Text
24.04.15
生活をするというのはとても大変なことだ。明日の献立を考えて、明後日の献立も考えて、だから今日はスーパーでこれを買わなくちゃいけなくて。聞き及んだところによると、世の中にはこれ以上のことをしている人も山ほどいるというのだから驚くほかない。いぬはいい。いぬはそういった一切から解放されている。明日の献立なんてものとは無縁の生活を送っている。にもかかわらず、ただ道を歩いているだけで女子中学生からかわいいともてはやされたりする。しかし君たちは知らないんだろうな。君たちがかわいいと言ったこのいぬが、平然としているように見えて、お尻に臭いうんちをべったりとつけたまま歩いていること。そのリードを握っているひとりのにんげんが、家に帰ったらお尻を拭いて綺麗にしてあげなければならないこと。お尻を拭いてあげているときに、剥き出しになったその牙をそのにんげんの手に突き立てて、見るも無惨の穴だらけにしてしまうこと。
0 notes
Text
24.04.14
ほとんど夏のように感じられる。日曜日の公園にはいぬとその飼い主たちの集会のようなものがあり、賑やかにゆるやかな輪を形成している。私は私のいぬといっしょにそれを遠巻きに眺める。我々はつねに部外者であり、そこに入っていくことは未来永劫ない。もしいぬがいなくなったら、ということをたまに考える。そうなると私はもはや部外者ですらなくなり、すぐさま冷たい死人と化すだろう。そういうことをぼんやりと考えながら、一時間くらいかけてみじん切りにした玉ねぎを飴色になるまで炒める。そうしておいしいポークカレーができあがる。
0 notes
Text
24.04.13
いぬに顔を舐め回されて起きる。九時に食べる朝ごはん。休日の朝。散歩に出てもすがすがしい陽気で、世界が春のぽかぽかした空気に包まれている。お昼寝から目覚めると東京ヤクルトスワローズが勝ち星を上げていて、やっぱり週末ともなると珍しいことも起きるものだなと思う。家で飼っている二匹のモルモットが、山もりの人参の千切りを次々とその小さな胃に収めていくところを眺める。そうしてしばらくぼーっとしている。
0 notes
Text
24.04.12
麻雀で悲惨な負け方をしても、いぬを撫で回せばそれだけで満たされる。掃除機をかけると、たったの一回でダストボックスいっぱいのいぬの毛が集まる。それをゴミ箱にぽいと捨てる瞬間がなんとも言えず快感なのだ。ぽつぽつと雨に降られながら街に向かう。買い物ついでにアフタヌーンティーをする。一度のお茶の時間でケーキを何種類も食べても許されるとは、まったく貴族とは度し難い生き物である。電車に乗って大きな川を渡るとき、いつも何かしら心を打つものが窓の外を流れていく。
0 notes
Text
24.04.11
遠くに見える山々は春らしく白く霞んでいる。風が吹けば桜が舞う。若い桜の葉はこの世で最も青いもののひとつだ。電車に乗れば馬鹿みたいに簡単に自動的に東京までたどり着ける。東京、世界で最も不快な街。神保町で古本とカレーの匂いを嗅ぐ。東京駅近くの文房具屋で特別なノートを一冊買う。ビルとビルの合間から見える皇居は、ほとんど緑の塊のように見える。
0 notes
Text
24.04.10
本を一冊読み終えた。文章をひとつ書き上げた。しかしながら「だからなんだ」と詰められたら何も言い返すことができない。実を言うと、夜中に咳き込んで午前2時からずっと起きている。静かな時間帯は文字たちが生き生きとして感じられる。キーボードを叩く音も心地良い。むずかしいことは考えず、ただひたすらに空白を埋めることだけに集中する。その安らかな時間を、いつの間にか部屋に入り込んでいた朝の光が邪魔をする。
0 notes
Text
24.04.09
日記というのは毎日書けばいいというものでもないと思う。この日記を書きはじめて三日後くらいからずっとそう思いつづけている。一週間ぶりに外に出たらほんとうに桜が咲いている。なんなら葉の緑さえ見える。内科の待合室で本を読んでいたらすぐ隣の席に星条旗柄のド派手なズボンを履いた筋骨隆々の日本人が座ってきて完全に集中を乱された。視界の隅で星条旗が邪魔してきて、うまく文章が入ってこない。帰宅後、ひさしぶりにマインクラフトを起動して、ものの五分で飽きる。
0 notes
Text
24.04.08
