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対話劇


蒼鬱の遠景を夏の頭上に祈る姿は死んだ(はずだった)僕の惑いで敵うわけはなく
魔法使いの国を書きとめるしるしを集めるために、
クレシェンド、徐々に大きくなる死者の声
(ただ、走って!)
初夏のアレグロ、眠るきみの速度、引き裂いた羊皮紙、雪には名前がない、だから、
ただ銃を持つこと 「戦争があるんだって!(*)」 そう、きみは知らないから、
花と火でできた草原を走りながら、まだ僕は祈ることが出来る
睡蓮に 堪えきった翡翠に 海が空になるまで、都市が堕ちるまで、モルフォが殖えるから、
指先が花に氷るまで、羊の群れが透過する水平線になるまで 犬が僕を朗読する、
朗読する、喋らないで、唇が震える樹木になるから、僕に語らせて、愛についての戯言にすぎないから、
(それは夢の速度で?)
いや、滴り続ける唾液の悲しみを、憂う透明の唄がなぞり、逸らせるまで
(あ、つまり死んでしまうまでね)
(黙ってくれ)
腐乱した魔法使いの綺麗な息を燃やしてみたい、星座がわたしたちの喉に小さな傷を付け、手首のアンチ・フォビアに至るように。だから夢の速度で走りたくて、今日もきみの日記を夢見ていた
人が死なない国の困った子供が抱きしめる玩具は青白い夢の息を固めた死者のかたどりで、
花の樹海を惑い続けるぼくたちの夢に過ぎないのかもしれないが、とても綺麗に語りつづけている、身籠りを
その汚い言葉が、季節が変わることが夢のように響くから、まだ残響する色調の放物線を眺めていた
たましいの心臓の息、ふるえる鼠が書いた世界で一番美しい言葉、溶けてしまった氷が象っていた真理の形象、夜がかつて司っていた幸福な世界の時間、戦争が起きる、「ここでは祈ることさえ(*)」
(祈りはどこにでもあるでしょ)
(ふざけないでくれ)
(ありふれているから祈りなんでしょ)
…………
死者が憩う小さな首の草原、雪の名前、輝いた日の署名、「泣かないで、また唄うから」、母の生としての子宮の視界、嘘を付くまでの僅かな青、永遠に至る傷口の空のような青さ、不可思議な夢の青、臨界点の青、濁る十字架の青、青、青、青、青、青、青、あお、君の青、瞳の青、感情の青、愛情の青、情欲の青、死の青、青、青、あお、輝いた日の青、深い死の青、死んだ後の青、きみがぼくの死体を見る瞬間の青、青、青、あお、星の青、霧の青、夜の青、記憶が汚れることの青、損なわれないことの青、綺麗なものを燃やした時間の青、首をかしげた青、表情の青、速度の青、温かい青、冷たさ、これは僕だ、それらはすべて唄われる青、きみと並んでみた天空の青。
(これは僕のパラノイアに過ぎない?)
