロンブックス
既刊 Saki-Atsume vol.1&2 フルカラー・8P・A4・web再録イラスト本・2冊1組 500円 シライトニウム フルカラー・8P・B5・白糸台中心イラスト本 200円 Overture [IF] 32P・B5・C93淡照本 500円
今回の新刊には特典として照魔鏡型ミラーと白糸台高校麻雀部ミラーが付いており、どちらかを選択出来ます。 さらに会場特典としてイラストカードがついてきます。
西K04b 西瓜BABY 湯間戸あきら
新刊 チーム清澄推し(準備号) コピー・B5・清澄本 200円
既刊 おこのみで かじゅ部部キャプ本・B5・30P 300円
グッズ 手描きコースター 300円
今回は新刊の予約特典として令和発表風のイラストプレゼントを行います。 大きさはトレカぐらいで特にリクエストがない場合はこちらでその時の気分で咲キャラを描かせていただきます。
①当日取りにくるお名前(HN可) ②キャラ名(基本一人ですがCP推しアピールがあると二人になるかも) この二つを明記してツイッターのDMにお送りください。
万が一ご予約いただいて、当日本が出せなかった時は特典イラストは差し上げます。その際はお手数ですがサークルスペースまでお越し下さい。
ドタキャン、バックレ、ダメ絶対!
西K05a 水面日和 minamosakana
新刊 宮永家の麻雀から走って逃げろ コピー本・宮永家本 100円
既刊 夏だ!従姉妹、襲来! 宮永姉妹光ちゃん本・コピー本・B5・12P 200円 宮永咲と焼けた自宅 コピー本・16P・B5・宮永家本 200円 車イスに乗った少女合同 B5・112P・SHT2018春みなもちゃん合同 1000円 出張!水面日和2 42P・B5・C93みなもちゃん考察本 300円
西K05b 忍者屋敷 那須了
新刊 咲実写 鑑賞ガイドブック 咲実写解説本 200円
既刊 咲-Saki-ファン13年生がいくはじめての聖地探訪 聖地巡礼本 200円
西K06a エンベロープフィルター kari
新刊 Wonderwall2 有珠山本 200円 (ゲスト:みどり)
既刊 Wonderwall コピー本・28P・有珠山本 300円 (ゲスト:みどり)
西K06b 花咲荘 いいんちょ
既刊 USUZAN DIVISION PROTOTYPE 有珠山本・B5・10P 100円
グッズ アクリルスタンドフィギュア(真屋由暉子・瑞原はやり・宇野沢栞) 各1200円 アクリルキーホルダー(獅子原爽・清水谷竜華・福路美穂子・真屋由暉子・瑞原はやり・宇野沢栞・高鴨穏乃・松実玄・松実宥・花田煌) 各600円 ※獅子原爽のみ500円 B2タペストリー(渡辺琉音×宇野沢栞、原村母娘、真屋由暉子) 各2500円 色紙 各500円
ほかイナイレの本とネプティーヌとシャニマスのグッズあり
西K07a 塩コーラ 鴻
新刊 二人のごほうび コピー本・京キャプ本 無料配布
西K07b ああ、あの牌? はいの
新刊 咲-Saki-舞台探訪 長野県清澄エリア 令和版 清澄聖地巡礼本・オールカラー・A5・24P 300円 (イラスト:がらぐば) 咲-Saki-舞台探訪 長野県伊那&飯田エリア 増補修正版 A5・20P・聖地巡礼本 400円 咲-saki-聖地巡礼 長野県飯田市 聖地巡礼本 300円 (サークルアマテラス星群からの委託)
既刊 実写版 咲-Saki-阿知賀編ロケ地めぐり A5・20P・実写版聖地巡礼本 500円 (イラスト:しそねり) はやりっぷ シノハユ舞台探訪 シノハユ聖地巡礼本・オールカラー・A5・32P 500円 (イラスト:しそねり、がらぐば) 咲-Saki-WALKER#W 改訂版 都内聖地巡礼本・オールカラー・A5・28P 500円 (イラスト:がらぐば) 咲-saki-聖地巡礼 IN岐阜県中津川市 聖地巡礼本 (サークルアマテラス星群からの委託) 咲-saki-ビューイング4 咲-saki-宮守編 宮守聖地巡礼本 (サークルアマテラス星群からの委託)
グッズ かじゅモモグッズセット 2000円 (サークル桃乃鶴からの委託)
西K08a フルスクラッチシンジケート ナガレ&ローファット
新刊 フラグメンツ・オレンジ&マゼンタ R-18・セラ洋コメディえっち小説本 1000円 (イラスト:ローファット)
既刊 「京ちゃん」と「咲」ファーストシーズン R-18・京咲青春小説本・124P 1500円 (イラスト:江戸川nao) 「京ちゃん」と「私」~10年後の私たち~ R-18・京咲小説本・28P 600円
グッズ 絹ちゃんアクキー(寝坊け絹ちゃん、誘惑絹ちゃん) 各600円 (デザイン:ローファット)
西K08b I.G.Project 沙夜,Waste戊
新刊 Scarlet Rose R-18・B5・フルカラー・40P・はじとー本 600円 メロンブックス とらのあな (原作:風兒)
既刊 一巡先の思い 24P・B5・怜竜本 400円 友情の黙契 74P・B5・穏憧和本 700円
グッズ 国広一タペストリー 2000円
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西K09a 星空ステップ トリスタ
新刊 姉帯さんの歪んだ性事情 R-18・B5・28P・姉帯豊音本 500円 メロンブックス
既刊 甘え下手な小瀬川さん R-18・B5・28P・小瀬川白望本 500円 みやもりフレンズ 宮守4コマギャグ本 500円 白望と×××したい豊音ちゃん B5・28P・豊白本 500円 miyamori summer vacation 32P・B5・豊シロメイン宮守本 500円 SUPER☆HIMEMATSU☆TIME! 姫松4コマ本 500円 みやもりmaker4! C93宮守女子本 400円 みやもりmaker3! 宮守女子本 400円 みやもりmaker2! 宮守女子本 400円 みやもりmaker! 宮守女子本 400円
グッズ 豊音・怜アクリルキーホルダー 各600円
西K09b はぐれわらびもち トムQ
新刊 ヘイ、ゴールデンルーキー B5・28P・しずあこ本 400円 (ゲスト:tyωさん)
既刊 四月になれば彼女(ら)は B5・24P・阿知賀本 400円 Paradise Lost ―宥と菫の秘密の松実館― 28P・宥菫本 400円
グッズ しずあこアクリルキーホルダー 600円
西K10a 脇役にじゅういち 永月涼
新刊 只今変身中 コピー本・霞巴コメディ本 100円
既刊 お御髪の事  24P・コピー本・永水本 100円 とある日の東京散歩 コピー本・24P・姫様巴ほのぼの本 100円 尊敬 コピー本・28P・A5・十曽湧狩宿巴永水女子本 100円 変わりゆくこと 32P・A5・C93春巴本 100円
ほかスクスト本あり
西K10b 草食竜 ぬめぬめ
新刊 ハツミックス 薄墨初美本? 500円
西K11a Feeling Time 里村知之
新刊 Cuuuuuuute!!! シノハユほのぼの4コマはや慕本 400円 サンプル
既刊 いちご×ゆきこ 有珠山ほのぼの4コママンガ 200円 #ユキちゃん好きな人RT 有珠山ほのぼの4コママンガ 400円
グッズ はや慕抱き枕カバー 7000円
西K11b アンチヘリックス 化学屋
新刊 ハッピーエンド-the scarlet hypnosis- B5・96P・オフセット 500円
既刊 この街で君と暮らしたい B5・18P・ニワチョコデート本・オフセット 200円 ハッピーエンド-the first film- 32P・B5・C93すこレジェ本 300円
今回の新刊を読む前に以前刊行されていたハッピーエンドを読んでおくと良いです。1と2はpixivで期間限定で公開されてるのでぜひ。the first film the second film
南3ホール
南リ13a 桜高鉄道倶楽部 セカイ
既刊 新道寺までは何マイル?〜北部九州舞台探訪ガイド〜 北部九州聖地巡礼本 神代の国にて〜永水舞台探訪ガイド〜 永水聖地巡礼本 400円
グッズ まいひめちゃんドット絵マイクロファイバークロス
ほかユーフォのグッズもあり
南4ホール
南ホ22a でこぴん いーぴん
新刊 次元間衝撃波なんて知らんぞいやー! A5・32P・実写咲本 200円 イラストで綴る、いーぴん的  実写「咲-Saki-」との3年間  A5・実写咲本 300円
2冊セット購入特典 として『清澄高校麻雀部クリアファイル』がもらえる
三日目(月曜日) 西2ホール
西た20a しじま 奇仙
新刊を出すのは難しいとのこと 書店委託・DL販売を検討しているとのこと
西た20b ミリマリ工房 ミリマリ
新刊 可憐なあの子は生オナホ R-18・鷺森灼エッチ本 500円
開幕から5分~10分ほどは席を外すとのこと
西た21a RADIOSTAR 工藤洋
新刊 石肌会 R-18・B5・石戸霞本 頒価不明 とらのあな メロンブックス
西た21b ひよたま御殿 長瀬ゆたか
新刊 憧ちゃん成長日記 R-18・A4・8P・新子憧本 頒価不明 とらのあな メロンブックス
南3ホール
南ヤ32b ユズドラシルの樹の下で。 湯住彩明
グッズ 小走やえアクリルキーホルダー 500円
ほかオリジナルあり
四日目(火曜日) 西1ホール
西れ28a VISTA オダワラハコネ
新刊 はつがき 江口セーラ 先着でお1人さまにつき1冊
グッズ セーラ干支両面アクスタ2019 1500円 怜ちゃんコスプレクリアファイル 300円 アクリルスタンド(船久保浩子、園城寺怜、清水谷竜華) 各1300円 アクリルスタンド(江口セーラ、愛宕雅枝、二条泉) 各1100円
おまけ本に江口セーラが出る予定
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kurihara-yumeko · 4 years ago
Text
