『遅読』のすすめで、内容を記録しているものです。 個人的な振り返りのためでもあり、じっくりと時間をかけて本を読ん��結果として記入しています。当然、結果的にネ��バレを含む事になりますので、ご注意ください。
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霊魂の足: 加賀美捜査一課長全短篇 角田喜久雄
「怪奇を抱く壁」 02
五日目。
加賀美の所へ井手隆一郎から18923円の小包が届き、新聞にはまた、例の尋ね人広告がのっています。 加賀美は、この新聞広告から井出洋子という人物を探すよりも、ハンドバッグの捜査に重点をおいている印象をえます。
七日目。
朝刊に井手が掲載したと思われる、 “午後七時、上野池の端ミカドにて、ハンドバッグの件で合う” という広告文がっています。
また、いろいろなことが分かってきます。 ・井出洋子は井手隆一郎の妻であろう事。 ・井手隆一郎は、茨城の資産家。 ・結婚と同時に、東京上野池の端に出てきたらしい。 ・井手隆一郎は厭人癖(厭人とは、人との交わりを嫌うこと)がある。 ・井出洋子は、空襲のあった日から行方が分かっていない。 ・井手隆一郎は昭和二十年、応召して中支にいっていた。なお、第二次世界大戦頃まで日本国内では現在の中国の華中を中支といっていた。 ・井手隆一郎は、中支派遣A部隊にいて、今年の始め復員した。 ・また、田所軍治も昭和十七年より中支派遣A部隊にいて、昭和二十年から小倉五五部隊に転勤。 ・軍需物資横領事件に関係あるとして、目下身辺探査中である。
これで、田所と隆一郎が同じ中支派遣A部隊に所属し、そこでの知り合いだったことがわかります。 また、田所は横領事件に関係しているとなると、例の60万円を届け出なかったのも何となくわかります。
さて、場面変わって、喫茶「ミカド」です。 午後6時30分。 加賀美は、隠れるように、衝立のボックス席に付きます。
午後6時50分。 田所と隆一郎が入ってきて、隠れるように座っている加賀美の近くにすわります。 隆一郎は、左胸に真っ赤な薔薇をさしています。
田所と隆一郎の会話が聞こえてきます。 隆一郎は、“ハンドバッグ”さえ手に入れば、十万円だって安い”といっています。 田所は、いくらか融通してもらえないかといっています。 六十万円や一万八千余円、盗まれてしまって、全財産をなくしてしまったと。 ちょっとした事情があって警察にだって訴えられない。 そんなときに、君が出しているた新聞の広告を見たのだと。 隆一郎は、“ハンドバッグ”が手に入れば、融通できるといいます。
理由までは分かりませんが、 これで、隆一郎が田所を追い込んだことはわかりました。
午後7時。
店にお客が入ってきますが、紅薔薇の男に声をかけるものはいません。 加賀美は、それらの様子を注意深く見ています。
午後7時30分。
やはり、紅薔薇の男に声をかけるものはいません。
そうしてやっと、 隆一郎が田所に、ハンドバッグを欲しがるのかを説明しだします。
それは、 隆一郎が戦争直前に日本に悪性インフレの来ることを予想して、五百万円の全財産を宝石類にかえました。 それは、私と家内二人丈しか知らん秘密でした。
戦況悪化に私は、遠い地方の銀行に依託保管するよう家内に連絡しました。 そして、総て手続きがすんだと家内から手紙がきたのです。
ところが、 その後、帰ってみれば家はやけ家内の行方が知れんという有様です。 さて、一体、家内はどこのどの銀行へ依頼保管したのでしょうか。 そこで、思い当たったのは、その銀行の保管依託証が家内のハンドバッグに入っているのではないかと。 なにしろ、家内が何時でも貴重品を入れ片時も手離さなかったものですから。 ただ、そのハンドバッグには、内かくしが作ってあって一寸見ただけではわからないようになっているのです。
田所はそれで納得したのか、宝石が入ってからでもいいので融通してくれと言っています。
8時。
やはり、紅薔薇の男に声をかけるものはいません。
まだ、待ってみるという隆一郎をのこして、 田所は、業を煮やしたのか出ていってしまいます。
と、ここで、隆一郎はとんでもない行動に出ます。 なんと、加賀美のいるテーブルへやってきたのです。
二人は黙って対峙します。 加賀美のたえがたい威圧に、隆一郎は目線が下に落ちます。 加賀美は、 例の嘘っぱちな広告は、田所を呼ぶためなのか、それとも僕を引張りだすためななのかと、問い詰めます。 それに隆一郎は両方だと答えます。
そこで、隆一郎は加賀美がある程度のことを理解していると判断して、 加賀美に総てを打ち明けるようです。
二人は、店を出ると、目的地へ向かって歩いていきます。 道々、隆一郎は事情を打ち明けます。
まず、田所を文無しにする。 広告をだして、文無しになった田所を食いつかせる。 唯一ハンドバッグの行方を知っているの田所に、ハンドバッグの場所へ行かせる。
ここまで話すと、二人は目的の場所に着きます。 そこは、荒廃した屋敷のあとで、残骸の向こうにまだ一画建物の名残が黒い影を作っています。 そこに、すでに誰かいて、残骸に向かって何かをしています。
で、話の続きです。 隆一郎は、軍隊で世話になった田所に妻のことも打ち明けていました。 田所が昨年内地へ転任になった時には、家内への手紙を託し、助力をと願っています。 その後、隆一郎が内地へ復員し、我が家が戦災にかかり同時に妻の行方が知れなくなっている事を知ります。
その焼け跡で崩れ残っている箇所を偶然見つけ、扉であるべき場所がコンクリートに変わっていいるのに気が付きます。 隆一郎は、コンクリートを崩してにると、もとの扉が現われ中に入ってみると、既に白骨と化し、首に縄が幾重にも巻��付いた死体があったのです。 着ていた衣服から妻だと思われまれます。
誰が殺したのかは、持っていたハンドバッグの中からでてきた戦地に送る私宛の書面でわかります。 その手紙の中で思いもよらぬ恐ろしい田所大尉の所行を訴えているのです。
そして、田所が小倉詰めとなって東京を去らねばならない日に犯行が行われたのです。 唯一生き残ってた女中の一人を探し当てその口から、その日、田所が慌てて玄関から出てくる所へ行きあたり、 いよいよ明日小倉へ行くので、お別れに来たが奥さんはお留守のようだから帰ったらよろしくつたえてくれと。
このまま警察に訴え出ても証拠が不充分です。 そこまで分かった私は一体どうすればよかったのでしょう。
明確なる、絶対、言い開きのならぬ証拠をつきとめて、彼を正しい法の裁きの座にすえてやることです。 彼を絞首台に送ってやることです。 私は殆ど狂人になりました。
後は、加賀美さんのお考えになって居るとおりです。
隆一郎が指し示すさきに、月明かりの下でコンクリートの壁の崩れ落ちるのが見えます。 そして、黒い人影が、扉をあけその奥へ消えました。 それを追いかけるように、井手と加賀美が入ってみると、 その人物は、大島飛白の防空服をつけた白骨の手からハンドバッグをもぎっとっている田所だったのです。 大島飛白の防空服を着たとありますが、大島飛白は、奄美大島で作られていた紬のことで実際その当時は、国民服として使われていたのでしょう。
隆一郎が、“絞首台”へ送れと騒ぎ立てていますが、 明治から、日本では、死刑は絞首刑だと知っていたことになります。 で、大団円となります。
田所の犯行は、小倉に転勤した昭和20年1月と思われます。 空襲のあった頃でしょうから、焼け跡とになるのはわかります。 その翌年の3月に犯罪が発覚することになりますから、1年以上もそのままだったんですね。 戦後の混乱期がどんな状態だったのかが何となくわかります。
田所の犯罪を暴くためには証拠がない。 そこで、隆一郎は罠を仕掛けて田所を追い詰める。 加賀美を証人に仕立て上げるという感じでしょうか?
勘ぐれば、 加賀美の“待ち人着たらず”ももしかすると、隆一郎の策略かもしれませんね。 田所を文無しにしたところはいいともしても、 田所に新聞を読ませる、特に広告を見せる必要が有るのですが、そのあたりは書かれていません。
まあ、どっかで呼んだことも有るような話でしたけど、
短編ですし、省かれている部分も多いのですが、かえってそれが、スピード感を与えていて面白かったです。
おわり。
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霊魂の足: 加賀美捜査一課長全短篇 角田喜久雄
「怪奇を抱く壁」 01
タイトルとどういう関係なんだろうという話が延々と続きますが、後半になってやっと壁が出てきます。 まあ、壁というか物置の扉をコンクリートで塗り固めた壁です。 壁といえばポーの黒猫ですね。 一瞬それが浮かびました。
途中で、終戦後の翌年に復員とありますから昭和21年の話だとわかります。 ちなみに、昭和21年当時は、現在の40分の1程度ということになるそうです。 本文中にいくつかの金額出てきますが、それそれこんな感じですかね。 60万・・・2400万 5万・・・200万 1万8千・・・72万
あと、「尺貫法(度量衡のひとつ)」では、 一寸は約3.03cm 一尺はその10倍(十寸)で約30.3cm 一間は一尺の6倍(六尺)で約181.8cm となります。
で、登場人物です。
加賀美敬介(かがみけいすけ)・・・警視庁捜査第一課長 井手隆一郎 井手洋子・・・井手隆一郎の妻 田所軍治(たどころぐんじ)・・・陸軍大尉
が、主な登場人物です。
刑事の勘とでも言うのでしょうか、『待ち人来ず』で、目撃しまう犯罪。 その後、その犯罪をきっかけに更に別の犯罪に巻き込まれるという話です。
最初の事件が発生するのは、上野駅地階のC食堂です。 巨大な荷物を持った男女がひしめきあいながらしきりなしに出入りする。 いかにも上野駅の風景らしいです。
ただ、そこは戦後ですから、浮浪者の群れがさまよい歩いていたり、 そこら中に葱や白米が落ちていて、誰も見向きもしません。
午後2時10分、 二人の男が隣合わせのテーブルに席をとります。 隣合わせといっても、一人の男へ背を向けてです。 加賀美の席の近くです。
一人は、37,8歳の陽に焼けた肉の厚い顔に、茶色の外套に同じ色のベロア帽で、 もう一人は、28,9歳で乙号国民服に同じ色の外套に眼鏡をかけている。
ベロア帽とは、ビロードやベルベットといわれる毛足の長い滑らかな布地でできた帽子のことです。
国民服は、1940年(昭和15年)に定められ、太平洋戦争中に使用された、日本国民男子の標準服で、 乙号は、背広型仕立てで襟が立折襟専用となっていて、胸と腰に4つのフラップ付きウェルトポケットがありました。
ベロア帽の男はレモンスカッシュをのみほすと、百円紙幣を三枚両替し、 「釣り銭はいらん」 と、十円紙幣を一枚女給に渡します。 十円紙幣ですから、400円くらいですかね。 コーヒー1杯が10円程度ですから、さらに安いだろうレモンスカッシュで釣りはいらない。 ま、妥当ですか?
ここで、 眼鏡の男がベロア帽の男の古トランクと自分のもっていた古トランクをすり替えてしまいます。
これが最初の犯罪です。 それに気がついた加賀美ですが、なぜか行動を起こしません。 普通の犯罪だとは思えない何かがあったのでしょう。 まあ、人を待っていたということもあったのかも知れません。 すり替えた古トランクを持ってる眼鏡の男が、 このあとどういう行動へでるのか知りたかったのかもしれません。
午後2時20分、 三十分遅れた東北線の上り急行がやっとホームに到着します。
戦後の混乱期ですから、急行とはいえ遅れることもあったのかも知れません。 あるいは、待ち人を1時間も待ちあぐんでしまった加賀美の行動を説明したのかもしれません。 つまり、地方警察部から出京する同僚を迎えに来たのだが、一向に現われないということです。
さて、この食堂から、ベロア帽の男が出ていき、眼鏡の男も出ていきます。 加賀美は、結局待ち人を諦めて、眼鏡の男の後を追いかけることにします。 とはいえ、地下道から路面へ出て、眼鏡の男が行く姿をみるだけで、現行犯だと捕らえることはしません。 加賀美は自分のそんな行動を変に感じています。
眼鏡の男は駅前郵便局へ入ります。加賀美もその後を追います。
眼鏡の男は問題のトランクの中から一尺角ぐらいの新聞紙包をとりだし、ハトロン紙と紐で、小包を作ります。 その小包を書留でだします。 加賀美はその様子を確認するタイミングで、差し出し先まで見て驚愕します。 送り先は、「警視庁捜査第一課長 加賀美敬介殿」となっていたのです。 ちなみに、捜査一課長の階級は警視正になります。
と、ここまでの様子を加賀美は反芻します。
眼鏡の男は、ベロア帽の男を尾行して一緒に食堂へ入って、そして計画的に隣りへ席をとった。 計画的なのは、すり替えるために寸分違わぬトランクまで用意していたのでわかる。 すり替えた後、トランクの中味を小包で警視庁あてに発送した。 30センチ四方の大きさですね。
加賀美は、郵便局をでた眼鏡の男の後を、間を取ってつけていきます。 眼鏡の男は、落ち着いた足取りで、一度も振り向かず焼け跡をぬけて闇市場へ出て、 松坂屋前から黒門町まで行くとそこでまた戻りはじめます。 そして「喫茶と洋酒ミカド」という店の中へ入ります。つづいて加賀美もないります。
「ミカド」は、コンクリートの地膚が露出していて焼ビルを改造した店です。 十年も前��はやったパソドゥブル『アルフォンゾ』のレコードがかかっています。
“Alfonso”というシャンソンがあります。 これのことだと思うのですが、パソドゥブルは、何でしょう? 歌手ですかね。それとも、シャンソンにジャンルでもあるのか?
店内での眼鏡の男の様子を改めて確認します。 国民服も外套も古びていて身体に合っていない。 軍靴もすっかり古びて真っ白く埃にまみれています。 復員直後で、お金もないという状況を現しているのでしょう。 しかも、加賀美が眼鏡の男をそれだけじっくり確認できるほど、その男は、そこにじっとしていたのでしょう。
ただ、加賀美は既に三杯目のビールをやっているとありますが、まだ、勤務中なんでは? まあ、時間を潰さないといけないのでしかたないですか?