道端にどでかいお饅頭が街灯くらいの間隔で設置されていて、それを通行人が自由に食べてもよい世界に住んでいる夢を見た。多くが齧られ、あんこが剥き出しになっている。その風景をたびたび思い出しながら布団を洗った。りんごを四等分にしてから皮を剥いて冷蔵庫で冷やしておく。それをおやつに食べる。ちょっと運動をしてゆっくり湯舟に浸かる。五分に一回くらい、見る人を不安にさせてしまうくらい激しく咳き込む。
0 notes
Text
24.04.07
なぜ人は咳をするのか。そういうことに思いを巡らせないわけにはいかないほど絶え間なく咳をしている。元気になったらお祝いにケーキを買って食べたいくらいだ。とはいえそろそろふつうの生活に戻ろうと思う。まいにち本を読んで文章を書く。それがほんとうにふつうかどうかはわからないけれど、私にとっては当たり前のことだったのだ。
0 notes
Text
24.04.06
床いちめん掃除機をかける。溜まりに溜まった洗濯物をやっつける。幼き頃はママが学校に電話をしてくれて大事を取って休ませてくれたものだった。体調が悪いとき、私はただ寝てさえいればよかった。今日はもうすぐに寝てしまおうと思う。風邪という状態から立ち直る決定的な瞬間に、われわれは立ち会うことができない。それはつねに睡眠中に起こるのだ。
0 notes
Text
24.04.05
朝も昼もご飯にのりたまをかけて食う。合間合間にはちみつをぺろぺろ舐める。最近はにじさんじの方々の動画をよく見ている。懐かしい人たちが今も変わらず配信をしていた。何年か前、病気でベッドから動けないときによく見ていた。この私にそろそろ文章を書かせてほしい。あまりの咳にこのように字を書くこともままならない。
0 notes
Text
24.04.04
ふつーに死にそ。まったく頭が回りません。足もともふらつく。壁に手をつけながらトイレとベッドを往復している。どうやらエアリズムのインナーをいちまい旅先に置いてきてしまったみたいだ。台湾の方々、よろしかったらもらってやってください。体調は最悪だが食欲だけは異様にある。今日この日に焼肉食べ放題に行けたらちゃんと元を取れるのに。そんなことを考えながら、なんとか生きています。
1 note
·
View note
Text
24.04.03
風邪を引いてもふつうに二日か三日経てば体調は快復していくものだと思っていた。それどころか悪化の一途を辿っている。咳をするたびに喀血しているかのようだ。私の尊敬する小説家はほとんど例外なく喀血していた。はちみつレモンをつくろうと思ったら冷蔵庫にレモンがなかった。シークヮーサーならあったので代わりにそれを使う。
0 notes
Text
24.04.01
熱がある。ベッドに横たわりながらマッシュルを見る。頭が回らなくても楽しく見られる良いアニメだ。グレープ味のピュレグミを食べたあとに炭酸水を飲むと、口のなかにファンタグレープができる。
0 notes
Text
24.03.31
疲れ果ててしまっていて、どこに行く気にも何をする気にもなれない。4月になったらがんばる。がんばるための環境づくりだけは今のうちにしておく。来年度の目標は英語を使って人とコミュニケーションを取れるようになること。ということでそれ専用のノートを用意しておく。毎日欠かさず英語を耳にしようということでポッドキャストのアプリから良さげな番組を見繕っておく。今日は衝撃の事実を前に恐れおののいた。来年度から小学6年生になる私の姪は、キムタクも福山雅治も知らない。
0 notes
Text
24.03.30
私くらいになってくるともう楽な洋服しか着たくないし楽な姿勢しか取りたくない。したがってだぼだぼのパジャマを着て一日中ベッドの上で横になっている。この世界にはトイレットペーパーを流せない国というものも存在している。日本で享受できている当たり前が普遍的なものとは限らない。しかしながらちいかわだけは台湾という国にも当たり前のような顔をして存在していた。ちいかわだけはぶっちゃけ日本だけでいいと思う。この旅を通じて思ったのは、つくづく私は家族とは馬が合わないなということだった。しかし家族のほうが悪いのではなく、いつだってどのような場所でも異常なのは私のほうなのであって、取り除かれるべき異物は私のほうなのだ。
0 notes