(きみが決めることだよ)
(じゃあこれは世界だ)
(もう死んでしまってもいいだろうか)
呪刻する死んでしまった魔法使いはもう僕の元には現れない。顕な蒼鬱の時刻、一角獣の時刻
モルフォ蝶はもう死ななくてもいいから、優しさを崩して途切れた記憶のフィルムを焼き直してまた夜を再構築する、
汚れた瞑想を吐きながら、墓の署名を上書きしながら
崩れる意味の恩赦をきみから得られるなら、臨界地の鳥みたいに飛べるから青い結晶をまた吐ける
空が注がれるからぼくの時間が夜になる意味、靴はもう亡くしたけど病の色で爆ぜるから、きみは絶対に死なないで。
火の記憶、出生の記憶、落丁の記憶、灰になるまでの静かな記憶、記憶、記憶、記憶、
(綴られたものがきみであるなら、きみは言葉なのか)
(僕はぼくのすべてであり、そのなかに響きがある)
(でも死んでしまうから、)
「千年の祈りを待つ天使の翼がもう燃えたのなら、この鳥たちは唄われる森になる! 地上の人々は愛を食べ、火を育て、氷る世界の霧になるだろう、それが死の隠喩であるなら、僕の言葉は愛の(ための)戯言だろう。だから朗読する速度で歩いている、痛くもかゆくもないふりをして、雪につつまれて、地上が消えるまで、墓所へ」
(そこには誰もいないよ)
・(*)が記載されているテキストはThe Cabsのリリックから引用しています。
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繭


朝焼けの街
燃える街
鎮静と爆ぜること、弔うように眠ること
吐く息の意味が、深海みたいに曇らずに
鐘みたいに澄む千年、
それは空想上の天体に似ていた
想像の森、空想の霧の奥にひかりがうるむ土地があり
不浄を拒否する葬斂の街の、窓がひらいている午前五時
駆け抜ける空気は絵画のなかの海岸みたいで
書き忘れられた水平線、無限に墜ちつづけるメーヴェのしろさ
その罪のなかで、迷子になった季節と迷路みたいに口ごもる
ゆらぎふるえている世界、また靑く背いて
美しさを縫う針と糸が優しい祈りの意味を成す(遠いあなたへ、囁く石へ)
速度を琥珀にする雪の時間が過ぎているけど、空は透過する零だから
鍵盤ハーモニカの色調に触れて潤んでいる 染まる火のように
だから、手紙を手渡すことが木漏れ日であるという水滴の祈りは三音節、
アルヴァ、エヴァ、すべて壊れないカンタータ、その深夜、
冬の子供が窓から火を入れて、たましいを起こしはじめる
しろい平野をながめながら
(ふかい、深い森の奥でひとりで水に澄むことを決めた天使、誰にも止められないけど、潤む文節を贈ることはできる)
水とたましいの境界がなくなる夜、
崩れてゆく雪がひかりの隠喩であることを知っていた
祝うみたいにひびく朗読の意味も
琥珀糖が世界みたいに崩れる意味も
その後の、雪も朗読もひびかない時間の意味も
速度と構造が承認されることで流れる水脈があるなら
暖かな地上の生が創造するたましいの湖があるだろう
その湖面に触れる瞬間、ゆびさきのふるえが
ひとつの意味になる
縫い目として、声として 天衣の天使が笑う
(ひらかれた窓、という隠喩の意味を、海の美しさを剥製にしながら考える、靑い時間のユーフォリア)
永遠、と名付けられた草原に、大切だったものと失くしたはずのもの、子供の頃の綺麗な記憶を引きずって、その音律がすべて(しずかに震えている)翼であることに気付いたら、いつでも言葉を送ってほしい、という祈りの深夜、
崩れそうな花に靑い蝶が止まる、消え去ることと在ることのあいだの小さな物語が僕の神話であること、
雪にのこる足跡みたいに、世界にぼくたちの痕跡が打た��ていることを知り「永遠に消えない火」の存在を想う、空みたいな夜
