Don't wanna be here? Send us removal request.
Text
擬人化一覧
日本海軍
戦艦(人名なし)
三笠
金剛、比叡、榛名、霧島
扶桑、山城
長門、陸奥
土佐
大和、武蔵
空母
鳳翔(鳳広タカヒロ)
龍驤(龍彦タツヒコ)
加賀
蒼龍(蒼木アオキ)、
飛龍(飛葉ヒバ)
翔鶴(翔輝ショウキ)、瑞鶴(瑞希ミズキ)
信濃(人名なし)
水上機母艦
若宮(人名不詳)
軽巡洋艦
天龍(天鈴アマリ)、龍田(龍留トオル)
長良、五十鈴、名取、由良(由和ユカ)、鬼怒(��鬼ユウキ)
阿武隈(阿昇アタカ)
川内(川治カワチ)、神通(神流カンナ)、那珂(那勇ナオ)
阿賀野、能代、矢矧(ヤチヨ)、��匂
駆逐艦(番号人名)
神風型(1神久ミク)
峯風型(6矢弦ヤヅル)
吹雪型(1吹幸フユキ、22響深トヨミ)
白露型(1白未キヨミ、2時弦シヅル)
陽炎型(1陽向ヒナタ、2知恵チサト、6夏向カナタ,7初和イチカ,8雪路ユキジ,9天汰アマタ,10時渡ハルト,12磯伸シノブ,13浜軌ハマキ)
初春型
島風(島和シマナ)
特務艦
摂津
氷川丸(三川氷子ミカワキヨコ、氷守ヒカミ)
宗谷(宗ツカサ)
間宮
明石
樫野
筑紫
第三図南丸
潜水艦
伊号潜水艦巡潜乙型(伊波イナミ)
呂500(さつき)
航空機
零戦(零奈レイナ)
九九艦爆(九十九ツヅラ)
九七艦攻(七海ナナセ)
一式陸攻(一音カズネ)
九六戦(六斗リクト)
九六艦爆(六哉ロクヤ)
九六艦攻(六海ムツミ)
零観(零千レイチ)
九八水偵(八夜ヤツヤ)
二式大艇(晴明ハルアキ)
紫電、紫電改(紫乃シノ)
白菊(菊道アキミチ)
零式小型水偵(金波カナミ)
晴嵐(晴南ハルナ)
特攻機
回天(回桜カイヨウ)
桜花(桜歌オウカ)
海龍(海桜ミオ)
自衛隊
はるな(ハルナ)
ひえい
こんごう(金剛カネヨシ)
あきづき
うみぎり
しまかぜ
せとゆき
しらね(白幸サユキ)
くらま(鞍利アンリ)
うわじま(和哉カズヤ)
いえしま(家哉イエトシ)
つきしま(築哉ツキヤ)
まえじま(前哉センヤ)
くめじま(久哉ヒサトシ)
とびしま
ゆげしま(弓哉ユミチカ)
ながしま(長哉タケスケ)
つのしま
いずも(出凪イズナ)
かが(加織カオリ)
あすか(明日香)
ひびき
はりま
わかさ
にちなん
えんしゅう(遠江トオミ)
ひうち
げんかい
はしだて
てんりゅう
くろべ
しらせ
SH-60J(彰ショウ)
SH-60K(恵ケイ)
TC-90(瀧喜タキ)
UC-90
T-5
TH-135(天翔テンカ)
ぶんご(豊和ユタカ)
やえやま(重雄シゲオ)
はちじょう(丈喜トモキ)
その他
横須賀鎮守府(ヒガシノ)
呉鎮守府(ニシノ)
舞鶴鎮守府(マイノ)
佐世保鎮守府(サガノ)
横須賀海軍工廠(スガノ)
呉海軍工廠(ショウノ)
舞鶴海軍工廠
横須賀長官官舎(サクラバ)
呉長官官舎
舞鶴長官官舎
海軍兵学校(ツキシマ)
海軍省
川崎造船所(カワノ、カワサキ)
三菱重工
海上保安庁(クボ)
徳島海軍航空基地(現、徳島教育航空群/マツバ)
日本郵船(ミカワ)
18 notes
·
View notes
Text
催花 道の向こうに
【九月二十日 兄の殯 】
秋雨の中、Sバースに泊まっていた一隻の船がタグボートに曳かれて今まさに呉を去ろうとしている。決して初めてではないその光景がこんなにも苦しいのは、きっとその船影が自分と同じものだからだろう。タグボートに曳かれてはいるが、その船が水を切って進む姿を見るのはもう一年以上前のことだ。先を行くタグボートの航跡を船首が二つに割き、それが空っぽの船の航跡になる。これを繰り返しながら船はだんだんと遠ざかり、その航跡に雨が落ち細かく水面を揺らしていた。誰かの涙のように雨は静かに水面を叩く、その音は誰かが啜り泣く声のようだった。
