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ataisai · 3 months ago
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黒夜の胡蝶
FFXI Ibun no Utaibito Transcript
Synopsis そこは黒き未来。 リリゼットはレディ・リリスに代わり、 黒き未来のアルタナ連合軍を率いて、 獣人軍たちと戦う日々を送っていた。 そんな折、 リリゼットはメリファト山地に未知の敵が現れたと、 部下から報告を受ける。 すぐさま駆けつけるが、そこに倒れていたのはなんと、 黒き未来にいるはずのない生き物だった。
Pg. 79
V 黒夜の胡蝶 高橋 玖 登場人物 リゼット ケット・シー モーグリ ラーゾス
Pg. 80
[シーン1 オズトロヤ城]
Narration: 天晶暦884年、ヴァナ・ディール。 アルタナ連合軍が、闇の王率いる獣人血盟軍と史上最大の戦い「クリスタル大戦」を20年にわたって繰り広げる、凄惨な祝福なき世界。 皆が知らない、もうひとつの未来―。
Larzos: いよいよですね、リリゼット様。 ここまでは作戦通り、ヤグード軍の大半はバルドニアでの戦線のため、出払っていやす。 おそらくオズトロヤ城は手薄になっているはず。
Lilisette: ええ。このために、我が軍の別働隊に北で暴れてもらっているわ。 今なら、こっちのヤグードたちの戦力を大幅に削ぐことができる。 狙い通り、千載一遇のチャンスよ。私たちで、オズトロヤ城に一斉に攻め込む。 目的は残ったヤグードたちの殲滅とそれから、城内の基地機能の停止。 そうすれば、ヤグード教団軍は隊を立て直せずに一気に弱体化して、瓦解していくはず。 ……ラーゾス、あなたがいてくれて助かったわ。
Larzos: ……へっ。瀕死のところをレディ・リリス様に、最後に命を救われるなんざあ……格好つかないですがね。 あの時は敵対していたリリゼット様にお仕えすることになろうとは夢にも思ってもいませんでした。 運命ってのは奇妙なもんですねェ。
Lilisette: ふふ、そうね。……城の中は複雑で迷宮みたいになっているわ。どこにヤグードが潜伏しているかわからない。 くれぐれも、深追いはしなくていいわ。派手に暴れれば、あちらから慌てて出てくるはず。
Larzos: 了解しやした。
Lilisette: じゃあ、いきましょう。作戦開始!
Larzos: はっ!
Lilisette: 来たわね、ヤグードたち! はっ、センシュアルダンス! ワーリングエッジ!
Pg.81
Lilisette: ふう……。 うまく敵の意表を突けたわ。出だしは好調ね。 ……獣人軍の勢いもますます増してきているし、まともに正面からやりあってはこちらが不利。敵を分散させて、各個撃破していくという作戦を立てたけど……。 お願い、うまくいって……。
Larzos: リリゼット様!
Lilisette: どうしたの?
Larzos: メリファト山地の偵察隊から新たに伝令です!!
Lilisette: メリファトから? いったい何?
Larzos: その……隊が偵察中に接敵し、未知の獣人……のようなものに遭遇したと報告が。
Lilisette: ……未知の獣人、のようなもの?? どういうことなの?
Larzos: 詳細はわかりやせん。 しかしクァールやヤグードたちに紛れて、見たこともない獣人のような、モンスターのようなものが出現した、と……。
Lilisette: ……いったい何? ひょっとしたら獣人軍が新たな勢力を率いて、こちらを背後から狙いに来たのかも? だとしたら、一大事ね。私が行ってくる。ここは頼むわね。
Larzos: 現状、我が軍が大きく優勢です。ここはしばらくは大丈夫かと。 俺もお供しやす。
[シーン2 メリファト山地]
Atomos: ユオオオオォォ……ン。
Lilisette: 今の音は……?
Pg. 82
―足音や風の音に混じって、再びアトモスの鳴き声が聞こえる。
Atomos: ユオオオオォォン……。
Lilisette: やっぱり、聞こえる……。
Larzos: どうしやした?
Lilisette: いいえ、何でもないわ。ええと、確かこの先ね。 メリファトはひどい砂嵐ね。いつ来ても寂しい場所。
Larzos: この辺りは獣人の勢いが活発です。 どこから敵襲があるかわかりやせん。お気を付けて……。
Larzos: リリゼット様、ヤグードですぜ!
Lilisette: くっ、出たわね! はっ! ダンサーズフューリー!!
Yagudo: ギャギャッ……!!
Lilisette: もう一匹いる! いくわよ、ワーリングエッジ!!
Moogle: クポオオオォォン!!
Moogle: ク……ポ……ォ……。
Lilisette: ふう。危なかったわね。
Larzos: さすがです。リリゼット様。お怪我は?
Lilisette: このくらい、なんでもないわ。それで、報告にあった奇妙な獣人というのはどこ?
Larzos: あの、それです、そこに倒れている、今、リリゼット様がワーリングエッジを炸裂させた、そいつです。
Lilisette: えっ? 待って。どれ?
Larzos: その白いもちっとした豚みたいな……。 何の獣人でしょうな。 オークの子どもでしょうか? それにしちゃあ、弱そうですが……。
Lilisette: ええーーー!! 豚、って、まさか!?
Moogle: ク……クポ……。
Pg. 83
Larzos: まだ息がありやがる。 獣人軍の一味に決まっています。 怪しい奴め! このっ!
Moogle: ……クポオッ。
Lilisette: 待って、そこにいるの……それって、モーグリ……?
Moogle: ウッ……クポッ(ダウンしながらもうなされる)。
Lilisette: 待って、待って、これは……あの、獣人ではなくて……。
Lilisette (Internally): そうか、黒き未来の皆はモーグリを見たことがないんだわ。 こちらの世界は、四国は滅び、あらゆる霊獣も神獣も絶えた世界。 つまり、モーグリもいない、女神の祝福なき世界だもの……。
Lilisette: そいつは、敵ではない、わ、多分……。
Larzos: んん? そうなんですか?
Lilisette: ええ。かなり多分……。
Larzos: リリゼット様、こいつをご存じなので?
Lilisette: 皆は知らないかもしれないけど、私には馴染み深くて、懐かしい存在なの……。 ひとまず安全な場所……カルゴナルゴ城砦に連れていきましょう。
[シーン3 カルゴナルゴ城砦]
Lilisette: ……皆、ご苦労様。オズトロヤの戦況はわかる?
Soldier: ……リリゼット様、たった今、伝令が入りました! オズトロヤ城で我が軍が、常駐するヤグードの全隊を撃破したとのことです!
Larzos: よし。これで奴ら、しばらくは大人しくなりやすぜ。
Pg. 84
Lilisette: やったわね。こちらの被害状況は?
Soldier: 負傷者が数名おりますが、大きな被害は出ていない模様です。
Lilisette: よかった。これで人心地つけるわね。 この隙に私たちも休息して、隊を立て直しましょう。
Atomos: ユオオオォォン……。
Lilisette: ……? やっぱり、アトモスの鳴き声が聞こえる。 アトモスが、動いている? いったいどうして? あの時、私とあいつとで、ふたつの未来が時間を奪い合うのは止めたはず。 黒き未来と白き未来が交わることは、もう二度とないはず。なのに……。 また、未来が互いに干渉しようとしているの?
Larzos: あのモーグリってやつは、ひとまず、ベッドに寝かせておきましたぜ。
Lilisette: あ、ええ。ありがとう。
Larzos: しかし、モーグリ……。 俺ァ伝聞の中でしか聞いたことがありやせんが確かにあんな容姿と言われれば、そんな記憶も……。 かつて、大戦前にヴァナ・ディールに存在し、我々と共に暮らしていたという、不思議な生き物、でしたね。
Lilisette: ええ。そう。 今のこの世界には、いるはずのない生き物だわ。どうして……。
Larzos: 本物なんですかね? その、何かの間違いで突然変異の、モンスターか何か、ということは?
Lilisette: それは考えにくい気がするわ……。
Lilisette (Internally): あり得るひとつの可能性として……ひょっとして、このモーグリは白き未来から来たんじゃ……?
Atomos: ユオオオオォォ……。
Larzos: さっきから、何か聞こえますねェ?
Pg. 85
Lilisette (Internally): ……やっぱり間違いない。アトモスは動いている。ということは……。
Lilisette: ひとまずラーゾス、あなたも休んで。この子……モーグリは、私が見張っているから。 Larzos: はい。
Cait Sith: ……ゼット。リリ……ゼット……!!
Lilisette: その声…… ケット・シー!? どうしたの、どうやってここに?
Cait Sith: アータ、あの音が聞こえたかしらン?
Atomos: ユオオォォン……。
Lilisette: ええ。やっぱり、あれは、アトモスね……?
Cait Sith: ええ。どういう訳かまた、不規則にふたつの未来が干渉し合っているみたい……。 アタクシは���その隙間を通って様子を見に来たのよン。
Lilisette: また、アトモスが動き出したの……?
Cait Sith: 信じがたいけど、どうやら、そのようねン。
Lilisette: ……そのせいなのか、どうなのかわからないけど、ねえ、ケット・シー。あれを見て。 あの、白いモチッとした、あの……私の勘違いじゃなければ。
Cait Sith: あれは……ひょっとしてモーグリですのン?
Lilisette: やっぱりそうよね? この黒き未来には本来いるはずのない……。
Cait Sith: それもそうだし……あの子、なに? 寝ているのン?
Lilisette: それは、あの、気絶しているのよ。 そう、ヤグードに、その……襲われてしまって……。
Cait Sith: あらやだ! でも、本当にモーグリなのかしらン? 疑わしいわねェ。誰か、怪しい奴が化けてるなんてことないかしらン?
Lilisette: えっ、そんなことある?
Cait Sith: 何か、危険なものを持っていたら大変だし、ちょっと探ってみましょう。
Pg. 86
Cait Sith: フーン、このふてぶてしい顔……。 短い手足……。 頭についたボンボン……。 閉じてるのか開いてるのかわからない目……。
Moogle: (寝言で文句を言う)クポッ……。
Cait Sith: 確かに記憶にあるモーグリ族と一緒だわねン。 アタクシほど有能じゃないにせよ、アータたちも何かと世話になったことがあるんじゃなくって?
Lilisette: そう? どちらかというと、トラブルメーカーだった気もするけど……。
Cait Sith: クンクン……獣臭いわねン。 雨に濡れた毛布みたいな……それから、生魚や果物の匂いもするわン……。 この、パンパンに膨らんだカバンの中は何が入っているのかしらン?
Lilisette: ちょっとちょっと、追い剥ぎじゃないんだから……。
Cait Sith: ん~……ごっちゃごちゃに詰め込んであるわねン。整理整頓もできない、なんてだらしない子なのかしら! ええーと。よっ、取り出せたわよン。これは何かしら? ポーション……? それから……よいしょっ、獣人印章? これは? 火打石。それから……ええーと、ポポトイモ? うっ、ぬるぬるするわン、これは……キュスカン。 それから、野兎の皮、火のクリスタル……。
Lilisette: クリスタル……! 久しぶりに見たわ。
Cait Sith: そうねン。 白き未来で生きとし生ける者の中にあるといわれるクリスタル……こちらの世界にないものねン。
Lilisette: ええ。女神アルタナの加護がなくなったこの黒き未来では、クリスタルは失われて久しいわ。
Cait Sith: でも、このモーグリが持っているのは、かつてヴァナ・ディールにあった、まごう事なきクリスタルねン……。
Lilisette: それじゃあ……。
Cait Sith: この子は、アトモスを通って白き未来から、どういう訳かこちらの黒き未来へやってきた。
Pg. 87
Cait Sith: やっぱり、その可能性が高そうねン。
Lilisette: どうして……? アトモスは、私とあいつで、ちゃんと扉を閉じたはず。 このモーグリが、またふたつの未来を繋いだというの? そんなこと不可能なはずよ?
Moogle: ……クポォ。 はつ。ここは……どこクポ。 モグは……いったい何を……。
Lilisette: あっ、起きたわ。おはよう、モーグリ。 あなた、モーグリよね?
Moogle: クポクポー!お助けクポ!もうワーリングエッジは嫌クポ!
Lilisette: ちょ、ちょっと待って。
Moogle: モグは何もしてないクポッ! 暴力反対クポ!
Lilisette: それは、ごめんって。ねえ、いったいあなたはどこから……。
Moogle: ここはどこクポ? モーグリは忙しいクポ。早く帰って、ボナンザの準備をしないと……。
Lilisette: ねえ、あなたどうやってここに来たの?
Moogle: モーグリはお仕事がいっぱいあるクポ……モグ祭りも控えているしお使いも頼まれていたし、それから、返さなきゃいけない預かりものもあるクポ。 それじゃクポ。
Cait Sith: ちょっと!話を聞きなさいよン! 事と次第によっては、大変なことになるかもしれないのよン!
Lilisette: そうよ、またふたつの未来が干渉しあって、どちらかが消滅するようなことになったら……。
Moogle: モグは何もわからないクポ。ただの害のない可愛いモーグリクポ〜。
Lilisette (Simultaneously): (同時に)引っ叩くわよ!
Cait Sith (Simultaneously): (同時に)引っ掻くわよン!
Moogle: ヒッ、クポ! 暴力反対クポ!!
Pg. 88
Lilisette: いいから、答えなさい。 どうやってアトモスを動かしてこちらの未来へやって来たの?
Moogle: 未来? アトモス……?
Lilisette: ここは、あなたがいた場所とは違う世界なの。 危険で、複雑で、祝福のない未来。 あなた、メリファトでヤグードに襲われて、そのまま生き倒れていてもおかしくなかったのよ。
Moogle: エー……。 ただ、モーグリは荷物整理のお仕事をしていて、ご主人さまに届け物をするために、メリファト山地を歩いていて……気がついたら、 ここにいたクポ。 ……そういえば、なんか大きな黒いものに吸い込まれたような気もするクポ?
Lilisette: それ、それよ!
Moogle: そして気がついたらヤグードたちに襲われて、それからは……よく覚えてないクポ。
Lilisette: うーん……。 嘘ではなさそうだけど。
Cait Sith: いーえっ。まだまだとっても怪しいですわン。 これは徹底的に調べないとダメよン。
Lilisette: どうやって?
Cait Sith: 世にも恐ろしい奥の手……拷問よ。
Moogle: ヒッ……クポ!
Lilisette: ええ!?
Cait Sith: そこのアータ!このモーグリを縛り上げてちょうだい!
Larzos: えっ? お、おう。
Moogle: イヤクポー!やめてクポー!!
Cait Sith: ケット・シー一族がひとたびこれを目の前で振られると、飛びつきたくて、いても立ってもいられなくなり思わず相手の言うことを聞いてしまうという、恐ろしい兵器……。 猫じゃらしの刑よン!
Pg. 89
Cait Sith: さあ、これでどう! パタパタッパタパタパタ……。
Moogle: ……何を振っているクポ? モコ草クポ?
Cait Sith: なっ、効かないですって!? アータ、思ったよりやるわねン……。
Lilisette: ケット・シーって、ひょっとして本当はただの猫なの?
Cait Sith: じゃあ第二弾いくわン。尻尾くすぐり地獄の刑よン! こしょこしょこしょこしょ……。
Moogle: やっ、やめてクポ!!! うふっ、うふふふふふふふふ……!
Lilisette: わっ、何の音?
Moogle: あっ、暴れたらモグの持ち物が、落ちちゃったクポ〜。 ちゃんと拾ってほしいクポ!
Cait Sith: はあ、アータ、本当に荷物が多いわねんン。 ちょっと、詰め込みすぎじゃなくって?? 装備品がたくさん散らばっちゃったわよン。 ベルト、指輪、あとこれは、イヤリング……?
Lilisette: ……待って、そのイヤリングは……ちょっと見せて。
Moogle: ダメクポ〜!それはすごく大事なものクポ! 返してクポ!
Lilisette: ……これは、胡蝶のイヤリングじゃない!? どうしてあなたが持っているの?