【小説】The day I say good-bye (3/4)【再録】
 (2/4)はこちらから→(https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/647000556094849024/)
「あー、もー、やんなっちゃうよなー」
 河野帆高はシャーペンをノートの上に投げ出しながらそう言って、後ろに大きく伸びをした。
「だいたいさー、宿題とか課題って意味がわからないんだよねー。勉強って自分のためにするもんじゃーん。先生に提出するためじゃないじゃーん。ちゃんと勉強してれば宿題なんて出さなくてもいいじゃーん」
「いや、よくないと思う」
「つーか何この問題集。分厚いくせにわかりにくい問題ばっか載せてさー。勉強すんのは俺らなんだから、問題集くらい選ばせてくれたっていーじゃんね」
「そんなこと言われても……」
 僕の前には一冊の問題集があった。
 夏休みの宿題として課されていたものだ。その大半は解答欄が未だ空白のまま。言うまでもないが、僕のものではない。帆高のものだ。どういう訳か僕は、やつの問題集を解いている。
 その帆高はというと、また別の問題集をさっきまでせっせと解いていた。そっちは先日のテストが終わったら提出するはずだったものだ。毎回、テスト範囲だったページの問題を全て解いて、テスト後に提出するのが決まりなのだ。帆高はかかとを踏み潰して上履きを履いている両足をばたつかせ、子供みたいに駄々をこねている。
「ちゃんと期限までにこつこつやっていればこんなことには……」
「しぬー」
「…………」
 つい三十分前のことだ。��課後、さっさと帰ろうと教室で荷物をまとめていた僕のところに、帆高は解答欄が真っ白なままの問題集を七冊も抱えてやってきた。激しく嫌な予感がしたが、僕は逃げきれずやつに捕らえられてしまった。さすが、毎日バスケに勤しんでいる人間は、同じ昼休みを昼寝で過ごす僕とは俊敏さが違う。
 帆高は夏休みの課題を何ひとつやっていなかった。テスト後に提出する課題も、だ。そのことを教師に叱責され、全ての課題を提出するまで、昼休みのバスケ禁止令と来月の文化祭参加禁止令が出されたのだという。
 それに困った帆高はようやく課題に着手しようと決意したらしいが、僕はそこに巻き込まれたという訳だ。一体どうして僕なのだろうか。そんな帆高だが、この間のテストでは学年三位の成績だというので、教師が激怒するのもわかるような気がする。
「…………どうして、保健室で勉強してるの」
 ベッドを覆うカーテンの隙間から頭の先を覗かせてそう訊いてきたのは、河野ミナモだった。帆高とは同じ屋根の下で暮らすはとこ同士だというが、先程から全くやつの方を見ようとしていない。
 そう、ここは保健室だ。養護教諭は今日も席を外している。並んだベッドで休んでいるのは保健室登校児のミナモだけだ。
「教室は文化祭の準備で忙しくて追い出されてさ。あ、ミナモ、俺にも夏休みの絵、描いてよ。なんでもいいからさ」
 帆高は鞄からひしゃげて折れ曲がった白紙の画用紙を取り出すと、ミナモへ手渡す。ミナモはしばらく黙っていたが、やがて帆高の方を見もしないまま、画用紙をひったくるように取るとカーテンの内側へと消えた。
 帆高が僕の耳元で囁く。
「こないだ、あんたと仲良くなったって話をしたら、少しは俺と向き合ってくれるようになったんだ。ミナモ、あんたのことは結構信頼してるんだな」
 へぇ、そうだったのか。僕がベッドへ目を向けた時、ミナモは既にカーテンを閉め切ってその中に閉じこもってしまっていた。耳を澄ませれば鉛筆を走らせる音が微かに聞こえてくる。
「そう言えば、あんたのクラスは文化祭で何やんのー?」
「なんだったかな……確か、男女逆転メイド・執事喫茶?」
「はー? まじでー?」
 帆高はけらけらと笑った。
「男女逆転ってことは、あんたもメイド服とか着る訳?」
「……そういうことなんじゃない?」
「うひゃー、そりゃ見物だなーっ!」
「あんたのとこは?」
「俺のとこはお化け屋敷」
 それはまた無難なところだな。こいつはお化けの恰好が似合いそうだ、と考えていると、
「そういやさ、クラスで思い出したんだけど、」
 と帆高は言った。
「あんたのとこ、クラスでいじめとかあったりする?」
「さぁ、どうだろ……。僕はよく知らないけど」
 いじめ、と聞いて思い出すのは、あーちゃんのこと、ひーちゃんのこと。
「なんか三組やばいみたいでさー。クラスメイト全員から無視されてる子がいるんだってさ」
「ふうん」
「興味なさそうだなー」
「興味ないなぁ」
 他人の心配をする余裕が、僕にはないのだから仕方ない。
 そうだ、僕はいつだって、自分のことで精いっぱいだった。
「透明人間になったこと、ある?」
 あの最後の冬、あーちゃんはそう僕に尋ねた。
 あーちゃんは部屋の窓から、遠い空を見上げていた。ここじゃないどこかを見つめていた。どこか遠くを、見つめていた。蛍光灯の光が眼鏡のレンズに反射して、その目元は見えなかったけれど、彼はあの時、泣きそうな顔をしていたのかもしれない。
 僕はその時、彼が発した言葉の意味がわからなかった。わかろうともしなかった。その言葉の本当の意味を知ったのは、あーちゃんが死んだ後のことだ。
 僕は考えなかったのだ。声を上げて笑うことも、大きな声で怒ることも、人前で泣くこともなかった、口数の少ない、いつも無表情の、僕の大事な友人が、何を考え、何を思っていたのか、考えようともしなかった。
 透明人間という、あの言葉が、あーちゃんが最後に、僕へ伸ばした手だった。
 あーちゃんの、誰にも理解されない寂しさだった。
「――くん? 鉛筆止まってますよ?」
 名前を呼ばれた気がして、はっとした。
 いけない、やつの前で物思いにふけってしまった。
「ぼーっとして、どした? その問題わかんないなら、飛ばしてもいいよ」
 いつの間にか帆高は問題集を解く作業を再開していた。流れるような筆致で数式が解き明かされていく。さすが、学年三位の優等生だ。問題を解くスピードが僕とは全然違う。
「……この問題集、あんたのなんだけどね」
 僕がそう言うと帆高はまたけらけらと笑ったので、僕は溜め息をついてみせた。
   「最近はどうだい? 少年」
 相談室の椅子にふんぞり返るように腰を降ろし、長い脚を大胆に組んで、日褄先生は僕を見ていた。
「担任の先生に聞いたよ」
 彼女はにやりと笑った。
「少年のクラス、文化祭で男がメイド服を着るんだろう?」
「…………」
 僕は担任の顔を思い浮かべ、どうして一番知られてはいけない人間にこの話をしたのだろうかと呪った。
「少年ももちろん着るんだろ? メイド服」
「…………」
「最近の中学生は面白いこと考えるなぁ。男女逆転メイド・執事喫茶って」
「…………」
「ちゃんとカメラ用意しないとなー」
「…………先生、」
「せんせーって呼ぶなっつってんだろ」
「カウンセリングして下さい」
「なに、なんか話したいことあるの?」
「いや、ないですけど」
「じゃあ、いーじゃん」
「真面目に仕事して下さい」
 そもそも、今日は日褄先生の方から、カウンセリングに来いと呼び出してきたのだ。てっきり何か僕に話したいことがあるのかと思っていたのに、ただの雑談の相手が欲しかっただけなんだろうか。
「昨日は市野谷んち行ってきた」
「そうですか」
「久しぶりに会ったよ、あの子に」
 僕は床を見つめていた目線を、日褄先生に向けた。彼女は真剣な表情をしている。
「……会ったんですか、ひーちゃんに」
 日褄先生のことを嫌い、その名を耳にすることも口にすること嫌い、会うことを拒み続けていた、あのひーちゃんに。
「なーんであの子はあたしを見ると花瓶やら皿やら投げつけてくるのかねぇ」
 不思議だ不思議だ、とちっとも不思議に思っていなそうな声で言う。
「あの子は、変わらないね」
 ありとあらゆるものが破壊され、時が止まったままの部屋で、二度と帰ってくることのない人を待ち続けているひーちゃん。
「あの子はまるで変わらない。小さい子供と同じだよ。自分の玩具を取り上げられてすねて泣いているのと同じだ」
「……ひーちゃんをそういう風に言わないで下さい」
「どうしてあの子をかばうんだい、少年」
「ひーちゃんにとって、あーちゃんは全てだったんですよ。そのあーちゃんが死んだんです。ショックを受けるのは、当然でしょう」
「違うね」
 それは即答だった。ぴしゃりとした声音。
 暖かい空気が遮断されたように。ガラス戸が閉められたように。
 世界が遮断されたかのように。
 世界が否定されたかのように。
「少年はそう思っているのかもしれないが、それは違う。あの子にとって、直正はそんなに大きな存在ではない」
「そんな訳、ないじゃないですか!」
「少年だって、本当はわかっているんだろ?」
「わかりません、そんなこと僕には――」
 僕を見る日褄先生の目は、冷たかった。
 そうだ。彼女はそうなのだ。相変わらずだ。彼女はカウンセラーには不向きだと思うほど、優しく、そして乱暴だ。
「少年はわかっているはずだ、直正がどうして死んだのか」
「…………先生、」
「せんせーって呼ぶなって」
「僕は、どうすればよかったんですか?」
「少年はよく頑張ったよ」
「そんな言葉で誤魔化さないで下さい、僕はどうすれば、ひーちゃんをあんな風にしなくても、済んだんですか」
 忘れられない。いつ会っても空っぽのひーちゃんの表情。彼女が以前のように笑ったり泣いたりするには、どうしても必要な彼はもういない。
「後悔してるの? 直正は死んでないって、嘘をついたこと」
「…………」
「でもね少年、あの子はこれから変わるつもりみたいだよ」
「え……?」
 ひーちゃんが、変わる?
「どういう、ことですか……?」
「市野谷が、学校に行くって言い出したんだよ」
「え?」
 ひーちゃんが、学校に来る?
 あーちゃんが帰って来ないのにどうして学校に通えるの、と尋ねていたひーちゃんが、あーちゃんがいない毎日に怯えていたひーちゃんが、学校に来る?
 あーちゃんが死んだこの学校に?
 あーちゃんはもう、いないのに?