空にいきのこるしろいものが、雪なのか花なのかわからないまま濡れていること、たましいの潤み
きみに続いている天体の坂を、差出人のない紙飛行機の言葉が高度を探りながら飛んでいることの鮮やかさ
それらを籠めた、
永遠と瞬間を縫い留める夏の終わりの、天使の呼吸がこもる小瓶を投擲して
手紙を手渡すことが天命の靑であること、靑という色調の意味(嘘じゃないよ)
スーサイド・ブルーの想いが唄う、薔薇が隠喩になって光る深夜、
星が墜ちてしまう、という天国の速度で散弾するオフィーリアの高度で
唄われる声がある
そして天命を剥がすコッペリア
色調はこころの棘の痣
その深夜、
月に透ける頁を使って祈りの文を書いている
だから、星を吐いて、雲天を晴らす高さの想像を透かしている
(祈りが墓標であっても、たましいのいろは靑く澄んでいる)
夜更けの街
沈む街
美しさと澄むこと、贖うように月を吐くこと
失楽の眼のいろの兎が、くしゃくしゃの声を投げながら
膨らむ世界を識る深夜、それら全ては
何千回も、何万回も甦る、明日の青空に似ていた
少し前の詩です。友人宛に書きました。
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展翅




遠景の翅が靑い死の速度に育つまでの、
スライド、復帰、破綻、発語、
きみの生命が筆跡している建築
抱きしめる熱の回帰する運動が千年を呪うから、
まだ生まれていない未定の羊皮紙がある
意識の速度が氷の原野に到るとき、
隠喩の薊がひらいてゆく
落ちながら、
まだ唄われる歌の色で。
星々がわたしの喉を小さな釘で切り裂くときに、しずかな恋���を感じたから、生命の秒針がひとりで眠るまで、
あなたの静かに崩れる琥珀糖を海の死を眺める温度で朗読している
あなたがあなたの不定の雫であるように、わたしがわたしのビオトープを覗くように
歳月はあるだろう、だから言葉を喪わないで 歴史の汚れの始まりだから
しずかな底で笑っているから、もう死んでしまった魔法使いの日々は「祈りの廃墟」に捧げられた花の軋轢で、
永久凍土のふたつに分かれた灯台の階段に吹きつける風の冷たさで永遠のドアをノックしている
午睡は歩行者の速度で進み、石の千年を脈拍の単位とする世界が死ぬ瞬間までわずかに凍る夜明けの高さを祈りながら、
わたしは痛む森林が失語する、千年紀のなかで阻害された「少年」の愛撫を奪胎している 愛の形だから
それらの悲愴な物語がわたしを構成する一部であるなら、わたしもひとつの天体だから、
恐らく、
(遠い)(不定の)(形になる前の)(靑の)(試されることとしての)(聞こえていることの)
(綺麗な路地で見たひとの)(灯台守の生命の)(瞳孔がひらいた白の)
(昔の記憶の)(揺り籠の最初の)(見えなかったものの)(軋みつづける天体図の)
(死んでしまった鳥の)(崩れていることの)(あなたの生涯の)
(限りなく清い棺の向こうの)(星座の意味の)(記憶の最初の)(最初で最後の)
「祈りのなかで」
不透明なヤハウェの眼球ではなく、透明な青年の眼球を抱えて。
それらは既に追想された物語であるから、不断の文字を
輪廻する回転としてではなく星座を呼吸する必要がある。
白い天体の比喩としての雪に名前を付けるようにきみの
名前を知るから、それを忘れないことがひとつめの響き。
徐々に神が(頼んでもいないのに)積もらせてゆく人類
の罪を数えるまでもなく、歴史は汚染されている。だが、
まだ唄われる言葉があるからアダムの骨は失語しない。
その意味を持って、細やかなものに名前を付けてゆく。
そして失踪する聖者の高さ!