Moogle: それは、モーグリのじゃないクポ。 ご主人さまの、とってもとっても大事な装備品を預かっているクポ。 なくしたら、すごく怒られるクポ。
Lilisette: 預かりもの……?
Moogle: モーグリは、モグハウスやモグサッチェルで、冒険者さんたちの装備品を預かる仕事をしているクポ。
Pg. 90
Moogle: いつもご主人さまと一緒に装備品を整理してるんだけど、あまりに数が多くてモグの荷物にこれが紛れ込んでしまったクポ。 大事な物みたいだから、今度ちゃんと手渡ししようと、カバンにしまっておいたクポ。
Lilisette: なるほど……そういうことなのね。 そのご主人さまって、ひょっとして……。いや、ひょっとしなくても……。
Cait Sith: フフフ、きっとアイツのことねン。
―頷きあうケット・シーとリリゼット。
Cait Sith: これで合点がいったわン。 アカツキのシンペーさん、女神の片翼である、アイツの想いや力がこもった胡蝶のイヤリング。 それはそれは、特別なものだったってことねン。 もちろん星回りや暦、そういった巡り合わせが偶然重なったんでしょうけど……。 アータ、そのイヤリングの力で、時空をこえてしまったんだわン。
Moogle: えーーっ、時空を超えた……クポ?
Cait Sith: ここは、アータがいたヴァナ・ディールとは別のもうひとつの未来なのよン。
Moogle: えっ……ちょっとわからないクポ……。 でも、なんか空は薄暗いし、知っているメリファト山地よりモンスターは強いし、全然冒険者さんたちに会わないし、なんか変だとは思ってたクポ……。
Lilisette: ……とまあ、謎はすべて解けたんだけど、アトモスが稼働してしまってる問題は、まったく解決しないわね。
Cait Sith: このままじゃあ、またふたつの未来が干渉しあって、どちらかが消滅してしまうわン。 それに、このモーグリを元の白き未来に帰さないといけないし……どうしたら……?
Moogle: モーグリはもう、元のヴァナ・ディールに帰れないクポ? (わざとらしい泣き真似)、それは嫌クポ〜。 モーグリがいなくなったら、困っちゃう人がいっぱいクポ。 収納はあふれ、ボナンザはなくなり、植物は枯れ、海は干上がり、ヴァナ・ディール存続の危機クポ……。
Pg. 91
Lilisette: でも、さっきの理論であなたが来たなら、胡蝶のイヤリングを持っていれば、きっとまたアトモスに吸い込まれて、元の白き未来へ帰 れるんじゃない? そして、イヤリングをきちんと持ち主に返したら、アトモスは止まらないかな……?
Moogle: 本当クポ?
Cait Sith: 試してみる価値はあるわねン。
Lilisette: やってみましょう。私たちが、禁断の口まで送っていくわ。 帰りにまたヤグードたちに襲われたら大変だしね。さあ、行くわよ。
[シーン4 ウォークオブエコーズ]
Atomos: ユオオオォォオオン……。
Lilisette: アトモス、やっぱりまだ動いているわね。 ここに入れば、戻れるかどうか、試してみましょう。
Moogle: うう……ちょっと不安クポ。
Cait Sith: アタクシが一緒に行ってあげるわン。特別にね。
Moogle: ありがとうクポ〜。二人とも、世話になったお礼に、無事に戻れたら何かお礼をしたいクポ。 モーグリは色々持ってるクポ。 ボナンザの景品もあるし、リディルも、クラクラも、ちょっと探せば色々出てくるし……。
Lilisette: それ、本当にあなたの物なの? そんなことより、ちゃんとあいつにイヤリングを返してね。 それから、よろしく伝えてちょうだい。
Moogle: え〜欲がないクポね。みんな冒険者たちはこぞって欲しがる物なのに……。
Lilisette: ん~……。(少し考えて) ……あ、じゃあ、新しいアイテムを合成することはできる?
Pg. 92
Moogle: もちろんクポ! モーグリネットワークで、腕のいい職人にいくらでも頼めるクポ!
Lilisette: だったら、その胡蝶のイヤリングと同じ物をもうひとつ、作れない? それ、私が相棒にあげた、思い出の品なの。 あいつも、大事に持っててくれてるの知って、嬉しかったから……。 だから、白き未来にいるあいつと、黒き未来にいる私、未来タッグで、お揃いでつけたいな、って思って。 ……できる?
Moogle: お安い御用クポ! モーグリの知り合いの凄腕彫金師に頼むクボ。 ……あっ、でもどうやってここに届けに来ればいいクポ?
Lilisette: う~ん、そういえばそうね。やっぱり難しいか。
Cait Sith: ……それは、アタクシに案があるわン。
Lilisette: え?
Atomos: ユオオオォォン……。
Cait Sith: あらやだ、そろそろ行きましょう。 アトモスがいつまで動いているかわからないし、ヤグードたちに勘づかれたら厄介だわン。
Moogle: じゃあ、ありがとうクポ。 ひどい暴力を振るわれたことは水に流すクポ。
Lilisette: そ、それはどうも。
―アトモス、光を放つ。 ―吸い込まれるモーグリ。
Lilisette: それじゃ、気をつけて。
Cait Sith: アータは、行かなくていいのン?
Lilisette: いいのよ。
Pg. 93
Lilisette: 戻ってこれる保証はないでしょ。 ここの皆を守る人がいなくなっちゃう。 それは私も、レディ・リリスも、あいつも、誰も望まない結果だもの。
Cait Sith: フフ。わかってるわン。一応聞いただけよン。 じゃあねン。
Moogle: バイバイクポ〜。
[シーン5 カルゴナルゴ城砦]
Larzos: ……リリゼット様。 数日休んで、隊もそろそろ疲労が取れた頃合いです。 カルゴナルゴを出てバルドニアの部隊と合流しやしょう。
Lilisette: ええ。そうね、 いよいよ獣人軍を北の海に追い落としてやりましょう。 じゃあ、出発しましょうか。
Lilisette: ……あれからしばらく経ったけど、 ケット・シーとモーグリはちゃんと帰れたのかしら。
Atomos: ユオオ……ォォン……。
Lilisette: ……また、アトモスの声? この間のモーグリはもう帰ったはず。今度はいったい、何?
Cait Sith: リリゼットーー!!!
Lilisette: ケット・シー? いったいどうしたの。モーグリを連れて帰ったんじゃ……。
Cait Sith: もう一度、イヤリングの力で、一瞬だけアトモスを動かすことに成功したのよン。
Lilisette: また、モーグリが来たの?
Pg. 94
Cait Sith: いいえ。 あの時のモーグリ、約束通り、新しい胡蝶のイヤリングを作ってくれたのよン。 それを持ってきて、渡すことくらいはできないか試してみたのン。
Lilisette: 待ってよ、それにしたって、そんなに都合よくしょっちゅうふたつの未来が繋がるわけ……。
Cait Sith: 今度は、本来の持ち主に頼んだわン。 アカツキのシンペーさん、本人にね。
Lilisette: えっ、ひょっとして……。
Cait Sith: そう。アイツに、来てもらったのン。
Lilisette: ……え!?
Lilisette: わぁ……! 久しぶり。会いたかった……!! 見てよ? 私、頑張ってるでしょ。 一緒に戦ってた頃よりも、もっと強くなったし、 この辺りの獣人軍はもうだいたい退けたわ。 あなたと一緒に守った未来だもの、 絶対に奪われたりしない。
Lilisette: ありがとう。この胡蝶のイヤリング、 あなたが大事にしてくれてるって聞いて、とっても嬉しかった。 私も、いつも一緒にいると思って、ずっと持っているわ。
Lilisette: ずっと……。
Cait Sith: ……帰っちゃったわねン。
Pg. 95
Cait Sith: 光が消えたから、アトモスも止まったみたい。 どういう条件で動いていたのかアタクシにもよくわからないけど……。 アルタナ様は気まぐれだから、また時が巡ればアイツに会えることもあるかもしれないわン。 Lilisette: ……ええ。
Cait Sith: さっそく、つけてみたらどう? そのイヤリング。
Lilisette: ……うん。中々いいわ、あのモーグリ、 調子のいい子だったけど、約束は守ったわね。 さ、私は次の戦線に行かなくちゃ。
Cait Sith: ええ。じゃあアタクシも行くわ。
Lilisette: ケット・シーも、元気で。
Cait Sith: またね、リリゼット。次はいつになるかしらね?
Lilisette: きっと、遠くない未来にまた会うわ。 ヴァナ・ディールは、まだまだ予想もできないことばかりだもの。 すぐに次の冒険が始まって、私たちは何度でも旅をする。 だから、未来タッグのあなたも、困ったらいつでも私を呼んで。 私、絶対に、どんな手段を使っても助けに行くわ。 必ず……。
(おしまい)
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ataisai · 3 months ago
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小さな友人の小さな贈り物 ~声優・加藤英美里の異世界転移~
FFXI Ibun no Utaibito Transcript
Synopsis 仕事を終えて帰宅した、 声優・加藤英美里。 いつものように 『FFXI』 にログインし、日課にしているコンテンツへの突入手続きを進める。 順番を知らせるチャイムが鳴り、「ズウゥゥン」 という効果音とともに画面が暗転した瞬間、彼女は気を失ってしまう。 気がつくと、 視界に飛び込んできたのは見知らぬ森の焚火の前。 そして森の奥から「ようやく起きたか」 と、 ガルカとエルヴァーンの男性、 ヒュームの女性の3人がこちらにやってくる。 「え!? もしかして私ヴァナ・ディールに来ちゃった!?」
Pg. 57
IV 小さな友人の小さな贈り物 ~声優・加藤英美里の異世界転移~ [はせがわみやび] 登場人物 [現実世界] 加藤英美里 [ヴァナ・ディール] エミリュー: タルタル族の女性。 白魔道士 ダークライト:エルヴァーン族の男性。 ナイト アイアン・フィスト:ガルカ族のモンク マリア: ヒューム族の女性。 黒魔道士
Pg. 58
[シーン1 都内某所]
Narration: 声優、加藤英美里の朝は早い。
Emiri Kato: まぁ、好きではじめた仕事ですから。
Narration: 最近は声優の仕事だけではなく、俳優としての仕事も増えた。 それでも、ファイナルファンタジー11のログインは欠かさない。 起床してすぐ日課のオークションチェックだ。 窓口でお目当てのアイテムの在庫と落札価格をチェックするかたわら、倉庫キャラクターのポストを確認する。
Emiri Kato: 全キャラクターのお財布を管理するのは大変ですよ。 でも、流通量と相場は刻々と変わりますから、一日も欠かせないのです。 さて、あとは必要な薬品をメインキャラに移して……これで完了、かな。
Narration: 今日は金曜日。 アフレコスタジオをハシゴした後、生放送番組に出演。 その合間にイベントの台本をチェックしたりと、実に多忙だ。 日によっては、食事をする時間もないと加藤は話す。
Emiri Kato: でも、自分で選んだ道ですから。後悔はしていませんよ。 それに今週末はアンバスケードにオデシー、そしてソーティの連戦がありますから。
Narration: そう言って加藤はパソコンの電源をつけたまま自宅を出る。 大通りでタクシーを探す加藤に、こう聞いてみた――あなたにとってファイナルファンタジー11とは?
Emiri Kato: ひとことで表すのは難しいですね。 でもね、これだけは言えます。私にとってFF11は――遊びじゃないんです。
Pg. 59
[シーン2 加藤英美里の自宅]
Emiri Kato: ふーっ、今日も一日おつかれさまっと。
Emiri Kato: 時間通りだね。みんな集まっているかな。
Emiri Kato: おいすー、と。
Chat Log: Naitou: おいすー Eric: おいすー Ink: あ、Emiryun! おいすっすー
Emiri Kato: おー、みんなもう集まってるう。ええと、「な・ん・の・話・を・してた・の?」っと。
Emiri Kato (Internally): チャットにいる面子はいつもの三人。 私たちは今夜、週末恒例のアンバスケードへと挑戦することになっていた。
Chat Log: Naitou: そういえばEmiryun、知ってた?
Ink:それだけでわかるわけないでしょ! Eric:ええと、床ペロしているときって、死ん���いるわけじゃないんだってさ
Emiri Kato: ほーん。じゃあ、レイズって死んだ人を蘇らせるわけじゃないってこと?
Chat Log: Ink:「レイズ・デッド」で「死者を蘇らせる」って意味になるから、「レイズ」はそれが語源なんだと思うけど、でもFFXIでは戦線に復帰させる魔 法ってところでしょう
Pg. 60
Chat Log: Naitou: つまり、ヒットポイントがゼロになってホームポイントに戻るっていうのは…… Eric: 命からがら死から逃れたってことだと思う
Emiri Kato: たしかに死亡って表現は使われてないよね。 でも、それじゃあどうやってホームポイントに戻っているんだろうね。
Emiri Kato (Internally): そんな他愛もない雑談をしながら、マウラでみんなと合流。 アンバスケードへと突入したんだけど……。
Emiri Kato (Internally): いつもとちがっていたのは、画面がいきなり真っ白になって、そのまま気を失ってしまったことだった。
[シーン3 異世界ヴァナ・ディール 東ロンフォール]
Emiryu: ん……。ここ……どこ? 森の中? どこかで見たような……。わあ、星がきれい。
―都会では見たこともない星空を見て驚く。だが、まだ自分がタルタルであることに気づいていない。森の暗闇の中からぬっと、大柄な男が現れる。腕と脚の太さがまるで丸太のよう
Iron Fist: おっ、目が覚めたか、エミリュー。
Emiryu: ひっ! だ、だだだ、だれ! って、でかっ!? しかもしっぽ……え、しっぽ? が、ガルカ??
Iron Fist: おいおい、エミリュー。寒さでどうにかなっちまったか? 俺がミスラに見えるか?
Pg. 61
Iron Fist: ほれ、もっと焚火に寄ったほうがいいぞ
―大柄なガルカの背後に隠れていたエルヴァーンのナイト、ダークライトが姿を見せる。
Darklight: やあ。ようやくお目覚めかい? おひめさま。
Emiryu: お、おひめさま? って、耳も首もながっ! しかもこの周りを気にしないキザっぷり! もしかして…… ヴァーン!?
Darklight: なんですかヴァーンとは。
―そしてダークライトのさらに後ろには黒魔道士装備のヒュームの女性、マリアがいた。
Maria: エミリューってば、急に倒れるんだもの。びっくりしちゃったわよ。 もう平気なの?
Emiryu: エミリュー? エミリューって?
Maria: え?
Darklight: は?
Iron Fist: はあ? おいおい、どうした! 記憶喪失にでもなったか?
Maria: おいしいからって、ヤグードドリンク飲み過ぎたんじゃないの? それとも、やっぱりあなたの名前ってあだ名かなにかだったのかしら?
Iron Fist: んん? あだ名ってどういうことだ?
Maria: アイアンは知らないかぁ。 タルタル族の女性って、ウィンダスの都にある大きな樹を基準に、生まれた場所の方角を二回繰り返す、っていう名前のつけ方をするのよね。
Darklight: ほう。なるほど、それならば、名前もエミリュリュ、とかになりそうですね。
Emiri Kato (Internally): そ、そうだったんだ。そんなの用語辞典��載ってたっけ? そもそも私の名前は英美里なんだけど……。
Pg. 62
Emiri Kato (Internally): あれれ?まって、もう体を起こしてるのに、みんながすっごく大きく見えてない? っていうか、私、縮んじゃってる!? しかもいま、ウィンダスとかヤグードドリンクとか言わなかった? じゃあ、やっぱりこの世界って……。
―いつもと様子の違うエミリューに、沈黙する一同。
Emiryu: 私……、いまタルタルなの!?
Iron Fist: そうだな
Darklight: そうですよ
Maria: ええ。あなたはタルタル族で白魔道士のエミリューよ。 パーティを組んでかれこれ一年になるけど、あなたがタルタルじゃなかったことは一度もないわね。 ねえ、まさか、ほんとに記憶をなくしちゃったの?