そんな状況に変化がおきます。
眼鏡の男は、ポケットから新聞を取りだすと、赤鉛筆で線を引きます。 まあ、ポケットに新聞が入っていたのは、まあ、後で読むつもりだったと思えますが、 赤鉛筆もポケットに入っていたのは、都合よすぎる気もしますけど。
その後、眼鏡の男は、トランクと新聞を置いたまま便所に行きます。 そして、そのまま消えてしまいます。 まんまと、逃げられてしまいます。
加賀美は、眼鏡の男がみた新聞をチェックします。
尋ね人 井手洋子の居所又は彼女常用のワニ皮のハンドバッグの所在ご通知下さった方に金三万円進呈す 中央局々留 井手隆一郎
という、広告欄でした。
何と、その新聞広告を、一ヶ月前から加賀美は知っていました。 どうということもない新聞広告ですね。 加賀美の気を引いたのはその金額らしいです。 確かに、3万円だといまなら120万円くらいですか。 ちょっとした金額ですね。
翌日、例の六十万円が加賀美のもとに届けられます。
小包の差出人欄に“井手隆一郎”とある。 これで、加賀美の気になっていた新聞広告と小包がつながることになります。
ここまでで、加賀美は眼鏡の男に仕組まれたと感じています。 確かに、小説的な展開ですから、眼鏡の男が仕組んだとすると納得いきますね。 ただ、理由まではわかりませんけど。
それから、加賀美はもう一つの不可解な点に気が付きます。 ベロア帽の男が、被害届を出していないのです。 ただ、「ミカド」へ置いてた被害者のトランクに名刺が挟んであって、 “陸軍大尉 田所軍治(たどころぐんじ)” と、被害者と思われる人物の名前がここで出てきます。 陸軍大尉田所軍治は、終戦当時九州小倉の部隊に居たのが判明します。
確かに、60万円(今なら2400万)ですからね。 無視するわけには行かないと思う金額ですが、警察に届けることができないお金なんですかね。
加賀美の洞察力の鋭さなんでしょうか? 峰刑事に喫茶「ミカド」を張り込ませています。 すると、 井手隆一郎と田所軍治が会っていて、親しげに話していたというのです。 被害者と加害者が親しげに話しているのです。
どういうことなんでしょう? 加害者は、この状況を理解しているはずですね。 被害者は、理解していなのでしょう。 だとすると、田所軍治は、60万円を井手隆一郎に盗まれたのに、親しく話して居ることになります。 どうして、田所は警察に届けないのか。 井手は何のために田所に近づいているのか。
つづく。
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大下宇陀児探偵小説選(1)
昆虫男爵ー使用ルビ集
序曲・銀座の昆虫
(C)埒(らち) (A)尾形良成(おがたよしなり) 人名:昆虫男爵です。 (C)渾名(あだな) (C)甲虫(かぶとむし) (C)卵生(らんせい) 卵の形で子を生み出す型式の事ですね。 (D)蚜虫(ありまき) アブラムシのことですが、てんとう虫に食べられる方のやつです。 (D)蛹(さなぎ) (B)面妖(おか)しい 本来ならあやしいと読むのでしょうが、話し言葉として表現したのでしょう。 (C)五十米(ごじゅうメートル) (C)冠(かぶ)る (D)跼(かが)む (C)呻(うな)る (B)飾窓(ショーウィンドー) (A)桃奴(ももやっこ) 人名:胎生昆虫だといわれた新橋の芸者。 (B)芸妓(げいしゃ) 京都で活動しているのが「芸妓」、それ以外で活動しているのが「芸者」。 (C)斜(はす)っかい (C)羽交(はが)い締め (B)哮(いき)る 荒々しくほえさけぶという意味です。たけり立つ よりもわかりやすかったのでしょうか? (B)浅間(あさま)しい 古い言い回しにはこういう表現があるみたいです。卑しいってことですね。 (B)年齢(とし) これは、文学的な表現の工夫でしょうね。 (B)婦人(ひと) これは、婦人ではなく、人として見たいということなんでしょう。 (C)良人(おっと) (B)他人(ひと) 「他人事」あたりからきたよみなんでしょう。 (A)根村幸雄(ねむらゆきお) 人名:男爵の青年時代からの親友で、医学博士。 (C)他家(たけ)
寄席の昆虫
(A)玉虫蛍子(たまむしほたるこ) 人名:本名稲岡由子、虫の鳴き声を真似して近頃評判の寄席芸人。 (D)山窩(さんか) 村里に定住せず山中や河原などで野営しながら漂泊の生活をおくっていた人々らしいです。 (D)蚯蚓(みみず) (D)蟋蟀(きりぎりす) きりぎりすという表現は、コオロギの古名としてみたいです。 (D)河鹿(かじか) カジカガエルの別名。 (D)破落戸(ごろつき) (B)��驚(びっくり) 当て字のようです。突然のことや意外なことに一瞬おどろくことですね。 (B)お銭(おあし) ぜにですね。まるで足が生えているかのように行ったり来たりすることから、「足」にたとえた。 (D)強請(ねだ)る (D)孤児(みなしご) (B)真実(ほんとう) うそでないことですから、ほんとうですね。 (D)一廉(ひとかど) ひときわ優れていることです。 (B)紙幣束(さつたば) 明治に発行された政府紙幣から「おさつ」とい割れたみたいです。 (C)忌々(いまいま)しい
湖畔の晩餐
(A)李(すもも) (C)容物(いれもの) (C)二粁(にきろ) (D)已(や)むを得ず 止まるとか終わるではなく、ここでは、しかたなくという意味で使われています。 (D)灼(や)ける (C)蘊蓄(うんちく) (D)剽悍(ひょうかん) すばやい上に、荒々しく強いことですが、ここではトンボのことを指してます。 (D)水蠆(やご) トンボの幼虫ですね。 (D)鰓(えら) (D)怺(こら)える (C)怪(け)しからん (B)匕首(あいくち) 当て字らしいです。正しくは「合口」です。 (B)破落漢(ごろつき) ならずものとか読むみたいいです。 (B)懐中(ふところ) 懐だけで“ふところ”と読みますね。 (B)踉(つ)ける ふらついたり、よろめいたりするという意味ですね。蛍子の兄が訪ねてきた様子を現しています。
地獄絵巻き
(D)鎖(とざ)されて (C)厠(かわや) (C)緞帳(どんちょう) (B)階下(した) まあ、ここでは下の階ことでしょう。 (C)箪笥(たんす) (B)吩咐(いいつ)ける 意味は、まさしくいいつけるです。 (B)消魂(けたた)ましい 魂が消えるほど驚くという意味の当て字でしょう。 (B)鳩尾(みぞおち) 胸の中央のへこんだ所ですね。なんでこれでみぞおちって読むんでしょうね?
老耄親爺と蝶々
(B)老耄(もうろく) 当て字のようです。耄碌(もうろく)と同じような意味ですね。 (B)狼狽(あわ)てて 不意の出来事などにあわててうろたえる漢字が出てますね。 (C)昨夜(ゆうべ) (C)硝子(がらす) (B)毒瓶(どくつぼ) 普通なら、毒壺でしょうけど、この小説の特異性からわざと昆虫採集に用いられる容器をイメージする毒瓶と表記したのかも。ただし、大型の毒瓶は毒壺ともよばれるみたいです。 (C)青酸加里(せいさんかり) 古い言い回しです。今なら、青酸カリですかね。 (D)縊(くく)る (C)鼈甲(べっこう) (B)老耄(おいぼれ) 古い言い方のようです。年を取ってぼけることですね。 (B)総義歯(そういれば) そうぎしと読みますが、意味は総入れ歯ということです。 (B)歯齦(はぐき) しぎんと読みますが、まさにはぐきの事です。歯肉炎のことを歯齦炎ともいいます。 (C)儂(わし) (A)杉山兵六(すぎやまひょうろく) 人名:探偵の助手で書生です。 (C)花骨牌(は��がるた) (D)翅(はね) (B)読者諸君(みなさま) まあ、そういうことです。 (B)頒(わか)つ あかつと読むみたいです。意味は、分かち配ることですから、そのあたりからわかつになったのかも。 (C)頁(ぺーじ)
根村博士の説明
(C)繚乱(りょうらん) (C)長閑(のどか) (C)遑(いとま) (C)朴訥(ぼくとつ) (D)擡(もた)げる (B)跫音(あしおと) 古い表現です。『跫』一字であしおとと読みます。
自殺説と他殺説
(D)凭(よ)りかかる (B)呀(あ)っと 感嘆したり驚いて発する声のことですが、今は使わないですね。 (D)蹣跚(よろ)めく
二人の嫌疑者
(C)鳩首(きゅうしゅ) 人々が寄り集まって、額をつきあわせて相談すること。まさに鳩が群れる感じですか。 (C)長(た)けた (C)杳(よう)として (D)仄聞(そくぶん) (D)昵懇(じっこん) 親しく付き合うさまという意味です。
断末魔の訴え
(D)嵌(は)める ある形に合うように中に入れておさめることで、革手袋をはめてます。 (C)遮二無二(しゃにむに) (C)朦朧(もうろう) (D)嚥(の)む 「飲む」や「呑む」と同じなんですが、のみ下すと言う意味で、ここでは、毒を飲んでます。 (D)刳(えぐ)る (B)縡(こと) 「息が絶える」の意の事切れるの事の当て字ですね。 (C)譫言(うわごと) (B)阿母(おっか)あ 母を親しんでいう語ですね。口語風に当てたんでしょう。
悪魔の恋
(B)背後(うしろ) まさに、後ろですね。 (D)邪(よこし)ま 道にはずれていることですが、恋に関する意味で使うイメージですね。 (B)応報(むくい) 【因果応報】のおうほうですね。むくいがあるからこの字なんでしょう。 (D)犇々(ひしひし) 強く身に迫るさまで、今も使いますが、こんな字なんですね。 (D)服(の)む 飲食物を口から体内に送りこむこと。「内服薬」なんかを思い浮かべるとイメージが湧くかも。
了
分類の凡例(適当です) (A)漢字の読み方が一意に定まらない場合 (B)当て字や外来語の表記 (C)子供や初学者向けの読み方の指示 (D)読みにくい漢字の補助
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猫は知っていた 7月9日 木曜日
朝から、悦子と雄太郎で推理してる場面からです。 二人共、内部犯行説で、誰かが嘘をついているという意見で一致したみたいです。 まあ、今までの状況からいってもそうでしょうね。
ただ、雄太郎は悦子の”犯人が、家永看護婦を呼び出してとっさに刺した”という説には反対しますね。 特に、毒を塗ったナイフというところが引っかかるみたいです。 あと、最後に言った”ネコ”と言う言葉。そして、本当にネコに殺されたのではないかとです。 まあ、それはそうとして、確かに、猫がどう関わるのでしょう?
雄太郎は、防空壕の中で実際に何が行われたのか?をおこなってみます。 が、どうやっても家永看護婦を殺害した手順がわかりません。 このあたりは、うまいですね。 確かにこれでは、殺害できません。って、読者は思いますね。
そんなことをやっている時に、箱崎医院長が訪ねてきます。 そこで、敬二のこと、英一のこと、平坂の細君が英一の高校時代のクラスメイトだったことなどを話します。 それから、人見看護婦が平坂の付添を断ったことを話します。 その後、これが一番肝心な話だと思うのですが、昨日の峰岸警部から雄太郎への電話をとったのが箱崎医院長だったことを確認します。 その電話の内容を他人に喋ったかを、雄太郎はわざわざ確認しますね。 それほど意味があることだとは思えないのにです。 何の意味があるのでしょう?
その後、雄太郎と悦子は家の周りを��いて出会った洗濯物を干している女中のカヨさんから面白い話をききます。 幸子ちゃんが夜中に一回起こしてあげれば、寝小便しない。 敏枝夫人が何かの加減でぐっすり寝て起こすのを忘れると、必ず寝小便してしまうというのである。 そこで悦子は、月曜日の朝、裏にふとんが干してあるのを見たことを思い出します。 つまり、これは、日曜日夜に敏枝夫人が幸子ちゃんを起こしてあげることを忘れたか、起こしてあげられる状態になかったか。 雄太郎は、誰かに睡眠剤を飲まされたのかとまで推理します。 ちょっと極端な気もしますが、何かわかっていてそういう推理をしたのでしょうか?
人見看護婦が、平阪を嫌っていた理由がこのあと明かされますが、これが本編とどう関係するのでしょうか? それは、人見の知人を捨てたからで、その知人の女性は発狂して精神病院に入れられて亡くなったそうで、まあ、感情的にも許せないですね。 ここまでで、雄太郎は、二号室にあった二包の毒薬が、工藤夫人の仕業だと推理します。 たぶん、発狂して死んだとのは工藤夫人の娘なのだろうとです。 そして、この件は、今回の事件とは関係ないとです。 鮮やかというか名推理ですね。 ただ、これで考えなければならないことが減って読者としては助かりますね。 それから、二号室の窓にかけられていたネクタイについて、ユリさんに確認を取りたいともいいます。 このあたり、一体どんな推理でこうなったのでしょう?
さて、場面は死体置場に移りそこには、平坂清子夫人、兼彦氏、兄の雄太郎、悦子、砧警部補の五人がいます。 時間は、午前十一時頃ですが、その前にひと悶着あります。 平坂清子夫人が、支度に手間取ったのです。 そこで、平坂家の女中から面白い話を聞くことになります。 それは、清子夫人と平坂の中が良くなかったということ。 悦子は、”平坂さんを殺したのは、清子夫人だといううわさ”について聞いてみますが、女中は否定しますね。 まあ、そうでしょうけど。 ただ、どうも、読者に刷り込んでいる感じで、平坂の失踪に清子夫人は関係ないような気はします。
死体置場には死体が二つあります。 ちなみに、死体置場は、病院の霊安室のようでがらんとした部屋に強いホルマリンのにおいがしています。
1つの死体は、 ・五分がりののびた頭 ・顔は何かでこすれたらしく一面に傷がついて、生前の面かげを見分けることは困難 ・みそっ歯のように茶色く欠けた前歯が三本見えている ・奥の方にも一本、齲歯(うし)がある ・丁度平坂氏くらいの背たけ ・肩はばは広い ・しっかりした体つきをしている ・所々すり傷があったが顔ほどではない。 ・両腕は顔に勝るとも劣らないほど傷だらけで、そでの短い服を着ていたとおもわれる。 ・顔や手の傷は、岩や水底ですれたもので他から暴力を加えられたわけではない ・腰から下は、きっかりときわだって色が白い ・上半身は日やけして、死体を横向けた時に見えた背中から首すじのあたりはかなり濃く日に焼けている ・溺死体なのでヒフが妙にふやけたようになっている ・最近下腹部を手術している ・下腹部に盲腸の手術の痕に似て縫い合わせた傷痕がある ・中様垂は異常ない ・胃の中に相当量のアルコールがある ・O型
もう1つの死体は、 ・首から上がめちゃめちゃ ・自動車に引きつぶされた ・平坂氏と同じくらいの背かっこう ・筋肉質でがっしりした体格 ・すねや腕や胸にまで黒い毛がはえているが、はだは男としては非常になめらかな感じで、すき通るように青白かった。 ・手術の痕がない ・O型 ・ユカタにゲタばき
と、ここで、平坂氏の病気が慢性の虫垂炎、俗に言う盲腸だったことが明かされますが、これどう関係しているんでしょう? この2つの死体のどちらかが平坂氏なんでしょうか? そうも違うような、でも、もしそうだとするとどういうことなんでしょうか?