「今すぐって訳じゃない。入学式さえ来なかったような不登校児がいきなり登校するって言っても、まずは受け入れる体勢を整えてやらないといけない。カウンセラーをもうひとり導入するとかね」
「でも、一体どうして……」
「それはあたしにもわからない。本当に唐突だったからね」
「そんな……」
 待つんじゃなかったのか。
 あーちゃんが帰って来るまで、ずっと。
 ずっとそこで。去年のあの日で。
「あたしは、それがどんな理由であろうとも、あの子にとって良いことになればそれでいいと思うんだよ」
 日褄先生はまっすぐ僕を見ていた。脚を組み替えながら、言う。
「少年は、どう思う?」
    僕の腕時計の針が止まったのは、半月後に文化祭が迫ってきていた、九月も終わりの頃だった。そしてそれに気付いたのは、僕ではなく、帆高だった。
「ありゃ、時計止まってるじゃん、それ」
「え?」
 帆高の課題は未だに終わっておらず、その日も保健室で問題集を広げて向き合っていた。何気なく僕の解答を覗き込んだ帆高が、そう指摘したのだ。
 言われて見てみれば、今は放課後だというのに、時計の針は昼休みの時間で止まっていた。ただいつ止まったのかはわからない。僕は普段、その時計の文字盤に注意を向けること���ほとんどないのだ。
「電池切れかな」
「そーじゃん? ちょっと貸してみ」
 帆高がシャープペンシルを置いて手を差し出してきたので、僕はそっと時計のベルトを外し、その手に乗せる。時計を外した手首の内側がやつに見えないように気を付ける。
 黒い、プラスチックの四角い僕の時計。
 僕の左手首の傷を隠すための道具。
 帆高はペンケースから細いドライバーを取り出すと、文字盤の裏の小さなネジをくるくると器用に外していた。それにしてもどうして、こんな細いドライバーを持ち歩いているんだろうか、こいつは。
「あれ?」
 問題集のページの上に転がったネジを、なくさないように消しゴムとシャーペンの間に並べていると、文字盤裏のカバーを外した帆高が妙な声を上げる。
 そちらに目をやると、ちょうど何かが宙を舞っているところだった。それは小さな白いものだった。重力に逆らえるはずもなく、ひらひらと落下していく。帆高の手から逃れたそれは、机の上に落ちた。
「なんだこれ」
 それは紙切れだった。ほんとうに小さな紙切れだ。時計のカバーの内側に貼り付いていたものらしい。僕はそれを中指で摘まんだ。摘まんで、
「…………え?」
 摘まんで、ゴミかと思っていた僕はそれを捨てようと思って、そしてそれに気が付いた。その小さな紙切れには、もっと小さな文字が記されている。
  図書室 日本の野生のラン
 「……図書室?」
 どくん、と。
 突然、自分の心臓の鼓動がやけに耳に響いた。なぜか急に息苦しい気分になる。嫌な胸騒ぎがした。
 ――うーくん、
 誰かが僕の名を呼んでいる。
「どうした?」
 僕の異変に気付いた帆高が身を乗り出して、僕の指先の紙を見やる。
「……日本の野生のラン?」
 ――うーくん、
 僕のことを呼んでいる。
「なんだこれ? なんかの暗号?」
 暗号?
 違う、これは暗号じゃない。
 これは。
 ――うーくん、
 僕を呼んでいるのは、一体誰だ?
「日本の野生のラン、図書室……」
 考えろ。
 考えろ考えろ考えろ。
 これは一体、どういうことだ?
 ――うーくん、
 知っている。わかっている。これは、恐らく……。
「図書室……」
 今になって?
 今日になって?
 どうしてあの日じゃないんだ。
 どうしてあの時じゃないんだ。
 これはそう、きっと最後の……。
 ――うーくん、この時計あげるよ。
「ああ……」
 耳鳴り。世界が止まる音。夏のサイレン。蝉しぐれ。揺れる青色は空の色。記憶と思考の回路が全て繋がる。
「あーちゃんだ…………」
   「英語の課題をするのに辞書を借りたいので、図書室を利用したいんですけど、鍵を借りていってもいいですかー?」
 帆高がそう言うと、職員室にいた教師はたやすく図書室の鍵を貸してくれた。
「そういえば河野くん、まだ宿題提出してないんだって? 担任の先生怒ってたわよ」
 通りすがりの他の教師がそう帆高に声をかける。やつは笑って答えなかった。
「じゃー、失礼しましたー」
 けらけら笑いながら職員室を出てくると、入口の前で待っていた僕に、「じゃあ行こうぜ」と声をかけて歩き出す。僕はそれを追うように歩く。
「ほんとにそうな訳?」
 階段を上りながら、振り返りもせずに帆高が問いかけてくる。
「なにが?」
「ほんとにさっきのメモ、あんたの自殺した友達が書いたもんなの?」
「…………恐らくは」
 僕が頷くと、信じられないという声で帆高は言う。
「にしても、なんだよ、『野生の日本のラン』って」
「『日本の野生のラン』だよ」
「どっちも同じだろー」
 放課後の校内は文化祭の準備で忙しい。廊下にせり出した各クラスの出し物の準備物やら、ダンボールでできた看板やらを踏まないようにして図書室へと急ぐ。途中、紙とビニール袋で作られたタコの着ぐるみを着た生徒とすれ違った。帆高がそのタコに仲良さげに声をかけているところを見ると、こいつの知り合いらしい。こいつにはタコの友人もいるのか。
 この時期の廊下は毎年混沌としている。文化祭の開催時期がハロウィンに近いせいか、クラスの出し物等もハロウィンに感化されている。まるで仮装行列だ。そんな僕も文化祭当日にはクラスの女子が作ってくれたメイド服が待っている。まだタコの方がましだった。
 がちゃがちゃ、と乱暴に鍵を回して帆高は図書室の扉を開けてくれた。
 閉め切られた図書室の、生ぬるい空気が顔に触れる。埃のにおいがする。それはあーちゃんのにおいに似ていると思った。
「『日本の野生のラン』って、たぶん植物図鑑だろ? 図鑑ならこっちだぜ」
 普段あまり図書室を利用しない僕を帆高がひょいひょいと手招きをした。
 植物図鑑が並ぶ棚を見る。植物図鑑、野山の樹、雑草図鑑、遊べる草花、四季折々の庭の花、誕生花と花言葉……。
「あっ…………た」
 日本の野生のラン。
 色褪せてぼろぼろになっている、背表紙の消えかかった題字が僕の目に止まった。恐る恐る取り出す。小口の上に埃が積もっていた。色褪せていたのは日に晒されていた背表紙だけのようで、両側を園芸関係の本に挟まれていた表紙と裏表紙には、名前も知らないランの花の写真が鮮やかな色味のままだった。ぱらぱらとページをめくると、日本に自生しているランが写真付きで紹介されている本。古い本のようだ。ページの端の方が茶色くなっている。
「それがなんだっつーんだ?」
 帆高が脇から覗き込む。
「普通の本じゃん」
「うん……」
 最初から最後まで何度もページをめくってみるが、特に何かが挟まっていたり、ページに落書きされているようなこともない。本当に普通の本だ。
「なんか挟まっていたとしても、もう抜き取られている可能性もあるぜ」
「うん……」
「にしても、この本がなんなんだ?」
 腕時計。止まったままの秒針。切れた電池。小さな紙。残された言葉は、図書室 日本の野生のラン。書いたのはきっと、あーちゃんだ。
 ――うーくん、この時計あげるよ。
 この時計をくれたのはあーちゃんだった。もともとは彼の弟、あっくんのものだったが、彼が気に入らなかったというのであーちゃんが僕に譲ってくれたものだ。
 その時彼は言ったのだ、
「使いかけだから、電池はすぐなくなるかもしれない。でもそうしたら、僕が電池を交換してあげる」
 と。
 恐らくあーちゃんは、僕にこの時計をくれる前、時計の蓋を開け、紙を入れたのだ。こんなところに紙を仕込める人は、彼しかいない。
 にしてもどういうことだろう、図書室 日本の野生のラン。この本がなんだと言うのだろう。
 てっきりこの本に何か細工でもしてあるのかと思ったけれど、見たところそんな部位もなさそうだ。そもそも、本を大切にしていたあのあーちゃんが、図書室の本にそんなことをするとは思えない。でもどうして、わざわざ図書室の本のことを記したのだろう。図書室……。
「あ……」
 図書室と言えば。
「貸出カード……」
 本の一番後ろのページを開く。案の定そこには、貸出カードを仕舞うための、紙でできた小さなポケットが付いている。
 中にはいかにも古そうな貸出カードが頭を覗かせている。それをそっと手に取って見てみると、そこには貸出記録ではない文字が記してあった。
  資料準備室 右上 大学ノート
 「……今度は資料準備室ねぇ」
 ぽりぽりと頭を掻きながら、帆高は面倒そうに言う。
「一体、なんだって言うんだよ」
「……さぁ」
「行ってみる?」
「…………うん」
 僕は本を棚に戻す。元通り鍵を閉め、僕らは図書室を後にした。
 図書室の鍵は後で返せばいいだろ、という帆高の発言に僕も素直に頷いて、職員室には寄らずに、資料準備室へ向かうことにした。
 またもや廊下でタコとすれ違った。しかも今度は歩くパイナップルと一緒だ。なんなんだ一体。映画の撮影のためにその恰好をしているらしいが、どんな映画になるのだろう。「戦え! パイナップルマン」と書かれたたすきをかけて、ビデオカメラを持った人たちがタコとパイナップルを追いかけるように速足で移動していった。
「そういえばさ、」
 僕は彼らから帆高へ目線を移しながら尋ねた。
「資料準備室、鍵、いるんじゃない?」
「あー」
「借りて来なくていいの?」
「貸して下さいって言って、貸してくれるような場所じゃないだろ」
 資料準備室の中には地球儀やら巨大な世界地図やら、あとはなんだかよくわからないものがいろいろ入っている。生徒が利用することはない。教師が利用することもあまりない。半分はただの物置になっているはずだ。そんな部屋に用事があると言ったところで、怪しまれるだけで貸してはくれないだろう。いや、この時期だし、文化祭の準備だと言えば、なんとかなるかもしれないけれど。
「じゃ、どうする気?」
「あんたの友達は、どうやってその部屋に入ったと思う?」
 そう言われてみればそうだ。あーちゃんはそんな部屋に、一体何を隠したというのだ。そして、どうやって?