Emiryu: え、えっと……お、覚えてる、かも
―エミリューは、額に手を当てて何かを思い出そうとしている。
Emiri Kato (Internally): そう、私はタルタル族のエミリュー……だ。両親はミンダルシア大陸を旅する商人だった。 親たちからは、「おまえの名前は旅の途中で知り合った恩人からもらったのよ」って聞かされてて……。 えっ。私いま、どうやって「思い出した」の?
―エミリューはついに気づく。
Emiryu: これって……。私、ヴァナ・ディールに転生しちゃったってこと!?
Iron Fist: どうしたんだ。ほんとうにだいじょうぶか?
Pg. 63
[シーン4 異世界ヴァナ・ディール(回想) バストゥーク港 蒸気の羊亭]
Emiri Kato (Internally): 心配する仲間たちに対して、大丈夫だからと繰り返しているうちに、私は少しずつエミリューとしての記憶を思い出していった。 そう、目の前の彼らと出会ったのは、この世界での一年前。 まだ私がテレポの魔法を使えなかった頃……。
Iron Fist: はっはっは!よーし、もっと呑め! いやあ、おまえたち、話がわかるじゃないか! そうそう、冒険だよ、冒険! 真に大切なやるべきことはそれだ! これからは冒険者の時代なんだ!
Darklight: 同感ですね、アイアン・フィスト。 これからは冒険者こそが世界を動かすのです。 私はサンドリア生まれの冒険者として、功成り名を遂げて、我がサンドリアこそが、世界で唯一の偉大なる国家であることを示さなけ ればなりません。
Maria: ダークライト、だったら、そんな妙なふたつ名を名乗ってないで、ちゃんとサンドリア人らしい本当の名前で通したほうがいいんじゃ ないの?
Darklight: 何を言うんです、マリア。この名前のすばらしさがわからないのですか。
Maria: ダークでライトとか。暗いのか明るいのかはっきりしなさいよ! 消し忘れかよ!
Darklight: そこがいいんじゃないですか。ふふ。我こそは、ふたつの世界の狭間に立つ者! くぅ、かっこいい!
Maria: へんたい……。
Darklight: (気にせず) ねえ、タルタルの美しいお嬢さん。 あなたもそう思うでしょう。
Emiryu: (美しいと言われて思わず) うええ!? あ、ええとその……あはは。そ、そうだね。いいと思うよ。うん。 いいんじゃないかな…… たぶん。
Iron Fist: ふん。名前なぞ、人々の役に立ち、偉大な功績をあげれば、勝手に広まるし、どんな名でも格好よく思えてくるものだ。
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Iron Fist: たとえヒュームとの付き合いのためのものでもな。 いまはまだ「聞いたことはない」と言われていても、いずれは「知らぬ者はいない」と言われるようにしてみせる。 俺は自分の力を試したい。魔法になど頼らず、この身ひとつでどこまで戦えるかを極めたいのだ。
Darklight: いかにも格闘家らしいですね。ええ、そのような野心は大切です。 けれど、冒険とは過酷なものです。一人ではままならないのも事実。 傷を負えば癒やしてくれる者が必要ですし、この世界には魔法でしか傷つけられない魔物もいるのですから。
Maria: あたしは、酒代が稼げりゃなんでもいいんだけどね。 ミスリルの砂粒集めてくるのなんて、ちょーだるかったー。 もうやりたくなーい!
Emiryu: 私も冒険者になりたての頃に経験あるよ。 あれ、大変だったよね……。
Maria: 街まで帰るの嫌だったから、デジョン覚えたよーなもん! 楽して稼ぎたーい。
Darklight: (呆れて) マリア、あなた、呑み代を稼ぐために黒魔法を覚えたんですか。
Maria: 歩きたくないでござる。 移動の魔法が使える白か黒のどっちかがいいなって。
Darklight: やれやれ。なんという……。 これだから、目先のことしか考えないヒュームは。
Maria: お仕事きめるときなんて、そんなもんでしょ。 ねえ、エミリューだって、そーよね?
Emiryu: わ、私? ええと、そのう……。 そもそもは弟たちが病弱で……それで……すこしでもあの子たちを元気にしてあげられないかなって……。
Maria: エミリュー! あなた……なんて、いい子なの!
―マリア、席が隣のエミリューを抱きしめて、頭を撫でる。
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Emiryu: そそ、そんなことないよ。 で、せっかく覚えた魔法だから、もっとたくさんの人たちを助けられないかなって思って……。
Darklight: ではエミリュー。まず私たちから助けてください。 私たちがパーティを組めば完璧です。 モンクにナイト、白魔道士に黒魔道士。こんなにバランスのいい組み合わせはありません!
Maria: お宝は漁れないけどね。
Darklight: ならば、マリア、あなたが盗賊の技も身に付ければよいのです。 セルビナの港に行って「生き残るための技術」を学べば可能ですよ。
Maria: セルビナって、さあ……。 あそこに行くまでの洞窟に、コウモリが出るじゃないの。 わかってる? 死んだら、死んじゃうのよ?
Iron Fist: 俺は、マウラにいる「ごうつくばあさん」も何かしらの知恵を授けてくれるって話を聞いたぞ。
―ダークライト、マリア、アイアン・フィストの三人が喧々諤々の会話を始める。
Emiryu: ふふ。でも、みんなで冒険の話をするのって楽しいね。 今日、一日でこんなに仲よくなれたんだもん。 きっと私たちっていいパーティになれるよ!
Iron Fist: うむ。
Darklight: もちろんです。
Maria: まあ、お酒が楽しく呑めるなら、多少ヘンなやつでも我慢するかあ。
―意気投合した4人はその後、出会いを祝して一晩中飲み明かすのだった。
Emiri Kato (Internally): こうして、私たちはパーティを組むことになったのだった。
Pg. 66
[シーン5 異世界ヴァナ・ディール(回想)]
Emiri Kato (Internally): バストゥークで知り合った私たちは、まずはジュノ大公国を目指した。
―パシュハウ沼にて。
Maria: ダークライト! あんた、なんであんな化け物に「やあやあ、どうもどうも」とか挨拶してんのよ!
Darklight: コミュニケーションの基本だからですよ?
Iron Fist: 沼地のでかいのには関わるなと言われてただろうに! ええい、走れ走れ! 逃げ切るぞ!
Emiryu: こわいよー!
―ジュノ大公国にて。
Emiryu: わ! 大きな橋の上に街ができてる!?
Darklight: あれが……ジュノですか! すごいところに造りますね!
Emiryu: 飛空艇が飛んでく! わあ、入れ替わるように向こうから新しい飛空艇が飛んできた!
Maria: ジュノは飛空艇のターミナルでもあるの。 この街はふたつの大陸に存在する三つの国と飛空艇で行き来できるのよ。
Emiri Kato (Internally): ジュノを経由して、東のミンダルシア大陸へと渡った私たちは、そのまま南へと下ってウィンダスに。
―ウィンダス連邦にて。
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Iron Fist: ここがエミリューの故郷ウィダスだな。
Emiryu: うん。育ったのはこの街だよ。
Darklight: おお、(ぺちぺちとカーディアンを叩きながら) こいつが名物の機械人形・カーディアンですか! って、なんで追いかけてくるんですかぁぁぁ!
Maria: そりゃ、持ってる杖を取り上げようとしたら怒るわよ……。
Emiri Kato (Internally): ウィンダスにしばらく滞在してから、船に乗ってクォン大陸へと戻った私たちは、再び大陸を北へと向かって……。
[シーン6 異世界ヴァナ・ディール 東ロンフォール]
Maria: エミリューってば、大丈夫なの? もうすこし休んだほうが……。
Emiryu: だ、だいじょうぶ。 ……ちょっと眩暈を感じただけ。
Iron Fist: 依頼に期限があるからな。 あまり休んでるわけにもいかん……エミリュー、どうだ? 歩けそうか?
Emiryu: う、うん。
Iron Fist: この先の、ラングモント峠に入って、抜けた向こうにあるアウトポストがポーションの届け先なわけだが……。
Maria: 峠と言いつつ、ほぼ洞窟だけどね。
Darklight: 伝説では、いにしえの修道士ラングモントが、己の拳ひとつで掘りぬいたって言われていますね。 彼は、その先に「楽園への扉」があると信じていたそうですよ。
Emiryu: 「楽園への扉」……神々の眠る地へと繋がる扉のことだよね。 それが本当にそんなところにあるのかな?
Maria: あたしとしては、気になるのは楽園って呑み放題なのかってことね。
Darklight: 神々の眠る場所ですよ? お酒などもってのほかです。
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Maria: ちっとも楽園じゃないわ……。
Iron Fist: 伝説はともかくだ。 ここからは寒さも厳しくなる。 峠の先は涙も凍るボスディン氷河、 そして氷の大地ザルカバードだ。 闇の血族の力が強い地でもある。
Darklight: 闇の血族……。 そういえば……サンドリアの街で噂になっていましたね……。
Maria: 噂?
Darklight: はい。闇の王のです。 闇の王が復活してズヴァール城に帰還した、と。
Maria: おお、こわい。 できれば、そんな物騒なヤツとは会いたくないわねぇ。
Iron Fist: 闇の王なぞ 今の俺たちでは歯が立たん。 どのみち、 俺たちの今回の任務は国境警備兵に備蓄用のポーションを届けるところまでだ。 高級なやつだからな。量は少なくとも貴重品だ。慎重に行くぞ。
Darklight: 物資を届けて、 アウトポストの転移装置に登録を済ませたら、さっさと帰りましょう。
Maria: あったりまえじゃないの。 お仕事終わったら、すぐ戻るわよ。
Emiryu: うん。 私の魔法でラテーヌまで送るね。
Maria: 街に戻ったら宴会よ、宴会! しゅちにくりんするんだから!
Darklight: そこまで呑めるほど報酬が出ますかねえ。
Maria: だったら、寄り道しない? ほら、あっちの噂もあるじゃん。
Darklight: あー、あれですか……。 本当ならば、確かに高額で売れるようなのですが……。
Emiryu: 高く売れる?
Iron Fist: 魔物の中には戦った冒険者が身に着けていたものを奪い取っている奴らがいるだろう?
Maria: たとえばほら、アモルフって呼ばれる魔物たちとかさ。 捕まえた獲物を体の中に溶かして吸収しちゃうでしょ?
Emiryu: と、溶か……。 (思い出して) あ、そ、そうだね……スライム、とかだよね。
Maria: そうそう。 ヘクトアイズとかもそう。 実はさ、ラングモント峠に入ったきり行方不明になってる魔道士がいてね。 そいつは魔法のスクロールを運んでいたってゆー噂が。
Pg. 69
Iron Fist: そのスクロールが極めて珍しいもので、未だに見つかっていない。 だから、途中で魔物に倒されて、そいつが持っているんじゃないかって話になってる。
Darklight: 魔法が掛かっている品は、滅多なことでは破けたり溶けたりしませんからね。 たしか……「リフレシュ」でしたか。
Iron Fist & Maria: (目を輝かせながら) おお!
Emiryu: ないないない! それは、デマ!
Iron Fist: んん? ほう。エミリューにしてはやけに自信ありげじゃないか。
Emiryu: えっ。(しまったと思いつつ)か、勘だけど!
Maria: でも、確かめてみるくらいは、いいんじゃない?
Darklight: チャンスがあれば、ですね。
Iron Fist: 依頼をこなすほうが先だがな。 さて、体もあったまっただろう? そろそろ行くぞ。
Everyone: 「ええ」「はい」「あーい」
Emiri Kato (Internally): こうして、私たち4人はラングモント峠へと足を踏み入れたのだった。
[シーン7 異世界ヴァナ・ディール ラングモント峠]
Iron Fist: おい、エミリュー。 前に出るな。
Emiryu: え? あう?
Darklight: いつもの並びを忘れたんですか、エミリュー。隊列を組むときは、前と後ろは魔物が出てもすぐ戦える人です。 つまり、私かアイアン・フィストです。絡まれたら困る魔道士は真ん中ですよ。
Iron Fist: 俺が前に出る。おまえのような鎧をガシャガシャ鳴らしてるやつを前にできるものか。
Pg. 70
Darklight: (肩をすくめつつ)ということです。
Emiryu: 洞窟の中って……こんなに暗いんだね。 ゲームの中とは全然ちがうよ……。
Darklight: ゲーム……? それはそうでしょう。洞窟ですからね。
Maria: だからこうして、ランタンをもってるんでしょ。
Emiryu: 足下はつるつる滑るし。
Darklight: 地下水が染み出しているようですね。まあ、洞窟ですからね。
Emiri Kato (Internally): 揺れる明かりに照らされて壁に踊る自分たちの影も、エミリューにはともかく、英美里である私には初めての経験だった。 明かりの届くぎりぎりのところまで先頭のアイアン・フィストが偵察に行っては戻ってくる。 なにごともなければそこまで進む。 ほんの少しずつの歩みだけれど、安全のためには仕方なかった。 そしてもし魔物がいても―。
Iron Fist: (ささやくように)ゴブリンだ。(指を3本立てて)3匹だな。
Darklight: どうです。勝てそうですか?
Iron Fist: いけるとは思うが……正直、ここの奴らとは戦ったことがないからな。
Emiryu: 「同じくらいの強さだ」ってこと? それとも「丁度よい相手だ」ってこと?
Maria: なに、それ?
Iron Fist: ふむ。それはわかりやすい伝え方だな。エミリューの言葉を借りるなら、同じくらいの強さってところだ。
Darklight: よい表現です。 今度からそれでいきましょう。 では、エミリュー、姿と音を隠す魔法をお願いします。
Emiri Kato (Internally): 私たちの任務は物資を届けることで、魔物の討伐ではなかった。 だからこそ、私たちはインビジとスニークを駆使し、どうしようもない時以外は戦うことを避けた。 そして、ゴブリンたちの目をかいくぐり、しばらく歩いたところで休憩することになった。
Pg. 71
Iron Fist: (偵察から戻ってきて) この先で分かれ道になっているぞ。 右と左……どちらに進むべきか……。
Emiryu: (考えこむ) 分かれ道……? ああ、たしか、右上に行けばボスディン氷河で、左上に行けば忘却の泉だったと思うけど……
Iron Fist, Darklight, & Maria: (いっせいに天井を見上げる) 上……?
Emiryu: ちがうちがう! 画面の上!
Iron Fist, Darklight, & Maria: (きょろきょろと左右を見る) 画面……?
Emiryu: (はっとなって) あああ! だ、だからほら、ちがくてちがくて!
Maria: ひょっとして地図の上……北ってことかしら? (懐から取り出した地図を見る) でも、この先って地図もあやふやなのよね。
Darklight: 仕方ありません。 まだまだ北の地は未踏破なところも多いですから。
Maria: でも分かれ道のこと覚えてるなんて。エミリューってば、よく地図を見てたのね。珍しい。
Emiryu: そそ、そんな気がしただけ!
Darklight: 左手の法則を使うなら、左の道ですが……。
Emiryu: 左手のほうそく?
Maria: 迷わないように左手を壁につけながら歩く探索方法のこと。 前に教えたでしょ。
Emiryu: 右手じゃダメなの?
Darklight: 武器をもつ手ですからね。 利き手は空けておくものです。
Pg. 72
Emiryu: 意外と不便……って、あ、思い出した! 私たち、リンクパールもってない! 連携、どうしよう!
Iron Fist: なにを今さら言ってるんだ。 声を掛け合えばいいだろう?
Darklight: あれ。 高いですもんね……冒険者割引とかないですかね?
Emiryu: び、貧乏パーティ……。
Maria: エミリューってば。ほんっとに今日はおかしいよ? リンクパールを持ってないなんて今さら今さら。へいきへいき。
Emiryu: (おそるおそる) でも……このままだとボスディンから遠ざかっちゃう……かも? そこでおっかないモンスターとかいたら?
Iron Fist: もちろん、逃げる。
Darklight: 逃がしてくれれば、ですけどね。
Maria: (首から提げているアミュレットを取り出して) いざとなったら、 これ!
