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グラタン塩
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165e83 · 6 years ago
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0529
部屋を片付けてたら、いいものみつけた
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 薔薇のかたちをしたシャンクボタン。いつ見てもほれぼれする。
これはいつか立ち寄った素材屋さんで買った。そのお店には定番の丸いものから、車や建物、ピエロなど様々なかたちを模したボタンがあり、それぞれがジャム瓶ほどの大きさのガラス瓶に詰められ、木棚にずらりと並んでいたのを覚えている。わたしはそこから薔薇のボタンの入った瓶を手に取って、色とりどりのそれを指でそっとかき分けながら、バニラ、ソーダ、アプリコット色のものを選んだ。そのとき、から、から、と鳴る音のくすぐったさと言ったら。
素材屋さんにはよく立ち寄る。珍しいかたちのボタンがあれば集める。手芸をしているわけではなく、もっぱら眺めるだけ。
祖母もボタンを集めていた。もう着なくなった服は捨てる前にボタンだけ外して再利用できるものは裁縫箱にしまい、縫い付けてしまうのには惜しいものは空色の紙箱にしまっていた。わたしはよく祖母に空色の箱をせがんで、ふたを開けては息をのんでいた。透き通った色をしたプラスチックのボタン、べっこう柄のボタン、カメオ調のボタン。どれも、おいしそう、である。……当時のわたしはまだ子どもだったのでどうか大目にみてほしいのだが、わたしはよく、きれいなボタンほど口に入れてみる癖があった。
味はものによってはするが、ニスか何かが溶けたような渋さがあったり埃っぽい不快な甘さがあったりとおいしくはない。あまく噛んで硬さやかたちを確かめたり、吐き出して水道水で洗ったときの輝きを見ることの方が目的だ。
手芸用品ってなんであんなにおいしそうな見た目に出来ているんだろう。ボタンは飴玉のようだし、まち針はロリポップチョコレート、糸くずは大好物の裂きイカのように見えて、人目を盗んではよく口に運んでいた。……手芸品ではないが、家に落ちていたパチンコ玉は見た目だけでは食べ物を連想することが出来なかったので、ひとまず口に入れたことがある。うっかり飲み込んで病院送りになったことがあるので、レントゲンを撮られながら「やはりボタンに限るな」と確信した。
この薔薇のボタンも、花びらの重なりが、むかし叔父が買ってきてくれたバースデーケーキに乗っかっていたバタークリームを彷彿とさせる。いやもう食べたりなんてしないが。……食べたくないかと聞かれると食べたいと答える。正直、鼻をくっつけてクリームやバニラのにおいを探してみたりする。まあどこにも無いのだが。
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165e83 · 6 years ago
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0528『男はつらいよ』
同年代のひとと『男はつらいよ』の話題になって、寅さんは彼ら彼女らからことごとく嫌われていることを知る。聞けば自分の妹の縁談をめちゃくちゃにする兄弟なんて最低だとのこと。(おそらく第1作目での、さくらのお見合いの場面を言っているのだと思う。)思えばわたしは、風の向くまま気の向くままに旅をする寅さんを憧れを抱くばかりで、自分がもし妹のさくらだったら、寅さんの家族だったらという視点で映画を観たことが無い。確かにお見合いの場で寅さんのしたことは自分と家族の顔に泥を塗る行為でもあるのだから、結婚意欲があるにしろ無いにしろ、実際にされたらたまらない。
だけど、もし寅さんというキャラクターが、誰に紹介しても恥ずかしくないような、むしろ自慢できる完全無欠の男性だったら、本作はどのような映画になっただろう。きっとありきたりな恋愛映画になりかねない気がする。それは(わたしが観なくなるだけで)何の問題もないはずなのに、あえて寅さんが”不完全”な男性として描かれた理由は絶対ある。
「寅さんは”不完全”」なんて乱暴な表現をしてしまったが、寅さんのプロフィールを簡単に紹介すれば、まず最終学歴は旧制中学を退学させられているので小卒。定職に就かず全国をぶらぶらし、旅先で開くテキヤの稼ぎは少なく、妹に借金することだってある。さくらのお見合いでの失態を筆頭に、子どものころから何かと問題を起こしてばかりなので故郷の柴又ではある意味有名人。今度は寅さん自身のお見合いをしようとなれば、お見合い相手に会う前に寅さんの名前を言っただけで縁談を断られてしまうほど。現代と時代背景が違うことを差し引いても、寅さんの経歴や性格は褒められたものじゃない。