医院に帰る途中で、雄太郎が偶然みかけたユリさんを喫茶店にさそいます。 そこで、雄太郎は指輪と一緒に何を盗まれたか、ユリさんを問い詰めます。 それが、はっきりすればおばあ様の死の真相がわかるとです。 何がどうしてそうなるのでしょう? 雄太郎はすごいですね。 指輪の他に相当の額の現金を持ち出したのではないか。そのお金は演劇部の金でお友だちから金曜日に預かってい���ものではないか。 と推理して、どうやらあたっているみたいです。
演劇部の者で積み立てていたお金15000円が、指輪と一緒に盗まれてその穴埋めを祖母がしてくることになった。 祖母が物置き部屋にしまってある古い茶つぼを売ることにして、医院の二号室に入院している平坂(骨董品を売買している)に頼んでみようと言って手紙を書いた。 手紙の内容は、「取引の場所は防空壕、時間は日曜日の午後二時。来てくれるなら二号室の窓に何か目じるしになる物を・・・」などが書かれていた。 日曜日のお昼前に祖母が、二号室の窓にネクタイがさがったと言って知らせてくれた。 でも、祖母は帰って来ません。そのうえ祖母と平坂が行方不明だと言う話がつたわって来ました。 どうしようと思っていたら悦子さんが指輪を返してくれて、質屋で指輪で一万五千円をかりてそれで、演劇部の積立金を穴埋めした。
これで、ネクタイの謎や桑田老夫人動向がわかりました。 防空壕で桑田老夫人と平坂が会ったらしいことはわかりました。 しかし、桑田老夫人が殺され、平坂が失踪したことはわかりませんね。
その後、医院に戻るととんでもないが起きています。 桐野の奥さんが殺されかけたのです。 八号室で桐野の奥さんがあお向けに倒れていて、ネコのチミが奥さんの胸の上にうずくまっていたのです。 一命はとりとめたようです。 状況としては、後ろからいきなりサロン・エプロンで喉をしめられたようで、誰にやられたかわからないようです。 ところでサロン・エプロンって、レースや刺繡で飾った腰から下の西洋風前かけのことです。 これだけでも、犯人が特定できそうですね。
八号室に行った悦子と雄太郎。 特別なにかあるとも思えないのですが、雄太郎は何かわかったみたいに、手紙を書いてポストに出すためにでかけてしまいます。 しかも、雄太郎は全てわかったから、防空壕で謎解きするというのです。 気になるのは窓の外のイチョウの木がうまく西日をさえぎるので室内は日は少しも当たらないという文ですかね?
悦子が防空壕で待っていると雄太郎がやってきます。 そしてよいよ謎解きの開始ですね。
犯人は、兼彦院長
イチョウの木のおかげで、西日など当たらない八号室を見て雄太郎はきがつきます。 部屋を変えられた本当の理由は、八号室が防空壕を真下に見下せる位置にあるからではないか。 そして、この事実から犯人は兼彦院長だと確信したと。
兼彦院長は平坂を殺害することにしたのだが、死体を処分してしまう必要ある。 家永看護婦と相談して平坂を失踪に見せかけるためにテープ・レコーダーのトリックを使う。 家永看護婦が桑田のおばあさんと平坂が防空壕で合うことを手紙で知ったのでそれを利用することにして、老夫人を物置部屋に閉じ込める。 防空壕へ行き、平坂の意識を失わせ抜穴の中に入れておく。 ところが閉じ込めたはずの桑田老夫人が姿を表わしたので兼彦院長は桑田老夫人を殺すよりなかった。 老夫人死体を抜穴に投げ込んだ時、壕の中をうろついていたチミがまぎれ込んでしまったことで抜け穴のことがわかる。
夜の八時ごろ家永看護婦が外出してニセ電話をかける。 ドライヴ・クラブから自動車���借りて車をかくす。 家永看護婦が薬を用いて家の者を眠らせる。 兼彦院長と家永看護婦は平坂を手術室に運び平坂の体に太陽灯をかけ髪をかり胸毛をそり歯を強い酸で腐触させて虫歯を作る。 桐野夫人が聞いた『こっちの一本は』と言は、平坂の歯のことだとおもう。 平坂氏に労働者風の服装をさせ、アルコール性飲料を流し込む。 兼彦院長は抜穴を通って出て行き用意の自動車を運転して、多摩川べりまで走らせると、石で平坂氏の顔や手を傷つけて川へ投げ込んだ。 桐野夫人が深夜、手術室のドア越しに聞いた一言で家永看護婦に疑惑がかかる。
次に、家永看護婦の殺害だが、壁のくぼみに金属製のパイプにスプリングを入れておさえがはずれると同時にスプリングがナイフをはじき出すような仕掛けがあったのではないか。 おさえに使われたのが、チミで、以前、ナシの木の下でのびていた黄色いネコは、麻酔剤での実験につかわれたのだろう。 それを元に、チミに麻酔剤をつかったのだろう。 ただ、予想外だったのは、抜穴の口に釘がさされていたことで、そのために、彼が用意しておいた、犯人は抜穴から逃げたという説はだめになってしまう。
雄太郎は、動機についてもある程度わかっているみたいです。 平坂氏の入院した6月27日の土曜日から1周間のあいだになにかかあたのだろう。
とここまで推理すると、 急に周りが慌ただしくなり兼彦院長が電車に引かれたとはこばれてきます。 悦子は、今まで雄太郎が話していたことは、さっきの話は兼彦院長に聞かせるのためだったのかと気が付きます。
これで終わりです。
なんとも、突っ込みどころ満載ですね。 防空壕で、平坂の意識を失わせるとありますが、実際のところ可能なんでしょうかね。 しかも、平坂の体に細工をするといっても、そう簡単にできるものでしょうか? しかも、手術の跡なんて解剖医には簡単にわかりそうですけど。
桑田老夫人を殺害して抜け穴に置いておくくらいなら平坂の死体と一緒に外に運び出したらいいのではないでしょうか? なぞ、そこに置いておいたのでしょうか?
家永看護婦の殺害に使われた装置ですが、1度も試さずに実行したとは思えないのですが、そんな時間はあったのでしょうか? ナイフに塗られていた毒も、出所がわかればそれだけでも捕まるのでは
つづく
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猫は知っていた 7月8日 水曜日
悦子の回想から始まります。
・平坂の失踪。 ・抜穴の存在を知っていた者は誰なのか? ・ドライヴ・クラブに現われたやせた小男の正体? ・二号室のクッションに平坂氏の薬袋を押し込んだのは誰か? ・私たちが二号室にいた時、ドアの外にいた女は誰か? ・ユリさんの脱毛クリームの空缶を抜穴の中に隠したのは誰か?
他にもあると思いますが、こんな事を回想してますね。 こんがらがった思考は、体を動かすことで解消できるものです。 というわけで、悦子も例の防空壕、そして抜け穴を見に行きます。 警察が徹底的に捜査してるでしょうから、目新しいことは何も見つからないだろうことはわかっていますね。 当然、何も見つからないだろうと思っていたら、とんでもないことがおきます。 なんと、抜け穴から人が出てきたのです。 しかもそれは、兄の雄太郎でした。 驚いたり、恥ずかしいやらで悦子は、雄太郎を怒ります。 雄太郎は近道したとすました顔です。
悦子は、驚いたときに怪我をしたので、治療のために自分の部屋に戻りヨジーム・チンキを塗ります。
ヨジーム・チンキは、ヨジウムのチンキということで、ヨジウムはヨウ素のことです。 一般には、ヨードというほうが通りはいいかも。 チンキは、ある薬品をアルコールに溶かした液体。または,チンキ剤のことです。 つまり、ヨウ素をアルコールに溶かした液体のことですね。
その時、悦子は、兄の大工道具をみつけてしまい、抜穴に復讐することを思いつきます。 五寸釘を二本で、五分とはかからなかったことを抜け穴にします。 具体的にどんな事をしたのかはっきりは書かれていませんが、多分、抜け穴が開かないように釘を打ったというところでしょうか? つまり、この一連の件は、悦子が抜け穴に釘で蓋をしたことを現したいんでしょう。 このあと、そのせいで抜け穴が使えないことが何かの要素になる事件でも起きるのでしょう。 なかなか、面白いですね。
その後、敬二を訪ねると言った兄に駅で追いつくと、そのまま一緒に電車に乗ります。 その途中の食事中に、雄太郎は、その薬がアヒ酸っだたことから、大胆な推理をします。 その薬で、平阪の殺害を計画していた。 ところが、平阪��薬を飲むのをやめていたので、それが失敗した。 それで薬をすり替えられる人として考えていた清子夫人、箱崎医院長、それに看護婦三人は除外できると。 確かに、この5人は薬のすり替えができますが、この5人の中に犯人がいたとしたら安易すぎますね。 ただ、実際にすり替えが行われたのは、日曜日の午前十時より後のことだろうから、まだわからないとです。
雄太郎は、平阪をよく知らないから、動機がわからない。 敬二は、抜穴の存在も知っていたと思われるし、それを敬二に確かめに行くのだと。 例えとして、エドモン・ダンテスが出てきますが、『巌窟王』の主人公ですね。 韓流なみの復讐劇ですね。 敬二が復讐をするという例えだとすると、一体何に対してでしょう? まあ、それもいずれ分かるのかもしれません。
その後、どうして敬二を訪ねるのかの最大の理由がわかります。 抜穴からブリキ缶が出た話をした時、彼が『何だってそんな物が埋めてあったのか?』と言ったことから、 それを埋めたのが敬二であることがわかったからだとです。 これで、ユリさんの秘密もわかるかも知れないとです。 なんか、サブキャラっぽい敬二が、キーを握っているんでしょうか?
笠井あきらの所を訪ねたらたまたま留守でした。 かわりに出てきたかみさんと話してみると、四日の夜に原稿料がはいったからと��ヶ月分の家賃を払ったそうです。 一カ月の家賃が、3600円なんて時代があったんですね。 そんな話をしていると、笠井あきらが帰ってきます。
雄太郎は、大胆にも、折角盗み出した指輪をなぜ抜穴の中に隠したのか尋ねます。 笠井あきらは、慌てたように、 「何でそんな所にユリの指輪なんかを」と、口走ります。 これはいけませんね。 こんなに簡単に誘導尋問に引っかかるなんて。 雄太郎が考えていたとおり、笠井あきらは敬二でしたね。
そして、笠井あきらこと敬二の告白です。 敬二は抜け穴を知ってましたね。 しかも、ユリのダイヤを盗んだのも敬二でした。 盗んだことに気がとがめて抜け穴に隠していた風ですが、雄太郎は、換金が難しいからだろうと見抜きますね。
敬二の告白です。 土曜日の午前11時頃に、本を持って帰るために戻ってきてたんですね。 これで、本棚の本がなくなっている件の犯人がわかりました。 というか、これだけで、敬二がここに戻ってきたというのを思いつくことはできないでしょうね。 その後、ユリ部屋から空き缶と指輪を盗んで、抜け穴を通って戻るときに、そこに隠します。 ところで、敬二は寄木細工の箱が開けられるみたいです。ユリの証言とは違いますね。 これはどういう意味なんでしょ。 あと、蜘蛛の巣について書かれていないのですが、敬二が抜け穴を通ったのなら、そのときに敬二が蜘蛛の巣だけになることはあっても、それ以降に入った人は、ほよんど蜘蛛の巣は気にならないことになるのではないかと思うのですが、どうなんでしょう?
雄太郎は、間代を払った金の出所も追求しますが、敬二は原稿料だと突っぱねます。 このあたりも、何かありそうです。
そして、その後びっくりする話が出てきます。 平坂の奥さんである清子夫人は、高校で敬二の二級上で英一のクラスメートでした。 しかも、英一と清子は愛し合っていたのに、清子の父親の破産により、債権者の中のひとりである平坂と結婚したと。 敬二は新派悲劇(新派劇で演ずる悲劇)と例えています。 ただ、この話を知っているのは、敬二とユリだけでした。 英一と清子に関係が会ったということが、平阪の失踪となにか関係があるのでしょうか? ますます、話が複雑になってきました。
駅までの帰り道で雄太郎は、考えていたことを駅近くで悦子に話します。 桑田のおばあちゃんと平坂の両方とも殺されたのではないか。 そして、平坂の死体は、自動車で運ばれたのではないかとです。 確かに、辻褄はあいますが、その後すがりつくように悦子が平阪からかかってきた2度の電話のことを問うと、それはテープレコーダーを使ったのではと雄太郎は答えます。 そのテープレコーダーを考えた根拠を雄太郎は説明します。 女性の声は、大体400サイクル、平坂の声が仮に200サイクルだとすると2分の1の速度で再生すると平坂の声のように聞こえるのではないかとです。 実際、それほどうまく行くかどうかはわかりませんね。 しかも、家永看護婦を疑っていますね。 可能かも知れないという程度でしょうか? まあ、確かに1回目の電話がかかってきたときは、外出していましたね。 2回目の電話のときはどうだったのでしょう?
しかも、1回目の電話が日曜の夜の8時過ぎだったこともあって、大洋ドライヴ・クラブで自動車を借りた小男が家永看護婦だったのではと疑っています。 どうも、自動車を借りるときに免許証を提示していたら小男とはならないと思うのですが、その当時は、まだ免許書に顔写真が使われていなかったのかもしれません。 それなら、なんとなく小柄な男と思われたのかもしれませんね。 雄太郎は、共犯として家永看護婦を考えているんですね。 家永看護婦が、電話をかける、自動車をかりる。
後は、平阪の死体がどこにあるか。 テープ・レコーダーは、どこにあったのか? そして今はどこにあるのか? 自動車は日曜の午後8時から月曜の午前2時までの6時間、どこに隠されていたのか? もし、平阪が殺されたとしたら、どうして殺されたのかという動機もわからないとですね。 これ以上は、警察力でもないと無理だと言う結論になります。
まあ、確かに難しいでしょうね。
なんと、ここで、老警部なる人物がいきなり登場します。
老警部、名は峰岸周作といい、以前、雄太郎たちが住んでいた目黒の近所にいた老人でした。 雄太郎たちが知り合った頃は、警視庁の捜査係長を勇退していて、よく犯人捜査の話をしてもらっていました。 雄太郎は、その老警部に会いに行きます。 悦子は、雄太郎と別れて、平坂清子夫人と会いに行きます。
別れた場所は、新宿駅でした。 時刻が書かれていませんが、午後の2時頃でしょうか?