Emiryu: あ、その首飾り……なんだっけ……思い出した! ええと……ヒットポイ、じゃなくて、生命力の低下を魔法で感知して、あぶなくなったら転移装置まで帰還させてくれるお守り、だよね。
Maria: そうだけど……。 なんで、新米冒険者に説明するみたいになってんの?
Emiryu: あ、あはははは。うん、知ってる。 知ってるよ?
Darklight: あまりお世話になりたくはありませんが……。
Maria: そうねぇ。エミリューは使ったことないって言ってたでしょ?
Emiryu: (胸元の、アミュレットのあるあたりを撫でながら) ないない。 ないから、とっさに出てこなかったんだもん。身に着けてることさえ忘れてた!
Maria: あのね。使わないほうがいいの。知ってる? (すごく嫌そうに) 死にそうなときってね、死にそうなほど痛いのよ? 痛いのはイヤでしょう? どれくらい痛いかっていうとさ。その前後の記憶がぜんぶ吹っ飛んじゃうくらい痛いわけ! いろんなこと忘れちゃうくらい。
Emiryu: ああ、だから経験値が減っちゃうのか。
Maria: けいけんち?
Emiryu: な、なんでもないよ!
Pg. 73
Darklight: だから、絶対になくしたり落としたりしちゃダメだぞ。
Emiryu: (ごくり)そう、なんだ……。えっと、で……ここは左に行くんだね?
―警戒しながらしばらく洞窟を進む一行。
Iron Fist: やっかいなやつがいるぞ。
Darklight: 「きょろきょろコウモリ」ですか……。
Emiryu: シーカーバットのことかな? あぁ、たしかに頭を振って誰かを探しているみたいだね。
Maria: 先のほうまで、けっこうな数がいるわねー。 エミリューの魔法、もつかしら。
Darklight: 隠れる魔法が途中で切れたら、絶対に絡まれますね……。
Emiryu: うー……タイマーとか、せめてログを出して……そういうわけにもいかないか。
Iron Fist: (ため息) エミリュー……どうだ。もつと思うか?
Emiryu: 自信ない……かも。こんなに長い洞窟は初めてだから……。
Maria: (しばし考えて) ロープを使いましょ。みんなで同じロープをつかんで歩くの。 エミリュー、あなたは魔法が切れそうになったら強く引っ張って。 そしたら、いちばんあいつらの少ないほうに向かってみんなでダッシュ! いい?
Iron Fist: わかった。それでいこう。
Darklight: では、ランタンの明かりも消しましょう。
Emiri Kato (Internally): 私たちは全員で一本のロープをもった。これが文字通りの命綱だ。 ランタンの明かりを、覆いをかけて消すと、あたりは真っ暗になる。 それから姿と音を魔法で隠して、おそるおそる前進したんだけど―。 私は忘れていた。 ここは北の地に近い洞窟で、足下は湿っていて滑るのだ。
Pg. 74
―真っ暗闇となった洞窟を進む一行。視界は奪われ、聞こえてくるのはコウモリの鳴き声と水が滴る音のみ。
Emiri Kato (Internally): ちりちりっとしたイヤぁな感じが、背筋を駆け昇ってきた。 あ、やばい。魔法が切れそうだとわかる。 でも、まだコウモリたちの飛び回るあたりを半分ほど越えたところ。 進むにも戻るにも中途半端で……。
Emiri Kato (Internally): あと、もうちょっと……お願い、もって! そんな私の願いも虚しく、ふっ、と体の表面から何かが剥がれ落ちるような感覚がやってくる。 魔法が―消える。慌てて、私はロープを強く引く! その瞬間に、私は足を滑らせてその場にひっくり返ってしまった!
Darklight: クッ、きょろきょろコウモリがすぐそこに!
Maria: エミリュー! アイアン、エミリューを抱えて!
Iron Fist: 前だ! 走れ! エミリュー、暴れるなよ!
Emiryu: アイアン! ダメ、放して! 来るよ!
Darklight: へいへい! いつまでママのスカートに隠れているんだい!?
Iron Fist: マリア、ランタンの明かりを! エミリュー、俺たちの後ろにまわるんだ!
Maria: あいよ! ええい、こっちくんな! 魔力よ、縛れ! バインド!
Maria: ほら、エミリュー! こっち!
Emiryu: う、うん! ごめん!
Maria: いいって! って、やば! 目玉おばけ、来た!
Emiryu: あれ、は……アーリマン!
Darklight: ここは私が!
Pg. 75
Emiryu: ダメ、あいつの……あの目を光らせては……。
―アーリマンのアイズオンミーがダークライトに直撃する。
Darklight: うおおお!
Iron Fist: ダークライト! 無理せず、引け!
Darklight: なん……の、これしき……。私は誇り高きエルヴァーンの騎士! 仲間を守る盾として役立てなくてなんのナイトか!
Maria: エミリュー! 癒しの魔法をそんなに使っちゃダメ! あなたが狙われちゃう。
Emiryu: で、でも……。
Maria: 敵、多すぎ! ええい! 荒ぶる雲間より現れるまばゆき輝きよ、闇を裂き森を焼く猛々しき力よ、汝の力もて我らが敵を討て。雷よ、広がりて疾走(はし)れ! サンダガ!
Iron Fist: マリア、 ここでその魔法はマズい! 狭すぎる!
Darklight: エミリュー、 そこから離れて!
Emiryu: ひぃぃぃ!
Maria: あぁぁぁぁ、ごめーん! 大丈夫?
Emiryu: う、うん。ちょっと前髪が焦げたかもだけど。
Iron Fist: このままではもたん、押し切られるぞ! マリア、撤退だ!
Maria: あいよ! みんなこっち集まって!
Maria: ……ほの暗き地の底から、閉ざされた地下牢の中から、果てなき迷宮の奥からも、我と仲間らを解き放て、光射すもとへと我らを導け、エスケ―。
Maria: きゃああ!
Pg. 76
Iron Fist: マリア!
Darklight: マリア!
Emiryu: マリアさん!
Emiri Kato (Internally): 死にそうなときって死にそうなほど痛い……ってマリアさんが言ってた。 このままじゃ、みんなそうなっちゃう。でも! そんなことにはさせない!
Emiryu: 女神よ……。 暁の女神よ。 我らを護りし女神よ、我らを慈しみし女神よ、貴女の涙より生まれ、この大地に生きゆく、貴女のいとし子らに、どうか、ささやかなる祝福を!
Iron Fist: いかん、エミリュー、それではおまえが狙われるぞ!
Darklight: フフっ、みなぎってきましたよ!
Iron Fist: 一匹でも多くあいつらをエミリューから引き離すんだ!
Darklight: もちろんです! 何人も私の前では死なせない!
Maria: エミリュー、耐えて! 必ずなんとかする!
Emiryu: うん……痛い……痛いよ……。あぁ、アミュレットが光ってる……そうか……私……。
Darklight: 我が剣を纏いし紅蓮の炎よ、敵を焼き尽くせ! レッドロータス!
Darklight: 今です! アイアン!
Iron Fist: 任せろ、うぉぉぉお! 拳よ唸れ、乱れ咲け! 乱撃!
Darklight: マリア、仕上げを!
Maria: エミリューの仇ぃ! 炎よ、広がりて敵を焼き尽くせ! ファイガぁ!
Emiryu: 私……まだ、いきてるんだけ、ど……。 (ガクっと気絶)
Maria: エミリュー! 仇は取ったからね! みんな集まって。逃げるよ! ……ほの暗き地の底から、閉ざされた地下牢の……エスケプ!
Pg. 77
[シーン8 加藤英美里の自宅]
Emiri Kato: えっ……? あ、あれ? ここ、どこ? えっ、私の部屋? まさか……夢……?
―なんとなくがっかりしながら体を起こし、まわりを見渡し違和感を覚える。
Emiri Kato: ……あれ、いつ着替えたっけ? なにこのカップ麺の山! お菓子の袋もぜんぶ空いちゃってるし! しかも日付が……変わってる!?
―しばらく呆然とする。
Emiri Kato: ええと、たしかアンバスケードに入ったところから記憶がなくて……。
―何かを思い出そうと考え込んでいると、ふとロンフォールの音楽が聞こえてくる。
Emiri Kato: あ、あのごめん……。
Chat Log: Naitou: ああ、きたきた Eric: いきなり反応がなくなったから、寝落ちしたかと思ったよ Ink: 今日も仕事でしょ。 大丈夫?
Emiri Kato: う、うん。ねえ、なんで私ロンフォールにいるの?
Pg. 78
Chat Log: Ink: え? Naitou: は? Eric: はあ? おいおい、どうした! 記憶喪失にでもなったか?
Emiri Kato (Internally): 三人によれば、私は一晩中ログインしっぱなしだったらしい。 アンバスケードを終えたあとは、なぜかラングモント峠に行きたがり、そして丸一日かけて隅々まで歩き回り、出会うヘクトアイズを片っぱしから狩りたがったそうだ。 しかも、あまりしゃべらず、おかしな振る舞いをしていたとか。
ふと、キャラクターのかばんの中を確認する。 そこには、親の仇みたいな勢いでアイテムリストを埋め尽くすヘクトアイズの眼。
そんな中、ぽつんとひとつ、かばんの底に。 驚いたことに、リフレシュのスクロールが入っていた。 それだけは売ることができなくて。
遠い世界の私の分身のその小さな贈り物を、私は今も大切に残しているのです。
(おしまい)
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ataisai · 3 months ago
Text
浦蛇太郎
FFXI Ibuno no Utaibito Transcript Synopsis ある日、 ルガジーンはアトルガン聖皇ナシュメラから直々に「とある祝賀の宴について、 将軍たちに折り入って頼み事がある」 と告げられる。あいにくザザ ーグとナジュリスは蛮族軍の捕虜となっており、 皇都で動ける者はミリとガダラルのみ。 さて、このふたりとともに何を頼まれるのだろうか。
Pg. 43
III 浦蛇太郎 高橋 玖 登場人物 ルガジーン ミリ・アリアポー ガダラル ファリワリ
Pg. 44
[シーン1 アルザビ]
Fari-Wari: ここはミンダルシア大陸から海を隔てた遙か東、エラジア大陸西部に位置する、アトルガン皇国。 その首都、アルザビでは来る日も来る日も魔笛を巡る蛮族の襲撃があり、五人の勇ましき将軍が、街の防衛のために立ち向かっているのでございます。 さてさて、そんなある日のこと―。
―ミリ、城壁の上あたりから周囲を見回している。
Mihli: ……フンフーン。 ワジャーム樹林もバフラウ段丘も、今日はモンスターが少ないね。 バルラーン絶対防衛ラインも異状なし……。 蛮族の奴ら、大人しくしてるみたいだな。 それじゃあ、今日はシャララトでチャイでも飲んで、ゆっくり過ごしちゃおうかな〜。 アルザビ防衛の要、水蛇将のミリ様といえど、たまには休暇が必要だよね。 さ~て、何しようかな~。 食べてみたいスウィーツもあったし、久しぶりの非番だから奮発しちゃお~。
Rughadjeen: おーい、ミリ! ここにいたのか。
Mihli: あ���ルガジーン。 どうしたの。
Rughadjeen: いいところに。じつは折り入って頼みがあるのだが……。
Mihli: え~なんか面倒なこと? 今日、ボクは遊びに行こうと思ってたんだけどな~。
Rughadjeen: ガダラルも! すまんが、こっちに来てくれ。
Gadalar: いったい何だ。 忙しい俺サマを呼びつけるなど、相当の用だろうな?
Rughadjeen: (とても深刻そうな顔で)二人とも、聞いてくれ。 我らが五蛇将始まって以来の…… いや、アトルガン建国以来の、一大事なのだ。
Pg. 45
Gadalar: ……むっ?
Mihli: えっ、そんな。いったい……どうしたっていうのさ。
Rughadjeen: ミリ、ガダラル。どうか力を貸してほしい。 もう、私だけではどうにも……。
Gadalar: なんだ、 蛮族に異変でもあったか? 俺サマがまとめて片付けてきてやるぞ。
Mihli: ルガジーンをそこまで悩ませるなんて。それか、まさか聖皇ナシュメラさまの身に何かあったとか……?
Rughadjeen: 実はな……。
Rughadjeen: ……先日、私は皇宮に呼び出され、聖皇ナシュメラ様に拝謁させていただく僥倖があったのだが。
Ovjang: ……くるシウナイ。 キョウハ、オリいッテたのミガアルノダ。
Rughadjeen: はっ。
Ovjang: ナシュメラ、ジキジキノ、 ねがイデアルゾ……
Mihli: ……で、何だったのさ?
Rughadjeen: 聖皇さまはこう仰った。 その、来たるめでたき日に、我々で執り行いお納めする儀式のことを……。
Gadalar: 説明が焦れったいぞ。さっさとしやがれ。
Mihli: つまり、どういうことなのさ?
Rughadjeen: ええーーーと、芝居だ! 聖皇さまは、来たるご自身のお誕生祝いに、芝居を望んでおられる。
Gadalar: 芝居だと??
Mihli: お芝居? どういうこと?
Rughadjeen: つまり、聖皇さまがお喜びになりそうな芝居、つまり演劇、舞台、をだな、我々に演じてほしい、と言うことだ。
Pg. 46
Mihli: ええ〜っ!!?
Gadalar: 断る!!
Mihli: なんでボクらなの? そんなの、その辺のからくり芸人でも呼んでくればいいじゃんか!
Rughadjeen: それはそう……そうなんだが。聖皇さまたってのお申し出でな。
Gadalar: 貴様一人でやれ、帰る!
Rughadjeen: 待て、待て待て待て。頼む、待ってくれ。
Gadalar: くだらん! 皇国防衛の要である将軍が、なぜ芝居ごっこなどに興じねばならんのだ! どうしても、というならザザーグとナジュリスにでも頼め!
Rughadjeen: ナジュリスもザザーグも捕虜で居ないのだ。お前たちしかいない。頼む。
Gadalar: 傭兵どもに言って、連れ戻させろ!
Rughadjeen: そんな時間はないのだ。稽古には時間がかかるだろう? 聖皇さまは異国の本か何かで、様々なお芝居のことを知られたようでな。 たいそう、憧れておられるそうだ。 普段お一人で公務に励まれ、聖皇さまは同年代の友人や、気の置けないお仲間もおられない。 お一人で寂しくしておられる聖皇さまを、少しでも元気づけて差し上げられないものか、と。
Mihli: ……ふーん。そういうことなら……まあ、気持ちはわかるけど。 ま、ボクも、聖皇さまには、昔けっこうお世話になったし……。 いいよ。やったげる。
Gadalar: ミリ……お前ッ!
Mihli: ガダラル、諦めなよ。断ったら、反逆罪で捕まっちゃうかもよ。
Gadalar: なんだと!?
Rughadjeen: よし、わかった、ガダラル。もし引き受けてくれるなら お前がこの間壊した店舗三軒と城壁、露店五軒の分、我々将軍にあてられた公費から賠償金を出してやる。 それでどうだ。
Gadalar: ぐぬぬぬぬ、クソッ、 卑怯だぞ!!
Pg. 47
Rughadjeen: ……よし、決まったな。 (二人を見渡して)将軍に二言はなしだぞ。
Mihli: うん。でもさあ、ボクら誰もお芝居なんてやったことないじゃん。 どうするつもり?
Rughadjeen: その通りだ。まあ、まずは演目を決めないといけないだろうな!
Mihli: なんでちょっと嬉しそうなの……。
Gadalar: 貴様、本当はやりたいんだろ。絶対そうだ。
Rughadjeen: うーん、どこかに演劇に詳しい御仁がいないものかなあ。
Fari-Wari: ……話は聞かせてもらいましたよ!
Mihli: わっ、誰?
Fari-Wari: どうも、ご無沙汰しております。 アトルガン皇国が誇る天才吟遊詩人タルタルこと、ファリワリです。
Mihli: ファリ……? 誰だっけ……。
Fari-Wari: 忘れたとは言わせませんよ!! 茶屋シャララトで、五蛇将の皆さんの歌を長きにわたって歌い続けてきたわたくし、ファリワリでございます!!