「またな」
もう二度とその船を見ることはない。
1 note
·
View note
Text
【幽世の雨】
東屋でうたた寝をしていると雨の音がした。天気雨だ。キラキラと光る雨粒が滝のように降り注ぐ様は、まるでこの世のものとは思えないほどに美しい光景だった。この世といってもここは現世でも【道】でもない、いわゆるあの世なのだ。
「綺麗だな」
手を伸ばすと水滴が手のひらで跳ねる。しばらくそうしていると手のひらの中に小さな水たまりができた。何気なく水たまりを覗けば、そこには無骨な灰色の艇の陰が見えた。
「……俺?」
歪で小さな水たまりの中の艇をよくよく見ると『731』のと三つの数字が見えた。
「ゆげだ!」
周りを見ればあちこちの水たまりに【掃海管制艇ゆげしま】の姿が映っていた。どうやらなにかの拍子に現世と一部繋がってしまったらしい。
「向こうも雨か。おーい! ゆみー!」
聞こえはしなだろうが、手近な水たまりをお覗、水面の向こうの弟を呼ぶ。すると偶然だろうか、【ゆげしま】がこちらに顔を向けた。そしてこちらに向かってなにか叫んでいるようだ。声は届かないが俺の名前を呼んでくれているような気がして、なんだか嬉しかった。
「ゆみー!! 雨漏りどんまい!!」
俺が再び【ゆげしま】に声を掛けるとすぐに水たまりの中の【ゆげしま】は消えてしまった。
「あっ!?……ケチだな」
俺の言葉に呼応するように、髪の毛から滴り落ちた水が鏡のようになった水面に波紋を作る。
「せんちゃん、なにしてんの?」
いつの間に来たのだろうか、気づけば久哉が俺を覗き込んでいた。その手には傘が二本。どうやら迎えに来てくれていたらしい。雨は止んでしまったが、弟としていい心がけだと思う。
「んー?いいこと」
「ふーん」
俺が答えると久哉は怪訝そうな顔で相槌をうつ。また機会があれば教えてやらないこともないが、今はまだ俺だけの秘密にしておこう。雨上がりの空は俺の心を表したかのような青であった。
【幻影は雨の中】
蒼い海に青い空。それらは何も現世の者たちだけの物ではない。現世に限りなく近い所に現世ではない場所……【道】と呼ばれるその場所に、人に望まれ人に想われて生じた【艦霊】と呼ばれる神々。彼らは人と共に海に生き空に焦がれ暮らしている。そして、どちらの世にも雨が降る。
最後の御奉公である掃海管制艇になってから二度目の梅雨を迎えた。そして本日は見事なまでの狐の嫁入りである。夏を目前にした恵みの雨に草木は喜び緑をより一層深いものにしていくが、明るい空とは裏腹に俺の心には厚い雨雲が掛かっていた。実のところ梅雨はあまり好きではないのだ。
「雨漏り……どうにかならないかな……」
ぼやいた所で光を含んだような金の雨は止むことなくなく甲板を叩いて染み込みこうして食堂にまで滴り落ちてくる。
「これじゃ、外も中も変わらないな」
食堂を出て15メートルも歩かないうちに外へ出ることができる。思い水密扉を開けてすぐの頭上には灰色の幌でできた屋根がある。その屋根を打つ雨の音は大きく滝の中にいるような心地だ。艇の外に目を向けると江田島や建造途中のピンク色のコンテナ船といつもの見慣れた風景の全てが灰色に霞んで輪郭が曖昧になっている。ふと、近くに係留されているSAMに誰かが乗っているような気がした。���員が整備しているのかと思ったが、それにはどうにも挙動が不審だ。
