15hegira

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23.11.30

世界一愛おしい猫が死んで明日で半年。まだ、日記を書いていた頃の休日の過ごし方といえば、猫とベッド、若しくはソファに沈んで何もしない、買い物にも行きたくない、このふわふわで私がいないと生きられない猫を、永遠に、胸に抱き死んでいきたいと思っていた。

おやすみ、ベリ

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22.7.14

愚かだとわかっているが、下には下がいる、と25年間ずっと言い聞かせてきた。痩せてないけど、私より太ってる人はいくらでもいる。美人じゃないけど、食事に行けばタクシー代を渡される。愛してくれる男はいないけど、欲を満たしたい時に甘えられる男はいくらでもいる。本当に好きな男には愛されないが、私も他の男達になんの感情もない。ほいほいついてくるのが悪い。同世代の女性が、インスタグラムで赤裸々にインテリアとか、収入を掲載していて吐き気がする。自分の半分以下の収入と家賃だというのに、幸せな姿を見せつけられている気分になるからだ。羨ましい。ほぼ毎日外食をし、たまにジムに行き、たいていの欲しいものは買えるか貰える。港区海っぺりで、ひとりでは持て余��広さの部屋に、今日も猫とソファに沈んで、ネットフリックスを見ている。家にいれば、誰にも何も言われないし、猫は私を必要としてくれる。無理矢理にでも、下には下がいる、と思う事で頭がおかしくならずに済んだ。誰か私を羨んでくれるのだろうか。

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22.7.14

眠剤を飲み尽くししょうがなく、家の近くの心療内科を予約した。話を聞いてほしいとか、症状を改善したいとかではない。だから、PCから目を離さず診察1分で、処方箋を出す前の医師を好んでいたが、引っ越しをしたためそうもいかない。

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1:40

空気の読めない私のSpotifyはドビュッシーの後に青い珊瑚礁を流そうとするから慌てて止めた。

副業バイトをサボって1日中、愛とかと恋とか、そんなことばかり考えていたせいで、卒業したはずの眠剤の箱を開け赤ワインをラッパ飲みしアイコスを光らせている。10ミリマイスリーを3錠だけ。

寝室が2階にあるせいで、薬とワインでふらふらしながら階段を5往復もしている。

猫が私の腕を枕にしてくれればすぐに眠れる気がするのに、私のただならぬ雰囲気を感じ取って足元でうずくまっている。

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22.7.11

貴重な休日、しなければならないことは沢山あるのに、11時に起床し洗濯だけ済ませ、永遠にソファに沈んでいる。昨晩観ていたネットフリックスを、普段観もしない地上波に切り替えたら、あの男がプロデューサーをする情報番組が流れている。17時にネイルの予約をした事を後悔。

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22.6.21

20代��後半になると、インスタグラムでは一気に結婚・子供の投稿が増え、好きだった男の態度に一喜一憂して休日をすごしているのなんて、私だけのような気持ちになる。

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22.6.18

「大好きだったろくでもない男がいたんですよ〜もう1年以上連絡とってないんですけどね笑」と上司に話した、その日の夜中に、1年以上ぶりに電話がきた。「次は〜横浜〜横浜〜」のアナウンスに混じって「元気だった？聞こえてる？ねえ、ねえ」と懐かしい声が私に話しかけていた。

元気だったよ、酔ってるでしょ、電話する相手間違えてるよ、と何度言っても「間違えてないよ、猫ちゃん鳴いてるね、元気かなぁって思って」などと話し続けている。久しぶりの友人と会い、マッチングアプリはクソだという話になり私のことを、1人だけ良い子がいた、と表現したらしい。「良い子」が「都合の良い子」と同意なのはわかっている。わかっているのに、また連絡が来て喜んでしまう自分を、心底哀れに思う。

もうあなたと同じ駅には住んでないから会えないよ、と言う私に「そっかあ、でもご飯誘いたくて、どの辺に引っ越したの?」と続けるもんだから、彼の職場と程近い私の最寄りを教えた。