悦子は、平坂清子夫人からなかなか面白い話をききます。 ・商取引のために人を殺すなどということは、絶対ない。 ・むしろ、平坂殺されたのではないか。 ・五日の、日曜の夕方、二号室の窓の所に平坂の紺とクリーム色の縞のネクタイがぶらさがっていた。 ・その場に、六号室に入院していた工藤の奥さんがいた。
工藤の奥さんという表現がいまいちよくわかりませんが、工藤まゆみのお母さんのことでしょう。 その人が、いたということと、ネクタイには何かの関連があるのでしょうか? そういう書き方ですからね。いかにも。
その後、どういうタイミングで一緒になったのかわかりませんが、箱崎医院に戻る途中で雄太郎が、老警部に会って事件の事を話したこと。しかも、身元不明の変死体について調べてくれることを話し、悦子は、平坂清子夫人との事を話します。
箱崎医院の近くまで来たときに、ふたりの少女がを見かけます。 ひとりはユリさんで、もう一人は友達のようです。 雄太郎は、ここでも大胆な行動に出ます。 かなり、怪しいですけどね。
土曜日、午後からのクラブ活動で今度の演劇のことで集まった。 今年は、ハウプトマンの『寂しき人々』を計画していて、衣装や舞台装置の資金を集めていること。 月曜日は、遅刻してきたあとおばあ様が亡くなったから帰ったと、雄太郎は聞き出します。 ちなみに、ユリさんが演劇をやっていることは桑田老婦人のみ知っていました。
『寂しき人々』とは、ゲルハルト・ハウプトマン作で、若い科学者が、彼の研究に理解のない妻と、彼の考えに共鳴する女子学生との三角関係に悩み、自殺をとげるまでを描いた自然主義的作品です。
ユリさんがおかしくなったのは、敬二にダイヤを盗まれたことがわかってからですね。 まあ、ダイヤが盗まれたらおかしくなるのはわかりますが、自殺するほどとは、どういうことなんでしょう?
箱崎医院に戻ってくると、箱崎から峰岸というひとから電話があったことが雄太郎に告げられ、その内容がテープ・レコーダーが発見されたことだというのです。 なんか本当にテープ・レコーダーが使われたんですかね。 雄太郎すごい! 箱崎は、テープ・レコーダーに何の意味があるのかわからないようですが、平阪殺しに関連していると雄太郎が言うと、驚きます。 箱崎は、平坂は���されたのか?いつ発見されたのか?聞きます。 そんな、箱崎をなだめて、家永看護婦が自動車の運転ができるか雄太郎は確認します。 箱崎は、よく覚えていないようですが、ただ、自動車屋の娘だから運転できるかもといいます。 ここで、雄太郎は、自分の組み上げた推論を語ります。
ニセ電話のことに及んだ時、箱崎の顔色が変わって、テープ・レコーダーを持っていたからと言って、その男が犯人だという証拠にはならないといいます。 うん? 犯人は、多分男でしょうが、まだ、犯人が男だとは決まっていないような気もしますけどね。 勘ぐりすぎでしょうかね。 雄太郎は、テープ・レコーダーを持っていたという方に引っかかたみたいで、テープ・レコーダーを持っていたのは誰かと聞きますが、箱崎は、答えませんね。
箱崎は話題を変えて、動機について尋ねます。 雄太郎もその点は、わからないみたいで、逆に、箱崎に思い当たるフシはないか尋ねますね。 箱崎は、平阪につてい知っていることは、私の患者だったと言う事実以外にはないといいますね。 それを聞いて、雄太郎の目が一瞬光るのですが、これのどこに問題があるのでしょう? 頭のいい人の考えることは、わかりません。 雄太郎は、箱崎が誰かをかばっていると考えているみたいですね。 その後、家永看護婦にも話を聞いてみようとしますが、外出中でした。 その時点で、夕方になっていましたね。
ここで、かん高い女の悲鳴が聞こえてきます。 皆で防空壕に駆けつけてみると、その入口で、家永看護婦が倒れているのを発見します。 烈しくケイレンしている彼女の右の肩に傷がついて、血が流れ出していました。 雄太郎と箱崎医院長が、家永看護婦を運ぼうとしますが、箱崎医院長は、一目見るなり毒にやられたようだと絶望的に頭を振ります。 その時、倒れていた家永看護婦が「ネコ。ネコが」といいます。 でた!!って感じですね。 そうこないと、面白くありません。
皆は立ちすくんでいるようですが、雄太郎は、冷静にあたりを観察しますね。 ・壕の入口から中を覗き込み、そこに生物の気配が感じられないのを確認します。 ・雄太郎がポケットから懐中電灯を取り出します。(用意周到です) ・おり口の石段には血がしたたって、��の中の方に続いていました。 ・壕の中に下りると、ローソクを立てるくぼみのすぐ前の床に、一本の刃の幅は二センチで万年筆よりやや長いナイフが落ちています。 ・鋭くとがった先端に血がついていてこれが凶器であると思われる。 ・ナイフの近くに、グリーンのビニールのハンドバッグが、ハンカチやコンパクトとともに散乱していました。 ・そのそばに、太い頑丈そうな一本の針金を見つけます。 ・その針金は35センチくらいの長さで、かぎ形に曲りもう一方の端はまるく、しゃもじのような形になっている。 ・ローソクを立てるくぼみに黒い猫の毛が落ちているのをみつけます。
こんなところでしょうか? ここまで読むと、猫に関連してる何らかの装置で家永看護婦が毒のついたナイフで殺されたという感じでしょうか?
壕の中から出てきて、雄太郎は駆けつけた警官や他の人と話しますが、箱崎医院長がズバッといいますね。 ・刃物にコブラの毒が塗ってあったのだろう。 ・あの右肩の傷は、後ろから刺されたもので、あれ以外一つも傷はない。 これは医者ならではなんでしょう。
その後、雄太郎が衝撃の発言をします。 犯人がどこに逃げたのかはわからないが、抜け穴を使って勝福寺側には行っていないというのです。 なんと、抜穴のふたがあけられないように釘でとめてあるというのです。
人見、えたいの知れない幽霊でも見たかのようにふるえ出します。 箱崎医院長と英一は、信じられないふうで眉を上げます。 敏枝夫人は、おどおどした様子です。
そこに、峰岸老警部の登場です。 この時点で、夕方もかなり時間の立った頃だと思うのですが、峰岸老警部は、勢力的なんですね。 雄太郎が、峰岸老警部に簡単に事件を説明して、それから敏枝夫人と引き合わせます。
その後、駆けつけた警視庁捜査一課の砧(きぬた)警部補に老警部の申出が受け入れられて、雄太郎が尋問に立ち会うことになります。 このあたりは、うまい演出ですね。
そして、峰岸老警部は尋問が行われる前の応接室で、雄太郎と打ち合わせと称して推理を聞きます。 雄太郎の推理はこうです。
テープ・レコーダーの録音は防空壕で録音は真犯人と家永看護婦が行い、そのまま防空壕に隠して置かれた。 家永看護婦が桑田老夫人の手紙を読んで事前に知ることができたので、日曜日の午後二時、平坂が防空壕にやって来るのを待ち伏せして彼を殺した。 そのまま犯人は平坂を殺して死体を抜穴の中にかくした。 夜になって家永看護婦は、フロへ行くと言って医院を出る時に、壕からレコーダーを持っていき公衆電話で箱崎医院を呼び出し平坂の声の第一回の電話をかた。 それからフロ屋の二軒先の質屋でレコーダーを質に入れた。 次にフロ屋へで入浴をすますと駅前のドライヴ・クラブへ駆けつけ自動車を借りた。 そして自動車をどこかにかくし医院へ戻って来てきた。 六日の月曜、家永看護婦は、質屋からレコーダーを受け出し、二回目の電話をかけた。 しかし、老夫人の死体が発見されていため、レコーダーの意味がなくなったので売り払った。
で、峰岸老警部が調べた情報と一致するようです。 かずさ屋という質屋には、日曜日の夜八時過ぎ女がレコーダーを預け、月曜日の午前九時半頃に受け出した。 恒春堂とう古物商には、六日の午前十時頃女が置いて行った。 確かにこれらは、時間があれば確認できそうですね。 ドライヴ・クラブのことが書かれていないのがちょっと気になります。 これも、家永看護婦だとすると、小柄な男性という証言はなんだったのでしょう? あと、この推理で気になるのは、日曜日の午後二時より前に犯人は、平阪に殺意を抱いたことになります。 そこに書かれたことで、殺意を抱くようなことがあったのでしょうか?
それから、平阪が殺されたとすると変死体として発見されているのではと雄太郎は推理したようで、峰岸老警部にそれを確認します。 三つあった身許不明の変死体の一つは女であとの二つは平坂の特徴とは合わない。 どうなんでしょうね? なんか、フリのような気もしますね。 男の2つの変死体のうちどちらかが…なんてなると面白いんですけど。
そして、よいよ応接室で尋問が始まります。 まず、雄太郎が現場の状況なんかについて質問を受けます。 今まで見てきた内容の確認で、目新しいこともありません。 抜け穴に釘を指したのが、悦子だとわかりますがこれも、読者にはなんとなくわかっていましたからニヤニヤしただけです。 ただ、これで抜け穴が通れないことがわかっていたのは、誰もいないことがはっきりしました。
次は、箱崎医院長です。 これも、特に目新しいこともありません。 ・症状から毒蛇の毒ではと考えた。 ・誰かがテープ・レコーダーを持っているのを見たことがない。 ・「ネコが、ネコが」というのは、聞き間違いでは��い。 ・死体のそばに落ちていたバンドバッグは見たことがある。
次は、敏枝夫人です。 特に目新しいこともないと思うのですが、どういうわけか文面を割いています。 何かあるのでしょうか?
敏枝夫人は、 看護婦と患者さんの夕食をすました後、うちの者の為におぜん立てをしている時に、この事件がおきます。 茶の間には、英一と女中がいました。 人見看護婦が知らせてくれたことで敏枝夫人が知ることとになります。 英一が出ていった後を追いかけると、壕の入口で主人と雄太郎が家永看護婦を抱き起こすようにしていて悦子さんが、そばに立って見ていました。 敏枝夫人は、被害者を見ていませんが、英一が『死んでるじゃないか』と言ったといってます。 ネコがどこにいたかはわからない。 ハンドバッグは家永のですがほかの物はわからない。
と、ここまでは、とくに目新しくもありません。
で、家永看護婦が、外出したのは誰の命令か?確認すますね。 すると敏枝夫人は、家永看護婦が私の所に来て、行ってまいりまでょうか、と言ってくれたとです。 家永看護婦が外出したことの裏付けにはなりましたね。
次は、英一です。 これも特に目新しいことはありませんが、どういうわけか家の中にテープ・レコーダーがあったことがあるかという質問を受けます。 答えは、知らないですが、英一がテープ・レコーダーと関わっているんでしょうか?
次は、人見看護婦です。 これも特に目新しいことはありません。 ただ、悲鳴が聞えた時、薬局で置時計を見て、その時刻が6時23分頃だと証言します。 野田看護婦と薬局の入口の前に立って話しているのを、その時刻の2,30分前に確認しています。 家永看護婦については、一番古参で頭も働く人だが、高慢だったといいいます。ナイフと針金以外は、家永看護婦のものだともいいますね。 平坂の手術に家永看護婦が立ち会ったことが書かれていますが、これ全体に関係あるのでしょうか? 門からは誰も出ていかなかったことも確認されますね。
次は、野田看護婦ですが、脳貧血で看護婦室で横になっています。
次は、桑田ユリです。 裏木戸からは誰も出なかったことを確認するだけです。
次は、炭屋の若主人です。 近所の炭屋で、炭の配達に6時10分ごろきて、それからずっと炭を切っていたと証言します。 その当時は、炭から灯油への転換期だったみたいです。 炭を切るとは、文字通り、使いやすいように長い炭を切っていたのでしょうか?
これで、表も裏も出入りがなかったことがはっきりしました。 つまり、内部の犯行ですね。
質屋や古物商は、家永看護婦に間違いないということですが、ドライヴ・クラブはわからないみたいです。 かなりいい加減ですね。
それから、女中のカヨさんの尋問ですが、ここでとんでもないことが発覚します。 英一の部屋にテープ・レコーダーが、1日から4日まであったとです。
これで、再度、英一の尋問です。 英一は、落ち着いたもので、預かったものだし犯罪には関係ないから言わなかったとです。 英一の部屋に、テープ・レコーダーがあったことを知っている人があるとすれば、箱崎医院長だろうといいます。
その他の人の尋問も行われますが、特に書かれることもありません。 翌日、2つの変死体、一つは酔っぱらい労働者の溺死体で、もう一つは、引き逃げの検証をするみたいです。
これで、水曜日は終わりです。 結局、死体が増えただけですね。 家永看護婦を共犯にできるような人物が犯人だということ、明らかに内部の犯行とわかったのは収穫でしょうか?