「誰かいるのかー?」
雨にかき消されない音量でSAMの上の不審者に声をかける。不審者はきがついたようでパッとこちらを振り向いた。その顔は自分によく似ているが纏う雰囲気は自分とは異なりおおらかなものだった。そんな人は俺の知る限りでは一人しかいなかった。
「せんちゃん?」
1年前に竜宮へ旅立った兄を呼ぶ。兄と思しき人は俺の記憶と寸分たがわない顔で笑ってみせた。そして兄は俺に向かって何かを叫んでいるが、雨の音に紛れ聞き取ることはできなかった。言い終わると兄は満足したように再び笑い、煙のように消えてしまった。
「せんちゃん、なに言ってるか分からないよ……」
雨は止み、空には鮮やかな虹がかかっていた。
l
2 notes
·
View notes
Text
【幻影は雨の中】
蒼い海に青い空。それらは何も現世の者たちだけの物ではない。現世に限りなく近い所に現世ではない場所……【道】と呼ばれるその場所に、人に望まれ人に想われて生じた【艦霊】と呼ばれる神々。彼らは人と共に海に生き空に焦がれ暮らしている。そして、どちらの世にも雨が降る。
最後の御奉公である掃海管制艇になってから二度目の梅雨を迎えた。そして本日は見事なまでの狐の嫁入りである。夏を目前にした恵みの雨に草木は喜び緑をより一層深いものにしていくが、明るい空とは裏腹に俺の心には厚い雨雲が掛かっていた。実のところ梅雨はあまり好きではないのだ。
「雨漏り……どうにかならないかな……」
ぼやいた所で光を含んだような金の雨は止むことなくなく甲板を叩いて染み込みこうして食堂にまで滴り落ちてくる。
「これじゃ、外も中も変わらないな」
食堂を出て15メートルも歩かないうちに外へ出ることができる。思い水密扉を開けてすぐの頭上には灰色の幌でできた屋根がある。その屋根を打つ雨の音は大きく滝の中にいるような心地だ。艇の外に目を向けると江田島や建造途中のピンク色のコンテナ船といつもの見慣れた風景の全てが灰色に霞んで輪郭が曖昧になっている。ふと、近くに係留されているSAMに誰かが乗っているような気がした。乗員が整備しているのかと思ったが、それにはどうにも挙動が不審だ。
「誰かいるのかー?」
雨にかき消されない音量でSAMの上の不審者に声をかける。不審者はきがついたようでパッとこちらを振り向いた。その顔は自分によく似ているが纏う雰囲気は自分とは異なりおおらかなものだった。そんな人は俺の知る限りでは一人しかいなかった。
「せんちゃん?」
1年前に竜宮へ旅立った兄を呼ぶ。兄と思しき人は俺の記憶と寸分たがわない顔で笑ってみせた。そして兄は俺に向かって何かを叫んでいるが、雨の音に紛れ聞き取ることはできなかった。言い終わると兄は満足したように再び笑い、煙のように消えてしまった。
「せんちゃん、なに言ってるか分からないよ……」
雨は止み、空には鮮やかな虹がかかっていた。
l
2 notes
·
View notes
Text
【三月二八日0000】
目の前に広がるのは正に大河と呼ぶに相応しい河。
「海が近いのかな」
そう言って足先で水と戯れれば冷たい感触が心地よい。
「海を渡る艇に河を渡らせるなんて、誰が考えたんだよ」
変な奴だろうなと、独り言で寂しさを紛らわしながら河へと入っていく。文句を言ったところで向こう岸には行かなければならないのだ。流れは穏やかで水は冷たすぎず気持ちが良い、そして深さも俺の頭が一つ水面から出る程で労せず進むことができる。
「拍子抜けだな……」
