生活
明日、が来てしまった。
窓から射し込む朝日はここ10日ほど感じていない。シャッターを締め切った朝かも夜かも分からない部屋でいつかに設定した名前も思い出せない曲に起こされた。
口が甘い。舌に残る安い缶チューハイの味が無意味な昨夜を物語る。How are you?I'm fine thank you,and you?並みに中身のない恋の話に咲いた花は駅のホームに置いてきた。もう枯れてしまっただろう。
ふと見たケータイの画面で確認した時刻、午後2時。今年何回目かの朝を逃したことへの虚無感を呑気なフリをした欠伸で打ち消し、ようやく身体を起こす。なんの期待も無しに窓を開け、そして重いシャッターを開けると無かった期待にすら答えられていない、なんの代わり映えもない景色が目に入ってきた。体感温度36度、熱中症注意報がでていそうだが、私の世界は今日も23度に保たれるので問題ない。
シャッターを開ききり窓を閉め、季節も時間も暑さも寒さも存在しない世界に戻ってきた祝杯として、1本タバコに火をつけた。天井に昇っていく薄い一筋の煙を見つめていると遠い昔が蘇ってくる、なんていうことはないが、
6年前の今頃、プールの授業をさぼって見学していた自分はタバコの味が想像できただろうか、とふと思った。プールの授業をさぼりがちな人間がろくな20歳になれないことは想像ついたかもしれないが。
プールの水の淡い味は忘れたが、あの人が吸っていたタバコの味を覚えた。
36度の中走り回って汗を掻く夏は忘れたが、36度に抱かれて汗を掻く夏を覚えた。
いつ忘れたのかは忘れたが、いつ覚えたのかはよく覚えている。
付け加えると、この哀愁を感じ始めるとタバコを無駄に吸うことも覚えたので再び呑気なフリをした欠伸で打ち消す。
本当は忘れたふりをしているだけで覚えたふりをしているだけだということに気づいているが、これといって執着する必要もないことだった。
自分の哲学など守らなくても息をしているだけで朝も昼も夜も来てくれる便利な世界だった。
きっとまた今日を知れないまま明日、が来てしまうのだろう。
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歩くのが苦痛だから2階から飛び降りて打撲する.
泣いて困らせるしか能がないのかな低気圧だから許して.
天井すらぼやけて見えるのに、
嘘は鮮明で、
殺してくれない愛なんて偽りだよ.
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