つづく
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猫は知っていた 7月6日 月曜日 2
ちょうどそこへ警官が抜け穴から一本の象牙のパイプと泥まみれのブリキ缶を持ってきます。 ただ、その警官がクモの巣でひどく汚れていたとあります。 抜け穴を平阪が、桑田老夫人が途中まで通ったとしたら、クモの巣はないでしょう。 だから、抜け穴を抜けた先もクモの巣だらけだったのでしょう。
ブリキ缶は例のやつですね。 雄太郎も悦子も知らん顔です。
象牙のパイプは平坂のらしいです。 ちょっとわざとらしいですね。 でも、実際、平坂は失踪しているわけですから、この抜け穴を通ったのは間違いないでしょう。 つまり、このパイプのおかげで、平坂は抜け穴を通ったということにしたいんでしょう。 実際はわかりませんが。
その時、電話ががかってきます。 平坂からみたいです。 電話をとったのは、野田看護婦であまりのことに悲鳴を上げてしまいます。 その場にいたのは、電話をとった野田看護婦、仁木兄妹、宮内技師、院長夫妻、小山田夫人、人見看護婦です。 これもわざとらしく挿入されていますね。 つまりここにいた人間は、関係ないとでも言うようです。
それから、桑田老夫人の持っていた四角い包に刑事が関心をよせます。 院長夫妻は、わからないが物置き部屋を調べれば分かるもしれないといいます。 これで、家の者と刑事は物置き部屋へ行ってしまいます。
おばあさんの消息を尋ねに外出していた家永看護婦が帰ってます。 家永��護婦は外出していたんですね。 そういえば、ユリさんも学校へ行ってました。 この二人は外出していたのですね。 悦子は、そのユリさんの事情を知りたと思っています。
どうして、桑田老夫人は殺されたのか? 一体何を持ちだそうとしていたのか? 平阪がこの件にどう関わっているのか? 面白くなってきました。
午後三時過ぎ、仁木兄妹は、英一から捜査の進展状況をききます。
・死亡時刻は、午後二時前後。 ・死因は扼殺。 ・ふろしき包の中身は、時価二万五千円ほどの茶つぼだと思われる。 ・パイプは勝福寺の床下に落ちていた。 ・寺の向かいの吉川という元陸軍少尉が、ゆうべ遅く自動車の音を聞いた。 ・平坂は、古い美術品などの輸出をやっていた。 ・祖母が茶つぼを取引するために防空壕で落ち合った?。 ・平坂が、祖母を殺して茶つぼを持って逃げたと警察は考えている。
ユリさんが親戚に電報を打つために外出するのを仁木兄妹は、チョウジの植込みのかくれてやりすごし、門の外で捕まえます。 家の中では話にくいかもと思ったのでしょうね。 チョウジとは、クローブのことで、高さ10m前後まで成長する常緑小高木です。 樹皮は灰褐色で滑らかな質感があり、葉は緑色で光に当たると反射する光沢があり、革の様な質感をもっています。花は多数の小花が枝の先に集まって集散花序をつくり、また個々の花は蕾が緑色から赤色へと成熟すると花開き多数の白色(~薄黄色)の雄蕊が溢れでます。花色は緑色や赤色、白色(薄黄色)で、個々の花は釘の様な形をした萼から多数の雄蕊と1本の雌しべをだします、花序は小花が枝先に集まり集散花序をつくります。
例の紛失事件についての話です。 ユリさんが答えたのは次のとおりです。 ・いつ���失したかわからない。 ・紛失に気づいたのは土曜日(7/4)、学校から帰った時。 ・寄木細工の箱に入れていたので開け方がわかるとは思えない。 ・指輪のほかに脱毛クリームの空き缶がなくなっていた。 ・でも、嫌疑をかけられるのがいやでごまかした。
で、雄太郎はそのユリさんの答えのほとんどを信じていません。
家に帰ってみると、家永看護婦に出くわして事件ことを話しますが、それよりもやっとって感じで、敬二のことが話題にあがります。 完全なサブキャラですから、もしかしたら全然出てこないのかもと思っていました。
大学に入るまでは、かなりやんちゃだったみたいですが、 医大へ入ったら下宿してもいいと言う条件で入学したのに、そこを飛び出しどこにいるかわからないそうです。 やっぱり、サブキャラですかね。
雄太郎は、家永看護婦に一つ疑問を投げかけます。 桑田老夫人と平坂がどうやって連絡していたのかという疑問です。 確かに、携帯電話もないし、入院患者と連絡をとるためには、病院に来るくらいしか思いつきませんね。
で、家永看護婦の答えは、「手紙」でした。 清子夫人が午前の便で、手紙が一通届いてたいのを思い出し、 家永看護婦がその手紙を、郵便受けから取ったのを思い出しました。
この当時は、午前と午後の2回郵便配達があったんですね。 もしかすると、夕方も配達があって3回とかあったんでしょうか? それだけ郵便物が多かったのでしょうか?
夜になって、仁木兄妹は銭湯に行き、その帰りに勝福寺の表門に回ってみます。 勝福寺も現場の一つですものね。 確かに確認するのもいいかもしれません。
表から正式に訪問するとしたら70mとなっています。 よく不動産なんかで「通常」は80M=1分といわれるみたいですから、訪問するとしたら1分くらいですかね。 勝福寺のまわりは半落葉低木の広葉樹であるイボタの木で囲まれています。 手入れはされていないみたいですね。
寺の前からゆるい坂の下まで広い道路がのびていて、その途中に古川元陸軍少将閣下の家があります。 その家の前にある空地で縁台を囲みふたりの男が街灯の光で将棋をさしていました。 一方は定年間近の小役人といった感じの頭のはげかかったずんぐりした男。 もうひとりは、「閣下」だった。
「閣下」は肩幅の広く上体を真直ぐにし太い手首は年をへたカシの木を思わせる頑丈さ。 銀泊色の髪の毛オールバックになでつけ、鼻の下には同じく銀の針のように光るひげが、鋭く南北両極を指しています。 縁台の一端には土焼きの蚊遣り豚が煙を淡く立てています。
さて、将棋はそれから簡単に蹴りが付いて、小役人といった感じの男が負けて挨拶も早々に帰ってしまいます。 それから、雄太郎が閣下の相手をして、今度は、閣下を負かしてしまいます。
そこで、閣下の重要な証言を聞くことになります。 ・午前二時十分前くらい坂の真下で車が止まった。 ・閣下の家か勝福寺に来るためだと思っていたが違った。 ・坂の上から車にのるために人が降り��きた。 ・二時すぎに、車が走り去った。
状況だけを考えれば、平阪がおばあちゃんを殺して茶つぼを持って逃げたとなりますね。
雄太郎と悦子は、事件について話します。 雄太郎が投げかけた疑問は、 ・老夫人がなぜ茶壺を売らなければならなかったか? ・老夫人を物置き閉じこめたのは誰か?また何のためか? ・平阪に抜け穴があることを話したのは誰か? ・ユリさんの指輪を盗んだのは誰か?
こんなところですかね。
つづく
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猫は知っていた 7月6日 月曜日 1
平阪と桑田老夫人の失踪はありますが、これといって大きな事件も起きないままです。
そんな状況ですが、ここで仁木雄太郎の慧眼が発揮されることになります、 なんと猫のチミが、勝福寺でみつかったことから、防空壕に勝福寺に抜ける抜穴があるのでは?と考えるのです。 そうすれば、平阪と桑田老夫人の失踪も説明がつくとです。
確かにそうですが、あまりに安易なんじゃと思ってしまいます。
五号室の患者の宮内技師も参加して大々的に某く号の探検が始まります。
防空壕は、2×3Mの広さで、雄太郎の頭すれすれの高さしかありません。 四方にタールを塗った支柱が立てられ、床はセメントで固められています。 入口の横に、ローソクなどを置くなどの役目をしたのだろう30cm角にくぼみがあります。
なんとそこに、雄太郎の推察したとおりの抜け穴がみつかります。 床のセメントが切り取られたようにななめに持ち上がって、60cm平方くらいの真暗な穴を見つけてしまうのです。 ありゃ、抜け穴ですか?って感じでしたね。
平阪や桑田老夫人はここから外へ出たんでしょうね。 しかし、平阪は降っていたような、桑田老夫人はかなりの高齢だったような、でも、出たんでしょうね? 前に悦子が入ったときに蜘蛛の巣のことが書かれていました。 それが、今回は書かれていません。 もし、平阪や桑田老夫人はここから外へ出たのなら、蜘蛛の巣はどう解釈すればいいのでしょう?
それにしても、60cm平方はかなり小さ気がします。
その抜け穴にまず雄太郎が入ります。 続けて悦子、そして宮内技師が入ります。
この三人は真直ぐ水平に続いている横穴を進みます。
そして、桑田老夫人の死体を発見することになるのです。 慌てて穴から出る三人、しかし、ここでも、雄太郎の慧眼が光ります。 帰る途中の横穴で、5cmばかりの円筒形のブリキ缶が埋まっているのを発見しそれをえぐり出すとその缶の中身を回収します。 入ったときに気がついていたみたいですが、そのまま通り過ぎたみたいですね。 でも、死体を発見したことで、これもなにか関係があるのかもしれないとそう思ったというところなんでしょう。
雄太郎はすごいですね。 あの間に、脈がないのを確認し、手で首をしめられたのだといいます。 そして、それ以上はわからないと。 とりあえず、それだけわかればいいのではないでしょうか? 疑うわけではないのでしょうが、兼彦と英一それに宮内技師の三人がまた抜け穴に入ります。
雄太郎と悦子は、服が汚れたと言い訳ににもならない言い訳で自分たちの部屋に戻ります。 そこで雄太郎がさっき夜かなで拾ったものを確認します。 エンジ色の皮張りの小さなケースに入った美しいプラチナの指輪でし���。 その指輪の前側に輝いているのは、白く光る大粒のダイヤです。
俄然面白くなってきました。 ダイヤにまつわる事件なんでしょうか?
ここで、悦子は、ユリさんの事を思い出します。 何か苦にしているのか、急にユリさんの加減が悪くなったらしいことをです。 そこでこの指輪を盗まれたので半病人になったのではないかと思います。 ちょっと突飛な感じもしますが、雄太郎が否定しないと言うことは、当たらずとも遠からずですかね。 そこで、悦子がユリさんのとろに行ってみると、なんと自殺しようとしてうところにであいます。 まあ、はっきりとは書かれていませんけどね。
とっさに、悦子は例のケースを見せます。すると、ユリさん目が見開かれました。 ビンゴでした。 ユリさんがいうところでは、母の形見で、どうやらなくなったみたいです。 ただ詳しいことはここでは明かされません。
このダイヤも伏線の一つかと思っていたのですが、悦子はユリさんそれを返してしまいます。 目をつぶるというよりも、 悦子が事件とは関係ないと勝手に判断したんでしょうかね。 そのあと、ユリさんは腕時計を見ながら走って、学校へ行ってしまいます。 さっきまでの塞いだ様子が嘘みたいです。 確かにダイヤの紛失も気になりますが、事件とは関係ないのでしょうかね。
悦子が防空壕へ戻ってみると、ちょうど桑田老夫人の死体が引き出されたところでした。 どうやって出したんっでしょうね。 かなり気になりますが、その点はどうでもいいんでしょうね。
桑田老夫人の死体は、昨日悦子が見たのと同じ、矢絣のひとえに夏帯を締めていて、 そのそばには、紫縮緬のふろしきと新しいゲタが一足あ��ました。
ちなみに、矢絣とは、矢羽根を図案化した模様のある絣のことです。 夏帯とは、夏用の婦人帯のことで、一重帯には博多織・綴れ織りなど厚手の布地を用い、腹合わせ帯には麻・絽ろ・紗しやなどが用いられるようです。 縮緬は表面に細かいしぼのある絹織物でかなり丈夫です。
気なるのは、紫縮緬のふろしきですかね。 ふろしきは何かを包むものですから、包むつもりで持っていったのか、それとも何かを包んでいて中身を犯人が持っていき、風呂敷をおいていったのか。 そのあたりは詳しく書かれていませんね。
警視庁の刑事の「被害者を最後に見た者は?」という質問というか尋問ですかね。 それに、悦子は一番最後かどうかはわからないけど、午後二時前に会ったことを告白します。 周りからは非難の目で見られれますが、たとえ、この事実を語っていたとしても老夫人の命を救うことはできないであろうことはわかっていますから、それほど気にしていません。 まあ多少はきまずいようですが。
ところが、この後小山田すみ子夫人が悦子の窮地を救います。 悦子より後に桑田老夫人を見かけたというのです。
例の物置き部屋の横手の戸口から、紫色の縮緬の風呂敷で包んだ大きな真四角の荷物をかかえてでてきたというのです。 しかも、きっかり二時に終わる放送討論会の終了をどこかのラジオから聞いたので、二時少し前だとです。 これは、かなり有力な情報です。 やはり風呂敷には何か包まれていたのですね。 それが現場にはなかったと言うことらしいです。 一体、何だったんでしょう?
一通り尋問が済んで、刑事の一番の関心は、やはりというか平坂の失踪でし���。 そこで、平坂のいた二号室の捜索をしますが、何もみつかりません。 防空壕の抜穴の存在についても誰も知らないことが確認されます。 とはいえ、犯人は知ってるだろうから誰かは嘘を付いているんでしょうね。
つづく。
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猫は知っていた 7月7日 火曜日
いきなりの急展開です。 雄太郎が、以前見た懸賞小説の事を思い出します。 そこには、左右が逆になっていたり、防空壕がありませんが、箱崎医院そっくりの場所で起こる殺人事件が描かれます。
探偵雑誌「指紋(指紋社)」の七月号に掲載されている笠井(かさい)あきら作の「X線室の恐怖」でした。 内容は、推理物の短篇で、ある開業医のレントゲン室で患者が奇怪な死を遂げます。 犯人は看護婦長の女性です。 悦子は、その犯人像に家永看護婦を当てはめていますね。 それなりに似ているのでしょう? まさかと思いますが、これも伏線でしょうか?
『指紋社』はもちろん架空の出版社でしょうけど、探偵小説や殺人事件となると指紋はつきものですからね。 もしかすると、今後もこの架空の『指紋社』が出てくるかもしれません。 ニヤリとできる要素ですね。
小説のタイトルが「X線室」となっているのに、その内容として「レントゲン室」と表現しているのがちょっと気になります。 そのあたりがこの小説の肝なんでしょうか。 これが、あんがい本編の伏線になっているのでしょうか。 同じものなのに別の表現があるとかです。 また、唐突に家永看護婦がでてくるのも意味が有りそうです。 あとは、笠井あきらの正体ですか?
その後、仁木兄妹は、笠井あきらを尋ねます。 というか、あきらかに出版社が住所を教えたとしか思えない展開です。 セキュリティのゆるさは今では考えられませんね。
笠井あきらは国電の巣鴨駅から五分ほどの広田文具店に部屋を借りています。 25,6の若い男で、肉づきのいい赤味をおびた顔と厚い大きな唇を持っていて、パーマをかけたと黒い髪がひたいに垂れかかり、太い眼鏡が顔の三分の一をかくしています。 『指紋』の作品が興味深かったというだけで、笠井あきらは仁木兄妹に会ってくれるみたいですね。
雄太郎は、箱崎医院の事件について笠井あきらに聞いてみますが、これといった反応が返ってきません。 でも、平阪のことは知っているみたいです。 その平阪が行方不明になったと知ると“死体は発見されたのか?”と問いかけてきます。 雄太郎でなくてもこれは変だとおもいますね。 まだ、平阪がどうなったのか誰も知らないはずなのに、どうして死体が発見されたのかと聞いてきたのでしょう?