Rughadjeen: え、ああー。そんなこともあったな?
Gadalar: 記憶にねェな。
Fari-Wari: 失礼な! わたくし、ガダラル将軍のファイガに何度お尻を焼かれたかわかりませんよ。 あの狼藉を覚えていないですと?
Gadalar: 火力が足りなかったか? 今度こそ灰にしてやるぜ??
Fari-Wari: ヒィーー! ……ま、まあいいでしょう。 物語といえばわたくし。わたくしといえば物語。 天才戯曲家と名高いわたくしが来たからには、演目の成功はまちがいなし! 皆さん大船に乗った気持ちでいてください。
Rughadjeen: おお、協力してくれるのか!
Fari-Wari: ええ、ええ。お安い御用です。 今日また改めて、皆さんはこのわたくしの才能にひれ伏すことになるでしょう!
Pg. 48
Mihli: 詩人じゃなかったの?
Gadalar: 信用できんぞ、このタルタルは。 以前やらかして傭兵と一緒に皇宮で査問されたこともあるそうだ。
Rughadjeen: まあまあまあ。 この際、力を貸してくれるなら、歓迎しようではないか。
Mihli: じゃあさ、ボクはかっこいい勇者の役でよろしく~。 ガダラルは何がいいかなあ? よく捕まるから囚われのお姫様?
Gadalar: 貴様ァッ、ふざけるなァッ!
Mihli: あははは!
Rughadjeen: お前たち、喧嘩するな!! ああもう、どうしたらいいのだ。
Fari-Wari: まったく先行きは不安ですが、ルガジーン将軍。 このわたくしに妙案がありますよ! 演目ですが、東方に伝わるおとぎ話、浦蛇太郎(うらへびたろう)、などは如何でしょう。
Rughadjeen: うらへび……たろう?
Mihli: 何それ、知らないな〜。
Fari-Wari: そうでしょう、そうでしょう。 なんといっても、聖皇さまにお納めする畏れ多きお芝居。 ここは皆が知ってるような、ありきたりな演目ではいけません。 がっかりされてしまいます。 売れっ子作家たるもの、常に観客の度肝を抜く! エンターテイナーはその気概を持っていきましょう!
Mihli: いや、ボクらは将軍で戦いが本分なんだけど……。 ま、いいや。で、どんな話なの?
Fari-Wari: 浦蛇太郎、という青年が海で蛇を助けると、 なんか、お礼に海の中に連れていかれて、 乙姫という姫に助けられて、色々あって、 最終的におじいちゃんになる、って話です。
Pg. 49
Mihli: はぁ? 全然わかんないよ。面白いのそれ?
Fari-Wari: 面白いです! 長きにわたって語り継がれている古典名作ですよ。
Rughadjeen: うーむ……。
Fari-Wari: とにかく! 配役を発表します! まずは主役! 浦蛇太郎はルガジーン将軍!
Rughadjeen: お、おう。
Fari-Wari: 海の中の「竜宮城」で浦蛇太郎を迎える乙姫役、それはミリ将軍でいきましょう。可憐な役なのではまり役ですよ。
Mihli: フーン。ボク、お姫様って柄じゃないんだよねえ。ま、いいけど。
Fari-Wari: そして、蛇は……そうですね、ガダラル将軍。
Gadalar: おいッ!!?
Fari-Wari: ぴったりです!
Gadalar: また焼かれたいらしいなッ!?
Rughadjeen: わがまま言うな。ガダラル。 アトルガン皇国の象徴、蛇王ザッハーク伝承にも通じ、我々将軍の名を冠する蛇を演ずるなど、名誉なことだぞ。
Mihli: そうだぞ~!
Gadalar: 畜生……畜生ッ!!
Fari-Wari: はいはい、ではいいですか、皆さん。 それでは、まず、海辺で蛇がいじめられているシーンからスタートしますよ! 本来ならば、蛇は名もなき子どもらによって無残にもいじめられておるのですが、今回はキャストがおりません都合上、不肖わたくしめが、 蛇をいじめさせていただきます。 えいっ、えいっ! あやしい蛇め、踏みつけてやる、えいえい!
Gadalar: ぬっ!? (怒り)
Fari-Wari: 石も投げてやる! えいえい!
Gadalar: うっ、いてっ、貴様、何しやがる!! この…… ファ・イ・ガーーーーーーーーー!!
Pg. 50
Fari-Wari: うわああああ、熱ぅぅぁぁぁ!!
Gadalar: 死ねッ!! 死中で活を求めろ!!!
Mihli: 落ち着いて、もう瀕死だよ。
Rughadjeen: ガダラル、芝居中にファイガを出すな。
Mihli: お芝居なんだからさあ。大人げないよ。 もっと身も心も、蛇になりきらないと。 ファリワリさんにレイズ~。
Gadalar: クソッ……!
Fari-Wari: ……いててて。本当にもう、相変わらず乱暴ですねえ……。 まあ、名作の誕生に困難はつきものです。 これしきのこと、この天才詩人兼戯曲家兼演出家には屁でもありません。 ともかく続きを進めますよ。
Mihli: なんか肩書き増えたね?
Fari-Wari: はい、そこで海岸を浦蛇太郎が通りかかって登場! いじめられている蛇を助けます。 ルガジーン将軍、ガダラル将軍を助けてください。
Gadalar: 貴様の助けなど要らん!!
Rughadjeen: ……と言っているが。
Fari-Wari: それじゃあ話が続かないんですよォ~。なんかいい感じに助けてくださいよォ~。
Mihli: 無茶ぶりするなあ。
Rughadjeen: 蛇を助けるってどうすればいいのだ……?
Mihli: なんか、餌でもあげればいいんじゃない?
Rughadjeen: うむ。よし、おいでおいでー。ほら、ジズの肉だよ。
Gadalar: ふざけるなッ!
Mihli: ガダラル、ちゃんと食べなよ。
Gadalar: 食えるかッ!! このっ……
Pg. 51
Fari-Wari: ……ああもう、ファイガはなし、なし! いいやもう。本番ではちゃんと食べてくださいね。 はい、そうすると、蛇はたいそう感謝して、助けてくれたお礼にと、浦蛇太郎を背中に乗せて、海の中の竜宮城というお城へ連れていくことにします。 えーとじゃあ、ガダラル将軍、ルガジーン将軍を背負って……。
Gadalar: 断る!
Fari-Wari: ええ~? あ、なんだ~そっか。意外と体力ないんですねえガダラル将軍……。
Gadalar: なんだとッ!? 背負えるぞこのくらい!
Mihli: 簡単だな〜。
Gadalar: うっ……くっ……。クソ、重いぞ、ルガジーン……。
Rughadjeen: まあ、鎧を着ているからな……。
Mihli: あはははは! この絵面、面白い! あとでザザーグとナジュリスにも教えてあげよ。
Gadalar: ……貴様ら、芝居が終わったらタダで済むと思うなよッ!
Fari-Wari: そんなこんなで浦蛇太郎は、海の底の豪奢な竜宮城に辿り着きます。 そこには乙姫様がいて、蛇を助けた浦蛇太郎をたいそう歓迎します。 さあ、乙姫様、歓迎の礼を!
Mihli: えっ? ようこそ~!!(プロテス)(シェル)(ヘキサストライク!!!!)
Fari-Wari: ヘキサはダメです! 浦蛇死んじゃうでしょ!
Mihli: えーっ、つまんないな。 スカルブレイカーならいい?
Fari-Wari: ダメです!!
Mihli: ちえっ。
Fari-Wari: えーと……それからですね。 乙姫様は、あらゆるご馳走や仲間の魚たちの舞いや踊りで、 浦蛇太郎をもてなすんですね。
Pg. 52
Mihli: 海の中…… サハギンの王国かな?
Rughadjeen: 物騒だな。
Fari-Wari: でも今回、あいにく踊れる魚にあてがないので、ここではメローさんとラミアさんたちに来てもらいました。
Lamia: アラアラ…私の人形がコンナニタクサン…… カワイイコト……サア私と踊リマセウ
Mihli: ワァーーーー!! ヘッ、ヘキサストライク!!!
Rughadjeen: ビクトリービーコン!
Gadalar: サラ��ンダーフレイム!!
Lamia: アァ~
Fari-Wari: ああっ! なんてこと! 貴重なエキストラの皆さんが……。 ちょっと将軍たち! 倒しちゃったら竜宮城のシーンが台なしです!
Rughadjeen: モンスターを連れてくるな!
Mihli: 皇宮に連れて行けるわけないだろ!
Fari-Wari: ……あ、そうか。 それもそうですね。うーん。本番はどうしましょう。
Gadalar: お前が魚をやればいいだろう。俺が焼き魚にしてやるぜ!
Fari-Wari: うわあぁぁ。とばっちりですよう。 なしなし、じゃあ魚のシーン、ここはカットで……。 ……ともかく、浦蛇太郎は手厚くもてなされて、ご馳走を食べたあと、満足してそろそろ帰る、となるんですね。 そのときに、お土産に、と乙姫からなんだか豪華な「玉手コッファー」を持たされます。
Mihli: 玉手コッファー……なんだそれ?
Fari-Wari: ようするに、お土産の宝箱です。 地上に戻ったらあけてくださいね、と。
Mihli: へえ~。姫いい奴じゃん。
Fari-Wari: はい、今回もここに、用意させていただきました。
Pg. 53
Rughadjeen: これを、浦蛇太郎が開けるのか?
Fari-Wari: どうぞどうぞ!
Rughadjeen: よし。では、パカッと……。
Mihli: ってうわああ、ミミックじゃん!!! ガダラル!
Gadalar: ふんっ! ファ・イ・ガ・III(スリー)!!
Mihli: ハァ……ハァ……吃驚した。
Gadalar: 貴様、騙してミミックを寄越すとは、いい度胸だな!?
Mihli: そうだそうだ、どういうつもりなのさ!
Fari-Wari: そっ、そういうお話なので! 浦蛇太郎がもらったお土産は罠。 本来のお話では、玉手コッファーを開けると不思議な煙に包まれ、みるみるうちに年を取ってお爺さんになってしまう、というお話なんですよう……。
Mihli: なんで?
Fari-Wari: え?
Mihli: なんで助けてあげたお礼が、そんな仕打ちなのさ? 意味わかんなくない?
Rughadjeen: そうだな。何の教訓もドラマもないぞ。
Fari-Wari: そんなことを言われましても……。 蛇も乙姫もなんか……好戦的で恐ろしい奴だったんじゃですかね。 皆さんみたいな……。
Mihli: んっ?
Fari-Wari: ……え~、とまあ、概ねこういう感じのお話になります。 大体おわかりいただけましたかな!
Mihli: いやー全然。
Gadalar: どこが面白いのかまったく分からねェな。
Pg. 54
Rughadjeen: こんなので、本当に聖皇さまに喜んでいただけるのだろうか。
Fari-Wari: そこは皆さんの頑張り次第ですよ! さ、もう一度リハーサルです。
Mihli: はあ~。思ったより面倒くさいな〜どうしてもやらないとダメ?
Rughadjeen: 頼む……!
Mihli: あとでチャイとイルミクヘルバスとシュトラッチ奢りだからね~。
Fari-Wari: ―その後も長い時間にわたり、血の滲むような稽古が行われた……。
―ついに、浦蛇太郎の幕は切って落とされ―
Serpent Generals: 新・浦蛇太郎。開・演ッ!
Fari-Wari: 皇宮にて、将軍たちの熱演が繰り広げられたのです―。
[シーン2 その後のアルザビ]
Fari-Wari: ―そして、芝居を演じ終えた数日後。
Rughadjeen: ……ミリ、ガダラル!ファリワリ殿!
Mihli: あっ、ルガジーン。 何か用? そろそろ警報が来そうだから、ボク、配置につかなきゃなんだけど。
Rughadjeen: ああ、すまん。この間の浦蛇太郎の話だ。
Pg. 55
Rughadjeen: あの芝居、聖皇さまはいたく気に入ってくださったそうでな。 その後、大変満足したというお褒めのお言葉をいただけたぞ。 いやー。よかった。 一言、礼をと思ってな。
Mihli: そっか~、よかった。 ボクら頑張ったもんね。
Gadalar: フン。俺サマがわざわざ出てやったんだ、当たり前だろう。
Rughadjeen: ファリワリ殿も、世話になったな。
Fari-Wari: いえいえ。わたくしの才能を持ってすれば、あのくらいお安い御用ですよう。
Rughadjeen: しかし、ひとつ困ったことがあってな。
Fari-Wari: どうしました? あっ、ひょっとして宰相様には怒られたとか……。
Rughadjeen: いや、そうではないのだ。 実は、今回のことで聖皇さまは大のお芝居好きになってしまったようでな。 直々に、近いうちにまた観たいと頼まれてしまった。
Mihli: えっ。
Gadalar: まさか。
Rughadjeen: 聖皇さまは近日中に次回作を、と仰ってな。つい、わかりました、と……。
Gadalar: 貴様ッ、調子に乗りやがって!
Mihli: なんでそんな安請け合いするのさ!
Rughadjeen: 聖皇さまの御願いを断れるわけなかろう。 どうするべきか、ファリワリ殿……。
Fari-Wari: ふっふっふ。 心配ご無用。 このファリワリにお任せください! そんなこともあろうかと、わたくしは次回作の構想もすでに練ってあります!
Rughadjeen: おお!
Fari-Wari: 題して、ロランベリーから生まれたロラン太郎!!
Mihli: ……ええっ?
Fari-Wari: こちらも東方に伝わる民話です。
Pg. 56
Fari-Wari: 川をどんぶらこ、どんぶらことロランベリーが流れてきてですね。 それを割ると、なんと中から元気な蛇の男の子が!!!
Gadalar: 黙れ!!
Fari-Wari: ウワァァァーーーー!!!
Gadalar: もう二度とご免だ!!!
(おしまい)
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ataisai · 3 months ago
Text
それゆけ! アルタナ四国・限界サバイバル
FFXI Ibun no Utaibito Transcript Synopsis 冒険者がヴァナ・ディールの地に降り立つ直前の天晶歴883年。 サンドリアの クリルラ、バストゥークのナジ、ウィンダスのクピピのもとに、 「ジュノにてセルビナ協定締結を前にした懇親会を行うので、 至急、 使者を遣わされたし......」という手紙が届く。しかしル・ルデの庭で3人を待ち受けていたのは、なんとモーグリ。なにやら、 モグ達が考えたレクリエーションに挑戦してほしい という。 3人は本当に懇親会に招待されたのだろうか?
Pg. 21
II それゆけ! アルタナ四国・限界サバイバル 高橋 玖 登場人物 モーグリ クリルラ クピピ ナジ マート
Pg. 22
[シーン1 ジュノ大公国 ル・ルデの庭]
―ル・ルデの庭に集まっているクリルラ、クピピ、ナジ。
Curilla: ……遅いですね、いったいいつまで待たせるのか。
Naji: クリルラさん、まだ五分しか経ってませんよ。
Curilla: そうでしたか、気がせいてしまって。 ナジ殿、失礼しました。
Naji: しかし、ジュノに着いたらクリルラさんもクピピさんもいて吃驚したなあ。 やっぱりバストゥークだけに送られてきたわけじゃなかったんだな。この手紙。
Kupipi: そうなの。ウィンダスにもいきなり送られてきたなの。 「ジュノにてセルビナ協定締結を前にした懇親会を行うので至急、使者を遣わされたし……」 変な手紙なの。
Curilla:いったい、ジュノは何を考えているのでしょうね? 大戦時に四国間でアルタナ連合軍が結成され、一応は友好関係が築かれた。 とはいえ、ジュノ大公カムラナート殿はまだまだ謎の多い人物。油断はしないほうが……
Naji: いやでも、あんまり疑うのもよくないっていうか。 単純に、みんなで仲よくしよう、っていうお誘いかもしれないし……。 何か、美味しいものとか出してくれるかもしれないし?