「良いこと教えてやるよ、――くん」
「……なに?」
 帆高は僕の名を呼んだのだと思うが、聞き取れなかった。
 やつは唇の端を吊り上げて、にやりと笑う。
「資料準備室って、窓の鍵壊れてるんだよ」
「はぁ……」
「だから窓から入れるの」
「資料準備室って、三階……」
「ベランダあんだろ、ベランダ」
 三階の廊下、帆高は非常用と書かれた扉を開けた。それは避難訓練の時に利用する、三階の全ての教室のベランダと繋がっている通路に続くドアだ。もちろん、普段は生徒の使用は禁止されている。と思う、たぶん。
「行こうぜ」
 帆高が先を行く。僕がそれを追う。
 日が傾いてきたこともあり、風が涼しかった。空気の中に、校庭の木に咲いている花のにおいがする。空は赤と青の絵具をパレットでぐちゃぐちゃにしたような色だった。あちこちの教室から、がやがやと文化祭の準備で騒がしい声が聞こえてくる。ベランダを歩いていると、なんだか僕らだけ、違う世界にいるみたいだ。
「よいっ、しょっと」
 がたんがたんと立て付きの悪い窓をやや乱暴に開けて、帆高がひょいと資料準備室の中へと入る。僕も窓から侵入する。
「窓、閉めるなよ。万が一開かなくなったらやばいからな」
「わかった」
「さて、資料準備室、右上、大学ノート、だったっけ? 右上、ねぇ……」
 資料準備室の中は、物が所せましと置かれていた。大きなスチールの棚から溢れ出した物が床に積み上げられ、壊れた机や椅子が無造作に置かれ、僕らの通り道を邪魔している。どんな物にも等しく埃が降り積もっていて、蜘蛛の巣が縦横無尽に走っている。
「右上っちゃー、なんのことだろうな」
 ズボンに埃が付かないか気にしながら、帆高が並べられた机の間を器用にす��抜けた。僕は部屋の中を見回していると、ふと、棚の中に大量のノートらしき物が並べられているのを見つけた。
 僕はその棚に苦労して近付き、手を伸ばしてノートを一冊取り出してみる。
「……昭和六十三年度生徒会活動記録」
 表紙に油性ペンで書かれた文字を僕が読み上げると、帆高が、
「生徒会の産物か」
 と言った。
「右上って、この棚の右上ってことじゃないかな」
「ああ。どうだろうな、ちょっと待ってろ」
 帆高は頷くと、一番下の段に足をかけて棚によじ登ると、最上段の右側に置いてあるノートを無造作に二十冊ほど掴んで降ろしてくれた。それを机の上に置くと、埃が空気に舞い上がる。ノートを一冊一冊見ていくと、一冊だけ、表紙に文字の記されていないノートがあった。
「それじゃね?」
 棚からぴょんと飛び降りた帆高が言う。
 僕はそのノートを手に取り、表紙をめくった。
  うーくんへ
  たったそれだけの、鉛筆で書かれた、薄い文字。
「……これだ」
 次のページをめくる。
  うーくんへ
 きみがこれを読む頃には、とっくに僕は死んでいるんだろうね。
 きみがこのノートを手に取ってくれたということは、僕がきみの時計の中に隠したあのメモを見てくれたということだろう? そして、あの図書室の本を、ちゃんと見つけてくれたということだろう?
 きみがメモを見つけた時、どこか遠いところに引っ越していたり、中学校を既に卒業していたらどうしようかと、これを書きながら考えているけれど、それはそれで良いと思う。図書室の本がなくなっていたり、このノートが捨てられてしまったりしていたらどうしようかとも思う。たとえ、今これを読んでいるきみがうーくんではなかったとしても、僕はかまわない。
 これでも考えたんだ。他の誰でもなく、きみだけが、このノートを手に取る方法を。
 これは僕が生きていたことを確かに証明するノートであり、これから綴るのは僕が残す最後の物語なのだから。
 これは、僕のもうひとつの遺書だ。
 「もうひとつの、遺書……」
 声が震えた。
 知らなかった。
 あーちゃんがこんなものを残しているなんて知らなかった。
 あーちゃんがこんなものを書いているなんて知らなかった。
 彼が死んだ時、僕はまだ小学校を卒業したばかりだった。
 あーちゃんは僕にメモを仕込んだ腕時計をくれ、それを使い続け、電池が切れたら交換すると信じていた。僕が自分と同じこの中学校に通って、メモを見て図書室を訪れると信じていた。あの古い本が破棄されることなく残っていて、貸出カードの文字がそのままであると信じていた。この部屋が片付けられることなく、窓が壊れたままで、ノートが残っていることを信じていた。
 なによりも、僕がまだ、この世界に存在していることを信じていた。
 たくさんの未来を信じていたのだ。自分はもう、いない未来を。
「目的の物は、それでいーんだろ?」
 帆高の目は、笑っていなかった。
「じゃ、ひとまず帰ろうぜ。俺の英語の課題、まだ終わってない」
 それに図書室の鍵も、返さなくちゃいけないし。そう付け加えるように言う。
「それは後でゆっくり読めよ。な?」
「……そうだね」
 僕は頷いて、ノートを閉じた。
    うーくんへ
 きみがこれを読む頃には、とっくに僕は死んでいるんだろうね。
 そんな出だしで始まったあーちゃんの遺書は、僕の机の上でその役目を終えている。
 僕は自分の部屋のベッドに仰向けに寝転がって、天井ばかりを眺めていた。ついさっきまで、ノートのページをめくり、あーちゃんが残した言葉を読んでいたというのに、今は眠気に支配されている。
 ついさっきまで、僕はその言葉を読んで泣いていたというのに。ページをめくる度、心が八つ裂きにされたかのような痛みを、繰り返し繰り返し、感じていたというのに。
 ノートを閉じてしまえばなんてことはない、それはただの大学ノートで、そこに並ぶのはただの筆圧の弱い文字だった。それだけだ。そう、それだけ。それ以上でもそれ以下でもなく、ただ「それだけ」であるという事実だけが、淡々と横たわっている。
 事実。現実。本当のこと。本当に起こったこと。もう昔のこと。以前のこと。過去のこと。思い出の中のこと。
 あーちゃんはもういない。
 どこにもいない。これを書いたあーちゃんはもういない。歴史の教科書に出てくる人たちと同じだ。全部全部、昔のことだ。彼はここにいない。どこにもいない。過去のこと。過去のひと。過去のもの。過去。過去そのもの。もはやただの虚像。幻。夢。嘘。僕がついた、嘘。僕がひーちゃんについた、嘘。あーちゃんは、いない。いない。いないいないいない。
 ただそれだけの、事実。
 あーちゃんのノートには、生まれ育った故郷の話から始まっていた。
 彼が生まれたのは、冬は雪に閉ざされる、北国の田舎。そこに東京から越してきた夫婦の元に生まれた彼は、生まれつき身体が弱かったこともあり、近所の子供たちとは馴染めなかった。
 虫捕りも魚釣りもできない生活。外を楽しそうに駆け回るクラスメイトを羨望の眼差しで部屋から見送る毎日。本屋も図書館もない田舎で、外出できないあーちゃんの唯一の救いは、小学校の図書室と父親が買ってくれた図鑑一式。
 あーちゃんは昔、ぼろぼろの、表紙が取れかけた図鑑をいつも膝の上に乗せて熱心に眺めていた。破けたページに丁寧に貼られていたテープを思い出す。
 学校で友達はできなかった。あーちゃんはいつもひとりで本を読んで過ごした。小学校に上がる以前、入退院を繰り返していた彼は、同年代との付き合い方がわかっていなかった。
 きっかけは小さなことだった。
 ひとりの活発なクラスメイトの男の子が、ある日あーちゃんに声をかけてきた。
 サッカーをする人数が足りず、教室で読書をしていた彼に一緒に遊ばないかと声をかけてきたのだ。
 クラスメイトに声をかけられたのは、その時が初めてだった。あーちゃんはなんて言えばいいのかわからず黙っていた。その子は黙り込んでしまったあーちゃんを半ば強引に、外に連れ出そうとした。意地悪をした訳ではない。その子は純粋に、彼と遊びたかっただけだ。
 手を引かれ、引きずられるようにして教室から連れ出される。廊下ですれ違った担任の先生は、「あら、今日は鈴木くんもお外で遊ぶの?」なんて声をかける。あーちゃんは抵抗しようと首を横に振る。なんとかして、自分は嫌なことをされているのだと伝えようとする。だけれどあーちゃんの手を引くそのクラスメイトは、にっこり笑って言った。
「きょうはおれたちといっしょにサッカーするんだ!」
 ただ楽しそうに。悪意のない笑顔。害意のない笑顔。敵意のない笑顔。純粋で、率直で、自然で、だから、だからこそ、最も忌むべき笑顔で。
 あーちゃんの頭の中に言葉が溢れる。
 ぼくはそとであそびたくありません。むりやりやらされようとしているんです。やめてっていいたいんです。たすけてください。
 しかしその言葉が声になるよりも早く、先生はにっこり笑う。