笠井あきらはそれには答えずに、夕刊を見て、桑田老夫人が殺されたことを知ります。 もしかすると、今知った芝居ですかね。 そして、探偵小説を書いているものだから、平阪も死んだのかと考えたと答えます。 わざとらしいですね。
それから、雄太郎は遺留品や猫がいなくなったこと、警察の捜査���尋問の模様を話して聞かせます。 笠井あきらは、おもしろいと熱心聞いています。 新しい発展があったら手紙ででも知らせてもらえませんかという笠井あきらに雄太郎は、快く承諾します。
結局この笠井あきらは、本編ではどんな役割なんでしょう? 仁木兄弟の推理に対して何かのヒントでも与えてくれるのでしょうか?
病院に戻ってくると、ちょうど、交通事故で二号室にはいった大野さんが退院するところでした。 仁木兄妹は、大胆な行動に出ます。 もともと二号室には平阪が入っていましたから、何か見つかるかもしれないと思ったのでしょう。 そして、悦子がベッドの上の二つ折りになったクッションの中から、平阪のと思われる「内用薬」と書かれた白い散薬の袋を見つけます。 それを自分のポケットに入れます。 そのとき、その二号室のドアの外に誰かがいるのに気が付きます。 そのドアの外にいた誰かは、結局二号室には入らず、立ち去ります。 雄太郎は、辛うじて気づくほどの化粧料の香りから、そこにいたのは女性だと判断します。
警察がなぜクッションに隠されていた薬の袋を見つけることができなかったのか? 悦子が考察しますが、案外的を得ている感じです。 警察が二号室を調べたとき、その時の入院患者である大野さんが例のクッションをずっと抱えていたのではないか? あとは、その薬袋の意味ですね。 雄太郎は、野田看護婦に平阪の薬の事を聞いてみます。 すると、日曜の午後の検温のときに二回分あったことがわかりました。 それを知っていたのは、看護婦三人と箱崎医院長、そして平阪の奥さんとなります。 知っていたことが重要なんでしょうか?
それから、大野さん以外にも、宮内さん、小山田さん、工藤さんもきょう退院します。 なんか、必要ない人物をさっさと片付けた感じです。
退院した患者を見送った箱崎医院長とそのあと、仁木兄妹、特に雄太郎が事件に関して話します。 ・平阪の行方は依然わからない。 ・あの抜穴を作った清川とは連絡がついた。 ・清川も勝福寺の前の住職も、平阪とは関係ない。 ・箱崎医院長は平阪を疑ってはいるが、桑田老夫人を物置きに閉じ込められたのは別の理由ではないか? ・月曜の明け方坂の下に止まった自動車は大洋ドライヴ・クラブのではないか? ・日曜の夜、八時頃、大洋ドライヴ・クラブの自動車が小柄な男に借り出されている。 ・車種は草色のトヨペットです。 ・その小柄な男は、自分で運転したが、運転はたいしてうまくなかった。 ・大洋ドライヴ・クラブから500mほどの雑木林に乗り捨ててあった。 ・ガソリンが、かなり消費されていた。 ・平阪は自動車の運転ができた。 ・箱崎医院長も自動車の運転ができた。(これなんの意味があるんでしょ) ・英一も自動車の運転ができた。(ますますこれなんの意味があるんでしょ) とこんなところですか。
にしても、貸自動車って今風に言えばレンタカーですよね。 車を借りるときに免許証を提示しないのでしょうか? 運転免許証を所持していることは絶対的な条件であると思うので、やはり提示したとして、小柄な男となっているんでしょうね。 すると、小柄な男なんていましたっけ? この件は本編とは直接関係ない? でもわざとらしく挿入されているのが気になりますね。
雄太郎が話の続きに何気なく、とんでもないことを言います。 巣鴨の文房具店であった笠井あきらが敬二だとです。 雄太郎の慧眼にはびっくりさせられますが、そう言われればなんとなく分かる話でしたね。 ただ、こうなってくるとやっぱり敬二はサブキャラで直接の関係はないのでしょう。 雄太郎が、こんなふうに推理するんだということを現したか���たのでしょうか?
その次には、こんな雄太郎を探偵と勘違いした五号室に入院している桐野青年の母親が、五日の夜、十二時頃、手術室で『こっちの一本は、このままにしておきますか?』と聞いたといいます。 その声が、家永看護婦に似ていたともです。 一緒に聞いていた箱崎医院長は、どうして家永看護婦がといいますが、 どうやら、手術室のカギの二つのひとつを家永看護婦が持っているのでそう思ったみたいですね。 家永看護婦は何をしていたのでしょう?
その時、雄太郎が、窓の外に黄色いネコが死んでいるのみつけます。 裏庭の果樹園のナシの木の下に、黄色いしまの子ネコが、横たわっています。 実際には気絶しているだけでした。 タイトルのとおり、猫がでてくるととても気になりますね。 猫は、どうして気絶していたのか? 気絶させたれていたのかもしれません。 まさに、猫はしっていたですね。
その後、仁木兄妹は、自分たちの成果を話し合います。 雄太郎は、ドライヴ・クラブで確認したことを話しますが、さほど新しいことはありません。 その男がミルキー・ハットをかぶっていたことと、 ガソリンの消費量からみて、8kmから10km走ったらしいということくらいです。 薬の分析は、あすの午前に結果が判明するということでした。 悦子は、桐野青年の母親の話を確認するために 人見さんと野田さんに聞いてみますが、日曜の夜はぐっすり眠っていたと想像通りの答えでした。 雄太郎は、何かを考える時のクセとして、手のひらを見つめて手相の研究に没頭し始めます。 この探偵がこの状態になったら、推理が始まったということなんですね。 覚えておきましょう。
平阪は相変わらず、行方不明だし、それ以��の謎もちょこちょこ出てきて、一体どうなるんでしょうね。
つづく
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猫は知っていた 7月5日 日曜日
仁木兄妹のことが少し語られます。 これが今後影響するかどうかは別にしても、人間味がありますね。 仁木悦子(妹)…145cm、60kg、身長の不足を補うくらいの運動神経の持ち主。 仁木両親…疎開先の信州に住みついて土地の高校の数学教師をしている父とお料理の得意な陽気な母。 仁木雄太郎(兄)…鴨居にとどくほどの身長。その当時なら多分、5尺8寸(1.76m)だと思いますから現代ではさほどの高身長でもないかもしれません。まあ、妹の145と比べれば高いですかね。 そして、信州へ帰省する予定みたいです。
さて、悦子が外出から戻ってみると、大玄関の前で見知らぬ老人が草をむしっています。 普通なら微笑ましい光景なんでしょうが、これも伏線なのかと勘ぐってしまいますね。 待合室では、野田看護婦が居眠りしており、診察室から、三人目の人見(ひとみ)看護婦が登場します。 この人は、家永看護婦と同じくらいの年齢で、おもに薬の方を受け持っているそうです。
ここで、入院患者の平坂勝也氏の登場です。 入院していたせいか生白い顔色��すが、病人らしくないがっしりした体格で、浴衣にヘコ帯、そのうえパイプを吸っています。 そのまま、外へ出て行ったようです。 野田看護婦が悦子に内緒話で、もう退院が決まっているのに早々に奥さんを帰したらしいです。 これは、奥さんにも知られたくない何かがあるのだということが想像できますね。 これも伏線なんでしょうか?
その後、「幼児の音楽教育」を敏枝夫人に渡そうとしていると、幸子ちゃんがやってきてチミがいないといいます。 タイトルがタイトルですから、これはなにかの伏線でしょうね。 ところで、「幼児の音楽教育(定価、280円)」という本を探してみると似たようなタイトルの本が、いくつかみつかります。内容は別にしても、定価は2000円から2800円くらいで、その頃の相場は、現代(2023年)と比べると10分の1くらいなんでしょうか。
で、悦子が幸子ちゃんといっしょにチミを探すことになります。 そこで、物置に閉じ込められた桑田老夫人を助けることになります。 桑田老夫人の様子も変ですが、どうして閉じ込められることになったのでしょう? ちなみに、チミは物置にもいたみたいですが、今はいないようで結局みつかりません。 どこに行ったんでしょうね?
野田看護婦の知らせで、入院患者の平坂がいなくなったことがわかります。 表門の所は、松造さんというお百姓が草取りをしていた。 そうですね。微笑ましい光景として書かれてました。 裏口の方は、奥さんとカヨさんが張り物してた。 だから、玄関から出たけど門から外へは出なかったと、野田看護婦はいいます。 確かに、出入り口は、表と裏の門しかないのですから、塀を乗り越えなければ無理ですね。 塀を乗り越えてまで外出する必要もないでしょうしね。
その平坂を最後に見たのは松造さんで、家の横手の方に曲がって行ったと証言します。 しかも、桑田老夫人もいなくなります。 なんと、桑田老夫人も表門からも裏門からもでていません。 しかも、チミまでいなくなりました。
ここで、悦子は、ちょっとどぎまぎします。 それは、そうでしょう。 物置に閉じ込められていた桑田老夫人を助けたときに見たのが最後の姿だと思われたからです。 その時の桑田老夫人の様子を思い出して、悦子は、黙っていることに決めました。
悦子は、平坂がいなくなったことを自分なりに調べてみようと、板塀に沿って歩いてみます。 板塀は二メートル余りあり、十二センチくらいの先のとがった鉄棒が上部に据えられてとても超えられるものではないようです。 一体どこに行ったんでしょうね?
そのまま歩いて行くと家の北西の角に、四本の高いいちょうの木が並んでいてそのあたりがやや小高くもり上っています。 防空壕です。 というか、これでしょう。 秘密の抜け穴です。
悦子は、怖くもなかったのでしょうか?入って見るみたいです。 三畳敷ぐらいの広さらしいのですが、くもの巣が、顔にひっかかります。 これは、どう考えるといいのでしょう? くもの巣があるということは、誰も入っていないということなのでしょうか? 悦子もそう思ったのか、ろくに調べもしないでそこを出ると、さらに裏手の方まで回ってみます。
ここまで来て、悦子は、敏枝夫人、英一さん、松造じいさん等のだれかが、ウソを言ったのだと結論します。 あるいは、何かの思い違いをしているのかもしれないとも思います。
そのまま、時間だけが過ぎて行きます。 そのとき、たまたま鳴った待合室の電話を悦子が取ることになります。 なんと電話の相手は、平坂でした。 正確に言うと、平坂と名乗った���性の声でした。
「わたし、平坂ですが」 「平坂ですが、清子来ておるでしょうか。家内ですがね」 「あ、呼んでくださらなくて結構。言づてだけしてください。実はわたしは商用で、わかりますか? 商用、仕事の方の用件で、名古屋まで行って来なければならなくなったのです。 三週間ほどで帰るからと言っておいてください。では失礼」
その時の会話は、悦子でなくても、平坂だと思うでしょうね。
その電話のせいでひと悶着ありますが結局、平坂は自分勝手に商用で名古屋に行ってしまったのだろうということになります。 それで、清子夫人は、退院の手続きをして自動車で帰って行きます。
さて、残されたのは、桑田老夫人失踪の謎です。 ところが、これも、突発事故によって遮られてしまいます。 交通事故があって、その被害者が担ぎ込まれてくるのです。
その後、悦子は兄に今日の出来事を話します。 そして、桑田老夫人の言った『何とかなるとよろしいんですけど』という言葉を思い出しています。
なにかの問題を抱えていたのは間違いないですね。
つづく
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猫は知っていた 7月4日 土曜日
さて、7月4日になり、仁木兄妹が箱崎医院に引っ越してくるところからです。
夏空に“ソフト・アイスクリーム”の形の入道雲という表現が面白いです。 今なら、ソフトクリームですね。
不二家が、昭和26年(1951年)にソフト・アイスクリームを作る機械をアメリカから輸入したそうです。 昭和27年(1952年)5月13日の朝刊に不二家洋菓子の広告に〈ソフトアイスクリーム〉の掲載があります。 昭和28年(1953年)には、ソフトクリームブームが到来したみたいです。 でも、ここでソフト・アイスクリームと表現したということは、不二家の影響が強いのでしょうか? 恐るべし不二家ですね。
荷物は、小さなオート三輪で運んできました。 昭和34年の話だとして、小さなオート三輪なら昭和32年に発売された「ミゼット」でしょうか?
さて、案内された部屋は七号室でした。 八号室では夕日のせいで暑くなるだろうからという理由でです。
わざわざ八号室から七号室に移ることを明確に書いているということはなにかあるのでしょうね。 というか、何かあるとしたら、部屋を変えさせた人物が関係しているのかも。 箱崎医院の関係者ですかね。
家永看護婦の嫌味がチクリと刺さりますが、これも伏線でしょうね。 階段の上り下りはギシギシとでも音がするのでしょうね、手術があったので静かにといってます。
悦子は、そんな家永看護婦のようすを“権柄尽く”といってます。 権力に任せて、強引に事を行うことですね。
2階に上がると今度は野田看護婦とあいます。 野田看護婦は、悦子の持っているブラックの絵に関心を示します。 ブラックとしか書かれていませんが、ジョルジュ・ブラックですかね。 パブロ・ピカソとともに「キュビスム」を生み出したフランスの画家です。凡人には全くわかりません。
この後、入院患者��わざとらしく紹介されます。 これも、何かの伏線でしょうね。
一号室は、小山田すみ子という中年の婦人で、頸部リンパ腺炎だそうだが、もうほとんどいいらしい。一人で入院している。 二号室が例の平坂勝也です。例のというのは、プロローグに出てきたからですね。 清子夫人が付添って看護しています。 職業は貿易商で、外人に日本の浮世絵や古美術品を売りつけているみたいです。 三号室は空室です。 五号には若い男の患者がふたりはいっています。 宮内正は26、7の機械技師で職場で左手を負傷したのだが、もう痛みもないので毎日を退屈しきっている。 桐野次郎は大学生でサッカーの練習中ころんで足を折り、つい二日ばかり前に入院した。 六号室は、工藤(くどう)まゆみで、十三くらいの女の子です。 背中におできができて手術したのが今日です。 七号室は、引越し先ですね。 で、不思議なんですが、八号室についてはかかれていません。 誰かが入っていればそれを書くのでしょうから、空室なんでしょうがなぜそのことにふれないんでしょうか?