振られた後、何度も何度も、最寄駅であの男を探した。後ろ姿が似ている人を、早歩きで追い抜かしては落胆した。会おうと思えば簡単に会えたのに、1年以上我慢してやっと、笑い話にできたのに結局このザマだ。

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0:51

引っ越しをするので診療情報提供書の作成をお願いします、と主治医に言い、引っ越し先では通院もせず、意図せずクローゼットの中から、未開封の診療情報提供書が出てきた。どうせ提出しないし、と思い開封したら私の細かすぎる生い立ちと診断名がダラダラと記載してあった。2度と読みたくないと思ったし、転院先で2度も同じ話をさせないための紙なんだな。　診断名:鬱病　で���出して笑った。仕事辞めた翌日に、1人でホットプレート焼き鳥パーティーする女が鬱病なわけないだろ。今日もマイスリーが仕事をしない。

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0:21

高校卒業後すぐ、東北から横浜におのぼりして一人で生活し専門に通い卒業し、3年働いたと思ったら転職し、毎週カウンター寿司のペアリングにフレンチやらイタリアンのコース料理と盛れた自分の画像を24時間だけ公開し、タクシーで港区の自宅に帰る私を、地元の同級生達が見たら滑稽だと思うのかなあ。

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22.3.15

何も考えず「いつもより眠れなくて追加で眠剤飲んじゃったりすると、夜中に起きてロールキャベツ作って写真撮ってたりするんですよ〜！このままじゃ夜中に徘徊とかしそうですよね！」と、面白おかしく言ったら泣くほど叱られて、3年欠かさず飲み続けた眠剤を辞めた。

風呂で飲酒して気絶したように寝たかと思えば、風呂上がりにベランダで飲酒して身体をキンキンに冷やすのを、誰も叱ってくれないからやめられない。

ここまで書いてた

22.5.29

どうしようもなく不安で、寝れば楽になるのはわかっているのに寝る手段が眠剤しかない。上司にはその類の内服は全て辞めたと言ったから、個人コンプラ違反としてクビになるかもしれない。眠れなくて仕事でミスするより余った薬を飲んだほうが私のためにも職場のためにもなると思って、マイスリー10mgを1錠だけマッカランで流し込んだ。30分後欠伸の一つもでず2錠飲み直した。気付いたらアラームで目が覚めて、上体をあげることすらできない眩暈と吐き気で「あ〜〜」と声に出して昨夜のことをやっと思い出す。左耳が聞こえない。この最悪なタイミングでメニエール発作いらっしゃい、じゃないわよ。しっかり眠って仕事をするための眠剤なのにその効果がこれじゃ、おまえは死ぬまで辛いと、言われているんじやん。苦労して辞めた眠剤は3ヶ月で呆気なく常飲��もどった。6年かけて寛解した摂食障害の再発が、何より怖いのよ。

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22.3.11

私は頻繁にストーリーに東京タワーを投稿するのだが　「ばかクソあほハゲ全部散れの感情を昇華するための散歩中です」　という意図がある

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22.3.11

最後の日記から、いつの間にかこんなに、時間が経った。およそ10ヶ月間で、一方的に失恋をして、職場を変え、引っ越しまでした。

職場の不満を投稿した翌日に仕事を辞めた、たったひと月で。翌月には今の所に入社したけど、それもまた地獄。私ごときでは到底入れないと思っていたが、何かの間違いで今働いている。以前と違い、やっとやりたい事を仕事にできているが、毎日心が死んでいく。10割満足できる職場はどこにもないと、わかっていたが、改めて思う。

転職してから、通勤がまあ辛く1月末に引っ越しをした。前の家といえば、好きだった男の家から徒歩10分程度で、どこに行くにも思い出してしまうからちょうど良いと思った。引っ越しをしてから気付いた事だけど、今の家は、あの男の職場の��駅で、自分の詰めの甘さに呆れた。マンションの屋上に出れば、レインボーブリッジの奥の夜景と一緒に、また思い出してしまう。