オレンジ色に濁ってゆく世界が真実であるなら
ぼくの声は死者の声と混じり合っている
糜爛する義足の神は世界をもう創れないから
不在の天から降る衣として、死と言葉があるだろう
歪んてしまった聖なるものの、息と色彩を留めるから
僕の展翅は祈りを知るためにある
この歴史が穢土に変わってしまう前に。
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丘へ

星屑が記述する線の意味
光の傷が流れる意味
鳥の心が廃墟みたいに染まる世の
裏拍で聴く心音が、
筋繊維を月の文様に変える
そして、生後十ヶ月の僕が書いた紅い太陽は
現在も脳裏の雪を溶かしている
捧げながら、
崩落したと聞かされていた橋を飛び越える情動が月の血管を神さまみたいに切ることに至り、僕はあいまいで柔らかい手つきの少女のまぼろしを追って走っていた、世界から零れ落ちた言葉を集めながら、
星々は終身の息であると決めた世界の秩序を創造する老人はもういないから、きみは「祈りの廃墟の国」の底にある「翼の骨」を掘り出して、嘆きの高さで星座を創る、だから僕たちが触れる永遠はチェレンコフ光の靑で満ちている、その瞬間を見て、僕は泣いていた、泣きながら、熱が熱としてうつくしいままであるように祈っていた、街は静かに燃えている、だから走って、雪の速度で
でもさ、僕たちの街が燃えるなら、昔、鉄塔の下できみが僕の腕に刻んだ「靑く澄む失語」の傷は記憶として永遠になるから、きみがその時何を考えていたのか僕にも触れられるかもしれない、数少ない希望として、
花が花であるように祈り続ける千年の樹海は毒を溜め込んで、解毒されないまま鎮静している、僕は奥に、もっとも深いところに入り込んで愛になるまでを待つ、手の先から順番に身体が樹木に変わってしまっても(何も抱きとめられない)、夜の暗闇に呑まれても忘れない(レーテを拒否しているから)、
その速度で、その純粋さで一角獣の言葉を記すことがぼくの意味であり手紙であるとき、靑いインクが軋轢する現象
すぐに墜ちてしまう靑空を綺麗な小瓶に詰めて永遠にするように、そして、
きみが何かを喪���ことは祈りじゃなくて、赦しでもないただのよろこびを欠いた唄だから、それを避けて 灰が灰であるように 夜が夜であるように(Eternity touches eternity, like snow)、でも、
すべて偽の星座である
でも、僕たちの生の痕跡である
その高度の構造を、射抜く昏がりは存在しないから
永遠になる 灰になる 群青として
ハレルヤ、
白夜、
(星の光が褪せてゆく、海の波音も消えている、大地はない、空もない 、ここには雪しか降らない、)
そして、
永遠に触れた指先が呪われたように生から離れてゆく深夜、僕たちがまだ識らない色調の花々が「滅びの朝」という意味に変わって、街の聖者は「赦すこと」と「怒りの日」のあいだで震えている、彼は善意の隠喩の鳥の死骸を拾い、僕たちが知っている丘に埋葬する、
そして世界はリンボになる、同じ速度でアダムが笑う 崩れるところを見ていてほしい
だから、言葉の意味を呪わずに、祈りの清さの梯子を掛けて、
日が暮れる美しい土地の記憶を描いて、
歪に狂わない丘へ行こう
きみが河の向こうへ渡るとき、月光は澄んでゆくから
太陽の無い対岸で、眠りの底に沈むとき、
丘の頂上に天使の死が引きずられてゆく。
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永遠

星辰の高さに折り畳まれて噴出する細分の
手首の傷はみな一様に違う心のひだのカンタータ、でも
きみが怯えて「まだ唄われる声」として歪む時、
ひかりは溺れる蜜の苦い憧憬になるから
瞬刻に、不可視の凍土が祈られる
その意味をふか��、深く呼吸する愛戀が
僕の棘
僕の縄である
だから、捧げる
靑を
心の深層を
月が見えない土地の深みにある「アルヴァ」を拒否する碑文の澱みが星々の高さを軋轢するとき、僕は祈らない教会の鳥を自らの眼で追っていた、だから、「まだ唄うことができる感情」を大切に抱えて君の元へ走っている
