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MUHI
人が消えた街並に、順番抜かしの夏のお出まし。
何もせず、誰にも会わず、機械の小さな画面を睨んで何でも知った気分。
お手本じみた夕立が飲み込む電話越しの"元気です"を置き去りに、手は空中に波を描く。
ぱち、と光る窓の外。
踝と掌の間に赤黒いシミ。
午前4時、救急車の専用レールを散歩。
監視カメラの数を数える。
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グランド勝手に入って壁を剥がして遊んだあの人が結婚したらここから引っ越さないと冷めたコーヒー人の顔色伺う案外しょうもないやつわたし電柱に貼ったステッカー雨で剥がれた止むまでツイッター弄んで夜と朝の間の光に名前がなくてよかった 2019.03.29
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団地の中の喫茶店で

名前に動物が入ってる人は雰囲気のある人が多いように思う。
よく行く団地の喫茶店で麒麟ちゃんと友だちになった。麒麟ちゃんは喫茶店のマスターのお子さんで、今は小学五年生。
自分はキリンが好きだ。嬉しくて小さい頃キリンになりたくてぬいぐるみを大切にしていた事を話した。
薄っすら微笑んでその他には?(好きな動物)と尋ねられたので昔飼っていた鶏、ハムスター、ヤモリの事を話した。
ヤモリの事は特に大好きで毎日かかさず世話をしていたが、あるときぷっつり糸が切れたような感じがして、気づけばヤモリを地面に叩きつけていた。ビタッ と音を立てて仰向けで目を閉じたヤモリをつまんでオロオロし、泣きながら家の裏の土手にお墓を作って埋めた。冷んやりとしていた。
どうしてそんな事したのかあんまりわからないんだ。と呟いた自分は麒麟ちゃんの方を見れなかった。
珈琲を入れながら話を聞いていたマスターが
子どもは大人より神様の世界に近いところにいます。成長し、自我が目覚めると薄れていく子どもの全能性がその残虐さに繋がるのかも。とても純粋で、時に心を無視して身体が動いてしまう事がある。私には子どもじゃなくなった今でも時々あって、何故そんな事してしまったんだろうと思ったりする。でも、多分それはわかることができないことです。私たちはわからない事をわかりたいと思うまま死ぬのかもしれない。と言ってくれた。
思いがけず暗い話をしてしまい申し訳無く思って見ると、麒麟ちゃんは飄々と宿題をこなしていた。
使っている鉛筆は自分が小学生の時に一番好きだったトンボ鉛筆で、キャップの先にキラキラ光るピンクのチャームが揺れていた。
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