「そう。良かったわ。休み時間はお外で遊んだ方がいいのよ。本は、おうちでも読めるでしょう?」
 そうして背を向けて、先生は行ってしまう。あーちゃんの腕を引く力は同い年とは思えないほどずっと力強く、彼の身体は廊下を引きずられていく。
 子供たちの笑い声。休み時間の喧騒。掻き消されていく。届かない。口にできない言葉。消えていく。途絶えていく。まるで、死んでいくように。
 あーちゃんは、自分の気持ちをどうやって他者に伝えればいいのか、わかっていなかった。彼に今まで接してきた大人たちは、皆、幼いあーちゃんの声に耳を傾けてくれる人たちばかりだった。両親、病院の医師や看護師。小さい声でぼそぼそと喋るあーちゃんの言葉を、辛抱強く聞いてくれた。
 自分で言わなければ他人に伝わらないということも、幼いあーちゃんは理解していなかった。どうすれば他人に伝えればいいのか、その方法を知らなかった。彼は他人との関わり方がわからなかった。
 だからあーちゃんは、持っていた本で、さっきまで自分が机で読んでいた本で、ずっと手に持ったままだったその分厚い本で、父親に買ってもらった恐竜の図鑑で、その子の頭を殴りつけた。
 一緒に遊ぼう、と誘ってくれた、初めて自分に話しかけてくれたクラスメイトを。
 まるで自然に、そうなることが最初から決まっていたかのように、力いっぱい腕を振り上げ、渾身の力で、その子を殴った。
 あーちゃんを引っ張っていた手が力を失って離れていく。まるで糸が切れた人形のように、その子が倒れていく。形相を変えて駆け寄って来る先生。目撃した児童が悲鳴を上げる。何をやっているの、そう先生が怒鳴る。誰かに怒鳴られたのは、初めてだった。
 倒れたその子は動かなかった。
 たった一撃だった。そんなつもりではなかった。あーちゃんはただ伝えたいだけだった。言葉にできなかった自分の気持ちを、知ってほしいだけだった。
 その一撃で、あーちゃんの世界は木っ端微塵に破壊された。
 彼の想いは、誰にも届くことはなかった。
 その子の怪我はたいしたことはなく、少しの間意識を失っていたけれど、すぐに起き上がれるようになった。病院の検査でも異常は見つからなかった。
 あーちゃんの両親は学校に呼び出され、その子の親にも頭を下げて謝った。
 あーちゃんはもう、口を開こうとはしなかった。届かなかった想いをもう口にしようとはしなかった。彼はこの時に諦めてしまったのだ。誰かにわかってもらうということも、そのために自分が努力をするということも。
 そうしてこの時から、彼は透明人間になった。
「ママがね、『すずきくんとはあそんじゃだめよ』って言うの」
「うちのママも言ってた」
「あいつ暗いよなー、いっつも本読んでてさ」
「しゃべってもぼそぼそしてて聞きとれないし」
「『ヨソモノにろくなやつはいない』ってじーちゃん言ってた」
「ヨソモノって?」
「なかまじゃないってことでしょ」
 あーちゃんが人の輪から外れたのか、それとも人が離れていったのか。
 あーちゃんはクラスの中で浮くようになり、そうしてそれは嫌がらせへと変わっていった。
 眼鏡。根暗。ガイジン。国に帰れよ。ばーか。
 投げつけられる言葉をあーちゃんは無視した。まるで聞こえていないかのように。
 あーちゃんは何も言わなかった。嫌だと口にすることはしなかった。けれど、彼の足は確実に学校から遠ざかっていった。小学二年生に進級した春がまだ終わり切らないうちに、あーちゃんは学校へ行けなくなった。
 そしてその一年後に、あーちゃんは僕の住む団地へとやって来た。
 笑うことも、泣くことも、怒ることもなく。ただ何よりも深い絶望だけを、その瞳に映して。ハサミで乱暴に傷つけられた、ぼろぼろのランドセルを背負って。
 彼のことを、僕が「あーちゃん」と呼んでいるのはどうしてなんだろう。
 彼の名前は、鈴木直正。「あーちゃん」となるべき要素はひとつもない。
 あーちゃんの弟のあっくんの名前は、鈴木篤人。「あつひと」だから、「あっくん」。
「あっくん」のお兄さんだから、「あーちゃん」。
 自分でそう呼び始めたのに、僕はそんなことまでも忘れていた。
 思い出させてくれたのは、あーちゃんのノート。彼が残した、もうひとつの遺書。
 あーちゃんたち一家がこの団地に引っ越して来た時、僕と最初に親しくなったのはあーちゃんではなく、弟のあっくんの方だった。
 あっくんはあーちゃんの三つ年下の弟で、小柄ながらも活発で、虫捕り網を片手に外を駆け回っているような子だった。あーちゃんとはまるで正反対だ。だけれど、あっくんはひとりで遊ぶのが好きだった。僕が一緒に遊ぼうとついて行ってもまるで相手にされないか、置いて行かれることばかりだった。ひとりきりが好きなところは、兄弟の共通点だったのかもしれない。
 あっくんと遊ぼうと思って家を訪ねると、彼はとっくに出掛けてしまっていて、大人しく部屋で本を読んでいるあーちゃんのところに辿り着くのだ。
「いらっしゃい」
 あーちゃんはいつも、クッションの上に膝を丸めるようにして座り、壁にもたれかかるようにして分厚い本を読んでいた。僕が訪れる時は大抵そこから始まって、僕の来訪を確認するためにちらりとこちらを見るのだ。開け放たれた窓からの逆光で、あーちゃんの表情はよく見えない。かけている銀縁眼鏡がぎらりと光を反射して、それからやっと、少し笑った彼の瞳が覗く。今思えば、それはいつだって作り笑いみたいな笑顔だった。
 最初のうちはそれで終わりだった。
 あーちゃんは僕がいないかのようにそのまま本を読み続けていた。僕が何か言うと、迷惑そうに、うざったそうに、返事だけはしてくれた。それもそうだ。僕はあーちゃんからしてみれば、弟の友達であったのだから。
 だけれどだんだんあーちゃんは、渋々、僕を受け入れてくれるようになった。本や玩具を貸してくれたり、プラモデルを触らせてくれたり。折り紙も教えてもらった。ペーパークラフトも。彼は器用だった。細くて白い彼の指が作り出すものは、ある種の美しさを持っていた。不器用で丸々とした、子供じみた手をしていた僕は、いつもそれが羨ましかった。
 ぽつりぽつりと会話も交わした。
 あーちゃんの言葉は、簡単な単語の組み合わせだというのに、まるで詩のように抽象的で、現実味がなく、掴みどころがなかった。それがあーちゃんの存在そのものを表しているかのように。
 僕はいつの頃からか彼を「あーちゃん」と呼んで、彼は僕を「うーくん」と呼ぶようになった。
  うーくんと仲良くできたことは、僕の人生において最も喜ばしいことだった。
 それはとても幸福なことだった。
 うーくんはいつも僕の声に、耳を傾けようとしてくれたね。僕はそれが懐かしくて、嬉しかった。僕の気持ちをなんとか汲み取ろうとしてくれて、本当に嬉しかった。
 僕の言葉はいつも拙くて、恐らくほとんど意味は通じなかったんじゃないかと思う。けれど、それでも聞いてくれてありがとう。耳を塞がないでいてくれて、ありがとう。
  ノートに記された「ありがとう」の文字が、痛いほど僕の胸を打つ。せめてその言葉を一度でも、生きている時に言ってくれれば、どれだけ良かったことだろう。
 そうして、僕とあーちゃんは親しくなり、そこにあの夏がやって来て、ひーちゃんが加わった。ひーちゃんにとってあーちゃんが特別な存在であったように、あーちゃんからしてもひーちゃんは、特別な存在だった。
 僕とあーちゃんとひーちゃん。僕らはいつも三人でいたけれど、三角形なんて初めから存在しなかった。僕がそう信じていたかっただけで、そこに最初から、僕の居場所なんかなかった。僕は「にかっけい」なんかじゃなくて、ただの点にしか過ぎなかった。
  僕が死んだことで、きっとひーちゃんは傷ついただろうね。
 傷ついてほしい、とすら感じる僕を、うーくんは許してくれるかな。きっときみも、傷ついただろう? もしかしたら、うーくんがこのノートを見つけた時、きみは既に僕の死の痛みから立ち直っているかもしれない。そもそも僕の死に心を痛めなかったかもしれないけれどね。
 こんな形できみにメッセージを残したことで、きみは再び僕の死に向き合わなくてはいけなくなったかもしれない。どうか僕を許してほしい。このノートのことを誰かに知られることは避けたかった。このノートはきみだけに読んでほしかった。
 きみが今どうしているのか、僕には当然わからないけれど、どうか、きみには生きてほしい。できるなら笑っていてほしい。ひーちゃんのそばにいてほしい。僕は裏切ってしまったから。あの子との約束を、破ってしまったから。
 「約束」という文字が、僅かに震えていた。
 約束?