奥にある鏡が「自死の星」が星座になることを映す瞬間を防ぐために、靑がまだ意味を成す綺麗な土地を祈っている、その高さでひかる情景を眺めていた、だからこれらは墓標じゃなくて、Dais Iraeの戯言が創った老人の国の滑稽な遊戯、でも
祈りの廃墟の土地はまだダムの底で雪に名前をつける子供たちを記憶しているから、きみは拾った言葉を標本にする、その速度で世界を見ている
世界を見ている、世界を構造している、世界を落馬している、だから罅のある結晶を背負っている
罅のある結晶を背負う、美しい墓所を見る、歴史は汚染されている
きみは一瞬の色調の、破綻の構造を避けて
すべての綺麗な約束の土地のなかで
だから、その尊厳は美しいわたしたちの森
だから、その蒼穹に球体関節の天使が殖える
その速さで世界の果ての愛戀を軋轢してほしい
これがひとつめの、でも唯一の祈り
(アダム、肋骨、名をつけること、雪、純粋、膨らんだ傘、会話、花々、世界の罅、すべてわたしたちの唄われる墓碑)
全てを世界から引きずり出して、まだ唄うことが出来るひとの眼前にオブジェのように提示したら、彼女は言葉のない、音節のない、でも靑い天使の文法の、知らない唄を叫ぶだろう
それが僕たちの土地の言葉である為に、捧げられる靑がある
それが僕たちの廃墟の時間である為に、狂う最果ての時計がある
だから、終焉を眺める天使の眼には、
ひかりの国の美しい子供たちしか映らない
だから落馬してゆくように墜ちる世界は
子供しかいない国の、祈りの土地にならなくてはならない
(ここには雪しか降らず、雨も温度も失ったまま、ひかりだけが咲いている。瞬刻の美しさが永遠であるなら)
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Lethe

星の動脈を切る剃刀
生命に触れる手つき
追想する瞼の深淵は清く
孤児がさえずる唄みたいに、
ふかく震えて
永遠を識る午前二時
廃線を追う速度で走っている情動は月の手首としてふるえる傷に至り、ぼくは星辰の脈を識る、生きていること
でも、喪うはずの言葉は霧じゃなくて、睡蓮が咲く空みたいに殖えるから、怯えながら雪を見て澄んでいた、それから星を拾う少女の手つきを眺めていた、(Phantom of water wounds, and repeat, repeat)、(and, still rain fell)、だから天使が死ぬまで待って、喪うことが祈りと重なる
こんなことは初めてだよね、永遠を縫う心の糸がぼくにしか見えなくて、森林のなかで愛になるまでを待つことが僕に課せられた孤独であること、荒野を駆け抜ける風がすべての墓になること、それらはすべて類型に回収されない物語であること、そして、
物語はいずれ葉脈みたいに夜に繋がって、偽の星座になること 別の物語へ 永遠へ
その高度をしろく想像すること、天と地が分かれない速度で誰にも追いつかれないこと、醜さに、醜い奴らに
そして縫うために、
靑が体内でふるえるまで深夜の祈りを焚きつづけて、その土地にきみが来ないことが唯一の真実として存在する時刻、
肩に降り積もる霧の雪の静けさだけが静脈がふるえることの意味だった、だから傷の星を殖やしている
ふかく吸い込んだ靑い空気がチェレンコフの光であることが永遠を識る手段であるなら、もう贖えない生と死の軋轢を縫い留める手段はなくて、だから街を澄む葬斂の空気はぼくのものであることが証明される(投身している受難の時刻)
ひかりがきえるところで泣いていて、世界を救う勇者がいない土地で走り続けている 対岸を夢見ながら、
だから、
散弾銃の言葉がひかりの壁を穿つ
青空は生と死のランドマークとして
震える、僕たちの祈りを記して
(それでさ、この世界を救うために街の聖者が死ぬことだけが言葉が綴られる意味らしい、嘘だと思うけどね)
そして、
弔いが空白を満たして濁らない祈りの息になる深夜、かえれないところに向かう聖者が綴る言葉の泡が「雪の名前」になる、彼は「滅びること」に潤んで満たされない孤独を生きている、でも彼には何も救えないから、現世では転落する鳥の言葉が振動する
だからぼくは走っていた、色彩にも心無い言葉にも追いつかれないスピードで、涙の高さで、永遠を籠める瑠璃の瓶を手に持ったまま空に向かう階段になる、