無心で歩き続けていたらあっという間に岸についてしまった。水から完全に上がれば、不思議なことに衣服はあっという間に乾いてしまった。そして、見たこともない景色にも関わらず向かうべき方向を俺は知っている。
河から離れるほどに地面には草木が増え、30分程進んだ頃にはすっかり見慣れた【道】にそっくりな風景が現れた。
「うわー、死んだ気がしねえ……」
「だろ?」
「うわっ!びっくりした!?」
俺の独り言に何の前触れもなく応えたのは約8年前に別れた長兄の声��驚き振り返るとそこには先に逝った兄弟たちが勢ぞろいしていた。
「こら、和哉。久がびっくりしてるじゃん」
「わー、お化けばっかだー」
「迎えに来てやったのに調子に乗んな!!」
築哉兄さんが容赦ない拳骨を俺の頭に落とし、前ちゃんと弟が笑う。10年も経っていないはずなのに何もかもが懐かしい。
「まあ、あれだ久哉、お前24歳だって?長かったな。おつかれ」
「うん、あんがと」
和哉兄さんが俺の頭をぽんと軽く叩いた。それを合図に築哉、家哉、弟たちが次々に口を開く。
「長生きだったなお前。頑張ったな」
「管制艇は掃海艇とは違った意味で疲れただろう?おつかれさま」
「おつかれリア充!」
「ようこそあの世へ!」
最後に見た時から変わらない兄弟たちなりの労いが素直に嬉しかった。
「久哉、頑張ったな」
「うん。一番のジジイになるくらい頑張った」
前ちゃんのぶっきらぼうで優しい一言に涙が溢れる。誤魔化そうとふざけてみるがうまくいかなくて、涙は次から次へと流れて止まらない。
「うわ、泣くなよ」
「頑張った、頑張った。もう大丈夫だ」
兄弟たちが慌てて俺の涙を袖で乱暴に拭ったり、背中を軽く叩く。仕草は乱暴でも気持ちは何よりも優しいのだ。
「よひらちゃんに、会いたい……」
「……結局は嫁か!!」
嬉しさのあまりとび出たのは数十分前に死別した愛しい人の名前だった。
できるだけ、ゆっくり来てください。俺の兄弟を、もう一度紹介します。
くめじま退役カウントダウン一週間お付き合いありがとうございました。
0 notes
Text
【三月二七日 2300】
現在時刻は2300。場所は掃海管制艇【くめじま】の私室。ここにいるのは元【くめじま】もとい久哉と妻の【よひら丸】、久哉の弟である【ゆげしま】【ながしま】の四人。状況としては特になにもすることはないのだが、強いて言うならば【げんかい】を待っているといったところだ。
「ねえ、久あと何分?」
「ん、あと30分」
「そう」
【よひら丸】、通称よっちゃんはそう言ったきりまた静かに何もせずに座っている。素直に甘えたり寂しがったりしないのだ、彼女は。弟たちも気を使ってか各々茶を啜っていたり煙草をふかしたりと、俺たちの間に入らないようにしながらも部屋からは出て行かず側にいてくれる。昨年の前哉の時もその前の家哉の時も���まで見送った兄弟皆、最期の日は一緒にいたのだ。
「よっちゃん、指輪どうしようか」
「久はどうしたい?」
「よっちゃんに持ってて欲しい」
左手の薬指で光る銀の指輪は竜宮へは持っていけない。私物だって使えるものは弟や後輩たちが使うのでよっちゃんに今あげられるものはこの指輪しかないのだ。
「……いいよ」
時計の長針が6を指した時、襖をノックする音が響く。襖を開ければお馴染み黒づくめの【げんかい】が立っていた。
「時間ピッタリだな」
「迎えに来たぞ」
「よっちゃん、弓、長、じゃあまたな」
左手の薬指から指輪を抜き去るとスウと冷えた空気が指輪のあった場所を撫でる。指輪をよっちゃんの手に握りこませれば、よっちゃんの瞳が少し揺れたような気がした。
