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carinadarling · 2 years ago
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つまらないと思う高杉の気持
 つまらないと思う高杉の気持ちは何となく理解出来る。人は一人では生きていけぬし、大切な誰かと支え合いたいと思うのが常だ。その誰かを失った世に活力を見い出せないのは仕方が無いのかもしれない。
「私は……」
 桜司郎は記憶が残っているこの二年間を顧みた。出会いと別れを繰り返し、自分とは何かを問い続ける日々。それを何と例えれば良いのか苦悩する。
「──私は。https://www.nuhart.com.hk/blog/new/2022/05/31/%E3%80%90%E7%94%9F%E9%AB%AE%E7%99%82%E7%A8%8B%E3%80%91%E6%BF%80%E5%85%89%E7%94%9F%E9%AB%AE%E3%80%81%E7%94%9F%E9%AB%AE%E5%B8%BD%E3%80%81%E7%94%9F%E9%AB%AE%E9%87%9D%E6%9C%89%E6%95%88%E6%B2%BB%E7%99%82/ この世はそこまで悪くないと、思います」
「ほう?」
 高杉は真意を探るような視線を桜司郎へ向けた。その瞳は今の時間が続くと信じて止まない、純粋な色をしている。出会った時の澄んだ琥珀色よりは若干の翳りはあるが、それでもまだ美しい。
 かつて高杉にもそのような時代があった。友や師と学問や思想を夜通し語らい、楽しんだ日々が。
 何処か自虐的な笑みを浮かべると、高杉は冷たい手を桜司郎の目元へ伸ばした。
「君はまだ世の無情さを知らんな。汚れきっちょらん、無垢な目ェをしよる」
──余程、壬生浪で可愛がられよるのか、それとも汚い部分は見て見ぬふりをしよるのか。
 いずれにせよ、この瞳はやがてくすんでいくことになるだろう。長州と薩摩が手を組めば、幕府にとって不利な展開となっていくことは間違いない。となれば、幕府に忠節を立てるへ身を置けばその割を食らう日が来るのだ。
「長州は、絶対に負けんよ。君が好きな世はこれから崩れていく。……僕がそうさせるからじゃ。僕らを足蹴にした幕府には、相応の報いを受けさせる」
 にい、と高杉は目を細めると触れた指を輪郭に沿ってなぞる。桜司郎はぞくりと身震いをすると共に息苦しさすら感じた。
 この男だけは敵に回してはいけないと頭の奥で警鐘が鳴る。生唾を飲み込むと震える唇を開いた。
「……高杉さん、教えてください。どうして、幕府と長州は争わなければならないのですか」
「誇りの為じゃ。踏みにじられた尊厳とを弔うために、僕らは歩みを止められん」
 高杉が放った言葉はズシンと重く桜司郎の心へのしかかる。幾多の悲しみに押し流されたこの人には、どのような言葉も冒涜にしかならないと感じた。
「少なくとも栄太は……幕府と長州の共存の道を探っちょったようじゃが。それももうあの世へ行ってしもうた。僕は師も、多くの友をも失った。……憎まん道理が無いじゃろう」*
 いつの間にか傾いた西陽が部屋の中へ射し込んでいる。山への帰路へつく烏の鳴き声が物悲しく部屋に響いた。
 桜司郎は眉を下げると、俯く。その横顔は夕陽に照らされ、顔には影が生まれた。
「……もう、和解は出来ないのですね」
「ああ。互いに心からろうとせん限り、駄目じゃ。理解とは一方的なものではいけん。今の幕府は力で長州を押し潰せると思っちょる」
 その証が訊問使である。幕府の命令に従わねば、力を持って長州を潰すという脅しをもかけている。
「僕らを下に見ちょるんじゃ。じゃけえ、理解し合うことは出来ん。それは和解とは言わんじゃろう」
───────
* スター特典あり。「それでも君は、壬生浪の元へ帰るんじゃろう」
 その問い掛けに、桜司郎は下唇を噛むと小さく頷いた。今にも泣きそうなその表情を見ると高杉はフッと笑い、枕元にある風呂敷を指差す。
「……桜花、その包みを開けてみい」
 高杉に促され、桜司郎はそれに手を伸ばした。するりと解け、中の物が眼前に晒される。
「これは……」
 見慣れぬ無機質な小型の銃に、桜司郎は目を白黒とさせた。新撰組でも調練に銃を取り入れているが、それは肩に担ぐような大きさのものである。このように片手で扱えそうなものは見たことが無かった。 「すみす、あんど、うぇっそんの
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