だから、軋まないで
月の血脈はまだ流れていて、美しさは消えないから
きみたちの幼年を想うことが水脈である深夜、
永遠につづく坂道に���たましいの水が流れるとき
繰り返される神話があり
死者と聖者のあいだを溶かす言葉がある
メーヴェが空を亀裂する、
だから生を現象する言葉がある
この時刻には意味があるから。
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黑田依直/塔の夢
誰もいない夢で桔梗(くすんだ肋骨の色をしている)を摘みつづける君に近いことが
僕の唯一の喜びで、遠くにいる逢う/逢わない/逢えないはずだった君はまだ
遠景の風を濁らせていた ペールブルー、肉体が乖離する朝
偽証の可能性が残る遺言の、その血の軋む僕達の署名は鉄塔の下で記されて
小さな指で、知らない言葉で、空っぽの心の痕跡を震え、通り抜けている
逢えないはずだった、君は眼の前にいる、でも僕達が逢うことはない
震えるままでいる、世界はことばとおとで出来ている、だから僕たちは夢に棲む
僕達の孤独な心は、幻想は、陶酔は、空っぽの塔を埋め 一羽の青い鳥になるだろう
僕たちが掴まえた響きは、世界に棲み、空に蹴り上げる球体として記憶される
僕たちはまだなん��ためにいるのか知らないけど
夢の中で響きつづける、エーテルを知っている
純潔の君の踊り続ける翼に
摑まって、僕達の言葉は響いてゆく
音のアレフで落丁を縫って
僕たちの人生が、僕たちの生が
一瞬の時間を通り過ぎるパレードに過ぎなかったとしても
僕はまだ君を愛しているし
君と逢うことはない
君とは隔てられている
(ここまでは昨日の記憶、だったはずの君が伝えたこと)
(嘔吐する美しい鹿を見ていた、かつて夜だったはずの)
(花が咲いたよ、君は知らない言葉で名前を付ける)
(子供たちの吹奏を聴きに天使が降りてくる)
(まだ時間は痛みを感じない歌)
「遠くに居るはずだった、君は隣りにいて逢えない。また光のシフォンが震えて、新しい幻が生み出されるから僕たちが掴まえる。遠景の塔、かつて棲んでいた。最初に言葉があったなら、次にあったのは幻想と夢、そして音で、僕たちは絶対に触れ合うことがないという青だった。眠っていいよ、まだ響くから」
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燒翅譚/黑田依直
遠き夢で視し街の邊にきみが呼ぶ 紅い靴がまだ見つからないと
少女おそらく紫苑の転生 舞台から逃げて暗転、Deusは凍る
きみの背中に降る雨滴の靑色にひらく羽から冬は始まる
天使はむしろ聲といふ傳へ 寒月のたゆたひの眼の色のうすべに
てのひらに揚羽蝶纏はせわが戀は夕紅のいろ、血の月の色
夢が生む絹を纏ひて海へゆく かたへのきみは生者だらうか
傷ついた腦髄ふかく鐘は鳴る ここには教會も葬儀もないが
「一切は夢、われらは月の光芒の殘滓」貘はけふも嘯き
眠りこむ世界に蝶と蛾は舞つて目覺めにわれの血潮捧げむ
火の夜の口膣は濡れて 天秤の片邊の咎の芽吹き美し
穏やかに燃える市街 アンドレア、美しく刻を凍りつかせて
墮つるそのまなかひの滅紫 終焉は鐘のごとくに世に響けり
囀る鳥たちといふ初夏の嘘 エデンはふかき紫に燃ゆる
大空が黑紅に滿つ日われらすでに燃ゆる地を視るアダムなりきか
水面に映る星々 失寵の街に光る髪、わがジュスティーヌ
遠近法狂ひて燃ゆる街 生は永久に消えぬ火 滅びの日まで
天使消え人ら朽ちゆく火の夜に鐘は響ゐて千年が經つ
水漬く街、燃ゆる大空 屍には花の滅紫をひとつ與えよ
洪水の街 ふかく搖るる汝の髪はしづくとなりてアンスリウムに
空はすべて汝の眼に注がれ水底に沈みし都市は花とたゆたふ
燃ゆる舟が天に還りゆく日を待てり 少女らは水の底ひに唄ふ
水底の少女は祈る 花、伽藍、世界とくづれ空の靑さへ
落馬す騎士のまなかひの空、花瓣、歌、九重の衣の地獄のとびら
アケロンの畔に臥せる蒼貌の星より墮ちし天使の雙子
神が手を走らせし跡 黑馬が驅くる地に紫壇美しく燃えゆく
白樺の立つ原野にて問ひかける天使の腐爛 Noli Me Tangere.