「久、またね」
よっちゃんは優しい声で別れを告げる。最期に愛しい人と弟たちの顔を見る。その表情は俺が想像していたよりも穏やかでほんの少しだけ安心した。【げんかい】によって襖が締められる。これからは【座敷童】の下までこの【げんかい】と二人、死出の旅だ。
「久哉」
「なに?【げんかい】。ズボンと靴下は脱いだよ」
真っ暗な道のりをこれまた真っ黒な【げんかい】といく。【げんかい】の懸念事項である下着問題について先に答えれば、隣から深い深いため息が聞こえてきた。
「それは見たら分かる。そうじゃなくてだな、お前、泣くなよ」
「……泣いてないし」
目からポタポタと落ちる水滴は決して涙ではないと主張すれば【げんかい】はまたため息をついてハンカチを寄越してくる。仕方がないので受け取って水滴を拭きながら歩けばあっという間に【座敷童】のいる本邸についた。戸を開けいつもと同じ玄関でいつものように靴を脱ぎ、正面の襖に手をかける。いつもより俺が緊張しているのは気のせいだということにしておこう。襖を開くといつもの部屋ではなく静かな八畳間だった。その真ん中に座敷童【ニシノ】が鎮座している。
「久哉、泣いたんか?」
「泣いてない」
「久哉は寂しがりだからなあ」
【ニシノ】は俺の主張は聞かずにニヤニヤとしげしげと俺の顔を見る。
「まきもせんちゃんも待ってるし、別に寂しがってはない」
「そうか」
【ニシノ】はやはりニヤニヤとしながら俺のことを見ていた。
「久哉、24年もよくがんばったな」
「家哉兄さんの記録、抜いてやったった」
「そうだなあ」
俺は呉と神戸の二つが母港だった。そして最初と最期が呉だった。そのせいだろうか寂しくはあるが、決して怖くはないのだ。
「2358(フタサンゴオハチ)」
【げんかい】の声が時刻を知らせる。俺の命もあと一分足らずだ。
「5、4、3、2、1」
ポンと肩を優しく叩かれる。それと同時に俺はこの世界のどこにもいなった。
24年と3ヶ月。また会うときは海の下の都にて。
0 notes
Text
【三月二六日】
掃海隊は家族のようなものだ。掃海隊に限った話ではないが、なにかあれば必ず誰かがすっ飛んできて援助してくれる。もちろんその逆もしかりだ。隊も一つひとつが小規模であるためか基本は隊ごとに相部屋であるが、掃海艦と管制艇には一人部屋が与えられている。しかし、管制艇で一人部屋であるはずの俺の部屋でこの一年当たり前のように生活している輩がいるのだ。そして、その輩……久哉は今晩も気持ちよさそうにイビキをかき眠っている。
「……狭い」
そう、狭いのだ。ただでさえ広くはない部屋に俺と久哉、さらに間には長哉までもが並んでいるのだ。いくら小柄な掃海艇といえども許容できる狭さではない。
「弓、去年よりは広いだろ」
ボソリと低い声が耳朶に響く。
「久ちゃん、起きてたの?」
「ん、弓が文句言ってたから起きた」
久哉はゴソゴソと枕元を探り一本の煙草を取り出した。
「弓ジッポない?」
「多分この辺……久ちゃん一本ちょうだい」
「はいよ」
久哉から煙草を受け取りジッポで火をつける。そして今度はジッポを久哉に渡せば、久哉も慣れた手つきで火をつける。二本分のタバコの光がくらい部屋に灯る。各々の煙草から出た青白い煙が天井へ登っていく様子がはっきりと見えた。
「久ちゃん」
「なに?」
「よっちゃんは明日来てくれるの?」
「多分来るよ。ニシノが特別にこの部屋だけよっちゃんとこの【道】と繋げてくれるってさ」
「部屋からは?」
「出られないって」
「……掃除しようね」