 あーちゃんとひーちゃんは、何か約束していたのだろうか。あのふたりだから、約束のひとつやふたつ、していたっておかしくはない。僕の知らないところで。
  うーくん。
 今まできみが僕と仲良くしてくれたことは本当に嬉しかった。きみが僕にもたらしてくれたものは大きい。きみと出会ってからの数年間は、僕が思っていたよりもずっと楽しかった。うーくんがどう思っているのかはわからないけれどね。
 ひーちゃんも、よくやってくれたと思ってる。僕が今まで生きてこられたのは、ふたりのおかげでもあると思ってるんだ。
 けれど僕は、どうしようもないくらい弱い人間だ。弱くて弱くて、きみやひーちゃんがそばにいてくれたというのに、僕は些細な出来事がきっかけで、きみたちと過ごした時間を全てなかったことにしてしまうんだ。
 気が付くと、自分がたったひとりになっているような気分になる。うーくんもひーちゃんも、本当は嫌々僕と一緒にいるのであって、僕のことなんか本当はどうでもいい存在だと思っている、なんて考えてしまう。きみは、「そうじゃない」と言ってくれるかもしれないが、僕の心の中に生まれた水溜まりは、どんどん大きくなっていくんだ。
 どうせ僕は交換可能な人間で、僕がいなくなってもまた次の代用品がやってきて、僕の代わりをする。僕の居た場所には他人が平気な顔をして居座る。そして僕が次に座る場所も、誰か他人が出て行った後の場所であって、僕もまた誰かの代用品なんだ、と考えてしまう。
 よく考えるんだ。あの時どうすれば良かったんだろうって。僕はどこで間違えてしまったんだろうって。
 カウンセラーの日褄先生は、僕に「いくらでもやり直しはできるんだ」って言う。でもそんなことはない。やり直すことなんかできない。だって、僕は生きてしまった。もう十四年間も生きてしまったんだ。積み上げてきてしまったものを、最初からまた崩すなんてことはできない。間違って積んでしまった積み木は、その年月は、組み直すことなんかできない。僕は僕でしかない。鈴木直正でしかない。過去を清算することも、変更することもできない。僕は、僕であるしかないんだ。そして僕は、こんな自分が大嫌いなんだ。
 こんなにも弱く、こんなにも卑怯で、こんなにも卑屈な、ひねまがった僕が大嫌いだ。
 でもどうしようもない。ひねまがってしまった僕は、ひねまがったまま、また積み上げていくしかない。ひねまがったままの土台に、ひねまがったまま、また積み上げていくしか。どんなに新しく積み上げても、それはやっぱりひねまがっているんだ。
 僕はもう嫌なんだ。間違いを修正したい。修正することができないのなら、いっそなかったことにしたい。僕の今までの人生なんてなかったことにしたい。僕にはもう何もできない。何もかもがなくなればいい。そう思ってしまう。そう思ってしまった。泣きたくなるぐらい、死にたくなるぐらい、そう思ったんだ。
 うーくん。
 やっぱり僕は、間違っているんだろうと思う。
 もう最後にするよ。うーくん、どうもありがとう。このノートはいらなくなったら捨ててほしい。間違っても僕の両親や、篤人、それからひーちゃんの目に晒さないでほしい。きみだけに、知ってほしかった。
 きみだけには、僕のようになってほしくなかったから。
 誰かの代わりになんて、なる必要ないんだ。
 世界が僕のことを笑っているように、僕も世界を笑っているんだ。
  そこで、あーちゃんの文字は止まっていた。
 最後に「サヨナラ」の文字が、一度書いて消した痕が残っていた。
 あーちゃんが僕に残したノートの裏表紙には、油性ペンで日付が書いてあった。
 あーちゃんが空を飛んだ日の日付。恐らく死ぬ前に、これを書いたのだろう。そして屋上に登る前にこのノートを資料室の棚の中へと隠した。その前に図書室の本に細工し、それ以前にメモを忍ばせた時計を僕に譲ってくれた。一体いつから、あーちゃんは死のうとしていたんだろう。僕が思っているよりも、きっとずっと以前からなんだろう。
 涙が。
 涙が出そうだ。
 どうして僕は、気付かなかったんだろう。
 どうして僕は、気付いてあげられなかったんだろう。
 一番側にいたのに。
 一番一緒にいたのに。
 一番僕が、彼のことをわかったつもりになっていて、それでいて、あーちゃんが何を思っていたのか、肝心なことは何もわかっていなかった。
 僕は何を見ていたんだろう。何を聞いていたんだろう。何を考えていたのだろう。何を感じていたのだろう。
 僕は何を、していたのだろう。
 何をして生きていたんだろう。
 あーちゃん。
 あーちゃんあーちゃんあーちゃん。
 僕は彼のたったひとりの友達だったというのに。
 言えばよかった。言ってあげればよかった。言いたかった。
 あーちゃんはひねまがってなんかないって。 
 あーちゃんはひとりなんかじゃないって。
 あーちゃんは、透明人間なんかじゃ、ないんだって。
 今さらだ。ほんとうに今さらだ。
 僕は知らなかった。わからなかった。気付いてあげられなかった。最後まで。本当に最後まで。何もかも。
 わかっていなかった。何ひとつ。
 ずっと一緒にいたのに。
 僕があーちゃんをちゃんと見ていなかったから、僕があーちゃんを透明にして、彼の見る世界を透明にしたのだ。
 僕が彼の心に触れることができていたならば、あーちゃんはこんなもの書かなくても済んだのだ。わざわざ人目につかないところに隠して、こんなものを、こんなものを僕に読ませなくても済んだのだ。
 僕は、こんなものを読まなくても済んだのに!
 あーちゃんがたとえ、ひねまがっていても、ひとりぼっちだったとしても、透明だったとしても、それがあーちゃんだったのに。あーちゃんはあーちゃんだったのに。あーちゃんの代わりなんて、どこにもいないというのに。
 ひーちゃんは今も、あーちゃんのことを待っているというのに。
 あーちゃんはもういないのに。全部嘘なのに。僕がついた嘘なのに。あんなに笑って、でも少しも楽しそうじゃない。空っぽのひーちゃん。世界は暗くて、壊れていて、終了していて、破綻していて、もうどうしようもないぐらい完璧に、歪んでしまっているというのに。それでも僕の嘘を信じて、あーちゃんは生きていると信じて、生きているというのに。
 僕はずっと勘違いをしていた。
 あーちゃんが遺書に書き残した、「僕の分まで生きて」という言葉。
 僕はあーちゃんの分まで生きたら、僕があーちゃんの代わりに生きたら、幸せになるような気がしていたんだ。あーちゃんの言葉を守っていれば、ご褒美がもらえるような、そんな風に思っていたんだ。
 あーちゃんはもういない。
 だから、誰も褒美なんかくれない。誰も褒���てなんてくれない。褒めてくれるはずのあーちゃんは、もういないのだから。
 本当の意味で、あーちゃんの死を理解していなかったのはひーちゃんではなく、僕だ。
 ひーちゃんはあーちゃんの死後、生きることを拒んだのだから。彼女はわかっていたのだ。生きていたって、褒美なんかないってことを。
 それでも僕が選ばせた。選ばせてしまった。彼女に生きていくことを。
 あーちゃんの分まで生きることを。
 ��美もなければ褒めてくれる人ももういない。
 それでも。
 でもそれでも、生きていこうと。生きようと。この世界で。
 あーちゃんのいない、この世界で。
 いつだってそうだ。
 ひーちゃんが正しくて、僕が間違っている。
 ひーちゃんが本当で、僕は嘘なんだ。
「最低だな……僕は」
 あーちゃんにもひーちゃんにも、何もしてあげられなかった。
   「あーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
 廊下どころか学校じゅうにまで聞こえそうな大絶叫を上げて、帆高が大きく伸びをした。
 物思いにふけっていた僕は、その声にぎょっとしてしまった。
「終わったあああああああああああああああーっ!」
「うるさいよ……」
 僕が一応注意しておいたけれど、帆高に聞こえているかは謎だ。
「終わった終わった終わったーっ!」
 ひゃっほぉ! なんて言いながら、やつは思い切り保健室のベッドにダイブしている。舞い上がった埃が電灯に照らされている。
「帆高、気持ちはわかるけど……」
「終わったー! 俺は自由だああああああああーっ!」
「…………」
 全く聞いている様子がない。あまりにうるさいので、このままでは教師に怒られてしまうかもしれない。そう、ここはいつもの通り、保健室だ。帆高のこの様子を見るに、夏休みの課題がやっと終わったところなのだろう。確かにやつの手元の問題集へ目をやると、最後の問題を解き終わったようだ。
 喜ぶ気持ちはわかるが、はしゃぎすぎだ。どうしようかと思っていると、思わぬ人物が動いた。
 すぱーんという小気味良い音がして、帆高は頭を抱えてベッドの上にうずくまった。やつの背後には愛用のスケッチブックを抱えた河野ミナモが立っている。隣のベッドから出てきたのだ。長い前髪でその表情はほとんど隠れてしまっているが、それでも彼女が怒っているということが伝わる剣幕だった。
「静かに、して」
 僕が知る限り、ミナモはまだ帆高とろくに会話を交わしたことがない。これが僕の知る限り初めてふたりが言葉を交わしたのを見た瞬間だった。それにしてはあまりにもひどい。
 ミナモはそれだけ言うとまたベッドへと戻り、カーテンを閉ざしてしまう。
「……にてしても、良かったね。夏休みの宿題が終わって」
「おー…………」
 ミナモの一撃がそんなに痛かったのだろうか、帆高は未だにうずくまっているままだ。僕はそんなやつを見て、そっと苦笑した。
 僕は選んだのだ。
 あーちゃんのいないこの世界で、それでも、生きることを。
 ※(4/4)へ続く→https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/649989835014258688/
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benediktine · 6 years ago
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【エコ時代の自転車】 - 英国式自転車生活 : https://blogs.yahoo.co.jp/tenzen194/17105528.html : https://archive.fo/twWWu 2009/5/24(日) 午前 0:39
デンマーク大使館主催のエコ・サイクリング、どんなものか行って見ました。こういう催しは、とにかく参加することに意味があるでしょう。言うまでもなくデンマーク、オランダはヨーロッパの中でも自転車先進国で、自動車と自転車のレーンの住み分け、あるいは自転車が巻き込まれない交通整理方法には、舌を巻くほかありません。英国もこのところ、そういうところをずいぶんデンマークから学んでいます。
面白いのは、そういうデンマークが、アメリカや日本のように「自転車オタク大国」でないことです。どういうものか、デンマークの人でレアものの自転車や部品を買い集めているコレクターの話を聞いたことがありません。これはオランダにもいない。それに反してアメリカと日本は世界有数のコレクター国であることを考えると実に興味深い。
さてそれはさておき、自転車で出かけることにしました。くくりが「エコ」ですから、泥除けのない自転車と荷物の積めない自転車はやめようと、「ローズ」と出かけることにしました。「ローズとはなに???」と思われる方も多いかと思いますが、英国では乗り物に名前をつけることは、そう珍しいことではありません。ジェームズ・ボンド、007の小説中で彼が持っているベントレーは「ジョージ」という名前でした。それに対して、私の黒いレディス・ロードスターの名前は「ローズ」。これはいわれがありまして、ある英国の友人と私の二人できめたものです。さらに言えば、「苗字」もあるのです。じつは二人で、自転車の童話を書こうと言っていたのでした。以来、この自転車の名前は、どのようなメーカーのマークがあろうと「ローズ・デュラモンド」なのです。
早朝6時に起きて、家を出たのが7時10分(多摩・八王子かいわい)。渋谷区役所に着いたのが8時40分でしたから、そんなに悪くありません。どういうものだか、自転車には持って生まれたスピードがあるようで、��摩・八王子から渋谷・表参道までは、このローズでは、どんなに頑張ってみても1時間30分ぐらいなのです。しかし、まったくストレス・フリー。これほど疲れない自転車も珍しい。MTBだと、変速段数も多いのに、これより20分ぐらい余分にかかります。いつも写真に出てくる緑色の「28号」はこれよりかなり速いのですが、楽かどうか?と言ったらわかりません。自転車は不思議です。
渋谷に着くと一番乗りでした。フリーライドということなので、しばしの休憩のあと、赤坂方面へ、天気が良かったので、弁慶橋を見てみたくなったのです。いつも、この堀を見ると、わたしはものすごく「江戸」を感じるのです。ドジョウやザリガニなんかが100万匹ぐらいいそうな雰囲気。むかしはさぞ「河童」が出そうだったでしょうね。そこから九段のほうへ行き、そっちのお堀もみて、そのあとはまたしても四谷の迎賓館へ。
カフェ・オ・レを飲んだりしても、まだ集合時間に早すぎます。自転車の行動半径は意外に広いものです。途中、何人かの同じTシャツを着た人たちに会いましたが、同じように時間をもてあましている感じ。逆に言うと、東京の都心は自転車移動で充分なのです。外苑前のテラスのある喫茶でお茶にしていると、浅草のほうから来た人たちと雑談になりました。彼らも浅草から青山まではすぐと言う印象。