Curilla: ナジ殿は人がよすぎますね。
Kupipi: ほんと~にバストゥーク人は単純な人が多いなの。
Naji: えっ?そんなことないけど? それは、どういう意味?
Kupipi: そのままなの。
―集まったばかりで、少しギスギスしている三人。
―空気を読まずモーグリが登場。
Pg. 23
Moogle: ……クポ~!!
―驚く一同
Moogle: 揃ったクポね! 本日はお日柄もよく、ようこそおいでくださったクポ! それでは早速、懇親会を始めるクポポ~!
Naji: ちょっと待ってくれよ。俺ら詳しいこと何も知らされてないんだけど?
Kupipi: いったい、どういうことなのなの?
Moogle: その手紙の内容の通りクポ! ジュノの皆は三国の皆さんとぜひ仲よくしたいと思っているクポ! なので今日はとっておきのパーティを企画しているクポ!
Naji: パーティ……って感じじゃないけどなあ。 なんか閑散としているし、俺らの他に誰もいないし……。
Curilla: ジュノではこれがパーティなのですか? 随分と我が国とは違うようね。
Kupipi: ウィンダスも、パーティと言えばフルーツどっさり、お菓子もどっさり。全然こんなんじゃないなの。
Moogle: (無視して) 皆さんには、まずはくじを引いてもらうクポ! さあさあ、この箱から一枚、紙を引くクポ!
Naji: えっと、俺らの話聞いてた?
Kupipi: 何か嫌な予感がするなの。
Moogle: 早くクポ! 早くクポ!
Curilla: ……誰が引くのです?
Kupipi: 私は嫌なの。ナジ ……がやるべきなのなの。
Pg. 24
Naji: えっ、呼び捨て??
Curilla: (ナジを見て頷く) ……では、お願いします。
Naji: まあ…… いいですけど… じゃあ、行きますよ。えいっ!
Moogle: 引いたクポね。えーっとなになに……まずはこれクポ! ジャジャーーン! 古代魔法のパピルス エクソレイの粘菌 ボムの炭 これを一人一個ずつ、三種類集めてきてほしいクポ〜!
Naji: はァ? なんだそりゃ?
Moogle: 皆さんには、これからデスゲームを……じゃなかった、親交を深めるためにパーティを組んで、お題をこなしてほしいクポ! これはモグ達が考えたレクリエーションだクポ。 ぜひ、張り切って挑戦してほしいクポ〜!
Naji: あっ、パーティって、そういう…… ?
Curilla: 国の代表として呼ばれたからには、さも大事な用件かと思えば……。 そういったお遊びなら、帰らせてもらいましょうか。
Kupipi: クピピも帰るなのです。
Moogle: ンン~? ひょっとして、皆さん、腕に自信がないクポ? そっか、モンスターに負けて大敗退、なんてことになったら確かに国の代表として格好がつかないクポね……。 それはモーグリに気遣いが足りなかったクポ。ごめんクポ~。 特にサンドリア王国、神殿騎士団長のクリルラ殿と言えば凄腕のナイトと聞いていたけど、残念クポ〜。
Curilla: はっ、なんですって!? あなた、我がサンドリア王国と神殿騎士団を侮辱すると許しませんよ。 私にとって、そんな「お使い」など造作もないこと。いくらでも持ってきて差し上げましょう。
Moogle: 本当クポ!? それはよかったクポ〜!
Pg. 25
Moogle: すべての品が揃ったら、またジュノに戻ってきてほしいクポ。 それでは、行ってらっしゃいクポ〜!
Curilla: あっ……。
Naji: ああ……。クリルラさん、あんなこと言っちゃって……。 やることになっちゃいましたよ。
Curilla: くっ…….私としたことが。 まんまとモーグリの奸計に乗せられてしまったわ。
―今なお三人は打ち解けておらず、お互い信用していない様子。
Kupipi: サンドリアはサンドリアで、融通がきかない人ばかりなの。
Curilla: ん?そちらこそ、実戦経験はあるのかしら? ウィンダスは剣に長けた人がいないようですが、いざという時に足を引っ張らないでくださいね。
Naji: (止めに入る) ちょっと、ちょっと~、二人とも。
Kupipi: はぁーー… 一緒に行くのが堅物騎士とバストゥークのペーペー……。 先が思いやられるなの。
Naji: なっ、ペーペー……って、 これでも俺は栄えあるミスリル銃士隊の一員だぞ!
Kupipi: 隊員五人の中では一番下って聞いているなの。
Naji: くっ、否定できない……! い、いや、でも、俺も国の代表として来ている以上、おめおめと引き下がれないからな。 ジュノ側にどんな意図があるかわからないけど、受けて立つぜ。
Curilla: しかし、こんな意味不明なお題をふっかけてきて、いったいどういうつもりなのでしょうね。 我々を混乱させようとしているとか……?
Naji: その隙にジュノが他国を制圧する? なーんて……穏やかじゃないな。
Curilla: まあ、いざ戦いとなっても我がサンドリアに敵う国はありませんが。
Pg. 26
Kupipi: フーン、ウィンダスにだって他国は足元にも及ばないなの。
Naji: まあまあ、とにかく出発しないと。 えーっと、場所は…… エクソレイの粘菌はクロウラーの巣、 古代魔法のパピルスはエルディーム古墳、 ボムの炭はガルレージュ要塞……。 歩いても行けるけど、チョコボに乗ろうか?
Curilla: 私は鍛錬のために走っていきます。
Naji: えっ。
Kupipi: クピピは買い物してから行くな。先に行っててなの。
Naji (Internally): この人たち….. 協調性がなさすぎるな……。
Naji: じゃ、じゃあ、まずはクロウラーの巣で。現地集合でよろしく!
[シーン2 クロウラーの巣]
Naji: ……さあ、到着した……けど、みんな、揃ってますか~?
Curilla: ええ。
Naji: ここで狙うのはエクソレイの粘菌。えーっと、エクソレイはキノコ族だな。
Kupipi: (不満げな様子)……。
Naji: ん?どした?
Kupipi: なんでナジが仕切ってるなの?
Naji: えっ、いやいやいや。そんなつもりないけど?
Pg. 27
Kupipi: なんか…… 腹立つなの。
Naji: えーー? だって、二人が協調性ないから……。
Curilla: そんなことより、時間が惜しいです。さっさと片付けましょう。私が先行します!
Naji: あ、ほら……言ってるそばから。
―一人でクロウラーの巣に突っ込んでいくクリルラ
Kupipi: クリルラさん待って、その先はモンスターがいっぱいで、用意なしに入ると……
Curilla: ……えっ?あった……!!
Kupipi: 襲われてしまうなの……。
Naji: クリルラさん、大丈夫!! えええーいっ、挑発!
Naji: うっ、痛っいたたたっ! わっ…これは… あれ?う、動けない!? 剣が振れない……なんで??
Kupipi: あっ!ナジ! クロウラーが吐いた糸のせいで体中ベトベトになってるなの!
Naji: うぅーーっ、体が重いし、どんどん体力が減っていく! こんな冒頭で倒されたらはるばるバストゥークから来たのに、残り何十分も出番なしじゃないか!
Curilla: ナジ殿! 今助けます! はあぁあつ、レッドロータス!
Naji: 待ってくれ、どんどんモンスターが寄ってきて、いつの間にか取り囲まれてるぞ!?
Kupipi: わっ、クロウラーが仲間を呼んじゃってるなの!
Curilla: いっ、一回外に出ましょう!
Kupipi: わかったなの!
Naji: ……グゥ。
Kupipi: はあ…….はあ…….ナジにレイズ~♪♪
Naji: うっ…….ありがとう……。
Pg. 28
Kupipi: クリルラさん、ここら辺のモンスターは好戦的なの。 物音を聞きつけると襲ってきて、しかも、近くにいる敵もどんどん加勢してくるから、距離を取って戦わないといけないなの。
Curilla: そ、そうなのですね。ごめんなさい。私としたことが……。 ナジさんも申し訳ない……。
Naji: いえ、二人が無事なら俺はそれで!
Kupipi: 仕方ないの。 ウィンダス歴代の魔導団でも、クロウラーの巣は中々に手こずるの。 クピピだ!け!が!たまにロランベリーを取りに来るから、ちょっと詳しいだけなの。(えっへん)
Curilla: クピピさん、クロウラーの巣と、そこに棲息するモンスターに対する知識、流石です。 敬服しました。 ここから気を引き締めて行きますね。
Kupipi: どういたしましてなの。
Naji: いや~、俺もなんか逆に燃えてきた。絶対にやり遂げるぞ!
Curilla: え?ええ。そうね。
Naji: エクソレイは巣の奥だ。さあ、気を取り直して行こう!
―再びクロウラーの巣に入り、移動する一同。
Naji: さつ。
Kupipi: ささつ。
Curilla: ささささつ。
Naji: よし! 今度は物陰に隠れながら、敵に気づかれずに中央の広場まで来られたな。
Kupipi: エクソレイを発見なのなの!
Naji: よし、ブーメランでおびき寄せよう。
Kupipi: ディア~!
Naji: レッドロータス!
Pg. 29
Curilla: セラフプレード!
Kupipi: やった〜なの~!!
Curilla: エクソレイの粘菌も手に入りましたね!
Kupipi: でも、一個だけなの……。
Naji: え、これを三人分やるのか?
Kupipi: うええええなの~。
―そして、一時間後――。
Naji: はぁ、はぁ…… なんとか揃ったな。
Kupipi: 粘菌、みんな一個ずつ。ちゃんとカバンに入ってるなのなの?
Curilla: ええ。大丈夫です。
Naji: 途中、広場中のクロウラーが襲ってきた時はどうしようかと思ったけど、どうにかなったな。
Kupipi: かなりヤバかったなの。ていうかナジはまた倒されていたなの。
Curilla: レイズが使えるクピピ殿がいてくれて本当によかったです……。
Naji: よし、張り切って次も行くぜ!
Kupipi: (疲れた様子)お、おおーー…… なの……。
[シーン3 エルディーム古墳]
Naji: えっと、お次の品は古代魔法のパピルス……。ここ、エルディーム古墳だな。
Curilla: パピルスは、魔法について記された紙切れみたいなものね。 スケルトン族の中でも、魔法に長けたリッチが持っているみたいなので、片っ端から倒していきましょう。 あいにく、スケルトン族と有利に戦えるモンクはいないけど……。
Pg. 30
Naji: (ビビっている風に)相手はアンデッドかあ……古墳って要するに墓だろ? 不気味な場所だよなあ。
Curilla: 元々はエルヴァーン族の由緒ある墓碑だったのですけれどね。 クリスタル大戦で数多の戦死者が出たため、現在の様相に……。
Kupipi: ナジはお化けが苦手なのなの?
Naji: そ、そんなことはない!
Kupipi: ウフフ。 強がりなの~。
Curilla: では、参りましょうか。
Kupipi: はぁ、はぁ。もう10体くらい倒したなの?
Naji: どいつも持ってないなあ……。
Curilla: まだまだ、これからよ!
―そして、一時間後――。
Kupipi: まっ、まだなの!??
Naji: 本当に持ってるのかよおおおおお???
Kupipi: もうリッチを何十体倒したか覚えてないの。本当にリッチで合ってるのなの?
Curilla: ナジ殿……もう一度確認してみては?
Naji: えっそんなはずない。確かにリッチだって聞いてるけど……。
Kupipi:じゃあ、クピピたち全員があのモーグリに騙されているとかなのじゃ……。
―そしてさらに一時間���経過―。
―ようやくアイテムがドロップする。
Pg. 31
Kupipi: あああーーーっ、やっと落としたなの!
Naji: よっしゃ! 一個目のパピルス、これ、誰の分にする?
Kupipi: クピピのがいいなの。
Curilla: どうせ、最終的には全員分集めるのだし、私は何でもいいですよ。
Naji: よし。ここは公平に、ダイスで決めるのはどうだ?
Kupipi: 望むところなの!
ダイス! Najiは、5を出した! ダイス! Curillaは、592を出した! ダイス! Kupipiは、998を出した!
Kupipi: ふふん~♪ なの。
Naji: 5、って。……いやいや、気を取り直して次だ!
―再びアイテムがドロップ。
Curilla: あっ、二個目のパピルス、落としましたね!
Naji: よし、クリルラさん。もう一度ダイス勝負だ!
ダイス! Curillaは、831を出した! ダイス! Najiは、8を出した!
Naji: 8、って。
Kupipi: さっきよりちょっと増えたの。
Curilla: ……まあ、なんとか、私とクピピさんの分は手に入ったってことね。
Pg. 32
Naji: ……お、俺の分は?
―そしてさらに一時間が経過―。
Naji: (半泣きで)…ねえ、なんで俺の分だけ落としてくれないの?
Kupipi: さあ……日頃の行いなの……?
Naji: そんなあ……。
Kupipi: あるいは、ここのお化けたちの呪いなの……。
Naji: ひっ、怖いこと言うのやめてくれよ~。
Kupipi: ああっ、ナジ!後ろ!! 後ろ〜〜なの!!!
Naji: またまた~、そんなこと言って怖がらせようたって、そうは騙されないぜ~。
Kupipi: 違うの違うの、後ろで……リッチがトルネドを唱えてるなの~~!
Naji: えっ……やば……!!
Naji: ぐわああぁぁーーー!!
Curilla: ……ナジ殿!いけない、今の魔法でかなりの深手を負ってしまったわね。
Kupipi: うわわわわ! 待って、スケルトンがあちこちからいっせいに集まってきたなの!
Curilla: くっ、スケルトン族はこちらの体力が減ると、襲ってくる習性があるの。 ここは私が引き受けます! 二人はいったん表へ退いてください、私もあとから行くわ!
Naji: お、おう。わかった!
Curilla: さあ、スケルトンたち、私はここよ! 来なさい、インビンシブル!!
―クリルラを囮に脱出するナジとクピピ。
Pg. 33
Kupipi: ……クリルラさん、出てこないなの。 大丈夫なの?
Naji: いくらクリルラさんでも一人であの数を相手にしたら、無事ではすまないんじゃ……。
Kupipi: ……むむ~。様子を見てくるなの!
Naji: おっ、俺も。
――再び古墳に入っていく二人。
Kupipi: クリルラさんあっ! ナジ、戦利品を見てなの!
Naji: パピルスが入ってる!
Curilla: ……お待たせしました。 ナジ殿の分も、ちゃんと落としたわよ。
Naji: 無事だったのか! ていうか、あの数のモンスターを一人で片付けたのか?
Curilla: ええ。いつも稽古でやってる組手より少なかったわね。
Kupipi: す、すごい····· 格好いいなの……。
Naji: 流石ナイトだな……!
Curilla: ……そ、そう? ありがとう。鍛錬した剣技を二人のために活かせて嬉しいわ。
Naji: さあ、これでもう古墳に用はないかな。 こんな辛気くさいところとは、さっさとおさらばしようぜ。
Curilla: ええ、次に向かいましょう。
[シーン4 ガルレージュ要塞]
Naji: ……というわけで最後、ガルレージュ要塞に来たわけだが……。 ボムの炭を手にいれるために倒すのは、ボム族のエクスプロージャーだな。 こいつは戦ってると自爆する超絶危ない相手だ。
Pg. 34
Curilla: ここはクリスタル戦争時、サンドリア軍が使用した地下要塞。 色々と曰く付きの場所です……。
Kupipi: 二人とも、もうこれ以上危険な目に遭わないように、クピピのそばを離れないでなの。 Naji: は、はい、わかりました、 クピピさん。
Kupipi: ほんとーに! 今日はクピピがいてよかったなの。 クピピはウィンダスでも一番のしっかり者だから、二人は来たのがクピピでラッキーなの。 ウィンダスはシャントット博士やコルモル博士、なんていうかこう……振り切った人ばかりで、 あの人たちが来てたらきっとたいへっ……。
―なぜか落とし穴に落ちるクピピ
Kupipi: ……っうぎゃっ!
Curilla: クピピ殿? 消えた? どこですか??
Naji: クピピさん――!?
Kupipi: ……こ、ここなの。
Naji: なんか、下のほうから声がするな?