花、伽藍、海原、こころ、刻、翼、この月の夜に燃え墮つるもの
きみの眼が光の中で閉じてゆく まだ見ぬ天にも夜はあらむか
また雨が、地上を汚す靑き火が降る 君の言葉と灰を流して
歌人の玉野勇希さんが主催された同人誌『ユーフォリクス Ver.1.5』に掲載された、僕の連作になります。物語としての連作の実験でもあります。
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空の記録/黑田依直
バス通りの遠くの光を抜けて、鱗粉が舞う十三時
朗読者と聴衆が失踪したあとの街を駆け抜けて
僕と君が生きてきた数十年のかたちをした土地に出る
心にもない天国の表象を重ねた日記の終章に向かう映画
すべての国のすべての人々が誰かに唄うことを集めた断章
こわれていく伽藍の、くずれていく構造の音を覚える蝶
母親と僕が居た海岸の、少しだけ翳るひかりを収めた写真
眠ったままでまだ起きてこない子供たちの、カーテンに映る意識
世界の記憶の保存庫、歴史から零れた水の為の冷凍庫、想像の海
少し閉じた左目、少女が唄う目覚めと眠りの間、燃えている櫻
偽証、想像、望郷、吹奏、黒子の眼でそれらを記述すること
「誰も知らない想像の海にある、頽落を牽引する馬が消えるまで近
くで話していて欲しかった。君の家に投函するための絵葉書は夜に
ついての記憶を集めた標本で、まだ眠っているから起こさない」
僕が記録するこれらの存在は曖昧で
君が署名する空のひかりを逸らす透明な人々にかき消されてしまう
それを葡萄酒へ、苦い煙に変えて飲み干すまでの短い苦痛を超えて
立ち上がる雲はこころを空に還すための高音質の両翼だ
僕たちの記録は還ってゆき、思春期の子供が吹奏する
天蓋を支える智天使は彼らの演奏を聴くために地上に降るだろう
どこにもなにもなくなって、すべてはあいまいなうみになっていく
それが僕たちの消えることと在ることの間にある映像だった
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櫻樹紀/黑田依直
さいはてに咲く一樹最後の一樹汝なれを呼びとむさくら、櫻と
天体、現世、失寵の眼と堕ちつづく櫻は霧に消えかへり、春
世界頽落その弔ひの底ひへと幾世の淵の櫻舞い散る
琥珀に眠るきみを妬みて雲珠桜毟り滅びるこの世を身捨つ
天使流罪後千年の日の島々に累々と立つさくら、美うるはし
天球儀軋む臥所にふかぶかと刺す花の枝 誰ぞ滴る
故郷を持たぬたましひ沈む湖に千年ののち櫻咲き初む
櫻嵐はわが鏡身の鳥に充ちアクロの丘へ ゆめ撃たれるな
櫻樹滅びし幾世を祈りつつ呪へ また雨が降るゲヘナの夜に
旅立ちのかたへの花は唄ひそむ繭籠もる世は目覚めの前と
友人の玉野勇希さんと一緒に作ったネプリ『さくらのはなをすごくもやした/櫻樹紀』の僕の連作になります。
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