絵画館前のほうへ移動してみると、ブースがたくさん出ていました。しかし行列が長いので、私はパス。今回のイベントは駐日デンマーク大使の発案だそうで、英国大使館なども、そのイベント支持に回ったそうです。ここで、私見ながら気が付いたのは、大使館関係者は子供用の小さいトレーラー式の自転車や、チャイルドシート付き自転車、低重心の重量運搬車などを出してきたのに、日本側はそういうものがほとんどなく、ロードが圧倒的に多い感じがしたことでした。これは「自転車を実用として使う」ことに対する意識の違いが明確に出ていると思います。ベルリンにはかなりしっかりしたサイクリングコースがありますが、ドイツ人も高級ロードレーサーに都市部でよく乗っています。一般の通勤とかでロードと言うのは、やはりベルリンでもそう多くはない。私はいまからんん十年前、中学2年生の時からチューブラータイヤのレーサーに乗っていましたが、現在、そういうレーサーを都市部の日常用に使おうとは思いません。私にとってレーサーは日常から離れて、神聖な別次元の走りを楽しむためのもの。ラゲッジスペースがゼロのフォーミュラカーを都市部で乗らないのと同じです。そういえば、残念なことは、あまりにも有名な、「デンマークの全天候型自転車、ラムヌッセン」の展示がありませんでした(もしかしたら、私の思い違いで、デンマークの自転車ではないのかもしれません)。
私はステージイベントを見るなどというのが苦手なので、途中で抜け出して、こんどは高田馬場へ、そして友人に会いに中野へ。友人宅で「のだめカンタービレ」のDVDなど見ているうち、すっかり遅くなり、帰りはみごとに雨に降られました。雨に濡れると、オイルランプはガラスにヒビが入ってしまうので、この段階で、オイルランプははずして、バスケットの中へ。そのバスケットは?しかし、心配無用。バスケットの中にはバスケットをつつむビニール袋と、サイクルポンチョが入っています。サイクリストの間では評価が割れるサイクルポンチョですが、これが気に入らない方は、たぶん、1)速度が速い 2)前傾して乗っている のだと思います。英国の本の広告を見てみると、前傾の強い人は「サイクルケープ」を、アップハンドルによるアップライト・ポジションの人は「サイクルポンチョ」を使っているのがわかります。「ローズ」はアップライト・ポジションなので、サイクル・ポンチョとは相性がいい。家へ帰ってみると、けっこうなどしゃぶりに会ったにもかかわらず、タイヤと前フォーク、チェーン・ケースの下のほう以外はほとんど濡れていませんでした。深い泥除けが有効なことは言うまでもない。この季節むれることもないし、あおられるのにさえ気をつければ、ポンチョはけっこう快適です。
ところで、東京オリンピックの時の写真を見ると、デンマーク・チームは、ハムレットという名前の、なかなか溶接のキレイなスチール・フレームを持ち込んでいました。これは東京オリンピックのロードの優勝車両、イタリアの幻の車両「ステラ・ベネッタ」とならんで、私が乗ってみたい車両です。
PS: けさのネットのニュースで、排出ガス規制に関して、日本では7%というのが世論ではもっとも多かったということが出ていましたが、重要な一点は、「その世論に、7%を推奨する科学的・理論的な根拠があるか?」ということでしょう。現在、私たちの地球は、自らが自らの状態を治癒する力の限界以上のところへ、環境が破壊されてきています。地球上の種の大絶滅が進行しつつあり、南米などの、薬草の宝庫と言われる植物もどんどん絶滅している。動物たち、植物たちの絶滅のあとは、人間の番でしょう。それでもまだ、大型自動車を趣味にして、それを乗り回し、電気は24時間こうこうとつけ使い放題、つい先日のニュースどおり、日本のあたりの二酸化炭素濃度が観測史上最高値を更新、のままでいいのか?ということです。経済・家計がうまくいっても、この地球がうまく生き延びられないのではなんにもなりません。地球は宇宙に浮かんだ、中に空気と水が入ったガラスの珠と考えたらわかりやすい。この水も空気も、それを汚したら、どこからもかわりをもらうことはできません。そのなかで生きるよりほかはないのです。
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yamaguchi-kp · 6 years ago
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「文化の薫る山口に…」 中原中也記念館名誉館長 福田 百合子さん [後編]
         ◯外郎の家
チェン「福田先生は山口の外郎(ういろう)の商家のたいへんな大家族のお生れなわけですが、どういったことから文学の道に進まれることになったのでしょうか?」
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福田「やっぱり戦争の影響っていうのが大きいですね。太平洋戦争があったものですから、外郎と云ってもお砂糖も配給制度になりますし、兄が4人もいたんですけど、みんな戦争に行ってしまって。だから家は祖母や母や叔父、叔母、わりあい年寄りのなかにおりましたので、いろんな話を聞くことが出来ました。山口の歴史や言葉について、生活習慣について。そういうことでずいぶん刺激を受けて、言葉には興味を持ったんですけど、文学をとは思わなかった。兄がシベリアに行って戦病死して、父も相当衝撃を受けたのですが、父もそれからすぐに亡くなったんです。外郎屋を継ぐ人がいなくなって続けていけなくなった。どうしようかという時に、ちょうど宮野の女専ができまして、そこに入るなら国語方面、文学方面しか行けないなって思って受験しました。そこで、太田静一という中也の研究家、嘉村礒多の研究家にお会いしました。それから、古典の世界を。両方教えてもらったので、そこからだと思います」
.
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チェン「福田先生の書かれた小説〝外郎の家〟のなかでも細やかにその辺の事情は綴られていましたね。山口を代表する大きな商家が途絶えてしまう、そのさみしさ、僕自身は華僑の生まれですが祖父母の苦労して築いた家業を継がなかった訳ですが、自分の境遇と重ねながら読ませていただきました」
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福田「そうですね。お父様のね…… 身につまされたでしょう」
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◯香月泰男との思い出
チェン「先ほど、お兄様のシベリアのお話に触れさせていただきましたが、山口でシベリアと云うと画家の香月泰男さんがいますね。僕は香月泰男美術館がとっても大好きな場所で山口に帰省すれば必ず足を運んでいたんですが、僕が東京の美大にいた頃にはよく周りから香月泰男美術館があるなんてうらやましい、中原中也記念館があっていいねえって云われてたんですが、もっと山口のなかでその魅力が広まってもいいのにって思いがすごくあるんです」
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福田「私は生前とてもよくしてもらいましたし……」
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チェン「福田先生の最初の出版の装丁を香月泰男さんがなさったんですよね」
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福田「そうです。〝心のふるさと散歩〟というKRYで随筆の放送をしたんですが、それを集めて文芸山口叢書の第1巻として出すことになった時に香月先生が装丁と挿絵を描いてくださって。だから原画も持っております。シベリアからお帰りになったということで、私は兄が亡くなった訳ですから、そのことを先生に話したら、ある種の後ろめたさをきっと持たれたと思うんですが、とってもよくしていただいて、アトリエにも上げていただいて、2階に抑留時代の飯盒があって、飯盒の焦げたススを墨にすり込んでシベリアシリーズの黒の原色として使ったのを、秘密なんだけどって云って教えてくださったり、平和の象徴の鳩もよくモティーフにされてましたが、それは河原で拾ってきた石にちょっと目をつけて鳩だよねーっておっしゃってたり。おもちゃシリーズがありますよね。あれなんかも、とても器用でいらしたから、ちょっとこうやって触ったり引っかけたりで作っておられましたね。最期のとき、新聞社からいち早く電話をもらって駆けつけたんです。ご遺体の手がまだ温かかった。ほんとうに身につまされました…… 古川薫さんもよく通われていて、著者に書いておられました。シベリアへの共通した恨みや思い入れを語られる時に、なんかこう心が通じ合えた気がいたしました」
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チェン「ほんとうに過酷な状況下で生きて帰られた。あの辛さを、シベリアシリーズとして描かれたのはみなさんよくご存知な訳ですが、一方で、福田先生も触れられたように、子どもが見て笑顔になるような、心がほっこりするようなおもちゃをたくさん作られてますね」
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福田「そうですね。最晩年には、ヨーロッパや南方を旅行されて、どんどん明るくなって色彩も豊富になって温かい華やかな作風も現れて楽しかったのですが、その最中に…… まあワインがお好きでたくさん召し上がってたのもあって、そのせいもあるかも知れませんが。そしてやっぱりシベリアの寒さや厳しさがお身体に響いていたんだと思いますね」
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◯古川薫との思い出
チェン「また、近年お亡くなりになられた古川薫さんとも交流がおありだったそうですね」
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福田「そうなんですよ。方言を集めた書物の企画も、古川さんが山口新聞時代に声をかけてくださったものだったんです。それよりももっと前、山口大学の頃、サッカーをされておられた頃から関わりがありました。それから文芸山口の会合の時には一緒にたいへんな大雪の中を山口駅まで歩いて行った思い出もあります」
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◯藤原義江、二村定一、山口の芸能
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チェン「僕は、古川薫さんの〝漂泊者のアリア〟の藤原義江さんの記念館につい先日、下関に行った際に訪ねてみたんです」
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福田「そうでしたか。ありますね」
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チェン「はい。ところが、藤原義江記念館を見て、ちょっと胸が痛んだというか…… 個人の方が一生懸命に苦しいなか運営なさっておられるという風情で。下関には、藤原義江さんだけでなく、例えば、二村定一さん、あるいは田中絹代さんという、云ってみれば芸能界の先駆者のようなとってもモダンな方がいっぱいおられる。山口はどうしても明治維新のこと中心にPRしますが、こういった昔の文化・芸能のことにももっとスポットを当てていただきたい。古川薫さんが、著書で光を当ててくださったように」
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福田「沢田研二がNHKホールで演じてた時にも、古川夫妻がみえてて、あれはなかなか熱演で」
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チェン「そうですね。沢田研二さんがああやって舞台にされて、藤原義江さんのことが広く知られるようになりましたね」
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福田「私は、実物を知ってて、山口師範の講堂で見たこともあったんです。その時にはバイオリンの諏訪根自子なども一緒でした」
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チェン「そうなんですか! 藤原義江ご本人をご覧になったことがあったんですね!」
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福田「当時〝世紀の恋〟と謳われた藤原あき夫人も綺麗でした。たいへんな名家の方ですからこう髪を膨らませて」
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チェン「そうでしたか。今で云うハーフで、堂々たる風格で、美しい横顔のお写真が残っていますが」
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福田「そうですね。ちょっと、私どもでは考えられないような生涯、それを観たくて、当時アリアがどんなものかも知らずに、音楽的にはなにもわからないまま、多くの人が高商の講堂に足を運んだものです」
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チェン「藤原義江さんはオペラで日本の第一人者ですし、また、二村定一さんは日本における初のジャズシンガーと云える方ですよね」
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福田「そして防府には、大村能章もいますしね。掘り起こせばほんとに豊かな人材がいます」