Kupipi: あ、穴っぽいものに、落ちたの……。
Naji: ええっ!?
Curilla: そうでした、暗くてわかりにくいけど,この要塞は先の大戦で大きな被害を受け廃墟になっているから、あちこちに落とし穴が空いているんです。
Naji: なんだってー、そこに落ちてしまったのか。 大変だ、クピピさん、今すぐ助けに行くから待ってて! って、うわあぁぁぁ――――!
―なぜか落とし穴に落ちるナジ
Pg. 35
Curilla: ナジ殿!
Naji: いってえー。
Kupipi: ナジまで落ちてきてどうするなの!!?
Curilla: 二人とも、大丈夫ですか? 今行くから、そこで動かないで! って、きゃあーーーーー!
―なぜか落とし穴に落ちるクリルラ
Naji: クリルラさん….。
Curilla: ……申し訳ない。
Kupipi: 三人とも落ちてしまったの。うわーん、もうおしまいなの。 全滅したら、みんなクリスタルのところに戻されてしまうなの。 クピピの帰還先は、ウィンダスの石の区なの……。
Naji: えっ……。 ジュノのクリスタルに寄ってこなかったの……? それは……それだけは避けたいね……。
Kupipi: ジュノの任務を途中にして戻ったら、ズババや博士たちにきっとすごく怒られるの。 うわーん……。
Curilla: 大丈夫。 上に続く道があります。 それに、ここまで私たちを助けてくださったクピピさんのことは、私が絶対に守り抜きます。 サンドリアの名にかけて。
Kupipi: (きゅんとする) クリルラさぁん……
Naji: ……お、俺も俺も!クピピさんには絶対に地面を舐めさせない!
Kupipi: あ、うん。ナジ…… さん……。
Curilla: 皆で慎重に上に戻りましょう。 しかし、上階に行っても魔防門の向こうに行かないといけませんが……。
Pg. 36
Kupipi: 魔防門? それは何なの?
Curilla: ガルレージュ要塞には、同時に四人が踏み板に乗らないと、開かない仕組みの門があるのです。
Naji: 四人……。
―互いに見合う。
Naji: いち、に、さん……。
Kupipi: 足りないのなの!
Naji: なんてこった、ここで詰みかあ~……。
―うーんうーん、と唸る三人。
Kupipi: ……あっ、そうなの!たしかカバンの中に……あったはず……これはどうでしょうなのなの?
Curilla: ん? 重い……なんですか、これは?
Kupipi: 円石なの。
Naji: 石……なんでこんなものを持ち歩いているんだ?
Kupipi: チャママさんから、ララブのしっぽ漬けをつくるための漬物石を、お遣いで頼まれてたなの。 これを使ってはどうなのなの?
Curilla: なるほど。いいですね。これを踏み板に置いて試してみましょう。
―しかしシーンとして何も起こらない
Naji: ……何も起きないな。
Kupipi: ダメなの、やり直しなの!こんなこともあろうかと、もう一個持ってるなの!
Pg. 37
―しかしシーンとして何も起こらない
Naji: しーーん……。
Kupipi: むむむ、もう一個あるなの。今度こそなの!えいっ!
Naji: 開いたぁーーーーー!! よっしゃあ!
Kupipi: クピピはやっぱりできる子なの~。
Curilla: あっ、あそこ! いましたよ、エクスプロージャーです!
Naji: ……あの、みんな、ちょっと思いついたことがあって、聞いてほしいんだけど、いいかな。
Kupipi: ん、何なのなの?
Naji: エクスプロージャーは「自爆」がヤバいらしい。 調子よく戦っていても、いきなり爆発されて一帯が丸焦げ、なんてこともあるそうなんだ。 ……だったら、一人が囮になって、自爆を誘発させるのはどうかな? そうすれば、あっという間に敵を倒せるし、何より全滅を免れることができる。
Curilla: なるほど。しかし、そんな危険すぎることをいったい誰が….。
Naji: 俺にまかせてくれ。 戦士として、皆を挑発で守ってみせる!
Kupipi: 嘘…… ナジがカッコよく見えるなの。
Naji: へっ、クリルラさんの活躍を見て、俺もちょっとはいいところを見せないとな、って思ってさ。 そうだ、それからボム族は魔力の流れにも敏感らしい。 二人とも、魔法を近くで使わないよう、くれぐれも気をつけて!
Curilla: わかったわ! では、よろしく頼みます。
Naji: おう!じゃあ、行っくぜぇーー!挑発!!
Naji: アァーーーッ イヤァァァァ 誰か大人のヒトぉぉぉ
Pg. 38
―そして一時間後――
―目的のボムの炭を手に入れる三人。
Curilla: ……ふう。ボムの炭も、ナジ殿の頑張りのお陰で手に入りました。 これですべての品が揃いましたね。
Naji: この時点ですでに十回くらい床舐めてるな、俺。
Kupipi: もっとなの。でも、身を挺して皆を守る姿、ちょっと見直したの。
Naji: え、えへへ。そっかなあ? まいったなあ~、やっぱ俺の伝説が増えちゃうなあ~。
Kupipi: 褒め過ぎたの。調子乗りすぎなの。
Naji: すいませんでした。
Curilla: まあ、とにかくこれでやっとジュノに帰れますね。
Naji: よし、待ってろ、モーグリ!!!
Kupipi: えいえいおーー! なの!
[シーン5 ジュノ大公国 ル・ルデの庭]
―ル・ルデの庭に再び集まっている一同。
Moogle: 皆さん、お帰りクポ〜! ……ふむふむ。パピルスに、炭に、粘菌。ちゃんと持ってきたクポね。
Curilla: ええ。あなたの言う懇親会、とやらはこれでいいのでしょう?
Naji: 何が目的かわからないけど、ちゃんとやり遂げたぜ。
Pg. 39
Moogle: ふうーーむ。 ……にゅにゅにゅにゅにゅ~(溜め)、おめでとうクポ~~!! 皆さんは見事、限界を突破したクポ〜!!
Naji: 限界を突破!?
Kupipi: どういうことなの??
Moogle: これは皆さんの力試しクポ。今は、天晶暦何年クポ?
Curilla: 現在ですか? 今年は天晶暦883年……。
Moogle: まさにこれから「冒険者の時代」が始まるクポ。
Kupipi: 冒険、者……?
Moogle: 多くの勇気ある冒険者たちがこのヴァナ・ディールにやってきて困難に挑み、世界を駆け巡り、大冒険を繰り広げるクポ。 それを皆さんに、助けてほしいクポ。
Naji: 俺たちが? 冒険者を?
Moogle: そうクポ。しかし冒険者も、おそらく腕に覚えのある者たち。 皆さんが負けるようなことがあってはいけないクポ。 そこで、これから彼らと切磋琢磨するために十分に実力があるかどうか、お題を出させてもらったクポ。
Naji: 力試し的なもの……だったということなのか?
Moogle: そうクポ。もちろん、この先、冒険者たちにも同じお題を与えるつもりクポ。
Curilla: なるほど。冒険者……か。 ジュノが先立って、彼らを受け入れるための準備をしている、というわけですね。
Naji: お題自体は大変なものだったけど、そう聞くと冒険者に会うの、ちょっと楽しみだな。
Kupipi: 確かに、なの。
Curilla: どんな強者たちがやってくるのか、待ち遠しいですね。 私たちも心して受け入れま���ょう。
―微笑みあう一行。
Pg. 40
Naji: ……うん。それに、確かに俺はこの一連の試練で前より随分強くなったような気がする 状況を判断し、作戦を立て、助け合うこと。 そして、どんなピンチに陥っても、仲間を信じて、諦めないこと……。 一緒に戦った二人のおかげだと思う。ありがとうございました。
Kupipi: まあね、なの。
Curilla: こちらこそ、です。
Moogle: さて、いい感じに場が温まったところで、お次のお題クポ!
Curilla: ええっ!?
Kupipi: 終わりじゃないなの??
Moogle: 誰がこれだけと言ったクポ? まだまだ続きがあるクポ〜。
Naji: こんな大変なお題、そう何度もできるかよォ……。
―そこに、奥から低い老人の声が響く。
Maat: ふぉっふぉっふぉっ。嫌ならやめてもいいんじゃよ。
―驚く一同。
Naji: えっ、誰っ??
Kupipi: ……むぅー、よくわかんないけど、なんかムカつく台詞なの……。
Curilla: いや、まだまだ!このサンドリア神殿騎士団長クリルラ、受けて立ちましょう。
Moogle: では、またくじ引きで次のお題を決めるクポ〜! さっ、この箱の中から引くクポ!
Curilla: では…….今度は私が行きます。
Pg. 41
Naji: クリルラさん、いい引いてくださいよ。頼む!
Curilla: わ、わかったわ。任せて。
―箱をゴソゴソする。
Moogle: はあーい、ぱんぱかぱーん! 次のお題はこちら! 「皆で行こう! ザルカバードツアー!悪名高きモンスターを倒して、すべての高い山に登ろう!」ですクポ~!
Naji: ヒイィーーッ!!
Kupipi: よ、よりによって、ザルカバードなの……なの……。
Curilla: ごめ、ごめんなさい……みんな!
Naji: いや、大丈夫。クリルラさん。 ここまできた俺らの絆、そして強さ!見せてやろう!
Kupipi: そうなの!頑張るなの!さっそくGO GOなの~!!
―去っていく三人。
Moogle: これでいいクポ? お爺ちゃんもずいぶん酔狂クポ。
Maat: ふぉふぉふぉ。あやつら、やるのう。 まさかあの試練を乗り越えるとは思っておらんかったわ。 これは久々に、ワシと互角に戦える猛者が出てくるやもしれんのう。 死力を尽くして戦い、自分自身を、そしてこのワシを越えていく、そんな奴らを長年待っておったんじゃ。 これから始まる、冒険者の時代とやら、面白くなりそうじゃのう。 フォーッフォッフォッフォ
(おしまい)
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ataisai · 3 months ago
Text
ミミルンのピカピカ★大冒険
FFXI Ibun no Utaibito Transcript
Synopsis ある日、サラヒム・センチネルに一匹のキキルンが 「捜し物を手伝って欲しい」 と訪ねてくる。 「ネズミの依頼なんてごめんだよ」 とそっけないナジャ社長だが、 「チャリチャリ いっぱいあるる、のよ~」 というキキルンの言葉を聞き、 金に目が眩んで引き受けることになる。 しかし、キキルンの言う通りに地面を掘っ てみても、出てくるのはガラクタばかり。 その中から、 キキルンはボロボロの棒を拾って帰っていった。 はてさて、 キキルンの“捜し物”とは......?
Pg. 3
I ミミルンのピカピカ★大冒険 高橋玖 登場人物 ナジャ社長 アブクーバ ミミルン ガッサド
Pg. 4 [シーン1 アトルガン白門 サラヒム・センチネル]
―サラヒム・センチネルの事務所内にアブクーバとナジャがいる。
Naja: ああ~ヒマだねえ。 最近は皇国からの依頼も減ってきてるし……。 このままじゃあ、おまんまの食い上げだよォ。 アブクーバ。あんた、ちょっと気の利いた依頼取ってきな。
Abquhbah: ナジャ社長、そんなうまい話はありませんよォ。 傭兵たちにも言ってますけど、地味な依頼を地道にコツコツ続けることが会社の発展に……。
Naja: アブクーバ、あんたいつから社長に意見できるほど偉くなったんだい、ん~?
Abquhbah: ふひーー、すみません!
Naja: わかったら、さっさと行って、儲け話を持ってきな!
Abquhbah: はっ、はい! ……ってあれ? 事務所の入り口に、誰か立ってますね。
Mimiroon: フンフーン♪ サラヒム・センチネルは、ここらの、ね?
Abquhbah: はあ、そうですが。
Mimiroon: あてくち、ミミルンの、よ。 ここ、 探偵社らの?? ルンルンネッタワークでおともらちに、聞いて来たの、よ??
Naja: お友だちょ~? 知らないねぇ。 こっちはネズミの相手しているほどヒマじゃないんだよ。 帰った、帰った!
Mimiroon: あてくち、依頼をするるの、よ。
Pg. 5
Abquhbah: ナジャ社長、いいんじゃないですか? ウチ、どうせ最近はヒマですし……。
Naja: アブクーバッ! 人聞きが悪い、うちはヒマなんじゃないよ。 畏れ多くも皇宮御用達のサラヒム・センチネルを、そんじょそこらの何でも屋と一緒にしてもらっちゃあ困るんだよ。
Mimiroon: でも、ミミルンはチャリチャリ、いっぱいあるる、のよ~。
Naja: …… ん?
Abquhbah: お金のことですよ! キキルンたちは、アトルガン貨幣のことをそう呼んでいるんです。 そう言えば、前にお金持ちの社長キキルンが来たこともありましたね。
Naja: ……ふ、ふーん?? そういうことなら、ちょっとは話を聞いてあげてもいいけど? ほらっ、アブクーバ、お茶をお出ししな!
Abquhbah: はっ、はい!
Naja: ―で、お客様、何をご依頼ですかねェ? 我が社は肩たたきから荒事まで、ずずずいーーーーっと幅広く対応してございますよ。
Mimiroon: そゆう、こわいのは、いいの。 ミミルン、探してるものあるる、のよ。
Naja: 探してる? なるほどなるほど。 捜し物のご依頼ですね。で、いったい何を???
Mimiroon: んんーー? わかんぬい。
Naja: ……は?
Abquhbah: えっと、自分でも、何を探すかわからない?
Mimiroon: ん。そなの、よ~。
Naja: ハァーー……? どういうことなんだい? これだからネズミは……。 アブクーバ、ちょっと詳しく聞いとくれよ。
Pg. 6
Abquhbah: えっ、あ、はい。
Mimiroon: あのね、キラキラ、さがすの、よ??
Abquhbah: んー? キラキラ??
Naja: あっ、ひょっとして、なんかのお宝かい?
Mimiroon: うつくしの、キラキラ、埋まってるるの。
Abquhbah: なるほど、どこかに埋まっているお宝を、掘り起こしたい、と。 そんな感じかな?
Mimiroon: うん? そなのね?
Naja: よし。 アブクーバッ!スコップとツルハシ持ってきな、出かけるよッ!
Abquhbah: は、はひーー!
[シーン2 ワジャーム樹林]
Abquhbah: ……と、まあワジャーム樹林に来ましたが、こんな殺風景な雑木林を当て所なく捜すんですか? ふひー。
Naja: で、どこにお宝が埋まってるんでしょうねえ~。ミミルンさん?
Mimiroon: んっと、んっと……ね。 ……こっちこっち。たぶん、ここらへん、らのよ。
Abquhbah: ここ? ただの土塊しかないですけど……とりあえず、ここを掘ってみればいいんですか?
Mimiroon: ん? そなの。
Abquhbah: なんか、要領を得ない話ですけど……ま、とりあえずやってみますか。
Naja: よしっ、アブクーバ、張り切っていこ!
Abquhbah: じゃあいきますよーー。いよいしょー!
Naja: よっ!
Pg. 7
Abquhbah: ゎっせーーーい!
Naja: 会社のためなら♪
Abquhbah: エーンヤコーラ♪ ……ってナジャ社長、かけ声だけじゃないですか!!
Naja: 当たり前だよ。あたいは、育ちがいいからねェ。 スプーンより重いものは持ったことがないのさ。
Abquhbah: いっつもモーニングスター担いでるのに……。
Naja: ああん? 何か言ったかい? アブクーバッ! サラヒム・センチネル社訓、その2!
Abquhbah: はひっ! 社長不敬は災いの元!!
Naja: よろしい!
Abquhbah: ……ふう、ふぅ、社長のためならエーンヤコーラ……。
―ツルハシが何か固いものにあたる。
Naja: なんだい? 何か固いものにあたった音がしたよ。
Abquhbah: 確かに、手応えがありました!