そんな寅さんを家族は見捨てない。(正確に言えば寅さんの実父は寅さんが子供のころに死に、ひとりで育てられなくなった実母は寅さんを手放したが。)要は寅さんの親代わりになった叔父と叔母、そしてさくらの三人で営む団子屋「とらや」は、いつまでも寅さんの帰る場所であり続ける。さくらに至っては、寅さんは腹違いの兄妹であるのに、彼にとっての一番の理解者だった。
いい家族、に見えるだろう。実際にいい人たちばかりなのだが、彼女らが「いい人」でいられるのは結局、寅さんが不完全でいてくれるからだと思う。ここで完全無欠版の寅さん(ex 東大卒で大手企業勤めのやさしいひと)を想像してみれば、叔父と叔母が親代わりになってあげるのも、寅さんのためにご飯と布団を用意するのも、さくらがよき理解者でいるのも、すべて寅さんに施されて当然のこととしてわたしたちの目に写る、だろう、……というか「家族としての当然の愛」などと見定めて、さくらたちのやさしさを見過ごしてしまうんじゃないだろうか。結局ひとの善意とか(下町的に表現すれば)人情というものは、一見それからかけ離れているひとがいることで、その意外性やちぐはぐさによって目立って見えるもんだと勝手に考えてる。わたしが普段「されて当然のこと」をして見落としてしまいがちなひと(特に家族の)やさしさを、わたしは映画の中の寅さんを通じて思い出す。
かと言ってさくらたちは、寅さんに対して無条件に愛情を振りまいているわけじゃない。さくらたちが寅さんの家族でいることをやめないのは、なんだかんだ寅さんにもひとを想うやさしさがあることを知っているからだ。さくらのお見合いでの寅さんの振る舞いだって、結婚こそ破談になってしまったが、初めからお見合いをぶっ壊そうと企ててやったわけではないのだ。むしろ縁談が成立するように協力したいと思っていた。――寅さんは、ほんとはやさしい。人並み以上にひとを思う気持ちがある。本作には、あまり世間からスポットを当てられないひとたちがたくさん出てくる。寅さんと同じテキヤを開く同業者、障がいのあるひと、家出少女、水商売に勤める女性……。寅さんは、社会という箱庭の中で、よくよく目を凝らさないと見えないような暗い影に隠れて暮らすひとたちに目を向ける。寅さん自身も、一応、”影の住人”に仕分けされる人間ではあるが、寅さんは隠れない。堂々としているから”影”と”影”の対になる世界とを行き来できるくらいの度胸がある。双方の世界を繋ぐ架け橋、と言い換えることもできる。
寅さんの曲りなりのやさしさを、寅さんの周りを取り巻くひとたちは理解している。だから寅さんは人脈が広く、第1作目から第49作目の各作品にかけて登場するヒロインたちに、まあモテる。寅さんの家族に至っては、さくらのお見合いが破談になったときは寅さんに対して「情けない息子だ」と泣いたが、寅さんのお見合いがうまくいかない(というか、お見合いまでに行きつかない。寅さんの名前を言っただけで邪険にされた)時も、お見合い相手に対して「あんまりじゃないか」と寅さんのために泣いてあげることができる。寅さんの不器用なやさしさは、その不完全さは、ひとの根底にあるらしいやさしさを引き出す力がある。わたしは、柴又のような観光地を紹介する際の「人情溢れる下町~…」というありふれた表現はうさんくさく感じてしまうが、『男はつらいよ』で描かれるひとのやさしさこそがいわゆる人情と言われるものならば、その存在を信じてみたい気持ちになれる。
もしかしたら寅さんがひどい人間に見えるひとは、今が充実していたり、充実を越えて現実に追われているひとたちかもしれない、……などとこじつけてみたりする。言い換えたら、寅さんのような”不完全”な人間ではなく、”完全無欠”、あるいはそうであることを強いられているひと。先ほど「寅さんは人脈が広く……」などと書いたが、実際、作中では寅さんを受けつけないキャラクターも登場する。思えば、そのキャラクターは、定職や家庭を持った”完全無欠”な人物だった。
――寅さんは、どれだけ人情に溢れる人物であっても、不器用あまりに世間から認められない故、報われない。それでいて、わたしを含めた、すべての報われない人たちの希望でもある。言わば「報われないひとの鑑」、だ。ひとには人情というものが備わっていて、自分自身が自分なりの人情をひとにお裾分けしてさえいれば(たとえそれが不器用なかたちであっても)、自分の身に戻ってくるし、自分の帰る場所が、いつまでも帰る場場所としてわたしを待っていてくれる。寅さんがそうであるように。寅さん自身もまた、誰かにとっての待つ人でありように。”やさしさ”って、存在があいまいで頼りないけど、捨てたもんじゃない。
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 ……わたしもまた”不完全”な人間なのである。”社会”を生きていて、ひとと関わる中で、どれだけ善意を込めて接しても冷たくあしらわれたり厳しく責められたりして、もういっそひとりで淋しく生きていたいと思うくらい報われないことばかりだけど、『男はつらいよ』を通して、ひととひとの関わりを傍観してみれば、あと、ほんのちょっとだけ、がんばってみようと、ひとにやさしくしようと思える『男はつらいよ』は、寅さんは、わたしと”社会”を繋ぎ、そっと背中を押してくれんだってんだから、見上げたもんだよ屋根屋のふんどし大したもんだよカエルのションベン、だ。