で、部屋の片付けの途中で、 兄が大事にしている“フレウム・アルピヌス”(Phleum alpinumフレウム・アルピヌムのことですかね)にちょっとふれてます。 これは、兄が植物学を専攻していることと、それ以外にもなにかの目的があってここに挿入されいるのかもしれません。 フレウム・アルピヌムは学名で、みやまあわがえり(深山粟返り)の頃らしいですが、7月だと花がしている時期だと思うのですが、そのことにはふれていません。
片付けをしていると、夕食の案内にユリさんが入ってきます。 ところが、このユリさん、様子が変です。 心ここにあらずで、顔色も青く、寝不足の時のように、いらいらと血走った目をしています。 これは、何かありますね。
さて、夕食です。 院長夫妻、おばあちゃん、英一さん、幸子ちゃん、それに仁木兄妹の七人が食卓を囲んでいます。 箱崎家のはなれの八畳の茶の間です。
・気分が悪いというユリのこと。 ・仁木兄は、大好きなくせにアルコールに弱く、すぐ眠くなってしまう。 ・幸子ちゃんが、金魚の模様のゆかたのことを。 ・おしゃれにうるさい敬二は、四月から医大へ行っていて、中野で下宿している。 ・病院と台所が離れているので、患者や看護婦の食事を運ぶのが大変だと。 ・洗濯も、病院専用の大きな電気洗たく機を買ってからは、楽になった。 ・調理場も建て増しして、家族と別にする。 ・親が読んでためになる小さい子供の音楽のおけいこに参考になる本このこと。
と多岐にわたります。
そして、これが一番の核心なんでしょうか。 英一が、“ヒヨドリジョウゴ”は、毒草なのかと、仁木兄に尋ねます。
鵯上戸(ヒヨドリジョウゴ)は、つる性多年草で日本全土の山野に分布しています。 ジャガイモの新芽に含まれることで有名な有毒成分である“ソラニン”を含むみたいです。 なんと、種が鳥や土に運ばれて、家庭の庭やベランダのプランターから突然生えてくることもあるようです。 他にも、モクレン科の常緑小喬木であるシキミにも、きれいな実がなるが、猛毒で子供が食べて死んだりします。 もともと『悪しき実』と呼ばれていたのが、シキミという名になったらしいです。 直接ではないのかもしれませんが、毒による事件でも起こることの伏線ですかね。
夕食の最後に女中のカヨさんが、水蜜桃を運んで来ます。 水蜜桃とは桃全体のことを意味しているみたいです。 そのため「水蜜桃」という品種はなく桃はほとんどがもともと「水蜜桃」だそうです。 知りませんでした。 ももではなく「水蜜桃」というと、通っぽくていいですね。
その後、仁木兄妹は、英一の書斎を訪ねることになります。
英一の書斎は、家の東側にあたる八畳の和室です。 窓際に勉強机と腰掛があって、本のぎっしり並んだ大きな書棚が二つあります。 きちんと整頓されていた書棚は、英一の几帳面な性格を表しているようです。 専門の医学書が大部分で、通俗科学書も少しありそれ以外の本は見当たらないようです。
英一は、平たいボール箱を探しますが、見当たらないようで、悦子が、壁ぎわの書類ののっている机を指さして「ここにあったのでは?」といいます。 理由は、丁度箱ぐらいの大きさの四角な物ぐらいに、ほこりがななかったからでした。 それに、英一は、例の用心深い目の色で、じっと悦子を見つめ、“置いてあったのは、人から預かって置きっ放してあったのを、返した”と答えます。 これも、なんだかわざとらしく挿入されていますね。 これも伏線なんでしょうか? いったいどんな箱なんでしょう?
英一が、探偵小説が好きなのかと悦子に振ります。 その部屋には敬二の本棚があり、探偵小説ずらりと並んでいます。
いくつか名の売れた一級品として挙げられています。
「ABC殺人事件」 ・1936年発表。 ・アガサ・クリスティの推理小説。 ABC殺人事件 (創元推理文庫) ISBN-10 : 4488105386 ISBN-13 : 978-4488105389 ポアロの元に、「ABC」と署名された挑戦状が届いて、その通りに事件がおきます。 面白そうです。
「赤い家の秘密」 ・1921年発表。 ・A・A・ミルンの推理小説。 赤い館の秘密【新訳版】 (創元推理文庫) ISBN-10 : 4488116027 ISBN-13 : 978-4488116026 「赤い館」で「銃声のような音が聞こえた」と、そこに人が倒れている。 この事件の謎を素人探偵のアントニー・ギリンガムが調査します。
「血の収穫」 ・1929年発表。 ・ダシール・ハメット作の1929年の探偵小説。 血の収穫【新訳版】 (創元推理文庫) ISBN-10 : 4488130062 ISBN-13 : 978-4488130060 悪党たちの対立によって荒廃した町に主人公が現れ、複数の陣営に接触して扇動や撹乱を行い彼らの抗争を激化させて殲滅する。 ハードボイルドやアクション小説というところでしょうか。 大好きなジャンルなので、今度読んでみたいですね。
「Xの悲劇」 ・1932年発表。 ・エラリー・クイーンの長編推理小説。 Xの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫) ISBN-10 : 4488104436 ISBN-13 : 978-4488104436 密閉状況での殺人やダイイング・メッセージとして「X」の形を作っていたなど、推理小説しては非常に面白そうです。
「カナリヤ殺人事件」 ・1927年発表。 ・S・S・ヴァン・ダイン作の長編推理小説。 カナリア殺人事件【新訳版】 (創元推理文庫) ISBN-10 : 4488103200 ISBN-13 : 978-4488103200 殺害現場が密室で犯人を特定するために、ポーカーによる心理探偵法を実践するという話です。
日本の作家がないのが残念ですが、ここにのは載せられないような事情があるのでしょうね。
英一と仁木兄は、毒草のことで盛り上がっています。 ヤマトリカブト(山鳥兜)は、特に根にアコニチン(アルカロイド)と呼ばれる毒が大量に含まれているみたいです。 アコニチンは、猛毒で、嘔吐・痙攣・呼吸困難・心臓発作を引き起こすみたいです。 そんなのここにあっていいのでしょうか?
英一さんのところから自分たちの部屋に帰るとき、桑田のおばあちゃんとあって、ユリさんの状態を確認します。 この状況は、ユリさんの部屋から出てきた桑田のおばあちゃんと仁木兄妹が会ったという感じでしょうか? その後、桑田のおばあちゃんは、脇玄関の戸をあけて外に出て行きます。 何をしに外に出たのかは説明されいません。 そのとき、桑田のおばあちゃんは、そでの中に何かをかくしてでもいるような感じだったとあります。 何かを持って外へ出たみたいですね。 様子のいおかしいユリさんも気になりますね。 これもなにかの伏線なのでしょうか?
これで、翌日に続きます。 特に何も起きないのが、かえってワクワクしますね。
つづく
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猫は知っていた プロローグ
7月4日(土)から7月9日(木)までのたった6日間の話です。
それよりも数日前から始まります。 これから惨劇の起こる箱崎医院(外科病院)と主な登場人物の紹介というところでしょうか。 仁木雄太郎の友人、牧村の世話で箱崎という医院の病室を借りることになって、訪ねて行くところです。
地図のせいか道に迷っている仁木兄妹が偶然声をかけた青年が、これから下宿することになる箱崎医院の長男の箱崎英一で、箱崎幸子にピアノを教えるということがこの時点でなんとなくわかります。 そのまま、箱崎英一と箱崎医院に行くことになります。
氷屋の角を曲り、公衆電話とラジオ屋の前を通りすぎ、電信柱の角を曲がってすぐという表現ですけど、氷屋、公衆電話、そしてラジオ屋です。 ラジオ屋って何でしょう? その頃は、ラジオが主流だったので、ラジオや無線機、真空管などの関連部品を扱う店が多くあったようです。 それが、いわゆるラジオ部品販売の「ラジオ屋」だそうです。
箱崎医院は、門から玄関まで、白っぽいきれいなじゃりが敷いてあり、どっしりした木造の二階建て、右手に別棟で古びた平屋があります。左の方が病院で、右手の平屋がはなれで皆こちらに住んでいます。
当然���うに、英一は、はなれの玄関に入っていきます。 出てきたのは、幸子の祖母で桑田ちえでした。箱崎敏枝夫人の母親です。 そして、お茶を運んで来たのが桑田ちえの孫で、両親に死なれたためにこの家の世話になっている桑田ユリです。 英一たちの従妹ですね。 で、桑田ちえの身の上話が有りますが、このあたりは本編と関係あるのか、ないのか?
そうこうしているうちに、敏枝夫人と幸子ちゃんが帰ってきます。 そこに、小さな黒ネコが登場します。「チミ」ですね。 この小説のタイトルでもある猫の登場です。 人なつこいネコで、人の行く所、行く所とついて歩くとありますが、いかにも伏線らしいいですね。
この猫なのか、別の猫なのかいったいどう猫が絡むのか楽しみですね。
さて、「医院」の方の棟の説明です。 図が付いているから関係あるんでしょう。
廊下の右側にならんだドアの上には、それぞれ、看護婦室、レントゲン室、診察室、手術室とあり、左側は応接室と薬局および玄関になっています。 玄関をはいった所に籐のテーブルや長いす、雑誌類をのせた小机が配置されて待合室に利用しているらしいです。 二階へ上がる途中で、院長の兼彦氏にあいます。 敏枝婦人と幸子ちゃん、そして兼彦が二階を案内してくれます。
二階は、広い廊下が中央をつらぬき、その両側に入院用の病室が並んでいて、つきあたりのには「ふとん部屋」があります。 病室は、左側に3つ、右側に4つあって、仁木兄妹は一番西側の8号室に案内されます。 病室が7つしかないのに8号室まであるのは、4号室がないからです。 イメージとしては、病室に下宿しても生活できるのかどうか不思議でしたけど、この当時は、こういうことは結構あったのかしれませんね。
8号室は案外広々として、明るい感じです。 窓に近い方に白ぬりのベッド、反対側の壁に畳が一畳、ベッドは患者用で畳は付添用だと思われます。 また、部屋の中には、小さいテーブルといす、腰ぐらいの高さの戸棚もあります。
ここを購入したのが昭和24年となっていますから、それから4年後の昭和28年というよりも、10年後の昭和34年の7月4日からの出来事と考えたほうがいいのかもしれませんね。
そこへ野田看護婦が兼彦氏を呼びに来ます。 それで、兼彦が出ていきます。 はっきりとは書かれていませんが、敏枝夫人と幸子ちゃんそれから「チミ」がそこに残っていたみたいです。
そのまま玄関まで降りてきて、はなれから入ってきたことを思い出します。 そこで、敏枝夫人がはなれに靴等を取りに行っている間に、平坂という患者のことが話題に上がります。 靴がないから待たされる。そこに、平坂という患者の話題。 このあたりはかなり伏線ぽいですね。
これで、プロローグは終わりです。
7月4日 土曜日に続きますが、推理小説として、犯人は最初に出てくるというのが有ります。 そのためのプロローグだとすると、この中に犯人がいるかも。
このプロローグで紹介されている登場人物です。
仁木悦子(にきえつこ)…主人公です。17、8の桑田ユリと1つ2つしか違わないらしいとあるので、20歳くらいですか。箸が転がってもおかしい年頃は、2年半前に卒業したという表現からもそんな感じですね。音楽大学の師範科に行ってるみたいです。 仁木雄太郎(にきゆうたろう)…主人公の兄です。大学生で植物学を専攻しています。 牧村���仁木雄太郎の友人です。
箱崎兼彦(かねひこ)…医院長 箱崎敏枝夫人…医院長の奥様で、小太りの気のよさそうな人です。 桑田ちえ…夫人の母親、幸子の祖母。65、6で小太りの世話好きそうな老婦人です。 箱崎英一(えいいち)…長男で医科大学に行っています。21、2で、きれいな一重まぶた、青白い顔と注意深い目をしたやせ型の引きしまったタイプで、頭はいいが、気さくにつきあえる相手ではなさそうです。 箱崎敬二(けいじ)…次男、医科大学に行っています。(厳密には登場していませんね) 箱崎幸子(さちこ)…幼稚園に通っているおかっぱ頭の女の子です。 桑田ユリ…17、8の少女。私立高校に通っているちょっとキツネに似た顔立ちのやせた少女です。桑田ちえの孫で、両親に死なれたためにこの家の世話になっていて、英一たちから見れば、従妹(いとこ)にあたります。
平坂氏(患者)…四十に近くかた幅の広いたくましい体格をしています。目も口もなみはずれて大きく、鼻は肉が厚く、まゆ毛は墨でぐいと引いたように濃く、一種独特な印象を与える精力的な顔です。 平坂夫人(患者の奥さん)…小柄で、目も口もこまこまと性質も内気そうに見えます。整った可憐な顔立ちにもかかわらず、疲労のせいかあまり生気がありません。
家永看護婦…細おもてですらりとしていて、度の強い近眼鏡の中の目を光らせています。 野田看護婦…ほんの子供といってもいいような少女で、左右の目が思いっきりとび離れた、人のよさそうな丸い顔をしています。
チミ…黒ネコ。人の行く所、行く所とついて歩きます。
登場人物はあまり多くありません。 じっくり追っていけば比較的かんたんにわかるかもしれませんね。 楽しみです。
つづく。
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「虚無への供物」中井英夫 5601
終章
60 翔び立つ凶鳥(まがどり)
とうとう、最後ですね。 長かったこの話もとうとう終わりです。
久生は、うすうす考えていたことが自分の思っていた通りで、ほっとした気持ちで明るい調子です。 そして、小説を書くと宣言します。
亜利夫にも、今回の事件を題材に小説を書くようにいいます。 探偵小説で、それも、本格推理長編の型で、最後に作中人物の一人がいきなりくるりと振り返って、 ページの外の“読者”に向かって“あなたが犯人だ”って指さす、そんな小説にしたいと。
それに、藍ちゃんが悪趣味だと���定します。
久生は、探偵小説って、細かい点が難しいと、第一の事件にまつわる気になる点を指摘します。
門のところに新しい電話番号札が光っていたのが、実は大事な証拠で、 ごく最近に氷沼家の電話が、九段から池袋局へ変わったという意味だったわけだと。
そのことについて話あっているテープを聞き直してみると、 肝心な時に藍ちゃんは寝ていたり、トイレに立っていたりしていて、これが伏線の一つになるのではないかと。
で、迎えに来た月原という少女と藍ちゃん、 何かを潜り抜けた若者と、何もしらないがそれを理解している少女との明るい出会いがそこに始まろうとしていた。
久生と亜利夫は、牟礼田の家をでて、いつもの神社の前までくると、二人はいっせいに牟礼田の家を見上げた。 そこには、確かに牟礼田ではない別の人物がたっていた。 蒼司だと言い切れるほどにはっきりはしないが、やはりあの家にいて、影できいていたのでないだろうか?