「はい」
久哉が重いガラスの灰皿に灰を落とす。たったそれだけの音もこの狭い部屋ではよく聞こえた。
「灰皿」
「はいよ」
軽薄だが温かみのある声、布団同士の擦れる音、煙草の煙を吐き出す息の音、兄の生きる音がする。それもあと一日だと思うと、胸の奥がほんの少しだけ痛んだ。
0 notes
Text
【三月二五日】
今日は足先が寒くて早くに目が覚めた。モコモコの靴下もズボンも履いていたのにだ。
「これが老化か……」
「なに言ってんの、もうとっくにジジイだろ」
「ほら、ジジイさっさと靴下脱ぐ!!デートだろ!!」
「和哉兄さん、家哉兄さん、弟たちが辛辣です」
「早く!!」
「はいっ」
パンイチな弟たちにせっつかれ、箪笥から一番綺麗なシャツを引っ張りだして袖を通す。その間も何故か弓哉も長哉も特に何も言わずに俺のことを見つめてくる。
「そんなに見なくてもよくない?」
「気にしないで」
結局ベルトを締め靴を履くまで弟たちは見守ってくれた。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
二人に見送られ居住区の出口まで走って行く。【道】の境界を抜けるとそこはかつての母港……阪神基地隊の門柱前だ。
「さて、行くか」
魚崎自体は久しぶりだが体はしっかりと道を覚えて、走れば懐かしい景色が目に入ってくる。
「この辺はあんまり変わらないな」
魚崎駅の改札を抜け、電車に飛び乗るとスマートフォンのメッセージアプリの着信音がなる。確認すれば、画面には相手の到着を知らせる文字が躍る。たったそれだけで顔がニヤけてしまうのはきっと今日が特別なデートだからだ。すぐさまに返信し、ポケットにスマートフォンを押し込んで窓に薄らと映った自分を確認する。走ってきたせいで髪の毛が少し乱れていた。手櫛でちょっと直す。10分も乗っていれば三宮駅にあっという間に着く。急いで西口の方へ向かえばすぐに長身の女性の後ろ姿が見えた。
「よっちゃん、お待たせ」
「5分前ぴったりね」
「自衛艦なので」
彼女の微笑みは今日も変わらず愛らしい。
三月の最後の日曜日、神戸の異人館にて仲睦まじく手を繋いで観光する姉弟のような二人がいたとかいなかったとか。
1 note
·
View note
Text
【三月二四日】
「くめじま、いるか?」
「いるよー」
支援艦のような賢そうな声がしたと思ったら、襖を開けたのはげんかいだった。多用途支援艦独特の真っ黒な服で神妙な顔をしているのでなんだか通夜のような雰囲気だが、通夜は今日ではない。
「どしたの?」
「いや、ちょっと注意しに」
「なんの?」
げんかいは意を決したようにひとつ息をついて口を開いた。
「二七日の夜、この家から【座敷童】の本邸への移動の際、単の下にズボンと靴下を履くのは禁止だ」
「……ズボン、ダメだったの?」
「ダメというより、俺が嫌だ」
なにかを思い出しているのであろう、げんかいの顔が苦々しく歪む。
「まえじまの……おっさんの脱ぎたてのズボンと靴下……ずっと持たされてた」
「愚兄が申し訳ない」
昨年の兄の愚行をほぼ一年経った今、弟の俺が謝るなんて夢にも思っていなかった。そして密��に真似をしようとしていたのに釘を刺されてしまった。
「ズボン靴下はやめとくな」
「そうしてくれ……」
「外套ならいいだろ?」
「却下」
多用途支援艦の頭は固いこということを俺は24歳にしてようやく知ったのだった。
0 notes
Text
【三月二三日 最期の金曜日】