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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0408
季節は4つあれど、きちんと1年365日を4等分してくれてるかと言ったら絶対そうじゃないよね。所詮は暑いか寒いかのどちらかだ。春なんて、結局のところそのふたつの間にある一瞬の箸休め的ポジションに過ぎない。咲き誇る花々はどうせ短命、ましてそれをゆっくり鑑賞する時間などほとんどない。年度初めである。ばたばたなのである。会社の窓から外を見やれば桜色に緑が混じりはじめてる。花見、行けてないけど誘いの声すらかけられてない。花見の約束を取り付けたところで今は特に話せることは何もない気がするから。ばたばたなのである。
春よ、遠き春よ、コンビニに行けばそこに、やたらめったらピンク色を誇張したソレ味の何菓子。
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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165e83 · 6 years ago
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0321
春は別ればかりでつらい、身近にいるひとたちともいつかその時がくるのだと考えると、なおのことつらい、という話をしていたら、でも、あなたこそ火花のように、人知れずそっと消えてしまうんじゃないかって思ってる、と言われて。
だからこそ残したいんだわたしは、恋文とはまた違う、書いてようやくまともに自己表現できる口下手なわたしがあなたにむけてほんとうの気持ちをさらけ出すには書くことでしか叶えられない、かたちにしたい、だまっているほんとうのことを、できるだけ精密に、緻密に、濃密に、あなたと離れ離れになってしまうまえに、わたしが散り散りになってしまうまでに。
しかし自分の考えが定まっていなくともとりあえず口にしてみるものだ。上の理由とはまたちがう、書きたい、その欲求の理由が他にある。……単に表現してたいって、だけ、たった、それっぽっち、を、ほろろとつぶやいただけで、ぜひ協力しよう、かたちにしよう、知恵を貸そう、と答えてくれる、そういう、ひと��ちに囲まれている、恵まれていると、決して今日まで気づかなかったわけじゃなかったんだけど、ただ、表現すること、したいと思うことに、自信を持てずにいたから、見て気づかぬふりをしていた。
わたしの話すことばは、ストレートで、遠慮が無い、転じて素直なところがいいと言ってくれたが、実は、ひとに見せられないような、暗くて、湿っぽい部分を隠すために、脊髄反射的に吐き出したことば――嘘と虚言で蓑隠れしているだけで、つまり、あなたが見ているわたしとは、ほんもののわたしじゃない。
それはそれで構わないとあなた達なら言ってくれるだろう。しかしわたしは気にするのだ。わたしの声をこころよく聞いてくれる、そんなやさしいあなた達にも、やはり、言われたってどうしようもできないことがある。しかしそれこそが、わたしが叫んででもあなたに伝えたい、ほんものの気持ちだったりするのだ。離れるとかとどまるとか、いつさくらが咲くとか咲かないとか、死ぬとか死にたくないとか、すきとかきらいとか…………。そんなほんもののわたしでも、ほんとうの「素直」なままのわたしでも、わたしは受け入れられるのかどうか不安に思う。
そんなことを考えていると、くちびるがぱさぱさになるのは、ずっと噛みしめていたから。滅多なとき、神にでもすがってみたい気分になったときに、おまじないとしてのオレンジのリップクリームを、実は、塗っていたのだが無意味だった。「ずうっとここにいて」「さくらがさいたらま���あおう」「いきているのがつらい」「あなたがすき」あなたが、わたしの目の前にいながら、言えないままでいたことばたちと口の中で溶けて、飲み込んだから。
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165e83 · 6 years ago
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0316
不安定な空模様、雨水と沈丁花のまじった青いにおい、春が近づいている。寒さにかまけて自宅に引きこもるのはもうやめて、今日なんか電車に乗って、好きな作家の講演会に赴き、新書も買って、柄にもなくサインをもらった。その時まったく嘘の名前を名乗ってみたら「ほんとうのなまえですか」と聞かれ我に返ってそそくさ帰る。春の魔法、春は魔法。
来月の予定が埋まりつつあってこわい。桜が散ったらワシ死ぬんかなあってくらい、行きたいところに行き、会いたいひとに会う。
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