Naja: 驚いた、本当に何か出てきたのかい? うっふふふ、宝石かい? あるいは埋蔵金かなにか……。
Abquhbah: よし、掘り起こしてみます。
Abquhbah: これは……なんでしょう? なにか金属みたいなものが出てきましたけど、ずいぶん錆び付いているような……。
Naja: 何だい?ボロッボロじゃないか……。ずいぶん古っちいものだねえ。
Abquhbah: ミミルンさん、全然ピカピカしてないけど、これでいいですか?
Mimiroon: んー……。わかんぬい……。
Pg. 8
Abquhbah: ……わかんぬい、か。
Naja: はーーぁ……。 なんか怪しくなってきたよ。 どーせ、金目のモノなんて、何もないってオチじゃないのかい?
Mimiroon: ちがうの、よ! ピカピカ、あるるの! まだ掘るる!!あっち!!
―駆け出すキキルン
Abquhbah: あっ、待ってください!
Naja: アブクーバッ! 追いかけるよッ!
Abquhbah: はいっ!
[シーン3 エジワ蘿洞]
Abquhbah: ……はあはあ、ひたすら後を追って、今度はエジワ蘿洞まで来ましたけど……。
Mimiroon: ここらの、よ! こんどこそ、キラキラあるるの、よ!!
Naja: こんなひとけのない洞窟に? 確かだろうねぇ? さっ、アブクーバ、掘ってみよ!
Abquhbah: ……うう、社長、僕もうさっき掘ったので、手が豆だらけなんですけど……腰も痛いし……。
Naja: アブクーバッ! サラヒム・センチネル社訓、その3!
Abquhbah: はいっ! 会社の歯車王を目指す!!!
Naja: よし!
Abquhbah: ふひーーーー!
Pg. 9
Abquhbah: どっせーーーい! よっこらっしょーーー!
Naja: アブクーバッ、サボるんじゃないよ。 ちょっとあたいはそこらで一休みしてるから。あとよろしく。
Abquhbah: はっはい! ふひ。……はぁはぁ、こんなに重労働なら、ファルズンも連れてくればよかったなあ。
Mimiroon: ないない、の?? ミミルンのキラキラ……。
Abquhbah: いや、どうでしょう。 まだわからないけど、まあ、こうなったらとことん付き合いますよ。
Naja: ……って、アブクーバ。 1時間もたつけどまだ出ないのかい? もう日が暮れちまうよ。
Abquhbah: いやあ、さっきから、掘り起こして出てきたのは、ここにあるガラクタばっかりで……。 なんかわかんない、ボロボロの棒。 なんかわかんない、金属の板。 なんかわかんない、布みたいなやつ……。 以上です。
Naja: ハァー?
Abquhbah: ミミルンさん、これ、探してたやつですかね?
Mimiroon: うーん、うーん。わかんぬい……。
Naja: はーやれやれ。とんだ無駄足じゃないか。やっぱりネズミはダメだね。 アブクーバッ、あたいは先に帰ってるから、このガラクタの始末しときな! あと、このネズミからきっちり代金回収しておくんだよ!
Abquhbah: ふひーーー! は、はいーー! ……ってことで、依頼はここまでですね。すみません。ミミルンさん。
Mimiroon: うぃ……。
Naja: この、掘り起こしたやつはどうします?
Pg. 10
Mimiroon: ん、これだけ、持ってかえるる。
Abquhbah: このボロボロの棒を? うんまあ、じゃあそうしてください。 他のガラクタ……みたいなやつも一応サラヒム・センチネルまで運びます?
Mimiroon: うぃ……。
Abquhbah: じゃあ、僕が持って帰るので、気が向いたら取りに来てくださいね。 ずっと置いておいても、ナジャ社長に怒られちゃうので……。
Mimiroon: ……うぃ。
[シーン4 アトルガン白門 サラヒム・センチネル~バルラーン大通り]
―再びサラヒム・センチネル事務所内。
Abquhbah: ……ああー疲れた。 結局、一日中ツルハシを振るって夜中までガラクタを運んでクタクタだよ。 ナジャ社長、今に始まったことじゃないけど本当に人使いが荒いよなあ。 あれさえなければ、可憐な可愛い系ミスラなのに……。ちょっと今日は疲れたし、ここで仮眠しよう。
―寝入るアブクーバ。
Abquhbah: ぐぅ…… ぐう……。
―そこに、持って帰ってきたガラクタの山から、ぼんやりとした光が放たれて謎の機械音が響く。
Automaton: グギギ…… グギギギ……。
Pg. 11
Automaton: …… 装甲の各パーツを確認。 自律機能、復活……。 再起動します……。
Abquhbah: ……ん? むにゃむにゃ。よしてくださいよ〜。 ボーナスだなんて……ま、もらえるものはもらいますけどぉ……。 ……ハッ夢か。 あれっ……? なんか物音が聞こえる……? えっ、この巨大な影は……!? な、なんだ……? う、うわあああああああ!!!
―再び皇都、パルラーン大通り
Mimiroon: ……ハァ~。一日中さがちても、キラキラなかったの、ね…… 残念らのよ……。
Mimiroon: ……ん。何か、音、 するる?
Abquhbah: あ、あぶなーーーい!!!ミミルンさん、避けて!
―暴れて、あたりを破壊しているオートマトン。
Mimiroon: わっ! 何、らの??
Abquhbah: ミミルンさんと一緒に拾った、あのガラクタですよ。 僕が寝ている横で、いつのまにか、組み上がって自立して、動き始めてしまって……。 ン……? あれは……あの姿は、まるで、巨大なオートマトンだ!
Mimiroon: まとん……。
Abquhbah: でもなんで……あんなに巨大なマトン見たことない。 それにあいつ、いきなり暴走して……。
Pg. 12
Mimiroon: あれ! ミミルンのピカピカ〜! まとん!! 暴れちゃらめ!!よ!
Naja: ちょっと、ちょっと! アブクーバッ、いったい何の騒ぎだい??
Abquhbah: ふひーー! ナジャ社長だ! (マズい!) あの、違、なんでも、なくはないんですけど……。
Naja: あの、暴れてるでっかいのは何なんだい? あんたらの仕業なのかい!
Abquhbah: いえ、滅相も! ……なくもないです……。
Naja: このままじゃあ街中をぶっ壊しちまうよ! 皇宮にでも突っ込んでごらん、あたいらはよくて縛り首、悪くて縛り首だよ!! アブクーバッ! 腕の二、三本、犠牲にしてでも止めな!!
Abquhbah: ふっ、ふひーーー! はいぃぃっ!
Abquhbah: ど、どうしたらいいんだ……。 そうこうするうちにも、城壁をどんどんぶっ壊してるじゃないか……。 あたりに、人も集まってきちゃったし……。
Ghatsad: おい、これはいったい何の騒ぎだ?
Abquhbah: あっ、マトン工房のガッサドさん! ちょうどいいところに! あれ、あの巨大なマトン、止めるには、どうしたらいいんですかぁ!
Ghatsad: あれは、マトン……なのか? あんなデカいものは初めて見るが……。
Townsfolk: きゃあーーーー!!
Abquhbah: 今度はなんだっ?
Mamool Ja: ギャギャッ……!
Townsfolk: 助けて、誰か……! 壊れた外壁からマムージャが入り込んできて……。
Abquhbah: えっ、そんな……!
Pg. 13
Abquhbah: 巨大マトンが暴走しただけじゃなく、蛮族を引き込んでしまうなんて……。
Ghatsad: おい、このままだとマムージャも街中で暴れてしまうぞ!
Townsfolk: 人民街区には子どもたちも大勢いるわ、なんとかして!
Abquhbah: はっ、はい! これ以上、被害が広がったら僕らもマジで縛り首になってしまう! なんとしても止めなくちゃ……! でも、いったいどうしたら……。
Ghatsad: おい、ストリンガーはないのか?
Abquhbah: ストリンガー?
Ghatsad: マトンであるからにはあいつもストリンガーで操作できるんじゃないか。 そうすれば、マトンはマスターの命令を聞く。それで、マムージャと戦わせるんだ!
Abquhbah: 棒……! もしかして、ミミルンさんのそれ!
Mimiroon: ん? これ、らの??
―キキルンが持っている棒がストリンガーだった。
Abquhbah: それです! 僕らが掘り出したボロボロの棒!!! それがストリンガーじゃないですか? ひょっとして……昨日掘り出したものは、全部オートマトンのパーツだったということか!
Mimiroon: すとりん、がー……?
Abquhbah: ……よし! それで操作してみましょう! ミミルンさん、いけますか?
Mimiroon: うぃうぃ! マトンーー!! 暴れちゃらめらめ(ダメダメ)、よ~!!
Automaton: ……ガ、ガガ……(ノイズ音) メ、命令の、入力を確認。 マスター、これより…… 戦闘モードに移行します。
Pg. 14
Mimiroon: まとん! あの、まむじゃをやっつけるる~の! えいっ!
Automaton: マスターのディプロイを確認……。 ……これより、敵の殲滅行動を開始します。 バリアモジュールを展開……。
Abquhbah: おお! 盾が使えるんですね!
Ghatsad: 白兵タイプだな。
Automaton: 「シールドバーーーッシュ」!!!
Mamool Ja: ギャアアァァアッ……!
Abquhbah: おおっと、マトンが盾でマムージャの攻撃を押し戻しました! いいぞ! 行っけえええーー!!
Mimiroon: マトン、がんばるるの、よ~! ぽちっ!
Automaton: オーバードライヴ…… コマンドを認識しました。 ……ギ、ギギ、「ボーンクラッシャー」!
Mamool Ja: ギャアァッ……!
Abquhbah: おおっ、何でしょう? 急にマトンの攻撃が強くなったような……。 ガッサドさん、これは、いったい?
Ghatsad: オーバードライヴだ。 マトンに共通する能力で、攻撃間隔が早くなったり、アタッチメントの効果があがったりするものだな。
Abquhbah: なるほど! つまり無茶苦茶パワーアップしているということですね。
Ghatsad: まあ……そうだ。
Automaton: 「ストリングシュレッダー」!!
Mamool Ja: ギャギャアーーーッ!!
Abquhbah: おおっ! マトン強い! 衝撃でマムージャがすっ飛ばされていきました!
Pg. 15
Abquhbah: これはかなり効いている模様~! しかし、このまま街中で暴れるのは大変困りますね……。
Ghatsad: ミミルン、リトリーブは使えるか?
Mimiroon: うい? りとっ……プ?
Ghatsad: リトリーブを使うと、マトンはマスターの元へ帰ってくる。 このままマトンを街の外に引っ張って、アルザビから引き離すんだ。
Abquhbah: それはナイスな作戦ですね!
Mimiroon: うぃ! うし(よし)、行くの、よ~! まとん! りとっプ~~!!
Automaton: ……コマンド、リトリーブを受け付けました。 マスターの元へ帰還します。
Ghatsad: よし、ミミルン、このまま街の外へ向かって走れ!
Mimiroon: うぃうぃ!
Abquhbah: ふひー! マムージャも追ってきてます!
Ghatsad: ワジャーム樹林に出て、もう一度、技をぶつけるんだ!
Mimiroon: うぃ!
[シーン5 ワジャーム樹林]
Abquhbah: よしワジャームまで出ました!
Mimiroon: まとん! もっかい、なんか、強いやつやるる、のよ!
Automaton: ……「ストリングシュレッダァァーー」!!
Pg. 16
Abquhbah: 決まったああ!!
Mamool Ja: ギャギャギャーーーーッ!
Ghatsad: よし、倒したな!
Abquhbah: やったああ~! やりましたよ! これで縛り首にならずにすみます……!
Mimiroon: まとん、えらいえらいの、よ~!
Abquhbah: ははっ! すごいですね! ミミルンさん、いったいあのマトンは何者なんですか?
Mimiroon: うん? キラキラ、落ちてきたの、よ?
Abquhbah: キラキラ……?
Mimiroon: おそらのキラキラ、落ちてきたところに、ミミルン、探しにいったの、よ~?
Abquhbah: ええ?? それって、マトンが空から落ちてきたってことですか? 不思議なこともあるもんだなァ……。
Ghatsad: ふぅ……。
―大団円、みたいな雰囲気になっている一同。しかしマトンはまだ戦いをやめず、カウントダウンが始まってしまう。
Automaton: ガ……ギギ……。 XI(イレブン)……。 X(テン)……。
Abquhbah: あれ? 誰か何か言いました?
Ghatsad: いや……?
―そこへ再び現れるナジャ社長。
Pg. 17
Naja: ……アプクーバッ! 何チンタラやってるんだい! さっさとあいつを始末しときなって言っただろ!
Abquhbah: ああっ、ナジャ、社長! いえ、あれからマムージャが来たりして、いろいろ大変だったんですよう。
Automaton: VII(セブン)……。 VI(シックス)……。
Naja: ああん? アブクーバッ、サラヒム・センチネル勤務評価、第一条!
Abquhbah: ふ、ふひーー! 社長の命令に絶対服従!
Naja: よし! さ~て、散々街中で暴れてくれたこのマトン、連れてきたのがあたいらだってバレたらえらいことだよ。 どうにか誤魔化して、なかったことにしないとね……。
Abquhbah: でも社長、これはミミルンさんがせっかく探し出したもので……。
Automaton: IV(フォー)……。 III(スリー)……。
Abquhbah: ……ん? なんかさっきから、誰か数を数えてません?
Ghatsad: ……マトンがカウントダウン、しているのか?
Naja: あーもうッ! ごちゃごちゃうるさいね! 面倒だ、こんなガラクタ、あたいのモーニングスターで一撃粉砕、証拠隠滅してやろうじゃないか!!
Automaton: II(ツー)……。 I(ワン)……。
Naja: はああぁッ!ピースブレイカーッ!!
―ナジャ社長、モーニングスターでマトンを一撃。
Abquhbah: あっ……。
Pg. 18
Mimiroon: こわれちゃったの……。
Naja: ほら、さっさとずらかるよ。
―泣くミミルン。
Mimiroon: ふぇええええ! ふぇえぇぇぇ~~ん! まとん……!
Ghatsad: なんてこった。
Naja: ああ、あんたガッサドじゃないか、いいところに。 その壊れたマトン、あんたに譲るからここの騒ぎを、いい感じにおさめといておくれよ。 あんた、皇宮兵にも顔が利くだろう。
Ghatsad: ……ふむ。まあいいだろう。 研究材料としては、面白そうだからな。
Naja: じゃあ、頼んだよ~。
Abquhbah: あっ、ナジャ社長、待ってくださいよ〜。 ミミルンさん、すみません。ではまた!
―去るナジャとアブクーバ。
Mimiroon: うう……、 ミミルンのまとん…… おそらのピカピカ……。
Ghatsad: 空のピカピカ……。 アトルガン皇国の礎を築いたアルザダール帝は、 不思議な力で動く人形を空に打ち上げたと言い伝えられているが……何か関連が……。 いや、まさか、な。
Mimiroon: ふぇぇぇん。
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Ghatsad: 泣くな。新しいマトンを何か見繕ってやる。
Mimiroon: ふぇぇぇぇん……うぃ……。
[シーン6 アトルガン白門 サラヒム・センチネル]
―再びサラヒム・センチネル。
Naja: ……はぁーーー。 あれから結局巨大マトンが破壊した外壁やら店舗やらの修理費を請求されて今回の稼ぎも全部ふっとんじまったよォ……。 まーた! ただ働きじゃないか! まったく、ろくでもない依頼ばっかりで、いつになったらまともな儲け話がくるんだろうねェ。
Abquhbah: ……いやあ、今回は、なんかちょっと惜しかった気もするんですけど……。 ナジャ社長がぶっ壊さなければ、あの巨大マトン、けっこういい買い手とか、あったりしたんじゃないですかねえ?
Naja: ああん? 社長に楯突くとはいい度胸だね。 アブクーバッ、サラヒム・センチネル評価基準、第三十二条ッ!
Abquhbah: は、はいっ! 社長を無視して減俸対象……。
Naja: アブクーバ、今回の騒ぎの罰として、今月は減俸だよっ!
Abquhbah: ふ、ふひーーーー! 社長、そ、それだけは勘弁してくださいーー!
(おしまい)
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