【艦霊】たるものカレーくらい作れなくてどうするとの【座敷童】の教育方針により、俺たち【艦霊】は艦種問わず一応カレーだけは食べられる物が作ることができる。そして金曜日の昼食といえばカレーである。
「久ちゃん、今日カレー作ってよ」 弟である弓哉の何気ない一言によって俺は今、補給艦の城厨房でじゃがいもの皮を剥いている。 「くめじま、遅いぞ!!」 俺に激を飛ばすましゅうの手にもじゃがいもが握られているのだがものすごいスピードで丸裸にされて行く。俺が一つ剥いている間にもましゅうがどんどんとじゃがいもの山を崩していく。奥ではおうみにとわだ、ときわが人参、玉ねぎをこれまたものすごいスピードで剥いていく。その姿はまさに戦場に赴く戦艦の如し、ただの掃海艇である俺はここでは子供の作ったプラモデル以下の性能しかない。どんどんと処理されていく野菜たちを横目で見ながらチマチマとできることをやるしかないのだ。 「ほら、くめじま、残りのやっとくから」 そう言ってましゅうは俺のところにあった残りのじゃがいもを奪いさっさと処理をして巨大な鍋に放りこんだ。そして小さめの鍋を一つ取って俺に渡した。 「これで足りるか?」 「だ、大丈夫デス……」
野菜と肉を鍋に入れ調味料と一緒に煮込む。後ろで補給艦たちがやはり巨大な鍋で恐ろしい量を煮込んでいるのを見ると俺の鍋がなんだかおもちゃのようだった。 「くめじま、そろそろいいんじゃないか?」 ましゅうが銀色のプレートを三枚、上の棚からひょいと取り出した。 「棚の場所、高くない?」 「掃海艇仕様じゃないからな。米はときわのところな」 ましゅうにさっさと行けと視線で告げられ、ときわの所へ行けばときわは巨大鍋をかき回す巨大杓文字から手を離し素早く米を盛ってくれた。 「あっ、俺ちょっと少なめでいい」 「早く言え!!」 そう言いながらもプレートの一つから米を減らして残りの二つに盛る手つきは丁寧で、補給艦の性質がしっかり表れていた。 「くめじま、カレー冷める前に持って行けよ」 「おう!ありがと!」 ましゅうが鬼のような速さでカレーを盛っていくのを背にプレートを持ってすぐ隣の食堂へと向かう���食堂ではもう既に弓哉と長哉が席について待っていた。 「はーい、くめじまスーパーカレーでーす!」 「スーパーなの?どこ?」 「米の量が?」 「まあ、味わえ!!」
カレーは誰が作ってもうまい。多分。
1 note
·
View note
Text
【三月二二日 弟へ】
吹く風が温くなり、春の匂いを運んでくる今日この頃。例年よりも急ぎ足でやってきた桜前線のおかげでHバースの桜は例年よりも早くに笑い、文字通りいつもの景色に花を添えている。狭い掃海屋敷の自室でぼんやりと机に並べた六通の手紙を眺める。これらは兄弟が遺したものである。皆一様に考えながらこっそり書いていた様をなんとなく覚えている。
「さて、どうしたもんかねー……」
白い便箋の上にペンを置いてみるが一向に一画たりとも書き出せない。書きたいことがありすぎるのだ。九人兄弟の最後の二人へ向けてどんな言葉を遺してやればいいのだろう。並べた一番端、一番新しい封筒を手に取り開く。前哉の手紙を開けば決して達筆ではない文字で書かれた『ありがとう』。このたった五文字だけしか前哉は遺さなかった。
「不器用め」
手紙を元あった通りに戻し、残りのものと纏めて机の端に揃えて置く。改めてペンを握り思い切って一文字目を書く。そうすればあとは勝手に次の文字が出てくる。どうせあとで推敲するのだからめちゃくちゃでも構わない。ペンと紙が擦れあう音がただただ耳に心地よかった。
1 note
·
View note