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チェン「はい。松島詩子さんもいますね!」
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福田「そうそう! 松島詩子も実際に会ってます」
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チェン「そうなんですか! あのすごいド��スの」
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福田「金龍館に淡谷のり子も来て、戦後すぐでしたから停電になってたいへんでしたが(笑)」
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チェン「商店街にあった映画館の金龍館ですね。僕は戦前の音楽に憧れがあるので、僕の立ち上げた劇団でも扱って、もちろん二村定一さんのアラビアの歌なんかもやったんですが、観に来て下さった多くの方が知らなかった初めて聴いたって云われる方がほとんどで。一緒にやった若い人も、もちろん知らない訳なんですが、昔にこんなモダンな人がいて美しいメロディーあったんだったって事に若い感性に響くものがいっぱいあったようなんです。だから、決して昔のものでもう終わったということではなく、また光を当てたり、良さを伝えていくってことをほんとうに大切にしていきたいと思ってるんです」
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福田「そうですね。そういうものを耳にするとまた自分で新しい作曲をしようというものが出てくるかもしれませんしね」
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チェン「そうですね。やっぱり何かかから、影響を受けて、感化やインスピレーションを受けて創作というもの生まれるものですしね」
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福田「そうですね」
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◯詩人の故郷、山口
チェン「話が多岐に及んで、山口の芸能についても触れていただきましたが、福田先生のご専門の中也を始め、山口にはまた、金子みすゞ、種田山頭火、まど・みちおさんなど詩人の方々もたくさん輩出しているわけです。また、宇野千代や下関出身の林芙美子もいますね。こういった、素晴らしい文学の方々がいっぱいおられるわけですが、僕は、これこそが山口の宝なんではないかって思いがとてもあるんです。愛媛県松山市は正岡子規の故郷で、その弟子筋の高浜虚子がいたり、中村草田男がいたりということで、俳句甲子園をやっていますね。去年は、東京の名門の開成高校を下して山口県の徳山高校が優勝して盛り上がったわけですが。この俳句甲子園は全国的にも注目を集めていて、これが映画化されたり、サントリーの地域文化賞を受賞したり、俳句を中心とした町興しが非常に成功したケースと云われています。山口はこれだけ錚々たる詩人の方がいっぱい居ますので、詩のメッカ、詩の故郷であるという事をもっと浸透させてうまくPRできるんではないかと考えているんです」
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福田「一応、中原中也賞というのがありまして、福島のご出身の詩人の和合亮一さんなどが受賞されて、ワークショップで小学校に詩を教えに来てくださったり、福島との交流もあって。また、いまは〝ぼうしの詩人賞〟と云って、小中学生を対象にした賞も設立したんです。けど、これもいかにして宣伝をしてみんなに行き渡るようにしないといけないわけで、その意味では、山口はそういう発信力が、ちょっと遠慮深いかもしれませんね…… もうちょっと堂々とたくさんしていってもいい気がします。でも、徐々に浸透していってくれればとも思います」
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チェン「そうですね。それにはまず、やっぱり地元の故郷の方が、中也や山頭火などの理解を深めて大切にしてほしいなって思います」
◉中原中也の舞台公演のお知らせ
  日時:2019年3月30(土)、31(日)
  会場:国指定重要文化財 山口県政資料館 旧議事堂
  主催:劇団ジャンク派
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福田「そうですね。私はまた、近代文学館として、中也、みすゞ、まど・みちおと繋ぎ、面で捉えるような、文学廻廊にするという将来構想をずっと前から持っているんです。山頭火と中也も繋がるし、みすゞとも繋がるし、婦人画報でまど・みちおとも繋がっている」
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チェン「なるほど! それはたいへん素敵な構想ですね! しかし、福田先生がこうやって山口のこれからについていっぱい思い描いているおられる事があって語ってくださってるわけなんですが、みなさん、びっくりされると思いますが、女性の先生ですからお年のこと触れさせてもらってたいへん恐縮なんですが…… 福田先生は、今年で90歳になられたんですよね…?」
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福田「はい満90です。もう卒寿というわけですから、人生卒業なんですけど…… まだ、もう少し、みなさんとご一緒させていただきたいと思っています」
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チェン「昭和3年のお生まれでしたよね」
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福田「はい、9月ですから、もう半分は過ぎましたけど…(笑)」
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チェン「いやー! 素晴らしいです…… いつもたいへんよく歩いていらっしゃいますよね」
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福田「今日も、ここまで歩いて参りました」
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チェン「寒い最中をほんとうにありがとうございます。そして、僕はびっくりしたのは、東京でお会いした時、羽田空港から、六本木のホテル、そして、銀座とご一緒させていただきましたが、とっても歩く速度も速くって、浜松町で山手線に乗り換えてとか、この道からゆけば早く着くとか、全部先生が教えてくださって、とても90歳の先生とは思えませんでした。びっくりして、驚異的だとすら感じています。しかも、いつまでもお美しい。こんな90歳の方っていうのは、日本中探してもなかなかいないんじゃないかと思っています」
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福田「いえいえ、それはちょっとオーバーですよ(笑)」
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チェン「ここで、ちょっと総括的にお伺いしたいと思っています。これまでも、折に触れお話いただいていましたが、福田先生の思われる〝山口のいいところ〟山口県の魅力についてお話いただけないでしょうか」
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福田「はい。山口は地理的に本州の端に位置している事から、よく吹き溜まりだという人がいますが…(笑)私は、ここから発信していく、海を控えていて、遥かに展開が出来る位置的なメリットがあると思っています。そして、非常に総合的に物事を考えられる。それは、瀬戸内側と日本海側と中山間部がありますし」
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チェン「玄界灘にも繋がってその向こうには大陸がある」
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福田「はい、九州や四国とも近い、文化的には京文化とも近い、そうゆうことを考えますとやはり総合的な1つの良さを持っていると思います」
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チェン「なるほど。この山口、長州の地から、新しい日本を創ろうと志した多くの志士たちも生まれ育ち飛び立っていきました。これもお国柄なんですかね」
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福田「歴史的なそういう面もあると思いますけど。近代的な意味でも、これから、方々へ飛び立っていくインターナショナルな人々の集約力もあるけど、発展力もあるというふうに思います」
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チェン「なるほど。すごく明るいお話をいただきました。逆に、山口のこれからを考える為にも、〝山口の残念なところ〟課題、これからよくしてゆかなくてはならない取り組みなど、そういったものがあればお聞かせいただけないでしょうか」
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福田「昔は、田んぼが広がり、それが水を受ける機能を果たし、結果、洪水も少なくしたと云ういいところもあったのでしょうけど、都市化してその機能も充分に発揮できなくなっているような、中途半端な地域性に終わっているんじゃないかと思います。先ほど云った文教的な意味合い、あるいは、個々の都市がそれぞれの特色を持ちながらそれを総合的に高めていく、そう云う発想が少し足りないんじゃないかと思います」
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チェン「云ってみればグランドヴィジョンが描けなくなっている。僕はすごく思うのは、昔の方、政治家なども風土をよく理解してグランドヴィジョンを持っている。例えば、東京大学を作れば、一方で大阪ではなく京都大学があり、国立美術館も、東京と京都。山口には、山口大学がありますが、前身となる高商は、やはり戦前は下関が非常に重要な港であった事から、日本に4大高商を作るにあたって、東京に一橋大学、神戸に神戸大学、そして山口と長崎に作った。このように地域の特性をうまく活かす、よく地理を理解している。山口も、やはり山口ならではの地域の特性・風土をよく理解して、ここにはこういうものが必要だと云うようなグランドヴィジョン、展望を描ける人材がほんとうに必要だと感じています」
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福田「それがいると思いますね。やはり住んでる者が声を上げていかなくてはいけませんね」
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チェン「はい、ですから、地域のポテンシャルや良さをまだ理解しきれていない、活かしきれてない、それが残念なことだなぁと思っています」
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福田「そうですね」
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チェン「福田先生の年齢をお聞きしてびっくりいたしましたが、若い人も負けていれませんね。90歳の福田先生がこれからの山口のことを思って精力的に様々な取り組みをなさっておられるわけですから。その多くがボランティアの活動で、ご尽力なさっておらえますね。地方の時代とも云われますが、一方で地方消滅なんて言葉も話題になりました。ほんとうに真剣に考えていかなくてはと思います」
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福田「そうですね。みんなで一緒に考えなきゃいけませんね」
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チェン「最後に、福田先生から、このメディアをご覧になってるみなさんに向けて、メッセージを一言いただけないでしょうか?」
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福田「はい。とても空気が美味しくって、風がとても気持ちよく、そして光も充分な、山口へぜひどうぞ」
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チェン「福田先生、長い時間に渡り、僕の至らない点が多くあったにも関わらず、今日は、様々な話に及びたいへん貴重なお話をお伺いすることができました。ほんとうにありがとうございました」
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福田「いいえ。どうも失礼しました」
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取材場所:一の坂川   喫茶ラ・セーヌ
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