11年前の今日は、地震のあとに雪が降った。歩道は割れた窓ガラスだらけ、コンビニの床は物で溢れていた。やっとの思いで帰宅したら、家の壁がほとんど崩れていたなんて経験、今後またあるのだろうか。

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21.5.28

死にたいと思うたびに、美容整形を受けて「普通になれた」と思って生きてきた。いつも美容医療に助けられたし、痛ければ痛いほど、生き易くなると思った。看護師になりたいなんて思ったことは微塵もなかったけど、美容医療に携わりたい一心で、学校を卒業して、働きたくもない総合病院に毎日通った。たった3年で、数えきれないほどの他人を看取った。やっと脱獄できると思い、美容外科に転職した。華やかでもないし誇れるものでもない。患者は、夜な夜な美容外科医のインスタグラムを巡って、縋る思いでクリニックに来ることを知っている。私もそうだったから。蓋を開ければ、医者は利益と映えるインフルエンサーのことしか考えていないし、カウンセラーはインセンティブのことしか考えていないし、看護師は効率と定時のことしか考えていない。もちろん全てのクリニックの話ではないけど。大きい憧れに反して、期待は小さくしておいて正解だった。

憧れの業界に足を踏み入れたとして、夜熟眠できるわけではないし、相変わらず数種の眠剤と効果が曖昧な大量のビタミン剤を酒で流しこんでいる。出会って数日の同期に、自律神経失調症と言われていよいよ受診する。異常な依存癖とストック癖のせいで、今は、冷蔵庫に大家族のような作り置きがある。料理をしているときは何も考えないし、冷蔵庫を開けて安心する。

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21.4.7

仕事を辞めてちょうど2週間。しなければいけない事は沢山あるが、動けない。毎日朝から晩まで、猫とソファに沈み、映画を観るか読書をしている。3年間の仕事中の躁が、今���全部集まって鬱になって帰ってきた。世間から必要とされていない、と被害妄想をして、気が深淵に落ちていく。どうしようもなく、好きな男に会いたくてしばらく泣いた。5月になれば、どうせ、仕事辞めたいって言うし、また好きな男の事を思って泣くんだろうな。

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21.3.28

3年間寝不足だった身体が、静脈麻酔で一生分休んだ気になった。頭から首の鈍痛と、内出血と、パンパンに腫れた顔は、元に戻ってくれるのだろうか。顔のあちこちに、ボトックスとかヒアルロン酸を入れても、顔の脂肪を取り除いても、美しくなれたことなんて一度もない。

退職した記念に、左鼻翼にピアスを開けた。ついでに耳朶に3つ、顔面の麻酔が切れないうちに。学生の時に開けた10数個の穴は、余裕のない生活で全て塞がった。これからは穴が塞がらないくらい、余裕のある生活をしたい。

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21.3.24

新卒で入職し、3年働いた病棟を本日退職。11月の日記に残した通り、たくさんの同僚に涙ながらに送り出され、きちんと惜しまれた、と思う。新人の時は泣いてばかりで、経験を積むほど文句が増え、ひとつの未練もないはずなのに、いざ挨拶するとなると、嗚咽でしばらく声が出なかった。地獄から抜け出す安心感とか、信頼する上司と後輩を、その地獄に残していく無駄な罪悪感とか、今までの日常が一変する不安とか、明確な理由はわからなかった。虫の居所の悪い医者に怒鳴られたり、認知症患者に殴られたり、唾を吐かれたり、あの日常にさえ、後ろ髪を鷲掴みされるほどの、未練と喪失感があったのかもしれない。退職なんてもっと、本当に、呆気ないものだと思っていたのに、あの地獄に対する、たった3年間の思いが大きすぎた。

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21.3.3

唯一嫌いな上司が40歳を目前に入籍した。「見栄で結婚して誰かのものになるなんて絶対嫌じゃない？」って同期は言ってたけど、私は誰かのものになりたい。それが不自由だとしても、絶対的な存在が欲しい。特に思い入れのない、自分の名字を捨てる事になっても、相手に対する思いがただの執着だとしても。