カーテンが引かれて、その影を隠す。
これで終わりです。
まあ、蒼司でしょうね。 犯罪者の末路はどうなるのか。何しろ犯人は読者ですからね。
おわり
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「虚無への供物」中井英夫 5591
終章
59 壁画の前で
そうなるのかって感じで久生が追求します。 結婚の延期もこのあたりに理由があるのかもしれません。
なんと、牟礼田はすべてを理解していて、 フランスにいる時から、誰が、どんな殺人計画をたてているかを知り抜いてしかも、それを止めようとしなかった。 つまり、何もかもあなたがお膳立てして蒼司さんを破滅の道へ追い込んだのではないか。
事件を揉み消そうとしたり、眼をくらまそうとしたあげく、蒼司さんにふさわしい告白の機会を与えて、 悲劇を悲劇���しく終わらせたのは立派ですけど、自分へ降りかかる火の粉を避けようとしていたためなのではないかと。
この事件の間中、あなたは一人の青年を故意に破滅させようとしたことはないか、 人間を実験材料にして、好きなように操る興味が一度もわかなかったと言い切れるかどうか、 本当の意味で一番残酷だったのは誰か、どうしても知りたいと。
牟礼田は答えます。
洞爺丸の報を聞いた時真っ先に考えたのは、そうやって蒼司の自殺を食い止めるかということだった。 残念がら、パリを離れられない。そこで、手紙を送って、ひとつの計画を吹き込無事になります。
そして、しだいに彼の中にある考えの発酵するよう執拗に囁きつづけます。 少なくとも紅司君の死の知らせを聞くまでは、蒼司君の自殺を防ごうという動機からいってやったことだったが、それが紅司君の死で、何もかも狂ってしまった。
そこで、思い切って、本当に橙二郎を殺させよう、そう決心んしたぼくの心のどこかに、 ���酷な興味が一瞬でも動かなかったといいきる自信はない。
そういう意味では、ぼくには探偵の資格がない 牟礼田は最後の告白を終えて口をつぐんでしまいます。
つづく
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「虚無への供物」中井英夫 5581
終章
58 五月は喪服の季(とき)
蒼司の告白後の世俗なんかが語られますが、正直この後になんの話があるのでしょう。
その頃の風俗や事件などが羅列され、現実味を与えています。 が、それほどの効果があるのでしょうか
プロレスブームは、1954年(昭和29年)の力道山vsシャープ兄弟から始まったみたいですね。 その後、力道山がアジア王者になったり世界タッグ王座になったりでその勢いに拍車がかかったみたいです。
ボディビルのブームは、昭和31年に日本ボディビル協会が設立されたのを基に始まったみたいです。
M+W時代というのは、男性度(M)女性度(W)を示すぐらいの意味で、映画『青春怪談』(獅子文六原作、日活版、新東宝版の2作が同時に公開された)から広まったようです。従来の男性像、女性像に対する見方が変わり、社会的に性差に対するこだわりが少なくなってきたことを反映したようです。
トニー谷の愛児誘拐事件は、1955年7月15日、人気芸人トニー谷の長男が下校途中に誘拐されたものです。
女学生の火だるま自殺は、わかりませんでした。
森永ヒ素ミルク中毒事件は、1955年6月頃から主に西日本を中心として起きた、ヒ素の混入した森永乳業製の粉ミルクを飲用した乳幼児に、多数の死者・ヒ素中毒患者を出した毒物混入事件です。
紫雲丸事故は、1955年(昭和30年)5月11日06時56分、香川県高松港沖合において日本国有鉄道(国鉄)の宇高連絡船の紫雲丸と第三宇高丸とが衝突し、紫雲丸が沈没して乗客乗員168人が死亡・行方不明になり、その多くが修学旅行中の小中学生や婦女子であったという事故です。
橋北中学校水難事件は、1955年(昭和30年)7月28日に三重県津市の津市立橋北中学校の女子生徒36人が、同市中河原海岸(文化村海岸)で水泳訓練中に溺死した水難事故です。
原爆投下後10年でいくつかの出来事があったみたいです。 1955年8月、 中区中島町1番(相生橋南)に原爆供養塔、納骨堂が改築させられた 中区中島町1番(原爆供養塔南)の平和の石燈 中区基町6番77号に電信電話職員原爆犠牲者慰霊碑 中区基町22番(三篠橋東詰南、本川河岸緑地)の広島陸軍病院原爆慰霊碑 中区小町1番(三井ガーデンホテル広島南東、平和大通り緑地帯)の移動演劇さくら隊原爆殉難碑 なんかが上がっています。
花火工場が相次いで爆発しとありますが、しっくりくる事故は、墨田区花火問屋爆発事故くらいです。
十日詣ともいわれる四万六千日(観世音菩薩の縁日)が、今年も7月10日行われたことが、 そして、今年のパリ祭は7月14日に行われることが、さり気なく挿入されています。 これだけの事件事故があっても催事は行われるということなんでしょか?
また、ボートネックの若者たちが氾濫した太陽族やカリプソとシスターボーイそれから狂熱のロカビリー、 ファンキー族が避暑地にたむろしてドドンパツイストからボサノバまでと風俗が描かれます。 太陽族は、石原慎太郎の小説に由来する風俗ですね。
季節は初夏になっていて、 下落合の牟礼田の家で、久生と亜利夫と藍ちゃんの四人が会っています。 何を考えたのか、久生は結婚の延期を主張して譲らず牟礼田はまたひとりでパリに帰ることになり、 この日は送別のために集まったのです。
蒼司はあれ以来、腰越にもあらわれず、牟礼田にも何の連絡もないという。
黙っていた牟礼田がつぶやきます。 自分が犯人な筈はないのに、犯人の要素を持つというわけかと。
つづく
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「虚無への供物」中井英夫 5571
終章
57 鉄格子の内そと(蒼司の告発)
蒼司が大学をやめることになった塑性論の矛盾を解決した論文が他の写しだったという話を藍ちゃんから聞いたと聞いて、 蒼司には怒りがよりも強い悲しみが浮かんできます。
これもよくわかりませんが、 藍ちゃんは、なぜ伯父さんを殺さなければならなかったのかが、どうしても判らないといいます。 どうしてそれが、紫司郎伯父さんへの供物になるのかです。
蒼司は、お前だけは、理解してくれると思っていたのにと呟きます。 お前だけではなく、読者にも解るように説明してください。
蒼司は、 洞爺丸の事故以降、藍ちゃんは倒錯の世界に入り込んでしまったし、 紅司が奇妙な大長編を書くことに腐心したといいます。 現実に堪えられないから、この世ならぬ異常な世界を追いかけることで非現実へ潜ろうとしたのだとです。 でも、蒼司ひとりが潜り損ねたということに誰も気付いてはくれなかったとです。
そこで、俺のおやじは、嵐だからこそ喜んで乗っていったと考えた。 そこを自分の墓に選び、悲劇を完成させ��ために乗り込んだのだとです。 藍ちゃんの親父と憎み合っていてその結末をつけなくてはならなく、そのために共々あの船に乗りこんだのではないかと。 だが、藍ちゃんも知っているように、おれたちのおやじは仲が良かったから、一旦、俺の空想はそこで断ち切られる。 そこで、神が、恐ろしい手違いをしたのだと。 藍ちゃんのパパは間違って死んだのだ。 俺のおやじと憎み合っていていたのは橙二郎で、やつを殺しさえすれば、俺のパパは人間の姿のまま、海の中へ落ち込んでゆくことができるだろうとです。
藍ちゃんや紅司が、この世ならぬ異常な世界を追いかけることで非現実へ潜ろうとしたのと同じように、 一旦そう思い出すと、そのイメージは、俺の中に生き続けることができたと蒼司はいいます。 橙二郎を殺すことで、人間の誇りを守っつことができるから実行したのだとです。
その後、蒼司がいいます。
“無責任な好奇心の創りだすお楽しみ。何か面白いことはないかと、きょろきょろしていれば、それにふさわしい突飛で残酷な事件が、いくらでも現実にうまれてくる。今はそんな時代だが、その中で自分さえ安全地帯にいて見物の側に廻ることが出来たら、どんな痛ましい光景でも喜んで眺めようという、それがお化けの正体なんだ。それには、何という凄まじい虚無だとしか思えない”
これがアンチミステリーってことですかね。
で、 蒼司は出て行っちゃったみたいです。
えっ、このままでいいんですか?
つづく
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「虚無への供物」中井英夫 5561
終章
56 幸福な殺人者(藤木田老人の告発)
蒼司の告白が続いています。 正直、読んでもよくわかりません。 犯罪者の心理とはこんなもんだとでもいいたのでしょうか?
第二の事件を実行に移すスプリングボードになった紅司の死、 そして、橙二郎を囲む麻雀をやる機会を待ってその計画を実行移したこと。 犯罪だとわからないとうにすることがパパへの供物になると、このあたりがイマイチ理解できません。
ただ、藤木田は、すっかり見抜いていたようだということです。 それなら、ちょっとヒントでも残して帰ればいいのに。
そして、第二の事件の顛末です。 ・電話で敬三を呼び寄せる ・向こうの受話器は外しておく ・誰かが台所のメータコックを締めるのを見計らって麻雀で二位になる ・二位になったので、席を立ってメータコックをあけ放す ・敬三をうろうろさせる ・二階へ上がると化粧室の湯沸かしのガス栓を一杯に開いてガスを噴出させる ・書斎へいき橙二郎へ麻酔をかがせて運び出す ・化粧室へ放り込む ・三分後、化粧室のガスを導火用だけ残して締める ・死体をベッドに運び、部屋の元栓とストーブの栓を全開にする ・階段側のドアをしめ、ナイトラッチをとざす ・書庫側のドアに内側から鍵をさし鍵をかけずに出る ・現場に真っ先に駆け付けて、鍵がかかっていえうふり���して、合鍵で向こうの鍵をつつき落として開ける
つまり、密室ではなかったということですね。
蒼司が、どうして橙二郎の死がパパへの供物になるのかは、俺だけが知っていればいいことだそうですが、 それだ一番大事な所なきがします。
聖母の園の事件の犯人の適格者は俺だとか、 鴻巣玄次がおれを架空の犯人にふさわしく取り残して死んだんだとか、 紅司が、鴻巣玄次って名前の元電気工が住む坂の上のアパートと与えたヒントで日記に仕立てたのとか、 八田皓吉からの電話に黒馬荘のことを教えてその結果が、またしても俺が犯人にされているとか。
そうして、牟礼田が小説を書くことで俺のそんな気持ちにとどめをさした。
ただ、亜利夫と久生にことは、ばかにしてますね。 確かに、ピントずれた推理だったかもしれませんが、それを非難することはできないような気がしますがね。 それに牟礼田が一枚噛んでいたようで、久生は怒るかと思っていたら、後悔はしないが、 それよりも、犯罪を犯した人間のほうが糾弾されるべきだといいます。
当然ですね。
久生はひるまず続けます。 今までの話でも、 紅司さんにしろ、鴻巣玄次にしろあなたの犯行ではないという確証はひとつもないといいます。
おお、そうですね。 犯人なのかそうでないのかまだわかりませんね。
おキミちゃんこと斎藤敬三が白血病で死にかけているのも、あなたが少しずつ砒素でも飲ませてるのかもといいます。
まあ、これはちょっと極端かもしれませんね。
さらに、意地悪い感じで、 蒼司が大学をやめることになった塑性論の矛盾を解決した論文が他の写しだったとするなら、 殺人についても同じことがいえるのではないか。
蒼司には、久生に古傷めいた過去をつつかれたことが、怒りとなったようで、今までとは態度が変わったようです。 どういうことなのか次節で解るのでしょう。
つづく
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「虚無への供物」中井英夫 5551
終章
55 非現実の鞭(むち)
蒼司の告白です。
なんとこの期に及んで、紅司を殺してないし、鴻巣玄次や聖母の園の事件ともまるっきり無関係だといいます。 この手で殺したのは橙二郎一人で、それ以外のことは考えもしなかったとです。
初めのうちは現実逃避する気持ちの方が強かった。 おキミちゃんという斎藤敬三を手なずけたり、 浜中鷗二の名でアパートを借りたり、 そこの裏木戸に向かい合った家を買って、九段局名の電話から思いついて贋名刺を作ったりした。 これは、橙二郎を葬るための準備だった。
しかも、準備したトリックが、紅司や鴻巣玄次の死を飾るためだけのものになった。 動坂の黒馬荘にいた鴻巣玄次の名を紅司に教えたばかりにとんでもない混乱が起き、 3月1日、事件に気づかず奴の居所を八田皓吉にいったために、自殺した。
これでいくと、第三の事件は、自殺なんでしょうか?
それから、第一の事件の顛末が語られますが、 なんと、隠れ家に潜んでいた蒼司のもとへやってきた紅司が足をすべらして、池の中に頭から突っ込んでしまった。 抱き起したときにはもう死んでいたとです。
とっさに表沙汰にできないと判断した蒼司は、死体を抱え裏木戸から風呂場まで取って返すと、 風呂場で奴を裸にし、例の皮膚炎が浮き出してるのをみると、思いついて蛍光燈や水道に細工をした。 紅司は倒れるときに掴んだんだろう、紅いゴム毬を握りしめていたので、洗濯機の中に隠した。 つまり、紅いゴム毬にはなんの意味もないということなんでしょう。 現実はこんなもんです。
それから、隠れ家にもどると、敬三に八田皓吉の声色で電話させ、 本当の九段の家に電話して八田皓吉に、一緒にいたことにしてくれといい、車を乗り回したうえで家へ駆けつけた。 一番てこずったのは爺やだが、ちょっとの間、姿をかくしただけだと信じこませた。 これが紅司の死の真相だと。
つまり、単なる事故なんですね。
おキミちゃんこと敬三が、今は骨髄性の白血病で寝たきりになっているとか、 あの聖母の園で大叔母さんがあんな死に方をしたと知ったこととか、自分の業の深さを思い知った。
牟礼田は帰国してすぐ、見舞に行ったとなっていますね。 この時点で、牟礼田にはすべてわかっていたのでしょうか? しかも、牟礼田が小説を書かなかったらさらに、事件を起こしていたかもしれないとです。
やはり、牟礼田はある程度はわかっていてのでしょうね。 できればどうやってそういう推理をしたのか教えてほしいですね。
つづく
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